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特表2024-502943変性グアユール樹脂生成物及び関連するプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-24
(54)【発明の名称】変性グアユール樹脂生成物及び関連するプロセス
(51)【国際特許分類】
   C08L 7/00 20060101AFI20240117BHJP
   C08L 97/02 20060101ALI20240117BHJP
   C08K 5/151 20060101ALI20240117BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20240117BHJP
   C07J 71/00 20060101ALN20240117BHJP
   C07J 17/00 20060101ALN20240117BHJP
【FI】
C08L7/00
C08L97/02
C08K5/151
C08K5/053
C07J71/00
C07J17/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537195
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 US2021072971
(87)【国際公開番号】W WO2022133477
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/127,539
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デデッカー,マーク エヌ.
【テーマコード(参考)】
4C091
4J002
【Fターム(参考)】
4C091AA01
4C091BB01
4C091CC01
4C091DD01
4C091EE07
4C091FF02
4C091FF06
4C091GG01
4C091HH02
4C091JJ02
4C091KK01
4C091LL03
4C091LL06
4C091MM03
4C091NN12
4C091PA09
4C091PA13
4C091PB01
4C091QQ07
4C091QQ15
4C091RR10
4C091RR13
4J002AC01W
4J002AH00X
4J002EC036
4J002EC046
4J002EC056
4J002EL016
4J002EX037
4J002EX087
(57)【要約】
【解決手段】 変性グアユール樹脂生成物及び変性グアユール樹脂生成物を調製する関連するプロセスが本明細書に開示される。変性グアユール樹脂生成物は、少なくとも1つの官能基を有するアルゲンタチンの混合物を含み、当該少なくとも1つの官能基は、アルコキシシラン、メルカプトシラン、及びブロック化メルカプトシランから選択される官能化用化合物によって提供される。第2の実施形態では、変性グアユール樹脂生成物を調製するプロセスであって、グアユール樹脂成分(アルゲンタチンの混合物を含む)を、アルコキシシラン、メルカプトシラン、及びブロック化メルカプトシランから選択される官能化用化合物と混合し、官能化用化合物によって提供される少なくとも1つの官能基を有する官能化アルゲンタチンを含む変性グアユール樹脂を生成する、プロセスが提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの官能基を有するアルゲンタチンの混合物を含み、前記少なくとも1つの官能基が、アルコキシシラン、メルカプトシラン、及びブロック化メルカプトシランから選択される官能化用化合物によって提供される、変性グアユール樹脂生成物。
【請求項2】
前記官能化用化合物が、硫黄含有アルコキシシランであり、好ましくはジスルフィドアルコキシシラン又はテトラスルフィドアルコキシシランから選択される、請求項1に記載の変性グアユール樹脂生成物。
【請求項3】
前記官能化用化合物が、ジスルフィドアルコキシシラン化合物であり、好ましくは、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリブトキシシリル-プロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリ-m-ブトキシシリル-プロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリプロポキシプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリヘキソキシシリルプロピル)ジスルフィド、2,2’-ビス(ジメチルメトキシシリルエチル)ジスルフィド、3,3’-ビス(ジフェニルシクロヘキソキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(エチル-ジ-sec-ブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(プロピルジエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリイソプロポキシシリルプロピル)ジスルフィド、12,12’-ビス(トリイソプロポキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(ジメトキシフェニルシリル-2-メチルプロピル)ジスルフィド、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載の変性グアユール樹脂生成物。
【請求項4】
前記官能化用化合物が、
(a)式(I)を有する非硫黄含有アルコキシシラン:
(4-n)-Si(OR (I)
(式中、n=2、3、又は4であり;各Rは、独立して、1~24個の炭素を有するヒドロカルビル基、好ましくは3~18個の炭素を有するアルキル若しくはシクロアルキル基、又は6~18個の炭素を有するアリール基から選択され、Rは、1~10個の炭素、好ましくは1~6個の炭素、より好ましくは1~3個の炭素を有するアルキル基である)又は
(b)4~6個のアルコキシ基を有する非硫黄含有ビスアルコキシシラン
から選択される非硫黄含有アルコキシシランである、請求項1に記載の変性グアユール樹脂生成物。
【請求項5】
前記官能化用化合物が、式(I)を有し、式中、n=3であり、Rが、6~24個の炭素、好ましくは12~20個の炭素を有するアルキル基から選択され、Rが、メチル又はエチルである、請求項4に記載の変性グアユール樹脂生成物。
【請求項6】
前記官能化用化合物が、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、又はヘキサデシルトリエトキシシランのうちの少なくとも1つを含む、請求項5に記載の変性グアユール樹脂生成物。
【請求項7】
前記官能化用化合物が、メルカプトシランである、請求項1に記載の変性グアユール樹脂生成物。
【請求項8】
前記官能化用化合物が、ブロック化メルカプトシランである、請求項1に記載の変性グアユール樹脂生成物。
【請求項9】
-70~100℃のTgを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の変性グアユール樹脂生成物。
【請求項10】
-60~0℃のTgを有する、請求項9に記載の変性グアユール樹脂生成物。
【請求項11】
1~100℃、好ましくは30~90℃、より好ましくは40~90℃のTgを有する、請求項9に記載の変性グアユール樹脂生成物。
【請求項12】
前記変性グアユール樹脂が、1600~5000グラム/モルのMn及び/又は2000~10000グラム/モルのMwを有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の変性グアユール樹脂生成物。
【請求項13】
前記アルゲンタチンの混合物が、少なくとも50質量%、好ましくは60~90質量%の、前記少なくとも1つの官能基で置き換えられた前記アルゲンタチンの混合物の-OH基からの水素原子を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の変性グアユール樹脂生成物。
【請求項14】
10重量%未満、好ましくは5重量%未満のグアユールゴムが前記変性グアユール樹脂生成物中に存在する、請求項1~13のいずれか一項に記載の変性グアユール樹脂生成物。
【請求項15】
前記官能化アルゲンタチンの混合物が、前記変性グアユール樹脂生成物の少なくとも40重量%、好ましくは前記変性グアユール樹脂生成物の過半重量、より好ましくは前記変性グアユール樹脂生成物の少なくとも60重量%又は60~95重量%を構成する、請求項1~14のいずれか一項に記載の変性グアユール樹脂生成物。
【請求項16】
前記変性アルゲンタチンの混合物が、前記変性グアユール樹脂生成物の重量による主成分である、請求項1~14のいずれか一項に記載の変性グアユール樹脂生成物。
