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特表2024-503064摩擦ライニングパッドにより形成された溝パターンを有する摩擦ディスク
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  • 特表-摩擦ライニングパッドにより形成された溝パターンを有する摩擦ディスク 図1
  • 特表-摩擦ライニングパッドにより形成された溝パターンを有する摩擦ディスク 図2
  • 特表-摩擦ライニングパッドにより形成された溝パターンを有する摩擦ディスク 図3A
  • 特表-摩擦ライニングパッドにより形成された溝パターンを有する摩擦ディスク 図3B
  • 特表-摩擦ライニングパッドにより形成された溝パターンを有する摩擦ディスク 図4
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  • 特表-摩擦ライニングパッドにより形成された溝パターンを有する摩擦ディスク 図6
  • 特表-摩擦ライニングパッドにより形成された溝パターンを有する摩擦ディスク 図7
  • 特表-摩擦ライニングパッドにより形成された溝パターンを有する摩擦ディスク 図8
  • 特表-摩擦ライニングパッドにより形成された溝パターンを有する摩擦ディスク 図9
  • 特表-摩擦ライニングパッドにより形成された溝パターンを有する摩擦ディスク 図10
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-24
(54)【発明の名称】摩擦ライニングパッドにより形成された溝パターンを有する摩擦ディスク
(51)【国際特許分類】
   F16D 13/62 20060101AFI20240117BHJP
   F16D 13/74 20060101ALI20240117BHJP
   F16D 55/40 20060101ALI20240117BHJP
   F16D 65/092 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
F16D13/62 A
F16D13/74 A
F16D55/40 F
F16D65/092 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542707
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(85)【翻訳文提出日】2023-07-13
(86)【国際出願番号】 DE2021100926
(87)【国際公開番号】W WO2022167021
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】102021102600.8
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021107101.1
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021117528.3
(32)【優先日】2021-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ボネット
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン ベアヴァルト
【テーマコード(参考)】
3J056
3J058
【Fターム(参考)】
3J056AA60
3J056BB12
3J056EA18
3J058AA44
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA59
3J058AA77
3J058AA87
3J058BA16
3J058BA35
3J058CA43
3J058CC03
3J058DE02
3J058FA06
3J058GA92
3J058GA93
(57)【要約】
