(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-24
(54)【発明の名称】薬物伝達用コンタクトレンズ及び眼科用薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20240117BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240117BHJP
A61K 9/00 20060101ALI20240117BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
A61F9/007 170
A61P27/02
A61K9/00
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540096
(86)(22)【出願日】2022-01-07
(85)【翻訳文提出日】2023-06-29
(86)【国際出願番号】 KR2022000314
(87)【国際公開番号】W WO2022149914
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】10-2021-0002689
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509148935
【氏名又は名称】テウォン ファーム カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】チョン, オク チャン
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ドゥ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ, ア ラム
(72)【発明者】
【氏名】パク, サン ウク
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076AA99
4C076BB24
4C084AA17
4C084MA58
4C084NA11
4C084NA13
4C084ZA33
(57)【要約】
薬物伝達効率及び生体利用率が向上された薬物伝達用コンタクトレンズに係り、該薬物伝達用コンタクトレンズは、薬物を安定して放出しうるが、既存に知られた点眼液対比で、投与用量及び投与回数が低減され、生体利用率向上を期待することができ、また、該薬物伝達用コンタクトレンズは、多様な薬物に手軽に適用させることができ、眼粘膜に刺激が少なく、製造方法が容易であって量産に有用である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ本体部と、
前記レンズ本体部の中心部から離隔されて位置し、薬物を保存するチャンバ部と、
前記チャンバ部の一部分と接合され、薬物放出を調節する遮断部と、を含み、
前記チャンバ部は、該チャンバ部から薬物が移動し、眼球に放出されるチャネル部を含む、薬物伝達用コンタクトレンズ。
【請求項2】
前記チャネル部は、薬物が放出される排出口を含む、請求項1に記載の薬物伝達用コンタクトレンズ。
【請求項3】
前記チャネル部は、薬物が放出される排出口と、薬物が排出されるために移動する排出路と、を含む、請求項1に記載の薬物伝達用コンタクトレンズ。
【請求項4】
前記遮断部は、チャンバ部の50面積%ないし95面積%を覆いうる大きさに形成される、請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の薬物伝達用コンタクトレンズ。
【請求項5】
前記チャンバ部には、薬物と薬物放出調節賦形剤とを含む、請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の薬物伝達用コンタクトレンズ。
【請求項6】
前記薬物放出調節賦形剤は、粘稠剤、乳化剤、安定化剤、pH調節剤、等張化剤及び保存剤からなる群のうちから選択されたいずれか1以上である、請求項5に記載の薬物伝達用コンタクトレンズ。
【請求項7】
前記薬物は、低分子化合物、高分子化合物、ペプチド及びポリペプチドからなる群のうちから選択された1以上によって構成される、請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の薬物伝達用コンタクトレンズ。
【請求項8】
前記薬物は、ヒアルロン酸、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、ブドウ糖、トレハロース、タウリン、プロピレングリコール、セトリミド、アスパラギン、パルミチン酸レチノール、ジクアホソル、レバミピド、リフィテグラスト、チモロール、ドルゾラミド、ラタノプロスト、ブリモニジン、タフルプロスト、ブリンゾラミド、トラボプロスト、ビマトプロスト、ベタキソロール、カルテオロール、ニプラジロール、アプラクロニジン、ヒロカルピン、レボブノロール、イソプロピルウノプロストン、ベフノロール、アセタゾールアミド、メタゾールアミド、ジクロフェナミド、ウノプロストン、ベルテポルフィン、レボフロキサシン、オフロキサシン、トブラマイシン、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、オキシテトラサイクリン、スルファメトキサゾール、グリシリジン酸、トスフロキサシン、アミノカプロン酸、ロメフロキサシン、クロラムフェニコール、デキサメタゾン、テトラヒドロゾリン、クロルフェニラミン、ナタマイシン、シプロフロキサシン、エノキソロン、フシジン酸、グアイアズレン、アズレン、エリスロマイシン、ゲンタマイシン、スルファメチゾール、セフメノキシム、ノルフロキサシン、ミクロノマイシン、テトラサイクリン、オロパタジン、ケトチフェン、アルカフタジン、ベポタスチン、アゼラスチン、ネオスチグミン、ピリドキシン、エピナスチン、ナファゾリン、パンテノール、レチノール、フェニラミン、アラントイン、アスパラギン酸、シアノコバラミン、アシタザノラスト、クロモリン、トラニラスト、ペミロラスト、ロドキサミド、N-アセチルアスパルチルグルタミン酸、ビルベリー乾燥エキス、β-カロテン、アスコルビン酸、シトルリン、トコフェロール、リボフラビン、フルスルチアミン、マンガン、セレニウム、エルゴカルシフェロール、セファクロル、フルオロメトロン、テトリゾリン、プレドニソロン、ロテプレドノール、リメキソロン、トリアムシノロン、ブロムフェナク、ケトロラク、ベンダザック、ジクロフェナク、プラノプロフェン、フルルビプロフェン、ペルビプロフェン、ネオマイシン、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ピレノキシン、チアミン、アザペンタセン、ベンダザックリシン、ネパフェナク、アシクロビル、ガンシクロビル、トリフルリジン、トロピカマイド、フェニルエフリン、アトロピン、シクロペントレート、ホマトロピン、ゾポルレスタット、フェノフィブラート、セレコキシブ、イムレコキシブ、ポルマコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブ、バルデコキシブ、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ラノリン、デキストラン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリソルベート80、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、カルボマー、グアーガム、ヒドロキシメチルセルロース、コンドロイチン、サイクロスポリン、ラニビズマブ、アフリベルセプト、ポリミキシンB、コリスチン、ベマシズマブ、リラグルチド、セマグルチド、及びそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群のうちから選択された1以上を含む、請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の薬物伝達用コンタクトレンズ。
【請求項9】
放出される薬物の眼球血中または組織内への薬物浸透率を向上させる、請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の薬物伝達用コンタクトレンズ。
【請求項10】
