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  • 特表-神経因性感作障害の治療 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-24
(54)【発明の名称】神経因性感作障害の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/66 20060101AFI20240117BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240117BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240117BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
A61K31/66
A61P27/02
A61P29/00
A61P25/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541745
(86)(22)【出願日】2022-01-10
(85)【翻訳文提出日】2023-09-06
(86)【国際出願番号】 US2022011874
(87)【国際公開番号】W WO2022150730
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】63/205,848
(32)【優先日】2021-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518144573
【氏名又は名称】アイビュー セラピューティクス,インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】5 Cedar Brook Drive, Suite 2, Cranbury, NJ 08512, United States
(74)【代理人】
【識別番号】110003487
【氏名又は名称】弁理士法人東海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,エドワード
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA34
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA58
4C086NA10
4C086ZA08
4C086ZA21
4C086ZA33
(57)【要約】
とりわけ、本発明は、神経因性眼痛障害の治療を必要とする対象における神経因性眼痛障害を治療するための方法であって、治療有効量の1-ジ-イソプロピル-ホスフィノイル-アルカン(DIPA)化合物を対象の眼表面に少なくとも1週間局所適用することを含み、DIPA化合物はDIPA化合物を眼表面に集中送達するように適合されている液体ビヒクルに溶解されている、方法を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経因性眼痛障害の治療を必要とする対象における神経因性眼痛障害を治療するための方法であって、治療有効量の1-ジ-イソプロピル-ホスフィノイル-アルカン(DIPA)化合物を前記対象の眼表面に少なくとも1週間局所適用することを含み、前記DIPA化合物は液体ビヒクルに溶解されており、前記液体ビヒクルは前記DIPA化合物を前記眼表面に集中送達するように適合されている、方法。
【請求項2】
前記DIPA化合物が0.5~5mg/mlの濃度で前記液体ビヒクルに溶解されており、前記液体ビヒクルが前記DIPA化合物を前記眼表面に送達する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液体ビヒクルが水溶液である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記液体ビヒクルが水または等張食塩水である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記DIPA化合物が0.5~5mg/mlの濃度で前記液体ビヒクルに溶解される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記液体ビヒクルに溶解された前記DIPA化合物が、ワイプによって前記対象の前記眼表面に送達される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記液体ビヒクルに溶解された前記DIPAが、前記対象の前記眼表面に1日4回適用される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記DIPA化合物が、
【化1】
である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記DIPA化合物が、
【化2】
【化3】
である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記DIPA化合物が、
【化4】
である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記神経因性眼痛障害がドライアイ疾患または眼の手術によって引き起こされる、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記神経因性眼痛障害が眼の外傷によって引き起こされる、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
神経因性眼痛障害の治療を必要とする対象において神経因性眼痛障害を治療するための局所薬剤であって、治療有効量の1-ジ-イソプロピル-ホスフィノイル-アルカン(DIPA)化合物を含有する水溶液を含む、局所薬剤。
【請求項14】
前記水溶液中の前記DIPA化合物の濃度が0.5~5mg/mLである、請求項13に記載の局所薬剤。
【請求項15】
前記DIPA化合物が、
【化5】
である、請求項13または14に記載の局所薬剤。
【請求項16】
前記神経因性眼痛障害がドライアイ疾患または眼の手術によって引き起こされる、請求項13~15のいずれか1項に記載の局所薬剤。
【請求項17】
前記神経因性眼痛障害が眼の手術によって引き起こされる、請求項13~15のいずれか1項に記載の局所薬剤。
【請求項18】
前記神経因性眼痛障害が心的外傷によって引き起こされる、請求項13~15のいずれか1項に記載の局所薬剤。
【請求項19】
神経因性眼痛障害の治療を必要とする対象において神経因性眼痛障害を治療するための医薬品を製造するための1-ジ-イソプロピル-ホスフィノイル-アルカン(DIPA)化合物の使用であって、前記医薬品は、治療有効量の前記DIPA化合物および液体ビヒクルを含み、前記液体ビヒクルは、前記対象の眼表面への前記DIPA化合物の集中送達に適合される、使用。
【請求項20】
前記DIPA化合物が、
【化6】
である、請求項19に記載の使用。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月11日に出願された米国仮出願63/205,848号の優先権を主張し、その内容はその全体が参照をもって本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の背景
チャールズ・シェリントン卿(Sir Charles Sherrington)は、1900年頃に痛みを「強制的な防御反射の精神的な付属物」と定義した。国際疼痛学会(IASP)による「痛み」の現代の定義は、実際の組織損傷または潜在的な組織損傷に関連する、またはそれに関連する似たような不快な感覚的および感情的経験であるとされている。
