(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-24
(54)【発明の名称】固定用量のタミバロテンによる処置レジメン
(51)【国際特許分類】
A61K 31/192 20060101AFI20240117BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240117BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240117BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240117BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20240117BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20240117BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
A61K31/192
A61P35/00
A61P35/02
A61K45/00
A61K31/706
A61K31/496
A61K39/395 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541295
(86)(22)【出願日】2022-01-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-30
(86)【国際出願番号】 US2022011670
(87)【国際公開番号】W WO2022150625
(87)【国際公開日】2022-07-14
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517342268
【氏名又は名称】サイロス ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ロス, デイビッド エー.
(72)【発明者】
【氏名】ケリー, マイケル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】マディガン, キャサリン イー.
(72)【発明者】
【氏名】ロザリオ, マリア
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA17
4C084MA52
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4C086MA66
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4C206NA14
4C206ZB26
4C206ZB27
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、とりわけ、(a)造血器がんと診断された患者または(b)造血器がんと診断された患者の集団を、固定用量のタミバロテンまたはその薬学的に許容され得る塩で処置する方法を特徴とする。タミバロテンは、患者の体重または体表面積にかかわらず、8~14(例えば、12mg/日)で、処方された日数、毎日投与され、唯一の治療薬として、または本明細書に記載されている追加の治療薬の1つもしくはそれより多くと組み合わせて投与され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造血器がんを有する患者を処置する方法であって、1日当たり約12mgのタミバロテンを前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記約12mgのタミバロテンが2つの用量に分割され、第1の用量が第1の1日用量であり、第2の用量が第2の1日用量である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の1日用量および前記第2の1日用量がそれぞれ約6mgのタミバロテンを含有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記タミバロテンが経口投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記約12mgのタミバロテンが、前記患者の体重または体表面積にかかわらず投与され、および/または前記患者が小児、青年もしくは成人のヒト患者である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記患者が成人のヒトである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記造血器がんが、白血病、必要に応じて、ベネトクラクスによる処置に抵抗性もしくは難治性の白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫または骨髄異形成を伴う骨髄系腫瘍である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記白血病が、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)または慢性骨髄性白血病(CML)であり、前記リンパ腫がホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記AMLが、非急性前骨髄球性白血病急性骨髄性白血病(非APL AML)である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記骨髄異形成を伴う骨髄系腫瘍が骨髄異形成症候群(MDS)である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記MDSがより高リスクのMDSである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、第2の治療薬を投与することを含み、前記第2の治療薬が低メチル化剤(HMA)またはBCL2阻害剤である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記HMAがデシタビンまたはアザシチジンであり、前記BCL2阻害剤がベネトクラクスである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記HMAがアザシチジンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アザシチジンが75mg/m
2の用量で非経口投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記タミバロテンが、28日間の処置サイクルの8~28日目のそれぞれで、1日2回、6mgの用量で経口投与され、アザシチジンが、28日間の処置サイクルの1~7日目のそれぞれで、75mg/m
2の用量で静脈内または皮下投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記方法が、第2の治療薬および第3の治療薬を投与することを含み、前記第2の治療薬および前記第3の治療薬が、HMA、必要に応じてアザシチジンまたはデシタビン、BCL2阻害剤、必要に応じてベネトクラクス、低用量ara-C(LDAC)、オビヌツズマブ、リツキシマブ、CD47阻害剤、必要に応じてマグロリマブ、およびアンドロゲンから独立して選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記方法が、第2、第3および第4の治療薬を投与することを含み、前記第2、第3および第4の治療薬が、HMA、必要に応じてアザシチジンまたはデシタビン、BCL2阻害剤、必要に応じてベネトクラクス、低用量ara-C(LDAC)、オビヌツズマブ、リツキシマブ、CD47阻害剤、必要に応じてマグロリマブ、およびアンドロゲンから独立して選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の薬剤がHMA、必要に応じてアザシチジンもしくはデシタビンであり、前記第3の薬剤がBCL2阻害剤、必要に応じてベネトクラクスであり、前記第4の薬剤がLDACである;
前記第2の薬剤がHMA、必要に応じてアザシチジンもしくはデシタビンであり、前記第3の薬剤がBCL2阻害剤、必要に応じてベネトクラクスであり、前記第4の薬剤がオビヌツズマブである;
前記第2の薬剤がHMA、必要に応じてアザシチジンもしくはデシタビンであり、前記第3の薬剤がBCL2阻害剤、必要に応じてベネトクラクスであり、前記第4の薬剤がリツキシマブである;
前記第2の薬剤がHMA、必要に応じてアザシチジンもしくはデシタビンであり、前記第3の薬剤がBCL2阻害剤、必要に応じてベネトクラクスであり、前記第4の薬剤がCD47阻害剤、必要に応じてマグロリマブである;または
前記第2の薬剤がHMA、必要に応じてアザシチジンもしくはデシタビンであり、前記第3の薬剤がBCL2阻害剤、必要に応じてベネトクラクスであり、前記第4の薬剤がアンドロゲンである;
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が、
AML、必要に応じてAMLのM4もしくはM5サブタイプを有する患者に、前記第2の薬剤としてHMA、必要に応じてアザシチジンもしくはデシタビン、前記第3の薬剤としてBCL2阻害剤、必要に応じてベネトクラクス、および前記第4の薬剤としてLDACを投与すること;
CLLもしくはSLLを有する患者に、前記第2の薬剤としてHMA、必要に応じてアザシチジンもしくはデシタビン、前記第3の薬剤としてBCL2阻害剤、必要に応じてベネトクラクス、および前記第4の薬剤としてオビヌツズマブを投与すること;
17p欠失を有するもしくは有さない、CLLもしくはSLLを有する患者に、前記第2の薬剤としてHMA、必要に応じてアザシチジンもしくはデシタビン、前記第3の薬剤としてBCL2阻害剤、必要に応じてベネトクラクス、および前記第4の薬剤としてリツキシマブを投与すること;
MDSを有する患者に、前記第2の薬剤としてHMA、必要に応じてアザシチジンもしくはデシタビン、前記第3の薬剤としてBCL2阻害剤、必要に応じてベネトクラクス、および前記第4の薬剤としてCD47阻害剤、必要に応じてマグロリマブを投与すること;または
持続性貧血を有する患者に、前記第2の薬剤としてHMA、必要に応じてアザシチジンもしくはデシタビン、前記第3の薬剤としてBCL2阻害剤、必要に応じてベネトクラクス、および前記第4の薬剤としてアンドロゲンを投与すること;
を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
それぞれが造血器がんを有する患者の集団を処置する方法であって、前記方法は、1日当たり約12mgのタミバロテンを前記患者に投与することを含み、前記約12mgのタミバロテンが、前記患者の体重または体表面積にかかわらず投与される、方法。
【請求項22】
前記約12mgのタミバロテンが2つの用量に分割され、第1の用量が第1の1日用量であり、第2の用量が第2の1日用量である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の1日用量および前記第2の1日用量がそれぞれ約6mgのタミバロテンを含有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記タミバロテンが経口投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記患者の集団がヒト小児、青年および/または成人を含む、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記患者の集団が成人のヒトを含む、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記造血器がんが、白血病、必要に応じて、ベネトクラクスによる処置に抵抗性もしくは難治性の白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫または骨髄異形成を伴う骨髄系腫瘍である、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記白血病が、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)または慢性骨髄性白血病(CML)であり、前記リンパ腫がホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記AMLが、非急性前骨髄球性白血病急性骨髄性白血病(非APL AML)である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記骨髄異形成を伴う骨髄系腫瘍が骨髄異形成症候群(MDS)である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記MDSがより高リスクのMDSである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記方法が、第2の治療薬を投与することを含み、前記第2の治療薬が低メチル化剤(HMA)またはBCL2阻害剤である、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記HMAがデシタビンまたはアザシチジンであり、前記BCL2阻害剤がベネトクラクスである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記HMAがアザシチジンである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記アザシチジンが75mg/m
