(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-24
(54)【発明の名称】IL-35又はIL-27を含むエクソソーム及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0781 20100101AFI20240117BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240117BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20240117BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240117BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240117BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20240117BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240117BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240117BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240117BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20240117BHJP
【FI】
C12N5/0781
A61P37/06
A61K38/20
A61P27/02
A61P9/00
A61P1/18
A61P29/00
A61P25/00
A61K35/17
C12N5/071
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541862
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-08
(86)【国際出願番号】 US2021034778
(87)【国際公開番号】W WO2022150056
(87)【国際公開日】2022-07-14
(32)【優先日】2021-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)2020年(令和2年)5月29日 https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fimmu.2020.01051/fullを通じて発表 (2)2020年(令和2年)8月2日 https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0022283620304745?via%3Dihubを通じて発表
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】510002280
【氏名又は名称】アメリカ合衆国
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】エグワグ、チャールズ イー.
(72)【発明者】
【氏名】カン、ミンギョン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BD38
4B065BD50
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084DA12
4C084ZA02
4C084ZA33
4C084ZA36
4C084ZB08
4C084ZB11
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB63
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA33
4C087ZA36
4C087ZB08
4C087ZB11
(57)【要約】
実施形態では、本発明は、インターロイキン-27(IL-27)又はインターロイキン-35(IL-35)を含む単離されたエクソソームの集団を提供する。一実施形態では、本発明はまた、インターロイキン-27(IL-27)を含むエクソソームの集団を調製する方法であって、(a)CD19+B2細胞又はB1a細胞を単離することと;(b)活性化細胞を提供するために、単離された細胞をLPS又はBCRアゴニストで活性化することと;(c)該活性化細胞から分泌されたエクソソームを単離することと、を含む方法を提供する。一実施形態では、本発明はまた、インターロイキン-35(IL-35)を含むエクソソームの集団を調製する方法であって、(a)CD138+形質細胞を単離することと;(b)活性化細胞を提供するために、単離された細胞をLPS又はBCRアゴニストで活性化することと;(c)該活性化細胞から分泌されたエクソソームを単離することと、を含む方法を提供する。本発明の更なる実施形態は、記載の通りである。
【選択図】
図9B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターロイキン-27(IL-27)を含む単離されたエクソソームの集団。
【請求項2】
前記エクソソームの集団がIL-35を更に含む、請求項1に記載の単離されたエクソソームの集団。
【請求項3】
インターロイキン-35(IL-35)を含む単離されたエクソソームの集団。
【請求項4】
インターロイキン-27(IL-27)を含むエクソソームの集団を調製する方法であって、
(a)CD19+B2細胞又はB1a細胞を単離することと;
(b)活性化細胞を提供するために、単離された細胞をLPS又はBCRアゴニストで活性化することと;
(c)該活性化細胞から分泌されたエクソソームを単離することと
を含む方法。
【請求項5】
インターロイキン-35(IL-35)を含むエクソソームの集団を調製する方法であって、
(a)CD138+形質細胞を単離することと;
(b)活性化細胞を提供するために、単離された細胞をLPS又はBCRアゴニストで活性化することと;
(c)該活性化細胞から分泌されたエクソソームを単離することと
を含む方法。
【請求項7】
哺乳動物における免疫系の抑制における使用のための、請求項1~3のいずれか一項に記載のエクソソームの集団。
【請求項8】
前記エクソソームの集団が、哺乳動物に対してIL-35又はIL-27を生産するB細胞を含む、請求項7に記載の使用のためのエクソソームの集団。
【請求項9】
前記哺乳動物が疾患を有する、請求項7又は8に記載の使用のためのエクソソームの集団。
【請求項10】
前記哺乳動物が自己免疫疾患を有する、請求項7~9のいずれか一項に記載の使用のためのエクソソームの集団。
【請求項11】
前記自己免疫疾患が眼の疾患である、請求項10に記載の使用のためのエクソソームの集団。
【請求項12】
前記自己免疫疾患が中枢神経系の疾患である、請求項10に記載の使用のためのエクソソームの集団。
【請求項13】
前記自己免疫疾患が脳の疾患である、請求項10に記載の使用のためのエクソソームの集団。
【請求項14】
前記自己免疫疾患がブドウ膜炎である、請求項10に記載の使用のためのエクソソームの集団。
【請求項15】
前記自己免疫疾患が脳脊髄炎である、請求項10に記載の使用のためのエクソソームの集団。
【請求項16】
前記哺乳動物が多発性硬化症を有する、請求項7~9のいずれか一項に記載の使用のためのエクソソームの集団。
【請求項17】
膵臓の炎症が抑制される、請求項7~9のいずれか一項に記載の使用のためのエクソソームの集団。
【請求項18】
前記哺乳動物が同種骨髄又は造血幹細胞移植を受けたことがある、請求項7又は8に記載の使用のためのエクソソームの集団。
【請求項19】
前記哺乳動物が同種固形臓器移植を受けたことがある、請求項7又は8に記載の使用のためのエクソソームの集団。
【請求項20】
前記哺乳動物が移植片対宿主病(GVHD)を有する、請求項18又は19に記載の使用のためのエクソソームの集団。
【請求項21】
前記哺乳動物が加齢黄斑変性症(AMD)を有する、請求項7~9のいずれか一項に記載の使用のためのエクソソームの集団。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この特許出願は、その全体が参照により本明細書に援用される、2021年1月11日出願の米国仮特許出願第63/135,833号の利益を主張する。
【0002】
連邦支援の研究又は開発に関する記述
本発明は、米国国立衛生研究所、国立眼科学研究所によって、プロジェクト番号EY000350-21及びEY000372-20の下、政府の支援を受けて成された。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
中枢神経系(CNS)は、脳、脊髄、及び眼網膜で構成される免疫学的特権部位である。その複雑で非常に脆弱な生理は、血液脳関門(BBB)又は血液眼関門(BOB)によって、潜在的に病原性である炎症細胞から保護されている。免疫抑制性サイトカインを構成的に分泌する常在性の眼ミクログリア細胞又は脈絡叢の上皮細胞は、眼、脳、及び脊髄の免疫特権の維持に寄与するが、神経炎症性疾患では、オリゴデンドロサイト又は網膜タンパク質に特異的な抗原受容体を有するリンパ球がBBB又はBOBを突破し、神経細胞及び視細胞を攻撃し破壊する。
【0004】
従って、CNSにおける炎症は固有の課題を提示し、CNSに関与する病理を治療又は予防する際には、網膜又は脳の機能的完全性を損わせる可能性のある付随的損傷を避ける必要がある。
【発明の概要】
【0005】
実施形態では、本発明は、インターロイキン-27(IL-27)又はインターロイキン-35(IL-35)を含む単離されたエクソソームの集団を提供する。
【0006】
実施形態では、本発明はまた、インターロイキン-27(IL-27)を含むエクソソームの集団を調製する方法であって、(a)CD19+B2細胞又はB1a細胞を単離することと;(b)活性化細胞を提供するために、単離された細胞をLPS又はBCRアゴニストで活性化することと;(c)該活性化細胞から分泌されたエクソソームを単離することと、を含む方法を提供する。
