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特表2024-503106回転機械用の磁気軸受、その電力供給方法及び回転機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-24
(54)【発明の名称】回転機械用の磁気軸受、その電力供給方法及び回転機械
(51)【国際特許分類】
   F16C 32/04 20060101AFI20240117BHJP
   F04D 19/04 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
F16C32/04 A
F04D19/04 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543111
(86)(22)【出願日】2022-01-18
(85)【翻訳文提出日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2022051037
(87)【国際公開番号】W WO2022157158
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】2100469
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511148259
【氏名又は名称】ファイファー バキユーム
(74)【代理人】
【識別番号】110003292
【氏名又は名称】弁理士法人三栄国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ フラッペ
【テーマコード(参考)】
3H131
3J102
【Fターム(参考)】
3H131AA02
3H131BA07
3H131BA12
3H131BA15
3H131CA13
3J102AA01
3J102BA02
3J102CA02
3J102CA24
3J102CA27
3J102DA03
3J102DA09
3J102DB05
3J102DB23
3J102DB37
3J102GA06
(57)【要約】
ロータ(7)を備える回転機械(100)の磁気軸受(1、1’)は、ロータ(7)を所定の方向に確実に位置決めするために、少なくとも一対のコイル(5、5’)を備え、一対の第1のコイル(5)と第2のコイル(5’)は、磁気軸受の電力供給回路(13)に並列な第1分岐(B1)と第2分岐(B2)にそれぞれ配置され、2つの分岐(B1とB2)は共通のDC電圧源(Vbus/2)に接続されている。第1の分岐(B1)は、第1のコイル(5)に関連付けられた第1の電圧レギュレータ(RV1)を含み、第2の分岐(B2)は、第2のコイル(5’)に関連付けられた第2の電圧レギュレータ(RV2)を含み、電力供給回路(13)は、第1の電圧レギュレータ(RV1)及び第2の電圧レギュレータ(RV2)の制御ユニット(11)も備え、制御ユニット(11)は、ロータ(7)の測定された位置の関数として第1のコイル(5)及び第2のコイル(5’)をそれぞれ循環する電流(Ib1、Ib2)をサーボ制御するように構成された2つの第1フィードバックループを備える。2つの第2フィードバックループは、第1のコイル(5)と第2のコイル(5’)の電流(Ib1、Ib2)の関数として、それぞれ第1のコイル(5)と第2のコイル(5’)の端子の電圧をサーボ制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ(7)を備える回転機械(100)の磁気軸受(1、1’)であって、
前記磁気軸受は、前記ロータ(7)の所定の方向への位置決めを確実にするために少なくとも一対の第1のコイルと第2のコイル(5、5’)を備え、
前記一対の第1のコイル(5)と第2のコイル(5’)が、前記磁気軸受の電力供給回路(13)の並列な第1の分岐(B1)と第2の分岐(B2)にそれぞれ配置され、
前記2つの分岐(B1、B2)は共通のDC電圧源(Vbus/2)に接続されており、前記第1の分岐(B1)は、前記第1のコイル(5)に関連付けられた第1の電圧レギュレータ(RV1)を含み、前記第2の分岐(B2)は、前記第2のコイル(5’)に関連付けられた第2の電圧レギュレータ(RV2)を含み、