【0003】
新しい定義に伴う更新された注記は次のとおりである:痛みは常に個人的な経験であり、生物学的、心理的、および社会的要因によってさまざまな程度の影響を受ける;痛みおよび侵害受容は異なる現象である;そして、痛みは感覚ニューロンの活動だけから推測され得ない。
【0004】
人生経験を通じて、個人は痛みの概念を学ぶ。痛みを経験した人の報告は尊重されるべきである。
【0005】
痛みは通常、適応的な役割を果たすが、機能および社会的および心理的健康に悪影響を与え得る。
【0006】
言葉による説明は、痛みを表現するためのいくつかの行動のうちの1つにすぎない;コミュニケーションが取れないからといって、人間または人間以外の動物が痛みを経験する可能性が否定されるわけではない。
【0007】
シェリントン(Sherrington)とIASPの定義では、痛みの精神的および経験的側面、すなわち、痛みは心によって認識される出来事であるという認識および強調がある。
【0008】
神経生理学および分子生物学の進歩により、痛みのメカニズムの理解が加速した。現在では、痛みはポリモーダルC線維と呼ばれる無髄の小径感覚線維の放出の増加によって活性化されることが認識されている。痛みは侵害受容性または神経因性として分類される。侵害受容性疼痛は、外傷、炎症、および免疫障害などの細胞損傷によって引き起こされる。神経因性疼痛は、痛みの信号を伝達する神経線維への損傷によって引き起こされる。痛みに伴い得る感覚としては、刺激、かゆみ(pruritus)(かゆみ(itch))、倦怠感、および不快感がある。この出願では、侵害受容に付随する精神的症状も「感覚的不快感」または知覚異常として分類される。
【0009】
慢性疼痛は、3ヶ月以上続く持続性または再発性の痛みとして定義される。各患者の痛みの重症度などのオプションの指定子があり、強度、痛みに関連した苦痛、および機能障害に基づいて等級付けされ得る。慢性疼痛の種類には、癌性疼痛、術後および外傷後の疼痛、筋骨格痛、頭痛および口腔顔面痛、内臓痛、ならびに神経因性疼痛が含まれる。
【0010】
神経因性疼痛は、痛みを伴う刺激に対する反応の増加(痛覚過敏)として、または通常は痛みを伴わない刺激に対する痛みを伴う反応(アロディニア)として、自然発生する場合と誘発される場合とがある。痛覚過敏または異痛症における過反応における痛みの増幅の増加は「感作」と呼ばれ、これは末梢神経(末梢感作)または中枢神経系(中枢感作)で起こり得る。現在、IASPはこれらの用語を標準化している。「過敏症」という用語は、伝統的にアレルギーおよび自己免疫を含む免疫系によって引き起こされる望ましくない反応を指すため、痛みの説明には使用されない。
【0011】
本明細書で使用される場合、「感作」とは、彼らの通常の入力に対する侵害受容ニューロンの反応性の増加、および/または通常の閾値下の入力に対する反応の補充を指す。
【0012】
「中枢感作」とは、中枢神経系の侵害受容ニューロンの彼らの正常または閾値下の求心性入力に対する反応性の増加を指す。
【0013】
「末梢感作」とは、彼らの受容野の刺激に対する末梢の侵害受容ニューロンの反応性の増加および閾値の低下を指す。
【0014】
神経因性眼痛(NOP)は、(角膜、縁、結膜、およびまぶたの縁の上皮として定義される)眼表面からの痛みを指す。NOPのメカニズムの1つは、角膜神経への繰り返しの直接損傷から生じる。侵害受容体の上方制御を伴う神経終末の異常な再生が末梢感作の原因であり得る。そして、持続的な痛みは中枢性の過敏化および苦痛を引き起こし得る。NOPは、眼の損傷が治癒した後、検出可能な解剖学的破壊、-いわゆる角膜の「汚れのない痛み」がない場合に発生し得る。NOPは、角膜神経障害、角膜神経痛、kertao神経痛、および角膜異痛症と呼ばれている。現在、慢性疼痛は国際疾病分類第11版でより標準化された用語になっており、慢性疼痛の分類は第21章のセクションMG30に記載されている。NOPは慢性神経因性疼痛として分類される。
【0015】
NOPは患者の生活の質に重大な悪影響を及ぼす。痛み、光への過敏症、および刺激の感覚は激しく、持続的かつ永続的であり、テレビを見る、読書、運転、および仕事などの日常活動を行う能力を損なう。身体的および社会的機能が低下し、苦痛が生じる。NOP患者の大規模なグループは、従来の治療では反応しない慢性的なドライアイ症候群に苦しんでいる。しかし、NOPは、(マイボーム腺機能不全などによる)涙液の分泌速度の変化または涙液の質もしくは安定性の変化などのドライアイ疾患の兆候がなくても発生し得る。特に治療が難しい状態は、屈折矯正手術または白内障手術後のNOPである。痛みが持続し、治りにくく、かつ精神を支配するため、患者は自暴自棄になり、自殺願望を抱くようになる。最近のよく知られた症例としては、デトロイト出身の35歳のテレビ気象学者で、レーシック手術によるNOP後に自殺した2人の幼い子供の母親であるJ.S.がある。NOPの徹底的かつ最新の議論は、フロリダ州マイアミ大学のAnat Galorによる論文に記載されている(Galor, A. et al., The Ocular Surface, 2018, 16, 31-44; Mehra D., Anat Galor, Ophthalmology and Therapy, 2020, 9(3): 427-47)。
【0016】
定義上、慢性神経因性疼痛は3ヶ月以上続く状態である。NOP患者の場合、これは通常、3ヶ月以内にすべてが試みられたが、成功したとしても限られたものであることを意味する。例えば、人工涙液、軟膏、およびジェルによる眼表面の治療が推奨される。これらに続いて、涙点プラグ、局所および全身の抗生物質、抗炎症ステロイド、ならびにシクロスポリンおよびリフィテグラストなどの抗炎症薬が使用される。神経成長因子および自己血清は、神経再生療法のための投機的な手順である。別の行動方針は、抗うつ薬(例えば、アミトリプチリン、ノルトリプチリン)、抗けいれん薬(例えば、カルバマゼピン)、NSAIDS、トラマドール、およびガバペンチン/プレガバリンなどの中枢神経系に影響を与える薬剤を投与することであるが、いずれも成功率にはばらつきがある。NOPが片頭痛に関連している場合、片頭痛の治療がNOPの軽減に役立ち得る。NOPの新しく効果的な治療法が必要である。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、神経因性眼痛障害の治療を必要とする対象における神経因性眼痛障害を治療するための方法および局所薬剤を提供する。
【0018】
一態様では、本発明は、治療有効量の1-ジ-イソプロピル-ホスフィノイル-アルカン(DIPA)化合物を対象の眼表面に局所的に適用することを含む、神経因性眼痛障害の治療を必要とする対象における神経因性眼痛障害を治療するための方法を提供する。DIPAの合成および受容体バイオアッセイは、米国特許第10,195,217号に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。DIPAは少なくとも1週間眼表面に適用され、DIPA化合物は液体ビヒクルに溶解され、液体ビヒクルはDIPA化合物の眼表面への集中送達に適合される。
【0019】
いくつかの実施形態では、DIPA化合物が0.5~5mg/mlのそこでの濃度で液体ビヒクルに溶解されており、液体ビヒクルがDIPA化合物を眼表面に送達する。
【0020】
いくつかの実施形態では、液体ビヒクルは水溶液である。
【0021】
いくつかの実施形態では、液体ビヒクルは水または等張食塩水である。
【0022】
いくつかの実施形態では、DIPA化合物が0.5~5mg/mlの濃度で液体ビヒクルに溶解される。
