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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-24
(54)【発明の名称】細長い医療デバイスのトルカー
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/09 20060101AFI20240117BHJP
【FI】
A61M25/09 530
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542784
(86)(22)【出願日】2021-01-14
(85)【翻訳文提出日】2023-09-11
(86)【国際出願番号】 US2021070035
(87)【国際公開番号】W WO2022154977
(87)【国際公開日】2022-07-21
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510292504
【氏名又は名称】コリンダス、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ザープス,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】カナーレ,キャメロン
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA28
4C267BB54
4C267CC08
4C267EE01
4C267GG50
4C267HH22
(57)【要約】
細長い医療デバイスのトルカーであって、経路を画定するキャビティを有する本体を含む。第1の顎部がキャビティ内で可動である。第1の顎部は柔軟特性を有するパッドを含む。第1の顎部とは別の付勢部材が本体に対して第1の顎部を付勢する。本体に対して可動のアクチュエータが、経路内でパッドにより細長い医療デバイスをピンチ及び/又はアンピンチするように第1の顎部を作動させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い医療デバイス用のトルカーであって、
経路を画定するキャビティを有する本体と、
前記キャビティ内で可動とされ、柔軟特性を有する第1のパッドを含む第1の顎部と、
前記第1の顎部を前記本体に対して付勢する、前記第1の顎部とは別の付勢部材と、
前記本体に対して可動とされ、前記経路内で前記第1のパッドにより細長い医療デバイスをピンチし及び/又はアンピンチするように前記第1の顎部を作動させる、アクチュエータと、を含む、トルカー。
【請求項2】
前記第1のパッドがエラストマー材料から形成され、
前記第1の顎部に向かって前記本体に対し可動とされた第2の顎部をさらに含み、該第2の顎部は、エラストマー材料から形成された第2のパッドを有し、
前記第1及び第2の顎部のそれぞれは、第1の弾性率を有するパッドベースを含み、該第1の弾性率が、前記第1及び第2のパッドの第2の弾性率よりも大きい、請求項1に記載のトルカー。
【請求項3】
前記第1及び第2の顎部のそれぞれが、前記本体のカム面を軸に互いに独立して自在に回動し、前記第1及び第2の顎部は互いに対し接続されていない、請求項2に記載のトルカー。
【請求項4】
前記エラストマー材料から形成された前記第1又は第2のパッドの遠位端又は近位端が、前記第1又は第2の顎部が前記カム面を軸に回動するときに、トルカー長手方向軸から半径方向へ離れるように動作する、請求項3に記載のトルカー。
【請求項5】
前記本体は、前記パッドベースそれぞれの非直線の従動面に接触するカム面を含む、請求項2に記載のトルカー。
【請求項6】
前記従動面が弧状である、請求項5に記載のトルカー。
【請求項7】
前記カム面が直線状である、請求項6に記載のトルカー。
【請求項8】
前記第1のパッドがエラストマーパッドであり、
前記エラストマーパッドと細長い医療デバイスとの間の圧力が、完全なピンチ状態で該細長い医療デバイスに前記エラストマーパッドが接触する全域で実質的に均等化される、請求項1に記載のトルカー。
【請求項9】
前記付勢部材は、前記第1及び第2のパッドを互いに向かって付勢する、請求項2に記載のトルカー。
【請求項10】
前記付勢部材は、前記第1及び第2のパッドを互いから離れるように付勢する、請求項2に記載のトルカー。
【請求項11】
前記付勢部材は、前記本体の長手方向軸と平行か同軸である長手方向軸を有する1つ以上の螺旋圧縮ばねを含む、請求項1に記載のトルカー。
【請求項12】
前記第1及び第2の顎部のそれぞれが遠位端及び近位端を有し、
前記第1及び第2の顎部の前記遠位端及び近位端の一方が、前記第1及び第2の顎部の前記遠位端及び近位端の他方より先に、互いに離れるように動作する、請求項2に記載のトルカー。
【請求項13】
前記経路は、0.014インチから0.038インチまでの直径をもつ細長い医療デバイスを受容することができる、請求項1に記載のトルカー。
【請求項14】
前記第1及び第2のパッドから細長い医療デバイスに加わる力の大きさが200から400Nであり、
前記第1及び第2のパッドの弾性率の大きさが200から400MPaであり、前記第1及び第2のパッドの長さが50mm以下であり、前記第1及び第2のパッドの硬度計値が45Dから75Dであり、
前記第1及び第2のパッドベースそれぞれの弾性率の大きさが3.5GPaより大きい、請求項2に記載のトルカー。
【請求項15】
細長い医療デバイスを解放可能にピンチするトルカーであって、
経路を画定するキャビティを有する本体と、
前記キャビティ内で可動であり、それぞれがパッドベースと該パッドベースに固着したパッドとを有し、互いに対し接続されていない、少なくとも2つの顎部と、
前記本体に対し前記顎部を付勢する、前記顎部とは別の付勢部材と、
前記本体に対して可動であり、前記経路内で前記パッドにより細長い医療デバイスをピンチし又はアンピンチするように互いに対し前記顎部を動作させる、ノブと、を含む、トルカー。
【請求項16】
前記本体は、前記パッドベースそれぞれの非直線の従動面に接触するカム面を含む、請求項15に記載のトルカー。
【請求項17】
前記顎部のそれぞれが互いに独立して前記カム面を軸に自在に回動する、請求項16に記載のトルカー。
【請求項18】
前記パッドと細長い医療デバイスとの間の圧力が、前記パッドの全長にわたって実質的に均等化される、請求項17に記載のトルカー。
【請求項19】
前記パッドから細長い医療デバイスに加わる力の大きさが200から400Nであり、
前記パッドの弾性率の大きさが200から400MPaであり、前記パッドの長さが50mm以下であり、前記パッドの硬度計値が45Dから75Dであり、
前記パッドベースの弾性率の大きさが3.5GPaより大きい、請求項15に記載のトルカー。
【請求項20】
細長い医療デバイスを解放可能に把持するトルカーであって、
経路を画定するキャビティを有する本体と、
前記キャビティ内で可動であり、それぞれがエラストマーパッドを有し、互いに対し接続されない、少なくとも2つの顎部と、
前記本体に対して前記顎部を付勢する、前記顎部とは別の付勢部材と、
前記本体に対して可動であり、前記経路内で前記エラストマーパッドにより細長い医療デバイスをピンチし又はアンピンチするように互いに対し前記顎部を動作させる、ノブと、を含み、
前記エラストマーパッドと細長い医療デバイスとの間の圧力が、完全なピンチ状態において前記エラストマーパッドの全長にわたって実質的に均等化される、トルカー。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
カテーテルやその他の細長い医療デバイス(EMD)は、神経介入手術としても知られる神経血管インターベンション(NVI)、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)、及び末梢血管インターベンション(PVI)を含む、様々な脈管系疾患の診断及び治療のための低侵襲医療処置に使用される。これらの処置は、通例、脈管系を通してガイドワイヤをナビゲートし、ガイドワイヤを利用してカテーテルを前進させ治療を行うことを含む。カテーテル式処置は、標準的な経皮的手法を使用し、イントロデューサシースを用いて、動脈や静脈などの適切な血管へアクセスすることから始まる。イントロデューサシースを介して、次に、NVIの場合の内頸動脈、PCIの場合の冠動脈口、又はPVIの場合の浅大腿動脈といった一次位置へ、診断ガイドワイヤを利用してシース又はガイドカテーテルを進める。そして、脈管系に適したガイドワイヤを、シース又はガイドカテーテルを通して、脈管系内の標的位置までナビゲートする。蛇行解剖学的構造などの状況では、ガイドワイヤ伝いに支持カテーテル又はマイクロカテーテルを挿入し、ガイドワイヤのナビゲーションを補助する。医師などの操作者は、画像システム(例えば、透視装置)を使用して造影剤注入によるシネを得て、ガイドワイヤ又はカテーテルを標的位置、例えば病変、にナビゲートするためのロードマップとして使用する固定フレームを選択することができる。また、操作者がガイドワイヤ又はカテーテルを送り込む間にも造影画像が得られ、これにより操作者は、デバイスが標的位置へ向かう正しい経路に沿って移動していることを確認できる。操作者は、透視法を用いて解剖学的構造を観察しながら、ガイドワイヤ又はカテーテルの近位端を操作し、遠位先端を適切な血管へ入れ標的の解剖学的位置(病変など)に向かわせ、側枝への進入を避ける。
【0002】
例えば、NVI、PCI、及びPVIのようなカテーテル式処置を行う医師を補助するために使用される、ロボットカテーテル式処置システムが開発されている。NVI処置の例としては、動脈瘤のコイル塞栓術、動静脈奇形の液体塞栓術、及び急性虚血性脳卒中の状況における大血管閉塞の機械的血栓摘出術が挙げられる。NVI処置において、医師は、ロボットシステムを用いて、神経血管ガイドワイヤ及びマイクロカテーテルの操作を制御することにより標的病変へのアクセスを獲得し、正常な血流を回復させる治療を施す。標的へのアクセスはシース又はガイドカテーテルによって可能になるが、より遠位の領域に対して、又は、マイクロカテーテル及びガイドワイヤの適切な支持を提供するために、中間カテーテルを必要とすることもある。ガイドワイヤの遠位先端は、病変や治療の種類に応じて、病変中にナビゲートされるか又は病変を通り過ぎてナビゲートされる。動脈瘤を治療する場合は、マイクロカテーテルを病変内に進め、ガイドワイヤを除去し、マイクロカテーテルを通して動脈瘤内にいくつかの塞栓コイルを留置し、動脈瘤内への血流を遮断するために使用する。動静脈奇形を治療する場合は、マイクロカテーテルを介して液体塞栓を奇形内に注入する。血管閉塞を治療するための機械的血栓除去は、吸引及びステント回収器の使用のいずれか又は両方によって達成される。血栓の位置に応じて、吸引は、吸引カテーテルを介して行うか、又は、細い動脈の場合はマイクロカテーテルを介して行う。吸引カテーテルが病変に入ったら、陰圧をかけてカテーテルを通し血栓を除去する。あるいは、マイクロカテーテルを通してステント回収器を配置することによって、血栓を除去することもできる。血栓をステント回収器で絡め取った後、ステント回収器及びマイクロカテーテル(又は中間カテーテル)をガイドカテーテルに引き込むことによって、血栓が回収される。
【0003】
PCIの場合、医師は、ロボットシステムを用いて、冠状動脈ガイドワイヤを操作することによって病変にアクセスし、治療を行い、正常な血流を回復させる。アクセスは、ガイドカテーテルを冠動脈入口部に着座させることにより可能となる。ガイドワイヤの遠位先端を病変の先までナビゲートし、そして、複雑な解剖学的構造のために、マイクロカテーテルを用いてガイドワイヤを適切に支持することができる。血流は、病変にステント又はバルーンを送り込んで展開することによって回復させる。病変は、ステント留置の前に前処置を必要とすることがあり、病変の前拡張のためにバルーンが送り込まれたり、又は、例えばレーザー又は回転式アテレクトミーカテーテル及びガイドワイヤを利用したバルーンを用いてアテレクトミーが実施される。画像診断及び生理学的測定が、画像カテーテル又は血流予備量比(FFR)測定を用いることにより適切な治療法を決定するために実施され得る。
【0004】
PVIの場合、医師は、ロボットシステムを用いて治療を行い、NVIと同様の技術で血流を回復させる。ガイドワイヤの遠位先端は病変の先までナビゲートされ、複雑な解剖学的構造に対してはガイドワイヤを適切に支持するためにマイクロカテーテルが使用される。病変にステント又はバルーンを送り込んで展開することにより血流を回復させる。PCIの場合と同様に、病変の前処置や画像診断も同じ様に用いられる。
【0005】
カテーテル又はガイドワイヤの遠位端での支持が、例えば、蛇行又は石灰化した脈管系のナビゲーションのために、遠位の解剖学的位置に到達するために、又は、硬化病変を横切るために、必要とされる場合、オーバーザワイヤ(OTW)カテーテル又は同軸システムが用いられる。OTWカテーテルにはガイドワイヤ用の内腔があり、この内腔がカテーテルの全長に延びている。これによりガイドワイヤが全長にわたって支持されるので、比較的安定したシステムとなる。しかし、このシステムには、ラピッドエクスチェンジカテーテル(後述)と比較した場合に、摩擦が大きい、全長が長いといったいくつかの弱点がある。通常、留置ガイドワイヤの位置を維持しながらOTWカテーテルを抜去又は交換するためには、ガイドワイヤの(患者から出ている)露出長がOTWカテーテルより長くなければならない。長さ300cmのガイドワイヤが一般的にはこの目的に十分とされており、交換長ガイドワイヤと呼ばれることが多い。このガイドワイヤの長さ故に、OTWカテーテルの抜去又は交換には2名の操作者が必要である。このことは、三軸系として当該技術分野で知られている三重同軸系を使用する場合(四重同軸カテーテルが使用されることも知られている)、さらに困難になる。しかしながら、その安定性を理由として、NVI及びPVI処置ではOTWシステムを使用することが多い。一方、PCI処置の場合は、ラピッドエクスチェンジ(又はモノレール)カテーテルを使用することが多い。ラピッドエクスチェンジカテーテルのガイドワイヤ内腔は、モノレール又はラピッドエクスチェンジ(RX)セクションと呼ばれるカテーテルの遠位部分を通るだけである。RXシステムを使用する操作者は、互いに対し平行にインターベンションデバイスを操作し(OTWシステムではデバイスを縦列構成で操作するのとは対照的に)、ガイドワイヤの露出長はカテーテルのRXセクションよりもわずかに長くしてあればよい。ラピッドエクスチェンジガイドワイヤは、通例で180~200cmの長さである。ガイドワイヤとモノレールの短さを考えれば、RXカテーテルは1人の操作者で交換可能である。しかし、より遠位の支持が必要な場合にRXカテーテルは不適当であることが多い。
【0006】
処置中に、ガイドワイヤ、ステント回収器、コイルなどの様々なワイヤ状デバイスがそのシャフトで把持され、患者の解剖学的構造中で当該デバイスが直線操作及び/又は回転操作される。EMDは、通常、操作者の指で把持されるか、又は、一般にトルカーとして知られているピンバイスのようなデバイスで把持される。
【0007】
トルカーは、処置中、操作者が、ガイドワイヤなどのEMDの一部分をピンチ(つまむ)しアンピンチ(放す)するために使用される。トルカーは、EMDの一部分を解放可能に固定するために使用され、使用者が、EMDを回転させ及び/又は並進させるなどのEMDの操作を行えるようにする。
【0008】
処置で使用されるデバイスの直径は、0.009-0.038インチ(0.229-0.965mm)の外径(OD)と、様々である。市販のトルカーは、一般的に、特定のODデバイス用に設計されている。例えば、0.014インチ(0.356mm)のODデバイスを操作するために1つのトルカーを使用し、0.038インチ(0.965mm)のODデバイスを操作するために別のトルカーを使用する、ということになる。
【発明の概要】
【0009】
細長い医療デバイスのトルカーであり、経路を画定するキャビティを有する本体を含むトルカーである。そのキャビティ内で第1の顎部が動作可能である。第1の顎部は、柔軟性をもつパッドを含む。第1の顎部とは別の付勢部材が、本体に対して第1の顎部を付勢する。本体に対して可動としたアクチュエータが第1の顎部を作動させ、経路内でパッドにより、細長い医療デバイスをピンチし及び/又はアンピンチする。一態様において、柔軟性をもつパッドは、エラストマー材料から形成される。一態様において、アクチュエーターがノブである。
【0010】
