IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニーの特許一覧

特表2024-503018タイヤキャビティノイズ低減のための個別の吸音体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-24
(54)【発明の名称】タイヤキャビティノイズ低減のための個別の吸音体
(51)【国際特許分類】
   B60C 5/00 20060101AFI20240117BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20240117BHJP
   G10K 11/162 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
B60C5/00 F
G10K11/16 140
G10K11/162
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541707
(86)(22)【出願日】2022-01-11
(85)【翻訳文提出日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 IB2022050180
(87)【国際公開番号】W WO2022149114
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】63/135,953
(32)【優先日】2021-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ウー,チェン
(72)【発明者】
【氏名】ガーディーズ,ロナルド ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】シー,トンヤン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ヤオ
(72)【発明者】
【氏名】ル,フオ イン
【テーマコード(参考)】
3D131
5D061
【Fターム(参考)】
3D131AA30
3D131BA08
3D131BB01
3D131BB03
3D131BC05
3D131BC44
3D131CB03
5D061AA06
5D061AA11
5D061AA12
5D061AA22
5D061AA26
5D061CC01
(57)【要約】
個別の吸音体(20a、20b)のアレイは、タイヤキャビティノイズを低減するために、空気式タイヤ(10)の環状トレッド部(12)の内面(122)、又はホイールリム(30)の環状リム表面(34)に取り付けられる。各吸音体(20a、20b)は、可撓性シート状基材(54)と、シート状スクリーン材(52)と、シート状基材(54)とシート状スクリーン材(52)とによって形成される閉空間内に配置される吸音体(56)と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸音体であって、
可撓性シート状基材と、
シート状スクリーン材と、
前記シート状基材と前記シート状スクリーン材とによって形成される閉空間内に配置される吸音材であって、前記吸音体の長手方向に沿って延びる、前記吸音材と、
を備える、吸音体。
【請求項2】
前記可撓性シート状基材が、約105%以上、約110%以上、任意選択的に、約115%以上の前記長手方向に沿った伸縮性を有する、請求項1に記載の吸音体。
【請求項3】
前記可撓性シート状基材が、ゴムフィルム、ポリウレタン(PU)フィルム、熱可塑性ポリウレタン(TPU)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、キャストポリプロピレン(CPP)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)、キャストポリエチレンテレフタレート(CPET)フィルム、又はTPU/PUコーティング布地のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の吸音体。
【請求項4】
前記シート状スクリーン材が、0.01mks rayl以上、1mks rayl以上、任意選択的に、1000mks rayl以上の流れ抵抗を有する、請求項1に記載の吸音体。
【請求項5】
前記シート状スクリーン材が、メッシュ布地、不織布、織布、ゴムフィルム、ポリウレタン(PU)フィルム、熱可塑性ポリウレタン(TPU)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、キャストポリプロピレン(CPP)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、キャストポリエチレンテレフタレート(CPET)フィルム、又はTPU/PUコーティング布地のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の吸音体。
【請求項6】
1つ以上の通気孔が、前記シート状スクリーン材上に形成されている、請求項1に記載の吸音体。
【請求項7】
前記吸音材が、ポリウレタン(PU)フォーム、ガラス繊維材料、鉱物繊維材料、ポリエステル繊維材料、ポリプロピレン繊維材料、吸音粒子が埋め込まれた不織繊維材料、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の吸音体。
【請求項8】
前記吸音材が、約1000mks rayl/m~約50000mks rayl/m、任意選択的に、約4000mks rayl/m~約6000mks rayl/mの範囲の流れ抵抗を有する、請求項1に記載の吸音体。
【請求項9】
前記吸音材が、約0.5mm~約200mm、約2mm~約100mm、任意選択的に、約5mm~約50mmの範囲の厚さを有する、請求項1に記載の吸音体。
【請求項10】
前記可撓性シート状基材上に配置された接着層を更に備える、請求項1に記載の吸音体。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の複数の吸音体を備える吸音体アセンブリであって、隣接する前記吸音体の前記吸音材が、間隙によって分離されている、吸音体アセンブリ。
【請求項12】
前記複数の前記吸音体が、接続部によって接続されている、請求項11に記載の吸音体アセンブリ。
【請求項13】
前記接続部が、吸音材を実質的に含まない、請求項12に記載の吸音体アセンブリ。
【請求項14】
空気式タイヤであって、
その周方向に延びる環状トレッド部と、
個別の吸音体のアレイであって、前記吸音体のうちの少なくとも1つが、請求項1~10のいずれか一項に記載の吸音体、又は請求項11~13のいずれか一項に記載の吸音体アセンブリである、個別の吸音体のアレイと、
を備え、
前記個別の吸音体がそれぞれ、前記環状トレッド部の内面に取り付けられており、前記個別の吸音体のアレイが、前記トレッド部の前記周方向に沿って分布されている、
空気式タイヤ。
【請求項15】
前記個別の吸音体がそれぞれ、接着層を介して前記環状トレッド部の前記内面に取り付けられている、請求項14に記載の空気式タイヤ。
【請求項16】
前記個別の吸音体のアレイが、前記トレッド部の前記内面の周方向長さの1%~100%の範囲の、前記トレッド部の前記周方向に沿った全長を有する、請求項13に記載の空気式タイヤ。