前記コンタクトレンズは、更に視力矯正レンズ部を含む、請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の薬物伝達用コンタクトレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物伝達効率及び生体利用率が向上された薬物伝達用コンタクトレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
眼疾患治療に使用される薬剤には、点眼液(または、目薬)や眼軟膏などがある。そのような既存眼疾患薬剤の場合、点眼液は、約7%ほどのみが効果的に使用され、残りは、涙循環により、2分ほど残留していて、鼻腔(nasal cavity)から排出されてしまう(Expert opinion on drug delivery 2006 3 (2) 275-287)。また、眼軟膏は、点眼液対比で、薬物残留時間が長いという長所があるが、剤形の特性上、異物感や、使用されている賦形剤により、目に刺激があることになり、目のまばたき時、視力に妨害ともなるという問題がある。
【0003】
それにより、薬物残留時間が長く、管理に利便性がある薬物伝達手段の開発が要求され、そのような要求に起因する技術として、薬物伝達用コンタクトレンズが開発された。しかしながら、現在、代表的に開発されている薬物伝達用コンタクトレンズは、高分子物質フィルム(drug polymer film)をコンタクトレンズ内に位置させて使用する形態であり、依然として問題点を有している。具体的には、フィルム形態に成形するためには、高濃度のポリマーを使用しなければならないが、FDAにおいては、ポリマーの医薬品における使用量に制限を置いている。従って、使用することができるポリマーの選択が制限的であるか、あるいは非常に厳格な基準の毒性試験を介し、高濃度のポリマーを使用することができる。また、高濃度のポリマーを使用する場合、塗布過程において、レンズ形状が維持されなかったり、レンズに粘着が良好になされなかったりするというようなレンズ成形に困難さが伴い、水溶性ポリマーの場合、溶解により、眼粘膜に刺激を誘発してしまうおそれがある。
【0004】
特に、薬物伝達用コンタクトレンズは、薬物が、所望する時間の間、一定に放出されることが重要であるが、高分子フィルムコンタクトレンズは、眼粘膜に露出されるポリマーの面積が広く、涙による薬物溶解により、初期薬物放出量が急激に多くなる現象が生じてしまう。また、個人別に、涙の分泌量が異なり、それにより、それぞれ異なる薬物の放出様相を示してしまうおそれがある。すなわち、涙量により、薬物放出パターンに大きく影響を受けるという問題点を有している。
【0005】
それにより、本発明の発明者らは、前述のような従来の問題点を解決するために、既存の薬物伝達用コンタクトレンズと異なる構造を具現させ、そのような構造は、持続的な薬物放出を介し、点眼液対比で、投与用量及び投与回数を低減させ、既存の薬物伝達用コンタクトレンズ対比で、薬物が安定して放出されうるようにするが、本発明の薬物伝達用コンタクトレンズは、眼疾患治療に最適化されうるということを見出し、本発明の完成に至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一態様は、レンズ本体部と、前記レンズ本体部の中心部から離隔されて位置し、薬物を保存するチャンバ部と、前記チャンバ部の一部分と接合され、薬物放出を調節する遮断部と、を含み、前記チャンバ部は、該チャンバ部から薬物が移動し、眼球に放出されるチャネル部を含む、薬物伝達用コンタクトレンズを提供するものである。
【0007】
他の態様は、眼科薬学的に活性である薬物と、粘稠剤、乳化剤または安定化剤のうちいずれか1以上の薬物放出調節賦形剤と、を含む眼科用組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様は、レンズ本体部と、前記レンズ本体部の中心部から離隔されて位置し、薬物を保存するチャンバ部と、前記チャンバ部の一部分と接合され、薬物放出を調節する遮断部と、を含み、前記チャンバ部は、チャンバ部から薬物が移動し、眼球に放出されるチャネル部を含む、薬物伝達用コンタクトレンズを提供する。
【0009】
本発明の薬物伝達用コンタクトレンズは、従来の点眼液及び薬物伝達用コンタクトレンズと対比して、構造を改善させることにより、薬物放出を調節することができ、生体利用率が改善され、薬物を安定して放出することができるという特徴がある。
【0010】
具体的には、本発明の一実施例による薬物伝達用コンタクトレンズを、
図1または
図2に示す。
【0011】
図1を参照すれば、本発明の薬物伝達用コンタクトレンズは、レンズ本体部内部に、特定形態(例えば、一字型など)を有し、少量の眼科薬学的に活性である薬物の保存空間であるチャンバ部を含み、前記チャンバ部の一部上に遮断部が接合され、前記チャンバ部の一部であり、該チャンバ部から薬物が移動して眼球に放出されるチャネル部を含む。前記チャネル部は、薬物が放出される排出口を含むものでもある。前記チャンバ部には、眼科薬学的に活性である薬物が注入される。
【0012】
図2を参照すれば、本発明の薬物伝達用コンタクトレンズは、チャネル部が、チャンバ部に保存された薬物が、排出口に移動しうる通路である排出路をさらに含むものでもある。前記排出路は、さらに微細な薬物放出調節を必要とする場合、適用されうる。従って、前記排出路は、チャンバ部の形態により、薬物伝達用コンタクトレンズに含まれてもよく、含まれなくてもよい。
【0013】
本明細書における用語「レンズ本体部」とは、眼球に着用することができるように、球面を有するものを意味する。該レンズ本体部の材質は、一般的に使用されるレンズの材質によってなり、具体的には、親水性高分子または疎水性高分子でもあるが、それらに特別に制限されるものではなく、当業者立場から適切に選択されうる。
【0014】
前記親水性高分子は、アカシア、寒天、アルギン酸、カルボマー、カラギーナン、酢酸セルロース、イナゴマメ(ceratonia)、キトサン、コンドロイチン硫酸塩、デルマタン硫酸、デキストラン、エチルセルロース、ゼラチン、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルベタデックス、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ヒプロメロースアセテートスクシネート、ヒプロメロースフタレート、カラヤガム、ローカストビーンガム、メチルセルロース、糖蜜、ペクチン、ポリアクリルアミド、ポリカプロラクトン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリオルトエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガカント、クエン酸トリエチル及びキサンタンガムからなる群のうちから選択された1以上を含むものでもありうる。
【0015】
前記疎水性高分子は、アセチルアルコール、アセチルエステルワックス、クエン酸アセチルトリブチル、モノステアリン酸アルミニウム、カルナウバロウ、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、セバシン酸ジブチル、エチルセルロース、モノステアリン酸グリセリン、ベヘン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、グリセリルパルミトステアラート、水添ひまし油、水添植物性油脂タイプ1、パルミチン酸イソプロピル、ポリカプロラクトン、ポリグリコライド、ポリ乳酸、ポリラクタイド、ポリメタクリレート、ポリオキシグリセリド、シェラック、ステアリン酸、ステアリルアルコール、クエン酸トリブチル、白蝋、黄蝋及びゼインからなる群のうちから選択された1以上を含むものでもありうる。
【0016】
さらに具体的には、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-HEMA:2-hydroxyethylmethacrylate)、グリセロールメタクリレート、シリコンヒドロゲル及びホスホリルコリンからなる群のうちから選択されたいずれか1以上でもあるが、それらに限定されるものではない。
【0017】
前記レンズ本体部は、必要により、さらに視力矯正部(視力矯正レンズ部)を含むものでもある。前記視力矯正部は、レンズ本体部の中心部に位置し、角膜上に位置し、瞳孔に入射する光を屈折させることにより、ディオプタ(diopter)を調節することができ、それを介し、近眼、遠眼、乱視などを矯正することができる。本発明の薬物伝達用コンタクトレンズは、薬物放出を介し、眼科疾患の改善、予防または治療の効果を示させると共に、コンタクトレンズ固有機能である視力矯正の役割も行うことができる。
