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特表2024-503118安定性および発現が改良されたポリペプチド複合体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-24
(54)【発明の名称】安定性および発現が改良されたポリペプチド複合体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20240117BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240117BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20240117BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240117BHJP
   C07K 16/24 20060101ALI20240117BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240117BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240117BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240117BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240117BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240117BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240117BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240117BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240117BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240117BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20240117BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C07K14/725
C07K16/28
C07K16/24
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
A61K39/395 N
A61P35/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543138
(86)(22)【出願日】2022-01-18
(85)【翻訳文提出日】2023-09-14
(86)【国際出願番号】 CN2022072592
(87)【国際公開番号】W WO2022156687
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/072601
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518330176
【氏名又は名称】ウーシー バイオロジクス アイルランド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】シュイ チエンチン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ショアン
(72)【発明者】
【氏名】クー チーチエ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA88X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB31
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA41
4H045BA70
4H045BA71
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、改変されたTCR定常領域にそれぞれ融合された重鎖および軽鎖の抗体可変領域を含むポリペプチド複合体を提供し、ここで該改変されたTCR定常領域は、該ポリペプチド複合体が改良された安定性および/または発現レベルを有するように、該ポリペプチド複合体を安定させるための少なくとも一つの変異を含む。また、ポリペプチド複合体の第一の抗原結合部分および第二の抗原結合部分を含む二重特異性抗原結合ポリペプチド複合体、該ポリペプチド複合体または該二重特異性抗原結合ポリペプチド複合体の製造方法、該ポリペプチド複合体または該二重特異性抗原結合ポリペプチド複合体を使用して疾患または障害を治療する方法、該ポリペプチド複合体および/または該二重特異性抗原結合ポリペプチド複合体をコードするポリペプチド、該ポリペプチドを含むベクターおよび宿主細胞、該ポリペプチド複合体および/または該二重特異性抗原結合性ポリペプチド複合体を含む組成物および医薬組成物も本明細書で提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の抗原結合部分および第二の抗原結合部分を含むポリペプチド複合体であって、ここで:
該第一の抗原結合部分は、
N末端からC末端まで、第一のT細胞受容体(TCR)定常領域(C1)に作動可能に連結された第一の抗体の第一の重鎖可変ドメイン(VH)を含む第一のポリペプチド、および
N末端からC末端まで、第二のT細胞受容体(TCR)定常領域(C2)に作動可能に連結された第一の抗体の第一の軽鎖可変ドメイン(VL)を含む第二のポリペプチドを含み、
ここで:
C1は操作された(engineered)CBetaまたは操作されたCAlphaを含み、
C2は操作されたCAlphaまたは操作されたCBetaを含み、
C1およびC2は、C1とC2の間に少なくとも一つの非天然鎖間結合を含む二量体を形成することができ、該非天然鎖間結合は該ポリペプチド複合体を安定化することができ、
該操作されたCAlphaおよび/または操作されたCBetaは、該操作されたCAlphaおよび/または操作されたCBetaのC末端領域、または操作されたCAlphaおよび/または操作されたCBetaのC末端に近接している一つまたは複数のアミノ酸位置に少なくとも1つの変異をさらに含み、ここで該少なくとも一つの変異は、操作されたCAlphaの安定性、操作されたCBetaの安定性、および/または操作されたCAlpha-CBetaの界面安定性を改善する、および
該第一の抗体は第一の抗原特異性を有する;および
該第二の抗原結合部分は第二の抗原特異性を有する、
ポリペプチド複合体。
【請求項2】
前記操作されたCAlphaが、P92S、E93D、S94V、およびS95Pから選択される少なくとも一つの変異残基を含む、および/または前記操作されたCBetaが、E17KおよびS21Aから選択される少なくとも一つの変異残基を含む、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項3】
前記操作されたCAlphaおよび/またはCBetaが、以下から選択される、一つまたは複数の非天然ジスルフィド結合を形成するための一つまたは複数の変異残基を含む、請求項1または2に記載のポリペプチド複合体: CAlpha上のP8C、CAlpha上のA9C、CAlpha上のV10C、CAlpha上のF26C、CAlpha上のF29C、CAlpha上のT33C、CAlpha上のQ34C、CAlpha上のV35C、CAlpha上のS36C、CAlpha上のS38C、CAlpha上のK39C、CAlpha上のF78C、CAlpha上のN80C、CAlpha上のS81C、CAlpha上のI82C、CAlpha上のP84C、CAlpha上のD86C、CAlpha上のT87C、CAlpha上のF88C、CAlpha上のF89C、CAlpha上のP90C、およびCBeta上のA18C。
【請求項4】
前記操作されたCAlphaが、そのC末端に「FFPSPESS」(配列番号9)または「PESS」(配列番号6)の欠失を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項5】
前記操作されたCAlphaが、CAlphaのC末端に「PESS」(配列番号6)の代わりに「VEPKS」(配列番号5)を有する変異を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項6】
前記操作されたCAlphaが、CAlphaのC末端に「PESS」(配列番号6)の代わりに「NRGE」(配列番号7)を有する変異を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項7】
前記操作されたCAlphaおよび前記操作されたCBetaが、CAlpha上の変異S22F、T33I、およびA73T、およびCBeta上の変異E17K、H22R、D38P、およびS53Dを含む、請求項1~6のいずれかに記載のポリペプチド複合体。
【請求項8】
前記操作されたCAlphaが、CAlpha上の変異残基P8CおよびD86C、ならびにCAlphaのC末端の4アミノ酸残基(アミノ酸残基92~95)の欠失を含む、請求項1、3、および4のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項9】
前記操作されたCAlphaおよび前記操作されたCBetaが、CAlpha上の変異残基P90CおよびCBeta上の変異残基A18C、ならびにCAlphaのC末端の4アミノ酸残基(アミノ酸残基92~95)の欠失を含む、請求項1、3、および4のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項10】
前記操作されたC2が、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、79、および80のいずれか一つを含み、前記操作されたC1が、配列番号11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、および65のいずれか一つを含む、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項11】
前記操作されたC1が、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、79、および80のいずれか一つを含み、前記操作されたC2が、配列番号11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、および65のいずれか一つを含む、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項12】
前記操作されたC1および前記操作されたC2がそれぞれ、以下の配列番号からなる群から選択される一対の配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド複合体: 10/11、12/13、14/15、16/17、18/19、20/21、22/23、24/25、26/27、28/29、30/31、32/33、34/35、36/37、38/39、40/41、42/43、44/45、46/47、48/49、50/51、52/53、54/55、56/57、58/59、60/61、62/63、64/65、79/43、および80/51。
【請求項13】
前記操作されたC2および前記操作されたC1がそれぞれ、以下の配列番号からなる群から選択される一対の配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド複合体: 12/13、14/15、16/17、18/19、20/21、22/23、24/25、26/27、28/29、30/31、32/33、34/35、36/37、38/39、40/41、42/43、44/45、46/47、48/49、50/51、52/53、54/55、56/57、58/59、60/61、62/63、64/65、79/43、および80/51。
【請求項14】
前記操作されたC2および前記操作されたC1がそれぞれ配列番号42および43の一対の配列を含むか、または前記操作されたC1および前記操作されたC2がそれぞれ配列番号42および43の一対の配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項15】