【請求項17】
前記隣接する吸音体の前記吸音材が、間隙によって分離されており、前記間隙は、前記トレッド部の前記内面の周方向長さの1%~99%の範囲の、前記トレッド部の前記周方向に沿った長さを有する、請求項13に記載の空気式タイヤ。
【請求項18】
ホイールリムであって、
その周方向に延びる環状リム表面と、
個別の吸音体のアレイであって、前記吸音体のうちの少なくとも1つが、請求項1~12のいずれか一項に記載の吸音体、又は請求項13に記載の吸音体アセンブリである、個別の吸音体のアレイと、
を備え、
前記個別の吸音体がそれぞれ、前記環状リム表面に取り付けられており、前記個別の吸音体のアレイが、前記環状リム表面の前記周方向に沿って分布されている、
ホイールリム。
【請求項19】
前記個別の吸音体がそれぞれ、接着層を介して前記環状リム表面の前記内面に取り付けられている、請求項18に記載のホイールリム。
【請求項20】
前記個別の吸音体のアレイが、前記環状リム表面の周方向長さの1%~100%の範囲の、前記環状リム表面の前記周方向に沿った全長を有する、請求項18に記載のホイールリム。
【請求項21】
前記隣接する吸音体の前記吸音材が、間隙によって分離されており、前記間隙は、前記環状リム表面の周方向長さの1%~99%の範囲の、前記環状リム表面の前記周方向に沿った長さを有する、請求項18に記載のホイールリム。
【請求項22】
請求項14に記載の空気式タイヤ、及び請求項18に記載のホイールリムのうちの少なくとも1つを備える、ホイール。
【請求項23】
タイヤキャビティノイズを低減する方法であって、
(i)空気式タイヤの環状トレッド部の内面、及び(ii)ホイールリムの環状リム表面、のうちの少なくとも1つに個別の吸音体のアレイを取り付けることを含み、
前記空気式タイヤが、密閉されたタイヤキャビティを形成するように前記ホイールリムに装着され、
前記吸音体のうちの少なくとも1つが、請求項1~10のいずれか一項に記載の吸音体、又は請求項11~13のいずれか一項に記載の吸音体アセンブリである、
方法。
【請求項24】
前記空気式タイヤ、及び前記ホイールリムのうちの少なくとも1つを自動車に取り付けることを更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記自動車が、乗用車、バス、トラック、又はトレーラのうちの少なくとも1つを含む、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
タイヤとビークルホイールのリムとの間に密閉されたキャビティは、他の空気キャビティと同様に、それ自体の共振周波数を有する。道路励振の周波数が、約200Hzであるタイヤキャビティの共振周波数と一致するとき、タイヤキャビティは共振し、タイヤ構造とタイヤキャビティとの間の結合に起因して激しい振動をもたらす。振動は、スピンドル力(すなわち、リム中心に加えられる反力)を増幅し、スピンドル力は、サスペンションシステムを介して車室内に更に伝達され得る。タイヤキャビティ共振ノイズ(又は略してタイヤキャビティノイズ)と呼ばれる、結果として生じる室内のノイズは、乗客によって容易に知覚され得る。このノイズは、低周波数の狭帯域ノイズであるため、非常に不快であり、室内の音質を著しく損なう。
【発明の概要】
【0002】
タイヤキャビティノイズを低減することが望まれている。本開示は、タイヤキャビティノイズを低減するための物品及び方法を提供する。一態様では、本発明は、可撓性シート状基材と、シート状スクリーン材と、シート状基材とシート状スクリーン材とによって形成される閉空間内に配置される吸音材であって、吸音体の長手方向に沿って延びる、吸音材と、を含む吸音体を説明する。
【0003】
別の態様では、本開示は、複数の上述の吸音体を含む吸音体アセンブリを説明する。隣接する吸音体の吸音材は間隙によって分離されており、吸音体のアレイは個別である。場合によっては、複数の吸音体は、接続部によって接続されている。
【0004】
別の態様では、本開示は、空気式タイヤであって、その周方向に延びる環状トレッド部と、個別の吸音体のアレイであって、吸音体のうちの少なくとも1つが、上述の吸音体、又は上述の吸音体アセンブリである、個別のアレイ吸音体アレイと、を含む、空気式タイヤを説明する。個別の吸音体はそれぞれ、環状トレッド部の内面に取り付けられており、個別の吸音体のアレイは、トレッド部の周方向に沿って分布されている。
【0005】
別の態様では、本開示は、ホイールリムであって、その周方向に延びる環状リム表面と、個別の吸音体のアレイであって、吸音体のうちの少なくとも1つが、上述の吸音体、又は上述の吸音体アセンブリである、個別の吸音体のアレイと、を含む、ホイールリムを説明する。個別の吸音体はそれぞれ、環状リム表面に取り付けられており、個別の吸音体のアレイは、環状リム表面の周方向に沿って分布されている。
【0006】
別の態様では、本開示は、空気式タイヤであって、その周方向に延びる環状トレッド部を含む、空気式タイヤと、個別の吸音体のアレイであって、吸音体のうちの少なくとも1つが、上述の吸音体、又は上述の吸音体アセンブリである、個別の吸音体のアレイと、を含む、ホイールを説明する。個別の吸音体はそれぞれ、環状トレッド部の内面に取り付けられており、個別の吸音体のアレイは、トレッド部の周方向に沿って分布されている。
【0007】
別の態様では、本開示は、ホイールリムであって、その周方向に延びる環状リム表面と、個別の吸音体のアレイであって、吸音体のうちの少なくとも1つが、上述の吸音体、又は上述の吸音体アセンブリである、個別の吸音体のアレイと、を含む、ホイールリムを含む、ホイールを説明する。個別の吸音体はそれぞれ、環状リム表面に取り付けられており、個別の吸音体のアレイは、環状リム表面の周方向に沿って分布されている。
【0008】
別の態様では、本開示は、タイヤキャビティノイズを低減する方法を説明する。この方法は、(i)空気式タイヤの環状トレッド部の内面、及び(ii)ホイールリムの環状リム表面、のうちの少なくとも1つに個別の吸音体のアレイを取り付けることを含む。空気式タイヤは、密閉されたタイヤキャビティを形成するようにホイールリムに装着される。吸音体の少なくとも1つは、上述の吸音体、又は上述の吸音体アセンブリである。
【0009】
様々な予期せぬ結果及び利点が、本開示の例示的な実施形態において得られる。本開示の例示的な実施形態の1つのそのような利点は、タイヤキャビティノイズを低減するための本明細書に記載される物品及び方法が、多孔質の吸音フォームの層がタイヤのトレッド部の内面上に取り付けられる典型的な解決策と比較して、タイヤキャビティ共振におけるより高いエネルギー消散及びより少ない追加の重量効果の点で、より良好な音響性能を提供することである。
【0010】
以上が本開示の例示的な実施形態の様々な態様及び利点の概要である。上記の「発明の概要」は、本開示の特定の例示的な実施形態の、図示される各実施形態又は全ての実現形態を説明することを意図するものではない。以下の図面及び「発明を実施するための形態」は、本明細書に開示される原理を使用する特定の好ましい実施形態を、より詳細に例示するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
以下の本開示の様々な実施形態の詳細な説明を添付図面と併せて検討することで、本開示をより完全に理解し得る。
