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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-24
(54)【発明の名称】T細胞を標的とするAAVベクター
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/864 20060101AFI20240117BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240117BHJP
   C12N 15/35 20060101ALI20240117BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240117BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240117BHJP
   C07K 14/015 20060101ALN20240117BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C12N15/63 Z ZNA
C12N15/35
C12N5/10
A61K35/76
C07K14/015
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542960
(86)(22)【出願日】2022-01-14
(85)【翻訳文提出日】2023-08-04
(86)【国際出願番号】 US2022012542
(87)【国際公開番号】W WO2022155482
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】63/137,497
(32)【優先日】2021-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】322005747
【氏名又は名称】ギンコ バイオワークス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ジェームズ ケノン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA23
4B065CA24
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA10
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB02
4C087ZB09
4C087ZB21
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA01
4H045EA20
(57)【要約】
本開示は、バリアントAAVカプシドタンパク質、及びAAVカプシド、及びそれを含むウイルスベクターを提供する。本明細書に記載のウイルスベクターは、天然のAAVカプシド配列と比較して、目的の標的細胞、例えばT細胞における形質導入を増加させ得る。本開示はまた、本開示のウイルスベクター及びウイルスカプシドを細胞またはそれを必要とする患者に投与する方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプシドタンパク質を含む組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、前記カプシドタンパク質が配列番号17~23のいずれか1つの配列を有する形質導入関連ペプチドを含む、前記組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター。
【請求項2】
前記カプシドタンパク質が、配列番号1に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の組換えAAVベクター。
【請求項3】
前記形質導入関連ペプチドが、配列番号1のアミノ酸454~460に対応するアミノ酸を置換する、請求項1または2に記載の組換えAAVベクター。
【請求項4】
前記カプシドタンパク質が、配列番号2、4、6、8、10、12、及び14からなる群から選択されるアミノ酸配列、またはそれらに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一な配列を含む、請求項1に記載の組換えAAVベクター。
【請求項5】
カプシドタンパク質を含む組換えAAVベクターであって、前記カプシドタンパク質が配列番号1の配列を含み、配列番号1のアミノ酸454~460が配列X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7(配列番号24)を含む形質導入関連ペプチドによって置換されている、前記組換えAAVベクター。
【請求項6】
X1がGではなく、X2がSではなく、X3がAではなく、X4がQではなく、X5がNではなく、X6がKではなく、及び/またはX7がDではない、請求項5に記載の組換えAAVベクター。
【請求項7】
X1がH、M、A、Q、V、またはSである、請求項5~6のいずれか1項に記載の組換えAAVベクター。
【請求項8】
X2がAまたはTである、請求項5~7のいずれか1項に記載の組換えAAVベクター。
【請求項9】
X3がPまたはTである、請求項5~8のいずれか1項に記載の組換えAAVベクター。
【請求項10】
X4がRまたはDである、請求項5~9のいずれか1項に記載の組換えAAVベクター。
【請求項11】
X5がV、Q、C、SまたはDである、請求項5~10のいずれか1項に記載の組換えAAVベクター。
【請求項12】
X6がE、AまたはPである、請求項5~11のいずれか1項に記載の組換えAAVベクター。
【請求項13】
X7がE、G、N、T、またはAである、請求項5~12のいずれか1項に記載の組換えAAVベクター。
【請求項14】
X1がHであり、X2がAであり、X3がPであり、X4がRであり、X5がVであり、X6がEであり、X7がEである、請求項5に記載の組換えAAVベクター。
【請求項15】
X1がMであり、X2がAであり、X3がPであり、X4がRであり、X5がQであり、X6がEであり、X7がGである、請求項5に記載の組換えAAVベクター。
【請求項16】
X1がHであり、X2がTであり、X3がTであり、X4がDであり、X5がCであり、X6がAであり、X7がNである、請求項5に記載の組換えAAVベクター。
【請求項17】
X1がAであり、X2がAであり、X3がPであり、X4がRであり、X5がSであり、X6がEであり、X7がTである、請求項5に記載の組換えAAVベクター。
【請求項18】
X1がQであり、X2がAであり、X3がPであり、X4がRであり、X5がQであり、X6がEであり、X7がGである、請求項5に記載の組換えAAVベクター。
【請求項19】
X1がVであり、X2がAであり、X3がPであり、X4がRであり、X5がDであり、X6がPであり、X7がAである、請求項5に記載の組換えAAVベクター。
【請求項20】
X1がSであり、X2がAであり、X3がPであり、X4がRであり、X5がSであり、X46がEであり、X7がNである、請求項5に記載の組換えAAVベクター。
【請求項21】
前記カプシドタンパク質が、配列番号1に対して少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の組換えAAVベクター。
【請求項22】
前記カプシドタンパク質が配列番号1に対して約99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項21に記載の組換えAAVベクター。
【請求項23】
前記カプシドタンパク質が配列番号2、4、6、8、10、12、及び14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の組換えAAVベクター。
【請求項24】
カプシドタンパク質を含む組換えAAVベクターであって、前記カプシドタンパク質が配列番号16のアミノ酸配列を有する形質導入関連ペプチドを含み、前記形質導入関連ペプチドが配列番号1に対してアミノ酸454~460を置換する、前記組換えAAVベクター。
【請求項25】
前記形質導入関連ペプチドが、配列番号17~23のいずれか1つのアミノ酸配列を有する、請求項24に記載の組換えAAVベクター。
【請求項26】
配列番号2、4、6、8、10、12、及び14のいずれか1つの配列を有する組換えAAVカプシドタンパク質をコードする、核酸。
【請求項27】
前記核酸が、配列番号3、5、7、9、11、13、及び15からなる群から選択される配列を含む、請求項26に記載の核酸。
【請求項28】
前記核酸がDNA配列である、請求項26または27に記載の核酸。
【請求項29】
前記核酸がRNA配列である、請求項26または27に記載の核酸。
【請求項30】
請求項26~29のいずれか1項に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項31】
請求項26~29のいずれか1項に記載の核酸、または請求項30に記載の発現ベクターを含む、細胞。
【請求項32】
前記カプシドタンパク質によってカプシド封入されたカーゴ核酸をさらに含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の組換えAAVベクター。
【請求項33】
前記カーゴ核酸が治療用タンパク質または治療用RNAをコードする、請求項32に記載の組換えAAVベクター。
【請求項34】
前記AAVベクターが、前記形質導入関連ペプチドを含まないAAVベクターと比較して、細胞への形質導入の増加を示す、請求項32~33のいずれか1項に記載の組換えAAVベクター。
【請求項35】
前記細胞がT細胞である、請求項34に記載のAAVベクター。
【請求項36】
前記AAVベクターが、前記形質導入関連ペプチドを含まないAAVベクターと比較して、前記T細胞の核への形質導入の増加を示す、請求項35に記載のAAVベクター。
【請求項37】
前記AAVベクターが、前記形質導入関連ペプチドを含まないAAVベクターと比較して、前記T細胞の細胞質基質への形質導入の増加を示す、請求項35に記載のAAVベクター。
【請求項38】
請求項1~25もしくは32~37のいずれか1項に記載の組換えAAVベクター、請求項26~29のいずれか1項に記載の核酸、請求項30に記載の発現ベクター、または請求項31に記載の細胞を含む、組成物。
【請求項39】
請求項31に記載の細胞または請求項1~25もしくは32~37のいずれか1項に記載の組換えAAVベクターと、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項40】
AAVベクターを細胞に送達する方法であって、前記細胞を請求項1~25または32~37のいずれか1項に記載のAAVベクターと接触させることを含む、前記方法。
【請求項41】
前記細胞の接触がin vitro、ex vivo、またはin vivoで行われる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記細胞がT細胞である、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
請求項1~25または32~37のいずれか1項に記載のAAVベクターの有効量を対象に投与することを含む、治療を必要とする対象を治療する方法。
【請求項44】
請求項1~25または32~37のいずれか1項に記載のAAVベクターとex vivoで接触させた細胞を対象に投与することを含む、治療を必要とする前記対象を治療する方法。
【請求項45】
前記対象が哺乳動物である、請求項43または44に記載の方法。
【請求項46】
前記対象がヒトである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
医薬品として使用するための、請求項1~25または32~37のいずれか1項に記載のAAVベクター。
【請求項48】
治療を必要とする対象を治療する方法における使用のための、請求項1~25または32~37のいずれか1項に記載のAAVベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月14日に出願された米国仮特許出願第63/137,497号の優先権の利益を主張するものであり、その内容は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、アデノ随伴ウイルス(AAV)由来のバリアントカプシドタンパク質、ならびにそれを含むウイルスカプシド及びウイルスベクターに関する。特に、本開示は、ウイルスベクターに組み込まれ、in vivo及び/またはex vivoでT細胞の増強された細胞形質導入の表現型を付与することができるバリアントAAVカプシドタンパク質及びそれを含むAAVカプシドに関する。
【0003】
電子的に提出されたテキストファイルの説明
本明細書とともに電子的に提出されたテキストファイルの内容は、参照によりその全体が組み込まれる:配列表のコンピュータ可読形式のコピー(ファイル名:STRD_022_01WO_Sequence_Listing.txt、記録日:2022年1月13日、ファイルサイズ約163.4キロバイト)。
【背景技術】
【0004】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、Parvoviridae科のディペンドウイルス属に属する小型の一本鎖DNAウイルスである。AAVは、多くの細胞及び組織タイプに感染する能力、病原性の欠如、免疫原性の低さ、及び非分裂細胞を効果的に形質導入する能力により、遺伝子治療のための有望なウイルスベクターである。既知のAAV血清型はそれぞれ、特定の細胞タイプに感染する能力に差がある。
【0005】
T細胞を標的とするAAVの使用に関心が集まっている。例えば、T細胞を標的とするAAVは、T細胞疲弊を予防、制限、及び/または逆転させるための遺伝子治療法に使用することができる。T細胞疲弊は、多くの慢性感染症及びがんにおいて生じるT細胞機能不全の状態であり、CAR-T療法の有効性を低減することも示されている。しかしながら、AAVは典型的には、T細胞を高レベルで形質導入しない。
【0006】
したがって、当該技術分野においては、T細胞を標的とし、形質導入効率を増強させることができる改善されたAAVベクターが必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、1つ以上の形質導入関連ペプチドを含むアデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドタンパク質、ならびにそれを含むAAVカプシド及びウイルスベクターに関する。開示された形質導入関連ペプチドは、T細胞などの所望の細胞タイプへのAAVベクターの細胞形質導入を増強することができる。
【0008】
本開示は、カプシドタンパク質を含む組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、該カプシドタンパク質が配列番号17~23のいずれか1つの配列を有する形質導入関連ペプチドを含む、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを提供する。いくつかの実施形態では、カプシドタンパク質は、配列番号1に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、形質導入関連ペプチドは、配列番号1のアミノ酸454~460に対応するアミノ酸を置換する。いくつかの実施形態では、カプシドタンパク質は、配列番号2、4、6、8、10、12、及び14からなる群から選択されるアミノ酸配列、またはそれらに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一な配列を含む。
【0009】
本開示は、カプシドタンパク質を含む組換えAAVベクターであって、該カプシドタンパク質が配列番号1の配列を含み、配列番号1のアミノ酸454~460が配列X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7(配列番号24)を含む形質導入関連ペプチドによって置換されている、組換えAAVベクターを提供する。いくつかの実施形態では、X1はGではなく、X2はSではなく、X3はAではなく、X4はQではなく、X5はNではなく、X6はKではなく、及び/またはX7はDではない。いくつかの実施形態では、X1はH、M、A、Q、VまたはSである。いくつかの実施形態では、X2はAまたはTである。いくつかの実施形態では、X3はPまたはTである。いくつかの実施形態では、X4はRまたはDである。いくつかの実施形態では、X5はV、Q、C、S、またはDである。いくつかの実施形態では、X6はE、A、またはPである。いくつかの実施形態では、X7はE、G、N、T、またはAである。いくつかの実施形態では、X1はHであり、X2はAであり、X3はPであり、X4はRであり、X5はVであり、X6はEであり、X7はEである。いくつかの実施形態では、X1はMであり、X2はAであり、X3はPであり、X4はRであり、X5はQであり、X6はEであり、X7はGである。いくつかの実施形態では、X1はHであり、X2はTであり、X3はTであり、X4はDであり、X5はCであり、X6はAであり、X7はNである。いくつかの実施形態では、X1はAであり、X2はAであり、X3はPであり、X4はRであり、X5はSであり、X6はEであり、X7はTである。いくつかの実施形態では、X1はQであり、X2はAであり、X3はPであり、X4はRであり、X5はQであり、X6はEであり、X7はGである。いくつかの実施形態では、X1はVであり、X2はAであり、X3はPであり、X4はRであり、X5はDであり、X6はPであり、X7はAである。いくつかの実施形態では、X1はSであり、X2はAであり、X3はPであり、X4はRであり、X5はSであり、X46はEであり、X7はNである。
【0010】
いくつかの実施形態では、カプシドタンパク質は、配列番号1に対して少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、カプシドタンパク質は、配列番号1に対して約99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、カプシドタンパク質は、配列番号2、4、6、8、10、12、及び14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0011】
本開示は、カプシドタンパク質を含む組換えAAVベクターであって、該カプシドタンパク質が、配列番号16のアミノ酸配列を有する形質導入関連ペプチドを含み、該形質導入関連ペプチドが、配列番号1に対してアミノ酸454~460を置換する、組換えAAVベクターを提供する。いくつかの実施形態では、形質導入関連ペプチドは、配列番号17~23のいずれか1つのアミノ酸配列を有する。
【0012】
本開示は、配列番号2、4、6、8、10、12、及び14のいずれか1つの配列を有する組換えAAVカプシドタンパク質をコードする核酸を提供する。いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号3、5、7、9、11、13、及び15からなる群から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸はDNA配列である。いくつかの実施形態では、核酸はRNA配列である。本開示は、本明細書に開示される核酸のいずれか1つを含む発現ベクターを提供する。本開示はさらに、本明細書に開示される核酸のいずれか1つ、または本明細書に開示される発現ベクターのいずれか1つを含む細胞を提供する。
【0013】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組換えAAVベクターのいずれか1つは、カプシドタンパク質によってカプシド封入されたカーゴ核酸をさらに含む。いくつかの実施形態では、該カーゴ核酸は、治療用タンパク質または治療用RNAをコードする。いくつかの実施形態では、該AAVベクターは、形質導入関連ペプチドを含まないAAVベクターと比較して、細胞への形質導入の増加を示す。いくつかの実施形態では、細胞はT細胞である。いくつかの実施形態では、該AAVベクターは、形質導入関連ペプチドを含まないAAVベクターと比較して、T細胞の核への形質導入の増加を示す。いくつかの実施形態では、該AAVベクターは、形質導入関連ペプチドを含まないAAVベクターと比較して、T細胞の細胞質基質への形質導入の増加を示す。
【0014】
本開示は、本明細書に開示される組換えAAVベクターのいずれか1つ、本明細書に開示される核酸のいずれか1つ、本明細書に開示される発現ベクターのいずれか1つ、または本明細書に開示される細胞のいずれか1つ、を含む組成物を提供する。本開示はさらに、本明細書に開示される細胞のいずれか1つ、または本明細書に開示される組換えAAVベクターのいずれか1つ、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0015】
本開示は、AAVベクターを細胞に送達する方法であって、該細胞を本明細書に開示されるAAVベクターのいずれか1つと接触させることを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、細胞の接触は、in vitro、ex vivo、またはin vivoで行われる。いくつかの実施形態では、細胞はT細胞である。本開示は、有効量の本明細書に開示されるAAVベクターのいずれか1つを対象に投与することを含む、治療を必要とする対象を治療する方法を提供する。本開示は、本明細書に開示されるAAVベクターのいずれか1つとex vivoで接触させた細胞を対象に投与することを含む、治療を必要とする対象を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。本開示は、医薬品として使用するための、本明細書に開示されるAAVベクターのいずれか1つを提供する。本開示はまた、治療を必要とする対象の治療方法における使用のための、本明細書に開示されるAAVベクターのいずれか1つを提供する。
【0016】
これらの実施形態及び他の実施形態については、以下の発明を実施するための形態でさらに詳しく述べる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】野生型AAV6と比較した、バリアントカプシドを含む様々なAAVベクターについて、実施例2に記載の製造プロセスを用いて得られた合計ベクターゲノム(vg)の体積収量を示す。
図2】野生型AAV6または示されたAAV6カプシドバリアントを含むAAVベクターのいずれかを形質導入されたT細胞の顕微鏡分析からの画像を示す。各AAVベクターはGFP導入遺伝子をパッケージングした。画像は、示されている異なる感染多重度(MOI)を用いてAAVベクターを細胞に形質導入した後に得た。
