(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-24
(54)【発明の名称】抗炎症性マイクロRNAが濃縮された細胞外小胞を産生するための方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20240117BHJP
A61K 35/545 20150101ALI20240117BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20240117BHJP
A61K 35/30 20150101ALI20240117BHJP
A61K 35/20 20060101ALI20240117BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240117BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240117BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20240117BHJP
C12N 5/0775 20100101ALI20240117BHJP
C12N 5/0797 20100101ALI20240117BHJP
C12N 5/095 20100101ALI20240117BHJP
【FI】
C12Q1/02
A61K35/545
A61K35/28
A61K35/30
A61K35/20
A61P29/00
A61P43/00 105
C12Q1/68 100Z
C12N5/0775
C12N5/0797
C12N5/095
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539873
(86)(22)【出願日】2021-12-29
(85)【翻訳文提出日】2023-08-23
(86)【国際出願番号】 CN2021142539
(87)【国際公開番号】W WO2022143784
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】202011612853.2
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519420355
【氏名又は名称】セルラー バイオメディシン グループ (シャンハイ) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(71)【出願人】
【識別番号】523474494
【氏名又は名称】セルラー バイオファーマ(シャンハイ) リミテッド
(72)【発明者】
【氏名】リー,ピン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジン
(72)【発明者】
【氏名】シェン,メイピン
(72)【発明者】
【氏名】ダイ,チェンシャン
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B063QA20
4B063QQ08
4B063QQ52
4B063QR48
4B063QR90
4B063QS10
4B063QS40
4B065AA90X
4B065AC14
4B065BA30
4B065BD39
4B065CA23
4B065CA44
4C087AA01
4C087BB39
4C087BB44
4C087BB45
4C087BB63
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZB11
4C087ZB21
(57)【要約】
単離された幹細胞を有効量の少なくとも1つの免疫調節因子と共に培養することによってエキソソームを産生する方法が提供される。このようにして産生されたエキソソームは、抗炎症性miRNAおよび/または上皮間葉転換を阻害するmiRNAが濃縮されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップを含む、少なくとも1つの抗炎症性miRNAが濃縮された細胞外小胞を産生するための方法:
(a)前記細胞外小胞の放出を可能にする期間にわたって細胞培養培地中で幹細胞を培養するステップであって、前記培養培地が、少なくとも1つの抗炎症性miRNAが濃縮された細胞外小胞の放出を誘導するのに有効な量の少なくとも1つの免疫調節因子を含み、前記細胞外小胞が前記幹細胞から前記細胞培養培地中に放出される、ステップ、および
(b)前記細胞培養培地から前記細胞外小胞を単離するステップ。
【請求項2】
前記少なくとも1つの免疫調節因子がインターフェロンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(a)の前に、前記幹細胞を約60%~約95%の範囲のコンフルエンシーで前培養することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの抗炎症性miRNAが、miR-146a、miR-21、let-7a、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記インターフェロンがインターフェロンγ(IFNγ)を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記インターフェロンが、前記細胞培養培地中で約1ng/ml~約50ng/mlの範囲の濃度を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記インターフェロンが約10ng/mlの濃度を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞外小胞がエキソソームを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞外小胞が、約50nm~約150nmの範囲の直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記幹細胞がヒト幹細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記幹細胞が、間葉系幹細胞、乳腺上皮幹細胞、神経幹細胞またはがん幹細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの抗炎症性miRNAのレベルが、前記少なくとも1つの免疫調節因子で処理されていない対照幹細胞における前記少なくとも1つの抗炎症性miRNAのレベルと比較して、少なくとも2倍増加する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの抗炎症性miRNAのレベルが約2倍~約5倍増加する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの抗炎症性miRNAのレベルが約2倍~約8倍増加する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記幹細胞が約1日~約8日間培養される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記幹細胞が約2日間培養される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法によって調製された細胞外小胞。
【請求項18】
請求項17に記載の細胞外小胞を含む医薬組成物。
【請求項19】
請求項17に記載の細胞外小胞を含むキット。
【請求項20】
対象の疾患を治療する方法であって、請求項18に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項21】
前記疾患が炎症性疾患、線維性疾患、またはそれらの組み合わせである、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月30日に出願された中国特許出願第2020116128532号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に出願された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2021年12月23日に作成された前記ASCIIコピーの名称は11299-009944-WO0_ST25.txtであり、サイズは2KBである。
【0003】
本開示は、バイオテクノロジーの分野に関し、特に、ヒト細胞に由来する細胞外小胞における特異的miRNAのレベルを増加させるための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
細胞外小胞(EV)は、リン脂質二重層を含有する細胞由来膜構造である。それらのサイズおよび生合成の機構に応じて、それらはエキソソーム、微小胞およびアポトーシス小体として分類され得る。EVはまた、エクトソームとエキソソームの2つのカテゴリーに大別することができる。エキソソームは、細胞によって分泌され、細胞間シグナル伝達において重要な役割を果たす。多胞体(MVB)は、エンドソーム内腔に内向きに出芽する管腔内小胞(ILV)によって定義されるエンドソームである。MVBが細胞表面(原形質膜)と融合すると、これらのILVはエキソソームとして放出される。
【0005】
細胞外小胞の主な特徴には、以下が含まれ得る:1)直径30~150nmのサイズ、2)透過型電子顕微鏡下でカップ形状の小胞構造であることが示されるリン脂質二重層を有すること、ならびに3)CD63、CD9、CD81などのテトラスパニン、およびTSG101、Alixなどのマーカーを有すること。エキソソームは、それらを分泌する細胞の構成成分(例えば、タンパク質、DNAおよびRNA)を含有する。RNAには、マイクロRNA(miRNA)、長い非コードRNA(長いncRNA、lncRNA)、環状RNA(circRNA)などの小分子RNAが含まれる。それらは、細胞の機能および挙動に影響を及ぼし得る遠隔細胞によって取り込まれる。エキソソームを介した細胞間コミュニケーションは、がん、神経変性、および炎症性疾患を含む様々な障害の病因に関与しているようである。Kalluri et al.,The biology,function,and biomedical applications of exosomes,Science,2020,367(6478):eaau6977。
【0006】
炎症は、感染および傷害に対する応答の複雑な生物学的および病態生理学的カスケードであり、炎症機序は多くの疾患に密接に関連している。炎症応答の規模、炎症促進因子および抗炎症因子の複雑なネットワーク、ならびに方向は、様々な障害の発症および進行に影響を及ぼし得る。現在利用可能な治療戦略は、炎症性疾患の原因ではなく症状を標的とすることが多く、しばしば無効であり得る。
【0007】
マイクロRNA(miRNA)は、増殖およびアポトーシスなどの細胞活性において重要な役割を果たす。それらはまた、炎症を制御するための重要な遺伝子調節因子として浮上している。それらは、適切な消散を可能にし、炎症反応の制御されない進行を防止するために微調整されたシグナル伝達調節因子である。Tahamtan et al.,Anti-Inflammatory MicroRNAs and Their Potential for Inflammatory Diseases Treatment,Front.Immunol.2018;9:1377。研究は、それらが肺炎症の進行に関与し、肺線維症の治療に有用であることを示している。間葉系幹細胞に由来するエキソソームは、マイクロRNAが濃縮されており、炎症経路を調節することによって抗炎症効果を有し得る。ヒト間葉系幹細胞に由来する細胞外小胞における特定のマイクロRNAのレベルを増加させることは、炎症性疾患および線維性疾患の治療において非常に重要である。しかしながら、細胞外小胞において特定の特異的マイクロRNAを増加させるための特に効率的な方法はない。
【0008】
本開示は、ヒト細胞に由来する細胞外小胞における特異的miRNA(例えば、抗炎症性miRNA)のレベルを効率的に増加させるための方法を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Kalluri et al.,The biology,function,and biomedical applications of exosomes,Science,2020,367(6478):eaau6977
【非特許文献2】Tahamtan et al.,Anti-Inflammatory MicroRNAs and Their Potential for Inflammatory Diseases Treatment,Front.Immunol.2018;9:1377
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示は、ヒト細胞に由来する細胞外小胞における特異的miRNAのレベルを増加させるための方法(インビトロ)を提供する。
【0011】
本開示は、少なくとも1つの抗炎症性miRNAおよび/または上皮間葉転換を阻害する少なくとも1つのmiRNAが濃縮された細胞外小胞を産生するための方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本方法は、以下のステップを含み得る:(a)細胞外小胞の放出を可能にする期間にわたって細胞培養培地中で細胞(例えば、幹細胞)を培養するステップであって、培地が、ある量の少なくとも1つの免疫調節因子を含み、細胞外小胞が細胞(例えば、幹細胞)から細胞培養培地中に放出される、ステップ、および(b)細胞培養培地から細胞外小胞を単離するステップ。
【0013】
特定の実施形態では、少なくとも1つの免疫調節因子の量は、少なくとも1つの抗炎症性miRNAおよび/または上皮間葉転換を阻害する少なくとも1つのmiRNAが濃縮された細胞外小胞の放出を誘導するのに有効である。
【0014】
本方法は、ステップ(a)の前に、幹細胞を、約60%~約95%、約70%~約95%、約70%~約90%、少なくとももしくは約60%、少なくとももしくは約70%、少なくとももしくは約80%、少なくとももしくは約90%、または約75%~約80%の範囲のコンフルエンシーで前培養することをさらに含み得る。
【0015】
少なくとも1つの抗炎症性miRNAおよび/または上皮間葉転換を阻害する少なくとも1つのmiRNAは、miR-146a、miR-21、let-7a、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0016】
細胞外小胞はエキソソームを含み得る。
【0017】
特定の実施形態では、1つ以上の細胞外小胞(例えば、エキソソーム)は、より高いレベルの少なくとも1つの抗炎症性miRNAおよび/または上皮間葉転換を阻害する少なくとも1つのmiRNAを含む。
【0018】
特定の実施形態では、少なくとも1つの免疫調節因子は、インターフェロン(例えば、1つ以上のインターフェロン)を含む。
【0019】
特定の実施形態では、1つ以上の免疫調節因子は、インターフェロンおよび/またはTNFαなどの腫瘍壊死因子(TNF)を含む。
【0020】
インターフェロンは、インターフェロンγ(IFNγ)を含み得る。インターフェロンは、1つ以上のインターフェロンを含み得る。
【0021】
インターフェロンは、I型、II型またはIII型インターフェロンであり得る。I型インターフェロンには、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-ε、インターフェロン-κおよびインターフェロン-ωが含まれる。II型インターフェロンには、インターフェロン-γが含まれる。
【0022】
特定の実施形態では、インターフェロンは、IFN-γ、IFN-α、IFN-β、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0023】
特定の実施形態では、インターフェロンは、IFN-γであり、α型および/またはβ型IFN(例えば、IFN-αおよびIFN-β)を含有しない。
【0024】
インターフェロンの量は、約1ng/ml~約200ng/ml、約1ng/ml~約150ng/ml、約1ng/ml~約100ng/ml、約5ng/ml~約50ng/ml、約5ng/ml~約40ng/ml、約5ng/ml~約30ng/ml、約5ng/ml~約20ng/ml、約5ng/ml~約15ng/ml、約5ng/ml~約10ng/ml、約8ng/ml~約12ng/ml、約9ng/ml~約11ng/ml、約1ng/ml~約50ng/ml、約1ng/ml~約50ng/ml、約1ng/ml~約40ng/ml、約1ng/ml~約30ng/ml、約1ng/ml~約20ng/ml、約1ng/ml~約10ng/ml、または約10ng/mlの範囲であり得る。
【0025】
インターフェロンの量は、少なくとも1つの抗炎症性miRNAおよび/または上皮間葉転換を阻害する少なくとも1つのmiRNAが濃縮されたエキソソームの放出を誘導するのに有効であり得る。
【0026】
培養培地は、幹細胞の培養に適している。
【0027】
細胞外小胞(例えば、エキソソーム)は、約30nm~約200nm、約50nm~約200nm、約30nm~約150nm、約50nm~約150nmの範囲の直径を有し得る。
【0028】
幹細胞は、ヒト幹細胞であり得る。幹細胞は、間葉系幹細胞、乳腺上皮幹細胞、神経幹細胞またはがん幹細胞であり得る。
【0029】
