(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-24
(54)【発明の名称】ユニボディ内骨格下腿義足とデジタル製造ワークフロー
(51)【国際特許分類】
A61F 2/66 20060101AFI20240117BHJP
【FI】
A61F2/66
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542746
(86)(22)【出願日】2022-01-11
(85)【翻訳文提出日】2023-09-12
(86)【国際出願番号】 US2022011939
(87)【国際公開番号】W WO2022169557
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペルツ,ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】デ・ビボ,ルカ
(72)【発明者】
【氏名】クースター,ファルコ
(72)【発明者】
【氏名】バラック,ハーブ
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA02
4C097BB02
4C097BB09
4C097CC01
4C097CC08
4C097DD02
4C097EE11
4C097TA07
4C097TA08
4C097TB17
(57)【要約】
ユニボディ下腿義足は、特定の患者の断端に合わせてパーソナライズされたソケットを含む。パイロンがソケットから延びており、パイロンは、間に開放空間を有する相互接続された細長いサポートの単一ポリマー構造である。この義足は、足-足首複合体も含み、足-足首複合体はパイロンから延びている単一ポリマーであり、足と足首の単一構造は、スムーズな対称歩行性能とエネルギーの捕捉とリターンのために、背屈、底屈、内がえし及び外がえしの動作を可能にする多軸の動的屈曲を提供するように形作られている。ソケット、パイロン、及び足-足首複合体はユニボディの一部である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニボディ下腿義足であって、
断端に取り付けるように構成されたソケットと、
前記ソケットから延びているパイロンであって、間に開放空間を有する相互接続された細長いサポートの単一ポリマー構造である前記パイロンと、
前記パイロンから延びている単一ポリマーである足-足首複合体であって、前記足と前記足首の単一構造は多軸の動的屈曲を提供するように形作られている、前記足-足首複合体と、
を備える、前記ユニボディ下腿義足。
【請求項2】
前記ソケット、前記パイロン、及び前記足-足首複合体が単一の一体部品である、請求項1に記載のユニボディ下腿義足。
【請求項3】
前記単一の一体部品が、単一のポリマーを含む、請求項1に記載のユニボディ下腿義足。
【請求項4】
前記単一の一体部品が、異なる剛性を有する複数の材料を含む、請求項1に記載のユニボディ下腿義足。
【請求項5】
前記パイロンが、前記断端の延長された外側境界内に収まるような形状及び寸法である、いずれかの先行請求項に記載のユニボディ下腿義足。
【請求項6】
前記相互接続された細長いサポートが、中央の開放空洞を画定し、前記開放空洞の周囲で湾曲している、いずれかの先行請求項に記載のユニボディ下腿義足。
【請求項7】
前記相互接続された細長いサポート及び前記相互接続された細長いサポートの間の開放空間が、患者の対側下腿部分の鏡映された境界をモデリングする、請求項6に記載のユニボディ下腿義足。
【請求項8】
前記中央の開放空洞が、前記ソケットから前記足-足首複合体に向かって減少する直径を有する、請求項6に記載のユニボディ下腿義足。
【請求項9】
前記相互接続された細長いサポート及び前記開放空間が、患者の対側下腿部分の内骨格形状の補完モデルを画定する、いずれかの先行請求項に記載のユニボディ下腿義足。
【請求項10】
前記パイロンが熱可塑性プラスチックで形成されている、いずれかの先行請求項に記載のユニボディ下腿義足。
【請求項11】
前記足-足首複合体が分割足首構造を含む、いずれかの先行請求項に記載のユニボディ下腿義足。
【請求項12】
前記分割足首構造が、S字形後部とS字形前部とを備え、前記S字形後部と前記S字形前部とは、前記S字形前部の終端部分からソール部分に延びている空隙によって互いに分離されている、請求項11に記載のユニボディ下腿義足。
【請求項13】
前記S字形後部が、中実であり、前記S字形前部よりも厚い、請求項12に記載のユニボディ下腿義足。
【請求項14】
前記S字形後部の上部が、前記パイロンの最下部と一体である、請求項13に記載のユニボディ下腿義足。
【請求項15】
前記S字形前部が、1つまたは複数の貫通開口を備える、請求項13に記載のユニボディ下腿義足。
【請求項16】
前記ソール部分が、分割されたつま先及び分割されたかかとを備える、請求項11~14のいずれかに記載のユニボディ下腿義足。
【請求項17】
前記足-足首複合体が、より可撓性の高い材料によって囲まれた、より硬い材料の中央ストリップを備える、いずれかの先行請求項に記載のユニボディ下腿義足。
【請求項18】
前記下腿義足全体の外面が可撓性材料であり、より硬い材料のコアを含む、いずれかの先行請求項に記載のユニボディ下腿義足。
【請求項19】
ユニボディ下腿義足を製造するための患者固有のワークフロー方法であって、
撮像及び/またはスキャンによって患者データを取得することと、
前記患者データから3Dモデルを構築することと、
前記3Dモデルをユニボディ下腿義足の3Dプリント可能な設計に変換することと、
前記ユニボディ下腿義足を3Dプリントすることと
を含む、前記方法。
【請求項20】
前記患者データを取得することが、対側肢及び断端を撮像することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記撮像が、スマートフォンを用いて行われる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記構築することが、ストラクチャーフロムモーション法、または構造化光法によって行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記3Dプリントが、単一のソケット、パイロン、ならびに足部及び足首をプリントし、前記パイロンは、間に開放空間を有する相互接続された細長いサポートの開放構造を有し、前記足部は、分割された足首、分割されたつま先、及び分割されたかかとを有する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記3Dプリントが、前記単一ソケット、前記パイロン、ならびに前記足及び足首に異なる剛性の領域を形成するマルチマテリアルプリントプロセスである、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する優先権主張及び参照
本出願は、2021年1月14日に出願された先行の米国仮出願番号第63/137,268号に基づく、35 U.S.C.セクション119及びすべての適用法令及び条約に基づく優先権を主張する。
政府権益に関する記述