2の用量で非経口投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記タミバロテンが、28日間の処置サイクルの8~28日目のそれぞれで、1日2回、6mgの用量で経口投与され、アザシチジンが、28日間の処置サイクルの1~7日目のそれぞれで、75mg/m
2の用量で静脈内または皮下投与される、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記方法が、第2の治療薬および第3の治療薬を投与することを含み、前記第2の治療薬および前記第3の治療薬が、HMA、必要に応じてアザシチジンまたはデシタビン、BCL2阻害剤、必要に応じてベネトクラクス、低用量ara-C(LDAC)、オビヌツズマブ、リツキシマブ、CD47阻害剤、必要に応じてマグロリマブ、およびアンドロゲンから独立して選択される、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記方法が、第2、第3および第4の治療薬を投与することを含み、前記第2、第3および第4の治療薬が、HMA、必要に応じてアザシチジンまたはデシタビン、BCL2阻害剤、必要に応じてベネトクラクス、低用量ara-C(LDAC)、オビヌツズマブ、リツキシマブ、CD47阻害剤、必要に応じてマグロリマブ、およびアンドロゲンから独立して選択される、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記第2の薬剤がHMA、必要に応じてアザシチジンもしくはデシタビンであり、前記第3の薬剤がBCL2阻害剤、必要に応じてベネトクラクスであり、前記第4の薬剤がLDACである;
前記第2の薬剤がHMA、必要に応じてアザシチジンもしくはデシタビンであり、前記第3の薬剤がBCL2阻害剤、必要に応じてベネトクラクスであり、前記第4の薬剤がオビヌツズマブである;
前記第2の薬剤がHMA、必要に応じてアザシチジンもしくはデシタビンであり、前記第3の薬剤がBCL2阻害剤、必要に応じてベネトクラクスであり、前記第4の薬剤がリツキシマブである;
前記第2の薬剤がHMA、必要に応じてアザシチジンもしくはデシタビンであり、前記第3の薬剤がBCL2阻害剤、必要に応じてベネトクラクスであり、前記第4の薬剤がCD47阻害剤、必要に応じてマグロリマブである;または
前記第2の薬剤がHMA、必要に応じてアザシチジンもしくはデシタビンであり、前記第3の薬剤がBCL2阻害剤、必要に応じてベネトクラクスであり、前記第4の薬剤がアンドロゲンである;
請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記方法が、
AML、必要に応じてAMLのM4もしくはM5サブタイプを有する患者に、前記第2の薬剤としてHMA、必要に応じてアザシチジンもしくはデシタビン、前記第3の薬剤としてBCL2阻害剤、必要に応じてベネトクラクス、および前記第4の薬剤としてLDACを投与すること;
CLLもしくはSLLを有する患者に、前記第2の薬剤としてHMA、必要に応じてアザシチジンもしくはデシタビン、前記第3の薬剤としてBCL2阻害剤、必要に応じてベネトクラクス、および前記第4の薬剤としてオビヌツズマブを投与すること;
17p欠失を有するもしくは有さない、CLLもしくはSLLを有する患者に、前記第2の薬剤としてHMA、必要に応じてアザシチジンもしくはデシタビン、前記第3の薬剤としてBCL2阻害剤、必要に応じてベネトクラクス、および前記第4の薬剤としてリツキシマブを投与すること;
MDSを有する患者に、前記第2の薬剤としてHMA、必要に応じてアザシチジンもしくはデシタビン、前記第3の薬剤としてBCL2阻害剤、必要に応じてベネトクラクス、および前記第4の薬剤としてCD47阻害剤、必要に応じてマグロリマブを投与すること;または
持続性貧血を有する患者に、前記第2の薬剤としてHMA、必要に応じてアザシチジンもしくはデシタビン、前記第3の薬剤としてBCL2阻害剤、必要に応じてベネトクラクス、および前記第4の薬剤としてアンドロゲンを投与すること;
を含む、請求項39に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年1月8日に出願された米国仮出願第63/135,450号の出願日の恩典を主張し、その内容の全体が、参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
白血病、リンパ腫、骨髄腫および骨髄異形成症候群(MDS)は、骨髄、血球、リンパ節およびリンパ系の他の部分に影響を及ぼし得る癌の類型である。米国だけでほぼ20万人の患者が2021年に白血病、リンパ腫または骨髄腫と診断され、新規診断された全癌の約10%を占めると推定された。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
概要
本発明は、とりわけ、単独でまたは第2の治療薬(例えば、アザシチジンまたはデシタビンなどの低メチル化剤)および/もしくはBCL2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)と組み合わせて、固定用量のタミバロテン(すなわち、患者の体重、体表面積(BSA)またはサイズの他の指標にかかわらず患者に与えられる用量)で、本明細書に記載される造血器がんの任意の1つまたはそれより多くを含む造血器がんを有すると診断された患者(例えば、青年または成人のヒト)を処置する方法を特徴とする。2つより多くの薬剤が使用される場合、以下の慣用の数値表示は複数の中の異なる薬剤を指すために便宜上使用されるという理解の下で、本発明者らは、「第3の」治療薬、「第4の」治療薬などと称することがあり、前記表示は、投与の順序を伝えることも、またはその他処置レジメンを制限することも意味しない。例えば、タミバロテン、アザシチジンおよびベネトクラクスが使用される場合、アザシチジンを第2の治療薬と称することができ、ベネトクラクスは第3の治療薬と称することができ、またはその逆もあり得る。タミバロテン、アザシチジン、ベネトクラクスおよびマグロリマブが使用される場合、ベネトクラクスは第3の治療薬と称されることがあり、マグロリマブは第4の治療薬と称されることがあり、またはその逆もあり得る。したがって、第1の局面において、本発明は、本明細書に記載される造血器がんの任意の1つまたはそれより多くを含む、造血器がんを有する患者を処置する方法であって、1日当たり約8~14mg(例えば、12mg)のタミバロテンまたはその薬学的に許容され得る塩を前記患者に投与する工程を含む方法を特徴とする。一態様において、患者は、本明細書に記載される造血器がんの任意の1つまたはそれより多くを含む、造血器がんを有し、前記方法は、1日当たり約12mgのタミバロテンまたはその薬学的に許容され得る塩を前記患者に投与する工程を含む。読みやすさのために、本発明者らは、あらゆる機会で、所与の化合物(例えば、タミバロテン、アザシチジン、デシタビンまたはベネトクラクス)の薬学的に許容され得る塩に言及しないことがあり得る。化合物が有用である場合、その化合物の治療的に有効かつ薬学的に許容され得る塩も使用され得ることが理解されるべきである。タミバロテンの1日用量は、複数回の1日投与(例えば、2回、3回または4回の投与)に分割することができる。例えば、約8~14mg(例えば、12mg)のタミバロテンの1日用量は、2つの用量に分割することができ、第1の用量は第1の1日用量であり、第2の用量は第2の1日用量である(例えば、午前8時頃および午後8時頃、午前9時頃および午後9時頃など、約12時間間隔で投与される)。第1の1日用量および第2の1日用量(ならびに2回を超える任意の用量)は、等しいまたは等しくない量のタミバロテンまたはその薬学的に許容され得る塩を含むことができる。例えば、1日2回投与される場合、各用量は、約4、5、6または7mgのタミバロテンを含有することができる(1日当たり合計8、10、12または14mgのタミバロテンを患者に提供する)。錠剤化に関しては、約8~14mg(例えば、12mg)を単一の錠剤または複数の錠剤中に含めることができる。例えば、12mg/日の用量の場合、患者は、それぞれが約3mgのタミバロテンを含有する2つの錠剤を朝に服用し、2つの錠剤を夜に服用することができるであろう(すなわち、朝に6mgおよび夜に6mg)。あるいは、12mg/日の用量の場合、患者は、朝に約2mgのタミバロテンをそれぞれ含有する3つの錠剤および夜に3つの錠剤を服用することができる(同じく、朝に6mg、夜に6mg)。錠剤が別の剤形、例えばカプセル剤に変更される場合も同様である。疑わしい場合には、これらの正確な投与量およびレジメンは本発明の範囲内であり、本明細書中にされる追加の(第2、第3、第4の)治療薬のいずれとも一緒に投与され得る。タミバロテンまたはその薬学的に許容され得る塩は経口投与することができ、本発明のいずれの局面または態様においても固定用量(例えば、約8~14mg(例えば、12mg)の総1日用量)を投与することができる。処置されている具体的な造血器がんにかかわらず、タミバロテンが癌を処置するための唯一の治療薬として投与されるか、または本明細書に記載される治療薬の任意の1つもしくはそれより多くを含む1もしくはそれを超える追加の治療薬と一緒に投与されるかどうかにかかわらず、剤形(例えば、錠剤またはカプセル剤)またはスケジュール(例えば、1日1回または2回投与される)にかかわらず、例えば、8~14mg(例えば、12mg)の固定用量を投与することができる。造血器がんは、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、または骨髄異形成を伴う骨髄系腫瘍(例えば、骨髄異形成症候群(MDS))であり得る。例えば、白血病は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)または慢性骨髄性白血病(CML)であり得、リンパ腫は、ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫であり得る。いくつかの態様では、AMLは非急性前骨髄球性白血病急性骨髄性白血病(非APL AML)である。本明細書で使用される用語は、Arberら(Blood 127(20):2391-2405,2016)と一致し、造血器がんが骨髄異形成を伴う骨髄系腫瘍である場合、造血器がんは、MDSもしくはそのサブタイプ(例えば、単系統異形成を伴うMDS、多系統異形成を伴うMDS、環状鉄芽球および単系統異形成もしくは多系統異形成を伴うMDS、孤立性del(5q)を伴うMDS、過剰な芽球1型もしくは2型を伴うMDS;または分類不可能なMDS)または骨髄異形成-骨髄増殖性腫瘍(すなわち、MDSおよび骨髄増殖性腫瘍の臨床的、検査的および/または形態学的特徴と重複する臨床的、検査的および/または形態学的特徴を有する骨髄系腫瘍)もしくはそのサブタイプ(例えば、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、BCR-ABL1陰性非定型慢性骨髄性白血病、環状鉄芽球および血小板増加を伴う骨髄異形成骨髄増殖性腫瘍または若年性骨髄単球性白血病)(Cazzola、New Engl.J.Med.383:1358-1374,2020)であり得る。他の態様において、造血器がんは、低形成性MDSまたは線維症を伴うMDSである。造血器がんがMDSである場合、MDSは、改訂国際予後スコアリングシステム(IPSS-R)または世界保健機関(WHO)予後スコアリングシステム(WPSS)に基づいて、高リスクMDS(HR-MDS)であり得る。あるいは、MDSは、IPSS-RまたはWPSSによって定義される低リスクMDS(LR-MDS)であり得る。任意の局面または態様において、方法は、第2の治療薬を患者に投与することを含むことができる。例えば、第2の治療薬は、低メチル化剤(HMA(例えば、デシタビンまたはアザシチジン))またはBCL2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)であり得る。アザシチジンが投与される場合、約75mg/m2の用量で非経口的に(例えば、静脈内または皮下)投与することができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるものの任意の1つまたはそれより多くを含む造血器がんを有する患者(例えば、成人のヒト)は、約8~14mg(例えば、28日間の処置サイクルの8~28日目のそれぞれに1日2回6mg)の用量で経口投与されるタミバロテンおよび28日間の処置サイクルの1~7日目のそれぞれに75mg/m2の用量で静脈内または皮下投与されるアザシチジンで処置される。患者は複数の処置サイクルを受けてもよく、直前に記載したとおりのタミバロテンおよびアザシチジンの投与は、第3の治療薬(例えば、当技術分野で公知のプロトコルによって投与されるベネトクラクスまたは別のBCL2阻害剤)の投与または第3および第4の治療薬(例えば、当技術分野で公知のプロトコルによって投与されるベネトクラクスまたは別のBCL2阻害剤およびオビヌツズマブ)の投与を伴い得る。