前記操作されたC2および前記操作されたC1がそれぞれ配列番号50および51の一対の配列を含むか、または前記操作されたC1および前記操作されたC2がそれぞれ配列番号50および51の一対の配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項16】
前記操作されたC2および前記操作されたC1がそれぞれ配列番号79および43の一対の配列を含むか、または前記操作されたC1および前記操作されたC2がそれぞれ配列番号79および43の一対の配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項17】
前記操作されたC2および前記操作されたC1がそれぞれ配列番号80および51の一対の配列を含むか、または前記操作されたC1および前記操作されたC2がそれぞれ配列番号80および51の一対の配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項18】
前記第一の抗原特異性および前記第二の抗原特異性のうちの一つが、外来性抗原、内在性抗原、自己抗原、ネオ抗原、ウイルス抗原、または腫瘍抗原を対象とする、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項19】
前記第一の抗原特異性および前記第二の抗原特異性のうちの一方が、T細胞特異的受容体分子および/またはナチュラルキラー細胞(NK細胞)特異的受容体分子を対象とし、他方が腫瘍関連抗原を対象とする、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項20】
前記第一の抗原特異性および前記第二の抗原特異性のうちの一方が、PD-L1を対象とし、他方が4-1BBを対象とする、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項21】
前記第一の抗原特異性および前記第二の抗原特異性のうちの一方が、HER2 D2を対象とし、他方がHER2 D4を対象とする、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項22】
前記第一の抗原特異性および前記第二の抗原特異性のうちの一方が、IL-17を対象とし、他方がIL-20を対象とする、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項23】
前記第一の抗原特異性および前記第二の抗原特異性のうちの一方が、IL-4を対象とし、他方がIL-13を対象とする、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項24】
部分(a moiety)に結合された、請求項1~23のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体を含む、コンジュゲート。
【請求項25】
請求項1~23のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体をコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項26】
請求項25に記載のポリヌクレオチドを含む、単離されたベクター。
【請求項27】
請求項25に記載の単離されたポリヌクレオチドまたは請求項26に記載の単離されたベクターを含む、宿主細胞。
【請求項28】
前記ポリペプチド複合体が発現される条件下で宿主細胞を培養する工程を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体を発現する方法であって、該宿主細胞が、前記ポリペプチド複合体をコードするポリヌクレオチドを含む、方法。
【請求項29】
請求項1~23のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体を産生する方法であって、以下を含む、方法:
a) 宿主細胞に以下を導入する工程:
N末端からC末端まで、第一のTCR定常領域(C1)に作動可能に連結された第一の抗体の第一の重鎖可変領域(VH)を含む第一のポリペプチドをコードする第一のポリヌクレオチド、および
N末端からC末端まで、第二のTCR定常領域(C2)に作動可能に連結された第一の抗体の第一の軽鎖可変ドメイン(VL)を含む第二のポリペプチドをコードする第二のポリヌクレオチド、
ここで:
C1およびC2は、C1とC2の間に少なくとも一つの非天然鎖間結合を含む二量体を形成することができ、該非天然鎖間結合は二量体を安定化することができる、および
前記第一の抗体は第一の抗原特異性を有する、
b) 前記宿主細胞に前記ポリペプチド複合体を発現させる工程。
【請求項30】
以下の工程をさらに含む、請求項29に記載の方法:
前記第一の抗原特異性とは異なる第二の抗原特異性を有する、第二の抗原結合部分をコードする一つまたは複数の追加のポリヌクレオチドを
前記宿主細胞に導入する工程。
【請求項31】
前記ポリペプチド複合体を単離することをさらに含む、請求項29~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
請求項1~23のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体を含む組成物。
【請求項33】
請求項1~23のいずれかに記載のポリペプチド複合体および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項34】
治療を必要とする対象の状態を治療する方法であって、治療有効量の請求項1~23のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体を対象に投与することを含む、方法。
【請求項35】
前記第一の抗原および前記第二の抗原が両方とも調節される場合、前記状態を軽減、除去、治療、または予防することができる、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
請求項1~23のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体を含む一つまたは複数の容器を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、その全体が参照により組み込まれる、2021年1月19日に出願された国際出願PCT/CN2021/072601号の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本開示は、一般に、改変されたTCR定常領域に融合された抗体可変領域を含むポリペプチド複合体、およびそれを含む多重特異性ポリペプチド複合体、ならびにそれらの調製方法および使用に関する。
【背景技術】
【0003】
二重特異性抗体等の多重特異性抗体は、新規のカテゴリーの治療薬として成長しつつある。2つの異なる標的または2つの異なるエピトープに結合する二重特異性抗体のユニークな能力により、通常の抗体ではアクセスできない多くの新規の作用機序(MOA)が可能になった。これらの新規のMOAを臨床開発に適用するために、その全内容が参照により本明細書に組み込まれるPCT/CN2018/106766号(WO2019/057122号)に開示されているように、2つの親抗体を所望の価数および機能を備えた二重特異性分子に構築することができる、WuXiBody(商標)という二重特異性プラットフォームを開発した。
【0004】
たとえば、PCT/CN2018/106766号(WO2019/057122号)に開示されているように、WuXiBody(商標)プラットフォームは、抗体FabのCH1ドメインおよびCLドメインを置き換えるために特定のTCR定常領域(CBeta/CAlpha)を採用した。キメラFabは、通常の抗体Fabの軽鎖および重鎖の界面と直交するユニークな軽鎖および重鎖の界面を有する。キメラFabと通常のFabを異なるフォーマットで構築することにより、異なる構造および価数を有する様々な二重特異性分子を作成することができる。
【0005】
所望の発現レベル、安定性、および/または抗原に対する親和性を有する二重特異性等の多重特異性の分子を設計することが大いに必要とされている。本開示は、たとえば、CAlphaおよび/またはCBetaのC末端領域および/またはC末端に近接している残基等の操作を通じて、所望の安定性および/またはタンパク質発現レベルを有する特定の多重特異性、たとえば二重特異性のポリペプチド複合体について記載する。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、本開示は、N末端からC末端まで、第一のT細胞受容体(TCR)定常領域(C1)に作動可能に連結された第一の抗体の第一の重鎖可変ドメイン(VH)を含む第一のポリペプチド、およびN末端からC末端まで、第二のT細胞受容体(TCR)定常領域(C2)に作動可能に連結された第一の抗体の第一の軽鎖可変ドメイン(VL)を含む第二のポリペプチドを含む、ポリペプチド複合体を提供し、ここでC1およびC2は、C1とC2の間に少なくとも一つの非天然鎖間結合を含む二量体を形成することができ、該非天然鎖間結合は該二量体を安定化することができ、該第一の抗体は第一の抗原特異性を有し、ここでC1は操作された(engineered)CBetaを含み、かつC2は操作されたCAlphaを含む、またはC1は操作されたCAlphaを含み、かつC2は操作されたCBetaを含む。
【0007】
一態様では、本開示は、第二の抗原結合部分と結合した第一の抗原結合部分を含む二重特異性ポリペプチド複合体を提供し、ここで該第一の抗原結合部分は、N末端からC末端まで、第一のT細胞受容体(TCR)定常領域(C1)に作動可能に連結された第一の抗体の第一の重鎖可変ドメイン(VH)を含む第一のポリペプチド、およびN末端からC末端まで、第二のT細胞受容体(TCR)定常領域(C2)に作動可能に連結された第一の抗体の第一の軽鎖可変ドメイン(VL)を含む第二のポリペプチドを含み、ここでC1およびC2は、C1に含まれる第一の変異残基とC2に含まれる第二の変異残基との間に少なくとも一つの非天然鎖間結合を含む二量体を形成することができ、該非天然鎖間結合は二量体を安定化することができ、ここでC1は操作されたCBetaを含み、C2は操作されたCAlphaを含み;または、C1は操作されたCAlphaを含み、C2は操作されたCBetaを含む、およびここで該第一の抗体は第一の抗原特異性を有し、該第二の抗原結合部分は該第一の抗原特異性とは異なる第二の抗原特異性を有する。
【0008】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるポリペプチド複合体は、CAlphaおよび/もしくはCBetaのC末端領域、またはCAlphaおよび/もしくはCBetaのC末端に近接している残基に少なくとも一つの変異を含む。一部の実施形態では、上記少なくとも一つの変異は、そのような変異のないCAlphaおよび/もしくはCBetaと比較して、CAlphaの安定性、CBetaの安定性、および/もしくはCAlpha-CBeta界面安定性を改善する。一部の実施形態では、少なくとも一つの変異を有する開示されたポリペプチド複合体は、そのような変異のないポリペプチド複合体と比較して、発現レベル、安定性、および/または抗原に対する親和性が改善している。
【0009】
一態様では、本開示は、本明細書で提供される二重特異性ポリペプチド複合体の二重特異性断片を提供する。一態様では、本開示は、部分(moiety)に結合した、本明細書に提供されるポリペプチド複合体、または本明細書に提供される二重特異性ポリペプチド複合体を含むコンジュゲートを本明細書に提供する。
【0010】
一態様では、本開示は、本明細書に提供されるポリペプチド複合体、または本明細書に提供される二重特異性ポリペプチド複合体をコードする単離されたポリヌクレオチドを本明細書に提供する。一態様では、本開示は、本明細書で提供されるポリヌクレオチドを含む単離されたベクターを本明細書で提供する。一態様では、本開示は、本明細書に提供される単離されたポリヌクレオチドまたは本明細書に提供される単離されたベクターを含む宿主細胞を本明細書に提供する。一態様では、本開示は、本明細書で提供されるポリペプチド複合体または本明細書で提供される二重特異性ポリペプチド複合体を発現する方法であって、本明細書で提供される宿主細胞を、ポリペプチド複合体または二重特異性ポリペプチド複合体が発現される条件下で培養することを含む方法を提供する。
【0011】