前記電力供給回路(13)はまた、前記第1の電圧レギュレータ(RV1)及び前記第2の電圧レギュレータ(RV2)の制御ユニット(11)を備え、
前記制御ユニット(11)は、前記ロータ(7)の測定された位置の関数として前記第1のコイル(5)及び前記第2のコイル(5’)をそれぞれ循環する電流(Ib1、Ib2)をサーボ制御するように構成された2つの第1フィードバックループと、前記第1のコイル(5)と前記第2のコイル(5’)の電流(Ib1、Ib2)の関数として、それぞれ前記第1のコイル(5)と前記第2のコイル(5’)の端子の電圧をサーボ制御するように構成された2つの第2フィードバックループとを備えていることを特徴とする磁気軸受。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気軸受(1、1’)において、
前記制御ユニット(11)の前記第1及び第2のフィードバックループは、
前記ロータ(7)の測定された位置の関数として、前記一対のコイル(5、5’)に供給される第1の電流設定値(Ci1、Ci2)を決定するように構成された第1の処理ユニット(15)を備え、
前記一対の前記第1のコイル(5)と前記第2のコイル(5’)は、各々、
前記第1の処理ユニット(15)によって決定された前記第1の電流設定値(Ci1、Ci2)を、関連する前記コイル(5、5’)内を循環する電流(Ib1、Ib2)と比較し、前記電流の比較結果の関数として電圧設定値(CV1、CV2)を決定する、第2の処理ユニット(17、17’)と、
前記第2の処理ユニット(17、17’)によって供給される前記電圧設定値(CV1、CV2)と前記コイルの端子の前記電圧を比較し、前記電圧の比較結果の関数として第2の電流設定値(Cii1、Cii2)を決定するように構成された第3の処理ユニット(19、19’)と、
前記第3の処理ユニット(19、19’)によって供給される前記第2の電流設定値(Cii1、Cii2)の関数として、関連する前記第1、第2の電圧レギュレータ(RV1、RV2)の電流を調整するように構成された第4の処理ユニット(21、21’)を備えていることを特徴とする磁気軸受。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の磁気軸受(1、1’)において、
前記第1の電圧レギュレータ(RV1)及び/または前記第2の電圧レギュレータ(RV2)は、それらの入力が前記関連するコイル(5,5’)に接続された昇圧回路であることを特徴とする磁気軸受。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の磁気軸受(1、1’)において、
前記第1の電圧レギュレータ(RV1)及び/または前記第2の電圧レギュレータ(RV2’)は、それらの出力が関連するコイル(5、5’)に接続された電圧降圧回路であることを特徴とする磁気軸受。
【請求項5】
請求項1または2に記載の磁気軸受(1、1’)において、
前記第1の電圧レギュレータ(RV1)は、その入力(e1)が前記第1のコイル(5)に接続された昇圧回路であり、前記第2の電圧レギュレータ(RV2’)は、その出力(S2’)が関連するコイル(5’)に接続される電圧降圧回路であることを特徴とする磁気軸受。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の磁気軸受において、
所定の方向における前記ロータ(7)の位置を測定するように構成された少なくとも1つの誘導型の位置センサ(9)を備えていることを特徴とする磁気軸受。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の磁気軸受において、
前記電力供給回路(13)の構成要素が、前記コイル(5、5’)から離れた電子回路基板上に配置され、電力供給ケーブル経由で前記コイル(5、5’)に連結されていることを特徴とする磁気軸受。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の第1の磁気軸受(1)及び第2の磁気軸受(1’)を備える回転機械(100)であって、
5対のコイル(5、5’)を備え、
前記第1及び前記第2のコイル対(5、5’)が、前記第1の磁気軸受(1)上の直交する第1の半径方向(X1)及び第2の半径方向(X2)に配置され、