図3】GFP導入遺伝子をパッケージングした野生型AAV6またはGFP導入遺伝子をパッケージングしたバリアントカプシドを含む示されたAAVのいずれかを形質導入したT細胞のフローサイトメトリー分析の結果を示す。Aは、試験した細胞試料のサイズ及び粒度(すなわち、前方散乱と側方散乱)を示し、そこから目的の細胞集団(図上の丸で囲まれた部分)を特定した。Bは、分析のために選択された細胞集団のみのサイズ及び粒度を示す。Cは、目的の細胞集団について測定された蛍光(FITC)シグナルを示す。野生型AAV6を形質導入した細胞と比較して、STRD-207カプシドを含むAAVベクターを形質導入した細胞では蛍光の増加があった。
図4】野生型AAV6または示されているカプシドバリアントを含むAAVのそれぞれを用いて実施したフローサイトメトリー実験から得られたGFP陽性T細胞の割合(%)のプロットを示す。T細胞は2人の異なるヒトドナー(ドナー11及びドナー12)由来であった。異なるMOIを、示されているように使用した(ドナー12のT細胞では10,000、5,000、及び2,500、ドナー11のT細胞では15,000、7,500、及び3,750)。
図5】実施例1に記載されているT細胞の形質導入のための3回の進化及び選択後に、活性化T細胞の核画分(A)及び細胞質画分(B)から得られたバリアントカプシドを含む個々のAAVの単離株を表すバブルプロットである。各バブルは別個のカプシドタンパク質のアミノ酸配列を表し、バブルの半径は各ライブラリーにおけるそのバリアントのリード数に比例する。Y軸はリードの絶対数を表す。データは、視覚化しやすいようにx軸に沿って広がっている。優勢な単離株をシークエンシング解析のために選択した。
図6】T細胞の核画分または細胞質画分において豊富に存在するAAVベクターにおいて特定された形質導入関連ペプチドの配列を示す。これらの形質導入関連ペプチドはカプシドタンパク質のアミノ酸464~456に位置しており、アミノ酸ナンバリングは野生型AAV6(配列番号1)に対応している。図6に示す配列は、上から下の順に配列番号17~23に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
特に定義されない限り、本明細書で用いるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書の発明を実施するための形態で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のみであり、制限するように意図するものではない。
【0019】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、論文、GenBankまたは他の受託番号、及び他の参考文献は、参照によってその全体が組み込まれる。
【0020】
本開示及び添付の特許請求の範囲におけるAAVカプシドタンパク質中のすべてのアミノ酸位置の指定は、VP1カプシドサブユニットのナンバリングに関するものである。当業者であれば、本明細書に記載される修飾は、AAV cap遺伝子に挿入された場合、VP1、VP2、及び/またはVP3カプシドサブユニットにおける修飾をもたらし得ることを理解するであろう。あるいは、カプシドサブユニットを独立して発現させて、カプシドサブユニットのうちの1つまたは2つのみ(VP1、VP2、VP3、VP1+VP2、VP1+VP3、またはVP2+VP3)において修飾を行うことができる。
【0021】
定義
以下の用語が、本明細書の説明及び添付の特許請求の範囲において使用される。
【0022】
単数形の「a」、「an」及び「the」は、文脈が別段に明確に示さない限り、複数形も含むことが意図されている。
【0023】
さらに、「約」という用語は、本明細書で使用する場合、測定可能な値、例えば、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の量または長さ、用量、時間、温度などに言及する場合に、指定された量の±20%、±10%、±5%、±1%、±0.5%、またはさらには±0.1%の変動を包含することを意味する。
【0024】
また、本明細書で使用する場合、「及び/または」とは、関連する列挙事項のうちの1つ以上を考え得る形で組み合わせたもののすべてと、択一形式(「または」)で解釈したときには、組み合わせたものが含まれないことを指すとともに、これらを包含する。
【0025】
文脈上、別段に示されていない限り、本明細書に記載されている様々な特徴は、任意の組み合わせで用いることができることが明確に意図されている。
【0026】
さらに、いくつかの実施形態では、本明細書に示されている任意の特徴または特徴を組み合わせたものを除外または省略できることも本開示は想定している。さらに例示すると、例えば、特定のアミノ酸がA、G、I、L、及び/またはVから選択され得ることを本明細書が示している場合、この文言はまた、これらのアミノ酸(複数可)の任意のサブセット、例えば、A、G、I、またはL;A、G、I、またはV;AまたはG;Lのみ;などから、そのような各々の副次的組み合わせが本明細書に明示的に記載されているかのように、アミノ酸が選択され得ることも示す。さらに、そのような文言はまた、指定されたアミノ酸のうちの1つ以上が除外され得ることも示す。例えば、いくつかの実施形態では、アミノ酸は、A、G、またはIではない;Aではない;GまたはVではないなど、そのような考えられ得る各除外項目が本明細書に明示的に記載されているかのようになる。
【0027】
本明細書で使用する場合、「低減する(reduce)」、「低減する(reduces)」、「低減」という用語及び類似の用語は、少なくとも約10%、約15%、約20%、約25%、約35%、約50%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約97%以上の減少を意味する。
【0028】
本明細書で使用する場合、「増強する(enhance)」、「増強する(enhances)」、「増強」という用語及び類似の用語は、少なくとも約10%、約15%、約20%、約25%、約35%、約50%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%、約150%、約200%、約300%、約400%、約500%以上の増加を示す。
【0029】
「パルボウイルス」という用語は、本明細書で使用する場合、自律的に複製するパルボウイルス及びディペンドウイルスを含む、Parvoviridae科を包含する。自律性パルボウイルスには、Protoparvovirus属、Erythroparvovirus属、Bocaparvirus属、及びDensovirus亜科のメンバーが含まれる。例示的な自律性パルボウイルスには、限定されないが、マウス微小ウイルス、ウシパルボウイルス、イヌパルボウイルス、ニワトリパルボウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコパルボウイルス、ガチョウパルボウイルス、H1パルボウイルス、バリケンパルボウイルス、B19ウイルス、及び現在知られているか、または後に発見される任意の他の自律性パルボウイルスが含まれる。他の自律性パルボウイルスは、当業者に既知である。例えば、BERNARD N.FIELDS et al,VIROLOGY,volume 2,chapter 69(4th ed.,Lippincott-Raven Publishers;Cotmore et al.Archives of Virology DOI 10.1007/s00705-013-1914-I)を参照のこと。「対象」、「個体」、及び「患者」という用語は、脊椎動物、例えば哺乳動物を指すために互換的に使用される。哺乳動物は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、ヒツジ、ウマ、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル、チンパンジー)、またはヒトであり得る。in vivoで得られた、またはin vitroで培養された対象の組織、細胞、またはそれらの誘導体も包含される。ヒト対象は、成人、ティーンエイジャー、小児(2歳~14歳)、乳児(1ヶ月~24ヶ月)、または新生児(1ヶ月まで)であり得る。いくつかの実施形態では、成人は、約65歳以上、または約60歳以上の高齢者である。いくつかの実施形態では、対象は、妊婦または妊娠を計画している女性である。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載の方法を「必要としている」。
【0030】
本明細書で使用する場合、「アデノ随伴ウイルス」(AAV)という用語は、限定されないが、AAV1型、AAV2型、AAV3型(3A型及び3B型を含む)、AAV4型、AAV5型、AAV6型、AAV7型、AAV8型、AAV9型、AAV10型、AAV11型、AAV12型、AAV13型、AAVrh32.33型、AAVrh8型、AAVrh10型、AAVrh74型、AAVhu.68型、鳥類AAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヒツジAAV、ヘビAAV、フトアゴヒゲトカゲAAV、AAV2i8、AAV2g9、AAV-LK03、AAV7m8、AAV Anc80、AAV PHP.B、及び現在知られているか、または後に発見される任意の他のAAVを含む。例えば、BERNARD N.FIELDS et al.,VIROLOGY,volume 2,chapter 69(4th ed.,Lippincott-Raven Publishers)を参照のこと。多くのAAV血清型及びクレードが特定されている(例えば、Gao et al,(2004)J.Virology 78:6381-6388;Moris et al,(2004)Virology 33-:375-383;及び表2を参照のこと)。
【0031】
本明細書で使用する場合、「キメラAAV」という用語は、2つ以上の異なる血清型のAAV由来の領域、ドメイン、及び/または個々のアミノ酸を有するカプシドタンパク質を含むAAVを指す。いくつかの実施形態では、キメラAAVは、第1のAAV血清型に由来する第1の領域、及び第2のAAV血清型に由来する第2の領域から構成されるカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、キメラAAVは、第1のAAV血清型に由来する第1の領域、第2のAAV血清型に由来する第2の領域、及び第3のAAV血清型に由来する第3の領域から構成されるカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、キメラAAVは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11及び/またはAAV12のうちの2つ以上に由来する領域、ドメイン、個々のアミノ酸を含み得る。例えば、キメラAAVは、以下(表1)に示される第1及び第2のAAV血清型からの領域、ドメイン及び/または個々のアミノ酸を含み得、表中、AAVX+Yは、AAVX及びAAVYに由来する配列を含むキメラAAVを示す。
【表1】
【0032】
複数のAAV血清型からの個々のアミノ酸または領域を1つのカプシドタンパク質に含めることによって、複数のAAV血清型に別々に由来する複数の所望の特性を有するカプシドタンパク質を得ることができる。
【0033】
様々な血清型のAAV及び自律性パルボウイルスのゲノム配列、ならびに天然の末端反復(TR)、Repタンパク質及びカプシドサブユニットの配列は、当該技術分野で既知である。このような配列は、文献、またはGenBankなどの公共データベースに見出すことができる。例えば、GenBank受託番号NC_002077、NC_001401、NC_001729、NC_001863、NC_001829、NC_001 862、AAB95450.1、NC_000883、NC_001701、NC_001510、NC_006152、NC_006261、AF063497、U89790、AF043303、AF028705、AF028704、J02275、J01901、J02275、X01457、AF288061、AH009962、AY028226、AY028223、NC_001358、NC_001540、AF513851、AF513852、AY530579を参照のこと(これらの開示は、参照により、パルボウイルス及びAAVの核酸配列及びアミノ酸配列を教示する目的で、本明細書に組み込まれる)。例えば、Srivistava et al.,(1983)J.Virology 45:555;Chiorini et al,(1998)J Virology 71:6823;Chiorini et al.,(1999)J.Virology 73:1309;Bantel-Schaal et al.,(1999)J Virology 73:939;Xiao et al,(1999)J Virology 73:3994;Muramatsu et al.,(1996)Virology 221:208;Shade et al,(1986)J.Virol.58:921;Gao et al,(2002)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 99:11854;Moris et al,(2004)Virology 33:375-383;国際特許公開WO00/28061、WO99/61601、WO98/11244;及び米国特許第6,156,303号も参照のこと(これらの開示は、参照により、パルボウイルス及びAAVの核酸配列及びアミノ酸配列を教示する目的で、本明細書に組み込まれる)。表2も参照のこと。自律性パルボウイルス及びAAVのカプシド構造は、BERNARD N.FIELDS et al.,VIROLOGY,volume 2,chapters 69&70(4th ed.,Lippincott-Raven Publishers)にさらに詳細に説明されている。AAV2(Xie et al.,(2002)Proc.Nat.Acad.Sci.99:10405-10)、AAV9(DiMattia et al.,(2012)J.Virol.86:6947-6958)、AAV8(Nam et al,(2007)J.Virol.81:12260-12271)、AAV6(Ng et al.,(2010)J.Virol.84:12945-12957)、AAV5(Govindasamy et al.(2013)J.Virol.87,11187-11199)、AAV4(Govindasamy et al.(2006)J.Virol.80:11556-11570)、AAV3B(Lerch et al.,(2010)Virology 403:26-36)、BPV(Kailasan et al.,(2015)J.Virol.89:2603-2614)、及びCPV(Xie et al,(1996)J.Mol.Biol.6:497-520及びTsao et al,(1991)Science 251:1456-64)の結晶構造の説明も参照のこと。
【表2-1】
【表2-2】
【0034】
組換えAAV(rAAV)ベクターは、ウイルス産生細胞株を使用して培養で産生することができる。「ウイルス産生細胞(viral production cell)」、「ウイルス産生細胞株」、または「ウイルス産生細胞(viral producer cell)」という用語は、ウイルスベクターを産生するのに使用される細胞を指す。HEK293細胞及び239T細胞は、一般的なウイルス産生細胞株である。以下の表8は、様々なウイルスベクターのための例示的なウイルス産生細胞株を列挙する。rAAVの産生は、典型的には細胞において3つのエレメント:1)AAV逆位末端反復(ITR)配列に隣接する導入遺伝子、2)AAV rep遺伝子及びcap遺伝子、ならびに3)ヘルパーウイルスタンパク質配列、の存在を必要とする。これらの3つのエレメントは、1つ以上のプラスミド上で提供され、細胞にトランスフェクションされるか、または形質導入され得る。
【表3】
【0035】
本明細書で使用する場合、「感染多重度」または「MOI」という用語は、細胞と接触するビリオンの数を指す。例えば、培養細胞は、1細胞当たり約1×10~約1×10個のビリオンの範囲のMOIでAAVと接触することができる。
【0036】
「形質導入」という用語は、本明細書で使用する場合、核酸(例えば、導入遺伝子)がウイルスベクターによって細胞に導入されるプロセスを指す。本明細書では、ウイルスベクターに組み込まれ、in vivoまたはex vivoで増強された細胞形質導入の表現型を付与することができる修飾されたAAVカプシドタンパク質(例えば、バリアントカプシドタンパク質)及びそれを含むカプシドについて記載する。本明細書で使用する場合、「増強された形質導入」、「増強された細胞形質導入」、及び類似の用語は、約1.5倍~約100倍、またはそれ以上の形質導入の増加を指し得る。例えば、形質導入は、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、少なくとも100倍、またはそれ以上増加し得る。修飾されたAAV(例えば、カプシドバリアントを含むAAV)の形質導入は、野生型AAVベクターまたは天然AAVベクターと比較して増強され得る。いくつかの実施形態では、形質導入関連ペプチドを含むAAVベクターの形質導入は、形質導入関連ペプチドを欠く以外は同一であるAAVベクターと比較して増強され得る。
【0037】
「導入遺伝子」という用語は、細胞の形質導入に使用される任意の核酸配列を指し、ex vivoで維持される細胞であっても、生物内の細胞であってもよい。導入遺伝子は、コード配列、非コード配列、cDNA、遺伝子またはその断片もしくは一部、ゲノム配列、調節エレメントなどであり得る。「トランスジェニック」生物、例えば、トランスジェニック植物またはトランスジェニック動物は、導入遺伝子が送達または導入された生物であり、該導入遺伝子は、トランスジェニック生物内で発現して産物を産生することができ、その存在により、生物において効果(例えば、治療効果または有益な効果)及び/または表現型(例えば、所望の表現型または改変された表現型)が付与され得る。
【0038】
「トロピズム」という用語は、本明細書で使用する場合、ウイルスが特定の細胞または組織に優先的に侵入し、任意選択で、その後、ウイルスゲノムに担持される配列(複数可)の発現(例えば、転写及び任意選択で翻訳)をその細胞内で行うこと、例えば、組換えウイルスでは、目的の異種核酸(複数可)の発現を行うことを指す。
【0039】
ウイルスゲノムからの異種核酸配列の転写は、例えば、誘導性プロモーターまたは別段に調節される核酸配列では、トランス作用因子の非存在下では開始しない場合があることは当業者には明らかであろう。rAAVゲノムの場合、そのウイルスゲノムからの遺伝子発現は、安定に組み込まれたプロウイルス、組み込まれないエピソーム、及びそのウイルスが細胞内で取り得る任意の他の形態から行うことができる。
【0040】
本明細書で使用する場合、「全身性トロピズム」及び「全身性形質導入」(ならびに同等の用語)とは、それぞれ、本開示のウイルスカプシドまたはウイルスベクターが、全身の組織(例えば、脳、肺、骨格筋、心臓、肝臓、腎臓及び/または膵臓)に対してトロピズムを示すか、または形質導入することを示す。いくつかの実施形態では、筋肉組織(例えば、骨格筋、横隔膜筋及び心筋)の全身性形質導入が観察される。いくつかの実施形態では、骨格筋組織の全身性形質導入が行われる。例えば、いくつかの実施形態では、全身の本質的にすべての骨格筋が形質導入される(ただし、形質導入の効率は、筋肉の種類によって変動し得る)。いくつかの実施形態では、四肢筋、心筋及び横隔膜筋の全身性形質導入が行われる。任意選択で、ウイルスカプシドまたはウイルスベクターは、全身経路(例えば、静脈内、関節内またはリンパ内などの全身経路)を介して投与される。
【0041】
あるいは、いくつかの実施形態では、カプシドまたはウイルスベクターは、局部(例えば、足蹠部に、筋肉内に、皮内に、皮下に、局所的に)送達される。
【0042】
別段に示されていない限り、「効率的な形質導入」もしくは「効率的なトロピズム」、または類似の用語は、好適な対照を参照することによって判断することができる(例えば、対照の形質導入またはトロピズムの少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、約95%またはそれ以上)。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、T細胞、骨格筋、心筋、横隔膜筋、膵臓(膵島β細胞を含む)、脾臓、胃腸管(例えば、上皮及び/または平滑筋)、中枢神経系の細胞、肺、関節細胞及び/または腎臓に対して、効率的な形質導入を行うか、または効率的なトロピズムを有する。好適な対照は、所望のトロピズムプロファイルを含む様々な要因によって決定されることになる。いくつかの実施形態では、好適な対照は野生型または天然ウイルスである。
【0043】
同様に、ウイルスが、標的組織に対して「効率的な形質導入を行わない」か、もしくは「効率的なトロピズムを有さない」か、または類似の用語については、好適な対照を参照することによって判断することができる。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、肝臓、腎臓、性腺及び/または生殖細胞に対して効率的な形質導入を行わない(すなわち、効率的なトロピズムを有さない)。いくつかの実施形態では、組織(複数可)(例えば肝臓)への望ましくない形質導入は、所望の標的組織(複数可)(例えば、骨格筋、横隔膜筋、心筋及び/または中枢神経系の細胞)の形質導入のレベルの20%以下、10%以下、5%以下、1%以下、0.1%以下である。
【0044】
本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」という用語は、別段に示されていない限り、ペプチド及びタンパク質の両方を包含する。
【0045】
「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチド塩基の配列であり、RNA、DNAまたはDNA-RNAハイブリッドの配列であり得る(天然に存在するヌクレオチド及び天然に存在しないヌクレオチドの両方を含む)が、代表的な実施形態では、一本鎖DNA配列または二本鎖DNA配列のいずれかである。
【0046】
本明細書で使用する場合、「単離」ポリヌクレオチド(例えば、「単離DNA」または「単離RNA」)とは、天然に存在する生物またはウイルスの少なくともいくつかの他の構成要素、例えば、細胞もしくはウイルスの構造的な構成要素、または一般的にそのポリヌクレオチドと関連して見られる他のポリペプチドもしくは核酸から少なくとも部分的に分離されたポリヌクレオチドを意味する。代表的な実施形態では、「単離」ヌクレオチドは、出発物質と比較して、少なくとも約10倍、約100倍、約1000倍、約10,000倍またはそれを上回る倍率で濃縮されている。
【0047】
同様に、「単離」ポリペプチドとは、天然に存在する生物またはウイルスの少なくともいくつかの他の構成要素、例えば、細胞もしくはウイルスの構造的な構成要素、または一般的にそのポリペプチドと関連して見られる他のポリペプチドもしくは核酸から少なくとも部分的に分離されたポリペプチドを意味する。いくつかの実施形態では、「単離」ポリペプチドは、出発物質と比較して、少なくとも約10倍、約100倍、約1000倍、約10,000倍またはそれを上回る倍率で濃縮されている。
