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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-24
(54)【発明の名称】リパーゼ突然変異体及びその応用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/63 20060101AFI20240117BHJP
   C12N 9/18 20060101ALI20240117BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240117BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240117BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240117BHJP
   C12P 1/00 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
C12N15/63 Z
C12N9/18 ZNA
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P1/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542950
(86)(22)【出願日】2021-03-02
(85)【翻訳文提出日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 CN2021078741
(87)【国際公開番号】W WO2022151568
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】202110059694.6
(32)【優先日】2021-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516156282
【氏名又は名称】▲凱▼菜英生命科学技▲術▼(天津)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】洪 浩
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ,ゲイジ
(72)【発明者】
【氏名】肖 毅
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 娜
(72)【発明者】
【氏名】焦 学成
(72)【発明者】
【氏名】▲賈▼ 如
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 文敬
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 冶
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064CA19
4B064CA21
4B064CB02
4B064CC06
4B064CC07
4B064CC24
4B064DA16
4B064DA20
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA26X
4B065AA44Y
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA83X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA02
4B065CA31
(57)【要約】
リパーゼ突然変異体及びその応用を提供し、前記リパーゼ突然変異体のアミノ酸配列はSEQ ID NO:1で示される配列を有し、即ちアミノ酸突然変異が生じた部位はV154L部位を含む。前記リパーゼ突然変異体のタンパク質の構造及び機能が改変し、大腸菌における発現の可溶性が改善され、酵素の触媒活性を向上させる。実用化の際に、酵素の使用量を低減し、反応体積を減少させ、後処理の難易度を低減し、工業化生産に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:1で示される配列にアミノ酸突然変異が生じた配列を有し、前記アミノ酸突然変異が生じた部位はV154L部位である、ことを特徴とするリパーゼ突然変異体。
【請求項2】
前記アミノ酸突然変異が生じた部位は、V154L+I189L、V154L+L144G+L140V、V154L+P143A+L147P、V154L+I189L+L144G、V154L+I189L+L144G+L140V、V154L+I189L+L144G+L140W、V154L+I189L+L144G+L140M、V154L+I189L+L144G+I285M、V154L+I189L+L144G+I285V、V154L+I189L+L144G+L140V+I285M、V154L+I189L+L144G+L140V+I285V、V154L+I189L+L144G+P143A+L147P、V154L+I189L+L144G+L140V+P143A+L147P、V154L+I189L+L144G+T259A+V221A、V154L+I189L+L144G+Q23L+S150N、V154L+I189L+L144H、V154L+I189L+L144H+L140V、V154L+I189L+L144H+L140V+P143A+L147P、V154L+I189L+L144R+L140V、V154L+I189L+L144R+L140V+P143A+L147P、V154L+I189L+L144G+T40S、V154L+I189L+L144G+M72A、V154L+I189L+L144G+W113A、V154L+I189L+L144G+T138R、V154L+I189L+L144G+L140A、V154L+I189L+L144G+L140I、V154L+I189L+L144G+A141I、V154L+I189L+L144G+A141L、V154L+I189L+L144G+A141Q、V154L+I189L+L144G+A141T、V154L+I189L+L144G+A141V、V154L+I189L+L144G+S153P、V154