(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-24
(54)【発明の名称】非経口用の免疫調節イミド化合物の安定溶液
(51)【国際特許分類】
A61K 31/454 20060101AFI20240117BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240117BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240117BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240117BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240117BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240117BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20240117BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240117BHJP
A61K 47/08 20060101ALI20240117BHJP
A61K 47/16 20060101ALI20240117BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20240117BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240117BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240117BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
A61K31/454
A61P29/00
A61P37/02
A61P35/00
A61K9/08
A61K47/22
A61K47/20
A61K47/18
A61K47/08
A61K47/16
A61K31/5377
A61K47/32
A61K47/12
A61K47/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541287
(86)(22)【出願日】2022-01-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-25
(86)【国際出願番号】 US2022011572
(87)【国際公開番号】W WO2022150561
(87)【国際公開日】2022-07-14
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521460332
【氏名又は名称】スタートン セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハートウィグ、ロッド・エル
(72)【発明者】
【氏名】セラノ-バティスタ、アルトゥーロ
(72)【発明者】
【氏名】オリバー、ジェームス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076BB01
4C076BB13
4C076BB14
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076BB31
4C076BB32
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC27
4C076DD23
4C076DD25
4C076DD40E
4C076DD43
4C076DD48E
4C076DD52E
4C076DD55E
4C076DD59E
4C076DD60E
4C076EE16
4C076EE39
4C076FF12
4C076FF14
4C076FF36
4C076FF61
4C076FF63
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC22
4C086BC73
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA63
4C086MA66
4C086MA67
4C086NA02
4C086NA03
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB26
(57)【要約】
本開示によれば、免疫介在性炎症性疾患(IMID)剤、これに限定しないが、例えばレナリドミド(LLD)などの免疫調節性イミド薬剤(IMiD)、の安定溶液を含む組成物が提供される。より詳細には、本開示の実施形態は、非経口用のIMiD安定溶液に関する。また、IMiDs安定溶液を調製する方法も提供される。いくつかの実施形態では、IMiD安定溶液またはそれを含む製剤の非経口的使用による、炎症性疾患及び癌の治療方法が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
免疫調節イミド(IMiD)化合物と、
極性非プロトン性溶媒と、
可溶性ポビドンポリマーと、を含む、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、
投与前のpHが、約3.0~7.0の範囲である、組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の組成物であって、
前記免疫調節イミド(IMiD)化合物は、レナリドミド、ポマリドミド、イベルドミド、またはそれらの任意の組み合わせを含み、
前記極性非プロトン性溶媒は、n-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、またはそれらの任意の組み合わせを含み、
前記可溶性ポビドンポリマーは、水溶性であり、ポリビニルピロリドンまたはそのコポリマーを含む、組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物であって、
約250~1600mOsm/kgの範囲の浸透圧を有する、組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物であって、
エントリー溶液と希釈溶液とを含み、
前記エントリー溶液及び前記希釈溶液は、患者への投与前は別々に維持されており、患者への投与時に、患者に投与するための最終溶液を形成するために互いに混合される、組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の組成物であって、
前記エントリー溶液は、前記免疫調節イミド(IMiD)化合物、前記極性非プロトン性溶媒、及び、任意選択で前記可溶性ポビドンポリマーを含む、組成物。
【請求項7】
請求項5に記載の組成物であって、
前記エントリー溶液は、該エントリー溶液の総重量に基づいて、
前記免疫調節イミド(IMiD)化合物を約0.05~30重量%の範囲の濃度で含み、
前記極性非プロトン性溶媒を約60~99.0重量%の範囲の濃度で含み、かつ、
前記可溶性ポビドンポリマーを約0~30重量%の範囲の濃度で含む、組成物。
【請求項8】
請求項5に記載の組成物であって、
前記希釈溶液は、前記可溶性ポビドンポリマー、緩衝系、水、及び、任意選択で前記極性非プロトン性溶媒を含む、組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の組成物であって、
前記希釈溶液は、該希釈溶液の総重量に基づいて、
前記可溶性ポビドンポリマーを約0.1~10重量%の範囲の濃度で含み、
前記緩衝系を約0.02~10重量%の範囲の濃度で含み、
前記水を約56~99.8重量%の範囲の濃度で含み、かつ、
前記極性非プロトン性溶媒を約0~10重量%の範囲の濃度で含む、組成物。
【請求項10】
請求項8に記載の組成物であって、
前記緩衝系は、クエン酸及び炭酸水素ナトリウムを含み、
前記希釈溶液は、該希釈溶液の総重量に基づいて、
前記クエン酸を約0.01~5重量%の範囲の濃度で含み、
前記炭酸水素ナトリウムを約0.01~5重量%の範囲の濃度で含む、組成物。
【請求項11】
請求項5に記載の組成物であって、
前記最終溶液は、前記免疫調節イミド(IMiD)化合物、前記極性非プロトン性溶媒、前記可溶性ポビドンポリマー、緩衝系、及び、水を含む、組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の組成物であって、
前記最終溶液は、該最終溶液の総重量に基づいて、
前記免疫調節イミド(IMiD)化合物を約0.01~1重量%の範囲の濃度で含み、
前記極性非プロトン性溶媒を約0.1~30重量%の範囲の濃度で含み、
前記可溶性ポビドンポリマーを約0.1~10重量%の範囲の濃度で含み、
前記緩衝系を約0.02~10重量%の範囲の濃度で含み、
前記水を約55~99.8重量%の範囲の濃度で含む、組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の組成物であって、
前記緩衝系は、クエン酸及び炭酸水素ナトリウムを含み、
前記最終溶液は、該最終溶液の総重量に基づいて、
前記クエン酸を約0.01~5重量%の範囲の濃度で含み、
前記炭酸水素ナトリウムを約0.01~5重量%の範囲の濃度で含む、組成物。
【請求項14】
請求項12に記載の組成物であって、
前記可溶性ポビドンポリマーは、約20,000~100,000の範囲の平均分子量を有する、組成物。
【請求項15】
請求項12に記載の組成物であって、
前記可溶性ポビドンポリマーは、約1,000~18,000の範囲の平均分子量を有する、組成物。
【請求項16】
請求項1に記載の組成物であって、
局所投与、経口投与、経皮投与、または非経口投与のための製剤を含む、組成物。
【請求項17】
請求項16に記載の組成物であって、
前記非経口投与は、筋肉内投与、静脈内投与、皮下投与、デポー投与、動脈内投与、腹腔内投与、注入投与、またはインプラント投与を含む、組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の組成物であって、
前記非経口投与は、皮下投与であり、
前記皮下投与は、外部薬剤供給部からの連続した薬剤供給による持続的、拍動的、または断続的なものであり、
前記外部薬剤供給部からの薬剤供給は、前記製剤を変更または補充する必要がある場合、または治療が完了したと医療専門家によって判断された場合を除き、非経口投与中は中断されない、組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の組成物であって、
賦形剤をさらに含み、
前記賦形剤は、溶媒、可溶化剤、希釈剤、懸濁化剤、分散剤、ゲル化剤、ポリマー、浸透促進剤、可塑剤、pH調整剤、pH安定化剤、乳化剤、シクロデキストリンもしくはその誘導体、界面活性剤、防腐剤、キレート化剤、錯化剤、皮膚軟化剤、保湿剤、粘滑剤、皮膚刺激低減剤、抗酸化剤、酸化剤、粘着付与剤、充填剤、結晶化抑制剤、揮発性薬剤、またはそれらの任意の組み合わせを含む、組成物。
【請求項20】
請求項5に記載の前記最終溶液を患者に投与する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2021年1月8日出願の米国仮特許出願第63/135,347号に基づく優先権を主張するものである。上記出願の開示内容の全体は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示の主題は、一般に、免疫調節薬、例えばレナリドミド(LLD)などの免疫介在性炎症性疾患(IMID)治療薬、の安定溶液を含む組成物に関する。より詳細には、本開示の実施形態は、非経口用のLLDの安定溶液に関する。また、LLDまたは他の免疫調節イミド薬(IMiD)の安定溶液を調製する方法も提供される。いくつかの実施形態では、IMiD安定溶液の非経口使用による炎症性疾患及び癌の治療方法、並びに、IMiD安定溶液を含む製剤が提供される。驚くべきことに、本開示のLLD溶液は、標準的なLLD溶液及び製剤と比較して、優れたLLD溶解性及び安定性を示す。
【背景技術】
【0003】
免疫調節イミド化合物としては、サリドマイドまたはサリドマイドの類似体(サリドマイド化合物ファミリーと総称する)が挙げられ、これらは、免疫調節作用、抗血管新生作用、抗炎症作用、抗増殖作用などの多面的な抗骨髄腫特性を有している。サリドマイドの類似体としては、レナリドミド、ポマリドミド、イベルドミド、アプレミラストなどが挙げられる。
【0004】
下記の化学式Iで表される、レナリドミド(3-(4-アミノ-1-3-ジヒドロ-1-オキソ-2H-イソインドール-2イル)-2、6-ピペリジンジオン)は、レブラミド(登録商標)として経口カプセル剤の形態で入手可能なFDA承認薬である。レナリドミド(LLD)は、例えば、デキサメタゾンとの併用による多発性骨髄腫(MM)の治療、自家造血幹細胞移植(自家HSCT)後の維持治療としての多発性骨髄腫(MM)の治療、追加の細胞遺伝学的異常を伴うまたは伴わない5q欠失異常を伴う低リスクまたは中等度1リスクの骨髄異形成症候群(MDS)に起因する輸血依存性貧血の治療、あるいは、マントル細胞リンパ腫(MCL)の治療であって、ボルテゾミブとリツキシマブ製剤との併用による濾胞性リンパ腫(FL)または辺縁帯リンパ腫(MZL)の前治療歴を含む2つの前治療後に疾患が再発または進行した患者の治療に適用される。レブラミド(登録商標)は、2.5mg、5mg、10mg、15mg、20mg、または25mgの力価の経口剤形として入手可能である。
【0005】
【0006】
下記の化学式IIで表される、ポマリドミド(4-アミノ-2-(2、6-ジオキソピペリジン-3-イル)イソインドリン-1、3-ジオン)は、経口カプセル剤の形態で入手可能なFDA承認薬である。ポマリドミドは一般的に、前治療歴(例えばレナリドミドなどの)を有し、前回の治療の終了時(またはその後すぐに)に疾患の進行が認められた多発性骨髄腫患者に対して、多くの場合はデキサメタゾンと組み合わせて使用される。ポマリドミドは、1mg、2mg、3mg、または4mgの力価の経口剤形として入手可能である。
【0007】
【0008】