一態様において、細長い医療デバイスを解放可能に把持するトルカーは、経路を画定するキャビティを有する本体を含む。少なくとも2つの顎部がキャビティ内で動作可能であり、顎部のそれぞれが、パッドベースと、パッドベースに固着されたパッドと、を有する。これら顎部は、互いに対し接続されていない。顎部とは別の付勢部材が、本体に対して顎部を付勢する。本体に対して可動としたノブが顎部を互いに対して動作させ、細長い医療デバイスを経路内でパッドによりピンチし又はアンピンチする。
【0011】
一態様において、細長い医療デバイスを解放可能に把持するトルカーは、経路を画定するキャビティを有する本体を含む。少なくとも2つの顎部がキャビティ内で動作可能であり、顎部のそれぞれがエラストマーパッドを有する。これら顎部は、互いに対し接続されていない。顎部とは別の付勢部材が、本体に対して顎部を付勢する。本体に対して可動としたノブが顎部を互いに対して動作させ、細長い医療デバイスを経路内でパッドによりピンチし又はアンピンチする。エラストマーパッドと細長い医療デバイスとの間の圧力は、十分にピンチした状態でエラストマーパッドの全域にほぼ均等化される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例に係る、カテーテル式処置システムの概略図。
図2】実施例に係る、カテーテル式処置システムの概略ブロック図。
図3】実施例に係る、カテーテル式処置システムのベッドサイドシステムの斜視図。
図4】パッドをもつ受動型トルカーアセンブリの斜視図。
図5図4の受動型トルカーアセンブリの分解図。
図6図4の受動型トルカーアセンブリの顎部の分解図。
図7】パッドがガイドワイヤ(EMD)を把持している図4のトルカーアセンブリを示す、概ね図4のX-Z平面で切り取った断面図。
図8】把持していたガイドワイヤ(EMD)を放す途中のパッドが合わさっていない状態にある図4のトルカーアセンブリを示す、概ね図4のX-Z平面で切り取った断面図(正確な縮尺ではない)。
図9】パッドが非把持状態にある図4のトルカーアセンブリを示す、概ね図4のX-Z平面で切り取った断面図である。
図10】把持していたガイドワイヤ(EMD)を放す途中にある単一の可動顎部を有する図4のトルカーアセンブリの実施例を示す、概ね図4のX-Z平面で切り取った断面図(正確な縮尺ではない)。
図11】パッドをもつ能動型トルカーアセンブリの斜視図。
図12図11の能動型トルカーアセンブリの一部のコンポーネントを示す分解図。
図13図11の能動型トルカーアセンブリの内部コンポーネントを示す分解図。
図14図11の能動型トルカーアセンブリの顎部の分解図。
図15】ノブがねじ込み前でパッドが非把持状態にある図11のトルカーアセンブリを示す、概ね図11のX-Z平面で切り取った断面図。
図16】ノブがねじ込まれ且つパッドが非把持状態にある図11のトルカーアセンブリを示す、概ね図11のX-Z平面で切り取った断面図。
図17】パッドが把持状態になった図11のトルカーアセンブリを示す、概ね図11のX-Z平面で切り取った断面図。
図18】デバイスモジュールにおける図4の受動型トルカーアセンブリの図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[定義]
【0014】
細長い医療デバイス(EMD)は、カテーテル(ガイドカテーテル、マイクロカテーテル、バルーン/ステントカテーテルなど)、ワイヤ式デバイス(ガイドワイヤ、塞栓コイル、ステント回収器など)、及び、これらの組み合せを有するデバイスを指す(ただしこれらに限定されない)。ワイヤ式EMDには、ガイドワイヤ、マイクロワイヤ、塞栓コイル用の近位プッシャー、ステント回収器、自己拡張型ステント、及び、フローダイバーターが含まれる(ただしこれらに限定されない)。通例、ワイヤ式EMDは、その近位終端にハブ又はハンドルをもたないた(だしこれに限定されない)。一実施例において、EMDは、カテーテル近位端のハブと、該ハブからカテーテル遠位端に向かって延びる柔軟シャフトと、をもつカテーテルを有し、シャフトがハブよりも柔軟である。一実施例において、カテーテルは、ハブとシャフトとの間で遷移する移行部分を含み、この移行部分の柔軟性はハブよりも柔らかく且つシャフトよりも硬い。一実施例において、移行部分は、張力緩和部(ストレインリリーフ)である。
【0015】
「遠位」と「近位」は、2つの別部分の相対的位置を定義する。ロボット駆動装置に関して言えば、「遠位」及び「近位」は、患者に対する使用目的に応じたロボット駆動装置の配置によって定義される。相対的位置を定義するために使用される場合、遠位部分は、ロボット駆動装置が使用目的の配置にあるときの近位部分よりも患者に近いところのロボット駆動装置の部分である。患者の体内では、アクセスポイントからの経路に沿ってより遠くにある脈管系ランドマークが、アクセスポイントに近いランドマークよりも遠位であると見なされる。アクセスポイントはEMDを患者に入れるポイントである。同様に、近位部分は、ロボット駆動装置が使用目的の配置にあるときの遠位部分よりも患者から遠いところの部分である。方向を定義するために使用される場合、遠位方向は、ロボット駆動が使用目的の配置にあるときの、何かが動いている又は何かが動いていく先の経路、又は、何かが近位部分から遠位部分及び/又は患者の方を目指す又は向いている経路を指す。近位方向は遠位方向の反対方向である。
【0016】
部材(カテーテル式処置システムのEMD又は他の要素)の長手方向軸(縦軸、長手軸)は、部材の近位部分から部材の遠位部分へ向かう方向に部材の横断面の中心を通過する部材の全長に延びる線又は軸である。例えば、ガイドワイヤの長手方向軸は、ガイドワイヤが関連する部分において非直線であろうとも、ガイドワイヤの近位部分からガイドワイヤの遠位部分へ向かう方向の中心軸である。
【0017】
「上、上部/上側、上方」は、重力の向きとは逆の一般的な方向を指し、「下、下部/下側、下方」は、重力の向きの一般的な方向を指す。
【0018】
部材の「軸方向動作」は、部材の長手方向軸に沿った部材の並進(平行移動)を意味する。
【0019】
部材の「回転動作」は、部材の局所的長手方向軸の周りの部材の角度方向変化を意味する。
【0020】
「軸方向挿入」は、第1の部材を、第2の部材の長手方向軸に沿って第2部材へ挿入することを意味する。
【0021】
「力」は、物体の動作を引き起こす又は引き起こし得る作用因子を意味する。物体に作用する力は、物体の動きを変化させ、物体の動きを遅らせ、既に物体に作用している力をバランスさせ、物体に内部ストレスを生じさせ得る。
【0022】
「トルク」は、物体の回転を引き起こす又は引き起こし得る作用因子を意味する。物体に作用するトルクは、物体の回転動作を変化させ、物体の回転動作を遅らせ、既に物体に作用しているトルクをバランスさせ、物体に内部応力を生じさせ得る。
【0023】
「固定」は、操作中に、第2の部材に対して第1の部材の意図的な相対動作が無いことを意味する。
【0024】
「ピンチ(つまむ)」は、部材が動くときにEMDと部材が一緒に動くように、EMDを部材に解放可能に固定することを意味する。部材の回転動作は、ピンチされた状態のEMDを回転動作させることになる。「アンピンチ(解放)」は、部材が動くときにEMDと部材とが個々に動くように、部材からEMDを解放することを意味する。アンピンチされたEMDは、部材に対して移動/回転することができる。
【0025】
「コレット」は、EMDの一部を解放可能に固定することができるデバイスを意味する。ここでの「固定」は、操作中、コレットとEMDの意図的な相対動作が無いことを意味する。
【0026】
「トルカー」は、ガイドワイヤなどのEMDの一部を解放可能にピンチし、アンピンチするデバイスを意味する。「トルカー」は、EMDを回転させ及び/又はEMDを並進させるために使用されるデバイスを示すために、カテーテル処置の医療専門家によって使用される一般的に受け入れられている用語である。トルカーは、コレット又はピンバイスとしても広く知られている。ここに開示するトルカーは、生体外(ex vivo)で使用され、患者の体外でEMDの一部をピンチするものである。
【0027】
[実施例の説明]
【0028】
実施例に係る図1は、カテーテル式処置システム10の一例を示した斜視図である。カテーテル式処置システム10は、カテーテル式医療処置、例えば、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)(例えば、STEMIを治療するため)などの経皮的インターベンション処置、神経血管インターベンション処置(NVI)(例えば、緊急の大血管閉塞(ELVO)を治療するため)、末梢血管インターベンション処置(PVI)(例えば、重症下肢虚血(CLI)のため)などを実施するために使用される。カテーテル式医療処置には、患者の疾患診断を補助するために1つ以上のカテーテルや他の細長い医療デバイス(EMD)を使用する診断カテーテル法処置が含まれる。例えば、カテーテル式診断処置の一実施例では、造影剤をカテーテルを通して1つ以上の動脈に注入し、患者の脈管系の画像を取得する。カテーテル式医療処置には、カテーテル(又は他のEMD)を用いて疾患を治療するカテーテル式治療処置(例えば、血管形成術、ステント留置、末梢血管疾患の治療、血栓除去、動脈静脈奇形治療、動脈瘤の治療など)も含まれる。治療処置は、例えば、血管内超音波(IVUS)、光干渉断層計(OCT)、血流予備量比(FFR)などの補助デバイス54(図2に示す)を含めることによって強化することができる。しかしながら、当分野で通常の知識を有する者であれば、実施されるべき処置の種類に基づいて特定の経皮的インターベンションデバイス又はコンポーネント(例えば、ガイドワイヤのタイプ、カテーテルのタイプなど)を選択可能である、と認識するのは当然である。カテーテル式処置システム10は、処置で使用される専用の経皮的インターベンションデバイスをわずかな調節で収容でき、あらゆるカテーテル式医療処置を実行することができる。
【0029】
カテーテル式処置システム10は、複数ある要素の中でも特に、ベッドサイドユニット20及び制御ステーション26を含む。ベッドサイドユニット20は、ロボット駆動装置24と、患者12の脇に位置する位置決めシステム22と、を備える。患者12は、患者テーブル18上に寝かされている。位置決めシステム22は、ロボット駆動装置24を位置決めし支持するために使用される。位置決めシステム22は、例えば、ロボットアーム、関節式アーム、ホルダーなどである。位置決めシステム22は、一端で、例えば患者テーブル18のレール、ベース、又はカートに取り付けることができる。位置決めシステム22の他端に、ロボット駆動装置24が取り付けられる。位置決めシステム22は(ロボット駆動装置24と共に)、患者12を患者テーブル18に寝かせるために、退避させることができる。患者テーブル18上に患者12を寝かせた後、位置決めシステム22を使用して、処置のためにロボット駆動装置24を患者12に対して位置決め(固定)する。一実施例において、患者テーブル18は、床及び/又は地面に据え付けられている台座17に支持され作動する。患者台18は、台座17に対して、多自由度、例えば、ロール、ピッチ、ヨー、で動作させることができる。ベッドサイドユニット20は、制御機器及びディスプレイ46(図2に示す)も含み得る。例えば、制御機器及びディスプレイは、ロボット駆動装置24のハウジングに配置することができる。
【0030】
一般に、ロボット駆動装置24は、適切な経皮的インターベンションデバイス及び付属機器48(図2に示す)(例えば、ガイドワイヤ、バルーンカテーテルを含む各種カテーテル、ステントデリバリーシステム、ステント回収器、塞栓形成コイル、液体塞栓、吸引ポンプ、造影剤や薬剤の送入デバイス、止血弁アダプタ、シリンジ、ストップコック、膨張デバイスなど)を備えていて、操作者(ユーザ)11が、制御ステーション26に配置された制御機器及び入力機器などの各種制御機器を操作することによって、ロボットシステムを利用してカテーテル式医療処置を実施できるようにしている。ベッドサイドユニット20、特にロボット駆動装置24は、ここに記載する機能をベッドサイドユニット20に付与するためのあらゆるコンポーネント及び/又はその組み合わせを含み得る。制御ステーション26の操作者11を、制御ステーション操作者(ユーザ)と呼び、ここでは操作者(ユーザ)を指す。ベッドサイドユニット20の操作者(ユーザ)は、ベッドサイドユニット操作者(ユーザ)と呼ぶ。ロボット駆動装置24は、レール又は直線部材60(図3に示す)に取り付けられた複数のデバイスモジュール32a-dを備える。レール又は直線部材60は、デバイスモジュールを案内し支持する。デバイスモジュール32a-dの各々を用いて、カテーテル又はガイドワイヤなどのEMDを駆動することができる。例えば、ロボット駆動装置24を用いて、診断カテーテルの中に、そして患者12の動脈の中のガイドカテーテルの中に、ガイドワイヤを自動的に送り込むことができる。EMDなど、1つ以上のデバイスは、例えばイントロデューサシースを介して、挿入点16から患者12の体内(例えば血管)に入る。
【0031】
ベッドサイドユニット20は制御ステーション26と通信し、制御ステーション26は、制御ステーション26のユーザ入力によって生成される信号をベッドサイドユニット20へ無線又は有線で送信してベッドサイドユニット20の様々な機能を制御することを可能にする。後述するように、制御ステーション26は、制御コンピューティングシステム34(図2に示す)を含むか、又は制御コンピューティングシステム34を介してベッドサイドユニット20と接続される。ベッドサイドユニット20は、制御ステーション26又は制御コンピューティングシステム34、あるいはその両方に、フィードバック信号(例えば、装填、速度、動作条件、警告信号、エラーコードなど)を提供することもできる。制御コンピューティングシステム34とカテーテル式処置システム10の各コンポーネントとの間の通信は、無線接続、有線接続、又はコンポーネント間の通信を可能にする他のあらゆる手段とし得る通信リンクを介して、提供される。制御ステーション26又は他の類似の制御システムは、ローカルサイト(例えば、図2中のローカル制御ステーション38)又はリモートサイト(例えば、図2中のリモート制御ステーション及びコンピューティングシステム42)のいずれかに位置する。カテーテル処置システム10は、ローカルサイトの制御ステーション又はリモートサイトの制御ステーション、あるいは同時にローカル制御ステーションとリモート制御ステーションの両方によって、操作することができる。ローカルサイトにおいて、操作者11及び制御ステーション26は、患者12及びベッドサイドユニット20と同じ部屋又は隣の部屋に位置する。ここで使用する場合のローカルサイトは、ベッドサイドユニット20と患者12又は被験体(例えば、動物又は死体)の場所であり、リモートサイトは、ベッドサイドユニット20を遠隔制御するために使用される制御ステーション26と操作者11の場所である。リモートサイトの制御ステーション26(及び制御コンピューティングシステム)とローカルサイトのベッドサイドユニット20及び/又は制御コンピューティングシステムは、例えばインターネットを介し、通信システム及びサービス36(図2に示す)で通信する。一実施例において、リモートサイトとローカル(患者)サイトは、互いに離れており、例えば、同じ建物内の別々の部屋、同じ都市内の別々の建物、別々の都市、又は、その他の、リモートサイトがローカルサイトのベッドサイドユニット20及び/又は患者12に対する物理的アクセスをもたない別々の場所、にある。
【0032】
制御ステーション26は、通例、カテーテル式処置システム10の各コンポーネント又はシステムを操作するためのユーザ入力を受信するように構成された1つ以上の入力モジュール28を含む。ここに示す実施例の場合、制御ステーション26は、操作者11がベッドサイドユニット20を制御してカテーテル式医療処置を行えるようにする。例えば、入力モジュール28は、ロボット駆動装置24と連動する経皮的インターベンションデバイス(例えば、EMD)を用いて各種のタスクをベッドサイドユニット20に行わせるように構成される(例えば、ガイドワイヤを前進、後退又は回転させる、カテーテルを前進、後退又は回転させる、カテーテルで配置したバルーンを膨張又は収縮させる、ステントを配置及び/又は展開させる、ステント回収器を配置及び/又は展開させる、コイルを配置及び/又は展開させる、造影剤をカテーテルへ注入する、カテーテルへ液体塞栓を注入する、カテーテルへ薬剤又は生理食塩水を注入する、カテーテルで吸引する、又は、カテーテル式医療処置の一部として実施され得るその他の機能を実施するなど)。ロボット駆動装置24は、経皮的インターベンションデバイスを含むベッドサイドユニット20のコンポーネントを動作(例えば、軸方向動作及び回転動作)させるための各種駆動機構を含む。
【0033】