一態様では、本開示は、本明細書で提供される二重特異性ポリペプチド複合体を産生する方法であって、 a) 宿主細胞に、N末端からC末端まで、第一のTCR定常領域(C1)に作動可能に連結された第一の抗体の第一の重鎖可変領域(VH)を含む第一のポリペプチドをコードする第一のポリヌクレオチド、およびN末端からC末端まで、第二のTCR定常領域(C2)に作動可能に連結された第一の抗体の第一の軽鎖可変ドメイン(VL)を含む第二のポリペプチドをコードする第二のポリヌクレオチドを導入する工程、ここでC1およびC2は、C1とC2の間に少なくとも一つの非天然鎖間結合を含む二量体を形成することができ、該非天然鎖間結合はC1およびC2の二量体を安定化することができる、および上記第一の抗体は第一の抗原特異性を有する; b) 上記宿主細胞に前記ポリペプチド複合体を発現させる工程を含む、方法を提供する。
【0012】
一態様では、本開示は、本明細書で提供される二重特異性ポリペプチド複合体を産生する方法であって、 a) 宿主細胞に、N末端からC末端まで、第一のTCR定常領域(C1)に作動可能に連結された第一の抗体の第一の重鎖可変領域(VH)を含む第一のポリペプチドをコードする第一のポリヌクレオチド、N末端からC末端まで、第二のTCR定常領域(C2)に作動可能に連結された第一の抗体の第一の軽鎖可変ドメイン(VL)を含む第二のポリペプチドをコードする第二のポリヌクレオチド、第二の抗体のVHを含む第三のポリペプチドをコードする第三のポリヌクレオチド、および第二の抗体のVLを含む第四のポリペプチドをコードする第四のポリヌクレオチドを導入する工程、ここでC1およびC2は、C1とC2の間に少なくとも一つの非天然鎖間結合を含む二量体を形成することができ、該非天然鎖間結合は二量体を安定化することができる、および上記第一の抗体は第一の抗原特異性を有する、および上記第二の抗体は第二の抗原特異性を有する; b) 上記宿主細胞に二重特異性のポリペプチド複合体を発現させる工程を含む、方法を提供する。
【0013】
一態様では、本開示は、本明細書で提供される二重特異性ポリペプチド複合体を産生する方法であって、 a) 宿主細胞に、N末端からC末端まで、第一のTCR定常領域(C1)に作動可能に連結された第二の抗体の第二の重鎖可変ドメイン(VH)に作動可能に連結された第一の抗体の第一の重鎖可変ドメイン(VH)および定常領域(CH1)を含む第一のポリペプチドをコードする第一のポリヌクレオチド、N末端からC末端まで、第二のTCR定常領域(C2)に作動可能に連結された第二の抗体の第二の軽鎖可変ドメイン(VL)を含む第二のポリペプチドをコードする第二のポリヌクレオチド、第一の抗体のVLを含む第三のポリペプチドをコードする第三のポリヌクレオチド、ここでC1およびC2は、C1とC2の間に少なくとも一つの非天然鎖間結合を含む二量体を形成することができ、および上記第一の抗体は第一の抗原特異性を有する、および上記第二の抗体は第二の抗原特異性を有する; b) 上記宿主細胞に二重特異性のポリペプチド複合体を発現させる工程を含む、方法を提供する。
【0014】
特定の実施形態では、本明細書で提供される二重特異性ポリペプチド複合体を産生する方法は、ポリペプチド複合体を単離することをさらに含む。
【0015】
一態様では、本開示は、本明細書で提供されるポリペプチド複合体、または本明細書で提供される二重特異性ポリペプチド複合体を含む組成物を提供する。一態様では、本開示は、本明細書に提供されるポリペプチド複合体、または本明細書に提供される二重特異性ポリペプチド複合体、および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物を本明細書に提供する。
【0016】
一態様では、本開示は、治療を必要とする対象の状態を治療する方法であって、治療有効量の本明細書で提供されるポリペプチド複合体、または本明細書で提供される二重特異性ポリペプチド複合体を対象に投与することを含む方法を本明細書で提供する。特定の実施形態では、第一の抗原および第二の抗原が両方とも調節される場合、該状態が軽減、除去、治療、または予防され得る。
【0017】
特定の実施形態では、非天然鎖間結合は、C1に含まれる第一の変異残基とC2に含まれる第二の変異残基との間に形成される。特定の実施形態では、第一および第二の変異残基の少なくとも一つはシステイン残基である。特定の実施形態では、非天然鎖間結合はジスルフィド結合である。特定の実施形態では、第一の変異残基はC1の接触界面(contact interface)内に含まれ、および/または第二の変異残基はC2の接触界面内に含まれる。特定の実施形態では、少なくとも一つの天然システイン残基がC1および/またはC2に存在しないか、または存在する。特定の実施形態では、操作されたCBetaのC74位の天然システイン残基は、存在しないか、または存在する。特定の実施形態では、天然のC74はCBetaには存在しない。特定の実施形態では、天然のジスルフィド結合(CAlpha上のC96、およびCBeta上のA128、D129、およびC130)は、存在してもしなくてもよい。
【0018】
特定の実施形態では、少なくとも一つの天然のN-グリコシル化部位がC1および/またはC2に存在しないか、または存在する。特定の実施形態では、天然のN-グリコシル化部位はC1および/またはC2には存在しない。
【0019】
特定の実施形態では、本明細書に開示される二量体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個またはそれ以上の非天然鎖間結合を含む。特定の実施形態では、非天然鎖間結合の少なくとも一つはジスルフィド結合である。 特定の実施形態では、二量体は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個またはそれ以上のジスルフィド結合を含む。
【0020】
特定の実施形態では、第一のVHは第一の結合ドメインでC1に作動可能に連結され、第一のVLは第二の連結ドメインでC2に作動可能に連結される。特定の実施形態では、第一のVHは、コネクタを介して第一の結合ドメインでC1に結合し、第一のVLは、コネクタを介して第二の結合ドメインでC2に結合する。
【0021】
特定の実施形態では、第一および/または第二の連結ドメインは、適切な長さ(たとえば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸残基)の抗体V/C結合のC末端断片、および適切な長さ(たとえば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸残基)のTCR V/C結合のN末端断片を含む。
【0022】
特定の実施形態では、操作されたCBetaは、アミノ酸残基9~35、52~66、71~86、および122~127からなる群から選択される接触界面内に変異システイン残基等の変異残基を含む;および/または操作されたCAlphaは、アミノ酸残基6~29、37~67、および86~95からなる群から選択される接触界面内に変異システイン残基等の変異残基を含む。
【0023】
特定の実施形態では、操作されたCBetaは、変異残基K9Eを含む。
【0024】
特定の実施形態では、操作されたCBetaは、S56C、S16C、F13C、V12C、E14C、L62C、D58C、S76C、およびR78Cから選択される位置でアミノ酸残基を置換する変異システイン残基を含む、および/または操作されたCAlphaは、T49C、Y11C、L13C、S16C、V23C、Y44C、T46C、L51C、およびS62Cから選択される位置でアミノ酸残基を置換する変異システイン残基を含む。
【0025】
特定の実施形態では、操作されたCBetaおよび操作されたCAlphaは、以下からなる群から選択される一対のアミノ酸残基を置換する一対の変異システイン残基を含み、ここでシステイン残基の対は、非天然の鎖間ジスルフィド結合を形成することができる: CBetaにおけるS16CおよびCAlphaにおけるY11C、CBetaにおけるF13CおよびCAlphaにおけるL13C、CBetaのS16CおよびCAlphaのL13C、CBetaのV12CおよびCAlphaのS16C、CBetaのE14CおよびCAlphaのS16C、CBetaのF13CおよびCAlphaのV23C、CBetaのL62CおよびCAlphaのY44C、CBetaのD58CおよびCAlphaのT46C、CBetaのS76CおよびCAlphaのT46C、CBetaのS56CおよびCAlphaのT49C、CBetaのS56CおよびCAlphaのL51C、CBetaのS56CおよびCAlphaのS62C、およびCBetaのR78CおよびCAlphaのS62C。
【0026】
特定の実施形態では、少なくとも一つの天然グリコシル化部位が、操作されたCBetaおよび/または操作されたCAlphaに存在しないか、または存在する。特定の実施形態では、操作されたCBetaにおける天然グリコシル化部位はN69であり、および/または操作されたCAlphaにおける天然グリコシル化部位は、N34、N68、N79、およびそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0027】
特定の実施形態では、操作されたCBetaは、天然CBetaのアミノ酸残基101~117を包含するFGループおよび/または天然CBetaのアミノ酸残基66~71を包含するDEループを欠失しているか、または保持している。
【0028】
特定の実施形態では、第一のポリペプチドは、抗体CH2ドメインおよび/または抗体CH3ドメインをさらに含む。
【0029】
特定の実施形態では、第一の抗原特異性および第二の抗原特異性は、2つの異なる抗原を対象とするか、または1つの抗原上の2つの異なるエピトープを対象とする。
【0030】
特定の実施形態では、第一の抗原結合部分はCTLA-4に結合する。特定の実施形態では、第二の抗原結合部分はPD-L1に結合する。特定の実施形態では、第一の抗原結合部分はPD-L1に結合する。特定の実施形態では、第二の抗原結合部分はCTLA-4に結合する。特定の実施形態では、第一の抗原結合部分はPD-L1に結合する。特定の実施形態では、第二の抗原結合部分は4-1BBに結合する。特定の実施形態では、第一の抗原結合部分は4-1BBに結合する。特定の実施形態では、第二の抗原結合部分はPD-L1に結合する。特定の実施形態では、第一および第二の抗原結合部分は、HER2の2つの別個のドメインにそれぞれ結合する。特定の実施形態では、第一の抗原結合部分はHER2 D2に結合する。特定の実施形態では、第二の抗原結合部分はHER2 D4に結合する。 特定の実施形態では、第一の抗原結合部分はHER2 D4に結合する。特定の実施形態では、第二の抗原結合部分はHER2 D2に結合する。特定の実施形態では、第一の抗原結合部分はIL-17に結合する。特定の実施形態では、第二の抗原結合部分はIL-20に結合する。特定の実施形態では、第一の抗原結合部分はIL-20に結合する。特定の実施形態では、第二の抗原結合部分はIL-17に結合する。特定の実施形態では、第一の抗原結合部分はIL-4に結合する。特定の実施形態では、第二の抗原結合部分はIL-13に結合する。特定の実施形態では、第一の抗原結合部分はIL-13に結合する。特定の実施形態では、第二の抗原結合部分はIL-4に結合する。
【0031】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるポリペプチド複合体の結合は、コネクタ、ジスルフィド結合、水素結合、静電相互作用、塩橋、もしくは疎水性-親水性相互作用、またはそれらの組み合わせを介する。
【0032】
特定の実施形態では、第二の抗原結合部分は、第二の抗原特異性を有する第二の抗体の重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む。特定の実施形態では、第二の抗原結合部分はFabを含む。特定の実施形態では、第一の抗原特異性および第二の抗原特異性は、2つの異なる抗原を対象とするか、または1つの抗原上の2つの異なるエピトープを対象とする。
【0033】
特定の実施形態では、第一および第二の抗原特異性の一方は、T細胞特異的受容体分子および/またはナチュラルキラー細胞(NK細胞)特異的受容体分子を対象とし、他方は、腫瘍関連抗原を対象とする。特定の実施形態では、第一および第二の抗原特異性の一方はCD3を対象とし、他方は腫瘍関連抗原を対象とする。特定の実施形態では、第一および第二の抗原特異性の一方はCD3を対象とし、他方はCD19を対象とする。
【0034】
特定の実施形態では、第一の抗原結合部分は第一の二量体化ドメインをさらに含み、第二の抗原結合部分は第二の二量体化ドメインをさらに含み、ここで第一および第二の二量体化ドメインは結合している。
【0035】