特定の実施形態では、少なくとも1つの抗炎症性miRNAのレベルは、インターフェロンで処理されていない対照幹細胞における少なくとも1つの抗炎症性miRNAのレベルと比較して、少なくとももしくは約1倍、少なくとももしくは約2倍、少なくとももしくは約3倍、少なくとももしくは約4倍、少なくとももしくは約5倍、少なくとももしくは約6倍、少なくとももしくは約7倍、少なくとももしくは約8倍、少なくとももしくは約9倍、約2倍~約5倍、約2倍~約7倍、約2倍~約6倍、約2倍~約4倍、約2倍~約3倍、または約2倍~約8倍増加し得る。
【0030】
幹細胞は、約1日~約10日間、約1日~約8日間、約1日~約6日間、約1日~約4日間、約1日~約3日間、約1日、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間または約8日間の範囲の期間にわたって培養され得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、細胞外小胞(例えば、エキソソーム)は、細胞外小胞(例えば、エキソソーム)を含有する培養培地を遠心分離、例えば、超遠心分離または順次遠心分離して、細胞外小胞(例えば、エキソソーム)を含むペレットを得ることによって、単離することができる。
【0032】
本方法のステップ(b)は、幹細胞から放出された細胞外小胞を含有する培養培地を遠心分離して、細胞外小胞を含むペレットを得ることを含み得る。特定の実施形態では、ステップ(b)において、培養培地は、300g(任意選択)、2000g~3000g(例えば、3000g)、10,000g、および110,000g~120,000g(例えば、120,000g)で遠心分離される(例えば、順次)。
【0033】
特定の実施形態では、細胞培養培地から細胞外小胞を単離するステップ(例えば、ステップ(b))は、細胞培養培地をポリエチレングリコール(PEG)と混合し、一定期間(例えば、一晩)インキュベートすることと、混合物を(例えば、遠心分離によって)分離して、細胞外小胞を含有する沈殿物を得ることとを含む。
【0034】
本開示は、本方法によって調製された細胞外小胞(例えば、エキソソーム)を提供する。
【0035】
細胞外小胞(例えば、エキソソーム)を含む医薬組成物も本開示に包含される。
【0036】
いくつかの実施形態では、組成物は無細胞である。
【0037】
組成物は、生理学的に許容される賦形剤をさらに含有することができる。
【0038】
組成物は、全身的に、またはそれを必要とする部位に局所的に対象に投与され得る。組成物は、対象または別の対象から得られた幹細胞に由来する、または幹細胞から放出された細胞外小胞(例えば、エキソソーム)を含有し得る。
【0039】
本開示は、細胞外小胞(例えば、エキソソーム)を含むキットを提供する。
【0040】
本開示はまた、対象の疾患を治療する方法を提供する。本方法は、本医薬組成物を対象に投与することを含み得る。
【0041】
疾患は、炎症性疾患、線維性疾患、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0042】
本開示の第1の態様では、以下のステップを含む、細胞外小胞における特異的miRNAのレベルを増加させるための方法が提供される:
(a)幹細胞を提供するステップ、
(b)適切な培養条件下で、幹細胞を前培養して、60~95%の範囲のコンフルエンスを有する前培養された幹細胞を得るステップ、
(c)1つ以上の免疫調節因子を含有する培養培地中で、前培養された幹細胞を誘導および培養して、幹細胞から放出された細胞外小胞を含有する培養培地を得るステップであって、1つ以上の免疫調節因子がインターフェロンを含む、ステップ、ならびに
(d)培養培地から細胞外小胞を単離するステップ。
【0043】
特定の実施形態では、細胞外小胞において、以下のmiRNA、miR-146a、miR-21、let-7a、またはそれらの組み合わせの1つ以上のレベルが増加する。
【0044】
特定の実施形態では、細胞外小胞は、以下の特徴の1つ以上を有する:
(m1)増加した相対的発現レベルM1を有するmiR-21(例えば、miR-21-5p)、ここで、M1≧3、またはM1は3~6の範囲であり、
(m2)増加した相対的発現レベルM2を有するmiR-146a(例えば、miR-146a-5p)、ここで、M2≧3、またはM2は3~9の範囲であり、および
(m3)増加した相対的発現レベルM3を有するlet-7a(例えば、let-7a-5p)、ここで、M3≧3、またはM3は3~6の範囲であり、
相対的発現レベルは、同じ条件下で、ただし幹細胞を1つ以上の免疫調節因子で処理せずに調製した細胞外小胞(対照)における対応するmiRNAの発現レベルと比較することによって得られる(対照におけるmiRNAのレベルを1とする)。
【0045】
特定の実施形態では、単離された細胞外小胞は、以下の特徴の1つ以上を有する:
(f1)増加した相対的発現レベルE1を有するTGFβ1、ここで、E1≧1.5、またはE1は1.5もしくは2.0からの範囲であり、および/または
(f2)増加した相対的発現レベルE2を有するHGF、ここで、E2≧1.5、またはE1は1.5もしくは2.0からの範囲であり、
相対的発現レベルは、同じ条件下で、ただし1つ以上の免疫調節因子を含まずに調製した細胞外小胞(対照)におけるTGFβ1またはHGFの発現レベルと比較することによって得られる(対照におけるTGFβ1またはHGFの発現レベルを1とする)。
【0046】
特定の実施形態では、細胞外小胞は、以下を有する:
(f3)低下した相対的発現レベルE3を有するMMP8、ここで、E3≦0.6、またはE3は0.4~0.6の範囲であり、
相対的発現レベルは、同じ条件下で、ただし1つ以上の免疫調節因子を含まずに調製した細胞外小胞(対照)におけるMMP8の発現レベルと比較することによって得られる(対照におけるMMP8の発現レベルを1とする)。
【0047】
特定の実施形態では、細胞外小胞は、以下の特徴の1つ以上を有する:
(f4)同様の相対的発現レベルE4を有するIL1β、ここで、E4≦15、例えば、1~15もしくは1~12であり、および/または
(f5)同様の相対的発現レベルE5を有するIL6、ここで、E5≦10、例えば、1~10もしくは1~6であり、
相対的発現レベルは、同じ条件下で、ただし1つ以上の免疫調節因子を含まずに調製した細胞外小胞(対照)におけるIL1βまたはIL6の発現レベルと比較することによって得られる(対照におけるIL1βまたはIL6の発現レベルを1とする)。
【0048】
特定の実施形態では、本方法は、細胞外小胞における抗炎症活性を有するmiRNA(または抗炎症性miRNA)のレベルを増加させるために使用される。
【0049】
特定の実施形態では、抗炎症性miRNAは、miR-146a-5p、miR-21-5p、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0050】
特定の実施形態では、細胞培養培地から細胞外小胞を単離するステップ(例えば、ステップ(d))は、以下を含む:
(d1)培養培地を分離して、細胞外小胞を含有する無細胞上清を得ること、
(d2)ステップ(d1)の上清をポリエチレングリコール(PEG)と混合し、一定期間(例えば、一晩)インキュベートすること、および
(d3)ステップ(d2)で得られた混合物を分離して、細胞外小胞を含有する沈殿物を得ること。
【0051】
特定の実施形態では、1つ以上の免疫調節因子は、1つ以上のヒト免疫調節因子を含む。
【0052】
特定の実施形態では、1つ以上の免疫調節因子は、1つ以上の組換え免疫調節因子を含む。
【0053】
特定の実施形態では、1つ以上の免疫調節因子は、IFN-γを含む。
【0054】
特定の実施形態では、1つ以上の免疫調節因子は、IFNおよびTNFαを含み、TNFα対IFNの質量比は、約0.01:1~約1:1、または約0.01:1~約0.2:1である。
【0055】
特定の実施形態では、幹細胞は、間葉系幹細胞である。
【0056】
特定の実施形態では、間葉系幹細胞は、ヒトなどの哺乳動物に由来する。
【0057】
特定の実施形態では、幹細胞は、脂肪、骨髄、胎盤、またはそれらの組み合わせなどのヒト組織に由来する。
【0058】
特定の実施形態では、幹細胞は、脂肪組織由来幹細胞である。
【0059】
特定の実施形態では、幹細胞のコンフルエンスは、前培養後に60~95%、70~90%または75~80%である。
【0060】
特定の実施形態では、培養培地は、血小板溶解物またはウシ胎児血清(FBS)を含有する。特定の実施形態では、培養培地中の血小板溶解物の濃度は、約2%(v/v)~約15%(v/v)、または約5%(v/v)~約10%(v/v)である。
【0061】
特定の実施形態では、培養培地は、血小板溶解物またはウシ胎児血清(FBS)を含有するMinimum Essential Medium α(MEM αまたはαMEM)である。
【0062】
特定の実施形態では、誘導および培養の期間は、約24時間~約48時間(例えば、ステップ(c)において)である。
【0063】
特定の実施形態では、1つ以上の免疫調節因子は、IFN-γ(例えば、配列番号1)を含む。
【0064】
特定の実施形態では、培養培地/系におけるIFN-γの濃度は、約5~40ng/ml、約5~20ng/mlまたは約9~11ng/mlである(培養培地/系の体積に基づいて計算)。
【0065】
特定の実施形態では、ステップ(d1)において、培養培地を遠心分離して無細胞上清を得る。
【0066】
特定の実施形態では、ステップ(d1)において、遠心分離は、約10~40分間の約3,000~10,000gの分別遠心分離である。
【0067】
特定の実施形態では、ステップ(d2)において、ポリエチレングリコール(PEG)は、PEG4000~PEG8000、例えばPEG6000から選択される。
【0068】
特定の実施形態では、混合物中のPEG(例えば、PEG6000)の濃度は、約8%(w/v)~約20%(w/v)、約8%(w/v)~約18%(w/v)、約5%(w/v)~約20%(w/v)、約8%(w/v)~約16%(w/v)、約8%(w/v)~約15%(w/v)、約8%(w/v)~約12%(w/v)、約8%(w/v)、約9%(w/v)、約10%(w/v)、約11%(w/v)、約12%(w/v)、約13%(w/v)、約14%(w/v)、約15%(w/v)、約16%(w/v)、約7%(w/v)、または約10%(w/v)~約12%(w/v)である。
【0069】
特定の実施形態では、ステップ(d3)において、培養培地を遠心分離して、細胞外小胞を含有する沈殿物を得る。
【0070】
特定の実施形態では、ステップ(d3)において、遠心分離は、約40~70分間の約3,000~15,000gの分別遠心分離である。
【0071】
特定の実施形態では、本方法は、ステップ(e):ステップ(d)で得られた細胞外小胞のmiRNAレベル、細胞生存率およびマーカー発現レベルを測定するステップをさらに含む。
【0072】
特定の実施形態では、マーカー発現レベルを測定するステップは、マーカーの遺伝子発現レベル(例えば、mRNAレベル)および/またはタンパク質レベルを測定することを含む。
【0073】
特定の実施形態では、マーカーには、成長因子、炎症促進因子、および細胞外小胞特異的マーカーが含まれる。
【0074】
特定の実施形態では、成長因子は、トランスフォーミング成長因子β1(TGFβ1)、肝細胞成長因子(HGF)、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0075】
特定の実施形態では、炎症促進因子は、インターロイキン1β(IL1β)、インターロイキン6(IL6)、メタロプロテイナーゼ8(MMP8)、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0076】
特定の実施形態では、細胞外小胞特異的マーカーは、CD9、CD63、CD81、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0077】
特定の実施形態では、miRNAは、miR-146a、miR-21、let-7a、またはそれらの組み合わせを含む。
【0078】
特定の実施形態では、miR-146aは、miR-146a-5pおよび/またはmiR-146a-3pである。
【0079】
特定の実施形態では、miR-21は、miR-21-5pおよび/またはmiR-21-3pである。
【0080】
特定の実施形態では、let-7aは、let-7a-5pおよび/またはlet-7a-3pである。
【0081】
本開示の第2の態様では、1つ以上のmiRNA(例えば、抗炎症性miRNA)の増加したレベルを有する細胞外小胞であって、本開示の第1の態様に記載の方法によって得られる細胞外小胞が提供される。
【0082】
特定の実施形態では、細胞外小胞は、ヒト細胞に由来する。
【0083】
特定の実施形態では、ヒト細胞は、誘導された幹細胞および/または間葉系幹細胞である。
【0084】
特定の実施形態では、1つ以上の免疫調節因子で処理されていない対照幹細胞から得られた細胞外小胞と比較して、本細胞外小胞は、以下の特徴の1つ以上を有する:
(1)1つ以上の抗炎症性miRNAの増加したレベル、および/または、上皮間葉転換を阻害する1つ以上のmiRNAの増加したレベル、
(2)TGFβ1、HGF、またはそれらの組み合わせから選択される成長因子のmRNAおよび/またはタンパク質の増加したレベル、
(3)メタロプロテイナーゼ8(MMP8)(これは炎症促進性である)のmRNAおよび/またはタンパク質の低下したレベル、ならびに
(4)細胞外小胞特異的マーカーの同様の、または増加したレベル。
【0085】
特定の実施形態では、miRNAは、miR-146a-5p、miR-21-5pおよびlet-7a-5pを含む。
【0086】
特定の実施形態では、成長因子は、トランスフォーミング成長因子β1(TGFβ1)および/または肝細胞成長因子(HGF)を含む。
【0087】
特定の実施形態では、細胞外小胞において、インターロイキン1β(IL1β)およびインターロイキン6(IL6)のmRNAおよび/またはタンパク質のレベルは、対照細胞外小胞のレベルと同様である。
【0088】
特定の実施形態では、細胞外小胞特異的マーカーは、CD9、CD63および/またはCD81を含む。
【0089】
特定の実施形態では、「陰性対照群」において、幹細胞は、同じ培養条件下で、ただし1つ以上の免疫調節因子を含まずに誘導および培養され、細胞外小胞が単離される。
【0090】
本開示の第3の態様では、以下を含む医薬組成物が提供される:
(Z1)本開示の第2の態様に記載の細胞外小胞、および
(Z2)薬学的に許容される担体。
【0091】
特定の実施形態では、医薬組成物の剤形は、液体剤形または固体剤形(凍結乾燥剤形など)から選択される。
【0092】
特定の実施形態では、医薬組成物は、炎症性疾患および/または線維性疾患を治療するために使用される。
【0093】
特定の実施形態では、線維性疾患は、肺線維症を含む。
【0094】
特定の実施形態では、医薬組成物は、注射剤または霧化吸入製剤であり得る。
【0095】
本開示の第4の態様では、本開示の第3の態様に記載の医薬組成物を含むキットが提供される。
【0096】
特定の実施形態では、キットは、炎症性疾患または線維性疾患を治療するための他の薬物をさらに含む。
【0097】
本開示の第5の態様では、本開示の第2の態様の細胞外小胞を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、疾患を治療するための方法が提供される。
【0098】
特定の実施形態では、疾患は、炎症性疾患、線維性疾患、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0099】
特定の実施形態では、疾患は、肺線維症、肺炎、気道炎症、ARDSまたはCOPDから選択される。
【0100】
特定の実施形態では、医薬組成物は、ウイルスに関連する、またはウイルスによって引き起こされる疾患を治療するために使用される。
【0101】
特定の実施形態では、ウイルスは、インフルエンザウイルス、SARSコロナウイルス、SARS-Cov-2、およびMERSコロナウイルスから選択される。
【0102】
特定の実施形態では、炎症性疾患は、ウイルス感染性炎症、細菌感染性炎症、真菌感染性炎症、自己免疫応答炎症、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0103】
特定の実施形態では、医薬組成物は、傷害を治療するために使用される。
【0104】
傷害は、虚血性傷害、低酸素傷害、化学的傷害、物理的傷害、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0105】
本開示の範囲内で、本開示の上記の技術的特徴および以下に詳細に説明する技術的特徴(実施形態など)を互いに組み合わせて、新しいまたは好ましい技術的解決策を形成することができることを理解されたい。スペースの制限のため、ここでは詳述しない。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【
図1】継代4(P4)の脂肪由来間葉系幹細胞の生存率に対する異なる免疫調節因子の効果を示す。対照は、陰性対照群である。TNFα:腫瘍壊死因子α;IFNγ:インターフェロンγ。TNFα+IFNγは、2つの因子を組み合わせて使用したことを意味する。統計分析をすべての群で行い、陰性対照群と比較した。Cell Counting Kit-8(CCK8)を使用して、示された因子を含有する溶液B中で48時間培養した後の細胞の生存率を測定した。結果は、TNFα群およびIFNγ群の細胞生存率は陰性対照群の細胞生存率と比較して有意に低下せず、TNFα+IFNγ群の細胞生存率は陰性対照群の細胞生存率と比較して低下したことを示す。