【0004】
本発明の局面および態様のいずれにおいても(例えば、処置されるべき具体的な造血器がんにかかわらず、タミバロテンが、単独でまたは第2の治療薬と組み合わせて投与されるかどうかにかかわらず、および正確な投薬レジメン(例えば、錠剤またはカプセル剤当たりのタミバロテンの正確な量)にかかわらず)、患者は、癌を有すると新規診断され(ND)得、したがって、処置未経験であり得、癌のより高リスク形態を有すると考えられ得、不適格(例えば、標準的または集中的な導入化学療法に不適格)と考えられ得、または以前の処置から再発したかもしくは以前の処置に対して難治性であり得る。本発明の局面および態様のいずれにおいても、診断は、患者の癌細胞が1またはそれを超えるバイオマーカー(例えば、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第9,845,508号および同第9,868,994号に記載されているRARAバイオマーカー)を発現しているという決定を含み得る。当技術分野において公知であるように、RARAバイオマーカーは、RARA一次RNA転写物(RARA遺伝子のコード領域(例えば、少なくとも1つのエクソン)および/または遺伝子の非コード領域(例えば、遺伝子のイントロンまたは調節領域(例えば、遺伝子の発現を調節するエンハンサーまたはスーパーエンハンサー))を含むDNA配列からのRNA転写産物)の上昇された発現を含むことができる。したがって、バイオマーカーとして評価されるRARA一次RNA転写物は、「エンハンサーRNA」または「eRNA」、マイクロRNA、前駆体mRNA(「プレmRNA」)または成熟mRNAであり得る。当技術分野において公知であるように、RARA一次RNA転写物の発現のレベルを評価する方法では、RARA一次RNA転写物から合成または逆転写されたcDNAを評価し得る。
【0005】
本明細書に開示され、患者または患者の集団を「処置する方法」として記載されている各治療方法はまた、「使用」に関して記載され得る。例えば、本発明は、本明細書に記載されている造血器がんの処置のための、10~14mg(例えば、12mg)の固定用量のタミバロテンの使用、および造血器がんを処置するための医薬品の調製のための、このような量のタミバロテンの使用を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施例1に記載されている研究デザインを示す概略図である。
【0007】
【
図2】
図2は、実施例1に記載されている研究に従って投与された治療薬の詳細を強調する表である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
詳細な説明
タミバロテンは、レチノイン酸受容体アルファ(RARα)の強力かつ選択的なアゴニストであり、日本において再発性/難治性急性前骨髄球性白血病(R/R APL)の処置に関して承認されている(例えば、Miwako,Drugs Today 43(8):563-568,2007、およびTobitaら、Blood 90(3):967-973,1997を参照)。タミバロテンは、非APL急性骨髄性白血病(AML)患者、すなわち、RARA発現レベルがqPCRによって決定される臨床試験アッセイによって同定されるようにRARA陽性である患者の部分集団において開発されている。RARA陽性と推定される患者は、このアッセイ、同様のアッセイまたは患者から得られた生体試料(例えば、血液または骨髄試料)内の癌細胞(例えば、芽球)中のRARA遺伝子または高レベルのRARA発現に関連するスーパーエンハンサーを検出する承認された(例えば、FDAによって承認された)試験によって同定することができる。例えば、RARA発現についてのアッセイは、必要に応じて、(例えば、血液または骨髄試料の採取によって)患者から得られた造血器がん細胞におけるRARA一次RNA転写物(例えば、RARA遺伝子から転写されたmRNA)のレベルを測定することによって行うことができる。細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)であり得、CD34/CD117陽性であると決定され得る。RNA転写物は細胞から抽出され、RT-qPCRなどの測定技術に供される。1またはそれを超える対照遺伝子(例えば、1またはそれを超える「ハウスキーピング」遺伝子)と比較してRARA発現を測定することができ、次いで、転写レベルが上昇している(例えば、対照遺伝子の発現レベルよりも1.5倍超を超える、および/または当技術分野で確立された所定の閾値レベルを上回る)かどうかを決定するために、結果を評価することができる。
【0009】
単剤のタミバロテンで処置されたRARA陽性R/R AMLおよびR/R HR-MDS患者における初期臨床データは、骨髄分化および芽球低減を伴う生物学的活性の証拠を実証した(Jurcicら、American Society of Hematology Annual Meeting、Abstract No.2633、2017)。新規診断された不適格AML患者では、アザシチジンと組み合わせたタミバロテンは、RARA陽性患者において高い完全奏効(CR)率および作用の急速な開始を示した(de Bottonら、European School of Haematology(ESH)Conference on AML、Abstract No.16081、2019)。より具体的には、この研究では、RARAバイオマーカー陽性およびRARAバイオマーカー陰性の処置未経験非APL AML患者が、アザシチジンで処置された(28日間の処置サイクルの1~7日目に75mg/m2を静脈内または皮下投与)およびタミバロテン(6mg/m2/日、経口、28日間の処置サイクルの8~28日目)。組み合わせの有害事象(AE)プロファイルは、AML/MDS患者の処置において単剤のタミバロテンまたは単剤のアザシチジンについて以前に報告されたものと一致していた。AML患者の約30%およびMDS患者の30%~40%がRARA陽性である(Jurcicら、前出;Vigilら、European School of Haematology(ESH)Conference on AML,Abstract No.8882,2018;de Bottonら、前出)。アザシチジンは依然としてHR-MDSの処置のための標準治療であるが、単剤のアザシチジンの臨床転帰を改善するための機会が存在する。本発明者らが現在実施している臨床試験の1つでは、新規診断されたRARA陽性HR-MDS患者が、タミバロテン+アザシチジンまたはプラセボ+アザシチジンでの治療に無作為に割り振られる(下記参照)。
【0010】
示されたように、本方法は、造血器がんを有する患者を処置する方法であって、1日当たり約12mgのタミバロテンを前記患者に投与する工程を含む方法を特徴とする。各1日用量は2つに分割することができ、第1の用量は第1の1日用量であり、第2の用量は第2の1日用量である。第1の1日用量および第2の1日用量はそれぞれ約6mgのタミバロテンを含有することができ、タミバロテンは経口投与することができる。本発明の方法のいずれにおいても、患者の体重または体表面積にかかわらず、約12mgのタミバロテンが投与される。本発明の方法のいずれにおいても、患者は、小児、青年または成人のヒト患者(例えば、高齢である、および/または標準的な導入化学療法に不適格であると推定される、および/または以前の処置に対して再発性もしくは難治性である成人のヒト)であり得る。本発明の方法において、造血器がんは、白血病(例えば、ベネトクラクスでの処置に対して抵抗性もしくは難治性の白血病またはM4もしくはM5サブタイプのAML)、リンパ腫、多発性骨髄腫、または骨髄異形成を伴う骨髄系腫瘍であり得る。より具体的には、白血病は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)または慢性骨髄性白血病(CML)であり得、リンパ腫がホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫であり得る。AMLは、非急性前骨髄球性白血病急性骨髄性白血病(非APL AML)であり得る。骨髄異形成を伴う骨髄系腫瘍は骨髄異形成症候群(MDS)(例えば、高リスクのMDSまたは低高リスクのMDS)であり得る。本発明の方法は、低メチル化剤(HMA)またはBCL2阻害剤などの第2の治療薬(すなわち、タミバロテンとは異なる薬剤)を投与する第2の工程を含むことができる。HMAはデシタビンまたはアザシチジン(または本明細書に開示されているもののうちの1つを含む別のHMA)であり得、BCL2阻害剤はベネトクラクスであり得る。一部の実施形態では、HMAはアザシチジンである。ここで、アザシチジンは投与され、75mg/m2の用量で非経口投与される得る。本発明の種々の実施形態では、タミバロテンは、28日間の処置サイクルの8~28日目のそれぞれで、1日2回、6mgの用量で経口投与され得、アザシチジンは、28日間の処置サイクルの1~7日目のそれぞれで、75mg/m2の用量で静脈内または皮下投与され得る。一部の実施形態では、方法は、第2の治療薬および第3の治療薬の両方を投与することを含み、第2の治療薬および第3の治療薬は、HMA(例えば、アザシチジンまたはデシタビン)、BCL2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)、低用量ara-C(LDAC)、オビヌツズマブ、リツキシマブ、CD47阻害剤(例えば、マグロリマブ)、およびアンドロゲンから独立して選択され得る。一部の実施形態では、方法は、第2、第3および第4の治療薬が、HMA(例えば、アザシチジンまたはデシタビン)、BCL2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)、LDAC、オビヌツズマブ、リツキシマブ、CD47阻害剤(例えば、マグロリマブ)、およびアンドロゲンから独立して選択される第2、第3および第4の治療薬を投与することを含む。実施形態では、第2の薬剤がHMA(例えば、アザシチジンもしくはデシタビン)であり、第3の薬剤がBCL2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)であり、第4の薬剤がLDACである;第2の薬剤がHMA(例えば、アザシチジンもしくはデシタビン)であり、第3の薬剤がBCL2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)であり、第4の薬剤がオビヌツズマブである;第2の薬剤がHMA(例えば、アザシチジンもしくはデシタビン)であり、第3の薬剤がBCL2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)であり、第4の薬剤がリツキシマブである;第2の薬剤がHMA(例えば、アザシチジンもしくはデシタビン)であり、第3の薬剤がBCL2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)であり、第4の薬剤がCD47阻害剤、必要に応じてマグロリマブである;または第2の薬剤がHMA(例えば、アザシチジンもしくはデシタビン)であり、第3の薬剤がBCL2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)であり、第4の薬剤がアンドロゲンである。