一実施例において、入力モジュール28は、1つ以上のタッチスクリーン、ジョイスティック、スクロールホイール、及び/又はボタンを含む。入力モジュール28に加えて、制御ステーション26は、フットスイッチや、音声命令用のマイクロフォンなど、追加のユーザ制御機器44(図2に示す)を使用することができる。入力モジュール28は、各種のコンポーネントと、例えばガイドワイヤ及び1つ以上のカテーテル又はマイクロカテーテルなどの各種の経皮的インターベンションデバイスと、を前進、後退、又は回転させるように構成される。ボタンは、例えば、緊急停止ボタン、倍率ボタン、デバイス選択ボタン、及び自動作動ボタンを含む。非常停止ボタンが押されると、ベッドサイドユニット20に対し動力(例えば、電力)が遮断又は除去される。速度制御モードにあるとき、倍率ボタンは、入力モジュール28の操作に応答して関連コンポーネントが動く速度を増加又は減少させるように作用する。位置制御モードにあるとき、倍率ボタンは、入力距離と出力指令距離との間のマッピングを変更する。デバイス選択ボタンは、ロボット駆動装置24に装填されている経皮的インターベンションデバイスのどれを入力モジュール28によって制御するかを、操作者11が選択できるようにする。自動作動ボタンは、カテーテル式処置システム10が操作者11から直接命令を受けずに経皮的インターベンションデバイスで実行することができるアルゴリズムによる動作を実行するために、使用される。一実施例において、入力モジュール28は、タッチスクリーン(ディスプレイ30の一部である場合とそうでない場合がある)に表示される1つ以上のコントローラ又はアイコン(図示せず)を含み、これらは、アクティブになると、カテーテル式処置システム10のコンポーネントを作動させる。入力モジュール28はまた、バルーンを膨張又は収縮させ、及び/又はステントを展開させるように構成されたバルーン又はステント制御器を含むことができる。入力モジュール28の各々は、1つ以上のボタン、スクロールホイール、ジョイスティック、タッチスクリーンなどを含み、これらは、1つ以上の特定のコンポーネントを専用制御するために使用され得る。さらに、1つ以上のタッチスクリーンが、入力モジュール28の各部分又はカテーテル式処置システム10の各コンポーネントに関連した1つ以上のアイコン(図示せず)を表示する。
【0034】
制御ステーション26は、ディスプレイ30を含む。一実施例において、制御ステーション26は、2つ以上のディスプレイ30を含むこともできる。ディスプレイ30は、制御ステーション26に位置する操作者11に情報又は患者特有のデータを表示するように構成される。例えば、ディスプレイ30は、画像データ(例えば、X線画像、MRI画像、CT画像、超音波画像など)、血行動態データ(例えば、血圧、心拍数など)、患者カルテ情報(例えば、病歴、年齢、体重など)、病変又は治療評価データ(例えば、IVUS、OCT、FFRなど)を表示するように構成することができる。さらに、ディスプレイ30は、処置特有の情報(例えば、処置チェックリスト、勧告(提言)、処置の期間、カテーテル又はガイドワイヤの位置、送り込まれた薬剤又は造影剤の量など)を表示するようにも構成される。また、ディスプレイ30は、制御コンピューティングシステム34(図2に示す)に関連した機能を提供するための情報を表示するように構成されていてもよい。ディスプレイ30は、システムのユーザ入力機能の一部を提供するためのタッチスクリーン機能を有する場合もある。
【0035】
カテーテル式処置システム10は、撮像システム14も含む。撮像システム14は、カテーテル式医療処置と併せて使用され得る医用撮像システム(例えば、非デジタルX線、デジタルX線、CT、MRI、超音波など)のいずれであってもよい。一実施例において、撮像システム14は、制御ステーション26と通信するデジタルX線撮像装置である。一実施例において、撮像システム14は、患者12に対する様々な角度位置の画像(例えば、矢状面像、尾面像、前後面像など)を得るために、患者12の周囲を撮像システム14が部分的又は完全に回転することを可能にするCアーム(図1に示す)を含む。一実施例において、撮像システム14は、X線源13と、イメージインテンシファイアとしても知られる検出器15と、を有するCアームを含んだ透視システムである。
【0036】
撮像システム14は、処置中に患者12の適切な領域のX線画像を撮像するように構成される。例えば、撮像システム14は、神経血管状態を診断するために、頭部の1つ以上のX線画像を撮像するように構成することができる。撮像システム14は、カテーテル式医療処置中に1つ以上のX線画像(例えば、リアルタイム画像)を撮像して、ガイドワイヤ、ガイドカテーテル、マイクロカテーテル、ステント回収器、コイル、ステント、バルーンなどを処置中に適切に位置決めするために、制御ステーション26の操作者11を補助するように構成することもできる。1つ以上の画像がディスプレイ30に表示される。例えば、画像をディスプレイ30に表示し、操作者11がガイドカテーテル又はガイドワイヤを適切な位置へ正確に移動させることができるようにする。
【0037】
方向を明確にするために、直交座標系をX,Y,Z軸で提示してある。正のX軸は、長手方向(軸方向)の遠位方向、すなわち、近位端から遠位端への方向、別の言い方をすれば近位から遠位の方向、に向いている。Y軸とZ軸は、X軸に対する横断面内にあり、正のZ軸が上向きで、つまり重力の反対方向であり、Y軸は、右手の法則によって自動的に決まる。
【0038】
一実施例に係る図2は、カテーテル式処置システム10のブロック図である。カテーテル処置システム10は、制御コンピューティングシステム34を含む。制御コンピューティングシステム34は、物理的に、例えば制御ステーション26(図1に示す)の一部であり得る。制御コンピューティングシステム34は、通例、ここに説明する各機能を備えたカテーテル式処置システム10を提供するのに適した電子制御ユニットである。例えば、制御コンピューティングシステム34は、埋め込みシステム、専用回路、ここに説明する機能をプログラムした汎用システムなどである。制御コンピューティングシステム34は、ベッドサイドユニット20、通信システム及びサービス36(例えば、インターネット、ファイアウォール、クラウドサービス、セッションマネージャ、病院ネットワークなど)、ローカル制御ステーション38、追加の通信システム40(例えば、テレプレゼンスシステム)、リモート制御ステーション及びコンピューティングシステム42、及び患者センサ56(例えば、心電図(ECG)デバイス、脳波(EEG)デバイス、血圧モニタ、温度モニタ、心拍モニタ、呼吸モニタなど)と通信する。制御コンピューティングシステムは、撮像システム14、患者テーブル18、追加の医療システム50、造影剤注入システム52、及び補助デバイス54(例えば、IVUS、OCT、FFRなど)とも通信する。ベッドサイドユニット20は、ロボット駆動装置24と位置決めシステム22とを含み、追加の制御機器及びディスプレイ46を含むこともできる。上述のように、追加の制御機器及びディスプレイは、ロボット駆動装置24のハウジングに配置することができる。インターベンションデバイス及び付属機器48(例えば、ガイドワイヤ、カテーテルなど)は、ベッドサイドシステム20と接続される。一実施例において、インターベンションデバイス及び付属機器48は、それぞれの補助デバイス54、すなわちIVUSシステム、OCTシステム、FFRシステムなどと、接続する専用のデバイス(例えば、IVUSカテーテル、OCTカテーテル、FFRワイヤ、造影用診断カテーテルなど)を含む。
【0039】
一実施例において、制御コンピューティングシステム34は、(例えば、ローカル制御ステーション38又はリモート制御ステーション42などの制御ステーション26(図1に示す)の)入力モジュール28とのユーザ相互作用に基づいた制御信号及び/又はカテーテル式処置システム10を用いて医療処置を実行するべく制御コンピューティングシステム34を制御するためにアクセス可能な情報に基づいた制御信号を生成するように構成されている。ローカル制御ステーション38は、1つ以上のディスプレイ30、1つ以上の入力モジュール28、及び追加のユーザ制御機器44を含む。リモート制御ステーション及びコンピューティングシステム42は、ローカル制御ステーション38と同様のコンポーネントを含み得る。リモート制御ステーション42及びローカル制御ステーション38は、それぞれに要求される機能に応じてあつらえた異なったものとすることができる。追加のユーザ制御機器44は、例えば、1つ以上の足入力コントローラを含む。足入力コントローラは、X線をオン/オフする、複数の保存画像をスクロールするなどの撮像システム14の機能を操作者が選択することを可能にするように、構成することができる。一実施例において、足入力デバイスは、入力モジュール28に含まれるスクロールホイールにマップされるデバイスを操作者が選択できるように構成することができる。追加の通信システム40(例えば、音声会話、ビデオ会話、テレプレゼンスなど)は、オペレータが患者、医療スタッフ(例えば、血管造影(angio suite)スタッフ)、及び/又はベッドサイド近くの機器とコミュニケーションを取るための支援に採用され得る。
【0040】
カテーテル式処置システム10は、明示していないあらゆる他のシステム及び/又はデバイスを含むように接続又は構成することができる。例えば、カテーテル式処置システム10は、画像処理エンジン、データ保存及びアーカイブシステム、自動バルーン及び/又はステント膨張システム、薬剤注入システム、薬剤追跡及び/又はログシステム、ユーザログ、暗号化システム、カテーテル式処置システム10のアクセス又は使用を制限するシステムなどを、含むことができる。
【0041】
上述したように、制御コンピューティングシステム34は、ロボット駆動装置24及び位置決めシステム22を含み且つ追加の制御機器及びディスプレイ46を含み得るベッドサイドユニット20と通信し、モータを動作制御し、経皮的インターベンションデバイス(例えば、ガイドワイヤ、カテーテルなど)を駆動するべく使用される機構を駆動するために、ベッドサイドユニット20へ制御信号を提供する。各駆動機構は、ロボット駆動装置24の一部として設けることができる。
【0042】
実施例に係る図3は、カテーテル式処置システム10のロボット駆動装置の斜視図である。図3において、ロボット駆動装置24は、直線部材60に連結された複数のデバイスモジュール32a-dを含む。デバイスモジュール32a-dのそれぞれは、直線部材60に移動可能に取り付けられたステージ62a-dを介して直線部材60に連結される。一つ一つのデバイスモジュール32a-dは、オフセットブラケット78a-dのようなコネクタを用いてステージ62a-dと接続される。一実施例において、デバイスモジュール32a-dは、ステージ62a-dに直接取り付けられる。各ステージ62a-dは、直線部材60に沿って直線的に移動するように独立して動作させることができる。したがって、各ステージ62a-d(及びステージ62a-dに連結された対応するデバイスモジュール32a-d)は、互いに対し及び直線部材60に対し、それぞれ個別に動作させることができる。各ステージ62a-dを作動させるために駆動機構が使用される。図3に示す実施例において、駆動機構は、各ステージ62a-dに連結された個別のステージ並進モータ64a-dとステージ駆動機構76とを有しているか、又は、ステージ並進モータ64a-d自体をリニアモータとして有することができる。ステージ駆動機構76は、例えば、回転ナットを介した送りねじ、ピニオンを介したラック、ピニオン又はプーリを介したベルト、スプロケットを介したチェーンである。一実施例では、ステージ駆動機構76は、これらの機構の組み合わせである。例えば、ステージ62a-dのそれぞれで、異なるタイプのステージ駆動機構を採用することができる。ステージ駆動機構が送りねじ及び回転ナットである実施例の場合、送りねじを回転させ、送りねじに対し各ステージ62a-dを係合させ及び係合解除させ、例えば前進又は後退させるなど、動作させる。図3に図示の実施例において、ステージ62a-d及びデバイスモジュール32a-dは、縦列駆動構造になっている。
【0043】
各デバイスモジュール32a-dは、駆動モジュール68a-dと、駆動モジュール68a-dに搭載され連結されたカセット66a-dと、を含む。図3に図示の実施例において、カセット66a-dの各々は、カセット66a-dを上下方向の下に向けて駆動モジュール66a-d上へ降ろすことにより、カセット66a-dが駆動モジュール68a-dに装着される向きで、駆動モジュール68a-dに装着される。カセット66a-dの上面(又は側面)は、カセット66a-dが駆動モジュール68a-dに装着されると、駆動モジュール68a-dの上面(又は側面)(すなわち、装着面)と平行である。ここで使用する場合、図3に示す装着したときの方向を水平方向と呼ぶ。他の実施例において、各カセット66a-dは、他の装着方向で駆動モジュール68a-dに取り付けられてもよい。図7図10に関して、種々の装着方向を以下に開示する。各カセット66a-dは、EMD(図示せず)の近位部と接続し支持するように構成されている。さらに、各カセット66a-dは、対応するステージ62a-dの作動で直線部材60に沿って直線的に移動することにより提供される直線動作に加えて、1つ以上の自由度を提供する要素を含むことができる。例えば、カセット66a-dは、駆動モジュール68a-dに連結されたカセットにおいてEMDを回転させるために使用される要素を、含むことができる。各駆動モジュール68a-dは、各カセット66a-d内の機構に駆動インターフェースを提供して自由度を追加するために、少なくとも1つのカプラを含む。また、各カセット66a-dは、デバイス支持体79a-dが配置されるチャンネルを含み、各デバイス支持体79a-dは、EMDの座屈を防止するために使用される。デバイスモジュール32a,32b,32cのそれぞれに支持アーム77a,77b,77cを取り付け、デバイスサポート79b,79c,79dの近位端をそれぞれ支持する固定点を設ける。ロボット駆動装置24は、デバイス支持体79、遠位支持アーム70、及び支持アーム77に接続されたデバイス支持接続部72も含む。支持アーム77は、最も遠位のデバイスモジュール32aに収容された最も遠位のデバイス支持体79aの近位端を支持する固定点を提供するために使用される。さらに、イントロデューサインターフェース支持体(リダイレクタ)74を、デバイス支持接続部72及びEMD(例えば、イントロデューサシース)に接続することができる。このロボット駆動装置24の構成は、単一の直線部材におけるアクチュエータの使用で、ロボット駆動装置24の体積及び重量を減少させることができる、という利点を有する。
【0044】
患者の病原体感染を防ぐために、ヘルスケアスタッフは、ベッドサイドユニット20と患者12又は被験体(図1に示す)が収容されている部屋で無菌技術を用いる。ベッドサイドユニット20と患者12を収容する部屋は、例えば、カテーテルラボ又はアンギオスイートである。無菌技術は、滅菌バリア、滅菌器具、適切な患者準備、環境管理、及び接触ガイドラインを使用することからなる。すなわち、すべてのEMD及びインターベンション付属品が滅菌され、滅菌バリアか滅菌器具のいずれかとのみ接触が許される。一実施例において、滅菌ドレープ(図示せず)を非滅菌ロボット駆動装置24を覆って配置する。各カセット66a-dは滅菌され、ドレープ付きロボット駆動装置24と少なくとも1つのEMDとの間の滅菌インターフェースとして機能する。各カセット66a-dは、1回の使用を目的として滅菌できるように設計されるか、カセット66a-d又はそのコンポーネントを複数の処置で使用できるように全部又は一部を再滅菌できるように設計される。
【0045】
図4及び図5を参照すると、一実施例に係る受動型トルカー100は、アクチュエータ106と、本体108と、第1の顎部110と、第2の顎部112と、ばね114と、ばねハウジング116と、を含む。トルカー100は、トルカー100の全体に延びる長手方向中心線に沿った内腔118を含む。本体108は、キャビティ109を含む。内腔118は、身体108の近位端から遠位端まで延びており、キャビティ109と流体連通している。内腔118は、ノブ106を通って延びる内腔部分と、ハウジング116を通って延びる内腔部分とを含む。内腔118の直径は、トルカー100を適用するEMD(図4及び図5には示せず)の直径よりも大きくされる。ここに説明するように、第1の顎部110及び第2の顎部112は、キャビティ109内で動作可能にしてある。一実施例において、ばね114は、本体108の長手方向軸と同軸の長手方向軸を有する。一実施例において、アクチュエータ106は、本体108に対して相対動作可能なノブであり、キャビティ109内でEMDを把持及び/又は解放するように第1の顎部110を動作させる。アクチュエータ106は他の周期の機構を含み、また、ここでは「アクチュエータ」と「ノブ」は用語として交互に取り替えて使用される。一実施例において、ノブ106は、本体108に対して可動であり、第1の顎部110及び第2の顎部112を動作させてキャビティ109内でEMDを把持及び/又は解放する。受動型トルカー100は、常態で閉状態にあり、EMDがトルカー100内にあるときにその閉の常態でEMDがピンチされる。操作者又はロボットシステムは、EMDをアンピンチするために付勢部材を操作する必要がある。
