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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-24
(54)【発明の名称】X線撮像システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20240117BHJP
【FI】
A61B6/00 330Z
A61B6/00 350Z
A61B6/00 333
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542669
(86)(22)【出願日】2022-01-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2022050873
(87)【国際公開番号】W WO2022157114
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】21152312.1
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウネイゲル アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ケーラー トーマス
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA30
4C093EA07
4C093FD03
4C093FF33
(57)【要約】
マルチエネルギー暗視野(DAX)及び位相コントラスト(PC)X線撮像の概念が提案される。そのような概念の1つは、位相ステッピングを用いて低エネルギー画像のセットを収集し、(位相ステッピングを用いて又は用いないで)高エネルギー画像のセットを収集することを含む。位相回復を使用して、位相ステップ低エネルギー画像から透過画像、DAX画像、及びPC画像を取得する。また、高エネルギー画像から高エネルギー透過画像を取得する。低エネルギー画像からの透過画像及び高エネルギー画像からの透過画像に基づいて、修正された透過画像を生成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチエネルギー暗視野及び位相コントラストX線撮像のためのシステムであって、
第1のセットのエネルギー値で複数の位相ステップX線画像を収集し、第2のセットのエネルギー値で少なくとも1つのX線画像を収集する撮像ユニットであって、前記第1のセットの各エネルギー値は、前記第2のセットの各エネルギー値よりも小さい、撮像ユニットと、処理ユニットとを含み、
前記処理ユニットは、
前記第1のセットのエネルギー値で収集した前記複数の位相ステップX線画像を、位相回復を使用して処理して、第1の透過画像、暗視野X画像、及び位相コントラスト画像を取得し、
前記第2のセットのエネルギー値で収集した前記少なくとも1つのX線画像を処理して、第2の透過画像を取得し、
前記第2の透過画像に基づいて前記第1の透過画像を処理して、修正された透過画像を生成する、システム。
【請求項2】
前記撮像ユニットは、前記第1のセットのエネルギー値で前記複数の位相ステップX線画像を収集する、格子干渉計、複数の(周期的にコード化された)開口部、伝播ベースの撮像配置、又は回転結晶を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1のセットのエネルギー値は、100kVp未満のエネルギー値、好ましくは60kVp~70kVpの範囲内のエネルギー値で構成されている、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第2のセットのエネルギー値は、100kVp以上のエネルギー値、好ましくは120kVp以上のエネルギー値、更に好ましくは少なくとも1つのエネルギー値が125kVpと実質的に等しいエネルギー値で構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記処理ユニットは、縞除去アルゴリズムに従って、前記複数の位相ステップX線画像のうちの少なくとも1つ及び/又は前記少なくとも1つのX線画像を処理して縞を除去する、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記撮像ユニットは、X線ビームスペクトルフィルタ及び/又は動的干渉格子を更に含み、前記X線ビームスペクトルフィルタ及び/又は前記動的干渉格子は、前記複数の位相ステップX線画像のうちの少なくとも1つ及び/又は前記少なくとも1つのX線画像から縞を除去する、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記処理ユニットは更に、前記第2の透過画像に基づいて前記第1の透過画像を処理して、前記修正された透過画像内の雑音を低減する、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記処理ユニットは更に、前記第2の透過画像に基づいて前記第1の透過画像を処理して、前記修正された透過画像内の軟組織又は骨を除去する、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記処理ユニットは更に、トレーニングアルゴリズムを実行し、前記トレーニングアルゴリズムは、トレーニング入力及び既知の出力を受信するトレーニングされたニューラルネットワークを作成し、前記トレーニング入力は、前記第1の透過画像を含み、前記既知の出力は前記修正された透過画像を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記処理ユニットは更に、画像処理アルゴリズムを実行し、前記画像処理アルゴリズムは、前記トレーニングされたニューラルネットワークを使用して、前記第1の透過画像を含む入力を受信し、前記修正された透過画像を含む出力を生成する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
マルチエネルギー暗視野及び位相コントラストX線撮像の方法であって、
第1のセットのエネルギー値で複数の位相ステップX線画像を、第2のセットのエネルギー値で少なくとも1つのX線画像を収集するステップであって、前記第1のセットの各エネルギー値は、前記第2のセットの各エネルギー値よりも小さい、収集するステップと、
