(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-24
(54)【発明の名称】カルシニューリン阻害剤の腎毒性を最小限に抑えるためのプロトコール
(51)【国際特許分類】
A61K 38/13 20060101AFI20240117BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240117BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240117BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240117BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20240117BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
A61K38/13
A61P13/12
A61P37/06
A61P43/00 121
A61K31/573
A61K31/5377
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542902
(86)(22)【出願日】2022-01-14
(85)【翻訳文提出日】2023-09-04
(86)【国際出願番号】 IB2022050316
(87)【国際公開番号】W WO2022153250
(87)【国際公開日】2022-07-21
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519402236
【氏名又は名称】アウリニア ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】フイジンガ,ロバート ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ソロモンス,ネイル
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084DA11
4C084MA02
4C084MA37
4C084MA52
4C084NA07
4C084ZA81
4C084ZB08
4C084ZC75
4C086BC73
4C086GA02
4C086GA12
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA07
4C086ZA81
4C086ZB08
4C086ZC75
(57)【要約】
限定されるものではないが、カルシニューリン阻害剤の腎毒性などの望ましくない副作用を最小限に抑えながら、タンパク尿腎臓病の治療における、ボクロスポリンの有効性を最大限にするために薬力学レジメンを用いる方法を、本明細書で提供する。腎機能及び/または状態の調査方法、ならびに、望ましくない副作用を最小限に抑えながら、タンパク尿腎臓病の治療における、ボクロスポリンの有効性を最大化するために、ボクロスポリン投薬及び投与を変更、停止、回復、及び/または再開する、対応するプロトコールもまた提供する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク尿腎臓病の治療における、または移植と関連する、慢性的なカルシニューリン阻害剤の腎毒性を軽減する方法であって、前記疾患を診断された対象、または移植を受けている、もしくは移植を受ける候補である対象に、所定の日用量の、有効量のボクロスポリンを、少なくとも55週間の計画された治療期間にわたり投与することを含み、前記方法が、
(a)前記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において、前記対象の、推定される糸球体濾過量(eGFR)を調査することと、
(b)(i)前記第1の時点と第2の時点との間で、前記対象のeGFRが、目標%を超えて、所定の値未満まで低下した場合に、前記日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または前記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、
(ii)前記第1の時点と第2の時点との間で、前記対象の前記eGFRが、前記目標%を下回って低下した場合に、同じ所定の日用量のボクロスポリンを前記対象に投与し続けることと、
をさらに含む、前記方法。
【請求項2】
前記第1の時点が、前記プロトコールの開始直前である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定の値が、50~90mL/分/1.73m
2の範囲である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記所定の値が、およそ60mL/分/1.73m
2である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記目標%が、20~45%の範囲である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記目標%が、およそ30%である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(a)前記対象の尿タンパク質クレアチニン比率(UPCR)が、朝最初の排尿、または24時間の尿により測定すると>1mg/mgであることを判定することと、
(b)前記対象が、>45mL/分/1.73m
2の慢性腎疾患疫学共同式(CKD-EP1)により測定されるeGFRを有することを判定することと、
により、前記対象において、前記方法を行う前に、前記対象が前記方法に適切であるか否かを同定することをさらに含み、(a)及び(b)の条件が満たされる場合、前記対象が、前記方法に適切であると同定される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
タンパク尿腎臓病の治療における、または移植と関連する、慢性的なカルシニューリン阻害剤の腎毒性を軽減する方法であって、前記疾患を診断された対象、または移植を受けている、もしくは移植を受ける候補である対象に、所定の日用量の、有効量のボクロスポリンを、エンドポイントまでの計画された治療期間にわたり投与することを含み、前記方法が、
(a)前記治療期間の前の第1の時点、及び前記エンドポイントの前かつ前記治療期間の開始後に生じる第2の時点において、前記対象の尿タンパク質クレアチニン比(UPCR)を測定し、前記第1の時点と第2の時点との間で、前記UPCRのあらゆる低下を判定することと、
(b)前記対象のUPCRが、前記第2の時点において、少なくとも所定量の低下を示すことができない場合に、前記対象にボクロスポリンを投与することを中断し、前記所定量の低下が示される場合に、前記投与を継続することと、
をさらに含む、前記方法。
【請求項9】
前記第1及び第2の時点において、前記対象の血液中のC3/C4濃度を測定することと、前記C3/C4の濃度が、前記第2の時点において正規化されたか否かを判定し、前記正規化が判明した場合、前記対象にボクロスポリンの投与を復活させる、または継続させ、正規化がまだ生じていない場合、前記中断を継続することと、をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
タンパク尿腎臓病の治療方法であって、前記タンパク尿腎臓病と診断された対象に、所定の日用量の、有効量のボクロスポリンを、少なくとも8週間の計画された治療期間にわたり投与することを含み、前記有効量が、15.8mg BID、または7.9mgボクロスポリンBIDである、前記方法。
【請求項11】
移植と関連する慢性的なカルシニューリン阻害剤の腎毒性の軽減方法であって、移植を受けている、または移植を受ける候補である対象に、所定の日用量の、有効量のボクロスポリンを、少なくとも8週間の計画された治療期間にわたり投与することを含み、前記有効量が、15.8mg BID、または7.9mgボクロスポリンBIDである、前記方法。
【請求項12】
移植拒絶反応の軽減方法であって、移植を受けている、または移植を受ける候補である対象に、所定の日用量の、有効量のボクロスポリンを、少なくとも8週間の計画された治療期間にわたり投与することを含み、前記有効量が、15.8mg BID、または7.9mgボクロスポリンBIDである、前記方法。
【請求項13】
前記タンパク尿腎臓病が狼瘡性腎炎である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記移植が、臓器移植または組織移植である、請求項1~9、11、及び12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記臓器移植が、腎臓(腎)移植、肝移植、または心臓移植である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記臓器移植が腎臓(腎)移植である、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記対象が、慢性的なカルシニューリン阻害剤の腎毒性に対する感受性が増加している、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記対象が、糸球体腎症を示す、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記対象が、
(a)P-糖タンパク質発現及び/または活性の変動;
(b)CYP3A4/5発現及び/または活性の変動;
(c)高齢の腎年齢;
(d)塩分欠乏;
(e)非ステロイド性抗炎症薬の使用;
(f)TGF-β及び/またはACEにおける遺伝多型;及び/または
(g)膜性腎症
の1つ以上を示す、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
(a)前記対象の間質線維化及び尿細管萎縮を、前記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、
(b)(i)前記第1及び第2の時点の間で、間質線維化及び尿細管萎縮が、皮質領域において5%超観察される場合に、前記日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または前記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、
(ii)前記第1及び第2の時点の間で、間質線維化及び尿細管萎縮が、皮質領域において5%未満観察される場合に、同じ所定の日用量のボクロスポリンを前記対象に投与し続けることと、
をさらに含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
(a)前記対象における内側細動脈硝子化の存在を、前記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、
(b)(i)前記第1の時点と第2の時点との間で、内側細動脈硝子化が存在する場合、前記日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または前記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、
(ii)前記第1の時点と第2の時点との間で、内側細動脈硝子化が存在しない場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを前記対象に投与し続けることと、
をさらに含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
内側細動脈硝子化が、輸入細動脈の壁周辺で、壊死平滑筋細胞が、局所的に円形の塊状タンパク質(硝子質)堆積物で置き換えられること、及び/または血管内腔が狭くなることにより同定される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
(a)前記対象における糸球体性損傷の存在を、前記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、
(b)(i)前記第1の時点と第2の時点との間で、糸球体性損傷が存在する場合、前記日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または前記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、
(ii)前記第1の時点と第2の時点との間で、糸球体損傷が存在しない場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを前記対象に投与し続けることと、
をさらに含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
糸球体損傷が、全体及び部分的糸球体硬化、尿細管萎縮、間質線維化、及び/または動脈硬化を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
糸球体損傷が、総腎慢性スコアが1を超えるときに存在する、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
(a)前記対象における傍糸球体装置(JGA)過形成の存在を、前記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、
(b)(i)前記第1の時点と第2の時点との間で、JGA過形成が存在する場合、前記日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または前記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、
(ii)前記第1の時点と第2の時点との間で、JGA過形成が存在しない場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを前記対象に投与し続けることと、
をさらに含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
JGA過形成が、
(a)血管成分、メサンギウム細胞成分、尿細管成分(密集斑)の存在の1つ以上を含む、傍糸球体装置成分の増大、及び/または
(b)細胞内レニン顆粒の存在
を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
(a)前記対象における尿細管微小石灰化の存在を、前記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、
(b)(i)前記第1の時点と第2の時点との間で、尿細管微小石灰化が存在する場合、前記日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または前記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、
(ii)前記第1の時点と第2の時点との間で、尿細管微小石灰化が存在しない場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを前記対象に投与し続けることと、
をさらに含む、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
(a)前記対象におけるP-糖タンパク質(P-gp)発現を、前記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、
(b)(i)前記第1の時点と第2の時点との間で、P-gpの発現喪失が所定の値を超えた場合に、前記日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または前記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、
(ii)前記第1の時点と第2の時点との間で、P-gpの発現喪失が所定の値未満となった場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを前記対象に投与し続けることと、
をさらに含む、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
P-gpの発現喪失に対する前記所定の値が、皮質領域における尿細管でのP-gp発現の、10%の喪失である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
(a)前記対象におけるカルシニューリン阻害剤(CNI)の腎毒性及び/またはBanffスコアを、前記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、
(b)(i)前記第1の時点と第2の時点との間で、CNI腎毒性及び/またはBanffスコアが所定範囲の外にある場合、前記日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または前記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、
(ii)前記第1の時点と第2の時点との間で、CNI腎毒性及び/またはBanffスコアが所定範囲内にある場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを前記対象に投与し続けることと、
をさらに含む、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
(a)CNI腎毒性スコアの前記所定範囲が0~3である;及び/または
(b)Banffスコアの前記所定範囲が0~3である、
請求項31に記載の方法。
【請求項33】
(a)前記対象の、アメリカ国立衛生研究所の活動指数(NIH-AI)、アメリカ国立衛生研究所の慢性指数(NIH-CI)、及び尿細管間質性活動指数(TIAI)のうちの1つを、前記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、
(b)(i)前記第1の時点と第2の時点との間で、前記NIH-AI、NIH-CI、及び/またはTIAIが所定範囲の外にある場合、前記日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または前記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、
(ii)前記第1の時点と第2の時点との間で、前記NIH-AI、NIH-CI、及び/またはTIAIが所定範囲内にある場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを前記対象に投与し続けることと、
をさらに含む、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
(a)NIH-AIの前記所定範囲が0~6である;及び/または
(b)NIH-CIの前記所定範囲が0~3である;及び/または
(c)TIAIの前記所定範囲が0~5である、
請求項33に記載の方法。
【請求項35】
(a)前記対象の尿検体での尿アニオンギャップ(UAG)を、前記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、
(b)(i)前記第1の時点と第2の時点との間で、前記UAGが所定範囲の外にある場合、前記日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または前記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、
(ii)前記第1の時点と第2の時点との間で、前記UAGが前記所定範囲内にある場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを前記対象に投与し続けることと、
をさらに含む、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
UAGの前記所定範囲が20~90mEq/Lである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
(a)前記対象の血清及び尿試料において、高カリウム血症、低マグネシウム血症、マグネシウム消費、及び/または高尿酸血症を、前記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、
(b)(i)前記第1の時点と第2の時点との間で、高カリウム血症、低マグネシウム血症、マグネシウム消費、及び/または高尿酸血症が検出される場合、前記日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または前記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、
(ii)前記第1の時点と第2の時点との間で、高カリウム血症、低マグネシウム血症、マグネシウム消費、及び高尿酸血症が検出されない場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを前記対象に投与し続けることと、
をさらに含む、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
(a)高カリウム血症が、5mmol/Lを超える血清カリウム濃度により判定され、
(b)低マグネシウム血症が、1.4mg/dL未満の血清マグネシウム濃度により判定され、
(c)マグネシウム消費が、2mEqを超える尿マグネシウム濃度により判定され、
(d)高尿酸血症が、7.0mg/dLを超える血清尿酸濃度により判定される、
請求項37に記載の方法。
【請求項39】
(a)前記対象の血清試料における血清クレアチニン(SCr)及び/または血清シスタチンC(SCysC)を、前記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、
(b)(i)前記第1の時点と第2の時点との間で、前記SCr及び/またはSCysCレベルが所定範囲を上回って上昇する場合、前記日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または前記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、
(ii)前記第1の時点と第2の時点との間で、前記SCr及び/またはSCysCレベルが所定範囲内にある場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを前記対象に投与し続けることと、
をさらに含む、請求項1~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
(a)SCrレベルの前記所定範囲が0.84~1.21mg/dLである;及び/または
(b)SCysCレベルの前記所定範囲が1mg/L未満である、
請求項39に記載の方法。
【請求項41】
(a)前記対象の血清試料において、クレアチニンクリアランス(CrCl)及び/または血中尿素窒素(BUN)を、前記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、
(b)(i)前記第1の時点と第2の時点との間で、前記CrClレベルが、第1の所定範囲を下回って低下し、かつ、BUNレベルが、第2の所定範囲を上回って上昇する場合、前記日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または前記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、
(ii)前記第1の時点と第2の時点との間で、前記CrCl及び/またはBUNレベルが所定範囲内にある場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを前記対象に投与し続けることと、
をさらに含む、請求項1~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
(a)CrClレベルの前記第1の所定範囲が、男性において137~150mL/分、及び女性において128~130mL/分であり、
(b)BUNレベルの前記第2の所定の範囲が7~20mg/dLである、