【請求項17】
変性グアユール樹脂生成物を調製するプロセスであって、
a.-OH基を有するアルゲンタチンの混合物を含むグアユール樹脂成分を提供することと、
b.前記グアユール樹脂成分を、アルコキシシラン、メルカプトシラン、及びブロック化メルカプトシランから選択される官能化用化合物と混合することと、
c.前記官能化用化合物によって提供される少なくとも1つの官能基を有する官能化アルゲンタチンを含む変性グアユール樹脂生成物を生成することと、
を含む、プロセス。
【請求項18】
前記アルゲンタチンの混合物が、前記グアユール樹脂成分の重量による主成分である、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記アルゲンタチンの混合物が、前記グアユール樹脂成分の少なくとも40重量%、好ましくは前記グアユール樹脂成分の過半重量、より好ましくは前記グアユール樹脂成分の少なくとも60重量%又は60~90重量%を構成する、請求項17に記載のプロセス。
【請求項20】
前記官能化用化合物が、1/1~6/1、好ましくは2/1~3/1の比の、前記官能化用化合物からのアルコキシ基の、前記アルゲンタチンの混合物中の-OH基に対するモル当量比を提供するのに十分な量で使用される、請求項17~19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
(b)が、酸を、好ましくは1~5のpHを達成するのに十分な量で添加することを含む、請求項17~20のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記グアユール樹脂成分を官能化用化合物と混合した後に、好ましくは20~100℃の温度まで熱を加える、請求項17~21のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項23】
(c)が、前記アルコキシシランのアルコキシ基から生成される副生成物アルコールの生成を含み、前記プロセスが、好ましくは熱及び/又は真空の使用によって、前記副生成物アルコールを除去することを更に含む、請求項17~22のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項24】
(c)で生成された前記変性グアユール樹脂生成物が、請求項2~14のいずれか一項に記載のものである、請求項17~23のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、変性グアユール樹脂生成物及び変性グアユール樹脂生成物を調製する関連するプロセスを対象とする。
【発明の概要】
【0002】
グアユール植物(Parthenium argentatum)は、ゴム及び樹脂を産生する木質の低木様植物である。グアユール植物からゴムを単離することを目的とするプロセスでは、副産物としてかなりの量のグアユール樹脂が生成される。
【0003】
変性グアユール樹脂生成物及び変性グアユール樹脂生成物を調製する関連するプロセスが本明細書に開示される。
【0004】
第1の実施形態では、変性グアユール樹脂生成物が提供される。変性グアユール樹脂生成物は、少なくとも1つの官能基を有するアルゲンタチンの混合物を含み、当該少なくとも1つの官能基は、アルコキシシラン、メルカプトシラン、及びブロック化メルカプトシランから選択される官能化用化合物によって提供される。
【0005】
第2の実施形態では、変性グアユール樹脂生成物を調製するプロセスが提供される。第2の実施形態のプロセスによれば、-OH基を有するアルゲンタチンの混合物を含むグアユール樹脂成分が提供される。グアユール樹脂成分を、アルコキシシラン、メルカプトシラン、及びブロック化メルカプトシランから選択される官能化用化合物と混合し、当該官能化用化合物によって提供される少なくとも1つの官能基を有する官能化アルゲンタチンを含む変性グアユール樹脂を生成する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
変性グアユール樹脂生成物及び変性グアユール樹脂生成物を調製する関連するプロセスが本明細書に開示される。
【0007】
第1の実施形態では、変性グアユール樹脂生成物が提供される。変性グアユール樹脂生成物は、少なくとも1つの官能基を有するアルゲンタチンの混合物を含み、当該少なくとも1つの官能基は、アルコキシシラン、メルカプトシラン、及びブロック化メルカプトシランから選択される官能化用化合物によって提供される。
【0008】
第2の実施形態では、変性グアユール樹脂生成物を調製するプロセスが提供される。第2の実施形態のプロセスによれば、-OH基を有するアルゲンタチンの混合物を含むグアユール樹脂成分が提供される。グアユール樹脂成分を、アルコキシシラン、メルカプトシラン、及びブロック化メルカプトシランから選択される官能化用化合物と混合し、当該官能化用化合物によって提供される少なくとも1つの官能基を有する官能化アルゲンタチンを含む変性グアユール樹脂を生成する。
【0009】
定義
本明細書に記載される用語は、実施形態を説明するためだけのものであり、全体として本発明を限定すると解釈すべきではない。
【0010】
本明細書で使用されるとき、用語「BR」又は「ポリブタジエン」は、1,3-ブタジエンのホモポリマーを指す。
【0011】
本明細書で使用されるとき、用語「過半量」は、50%超(例えば、少なくとも50.1%、少なくとも50.5%、少なくとも51%等)を指す。
【0012】
本明細書で使用されるとき、用語「半量未満」は、50%未満(例えば、49.5%以下、49%以下等)を指す。
【0013】
本明細書で使用されるとき、略記Mnは、数平均分子量に使用される。
【0014】
本明細書で使用されるとき、略記Mpは、ピーク分子量に使用される。
【0015】
本明細書で使用されるとき、略記Mwは、重量平均分子量に使用される。
【0016】
本明細書で特に明記しない限り、用語「ムーニー粘度」は、ムーニー粘度、ML1+4を指す。ゴム組成物のムーニー粘度は、加硫又は硬化に先立って測定されることを、当業者は理解するであろう。
【0017】
本明細書で使用されるとき、用語「天然ゴム」は、ヘベアゴムの木等の資源及び非ヘベア資源(例えば、グアユール植物及びTKS等のタンポポ)から採集することができるもの等の天然に存在するゴムを意味する。言い換えれば、用語「天然ゴム」は、合成ポリイソプレンを除くものと解釈すべきである。
【0018】
本明細書で使用されるとき、用語「グアユールゴム」は、グアユール植物から採取された天然ゴムの下位分類である。対照的に、グアユール植物から採集されたものではない天然ゴムは、本明細書では「非グアユール天然ゴム」と呼ばれ、ヘベアゴム並びにタンポポ等の他の資源を含み得る。
【0019】
本発明で使用する場合、用語「phr」とは、ゴム100部当たりの部を意味する。100部のゴムは、本明細書では100部のゴム成分とも称される。
【0020】
本明細書で使用するとき、用語「ポリイソプレン」は、合成ポリイソプレンを意味する。言い換えれば、この用語は、イソプレンモノマーから製造されたポリマーを示すために用いられ、天然由来のゴム(例えば、パラゴムノキ天然ゴム、グアユール起源の天然ゴム、又はタンポポ起源の天然ゴム)を含むと解釈すべきではない。ただし、用語「ポリイソプレン」は、イソプレンモノマーの天然源から製造されるポリイソプレンを含むと解釈すべきである。
【0021】
本明細書で使用されるとき、用語「SBR」は、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを意味する。
【0022】
本明細書で使用されるとき、用語「トレッド」は、通常の膨張及び荷重下で道路と接触するタイヤの部分を指し、用語「サブトレッド」は、概して道路と接触しないトレッドの基礎になる部分を指す。
【0023】
変性グアユール樹脂生成物
上述の通り、本明細書に開示される第1の実施形態は、変性グアユール樹脂生成物を対象とし、本明細書に開示される第2の実施形態は、変性グアユール樹脂生成物を調製するプロセスを提供する。第1及び第2の実施形態によれば、変性グアユール樹脂生成物は、少なくとも1つの官能基を有するアルゲンタチンの混合物を含み、当該少なくとも1つの官能基は、アルコキシシラン、メルカプトシラン、及びブロック化メルカプトシランから選択される官能化用化合物によって提供される。当業者であれば理解するように、アルゲンタチンは、グアユール樹脂中に天然に存在し、1つ以上の-OH基を(未修飾又は非官能化形態で)含有する化合物のクラスを構成する。これらのアルゲンタチンは、アルゲンタチンA、アルゲンタチンB、アルゲンタチンC、アルゲンタチンD、アルゲンタチンE、及びアルゲンタチンFを含む様々なカテゴリーに分類されている。アルゲンタチンの修飾又は官能化は、アルゲンタチン化合物の-OH基からの酸素原子を官能化用化合物のケイ素原子に結合させることによって行われる。換言すれば、アルゲンタチン化合物と官能化用化合物との間の結合点は、アルゲンタチン化合物の-OH基から官能化用化合物のケイ素原子まで酸素原子を介する。非限定的な例としては、官能化用化合物にトリアルコキシシランを使用すると、以下の修飾又は官能化されたアルゲンタチン構造が得られる:
【0024】
【化1】
(式中、Arg-Oは、その-OH基からの水素原子なしでアルゲンタチン化合物を指す)。トリアルコキシシラン化合物は3つのアルコキシ基を含有するので、アルゲンタチン化合物に対する3つの結合点を提供する。2つ以上の-OH基を含有するアルゲンタチン化合物については、アルコキシシラン化合物のケイ素原子への2つ以上の結合点が可能である。全体として、アルゲンタチンとアルコキシシラン化合物(又はより広義には、官能化用化合物)との間の結合の結果、変性グアユール樹脂生成物が得られる。
【0025】
第1及び第2の実施形態によれば、アルゲンタチンを官能化するために使用される特定の官能化用化合物は様々であり得る。上述した通り、第1及び第2の実施形態によれば、官能化用化合物は、アルコキシシラン、メルカプトシラン、及びブロック化メルカプトシランから選択され、各々以下により詳細に論じる通りである。
【0026】
第1及び第2の実施形態によれば、官能化用化合物からの官能基によって置換されるアルゼンタチンの-OH基からの水素原子の質量パーセント又は重量パーセントは様々であり得る。第1及び第2の実施形態の好ましい実施形態では、変性グアユール樹脂生成物中の官能化アルゲンタチンの混合物は、少なくとも50質量%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又はそれ以上)の、少なくとも1つの官能基で置換されたその-OH基からの水素原子、好ましくは60~90質量%(例えば、60、65、70、75、80、85、又は90%)の少なくとも1つの官能基で置換されたその-OH基からの水素原子を有する。アルコキシシランからの少なくとも1つの官能基によって置換されたアルゲンタチンの混合物の-OH基からの水素原子の質量パーセントは、アルゲンタチンの混合物の官能化パーセントであるとみなすことができる。換言すれば、-OH基からの水素原子の75質量%が官能化からの官能基で置換されているアルゲンタチンの混合物は、75%官能化されているとみなすことができる。
【0027】
本明細書に開示される第1及び第2の実施形態によれば、変性グアユール樹脂生成物の特性(例えば、Tg、Mn、及びMw)は様々であり得る。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、変性グアユール樹脂生成物は、約-70~100℃(例えば、-70、-60、-50、-40、-30、-20、-10、0、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100℃のTgを有する。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、変性グアユール樹脂生成物は、前述の範囲の下方部分内のTg、例えば、-60~0℃(例えば、-60、-55、-50、-45、-40、-35、-30、-25、-20、-15、-10、-5、又は0℃)のTgを有する。第1及び第2の実施形態の他の実施形態では、変性グアユール樹脂生成物は、-70~100℃の前述の範囲の上方部分内のTg、例えば、1~100℃(例えば、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100℃)、好ましくは30~90℃(例えば、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90℃)、より好ましくは40~90℃(例えば、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90℃)のTgを有する。前述の範囲のうちの1つ内のTgを有する変性グアユール樹脂生成物は、例えば、トレッド化合物のための、タイヤゴム組成物において特に有用であり得る。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、変性グアユール樹脂生成物は、2000~4500グラム/モル及び2500~4000グラム/モルを含む、1600~5000グラム/モル(例えば、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900、4000、4100、4200、4300、4400、4500、4600、4700、4800、4900、又は5000グラム/モル)のMnを有する。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、変性グアユール樹脂生成物は、4000~9000グラム/モル及び5000~8000グラム/モルを含む、2000~10,000グラム/モル(例えば、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、又は10,000グラム/モル)のMwを有する。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、変性グアユール樹脂は、前述の範囲内のMw及びMnを有する。特定のそのような実施形態では、変性グアユール樹脂はまた、前述の範囲のうちの1つ内のTgを有する。Mw及びMn値は、例えば実施例に記載の方法を使用して、GPCによって求めることができる。Tg値は、TA Instruments(New Castle、Delaware)製等の機器を使用してDSCによって求めることができ、その場合、-120℃で冷却した後に10℃/分の温度上昇を使用して、測定を実施する。その後、正接をDSC曲線の急上昇前後のベースラインに引く。DSC曲線上の温度(2つの接点の中間に対応する点で読み取る)をTgとして使用することができる。
【0028】
第1及び第2の実施形態によれば、変性グアユール樹脂生成物中に存在するグアユールゴムの量は様々であり得る。当業者であれば理解するように、変性グアユール樹脂生成物中に存在するグアユールゴムの量は、変性グアユール樹脂生成物が調製される由来の(未変性)グアユール樹脂成分中に存在していたグアユールゴムの量に依存することが多い。しかしながら、変性グアユール樹脂生成物中に存在するグアユールゴムの量は、グアユール樹脂成分の官能化後に添加されるグアユールゴムを指すこともある。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、変性グアユール樹脂生成物は、10重量%未満(例えば、9.5%、9%、8.5%、8%、7.5%、7%、6.5%、6%、5.5%、5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.5%、又はそれ以下)、好ましくは5重量%未満(例えば、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.5%、又はそれ以下)、又は更には1重量%未満のグアユールゴムを含有する。
【0029】
本明細書に開示される第1及び第2の実施形態によれば、変性グアユール樹脂生成物中の官能化アルゲンタチンの重量パーセントは様々であり得る。好ましくは、第1及び第2の実施形態によれば、官能化アルゲンタチンの混合物は、変性グアユール樹脂生成物の重量での主成分を構成する。主成分とは、変性グアユール樹脂生成物中に存在する異なる成分(例えば、未修飾アルゲンタチン、トリグリセリド、脂肪酸)のうち、最大量で存在する成分が官能化アルゲンタチン成分(これは概して官能化アルゲンタチンの混合物である)であることを意味する。第1及び第2の実施形態のより好ましい実施形態では、官能化アルゲンタチンの混合物は、変性グアユール樹脂生成物の少なくとも40重量%(例えば、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又はそれ以上)、より好ましくは変性グアユール樹脂生成物の少なくとも過半重量(例えば、51%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又はそれ以上)、更により好ましくは変性グアユール樹脂生成物の少なくとも60重量%(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又はそれ以上)、又は変性グアユール樹脂生成物の60~90重量%(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%)を構成する。変性グアユール樹脂生成物中の官能化アルゲンタチンの量は、(例えば、実施例に記載される手順を使用して)GPCによって求めることができ、その場合、官能化アルゲンタチンは、概して少なくとも第1の溶出ピーク、及び多くの場合第2の溶出ピークの少なくとも一部分によって表される(官能化アルゲンタチンは、概ね、以下で論じる通り、1600~5000グラム/モルの範囲のMnを有し、したがって、当業者は、このMn範囲内の生成物の量に対応するようにGPC結果を解釈する方法を理解する)。変性グアユール樹脂生成物はまた、トリグリセリド、脂肪酸、並びに未修飾アルゲンタチン及びグアユールのいくらかの部分を含有してもよい(相対量は、概して、未変性グアユール樹脂成分中に存在する量及び/又はこのような材料を除去するために変性グアユール樹脂生成物に対して行われる任意の精製プロセスに応じて変動する)。