第1の透過画像、DAX画像、及び位相コントラスト画像を取得するために、前記第1のセットのエネルギー値で収集した前記複数の位相ステップX線画像に位相回復プロセスを実行するステップと、
前記第2のセットのエネルギー値で収集した前記少なくとも1つのX線画像を処理して、第2の透過画像を取得するステップと、
前記第2の透過画像に基づいて前記第1の透過画像を処理して、修正された透過画像を生成するステップと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記第1の透過画像を処理するステップは、前記第2の透過画像に基づいて前記第1の透過画像内の雑音を低減するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の透過画像を処理するステップは、前記第2の透過画像に基づいて前記第1の透過画像から軟組織又は骨を除去するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のセットのエネルギー値は、100kVp未満のエネルギー値、好ましくは60kVp~70kVpの範囲内のエネルギー値で構成される、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
コンピュータプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムコード手段は、処理システムを有するコンピューティングデバイス上で実行されると、前記処理システムに、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法の全てのステップを実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暗視野X線撮像及び位相コントラストX線撮像の分野に関する。本発明は、マルチエネルギー暗視野及び位相コントラストX線撮像システム、マルチエネルギー暗視野及び位相コントラストX線撮像方法、及び関連するコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
暗視野X線(DAX)撮像では、最近、肺疾患の診断及び病期分類の診断精度が向上していることが実証されている。従来のX線撮像技法では、物体にX線を照射して、物体の透過画像を取得する。しかし、ほとんど吸収しない血管、軟骨、肺、及び乳房組織などの軟組織では、骨画像と比較して減衰コントラストが低くなる。この欠点を克服するために、近年では、X線を用いたDAX画像や位相コントラスト(PC)画像の取得において大きな進展を見せている。
【0003】
DAX及びPC撮像に使用される技法のいくつかは、格子干渉法又は格子非干渉法に分類される。これらの技法の各々では、X線が物体を通過した後に、X線の縞パターンが生成される。物体によって引き起こされる縞パターンの変化を使用して、DAX及びPC画像が抽出される。
【0004】
DAX及びPC撮像では、例えばX線管などのX線源の近くに隣接して配置された線源格子によって生成される少なくとも部分的にコヒーレントな放射X線が使用される。物体を貫通するコヒーレントX線は、その後の位相情報の取得を可能にする。適切な位相情報を得るために、いわゆる位相ステッピングが実行される。
【0005】
位相ステッピングでは、1つの(干渉)格子が別の格子及びX線検出素子に対してその格子ピッチのある分数(例えば、位相格子の格子ピッチの4分の1、6分の1、8分の1)で横方向に変位する。位相ステッピングが特定の格子を使用して実行される場合、位相ステッピングはこの特定の格子の全周期をカバーしなければならない。位相ステッピング技法では、典型的に、振動擾乱を十分に抑制するために10枚以上の画像を収集する必要があることが示されている。
【0006】
ヒト患者の通常の透過画像では、肋骨は高いkVpに対してコントラストが低いため、約125kVpのX線エネルギーが使用される。しかしながら、DAX撮像は、より低いX線エネルギーでより感応性があるため、約70kVpのX線エネルギーが使用される。これらのより低いX線エネルギーでは、骨がこれらのエネルギーでの暗視野画像及び透過画像を解析並びに解釈する能力と干渉する程度にまで、肋骨は見えるようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
DAXの利点の1つは、それが常に透過画像と一緒に収集されることである。DAX画像と透過画像の同時収集は、収集パラメータをトレードオフしなければならないという欠点がある。特に、肺組織によって生成されるDAX信号はX線エネルギーの増加に伴って急速に減少するため、DAX画像収集は通常、60kVp~70kVpのX線エネルギーに最適である。更に、現在の医療ガイドラインでは、胸部X線撮影は≧120kVpのエネルギーで行う必要があると述べている。これは、肋骨がより高いkVpに対して減衰コントラストが低いためである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、特許請求の範囲によって規定される。
【0009】
本発明の一態様による実施例によれば、マルチエネルギー暗視野(DAX)及び位相コントラスト(PC)X線撮像システムが提供される。このシステムは、第1のセットのエネルギー値で複数の位相ステップX線画像を収集し、第2のセットのエネルギー値で少なくとも1つのX線画像を収集する撮像ユニットであって、第1のセットの各エネルギー値は、第2のセットの各エネルギー値よりも小さい、撮像ユニットと、処理ユニットとを含み、処理ユニットは、第1のセットのエネルギー値で収集した複数の位相ステップX線画像を、位相回復を使用して処理して、第1の透過画像、DAX画像、及びPC画像を取得し、第2のセットのエネルギー値で収集した少なくとも1つのX線画像を処理して、第2の透過画像を取得し、第2の透過画像に基づいて第1の透過画像を処理して、修正された透過画像を生成する。
【0010】
このシステムは、位相ステッピングを用いて低エネルギー画像のセットを収集し、(位相ステッピングを用いて又は用いないで)高エネルギー画像のセットを収集する。位相回復を使用して、位相ステップ低エネルギー画像から透過画像、DAX画像、及びPC画像が取得される。高エネルギー画像から高エネルギー透過画像が取得される。
【0011】
低エネルギー画像からの透過画像(即ち、第1の透過画像)及び高エネルギー画像からの透過画像(即ち、第2の透過画像)に基づいて、修正された透過画像が生成される。