第3及び第4のコイル対(5、5’)が、前記第2の磁気軸受(1’)上の前記直交する第1の半径方向及び第2の半径方向に配置され、
第5のコイル対(5、5’)が、前記ロータ(7)の軸方向(X3)に配置されていることを特徴とする回転機械。
【請求項9】
請求項8に記載の回転機械(100)において、
前記回転機械は、ターボ分子真空ポンプであることを特徴とする回転機械。
【請求項10】
ロータ(7)を備える回転機械(100)の磁気軸受(1、1’)に電力を供給する方法であって、
前記磁気軸受(1、1’)は少なくとも一対のコイル(5、5’)を備え、前記一対のコイル(5、5’)は前記ロータ(7)の両側に配置されており、
前記一対のコイル(5、5’)に、共通のDC電圧源(Vbus/2)から電力を供給し、
一方で、前記ロータ(7)を前記第1のコイル(5)及び前記第2のコイル(5)に対して中心に保つために、前記一対の前記第1のコイル(5)及び前記第2のコイル(5’)の電流を、前記ロータ(7)の測定された位置の関数としてサーボ制御し、
他方で、一対の前記第1のコイル(5)と前記第2のコイル(5’)の各端子の電圧を、前記第1のコイルと前記第2のコイルの電流(Ib1、Ib2)の関数としてサーボ制御することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械用の磁気軸受、それを用いた回転機械、及びこのような磁気軸受に電力を供給する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気軸受を備えた回転機械、特に最新技術のターボ分子真空ポンプは、磁気軸受によって浮遊状態で支持及び案内されることにより、一般に固定子内で非常に高速で回転するロータを備えている。これらの磁気軸受は、回転機械のロータを摩擦なくガイドできるようにする磁界を生成するための電磁石を形成する複数のコイルを備えている。
【0003】
これらのコイルは通常、ロータの両側の軸受上に対で配置され、この1対のコイルは、対をなす2つのコイルを結ぶ方向に対応した所定の方向に、ロータをガイドすることができる。軸受は一般に、ロータを半径方向平面内で案内できるようにするために、互いに90°の位置関係に配置された少なくとも2対のコイルを備えている。ロータを軸方向にガイドするために、通常、さらに一対の追加のコイルが使用される。
【0004】
ロータを所定の位置に維持するために、一対のコイル内を循環し、生成される磁場の強度を定義する電流は、ロータの位置の関数としてサーボ制御される。このロータの位置は、例えば、コイルの近くの軸受に設置された専用のセンサによって測定される。
【0005】
図1は、従来技術による、磁気軸受の一対のコイル5、5’と、これらのコイル5、5’への電力供給装置の例示的な実施形態を示す図である。
この電力供給装置は、一対のコイル5、5’が、DC電圧源Vから電力供給され、その中間点がコイル5、5’の第1端子に接続される直列接続の2つのトランジスタTを有する、ハーフブリッジ回路を備えている。このハーフブリッジ回路の各トランジスタTは、50%の一定のデューティサイクルにより逆相で駆動される。
各コイル5、5’の第2端子は、一端はダイオードDを介してDC電圧源Vに接続され、他端は、トランジスタT0を介してグランドに接続されている。これらのトランジスタT0は、ロータ7の位置の関数としてコイル5、5’内の電流をサーボ制御するように構成された、調整ループBRによって制御される。
一対の第1のコイル5と第2のコイル5’の電流設定値は、いわゆるアイドル電流I0と、ロータの位置の関数として計算される電流デルタΔiを重ね合わせたものである。この電流デルタΔiは、コイル5、5’の一方では加算され、他方では減算されて、ロータの位置をサーボ制御する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ただし、このような設定には欠点が生じる可能性がある。
実際、各コイルの端子に印加されるパルス電圧は電流リップルを生成する傾向があり、これがロータの損失や振動を誘発する可能性がある。特に、回転機械が、高い精度と非常に安定した環境が要求される、ナノメートルエッチング法が行われる真空チャンバーのポンピングに使用される真空ポンプである場合に有害となる可能性がある。