【0007】
実施形態では、本発明はまた、インターロイキン-35(IL-35)を含むエクソソームの集団を調製する方法であって、(a)CD138+形質細胞を単離することと;(b)活性化細胞を提供するために、単離された細胞をLPS又はBCRアゴニストで活性化することと;(c)該活性化細胞から分泌されたエクソソームを単離することと、を含む方法を提供する。
【0008】
本発明の更なる実施形態は、本明細書に記載の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
以下に説明する図に示す結果は、本発明の態様によるものである。
【
図1A】
図1Aは、IL-35を生産しない活性化B細胞(ナイーブエクソソーム;上のグラフ及び写真のセット)又はIL-35を分泌する制御性B細胞(i35-エクソソーム;下のグラフ及び写真のセット)に由来するエクソソームの精製、特性解析、及び定量の結果を表す2セットのグラフ及び写真である。ナノ粒子追跡分析(Nanoparticle Tracking Analysis、NTA)により分析されたエクソソームサンプルのサイズ分布分析。3つの独立した実験の平均±SEMを示す。
【
図1B】
図1B及び1Cは、エクソソーム定量アッセイを用いることによる非刺激(「1」と標識)及び刺激(「2」と標識)B細胞培養で放出されたエクソソームの定量(
図1B)、並びにELISAによる2×10
10個のナイーブエクソソーム(「1」と標識)又はi35-エクソソーム(「2」と標識)(n=6)中に含有されるIL-35の量の測定(
図1C)を表す棒グラフである。
【
図1C】
図1B及び1Cは、エクソソーム定量アッセイを用いることによる非刺激(「1」と標識)及び刺激(「2」と標識)B細胞培養で放出されたエクソソームの定量(
図1B)、並びにELISAによる2×10
10個のナイーブエクソソーム(「1」と標識)又はi35-エクソソーム(「2」と標識)(n=6)中に含有されるIL-35の量の測定(
図1C)を表す棒グラフである。
【
図1D】
図1Dは、i35-Breg細胞由来のエクソソーム(右レーン、2)又はIL-35を生産しないB細胞由来のエクソソーム(ナイーブエクソソーム;左レーン、1)が発現するエクソソームマーカー(HSP70及びCD63)のウェスタンブロット分析を表す。
【
図1E】
図1Eは、Ebi3又はp35に特異的な抗体を用いた免疫沈降/ウェスタンブロット分析に供したナイーブエクソソーム(左レーン、1)又はi35-エクソソーム(右レーン、2)由来の溶解物(左パネル)、及びEbi3又はp35又はマウスIgGに特異的な抗体を用いた免疫沈降/ウェスタンブロット分析に供したi35-エクソソーム由来の溶解物(右パネル)を示す免疫沈降/ウェスタンブロットを表す。
【
図1F】
図1F及び1Gは、抗CD3/CD28 Ab及びナイーブエクソソーム(「1」と標識)又はi35-エクソソーム(「2」と標識)を含有する培養培地中においてインビトロで3日間刺激したCD4+T細胞の結果を示す棒グラフである。上清中のIL-2(
図1F)又はIFN-γ(
図1G)の分泌をELISAによって検出した(n=6)。結果は3つの独立した試験を表す、
****p<0.0001。
【
図1G】
図1F及び1Gは、抗CD3/CD28 Ab及びナイーブエクソソーム(「1」と標識)又はi35-エクソソーム(「2」と標識)を含有する培養培地中においてインビトロで3日間刺激したCD4+T細胞の結果を示す棒グラフである。上清中のIL-2(
図1F)又はIFN-γ(
図1G)の分泌をELISAによって検出した(n=6)。結果は3つの独立した試験を表す、
****p<0.0001。
【
図1H】
図1Hは、ナイーブエクソソーム又はi35-エクソソーム(20μg)を含有する培養培地中、非分極条件下において抗CD3/CD28 Abで4日間CD4+T細胞を刺激した後の結果を表す一連のグラフである。
【
図1I】
図1Iは、CFSE希釈アッセイによって評価したリンパ球増殖に対するナイーブエクソソーム又はi35-エクソソームの効果を示す棒グラフである。結果は3つの独立した試験を表す、
**p<0.01、
***p<0.001。
【
図2A】
図2Aは、実施例1に記載の通りエクソソーム処理に使用したタイムラインスキームを表す。
【
図2B】
図2Bは、耳内視鏡イメージングシステムを用いてEAU導入後15日目及び17日目に撮影した網膜の眼底画像を、それに対応するヒストグラムと共に表す。i35-エクソソームで処理したマウスと比較すると、PBSで処理したマウスの眼底像では、視神経円板縁の著しいにじみ及び傍瞳孔領域の拡大(黒矢印)、網膜血管炎(丸矢印)、黄白色の網膜及び脈絡膜の浸潤(白矢印)を特徴とするより重度の眼炎症が認められた。臨床スコア及び疾患重症度の評価は、視神経円板又は網膜血管の変化、並びに網膜及び脈絡膜の浸潤に基づいていた。ヒストグラムは臨床スコアを示す(n=14)。結果は3つの独立した試験を表す、
***p<0.001、
****p<0.0001。
【
図2C】
図2Cは、組織像を表す。PBSで処理したマウスの眼は、重症のブドウ膜炎の特徴である網膜の巨大な陥入(
*)の発生を特徴とする非常に重症のEAUを示す。H&E組織切片:スケールバー、100μm。V、硝子体;GCL、神経節細胞層;INL、内核層;ONL、外核層;RPE/CH、網膜色素上皮及び脈絡膜。
【
図2D】
図2Dは、i35-エクソソームで処理したマウスの硝子体及び視神経乳頭における炎症細胞(白矢印)の顕著な減少を示す代表的なOCT画像を表す。丸で囲んだ矢印は、重症のブドウ膜炎の特徴を表す網膜ひだを示す。
【
図2E】
図2Eは、EAU誘導後17日目の網膜のERG分析を表す棒グラフである。明順応又は暗順応したERGのa波又はb波の振幅の平均値をフラッシュ輝度の関数としてプロットし、値は平均±SEMである。データは、少なくとも3回の測定の平均±SEMとして表す。結果は3つの独立した試験を表す。
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.0001。
【
図3A】
図3Aは、細胞内サイトカインアッセイによる、PBS又はi35-エクソソームで処理したマウスの眼、脾臓、又はリンパ節におけるCD4+リンパ球の分析を表すグラフである(n=14)。データは3回の反復実験の平均±SEMとして表され、結果は3つの独立した試験を表す、
**p<0.01、
***p<0.001。
【
図3B】
図3B及び3Cは、IFNγ(
図3B)並びにFox3p及びp35/Ebi3(
図3C)についての細胞内サイトカインアッセイ(n=14)によるPBS又はi35-エクソソームで処理したマウスの眼におけるCD4+T細胞の分析を表すグラフである。データは3回の反復実験の平均±SEMとして表され、結果は3つの独立した試験を表す、
*p<0.05、
**p<0.01。
【
図3C】
図3B及び3Cは、IFNγ(
図3B)並びにFox3p及びp35/Ebi3(
図3C)についての細胞内サイトカインアッセイ(n=14)によるPBS又はi35-エクソソームで処理したマウスの眼におけるCD4+T細胞の分析を表すグラフである。データは3回の反復実験の平均±SEMとして表され、結果は3つの独立した試験を表す、
*p<0.05、
**p<0.01。
【
図4】
図4は、腹腔から選別し、LPS又はBCR(IgM/抗CD40)で72時間培養刺激したCD19
+CD5
+B1a細胞を示す棒グラフである。p28、Ebi3、又はIL-27(p28+Ebi3)を発現しているCD19
+CD5
+CD23
-B1a細胞又はCD19
+CD5
+CD23
-CD81
+B1a細胞の割合を、細胞内サイトカイン染色アッセイによって決定した。Y軸(カウント)は、p28、Ebi3、又はIL-27(p28+Ebi3)を発現しているB1a細胞の割合を示す。
【
図5】
図5は、脾臓由来のCD19+B-2細胞と比較して、活性化された腹腔B1a細胞によってより多くのi27-エクソソームが放出されたことを示す棒グラフである。
【
図6】
図6は、マウス腹腔B1a細胞由来のi27-エクソソーム50μgが100pg/mLのインターロイキン27(IL-27)を含有することを示す棒グラフである。
【
図7】
図7は、脾臓のB-1細胞もIL-27を分泌し、T細胞の増殖を阻害することを示すフローサイトメトリープロット及び棒グラフを表す一連のグラフである。
【
図8】
図8は、i27-エクソソームが実験的自己免疫性ブドウ膜炎(EAU)を抑制したことを示すグラフである。
【
図9A】
図9A及び9Bは、i27-エクソソームが、制御性T細胞の増殖を誘導しながら炎症促進性応答(IL-17及びIFN-γ)を阻害することによってEAUを抑制したことを示す、フローサイトメトリープロット(
図9A)及び棒グラフ(
図9B)である。
【
図9B】
図9A及び9Bは、i27-エクソソームが、制御性T細胞の増殖を誘導しながら炎症促進性応答(IL-17及びIFN-γ)を阻害することによってEAUを抑制したことを示す、フローサイトメトリープロット(
図9A)及び棒グラフ(
図9B)である。
【
図10A】
図10A及び10Bは、i27エクソソームがブドウ膜形成T細胞の増殖を抑制することによってブドウ膜炎を改善したことを示す、フローサイトメトリープロット(
図10A)及び棒グラフ(
図10B)である。
【
図10B】
図10A及び10Bは、i27エクソソームがブドウ膜形成T細胞の増殖を抑制することによってブドウ膜炎を改善したことを示す、フローサイトメトリープロット(
図10A)及び棒グラフ(
図10B)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
B細胞(又はBリンパ球)は、抗体を分泌する形質細胞に分化するリンパ球である。未熟B細胞は、ほとんどの哺乳動物の骨髄で生産される。骨髄でIgM+の未成熟段階に達した後、これら未成熟B細胞は脾臓に移動し、そこでは移行期B細胞と呼ばれ、これら細胞の一部が最終的に成熟Bリンパ球に分化する。B細胞の発生は幾つかの段階を経て行われ、それぞれの段階で抗体遺伝子のゲノム含量が変化する。
【0011】