【0012】
第2の透過画像に基づくことによって、修正された透過画像は、第2の透過画像の特徴(例えば、高い信号対雑音比)を保持できるため、それが高エネルギー(例えば、125kVp)で収集されたかのように見え、これにより、胸部のX線撮像の収集エネルギーに関する臨床要件が満たされる。
【0013】
また、第1の透過画像にも基づくことによって、修正された透過画像は、第1の透過画像の特徴(例えば、像のフレーミング)も保持できる。システムは、第1の透過画像と同時に低エネルギーDAX画像及びPC画像を収集できるため、低エネルギーDAX画像及びPC画像を、修正された透過画像と直ぐに比較できる。これは、画像のフレーミングが全て同じだからである(即ち、画像は互いに位置合わせ/整列されている)。
【0014】
更に、第1の透過画像及び第2の透過画像の両方に基づくことによって、高エネルギー透過画像特徴と低エネルギー透過画像特徴とを比較できる(例えば、減衰コントラスト)。処理ユニットは、この比較からセグメンテーション情報を取得し、この情報を使用して、画像内の高吸収性特徴(例えば、骨)を除去するか、又は、反対に、画像内の低吸収性特徴(例えば、軟組織)を除去することができる。
【0015】
例として、修正された透過画像は、システムが修正された透過画像内の雑音を低減する、及び/又は骨若しくは軟組織を除去することができるような高エネルギー透過画像と低エネルギー透過画像との組み合わせである。修正された透過画像は、第1の透過画像と同一の主題及びフレーミングを有するDAX画像及び/又はPC画像とマッチしており、修正された透過画像は臨床的に許容可能である。
【0016】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に説明する実施形態から明らかになり、また、当該実施形態を参照して説明される。
【0017】
いくつかの実施形態では、撮像ユニットは、第1のセットのエネルギー値で複数の位相ステップX線画像を収集する、格子干渉計、複数の(周期的な)開口部、伝播ベースの撮像配置、又は回転結晶を含む。位相ステップ画像系列は、様々なハードウェア(格子ベースの撮像用の格子干渉計、エッジ照明用の複数の開口部、伝播ベースの撮像用の伝播センサ、又は分析器ベースの撮像用の回転結晶)で収集できる。異なるハードウェアを利用する実施形態は、特定の被検者に対するシステム感度の向上、位相ステッピング制御の向上、及び空間分解能の向上などであるが、これらに限定されない利点を提供できる。
【0018】
いくつかの実施形態では、第1のセットのエネルギー値は、100kVp未満のエネルギー値、好ましくは60kVp~70kVpの範囲内のエネルギー値で構成されている。したがって、上記の位相ステップ画像系列は、60~70kVpであるが、これに限定されない最適なDAX画像収集のための少なくとも1つの低エネルギー状態で収集される。
【0019】
いくつかの実施形態では、第2のセットのエネルギー値は、100kVp以上のエネルギー値、好ましくは120kVp以上のエネルギー値、更に好ましくは少なくとも1つのエネルギー値が125kVpと実質的に等しいエネルギー値で構成されている。したがって、上記の少なくとも1つのX線画像は、120kVpを上回る、理想的には125kVpでの最適透過画像収集のための少なくとも1つの高エネルギー状態で収集される。
【0020】
いくつかの実施形態では、処理ユニットは、縞除去(例えば、位相ステッピング)アルゴリズムに従って、複数の位相ステップX線画像のうちの少なくとも1つ及び/又は少なくとも1つのX線画像を処理して縞を除去する。更に、いくつかの実施形態では、撮像ユニットは、X線ビームスペクトルフィルタ及び/又は動的干渉格子を使用して縞除去アルゴリズムに従って、複数の位相ステップX線画像のうちの少なくとも1つ及び/又は少なくとも1つのX線画像を処理して残留縞を除去する。
【0021】
縞は、格子干渉法を用いて位相ステッピングを実行するDAXシステムを使用して画像を収集することから生じる。したがって、実施形態は、このような縞を除去又は低減する。例えば、実施形態は、縞情報を取得するために、物体のない位相ステップX線画像を収集する。しかし、縞に関する情報は、他の方法で取得されてもよい。処理ユニットは、縞情報を用いて縞除去アルゴリズムを実行できる。いくつかの実施形態は、撮像システムの物理的な構成要素を使用して縞を除去できる。即ち、干渉格子を動かして縞を除去するか、スペクトルフィルタを使用して、そもそも縞が生じないようにすることができる。縞を除去すると、X線画像のコントラスト、明瞭さ、及び全体的な品質が向上する。
【0022】
いくつかの実施形態では、処理ユニットは、第2の透過画像に基づいて第1の透過画像を処理して、修正された透過画像内の雑音を低減する。最適な低エネルギー値で収集されたDAX画像は、肺疾患の診断の際に有用である。しかし、低エネルギー値で同時に収集した透過画像は、信号対雑音比が不十分であり、医療ガイドラインに沿っていない。したがって、処理ユニットは、高エネルギー透過画像からの情報を使用して、低エネルギー透過画像内の信号対雑音比を向上させる。結果として得られる修正された透過画像は、臨床的に許容可能である「仮想」の125kVp画像となる。
【0023】
いくつかの実施形態では、処理ユニットは、第2の透過画像に基づいて第1の透過画像を処理して、修正された透過画像内の軟組織又は骨を除去する。画像セグメンテーションなどの技法を使用して、低エネルギー透過画像と高エネルギー透過画像との間の高吸収性特徴(即ち、骨)の減衰コントラストの差が決定される。次に、この差を使用して、X線画像から骨又は軟組織を除去する。これは、臨床医が処理する画像内に無関係な情報が少なくなるので、肺疾患の診断の際に有益となる。また、高吸収性特徴によって不明瞭にされ得る透過画像内の特徴を特定するために使用することもできる。
【0024】
いくつかの実施形態では、処理ユニットは更に、トレーニングアルゴリズムを実行する。このトレーニングアルゴリズムは、トレーニング入力及び既知の出力を受信するトレーニングされたニューラルネットワークを作成し、トレーニング入力は、第1の透過画像を含み、既知の出力は修正された透過画像を含む。更に、いくつかの実施形態では、処理ユニットは更に、画像処理アルゴリズムを実行する。画像処理アルゴリズムは、トレーニングされたニューラルネットワークを使用して、第1の透過画像を含む入力を受信し、修正された透過画像を含む出力を生成する。