請求項41に記載の方法。
【請求項43】
(a)前記対象の腎血管抵抗及び/または腎血漿流量(RPF)を、前記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、
(b)(i)前記第1の時点と第2の時点との間で、前記腎血管抵抗及び/またはRPFが、所定の値の外側まで変化した場合、前記日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または前記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、
(ii)前記第1の時点と第2の時点との間で、前記腎血管抵抗及び/またはRPFが所定値内にある場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを前記対象に投与し続けることと、
をさらに含む、請求項1~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
RPFの前記所定の値が600mL/分である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
(a)前記対象の、朝/無作為の尿検体におけるアルブミン尿を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、
(b)(i)前記第1の時点と第2の時点との間で、前記アルブミン尿が検出される場合、前記日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または前記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、
(ii)前記第1の時点と第2の時点との間で、前記アルブミン尿が検出されない場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを前記対象に投与し続けることと、
をさらに含む、請求項1~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
アルブミン尿が、30mg/gを超えるアルブミン/クレアチニン比率の存在により判定される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記方法が、前記第1の時点と第2の時点との間で、1種以上の尿電解質の濃度の実質的な増加もしくは低下をもたらさない、または1種以上の尿電解質の濃度が、前記所定の値未満で低下または増加する、請求項1~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
(a)前記対象の1種以上の尿電解質の濃度を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、
(b)(i)前記第1の時点と第2の時点との間で、1種以上の尿電解質の濃度が所定の値を超えて低下または増加する場合、前記日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または前記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、
(ii)前記第1の時点と第2の時点との間で、1種以上の尿電解質の濃度が所定の値未満で低下または増加する場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、
をさらに含む、請求項1~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記尿電解質が、マグネシウム、ナトリウム、及びカリウムの1つ以上から選択される、請求項47または48に記載の方法。
【請求項50】
前記尿電解質がマグネシウムであり、前記所定の値が約20mg/dLである、請求項47または48に記載の方法。
【請求項51】
前記尿電解質がナトリウムであり、前記所定の値が約50mmol/Lである、請求項47または48に記載の方法。
【請求項52】
前記尿電解質がカリウムであり、前記所定の値が約10mmol/Lである、請求項47または48に記載の方法。
【請求項53】
前記方法が、実質的な脂質異常症をもたらさない、または1種以上の脂質の濃度が、前記第2の時点において所定範囲内にある、請求項1~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
(a)前記対象の1種以上の脂質の濃度を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、
(b)(i)前記第2の時点において、1種以上の脂質の濃度が所定範囲の外側にある場合、前記日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または前記対象へのボクロスポリンの投与を停止し、
(ii)前記第2の時点において、1種以上の脂質の濃度が所定範囲内にある場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを前記対象に投与し続けることと、
をさらに含む、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記1種以上の脂質が、総コレステロール、低比重リポタンパク(LDL)コレステロール、及びトリグリセリドの1つ以上から選択される、請求項53または54に記載の方法。
【請求項56】
前記脂質が総コレステロールであり、前記所定範囲が100~200mg/dLである、請求項53または54に記載の方法。
【請求項57】
前記脂質がトリグリセリドであり、前記所定範囲が50~150mg/dLである、請求項53または54に記載の方法。
【請求項58】
前記脂質がLDLであり、前記所定範囲が50~130mg/dLである、請求項53または54に記載の方法。
【請求項59】
前記第1の時点が、前記プロトコールの開始直前である、請求項1~9、及び13~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記第2の時点が、前記第1の時点及び前記プロトコール開始の後である、請求項1~9、及び13~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記第2の時点が、前記計画される治療期間の中間地点の後である、請求項1~9、及び13~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記第2の時点が、前記計画される治療期間の終了後である、請求項1~9、及び13~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記所定の日用量が、39.5mgのボクロスポリンBID、または31.6mgのボクロスポリンBID、または23.7mgのボクロスポリンBID、または15.8mgのボクロスポリンBID、または7.9mgのボクロスポリンBIDである、請求項1~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記対象の腎機能を、eGFRを調査することにより、前記治療期間の終了後の時点で評価することをさらに含む、請求項1~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記治療期間の終了後の時点で、タンパク質/クレアチニン比(UPCR)を調査することにより、前記対象に対する有効性を評価することをさらに含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記対象に、有効量のミコフェノール酸モフェチル(MMF)を投与することをさらに含む、請求項1~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記対象に、有効量のコルチコステロイドを投与することをさらに含む、請求項1~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記治療期間が、少なくとも100週間である、請求項1~67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
前記治療期間が、少なくとも150週間である、請求項1~68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
前記対象のeGFRを、第3の時点で判定することと、前記第3の時点でeGFRが、前記第1の時点で判定したeGFRと、前記目標%未満で異なると判定される場合、前記所定の日用量のボクロスポリンの投与を再開することと、をさらに含む、請求項1~9、及び13~69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
前記目標%が、20~45%である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記目標%が、およそ30%である、請求項70に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月15日に出願された、「PROTOCOL TO MINIMIZE CALCINEURIN INHIBITOR NEPHROTOXICITY」と題する米国特許仮出願番号第63/138,325号、2021年9月17日に出願された、「PROTOCOL TO MINIMIZE CALCINEURIN INHIBITOR NEPHROTOXICITY」と題する米国特許仮出願番号第63/245,779号、及び2021年9月21日に出願された、「PROTOCOL TO MINIMIZE CALCINEURIN INHIBITOR NEPHROTOXICITY」と題する米国特許仮出願番号第63/246,765号からの優先権を主張し、これらの内容全体が参照として組み込まれている。
【0002】
本開示は、限定されるものではないが、カルシニューリン阻害剤の腎毒性などの望ましくない副作用を最小限に抑えながら、タンパク尿腎臓病の治療における、ボクロスポリンの有効性を最大限にするために薬力学レジメンを用いる方法に関する。腎機能及び/または状態の調査方法、ならびに、望ましくない副作用を最小限に抑えながら、タンパク尿腎臓病の治療における、ボクロスポリンの有効性を最大化するために、ボクロスポリン投薬及び投与を変更、停止、回復、及び/または再開する、対応するプロトコールもまた提供する。
【背景技術】
【0003】
シクロスポリン及びタクロリムスなどのカルシニューリン阻害剤薬物(CNI)は、共に強力な免疫抑制剤であり、組織移植と組み合わせての使用を含む、様々な条件の治療で使用するために試験されている。これらの化合物は共に、長期の腎毒性を示す。
【0004】
長期使用でも許容される、効果的な免疫抑制剤であったCNIを開発することが有益であろう。特に、このようなCNI、及び長期間にわたり当該CNIを投与する方法を同定することが有益であろう。
【発明の概要】
【0005】
いくつかの態様では、タンパク尿腎臓病の治療における、または移植と関連する、慢性的なカルシニューリン阻害剤の腎毒性を軽減するための方法、組成物、装置、及びシステムであって、対象を、上記方法に適切と同定することと、所定の日用量の、有効量のボクロスポリンを投与することと、上記治療期間の前、間、及び終了後の時点で、上記対象の腎機能を調査することと、を含む、上記方法、組成物、装置、及びシステムを本明細書において提供する。
【0006】
任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する、タンパク尿腎臓病の治療における、または移植と関連する、慢性的なカルシニューリン阻害剤の腎毒性を軽減する方法は、上記疾患を診断された対象、または移植を受けている、もしくは移植を受ける候補である対象に、所定の日用量の、有効量のボクロスポリンを、少なくとも55週間の計画された治療期間にわたり投与することを伴う。いくつかの例では、方法は、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において、対象の、推定される糸球体濾過量(eGFR)を調査することと、上記第1の時点及び第2の時点との間において、上記対象のeGFRが、目標%を超えて、所定の値未満まで低下した場合に、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。いくつかの例では、方法は、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において、対象の、推定される糸球体濾過量(eGFR)を調査することをさらに含み、上記第1の時点と第2の時点の間において、対象のeGFRが、上記目標%を下回って低下した場合に、方法は、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることを含む。
【0007】
任意の実施形態のいくつかにおいて、第1の時点は、上記プロトコールの開始直前である。いくつかの実施例では、所定の値は、50~90mL/分/1.73m2の範囲である。任意の実施形態のいくつかにおいて、目標%は、20~45%の範囲である。いくつかの態様では、所定の値は、およそ60mL/分/1.73m2である。いくつかの例では、目標%はおよそ30%である。
【0008】
任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、(a)対象の尿タンパク質クレアチニン比率(UPCR)が、朝最初の排尿、または24時間の尿により測定すると>1mg/mgであることを判定することと、(b)対象が、>45mL/分/1.73m2の慢性腎疾患疫学共同式(CKD-EP1)により測定されるeGFRを有することを判定することと、により、対象において、上記方法を行う前に、対象が上記方法に適切であるか否かを同定することをさらに含み、(a)及び(b)の条件が満たされる場合、対象は、上記方法に適切であると同定される。
【0009】
任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する、タンパク尿腎臓病の治療における、または移植と関連する、慢性的なカルシニューリン阻害剤の腎毒性を軽減する方法は、上記疾患を診断された対象、または移植を受けている、もしくは移植を受ける候補である対象に、所定の日用量の、有効量のボクロスポリンを、エンドポイントまでの計画された治療期間にわたり投与することを伴い、(a)上記治療期間の前の第1の時点、及びエンドポイントの前かつ治療期間の開始後に生じる第2の時点において、上記対象の尿タンパク質クレアチニン比(UPCR)を測定し、上記第1の時点と第2の時点との間で、上記UPCRのあらゆる低下を判定することと、(b)上記対象のUPCRが、上記第2の時点において、少なくとも所定量の低下を示すことができない場合に、対象にボクロスポリンを投与することを中断し、上記所定量の低下が示される場合に、上記投与を継続することと、をさらに含む。
【0010】
任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書に記載する方法は、上記第1及び第2の時点において、上記対象の血液中のC3/C4濃度を測定することと、C3/C4の濃度が、上記第2の時点において正規化されたか否かを判定し、上記正規化が判明した場合、対象にボクロスポリンの投与を復活させる、または継続させ、正規化がまだ生じていない場合、上記中断を継続することと、をさらに含む。
【0011】
任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示するタンパク尿腎臓病の治療方法は、タンパク尿腎臓病と診断された対象に、所定の日用量の、有効量のボクロスポリンを、少なくとも8週間の計画された治療期間にわたり投与することを伴い、上記有効量は、15.8mg BID、または7.9mgボクロスポリンBIDである。
【0012】
任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する移植と関連する慢性的なカルシニューリン阻害剤の腎毒性を軽減する方法は、移植を受けている、または移植を受ける候補である対象に、所定の日用量の、有効量のボクロスポリンを、少なくとも8週間の計画された治療期間にわたり投与することを伴い、上記有効量は、15.8mg BID、または7.9mgボクロスポリンBIDである。
【0013】
任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する移植拒絶反応を軽減する方法は、移植を受けている、または移植を受ける候補である対象に、所定の日用量の、有効量のボクロスポリンを、少なくとも8週間の計画された治療期間にわたり投与することを伴い、上記有効量は、15.8mg BID、または7.9mgボクロスポリンBIDである。
【0014】
任意の実施形態のいくつかにおいて、タンパク尿腎臓病は狼瘡性腎炎である。
【0015】
任意の実施形態のいくつかにおいて、移植は、臓器移植または組織移植である。任意の実施形態のいくつかにおいて、臓器移植は、腎臓(腎)移植、肝移植、または心臓移植である。任意の実施形態のいくつかにおいて、臓器移植は腎臓(腎)移植である。
【0016】
任意の実施形態のいくつかにおいて、対象は、慢性的なカルシニューリン阻害剤の腎毒性に対する感受性が増加している。いくつかの態様では、対象は、慢性的なカルシニューリン阻害剤の腎毒性に対する感受性が増加しており、(a)P-糖タンパク質発現及び/または活性の変動、(b)CYP3A4/5発現及び活性の変動、(c)高齢の腎年齢、(d)塩分欠乏、(e)非ステロイド性抗炎症薬の使用、(f)ならびに、TGF-β及び/またはACEにおける遺伝多型のうちの1つ以上を示している。いくつかの態様では、対象は、慢性的なカルシニューリン阻害剤の腎毒性に対する感受性が増加しており、(a)P-糖タンパク質発現及び/または活性の変動、(b)CYP3A4/5発現もしくは活性の変動、(c)高齢の腎年齢、(d)塩分欠乏、(e)非ステロイド性抗炎症薬の使用、(f)またはTGF-β及び/またはACEにおける遺伝多型のうちの1つ以上を示している。
【0017】
任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象の間質線維化及び尿細管萎縮を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、間質線維化及び尿細管萎縮が、皮質領域において5%超観察される場合に、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象の間質線維化及び尿細管萎縮を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、間質線維化及び尿細管萎縮が、皮質領域において5%未満観察される場合に、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。
【0018】
任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象における内側細動脈硝子化の存在を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、内側細動脈硝子化が存在する場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象における内側細動脈硝子化の存在を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、内側細動脈硝子化が存在しない場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。いくつかの態様では、内側細動脈硝子化は、輸入細動脈の壁周辺で、壊死平滑筋細胞が、局所的に円形の塊状タンパク質(硝子質)堆積物で置き換えられること、及び血管内腔が狭くなることにより同定される。いくつかの態様では、内側細動脈硝子化は、輸入細動脈の壁周辺で、壊死平滑筋細胞が、局所的に円形の塊状タンパク質(硝子質)堆積物で置き換えられること、または血管内腔が狭くなることにより同定される。
【0019】
任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象における糸球体損傷の存在を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、糸球体損傷が存在する場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象における糸球体損傷の存在を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、糸球体損傷が存在しない場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。いくつかの態様では、糸球体損傷は、全体及び部分的糸球体硬化、尿細管萎縮、間質線維化、ならびに動脈硬化を含む。いくつかの態様では、糸球体損傷は、全体及び部分的糸球体硬化、尿細管萎縮、間質線維化、または動脈硬化を含む。いくつかの例では、糸球体損傷は、総腎慢性スコアが1を超えるときに存在する。
【0020】
任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象における傍糸球体装置(JGA)過形成の存在を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、JGA過形成が存在する場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象における傍糸球体装置(JGA)過形成の存在を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、JGA過形成が存在しない場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。いくつかの例では、JGA過形成は、血管成分、メサンギウム細胞成分、尿細管成分(密集斑)、及び細胞内レニン顆粒の存在の1つ以上を含む、傍糸球体装置成分の増大を含む。いくつかの例では、JGA過形成は、血管成分、メサンギウム細胞成分、尿細管成分(密集斑)、または細胞内レニン顆粒の存在の1つ以上を含む、傍糸球体装置成分の増大を含む。
【0021】
任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象における尿細管微小石灰化の存在を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、尿細管微小石灰化が存在する場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象における尿細管微小石灰化の存在を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、尿細管微小石灰化が存在しない場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。
【0022】
任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象におけるP-糖タンパク質(P-gp)発現を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、P-gpの発現喪失が所定の値を上回る場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象におけるP-糖タンパク質(P-gp)発現を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、P-gpの発現喪失が所定の値を下回る場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。いくつかの例では、P-gpの発現喪失に対する所定の値は、皮質領域における尿細管でのP-gp発現の、10%の喪失である。
【0023】