本発明は、実質的に菱形様形状または平行四辺形形状の設計を有する、摩擦ディスク(19)用の長方形摩擦ライニングパッド(11~13)に関し、摩擦ライニングパッド(11~13)は、内径(83)および外径(84)を有する摩擦面であり、キャリアディスク(18)に固定された状態で、摩擦ライニングパッド(11~13)によって画定された2つのパッド溝(8)と、摩擦面の内部に配置されている交点(81,82)において交わる、型押しされた溝(9)を有する。摩擦ディスク(19)は、キャリアディスク(18)と、このタイプの、好ましくは同じ設計およびサイズの複数の摩擦ライニングパッド(11~13)とを有する。パッド溝(8)と型押しされた溝(9)とを有する溝パターンは、キャリアディスク(18)と摩擦ライニングパッド(11~13)とによって形成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦ディスク用の溝パターン(10)であって、前記溝パターン(10)は、摩擦ライニングパッド(11~13;14~16)を使用して形成されており、前記摩擦ライニングパッド(11~13;14~16)は、菱形様形状を有し、前記摩擦ライニングパッド(11~13;14~16)は、内径(83)および外径(84)を有する摩擦面(80)を構成する、溝パターン(10)において、各前記摩擦ライニングパッド(11~13;14~16)は、型押しされた溝(9)を有し、前記型押しされた溝(9)は、前記それぞれの摩擦ライニングパッドによって画定された2つのパッド溝(8;78)と、前記摩擦面(80)の内部に両方配置されている第1の交点(81)および第2の交点(82)において交わることを特徴とする、溝パターン(10)。
【請求項2】
パッド角部のパッド内角(1)は、40~145度の角度を有することを特徴とする、請求項1に記載の溝パターン。
【請求項3】
すべてのパッド角部は、その周囲輪郭に沿って丸み付けされていることを特徴とする、請求項1または2に記載の溝パターン。
【請求項4】
前記パッド角部の曲率半径(2)は、1ミリメートル以上であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の溝パターン。
【請求項5】
前記摩擦ライニングパッド(11~16)は、各前記摩擦ライニングパッド(11~16)に関して、幅(3)の高さ(4)に対する比が2未満である幅(3)および高さ(4)を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の溝パターン。
【請求項6】
隣接する2つの摩擦ライニングパッド(11~16)間には、溝幅(5)を有するそれぞれ1つのパッド溝(8;78)が配置されており、前記溝幅(5)は、前記摩擦ライニングパッド(11~16)の前記型押しされた溝(9)の溝幅(6)より小さいことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の溝パターン。
【請求項7】
前記パッド溝(8;78)と前記型押しされた溝(9)との間の分岐角(7)は、90~100度であることを特徴とする、請求項6に記載の溝パターン。
【請求項8】
前記型押しされた溝(9)の型押し深さは、前記摩擦ライニングパッド(11~16)の厚さの最大50パーセントに相当することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の溝パターン。
【請求項9】
すべての前記摩擦ライニングパッド(11~16)は、同一の形状および同一のサイズを有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の溝パターン。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の溝パターン(10)用の摩擦ライニングパッド(11~16)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の特徴を有する摩擦ディスク用の溝パターンに関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書においてパッド形状とも称される、溝または溝パターンは、切り替え要素が閉状態でも、油流によってディスクを冷却するために使用される。その溝または溝パターンは、油膜を寸断し、それにより摩擦値を安定させる。それにより、切り替え時に所望の摩擦挙動が実現される。アイドリング挙動が改善し、ドラッグトルクが低下する。
【0003】
本発明の適用範囲:
湿式多板クラッチおよびブレーキは、従来型のパワーシフト式変速機、高負荷ドライブトレインの新型ハイブリッドモジュール、または切り替え可能eアクスルにおける広範な用途向けであり、その場合、高い要求に応える高性能部品を形成する。自動車向け用途において、CO2排出量の削減要求およびドライブトレインの効率向上は、極めて重要である。切り替え要素における負荷依存損失の低下のほか、熱負荷と十分な冷却に注意する必要がある。摩擦特性、熱収支、および効率性が互いに影響し合う場合、摩擦ディスクの溝パターンは、中心的な役割を果たす(図1を参照)。
【0004】