成熟B細胞は、形質B細胞(形質細胞、プラズマ細胞、又はエフェクターB細胞としても知られている)又はメモリーB細胞のいずれかに分類され得る。形質B細胞は、抗原に曝露されたことがあり、大量の抗体を生産及び分泌する大型のB細胞である。形質B細胞は、短命であり、特定の免疫反応を誘導した抗原が排除されるときにアポトーシスを受ける。対照的に、メモリーB細胞は、予備刺激抗原の繰り返し曝露に対して迅速に応答するために予備刺激された長寿命の刺激B細胞である。メモリーB細胞は、B細胞の活性化/増殖後にリンパ系組織で産生され、骨髄、リンパ節、及び脾臓に存在する。
【0012】
各B細胞は、その表面上にある特定の抗原に結合する固有の受容体タンパク質を有し、これはB細胞受容体(BCR)と称される。BCRは、B細胞を他の種類のリンパ球と区別することを可能にする膜結合型免疫グロブリンであり、B細胞の活性化に関与する主要なタンパク質である。B細胞がその同族抗原に遭遇し、Tヘルパー細胞から追加のシグナルを受け取ると、B細胞は形質B細胞又はメモリーB細胞のいずれかに更に分化することができる。B細胞は、形質B細胞又はメモリーB細胞に直接分化することもあり、胚中心反応と呼ばれる中間分化段階を経ることもあり、その場合、B細胞は免疫グロブリン遺伝子の可変領域の体細胞超変異を受け、場合によってはクラススイッチングを受ける。B細胞の他の機能としては、抗原提示、サイトカイン生産、及びリンパ系組織の編成が挙げられる。
【0013】
特定のB細胞は、IL-10、IL-35、又はTGFβ等の抗炎症性サイトカインを単独で、又は阻害性細胞表面受容体(これらは、例えばB2リンパ球系列の制御性B細胞である)と組み合わせて生産することを通して自己免疫疾患を抑制することができる。IL-35を生産する制御性B細胞(Breg)(i35-Breg)は、脳脊髄炎及びブドウ膜炎を抑制する。インターロイキン-27を生産及び分泌するB-1a系列等のBreg(i27-Breg)も、自己免疫疾患を抑制することができる。いかなる理論にも拘束されるものではないが、BregはTh1及びTh17 T細胞を阻害し、制御性T細胞(Treg)を増幅させる。
【0014】
インターロイキン-35(IL-35)は、ヘテロ二量体サイトカインであるIL-12ファミリーのメンバーであり、エプスタイン・バーウイルス(EBV)誘導遺伝子3(IL27bとしても知られている)によってコードされているβ鎖サブユニットであるEbi3と、IL-12αによってコードされているIL12p35αサブユニットで構成される。IL-35は、制御性T細胞によって生産され、Tregの免疫抑制活性に関与している。
【0015】
インターロイキン-27(IL-27)は、IL-12サイトカインファミリーのメンバーである。IL-27は、Ebi3及びIL-27p28の2つの異なるタンパク質サブユニットで構成されるヘテロ二量体サイトカインである。IL-27は、細胞によって発現され、IL-27受容体(IL-27R)と相互作用する。IL-27Rは、2つのタンパク質IL-27α(IL-27アルファ)及びgp130からなる。IL-27は、免疫系におけるT細胞の多様な集団の分化を誘導する。炎症刺激の際にB-1a制御細胞が天然に活性化されると、IL-27生産と同時にi27-Bregの脾臓への流出が惹起され、そこでi27-Bregは従来のリンパ球を再プログラムして免疫制御機能を獲得する。
【0016】
Bregを治療法に使用することの1つの障害は投薬であるが、その理由は、生物学的に活性のあるIL-35及びIL-27はそれぞれ弱く会合したヘテロ二量体であり、容易に解離するので、Bregによって分泌されるIL-35又はIL-27の生物学的利用能を確認することが困難になるためである。
【0017】
予想外かつ驚くべきことに、i35-Breg及びi27-Bregが、それぞれIL-35(i35-エクソソーム)及びIL-27(i27-エクソソーム)を含有するエクソソームを分泌することが見出された。一般に、エクソソームは、リンパ球を含む免疫細胞によって分泌される。エクソソームは、タンパク質、脂質、ヌクレオチド、miRNA、及びmRNAを含有し、その機能は、起源細胞及びその生理学的状態によって変化し得る。エクソソームは、BBB又はBOBを通過し、CNSにカーゴを送達することができる30~150nm(例えば、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、110nm、120nm、130nm、140nm、又は150nm)のナノサイズの小胞である。
【0018】
実施形態では、本発明は、インターロイキン-27(IL-27)又はインターロイキン-35(IL-35)を含む単離されたエクソソームの集団を提供する。実施形態では、本発明は、IL-27を含む単離されたエクソソームの集団を提供する。実施形態では、本発明は、IL-35を含む単離されたエクソソームの集団を提供する。実施形態では、本発明は、IL-27及びIL-35の両方を含む単離されたエクソソームの集団を提供する。
【0019】
本発明のエクソソームは、標的細胞の表面上で抑制性受容体であるリンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、及びC-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)の発現を誘導することができる。LAG-3(又は表面抗原分類223(CD223))は、ヒトではLAG3遺伝子によってコードされるタンパク質である。LAG3は、免疫チェックポイント受容体である。PD-1(又は表面抗原分類279(CD279))は、ヒトではPDCD1遺伝子によってコードされるタンパク質である。PD-1も、免疫チェックポイント受容体である。PD-1は、抗原特異的T細胞のアポトーシスを促進し、制御性T細胞(抗炎症性、抑制性T細胞)のアポトーシスを減少させる。CXCR4(又はフーシン又は表面抗原分類184(CD184))は、ヒトではCXCR4遺伝子によってコードされるタンパク質である。CXCR4は、リンパ球に対する走化性活性を有する分子である間質由来因子-1(SDF-1又はCXCL12)に特異的なアルファ-ケモカイン受容体である。
【0020】
エクソソームはまた、阻害性受容体グルココルチコイド誘導TNFR関連タンパク質(GITR又は腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー18(TNFRSF18)又は活性化誘導性TNFRファミリー受容体(AITR))の細胞表面発現を誘導し得る。GITRは、ヒトではTNFRSF18遺伝子によってコードされるタンパク質である。GITRは、T細胞の活性化の際に発現が増加することが示されている。エクソソームはまた、阻害性受容体OX40(又は腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー4(TNFRSF4)又は表面抗原分類134(CD134))の細胞表面発現を誘導し得る。OX40は、ヒトではTNFRSF4遺伝子によってコードされるタンパク質である。OX40は、休止ナイーブT細胞では構成的には発現しない。エクソソームはまた、阻害性受容体細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4又は表面抗原分類152(CD152))の細胞表面発現を誘導し得る。CTLA4は、ヒトではCTLA4遺伝子によってコードされるタンパク質である。CTLA4は、免疫チェックポイントであり、免疫応答をダウンレギュレートする。CTLA4は、制御性T細胞では構成的に発現するが、通常のT細胞では活性化後にのみアップレギュレートされる。
【0021】
エクソソームは、哺乳動物の細胞に由来するものであってよい。「哺乳動物」という用語は、マウス等のげっ歯目、並びにウサギ等の兎形目、ネコ及びイヌを含む食肉目、ウシ及びブタを含む偶蹄目、ウマを含む奇蹄目、霊長目、オマキザル目(Ceboid)又はサル目(Simioid)、並びに真猿亜目(Anthropoid)(ヒト及び類人猿)を含むが、これらに限定されない。より好ましくは、エクソソームは、ヒト由来の細胞のものである。
【0022】
実施形態では、本発明はまた、インターロイキン-27(IL-27)を含むエクソソームの集団を調製する方法であって、(a)CD19+B2細胞又はB1a細胞を単離することと;(b)活性化細胞を提供するために、単離された細胞をLPS又はBCRアゴニストで活性化することと;(c)該活性化細胞から分泌されたエクソソームを単離することと、を含む方法を提供する。CD19+B2細胞又はB1a細胞は、任意で、IL-27で刺激されてもよい。実施形態では、本発明はまた、インターロイキン-35(IL-35)を含むエクソソームの集団を調製する方法であって、(a)CD138+形質細胞を単離することと;(b)活性化細胞を提供するために、単離された細胞をLPS又はBCRアゴニストで活性化することと;(c)該活性化細胞から分泌されたエクソソームを単離することと、を含む方法を提供する。CD138+形質細胞は、任意で、IL-27で刺激されてもよい。
【0023】
ソース哺乳動物の組織又は体液のサンプルは、哺乳動物の末梢リンパ系組織、哺乳動物の臍帯血、哺乳動物の腹水、哺乳動物の骨髄、人工多能性細胞(iPSC)、又はCD19+B2、CD138+、若しくはB-1aの細胞を含有する任意の他のサンプル等の任意の好適なソースに由来し得る。少なくとも幾つかの実施形態では、サンプルとして腹水又は臍帯血を使用することが望ましい場合があるが、その理由は、これらのソースは、典型的には、他のサンプル(例えば、末梢リンパ系組織)よりもB-1a細胞の割合が高いからである。幾つかの実施形態では、組織又は流体の好ましいソースは、本発明のエクソソームの集団で処理されるドナー対象に由来し得る。B1a細胞は、胎児組織を起源とし、主に腹膜腔及び胸膜腔に存在し、通常のB細胞(B2)よりも大きく、長寿命でありかつ自己複製する自然免疫様B細胞である。B1a細胞は、IL-10の主要なソースであり、自然免疫応答及び適応免疫応答の両方の進行を阻害し、組織の損傷を防ぐ。
【0024】
細胞の成長を支援することができる任意の好適な細胞培養培地を使用することができる。例えば、Roswell Park Memorial Institute培地(RPMI1640)培養培地を使用することができる。
【0025】