【
図2A】異なる免疫調節因子で細胞を処理したか、または処理しなかった場合の、P4の脂肪由来間葉系幹細胞におけるmRNAレベルでのTGFβ1、HGF、MMP8、IL6およびIL1βの発現を示す。
図2Aは、mRNAレベルでのトランスフォーミング成長因子β1(TGFβ1)の発現を示し、
図2Bは、mRNAレベルでの肝細胞成長因子(HGF)の発現を示し、
図2Cは、mRNAレベルでのメタロプロテイナーゼ8(MMP8)の発現を示し、
図2Dは、mRNAレベルでのインターロイキン6(IL6)の発現を示し、
図2Eは、mRNAレベルでのインターロイキン1β(IL1β)の発現を示す。対照は、陰性対照群である。TNFα:腫瘍壊死因子α;IFNγ:インターフェロンγ。TNFα+IFNγは、2つの因子を組み合わせて使用したことを意味する。統計分析をすべての群で行い、陰性対照群と比較した(*P<0.05、**P<0.001、***P<0.0001)。エラーバー、S.D.(標準偏差)。
【
図2B】異なる免疫調節因子で細胞を処理したか、または処理しなかった場合の、P4の脂肪由来間葉系幹細胞におけるmRNAレベルでのTGFβ1、HGF、MMP8、IL6およびIL1βの発現を示す。
図2Aは、mRNAレベルでのトランスフォーミング成長因子β1(TGFβ1)の発現を示し、
図2Bは、mRNAレベルでの肝細胞成長因子(HGF)の発現を示し、
図2Cは、mRNAレベルでのメタロプロテイナーゼ8(MMP8)の発現を示し、
図2Dは、mRNAレベルでのインターロイキン6(IL6)の発現を示し、
図2Eは、mRNAレベルでのインターロイキン1β(IL1β)の発現を示す。対照は、陰性対照群である。TNFα:腫瘍壊死因子α;IFNγ:インターフェロンγ。TNFα+IFNγは、2つの因子を組み合わせて使用したことを意味する。統計分析をすべての群で行い、陰性対照群と比較した(*P<0.05、**P<0.001、***P<0.0001)。エラーバー、S.D.(標準偏差)。
【
図2C】異なる免疫調節因子で細胞を処理したか、または処理しなかった場合の、P4の脂肪由来間葉系幹細胞におけるmRNAレベルでのTGFβ1、HGF、MMP8、IL6およびIL1βの発現を示す。
図2Aは、mRNAレベルでのトランスフォーミング成長因子β1(TGFβ1)の発現を示し、
図2Bは、mRNAレベルでの肝細胞成長因子(HGF)の発現を示し、
図2Cは、mRNAレベルでのメタロプロテイナーゼ8(MMP8)の発現を示し、
図2Dは、mRNAレベルでのインターロイキン6(IL6)の発現を示し、
図2Eは、mRNAレベルでのインターロイキン1β(IL1β)の発現を示す。対照は、陰性対照群である。TNFα:腫瘍壊死因子α;IFNγ:インターフェロンγ。TNFα+IFNγは、2つの因子を組み合わせて使用したことを意味する。統計分析をすべての群で行い、陰性対照群と比較した(*P<0.05、**P<0.001、***P<0.0001)。エラーバー、S.D.(標準偏差)。
【
図2D】異なる免疫調節因子で細胞を処理したか、または処理しなかった場合の、P4の脂肪由来間葉系幹細胞におけるmRNAレベルでのTGFβ1、HGF、MMP8、IL6およびIL1βの発現を示す。
図2Aは、mRNAレベルでのトランスフォーミング成長因子β1(TGFβ1)の発現を示し、
図2Bは、mRNAレベルでの肝細胞成長因子(HGF)の発現を示し、
図2Cは、mRNAレベルでのメタロプロテイナーゼ8(MMP8)の発現を示し、
図2Dは、mRNAレベルでのインターロイキン6(IL6)の発現を示し、
図2Eは、mRNAレベルでのインターロイキン1β(IL1β)の発現を示す。対照は、陰性対照群である。TNFα:腫瘍壊死因子α;IFNγ:インターフェロンγ。TNFα+IFNγは、2つの因子を組み合わせて使用したことを意味する。統計分析をすべての群で行い、陰性対照群と比較した(*P<0.05、**P<0.001、***P<0.0001)。エラーバー、S.D.(標準偏差)。
【
図2E】異なる免疫調節因子で細胞を処理したか、または処理しなかった場合の、P4の脂肪由来間葉系幹細胞におけるmRNAレベルでのTGFβ1、HGF、MMP8、IL6およびIL1βの発現を示す。
図2Aは、mRNAレベルでのトランスフォーミング成長因子β1(TGFβ1)の発現を示し、
図2Bは、mRNAレベルでの肝細胞成長因子(HGF)の発現を示し、
図2Cは、mRNAレベルでのメタロプロテイナーゼ8(MMP8)の発現を示し、
図2Dは、mRNAレベルでのインターロイキン6(IL6)の発現を示し、
図2Eは、mRNAレベルでのインターロイキン1β(IL1β)の発現を示す。対照は、陰性対照群である。TNFα:腫瘍壊死因子α;IFNγ:インターフェロンγ。TNFα+IFNγは、2つの因子を組み合わせて使用したことを意味する。統計分析をすべての群で行い、陰性対照群と比較した(*P<0.05、**P<0.001、***P<0.0001)。エラーバー、S.D.(標準偏差)。
【
図3A】異なる免疫調節因子で細胞を処理したか、または処理しなかった場合の、P4の脂肪由来間葉系幹細胞に由来する細胞外小胞におけるmiR-21-5p、let-7a-5pおよびmiR-146a-5pのレベルを示す。
図3Aは、miR-21-5pレベルを示し、
図3Bは、let-7a-5pレベルを示し、
図3Cは、miR-146a-5pレベルの比較を示す。対照は、陰性対照群である。TNFα:腫瘍壊死因子α;IFNγ:インターフェロンγ。TNFα+IFNγは、2つの因子を組み合わせて使用したことを意味する。統計分析をすべての群で行い、陰性対照群と比較した(*P<0.05、**P<0.001、***P<0.0001)。エラーバー、S.D。
【
図3B】異なる免疫調節因子で細胞を処理したか、または処理しなかった場合の、P4の脂肪由来間葉系幹細胞に由来する細胞外小胞におけるmiR-21-5p、let-7a-5pおよびmiR-146a-5pのレベルを示す。
図3Aは、miR-21-5pレベルを示し、
図3Bは、let-7a-5pレベルを示し、
図3Cは、miR-146a-5pレベルの比較を示す。対照は、陰性対照群である。TNFα:腫瘍壊死因子α;IFNγ:インターフェロンγ。TNFα+IFNγは、2つの因子を組み合わせて使用したことを意味する。統計分析をすべての群で行い、陰性対照群と比較した(*P<0.05、**P<0.001、***P<0.0001)。エラーバー、S.D。
【
図3C】異なる免疫調節因子で細胞を処理したか、または処理しなかった場合の、P4の脂肪由来間葉系幹細胞に由来する細胞外小胞におけるmiR-21-5p、let-7a-5pおよびmiR-146a-5pのレベルを示す。
図3Aは、miR-21-5pレベルを示し、
図3Bは、let-7a-5pレベルを示し、
図3Cは、miR-146a-5pレベルの比較を示す。対照は、陰性対照群である。TNFα:腫瘍壊死因子α;IFNγ:インターフェロンγ。TNFα+IFNγは、2つの因子を組み合わせて使用したことを意味する。統計分析をすべての群で行い、陰性対照群と比較した(*P<0.05、**P<0.001、***P<0.0001)。エラーバー、S.D。
【
図4A】異なる免疫調節因子で処理した後の細胞外小胞の粒子濃度および粒径のナノ粒子追跡分析(NTA)を示す。
図4Aは、陰性対照群の粒径分布を示し、
図4BはTNFα群の粒径分布を示し、
図4Cは、IFNγ群の粒径分布を示し、
図4Dは、TNFα+IFNγ群の粒径分布を示し、
図4Eは、細胞外小胞の粒子密度/濃度を示し、
図4Fは、細胞外小胞の粒径を示す。統計分析をすべての群で行い、陰性対照群と比較した(*P<0.05、**P<0.001、***P<0.0001)。エラーバー、S.D。
【
図4B】異なる免疫調節因子で処理した後の細胞外小胞の粒子濃度および粒径のナノ粒子追跡分析(NTA)を示す。
図4Aは、陰性対照群の粒径分布を示し、
図4BはTNFα群の粒径分布を示し、
図4Cは、IFNγ群の粒径分布を示し、
図4Dは、TNFα+IFNγ群の粒径分布を示し、
図4Eは、細胞外小胞の粒子密度/濃度を示し、
図4Fは、細胞外小胞の粒径を示す。統計分析をすべての群で行い、陰性対照群と比較した(*P<0.05、**P<0.001、***P<0.0001)。エラーバー、S.D。
【
図4C】異なる免疫調節因子で処理した後の細胞外小胞の粒子濃度および粒径のナノ粒子追跡分析(NTA)を示す。
図4Aは、陰性対照群の粒径分布を示し、
図4BはTNFα群の粒径分布を示し、
図4Cは、IFNγ群の粒径分布を示し、
図4Dは、TNFα+IFNγ群の粒径分布を示し、
図4Eは、細胞外小胞の粒子密度/濃度を示し、
図4Fは、細胞外小胞の粒径を示す。統計分析をすべての群で行い、陰性対照群と比較した(*P<0.05、**P<0.001、***P<0.0001)。エラーバー、S.D。
【
図4D】異なる免疫調節因子で処理した後の細胞外小胞の粒子濃度および粒径のナノ粒子追跡分析(NTA)を示す。
図4Aは、陰性対照群の粒径分布を示し、
図4BはTNFα群の粒径分布を示し、
図4Cは、IFNγ群の粒径分布を示し、
図4Dは、TNFα+IFNγ群の粒径分布を示し、
図4Eは、細胞外小胞の粒子密度/濃度を示し、
図4Fは、細胞外小胞の粒径を示す。統計分析をすべての群で行い、陰性対照群と比較した(*P<0.05、**P<0.001、***P<0.0001)。エラーバー、S.D。
【
図4E】異なる免疫調節因子で処理した後の細胞外小胞の粒子濃度および粒径のナノ粒子追跡分析(NTA)を示す。
図4Aは、陰性対照群の粒径分布を示し、
図4BはTNFα群の粒径分布を示し、
図4Cは、IFNγ群の粒径分布を示し、
図4Dは、TNFα+IFNγ群の粒径分布を示し、
図4Eは、細胞外小胞の粒子密度/濃度を示し、
図4Fは、細胞外小胞の粒径を示す。統計分析をすべての群で行い、陰性対照群と比較した(*P<0.05、**P<0.001、***P<0.0001)。エラーバー、S.D。
【
図4F】異なる免疫調節因子で処理した後の細胞外小胞の粒子濃度および粒径のナノ粒子追跡分析(NTA)を示す。
図4Aは、陰性対照群の粒径分布を示し、
図4BはTNFα群の粒径分布を示し、
図4Cは、IFNγ群の粒径分布を示し、
図4Dは、TNFα+IFNγ群の粒径分布を示し、
図4Eは、細胞外小胞の粒子密度/濃度を示し、
図4Fは、細胞外小胞の粒径を示す。統計分析をすべての群で行い、陰性対照群と比較した(*P<0.05、**P<0.001、***P<0.0001)。エラーバー、S.D。
【
図5】異なる免疫調節因子で処理した後のP4の脂肪由来間葉系幹細胞由来のエキソソームのマーカーCD9、CD63およびCD81の発現を示す(試料は同じ体積を有していた)。Ctrl:陰性対照群;TNF10:TNFα 10ng/ml;IFN10:IFNγ 10ng/ml;T+I10:TNFα 10ng/ml+IFNγ 10ng/ml。
【発明を実施するための形態】
【0107】
本開示は、単離された幹細胞を有効量の少なくとも1つの免疫調節因子と共に培養することによってエキソソームを産生する方法を提供する。このようにして産生されたエキソソームは、抗炎症性miRNAおよび/または上皮間葉転換を阻害する少なくとも1つのmiRNAが濃縮されている。
【0108】
本開示は、ヒト細胞に由来する細胞外小胞における特定のmiRNAのレベルを増加させるためのインビトロ方法を提供する。具体的には、幹細胞が、1つ以上の免疫調節因子(例えば、インターフェロンγ)の存在下で培養され、細胞外小胞が、増加したレベルの抗炎症性miRNAおよび/または低下したレベルの炎症促進因子を含有する細胞培養培地から単離される。特定の実施形態では、間葉系幹細胞が本開示の方法によって培養されるとき、細胞外小胞におけるmiR-146a、miR-21およびlet-7aのレベルが有意に増加し、一方、インターロイキン1β(IL1β)、インターロイキン6(IL6)、メタロプロテイナーゼ8(MMP8)などの炎症促進因子のレベルは有意に低下する。
【0109】
特定の実施形態では、抗炎症性miRNAおよび/または上皮間葉転換を阻害する少なくとも1つのmiRNAが濃縮された細胞外小胞の集団が、1つ以上の免疫調節因子で処理されていない幹細胞に由来する細胞外小胞と比較して、少なくとももしくは約0.1%、少なくとももしくは約0.5%、少なくとももしくは約1%、少なくとももしくは約2%、少なくとももしくは約5%、少なくとももしくは約10%、少なくとももしくは約15%、少なくとももしくは約20%、少なくとももしくは約25%、少なくとももしくは約30%、少なくとももしくは約40%、少なくとももしくは約50%、少なくとももしくは約60%、少なくとももしくは約70%、少なくとももしくは約75%、少なくとももしくは約80%、少なくとももしくは約85%、または少なくとももしくは約90%の、より高いレベルの1つ以上の抗炎症性miRNAおよび/または上皮間葉転換を阻害する1つ以上のmiRNAを含む細胞外小胞を含む。
【0110】
細胞外小胞における1つ以上の抗炎症性miRNAおよび/または上皮間葉転換を阻害する1つ以上のmiRNAのレベルは、1つ以上の免疫調節因子で処理されていない幹細胞に由来する対照細胞外小胞における1つ以上の抗炎症性miRNAおよび/または上皮間葉転換を阻害する1つ以上のmiRNAのレベルと比較して、約1%~約100%、約5%~約90%、約10%~約80%、約5%~約70%、約5%~約60%、約10%~約50%、約15%~約40%、約5%~約20%、約1%~約20%、約10%~約30%、少なくとももしくは約5%、少なくとももしくは約10%、少なくとももしくは約15%、少なくとももしくは約20%、少なくとももしくは約30%、少なくとももしくは約40%、少なくとももしくは約50%、少なくとももしくは約60%、少なくとももしくは約70%、少なくとももしくは約80%、少なくとももしくは約90%、少なくとももしくは約100%、約10%~約90%、約12.5%~約80%、約20%~約70%、約25%~約60%、または約25%~約50%、少なくとももしくは約1倍、少なくとももしくは約2倍、少なくとももしくは約3倍、少なくとももしくは約4倍、少なくとももしくは約5倍、少なくとももしくは約6倍、少なくとももしくは約7倍、少なくとももしくは約8倍、少なくとももしくは約9倍、少なくとももしくは約10倍、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.8倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3.5倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、約2倍~約100倍、約1.1倍~約10倍、約1.1倍~約5倍、約1.5倍~約5倍、約2倍~約5倍、約3倍~約4倍、約5倍~約10倍、約5倍~約100倍、約10倍~約100倍、約10倍~約20倍、約20倍~約100倍、約20倍~約50倍、約30倍~約100倍、約50倍~約100倍、約70倍~約100倍増加し得る。
【0111】
細胞外小胞における1つ以上の成長因子(例えば、TGFβ1および/またはHGF)のmRNAレベルおよび/またはタンパク質レベルのレベルは、1つ以上の免疫調節因子で処理されていない幹細胞に由来する対照細胞外小胞における1つ以上の成長因子のmRNAレベルおよび/またはタンパク質レベルのレベルと比較して、約1%~約100%、約5%~約90%、約10%~約80%、約5%~約70%、約5%~約60%、約10%~約50%、約15%~約40%、約5%~約20%、約1%~約20%、約10%~約30%、約50%~約100%、少なくともまたは約5%、少なくともまたは約10%、少なくともまたは約15%、少なくともまたは約20%、少なくともまたは約30%、少なくともまたは約40%、少なくともまたは約50%、少なくともまたは約60%、少なくともまたは約70%、少なくともまたは約80%、少なくともまたは約90%、少なくともまたは約100%、約10%~約90%、約12.5%~約80%、約20%~約70%、約25%~約60%、または約25%~約50%、少なくともまたは約1倍、少なくともまたは約2倍、少なくともまたは約3倍、少なくともまたは約4倍、少なくともまたは約5倍、少なくともまたは約6倍、少なくともまたは約7倍、少なくともまたは約8倍、少なくともまたは約9倍、少なくともまたは約10倍、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.8倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3.5倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、約2倍~約100倍、約1.1倍~約10倍、約1.1倍~約5倍、約1.5倍~約5倍、約2倍~約5倍、約3倍~約4倍、約5倍~約10倍、約5倍~約100倍、約10倍~約100倍、約10倍~約20倍、約20倍~約100倍、約20倍~約50倍、約30倍~約100倍、約50倍~約100倍、約70倍~約100倍増加し得る。
【0112】
