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特表2024-502935Cu及びFe交換したゼオライトを含むSCR触媒の製造方法、上記触媒、上記触媒を含むシステム、及びこれを使用した排気ガス処理
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-24
(54)【発明の名称】Cu及びFe交換したゼオライトを含むSCR触媒の製造方法、上記触媒、上記触媒を含むシステム、及びこれを使用した排気ガス処理
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/30 20060101AFI20240117BHJP
   B01J 29/76 20060101ALI20240117BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240117BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20240117BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
B01J37/30 ZAB
B01J29/76 A
B01D53/94 222
B01D53/94 228
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/08 B
F01N3/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534738
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(85)【翻訳文提出日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2021084729
(87)【国際公開番号】W WO2022122796
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】20212708.0
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ヤング,ジェフ エイチ
(72)【発明者】
【氏名】シュエ,ウェン-メイ
(72)【発明者】
【氏名】ロト,スタンリー エー.
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA18
3G091AB02
3G091AB04
3G091AB13
3G091BA01
3G091CA16
3G091GB01W
3G091GB09X
4D148AA06
4D148AA08
4D148AA13
4D148AA18
4D148AB01
4D148AB02
4D148AB09
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4D148CD05
4D148DA03
4D148DA11
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169AA14
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA21C
4G169BA29C
4G169BC16A
4G169BC16B
4G169BC17A
4G169BC18A
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BD03A
4G169CA03
4G169CA08
4G169CA13
4G169DA06
4G169EA18
4G169EA27
4G169EE06
4G169EE09
4G169FA01
4G169FA02
4G169FA06
4G169FB23
4G169FB30
4G169FC03
4G169FC08
4G169ZA02A
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4G169ZA06A
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4G169ZA11A
4G169ZA13A
4G169ZA14A
4G169ZA14B
4G169ZA19A
4G169ZA38A
4G169ZA40A
4G169ZA42A
4G169ZD01
4G169ZD05
4G169ZF02A
4G169ZF04A
4G169ZF04B
4G169ZF05A
4G169ZF05B
4G169ZF07A
(57)【要約】
本発明は、窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒を調製するための方法であって、
(1)骨格構造中にSiO及びXを含むゼオライト材料を提供する工程であって、Xが3価の元素である工程;
(2)工程(1)で提供されたゼオライト材料を、1種以上の鉄(II)及び/又は鉄(III)含有化合物とのイオン交換手順に供する工程;
(3)工程(2)で得られたFeイオン交換ゼオライト材料と、1種以上の銅(II)含有化合物と、溶媒系とを含むスラリーを調製する工程;
(4)基材を用意し、及び該基材上に工程(3)で得られたスラリーをコーティングする工程;
(5)工程(4)で得られた被覆基材を焼成する工程;
を含み、上記ゼオライト材料はLTA、AFT、AFV、SAV、SFW、TSC、FAU、MFI、BEA、FER、MOR、CHA、AEI、RTH、LEV、DDR、KFI、ERI、及びAFX、及びこれらの2種以上の混合構造からなる群から選択されるフレームワーク型構造を有する方法に関する。更に本発明は、本発明の方法に従い得られる窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒及びその使用に関する。更に本発明は、内燃機関から排出される排気ガスを処理するための排気ガス処理システムであって、本発明に従う窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒を含む排気ガス処理システムに関する。最後に、本発明は、本発明に従う窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒を使用した、窒素酸化物の選択的触媒還元の方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒を調製するための方法であって、
(1)骨格構造中にSiO及びXを含むゼオライト材料を提供する工程であって、Xが3価の元素である工程;
(2)工程(1)で提供されたゼオライト材料を、1種以上の鉄(II)及び/又は鉄(III)含有化合物とのイオン交換手順に供する工程;
(3)工程(2)で得られたFeイオン交換ゼオライト材料と、1種以上の銅(II)含有化合物と、溶媒系とを含むスラリーを調製する工程;
(4)基材を用意し、及び該基材上に工程(3)で得られたスラリーをコーティングする工程;
(5)工程(4)で得られた被覆基材を焼成する工程;
を含み、前記ゼオライト材料はLTA、AFT、AFV、SAV、SFW、TSC、FAU、MFI、BEA、FER、MOR、CHA、AEI、RTH、LEV、DDR、KFI、ERI、及びAFX、及びこれらの2種以上の混合構造からなる群から選択されるフレームワーク型構造を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
XがAl、B、In、Ga及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(2)で得られたFeイオン交換ゼオライト材料は、Feイオン交換ゼオライト材料中、SiO、Al及びFeとして計算したFeの100質量%を基準として、Feとして計算して、0.1~8質量%の範囲の量でFeを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