【0023】
いくつかの実施形態では、液体ビヒクルに溶解されたDIPA化合物が、ワイプによって対象の眼表面に送達される。
【0024】
いくつかの実施形態では、液体ビヒクルに溶解されたDIPAが、対象の眼表面に1日4回適用される。
【0025】
いくつかの実施形態では、DIPA化合物は、
【化1】
である。
【0026】
いくつかの実施形態では、神経因性眼痛障害はドライアイ疾患によって引き起こされる。
【0027】
いくつかの実施形態では、神経因性眼痛障害は眼の手術によって引き起こされる。
【0028】
いくつかの実施形態では、神経因性眼痛障害は眼の外傷によって引き起こされる。
【0029】
第2態様では、本発明は、DIPA-1-7、DIPA-1-8、またはDIPA-1-9(すなわち、1-[ジイソプロピル-ホスフィノイル]-ノナン)であり得る、治療有効量のDIPA化合物を含有する水溶液を含む、神経因性眼痛障害の治療を必要とする対象における神経因性眼痛障害を治療するための局所薬剤を提供する。
【0030】
いくつかの実施形態では、水溶液中のDIPA化合物の濃度が0.5~5mg/mLである。
【0031】
いくつかの実施形態では、神経因性眼痛障害はドライアイ疾患によって引き起こされる。
【0032】
いくつかの実施形態では、神経因性眼痛障害は眼の手術によって引き起こされる。
【0033】
いくつかの実施形態では、神経因性眼痛障害は眼の外傷によって引き起こされる。
【0034】
第3の態様では、本発明は、神経因性眼痛障害の治療を必要とする対象において神経因性眼痛障害を治療するための医薬品を製造するためのDIPA化合物(例えば、DIPA-1-7、DIPA-1-8、またはDIPA-1-9)の使用であって、医薬品は、治療有効量のDIPA化合物(例えば、DIPA-1-7、DIPA-1-8、またはDIPA-1-9)および液体ビヒクルを含み、液体ビヒクルは、対象の眼表面へのDIPA化合物の集中送達に適合される、使用を提供する。
【0035】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲を参照することにより、よりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
次に、添付の図面を参照して、本発明の実施形態をより詳細に説明する:
【0037】
図1】まぶたの縁のTRPM8を標的とするcryosim-3を含むガーゼの局所適用方法を示す。
【0038】
図2】ドライアイ患者の眼痛の軽減におけるTRPM8アゴニストの作用メカニズムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(発明の詳細な説明)
上記の概要セクション、および詳細な説明セクション、ならびに以下の特許請求の範囲では、本発明の特定の特徴について言及される。本明細書における本発明の開示には、そのような特定の特徴のあらゆる可能な組み合わせが含まれることを理解されたい。例えば、特定の特徴が、本発明の特定の態様もしくは実施形態、または特定の請求項の文脈で開示されている場合、その特徴はまた、可能な範囲で、本発明の他の特定の態様および実施形態と組み合わせて、ならびに/またはそれらと関連して、ならびに本発明で広く使用され得る。
【0040】
一態様では、本発明は、神経因性眼痛障害の治療を必要とする対象における神経因性眼痛障害を治療するための方法であって、治療有効量の1-ジ-イソプロピル-ホスフィノイル-アルカン(DIPA)化合物を対象の眼表面に少なくとも1週間局所適用することを含み、DIPA化合物は液体ビヒクルに溶解され、液体ビヒクルはDIPA化合物を眼表面に集中送達するように適合されている、方法を提供する。
【0041】
第2態様では、本発明は、治療有効量のDIPA化合物(例えば、DIPA-1-7、DIPA-1-8、またはDIPA-1-9)を含有する水溶液を含む、神経因性眼痛障害の治療を必要とする対象における神経因性眼痛障害を治療するための局所薬剤を提供する。
【0042】
第3の態様では、本発明は、神経因性眼痛障害の治療を必要とする対象において神経因性眼痛障害を治療するための医薬品を製造するためのDIPA化合物(例えば、DIPA-1-7、DIPA-1-8、またはDIPA-1-9)の使用であって、医薬品は、治療有効量のDIPA化合物(例えば、DIPA-1-7、DIPA-1-8、またはDIPA-1-9)および液体ビヒクルを含み、液体ビヒクルは、対象の眼表面へのDIPA化合物の集中送達に適合される、使用を提供する。
【0043】
神経因性眼痛障害を持つ患者は、神経因性眼痛(NOP)を経験する。神経因性眼痛(NOP)は、(角膜、縁、結膜、およびまぶたの縁の上皮として定義される)眼表面からの痛みを指す。いくつかの実施形態では、神経因性眼痛障害はドライアイ疾患によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、神経因性眼痛障害は眼の手術によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、神経因性眼痛障害は眼の外傷によって引き起こされる。
【0044】
眼表面の神経生物学および作用メカニズム:約2億年前、特定の生物は代謝熱生成を制御する能力(吸熱)と体内の温度を一定に維持する(恒温)能力を獲得した(McNab, B.K. The evolution of endothermy in the phylogeny of mammals. American Naturalist 112: 1-21, 1978.)。「冷血」生理機能から「温血」生理機能へのこの進化的移行により、そのような種は変化しやすい環境に適応し、生き残ることができるようになった。この変化に関連して、特に眼と上気道の体温を監視および制御し、飲むこと、喉の渇き、および涙の分泌を調節する感覚システムの開発と洗練が行われていた。涼しさは、眼、顔、鼻、耳、および首などの生物の表面から広がる神経信号である。例えば、哺乳類の顔の皮膚からの熱受容性入力の約92%は低温ニューロンからのものである。これらのニューロンは15~18℃で持続緊張状態で活動する(Hutchison, W.D. et al., J. Neurophysiol. 77: 3252-3266, 1997; Takashima, Y. et al., J. Neurosci., 27, 14147-14157, 2007)。
【0045】
涼しさおよび冷たさの主な検出体は、TRPM8として知られる内在性膜タンパク質である(Bautista, D.M. et al., Nature 448: 204-208, 2007)。低温に反応する別の受容体はTRPA1である。TRPM8を含むニューロンの解剖学的構造がマウスでマッピングされた(Dhaka et al., J. Neurosci. 28: 566-575, 2008; Schecterson et al., Molecular Vision 26:576-587, 2020)。TRPM8を含む末梢神経線維は表皮の表層に位置し、脊髄および脳幹の表層に突き出ている。角膜およびまぶたの神経線維終末もマッピングされる。TRPM8ニューロン系は、C線維カテゴリーに属する侵害受容ニューロンとは明確に分離されている。TRPM8神経線維はほとんどが有髄であり、伝導速度に基づいてA-δに分類される。
【0046】