特定の実施形態では、第一および第二の二量体化ドメインの結合は、コネクタ、ジスルフィド結合、水素結合、静電相互作用、塩橋、もしくは疎水性-親水性相互作用、またはそれらの組み合わせを介する。
【0036】
特定の実施形態では、第一および/または第二の二量体化ドメインは、場合によりIgG1、IgG2またはIgG4に由来する、抗体ヒンジ領域の少なくとも一部を含む。
【0037】
特定の実施形態では、第一および/または第二の二量体化ドメインは、抗体ヒンジ領域、抗体CH2ドメイン、および/または抗体CH3ドメインの少なくとも一部をさらに含む。特定の実施形態では、第一の二量体化ドメインは、第三の結合ドメインで第一のTCR定常領域(C1)に作動可能に連結される。
【0038】
特定の実施形態では、第二の二量体化ドメインは、第二の抗原結合部分の重鎖可変ドメインに作動可能に連結される。
【0039】
特定の実施形態では、第一および第二の二量体化ドメインは異なり、ホモ二量体化を妨げ、および/またはヘテロ二量体化を促進する方法で結合する。
【0040】
特定の実施形態では、第一および第二の二量体化ドメインは、ノブ・イン・トゥ・ホール、疎水性相互作用、静電相互作用、親水性相互作用、または柔軟性の増加を介して結合してヘテロ二量体を形成することができる。
【0041】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaおよびCBetaは、本明細書に開示されるポリペプチド複合体の安定性および/または発現レベルを改善するために、マウスTCRの安定性に寄与する少なくとも一つの対応するアミノ酸残基で置換された少なくとも一つの残基を含む。
【0042】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、C末端に1つ以上の変異残基、たとえば1、2、3、4、5、または6個の変異残基を含み、ここで変異残基は、ヒトIgG1ヒンジ配列、ヒトカッパ軽鎖C末端配列、PDB-5DK3(ヒトIgG4)CH1領域配列、ヒトラムダ軽鎖C末端領域配列、PDB-1IGT(マウスIgG2a)CH1領域配列、PDB-1IGT(マウスIgG2a)カッパ軽鎖C末端領域配列、ヒトIgG2ヒンジ領域配列(たとえば、ERKCC-ERKSC、配列番号3)、PDB-5E8E(ヒトIgA)CH1領域配列、PDB-5E8E(ヒトIgA)カッパ軽鎖C末端領域配列、PDB-1DEE(ヒトIgM)CH1領域配列、ヒトIgE CH1領域配列、またはヒトIgD CH1領域配列に由来する断片を含む。
【0043】
特定の実施形態では、たとえばそのC末端におけるCAlphaの一つまたは複数の改変は、本明細書に開示されるポリペプチド複合体の安定性および/または発現レベルを改善し得る。特定の実施形態では、CAlphaのC末端残基(CAlphaのC末端領域の残基、たとえば位置81~96、84~95、92~95、または92~96のアミノ酸残基)をヒトIgG1配列セグメントまたはヒトカッパ軽鎖C末端セグメントによって置換することにより、本明細書に開示されるポリペプチド複合体の安定性および/または発現レベルが改善され得る。特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、CAlphaのC末端に変異を含み、C末端は、アミノ酸配列、たとえば、ヒトIgG1ヒンジ配列に由来する「EPKS」(配列番号4)および「VEPKS」(配列番号5)を含む。たとえば、操作されたCAlphaは、CAlphaのC末端に「PESS」(配列番号6)の代わりに「VEPKS」(配列番号5)を有する変異を含む。別の例として、操作されたCAlphaは、CAlphaのC末端に「PESS」(配列番号6)の代わりに「EPKS」(配列番号4)を有する変異を含む。特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、CAlphaのC末端に変異を含み、C末端は、ヒトカッパ軽鎖C末端残基に由来するアミノ酸配列、たとえば、「NRGE」(配列番号7)を含む。たとえば、操作されたCAlphaは、CAlphaのC末端に「PESS」(配列番号6)の代わりに「NRGE」(配列番号7)を有する変異を含む。
【0044】
特定の実施形態では、CBeta上の少なくとも一つのアミノ酸残基、たとえば、CAlphaのC末端に構造的に近いまたは近接している残基の改変も、本明細書に開示されるポリペプチド複合体の安定性および/または発現レベルを改善し得る。
【0045】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaおよび/またはCBetaは、本明細書に開示されるポリペプチド複合体の安定性および/または発現レベルを改善するために、マウスTCR由来の対応する一つまたは複数のアミノ酸残基に変異した一つまたは複数の残基を含む。たとえば、操作されたCAlphaは、置換P92S、E93D、S94V、およびS95Pから選択される少なくとも一つの変異残基を含み、および/または改変CBetaは、置換E17KおよびS21Aから選択される少なくとも一つの変異残基を含む。特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、変異残基P92S、E93D、S94V、およびS95Pを含む。特定の実施形態では、操作されたCBetaは、変異残基E17KおよびS21Aを含む。特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、変異残基P92S、E93D、S94V、およびS95Pを含み、改変CBetaは、変異残基E17KおよびS21Aを含む。
【0046】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaおよび/または操作されたCBetaは、CAlpha上のS22F、T33I、およびA73TならびにCBeta上のE17K、H22R、D38P、およびS53Dから選択される、1、2、3、4、5、6、または7個の変異を含む。
【0047】
特定の実施形態では、少なくとも一つの天然システイン残基は、操作されたCAlphaおよびCBeta中に存在しなくても存在していてもよい。特定の実施形態では、天然残基A128、D129およびC130はCBetaには存在せず、および/または天然残基C96はCAlphaには存在しない。特定の実施形態では、2つのCys残基によって形成される元のTCR天然ジスルフィド結合が存在するように、天然残基A128、D129、およびC130はCBetaに存在し、および/または天然残基C96はCAlphaに存在する。
【0048】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaおよび/またはCBetaは、以下から選択される、一つまたは複数の非天然ジスルフィド結合を形成する一つまたは複数の変異残基を含む: CAlpha上のP8C、CAlpha上のA9C、CAlpha上のV10C、CAlpha上のF26C、CAlpha上のF29C、CAlpha上のT33C、CAlpha上のQ34C、CAlpha上のV35C、CAlpha上のS36C、CAlpha上のS38C、CAlpha上のK39C、CAlpha上のF78C、CAlpha上のN80C、CAlpha上のS81C、CAlpha上のI82C、CAlpha上のP84C、CAlpha上のD86C、CAlpha上のT87C、CAlpha上のF88C、CAlpha上のF89C、CAlpha上のP90C、およびCBeta上のA18C。
【0049】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaおよび/またはCBetaは、非天然ジスルフィド結合を形成するための、以下から選択される一つまたは複数の変異残基の群を含む: CAlpha上のF26CおよびF78C、CAlpha上のS36CおよびN80C、CAlpha上のS38CおよびN80C、CAlpha上のK39CおよびN80C、CAlpha上のQ34CおよびS81C、CAlpha上のV35CおよびS81C、CAlpha上のS36CおよびS81C、CAlpha上のQ34CおよびI82C、CAlpha上のP8CおよびP84C、CAlpha上のF29CおよびP84C、CAlpha上のT33CおよびP84C、CAlpha上のP8CおよびD86C、CAlpha上のP8CおよびT87C、CAlpha上のA9CおよびF88C、CAlpha上のV10CおよびF89C、CAlpha上のP90CおよびCBeta上のA18C、CAlpha上のP8C、D86C、P90CおよびCBeta上のA18C、CAlpha上のP8CおよびD86C。
【0050】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、以下の変異残基を含む: CAlpha上のF26CおよびF78C。
【0051】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、以下の変異残基を含む: CAlpha上のS36CおよびN80C。
【0052】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、以下の変異残基を含む: CAlpha上のS38CおよびN80C。
【0053】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、以下の変異残基を含む: CAlpha上のK39CおよびN80C。
【0054】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、以下の変異残基を含む: CAlpha上のQ34CおよびS81C。
【0055】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、以下の変異残基を含む: CAlpha上のV35CおよびS81C。
【0056】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、以下の変異残基を含む: CAlpha上のS36CおよびS81C。
【0057】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、以下の変異残基を含む: CAlpha上のQ34CおよびI82C。
【0058】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、以下の変異残基を含む: CAlpha上のP8CおよびP84C。
【0059】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、以下の変異残基を含む: CAlpha上のF29CおよびP84C。
【0060】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、以下の変異残基を含む: CAlpha上のT33CおよびP84C。
【0061】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、以下の変異残基を含む: CAlpha上のP8CおよびD86C。
【0062】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、以下の変異残基を含む: CAlpha上のP8CおよびT87C。
【0063】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、以下の変異残基を含む: CAlpha上のA9CおよびF88C。
【0064】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、以下の変異残基を含む: CAlpha上のV10CおよびF89C
【0065】
特定の実施形態では、操作されたCBetaは、以下の変異残基を含む: CBeta上のA18C。
【0066】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaおよび操作されたCBetaは、以下の変異残基を含む: CAlpha上のP90CおよびCBeta上のA18C。
【0067】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaおよび操作されたCBetaは、以下の変異残基を含む: CAlpha上のP8C、D86C、およびP90C、ならびにCBeta上のA18C。
【0068】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、以下の変異残基を含む: CAlpha上のP8CおよびD86C。
【0069】