培養細胞は、リポ多糖(LPS)、又はBCRアゴニスト、又はToll様受容体(TLR)アゴニストに曝露され得る。細胞を活性化することができる任意の好適なBCRアゴニスト又はTLRアゴニストを使用することができる。BCRアゴニストの例としては、抗CD40及び抗IgM抗体が挙げられる。TLRアゴニストの例としては、TLR9及びTLR4アゴニストが挙げられる。全てのリンパ球の場合と同様に、生物活性を惹起するためには細胞を活性化する必要がある。CD40は、抗原提示細胞上にみられる共刺激性タンパク質であり、B細胞受容体とIgMに対する抗体との相互作用後のB細胞の活性化に関与する。
【0026】
本明細書で使用するとき、「Toll様受容体」及び「TLR」という用語は、病原体関連分子パターンを認識し、自然免疫における重要なシグナル伝達要素として作用する、高度に保存された哺乳動物タンパク質のファミリーの任意のメンバーを指す。TLRポリペプチドは、ロイシンリッチリピートを有する細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及びTLRシグナル伝達に関与する細胞内ドメインを含む特徴的な構造を共有している。
【0027】
「Toll様受容体4」及び「TLR4」という用語は、公的に入手可能なTLR4配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の配列同一性を共有する核酸又はポリペプチドを指す。好適なTLR4アゴニストは、LPSである。
【0028】
「Toll様受容体9」及び「TLR9」という用語は、公的に入手可能なTLR9配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の配列同一性を共有する核酸又はポリペプチドを指す。好適なTLR9アゴニストは、CpGモチーフを含有するオリゴヌクレオチド(CpG ODN)である。
【0029】
任意で刺激に使用されるIL-27又はIL-35タンパク質は、タンパク質を天然に生産する細胞から単離されたネイティブのIL-27又はIL-35タンパク質であり得る。この実施形態では、IL-27又はIL-35タンパク質は、好ましくは、哺乳動物(例えば、ヒト又はマウス)から単離される。あるいは、このタンパク質は、通常の分子生物学的技術を用いて産生された組換えのIL-27又はIL-35タンパク質であってもよい。組換えのIL-27又はIL-35タンパク質は、ヒト又はマウス由来のネイティブのIL-27/IL-35タンパク質の全部又は一部を含有し得る。例えば、組換えタンパク質は、ネイティブヒトタンパク質全体又はネイティブマウスタンパク質全体を含有し得る。別の実施形態では、組換えのIL-27又はIL-35タンパク質は、ヒト由来のネイティブタンパク質の一部及びマウス由来のネイティブタンパク質の一部を含有し得る(すなわち、「キメラ」タンパク質)。当業者であれば、組換えのIL-27又はIL-35タンパク質が、例えばB細胞におけるIL-27又はIL-35タンパク質の発現及び/又は安定性を最適化する他の要素を含有し得ることを理解するであろう。実施形態では、IL-27タンパク質は、IL-27p28及びエプスタイン・バーウイルス(EBV)誘導遺伝子3(Ebi3)タンパク質を含む組換え融合タンパク質である。実施形態では、IL-35タンパク質は、IL-12p35αサブユニットタンパク質及びエプスタイン・バーウイルス(EBV)誘導遺伝子3(Ebi3)タンパク質を含む組換え融合タンパク質である。
【0030】
本発明の方法は、哺乳動物における疾患の治療に有用である。この治療により、免疫系の望ましい抑制がもたらされ得る。
【0031】
本発明の方法は、移植片対宿主病(GVHD)の治療、抑制、又は予防に有用である。患者は、実質臓器又は同種骨髄又は造血幹細胞の移植を受けることができる。GVHDを予防又は重症度を軽減するために、本発明のエクソソームの集団は、哺乳動物が同種移植を受ける前に哺乳動物に投与される。あるいは、本発明のエクソソームの集団を移植材料と混合して移植混合物を形成し、次いで、該移植混合物を哺乳動物に投与することによって、GVHDを予防又は抑制することができる。これに関して、移植材料は、同種リンパ球を含み得る。実施形態では、移植細胞は、iPS細胞由来の細胞(例えば、心臓細胞、膵臓細胞、網膜細胞)である。
【0032】
本発明のエクソソームの集団は、エクスビボで移植材料と混合することができる。「エクスビボ」とは、天然条件を最低限変化させた、生物外の人工環境における細胞若しくは組織内で又は該細胞若しくは組織に対して実施される方法を指す。対照的に、用語「インビボ」とは、その正常なインタクトな状態における生体内で実施される方法を指し、一方、「インビトロ」法は、その通常の生物学的状況から単離された生物の構成要素を使用して実施される。
【0033】
エクソソームの集団は、薬学的に許容し得る(例えば、生理学的に許容し得る)組成物の形態で投与することができる。組成物は、担体、好ましくは薬学的に(例えば、生理学的に許容し得る)担体、及びエクソソームの集団を含み得る。任意の好適な担体を本発明の状況において使用することができ、多くのそのような担体は当技術分野において公知である。担体の選択は、一部には、組成物を投与し得る具体的な部位及び組成物を投与するために使用される具体的な方法によって決定されるであろう。組成物は、任意で無菌であってもよい。組成物は、保存のために凍結又は凍結乾燥し、使用前に好適な無菌担体中で再構成してもよい。組成物は、当技術分野で公知の従来の技術に従って作製することができる。
【0034】
エクソソームの集団は、(本明細書で先に定義したとおり)哺乳動物に投与することができる。好ましくは、哺乳動物は、マウス又はヒトである。
【0035】
本発明は、哺乳動物における免疫系を抑制する方法であって、本発明のエクソソームの集団を、それを必要とする哺乳動物に投与し、それによって該哺乳動物における免疫系を抑制することを含む方法を提供する。従って、本発明は、哺乳動物における自己免疫を抑制する方法であって、エクソソームの単離された集団を哺乳動物に投与することを含み、その際に、例えば、哺乳動物におけるインビボIL-27又はIL-35生産が人為的に高いレベルまで増加し、それによって哺乳動物における自己免疫が抑制される方法を提供する。IL-27及びIL-35は、インビボで急速にクリアランスされるが、前記単離された集団を投与すると、インビボにおいてIL-27又はIL-35を持続投与することが可能になる。このことは、例えばIL-27やIL-35の直接投与に依存し得る療法とは明らかに異なる利点をもたらす。
【0036】
IL-27及びIL-35は、サイトカインのIL-12ファミリーの2つの免疫抑制メンバーである。IL-35又はIL-27は、自己免疫疾患の抑制において大きな見込みを示すが、サイトカイン、特にヘテロ二量体サイトカインを生物製剤として使用する際の大きな問題点は、半減期が比較的短く、生物活性が一過性であり、薬物動態学的特性が予測できないことである。別の問題点は、投薬の問題に関連している。IL-35又はIL-27サブユニットタンパク質の会合は強くない(非共有結合性)ので、IL-35及びIL-27サブユニットタンパク質は容易に解離し、そのため、疾患を改善するために投与される又は必要とされる生物活性p35:Ebi3又はp28:Ebi3ヘテロ二量体の有効用量を確認することが困難になる。本発明のエクソソームの治療的使用は、Breg細胞又はTreg細胞によって生産される最も有効なサイトカインであるIL-10、IL-27、又はIL-35等の生物製剤の使用を超える幾つかの治療上の利点を提供する。治療法におけるエクソソームの使用は、例えば以下を含むBreg療法を超える利点を有する:(1)エクソソームは、小胞に区分けされたIL-27(IL27p28/Ebi3)又はIL-35(IL12p35/Ebi3)の両サブユニットを含有し、投与される生物活性IL-35又はIL-27の量を確認するという投薬上の問題を取り除く、及び(2)エクソソームのサイズが小さいことに起因して、エクソソームを利用してIL-27又はIL-35をCNS組織に送達し、BBB又はBOBを通過させることができる。
【0037】
「自己免疫」という用語は、本明細書で使用するとき、生物(例えば、ヒト又はマウス等の哺乳動物)が自身の構成部分を自己として認識することができず、その結果、生物自身の細胞及び組織に対する免疫応答が生じることを指す。言い換えれば、自己免疫は、「自己」抗原に対する適応免疫応答であり、宿主組織の損傷によって病理を媒介する炎症促進性サイトカインの生産、又は補体媒介性疾患を引き起こし得る「自己抗体」の生産を特徴とする。
【0038】
「自己免疫疾患」とは、組織の傷害が身体構成部分に対する体液性及び/若しくは細胞媒介性の免疫応答、又は、広義には自己に対する免疫応答に関連する疾患又は障害の群のいずれか1つを指す。病理学的な免疫応答は、全身的である場合もあり、臓器特異的である場合もある。例えば、自己に対する免疫応答は、関節、皮膚、脳、ニューロンを保護するミエリン鞘、腎臓、肝臓、膵臓、甲状腺、副腎、眼(例えば、ブドウ膜炎)、及び卵巣に影響を及ぼす可能性がある。免疫複合体の形成は、自己免疫疾患の病因及び進行において役割を果たす。免疫複合体形成の増加は、自己に対する抗体(自己抗体)の存在と相関する。自己抗体の存在は、免疫複合体の一部として又は抗原に結合していない状態(遊離抗体)で、組織の炎症に寄与し得る。幾つかの自己免疫疾患では、遊離自己抗体の存在が疾患の病理に大きく寄与する。自己免疫疾患の病因及び進行の別の側面は、炎症促進性サイトカインの役割である。正常な状況下では、腫瘍壊死因子α(TNF-α)及びインターロイキン-1(IL-1)等の炎症促進性サイトカインは、感染及び細胞ストレスに対する応答において保護的な役割を果たす。しかし、TNF-α及びIL-1の慢性的及び/又は過剰な生産に起因する病理学的帰結は、関節リウマチ、クローン病、炎症性腸疾患、ブドウ膜炎、及び乾癬等の多くの自己免疫疾患の進行の根底にあると考えられる。自己免疫疾患に関与する他の炎症促進性サイトカインとしては、インターロイキン-6、インターロイキン-8、及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子が挙げられる(例えば、米国特許第8,080,555号参照)。