【0012】
図1dash図1’は典型的な吸音体又はノイズダンパを含むタイヤの分解部分図である。
図1A】一実施形態による、個別の吸音体のアレイを含むタイヤの概略断面図である。
図1B図1Aのタイヤの斜視側面図である。
図2A】一実施形態による、個別の吸音体のアレイの斜視側面図である。
図2B】別の実施形態による、個別の吸音体のアレイの斜視側面図である。
図3】一実施形態による、個別の吸音体のアレイを含むホイールリムの斜視側面図である。
図4A】一実施形態による、個別の吸音体のアレイの斜視側面図である。
図4B】別の実施形態による、個別の吸音体のアレイの斜視側面図である。
図5】一実施形態による、吸音体アセンブリの概略断面図である。
図6A】一実施形態による、吸音体アセンブリの斜視側面図である。
図6B】別の実施形態による、吸音体アセンブリの斜視側面図である。
図7A】一実施形態による、吸音体アセンブリの斜視底面図である。
図7B】別の実施形態による、吸音体アセンブリの斜視底面図である。
図8】音響試験設置の概略正面図である。
【0013】
図面では、同様の参照符号は、同様の要素を示す。上記に特定した図面は、縮尺通りに描かれていないことがあり、本開示の様々な実施形態を説明しているが、「発明を実施するための形態」で指摘するように、他の実施形態もまた企図される。全ての場合において、本開示は、本明細書で開示される開示内容を、明示的な限定によってではなく、例示的な実施形態を表現することによって説明する。本開示の範囲及び趣旨に含まれる、数多くの他の修正形態及び実施形態を、当業者によって考案することができる点を理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ホイールのタイヤキャビティノイズを低減するための1つの典型的な解決策は、多孔質の吸音フォームの層をタイヤのトレッド部の内面上に接着することである。フォーム層は、タイヤの周方向に連続して延びている。図1’は、タイヤ10’のトレッド部12’の内面に取り付けられた連続フォーム層20’を含むタイヤ10’の分解部分図である。連続 フォーム層20’は、実質的に閉ループを形成するようにタイヤの周方向に延びている。この解決策は、ビークル用の市販タイヤ及びホイールによって広く採用されている。例えば、連続ポリウレタン(PU)フォーム層は、タイヤキャビティノイズを低減するために、ビークルタイヤの内側トレッド上に取り付けられている。
【0015】
本開示は、図1’に示されるような従来の解決策がいくつかの技術的欠点を有し得ることを見出した。第1に、ポリウレタン(PU)フォームの音響性能は、他の繊維状吸音材と比較して相対的に低い。所望の周波数範囲100Hz~300Hzにおける厚さ25mmのPUフォームのサンプルの垂直入射吸音係数は、0.1未満である。従って、ポリウレタン(PU)フォームは、その低い材料コストのために広く使用されてきたが、タイヤキャビティノイズ低減としては、望ましい材料ではない場合がある。更に、連続PUフォーム層をタイヤ上に接着するための労働コストは、タイヤ製造業者のもう1つの懸念事項である。より良好な接着状態を達成するために、通常、トレッドの内面上の型剥離層(0.5mm未満の厚さを有する)を研削除去する前処理が、接着プロセスの前に行われる。従って、タイヤに接着する連続フォーム層の面積が大きいほど、追加の労働コストが高くなる。例えば、典型的な自動車用タイヤの場合、前処理される面積は、約0.3~0.6mであり得る。接着面積は、接着剤の材料費にも比例する。更に、PUフォーム層を有するタイヤがパンクした場合、パンクした領域を覆うPUのフォームの部分は、修理作業の前に除去される必要がある。PUフォーム層全体を除去し、それを新しいものと交換することは困難であり、かつ費用がかかる場合がある。実際には、タイヤに取り付けられたPUフォーム層は、通常、25mmの厚さ及び150mm~180mmの範囲の幅を有する。典型的なタイヤ周長は、例えば、2.372mであり得る。それに対応して、PUフォームの密度が50kg/m、幅が150mmであると仮定すると、PUフォーム層の体積は8.9×10-3で、重量は445gとなる。このような追加の重量は、タイヤの燃料効率を低下させる可能性がある。
【0016】
本明細書に記載される物品及び方法のいくつかの実施形態は、従来の解決策に関する上記の問題に対処しながらタイヤキャビティノイズを低減するために提供される。本明細書に記載されるアプローチは、多孔質の吸音フォームの層がタイヤのトレッド部の内面上に取り付けられる典型的な解決策と比較して、タイヤキャビティ共振におけるより高いエネルギーの消散及びより少ない追加重量効果の点で、より良好な音響性能を提供する。図1Aは、一実施形態による、個別の吸音体20aのアレイを有する空気式タイヤ10の概略断面図である。図1Bは、図1Aのタイヤ10の斜視側面図である。空気式タイヤ10は、実質的に環状の形状を形成し、トレッド部12と、一対のサイドウォール部14と、軸方向に間隔を置いた一対のビード部16と、を含む。サイドウォール部14は、トレッド部12の端部から半径方向内側に延びており、ビード部16は、サイドウォール部14の内側端部に配置されている。トレッド部12は、外面121と、外面121とは反対側の内面122とを有する。空気式タイヤ10が、更に以下で説明する図3のホイールリム30などのホイールリムに装着されると、開放されたタイヤ空洞が閉じられ、環状の閉じたタイヤキャビティが形成される。いくつかの実施形態では、タイヤ10のキャビティに面する内面は、低空気透過性を有するインナーライナーゴムで覆われてもよい。
【0017】
空気式タイヤ10は、例えば、乗用車用チューブレスラジアルタイヤであってもよい。空気式タイヤ10は、車室内の静粛性が強く望まれる乗用車に使用される形態で作られていてもよく、又はトラック、オートバイ、航空機、自転車、トレーラなどの各種用途のためのタイヤであってもよい。また、空気式タイヤ10は、バイアスタイヤであってもよい。
【0018】
図1Aに示す実施形態では、個別の吸音体20aのアレイが、トレッド部12の内面122に取り付けられている。吸音体20aは、空気式タイヤ10の周方向に沿って分布されている。音波が1つの吸音体を通って次の吸音体に伝搬するときに、音響エネルギーは消散する。各吸音体20aは、例えば接着剤又は接着テープを介してトレッド部12の内面122に取り付けられている。接着剤又は接着テープは、例えば摂氏80度以上の高温に耐えることができる。例示的な接着テープとしては、例えば、3M Company(St.Paul,MN)から商品名9988 EGで市販されているものが挙げられる。多くの用途において、吸音体20aと空気式タイヤの内面122との間の結合は、最低回転速度が80km/hであり、持続時間が34時間である耐久性試験を規定するGB/T 4502-2016(ISO 10191)の基準下で、800,000サイクル以上の繰り返し荷重に耐えることができる。
【0019】