特定の実施形態では、操作されたCBetaは、Glyアミノ酸残基がヒンジ領域に隣接するか、またはヒンジ領域の一部を形成するように、CBetaのC末端にGlyアミノ酸残基を含む。
【0070】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、そのC末端にまたはC末端周囲に、1~22個のアミノ酸残基、たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22個のアミノ酸残基の欠失を含む。特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、そのC末端にまたはC末端周囲に、アミノ酸残基「FFPSPESS」(配列番号9)等の8個のアミノ酸残基(たとえば、アミノ酸残基88~95)の欠失を含む。特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、そのC末端にまたはC末端周囲に、アミノ酸残基「PESS」(配列番号6)等の4つのアミノ酸残基(たとえば、アミノ酸残基92~95)の欠失を含む。
【0071】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaおよびCBetaは、CBetaのC末端にアミノ酸残基グリシンを含み、CAlphaのC末端に「PESS」(配列番号6)の代わりに「VEPKS」(配列番号5)を有する変異を含む。
【0072】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaおよびCBetaは、元のTCR天然ジスルフィド結合(CAlpha上のC96、ならびにCBeta上のA128、D129、およびC130)、CBetaのC末端のアミノ酸残基グリシン、およびCAlphaのC末端における「PESS」(配列番号6)の代わりに「NRGE」(配列番号7)を有する変異を含む。
【0073】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaおよびCBetaは、元のTCR天然ジスルフィド結合(CAlpha上のC96、ならびにCBeta上のA128、D129、およびC130)、およびCAlphaのC末端のP92S、E93D、S94V、およびS95P変異、CBeta上のE17KおよびS21A変異を含む。
【0074】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaおよびCBetaは、元のTCR天然ジスルフィド結合(CAlpha上のC96、ならびにCBeta上のA128、D129、およびC130)、CBetaのC末端のアミノ酸残基グリシン、およびCAlphaのC末端の「PESS」(配列番号6)の代わりに「VEPKS」(配列番号5)を有する変異を含む。
【0075】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaおよびCBetaは、元のTCR天然ジスルフィド結合(CAlpha上のC96、ならびにCBeta上のA128、D129、およびC130)、CBetaのC末端のアミノ酸残基グリシン、およびCAlphaのC末端の「PESS」(配列番号6)の代わりに「NRGE」(配列番号7)を有する変異を含む。
【0076】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、Calpha上の変異残基F26CおよびF78C、およびCalphaのC末端の4つのアミノ酸残基(アミノ酸残基92~95)の欠失を含む。
【0077】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、Calpha上の変異残基S36CおよびN80C、およびCalphaのC末端の4つのアミノ酸残基(アミノ酸残基92~95)の欠失を含む。
【0078】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、Calpha上の変異残基S38CおよびN80C、およびCalphaのC末端の4つのアミノ酸残基(アミノ酸残基92~95)の欠失を含む。
【0079】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、Calpha上の変異残基K39CおよびN80C、およびCalphaのC末端の4つのアミノ酸残基(アミノ酸残基92~95)の欠失を含む。
【0080】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、Calpha上の変異残基Q34CおよびS81C、およびCalphaのC末端の4つのアミノ酸残基(アミノ酸残基92~95)の欠失を含む。
【0081】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、Calpha上の変異残基V35CおよびS81C、およびCalphaのC末端の4つのアミノ酸残基(アミノ酸残基92~95)の欠失を含む。
【0082】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、Calpha上の変異残基S36CおよびS81C、およびCalphaのC末端の4つのアミノ酸残基(アミノ酸残基92~95)の欠失を含む。
【0083】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、Calpha上の変異残基Q34CおよびI82C、およびCalphaのC末端の4つのアミノ酸残基(アミノ酸残基92~95)の欠失を含む。
【0084】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、Calpha上の変異残基P8CおよびP84C、およびCalphaのC末端の4つのアミノ酸残基(アミノ酸残基92~95)の欠失を含む。
【0085】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、Calpha上の変異残基F29CおよびP84C、およびCalphaのC末端の4つのアミノ酸残基(アミノ酸残基92~95)の欠失を含む。
95)の欠失を含む。
【0086】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、Calpha上の変異残基T33CおよびP84C、およびCalphaのC末端の4つのアミノ酸残基(アミノ酸残基92~95)の欠失を含む。
【0087】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、Calpha上の変異残基P8CおよびD86C、およびCalphaのC末端の4つのアミノ酸残基(アミノ酸残基92~95)の欠失を含む。
【0088】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、Calpha上の変異残基P8CおよびT87C、およびCalphaのC末端の4つのアミノ酸残基(アミノ酸残基92~95)の欠失を含む。
【0089】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、Calpha上の変異残基A9CおよびF88C、およびCalphaのC末端の4つのアミノ酸残基(アミノ酸残基92~95)の欠失を含む。
【0090】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、Calpha上の変異残基V10CおよびF89C、およびCalphaのC末端の4つのアミノ酸残基(アミノ酸残基92~95)の欠失を含む。
【0091】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaおよび操作されたCBetaは、Calpha上の変異残基P90CおよびCbeta上の変異残基A18C、およびCalphaのC末端の4つのアミノ酸残基(アミノ酸残基92~95)の欠失を含む。
【0092】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaおよび操作されたCBetaは、Calpha上の変異S22F、T33I、およびA73T、ならびにCbeta上の変異E17K、H22R、D38P、およびS53Dを含む。
【0093】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaおよび操作されたCBetaは、7つの変異Calpha上のS22F、T33I、およびA73T、ならびにCbeta上のE17K、H22R、D38P、およびS53D、ならびに元のTCR天然ジスルフィド結合(CAlpha上のC96、ならびにCBeta上のA128、D129、およびC130)を含む。
【0094】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaおよび操作されたCBetaは、Calpha上の変異P8C、D86C、およびP90C、ならびにCbeta上の変異A18Cを含む。
【0095】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaおよび操作されたCBetaは、Calpha上の変異P8C、およびD86Cをふくみ、かつ元のTCR天然ジスルフィド結合(CAlpha上のC96、ならびにCBeta上のA128、D129、およびC130)を含む。
【0096】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaおよび操作されたCBetaは、Calpha上の変異P90CおよびCbeta上の変異A18Cを含み、かつ元のTCR天然ジスルフィド結合(CAlpha上のC96、ならびにCBeta上のA128、D129、およびC130)を含む。
【0097】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaおよび操作されたCBetaは、Calpha上の変異P8C、D86C、およびP90C、ならびにCbeta上の変異A18Cを含み、かつ元のTCR天然ジスルフィド結合(CAlpha上のC96、ならびにCBeta上のA128、D129、およびC130)を含む。
【0098】
特定の実施形態では、操作されたC2は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、79、および80のいずれか一つを含む、および/または操作されたC1は、配列番号11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、および65のいずれか一つを含む。特定の実施形態では、操作されたC1は、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、79、および80のいずれか一つを含む、および/または操作されたC2は、配列番号11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、および65のいずれか一つを含む。特定の実施形態では、操作されたC1および操作されたC2がそれぞれ、以下の配列番号からなる群から選択される一対の配列を含む: 10/11、12/13、14/15、16/17、18/19、20/21、22/23、24/25、26/27、28/29、30/31、32/33、34/35、36/37、38/39、40/41、42/43、44/45、46/47、48/49、50/51、52/53、54/55、56/57、58/59、60/61、62/63、64/65、79/43、および80/51。特定の実施形態では、操作されたC2および操作されたC1がそれぞれ、以下の配列番号からなる群から選択される一対の配列を含む: 12/13、14/15、16/17、18/19、20/21、22/23、24/25、26/27、28/29、30/31、32/33、34/35、36/37、38/39、40/41、42/43、44/45、46/47、48/49、50/51、52/53、54/55、56/57、58/59、60/61、62/63、64/65、79/43、および80/51。
【0099】
特定の実施形態では、操作されたC2および操作されたC1はそれぞれ、配列番号42および43の一対の配列を含む。特定の実施形態では、操作されたC1および操作されたC2はそれぞれ、配列番号42および43の一対の配列を含む。
【0100】
特定の実施形態では、操作されたC2および操作されたC1はそれぞれ、配列番号50および51の一対の配列を含む。特定の実施形態では、操作されたC1および操作されたC2はそれぞれ、配列番号50および51の一対の配列を含む。
【0101】