本発明は、全米科学財団によって与えられた政府支援助成金番号CNS-1338192、米国標準技術局によって与えられた助成金番号70NANB17H211、及び米国陸軍研究局によって与えられた助成金番号W912HZ172-0024を用いて行われた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0002】
本発明の分野は、下腿義足である。
【背景技術】
【0003】
2017年、世界保健機関(WHO)は、世界中で義足やその他の補助器具を必要とする人が3,500万人から4,000万人いると推定し、この数は2050年までに倍増すると予想されている。十分なサービスが受けられていない国及び先進国の両方で、義足やその他の補助器具を利用できるのは、必要とする人々の5~15%だけである。その結果、3,400~3,800万人という膨大な人々が、制限された、しばしば苦痛を伴う生活を送っており、そのうち210万人は米国に居住している。毎年185,000人を超えるアメリカ人が手足を失う原因となっている病状には、血管疾患(54%)、外傷(44%)、及び癌(2%)がある。糖尿病患者は特に下肢切断を必要とする血管障害を起こしやすいが、この状況は新型コロナウイルス感染症のパンデミックによってさらに悪化している。特に糖尿病の発生率の増加を伴う高齢化で、高齢者は特にリスクにさらされている。切断に起因する可動性や健康関連の問題は、患者の生活の質に悪影響を及ぼし、特に小児や青少年においては、心理的及び心理社会的問題を引き起こす可能性もある。回復とリハビリテーションは、義足のコストと製造時間によって悪影響を受ける。この状況は、切断者が医療施設や経験豊富な施術者へのアクセスが限られている発展途上国では特に深刻である。
【0004】
従来の下腿義足は、複数の高価なコンポーネントから形成されている。患者固有の設計は、通常、手作業による成形、彫刻、複合材料のレイアップによってソケットを製作し、その後、高価なサードパーティ製コンポーネントから適切な義足を組み立てることによって実現される。
【0005】
従来の下腿義足の3つの基本コンポーネントは、ソケット、パイロン、及び足首-足複合体を含む。ソケットは、コルセット、ストラップ、ロックピン、または吸引などによって義足を着用者に取り付ける。ソケットは通常、炭素繊維強化ポリマー(CFRP)などの複合材料から作られる。パイロンは通常CFRPまたはアルミニウムで作られ、高さを調整し、ソケットと足部の間で荷重を伝達するために使用される。ソケット、パイロン、及び足首-足複合体の間の接続は、ピラミッドコネクタを用いて行うことができ、これにより適切な転子(股関節)-膝-足首(TKA)ラインの調整が可能になる。調整可能な義足は内骨格システムと呼ばれ、可撓性の向上、軽量化、歩行性能の向上、快適性の向上など、様々な理由で非常に人気がある。コンポーネントが互いにしっかりと固定されており、製造後に位置合わせできない場合、この義足は外骨格システムである。足首-足複合体は地面と接触する役割を果たし、適切な歩行可動性を提供するために能動的または受動的であってよい。より単純な受動的システムは硬く、エネルギーの捕捉と解放ができないため、歩行時の代謝コストが高く、非対称な歩行になる。高性能な受動的システムは、特殊な素材と設計を使用して、歩行サイクル中にエネルギーを蓄積及び解放することで、歩行の代謝コストを削減し、快適性と機能性を向上させる。能動的システムは、動力モータ、サーボ、センサを使用して歩行サイクルを制御し、性能を大幅に向上させることができる。しかし、能動的システムは法外に高価で信頼性が低く、電源が必要であり、世界の切断患者の大多数にとっては利用が非常に困難である。
【0006】
従来の義足のフィッティングプロセスは複雑で費用がかかり、複数のステップが必要である。義肢装具士は、伝統的な成型や彫刻のプロセスを使用して効果的な義足のケアを提供できるようになるまで、数十年とは言わないまでも、長年の経験を必要とする。切断者が義足を着用しないことを選択する主な理由の1つは、ソケットが不快であることである。ソケットは、それを形成する義足と同じ程度までしか良くならない。さらに、義足の利用可能性危機を解決するには、世界中でさらに75,000人の義肢装具士が必要であると推定され、新しい義肢装具士の訓練には、費用と時間がかかる。
【0007】
足首-足複合体の設計は、材料科学と製造技術の進歩の恩恵を受けている。一般に、足-足首複合体が能動的であっても受動的であっても、複合体の上部にはパイロンとの接続を提供する水平エッジが含まれる。ソリッドアンクルクッションヒール(SACH)モデルは、弾力性のある足のインセットを備えたシンプルな受動的義足である。SACHの足部の静的設計により、歩行特性が非対称になり、代謝コストが高くなり、エネルギーリターンの恩恵が低くなる。
【0008】
SACHモデルに似た基本的な義足モデルが一般的に使用されているが、新しい素材や設計も登場している。新しいモデルには、ランニングブレード、ナイアガラフット、シアトルフットなどが含まれる。ランニングブレードはカーボンファイバー製のブレードタイプの足部で、ランニング用に設計されているが、歩行時には問題が生じる。斬新な固定足部であるナイアガラフットは、Hytelからできている。Hytelは、優れた耐久性とエネルギーリターンを提供する熱可塑性ポリエステルエラストマーである。ナイアガラフットは3百万回を超える負荷サイクルでテストされており、カーボンファイバー製足部よりも耐久性が向上していることが示されている。「ナイアガラフット」[オンライン] http://protosthetics.com/niagara-foot。シアトルフットには、カーボンファイバー、ナイロン、及び金属などの様々な材料で成形及び製造されたコンポーネントが組み込まれている。シアトルフットはパイロンに直接ボルトで固定することも、足首の関節をシミュレートする特別なアダプタを使用して取り付けることもできる。義足:義足製品:グローバル。[オンライン]https://trulife.com/product-category/prosthetics/feet/。
【0009】
最近の取り組みは、デジタル製造と積層造形に焦点が当てられている。Summitの米国特許第8,366,789号には、単一の材料から同時に一体的にプリントできる外骨格義足を作成する方法が記載されている。この特許に開示された設計は新規であるが、多くの制限要因により、外骨格システムは内骨格システムよりも支持を失っている。そのような重要な要素の1つは、製造後に設計を調整できないことである。これはすべての切断者に共通の問題であり、最初の数か月から1年の間に切断肢の形状が大きく変化する新しい切断者にとってはさらに重要である。これらの新しい切断者に外骨格義足が使用される場合、患者は痛みを伴う機能不全のソケットに耐えるか、再測定して新しい義足を構築するために義肢装具士のところに戻る必要がある。開示された1つの設計は、対側肢の外形に似た前部部材と後部部材を有する下肢の長さにわたる細長い部材を含む。重量は前部部材と後部部材に分散される。これらの部材は基本的な固定足部と結合され、単一のフォトポリマー材料でプリントされる。単一の材料を使用すると、機能的には重大な欠点がある。これは、硬いことでメリットが得られる領域が、可撓性で柔軟であるべき領域と妥協することが必要なためである。さらに、Summitが好ましいプリンタタイプとして指定している液槽光重合法は、微細な特徴を備えた詳細な部品を製造できるが、フォトポリマーは一般にサーモポリマーに比べて強度、可撓性、耐久性が低くなる。他の開示された設計には、細長い前部部材と足との間のボール及びソケット接続が含まれる。他の設計には、膝領域の複数の機械的リンケージと足首領域のボール及びソケットとが含まれる。機械的リンケージと、ボール及びソケットの接続は、動作を何度も繰り返すと磨耗して緩む可能性があり、これは、ユーザの歩行に悪影響を及ぼす。単純な足部と、膝から足部まで伸びる固体の細長いサポートは、加えられる力の要件を満たすために比較的厚く、重くなる。フォトポリマー材料を使用すると、荷重が材料の能力を超えた場合に致命的な故障が発生し、患者が重傷を負う可能性がある。