【0039】
本発明のエクソソーム集団及び方法は、任意の自己免疫疾患に関連する自己免疫を抑制するために用いることができる。80を超える自己免疫疾患が当技術分野において公知であり、その例としては、多発性硬化症(MS)、インスリン依存性糖尿病、全身性エリテマトーデス(SLE)、乾癬、自己免疫性肝炎、甲状腺炎、膵島炎、ブドウ膜炎、睾丸炎、重症筋無力症、特発性血小板減少性紫斑病、炎症性腸疾患(例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎)、脳脊髄炎、全身性自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ(RA)、強皮症、及び若年性関節炎等)が挙げられる。
【0040】
自己免疫は、自己免疫疾患に罹患した哺乳動物(例えば、ヒト)において自己免疫疾患の1つ以上の症状が軽減又は緩和された場合に「抑制」される。症状の改善、悪化、退行、又は進行は、任意の客観的又は主観的な尺度によって決定することができ、その多くは当技術分野で公知である。当業者であれば、自己免疫疾患の症状は、疾患及び異常な免疫応答の部位に基づいて異なることを理解するであろう。幾つかの自己免疫疾患に共通する症状としては、例えば、疲労、筋肉痛及び/又は関節痛、筋力低下、発熱、腺肥大、炎症、感染症に対する易罹患性、体重の減少又は増加、アレルギー、消化器系の問題、血圧の変化、並びにめまいが挙げられる。
【0041】
本発明のエクソソーム集団及び方法は、膵臓における炎症を低減又は抑制するために使用することができる。
【0042】
本発明のエクソソーム集団及び方法は、加齢黄斑変性症(AMD)の症状を低減又は抑制するために用いることができる。
【0043】
本明細書で使用するとき、「治療」、「治療する」等の用語は、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを指す。
【0044】
好ましくは、薬理学的及び/又は生理学的効果は治療的である、すなわち、該効果は、疾患及び/又は疾患に起因し得る有害な症状を部分的又は完全に治癒するものである。この目的のために、本発明の方法は、「治療的に有効な量」の単離されたエクソソーム集団を投与することを含む。「治療的に有効な量」とは、所望の治療結果を達成するために、必要な投与量及び期間で有効な量を指す。治療的に有効な量は、疾患の状態、個体の年齢、性別、及び体重、並びに個体における所望の応答を惹起するエクソソーム集団の能力等の要因に応じて変化し得る。
【0045】
あるいは、薬理学的及び/又は生理学的な効果は、予防的であってもよく、すなわち、該効果は、自己免疫疾患又はその症状を完全に又は部分的に予防するものであってもよい。これに関して、本発明の方法は、自己免疫疾患の素因があるか、そうでなければ発症するリスクがある哺乳動物に「予防的に有効な量」の単離されたエクソソーム集団を投与することを含む。「予防的に有効な量」とは、所望の予防結果(例えば、疾患の発症の予防又は疾患の再燃の予防)を達成するために、必要な投与量及び期間で有効な量を指す。
【0046】
本発明の単離されたエクソソーム集団又は単離されたエクソソーム集団を含む組成物は、経口、静脈内、腹腔内、皮下、肺、経皮、筋肉内、鼻腔内、頬側、舌下、又は座剤投与を含む任意の好適な投与技術を用いて哺乳動物に投与することができ、その多くは当技術分野で公知である。好ましくは、組成物は、非経口投与に適している。本明細書で使用するとき、「非経口」という用語は、静脈内、筋肉内、皮下、直腸内、膣内、及び腹腔内への投与を含む。より好ましくは、組成物は、静脈内、腹腔内、又は皮下への注射による末梢全身送達を用いて哺乳動物に投与される。
【0047】
治療又は予防の有効性は、治療を受けた患者を定期的に評価することによってモニタリングすることができる。数日間又はそれ以上にわたって繰り返し投与する場合、状況に応じて、疾患の症状が所望の通り抑制されるまで治療を繰り返す。しかし、他の投与レジメンが有用である場合もあり、これも本発明の範囲内である。所望の投与量は、組成物の単回ボーラス投与、組成物の複数回ボーラス投与、又は組成物の連続注入投与によって送達され得る。
【0048】
哺乳動物(例えば、ヒト)に投与される細胞の典型的な量は、例えば、50万~1億個の細胞の範囲であってよいが、この例示的範囲を下回る量又は上回る量も、本発明の状況において好適であり得る。例えば、細胞の1日用量は、約50万~約5,000万個の細胞(例えば、約500万個の細胞、約1,500万個の細胞、約2,500万個の細胞、約3,500万個の細胞、約4,500万個の細胞、又は前述の値のいずれか2つによって定義される範囲)、好ましくは、約1,000万~約1億個の細胞(例えば、約2,000万個の細胞、約3,000万個の細胞、約4,000万個の細胞、約6,000万個の細胞、約7,000万個の細胞、約8,000万個の細胞、約9,000万個の細胞、又は前述の値のいずれか2つによって定義される範囲)、より好ましくは、約1,000万個~約5,000万個の細胞(例えば、約1,200万個の細胞、約2,500万個の細胞、約3,500万個の細胞、約4,500万個の細胞、又は前述の値のいずれか2つによって定義される範囲)であってよい。
【0049】
本発明は、自己免疫疾患に対する他の既存の治療法と組み合わせて利用することができる。例えば、本発明のエクソソーム集団は、本明細書に開示される自己免疫疾患等の自己免疫疾患の治療又は予防のために、免疫抑制若しくは免疫調節剤、又は他の抗炎症剤と組み合わせて投与することができる。これに関して、本発明の方法は、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)(例えば、金塩、スルファサラジン、抗マラリア剤、メトトレキサート、D-ペニシラミン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、シクロスポリンA、タクロリムス、シロリムス、ミノサイクリン、レフルノミド、及びグルココルチコイド)、カルシニューリン阻害剤(例えば、シクロスポリンA又はFK506)、リンパ球再循環調節剤(例えば、FTY720及びFTY720アナログ)、mTOR阻害薬(例えば、ラパマイシン、40-O-(2-ヒドロキシエチル)-ラパマイシン、CCI779、ABT578、AP23573、又はTAFA-93)、免疫抑制特性を有するアスコマイシン(例えば、ABT-281、ASM981等)、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプレン、メトトレキサート、レフルノミド、ミゾリビン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、15-デオキシスペルグアリン、又はそれらの免疫抑制性の同族体、類似体、若しくは誘導体、免疫抑制性モノクローナル抗体(例えば、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD8、CD25、CD28、CD40、CD45、CD58、CD80、CD86、又はそれらのリガンド等の白血球受容体に対するモノクローナル抗体)、他の免疫調節化合物、接着分子阻害剤(例えば、LFA-1アンタゴニスト、ICAM-1若しくは-3アンタゴニスト、VCAM-4アンタゴニスト、又はVLA-4アンタゴニスト)、化学療法剤(例えば、パクリタキセル、ゲムシタビン、シスプラチン、ドキソルビシン、又は5-フルオロウラシル)、抗TNF剤(例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、CDP870等のTNFに対するモノクローナル抗体、又はENBREL(商標)(エタネルセプト)若しくはPEG-TNF-RI等のTNF-RI若しくはTNF-RIIに対する受容体コンストラクト)、炎症促進性サイトカインの遮断剤、IL-1遮断剤(例えば、KINERET(商標)(アナキンラ)又はIL-1トラップ、AAL160、ACZ885、及びIL-6遮断剤)、ケモカイン遮断剤(例えば、プロテアーゼの阻害剤又は活性化剤)、抗IL-15抗体、抗IL-6抗体、抗CD20抗体、NSAID、及び/又は抗感染剤と組み合わせて使用することができる。
【0050】
本発明は、IL-35又はIL-27を生産するB細胞の投与と組み合わせて利用することができる。IL-35(i35-Breg)又はIL-27(i27-Breg)を生産するB細胞は、本発明のエクソソーム集団と順次(前又は後に)又は同時に哺乳動物に投与することができる。
【0051】
以下は、本発明の特定の態様を含む:
【0052】
1. インターロイキン-27(IL-27)を含む単離されたエクソソームの集団。
【0053】
2. 該エクソソームの集団がIL-35を更に含む、態様1に記載の単離されたエクソソームの集団。
【0054】
3. インターロイキン-35(IL-35)を含む単離されたエクソソームの集団。
【0055】
4. インターロイキン-27(IL-27)を含むエクソソームの集団を調製する方法であって、
(a)CD19+B2細胞又はB1a細胞を単離することと;
(b)活性化細胞を提供するために、単離された細胞をLPS又はBCRアゴニストで活性化することと;
(c)該活性化細胞から分泌されたエクソソームを単離することと
を含む方法。
【0056】
5. インターロイキン-35(IL-35)を含むエクソソームの集団を調製する方法であって、
(a)CD138+形質細胞を単離することと;
(b)活性化細胞を提供するために、単離された細胞をLPS又はBCRアゴニストで活性化することと;
(c)該活性化細胞から分泌されたエクソソームを単離することと
を含む方法。
【0057】
7. 哺乳動物における免疫系の抑制における使用のための、態様1~3のいずれか1つに記載のエクソソームの集団。
【0058】
8. 該エクソソームの集団が、哺乳動物に対してIL-35又はIL-27を生産するB細胞を含む、態様7に記載の使用のためのエクソソームの集団。
【0059】
9. 該哺乳動物が疾患を有する、態様7又は8に記載の使用のためのエクソソームの集団。
【0060】