【0025】
第1の透過画像と第2の透過画像との差は、極値ではなく、ニューラルネットワークは、第2の透過画像を収集する必要なくシステムから修正された透過画像を出力するようにトレーニングされる。ニューラルネットワークのいくつかの実施形態では、ニューラルネットワークは、雑音低減、骨若しくは軟組織除去、及び/又はこれらの2つの作用の組み合わせのためにトレーニングされる。これらの深層学習方法は、システムが臨床的に許容可能なマルチエネルギーX線画像を出力する速度を増加させる。更に、これらの深層学習方法は、システムがマルチエネルギーDAX及びPC撮像を実行するために必要とする入力を単純化する。
【0026】
本発明の別の態様によれば、マルチエネルギー暗視野(DAX)及び位相コントラスト(PC)X線撮像方法が提供される。この方法は、第1のセットのエネルギー値で複数の位相ステップX線画像を、第2のセットのエネルギー値で少なくとも1つのX線画像を収集するステップであって、第1のセットの各エネルギー値は、第2のセットの各エネルギー値よりも小さい、収集するステップと、第1の透過画像、DAX画像、及び位相コントラスト(PC)画像を取得するために、第1のセットのエネルギー値で収集した複数の位相ステップX線画像に位相回復プロセスを実行するステップと、第2のセットのエネルギー値で収集した少なくとも1つのX線画像を処理して、第2の透過画像を取得するステップと、第2の透過画像に基づいて第1の透過画像を処理して、修正された透過画像を生成するステップとを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、第1の透過画像を処理するステップは、第2の透過画像に基づいて第1の透過画像内の雑音を低減するステップを含む。
【0028】
更に、いくつかの実施形態では、第1の透過画像内の異なる材料(例えば、軟組織や骨)間のコントラストを適応させるために、第2の透過画像が使用される。したがって、いくつかの実施形態では、第1の透過画像を処理するステップは、第2の透過画像に基づいて第1の透過画像から軟組織又は骨を除去するステップを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、第1のセットのエネルギー値は、100kVp未満のエネルギー値、好ましくは60kVp~70kVpの範囲内のエネルギー値で構成されている。
【0030】
本発明の別の態様によれば、コンピュータプログラムコード手段を含むコンピュータプログラム製品が提供される。これは、処理システムを有するコンピューティングデバイス上で実行されると、処理システムに、提示した実施形態による方法の全てのステップを実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明をより深く理解し、本発明がどのように実行されるかをより明確に示すために、ほんの一例として添付の図面を参照する。
【0032】
図1図1は、マルチエネルギーDAX撮像システムのフロー図である。
図2図2は、透過X線画像の例と暗視野X線画像の例である。
図3図3は、本発明の1つ以上の実施形態による撮像ユニットの概略図である。
図4図4は、本発明の1つ以上の実施形態によるマルチエネルギーDAX撮像方法のフロー図である。
図5図5は、トレーニングされたニューラルネットワークを使用して修正されたX線画像を出力する画像処理アルゴリズムのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、図を参照して説明される。
【0034】
詳細な説明及び具体的な実施例は、装置、システム、及び方法の模範的な実施形態を示しているが、説明のみを目的としたものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではないことが理解されるべきである。本発明の装置、システム、及び方法のこれらの及び他の特徴、態様並びに利点は、次の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面からよりよく理解されるようになるであろう。図は単なる概略図であり、縮尺どおりに描かれていないことが理解されるべきである。また、図全体で同じ参照番号を使用して、同じ部分又は類似の部品を示すことが理解されるべきである。
【0035】
マルチエネルギー暗視野(DAX)及び位相コントラスト(PC)X線撮像システムが提案されている。このシステムは、第1のセットのエネルギー値で複数の位相ステップX線画像を収集し、第2のセットのエネルギー値で少なくとも1つのX線画像を収集する撮像ユニットを含み、第1のセットの各エネルギー値は、第2のセットの各エネルギー値よりも小さい。更に、マルチエネルギーDAX撮像システムは、第1のセットのエネルギー値で収集された複数の位相ステップX線画像を、位相回復を使用して処理して、第1の透過画像、DAX画像、及び位相コントラスト画像を取得する処理ユニットを含む。処理ユニットは更に、第2のセットのエネルギー値で収集した少なくとも1つのX線画像を処理して、第2の透過画像を取得し、第2の透過画像に基づいて第1の透過画像を処理して、修正された透過画像を生成する。
【0036】
実施形態は、マルチエネルギー暗視野(DAX)及び位相コントラストX線撮像のコンセプトを提供する。これには、低kVpでの位相ステッピングを用いた一連の画像の収集、高kVpでの位相ステッピングを用いる又は用いない1つ(又は複数)の追加画像の収集、低kVpでのステッピングシリーズの位相回復(DAX画像及び低kVp透過画像をもたらす)、高kVp透過画像からの縞の除去、例えば、透過画像の組み合わせ、低kVp透過画像から取られた追加の構造情報を使用した高kVp透過画像の雑音除去、及び/又は骨除去若しくは軟組織除去を行うための低kVp透過画像と高kVp透過画像の最新技術のデュアルエネルギーの組み合わせが含まれる。したがって、DAX画像収集とマルチエネルギー透過画像収集とを組み合わせるという概念が提案されている。一般に、提案された実施形態は2つのエネルギー収集のみに限定されない。即ち、原理的には、位相ステッピングの各新しいステップは異なるエネルギーで収集できる。この場合、X線エネルギーが格子干渉計の可視性(性能)に与える影響を考慮しながら、全ての画像を一度に考慮して位相回復が実行される。
【0037】
DAX撮像には、X線源と、物体を通るX線の減衰ではなく、同じ物体を通るX線の回折の大きさを測定できる構成とが含まれる。