吸音体20aは、空気式タイヤ10の周方向に沿って個別に分布されている。吸音体20aは、隣接する吸音体の吸音材が間隙によって分離されるので、個別であるとみなされる。タイヤ10の周方向に沿った吸音体20aの長さ寸法は、例えば、約3mm~約2.5m、約10mm~約1m、又は約15mm~約0.5mの範囲であってもよい。タイヤ10の周方向に沿った吸音体20aの長さ寸法は、例えば、タイヤ10の内面122の周方向長さの約0.1%~約100%、約5%~約99%、約10%~約99%、又は約20%~約95%の範囲であってもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、隣接する吸音体は、例えば、以下で更に説明する図2A図2Bの接続部21(又は図6A及び図6Bの70c)などの接続部によって接続されてもよい。いくつかの実施形態では、隣接する吸音体は接続されなくてもよい。例えば、図2A図2Bに示す実施形態では、タイヤ10の周方向に沿って隣接する吸音体20aの間に間隙22がある。接続部21又は間隙22は、例えば、吸音体の長さの約1%~約100%の範囲の、周方向に沿った長さ寸法を有してもよい。吸音体20aは、タイヤ10の周方向に均等に分布されてもよい。隣接する吸音体は、接続部によって接続することができるが、隣接する吸音体の吸音材は間隙によって分離することができ、吸音体は個別であるとみなすことができることを理解されたい。
【0021】
吸音体20aは、例えば、約5mm~約250mmの範囲の、タイヤ10の周方向に対して実質的に垂直な方向に沿った幅を有してもよい。吸音体の幅は、例えば、トレッド部12のトレッド幅の約1%~約150%の範囲であってもよい。空気式タイヤ10のトレッド部12のトレッド幅は、特に限定されないが、60mm~315mmの幅であってもよい。用語「トレッド幅」は、空気式タイヤ10の中心軸を含む断面視において、空気式タイヤ10が路面に接地する部分の幅を意味する。トレッド幅は、実際に測定されたトレッド部12の幅に限定されるものではなく、規格指定で与えられる幅寸法であってもよい。
【0022】
図2Aは、一実施形態による吸音体アセンブリ210を示す。吸音体アセンブリ210は、図1Aのトレッド部12の内面122に取り付けられる吸音体20aのアレイを含む。隣接する吸音体20aは、それぞれの接続部21によって接続され、連続したテープ、バンド、又はストリップを形成する。隣接する吸音体20aは接続部21によって接続されているが、接続部21は吸音材を実質的に含まず、隣接する吸音体の吸音材が個別であってもよいことを理解されたい。吸音体アセンブリ210がタイヤトレッド部の内面に装着されると、吸音体アセンブリ210のヘッドとテールとの間に間隙22が形成される。場合によっては、吸音体アセンブリ210がタイヤトレッド部の内面に装着されると、接続部21は、吸音体アセンブリ210のヘッドとテールを接続して、閉ループを形成することができる。
【0023】
図2Bは、図1Aのトレッド部12の内面122に取り付けることができる複数の個別の吸音体アセンブリとして配置された吸音体20aのアレイを示す。隣接する吸音体20aは、それぞれの接続部21によって接続されて、吸音体アセンブリ210a、210b、210c又は210dを形成し、これらは、タイヤトレッド部の内面に装着されたときに間隙22によって分離される。このレイアウトは、個別の吸音体のアレイ全体を交換することなく、損傷した吸音体を新しいものと交換するのに有益であることを理解されたい。吸音体アセンブリは、任意の数の隣接する吸音体を接続することによって形成することができることを理解されたい。吸音体のアレイは、任意の数の吸音体アセンブリを含むことができることも理解されたい。
【0024】
図3は、一実施形態による、個別の吸音体20bのアレイを含むホイールリム30の斜視側面図である。ホイールリム30は、図1Aのビード部16などのタイヤビード部が着座する一対のビードシート32を含む。ホイールリム30は、リム表面34を有する。空気式タイヤがホイールリム30に装着されると、開放されたタイヤ空洞が閉じられ、環状の閉じたタイヤキャビティが形成されて、ホイールリム30のリム表面34が環状の閉じたタイヤキャビティに面する。
【0025】
図3に示す実施形態では、個別の吸音体20bのアレイが、リム表面34に取り付けられている。吸音体20bは、ホイールリム30の周方向に沿って分布されている。各吸音体は、例えば接着剤又は接着テープを介してリム表面34に取り付けられている。接着剤又は接着テープは、例えば摂氏80度以上の高温に耐えることができる。例示的な接着テープとしては、例えば、3M Company(St.Paul,MN)から商品名9988 EGで市販されているものが挙げられる。多くの用途において、吸音体20aとホイールリム30のリム表面34との間の結合は、最低回転速度が80km/hであり、持続時間が34時間である耐久性試験を規定するGB/T 4502-2016(ISO 10191)の基準下で、800,000サイクル以上の繰り返し荷重に耐えることができる。
【0026】
吸音体20bは、ホイールリム30の周方向に沿って個別に分布されている。吸音体20bは、隣接する吸音体の吸音材が間隙によって分離されているので、個別であるとみなされる。音波が1つの吸音体から別の吸音体へ通過するときに、音波のエネルギーは消散する。ホイールリム30の周方向に沿った吸音体20bの長さ寸法は、例えば、約3mm~約2.5m、約10mm~約1m、又は約15mm~約0.5mの範囲であってもよい。ホイールリム30の円周方向に沿った吸音体20bの長さ寸法は、例えば、リム表面34の周方向長さの約0.15%~約100%、約5%~約99%、約10%~約99%、又は約20%~約95%の範囲であってもよい。
【0027】
隣接する吸音体20bは、接続部21によって接続されてもよく、又は間隙22によって分離されてもよい。接続部21又は間隙22は、例えば、吸音体の長さの約1%~約100%の範囲の、周方向に沿った長さ寸法を有してもよい。いくつかの実施形態では、隣接する吸音体は、例えば、以下で更に説明する図4の接続部70cなどの接続部によって接続されてもよい。吸音体20bは、ホイールリム30の周方向に均等に分布されてもよい。隣接する吸音体は、接続部によって接続することができるが、隣接する吸音体の吸音材は間隙によって分離することができ、吸音体は個別であるとみなすことができることを理解されたい。
【0028】
吸音体20bは、例えば、約5mm~約200mmの範囲の、ホイールリム30の周方向に対して実質的に垂直な方向に沿った幅を有してもよい。吸音体の幅は、例えば、ホイールリム30のリム幅の約1.5%~約100%の範囲であってもよい。ホイールリム30の幅は、特に限定されないが、127mm~317.5mmの幅であってもよい。用語「リム幅」は、一対のビードシート32間の軸方向距離を意味する。
【0029】
図4Aは、一実施形態による吸音体アセンブリ410を示す。吸音体アセンブリ410は、図3のリム30のリム表面34に取り付けられる吸音体20bのアレイを含む。隣接する吸音体20bは、それぞれの接続部21によって接続され、連続したテープを形成する。吸音体アセンブリ410がリム表面34に装着されると、吸音体アセンブリ410のヘッドとテールとの間に間隙22が形成される。場合によっては、吸音体アセンブリ410がリム30のリム表面34に装着されると、接続部21は、吸音体アセンブリ410のヘッドとテールとを接続して、閉じたバンドを形成することができる。この閉ループ構成は、ホイールが回転しているときの遠心力に抵抗するのに有益であることを理解されたい。場合によっては、閉じたバンド構成における接続部21は、熱収縮性フィルムで作られてもよい。熱収縮性フィルムが、例えば、オーブン内で、又はヒートガンを用いて加熱されると、閉じたバンド構成は、その周方向長さを収縮させることができ、その結果、個別の吸音体20bをリム30にしっかりと接合することができる。