細胞外小胞における1つ以上の炎症促進因子(例えば、MMP8、IL1βおよび/またはIL6)のmRNAレベルおよび/またはタンパク質レベルのレベルは、1つ以上の免疫調節因子で処理されていない幹細胞に由来する対照細胞外小胞における1つ以上の炎症促進因子のmRNAレベルおよび/またはタンパク質レベルのレベルと比較して、約1%~約100%、約5%~約90%、約10%~約80%、約5%~約70%、約5%~約60%、約10%~約50%、約15%~約40%、約5%~約20%、約1%~約20%、約10%~約30%、少なくともまたは約5%、少なくともまたは約10%、少なくともまたは約15%、少なくともまたは約20%、少なくともまたは約30%、少なくともまたは約40%、少なくともまたは約50%、少なくともまたは約60%、少なくともまたは約70%、少なくともまたは約80%、少なくともまたは約90%、少なくともまたは約100%、約10%~約90%、約12.5%~約80%、約20%~約70%、約25%~約60%、約25%~約50%、約40%~約60%、少なくともまたは約1倍、少なくともまたは約2倍、少なくともまたは約3倍、少なくともまたは約4倍、少なくともまたは約5倍、少なくともまたは約6倍、少なくともまたは約7倍、少なくともまたは約8倍、少なくともまたは約9倍、少なくともまたは約10倍、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.8倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3.5倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、約2倍~約100倍、約1.1倍~約10倍、約1.1倍~約5倍、約1.5倍~約5倍、約2倍~約5倍、約3倍~約4倍、約5倍~約10倍、約5倍~約100倍、約10倍~約100倍、約10倍~約20倍、約20倍~約100倍、約20倍~約50倍、約30倍~約100倍、約50倍~約100倍、約70倍~約100倍低下し得る。
【0113】
一実施形態では、間葉系幹細胞のための細胞培養培地は、MEM α(Minimum Essential Medium α)である。
【0114】
別の実施形態では、間葉系幹細胞の細胞培養培地はMSC Medium(500mlの低グルコースDMEM、25mlの小胞枯渇ウシ血清、GlutaMAX 1%)である。
【0115】
一実施形態では、乳腺上皮幹細胞のための細胞培養培地は、Mammary Epithieal Basal Medium(250mlのMCDB-170、250mlのDMEM-F12、1.2gの重炭酸ナトリウム、2.5μgのEGF、0.25mgのヒドロコルチゾン、2.5mgのインスリン、35mgのBPE)である。
【0116】
本開示は、細胞外小胞を調製する方法を提供する。
【0117】
特定の実施形態では、本開示は、ヒト細胞に由来する細胞外小胞におけるmiR-146aおよびmiR-21のレベルをインビトロで増加させるための方法を提供する。本方法は、以下のステップを含み得る:
(1)培養培地(例えば、血小板溶解物(溶液Bなど)またはウシ胎児血清(FBS)を含有する培養培地)中で、脂肪由来間葉系幹細胞(例えば、P2~P4)を、例えば約10,000~15,000細胞/cm2の細胞播種密度で播種し、約70%~90%の細胞コンフルエンスに達するように細胞を培養するステップ、
(2)細胞を、1つ以上の免疫調節因子(ヒト組換えインターフェロンγなど)を含有する培養培地(例えば、血小板溶解物(溶液Bなど)またはウシ胎児血清(FBS)を含有する培養培地)中で約24時間~約48時間培養するステップ、
(3)培養培地を回収し、培養培地の3,000~10,000gの分別遠心分離後に上清を得るステップ、および
(4)ステップ(3)で得られた上清を、ポリエチレングリコール(PEG)(例えば、溶液C)と例えば一晩、共インキュベートした後、ヒト細胞由来の細胞外小胞を含有する3,000~15,000gの分別遠心分離によって沈殿物を得るステップ。
【0118】
本開示の方法では、細胞外小胞における特定の特異的miRNA(miR-146aおよびmiR-21など)のレベルまたは発現を有意に増加させることができ、細胞外小胞の特異的タンパク質の粒径または発現に実質的に影響しない。
【0119】
本開示は、ヒト細胞に由来する細胞外小胞における特定のmiRNAのレベルをインビトロで増加させるための方法を提供する。本方法は、以下のステップを含み得る:(1)血小板溶解物を含有する培地中で、P2~P4脂肪由来間葉系幹細胞を約10,000~15,000細胞/cm2の細胞播種密度で播種し、細胞を約70%~90%のコンフルエンスに培養するステップ、および(2)幹細胞を培養し、細胞外小胞を単離するステップ。
【0120】
特定の実施形態では、間葉系幹細胞は、ヒト組織に由来する間葉系幹細胞である。細胞は、P2、P3、P4、P5およびP6から選択され得る。一実施形態では、間葉系幹細胞は、ヒト組織由来の間葉系幹細胞であり、細胞はP4から選択される。
【0121】
特定の実施形態では、間葉系幹細胞の播種密度は、前培養または培養について10,000~15,000細胞/cm2または約10,000細胞/cm2であり得る。
【0122】
特定の実施形態では、血小板溶解物の濃度は、細胞培養培地中で約2%、5%、または10%であり得る。
【0123】
特定の実施形態では、間葉系幹細胞のコンフルエンスは、70%~90%、約80%または約70%の範囲であり得る。
【0124】
本開示は、ヒト細胞に由来する細胞外小胞における特定のmiRNAのレベルを増加させるために使用され得る培養培地を含有するキットを提供し、この細胞培養培地は、約10~40ng/mlの濃度で示された免疫調節因子を含有する溶液Bを含む。
【0125】
特定の実施形態では、細胞培養培地中の免疫調節因子の濃度は、約10ng/mlである。
【0126】
特定の実施形態では、溶液Bは、約5%~約10%(例えば、10%、または5%)の血小板溶解物を含有する細胞培養培地である。
【0127】
特定の実施形態では、溶液Bは、約100,000~150,000gで約6時間~約24時間の超遠心分離後、約5%~約10%(例えば、10%、または5%)の血小板溶解物を含有するαMEM培地の上清を回収することによって得られる。
【0128】
特定の実施形態では、溶液Bは、約120,000gで約6時間の超遠心分離後、約5%~約10%(例えば、10%、または5%)の血小板溶解物を含有するαMEM培地の上清を回収することによって得られる。
【0129】
特定の実施形態では、ポリエチレングリコール(PEG)(例えば、溶液C)を、培養培地、または細胞外小胞を含有する上清に、約8%~約20%のPEG(例えば、PEG4000~8000)の最終濃度まで添加する。
【0130】
本開示は、ヒト細胞に由来する細胞外小胞を単離するための方法を提供する。
【0131】
ステップ(3)では、ステップ(2)で得られた培養培地の約3,000~10,000gの分別遠心分離後に上清を回収し、ステップ(4)では、ステップ(3)で得られた上清を溶液Cと一晩共インキュベートし、3,000~15,000gの分別遠心分離によって、ヒト細胞由来の細胞外小胞を含有する沈殿物を得る。
【0132】
特定の実施形態では、ステップ(2)で得られた培養培地を約3,000gで約15分間遠心分離する。
【0133】
特定の実施形態では、ステップ(2)で得られた培養培地を約10,000gで約30分間遠心分離する。
【0134】
特定の実施形態では、ステップ(3)で得られた上清をPEG(例えば、PEG4000~8000を含有する溶液C)と例えば一晩共インキュベートし、このとき、混合物中のPEGの最終濃度は約8%~約20%である。
【0135】
特定の実施形態では、混合物(PEGおよび細胞外小胞を含有する)は、約12%のPEG6000を含有する。
【0136】
特定の実施形態では、ステップ(3)で得られた上清を溶液Cと一晩共インキュベートし、次いで、分別遠心分離を行う(約3,000gで約1時間、または約120,000gで約70分間)。
【0137】
特定の実施形態では、本方法は、細胞生存率を測定し、少なくとも1つのマーカーの遺伝子発現レベル(例えば、mRNAレベル)および/またはタンパク質レベルを測定するステップ(5)をさらに含む。
【0138】
特定の実施形態では、ステップ(5)において、モニタリングすることは、マーカーの遺伝子発現レベル(例えば、mRNAレベル)および/またはタンパク質レベルを測定することを含み、マーカーは陽性マーカーおよび/または陰性マーカーであり得る。
【0139】
特定の実施形態では、陽性マーカーは、遺伝子発現レベルが、ヒト細胞に由来する細胞外小胞におけるmiR-146a、miR-21およびlet-7aのレベルを増加させる程度と正に相関するマーカーである。陰性マーカーは、遺伝子発現レベルが、ヒト細胞に由来する細胞外小胞におけるmiR-146a、miR-21およびlet-7aのレベルを増加させる程度と負に相関するマーカーである。
【0140】
特定の実施形態では、陽性マーカーは、トランスフォーミング成長因子β1(TGFβ1)および肝細胞成長因子(HGF)から選択される。
【0141】
特定の実施形態では、陰性マーカーは、インターロイキン1β(IL1β)、インターロイキン6(IL6)およびメタロプロテイナーゼ8(MMP8)から選択される。
【0142】
特定の実施形態では、ステップ(5)において、モニタリングすることは、ヒト細胞に由来する細胞外小胞におけるmiR-146a、miR-21およびlet-7aの相対的発現レベルを蛍光定量PCRによって測定することを含む。
【0143】
特定の実施形態では、ステップ(5)において、モニタリングすることは、ウエスタンブロットによって、ヒト細胞に由来する細胞外小胞に特異的なマーカーCD9、CD63およびCD81のタンパク質レベルを測定することを含む。このマーカーは、細胞外小胞に特異的なタンパク質の発現と正に相関する。
【0144】
特定の実施形態では、ステップ(5)において、モニタリングすることは、NTAによってヒト細胞由来の細胞外小胞の粒子濃度および粒径を測定することを含む。
【0145】
本開示は、IFNγが、ヒト細胞に由来する細胞外小胞における抗炎症性miRNA(miR-21-5pおよびmiR146a-5pなど)および/または上皮間葉転換を阻害するmiRNA(let-7a-5pなど)のレベルをインビトロで効果的に増加させることができることを提供する。炎症促進因子メタロプロテイナーゼ8(MMP8)のレベルは、有意に低減される。したがって、本開示の細胞外小胞は、より良好な抗炎症活性を有する。
【0146】
本方法は、細胞外小胞における成長因子(例えば、TGFβ1およびHGF)のレベル(mRNAおよび/またはタンパク質レベル)を増加させ、これは治療効果を改善するのに役立つ。
【0147】
本開示で得られる細胞外小胞に特異的なタンパク質CD9、CD63およびCD81の発現レベルがさらに増加され、これは、本開示の細胞外小胞が良質であることを示す。
【0148】
実験結果は、特異的免疫調節因子(例えば、IFNγ)を含有する培養培地の使用が細胞生存率に影響せず、細胞毒性効果が低いことを示した。
【0149】
細胞外小胞
細胞外小胞は、細胞によって放出される膜に包まれた小胞である。それらの主要構成成分は、脂質、タンパク質および核酸である。それらは、核酸および可溶性タンパク質を含む水性コアをカプセル化する脂質-タンパク質二重層から構成される。細胞外小胞には、限定されないが、それらのサイズ、細胞起源および形成機構に基づいて、エキソソーム、脱落小胞(shedding vesicle)、微小胞、小胞、大型小胞、微粒子およびアポトーシス小体が含まれる。エキソソームは、多小胞体(MVB)を形成する後期エンドソームの内向きの出芽によって形成され、次いで、多小胞体は細胞の限界膜と融合し、付随してエキソソームを放出する。脱落小胞は、限界細胞膜の外向きの出芽とそれに続く融合によって形成される。細胞がアポトーシスを受けたとき、細胞は崩壊し、アポトーシス小体と呼ばれる異なる膜に包まれた小胞にその細胞内容物を分割する。細胞外小胞の非限定的な例としては、循環細胞外小胞、ベータ細胞細胞外小胞、膵島細胞細胞外小胞、エキソソームおよびアポトーシス小体、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0150】
3つの主要なタイプの細胞外小胞(EV)、すなわち、エキソソーム、微小胞およびアポトーシス小体が存在する。EVの3つの主要なタイプのすべては、脂質二重層で区切られており、直径は30~2,000nmの範囲である。
【0151】
大きな細胞外小胞は、直径が約5μm~約12μmの範囲であり得る。アポトーシス小体は、直径が約1μm~約5μmの範囲であり得る。微小胞は、直径が約100nm~約1μmの範囲であり得る。エキソソームは、約30nm~約150nm、約30nm~約100nm、約50nm~約150nm、約50nm~約100nm、または約50nm~約200nmの範囲の直径を有し得る。
【0152】
エキソソームは、細胞微小環境中のほとんどすべてのタイプの細胞によって分泌される小さな膜結合小胞であり、生物流体中に見出される(Lotvall et al.,Minimal experimental requirements for definition of extracellular vesicles and their functions:a position statement from the International Society for Extracellular Vesicles,J.Extracell.Vesicles 2014;3:26913)。それらは、異なるRNA(mRNA、調節性miRNA)、DNA、脂質およびタンパク質を含む生体高分子を天然に保有し、それらのカーゴをレシピエント細胞に効率的に送達し、機能を誘発し、細胞コミュニケーションを媒介することができる(Thery et al.,Exosomes:composition,biogenesis and function,Nat.Rev.Immunol.2002;2(8):569-79)。
【0153】
エキソソームは、間葉系幹細胞(MSC)を含む様々な細胞のパラクリン因子の主成分である。MSCエキソソームは、MSCに由来するEVの一タイプである。MSC由来エキソソームでは、いくつかのmiRNAおよびタンパク質が、異なる経路を介して標的細胞の様々な活性を変化させるとして同定されている。MSCエキソソームは、発症、エピジェネティック調節、免疫調節(miR-155およびmiR-146)、腫瘍形成および腫瘍進行(miR-23b、miR-451、miR-223、miR-24、miR-125b、miR-31、miR-214およびmiR-122)などの生理学的および病理学的プロセスに関与する。エキソソソームデータベースであるExoCartaによれば、900を超えるタイプのタンパク質がMSCエキソソームから収集されている。MSCエキソソームが、特定のサイトカインおよび成長因子、例えばTGFβ1、インターロイキン-6(IL-6)、IL-10、肝細胞成長因子(HGF)などを含有することが研究により示されており、これらは免疫調節において役立つことが示されている。血管内皮成長因子(VEGF)、細胞外マトリックスメタロプロテイナーゼ誘導物質(EMMPRIN)およびMMP-9もまた、MSCエキソソームにおいて見出されている。これらのタンパク質は、血管新生を刺激するのに重要な役割を果たし、エキソソームによって促進される組織修復を促し得る。
【0154】
いくつかの実施形態では、エキソソームまたは細胞外小胞は、限定されないが、赤血球、免疫細胞、ヒト単球およびマクロファージ、腫瘍細胞、上皮細胞、線維芽細胞、幹細胞(例えば、初代細胞もしくは自己細胞から)、または骨髄を含む細胞または組織に由来する。細胞外小胞またはエキソソームは、B細胞、T細胞、単球またはマクロファージから単離され得るか、またはそれらに由来し得る。
【0155】
いくつかの実施形態では、エキソソームまたは細胞外小胞は、培養細胞に由来する。
【0156】
いくつかの実施形態では、エキソソームまたは細胞外小胞は、カーゴまたはペイロードを含むか、または含有する。いくつかの実施形態では、カーゴまたはペイロードは、治療剤である。いくつかの実施形態では、カーゴまたはペイロードは、診断剤である。
【0157】
本エキソソームまたは細胞外小胞のカーゴまたはペイロードには、限定されないが、核酸(DNA、RNAなど)、タンパク質、ペプチド、ポリペプチドおよび/または小分子が含まれる。
【0158】
本開示はまた、本明細書に記載のエキソソームまたは細胞外小胞を含む医薬組成物を含む組成物を提供する。本開示はまた、疾患の治療に使用するための本明細書に記載のエキソソームまたは細胞外小胞、および本明細書に記載のエキソソームまたは細胞外小胞のいずれかを使用する疾患の治療方法を提供する。
【0159】
細胞外小胞を単離するための方法としては、遠心分離などのサイズ分離方法が挙げられる。一実施形態では、細胞外小胞の様々な成分を単離することは、順次遠心分離を含む単離方法によるものであり得る。本方法は、試料を800gで所望の時間量にわたって遠心分離すること、細胞および細胞残屑を含有するペレットならびに(第1の)上清を回収すること、(第1の)上清を2,000gで所望の時間遠心分離すること、大きな細胞外小胞およびアポトーシス小体を含有するペレットならびに(第2の)上清を回収することを含み得る。順次遠心分離方法は、(第2の)上清を10,000gで遠心分離し、微小胞を含有するペレットならびに(第3の)上清を回収することをさらに含み得る。順次遠心分離方法は、(第3の)上清を100,000gで遠心分離し、エキソソーム(直径約30nm~約200nmの範囲)を含有するペレットならびに(第4の)上清を回収することをさらに含み得る。順次遠心分離方法は、リン酸緩衝生理食塩水などで細胞外小胞(例えば、大きな細胞外小胞およびアポトーシス小体、微小胞ならびにエキソソーム)を含むペレットの各々を洗浄し、続いて適切な重力で遠心分離して細胞外小胞を含有するペレットを回収することをさらに含み得る。各遠心分離ステップ後の細胞外小胞の単離、純度、濃度、サイズ、サイズ分布およびそれらの組み合わせは、ナノ粒子追跡、透過型電子顕微鏡、免疫ブロットおよびそれらの組み合わせなどの方法を使用して確認することができる。濃度およびサイズなどについて細胞外小胞を分析するためのナノ粒子追跡(NTA)は、ZETAVIEW(ParticleMetrix,Meerbusch,Germanyから市販)などの市販の機器を使用して動的光散乱によって行うことができる。単離後、本方法は、細胞外小胞マーカーを検出することをさらに含み得る。