TRPM8末梢冷/冷求心性神経は、Henselによる古典的な研究で初めて注意深く説明された。彼は、冷気を個別に与えると特定の神経線維の放出と関連している可能性がある、体の「コールドスポット」の密度をマッピングした。熱感覚は、知覚および生物学的反応システムと密接に関連している。したがって、熱いシャワーは40℃では快適であるが、43.4℃では個体は熱から逃れようとする。43.4℃は、熱/痛みの受容体とC線維の放出の活性化、毛細血管後細静脈からの血漿内容物の漏出、および細胞の酸素消費の異常が始まるポイントでもある。冷たさ/冷たさの感覚についても、同様の正確な識別が行われる。したがって、約18℃になると、個人は寒さを訴え、より多くの服を着て、そして温度自動調節体をオンにし始めた。動物は実験状況において、±1℃の温度差を容易に感知する。化学薬品も冷却強度の範囲を選択する。ほんのり冷たくてヒリヒリするものもあれば、爽やかに涼しいものもあれば、ただ寒いだけのものもある。
【0047】
身体表面の物理的な涼しさ/冷たさの抗侵害受容特性は、刺激、かゆみ、および痛みを軽減する。したがって、エアコン、冷水、および氷は、熱、外傷、痛み、および特定の種類の炎症による感覚の不快感を和らげるために使用され得る。涼しさ/冷たさに必要な熱回収の伝達は、気体、液体、または固体の材料を使用して実現され得、蒸発、対流、またはエネルギーの伝導のメカニズムを利用する。
【0048】
脳では、侵害受容性と非侵害受容性の両方のニューロンからの入力間に調節された相互作用が存在する。また、入力の起源を正確に地形学的に認識することもできる。小さな針による痛みまたは陥入まつげ(睫毛症)もしくは陥入爪による大惨事を正確に識別するのを目撃してください。生体の正常な機能が完全に破壊される可能性があるため、眼表面神経の神経障害が重篤な影響を引き起こすことが予想される。ここでの薬理学的戦略は、TRPM8神経入力を使用して、NOPにおける侵害受容性知覚の中枢感作を制御し、かつ遮断することである。有害な刺激の知覚を妨げることにより、個人の精神と痛みに対する不安が軽減され、慢性的な痛みの状態が全体的に改善される。述べられている仮説は、Aδ-線維を介した冷たさ/冷信号が、不快信号の増幅とそれに続く病因を遮断するために利用されるというものである。
【0049】
理論に制限されることなく、ここで提案されているメカニズムを類推すると、あたかも組織内に3本の電話回線があり、それぞれが異なるダイヤルメカニズムとケーブル伝導システムを備えているようなものである。1つは、タッチと素早く伝導する圧力用である。1つは涼しさと冷たさのため、やや遅い(Aσは約2~6メートル/秒で伝導)。1つは刺激、かゆみ、および痛みに使用され、ゆっくりと伝導します(<2メートル/秒、主にC線維)。たとえて言えば、2本の電話回線のうちの1つが、中央交換機で他の信号伝達に干渉する。この発見の化合物、1-ジイソプロピル-ホスフィノイル-ノナン(Cryosim-3)または1-ジイソプロピルホスフィノイル-オクタン(Cryosim-2)を、涼しさおよび冷たさの信号に関与する電話回線を刺激するためのダイヤルメカニズムとして使用することが提案されている。この電話回線を使用すると、生成された信号がC線維回線からの不快信号の増幅を軽減し、慢性的な痛みに有益な効果をもたらすことが期待される。
【0050】
上記の考察および実施例1のデータに基づいて、TRPM8アゴニストが中枢神経系へのAσ線維入力を開始し、侵害受容性情報の流れを変化させることが提案される。侵害受容体からの信号入力の生成または伝達に干渉がないため、この作用様式は間接的である。冷たさ/冷信号は18℃で持続緊張状態で活動し、顔の皮膚からの熱受容性入力の92%を構成することに注意されたい。後角ニューロンでは、TRPM8細胞の50%が18~19℃の狭い温度範囲で活性化する。したがって、TRPM8の放出頻度がわずかに増加すると、その体積が非常に大きいため、中枢神経系における感覚伝達と統合が支配されることになる。この冷却信号の洪水は、侵害受容系の感作を増大させ得る。
【0051】
Cryosimの場合、薬物送達方法は、局所的であり、侵害受容体を含む受容野またはすぐ隣接する感覚野に集中される。いくつかの実施形態では、液体ビヒクルに溶解されたDIPA化合物が、ワイプによって対象の眼表面に送達される。いくつかの実施形態では、液体ビヒクルに溶解されたDIPAが、対象の眼表面に1日1、2、3または4回適用される。抗神経障害作用の様式は間接的で、つまり信号の伝達には直接的な影響はない。Cyrosim-3は非角化組織に作用するように設計されている。その受容野は三叉神経の眼枝の神経終末、特に眼窩上神経の受容野である。この方法の概略を図1および図2に示す。冷却剤を眼球縁上のTRPM8ニューロンの受容野に塗布する(図1)。専用のTRPM8線維は眼窩上神経の求心性神経にある(緑色)。これらの信号が脳幹の三叉神経核に到達すると、冷却信号は毛様体神経の求心性神経(赤)を介して伝達される侵害受容性信号を遮断および抑制する[図2]。
【0052】
ここで使用したcryosimの選択および合成方法は、2019年4月11日に公開されたWei16/350 559、US2019/0105335に記載されている。本発明の実施に好ましい実施形態は、1-[ジイソプロピル-ホスフィノイル]-ノナン(同義語:Cryosim-3、1-ジイソプロピル-ホスホリルノナン、CAS Registry No. 1503744-37-8-7)である。Cryosim-3は、Burlingame, Calif. USAにあるPhoenix Pharmaceuticals社から97%超の純度で入手できる合成分子である。
【0053】
いくつかの実施形態では、DIPA化合物は、その薬学的に許容される塩、ポリマー、エステルまたは酸である。
【0054】
いくつかの実施形態では、DIPA化合物は、他の活性剤、保存剤、緩衝剤、希釈剤、塩、薬学的に許容される担体、または他の薬学的に許容される成分などの他の成分と混合され得る。
【0055】
本明細書で使用される場合、「希釈剤」とは、薬理学的活性を欠くが、薬学的に必要または望ましい可能性のある医薬組成物中の成分を指す。例えば、希釈剤は、製造および/または投与のために質量が小さすぎる強力な薬物の嵩を増加させるために使用され得る。また、注射、摂取または吸入により投与される薬物の溶解のための液体であってもよい。本技術分野における一般的な希釈剤の形態は、限定されるものではないが、ヒト血液の組成を模倣したリン酸緩衝生理食塩水のような緩衝水溶液である。
【0056】
本明細書で使用される場合、「担体」とは、細胞または組織への化合物の取り込みを促進する化合物を指す。例えば、限定するものではないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノール(EtOH)、またはPEG400は、対象の細胞または組織への多くの有機化合物の取り込みを促進する、一般的に利用される担体である。
【0057】
本明細書で使用される場合、「個人」、「患者」または「対象」という用語は互換的に使用される。いずれの用語も、医療従事者(例えば、医師、正看護師、看護師、医師助手、病院の雑役係、またはホスピス従事者)の監督(例えば、常時または断続的)を特徴とする状況を必要としないか、またはそのような状況に限定されない。
【0058】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」とは、神経因性眼痛障害の治療を必要とする対象において神経因性眼痛障害を治療するために適用される妥当な利益/リスク比で、十分な量のDIPA化合物を指す。しかしながら、DIPA化合物の1日当たりの総使用量は、主治医または個人指導者が健全な医学的判断の範囲内で決定し得ることが理解される。任意の特定の対象に対する具体的な有効用量レベルは、治療される他の障害および障害の重症度、使用される特定の組成物、対象の年齢、体重、一般的な健康状態、性別および食事、使用されるDIPA化合物の投与時間、投与経路、および排泄速度、投与期間、DIPA化合物と併用または同時に使用される薬剤、ならびに医療技術またはスポーツ科学でよく知られているような要因などの様々な要因に依存する。さらに、「治療有効量」とは、研究者または臨床医が求めている組織、システム、または対象の生物学的または医学的反応を引き出す量である。