【0030】
図4Bは、図3のリム30のリム表面34に取り付けることができる複数の個別の吸音体アセンブリとして配置された、吸音体20bのアレイを示す。隣接する吸音体20bは、それぞれの接続部21によって接続されて、吸音体アセンブリ410a、410b、410c、又は410dを形成し、これらは、リムに装着されたときに間隙22によって分離される。このレイアウトは、個別の吸音体のアレイ全体を交換することなく、損傷した吸音体を新しいものと交換するのに有益であることを理解されたい。吸音体アセンブリは、任意の数の隣接する吸音体を接続することによって形成することができることを理解されたい。吸音体のアレイは、任意の数の吸音体アセンブリを含むことができることも理解されたい。
【0031】
図5は、一実施形態による、吸音体アセンブリ510の概略断面図である。吸音体アセンブリ510は、複数の吸音体20a(例えば、図1Aを参照)、又は吸音体20b(例えば、図3を参照)を含む。各吸音体20a又は20bは、シート状スクリーン材52とシート状基材54とを含み、それぞれの周縁部で接続されて閉空間を形成している。基材54とスクリーン材52とによって形成される閉空間には、吸音材56が配置される。接着要素58は、吸音体アセンブリ510を表面上に取り付けるために提供される。隣接する吸音体20a又は20bは接続部21によって接続することができ、接続部は、シート状スクリーン材52、シート状基材54、又は隣接する吸音体20a若しくは20bの間の間隙領域に延びる接着要素58のうちの少なくとも1つを含むことができる。接続部21は、隣接する吸音体20a又は20bを接続するために他の適切な材料を含むことができることを理解されたい。接続部21は、吸音材56を実質的に含まず、隣接する吸音材56は個別であってもよい。
【0032】
吸音体アセンブリ510が使用されているとき、吸音体がリム表面(例えば、図3のリム30のリム表面34)又はタイヤトレッド部(例えば、図1Aのトレッド部12の内面122)に取り付けられている場合、スクリーン材52は空気キャビティに面している。スクリーン材52は、例えば熱可塑性ポリウレタン(TPU)フィルムなどの1つ以上のシート状材料を含むことができる。機械的な観点から、スクリーン材は、タイヤが変形するとき又はリムが回転するときに吸音体が大きな変形を受ける際に、吸音体を保護することができることを理解されたい。音響的な観点から、スクリーン材は、吸音材56の低周波吸収を変化させ得ることを理解されたい。スクリーン材の音響性能は、その音響インピーダンスZによって決定され、それは、その面密度及び流動抵抗の複素関数である。この関係を記述する解析公式は、
【数1】
であり、式中、ρareaはスクリーン材の面密度であり、Rはその流動抵抗である。用語「面密度」は、単位面積当たりの質量として定義される。用語「流動抵抗」は、試験規格ASTM C522又はISO 9053に従って測定することができる、1つの材料の空気透過性を示す。好適なスクリーン材の場合、その面密度は、例えば、約0.5g/m2~10000g/m、又は約1g/m2~1000g/mであり得る。その流動抵抗は、例えば、0.01mks rayl以上、1mks rayl以上、又は1000mks rayl以上であり得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、空気不透過性スクリーン材(例えば、TPUフィルム)を使用することができる。用語「空気不透過性」は、上記の式における無限の大きな流動抵抗Rを指し、不透過性スクリーン材が純粋なリアクタンスインピーダンスを導入することを示す。空気不透過性スクリーン材の純粋なリアクタンスインピーダンスは、吸音体の低周波吸収を増大させるのに有益であることを理解されたい。
【0034】
いくつかの実施形態では、多孔質スクリーン材(例えば、音響メッシュ布地)が使用されてもよい。多孔質材料は、空気不透過性材料と比較して、比較的小さい値の流動抵抗Rを有する。多孔質スクリーン材は、ほぼ純粋な抵抗インピーダンス、すなわち、Z≒Rを導入することができる。従って、多孔質スクリーン材の存在は、吸音体の低周波吸収を増大させないことがある一方で、吸音体の表面インピーダンスをRだけ増加させることがある。用語「表面インピーダンス」は、吸音体の表面で測定される音響インピーダンスとして定義される。
【0035】
基材54は、例えばポリウレタン(PU)フィルムなどの1つ以上の可撓性材料を含むことができる。基材は、湾曲面(例えば、リム表面又はタイヤトレッド部の内面)に取り付けられたときに所望の変形能力を有する任意の好適な可撓性材料を含んでもよいことを理解されたい。基材54は、それが取り付けられた表面から歪み又は伸張を受けるときに、吸音体の機械的完全性に影響を及ぼすことなく基材54が対応して変形することができるように、伸張可能又は適合可能である。いくつかの実施形態では、基材の破損までの最大伸度は、例えば、105%以上、110%以上、又は115%以上であり得る。吸音体がホイールタイヤの内面に配置されると、基材がトレッド部から伝達される周期的な歪みを受けることがあり、ホイールタイヤのトレッド部の接地と接地解除とが繰り返されることによって熱を発生させることがある。基材は、それ自体が耐水性及び耐油性であることができ、又は基材上に耐水性及び耐油性コーティングを有することができる。
【0036】
基材54とスクリーン材52とによって形成される閉空間には、吸音材56が配置される。いくつかの実施形態では、吸音材は不織繊維から作られる。吸音材は、音波が吸音材の多孔質微細構造を通過するときに音減衰を有する任意の適切な可撓性材料を含んでもよいことを理解されたい。吸音材料の流れ抵抗は、その音減衰性能を決定するための1つの重要な材料パラメータである。いくつかの実施形態では、吸音材料の流れ抵抗は、例えば、約1000mks rayl/m~約50000mks rayl/m、約2000mks rayl/m~約20000mks rayl/m、約3000mks rayl/m~約10000mks rayl/m、又は約4000mks rayl/m~約6000mks rayl/mの範囲であってもよい。用語「流れ抵抗」は、厚さに対する流れ抵抗の比として定義される。吸音材が耐えることができる最大温度は、例えば、摂氏約80度~摂氏約180度の範囲であり得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、吸音材56及び不透過性スクリーン材52は、2つの材料間の緩い接続に起因して空隙が存在するように、互いに密着も接合もされなくてよい。それらの間の空隙は、吸音体の低周波吸収を更に増大させることができる。
【0038】