任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象におけるカルシニューリン阻害剤(CNI)の腎毒性及び/またはBanffスコアを、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、CNI腎毒性及び/またはBanffスコアが所定範囲の外にある場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象におけるカルシニューリン阻害剤(CNI)の腎毒性及び/またはBanffスコアを、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、CNI腎毒性及び/またはBanffスコアが所定範囲内にある場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。いくつかの態様では、CNI腎毒性スコアの所定範囲は0~3であり、Banffスコアの所定範囲は0~3である。いくつかの態様では、CNI腎毒性スコアの所定範囲は0~3である、またはBanffスコアの所定範囲は0~3である。
【0024】
任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象の、アメリカ国立衛生研究所の活動指数(NIH-AI)、アメリカ国立衛生研究所の慢性指数(NIH-CI)、及び尿細管間質性活動指数(TIAI)のうちの1つ以上を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、NIH-AI、NIH-CI、及び/またはTIAIが所定範囲の外にある場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象の、アメリカ国立衛生研究所の活動指数(NIH-AI)、アメリカ国立衛生研究所の慢性指数(NIH-CI)、及び尿細管間質性活動指数(TIAI)のうちの1つ以上を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、NIH-AI、NIH-CI、及び/またはTIAIが所定範囲内にある場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、NIH-AIの所定範囲は0~6であり、NIH-CIの所定範囲は0~3であり、TIAIの所定範囲は0~5である。任意の実施形態のいくつかにおいて、NIH-AIの所定範囲は0~6である、またはNIH-CIの所定範囲は0~3であり、TIAIの所定範囲は0~5である。任意の実施形態のいくつかにおいて、NIH-AIの所定範囲は0~6であり、NIH-CIの所定範囲は0~3である、またはTIAIの所定範囲は0~5である。任意の実施形態のいくつかにおいて、NIH-AIの所定範囲は0~6である、またはNIH-CIの所定範囲は0~3である、またはTIAIの所定範囲は0~5である。
【0025】
任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象の尿検体での尿アニオンギャップ(UAG)を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、UAGが所定範囲の外にある場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象の尿検体での尿アニオンギャップ(UAG)を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、UAGが所定範囲内にある場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。いくつかの態様では、UAGの所定範囲は20~90mEq/Lである。
【0026】
任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象の血清及び尿試料において、高カリウム血症、低マグネシウム血症、マグネシウム消費、及び高尿酸血症を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、高カリウム血症、低マグネシウム血症、マグネシウム消費、及び高尿酸血症が検出される場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象の血清及び尿試料において、高カリウム血症、低マグネシウム血症、マグネシウム消費、及び/または高尿酸血症を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、高カリウム血症、低マグネシウム血症、マグネシウム消費、または高尿酸血症が検出される場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象の血清及び尿試料において、高カリウム血症、低マグネシウム血症、マグネシウム消費、及び高尿酸血症を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、高カリウム血症、低マグネシウム血症、マグネシウム消費、及び高尿酸血症が検出されない場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象の血清及び尿試料において、高カリウム血症、低マグネシウム血症、マグネシウム消費、または高尿酸血症を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、高カリウム血症、低マグネシウム血症、マグネシウム消費、または高尿酸血症が検出されない場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。いくつかの態様では、高カリウム血症は、5mmol/Lを超える血清カリウム濃度により判定される。いくつかの態様では、低マグネシウム血症は、1.4mg/dL未満の血清マグネシウム濃度により判定される。いくつかの態様では、マグネシウム消費は、2mEqを超える尿マグネシウム濃度により判定される。いくつかの態様では、高尿酸血症は、7.0mg/dLを超える血清尿酸濃度により判定される。
【0027】
任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象の血清試料における血清クレアチニン(SCr)及び血清シスタチンC(SCysC)を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、SCr及びSCysCレベルが所定範囲を上回って上昇する場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象の血清試料における血清クレアチニン(SCr)及び血清シスタチンC(SCysC)を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、SCrまたはSCysCレベルが所定範囲を上回って上昇する場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象の血清試料における血清クレアチニン(SCr)及び血清シスタチンC(SCysC)を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、SCr及びSCysCレベルが所定範囲内にある場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象の血清試料における血清クレアチニン(SCr)及び血清シスタチンC(SCysC)を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、SCrまたはSCysCレベルが所定範囲内にある場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。いくつかの例では、SCrレベルの所定範囲は0.84~1.21mg/dLであり、SCysCレベルの所定範囲は1mg/L未満である。いくつかの例では、SCrレベルの所定範囲は0.84~1.21mg/dLである、またはSCysCレベルの所定範囲は1mg/L未満である。
【0028】
任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象の血清試料において、クレアチニンクリアランス(CrCl)及び血中尿素窒素(BUN)を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、CrClレベルが、第1の所定範囲を下回って低下し、かつ、BUNレベルが、第2の所定範囲を上回って上昇する場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象の血清試料において、クレアチニンクリアランス(CrCl)及び血中尿素窒素(BUN)を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、CrClレベルが、第1の所定範囲を下回って低下する、またはBUNレベルが、第2の所定範囲を上回って上昇する場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象の血清試料において、クレアチニンクリアランス(CrCl)及び血中尿素窒素(BUN)を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、CrCl及びBUNレベルが所定範囲内にある場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象の血清試料において、クレアチニンクリアランス(CrCl)及び血中尿素窒素(BUN)を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、CrClまたはBUNレベルが所定範囲内にある場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。いくつかの態様では、CrClレベルの第1の所定範囲は、男性において137~150mL/分、及び女性において128~130mL/分でありBUNレベルの第2の所定の範囲は7~20mg/dLである。
【0029】
任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象の腎血管抵抗及び腎血漿流量(RPF)を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、腎血管抵抗及びRPFが、所定の値の外側まで変化した場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象の腎血管抵抗及び腎血漿流量(RPF)を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、腎血管抵抗またはRPFが、所定の値の外側まで変化した場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象の腎血管抵抗及び腎血漿流量(RPF)を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、腎血管抵抗及びRPFが、所定の値内に留まる場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象の腎血管抵抗及び腎血漿流量(RPF)を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、腎血管抵抗またはRPFが、所定の値内に留まる場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。いくつかの実施例では、RPFの所定の値は600mL/分である。
【0030】
任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象の、朝及び無作為の尿検体におけるアルブミン尿を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、アルブミン尿が検出される場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、上記対象の、朝及び無作為の尿検体におけるアルブミン尿を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、アルブミン尿が検出されない場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。いくつかの態様では、アルブミン尿は、30mg/gを超えるアルブミン/クレアチニン比率の存在により判定される。
【0031】
任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書に記載の方法は、上記第1の時点と第2の時点との間で、尿電解質濃度を実質的に低下または増加させない。任意の実施形態のいくつかにおいて、方法は、1種以上の尿電解質の濃度の実質的な増加もしくは低下をもたらさない、または1種以上の尿電解質の濃度は、上記第1の時点と第2の時点との間で、所定の値未満で低下または増加する。
【0032】
任意の実施形態のいくつかにおいて、(a)上記対象の1種以上の尿電解質の濃度を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、(b)(i)上記第1の時点と第2の時点との間で、1種以上の尿電解質の濃度が所定の値を超えて低下または増加する場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止し、(ii)上記第1の時点と第2の時点との間で、1種以上の尿電解質の濃度が所定の値未満で低下または増加する場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、を伴う方法を本明細書で提供する。
【0033】
任意の実施形態のいくつかにおいて、尿電解質は、マグネシウム、ナトリウム、及びカリウムの1つ以上から選択される。任意の実施形態のいくつかにおいて、尿電解質はマグネシウムであり、所定の値は約20mg/dLである。任意の実施形態のいくつかにおいて、尿電解質はナトリウムであり、所定の値は約50mmol/Lである。任意の実施形態のいくつかにおいて、尿電解質はカリウムであり、所定の値は約10mmol/Lである。
【0034】
任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書に記載の方法は、実質的な脂質異常症をもたらさない、または1種以上の脂質の濃度が、上記第2の時点において所定範囲内にある。
【0035】
任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書で開示する方法は、(a)上記対象の1種以上の脂質の濃度を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、(b)(i)上記第2の時点において、1種以上の脂質の濃度が所定範囲の外側にある場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止し、(ii)上記第2の時点において、1種以上の脂質の濃度が所定範囲内にある場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、1種以上の脂質は、総コレステロール、低比重リポタンパク(LDL)コレステロール、及びトリグリセリドの1つ以上から選択される。任意の実施形態のいくつかにおいて、脂質は総コレステロールであり、所定範囲は100~200mg/dLである。任意の実施形態のいくつかにおいて、脂質はトリグリセリドであり、所定範囲は50~150mg/dLである。任意の実施形態のいくつかにおいて、脂質はLDLであり、所定範囲は50~130mg/dLである。
【0036】
提供される実施形態のいずれかにおいて、第1の時点は、上記プロトコール開始直前に提供される。任意の実施形態のいくつかにおいて、第2の時点は、第1の時点及び上記プロトコール開始の後である。任意の実施形態のいくつかにおいて、第2の時点は、計画される治療期間の中間地点の後である。任意の実施形態のいくつかにおいて、第2の時点は、計画される治療期間の終了後である。
【0037】
提供される実施形態のいずれかにおいて、所定の日用量は、39.5mgのボクロスポリンBID、または31.6mgのボクロスポリンBID、または23.7mgのボクロスポリンBID、または15.8mgのボクロスポリンBID、または7.9mgのボクロスポリンBIDである。
【0038】
提供される実施形態のいずれかにおいて、方法は、上記対象の腎機能を、eGFRを調査することにより、上記治療期間の終了後の時点で評価することをさらに含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、方法は、上記治療期間の終了後の時点で、タンパク質/クレアチニン比(UPCR)を調査することにより、上記対象に対する有効性を評価することをさらに含む。
【0039】
提供される実施形態のいずれかにおいて、方法は、上記対象に、有効量のミコフェノール酸モフェチル(MMF)を投与することをさらに含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、方法は、上記対象に、有効量のコルチコステロイドを投与することをさらに含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、治療期間は、少なくとも100週間である。任意の実施形態のいくつかにおいて、治療期間は、少なくとも150週間である。
【0040】
提供される実施形態のいずれかにおいて、方法は、対象のeGFRを、第3の時点で判定することと、上記第3の時点でeGFRが、上記第1の時点で判定したeGFRと、上記目標%未満で異なると判定される場合、上記所定の日用量のボクロスポリンの投与を再開することと、をさらに含む。いくつかの例では、目標%は20~45%である。いくつかの例では、目標%はおよそ30%である。
【0041】
任意の実施形態のいくつかにおいて、タンパク尿腎臓病の治療において、慢性的なカルシニューリン阻害剤の腎毒性を軽減する方法であって、上記方法が、上記疾患と診断された対象に、所定の日用量の、有効量のボクロスポリンを、エンドポイントまでの計画された治療期間にわたり投与することを含み、上記治療期間の前の第1の時点、及びエンドポイントの前かつ治療期間の開始後に生じる第2の時点において、上記対象の尿タンパク質クレアチニン比(UPCR)を測定し、上記第1の時点と第2の時点との間で、上記UPCRのあらゆる低下を判定することと、上記対象のUPCRが、上記第2の時点において、少なくとも所定量の低下を示すことができない場合に、対象にボクロスポリンを投与することを中断し、上記所定量の低下が示される場合に、上記投与を継続することと、をさらに含む、上記方法を本明細書で開示する。
【0042】
任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書に記載する方法は、上記第1及び第2の時点において、上記対象の血液中のC3/C4濃度を測定することと、C3/C4の濃度が、上記第2の時点において正規化されたか否かを判定し、上記正規化が判明した場合、対象にボクロスポリンの投与を復活させる、または継続させ、正規化がまだ生じていない場合、上記中断を継続することと、をさらに含む。いくつかの態様では、方法は、上記対象に、有効量のミコフェノール酸モフェチル(MMF)を投与することをさらに含む。いくつかの例では、方法は、対象に、有効量のコルチコステロイドを投与することをさらに含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、所定の日用量は、39.5mgのボクロスポリンBID、または31.6mgのボクロスポリンBID、または23.7mgのボクロスポリンBID、または15.8mgのボクロスポリンBID、または7.9mgのボクロスポリンBIDである。
【0043】
任意の実施形態のいくつかにおいて、狼瘡性腎炎と診断された対象に、所定の日用量の、有効量のボクロスポリンを、少なくとも8週間の計画された治療期間にわたり投与することを含み、上記有効量が、15.8mg BID、または7.9mgボクロスポリンBIDである、タンパク尿腎臓病の治療方法を本明細書で開示する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】ミコフェノール酸モフェチル(MMF)及びコルチコステロイドを同時投与され(上図)、提示される先細りプロトコールに供される(下図)対象における、24及び48週における、プラセボに対するボクロスポリンの安全性及び有効性を比較する治験の略図を示す。
【
図2A】様々なボクロスポリン代謝産物の構造を示す。ボクロスポリン代謝産物のIM4nを示す。
【
図2B】様々なボクロスポリン代謝産物の構造を示す。主要代謝産物のボクロスポリン代謝産物である、IM9を示す。
【
図2C】様々なボクロスポリン代謝産物の構造を示す。ボクロスポリン代謝産物のIM1c(R)を示す。
【
図2D】様々なボクロスポリン代謝産物の構造を示す。ボクロスポリン代謝産物のIM1c(S)を示す。
【
図2E】様々なボクロスポリン代謝産物の構造を示す。ボクロスポリン代謝産物のIM19(MeBmt環化)を示す。
【
図2F】様々なボクロスポリン代謝産物の構造を示す。ボクロスポリン代謝産物のIM19を示す。
【
図2G】様々なボクロスポリン代謝産物の構造を示す。ボクロスポリン代謝産物のIM4を示す。
【
図2H】様々なボクロスポリン代謝産物の構造を示す。ボクロスポリン代謝産物のIM1-ジオール-1を示す。
【
図2I】様々なボクロスポリン代謝産物の構造を示す。ボクロスポリン代謝産物のIM1-ジオール-2を示す。
【
図2J】様々なボクロスポリン代謝産物の構造を示す。aa-1の1-η炭素における構造が異なる、IM1-ジオール-2のジアステレオマーである、ボクロスポリン代謝産物のIM1-ジオール-3を示す。
【
図2K】様々なボクロスポリン代謝産物の構造を示す。トリヒドロキシ化した、仮説上のボクロスポリン代謝産物を示す。
【
図3】シクロスポリンA(CsA)、ボクロスポリン(VSP)、及びいずれかの親薬剤のIV投与後の、マウス腎臓におけるこれらの代謝産物の、MALDI-MSIイメージングを示す。質量シグナル比を、色強度マップ(m/z強度)として可視化し、検出した分子に対する空間情報を提供する。
【
図4-1】シクロスポリンA(CsA)またはボクロスポリン(VSP)親薬剤、及び投与後のマウス腎臓におけるこれらの代謝産物に対する、一連の重なり合った、及び個別のin situ MALDI-MSI画像を示す。Aは、各親薬剤に対する、個別の画像と並べた、シクロスポリンA[CsA+Na]
+及びボクロスポリン代謝産物[VSP+Na]
+の重なり画像を示す。Bは、CsA代謝産物[AM4n+Na]
+及びVSP代謝産物[IM4n+Na]
+に対する、重なり画像及び個別の画像を示す。Cは、CsA代謝産物[AM1/AM1c/AM9+Na]
+及びVSP代謝産物[IM1c/IM4/IM9+Na]
+に対する、重なり画像及び個別の画像を示す。質量シグナル比を、色強度マップ(m/z強度)として可視化し、検出した分子に対する空間情報を提供する。
【
図4-2】シクロスポリンA(CsA)またはボクロスポリン(VSP)親薬剤、及び投与後のマウス腎臓におけるこれらの代謝産物に対する、一連の重なり合った、及び個別のin situ MALDI-MSI画像を示す。Dは、CsA代謝産物[AM19/AM1c9+Na]
+及びVSP代謝産物[IM19(環状)+Na]
+に対する、重なり画像及び個別の画像を示す。Eは、CsA代謝産物[AM19/AM1c9+Na]
+及びVSP代謝産物[IM1-ジオール-1/IM19+Na]
+に対する、重なり画像及び個別の画像を示す。質量シグナル比を、色強度マップ(m/z強度)として可視化し、検出した分子に対する空間情報を提供する。
【
図5】長期の安全性、及び忍容性継続研究の略図を示す。示すように、最初の1年の研究に含まれた357名の対象のうち、216名の対象が、継続研究に進んだ。
【
図6】追加の4週間フォロアーップ時点を伴う36ヶ月の期間にわたる、ボクロスポリン群の対象116名、及び対照群の対象100名に対する、平均の推定糸球体濾過量(eGFR)を示す。同じ時点における各研究群における対象の数もまた示す。
【