【0046】
アンピンチ状態のトルカー100において、EMDは、トルカー100の遠位端で、近位へ向かう長手方向(長手近位方向)104に内腔118へ挿入され、そして、トルカー100の遠位端で、遠位へ向かう長手方向(長手遠位方向)102に内腔118から引き抜かれるか又は取り出されるか、あるいは、トルカー100の近位端で、長手近位方向104に内腔118から引き抜かれるか又は取り出される。一実施例において、EMDは、トルカー100の近位端で、長手遠位方向102に内腔118に挿入され、そして、トルカー100の近位端で、長手近位方向104に内腔118から引き抜かれるか、あるいは、トルカー100の遠位端で、長手遠位方向102に内腔118から引き抜かれる。ピンチ状態のトルカー100において、EMDの一部(トルカー該当部分)が本体108に対して固定される。具体的には、ピンチ状態において、トルカー100の第1の顎部110及び第2の顎部112がEMD120(図7参照)のシャフトの一部をピンチし、その結果、トルカー100の長手方向軸の周りの回転及び/又は長手方向軸に沿った並進が、ピンチしているEMDのシャフトの一部に同じ又は実質的に同じ回転及び/又は並進の動作をさせる、パッドに沿って分散したトルク及び/又は力をもたらす。一実施例において、パッドの長手方向全域でEMDの一部をピンチしてあるEMDにトルカーの回転でトルクが加えられると、トルカーの近位端からトルカーの遠位端にかけて、EMDのねじれが徐々に増加する。一実施例において、EMDは、ピンチされた状態でパッドの近位端に対して固定される。EMDは、トルクが加えられたときに、トルカーの近位端から遠位端にかけてパッドの全域にわたる回転の度合いを有する。
【0047】
ノブ106は、遠位部分106a及び近位部分106bを含み、これら両部分の長手方向中心線がトルカー100の長手方向中心線と整列する。一実施例において、ノブ106の遠位部分106aは、遠位へ延びる内腔118を有する支持チューブであり、EMDが並進及び/又は回転させられるときに、EMDの当該部分について全体的に座屈を抑制しよじれを防ぐ。一実施例において、ノブ106の遠位部分106aは、内腔118を有する円筒形の支持チューブである。一実施例において、ノブ106の近位部106bは円筒形カップであり、近位方向に開口し、当該円筒形カップの遠位基部から近位方向に延出した内部突起106cを有する。一実施例において、ノブ106の内部突起106cは、内腔118を有する円筒で、その中心線がトルカー100の長手方向中心線と整列する。一実施例において、ノブ106の近位部分106bは、円筒形カップの内壁に雌ねじ106dを含む。一実施例において、ノブ106の近位部分106bは、内部突起106cの外壁に雄ねじを含む。一実施例において、ノブ106が雌ねじを含み、本体108が雄ねじを含む。一実施例において、ノブ106は、EMDのシャフトの一部を通す内部経路として内腔118をもつ、成形品などの単一の製造部品である。一実施例において、ノブ106は、EMDのシャフトの一部を通す内部経路として内腔118をもつ、組み立て部品である。一実施例において、経路は、0.014インチ(0.356mm)から0.038インチ(0.965mm)までの直径を有する細長い医療デバイスを収容することができる。一実施例において、収容可能な細長い医療デバイスの直径の範囲は、0.038インチ(0.965mm)以下の直径を有するデバイスを含む。一実施例において、経路は、0.016インチ(0.406mm)±0.002インチ(0.051mm)といった範囲の特殊な直径のEMDを収容することができる。
【0048】
本体108は、遠位部分108a、中間部分108b、及び近位部分108cを含み、これら全ての部分の長手方向中心線がトルカー100の長手方向中心線と整列する。一実施例において、本体108は、遠位部分108a、中間部分108b、及び近位部分108cにおいて別々の内径及び外径を有する中空の円筒である。一実施例において、本体108は、円筒形ではない部分をもっていてもよい。一実施例において、遠位部分108aの外壁に雄ねじ108dを含む。一実施例において、遠位部分108aの内壁に雌ねじを含む。一実施例において、本体108の内壁は、互いに向かい合った内壁に溝が切られてなる第1のチャンネル108e及び第2のチャンネル108fを含む。第1のチャンネル108eの幅は第1の顎部110の幅より広く、第2のチャンネル108fの幅は第2の顎部112の幅より広い。一実施例において、本体108は、EMDのシャフトの一部を通す内部経路をもつ、成形品などの単一の製造部品である。一実施例において、本体108は、EMDのシャフトの一部を通す内部経路をもつ、組み立て部品である。
【0049】
第1の顎部110は、第1のパッド110aと第1のパッドベース110bを含み、第2の顎部112は、第2のパッド112aと第2のパッドベース112bを含む。一実施例において、第1のパッドベース110bは、平行六面体状の部材であり、その最長寸法に対応する長手方向軸がトルカー100の長手方向軸に沿って延びている。一実施例において、第1のパッドベース110bは、立方体状の部材であり、その最長寸法に対応する長手方向軸がトルカー100の長手方向軸に沿って延びている。一実施例において、第1のパッドベースは、プリズム状の形状を有する。一実施例において、第1のパッドベース110bは、第1のパッド110aを貼り付けるための平坦な底面を含む。一実施例において、第1のパッド110aは、第1のパッドベース110bに、化学的に接着されるか、機械的に装着されるか、又は、部材どうしを貼り付ける他の周知の手段で、付けられる。一実施例において、第2のパッドベース112bは、平行六面体状の部材であり、その最長寸法に対応する長手方向軸がトルカー100の長手方向軸に沿って延びている。一実施例において、第2のパッドベース112bは、立方体状の部材であり、その最長寸法に対応する長手方向軸がトルカー100の長手方向軸に沿って延びている。一実施例において、第2のパッドベース112bは、第2のパッド112aを貼り付けるための平坦な上面を含む。
【0050】
図6を参照すると、一実施例に係る第1のパッドベース110bは、第1のパッド110aが貼り付けられる平坦な底面(下側面)110cと、平坦な表側側面110dと、平坦な裏側側面110eと、傾斜した平坦な遠位端面110fと、突起110hを備えた平坦な近位端面110gと、上面(上側面)と、を含み、上面は、平坦な遠位部分110iと、カーブした中間部分110jと、傾斜した平坦な中間部分110kと、平坦な近位部分110mと、を含む。一実施例において、第1のパッドベース110bの上面のカーブした中間部分110jは、凸の弧状輪郭を有し、平坦な遠位部分110iと傾斜した平坦な中間部分110kとの間の遷移面である。
【0051】
一実施例において、第2のパッドベース112bは、第1のパッドベース110bと同一であり、第1のパッドベース110bの各表面とそれぞれ一致する表面を含む。一実施例に係るトルカー100において、第2のパッドベース112bは、その長手方向軸の周りに、第1のパッドベース110bに対して180度回転(反転)している。言い換えると、ここに説明する第1のパッド110aが装着された第1のパッドベース110bの平坦な底面110cが、第2のパッド112aが装着された第2のパッドベース112bの平坦な上面と向かい合っている。
【0052】
一実施例において、第1の顎部110の第1のパッド110aの底面は、平坦な表面である。一実施例において、第1の顎部110の第1のパッド110aの底面は、第1のパッド110a表面の全長に延びる凹の弧状輪郭(横断面において、すなわちY-Z面において)を含んでいる平坦表面である。一実施例において、第1の顎部110の第1のパッド110aの底面は、第1のパッド110a表面の全長に延びる凹の弧状輪郭(横断面において、すなわちY-Z面において)を含んでいる湾曲表面である。
【0053】
一実施例において、第2のパッド112aは、第1のパッド110aと同一であり、第1のパッド110aの各表面とそれぞれ一致する表面を含む。一実施例において、第2の顎部112の第2のパッド112aの上面は、第1の顎部110の第1のパッド110aの底面と同一であり、第1のパッド110aの各表面とそれぞれ一致する表面を含む。一実施例において、第1のパッド110aは第1のパッドベース110bに固着され、第2のパッド112aは第2のパッドベース112bに固着される。
【0054】
一実施例において、第1のパッド110a及び第2のパッド112aは、医療用生体適合材料から形成され、パッドで押圧したときに、カテーテル処置で使用されるガイドワイヤなどのEMDの被覆を傷つけず又は貫通しないものとする。一実施例において、第1のパッド110aと第2のパッド112aは、50D-75Dの硬度計(デュロメーター)測定値の範囲内のエラストマー材料から形成され、SPI-B1,A1,C1,A2,B2,又はC2などの特定の平滑度/粗さ/テクスチャ評価で製造される。一実施例において、ここに記載したSPI(Society of Plastic Industry)評価は、記載したSPI評価の後の括弧内に示す、次のマイクロインチ(μインチ)のRa(roughness parameter:粗さパラメータ)値に対応する:SPI B1(RA 2-3),A1(RA 0-1),A2(RA 1-2),B2(RA 4-5),C2(RA 25-28)。一実施例において、第1のパッド110a及び第2のパッド112aは、金属材料などの他の材料と比較して低弾性率値且つ高ひずみ値の天然又は合成材料から形成される。
【0055】
ここで使用されるエラストマー材料とは、弾性又は粘弾性特性を有するポリマーからなる材料、又は、弾性又は粘弾性特性を有するゴム又はゴム様材料、又は、柔軟特性及び/又は弾性又は粘弾性特性を有する材料である。第1のパッド110a及び第2のパッド112aは、ここではエラストマーパッドと呼ぶ。一実施例において、柔軟特性を有する各パッドは、ポリウレタン材料又はポリエーテルブロックアミド(PEBA)材料から形成される。
【0056】
一実施例において、第1のパッドベース110b及び第2のパッドベース112bは、第1のパッド110a及び第2のパッド112aの材料よりも硬い、生体適合プラスチックなどの医療用生体適合材料から形成される。一実施例において、第1のパッドベース110b及び第2のパッドベース112bは、Ultem1000又はステンレス鋼などの材料から形成される。一実施例において、第1のパッドベース110b及び第2のパッドベース112bは、第1のパッド110a及び第2のパッド112aの材料よりも剛性が高い材料から形成される。一実施例において、第1のパッドベース110b及び第2のパッドベース112bは、3.5GPaの値と同等以上の弾性率を有する材料から形成される。一実施例において、第1のパッドベース110b及び第2のパッドベース112bは、第1のパッド110a及び第2のパッド112aの材料の2倍以上の値の弾性率を有する材料から形成される。一実施例において、第1のパッドベース110b及び第2のパッドベース112bは、第1のパッド110a及び第2のパッド112aの材料の10倍以上の値の弾性率を有する材料から形成される。
【0057】
一実施例に係るトルカー100において、ノブ106の雌ねじ106dが本体108の雄ねじ108dと噛み合い、ノブ106の本体108に対する回転が、ノブ106と本体108との間の長手方向の距離に変化をもたらし、この相対回転の方向に応じて当該距離が増減する。ノブ106と本体108との相対回転の単位当たりの長手方向距離の変化は、噛み合っているねじ106d,108dのピッチで決まる。一実施例(図示せず)に係るトルカー100において、ノブ106の内部突起106cの雄ねじが、本体108の遠位部分108aの内壁にある雌ねじと噛み合い、ノブ106の本体108に対する回転が、ノブ106と本体108との間の長手方向の距離に変化をもたらし、この相対回転の方向に応じて当該距離が増減する。ノブ106と本体108との相対回転の単位当たりの長手方向距離の変化は、噛み合っているねじのピッチで決まる。
【0058】
一実施例において、ばね114は、螺旋圧縮ばねである。一実施例において、ばね114は、平らで研磨済みの端部を有する螺旋圧縮ばねである。一実施例において、ばね114は、方形で研磨済みの端部を有する螺旋圧縮ばねである。一実施例において、ばね114は、中空円筒形又は別の形状の柔軟弾性部材である。
【0059】
ばねハウジング116は、遠位部分116aと、ベベルギア116bと、近位部分116cと、を含み、これら全ての部分の長手方向中心線がトルカー100の長手方向中心線と整列している。一実施例において、ベベルギア116bは、ばねハウジング116の遠位部分116aと近位部分116cの中間にあり、これらの部分116a,116cに固着されて一体になっている。一実施例において、ベベルギア116bの歯は、長手近位方向104に向いている。一実施例において、ベベルギアは、ロボットシステムの駆動部材により駆動されて動作する被駆動部材である。一実施例において、ばねハウジング116の遠位部分116aは円筒形カップで、遠位方向に開口し、その近位基部に開口部を含む。一実施例において、ばねハウジング116の近位部分116cは円筒形カップで、遠位方向に開口し、円筒形カップの近位基部から遠位方向に延出している内部ポスト116dを有し、内腔118がトルカー100の長手方向中心軸に沿って全体に延伸している。一実施例において、ばねハウジング116の内部ポスト116dは、面取りした遠位端を有し、中心に内腔118を有し、トルカー100の長手方向中心線と整列した中心線を有する、円筒状突起である。一実施例において、ばねハウジング116は、EMDのシャフトの一部を通す内部経路として内腔118をもつ、成形品などの単一の製造部品である。一実施例において、ばねハウジング116は、EMDのシャフトの一部を通す内部経路として内腔118をもつ、組み立て部品である。一実施例において、ベベルギア116bは、トルカー本体の外側部分のどこかに配置することができ、及び/又は、アクチュエータ又はノブ106の外側部分のどこかに配置してもよい、被駆動部材である。被駆動部材116bは、平歯車、ウォームギア、ハイポイドギアなどの他のタイプの歯車であってもよく、又は、ベルト駆動機構(これに限定されない)を含む駆動部材と摩擦係合する面であってもよい。
【0060】
一実施例に係る組み立て後のトルカー100において、本体108の近位部分108cは、例えば、相手の係合リップと係合する部分の成形アンダーカットを利用して、ハウジング116の遠位部分116aにスナップフィットする。一実施例に係る組み立て後のトルカー100において、本体108の近位部分108cは、例えば、係合部の寸法的干渉を利用して、ハウジング116の遠位部分116aに締り嵌めされる。一実施例において、本体108の近位部分108cは、粘着剤、接着剤、接合剤、レーザー溶接、超音波溶接、又は組み立て及び製造時に2つの物体をくっつけるその他の手段によって、ハウジング116の遠位部分116aに固定される。一実施例に係るトルカー100において、本体108は、締結具(図示せず)を用いてハウジング116に取り外し可能に固定される。ここで使用する「スナップフィット」は、可撓性部品(通常はプラスチック)を組み付ける組み立て方法で、部品の連結コンポーネントを互いに押し付けて最終製品を形成する。スナップフィットには、片持ち梁型、ねじり型、環状型など多くのバリエーションがある。スナップフィットは、一体型組み付け機能として、爪やねじを用いた組み立ての代替法であり、早さの点、緩んだ部分がない点で、利点がある。
【0061】
一実施例に係るトルカー100において、ばね114は、ハウジング116に対する縦横の動き(すなわち、Y-Z平面における動き)を拘束され、ハウジング116の円筒形カップの近位基部から遠位方向に延びる中央の内部ポスト116dの周囲に着座していることによって座屈が防止される。内部ポスト116dは、ばね114の内径よりも外径が小さい円筒形であり、中央に内腔118を含む。一実施例において、ハウジング116の近位部分116cの内径又はハウジング116の近位部分116cの内部ポスト116dの外径が、座屈を防ぐために必要とされる。