さらに、コイルとその電力供給ケーブルにおける大幅かつ急速な電圧変動は、電磁放射を引き起こし、高価で高品質な電磁シールド対策が講じられていない場合には、特にコイルの近くに位置するロータの位置センサに障害を引き起こす可能性がある。
【0007】
したがって、従来技術の欠点を少なくとも部分的に克服することを可能にし、ロータの振動を低減し、コイルとその電力供給ケーブルの電磁放射を低減することを可能にする解決策を見つける必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明の主題は、ロータを備える回転機械の磁気軸受に関する。この磁気軸受は、ロータを所定の方向に確実に位置決めするために、第1のコイルと第2のコイルとを含む少なくとも一対のコイルを備えており、
前記一対の第1のコイルと第2のコイルは、磁気軸受の電力供給回路の並列な第1の分岐と第2の分岐にそれぞれ配置され、これら2つの分岐は共通の1つのDC電圧源に接続され、第1の分岐は第1のコイルに関連付けられた第1の電圧レギュレータを含み、第2の分岐は第2のコイルに関連付けられた第2の電圧レギュレータを備えている。
電力供給回路は、第1及び第2の電圧レギュレータの制御ユニットも備えており、
前記制御ユニットは、ロータの測定された位置の関数として、第1及び第2のコイル内をそれぞれ循環する電流をサーボ制御するように構成された2つの第1のフィードバックループと、第1及び第2のコイルの電流の関数として、第1及び第2のコイルの端子における電圧をそれぞれサーボ制御するように構成された2つの第2のフィードバックループを備えている。
これら第1のフィードバックループと第2のフィードバックループは入れ子になっており、電流が設定値に最もよく従うように各コイルの端子の電圧を調整できる。
【0009】
ロータの位置の関数としてコイル内を循環する電流をサーボ制御するように構成された第1のフィードバックループと、コイル内の電流の関数として、コイルの端子の電圧をサーボ制御するように構成された第2のフィードバックループの使用は、ロータを所定の位置に保ちながら、コイルに直流電圧を印加することができるため、磁気軸受への電力供給によって発生する振動を低減し、磁気軸受のコイルの電力供給ケーブルの電磁放射を低減することができる。
【0010】
本発明の別の態様によれば、制御ユニットの第1及び第2のフィードバックループは、
ロータの測定された位置の関数として一対のコイルに供給される第1の電流設定値を決定するように構成された、第1の処理ユニットを含み、
前記一対の第1のコイルと第2のコイルは、各々、
前記第1の処理ユニットによって決定された前記第1の電流設定値と、関連するコイル内を循環する電流とを比較し、前記電流の比較の結果の関数として電圧設定値を決定するように構成された第2の処理ユニットと、
前記第2の処理ユニットによって供給される前記電圧設定値と前記各コイルの端子の電圧を比較し、前記電圧の比較の結果の関数として第2の電流設定値を決定するように構成された第3の処理ユニットと、
前記第3の処理ユニットによって供給される前記第2の電流設定値の関数として、関連する電圧レギュレータ内の電流を調整するように構成された第4の処理ユニットとを含んでいる。
【0011】
本発明の別の態様によれば、前記第1の電圧レギュレータ及び/または前記第2の電圧レギュレータは、その入力が関連する前記コイルに接続される昇圧回路である。
本発明の別の態様によれば、前記第1の電圧レギュレータ及び/または前記第2の電圧レギュレータは、その出力が関連する前記コイルに接続される電圧降圧回路である。
【0012】
本発明の別の態様によれば、前記第1の電圧レギュレータは、その入力が第1のコイルに接続される昇圧回路であり、前記第2の電圧レギュレータは、その出力が関連するコイルに接続される電圧降圧回路である。
本発明の別の態様によれば、前記磁気軸受は、所定の方向における前記ロータの位置を測定するように構成された少なくとも1つの誘導型の位置センサを備えている。
本発明の別の態様によれば、前記電力供給回路の構成要素は、前記コイルから離れた電子回路基板上に配置され、電力供給ケーブルを介して前記コイルに接続されている。
【0013】