【0059】
当業者は、状態が完全に根絶または予防されなくても、それもしくはその症状および/または影響が、対象において部分的に改善または緩和される場合であっても、その量が「有効」とみなされ得ることを認識する。方法の有効性を決定するための様々な指標は、神経因性眼痛障害の治療を必要とする対象において神経因性眼痛障害を治療するための当業者に知られている。
【0060】
本明細書で使用される場合、「集束送達」とは、指定された解剖学的部位への少量の液体の「部位特異的送達」を意味する。有効成分が投与部位またはその近傍に留まることが期待される。例えば、2mg/mLのC3を含むコットンワイプを拭くと、まぶたの縁へのオフロード量は約20~40マイクロリットルとなる。この量は、まつげを通ってまぶたの移行上皮にあるTRPM8受容体に到達する。まばたきはさらに、まぶたの「ワイパー」を利用してC3を角膜に分布させることができる。全体として、この少量の送達は眼表面のみに集中する。
【0061】
いくつかの実施形態では、DIPA化合物が0.5~5mg/mlのそこでの濃度で液体ビヒクルに溶解されており、液体ビヒクルがDIPA化合物を眼表面に送達する。
【0062】
いくつかの実施形態では、液体ビヒクルは水溶液である。
【0063】
いくつかの実施形態では、液体ビヒクルは水または等張食塩水である。
【0064】
いくつかの実施形態では、DIPA化合物が0.5~5mg/mlの濃度で液体ビヒクルに溶解される。
【0065】
用量は、所望の効果および治療上の適応症に応じて、広い範囲にわたってよい。用量は、対象が必要とするように、1日または複数日の間に投与される1回または2回以上の連続であってもよい。いくつかの実施形態では、化合物は、例えば、1週間以上、または数ヶ月もしくは数年の連続治療期間にわたって投与される。いくつかの実施形態では、DIPA化合物またはその薬学的に許容される塩は、標準治療内の薬剤の投与頻度と比較して、より少ない頻度で投与され得る。いくつかの実施形態では、DIPA化合物またはその薬学的に許容される塩は、1日1回投与され得る。いくつかの実施形態では、DIPA化合物またはその薬学的に許容される塩による治療レジメの総時間は、標準治療による治療レジメの総時間と比較して短くすることができる。
【0066】
当業者には理解されるように、特定の状況では、特に攻撃的な疾患または感染症を効果的かつ積極的に治療するために、本明細書に開示された化合物を、上記の好ましい投与量範囲を超える量、またははるかに超える量で投与する必要があり得る。
【0067】
主治医は、毒性または臓器機能障害による投与の中止、中断、または調整の方法および時期を知っていることに留意すべきである。逆に、主治医は、臨床反応が十分でない場合(毒性を除く)、より高いレベルに治療を調整することも知っている。対象疾患の管理における投与用量の量は、治療される状態の重症度および投与経路によって異なる。状態の重症度は、例えば、標準的な予後評価法によって部分的に評価され得る。さらに、用量およびおそらくは投与頻度も、個々の患者の年齢、体重および反応に応じて変化する。
【0068】
眼表面の末梢知覚神経は、角膜、辺縁、結膜およびまぶたの縁の上皮と定義され、三叉神経の眼科部門から発生する。まぶたおよび角膜は神経終末の密度が高く、1平方ミリメートルあたり約7000個の神経終末があると推定されている。この密度は皮膚の約300~600倍である。これらの神経終末は、最初は有髄であるが、それらが角膜上皮を貫通するにつれてミエリンを失う。神経叢には、約80%の無髄C線維および約20%の有髄神経線維(A-δ線維)が含まれる。ポリモーダル侵害受容体は、70%が無髄C線維であり、熱刺激、機械的刺激、内因性刺激、および外因性炎症刺激など、多種多様な刺激に反応する。対照的に、有髄A-δ線維は、特にまつげの毛包の基部にあるまぶた表面で、無害な冷却を伝達する。
【0069】
角膜の神経終末の複雑さおよび入り組んだ様子は、Schectersonらの最近の論文に示されている。(Molecular Vision 26:576-587, 2020)。侵害受容性線維は、TRPV1およびTRPA1と呼ばれるTRPチャネルと関連する。また、別の線維系としてTRPM8も存在する。TRPM8は冷却のセンサーである膜内在性タンパク質である。皮膚および気道消化管におけるTRPM8の活性化は、部位特異的な冷却信号を脳に伝達する。角膜神経線維におけるTRPM8の正確な生理的役割はまだわかっていない。
【0070】
以前の研究において、本出願の発明者は、Cryosim-3(1-ジイソプロピル-ホスフィノイルノナン)と呼ばれる設計された選択的TRPM8アゴニストの適用が、軽度から中等度のドライアイ疾患患者の眼の不快感を緩和することを見出している(Yang, J.M.; et al., BMC Ophthalmol 2017, 17, 101.)。これは感覚神経を介する急性の直接的な抗侵害受容作用であり、(例えば冷たいタオルからの)冷たさが不快感を軽減するのと同じである。さて、驚くべきことに、この出願の発明者は、Cryosim-3がNOP患者にも有効であることを発見した。薬物の抗侵害受容効果が抗神経障害作用を予測または相関するものではないことを明確にしておく必要がある。例えば、オピオイド(例えば、モルヒネ)および非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS、例えば、イブプロフェン)は抗侵害受容作用があるが、どちらも神経因性疼痛には効果がない。神経因性疼痛は3ヵ月以上の慢性症状である。糖尿病性潰瘍などでは、涼しさまたは冷たさが神経因性疼痛を悪化させることがある。したがって、NOPにおけるCryosim-3の有効性は珍しいものであった。
【0071】
さらに、Cryosim-3によるNOP患者の治療には疾患修飾効果があるようであった。NOP患者の生活の質は大幅に改善し、Cryosim-3の使用終了後もその効果は持続した。これもまた予想外であった。
【0072】
NOP治療の成功には、感作過程を減弱させること、すなわち、不快信号の増幅を抑制することが必要である。末梢感作および中枢感作は、局所麻酔点眼薬、例えば塩酸プロパラカイン溶液(Alcaine(登録商標))を使用することで区別され得る。一部の患者では、Alcaineによって一時的(30分未満)に症状が遮断されるものの、NOPは主に中枢感作によって引き起こされることが知られている。すなわち、NOP患者は持続的な眼表面の不快感を経験し、時間の経過とともに、特に夕方の時間帯に、不快信号にとらわれるようになり、精神的にそれを増幅させる。中枢感作の徴候であるこの眼の不快感への精神的なとらわれがNOPを悪化させる。
【0073】
NOPを治療するためには、Cryosim-3を1日4回(q.i.d.)の定期的なスケジュールで、眼を拭きながら少なくとも1週間塗布することが重要であることを、本願の発明者は発見した。治療を1ヵ月に延長すると、さらなる改善がみられた。このような定期的な塗布と効果に関する患者教育が、臨床的改善を達成する鍵であった。
【0074】
要約すると、Cryosim-3を少なくとも1週間、定期的に眼表面に適用することに基づく、NOPに対する新規で効果的な治療が解明された。この発見の詳細は実施例1にある。