特定の実施形態では、操作されたC2および操作されたC1はそれぞれ、配列番号79および43の一対の配列を含む。特定の実施形態では、操作されたC1および操作されたC2はそれぞれ、配列番号79および43の一対の配列を含む。
【0102】
特定の実施形態では、操作されたC2および操作されたC1はそれぞれ、配列番号80および51の一対の配列を含む。特定の実施形態では、操作されたC1および操作されたC2はそれぞれ、配列番号80および51の一対の配列を含む。
【0103】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるポリペプチド複合体は、Fab、(Fab)、ビボディ(bibody)、トリボディ(tribody)、triFab、タンデム連結されたFab、Fab-Fv、タンデム連結されたVドメイン、タンデム連結されたscFvs、および他のフォーマットへと作製することができる。
【0104】
別の態様では、本開示は、疾患または状態の検出、診断、予後診断、または治療のための、本明細書で提供されるポリペプチド複合体を含むキットを提供する。
【0105】
本開示の前述および他の特徴および利点は、添付の図面を参照して開始するいくつかの実施形態の以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0106】
図1図1Aは、非還元条件または還元条件下での、精製後のT8311タンパク質の第一のバッチのSDS-PAGE特性評価を示す。図1Bは、精製後のT8311タンパク質の第一のバッチのSEC-HPLC特性評価を示す。
図1-2】図1Aは、非還元条件または還元条件下での、精製後のT8311タンパク質の第一のバッチのSDS-PAGE特性評価を示す。図1Bは、精製後のT8311タンパク質の第一のバッチのSEC-HPLC特性評価を示す。
図1-3】図1Aは、非還元条件または還元条件下での、精製後のT8311タンパク質の第一のバッチのSDS-PAGE特性評価を示す。図1Bは、精製後のT8311タンパク質の第一のバッチのSEC-HPLC特性評価を示す。
図2図2Aおよび2Cは、非還元または還元条件下での、精製後のT8311タンパク質の第二のバッチのSDS-PAGE特性評価を示す。図2Bおよび2Cは、精製後のT8311タンパク質の第二のバッチのSEC-HPLC特性評価を示す。
図2-2】図2Aおよび2Cは、非還元または還元条件下での、精製後のT8311タンパク質の第二のバッチのSDS-PAGE特性評価を示す。図2Bおよび2Cは、精製後のT8311タンパク質の第二のバッチのSEC-HPLC特性評価を示す。
図2-3】図2Aおよび2Cは、非還元または還元条件下での、精製後のT8311タンパク質の第二のバッチのSDS-PAGE特性評価を示す。図2Bおよび2Cは、精製後のT8311タンパク質の第二のバッチのSEC-HPLC特性評価を示す。
図3図3は、温度上昇時のT8311タンパク質の第一のバッチのDSFプロファイルを示す。
図3-2】図3は、温度上昇時のT8311タンパク質の第一のバッチのDSFプロファイルを示す。
図4図4は、T8311タンパク質のDSC曲線を示し、T8311-57およびT8311-61のDSC曲線は右にシフトしており、これはT8311-1と比較して温度上昇に対する耐性が比較的強いことを示している。
図5】T8311タンパク質のDLS曲線を示す。
図6】T8311-1、T8311-57、およびT8311-61の質量スペクトルを示す。
図7】標的発現細胞に対するT8311タンパク質の結合曲線を示す。
図8】T8311タンパク質の機能をチェックするためのレポーター遺伝子アッセイの結果を示す。T8311-57およびT8311-61は、PD-L1発現細胞による4-1BB媒介NF-KB経路の活性化において良好なアゴニスト効果を示した。G34(T8311-U14T2.G34-1.uIgG1)は、PD-L1発現細胞を用いたRGAテストで弱いアゴニスト効果を示した。
図9】T8311タンパク質のPK分析結果を示す。T8311-U14T2.G25R-57.uIgG1およびT8311-U14T2.G25R-61.uIgG1は、他の抗体と比較して、より長いt1/2を示し、より大きなAUCおよびより小さなクリアランスを示した。
図10】精製後のW3618タンパク質のSDS-PAGE(A)およびSEC-HPLC(B)の特性評価を示す。
図11】温度上昇時のW3618タンパク質のDSFプロファイルを示す。
図12】TRAC_Human CAlpha(配列番号1)および本明細書に開示される操作されたCAlpha、TRAC_WuXiBody 1.0(配列番号10)の配列および番号付けを示す。
図13】TRBC2_Human CBeta(配列番号2)および本明細書に開示される操作されたCBeta、TRBC_WuXiBody 1.0(配列番号8)の配列および番号付けを示す。
図14】2つのWuXiBodyフォーマットE17RおよびG25R、ならびに対照フォーマットG34を示す。
図15】W3618タンパク質のPK分析結果を示す。W3618-U4T1.E17R-57.uIgG1およびW3618-U4T1.E17R-61.uIgG1は、W3618-U4T1.E17R-1.uIgG1と比較して、より長いt1/2を示し、より大きなAUCおよびより小さなクリアランスを示した。
図16】非還元条件または還元条件下での、精製後のW329001-U3T3タンパク質のSDS-PAGE特性評価(上のパネル)、および精製後のW329001-U3T3タンパク質のSEC-HPLC特性評価(下のパネル)を示す。
図17】温度上昇時のW329001-U3T3タンパク質のDSFプロファイルを示す。
図18】W329001-U3T3タンパク質のPK分析結果を示す。W329001-U3T3.G25R-57.uIgG1およびW329001-U3T3.G25R-61.uIgG1は、W329001-U3T3.G25R-1.uIgG1と比較して、より長いt1/2を示し、より大きなAUCおよびより小さなクリアランスを示した。
図19】非還元条件下または還元条件下での、精製後のW329001-U4T4タンパク質のSDS-PAGE特性評価(上のパネル)、および精製後のW329001-U4T4タンパク質のSEC-HPLC特性評価(真ん中のパネルおよび下のパネル)を示す。
図19-2】非還元条件下または還元条件下での、精製後のW329001-U4T4タンパク質のSDS-PAGE特性評価(上のパネル)、および精製後のW329001-U4T4タンパク質のSEC-HPLC特性評価(真ん中のパネルおよび下のパネル)を示す。
図20】温度上昇時のW329001-U4T4タンパク質のDSFプロファイルを示す。
図21】W329001-U4T4.G25R-57.uIgG1タンパク質およびW329001-U4T4.G25R-61.uIgG1タンパク質のPK分析結果を示す。W329001-U4T4.G25R-57.uIgG1およびW329001-U4T4.G25R-61.uIgG1は、W329001-U4T4.G25R-1.uIgG1と比較して、より長いt1/2を示し、より大きなAUCおよびより小さなクリアランスを示した。
図22】W329001-U4T4.G25R-57.uIgG1タンパク質とW329001-U4T4.G25R-78.uIgG1タンパク質のPK分析結果の比較を示す。
図23】W329001-U4T4.G25R-61.uIgG1タンパク質とW329001-U4T4.G25R-79.uIgG1タンパク質のPK分析結果の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0107】
詳細な説明
本開示の以下の記載は、単に本開示の様々な実施形態を説明することを目的としている。したがって、論じた特定の改変は、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。当業者には、本開示の範囲から逸脱することなく様々な等価物、変更、および改変を行うことができることが明らかであり、そのような等価性の実施形態も本明細書に含まれることが理解される。刊行物、特許および特許出願を含む、本明細書で引用されるすべての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で引用される参考文献の特定の内容が本開示と矛盾するまたは一貫性がない場合、本開示が優先する。
【0108】
本明細書で使用される特定の用語は、PCT/CN2018/106766号(WO2019/057122号)で定義および/または説明されている。これらの定義および/または説明は本明細書に組み込まれ、別段の記載がない限り、本開示に適用される。
【0109】
A.ペプチド複合体
一態様では、本開示は、N末端からC末端まで、第一のT細胞受容体(TCR)定常領域(C1)に作動可能に連結された第一の抗体の第一の重鎖可変ドメイン(VH)を含む第一のポリペプチド、およびN末端からC末端まで、第二のT細胞受容体(TCR)定常領域(C2)に作動可能に連結された第一の抗体の第一の軽鎖可変ドメイン(VL)を含む第二のポリペプチドを含み、ここでC1およびC2は、C1とC2の間に少なくとも一つの非天然鎖間結合を含む二量体を形成することができ、該非天然鎖間結合は該二量体を安定化することができ、該第一の抗体は第一の抗原特異性を有し、ここでC1は操作されたCBetaを含み、C2は操作されたCAlphaを含む、またはC1は操作されたCAlphaを含み、C2は操作されたCBetaを含む。
【0110】
一態様では、本開示は、第二の抗原結合部分と結合した第一の抗原結合部分を含む二重特異性ポリペプチド複合体を提供し、ここで該第一の抗原結合部分は、N末端からC末端まで、第一のT細胞受容体(TCR)定常領域(C1)に作動可能に連結された第一の抗体の第一の重鎖可変ドメイン(VH)を含む第一のポリペプチド、およびN末端からC末端まで、第二のT細胞受容体(TCR)定常領域(C2)に作動可能に連結された第一の抗体の第一の軽鎖可変ドメイン(VL)を含む第二のポリペプチドを含み、ここでC1およびC2は、C1に含まれる第一の変異残基とC2に含まれる第二の変異残基との間に少なくとも一つの非天然鎖間結合を含む二量体を形成することができ、該非天然鎖間結合は二量体を安定化することができ、ここでC1は操作されたCBetaを含み、C2は操作されたCAlphaを含み;または、C1は操作されたCAlphaを含み、C2は操作されたCBetaを含む、およびここで該第一の抗体は第一の抗原特異性を有し、該第二の抗原結合部分は該第一の抗原特異性とは異なる第二の抗原特異性を有する。
【0111】
多重特異性フォーマットおよび/または番号付けの都合に応じて、本明細書に開示されるような、第一、第二、および第三等の番号付け配列は異なっていてもよい。たとえば、第一のVHに第二のVHとして番号付けしてもよく、第一のVLに第二のVLとして番号付けしてもよい。別の例として、第二の抗原結合部分は第一の抗原結合部分として番号付けしてもよく、第一の抗原結合部分は第二の抗原結合部分として番号付けしてもよい。図14に示すように、好みおよび/または利便性に応じて、VH1にはVH2として番号付けすることができ、VL1にはVL2等として番号付けすることができる。
【0112】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるポリペプチド複合体は、CAlphaおよび/もしくはCBetaのC末端領域、またはCAlphaおよび/もしくはCBetaのC末端に近接している残基に少なくとも一つの変異を含む。一部の実施形態では、少なくとも一つの変異は、そのような変異のないCAlphaおよび/またはCBetaと比較して、CAlphaの安定性、CBetaの安定性、および/またはCAlpha-CBeta界面安定性を改善する。一部の実施形態では、少なくとも一つの変異を有する開示されたポリペプチド複合体は、そのような変異のないポリペプチド複合体と比較して、発現レベル、安定性、および/または抗原に対する親和性が改善している。
【0113】
i. TCR定常領域
本明細書で提供されるポリペプチド複合体は、TCRに由来する定常領域を含む。天然TCRは2本のポリペプチド鎖から構成されており、一般に2つのタイプがある: 一つはアルファ鎖およびベータ鎖から構成され(すなわち、アルファ/ベータTCR)、もう一つはガンマ鎖およびデルタ鎖から構成されている(すなわち、ガンマ/デルタTCR)。これら2つのタイプは構造的に似ているが、位置および機能が異なる。約95%のヒトT細胞はアルファ/ベータTCRを有し、残りの5%はガンマ/デルタTCRを有する。アルファ鎖の前駆体も見出され、プレアルファ鎖と命名される。2つのTCRポリペプチド鎖のそれぞれは、免疫グロブリンドメインおよび膜近傍領域(membrane proximal region)を含む。免疫グロブリン領域は可変領域および定常領域からなり、免疫グロブリン型のフォールドが存在することが特徴である。各TCRポリペプチド鎖はシステイン残基(たとえば定常ドメインのC末端または膜近傍領域のN末端)を有しており、これらが一緒になって2つのTCR鎖をつなぐジスルフィド結合を形成することができる。