本発明はまた、前記第1及び第2の磁気軸受を備える回転機械にも関し、この回転機械は5対のコイルを備え、第1及び第2のコイル対が、前記第1の磁気軸受上に第1及び第2の直交する半径方向に配置され、第3及び第4のコイル対が前記第2の磁気軸受上に前記第1及び第2の直交する半径方向に配置され、第5のコイル対が前記ロータの軸方向に配置されている。
【0014】
本発明の別の態様によれば、前記回転機械はターボ分子真空ポンプである。
【0015】
本発明は、ロータを備える回転機械の磁気軸受に電力を供給する方法にも関する。前記磁気軸受は少なくとも一対のコイルを備えている。前記一対のコイルは前記ロータの両側に配置され、共通の1つのDC電圧源によって電力が供給され、一方では、前記一対の第1のコイルと第2のコイルの電流は、前記ロータを前記第1のコイルと前記第2のコイルの中心に保つために、前記ロータの測定された位置の関数としてサーボ制御され、他方では、前記一対の第1のコイルと第2のコイルのそれぞれの端子の電圧は、前記第1のコイルと前記第2のコイルの電流の関数としてサーボ制御される。
本発明の他の特徴及び利点は、例示的かつ非限定的な例として与えられる以下の説明及び添付の図面を読むことにより、より明確に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】従来技術による軸受の電力供給回路の概略図である。
図2】本発明の一実施例になる磁気軸受の概略を示す斜視図である。
図3】本発明の第1の変形例に係る、磁気軸受の一対のコイルの電力供給回路の概略を示す図である。
図4】第2の変形例に係る、磁気軸受の一対のコイルの電力供給回路の概略を示す図である。
図5】本発明の実施例になる、2つの磁気軸受を備える回転機械の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の図では、同一の要素には同じ参照番号が付けられている。
以下の実施形態は例である。この説明は1つ以上の実施形態に言及しているが、これは必ずしも各参照が同じ実施形態に関連していること、または複数の特徴が単一の実施形態にのみ適用されることを意味するものではない。異なる実施形態の1つの特徴を組み合わせたり交換したりして、他の実施形態を提供することもできる。
【0018】
本発明は、回転機械の磁気軸受に関する。この回転機械は、例えば真空ポンプ、特に半導体製造のプロセスチャンバに使用できるターボ分子真空ポンプ等である。
図2は、そのような回転機械の磁気軸受1の例示的な実施形態を示している。
磁気軸受1は、例えば、回転機械のロータ7の周囲に配置された2対のコイル5、5’を有する、1つの電磁石3を備えている。この電磁石3は、例えば、コイル5、5’が配置されるエアギャップ4を備えている。
第1の対のコイル5、5’は、軸X1によって表される第1の方向に配置され、第2の対のコイル5、5’は、軸X2によって表される第2の方向に配置され、第1の方向と第2の方向の角度は互いに直角であり、ロータの回転軸X3に対しても直角である。
したがって、2対のコイル5、5’内の電流の強さを制御することによって、ロータ7を所望の半径方向位置に維持することが可能である。
磁気軸受1はまた、ロータ7の位置センサ9、例えば、ロータ7の位置を決定することを可能にする誘導センサを備えている(実際には、ロータ7の位置を決定するために(例えば2つの軸受に配置された)複数の位置センサが使用される)。
磁気軸受1はまた、この位置センサ9(実際には複数の位置センサ9)によって供給される測定値に応じて、2対のコイル5、5’の電流をサーボ制御できるように構成された制御ユニット11を備えている。
【0019】
図5は、ロータ7の第1端と第2端にそれぞれ配置された2つの磁気軸受1及び1’を備えた回転機械100を概略的に示している。ロータ7は、このロータ7を回転駆動するように構成されたステータ6によって取り囲まれている。
各磁気軸受は、軸X1上の第1の対のコイル5、5’と、この軸X1に直角な軸X2上の第2の対のコイル5、5’と、追加の対のコイル5、5’を備えている。追加の対のコイル5、5’は、ロータ7の軸方向(すなわち軸X3上)の位置を制御するために使用される。
5つの位置センサ9が、磁気軸受1及び磁気軸受1’上に配置されている。例えば、ロータ7の半径方向の変位を測定するために、各磁気軸受1、1’に対して直角の2つの方向に従って、2つの位置センサ9が配置されており、ロータ7の軸方向の位置を測定するために、1つの追加の位置センサ9が配置されている。