【0048】
本明細書で使用する場合、ウイルスベクターを「単離する」もしくは「精製する」(または文法的に同等な語)とは、ウイルスベクターを、出発物質中の少なくともいくつかの他の構成要素から、少なくとも部分的に分離することを意味する。いくつかの実施形態では、「単離」ウイルスベクターまたは「精製」ウイルスベクターは、出発物質と比較して、少なくとも約10倍、約100倍、約1000倍、約10,000倍またはそれを上回る倍率で濃縮されている。
【0049】
本明細書で使用する場合、「形質導入関連ペプチド」という用語は、AAVベクターに組み込まれ、任意の細胞へのAAVベクターの形質導入を改変させ得る短いアミノ酸配列を指す。形質導入関連ペプチドは、AAVベクターの形質導入に何らかの影響を与え得る。例えば、いくつかの実施形態では、形質導入関連ペプチドは、目的の標的細胞へのAAVベクターの形質導入を増加させる。いくつかの実施形態では、形質導入関連ペプチドは、標的とされていない細胞へのAAVベクターの形質導入を減少させる。形質導入関連ペプチドは、既存のAAVカプシド配列に挿入されてもよく(すなわち、配列中のアミノ酸の正味の数の増加を生じさせる)、またはAAVカプシド配列の既存の部分を置換してもよい(すなわち、配列内のアミノ酸の数の正味の変化を生じさせない、または低減する)。
【0050】
「治療用ポリペプチド」または「治療用タンパク質」とは、細胞もしくは対象におけるタンパク質の不在または欠損に起因する症状を緩和し、低減し、予防し、遅延し及び/または安定させることができるポリペプチドであり、及び/または別段の形で対象に利益、例えば抗がん作用、もしくは移植生存性の向上をもたらすポリペプチドである。
【0051】
「治療する」、「治療すること」、または「~の治療」という用語(及びその文法的変形表現)とは、対象の状態の重症度を低減し、少なくとも部分的に改善し、もしくは安定させること、及び/または少なくとも1つの臨床症状をいくらか緩和、軽減、減少もしくは安定化させること、及び/または疾患もしくは障害の進行の遅延が存在することを意味する。「対象」という用語は、「患者」という用語と交換可能に用いられる。
【0052】
「予防する」、「予防すること」及び「予防」(ならびにその文法的変形表現)とは、対象における疾患、障害及び/または臨床症状(複数可)の発生を予防及び/または遅延すること、及び/または疾患、障害及び/または臨床症状(複数可)の発生の重症度を、本開示の方法を行わない状態で見られる重症度よりも低減することを指す。予防は、完全なもの、例えば、疾患、障害及び/または臨床症状(複数可)が完全に存在しないことであり得る。予防は、部分的であってもよく、対象における疾患、障害及び/または臨床症状(複数可)の発生、及び/または発生の重症度が、本開示を行わない状態で生じ得るものよりも低くなるような予防であり得る。
【0053】
「治療有効量」とは、本明細書で使用する場合、疾患または疾患の臨床症状のうちの少なくとも1つを治療するために対象に投与したときに、疾患またはその症状のそのような治療に影響を及ぼすのに十分な量を指す。「治療有効量」は、例えば、疾患及び/またはその疾患の症状、疾患及び/または疾患もしくは障害の症状の重症度、治療される患者の年齢、体重及び/または健康状態、ならびに処方医の判断に応じて変動し得る。任意の所定の場合における適切な量は、当業者が確認し得るか、または常法的な実験によって決定することができる。
【0054】
本明細書で使用する場合、「ウイルスベクター」、「ベクター」または「遺伝子送達ベクター」という用語は、核酸送達ビヒクルとして機能し、ビリオン内にパッケージングされたベクターゲノム(例えばウイルスDNA[vDNA])を含むウイルス(例えばAAV)粒子を指す。あるいは、いくつかの文脈では、「ベクター」という用語は、そのベクターゲノム/vDNAのみを指すために用いられる場合もある。
【0055】
「アデノ随伴ウイルスベクター」または「AAVベクター」は、典型的には、AAVカプシド、及びAAVカプシドによってカプシド封入された核酸(例えば、導入遺伝子を含む核酸)を含む。「AAVカプシド」は、約60個の「AAVカプシドタンパク質」(本明細書では互換的に「AAVカプシドタンパク質サブユニット」または「カプシドタンパク質」と称される)を含むほぼ球形のタンパク質シェルであり、会合してT=1の正二十面対構造をとる。本明細書に記載されるAAVベクターのAAVカプシドは、複数のAAVカプシドタンパク質を含む。AAVベクターがAAVカプシドタンパク質を含むと記載される場合、該AAVベクターがAAVカプシドを含み、該AAVカプシドが1つ以上のAAVカプシドタンパク質を含むことが理解されるであろう。「ウイルス様粒子(viral-like particle)」または「ウイルス様粒子(virus-like particle)」という用語は、移入カセットまたは導入遺伝子を含む任意のベクターゲノムまたは核酸を含まないタンパク質カプシドを指す。「AAVベクター」、「AAVカプシド」、及び「AAVカプシドタンパク質」という用語は、本明細書では互換的に使用される場合がある。文脈に基づいて、当業者であれば、使用される特定の用語の意味を容易に推測できるであろう。
【0056】
いくつかの実施形態では、AAVベクターは、「移入カセット」を含む核酸、すなわち、AAVベクターによって細胞に送達され得る1つ以上の配列を含む核酸を含み得る。いくつかの実施形態では、核酸は自己相補的である(すなわち、二本鎖である)。いくつかの実施形態では、核酸は自己相補的ではない(すなわち、一本鎖である)。
【0057】
「rAAVベクターゲノム」または「rAAVゲノム」とは、1つ以上の異種核酸配列を含むAAVゲノム(すなわちvDNA)である。rAAVベクターでは概して、ウイルスの生成には、シスの末端反復(複数可)(TR(複数可))のみが必要となる。他のすべてのウイルス配列は、必須ではなく、トランスで供給され得る(Muzyczka,(1992)Curr.Topics Microbiol.Immunol.158:97)。典型的には、rAAVベクターゲノムは、ベクターによって効率的にパッケージングできる導入遺伝子のサイズを最大化するために、1つ以上のTR配列のみを保持することになる。構造タンパク質及び非構造タンパク質のコード配列は、トランスで供給され得る(例えば、プラスミドなどのベクターから、またはその配列をパッケージング細胞に安定的に組み込むことによって)。実施形態では、rAAVベクターゲノムは、少なくとも1つのTR配列(例えば、AAV TR配列)、任意選択で2つのTR(例えば、2つのAAV TR)を含み、その2つのTRは典型的には、ベクターゲノムの5’末端及び3’末端に位置して、異種核酸を挟むが、その異種核酸に連続する必要はない。TRは、同じであっても、互いに異なっていてもよい。
【0058】
「末端反復」または「TR」という用語には、ヘアピン構造を形成して、逆位末端反復として機能する(すなわち、複製、ウイルスパッケージング、組み込み及び/またはプロウイルスレスキューなどのような所望の機能を媒介する)任意のウイルス末端反復または合成配列が含まれる。TRは、AAV TRであることも、非AAV TRであることもできる。例えば、非AAV TR配列、例えば、他のパルボウイルス(例えば、イヌパルボウイルス(CPV)、マウスパルボウイルス(MVM)、ヒトパルボウイルスB-19)のもの、または任意の他の好適なウイルス配列(例えば、SV40複製起点として機能するSV40ヘアピン)をTRとして使用することができ、該配列は切断、置換、欠失、挿入及び/または付加によってさらに修飾され得る。さらに、TRは、部分的または完全に合成されたもの、例えば、Samulskiらの米国特許第5,478,745号に記載されている「二重D配列」であり得る。
【0059】
「AAV末端反復」または「AAV TR」は、血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13を含むがこれらに限定されない任意のAAV、または現在知られているか、もしくは後に発見される任意の他のAAVからであり得る(例えば、表2を参照のこと)。AAV末端反復は、末端反復が所望の機能、例えば、複製、ウイルスパッケージング、組み込み、及び/またはプロウイルスレスキューなどを媒介する限り、天然の末端反復配列を有する必要はない(例えば、天然のAAV TR配列は、挿入、欠失、切断、及び/またはミスセンス変異によって改変され得る)。
【0060】
本開示のウイルスベクターはさらに、国際特許公開WO00/28004及びChao et al,(2000)Molecular Therapy 2:619に記載されるように、「標的化」ウイルスベクター(例えば、指向型トロピズムを有する)及び/または「ハイブリッド」パルボウイルス(すなわち、ウイルスTR及びウイルスカプシドが異なるパルボウイルスからのものである)であり得る。
【0061】
本開示のウイルスベクターはさらに、国際特許公開WO01/92551(その開示は、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるように、二本鎖パルボウイルス粒子であることができる。したがって、いくつかの実施形態では、二本鎖(デュプレックス)ゲノムを本開示のウイルスカプシドにパッケージングすることができる。
【0062】
さらに、ウイルスカプシドまたはゲノムエレメントは、挿入、欠失及び/または置換を含む他の修飾を含むことができる。
【0063】
本明細書で使用する場合、「アミノ酸」という用語は、任意の天然に存在するアミノ酸、その修飾形態、及び合成アミノ酸を包含する。
【0064】
天然に存在する左旋性(L-)アミノ酸を表3に示す。

【表4】
【0065】
あるいは、アミノ酸は、修飾アミノ酸残基(非限定的な例を表4に示す)であることができ、及び/または翻訳後修飾(例えば、アセチル化、アミド化、ホルミル化、ヒドロキシル化、メチル化、リン酸化もしくは硫酸化)によって修飾されているアミノ酸であることができる。
【表5-1】
【表5-2】
【0066】
さらに、天然に存在しないアミノ酸は、「非天然」アミノ酸であり得る(Wang et al.,Annu Rev Biophys Biomol Struct.35:225-49(2006)に記載される)。有益なことに、これらの非天然アミノ酸は、目的の分子をAAVカプシドタンパク質に化学的に連結させるのに使用することができる。
【0067】
「能動免疫応答」または「能動免疫」は、「免疫原との遭遇後の宿主組織及び細胞の関与」を特徴とする。これは、リンパ細網組織における免疫能のある細胞の分化及び増殖を伴い、抗体の合成もしくは細胞媒介反応性の発達、またはその両方につながる。Herbert B.Herscowitz,Immunophysiology:Cell Function and Cellular Interactions in Antibody Formation,in IMMUNOLOGY:BASIC PROCESSES 1 17(Joseph A.Bellanti ed.,1985)。換言すると、感染またはワクチン接種によって免疫原に曝露された後、宿主によって能動免疫応答が開始される。能動免疫は、受動免疫と対比することができ、受動免疫は、能動免疫化宿主から非免疫宿主への予め形成された物質(抗体、移入因子、胸腺移植片、インターロイキン-2)の移入によって獲得される。
【0068】
「防御」免疫応答または「防御」免疫は、本明細書で使用する場合、その免疫応答によって、疾患の発症を予防または低減するという点で、対象にある程度の利点をもたらすことを示す。あるいは、防御免疫応答または防御免疫は、疾患、特にがんまたは腫瘍の治療及び/または予防において有用であり得る(例えば、がんまたは腫瘍形成を予防することにより、がんまたは腫瘍を退縮させることにより、及び/または転移を予防することにより、及び/または転移性結節の成長を予防することにより)。治療の利点が任意のその欠点を上回る限り、防御効果は完全であっても部分的であってもよい。
【0069】
本明細書で使用する場合、「がん」という用語は、腫瘍形成がんを包含する。同様に、「がん組織」という用語は、腫瘍を包含する。「がん細胞抗原」は、腫瘍抗原を包含する。
【0070】
「がん」という用語は、当該技術分野において理解されている意味を有し、例えば、身体の離れた部位に拡散する(すなわち、転移する)可能性のある組織の無制御な増殖である。例示的ながんには、限定されないが、黒色腫、腺癌、胸腺癌、リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫)、肉腫、肺癌、肝臓癌、結腸癌、白血病、子宮癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、膀胱癌、腎臓癌、膵臓癌、脳癌、及び現在知られているか、または後に特定される任意の他のがんもしくは悪性状態が含まれる。代表的な実施形態では、本開示は、腫瘍形成がんの治療及び/または予防方法を提供する。
【0071】
「腫瘍」という用語はまた、当該技術分野において、例えば、多細胞生物内の未分化細胞の異常な塊として理解されている。腫瘍は、悪性または良性であり得る。代表的な実施形態では、本明細書に開示される方法は、悪性腫瘍を予防及び治療するために使用される。
【0072】
「がんを治療すること」、「がんの治療」という用語、及び同等の用語は、がんの重症度を低減するかもしくは少なくとも部分的に解消させること、及び/または疾患の進行を遅延させる及び/または制御すること、及び/または疾患を安定化させることが意図される。いくつかの実施形態では、これらの用語は、がんの転移を予防するか、低減するかもしくは少なくとも部分的に解消すること、及び/または転移性結節の成長を予防するか、低減するかもしくは少なくとも部分的に解消することを示す。
【0073】
「がんの予防」または「がんを予防すること」、及び同等の用語は、その方法が、がんの発症率及び/または重症度を少なくとも部分的に解消するもしくは低減する及び/または遅延させることが意図される。換言すれば、対象におけるがんの発症の可能性もしくは確率が低減される、及び/または発症が遅延され得る。
【0074】
修飾されたAAVカプシドタンパク質及びそれを含むカプシド
本開示は、AAVカプシドタンパク質(VP1、VP2及び/またはVP3)バリアント、ならびにそれを含むウイルスカプシド及びウイルスベクターを提供する。各カプシドバリアントは、1つ以上の形質導入関連ペプチドを含む。形質導入関連ペプチドは、天然に存在するAAVカプシドタンパク質には存在せず、いくつかの実施形態では、カプシドタンパク質を含むAAVベクターに、目的の標的細胞(例えば、T細胞)への形質導入の増強をもたらし得る。本明細書に開示されるAAVカプシドタンパク質バリアントは、現在知られているか、または後に発見される任意のAAV血清型のカプシドタンパク質に対するバリアントであってもよい。いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質バリアントは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh.8、AAVrh.10、AAVrh32.33、AAVrh74、ウシAAV、及び鳥類AAVから選択されるAAV血清型からのカプシドタンパク質のバリアントである。
【0075】
a.AAVカプシドタンパク質の修飾
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の形質導入関連ペプチドは、修飾されたAAVカプシドタンパク質を含むウイルスベクターに、in vitro、in vivo、またはex vivoでの様々な細胞タイプ(例えば、T細胞)における細胞形質導入の増強を含むがこれらに限定されない1つ以上の望ましい特性を付与することができる。いくつかの実施形態では、本開示のカプシドタンパク質は、AAVベクターに組み込まれ得る。いくつかの実施形態では、カプシドタンパク質を含むAAVベクターは、野生型AAV、または形質導入関連ペプチドを含まないAAVカプシドタンパク質を含むAAVウイルス粒子もしくはAAVウイルスベクターと比較して、増強された細胞形質導入(例えば、増強されたT細胞の形質導入)を有する。いくつかの実施形態では、本開示のAAVウイルス粒子またはベクターは、中和抗体を回避することもできる。
【0076】
本開示の形質導入関連ペプチドは、野生型AAVカプシドタンパク質のアミノ酸配列を置換することができ、その結果、AAVカプシドタンパク質配列中のアミノ酸の数の正味の増減は生じない。いくつかの実施形態では、野生型AAVカプシドタンパク質のアミノ酸配列を本開示の形質導入関連ペプチドで置換すると、野生型AAVカプシドタンパク質配列と比較してアミノ酸の正味の損失(例えば欠失)が生じ得る。例えば、形質導入関連ペプチドは、以下の血清型のいずれか1つ:AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh.8、AAVrh.10、AAVrh32.33、AAVrh74、ウシAAV、及び鳥類AAVからのAAVカプシドタンパク質の1つ以上のアミノ酸を置換することができる。いくつかの実施形態では、本開示の形質導入関連ペプチドは、野生型AAVカプシドタンパク質のアミノ酸配列に挿入され得、その結果、AAVカプシドタンパク質配列中のアミノ酸の数が増加する。
【0077】
いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質の修飾は、天然AAVカプシドタンパク質の1つ以上のアミノ酸残基の、天然カプシド配列には存在しないアミノ酸による置換をもたらす。いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質の修飾は、天然のカプシドタンパク質配列には存在しないアミノ酸による、以下のアミノ酸残基:454、455、456、457、458、459、及び460の1つ以上の置換をもたらし、該アミノ酸ナンバリングは、野生型AAV6カプシドタンパク質のVP1配列、または任意の他のAAV血清型のカプシドタンパク質の対応する残基に対するものである。いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質の修飾は、以下のアミノ酸残基:454、455、456、457、458、459、及び460の1つ以上の欠失をもたらし、該アミノ酸ナンバリングは、野生型AAV6カプシドタンパク質のVP1配列、または任意の他のAAV血清型のカプシドタンパク質の対応する残基に対するものである。いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質の修飾は、天然のAAV6カプシドタンパク質配列(配列番号1)のアミノ酸配列に対する、アミノ酸454、455、456、457、458、459、及び/または460の1つ以上の置換をもたらす。
【0078】
いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、配列X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7(配列番号24)の形質導入関連ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、配列X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7(配列番号24)の形質導入関連ペプチドを含み、該カプシドタンパク質は、以下の血清型:AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh.8、AAVrh.10、AAVrh32.33、AAVrh74、ウシAAVまたは鳥類AAV、のいずれか1つのものである。いくつかの実施形態では、配列番号1または25~34のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含むAAVカプシドタンパク質は、配列X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7(配列番号24)の形質導入関連ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、天然のAAV6カプシドタンパク質配列(例えば、配列番号1)の配列を含み、さらに、配列番号24の形質導入関連ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、野生型AAVカプシドタンパク質配列、例えば配列番号1、または25~34のアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%の同一性、例えば少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%、または約100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるAAVカプシドタンパク質は、配列番号1に対して約99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0079】
配列番号24の形質導入関連ペプチドを使用して、開示されたAAVカプシドタンパク質のアミノ酸配列の任意の場所にある1つ以上のアミノ酸残基を置換することができる。いくつかの実施形態では、配列番号24の形質導入関連ペプチドを使用して、カプシドタンパク質の配列を置換することができ、該カプシドタンパク質は、配列番号1及び25~34のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、配列番号24の形質導入関連ペプチドは、本明細書に開示されるAAVカプシドタンパク質のアミノ酸配列に挿入され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される1つ以上のAAVカプシドタンパク質の天然配列を配列番号24の形質導入関連ペプチドで置換すると、AAVカプシドタンパク質の配列から1つ以上のアミノ酸が欠失される場合がある。いくつかの実施形態では、カプシドタンパク質は、配列番号1のアミノ酸454~460が配列番号24を含む形質導入関連ペプチドにより置換されていることを除いて、配列番号1の配列を含み得る。いくつかの実施形態では、配列番号24は、野生型AAVカプシドタンパク質の配列を置換するために使用され、その結果得られる配列は、野生型配列には存在しない少なくとも1つ、2つ、3つなどの個々のアミノ酸を含むようになる。
【0080】