L+I189L+L144G+S153T、V154L+I189L+L144G+P143G、V154L+I189L+L144G+P143I、V154L+I189L+L144H、V154L+I189L+L144P、V154L+I189L+L144R、V154L+I189L+L144S、V154L+I189L+L144T、V154K+I189L+L144G、V154M+I189L+L144G、V154L+I189L+L144G+I285L、V154L+I189L+L144G+I285A、V154L+I189L+L144G+D134H+T138R、V154L+I189L+L144T+A141L、V154L+I189L+L144G+S153P+L154K、V154L+I189L+S153T、V154L+I189L+S153P、V154L+I189L+D134T+T138R、V154L+I189L+D134N+T138R、V154L+I189L+D134+T138R、V154L+I189L+V190I、V154L+I189L+V190T、V154L+I189L+V190Y、V154L+I189L+V190A、V154L+I189L+A141L+L144T、V154L+I189L+A141V+L144D、V154L+I189L+A141Q+L144P、V154L+I189L+A141I+L144G、V154L+I189L+A141I+L144H、V154L+I189L+L144A、V154L+I189L+A281P、V154L+I189L+L144G+T256A、V154L+I189L+L144G+T186A、V154L+I189L+L144G+E269D、V154L+I189L+L144G+G307C+C311L+T316A、V154L+I189L+L144G+T44S、V154L+I189L+L144G+P152L、V154L+I189L+L144G+Q11L+Q73H、V154L+I189L+L144G+T259A+V221A又はV154L+I189L+L144R+P143A+L147Pのいずれか一つの組合せ突然変異部位である、ことを特徴とする請求項1に記載のリパーゼ突然変異体。
【請求項3】
請求項1~2のいずれか一項に記載のリパーゼ突然変異体をコードする、ことを特徴とするDNA分子。
【請求項4】
請求項3に記載のDNA分子が連結されている、ことを特徴とする組換えプラスミド。
【請求項5】
前記組換えプラスミドに用いられるベクターは、pET-22a(+)、pET-22b(+)、pET-3a(+)、pET-3d(+)、pET-11a(+)、pET-12a(+)、pET-14b、pET-15b(+)、pET-16b(+)、pET-17b(+)、pET-19b(+)、pET-20b(+)、pET-21a(+)、pET-23a(+)、pET-23b(+)、pET-24a(+)、pET-25b(+)、pET-26b(+)、pET-27b(+)、pET-28a(+)、pET-29a(+)、pET-30a(+)、pET-31b(+)、pET-32a(+)、pET-35b(+)、pET-38b(+)、pET-39b(+)、pET-40b(+)、pET-41a(+)、pET-41b(+)、pET-42a(+)、pET-43a(+)、pET-43b(+)、pET-44a(+)、pET-49b(+)、pQE2、pQE9、pQE30、pQE31、pQE32、pQE40、pQE70、pQE80、pRSET-A、pRSET-B、pRSET-C、pGEX-5X-1、pGEX-6p-1、pGEX-6p-2、pBV220、pBV221、pBV222、pTrc99A、pTwin1、pEZZ18、pKK232-8、pUC-18又はpUC-19、ことを特徴とする請求項4に記載の組換えプラスミド。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の組換えプラスミドを含有する、ことを特徴とする宿主細胞。
【請求項7】
前記宿主細胞は原核細胞又は真核細胞を含む、ことを特徴とする請求項6に記載の宿主細胞。
【請求項8】
前記原核細胞は大腸菌BL21(DE3)細胞又は大腸菌DH5α形質転換受容性細胞であり、前記真核細胞は酵母である、ことを特徴とする請求項7に記載の宿主細胞。
【請求項9】
リパーゼを採用してエステル類化合物に触媒加水分解反応を行うステップを含むキラル酸を生産する方法において、前記リパーゼは請求項1~2のいずれか一項に記載のリパーゼ突然変異体である、ことを特徴とするキラル酸を生産する方法。
【請求項10】
前記エステル類化合物は
【化1】
であり、前記リパーゼ突然変異体により酸類化合物
【化2】
及びアルコール類化合物HO-Rに加水分解され、ここで、RはCH、CHCH、CH-CHCH又はCHCHCHを表し、R、R、R、Rはそれぞれ独立してH、F、Cl、Br、CH又はCHCHを表す、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記エステル類化合物は、
【化3】
である、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記リパーゼ突然変異体の触媒加水分解反応のpHは6.5~8.5で、反応温度は20℃~37℃で、反応体積は10倍~50倍の基質使用量体積であり、単位はmg:μLである、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記リパーゼ突然変異体の触媒加水分解反応のpHは8.5で、反応温度は30℃で、反応体積は10倍の基質使用量体積であり、単位はmg:μLである、ことを特徴とする請求項12に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジーの分野に関し、具体的には、リパーゼ突然変異体及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのキラル酸類、アルコール類化合物(例えばα-置換プロピオン酸類化合物)は、活性を有し、キラル薬物合成における重要なキラルユニットである。酸、アルコール及びエステル類キラル薬物の分割は一般的に、まず化学的方法を用いて対応するメチルエステル、エチルエステル又はプロピルエステルなどのラセミ体を合成し、そしてリパーゼ又はエステラーゼを用いて立体選択的加水分解を行い、それによって単一鏡像異性体配置のキラルユニットを得る。例えば除草剤(R)-α-フェノキシプロピル、抗炎症剤(S)-フェニルプロパノールは、全てリパーゼの立体選択性により、単一の活性異性体に転化される。