工程(3)で得られたスラリーは、焼成スラリーの100質量%に基づいて、0.05~8質量%の範囲の量で、CuOとして計算されるCuを含有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程(3)で調製されたスラリーが、1種以上のバインダーを更に含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記スラリーは、焼成スラリーの100質量%に基づいて0.5~15質量%の範囲の量で前記1種以上のバインダーを含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程(3)で調製されたスラリーが1種以上の糖をさらに含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記スラリーは、前記スラリーに含まれる溶媒系100質量%に対して10質量%以下の量で前記1種以上の糖を含むことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法に従って得ることができる、及び/又は得られる窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒。
【請求項10】
内燃機関から排出される排気ガスを処理する排気ガス処理システムであって、請求項9に記載の窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒と、ディーゼル酸化触媒、アンモニア酸化触媒、選択的触媒還元触媒、触媒化煤フィルター及びSCR/AMOx触媒のうちの1種以上とを含む排気ガス処理システム。
【請求項11】
ディーゼル酸化触媒、触媒化煤フィルター及び窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒を含む請求項10に記載のシステムであって、前記ディーゼル酸化触媒は、前記触媒化煤フィルターの上流に位置し、及び前記触媒化煤フィルターは、窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒の上流に位置することを特徴とするシステム。
【請求項12】
ディーゼル酸化触媒、触媒化煤フィルター及び窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒を含む請求項10に記載のシステムであって、前記ディーゼル酸化触媒は、前記窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒の上流に位置し、及び窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒は、触媒化煤フィルターの上流に位置していることを特徴とするシステム。
【請求項13】
窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒と触媒化煤フィルターとを含む請求項10に記載のシステムであって、前記窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒は、前記触媒化煤フィルターの上流に位置していることを特徴とするシステム。
【請求項14】
窒素酸化物の選択的触媒還元のための方法であって、前記窒素酸化物は排気ガス流中に含まれており、前記方法は、
(1)前記排気ガス流を提供する工程;
(2)工程(1)で提供された排気ガス流を、請求項9に記載の選択的触媒還元用の触媒に通すか、請求項10~13のいずれか1項に記載の排気ガス処理システムを介して通過させる工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
窒素酸化物の選択的触媒還元のために、請求項9に記載の触媒、又は請求項10~13のいずれか1項に記載の排気ガス処理システムを使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒の調製方法及び本発明の方法に従って得られる、窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒及びその使用に関する。更に本発明は、内燃機関、好ましくはディーゼルエンジンから出る排気ガスを処理するための排気ガス処理システムであって、本発明に従う窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒を含むシステムに関する。最後に本発明は、本発明に従う窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒を採用した窒素酸化物の選択的触媒還元方法に関する。
【背景技術】
【0002】
傾向として最新の大型ディーゼルエンジンのNOxのエンジン排出量は、より燃費の良いエンジンの製造により増加すると同時に、後処理システムのNOx変換の要求が増加している。一部のエンジンでは、95%を超えるNOx変換がすでに義務付けられている。これと同時に、亜酸化窒素(NO)の目標は0.1~0.14 g / kWhの範囲であるため、これらの目標を達成することはより困難になる。従って、NOx転化率が高く、N2O形成が中程度から低い(< 0.1 g / kWh)SCR触媒は、市場の要件に対応するために必須であるように思われる。
【0003】
Fe-ゼオライトとCu-ゼオライトを1つの触媒系に組み合わせることで、この最適化要件に対処できることは周知である。例えば、特許文献1(国際公開第2016/070090号A1)は、銅で促進された第1のモレキュラーシーブと、鉄で促進された第2のモレキュラーシーブとを含む触媒物品を開示している。特許文献2(US 2011/0305614 A1)はまた、触媒、特にCu-CHAとFe-MFLの混合物を含む選択的触媒還元(SCR)触媒を開示している。最後に、特許文献3(国際公開第2017/153894 A1号)は、金属イオン交換モレキュラーシーブ、Cu-CHAを開示しており、これは少なくとも1つの追加の金属、好ましくはAlとイオン交換される。
【0004】
一方、特許文献4(国際公開第2015/101930A1号)は、BEA-タイプフレームワーク構造を有する、バイメタル交換ゼオライトを調製するための方法であって、銅とのイオン交換を行う第1の工程と、それに続く鉄とのイオン交換を行う工程とを含む方法に関する。同様に、特許文献5(国際公開第2017/134581 A1号)は、鉄及び銅でバイメタル交換されたCHA型骨格構造を有するゼオライトを調製するための方法を開示し、ここで、バイメタル交換ゼオライトは、続いてSCRウォッシュコートを調製するために採用されている。
【0005】
特許文献6(国際公開第2018/10718号A)は、Cuイオン交換ゼオライト又はFeイオン交換ゼオライトのいずれかを調製するためのスラリー内イオン交換方法に関する。
【0006】
従って現在の開発状況を考慮すると、特に長期間の使用中にエイジング(aging)条件にさらされた後、NO排出量の増加につながることなく、NOx変換活性の増加を示す触媒の必要性が残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2016/070090号A1
【特許文献2】US 2011/0305614 A1
【特許文献3】国際公開第2017/153894 A1号
【特許文献4】国際公開第2015/101930A1号
【特許文献5】国際公開第2017/134581 A1号
【特許文献6】国際公開第2018/10718号A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