下記の化学式IIIで表される、サリドマイド(2-(2、6-ジオキソピペリジン-3-イル)イソインドール-1、3-ジオン)は、経口カプセル剤の形態で入手可能なFDA承認薬である。サリドマイドは一般的に、多発性骨髄腫と新たに診断された患者の治療に、多くの場合はデキサメタゾンと組み合わせて使用される。サリドマイドには、50mg、100mg、150mg、または200mgの力価の経口剤形として入手可能である。
【0009】
【0010】
下記の化学式Vで表される、イベルドミド((3S)-3-[7-[[4-(モルホリン-4-イルメチル)フェニル]メトキシ]-3-オキソ-1H-イソインドール-2-イル]ピペリジン-2、6-ジオン)は、難治性多発性骨髄腫の治療薬として開発中である。
【0011】
【0012】
レナリドミド(LLD)
【0013】
LLDは、レブラミド(Revlimid)の処方情報に規定されているように、ごくわずかな水溶性を示すとされ、文献や様々なウェブサイト(www.pubchem.com)に開示されている。酸性度の低い緩衝液への溶解度は、約0.4~0.5mg/mLの範囲であると報告されている。
【0014】
最近の科学的な調査によると、LLDの溶解度は、例えば、生理学的に許容されるpH範囲である約pH3~8の範囲では約0.4mg/mL以下に限られており、保存条件によっては、約pH6.0~7.0の相対的pH範囲では約0.2mg/mL程度まで低くなることが分かっている。さらに、LLDは、約pH6.0~7.0の範囲では、緩衝液の有無にかかわらず溶液中で化学的に安定ではなく、pH範囲が7.0を超えると化学的安定性は著しく低下する(例えば、0.1NのNaOHなどの塩基性条件では、約100%の分解が引き起こされると予想される)。LLDの溶解度は、pHが約7.0よりも高くなるにしたがって、約0.0mg/mLまで著しく低下する。
【0015】
最近、LLDは、塩基性加水分解と酸化との両方を受けることが報告されている。LLDは、クロマトグラフィ分析で観察された少なくとも2つの一次同定された加水分解性のピークと、同じクロマトグラフィHPLC法で観察された少なくとも2つの一次同定された酸化性のピークで分解される。
【0016】
さらに、LLDは、表1に示すように、LLDの医薬組成物中で不純物(Imp)となり得るいくつかの一次関連化合物を有することが知られている。
【0017】
【0018】
また、LLDは、表2に示すように、医薬組成物中で不純物(Imp)となり得るいくつかの二次関連化合物及び三次関連化合物を有することが知られている。
【0019】
【0020】
具体的には、LLDは、例えば酸化条件または加水分解条件下で予測可能な分解を示す。LLDは、酸性加水分解(HCl)に曝された場合は比較的安定的であるが、酸化(H2O2)や塩基性加水分解(NaOH)の影響を受けやすい。例えば、LLDは、下記の分解経路を介して分解されると考えられている。
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
理論に拘束されることを望まないが、LLDの不純物12は、不純物3の酸化または不純物13もしくは不純物14の加水分解に起因して生成され、不純物13は、不純物2の酸化または不純物28の加水分解に起因して生成され、不純物14は、不純物1の酸化または不純物28の加水分解に起因して生成されると考えられている。
【0027】
一次関連化合物については、LLDの不純物1は塩基性加水分解(優先経路)に起因して生成され、不純物2は塩基性加水分解(代替経路)に起因して生成され、不純物9は医薬品有効成分(API)の酸化(優先経路)に起因して生成されると考えられている。
【0028】
二次関連化合物については、LLDの不純物3は、不純物1及び不純物2の塩基性加水分解に起因して生成され、不純物28は不純物9の酸化に起因して生成されると考えられている。
【0029】
三次関連化合物については、LLDの不純物12は、不純物3、不純物13、及び不純物14の複合酸化/加水分解に起因して生成され、不純物13は不純物1及び不純物28の複合酸化/加水分解に起因して生成され、不純物14は不純物2及び不純物28の複合酸化/加水分解に起因して生成されると考えられている。
【0030】
医薬品開発において、その製品が化学的に安定であるとみなされるのは、力価に変化がないか、または力価の変化が限定的であり、かつ、その製品が、新医薬品に含まれる総不純物及び個々の不純物を評価するための規格書及び医薬品規制調和国際会議(ICH:International Conference on Harmonization of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use)のガイドラインQ3Bに関して、凍結、冷蔵、室温についてのICHの相対的保存条件下で最長で24ヶ月間、加速条件で最長6ヶ月間保持して、その製品が化学的に安定な場合である。
【0031】
また、加水分解及び酸化の両方の事象が様々なレベルで起こる標準溶液または製剤中でLLD薬剤を調製すると、T0において、関連化合物(ピーク面積で1.5%超の総関連物質)が有意に形成されると考えられている。このようなICH保存条件下ではわずか48時間後に、製剤中に形成された関連物質は、2.5%超まで増加し、pH7.0などの高いpH範囲のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中では10%超まで増加する。関連物質の総量が5%を超えると、毒性、有害事象、未知の分解経路の生成、及び、二次的な分解事象がより懸念される。
【0032】
現在承認されているLLD製剤は、粉末を充填したカプセルとして提供される経口固形剤である。そのため、薬剤は固体の状態で維持され、酸化や加水分解による分解経路の影響を受けにくい。固形経口製剤では、酸化や加水分解による分解経路は、製剤化、乾燥剤、脱酸素剤、またはそれらの任意に組み合わせによって、抑制することができる。結晶形態の安定な多形体が記載されている、Jaworskyらによる米国特許第7、465、800号明細書を参照されたい。
【0033】
皮下注射、注入、または他の非経口投与のための注射剤は、通常、最も単純な製剤では溶液製剤(drug-in-solution)であり、その他にも、エマルション、懸濁液、マイクロエマルション、ナノエマルション、微粒子、及び他の剤形が考えられる。このような剤形については、LLDの安定的な溶液製剤についてのニーズが依然として存在する。現在、最終製剤の目標濃度が0.1~20.0mg/mLの範囲であるにもかかわらず、LLDの溶解度が0.4mg/mL未満であるため、製剤化アプローチは困難であると考えられている。また、現在、酸化分解及び加水分解の経路や、潜在的な他の未知の分解経路または二次反応によって生成される関連物質に起因して、溶液中でLLD(API)が不安定であるため、製剤化アプローチは困難であると考えられている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0034】
第1の態様では、免疫介在性炎症性疾患の治療に使用できる免疫調節イミド薬剤(IMiD)、例えばレナリドミド(LLD)など、の安定溶液が提供される。
【0035】
いくつかの実施形態では、本開示は、組成物であって、極性非プロトン性溶媒中に、IMiDの安定な濃縮溶液を、約0.1mg/mL(0.01重量%)~飽和状態、例えば、約0.2~200mg/mL(0.02~20重量%)、約0.5~100mg/mL(0.05~10重量%)、または、約1~60mg/mL(0.1~6重量%)の濃度で含む組成物に関する。IMiDと極性非プロトン性溶媒との組み合わせにより、結晶粒子を含まない安定した真溶液が形成されることが証明されている。この場合、溶質であるIMiDの医薬品有効成分(API)が溶媒中に完全に溶解しており、溶媒は実質的に水を含まない極性非プロトン性溶媒であるので、真溶液では出発多形相は重要ではない。極性非プロトン性溶媒は溶解性を提供し、溶質は飽和濃度よりも十分に低い濃度で配合されるため、溶液の長期安定性が向上する。APIは溶液中に完全に溶解しているため、極性非プロトン性溶媒は、最も利用可能で反応性の高い状態で、加水分解及び/又は酸化反応からAPIを保護する。管理された条件下では、この形態で、最大24ヵ月間にわたって安定的であると予想される。
【0036】
他の実施形態では、IMiDと極性非プロトン性溶媒とを含有する安定溶液を含む組成物は、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)、2-ピロリドン(2-ピロール)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、アセトン、アセトニトリル(ACN)、テトラヒドロフラン(THF)などから選択される極性非プロトン性溶媒を含む。いくつかの実施形態では、極性非プロトン性溶媒は、薬学的に許容される極性非プロトン性溶媒である。いくつかの実施形態では、極性非プロトン性溶媒は、NMPである。他の実施形態では、本開示は、IMiD及び極性非プロトン性溶媒を含有する安定溶液を含む最終希釈組成物であって、極性非プロトン性溶媒が、約0.1~99重量%、例えば、約0.5~50重量%、または約1~25重量%の量のNMPを含む、最終希釈組成物に関する。他の実施形態では、本開示は、最大で99重量パーセントの量のNMPを含む濃縮組成物であって、例えば、約70~99重量%の極性非プロトン性溶媒(例えば、NMP)と、約10~300mg/mL(1~30重量%)のAPI(例えば、LLD)とを含む濃縮組成物に関する。
【0037】
また、本開示は、濃縮溶液を適切なビヒクル(例えば、希釈剤)で最終的に希釈することにより調製される、最終組成物中のpHが約3.0~7.0の範囲である薬学的に許容される緩衝剤を有する可溶性ポビドン(PVP)ポリマーを含む投与期間中安定な製剤に関する。いくつかの実施形態では、IMiDは、LLD、サリドマイド、ポマリドマイド、イベルドマイド、及びそれらの任意の組み合わせから選択される。他の実施形態では、本開示の組成物は、LLDを、約0.01mg/mL(0.001重量%)~飽和状態、例えば、約0.05~100.0mg/mL(0.005~10重量%)、または、約0.1mg/mL(0.01重量%)~20.0mg/mL(2重量%)の濃度で、かつ、投与のための最終組成物において許容可能な生理学的pHで含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、水溶性ポリマーである可溶性ポビドンポリマーを含む。他の実施形態では、ポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)またはそのコポリマーを含む。いくつかの実施形態では、PVPは、約2,000~1,200,000、例えば、約2,000~54,000の平均分子量を有し、本開示の組成物中の可溶性ポビドンポリマーの濃度は、約0.1~25重量%、例えば、約0.2~20重量%、または、約0.4~10重量%である。いくつかの実施形態では、可溶性ポビドンポリマーは、約1,000~18,000、例えば、約1,500~16,000、または、約2,000~14,000の範囲の平均分子量を有する(例えば、Kollidon K-12、Kollidon K-17)。さらに、このような分子量を有する場合、可溶性ポビドンポリマーの濃度は、約2~25重量%、例えば、約4~20重量%、または、約6~10重量%の範囲であり得る。さらに他の実施形態では、可溶性ポビドンポリマーは、約20,000~100,000、例えば、約22,000~90,000、または、約24,000~80,000の範囲の平均分子量を有し得る(例えば、Kollidon K-25、Kollidon K-30、Kollidon VA64)。本開示の組成物中の可溶性ポビドンポリマーの濃度は、約0.1~10.0重量%、例えば、約0.5~8重量%、または、約1~6重量%の範囲であり得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、本開示は、LLDなどのIMiDを含む製剤であって、分解に対する耐性を有する製剤に関する。いくつかの実施形態では、IMiDは、酸性、塩基性、または酸化条件下での強制分解を含む加水分解または酸化分解に対する耐性を有する。
【0040】
他の実施形態では、本開示は、IMiD及びポリマーを含有する安定溶液であって、局所投与、経口投与、経皮投与、または非経口投与(筋肉内投与、静脈内投与、皮下投与、デポー投与、動脈内投与、腹腔内投与、注入投与など)、好ましくは皮下投与(皮下注入)のための製剤を含む、安定溶液に関する。
【0041】
他の実施形態では、IMiD及びポリマーを含有する安定溶液は、賦形剤または賦形剤の組み合わせをさらに含む。いくつかの実施形態では、賦形剤は、溶媒、可溶化剤、希釈剤、懸濁化剤、分散剤、ゲル化剤、ポリマー、浸透促進剤、可塑剤、pH調整剤、pH安定化剤、乳化剤、シクロデキストリンまたはその誘導体、界面活性剤、防腐剤、キレート化剤、錯化剤、皮膚軟化剤、保湿剤、粘滑剤、皮膚刺激低減剤、抗酸化剤、酸化剤、粘着付与剤、充填剤、結晶化抑制剤、及び揮発性薬剤からなる群から選択される。
【0042】
別の態様では、本開示は、投与用の濃縮組成物または最終希釈組成物中に、IMiDと、可溶性ポビドンポリマーと、極性非プロトン性溶媒とを含有する安定溶液を含む組成物に関する。いくつかの実施形態では、IMiDと、可溶性ポビドンポリマーと、極性非プロトン性溶媒とを含有する安定溶液を含む本開示の組成物は、レナリドミド、サリドマイド、ポマリドマイド、またはイベルドミドから選択されるIMiDを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、IMiD、可溶性ポビドンポリマー、及び極性非プロトン性溶媒を含有する安定溶液を含む本開示の組成物は、投与のための最終組成物において、レナリドミドを生理学的pHで、かつ、約0.01~飽和状態すなわち300mg/mL(0.001~30重量%)、例えば、約0.1~100.0mg/mL(0.01~10重量%)、または、約0.2~20.0mg/mL(0.02~2重量%)の範囲の濃度で含む。さらに、溶解性ポビドンポリマーは、濃縮溶液中に、約0.01~500mg/mL(0.001~50重量%)、例えば、約0.1~300mg/mL(0.01~30%重量%)、または、約0.2~100mg/mL(0.02~10%重量%)の濃度で含まれる。極性非プロトン性溶媒は、溶液のバランスとして、約20~99.998重量%、例えば、約60~99.98重量%、または、約88~99.96重量%の濃度で含まれる。