実施形態では、方法が、AML(例えば、AMLのM4もしくはM5サブタイプを有する患者に、第2の薬剤としてHMA(例えば、アザシチジンもしくはデシタビン)、第3の薬剤としてBCL2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)、および第4の薬剤としてLDACを投与すること;CLLもしくはSLLを有する患者に、第2の薬剤としてHMA(例えば、アザシチジンもしくはデシタビン)、第3の薬剤としてBCL2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)、および第4の薬剤としてオビヌツズマブを投与すること;17p欠失を有するもしくは有さない、CLLもしくはSLLを有する患者に、第2の薬剤としてHMA(例えば、アザシチジンもしくはデシタビン)、第3の薬剤としてBCL2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)、および第4の薬剤としてリツキシマブを投与すること;MDSを有する患者に、第2の薬剤としてHMA(例えば、アザシチジンもしくはデシタビン)、第3の薬剤としてBCL2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)、および第4の薬剤としてCD47阻害剤(例えば、マグロリマブ)を投与すること;または持続性貧血を有する患者に、第2の薬剤としてHMA(例えば、アザシチジンもしくはデシタビン)、第3の薬剤としてBCL2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)、および第4の薬剤としてアンドロゲンを投与することを含む。
【0011】
別の局面において、本発明は、それぞれが造血器がん(例えば、同種の造血器がん)を有する患者の集団を処置する方法であって、患者の体重または体表面積にかかわらず、1日当たり約12mgのタミバロテンを前記患者のそれぞれに投与する工程を含む方法を特徴とする。各1日用量は2つに分割することができ、第1の用量は第1の1日用量であり、第2の用量は第2の1日用量である。第1の1日用量および第2の1日用量はそれぞれ約6mgのタミバロテンを含有することができ、タミバロテンは経口投与することができる。患者の集団を処置する方法のいずれにおいても、患者は、小児、青年または成人のヒト患者(例えば、高齢である、および/または標準的な導入化学療法に不適格であると推定される、および/または以前の処置に対して再発性もしくは難治性である成人のヒト)であり得る。集団を処置する方法において、造血器がんは、白血病(例えば、ベネトクラクスでの処置に対して抵抗性もしくは難治性の白血病またはM4もしくはM5サブタイプのAML)、リンパ腫、多発性骨髄腫、または骨髄異形成を伴う骨髄系腫瘍であり得る。より具体的には、白血病は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)または慢性骨髄性白血病(CML)であり得、リンパ腫がホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫であり得る。AMLは、非急性前骨髄球性白血病急性骨髄性白血病(非APL AML)であり得る。骨髄異形成を伴う骨髄系腫瘍は骨髄異形成症候群(MDS)(例えば、高リスクのMDSまたは低高リスクのMDS)であり得る。本発明の方法は、低メチル化剤(HMA)またはBCL2阻害剤などの第2の治療薬(すなわち、タミバロテンとは異なる薬剤)を投与する第2の工程を含むことができる。HMAはデシタビンまたはアザシチジン(または本明細書に開示されているもののうちの1つを含む別のHMA)であり得、BCL2阻害剤はベネトクラクスであり得る。一部の実施形態では、HMAはアザシチジンである。ここで、アザシチジンは投与され、75mg/m2の用量で非経口投与される得る。本発明の種々の実施形態では、タミバロテンは、28日間の処置サイクルの8~28日目のそれぞれで、1日2回、6mgの用量で経口投与され得、アザシチジンは、28日間の処置サイクルの1~7日目のそれぞれで、75mg/m2の用量で静脈内または皮下投与され得る。一部の実施形態では、方法は、第2の治療薬および第3の治療薬の両方を投与することを含み、第2の治療薬および第3の治療薬は、HMA(例えば、アザシチジンまたはデシタビン)、BCL2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)、低用量ara-C(LDAC)、オビヌツズマブ、リツキシマブ、CD47阻害剤(例えば、マグロリマブ)、およびアンドロゲンから独立して選択され得る。一部の実施形態では、方法は、第2、第3および第4の治療薬が、HMA(例えば、アザシチジンまたはデシタビン)、BCL2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)、LDAC、オビヌツズマブ、リツキシマブ、CD47阻害剤(例えば、マグロリマブ)、およびアンドロゲンから独立して選択される第2、第3および第4の治療薬を投与することを含む。実施形態では、第2の薬剤がHMA(例えば、アザシチジンもしくはデシタビン)であり、第3の薬剤がBCL2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)であり、第4の薬剤がLDACである;第2の薬剤がHMA(例えば、アザシチジンもしくはデシタビン)であり、第3の薬剤がBCL2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)であり、第4の薬剤がオビヌツズマブである;第2の薬剤がHMA(例えば、アザシチジンもしくはデシタビン)であり、第3の薬剤がBCL2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)であり、第4の薬剤がリツキシマブである;第2の薬剤がHMA(例えば、アザシチジンもしくはデシタビン)であり、第3の薬剤がBCL2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)であり、第4の薬剤がCD47阻害剤、必要に応じてマグロリマブである;または第2の薬剤がHMA(例えば、アザシチジンもしくはデシタビン)であり、第3の薬剤がBCL2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)であり、第4の薬剤がアンドロゲンである。実施形態では、方法が、AML(例えば、AMLのM4もしくはM5サブタイプを有する患者に、第2の薬剤としてHMA(例えば、アザシチジンもしくはデシタビン)、第3の薬剤としてBCL2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)、および第4の薬剤としてLDACを投与すること;CLLもしくはSLLを有する患者に、第2の薬剤としてHMA(例えば、アザシチジンもしくはデシタビン)、第3の薬剤としてBCL2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)、および第4の薬剤としてオビヌツズマブを投与すること;17p欠失を有するもしくは有さない、CLLもしくはSLLを有する患者に、第2の薬剤としてHMA(例えば、アザシチジンもしくはデシタビン)、第3の薬剤としてBCL2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)、および第4の薬剤としてリツキシマブを投与すること;MDSを有する患者に、第2の薬剤としてHMA(例えば、アザシチジンもしくはデシタビン)、第3の薬剤としてBCL2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)、および第4の薬剤としてCD47阻害剤(例えば、マグロリマブ)を投与すること;または持続性貧血を有する患者に、第2の薬剤としてHMA(例えば、アザシチジンもしくはデシタビン)、第3の薬剤としてBCL2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)、および第4の薬剤としてアンドロゲンを投与することを含む。
【0012】
以下の定義は、文脈がそうでないことを明らかに示さない限り、本明細書に記載の組成物、方法、および使用に適用され、必要であるまたは所望の場合、特許請求の範囲は定義内の文言を含むように補正することができると理解される。さらに、これらの定義は、定義された用語の言語的および文法的な変形(例えば、用語の単数形および複数形)に適用され、いくつかの言語的変形は以下で具体的に言及される(例えば、「投与」と「投与すること」)。
【0013】
「約」という用語は、値に関連して使用される場合、記載値のプラスまたはマイナス5%(例えば、記載値のプラスマイナス1%、2%、3%、4%、または5%(両端を含む)以内)の任意の値または値以内の範囲を示す。例えば、約10mgの用量とは、10mgよりも5%程度低い用量(9.5mg)、10mgよりも5%程度高い用量(10.5mg)、およびそれらの間の任意の用量または投与量範囲を意味する。記載値を上回ることができない場合(例えば、100%)、「約」は、記載値よりも最大5%まで小さい任意の値または値の範囲を示す(例えば、約100%の純度は、95%~100%純粋であることを意味する(例えば、96%~100%純粋、97%~100%純粋など))。値を測定する機器または技法の誤差の範囲が5%を超える場合、それらが両方ともにその機器または技法の誤差の範囲内にある場合、所与の値は記載値とほぼ同じになる。
【0014】
「投与」という用語およびその変形、例えば「投与すること」は、本明細書に記載の化合物(例えば、タミバロテン、HMA(例えば、アザシチジン)、ベネトクラクスなどのBCL2阻害剤、およびその薬学的に許容され得る塩)あるいは1またはそれを超えるそのような化合物を含有する医薬組成物の、被験体(例えば、ヒト患者)または系(例えば、エクスビボで維持されている細胞または組織に基づく系)への投与を指す。その投与の結果として、化合物またはその化合物を含有する組成物は、被験体(例えば、患者)または系に導入される。医薬有効成分に加えて、陽性対照、陰性対照、およびプラセボとして使用される物品(そのいずれもが化合物となり得るかまたは化合物を含むことができる)も、「投与する」ことができる。当業者であれば、適切な状況で、患者または系への投与に利用することができる多様な経路を承知している。例えば、投与経路は、経口(すなわち、医薬組成物の嚥下による)であってもよいし、非経口であってもよい。より具体的には、投与経路は、気管支(例えば、気管支滴注による)、口による(すなわち、経口)、皮膚(真皮または皮内への局所適用、皮間(interdermal)または経皮投与であるかまたはそれらを含み得る)、胃内または経腸(すなわち、それぞれ胃または腸に直接)、髄内、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、くも膜下腔内、腫瘍内、静脈内(または動脈内)、脳室内、特定の器官への適用または注射(例えば、肝内)、粘膜(例えば、頬側、直腸、舌下、または膣)、皮下、気管(例えば、気管内滴注により)、または眼(例えば、局所、結膜下、または硝子体内)であり得る。投与は、断続的な投与(すなわち、様々な時間で分離された投与)および/または定期的な投与(すなわち、共通の期間で分離された投与(例えば、数時間ごと、毎日(例えば、毎日1回の経口投与)、毎週、週に2回など))を含み得る。他の実施形態では、投与は、選択した時間(例えば、約1~2時間)の連続投与(例えば、灌流)を含み得る。本明細書に記載される追加の(すなわち、第2、第3および第4の)薬剤の治療有効量および投与レジメンは当技術分野で公知であり、本発明者らはそのような量およびレジメンを、特にアザシチジン、デシタビン、およびベネトクラクスが採用される場合に、本発明の方法で使用することができると予想している。