いくつかの実施形態では、配列番号24は、X1がGではなく、X2がSではなく、X3がAではなく、X4がQではなく、X5がNではなく、X6がKではなく、及び/またはX7がDではない配列を含む。いくつかの実施形態では、X1は、H、M、A、Q、V、またはSである。いくつかの実施形態では、X2はAまたはTである。いくつかの実施形態では、X3はPまたはTである。いくつかの実施形態では、X4はRまたはDである。いくつかの実施形態では、X5はV、Q、C、S、またはDである。いくつかの実施形態では、X6はE、A、またはPである。いくつかの実施形態では、X7は、E、G、N、T、またはAである。いくつかの実施形態では、X1はHであり、X2はAであり、X3はPであり、X4はRであり、X5はVであり、X6はEであり、X7はEである。いくつかの実施形態では、X1はMであり、X2はAであり、X3はPであり、X4はRであり、X5はQであり、X6はEであり、X7はGである。いくつかの実施形態では、X1はHであり、X2はTであり、X3はTであり、X4はDであり、X5はCであり、X6はAであり、X7はNである。いくつかの実施形態では、X1はAであり、X2はAであり、X3はPであり、X4はRであり、X5はSであり、X6はEであり、X7はTである。いくつかの実施形態では、X1はQであり、X2はAであり、X3はPであり、X4はRであり、X5はQであり、X6はEであり、X7はGである。いくつかの実施形態では、X1はVであり、X2はAであり、X3はPであり、X4はRであり、X5はDであり、X6はPであり、X7はAである。いくつかの実施形態では、X1はSであり、X2はAであり、X3はPであり、X4はRであり、X5はSであり、X46はEであり、X7はNである。
【0081】
いくつかの実施形態では、形質導入関連ペプチドは、X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7のアミノ酸配列を有し、X1=H、M、Q、V、またはS;X2=AまたはT;X3=PまたはT;X4=RまたはD;X5=V、Q、C、S、またはD;X6=E、A、またはP;及びX7=E、G、N、T、またはAである(配列番号16)。いくつかの実施形態では、形質導入関連ペプチドは、配列番号17~23のいずれか1つのアミノ酸配列を有する。
【0082】
いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、配列番号17~23のいずれか1つのアミノ酸配列を有する形質導入関連ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、配列番号17~23のいずれか1つのアミノ酸配列を有する形質導入関連ペプチドは、AAVカプシドタンパク質の1つ以上のアミノ酸を置換する。本開示は、以下の血清型:AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh.8、AAVrh.10、AAVrh32.33、AAVrh74、ウシAAV、及び鳥類AAVのいずれか1つのAAVカプシドタンパク質のバリアントであって、配列番号17~23のいずれか1つのアミノ酸配列を有する形質導入関連ペプチドを含むアミノ酸配列を含む、AAVカプシドタンパク質のバリアントを提供する。いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、配列番号1及び25~34のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含むが、1つ以上のアミノ酸は配列番号17~23のいずれか1つのアミノ酸配列を有する形質導入関連ペプチドで置換される。
【0083】
いくつかの実施形態では、配列番号17~23のいずれか1つのアミノ酸配列を有する形質導入関連ペプチドは、以下の血清型:AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh.8、AAVrh.10、AAVrh32.33、AAVrh74、ウシAAV、及び鳥類AAVのいずれか1つのAAVカプシドタンパク質の1つ以上のアミノ酸を置換する。いくつかの実施形態では、配列番号17~23のいずれか1つのアミノ酸配列を有する形質導入関連ペプチドは、配列番号1及び25~34のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含むAAVカプシドタンパク質の1つ以上のアミノ酸を置換する。
【0084】
いくつかの実施形態では、天然のAAV6カプシドタンパク質(例えば配列番号1)のアミノ酸454~460は、配列番号17~23のいずれか1つの配列を含む形質導入関連ペプチドによって置換される。いくつかの実施形態では、天然のAAV6カプシドタンパク質(例えば配列番号1)のアミノ酸454~460は、配列番号17の形質導入関連ペプチドによって置換される。いくつかの実施形態では、天然のAAV6カプシドタンパク質(例えば配列番号1)のアミノ酸454~460は、配列番号18の形質導入関連ペプチドによって置換される。いくつかの実施形態では、天然のAAV6カプシドタンパク質(例えば配列番号1)のアミノ酸454~460は、配列番号19の形質導入関連ペプチドによって置換される。いくつかの実施形態では、天然のAAV6カプシドタンパク質(例えば配列番号1)のアミノ酸454~460は、配列番号20の形質導入関連ペプチドによって置換される。いくつかの実施形態では、天然のAAV6カプシドタンパク質(例えば配列番号1)のアミノ酸454~460は、配列番号21の形質導入関連ペプチドによって置換される。いくつかの実施形態では、天然のAAV6カプシドタンパク質(例えば配列番号1)のアミノ酸454~460は、配列番号22の形質導入関連ペプチドによって置換される。いくつかの実施形態では、天然のAAV6カプシドタンパク質(例えば配列番号1)のアミノ酸454~460は、配列番号23の形質導入関連ペプチドによって置換される。
【0085】
いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、配列番号2、4、6、8、10、12、及び14からなる群から選択されるアミノ酸配列、またはそれらと少なくとも約80%同一な配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、配列番号2、4、6、8、10、12、または14のいずれか1つと少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0086】
b.AAVカプシドタンパク質の他の修飾
本開示は、修飾されるAAVカプシドタンパク質が天然に存在するAAVカプシドタンパク質(例えば、AAV2、AAV3aもしくは3b、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、もしくはAAV11カプシドタンパク質または表2に示されるAAVのいずれか)であり得ることが企図されるが、それらに限らない。当業者であれば、AAVカプシドタンパク質に対する様々な操作が当該技術分野で既知であり、本開示は天然に存在するAAVカプシドタンパク質の修飾に限定されないことを理解するであろう。例えば、修飾されるカプシドタンパク質は、天然に存在するAAVと比較して既に改変されていてもよい(例えば、天然に存在するAAVカプシドタンパク質、例えば、AAV2、AAV3a、AAV3b、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、または現在知られているか、もしくは後に発見される任意の他のAAVに由来する)。いくつかの実施形態では、カプシドタンパク質は、操作されたAAV、例えば、AAV2i8、AAV2g9、AAV-LK03、AAV7m8、AAV Anc80、AAV PHP.Bであってもよい。このようなAAVカプシドタンパク質もまた、本開示の範囲内である。
【0087】
いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質はキメラである。例えば、キメラAAVカプシドタンパク質は、2つ以上のAAV血清型、または3つ以上のAAV血清型に由来する配列を含み得る。キメラAAVカプシドタンパク質は、以下のAAV血清型:AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh.8、AAVrh.10、AAVrh32.33、AAVrh74、ウシAAV、及び鳥類AAV、のうちの2つ以上に由来する配列を含み得る。
【0088】
したがって、いくつかの実施形態では、修飾されるAAVカプシドタンパク質は、天然に存在するAAVに由来し得るが、カプシドタンパク質に挿入される、及び/または置換される、及び/または1つ以上のアミノ酸の欠失によって改変されている1つ以上の外来配列(例えば、天然ウイルスに外因性である)をさらに含む。したがって、本明細書で特定のAAVカプシドタンパク質(例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、もしくはAAV11カプシドタンパク質、または表2に示されるAAVのいずれかからのカプシドタンパク質など)について言及する場合、天然のカプシドタンパク質、及び本開示の修飾以外の改変を有するカプシドタンパク質を包含することが意図される。このような改変には、置換、挿入、及び/または欠失が含まれる。いくつかの実施形態では、カプシドタンパク質は、そのタンパク質に挿入されたアミノ酸(本開示のアミノ酸配列置換以外)を、天然のAAVカプシドタンパク質配列と比較して、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または20個、20個未満、30個未満、40個未満、50個未満、60個未満、または70個未満含む。実施形態では、カプシドタンパク質は、天然のAAVカプシドタンパク質配列と比較して、アミノ酸置換(本開示による形質導入関連ペプチド以外)を1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または20個、20個未満、30個未満、40個未満、50個未満、60個未満、または70個未満含む。いくつかの実施形態では、カプシドタンパク質は、天然のAAVカプシドタンパク質配列と比較して、アミノ酸の欠失(本開示の形質導入関連ペプチド以外)を1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または20個、20個未満、30個未満、40個未満、50個未満、60個未満、または70個未満含む。
【0089】
本開示によるAAVカプシドタンパク質に対する修飾は、「選択的」修飾である。このアプローチは、AAV血清型間のサブユニット全体または大きなドメインのスワップを伴う以前の研究とは対照的である(例えば、国際特許公開WO00/28004及びHauck et al.,(2003)J.Virology 77:2768-2774を参照のこと)。いくつかの実施形態では、「選択的」修飾は、約20、18、15、12、10、9、8、7、6、5、4または3個以下の連続するアミノ酸の挿入及び/または置換及び/または欠失をもたらす。本開示の修飾されたカプシドタンパク質及びカプシドは、現在知られているか、または後に特定される任意の他の修飾をさらに含み得る。アミノ酸残基が、野生型アミノ酸配列または天然のアミノ酸配列に存在するアミノ酸残基以外の任意のアミノ酸残基によって置換される本明細書に記載される実施形態では、任意の他のアミノ酸残基は、当該技術分野で既知である任意の天然または非天然のアミノ酸残基であり得る(例えば、表3及び4を参照のこと)。いくつかの実施形態では、置換は保存的置換であり得、いくつかの実施形態では、置換は非保存的置換であり得る。
【0090】
本明細書に記載されているように、多数のAAVからのカプシドタンパク質のアミノ酸配列及び核酸配列が当該技術分野で既知である。したがって、天然のAAVカプシドタンパク質のアミノ酸位置に「対応する」アミノ酸は、任意の他のAAVについて容易に決定することができる(例えば、配列アラインメントを使用することにより)。2つ以上のアミノ酸配列間の配列類似性または同一性を決定する方法は当該技術分野で既知である。配列類似性または同一性は、Smith&Waterman,Adv.Appl.Math.2,482(1981)の局在的配列同一性アルゴリズム、Needleman&Wunsch,J Mol.Biol.48,443(1970)の配列同一性アラインメントアルゴリズム、Pearson&Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85,2444(1988)の類似検索法、これらのアルゴリズムのコンピュータ実装(Wisconsin Genetics Software PackageのGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA、Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,WI)によるもの、Devereux et al.,Nucl.Acid Res.12,387-395(1984)により記載されるBest Fit配列プログラム、または検査によるものを含むがこれらに限定されない、当該技術分野で既知である標準的な技法を使用して決定され得る。
【0091】
別の好適なアルゴリズムは、Altschul et al.,J Mol.Biol.215,403-410,(1990)、及びKarlin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90,5873-5787(1993)に記載されているBLASTアルゴリズムである。特に有用なBLASTプログラムは、Altschul et al.,Methods in Enzymology,266,460-480(1996);blast.wustl/edu/blast/README.htmlから入手したWU-BLAST-2プログラムである。WU-BLAST-2は、いくつかの検索パラメータを使用し、これは任意選択でデフォルト値に設定される。パラメータは、動的な値であり、特定の配列の組成及び目的の配列が検索される特定のデータベースの組成に応じて、プログラム自体により確立されるが、その値は感度を増加させるために調整されてもよい。
【0092】
さらに、追加の有用なアルゴリズムは、Altschul et al,(1997)Nucleic Acids Res.25,3389-3402によって報告されているギャップBLASTである。
【0093】
別段に示されていない限り、同一性パーセントの計算は、ワールドワイドウェブのアドレス:blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgiで入手可能なBLASTアルゴリズムを用いて、本開示において実施される。
【0094】
c.修飾されたウイルスカプシド
本開示はまた、本明細書に開示されるバリアントカプシドタンパク質の少なくとも1つを含むウイルスカプシドを提供する。いくつかの実施形態では、ウイルスカプシドはパルボウイルスカプシドであり、これはさらに、自律性パルボウイルスカプシドまたはディペンドウイルスカプシドであってもよい。任意選択で、ウイルスカプシドはAAVカプシドである。いくつかの実施形態では、AAVカプシドは、AAV1、AAV2、AAV3a、AAV3b、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh8、AAVrh10、AAVrh32.33、ウシAAVカプシド、鳥類AAVカプシド、または現在知られているか、もしくは後に特定される任意の他のAAVである。AAV血清型の非限定的なリストを表2に示す。本開示のAAVカプシドは、表2に列挙されたAAV血清型のいずれかであり得るか、または1つ以上の挿入、置換、及び/または欠失によって前述のいずれかに由来し得る。修飾されたウイルスカプシドは、例えば米国特許第5,863,541号に記載されている「カプシド担体」として使用することができる。本開示によるウイルスカプシドは、当該技術分野で既知である任意の方法を使用して、例えば、バキュロウイルスからの発現によって産生することができる(Brown et al.,(1994)Virology 198:477-488)。いくつかの実施形態では、AAVカプシドは、本明細書に記載される約60のバリアントカプシドタンパク質を含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、ウイルスカプシドは、所望の標的組織(複数可)上に存在する細胞表面分子と相互作用するようにウイルスカプシドを誘導する標的化配列(例えば、ウイルスカプシドに置換または挿入される)を含む標的化ウイルスカプシドであり得る(例えば、国際特許公開WO00/28004及びHauck et al.,(2003)J.Virology 77:2768-2774)、Shi et al.,Human Gene Therapy 17:353-361(2006)[AAVカプシドサブユニットの520位及び/または584位におけるインテグリン受容体結合モチーフRGDの挿入を記載する]、ならびに米国特許第7,314,912号[AAV2カプシドサブユニットのアミノ酸447位、534位、573位、及び587位に続くRGDモチーフを含有するPIペプチドの挿入を記載する]を参照のこと)。挿入を許容するAAVカプシドサブユニット内の他の位置は、当該技術分野で既知である(例えば、Grifman et al.,Molecular Therapy 3:964-975(2001)により記載される449位及び588位)。
【0096】
例えば、本開示のウイルスカプシドは、目的の特定の標的組織(例えば、肝臓、骨格筋、心臓、横隔膜筋、腎臓、脳、胃、腸、皮膚、内皮細胞及び/または肺)に対するトロピズムが比較的非効率である場合がある。有益なことに、標的化配列をこれらの低形質導入ベクターに組み込むことによって、そのウイルスカプシドに、所望のトロピズム、及び任意選択で、特定の組織または細胞、例えばT細胞に対する選択的トロピズムを付与することができる。標的化配列を含むAAVカプシドタンパク質、カプシド、及びベクターは、例えば国際特許公開WO00/28004に記載されている。別の例としては、低形質導入ベクターを所望の標的組織(複数可)に再誘導する手段として、Wang et al.,Annu Rev Biophys Biomol Struct.35:225-49(2006)に記載されている1つ以上の天然に存在しないアミノ酸を本開示のAAVカプシドサブユニットに直交部位で組み込むことができる。有益なことに、これらの非天然アミノ酸を用いて、目的の分子をAAVカプシドタンパク質に化学的に連結することができ、その分子としては、限定されないが、グリカン(マンノース-樹状細胞標的化);特定のがん細胞タイプに標的化送達するためのRGD、ボンベシン、または神経ペプチド;成長因子受容体、インテグリンなどの特定の細胞表面受容体を標的とするファージディスプレイから選択されるRNAアプタマーまたはペプチドが挙げられる。アミノ酸を化学修飾する方法は、当該技術分野で既知である(例えば、Greg T.Hermanson,Bioconjugate Techniques,1st edition,Academic Press,1996を参照のこと)。いくつかの実施形態では、標的化配列は、特定の細胞タイプ(複数可)への感染を誘導するウイルスカプシド配列(例えば、自律性パルボウイルスカプシド配列、AAVカプシド配列、または任意の他のウイルスカプシド配列)であり得る。
【0097】
別の非限定的な例として、ヘパリン結合ドメインまたはヘパラン硫酸(HS)結合ドメイン(例えば、呼吸器合胞体ウイルスヘパリン結合ドメイン)を、典型的にはHS受容体に結合しないカプシドサブユニット(例えば、AAV4、AAV5)に挿入または置換して、得られるバリアントにヘパリン及び/またはヘパラン硫酸への結合性を付与し得る。HS/ヘパリンへの結合は、アルギニン及び/またはリジンに富む「塩基性パッチ」によって媒介されることが当該技術分野で既知である。例示的な実施形態では、モチーフBXXB(配列番号105)(配列中、「B」は塩基性残基であり、Xは中性及び/または疎水性である)に続く配列を用いることができる。非限定的な例として、BXXBは、RGNR(配列番号106)であり得る。別の非限定的な例として、BXXBは、天然のAAV2カプシドタンパク質のアミノ酸262位~265位を置換する、または別のAAV血清型のカプシドタンパク質の対応する位置(複数可)で置換される。
【0098】
パルボウイルスB19は、グロボシドをその受容体として用いて、初代赤血球前駆細胞に感染する(Brown et al,(1993)Science 262:114)。B19の構造は、8Å分解能で測定されている(Agbandje-McKenna et al,(1994)Virology 203:106)。グロボシドに結合するB19カプシドの領域は、アミノ酸399~406の間(Chapman et al,(1993)Virology 194:419)、βバレル構造E及びFの間のループアウト領域(Chipman et al,(1996)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 93:7502)にマッピングされている。したがって、B19カプシドのグロボシド受容体結合ドメインを本開示のAAVカプシドタンパク質に置換して、ウイルスカプシドまたはそれを含むウイルスベクターを赤血球系細胞に標的化することができる。
【0099】
いくつかの実施形態では、外因性標的化配列は、修飾されたAAVカプシドタンパク質を含むウイルスカプシドまたはウイルスベクターのトロピズムを改変するペプチドをコードする任意のアミノ酸配列であり得る。いくつかの実施形態では、標的化ペプチドまたはタンパク質は、天然に存在するものであってもよく、あるいは、完全または部分的に合成されたものであってもよい。例示的な標的化配列としては、細胞表面受容体及び糖タンパク質に結合するリガンド及び他のペプチド、例えばRODペプチド配列、ブラジキニン、ホルモン、ペプチド成長因子(例えば、上皮成長因子、神経成長因子、線維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、インスリン様成長因子I及びIIなど)、サイトカイン、メラニン細胞刺激ホルモン(例えば、a、β、またはγ)、神経ペプチド及びエンドルフィンなど、ならびに細胞をそれらの同族受容体を標的化する能力を保持するそれらの断片が挙げられる。他の例示的なペプチド及びタンパク質としては、サブスタンスP、ケラチノサイト成長因子、神経ペプチドY、ガストリン放出ペプチド、インターロイキン2、ニワトリ卵白リゾチーム、エリスロポエチン、ゴナドリベリン、コルチコスタチン、β-エンドルフィン、Leu-エンケファリン、リモルフィン、アルファ-ネオエンケファリン、アンジオテンシン、ニューマジン(pneumadin)、血管作用性腸ペプチド、ニューロテンシン、モチリン及び上記のようなものの断片が挙げられる。またさらなる選択肢として、毒素(例えば、破傷風毒素またはアルファ-ブンガロトキシンなどのヘビ毒素)からの結合ドメインが、標的化配列としてカプシドタンパク質に置換され得る。さらに別の代表的な実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、Cleves(Current Biology 7:R318(1997))により記載される「非古典的」輸入/輸出シグナルペプチド(例えば、線維芽細胞成長因子-1及び-2、インターロイキン1、HIV-1 Tatタンパク質、ヘルペスウイルスVP22タンパク質など)をそのAAVカプシドタンパク質に置換することによって修飾することができる。また、特定の細胞による取り込みを誘導するペプチドモチーフ、例えば、肝臓細胞による取り込みを引き起こすFVFLP(配列番号104)ペプチドモチーフも包含される。