【0114】
ヒトTCRα鎖定常領域(CAlphaまたはCalphaと呼ばれる)は、図12に示すように、NCBIアクセッション番号P01848、または配列番号1のアミノ酸配列を有するTRACとして知られている。
【0115】
ヒトTCRβ鎖定常領域(CBetaまたはCbetaと呼ばれる)は、TRBC1およびTRBC2(IMGT命名法)として知られる2つの異なるバリアントを有する(Toyonaga B, et al., PNAs, Vol. 82, pp.8624-8628, Immunology (1985)を参照)。TRBC2_Human(CBeta)のアミノ酸配列を図13に配列番号2として示す。
【0116】
具体的には、天然TCRβ鎖は、74位に天然システイン残基を含み、これは対になっていないため、天然アルファ/ベータTCRにおいてジスルフィド結合を形成しない。特定の実施形態では、本明細書で提供されるポリペプチド複合体において、この天然のシステイン残基は存在しないか、または別の残基に変異している。これは、間違った鎖内または鎖間のペアリングを回避するのに役立ち得る。特定の実施形態では、天然のシステイン残基は、別の残基、たとえばセリンまたはアラニン(たとえば、C74A)に置換される。特定の実施形態では、置換により、インビトロでのTCRリフォールディング効率を改善することができる。
【0117】
本開示において、本明細書で提供されるポリペプチド複合体の第一および第二のTCR定常領域は、TCR定常領域の間に、TCR定常領域を安定化することができる少なくとも一つの非天然鎖間結合を含む二量体を形成することができる。一部の実施形態では、本明細書に開示されるポリペプチド複合体は、CAlphaの安定性、CBetaの安定性、および/またはCAlpha-CBeta界面安定性を改善するために、CAlphaおよび/もしくはCBetaのC末端領域、またはCAlphaおよび/もしくはCBetaのC末端に近接している残基に少なくとも一つの変異を含む。
【0118】
鎖間結合は、一方のTCR定常領域上の一つのアミノ酸残基と、他方のTCR定常領域上の別のアミノ酸残基との間に形成される。特定の実施形態では、非天然鎖間結合は、2つのTCR定常領域を結合させて二量体にすることができる任意の結合または相互作用であってもよい。適切な非天然鎖間結合の例は、ジスルフィド結合、水素結合、静電相互作用、塩橋、または疎水性-親水性相互作用、ノブ・イン・トゥ・ホール、またはそれらの組み合わせを含む。非天然鎖間結合の例は、PCT/CN2018/106766号(WO2019/057122号)に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0119】
特定の実施形態では、TCR定常領域二量体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の非天然鎖間結合を含む。場合により、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の非天然鎖間結合のうちの少なくとも一つは、ジスルフィド結合、水素結合、静電相互作用、塩橋、もしくは疎水性-親水性相互作用、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0120】
変異残基を含むTCR定常領域は、本明細書では「操作された」TCR定常領域、たとえば、操作されたCAlphaまたは操作されたCBetaとも呼ばれる。特定の実施形態では、ポリペプチド複合体の第一のTCR定常領域(C1)は、操作されたTCRα鎖(CAlpha)を含み、第二のTCR定常領域(C2)は、操作されたTCRβ鎖(CBeta)を含む。特定の実施形態では、C1は操作されたCBetaを含み、C2は操作されたCAlphaを含む。
【0121】
特定の実施形態では、操作されたTCR定常領域は、一つまたは複数の変異システイン残基を含む。特定の実施形態では、一つまたは複数の変異残基は、第一および/または第二の操作されたTCR定常領域の接触界面内に含まれる。
【0122】
本明細書で使用される「接触界面」という用語は、ポリペプチドが互いに相互作用/結合するポリペプチド上の特定の領域を指す。接触界面は、相互作用が生じるときに接触または結合する、対応するアミノ酸残基と相互作用することができる一つまたは複数のアミノ酸残基を含む。接触界面中のアミノ酸残基は、連続した配列であってもなくてもよい。たとえば、界面が三次元である場合、界面内のアミノ酸残基は、直線配列上の異なる位置で分離されていてもよい。
【0123】
特定の実施形態では、操作されたCBetaは、アミノ酸残基9~35、52~66、71~86、および122~127からなる群から選択される接触界面内に変異システイン残基等の変異残基を含む。特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、アミノ酸残基6~29、37~67、および86~95からなる群から選択される接触界面内に変異システイン残基等の変異残基を含む。特に指定しない限り、本開示におけるTCR定常領域のアミノ酸残基の番号付けは、図12および13に示す通りである。
【0124】
特定の実施形態では、一つまたは複数のジスルフィド結合が、操作されたCAlphaと操作されたCBetaとの間に形成され得る。CBeta中の変異したシステイン残基は、以下からなる群から選択される置換であってもよい: S56C、S16C、F13C、V12C、E14C、F13C、L62C、D58C、S76C、およびR78C。および/またはCAlpha中の変異したシステイン残基は、以下からなる群から選択される置換であってもよい: T49C、Y11C、L13C、S16C、V23C、Y44C、T46C、L51C、およびS62C。特定の実施形態では、変異したシステイン残基の対は、以下からなる群から選択される置換の対であってもよく、ここで一対のシステイン残基は、非天然の鎖間ジスルフィド結合を形成することができる: CBetaにおけるS16CおよびCAlphaにおけるY11C、CBetaにおけるF13CおよびCAlphaにおけるL13C、CBetaのS16CおよびCAlphaのL13C、CBetaのV12CおよびCAlphaのS16C、CBetaのE14CおよびCAlphaのS16C、CBetaのF13CおよびCAlphaのV23C、CBetaのL62CおよびCAlphaのY44C、CBetaのD58CおよびCAlphaのT46C、CBetaのS76CおよびCAlphaのT46C、CBetaのS56CおよびCAlphaのT49C、CBetaのS56CおよびCAlphaのL51C、CBetaのS56CおよびCAlphaのS62C、およびCBetaのR78CおよびCAlphaのS62C。
【0125】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaおよび/またはCBetaは、一つまたは複数の非天然ジスルフィド結合を形成するための、以下から選択される一つまたは複数の変異残基を含む: CAlpha上のP8C、CAlpha上のA9C、CAlpha上のV10C、CAlpha上のF26C、CAlpha上のF29C、CAlpha上のT33C、CAlpha上のQ34C、CAlpha上のV35C、CAlpha上のS36C、CAlpha上のS38C、CAlpha上のK39C、CAlpha上のF78C、CAlpha上のN80C、CAlpha上のS81C、CAlpha上のI82C、CAlpha上のP84C、CAlpha上のD86C、CAlpha上のT87C、CAlpha上のF88C、CAlpha上のF89C、CAlpha上のP90C、およびCBeta上のA18C。
【0126】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaおよび/またはCBetaは、非天然ジスルフィド結合を形成するための、以下から選択される一つまたは複数の変異残基の群を含む: CAlpha上のF26CおよびF78C、CAlpha上のS36CおよびN80C、CAlpha上のS38CおよびN80C、CAlpha上のK39CおよびN80C、CAlpha上のQ34CおよびS81C、CAlpha上のV35CおよびS81C、CAlpha上のS36CおよびS81C、CAlpha上のQ34CおよびI82C、CAlpha上のP8CおよびP84C、CAlpha上のF29CおよびP84C、CAlpha上のT33CおよびP84C、CAlpha上のP8CおよびD86C、CAlpha上のP8CおよびT87C、CAlpha上のA9CおよびF88C、CAlpha上のV10CおよびF89C、CAlpha上のP90CおよびCBeta上のA18C、CAlpha上のP8C、D86C、P90CおよびCBeta上のA18C、CAlpha上のP8CおよびD86C。
【0127】
本出願全体を通じて本明細書で使用される場合、TCR定常領域に関して「XnY」は、TCR定常領域上のn番目のアミノ酸残基X(本明細書で提供される図12~13の番号付けに基づく)はアミノ酸残基Yで置換されていることを意味することを意図する。ここで、XおよびYはそれぞれ特定のアミノ酸残基の一文字の略語である。番号nは図12~13に示されている番号付けにのみ基づいており、実際の位置とは異なる場合があることに留意されたい。
【0128】
非天然アミノ酸残基に加えて、特定の実施形態における操作されたTCR定常領域は、野生型TCR定常領域配列中の一つまたは複数の天然残基に対する追加の改変をさらに含んでもよい。このような追加の改変の例は、天然のシステイン残基に対する改変、天然のグリコシル化部位に対する改変、および/または天然のループに対する改変を含む。
【0129】
特定の実施形態では、少なくとも一つの天然システイン残基が、操作されたCBeta中に存在しないか、存在する。たとえば、CBetaのC74位の天然システイン残基は、操作されたCBetaに存在してもしなくてもよい。
【0130】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、本明細書で提供されるポリペプチド複合体は、CBeta上の天然システイン残基の存在および非存在の両方を許容するという点で有利であると考えられる。可溶性TCRヘテロ二量体上の天然システイン残基の存在がTCRのリガンド結合能力に有害であることが示唆されているが(たとえば、米国特許第7,666,604号を参照)、本明細書で提供されるポリペプチド複合体は、抗原結合活性に悪影響を与えることなくこの天然システインの存在を許容する。さらに、TCRヘテロ二量体における天然のジスルフィド結合はTCRヘテロ二量体の安定化に良いというWu et al. mAbs, 7(2), pp.364-376 (2005)による反対の教示にもかかわらず、本明細書で提供されるポリペプチド複合体は、高レベルで発現される天然のシステイン残基の非存在下で存在する。
【0131】
特定の実施形態では、天然のTCR定常領域に存在する一つまたは複数の天然のグリコシル化部位は、本開示で提供されるポリペプチド複合体中に改変(たとえば、除去)されてもよく、または維持されてもよい。ポリペプチド配列に関して本明細書で使用される「グリコシル化部位」という用語は、炭水化物部分(たとえば、オリゴ糖構造)が結合できる側鎖を有するアミノ酸残基を指す。抗体のようなポリペプチドのグリコシル化は、通常、N結合型またはO結合型のいずれかである。N結合型とは、アスパラギン残基の側鎖、たとえばアスパラギン-X-セリンおよびアスパラギン-X-スレオニン等のトリペプチド配列におけるアスパラギン残基(Xはプロリンを除く任意のアミノ酸)への炭水化物部分の結合を指す。O結合型グリコシル化とは、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのいずれか一つの糖がヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンに結合することを指す。天然グリコシル化部位の除去は、上記のトリペプチド配列の一つまたは複数(N結合型グリコシル化部位の場合)または一つまたは複数のセリンまたはスレオニン残基(O結合型グリコシル化部位の場合)が置換されるようにアミノ酸配列を改変することによって利便性よく達成することができる。