【0018】
本明細書における用語「チャンバ部」とは、レンズ本体部の中心部から離隔されて位置しているものであり、眼球に露出される薬物、具体的には、眼科薬学的に活性である薬物を保存する部分を意味する。前記チャンバ部は、コンタクトレンズの内部に、凹状構造(concave structure)にも形成される。また、前記チャンバ部は、単一なコンタクトレンズに、1または複数個が形成され、複数個のチャンバ部は、同一薬物、または複数の異なる薬物を保存することができる。
【0019】
図3は、本発明の薬物伝達用コンタクトレンズのチャンバ部の形状を具体的に示したものである。
図3を参照すれば、チャンバ部は、複数の一字型でもって、少量の薬物を保存する空間(
図3(a)参照)、3個の個別薬物を保存する空間(
図3(b)参照)、1個の大容量薬物を保存する空間(
図3(c)参照)、フュージョンタイプ(
図3(d)参照)の形態にも具現され、薬物を効果的に保存することができものであるならば、それらに限定されるものではない。
【0020】
特に、チャンバ部は、適用される薬物の量によって形態を選択し、大きさを調節することができる。前記大きさが調節されるというのは、選択されたチャンバ部の直径及び/または深み、チャネル長などが変更されることを意味する。すなわち、前記チャンバ部の形状を選定し、コンタクトレンズモールドを作製し、それを利用し、コンタクトレンズ形状を作製した後、薬物を注入し、遮断部を結合し、薬物伝達用コンタクトレンズを製造することができる(
図4)。
【0021】
前記チャンバ部は、一般的に使用されるレンズの材質によってなり、具体的には、-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-HEMA:2-hydroxyethylmethacrylate)、グリセロールメタクリレート、シリコンヒドロゲル及びホスホリルコリンからなる群のうちから選択されたいずれか1以上でもあるが、それらに限定されるものではない。
【0022】
本明細書における用語「チャネル部」とは、薬物が移動し、眼球及び/または涙に露出される領域を意味し、薬物を供給する役割を行う。このとき、該薬物は、眼球及び/または涙に露出されるチャネル部から徐々に放出されうる。前記チャネル部は、排出口及び/または排出路を含むものでもあり、具体的には、排出口のみを含むか、あるいは排出口及び排出路を含むものでもありうる。
【0023】
本明細書における用語「排出口」とは、薬物が放出される部位を意味し、「排出路」とは、薬物が排出されるために、チャンバ部からチャネル部(排出口)に薬物が移動する通路を意味する。このとき、該排出路は、チャンバ部に保存された薬物が、一定速度でチャネル部(排出口)を介し、眼球に放出されうるようにさせるものでもある。排出路長及びチャネル部サイズは、チャンバ部の形態、及びそれを覆う遮断部の大きさによって調節することができ、排出路長及びチャネル部サイズの調節により、薬物の放出量と速度とを決定することができる。
【0024】
本明細書における用語「遮断部」とは、薬物が放出される速度及びパターンを調節することができる部分を意味するものでもある。前記遮断部は、一般的に使用されるレンズの材質によってなる。具体的には、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-HEMA:2-hydroxyethylmethacrylate)、グリセロールメタクリレート、シリコンヒドロゲル及びホスホリルコリンからなる群のうちから選択されたいずれか1以上でもあるが、それらに限定されるものではない。
【0025】
前記遮断部は、チャンバ部の50ないし95面積%を覆いうる大きさに形成されることを特徴とし、望ましくは、70ないし95面積%のチャンバ部を覆いうる大きさに形成されうるものであるが、それに限定されるものではない。具体的には、前記遮断部の大きさまたは遮断率が、前記範囲内である場合、目標とする薬物放出パターンを確保しうる。
【0026】
前記遮断部がチャンバ部を覆う面積により、チャンバ部の遮断率を制御することができ、該遮断部がチャンバ部を覆う面積%が、チャンバ部の遮断率を意味するものでもある。前記遮断部のチャンバ部遮断率は、50%以上100%未満でもあり、具体的には、50ないし99%、50ないし97%、50ないし95%、50ないし93%、60ないし99%、60ないし97%、60ないし95%、60ないし93%、70ないし99%、70ないし97%、70ないし95%、70ないし93%、75ないし99%、75ないし97%、75ないし95%、75ないし93%、80ないし99%、80ないし97%、80ないし95%、80ないし93%、85ないし99%、85ないし97%、85ないし95%、85ないし93%、90ないし99%、90ないし97%、90ないし95%、または90ないし93%のチャンバ部遮断率を示すことでもありうる。
【0027】
前記薬物伝達用コンタクトレンズは、一定の速度で薬物を放出するためのものでもありうる。一実施例によれば、本発明の薬物伝達用コンタクトレンズは、遮断部を介し、チャンバ部遮断率(遮断部がチャンバ部を覆う面積%)を制御し、チャンバ部内に保存された薬物の放出速度を調節することができ、具体的には、前記放出速度の調節は、チャンバ部に保存された薬物が一定速度で放出されるように調節するものでもある。従って、本発明の薬物伝達用コンタクトレンズは、薬物が初期に一度に放出されず、制御されたパターンで薬物を放出することができるという特徴がある。前記制御されたパターンは、Zero order model、First order model、Higuchi model、Noyes-Whitney model、Korsmeyer-Peppas modelなどがあるが、それらに限定されるものではない。
【0028】
前記薬物伝達用コンタクトレンズは、徐放出型薬物伝達用コンタクトレンズでもありうる。本明細書における用語「徐放出」とは、薬物の放出メカニズム/パターンを調節し、体内に長期間にわたって徐々に放出されることを意味する。具体的には、前記徐放出は、前記遮断部を介し、チャンバ部遮断率を制御して具現されるものでもありうる。
【0029】
前記遮断部の平均厚は、30ないし80μmでもあり、望ましくは、40ないし60μmでもあるが、それに限定されるものではない。
【0030】
前記チャンバ部には、薬物と薬物放出調節賦形剤とを含むものでもありうる。前記薬物放出調節賦形剤は、粘稠剤、乳化剤、安定化剤、pH調節剤、等張化剤及び保存剤からなる群のうちから選択されたいずれか1以上を含むものでもありうる。
【0031】
前記粘稠剤は、キサンタンガム、カルボマー、カーボポール、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポビドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール4000、グリセリン、デキストラン、アルギン酸、ブドウ糖、デキストロース及びプロピレングリコールジカプリレートからなる群のうちから選択されたいずれか1以上を含むものでもありうるが、それらに限定されるものではない。
【0032】
前記粘稠剤の含量は、薬物を含む眼科用組成物全体含量につき、キサンタンガム0.0015~0.15w/v%、カルボマー0.005~0.5w/v%、カーボポール0.002~0.2w/v%、ポリビニルアルコール0.018~1.8w/v%、ヒドロキシエチルセルロース0.005~0.5w/v%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース0.02~2。0w/v%、メチルセルロース0.014~1.4w/v%、カルボキシメチルセルロースナトリウム0.005~0.5w/v%、ポビドン0.04~4.0w/v%、ポリエチレングリコール0.04~4.0w/v%、ポリエチレングリコール4000.08~8.0w/v%、ポリエチレングリコール40000.02~2.0w/v%、グリセリン0.025~2.5w/v%、デキストラン0.001~0.1w/v%、アルギン酸0.01~1.0w/v%、ブドウ糖0.0009~0.09w/v%、デキストロース0.00065~0.065w/v%及びプロピレングリコールジカプリレート0.0005~0.05w/v%で使用することができる。
【0033】