【0044】
いくつかの実施形態では、IMiD、可溶性ポビドンポリマー、及び極性非プロトン性溶媒を含有する安定溶液を含む本開示の組成物は、水溶性ポリマーを含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、IMiD、可溶性ポビドンポリマー、及び極性非プロトン性溶媒を含有する安定溶液を含む本開示の組成物は、ポリビニルピロリドン(PVP)またはそのコポリマーを含む。いくつかの実施形態では、PVPは、約2,000~1,200,000の平均分子量を有する。他の実施形態では、PVPは、約2,000~54,000の平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、本開示の組成物中のPVPの濃度は、約0.1~25.0重量%、例えば、約0.2~20重量%、または、約0.4~10.0重量%である。
【0046】
他の実施形態では、IMiD、可溶性ポビドンポリマー、及び極性非プロトン性溶媒を含有する安定溶液を含む本開示の組成物は、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)、2-ピロリドン(2-ピロール)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、アセトン、アセトニトリル(ACN)、テトラヒドロフラン(THF)などから選択される極性非プロトン性溶媒を含む。いくつかの実施形態では、極性非プロトン性溶媒は、薬学的に許容される極性非プロトン性溶媒である。いくつかの実施形態では、極性非プロトン性溶媒は、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)である。他の実施形態では、本開示は、IMiD、可溶性ポビドンポリマー、及び極性非プロトン性溶媒を含有する安定溶液を含む最終希釈組成物であって、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)を約0.1~50重量%、例えば約1~44重量%の濃度で含む最終希釈組成物に関する。他の実施形態では、本開示は、極性非プロトン性溶媒(例えば、NMP)を約99重量%の濃度で含む濃縮組成物に関する。PVPは、濃縮組成物の大部分が、NMP(例えば、約70~99重量%の濃度で含まれる)と、LLDなどのAPI(最大で約300mg/mLまたは30重量%の濃度で含まれる)とになるように、極性非プロトン性溶媒中に溶解限度で含まれる(すなわち、PVPの分子量(MW)に依存して、濃縮組成物中に最大で約30重量%の濃度で含まれる)。PVPは、濃縮エントリー溶液中に含まれる場合、濃縮組成物の大部分が、NMP(例えば、50~99重量%)と、PVP(1~50重量%)と、LLDなどの医薬品有効成分(最大で約30重量%)とになるように、極性非プロトン性溶媒中に溶解限度で含まれる(最大で約30重量%)。
【0047】
いくつかの実施形態では、IMiD、可溶性ポビドンポリマー、及び極性非プロトン性溶媒を含有する安定溶液を含む本開示の組成物は、加水分解または酸化分解、及び/または、酸性、塩基性、または酸化条件下での強制分解などの分解に対する耐性を有するIMiDを含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、IMiD、可溶性ポビドンポリマー、及び極性非プロトン性溶媒を含有する安定溶液を含む本開示の組成物は、局所投与、経口投与、経皮投与、または非経口投与(筋肉内投与、静脈内投与、皮下投与、デポー投与、インプラント投与、動脈内投与、腹腔内投与、注入投与など)、好ましくは皮下投与(皮下注入)のための製剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、賦形剤または賦形剤の組み合わせをさらに含む。いくつかの実施形態では、賦形剤は、溶媒、可溶化剤、希釈剤、懸濁剤、分散剤、ゲル化剤、ポリマー、生分解性ポリマー、浸透促進剤、可塑剤、pH調整剤、緩衝剤、pH安定剤、乳化剤、補助乳化剤、界面活性剤、懸濁剤、安定剤、防腐剤、キレート剤、錯化剤、皮膚軟化剤、保湿剤、粘滑剤、皮膚刺激軽減剤、抗酸化剤、酸化剤、粘着付与剤、充填剤、及び揮発性薬剤からなる群から選択される。
【0049】
別の態様では、LLD安定溶液などのIMiD安定溶液を調製する方法、及びIMiD安定溶液を含む製剤が提供される。
【0050】
いくつかの実施形態では、本開示は、LLD及び可溶性ポビドンポリマーを含有する安定溶液を含む組成物を調製する方法であって、ポビドンポリマーの溶液にLLDを適切な生理学的pHで添加するステップを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、ポビドンポリマーとしてPVPを含む。他の実施形態では、本開示の方法は、約0.1~20.0mg/mL(0.01~2重量%)のLLDを生理学的pHで含有する安定溶液を調製する。
【0051】
他の実施形態では、本開示の方法は、酸性、塩基性または酸化条件に曝されたときに加水分解及び/または酸化分解の強制分解に対する耐性を有するLLDを提供する。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、非経口投与用の製剤におけるLLD及びポリマーを含有する安定溶液を提供する。
【0052】
別の態様では、本開示は、LLDなどのIMiD、極性非プロトン性溶媒、及びポビドンを含有する安定溶液を含む濃縮組成物を調製する方法であって、ポビドンポリマー及び極性非プロトン性溶媒を含む溶液にLLDを加えるステップを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、濃縮組成物は、実質的に水を含まない。いくつかの実施形態では、濃縮組成物は、PVPを含む。他の実施形態では、濃縮組成物は、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)を含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、濃縮組成物は、極性非プロトン性溶媒によって可溶化されるPVP及びLLDを含む。他の実施形態では、濃縮組成物は、LLD、PVP、及びNMPの濃縮溶液に溶解する追加の薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、濃縮組成物は、LLDを約0.1~100mg/mL(約0.1~10重量%)の濃度で含む可溶化IMiDを含む。他の実施形態では、PVPは、約0.1~50重量%の範囲の濃度で含まれ、溶解される。他の実施形態では、NMPは、約50~99.8重量%の範囲の濃度で含まれる。
【0055】
いくつかの実施形態では、濃縮組成物は、酸性、塩基性または酸化条件に曝されたときに加水分解及び/または酸化分解の強制分解に対する耐性を有するIMiDを含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、本開示は、非経口投与のために希釈される濃縮組成物中の、LLDなどのIMiD、ポリマー、及び極性非プロトン性溶媒を含有する安定溶液に関する。いくつかの実施形態では、安定溶液は、適切な緩衝液で非経口投与用に希釈される濃縮組成物中に、極性非プロトン性溶媒であるPVPと、約0.1~100.0mg/mL(0.01~10重量%)のLLDとを含有する。他の実施形態では、極性非プロトン性溶媒であるPVPと、約0.1~20mg/mL(0.01~2重量%)のLLDとを含有する安定溶液を適切な緩衝液で希釈して、約4.0~7.0、例えば約5.0~6.5の生理学的pHの安定溶液を調製する。いくつかの実施形態では、本開示は、LLDなどのIMiDsの安定溶液であって、約0.1~25重量%、例えば約0.4~10重量%の最終濃度のPVPと、約0.1~44重量%、例えば約0.5~20wt重量%の最終濃度のNMPとを含む、IMiDsの安定溶液に関する。
【0057】
いくつかの実施形態では、本開示は、非経口投与のために希釈される濃縮組成物中の、LLDなどのIMiDと、極性非プロトン性溶媒とを含む安定溶液に関する。いくつかの実施形態では、安定溶液は、非経口投与のために適切な緩衝液で希釈される濃縮組成物中に、極性非プロトン性溶媒と、約0.1~100.0mg/mL(0.01~10重量%)の濃度のLLDを含有する。希釈溶液または適切な緩衝液は、濃縮液中にNMP及びLLDを約1:1~1:50、例えば、約1:2~1:30、または約1:5~1:26の比率で含有するように調製される。いくつかの実施形態では、本開示の希釈溶液は、約3~6の生理学的pHで注入するために、PVPと、緩衝剤と、水とを含む。PVPは、この希釈溶液中に、約0.1~25重量%、例えば、約0.2~20重量%、または、約0.4~10重量%の濃度で含まれる。
【0058】
また、本開示は、LLDで治療可能であることが知られている疾患または状態、これに限定しないが、例えば、多発性骨髄腫、低リスクまたは中等度1リスクの骨髄異形成症候群に起因する輸血依存性貧血、マントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、血液癌、固形腫瘍癌、乾癬性関節炎、サイトカイン放出症候群など、を治療する方法であって、治療を必要とする対象に対して、免疫調節性イミド化合物を持続的に投与するステップを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、対象に対して、免疫調節性イミド化合物を、所定の日数にわたって、所定の1時間あたりの量で、持続的に投与することを含む。
【0059】
別の態様では、本開示は、LLDなどのIMiDとポリマーとを含有する安定溶液を含む製剤を非経口投与することによって、炎症性の疾患または癌を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、PVPと、生理学的pHで約0.1~20.0mg/mL(0.01~2重量%)の濃度のLLDとを含有する安定溶液を含む。他の実施形態では、IMiD安定溶液は、LLD安定溶液などのIMiD安定溶液と、薬学的に許容される担体とを含む製剤の形態で、非経口的に投与される。
【0060】
或る特定の実施形態では、免疫調節性イミド(IMiD)化合物と、極性非プロトン性溶媒と、可溶性ポビドンポリマーとを含む組成物が提供される。
【0061】
本開示の組成物は、投与前のpHが、約3.0~7.0の範囲である。
【0062】
免疫調節性イミド(IMiD)化合物は、レナリドミド、ポマリドミド、イベルドミド、またはそれらの任意の組み合わせを含み、極性非プロトン性溶媒は、n-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、またはそれらの任意の組み合わせを含み、可溶性ポビドンポリマーは、水溶性であり、ポリビニルピロリドンまたはそのコポリマーを含む。
【0063】
また、本開示の組成物は、約250~1600mOsm/kgの範囲の浸透圧を有する。
【0064】
一実施形態では、本開示の組成物は、エントリー溶液と希釈溶液とを含み、エントリー溶液及び希釈溶液は、患者への投与前は別々に維持されており、患者への投与時に、患者に投与するための最終溶液を形成するために互いに混合される。また、エントリー溶液は、免疫調節イミド(IMiD)化合物、極性非プロトン性溶媒、及び、任意選択で可溶性ポビドンポリマーを含む。加えて、エントリー溶液は、該エントリー溶液の総重量に基づいて、免疫調節イミド(IMiD)化合物を約0.05~30重量%の範囲の濃度で含み、極性非プロトン性溶媒を約60~99.0重量%の範囲の濃度で含み、かつ、可溶性ポビドンポリマーを約0~30重量%の範囲の濃度で含む。
【0065】
希釈溶液は、可溶性ポビドンポリマー、緩衝系、水、及び、任意選択で極性非プロトン性溶媒を含む。また、希釈溶液は、該希釈溶液の総重量に基づいて、可溶性ポビドンポリマーを約0.1~10重量%の範囲の濃度で含み、緩衝系を約0.02~10重量%の範囲の濃度で含み、水を約56~99.8重量%の範囲の濃度で含み、かつ、極性非プロトン性溶媒を約0~10重量%の範囲の濃度で含む。
【0066】
加えて、緩衝系は、クエン酸及び炭酸水素ナトリウムを含む。希釈溶液は、該希釈溶液の総重量に基づいて、クエン酸を約0.01~5重量%の範囲の濃度で含み、炭酸水素ナトリウムを約0.01~5重量%の範囲の濃度で含む。
【0067】
さらに、最終溶液は、免疫調節イミド(IMiD)化合物、極性非プロトン性溶媒、可溶性ポビドンポリマー、緩衝系、及び、水を含む。例えば、最終溶液は、該最終溶液の総重量に基づいて、免疫調節イミド(IMiD)化合物を約0.01~1重量%の範囲の濃度で含み、極性非プロトン性溶媒を約0.1~30重量%の範囲の濃度で含み、可溶性ポビドンポリマーを約0.1~10重量%の範囲の濃度で含み、緩衝系を約0.02~10重量%の範囲の濃度で含み、水を約55~99.8重量%の範囲の濃度で含む。
【0068】
加えて、緩衝系は、クエン酸及び炭酸水素ナトリウムを含む。最終溶液は、該最終溶液の総重量に基づいて、クエン酸を約0.01~5重量%の範囲の濃度で含み、炭酸水素ナトリウムを約0.01~5重量%の範囲の濃度で含む。
【0069】
また、可溶性ポビドンポリマーは、約20,000~100,000の範囲の平均分子量を有するか、または、約1,000~18,000の範囲の平均分子量を有する。
【0070】
加えて、本開示の組成物は、局所投与、経口投与、経皮投与、または非経口投与のための製剤を含む。非経口投与は、筋肉内投与、静脈内投与、皮下投与、デポー投与、動脈内投与、腹腔内投与、注入投与、またはインプラント投与を含む。さらに、非経口投与は、皮下投与(皮下注入)であってよく、その場合、皮下投与は、外部薬剤供給部からの連続した薬剤供給による持続的、拍動的、または断続的なものであり得る。外部薬剤供給部からの薬剤供給は、製剤を変更または補充する必要がある場合、または治療が完了したと医療専門家によって判断された場合を除き、非経口投与中は中断されない。