【0030】
グアユール樹脂生成物
上述の通り、第2の実施形態のプロセスは、変性グアユール樹脂生成物を生成するための、官能化用化合物と混合するグアユール樹脂生成物の使用を含む。同様に、第1の実施形態の変性グアユール樹脂生成物は、本明細書で論じられる官能化用化合物が使用されるグアユール樹脂生成物の官能化バージョンであると理解することができる。上述の通り、グアユール樹脂生成物は、-OH基を有するアルゲンタチンの混合物を含む。好ましくは、第1及び第2の実施形態によれば、アルゲンタチンの混合物は、グアユール樹脂成分の重量による主成分を構成する。主成分とは、グアユール樹脂成分中に存在する異なる成分(例えば、アルゲンタチン、トリグリセリド、脂肪酸、及び低分子量ゴム)のうち、最大量で存在する成分がアルゲンタチン成分(これは概してアルゲンタチンの混合物である)であることを意味する。第1及び第2の実施形態のより好ましい実施形態では、アルゲンタチンの混合物は、グアユール樹脂成分の少なくとも40重量%(例えば、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又はそれ以上)、より好ましくはグアユール樹脂成分の少なくとも過半重量(例えば、51%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又はそれ以上)、更により好ましくはグアユール樹脂成分の少なくとも60重量%(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又はそれ以上)、又はグアユール樹脂成分の60~90重量%を構成する。概して、グアユール樹脂のアルゲンタチン成分を他の天然に存在する成分から分離することが困難であるため、アルゲンタチンを構成するグアユール樹脂成分の重量パーセントは100%未満になる。
【0031】
第1及び第2の実施形態によれば、グアユール樹脂成分中に存在するグアユールゴムの量は様々であり得る。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、グアユール樹脂成分は、10重量%未満(例えば、9.5%、9%、8.5%、8%、7.5%、7%、6.5%、6%、5.5%、5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.5%、又はそれ以下)、好ましくは5重量%未満(例えば、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.5%、又はそれ以下)、又は更には1重量%未満のグアユールゴムを含有する。
【0032】
官能化用化合物
上述した通り、第1及び第2の実施形態によれば、官能化用化合物は、アルコキシシラン、メルカプトシラン、及びブロック化メルカプトシランから選択される。以下でより詳細に論じる通り、アルコキシシランは、硫黄含有アルコキシシラン並びに非硫黄含有アルコキシシランの両方を含むと理解されるべきである。
【0033】
本明細書に開示される第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、官能化用化合物は、非硫黄含有アルコキシシランである。好ましくは、そのような実施形態によれば、非硫黄含有アルコキシシランは、式(I)を有する:
(4-n)-Si(OR (I)
(式中、n=2、3、又は4であり;各Rは、独立して、1~20個の炭素、好ましくは2~18個の炭素を有するヒドロカルビル基から選択され;Rは、1~10個の炭素、好ましくは1~6個、より好ましくは1~3個の炭素を有するアルキル基、又は6~18個の炭素、好ましくは6~12個の炭素を有する芳香族基である)。n=2の場合、非硫黄含有アルコキシシランは、ジアルコキシシランであると理解することができる。n=3の場合、非硫黄含有アルコキシシランは、トリアルコキシシランであると理解することができる。n=4の場合、非硫黄含有アルコキシシランは、テトラアルコキシシランであると理解することができる。
【0034】
第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、官能化用化合物は、式(I)(式中、n=2である)を有する非硫黄含有アルコキシシランシラン、すなわち、ジアルコキシシランである。ジアルコキシシランである非硫黄含有アルコキシシランの非限定的な例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジペンチルジメトキシシラン、ジペンチルジエトキシシラン、ジヘキシルジメトキシシラン、ジヘキシルジエトキシシラン、ジヘプチルジメトキシシラン、ジヘプチルジエトキシシラン、ジオクチルジメトキシシラン、ジオクチルジエトキシシラン、ジノニルジメトキシシラン、ジノニルジエトキシシラン、ジデシルジメトキシシラン、ジデシルジエトキシシラン、ジウンデシルジメトキシシラン、ジウンデシルジエトキシシラン、ジドデシルジメトキシシラン、ジドデシルジエトキシシラン、ジトリデシルジメトキシシラン、ジトリデシルジエトキシシラン、ジテトラデシルジメトキシシラン、ジペンタデシルジメトキシシラン、ジテトラデシルジエトキシシラン、ジペンタデシルジエトキシシラン、ジヘキサデシルジメトキシシラン、ジヘキサデシルジエトキシシラン、ジヘプタデシルジメトキシシラン、ジヘプタデシルジエトキシシラン、ジオクタデシルジメトキシシラン、ジオクタデシルジエトキシシラン、ジノナデシルジメトキシシラン、ジノナデシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジプロポキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジベンジルジメトキシシラン、ジベンジルジエトキシシランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、官能化用化合物は、式(I)(式中、n=3である)を有する非硫黄含有アルコキシシランシラン、すなわち、トリアルコキシシランである。トリアルコキシシランである非硫黄含有アルコキシシランの非限定的な例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ノニルトリメトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ウンデシルトリメトキシシラン、ウンデシルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、トリデシルトリメトキシシラン、トリデシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン、ペンタデシルトリメトキシシラン、ペンタデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ヘプタデシルトリメトキシシラン、ヘプタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、ノナデシルトリメトキシシラン、ノナデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、官能化用化合物は、式(I)(式中、n=4である)を有する非硫黄含有アルコキシシランシラン、すなわち、テトラアルコキシシランである。テトラアルコキシシランである非硫黄含有アルコキシシランの非限定的な例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、及びテトライソブトキシシランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