【0015】
「生体試料」という用語は、目的の生物学的供給源(例えば、組織または生物(例えば、動物またはヒト患者)または細胞培養物)から得られるかまたはそれに由来する試料を指す。例えば、生体試料は、本開示の方法によって診断および/または処置される疾患(または、動物モデルの場合は、ヒト患者の疾患のシミュレーション)に罹患している個体(例えば、患者または動物モデル)あるいは基準標準または対照としての役割を果たす(またはその試料が基準または対照集団に寄与する)個体から得た試料であり得る。生体試料は、生体細胞(例えば、がん細胞)、組織または体液またはそれらの任意の組合せを含み得る。例えば、生体試料は、腹水;血液;血液細胞;体液であり得るか、またはそれらを含み得、そのいずれもが、細胞(例えば、腫瘍細胞(例えば、少なくとも血液またはリンパ管に見出される血中循環腫瘍細胞(CTC)));骨髄またはその成分(例えば、造血細胞、骨髄脂肪組織、または間質細胞);脳脊髄液(CSF);糞便;屈側体液(flexural fluid);浮動性核酸(例えば、循環腫瘍DNA);婦人科体液;毛髪;免疫浸潤物;リンパ液;腹水;血漿;唾液;皮膚またはその構成成分(例えば、毛包);痰;外科的に得た検体;(例えば、鼻、口または膣の)皮膚または粘膜から掻爬またはスワブされた組織;組織または細針生検試料;尿;管洗浄または気管支肺胞洗浄などの洗液または洗浄;またはその他の体液、組織、分泌物、および/または排出物を含んでもよいし含まなくてもよい。生体試料には、脾臓およびリンパ節を含む多くの組織および臓器に見出されるがん細胞(例えば、本明細書に記載される造血器がんのもの)または免疫細胞、例えばNK細胞および/またはマクロファージが含まれ得る。体液(例えば、血液、CSF、リンパ液、血漿、または尿)の試料、または上記体液から得た試料には、腫瘍細胞(例えば、CTC)および/または浮動性もしくは無細胞核酸が含まれ得る。試料内の細胞(例えば、がん細胞)は、処置が意図されている個々の患者から得たものであってよい。入手した形態で使用される試料は「一次」試料と呼ばれることがあり、(例えば、試料の1またはそれを超える成分を除去することにより)さらに操作された試料は「二次」または「加工」試料と呼ばれることがある。そのような加工試料は、特定の細胞種、細胞成分(例えば、膜画分)、または細胞材料(例えば、増幅に供され得る1またはそれを超える細胞のタンパク質、DNA、またはRNA(例えば、mRNA))を含んでいてもよいし、それらが富化されていてもよい。
【0016】
「生物学的に活性な」という用語は、(例えば、ヒト、他の動物、または細胞/組織培養またはインビトロで維持される系において)観察可能な生物学的効果を生み出すか、またはその生物学的系もしくはモデルをもたらす薬剤(例えば、本明細書に記載の化合物)を記載する。そのような薬剤の「生物学的活性」は、薬剤と標的(例えば、RARAまたはBCL2)との間の結合により現れ得、生物学的経路、事象または状態(例えば、疾患状態)のモジュレーション(例えば、誘導、増強、または抑制)をもたらすことがある。例えば、薬剤は、細胞活性(例えば、免疫応答の刺激または相同組換え修復の阻害)、細胞周期のある相で費やされた時間(細胞増殖の速度を変え得る)、またはアポトーシスの開始または細胞死をもたらす別の経路の活性化(腫瘍退縮をもたらし得る)をモジュレートすることができる。生物学的活性、および必要に応じてその程度は、活性の任意の所与の直接または下流の産物、あるいは活性に関連する任意の事象(例えば、細胞成長または腫瘍退縮の阻害)を検出する既知の方法を用いて評価することができる。
【0017】
「担体」という用語は、投与のために活性医薬剤(例えば、本開示の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩、溶媒和物、立体異性体、互変異性体,または同位体形態)とともに製剤化される希釈剤、アジュバント、賦形剤、または他のビヒクルを指す。担体は、医薬組成物に組み込まれる量および方法において、被験体に対して無毒であり、それとともに製剤化される有効成分(例えば、化合物またはその他の指定された形態)の生物学的活性を破壊しない。担体は、無菌または滅菌可能な液体、例えば、水(例えば、注射用水)または天然もしくは合成の油(例えば、石油系もしくは鉱油、動物油、または植物油(例えば、落花生油、大豆油、ゴマ油、またはカノーラ油))であってよい。また、担体は固体;1またはそれを超える固体成分(例えば、塩、例えば、「生理食塩水」)を含む液体;固体の混合物;または液体の混合物であり得る。
【0018】
「比較可能な」という用語は、互いに同一ではないが、それらの間の比較が可能なほど十分に類似しているので、観察された相違点または類似点に基づいて当業者が合理的に結論を引き出すことができることがわかる、2またはそれを超える項目(例えば、薬剤、実体、状況、状態のセットなど)を指す。一部の実施形態では、状態、状況、個体(例えば、個々の患者または被験体)、または集団の比較可能なセットは、複数の実質的に同一の特徴および1または少数の変化のある特徴によって特徴づけられる。当業者であれば、前後関係から、2またはそれを超える項目を比較可能とみなすために、所与状況においてどの程度の同一性が必要であるかを理解する。例えば、2つの項目は、その項目で得られた結果または観察された現象のどんな相違も、変化のあるそれらの特徴によって引き起こされるかまたはそれらの特徴における変形形態を示すという合理的な結論を保証するのに十分な数および種類の実質的に同一の特徴を共有している場合に互いに比較可能である。一部の実施形態では、比較可能な項目は、「対照」として機能する。例えば、「対照被験体/集団」は、処置中の個体/集団と同じ疾患に罹患している未処置(またはプラセボ処置)個体/集団であり得る。
【0019】
「併用治療」という用語は、単一の疾患(例えば、本明細書に記載のがん)を処置するために、被験体が2またはそれを超える治療レジメン(例えば、2またはそれを超える治療薬(例えば、3種類の薬剤))に曝露されている状況を指す。2またはそれを超えるレジメン/薬剤は、同時にまたは逐次投与されてよい。同時に投与する場合、第1の薬剤の用量と第2の薬剤の用量はほぼ同時に投与され、両方の薬剤は患者に同時に、または、第1の薬剤が第2の薬剤よりも即効性または遅効性である場合には重複する期間中に、効果を発揮する。逐次投与される場合、第1および第2の薬剤の用量は時間的に離れており、それらが患者に同時に効果を及ぼすこともあり、及ぼさないこともある。例えば、第1および第2の薬剤は、同じ時間内または同日中に投与されてよく、その場合、第1の薬剤は、第2の薬剤が投与されるときにまだ活性である可能性があるであろう。あるいは、第2の薬剤が投与されたときに第1の薬剤がもはや活性を持たないように、第1および第2の薬剤の投与の間にはるかに長い時間が経過していてもよい(例えば、難治性がんの処置の際に起こり得るように、任意の用量の第2のレジメンの同じまたは異なる投与経路での投与の前にすべての用量の第1のレジメンが投与される)。明確にするために、併用治療は、個々の薬剤が単一の組成物で一緒にまたは同時に投与されることを必要するものではないが、一部の実施形態では、本開示の化合物および本明細書に記載の第2の薬剤を含む2またはそれを超える薬剤は、同じ期間内に(例えば、同じ時間、日、週または月内に)投与されてよい。
【0020】
「剤形」、「製剤」、および「調製物」という用語は、本明細書に記載の化合物(例えば、タミバロテン、HMA、またはBCL2阻害剤)を含有する組成物、または本明細書に記載の使用に適した他の生物学的または治療的に活性な有効成分(例えば、タミバロテンと組み合わせたもの)を指す。「単位剤形」という用語は、本明細書に記載の化合物(例えば、タミバロテン)またはその薬学的に許容され得る塩を含有する物理的に別個の単位を指す。1またはそれを超える追加の/第2の薬剤も、本明細書に記載のように単位剤形で製剤化、投与または使用することができる。そのような各単位は、所定の量の活性医薬成分を含むことができる。この量は、単回投与用に処方された量(すなわち、治療または予防レジメンの一部として投与された場合に望ましい結果と相関すると予想される量)またはその部分であってよい(例えば、単位剤形(例えば、錠剤またはカプセル剤)は、単回投与用に処方された量の半分を含んでよく、その場合、患者は2つの単位剤形(すなわち、2錠または2カプセル)を服用することになる)。当業者は、特定の被験体に投与される組成物または薬剤の総量が、1またはそれを超える主治医によって決定され、複数の単位剤形(例えば、本明細書に記載の通り)の投与を伴う場合があることを理解する。
【0021】
「投与レジメン」という用語は、患者に投与されるかまたは患者に処方される1または複数の単位剤形を指し、一般に、期間(例えば、本明細書に記載または当技術分野で公知のとおり)によって分離された複数の用量が含まれる。投与レジメン内で投与される1または複数の剤形は、同じ単位投与量のものであっても異なる量のものであってもよい。例えば、投与レジメンには、第1の投与量の第1の投与と、それに続いて、第1の投与量と同じまたは異なる第2の投与量における1またはそれを超える追加の投与が含まれ得る。
【0022】
「有効量」とは、薬剤の投与目的である所望の効果を生じる薬剤(例えば、タミバロテンまたは本明細書に記載の「第2の」薬剤))の量をさす。一部の実施形態では、この用語は、疾患に罹患しているかまたは疾患に罹患しやすい集団に治療用投与レジメンに従って投与された場合に、疾患を処置するのに十分な量を指す。この場合、有効量は「治療有効量」と呼ばれることもある。当業者であれば、治療有効量が、特定の個体(すなわち、所与の個々の患者において)において処置の成功を達成しない可能性があることを理解する。むしろ、治療有効量は、そのような処置を必要とする患者の集団に投与された場合に、有意な数または特定の予想される数の被験体に望ましい薬理学的応答をもたらす。有効量への言及は、投与された薬剤の量、あるいは投与後の1またはそれを超える特定の組織(例えば、疾患に罹患した組織)または体液(例えば、血液、唾液、尿など)において測定された量への言及であり得る。
【0023】
「改善する」、「増加する」または「減少する/低下する」(および「改善された」または「改善している」などの明らかなその変形)は、基準値に対して値が変化するかまたは変化した様式を特徴づけるために使用される用語である。例えば、処置前の患者(または患者から得た生体試料)から得た測定値は、同じ患者、対照患者、患者集団の平均、または患者から得た1または複数の生体試料において、処置中または処置後に得られた場合の測定値と比較して増加または減少/低下し得る。この値は、いずれの場合にも、増加または低下が好ましい治療成果に関連しているかどうかに応じて改善され得る。
【0024】
本明細書に記載のように投与が企図される「患者」には、限定されるものではないが、ヒトが含まれ、患者は、男性、女性、トランスジェンダーまたはその他の性別の人(例えば、小児、青年または成人の被験体(例えば、若年成人、中年成人または高齢成人(例えば、65歳またはそれより高齢の高齢患者))であってよい。高齢患者は、標準的な導入化学療法に不適格であると推定され得るので、「高齢不適格」患者と呼ばれ得る。
【0025】
「医薬組成物」または「薬学的に許容され得る組成物」は、本発明者らは「医薬製剤」または「薬学的に許容され得る製剤」とも呼ぶこともあるが、活性薬剤(例えば、活性医薬成分(例えば、タミバロテンまたは本明細書に記載の第2の薬剤))が1またはそれを超える薬学的に許容され得る担体とともに製剤化されている組成物/製剤である。活性薬剤/有効成分は、関連のある集団に投与された場合に所定の治療効果を達成する統計学的に有意な確率を示す治療レジメンでの投与に適切な単位投与量で存在することができる。医薬組成物は、固体または液体形態での投与のために特別に製剤化されてよく、それには経口または非経口投与用に作製されたかかる形態が含まれる。経口投与の場合、医薬組成物は、例えば、水性または非水性の液剤または懸濁剤として、あるいは錠剤またはカプセル剤として製剤化されることができる。口からの全身吸収の場合、組成物は、頬側投与、舌下投与、または舌へ適用するためのペースト剤として製剤化することができる。非経口投与の場合、組成物は、例えば、皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、腫瘍内、または硬膜外注射のための滅菌液剤または懸濁剤として製剤化することができる。活性薬剤/有効成分(例えば、本明細書に記載の化合物またはその特定の形態)を含む医薬組成物は、持続放出製剤として、または局所適用のためのクリーム剤、軟膏剤、制御放出パッチ剤、またはスプレー剤としても製剤化され得る。クリーム剤、軟膏剤、フォーム剤、ジェル剤、およびペースト剤は、鼻、口、膣、および直腸を覆う粘膜に塗布することもできる。本明細書に記載の化合物のいずれか、およびそのような化合物を含有する医薬組成物はいずれも、「医薬品」と呼ばれることもある。