10.該哺乳動物が自己免疫疾患を有する、態様7~9のいずれか1つに記載の使用のためのエクソソームの集団。
【0061】
11. 該自己免疫疾患が眼の疾患である、態様10に記載の使用のためのエクソソームの集団。
【0062】
12. 該自己免疫疾患が中枢神経系の疾患である、態様10に記載の使用のためのエクソソームの集団。
【0063】
13. 該自己免疫疾患が脳の疾患である、態様10に記載の使用のためのエクソソームの集団。
【0064】
14. 該自己免疫疾患がブドウ膜炎である、態様10に記載の使用のためのエクソソームの集団。
【0065】
15. 該自己免疫疾患が脳脊髄炎である、態様10に記載の使用のためのエクソソームの集団。
【0066】
16. 該哺乳動物が多発性硬化症を有する、態様7~9のいずれか1つに記載の使用のためのエクソソームの集団。
【0067】
17. 膵臓の炎症が抑制される、態様7~9のいずれか1つに記載の使用のためのエクソソームの集団。
【0068】
18. 該哺乳動物が同種骨髄又は造血幹細胞の移植を受けたことがある、態様7又は8に記載の使用のためのエクソソームの集団。
【0069】
19. 該哺乳動物が同種実質臓器移植を受けたことがある、態様7又は8に記載の使用のためのエクソソームの集団。
【0070】
20. 該哺乳動物が移植片対宿主病(GVHD)を有する、態様18又は19に記載の使用のためのエクソソームの集団。
【0071】
21. 該哺乳動物が加齢黄斑変性症(AMD)を有する、態様7~9のいずれか1つに記載の使用のためのエクソソームの集団。
【0072】
上記は実施形態の単なる例であることに留意されるものとする。他の例示的な実施形態は、本明細書における記載全体から明らかになる。また、これらの実施形態の各々は、本明細書で提供される他の実施形態と様々に組み合わせて使用できることも、当業者であれば理解するであろう。
【0073】
以下の実施例は本発明を更に説明するが、無論、いかなる方法でもその範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0074】
実施例1
この実施例は、本発明の実施形態に係るi35-エクソソームの生産及び使用を示す。
【0075】
材料及び方法
マウス
6~8週齢のC57BL/6Jマウス(は、Jackson Laboratory (Jackson Laboratory,Bar Harbor,ME,USA)から購入した。動物の世話及び実験は米国国立衛生研究所(NIH)の指針に準拠し、実験プロトコールはNIH/NEI動物実験プロトコール(ASP)#NEI-597で承認された。
【0076】
エクソソームの単離及び特性評価
i35-BregはほとんどがCD138+形質細胞であるため、Miltenyi-Biotec製のMicroBead(130-121-301)を用いることによって単離した脾臓B細胞を用いる。i35-Bregエクソソーム(i35-エクソソーム)を産生するために、低密度(<106/mL)で72時間形質細胞を抗IgM/抗CD40Abで刺激した。フローサイトメトリーによるp35及びEbi3発現についてのアリコートの分析では、既述の通り(Wang et al.,Nat.Med.,20:633-41(2014)、参照により本明細書に援用される)この培養条件下においてi35-Bregの濃縮(>35%)が常に示された。この培養条件下では、Vi-Cell XR(Viability Analyzer,Beckman Coulter,Indianapolis,IN,USA)で確認された通り、i35-Breg又は非刺激CD19+対照B細胞は死滅しない。製造業者のガイドラインに従ってExoquick TC試薬(System Biosciences,Palo Alto,CA,USA)を用いて、対照及びi35-Breg濃縮培養の培養上清からエクソソームを単離するために、エクソソームが枯渇したFBSを含む完全培地を用いた。エクソソームのサイズ分布は、NanoSightシステム(NanoSight,Salisbury,United Kingdom)を用いてNanoparticle Tracking Analysisによって測定し、エクソソームマーカー又はIL-35サブユニットタンパク質の発現は、ウェスタンブロッティングによって特性評価した。
【0077】
ウェスタンブロッティング分析
エクソソームをRIPAバッファ[10mM Tris-Cl(pH8.0)、1mM EDTA、1% Triton X-100、0.1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS、140mM NaCl、及び1mM PMSF]に溶解させ、溶解物を4℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、溶解物を14,000rpmで30分間遠心分離し、上清を回収した。溶解物(7μg/レーン)を4-12%勾配SDS-PAGEで分画し、使用した抗体は以下の通りであった:CD63、CD9、HSP70(System Biosciences #EXOAB-KIT-1)、p35(Santa Cruz Biotechnology,Dallas,TX,USA)、及びEbi3(Santa Cruz)。二次抗体反応後、LI-CORシステム(LI-COR Biosciences,Lincoln,NE,USA)でシグナルを検出した。データ分析にはImage studioソフトウェア(LI-COR Biosciences)を使用した。
【0078】
免疫沈降
i35-エクソソーム溶解物を抗体(4μgの抗Ebi3又はNormal IgG)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、Dynabeads Protein A Immunoprecipitation Kit(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA,USA)製の磁気ビーズを溶解物と共に4℃で1時間インキュベートし、沈殿したビーズを洗浄し、タンパク質を溶出し、95℃で10分間煮沸した。サンプルを4-12%勾配SDS-PAGEで分画し、Ebi3又はp35の抗体と共にインキュベートした。二次抗体反応後、LI-CORシステムでシグナルを検出した。データ分析にはImage studioソフトウェアを使用した。
【0079】
CFSE(カルボキシフルオレセインスクシンイミジル)希釈アッセイ
CFSE希釈アッセイでは、市販のCFSE Cell Proliferationキット(Molecular Probes,Inc,Eugene,OR,USA)を用いて細胞を72時間培養した。様々なラウンドの細胞分裂を経た細胞に関する情報を示すグラフ表示を、FlowJoソフトウェアから得た。非刺激細胞の分析に基づいて細胞増殖の閾値を決定した。
【0080】
ELISA
MACS細胞分離システム(Miltenyi,Cologne,Germany)によって脾臓及びリンパ節からCD4+細胞を単離した。T細胞の活性化のために、3μg/mLの抗CD3抗体でプレコーティングしたプレートに細胞を播種し、1μg/mLの可溶性抗CD28抗体及びPBS又はエクソソームと共にインキュベートした。24時間後、活性化CD4+T細胞の上清中に分泌されたサイトカインをMultiplex ELISA(R&D Systems,Minneapolis,MN,USA)によって分析した。
【0081】
実験的自己免疫性ブドウ膜炎(EAU)
結核菌(Mycobacterium tuberculosis)H37RA株(2.5mg/mL)を含有する0.2mLのエマルジョン(完全フロイントアジュバント(CFA)と1:1v/v)中のIRBP651-670-ペプチドでC57BL/6Jを能動免疫することによりEAUを誘導した。免疫と同時にマウスに百日咳菌(Bordetella pertussis)毒素(1μg/マウス)も投与した。マウスの年齢及び性別を一致させ、ほとんどの実験では6~8週齢のマウスを使用した(14頭/群、n=14)。臨床的疾患を確立し、眼底検査及び組織学的検査によってスコア化した(Wang et al.,Nat.Med.,20:633-41(2014)、He et al.,J.Autoimmun.,62:31-8(2015)、及びOh et al.,J.Immunol.,187:3338-46(2011)、これらはそれぞれ参照により本明細書に援用される)。
【0082】
組織学的検査
組織学的検査のために眼球を摘出し、10%緩衝ホルマリンで固定し、垂直瞳孔-視神経面で連続的に切片を作製した。次いで、標本を段階的アルコール系列で脱水し、メタクリレートに包埋し、連続横断切片(4μm)を切り出し、ヘマトキシリン・エオジン(H&E)で染色する。代表的な切片の写真を顕微鏡写真機で撮影する。
【0083】
眼底検査
EAU導入後15日目及び17日目に眼底検査を行った。小型げっ歯類用のMicron III網膜イメージング顕微鏡(Phoenix Research Labs)、又は既述の通り(Oh et al.,J.Immunol.,187:3338-46(2011)及びPaques et al.,Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,48:2769-74(2007)、これらはそれぞれ参照により本明細書に援用される)Nikon D90デジタルカメラに接続された改良型Karl Storz動物用耳内視鏡を用いて眼底画像を取得した。主観を避けるために、マウスの身元を知らせることなく覆面観察者によって眼底写真を評価することによりバイアスを取り除いた。内視鏡を位置決めし、上側、下側、外側、又は内側の視野から見ることにより、各眼から少なくとも6枚の画像(網膜中心後像2枚、網膜周辺像4枚)を撮影し、各病変を同定し、マッピングし、記録した。網膜炎症の臨床的等級付けは確立されている通りであった(He et al.,J.Autoimmun.,62:31-8(2015);Chan et al.,J.Autoimmun.,3:247-55(1990)、Xu et al.,Exp.Eye Res.,87:319-26(2008)、これらはそれぞれ参照により本明細書に援用される)。
【0084】
光干渉断層法(OCT)