本明細書に開示される第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、官能化用化合物は、非硫黄含有ビスアルコキシシランである。非硫黄含有ビスアルコキシシランは、2個のケイ素原子を含有し、好ましくは二価ヒドロカルビル基によって分離され、各ケイ素原子が2つ又は3つのアルコキシ基を有するものとして理解することができる。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、非硫黄含有ビスアルコキシシランは、式(Y)G(Z)を有し、式中、Gは、C~C50直鎖及び分岐アルキレン、C~C50直鎖及び分岐アルケニレン、C~C50芳香族からなる群から選択される分離用基であり、各々任意選択で、1つ以上のO又は1つ以上のN、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるヘテロ原子を含有し;Y及びZは、同じであっても異なっていてもよく、各々独立して、式Si(R(OR3-p(式中、各Rは、独立して、C~C20脂肪族、脂環式、又は芳香族を含み、Rは、C~C脂肪族又は脂環式であり、pは0又は1の整数である)の基を含む。第1及び第2の実施形態の好ましい実施形態では、非硫黄含有ビスアルコキシシランが前述の式を有する場合、非エラストマー反応性フィラー補強剤のGは、C~C20アルキレン、及びアルケニレン、及びC~C20芳香族からなる群から選択され、各々任意選択で、1つ以上のO又は1つ以上のN、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるヘテロ原子を含有する。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、非硫黄含有ビスアルコキシシランは、式(Y)G(Z)を有し、式中、Gは、C~C20アルキレン及びアルケニレンからなる群から選択され、各Rは、C~C直鎖及び分岐脂肪族からなる群から選択される。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、非硫黄含有ビスアルコキシシランは、式(Y)G(Z)を有し、Gは、C~C20直鎖及び分岐アルキレン、並びにC~C20直鎖及び分岐アルケニレンからなる群から選択され、いずれも任意選択で1つ以上の芳香環の形態で追加の炭素原子を含有する。特定の実施形態では、非硫黄含有ビスアルコキシシランは、C~C(すなわち、メチル~ヘキシル)、好ましくはC~C、更により好ましくはC~Cからなる群から選択されるアルコキシの炭素部分を有するビス(トリアルコキシ)シランである。そのようなビス(トリアルコキシ)シランの具体例としては、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリブトキシシリルエタン、ビス(トリエトキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリブトキシシリルプロパン、ビス(トリエトキシシリル)ブタン、ビス(トリメトキシシリル)ブタン、ビス(トリブトキシシリルブタン、ビス(トリエトキシシリル)イソブタン、ビス(トリメトキシシリル)イソブタン、ビス(トリブトキシシリルイソブタン、ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリブトキシシリルヘキサン、ビス(トリエトキシシリル)シクロヘキサン、ビス(トリメトキシシリル)シクロヘキサン、ビス(トリブトキシシリルシクロヘキサン、ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、ビス(トリエトキシシリル)ヘプタン、ビス(トリブトキシシリルヘプタン、ビス(トリエトキシシリル)オクタン、ビス(トリメトキシシリル)オクタン、ビス(トリブトキシシリルオクタン、ビス(トリエトキシシリル)ノナン、ビス(トリメトキシシリル)ノナン、ビス(トリブトキシシリルノナン、ビス(トリエトキシシリル)デカン、ビス(トリメトキシシリル)デカン、ビス(トリブトキシシリルデカン、ビス(トリエトキシシリル)ドデカン、ビス(トリメトキシシリル)ドデカン、ビス(トリブトキシシリルドデカン、ビス(トリエトキシシリル)テトラデカン、ビス(トリメトキシシリル)テトラデカン、ビス(トリブトキシシリルテトラデカン、ビス(トリエトキシシリル)オクタデカン、ビス(トリメトキシシリル)オクタデカン、ビス(トリブトキシシリルオクタデカン、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書に開示される第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、官能化用化合物は、2~6つのアルコキシシラン基を有する硫黄含有アルコキシシランである。好ましくは、そのような実施形態によれば、硫黄含有アルコキシシランは、ジスルフィドアルコキシシラン又はテトラスルフィドアルコキシシランから選択される。ジスルフィドアルコキシシランは、2つの硫黄原子(互いに単結合している)を有するものとして理解することができ、その各硫黄は、ケイ素原子に結合している分離用アルキレン基に結合しており、当該ケイ素原子は、2つ又は3つのアルコキシ基を有する。テトラスルフィドアルコキシシランは、4つの硫黄原子(互いに単結合している)を有するものとして理解することができ、末端硫黄は各々、ケイ素原子に結合している分離用アルキレン基に結合しており、当該ケイ素原子は、2つ又は3つのアルコキシ基を有する。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、ジスルフィドアルコキシシランは、式(アルコキシ)(アルキル)3-aSi-(CH-S-S-(CH-Si(アルキル)3-a(アルコキシ)(式中、aは、2又は3であり;bは、1~10、好ましくは2~8、より好ましくは2又は3の整数であり;アルコキシ基中のアルキルは、1~10個の炭素、好ましくは1~6個の炭素、より好ましくは1~4個の炭素のアルキルから選択される)を有する。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、テトラスルフィドアルコキシシランは、式(アルコキシ)(アルキル)3-dSi-(CHS-S-S-S-(CH-Si(アルキル)3-d(アルコキシ)(式中、dは、2又は3であり;eは、1~10、好ましくは2~8、より好ましくは2又は3の整数であり;アルコキシ基中のアルキルは、1~10個の炭素、好ましくは1~6個の炭素、より好ましくは1~4個の炭素のアルキルから選択される)を有する。あるいは、他の実施形態では、テトラスルフィドアルコキシシランは、硫黄鎖の一方の末端(例えば、第1の硫黄)のみにアルコキシシランアルキレン部分を有し、硫黄鎖の他方の末端(例えば、第4の硫黄)には、別の部分が存在する(例えば、チオカルバモイル、ベンゾチアゾール)。
【0039】
本明細書に開示される第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、官能化用化合物がジスルフィドアルコキシシランである場合、それは、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリブトキシシリル-プロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリ-m-ブトキシシリル-プロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリプロポキシプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリヘキソキシシリルプロピル)ジスルフィド、2,2’-ビス(ジメチルメトキシシリルエチル)ジスルフィド、3,3’-ビス(ジフェニルシクロヘキソキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(エチル-ジ-sec-ブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(プロピルジエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリイソプロポキシシリルプロピル)ジスルフィド、12,12’-ビス(トリイソプロポキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(ジメトキシフェニルシリル-2-メチルプロピル)ジスルフィド、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0040】
本明細書に開示される第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、官能化用化合物がテトラスルフィドアルコキシシランである場合、それは、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-ベンゾトリアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾトリアゾールテトラスルフィド、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0041】