図7】追加の4週間フォロアーップ時点を伴う36ヶ月の期間にわたる、ボクロスポリンの対象116名、及び対照群の対象100名に対する、訪問毎の平均尿タンパク質クレアチニン比(UPCR)を示す。同じ時点における各研究群における対象の数もまた示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明は、例えば、狼瘡性腎炎などのタンパク尿腎臓病の治療における、または移植と関連する、カルシニューリン阻害剤(CNI)腎毒性を回避しながら、CNIの長期使用を伴う、方法、プロトコール、治療レジメン、及び/または治療用使用などの使用に関する。いくつかの実施形態では、CNIはボクロスポリンである。いくつかの実施形態では、本発明は、急性または慢性CNI腎毒性に対して感受性が高い、またはこれらのリスクが増加している、必要とする対象に、長期間にわたりCNIを投与することを伴う。実施形態の一態様では、個体は免疫抑制療法を必要とし、カルシニューリン阻害剤の腎毒性の発症に関する1つ以上のリスク因子を呈する。
【0046】
いくつかの態様では、提供する方法及び使用は、CNI療法を必要とする対象、例えば、狼瘡性腎炎を有する対象における、ボクロスポリンを用いる治療によって、CNI腎毒性に対する感受性またはリスクの実質的な増加を伴うことなく、安全かつ効果的な治療がもたらされるという観察結果に基づく。いくつかの態様では、本明細書で提供する結果は、ボクロスポリンを用いる治療レジメンが、対象の尿電解質及び/または脂質濃度に、実質的な影響を有しないことを裏付けする。いくつかの態様では、本明細書で提供する結果は、ボクロスポリンを用いる治療レジメンが、CNI療法の有害反応であり得る、脂質濃度の実質的な低下または脂質異常症の軽減をもたらすことを裏付けする。提供する方法及び使用は、ボクロスポリン及びその代謝産物が、腎臓には高濃度で蓄積しない一方で、主に用いられるCNIであるシクロスポリン、及びその代謝産物は、特に皮質に、高濃度で蓄積するという、イメージング研究からの観察結果にもまた基づく。したがって、本明細書に記載する結果は、CNI療法を必要とする対象、特に、CNI腎毒性の感受性またはリスクが増加した対象に対する、ボクロスポリンを用いる、ならびに、本明細書で提供する方法、治療レジメン、プロトコール、及び使用の利点を裏付けする。
【0047】
いくつかの態様では、狼瘡性腎炎などのタンパク尿腎臓病、または移植と関連する腎毒性の治療用薬剤の製造における、ボクロスポリンなどのカルシニューリン阻害剤(CNI)の使用もまた提供する。いくつかの態様では、狼瘡性腎炎などのタンパク尿腎臓病、もしくは、移植と関連する腎毒性の治療で使用するための、または狼瘡性腎炎などのタンパク尿腎臓病、もしくは、移植と関連する腎毒性を有する対象に投与するための、ボクロスポリンの投与方法もまた提供する。いくつかの態様では、ボクロスポリンの使用は、本明細書に記載の方法のいずれかに従う。
【0048】
例えば、本明細書に記載する方法または使用のいずれかに従い、狼瘡性腎炎などのタンパク尿腎臓病、または移植と関連する腎毒性を有する対象を選択することと、対象にボクロスポリンを投与することと、を伴う治療方法もまた提供する。いくつかの実施形態では、ボクロスポリンは、狼瘡性腎炎などのタンパク尿腎臓病、または移植と関連する腎毒性の治療をもたらす有効量で投与される。使用は、そのような方法及び治療における、ならびに、そのような治療方法を実施するための薬剤の調製における、ボクロスポリンの使用を含む。いくつかの実施形態では、方法は、例えば、提供する実施形態に従い、狼瘡性腎炎などのタンパク尿腎臓病、または移植と関連する腎毒性を有する、または有することが疑われる対象に、ボクロスポリンを投与することにより実施される。いくつかの実施形態では、方法はそれによって、対象における、狼瘡性腎炎などのタンパク尿腎臓病、または移植と関連する腎毒性を治療する。
【0049】
カルシニューリン阻害剤
シクロスポリンは、数十年にわたり、移植療法と組み合わさって用いられる、最前線のCNIである。別のCNIであるタクロリムスもまた、移植療法では用いられて成功している。
【0050】
シクロスポリン及びタクロリムスの免疫抑制性は、ホスファターゼであるカルシニューリンの阻害によりもたらされていると考えられている。シクロスポリン及びタクロリムスは、カルシニューリンのホスファターゼ活性を阻害すると考えられている。この阻害によりIL-2産生が抑制され、故に、T細胞の活性化が抑制される。残念ながら、これら化合物をより長期間用いることで、現在は急性CNI腎毒性として認識されている、GFRの可逆的減少などの腎機能不全、加えて、不可逆的かつ進行性の尿細管間隙損傷、及び糸球体硬化または慢性CNI腎毒性の結果としての、不可逆的な腎機能損傷が引き起こされることが報告されている。
【0051】
全体が本明細書に参照により組み込まれている、米国特許第9,765,119号に記載されているボクロスポリンは、その毒性の低下、ならびに、対象への耐性及び有効性を最大化するように変動して投与することができる能力を考慮すると、優れたCNIを呈する。いくつかの実施形態では、CNI療法を必要とする対象には、ボクロスポリンが投与される。いくつかの態様では、ボクロスポリンは、バックグラウンド免疫抑制療法と共に、活性狼瘡性腎炎を有する対象に投与される。いくつかの態様では、ボクロスポリンは、一定の用量-濃度関係をもたらす、線形薬物動態プロファイルを示す。いくつかの態様では、ボクロスポリンは、通常、CNIの使用と関連する治療薬の監視の必要性を取り除くという利点をもたらす。
【0052】
CNI療法、及びCNI腎毒性への感受性
CNIを用いて、様々な状態、特に、病状に対する自己免疫要素を含む状態に苦しむ対象が治療される。CNIの免疫抑制活性は、免疫系の活性と関連する状態における症状の、直接の原因の治療に役立つと考えられている。例えば、CNIは、単独で、または他の投薬と共に、特に、腎臓、肝臓、及び心臓移植を受ける対象において移植拒絶反応を防ぐために、移植療法の一部として使用される。CNIはまた、単独またはメトトレキサートと共に使用され、関節リウマチを治療する。CNIはまた、乾癬を治療するために使用される。CNIはまた、狼瘡性腎炎を治療するために使用される。残念ながら、(限定されるものではないが、狼瘡性腎炎などの)糸球体腎症を有する患者において、従来のCNIを長期間投与することで、さらなる急性または慢性CNI腎毒性に繋がる可能性がある。一般に、(限定されるものではないが、自己免疫性糸球体腎症などの)糸球体腎症と関連する、急性または慢性CNI腎毒性の発症を呈する、または発症しやすい対象が、本発明の恩恵を受ける。
【0053】
以下:急性細小動脈症、尿細管空胞化、及び血栓性細小血管障害(TMA)を呈する対象が、急性CNI腎毒性になりやすい可能性がある。
【0054】
臓器移植または組織移植などの移植、及び例えば、移植拒絶反応を軽減または予防するためのCNI療法を受けた、または受ける候補である対象が、急性CNI腎毒性になりやすい可能性がある。いくつかの態様では、対象は、腎臓(腎)移植、肝移植、または心臓移植を受けている可能性がある、または受ける候補である。いくつかの態様では、対象は、腎臓(腎)移植を受けている可能性がある、または受ける候補である。
【0055】
急性CNI腎毒性の感受性を示す代表的な診断としては、例えば、他の治療用化合物により引き起こされる、変化した腎血行動態などの腎機能不全;マンニトール、グルコース、スクロース、デキストランなどの一般的な医薬賦形剤、または放射線造影剤により引き起こされる浸透性腎症;再発病(原発性HUS/TTP)、虚血再灌流傷害、腎感染症、ならびに、mTOR阻害剤及び抗ウイルス剤などの様々な他の薬物の副作用が挙げられる。
【0056】
以下:間質線維化及び尿細管萎縮、内側細動脈硝子化、糸球体被膜線維症、糸球体全体の硬化、焦点性分節糸球体硬化(FSGS)、傍糸球体装置過形成、ならびに尿細管微小石灰化を呈する対象は、慢性CNI腎毒性になりやすい可能性がある。
【0057】
CNI療法と関連する他の副作用としては脂質異常症が挙げられ、これは、心臓血管疾患リスクの増加に寄与する可能性がある。脂質異常症は、炎症、及びCNIなどの免疫抑制剤の使用と関連している可能性がある。
【0058】
慢性CNI腎毒性の感受性を示す代表的な診断としては、老化、虚血再灌流傷害、感染症(UTI、CMV)、慢性虚血、真性糖尿病、高血圧、糸球体虚血、骨及びミネラルの不均衡、ならびにタンパク尿が挙げられる。
【0059】
いくつかの態様では、ボクロスポリンを用いる治療によって、慢性CNI腎毒性または急性CNI腎毒性などのCNI腎毒性を、軽減、緩和、または改善することができる。いくつかの態様では、本明細書で提供する方法、プロトコール、及び使用のいずれかを、CNI療法を必要とする、またはCNI腎毒性になりやすい可能性がある、もしくは、CNI腎毒性に対して増加したリスクもしくは感受性を示し得る対象への治療目的で用いることができる。いくつかの態様では、本明細書に記載する対象、例えば、CNI療法を必要とし、CNI腎毒性になりやすい可能性がある、またはCNI腎毒性に対して増加したリスクもしくは感受性を示し得る対象のいずれかに、本明細書で提供する方法、プロトコール、及び使用のいずれかに従い、ボクロスポリンを投与することができる。
【0060】
カルシニューリン阻害剤の腎毒性に対するリスク因子
カルシニューリン阻害剤の腎毒性の発症に関する、様々な臨床的リスク因子が存在する。これらとしては、シクロスポリン及びタクロリムスへの全身過剰曝露、mTOR阻害剤の投与、腎臓の特異的ABCB1遺伝子型の存在、腎尿細管上皮細胞におけるABCB1タンパク質の発現、CYP3A4/5遺伝子型の存在、腎尿細管上皮細胞におけるCYP3A4/5タンパク質の発現、CNI代謝産物を変える他の薬物(例えば、ケトコナゾール)との相互作用、腎年齢が高いこと、非ステロイド性抗炎症薬の使用、塩分欠乏及び利尿薬の使用、ならびに、トランスフォーミング増殖因子β及びアンジオテンシン転換酵素を含むがこれらに限定されない他の遺伝子の遺伝多型が挙げられる。
【0061】
本明細書に記載の方法のいずれかに従ったいくつかの実施形態では、上記対象は、慢性的なカルシニューリン阻害剤(CNI)の腎毒性に対する感受性が増加している。いくつかの実施形態では、上記対象は、対応する個体の集団と比較して、CNI腎毒性に対する感受性が増加している。いくつかの実施形態では、個体の集団とは、罹患した集団全体を意味する。いくつかの実施形態では、個体の集団とは、特定の性別の集団全体を意味する。いくつかの実施形態では、個体の集団とは、特定の人種の集団全体を意味する。いくつかの実施形態では、個体の集団とは、特定の年齢群の集団全体を意味する。いくつかの実施形態では、個体の集団とは、特定の地理的領域の集団全体を意味する。いくつかの実施形態では、上記対象は、集団全体と比較して、CNI腎毒性に対する感受性が増加している。いくつかの実施形態では、上記対象は、罹患した集団全体と比較して、CNI腎毒性に対する感受性が増加している。いくつかの実施形態では、上記対象は、同じ性別の集団と比較して、CNI腎毒性に対する感受性が増加している。いくつかの実施形態では、上記対象は、同じ性別の集団と比較して、CNI腎毒性に対する感受性が増加している。いくつかの実施形態では、上記対象は、同じ人種の集団と比較して、CNI腎毒性に対する感受性が増加している。いくつかの実施形態では、上記対象は、同じ年齢群の集団と比較して、CNI腎毒性に対する感受性が増加している。いくつかの態様では、提供される実施形態は、例えば、本明細書に記載する指標の1つ以上、または本明細書に記載する指標のうちの1つ以上の変化を調査または測定することにより、CNI腎毒性のリスクを調査または監視することを含む。
【0062】
上記対象が、慢性的なカルシニューリン阻害剤(CNI)の腎毒性に対する感受性が増加しているいくつかの実施形態では、上記対象は、深刻な腎不全(CLCr≧90mL/分)を示す。いくつかの実施形態では、上記対象は、ベースラインのeGFRで深刻な腎不全を示し、ベースラインeGFRは、約>30、>35、>40、>45、>50、>60、または>70mL/分/1.73m2のうちの1つである。いくつかの実施形態では、ボクロスポリンCmax及び/またはAUCは、深刻な腎不全を有する対象において、そのような不全を有しない対応する対象と比較して、増加している。いくつかの実施形態では、ボクロスポリンCmaxは、深刻な腎不全を有する対象において、そのような不全を有しない対応する対象と比較して、約1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2.0倍、3.0倍、5.0倍、10.0倍またはそれ以上のいずれか1つだけ増加する。いくつかの実施形態では、ボクロスポリンAUCは、深刻な腎不全を有する対象において、そのような不全を有しない対応する対象と比較して、約1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2.0倍、3.0倍、5.0倍、10.0倍またはそれ以上のいずれか1つだけ増加する。
【0063】
上記対象が、慢性的なカルシニューリン阻害剤(CNI)の腎毒性に対する感受性が増加しているいくつかの実施形態では、上記対象は、肝不全を示す。いくつかの実施形態では、上記対象は、軽度の肝不全(Child-PughA)、または中程度の肝不全(Child-PughB)を示す。いくつかの実施形態では、ボクロスポリンCmax及び/またはAUCは、肝不全を有する対象において、そのような不全を有しない対応する対象と比較して、増加している。いくつかの実施形態では、ボクロスポリンCmaxは、軽度または中程度の肝不全を有する対象において、そのような不全を有しない対応する対象と比較して、約1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2.0倍、3.0倍、5.0倍、10.0倍またはそれ以上のいずれか1つだけ増加する。いくつかの実施形態では、ボクロスポリンAUCは、軽度中程度の腎不全を有する対象において、そのような不全を有しない対応する対象と比較して、約1.1倍、1.2倍、1.4倍、1.6倍、1.8倍、2.0倍、2.2倍、2.4倍、2.6倍、2.8倍、3.0倍、4.0倍、5.0倍、10.0倍またはそれ以上のいずれか1つだけ増加する。
【0064】
ボクロスポリンは、感受性CYP3A4基質である。強力な、または中程度のCYP3A4阻害剤と同時投与することで、ボクロスポリン曝露が増加する。いくつかの実施形態では、ボクロスポリンCmax及び/またはAUCは、強力なCYP3A4阻害剤(例えば、ケトコナゾール、イトラコナゾール、クラリスロマイシン)、または中程度のCYP3A4阻害剤(例えば、ベラパミル、フルコナゾール、ジルチアゼム)を受ける対象において、そのようなCYP3A4阻害剤を受けない対応する対象と比較して増加する。いくつかの実施形態では、ボクロスポリンCmaxは、強力な、または中程度のCYP3A4阻害剤を受ける対象において、そのようなCYP3A4阻害剤を受けない対応する対象と比較して、約1.1倍、1.2倍、1.4倍、1.6倍、1.8倍、2.0倍、2.2倍、2.4倍、2.6倍、2.8倍、3.0倍、4.0倍、5.0倍、10.0倍またはそれ以上のいずれか1つだけ増加する。いくつかの実施形態では、ボクロスポリンAUCは、強力な、または中程度のCYP3A4阻害剤を受ける対象において、そのようなCYP3A4阻害剤を受けない対応する対象と比較して、約2.0倍、2.2倍、2.4倍、2.6倍、2.8倍、3.0倍、3.2倍、3.4倍、3.6倍、3.8倍、4.0倍、5.0倍、10.0倍またはそれ以上のいずれか1つだけ増加する。
【0065】
本明細書に記載の方法のいずれかに従ったいくつかの実施形態では、対象は、1種以上の腎疾患を患っている。いくつかの実施形態では、対象は、1種以上の腎疾患を患っており、1種以上の腎疾患は、慢性カルシニューリン阻害剤(CNI)腎毒性に対する感受性の増加に寄与している。上記対象が、CNI腎毒性に対する感受性が増加しているいくつかの実施形態では、上記対象は、1種以上の形態の糸球体腎症を示す。上記対象がCNI腎毒性に対する感受性が増加しており、上記対象が1種以上の形態の糸球体腎症を示すいくつかの実施形態では、従来のCNI(シクロスポリンまたはタクロリムスなど)を長期間投与することにより、限定されるものではないがさらなる急性及び慢性腎毒性などの、長期間の腎損傷がもたらされる可能性がある。いくつかの実施形態では、対象は糸球体腎症を示す。いくつかの実施形態では、対象は慢性糸球体腎症を示す。いくつかの実施形態では、対象は炎症性糸球体腎症を示す。いくつかの実施形態では、対象は非炎症性糸球体腎症を示す。いくつかの実施形態では、対象は自己免疫性糸球体腎症を示す。いくつかの実施形態では、対象は急性糸球体腎症を示す。いくつかの実施形態では、対象は糸球体腎炎を示す。いくつかの実施形態では、対象は慢性性糸球体腎炎を示す。いくつかの実施形態では、対象は急性糸球体腎炎を示す。いくつかの実施形態では、対象は炎症性腎疾患を示す。いくつかの実施形態では、対象は非炎症性腎疾患を示す。いくつかの実施形態では、対象は、自己免疫の文脈での炎症性腎疾患を示す。いくつかの実施形態では、自己免疫性腎疾患は、腎組織内での自己抗原(グッドパスチャー抗原など)から生じ得る。いくつかの実施形態では、自己免疫性腎疾患は、組織損傷事象(例えば、狼瘡性腎炎)を引き起こす、腎臓内での免疫複雑化を引き起こす腎臓の外にある自己抗原から生じ得る。いくつかの実施形態では、自己免疫性腎疾患は、腎臓内に由来もせず、また堆積もしていないが、抗体の、抗原または抗原を有する細胞との相互作用が疾患を引き起こす、抗原及び抗体(例えば、好中球細胞質抗原(ANCA)関連血管炎または糸球体腎炎に対する自己抗体)から生じ得る。いくつかの実施形態では、対象は、抗糸球体基底膜疾患(抗GBM疾患)を患っている。いくつかの実施形態では、対象は、狼瘡性腎炎を患っている。いくつかの実施形態では、対象は、全身性エリテマトーデス(SLE)を患っている。いくつかの態様では、全身性エリテマトーデス(SLE)を有する対象の最大半数が、腎臓に深刻かつ永続的な損傷を、場合によっては腎不全をもたらし得る、LNを発症する可能性がある。いくつかの実施形態では、対象は、ANCA関連脈管炎を患っている。いくつかの実施形態では、対象は、ANCA関連糸球体腎炎を患っている。
【0066】
上記対象が、慢性的なカルシニューリン阻害剤(CNI)の腎毒性に対する感受性が増加しているいくつかの実施形態では、上記対象は、(a)P-糖タンパク質発現及び/または活性の変動;(b)CYP3A4/5発現及び/または活性の変動、(c)高齢の腎年齢;(d)塩分欠乏;(e)非ステロイド性抗炎症薬の使用;及び/または(f)TGF-β及び/またはACE遺伝子における遺伝多型のうちの1つ以上を示す。いくつかの実施形態では、上記対象は、局所腎P-糖タンパク質の上方制御を示す。いくつかの実施形態では、上記対象は、上述した対応する集団と比較して、局所腎P-糖タンパク質の、およそ20%、40%、50%、75%、100%、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、75倍、100倍、500倍、1000倍以上の上方制御のいずれか1つを示す。いくつかの実施形態では、上記対象は、ABCB1遺伝子において、1種以上の一塩基多型を示す。いくつかの実施形態では、上記対象は、ABCB1遺伝子の3435位において、TT遺伝子型を示す。いくつかの実施形態では、上記対象は、移植腎におけるABCB1遺伝子の3435位において、TT遺伝子型を示す。いくつかの実施形態では、上記対象は、ABCB1遺伝子の2677位において、TT遺伝子型を示さない。いくつかの実施形態では、上記対象は、移植腎におけるABCB1遺伝子の2677位において、TT遺伝子型を示さない。いくつかの実施形態では、上記対象は、非ステロイド性抗炎症薬に曝露されている、またはこれを投与されている。いくつかの実施形態では、上記対象は、上述した対応する集団よりも、約1、2、3、4、5、8、10、12、15、18、20、25、30、35、40歳のうちのいずれか1つの高齢の腎年齢などの、高齢の腎年齢を示す。いくつかの実施形態では、上記対象は、上述した対応する集団と比較して、最大10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%以上の枯渇といった、塩分欠乏を示す。いくつかの実施形態では、上記対象は、食事でのナトリウム制限の結果として塩分欠乏を示す。いくつかの実施形態では、上記対象における塩分欠乏は、上述した対応する集団と比較して、薬物の、およそ20%、40%、50%、75%、100%、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、75倍、100倍、500倍、1000倍以上のいずれか1つの薬物再吸収などの、薬物の腎尿細管への再吸収の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、上記対象は、CYP3A4及び/またはCYP3A5遺伝子において、1種以上の多型を示す。いくつかの実施形態では、上記対象はCYP3A5*1キャリアである。いくつかの実施形態では、上記対象の肝臓及び腸CYP3A5は、CYP3A5*1から発現する。いくつかの実施形態では、上記対象はCYP3A5*1キャリアであり、対象の肝臓におけるタクロリムス代謝産物の生成は、上述した対応する集団における生成よりも、20%、40%、50%、75%、100%、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、75倍、100倍、500倍、1000倍以上のいずれか1つだけ高い。いくつかの実施形態では、上記対象は、TGF-β及び/またはアンジオテンシン変換酵素(ACE)において、遺伝子多型を示す。いくつかの実施形態では、上記対象は、約20%、40%、50%、75%、100%、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、75倍、100倍、500倍、1000倍以上のいずれか1つの活性の増加などの、ACE活性の増加を有する。いくつかの実施形態では、上記対象は、約20%、40%、50%、75%、100%、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、75倍、100倍、500倍、1000倍以上のいずれか1つの、血清ACE濃度の増加などの、ACEの血清濃度の増加を有する。いくつかの実施形態では、上記対象は、コドン10においてTGF-β多型を示す。いくつかの実施形態では、上記対象は、同種異系移植片において局所TGF-β産生の増加を示す。いくつかの実施形態では、上記対象は、TGF-βの約20%、40%、50%、75%、100%、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、75倍、100倍、500倍、1000倍以上のいずれか1つの、尿細管上皮細胞におけるTGF-βの上方制御などの、尿細管上皮細胞におけるTGF-βの上方制御を示す。
【0067】
タンパク尿腎臓病または移植の治療における、CNI腎毒性の軽減方法
いくつかの態様では、タンパク尿腎臓病、または臓器移植、例えば、腎臓(腎)移植、心臓移植、肝移植、もしくは心臓移植などの移植の治療における慢性的なカルシニューリン阻害剤の腎毒性の軽減方法を提供する。
【0068】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示するタンパク尿腎臓病治療における、または移植と関連する慢性的なカルシニューリン阻害剤の腎毒性を軽減する方法は、上記疾患を診断された対象に、所定の日用量の、有効量のボクロスポリンを、少なくとも55週間の計画された治療期間にわたり投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において、対象の、推定される糸球体濾過量(eGFR)を調査することと、上記第1の時点及び第2の時点との間において、上記対象のeGFRが、目標%を超えて、所定の値未満まで低下した場合に、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。いくつかの例では、方法は、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において、対象の、推定される糸球体濾過量(eGFR)を調査することをさらに含み、上記第1の時点と第2の時点の間において、対象のeGFRが、上記目標%を下回って低下した場合に、方法は、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることを含む。いくつかの実施形態では、治療期間は、少なくとも約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120週のいずれか1つ、またはこれらの間のいずれかの長さの治療期間である。