標準的なSCR及び高速SCRガス供給条件の両方で高いNOx変換レベルを維持しながら、NO排出量を大幅に削減することを可能にする選択的触媒還元触媒及びそのような触媒性能を示す選択的触媒還元触媒の調製方法を提供することが本発明の目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従ってFe-CHA SCR触媒スラリーに比較的少量の銅を追加充填することにより、標準的なSCR条件下でのSCRプロセス中に得られるウォッシュコート触媒のNOメイクを大幅に低減できることが見出されたのは、驚くべきことであった。それに加えて、同時に、銅による前記追加の積載がNOx変換活性の実質的な増加をもたらすことが予想外に見出された。更に、驚くべきことに、Fe-CHAに銅を更に積載(loading)すると、Fe-CHA触媒のNOx変換活性がさらに相当に増加することが見出された。さらに、特に標準的なSCR条件下で、エイジング後に低いNOx活性を示すFe-CHA触媒とは対照的に、Fe-CHA触媒スラリーに銅を積載すると、得られるウォッシュコート触媒において、全く予想外に上記傾向が逆転し、エイジング後に特に標準のSCR条件下で、更に優れてさえいる性能を発揮することが全く予想外に見出された。
【0010】
従って本発明は、窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒を調製するための方法であって、
(1)骨格構造中にSiO及びXを含むゼオライト材料を提供する工程であって、Xが3価の元素である工程;
(2)工程(1)で提供されたゼオライト材料を、1種以上の鉄(ll)及び/又は鉄(III)含有化合物とのイオン交換手順に供する工程;
(3)工程(2)で得られたFeイオン交換ゼオライト材料と、1種以上の銅(ll)含有化合物と、溶媒系とを含むスラリーを調製する工程;
(4)基材を用意し、及び該基材上に工程(3)で得られたスラリーをコーティングする工程;
(5)工程(4)で得られた被覆基材を焼成する工程;
を含み、上記ゼオライト材料はLTA、AFT、AFV、SAV、SFW、TSC、FAU、MFI、BEA、FER、MOR、CHA、AEI、RTH、LEV、DDR、KFI、ERI、及びAFX、及びこれらの2種以上の混合構造からなる群から選択されるフレームワーク型構造を有し、及びより好ましくは上記ゼオライト材料は、CHA及び/又はAEIタイプフレームワーク型構造、好ましくはCHAタイプフレームワーク構造を有する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に従えば、XはAl、B、In、Ga、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されることが好ましく、より好ましくはAl、B、In、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され、ここでXはより好ましくはAl及び/又はBを表し、 XはAlであることが好ましい。
【0012】
本発明に従えば、工程(1)で提供されるゼオライト材料は、SiO:Xモル比を好ましくは1~200の範囲で示し、この範囲はより好ましくは5~120、更に好ましくは10~80、更に好ましくは15~50、更に好ましくは20~40であり、 より好ましくは25~35である。
【0013】
本発明によれば、工程(1)で提供されるゼオライト材料は、元素として計算して、1000ppm以下の鉄、より好ましくは0~100ppm、更に好ましくは0~10ppmの鉄を含むことが好ましい。
【0014】
本発明に従えば、1種以上の鉄(II)及び/又は鉄(III)含有化合物は、硫酸鉄、亜硫酸鉄、硫酸水素鉄、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、フッ化鉄、過塩素酸鉄、硝酸鉄、亜硝酸鉄、リン酸鉄、リン酸二水素鉄、リン酸水素鉄、炭酸鉄、炭酸水素鉄、酢酸鉄、クエン酸鉄、マロン酸鉄、シュウ酸鉄、酒石酸鉄、ヘキサシアノ鉄酸塩、フェロセン、及びフェロセニウム塩(これらの2種以上の組み合わせを含む)からなる群から選択されることが好ましく、これはより好ましくは硝酸鉄(III)、酢酸鉄(II)、クエン酸鉄(III)アンモニウム、硫酸鉄(II)、及びシュウ酸鉄(II)(これらの2種以上の組み合わせを含む)からなる群から選択され、ここでより好ましくは硝酸鉄(III)及び/又は酢酸鉄(II)が、1種以上の鉄(II)及び/又は鉄(III)含有化合物として採用される。
【0015】
本発明に従えば、工程(2)におけるイオン交換は、1種以上の溶媒を含む溶媒系で行われることが好ましく、ここで上記1種以上の溶媒は好ましくは、水、有機溶媒、及びこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくはイオン交換水、アルコール、及びこれらの混合物からなる群から選択され、 より好ましくは脱イオン水、メタノール、エタノール、プロパノール、及びこれらの混合物からなる群から選択され、ここでより好ましくは1種以上の溶媒が水を含み更に好ましくは脱イオン水が溶媒系として使用される。
【0016】
本発明に従えば、工程(2)におけるイオン交換は、20~100℃の範囲の温度で行われることが好ましく、この温度は30~90℃がより好ましく、40~80℃が更に好ましく、50~70℃が更に好ましく、55~65℃が更に好ましい。本発明に従えば、工程(2)におけるイオン交換は、0.25~10時間の範囲の持続時間で行われることが好ましく、この時間は好ましくは0.5~5時間、より好ましくは1~3時間、更に好ましくは1.5~2.5時間の範囲である。
【0017】
本発明に従えば、工程(2)で得られるFeイオン交換ゼオライト材料がFeを、Feイオン交換ゼオライト材料中のSiO、Al、及びFeとして計算されるFeの100質量%に基づいて、0.1~8質量%の範囲の量で含むことが好ましく、この量はより好ましくは0.5~5質量%、より好ましくは1.5~3.5質量%であり、より好ましくは1.5~3質量%、より好ましくは2~2.8質量%であり、及び更に好ましくは2.2~2.6質量%である。
【0018】
本発明によれば、前記1種以上の銅(II)含有化合物が、CuO、塩化銅(II)、臭化銅(II)、過塩素酸銅(II)、亜硫酸銅(II)、硫酸水素銅(II)、硫酸銅(II)、亜硝酸銅(II)、硝酸銅(II)、リン酸二水素銅、リン酸水素銅(II)、リン酸銅(II)、炭酸水素銅、炭酸銅(II)、酢酸銅(II)、クエン酸銅(II)、マロン酸銅(II)、シュウ酸銅(II)、酒石酸銅(II)、及びこれらの2つ以上の混合物からなる群から選択されることが好ましく、これはより好ましくはCuO、塩化銅(II)、硫酸銅(II)、硝酸銅(II)、酢酸銅(II)及びこれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、ここで更に好ましくは、銅(II)含有化合物はCuOである。
【0019】
本発明に従えば、工程(3)で得られるスラリーは、CuOとして計算されるCuを、焼成スラリー100質量%に対して0.05~8質量%の範囲の量で含有することが好ましく、この量はより好ましくは、0.05~8質量%であり、更に好ましくは0.1~5質量%であり、更に好ましくは0.3~3質量%であり、更に好ましくは0.5~2質量%であり、更に好ましくは0.7~1.5質量%であり、更に好ましくは0.8~1.2質量%であり、更に好ましくは0.9~1.1質量%である。
【0020】
本発明に従えば、工程(3)における溶媒系が1種以上の溶媒を含むことが好ましく、ここで上記1種以上の溶媒は好ましくは、水、有機溶媒、及びこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは脱イオン水、アルコール、及びこれらの混合物からなる群から選択され、更に好ましくは脱イオン水、 メタノール、エタノール、プロパノール、及びこれらの混合物からなる群から選ばれ、ここでより好ましくは1種以上の溶媒が水を含み、そしてより好ましくは脱イオン水が溶媒系として使用される。
【0021】
本発明に従えば、工程(3)で調整されるスラリーは、スラリーの100質量%に対して15~75質量%の固形分含有量を示すことが好ましく、この量はより好ましくは、20~65質量%であり、更に好ましくは25~60質量%であり、更に好ましくは30~55質量%であり、更に好ましくは33~50質量%であり、更に好ましくは35~45質量%であり、及び更に好ましくは38~42質量%である。
【0022】