【0003】
リパーゼは高度な立体選択性を有し、キラル分割を触媒し、単一のキラルアルコール類、アミン類、及びエステル類などの有機合成中間体を製造することができる(リパーゼの固定化及びそのキラル分割に関する研究の進展[J].応用化学工業,2011,40(10):1823-1827)。キラル薬物合成において、一般的なリパーゼは、ブタ膵臓リパーゼ、カンジダ属リパーゼ、シュードモナス属リパーゼ及びケカビ属リパーゼを含む(キラル薬物合成における生体触媒の使用[J].アミノ酸及び生物資源,2013,35(4):39-42)。
【0004】
例えば、出願公開番号CN108642025Aの発明特許出願には、Rhizopus Chinonsisのリパーゼ由来の突然変異体M8A、L10A、D11A、L12A、P17Gの酵素比活性が野生型酵素の比活性に比べて1.1~2.4倍向上し、M8A、L10A、T9Aの1,3-位置選択性が野生型酵素に比べて4.75~5倍向上することが開示されている。
【0005】
さらに例えば、出願公開番号CN109750013Aの発明特許出願には、Rhizopus Chinonsisのリパーゼ由来の突然変異体V131Nが開示されており、当該突然変異体は理想的な耐熱特性を持っており、50℃で120minに耐えてその相対酵素活性は約66.12%であるが、野生型リパーゼは28.24%しか残っておらず、60℃で野生リパーゼの相対酵素活性が半分残っている時間は約60minであり、対応する突然変異体は25minだけである。
【0006】
工業的に生産する場合、野生型のリパーゼの多くは触媒効率が低く、立体選択性が悪く、安定性が弱く、遺伝子工学的手段を用いてこれを一般的な工学的細菌に発現させる場合、目的タンパク質の発現量が低く、可溶性が悪く、触媒活性が弱いなどの欠点があるため、実際に広く利用できるリパーゼは多くない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、酵素の活性を向上させるためのリパーゼ突然変異体及びその応用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を実現するために、本発明の一態様によれば、リパーゼ突然変異体を提供する。当該リパーゼ突然変異体は、SEQ ID NO:1で示される配列にアミノ酸突然変異が生じた配列を有し、アミノ酸突然変異が生じた部位はV154L部位を含む。
【0009】
さらに、アミノ酸突然変異が生じた部位は、Q11L、T40S、T44S、Q23L、M72A、W113A、D134H/T/N、T138R、L140V/W/M/A/I、A141I/L/Q/T/V、P143A/G/I、L144G/H/P/R/S/T/D/A、L147P、S150N、P152L、S153P/T、V154K、T186A、I189L、V190I/T/Y/A、V221A、T256A、T259A、E269D、A281P、I285M/V/L/A、G307C、C311L、T316Aのいずれか1つ又は複数をさらに含み、ここで、「/」は「又は」を表す。
【0010】
さらに、アミノ酸突然変異が生じた部位は、V154L+I189L、V154L+L144G+L140V、V154L+P143A+L147P、V154L+I189L+L144G、V154L+I189L+L144G+L140V、V154L+I189L+L144G+L140W、V154L+I189L+L144G+L140M、V154L+I189L+L144G+I285M、V154L+I189L+L144G+I285V、V154L+I189L+L144G+L140V+I285M、V154L+I189L+L144G+L140V+I285V、V154L+I189L+L144G+P143A+L147P、V154L+I189L+L144G+L140V+P143A+L147P、V154L+I189L+L144G+T259A+V221A、V154L+I189L+L144G+Q23L+S150N、V154L+I189L+L144H、V154L+I189L+L144H+L140V、V154L+I189L+L144H+L140V+P143A+L147P、V154L+I189L+L144R+L140V、V154L+I189L+L144R+L140V+P143A+L147P、V154L+I189L+L144G+T40S、V154L+I189L+L144G+M72A、V154L+I189L+L144G+W113A、V154L+I189L+L144G+T138R、V154L+I189L+L144G+L140A、V154L+I189L+L144G+L140I、V154L+I189L+L144G+A141I、V154L+I189L+L144G+A141L、V154L+I189L+L144G+A141Q、V154L+I189L+L144G+A141T、V154L+I189L+L144G+A141V、V154L+I189L+L144G+S153P、V154L+I189L+L144G+S153T、V154L+I189L+L144G+P143G、V154L+I189L+L144G+P143I、V154L+I189L+L144H、V154L+I189L+L144P、V154L+I189L+L144R、V154L+I189L+L144S、V154L+I189L+L144T、V154K+I189L+L144G、V154M+I189L+L144G、V154L+I189L+L144G+I285L、V154L+I189L+L144G+I285A、V154L+I189L+L144G+D134H+T138R、V154L+I189L+L144T+A141L、V154L+I189L+L144G+S153P+L154K、V154L+I189L+S153T、V154L+I189L+S153P、V154L+I189L+D134T+T138R、V154L+I189L+D134N+T138R、V154L+I189L+D134+T138R、V154L+I189L+V190I、V154L+I