国際公開第2016 180 540(A1)号は、内周部と外周部とを結合するが、半径方向には延びず、交差しない、直線状に延びる溝からなる第1の溝セットを備えた環状の湿式摩擦ライニングを開示している。米国特許第6 293 382(B1)号は、追加的な第2の溝セットを有しており、この第2の溝セットの各溝は、第1の溝セットのそれぞれ2つの隣接する溝を結合する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、摩擦ディスクの場合に、適切な溝パターンによって引き摺り損失を最小限に抑え(図2を参照)、冷却能力を最適化することである(図4を参照)。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本課題は、請求項1に記載の特徴を有する溝パターンによって解決される。
【0007】
したがって、摩擦ディスク用の本発明による溝パターンは、溝パターンが摩擦ライニングパッドを使用して形成されており、摩擦ライニングパッドが、菱形様形状を有し、それぞれの摩擦ライニングパッドが、型押しされた溝を有することを企図している。
【0008】
このような方法で、ドラッグトルクは、さらに低下する。
【0009】
菱形様の摩擦ライニングパッドは、キャリアディスク、例えば、キャリアプレートに取り付けられている。キャリアディスクは、実質的に、円環状ディスク形状を有する。キャリアディスクの半径方向内側または半径方向外側には、ディスクキャリアとの相対回転不能な接続をもたらすために使用する歯切部が設けられている。半径方向内側および半径方向外側には、有利には、キャリアディスクの縁部が、摩擦ライニングパッドからは独立して留まる。したがって、キャリアディスクを取り付ける際に、摩擦ライニングパッドのサイズおよび/または形状の公差を補正することができる。さらに、摩擦ライニングパッドは、有利には、円周方向に均一に相互離間されている。円周方向の摩擦ライニングパッド相互の間隔によって、摩擦ライニングパッド間の溝が生じる。このような溝は、以下では、パッド溝と称される。パッド溝は、摩擦ライニングパッドの菱形様形状のために、半径方向に対して斜めに延在する。摩擦ディスクをねじる回転方向に応じて、この場合、スチールディスクの方が摩擦ディスクより速く回転し、ロック作用またはポンプ作用のいずれかがもたらされる。どちらの作用も、以下の図面の説明で詳細に説明される。摩擦ライニングパッド内の型押しされた溝によって、油流を、スチールディスクと摩擦ディスクとの間で半径方向内側から半径方向外側へ、特に冷却能力を顧慮して、最適化することができる。特に有利には、ロック効果から生み出されるロック作用は、菱形様の摩擦ライニングパッドと組み合わせて、パッド溝と型押しされた溝との間の相互作用によって、最大限有効に変化させることができる。
【0010】
摩擦ライニングパッドは、内径および外径を有する摩擦面である。摩擦ライニングパッド間の間隔によって、パッド溝が形成される。摩擦面は、内径および外径を有する環状面の形状を有する。その場合、摩擦面は、摩擦ライニングパッドによって画定されるため、内径だけではなく外径もまた公差に関係してサイズ偏差を有してもよい。本発明の主要な一態様によれば、摩擦ライニングパッドによって画定されたパッド溝を有する各摩擦ライニングパッドの、型押しされた溝の2つの交点は、両方とも必ず摩擦面の内部に、したがって、摩擦面の内径と外径との間に半径方向に配置されている。
【0011】
本溝パターンの好ましい実施例によれば、パッド角部のパッド内角は、40~145度の角度を有することを特徴とする。各パッド角部には、パッド内角が含まれている。摩擦ライニングパッドの菱形様形状に基づいて、各摩擦ライニングパッドは、90度よりも大きい、対向する2つの内角を含み、90度よりも小さい、対向する2つの内角を含む。指定されたサイズ範囲は、これに関連している。内角のうちの2つは、好適には、40~50度である。他の2つの内角は、好適には、125~145度である。
【0012】
本溝パターンの好ましいさらなる実施例では、すべてのパッド角部が周囲輪郭に沿って丸み付けされていることを特徴とする。これは、摩擦ライニングパッドの周囲の流れを顧慮して、有利であることが明らかにされた。
【0013】
本溝パターンの好ましいさらなる実施例では、パッド角部の曲率半径が1ミリメートル以上であることを特徴とする。これは、摩擦ライニングパッドの周囲の流れを顧慮して、十分であることが明らかにされた。
【0014】