【0100】
ファージディスプレイ技法及び当該技術分野で既知である他の技法を用いて、目的の任意の細胞タイプを認識するペプチドを特定することができる。標的化配列は、受容体(例えば、タンパク質、糖鎖、糖タンパク質またはプロテオグリカン)を含む、細胞表面結合部位を標的とする任意のペプチドをコードし得る。細胞表面結合部位の例には、限定されないが、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、及び他のグリコサミノグリカン、ムチンに見られるシアル酸部分、糖タンパク質、ならびにガングリオシド、MHC1糖タンパク質、膜糖タンパク質に見られる糖鎖構成成分(マンノース、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン、フコース、ガラクトースなどを含む)が挙げられる。表7は、好適な標的化配列の他の非限定的な例を示す。
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【表6-4】
【表6-5】
【表6-6】
【表6-7】
【0101】
いくつかの実施形態では、標的化配列は、細胞への侵入を標的とする別の分子に化学的にカップリングするのに用いることができるペプチド(例えば、そのR基を介して化学的にカップリングできるアルギニン残基及び/またはリジン残基を含むことができる)であり得る。いくつかの実施形態では、本開示のAAVカプシドタンパク質またはウイルスカプシドは、WO2006/066066に記載されている変異を含むことができる。例えば、カプシドタンパク質は、天然のAAV2カプシドタンパク質のアミノ酸263位、705位、708位、及び/または716位における選択的アミノ酸置換、または別のAAV血清型からのカプシドタンパク質における対応する変更(複数可)を含むことができる。
【0102】
追加的または代替的に、いくつかの実施形態では、カプシドタンパク質、ウイルスカプシド、またはベクターは、AAV2カプシドタンパク質のアミノ酸264位の直後に選択的アミノ酸の挿入を含むか、または他のAAVからのカプシドタンパク質において対応する変更を含む。「アミノ酸X位の直後」とは、挿入が、指示されたアミノ酸位置のすぐ後に続くことを意図する(例えば、「アミノ酸264位の後」は、265位での点挿入、またはより広範囲での挿入、例えば、265位~268位の挿入などを示す)。さらに、いくつかの実施形態では、本開示のカプシドタンパク質、ウイルスカプシド、またはベクターは、アミノ酸修飾、例えば、PCT公開第WO2010/093784号(例えば、2i8)及び/またはPCT公開第WO2014/144229号(例えば、二重グリカン)に記載されるものを含み得る。
【0103】
異種分子は、AAV感染において天然に見出されないもの、例えば野生型AAVゲノムによりコードされないものと定義される。さらに、治療上有用な分子は、キメラウイルスカプシドの外側に会合して、該分子を宿主標的細胞内へ移入することができる。このような会合分子には、DNA、RNA、有機小分子、金属、糖鎖、脂質、及び/またはポリペプチドが含まれ得る。本開示の一実施形態では、治療上有用な分子は、カプシドタンパク質に共有結合している(すなわち、コンジュゲートまたは化学的にカップリングしている)。分子を共有結合させる方法は、当業者に既知である。
【0104】
d.修飾されたウイルスベクター
本開示は、本開示のカプシドタンパク質バリアント及びカプシドを含むウイルスベクターを提供する。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、パルボウイルスベクター(例えば、パルボウイルスカプシド及び/またはベクターゲノムを含む)、例えば、AAVベクター(例えば、AAVカプシド及び/またはベクターゲノムを含む)である。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、本開示の修飾されたカプシドタンパク質を含む修飾されたAAVカプシド及びベクターゲノムを含む。
【0105】
例えば、いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、(a)本開示のカプシドタンパク質バリアントを含むウイルスカプシド(例えば、AAVカプシド)と、(b)末端反復配列(例えば、AAV TR)を含む核酸と、を含み、該末端反復配列を含む核酸は、ウイルスカプシドによってカプシド封入される。核酸は、任意選択で、2つの末端反復(例えば、2つのAAV TR)を含み得る。代表的な実施形態では、ウイルスベクターは、目的のポリペプチドまたは機能性RNAをコードする異種核酸を含む組換えウイルスベクターである。
【0106】
AAVは典型的には、T細胞を高レベルで形質導入しない。対照的に、いくつかの実施形態では、本開示のウイルスベクターは、野生型ウイルスベクター、またはカプシドタンパク質バリアントを含まないウイルスベクターによる形質導入のレベルと比較して、1つ以上の細胞タイプ(例えば、T細胞)及び/または組織の形質導入の増強を示す。いくつかの実施形態では、AAVウイルスベクターは、野生型または天然のAAVウイルスベクターと比較して細胞形質導入を増加させる。いくつかの実施形態では、AAVウイルスベクターは、野生型もしくは天然のAAVウイルスベクター、または本明細書に開示されるカプシドタンパク質バリアントのいずれか1つを含まないAAVウイルスベクターと比較して、1つ以上の細胞タイプ(例えば、T細胞)において形質導入を増加させる。いくつかの実施形態では、AAVウイルスベクターは、造血幹細胞への形質導入を増加させ得る。いくつかの実施形態では、AAVウイルスベクターは、単球、好塩基球、好酸球、好中球、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、T細胞、及び/またはナチュラルキラー細胞において形質導入を増加させ得る。いくつかの実施形態では、AAVウイルスベクターは、衛星細胞、間葉系幹細胞、及び/または基底細胞において形質導入を増加させ得る。いくつかの実施形態では、AAVウイルスベクターは、肺上皮細胞、肝細胞、及び/または骨格筋細胞において形質導入を増加させ得る。
【0107】
AAVの既知の受容体及び共受容体には、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、インテグリン、O-結合シアル酸、N-結合シアル酸、AAV受容体(AAVR、KIAA0319L)、肝細胞成長因子受容体(c-Met)、CD9、FGFR-1、37/67kDaラミニン受容体、及び血小板由来成長因子受容体が含まれる。実施形態では、本開示のAAVウイルスベクターは、これらの受容体及び/または共受容体のうちの1つ以上に対して親和性を増加させる。例えば、いくつかの実施形態では、AAVウイルスベクターは、野生型または天然のAAVウイルスベクターと比較して、ヘパリン及び/またはヘパラン硫酸結合を増加させる。いくつかの実施形態では、AAVウイルスベクターは、野生型または天然のAAVウイルスベクターと比較して、シアル酸結合を増加させる。いくつかの実施形態では、AAVウイルスベクターは、野生型または天然のAAVウイルスベクターと比較して、インテグリン結合を増加させる。いくつかの実施形態では、AAVウイルスベクターは、野生型または天然のAAVウイルスベクターと比較して、αサブユニット及びβサブユニットを含むインテグリンへの結合を増加させる。インテグリンは、例えば、α4β7、α4β1、α1β1、α2β1、αEβ7、αLβ2、α5β1、α5β6、α5β5、α5β8、α5β8、α3β1、α5β1、α11β1、α5β3、α11β3、αVβ3、αVβ5、αVβ6、αVβ8であり得る。
【0108】
本開示はまた、本開示のカプシドタンパク質バリアント(例えば、AAVカプシドタンパク質バリアント)またはカプシドタンパク質バリアントを含む1つ以上のカプシド(例えば、AAVカプシド)をコードするヌクレオチド配列、またはそれを含む発現ベクターを提供する。いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号2、4、6、8、10、12、及び14のいずれか1つの配列を有する組換えAAVカプシドタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号3、5、7、9、11、13、及び15からなる群から選択される配列を含む。ヌクレオチド配列は、DNA配列またはRNA配列であり得る。発現ベクターは、限定されないが、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、AAV、ヘルペスウイルス、ワクシニア、ポックスウイルス、バキュロウイルスなど)、または非ウイルスベクター、例えば、プラスミド、ファージ、YAC、BACなどであり得る。本開示はまた、本開示の1つ以上のヌクレオチド配列または発現ベクターを含む細胞を提供する。細胞は、in vitro、ex vivo、またはin vivoで存在し得る。
【0109】
ウイルスベクターの産生方法
本開示はさらに、本明細書に開示されるウイルスベクターを産生する方法を提供する。したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、細胞形質導入を増加させる(例えば、T細胞への形質導入を増加させる)AAVベクターの産生方法であって、a)AAVカプシドタンパク質上の表面露出残基を特定すること、b)(a)で特定した表面露出アミノ酸残基のアミノ酸置換を含むAAVカプシドタンパク質のライブラリーを生成すること、c)(b)のAAVカプシドタンパク質のライブラリーからのカプシドタンパク質を含むAAV粒子を産生すること、d)感染及び複製が起こり得る条件下で(c)のAAV粒子と細胞を接触させること、e)少なくとも1回の感染サイクルを完了して、対照AAV粒子と同等以上の力価に複製できるAAV粒子を選択すること、を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、ステップ(d)及び(e)は複数回、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、または10回繰り返される。表面露出残基を特定するための方法の非限定的な例には、低温電子顕微鏡法が挙げられる。AAV2(Xie et al.,(2002)Proc.Nat.Acad.Sci.99:10405-10)、AAV9(DiMattia et al.,(2012)J.Virol.86:6947-6958)、AAV8(Nam et al,(2007)J.Virol.81:12260-12271)、AAV6(Ng et al.,(2010)J.Virol.84:12945-12957)、AAV5(Govindasamy et al.(2013)J.Virol.87,11187-11199)、AAV4(Govindasamy et al.(2006)J.Virol.80:11556-11570)、AAV3B(Lerch et al.,(2010)Virology 403:26-36)、BPV(Kailasan et al.,(2015)J.Virol.89:2603-2614)、及びCPV(Xie et al,(1996)J.Mol.Biol.6:497-520及びTsao et al,(1991)Science 251:1456-64)の結晶構造の説明も参照のこと。
【0110】
表面露出残基の解像及び特定により、ランダム変異誘発、合理的変異誘発及び/または縮重変異誘発によるその後の修飾が可能となり、さらなる選択及び/またはスクリーニングを通じて特定できるAAVカプシドが生成される。したがって、さらなる実施形態では、本開示は、細胞形質導入を増加させる(例えば、T細胞への形質導入を増加させる)AAVベクターの産生方法であって、a)AAVカプシドタンパク質上の表面露出アミノ酸残基を特定すること、b)ランダム変異誘発、合理的変異誘発及び/または縮重変異誘発によって(a)で特定した表面露出アミノ酸残基のアミノ酸置換を含むAAVカプシドタンパク質を生成すること、c)(b)のAAVカプシドタンパク質からのカプシドタンパク質を含むAAV粒子を産生すること、d)感染及び複製が起こり得る条件下で(c)のAAV粒子と細胞を接触させること、ならびにe)少なくとも1回の感染サイクルを完了して、対照AAV粒子と同等以上の力価に複製できるAAV粒子を選択すること、を含む方法を提供する。
【0111】
ランダム変異誘発、合理的変異誘発及び/または縮重変異誘発によって、表面露出アミノ酸残基のアミノ酸置換を含むAAVカプシドタンパク質を生成する方法は、当該技術分野で既知である。この包括的アプローチは、いずれのAAVカプシドの修飾にも適用できるプラットフォーム技術をもたらす。このプラットフォーム技術の適用により、元のAAVカプシドテンプレートに由来し、形質導入効率が増強されたAAVバリアントが得られる。1つの利点及び利益として、この技術の適用により、AAVベクターによる遺伝子療法の対象となる患者のコホートが拡大されることとなる。
【0112】
いくつかの実施形態では、本開示は、ウイルスベクターを産生する方法であって、細胞に、(a)少なくとも1つのTR配列(例えばAAV TR配列)を含む核酸テンプレートと、(b)その核酸テンプレートの複製及びAAVカプシドへのカプシド封入に十分なAAV配列(例えば、AAV rep配列及び本開示のAAVカプシドをコードするAAV cap配列)と、を提供することを含む、方法を提供する。任意選択で、核酸テンプレートは、少なくとも1つの異種核酸配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸テンプレートは2つのAAV ITR配列を含み、それらのITR配列は、異種核酸配列(存在する場合)の5’側及び3’側に位置するが、その異種核酸配列に直接連続している必要はない。
【0113】
核酸テンプレートならびにAAV rep配列及びcap配列は、AAVカプシド内にパッケージングされた核酸テンプレートを含むウイルスベクターが細胞内で産生されるような条件下で提供される。方法は、細胞からウイルスベクターを収集するステップをさらに含み得る。ウイルスベクターは、培地から、及び/または細胞を溶解することによって収集することができる。細胞は、AAVウイルス複製を許容する細胞であり得る。当該技術分野で既知である任意の好適な細胞を用いることができる。いくつかの実施形態では、細胞は哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、複製欠損ヘルパーウイルスから欠失した機能をもたらすトランス相補性パッケージング細胞株、例えば、293細胞または他のE1aトランス相補性細胞であることができる。
【0114】
AAVの複製配列及びカプシド配列は、当該技術分野で既知である任意の方法によって提供され得る。現行のプロトコルでは典型的には、単一のプラスミド上でAAV rep/cap遺伝子を発現させる。AAVの複製配列及びパッケージング配列は、一緒に提供される必要はないが、一緒に提供されるのが利便的なことがある。AAV rep配列及び/またはcap配列は、任意のウイルスベクターまたは非ウイルスベクターによって提供され得る。例えば、rep/cap配列は、ハイブリッドアデノウイルスベクターまたはヘルペスウイルスベクターによって提供され得る(例えば、欠失のあるアデノウイルスベクターのE1aまたはE3領域に挿入される)。EBVベクターを用いて、AAV cap遺伝子及びrep遺伝子を発現させてもよい。この方法の1つの利点は、EBVベクターがエピソームであるが、連続した細胞分裂の全体を通じて高いコピー数を維持することである(すなわち、「EBVベースの核エピソーム」として表される染色体外エレメントとして細胞に安定的に組み込まれる、Margolski,(1992)Curr.Top.Microbiol.Immun.158:67を参照のこと)。さらなる選択肢として、rep/cap配列は、細胞に安定して組み込まれ得る。典型的には、AAV rep/cap配列は、これらの配列のレスキュー及び/またはパッケージングを防止するために、TRに隣接しない。
【0115】
核酸テンプレートは、当該技術分野で既知である任意の方法を使用して細胞に提供され得る。例えば、テンプレートは、非ウイルスベクター(例えば、プラスミド)またはウイルスベクターによって供給され得る。いくつかの実施形態では、核酸テンプレートは、ヘルペスウイルスまたはアデノウイルスベクターによって供給される(例えば、欠失のあるアデノウイルスのE1aまたはE3領域に挿入される)。別の例示として、Palombo et al.,(1998)J.Virology 72:5025は、AAV TRに隣接するレポーター遺伝子を担持するバキュロウイルスベクターについて記載している。EBVベクターを用いて、rep/cap遺伝子に関して上述されるように、テンプレートを送達してもよい。
【0116】
いくつかの実施形態では、核酸テンプレートは、複製rAAVウイルスによって提供される。いくつかの実施形態では、核酸テンプレートを含むAAVプロウイルスは、細胞の染色体に安定して組み込まれる。ウイルス力価を増強するために、増殖性AAV感染を促進するヘルパーウイルス機能(例えば、アデノウイルスまたはヘルペスウイルス)を細胞に提供することができる。AAV複製に必要なヘルパーウイルス配列は、当該技術分野で既知である。典型的には、これらの配列は、ヘルパーアデノウイルスまたはヘルペスウイルスベクターによって提供される。あるいは、アデノウイルスまたはヘルペスウイルス配列は、別の非ウイルスベクターまたはウイルスベクター、例えば、Ferrari et al.,(1997)Nature Med.3:1295、ならびに米国特許第6,040,183号及び同第6,093,570号に記載される効率的なAAV産生を促進するヘルパー遺伝子のすべてを担持する非感染性アデノウイルスミニプラスミドとして提供され得る。
【0117】
さらに、ヘルパーウイルス機能は、ヘルパー配列が染色体に埋め込まれたパッケージング細胞によって提供されるか、または安定した染色体外エレメントとして維持され得る。一般に、ヘルパーウイルス配列は、AAVビリオンにパッケージングすることができず、例えば、TRに隣接していない。当業者であれば、
【0118】
単一のヘルパー構築物上にAAV複製及びカプシド配列、ならびにヘルパーウイルス配列(例えば、アデノウイルス配列)を提供することが有利であり得ることを理解するであろう。このヘルパー構築物は、非ウイルスまたはウイルス構築物であり得る。1つの非限定的な例示として、ヘルパー構築物は、AAV rep/cap遺伝子を含むハイブリッドアデノウイルスまたはハイブリッドヘルペスウイルスであり得る。いくつかの実施形態では、AAV rep/cap配列及びアデノウイルスヘルパー配列は、単一のアデノウイルスヘルパーベクターによって供給される。このベクターは、核酸テンプレートをさらに含み得る。AAV rep/cap配列及び/またはrAAVテンプレートは、アデノウイルスの欠失領域(例えば、E1aまたはE3領域)に挿入され得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、AAV rep/cap配列及びアデノウイルスヘルパー配列は、単一のアデノウイルスヘルパーベクターによって供給される。rAAVテンプレートは、例えば、プラスミドテンプレートとして提供され得る。いくつかの実施形態では、AAV rep/cap配列及びアデノウイルスヘルパー配列は、単一のアデノウイルスヘルパーベクターによって提供され、rAAVテンプレートは、プロウイルスとして細胞に組み込まれる。あるいは、rAAVテンプレートは、染色体外エレメントとして(例えば、EBVベースの核エピソームとして)細胞内に維持されるEBVベクターによって提供される。
【0120】
いくつかの実施形態では、AAV rep/cap配列及びアデノウイルスヘルパー配列は、単一のアデノウイルスヘルパーにより提供される。rAAVテンプレートは、別個の複製ウイルスベクターとして提供され得る。例えば、rAAVテンプレートは、rAAV粒子または第2の組換えアデノウイルス粒子によって提供され得る。前述の方法によれば、ハイブリッドアデノウイルスベクターは、典型的には、アデノウイルスの複製及びパッケージングに十分なアデノウイルス5’及び3’シス配列(すなわち、アデノウイルス末端反復及びPAC配列)を含む。AAV rep/cap配列、及び存在する場合、rAAVテンプレートは、アデノウイルス骨格に埋め込まれ、5’及び3’シス配列に隣接しているため、これらの配列は、アデノウイルスカプシドにパッケージングされ得る。上述のように、アデノウイルスヘルパー配列及びAAV rep/cap配列は、これらの配列がAAVビリオンにパッケージングされないように、一般に、TRに隣接していない。Zhang et al.,((2001)Gene Ther.18:704-12)では、アデノウイルスとAAV rep及びcap遺伝子の両方を含むキメラヘルパーについて記載されている。
【0121】
AAVパッケージング法では、ヘルペスウイルスもヘルパーウイルスとして使用してもよい。AAV Repタンパク質(複数可)をコードするハイブリッドヘルペスウイルスは有益なことに、拡張可能なAAVベクター産生スキームを容易にし得る。AAV-2 rep及びcap遺伝子を発現するハイブリッド単純ヘルペスウイルスI型(HSV-1)ベクターが記載されている(Conway et al.,(1999)Gene Therapy 6:986及びWO00/17377)。いくつかの実施形態では、本開示のウイルスベクターを、例えば、Urabe et al.,(2002)Human Gene Therapy 13:1935-43により記載されるように、バキュロウイルスベクターを使用して昆虫細胞において産生し、rep/cap遺伝子及びrAAVテンプレートを送達することができる。
【0122】
混入ヘルパーウイルスを含まないAAVベクターストックは、当該技術分野で既知である任意の方法によって得ることができる。例えば、AAV及びヘルパーウイルスは、サイズに基づいて容易に区別することができる。AAVは、ヘパラン基質に対する親和性に基づき、ヘルパーウイルスから分離することもできる(Zolotukhin et al.(1999)Gene Therapy 6:973)。欠失のある複製欠損ヘルパーウイルスを用いて、いずれの混入ヘルパーウイルスも、複製能を持たないようにできる。いくつかの実施形態では、AAVウイルスのパッケージングを媒介するのに必要なのはアデノウイルス初期遺伝子の発現のみであるため、後期遺伝子の発現を欠くアデノウイルスヘルパーを用いてもよい。後期遺伝子の発現を欠損したアデノウイルス変異体は、当該技術分野で既知である(例えば、アデノウイルス変異体ts100K及びts149)。
【0123】
組換えウイルスベクター