【0026】
本明細書において、「薬学的に許容され得る塩」という用語は、妥当な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激作用、アレルギー反応などを伴わずに、ヒトおよび下等動物の組織と接触して使用するために適しており、合理的な利益/リスク比に合った塩を指す。薬学的に許容され得る塩は、当技術分野で周知である。例えば、Bergeらは、参照により本明細書に組み込まれるJ.Pharmaceutical Sciences,66:1-19、1977に薬学的に許容され得る塩を詳細に記載している。本明細書に記載の化合物の薬学的に許容され得る塩には、適した無機および有機の酸および塩基に由来するものが含まれる。薬学的に許容され得る無毒の酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸などの無機酸と、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸またはマロン酸などの有機酸と形成されるか、あるいはイオン交換などの当技術分野で公知の他の方法を使用することによって形成されるアミノ基の塩である。他の薬学的に許容され得る塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、蟻酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、MALAT1e、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。適切な塩基に由来する塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩およびN+(C1~4アルキル)4
-塩が挙げられる。代表的なアルカリもしくはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。さらなる薬学的に許容され得る塩としては、適切な場合、無毒のアンモニウム、第四級アンモニウム、ならびにハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩、およびアリールスルホン酸塩などの対イオンを使用して形成されたアミンカチオンが挙げられる。
【0027】
本明細書に記載される方法による処置のために指定される「患者の集団」は、2またはそれを超える患者(例えば、2、5、10、約100または約1000人の)患者である。
【0028】
「RARA遺伝子」という用語は、機能的なレチノイン酸受容体-α(RARA)をコードし、RARA遺伝子の全部または一部を含む遺伝子融合を特に除外するゲノムDNA配列を指す。一部の実施形態では、RARA遺伝子は、ゲノムビルドhg19のchr17:38458152-38516681に位置している。
【0029】
「基準」という用語は、比較が行われる標準または対照を記載する。例えば、目的の薬剤、動物(例えば、被験体(例えば、実験室の研究で使用される動物))、単一の細胞または複数の細胞、個体(例えば、個々の患者)、集団、試料(例えば、生体試料)、配列または値は、基準または対照の薬剤、動物(例えば、被験体(例えば、実験室の研究で使用される動物))、単一の細胞または複数の細胞、個体(例えば、個々の患者)、集団、試料、または配列または値とそれぞれ比較される。一部の実施形態では、基準または対照は、目的の試験または決定と実質的に同時に試験および/または決定される。他の実施形態では、基準または対照は、歴史的な基準または対照であり、必要に応じて有形の媒体に具体化される。一般に、当業者が理解するように、基準または対照は、評価中の条件と比較可能な条件下で決定または特徴づけされ、当業者であれば、特定の可能性のある基準または対照への依拠および/または比較を正当化するのに十分な類似点が存在する場合に正しく評価する。
【0030】
処置に関して「応答」という用語は、処置の結果として生じるか、または処置と相関する患者の状態の有益な変化を指すことがある。このような変化には、状態の安定化(例えば、処置がなければ起こったと思われる悪化の予防(例えば、安定(stable disease)
))、状態の症状の回復、および/または状態の治癒の見込みの改善(例えば、腫瘍退縮)などが含まれてよい。応答は、細胞応答(例えば、がん細胞で評価される通り)であってよく、当技術分野で公知の臨床基準および客観的基準を含む多種多様な基準を用いて測定することができる。応答を評価するための技法には、限定されるものではないが、アッセイ評価、臨床検査、陽電子放出断層撮影、X線、CTスキャン、MRI、超音波、内視鏡検査、腹腔鏡検査、被験体から得た試料中の腫瘍マーカーの存在またはレベルの評価、細胞学、および/または組織学が含まれる。腫瘍応答の測定に関しては、処置に対する応答を評価するための方法およびガイドラインが、Therasseら(J.Natl.Cancer Inst.,92(3):205-216,2000)において考察されている。がんおよび/または患者の群を比較する場合、比較される群が、奏効率を決定するための同じまたは比較可能な基準に基づいて評価されるのであれば、正確な応答基準は任意の適切な方法で当業者が選択することができる。
【0031】
本明細書で使用され得るその他の用語および略語には、有害事象に対するAE;急性骨髄性白血病に対するAML;急性前骨髄球性白血病に対するAPL;全トランス型レチノイン酸に対するATRA;1日2回に対するBID;体表面積に対するBSA;信頼区間に対するCI;完全寛解または完全奏効に対するCR;完全奏効の期間に対するDOCR;無事象生存に対するEFS;高リスク骨髄異形成症候群に対するHR-MDS;全奏効率に対するORR;全生存に対するOS;進行性疾患に対するPD;薬物動態に対するPK;部分寛解または部分奏効に対するPR;レチノイン酸受容体アルファに対するRARAまたはRARα;赤血球に対するRBC;再発性/難治性に対するR/R;重篤な有害事象に対するSAE;輸血非依存性に対するTI;正常上限に対するULNが含まれる。
【0032】
本明細書に記載されるように、タミバロテンまたはタミバロテンと1もしくはそれを超える追加の治療薬との組み合わせでの処置に適した患者:一態様において、本方法は、タミバロテンまたはその治療的に有効な薬学的に許容され得る塩を、単独で、または本明細書に記載される追加の(例えば、第2、第3または第4の)治療薬の1つもしくはそれより多くと組み合わせて投与することを含む。例えば、約8~14mg/日(例えば、12mg/日)の固定用量のタミバロテンは、必要に応じてベネトクラクスをさらに含めて、必要に応じて低用量のara-C(LDAC)(例えば、非APL AMLなどのAMLを有する患者に対して)、オビヌツズマブ(例えば、CLLまたはSLLを有する患者に対して)、リツキシマブ(例えば、17p欠失を有するまたは有さない、CLLまたはSLLを有する患者に対して)、CD47阻害剤(例えば、マグロリマブ)(例えば、MDSを有する患者に対して)または内分泌療法(例えば、持続性貧血を有する患者のためのアンドロゲン療法)をさらに含めて、アザシチジンまたはデシタビンなどのHMAと組み合わせて投与することができる。例えば、必要に応じてLDACをさらに含む、タミバロテン、HMA(例えば、アザシチジンまたはデシタビン)と組み合わせたタミバロテン、またはHMA(例えば、アザシチジンまたはデシタビン)およびベネトクラクスと組み合わせたタミバロテンを、新規診断された(本明細書に記載されている単球/単球発現シグネチャ(MES)によることを含む当技術分野において公知の任意の方法によって同定される、例えば、M4またはM5サブタイプの)AML患者に投与することができる。患者は、少なくとも60歳(例えば、少なくとも60、65、70もしくは75歳またはそれより高齢)であり得、および/または集中的な導入化学療法の使用を妨げる併存疾患を有し得る(すなわち、患者は不適格であると推定され得る。)。別の態様において、本方法は、単独で、またはベネトクラクスでの処置後に再発した患者、ベネトクラクスでの処置に対して難治性になった患者、または患者の癌細胞が(例えば、エクスビボアッセイによって;例えば、CLLまたはSLLを有する患者)ベネトクラクスに対する抵抗性を示す患者に対して前述された1もしくはそれを超える「第2の」治療薬と組み合わせて、タミバロテンを投与することを含む。したがって、一態様において、本発明の方法は、単独で、または必要に応じてHMA(例えば、アザシチジンまたはデシタビン)および/またはオビヌツズマブも含めて、ベネトクラクスと組み合わせて、CLLまたはSLLを有する患者(例えば、ND患者)に、8~14mg/日(例えば、12mg/日)でタミバロテンを投与することを含む。別の態様において、前記方法は、単独で、または必要に応じてHMA(例えば、アザシチジンまたはデシタビン)および/またはリツキシマブも含めて、ベネトクラクスと組み合わせて、CLLまたはSLLを有する患者(例えば、ND患者)に、8~14mg/日(例えば、12mg/日)でタミバロテンを投与することを含む。これらの態様の任意の1つまたはそれより多くにおいて、タミバロテンまたはその治療的に有効な薬学的に許容され得る塩は、単回または分割された1日用量で、および/または処置サイクルの指定された日に(例えば、28日間の処置サイクルの8~28日目に)経口投与することができる。一般に、本明細書に記載されるような使用のための各治療薬(例えば、第2の薬剤、第3の薬剤、または第4の薬剤として)は、良質な医療のための原則に合致し、関連する薬剤および患者に適切な医薬組成物および投薬レジメンを使用して、治療有効量で製剤化され、投薬され、投与される。タミバロテンが1またはそれを超える第2の治療薬と組み合わせて投与される場合、それらの薬剤は、それらが個々の使用について承認されている投薬レジメンに従って投与することができる。全体としての処置レジメンにおいて、HMAは、造血器がんを有する患者に(例えば、AML(例えば、再発性または難治性AML)またはMDS(例えば、高リスクMDS)を有する患者に)、例えば、処置レジメンの1~7日目に、本明細書に記載されているかまたは当技術分野で公知の用量および経路で(典型的には静脈内または皮下経路によって)投与することができ、タミバロテンは、例えば、約8~14mg/日(例えば、12mg/日)の用量で、処置レジメンの8~28日目に経口投与することができ、その後、処置を中止することができ、繰り返すことができ、またはその後、患者は数日間もしくは数週間にわたって処置からの猶予を有することができる。
【0033】
高リスクMDSに関して、本明細書の他の箇所で参照されるように、IPSS-Rは、患者の疾患の経過を予測するために5つの予後指標:(1)芽球、(2)細胞遺伝学、(3)ヘモグロビン、(4)血小板数および(5)絶対好中球数を使用する。1.5点またはそれ未満のスコアは、極めて低いリスクを示し、1.5より大きく3点までおよび3点を含むスコアは低リスクを示し、3点より大きく4.5点までおよび4.5点を含むスコアは、中リスクを示し、4.5より大きく6点までおよび6点を含むスコアは高リスクを示し、6.5点またはそれを超えるスコアは極めて高いリスクを示す。IPSS-Rに基づいて、患者は、4.5点を超えるスコアを有する場合、より高いリスクのMDSを有する。WPPSは、IPSS-Rほど頻繁には使用されない。WPPSは、予後因子としてMDSサブタイプを含むという点でIPSS-Rとは異なる。WPPSはまた、重度の貧血の存在または不存在に基づいてスコアを割り当てる。WPPSでは、0点のスコアは極めて低いリスクを示し、1点のスコアは低いリスクを示し、2点のスコアは中程度のリスクを示し、3~4点のスコアは高いリスクを示し、5~6点のスコアは極めて高いリスクを示す。WPSSに基づいて、患者は、3点を超えるスコアを有する場合に、より高いリスクのMDSを有する(Lorand-Metzeら、Hematol.Transfus.Cell Ther.,40(3):262-266,2018を参照)。
【0034】