本明細書に開示される第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、官能化用化合物は、メルカプトシラン化合物である。メルカプトシラン化合物は、一般式HS-R-Si(X)(R 3-n)(式中、各Xは、独立してハロゲン又はアルコキシ基(アルコキシ基の場合、式OR(式中、Rは、C~C脂肪族、脂環式、又は芳香族基である)のアルコキシ基である)から選択され;Rは、C~Cアルキレンから選択され; 各Rは、独立して、C~C30アルキル、C~C30アルカリール、C~C30脂環式、又はC~C20芳香族から選択され;nは、1~4の整数である)を有するものとして記載することができる。Xがハロゲンである場合、それは、塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素からなる群から選択され、好ましくは塩素であってよい。本明細書に開示される第1及び第2の実施形態の特定の好ましい実施形態では、官能化用化合物は上記式を有するメルカプトシランであり、RはC~Cアルキレンから選択され、Xはアルコキシ基(C~Cの炭素部分を有する)であり、nは3である。1-メルカプトメチルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリプロキシシラン、18-メルカプトオクタデシルジエトキシクロロシラン
【0042】
本明細書に開示される第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、官能化用化合物は、ブロック化メルカプトシランである。ブロック化メルカプトシランは、一般式B-S-R-Si-Xを有するものとして記載することができ、硫黄原子のポリマーとの反応を「ブロック」するためにメルカプト水素原子に置き換わったブロック基Bを有する。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、ブロック化メルカプトシランが上記一般式を有する場合、Bは、単結合を介して硫黄に直接結合した不飽和ヘテロ原子又は炭素の形態であり得るブロック基であり;Rは、C~C直鎖又は分岐アルキル鎖から選択され、各Xは、独立して、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、ハロゲン、ハロゲン含有C~Cアルキル、及びハロゲン含有C~Cアルコキシからなる群から選択される。本明細書に開示される第1及び第2の実施形態の特定の実施形態における官能化用化合物として使用するのに好適なブロック化メルカプトシランとしては、米国特許第6,127,468号、同第6,204,339号、同第6,528,673号、同第6,635,700号、同第6,649,684号、同第6,683,135号、及び同第7,256,231号に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に開示される第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、官能化用化合物がブロック化メルカプトシランである場合、それは、2-トリエトキシシリル-1-エチルチオアセテート、2-トリメトキシシリル-1-エチルチオアセテート、2-(メチルジメトキシ-シリル)-1-エチルチオアセテート、3-トリメトキシシリル-1-プロピルチオアセテート、トリエトキシシリルメチル-チオアセテート、トリメトキシシリルメチルチオアセテート、トリイソプロポキシシリルメチルチオアセテート、メチルジエトキシシリルメチルチオアセテート、メチルジメトキシシリルメチルチオアセテート、メチルジイソプロポキシシリルメチルチオアセテート、ジメチルエトキシシリルメチルチオアセテート、ジメチルメトキシシリルメチルチオアセテート、ジメチルイソプロポキシシリルメチルチオアセテート、2-トリイソプロポキシシリル-1-エチルチオアセテート、2-(メチルジエトキシシリル)-1-エチルチオアセテート、2-(メチルジイソプロポキシシリル)-1-エチルチオアセテート、2-(ジメチルエトキシシリル-1-エチルチオアセテート、2-(ジメチルメトキシシリル)-1-エチルチオアセテート、2-(ジメチルイソプロポキシシリル)-1-エチルチオアセテート、3-トリエトキシシリル-1-プロピル-チオアセテート、3-トリイソプロポキシシリル-1-プロピルチオアセテート、3-メチルジエトキシシリル-1-プロピル-チオアセテート、3-メチルジメトキシシリル-1-プロピルチオアセテート、3-メチルジイソプロポキシシリル-1-プロピルチオアセテート、1-(2-トリエトキシシリル-1-エチル)-4-チオアセチルシクロヘキサン、1-(2-トリエトキシシリル-1-エチル)-3-チオアセチルシクロヘキサン、2-トリエトキシシリル-5-チオアセチルノルボルネン、2-トリエトキシシリル-4-チオアセチルノルボルネン、2-(2-トリエトキシシリル-1-エチル)-5-チオアセチルノルボルネン、2-(2-トリエトキシ-シリル-1-エチル)-4-チオアセチルノルボルネン、1-(1-オキソ-2-チア-5-トリエトキシシリルフェニル)安息香酸、6-トリエトキシシリル-1-ヘキシルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-5-ヘキシルチオアセテート、8-トリエトキシシリル-1-オクチルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-7-オクチルチオアセテート、6-トリエトキシシリル-1-ヘキシルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-5-オクチルチオアセテート、8-トリメトキシシリル-1-オクチルチオアセテート、1-トリメトキシシリル-7-オクチルチオアセテート、10-トリエトキシシリル-1-デシルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-9-デシルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-2-ブチルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-3-ブチルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-3-メチル-2-ブチルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-3-メチル-3-ブチルチオアセテート、3-トリメトキシシリル-1-プロピルチオオクタノエート、3-トリエトキシシリル-1-プロピル-1-プロピルチオパルミテート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルチオオクタノエート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルチオベンゾエート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルチオ-2-エチルヘキサノエート、3-メチルジアセトキシシリル-1-プロピルチオアセテート、3-トリアセトキシシリル-1-プロピルチオアセテート、2-メチルジアセトキシシリル-1-エチルチオアセテート、2-トリアセトキシシリル-1-エチルチオアセテート、1-メチルジアセトキシシリル-1-エチルチオアセテート、1-トリアセトキシシリル-1-エチル-チオアセテート、トリス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)トリチオホスフェート、ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)メチルジチオホスホネート、ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)エチルジチオホスホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルジメチルチオホスフィネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルジエチルチオ-ホスフィネート、トリス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)テトラチオホスフェート、ビス-(3-トリエトキシシリル-1プロピル)メチルトリチオホスホネート、ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)エチルトリチオホスホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルジメチルジチオホスフィネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルジエチルジチオホスフィネート、トリス-(3-メチルジメトキシシリル-1-プロピル)トリチオホスフェート、ビス-(