189L+V190T、V154L+I189L+V190Y、V154L+I189L+V190A、V154L+I189L+A141L+L144T、V154L+I189L+A141V+L144D、V154L+I189L+A141Q+L144P、V154L+I189L+A141I+L144G、V154L+I189L+A141I+L144H、V154L+I189L+L144A、V154L+I189L+A281P、V154L+I189L+L144G+T256A、V154L+I189L+L144G+T186A、V154L+I189L+L144G+E269D、V154L+I189L+L144G+G307C+C311L+T316A、V154L+I189L+L144G+T44S、V154L+I189L+L144G+P152L、V154L+I189L+L144G+Q11L+Q73H、V154L+I189L+L144G+T259A+V221A又はV154L+I189L+L144R+P143A+L147Pのいずれか一つの組合せ突然変異部位を含む。
【0011】
本発明の別の態様によれば、DNA分子を提供する。当該DNA分子は、上記いずれかのリパーゼ突然変異体をコードする。
【0012】
本発明のさらに別の態様によれば、組換えプラスミドを提供する。当該組換えプラスミドに上記いずれかのDNA分子が連結されている。
【0013】
さらに、組換えプラスミドに用いられるベクターは、pET-22a(+)、pET-22b(+)、pET-3a(+)、pET-3d(+)、pET-11a(+)、pET-12a(+)、pET-14b、pET-15b(+)、pET-16b(+)、pET-17b(+)、pET-19b(+)、pET-20b(+)、pET-21a(+)、pET-23a(+)、pET-23b(+)、pET-24a(+)、pET-25b(+)、pET-26b(+)、pET-27b(+)、pET-28a(+)、pET-29a(+)、pET-30a(+)、pET-31b(+)、pET-32a(+)、pET-35b(+)、pET-38b(+)、pET-39b(+)、pET-40b(+)、pET-41a(+)、pET-41b(+)、pET-42a(+)、pET-43a(+)、pET-43b(+)、pET-44a(+)、pET-49b(+)、pQE2、pQE9、pQE30、pQE31、pQE32、pQE40、pQE70、pQE80、pRSET-A、pRSET-B、pRSET-C、pGEX-5X-1、pGEX-6p-1、pGEX-6p-2、pBV220、pBV221、pBV222、pTrc99A、pTwin1、pEZZ18、pKK232-8、pUC-18又はpUC-19である。
【0014】
本発明のさらなる態様によれば、宿主細胞を提供する。当該宿主細胞は、上記いずれか一つの組換えプラスミドを含有する。
【0015】
さらに、宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞を含み、好ましくは、原核細胞は大腸菌BL21(DE3)細胞又は大腸菌DH5α形質転換受容性細胞であり、真核細胞は酵母である。
【0016】
本発明のさらに別の態様によれば、キラル酸を生産する方法を提供する。当該方法は、リパーゼを採用してエステル類化合物に触媒加水分解反応を行うステップを含み、リパーゼが上記いずれか一つのリパーゼ突然変異体である。
【0017】
さらに、エステル類化合物は、
【化1】
であり、リパーゼ突然変異体により酸類化合物
【化2】
及びアルコール類化合物HO-Rに加水分解され、ここで、RはCH、CHCH、CH-CHCH又はCHCHCHを表し、R、R、R、Rはそれぞれ独立してH、F、Cl、Br、CH又はCHCHを表し、好ましくは、エステル類化合物は
【化3】
である。
【0018】
さらに、リパーゼ突然変異体の触媒加水分解反応のpHは6.5~8.5で、反応温度は20~37℃で、反応体積は10~50倍の基質使用量体積で、単位はmg:μLであり、好ましくは、リパーゼ突然変異体の触媒加水分解反応のpHは8.5で、反応温度は30℃で、反応体積は10倍の基質使用量体積(mg:μL)である。
【発明の効果】
【0019】
本発明のリパーゼ突然変異体は、タンパク質の構造及び機能の改変を実現し、大腸菌におけるその発現の可溶性が明らかに改善され、酵素の触媒活性を大幅に向上させる。実用化の際に酵素の使用量を大幅に低減し、反応体積を減少させ、後処理の難易度を低減し、工業化生産に適している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
なお、本願における実施例及び実施例における特徴は、矛盾しない限り、互いに組み合わせることができる。以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0021】
本発明は、指向性進化の方法によりリパーゼの特異性を向上させ、リパーゼの使用量を低減する。本発明のテンプレートアミノ酸(Pseudomonas putida,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/,ACCESSION:P41365)の配列は、SEQ ID NO:1(MLPSGSDPAFSQPKSVLDAGLTCQGASPSSVSKPILLVPGTGTTGPQSFDSNWIPLSTQLGYTPCWISPPPFMLNDTQVNTEYMVNAITALYAGSGNNKLPVLTWSQGGLVAQWGLTFFPSIRSKVDRLMAFAPDYKGTVLAGPLDALAVSAPSVWQQTTGSALTTALRNAGGLTQIVPTTNLYSATDEIVQPQVSNSPLDSSYLFNGKNVQAQAVCGPLFVIDHAGSLTSQFSYVVGRSALRSTTGQARSADYGITDCNPLPANDLTPEQKVAAAALLAPAAAAIVAGPKQNCEPDLMPYARPFAVGKRTCSGIVTP)であり、対応するヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:2(ATGCTGCCGAGTGGCAGTGACCCGGCGTTTAGTCAGCCGAAGAGCGTGCTCGATGCCGGTCTGACGTGTCAAGGCGCCAGTCCAAGCAGCGTTAGCAAACCGATTCTGCTGGTTCCGGGCACCGGTACCACGGGCCCGCAGAGCTTCGACAGCAACTGGATTCCGCTGAGTACCCAACTGGGCTACACGCCGTGCTGGATCAGTCCACCACCGTTCATGCTGAACGACACCCAAGTTAACACGGAGTACATGGTGAATGCGATCACCGCGCTGTACGCCGGCAGTGGTAACAATAAACTGCCGGTGCTCACGTGGAGTCAAGGCGGTCTGGTGGCCCAATGGGGTCTGACCTTCTTCCCGAGTATCCGCAGCAAAGTGGACCGTCTGATGGCGTTCGCCCCGGACTACAAAGGCACCGTTCTGGCCGGTCCACTGGATGCGCTGGCCGTTAGTGCCCCGAGCGTTTGGCAGCAGACGACCGGTAGTGCGCTGACCACCGCCCTCCGTAATGCGGGTGGTCTGACCCAAATCGTGCCGACGACCAATCTGTATAGCGCCACGGACGAGATTGTGCAGCCACAAGTTAGCAATAGCCCGCTGGACAGCAGCTACCTCTTCAATGGCAAAAACGTGCAAGCCCAAGCCGTTTGTGGTCCGCTGTTCGTTATCGATCACGCCGGTAGTCTGACGAGCCAGTTCAGCTATGTGGTTGGTCGCAGTGCGCTGCGTAGCACCACCGGTCAAGCCCGTAGCGCCGATTACGGCATTACCGACTGCAACCCGCTGCCAGCCAACGATCTGACCCCAGAACAGAAAGTTGCGGCCGCGGCGCTGCTGGCGCCAGCCGCGGCCGCCATTGTTGCCGGCCCGAAACAGAATTGCGAACCGGATCTGATGCCGTACGCGCGTCCATTCGCCGTGGGCAAACGCACGTGCAGCGGTATTGTTACCCCGTAA)である。
【0022】
まず部位特異的突然変異の方式によりリパーゼに突然変異部位を導入し、突然変異体の特異性について検出を行い、特異性が向上した突然変異体を選別する。ここで突然変異体V154Lは、開始テンプレートより特異性向上幅が比較的大きい。その後、V154Lをテンプレートとして突然変異を続け、触媒活性が向上した突然変異体を得ることを期待する。
【0023】
ここで、部位特異的突然変異:ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの方法により目的DNA断片(ゲノムでもプラスミドでもよい)に所望の変化(通常、有利な方向を特徴付ける変化)を導入することを指し、塩基の追加、削除、点突然変異などを含む。部位特異的突然変異は、DNAが発現する目的タンパク質の性状及び特徴付けを迅速かつ効率的に向上させることができ、遺伝子研究作業において非常に有用な手段である。
【0024】
全プラスミドPCRを利用して部位特異的突然変異を導入する方法は簡単かつ有効であり、現在では比較的多く用いられている手段である。その原理は、突然変異部位を含む1対のプライマー(正、逆)と、テンプレートプラスミドとをアニーリングした後にポリメラーゼを用いて「サイクリック伸長」することであり(いわゆるサイクリック伸長とは、ポリメラーゼがテンプレートに従ってプライマーを伸長し、一周後プライマーの5’端に戻って終了し、さらに加熱、アニーリング及び伸長を繰り返すことを経るサイクルを指す。)、この反応はローリングサークル増幅とは異なり、多数のタンデムコピーを形成しない。正逆プライマーの伸長産物はアニーリング後に対合して刻み目の付いた開環プラスミドとなる。Dpn I酵素を用いて伸長産物を切断し、元のテンプレートプラスミドは通常の大腸菌由来であり、damメチル化により修飾され、Dpn Iに敏感であるため切断されるが、インビトロで合成された突然変異配列を含むプラスミドはメチル化がないため切断されず、従ってその後の形質転換において成功に形質転換され、突然変異プラスミドのクローンを得ることができる。突然変異プラスミドを大腸菌細胞内に形質転換し、そして超音波で細胞を破砕する方法により粗酵素を得る。
【0025】
上記のようにして得られた突然変異プラスミドを大腸菌細胞内に形質転換し、大腸菌で過剰発現させる。そして超音波で細胞を破砕する方法により粗酵素を得る。リパーゼ誘導発現最適条件:25℃、0.1mM IPTG、16h誘導。
【0026】
ソフトウェアを用いてリパーゼの三次元構造をコンピュータシミュレーションにより解析したところ、本発明の突然変異が行われた部位は、いずれも基質結合部位の近傍に位置していることが分かる。
【0027】
本発明の典型的な一実施形態によれば、リパーゼ突然変異体を提供する。当該リパーゼ突然変異体は、SEQ ID NO:1で示される配列にアミノ酸突然変異が生じた配列を有し、アミノ酸突然変異が生じた部位はV154L部位を含む。
【0028】
好ましくは、アミノ酸突然変異が生じた部位は、Q11L、T40S、T44S、Q23L、M72A、W113A、D134H/T/N、T138R、L140V/W/M/A/I、A141I/L/Q/T/V、P143A/G/I、L144G/H/P/R/S/T/D/A、L147P、S150N、P152L、S153P/T、V154K、T186A、I189L、V190I/T/Y/A、V221A、T256A、T259A、E269D、A281P、I285M/V/L/A、G307C、C311L、T316Aのいずれか1つ又は複数をさらに含み、ここで「/」は「又は」を表す。
【0029】