【0038】
X線撮像における位相ステッピングは、当業者に知られているプロセスであり、物体に関する位相情報を決定することを含む。特に、位相ステッピングは、格子の周期に等しい距離を通って、センサに対して格子を横方向に動かすことによって実行される。他の実施例では、位相ステッピングは、格子の周期に等しい距離を通って、格子に対してセンサを横方向に動かすことによって実行される。これは格子の周期よりも短いステップで行われるので、全てのステップを合計すると、総移動距離が格子周期となる。更に別の実施例では、位相ステッピングは、X線源からX線ビームが放出された後に、電磁石を使用してX線ビームのターゲットを移動させる電磁位相ステッピングを使用して実行される。X線ビームのターゲットの移動は、(位相)格子の周期に等しい距離を通って、センサに対して横方向になる。
【0039】
「エネルギー」又は「エネルギー値」とは、X線を生成するためにX線管の両端に印加されるピーク電位、ピーク電圧、及び/又は最大電圧を指し、kVp、即ち、ピークキロ電圧で測定される。kVpが高いほど、X線源から放出されるX線のエネルギーが大きくなる。例えば、低エネルギー画像とは、高エネルギー画像と比較して低いkVpで収集されたX線画像を指し、逆に高エネルギー画像とは、低エネルギー画像と比較して高いkVpで収集されたX線画像を指す。低エネルギー画像は通常、透過画像では、信号対雑音比が低く、減衰コントラストが低くなるが、DAX画像は信号対雑音比が高くなる。高エネルギー画像は通常、透過画像では、信号対雑音比が高く、減衰コントラストが高くなるが、DAX画像は信号対雑音比が低くなる。
【0040】
図1を参照するに、一実施形態によるマルチエネルギーDAX及びPC X線撮像のためのシステム100の簡略化されたブロック図が示されている。システムは、X線撮像ユニット102と、処理ユニット112とを含む。
【0041】
撮像ユニット102は、第1のセットのエネルギー値104で複数の位相ステップX線画像108を収集し、第2のセットのエネルギー値106で少なくとも1つのX線画像110を収集する。ここで、第1のセット104の各エネルギー値は、第2のセット106の各エネルギー値よりも小さい。
【0042】
例として、第1のセットのエネルギー値104は、100kVp未満のエネルギー値、好ましくは60kVp~70kVpの範囲内のエネルギー値(即ち、低エネルギー値)で構成されている。このようにして、第1のセットのエネルギー値104は、DAX画像114の最適な収集のために構成される。DAX画像114の最適な収集は、信号対雑音比が最大のときである。第1のセットのエネルギー値104は、DAX画像114の最適な収集のために、自動的に決定されるか、臨床医が決定するか、又はデフォルト値によって決定される。
【0043】
第2のセットのエネルギー値106は、100kVp以上のエネルギー値、好ましくは120kVp以上のエネルギー値、更に好ましくは少なくとも1つのエネルギー値が125kVpと実質的に等しい(例えば、125kVp±1%、又は125kVpと等しい)エネルギー値(即ち、高いエネルギー値)で構成されている。このようにして、第2のセットのエネルギー値106は、第2の透過画像416の最適な収集のために構成される。第2の透過画像416の最適な収集は、信号対雑音比が最大であるとき、及び/又は第2のセットのエネルギー値106が医療ガイドラインに沿っているとき、即ち、120kVpを超えるときである。第2のセットのエネルギー値106は、第2の透過画像416の最適な収集のために、自動的に決定されるか、臨床医が決定するか、又はデフォルト値によって決定される。
【0044】
撮像ユニット102は更に、処理ユニット112に、第1のセットのエネルギー値104で複数の位相ステップX線画像108を提供し、第2のセットのエネルギー値106で少なくとも1つのX線画像110を提供する。
【0045】
処理ユニット112は、第1のセットのエネルギー値で収集された複数の位相ステップX線画像を、位相回復を使用して処理して、第1の透過画像、DAX画像114、及び位相コントラスト(PC)画像116を取得する。DAX撮像における位相回復は、当業者に知られているプロセスであり、位相ステッピングによって取得したX線画像から位相情報を決定することを含む。特に、X線ビームの位相を直接測定することはできず、位相シフトは2つ以上の波を干渉して強度変調に変換する必要がある。位相回復は、位相回復を実行するアルゴリズムの実装を指す場合がある。第1の透過画像108は、低エネルギー透過画像204であり、DAX画像114とPC画像116とはどちらも低エネルギーX線画像である。
【0046】
また、処理ユニット112は、第2のセットのエネルギー値106で収集された少なくとも1つのX線画像110を処理して、第2の透過画像416を取得する。したがって、第2の透過画像416は高エネルギー透過画像206である。
【0047】
処理ユニット112は更に、第2の透過画像416に基づいて第1の透過画像108を処理して、修正された透過画像118を生成する。つまり、修正された透過画像118は、第1の透過画像108と第2の透過画像416との組み合わせである。つまり、修正された透過画像118は、低エネルギー透過画像204と高エネルギー透過画像206との組み合わせである。
【0048】
処理ユニット112の出力は、DAX画像114、PC画像116、及び/又は修正された透過画像118であり、これら3つの出力は全て最適な状態になる。
【0049】
処理ユニット112は更に、第2の透過画像410に基づいて第1の透過画像108を処理して、修正された透過画像118内の雑音を低減する。処理ユニット112は、第2の透過画像410の信号対雑音比が高く、臨床的に許容できるため、第2の透過画像410、即ち、高エネルギー透過画像206に基づいて、透過画像内の最適信号対雑音比を決定する。次に、処理ユニット112は、第2の透過画像410からのコントラスト情報を使用して、第1の透過画像108、即ち、信号対雑音比が低く、臨床的に許容できない低エネルギー透過画像204を処理する。次に、処理ユニット112は、第1の透過画像108のフレーミングを有するが、第2の透過画像410の高い信号対雑音比と臨床的受容性を有する修正された透過画像118を生成する。
【0050】