前記乳化剤は、ポリオキシ40硬化ひまし油、ポリオキシ40水添ひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油60、ポリオキシエチレン水添ひまし油、ポリオキシル35カスターオイル、プロピレングリコール、ポロキサマー、ポリソルベート80、チロキサポール、ポリエチレングリコール4000、ポビドン、マクロゴールグリセロールヒドロキシステアレート及びひまし油からなる群のうちから選択されたいずれか1以上を含むものでもあるが、それらに限定されるものではない。
【0034】
前記乳化剤の含量は、薬物を含む眼科用組成物全体含量につき、ポリオキシ40硬化ひまし油0.0005~0.05w/v%、ポリオキシ40水添ひまし油0.002~0.2w/v%、ポリオキシエチレン硬化ひまし油0.001~0.1w/v%、ポリオキシエチレン硬化ひまし油600.003~0.3w/v%、ポリオキシエチレン水添ひまし油0.001~0.1w/v%、ポリオキシル35カスターオイル0.05~5.0w/v%、プロピレングリコール0.03~3.0w/v%、ポロキサマー0.0005~0.05w/v%、ポリソルベート800.01~1.0w/v%、チロキサポール0.005~0.5w/v%、ポリエチレングリコール4000 0.02~2.0w/v%、ポビドン0.04~4.0w/v%、マクロゴールグリセロールヒドロキシステアレート0.05~5.0w/v%、ひまし油0.0126~1.26w/v%で使用することができる。
【0035】
前記安定化剤は、エデト酸ナトリウム水和物、クエン酸ナトリウム、ポビドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリソルベート80、チロキサポール、トロメタミン、プロピレングリコール、亜硫酸水素ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、チオ硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルガンマデックス及びアミノカプロン酸からなる群のうちから選択されたいずれか1以上を含むものでもありうるが、それらに限定されるものではない。
【0036】
前記安定化剤の含量は、薬物を含む眼科用組成物全体含量につき、エデト酸ナトリウム水和物0.005~0.5w/v%、クエン酸ナトリウム0.00294~0.294w/v%、ポビドン0.04~4.0w/v%、ポリビニルアルコール0.018~1.8w/v%、ヒドロキシエチルセルロース0.005~0.5w/v%、メチルセルロース0.014~1.4w/v%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース0.02~2.0w/v%、ポリソルベート800.01~1.0w/v%、チロキサポール0.005~0.5w/v%、トロメタミン0.006~0.6w/v%、プロピレングリコール0.03~3.0w/v%、亜硫酸水素ナトリウム0.001~0.1w/v%、ジブチルヒドロキシトルエン、0.00005~0.005w/v%、チオ硫酸ナトリウム0.002~0.2w/v%、ヒドロキシプロピルガンマデックス0.015~1.5w/v%、アミノカプロン酸0.002~0.2w/v%で使用することができる。
【0037】
前記pH調節剤は、塩酸、リン酸、無水リン酸一水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸無水物、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、モノエタノールアミン、ホウ砂、ホウ酸、乾燥亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム及び乳酸ナトリウムからなる群のうちから選択されたいずれか1以上を含むものでもありうるが、それらに限定されるものではない。
【0038】
前記pH調節剤の含量は、薬物を含む眼科用組成物全体含量につき、塩酸0.0027~0.27w/v%、リン酸0.00288~0.288w/v%、無水リン酸一水素ナトリウム0.00474~0.474w/v%、硫酸ナトリウム0.012~1.2w/v%、クエン酸0.00005~0.005w/v%、クエン酸ナトリウム0.00294~0.294w/v%、酢酸無水物0.00007~0.007w/v%、酢酸ナトリウム0.029~2.9w/v%、炭酸水素ナトリウム0.0005~0.05w/v%、水酸化ナトリウム0.00716~0.716w/v%、モノエタノールアミン0.00052~0.052w/v%、ホウ砂0.011~1.1w/v%、ホウ酸0.02~2.0w/v%、乾燥亜硫酸ナトリウム0.002~0.2w/v%、メタ重亜硫酸ナトリウム0.004~0.4w/v%、ホウ酸ナトリウム0.00019~0.019w/v%、乳酸ナトリウム0.0002~0.02w/v%で使用することができる。
【0039】
前記等張化剤は、デキストロース、グリセリン、濃グリセリン、マンニトール、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム水和物、塩化マグネシウム水和物、D-ソルビトール、D-ソルビトール液、ブドウ糖及びプロピレングリコールからなる群のうちから選択されたいずれか1以上を含むものでもありうるが、それらに限定されるものではない。
【0040】
前記等張化剤の含量は、薬物を含む眼科用組成物全体含量につき、デキストロース0.00065~0.065w/v%、グリセリン0.025~2.5w/v%、濃グリセリン0.026~2.6w/v%、マンニトール0.05~5.0w/v%、塩化カリウム0.0037~0.37w/v%、塩化ナトリウム0.0655~6.55w/v%、塩化カルシウム水和物0.00048~0.048w/v%、塩化マグネシウム水和物0.0003~0.03w/v%、D-ソルビトール0.05~5.0w/v%、D-ソルビトール液0.066~6.6w/v%、ブドウ糖0.0009~0.09w/v%、プロピレングリコール0.03~3.0w/v%で使用することができる。
【0041】
前記保存剤は、塩化ベンゼトニウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウム及びクロロクレゾールからなる群のうちから選択されたいずれか1以上を含むものでもありうるが、それらに限定されるものではない。
【0042】
前記保存剤の含量は、薬物を含む眼科用組成物全体含量につき、塩化ベンゼトニウム0.002~0.1w/v%、パラオキシ安息香酸メチル0.0005~0.05w/v%、パラオキシ安息香酸プロピル0.0005~0.05w/v%、クロロブタノール0.25~0.05w/v%、塩化ベンザルコニウム0.002~0.1w/v%、クロロクレゾール0.0005~0.05w/v%で使用することができる。
【0043】
一実施例によれば、本発明の薬物伝達用コンタクトレンズは、遮断部を介し、チャンバ部遮断率(遮断部がチャンバ部を覆う面積%)及び薬物放出調節賦形剤の組成/比率の組み合わせを制御し、チャンバ部内に保存された薬物の放出速度を調節することができ、具体的には、前記放出速度の調節は、チャンバ部に保存された薬物が一定速度で放出されるように調節するものでもある。従って、本発明の薬物伝達用コンタクトレンズは、薬物が初期に一度に放出されず、一定速度で薬物を放出することができるという特徴がある。
【0044】
前記薬物伝達用コンタクトレンズは、徐放出型薬物伝達用コンタクトレンズでもあり、具体的には、前記徐放出は、前記遮断部を介し、チャンバ部遮断率及び薬物放出調節賦形剤の組成/比率の組み合わせを制御しても具現されえる。
【0045】
前記薬物伝達用コンタクトレンズは、点眼液対比で、薬物の放出速度調節及び/または徐放出の効果が効果的に具現されるものでもあり、具体的には、前記薬物伝達用コンタクトレンズは、点眼液に対比し、効果的に薬物を一定に放出することができるが、点眼液対比で、少量の薬物でも、効果的な治療効能を示すことができる。例えば、前記薬物伝達用コンタクトレンズは、点眼液対比で、0.5ないし50重量%の薬物でも、効果的な治療効能を示すことができ、具体的には、0.5ないし40重量%、0.5ないし30重量%、0.5ないし20重量%、0.5ないし10重量%、0.5ないし8重量%、0.5ないし6重量%、0.5ないし4重量%、0.5ないし2重量%、1ないし40重量%、1ないし30重量%、1ないし20重量%、1ないし10重量%、1ないし8重量%、1ないし6重量%、1ないし4重量%、1ないし2重量%、2ないし40重量%、2ないし30重量%、2ないし20重量%、2ないし10重量%、2ないし8重量%、2ないし6重量%、または2ないし4重量%の薬物でも、効果的な治療効能を示すことができるが、それに限定されるものではない。一実施例によれば、同一/類似組成の薬物を含む本発明の薬物伝達用コンタクトレンズ製剤及び点眼剤を利用し、薬物放出評価を行った結果、前記コンタクトレンズ製剤は、点眼剤対比で、顕著にすぐれた薬物放出結果(一定速度による薬物放出)を示すところを確認したが(表7ないし表9、及び