【0062】
一実施例に係るトルカー100において、ばね114の近位端は、ハウジング116の近位部分116cの近位端にある円筒形カップ基部(底)の内面と接触することによって、ハウジング116に対する長手方向の動きを拘束されている。一実施例に係るトルカー100において、ばね114の遠位端は、第1の顎部110の第1のパッドベース110bの平坦な近位端面110gと接触していると共に、第2の顎部112の第2のパッドベース112bの平坦な近位端面と接触している。一実施例において、第1のパッドベース110bは、第1のパッドベース110bの平坦な近位端面110gにおいて底面110cの近くに楔状突起110hを含み、第2のパッドベース112bは、第2のパッドベース112bの平坦な近位端面において上面の近くに、対応する楔状突起を含む。これら楔状突起は近位方向へ突出し、そしてこれら楔状突起は、ばね114の遠位端においてばね114の内径の内側に位置する。
【0063】
一実施例に係るトルカー100において、第1のパッドベース110bは、本体108の第1のチャンネル108eで拘束されつつ動作し、第2のパッドベース112bは、本体108の第2のチャンネル108fで拘束されつつ動作する。具体的には、一実施例において、第1のチャンネル108eの側壁が、(第1のパッドベース110bの平坦な表側側面110d及び平坦な裏側側面110eに接触することによって)第1の顎部110の横方向の動きを拘束し、同様に第2のチャンネル108fの側壁が、第2の顎部112の横方向の動きを拘束する。
【0064】
一実施例において、第1の顎部110の第1のパッドベース110bの上面の一部は、本体108の第1のチャンネル108eの内部円周壁(溝の底)の一部と接触し、第2の顎部112の第2のパッドベース112bの底面の一部は、本体108の第2のチャンネル108fの内部円周壁(溝の底)の一部と接触する。
【0065】
一実施例において、トルカー100は2つの顎部を含んでおり、この2つの顎部は互いに対して動作し、EMDのシャフトの一部を少なくとも片方の顎部に解放可能に固定する。一実施例において、トルカー100は顎部を1つ含んでおり、この顎部は、トルカー100の本体に対して動作し、EMDのシャフトの一部を当該1つの顎部で解放可能にピンチする。一実施例において、トルカー100は2つより多い顎部を含んでおり、これら顎部は互いに対して動作し、EMDのシャフトの一部を少なくとも1つの顎部に解放可能に固定する。
【0066】
一実施例に係るトルカー100において、ばね114は、本体に対して1つの顎部を付勢する付勢部材として作用する。一実施例に係るトルカー100において、ばね114は、本体に対して2つの顎部を付勢する付勢部材として作用する。一実施例に係るトルカー100において、ばね114は、本体に対して2つより多い顎部を付勢する付勢部材として作用する。
【0067】
一実施例において、同時に動作する2つ以上の部材が、EMDのシャフトがトルカーに対して相対的に移動することなく、EMDのシャフトの一部にトルカーから伝達されるトルク及び/又は力を増加させる機械的利点をもたらす。トーカを用いてEMDにかけるピンチ力は、ピンチをなすのに必要な力よりも大きくすることができる。EMDのシャフトの一部がピンチされると、EMDは、EMD処置の許容可能な動作パラメータを通して、トルカー及びEMDの当該一部の相対的な動きがないように、固定される。
【0068】
図7図8、及び図9を参照すると、一実施例に係る受動型トルカー100が、それぞれ、ピンチ状態、部分的なピンチ状態、及びアンピンチ状態に対応する段階で示されている。ピンチ状態においてトルカー100は、完全な把持状態にあり、EMD120の一部をピンチしている。部分的なピンチ状態においてトルカー100は、部分的な把持状態にあり、EMD120の一部を部分的にピンチしている。アンピンチ状態においてトルカー100は、解放(把持解除)状態にあり、EMD120をピンチしていない。全3つの状態(ピンチ、部分的ピンチ、アンピンチ)において図示された実施例において、ノブ106の雌ねじ106dは、本体108の雄ねじ108dと噛み合う。アンピンチ状態において、トルカーの長手方向軸と直交する方向におけるパッド間の距離は、EMDの直径よりも大きい。
【0069】
図7を参照すると、トルカー100のピンチ状態において、ノブ106は、本体108に対して開位置にある。ノブ106の内部突起106cの近位端面と第1の顎部110の第1のパッドベース110bの傾斜遠位端面110fとの間には接触がなく(すなわち、隙間が存在する)、ノブ106の内部突起106cの近位端面と第2の顎部112の第2のパッドベース112bの傾斜遠位端面との間にも接触がない。ノブ106を本体108に対し、本体108からノブ106のねじを外す方向に回転させると、ノブ106は、本体108に対して長手遠位方向102へ移動し、内部突起106cの近位端面と第1の顎部110及び第2の顎部112の遠位端面との間のギャップを増大させる。
【0070】
一実施例において、ノブ106は、ねじの噛み合いが無くなってノブ106が本体108から外れるまで、本体108からノブ106のねじを外す方向に、本体108に対して制限なく回転させられる。一実施例において、ノブ106は、ノブ106が本体108から外れないようにするストッパに達するまで、本体108からノブ106のねじを外す方向に、本体108に対して制限なく回転させられる。
【0071】
ノブ106が本体108に対して開位置にあるトルカー100のピンチ状態において、第1のパッドベース110bの近位端の楔状突起110hの傾斜面と、ばねハウジング116の内部ポスト116d(円筒形カップの近位基部から遠位方向に延びる)において前記傾斜面に対面する面取り遠位端面と、の間にも接触がなく(すなわち、隙間が存在し)、さらに、第2のパッドベース112bの近位端の楔状突起の傾斜面と、ばねハウジング116の内部ポスト116dにおいて前記傾斜面に対面する面取り遠位端面と、の間にも接触がない。
【0072】
トルカー100のピンチ状態において、第1の顎部110の第1のパッド110aと第2の顎部112の第2のパッド112aとは、互いに対面し、互いに平行であると共にEMD120の一部に平行であり、各パッドの全域でEMD120の一部をピンチしている。すなわち、第1のパッド110aと第2のパッド112aは、両者の長さ全域でEMD120の一部と接触している。
【0073】
トルカー100のピンチ状態において、ばね114は、その静止長よりも圧縮される。したがって、長手遠位方向102に向かってばねの復元力が作用する。(ばねの復元力は、静的平衡で長手近位方向104にも作用する。しかし、ばね114の近位端は、ハウジング116に対して、そしてハウジング116を組み付けた本体108に対して、拘束、つまり固定されている。したがって、ばねの復元力は、長手遠位方向102に作用する。)この力の半分は、ばね114の遠位端と第1のパッドベース110bの平坦な近位端面110gとの接触によって第1の顎部110に作用し、この力の半分は、ばね114の遠位端と第2のパッドベース112bの平坦な近位端面との接触によって第2の顎部112に作用する。
【0074】
長手遠位方向102において第1の顎部110に力(ばね114からの復元力の半分)が加えられるが、第1の顎部110は、本体108に対して長手遠位方向102へ移動することを拘束されている。第1の顎部110の長手遠位方向102への動作は、ばね114からの復元力の半分の力成分と同等の大きさで反対方向の力成分によって拘束される。すなわち、力成分が長手近位方向104に作用し、長手方向の第1の顎部110の静的平衡が達成される。この長手方向の力成分は、第1の顎部110の第1のパッドベース110bの上面のカーブした中間部分110jと本体108の第1のチャンネル108eの上側内面の異形部分との間の接触点又は接触領域に作用する。
【0075】
ここに説明するように、上下方向の力成分もまた、第1の顎部110の第1のパッドベース110bの上面のカーブした中間部分110jと、本体108の第1チャンネル108eの上側内面の異形部分との間の接触点又は接触領域に作用する。
【0076】
本体108の第1のチャンネル108eの上側内面の異形部分はカム面を画定し、このカム面が、第1の顎部110の第1のパッドベース110bの上面のカーブした中間部分110jにより画定される従動面に接触する。カム面と従動面の輪郭(及びばねからの力)により結果として生じる力は、接触点又は接触領域において、近位(負のX方向)に向かう長手方向の力成分と下方(負のZ方向)に向かう上下方向の力成分となって本体108から第1の顎部110に作用する。第1の顎部110に上下方向の力成分が作用する結果として、第1のパッド110aがEMD120の一部へ押圧され、EMD120の一部と第1のパッド110aとを接触させる。一実施例において、従動面は非直線である。一実施例において、従動面は直線である。一実施例において、従動面は弧状である。一実施例において、本体108は、第1のパッドベース110bの非直線従動面に接触するカム面を含む。一実施例において、本体108は、第1のパッドベース110bの直線従動面に接触するカム面を含む。一実施例において、本体108は、第1のパッドベース110bの弧状従動面に接触するカム面を含む。
【0077】
第1の顎部110は、カム面と従動面の接触点又は接触領域を軸にして回動及び/又は揺動(X-Z平面で)することができる。EMD120の一部と第1のパッド110aとの間に接触が生じると、第1の顎部110が接触点又は接触領域を軸に回動及び/又は揺動し、EMD120の一部に作用する上下方向の力成分が分散し、第1のパッド110aの長さ方向でEMD120にかかる圧力が均等化される。「回動及び/又は揺動」は、1つの点を軸に動くこと、所定の輪郭に沿った表面を軸に動くこと、の両方を含む。
【0078】
同様に、力(ばね114からの復元力の半分)が長手遠位方向102に第2の顎部112にも加えられるが、第2の顎部112は、本体108に対して長手遠位方向102へ移動することを拘束されている。第2の顎部112の長手遠位方向102の動作は、ばね114からの復元力の半分の力成分と同等の大きさで反対方向の力成分によって拘束される。すなわち、力成分が長手近位方向104に作用し、長手方向の第2の顎部112の静的平衡が達成される。この長手方向の力成分は、第2の顎部112の第2のパッドベース112bの底面のカーブした中間部分と本体108の第2のチャンネル108fの下側内面の異形部分との間の接触点又は接触領域に作用する。
【0079】
上下方向の力成分は、接触点又は接触領域でも作用する。本体108の第2のチャンネル108fの下側内面の異形部分はカム面を画定し、このカム面が、第2の顎部112の第2のパッドベース112bの底面のカーブした中間部分により画定される従動面に接触する。カム面と従動面の輪郭(及びばねからの力)により結果として生じる力は、接触点又は接触領域において、近位(負のX方向)に向かう長手方向の力成分と上方(正のZ方向)に向かう上下方向の力成分となって本体108から第2の顎部112に作用する。第2の顎部112に上下方向の力成分が作用する結果として、第2のパッド112aがEMD120の一部へ押圧され、EMD120の一部と第2のパッド112aとを接触させる。一実施例において、従動面は非直線である。一実施例において、従動面は直線である。一実施例において、従動面は弧状である。一実施例において、本体108は、第2のパッドベース112bの非直線従動面に接触するカム面を含む。一実施例において、本体108は、第2のパッドベース112b上の直線従動面に接触するカム面を含む。一実施例において、本体108は、第2のパッドベース112b上の弧状従動面に接触するカム面を含む。
【0080】
第2の顎部112は、カム面と従動面の接触点又は接触領域を軸に回動及び/又は揺動(X-Z平面で)することができる。EMD120の一部と第2のパッド112aとの間に接触が生じると、第2の顎部112が、接触点又は接触領域を軸に回転及び/又は揺動し、EMD120の一部に作用する上下方向の力成分が分散し、第2のパッド112aの長さ方向でEMD120にかかる圧力が均等化される。
【0081】
第1の顎部110及び第2の顎部112は、互いに独立して本体108のカム面を軸にして自在に回動及び/又は揺動することができ、第1の顎部110と第2の顎部112とは互いに接続されていない。一実施例において、第1の顎部110と第2の顎部112は、単品製造部品で互いに直接には接続されない。一実施例において、第1の顎部110と第2の顎部112は、リンクを介して互いに直接には接続されない。一実施例において、第1の顎部110がカム面を軸に回動するとき、第1のパッド110aの遠位端及び近位端は、トルカー100の長手方向軸から半径方向に離れるように動く。一実施例において、第1のパッド110aの遠位端及び近位端と第2のパッド112aの遠位端及び近位端とは、第1の顎部110と第2の顎部112がカム面を軸に回動するとき、トルカー100の長手方向軸から半径方向に離れるように動く。
【0082】
第1のパッド110aと第2のパッド112aとが互いに対し押し付けられ、各々で円形断面を有するEMD120を押圧すると、第1のパッド110a及び第2のパッド112aのそれぞれはEMD120の周囲でわずかに変形し、第1のパッド110aの底面とEMD120の一部の周面とが第1のパッド110aの長さ方向で接触し、第2のパッド112aの上面とEMD120の一部の周面とが第2のパッド112aの長さ方向で接触する。一実施例において、圧力は、完全な把持状態において、EMD120の一部と接触するエラストマーパッドの長さ方向でEMD120に対し均等化される。一実施例において、圧力は、完全な把持状態において、EMD120の一部と接触するエラストマーパッドの長さ全域でEMD120に対し均等化される。一実施例において、圧力は、完全な把持状態において、EMD120の一部と接触するエラストマーパッドの全長のうちの大部分でEMD120に対し均等化される。一実施例において、エラストマーパッドとEMD120の一部との間の圧力は、完全な把持状態において、エラストマーパッドの長さ全域で実質的に均等化される。
【0083】
第1のパッド110aがEMD120の周囲で部分的に変形し、第2のパッド112aがEMD120の周囲で部分的に変形すると、すなわち、パッドのそれぞれが長さ方向でEMD120の円形断面の円弧に適応すると、両パッドは反対方向から互いに向かって押し付けられ、EMD120がそれらの間にピンチされる。
【0084】
図8を参照すると、部分的ピンチ状態のトルカー100において、ノブ106は、本体108に対して「完全には閉じていない」位置(不完全閉位置)にある。トルカー100は、ピンチ状態からアンピンチ状態への遷移中でEMD120を部分的にピンチしている。ノブ106を本体108に向けてねじ込む方向にノブ106を本体108に対して回転させることにより、ノブ106は、本体108に対して長手近位方向104に移動し、内部突起106cの近位端面と第1の顎部110及び第2の顎部112の遠位端面との間にギャップが無くなる。具体的には、ノブ106の内部突起106cの近位端面と第1の顎部110の第1のパッドベース110bの傾斜遠位端面110fとが接触し(すなわち、ギャップ無し)、ノブ106の内部突起106cの近位端面と第2の顎部112の第2のパッドベース112bの傾斜遠位端面とが接触する。
【0085】
ノブ106が本体108に向かってねじ込まれると、ノブ106の内部突起106cの近位端面が長手近位方向104へ移動し、第1の顎部110の第1のパッドベース110bの傾斜遠位端面110fを長手方向近位方向104に押す。内部突起106cの近位端面が、第1の顎部110の傾斜遠位端面110fを長手近位方向104に押すと、第1の顎部110の傾斜遠位端面110fの傾斜方向(傾斜角度)に従い、第1の顎部110の第1のパッド110aの遠位端がEMD120から半径方向に開いていき、EMD120から離れる。同様に、内部突起106cの近位端面が、第2の顎部112の傾斜遠位端面を長手近位方向104に押すと、第2の顎部112の傾斜遠位端面の傾斜方向(傾斜角度)に従い、第2の顎部112の第2のパッド112aの遠位端がEMD120から半径方向に開いていき、EMD120から離れる。
【0086】
不完全閉位置において、ノブ106が本体108に向かってねじ込まれると、ノブ106の内部突起106cの近位端面が長手近位方向104へ移動し、第1の顎部110及び第2の顎部112を押して、第1の顎部110及び第2の顎部112をピンチ状態の位置から近位側へ移動させる。この作動が、ピンチ状態での圧縮からさらにばね114を圧縮し、長手遠位方向102のばね復元力を増加させ、ピンチ状態のときよりも大きくする。