本発明に従えば、工程(3)で調製されたスラリーは1種以上のバインダーを更に含むことが好ましく、より好ましくはAl、Si、及び/又はZrに基づく1種以上のバインダー、好ましくはAl及び/又はZrに基づく1種以上のバインダー、より好ましくはZrに基づく1種以上のバインダーを更に含み、ここでより好ましくは、工程(3)で調製されたスラリーは、バインダーとしてZrOの1種以上の供給源を更に含有し、ここで上記ZrOの1種以上の供給源は、好ましくは1種以上のジルコニウム塩を含み、より好ましくは塩化ジルコニル、酢酸ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセトナート、水酸化ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、及びオキシ塩化ジルコニウム(及びこれらの2種上の混合物を含む)からなる群より選択される1種以上のジルコニウム塩を含み、更に好ましくは酢酸ジルコニウム、 ジルコニウムアセチルアセトナート、水酸化ジルコニウム、及び炭酸ジルコニウム(これらの2種以上の混合物を含む)から成る群から選択され、ここでより好ましくは、1種以上のジルコニウム塩は、酢酸ジルコニウムを含み、ここでより好ましくは工程(3)で調製されたスラリーは、バインダーとして酢酸ジルコニウムを更に含む。上記特定の、及び好ましい実施形態に従えば、スラリーは、焼成スラリーの100質量%に基づいて、0.5~15質量%の範囲の量で上記1種以上のバインダーを含むことが好ましく、この量は、より好ましくは1~10質量%、更に好ましくは3~7質量%、更に好ましくは4~6質量%であり、 更に好ましくは4.5~5.5質量%である。
【0023】
本発明に従えば、工程(3)で調製されたスラリーが1種以上の糖をさらに含むことが好ましく、ここで上記1種以上の糖は好ましくはスクロースを含み、より好ましくはスクロースが1種以上の糖として使用される。上記特定の、及び好ましい実施形態に従えば、上記スラリーは、上記スラリーに含まれる溶媒系100質量%に対して10質量%以下の量の上記1種以上の糖類を含むことが好ましく、この量は、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下の量、更に好ましくは3質量%以下の量、更に好ましくは2質量%以下の量、より好ましくは1質量%以下の量、より好ましくは0.5質量%以下の量、及び更に好ましくは0.1質量%以下の量である。
【0024】
本発明に従えば、工程(4)におけるスラリーの塗工(コーティング)前に、工程(3)で得られたスラリーを5~60℃の範囲の温度に維持することが好ましく、この温度はより好ましくは10~50℃の範囲、更に好ましくは15~45℃の範囲、更に好ましくは18~30℃の範囲であり、更に好ましくは20~25℃の範囲である。上記特定の、及び好ましい実施形態に従えば、スラリーを上記温度に、0.1~72時間の範囲の持続時間、維持することが好ましく、この時間はより好ましくは0.5~48時間、より好ましくは1~36時間、より好ましくは3~30時間、更に好ましくは6~24時間、更に好ましくは10~20時間、更に好ましくは12~18時間、及び更に好ましくは14~16時間である。
【0025】
本発明に従えば、工程(4)で提供される基材(substrate)は、壁流又は流通(flow-through)基材であり、好ましくは壁流又は流通ハニカム基材であり、及びより好ましくは流通ハニカム基材である。
【0026】
本発明に従えば、工程(4)で提供される基材(substrate)は、好ましくはセラミックス物質を含み、セラミックス物質から構成されることが好ましく、ここで上記セラミック物質は、好ましくは、アルミナ、シリカ、ケイ酸塩、アルミノシリケート、コージェライト、ムライト、アルミノチタン酸塩、炭化ケイ素、ジルコニア、マグネシア、より好ましくはスピネル及びチタニアの1種以上を含み、及び好ましくはこれらから成り、及びこれらは、更に好ましくは炭化ケイ素及びコージェライトのうちの1種以上であり、さらに好ましくはコーディエライトである。
【0027】
本発明に従えば、工程(4)の後及び工程(5)における焼成の前に、塗布された基材をガス雰囲気中で乾燥させることが好ましく、ここでガス雰囲気の温度は80~250℃の範囲、より好ましくは90~200℃の範囲、更に好ましくは100~150℃の範囲であり、より好ましくは110~130℃の範囲であり、そしてガス雰囲気は空気であることが更に好ましい。上記特定の及び好ましい実施形態に従えば、乾燥は10~180分の範囲の持続時間で行われることが好ましく、この持続時間はより好ましくは20~120分の範囲、さらに好ましくは30~90分の範囲、更に好ましくは40~80分の範囲である。
【0028】
本発明に従えば、工程(5)における焼成は、350~800℃の範囲の温度で行われることが好ましく、この温度は400~700℃の範囲がより好ましく、450~650℃の範囲がさらに好ましく、及び500~600℃の範囲が更に好ましい。
【0029】
本発明に従えば、工程(5)における焼成が10分から180分の範囲の持続時間で行われることが好ましく、この時間は更に好ましくは20~120分の範囲であり、より好ましくは30~90分の範囲であり、更に好ましくは40~80分の範囲である。
【0030】
本発明に従えば、工程(5)における焼成は空気を含むガス雰囲気中で行われることが好ましく、上記工程(5)における焼成は空気中で行われることが好ましい。
【0031】
本発明に従えば、前記工程が工程(1)、(2)、(3)、(4)及び工程(5)からなることが好ましい。
【0032】
本発明は更に、本発明方法の特定の及び好ましい実施形態に従って得ることが可能な、及び/又は得られる窒素酸化物の選択的触媒還元のための触媒に関する。
【0033】
これに加えて本発明はまた、内燃機関、好ましくはディーゼルエンジンから出る排気ガスを処理するための排気ガス処理システムであって、本発明の特定の、及び好ましい実施形態の何れかによる窒素酸化物の選択的触媒還元のための触媒を含むシステム、及び ディーゼル酸化触媒、アンモニア酸化触媒、選択的触媒還元触媒、触媒煤フィルター及びSCR/AMOx触媒のうちの1つ以上を含む排気ガス処理システムにも関する。
【0034】
本発明に従えば、本発明の特定の好ましい実施形態のいずれかによるディーゼル酸化触媒、触媒化煤フィルター及び窒素酸化物の選択的触媒還元のための触媒を含むシステムが好ましく、ここでディーゼル酸化触媒は、触媒化煤フィルターの上流に位置し、及び上記触媒化煤フィルターは、上記窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒の上流に位置し、 ここで、ディーゼル酸化触媒は、好ましくはシステムの第1触媒であり、及び好ましくは、エンジンとディーゼル酸化触媒との間に触媒が存在しない。更に上記システムは、窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒の下流に位置する選択的触媒還元触媒を更に含むことが好ましい;上記システムは、アンモニア酸化触媒を更に含むことが好ましく、ここで上記アンモニア酸化触媒は、前記選択的触媒還元触媒の下流に位置する。また更に、及びこれとは独立して、システムが還元剤インジェクターを更に備えることが好ましく、ここで還元剤インジェクターは、触媒化された煤フィルターの下流に位置し、窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒の上流に位置し、ここで還元剤は尿素であることが好ましい。
【0035】
この替わりに、本発明の特定の及び好ましい実施形態のいずれかによるディーゼル酸化触媒、触媒化煤フィルター及び窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒を含む本発明によるシステムが好ましく、ここでディーゼル酸化触媒は、窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒の上流に配置され、及び窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒は、触媒化煤フィルターの上流に配置され;上記ディーゼル酸化触媒は、好ましくは上記システムの第1触媒であり、及び好ましくは上記エンジンとディーゼル酸化触媒との間に触媒が存在しない。