3-メチル-ジメトキシシリル-1-プロピル)メチルジチオホスホネート、ビス-(3-メチルジメトキシシリル-1-プロピル)-エチルジチオホスホネート、3-メチルジメトキシシリル-1-プロピルジメチルチオホスフィネート、3-メチルジメトキシシリル-1-プロピルジエチルチオホスフィネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルメチル-チオサルフェート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルメタンチオスルホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピル-エタンチオスルホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルベンゼンチオスルホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルトルエンチオスルホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルナフタレンチオスルホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルキシレンチオスルホネート、トリエトキシシリルメチルメチルチオサルフェート、トリエトキシシリルメチルメタンチオスルホネート、トリエトキシシリルメチルエタンチオスルホネート、トリエトキシシリルメチルベンゼンチオスルホネート、トリエトキシシリルメチルトルエンチオスルホネート、トリエトキシシリルメチルナフタレンチオスルホネート、トリエトキシシリルメチルキシレンチオスルホネートなどからなる群から選択される。
【0043】
変性グアユール樹脂生成物を調製するプロセス
上記の通り、本明細書において開示される第2の実施形態は、変性グアユール樹脂生成物を調製するプロセスを対象とする。概して、第2の実施形態のプロセスによれば、-OH基を有するアルゲンタチンの混合物を含むグアユール樹脂成分であって、出発生成物であるとみなすことができる、グアユール樹脂成分が提供される。アルゲンタチンの-OH基は、アルゲンタチン構造の固有の部分として理解されるべきであり、更に以下に議論されるように、官能化用化合物に結合するための部位を提供する。第2の実施形態のプロセスによれば、グアユール樹脂成分を、アルコキシシラン、メルカプトシラン、及びブロック化メルカプトシランから選択される官能化用化合物と混合し、官能化用化合物によって提供される少なくとも1つの官能基を有する官能化アルゲンタチンを含む変性グアユール樹脂生成物を生成する。
【0044】
変性グアユール樹脂生成物(又は、より具体的には、その中の官能化アルゼンタチン)を調製するために使用される官能化用化合物の量は、第2の実施形態のプロセスに従って様々であり得る。概して、官能化用化合物の量は、官能化用化合物からのアルコキシ基の、アルゲンタチンの混合物中の-OH基に対するモル当量比として計算することができる。したがって、相対的により多くのアルコキシ基(例えば、6)を有するアルコキシシラン化合物の使用は、アルコキシ基を2つだけしか有しないアルコキシシラン化合物と比べて、同等の官能化パーセントのアルゲンタチンを生成するために使用することを必要とするアルコキシシラン化合物のモル数が少なくなり得る。第2の実施形態の特定の好ましい実施形態では、官能化用化合物は、1/1~6/1(例えば、1/1、1.5/1、2/1、2.5/1、3/1、3.5/1、4/1、4.5/1、5/1、5.5/1、又は6/1)、より好ましくは2/1~3/1(例えば、2.1/1、2.2/1、2.3/1、2.4/1、2.5/1、2.6/1、2.7/1、2.8/1、2.9/1、又は3/1)の、官能化用化合物からのアルコキシ基の、アルゲンタチンの混合物中の-OH基に対するモル当量比を提供するのに十分な量で使用される。
【0045】
第2の実施形態のプロセスの特定の好ましい実施形態では、酸の使用は、官能化用化合物とアルゲンタチン化合物との間の反応を触媒するのに有用であり得る。そのような実施形態によれば、使用される酸の量は様々であり得る。第2の実施形態のプロセスの特定の好ましい実施形態では、酸は、官能化用化合物とグアユール樹脂成分との混合物中で1~5(例えば、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、又は5)のpHを達成するのに十分な量で使用される。鉱酸をはじめとするがこれに限定されない様々な酸を使用することができる。例示的な鉱酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、及び硝酸が挙げられる。
【0046】
第2の実施形態のプロセスの特定の好ましい実施形態では、グアユール樹脂成分を官能化用化合物と混合した後に熱を加える。官能化用化合物とグアユール樹脂成分のアルゲンタチンとの間の反応を触媒するために酸が添加される実施形態では、加えられるあらゆる熱は、好ましくは、酸が添加された後に加えられる。熱が加えられる第2の実施形態の実施形態では、混合物(すなわち、官能化用化合物、グアユール樹脂成分、及び任意選択で酸、の混合物)が加熱される温度は様々であり得る。好ましい実施形態では、混合物は、20~100℃(例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100℃)の温度まで加熱される。
【0047】
当業者であれば理解するように、官能化用化合物とグアユール樹脂成分のアルゲンタチンとの間の反応は、副生成物アルコールを生成する。したがって、第2の実施形態のプロセスの特定の実施形態では、プロセスは、変性グアユール樹脂生成物から副生成物アルコールを除去することを更に含む。熱及び/又は真空を含む様々なプロセスを、副生成物アルコールを除去するために使用することができる。
【実施例
【0048】
以下の実施例は、本開示の特定の及び例示的な実施形態、並びに/又は実施形態の特徴を例示するものである。実施例は、単に例示の目的で提供されており、本開示を限定するものとして解釈すべきでない。本開示の実施形態の趣旨及び範囲を逸脱することなく、これらの具体的な実施例に対する多くの変更が可能である。上述の通り、異なる量のグアユール樹脂成分(異なる量のアルゲンタチンを含有する)を使用して、また、上述の通り、異なる量又は種類の官能化用化合物を使用して、変性グアユール樹脂生成物を調製できることが具体的に理解されるべきである。
【0049】
実施例1(変性グアユール樹脂生成物の生成):グアユール樹脂の一部分(グアユール樹脂成分)を、n-オクタデシルトリメトキシシランの形態の官能化用化合物(純度97%、液体形態でGelestから入手、分子量374.7グラム/モル)と混合した。グアユール樹脂成分は、約80重量%のアルゲンタチン及び3.8重量%の低分子量ゴム(低分子量GPCによって測定)を含有していた。官能化用化合物の1グラムの部分をグアユール樹脂成分の2グラムの部分に添加し、次いで、1ミリリットルの水を添加して縮合反応を促進した。混合物をホットプレート上で約1時間加熱して沸騰させ、次いで、75℃の真空オーブンに2時間入れて、あらゆる発生したメタノールを除去した。以下の表1は、グアユール樹脂成分の特性と比較した変性グアユール樹脂生成物の特性の変化を示し、この変化は、グアユール樹脂成分中のアルゲンタチンと官能化用化合物との、アルゲンタチンによるメチル基の置換を引き起こす反応に起因すると考えられる。表1のデータから分かるように、変性グアユール樹脂生成物のMn、Mw、及びMz値は、未変性形態のグアユール樹脂成分の対応する値と比較して増加している。表1はまた、グアユール樹脂成分又は変性グアユール樹脂生成物の異なる成分の重量パーセント(GPCからの選択されたピークのピーク下面積から計算)を示す。成分1は、オリゴマー化生成物(第1のピーク)に対応し、成分2は、樹脂トリグリセリド及び低分子量オリゴマー化生成物(ピーク2及び3から、850~2000グラム/モルのMnの範囲)に対応し、成分3は、アルゲンタチン及びグアユールの形態の未変性樹脂(ピーク4及び5から、400~850グラム/モルのMnの範囲)に対応する。表1のデータによれば、実施例1の変性グアユール樹脂生成物は、より少量(重量パーセント)のアルゲンタチン(成分3のパーセントがより低いことをエビデンスとして)及びより多量のオリゴマー化材料(グアユール樹脂成分中のアルゲンタチンとアルコキシシランとの反応から生成される生成物に対応する成分1のパーセントがより高いことをエビデンスとして)を有する。TgをDSCによって測定し、分子量値をGPC(TOSOHカラム、溶出溶媒としてTHF、及び標準ポリスチレンを使用)を用いて測定した。
【0050】
【表1】
【0051】