【0087】
ノブ106が本体108に対して不完全閉位置にあるトルカー100の部分的ピンチ状態において、第1のパッドベース110bの近位端にある楔状突起110hの傾斜面と、ばねハウジング116の内部ポスト116d(円筒形カップの近位基部から遠位方向に延びる)にある前記傾斜面に対面した面取り遠位端面と、も接触し(すなわち、ギャップが無くなる)、第2のパッドベース112bの近位端にある楔状突起の傾斜面と、ばねハウジング116の内部ポスト116dにある前記傾斜面に対面した面取り遠位端面と、も接触する。
【0088】
トルカー100の部分的ピンチ状態において、第1の顎部110の第1のパッド110a及び第2の顎部112の第2のパッド112aは、トルカー100の長手方向中心線に対し整列していない状態にある。トルカー100の部分的ピンチ状態において、第1の顎部110の第1のパッド110aと第2の顎部112の第2のパッド112aは、平行ではなく、EMD120の一部を部分的にピンチし且つ部分的にアンピンチしている。具体的に言えば、整列していない状態にあるので、第1のパッド110aと第2のパッド112aは、近位端に向かってはEMD120の一部と接触(又は部分的に接触)しており、第1のパッド110aと第2のパッド112aは、遠位端に向かってはEMD120の一部と接触していない。一実施例において、顎部の遠位端及び近位端のどちらかが、該顎部の遠位端及び近位端の他方より先に相手から離れる。
【0089】
上述したように、本体108の第1のチャンネル108eの上側内面の異形部分は、カム面を画定し、第1の顎部110の第1のパッドベース110bの上面のカーブした中間部分110jは、従動面を画定する。第1の顎部110の第1のパッドベース110bには、長手近位方向104に長手方向の力成分が作用し、ばね114からの復元力の半分とで長手方向の静的平衡が達成される。この長手方向の力成分は、ピンチ状態でかかる力成分よりも大きい。カム面と従動面の輪郭により、上下方向の力成分も、第1の顎部110の第1のパッドベース110bに作用する。長手方向の力成分は近位側に向けられ、上下方向の力成分は下方に向けられる。トルカー100の部分的ピンチ状態において、上下方向の力成分は、第1のパッド110aの近位部分をEMD120に押し付ける。EMD120の一部と第1のパッド110aの近位部分とが接触する。
【0090】
同様に、本体108の第2のチャンネル108fの下側内面の異形部分がカム面を画定し、第2の顎部112の第2のパッドベース112bの底部表面のカーブした中間部分が従動面を画定する。
【0091】
長手方向の力成分が、第2の顎部112の第2のパッドベース112bに長手近位方向104で作用し、ばね114からの復元力の半分とで長手方向の静的平衡が達成される。この長手方向の力成分は、ピンチ状態でかかる力成分よりも大きい。カム面と従動面の輪郭により、上下方向の力成分も、第2の顎部112の第2のパッドベース112bに作用する。長手方向の力成分は近位側に向けられ、上下方向の力成分は上方に向けられる。トルカー100の部分的ピンチ状態において、上下方向の力成分は、第2のパッド112aの近位部分をEMD120に押し付ける。EMD120の一部と第2のパッド112aの近位部分とが接触する。
【0092】
第1のパッド110aの近位部分及び第2のパッド112aの近位部分は、それぞれEMD120の一部の周囲で変形する。第1のパッド110aと第2のパッド112aの各近位部分は、EMD120の一部を部分的にピンチするように、反対方向から互いに向かって押し付けられている。
【0093】
図9を参照すると、トルカー100のアンピンチ状態において、ノブ106は、本体108に対して閉位置にある。トルカー100のアンピンチ状態において、内腔118内のEMD120は、長手近位方向104へ引き抜くことができ、あるいは、EMD120は、内腔118内に長手遠位方向102で挿入することができる。ノブ106を本体108に向けてねじ込む方向で、それ以上移動できなくなるまで完全にノブ106を本体108に対して回転させると、ノブ106は、本体108に対して最も近位の位置まで移動する。部分的ピンチ状態と同様に、内部突起106cの近位端面と第1の顎部110及び第2の顎部112の遠位端面との間にギャップは存在しない。
【0094】
トルカー100の完全なアンピンチ状態において、ノブ106の内部突起106cの近位端面は、その最も近位の位置にある。ノブ106の内部突起106cの近位端面(又は近位端面の縁)は、中心線から半径方向に最も離れた位置にある第1の顎部110の傾斜遠位端面110fの一部において、第1の顎部110の傾斜遠位端面110fと接触する。第1の顎部110の傾斜遠位端面110fの傾斜方向(傾斜角度)により、第1の顎部110の第1のパッド110aの遠位端は、トルカー100の長手方向中心線から離れたその最も半径方向で遠い位置に移動する。同様に、ノブ106の内部突起106cの近位端面(又は近位端面の縁)は、中心線から半径方向に最も離れた位置にある第2の顎部112の傾斜遠位端面の一部において、第2の顎部112の傾斜遠位種面と接触する。第2の顎部112の傾斜遠位端面の傾斜方向(傾斜角度)により、第2の顎部112の第2のパッド112aの遠位端は、トルカー100の長手方向中心線から離れたその最も半径方向で遠い位置に移動する。
【0095】
トルカー100の完全なアンピンチ状態において、ノブ106の内部突起106cの近位端面(又は近位端面の縁)は、第1の顎部110及び第2の顎部112を長手近位方向104へ、到達可能な最も近位の位置まで押す。到達可能な最も近位の位置は、トルカー100のばね114の最大圧縮に対応する。トルカー100のばね114からの最大復元力が発生し、第1の顎部110及び第2の顎部112に対して長手近位方向102へ作用する。
【0096】
トルカー100の完全なアンピンチ状態において、第1のパッドベース110bの近位端にある楔状突起110hの傾斜面は、その最も近位の位置にあり、ばねハウジング116の内部ポスト116d(円筒形カップの近位基部から遠位方向に延びる)の面取り遠位端面に接触して押し付けられる。第1のパッドベース110bの近位端にある楔状突起110hの傾斜面の傾斜方向(傾斜角度)により、第1の顎部110の第1のパッド110aの近位端は、トルカー100の長手方向中心線から半径方向に離れるように動く。同様に、第2のパッドベース112bの近位端における楔状突起の傾斜面は、その最も近位の位置にあり、ばねハウジング116の内部ポスト116dの面取り遠位端面に接触して押し付けられる。第2のパッドベース112bの近位端にある楔状突起の傾斜面の傾斜方向(傾斜角度)により、第2の顎部112の第2のパッド112aの近位端は、トルカー100の長手方向中心線から半径方向に離れるように動く。
【0097】
トルカー100の完全なアンピンチ状態において、第1の顎部110及び第2の顎部112の近位端及び遠位端の両方が、トルカー100の長手方向中心線から最も半径方向に離れた位置にあり、EMD120の直径よりも大きいギャップ間隔を第1のパッド110aと第2のパッド112aの対向する最外面の間に長さ方向で形成する。換言すれば、第1の顎部110の第1のパッド110a及び第2の顎部112の第2のパッド112aは非把持状態にあり、トルカー100はEMD120をピンチしていない。
【0098】
一実施例に係るトルカー100において、0.014インチ(0.356mm)のガイドワイヤのトルク目標は、2mNm以上である。別の言い方をすれば、一実施例において、トルカー100は、EMDがトルカーに対して滑らない2mNm以上を伝達又は印加する。一実施例に係るトルカー100において、各パッドのエラストマーパッドの長さは50mm以下である。一実施例に係るトルカー100において、エラストマーパッドの厚さは0.5mmから2mmの範囲にある。一実施例に係るトルカー100において、エラストマーパッドの係数は250MPaから320MPaの範囲にある。一実施例に係るトルカー100において、パッドベースの材料はステンレス鋼である。一実施例に係るトルカー100において、パッドの弾性率は3GPa以上である。
【0099】
図10を参照すると、一実施例に係る受動型トルカー100は、可動式の第1の顎部110と固定式の第2の顎部112とを含む。一実施例において、受動型トルカー100は、2つ以上の可動式顎部を含む。一実施例において、受動型トルカー100は、ハウジング116にベベルギア116bを含まず、ハウジング116が手動で操作される。一実施例において、受動型トルカー100は、ハウジング116にベベルギア116bを含まず、プーリのような機械的な回転手段を含む。
【0100】
図11図12、及び図13を参照すると、一実施例に係る能動型トルカー200は、ノブ206、本体208、第1の顎部210、第2の顎部212、第1のばね214、第2のばね216、第1のピン218、第2のピン220、ハウジング222、及び締め具224を含む。トルカー200は、全体に延びるトルカー200の長手方向中心線に沿った内腔226を含む。内腔226の直径は、トルカー200を使用するEMDの直径よりも大きい径とされる。
【0101】
トルカー200のアンピンチ状態において、ENDは、トルカー200の遠位端から長手近位方向204へ内腔226に挿入され、そしてトルカー200の遠位端で長手遠位方向202へ内腔226から引き抜かれるか、又は、EMDは、トルカー200の近位端から長手遠位方向202へ内腔226に挿入され、そしてトルカー200の近位端で長手近位方向204へ内腔226から引き抜かれる。受動型トルカーに関して上述したように、EMDがトルカーにどのように挿入されたかとは無関係に、遠位端又は近位端のいずれかからEMDをトルカーから取り出すことができる。トルカー200のピンチ状態において、EMDの一部がトルカー200に対して固定される。具体的には、ピンチ状態において、トルカー200の第1の顎部210及び第2の顎部212がEMD228(図14参照)のシャフトの一部をピンチし、その結果、長手方向軸の周りの又は長手方向軸に沿ったトルカー200の回転及び/又は並進により、ピンチされたEMDのシャフトの一部が相応に回転及び/又は並進する。能動型トルカー200は、常態で開状態又は解放状態にあり、EMDはアンピンチである。操作者は、EMDをピンチするために、アクチュエータを作動させてばね付勢を克服し、トーカを閉じる必要がある。
【0102】
ノブ206は、遠位部分206a及び近位部分206bを含み、両部分の長手方向中心線がトルカー200の長手方向中心線と整列する。一実施例において、ノブ206は、遠位部分206aと近位部分206bとで個別の内径及び外径を有する中空円筒である。一実施例において、ノブ206の遠位部206aは中空円筒である。一実施例において、ノブ206の遠位部分206aは、外壁に平坦な外面の配列を有する中空円筒であり、例えば、雌ねじが存在しない六角ナットの形状である。一実施例において、ノブ206の遠位部分206aは、外壁に異形面の配列を有する中空円筒である。一実施例において、ノブ206の遠位部分206aは、平滑な内壁を有する中空円筒である。一実施例において、ノブ206の近位部分206bは、雌ねじ206cを有する中空円筒であり、雌ねじ206cは円筒の内壁にあるねじである。一実施例において、ノブ206の近位部分206bは、外壁に異形面の配列を有する中空円筒である。一実施例において、ノブ206の近位部分206bは、平滑な外壁を有する中空円筒である。一実施例において、ノブ206の近位部分206bは、刻み付きの外壁を有する中空円筒である。一実施例において、ノブ206は、EMDのシャフトの一部を通す内部経路を有する成形部品などの単品製造部品である。一実施例において、ノブ206は、EMDのシャフトの一部を通す内部経路を有する組み立て部品である。
【0103】
本体208は、遠位部分208a、中間部分208b、及び近位部分208cを含み、全ての部分の長手方向中心線がトルカー200の長手方向中心線と整列する。一実施例において、本体208は、遠位部分208a、中間部分208b、及び近位部分208cにおいて個別の直径を有する開放円筒である。一実施例において、遠位部分208aの外壁は、雄ねじ208dを含む。一実施例において、遠位部分208aの内壁の一部に円錐形区域を含み、円錐形区域は、長手方向軸を横切る面(すなわちY-Z面)における直径が線形増加する区域又は線形減少する区域である。一実施例において、遠位部分208aの内壁は、円錐形区域を有する複数の部分を含み、その円錐形区域は、長手方向軸を横切る面(すなわち、Y-Z面)における直径が線形増加する区域及び線形減少する区域を含んでいる。
【0104】
一実施例において、本体208の中間部分208bは、外壁に異形面の配列を有する中空円筒である。一実施例において、本体208の中間部分208bは、平滑な外壁を有する中空円筒である。一実施例において、本体208の中間部分208bは、刻み付き外壁を有する中空円筒である。一実施例において、本体208の近位部分208cは、近位端面に、締め具224を受け入れるねじ付き穴を含む。一実施例において、本体208は、EMDのシャフトの一部を通す内部経路を有する、成形品などの単品製造部品である。一実施例において、本体208は、EMDのシャフトの一部を通す内部経路を有する、組み立て部品である。
【0105】
第1の顎部210は第1のパッド210aと第1のパッドベース210bとを含み、第2の顎部212は第2のパッド212aと第2のパッドベース212bとを含む。一実施例において、第1のパッド210aは第1のパッドベース210bに固着され、第2のパッド212aは第2のパッドベース212bに固着される。一実施例において、第1のパッドベース210bは、トルカー200の長手方向軸に沿う方向のベース最長寸法に相当する長手方向軸を有する平行六面体状部材である。一実施例において、第1のパッドベース210bは、トルカー200の長手方向軸に沿う方向のベース最長寸法に相当する長手方向軸を有する立方体状部材である。一実施例において、第1のパッドベース210bは、第1のパッド210aを貼り付ける平坦な底面を含む。一実施例において、第2のパッドベース212bは、トルカー200の長手方向軸に沿う方向のベース最長寸法に相当する長手方向軸を有する平行六面体状部材である。一実施例において、第2のパッドベース212bは、トルカー200の長手方向軸に沿う方向のベース最長寸法に相当する長手方向軸を有する立方体状部材である。一実施例において、第2のパッドベース212bは、第2のパッド212aを貼り付ける平坦な上面を含む。
【0106】
図14を参照すると、一実施例に係る第1のパッドベース210bは、第1のパッド210aが貼り付けられる平坦な底面(下面)210cと、平坦な表側側面210dと、平坦な裏側側面210eと、傾斜した遠位端面210fと、第1のパッドベース210bの中を遠位へ延びるが遠位端面まで貫通はしない穴210hを備えた近位端面210gと、上面(上側面)と、を含み、上面は、遠位部分210iと、第1の中間部分210jと、第2の中間部分210kと、第3の中間部分210mと、近位部分210nと、を備える。一実施例において、第1のパッドベース210bの上面の遠位部分210iと第1の中間部分210jとの間に遷移部分が含まれ、第1のパッドベース210bの上面の第3の中間部分210mと近位部分210nとの間に遷移部分が含まれる。一実施例において、傾斜遠位端面210fは、第1のパッドベース210bの遠位端面から先へ延びている。一実施例において、傾斜遠位端面210fは、第1のパッドベース210bの遠位端面の一部からなる。一実施例において、穴210hの直径は、第1のばね214の外径よりも大きく且つ第1のピン218の外径よりも大きい。一実施例において、第1のパッドベース210bの各部分210i,210j,210k,210m,210nの上面(上側面)は、円周方向に弧状の表面のようにカーブしている。一実施例において、第1のパッドベース210bの各部分210i,210j,210k,210m,210nの上面(上側面)は、平坦面である。
【0107】
一実施例において、第2のパッドベース212bは、第1のパッドベース210bと同一であり、第1のパッドベース210bの各表面とそれぞれ一致する表面を含む。一実施例に係るトルカー200において、第2のパッドベース212bは、その長手方向軸の周りに、第1のパッドベース210bに対して180度回転(反転)している。換言すれば、第1のパッド210aが付けられている第1のパッドベース210bの平坦な底面210cは、第2のパッド212aが付けられている第2のパッドベース212bの平坦な上面と対面している。
【0108】