図13ないし
図15)、本発明の薬物伝達用コンタクトレンズを利用する場合、効果的に薬物を一定速度で伝達することができるということが分かる。
【0046】
また、一実施例によれば、同一/類似組成の薬物を含む本発明の薬物伝達用コンタクトレンズ製剤及び点眼剤を利用し、血中及び眼球組織に対する薬物動態評価を行った結果、薬物伝達用コンタクトレンズ製剤を利用する場合の血中、角膜、結膜、強膜または眼房水における生体利用率が、点眼剤対比で、それぞれ約14倍、37倍、11倍、11倍または133倍上昇することを確認した(表10ないし14及び
図16ないし20)。従って、本発明の薬物伝達用コンタクトレンズ製剤を利用する場合、点眼液対比で、0.5~10重量%(血中:約7.1%、角膜:約2.7%、結膜:約9.1%、強膜:約9.1%、または眼房水:約0.75%)の薬物でも、効果的な治療効能を示すことができることが分かる。
【0047】
前記薬物は、眼科薬学的に活性である薬物でもありうる。
【0048】
前記薬物は、低分子化合物、高分子化合物、ペプチド及びポリペプチドからなる群のうちから選択された1以上によって構成されたものでもあるが、それらに限定されるものではない。
【0049】
前記薬物は、眼球乾燥症治療剤、緑内障治療剤、眼圧降下剤、視力損傷治療剤、抗菌剤、アレルギー性結膜炎治療剤、眼瞼結膜炎治療剤、夜盲症治療剤、視力減退治療剤、眼炎症治療剤、白内障治療剤、抗ウイルス剤、散瞳薬、炭酸脱水酵素抑制剤及び黄斑変性治療剤からなる群のうちから選択された1以上を含むものでもありうるが、それらに限定されるものではない。
【0050】
前記低分子化合物は、一般的に、分子量が1,000以下の物質を意味しうる。前記低分子化合物形態のヒアルロン酸、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、ブドウ糖、トレハロース、タウリン、プロピレングリコール、セトリミド、アスパラギン、パルミチン酸レチノール、ジクアホソル、レバミピド、リフィテグラスト、チモロール、ドルゾラミド、ラタノプロスト、ブリモニジン、タフルプロスト、ブリンゾラミド、トラボプロスト、ビマトプロスト、ベタキソロール、カルテオロール、ニプラジロール、アプラクロニジン、ヒロカルピン、レボブノロール、イソプロピルウノプロストン、ベフノロール、アセタゾールアミド、メタゾールアミド、ジクロフェナミド、ウノプロストン、ベルテポルフィン、レボフロキサシン、オフロキサシン、トブラマイシン、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、オキシテトラサイクリン、スルファメトキサゾール、グリシリジン酸、トスフロキサシン、ロメフロキサシン、クロラムフェニコール、デキサメタゾン、テトラヒドロゾリン、クロルフェニラミン、ナタマイシン、シプロフロキサシン、エノキソロン、フシジン酸、グアイアズレン、アズレン、エリスロマイシン、ゲンタマイシン、スルファメチゾール、セフメノキシム、ノルフロキサシン、ミクロノマイシン、テトラサイクリン、オロパタジン、ケトチフェン、アルカフタジン、ベポタスチン、アゼラスチン、ネオスチグミン、ピリドキシン、エピナスチン、ナファゾリン、パンテノール、レチノール、フェニラミン、アラントイン、アスパラギン酸、シアノコバラミン、アシタザノラスト、クロモリン、トラニラスト、ペミロラスト、ロドキサミド、N-アセチルアスパルチルグルタミン酸、ビルベリー乾燥エキス、β-カロテン、アスコルビン酸、シトルリン、トコフェロール、リボフラビン、フルスルチアミン、マンガン、セレニウム、エルゴカルシフェロール、セファクロル、フルオロメトロン、テトリゾリン、プレドニソロン、ロテプレドノール、リメキソロン、トリアムシノロン、ブロムフェナク、ケトロラク、ベンダザック、ジクロフェナク、プラノプロフェン、フルルビプロフェン、ペルビプロフェン、ネオマイシン、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ピレノキシン、チアミン、アザペンタセン、ベンダザックリシン、ネパフェナク、アシクロビル、ガンシクロビル、トリフルリジン、トロピカマイド、フェニルエフリン、アミノカプロン酸、アトロピン、シクロペントレート、ホマトロピン、ゾポルレスタット、フェノフィブラート、セレコキシブ、イムレコキシブ、ポルマコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブ及びバルデコキシブからなる群のうちから選択された1以上を含むものでもありうるが、それらに限定されるものではない。
【0051】
前記高分子化合物は、一般的に、重合体(polymer)を意味し、合成高分子と天然高分子とに分類される。また、前記高分子化合物は、前述の低分子化合物を除いた化合物、ポリマーなどを意味しうる。前記高分子化合物形態の薬物は、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ラノリン、デキストラン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリソルベート80、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、カルボマー、グアーガム及びヒドロキシメチルセルロースからなる群のうちから選択された1以上を含むものでもありうるが、それらに限定されるものではない。
【0052】
前記ペプチドは、アミノ酸単位体が、人工的または自然発生的に連結された重合体を意味する。前記ペプチドは、アミノ酸残基の数により、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチドなどにも分類される。本発明において前記ペプチド形態の薬物は、1個のペプチド単独で構成されるか、あるいは2個以上のペプチドによって構成されうる、具体的には、1個のペプチド単独であるか、あるいは2個、3個または4個のペプチドが結合された形態でもありうる。前記ペプチド形態の薬物は、コンドロイチン、サイクロスポリン、ラニビズマブ、アフリベルセプト、ポリミキシンB、コリスチン、ベマシズマブ、リラグルチド及びセマグルチドからなる群のうちから選択された1以上を含むものでもありうるが、それらに限定されるものではない。
【0053】
一例として、前記薬物は、リフィテグラスト、チモロール、ドルゾラミド、ラタノプロスト、ゾポルレスタット、レボフロキサシン、ヒロカルピン、レバミピド、フェノフィブラート、オロパタジン、フルオロメトロン、ピレノキシン、アシクロビル、リラグルチド、セマグルチド、サイクロスポリン、またはその薬学的に許容可能な塩からなる群のうちから選択された1以上を含むものでもありうる。
【0054】
前記薬物伝達用コンタクトレンズは、放出される薬物の眼球血中または眼球組織(角膜、結膜、強膜及び眼房水)内への薬物浸透率を向上させるものでもあり、具体的には、眼球血中または眼球組織(角膜、結膜、強膜及び眼房水)内への薬物浸透率を、点眼液対比で向上させるものでもある。従って、前記薬物伝達用コンタクトレンズは、放出される薬物の生体利用率を向上させることができる。
【0055】