本溝パターンの好ましいさらなる実施例では、摩擦ライニングパッドが、各摩擦ライニングパッドに関して、幅の高さに対する比率が2未満である幅および高さを有することを特徴とする。摩擦ライニングパッドの幅の高さに対する比は、好適には1.5~1.7の間である。この幅の高さに対する比は、有利には、摩擦ディスクをねじることができる両方の方向に適用される。
【0015】
本溝パターンの好ましいさらなる実施例では、隣接する2つの摩擦ライニングパッド間に、溝幅を有するそれぞれ1つのパッド溝が配置されており、その溝幅が、摩擦ライニングパッドの型押しされた溝の溝幅より小さいことを特徴とする。パッド溝の幅は、菱形様の摩擦ライニングパッドの間隔によって、相対的に相互画定される。パッド溝の小さい方の溝幅は、パッド溝が、好適には、型押しされた溝より大きい溝深さを有するので、特に有利である。
【0016】
本溝パターンの好ましいさらなる実施例では、パッド溝と型押しされた溝との間の分岐角が90~100度であることを特徴とする。パッド溝と型押しされた溝との間の特に好ましい分岐角は、90.4度である。提示された角度範囲によって、型押しされた溝が実質的にパッド溝と交差して延びることがもたらされる。これは、要求された溝パターンでの油流についての所望の影響を顧慮して、極めて効果的であると明らかにされた。
【0017】
本溝パターンの好ましいさらなる実施例では、型押しされた溝の型押し深さが摩擦ライニングパッドの厚さの最大50パーセントに相当することを特徴とする。これは、摩擦ライニングパッドの製造および取り付けを顧慮して、有利であることが明らかにされた。
【0018】
本溝パターンの好ましいさらなる実施例では、すべての摩擦ライニングパッドが同一の形状およびサイズを有することを特徴とする。これもまた、摩擦ライニングパッドの製造および取り付けを顧慮して、有利であることが明らかにされた。同一の形状およびサイズという用語は、製造公差を含む。
【0019】
本発明は、さらに、上述の溝パターン用の摩擦ライニングパッドに関する。摩擦ライニングパッドは、個別に取り扱うことができる。
【0020】
本発明のさらなる利点および有利な実施形態は、以下の図面とその説明の対象である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】空気導入とドラッグトルクとの関連を示す図である。
図2】課題および改善を示す図である。
図3】搬送作用およびロック作用を示す図である。
図4】冷却能力を示す図である。
図5】本発明による溝デザインを示す図である。
図6】本発明による溝デザインの寸法を示す図である。
図7】本発明による溝デザインの寸法を示す図である。
図8】本発明による溝デザインの寸法を示す図である。
図9】本発明による溝デザインのパッドを示す図である。
図10】型押しされた溝とパッド溝との間の交点が摩擦面の内部に常時配置されていることが具体的に示されている、図3Aと類似の図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図6の角度(1)は、40~145度である(詳細は、図9を参照)。
・パッド外縁は、周囲に沿って丸み付けされており、好ましくは、1mm以上である(図7(2)を参照)。
・中央の型押しを顧慮した複列式のデザインは、内側列および外側列用の三角形形状のほぼ同一のパッド表面、型押しを顧慮しない土台形状をもたらす。パッドは、菱形として形成されている
・パッドの幅(3)の高さ(4)に対する比は、2未満(好適には、1.5~1.7)である(図7を参照)
・型押し(5)の幅は、溝(6)の幅より広い(図8を参照)
・型押し角度(7)に対する溝角度の比は、90~100度、好適には、90.4度である(図8を参照)
【0023】
-最適化されたパッド形状による製造品質の最適化。
-摩擦装置が開いた状態での、例えば、溝型押しによる、曳糸性および端部品質の向上とそれによるドラッグトルクの低減。
-パッド端部およびパッド角部の、耐用期間にわたる堅牢な摩耗特性。端部形状(わずかな丸み(1))を維持することによって、強固で、一定した流体力学的特性(くさび作用)、ひいては安定した摩擦特性がもたらされる。制御の適用コストが削減される。
-分岐角(7)が90~100°、好適には、90.4°である、本発明の好ましいさらなる実施形態による、油膜の迅速な除去。
-溝の角度位置によって、摩擦ディスクに対向するスチールディスクの相対的回転方向に応じた油の搬送作用(図3A)またはロック作用(図3B)を実現することができる(指向性)。摩擦ディスクとスチールディスクとの間の相対的回転方向に応じて、冷却能力(図4を参照)を、用途に合わせて変化させることができる。パッド型押し部(図5の「型押しされた溝」)によって、この流入を任意に形成し(図8を参照:型押し深さ、幅(5)、角度(7))、それぞれの用途に対して最適化することができる。