【0036】
上記代替的な好ましい実施形態に従えば、上記システムは更に、窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒の下流及び触媒化煤フィルターの上流に位置する選択的触媒還元触媒をさらに含むことが好ましく;上記システムは、アンモニア酸化触媒を更に備えることが好ましく、上記アンモニア酸化触媒は、上記触媒還元触媒の下流側及び上記触媒化煤フィルターの上流に位置する。
【0037】
これに加えて、又はこれとは独立して、上記代替的な好ましい実施形態に従い、上記システムが触媒化煤フィルターの下流に位置するSCR/AMOx触媒を更に含むことが好ましく、ここで上記システムは好ましくは、上記SCR/AMOx触媒の上流、及び上記触媒化煤フィルターの下流に位置する還元剤インジェクターを更に含み、及び前記還元剤は尿素であることがより好ましい。
【0038】
更にこれに加えて、又はこれらとは独立して、上記代替的に好ましい実施形態に従えば、これらが還元剤インジェクターを更に備えることが更にさらに好ましく、ここで上記還元剤インジェクターは、上記ディーゼル酸化触媒の下流及び窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒の上流に位置し、上記還元剤は尿素であることが好ましい。
【0039】
更に代替的に、本発明の特定かつ好ましい実施形態のいずれかによる窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒と、触媒化煤フィルターとを含む本発明に係るシステムにおいて、上記窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒は、触媒化煤フィルターの上流に配置され、上記窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒は好ましくは、システムの第1の触媒であり、及び好ましくは、エンジンと窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒との間に触媒が存在しない。
【0040】
上記代替的に好ましい実施形態に従えば、上記システムは、窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒の下流及び触媒化煤フィルタの上流に位置する選択的触媒還元触媒を更に含むことが好ましい;ここで上記システムは、アンモニア酸化触媒を更に備えることが好ましく、上記アンモニア酸化触媒は、上記選択的触媒還元触媒の下流側及び前記触媒化煤フィルターの上流側に位置する。
【0041】
これに加えて、又はこれとは独立して、上記代替的に好ましい実施形態に従えば、上記システムは、第1の還元剤インジェクターを更に含み、上記第1の還元剤インジェクターは、窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒の上流に配置され、ここで上記還元剤は尿素であることが好ましい。
【0042】
更にこれに加えて、又はそれとは独立して、上記代替的に好ましい実施形態に従い、上記システムが、触媒化煤フィルターの下流に位置するSCR/AMOx触媒をさらに含むことがお更に好ましく、ここで上記システムは好ましくは、上記SCR/AMOx触媒の上流及び上記触媒化煤フィルタの下流に位置する還元剤インジェクターをさらに備え、 還元剤は、より好ましくは尿素である。
【0043】
上記態様に加え本発明は更に、窒素酸化物の選択的触媒還元のための方法であって、上記窒素酸化物は排気ガス流中に含まれており、上記方法は、
(1)上記排気ガス流を、好ましくはディーゼルエンジンから提供する工程;
(2)工程(1)に提供された排気ガス流を、本発明の特定の及び好ましい実施形態に従う選択的触媒還元用の触媒に通すか、又は本発明の特定の及び好ましい実施形態に従う排気ガス処理システムを介して通過させる工程、
を含む方法に関する。
【0044】
最後に本発明は更に、本発明の特定の、及び好ましい実施形態のいずれかに従う触媒の、窒素酸化物、好ましくはディーゼルエンジンから出る窒素酸化物の選択的触媒還元のための使用、又は本発明の特定の、及び好ましい実施形態のいずれかに従う排気ガス処理システムの、窒素酸化物、好ましくはディーゼルエンジンから出る窒素酸化物の選択的触媒還元のための使用に関する。
【0045】
本発明は、以下の実施形態のセット、及び記載された従属関係及びバックリファレンスから得られる実施形態の組合せによってさらに説明される。特に、例えば「(The)…実施形態1~4のいずれか1つの」等の用語との関連で、実施形態の範囲が言及される各場合において、この範囲の全ての実施形態は、この技術分野の当業者にとって、明確に開示されていることが意味される。すなわち、この用語の記述は、この技術分野の当業者にとって、「(The)…実施形態1、2、3及び4の何れか1つ」と同意語であると理解される。更に、以下の一連の実施形態は、保護の範囲を決定する請求項のセットではなく、本発明の一般的かつ好ましい態様に向けられた説明の適切に構造化された部分を表すことに明示的に留意されたい。
【0046】
1.窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒を調製するための方法であって、
(1)骨格構造中にSiO及びXを含むゼオライト材料を提供する工程であって、Xが3価の元素である工程;
(2)工程(1)で提供されたゼオライト材料を、1種以上の鉄(II)及び/又は鉄(III)含有化合物とのイオン交換手順に供する工程;
(3)工程(2)で得られたFeイオン交換ゼオライト材料と、1種以上の銅(II)含有化合物と、溶媒系とを含むスラリーを調製する工程;
(4)基材を用意し、及び該基材上に工程(3)で得られたスラリーをコーティングする工程;
(5)工程(4)で得られた被覆基材を焼成する工程;
を含み、上記ゼオライト材料はLTA、AFT、AFV、SAV、SFW、TSC、FAU、MFI、BEA、FER、MOR、CHA、AEI、RTH、LEV、DDR、KFI、ERI、及びAFX、及びこれらの2種以上の混合構造からなる群から選択されるフレームワーク型構造を有し、該フレームワーク型構造は好ましくは、CHA、AEI、RTH、及びAFX、及びこれらの2種以上の混合構造からなる群から選択され、より好ましくは、ゼオライト材料はCHA及び/又はAEIタイプのクレームワーク型構造を有し、好ましくはCHAタイプのクレームワーク型構造を有する、方法。
【0047】
2.XがAl、B、In、Ga及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され、好ましくはAl、B、In及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくはXがAl及び/又はB、好ましくはA1である、実施形態1に記載の方法。
【0048】
3.工程(1)で提供されたゼオライト材料が、SiO:Xモル比を、1~200の範囲に示し、より好ましくは5~120、更に好ましくは10~80、更に好ましくは15~50、更に好ましくは20~40、 より好ましくは25~35の範囲に示す、実施形態1又は2に記載の方法。
【0049】
4.工程(1)で提供されるゼオライト材料は、元素として計算して、1000ppm以下の鉄、好ましくは0~100ppm、及び更に好ましくは0~10ppmの鉄を含む、実施形態1~3の何れかに記載の方法。
【0050】
5.1種以上の鉄(II)及び/又は鉄(III)含有化合物は、硫酸鉄、亜硫酸鉄、硫酸水素鉄、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、フッ化鉄、過塩素酸鉄、硝酸鉄、亜硝酸鉄、リン酸鉄、リン酸二水素鉄、リン酸水素鉄、炭酸鉄、炭酸水素鉄、酢酸鉄、クエン酸鉄、マロン酸鉄、シュウ酸鉄、酒石酸鉄、ヘキサシアノ鉄酸塩、フェロセン、及びフェロセニウム塩(これらの2種以上の組み合わせを含む)からなる群から選択され、好ましくは硝酸鉄(III)、酢酸鉄(II)、クエン酸鉄(III)アンモニウム、硫酸鉄(II)、及びシュウ酸鉄(II)(これらの2種以上の組み合わせを含む)からなる群から選択され、より好ましくは硝酸鉄(III)及び/又は酢酸鉄(II)が、1種以上の鉄(II)及び/又は鉄(III)含有化合物として採用される、実施形態1~4の何れかに記載の方法。