前記薬物は、ヒアルロン酸、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、ブドウ糖、トレハロース、タウリン、プロピレングリコール、セトリミド、アスパラギン、パルミチン酸レチノール、ジクアホソル、レバミピド、リフィテグラスト、チモロール、ドルゾラミド、ラタノプロスト、ブリモニジン、タフルプロスト、ブリンゾラミド、トラボプロスト、ビマトプロスト、ベタキソロール、カルテオロール、ニプラジロール、アプラクロニジン、ヒロカルピン、レボブノロール、イソプロピルウノプロストン、ベフノロール、アセタゾールアミド、メタゾールアミド、ジクロフェナミド、ウノプロストン、ベルテポルフィン、レボフロキサシン、オフロキサシン、トブラマイシン、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、オキシテトラサイクリン、スルファメトキサゾール、グリシリジン酸、トスフロキサシン、アミノカプロン酸、ロメフロキサシン、クロラムフェニコール、デキサメタゾン、テトラヒドロゾリン、クロルフェニラミン、ナタマイシン、シプロフロキサシン、エノキソロン、フシジン酸、グアイアズレン、アズレン、エリスロマイシン、ゲンタマイシン、スルファメチゾール、セフメノキシム、ノルフロキサシン、ミクロノマイシン、テトラサイクリン、オロパタジン、ケトチフェン、アルカフタジン、ベポタスチン、アゼラスチン、ネオスチグミン、ピリドキシン、エピナスチン、ナファゾリン、パンテノール、レチノール、フェニラミン、アラントイン、アスパラギン酸、シアノコバラミン、アシタザノラスト、クロモリン、トラニラスト、ペミロラスト、ロドキサミド、N-アセチルアスパルチルグルタミン酸、ビルベリー乾燥エキス、β-カロテン、アスコルビン酸、シトルリン、トコフェロール、リボフラビン、フルスルチアミン、マンガン、セレニウム、エルゴカルシフェロール、セファクロル、フルオロメトロン、テトリゾリン、プレドニソロン、ロテプレドノール、リメキソロン、トリアムシノロン、ブロムフェナク、ケトロラク、ベンダザック、ジクロフェナク、プラノプロフェン、フルルビプロフェン、ペルビプロフェン、ネオマイシン、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ピレノキシン、チアミン、アザペンタセン、ベンダザックリシン、ネパフェナク、アシクロビル、ガンシクロビル、トリフルリジン、トロピカマイド、フェニルエフリン、アトロピン、シクロペントレート、ホマトロピン、ゾポルレスタット、フェノフィブラート、セレコキシブ、イムレコキシブ、ポルマコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブ、バルデコキシブ、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ラノリン、デキストラン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリソルベート80、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、カルボマー、グアーガム、ヒドロキシメチルセルロース、コンドロイチン、サイクロスポリン、ラニビズマブ、アフリベルセプト、ポリミキシンB、コリスチン、ベマシズマブ、リラグルチド、セマグルチド、及びそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群のうちから選択された1以上を含むものでもありうる。
【0056】
前記薬物伝達用コンタクトレンズは、点眼液と対比させ、投与される薬物の眼球血中または眼球組織(角膜、結膜、強膜及び眼房水)内への薬物浸透率を向上させるものでもありうる。
【0057】
一実施例によれば、同一/類似組成の薬物を含む本発明の薬物伝達用コンタクトレンズ製剤点眼剤を利用し、薬物の生体利用率を評価した結果、前記コンタクトレンズ製剤は、点眼剤対比で、薬物の生体利用率及び薬物濃度維持時間が顕著に向上されたことを確認したが(表10ないし表14、及び
図16ないし
図20)、本発明の薬物伝達用コンタクトレンズを利用する場合、薬物を眼球血管内及び組織内に効果的に伝達することができるということが分かる。
【0058】
他の態様は、眼科薬学的に活性である薬物と、粘稠剤、乳化剤または安定化剤のうちいずれか1以上の薬物放出調節賦形剤と、を含む眼科用組成物を提供する。前述のところで説明した内容と同一部分は、前記組成物にも共に適用される。
【0059】
前述眼科薬学的に活性である薬物は、全体眼科用組成物の総含量対比で、5~20w/v%で含まれうるが、それに限定されるものではない。
【0060】
前記眼科用組成物は、pH調節剤、等張化剤または保存剤などを追加して含むものでもありうる。
【0061】
前記眼科用組成物は、眼科疾患の改善用、予防用ないし治療用としても使用され、望ましくは、眼球乾燥症、緑内障、眼圧降下、視力損傷、細菌/ウイルス、アレルギー性結膜炎、眼瞼結膜炎、夜盲症、視力減退、眼炎症、白内障、瞳孔障害、脱酸脱水酵素及び/または黄斑変性による疾患、または障害の改善、予防または治療にも使用されえるが、それらに限定されるものではない。
【0062】
本明細書における用語「改善」とは、本発明による眼科用組成物の投与により、眼科疾患の症状が好転されることを意味する。
【0063】
本明細書における用語「予防」とは、本発明による眼科用組成物の投与により、眼科疾患の症状を抑制または遅延させる全ての行為を意味する。
【0064】
本明細書における用語「治療」とは、本発明による眼科用組成物の投与により、眼科疾患の症状が良好に変更されることを意味する。
【0065】
[具現例]
以下においては、
図6ないし
図10を参照し、本発明の薬物伝達用コンタクトレンズの具体的な具現例について説明する。本具現例の1コンタクトレンズは、コンタクトレンズの中心部から離隔されて位置し、薬物を保存する薬物保存構造を含み、コンタクトレンズユーザの眼球に薬物を提供する。また、コンタクトレンズの中心部に位置し、光を屈折させる視力矯正レンズ部を更に含むものでもありうる。
【0066】
第1具現例
以下においては、本発明によるコンタクトレンズの一具現例について、
図6を参照して説明する。ただし、前述のところで説明された要素と同一であるか、あるいは類似した要素の説明は、省略することができる。
図6は、本発明によるコンタクトレンズの一具現例を概要的に図示した断面図である。
図6を参照すれば、前記コンタクトレンズは、コンタクトレンズに、凹状構造に形成され、凹状構造に薬物を保存するチャンバ部122と、少なくともチャンバ部122の一部を覆う遮断部124と、遮断部124に形成され、薬物を眼球に提供するチャネル部と、を含む。
【0067】
チャンバ部122は、コンタクトレンズ12の内部に、凹状構造に形成されうる。一実施例において、チャンバ部122は、単一なコンタクトレンズ12に複数個が形成され、複数個のチャンバ部122は、複数の異なる薬物を保存することができる。他の実施例において、複数個のチャンバ部122は、同一薬物を保存することができる。
【0068】
チャンバ部122は、予め定められた体積を有するように形成されうる。一例として、チャンバ部122は、1μl体積ないし2μl体積の薬物を保存するようにも形成される。他の例として、チャンバ部122は、保存された薬物の1回投与量に相応する体積にも形成されえる。
【0069】
前述の具現例の一例として、遮断部124は、シリコン材質でもありうる。遮断部124は、レンズと同一の高分子材質、前述の親水性高分子材質及び疎水性高分子材質のうちいずれか一つによっても形成されえる。
【0070】
第2具現例
以下においては、本発明によるコンタクトレンズの他の具現例について、
図7ないし
図9を参照して説明する。ただし、前述のところで説明された要素と同一であるか、あるいは類似した要素の説明は、省略しうる。
図7は、前記コンタクトレンズの他の具現例を概要的に図示した平面図である。
図8は、
図7のA-A’線に沿って切断した断面図を概要的に図示した断面図である。
図7及び
図8を参照すれば、コンタクトレンズ13は、薬物保存構造140を含む。薬物保存構造140は、凹状構造に形成され、凹状構造に薬物を保存するチャンバ部(チャンバ部の一部142、排出路146、排出口148)と、コンタクトレンズに凹状構造に形成され、薬物を放出するように、チャンバ部(チャンバ部の一部142、排出路146、排出口148)に含まれた薬物が前記排出口に移動しうる通路である排出路146、及びチャンバ部(チャンバ部の一部142、排出路146、排出口148)の一部を覆う遮断部144を含み、遮断部144は、薬物排出路端部を開放させ、排出口148を形成する。
【0071】
排出路146は、チャンバ部(チャンバ部の一部142、排出路146、排出口148)に含まれるものであり、チャンバ部(チャンバ部の一部142、排出路146、排出口148)に含まれた薬物Dを排出口148に誘導する。
図8は、排出路146と、チャンバ部の一部142は、同一高さに形成されている例を図示するが、図示されていない例において、排出路146は、チャンバ部の一部142の高さよりさらに低い高さにも形成されえる。
【0072】
遮断部144は、