【0160】
細胞外小胞を単離する方法としてはまた、例えばEXOQUICK TC試薬(System Biosciences,Palo Alto,Calif.から市販)などの市販の試薬を使用することが挙げられる。
【0161】
エキソソームは、超遠心分離、精密濾過、サイズ排除クロマトグラフィーなど、またはそれらの組み合わせを含む任意の適切な技術によって単離され得る。エキソソームは、物理的パラメータ(例えば、サイズ、密度)および生化学的パラメータ(例えば、それらの生合成に関与する特定のタンパク質の有無)の両方に基づく技術の組み合わせを使用して単離することができる。特定の実施形態では、エキソソームは、キットを使用して単離される。一実施形態では、エキソソームは、Invitrogen製のTotal Exosome Isolation Kitおよび/またはTotal Exosome Isolation Reagentを使用して単離される。
【0162】
単離後、本方法は、細胞外小胞の細胞外小胞マーカーを検出することをさらに含み得る。
【0163】
細胞外小胞マーカーまたはエキソソームマーカーには、CD9、CD63、CD81、LAPM1、TSG101、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0164】
細胞
細胞は、真核細胞であり得る。細胞は、ヒト細胞または非ヒト哺乳動物細胞(例えば、非ヒト霊長類細胞)などの哺乳動物細胞であり得る。これらには、American Tissue Culture Collectionから取得することができるいくつかの細胞株が含まれる。特定の実施形態では、細胞を、病原体、例えばウイルス、細菌、マイコバクテリア、真菌、単細胞生物に感染させる。特定の実施形態では、細胞は、腫瘍細胞である。
【0165】
哺乳動物は、ヒトまたは非ヒト霊長類であり得る。非ヒト霊長類には、限定されないが、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、およびマカク、例えばアカゲザルが含まれる。哺乳動物は、トランスジェニック非ヒト哺乳動物であり得る。
【0166】
特定の実施形態では、細胞は、除去され、一次、二次、不死化またはトランスフォーム状態で組織培養中に維持され得る。特定の実施形態では、細胞は、培養細胞であるか、または供給源(例えば、組織、器官、対象など)から新たに得られた細胞である。哺乳動物細胞は、初代細胞または二次細胞であり得、これは、動物組織から得られた後、比較的短時間培養で維持されていることを意味する。これらには、初代肝細胞、初代筋細胞、初代筋芽細胞などが含まれる。
【0167】
特定の実施形態では、本方法は、幹細胞または前駆細胞を培養する。幹細胞は、自己複製する能力および分化した子孫を生成する能力の両方を有する未分化細胞である(Morrison et al.(1997)Cell 88:287-298を参照)。哺乳動物では、2つの広範なタイプの幹細胞、すなわち、胚性幹細胞および成体幹細胞が存在し、これらは様々な組織に見出される。
【0168】
幹細胞は、骨髄由来幹細胞(BMSC)、脂肪由来幹細胞(ADSC)、神経幹細胞(NSC)、血液幹細胞または造血幹細胞であり得る。幹細胞はまた、臍帯血に由来し得る。幹細胞は、体細胞核移植または脱分化によって生成され得る。
【0169】
幹細胞には、限定されないが、血液幹細胞、脂肪幹細胞、骨髄間葉系幹細胞、間葉系幹細胞、神経幹細胞(NSC)、皮膚幹細胞、内皮幹細胞、肝幹細胞、膵幹細胞、腸管上皮幹細胞または生殖幹細胞が含まれる。特定の実施形態では、間葉系幹細胞は、骨髄、臍帯血および脂肪組織などの中胚葉器官から単離される。
【0170】
特定の実施形態では、幹細胞は、誘導多能性幹細胞(iPS細胞またはiPSC)である。IPSCとは、非多能性細胞、典型的には成体体細胞、または最終分化細胞、例えば線維芽細胞、造血細胞、ミオサイト、ニューロン、表皮細胞などから人工的に生成された多能性幹細胞の一タイプを指す。
【0171】
特定の実施形態では、本方法は、増殖細胞を培養する。特定の実施形態では、本方法は、T細胞(初代T細胞を含む)を培養する。
【0172】
細胞は、治療されている対象から採取された自己細胞および/または生体適合性の同種もしくは同系の細胞、例えば自己、同種もしくは同系の幹細胞(例えば、間葉系幹細胞)、前駆細胞(例えば、結合組織前駆細胞または多能性成体前駆細胞)および/またはさらに分化した他の細胞を含み得る。
【0173】
(限定されないが)胚性幹細胞、誘導された高効力幹細胞、がん幹細胞および組織幹細胞を含む、分化能を有する任意の幹細胞が、誘導されたエキソソームを産生するための方法において使用され得る。組織幹細胞には、限定されないが、間葉系幹細胞、造血幹細胞、乳腺幹細胞、神経幹細胞、小腸幹細胞、皮膚幹細胞、臍帯血幹細胞、角膜縁幹細胞、毛包幹細胞、脂肪組織由来幹細胞、骨髄幹細胞、角膜幹細胞および卵巣幹細胞が含まれる。エキソソームを産生するために使用される幹細胞は、胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞、がん幹細胞、間葉系幹細胞、造血幹細胞、乳腺幹細胞、神経幹細胞、小腸幹細胞、皮膚幹細胞、臍帯血幹細胞、角膜縁幹細胞、毛包幹細胞、脂肪組織由来幹細胞、骨髄幹細胞、角膜幹細胞および卵巣幹細胞から選択することができる。
【0174】
本方法の特定の実施形態では、細胞を、約1時間~約30日間、約3時間~約20日間、約5時間~約10日間、約5時間~約5日間、約10時間~約3日間、約12時間~約48時間、約12時間~約36時間、約1日~約10日間、約1日~約8日間、約1日~約6日間、約1日~約5日間、約1日~約4日間、約1日~約3日間、約1日~約2日間、約12時間、約1日、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間または約48時間の範囲の期間にわたって、1つ以上の免疫調節因子と接触させる。
【0175】
マイクロRNA
マイクロRNA(miRNAまたはmiR)は、遺伝子発現を転写後に調節する調節RNAのクラスである。miRNAは、進化的に保存された、約18~25ヌクレオチドの長さの小さな非コードRNA分子である。Weiland et al.,(2012)RNA Biol.9(6):850-859。Bartel DP(2009)Cell 136(2):215-233。各miRNAは、miRNAに対する部分的に相補的な配列を含む数百の標的mRNAをダウンレギュレートすることができる。miRNAは、標的mRNAの分解を促進することによって、または翻訳を阻害することによって、標的mRNAのリプレッサーとして作用する。Braun et al.(2013)Adv.Exp.Med.Biol.768:147-163。
【0176】
細胞の転写後調節の方法として、miRNAは、増殖およびアポトーシスなどの細胞活性において重要な役割を果たす。いくつかのmiRNAは、重要な負のフィードバックループに影響を及ぼし、一方、他のmiRNAは、応答の阻害剤を抑圧することによって免疫系の応答を増幅する働きをする。miRNAは、先天性免疫応答の開始に関与するシグナル伝達タンパク質を標的とし、様々な異なるmiRNAが炎症応答の強度に影響を及ぼす。miRNAは、炎症を減弱させるプロセスに関連し得る。
【0177】
研究により、miRNAが肺の炎症の進行に密接に関連していることが示されている。例えば、LPS刺激は、NF-κB経路を介して抗炎症効果を有するmiR-21のアップレギュレーションを引き起こし得る。TNF-α刺激は、miR-146のアップレギュレーションを引き起こし得、それにより、その後、IL-6、IL-8などの炎症促進因子のレベルをダウンレギュレートし得る。したがって、マイクロRNAは、炎症の進行において重要なフィードバック調節の役割を果たす。インビボおよびインビトロ特発性肺線維症実験では、上皮間葉転換(EMT)を調節するために、let-7ファミリーのマイクロRNAを、肺胞上皮細胞において高い発現レベルを有するトランスフォーミング成長因子TGF-βおよびHGMA2によって阻害した。これは、let-7ファミリーのマイクロRNAが肺線維症の治療に有用であり得ることを示す。間葉系幹細胞に由来するエキソソームは、miR-21およびmiR146を含むマイクロRNAが濃縮され得、炎症経路を調節することによって抗炎症効果を有し得る。
【0178】
したがって、間葉系幹細胞に由来する細胞外小胞におけるmiR-21、miR-146および/またはlet-7aのレベルを増加させることは、炎症性疾患および線維性疾患(例えば、肺線維症)の治療において非常に重要である。
【0179】
本EVは、低毒性の、特定の部位へのmiRNAの標的化された効果的な送達を提供し得る。本EVは、miRNAを循環ヌクレアーゼから保護し、mRNAを無傷で標的部位に送達し得る。
【0180】
抗炎症性miRNAには、miR-21、miR-146(miR-146a、miR-146b)、let-7a、miR-10a、miR-24、miR-124、miR-145、miR-149、miR-155、miR-181(miR-181a、miR-181b、miR-181c、miR-181d)、miR-9、miR-17-3p、miR-31、miR-99b、miR-125b、miR-126、miR-132、miR-142-3p、miR-187およびmiR-210、miR-223のうちの1つ以上が含まれる。Tahamtan et al.,Anti-Inflammatory MicroRNAs and Their Potential for Inflammatory Diseases Treatment,Front.Immunol.2018;9:1377。
【0181】
miR-10aおよびその作用は脊椎動物間で十分に保存されており、炎症の制御における重要な転写後メディエータであることが見出されている(Qin et al.,Role of microRNAs in endothelial inflammation and senescence,Mol Biol Rep(2012)39:4509-18)。重要なことに、そのダウンレギュレーションは、炎症性障害、例えば関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(IBD)、大腸炎、急性膵炎およびアテローム性動脈硬化症において報告されている(Fang et al.,MicroRNA-10a regulation of proinflammatory phenotype in athero-susceptible endothelium in vivo and in vitro.Proc Natl Acad Sci U S A(2010)107:13450-5;Xue et al.,Microbiota downregulates dendritic cell expression of miR-10a,which targets IL-12/IL-23p40.J Immunol(2011)187:5879-86;Liu et al.,Identification of serum microRNAs as diagnostic and prognostic biomarkers for acute pancreatitis,Pancreatology(2014)14:159-66;Wu et al.,miR-10a inhibits dendritic cell activation and Th1/Th17 cell immune responses in IBD.Gut(2015)64(11):1755-64;Mu et al.,A novel NF-κB/YY1/microRNA-10a regulatory circuit in fibroblast-like synoviocytes regulates inflammation in rheumatoid arthritis,Sci Rep(2016)6:20059)。このmiRNAは、腸内で主に発現され、前述のように腸の恒常性の維持に寄与する。miR-10aは、NF-κBシグナル伝達に関与する複数の標的遺伝子を阻害し、炎症性疾患の病因において重要である。
【0182】
最近の研究により、炎症経路の負のフィードバックによる炎症の消散におけるmiR-21の本質的な役割が明らかにされている(Sheedy et al.,Negative regulation of TLR4 via targeting of the proinflammatory tumor suppressor PDCD4 by the microRNA miR-21.Nat.Immunol.(2010)11:141-7;Feng et al.,miR-21 attenuates lipopolysaccharide-induced lipid accumulation and inflammatory response:potential role in cerebrovascular disease,Lipids Health Dis.(2014)13:27;Lin et al.,miR-21 regulates TNF-α-induced CD40 expression via the SIRT1-NF-κB pathway in renal inner medullary collecting duct cells,Cell Physiol.Biochem.(2017)41:124-36)。
【0183】
miR-146ファミリーは、2つの遺伝子、miR-146aおよびmiR-146bを含み、これらは、炎症促進性刺激に応答して、過剰な炎症を制御するための負のフィードバックとして発現される(Kutty et al.,Differential regulation of microRNA-146a and microRNA-146b-5p in human retinal pigment epithelial cells by interleukin-1β,tumor necrosis factor-α,and interferon-γ,Mol.Vis.(2013)19:737-50)。それらの異常な発現は、RA、ループス疾患、乾癬、および変形性関節症などの様々な炎症性障害に関連する(Xu et al.,Association of MicroRNA-146a with autoimmune diseases.Inflammation(2012)35(4):1525-9)。
【0184】
1つ以上のmiRNAの測定されたレベルと、基準量または対照試料におけるmiRNAの1つ以上のレベルとの比較は、当業者に公知の任意の方法によって行われ得る。例えば、試料中のマイクロRNAの量と標準量とを比較することは、試料中の5S rRNA(またはスパイクされたオリゴヌクレオチド)とmiRNAとの比を、対照試料中の5S rRNA(またはスパイクされたオリゴヌクレオチド)とmiRNAとの公表されたまたは公知の比と比較することを含み得る。
【0185】
miRNAのレベル、量、存在量または濃度が測定され得る。測定結果は、絶対値であってもよいし、相対的(例えば、基準オリゴヌクレオチドに対して、基準miRNAに対してなど)であってもよい。
【0186】
試料中のマイクロRNAの量またはレベルを測定または検出することは、当業者に公知の任意の様式で行うことができ、miRNAのレベルを測定または検出するためのそのような技術は周知であり、容易に使用することができる。miRNAを検出するための様々な方法が記載されており、それらの方法としては、小分子RNAシーケンシング(sRNAseq)、ディープシーケンシング、単一分子直接RNAシーケンシング(RNAseq)、ノーザンブロッティング、マイクロアレイ、リアルタイムPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、逆転写PCR(RT-PCR)、標的化RT-PCR、インサイチュハイブリダイゼーション、miRNA Taqmanアレイカード、電気化学的方法(例えば、miRNAライゲートナノ粒子の酸化)、生物発光法、生物発光タンパク質再組立て、BRET(生物発光共鳴エネルギー転移)ベースの方法、蛍光相関分光法および表面増強ラマン分光法が挙げられ得る(Cissell,K.A.and Deo,S.K.(2009)Anal.Bioanal.Chem.,394:1109-1116)。
【0187】
本発明の方法は、miRNAのレベルまたは量をアッセイするとき、RNAを逆転写するステップを含み得る。
【0188】
任意の適切な方法/キットを使用して、単離し、miRNAのレベルをアッセイすることができる。
【0189】