【0010】
Laymanらの米国特許第10,010,433号及びLaymanらの米国特許第9,480,581号には、3Dプリントされたソケットを作成するための撮像及びデジタルプロセスが記載されている。最初にチェックソケットが製造され、従来のアライメントコネクタ、パイロン、及び足/足首コンポーネントと適合させる。アライメントとソケットのフィット感調整は、経験豊富な義肢装具士と患者の訪問を必要とする手動の方法で行われる。次に、スキャナを使用して、位置合わせされた義足のデジタルコピーが作成される。デジタルコピーは、取り付けポイントを特定の患者に合わせて位置合わせし、患者に適合するソケットを設計するために使用される。プリントされたソケットにより適合性を向上させることができるが、時間のかかる手動のフィッティング及びアライメントプロセスにより、この方法の有効性が低下する。さらに、従来のハードウェア、コネクタ、パイロン、及び足首-足複合体を使用すると、コストと重量が増加する一方、デジタルプロセスによってもたらされる時間の節約やカスタマイズ性が減少する。
【0011】
Valentiの「Experience with Endoflex:A Monolithic Thermoplasttic Prosthesis for Below-Knee Amputees」、Journal of Prosthetics and Orthotics、第3巻、第1号、43~50ページでは、義足に適合させることができるモノリシックソケットと棒状の固体パイロンについて記載されている。
【0012】
義足の作成とフィッティングは依然として高価である。ほとんどの患者には、別個の高価なコンポーネントから形成された義足が装着されている。コンポーネントが別々になると、重量が増し、複雑になり、費用も追加になる。
【0013】
最近、日本企業のインスタリムは、3D-CAD、3Dプリント、機械学習(AI)テクノロジーを使用して、3Dプリントされた下腿義足を作成した。プリントされた義足は、プリントされたソケットパーツであり、次に標準的な固体パイロン及び足部と結合される。プリントされたソケットは、従来の装具と比較してコストとフィッティングの面で利点がある。パイロンと足部のフィッティングには依然として技術が必要であり、高価になり得る。
【発明の概要】
【0014】
好ましい実施形態は、断端に取り付けるように構成されたソケットを含むユニボディ下腿義足を提供する。パイロンがソケットから延びており、パイロンは、間に開放空間を有する相互接続された細長いサポートの単一ポリマー構造である。この義足はまた、足-足首複合体を含み、足-足首複合体はパイロンから延びる単一ポリマーであり、足と足首の単一構造は多軸の動的屈曲を提供するように形作られている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】好ましい実施形態ユニボディ下腿義足の斜視図である。
【
図1B】撮像と3Dプリントによって、
図1Aのカスタムフィットユニボディ下腿義足を患者に提供するための好ましいワークフローのフローチャートである。
【
図2】患者適合ソケット部分の生成プロセスを示す。
【
図3】A~Cはそれぞれ、健康な対側肢の脛骨領域の3Dスキャン、パイロン領域のトポロジ最適化、及び最適化されたパイロンの滑らかなバージョンを示す。
【
図4】A~Cは、前足部、かかと部、及びU軸のそれぞれの荷重状態を示す。
【
図5】A及びBは、患者の健康な対側肢に基づいたユニボディ下腿義足の設計プロセスを示す。
【
図6】本発明の好ましい複数材料の足/足首複合体を示す。
【
図7】修正されたソケットを備えた本発明の好ましい多材料ユニボディ下腿義足を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好ましい実施形態は、ユニボディ下腿義足である。好ましい義足は、純粋に受動的な構造を使用し、滑り接続を使用せずに、滑らかで対称的な歩行とエネルギーの再捕捉を提供する内骨格ユニボディ設計、バイオインスパイアードの態様、及び足部の設計を提供する。別の好ましい実施形態は、患者固有の設計ワークフローである。このワークフローは、従来の成形、彫刻、組み立てプロセスと比較して、低コスト、高精度、優れた快適性、及びより堅牢な義足の提供を可能にする一連のデジタルスキャン、設計、及び製造ステップを含む。好ましい実施形態は、断端のデジタルモデルから製造されたカスタムフィットソケットを備えた3Dプリントされた義足である。
【0017】
次に、本発明の好ましい実施形態について、図面及び実験に関して説明する。本発明のより広範な態様は、当技術分野における一般知識及び以下の実験の説明を考慮して当業者には理解されるであろう。
【0018】
図1Aは、好ましい実施形態のユニボディ下腿義足100を示す。義足100は、断端に取り付けられるように構成されたソケット102を含む。パイロン104がソケット102から延びている。パイロン104は、バイオインスパイアードの、相互接続された細長いサポート106からなる単一トラス構造で、サポート間に開放空間108を有する。パイロンは、熱可塑性材料で作られることが好ましい。足-足首複合体110は、パイロン104から延びる単一ポリマーである。足-足首の単一構造110は、滑らかな対称歩行性能のための背屈、底屈、内がえし及び外がえしの動きを可能にする多軸の動的屈曲を提供するように形作られている。
【0019】
ソケット102、パイロン104、及び足-足首110の構造は単一の一体部品であることが好ましい。異なる領域で異なる特性を持つ1つまたは複数の材料を使用して、異なる領域で調整された剛性を備えた単一の一体部品をプリントすることができる。3Dスキャンとトポロジ最適化との組み合わせにより、パイロン104は、断端の延長された外部境界内に収まるように形状及び寸法を定めることができ、所与の目標Kレベルの使用を達成するためにパイロン104内のポリマー材料の総量を最小限に抑えて非常に軽量にすることができる。さらに、相互接続されたサポートとノードとによって形成され、足首-足複合体と統合されたトラス構造は、脛-足首-足全体を通じて達成されるエネルギーの捕捉と解放により、歩行サイクル中に動的な多軸応答を提供する。パイロン104の最適化プロセスには、
図3A~3Cに関して以下で説明する例が含まれる。