【0069】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示するタンパク尿腎臓病治療における、または移植と関連する慢性的なカルシニューリン阻害剤の腎毒性を軽減する方法は、狼瘡性腎炎を診断された対象に、所定の日用量の、有効量のボクロスポリンを、少なくとも55週間の計画された治療期間にわたり投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において、対象の、推定される糸球体濾過量(eGFR)を調査することと、上記第1の時点及び第2の時点との間において、上記対象のeGFRが、目標%を超えて、所定の値未満まで低下した場合に、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。いくつかの例では、方法は、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において、対象の、推定される糸球体濾過量(eGFR)を調査することをさらに含み、上記第1の時点と第2の時点の間において、対象のeGFRが、上記目標%を下回って低下した場合に、方法は、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることを含む。いくつかの実施形態では、治療期間は、少なくとも約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120週のいずれか1つ、またはこれらの間のいずれかの長さの治療期間である。
【0070】
いくつかの実施形態では、第1の時点は、上記プロトコールの開始直前である。いくつかの例では、所定の値は、約30~約110mL/分/1.73m2の範囲である。いくつかの実施形態では、所定の値は、約50~約90mL/分/1.73m2の範囲である。いくつかの実施形態では、所定の値は、約30~40、40~50、50~60、60~70、70~80、80~90、90~100、及び100~110mL/分/1.73m2のいずれか1つの範囲である。いくつかの実施形態では、所定の値は、約30、40、50、60、70、80、90、または100mL/分/1.73m2のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、所定の値は、約60mL/分/1.73m2である。いくつかの実施形態では、目標%は、約10%~約60%の範囲である。いくつかの実施形態では、目標%は、約20%~約45%の範囲である。いくつかの実施形態では、目標%は、約10%~20%、20%~30%、30~35%、35%~40%、40%~45%、45%~50%、50%~55%、及び55%~60%のいずれか1つの範囲である。いくつかの実施形態では、目標%はおよそ20%である。いくつかの実施形態では、目標%はおよそ30%である。
【0071】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示するタンパク尿腎臓病治療における、または移植と関連する慢性的なカルシニューリン阻害剤の腎毒性を軽減する方法は、狼瘡性腎炎を診断された対象に、所定の日用量の、有効量のボクロスポリンを、少なくとも55週間の計画された治療期間にわたり投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において、対象の、推定される糸球体濾過量(eGFR)を調査することと、上記第1の時点及び第2の時点との間において、上記対象のeGFRが、20%超、60mL/分/1.73m2未満に低下した場合に、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。いくつかの例では、方法は、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において、対象の、推定される糸球体濾過量(eGFR)を調査することをさらに含み、上記第1の時点と第2の時点の間において、対象のeGFRが、20%を下回って低下した場合に、方法は、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることを含む。
【0072】
方法が、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において、対象の、推定される糸球体濾過量(eGFR)を調査することを含むいくつかの実施形態では、第1の時点は、上記プロトコールの開始直前である。いくつかの実施形態では、方法は、上記プロトコールの開始後、2週毎に対象のeGFRを調査することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、上記プロトコールの開始後、初月は2週に1回、その後は4週に1回、対象のeGFRを調査することを含む。上記プロトコールの開始後の任意の調査において、上記対象のeGFRが、目標%を上回って低下し、所定の値を下回るいくつかの実施形態では、方法は、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することを含む。
【0073】
方法が、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において、対象のeGFRを調査することを含むいくつかの実施形態では、第1の時点は、上記プロトコールの開始直前である。上記プロトコールの開始後の調査において、上記対象のeGFRが、第1の時点におけるeGFRと比較して目標%を上回って低下し、所定の値を下回るいくつかの実施形態では、方法は、日用量を7.9mg BID減少させることを含む。上記プロトコールの開始後の調査において、上記対象のeGFRが、第1の時点におけるeGFRと比較して目標%を上回って低下し、所定の値を下回り、かつ、日用量が7.9mg BID減少するいくつかの実施形態では、方法は、用量減少から2週間後に、対象のeGFRを調査することを含み、最初の用量減少の2週間後の調査において、所定の値に対する第1の時点におけるeGFRと比較して、上記対象のeGFRが目標%を上回って低下する場合、第2の、日用量の7.9mg BIDの減少をさらに含む。方法が1回以上の用量減少を含むいくつかの実施形態では、方法は、1回以上の用量減少後、2週毎に、対象のeGFRを調査することを含み、上記対象のeGFRが、第1の時点におけるeGFRと比較して目標%を下回って低下する場合に、各eGFR調査に対して、日用量を7.9mg BID増加させることを含む。いくつかの実施形態では、用量の増加は、用量の、初期の所定用量の超過を引き起こさない。いくつかの例では、所定の値は、約30~約110mL/分/1.73m2の範囲である。いくつかの実施形態では、所定の値は、約50~約90mL/分/1.73m2の範囲である。いくつかの実施形態では、所定の値は、約30~40、40~50、50~60、60~70、70~80、80~90、90~100、及び100~110mL/分/1.73m2のいずれか1つの範囲である。いくつかの実施形態では、所定の値は、約30、40、50、60、70、80、90、または100mL/分/1.73m2のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、所定の値は、約60mL/分/1.73m2である。いくつかの実施形態では、目標%は、約10%~約60%の範囲である。いくつかの実施形態では、目標%は、約10%~約45%の範囲である。いくつかの実施形態では、目標%は、約10%~20%、20%~30%、30~35%、35%~40%、40%~45%、45%~50%、50%~55%、及び55%~60%のいずれか1つの範囲である。いくつかの実施形態では、目標%はおよそ20%である。
【0074】
上記対象のeGFRが、第1の時点のeGFRと比較して約20%~約30%低下し、上記プロトコール開始後の調査において60mL/分/1.73m2を下回るいくつかの実施形態では、方法は、日用量を7.9mg BID減少させることを含む。上記対象のeGFRが、第1の時点のeGFRと比較して約20%~約30%低下し、上記プロトコール開始後の調査において60mL/分/1.73m2を下回り、日用量が7.9mg BID減少するいくつかの実施形態では、方法は、用量減少から2週間後に、対象のeGFRを調査することを含み、上記対象のeGFRが、第1の時点におけるeGFRと比較して20%を超えて低下し、最初の用量減少の2週間後の調査において、60mL/分/1.73m2未満を下回る場合、第2の、日用量の7.9mg BIDの減少をさらに含む。方法が1回以上の用量減少を含むいくつかの実施形態では、方法は、1回以上の用量減少後、2週毎に、対象のeGFRを調査することを含み、上記対象のeGFRが、第1の時点におけるeGFRと比較して20%を下回って低下する場合に、各eGFR調査に対して、日用量を7.9mg BID増加させることを含む。いくつかの実施形態では、用量の増加は、用量の、初期の所定用量の超過を引き起こさない。
【0075】
方法が、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において、対象のeGFRを調査することを含むいくつかの実施形態では、第1の時点は、上記プロトコールの開始直前である。上記対象のeGFRが、第1の時点におけるeGFRと比較して第1の目標%以上低下し、上記プロトコール開始後の任意の調査において所定の値を下回るいくつかの実施形態では、方法は、上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することを含む。上記対象のeGFRが、第1の時点におけるeGFRと比較して目標%以上低下し、上記プロトコールの開始後の調査において所定の値を下回り、上記対象へのボクロスポリンの投与が停止されるいくつかの実施形態では、方法は、投与停止から2週間後に対象のeGFRを調査することを含み、上記対象のeGFRが、ボクロスポリンの投与中止の2週間後の調査において、第1の時点におけるeGFRと比較して第2の目標%を下回って低下している場合に、初期の所定用量で投与を再開することをさらに含む。いくつかの実施形態では、所定の値は、約50~約90mL/分/1.73m2の範囲である。いくつかの実施形態では、所定の値は、約30~40、40~50、50~60、60~70、70~80、80~90、90~100、及び100~110mL/分/1.73m2のいずれか1つの範囲である。いくつかの実施形態では、所定の値は、約30、40、50、60、70、80、90、または100mL/分/1.73m2のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、所定の値は、約60mL/分/1.73m2である。いくつかの実施形態では、第1の目標%は、約10%~約60%の範囲である。いくつかの実施形態では、第1の目標%は、約20%~約45%の範囲である。いくつかの実施形態では、第1の目標%は、約10%~20%、20%~30%、30~35%、35%~40%、40%~45%、45%~50%、50%~55%、及び55%~60%のいずれか1つの範囲である。いくつかの実施形態では、第1の目標%はおよそ30%である。いくつかの実施形態では、第2の目標%は、約10%~約60%の範囲である。いくつかの実施形態では、第2の目標%は、約10%~約45%の範囲である。いくつかの実施形態では、第2の目標%は、約10%~20%、20%~30%、30~35%、35%~40%、40%~45%、45%~50%、50%~55%、及び55%~60%のいずれか1つの範囲である。いくつかの実施形態では、第2の目標%はおよそ20%である。
【0076】
上記対象のeGFRが、第1の時点におけるeGFRと比較して30%以上低下し、上記プロトコールの開始後の任意の調査において60mL/分/1.73m2を下回るいくつかの実施形態では、方法は、上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することを含む。上記対象のeGFRが、第1の時点におけるeGFRと比較して30%以上低下し、上記プロトコールの開始後の調査において60mL/分/1.73m2を下回り、上記対象へのボクロスポリンの投与が停止されるいくつかの実施形態では、方法は、投与停止から2週間後に対象のeGFRを調査することを含み、上記対象のeGFRが、ボクロスポリンの投与中止の2週間後の調査において、第1の時点におけるeGFRと比較して20%を下回って低下している場合に、初期の所定用量で投与を再開することをさらに含む。
【0077】
任意の実施形態において、本明細書で開示する方法は、(a)対象の尿タンパク質クレアチニン比率(UPCR)が、朝最初の排尿、または24時間の尿により測定すると>1mg/mgであることを判定することと、(b)対象が、>45mL/分/1.73m2の慢性腎疾患疫学共同式(CKD-EP1)により測定されるeGFRを有することを判定することと、により、対象において、上記方法を行う前に、対象が上記方法に適切であるか否かを同定することをさらに含み、(a)及び(b)の条件が満たされる場合、対象は、上記方法に適切であると同定される。いくつかの実施形態では、方法は、対象の尿タンパク質クレアチニン比率(UPCR)が、朝最初の排尿、または24時間の尿により測定すると>1.5mg/mgであることを判定することを含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象の間質線維化及び尿細管萎縮を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1及び第2の時点の間で、間質線維化及び尿細管萎縮が、所定パーセンテージの皮質領域を上回って観察される場合に、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象の間質線維化及び尿細管萎縮を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1及び第2の時点の間で、間質線維化及び尿細管萎縮が、所定パーセンテージの皮質領域を下回って観察される場合に、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、所定パーセンテージは、0%、1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、もしくは50%のいずれか1つ、またはこれらの間のいずれかのパーセンテージである。いくつかの実施形態では、所定パーセンテージは、約0%~5%、約5%~約25%、約25%~約50%、または約50%~約99%のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、所定パーセンテージは、≦5%;5~25%;25~≦50%;または>50%のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、所定パーセンテージは、約5%である。いくつかの実施形態では、間質線維化及び尿細管萎縮は、非瘢痕性皮質領域における単核球浸潤により判定され、これは、腎臓同種移植片拒絶に対するBanffの隙間炎症スコアに類似している。いくつかの実施形態では、単核球浸潤が関与する非瘢痕性皮質領域のパーセンテージは、ヘマトキシリン及びエオシン染色(H&E)、過ヨウ素酸-Schiff(PAS)、銀及び三色染色、ならびにコラーゲンIII免疫組織化学により評価され、以下のカテゴリーを用いて、半定量的に等級付けされる:0等級:≦5%;1等級:5~25%;2等級:25~≦50%;3等級:>50%。
【0079】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象における内側細動脈硝子化の存在を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、内側細動脈硝子化が存在する場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象における内側細動脈硝子化の存在を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、内側細動脈硝子化が存在しない場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、内側細動脈硝子化は、輸入細動脈の壁周辺で、壊死平滑筋細胞が、局所的に円形の塊状タンパク質(硝子質)堆積物で置き換えられること、及び血管内腔が狭くなることにより同定される。いくつかの実施形態では、内側細動脈硝子化は、輸入細動脈の壁周辺で、壊死平滑筋細胞が、局所的に円形の塊状タンパク質(硝子質)堆積物で置き換えられること、または血管内腔が狭くなることにより同定される。
【0080】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象における糸球体損傷の存在を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、糸球体損傷が存在する場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象における糸球体損傷の存在を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、糸球体損傷が存在しない場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。いくつかの態様では、糸球体損傷は、全体及び部分的糸球体硬化、尿細管萎縮、間質線維化、ならびに動脈硬化を含む。いくつかの実施形態では、糸球体損傷は、全体及び部分的糸球体硬化、尿細管萎縮、間質線維化、または動脈硬化を含む。いくつかの例では、糸球体損傷は、総腎慢性スコアが1を超えるときに存在する。糸球体損傷を判定するために、全体及び部分的糸球体硬化は0~3で、尿細管萎縮は0~3で、間質線維化は0~3で、及び動脈硬化症は0~1で、スコア付けされる。次に、スコアを加え(総腎慢性スコア)、最小(合計スコア0~1)、軽度(合計スコア2~4)、中程度(合計スコア5~7)、及び重度(合計スコア≧8)の、慢性病変の合計深刻度を等級付けする。いくつかの実施形態では、糸球体損傷は、総腎慢性スコアが、0、1、2、3、4、5、6、7、8のいずれか1つを上回るときに存在するものと判定される。いくつかの実施形態では、糸球体損傷は、総腎慢性スコアが、約1、約2~約4、約5~約7、または約8~約10であるときに存在するものと判定される。いくつかの実施形態では、糸球体損傷は、軽度の糸球体損傷である。いくつかの実施形態では、糸球体損傷は、中程度の糸球体損傷である。いくつかの実施形態では、糸球体損傷は、深刻な糸球体損傷である。
【0081】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象における傍糸球体装置(JGA)過形成の存在を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、JGA過形成が存在する場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象における傍糸球体装置(JGA)過形成の存在を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、JGA過形成が存在しない場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。いくつかの例では、JGA過形成は、血管成分、メサンギウム細胞成分、尿細管成分(密集斑)、及び細胞内レニン顆粒の存在の1つ以上を含む、傍糸球体装置成分の増大を含む。いくつかの例では、JGA過形成は、血管成分、メサンギウム細胞成分、尿細管成分(密集斑)、または細胞内レニン顆粒の存在の1つ以上を含む、傍糸球体装置成分の増大を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象における尿細管微小石灰化の存在を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、尿細管微小石灰化が存在する場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象における尿細管微小石灰化の存在を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、尿細管微小石灰化が存在しない場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象におけるP-糖タンパク質(P-gp)発現を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、P-gpの発現喪失が所定の値を上回る場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象におけるP-糖タンパク質(P-gp)発現を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、P-gpの発現喪失が所定の値を下回る場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。いくつかの例では、P-gpの発現喪失に対する所定の値は、皮質領域における尿細管でのP-gp発現の、10%の喪失である。糸球体及び尿細管上皮細胞におけるP-糖タンパク質発現は、強度及び分布に従い、半定量的にスコア付けすることができる。分類は、正常=0ポイント、皮質領域に位置する尿細管の10%未満における、P-gp発現の喪失;軽度の喪失=1ポイント、皮質領域の尿細管の10%~24%における、P-gp発現の喪失;中程度の喪失=2ポイント、皮質領域の尿細管の25%~50%における、P-gp発現の喪失;深刻な喪失=3ポイント、皮質領域の尿細管の50%超における、P-gp発現の喪失を含むことができる。いくつかの実施形態では、P-gpの発現喪失に対する所定の値は、皮質領域の尿細管におけるP-gp発現の、約5%~約50%の喪失である。いくつかの実施形態では、P-gpの発現喪失に対する所定の値は、皮質領域の尿細管におけるP-gp発現の、約5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%の喪失のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、P-gpの発現喪失に対する所定の値は、皮質領域の尿細管におけるP-gp発現の、約1%~約5%、約5%~約10%、約10%~約25%、約25%~約50%、または50%以上の喪失のいずれか1つである。いくつかの例では、P-gpの発現喪失に対する所定の値は、皮質領域における尿細管でのP-gp発現の、10%の喪失である。
【0084】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象におけるカルシニューリン阻害剤(CNI)の腎毒性及び/またはBanffスコアを、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、CNI腎毒性及び/またはBanffスコアが所定範囲の外にある場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象におけるカルシニューリン阻害剤(CNI)の腎毒性及び/またはBanffスコアを、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、CNI腎毒性及び/またはBanffスコアが所定範囲内にある場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、CNI腎毒性スコアの所定範囲は、約0~1、0~2、0~3、0~4、0~5、0~6、0~7、0~8、0~9、または0~10のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、CNI腎毒性スコアの所定範囲は、約<1、<2、<3、<4、<5、<6、<7、<8、<9、または<10のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、Banffスコアの所定範囲は、約0~1、0~2、0~3、0~4、0~5、0~6、0~7、0~8、0~9、または0~10のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、Banffスコアの所定範囲は、約<1、<2、<3、<4、<5、<6、<7、<8、<9、または<10のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、CNI腎毒性スコアの所定範囲は0~3である、またはBanffスコアの所定範囲は0~3である。