図7に例示されているように、コンタクトレンズ13の背面を覆うようにも形成され、排出路146の下端部を開放させ、排出口148を形成することができる。
【0073】
図9(a)は、コンタクトレンズの断面を、
図7において、B方向から見た排出口148の例を図示した図面であり、
図9(b)は、排出口148の他の例を図示した図面である。
図7ないし
図9(a)を参照すれば、遮断部144は、排出路146の下端部を露出させ、排出口148を形成する。従って、
図9(a)に例示された例によれば、排出口148は、コンタクトレンズ13の下面に薬物Dを排出する。
【0074】
しかしながら、
図9(b)に例示された薬物排出口の例によれば、遮断部144は、排出路146の下面をすっかり覆うようにも形成されるが、排出路146の側端部を開放するので、
図9(b)に例示されているように、排出路146の端部に、排出口148が形成されうる。
【0075】
人は、瞼を無意識的にまばたきさせる。例示されたコンタクトレンズ13のユーザは、瞼を無意識的にまばたきさせ、瞼がコンタクトレンズ13の上部を動かしながら提供する圧力により、チャンバ部(チャンバ部の一部142、排出路146、排出口148)に保存された薬物Dは、排出口148を介して吐出され、ユーザの眼球に提供されうる。
【0076】
第3具現例
以下においては、本発明によるコンタクトレンズのさらに他の具現例について、
図10を参照して説明する。ただし、前述のところで説明された要素と同一であるか、あるいは類似した要素の説明は、省略することができる。
図10は、前記コンタクトレンズのさらに他の具現例を概要的に図示した平面図である。
図10を参照すれば、コンタクトレンズ14は、薬物保存構造150を含む。薬物保存構造150は、凹状構造に形成され、凹状構造に薬物を保存するチャンバ部(152+排出路156+排出口158)と、コンタクトレンズに凹状構造に形成され、薬物を放出するようにチャンバ部(152、排出路156、排出口158)に含まれた排出路156と、チャンバ部(152、排出路156、排出口158)の一部を覆う遮断部154と、を含み、遮断部154は、排出路端部を開放させ、排出口158を形成する。
【0077】
図示された例によればチャンバ部(152、排出路156、排出口158)は、コンタクトレンズ14の中心に沿って円形にも形成される。従って、単一薬物を大容量に保存することができる。
【0078】
図示されたコンタクトレンズ14において、排出口158は、以上のところで説明された例のように、コンタクトレンズ14の下面に形成され、薬物Dを排出することができるが、排出口158は、排出路156の側面部に形成され、コンタクトレンズ14の端部から薬物を排出することができる。
【発明の効果】
【0079】
本発明による薬物伝達用コンタクトレンズは、薬物が一定に持続的に放出されるようにするが、既存に知られた点眼液対比で、投与用量及び投与回数が低減され、生体利用率の向上を期待することができ、投与用量から生じる副作用を低減させることができ、組織内への薬物移行率を高めることができる。また、本発明による薬物伝達用コンタクトレンズは、多様な薬物に手軽に適用させることができ、眼粘膜に刺激が少なく、製造方法が容易であり、量産に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【
図1】本発明の一実施例による薬物伝達用コンタクトレンズの構造を示した図である。
【
図2】本発明の他の実施例による薬物伝達用コンタクトレンズの構造を示した図である。
【
図3】本発明による薬物伝達用コンタクトレンズのチャンバ部の形状を具体的に示した図である。
【
図4】本発明による薬物伝達用コンタクトレンズを作製するためのコンタクトレンズ形状を示した図である。
【
図5】遮断部のチャンバ部遮断率による薬物伝達用コンタクトレンズを示した図である。
【
図6】本発明による薬物伝達用コンタクトレンズの第1具現例を概要的に図示した平面図である。
【
図7】本発明による薬物伝達用コンタクトレンズの第2具現例を概要的に図示した平面図である。
【
図8】
図7のA-A’線に沿って切断した断面図を概要的に図示した断面図である。
【
図9】(a)は、コンタクトレンズの断面を、
図7においてB方向から見た薬物排出口148の例を図示した図面であり、(b)は、薬物排出口148の他の例を図示した図面である。
【
図10】本発明による薬物伝達用コンタクトレンズの第3具現例を概要的に図示した平面図である。
【
図11】チャンバ部遮断率による薬物伝達用コンタクトレンズの薬物放出試験評価結果を示したグラフである。
【
図12】チャンバ部に含まれる薬物放出調節賦形剤の組成による薬物放出試験評価結果を示したグラフである。
【
図13】チャンバ部に含まれる薬物放出調節賦形剤の組成による薬物放出試験評価結果を示したグラフである。
【
図14】チャンバ部に含まれる薬物放出調節賦形剤の組成による薬物放出試験評価結果を示したグラフである。
【
図15】チャンバ部に含まれる薬物放出調節賦形剤の組成による薬物放出試験評価結果を示したグラフである。
【
図16】本発明の薬物伝達用コンタクトレンズを利用して放出された薬物の血中生体薬物動態の評価結果を示したグラフである。
【
図17】本発明の薬物伝達用コンタクトレンズを利用して放出された薬物の角膜内生体薬物動態の評価結果を示したグラフである。
【
図18】本発明の薬物伝達用コンタクトレンズを利用して放出された薬物の結膜内生体薬物動態の評価結果を示したものである。
【
図19】本発明の薬物伝達用コンタクトレンズを利用して放出された薬物の強膜内生体薬物動態の評価結果を示したグラフである。
【
図20】本発明の薬物伝達用コンタクトレンズを利用して放出された薬物の眼房水内生体薬物動態の評価結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0081】
以下、実施例または実験例を介し、さらに詳細に説明する。しかしながら、それらの実施例または実験例は、例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がそれら実施例に限定されるものではない。
【0082】
実験例1:薬物を保存しうるチャンバ部及び遮断部などを含む薬物保存用コンタクトレンズの製造
本発明の薬物伝達用コンタクトレンズを製造するために、下記のような実験を行った。
具体的には、多様な形態のチャンバ部を含む薬物伝達用コンタクトレンズの本体部を製造するために、モールド(雌型及び雄型)を作製した。該モールドは、304-グレードステンレス鋼材質を使用し、ミリングマシン(CNC machine8 50)を利用して加工した。
【0083】
次に、該モールドの雌型に、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-HEMA:2-hydroxyethylmethacrylate)15mLを塗布した後、2-HEMA上に雄型を結合させ、コンタクトレンズ形状を作製した。その後、強制循環乾燥器(forced convection oven)OF-02を使用し、80℃で1時間硬化させた後、2-HEMAを、雌型と雄型とに分離させ、コンタクトレンズを除いた部分を除去し、本体部を完成した。
【0084】
次に、本体部上部に遮断部を接合させた。該遮断部は、2-HEMAを使用し、チャンバ部面積の一部または全部(25%、50%、75%、85%、95%、100%)を遮断しうる多様な大きさに作製した(
図5)。
【0085】
実験例2:遮断部(遮断膜)の大きさによる薬物放出特性の評価
薬物を保存するチャンバ部と接合し、該チャンバ部に保存された薬物の放出を遮断する遮断部(遮断膜)の大きさによる薬物放出特性を評価するために、
図4による多様な遮断率を有する薬物伝達用コンタクトレンズを準備した。
【0086】
具体的には、複数の一字型のチャンバ部を、チャンバ部の総面積を基準に、0%、25%、50%、75%、85%、95%及び100%の比率のチャンバ部面積を遮断しうる遮断部(遮断膜)と接合された薬物伝達用コンタクトレンズを準備し、それぞれのチャンバ部に薬物を注入し、薬物の放出特性を評価した。
【0087】
薬物放出試験は、フランツセル(Franz diffusion cell)に、前述の薬物伝達用コンタクトレンズを入れて評価し、pH7.4リン酸塩緩衝溶液を使用し、37.0±0.5℃に温度を維持し、試験を行った。リフィテグラストを蒸溜水に溶かした溶液を、薬物伝達用コンタクトレンズのチャンバ部に注入し、それをドナー(donor)に装着させて進めた。また、それぞれの容器から、定められたサンプリング時間(0.5,1,1.5,2,3,4,5,6時間)に薬物が放出された5mLの溶液を注射器で採取し、同量の緩衝溶液を充填する方式で実験を行い、採取された薬物が含まれた溶液5mLをシリンジフィルタで濾過した後、2mLずつを取り、バイアルに入れて検液にし、得られた検液を、HPLCを使用して分析した。