【0020】
義足全体は非常に軽量であっても、Kレベル2からKレベル4に対応している。
図1に示すように、相互接続された細長いサポート106は、接続ノード部分(「ノード」)112を有し、中央の開放空洞及び開放空洞の周りの湾曲を画定する。すなわち、相互接続された細長いサポート106は、ノード112に向かって緩やかに湾曲または弧を描き、パイロン104の中心長手軸に沿って、相互接続された細長いサポート106間に空洞が存在する。中央の開放空洞は、人間の下腿部分のサイズの減少に似通ったように、ソケット104から足-足首複合体110まで減少する直径を有する。相互接続された細長いサポート及びノード112の外側の仮想境界は、患者の対側下腿部分の鏡映形状に従う。以下で説明する撮像及び3Dプリントの作成方法を使用すると、鏡映モデルは、患者の対側下腿部分からの3Dスキャンデータが入手可能な場合、そのデータに基づいている。入手できない場合、別の実施形態は、データベースからの下腿部分の開始幾何学的形状を使用するパイロン構造である。データベースモデルは、特に体重、活動レベル、見た目の美しさに基づいて選択することができ、特定の患者に適切にフィットするようにスケーリングされる。一般に、相互接続された細長いサポート106及び開放空間108は、患者の健全な対側脚の鏡映モデルに従う外側境界を有する、バイオインスパイアードのトラス構造を画定することができる。
【0021】
パイロン104及び義足100全体にとって好ましい材料は、3Dプリント可能な熱可塑性プラスチックである。パイロン104に関しては、熱可塑性材料により、必要に応じて、患者のフィッティング中に加熱ゾーン128のアライメント調整が可能になる。さらに、圧力を増減する必要がある特定の領域を熱成形することで、ソケットのフィット感を修正することができる。しかし、好ましい実施形態は、設計段階で適切に位置合わせされ、製造後にいかなる修正も必要としない義足であり、本方法は、いかなる製造後の方法も用いずに使用することができる患者固有の義足を得る可能性を高める。脚は患者の欠損した脚を非常に厳密にモデル化できるが、調整が必要無いことはまれなケースである。有利なことに、内骨格設計では、パイロンを柔軟な温度に加熱することにより、患者の最終フィッティング中に調整を行うことができる。
【0022】
足-足首複合体110は、S字形後部114とS字形前部116とを含み、それらは、S字形前部116の終端部120からソール部分122まで延びる間隙118によって互いに分離される。これにより、エネルギーの再捕捉による動的な応答を与える分割された足首部分が画定される。間隙は、上部では小さく、下部118Lでは涙滴の輪郭形状に広がることが好ましい。後部S字形部分114の上部124は、パイロン104の最下部と一体であってよく、本質的にパイロン104の基部を形成し、パイロン104及び足-足首複合体110はそれぞれ、またソケット102と単一の一体部品構造を形成する。パイロン104及び足-足首複合体110を通るより大きな力に対処するために、S字形後部114は中実であってよく、S字形前部116よりも実質的に厚くすることができ、S字形前部116自体は1つまたは複数の貫通開口部126を含み得る。ソール部分122は、分割されたつま先130及び分割されたかかと132を含み得る。分割されたつま先とかかとは、大きな内がえしと外がえしが有益な平坦でない地形に役立つ。全体的に、単一の足部分とパイロン部分には、ボールソケット接続やマルチリンクピン接続などの機械的なリンケージ、ジョイント、またはスライド機構が含まれていないため、長期にわたる耐久性が得られる。
【0023】
この義足は、政府運営の医療制度や保険会社のすべての要件を満たすことができる。一例として、米国のメディケアプログラムでは、次の例のような「Lコード」が使用されている。
【0024】
L5301-膝下、モールドソケット、脛、SACH(サッチ)足部、内骨格システム(ベースコード)。本義足100は、これと、L5637を満たす。すなわち、下肢、膝下に追加で、トータルコンタクトソケットが断端に対して全接触面を有する。
【0025】
L5645-下肢、膝下に追加で、可撓性のインナーソケット、可撓性と快適性を高める外部フレームのインナーソケットポケット、突き出た骨の突起はソケット内の調整された柔らかい領域に受け入れられる。
【0026】
L5647-下肢に追加で、膝下サクションソケット。ソケットは、吸引嵌合を作成するためのサスペンションスリーブを備えた一方向排出バルブを備えてよい。
【0027】
L5671-下肢に追加で、膝下/膝上のサスペンションロック機構(シャトル、ランヤード、または同等のもの)は、ソケットインサートピンロックは含まない。一般に、ソケットはサスペンションを含む従来の任意の取り付け方式で機能するように製造することができる。
【0028】
L5940-追加、内骨格システム、膝下、超軽量素材(チタン、カーボンファイバーまたは同等のもの)。本パイロンと足/足首の構造は非常に軽量である。オープン内骨格スタイルのコンポーネントは使用する材料を最小限に抑え、非常に軽量に使用することもできる。さらに、単一の一体部品設計を使用することで、従来のパイロンやコンポーネント間の取り付けに使用されていた金属を排除することができる。
【0029】
L5910-追加、内骨格システム、膝下、アライメント可能なシステム。以下に説明するように、好ましい実施形態の義足は、熱成形アライメントプロセスによって調整することができる。
【0030】
L5981-すべての下肢義足、フレックスウォークシステム、または同等の動的応答統合パイロン足部。本願の好ましい単一義足は、このコードを満たす。
【0031】
患者固有のフィッティング及び製造方法について、好ましい方法が
図1Bに示されている。患者画像取得(150)は、患者のデジタルツインを作成する目的で、写真、スキャンデータ、またはその両方を含み得る。写真はスマートフォンで撮影することもでき、患者固有の義足の製造に成功したことで実験的に実証されている。次に、画像及び/またはスキャンデータから3Dモデルが作成される(152)。好ましいモデリングは、ストラクチャーフロムモーション(SfM)技術または構造化光ソフトウェア(SL)を使用して、写真データから実行される。SfMについては、C.Bregler、A.Hertzmann、及びH.Biermannの「Recovering non-rigid 3d shape from image streams」、コンピュータビジョンとパターン認識に関するIEEE会議議事録を参照のこと。CVPR2000(カタログ番号PR00662)、F.Dellaert、S.Seitz、C.Thorpe、及びS.Thrun、「Structure from motion without correspondence」コンピュータビジョンとパターン認識に関するIEEE会議議事録。CVPR2000(カタログ番号PR00662)。