吸音材56の厚さは、例えば、約0.5mm~約200mm、約1mm~約100mm、又は約5mm~約50mmの範囲であってもよい。基材の長手方向に沿った吸音材56の長さ寸法は、例えば、約3mm~約2mの範囲であってもよい。基材の長手方向に対して垂直な吸音材の幅寸法は、例えば、約5mm~約250mmの範囲であってもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、吸音体の内側と外側との間で空気圧を均衡させるために、通気孔をスクリーン材(例えば、図5のスクリーン材52)上に設けることができる。図6A及び図6Bに示す実施形態では、吸音体アセンブリ710及び720はそれぞれ、接続部70c又は70c’を介して並んで接続された2つの吸音体、又は吸音パッチ70a及び70bを含む。吸音パッチ70a及び70bのそれぞれは、図5に示す吸音体20a又は20bと同様の構成を有していてもよい。図6Aに示すように、接続部70cは、2つの隣接する吸音パッチを接続しており、吸音体510のシート状スクリーン材52とシート状基材54とを含んでいてもよい。図6Bに示すような別の実施形態では、接続部70c’の少なくとも一部は、シート状基材54を含むが、スクリーン材52を含まなくてもよい。機械的な観点から、接続部70c又は70c’により、吸音体アセンブリ710又は720は、容易に曲げることができ、様々なリム表面34及びトレッド部12の様々な内面122に容易に収容することができる。音響的観点から、接続部70c又は70c’は、音波が一方の吸音体から他方の吸音体に伝搬するときに、2つの隣接する吸音体の間に音響インピーダンス変化を導入して、より多くのエネルギー消散を提供することができる。また、接続部70cは修理性についても有利である。吸音体アセンブリの1つの吸音体が損傷して新しいものと交換する必要があるとき、交換される吸音体を接続部で切断することは容易である。通気孔70d/70eは、吸音体の内側と外側との間で空気圧を均衡させるために、スクリーン材52に配置される。通気孔70d/70eは、同様の機能を達成するために、多孔質材料で作ることができることを理解されたい。
【0040】
再び図5を参照すると、接着要素58は、吸音体アセンブリ510を表面上に取り付けるために提供される。図7A及び図7Bは、接着層(複数可)又はテープ(複数可)の様々な構成及び配置を示す。図7Aでは、接着剤又は接着要素58aの連続層が、隣接する吸音体20a/20bの下のベースシート状材料に取り付けられている。接着剤又は接着要素58aは、接続部21にわたって連続的に延びる。接着剤又は接着テープの連続的なレイアウトは、製造を容易にするために有益である。図7Bでは、不連続接着剤又は接着テープ58bが、それぞれの吸音体20a/20bの下の基材に取り付けられている。接着層又は接着テープ58bは、接続部21において接続されていない。接着剤又は接着テープの不連続なレイアウトは、1つの吸音体を交換する必要がある場合の補修性に有益であることを理解されたい。
【0041】
別段の指示がない限り、本明細書及び実施形態で使用される量又は原料、特性の測定値などを表す全ての数は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されていると理解されるものとする。したがって、反対の指示がない限り、前述の明細書及び添付の実施形態のリストに記載される数値パラメータは、本開示の教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変化し得る。最低でも、各数値パラメータは少なくとも、報告される有効桁の数に照らして通常の丸め技法を適用することにより解釈されるべきであるが、このことは特許請求される記載の実施形態の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではない。
【0042】
本開示の例示的な実施形態は、本開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく、様々な修正及び変更が行われ得る。したがって、本開示の実施形態は、以下に記載の例示的な実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている限定及びこれらの任意の均等物により支配されるものであることは理解されたい。
【0043】
例示的な実施形態のリスト
例示的な実施形態を以下に列挙する。実施形態1~14、15~17、18~23、24~29、30、31、及び32~34のいずれか1つを、組み合わせることができることを理解されたい。
【0044】
実施形態1は、吸音体であって、
可撓性シート状基材と、
シート状スクリーン材と、
シート状基材とシート状スクリーン材とによって形成される閉空間内に配置される吸音材であって、吸音体の長手方向に沿って延びる、吸音材と、
を備える、吸音体である。
【0045】
実施形態2は、可撓性シート状基材が、約105%以上、約110%以上、又は任意選択的に、約115%以上の長手方向に沿った伸縮性を有する、実施形態1に記載の吸音体である。
【0046】
実施形態3は、可撓性シート状基材が、耐水性及び耐油性材料を含む、実施形態1又は2に記載の吸音体である。
【0047】
実施形態4は、可撓性シート状基材が、ゴムフィルム、ポリウレタン(PU)フィルム、熱可塑性ポリウレタン(TPU)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、キャストポリプロピレン(CPP)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)、キャストポリエチレンテレフタレート(CPET)フィルム、又はTPU/PUコーティング布地のうちの少なくとも1つを含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の吸音体である。
【0048】
実施形態5は、シート状スクリーン材が、0.01mks rayl以上、1mks rayl以上、又は1000mks rayl以上の流れ抵抗を有する、実施形態1~4のいずれか1つに記載の吸音体である。
【0049】
実施形態6は、シート状スクリーン材が、約0.5g/m~10000g/m、又は約1g/m~1000g/mの面密度を有する、実施形態1~5のいずれか1つに記載の吸音体である。
【0050】
実施形態7は、シート状スクリーン材が、メッシュ布地、不織布、織布、ゴムフィルム、ポリウレタン(PU)フィルム、熱可塑性ポリウレタン(TPU)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、キャストポリプロピレン(CPP)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、キャストポリエチレンテレフタレート(CPET)フィルム、又はTPU/PUコーティング布地のうちの少なくとも1つを含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の吸音体である。
【0051】
実施形態8は、1つ以上の通気孔が、シート状スクリーン材上に形成されている、実施形態1~7のいずれか1つに記載の吸音体である。
【0052】
実施形態9は、吸音材が、ポリウレタン(PU)フォーム、ガラス繊維材料、鉱物繊維材料、ポリエステル繊維材料、ポリプロピレン繊維材料、吸音粒子が埋め込まれた不織繊維材料、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の吸音体である。
【0053】
実施形態10は、吸音材が、約1000mks rayl/m~約50000mks rayl/m、任意選択的に、約4000mks rayl/m~約6000mks rayl/mの範囲の流れ抵抗を有する、実施形態1~9のいずれか1つに記載の吸音体である。