【0071】
さらに、本開示の組成物は、賦形剤をさらに含み得る。賦形剤としては、溶媒、可溶化剤、希釈剤、懸濁化剤、分散剤、ゲル化剤、ポリマー、浸透促進剤、可塑剤、pH調整剤、pH安定化剤、乳化剤、シクロデキストリンもしくはその誘導体、界面活性剤、防腐剤、キレート化剤、錯化剤、皮膚軟化剤、保湿剤、粘滑剤、皮膚刺激低減剤、抗酸化剤、酸化剤、粘着付与剤、充填剤、結晶化抑制剤、揮発性薬剤、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0072】
また、本開示は、上記の最終溶液を患者に投与する方法も意図する。
【0073】
本発明の上記及び他の特徴、態様及び利点は、以下の説明及び添付された特許請求の範囲を参照することによって、より良く理解できるであろう。添付図面は、本明細書に組み込まれてその一部を構成し、本発明の実施形態を図示し、本明細書と共に本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【
図1】
図1は、室温で参照標準対照溶液中に保存したLLD試料の高速液体クロマトグラフィ(HPLC)クロマトグラムである。
【
図2】
図2は、酸性条件下で保存したLLD試料のHPLCクロマトグラムである。
【
図3】
図3は、加水分解を強制するために、水酸化ナトリウム溶液中に保存したLLD試料のHPLCクロマトグラムである。
【
図4】
図4は、酸化分解を強制するために、過酸化物溶液中に保存したLLD試料のHPLCクロマトグラムである。
【
図5】
図5は、強制酸化分解条件下でイソプロピルアルコールの存在下に保存したLLD試料のHPLCクロマトグラムである。
【
図6】
図6は、強制酸化分解条件下でアセトニトリルの存在下に保存したLLD試料のHPLCクロマトグラムである。
【
図7】
図7は、強制加水分解条件下イソプロピルアルコールの存在下に保存したLLD試料のHPLCクロマトグラムである。
【
図8】
図8は、強制加水分解条件下でアセトニトリルの存在下に保存したLLD試料のHPLCクロマトグラムである。
【
図9】
図9は、強制加水分解/酸化分解条件下で1%PEG400の存在下に保存したLLD試料のHPLCクロマトグラムである。
【
図10】
図10は、強制加水分解/酸化分解条件下で1%PGの存在下に保存したLLD試料のHPLCクロマトグラムである。
【
図11】
図11は、強制加水分解/酸化分解条件下で1%PVP K-12の存在下に保存したLLD試料のHPLCクロマトグラムである。
【
図12】
図12は、強制加水分解/酸化分解条件下で1%PVP K-30の存在下に保存したLLD試料のHPLCクロマトグラムである。
【
図13】
図13は、強制塩基性加水分解条件下で1%PEG400の存在下に保存したLLD試料のHPLCクロマトグラムである。
【
図14】
図14は、強制塩基性加水分解条件下で1%PGの存在下に保存したLLD試料のHPLCクロマトグラムである。
【
図15】
図15は、強制塩基性加水分解条件下で1%PVP K-12の存在下に保存したLLD試料のHPLCクロマトグラムである。
【
図16】
図16は、強制塩基性加水分解条件下で1%PVP K-30の存在下に保存したLLD試料のHPLCクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0075】
本明細書で使用するとき、「薬学的に許容される塩」という用語は、遊離塩基の酸付加塩または付加塩を含む。「薬学的に許容される塩」という用語の範囲には、すべての可能な異性体及びそれらの混合物、並びに、任意の薬学的に許容される代謝物、生体前駆体、及び/またはプロドラッグ、例えば、記載または説明した化合物とは異なる構造式を有するが、哺乳類などの対象、特にヒトへの投与時に、インビボでそのような化合物に直接的または間接的に変換される化合物が含まれる。
【0076】
本明細書で使用するとき、「対象」及び「患者」という用語は、互換的に使用される。本明細書で使用するとき、「患者」という用語は、動物、好ましくは非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラット)や霊長類(例えば、サル、ヒト)などの哺乳類、最も好ましくはヒトを指す。いくつかの実施形態では、対象は、家畜(例えば、ウマ、ブタ、ウシ)やペット(例えば、イヌ、ネコ)などの非ヒト動物である。特定の実施形態では、対象は、高齢のヒトである。別の実施形態では、対象は、ヒトの成人である。別の実施形態では、対象は、ヒトの子供である。さらに別の実施形態では、対象は、ヒトの幼児である。
【0077】
本明細書で使用するとき、「活性薬剤」または「治療剤」という用語は、疾患、障害または状態の予防、治療、処置、及び/または診断のために使用される、任意の分子、化合物、手段、及び/または物質を指す。
【0078】
本明細書で使用するとき、「有効量」という用語は、疾患または症状の進行、再発、または発症の予防、疾患または症状の1以上の症状の予防、治療、軽減または改善、別の治療の予防効果の増強または改善、疾患または症状の重症度または継続期間の軽減または短縮、疾患または症状の1以上の症状の寛解、疾患または状態の進行の予防、疾患または状態あるいはその1以上の症状の緩和、及び/または、別の治療における治療効果の増強または改善、をもたらすのに十分な治療剤の量を指す。
【0079】
本明細書で使用するとき、「薬学的に許容される」という用語は、米国の連邦政府または州政府の規制機関によって承認されているか、または、動物、より具体的にはヒトに使用するために米国薬局方、欧州薬局方、中国薬局方、または他の一般的に認められた薬局方に記載されていることを意味する。
【0080】
本明細書で使用するとき、疾患または障害の「治療」または「治療する」という用語は、疾患または障害を改善することを意味し、例えば、疾患、その発症、またはその1以上の臨床症状を遅らせる、止める、または軽減することを意味する。また、この用語は、患者が認識できるか否かにかかわらず、1以上の身体的パラメータを軽減または改善することを指す。また、この用語は、疾患または障害を、身体的及び/または生理学的に調節することを指す(例えば、認識可能な症状及び/または身体的パラメータを安定化することによって)。
【0081】
本明細書で使用するとき、疾患または障害の「予防」という用語は、疾患または障害の症状が明らかになる前に、本発明の化合物を対象に投与することを指す。
【0082】
本明細書で使用するとき、患者または対象は、生物学的に、医学的に、または生活の質において利益が得られる治療を「必要としている」ものを指す。
【0083】
本明細書で使用するとき、「類似体」、「誘導体」または「誘導体化された」という用語は、化合物またはその薬学的に許容される塩あるいはそれらの混合物の化学的修飾を含む。すなわち、「誘導体」は、所与の対象または用途において化合物の機能的活性を誘導することができる化合物の機能的等価物であり得る。
【0084】
本明細書で使用するとき、「組成物」及び「製剤」という用語は、特に明記しない限り、互換的に使用され得る。一般的に、製剤は、非経口投与用の独立したLLD安定溶液として使用され得る。
【0085】
本明細書で使用するとき、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、及び本発明の文脈で使用される同様の用語は、特に明記しない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を含むものと解釈されるべきである。本明細書で提供されるいずれかのもしくはすべての例、または例を示す用語(例えば、「など」、「例として」、「例示的」、「例えば」)の使用は、単に、本発明をより良く説明することを意図したものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【0086】
本明細書で使用するとき、「治療薬」という用語は、疾患または障害を治療及び/または処置する目的で使用される任意の分子、化合物及び/または物質を指す。
【0087】
本明細書で使用するとき、「治療」及び「療法」という用語は、疾患または状態、またはそれらの1以上の症状の予防、治療、及び/または処置に使用することができる任意の方法、組成物、及び/または薬剤を指す。特定の実施形態では、「治療」及び「療法」という用語は、低分子療法を指す。
【0088】
本明細書で使用するとき、「エントリー溶液(ES:entry solution)」という用語は、最終剤形に希釈するために、不溶性APIの溶解を濃縮レベルで開始させる濃縮物として調製された、本明細書に記載された組成物の製剤を指す。いくつかの実施形態では、ESは、最終剤形を構築することを意図していない。いくつかの実施形態では、ESは、真溶液である。いくつかの実施形態では、ESは、最終剤形を形成するために希釈される。
【0089】
本明細書で使用するとき、「希釈溶液(DS:diluent solution)」という用語は、濃縮されたエントリー溶液を希釈するための溶液として調製された本開示の製剤を指す。いくつかの実施例では、DSは、API(原薬)を含まない。いくつかの実施形態では、DSは、真溶液である。
【0090】
本明細書で使用するとき、「最終剤形」、「最終製剤」、「完成医薬品(FDP)」、または「最終溶液」という用語は、使用及び/または投与に適切な濃度のすべての成分を含む最終組成物を生成するためにESをDSで希釈した本開示の製剤を指す。例えば、いくつかの実施形態では、1mLのESを25mLのDSと混合して最終容量26mLの最終製剤を調製することができる。
【0091】
製剤
【0092】
本開示は、一つには、レナリドミド(LLD)の存在下でn-メチル-2-ピロリドン(NMP)及び可溶性ポビドン(PVP)を使用して溶解性を高め、LLDの分解を驚くほど緩和することに関する。例えば、強制分解条件下での、加水分解及び酸化分解である(例えば、水溶液の存在下では非プロトン性溶媒であるアセトニトリル(ACN)、水溶液の存在下ではプロトン性溶媒であるイソプロピルアルコール(IPA))。
【0093】
また、本開示は、約0.1~10重量%、例えば、約0.5~8重量%、または約1~6重量%の範囲の濃度で、PVPの分子量が約28k~70kの高い保護能力を有することを実証する(Kollidon K-25、K-30、VA64)。いくつかの実施形態では、より高濃度のPVPが好ましいかもしれないが、より高分子量のPVPでは、非経口毒性が速度制限因子となる可能性がある。
【0094】
本開示は、低分子量のPVP(Kollidon K-12、及びK-17)が、強制分解条件下での加水分解及び酸化分解に対して同程度の保護効果を示すことを実証する。また一方、約2~25重量%、例えば、約4~20重量%、または約6~10重量%の範囲の濃度などのより高濃度の低分子量のPVPは、低濃度のPVPの中程度MWグレード(Kollidon K-25、K-30、及びVA64)に匹敵する保護安定性を示した。さらに、最も分子量が高いPVP(Kollidon K-90)は、加水分解に対する保護性はそれほど高くないことが分かった。これらの知見は、LLDなどのIMiDの安定溶液の調整に関する技術の予測が不可能であることを示している。
【0095】
そして、表3は、LLDと特定のKollidonグレードとを含む製剤についての、特定のグレードの報告されたMW範囲、DI水中のポリマーのラボ製溶液の実験的pH、及び、特定のグレードのKollidon(DI水中の1%のポリマー負荷)が存在する場合のLLD分解防止の有用性の順位、に関連する本開示の知見のいくつかを要約している。
【0096】
【0097】
加えて、本開示は、ヒト血液と平衡状態にある非経口製剤に適した浸透圧(例えば、約280~300mOs/kg)を有する希釈溶液の利用を提供する。例えば、約3~7、例えば、約3.5~6.5、または約4~7の安定したpH範囲を達成し維持するために、一般的な緩衝系を利用することができる。
【0098】
本開示に用いられる緩衝系としては、重炭酸塩、リン酸塩、生理食塩水、クエン酸塩、コハク酸塩、ヒスチジン、酢酸塩、または他の適切な非経口緩衝液が挙げられる。一実施形態では、クエン酸一水和物と炭酸水素ナトリウムとを含む緩衝系が好ましい。塩化ナトリウムが、必要に応じて浸透圧を調整するのに適した塩であることが分かった。
【0099】
水性溶液中の低分子量ポビドン(Kollidon K-12、Kollidon K-17)の濃度を約10重量%まで高めると、レナリドミドを酸化から実質的に保護することができることが見出され、また、加水分解安定性の大幅な改善も観察された。
【0100】
さらに、NMPの凝集特性は水性溶液の浸透圧に大きな影響を与え、PVPは浸透圧にほとんど影響を与えないことも見出された。具体的には、NMPの濃度を高くすると、PVPの濃度を高くした場合と比べて、浸透圧がはるかに高い割合で増加することが見出された。したがって、極性非プロトン性溶媒(例えば、NMP)及び可溶性ポビドンポリマー(例えば、PVP)の特定の濃度及び比は、約250~1600mOsm/kg、例えば、約300~1300mOsm/kg、または、約400~1200mOsm/kの範囲の適切な浸透圧を得るために重要である。
【0101】
また、本開示は、提供される安定溶液に含めると有用であることが示されている他の賦形剤も考慮されており、そのようなものとしては、これに限定しないが、抗酸化剤、他の溶解性増強剤、保湿剤、保存料、増量剤、または、製剤の安定性、溶解性または保存を補助するためにPVP及びLLDと組み合わせて使用される他の賦形剤が挙げられる。
【0102】
本開示のいくつかの実施形態では、医薬品有効成分(API)の安定性を維持するためには、溶液を調製するための成分の添加順序が最も重要である。例えば、いくつかの実施形態では、LLDは、PVPを含むかまたは含まない極性非プロトン性溶媒によって溶液中に入れなければならない(以降、エントリー溶液と称する)。他の実施形態では、クエン酸一水和物やポリエチレングリコールなどのNMPに溶解する添加剤を組み込んでもよい。いくつかの実施形態では、pHや浸透圧を調整するために、投与時に希釈剤を加えて最終製剤を調製する。
【0103】