【0051】
6.工程(2)におけるイオン交換は、1種以上の溶媒を含む溶媒系で行われ、上記1種以上の溶媒は好ましくは、水、有機溶媒、及びこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは脱イオン水、アルコール、及びこれらの混合物からなる群から選択され、 より好ましくは脱イオン水、メタノール、エタノール、プロパノール、及びこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは1種以上の溶媒が水を含み、更に好ましくは脱イオン水が溶媒系として使用される、実施形態1~5の何れかに記載の方法。
【0052】
7.工程(2)におけるイオン交換が、20~100℃の範囲の温度、好ましくは30~90℃の範囲の温度、より好ましくは40~80℃の範囲の温度、より好ましくは50~70℃の範囲の温度、及びより好ましくは55~65℃の範囲の温度で行われる、実施形態1~6の何れかに記載の方法。
【0053】
8.工程(2)におけるイオン交換が、0.25~10時間の範囲の持続時間、好ましくは0.5~5時間、より好ましくは1~3時間、及びより好ましくは1.5~2.5時間の持続時間で行なれる、実施形態1~7の何れかに記載の方法。
【0054】
9.工程(2)で得られたFeイオン交換ゼオライト材料は、Feイオン交換ゼオライト材料中、SiO、Al及び(Feとして計算して)Feの100質量%を基準として、Feとして計算して、0.1~8質量%の範囲、好ましくは0.5~5質量%の範囲、より好ましくは1~3.5質量%の範囲、より好ましくは1.5~3質量%の範囲、より好ましくは2~2.8質量%の範囲、及びより好ましくは2.2~2.6質量%の範囲の量でFeを含む、実施形態1~8の何れかに記載の方法。
【0055】
10.上記1種以上の銅(II)含有化合物が、CuO、塩化銅(II)、臭化銅(II)、過塩素酸銅(II)、亜硫酸銅(II)、硫酸水素銅(II)、硫酸銅(II)、亜硝酸銅(II)、硝酸銅(II)、リン酸二水素銅、リン酸水素銅(II)、リン酸銅(II)、炭酸水素銅、炭酸銅(II)、酢酸銅(II)、クエン酸銅(II)、マロン酸銅(II)、シュウ酸銅(II)、酒石酸銅(II)、及びこれらの2つ以上の混合物からなる群から選択され、好ましくはCuO、塩化銅(II)、硫酸銅(II)、硝酸銅(II)、酢酸銅(II)及びこれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、更に好ましくは、銅(II)含有化合物はCuOである、実施形態1~9の何れかに記載の方法。
【0056】
11.工程(3)で得られるスラリーは、CuOとして計算されるCuを、焼成スラリー100質量%に対して0.05~8質量%の範囲、好ましくは0.05~8質量%の範囲、より好ましくは0.1~5質量%の範囲、より好ましくは0.3~3質量%の範囲、より好ましくは0.5~2質量%の範囲、より好ましくは0.7~1.5質量%の範囲、より好ましくは0.8~1.2質量%の範囲、及びより好ましくは0.9~1.1質量%の範囲の量で含有する、実施形態1~10の何れかに記載の方法。
【0057】
12.工程(3)における溶媒系が1種以上の溶媒を含み、ここで上記1種以上の溶媒は好ましくは、水、有機溶媒、及びこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは脱イオン水、アルコール、及びこれらの混合物からなる群から選択され、更に好ましくは脱イオン水、 メタノール、エタノール、プロパノール、及びこれらの混合物からなる群から選ばれ、ここでより好ましくは1種以上の溶媒が水を含み、そしてより好ましくは脱イオン水が溶媒系として使用される、実施形態1~11の何れかに記載の方法。
【0058】
13.工程(3)で調整されるスラリーが、スラリーの100質量%に対して15~75質量%の固形分含有量を示すことが好ましく、この量はより好ましくは、20~65質量%であり、更に好ましくは25~60質量%であり、更に好ましくは30~55質量%であり、更に好ましくは33~50質量%であり、 更に好ましくは35~45質量%であり、及び更に好ましくは38~42質量%である、実施形態1~12の何れかに記載の方法。
【0059】
14.工程(3)で調製されたスラリーが、1種以上のバインダーを更に含み、好ましくはAl、Si、及び/又はZrに基づく1種以上のバインダー、好ましくはAl及び/又はZrに基づく1種以上のバインダー、より好ましくはZrに基づく1種以上のバインダーを更に含み、ここでより好ましくは、工程(3)で調製されたスラリーは、バインダーとしてZrOの1種以上の供給源を更に含有し、 ここで上記ZrOの1種以上の供給源は、好ましくは1種以上のジルコニウム塩を含み、より好ましくは塩化ジルコニル、酢酸ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセトナート、水酸化ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、及びオキシ塩化ジルコニウム(及びこれらの2種上の混合物を含む)からなる群より選択される1種以上のジルコニウム塩を含み、更に好ましくは酢酸ジルコニウム、 ジルコニウムアセチルアセトナート、水酸化ジルコニウム、及び炭酸ジルコニウム(これらの2種以上の混合物を含む)から成る群から選択され、ここでより好ましくは、1種以上のジルコニウム塩は、酢酸ジルコニウムを含み、ここでより好ましくは工程(3)で調製されたスラリーは、バインダーとして酢酸ジルコニウムを更に含む、実施形態1~13の何れかに記載の方法。
【0060】
15.スラリーが、焼成スラリーの100質量%に基づいて、0.5~15質量%の範囲の量で1種以上のバインダーを含み、この量は好ましくは1~10質量%、更に好ましくは3~7質量%、更に好ましくは4~6質量%であり、 及び更に好ましくは4.5~5.5質量%である、実施形態1~14の何れかに記載の方法。
【0061】
16.工程(3)で調製されたスラリーが1種以上の糖をさらに含み、上記1種以上の糖は好ましくはスクロースを含み、より好ましくはスクロースが1種以上の糖として使用される、実施形態1~14の何れかに記載の方法。
【0062】
17.上記スラリーは、上記スラリーに含まれる溶媒系100質量%に対して10質量%以下の量で、上記1種以上の糖を含み、この量は、好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下の量、更に好ましくは3質量%以下の量、更に好ましくは2質量%以下の量、より好ましくは1質量%以下の量、より好ましくは0.5質量%以下の量、及び更に好ましくは0.1質量%以下の量である、実施形態16に記載の方法。
【0063】
18.工程(4)におけるスラリーの塗工(コーティング)前に、工程(3)で得られたスラリーを5~60℃の範囲の温度に維持し、この温度は好ましくは10~50℃の範囲、更に好ましくは15~45℃の範囲、 更に好ましくは18~30℃の範囲であり、更に好ましくは20~25℃の範囲である、実施形態1~17の何れかに記載の方法。
【0064】
19.スラリーを上記温度に、0.1~72時間の範囲の持続時間、維持し、この時間は好ましくは0.5~48時間、より好ましくは1~36時間、より好ましくは3~30時間、更に好ましくは6~24時間、 更に好ましくは10~20時間、更に好ましくは12~18時間、及び更に好ましくは14~16時間である、実施形態18に記載の方法。
【0065】
20.工程(4)で提供される基材(substrate)は、壁流又は流通(flow-through)基材であり、好ましくは壁流又は流通ハニカム基材であり、及びより好ましくは流通ハニカム基材である、実施形態1~19の何れかに記載の方法。