【0024】
図1では、3つのカルテシアン座標グラフが上下に重ねて図示されている。x軸20上には、摩擦部15を有する湿式多板クラッチ1が動作している時の、それぞれ1つの回転数が適切な単位で描かれている。y軸21上には、体積流量が適切な単位で描かれている。y軸22上には、隙間体積効率が適切な単位で描かれている。y軸23上には、ドラッグトルクが適切な単位で描かれている。
【0025】
図1では、搬送された体積流量24が供給された体積流量25を超過する場合に、搬送された体積流量24によってどのように空気導入26が行われるかが具体的に示されている。この限度を超えると、隙間体積効率26が低下し、潤滑隙間は、空気を含む。この限度を超えると、供給された体積流量25は、空気を含む。図2の下側では、最大ドラッグトルク27の場合に空気導入26が発生することが示されている。
【0026】
図2では、応力が印加された摩擦部15によって、ドラッグトルク曲線30において、空気導入28の低回転数への変位がいかに達成されるかが示されている。図3で図示された溝パターンによって、冷却媒体および/または潤滑媒体の搬送作用を改善することができる。
【0027】
図3は、図3Aおよび図3Bを含む。図3Aおよび図3Bでは、溝デザインとも称される、本発明による溝パターン10が図示されている。溝パターン10は、キャリアディスク18上に配置されている摩擦ライニングパッド11~13;14~16を含む。摩擦ライニングパッド11~13;14~16を有するキャリアディスク18は、摩擦ディスク19と称される。
【0028】
摩擦ライニングパッド11~13;14~16はすべて、丸み付けされた角部を有する菱形様形状を有する。摩擦ライニングパッド11~13;14~16は、隣接する2つの摩擦ライニングパッド12、13間;14、15間でそれぞれ1つのパッド溝8が生じるように、円周方向に相互離間されている。パッド溝8は、キャリアディスク18の深さに制限されている。パッド溝8は、半径方向に対して斜めに延在する。
【0029】
さらに、摩擦ライニングパッド11~13;14~16はそれぞれ、1つの型押しされた溝9を有する。型押しされた溝9は、パッド溝8と交差して延在する。さらに、パッド溝8は、型押しされた溝9より大きい溝深さを有する。型押しされた溝9の溝深さは、摩擦ライニングパッド11~13;14~16の厚さの最大50パーセントである。パッド溝8の溝深さは、摩擦ライニングパッド11~13;14~16の厚さに相当する。
【0030】
多板クラッチでは、スチールディスク付きの複数の摩擦ディスク19がデイスクパッケージ内に配置されている。図3Aおよび図3Bでは、矢印60;70によって、摩擦ディスク19の動作中の回転方向が示されている。その場合、割り当てられたスチールディスクの方が、それぞれ割り当てられた摩擦ディスク19より高速で回転するという条件が適用される。矢印61~64;71~74によって、動作中に作用する力が示されており、その力は、摩擦ディスク19とスチールディスクとの間で半径方向内側から半径方向外側への油流からもたらされる。
【0031】
矢印61;71は、遠心力を具体的に示す。矢印62;72は、パッド溝8による流れを具体的に示し、そのパッド溝8は、パッド内角および回転方向60;70に応じて、摩擦ライニングパッド11~13;14~16の菱形様形状によって、矢印62;72で示されている力をもたらす。
【0032】
図3Aおよび図3Bでは、矢印63;73によって、スチールディスクと摩擦ディスク19との間の相対運動によってもたらされる力が示されている。矢印64;74によって、力61~63;71~73から生じる力が示されている。
【0033】
図3Aでは、割り当てられたスチールディスクより摩擦ディスク19の方が回転方向60に低速で回転する場合に、摩擦ライニングパッド11~13によってもたらされるロック作用が、具体的に示されている。図3Bでは、割り当てられたスチールディスクより摩擦ディスク19の方が回転方向70に低速で回転する場合に、摩擦ライニングパッド14~16によってもたらされるポンプ作用が、具体的に示されている。
【0034】
図4では、y軸40と棒41~44からなる棒グラフが示されている。y軸40上には、冷却能力がキロワット単位で描かれている。棒41~44は、図3Aおよび図3Bの溝パターン10で実現することができる、異なる大きさの体積流量に対するの冷却能力である。
【0035】