より好ましくは、アミノ酸突然変異が生じた部位は、V154L+I189L、V154L+L144G+L140V、V154L+P143A+L147P、V154L+I189L+L144G、V154L+I189L+L144G+L140V、V154L+I189L+L144G+L140W、V154L+I189L+L144G+L140M、V154L+I189L+L144G+I285M、V154L+I189L+L144G+I285V、V154L+I189L+L144G+L140V+I285M、V154L+I189L+L144G+L140V+I285V、V154L+I189L+L144G+P143A+L147P、V154L+I189L+L144G+L140V+P143A+L147P、V154L+I189L+L144G+T259A+V221A、V154L+I189L+L144G+Q23L+S150N、V154L+I189L+L144H、V154L+I189L+L144H+L140V、V154L+I189L+L144H+L140V+P143A+L147P、V154L+I189L+L144R+L140V、V154L+I189L+L144R+L140V+P143A+L147P、V154L+I189L+L144G+T40S、V154L+I189L+L144G+M72A、V154L+I189L+L144G+W113A、V154L+I189L+L144G+T138R、V154L+I189L+L144G+L140A、V154L+I189L+L144G+L140I、V154L+I189L+L144G+A141I、V154L+I189L+L144G+A141L、V154L+I189L+L144G+A141Q、V154L+I189L+L144G+A141T、V154L+I189L+L144G+A141V、V154L+I189L+L144G+S153P、V154L+I189L+L144G+S153T、V154L+I189L+L144G+P143G、V154L+I189L+L144G+P143I、V154L+I189L+L144H、V154L+I189L+L144P、V154L+I189L+L144R、V154L+I189L+L144S、V154L+I189L+L144T、V154K+I189L+L144G、V154M+I189L+L144G、V154L+I189L+L144G+I285L、V154L+I189L+L144G+I285A、V154L+I189L+L144G+D134H+T138R、V154L+I189L+L144T+A141L、V154L+I189L+L144G+S153P+L154K、V154L+I189L+S153T、V154L+I189L+S153P、V154L+I189L+D134T+T138R、V154L+I189L+D134N+T138R、V154L+I189L+D134+T138R、V154L+I189L+V190I、V154L+I189L+V190T、V154L+I189L+V190Y、V154L+I189L+V190A、V154L+I189L+A141L+L144T、V154L+I189L+A141V+L144D、V154L+I189L+A141Q+L144P、V154L+I189L+A141I+L144G、V154L+I189L+A141I+L144H、V154L+I189L+L144A、V154L+I189L+A281P、V154L+I189L+L144G+T256A、V154L+I189L+L144G+T186A、V154L+I189L+L144G+E269D、V154L+I189L+L144G+G307C+C311L+T316A、V154L+I189L+L144G+T44S、V154L+I189L+L144G+P152L、V154L+I189L+L144G+Q11L+Q73H、V154L+I189L+L144G+T259A+V221A又はV154L+I189L+L144R+P143A+L147Pのいずれか一つの組合せ突然変異部位を含む。
【0030】
本発明のリパーゼ突然変異体は、タンパク質の構造及び機能の改変を実現し、大腸菌におけるその発現の可溶性が明らかに改善され、酵素の触媒活性を極めて大きく向上させる。実用化の際に酵素の使用量を大幅に低減し、反応体積を減少させ、後処理の難易度を低減し、工業化生産に適している。
【0031】
本発明のリパーゼ突然変異体は、SEQ ID NO:1で示されるリパーゼを基礎として、部位特異的突然変異の方法により突然変異を行い、それによってそのアミノ酸配列を変え、タンパク質の構造及び機能の改変を実現し、さらに指向性スクリーニングの方法により、上記突然変異部位を有するリパーゼを得ることにより、これらのリパーゼ突然変異体は、酵素特異性が大幅に向上する利点を有し、且つ酵素活性も相応に向上するため、酵素の使用量が大幅に低減され、工業生産におけるコストが低減される。
【0032】
本発明の典型的な一実施形態によれば、DNA分子を提供する。上記DNAは、得られるリパーゼをコードし、酵素活性及び酵素の安定性を向上させ、工業的なアミノ酸の生産において酵素の添加量を減少させ、後処理の難易度を低減する。
【0033】
本発明の上記DNA分子は、「発現カセット」の形態で存在してもよい。「発現カセット」とは適切な宿主細胞において特定のヌクレオチド配列の発現を指示することができるDNA及びRNA配列を包含する、線形又は環状の核酸分子を指す。一般に、目的ヌクレオチドに効果的に連結されたプロモーターを含み、これは任意選択で停止シグナル及び/又は他の調節エレメントに効果的に連結されている。発現カセットは、また、ヌクレオチド配列の正確な翻訳に必要な配列を含んでもよい。コード領域は、通常、目的タンパク質をコードするが、センス又はアンチセンス方向に目的機能性RNA、例えばアンチセンスRNA又は非翻訳RNAもコードする。目的ポリヌクレオチド配列を含む発現カセットは、キメラであってもよく、ここで、キメラとは、少なくとも1つのその成分と、その少なくとも1つの他の成分とが異種であることを意味する。発現カセットは、また、天然に存在するが、異種発現のための効果的な組換え形成によって得られることができる。
【0034】
本発明の典型的な一実施形態によれば、組換えプラスミドを提供する。当該組換えプラスミドは、上記いずれかのDNA分子を含有する。上記組換えプラスミド中のDNA分子は、組換えプラスミドの適切な位置に配置されることにより、上記DNA分子は、複製、転写又は発現を正確かつ円滑に行うことができる。
【0035】
本発明において上記DNA分子を限定する際に用いる限定語は「含有」であるが、DNA配列の両端にその機能に関与しない他の配列を任意に付加できることを意味するものではない。当業者は、組換え操作の要求を満たすために、DNA配列の両端に適切な制限酵素の酵素切断部位を付加するか、又は開始コドン、終止コドンなどをさらに付加する必要があることを知っており、従って、閉鎖式の表現で限定すれば、これらの状況を真実にカバーすることができない。
【0036】