【0066】
21.工程(4)で提供される基材は、セラミックス物質を含み、好ましくはセラミックス物質から構成され、ここで上記セラミック物質は、好ましくアルミナ、シリカ、ケイ酸塩、アルミノシリケート、コージェライト、ムライト、アルミノチタン酸塩、炭化ケイ素、ジルコニア、マグネシア、より好ましくはスピネル及びチタニアの1種以上を含み、及び好ましくはこれらから成り、及びこれらは、更に好ましくは炭化ケイ素及びコージェライトのうちの1種以上であり、さらに好ましくはコーディエライトである、実施形態1~20の何れかに記載の方法。
【0067】
22.工程(4)の後及び工程(5)における焼成の前に、塗布された基材をガス雰囲気中で乾燥させ、ここでガス雰囲気の温度は80~250℃の範囲、好ましくは90~200℃の範囲、更に好ましくは100~150℃の範囲であり、より好ましくは110~130℃の範囲であり、そしてガス雰囲気は空気であることが更に好ましい、実施形態1~21の何れかに記載の方法。
【0068】
23.乾燥は、10~180分の範囲の持続時間で行われ、この持続時間は好ましくは20~120分の範囲、更に好ましくは30~90分の範囲、更に好ましくは40~80分の範囲である、実施形態22に記載の方法。
【0069】
24.工程(5)における焼成は、350~800℃の範囲の温度で行われ、この温度は400~700℃の範囲がより好ましく、450~650℃の範囲が更に好ましく、及び500~600℃の範囲が更に好ましい、実施形態1~23の何れかに記載の方法。
【0070】
25.工程(5)における焼成が、10分から180分の範囲の持続時間で行われ、この時間は好ましくは20~120分の範囲であり、より好ましくは30~90分の範囲であり、更に好ましくは40~80分の範囲である、実施形態1~24の何れかに記載の方法。
【0071】
26.工程(5)における焼成は、空気を含むガス雰囲気中で行われ、上記工程(5)における焼成は空気中で行われる、実施形態1~25の何れかに記載の方法。
【0072】
27.上記工程が工程(1)、(2)、(3)、(4)及び工程(5)からなる、実施形態1~26の何れかに記載の方法。
【0073】
28.実施形態1~27の何れかに記載の方法に従って得ることが可能な、及び/又は得られる窒素酸化物の選択的触媒還元のための触媒。
【0074】
29.内燃機関、好ましくはディーゼルエンジンから出る排気ガスを処理するための排気ガス処理システムであって、実施形態28に従う窒素酸化物の選択的触媒還元のための触媒を含むシステム、及び ディーゼル酸化触媒、アンモニア酸化触媒、選択的触媒還元触媒、触媒煤フィルター及びSCR/AMOx触媒のうちの1つ以上を含む排気ガス処理システム。
【0075】
30.ディーゼル酸化触媒、触媒化煤フィルター及び窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒を含むシステムであって、上記ディーゼル酸化触媒が触媒化煤フィルターの上流に位置し、及び上記触媒化煤フィルタは、上記窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒の上流に位置し、 ここでディーゼル酸化触媒は、好ましくはシステムの第1触媒であり、及び好ましくは、エンジンとディーゼル酸化触媒との間に触媒が存在しない、実施形態29に記載のシステム。
【0076】
31.更に窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒の下流に位置する選択的触媒還元触媒を更に含み、上記システムは、好ましくはアンモニア酸化触媒を更に含み、ここで上記アンモニア酸化触媒は、上記選択的触媒還元触媒の下流に位置する、実施形態31に記載のシステム。
【0077】
32.還元剤インジェクターを更に備え、ここで還元剤インジェクターは、触媒化煤フィルターの下流に位置し、及び窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒の上流に位置し、ここで還元剤は好ましくは尿素である、実施形態30又は31に記載のシステム。
【0078】
33.ディーゼル酸化触媒、触媒化煤フィルター及び窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒を含み、ディーゼル酸化触媒は、窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒の上流に配置され、及び窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒は、触媒化煤フィルターの上流に配置され、上記ディーゼル酸化触媒は、好ましくは上記システムの第1触媒であり、及び好ましくは上記エンジンとディーゼル酸化触媒との間に触媒が存在しない実施形態29に記載のシステム。
【0079】
34.上記システムが窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒の下流及び触媒化煤フィルターの上流に位置する選択的触媒還元触媒を更に含み、上記システムは、好ましくはアンモニア酸化触媒を更に備え、上記アンモニア酸化触媒は、上記触媒還元触媒の下流側及び上記触媒化煤フィルターの上流に位置する、実施形態33に記載のシステム。
【0080】
35.上記システムが触媒化煤フィルターの下流に位置するSCR/AMOx触媒を更に含み、ここで上記システムは好ましくは、上記SCR/AMOx触媒の上流、及び上記触媒化煤フィルターの下流に位置する還元剤インジェクターを更に含み、及び上記還元剤は尿素であることがより好ましい、実施形態33又は34に記載のシステム。
【0081】
36.還元剤インジェクターを更に備え、ここで上記還元剤インジェクターは、上記ディーゼル酸化触媒の下流及び窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒の上流に位置し、上記還元剤は尿素であることが好ましい実施形態33~35の何れかに記載のシステム。
【0082】
37.窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒と、触媒化煤フィルターとを含むシステムにおいて、上記窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒は、触媒化煤フィルターの上流に配置され、上記窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒は好ましくは、システムの第1の触媒であり、及び好ましくは、エンジンと窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒との間に触媒が存在しない、実施形態29に記載のシステム。
【0083】
38.上記システムは、窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒の下流及び触媒化煤フィルタの上流に位置する選択的触媒還元触媒を更に含み、ここで上記システムは、アンモニア酸化触媒を更に備えることが好ましく、上記アンモニア酸化触媒は、上記選択的触媒還元触媒の下流側及び前記触媒化煤フィルターの上流側に位置する、実施形態37に記載のシステム。
【0084】
39.第1の還元剤インジェクターを更に含み、上記第1の還元剤インジェクターは、窒素酸化物の選択的触媒還元用の触媒の上流に配置され、ここで上記還元剤は尿素である、実施形態37又は38に記載のシステム。
【0085】
40.上記システムが、触媒化煤フィルターの下流に位置するSCR/AMOx触媒を更に含み、ここで上記システムは好ましくは、上記SCR/AMOx触媒の上流及び上記触媒化煤フィルターの下流に位置する還元剤インジェクターをさらに備え、 還元剤は、より好ましくは尿素である、実施形態37~39の何れかに記載のシステム。
【0086】
41.窒素酸化物の選択的触媒還元のための方法であって、上記窒素酸化物は排気ガス流中に含まれており、上記方法は、