SLについては、J.Geng、「Structured-light 3d surface imaging:a tutorial」、Advances in Optics and Photonics、第3巻、No.2、128ページ、2011年:S.Dunn、R.Keizer、及びJ.Yu、「Measuring the area and volume of the human body with structured light」、IEEE Transactions on Systems,Man,and Cybernetics、第19巻、No.6、1350~1364ページ、1989年。好ましい実施形態では、Apple iPhoneXR TrueDepthカメラなどの顔認識カメラを備えたスマートフォンを使用して、COMBなどのアプリを使用して患者をスキャンする。これにより、患者全体のデジタルツインをSTL形式で生成する、低コストでモバイル性の高いソリューションが可能になる。別の実施形態では、顔認識カメラは、切断された脚及び足、ふくらはぎ部分など、それらの対側肢の関心領域のみをキャプチャするために使用される。別の実施形態では、構造化光スキャナを使用して、ユニボディ義肢を設計するために必要な患者全体または特定の関心領域のいずれかをスキャンする。別の実施形態では、任意のスマートフォンの背面カメラなどの任意のデジタルカメラを使用して一連の写真を撮影し、写真測量技術を使用して再構成し、患者の点群デジタルツインを作成する。
【0032】
プリント用のGコード(プリントモデル)が3Dモデルから生成される(154)。これは、スライスソフトウェアを介して実現される。実験で使用した設定例には、ノズルサイズ1.4mm、層の高さ0.7mm、プリント速度2000mm/分、ノズル温度(摂氏240~280度の間で材料によって異なる)、ベッド温度(摂氏90~140度の間で材料によって異なる)、チャンバ温度(摂氏70~90度の間で材料によって異なる)、充填剤密度100%が含まれた。これらの設定は、使用するソフトウェアに関係なく、スライスソフトウェアで使用される。これらの設定は、製造中のプリンタの挙動を制御する。職人は、プリントされる素材に基づいた調整を認識している。次に、義足は、3Dプリントでプリントされ(156)、遠隔でプリントしてフィッティング担当者/患者に発送するか、フィッティング担当者/患者の近くでプリントするためのプリントデータを送信することができる。これにより、患者が居住している場所で患者を撮影し、その場所で義足を受け取ることができる。試験及び調整(158)には、患者が義足のフィット感及び性能を試験することが含まれる。フィッティング担当者は、熱成形を通じてアライメントとソケットのフィット感を微調整することができる。好ましい実施形態では、ヒートガンを使用して、加熱ゾーン128が柔軟になるまで加熱ゾーン128の温度を上昇させる(材料のガラス転移温度より高く、材料の溶融温度より低い、手持ち式レーザ温度計を使用してチェック)。別の実施形態では、加熱ゾーン128が柔軟になるまで加熱ゾーン128の温度を上昇させるために放射加熱が使用される。トーチ/フレームの使用などの他の方法は、熱分布の制御が困難になる可能性があるが、それでも加熱ゾーン128を加熱する可能な方法である。アライメントは、足首を所定の位置にクランプし、矢状面、前頭面、及び横断面での回転と平行移動を制御できるアライメントジグを使用して制御する必要がある。回転は1度未満に制御し、平行移動の精度は1ミリメートルまでに制御する必要がある。ソケットは局所的に加熱され、患者の切断肢に対する圧力を増減する必要がある特定の領域でのフィット感を調整する。ソケット内に収めるための調整は、端が丸い頑丈な木の棒を使用して、患者の切断肢に対する圧力を増減するように関心領域に押し込んで手動で行われる。注記として、多くのチェックソケットやソケットライナなどが熱可塑性プラスチックであるため、熱成形は従来の人工装具クリニックでは一般的に行われている。しかし、従来の人工装具ソケットは複合材料を使用していることが多く、フィット感を調整することができない。この点で我々は有利である。なぜなら、最初のフィッティング時、または義足の寿命中のフォローアップの予約時、患者が違和感を覚えると、ソケットを簡単に修正できるからである。足部の一般的な設計は標準的なものにすることができる。つまり、S字形の後部と前部を有し、分割された設計は狭く始まり、涙滴型になる。ただし、足部の実際の寸法は、体重、活動レベル、使用状況などに基づいて患者ごとにカスタマイズされる。
【0033】
図1Bの方法は、非常に便利なサービスとビジネスモデルを可能にする。例えば、患者は従来の専門家と物理的に会うことなく、機能的な義足を受け取ることができる。熟練した義肢装具士がいない地域では、専門外の施術者でも熱成形プロセスによってプリントされた肢に微調整を加えることができる。有資格の義肢装具士にフィッティング及び歩行テストを行わせることが常に好ましいが、世界の多くの地域ではこれは不可能であり、本発明の義足はそのような状況で運用可能な代替手段を提供する。
【0034】
本発明の好ましいフィッティング及び製造方法では、患者の撮像を遠隔で行うことができ、データを設計者及び3Dプリント施設に送信することができる。対側肢及び断端の一部の画像データは、
図1Aに従って最適化された患者固有のプリントされた義足を作成するためにソフトウェアで実施される好ましい方法とともに使用される。
図1Bの方法の追加の好ましい特徴は、本発明のプロトタイプ義足の撮像、プリント、フィッティング及びテストを示す以下の実験の説明を参照すれば当業者には理解されるであろう。
【0035】
3Dプリントは一般に積層造形プロセスと考えることができる。他の追加プロセスを使用することもできる。積層プロセスは、熱成形可能な材料を堆積でき、好ましくは、材料押出、粉末床溶融及び材料噴射技術など、単一の堆積に複数の材料を可能にする。材料押出が好ましい方法である。溶融フィラメント製造(FFF)は、好ましい材料押出技術である。
【0036】
義足は様々な材料で作ることができるが、調整には熱可塑性プラスチックが好ましい。3Dプリントに使用される一般的なポリマーは、ABS、PLA、PC、PETG、ナイロン、PEI及びPEEKである。一般に、堆積及び固化できる任意の材料を使用して、本発明の方法によって義足を形成することができる。好ましい材料としては、熱可塑性ペレット、フィラメント、樹脂などが挙げられ、発泡剤、繊維、粒子などの添加剤が含まれていてもよい。関連する処理温度の範囲は摂氏200~500度である。材料は十分な結合強度で前の層に接着する必要があり、熱を加えることで再形成可能でなければならない。選択された材料は、高い伸びと優れた層間結合を示すことが好ましい。高い伸びとは、150%を超える極限伸びを意味する。優れた層間結合とは、層に垂直な方向の引張強度が材料の引張強度の60%以上となる高い層間結合を意味する。
【0037】
3Dプリント156は有利なことに、単一の一体部品装具を製造するためのマルチマテリアルプリントであってよい。複数の素材を使用することで、単一のプリントで局所的に硬さを調整することができ、歩行性能、快適さ、強度を向上させることができる。例えば、ソケットの敏感な接触領域(
図7、領域1204を参照)は、快適さを改善するために他の領域よりも柔らかくすることができる。別の例には、ユニボディ全体(または3つの部分のいずれか)の外面の1~5mmのシェルが可撓性材料であり、コア材料がそれより硬いコアシェルパターンが含まれる。熱可塑性エラストマ、熱可塑性ウレタン、無充填ナイロン及びポリプロピレンなどの材料が可撓性材料として機能し、チョップドカーボンまたはガラス繊維を充填したナイロンやポリプロピレン、ポリカーボネート、PEEK及びPEIなどの材料が硬い素材として機能する。