本発明において用いられる用語「プラスミド」は、二本鎖又は一本鎖の線形又は環状の形態の任意のプラスミド、コスミド、バクテリオファージ又はアグロバクテリウム二元核酸分子を含み、好ましくは組換え発現プラスミドであり、原核生物発現プラスミドであっても真核生物発現プラスミドであってもよいが、好ましくは原核生物発現プラスミドであり、ある実施形態では、組換えプラスミドに用いられるベクターは、pET-22a(+)、pET-22b(+)、pET-3a(+)、pET-3d(+)、pET-11a(+)、pET-12a(+)、pET-14b、pET-15b(+)、pET-16b(+)、pET-17b(+)、pET-19b(+)、pET-20b(+)、pET-21a(+)、pET-23a(+)、pET-23b(+)、pET-24a(+)、pET-25b(+)、pET-26b(+)、pET-27b(+)、pET-28a(+)、pET-29a(+)、pET-30a(+)、pET-31b(+)、pET-32a(+)、pET-35b(+)、pET-38b(+)、pET-39b(+)、pET-40b(+)、pET-41a(+)、pET-41b(+)、pET-42a(+)、pET-43a(+)、pET-43b(+)、pET-44a(+)、pET-49b(+)、pQE2、pQE9、pQE30、pQE31、pQE32、pQE40、pQE70、pQE80、pRSET-A、pRSET-B、pRSET-C、pGEX-5X-1、pGEX-6p-1、pGEX-6p-2、pBV220、pBV221、pBV222、pTrc99A、pTwin1、pEZZ18、pKK232-8、pUC-18又はpUC-19から選ばれる。より好ましくは、上記組換えプラスミドは、pET-22b(+)である。
【0037】
本発明の典型的な一実施形態によれば、上記いずれか一つの組換えプラスミドを含有する宿主細胞を提供する。本発明に適用する宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞を含むが、これらに限定されない。原核細胞は大腸菌BL21(DE3)細胞又は大腸菌DH5α形質転換受容性細胞であり、真核細胞は酵母であることが好ましい。
【0038】
本発明の典型的な一実施形態によれば、キラル酸を生産する方法を提供する。当該方法は、リパーゼを採用してエステル類化合物に触媒加水分解反応を行うステップを含み、リパーゼが上記いずれか一つのリパーゼ突然変異体である。本発明の上記リパーゼは、よりよい特異性、ひいてはより高い酵素触媒活性を有するため、本発明のリパーゼ突然変異体を利用してキラル酸を製造すると生産コストを低減することができるだけでなく、得られるアミノ酸e.e.値がより高い。
【0039】
エステル類化合物は、
【化4】
であり、リパーゼ突然変異体により酸類化合物
【化5】
及びアルコール類化合物
【化6】
に加水分解され、ここで、RはCH、CHCH、CH-CHCH又はCHCHCHを表し、R、R、R、Rはそれぞれ独立してH、F、Cl、Br、CH又はCHCHを表す。
【0040】
本発明の典型的な一実施形態によれば、エステル類化合物は、
【化7】
である。
【0041】
突然変異体はエステル類反応を触媒し、異なる反応条件下での転化率はそれぞれ異なり、突然変異体pHがpH6.5、pH7.5及びpH8.5を含むがこれらに限定されない場合、いずれも良好な触媒反応を示し、好ましいpH8.5は突然変異体の最適pH条件であり、反応温度の上昇に伴い、突然変異体は、20℃、30℃、37℃で触媒活性が徐々に上昇し、この種の反応基質は大部分が37℃で明らかに揮発する可能性があることから、好ましい30℃は比較的適切な反応温度であり、突然変異体は50体積/25体積/10体積を含むがこれらに限定されない異なる反応体積での酵素触媒活性の差が大きくないが、体積が小さいほど後処理に有利であり、工業化生産の需要に適合するので、好ましい10Vはより合理的な反応体積である。
【0042】
以下、具体的な実施例を参照して本発明の有益な効果をさらに説明する。
【化8】
【0043】
(実施例1)
それぞれ20mgの基質1/基質2/基質3を取り、反応系に2mgの再懸濁したリパーゼ又はその突然変異体の菌泥を順次加えて、0.1 M pH 8.5 Tris-Cl Bufferで系500μLまでに補充し、200rpm、30℃で16h恒温反応させた。系に2倍体積(1mL)のアセトニトリルを加え、十分均一にし、12000rpmで3min遠心分離し、層分離の有無を観察し、層分離がある場合に、アセトニトリル:精製水=1:1の混合液を層分離が無くなるまで追加し、最後に200μLの遠心分離した上清を400μLのアセトニトリル:精製水=1:1の混合液に取り、均一に混合した後にHPLCにサンプルを送って転化率を検出した。一部の突然変異体の反応特性は、以下の表1に示すとおりである(タンパク質発現の可溶性状況も付記している。)。
【表1】
【0044】
母種(-)を対照とし、活性向上の倍数を+で表し、+は10~50倍、++は50~100倍、+++は100~200倍以上向上したことを示す。
【0045】
「*」は大腸菌におけるタンパク質発現の可溶性で、菌体超音波破砕後の遠心分離した上清及び沈澱におけるタンパク質の分布割合を表し、*は1:10から1:5の割合を表し、**は1:4から1:1の割合を表し、***は1:1から2:1の割合を表し、****は2:1から4:1の割合を表す。
【0046】
(実施例2)
それぞれ20mgの基質1/基質4を取り、反応系に2mgの再懸濁したリパーゼ又はその突然変異体の菌泥を順次加えて、0.1M pH 8.5 Tris-Cl Bufferで系500μLまでに補充し、200rpm、30℃で16h恒温反応させた。系に2倍体積(1mL)のアセトニトリルを加え、十分均一にし、12000rpmで3min遠心分離し、層分離の有無を観察し、層分離がある場合に、アセトニトリル:精製水=1:1の混合液を層分離が無くなるまで追加し、最後に200μLの遠心分離した上清を400μLのアセトニトリル:精製水=1:1の混合液に取り、均一に混合した後にHPLCにサンプルを送って転化率を検出した。一部の突然変異体の反応特性は、以下の表2に示すとおりである。
【表2(1)】
【表2(2)】
【0047】