他の実施形態では、本開示のIMiDの安定溶液の最終製品の濃度は、以下のように調製することができる。例えば、バルク濃縮物またはエントリー溶液(ES)は、エントリー溶液の総重量に基づいて、約0.05~30重量%、例えば、約0.1~20重量%、または約1~5重量%の範囲の濃度の免疫調節化合物(例えば、LLD)を、約60~99.9重量%、例えば、約80~99.25重量%、または約95~99重量%の範囲の濃度の極性非プロトン性溶媒(例えば、NMP)に加えることによって調製することができる。さらに、免疫調節性化合物(例えば、LLD)が極性非プロトン性溶媒(例えば、NMP)に溶解するように、極性非プロトン性溶媒と免疫調節性化合物との比は、約99:1~50:50、例えば約98:2~80:20の範囲となるようにする。例えば、バルク濃縮物は、LLDがNMP中に溶解するように、NMP:LLDの比が約99:1~50:50の範囲、より好ましくは約98:2~80:20の範囲となるように、LLDを、最大で、約1mg/mL(0.1重量%)、例えば、約5mg/mL(0.5重量%)、約6.5mg/mL(0.65重量%)、約10mg/mL(1重量%)、約13mg/mL(1.3重量%)、約15mg/mL(1.5重量%)、約19.5mg/mL(1.95重量%)、約20mg/mL(2重量%)、約25mg/mL(2.5重量%)、約30mg/mL(3重量%)、約35mg/mL(3.5重量%)、約40mg/mL(4重量%)、約45mg/mL(4.5重量%)、約50mg/mL(5重量%)、約55mg/mL(5.5重量%)、約60mg/mL(6重量%)、約65mg/mL(6.5重量%)、約70mg/mL(7重量%)、約75mg/mL(7.5重量%)、約80mg/mL(8重量%)、約85mg/mL(8.5重量%)、約90mg/mL(9重量%)、約95mg/mL(9.5重量%)、または、約100mg/mL(10重量%)の量で添加することによって調製することができる。
【0104】
さらに、必須ではないが、エントリー溶液(ES)は、該エントリー溶液の総重量に基づいて、約0~30重量%、例えば、約0.1~15重量%、または約0.2~10重量%の範囲の量の可溶性ポビドンポリマー(例えば、PVPまたはポビドン)を含むことができる。
【0105】
また、免疫調節化合物を実質的に含まない希釈溶液(DS)を調製し、それをエントリー溶液(ES)と組み合わせることにより、患者に送達するための最終的な溶液または組成物を形成することができる。必須ではないが、希釈溶液は、極性非プロトン性溶媒(例えば、NMP)を、希釈溶液の総重量に基づいて、約0~10重量%、例えば約0.1~8重量%、または約0.2~6重量%の範囲の濃度で含むことができる。
【0106】
また、希釈溶液は、可溶性ポビドンポリマー(例えば、PVPまたはポビドン)を、希釈溶液の総重量に基づいて、約0.1~10重量%、例えば、約1~9重量%、または約2~8重量%の範囲の濃度で含むことができる。
【0107】
加えて、希釈溶液は、緩衝系を、希釈溶液の総重量に基づいて、約0.02~10重量%、例えば、約0.02~4重量%、約0.4~1.6重量%、または約0.6~1.2重量%の範囲の濃度で含むことができる。また、緩衝系は、クエン酸を、希釈溶液の総重量に基づいて、約0.01~5重量%、例えば、約0.01~2重量%、約0.2~0.8重量%、または約0.3~0.6重量%の範囲の濃度で含むことができる。さらに、緩衝系は、各成分の浸透圧を300~600mOsm/kgに維持するために、phをさらに調整することなく、中和溶液の等張溶液、好ましくは、塩化ナトリウムを含むかまたは含まない重炭酸ナトリウムを、約0.01~5重量%の濃度で含むことができる。なお、各成分の浸透圧は、約250~1600mOsm/kg、例えば、約300~1300mOsm/kg、または約400~1200mOsm/kgの範囲であってもよい。例えば、希釈溶液中の緩衝系は、希釈溶液の総重量に基づいて、クエン酸を、上記の濃度で含むことができ、また、炭酸水素ナトリウムを、約0.01~5重量%、例えば約0.01~2重量%、約0.2~0.8重量%、または約0.3~0.6重量%の濃度で含むことができる。
【0108】
最後に、希釈溶液は、総濃度を最大で100重量%にする量の水を含むことができる。したがって、希釈溶液中の水の濃度は、希釈溶液の総重量に基づいて、約56~99.8重量%、例えば、約80~98重量%、約84~96重量%、または約88~94重量%の濃度であり得る。
【0109】
エントリー溶液と希釈溶液とを組み合わせて、患者に送達するための最終溶液が形成される。エントリー溶液及び希釈溶液は、最終溶液を形成するために使用されるまでは別々に維持される(例えば、別々のバイアルとして)。各成分の濃度は以下に説明するようにして決定することができる。具体的には、最終溶液は、免疫調節剤(例えば、LLD)を、最終溶液の総重量に基づいて、約0.01~1重量%、例えば、約0.02~0.9重量%、または約0.03~0.8重量%の濃度で含むことができる。
【0110】
さらに、最終溶液は、極性非プロトン性溶媒を、最終溶液の総重量に基づいて、約0.1~30重量%、例えば、約1~20重量%、または約2.5~15重量%の濃度で含むことができる。
【0111】
また、最終溶液は、可溶性ポビドンポリマーを、最終溶液の総重量に基づいて、約0.1~10重量%、例えば、約1~9重量%、または約2~8重量%の濃度で含むことができる。
【0112】
加えて、最終溶液は、緩衝系を、最終溶液の総重量に基づいて、約0.02~10重量%、例えば、約0.02~4重量%、約0.04~1.6重量%、または約0.06~1.2重量%の濃度で含むことができる。また、最終溶液は、クエン酸を、最終溶液の総重量に基づいて、約0.01~5重量%、例えば、約0.01~2重量%、約0.2~0.8重量%、または約0.3~0.6重量%の濃度で含むことができる。また、最終溶液は、炭酸水素ナトリウムを、最終溶液の総重量に基づいて、約0.01~5重量%、例えば、約0.01~2重量%、約0.2~0.8重量%、または約0.3~0.6重量%の濃度で含むことができる。
【0113】
また、最終溶液は、水を、最終溶液の総重量に基づいて、約55~99.8重量%、例えば、約65~95重量%、または約75~90重量%の濃度で含むことができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、最終溶液は、免疫調節性化合物の安定溶液、極性非プロトン性溶媒、及び可溶性ポビドンポリマーを含む組成物とすることができ、これは、可溶性ポビドンポリマー及び極性非プロトン性溶媒の溶液に免疫調節性化合物を添加するか、または極性非プロトン性溶媒に免疫調節性化合物を添加することによって調製することができる。そして、実質的に水を含まない、可溶性ポビドンポリマーが添加されたかまたは添加されていない、免疫調節化合物及び極性非プロトン性溶媒を含む、得られた安定溶液(例えば、濃縮溶液またはエントリー溶液)に、適切な生理学的pHの可溶性ポビドンポリマー及び1以上の賦形剤を含む希釈溶液を添加する。得られた最終溶液は、酸性、塩基性、または酸化条件に曝されたときに、加水分解及び/または酸化強制分解に対して耐性を有する。
【0115】
患者に送達するための組成物または最終溶液を形成または調製する特定の方法にかかわらず、患者への投与は、局所投与、経口投与、経皮投与、または非経口投与であり得る。さらに、非経口投与は、筋肉内投与、静脈内投与、皮下投与、デポー投与、インプラント投与、動脈内投与、腹腔内投与、または注入投与であり得る。加えて、非経口投与が皮下投与である場合、皮下投与(皮下注入)は、外部薬剤供給部からの連続した薬剤供給による持続的、拍動的、または断続的なものである。また、非経口投与が、持続的、拍動的、または断続的のいずれであっても、外部薬剤供給部からの薬剤供給は、製剤を変更または補充する必要がある場合、または治療が完了したと医療専門家によって判断された場合を除き、非経口投与中は中断されないことを理解されたい。さらに、外部薬剤供給部は、医療施設内で皮下投与の対象となる患者に固定された注入ラインとカテーテルアセンブリを備えた外来ポンプを含み得る。他の実施形態では、外部薬剤供給部は、患者にパッチポンプを接着するために接着剤または他の手段を介して患者に一時的に貼り付けることができる装置に最終溶液を充填するウェアラブルパッチポンプを含み得る。
【0116】
いくつかの実施形態では、上述したエントリー溶液(ES)、希釈溶液(DS)及び最終製剤溶液の製剤が表4~6に示されており、エントリー溶液は、PVP及び/またはクエン酸一水和物の有無にかかわらず、LLD及びNMPを含むことを示している。例えば、いくつかの実施形態では、ES#1は、LLD、PVP、NMP、及びクエン酸一水和物を含む。他の実施形態では、ES#2は、LLD、PVP、及びNMPを含む。別の実施形態には、ES#3は、LLD及びNMPを含む。これらの製剤は、LLD最終剤形の最も安定な希釈スキーマに対応するために、ESまたはDSのいずれかを操作することを可能にする。
【0117】
さらに、ポビドンやPharmasolve(n-メチル-2-ピロリドン)などの、溶液製品に使用するのに適切であることが後に証明された賦形剤でのLLD溶解度を求めた。これらの材料は、同類溶解性に適合している。アセトニトリルも極性非プロトン性溶媒として溶解度を評価した。有機揮発性溶媒の評価は、非経口用製剤の製剤化アプローチに含めるためではなく、APIを可溶化するために必要な潜在的な溶解度パラメータを確認するために行った。
【0118】
この試験では、溶解度の問題と酸化経路の安定性への潜在的な影響を解決するために、BASFのKollidon技術ガイドに掲載されている2つの目的でのポビドンの使用を評価した。レナリドミド、ポビドン、及びPharmasolveの構造解析から、APIと賦形剤との間の独特の関係があることが分かった。例えば、下記の構造式I、構造式II、及び構造式IIIに示すように、レナリドミドの分子の中心部の構造は、ポビドンやPharmasolveの構造と類似している。
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
LLDはNMPに約30重量%(約300mg/mL)の量で溶解し、ポビドン水溶液は水溶性を約2~3倍向上させる。ポビドン水溶液は各分子内にピロリドン基本構造を有するため、医薬品有効成分であるレナリドミドと会合することが可能である。ポビドンは、溶解度を、約0.2mg/mLから約0.8mg/mLまで向上させる。さらに、ポビドンのポリマー鎖は、特異的な水素結合親和性を有しており、溶解度を向上させ、最も酸化されやすいレナリドミドの一級アミンを保護する。
【0123】
いくつかの実施形態では、ES#3の場合、まず、LLDを添加し、その後、溶解が発生するまで、NMPを添加する。約20mLの量の場合、溶解は、通常、約15分以内に完了する。ただし、より大規模な生産では、より長い溶解時間が必要となることを理解されたい。また、理論に拘束されることを望まないが、NMP中のLLDの飽和点は約30%であり、ES#3の目標値である1.3重量%は飽和点を大きく下回っていることが観測されている。
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
いくつかの実施形態では、特定のDS製剤を調製するための成分の添加順序は定義されていない。また、NaClなどの特定の成分の量は、例えばVP浸透圧計で分析した後に、浸透圧を調整してもよいことを理解されたい。いくつかの実施形態では、特定の最終医薬製品では、浸透圧が約300~600mOs/kgであることが望ましい。
【0131】
いくつかの実施形態では、本開示の溶液は、極性非プロトン性溶媒またはポリマー、これに限定しないが、例えば、n-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ポリビニルカプロラクタム、ポビドン、及びそれらのコポリマーなどを含むことができる。なお、機能性を持たない他のポリマーは、極性非プロトン性を含む同様の構造を含むか、または、極性プロトン基(-OH)を示さずに極性非プロトン性溶媒に可溶であってもよい。また、特定の実施形態では、Kollidon VA64(PVPと酢酸ビニルとのコポリマー)を含むことができる。
【0132】
いくつかの実施形態では、安定LLD溶液及びそれを含む製剤は、標準治療LLD治療の1日用量の10~100%の用量、例えば、標準治療LLD治療の1日用量の10~90%、10~80%、10~70%、10~60%、10~50%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70~80%、80~90%、90~100%、または100%の用量を含む。いくつかの実施形態では、治療標準は、例えば1日1回500mcgのLLDの腹腔内注射である。いくつかの実施形態では、レブラミド(登録商標)として、1日あたり約2.5mg、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、または約25mgのLLDを1日1回経口投与することが標準治療としてFDAに承認されている。
【0133】
様々な実施形態では、本開示のLLDの安定溶液及びそれを含む製剤は、多発性骨髄腫、低リスクまたは中等度1リスクの骨髄異形成症候群に起因する輸血依存性貧血、マントル細胞リンパ腫、固形腫瘍癌、及び血液癌を治療するために使用され得る。LLDの安定溶液は、非経口送達のために、薬学的に許容される担体または担体の組み合わせと混合され得る。
【0134】
本開示のLLDの安定溶液のいくつかの製剤は、LLDの安定溶液と、薬学的に許容される担体とを含む。薬学的に許容される担体は、LLDの安定溶液の他の成分(存在する場合)との適合性を有し、かつ、対象(患者)の健康に無害なものであるべきである。製剤のための例示的な担体としては、これに限定しないが、水、カルボキシメチルセルロース(CMC)、Tween80、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノール、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、デキストロース、及び、ポリエチレングリコールまたはそのコポリマー、例えば、PEG200、PEG300、PEG400、PEG600、PEG800、PEG1450などが挙げられる。
【0135】