本開示は、本明細書に開示されるカプシドタンパク質(例えば、AAVカプシドタンパク質)の少なくとも1つまたはカプシド(例えば、AAVカプシド)の少なくとも1つを含む組換えウイルスベクター(例えば、組換えAAVベクター)を提供し、該カプシドタンパク質は、本明細書に開示される1つ以上の形質導入関連ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、野生型AAVベクター、または形質導入関連ペプチドを含まないAAVベクターと比較して、細胞、例えばT細胞への形質導入の増加を示す。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、野生型AAVベクター、または形質導入関連ペプチドを含まないAAVベクターと比較して、T細胞の核への形質導入の増加を示す。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、野生型AAVベクター、または形質導入関連ペプチドを含まないAAVベクターと比較して、T細胞の細胞質基質への形質導入の増加を示す。
【0124】
本開示の組換えウイルスベクターは、核酸を細胞にin vitro、ex vivo、及びin vivoで送達するのに有用である。修飾されたウイルスカプシドによりパッケージングして、細胞内へ移入できる分子には、異種のDNA、RNA、ポリペプチド、有機小分子、金属、またはこれらの組み合わせが含まれる。特に、ウイルスベクターは、有益なことに、哺乳動物細胞を含む動物細胞に核酸を送達または移入するのに用いることができる。したがって、いくつかの実施形態では、核酸(「カーゴ核酸」)を本開示のカプシドタンパク質によりカプシド封入され得る。本開示のウイルスベクターで送達されるカーゴ核酸配列は、目的の任意の異種核酸配列(複数可)であり得る。
【0125】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるAAVベクターによって送達される異種核酸の発現は、野生型AAVベクター(AAV6ベクターなど)または本明細書に開示される形質導入関連ペプチドを含まないAAVベクターによって送達される異種核酸の発現と比較して増加する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるAAVベクターによって送達される異種核酸の発現は、野生型AAVベクター(AAV6ベクターなど)または本明細書に開示される形質導入関連ペプチドを含まないAAVベクターによって送達される異種核酸の発現と比較して、少なくとも約1.5倍、例えば約2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍(間にあるすべての値及び部分範囲を含む)増加する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるAAVベクターによって送達される異種核酸の発現は、野生型AAVベクター(AAV6ベクターなど)または本明細書に開示される形質導入関連ペプチドを含まないAAVベクターによって送達される異種核酸の発現と比較して、少なくとも約10%、例えば、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%(間にあるすべての値及び部分範囲を含む)増加する。
【0126】
目的の核酸としては、治療用(例えば、医学的または獣医学的用途)または免疫原性(例えば、ワクチン用)ポリペプチドもしくはRNAを含む、ポリペプチドをコードする核酸が含まれる。いくつかの実施形態では、該カーゴ核酸は、治療用タンパク質または治療用RNAをコードする。
【0127】
治療用ポリペプチドには、限定されないが、キメラ抗原受容体(CAR)、ABCD1、βグロビン(HBB)、ヘモグロビンA、ヘモグロビンF、嚢胞性線維症膜貫通調節因子タンパク質(CFTR)、ジストロフィン(ミニジストロフィン及びマイクロジストロフィンを含む。例えば、Vincent et al,(1993)Nature Genetics 5:130;米国特許公開第2003/017131号;国際公開WO/2008/088895,Wang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:1 3714-13719(2000);及びGregorevic et al.,Mol.Ther.16:657-64(2008)を参照のこと)、ミオスタチンプロペプチド、フォリスタチン、アクチビン11型可溶性受容体、IGF-1、抗炎症性ポリペプチド、例えば、IκB優性変異体、サルコスパン、ユートロフィン(Tinsley et al,(1996)Nature 384:349)、ミニユートロフィン、凝固因子(例えば、第VIII因子、第IX因子、第X因子など)、エリスロポエチン、アンジオスタチン、エンドスタチン、カタラーゼ、チロシンヒドロキシラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、LDL受容体、リポタンパク質リパーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、β-グロビン、a-グロビン、スペクトリン、α-1-アンチトリプシン、アデノシンデアミナーゼ、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、β-グルコセレブロシダーゼ、スフィンゴミエリナーゼ、リソソームヘキソサミニダーゼA、分岐鎖ケト酸脱水素酵素、RP65タンパク質、サイトカイン(例えば、α-インターフェロン、β-インターフェロン、γ-インターフェロン、インターロイキン-2、インターロイキン-4、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、リンパ毒素など)、ペプチド成長因子、神経栄養因子及びホルモン(例えば、ソマトトロピン、インスリン、インスリン様成長因子1及び2、血小板由来成長因子、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、神経成長因子、神経栄養因子-3及び-4、脳由来神経栄養因子、骨形成タンパク質[RANKL及びVEGFを含む]、グリア由来成長因子、トランスフォーミング成長因子-α及び-βなど)、リソソーム酸性α-グルコシダーゼ、α-ガラクトシダーゼA、受容体(例えば、腫瘍壊死成長因子可溶性受容体)、S100A1、パルブアルブミン、アデニリルシクラーゼ6型、カルシウムハンドリングを調節する分子(例えば、SERCA2A、PP1の阻害剤1及びその断片[例えば、WO2006/029319及びWO2007/100465])、Gタンパク質共役受容体キナーゼ2型ノックダウンに作用する分子、例えば短縮型の構成的活性bARKct、抗炎症因子、例えばIRAP、抗ミオスタチンタンパク質、アスパルトアシラーゼ、モノクローナル抗体(単鎖モノクローナル抗体を含む;例示的なMabはHerceptin(登録商標)Mabである)、神経ペプチド及びその断片(例えば、ガラニン、神経ペプチドY(米国特許第7,071,172号を参照のこと)、血管新生阻害剤、例えばバソヒビン及び他のVEGF阻害剤(例えば、バソヒビン2[WO JP2006/073052を参照のこと])が含まれ得る。他の例示的な異種核酸配列は、自殺遺伝子産物(例えば、チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、ジフテリア毒素、及び腫瘍壊死因子)、宿主因子の転写を増強または阻害するタンパク質(例えば、転写エンハンサーまたは阻害因子エレメントに連結されたヌクレアーゼ不活性型Cas9、転写エンハンサーまたは阻害因子エレメントに連結されたジンクフィンガータンパク質、転写エンハンサーまたは阻害因子エレメントに連結された転写アクチベーター様(TAL)エフェクター)、がん療法で使用される薬剤に対する耐性を付与するタンパク質、がん抑制遺伝子産物(例えば、p53、Rb、Wt-1)、TRAIL、FAS-リガンド、及び治療効果を必要とする対象において治療効果を有する任意の他のポリペプチドをコードする。AAVベクターを用いて、モノクローナル抗体及び抗体断片、例えば、ミオスタチンに対して指向される抗体または抗体断片を送達することもできる(例えば、Fang et al.,Nature Biotechnology 23:584-590(2005)を参照のこと)。ポリペプチドをコードする異種核酸配列には、レポーターポリペプチド(例えば、酵素)をコードする配列が含まれる。レポーターポリペプチドは当該技術分野で既知であり、緑色蛍光タンパク質、β-ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ及びクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子が挙げられるが、これらに限らない。任意選択で、異種核酸は、分泌型ポリペプチド(例えば、その天然状態で分泌型ポリペプチドであるか、または例えば、当該技術分野で既知である分泌シグナル配列との作動可能な会合によって分泌されるように操作されたポリペプチド)をコードする。
【0128】
あるいは、本開示のいくつかの実施形態では、異種核酸は、アンチセンス核酸、リボザイム(例えば、米国特許第5,877,022号に記載される)、スプライソソーム媒介/ramスプライシングをもたらすRNA(Puttaraju et al,(1999)Nature Biotech.17:246、米国特許第6,013,487号、米国特許第6,083,702号を参照のこと)、遺伝子サイレンシングを媒介するsiRNA、shRNA、またはmiRNAを含む干渉RNA(RNAi)(Sharp et al,(2000)Science 287:2431を参照のこと)、及び他の非翻訳RNA、例えば、「ガイド」RNA(Gorman et al.,(1998)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 95:4929、Yuanらの米国特許第5,869,248号)などをコードしてもよい。例示的な非翻訳RNAには、複数の薬剤耐性(MDR)遺伝子産物に対するRNAi(例えば、腫瘍を治療及び/または予防するため、及び/または化学療法による損傷を防ぐための心臓に投与するためのもの)、ミオスタチンに対するRNAi(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー用)、VEGFに対するRNAi(例えば、腫瘍を治療及び/または予防するため)、ホスホランバンに対するRNAi(例えば、心血管疾患を治療するため。例えば、Andino et al.,J.Gene Med.10:132-142(2008)及びLi et al.,Acta Pharmacol Sin.26:51-55(2005)を参照のこと)、ホスホランバン阻害性またはドミナントネガティブ分子、例えばホスホランバンS16E(例えば、心血管疾患を治療するため、例えば、Hoshijima et al.Nat.Med.8:864-871(2002)を参照のこと)、アデノシンキナーゼに対するRNAi(例えば、てんかん用)、ならびに病原性生物及びウイルス(例えば、B型及び/またはC型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、CMV、単純ヘルペスウイルス、ヒトパピローマウイルスなど)に対して指向されるRNAiが含まれる。
【0129】
さらに、選択的スプライシングを誘導する核酸配列を送達することができる。例示すると、ジストロフィンエキソン51の5’及び/または3’スプライス部位と相補的であるアンチセンス配列(または他の阻害配列)を、U1またはU7核内低分子(sn)RNAプロモーターと共に送達して、このエキソンのスキッピングを誘導することができる。例えば、アンチセンス/阻害配列(複数可)の5’側に位置するU1またはU7 snRNAプロモーターを含むDNA配列を本開示の修飾されたカプシド内にパッケージングして、送達することができる。
【0130】
いくつかの実施形態では、遺伝子編集を誘導する核酸配列を送達することができる。例えば、核酸は、遺伝子編集分子、例えばガイドRNAまたはヌクレアーゼをコードすることができる。いくつかの実施形態では、核酸は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、ホーミングエンドヌクレアーゼ、TALEN(転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ)、NgAgo(アルゴノートエンドヌクレアーゼ)、SGN(構造誘導型エンドヌクレアーゼ)、またはRGN(RNA誘導型ヌクレアーゼ)、例えばCas9ヌクレアーゼもしくはCpf1ヌクレアーゼをコードし得る。
【0131】
ウイルスベクターはまた、宿主染色体上の遺伝子座と共通の相同性を有し、それと組み換わる異種核酸を含み得る。このアプローチは、例えば、宿主細胞における遺伝的欠損を修正するために利用することができる。
【0132】
本開示はまた、例えば、ワクチン接種のための、免疫原性ポリペプチドを発現するウイルスベクターも提供する。核酸は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、インフルエンザウイルス、HIVまたはSIV gagタンパク質、腫瘍抗原、がん抗原、細菌抗原、ウイルス抗原などからの免疫原を含むがこれらに限定されない、当該技術分野で既知である任意の目的の免疫原をコードし得る。
【0133】
ワクチンベクターとしてのパルボウイルスの使用は、当該技術分野で既知である(例えば、Miyamura el al,(1994)Proc.Nat.Acad.Sci USA 91:8507、Youngらの米国特許第5,916,563号、Mazzaraらの米国特許第5,905,040号、米国特許第5,882,652号、Samulskiらの米国特許第5,863,541号を参照のこと)。抗原は、パルボウイルスカプシドにおいて提示され得る。あるいは、抗原は、組換えベクターゲノムに導入した異種核酸から発現され得る。本明細書に記載される及び/または当該技術分野で既知である任意の目的の免疫原は、本開示のウイルスベクターにより提供され得る。
【0134】
免疫原性ポリペプチドは、免疫応答を誘発し、及び/または対象を、微生物、細菌、原虫、寄生虫、真菌、及び/またはウイルス感染及び疾患を含むがこれらに限定されない、感染及び/または疾患から保護するのに好適な任意のポリペプチドであり得る。例えば、免疫原性ポリペプチドは、オルトミクソウイルス免疫原(例えば、インフルエンザウイルス免疫原、例えば、インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)表面タンパク質またはインフルエンザウイルス核タンパク質、またはウマインフルエンザウイルス免疫原)、またはレンチウイルス免疫原(例えば、ウマ伝染性貧血ウイルス免疫原、サル免疫不全ウイルス(SIV)免疫源、またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)免疫原、例えば、HIVもしくはSIVエンベロープGP 160タンパク質、HIVもしくはSIVマトリックス/カプシドタンパク質、ならびにHIVもしくはSIV gag、pol、及びenv遺伝子産物)であり得る。免疫原性ポリペプチドはまた、アレナウイルス免疫原(例えば、ラッサ熱ウイルス免疫原、例えばラッサ熱ウイルスヌクレオカプシドタンパク質、及びラッサ熱エンベロープ糖タンパク質)、ポックスウイルス免疫原(例えば、ワクシニアウイルス免疫原、例えばワクシニアLI遺伝子産物またはL8遺伝子産物)、フラビウイルス免疫原(例えば、黄熱ウイルス免疫原または日本脳炎ウイルス免疫原)、フィロウイルス免疫原(例えば、エボラウイルス免疫原またはマールブルグウイルス免疫原、例えばNP及びGP遺伝子産物)、ブニヤウイルス免疫原(例えば、RVFV、CCHF、及び/またはSFSウイルス免疫原)、またはコロナウイルス免疫原(例えば、感染性ヒトコロナウイルス免疫原、例えば、ヒトコロナウイルスエンベロープ糖タンパク質、またはブタ伝染性胃腸炎ウイルス免疫原、または鳥類感染性気管支炎ウイルス免疫原)であり得る。免疫原性ポリペプチドはさらに、ポリオ免疫原、ヘルペス免疫原(例えば、CMV、EBV、HSVの免疫原)、ムンプス免疫原、麻疹免疫原、風疹免疫原、ジフテリア毒素もしくはその他のジフテリアの免疫原、百日咳抗原、肝炎(例えば、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎など)の免疫原、及び/または当該技術分野で現在知られているか、もしくは後に免疫原として特定される任意の他のワクチン免疫原であり得る。
【0135】
あるいは、免疫原性ポリペプチドは、任意の腫瘍またはがん細胞抗原であり得る。任意選択で、腫瘍またはがん抗原は、がん細胞の表面に発現する。
【0136】
例示的ながん及び腫瘍細胞抗原は、S.A.Rosenberg(Immunity 10:281(1991))に記載されている。他の例示的ながん抗原及び腫瘍抗原には、限定されないが、BRCA1遺伝子産物、BRCA2遺伝子産物、gp100、チロシナーゼ、GAGE-1/2、BAGE、RAGE、LAGE、NY-ESO-1、CDK-4、β-カテニン、MUM-1、カスパーゼ-8、KIAA0205、HPVE、SART-1、FRAME、p15、黒色腫腫瘍抗原(Kawakami et al.,(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:3515、Kawakami et al.,(1994)J.Exp.Med.,180:347、Kawakami et al.,(1994)Cancer Res.54:3124)、MART-1、gp100、MAGE-1、MAGE-2、MAGE-3、CEA、TRP-1、TRP-2、P-15、チロシナーゼ(Brichard et al.,(1993)J Exp.Med.178:489)、HER-2/neu遺伝子産物(米国特許第4.968.603号)、CA125、LK26、FB5(エンドシアリン)、TAG72、AFP、CA19-9、NSE、DU-PAN-2、CA50、SPan-1、CA72-4、HCG、STN(シアリルTn抗原)、c-erbB-2タンパク質、PSA、L-CanAg、エストロゲン受容体、乳脂肪グロブリン、p53腫瘍抑制タンパク質(Levine,(1993)Ann.Rev.Biochem.62:623)、ムチン抗原(国際特許公開WO90/05142)、テロメラーゼ、核マトリックスタンパク質、前立腺酸性ホスファターゼ、パピローマウイルス抗原、及び/または黒色腫、腺癌、胸腺腫、リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫)、肉腫、肺癌、肝臓癌、結腸癌、白血病、子宮癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、膀胱癌、腎臓癌、膵臓癌、脳癌、及び現在知られているか、もしくは後に特定される任意の他のがんもしくは悪性の病態、またはそれらの転移といったがんに関連することが現在知られているか、または後に発見される抗原(例えば、Rosenberg,(1996)Ann.Rev.Med.47:481-91を参照のこと)が含まれる。
【0137】
当業者であれば、目的の異種核酸(複数可)が適切な制御配列と作動可能に会合し得ることを理解するであろう。例えば、異種核酸は、転写/翻訳制御シグナル、複製起点、ポリアデニル化シグナル、内部リボソーム侵入部位(IRES)、プロモーター、及び/またはエンハンサーなどの発現制御エレメントと作動可能に会合し得る。
【0138】
さらに、目的の異種核酸(複数可)の調節された発現は、例えば、特定の部位でのスプライシング活性を選択的に遮断するオリゴヌクレオチド、小分子、及び/または他の化合物の有無によって異なるイントロンの選択的スプライシングを調節することにより、転写後レベルで達成され得る(例えば、WO2006/119137に記載される)。
【0139】
当業者であれば、所望のレベル及び組織特異的発現に応じて、様々なプロモーター/エンハンサーエレメントを使用することができることを理解するであろう。プロモーター/エンハンサーは、所望の発現パターンに応じて、構成的または誘導性であり得る。プロモーター/エンハンサーは、天然または外来であり得、天然または合成配列であり得る。外来とは、転写開始領域が、該転写開始領域が導入される野生型宿主において見られないことを意図する。
【0140】
いくつかの実施形態では、プロモーター/エンハンサーエレメントは、標的細胞または治療される対象に対して天然であり得る。代表的な実施形態では、プロモーター/エンハンサーエレメントは、異種核酸配列に対して天然であり得る。プロモーター/エンハンサーエレメントは、一般に、目的の標的細胞(複数可)において機能するように選択される。さらに、いくつかの実施形態では、プロモーター/エンハンサーエレメントは、哺乳動物プロモーター/エンハンサーエレメントである。プロモーター/エンハンサーエレメントは、構成的または誘導性であり得る。
【0141】
誘導性発現制御エレメントは、典型的に、異種核酸配列(複数可)の発現にわたって調節を提供することが望ましいそれらの用途において有利である。遺伝子送達のための誘導性プロモーター/エンハンサーエレメントは、組織特異的または優先プロモーター/エンハンサーエレメントであり得、筋肉特異的または優先(心筋、骨格筋、及び/または平滑筋特異的または優先を含む)、神経組織特異的または優先(脳特異的または優先を含む)、眼特異的または優先(網膜特異的及び角膜特異的を含む)、肝臓特異的または優先、骨髄特異的または優先、膵臓特異的または優先、脾臓特異的または優先、及び肺特異的または優先プロモーター/エンハンサーエレメントを含む。いくつかの実施形態では、プロモーター及び/またはエンハンサーなどの誘導性発現制御エレメントは、T細胞における選択的発現を促進する。他の誘導性プロモーター/エンハンサーエレメントとしては、ホルモン誘導性エレメント及び金属誘導性エレメントが挙げられる。例示的な誘導性プロモーター/エンハンサーエレメントには、限定されないが、Tet on/offエレメント、RU486誘導性プロモーター、エクジソン誘導性プロモーター、ラパマイシン誘導性プロモーター、及びメタロチオネインプロモーターが含まれる。
【0142】
異種核酸配列(複数可)が転写され、次いで標的細胞内で翻訳される実施形態では、挿入されたタンパク質コード配列の効率的な翻訳のために、一般に、特定の開始シグナルが含まれる。これらの外因性翻訳制御配列は、ATG開始コドン及び隣接配列を含み得、天然及び合成の両方の様々な起源のものであることができる。
【0143】
医薬組成物及び使用方法