【0075】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で参照されるすべての特許、出願、公開された申請およびその他の刊行物は、別段の記載がない限り、参照によりその全体が組み込まれる。ここで用語に複数の定義がある場合は、特に明記しない限り、このセクションの定義が優先される。
【0076】
ここで使用される用語は、特定のケースを説明することのみを目的としており、限定することを意図したものではない。本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数形も含むものとする。さらに、「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」、またはそれらの変形が、詳細な説明および/または特許請求の範囲のいずれかで使用される限りにおいて、そのような用語は、用語「comprising(含む)」と同様の方法で包括的であることを意図している。
【0077】
「対象」とは、治療、観察または実験の対象となる動物を指す。「動物」には、魚類、貝類、爬虫類、および特に哺乳類など、冷血および温血動物の脊椎動物および無脊椎動物が含まれる。「哺乳類」には、限定されないが、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、サル、チンパンジー、および類人猿などの霊長類、およびヒトが含まれる。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0078】
「治療(treating)」、「治療(treatment)」、「治療(therapeutic)」または「療法(therapy)」という用語は、必ずしも疾患または状態の完全な治癒または廃絶を意味するものではない。疾患または状態の望ましくない徴候または症状の任意の緩和は、その程度を問わず、治療および/または療法とみなすことができる。
【0079】
アロディニア:通常は痛みを引き起こさない刺激による痛み。
【0080】
鎮痛:通常であれば痛みを伴う刺激に対する反応の痛みがないこと。
【0081】
感覚異常:自発的か誘発かを問わず、不快な異常な感覚。
【0082】
痛覚過敏:通常は痛みを引き起こす刺激による痛みの増加。
【0083】
神経因性疼痛:体性感覚神経系の病変または疾患によって引き起こされる痛み。
【0084】
侵害受容:有害な刺激をコードする神経プロセス。
【0085】
侵害受容体:有害な刺激を伝達およびコードし得る、末梢体性感覚神経系の高閾値感覚受容体。
【0086】
侵害受容ニューロン:有害な刺激をコードし得る体性感覚神経系の中枢または末梢ニューロン。
【0087】
侵害受容性疼痛:非神経組織への実際の損傷またはその恐れのある損傷から生じ、侵害受容体の活性化によって生じる痛み。
【0088】
侵害受容性刺激:侵害受容体によって変換およびコードされた、実際にまたは潜在的に組織に損傷を与える事象。
【0089】
侵害受容体:有害な刺激を伝達およびコードし得る、末梢体性感覚神経系の高閾値感覚受容体。
【0090】
有害な刺激:正常な組織に損傷を与える、または損傷を与える恐れのある刺激。
【0091】
痛みの閾値:痛みとして認識される刺激の最小強度。
【0092】
感作:彼らの通常の入力に対する侵害受容ニューロンの反応性の増加、および/または通常の閾値下の入力に対する反応の補充。
【0093】
中枢感作:中枢神経系の侵害受容ニューロンの彼らの正常または閾値下の求心性入力に対する反応性の増加。
【0094】
末梢感作:彼らの受容野の刺激に対する末梢の侵害受容ニューロンの反応性の増加および閾値の低下。
【0095】
実施例1
この実施例は、ヒト対象の神経因性眼痛を軽減するための局所TRPM8アゴニスト(cryosim-3)のパイロット研究である。
【0096】
要約:角膜およびまぶたに存在する冷感受容体であるTRPM8の活性化は、他の異常な侵害受容入力を抑制することにより、ドライアイ(DE)の神経因性眼痛(NOP)を緩和する可能性がある。DE関連NOPの軽減に対する局所TRPM8アゴニスト、cryosim-3(C3)の効果が調査された。方法:DE関連NOP患者15名を対象とした有望なパイロット研究が実施された。これらの患者には、1ヶ月間、1日4回、彼らのまぶたに局所C3を塗布した。患者は臨床検査を受けた。彼らはまた、ベースライン時、治療1週間後、および1ヶ月後に、NOPに関する検証済みアンケートである眼痛評価調査(OPAS)にも回答した。結果:1週間後には、眼痛強度、生活の質(運転/テレビ視聴、一般活動、睡眠、および生活を楽しむ/他者との関係)、および関連因子(灼熱感、光過敏、および流涙)のOPASスコアが大幅に改善された。眼痛強度、生活の質、および関連因子の合計OPASスコアは、1ヶ月後も改善されたままであった。シルマーテストスコアも1ヶ月で改善した。結論:TRPM8アゴニスト(C3)は、従来の治療に反応しないDE関連NOP患者を治療するための新規薬剤となり得る。
【0097】
ドライアイ(DE)は、涙液層の恒常性の喪失とそれに伴う眼の症状を特徴とする眼表面の多因子疾患である[1]。有病率は10%~70%である[1]。DE患者の中には、眼に見える症状が最小限であっても、彼らの生活の質(QoL)を低下させる重度の痛みを経験する人もいる[1]。DE治療の一部として局所薬剤を適用して、炎症と涙膜浸透圧を低下させることができる[2]。一般に、眼の痛みが局所治療で解決できない場合は、他の特定の原因を疑う必要があり、特に神経因性疼痛が根本的な原因であり得る[3,4]。DEでは、眼の痛みが臨床症状を不釣り合いに上回る場合、根底にある神経因性眼痛(NOP)の性質が示唆される[4]。
【0098】
一過性受容体電位(TRP)カチオンチャネルは、化学的刺激および温度刺激の知覚に関連する[5]。TRPファミリーの中で、TRPM8は三叉神経の眼枝の神経終末に位置する冷感受容体である[6]。TRPM8の活性化は他の異常な侵害受容入力を抑制できるため、このチャネルを標的とする薬剤はDEのNOPを緩和する可能性を有し得る[7,8]。特に、TRPM8は、角膜だけでなくまぶたにも分布しており、したがって、角膜に直接点眼することなく、まぶたに塗布する局所薬剤を使用して活性化され得る[6,9,10]。私たちの以前の研究では、水溶性の選択的TRPM8アゴニストである局所cryosim-3(C3)が合併症を引き起こすことなく基礎涙液分泌を増加させ、眼の不快感を軽減することによってDEの治療に有効であることを明らかにした[9]。このパイロット研究では、我々は、DE患者のNOPの軽減に対する局所TRPM8アゴニスト(C3)の効果を調査することを目的とした。
【0099】
方法
この見込みのある非ランダム化パイロット研究は、ヘルシンキ宣言の教義に従って実施された。全南大学病院施設審査委員会(Chonnam National University Hospital Institutional Review Board)(CNUH-2018-274)から倫理的承認を得た。対象患者全員からインフォームドコンセントを得た。サンプルサイズは、G*Powerソフトウェア(バージョン3.1.9.4;Heinrich-Heine University, Germany)を用いて、α=0.05の水準および疼痛尺度の2点差を検出する検出力95%で計算した。したがって、合計13人の患者というサンプルサイズで十分であることがわかった。
【0100】
2018年1月および12月の間に評価を受けた、NOP特徴を伴うDE患者を登録した。DEは、OSDIスコア≧13および涙液崩壊時間(TBUT)≦7秒に基づいて診断された。算入基準は以下の通り:(1)従来の局所薬剤(例えば、潤滑剤、抗炎症剤、分泌促進剤など)に3ヵ月超反応しない慢性眼痛、(2)灼熱感または刺痛感などの特定の記述子を伴うDEの疼痛症状および徴候の不一致、んらびに(3)Wong-Baker FACES Pain Rating Scale(WBFPS)スコア≧4。DE以外の眼疾患の既往歴のある患者、ならびに疼痛および気分の状態を変化させる全身的な薬剤の投与を受けている患者は除外した。