【0085】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象の、アメリカ国立衛生研究所の活動指数(NIH-AI)、アメリカ国立衛生研究所の慢性指数(NIH-CI)、及び尿細管間質性活動指数(TIAI)のうちの1つを、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、NIH-AI、NIH-CI、及び/またはTIAIが所定範囲の外にある場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象の、アメリカ国立衛生研究所の活動指数(NIH-AI)、アメリカ国立衛生研究所の慢性指数(NIH-CI)、及び尿細管間質性活動指数(TIAI)のうちの1つを、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点における腎生検により調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、NIH-AI、NIH-CI、及び/またはTIAIが所定範囲内にある場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、NIH-AIの所定範囲は、約0~1、0~2、0~3、0~4、0~5、0~6、0~7、0~8、0~9、0~10、0~11、0~12、0~13、0~14、0~15、0~16、0~17、0~18、0~19、または0~20のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、NIH-AIの所定範囲は、<1、<2、<3、<4、<5、<6、<7、<8、<9、<10、<11、<12、<13、<14、<15、<16、<17、<18、<19、または<20のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、NIH-AIの所定範囲は約0~6である。いくつかの実施形態では、NIH-CIの所定範囲は、約0~1、0~2、0~3、0~4、0~5、0~6、0~7、0~8、0~9、または0~10のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、NIH-CIの所定範囲は<1、<2、<3、<4、<5、<6、<7、<8、<9、または<10のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、NIH-CIの所定範囲は約0~3である。いくつかの実施形態では、TIAIの所定範囲は、約0~1、0~2、0~3、0~4、0~5、0~6、0~7、0~8、0~9、0~10、0~11、0~12、0~13、0~14、または0~15のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、NIH-AIの所定範囲は、<1、<2、<3、<4、<5、<6、<7、<8、<9、<10、<11、<12、<13、<14、または<15のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、TIAIの所定範囲は約0~5である。いくつかの実施形態では、NIH-AIの所定範囲は約0~6である、またはNIH-CIの所定範囲は約0~3である、及び/またはTIAIの所定範囲は約0~5である。いくつかの実施形態では、NIH-AIの所定範囲は0~6であり、NIH-CIの所定範囲は0~3である、またはTIAIの所定範囲は0~5である。
【0086】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象の尿検体での尿アニオンギャップ(UAG)を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、UAGが所定範囲の外にある場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象の尿検体での尿アニオンギャップ(UAG)を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、UAGが所定範囲内にある場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。尿検体は、尿を酸化するのに十分な量の塩化アンモニウム(NH4Cl)を投与することを伴う、NH4+負荷試験により調査することができる。尿pHは、NH4+分泌に対するサロゲートマーカーとして尿アニオンギャップ(UAG)を用いて計算される。UAGは、尿内に存在するナトリウム(Na+)及びカリウム(K+)イオンから、尿クロール(Cl-)を差し引くことで導出される。いくつかの実施形態では、UAGの所定範囲は、約5~約150mEq/Lである。いくつかの実施形態では、UAGの所定範囲は、約10~約120、約15~約100、約20~約90、約30~約80、約40~約70、約50~約60、約10~約90、約10~約60、約20~約100、約20~約90、約20~約60、約30~約120、約30~約100、約30~約90、約30~約60mEq/Lのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、UAGの所定範囲は、約20~約90mEq/Lである。
【0087】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象の血清及び尿試料において、高カリウム血症、低マグネシウム血症、マグネシウム消費、及び高尿酸血症を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、高カリウム血症、低マグネシウム血症、マグネシウム消費、及び高尿酸血症が検出される場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象の血清及び尿試料において、高カリウム血症、低マグネシウム血症、マグネシウム消費、及び/または高尿酸血症を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、高カリウム血症、低マグネシウム血症、マグネシウム消費、または高尿酸血症が検出される場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象の血清及び尿試料において、高カリウム血症、低マグネシウム血症、マグネシウム消費、及び高尿酸血症を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、高カリウム血症、低マグネシウム血症、マグネシウム消費、及び高尿酸血症が検出されない場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象の血清及び尿試料において、高カリウム血症、低マグネシウム血症、マグネシウム消費、または高尿酸血症を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、高カリウム血症、低マグネシウム血症、マグネシウム消費、または高尿酸血症が検出されない場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、高カリウム血症は、約4、5、6、7、8、9、または10mmol/Lのいずれか1つを超える血清カリウム濃度により判定される。いくつかの実施形態では、高カリウム血症は、約5mmol/Lを超える血清カリウム濃度により判定される。いくつかの態様では、低マグネシウム血症は、約0.9、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、または2.5mg/dLのいずれか1つを下回る血清マグネシウム濃度により判定される。いくつかの態様では、低マグネシウム血症は、約1.4mg/dL未満の血清マグネシウム濃度により判定される。いくつかの態様では、マグネシウム消費は、約0.8、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2、2.2、2.4、2.6、2.8、3.0、3.5、または4.0mEqのいずれか1つを上回る尿マグネシウム濃度により判定される。いくつかの態様では、マグネシウム消費は、約2mEqを超える尿マグネシウム濃度により判定される。いくつかの態様では、高尿酸血症は、約4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、または10.0mg/dLのいずれか1つを上回る血清尿酸値濃度により判定される。いくつかの態様では、高尿酸血症は、約7.0mg/dLを超える血清尿酸濃度により判定される。
【0088】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象の血清試料における血清クレアチニン(SCr)及び血清シスタチンC(SCysC)を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、SCr及びSCysCレベルが所定範囲を上回って上昇する場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象の血清試料における血清クレアチニン(SCr)及び血清シスタチンC(SCysC)を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、SCrまたはSCysCレベルが所定範囲を上回って上昇する場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象の血清試料における血清クレアチニン(SCr)及び血清シスタチンC(SCysC)を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、SCr及びSCysCレベルが所定範囲内にある場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象の血清試料における血清クレアチニン(SCr)及び血清シスタチンC(SCysC)を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、SCrまたはSCysCレベルが所定範囲内にある場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。いくつかの例では、SCrレベルの所定範囲は、約0.5~2.0、0.5~1.8、0.5~1.6、0.5~1.4、0.5~1.21、0.5~1、0.84~2.0、0.84~1.8、0.84~1.6、0.84~1.4、0.84~1.21、または0.5~1mg/dLのいずれか1つである。いくつかの例では、SCrレベルの所定範囲は、約1<1.0、<1.1、<1.2、<1.21、<1.3、<1.4、<1.5、<1.6、<1.7、<1.8、<1.9、または<2.0mg/dLのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、SCysCレベルの所定範囲は、約<0.5、<0.6、<0.7、<0.8、<0.9、<1.0、<1.1、<1.2、<1.3、<1.4、<1.5、<1.6、<1.7、<1.8、<1.9、または<2.0mg/Lのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、SCysCレベルの所定範囲は、1mg/L未満である。いくつかの例では、SCrレベルの所定範囲は0.84~1.21mg/dLである、及び/またはSCysCレベルの所定範囲は1mg/L未満である。
【0089】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象の血清試料において、クレアチニンクリアランス(CrCl)及び血中尿素窒素(BUN)を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、CrClレベルが、第1の所定範囲を下回って低下し、かつ、BUNレベルが、第2の所定範囲を上回って上昇する場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象の血清試料において、クレアチニンクリアランス(CrCl)及び血中尿素窒素(BUN)を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、CrClレベルが、第1の所定範囲を下回って低下する、またはBUNレベルが、第2の所定範囲を上回って上昇する場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象の血清試料において、クレアチニンクリアランス(CrCl)及び血中尿素窒素(BUN)を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、CrCl及びBUNレベルが所定範囲内にある場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象の血清試料において、クレアチニンクリアランス(CrCl)及び血中尿素窒素(BUN)を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、CrClまたはBUNレベルが所定範囲内にある場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、CrClレベルの第1の所定範囲は、男性において、約120~170、130~170、130~160、130~150、135~170、135~160、135~150、137~170、137~137~160、137~150mL、もしくは140~145mL/分のいずれか1つ、またはこれらの間のいずれかの範囲である。いくつかの実施形態では、CrClレベルの第1の所定範囲は、女性において、約110~150、120~150、120~140、120~135、125~150、125~140、125~130、もしくは128~130mL/分のいずれか1つ、またはこれらの間のいずれかの範囲である。いくつかの実施形態では、BUNレベルの第2の所定の範囲は、約5~30、5~25、6~22、7~20、8~18、9~15、10~12mg/dLのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、CrClレベルの第1の所定範囲は、男性において137~150mL/分、及び女性において128~130mL/分でありBUNレベルの第2の所定の範囲は7~20mg/dLである。
【0090】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象の腎血管抵抗及び腎血漿流量(RPF)を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、腎血管抵抗及びRPFが、所定の値の外側まで変化した場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象の腎血管抵抗及び腎血漿流量(RPF)を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、腎血管抵抗またはRPFが、所定の値の外側まで変化した場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象の腎血管抵抗及び腎血漿流量(RPF)を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、腎血管抵抗及びRPFが、所定の値内に留まる場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象の腎血管抵抗及び腎血漿流量(RPF)を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、腎血管抵抗またはRPFが、所定の値内に留まる場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、RPFの所定の値は、約500~800、500~700、510~690、520~680、530~670、540~660、550~650、560~640、570~630、580~620、または590~610mL/分のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、RPFの所定の値は、約500~700、520~700、540~700、560~700、580~700、600~700、500~680、500~660、500~640、500~620、または500~620mL/分のいずれか1つである。いくつかの例では、RPFの所定の値は、約600mL/分である。
【0091】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象の、朝及び無作為の尿検体におけるアルブミン尿を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、アルブミン尿が検出される場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象の、朝及び無作為の尿検体におけるアルブミン尿を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、アルブミン尿が検出されない場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。尿アルブミンを分析し、アルブミン尿の、腎臓病:全体アウトカムの改善(KDIGO)段階を基に分類し、クレアチニン(g)で除したアルブミン(mg)として報告することができる。段階としては、A1:30mg/g未満、A2:30~300mg/g、及びA3:300mg/g超が挙げられる。いくつかの実施形態では、アルブミン尿は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、150、200、250、300、400、または500mg/gのいずれか1つを上回る、アルブミン/クレアチニン比率の存在により判定される。いくつかの実施形態では、アルブミン尿は、30mg/gを超えるアルブミン/クレアチニン比率の存在により判定される。
【0092】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象の1種以上の尿電解質の濃度を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、1種以上の尿電解質の濃度が所定の値を超えて低下または増加する場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象の1種以上の尿電解質の濃度を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第1の時点と第2の時点との間で、1種以上の尿電解質の濃度が所定の値未満で低下または増加する場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、尿電解質は、マグネシウム、ナトリウム、及びカリウムの1つ以上から選択される。
【0093】
任意の実施形態のいくつかにおいて、尿電解質はマグネシウムであり、所定の値は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、または40mg/dLである。任意の実施形態のいくつかにおいて、尿電解質はマグネシウムであり、所定の値は約20mg/dLである。任意の実施形態のいくつかにおいて、尿電解質はナトリウムであり、所定の値は、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、または100mmol/Lである。任意の実施形態のいくつかにおいて、尿電解質はナトリウムであり、所定の値は約50mmol/Lである。任意の実施形態のいくつかにおいて、尿電解質はカリウムであり、所定の値は、約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25mmol/Lである。任意の実施形態のいくつかにおいて、尿電解質はカリウムであり、所定の値は約10mmol/Lである。
【0094】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象の1種以上の脂質の濃度を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第2の時点において、1種以上の脂質の濃度が所定範囲の外側にある場合、日用量を、7.9mg BIDずつ(複数可)減少させる、または上記対象へのボクロスポリンの投与を停止することと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、上記対象の1種以上の脂質の濃度を、上記治療期間の異なる日の、少なくとも第1の時点及び第2の時点において調査することと、上記第2の時点において、1種以上の脂質の濃度が所定範囲内にある場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けることと、をさらに含む。いくつかの態様では、対象が、第1の時点において所定範囲の外にある、1種以上の脂質の濃度を示す場合であっても、対象は、少なくとも第2の時点までボクロスポリンの投与を受け、この時点において、1種以上の脂質の濃度が所定範囲内にある。
【0095】
任意の実施形態のいくつかにおいて、1種以上の脂質は、総コレステロール、高比重リポタンパク(HDL)コレステロール、低比重リポタンパク(LDL)コレステロール、及びトリグリセリドの1つ以上から選択される。任意の実施形態のいくつかにおいて、脂質は、総コレステロール、低比重リポタンパク(LDL)コレステロール、及びトリグリセリドの1つ以上から選択される。
【0096】
任意の実施形態のいくつかにおいて、脂質は総コレステロールであり、所定範囲は、170mg/dL未満、100~200、または125~200mg/dLである。任意の実施形態のいくつかにおいて、脂質は総コレステロールであり、所定範囲は100~200mg/dLである。任意の実施形態のいくつかにおいて、脂質はトリグリセリドであり、所定範囲は、150mg/dL未満、または50~150mg/dLである。任意の実施形態のいくつかにおいて、脂質はトリグリセリドであり、所定範囲は50~150mg/dLである。任意の実施形態のいくつかにおいて、脂質はLDLであり、所定範囲は、100、110、120、もしくは130mg/dL未満、または10~130、30~130、もしくは50~130mg/dLである。任意の実施形態のいくつかにおいて、脂質はLDLであり、所定範囲は50~130mg/dLである。任意の実施形態のいくつかにおいて、脂質はHDLであり、所定範囲は40、45、もしくは50mg/dL以上、または35~60mg/dLである。任意の実施形態のいくつかにおいて、脂質はLDLであり、所定範囲は35~60mg/dLである。
【0097】
本明細書に記載の方法のいずれかに従ったいくつかの実施形態では、所定の日用量は、39.5mgのボクロスポリンBID、または31.6mgのボクロスポリンBID、または23.7mgのボクロスポリンBID、または15.8mgのボクロスポリンBID、または7.9mgのボクロスポリンBIDである。いくつかの実施形態では、所定の日用量は、約7.9~23.7、23.7~31.6、31.6~39.5、または39.5~79mgのボクロスポリンのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、所定の日用量は、約2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、24、28、32、36、40、60、80、100mgのボクロスポリン、またはこれらの間の任意の値である。
【0098】