(1)上記排気ガス流を、好ましくはディーゼルエンジンから提供する工程;
(2)工程(1)に提供された排気ガス流を、実施形態28に従う選択的触媒還元用の触媒に通すか、又は実施形態29~40の何れかに従う排気ガス処理システムを通して通過させる工程、
を含む方法。
【0087】
42.実施形態28に従う触媒、又は実施形態29~40のいずれかに従う排気ガス処理システムの、窒素酸化物、好ましくはディーゼルエンジンから出る窒素酸化物の選択的触媒還元のための使用。
【実施例
【0088】
参考例1:CHA型骨格構造を有するゼオライト材料の調整
WO2011/064186A1の比較例1及比較例2のステップ2.1に記載された手順に従い、チャバザイトを調製した。
【0089】
参考例2:液相イオン交換(LPIE)プロセスに従って調製したFe-CHA
参考例1に従って得られたゼオライト材料を、US 9,486,792 B2の実施例3に従って鉄とイオン交換した。このイオン交換を行い、Fe-CHAの質量に基づいて、Feとして計算される、Fe-CHAゼオライト材料中2.45質量%のFe含有量を得る。
【0090】
参考例3:一般的なコーティング(塗布)方法
フロースルー基材をコーティング材でコーティングするために、フロースルー基材が、塗布されるコーティングの目標長さに等しい、基材の特定の長さ部分で、スラリーの部位に垂直に浸漬された。このようにして、ウォッシュコートが基材の壁に接触した。試料をスラリー中に特定の期間、通常は1~10秒間放置した。次に基材をスラリーから取出し、余分なスラリーを基材から排出させ、次に圧縮空気を(スラリーの浸透方向に対して)吹き付けることによって基材から除去した。
【0091】
比較例1:Fe-CHAを含むSCR触媒の調製
水と参考例2のFe-CHAを混合して、ウォッシュコートスラリーを調製し、バインダーを含む固形分目標40質量%のスラリーを生成した。この混合物を含む触媒コーティングを、参考例5のウォッシュコートプロセスを介して、セル密度400cpsi及び壁厚6milのセラミック流通(フロースルー)セラミックモノリス上に堆積させた。コーティングしたモノリスを110℃Cで乾燥させた。コーティング工程により、触媒積載量は2.1 g/inとなった。
【0092】
より特定的には、ウォッシュコートスラリーを調製するために、酢酸ジルコニル水溶液を参考例2からのFe-CHAゼオライト(焼成スラリーの100質量%に対してZr-OAc5質量%) 及び脱イオン水と混合し、スラリーを形成した。次いでスラリーを、コーティングされていないフロースルーハニカムコーディエライトモノリス基材の全長にわたって配置した。上記基材を、参考例5に記載した方法に従って塗布した。その後、基板を乾燥させた後、550℃で60分間焼成した。
【0093】
実施例1:Fe-CHA及びCuOとして計算した0.5質量%Cuを含むSCR触媒の調製
参考例2からのFe-CHAに銅を添加してFe/Cu促進ゼオライトを形成するために、スラリー内イオン交換法を使用した(この効果のためにEP 3 549 913 A1に記載されているスラリー内イオン交換(ISIE)工程を使用した)。この例では、追加のCuの供給源である酸化Cu(II)を使用して、スラリー中の必要なレベルまでCu含有量を追加し、その後スラリー内のイオン交換を完了するために完全に混合させた。
【0094】
より特定的には、比較例1に従って覆セラミックモノリスを調製したが、ここでウォッシュコートスラリーを調製する際に、Cu(II)酸化物を更に添加し、焼成スラリーの質量に対してCuOとして計算される0.5質量%のCu含有量をスラリー中に得るようにした。この趣旨で、Fe-CHAをCu(II)酸化物と混合し、及び続いて5wt%Zr-oAcと混合し、次いで糖(スクロース;スラリーの製造に使用した水100質量%に対して3質量%未満)を添加した。次いで、スラリーを一晩放置してから、フロースルー基材内にコーティングした。次いで、被覆基材を550℃で1時間焼成した。
【0095】
実施例2:Fe-CHA及び1.0質量%Cuを含有するSCR触媒の調製
実施例1に記載の手順に従って被覆セラミックモノリスを調製したが、ここでCu(II)酸化物を、CuOとして計算し、焼成スラリーの質量に基づいて1.0質量%のスラリー中Cu含有量を得るような量で更に添加した。
【0096】
実施例3:Fe-CHA及び1.6質量%Cuを含有するSCR触媒の調製
実施例1に記載の手順に従って被覆セラミックモノリスを調製したが、ここでCu(II)酸化物を、CuOとして計算し、焼成スラリーの質量に基づいて1.6質量%のスラリー中Cu含有量を得るような量で更に添加した。
【0097】
実施例4:Fe-CHA及び2.0質量%Cuを含有するSCR触媒の調製
実施例1に記載の手順に従って被覆セラミックモノリスを調製したが、ここでCu(II)酸化物を、CuOとして計算し、焼成スラリーの質量に基づいて2.0質量%のスラリー中Cu含有量を得るような量で更に添加した。
【0098】
実施例5:NOx転化率とNO生成における触媒の試験
比較例1及び実施例1~4の触媒を、新鮮な状態及び水熱熟成状態で試験した。被覆モノリスの水熱処理は水蒸気で行い、及びこれはモノリス上を、所要温度(650℃)にわたり空間速度9000h-1及び規定時間(50時間)で、N流中約10%O2、10%HOを流すことで達成した。
【0099】
SCRテスト条件:
空間速度(SV)= 80kh-1、温度:250℃、200℃
標準SCRガス供給:550ppm NH、500ppmNO、5%HO、10%O、バランスN
高速SCRガス供給:500ppmNH、250ppmNO、250ppmNO、5%HO、10%O、バランスN
標準及び高速SCR条件下での新鮮及び熟成状態(エイジング状態)の触媒サンプルの触媒試験の結果を、それぞれ以下の表1及び表2に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
従って、表1から理解できるように、Fe-CHA SCR触媒スラリーに0.5質量%の銅を追加充填することにより、標準的なSCR条件下におけるSCR工程の間の得られた触媒のNO形成が、相当に低減可能であった。更に、同時に、上記銅の追加積載は、比較例1のFe-CHA触媒と比較して、標準及び高速SCR条件の両方においてNOx転化活性の実質的な増加をもたらすことが予想外に見出された。それに加えて、更に多くの銅を用いたFe-CHA触媒スラリーへの積載(充填)は、比較例1のFe-CHA触媒と比較して、得られる触媒のNOx転化活性の更なる実質的な増加をもたらすことが分かった。
【0103】
更なる関心点は、SCR条件下での触媒の長期使用の効果に関するものであり、ここで上記効果は、エイジング処理(熟成処理)によってシミュレートされる。従って比較例1のFe-CHA触媒を用いて得られた結果からわかるように、エイジング変化は標準条件下でのSCR活性の相当な低下をもたらすが、高速SCR条件下では、エイジングした触媒はNO排出量の劇的な増加を示す。驚くべきことに、スラリーにその調製中に0.5質量%の銅を装填した本発明触媒は、NOx活性の低下を全く示さない。更に驚くべきことに、銅の充填量が更に高い発明試料は、特に標準的なSCR条件下で、エイジング後のSCR活性の大幅な増加を示している。高速SCR条件下での本発明試料の性能については、(高速SCR条件下で、特にエイジング後に本発明の触媒で観察されて良い、NOx活性の実質的な増加にもかかわらず、)エイジング後のFe-CHA触媒によって示されるN2O排出量の劇的な増加は、本発明の触媒では観察されず、本発明の触媒は、新鮮な触媒と比較してN2O排出量は僅かしか増加しないことが予想外に見出された。
【0104】
従って驚くべきことに、Fe-CHA SCR触媒スラリーに様々な量の銅を積載することによって、本発明に従って高度に改良された触媒が得られた。
引用文献:
-WO2016/070090A1
-US2011/0305614A1
-WO2017/153894A1
-WO2015/101930A1
-WO2017/134581A1
-WO2018/10718A
-WO2011/064186A1
-US9486792B2
【国際調査報告】