【0101】
患者は、従来の局所治療を行いながら、C3を追加投与して治療された。C3サンプル(2mg/mL)を精製水で希釈し、ガーゼに浸し、そして自動化装置を用いて包装した。患者に、1ヵ月間、1日4回、閉じたまぶたの縁にガーゼを拭いて局所C3を塗布した(図1)。
【0102】
視覚関連QoLの定量化には、0から100までのOSDI質問票を用いた。TBUT(涙液崩壊時間)は、最後の完全な瞬きから涙液膜の崩壊が最初に出現するまでの時間間隔を3回測定し、その平均値を解析に用いた。角膜染色スコアは、面積および密度スコアを掛け合わせた面積密度指数を用いて評価した。シルマーテストスコアは湿潤の長さを表し、局所麻酔(0.5%プロパラカイン)下で5分間、外眼角に置かれた較正済みの滅菌ストリップを用いて測定された。右眼のスコアのみが評価された。
【0103】
WBFPSは、DE患者の痛みの重症度をスクリーニングするために選択された。患者は彼らが経験している痛みを最もよく表している顔を選ぶ。ベースライン時、治療1週間後および1ヵ月後に、患者はOPASも記入した。OPASは神経因性疼痛のための有効な質問票であり、すでに述べたとおりである[11]。質問は分析のためにセクションに分けられた:質問4-9は眼痛強度に関するもの(0-60);質問10-11は眼以外の痛みに関するもの(0-20);質問13-19(0-10、合計スコア0-60)はQoL(読書および/またはコンピュータの使用、運転および/またはテレビの視聴、一般的な活動、気分、睡眠、および生活を楽しむ/他の人々との関係)を評価した;質問20-21(各スコア0-1、合計スコア0-2)では、悪化因子(機械的刺激および化学的刺激)を評価し;そして、質問22-25(各スコア0-1、合計スコア0-4)では、関連因子(発赤;熱感;光に対する過敏性;および流涙)を評価した。OPASの症状緩和に関するセクションは除外され、質問4-25のみが分析された。質問は以下の5つのセクションに分けられた:眼痛強度、眼以外の痛み、QoL、悪化因子、および関連因子。
【0104】
統計解析はPASW Statistics for Windows, Version 18.0(SPSS Inc., Chicago, IL, USA)を用いて行った。分布の正規性はShapiro-Wilk検定を用いて評価した。治療前後のパラメータ比較には、ウィルコクソンの符号順位検定およびボンフェローニの事後検定を用いた反復測定分散分析を用いた。P<0.05を統計的に有意とみなした。
【0105】
結果
本研究では、NOPの特徴を伴うDE患者20人を登録した。5人の患者(25.0%)が薬物無効または不耐容のため治療を中止した。残りの15人の患者(75.0%)を解析対象とした。平均年齢は59.5±13.0歳で、9人の患者(60.0%)が女性であった。5人の患者に眼内手術歴があり、1人の患者に眼外傷歴があった。
【0106】
治療後1週間で、眼痛強度、QoL(運転/テレビ視聴、一般活動、睡眠、および生活を楽しむ/他者との関係)、および関連因子(灼熱感、光過敏、および流涙)は改善した。眼痛強度、QoL(睡眠)、および関連因子(灼熱感および光過敏症)の総眼痛評価調査(OPAS)スコアは、1ヵ月後も改善したままであった。しかし、眼以外の痛みおよび悪化因子のスコアは治療後も変化しなかった(表1)。臨床的DEパラメータのうち、OSDIおよびシルマーテストスコアは治療後1ヵ月で改善した(表2)。疼痛スコアには、以前に使用した薬剤による有意差はみられなかった(表3)。
【表1-1】
【表1-2】
【表2】
【表3】
HA、ヒアルロン酸;CsA、シクロスポリンA。
【0107】
DEは眼症状を伴う眼表面の多因子疾患である[1]。DEの有病率は、過去30年間に世界中でかなり増加している[1]。DE患者の中には、特に異常な眼症状を伴わずに、彼らのQoLに影響を及ぼす眼痛を経験する者もいる[1]。痛みの分類は、根本的な病因に基づいている:(1)侵害受容体の活性化による組織の実際の損傷または損傷のおそれによる侵害受容性疼痛、および(2)体性感覚神経系の病変または疾患による神経因性疼痛[12]。末梢神経の損傷が繰り返されると末梢の感作が起こり、および末梢の異所性疼痛が長く続くと中枢の感作が始まる[4]。眼痛の症状が臨床症状よりも不釣り合いな場合は、全身治療を含む特別な管理が必要であり得るNOPが基礎にあることが示唆される[4]。
【0108】
しかし、DEに伴う慢性NOPは、従来の薬剤では治療が困難な臨床的問題である[4,13]。シクロスポリンAのような従来の局所薬剤は、傷害を受けた神経からの炎症性神経ペプチドおよびサイトカインの放出を減少させ、それによって侵害受容性疼痛および末梢の感作に影響を与える[13]。しかし、慢性NOP患者において角膜神経の形態学的状態および中枢感作の改善をもたらすには、これらの局所治療には限界があるように思われた。現在の全身薬剤には、主に経口抗うつ薬、抗けいれん薬、またはガバペンチノイドが含まれる。しかし、これらの全身治療には、遅発性、効果のばらつき、および許容できない副作用など、いくつかの限界がある[4,13,14]。さらに、DEに伴うNOPに対する全身性神経因性疼痛薬剤の使用を支持するのに利用できるデータは限られている[14-16]。この点において、DEにおけるNOPの治療には、即効作用があり、効果的で安全な局所薬剤が必要とされている。
【0109】
TRPスーパーファミリーのいくつかのメンバーは、特に慢性状態における侵害受容に重要な役割を果たすことから、疼痛制御の重要な標的として浮上してきた[5]。TRP受容体は、角膜(TRPV1-4、TRPA1、TRPC4、およびTRPM8)、結膜(TRPV1、TRPV2、およびTRPV4)、およびまぶた(TRPM8)で特定されている[6]。さらに、多くの研究がTRPチャネルの機能障害およびDEとの間の関連を報告している[3,6,17]。TRPM8は、涼しさの感知に関連する主要な受容体であり、蒸発冷却および高浸透圧刺激に対する反応を介して涙腺機能を制御している[10,18-20]。氷嚢で眼周囲を冷やすこと、または冷たい人工涙液を点眼することで、手術後の眼痛が緩和され得ることがいくつかの研究で示されている[21,22]。TRPM8アゴニストおよびアンタゴニストはどちらも、疼痛制御の治療薬と考えられている[5-7,23]。TRPM8アンタゴニストは、冷痛症などの急性および慢性疼痛を改善することが示されている[23,24]。しかし、TRPM8アンタゴニストは、TRPM8ノックアウトマウスを用いた実験結果に示されているように、DEにおいて望ましくない副作用として、基礎涙液分泌を減少させ得る[20]。TRPM8アゴニストは、TRPM8を過剰に活性化し、そのダウンレギュレーションを引き起こすことにより、抗アロディニック活性を示し得る[25]。分子レベルでのTRPM8アゴニストまたはアンタゴニスト[23,24]の作用に基づく、この種の動物実験および作用メカニズムに関する仮説は、混迷した思考の泥沼に陥ることがわかり得る。NOPの治療に対する最良の答えは、臨床試験による実証的メリットの上に見出される。
【0110】