定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応を使用してマイクロRNAを検出および定量するために使用することができる市販のキット、例えばAmbion,U.S.A.から入手可能なqRT-PCR miRNA Detection Kitもある。成熟miRNAの短い長さを補うために標的特異的なステルンループ(stern-loop)逆転写プライマーを使用するTaqMan MicroRNA Assaysも、Applied Biosystems(Life Technologies,Inc.,USA)から入手可能である。OriGene,Inc.(USA)から市販されているqSTAR MicroRNA Detection Assaysを使用することもできる。米国特許公開第20140024700号明細書。他の市販のキット、例えば、PAXgene Blood miRNA Kit(シリカベースのRNA精製技術を使用する)が、18ヌクレオチド以上のmiRNAを単離するために使用され得、Qiagen,USAから入手可能である。miScript PCR Systemは、miRNAおよびmRNAをcDNAに変換し、SYBR GreenベースのリアルタイムPCRを使用してmiRNAの検出を可能にする三成分系であり、すべて単一の試料からの成熟miRNA、前駆体miRNAおよびmRNAの定量に使用することができる(Qiagen,USAから同様に入手可能)。GeneCopoeiaは、miRNAの定量のためにSYBR Greenと併せてRT-PCRを使用することに基づく市販のキットを有する(GeneCopoeia,Inc.,USAから入手可能なAll-in-One(商標)miRNA qRT-PCR Detection Kit)。Life Technologies,Inc.(USA)から入手可能なmirVANAは、小分子RNAを単離するためのガラス繊維フィルタ(GFF)ベースの方法を使用する。
【0190】
miRNAを検出するための方法はまた、複数のマイクロRNAを同時に検出することを可能にするハイブリダイゼーションベースの技術プラットフォームおよび大規模並列次世代小分子RNAシーケンシングを含み得る。市販のハイブリダイゼーションベースの一技術は、標識分岐DNA(Panornics)によって提供されるシグナル増幅を用いたサンドイッチハイブリダイゼーションアッセイを利用する。別のハイブリダイゼーションベースの技術は、Nanostring Technologyから入手可能であり(nCounter miRNA Expression Assay)、この場合、複数のmiRNA配列が検出され、蛍光標識された配列タグで区別される。次世代シーケンシングの例は、Life Technologies(SOLiDプラットフォーム)およびIllumina,Inc.(例えば、Illumina HumanHT-12ビーズアレイ)から入手可能である。
【0191】
miRNAは、小RNA分子を単離するための当技術分野で記載されている方法によって単離することができる(米国特許公開第20100291580号明細書、米国特許公開第20100222564号明細書、米国特許公開第20060019258号明細書、米国特許公開第20110054009号明細書および米国特許公開第20090023149号明細書)。
【0192】
一実施形態では、miRNAは、以下のステップを含む方法によって試料から単離され得る:a)miRNAを有する試料を得るステップ、b)試料から全RNAを単離するステップ、c)適切なサイズのRNA(例えば、小分子RNA)を分離するための、例えばゲル電気泳動(例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動)による全RNAのサイズ分画ステップ、d)分離された小分子RNAの一端または両端にDNAアダプタをライゲートするステップ、e)アダプタライゲートRNAのcDNAへの逆転写およびPCR増幅ステップ、ならびに(f)DNAシーケンシングステップ。ステップ(a)~(f)は、上記とは異なる順序で行われてもよい。ステップ(a)~(f)のいずれかは、省略されてもよく、または組み合わされてもよい。
【0193】
試料からmiRNAを単離するための他の方法としては、以下のステップを含む方法を使用することが挙げられる:a)miRNAを有する試料を得るステップ、b)試料に抽出溶液を添加するステップ、c)抽出された試料にアルコール溶液を添加するステップ、d)試料を鉱物またはポリマー支持体に適用するステップ、ならびにe)鉱物支持体またはポリマー支持体から、miRNAを含有するRNAをイオン性溶液で溶出するステップ。試料からmiRNA分子を単離するための他の手順は、以下を伴うことができる:a)アルコール溶液を試料に添加するステップ、b)試料を鉱物またはポリマー固体支持体に適用するステップ、c)イオン溶液で支持体からmiRNA分子を溶出するステップ、およびd)miRNA分子を使用する、または、特徴づけるステップ(米国特許出願公開第20100222564号明細書)。
【0194】
miRNAはまた、mRNAからのmiRNAの分離を伴う方法、例えば米国特許出願公開第20060019258号明細書に記載の方法によって単離され得る。これらの方法は、a)5’キャップ構造を有するmRNAおよび5’リン酸を有する小分子RNAを含む生物学的単離物を提供するステップ、b)単離物を、標識部分を有するリン酸反応性試薬と、標識部分が5’キャップ構造よりも5’リン酸に優先的に付加される条件下で接触させ、それによって、標識小分子RNAを産生するステップ、ならびにc)標識の存在に従ってmRNAから小分子RNAを区別するステップを含む。
【0195】
マイクロRNAを単離および/または定量する方法の例としては、限定されないが、マイクロRNAの少なくとも一部を蛍光核酸(蛍光プローブ)とハイブリダイズし、ハイブリダイズしたマイクロRNAを蛍光試薬と反応させること、この場合、ハイブリダイズしたマイクロRNAが蛍光を放出する、またはマイクロRNAの少なくとも一部を放射性標識相補的核酸にハイブリダイズすることが挙げられる。miRNAの蛍光標識および検出のための市販の製品が存在する。NCode miRNA Rapid Labeling SystemおよびNCode Rapid Alexa Fluor 3 miRNA Labeling Systemは両方とも、Life Technologies,Inc.(USA)から市販されている。さらに、蛍光標識は市販されており、Alexa Flour色素(Molecular Probes)、Life Technologies,Inc.(USA)から入手可能、Cy色素(Lumiprobes)、DyLightフルオロフォア(ThermoScientific(USA)から入手可能)、およびFluoProbesを含み得る。
【0196】
ロックド核酸プローブも使用することができる。例えば、miRCURY LNA microRNA ISH Optimization Kitsは、マイクロRNAの検出を提供する。このキットは、インサイチュハイブリダイゼーションに使用することができ、Exiqon(USAおよびDenmark)から市販されているdouble DIG*-labeled miRCURY LNA(商標)microRNA Detectionを使用する。
【0197】
一実施形態では、miRNAを検出するためのプローブは、一本鎖デオキシリボ核酸分子、一本鎖リボ核酸分子、一本鎖ペプチド核酸(PNA)または一本鎖ロックド核酸(LNA)を含む一本鎖分子を含み得る。プローブは、プローブがmiRNAを検出することができるように、検出されるmiRNAの相補体と実質的に相補的、例えば、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であり得る。いくつかの実施形態では、プローブは、プローブがmiRNAの相補体を検出することができるように、miRNAと実質的に同一、すなわち80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である。いくつかの例では、プローブは、少なくとも5ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも15ヌクレオチド、少なくとも20ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、少なくとも30ヌクレオチドまたは少なくとも40ヌクレオチドである。いくつかの場合では、プローブは、25ヌクレオチド以下、35ヌクレオチド以下;50ヌクレオチド以下;75ヌクレオチド以下、100ヌクレオチド以下または125ヌクレオチド以下の長さであり得る。いくつかの実施形態では、プローブは、miRNAの少なくとも5個の連続するヌクレオチド、例えば、少なくとも6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、20個、21個および22個またはそれ以上の連続するヌクレオチドと実質的に相補的、または実質的に同一である。いくつかの実施形態では、プローブは、5~20個、5~25個、5~50個、50~100個または100個を超える連続するヌクレオチド長であり得る。
【0198】
免疫調節因子
本明細書で使用される場合、免疫調節因子は、インターフェロン(IFN-γ、IFN-αおよびIFN-βなど)、腫瘍壊死因子(TNF、例えばTNFα)、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0199】
インターフェロンは、I型、II型およびIII型インターフェロンを包含する。インターフェロンは、ヒトインターフェロンであり得る。
【0200】
I型インターフェロンには、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-ε、インターフェロン-κおよびインターフェロン-ωが含まれる。II型インターフェロンには、インターフェロン-γが含まれる。III型インターフェロンには、インターフェロン-λが含まれる。
【0201】
本方法および本組成物で使用されるインターフェロンは、野生型インターフェロンの配列の全部または一部と実質的に同一の(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一の)アミノ酸配列を有するペプチドまたはタンパク質であり得る。米国特許出願第20070274950号明細書;第20040247565号明細書および第20070243163号明細書;米国特許第7,238,344号明細書;第6,962,978号明細書;第4,588,585号明細書;第4,959,314号明細書;第4,737,462号明細書;第4,450,103号明細書;第5,738,845号明細書;ならびに国際公開第07/044,083号は、それぞれ参照によりその全体が組み込まれる。
【0202】
インターフェロンはまた、PEG化インターフェロン(PEG-IFN)など、修飾され得る。本方法において使用され得るインターフェロンにはまた、インターフェロンの変種、例えば、フラグメント、コンセンサスインターフェロン(CIFN)、変性したグリコシル化(非ネイティブグリコシル化またはアグリコシル化)を有するインターフェロン、非天然インターフェロン、組換えインターフェロン、インターフェロン変異体が含まれる。当業者は、市販されており、治療薬として使用されているものを含む様々なインターフェロンを十分に認識している。
【0203】
インターフェロンは、合成、組換えまたは精製され得る。インターフェロンはまた、インターフェロンをコードする核酸配列を含むベクターを使用して発現させることができる。
【0204】
IFNγは体内の重要な免疫調節因子であり、MHCクラスIおよびII抗原のプロセシングおよび提示を促進することができる。IFNγは、細胞表面受容体に結合することによって様々な抗ウイルスタンパク質を産生するようにウイルス感染細胞を誘導することができる。
【0205】
特定の実施形態では、IFNγは、16.8kDaの分子量を有する。
【0206】
代表的なヒトインターフェロンγアミノ酸配列を配列番号1に示す:
MQDPYVKEAENLKKYFNAGHSDVADNGTLFLGILKNWKEESDRKIMQSQIVSFYFKLFKNFKDDQSIQKSVETIKEDMNVKFFNSNKKKRDDFEKLTNYSVTDLNVQRKAIHELIQVMAELSPAAKTGKRKRSQMLFQGRRASQ(配列番号1)
インターフェロンのN末端またはC末端に任意選択のタグ配列(容易な精製のための6Hisタグなど)が存在し得る。さらに、本開示の免疫調節抑制因子(インターフェロンなど)は、野生型および変異型を含み得、変異型は、野生型の対応する生物学的活性の少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%を含む。
【0207】
細胞培養培地中の免疫調節因子の濃度は、1つ以上の所望のmiRNAのレベルの増加を促進し得、および/または1つ以上の炎症促進因子のレベルを低減し得る。細胞培養培地中の免疫調節因子の濃度は、約0.5ng/ml~約200ng/ml、約0.5ng/ml~約150ng/ml、約0.5ng/ml~約100ng/ml、約1ng/ml~約200ng/ml、約1ng/ml~約150ng/ml、約1ng/ml~約100ng/ml、約1ng/ml~約80ng/ml、約1ng/ml~約50ng/ml、約1ng/ml~約30ng/ml、約1ng/ml~約20ng/ml、約1ng/ml~約10ng/ml、約5ng/ml~約10ng/ml、約1ng/ml~約10μg/ml、約10ng/ml~約1μg/ml、約10ng/ml~約500ng/ml、約10ng/ml~約250ng/ml、または約10ng/ml~約100ng/mlの範囲であり得る。特定の実施形態では、細胞培養培地中の免疫調節因子の濃度は、約10±5ng/mlである。
【0208】
細胞培養培地中の免疫調節因子の濃度は、少なくとももしくは約1ng/ml、少なくとももしくは約2ng/ml、少なくとももしくは約3ng/ml、少なくとももしくは約4ng/ml、少なくとももしくは約5ng/ml、少なくとももしくは約6ng/ml、少なくとももしくは約7ng/ml、少なくとももしくは約8ng/ml、少なくとももしくは約9ng/ml、少なくとももしくは約10ng/ml、少なくとももしくは約11ng/ml、少なくとももしくは約12ng/ml、少なくとももしくは約13ng/ml、少なくとももしくは約14ng/ml、少なくとももしくは約15ng/ml、少なくとももしくは約16ng/ml、少なくとももしくは約17ng/ml、少なくとももしくは約18ng/ml、少なくとももしくは約19ng/ml、少なくとももしくは約20ng/ml、少なくとももしくは約25ng/ml、少なくとももしくは約30ng/ml、少なくとももしくは約35ng/ml、少なくとももしくは約40ng/ml、少なくとももしくは約45ng/ml、少なくとももしくは約50ng/ml、少なくとももしくは約55ng/ml、少なくとももしくは約60ng/ml、少なくとももしくは約65ng/ml、少なくとももしくは約70ng/ml、少なくとももしくは約75ng/ml、少なくとももしくは約80ng/ml、少なくとももしくは約85ng/ml、少なくとももしくは約90ng/ml、少なくとももしくは約95ng/ml、または少なくとももしくは約100ng/mlであり得る。特定の実施形態では、免疫調節因子は、約10ng/ml~約150ng/ml、約50ng/ml~約150ng/ml、または約75ng/ml~約150ng/mlの濃度で培養培地中に存在し得る。特定の実施形態では、免疫調節因子は、約10ng/mlの濃度で培養培地中に存在し得る。
【0209】
特定の実施形態では、細胞培養培地中のIFN-γの濃度は、約5ng/ml~約40ng/ml、約5ng/ml~約20ng/ml、約9ng/ml~約11ng/ml(培養系/培地の体積に基づいて計算)の範囲である。
【0210】
医薬組成物
本開示は、本エキソソームまたは本細胞外小胞を含む医薬組成物を提供する。本開示は、状態または障害の治療に使用するための本エキソソームまたは本細胞外小胞の使用を提供する。
【0211】
いくつかの実施形態では、本エキソソームまたは本細胞外小胞は、薬学的に許容される担体と混合されて、医薬組成物を形成し得る。
【0212】
有効量は、当業者によって認識されるように、治療される特定の状態、状態の重症度、年齢、身体状態、サイズ、性別および体重を含む個々の患者パラメータ、治療の期間、併用療法の性質(もしあれば)、特定の投与経路、ならびに医療従事者の知識および専門的技術内の同様の因子に応じて変動する。いくつかの実施形態では、有効量は、対象における任意の疾患または障害の症状を緩和するか、軽減するか、改善するか、良くするか、低減するか、またはその進行を遅延させる。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0213】
緩衝液を含む薬学的に許容される担体は、当技術分野で周知であり、リン酸、クエン酸、および他の有機酸;アスコルビン酸およびメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤;低分子量ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質;アミノ酸;疎水性ポリマー;単糖類;二糖類;ならびに他の炭水化物;金属錯体;ならびに/または非イオン性界面活性剤を含み得る。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.(2000)Lippincott Williams and Wilkins,Ed.K.E.Hooverを参照されたい。
【0214】
本エキソソームまたは本細胞外小胞は、細胞をエキソソームまたは細胞外小胞と接触させることによって細胞に送達され得る。
【0215】
本エキソソームまたは本細胞外小胞または本組成物は、限定されないが、静脈内、脳室内(ICV)注射、大槽内注射または注入、経口、経皮、経眼(ocular)、腹腔内、皮下、インプラント、舌下、皮下、筋肉内、経直腸、経粘膜、経眼(ophthalmic)、髄腔内、関節内、動脈内、くも膜下内(sub-arachinoid)、気管支内およびリンパ内投与を含む任意の経路によって対象に送達/投与され得る。本組成物は、非経口的または全身的に投与され得る。本組成物は、局所的に投与され得る。