実施例2~5(変性グアユール樹脂生成物の生成):グアユール樹脂の一部分(グアユール樹脂成分)を、4つの官能化用化合物のうちの1つと混合した。実施例2では、ポリジメトキシシラン(Gelestから製品名PSI-026で入手)を利用した。実施例3では、n-プロピルトリメトキシシラン(Gelestから製品名SIP 6918.0で入手)を利用した。実施例4では、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(Gelestから製品名SIM 6474.0で入手)を利用した。実施例5では、4-テトラエトキシシラン(Gelestから製品名SIT 7110.0で入手)を利用した。各官能化用化合物は液体の形態で存在していた。グアユール樹脂成分(実施例1で使用したグアユール樹脂成分とは異なる)はトルエン溶液中に存在し、グアユール樹脂成分の主成分はアルゲンタチンの混合物であった。グアユール樹脂成分は、約76重量%のアルゲンタチン及び0.0重量%のゴム(低分子量GPCによって測定)を含有していた。各実施例について、それぞれの官能化用化合物を、以下の表2に示す量でトルエン溶液中のグアユール樹脂成分の一部分に添加した。グアユール樹脂成分をそれぞれの官能化用化合物と混合した後、2ミリリットルの酸性エタノール-水溶液を各混合物に添加し、次いで、ホットプレート上に数時間(撹拌せずに)置いた。(酸性エタノール-水溶液は、水及びエタノールの10%溶液10ミリリットルを作製し、6N塩酸1ミリリットルを添加することによって調製した。)ホットプレート手順を金曜日に行い、サンプルを週末の間(室温で)静置した。月曜日の朝に、各サンプルを100℃の真空オーブンに4時間入れ、次いで、試験に送った。以下の表3は、グアユール樹脂成分の特性と比較した変性グアユール樹脂生成物の特性の変化を示し、この変化は、グアユール樹脂成分中のアルゲンタチンと官能化用化合物との、アルゲンタチンによるメチル又はエチル基の置換を引き起こす反応に起因すると考えられる。表3はまた、グアユール樹脂成分又は変性グアユール樹脂生成物の異なる成分の重量パーセント(GPCからの選択されたピークのピーク下面積から計算)を示す。成分1は、オリゴマー化生成物(第1のピーク)に対応し、成分2は、樹脂トリグリセリド及び低分子量オリゴマー化生成物(ピーク2及び3から、850~2000グラム/モルのMnの範囲)に対応し、成分3は、アルゲンタチン及びグアユールの形態の未変性樹脂(ピーク4、5、及び6から、400~850グラム/モルのMnの範囲)に対応する。表3のデータによれば、実施例2~5の各変性グアユール樹脂生成物は、より少量(重量パーセント)のアルゲンタチン(成分3のパーセントがより低いことをエビデンスとして)及びより多量のオリゴマー化材料(グアユール樹脂成分中のアルゲンタチンと官能化用化合物との反応から生成される生成物に対応する成分1のパーセントがより高いことをエビデンスとして)を有する。実施例4のみがMn、Mw、及びMzの増加を示すが、実施例2~5の各々について成分3のパーセントが減少し、実施例2~5の各々について成分1の量が増加するという事実は、グアユール樹脂成分中のアルゼンタチンと官能化用化合物との間で反応が起こったことを示している。TgをDSCによって測定し、分子量値をGPC(TSOHカラム、溶出溶媒としてTHF、及び標準ポリスチレンを使用)を用いて測定した。
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
本出願は、本明細書において開示されている組成物及び方法の実施形態が開示される数値範囲全体で実行できるため、明確な範囲限界が明細書内に言葉どおりに言及されていなくても、開示される数値範囲内の任意の範囲を支持する、いくつかの数値範囲限界を開示している。実質的に任意の複数又は単数の用語を本明細書で用いることに関して、当業者は、状況又は用途に適切となるように、複数から単数へ、又は単数から複数へ置き換えることができる。様々な単数又は複数の置き換えは、簡潔にするため、本明細書では明示的に記述されている場合がある。
【0055】
一般的に、当業者は、本明細書及び特に添付の特許請求の範囲で使用された用語は、概して「オープン」な用語を意図していることを理解するだろう。例えば、用語「含む」は、「含むがこれらに限定されない」と解釈されるべきであり、用語「有する」は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、用語「挙げられる」は、「挙げられるがこれらに限定されない」と解釈されるべきである。更に、当業者は、前置きされた請求項の記載において特定の数が意図される場合、そのような意図は当該請求項中に明示的に記載されるものとし、そのような記載がない場合は、そのような意図も存在しないことを理解するだろう。例えば、理解を助けるものとして、以下の添付の特許請求の範囲には、請求項の記載を前置きするために、前置き語句「少なくとも1つ」及び「1つ以上」の使用を含む場合がある。しかし、そのような語句の使用は、同じ請求項が、前置き語句「1つ以上」又は「少なくとも1つ」、及び、「a」又は「an」などの不定冠詞を含む場合であっても、不定冠詞「a」又は「an」による請求項の記載の前置きが、そのように前置きされた請求項の記載を含む任意の特定の請求項を、そのような記載を1つのみ含む発明に限定することを意味するものとして解釈されてはならず(例えば、「a」又は「an」は、典型的には、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである)、請求項の記載の前置きに使用される定冠詞の使用についても同じことが言える。加えて、前置きされた請求項の記載において特定の数が明示的に記載される場合でも、当業者は、このような記載が、少なくとも記載される数を意味するものと典型的には解釈されるべきであることを理解している(例えば、他の修飾語句を持たない明らかな記載である「2つの記載」は、典型的には、少なくとも2つの記載、又は2つ以上の記載を意味する)。更に、「A、B、及びCなどのうち少なくとも1つ」に類似する慣例表現を用いる場合、一般に、このような構成は、当業者がその慣例表現を理解し得るという意味において意図される(例えば、「A、B、及びCのうち少なくとも1つを有するシステム」として、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びBを共に、A及びCを共に、B及びCを共に、並びに/又は、A、B、及びCを共になどを有するシステムが挙げられ得るが、これらに限定されない)。更に、当業者は、事実上、2つ以上の代替用語を示す任意の離接的単語又は語句は、明細書、請求項、又は図面を問わず、これらの用語のうちの1つ、これらの用語のうちのいずれか、又はこれらの用語の両方を含む可能性を企図すると理解されるべきであることを、理解するであろう。例えば、語句「A又はB」は、「A」又は「B」又は「A及びB」の可能性を含むと理解されるであろう。特許、特許出願、及び非特許文献を含むがこれらに限定されない全ての参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。組成物及び方法の様々な態様並びに実施形態を本明細書に開示してきたが、他の態様及び実施形態が、当業者には明らかであろう。本明細書で開示されている様々な態様及び実施形態は、例示目的であり、特許請求の範囲により示されている真の範囲及び趣旨を限定することを意図していない。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの官能基を有するアルゲンタチンの混合物を含み、前記少なくとも1つの官能基が、アルコキシシラン、メルカプトシラン、及びブロック化メルカプトシランから選択される官能化用化合物によって提供される、変性グアユール樹脂生成物。
【請求項2】
-70~100℃のTgを有する、請求項1に記載の変性グアユール樹脂生成物。
【請求項3】
10重量%未満のグアユールゴムが前記変性グアユール樹脂生成物中に存在する、請求項1又は2に記載の変性グアユール樹脂生成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の変性グアユール樹脂生成物を調製するプロセスであって、
a.-OH基を有するアルゲンタチンの混合物を含むグアユール樹脂成分を提供することと、
b.前記グアユール樹脂成分を、アルコキシシラン、メルカプトシラン、及びブロック化メルカプトシランから選択される官能化用化合物と混合することと、
c.前記官能化用化合物によって提供される少なくとも1つの官能基を有する官能化アルゲンタチンを含む変性グアユール樹脂生成物を生成することと、
を含む、プロセス。
【請求項5】
(b)が酸を添加することを含み、(b)において前記グアユール樹脂成分を官能化用化合物と混合した後に熱が加えられ、(c)が前記アルコキシシランのアルコキシ基から生成される副生成物アルコールの生成を含み、前記プロセスが、前記副生成物アルコールを除去することを更に含む、請求項4に記載のプロセス。

【国際調査報告】