図1のシステムのいくつかの実装形態では、処理ユニット112は更に、第2の透過画像410に基づいて第1の透過画像108を処理して、修正された透過画像418内の軟組織又は骨を除去する。処理ユニット112は、第1の透過画像108及び第2の透過画像410からコントラスト情報を決定する。コントラスト情報は、画像のどの領域が吸収率の高い特徴(即ち、骨)であるかを示す。処理ユニット112は、画像セグメンテーション方法を使用して、第1の透過画像108及び第2の透過画像410のコントラスト情報を決定する。コントラスト情報は、処理ユニット112に渡された任意のX線画像情報に基づくことができる。処理ユニット112は、画像の領域が吸収性の高い特徴として特定された後、これらの特徴を除去する。これらの特徴の除去は、不透明マスク、部分的な不透明マスク、輝度の低下、及び/又はコントラストの低下のいずれかのエフェクトを決定された領域に適用することによって行われる。
【0051】
処理ユニット112は、縞除去アルゴリズムに従って、位相ステップX線画像108のうちの少なくとも1つ及び/又は少なくとも1つのX線画像110を処理して、縞を除去する。縞は、格子干渉法を使用した結果、X線画像内に残るアーチファクトであり、X線画像に垂直な帯又はストライプとして出現する。縞除去アルゴリズムでは、縞情報を得るために、物体が存在しない位相ステップX線画像を使用する。これは限定を意図したものではない。処理ユニットは、任意の方法で得られた縞情報を用いて縞除去アルゴリズムを実行できる。縞を除去すると、X線画像のコントラスト、明瞭さ、及び全体的な品質が向上する。
【0052】
図2を参照するに、低エネルギー204及び高エネルギー206で収集された透過画像202の例と、低エネルギー210及び高エネルギー212で収集されたDAX画像208の例が示されている。
【0053】
透過画像202は、物体308を透過したX線信号から生成される。したがって、X線ビーム306は、物体308によって減衰及び/又は吸収されている。エネルギーはX線ビーム306から物体308に伝達され、通常は骨などの高密度の特徴である高吸収特性を有する特徴では、より多くのエネルギーが伝達されるため、X線信号は弱くなる。これは、透過画像202の像がより白く見える部分で示され、この領域でX線信号のより多くの吸収が発生したことを示している。例として、透過画像202は、骨などの物体308の高吸収性特徴における破損や劣化の兆候を検査するのに役立つ。高エネルギー106のX線信号は、低エネルギー104のX線信号と比較して、高吸収性特徴に容易に吸収される。したがって、高エネルギー透過画像206は、物体308の低吸収性特徴と高吸収性特徴との間で、減衰コントラストとして知られるコントラストがより高い。逆に、低エネルギー透過画像204は、低吸収性特徴と高吸収性特徴との間の減衰コントラストは低い。
【0054】
DAX画像208は、物体308を通って回折されたX線信号から生成され、したがってX線ビーム306の位相は変化している。X線ビーム306の回折は小角散乱によって支配されているため、電子密度の異なる物体308の特徴を通る回折の大きさは異なる。したがって、DAX画像208は、軟組織などの物体308の低吸収性特徴からの情報を得るのに優れている。高エネルギー106のX線信号からの回折情報は、低エネルギー104のX線信号と比較して、物体308を通ってより早く劣化する。したがって、低エネルギーDAX画像212は、(高エネルギーDAX画像と比較して)物体308の軟組織における電子密度のわずかな変化の間でよりコントラストが高くなる。逆に、高エネルギーDAX画像210では、物体308の軟組織における電子密度のわずかな変化の間でコントラストが低くなる。
【0055】
ヒト胸部のX線撮像では、肺疾患の診断には骨よりも軟部組織の方が関心が高い。したがって、DAX画像208は臨床医に有用であるが、例えば、臨床的に許容できるように、透過画像202とマッチさせる必要がある。透過画像202は、DAX撮像システム上で、位相回復406を用いてDAX画像208と同時に取得できる。しかし、前述のように、これらの2つの画像の収集パラメータにはトレードオフがあり、つまり、透過画像202は高エネルギー106で最良に収集され、DAX画像は低エネルギー104で最良に収集される。
【0056】
しかし、提案されたコンセプトによれば、高エネルギー(例えば125kVp)で収集されたように見えるが低エネルギー収集の特性を保持した修正された透過画像が提供され、これにより、例えば胸部のX線撮像の収集エネルギーに関する臨床要件を満たすことができる。
【0057】
更なる例示として、図3を参照して、提案された実施形態に従って使用され得る模範的な撮像ユニット102について説明する。図3は、一実施形態による撮像ユニット102の簡略化された概略図を示している。具体的には、この実施形態では、撮像ユニット102は、第1のセットのエネルギー値104で、複数の位相ステップX線画像108を収集する格子干渉計304、310、312を含む。
【0058】
撮像ユニット102は、X線源300、X線ビームスペクトルフィルタ302、線源格子304、X線ビーム306、物体308、位相格子310、解析格子312、及び/又はセンサ314を含む。
【0059】
線源格子304、位相格子310、及び/又は解析格子312は、第1のセットのエネルギー値104、第2のセットのエネルギー値106、及び/又はX線源300の構成に従って構成される。つまり、いくつかの実施形態では、格子304、310、312のいずれかの格子間の距離は、格子304、310、312を通過するX線ビーム306のエネルギーレベルに合わせて修正されて、位相ステップX線画像108内の位相情報、並びに/又は位相ステップX線画像108及び/若しくは少なくとも1つのX線画像110における信号対雑音比の品質を最大化する。
【0060】
撮像ユニットは、第1のセットのエネルギー値104で、複数の位相ステップX線画像108を収集する格子干渉計304、310、312を含む。格子干渉計のセットアップは、位相格子310と解析格子312とを含み、追加的に、線源格子304を含んでいてもよい。格子は、第1の材料の線の繰り返し構造と、第2の材料又は空間の線とからなる。したがって、格子には交互の線構造がある。格子には、第1の材料の線の端と第1の材料の次の線の端との間の垂直距離である周期などの重要な寸法がある。格子の周期は、X線ビーム306の異なるエネルギー値104、106に適合するように決定される。格子のもう1つの重要な寸法は、位相格子310と解析格子312との間の距離であり、これもX線ビーム306のエネルギー値104、106に適合するように決定される。