【0038】
実験データ
実験では、スマートフォンと写真測量技術を使用して、患者の損傷肢を費用対効果の高い3Dモデリングできることが実証された。一部のテストでは、単一の一体部品の下腿義足に先立つ物(precursor)として別個のコンポーネントを使用した。
【0039】
患者固有のワークフロー
好ましいワークフローは、スマートフォンの顔認識カメラを使用して患者の3Dモデルを生成するCombスキャナアプリ(Comb O&P、オハイオ州チャードン)によって切断患者をスキャンすることから始まる。スキャンデータは患者の測定フォームによって補足され、鏡映対側肢の外形に従うパーソナライズされた義肢の設計に使用される。すべての義足のデジタル設計プロセスは、認定義肢装具士(CPO)の監督の下で行われる。ソケットは、人工装具設計ソフトウェアNeo(Rodin4D、イタリア)を用いてスキャンデータと患者の測定値を使用して作成される。バイオインスパイアードの本発明のトラス構造を有するパイロンは、バイオインスパイアードの、相互接続された細長いサポートからなる単一のトラス構造を有する本発明のパイロンを実装するように制御されるトポロジ最適化ソフトウェアnTopology(nTopology、ニューヨーク州ニューヨーク)を使用して作成される。多軸の動的足-足首複合体は、多軸の動的屈曲を提供する本発明の足-足首複合体を実装するように制御されたFusion360(Autodesk、カリフォルニア州サンラファエル)で作成される。最後に、ソケット、パイロン、及び足-足首複合体の、本発明の単一の一体部品である下腿義足へのアライメント及び統合は、Meshmixer(Autodesk、カリフォルニア州サンラファエル)で行われる。完成したモデルは、Simplify3D(Simplify3D、オハイオ州シンシナティ)を使用して3Dプリンタが解釈できるGコードにスライスされる。溶融フィラメント製造(FFF)製造プロセスでは、エンジニアリンググレードの熱可塑性プラスチックを使用して、強力で耐久性のある内骨格義足を製造する。UniLegは義肢装具士または医師に送られ、義肢装具士または医師は、切断者が、切断者にパーソナライズされた義肢を装着できるように支援し、滑らかで対称的な歩行を確認する。修正が必要な場合は、熱成形を使用してフィット感とアライメントを調整することができる。
【0040】
撮像とモデリング
広く普及しているスマートフォン撮影技術は、患者の3Dモデルの作成に役立つ。Combスキャナアプリ(Comb O&P、オハイオ州チャードン)は、多くのスマートフォンで利用可能な正面顔認識カメラ、例えばiPhoneのTrueDepthカメラ(Apple、カリフォルニア州クパチーノ)を使用する。撮像は世界中のどこでもオンサイトで実行することができ、スキャンデータと測定フォームは次に、製造業者(または製造業者が運用するクラウド)に送信される。少なくとも、切断患者の断端と対側側のスキャンが行われる。
【0041】
ソケットの設計
切断者の断端からのスキャンデータは、
図2に示されるプロセスにおいて、ソケットの開始形状として使用される。荷重を適切に分散し、圧力スポットを防ぐために、Neo(Rodin4D、イタリア)を使用して修正が行われる。プロセスは次のとおりである。(1)メッシュがクリーンにされ、平滑化され、体積が3%減少する(a1、2)、(2)幅2cm、深さ1cmのスロットが、主な耐荷重機能である膝蓋骨腱バー用に彫られ、内側-外側領域が2%圧縮される(b1、2)、(3)膝の適切な可動性を考慮してソケットのトリムラインが描かれ、ソケットの壁は4mmまで厚くされる(c)、(4)シャトルロックを収容するために、遠位端に押出部分が作成される(d)修正値は患者ごとに異なり得るため、このプロセスにはCPOによる指導が役立つ。
【0042】
パイロンの設計
本発明のパイロンは、材料の使用量を減らしてコストと製造時間を削減しながら、強度があり、3Dプリント可能となるように設計されている。パイロンは、患者の体重と活動レベルに基づいて、ISO規格10328に従って、一連の圧縮荷重とトルク荷重に耐えることが期待されている。トポロジ最適化(TO)ソフトウェアnTopology(nTopology、ニューヨーク州ニューヨーク)を使用して、バイオインスパイアードの単一のトラス構造であって、間に開放空間を有する相互接続された細長いサポートからなるトラス構造を提供するために一貫した最適なトラス構造を生成する。切断患者の対側肢の下腿部分の鏡映モデルを使用して、パイロンが生成される。両脚切断者に健全肢がない場合、一般的な下腿部をデータベースから選択し、患者に合わせて向きの変更及びスケーリングを行うことができる。TOのモデル準備には、トポロジが最適化される設計空間(
図3A)と、荷重及び制約がかかる境界条件領域(
図3Aの上部及び下部のディスク)の定義が必要である。トポロジの最適化は、剛性を最大化する目的で実行される。
【0043】
得られたメッシュ(
図3B)をSTLファイルとしてエクスポートし、次にメッシュモデリングソフトウェアMeshmixer(Autodesk、カリフォルニア州サンラファエル)にインポートして、平滑化し、正しい寸法にスケーリングした。
図3Cに示す本発明の最終的なパーソナライズされたバイオトラス構造は、特定の切断者の鏡映対側肢の外側輪郭に従う外側輪郭を有する。内骨格トラス構造の大きな利点は、座屈せずに変形できることであり、これにより熱成形によるアライメントの調整が可能になる。
【0044】
足首-足複合体
足-足首複合体は、滑らかな対称歩行性能及びエネルギーの捕捉及びリターンのための背屈、底屈、内がえし及び外がえしの動作を可能にする多軸の動的応答を提供するように設計されており、これを
図4A~4Cに示す。上記のように、足-足首複合体は、間隙によって互いに分離されたS字形後部部分とS字形前部部分を含む。これは、
図4Cに示すように、かかと着地時の底屈を可能にする分割足首を画定する。人が
図4Bのミッドスタンスに移行するとき、分割された足首の間隙が閉じ、安定性が得られる。最終スタンスに移行すると、足-足首複合体全体が丸くなってエネルギーを捕捉し(
図4A)、エネルギーは、次の歩行サイクルを推進するために解放される。足首-足複合体の上部はパイロンの基部に統合され、地面から動的パイロンを通ってソケットまで荷重がスムーズに伝達される。ソール部分は、分割されたつま先及び分割されたかかとを含み得る。つま先とかかとが分割されているため、大きな内がえしと外がえしが有益である凹凸のある地形において、役に立つ。
【0045】
デジタルアライメントと統合
ソケット、パイロン、及び足-足首複合体は、
図5A及び5Bに示すように、Meshmixer(Autodesk、カリフォルニア州サンラファエル)で一体部品のUniLegに位置合わせされ、統合される。アライメントは、対側肢の鏡映モデルを使用してガイドされる。膝と足首の位置を揃えるために、鏡映された脚の中央を通る円柱が描かれている(
図5A)。得られたユニボディ設計(