【0054】
実施形態11は、吸音材が、約0.5mm~約200mm、任意選択的に、5mm~約50mmの範囲の厚さを有する、実施形態1~10のいずれか1つに記載の吸音体である。
【0055】
実施形態12は、吸音材が、約3mm~約2.5mの範囲の長手方向に沿った長さを有する、実施形態1~11のいずれか1つに記載の吸音体である。
【0056】
実施形態13は、吸音材が、約5mm~約200mmの範囲の幅を有する、実施形態1~12のいずれか1つに記載の吸音体である。
【0057】
実施形態14は、可撓性シート状基材上に配置された接着層を更に備える、実施形態1~13のいずれか1つに記載の吸音体である。
【0058】
実施形態15は、実施形態1~14のいずれか1つに記載の複数の吸音体を備える吸音体アセンブリであって、隣接する吸音体の吸音材が、間隙によって分離されている、吸音体アセンブリである。
【0059】
実施形態16は、複数の吸音体が、接続部によって接続されている、実施形態15に記載の吸音体アセンブリである。
【0060】
実施形態17は、接続部が、吸音材を実質的に含まない、実施形態16に記載の吸音体アセンブリである。
【0061】
実施形態18は、空気式タイヤであって、
その周方向に延びる環状トレッド部と、
個別の吸音体のアレイであって、吸音体のうちの少なくとも1つが、実施形態1~14のいずれか1つに記載の吸音体、又は実施形態15~17のいずれか1つに記載の吸音体アセンブリである、個別の吸音体のアレイと、
を備え、
個別の吸音体がそれぞれ、環状トレッド部の内面に取り付けられており、個別の吸音体のアレイが、トレッド部の周方向に沿って分布されている、空気式タイヤである。
【0062】
実施形態19は、少なくとも1つの吸音体の可撓性シート状基材が、トレッド部の周方向に沿って伸長している、実施形態18に記載の空気式タイヤである。
【0063】
実施形態20は、個別の吸音体がそれぞれ、接着層を介して環状トレッド部の内面に取り付けられている、実施形態18又は19に記載の空気式タイヤである。
【0064】
実施形態21は、個別の吸音体のアレイが、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、又は任意選択的に、少なくとも6つの吸音体を含む、実施形態18~20のいずれか1つに記載の空気式タイヤである。
【0065】
実施形態22は、個別の吸音体のアレイが、トレッド部の内面の周方向長さの1%~100%の範囲の、トレッド部の周方向に沿った全長を有する、実施形態18~21のいずれか1つに記載の空気式タイヤである。
【0066】
実施形態23は、隣接する吸音体の吸音材が、間隙によって分離されており、間隙は、トレッド部の内面の周方向長さの1%~99%の範囲の、トレッド部の周方向に沿った長さを有する、実施形態18~22のいずれか1つに記載の空気式タイヤである。
【0067】
実施形態24は、ホイールリムであって、
その周方向に延びる環状のリム表面と、
個別の吸音体のアレイであって、吸音体のうちの少なくとも1つが、実施形態1~14のいずれか1つに記載の吸音体、又は実施形態15~17のいずれか1つに記載の吸音体アセンブリである、個別の吸音体のアレイと、
を備え、
個別の吸音体がそれぞれ、環状リム表面に取り付けられており、個別の吸音体のアレイが、環状リム表面の周方向に沿って分布されている、ホイールリムである。
【0068】
実施形態25は、少なくとも1つの吸音体の可撓性シート状基材が、環状リム表面の周方向に沿って伸長している、実施形態24に記載のホイールリムである。
【0069】
実施形態26は、個別の吸音体がそれぞれ、接着層を介して環状リム表面の内面に取り付けられている、実施形態24又は25に記載のホイールリムである。
【0070】
実施形態27は、個別の吸音体のアレイが、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、又は任意選択的に、少なくとも6つの吸音体を含む、実施形態24~26のいずれか1つに記載のホイールリムである。
【0071】
実施形態28は、個別の吸音体のアレイが、環状リム表面の周方向長さの1%~100%の範囲の、環状リム表面の周方向に沿った全長を有する、実施形態24~27のいずれか1つに記載のホイールリムである。
【0072】
実施形態29は、隣接する吸音体の吸音材が、間隙によって分離されており、間隙は、環状リム表面の周方向長さの1%~99%の範囲の、環状リム表面の周方向に沿った長さを有する、実施形態24~28のいずれか1つに記載のホイールリムである。
【0073】
実施形態30は、実施形態18~23のいずれか1つに記載の空気式タイヤを備える、ホイールである。
【0074】
実施形態31は、実施形態24~29のいずれか1つに記載のホイールリムを備える、ホイールである。
【0075】
実施形態32は、タイヤキャビティノイズを低減する方法であって、
(i)空気式タイヤの環状トレッド部の内面、及び(ii)ホイールリムの環状リム表面、のうちの少なくとも1つに個別の吸音体のアレイを取り付けることを含み、
空気式タイヤが、密閉されたタイヤキャビティを形成するようにホイールリムに装着され、
吸音体のうちの少なくとも1つが、実施形態1~14のいずれか1つに記載の吸音体、又は実施形態15~17のいずれか1つに記載の吸音体アセンブリである、
方法である。
【0076】
実施形態33は、空気式タイヤ、及びホイールリムのうちの少なくとも1つを自動車に取り付けることを更に含む、実施形態32に記載の方法である。
【0077】
実施形態34は、自動車が、乗用車、バス、トラック、又はトレーラのうちの少なくとも1つを含む、実施形態33に記載の方法である。
【0078】
本開示の作用を、以下の詳細な実施例に関して、更に記載する。これらの実施例は、様々な具体的な好ましい実施形態及び技法を更に示すために提供される。しかしながら、本開示の範囲内に留まりつつ、多くの変更及び修正を加えることができるということが理解されるべきである。
【実施例
【0079】
これらの実施例は、単に例証を目的としたものであり、添付の特許請求の範囲を過度に限定することを意図するものではない。本開示の幅広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似値であるが、具体的な実施例において示される数値は、可能な限り正確に報告している。しかしながら、いずれの数値にも、それぞれの試験測定値において見出される標準偏差から必然的に生じる、特定の誤差が本質的に含まれる。最低でも、各数値パラメータは少なくとも、報告される有効桁の数に照らして通常の丸め技法を適用することにより解釈されるべきであるが、このことは特許請求の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではない。
【0080】
試験方法
異なる音響処理の性能を評価するために、「タイヤキャビティ共振管」と呼ばれる音響試験方法が開発されている。この試験では、20cm×20cmの内側断面を有するまっすぐなチューブを使用して、ハーフタイヤキャビティをシミュレートする。従って、まっすぐなチューブの長さは、環状タイヤキャビティの平均長さの半分に等しい。まっすぐなチューブの長さは、タイヤキャビティの共振周波数に直接関連し、これは、