本開示のLLDの安定溶液、及びそれを含む製剤では、LLDは、約0.01~300mg/mL(約0.001~30重量%)、約0.05~100mg/mL(約0.005~10重量%)、約0.05~50mg/mL(約0.005~5重量%)、約0.1~40mg/mL(約0.01~4重量%)、約0.1~25mg/mL(約0.01~2.5重量%)、または、約0.2~10mg/mL(約0.02~1重量%)の濃度で存在する。他の実施形態では、LLDの安定溶液製剤は、LLDを約0.1~20.0mg/mL(約0.01~2重量%)の濃度で含む。例えば、いくつかの実施形態では、LLDの安定製剤は、LLDを、投与のための最終組成物において、約0.1mg/mL、約0.25mg/mL、約0.5mg/mL、約0.75mg/mL、約1.0mg/mL、約2.0mg/mL、約2.5mg/mL、約3.0mg/mL、約4.0mg/mL、約6.0mg/mL、約8.0mg/mL、約10.0mg/mL、約12.0mg/mL、約14.0mg/mL、約15.0mg/mL、または約20mg/mL(約0.01重量%、約0.025重量%、約0.05重量%、約0.075重量%、約0.1重量%、約0.2重量%、約0.25重量%、約0.3重量%、約0.4重量%、約0.6重量%、約0.8重量%、約1重量%、約1.2重量%、約1.4重量%、約1.5重量%、または約2重量%)の濃度で含む。
【0136】
本開示によれば、本発明者らは、LLD及び追加成分を含む特定の溶液が、LLDの溶解度を高め、LLDの安定性に優れた溶液を提供することを予期せず見出した。例えば、本開示の特定のLLD溶液では、生理学的pHで極性非プロトン性溶媒及びポビドンの両方を組み込むことによって、LLDの加水分解及び酸化的分解の両方が緩和される。
【0137】
いくつかの実施形態では、本開示の安定なLLD溶液及びそれを含む製剤は、水溶性ポリマーなどのポリマーをさらに含む。いくつかの実施形態では、安定なLLD溶液及びそれを含む製剤は、ポリビドンまたはポビドンと称されるポリビニルピロリドン(PVP)を含む。PVPは、モノマーであるN-ビニルピロリドンから作られる水溶性ポリマーである。いくつかの実施形態では、PVPは、本開示のエントリー溶液、希釈溶液、及び/または最終希釈LLD製剤に含まれる。他の実施形態では、PVPは、本開示のエントリー溶液及び希釈溶液の両方に含まれる。
【0138】
いくつかの実施形態では、本開示の安定なLLD溶液及びそれを含む製剤は、約2~70kの分子量を有するPVPをさらに含む(kは水中でのポリマーの相対粘度に基づいて計算される平均分子量(K値)を表す)。
【0139】
さらなる実施形態では、本開示の安定なLLD溶液及びそれを含む製剤は、所定の期間にわたって患者における活性成分の投与量の変動を低減することを可能にする。いくつかの実施形態では、所定の期間は、最大で24時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、7日間、8~13日間、2週間、15日間、21日間、28日間で、またはそれ以上のサイクルである。
【0140】
いくつかの実施形態では、LLDの安定溶液及びそれを含む製剤は、任意選択で1以上の担体及び賦形剤を含む。任意選択の担体または賦形剤は、2つまたは複数の機能を有してもよく、例えば、特定の賦形剤は、可溶化剤または安定化剤として機能してもよい。任意選択の担体または賦形剤としては、これに限定しないが、溶媒、可溶化剤、希釈剤、懸濁剤、分散剤、ゲル化剤、ポリマー、生分解性ポリマー、浸透促進剤、可塑剤、pH調整剤、緩衝剤、pH安定剤、乳化剤、補助乳化剤、界面活性剤、懸濁剤、安定剤、保存剤、キレート剤、錯化剤、皮膚軟化剤、保湿剤、粘質剤、皮膚刺激低減剤、抗酸化剤、酸化剤、粘着付与剤、充填剤、及び揮発性化学物質が挙げられる。
【0141】
いくつかの実施形態では、LLDの安定溶液及びそれを含む製剤は、溶媒を含む。溶媒としては、例えば、C1~C20アルコール(これに限定しないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、プロパノール、2-メチル-2-プロパノール(別名:t-ブチルアルコール)、ペンタノール、2、4-ジメチル-2-ペンタノール、3、5-ジメチル-3-ヘキサノール、及び、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19またはC20炭素原子を有するアルコール)、多価アルコール、グリコール(これに限定しないが、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン)、グリコールの誘導体、ピロリドン(これに限定しないが、例えば、Nメチル2-ピロリドン、2-ピロリドン)、スルホキシド(これに限定しないが、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO))、ジメチルイソソルビド、鉱油、植物油、水、極性溶媒、半極性溶媒、非極性溶媒、エステル、ケトン、アルコール、アルカン、例えば、酢酸エチル、アセトン、ジクロロメタン、クロロホルム、ヘプタン、ヘキサン、シロキサン、エタノール、イソプロパノール、トルエン、及び、酸、例えば、酢酸、乳酸、レブリン酸、塩基などが挙げられる。
【0142】
いくつかの実施形態では、LLDの安定溶液及びそれを含む製剤は、界面活性剤、可溶化剤、乳化剤、または分散剤を含み、例えば、陰イオン性、陽イオン性、非イオン性、及び両性界面活性剤を含む。そのようなものとしては、例えば、プロピレングリコール、モノカプリレートI型、プロピレングリコールモノカプリレートII型、プロピレングリコールジカプリレート、中鎖トリグリセリド、プロピレングリコールモノラウレートII型、リノレオイルポリオキシル-6グリセリド、オレオイル-ポリオキシ1-6-グリセリド、ラウロイルポリオキシル-6-ギルグリセリド、ポリグリセリン1-3-ジオレイン酸、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノラウレートI型、ポリグリセリル-3-ジオレイン酸、カプリロアポロイルポリオキシル-8グリセリド、シクロデキストリン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DEGEE)、ポリソルベート/ポリエトキシ化ソルビタン型またはtween(登録商標)型の界面活性剤、ソルビタンエステルまたはSpan(登録商標)型の溶剤型界面活性剤、グリコール、ヘキシルエングリコール、Brij(登録商標)型の界面活性剤、及びラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。DEGEE(別名:ジ(エチレングリコール)エチルエーテルまたは2-(2-エトキシエトキシ)エタノール)は、例えば、Transcutol(登録商標)(TC)、Transcutol(登録商標)P、Transcutol(登録商標)CG、Transcutol(登録商標)HP(フランス国リヨン州、ガッテフォセ社)、及び、Carbitol(TM)(米国ミシガン州、ダウケミカルズ社)などの様々な商品名で市販されている。Span(登録商標)またはTween(登録商標)界面活性剤は、これに限定しないが、Span20(登録商標)、Span(登録商標)40、Span(登録商標)60、Span(登録商標)80、Span(登録商標)83、Span(登録商標)85、Span(登録商標)120、Tween20(登録商標)、Tween21(登録商標)、Tween40(登録商標)、Tween60(登録商標)、Tween61(登録商標)、Tween65(登録商標)、及びTween80(登録商標)から選択することができる。Brij(登録商標)は、様々な供給元(例えば、シグマアルドリッチ社(Sigma-Aldrich))から市販されている非イオン界面活性剤のグループであり、Brij(登録商標)93(平均Mn:約357)、Brij(登録商標)S100(平均Mn:約4、670)、Brij(登録商標)58(平均Mn:約1124)、Brij(登録商標)O10(平均Mn:約709、別名:Brij97、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル)、Brij(登録商標)C10(平均Mn:約683)、Brij(登録商標)L4(平均Mn:約362、別名:ポリエチレングリコールドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル)、BRIJ(登録商標)O20(平均Mn:約1、150、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル)、Brij(登録商標)S2MBAL(別名:Brij(登録商標)S2)、ポリエチレングリコールオクタデシルエーテル、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル(ジエチレングリコールオクタデシルエーテル)、Brij(登録商標)S10(平均Mn:約711)、Brij(登録商標)S20、及び、Brij(登録商標)35(別名:Brij(登録商標)L23(ポリオキシエチレンラウリルエーテル))から選択することができる。界面活性機能を発揮するために製剤に含まれる界面活性剤の適切な量は、0.01~95重量%であり得る。いくつかの実施形態では、製剤に含まれる界面活性剤の適切な量は、5重量%未満、例えば、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、または0.5重量%未満であり得る。溶媒/可溶化機能を発揮するために製剤に含まれる界面活性剤の適切な量は、約5~50重量%であり得る。当業者には明らかなように、適切かつ十分な量を達成するために、量を増減させてもよい。
【0143】
グリコールは、アルコール族に属する小さな有機化合物のクラス(例えば、MWは通常150ダルトン未満)またはそのポリマーであり、2つのヒドロキシル(-OH)基が異なる炭素原子に結合している。グリコール類の最も単純なメンバーはエチレングリコール(別名:1、2-エタンジオール)であり、他のメンバーとしては、これに限定しないが、プロピレングリコール(別名:1、2-プロパンジオール)、ブチレングリコール(1、3-ブタンジオール)、1、4-ブタンジオール、ペンチレングリコール(1、2-ペンタンジオール)、ヘキシレングリコール(2、4-ペンタンジオール)、2-エチル-1、3-ヘキサンジオール、及び2-メチル-2-プロピル-1、3-プロパンジオールが挙げられる。同様に、上記のグリコールジオール、特にエチレングリコールの高分子量ポリマーを使用することができ、そのようなものとしては、これに限定しないが、ポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。PEGは、様々な分子量、一般的、約200g/mol~1000万g/mol、例えば、PEG200、300、400、600、800、1000、1500、3350、4000、6000、8000、10000、20000、35000で入手可能である。異なる分子量のPEGは、同様の界面活性剤特性を有するが、より高分子量のポリマーが好ましい。
【0144】
別の任意選択の賦形剤としては、これに限定しないが、例えば、緩衝液(例えば、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液)、酸及び酸誘導体(例えば、カルボン酸、有機酸、無機酸、スルホン酸、ハロゲン化カルボン酸、ビニル系カルボン酸、塩酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、アスコルビン酸、リン酸)、塩基及び塩基誘導体、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、トリメチルアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、及びトロメタミンから選択される1以上のpH調整剤及び緩衝剤が挙げられる。pH調整剤としては、弱有機酸や弱有機塩基を用いることが好ましい。pH調節/緩衝剤または安定剤は、経皮製剤の適切なpHを維持するのに役立つ。
【0145】
さらに別の任意選択の賦形剤としては、これに限定しないが、例えば、シクロデキストリンまたはその誘導体、アミノ酸、乳化剤、補助乳化剤、界面活性剤、懸濁剤、保存剤、抗酸化剤、キレート剤、皮膚軟化剤、湿潤剤、粘滑剤、皮膚刺激低減剤、粘着付与剤、充填剤、架橋剤、樹脂、結晶化阻害剤、及び粘土が挙げられる。
【0146】
そのような任意選択の乳化剤、補助乳化剤、界面活性剤、及び懸濁剤としては、これに限定しないが、モノグリセリド、ジグリセリド、ステアリン酸ポリオキシル、トリセテアレス-4リン酸とパルミトステアリン酸エチレングリコールとパルミトステアリン酸ジエチレングリコールとの混合物、ポリグリセリル-3ジイソステアリン酸エステル、ステアリン酸PEG-6とパルミトステアリン酸エチレングリコールとステアリン酸PEG-32との混合物、オレオイルポリオキシル-6グリセリド、ラウロイルポリオキシル-6グリセリド、カプリロカプロイルポリオキシ-8グリセリド、プロピレングリコールモノカプリレートI型、プロピレングリコールモノラウレートII型、プロピレングリコールモノラウレートI型、プロピレングリコールモノカプリレートII型、ポリグリセリル-3ジオレート、ステアリン酸PEG-6とステアリン酸PEG-32との混合物、レシチン、セチルアルコール、コレステロール、ベントナイト、ビーガム、水酸化マグネシウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸トリエタノールアミン、ラウリン酸カリウム、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、モノステアリン酸グリセリル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー(ポロキサマー)、ソルビタンモノラウレート、ラノリンアルコール及びエトキシル化ラノリンアルコール、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖ジステアレート、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、ヘクトライト、ケイ酸アルミニウム、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80)、及び、Span(登録商標)界面活性剤製品(例えば、Span(登録商標)80、Span(登録商標)20)が挙げられる。