【0088】
前記実験結果、薬物伝達用コンタクトレンズの遮断部サイズ(チャンバ部遮断比)により、薬物放出様相に違いがあることを確認し、具体的には、薬物の放出率が、チャンバ部の遮断比によって影響を受け、50%ないし95%の遮断比においては、薬物の持続放出効果が示されたが、100%遮断比においては、持続放出効果が示されていないことを確認した(表1及び
図11)。前記結果を基に、本発明の薬物伝達用コンタクトレンズの場合、遮断部(遮断膜)を利用し、チャンバ部の遮断比を調節することにより、ある程度レベルの薬物放出調節が可能であり、具体的には、一定速度で薬物が放出されうるように調節しうるということが分かる。
【0089】
【0090】
実験例3:薬物放出の調節賦形剤を利用した薬物放出調節の評価
3-1:薬物放出調節の評価1
本発明の薬物伝達用コンタクトレンズにおいて、薬物放出調節賦形剤を利用し、チャンバ部に注入された薬物の放出を調節しうるか否かということを確認するために、下記のような実験を行った。
【0091】
具体的には、薬物放出調節のための賦形剤を、薬物と共に薬物伝達用コンタクトレンズの薬物保存所であるチャンバ部に注入した。チャンバは、
図3(a)で提示された形態を使用し、チャンバ部の総面積を基準に、75%を遮断しうる大きさの遮断部(遮断膜)を使用した。
【0092】
薬物放出調節のための賦形剤として、粘稠剤、乳化剤及び/または安定化剤を使用した。該粘稠剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を、乳化剤は、ポロキサマー(Poloxamer 188)、安定化剤は、ポリソルベート80を使用し、下記表2の比率でサンプルを製造した後、薬物放出試験を行った。
【0093】
【0094】
薬物放出試験は、フランツセル(Franz diffusion cell)に、前述の薬物伝達用コンタクトレンズを入れて評価し、pH7.4リン酸塩緩衝溶液を使用し、37.0±0.5℃に温度を維持して試験を行った。リフィテグラスト(Lifitegrast)と薬物放出調節賦形剤とを含む組成液を、薬物伝達用コンタクトレンズのチャンバ部に注入し、それをドナー(donor)に装着して進めた。また、それぞれの容器から、定められたサンプリング時間(0.5,1,1.5,2,3,4,5,6時間)に薬物が放出された5mLの溶液を注射器で採取し、同量の緩衝溶液を充填する方式で実験を行い、採取された薬物が含まれた溶液5mLをシリンジフィルタで濾過した後、2mLずつを取り、バイアルに入れて検液にし、得られた検液をHPLCを使用して分析した。
【0095】
前記実験結果、薬物伝達用コンタクトレンズのチャンバ部に注入される粘稠剤、乳化剤及び/または安定化剤の組成及び比率により、薬物の持続放出効果を具現しうることを確認した(表3及び
図12)。
【0096】
【0097】
従って、前記結果を基に、遮断部のチャンバ部遮断比及び薬物放出調節賦形剤を同時に適用することにより、目標とする薬物放出パターンを達成することができるということが分かる。
【0098】
3-2:薬物放出調節の評価2
薬物放出調節賦形剤が、多様な薬物に対して薬物放出を調節しうるか否かということを確認するために、下記のような実験を行った。
【0099】
具体的には、薬物放出調節のための賦形剤を、多様な種類の薬物と共に、薬物伝達用コンタクトレンズの薬物保存所であるチャンバ部に注入した。チャンバは、
図3(d)で提示された形態を使用し、チャンバ部の総面積を基準に、92%を遮断しうる大きさの遮断部(遮断膜)を使用した。薬物放出試験は、前記実験例3-1に記載された方法で行い、定められた時間(1,2,4,6時間)にサンプリングし、それをHPLCを使用して分析し、実施例を点眼剤(比較例)と比較した。
【0100】
対象薬物としては、リフィテグラスト、ラタノプロスト及びリラグルチドを使用し、チャンバ部に注入される薬物組成液は、下記の表4ないし表6に記載された組成で構成した。
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
前記実験の結果、多様な種類の薬物についても、薬物組成液内の賦形剤の比率により、薬物放出様相を調節しうるということを確認した。また、本発明の薬物伝達用コンタクトレンズを利用する場合、点眼液対比で、薬物を一定速度で放出させうるということを確認した(表7ないし表9、及び
図13ないし
図15)。
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
従って、前記結果を基に、遮断部のチャンバ部遮断比及び薬物放出調節賦形剤を同時に適用することにより、目標とする薬物放出パターンを達成しうるということが分かる。
【0109】
実験例4:生体利用率改善の試験
本発明の薬物伝達用コンタクトレンズを利用して放出された薬物の生体薬物動態評価のために、下記のような実験を行った。
【0110】
具体的には、コンタクトレンズの着用が可能な約6ヵ月齢の兎を試験動物として利用し、該試験動物は、投薬前の1週間、23±2℃、湿度50±10%、12/12時間の明暗サイクルの飼育条件において、適応期を経るようにさせた。実験例3-1の実施例6番組成の薬物伝達用コンタクトレンズを、実験群(実施例12)として利用し、対照群(比較例4)としては、シードラ点眼液を1回投薬した後で比較した。薬物の作用部位である角膜、結膜、強膜及び眼房水への薬物分布を確認するために、投薬後、製剤別に多様な時点において兎を犠牲にし、眼球を摘出した。各時点において犠牲になる個体は、2匹であり、眼球組織数は4個になるようにした。摘出された眼球から、角膜、結膜、強膜などを分離し、蒸溜水において均質化させた後、試料中における薬物の濃度をLC-MS/MSを使用して分析した。眼球組織における薬物濃度から、濃度・時間曲線下面積(AUC)及び平均濃度を算出し、対照群対比の実験群の投与用量対比の組織分布率の増減を評価した。
【0111】
血中薬物動態を分析した結果、本発明の薬物伝達用コンタクトレンズ使用時、点眼剤対比における生体利用率が14倍上昇することを認めることができた(表10及び
図16)。
【0112】
【0113】
次に、角膜内薬物動態結果を分析した結果、本発明の薬物伝達用コンタクトレンズ使用時、対照群(点眼剤)対比で、角膜内への薬物浸透率が37倍上昇して、投与3時間後まで、角膜内において、薬物濃度が維持されることを認めることができた(表11及び
図17)。
【0114】
【0115】
次に、結膜内薬物動態結果を分析した結果、本発明の薬物伝達用コンタクトレンズ使用時、対照群(点眼剤)対比で、結膜内への薬物浸透率が11倍上昇し、長期間結膜内において、薬物濃度が維持されることを認めることができた(表12及び
図18)。
【0116】
【0117】
次に、強膜内の薬物動態結果を分析した結果、本発明の薬物伝達用コンタクトレンズ使用時、対照群(点眼剤)対比で、強膜内への薬物浸透率が11倍上昇することを認めることができた(表13及び
図19)。
【0118】
【0119】
次に、眼房水内の薬物動態結果を分析した結果、本発明の薬物伝達用コンタクトレンズ使用時、対照群(点眼剤)対比で、眼房水内への薬物浸透率が133倍上昇し、長期間薬物濃度が維持されることを確認することができた(表14及び
図20)。
【0120】
【0121】
前述の結果を総合すれば、本発明の薬物伝達用コンタクトレンズを利用する場合、血中及び眼球の多様な組織(角膜、結膜、強膜及び眼房水)内における、既存点眼液対比での薬物浸透率及び生体利用率を顕著に向上させることができるということが分かるが、前述の薬物伝達用コンタクトレンズを眼科薬学的薬物の伝達、及びそれを介する眼疾患治療/予防に効果的に利用することができる。
【0122】
前述の本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の当業者であるならば、本発明の技術的思想や、必須な特徴を変更せずとも、他の具体的な形態に容易に変形が可能であるということを理解することができるであろう。従って、以上で記述された実施例は、全ての面において、例示的なものであり、限定的ではないと理解されなければならない。
【国際調査報告】