本開示はまた、本明細書に開示されるAAVカプシドタンパク質、AAVカプシド、ウイルスベクター、核酸、発現ベクター、及び/または細胞のうちの少なくとも1つを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、該組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体中に本開示のウイルスベクター及び/またはカプシド及び/またはカプシドタンパク質及び/またはウイルス粒子、ならびに任意選択で、他の薬剤、医薬品、安定化剤、緩衝剤、担体、アジュバント、希釈剤などを含む医薬組成物が提供される。注射用では、担体は、典型的には液体となる。他の投与様式では、担体は、固体または液体のいずれかであり得る。吸入投与では、担体は吸入可能なものであり、任意選択で、固体または液体の微粒子形態であることができる。「薬学的に許容される」とは、毒性がないか、または別段の形で望ましくないものではない材料を意味し、すなわち、その材料は、いかなる望ましくない生物学的作用も引き起こすことなく対象に投与することができる。
【0144】
本開示によるウイルスベクターは、分裂細胞及び非分裂細胞を含む広範な細胞内に異種核酸を送達するための手段を提供する。いくつかの実施形態では、細胞はT細胞である。ウイルスベクターを用いて、例えば、in vitroでポリペプチドを産生するために、またはex vivo遺伝子療法を行うために、目的の核酸を細胞にin vitroで送達できる。ウイルスベクターは、さらに、核酸の送達が必要な対象に核酸を送達して、例えば、免疫原性ポリペプチド、または治療用ポリペプチド、または機能性RNAを発現させる方法において有用である。このようにして、該ポリペプチドまたは機能性RNAを、対象において、in vivoで産生させることができる。対象は、該ポリペプチドが欠損しているために、該ポリペプチドを必要とし得る。さらに、該方法は、該ポリペプチドまたは機能性RNAを対象において産生させることによって、ある程度の有益な作用をもたらし得るという理由で行うことができる。いくつかの実施形態では、該方法は、in vitro、ex vivo、またはin vivoで細胞内でポリペプチドまたはRNAを発現させること、及び任意選択で、細胞からポリペプチドまたはRNAを単離することを含む。ウイルスベクターを使用して、目的のポリペプチドまたは機能性RNAを培養細胞または対象において産生させることもできる(例えば、対象をバイオリアクターとして使用して、該ポリペプチドを産生させるか、または例えばスクリーニング法と関連させて該機能性RNAが対象に及ぼす作用を観察する)。
【0145】
本開示は、本開示のウイルスベクター、ウイルス粒子、及び/または組成物のいずれか1つを対象に投与する方法を提供する。したがって、本開示は、有効量の本明細書に開示されるウイルスベクター(例えば、AAVベクター)のいずれか1つ、ウイルス粒子(例えば、AAV粒子)のいずれか1つ、及び/または組成物のいずれか1つを対象に投与することを含む、治療を必要とする対象を治療する方法を提供する。したがって、本開示は、本明細書に開示されるウイルスベクター(例えば、AAVベクター)のいずれか1つ、ウイルス粒子(例えば、AAV粒子)のいずれか1つ、及び/または組成物のいずれか1つを、医薬品として使用するため、及び/または治療を必要とする対象の治療方法において使用するために提供する。
【0146】
いくつかの実施形態では、本開示のウイルスベクターは、ポリペプチドまたは機能性RNAをコードする異種核酸を送達して、治療用ポリペプチドまたは機能性RNAを送達することが有益である任意の疾患状態を治療及び/または予防するために用いることができる。いくつかの実施形態では、疾患状態は、T細胞の機能不全または増加に関連するか、相関するか、またはそれによって引き起こされる。いくつかの実施形態では、疾患状態には、限定されないが、嚢胞性線維症(嚢胞性線維症膜貫通調節因子タンパク質)及び肺の他の疾患、血友病A(第VIII因子)、血友病B(第IX因子)、サラセミア(β-グロビン)、貧血(エリスロポエチン)、及び他の血液障害、アルツハイマー病(GDF;ネプリリシン)、多発性硬化症(βインターフェロン)、パーキンソン病(グリア細胞株由来神経栄養因子[GDNF])、ハンチントン病(反復を除去するためのRNAi)、筋萎縮性側索硬化症、てんかん(ガラニン、神経栄養因子)、及び他の神経障害、がん(エンドスタチン、アンジオスタチン、TRAIL、FAS-リガンド、インターフェロンを含むサイトカイン;VEGFまたは多剤耐性遺伝子産物に対するRNAiを含むRNAi、mir-26a[例えば、肝細胞癌に対するもの])、真性糖尿病(インスリン)、筋ジストロフィー、例としてデュシェンヌ型(ジストロフィン、ミニジストロフィン、インスリン様成長因子I、サルコグリカン[例えば、a、β、γ]、筋伸展性ミオスタチンプロペプチドに対するRNAi、フォリスタチン、アクチビンII型可溶性受容体、抗炎症性ポリペプチド、例えば、IκB優性変異体、サルコスパン、ユートロフィン、ミニユートロフィン、エクソンスキッピングを誘導するためのジストロフィン遺伝子中のスプライスジャンクションに対するアンチセンスまたはRNAi[例えば、WO/2003/095647を参照のこと]、エクソンスキッピングを誘導するためのU7 snRNAに対するアンチセンス[例えば、WO/2006/021724を参照のこと]、及びミオスタチンまたはミオスタチンプロペプチドに対する抗体または抗体断片)及びベッカー型、ゴーシェ病(グルコセレブロシダーゼ)、ハーラー病(a-L-イズロニダーゼ)、アデノシンデアミナーゼ欠損症(アデノシンデアミナーゼ)、糖原病(例えば、ファブリー病[a-ガラクトシダーゼ]及びポンペ病[リソソーム酸性α-グルコシダーゼ])及び他の代謝障害、先天性肺気腫(α-1-アンチトリプシン)、レッシュ-ナイハン症候群(ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ)、ニーマン・ピック病(スフィンゴミエリナーゼ)、テイ-サックス病(リソソームヘキソサミニダーゼA)、メープルシロップ尿症(分岐鎖ケト酸脱水素酵素)、網膜変性疾患(ならびに眼及び網膜の他の疾患;例えば、黄斑変性症に関するPDGF及び/またはバソヒビンもしくは他のVEGFの阻害剤、または網膜障害、例えばI型糖尿病におけるものを治療/予防するための他の血管新生阻害剤)、実質臓器の疾患、例えば、脳(例として、パーキンソン病[GDNF]、星状細胞腫[エンドスタチン、アンジオスタチン及び/またはVEGFに対するRNAi]、膠芽腫[エンドスタチン、アンジオスタチン及び/またはVEGFに対するRNAi])、肝臓、腎臓、心臓、例として鬱血性心不全または末梢動脈疾患(PAD)(例えば、プロテインホスファターゼ阻害剤I(I-1)及びその断片(例えば、IlC)、serca2a、ホスホランバン遺伝子を調節するジンクフィンガータンパク質、Barkct、[32-アドレナリン作動性受容体、2-アドレナリン作動性受容体キナーゼ(BARK)、ホスホイノシチド-3キナーゼ(PI3キナーゼ)、S100A1、パルブアルブミン、アデニリルシクラーゼ6型、Gタンパク質共役受容体キナーゼ2型ノックダウンに作用する分子、例えば短縮型の構成的活性bARKct;カルサルシン、ホスホランバンに対するRNAi、ホスホランバン阻害性またはドミナントネガティブ分子、例えば、ホスホランバンS16Eなどの送達による)、関節炎(インスリン様成長因子)、関節障害(インスリン様成長因子1及び/または2)、内膜過形成(例えば、enos、inosの送達による)、心臓移植の生存の改善(スーパーオキシドジスムターゼ)、AIDS(可溶性CD4)、筋消耗(インスリン様成長因子I)、腎不全(エリスロポエチン)、貧血(エリスロポエチン)、関節炎(抗炎症性因子、例えばIRAP及びTNFa可溶性受容体)、肝炎(a-インターフェロン)、LDL受容体欠損症(LDL受容体)、高アンモニア血症(オルニチントランスカルバミラーゼ)、クラッベ病(ガラクトセレブロシダーゼ)、バッテン病、脊髄小脳失調症、例としてSCA1、SCA2、及びSCA3、フェニルケトン尿症(フェニルアラニンヒドロキシラーゼ)、自己免疫疾患などが含まれる。本開示はさらに、臓器移植後に用いて、移植の成功率を上昇させる、及び/または臓器移植もしくは補助療法の負の副作用を低減することができる(例えば、サイトカインの産生を遮断する免疫抑制剤または阻害核酸を投与することによって)。別の例として、骨形成タンパク質(BNP2、7など、RANKL及び/またはVEGFを含む)を、例えば、がん患者における骨折または外科的除去の後に、骨同種移植片と共に投与することができる。
【0147】
いくつかの実施形態では、本開示のウイルスベクターを用いて、肝疾患または肝障害を治療及び/または予防するためのポリペプチドまたは機能性RNAをコードする異種核酸を送達することができる。肝疾患または障害は、例えば、原発性胆汁性肝硬変、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、自己免疫性肝炎、B型肝炎、C型肝炎、アルコール性肝疾患、線維症、黄疸、原発性硬化性胆管炎(PSC)、バッド-キアリ症候群、ヘモクロマトーシス、ウィルソン病、アルコール性線維症、非アルコール性線維症、脂肪肝、ギルバート症候群、胆道閉鎖症、α-1-アンチトリプシン欠乏症、アラジール症候群、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症、血友病B、遺伝性血管浮腫(HAE)、ホモ接合性家族性高コレステロール血症(HoFH)、ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症(HeFH)、フォン・ギールケ病(GSD I)、血友病A、メチルマロン酸血症、プロピオン酸血症、ホモシスチン尿症、フェニルケトン尿症(PKU)、チロシン血症1型、アルギナーゼ1欠損症、アルギニノコハク酸リアーゼ欠損症、カルバモイルリン酸合成酵素1欠損症、シトルリン血症1型、シトリン欠損症、クリグラー・ナジャー症候群1型、シスチン症、ファブリー病、糖原病1b、LPL欠損症、N-アセチルグルタミン酸合成酵素欠損症、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症、オルチニントランスロカーゼ欠損症、原発性高シュウ酸尿症1型、またはADA SCIDであり得る。
【0148】
本明細書に記載のウイルスベクターを使用して、人工多能性幹細胞(iPS)を作製することもできる。例えば、本開示のウイルスベクターを使用して、非多能性細胞、例えば、成人線維芽細胞、皮膚細胞、肝臓細胞、腎臓細胞、脂肪細胞、心臓細胞、神経細胞、上皮細胞、内皮細胞などに幹細胞関連核酸(複数可)を送達することができる。
【0149】
幹細胞と関連する因子をコードする核酸は、当該技術分野で既知である。幹細胞及び多能性と関連するこのような因子の非限定的な例としては、Oct-3/4、SOXファミリー(例えば、SOX1、SOX2、SOX3及び/またはSOX15)、Klfファミリー(例えば、Klf1、KHZ Klf4及び/またはKlf5)、Mycファミリー(例えば、C-myc、L-myc及び/またはN-myc)、NANOG及び/またはLIN28が挙げられる。
【0150】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される修飾されたベクターを使用して、本明細書に記載される、リソソーム蓄積症、例えばムコ多糖症(例えば、スライ症候群[β-グルクロニダーゼ]、ハーラー症候群[アルファ-L-イズロニダーゼ]、シャイエ症候群[アルファ-L-イズロニダーゼ]、ハーラー・シャイエ症候群[アルファ-L-イズロニダーゼ]、ハンター症候群[イズロン酸スルファターゼ]、サンフィリポ症候群A[ヘパランスルファミダーゼ]、B[N-アセチルグルコサミニダーゼ]、C[アセチル-CoA:アルファ-グルコサミニドアセチルトランスフェラーゼ]、D[N-アセチルグルコサミン6-スルファターゼ]、モルキオ症候群A[ガラクトース-6-硫酸スルファターゼ]、B[β-ガラクトシダーゼ]、マロトー・ラミー症候群[N-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ]など)、ファブリー病(a-ガラクトシダーゼ)、ゴーシェ病(グルコセレブロシダーゼ)、または糖原病(例えば、ポンペ病;リソソーム酸性α-グルコシダーゼ)を治療することができる。いくつかの実施形態では、本開示を実施して、代謝障害、例えば糖尿病(例えば、インスリン)、血友病(例えば、第IX因子または第VIII因子)、リソソーム蓄積症、例えばムコ多糖症(例えば、スライ症候群[β-グルクロニダーゼ]、ハーラー症候群[アルファ-L-イズロニダーゼ]、シャイエ症候群[アルファ-L-イズロニダーゼ]、ハーラー・シャイエ症候群[アルファ-L-イズロニダーゼ]、ハンター症候群[イズロン酸スルファターゼ]、サンフィリポ症候群A[ヘパランスルファミダーゼ]、B[N-アセチルグルコサミニダーゼ]、C[アセチル-CoA:アルファ-グルコサミニドアセチルトランスフェラーゼ]、D[N-アセチルグルコサミン6-スルファターゼ]、モルキオ症候群A[ガラクトース-硫酸スルファターゼ]、B[β-ガラクトシダーゼ]、マロトー・ラミー症候群[N-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ]など)、ファブリー病(アルファ-ガラクトシダーゼ)、ゴーシェ病(グルコセレブロシダーゼ)、または糖原病(例えば、ポンペ病;リソソーム酸性α-グルコシダーゼ)を治療及び/または予防することもできる。
【0151】
遺伝子移入は、疾患状態を理解し、療法を提供するために大いに役立つ。欠陥遺伝子が既知であり、クローニングされている多数の遺伝性疾患が存在する。概して、上記疾患状態は、一般的には劣性様式で遺伝する通常酵素の欠損状態と、調節または構造タンパク質に関与する場合があり、典型的には優性様式で遺伝する不均衡状態との2つに分類される。欠損状態疾患については、遺伝子移入を使用して、正常な遺伝子を患部組織にもたらし置換療法を行うこと、またアンチセンス変異を使用して疾患の動物モデルを作成することができる。不均衡な疾患状態については、遺伝子移入を使用して、モデル系において疾患状態を作成することができ、次いでそれを疾患状態に対抗する試行において使用することができる。したがって、本開示によるウイルスベクターは、遺伝性疾患の治療及び/または予防を可能にする。
【0152】
本開示によるウイルスベクターを用いて、機能性RNAを細胞にin vitroまたはin vivoで提供してもよい。機能性RNAは、例えば、非コードRNAであり得る。いくつかの実施形態では、細胞における機能性RNAの発現は、該細胞による特定の標的タンパク質の発現を減少させることができる。したがって、機能性RNAを投与して、特定のタンパク質の発現を減少させる必要のある対象において、該タンパク質の発現を減少させることができる。いくつかの実施形態では、細胞における機能性RNAの発現は、該細胞による特定の標的タンパク質の発現を増加させることができる。したがって、機能性RNAを投与して、特定のタンパク質の発現を増加させる必要のある対象において、該タンパク質の発現を増加させることができる。いくつかの実施形態では、機能性RNAの発現によって、細胞内の特定の標的RNAのスプライシングを調節することができる。したがって、機能性RNAを投与して、特定のRNAのスプライシングを調節する必要のある対象において、該RNAのスプライシングを調節することができる。いくつかの実施形態では、細胞における機能性RNAの発現は、該細胞による特定の標的タンパク質の機能を調節することができる。したがって、機能性RNAを投与して、特定のタンパク質の機能を調節する必要のある対象において、該タンパク質の機能を調節することができる。機能性RNAは、例えば、細胞もしくは組織の培養系を最適化するために、またはスクリーニング方法において、in vitroで細胞に投与して遺伝子発現及び/または細胞生理機能を調節することもできる。
【0153】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるウイルスベクターをex vivoで細胞と接触させてもよい。いくつかの実施形態では、細胞は、T細胞、例えば活性化T細胞である。いくつかの実施形態では、細胞(例えば、活性化T細胞)は、ヒト患者などの対象から得られる。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターと接触した細胞は、それを必要とする対象に投与される。
【0154】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする異種核酸を含む。したがって、いくつかの実施形態では、ウイルスベクターとT細胞との接触により、キメラ抗原受容体(CAR)が発現され、CAR T細胞が生成される。したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示されるウイルスベクターのいずれか1つをex vivoでT細胞と接触させることを含む、CAR T細胞を調製する方法を提供する。本開示はさらに、本明細書に開示される方法のいずれか1つを使用して産生されたCAR T細胞と、本明細書に開示されるCAR T細胞を対象に投与することを含む治療を必要とする対象を治療する方法とを提供する。いくつかの実施形態では、CAR T細胞は、同じ対象から得られたT細胞(自己T細胞)を使用して産生されるが、他の実施形態では、CAR T細胞は、健康なドナー対象から得られたT細胞(同種異系T細胞)を使用して産生される。CAR T細胞の投与を必要とする対象は、医師または熟練した医療従事者によって特定され得、任意の疾患、例えば、がん、例えば、急性リンパ性白血病(ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、または多発性骨髄腫を有し得る。
【0155】
T細胞疲弊は、多くの慢性感染症及びがんにおいて生じるT細胞機能不全の状態であり、CAR-T療法の有効性を低減することも示されている。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組換えウイルスベクターは、T細胞疲弊を予防、制限、及び/または逆転させるための遺伝子治療法(例えば、CAR-T治療法)において使用される。したがって、本開示は、本明細書に開示されるウイルスベクター(例えば、AAVベクター)のいずれか1つ、ウイルス粒子(例えば、AAV粒子)のいずれか1つ、及び/または組成物のいずれか1つの有効量を対象に投与することを含む、対象におけるT細胞疲弊を緩和、予防、制限、及び/または逆転させる方法を提供する。
【0156】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、免疫原、例えば免疫原性ポリペプチドをコードする異種核酸を含む。したがって、いくつかの実施形態では、ウイルスベクターと細胞との接触は、免疫原の発現をもたらす。いくつかの実施形態では、細胞は対象に投与され得、それにより、対象において免疫原に対する免疫応答が誘導される。いくつかの実施形態では、防御免疫応答が誘発される。いくつかの実施形態では、細胞は抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)である。いくつかの実施形態では、細胞は対象から取り出されており、ウイルスベクターがその中に導入され、次いで細胞が対象に戻される。Ex vivoでの操作のために対象から細胞を取り出し、次いで対象に戻す方法は、当該技術分野で既知である(例えば、米国特許第5,399,346号を参照のこと)。あるいは、組換えウイルスベクターを、ドナー対象からの細胞、培養細胞、または他の任意の好適な供給源からの細胞に導入することができ、該細胞は、それを必要とする対象(すなわち、「レシピエント」対象)に投与される。
【0157】
いくつかの実施形態では、細胞を、がんを有する対象から取り出し、本開示によるがん細胞抗原を発現するウイルスベクターと接触させることができる。次いで、この修飾された細胞を対象に投与することにより、がん細胞抗原に対する免疫応答が誘発される。この方法は、in vivoで十分な免疫応答を開始できない(すなわち、十分な量の増強した抗体を産生できない)免疫抑制状態にある対象に有利に用いられ得る。あるいは、がん抗原をウイルスカプシドの一部として発現させるか、または他の方法でウイルスカプシドに会合させることもできる(例えば、上述のように)。別の選択肢として、当該技術分野で既知である任意の他の治療用核酸(例えば、RNAi)またはポリペプチド(例えば、サイトカイン)を投与して、がんを治療及び/または予防することができる。
【0158】
免疫応答は、免疫調節性サイトカイン(例えば、α-インターフェロン、β-インターフェロン、γ-インターフェロン、オメガ-インターフェロン、タウ-インターフェロン、インターロイキン-1-α、インターロイキン-1β、インターロイキン-2、インターロイキン-3、インターロイキン-4、インターロイキン5、インターロイキン-6、インターロイキン-7、インターロイキン-8、インターロイキン-9、インターロイキン-10、インターロイキン-11、インターロイキン-12、インターロイキン-13、インターロイキン-14、インターロイキン-18、B細胞成長因子、CD40リガンド、腫瘍壊死因子α、腫瘍壊死因子β、単球走化性タンパク質-1、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子、及びリンホトキシン)により増強され得ることが当該技術分野で既知である。したがって、免疫調節性サイトカイン(好ましくはCTL誘導性サイトカイン)をウイルスベクターと共に対象に投与することができる。サイトカインは、当該技術分野で既知である任意の方法により投与することができる。外因性サイトカインを対象に投与してもよく、あるいは、サイトカインをコードする核酸を、好適なベクターを用いて対象に送達して、該サイトカインをin vivoで産生させてもよい。
【0159】
さらに、本開示によるウイルスベクターは、診断法及びスクリーニング法において使用され、これにより目的の核酸が細胞培養系あるいはトランスジェニック動物モデルにおいて一過性または安定的に発現される。
【0160】
本開示のウイルスベクターはまた、当業者には明らかなように、遺伝子標的化、クリアランス、転写、翻訳などを評価するためのプロトコルでの使用を含むが、これらに限定されない様々な非治療的目的でも使用することができる。該ウイルスベクターはまた、安全性(分散、毒性、免疫原性など)を評価する目的でも使用することができる。このようなデータは、例えば、臨床的有効性の評価前に規制当局承認プロセスの一環として、米国食品医薬品局によって検討される。
【0161】
いくつかの実施形態では、本開示の修飾されたウイルスカプシドは、新規なカプシド構造に対する抗体の産生に使用される。いくつかの実施形態では、細胞への抗原提示のために、例えば対象へ投与して外因性アミノ酸配列に対して免疫応答をもたらすために、外因性アミノ酸配列を修飾されたウイルスカプシド中に挿入することができる。
【0162】
いくつかの実施形態では、目的のポリペプチドまたは機能性RNAをコードする核酸を送達するウイルスベクターを投与する前及び/またはその投与と同時に(例えば、それぞれの投与から数分もしくは数時間以内に)ウイルスカプシドを投与して、特定の細胞部位を遮断することができる。例えば、本発明のカプシドは、肝臓細胞上の細胞受容体を遮断するために送達することができ、その後またはそれと同時に送達ベクターを投与でき、それによって、肝臓細胞の形質導入を低減し、他の標的(例えば、骨格筋、心筋及び/または横隔膜筋)の形質導入を増強し得る。