【0061】
波の位相を直接測定することはできず、むしろ、位相シフトは2つ以上の波を干渉して強度変調に変換する必要がある。対応する干渉パターンを生成するために、位相格子310が使用される。位相格子は、検査対象の物体308とセンサ314との間に配置される(又は、光源格子304と物体308との間に配置することもできる)。位相格子310によって生成される干渉パターンは、センサ314に空間分解能がないことにより、センサ314で検出するには小さすぎる場合があるため、センサ314で検出可能であるように十分に大きい干渉パターンを続けて提供するために、解析格子312が、位相格子310とセンサ314との間に配置される。好ましくは、解析格子312の導入は、新しい縞を導入しないが、解析格子は、位相格子310の干渉パターンを「解析」するためだけに使用される。
【0062】
位相ステッピングは、解析格子312を解析格子312の線格子の方向に対して垂直に、且つ解析格子312の周期と等しい合計距離となるようにステップ単位で移動して実行される。位相ステップX線画像108は、複数のインスタンス(即ち、異なるステップ)でセンサによって取得される。これらのインスタンスは、解析格子312の周期のある分数(例えば、4分の1、6分の1、8分の1)(即ち、解析格子312の周期に等しい距離)にある。位相情報を取得できる画像系列を取得するには、複数のインスタンスが必要である。解析格子312は、モータや、周期の分数精度を達成する高精度のアクチュエータを実装することで移動することができる。位相ステッピングでは、振動擾乱を抑制するために10枚以上の画像を収集する必要がある。
【0063】
或いは、例として、位相ステッピングは、
(i)センサ314を解析格子312の線格子の方向に対して垂直に移動すること、
(ii)格子を解析格子312の線格子の方向に対して垂直に移動すること、
(iii)X線源300を解析格子312の線格子の方向に対して垂直に移動すること、
(iv)X線ビーム306を解析格子312の線格子の方向に垂直に移動すること(即ち、電磁位相ステッピングを使用する)、及び
(v)位相格子310と解析格子312とを一緒に軸周りに格子バーの向きに沿って一定の角度で回転させる(例えば、これらの2つの格子は互いに整列した位置に維持されるか、機械的に固定される)こと、
によって実行される。
【0064】
他の手段で位相ステッピングの効果を得るために、撮像ユニット内の格子干渉法の機能を、
センサ314用のX線マスク(X線マスク内に複数の開口部、即ち、エッジ照明用のコード化された開口部がある)、
X線ビーム306の方向に平行に移動できる伝播センサ、又は
センサ314上の物体308を通過した後にX線ビームを方向付ける回転結晶、
に置換してもよい。
【0065】
撮像ユニットは、X線ビームスペクトルフィルタ302及び/又は動的干渉格子304を含んでいてもよい。X線ビームスペクトルフィルタ302及び/又は動的干渉格子304は、位相ステップX線画像108のうちの少なくとも1つ及び/又は少なくとも1つのX線画像110から縞を除去する。X線ビームスペクトルフィルタ302は、X線ビーム306が縞を生じさせないように十分な品質であることを確保することで、そもそも縞が生じないようにすることができる。動的干渉格子304は、画像収集中に干渉格子を移動して、結果の画像から縞を除去する(smear out)。縞を除去すると、X線画像のコントラスト、明瞭さ、及び全体的な品質が向上する。
【0066】
図4を参照すると、一実施形態による、マルチエネルギーDAX及びPC X線撮像方法400の簡略化されたブロック図が示されている。具体的には、この実施形態では、処理ユニット112が方法400のステップを実行する。
【0067】
ステップ402及び404で、方法400は、第1のセットのエネルギー値104で収集された複数の位相ステップX線画像と、第2のセットのエネルギー値106で収集された少なくとも1つのX線画像(位相ステッピングを用いる又は用いない)を受信する。第1のセットの各エネルギー値は、第2のセットの各エネルギー値よりも小さい。
【0068】
例として、第1のセットのエネルギー値104は、100kVp未満、好ましくは60kVp~70kVpの範囲内のエネルギー値(即ち、低エネルギー値)で構成されている。第1のセットのエネルギー値104は、DAX画像114の最適な収集のために、処理ユニット112によって自動的に決定されるか、又はそうでなければ、臨床医が決定するか、若しくはデフォルト値によって決定される。
【0069】
第2のセットのエネルギー値106は、100kVp以上、好ましくは120kVp以上、更に好ましくは少なくとも1つのエネルギー値が125kVpと実質的に等しいエネルギー値(即ち、高いエネルギー値)で構成されている。第2のセットのエネルギー値106は、第2の透過画像416の最適な収集のために、自動的に決定されるか、臨床医が決定するか、又はデフォルト値によって決定される。
【0070】
ステップ406では、ステップ402からの複数の位相ステップX線画像に対して位相回復が実行される。
【0071】
ステップ408では、位相回復406のプロセスの出力は、取得した第1の透過画像、DAX画像、及びPC画像である。DAX画像及びPC画像は、本方法の出力である。
【0072】
ステップ410では、ステップ404から受信した少なくとも1つのX線画像が処理され、第2の透過画像が取得される。
【0073】
ステップ412では、画像組み合わせアプリケーションが、ステップ408からの第1の透過画像及びステップ410からの第2の透過画像を処理する。画像の組み合わせアプリケーションは、ステップ408からの第1の透過画像及びステップ410からの第2の透過画像からコントラスト情報を決定する。コントラスト情報には、透過画像の最適な信号対雑音比が含まれ、第2の透過画像410に基づいて決定される。これは、第2の透過画像410が高いエネルギー値で収集されているため、信号対雑音比が高く、臨床的に許容できるためである。また、コントラスト情報は、第1の透過画像と第2の透過画像の両方で、画像のどの領域が吸収率の高い特徴(即ち、骨)であるかも示す。本方法では、画像セグメンテーション方法を使用してコントラスト情報を決定する。
【0074】
ステップ414では、画像組み合わせアプリケーション412からの第1の透過画像がコントラスト情報に基づいて処理されて、第1の透過画像から雑音を低減及び/又は除去し、雑音低減画像が生成される。
【0075】