いくつかの実施形態では、第1の時点は、上記プロトコールの開始の、約0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、12、16、24、36、または48時間前のいずれか1つである。上記実施形態のいずれかにおいて、第1の時点は、上記プロトコールの開始直前である。いくつかの実施形態では、第2の時点は、上記プロトコールの開始後約1、2、3、4、5、10、14、15、20、25、28、30、40、50日以上のいずれか1つ、またはこれらの間の任意の時点である。いくつかの実施形態では、第2の時点は、上記プロトコールの開始後約1、2、3、4、5、8 10、12、15、16、20、24、25、28、30、32、35、36、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、150週以上のいずれか1つ、またはこれらの間の任意の時点である。
【0099】
上記実施形態のいずれかにおいて、有効量のボクロスポリンの所定の日用量は、約5、7.9、10、12、15、15.8、20、23.7、25、28、30、31.6、35、39.5、40、45、50mgのボクロスポリンBIDのいずれか1つ、またはこれらの間の任意の量である。いくつかの実施形態では、所定の日用量は、39.5mgのボクロスポリンBID、または31.6mgのボクロスポリンBID、または23.7mgのボクロスポリンBID、または15.8mgのボクロスポリンBID、または7.9mgのボクロスポリンBIDである。
【0100】
対象がベースラインにて深刻な腎不全を有する、本明細書に記載の方法のいずれか1つに従ったいくつかの実施形態では、有効量のボクロスポリンの所定の日用量は、約2,5、7.9、10、12、15、15.8、20、23.7、25、28、30、31.6、35mgのボクロスポリンBIDのいずれか1つ、またはこれらの間の任意の量である。対象がベースラインで深刻な腎不全を有するいくつかの実施形態では、有効量のボクロスポリンの所定の日用量は、約15.8mgのボクロスポリンBIDである。
【0101】
対象が中程度の肝不全を有する、本明細書に記載の方法のいずれか1つに従ったいくつかの実施形態では、有効量のボクロスポリンの所定の日用量は、約2,5、7.9、10、12、15、15.8、20、23.7、25、28、30、31.6、35mgのボクロスポリンBIDのいずれか1つ、またはこれらの間の任意の量である。対象が中程度の肝不全を有するいくつかの実施形態では、有効量のボクロスポリンの所定の日用量は、約15.8mgのボクロスポリンBIDである。
【0102】
対象に、1種以上の中程度のCYP3A4阻害剤が同時投与される、本明細書に記載の方法のいずれか1つに従ったいくつかの実施形態では、有効量のボクロスポリンの所定の日用量は、約2、5、7.9、10、12、15、15.8、20、23.7、25、28、30、31.6、35mgのボクロスポリンのいずれか1つ、またはこれらの間の任意の量の、毎朝用量;及び約1、2、5、7.9、10、12、15、15.8、20のいずれか1つ、またはこれらの間の任意の量の、午後用量を含む。対象に、1種以上の中程度のCYP3A4阻害剤が同時投与されるいくつかの実施形態では、有効量のボクロスポリンの所定の日用量は、約15.8mgのボクロスポリンの毎朝用量、及び約7.9mgのボクロスポリンの毎午後用量を含む。いくつかの実施形態では、中程度のCYP3A4阻害剤は、ベラパミル、フルコナゾール、ジルチアゼムのうちの1つを含む。
【0103】
上記実施形態のいずれかにおいて、方法は、上記対象の腎機能を、eGFRを調査することにより、上記治療期間の終了後の時点で評価することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、上記治療期間の終了後の時点で、タンパク質/クレアチニン比(UPCR)を調査することにより、上記対象に対する有効性を評価することをさらに含む。
【0104】
上記実施形態のいずれかにおいて、方法は、上記対象に、有効量のミコフェノール酸モフェチル(MMF)を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、上記対象に、有効量のコルチコステロイドを投与することをさらに含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供する方法及び使用を、持続性もしくは長期治療レジメンに用いることができる、及び/または慢性的なカルシニューリン阻害剤の腎毒性を軽減するために用いることができる。いくつかの実施形態では、治療期間は少なくとも55週間である。いくつかの実施形態では、治療期間は少なくとも100週間である。任意の実施形態のいくつかにおいて、治療期間は、少なくとも150週間である。いくつかの態様では、治療期間は、少なくとも1年、2年、または3年である。
【0106】
上記実施形態のいずれかにおいて、方法は、対象のeGFRを、第3の時点で判定することと、上記第3の時点でeGFRが、上記第1の時点で判定したeGFRと、上記目標%未満で異なると判定される場合、上記所定の日用量のボクロスポリンの投与を再開することと、をさらに含む。いくつかの例では、目標%は20~45%である。いくつかの例では、目標%はおよそ30%である。
【0107】
いくつかの実施形態では、タンパク尿腎臓病の治療における、または移植と関連する、慢性的なカルシニューリン阻害剤の腎毒性を軽減する方法であって、上記方法が、上記疾患と診断された対象に、所定の日用量の、有効量のボクロスポリンを、エンドポイントまでの計画された治療期間にわたり投与することを含み、上記治療期間の前の第1の時点、及びエンドポイントの前かつ治療期間の開始後に生じる第2の時点において、上記対象の尿タンパク質クレアチニン比(UPCR)を測定し、上記第1の時点と第2の時点との間で、上記UPCRのあらゆる低下を判定することと、上記対象のUPCRが、上記第2の時点において、少なくとも所定量の低下を示すことができない場合に、対象にボクロスポリンを投与することを中断し、上記所定量の低下が示される場合に、上記投与を継続することと、をさらに含む、上記方法を本明細書で開示する。
【0108】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する方法は、上記第1及び第2の時点において、上記対象の血液中のC3/C4濃度を測定することと、C3/C4の濃度が、上記第2の時点において正規化されたか否かを判定し、上記正規化が判明した場合、対象にボクロスポリンの投与を復活させる、または継続させ、正規化がまだ生じていない場合、上記中断を継続することと、をさらに含む。いくつかの態様では、方法は、上記対象に、有効量のミコフェノール酸モフェチル(MMF)を投与することをさらに含む。いくつかの例では、方法は、対象に、有効量のコルチコステロイドを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、所定の日用量は、39.5mgのボクロスポリンBID、または31.6mgのボクロスポリンBID、または23.7mgのボクロスポリンBID、または15.8mgのボクロスポリンBID、または7.9mgのボクロスポリンBIDである。
【0109】
いくつかの実施形態では、狼瘡性腎炎と診断された対象に、所定の日用量の、有効量のボクロスポリンを、少なくとも8週間の計画された治療期間にわたり投与することを含み、上記有効量が、15.8mg BID、または7.9mgボクロスポリンBIDである、タンパク尿腎臓病の治療方法を本明細書で開示する。
【0110】
本出願で参照される、特許文書、科学記事、及びデータベースを含む全ての出版物は、各個別の出版物が、個別に参照により組み込まれるのと同じ程度に、あらゆる目的のためにそれら全体が参照により組み込まれている。本明細書で説明される定義が、参照により本明細書に組み込まれている特許、出願、公報、及び他の出版物で説明されている定義に反する場合、またはそうでなければ矛盾する場合、本明細書で記載される定義が、参照により本明細書に組み込まれている定義よりも優先される。
【0111】
本明細書で使用される節の見出しは、構成目的のみのためであり、記載される主題を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0112】
以下の実施例は例証目的でのみ含まれ、本開示の範囲を限定することを意図していない。
【0113】
実施例1:LN治療の48週間研究
研究に登録された対象を3つの群に分け、88名の対象は、2gのMMFを毎日、加えて、経口コルチコステロイド-即ち、
図1に示す先細り用量のプレドニゾン-20~25mg/日で開始し、12週間後に、2.5mg/日に徐々に減少、を投与された対照群に属した。低用量群の89名の対象は、このバックグラウンド治療を受けたが、加えて、1日2回、それぞれ7.9mg(即ち、23.7mg)のボクロスポリンを含有する3つのカプセルの投与を受けた。本研究で使用したボクロスポリンは、90%を超えるE異性体を含んだ。88名の対象で構成される第3の群は、同様のバックグラウンド治療を受けたが、加えて、5つの、7.9mgカプセル(即ち、39.5mg)を1日2回投与された。研究は48週間の期間にわたり行い、安全性を24週の時点で調査した。
【0114】
対象は、研究に参加する前に、(a)朝一番の排尿により測定する尿タンパククレアチニン比率(UPCR)が>1.5mg/mgである、及び(b)慢性腎疾患疫学共同式(CKD-EP1)により測定するeGFRが、>45mL/分/1.73m2である、と判定することによりスクリーニングした。対象は、24週間及び48週間後、加えて、50週目の後続評価にて調査した。
【0115】
低用量投与は、高用量のボクロスポリン投与よりも良好な結果をもたらした。簡潔に述べると、対照の19.3%に対し、低用量患者の32.6%は、24週の時点でCRを示し、対照の49%と比較して、70%がPRを示した。
【0116】
本実施例におけるCRは、有効性、安全性、及び低用量ステロイド:UPCR≦0.5mg/mg(確認済み);eGFR>60mL/分/1.73m2、またはベースラインの20%以内;ステロイド≦10mg/日;救助投薬の投与なし、を含む複合評価項目である。
【0117】
PRは、安全性及び有効性:ベースラインからの、UPCRの50%の低下、及び救助投薬の使用なし、を含む複合評価項目である。
【0118】
副作用として経験するeGFRの低下の指標の有無に従い、用量が減少するまたは停止される、薬力学プロトコールの有効性を判定するために、治療が、本発明のプロトコールに従い変化したか否かを考慮して、患者のこれら3つの群を、治療の24週間及び48週間後に調査した。3つの群全てにおいて、上述の例示的プロトコール、即ち、各患者のeGFRが、ボクロスポリンの第1用量の投与直前、及び少なくとも1日後である第2の時点に測定されるプロトコールで説明される基準に従い、患者を調査し、
(i)上記対象のeGFRが、上記第1の時点と第2の時点との間で、30%を超えて、60mL/分/1.73m2未満まで低下した場合、上記対象へのボクロスポリンの投与を停止し、
(ii)上記対象のeGFRが、上記第1の時点と第2の時点との間で、20%~30%、60mL/分/1.73m2未満の値まで低下した場合、用量を減らしたボクロスポリンを上記対象に投与し、
(iii)上記対象のeGFRが、上記第1の時点と第2の時点との間で、<20%低下した場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けた。
【0119】
結果を、下表2及び3に示す。表2は、24週間後の完全寛解(CR)または部分寛解(PR)のパーセンテージを示し、表3は、用量減少を伴わない、及び用量減少を伴った患者に対する、48週間後のこれらの値を示す。
【表1】
【表2】
【0120】
本研究では、CRは、UPCR≦0.5mg/mg;eGFR>60mL/分/1.73m2、またはベースラインの20%以内、≦10mg/日のステロイド、及び救助投薬の投与なし、の複合として定義された。PRは、ベースラインからの50%のUPCRの低下、及び救助投薬の使用なしとして定義される。
【0121】
表2に示すように、24週間後に、プラセボ患者の12.5%、低用量患者の43.8%、及び高用量ボクロスポリン患者の53.4%が、治療中に用量減少を受けた。完全寛解を有する患者のパーセンテージは、薬力学的投与による投与群のいずれにも影響を与えず、部分寛解のパーセンテージもまた、ほぼ同じであったが、高用量群においては、部分寛解のパーセンテージが改善した。表3は48週の時点で同様の結果を示すが、高いパーセンテージの患者が、用量減少を受けた。ここでも、全体の寛解に劇的な効果は示されなかった。
【0122】
実施例2:低用量プロトコール
実施例1におけるものと同様の臨床研究の過程において、対象のかなりの部分が、1日2回(BID)投与される15.8mgのボクロスポリンまでほぼ即座に減少された用量において、実質的な寛解を示したことが観察された。したがって、出願者らはこれらのデータを分析し、15.8mgまたは7.9mgのボクロスポリンBIDを提供する用量プロトコールが、本プロトコールの薬力学的態様の有無に関係なく効果的であるという結論を下した。
【0123】
カプセルが7.9mgのボクロスポリンを含有するため、1キャップは7.9mgのボクロスポリンを表し、2キャップは15.8mgのボクロスポリンを表し、3キャップは23.7mgのボクロスポリンを表す、などである。治療のかなり初期において用量を7.9mgのボクロスポリンBIDまで減らした場合であっても、かなりの数の対象が、完全または部分寛解を示し、同様の結果が、15.8mg BIDの投与に対しても得られた。
【0124】
実施例3:低用量コルチコステロイド
コルチコステロイドの用量は、表4及び5に示す「標準ケア」と比較して効果的に減少させることができ、1日当たり4mg以下までさらに減少させることができることもまた、出願者らは発見した。
【表3】
【表4】
【0125】
実施例4:LN治療の、55週目後のフォローアップ調査
実施例1に記載するように、本研究に登録した対象を、治療の55週間後に調査し、本明細書に記載するプロトコールに従って、治療を変えるか否かを調査する。
【0126】
3つの群全てにおいて、上記明細書に記載する例示的プロトコール、即ち、各患者のeGFRが、ボクロスポリンの第1用量の投与直前、及び少なくとも1日後である第2の時点に測定されるプロトコールで説明される基準に従い、対象を調査し、
(i)上記対象のeGFRが、上記第1の時点と第2の時点との間で、30%以上、60mL/分/1.73m2未満まで低下した場合、上記対象へのボクロスポリンの投与を停止するか、または上記対象へのその用量を減少させ;
(ii)上記対象のeGFRが、上記第1の時点と第2の時点との間で、20%~30%、60mL/分/1.73m2未満の値まで低下した場合、用量を減らしたボクロスポリンを上記対象に投与し、
(iii)上記対象のeGFRが、上記第1の時点と第2の時点との間で、20%以下低下した場合、同じ所定の日用量のボクロスポリンを上記対象に投与し続けた。
【0127】
実施例5:間質線維化及び尿細管萎縮の調査
腎生検を、実施例4に記載する研究の過程の様々な時点において収集する。生検を全て、光学顕微鏡、免疫蛍光顕微鏡、及び電子顕微鏡を用いて調査する。収集した腎生検を、ヘマトキシリン及びエオシン染色(H&E)、過ヨウ素酸-Schiff(PAS)、銀及び三色染色、ならびにコラーゲンIII免疫組織化学により調査し、以下のカテゴリーを用いて、半定量的に等級付けする:0等級:≦5%;1等級:5~25%;2等級:25~≦50%;3等級:>50%。このカテゴリーは、単核球浸潤が関与する非瘢痕性皮質領域のパーセンテージを示し、これは、腎臓同種移植片拒絶に対するBanffの隙間炎症スコアに類似している。三色染色を用いて、線維症の同定を補助する。間質線維化は、コラーゲンの蓄積として識別され、間質尿細管萎縮における関連する分子は、蒼白色の細胞質を含む小さな尿細管、または拡張した薄い尿細管により識別される。
【0128】
腎生検によって、実施例4に記載する第1の時点と第2の時点との間で、間質線維化及び尿細管萎縮の存在が明らかになる場合、上記対象へのボクロスポリンの投与を停止する、または減少させる。腎生検によって、上記第1の時点と第2の時点との間で、間質線維化及び尿細管萎縮の存在が明らかとならない場合、上記対象へのボクロスポリンの投与を、同じ所定の日用量で継続する。
【0129】
実施例6:内側細動脈硝子化の調査
実施例5に記載するとおりに入手した腎生検を、内側細動脈硝子化に関してさらに調査する。輸入細動脈の媒体中に、結節型の硝子質堆積物が存在することは、輸入細動脈の壁周辺で、壊死平滑筋細胞が、局所的または円形の塊状タンパク質(硝子質)堆積物で置き換えられることにより同定される。さらなる調査は、正の腎アウトカムとは負に関連する、血管内腔の狭窄化の調査を含む。
【0130】
腎生検によって、実施例4に記載する第1の時点と第2の時点との間で、内側細動脈硝子化の存在が明らかになる場合、上記対象へのボクロスポリンの投与を停止する、または減少させる。腎生検によって、上記第1の時点と第2の時点との間で、内側細動脈硝子化の存在が明らかとならない場合、上記対象へのボクロスポリンの投与を、同じ所定の日用量で継続する。
【0131】
実施例7:糸球体性被膜線維症、全体糸球体硬化、及び焦点性分節糸球体硬化(FSGS)の調査
実施例5に記載するとおりに入手した腎生検を、糸球体損傷に関してさらに調査する。全体糸球体硬化は、細動脈硝子化、細小動脈症、二次糸球体性虚血、及び/または失尿細管糸球体の存在により同定される。失尿細管糸球体の存在は、近位尿細管と切り離された糸球体の存在により特徴付けられる。失尿細管糸球体は、糸球体周囲線維化(被膜線維症)の存在、または拡大した糸球体性嚢胞の中で激しく収縮した糸球体の存在によってもまた同定される。焦点性分節糸球体硬化病変は、少なくとも1つの糸球の一部に硬化が存在することで同定され、全糸球体体積のおよそ12.5%として同定されている。
【0132】
全体及び部分的糸球体硬化は0~3で、尿細管萎縮は0~3で、間質線維化は0~3で、及び動脈硬化症は0~1で、スコア付けされる。次に、スコアを加え(総腎慢性スコア)、最小(合計スコア0~1)、軽度(合計スコア2~4)、中程度(合計スコア5~7)、及び重度(合計スコア≧8)の、慢性病変の合計深刻度を等級付けする。
【0133】
腎生検によって、実施例4に記載する第1の時点と第2の時点との間で、糸球体損傷の存在が明らかになる場合、上記対象へのボクロスポリンの投与を停止する、または減少させる。腎生検によって、上記第1の時点と第2の時点との間で、糸球体損傷の存在が示されない場合、上記対象へのボクロスポリンの投与を、同じ所定の日用量で継続する。
【0134】
実施例8:傍糸球体装置過形成の調査
実施例5に記載するとおりに入手した腎生検を、傍糸球体装置(JGA)過形成に関してさらに調査する。腎生検を、マッソン及び免疫ペルオキシダーゼ染色で染色し、免疫組織化学分析を行う。試料を、電子顕微鏡によってさらに分析する。JGA過形成は、血管成分(輸入及び輸出細動脈の一部)、メサンギウム細胞成分(変性糸球体外及び糸球体内平滑筋細胞)、ならびに、尿細管成分(密集斑)、加えて、細胞内レニン顆粒の存在を含む傍糸球体装置成分の拡大によって評価される。
【0135】
腎生検によって、実施例4に記載する上記第1の時点と第2の時点との間で、JGA過形成の存在が明らかとなる場合、上記対象へのボクロスポリンの投与を停止する。腎生検によって、上記第1の時点と第2の時点との間で、JGA過形成の存在が明らかとならない場合、上記対象へのボクロスポリンの投与を、同じ所定の日用量で継続する。
【0136】
実施例9:尿細管微小石灰化の調査
実施例5に記載するとおりに入手した腎生検を、尿細管微小石灰化に関してさらに調査する。脱灰していないホルマリン(4%)で固定した、パラフィン埋包生検の組織学スライドを、ヘマトキシリン・エオジン染色(H&E)及び過ヨウ素酸シッフ(PAS)染色、加えて、リン酸カルシウム沈着を可視化するためのフォン・コッサ及びアリザリン染色で分析する。電子顕微鏡を用いて、腎尿細管内でのカルシウムの沈着をさらに同定する。微小石灰化の密度を、生検1ミリメートル当たりの石灰化病巣の数として評価し、生検で発見される石灰化病巣の総数を、スライドで測定した生検の総面積で除することにより計算する(1平方ミリメートル当たりの病巣総数)。
【0137】
腎生検によって、実施例4に記載する第1の時点と第2の時点との間で、尿細管微小石灰化の存在が明らかになる場合、上記対象へのボクロスポリンの投与を停止する、または減少させる。腎生検によって、上記第1の時点と第2の時点との間で、尿細管微小石灰化の存在が明らかとならない場合、上記対象へのボクロスポリンの投与を、同じ所定の日用量で継続する。
【0138】
実施例10:P-糖タンパク質発現クレアチニンクリアランスの調査
実施例5に一般に記載する対象から入手した腎生検を、P-糖タンパク質発現に関して調査する。P-糖タンパク質(P-gp)発現を、抗P-糖タンパク質抗体を用いて、腎生検を染色することにより分析する。糸球体及び尿細管上皮細胞におけるP-糖タンパク質発現は、強度及び分布に従い、半定量的にスコア付けする。分類は、正常=0ポイント、皮質領域に位置する尿細管の10%未満における、P-gp発現の喪失;軽度の喪失=1ポイント、皮質領域の尿細管の10%~24%における、P-gp発現の喪失;中程度の喪失=2ポイント、皮質領域の尿細管の25%~50%における、P-gp発現の喪失;深刻な喪失=3ポイント、皮質領域の尿細管の50%超における、P-gp発現の喪失、を含む。P-糖タンパク質の発現の低下は、腎病状を示唆している。
【0139】
腎生検により、実施例4に記載する第1の時点と第2の時点との間で、所定範囲外のP-gpの発現喪失が明らかになる場合、上記対象へのボクロスポリンの投与を停止する、または減少させる。腎生検により、上記第1の時点と第2の時点との間で、所定範囲外のP-gpの発現喪失が明らかにならない場合、上記対象へのボクロスポリンの投与を、同じ所定の日用量で継続する。
【0140】
実施例11:カルシニューリン阻害剤の腎毒性及びBanffスコアの調査
上述の薬力学的プロトコールの有効性をさらに判定するために、実施例5に記載のとおりに入手した腎生検を、カルシニューリン阻害剤(CNI)の腎毒性及びBanffスコアに関して、さらに調査する。慢性的な変化の深刻度を等級付けするために、生検を全て、半定量的にスコア付けする。CNI腎毒性スコアは、0~3のスケールで等級付けされる6つのパラメーターに基づき評価され、これにより、可能となる合計スコアは18である。6つのパラメーターとしては、(1)等尺性尿細管液胞化(tv)、(2)末梢または内側細動脈硝子質(ah)、(3)縞状間質線維化、(4)糸球体の虚血性崩壊、(5)傍糸球体装置過形成、及び(6)尿細管ジストロフィー石灰化が挙げられる。Banffの慢性スコア(BChS)を判定するために、腎生検を、移植糸球体症(cg)、尿細管萎縮(ct)、間質線維化(ci)、及び慢性的な血管変化(cv)に関して分析し、0~3のスケールで等級付けする。腎病状の深刻度は、軽度、中程度、及び深刻に分類分けされる。
【0141】
腎生検により、実施例4に記載する第1の時点と第2の時点との間で、所定範囲外のCNI腎毒性スコア、またはBanffの慢性スコア(BChS)が明らかになる場合、上記対象へのボクロスポリンの投与を停止する、または減少させる。腎生検により、第1の時点と第2の時点との間で、所定範囲外のCNI腎毒性スコア、またはBanffの慢性スコア(BChS)が明らかにならない場合、上記対象へのボクロスポリンの投与を、同じ所定の日用量で継続する。
【0142】
実施例12:活性及び慢性指数の調査
実施例5に記載のとおりに入手した腎生検を、アメリカ国立衛生研究所の活動指数(NIH-AI)、アメリカ国立衛生研究所の慢性指数(NIH-CI)、及び尿細管間質性活動指数(TIAI)を用いてさらに調査する。生検スライドを、ヘマトキシリン・エオジン(H&E)、トリクロム、ならびに、C3、C4、C5、C1q、IgG、IgM、及びIgAによる免疫蛍光法で染色した。電子顕微鏡写真を収集し、解釈を容易にした。
【0143】
指数は、0~3のスケール(スコア0=存在しない、1=<25%の糸球体、2=25~50%の糸球体、及び3=>50%の糸球体を表す)で、生検における、後述する各特徴を示す糸球体のパーセンテージをスコア付けすることを含む。
【0144】