【0216】
静脈内形態には、限定されないが、ボーラス注射および点滴注射が含まれる。静脈内剤形の例としては、限定されないが、注射用水USP;限定されないが、塩化ナトリウム注射液、リンガー注射液、デキストロース注射液、デキストロースおよび塩化ナトリウム注射液、ならびに乳酸加リンガー注射液を含む水性ビヒクル;限定されないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールを含む水混和性ビヒクル;ならびに、限定されないが、トウモロコシ油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピルおよび安息香酸ベンジルを含む非水性ビヒクルが挙げられる。
【0217】
本開示は、(a)本開示に記載の方法によって調製された細胞外小胞と、(b)薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0218】
本開示の細胞外小胞は、増加したレベルの特異的miRNA(miR-146a、miR-21およびlet-7aなど)を有するので、および、インターロイキン1β(IL1β)、インターロイキン6(IL6)およびメタロプロテイナーゼ8(MMP8)などの炎症促進因子のレベルが低減されるので、本開示は、炎症、線維症、感染性疾患などの様々な疾患の治療に適している。
【0219】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」の成分は、過剰な副作用(毒性、刺激およびアレルギー反応など)がなく、ヒトおよび/または哺乳動物に適している。「薬学的に許容される担体」という用語は、治療剤の投与に使用される様々な賦形剤および希釈剤を含む担体を指す。
【0220】
本開示の医薬組成物は、安全かつ有効な量の本開示の活性成分および薬学的に許容される担体を含む。そのような担体には、(限定されないが)生理食塩水、緩衝液、グルコース、水、グリセロール、エタノール、およびそれらの組み合わせが含まれる。一般に、医薬製剤は投与様式に適合すべきである。本開示の医薬組成物の剤形は、注射剤、凍結乾燥製剤、幹細胞製剤または霧化吸入製剤であり得る。例えば、通常の生理食塩水、またはグルコースおよび他のアジュバントを含有する水溶液を用いて従来の方法によって調製することができる。無菌条件下で医薬組成物を調製することが望ましい。
【0221】
本開示の活性成分の有効量は、投与様式、治療される疾患の重症度などによって変動し得る。好ましい有効量は、様々な因子に基づいて(例えば、臨床試験を通じて)当業者によって決定され得る。因子には、限定されないが、活性成分の薬物動態パラメータ、例えばバイオアベイラビリティ、代謝、半減期など;治療される患者の疾患の重症度、患者の体重、患者の免疫状態、投与経路などが含まれる。
【0222】
本開示の薬学的に許容される担体には、(限定されないが)水、生理食塩水、リポソーム、脂質、タンパク質、タンパク質-抗体コンジュゲート、ペプチド、セルロース、ナノゲル、またはそれらの組み合わせが含まれる。担体の選択は、当業者に周知の投与様式と一致すべきである。
【0223】
治療される状態
本開示は、対象における障害を治療するための方法であって、本組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。本エキソソームまたは本細胞外小胞は、治療有効量で投与され得る。本エキソソームまたは本細胞外小胞は、状態、障害または疾患を治療するために対象に送達/投与され得る。
【0224】
本組成物は、炎症性疾患および/または線維性障害を治療するために使用され得る。本組成物は、ウイルス感染または細菌感染を治療するために使用され得る。
【0225】
本組成物は、炎症性疾患などの疾患、または自己免疫障害などの免疫障害を治療する方法に使用され得る。
【0226】
炎症性障害は、急性炎症性障害または慢性炎症性障害であり得る。
【0227】
炎症性疾患、障害または状態の例としては、限定されないが、皮膚炎、慢性湿疹、乾癬、多発性硬化症、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、移植片対宿主病、敗血症、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、シェーグレン症候群、進行性全身性硬化症、強皮症、急性冠動脈症候群、虚血性再灌流、クローン病、炎症性腸疾患、子宮内膜症、糸球体腎炎、重症筋無力症、特発性肺線維症、喘息、アレルギー反応、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)もしくは他の急性白血球媒介肺傷害、血管炎または炎症性自己免疫性筋炎が挙げられる。
【0228】
炎症性疾患には、アトピー性皮膚炎などの炎症性皮膚疾患、慢性鼻炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの炎症性呼吸器疾患、および潰瘍性大腸炎、クローン病などの炎症性腸疾患などが含まれる。
【0229】
本明細書で使用される場合、「炎症性疾患」という用語は、哺乳動物の身体内の炎症反応によって引き起こされる疾患を指し、その代表的な例としては、喘息、慢性閉塞性肺疾患、鼻炎などの呼吸器炎症性疾患;アトピー性皮膚炎、乾癬、座瘡、接触皮膚炎などの皮膚炎症性疾患;胃炎、消化性潰瘍、炎症性腸疾患などの消化器炎症性疾患;および上記の疾患の合併症が挙げられる。さらに、炎症性疾患には、肺がん、胃がん、結腸直腸がんなどの炎症反応関連がんも含まれる。
【0230】
さらに、本明細書に記載の組成物は、炎症の迅速な消散から利益を得る状態を治療するのに有用である。したがって、本明細書に記載の組成物は、熱創傷および糖尿病性創傷の治癒を含む創傷治癒の促進に有用である。本明細書に記載の方法に従って治療され得る他の症状としては、慢性膵炎、皮膚炎、腹膜炎、ドライアイ、細菌感染、脂肪組織炎症、限局性侵襲性歯周炎、顎関節症、関節炎、術後疼痛、術後認知低下、内毒素ショック、HSV-角膜炎、同種移植片拒絶および心虚血が挙げられる。
【0231】
特定の実施形態では、炎症性疾患または炎症性障害は、喘息、虚血再灌流傷害、ライム関節炎、歯周炎、腹膜炎、乾癬、関節リウマチ、強皮症および全身性炎症反応症候群からなる群から選択される。特定の実施形態では、炎症性疾患または炎症性障害は、口腔粘膜炎、口内炎、口唇炎、舌炎およびシェーグレン症候群からなる群から選択される。特定の実施形態では、炎症性疾患または炎症性障害は、変形性関節症または関節リウマチである。特定の実施形態では、炎症性疾患または炎症性障害は、脂肪組織炎症である。特定の実施形態では、炎症性疾患または炎症性障害は、血管炎症である。特定の実施形態では、炎症性疾患または炎症性障害は、心虚血である。特定の実施形態では、炎症性疾患または炎症性障害は、子宮内膜症である。特定の実施形態では、炎症性疾患または炎症性障害は、口腔粘膜炎である。特定の実施形態では、炎症性疾患または炎症性障害は、眼系の疾患または障害である。特定の実施形態では、眼系の疾患または障害は、眼の炎症性疾患、ドライアイ症候群、黄斑浮腫および網膜症からなる群から選択される。特定の実施形態では、本方法は、角膜創傷治癒を促進するための方法である。
【0232】
特定の実施形態では、本方法は、本組成物を抗炎症剤と共に投与することをさらに含む。特定の実施形態では、化合物および抗炎症剤は、同じ剤形または別々の剤形に含有される。
【0233】
特定の実施形態では、疾患または障害は、喘息、虚血再灌流傷害、ライム関節炎、歯周炎、腹膜炎、乾癬、関節リウマチ、強皮症、口腔粘膜炎、口内炎、口唇炎、舌炎、シェーグレン症候群および全身性炎症反応症候群から選択される炎症性疾患または炎症性障害である。特定の実施形態では、炎症性疾患または炎症性障害は、喘息、乾癬、強皮症および口腔粘膜炎から選択される。
【0234】
特定の実施形態では、本開示は、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、クローン病、直腸炎、嚢炎、嚢のクローン病、好酸球性大腸炎、リンパ球性大腸炎、コラーゲン性大腸炎、空置性大腸炎、化学的大腸炎、虚血性大腸炎、感染性大腸炎、偽膜性大腸炎および不定性大腸炎からなる群から選択される消化器疾患または消化器障害を治療する方法を提供する。特定の実施形態では、疾患または障害は、潰瘍性大腸炎、クローン病、直腸炎、嚢炎、嚢のクローン病、好酸球性大腸炎、リンパ球性大腸炎、コラーゲン性大腸炎、空置性大腸炎、化学的大腸炎および虚血性大腸炎から選択されるIBD関連疾患またはIBD関連障害である。実施形態では、IBD関連疾患またはIBD関連障害は、潰瘍性大腸炎またはクローン病である。実施形態では、IBD関連疾患またはIBD関連障害は、嚢炎である。特定の実施形態では、本開示は、腸閉塞、慢性膵炎、大腸炎、結腸がん、先天性消化器異常、腹壁破裂、高排出瘻孔、非経口栄養関連肝疾患、術後イレウス(POI)、術後腸炎症、短腸症候群および散発性ポリポーシスからなる群から選択される消化器疾患または消化器障害を治療する方法を提供する。
【0235】
治療される状態または疾患としては、炎症性または自己免疫障害、状態および疾患、例えば炎症性腸疾患、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎、多関節性関節炎、多発性硬化症、アレルギー性疾患、乾癬、アトピー性皮膚炎および喘息、ならびに上記の病態が挙げられる。
【0236】
本組成物は、線維性障害を治療するために使用され得る。
【0237】
線維性障害には、限定されないが、肝臓、腸、腎臓、皮膚、表皮、内皮、筋肉、腱、軟骨、心臓、膵臓、肺、子宮、神経系、精巣、陰茎、卵巣、副腎、動脈、静脈、結腸、腸(例えば、小腸)、胆道、軟組織(例えば、縦隔または後腹膜)、骨髄、関節、眼および胃の線維症が含まれ得る。さらなる特定の実施形態では、線維性障害には、肝臓、腎臓、皮膚、表皮、内皮、筋肉、腱、軟骨、心臓、膵臓、肺、子宮、神経系、精巣、卵巣、副腎、動脈、静脈、結腸、腸(例えば、小腸)、胆道、軟組織(例えば、縦隔または後腹膜)、骨髄、関節および胃の線維症が含まれ得る。さらなる特定の実施形態では、線維性障害には、肝臓、腸、肺、心臓、腎臓、筋肉、皮膚、軟組織、骨髄、腸、および関節の線維症が含まれ得る。さらに別の実施形態では、線維性障害には、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肺線維症、特発性肺線維症、皮膚線維症、眼線維症(莢膜線維症など)、心内膜心筋線維症、縦隔線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、進行性塊状線維症(石炭労働者の塵肺症の合併症)、増殖性線維症、新生物性線維症、慢性炎症性気道疾患(COPD、喘息、気腫、喫煙者の肺、結核)に続く肺線維症、アルコールまたは薬物誘導性肝線維症、肝硬変、感染誘導性肝線維症、放射線または化学療法誘導性線維症、腎性全身性線維症、クローン病、潰瘍性大腸炎、ケロイド、陳旧性心筋梗塞、強皮症/全身性強皮症、関節線維症、いくつかの形態の癒着性関節包炎、慢性線維化胆管症、例えば原発性硬化性胆管炎(PSC)、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、胆道閉鎖、家族性肝内胆汁うっ滞症3型(PFIC3)、インプラント周囲線維症および石綿肺が含まれ得る。
【0238】
「線維症」、「線維性疾患」、「線維性障害」という用語およびそれらの語形変化は、器官または組織における線維性結合組織の過剰な沈着の病理学的状態を示し得る。より具体的には、線維症は、組織損傷に対する応答として、持続的な線維性瘢痕形成および結合組織による細胞外マトリックスの過剰産生を含む病理学的プロセスである。生理学的には、結合組織の沈着物は、下にある器官または組織の構造および機能を消滅させる可能性がある。
【0239】
線維症または線維性障害は、任意の器官または組織の線維症に関連し得る。特定の器官線維症の例示的な非限定的な例としては、肝臓、腸、腎臓、皮膚、表皮、内皮、筋肉、腱、軟骨、心臓、膵臓、肺、子宮、神経系、精巣、陰茎、卵巣、副腎、動脈、静脈、結腸、腸(例えば小腸)、胆道、軟組織(例えば、縦隔または後腹膜)、骨髄、関節または胃の線維症、特に肝臓、腎臓、皮膚、表皮、内皮、筋肉、腱、軟骨、心臓、膵臓、肺、子宮、神経系、精巣、卵巣、副腎、動脈、静脈、結腸、腸(例えば小腸)、胆道、軟組織(例えば、縦隔または後腹膜)、骨髄、関節または胃の線維症が挙げられる。
【0240】
特定の実施形態では、線維性障害は、肝臓、腸、肺、心臓、腎臓、筋肉、皮膚、軟組織(例えば、縦隔または後腹膜)、骨髄、腸、および関節(例えば、膝、肩または他の関節)の線維症からなる群から選択される。
【0241】
一実施形態では、線維性障害は、肝臓、肺、皮膚、腎臓または腸の線維症であり得る。
【0242】
特定の実施形態では、線維性障害には、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肺線維症、特発性肺線維症、皮膚線維症、眼線維症、心内膜心筋線維症、縦隔線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、進行性塊状線維症(石炭労働者の塵肺症の合併症)、増殖性線維症、新生物性線維症、慢性炎症性気道疾患(COPD、喘息、気腫、喫煙者の肺、結核)に続く肺線維症、アルコールまたは薬物誘導性肝線維症、肝硬変、感染誘導性肝線維症、放射線または化学療法誘導性線維症、腎性全身性線維症、クローン病、潰瘍性大腸炎、ケロイド、陳旧性心筋梗塞、強皮症/全身性強皮症、関節線維症、いくつかの形態の癒着性関節包炎、慢性線維化胆管症、例えば原発性硬化性胆管炎(PSC)および原発性胆汁性胆管炎(PBC)、胆道閉鎖、家族性肝内胆汁うっ滞症3型(PFIC3)、インプラント周囲線維症ならびに石綿肺が含まれる。
【0243】
本組成物は、抗炎症剤または鎮痛剤、例えばオピエートアゴニスト、リポキシゲナーゼ阻害剤、例えば5-リポキシゲナーゼの阻害剤、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、例えばシクロオキシゲナーゼ-2阻害剤、インターロイキン阻害剤、例えばインターロイキン-1阻害剤、NMDAアンタゴニスト、一酸化窒素の阻害剤もしくは一酸化窒素の合成の阻害剤、非ステロイド性抗炎症剤、またはサイトカイン抑制抗炎症剤と併せて、例えば、アセトアミノフェン、アスピリン、コデイン、フェンタニル、イブプロフェン、インドメタシン、ケトロラック、モルヒネ、ナプロキセン、フェナセチン、ピロキシカム、ステロイド性鎮痛剤、スフェンタニル、スリンダク、テニダップなどの化合物と共に、使用され得る。同様に、本組成物は、上記の鎮痛剤;増強剤、例えばカフェイン、H2アンタゴニスト(例えば、ラニチジン)、シメチコン、水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウム;充血緩和剤、例えばフェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、プソイドエフェドリン、オキシメタゾリン、エピネフリン、ナファゾリン、キシロメタゾリン、プロピルヘキセドリン、レボ-デゾキシエフェドリン;鎮咳剤、例えばコデイン、ヒドロコドン、カラミフェン、カルベタペンタン、デキストロメトルファン;利尿剤;および、鎮静性または非鎮静性抗ヒスタミン剤と共に投与され得る。
【0244】
抗炎症剤には、限定されないが、プロスタサイクリン、ドーパミン、ガンシクロビル、レボフロキサシン、シメチジン、ヘパリン、アンチトロンビン、エリスロポエチンおよびアスピリンが含まれる。
【0245】