したがって、ロータ7の位置は、これらのすべての位置センサ9の測定値から、制御ユニット11のマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラなどの処理手段によって決定することができ、次いで、この測定されたこれらの位置を使用して、コイル5、5’に供給される電流設定値を決定することができる。あるいはまた、異なる数のコイル対、例えば各軸受1、1’に対して2より多い数のコイルを使用することもできる。異なる数の位置センサ9を使用することもできる。
【0020】
図3は、一対のコイル5、5’に関連付けられた1つの磁気軸受1に対する、1つの電力供給回路13の例示的な実施形態を表している。これと同様の電気回路13を、回転機械のコイル5、5’の各対に関連付けることができる。
この電気回路13は、特に制御ユニット11を含むプリント回路または電子回路基板を備えることができ、このプリント回路は、電力供給ケーブルを介して対のコイル5、5’及び位置センサ9に接続されている。
電気回路13は、回転機械100のDC電圧源Vbusから供給される電圧源であり、DC電圧源Vbus/2を備えている。電気回路13はまた、第1端で共通のDC電圧源Vbus/2に接続され、第2端で共通のDC電圧源Vbusに接続される、並列の2つの分岐B1及びB2を備えている。
第1の分岐B1は、電流Ib1が循環する一対のコイルの第1のコイル5と、この第1のコイル5に関連付けられた第1の電圧レギュレータRV1とを備えている。第2の分岐B2は、電流Ib2が循環する一対の第2のコイル5’と、この第2のコイル5’に関連付けられた第2の電圧レギュレータRV2とを備えている。
【0021】
図3の例では、電圧レギュレータは昇圧回路(昇圧型コンバータとも称される)であり、その入力は関連するコイル5、5’に接続されている。
第1の電圧レギュレータRV1に対応する昇圧回路は、第1の電圧レギュレータRV1の入力点e1とグランドとの間に設けられたコンデンサC1と、第1の電圧レギュレータRV1の入力点e1と出力点s1との間にダイオードD1と直列に配置されたインダクタL1と、このインダクタL1とダイオードD1との間の中点m1とグランドとの間に配置されたトランジスタT1とを含んでいる。
トランジスタT1のスイッチオフ及びスイッチオンの制御により、一対のコイルの第1のコイル5内を循環する電流Ib1を制御することができる。
【0022】
同様に、第2の電圧レギュレータRV2に対応する昇圧回路は、第2の電圧レギュレータRV2の入力点e2とグランドとの間に配置されたコンデンサC2と、第2の電圧レギュレータRV2の入力点e2と出力点s2との間にダイオードD2と直列に配置されたインダクタL2と、このインダクタL2とダイオードD2との間の中点m2とグランドとの間に配置されたトランジスタT2とを含んでいる。トランジスタT2のスイッチオフ及びスイッチオンの制御により、一対のコイルの第2のコイル5’内を循環する電流Ib2を制御することができる。
出力点s1及びs2は、例えば、DC電圧源Vbusに接続されている。
【0023】
他のタイプの電圧レギュレータを使用することができる。例えば、電圧降圧回路(バック型コンバータとも称される)や、関連する一対のコイル5、5’内を循環する電流の制御を可能にする他のタイプの電圧レギュレータなどである。
【0024】
電力供給回路13はまた、第1及び第2の電圧レギュレータRV1及びRV2のための、制御ユニット11を備えている。
この制御ユニット11は、少なくとも1つの位置センサ9によって与えられるロータ7の測定位置の関数として、第1のコイル5及び第2のコイル5’をそれぞれ循環する電流をサーボ制御するように構成された、2つの第1のフィードバックループを備えている。
【0025】
これら2つの第1のフィードバックループは、ロータ7の測定された位置の関数として一対のコイル5、5’に供給される第1の電流設定値Ci1、Ci2を決定するように構成された、第1の処理ユニット15を備えている。