母種(-)を対照とし、活性向上の倍数を+で表し、+は50~100倍、++は100~200倍、+++は200~400倍、++++は400倍以上向上したことを示す。
【0048】
(実施例3)
それぞれ20mgの基質1/基質2/基質3/基質4/基質5/基質6を取り、反応系に2mgの再懸濁したリパーゼ又はその突然変異体の菌泥を順次加えて、0.1M pH8.5 Tris-Cl Bufferで系500μLまでに補充し、200rpm、30℃で16h恒温反応させた。系に2倍体積(1mL)のアセトニトリルを加え、十分均一にし、12000rpmで3min遠心分離し、層分離の有無を観察し、層分離がある場合に、アセトニトリル:精製水=1:1の混合液を層分離が無くなるまで追加し、最後に200μLの遠心分離した上清を400μLのアセトニトリル:精製水=1:1の混合液に取り、均一に混合した後にHPLCにサンプルを送って転化率を検出した。一部の突然変異体の反応特性は、以下の表3に示すとおりである。
【表3】
【0049】
母種(-)を対照とし、活性向上の倍数を+で表し、+は50~100倍、++は100~200倍、+++は200~400倍、++++は400倍以上向上したことを示す。
【0050】
(実施例4)
それぞれ20mg/100mg/1gの基質2/基質5/基質6を取り、反応系に0.1wt(質量比)に相当するリパーゼ又はその突然変異体の菌泥を順次加えて、0.1M pH 8.5 Tris-Cl Bufferで系25 Vまでに補充し、200rpm、30℃で16h恒温反応させた。系に2倍反応体積のアセトニトリルを加え、十分均一にし、12000rpmで3min遠心分離し、層分離の有無を観察し、層分離がある場合に、アセトニトリル:精製水=1:1の混合液を層分離が無くなるまで追加し、最後に200μLの遠心分離した上清を400μLのアセトニトリル:精製水=1:1の混合液に取り、均一に混合した後にHPLCにサンプルを送って転化率を検出した。比較的良い3つの突然変異体を選択して20mgから100mg、次いで1gまで段階的に拡大したところ、その転化活性は母種に比べて全て明らかに向上し、具体的な反応特性は以下の表4に示すとおりである。
【表4】
【0051】
母種(-)を対照とし、活性向上の倍数を+で表し、+は50~100倍、++は100~200倍、+++は200~400倍、++++は400倍以上向上したことを示す。
【0052】
(実施例5)
それぞれ20mgの基質2/基質5を取り、反応系に2mgに相当する再懸濁したリパーゼ又はその突然変異体の菌泥を順次加え、0.1Mの異なるpH Tris-Cl Buffer(pH6.6/7.5/8.5)を加え、異なる反応体積50V/25V/10V及び20℃/30℃/37℃などの異なる温度を設定し、200rpmで16h反応させた。系に2倍体積のアセトニトリルを加え、十分均一にし、12000rpmで3min遠心分離し、層分離の有無を観察し、層分離がある場合に、アセトニトリル:精製水=1:1の混合液を層分離が無くなるまで追加し、最後に200μLの遠心分離した上清を400μLのアセトニトリル:精製水=1:1の混合液に取り、均一に混合した後にHPLCにサンプルを送って転化率を検出した。異なる反応条件下におけるこの3つの突然変異体の2種類の基質に対する転化結果から見ると、pH8.5は比較的良い反応pH値であり、触媒反応は温度の増加に伴い加速しているが、この種の反応基質は大部分が37℃で明らかに揮発する可能性があるため、30℃は比較的適切な反応温度であり、異なる反応体積(50V/25V/10V)の転化活性の差は大きくなく、体積が小さいほど後処理に有利であり、工業化生産の需要に適合する。具体的な反応特性は以下の表5に示すとおりである。
【表5】
【0053】
母種(-)を対照とし、活性向上の倍数を+で表し、+は50~100倍、++は100~200倍、+++は200~400倍、++++は400倍以上向上したことを示す。
【0054】
(実施例6)
それぞれ20mgの基質1/基質2/基質3/基質4/基質5/基質6を取り、反応系に2mgの再懸濁したリパーゼ又は一部の突然変異体の菌泥を順次加えて、0.1M pH8.5 Tris-Cl Bufferで系500μLまでに補充し、200rpm、30℃で16h恒温反応させた。反応系に6M塩酸を加えてpHを2~3の間に調整し、1mLの酢酸エチル(EA)を加えて十分に抽出反応させ、12000rpmで10min遠心分離し、上清を無水硫酸マグネシウムで水切りした後、12000rpmで10min遠心分離し、再び上清を取り、GCに送って検出した。製品のe.e.値は工業化生産過程において非常に重要な指標であり、本専利はタンパク質のアミノ酸配列を改造し、活性を大幅に向上させると同時に製品のe.e.値を最大限保証すべきであり、しかもe.e.値は安定を維持しながらも若干向上しており、少なくとも低下していない。いくつかの突然変異体の具体的な反応特性は以下の表6に示すとおりである。
【表6】
*はe.e.値が97%~99%であることを表し、**はe.e.値>99%であることを表す。
【0055】
本発明は大量の実験検証を経て、基質の使用量が徐々に増加し、最終的に本発明のリパーゼ突然変異体の触媒反応の転化率が最初の<0.5%から96%まで向上し、ひいては99%に達し、しかも製品のe.e.値は大部分が>99%を維持し(少量のe.e.値は97%~99%の間である。)、生産の周期を大幅に短縮し、人件費及び物件費を低減することを証明する。
【0056】
上記は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、当業者にとって本発明は様々な変更及び変形が可能である。本発明の精神及び原則を逸脱しない範囲でなされる任意の修正、均等置換、改良などは、本発明の保護の範囲内に含まれるものとする。

【手続補正書】
【提出日】2023-07-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
エステル類化合物は、
【化4】
であり、リパーゼ突然変異体により酸類化合物
【化5】
及びアルコール類化合物
【化6】
に加水分解され、ここで、RはCH、CHCH、CH-CHCH又はCHCHCHを表し、R、R、R、Rはそれぞれ独立してH、F、Cl、Br、CH又はCHCHを表す。
【国際調査報告】