図5B)は、一体部品で完全にプリントすることができる。使用される唯一の市販コンポーネントは、ソケットに断端を固定するためのシャトルロックとピンシステムである。必要に応じて、オンサイトで義肢装具士または医師が熱成形によってアライメントとソケットのフィット感を微調整することができる。ヒートガンを使用して、パイロンが柔軟になるまでパイロンの温度を上げ、これにより、矢状面、前頭面、及び横断面での手動の回転と平行移動が可能になる。ソケット内に収まるように調整するには、関心領域を柔軟になるまで加熱し、次に、端が丸い頑丈な木製の棒を関心領域に押し込み、患者の断端にかかる圧力を増減させる。
【0046】
多くのチェックソケットが熱可塑性プラスチックであるため、熱成形は従来の人工装具クリニックで一般的に行われている。しかし、従来の人工装具ソケットは複合材料を使用していることが多く、フィット感を調整することができない。本発明の義足は、患者が違和感を覚えた場合に、最初のフィッティング時、または義足の寿命中のフォローアップ予約時に熱成形によって容易に修正できるため、大きな利点を提供する。
【0047】
患者フィッティングによる検証
患者には、本発明のユニボディ下腿義足が装着された。アライメントは、患者が立った状態で前面及び側面で評価された。適切なTKAアライメントのためには、立っているときに転子(股関節)、膝、足首のポイントが垂直線に沿っていなければならない。本発明のユニボディ下腿義足の利点を定量化するために、患者の既存の義足と重量、コスト、及び設計時間の比較が行われた。義足間の重量を比較すると、従来の義足の重量は4ポンドであったが、本義足の重量はわずか1.8lbsで、55%の軽量化が明らかになった。軽量の義足は活動中の代謝コストを削減し、より快適であると報告されることが多い。設計と製造にかかる時間を2つの設計方法で比較した。従来の下腿義足の設計と製造にかかる合計時間は14日と推定された。この推定には、測定(1日)、金型の作成(3日)、ソケット作成(6日)、ならびに組み立て及びアライメント(4日)が含まれる。比較すると、本発明のユニボディ設計及び製造時間は、データ取得(1時間)、設計時間(3時間)、及びプリント時間(12時間)で構成される16時間である。
【0048】
修正された設計
図6は、
図1Aの足/足首複合体110の一般的な形状、配置、及び構造と一致する好ましい足/足首複合体1102を示す。足/足首複合体1102は、可撓性の高い方の材料1106によって囲まれた硬い方の材料の中央ストリップ1104を含む。2つの材料の比によって、エネルギーリターン、可撓性、動的範囲を制御する。
図6には示されていないが、足/足首複合体1102は、パイロン部分及びソケット部分と一体である。
【0049】
図7は、患者の切断肢の感圧領域の可撓性材料の1つまたは複数の(内部/患者接触側)ポケット1204を含む、本発明のユニボディ義足1202を示す。これらの領域は、クリニックを訪れた際にスキャンが行われるときに患者または医師によって特定することができる。
【0050】
実験所見
実証された撮像及び3Dプリントのワークフローを使用して、撮影用のスマートフォンを持っている施術者がケアするほぼすべての人に義足を提供することができる。これは、CTスキャナなどのハイテク医療用撮像装置が入手できない、または法外なコストがかかる地方のコミュニティに利益をもたらし得る。このワークフローにより、快適で高性能なカスタムフィットの義足が提供される。
【0051】
本発明の特定の実施形態を図示し説明してきたが、当然ながら、当業者には他の修正、置換及び代替が明らかである。そのような修正、置換及び代替は、添付の特許請求の範囲から決定されるべき本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく行うことができる。
【0052】
本発明の様々な特徴は、添付の特許請求の範囲に記載されている。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニボディ下腿義足であって、
断端に取り付けるように構成されたソケットと、
前記ソケットから延びているパイロンであって、間に開放空間を有する相互接続された細長いサポート
からなる単一ポリマー
トラス構造である前記パイロンと、
前記パイロンから延びてい
るポリマー
単一構造である足-足首複合体であって、前記
ポリマー単一構造は多軸の動的屈曲を提供するように形作られている、前記足-足首複合体と、
を備える、前記ユニボディ下腿義足。
【請求項2】
前記ソケット、前記パイロン、及び前記足-足首複合体が単一の一体部品である、請求項1に記載のユニボディ下腿義足。
【請求項3】
前記単一ポリマートラス構造は、前記相互接続された細長いサポート及びノードにより形成され、
前記相互接続された細長いサポートが、中央の開放空洞を画定し、前記
中央の開放空洞の周囲で湾曲し
、及び
前記中央の開放空洞は、前記パイロンの中心長手軸に沿って、前記相互接続された細長いサポート間に存在する、請求項1に記載のユニボディ下腿義足。
【請求項4】
前記パイロンが熱可塑性プラスチックで形成されている
、請求項
1に記載のユニボディ下腿義足。
【請求項5】
前記足-足首複合体が分割足首構造を含む
、請求項
1に記載のユニボディ下腿義足。
【請求項6】
前記分割足首構造が、S字形後部とS字形前部とを備え、前記S字形後部と前記S字形前部とは、前記S字形前部の終端部分からソール部分に延びている空隙によって互いに分離されている、請求項
5に記載のユニボディ下腿義足。
【請求項7】
前記S字形後部が、中実であり、前記S字形前部よりも厚い、請求項
6に記載のユニボディ下腿義足。
【請求項8】
前記S字形後部の上部が、前記パイロンの最下部と一体である、請求項
7に記載のユニボディ下腿義足。
【請求項9】
前記S字形前部が、1つまたは複数の貫通開口を備える、請求項
7に記載のユニボディ下腿義足。
【請求項10】
ソール部分が、分割されたつま先及び分割されたかかとを備える、請求項
5に記載のユニボディ下腿義足。
【請求項11】
前記下腿義足の
前記ソケット、前記パイロン、又は前記足-足首複合体のいずれかの外面が可撓性材料であり、より硬い材料のコアを含む
、請求項
1に記載のユニボディ下腿義足。
【請求項12】
前記単一ポリマートラス構造は、内骨格トラス構造である、請求項1に記載のユニボディ下腿義足。
【請求項13】
前記相互接続された細長いサポートがノードに向かって湾曲または弧を描き、及び
前記パイロンは熱可塑性プラスチックからなる、請求項12に記載のユニボディ下腿義足。
【請求項14】
前記パイロンは、トポロジ最適化により形状及び寸法が定められて所与の目標Kレベルの使用のためのポリマー材料の総量が軽量である、請求項1に記載のユニボディ下腿義足。
【請求項15】
前記ソケット、前記パイロン、及び前記足-足首複合体は、3Dプリントされた単一の一体部品であり、及び
前記単一の一体部品は、前記ソケット、前記パイロン、又は前記足-足首複合体において異なった硬さの領域を形成する複数の素材を含む、請求項1に記載のユニボディ下腿義足。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
関連出願に対する優先権主張及び参照