ステップ416では、画像組み合わせアプリケーション412からの第1の透過画像又はステップ414からの雑音低減画像が、コントラスト情報に基づいて処理されて、第1の透過画像又は雑音低減画像から骨又は軟組織が除去される。骨又は軟組織の除去は、不透明マスク、部分的な不透明マスク、輝度の低下、及び/又はコントラストの低下のいずれかのエフェクトを決定された領域に適用することによって行われる。特徴除去画像が生成される。
【0076】
ステップ418では、ステップ414からの雑音低減画像又はステップ416からの特徴除去画像に基づいて、修正された透過画像が生成される。修正透過画像は、本方法の出力である。
【0077】
本方法400は、コンピュータプログラムコード手段を含むコンピュータプログラム製品を使用してもよい。コンピュータプログラムコード手段は、処理システムを有するコンピューティングデバイス上で実行されると、処理システムに、本方法400の全てのステップを実行させる。
【0078】
図5を参照すると、一実施形態による画像処理アルゴリズム500の簡略化されたブロック図が示されている。具体的には、この実施形態では、処理ユニット112が画像処理アルゴリズム500のステップを実行する。
【0079】
処理ユニット112は更に、画像処理アルゴリズム500を実行する。画像処理アルゴリズムは、トレーニングされたニューラルネットワーク504を使用して、第1の透過画像を含む入力502を受信し、修正された透過画像を含む出力506を生成する。70kVpと125kVpとの間での画像の外観の差はそれほど大きくないため(特に、胸郭などの胸部の吸収率の高い部分だけが画像上でよりはっきりと現れる)、これらの差についてトレーニングされたニューラルネットワークは、非常にうまく機能し、診断目的に適した画像が生成される。
【0080】
人工ニューラルネットワーク(又は、単にニューラルネットワーク)の構造は、人間の脳から発想を得たものである。ニューラルネットワークは層で構成され、各層は複数のニューロンを含む。各ニューロンは数学操作を含む。特に、各ニューロンは、単一のタイプの変換の異なる重み付けの組み合わせ(例えば、シグモイドなどの同じタイプの変換であるが、異なる重み付けを有する)を含み得る。入力データの処理プロセスでは、各ニューロンの数学操作が入力データに対して行われて、数値出力が生成され、ニューラルネットワークの各層の出力は、次の層に順番に供給される。最終層が出力を提供する。
【0081】
ニューラルネットワークには、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)や再帰型ニューラルネットワーク(RNN)など、いくつかのタイプがある。本発明の実施形態は、CNNベースの学習アルゴリズムを使用する。CNNは画像解析に特にうまくいくことが証明されており、他のタイプのニューラルネットワークよりもはるかに低いエラー率で画像を分類できるからである。
【0082】
CNNには通常、畳み込み層、プーリング層、全結合層、及びソフトマックス層など、いくつかの層が含まれている。畳み込み層は学習可能なフィルタのセットからなり、入力から特徴を抽出する。プーリング層は非線形ダウンサンプリングの一形態であり、1つの層の複数のニューロンの出力を次の層の1つのニューロンに結合することでデータサイズを縮小する。全結合層は1つの層の各ニューロンを次の層の全てのニューロンに接続する。ソフトマックス層は、各出力の確率分布を決定する。
【0083】
機械学習アルゴリズムのトレーニング方法はよく知られている。通常、このような方法は、トレーニング入力データエントリと対応するトレーニング出力データエントリとを含むトレーニングデータセットを取得することを含む。初期化された機械学習アルゴリズムが各入力データエントリに適用されて、予測された出力データエントリが生成される。予測された出力データエントリと対応するトレーニング出力データエントリとのエラーを使用して、機械学習アルゴリズムが修正される。このプロセスはエラーが収束するまで、即ち、予測された出力データエントリがトレーニング出力データエントリと十分に類似する(例えば±1%)まで繰り返される。これは一般に、教師付き学習技術として知られている。
【0084】
例えば、各ニューロンの数学的操作の重み付けは、エラーが収束するまで修正される。ニューラルネットワークを修正する既知の方法には、勾配降下アルゴリズム、誤差逆伝搬アルゴリズムなどがある。
【0085】
図5で使用したニューラルネットワークのトレーニング入力データエントリは、透過画像例408に対応している。トレーニング出力データエントリは修正された透過画像418に対応している。
【0086】
トレーニングサンプルを向上させるために、いくつかの前処理方法を使用してもよい。同じ撮像システムからの透過画像は、例えば表示特徴で正規化され得る。
【0087】
VGG、Inception、及びResNetなどの1つ以上の既存のCNNベースの学習アルゴリズムを修正することで複数のニューラルネットワークを生成できる。
【0088】
開示された実施形態の変形例は、図面、開示及び添付の特許請求の範囲の検討から、請求項に係る発明を実施する際に当業者によって理解され、実行され得る。特許請求の範囲において、語「含む」は、他の要素又はステップを排除するものではなく、単数形の要素は複数を排除するものではない。
【0089】
単一のプロセッサ又は他のユニットが、特許請求の範囲に記載されているいくつかのアイテムの機能を果たすことができる。
【0090】
特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを意味するものではない。
【0091】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に又はその一部として供給される、光記憶媒体又は固体媒体などの任意の適切な媒体に格納/配布することができるが、インターネット又は他の有線若しくはワイヤレス通信システムを介してなど他の形式で配布することもできる。
【0092】
「~するように適応されている」という用語が、特許請求の範囲又は説明で使用されている場合、「~するように適応されている」という用語は「~するように構成されている」という用語と同等であることを意図していることに留意されたい。
【0093】
特許請求の範囲における任意の参照符号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】