別々に、または同じ医薬組成物中のいずれかで投与される、本組成物と組み合わせられ得る他の治療剤の例としては、限定されないが、以下が挙げられる:(a)VLA-4アンタゴニスト、(b)コルチコステロイド、例えばベクロメタゾン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、フルチカゾン、ヒドロコルチゾン、ブデソニド、トリアムシノロン、サルメテロール、サルメテロール、サルブタモール、ホルモテロール、(c)免疫抑制剤、例えばシクロスポリン(シクロスポリンA、Sandimmune(登録商標)、Neoral(登録商標))、タクロリルヌス(tacrolirnus)(FK-506、Prograf(登録商標))、ラパマイシン(シロリムス、Rapamune(登録商標))および他のFK-506型免疫抑制剤、ならびにミコフェノレート、例えばミコフェノール酸モフェチル(CellCept(登録商標))、(d)抗ヒスタミン剤(H1-ヒスタミンアンタゴニスト)、例えばブロモフェニラミン、クロルフェニラミン、デキスクロイフェニラミン、トリプロリジン、クレマスチン、ジフェンヒドラミン、ジフェニルピラリン、トリペレナミン、ヒドロキシジン、メトジラジン、プロメタジン、トリメプラジン、アザタジン、シプロヘプタジン、アンタゾリン、フェニラミンピリルアミン、アスタミゾール、テルフェナジン、ロラタジン、セチリジン、フェキソフェナジン、デスカルボエトキシロラタジン、(e)非ステロイド性抗喘息剤(例えば、テルブタリン、メタプロテレノール、フェノテロール、イソエタリン、アルブテロール、ビトルテロールおよびピルブテロール)、テオフィリン、クロモリンナトリウム、アトロピン、イプラトロピウムブロミド、ロイコトリエンアンタゴニスト(例えば、ザフムルカスト、モンテルカスト、プランルカスト、イラルカスト、ポビルカストおよびSKB-106、203)、ロイコトリエン生合成阻害剤(ジロートン、BAY-1005)、(f)非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、例えばプロピオン酸誘導体(例えば、アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ブクロキシ酸、カルプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ミロプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピルプロフェン、プラノプロフェン、スプロフェン、チアプロフェン酸およびチオキサプロフェン)、酢酸誘導体(例えば、インドメタシン、アセメタシン、アルクロフェナク、クリダナク、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、フェンクロジン酸、フェンチアザク、フロフェナク、イブフェナク、イソキセパック、オキスピナク、スリンダク、チオピナク、トルメチン、ジドメタシンおよびゾメピラク)、フェナム酸誘導体(例えば、フルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルミン酸およびトルフェナム酸)、ビフェニルカルボン酸誘導体(例えば、ジフルニサルおよびフルフェニサル)、オキシカム(例えば、イソキシカム、ピロキシカム、スドキシカムおよびテノキシカン)、サリチレート(例えば、アセチルサリチル酸およびスルファサラジン)ならびにピラゾロン(例えば、アパゾン、ベズピペリロン、フェプラゾン、モフェブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン)、(g)シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害剤、例えばセレコキシブ(Celebrex(登録商標))およびロフェコキシブ(Vioxx(登録商標))、(h)ホスホジエステラーゼIV型(PDE IV)の阻害剤、(i)金化合物、例えばオーラノフィンおよびオーロチオグルコース、(j)エタネルセプト(Enbrel(登録商標))、(k)抗体療法、例えばオルソクローン(OKT3)、ダクリズマブ(Zenapax(登録商標))、バシリキシマブ(Simulect(登録商標))およびインフリキシマブ(Remicade(登録商標))、(l)ケモカイン受容体の他のアンタゴニスト、特にCCR5、CXCR2、CXCR3、CCR2、CCR3、CCR4、CCR7、CX3CR1およびCXCR6、(m)潤滑剤または皮膚軟化剤、例えば鉱油およびラノリン、(n)角質溶解剤(例えば、タザロテン)、(o)ビタミンD3誘導体、例えばカルシポトリエンまたはカルシポトリオール(Dovonex(登録商標))、(p)PUVA、(q)アントラリン(Drithrocreme(登録商標))、(r)エトレチネート(Tegison(登録商標))およびイソトレチノイン、ならびに(s)多発性硬化症治療剤、例えばインターフェロン-ベータ-1ベータ(Betaseron(登録商標))、インターフェロン(ベータ-1アルファ(Avonex(登録商標))、アザチオプリン(Imurek(登録商標)、Imuran(登録商標))、酢酸グラチラマー(Capoxone(登録商標))、グルココルチコイド(例えば、プレドニゾロン)およびシクロホスファミド、(t)DMARDS、例えばメトトレキサート、(u)他の化合物、例えば5-アミノサリチル酸およびそのプロドラッグ;ヒドロキシクロロキン;D-ペニシラミン;代謝拮抗剤、例えばアザチオプリン、6-メルカプトプリンおよびメトトレキサート;DNA合成阻害剤、例えばヒドロキシ尿素および微小管破壊剤、例えばコルヒチン。
【0246】
本組成物および本方法は、肝線維症、肺の炎症状態、例えばSARS-CoV-2、気管支炎および敗血症などのウイルスによって引き起こされるものなどを治療するために使用され得る。
【0247】
キット
本開示はまた、本エキソソームもしくは本細胞外小胞、または本組成物を含有するキットを包含する。
【0248】
いくつかの実施形態では、キットは、本エキソソームもしくは本細胞外小胞、または本組成物、およびキットを使用するための説明書を含む。要素は、個別に、または組み合わせて提供され得る。
【0249】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載の要素の1つ以上を利用するプロセスで使用するための1つ以上の試薬を含む。試薬は、任意の適切な容器で提供され得る。例えば、キットは、1つ以上の反応緩衝液または保存緩衝液を提供し得る。試薬は、特定のアッセイで使用可能な形態で、または使用前に1つ以上の他の成分の添加を必要とする形態で(例えば、濃縮物または凍結乾燥形態で)提供され得る。
【0250】
本開示は、いくつかの実施形態を参照してさらに説明される。実施形態は、本開示を例示するためにのみ使用され、本開示の範囲を限定するためには使用されないことを理解されたい。実験方法について条件が指定されていない以下の実施形態では、従来の条件、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)に記載されている条件、または製造業者の推奨事項が一般に使用される。特に明記しない限り、百分率および部は重量百分率および重量部である。
【0251】
常に明示的に述べられているわけではないが、すべての数値指定の前に「約」という用語があってもよいことを理解されたい。特定の値が本出願および特許請求の範囲に記載されている場合、特に述べられていない限り、「約」という用語は、特定の値に対して許容可能な誤差範囲内を意味すると仮定されるべきである。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、特定の値±10%を指す。
【0252】
実験方法
(1)ヒト間葉系幹細胞の培養
P4のヒト脂肪由来間葉系幹細胞を1×104細胞/cm2で播種し、80%まで増殖したら元の培地を捨てた。溶液B(陰性対照群)、10ng/mlのIFNγを含有する溶液B、10ng/mlのTNFαを含有する溶液B、および10ng/mlのTNFα+10ng/mlのIFNγを含有する溶液Bをそれぞれ細胞に添加し、37℃で、5%のCO2と共に約48時間培養した。
【0253】
(2)ヒト間葉系幹細胞由来の細胞外小胞の単離
細胞培養物上清を回収し、3000gで15分間遠心分離した。上清を次のステップに使用し、沈殿物を除去した。上清を10,000gで0.5時間遠心分離した。次いで、上清を使用し、細胞残屑を除去した。PEG濃度が12%となるように、24%のPEG6000を含有する溶液(例えば、溶液C)を培養培地(遠心分離後の上清)に添加し、4℃で一晩保持した。これを3,200gで4℃で1時間遠心分離した。上清を捨て、沈殿物をPBSに再懸濁した。これを120,000gで70分間遠心分離した。上清を捨て、遠心管の底部の沈殿物をPBSに再懸濁した。
【0254】
(3)細胞生存率の測定
CCK8キットを使用して、(示された因子を含むか、または含まない)異なる溶液B中で48時間培養した後の細胞の代謝値を測定した。
【0255】
(4)定量的蛍光PCR(qPCR)による遺伝子の発現レベルの測定
RNA抽出キットを用いて細胞のRNAを抽出し、RevertAid(商標)First Strand cDNA Synthesis Kitを使用して1μgのRNAを逆転写した。実験要件に従って、TaqMan(登録商標)Gene Expressionアッセイのプローブをプライマーとして使用して、定量的蛍光PCRによって関連タンパク質のmRNA発現レベルを測定した。GAPDHを内部対照として実験を3回繰り返した。PCR後、Ct値を測定した。2
-△△CT法を実験におけるデータ分析に使用した。
【表1】
(5)定量的蛍光PCR(qPCR)によるmiRNAレベルの測定
RNA抽出キットを使用して、細胞外小胞からmiRNAを単離した。NanoDropを定量化のために使用した。10ngをその後の逆転写に使用した。TaqMan(登録商標)Advanced miRNA AssaysをcDNAへの逆転写に使用した。miR-191-5pを内部対照として実験を3回繰り返した。PCR後、Ct値を測定した。2
-△△CT法を実験におけるデータ分析に使用した。
【表2】
(6)ウエスタンブロットによる細胞外小胞マーカーの発現の測定
プロテアーゼ阻害剤を含むNP-40溶解緩衝液を使用して、エキソソームを溶解した。BCAキットを使用して、エキソソソームタンパク質濃度を測定した。4×ローディング緩衝液を試料の一部に添加し、95℃で5分間煮沸した。同じ体積の試料を電気泳動ゲルにロードし、80Vで0.5時間および120Vで1時間泳動した。ゲル電気泳動後、タンパク質をPVDF膜に250mAの定電流で1.5時間転移させた。転移後、試料を0.5時間ブロックした。一次抗体(抗CD9、抗CD63および抗CD81)(1:1,000)をブロッキング緩衝液に添加し、4℃で一晩インキュベートした。TBSTを使用して、膜を10分間3回すすいだ。一次抗体種に特異的な二次抗体(1:3,000)を添加し、試料を室温で3時間インキュベートした。TBSTを使用して膜を10分間3回すすぎ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を使用してウエスタンブロットでタンパク質を検出した。
【0256】
(7)NTAによる細胞外小胞の粒子濃度および粒径の測定
脱イオン水を使用して、ナノ粒子追跡分析器ZetaViewの試料細胞を洗浄した。機器をポリスチレンミクロスフェアによって較正した。PBSを使用して試料細胞を洗浄した。試料をPBSを使用して希釈し、分析を行った。
【0257】
[実施例1]
脂肪由来間葉系幹細胞の活性に対する異なる免疫調節因子の効果
上記のように10ng/mlの因子で細胞を処理した後、CCK8を使用して細胞生存率を測定した。
【0258】
図1に示すように、TNFαまたはIFNγで処理した細胞の生存率は、陰性対照群の生存率と比較して有意に変化しなかった。TNFαおよびIFNγで処理した細胞の生存率は、陰性対照群の生存率と比較してわずかに低下した。
【0259】
[実施例2]
異なる免疫調節因子で処理した細胞におけるmRNA発現レベル
上記のように10ng/mlの因子で細胞を処理した後、蛍光定量PCRを使用して、細胞における異なるmRNAの発現を測定した。
【0260】
【0261】
(a)IFNγで処理した細胞では、陰性対照群のmRNA発現レベルと比較して、トランスフォーミング成長因子β1(TGFβ1)および肝細胞成長因子(HGF)のmRNA発現レベルが有意に増加した。炎症促進性MMP8のmRNA発現レベルは、陰性対照群のmRNA発現レベルと比較して有意に低下した。IL1βおよびIL6のmRNA発現レベルは、陰性対照群のmRNA発現レベルと比較して約数倍増加した(例えば、IL1βは約13倍増加し、IL6は約6倍増加した)が、その増加はTNFαを添加したときの増加よりもはるかに(数十~数百倍)小さかった。
【0262】
(b)TNFαまたはTNFα+IFNγで処理した細胞では、TGFβ1およびHGFのmRNA発現レベルは、陰性対照群のmRNA発現レベルと比較して有意に増加しなかった。炎症促進性IL1β、IL6およびMMP8のmRNA発現レベルは、陰性対照群のmRNA発現レベルと比較して、数十倍または数百倍も有意に増加した(例えば、IL1βは200倍を超えて増加し、IL6は30倍を超えて増加した)。
【0263】
上記の結果は、特異的免疫調節因子(例えば、IFNγ)による処理後、細胞におけるTGFβ1およびHGFのmRNAレベルが増加し、TGFβ1およびHGFのレベルの増加をもたらしたことを示唆している。これにより、細胞外小胞における対応するタンパク質のmRNAおよび/またはタンパク質のレベルの増加がもたらされた。
【0264】
特異的免疫調節因子(例えば、IFNγ)による処理後、炎症促進性MMP8のmRNAレベルが低下し、これにより、細胞におけるMMP8の合成の低下がもたらされた。これにより、細胞外小胞における因子のmRNAおよび/またはタンパク質のレベルの低下がもたらされた。
【0265】
特異的免疫調節因子(例えば、IFNγ)による処理後、細胞における炎症促進性IL1βおよびIL6のmRNAレベルはあまり変化せず、これにより、細胞外小胞におけるIL1βおよびIL6のmRNAおよび/またはタンパク質の同様のレベル(またはレベルのわずかな増加)がもたらされた。
【0266】
[実施例3]
異なる免疫調節因子で処理した細胞外小胞におけるmiRNAレベル
上記のように10ng/mlの因子で細胞を処理した後、RNA抽出キットを使用して、細胞から産生された細胞外小胞からRNAを抽出し、RNAをcDNAに逆転写した。miR-21-5p、let-7a-5pおよびmiR-146a-5pの発現をqPCRによって測定した。
【0267】
図3A~
図3Cに示すように、IFNγで処理した細胞では、抗炎症性miR-21-5pおよびmiR-146a-5pの発現レベルは、陰性対照群の発現レベルと比較して有意に増加した。上皮間葉転換(EMT)の調節に関連するlet-7a-5pの発現レベルも、陰性対照群の発現レベルと比較して有意に増加した。
【0268】
[実施例4]
NTAによって測定した、異なる免疫調節因子で細胞を処理した後の細胞外小胞の粒子濃度および粒径
ZetaViewを使用して、異なる免疫調節因子で細胞を処理したときの細胞外小胞の粒子濃度および粒径を測定した。
【0269】
図4A~
図4Fに示すように、因子で処理した細胞からのすべての細胞外小胞の粒子濃度は、陰性対照群の粒子濃度よりも有意に低かった。TNFαまたはIFNγで処理した細胞からの細胞外小胞の粒径は、陰性対照群の粒径と有意に異ならなかった。TNFα+IFNγで処理した細胞からの細胞外小胞の粒径は、陰性対照群の粒径よりも有意に大きかった。
【0270】
[実施例5]
異なる炎症促進因子で細胞を処理した後の細胞外小胞特異的マーカーの発現
ウエスタンブロットを使用して、異なる因子で処理した細胞から産生された細胞外小胞に特異的なマーカーの発現を測定した。
【0271】
図5に示すように、IFNγ群の細胞外小胞のCD9、CD63およびCD81の発現レベルが最も高かった。
【0272】
考察
異なる培養条件および誘導条件は、EVの産生に対して異なる効果を有した。
【0273】
この研究は、特異的免疫調節因子(IFNγなど)の存在下で培養した細胞からの細胞外小胞のmiR-146a-5p、miR-21-5pおよびlet-7a-5pのレベルが、陰性対照群のレベルと比較して予想外に有意に増加したことを示す。
【0274】
miR-146a-5pおよびmiR-21-5pは抗炎症活性を有し、let-7a-5pは上皮間葉転換を阻害する活性を有するので、本方法を使用して生成されたEVはより良好な抗炎症活性および/または上皮間葉転換(EMT)を阻害する能力を有し、これは炎症性疾患または線維性疾患などの疾患の治療に有益である。
【0275】
さらに、脂肪由来間葉系幹細胞をIFNγで処理した後、細胞内のTGFβ1およびHGFのmRNAレベルが有意に増加し、これにより、細胞外小胞におけるTGFβ1およびHGFのmRNAおよび/またはタンパク質のレベルの増加がもたらされた。
【0276】
さらに、炎症促進因子MMP8のmRNA発現は有意に減少したが、IL1βおよびIL6のmRNAレベルは有意に増加せず、これはまた、炎症性疾患または線維性疾患などの疾患を治療するために使用される本開示のEVにとって役立つ。
【0277】
さらに、IFNγ処理細胞の分泌エキソソームによって産生される細胞外小胞特異的マーカーであるCD9、CD63およびCD81のレベルが最も高く、本開示のEVが優れた品質を有することを示唆している。
【0278】
IFNγによる処理は、他の処理条件(例えば、TNFαおよびTNFα+IFNγ)と比較して、細胞外小胞における抗炎症性miRNA(例えば、miR-146a-5pおよびmiR-21-5p)のレベルおよび上皮間葉転換を阻害するlet-7a-5pのレベルをより効果的に増加させることができ、好ましいサイトカイン発現プロファイルを得ることができ、それによって本開示のEVにおける複数の因子(TGFβ1およびHGFなど)および複数の活性分子(miRNA、mRNAおよびタンパク質)の組み合わせ効果および相乗効果に寄与する。
【0279】
本発明の範囲は、上記で具体的に示され説明されたものによって限定されない。当業者は、材料、構成、構造および寸法の図示された例に対する適切な代替物があることを認識するであろう。特許および様々な刊行物を含む多数の参考文献が、本発明の説明において引用され、議論される。そのような参考文献の引用および議論は、単に本発明の説明を明確にするために提供されており、任意の参考文献が本明細書に記載の本発明の先行技術であることを認めるものではない。本明細書で引用および議論されるすべての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されているものの変形、修正、および他の実施は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく当業者に想起されるであろう。本発明の特定の実施形態を示し説明したが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく変更および修正を行うことができることは当業者には明らかであろう。前述の説明に記載された事項は、例示のみを目的として提供され、限定として提供されるものではない。
【国際調査報告】