【0147】
追加の保存剤及び安定剤は、これに限定しないが、メタ重亜硫酸ナトリウム、クエン酸、アスコルビン酸、ビタミンE、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、α-トコフェロール、パルミチン酸アコルビル、プロピオン酸、重硫酸ナトリウム、没食子酸プロピル、モノチオグリセロール、アスコルビン酸ナトリウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、フェニルエチルアルコール、クロロキシレノール、クレゾール、ヘキセチジン、フェノキシエタノール、クロロブタノール、アスコルビン酸、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、フェノール、安息香酸カリウム、デヒドロ酢酸、塩化セチルピリジニウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、及び変色剤から選択され得る。
【0148】
キレート剤は、これに限定しないが、エデト酸ナトリウム、エデト酸、酒石酸、フマル酸、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、及びエデト酸二カリウムから選択され得る。
【0149】
充填剤は、これに限定しないが、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、デンプン、糖、二酸化チタン、タルク、シェラック、コロイド状二酸化ケイ素、カオリン、酸化マグネシウム、及び粘土から選択され得る。
【0150】
分解の分析
【0151】
強制的な酸化分解や加水分解などの分解からの保護を提供するために、LLDの製剤を分析した。API(原薬)の安定性を理解するために必要な試薬や溶媒の存在下で、LLD製剤などの様々な製剤の溶液中での評価を行い、主要な基準ピークの力価及び純度を求めた。溶液中のAPIを分析するための主要な分析法は、HPLCによってAPIの様々な主要ピーク及び分解ピークを特定し定量する安定性指示法である。例えば、LLDを含む製剤は、関心のあるLLDの主要ピークの分析と、既知及び未知の不純物とを評価することができる。LLDの場合、加水分解では2つ以上の目的ピークが存在し、酸化経路では2つ以上の目的ピークが存在する。
【0152】
分析評価の過程で、溶液中のAPIを強制分解し、特定されたクロマトグラフィのピーク、主要ピーク、分解/不純物がどのように形成されたかを評価する。分析溶液及び標準物質の強制分解は、様々な加水分解経路及び酸化経路による有意な分解を示す。
図1~4に示すように、LLD溶液のHPLCクロマトグラムは、熱ストレス(40°C)下で酸性、塩基性、または酸化条件に曝されたときに、様々なパターンの主要ピーク及び分解ピークを示す。
【0153】
具体的には、LLDについては、常温で保持した標準溶液中では、明らかな分解事象は検出されなかった(
図1)。また、LLDは酸性条件下では比較的安定であり、加水分解や酸化のピークはほとんど検出されなかった(
図2)。しかしながら、水酸化ナトリウム加水分解条件下での強制分解試験では、LLDは2つの加水分解ピークに分解されやすいことが示された(
図3)。また、過酸化物酸化条件での強制分解試験では、LLDは有意な酸化を受けやすいことが示された(
図4)。
【0154】
また、LLDの加水分解及び酸化分解経路をさらに解明するために、LLDの存在下で極性プロトン性溶媒(イソプロピルアルコール、IPA)及び極性非プロトン性溶媒(アセトニトリル、ACN)の両方を導入することによって、別のLLD製剤も分析した。したがって、本開示は、機能性溶媒(-OH)または不活性もしくは非機能性の溶媒(ACN)の特定の特性を調べることができるLLDの潜在的な追加的な分解経路の分析を提供する。
図5~8に示すように、本開示は、極性プロトン性溶媒であるIPAまたは極性非プロトン性溶媒であるACNの存在下での、LLDの過酸化物酸化及び塩基性加水分解による強制分解の評価を提供する。
【0155】
いくつかの実施形態では、IPAの存在下では、酸化経路による強制分解は、一部の酸化(RT20.324)に対しては保護されるが、有意な加水分解が発生することが分かった(
図5、RT11.498及びRT13.560)。また、ACNの存在下では、酸化経路を介したLLDの強制分解は、一部の加水分解に対しては保護される(
図6、RT11.490及びRT13.561)が、有意な酸化が発生することが分かった(
図6、RT20.340、RT25.173及びRT25.528)。
【0156】
他の実施形態では、IPAの存在下では、塩基性加水分解経路を介したLLDの強制分解は、いかなる加水分解に対しても保護されないことが分かった(
図7、RT11.496及びRT13.539)。LLDの損失は100%であり(
図7、RT~15.2)、酸化は観察されなかった(
図7、RT~20.3)。さらに、特定の実施形態は、ACNの存在下では、塩基性加水分解経路を介した強制分解は、いかなる加水分解に対しても保護しされないことが分かった(
図8、RT11.464及びRT13.542)。LLDの損失は100%であり(
図8、RT~15.2)、酸化は観察されなかった(
図8、RT~20.3)。
【0157】
したがって、本開示は、酸化ストレス条件下において、LLDが、極性プロトン性溶媒による酸化及び加水分解から保護されることを提供する。ただし、特定の実施形態では、極端な塩基性条件下では、IPAもACNも加水分解を防ぐことができなかった。いかなる科学的理論にも拘束されることなく、極性プロトン性溶媒を使用した場合、いかなる(-OH)アルコール基も加水分解による安定性に大きな問題をもたらすと考えられており、極性非プロトン性溶媒を使用した場合、いかなる極性非プロトン性溶媒も酸化による安定性に懸念をもたらすと考えられている。医薬用途、より具体的には非経口用途でよく知られ、よく理解されている抗酸化剤と同様に、PVPなどの極性非プロトン性で機能し、医薬製品における非経口用途に適している極性非プロトン性溶媒または賦形剤の使用は、加水分解を防止するための実行可能な候補と考えられ、酸化から保護するための抗酸化剤が評価される。
【0158】
他の実施形態では、本開示は、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの極性非プロトン性溶媒の存在下でのPVPの使用により、LLDの分解を有意に保護することを提供する。分解からのこのような保護を提供する他の極性アプロトン性溶媒としては、DMSO、DMF、DMAc、及びACNが挙げられる。いくつかの実施形態では、FDAによって承認された医薬品の規制上の優先順位により、本開示の溶液はNMPを含む。約99:1~50:50、好ましくは約98:2~80:20の比率でのNMPとPVP(K-12)との組み合わせ、及び、水の非存在下でのNMP、K-12、及びLLDの組み合わせは、長期保存及び加速条件に対して優れた安定性を示す。水存在下での、極性非プロトン性溶媒単独では、APIを加水分解から保護することができないが、水存在下での、極性非プロトン性溶媒とPVPとの組み合わせは、加水分解の90%超及び酸化のほぼ100%を緩和する。
【0159】
いくつかの実施形態では、濃縮物としてのNMP:ポビドン:LLDの組み合わせは、FDA IIGにしたがって許容される範囲外のレベルのNMPまたはポビドンに患者に曝露する可能性があるため、単独製剤としては適していない。しかしながら、この組み合わせにより、薬剤製品の室温条件下での長期保存に対する安定性が大幅に向上する。本開示の特定の実施形態によれば、希釈溶液は患者への投与時に添加され、投与期間以上の安定性を維持する。他の実施形態によれば、特定の組み合わせは、希釈剤を添加するステップなしでの長期保存の可能性を示す。
【0160】
さらに他の実施形態では、pH4.5未満ではLLDなどのAPIの総関連不純物は無視できる程度であるので、酸性条件はAPIの安定性が向上する。ただし、pH4.5未満は、注射や皮下注射には適さない。したがって、NMP:ポビドンの濃縮物の特定の実施形態を特定の添加剤の組み合わせで希釈することで、約5.0~6.5の適切なpHを有する等張溶液を調製することができる。
【0161】
他の実施形態では、LLDの安定溶液などのIMiDsの安定溶液は、塩酸、リン酸、酢酸、アスコルビン酸、アジピン酸、安息香酸、ホウ酸、EDTA、エデト酸、ギ酸、フマル酸、硝酸、ソルビン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、没食子酸、アミノ酸、及びクエン酸などの様々な酸のいずれかを含み得る。いくつかの実施形態では、NMPに溶解する酸は、本開示の溶液に含めることが可能であり、薬剤溶液に適した環境を提供する能力を有する。いくつかの実施形態では、クエン酸一水和物が本開示の組成物に含まれ、NMP及びPVP濃縮物に特に可溶性であることが見出されている。
【0162】
他の実施形態では、本開示の溶液は、例えば、クエン酸塩、塩化物、水酸化物、重炭酸塩、炭酸塩、スルホン酸塩のナトリウム塩またはカリウム塩などの中和剤を含んでもよく、トリスまたはトリエタノールアミンなどの弱有機塩基が有用であることが見出されている。いくつかの実施形態では、炭酸水素ナトリウムは、全体として約5.0~6.5、より好ましくは約pH5.5~6.0の最終pH範囲で、等張濃度の塩化ナトリウムと組み合わせることにより、希釈溶液中で有用性を提供することが見出された。
【0163】
本開示のLLDの安定溶液の特定の実施形態は、薬学的に許容されるポリマーであるポビドン(PVP)を含む。理論に拘束されることを望まないが、PVPは、構造によって極性非プロトン性で機能する賦形剤を提供すると考えられており、ポリマーは、特定の配置で第三級アミンとケトンを有する5員環を含む。これにより、このタイプのポリマーは、アルコール(-OH)基の賦形剤の使用を避けることができるが、本質的に極性非プロトン性である構造を提供する。
【0164】
したがって、本開示の安定なLLD溶液のいくつかの実施形態は、約2,000~3,000の分子量を有するPVPK-12、及び/または、約44,000~54,000の分子量を有するPVPK-30を含む。また、理論に拘束されることを望まないが、PVPの別の分子量の範囲も、溶解度、粘度、及び他の態様の差異をもたらすと考えられている。下記の構造式は、BASF社から提供される可溶性グレードのPVP(グレードK-12からK-90を含む)の基本的な化学構造を示す。
【0165】
【0166】
図9~16に示すように、本開示は、PVP、PEG、及びPGを含む様々な製剤の存在下での、LLDの過酸化物酸化及び塩基性加水による強制分解の評価を提供する。
【0167】
1%PEG400を含むLLDの溶液を過酸化物酸化による強制分解に曝したところ、加水分解(
図9、RT11.470及びRT13.529)及び酸化(
図9、RT20.332)の両方が見られた。1%PGを含むLLDの溶液を過酸化物酸化による強制分解に曝したところ、加水分解(
図10、RT11.482及びRT13.550)及び酸化(
図10、RT20.343)の両方が見られた。
【0168】
1%PVPK-12を含むLLD溶液を、過酸化物酸化による強制分解に曝したところ、加水分解はほとんど起こらず(
図11、RT11.423及びRT13.539)、酸化関連物質は存在しなかった。
図11のLLDピークの後に観察されたピークのすべてではないにしてもほとんどは、Kollidon K-12に関連するプラセボであり、LLDには関連しない。1%PVPK-30を含むLLD溶液を、過酸化物酸化による強制分解に曝したところ、加水分解はほとんど観察されず(
図12、RT13.548)、酸化も見られなかった。
図12のRT5.253におけるピークは、Kollidon 30に関連するプラセボである。
【0169】
1%PEG400を含むLLDの溶液を、過酸化物酸化による強制分解に曝したところ、有意な加水分解は見られたが(
図13、RT11.443及びRT13.516)、酸化は見られなかった(
図13、RT~20.3)。しかし、LLDの100%は分解された(
図13、RT~15.2)。1%PGを含むLLDの溶液を、過酸化物酸化による強制分解に曝したところ、有意な加水分解は見られたが(
図14、RT11.459及びRT13.536)、酸化は見られなかった(
図14、RT~20.3)。ただし、LLDの100%は分解された(
図14、RT~15.2)。
【0170】
1%PVPK-12を含むLLDの溶液を、過酸化物酸化による強制分解に曝したところ、有意な加水分解が起こったが(
図15、RT11.404及びRT13.524)、酸化ピークは見られなかった。LLDの100%は分解された(
図15、RT~15.2)。上述した
図11の場合と同様に、LLDのRT~15.2後のピークは、Kollidon K-12に関連するプラセボのピークである。
【0171】
1%PVPK-30を含むLLD溶液液を、過酸化物酸化による強制分解に曝したところ、有意な加水分解が認められたが(
図16、RT11.410及びRT13.529)、酸化関連物質は認められなかった。しかし、RT 15.195では、かなりの量のLLDが存在する。
【0172】
強制塩基性加水分解を用いた以前の試験と、同様の条件下で提示されたHPLCクロマトグラフィ分析は、LLDの100%分解を示した。本明細書で実証されたように、Kollidon K-30(ポビドンK-30)を含有することにより、これまで報告されていないLLDの溶液の安定性及び分解に対する耐性が付与される。したがって、本開示は、ポビドンK-30を含む安定なLLDの溶液を含む。
【0173】
これ以上詳しく説明しなくても、当業者であれば、上記の説明に基づいて、本発明を最大限に利用することができると考えられる。したがって、以下の具体的な実施形態は、単なる例示であり、本開示の残りの部分を何ら限定するものではないと解釈されるべきである。本明細書で引用されるすべての刊行物は、本明細書で言及される目的または主題のために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0174】