光干渉断層法(OCT)は、生きている動物の様々な眼球構造の内部微細構造を可視化できる非侵襲的手技である。水平又は垂直スキャンを可能にする調整可能なホルダーを用いてマウスを固定し、各スキャンを少なくとも2回行い、その都度再調整を行った。最適なシグナル強度及びコントラストが得られるまで、スキャンの寸法(深さ及び横方向の範囲)を調整した。システムソフトウェアを使用して、同じ眼から水平及び垂直の両スキャンで得られた全ての画像の網膜中心領域から網膜の厚さを測定し、平均した。システムソフトウェアで網膜の厚さを決定するために使用した方法は、記載の通りであった(He et al.,J.Autoimmun.,62:31-8(2015)及びGabriele et al.,Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,52:2250-4(2011)、それぞれ参照により本明細書に援用される)。
【0085】
網膜電図(ERG)
ERGは、網膜の光刺激に応答する電位変化を測定し、肉眼的な生理学的変化に特徴的な視覚機能の欠陥を同定するために使用される。ERG記録の前に、マウスを一晩暗順応させ、薄暗い赤色照明下で実験を行う。ERGは、光刺激を産生し、制御する網膜電図検査コンソールを用いて、麻酔したマウスに記録される。Ganzfeldドームで送達される単一閃光を用いて暗順応ERGを記録し、参照電極(金線)を口内に、接地電極(皮下ステンレス鋼針)を尾の付け根に配置する。シグナルを差動増幅し、デジタル化する。ERGの主要成分(a波及びb波)の振幅を、自動化された方法で測定する(He et al.,J.Autoimmun.,62:31-8(2015)、参照により本明細書に援用される)。
【0086】
フローサイトメトリー
細胞内サイトカインを検出するため、細胞をPMA(20ng/mL)/イオノマイシン(1μM)で4時間再刺激した。最後の1時間にGolgiStopを添加し、推奨通りBD Biosciences Cytofix/Cytopermキット(BD Pharmingen,San Diego,CA,USA)を用いて細胞内サイトカイン染色を行った。既述の通り(Dambuza et al.,Nat.Commun.,8:719(2017)、参照により本明細書に援用される)タンパク質特異的モノクローナル抗体及び対応するアイソタイプ対照Ab(BD Pharmingen,San Diego,CA,USA)を用いて、MACSQuantアナライザー(Miltenyi Biotec,San Diego,CA,USA)においてFACS分析を行った。蛍光色素を結合させたmAbで染色したサンプルに対してFACS分析を行い、各実験を色補正した。死細胞を死細胞排除色素(Fixable Viability Dye eFluorR 450;eBioscience,San Diego,CA,USA)で染色し、生細胞を側方散乱及び前方散乱分析に供した。象限ゲートは、<0.2%バックグラウンドのアイソタイプ対照を用いて設定した。
【0087】
統計分析
独立両側スチューデントt検定によって統計分析を実施した。データは、平均±SEMとして提示する。
【0088】
結果
i35-Breg由来エクソソームはインビトロでCD4+T細胞の増殖及びINF-gの分泌を抑制した
B細胞がIL-35含有エクソソームを分泌することができるかどうかを調べるために、CD19+B細胞(1×10
6細胞)を播種し、抗IgM/抗CD40で72時間刺激した。パイロット試験で、既述の通り(Wang et al.,Nat.Med.,20:633-41(2014)及びDambuza et al.,Nat.Commun.,8:719(2017)、それぞれ参照により本明細書に援用される)、IL-35生産B細胞(i35-Breg)が培養物中に濃縮(>35%)されていることが確認された。対照B細胞も10
6/mLで培養したが、この低密度培養条件下では、i35-Bregも非刺激CD19+対照B細胞も死滅しない。エクソソームが濃縮された細胞外小胞(EV)を、ExoQuickエクソソーム沈殿溶液を用いて細胞上清から単離し、ナノ粒子追跡分析(NTA)法を用いてエクソソームの粒径分布を求めたところ、非刺激CD19+B細胞(ナイーブエクソソーム)及びBreg由来エクソソーム(i35-エクソソーム)では50~150nmの範囲であった(
図1A)。培養物中に放出されたエクソソームを上清から抽出し、Exosome Quantitation Assay(System Biosciences)を用いてエクソソーム数を定量した。非刺激又は刺激のCD19+B細胞から、それぞれ平均2.5×10
10個及び4.0×10
10個のエクソソームが分泌された(
図1B)。非刺激B細胞からのエクソソーム(ナイーブエクソソーム)がIL-35を生産しなかったのに対し、i35-エクソソームからの2×10
10個のエクソソームは、ELISAで測定したところ20ngものIL-35(n=6)を生産することが判明した(
図1C)。エクソソームから調製した溶解物のウェスタンブロット分析は、ナイーブエクソソーム及びi35-エクソソームの両方が古典的なエキソソソームマーカーであるCD63及びHsp70を発現することを示し、ナイーブエクソソームはIL-35を発現しなかったが、i35-エクソソームは、会合してヘテロ二量体IL-35サイトカインを生産するp35及びEbi3の両サブユニットを分泌することが確認された(
図1D)。
【0089】
i35-エクソソームがヘテロ二量体IL-35を生産するという直接的な証拠を提供するために、p35及びEbi3に特異的な抗体を用いて相互免疫沈降分析を行った。抽出物をEbi3抗体で沈殿させ、p35抗体を用いてウェスタンブロット分析したところ、i35-エクソソームが確かにヘテロ二量体IL-35を生産することが確認された(
図1E)。等価なIgG軽鎖バンド強度を示す免疫沈降データは、レーン1及び2に等量の総溶解物が使用されたことを示す(
図1E、右図)。
【0090】
i35-エクソソームが、TCR活性化に応答してエフェクターサイトカインを生産するT細胞の能力を阻害することができるかどうかについて調べた。ナイーブCD4+細胞を野生型マウスから単離及び精製し、抗CD3/抗CD28抗体及びナイーブエクソソーム又はi35-エクソソーム(1.27×10
10個のエクソソーム)を含有する培地で3日間刺激した。ELISAアッセイによる上清の分析は、ナイーブエクソソームを投与した培養物と比較して、i35-エクソソームは、TCRが媒介するIL-2(
図1F)及びIFN-γ(
図1G)の分泌を抑制することを示した。CFSE希釈アッセイによって、T細胞の増殖応答に対するi35-エクソソームの効果についても調べた。i35-エクソソームによるT細胞増殖の著しい阻害は、観察されたIL-2及びIFN-γ分泌の減少と一致しており(
図1H)、インビトロでのT細胞の炎症促進応答の抑制におけるi35-エクソソームの有効性を強調している。
【0091】
i35-エクソソームは、確立された実験的自己免疫性ブドウ膜炎(EAU)を抑制した
インビトロにおけるi35-エクソソームの免疫抑制性効果に鑑み、i35-エクソソームを使用してヒトブドウ膜炎のモデルである実験的自己免疫性ブドウ膜炎(EAU)マウスを治療することができるかどうかを調べた。CFAエマルジョン中光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP651-670)に由来する自己抗原性ペプチドで能動免疫することによって、C57BL/6JマウスにおいてEAUを誘導した。免疫後9日目に約2×10
10個のエクソソーム(30μg/マウス)でマウスを処理し、免疫後14日目まで毎日後眼窩注射を行い、免疫後17日目に疾患の重症度を評価した。免疫及びエクソソーム処理のストラテジを示す(
図2A)。眼底検査、組織学的検査、光干渉断層法、及び網膜電図検査法によって疾患の進行をモニタリングした。対照マウス(PBS)の眼底像及び組織像は、視神経円板縁のにじみ及び傍瞳孔領域の拡大、乳頭水腫、中程度のカフィングを伴う網膜血管炎、硝子体炎、網膜襞、炎症細胞の硝子体への実質的浸潤、脈絡膜炎、並びに黄白色の網膜及び脈絡膜浸潤を特徴とする重度の炎症を示す(
図2B、C)。対照的に、眼底(
図2B)又は組織学的(
図2C)分析から得られた画像により、i35-エクソソームで処理したマウスの眼ではEAUが軽度であることが明らかになり、臨床スコアは未処理マウスの眼と比較して有意に低かった(
図2B)。
【0092】
光干渉断層法(OCT)は、生きている動物の様々な眼球構造の内部微細構造を可視化できる非侵襲的手技であり、OCT分析の結果、i35-エクソソームで処理したマウスと比較して、対照の未処理眼の硝子体及び視神経乳頭に炎症細胞がかなり蓄積していることが明らかになった(
図2D)。網膜の炎症は、視覚機能の変化を示す網膜電図(ERG)の変化を誘導し、網膜の光刺激に応答する電位の変化を記録することによって評価される。明順応刺激下でのERGは錐体が駆動するシグナル伝達を反映するが、暗順応下でのb波反応は桿体が駆動するシグナル伝達の状態を評価し、より低いa波及びb波の記録は網膜の病理を示す。EAUの病理は、炎症性Th17及び/又はTh1細胞による光受容細胞の攻撃に起因する桿体及び錐体における欠陥と関連している。i35-エクソソームを有する眼では、対照眼と比較してa波及びb波の振幅の有意な増加が観察され(
図2E)、このことは、EAUを有する正常マウスにおける錐体及び桿体のシグナル伝達機能における欠陥が、i35-エクソソーム処理によって部分的に救済されたことを示唆している。EAUを有する未処理マウスで観察された錐体及び桿体のシグナル伝達機能における欠陥並びにより高いEAU病理学的スコアは、i35-エクソソームがEAU中のマウスで観察された視覚機能障害の低下を防ぐ機序に寄与したことを示唆している。
【0093】
i35-エクソソームは、Treg細胞の増殖を誘導することによりEAU中のTh17応答を抑制する