NIH AIに関して、内毛細管の細胞過多、糸球体性毛細管ループ内の好中球または核崩壊、類線維素壊死、硝子質沈着、細胞または線維細胞性半月体、及び間質性炎症を含む、疾患活動性の指標を調査する。半月体及び類線維素壊死は、予後に悪影響を及ぼすため、2倍で重み付けをする。スコア範囲は0~24であり、0を不活性とみなす。高いNIH-AI値(>6)は、重大な変化とみなす。
【0145】
NIH-CIの指標としては、全体糸球体硬化、線維性半月体、尿細管萎縮、及び間質線維化の全てのパーセンテージが挙げられる。NIH-CIスコア範囲は0~12であり、0が慢性性なしを表す。高いNIH-CI値(>3)は、腎不全の進行と相関している。
【0146】
TIAIに関しては、尿細管細胞の核濃縮、核活性化、壊死、平滑化、尿細管内腔内のマクロファージ、尿細管内腔内の上皮細胞、及び間質性炎症を調査する。TIAIスコア範囲は0~21であり、0は間質性活性がないことを示す。
【0147】
統計分析を行い、カテゴリー変数の頻度を判定する。P値<0.05を、統計的に有意とみなす。
【0148】
腎生検により、実施例4に記載する第1の時点と第2の時点との間で、所定範囲外のNIH-AI、NIH-CI、またはTIAIが明らかになる場合、上記対象へのボクロスポリンの投与を停止する、または減少させる。腎生検により、上記第1の時点と第2の時点との間で、所定範囲外のNIH-AI、NIH-CI、またはTIAIが明らかにならない場合、上記対象へのボクロスポリンの投与を、同じ所定の日用量で継続する。
【0149】
実施例13:遠位尿細管アシドーシス(高クロール性代謝性アシドーシス)の調査
尿検体を、実施例4に実質的に記載するように、研究の過程における様々な時点において収集し、尿を酸化するのに十分な量の塩化アンモニウム(NH4Cl)を投与することを伴う、NH4+負荷試験を用いて調査した。尿pHは、NH4
+分泌に対するサロゲートマーカーとして尿アニオンギャップ(UAG)を用いて計算される。UAGは、尿内に存在するナトリウム(Na+)及びカリウム(K+)イオンから、尿クロール(Cl-)を差し引くことで導出される。
【0150】
尿pHの低下が起こらないことは、20~90mEq/Lを上回る範囲を特徴とする、不適切に正のUAGにより検出される。正のUAG結果を、遠位尿細管アシドーシスの指標として用いる。
【0151】
正のUAGが、実施例4に記載する第1の時点と第2の時点との間で検出される場合、上記対象へのボクロスポリンの投与を停止する、または減少させる。負のUAGが、上記第1の時点と第2の時点との間で検出される場合、上記対象へのボクロスポリンの投与を、同じ所定の日用量で継続する。
【0152】
実施例14:イオン恒常性の調査
血清及び尿試料を、実施例4に記載する調査の異なる時点において対象から入手し、高カリウム血症、低マグネシウム血症、マグネシウム消費、及び高尿酸血症を調査する。高カリウム血症を、採取した血清試料から調査し、軽度(5.1~<6mmol/L)、中程度(6~<7mmol/L)、及び深刻(≧7mmol/L)に分類する。低血清マグネシウム(低マグネシウム血症)は、標準的な参照範囲を下回る、即ち、1.4~1.8mg/dL未満の血清マグネシウム濃度として判定する。2mEq(1mmolまたは24mg)を超えるマグネシウム分泌を示す尿分析は、腎マグネシウム消費を示すものとして分類する。尿酸の増加(高尿酸血症)は、採取した血清試料から調査し、標準的な上限値である6.0~7.0mg/dLを上回る値として分類する。
【0153】
高カリウム血症、低マグネシウム血症、マグネシウム消費、または高尿酸血症が、実施例4に記載する第1の時点と第2の時点との間で検出される場合、上記対象へのボクロスポリンの投与を停止する、または減少させる。高カリウム血症、低マグネシウム血症、マグネシウム消費、または高尿酸血症が、上記第1の時点と第2の時点との間で検出されない場合、上記対象へのボクロスポリンの投与を、同じ所定の日用量で継続する。
【0154】
実施例15:血清クレアチニン及びシスタチンCの調査
血清試料を、実施例4に記載する研究に登録した対象から採取する。血清クレアチニン(SCr)は、酵素法、及びJaffe法により推定する。血清シスタチンC(SCysC)は、粒子増強比濁分析免疫アッセイ(PENIA)、及び粒子増強比濁免疫アッセイ(PETIA)により推定する。SCrレベルの増加は、正常範囲の0.84~1.21mg/dL(74.3~107mmol/L)を上回る値として判定される。SCysCレベルの増加は、1mg/Lを上回る値として判定される。
【0155】
SCrまたはSCysCレベルの増加が、実施例4に記載する第1の時点と第2の時点との間で検出される場合、上記対象へのボクロスポリンの投与を停止する、または減少させる。SCrまたはSCysCレベルの増加が、上記第1の時点と第2の時点との間で検出されない場合、上記対象へのボクロスポリンの投与を、同じ所定の日用量で継続する。
【0156】
実施例16:クレアチニンクリアランス及び血中尿素窒素(BUN)の調査
実施例4に記載する研究に登録した対象を、クレアチニンクリアランス及び血中尿素窒素に関してさらに調査する。身長及び体重を含む対象の個体群統計を記録し、血清クレアチニン(SCr)を、実施例15に記載のとおりに測定する。時間を計って尿試料を採取し、時間、体積、及びクレアチニン濃度を記録する。
【0157】
クレアチニンクリアランス(CrCl)は、女性においては*0.85の補正を用いて、Cockcroft-Gaultの式:CrCl=((140-年齢)*(体重(kg))/72*SCr)を用いて計算する。クレアチニンクリアランス(CrCl)もまた、Dubois及びDubois式:CrCl=(尿クレアチニン*尿体積)/(血清クレアチニン*時間(分))を用いて計算する。男性において、標準的な上部範囲である、137~150mL/分、及び女性において128~130mL/分の、クレアチニンクリアランスの外まで値が減少することは、腎病状を示唆している。
【0158】
血清試料を採取し、血中尿素窒素(BUN)レベルを分析する。BUNは、標準的な計装を用いて定量的に測定する。標準範囲の7~20mg/dL(2.5~7.1mmol/L)を上回るBUNの増加は、腎病状を示唆している。
【0159】
CrCl値の減少、またはBUNレベルの増加が、実施例4に記載する第1の時点と第2の時点との間で検出される場合、上記対象へのボクロスポリンの投与を停止する、または減少させる。CrCl値の減少、またはBUNレベルの増加が、上記第1の時点と第2の時点との間で検出されない場合、上記対象へのボクロスポリンの投与を、同じ所定の日用量で継続する。
【0160】
実施例17:腎血管抵抗及び腎血漿流量の調査
実施例4に記載する研究に登録した対象を、腎血管抵抗及び腎血漿流量(RPF)に関してさらに調査する。腎血管抵抗は、平均動脈圧により除した腎血流量として計算される。腎血流量は、腎動脈に固定した、小型パルスドップラープローブにより測定する。平均動脈圧は、オシロメーターデバイスを用いる血圧の測定、続いて、以下の式:(収縮期血圧+2(拡張期血圧))/3を用いる計算により測定される。
【0161】
腎血漿流量を調査するために、血清及び尿試料を、上記実施例に概して記載するとおりに採取し、パラアミノ馬尿酸(PAH)を分析する。尿の流速及び体積を、cc/分で測定する。RPFを、(尿内のPAH*尿の流速(cc/分))/血漿内のPAHとして計算する。標準範囲の600mL/分の外の値は、腎病状を示唆している。
【0162】
腎血管抵抗またはRPFの変化が、実施例4に記載する第1の時点と第2の時点との間で検出される場合、上記対象へのボクロスポリンの投与を停止する、または減少させる。腎血管抵抗またはRPFの変化が、上記第1の時点と第2の時点との間で検出されない場合、上記対象へのボクロスポリンの投与を、同じ所定の日用量で継続する。
【0163】
実施例18:アルブミン尿の調査
実施例4に記載のとおり、本研究におけるアルブミン/クレアチニン比率として、24時間の尿採取、または早朝/無作為検体で尿アルブミンを測定する。試料を分析し、アルブミン尿の、腎臓病:全体アウトカムの改善(KDIGO)段階を基に分類し、クレアチニン(g)で除したアルブミン(mg)として報告することができる。段階としては、A1:30mg/g未満、A2:30~300mg/g、及びA3:300mg/g超が挙げられる。
【0164】
尿路感染症を除く2つの機会においてアルブミン尿が存在することは、糸球体性機能不全を示唆している。3ヶ月以上アルブミン尿が続くことは、慢性腎疾患を示唆している。
【0165】
アルブミン尿が、実施例4に記載する第1の時点と第2の時点との間で検出される場合、上記対象へのボクロスポリンの投与を停止する、または減少させる。アルブミン尿が、上記第1の時点と第2の時点との間で検出されない場合、上記対象へのボクロスポリンの投与を、同じ所定の日用量で継続する。
【0166】
実施例19:ボクロスポリンで治療した狼瘡性腎炎患者における、電解質特性の調査
腎臓内で調節される電解質不均衡は、充実性臓器移植におけるカルシニューリン阻害剤(CNI)の使用と関連していることが報告されている(Gratreak et al.,Physiological reports.2020;8(1):e14316-e;Deray et al.,Ann Intern Med.1992;117(7):578-83)。CNIの使用による腎毒性の臨床所見は、例えば、経時的な、尿及び/または血清電解質濃度の変化を調査することにより裏付けることができる。狼瘡性腎炎を有する対象の尿電解質における免疫抑制療法と組み合わせた、CNIボクロスポリンの効果を調査した。
【0167】
活性狼瘡性腎炎を有する対象において、二重盲検無作為化比較試験を行い、プラセボと比較して、経口ボクロスポリン(23.7mg、1日2回)の有効性及び安全性を調査した。MMF(目標用量の1gを1日2回)、及び低用量の経口ステロイド(16週目に、2.5mg/日に急激に漸減)もまた、ボクロスポリン及びプラセボ群の両方において、対象に投与した。
【0168】
MMF及び低用量ステロイドと組み合わせてボクロスポリンで治療した、狼瘡性腎炎を有する患者は、MMF及び低用量ステロイドのみで治療した患者と比較して、有意に高い完全腎奏効率を達成した(1年の時点で、40.8%と22.5%;OR 2.65;p<0.0001)。
【0169】
各治療群における60名の患者からの、24時間の時点での尿試料を、電解質の尿分析のために選択した。試料は、治療に対して、1年の時点で、ベースラインから、尿タンパク質クレアチニン比率(UPCR)の少なくとも50%の低下の応答をした患者(治療応答者)、当該応答をしなかった患者(非応答者)、及び研究中に、推定される糸球体濾過量(eGFR)の、ベースラインから少なくとも30%の低下を有した患者からのものを含んだ。マグネシウム、カリウム、及びナトリウムの、ベースラインから1年での平均変化を、24時間尿排泄濃度として示した。
【0170】
尿電解質排泄濃度の、ベースラインからの平均変化は、マグネシウム(<13.4mg/dL)及びカリウム(<6.4mmol/L)に対しては小さく、サブグループのいずれに対しても、治療群の間で有意差は見られなかった。1年の時点で、対照群における応答者(14.0mmol/Lの増加)を除き、全てのサブグループ(<30.5mmol/L)において、ナトリウム排泄濃度はベースラインから低下した(表6)。
【表5】
【0171】
ボクロスポリンで治療した患者の、平均血清電解質濃度は、正常範囲内であった(Rovin et al.,Lancet.2021 May 29;397(10289):2070-2080)。ボクロスポリンの研究投与の時点で、マグネシウム、カリウム、及びナトリウムの、尿電解質排泄濃度のベースラインからの変化は、治療に対する応答に関係なく、いずれの治療群においても臨床的に有意でなかった。
【0172】
研究結果により、報告される、血清での正常な電解質濃度と共に、ボクロスポリンが、電解質の平均濃度に実質的な影響を及ぼさないことが確認される。結果は、狼瘡性腎炎を有する患者、特に、CNI腎毒性に対するリスクが増加している可能性がある患者の治療に対する、ボクロスポリンの安全性及び有効性をさらに裏付ける。
【0173】
実施例20:マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析イメージング(MALDI-MSI)による、マウス腎組織におけるシクロスポリンA、ボクロスポリン、及び代謝産物の局在化
シクロスポリンA及びボクロスポリンは構造的に類似しているものの、2つの化合物は、異なる代謝安定性及び分布を示し、これらは、固有の有効性及び安全性プロファイルに寄与している可能性がある。シクロスポリンAの特定の代謝産物は、腎毒性と相関している(Wu and Kuca,Current Drug Metabolism 2019;20(2):84-90(7))。マウス腎臓における、シクロスポリンA、ボクロスポリン、及びこれらの代謝産物の局在化及び分布を、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析イメージング(MALDI-MSI)を用いて、IV投与後に調査した。MALDI-MSIは、標識化を必要とせずに、生物学的組織試料における、分子の空間配置を高感度でマルチプレックス分析する。
【0174】
ヒトにおける、シクロスポリンAの主要代謝経路としては、ヒドロキシル化及びN-脱メチル化が挙げられる。これらのプロセスは、親化合物よりも比較的毒性が低い代謝産物をもたらすが、腎臓での代謝は、肝臓におけるほど効率的ではない。シクロスポリンAの代謝産物としては、AM1、AM1c、AM4N、AM9、AM19、及びAM1c9が挙げられる。AM19及びAM1c9などの、いくつかの代謝産物は、シクロスポリンAで治療した対象における腎毒性と相関している(Wu and Kuca,Current Drug Metabolism 2019;20(2):84-90(7))。
【0175】
ボクロスポリンの主要代謝産物としては、IM4n、IM9、IM1c(R)、IM1c(S)、IM19(MeBmt:環化)、IM19、IM4、IM1-ジオール-1、IM1-ジオール-2、及びIM1-ジオール-3、ならびに、トリヒドロキシ化された、予測ボクロスポリン代謝産物が挙げられる(例示的なボクロスポリン代謝産物の構造を示す、
図2A~
図2Kを参照されたい)。
【0176】
マウスに、尾静脈注射によってシクロスポリンAまたはボクロスポリンのいずれかを投与し、投与後に腎臓を回収した。腎臓を凍結切片処理し、MALDI-MSI分析のためにマトリックスで覆った。試料を、質量分析計にてラスタプロセスで測定し、空間的に分解された質量スペクトルを入手した。検出した分子を、色強度マップとして可視化した(m/z 0%~100%)。次に、試料の組織学的染色を行った。同じ試料の、組織学的染色及びMALDI-MSI測定値を、同時に記録した。
【0177】
下表7は、シクロスポリンA及びボクロスポリン代謝産物の、実際の、及び実験上の、質量電荷比(m/z)、加えて、質量精度(ppm)を示す。
【表6】
【0178】
図3は、例示的なマウス腎臓のMALDI-MSI、光学イメージング、ならびにヘマトキシリン及びエオジン(H&E)を示す。シクロスポリンAと比較して、ボクロスポリンの分布及び強度は、腎臓全体を通して、特に皮質において相対的に弱かった([VSP+Na]
+ vs [CsA+Na]
+)。シクロスポリンA代謝産物と比較したときに、腎臓への蓄積、分布、及び強度が減少ないし低下したことは、いくつかのボクロスポリン代謝産物に対して明白であった。他のボクロスポリン代謝産物と同様に、仮説上のトリヒドロキシ化代謝産物[(IM19+OH)+Na]
+は、腎臓において実質的に蓄積しないようであった。他のボクロスポリン代謝産物、及び親化合物そのものとは対照的に、[IM1c/IM4/IM9+Na]
+は、腎臓に大規模に分布し、全体の強度をより大きく示した。
図4A~
図4Eは、各化合物またはその代謝産物のそれぞれの、分子局在化に加えて、重なり合ったシクロスポリンA及びボクロスポリンの、一連のMALDI-MSI画像を示す。[IM1c/IM4/IM9+Na]
+の例外はあれど、ボクロスポリン及びその代謝産物は、シクロスポリンA及びその代謝産物よりも、腎臓には大幅に低い程度で、かつ、大幅に低い強度で分布したようであった。
【0179】
まとめると、これらの結果は、シクロスポリンA及びその代謝産物と比較して、ボクロスポリン及びその代謝産物の固有の腎臓分布と一致している。腎臓における、シクロスポリンA及びその代謝産物の広きにわたる分布及び強度は、この化合物の腎毒性を部分的に説明し得る。対照的に、腎臓全体における、ボクロスポリン及びその代謝産物の、強度、蓄積、及び分布の低下ないし減少は、ボクロスポリンの忍容性の向上、及び腎毒性の低下を裏付け、CNI療法を必要とする対象、特に、CNI腎毒性に罹りやすい可能性がある、または高いリスクもしくは感受性を示し得る対象における、ボクロスポリン療法の使用を裏付ける。
【0180】
実施例21:ボクロスポリンで治療した狼瘡性腎炎患者における、脂質プロファイルの調査
脂質異常症は、狼瘡性腎炎(LN)を治療するために用いる免疫抑制剤の、潜在的な副作用である。LNは、心臓血管疾患のリスク増加と関連しており、炎症及び免疫抑制剤と関連する脂質異常症により悪化する可能性がある。ボクロスポリンは、シクロスポリンAと構造的に類似しており、これに対しては、脂質異常症が既知の副作用である。他の病状に対するボクロスポリン治療は、平均脂質濃度において中立の影響を有することが報告されている。本実施例は、LNを有する対象の脂質濃度への、ボクロスポリンの影響を調査する。LNを有する対象の脂質濃度における、免疫抑制療法と組み合わせたボクロスポリンの影響を調査した。
【0181】
生検で証明された活性狼瘡性腎炎(クラスIII、IV、またはV±III/IV)、及びタンパク尿≧1.5mg/mg(クラスVに対しては≧2mg/mg)を有する対象を、第2相及び第3相臨床試験に登録し、プラセボ(対照)と比較しての、ボクロスポリンの有効性及び安全性を調査した。患者全員に、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)(目標の1g BID)、及び急速に漸減する低用量ステロイドを同時に投与した。同様に設計した臨床試験からプールしたデータは、ボクロスポリンをMMF及び低用量ステロイドに加えることで、治療から1年で、著しく高い完全な腎奏効率(CRR)がもたらされた(43.7%と23.3%;OR 2.76;P<0.0001)ことを示した。
【0182】
プールしたデータセットをさらに分析し、LNを有する対象における脂質濃度への、ボクロスポリンの影響を調査した。プールしたデータは、ボクロスポリン(23.7mg BID)群に268名の患者を、プラセボ治療対照群において266名の患者を含んだ。空腹時総コレステロール、低密度リポタンパクコレステロール(LDL)、高密度リポタンパクコレステロール(HDL)、及びトリグリセリドを、CLIA認定の中央実験室で、ベースライン及び1年のフォローアップ時に調査した。
【0183】
表8は、ベースラインから1年までの、ボクロスポリンまたはプラセボ(対照)で治療した対象の、脂質プロファイルの変化を示す。総コレステロール、LDL、及びトリグリセリドの平均値は、ベースラインにおいてはそれぞれの正常範囲を上回っており、ボクロスポリン及びプラセボ群の両方において、研究中に減少した。1年の時点で、ベースラインからの減少は、総コレステロール(P=0.0062)及びLDL(P=0.023)に関しては、対照群よりもボクロスポリン群において有意に大きかった。トリグリセリドの、ベースラインからの全体的な減少は、1年の時点においても、ボクロスポリン治療患者よりも大きかった(P=0.0768)。1年の時点で、総コレステロールが正常範囲の患者のパーセンテージは、ボクロスポリン群において約42%増加(ベースラインにおける17.3%から、59.2%)し、対照群において29%増加(ベースラインにおける19.4%から、48.3%)した。正常なLDLのパーセンテージは、対照群における約21%の増加(ベースラインにおける34.5%から、55.2%)と比較して、ボクロスポリン群において約42%増加(ベースラインにおける29.7%から、71.4%)した。正常なトリグリセリドを有する対象のパーセンテージは、ボクロスポリン群において32.3%から56.1%に、対照群において36.1%から53.6%に増加した。平均HDLレベルは、両群において正常範囲内にあり、研究を通して安定したままであった。
【表7-1】
【表7-2】
【0184】
ベースラインから1年間のフォローアップまで、総コレステロール、LDLコレステロール、及びトリグリセリドレベルは、両方の治療群で改善された。ボクロスポリン群は、より高いCRR率と共に、脂質の大幅な減少、及び対象が正常な脂質範囲に入るパーセンテージが全体的により高いことを示した。LN患者における心臓血管疾患のリスクを考慮すると、臨床試験で観察された、CRRの改善、及び脂質濃度への好ましい影響は、LN及び他の疾患の治療のための、CNIボクロスポリンの使用をさらに裏付ける。
【0185】
実施例22:長期の安定性及び忍容性の継続研究
狼瘡性腎炎(LN)に対して、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)及びステロイドと組み合わせた、12ヶ月のボクロスポリン治療を以前に終えた対象を、同じ治療をさらに2年行う、長期の継続研究に登録した。
【0186】
継続研究では、実施例21に概して記載するとおりに、狼瘡性腎炎を有する対象において、プラセボと比較してボクロスポリンを、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)と低用量ステロイドと組み合わせて調査した。継続研究には、さらに24ヶ月間、概して
図5に示すように、最初の1年間の研究に含まれた357名の対象のうち、216名が関与し、同じ治療群:低用量ステロイドを1日2回1gで、MMFと組み合わせて、ボクロスポリンの、23.7mg・1日2回の同じ治療を受けるボクロスポリン群に116名の患者、及び低用量ステロイドを1日2回1gで、MMFと組み合わせてプラセボで受ける対照群に100名の患者、で継続した。ボクロスポリン群における90名の対象、及び対照群における78名の対象が、研究終了時に合計36ヶ月の治療を受けた。対象の個体群統計を表9に示す。
【表8】
【0187】
表10は、治療前ベースライン、及び治療から1年(12ヶ月)のベースラインにおける、平均補正推定糸球体濾過量(eGFR)、及び平均尿タンパク質クレアチニン比率(UPCR)において、観察された値を示す。
【表9】
【0188】
ボクロスポリン治療群の116名の対象において、平均推定糸球体濾過量(eGFR)は、
図6に示すように、36ヶ月にわたり安定していた。さらに、活性対照群と比較して、ボクロスポリン治療群は、36ヶ月の時点において、+2.7mL/分のベースラインeGFRから増加を示した。平均eGFRは、ボクロスポリン治療群において、36ヶ月にわたり安定していた。
【0189】
平均UPCRは、
図7に示すように、3年のあらゆる時点において、ボクロスポリン治療群において下回っていた。
【0190】
ボクロスポリンは十分忍容され、予想外の安全性シグナルは観察されなかった。表11は、有害事象の一覧を示す。両方の研究群において、かなりの深刻な有害事象率が存在した(ボクロスポリン治療群において19%、及び活性対照群において24%)。さらに、ボクロスポリン治療群において死亡例はなかったが、活性対照群においては4件の死亡例があった。ボクロスポリン治療群(12.9%の離脱)と比較して、活性対照群では、離脱のパーセンテージが高かった(15.0%の離脱)。
【表10】
【0191】
バックグラウンド免疫抑制療法と組み合わせた、活性狼瘡性腎炎(LN)を有する成人、全身性エリテマトーデス(SLE)を有する対象における深刻な合併症の治療のための、ボクロスポリンの長期安全性及び忍容性を調査する、3年の長期継続研究の結果は、LNを有する対象に対する、ボクロスポリンの長期治療を裏付ける。結果は、タンパク尿の効果的な治療及び実質的な軽減を維持しながら、最大3年の治療後でさえも、長期安全性及び忍容性、eGFRに最小の影響を示す。
【0192】
本発明の範囲は、例えば、本発明の様々な態様を示すために提供される、特定の開示される実施形態に限定されることを意図するものではない。本記載の組成物及び方法に対する様々な変更は、本明細書の記載及び教示から明らかになるであろう。そのような変形は、本開示の真の範囲及び趣旨から逸脱することなく行われ得るとともに、本開示の範囲に含まれることが意図されている。
【国際調査報告】