一実施例において、第1の顎部210の第1のパッド210aの底面は、平坦面である。一実施例において、第1の顎部210の第1のパッド210aの底面は、第1のパッド210a表面の長さ方向に延びる凹の弧状輪郭(横断面、すなわちY-Z面において)を含む平坦面である。一実施例において、第1の顎部210の第1のパッド210aの底面は、第1のパッド210a表面の長さ方向に延びる凹の弧状輪郭(横断面、すなわちY-Z面において)を有するカーブした面である。
【0109】
一実施例において、第2のパッド212aは、第1のパッド210aと同一であり、第1のパッド210aの各表面とそれぞれ一致する表面を含む。一実施例において、第2の顎部212の第2のパッド212aの上面は、第1の顎部210の第1のパッド210aの底面と同一であり、第1のパッド210aの各表面とそれぞれ一致する表面を含む。一実施例において、第1のパッド210aは第1のパッドベース210bに固着され、第2のパッド212aは第2のパッドベース212bに固着される。
【0110】
一実施例において、第1のパッド210a及び第2のパッド212aは、医療用生体適合材料から形成され、パッドで押圧したときに、カテーテル処置で使用されるガイドワイヤなどのEMDの被覆を傷つけず又は貫通しないものとする。一実施例において、第1のパッド210aと第2のパッド212aは、50D-75Dの硬度計測定値の範囲内のエラストマー材料から形成され、SPI-B1,A1,C1,A2,B2,又はC2などの特定の平滑度/粗さ評価で製造される。一実施例において、第1のパッド210a及び第2のパッド2112aは、他の材料と比較して低弾性率値且つ高ひずみ値の天然又は合成材料から形成成される。
【0111】
一実施例において、第1のパッドベース210b及び第2のパッドベース212bは、第1のパッド210a及び第2のパッド212aの材料よりも硬い、生体適合プラスチックなどの医療用生体適合材料から形成される。一実施例において、第1のパッドベース210b及び第2のパッドベース212bは、Ultem1000又はステンレス鋼などの材料から形成される。一実施例において、第1のパッドベース210b及び第2のパッドベース212bは、第1のパッド210a及び第2のパッド212aの材料よりも剛性が高い材料から形成される。一実施例において、第1のパッドベース210b及び第2のパッドベース212bは、3.5GPaの値と同等以上の弾性率を有する材料から形成される。一実施例において、第1のパッドベース210b及び第2のパッドベース212bは、第1のパッド210a及び第2のパッド212aの材料の値の2倍以上の値の弾性率を有する材料から形成される。一実施例において、第1のパッドベース210b及び第2のパッドベース212bは、第1のパッド210a及び第2のパッド212aの材料の10倍の値の弾性率を有する材料から形成される。
【0112】
一実施例に係るトルカー200において、ノブ206の雌ねじ206cは本体208の雄ねじ208dと噛み合い、本体208に対するノブ206の回転によりノブ206と本体208との間の長手方向の距離が変化し、この相対回転の方向に応じてその距離は増減する。ノブ206と本体208との相対回転の単位当たりの長手方向距離の変化は、噛み合ったねじ206d,208dのピッチで決まる。一実施例係るトルカー200において、ノブ106の雄ねじが本体208の遠位部分208aの内壁に形成の雌ねじと噛み合い、本体208に対するノブ206の回転によりノブ206と本体208との間の長手方向の距離が変化し、この相対回転の方向に応じてその距離は増減する。ノブ206と本体208との相対回転の単位当たりの長手方向距離の変化は、噛み合ったねじのピッチで決まる。
【0113】
一実施例において、第1のばね214及び第2のばね216は、螺旋圧縮ばねである。一実施例において、第1のばね214及び第2のばね216は、平らで研磨された端部を有する螺旋圧縮ばねである。一実施例において、第1のばね214及び第2のばね216は、方形で研磨された端部を有する螺旋圧縮ばねである。一実施例において、第1のばね214及び第2のばね216は、中空円筒又は他の形状をした柔軟弾性部材である。一実施例において、第1のばね214と第2のばね216とは、同じ寸法を有し、同じ材料から形成され、そして同じ剛性特性を有するというように、同一である。一実施例において、第1のばね214と第2のばね216とは、異なる寸法を有するか、異なる材料から形成されるか、又は異なる剛性特性を有するというように、異なる。
【0114】
一実施例において、第1のピン218及び第2のピン220は、その各長手方向軸がトルカー200の長手方向軸の方向に向いた円筒(円柱)形のピンである。一実施例において、第1のピン218と第2のピン220とは、同じ寸法を有し、同じ材料から形成される、というように同一である。一実施例において、第1のピン218と第2のピン220とは、異なる寸法を有するか、又は異なる材料から形成される。一実施例において、第1のピン218の外径は第1のばね214の外径と同等以上であり、第2のピン220の外径は第2のばね216の外径と同等以上である。
【0115】
ハウジング222は、遠位部分222a、第1の中間部分222b、第2の中間部分222c、及び近位部分222dを含み、これら全ての部分の長手方向中心線はトルカー200の長手方向中心線と整列する。一実施例において、ハウジング222の遠位部分222aは、EMDが並進及び/又は回転させられるときに、長さ方向におけるEMDの一部の座屈を抑制しねじれを防ぐために遠位へ延びた内腔226を有する支持チューブである。一実施例において、ハウジング222の遠位部分222aは、内腔226を有する円筒形の支持チューブである。
【0116】
ハウジング222の第1の中間部分222bは遷移区域であり、その遠位端の遠位部分222aとその近位端の第2の中間部分22cとを一体的に接続し、内腔226が長手方向中心線に沿って延びている。一実施例において、第1の中間部分222bは、共通の円錐基部でつながっていて両頭頂を切り詰めた二重円錐台形に形成され、長手方向中心線に沿って延びる内腔226を有する。一実施例において、二重円錐台の接続円錐基部の直径は同一であり、ノブ206の遠位部分206aの内径よりも小さい。一実施例において、第1の中間部分222bは、遠位の円錐台と近位の円錐台とを含み、遠位の円錐台は、遠位部分222aの外径から第2の中間部分222cの外周面へ遷移する。一実施例において、第1の中間部分222bは、長手近位方向104に向かって直径が増加する円錐面を有する遠位円錐台と、長手近位方向104へ向かって直径が減少する円錐面及び平坦な近位端面を有する近位円錐台と、を含む。一実施例において、第1の中間部分222bは、弧状輪郭の円錐面を有する二重円錐を含む。
【0117】
ハウジング222の第2の中間部分222cは、第1の中間部分222bと近位部分222dを一体的に接続し、第1の中間部分22bを遠位端で、近位部分222dを近位端で接続する。一実施例において、第2の中間部分222cは円筒形であり、第1のポケット222e及び第2のポケット222fを含み、これらポケットは、第2の中間部分222cの中へ凹設されており且つ第2の中間部分22cの長手方向軸に沿っており、そして、第2の中間部分222cは、近位端に円錐部分222gを含む。一実施例において、第1のポケット222eの長さは第1の顎部210の長さよりも長く、第2のポケット222fの長さは第2の顎部212の長さよりも長い。一実施例において、第1のポケット222eの幅は第1の顎部210の幅より広く、第2のポケット222fの幅は第2の顎部212の幅より広い。一実施例において、円錐部分222gの基部は、ハウジング222の第2中間部分222cの近位端にあり、その円錐面の直径は、長手遠位方向202に向かって減少している。
【0118】
一実施例において、近位部分222dは、遠位部位222h及び近位部位222iを含み、遠位部位222hは、外径及び内径を有するディスク状の円筒であり、近位部位222iは、近位方向に向いた歯をもつベベルギアである。一実施例において、近位部分222dの遠位部位222h及び近位部位222iは、EMDのシャフトの一部を通す内部経路を有する、成形品などの単品製造部品である。一実施例において、近位部分222dの遠位部位222h及び近位部位222iは、EMDのシャフトの一部を通す内部経路を有する、互いに組み付けた1つの一体型ユニットとされる。一実施例において、ハウジング222の近位部分222dは、全体を通して長手方向に延びる2つの孔を含み、この孔の直径は、締め具224のねじ部分の直径より大きく、これらの孔は、近位部分222dの周縁に位置し、本体208の近位部分208cの凹設されたねじ穴の位置と一致する。一実施例において、ベベルギアは、ロボットシステムの駆動部材により駆動されて動作する被駆動部材である。
【0119】
一実施例において、ハウジング222は、EMDのシャフトの一部を通す内部経路を有する、成形品などの単品製造部品である。一実施例において、ハウジング222は、EMDのシャフトの一部を通す内部経路を有する、組み立て部品である。
【0120】
一実施例に係る組み立て後のトルカー200において、本体208は、締め具224によってハウジング222に取り外し可能に固定される。締め具224は、ハウジング222の近位部分222dの孔に挿入され、本体208の近位部分208cに凹設されたねじ穴にねじ込まれる。一実施例に係る組み立て後のトルカー200において、本体208は、粘着剤、接着剤、接合剤、レーザー溶接、超音波溶接、又は組み立て及び製造時に2つの物体をくっつけるその他の手段によって、ハウジング222に固定される。
【0121】
一実施例に係るトルカー200において、第1のばね214は、長手遠位方向202に挿入され、全体が第1の顎部210の穴210hの中に位置し、第2のばね216は、長手遠位方向202に挿入され、全体が第2の顎部212の同様の穴の中に位置する。一実施例に係るトルカー200において、第1のばね214の遠位端は、第1の顎部210の穴210hの遠位端に対して押し付けられ、第2のばね216の遠位端は、第2の顎部212の同様の穴の遠位端に対して押し付けられる。一実施例に係るトルカー200において、第1のピン218は、長手遠位方向202に挿入され、その遠位端が第1の顎部210の穴210hの中で第1のばね214の近位端に当接し、第2のピン220は、長手遠位方向202に挿入され、その遠位端が第2の顎部212の同様の穴の中で第2のばね216の近位端に当接する。
【0122】
一実施例に係るトルカー200において、第1のパッドベース210bは、ハウジング222の第1のポケット222eの中で動作を拘束され、第2のパッドベース212bは、ハウジング222の第2のポケット222fの中で動作を拘束される。具体的には、一実施例において、第1のポケット222eの壁が、(第1のパッドベース210bの平坦な表側側面210d及び平坦な裏側側面210eに接触することによって)第1の顎部210の横方向の動きを拘束し、第2のポケット222fの壁が、第2の顎部212の横方向の動きを拘束する。
【0123】
一実施例において、第1の顎部210の第1のパッドベース210bの上面の一部が本体208の内周壁の一部と接触し、第2の顎部212の第2のパッドベース212bの底面の一部が本体208の内周壁の一部と接触する。一実施例において、第1の顎部210の第1のパッドベース210bの上面の一部が本体208の内周壁の一部と接触し、第1の顎部210の第1のパッドベース210bの上面の一部がハウジング222の内周壁の一部に接触し、そして、第2の顎部212の第2のパッドベース212bの底面の一部が本体208の内周壁の一部に接触し、第2の顎部212の第2のパッドベース212bの底面の一部がハウジング222の一部に接触する。
【0124】
一実施例において、トルカー200は2つの顎部を含み、これら顎部は、互いに対し動作して、当該顎部の少なくとも1つにEMDのシャフトの一部を解放可能に固定する。一実施例において、トルカー200は1つの顎部を含み、この顎部は、トルカー200の本体に対し動作して、当該顎部にEMDのシャフトの一部を解放可能に固定する。一実施例において、トルカー200は2つよりも多い顎部を含み、これら顎部は、互いに対し動作して、当該顎部の少なくとも1つにEMDのシャフトの一部を解放可能に固定する。
【0125】
一実施例に係るトルカー200において、第1のばね214が、本体に対して1つの顎部を付勢する付勢部材として作用する。一実施例に係るトルカー100において、第1のばね214と第2のばね216が、本体に対して2つの顎部を付勢する付勢部材として作用する。一実施例に係るトルカー100において、2つより多いばねが、本体に対して2つより多い顎部を付勢する付勢部材として作用する。
【0126】
図15図16、及び図17を参照すると、一実施例に係る能動型トルカー200が、それぞれ、完全なアンピンチ状態、ピンチ状態へ移行途中のアンピンチ状態、そして、ピンチ状態に相当する段階で、示されている。アンピンチ状態において、トルカー200は、非把持(解放)状態にあり、EMD228をピンチしていない。ピンチ状態において、トルカー200は、完全な把持状態にあり、EMD228の一部をピンチしている。全部で3つの状態(アンピンチ、ピンチへ移行途中のアンピンチ、ピンチ)で図示された実施例において、ノブ206の雌ねじ206cは、本体208の雄ねじ208dと噛み合っている。
【0127】
図15を参照すると、トルカー200の完全なアンピンチ状態において、ノブ206は、本体208に対して開位置にある。トルカー200のアンピンチ状態において、内腔226内のEMD228は、長手近位方向204へ引き出すことができるし、またEMD228は、長手遠位方向202で内腔226に挿入することができる。第1の顎部210の第1のパッドベース210bの上面の第3の中間部分210mと本体208の遠位部分208aの傾斜した内壁とは接触しておらず(すなわち、ギャップが存在)、第2の顎部212の第2のパッドベース212bの底面の対応する中間部分と本体208の遠位部分208aの傾斜した内壁との間にも接触がない。ノブ206のねじが本体208から外れる方向に、ノブ206を本体208に対して回転させることによって、ノブ206は本体208に対して長手遠位方向202へ移動し、第1の顎部210の第1のパッドベース210bの上面の第3の中間部分210mと本体208の遠位部分208aの傾斜した内壁との間のギャップが増加し、第2の顎部212の第2のパッドベース212bの底面の対応する中間部分と本体208の遠位部分208aの傾斜した内壁との間のギャップも増加する。
【0128】
一実施例において、ノブ206は、ねじが外れてノブ206を本体208から取り外すことができるところまで、ノブ206のねじを本体208から外す方向に本体208に対して制限なく回転できる。一実施例において、ノブ206は、ノブ206が本体208から外れないように設けられるストッパに到達するまで、ノブ206のねじを本体208から外す方向に本体208に対して制限なく回転できる。
【0129】
本体208に対してノブ206が開位置にあるトルカー200の完全なアンピンチ状態において、ハウジング222の第1の中間部分222bの近位側円錐面と第1の顎部210の第1のパッドベース210bの傾斜遠位端面210fとが接触し、ハウジング222の第1の中間部分22bの近位側円錐面と第2の顎部212の第2のパッドベース212bの傾斜遠位端面との間にも接触がある。
【0130】
トルカー200の完全なアンピンチ状態において、第1の顎部210の第1のパッド210a及び第2の顎部212の第2のパッド212aは、互いに向き合っており、所定の距離だけ互いに離間し、互いに対して平行であり、EMDがある場合は、EMD228の一部に対して平行であり、EMD228のいずれの部分とも接触していない。第1のパッド210a及び第2のパッド212aは、両パッドの全域でEMD228の一部と接触していない。
【0131】
トルカー200の完全なアンピンチ状態において、第1のばね214及び第2のばね216は、それぞれの静止長に対して圧縮されている。その結果、第1のばね214から長手遠位方向202にばね復元力が作用し、第2のばね216から長手遠位方向202にばね復元力が作用する。(ばね復元力は、静的平衡の間、第1のばね214から及び第2のばね216から長手近位方向204にも作用する。しかし、第1のばね214の近位端及び第2のばね216の近位端は、拘束されている、すなわち、ハウジング222に対して及びハウジング222が取り付けられた本体208に対して固定されている。第1のピン218と第2のピン220の長さは一定であり、そして両ピンは、ハウジング222の第2の中間部分222cの円錐部分222gと近位端が当接するので、ハウジング222に対して及び本体208に対して相対動作することが拘束されている。したがって、この場合のばね復元力は、長手遠位方向202に作用する。)