EAUは、T細胞が媒介する眼内炎症性疾患であり、網膜病理は、EAU中に網膜に動員される炎症細胞によって分泌される炎症促進性サイトカインの細胞傷害作用に一部起因している。EAUの病因にはTh1及びTh17が関与していることから、i35-エクソソームで処理したマウスでEAUが抑制される基本機序が、炎症促進性応答に対する拮抗作用に由来するのかどうかを調べた。C57BL/6JマウスにおいてEAUを誘導し、眼の眼底検査を行ったところ、免疫後15日目までにブドウ膜炎が発症することが証明された。次いで、免疫後17日目にマウスを殺処分し、網膜、脾臓、又はリンパ節から単離したリンパ球を細胞内サイトカインアッセイで分析した。EAU中に眼に浸潤する細胞を分析した結果、i35-エクソソームで処理したマウスの眼ではEAU中に網膜に動員される炎症細胞によって分泌される炎症促進性サイトカインが有意であり、Th17細胞が有意に減少するが、対照マウスの眼ではそうではないことが明らかになった(
図3A)。同様に、脾臓又はリンパ節におけるTh17細胞のレベルは著しく減少し、i35-エクソソームがEAU中にTh17応答に拮抗することを示す証拠が得られた(
図3A)。EAUマウスの眼におけるTh1細胞のレベルを分析したところ、i35-エクソソーム処理マウスと未処理マウスとの間に有意差は認められなかった(
図3B)。これは、i35-エクソソームがTh17応答には拮抗するが、Th1応答には拮抗しないことを示唆しており、EAUの病理が主にTh17細胞によって媒介されることを示す既報と一致している。
【0094】
制御性B細胞(Breg)及び制御性T細胞(Treg)は、ブドウ膜炎を媒介する炎症促進性応答を抑制することが示されているため、i35-エクソソームが媒介するEAUの減弱が、制御性細胞の増殖に一部起因するのかどうかを調べた。EAU中に眼に浸潤するリンパ球を分析したところ、Foxp3+制御性T細胞及びIL-35生産制御性T細胞(iTR35)が有意に増殖していることが観察された(
図3C)。
【0095】
考察
ブドウ膜炎は、バードショット網膜脈絡症、ベーチェット病、眼サルコイドーシスを含む多様な眼内炎症性疾患群であり、米国における重度の視力障害の10%を占めている。この疾患は、眼の前部(前部ブドウ膜炎)、眼の後部(後部ブドウ膜炎)、又は眼全体(汎ブドウ膜炎)で発症し得、感染性又は自己免疫性の病因である可能性がある。従来の治療としては、コルチコステロイドの局所又は全身への投与が挙げられる。ステロイドはブドウ膜炎に有効な治療法であるが、重篤な副作用があるため長期間使用することができない。インターフェロン、Tac抗体(ダクリズマブ)、TNF-α遮断剤、並びにIL-10を含有する徐放性眼インプラント等の生物製剤は、難治性で失明に至る眼炎症性疾患の治療において、ステロイドに代わる有効な選択肢を提供する。しかし、これら治療法の有効性の根底にある機序は完全には解明されておらず、ブドウ膜炎に対する生物製剤及び細胞ベースの治療法等の代替療法の開発が大きな勢力となっている。制御性B細胞は、自己免疫及び神経変性の疾患に対する細胞療法について大きな見込みを示す。しかし、治療に使用するのに十分な量を製造するのは技術的に非常に困難であり、多大な労力を必要とするため、臨床に導入できるようになる前に克服すべき大きな障害が残っている。更に、Bregは炎症又は自己免疫性の疾患をAg特異的に抑制するので、その抑制効果は疾患を惹起する特定の自己抗原に限定される。
【0096】
ヒトのブドウ膜炎又は多発性硬化症のマウスモデルにおいてi35-Bregが媒介するブドウ膜炎又は脳脊髄炎の抑制及び改善は、i35-Bregによって炎症部位で分泌されるIL-35の阻害作用に起因する。Breg細胞は、生物活性IL-35を含有するエクソソーム(i35-エクソソーム)を放出するが、これがi35-Breg細胞が炎症応答を抑制する追加の機序である可能性がある。EAUはヒトのブドウ膜炎と重要な臨床的特徴を共有しており、ブドウ膜炎を抑制及び/又は改善するとされる治療法の評価に有用な枠組みを提供する。EAUはまた、多発性硬化症の動物モデルであるEAEと重要な免疫病原性の特徴を共有している。従って、CNS自己免疫疾患の治療にi35-Bregを使用できることを実証するためにEAUモデルを利用した。i35-エクソソームはEAUを抑制し、病原性Th17細胞の網膜への増殖及び輸送を阻害することにより眼病理からの保護をもたらした。ERGデータは、i35-エクソソームがブドウ膜炎に伴う網膜機能の低下からマウスを救うことを示し、i35-エクソソームの神経保護効果が強調された。臨床的に重要なのは、i35-エクソソームは無毒性であり、全身性の同種免疫応答を誘導することなくブドウ膜炎を軽減することである。このことは、i35-エクソソームが現在ブドウ膜炎の治療に用いられている抗炎症剤を補完する可能性を示唆している。
【0097】
実施例2
この実施例は、本発明の実施形態に係るi27-エクソソームの生産及び使用を示す。
【0098】
B1a単離キットを用いてマウス腹腔のB1a細胞を単離した。100万個の細胞を1mLの培地に播種し、抗IgM/抗CD40で72時間刺激した。EXO Quick-Ultra(System Biosciences)を用いて上清からエクソソームを単離し、Exosome Quantitation Assay kit(System Biosciences)を用いて測定した。刺激されたB1a細胞からは約3000億個のエクソソーム(40μg)が放出される。
図4は、活性化マウスB1a細胞が細胞表面でIL-27(p28+/Ebi3+)及びCD81を共発現することを示す。
【0099】
CD19 Microbeads又はB220 Microbeads等の商業的ソースから購入したキットを用いることによって、腹腔、脾臓、又は血液からB-1又はB-2の細胞を単離した。また、B-1a特異的抗体に結合させた磁気ビーズでB-1a細胞を陽性選択した。細胞(1×10
6個)をリポ多糖(LPS)又はB細胞受容体(BCR)活性化(抗IgM抗体及び抗CD40抗体)で72時間活性化し、上清からエクソソームを単離し、定量した。結果を
図5に示す。
【0100】
ELISAによるIL-27の定量を
図6に示す。50μgのB1aエクソソームには約100pg/mLのIL-27が含有されていた。
【0101】
図7は、脾臓のB-1細胞もIL-27を分泌し、T細胞の増殖を阻害することを示すフローサイトメトリープロット及び棒グラフを表す。
【0102】
CD9、CD63、及びCD81、並びにIL-27(p28/Ebi3)の発現は、活性化B1a細胞の表面膜に共局在していた。p35及びebi3はそれぞれエクソソームマーカーCD81と共局在するが、p35及びebi3は共局在しないことから、B1a細胞はp35含有エクソソーム又はebi3含有エクソソームを放出することができるが、IL-35含有エクソソームはできないことが示唆された。
【0103】
図8に示すように、i27-エクソソームは実験的自己免疫性ブドウ膜炎(EAU)を抑制した。黒色マウスにおいてEAUを誘導し、免疫後6日目にリン酸緩衝生理食塩水(対照、100μL)又は30μgのエクソソーム(100μL中)で処理し、免疫後10日目まで毎日後眼窩注射を行った。B1a-エクソソームで処理したマウスでは、重度の炎症応答が減弱することが判明した。
【0104】
i27-エクソソームは、
図9A及び9Bに示すように、制御性Treg細胞の増殖を誘導すると同時に炎症促進性応答(IL-17及びIFN-γ)を阻害することによってEAUを抑制した。
【0105】
i27-エクソソームは、
図10A及び10Bに示すように、ブドウ膜形成性T細胞の増殖を抑制することによってブドウ膜炎を改善した。
【0106】
本明細書に引用した刊行物、特許出願、及び特許を含む全ての参照文献は、各参照文献が個々にかつ具体的に参照によって援用されると示されており、その全体が本明細書に記載されているかのように、参照によって本明細書に援用される。
【0107】
本発明の説明に関連して(特に以下の特許請求の範囲に関連して)用語「a」及び「an」及び「the」及び「少なくとも1つ」、並びに類似の参照対象の使用は、本明細書において他の指定がない限り又は文脈から明らかに矛盾していない限り、単数形及び複数形の両方を網羅すると解釈されるべきである。1つ以上の項目のリストの後の用語「少なくとも1つ」の使用(例えば、「A及びBのうちの少なくとも1つ」)は、本明細書において他の指定がない限り又は文脈から明らかに矛盾していない限り、列挙される項目から選択される1つの項目(A又はB)又は列挙される項目のうちの2つ以上の任意の組み合わせ(A及びB)を意味すると解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含有する(containing)」は、特に断らない限り、オープンエンドな用語である(すなわち、「含むがこれらに限定されない」を意味する)と解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において他の指定がない限り、単に、範囲内の各別個の値を個々に参照する省略法として機能することを意図し、各別個の値が、本明細書に個々に列挙されているかのように明細書に援用される。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書において他の指定がない限り又は文脈から明らかに矛盾していない限り、任意の好適な順序で実施することができる。本明細書に提供される任意の及び全ての例又は例示的な表現(例えば、「等」)の使用は、特に主張しない限り、単に本発明をより深く解明することを意図し、本発明の範囲の限定を提起するものではない。明細書中の表現はいずれも、任意の請求されていない要素が本発明の実施に必須であることを示すと解釈されるべきではない。
【0108】
本発明を実施するための本発明者らに公知の最良の形態を含む本発明の好ましい実施形態が、本明細書に記載される。好ましい実施形態の変形は、前述の記載を読んだときに当業者に明らかになり得る。本発明者らは、当業者がこのような変形を適宜使用すると予想し、そして、本発明者らは、本明細書に具体的に記載されているのとは別の方法で本発明が実施されることを意図している。従って、本発明は、準拠法によって認められている通り、本明細書に添付される特許請求の範囲に列挙される発明主題の全ての変形及び等価物を含む。更に、その全ての可能な変形における上記要素の任意の組み合わせは、本明細書において他の指定がない限り又は文脈から明らかに矛盾していない限り、本発明によって包含される。
【国際調査報告】