ロータの所望の位置(通常、一対の第1のコイル5と第2のコイル5’の間の中心の位置)を得るために、第1の処理ユニット15は、第1のコイル5に関連する第1の電流設定値Ci1を提供し、かつ、第2のコイル5’に関連する第2の電流設定値Ci2を提供するために、所定の電流値I0に加えられ、あるいはこの所定の電流値I0から減算されるべき補正値に対応する電流デルタΔiを決定するように構成されている。
したがって、電流デルタΔiの符号は、ロータ7の軸が、電流の大部分が通過する軸受に向かって引っ張られる方向を定義し、軸受のコイル5、5’は、磁化されていないロータ7の軸受をこれらのコイルに向かって「引っ張る」ことしかできない。
したがって、ロータ7にかかる力は、2つの反対方向の力の合成となり、1つは(I0+Δi)に比例し、もう1つは(I0-Δi)に比例する。これは、電流変化ΔiとI0に加えられる力を線形化する効果がある。事前に定義された電流値I0は、時間が経っても一定である。
【0026】
第1のフィードバックループは、第1の電流設定値Ci1と第1のコイル5内を循環する電流の測定値とをそれぞれ比較し、第2の電流設定値Ci2と第2のコイル5’内を循環する電流の測定値とをそれぞれ比較するように構成された第2の処理ユニット17、17’も備えている。
第2の処理ユニット17、17’はまた、第1の電流設定値Ci1、Ci2と、関連するコイル5、5’内を循環する電流の測定値との間の比較の結果の関数として、電圧設定値CV1、CV2を決定するように構成されている。
【0027】
制御ユニット11はまた、第1のフィードバックループ内で入れ子になり、第1のコイル5及び第2のコイル5’の電流Ib1、Ib2の関数として、第1のコイル5及び第2のコイル5’の端子における電圧をそれぞれサーボ制御するように構成された、2つの第2のフィードバックループを備えている。
【0028】
これら2つの第2のフィードバックループは、第2の処理ユニット17、17’によって供給される電圧設定値CV1、CV2と、コイル5、5’の端子の電圧(実際には、昇圧回路の入力e1、e2(または降圧回路の場合は出力s2’)で測定された電圧であり、関連するコイル5、5’の端子の電圧を反映する)との間の比較の結果の関数として、第2の電流設定値Cii1、Cii2を決定する。
【0029】
制御ユニット11はまた、第3の処理ユニット19によって供給される第2の電流設定値Cii1の関数として第1の電圧レギュレータRV1内の電流を調整し、第3の処理ユニット19’によって供給される第2の電流設定値Cii2の関数として第2の電圧レギュレータRV2の電流を調整するように構成された、第4の処理ユニット21、21’も備えている。そのため、この第4の処理ユニット21、21’は、トランジスタT1、T2を循環する電流(トランジスタT1、T2がオンになったときにインダクタL1、L2を循環する電流に対応する)を、第2の電流設定値Cii1、Cii2と比較する。
【0030】
第1の処理ユニット15、第2の処理ユニット17、17’、第3の処理ユニット19、19’、及び第4の処理ユニット21、21’は、例えば、制御ユニット11のマイクロコントローラをプログラミングすることによって生成される。
したがって、第2のフィードバックループは、第1のフィードバックループ内に入れ子になっていて、コイル5及びコイル5’に対するロータ7の位置と、コイル5及びコイル5’の端子における電圧の両方をサーボ制御できるようにする。
【0031】
コイル5、5’の端子の電圧値は、したがって、-Vbus/2とVbus/2の間で変化するDC電圧である。-Vbus/2は、関連する電圧レギュレータRV1、RV2の入力e1、e2の電圧がVbusの場合の電圧であり、コンポーネントが理想的であることを考慮し、損失を無視する。Vbus/2は、関連する電圧レギュレータRV1、RV2の入力e1、e2の電圧が0の場合電圧であり、コンポーネントが理想的であると考え、損失を無視する。
【0032】
したがって、図1で説明した従来技術の場合のようなコイル5、5’のスイッチモード電源(パルス電圧)がなく、入れ子状のフィードバックループを使用してコイル5、5’の電流値の両方を調整することができる。第1のコイル5及び第2のコイル5’の端子における電圧の値により、特に電源電圧の切り替えに起因するコイル5、5’における電流リップルを低減し、さらには除去することが可能になる。