タミバロテン:タミバロテンは、t(15;17)転座の存在またはPML-RARα遺伝子の発現によって特徴付けられる再発性または難治性APLの処置に関して、2005年4月以来日本において承認された経口的に利用可能な合成レチノイドである(例えば、Miwako、前出およびTobitaら、前出を参照)。タミバロテンは、APLの現在の第1選択処置の成分であるATRAと比較して有意に改善されたインビボ薬理特性を有する、より強力で、選択的なRARαアゴニストであるように設計された。インビトロでは、タミバロテンはATRAよりも約10倍強力である。タミバロテンは、構造:
【化1】
を有し、AM-80、INNO-507、NSC-608000、OMS-0728、TM-411、TOS-80、TOS-80TおよびZ-208としても知られている。
【0035】
アザシチジンおよびデシタビン:アザシチジンは、デオキシリボ核酸(DNA)の低メチル化を含む複数の機構を介して異常な造血骨髄細胞に対して抗腫瘍効果を及ぼすピリミジン類似体である。DNA、RNAおよびタンパク質合成の阻害を伴うDNAおよびリボ核酸(RNA)中への組み込みから、細胞傷害性も生じ得る。アザシチジンは、MDSの処置に関して、米国(US)および欧州連合(EU)で承認されている。アザシチジンは、EUにおいてAMLでの使用に関しても承認されており、米国においてAMLの処置のための標準治療として広く受け入れられている。デシタビンは、シチジンの類似体であり、低メチル化剤でもある。デシタビンは骨髄異形成症候群およびAMLの処置のために使用される。
【0036】
他のHMA:アザシチジンおよびデシタビンに加えて、本明細書に記載の方法において「第2の」治療薬として使用することができる他の低メチル化剤(HMA)には、グアデシタビン(SGI-110としても知られている、シトシン類似体)、FdCyd(5-フルオロ-2’-デオキシシチジンとしても知られ、別のシトシン類似体)、ゼブラリン(シトシン類似体)、CP-4200(シトシン類似体)、RG108(小分子阻害剤)、ナナオマイシンA(小分子阻害剤)およびレナリドミドが含まれる。
【0037】
ベネトクラクスおよび他のBCL2阻害剤:BCL2阻害剤は、使用が承認されたものまたは臨床段階の開発中のものを含め、本明細書に記載の方法および使用に採用することができる。より具体的には、ベネトクラクスが入手可能であり、錠剤の形態で投与され得、各投与単位は、10、50、または100mgの治療薬を含有する。ベネトクラクスを、タミバロテンおよびHMA(例えば、アザシチジン)と組み合わせて投与して、血液がん(例えば、CLLまたはSLL)を処置する場合、ベネトクラクスは、推奨される400mgの一日量まで、数週間(例えば、5週間)にわたる毎週の増量スケジュールに従って投与することができる。例えば、血液がん(例えば、CLLまたはSLL)の患者は、本明細書に記載の併用治療を受けてよく、これは第1週に20mg、PO、QDのベネトクラクス;第2週に50mg、PO、QDのベネトクラクス;第3週に100mg、PO、QDのベネトクラクス;第4週に200mg、PO、QDのベネトクラクス;および第5週以降に400mg、PO、QDのベネトクラクスを含む。この処置レジメンの修正版は、その後の処置サイクル(例えば、サイクル2、サイクル3~6、およびサイクル7~12)について当技術分野で公知である。ベネトクラクスの投与は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第8,546,399号;8,722,657号;9,174,982号;9,539,251号;10,730,873号;および10,993,942号のうちの1またはそれを超えるものに記載される通りであり得る。あるいは、第2世代のBCL2阻害剤S65487が投与(例えば、静脈内投与)されてもよく、AML、NHL、MM、およびCLLと診断された患者への投与に特に適している可能性がある。あるいは、選択的BCL2阻害剤BGB-11417が投与(例えば、毎日1回経口投与)されてもよく、再発/難治性NHL、CLL、またはSLLと診断された患者への投与に特に適している可能性がある。
【0038】
あるいは、BCL-XL/BCL2阻害剤ナビトクラクス(ABT-263)が投与されてもよく(例えば、7~14日間の150mgのリードイン用量の経口錠剤または液剤投与、続いて325mgの毎日1回連続投与による)、NHLまたはCLLと診断された患者に特に適している可能性がある。あるいは、BCL2阻害剤であるペルシトクラクス(pelcitoclax)(APG-1252)が投与されてもよく(例えば、28日サイクルで10~400mgの用量範囲で週2回(BIW)または週1回(QW))、NHLと診断された患者に特に適している可能性がある。あるいは、BCL2阻害剤であるリサフトクラクス(lisaftoclax)(APG-2575)が投与されてもよく(例えば、20~1,200mgの用量範囲で経口投与)、R/R CLLと診断された患者に特に適している可能性がある。
【0039】
投与(経口または非経口投与のいずれか)用に、本明細書に記載の治療薬は、薬剤を当技術分野で周知の1またはそれを超える薬学的に許容され得る担体と組み合わせることによって容易に製剤化することができる。実際、RARAアゴニスト(例えば、タミバロテン)、HMA(例えば、アザシチジンおよびデシタビン)、およびBCL2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)の製剤は、当技術分野で公知であり、本明細書に記載の方法(または使用)において採用することができる。例えば、そして上記のように、ベネトクラクスは錠剤形態で利用可能であり、各投与単位は10、50、または100mgの治療薬を含み、そのような錠剤は、本明細書に記載の方法のいずれかにおいて採用する(または本明細書に記載のように使用する)ことができる。例えば、ベネトクラクスを、タミバロテンおよびHMA(例えば、アザシチジン)と組み合わせて投与して、血液がん(例えば、CLLまたはSLL)を処置する場合、ベネトクラクスは、推奨される400mgの一日量まで、数週間(例えば、5週間)にわたる毎週の増量スケジュールに従って投与することができる。
【0040】
LDAC:低用量ara-C(シタラビンの商品名で入手可能)は、本明細書に記載されるように、タミバロテンと一緒に使用することができ、造血器がんがAML(例えば、APL、AMLのM4もしくはM5サブタイプ、または非APL AML)、CMLまたはALLである場合に特に有用であり得る。LDACは、静脈内または髄腔内注入によって投与され、本方法における公知の投薬スケジュールに従ってそのまま投与され得る。
【0041】
オビヌツズマブ:本明細書中に記載の方法(または使用)が、ベネトクラクス、タミバロテンおよびHMA(例えば、アザシチジン)に加えて、オビヌツズマブの投与を含む場合、オビヌツズマブは、1日目に100mgで、2日目に900mgで、ベネトクラクスによる増量投薬スケジュールの前に、8および15日目に1,000mgで静脈内投与され得る。この処置レジメンの改変バージョンは、その後の処置サイクルのために当技術分野で公知である(例えば、サイクル2、サイクル3~6およびサイクル7~12)。
【0042】
造血器がん:本明細書に記載されている方法は、造血器がん(例えば、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、または骨髄異形成を伴う骨髄系腫瘍(例えば、骨髄異形成症候群(MDS))を有する患者に適用することができる。HR-MDSは、効果的で耐容性のある治療に対して満たされていない高いニーズがある難病である。同種異系HSCT(造血幹細胞移植)は、この症状に対する唯一の根治的処置である。アザシチジンは、新規診断されたHR-MDS患者に対する標準治療であるが、CRおよびPR率は低く、処置は根治的ではない。したがって、HR-MDSを有する患者の生存を延ばすために、アザシチジンの有効性を置き換えまたは増強する新規な治療法が必要とされている。さらに、低メチル化剤によるフロントライン治療に失敗した患者に対しては、標準治療は存在しない。したがって、HR-MDS患者は予後不良であり、より効果的な処置選択肢を必要とする。
【0043】
造血器がんがAMLである場合、AMLは、それぞれ急性骨髄単球性白血病および急性単球性白血病としても知られるM4またはM5サブタイプなどのそのサブタイプであり得る。当技術分野で理解されているように、AMLによって冒された細胞は通常腫瘍を形成せず、代わりに、骨髄全体に全般的に見られ、他の器官(例えば、脾臓および肝臓)に見出され得る。French-American-British(FAB)共同研究および世界保健機関(WHO)の2つの組織が、AMLの様々なサブタイプに対する分類を開発している。FABは、主に染色後の顕微鏡下での細胞の外観に基づいて、癌が最初に発生した細胞型および細胞の成熟度に基づいて8つのサブタイプ(M0~M7)を定義した。FABサブタイプは以下のとおりである:M0(未分化急性骨髄芽球性白血病);M1(最小の成熟を伴う急性骨髄芽球性白血病);M2(成熟を伴う急性骨髄芽球性白血病);M3(急性前骨髄球性白血病(APL));M4(急性骨髄単球性白血病);M4 eos(好酸球増加を伴う急性骨髄単球性白血病);M5(急性単球性白血病);M6(急性赤白血病);およびM7(急性巨核芽球性白血病)。M0~M5サブタイプは、未成熟形態の白血球に由来し、M6サブタイプは、未成熟形態の赤血球に由来し、M7サブタイプは未成熟血小板に由来する。WHOシステムは、予後に影響を及ぼすことが知られている因子を含み、ある種の遺伝的異常を伴うAMLおよび骨髄異形成関連の変化を伴うAMLに言及する。遺伝子異常には、PML-RARA融合遺伝子を有するAPLおよび8番染色体と21番染色体の間の転座[t(8;21)];16番染色体における転座または逆位[t(16;16)またはinv(16)];9番染色体と11番染色体の間の転座[t(9;11)];6番染色体と9番染色体の間の転座[t(6;9)];第3染色体における転座または逆位[t(3;3)またはinv(3)];1番染色体と22番染色体の間の転座[t(1:22)]を有するAML;BCR-ABL1(BCR-ABL)融合遺伝子(これが固有のサブタイプであるという十分な証拠がない可能性があるので、現在暫定的な実体と考えられている);変異したNPM1遺伝子;CEBPA遺伝子の二対立遺伝子変異;RUNX1遺伝子の変異(同じく暫定的実体)が含まれる。これらのサブタイプのいずれの造血器がんも、本明細書に記載されている固定用量のタミバロテンによる処置に適している。
【0044】
MDSおよびAMLは、骨髄前駆細胞の障害された分化に関連する関連の血液学的障害である。骨髄異形成症候群は、造血細胞の体細胞変異したクローンの増殖および拡散から生じることが知られており、しばしばAMLに進行する(例えば、Cazzola,New Engl.J.Med.383:1358-1374,2020の
図1および1363頁の白血病性形質転換の記載を参照)。
【0045】
本明細書に記載されている処置(すなわち、固定用量のタミバロテン(例えば、約8~14mg/日(例えば、1日当たり12mg)、経口、必要に応じて分割された1日用量(例えば、BID))での)に適した他の具体的な造血器がんには、慢性骨髄単球性白血病(CMML)などの骨髄異形成-骨髄増殖性腫瘍;慢性リンパ性白血病((例えば、17p欠失を伴う)CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);小リンパ球性リンパ腫(SLL);多発性骨髄腫(MM);ホジキンリンパ腫(HL);非ホジキンリンパ腫(NHL);およびマントル細胞リンパ腫(MCL)が含まれる。処置に適した骨髄異形成-骨髄増殖性腫瘍の他のサブタイプには、BCR-ABL1陰性非定型慢性骨髄性白血病、環状鉄芽球および血小板増加症を伴う骨髄異形成-骨髄増殖性腫瘍、および若年性骨髄単球性白血病が含まれる。
【0046】
MES:上記のように、M4またはM5サブタイプのAML患者は、単球/単球発現シグネチャ(MES)によることを含む、当技術分野で公知の任意の方法によって同定することができる。そのシグネチャを決定する際に、基準と比較して、遺伝子CD14、CLEC7A(CD369)、CD86、CD68、LYZ、MAFB、CD34、ITGAM(CD11b)、FCGR1A(CD64)、RARAおよびKIT(CD117)の1つもしくはそれより多くからの一次RNA転写産物(例えば、KIT、CD64、CD86およびLYZの発現レベル))またはこれらによってコードされるタンパク質の上昇した発現、および/またはそれらの相関(例えば、MCL1の上昇した発現および/またはBCL2の低下した発現)について、患者から得られた生体試料をアッセイすることができる。例えば、M4/M5サブタイプのバイオマーカーは、遺伝子CD34、KIT(CD117)およびBCL2の組み合わせの発現レベルであり得る。当技術分野で公知の技術によって、MESに寄与する遺伝子に関連するエンハンサーまたはスーパーエンハンサーを評価することもできる。