本開示の発明をより完全に理解するために、以下の実施例を示す。本出願に記載された実施例は、本明細書に提供された方法及び組成物を説明するために提供されたものであり、いかなる意味においても、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0175】
実施例
【0176】
実施例1:表10にしたがって、LLDの製剤を調製した。製剤は、Kollidon K-12(PVP)をNMPに添加して溶解させた後、LLDのAPI(原薬)をNMP:PVP溶液に特定の濃度で加えて、濃縮組成物として調製した。得られた濃縮物は、NMP:PVPにおけるLLDの真溶液である。希釈剤は、pHを調整せずに塩化ナトリウムを脱イオン水に溶解させることによって、別々に調製した。希釈は、希釈剤に濃縮物を1:4の比率で加えることによって行った。次に、最終的な薬剤溶液としての希釈製剤を、塩基性加水分解を持続させるために一定量の水酸化ナトリウムに曝し、酸化を持続させるために一定量の過酸化水素に曝すことによって、強制分解試験を行った。得られた溶液を酸で中和して中性pHにするか、または、酵素活性によって過酸化物を不活化した。得られた溶液をDAD検出によるHPLC勾配法で分析した。これらの分析結果の要約を表11に示し、本開示の特定の製剤がLLD分解の実質的な保護を示すことを実証した。この溶液を室温で保持し、T0(希釈後4時間以内)、2日目、3日目、及び7日目に7日間にわたって分析した。いずれの溶液も、7日間を通して酸化劣化が観察されず、このことから、極性非プロトン性溶媒と極性非プロトン性ポリマーであるPVPとの組み合わせが、生理食塩水の存在下でLLDの酸化を緩和することが分かった。また、これらの製剤のそれぞれについて、LLD不純物1及びLLD不純物2として加水分解が起こることが観察された。PVPの濃度を4.0%から0.4%に低下させると、分解が増加するという明確な傾向が見られた。1001~1004までの各製剤について、T0から7日目の環境RTまで時間が経過するにしたがって、分解が増加するという明確な傾向が見られた。しかしながら、2~4%超のPVPの濃度は、0.4~0.8%のPVPで観察される濃度と比較して、有意差が認められた。溶液安定性の7日間で、0.4%PVP溶液で起こる加水分解による全RCの分解は、4.0%PVP溶液と比較して、15倍であった。
【0177】
【0178】
【0179】
実施例2:LLD製剤は、pH調整のために緩衝剤成分である炭酸水素ナトリウム及びクエン酸一水和物を加えたこと以外は上記の実施例1と同様の方法で、表12にしたがって調製した。その後、製剤を強制分解に供し、上記の実施例1と同様の方法で、HPLCによって分析した。この分析の結果は表13に示されており、本開示の特定の製剤がLLD分解を実質的に防ぐことを実証している。希釈溶液を室温で保持し、T0(希釈後4時間以内)、2日目、3日目、4日目及び7日目に7日間にわたって分析した。いずれの溶液も、7日間を通して酸化劣化が観察されず、このことから、極性非プロトン性溶媒と極性非プロトン性ポリマーであるPVPとの組み合わせが、緩衝系の存在下でLLDの酸化を緩和することが分かった。また、これらの製剤のそれぞれについて、LLD不純物1及びLLD不純物2として加水分解が起こることが観察された。以下の製剤は、エントリー液にクエン酸一水和物を、希釈剤に炭酸水素ナトリウムを添加して評価したものである。これらは一定濃度であったため、pH調整は行わず、結果のpHを報告した。上記の製剤1001~1004は、1001-I~1004-IVと比較して、NMP:PVP及びクエン酸一水和物などの弱有機酸の存在下で加水分解の著しい減少が観察されるという、明らかな差異があった。1001-I~1004-IVの各製剤について、T0から7日間の環境RTまで時間が経過するにしたがって、分解が増加するという明確な傾向が見られた。しかしながら、1003-III及び1004-IVでは、見かけのpHが約4.5と低pHであるという有意な差異が観察された。したがって、LLDの溶液は、7日間の周囲温度での総RCが約0.15%の低いpHであり、約5.0の高pHのものと比較してより安定的であることが示された。なお、より適切な生理学的pHは、約5.0~7.0を目標とすることが望ましい。また、クエン酸一水和物だけでは加水分解及び酸化分解の両方を抑制するには不十分であることに留意されたい。
【0180】
【0181】
【0182】
実施例3:LLDの製剤は、実施例2の製剤1001-I及び1002-IIと比較するために、低濃度のPVPのためのエントリー溶液に高濃度のクエン酸一水和物を添加し、希釈剤中の炭酸水素ナトリウム濃度を調整して約5.7の目標pHを達成すること以外は、実施例1と同様の方法で、表14にしたがって調製した。その後、製剤を強制分解に供し、上記の実施例1と同様の方法で、HPLCによって分析した。この分析の結果は表13に示されており、本開示の特定の製剤がLLD分解を実質的に防ぐことを実証している。希釈溶液を室温で保持し、T0(希釈後4時間以内)、2日目、及び7日目に7日間にわたって分析した。いずれの溶液も、7日間を通して酸化劣化が観察されず、このことから、極性非プロトン性溶媒と極性非プロトン性ポリマーであるPVPとの組み合わせが、緩衝系の存在下でLLDの酸化を緩和することが分かった。また、これらの製剤のそれぞれについて、LLD不純物1及びLLD不純物2として加水分解が起こることが観察された。製剤1001-Ib及び1002-IIbは、1001-I及び1002-IIと比較して、NMP:PVP及びクエン酸一水和物などの弱有機酸の存在下で加水分解の有意な減少(約50%の減少)が観察されるという、明らかな差異があった。
【0183】
【0184】
【0185】
実施例4:LLDの製剤は、pH調整のため緩衝成分の炭酸水素ナトリウムとクエン酸一水和物を加えたこと以外は、実施例1と同様の方法で、表16にしたがって調製した。その後、製剤を強制分解に供し、上記の実施例1と同様の方法で、HPLCによって分析した。この分析の結果は表17に示されており、本開示の特定の製剤がLLD分解を実質的に防ぐことを実証している。希釈溶液を室温で保持し、T0(希釈後4時間以内)、2日目、及び7日目に7日間にわたって分析した。いずれの溶液も、7日間を通して酸化劣化が観察されず、このことから、極性非プロトン性溶媒と極性非プロトン性ポリマーであるPVPとの組み合わせが、緩衝系の存在下でLLDの酸化を緩和することが分かった。これらの製剤のそれぞれについて、LLD不純物1及びLLD不純物2として加水分解が起こることが観察された。以下の製剤は、エントリー液にクエン酸一水和物を、希釈剤に炭酸水素ナトリウムを添加して評価したものである。これらは一定濃度であったため、pH調整は行わず、結果のpHを報告した。ただし、炭酸水素ナトリウム濃度を調整した1003-III及び1004-IVのリメイク製剤(REMAKE 1003-III、1004-IV)では、pHの約4.5から約5.5への変化が観察された。生理学的に許容されるpHになった結果、加水分解がわずかに増加した。
【0186】
【0187】
【0188】
実施例5:本開示のエントリー溶液など溶液の調製における成分の添加順序の影響を調べた。表18に示すように、2つの異なる成分添加順序にしたがってエントリー溶液を調製した。
【0189】
【0190】
第1の添加順序では、LLD、NMP、及びPVPを比較的同時に添加してESを作成し、追加成分の添加前にAPIまたはPVPを完全に溶解させないようにした。そのため、NMP存在下でのLLD及びPVPの溶解は、ほぼ同時に起こる。その後、ESを希釈剤で希釈し、LLDの最終濃度を約0.5mg/mLにした。このようにしてESを調製したところ、第1の添加順序では、最終希釈製剤20mL量中に少量の白色のフレーク状の未知の沈殿物が浮遊しているのが観察された。未知の沈殿物は分離され、FTIRにより、LLD及びPVPの混合物/複合体であることが同定された。
【0191】
第2の添加順序では、PVPを添加させた後、NMPを添加し、溶解させてESを調製した。PVPの溶解後、LLDを添加し、溶解させた。その後、ESを、LLDの最終濃度が約0.5mg/mLになるまで希釈した。この第2の添加順序によるESの調製では、白色沈殿は観察されなかった。
【0192】
理論に拘束されることを望まないが、この沈殿現象は、高濃度のPVP中に比較的高濃度のLLDが存在する場合に起こると考えられる。したがって、両方の固体を同時に溶解させると、直接的な相互作用の可能性が高くなる。LLDの濃度が2.5mg/mLであるES製剤のように、LLDの薬剤濃度が低い場合、希釈製剤での沈殿は観察されなかった。これは、LLDの濃度が著しく低いため、相対的な相互作用の発生率が低くなったためだと考えられる。
【0193】
しかしながら、LLDの濃度が13mg/mLであるES製剤のように、LLDの薬剤濃度が高い場合、LLD及びPVPの相対的な相互作用が強くなる。そのため、高濃度のLLDを第1の添加順序にしたがって添加すると、希釈溶液中に白色沈殿が観察された。ESをさらに調べると、第1の添加順序にしたがって調製した溶液は、透明なゲルを含むことが観察された。ここでも理論に拘束されることは望まないが、ES中にこのような透明なゲルが存在すること、または、希釈溶液中に固体微粒子が存在することは、LLD及びPVPの複合体が存在することを示すと考えられる。これらの複合体は、LLD及びPVPの固体原料がNMP中に存在する場合に形成されると考えられる。その結果、混合/攪拌中に均質になるまで溶解が続くため、溶解状態のPVPの高濃度ポケットに近接して、溶解状態のLLDの高濃度ポケットが形成されることとなる。LLD及びPVPのこれらのポケットの相互作用により、沈殿物が生成される。したがって、これらの知見は、本開示のESのような溶液の製造における、成分の添加順序を注意深く制御することの重要性を示している。
【0194】
実施例6:レナリドマイド2部系の評価
【0195】
水溶液中でのレナリドミドの安定性を得ることは生理学的pHでは困難であるため、凍結乾燥剤や希釈剤に類似する2部系を開発することにした。この製剤の目的は、APIをビヒクルに組み込んで溶解性を得ることにより、無菌濾過による処理を容易にして安定性を維持して、充填/最終製剤を得ることである。この活性薬剤含有製剤は、溶液中に薬剤を添加し、容易に希釈できるように調製されるため、エントリー溶液(ES)と称される。希釈溶液(DS)は、最終的な希釈製剤がレナリドミドの溶解性を維持し、緩衝能を維持し、かつ、製剤の浸透圧を許容範囲内に保つように調製した希釈溶液である。
【0196】
単純な緩衝系(0.9%塩化ナトリウム)で、NMP及びポビドンを様々な濃度で評価した。分析結果を表19に示す。調製の際、Kollidon 30をポビドン成分として使用した。本研究の希釈剤系は、初期の研究との比較目的で、0.9%生理食塩水を使用した。製剤は、最初にpHについて試験し、次に、各時点で関連物質について分析した。ここに示すように、NMPの存在下で、7日間の室温安定性が得られた。
【0197】
【0198】
ポビドンの非経口グレードであるKollidon 12の高濃度は、Kollidon 25及びKollidon 30の低濃度と同等であることが分かった。
【0199】
最終的な製剤決定を調整するために、浸透圧及びpHの仕様を検討した。pH4.5~5.0の範囲が、最も安定であった。また、薬剤濃度やNMP濃度を最適化し、浸透圧を約300~600mOsm/kgに維持するための希釈スキームを組み込むことによって、浸透圧を調整した。最終的な浸透圧は、下記の表20に示すように、最終組成物で約450~500mOsm/kgであった。
【0200】
選択された最終製剤は、エントリー溶液と希釈溶液とからなる。エントリー溶液は、レナリドミドとn-メチル-2-ピロリドンを含む。希釈溶液は、注射用水中に、ポビドン(Kollidon 12)、クエン酸一水和物、及び炭酸水素ナトリウムを含む。ポビドン、クエン酸一水和物、炭酸水素ナトリウム、及びAPIの組み合わせにより、径のpHは、約5となる。
【0201】
【0202】
製剤の一実施形態は、製剤用に調製された2つの別々のバイアルで構成され、投与時に最終的な薬剤希釈を形成するために互いに混合される。第1のバイアルは、別途調製した溶液として、実質的に水を含まない溶媒と組み合わせた医薬品有効成分を含む。溶媒に可溶な、実質的に水を含まない他の添加剤の組み合わせ、これに限定しないが、例えば、緩衝添加剤、ポリマー、可溶化添加剤、乳化剤、結晶化阻害剤などを組み込んでもよい。第2のバイアルは、実質的にAPIを含まない希釈溶液を含む。希釈溶液は、緩衝剤、ポリマー、可溶化賦形剤、保湿剤、乳化剤、結晶化阻害剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、安定剤、抗酸化剤、保護剤、または保存剤を含む水性溶液である。
【0203】
【0204】
【0205】
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
また、レナリドミドまたは第1級アミン官能基を含むAPIや賦形剤と直接相互作用するため、製剤中に抗酸化剤としてメタ重亜硫酸ナトリウムを含んではならないことも分かった。
【0212】
図面に示された特徴は必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではないことに留意されたい。また、一実施形態の特徴は、本明細書に明示的に記載されていなくても、別の実施形態と共に用いてもよいことは、当業者であれば理解できるであろう。また、本開示の実施形態を不必要に不明瞭にしないように、よく知られている構成要素やプロセスについては、説明は省略されている場合がある。
【0213】
様々な実施形態が開示されているが、その詳細な説明から、本発明のさらなる別の実施形態が当業者には明らかになるであろう。本発明は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な明白な側面において無数の改変が可能である。したがって、図面及び説明は、例示的なものであり、限定的なものではないと見なすべきである。
【国際調査報告】