【数2】
によって与えられ、式中、fは第1のキャビティモードの共振周波数であり、Lはチューブの長さである。試験では、まっすぐなチューブの長さは1mに設定され、これは、2mの環状タイヤキャビティの平均長さを有するタイヤを示す。対応するタイヤキャビティ共振周波数は171.5Hzであり、これは多くの大型タイヤに共通の共振周波数である。
【0081】
図8は、音響試験設置の概略正面図である。まっすぐなチューブの一端は閉じられており、他端はピストンパネルによって閉じられている。ピストンパネル86の位置は、異なるタイヤサイズに従って調整することができる。ピストンパネルには、加速度計82及びマイクロフォン86がピストンパネルの中心に装着されている。試験中、力ハンマー86を使用してピストンパネルの中心にパルス力を加える。ピストンの中心における加速度応答及び音圧応答は、加速度計82及びマイクロフォン86によってそれぞれ測定される。音圧応答と加速度応答との間の周波数応答関数の振幅が最終的に決定され、第1のキャビティモードでの損失係数を計算するために使用される。損失係数は、減衰測定規格ISO 16940による「ハーフパワー」法に基づいて計算される。損失係数が高いほど、対応する音響処理、すなわち、チューブ内に配置された吸音体20a/20bによって導入されるエネルギー消散が大きくなる。
【0082】
実施例及び比較例
本開示の個別の吸音体の音響性能を、市場の典型的なPUフォームの解決策と比較するために、以下の実施例及び比較例を試験する。ベンチマークは、チューブに音響処理が施されていない場合である。比較例1は、まっすぐなチューブの底面に結合するPUフォームの連続層を使用する。PUフォームの長手方向の長さ、幅及び高さは、それぞれ1m、150mm、及び25mmである。PUフォームは、50kg/mのかさ密度を有し、8000mks rayl/mの流れ抵抗を有する。比較例2は、比較例1と同じPUフォーム材料を使用する。比較例2では、9つのPUフォーム部材がチューブ長さ方向に均等に分布され、まっすぐなチューブの底面に接合される。各PUフォーム部材の長手方向の長さ、幅、及び高さは、70mm、150mm、及び25mmである。2つの隣接するPUフォーム部材間の間隙は、10mmである。比較例3は、比較例1と同じPUフォーム材料を使用する。比較例3では、連続PUフォーム層の厚さを40mmに増加させる。
【0083】
実施例1は、本開示の個別の吸音体(複数可)を使用する。9つの個別の吸音体のアセンブリが、チューブの底面に接合される。各吸音体は同じ構造を有する。スクリーン材は、0.1mmのTPUフィルムから作られる。それは、60g/mの面密度を有し、空気不透過性である。空気不透過性スクリーン材は、吸音材の低周波吸収を増大させることができることを理解されたい。吸音材は、ポリエステル繊維材料から作られる。それは、6000rayl/mの流れ抵抗、及び400g/mの面密度を有する。吸音材の長手方向の長さ、幅、及び高さは、それぞれ70mm、150mm、及び25mmである。基材は、0.1mmのPUフィルムから作られる。基材は、60g/mの面密度を有する。スクリーン材と吸音材は、取り付けも接合もされておらず、それらの間に緩い接続が導入され、これにより、低周波吸収が更に増大する。2つの隣接する吸音体間の間隙は、10mmである。
【0084】
実施例2は、実施例1と同じ個別レイアウト、同じスクリーン材、及び同じ基材を使用する。実施例1とは異なり、各吸音体パッチにおける実施例2の吸音材は、異なる音材料の2つの層から構成される。スクリーン材に面する上層は、13mm厚のポリプロピレン繊維層である。それは、1100mks rayl/mの流れ抵抗、及び96g/mの面密度を有する。基材に面する底層は、12mm厚のポリエステル繊維層である。それは、5000mks rayl/mの流れ抵抗、及び300g/mの面密度を有する。上層は、底層よりも低い流れ抵抗を有し、これは、低周波吸収に有益である。吸音体がタイヤトレッド部に接合されるとき、底層は、ホイールが回転しているときの遠心力に対する剛性抵抗を提供する。上層及び下層は接合されなかった。
【0085】
試験結果
各ケースの第1キャビティモードでの損失係数を測定し、比較のために使用した。試験結果を以下の表1に列挙する。各ケースの総重量を、表の第3列に列挙する。比較例1と実施例1又は実施例2とを比較することによって、本開示の個別の吸音体は、損失係数において78%の増加を達成することができ、市場の典型的なPUフォームの解決策よりも良好な音響性能を示すことが見出された。音響性能に加えて、本開示の個別の吸音体は、66.5%の総重量低減を達成することができ、これは、タイヤの燃料効率にとって有益である。比較例2と実施例1又は実施例2とを比較することによって、同じレイアウトであっても、本開示の個別の吸音体(複数可)は、個別のPU部材よりもはるかに高い損失係数を示すことが見出された。比較例3と実施例1又は実施例2との比較によって、連続PUフォーム層の厚さを40mmに増加させても、その損失係数は個別の吸音体よりも依然として低いことが見出された。
【0086】
【表1】
_
【0087】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」、又は「ある実施形態」に対する言及は、「実施形態」という用語の前に、「例示的な」という用語が含まれているか否かにかかわらず、その実施形態に関連して説明される具体的な特徴部、構造、材料、又は特性が、本開示の特定の例示的な実施形態のうちの少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して、様々な箇所における「1つ以上の実施形態において」、「特定の実施形態において」、「一実施形態において」、又は「ある実施形態において」などの表現の出現は、必ずしも本開示の特定の例示的な実施形態のうちの同一の実施形態に言及するものとは限らない。更に、具体的な特徴部、構造、材料、又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の好適な方法で組み合わされてもよい。
【0088】
本明細書では特定の例示的な実施形態について詳細に説明してきたが、当業者には、上述の説明を理解した上で、これらの実施形態の変更形態、変形形態、及び均等物を容易に想起できることが理解されよう。したがって、本開示は、ここまで説明してきた例示的な実施形態に過度に限定されるものではないことを理解されたい。特に、本明細書で使用するとき、端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含されるあらゆる数値を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)ことが意図される。加えて、本明細書で使用される全ての数は、用語「約」によって修飾されるものと想定される。更に、種々の例示的な実施形態が説明されてきた。これらの実施形態及び他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内にある。
図1A
図1B
図1dash
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
【国際調査報告】