【0047】
臨床研究において、本出願人は、アザシチジンと組み合わせた、非APL AMLにおけるタミバロテンの安全性、薬物動態、薬力学および臨床活性を調査しており、調査を継続している。臨床活性データは、芽球中でのRARAの過剰発現によって特徴付けられる患者のゲノム的に規定されたサブセットにおいて、タミバロテンとアザシチジンの組み合わせをさらに開発することの理論的根拠を支えている。HR-MDSはAMLと生物学的に密接に関連しており、これらの症状にわたって共通の変異が見出され(Arberら、Blood 127(20):2391-2405,2016)、タミバロテンとアザシチジンの組み合わせが、新規診断されたHR-MDSを有する者において臨床活性を有するという仮説を裏付けている。
【0048】
組み合わせのAEプロファイルは、AML/MDS患者の処置における単剤のタミバロテンまたは単剤のアザシチジンについて以前に報告されたものと一致していた。タミバロテンとアザシチジンの組み合わせによる骨髄抑制の割合は、単剤のアザシチジンと比較可能であり、この組み合わせからの相加的な血液学的毒性の証拠はない。非血液学的AEの大部分は、軽度で可逆的であった。タミバロテン+アザシチジンの安全性プロファイルは、1000人を超える患者がR/R APLに対して処置された、タミバロテンでの日本の市場経験によってさらに裏付けられている。全体として、タミバロテンの安全性プロファイルは許容され得ると考えられ、患者への利益は、(活性な組み合わせに無作為に割り振られた患者に対する)研究の期間中の、タミバロテン+アザシチジンを与えられることの潜在的な臨床的有用性によって主に規定される。無作為化試験の両処置群は、HR-MDSを処置するための現在の標準治療であるアザシチジンを含む。
【0049】
本試験において評価された基礎症状のリスクは著しく、満たされていない医学的必要性が高い領域である。HR-MDSは、持続性血球減少症による感染および合併症のリスクを伴う。HR-MDSに対する処置を受けている患者は、反復した骨髄吸引の処置上のリスクを被り、これも本試験において必要とされる評価である。タミバロテン+アザシチジンの臨床活性は、タミバロテン+アザシチジンの組み合わせの新たに出現した好ましい安全性プロファイルと相まって、この組み合わせが、AMLを有するRARA陽性患者およびHR-MDSを有する患者に有益な処置選択肢をもたらす可能性を有することを示唆している。
【実施例】
【0050】
実施例
[実施例1]
実施例1:高リスク骨髄異形成症候群を有する新規診断されたRARA陽性成人患者におけるタミバロテン+アザシチジン対プラセボ+アザシチジンの無作為化二重盲検プラセボ対照第3相試験(予測的実施例)
患者は、所定の基準のすべてが該当する場合にのみ、試験に参加する資格がある。これらには、年齢(インフォームドコンセントの署名時に少なくとも18歳);RARAバイオマーカーの状態(陽性);HR-MDSの診断;スクリーニング訪問時に5%超の骨髄芽球を伴う測定可能な疾患および十分な臓器機能が含まれる。HR-MDSの診断は、世界保健機関(WHO)分類、および(a)極めて高い(リスクスコア>6)、高い(リスクスコア>4.5~6)、または中間(リスクスコア>3~4.5)としての改訂国際予後スコアリングシステム(IPSS-R)リスクカテゴリを満たすことを必要とする。Cockcroft-Gault糸球体濾過速度推定に基づいて、(a)総ビリルビン≦3.0×正常値の上限(ULN)、(b)アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)≦3×ULN、および(c)クレアチニンクリアランス≧30mL/分によって定義される適切な臓器機能。(例えば、患者が、HMAによるMDSの処置を以前に受けたことがあるか、以前にATRAを受けたことがあるか、免疫不全であるか、または妊娠している場合には)患者は、いずれの所定の基準も満たされる臨床試験から除外される。提案された適格基準は、新規診断されたRARA陽性のHR-MDS患者のみが確実に試験に登録されるようにすることを意図している。同種異系HSCTはHR-MDSの根治的治療であるので、スクリーニング時に移植適格であり、この処置を受けることに同意する患者は除外される。低メチル化剤または化学療法(レナリドミドを含む)による事前の処置を受けた患者は、試験処置の効果の解釈の混乱を避けるために除外される。続発性AMLへのMDSの転換は、50%以上の骨髄芽球数および20%以上の総骨髄芽球数の増加または末梢血中の20%以上の芽球数の増加のいずれかによって定義される。
【0051】
これは、新規診断されたHR-MDSを有するRARA陽性患者における治療の第一選択として、タミバロテン+アザシチジンの活性をプラセボ+アザシチジンと比較した第3相多施設無作為化二重盲検プラセボ対照試験である。
【0052】
スクリーニング前訪問では、血液試料を採取し、研究への参加資格を決定するためのRARAバイオマーカーの評価のために、現在Almac Diagnostics Laboratoryであると予定されている研究室に送る。スクリーニング前およびスクリーニング評価は、サイクル1、1日目の30日以内に実施される。
【0053】
タミバロテン+アザシチジンまたはプラセボ+アザシチジンのいずれかを与えられるように、患者を2:1に無作為化する。IPSS-Rリスク群(中リスク、高リスク、超高リスク)によって、無作為化を層別化する。
【0054】
応答は、修正IWG MDS基準(Cheson、2006)に従って治験責任医師によって評価される。応答を測定するために、サイクル2および4の1日目に、その後3サイクルごと(7、10、13など)に骨髄吸引液を収集し、臨床所見または末梢血球数の変化に基づいて臨床的に決定される他の時点で骨髄吸引液を収集する。サイクル7の1日目における応答評価の後には、CRの患者は、応答評価のための骨髄吸引液の頻度を6サイクルごとに減少させ得る。
【0055】
SoAに詳述されているように、患者は試験参加を通じて、応答および安全性評価を受ける。許容され得ない毒性、疾患の進行(AMLへの転換を含む)、再発を経験するか、寛解後療法(HSCTなど)もしくは代替抗癌治療を求めるという決定を行うか、患者が同意を取り下げるか、または治験責任医師が試験薬を中止することが患者にとって最良の利益であると決定するまで、患者は、試験薬を受け続け得る。
【0056】
EoT訪問は、試験薬の最終用量の3日以内に(または薬物処置を永久に停止する決定が、研究薬が中断されている期間の直後に続く場合には、この決定の3日以内に)およびその後の抗癌治療の開始前に行われるべきである。安全性追跡調査訪問は、EoT訪問の30日(±3日)後およびその後の抗癌治療の開始前に行うべきである。EoT訪問後に、進行/再発していない、またはその後の抗癌治療(試験薬ではない)を開始していない患者は、その後の抗癌治療の開始または疾患の進行/再発のうちいずれか早い方まで、最長5年間、応答評価のために3ヶ月ごとに追跡調査される。試験薬の中止後最長5年間、3ヶ月ごとに、その後の抗癌治療の開始、AMLへの転換、およびOSを記録するために、すべての患者を追跡調査する。試験デザインの概略図が
図1に示されており、治療薬の詳細を強調する表が
図2に示されている。
【0057】
毎日合計6錠(合計12mg)、朝に3錠(6mg)、夕方に3錠(6mg)を服用する。28日間の処置サイクルの8~28日目に投与されるタミバロテンの6mg BIDレジメンの選択は、AMLまたはMDSを有する成人におけるタミバロテンの第2相試験ならびに日本の臨床試験および市場経験からのものを含む、現在までにタミバロテンについて本発明者らが利用可能な安全性、有効性およびPKデータの全体に基づく。
【0058】
以前の研究で使用された用量およびレジメン(2分割用量で6mg/m2/日)は、APLの処置に関して日本で承認された用量およびレジメンに基づいていた。その研究からの集団PK分析は、身体サイズがクリアランスと有意に関連しないことを示した;したがって、タミバロテン投薬に対する体表面積(BSA)に基づく調整は必要ない。この分析に基づいて、6mgのBIDフラット投薬レジメンを含む本明細書に記載の固定投薬レジメンは、以前の研究で使用された6mg/m2/日(2分割用量)レジメンと比較して同様のPK曝露を提供すると予想される。
[実施例2]
実施例2:タミバロテンの「固定」用量投与(すなわち、患者の体重またはBSAとは独立した投薬)としても知られる「フラット」の理論的根拠
【0059】
本発明者らは、タミバロテンが6mg/m2/日で投与された以前の研究において観察されたタミバロテンの有効性が、フラットまたは固定量の投薬によって損なわれるという証拠を見出さなかった。これは予想外であり、有益である(なぜなら、例えば、それは、患者によるより良い服薬順守ならびに医師および患者の両方によるより少ない投薬ミスをもたらし得るからである。)。
【0060】
本発明者らは、BSAに基づいて、以前にタミバロテンで処置された患者からの約900個の試料を分析した。患者の特徴を用いて集団PKモデルを開発し、本発明者らは、薬物クリアランスに対する重量の影響を評価した。「フラット」対BSAベースの投薬の成績を評価するためにシミュレーションを行った。曝露と有効性および安全性との関係を確立するために、モデルからのシミュレートされたAUC(曲線下面積)を使用し、本発明者らは、曝露およびCR/CRiの達成およびグレード3に等しいまたはそれを超える有害事象を伴う曝露を分析した。本発明者らのモデルにおいて、本発明者らは、1日当たり12mgのタミバロテンのフラット投薬が、10~14mgの1日用量のBSAをベースとした投薬と同様の曝露を提供することを見出した。モデルは、BSAにかかわらず患者に投与される12mgのフラット投薬が、6mg/m2の承認された投薬レジメンを使用して得られるものと同様の曝露を達成することを予測する。集団PKモデリングおよびシミュレーションは、タミバロテンへの同様の曝露が、10~14mg/日用量の用量範囲にわたってBSAベースの投薬またはフラット1日投薬のいずれかで達成されること、および12mgのフラット1日投薬(6mg BIDとして投与)がBSA範囲にわたって同様の曝露をもたらすことを実証した。より高いAUCは、CRを達成するより高い確率と関連していなかった。
[実施例3]
実施例3:標準的導入治療に適格でないRARA陽性AMLについて選択された以前に処置されていない成人患者におけるベネトクラクスおよびアザシチジンと組み合わせたタミバロテン(予測的実施例)
【0061】
現在、標準的な導入治療に適格でないND AML患者は、最初の処置としてベネトクラクスとアザシチジンの組み合わせをますます与えられている。このようなAML患者の無作為化試験において、ベネトクラクスとのアザシチジンの組み合わせは、アザシチジン単独療法による処置と比較して高い複合的完全寛解(CR)率および生存利益を実証した(DiNardoら、N.Engl.J.Med.383(7):617-629,2020)。しかしながら、患者の約1/3はベネトクラクス/アザシチジンの組み合わせに反応せず(DiNardoら、前出)、この亜集団における転帰を改善するニーズが存在することを裏付けている。
【0062】
第2相非盲検3部多施設試験では、本発明者らは、試験登録の時点で標準的な集中化学療法に耐える可能性が低いRARA陽性の、以前に処置されていない非APL AML患者におけるタミバロテン-ベネトクラクス-アザシチジン併用治療を評価する。アザシチジンは、(VIDAZA米国処方情報(USPI)に従って)各28日間の治療サイクルの1日目~7日目に、毎日75mg/m2で静脈内または皮下投与される。アザシチジン(1~5日目、8日目および9日目)の別の投薬は、試験全体を通して許容される。ベネトクラクスは、CYP3AおよびP-gp阻害剤を同時に与えられている患者に対する増量および適切な投薬を含む、最新のVENCLEXTA USPIおよびVENCLYXTO SmPCに記載されている用量で、1~28日目に毎日経口投与される。タミバロテンは、6mgで1日2回(BID)、8~28日目または28日間の治療サイクルごとに経口投与される。
【国際調査報告】