このパイロット研究では、TRPM8アゴニスト(C3)のまぶたへの局所塗布が、DE患者のNOP緩和に安全かつ有効であることが示された。我々は以前に、C3の局所適用が基礎涙液分泌を刺激し、軽度のDE患者の眼の不快感を緩和することを示した[9]。上まぶたおよび角膜を支配するTRPM8の感覚線維は、三叉神経の眼枝に存在する[6]。本研究では、まぶたの縁を介したTRPM8の信号伝達が、脳内では角膜だけでなく眼表面全体からの信号として認識されている可能性があると仮定した[9]。TRPM8が活性化すると、中枢のシナプスからグルタミン酸が放出され、そして神経終末の抑制性受容体を介して、傷害によって活性化された侵害受容性求心性神経伝達が抑制される(図2)[8]。さらに、これらの作用が後角の神経因性感作を減弱させるという仮説もある[8]。さらに、OSDIおよびシルマーテストスコアは改善したが、TBUTおよび角膜染色スコアはC3投与後も変化しなかった。TRPM8アゴニストは、神経細胞作用を介して基礎涙液分泌を増加させ、および眼の不快感を軽減することが知られているが、涙液膜には直接作用しない[6,9]。これらの結果は、我々の以前の研究と一致していた[9]。
【0111】
C3をまぶたの縁に局所投与することで、不快感または逆説的な眼痛などの副作用を引き起こす角膜露出を最小限に抑え得る[9]。さらに、C3の拭き取りは、従来の点眼の導入よりも患者にとって快適であり、約40分後に痛みのない冷却感が得られた[9]。OPASスコアも治療後1週間で減少しており、局所薬物が全身薬物よりも早く効果を発揮することを示している[14]。さらに、効果は一時的であったが、C3は特に患者が運転時または睡眠時などDEによる強い痛みを感じる場合に有効であり、それによりQoLの改善につながった。
【0112】
さらに、この実施例の患者は、長期間(122.7日間)従来の治療に効果を示さなかったが、彼らは、C3治療後1週間以内に眼痛の改善を示した。この改善は、以前の従来の治療の遅延効果ではなく、C3治療の直接的な効果を示唆する。したがって、TRPM8アゴニスト(C3)は、従来の局所治療に反応しないDE患者のNOPを治療するための新規薬剤となり得る。
参照文献
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2. Jones, L.; Downie, L.E.; Korb, D.; Benitez-Del-Castillo, J.M.; Dana, R.; Deng, S.X.; Dong, P.N.; Geerling, G.; Hida, R.Y.; Liu, Y.; et al. TFOS DEWS II Management and Therapy Report. Ocul Surf 2017, 15, 575-628, doi:10.1016/j.jtos.2017.05.006.
3. Belmonte, C.; Nichols, J.J.; Cox, S.M.; Brock, J.A.; Begley, C.G.; Bereiter, D.A.; Dartt, D.A.; Galor, A.; Hamrah, P.; Ivanusic, J.J.; et al. TFOS DEWS II Pain and Sensation Report. The Ocular Surface 2017, 15, 404-437, doi:10.1016/j.jtos.2017.05.002.
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図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-09-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
いくつかの実施形態では、DIPA化合物は、
【化1】
である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経因性眼痛障害の治療を必要とする対象における神経因性眼痛障害を治療するための方法であって、治療有効量の1-ジ-イソプロピル-ホスフィノイル-アルカン(DIPA)化合物を前記対象の眼表面に少なくとも1週間局所適用することを含み、前記DIPA化合物は液体ビヒクルに溶解されており、前記液体ビヒクルは前記DIPA化合物を前記眼表面に集中送達するように適合されている、方法。
【請求項2】
前記DIPA化合物が0.5~5mg/mlの濃度で前記液体ビヒクルに溶解されており、前記液体ビヒクルが前記DIPA化合物を前記眼表面に送達する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液体ビヒクルが水溶液である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記液体ビヒクルが水または等張食塩水である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記DIPA化合物が0.5~5mg/mlの濃度で前記液体ビヒクルに溶解される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記液体ビヒクルに溶解された前記DIPA化合物が、ワイプによって前記対象の前記眼表面に送達される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記液体ビヒクルに溶解された前記DIPAが、前記対象の前記眼表面に1日4回適用される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記DIPA化合物が、
【化1】
である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記DIPA化合物が、
【化2】
【化3】
である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記DIPA化合物が、
【化4】
である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記神経因性眼痛障害がドライアイ疾患または眼の手術によって引き起こされる、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記神経因性眼痛障害が眼の外傷によって引き起こされる、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
神経因性眼痛障害の治療を必要とする対象において神経因性眼痛障害を治療するための局所薬剤であって、治療有効量の1-ジ-イソプロピル-ホスフィノイル-アルカン(DIPA)化合物を含有する水溶液を含む、局所薬剤。
【請求項14】
前記水溶液中の前記DIPA化合物の濃度が0.5~5mg/mLである、請求項13に記載の局所薬剤。
【請求項15】
前記DIPA化合物が、
【化5】
である、請求項13または14に記載の局所薬剤。
【請求項16】
前記神経因性眼痛障害がドライアイ疾患または眼の手術によって引き起こされる、請求項13~15のいずれか1項に記載の局所薬剤。
【請求項17】
前記神経因性眼痛障害が眼の手術によって引き起こされる、請求項13~15のいずれか1項に記載の局所薬剤。
【請求項18】
前記神経因性眼痛障害が心的外傷によって引き起こされる、請求項13~15のいずれか1項に記載の局所薬剤。
【請求項19】
神経因性眼痛障害の治療を必要とする対象において神経因性眼痛障害を治療するための医薬品を製造するための1-ジ-イソプロピル-ホスフィノイル-アルカン(DIPA)化合物の使用であって、前記医薬品は、治療有効量の前記DIPA化合物および液体ビヒクルを含み、前記液体ビヒクルは、前記対象の眼表面への前記DIPA化合物の集中送達に適合される、使用。
【請求項20】
前記DIPA化合物が、
【化6】
である、請求項19に記載の使用。
【国際調査報告】