【0132】
第1のばね214からのばね復元力は、第1のばね214の遠位端と第1のパッドベース210bの穴210hの遠位端内面との接触によって、第1の顎部210に作用する。その結果、第1の顎部210は、第1のパッドベース210bの上面の第1の中間部分210jとノブ206の傾斜した内壁との接触で動きが拘束されるまで、長手遠位方向202へ移動する。同様に、第2のばね216からのばね復元力は、第2のばね216の遠位端と第2のパッドベース212bの穴の遠位端内面との接触によって、第2の顎部212に作用する。その結果、第2の顎部212は、第2のパッドベース212bの底面の対応する第1の中間部分とノブ206の傾斜した内壁との接触で動きが拘束されるまで、長手遠位方向202へ移動する。
【0133】
図16を参照すると、完全なアンピンチ状態から完全なピンチ態へ移行する途中のトルカー200のアンピンチ状態において、ノブ206は、本体208に対して不完全な閉位置にある。ノブ206を本体208へねじ込む方向に、ノブ206を本体208に対して回転させることにより、ノブ206は、本体208に対して長手近位方向204に移動する。その結果、第1の顎部210の第1のパッドベース210bの上面の第3の中間部分210mと本体208の遠位部分208aの傾斜した内壁とが接触し、第2の顎部212の第2のパッドベース212bの底面の対応する中間部分と本体208の遠位部分208aの傾斜した内壁とが接触する。
【0134】
ノブ206を本体208へねじ込むと、ノブ206は、本体208に対して長手近位方向204へ移動し、第1の顎部210及び第2の顎部212を長手近位方向204に押す。長手近位方向204への動作が第1のばね214をアンピンチ状態における圧縮よりもさらに圧縮し、アンピンチ状態における第1のばねの復元力よりも大きな第1のばねの復元力を生じさせ、また、第2のばね216もアンピンチ状態における圧縮よりもさらに圧縮され、アンピンチ状態における第2のばねの復元力よりも大きな第2のばねの復元力が生じる。
【0135】
ノブ206の傾斜した内壁により、ノブ206は、第1の顎部210をトルカー200の長手方向中心線に向け押し下げもし、第2の顎部212をトルカー200の長手方向中心線に向け押し上げもする。換言すれば、第1の顎部210の第1のパッド210aは、半径方向でEMD228の一部に向かって移動し、第2の顎部212の第2のパッド212aも、半径方向でEMD228の一部に向かって移動する。第1のパッド210aと第2のパッド212aは、第1のパッドベース210bの上面の2つの傾斜面と第2のパッドベース212bの下面の2つの傾斜面の結果として、互いに平行に向かい合い、パッド間のEMD228の一部に対して平行な向きを維持する。具体的に言えば、第1のパッドベース210bの上面の第1の中間部分210jの傾斜は、ノブ206の内壁の傾斜と同じであり、第1のパッドベース210bの上面の第3の中間部分210mの傾斜は、本体208の内壁の傾斜と同じである。第1のパッドベース210bの底面210cは平坦。さらに、第1のパッドベース210bの上面の第1の中間部分210jの傾きは、第1のパッドベース210bの上面の第3の中間部分210mの傾きと同じ大きさで符号が逆である。その結果、第1のパッドベース210bの平坦な底面210cと共に第1のパッド210aは、ノブ206が本体208へねじ込まれている間、トルカー200の長手方向中心線に対して平行を維持し、トルカー200の長手方向中心線に向かって移動する。同様にして、第2のパッドベース212bの平坦な上面と共に第2のパッド212aは、ノブ206が本体208へねじ込まれている間、トルカー200の長手方向中心線に対して平行を維持し、トルカー200の長手方向中心線に向かって移動する。
【0136】
図17を参照すると、トルカー200のピンチ状態において、ノブ206は、本体208に対し閉位置にある。トルカー200のピンチ状態において、第1の顎部210の第1のパッド210aと第2の顎部212の第2のパッド212aとは、互いに向かい合い、互いに対し平行であり、EMD228の一部と平行であり、各パッドの全長でEMD228の一部をピンチしている。すなわち、第1のパッド210aと第2のパッド212aは、各パッドの全長でEMD228の一部と接触している。ノブ206を本体208へねじ込む方向に、それ以上移動できなくなるまでノブ206を本体208に対し最後まで回転させることにより、ノブ206は、本体208に対して最も近位の位置まで移動する。
【0137】
ノブ206が本体208ノブ206に対し最も近位の位置にある状態で、ノブ206は、第1の顎部210及び第2の顎部212を長手近位方向204へ、第1のばね214の最大圧縮及び第2のばね216の最大圧縮に対応する最も近位の達成可能な位置まで押し込む。第1のばね214からの最大復元力が第1の顎部210に対して長手遠位方向202へ発生して作用し、第2のばね216からの最大復元力が第2の顎部212に対して長手遠位方向202へ発生して作用する。したがって、最大となる上下方向の力成分が、トルカー200の長手方向中心線に向かって半径方向下方へ第1の顎部を押すように作用し、最大となる上下方向の力成分が、トルカー200の長手方向中心線に向かって半径方向上方へ第2の顎部を押すように作用する。
【0138】
第1のパッド210aと第2のパッド212aとが互いに対し押し付けられ、円形断面を有するEMD228に各々が押し付けられると、第1のパッド210aと第2のパッド212aはそれぞれ、EMD228の周囲でわずかに変形し、第1のパッド210aの全長で、第1のパッド210aの底面とEMD228の一部の周面とが接触し、第2のパッド212aの全長で、第2のパッド212aの上面とEMD120の一部の周面とが接触する。
【0139】
第1のパッド210aがEMD228の周囲で部分的に変形し、第2のパッド212aがEMD228の周囲で部分的に変形すると、すなわち、両パッドがその全長でEMD228の円形断面の円弧に適合すると、これらパッドは互いに反対方向から押し合い、EMD228が当該パッド間にピンチされる。
【0140】
一実施例において、柔軟特性を有するパッドは、200から400MPaの弾性率の大きさを有する。一実施例において、柔軟特性を有するパッドは、パッドの硬度計値が45Dから75Dである。一実施例において、柔軟特性を有するパッドは、200から400MPaの弾性率の大きさを有し且つパッドの硬度計値が45Dから75Dである。一実施例において、顎部パッドからEMDに加わる力の大きさは200から400Nである。一実施例において、パッドの長さは50mm以下である。一実施例において、パッドベースの弾性率は3.5GPa以上の値を有する。一実施例において、パッドベースの弾性率はパッドの弾性率よりも大きい。一実施例において、エラストマーパッドの弾性率は200から400MPaの値を有し、エラストマーパッドの長さは50mm以下の値を有し、エラストマーパッドの硬度計値は45Dから75Dの値を有し、パッドベースの弾性率は3.5GPa以上の値を有する。この段落で言及する顎部のパッドは、トルカー100及びトルカー200における顎部のパッドである。
【0141】
ここに説明するように、トルカー200の把持状態において、EMDのシャフトはトルカー200の内部経路でピンチされている。一実施例において、EMDはトルカー200の内部経路に軸方向で装填される。軸方向装填の場合、シャフトの一部は、最初に内腔226の近位又は遠位開口にEMDの自由端を挿入することによって、トルカー200の内部経路に装填される。
【0142】
別の実施例において、EMDのシャフトはトルカーの内部経路に半径方向で装填される。半径方向の装填は軸方向の装填と対照的で、側方装填又は横方向装填と呼ばれることもある。EMDは、トルカーの長手方向スリット又は開口(トルカーの側面でトルカーの近位端から遠位端まで延びる)を通してトルカー200に装填される。半径方向装填の実施例の場合、内部経路へのアクセスは、トルカー200に沿った長手方向のスリットによってトルカー外周から内部経路へ得られる。
【0143】
図18を参照すると、トルカー100が、一実施例に係るデバイスモジュール32に配置されている。図示しないが、トルカー200も、EMDをロボット制御するデバイスモジュール内に配置することができる。デバイスモジュール32のカセット66は、トルカー100にあるベアリング面117を受け入れるベアリング支持部232を含む。デバイスモジュールのベアリング支持部232は、トルカー100の回転及びスラスト支持を提供し、これにより、トルカー100はデバイスモジュールの長手方向軸の周りを回転できるが、デバイスモジュール自体は回転しない。ノブ106の遠位部分106aは、EMDの座屈防止支持を提供する。一実施例に係るベアリング支持部232は、カセット66内のC字形ブラケットによって形成され、一実施例に係るベアリング支持部232は、カセット66内のブラケットによって部分的に形成されると共にカセット66に枢着されたカバーの一部によって部分的に形成される。
【0144】
一実施例において、遠位部分106aの遠位自由端は、デバイスモジュールの長手方向軸に沿ってデバイス支持体又は可撓性トラック79の直ぐ傍にあり、EMDを並進及び/又は回転させるときに、遠位部分106aの遠位端とトラック79との間でEMDが座屈しないように守られる。一実施例において、遠位部分106aの遠位自由端とデバイス支持体又はトラック79との間の距離は、1インチ(25.4mm)以下であり、一実施例において、0.5インチ(12.7mm)以下である。一実施例において、遠位部分106aの遠位自由端は、デバイス支持体又はトラック79に画定される内腔の中に位置する。一実施例において、トラック79は、デバイスモジュールの長手方向軸と同一線にある位置からデバイスモジュールの長手方向軸からオフセットした位置へ移動可能な柔軟部材から形成される。一実施例において、トラック79は、トラック79の外表面からその中を長手方向に延びる内腔まで届く長手方向のスリットを有する。使用時の位置において、駆動部材(ベベルギア)116bは、駆動部材230と噛み合う。駆動部材は、回転運動をトルカー及びEMDに伝えるべくロボット制御される。
【0145】
一実施例の遠位部分106aの遠位端、一実施例において、トルカーは、近位シャフトを回転させるのが望ましくないステント回収器やある種のコイルなど、ある種のEMDと共に使用され、この場合、アダプタは駆動部材を備えていない。一実施例において、アダプタは、アダプタと特定のEMDの回転を防止するためにカセット又はデバイスモジュールにあるストッパと係合するタブのような機能を含む。
【0146】
受動型トルカー100は、エラストマーパッドと共にピンチする、予荷重ばねを備えた2つの顎付きコレットに似ている。操作者がノブをねじ込むと、顎部は強制的に開状態になる。顎部を再び閉じるには、ノブを緩めて顎部をリリースする。受動型トルカーはEMDに傷を与えず、ワイヤ状デバイスのあらゆるサイズを受け入れ、操作者の力の強さに起因する性能のばらつきを排除する。本発明の派生には、軸方向装填に対する半径方向装填、片側ピンチ、代替の力の発生源、及び代替の作動機構が含まれる。
【0147】
パッドにエラストマー材料を使用すると、金属材料から形成される顎部に比べて、EMDの外表面被覆への損傷が最小限に抑えられる。
【0148】
他の種類のトルク装置が利用可能であるが、最も一般的に使用されるトルク装置は、操作者がノブを締め付けてワイヤ状デバイスのピンバイスを閉じることを必要とする。トルカーの回転及び直線把持は、操作者がノブをどれだけきつく締め付けるかによって決まる。人体強度試験では、集団の5%以上が、ターゲットとするトルク性能である2.5mNmのガイドワイヤトルクを達成するために、ノブに十分なトルクを与えることができないであろうことが示唆されている。直径0.035-0.038インチ(0.889-0.965mm)のデバイスのアクセスワイヤで、6.5mNmトルクを達成するのに十分なノブトルクを提供できる人は、かなり少ないであろう。
【0149】
実施例に基づく説明で開示してきたが、当分野で通常の知識をもつ者であれば、定義された主題の思想及び範囲から逸脱することなく、形態及び細部に変更を加えることができることは、当然認識される。例えば、種々の実施例が、1つ以上の利益を提供する1つ以上の特徴を含むとして説明されているが、説明された特徴は、互いに交換することもでき、あるいは、説明された実施例において互いに又は他の代替的な実施例において、組み合わせることもできる、ということが想到される。ここに開示した技術は比較的複雑であるため、当該技術における全て変更が予見可能であるとは限らない。上記の開示は、可能な限り広範囲であることを明白に意図している。例えば、特に明記しない限り、1つの特定の要素を記述する定義は、複数の同様の特定の要素も包含する。
図1
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図18
【誤訳訂正書】
【提出日】2023-10-18
【誤訳訂正1】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0014
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0014】
細長い医療デバイス(EMD)は、カテーテル(ガイドカテーテル、マイクロカテーテル、バルーン/ステントカテーテルなど)、ワイヤ式デバイス(ガイドワイヤ、塞栓コイル、ステント回収器など)、及び、これらの組み合せを有するデバイスを指す(ただしこれらに限定されない)。ワイヤ式EMDには、ガイドワイヤ、マイクロワイヤ、塞栓コイル用の近位プッシャー、ステント回収器、自己拡張型ステント、及び、フローダイバーターが含まれる(ただしこれらに限定されない)。通例、ワイヤ式EMDは、その近位終端にハブ又はハンドルをもたない(ただしこれに限定されない)。一実施例において、EMDは、カテーテル近位端のハブと、該ハブからカテーテル遠位端に向かって延びる柔軟シャフトと、をもつカテーテルを有し、シャフトがハブよりも柔軟である。一実施例において、カテーテルは、ハブとシャフトとの間で遷移する移行部分を含み、この移行部分の柔軟性はハブよりも柔らかく且つシャフトよりも硬い。一実施例において、移行部分は、張力緩和部(ストレインリリーフ)である。
【誤訳訂正2】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0043
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0043】
各デバイスモジュール32a-dは、駆動モジュール68a-dと、駆動モジュール68a-dに搭載され連結されたカセット66a-dと、を含む。図3に図示の実施例において、カセット66a-dの各々は、上下方向の向きでカセット66a-dに装着される。他の実施例において、各カセット66a-dは、他の装着方向で駆動モジュール68a-dに取り付けられ得る。各カセット66a-dは、EMD(図示せず)の近位部と接続し支持するように構成されている。さらに、各カセット66a-dは、対応するステージ62a-dの作動で直線部材60に沿って直線的に移動することにより提供される直線動作に加えて、1つ以上の自由度を提供する要素を含むことができる。例えば、カセット66a-dは、駆動モジュール68a-dに連結されたカセットにおいてEMDを回転させるために使用される要素を、含むことができる。各駆動モジュール68a-dは、各カセット66a-d内の機構に駆動インターフェースを提供して自由度を追加するために、少なくとも1つのカプラを含む。また、各カセット66a-dは、デバイス支持体79a-dが配置されるチャンネルを含み、各デバイス支持体79a-dは、EMDの座屈を防止するために使用される。デバイスモジュール32a,32b,32cのそれぞれに支持アーム77a,77b,77cを取り付け、デバイスサポート79b,79c,79dの近位端をそれぞれ支持する固定点を設ける。ロボット駆動装置24は、デバイス支持体79、遠位支持アーム70、及び支持アーム77に接続されたデバイス支持接続部72も含む。支持アーム77は、最も遠位のデバイスモジュール32aに収容された最も遠位のデバイス支持体79aの近位端を支持する固定点を提供するために使用される。さらに、イントロデューサインターフェース支持体(リダイレクタ)74を、デバイス支持接続部72及びEMD(例えば、イントロデューサシース)に接続することができる。このロボット駆動装置24の構成は、単一の直線部材におけるアクチュエータの使用で、ロボット駆動装置24の体積及び重量を減少させることができる、という利点を有する。
【国際調査報告】