本出願は、2021年1月14日に出願された先行の米国仮出願番号第63/137,268号に基づく、35 U.S.C.セクション119及びすべての適用法令及び条約に基づく優先権を主張する。
政府権益に関する記述
本発明は、全米科学財団によって与えられた助成金番号CNS-1338192、米国標準技術局によって与えられた助成金番号70NANB17H211、及び米国陸軍研究局によって与えられた助成金番号W912HZ172-0024の下で政府支援を用いて行われた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
従来の義足のフィッティングプロセスは複雑で費用がかかり、複数のステップが必要である。義肢装具士は、伝統的な成型や彫刻のプロセスを使用して効果的な義足のケアを提供できるようになるまで、数十年とは言わないまでも、長年の経験を必要とする。切断者が義足を着用しないことを選択する主な理由の1つは、ソケットが不快であることである。ソケットは、それを形成する義肢装具士と同じ程度までしか良くならない。さらに、義足の利用可能性危機を解決するには、世界中でさらに75,000人の義肢装具士が必要であると推定され、新しい義肢装具士の訓練には、費用と時間がかかる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
SACHモデルに似た基本的な義足モデルが一般的に使用されているが、新しい素材や設計も登場している。新しいモデルには、ランニングブレード、ナイアガラフット、シアトルフットなどが含まれる。ランニングブレードはカーボンファイバー製のブレードタイプの足部で、ランニング用に設計されているが、歩行時には問題が生じる。斬新な固定足部であるナイアガラフットは、Hytrelからできている。Hytrelは、優れた耐久性とエネルギーリターンを提供する熱可塑性ポリエステルエラストマーである。ナイアガラフットは3百万回を超える負荷サイクルでテストされており、カーボンファイバー製足部よりも耐久性が向上していることが示されている。「ナイアガラフット」[オンライン] http://protosthetics.com/niagara-foot。シアトルフットには、カーボンファイバー、ナイロン、及び金属などの様々な材料で成形及び製造されたコンポーネントが組み込まれている。シアトルフットはパイロンに直接ボルトで固定することも、足首の関節をシミュレートする特別なアダプタを使用して取り付けることもできる。義足:義足製品:グローバル。[オンライン]https://trulife.com/product-category/prosthetics/feet/。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
【
図1A】
ユニボディ下腿義足の
好ましい実施形態の斜視図である。
【
図1B】、撮像と3Dプリントによって、
図1Aのカスタムフィットユニボディ下腿義足を患者に提供するための好ましいワークフローのフローチャートである。
【
図2】患者適合ソケット部分の生成プロセスを示す。
【
図3】A~Cはそれぞれ、健康な対側肢の脛骨領域の3Dスキャン、パイロン領域のトポロジ最適化、及び最適化されたパイロンの滑らかなバージョンを示す。
【
図4】A~Cは、前足部、かかと部、及びU軸のそれぞれの荷重状態を示す。
【
図5】A及びBは、患者の健康な対側肢に基づいたユニボディ下腿義足の設計プロセスを示す。
【
図6】本発明の好ましい複数材料の足/足首複合体を示す。
【
図7】修正されたソケットを備えた本発明の好ましい多材料ユニボディ下腿義足を示す。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
図1Aは
、ユニボディ下腿義足100
の好ましい実施形態を示す。義足100は、断端に取り付けられるように構成されたソケット102を含む。パイロン104がソケット102から延びている。パイロン104は、バイオインスパイアードの、相互接続された細長いサポート106からなる単一トラス構造で、サポート間に開放空間108を有する。パイロンは、熱可塑性材料で作られることが好ましい。足-足首複合体110は、パイロン104から延びる単一ポリマーである。足-足首の単一構造110は、滑らかな対称歩行性能のための背屈、底屈、内がえし及び外がえしの動きを可能にする多軸の動的屈曲を提供するように形作られている。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
義足全体は非常に軽量であっても、Kレベル2からKレベル4に対応している。
図1に示すように、相互接続された細長いサポート106は、接続ノード部分(「ノード」)112を有し、中央の開放空洞及び開放空洞の周りの湾曲を画定する。すなわち、相互接続された細長いサポート106は、ノード112に向かって緩やかに湾曲または弧を描き、パイロン104の中心長手軸に沿って、相互接続された細長いサポート106間に空洞が存在する。中央の開放空洞は、人間の下腿部分のサイズの減少に似通ったように、ソケット
102から足-足首複合体110まで減少する直径を有する。相互接続された細長いサポート及びノード112の外側の仮想境界は、患者の対側下腿部分の鏡映形状に従う。以下で説明する撮像及び3Dプリントの作成方法を使用すると、鏡映モデルは、患者の対側下腿部分からの3Dスキャンデータが入手可能な場合、そのデータに基づいている。入手できない場合、別の実施形態は、データベースからの下腿部分の開始幾何学的形状を使用するパイロン構造である。データベースモデルは、特に体重、活動レベル、見た目の美しさに基づいて選択することができ、特定の患者に適切にフィットするようにスケーリングされる。一般に、相互接続された細長いサポート106及び開放空間108は、患者の健全な対側脚の鏡映モデルに従う外側境界を有する、バイオインスパイアードのトラス構造を画定することができる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
デジタルアライメントと統合
ソケット、パイロン、及び足-足首複合体は、
図5A及び5Bに示すように、Meshmixer(Autodesk、カリフォルニア州サンラファエル)で一体部品のUniLegに位置合わせされ、統合される。アライメントは、対側肢の鏡映モデルを使用してガイドされる。膝と足首の位置を揃えるために、鏡映された脚の中央を通る円柱が描かれている(
図5A)。得られたユニボディ設計(
図5B)は、一体部品で完全にプリントすることができる。使用される唯一の市販コンポーネントは、ソケットに
、例えば図1Aの穴140中などに、断端を固定するためのシャトルロックとピンシステムである。必要に応じて、オンサイトで義肢装具士または医師が熱成形によってアライメントとソケットのフィット感を微調整することができる。ヒートガンを使用して、パイロンが柔軟になるまでパイロンの温度を上げ、これにより、矢状面、前頭面、及び横断面での手動の回転と平行移動が可能になる。ソケット内に収まるように調整するには、関心領域を柔軟になるまで加熱し、次に、端が丸い頑丈な木製の棒を関心領域に押し込み、患者の断端にかかる圧力を増減させる。
【国際調査報告】