【0163】
投与量及び投与様式
ウイルスベクターは、特定の標的細胞に好適な標準的な形質導入法に従って、適切な感染多重度において細胞中に導入することができる。投与するウイルスベクターの力価は、標的細胞タイプ及び数ならびに特定のウイルスベクターに応じて変動し得、当業者であれば過度の実験をすることなく決定することができる。代表的な実施形態では、少なくとも約10感染単位、任意選択で少なくとも約10感染単位が細胞に導入される。
【0164】
ウイルスベクターが導入される細胞(複数可)は、T細胞、神経細胞(末梢及び中枢神経系の細胞、特に脳細胞、例えばニューロン及びオリゴデンドロサイトを含む)、肺細胞、眼の細胞(網膜細胞、網膜色素上皮細胞、及び角膜細胞を含む)、上皮細胞(例えば、腸及び呼吸上皮細胞)、筋細胞(例えば、骨格筋細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、及び/または横隔膜筋細胞)、樹状細胞、膵臓細胞(島細胞を含む)、肝細胞、心筋細胞、骨細胞(例えば、骨髄幹細胞)、造血幹細胞、脾臓細胞、ケラチノサイト、線維芽細胞、内皮細胞、前立腺細胞、生殖細胞などを含むが、これらに限定されない任意のタイプのものであり得る。代表的な実施形態では、細胞は、任意の前駆細胞であることができる。さらなる可能性として、細胞は、幹細胞(例えば、神経幹細胞、肝臓幹細胞)であることができる。さらに別の選択肢として、細胞は、がん細胞または腫瘍細胞であることができる。さらに、細胞は、上に示したように、任意の起源の種からであり得る。
【0165】
ex vivoでの核酸送達に好適な細胞は、上記のようなものである。対象に投与する細胞の投与量は、対象の年齢、状態及び種、細胞のタイプ、細胞によって発現させる核酸、投与様式などによって変動する。典型的には、薬学的に許容される担体中で、1用量当たり少なくとも約10~約10個の細胞または少なくとも約10~約10個の細胞が投与される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターを形質導入した細胞は、薬学的担体と組み合わせて治療有効量で対象に投与される。
【0166】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターを細胞に導入し、該細胞を対象に投与して、送達されたポリペプチド(例えば、導入遺伝子としてまたはカプシドにおいて発現される)に対する免疫原性応答を誘発することができる。典型的には、薬学的に許容される担体と組み合わせて、免疫原的に有効な量のポリペプチドを発現する細胞の量が投与される。「免疫原的に有効な量」は、医薬製剤が投与される対象においてポリペプチドに対する能動免疫応答を誘発するのに十分である、発現したポリペプチドの量である。いくつかの実施形態では、投与量は、防御免疫応答をもたらすのに十分である。免疫原性ポリペプチドの投与の利点が任意のその欠点を上回る限り、付与される防御の程度は完全であるか、または永続的である必要はない。したがって、本開示は、細胞に核酸を投与する方法であって、該細胞を本開示のウイルスベクター、ウイルス粒子、及び/または組成物と接触させることを含む、方法を提供する。
【0167】
対象に投与するウイルスベクター及び/またはカプシドの投与量は、投与様式、治療及び/または予防される疾患または病態、個々の対象の状態、特定のウイルスベクターまたはカプシド、ならびに送達される核酸などに依存し、常法で決定され得る。治療効果を達成するための例示的な用量は、少なくとも約10、約10、約10、約10、約10、約1010、約1011、約1012、約1013、約1014、約1015の形質導入単位、任意選択で約10~1013の形質導入単位の力価である。いくつかの実施形態では、2回以上の投与(例えば、2回、3回、4回以上の投与)を用いて、様々な間隔、例えば、毎日、毎週、毎月、毎年などの期間にわたって所望のレベルの遺伝子発現を達成することができる。
【0168】
本開示によるウイルスベクター、ウイルス粒子及び/またはカプシドの、それを必要とするヒト対象または動物への投与は、当該技術分野で既知である任意の手段によって行うことができる。任意選択で、ウイルスベクター、ウイルス粒子及び/または組成物は、薬学的に許容される担体中に治療有効量で送達される。いくつかの実施形態では、治療有効量のウイルスベクター、ウイルス粒子及び/またはカプシドが送達される。
【0169】
例示的な投与様式としては、経口、直腸、経粘膜、鼻腔内、吸入(例えば、エアロゾルを介して)、頬側(例えば、舌下)、膣、髄腔内、眼内、経皮、子宮内(または卵内)、非経口(例えば、静脈内、皮下、皮内、筋肉内[例として、骨格筋、横隔膜筋及び/または心筋への投与]、皮内、胸腔内、脳内及び関節内)、局所(例えば、気道表面を含む皮膚及び粘膜表面の両方への、ならびに経皮投与)、リンパ管内など、ならびに組織または器官への直接的注射(例えば、肝臓、骨格筋、心筋、横隔膜筋、または脳への)が挙げられる。投与は、腫瘍(例えば、腫瘍またはリンパ節中、またはその付近)に対するものであることもできる。任意の所与の場合における最も好適な経路は、治療及び/または予防される病態の性質及び重症度、ならびに使用されている特定のベクターの性質に依存する。本開示はまた、全身送達のためのアンチセンスRNA、RNAi、または他の機能性RNA(例えば、リボザイム)などの非コードRNAを生成するために実施することもできる。
【0170】
注射剤は、液体溶液もしくは懸濁液、注射前の液体の溶液もしくは懸濁液に好適な固体形態、またはエマルションのいずれかとして、従来の形態で調製され得る。あるいは、本開示のウイルスベクター及び/またはウイルスカプシドを、全身様式ではなく局在様式で、例えば、デポー製剤または徐放性製剤において投与してもよい。さらに、ウイルスベクター及び/またはウイルスカプシドは、外科的に移植可能なマトリックスに付着させて送達され得る(例えば、米国特許公開第US-2004-0013645-A1号に記載される)。
【実施例
【0171】
以下の実施例は、例示目的で本明細書に含まれているに過ぎず、限定することを意図したものではない。本明細書で使用する場合、STRD.201、STRD.202、STRD.203、STRD.204、STRD.205、STRD.206、及びSTRD.207という用語は、カプシドタンパク質配列を表すために使用され、AAV-STRD.201、AAV-STRD.202、AAV-STRD.203、AAV-STRD.204、AAV-STRD.205、AAV-STRD.206、及びAAV-STRD.207という用語は、カプシドタンパク質を含むAAVベクターを表すために使用される。ただし、STRD.201、STRD.202、STRD.203、STRD.204、STRD.205、STRD.206、及びSTRD.207という用語は、当業者には明らかなように、文脈によっては、指定されたカプシドを含むAAVベクターを表すために使用されることがある。
【0172】
実施例1:形質導入関連ペプチドを含むAAVカプシドタンパク質バリアントの進化
in vitroでの進化プロセスを使用して、AAVベクターに組み込まれるとT細胞へのベクターの形質導入が増強されるAAVカプシドタンパク質バリアントを調製した。このプロセスの最初のステップには、低温電子顕微鏡を使用したAAVカプシド表面の表面露出領域の特定が含まれた。次いで、AAVカプシドの表面露出領域内の選択された残基を、各コドンをヌクレオチドNNKによって置換した縮重プライマーを使用した変異誘発に供し、ギブソンアセンブリ及び/またはマルチステップPCRによって遺伝子断片を一緒に組み合わせた。本明細書では、配列番号1のアミノ酸残基454~460をランダム変異誘発に供し、組換えカプシド遺伝子配列のライブラリーを生成した。この縮重ライブラリーの各遺伝子を野生型AAVゲノムにクローニングして、元のCapコードDNA配列と置換し、プラスミドライブラリーを得た。次に、プラスミドライブラリーを、アデノウイルスヘルパープラスミドと共に293産生細胞株にトランスフェクトし、AAVカプシドライブラリーを生成した。DNAシークエンシングにより、AAVライブラリーの作製が成功したことを確認した。
【0173】
T細胞を標的とし、効果的に形質導入できるAAVベクターを特定するために、上述のAAVライブラリーを複数回のin vitro選択に供した。具体的には、混合細胞集団への最初の形質導入を行い、続いて活性化ドナーT細胞への2回の形質導入を行った。各段階でウイルスDNAを精製し、PCR増幅してAAVベクターにバッククローニングし、次の回の選択に使用した。コンビナトリアルな操作及びAAVベクターの選択に使用される一般的な方法のさらなる詳細は、WO2019/195449、WO2019/195423、及びWO2019/195444に提供されており、それぞれの内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。3回の感染後、培養T細胞からAAV粒子を単離した。具体的には、細胞を溶解し、ウイルスDNAをT細胞の核画分及び細胞質画分から精製し、上記のようにPCR増幅してAAVベクターにバッククローニングした。
【0174】
実施例1に記載された3回の選択及び進化の後、T細胞の核画分及び細胞質画分において豊富に存在するAAVバリアントをシークエンシングして、単一のAAV単離株を特定した。図5に示すバブルプロットにおいて、バブルの大きさはリード数に比例する。核画分(AAV.STRD-203、205)、細胞質画分(AAV.STRD-206、207)、または核画分及び細胞質画分(AAV.STRD-201、202、及び204)において最も豊富に存在するAAVバリアントをシークエンシングし、アミノ酸454~460位に存在するアミノ酸残基を特定した。図6及び表5を参照のこと。これらの結果から、表5の形質導入関連ペプチドを含むバリアントカプシドタンパク質を含む組換えAAVビリオンは、T細胞を効果的に形質導入できることが示された。
【表7】
【0175】
実施例2:形質導入関連ペプチドを含むAAVベクターの製造性
実施例1で特定された様々なAAVベクターが大規模システムで製造可能かどうかを判断するために、標準的な方法に従ってAAVを産生し、収量を野生型AAV6ベクターの収量と比較した。
【0176】
標準的なトリプルトランスフェクションプロトコルに従って、AAVをHEK293細胞で産生した。簡単に述べると、細胞に、(i)野生型AAV9カプシド配列、または表5に列挙されたバリアントカプシド配列のいずれかを含むプラスミド、(ii)5’ITR、導入遺伝子、及び3’ITR配列を含むプラスミド、ならびに(iii)AAV産生に必要なヘルパー遺伝子を含むプラスミドをトランスフェクトした。AAVを細胞培養の上清から精製した。続いて、PCRベースの定量化アプローチを使用して、各AAVの収量を測定した。
【0177】
図1及び表6に示すように、STRD-201のカプシド配列を含む組換えAAVベクター(本明細書では「AAV.STRD-201」と称される)は、野生型AAV6の収量よりも高い収量を示した。さらに、AAV.STRD-204、AAV.STRD-205、AAV.STRD-206、及びAAV.STRD-207の収量は、野生型AAV6の収量と同等であった。
【0178】
これらのデータは、カプシドバリアントタンパク質を含むAAVベクターが商業的製造に好適であることを裏付ける。
【表8】
【0179】
実施例3:T細胞におけるAAVバリアントによるGFP導入遺伝子の発現の特性決定
GFP導入遺伝子配列を保持する、組換えAAVバリアント、AAV.STRD-201、AAV.STRD-202、AAV.STRD-204、AAV.STRD-205、AAV.STRD-206、及びAAV.STRD-207、または野生型AAV6ベクターを活性化T細胞に形質導入した。T細胞は増殖中に凝集するため、イメージング前に細胞をピペットで上下させるか、混合した。GFPの発現を顕微鏡により観察し、実験からの画像を図2に示す。GFP発現が高いほど、T細胞へのウイルスベクターの形質導入がより効率的であることを示す。図2の画像から分かるように、すべてのAAVバリアントは、野生型AAV6ウイルスベクターと比較して、より明るい緑色の蛍光シグナルを示し、したがって、活性化T細胞におけるGFPのより高い発現を示した。組換えAAVバリアントの中でも、AAV.STRD-201及びAAV.STRD-207は特に増強されたGFP発現を示し、このことは、T細胞への形質導入がより増強されていることを示唆する。野生型AAV6ウイルスベクターと比較してAAVバリアントからのGFP発現のレベルをさらに分析するために、AAV6ベクターまたはAAV.STRD-207バリアントのいずれかを形質導入したT細胞をフローサイトメトリーに供し、T細胞のみを陰性対照として使用した。図3Cに示すように、AAV.STRD-207バリアントを形質導入した増加した割合の細胞は、AAV6親ベクターにより形質導入した集団と比較してより高いGFPシグナル(青線を超えるFITCシグナルにより示される)を示した。AAVバリアント(AAV.STRD-201、AAV.STRD-202、AAV.STRD-204、AAV.STRD-205、AAV.STRD-206及びAAV.STRD-207)を形質導入された細胞におけるGFP発現は、図4においてさらに定量化され、図4では、所与の集団におけるGFP陽性細胞の割合(%)(棒グラフで示す)及びその集団におけるGFPの平均強度(線グラフで示す)が示される。この結果は、GFP陽性細胞数の増加が、野生型AAV6と比較して、AAVバリアントによって形質導入された細胞におけるGFPシグナルの平均強度の増加とよく対応していることを示しており、このことは、AAVバリアントのT細胞への形質導入が増強された結果、T細胞におけるGFP発現が増加したことを示している。
【0180】
上記は本発明を例示するものであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。本発明は以下の特許請求の範囲によって定義され、特許請求の範囲の均等物も本発明に含まれる。
【0181】
付番された実施形態
以下の実施形態のリストは、例示のみを目的として本明細書に含まれており、包括的または限定的であることを意図するものではない。特許請求される主題は、以下の実施形態に明示的に限定されない。
実施形態1.カプシドタンパク質を含む組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、前記カプシドタンパク質が配列番号17~23のいずれか1つの配列を有する形質導入関連ペプチドを含む、前記組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター。
実施形態2.前記カプシドタンパク質が、配列番号1に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態1に記載の組換えAAVベクター。
実施形態3.前記形質導入関連ペプチドが、配列番号1のアミノ酸454~460に対応するアミノ酸を置換する、実施形態1または実施形態2に記載の組換えAAVベクター。
実施形態4.前記カプシドタンパク質が、配列番号2、4、6、8、10、12、及び14からなる群から選択されるアミノ酸配列、またはそれらに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一な配列を含む、実施形態1に記載の組換えAAVベクター。
実施形態5.カプシドタンパク質を含む組換えAAVベクターであって、前記カプシドタンパク質が配列番号1の配列を含み、配列番号1のアミノ酸454~460が配列X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7(配列番号24)を含む形質導入関連ペプチドによって置換されている、前記組換えAAVベクター。
実施形態6.X1がGではなく、X2がSではなく、X3がAではなく、X4がQではなく、X5がNではなく、X6がKではなく、及び/またはX7がDではない、実施形態5に記載の組換えAAVベクター。
実施形態7.X1がH、M、A、Q、V、またはSである、実施形態5~6のいずれか1つに記載の組換えAAVベクター。
実施形態8.X2がAまたはTである、実施形態5~7のいずれか1つに記載の組換えAAVベクター。
実施形態9.X3がPまたはTである、実施形態5~8のいずれか1つに記載の組換えAAVベクター。
実施形態10.X4がRまたはDである、実施形態5~9のいずれか1つに記載の組換えAAVベクター。
実施形態11.X5がV、Q、C、SまたはDである、実施形態5~10のいずれか1つに記載の組換えAAVベクター。
実施形態12.X6がE、AまたはPである、実施形態5~11のいずれか1つに記載の組換えAAVベクター。
実施形態13.X7がE、G、N、T、またはAである、実施形態5~12のいずれか1つに記載の組換えAAVベクター。
実施形態14.X1がHであり、X2がAであり、X3がPであり、X4がRであり、X5がVであり、X6がEであり、X7がEである、実施形態5に記載の組換えAAVベクター。
実施形態15.X1がMであり、X2がAであり、X3がPであり、X4がRであり、X5がQであり、X6がEであり、X7がGである、実施形態5に記載の組換えAAVベクター。
実施形態16.X1がHであり、X2がTであり、X3がTであり、X4がDであり、X5がCであり、X6がAであり、X7がNである、実施形態5に記載の組換えAAVベクター。
実施形態17.X1がAであり、X2がAであり、X3がPであり、X4がRであり、X5がSであり、X6がEであり、X7がTである、実施形態5に記載の組換えAAVベクター。
実施形態18.X1がQであり、X2がAであり、X3がPであり、X4がRであり、X5がQであり、X6がEであり、X7がGである、実施形態5に記載の組換えAAVベクター。
実施形態19.X1がVであり、X2がAであり、X3がPであり、X4がRであり、X5がDであり、X6がPであり、X7がAである、実施形態5に記載の組換えAAVベクター。
実施形態20.X1がSであり、X2がAであり、X3がPであり、X4がRであり、X5がSであり、X46がEであり、X7がNである、実施形態5に記載の組換えAAVベクター。
実施形態21.前記カプシドタンパク質が、配列番号1に対して少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態5に記載の組換えAAVベクター。
実施形態22.前記カプシドタンパク質が配列番号1に対して約99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態21に記載の組換えAAVベクター。
実施形態23.前記カプシドタンパク質が配列番号2、4、6、8、10、12、及び14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態5に記載の組換えAAVベクター。
実施形態24.カプシドタンパク質を含む組換えAAVベクターであって、前記カプシドタンパク質が配列番号16のアミノ酸配列を有する形質導入関連ペプチドを含み、前記形質導入関連ペプチドが配列番号1に対してアミノ酸454~460を置換する、前記組換えAAVベクター。
実施形態25.前記形質導入関連ペプチドが、配列番号17~23のいずれか1つのアミノ酸配列を有する、実施形態24に記載の組換えAAVベクター。
実施形態26.配列番号2、4、6、8、10、12、及び14のいずれか1つの配列を有する組換えAAVカプシドタンパク質をコードする、核酸。
実施形態27.前記核酸が、配列番号3、5、7、9、11、13、及び15からなる群から選択される配列を含む、実施形態26に記載の核酸。
実施形態28.前記核酸がDNA配列である、実施形態26または実施形態27に記載の核酸。
実施形態29.前記核酸がRNA配列である、実施形態26または実施形態27に記載の核酸。
実施形態30.実施形態26~29のいずれか1つに記載の核酸を含む、発現ベクター。
実施形態31.実施形態26~29のいずれか1つに記載の核酸、または実施形態30に記載の発現ベクターを含む、細胞。
実施形態32.前記カプシドタンパク質によってカプシド封入されたカーゴ核酸をさらに含む、実施形態1~25のいずれか1つに記載の組換えAAVベクター。
実施形態33.前記カーゴ核酸が治療用タンパク質または治療用RNAをコードする、実施形態32に記載の組換えAAVベクター。
実施形態34.前記AAVベクターが、前記形質導入関連ペプチドを含まないAAVベクターと比較して、細胞への形質導入の増加を示す、実施形態32~33のいずれか1つに記載の組換えAAVベクター。
実施形態35.前記細胞がT細胞である、実施形態34に記載のAAVベクター。
実施形態36.前記AAVベクターが、前記形質導入関連ペプチドを含まないAAVベクターと比較して、前記T細胞の核への形質導入の増加を示す、実施形態35に記載のAAVベクター。
実施形態37.前記AAVベクターが、前記形質導入関連ペプチドを含まないAAVベクターと比較して、前記T細胞の細胞質基質への形質導入の増加を示す、実施形態35に記載のAAVベクター。
実施形態38.実施形態1~25または32~37のいずれか1つに記載の組換えAAVベクター、実施形態26~29のいずれか1つに記載の核酸、実施形態30に記載の発現ベクター、または実施形態31に記載の細胞を含む、組成物。
実施形態39.実施形態31に記載の細胞または実施形態1~25もしくは32~37のいずれか1つに記載の組換えAAVベクターと、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
実施形態40.AAVベクターを細胞に送達する方法であって、前記細胞を実施形態1~25または32~37のいずれか1つに記載のAAVベクターと接触させることを含む、前記方法。
実施形態41.前記細胞の接触がin vitro、ex vivo、またはin vivoで行われる、実施形態40に記載の方法。
実施形態42.前記細胞がT細胞である、実施形態40または実施形態41に記載の方法。
実施形態43.実施形態1~25または32~37のいずれか1つに記載のAAVベクターの有効量を対象に投与することを含む、治療を必要とする対象を治療する方法。
実施形態44.実施形態1~25または32~37のいずれか1つに記載のAAVベクターとex vivoで接触させた細胞を対象に投与することを含む、治療を必要とする前記対象を治療する方法。
実施形態45.前記対象が哺乳動物である、実施形態43または実施形態44に記載の方法。
実施形態46.前記対象がヒトである、実施形態45に記載の方法。
実施形態47.医薬品として使用するための、実施形態1~25または32~37のいずれか1つに記載のAAVベクター。
実施形態48.治療を必要とする対象を治療する方法における使用のための、実施形態1~25または32~37のいずれか1つに記載のAAVベクター。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
2024503091000001.app
【国際調査報告】