棒41および42は、油の相対的に低い体積流量を具体的に示す。棒43、44は、むしろ高い体積流量を具体的に示す。その場合、図3Aで棒41、43は、ポンプ作用に割り当てられている。棒42、44は、図3Bでロック作用に割り当てられている。
【0036】
ポンプ作用によって、体積流量が低い場合だけではなく高い場合にも、冷却能力の増大がもたらさされる。ただし、冷却能力は、図4で示されるように、体積流量が高い場合は、体積流量が低い場合ほど大きく変化しない。ロック作用は、用途に応じて、型押し溝の仕様によって、または型押しされた溝の断面積、すなわち、幅と深さとによって、緩和または変化させることができる。断面積がより大きくなるほど、型押しされた溝を経由する油の流出量は多くなる。
【0037】
図5では、摩擦ライニングパッド11~13がそのパッド角部31~34で丸み付けされていることが示されている。図7では、曲率半径が2で示され、実質的にすべてのパッド角部31~34で等しい。曲率半径2は、有利には、1ミリメートル以上である。
【0038】
図6では、摩擦ライニング12のパッド内角1が両矢印で示されている。パッド内角1は、40~145度である。摩擦ライニングパッド12内で型押しされた溝9が中央に配置されていることによって、半径方向内側および半径方向外側で同一のパッド表面を有する複列式の溝デザインがもたらされる。その同一のパッド表面は、摩擦ライニングパッド12の菱形様形状に基づいて、それぞれ1つの三角形形状を有する。
【0039】
図7では、両矢印3によって、摩擦ライニングパッド12の幅が示されている。両矢印4によって、摩擦ライニングパッド12の高さが示されている。幅3の高さ4に対する比は、好適には、すべての摩擦ライニングパッドに関して、2未満である。幅3と高さ4の比は、有利には、溝パターン10のすべての摩擦ライニングパッド11~13;14~16に関して、好適には、1.5~1.7である。
【0040】
図6および図7では、寸法記入のために、摩擦ライニングパッド12に補助線が引かれている。補助線と摩擦ライニングパッド12との間には、部分的に隙間がある。この隙間は、摩擦ライニングパッド12の製造条件により存在してもよい公差を具体的に示すものである。
【0041】
図8では、両矢印5によって、型押しされた溝9の溝幅が示されている。両矢印6によって、摩擦ライニングパッド12と13との間のパッド溝8の溝幅が示されている。両矢印7によって、パッド溝8と型押しされた溝9との間の分岐角が示されている。
【0042】
完全な溝パターン10内のパッド溝8と型押しされた溝9との間の分岐角7は、有利には、90~100度、好適には、90.4度である。
【0043】
図9では、両矢印51~54によって、摩擦ライニングパッド12のパッド内角が示されている。パッド内角51~54の角度は、記載順に132;44.5;142;41.6である。
【0044】
図10では、図3Aに記載の摩擦ディスク19が補助線付きで示され、摩擦ライニングパッド11~13が摩擦面80を形成することが具体的に示されている。摩擦面80は、内径83によって半径方向内側が画定され、外径84によって半径方向外側が画定される。ここでは、製造条件により、公差が発生してもよい。
【0045】
しかし、実質的には、摩擦ライニングパッド12の型押しされた溝9と、摩擦ライニングパッド12によって画定される2つのパッド溝8および78との交点81、82は、摩擦面80の内部に配置されている。
【符号の説明】
【0046】
1 パッド内角
2 曲率半径
3 幅
4 高さ
5 溝幅
6 溝幅
7 分岐角
8 パッド溝
9 型押しされた溝
10 溝パターン
11 摩擦ライニングパッド
12 摩擦ライニングパッド
13 摩擦ライニングパッド
14 摩擦ライニングパッド
15 摩擦ライニングパッド
16 摩擦ライニングパッド
18 キャリアディスク
19 摩擦ディスク
20 x軸
21 y軸
22 y軸
23 y軸
24 搬送された体積流量
25 供給された体積流量
26 空気導入
27 ドラッグトルク
28 空気導入
30 ドラッグトルク曲線
31 パッド角部
32 パッド角部
33 パッド角部
34 パッド角部
40 y軸
41 棒
42 棒
43 棒
44 棒
51 パッド内角
52 パッド内角
53 パッド内角
54 パッド内角
60 回転方向
61 矢印
62 矢印
63 矢印
64 矢印
70 回転方向
71 矢印
72 矢印
73 矢印
74 矢印
78 パッド溝
80 摩擦面
81 第1の交点
82 第2の交点
83 内径
84 外径
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】