これにより、スイッチング周波数に近い周波数での振動の低減、さらには除去が可能になり、その結果、回転機械100が生成する振動が少なくなり、この回転機械100の環境や、この回転機械の近くに位置する精密機器への影響が少なくなる。
さらに、コイル5、5’に電流リップルがないため、電流リップルに対処するためにこれらのコイル5、5’のインダクタンス値の選択が制限されず、コイル5、5’のインダクタンス値として、より低いインダクタンス値を使用できるようになる。
【0033】
さらに、コイル5、5’に経時的な急激な電圧変化がないことにより、コイル5、5’及びこれらのコイル5、5’を接続する電力供給ケーブルの電磁放射を大幅に制限し、さらには排除することができる。この電磁放射がなくなることにより、コイル5、5’の近くに位置する誘導位置センサ9への妨害を特に回避することも可能になる。
【0034】
図4は、第2の分岐B2’が降圧回路(バック型コンバータとも称される)に対応する第2の電圧レギュレータRV2’を備える点で、前の例とは異なる変形された実施形態を表わしている。この実施形態では、その入力点e2’は、第1の電圧レギュレータRV1の出力点s1に接続され、その出力点s2’は第2のコイル5’に接続されている。
【0035】
第2の電圧レギュレータRV2’に対応する降圧回路は、入力e2’と出力s2’との間に直列に配置された、トランジスタT2’とインダクタL2’とを備えている。
また、この降圧回路は、トランジスタT2’とインダクタL2’との間の中点m2’とグランドとの間に配置されたダイオードD2’と、グランドと出力点s2’との間に配置されたコンデンサC2’とを備えている。
トランジスタT2’のスイッチオフ及びスイッチオンの制御により、一対の第2のコイル5’内を循環する電流を制御することが可能になる。
【0036】
電力供給回路13の他の要素は、図3に基づいて説明した前述の実施形態と同一である。
この実施形態では、第2の分岐B2’、特に第2のコイル5’の電流の方向は、図3の実施形態の第2の分岐B2の電流の方向と反対である。
これにより、DC電圧源Vbus/2によって供給される電流IVbを大幅に低減することが可能になる。
電流IVbは実際には2Δiに実質的に等しい。これは、同じDC電圧源Vbus/2を使用して回転機械100のコイル5、5’のすべての対に電力を供給する場合に、特に有利となる。
【0037】
このように、前述した一対のコイル5、5’の電力供給回路13の異なる変形を複製して、回転機械100のすべての対のコイル5、5’に電力を供給することが可能になる。したがって、発生する振動を制限することによって、ロータ7の位置を正確に制御することができる。
【0038】
本発明はまた、前述したように少なくとも1つの電力供給回路13を有する磁気軸受1、1’を備えた回転機械100、特にターボ分子真空ポンプに関する。
異なるコイル対5、5’に関連付けられた異なる電力供給回路13の異なる複数の制御ユニット11を、単一の電子回路基板上に配置することもできる。
【0039】
本発明はまた、前述したように磁気軸受1に電力を供給する方法にも関するものである。この方法では、一方では、ロータ7を第1のコイル5及び第2のコイル5’に対して中心に保つために、一対の第1及び第2のコイル内の電流が、測定されたロータ7の位置の関数としてサーボ制御される。
他方、磁気軸受1への電力供給によって発生する振動を制限するために、一対の第1のコイル5と第2のコイル5’のそれぞれの端子の電圧は、第1のコイル5と第2のコイル5’の電流Ib1、Ib2の関数としてサーボ制御される。
【符号の説明】
【0040】
1、1’ 磁気軸受
3 電磁石
4 エアギャップ
5 第1のコイル
5’ 第2のコイル
6 ステータ
7 ロータ
9 位置センサ
11 制御ユニット
13 電力供給回路
15 第1の処理ユニット
17、17’ 第2の処理ユニット
19、19’ 第3の処理ユニット
21、21’ 第4の処理ユニット
100 回転機械
Ci1、Ci2 第1の電流設定値
Cii1、Cii2 第2の電流設定値
CV1、CV2 電圧設定値
RV1 第1の電圧レギュレータ
RV2 第2の電圧レギュレータ
X1 第1の半径方向
X2 第2の半径方向
X3 軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】