【0132】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるポリペプチド複合体において、少なくとも一つの天然グリコシル化部位は、操作されたTCR定常領域、たとえば、第一および/または第二のTCR定常領域に存在しないか、または存在する。いかなる理論にも束縛されるものではないが、本明細書で提供されるポリペプチド複合体は、CAlpha(すなわちN34、N68、およびN79)およびCBeta(すなわちN69)などはタンパク質の発現と安定性に必要である(Wu et al., Mabs, 7:2, 364-376, 2015を参照)等、N結合型グリコシル化部位が存在するという既存の教示とは対照的に、タンパク質の発現および安定性に影響を与えることなくグリコシル化部位の全部または一部の除去を許容すると考えられる。
【0133】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるポリペプチド複合体において、操作されたCAlphaのN-グリコシル化部位の少なくとも一つ、たとえばN34、N68、およびN79が、存在しないか、または存在する。特定の実施形態では、操作されたCBetaにおけるN-グリコシル化部位の少なくとも一つ、たとえば、N69は存在しないか、または存在する。
【0134】
特定の実施形態では、天然TCR定常領域に存在する一つまたは複数の天然二次構造は、本開示で提供されるポリペプチド複合体中に改変(たとえば、除去)または保持されてもよい。特定の実施形態では、天然ループ(天然CBetaのFGループおよび/またはDEループ等)は、本明細書で提供されるポリペプチド複合体中で改変される(たとえば、除去される)か、保持される。「FGループ」および「DEループ」という用語は、主にTCRβ鎖定常ドメインに見られる構造である。FGループは天然のCBetaのアミノ酸残基101~117を包含しており、CD3に対するα/βTCRキャビティの一つの構成要素を形成する、異常に細長く、溶媒に曝露されている構造要素である。DEループは、天然のCBetaのアミノ酸残基66~71を含む。特定の実施形態では、FGループの配列は存在しない、および/またはYPSN(配列番号81)で置換されている。
特定の実施形態では、天然DEループの配列は存在しない、および/またはQSGR(配列番号82)で置換されている。
【0135】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaおよびCBetaは、本明細書に開示されるポリペプチド複合体の安定性および/または発現レベルを改善するために、マウスTCRの安定性に寄与する少なくとも一つの対応するアミノ酸残基で置換された少なくとも一つの残基を含む。
【0136】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、C末端に一つまたは複数の変異残基、たとえば1、2、3、4、5、または6個の変異残基を含み、ここで変異残基は、ヒトIgG1ヒンジ配列、ヒトカッパ軽鎖C末端配列、PDB-5DK3(ヒトIgG4)CH1領域配列、ヒトラムダ軽鎖C末端領域配列、PDB-1IGT(マウスIgG2a)CH1領域配列、PDB-1IGT(マウスIgG2a)カッパ軽鎖C末端領域配列、ヒトIgG2ヒンジ領域配列(たとえば、ERKCC-ERKSC、配列番号3)、PDB-5E8E(ヒトIgA)CH1領域配列、PDB-5E8E(ヒトIgA)カッパ軽鎖C末端領域配列、PDB-1DEE(ヒトIgM)CH1領域配列、ヒトIgE CH1領域配列、またはヒトIgD CH1領域配列に由来する断片を含む。
【0137】
特定の実施形態では、たとえばそのC末端におけるCAlphaの一つまたは複数の改変は、本明細書に開示されるポリペプチド複合体の安定性および/または発現レベルを改善し得る。特定の実施形態では、CAlphaのC末端残基(CAlphaのC末端領域の残基、たとえば位置81~96、84~95、92~95、または92~96のアミノ酸残基)をヒトIgG1配列セグメントまたはヒトカッパ軽鎖C末端セグメントによって置換することにより、本明細書に開示されるポリペプチド複合体の安定性および/または発現レベルが改善され得る。特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、CAlphaのC末端に変異を含み、C末端は、アミノ酸配列、たとえば、ヒトIgG1ヒンジ配列に由来する「EPKS」(配列番号4)および「VEPKS」(配列番号5)を含む。たとえば、操作されたCAlphaは、CAlphaのC末端に「PESS」(配列番号6)の代わりに「VEPKS」(配列番号5)を有する変異を含む。別の例として、操作されたCAlphaは、CAlphaのC末端に「PESS」(配列番号6)の代わりに「EPKS」(配列番号4)を有する変異を含む。特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、CAlphaのC末端に変異を含み、C末端は、ヒトカッパ軽鎖C末端残基に由来するアミノ酸配列、たとえば、「NRGE」(配列番号7)を含む。たとえば、操作されたCAlphaは、CAlphaのC末端に「PESS」(配列番号6)の代わりに「NRGE」(配列番号7)を有する変異を含む。
【0138】
特定の実施形態では、CBeta上の少なくとも一つのアミノ酸残基、たとえば、CAlphaのC末端に構造的に近いまたは近接している残基の改変も、本明細書に開示されるポリペプチド複合体の安定性および/または発現レベルを改善し得る。
【0139】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaおよび/またはCBetaは、本明細書に開示されるポリペプチド複合体の安定性および/または発現レベルを改善するために、マウスTCR由来の対応する一つまたは複数のアミノ酸残基に変異した一つまたは複数の残基を含む。たとえば、操作されたCAlphaは、置換P92S、E93D、S94V、およびS95Pから選択される少なくとも一つの変異残基を含み、および/または改変CBetaは、置換E17KおよびS21Aから選択される少なくとも一つの変異残基を含む。特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、変異残基P92S、E93D、S94V、およびS95Pを含む。特定の実施形態では、操作されたCBetaは、変異残基E17KおよびS21Aを含む。特定の実施形態では、操作されたCAlphaは、変異残基P92S、E93D、S94V、およびS95Pを含み、改変CBetaは、変異残基E17KおよびS21Aを含む。
【0140】
特定の実施形態では、操作されたCAlphaおよび/または操作されたCBetaは、CAlpha上のS22F、T33I、およびA73TならびにCBeta上のE17K、H22R、D38P、およびS53Dから選択される、1、2、3、4、5、6、または7個の変異を含む。
【0141】
本明細書で提供されるポリペプチド複合体において、TCR由来の定常領域は、抗体由来の可変領域に作動可能に連結されている。抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域は、スペーサーの有無にかかわらず、TCR定常領域に作動可能に連結することができる。
【0142】
特定の実施形態では、第一の抗体重鎖可変ドメイン(VH)は第一の結合ドメインで第一のTCR定常領域(C1)に融合されており、第一の抗体軽鎖可変ドメイン(VL)は第二の結合ドメインで第二のTCR定常領域(C2)に融合されている。
【0143】
特定の実施形態では、第一の結合ドメインは、抗体 V/C結合のC末端断片の少なくとも一部、およびTCR V/C結合のN末端断片の少なくとも一部を含む。
【0144】
本明細書で使用される用語「抗体 V/C結合」は、抗体可変ドメインと定常ドメインとの境界、たとえば、重鎖可変ドメインとCH1ドメインとの間の境界、または軽鎖可変ドメインと軽鎖定常ドメインとの間の境界を指す。同様に、用語「TCR V/C結合」は、TCR可変ドメインと定常ドメインとの境界、たとえば、TCRα可変ドメインと定常ドメインとの間の境界、またはTCRβ可変ドメインと定常ドメインとの間の境界を指す。第一の結合ドメインおよび第二の結合ドメインなどの結合ドメインは、PCT/CN2018/106766号(WO2019/057122号)に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0145】
特定の実施形態では、第一のポリペプチドは、式(I):VH-HCJ-C1のように作動可能に連結されたドメインを含む配列を含み、第二のポリペプチドは、式(II):VL-LCJ-C2のように作動可能に連結されたドメインを含む配列を含む。ここで:
VHは抗体の重鎖可変ドメインである;
HCJは、上記で定義した第一の結合ドメインである;
C1は、上記で定義した第一のTCR定常ドメインである;
VLは抗体の軽鎖可変ドメインである;
LCJは、上記で定義した第二の結合ドメインである;
C2は、上記で定義した第二のTCR定常ドメインである。
【0146】
HCJおよびLCJの様々な配列が、参照により本明細書に組み込まれるPCT/CN2018/106766号(WO2019/057122号)に記載されている。
【0147】
米国特許第9,683,052号は、TCR定常領域間の接触界面内の特定の残基をFc領域内に操作して(engineered into)、2つの重鎖のヘテロ二量体対合を促進することができることを開示している。本明細書に開示されるTCR定常領域間の接触界面内のそのような残基および/または対応する残基は、軽鎖と重鎖との間の対形成を促進するために、Fab領域、たとえば、CH1ドメインおよびCLドメイン内に操作することもできる。
【0148】
ii. 抗体可変領域
本明細書で提供されるポリペプチド複合体は、第一の抗体の第一の重鎖可変ドメイン(VH)および第一の軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。従来のネイティブ抗体では、可変領域は、たとえば、N末端からC末端まで、次の式に示されるように、隣接するフレームワーク(FR)領域によって挟まれた3つのCDR領域を含む: FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4。本明細書で提供されるポリペプチド複合体は、そのような従来の抗体可変領域を含むことができるが、これに限定されない。たとえば、可変ドメインは、可変ドメインが抗原に特異的に結合できる限り、抗体重鎖または軽鎖のCDRの3つすべてまたは3つ未満と、FRの4つすべてまたは4つ未満を含んでもよい。
【0149】
第一の抗体は、第一の抗原特異性を有する。換言すれば、VHおよびVLは、抗原またはエピトープに特異的に結合することができる抗原結合部位を形成する。抗原特異性は、任意の適切な抗原またはエピトープ、たとえば、外来性抗原、内在性抗原、自己抗原、ネオ抗原、ウイルス抗原、または腫瘍抗原を対象とすることができる。外来性抗原は、吸入、摂取、または注射によって体内に入り、エンドサイトーシスまたは食作用によって抗原提示細胞(APC)によって提示され、MHC II複合体を形成することができる。内在性抗原は、細胞代謝、細胞内ウイルスまたは細菌感染の結果として正常細胞内で生成され、MHC I複合体を形成することができる。自己抗原(ペプチド、DNA、RNA等)は、自己免疫疾患に罹患している患者の免疫系によって認識されるが、正常な状態では、この抗原は免疫系の標的となるべきではない。ネオ抗原は正常な身体にはまったく存在せず、腫瘍やがん等の特定の病気が原因で生成される。特定の実施形態では、抗原は、特定の疾患(たとえば、腫瘍またはがん、自己免疫疾患、感染症および寄生虫症、心血管疾患、神経障害、神経精神状態(neuropsychiatric condition)、傷害、炎症、凝固障害)に関連している。特定の実施形態では、抗原は免疫系(たとえば、B細胞、T細胞、NK細胞、マクロファージ等の免疫細胞)に関連する。
【0150】
特定の実施形態では、第一の抗原特異性は、免疫関連抗原またはそのエピトープを対象とする。免疫関連抗原の例は、T細胞特異的受容体分子および/またはナチュラルキラー細胞(NK細胞)特異的受容体分子を含む。
【0151】
T細胞特異的受容体分子は、T細胞が、抗原提示細胞またはAPCと呼ばれる別の細胞によって提示されるエピトープ/抗原に結合し、追加のシグナルが存在する場合には、それによって活性化されて応答することを可能にする。T細胞特異的受容体分子は、TCR、CD3、CD28、CD134(OX40とも呼ばれる)、4-1 BB、CD5、およびCD95(Fas受容体としても知られる)であってもよい。
【0152】
NK細胞特異的受容体分子の例は、CD16、低親和性Fc受容体およびNKG2D、およびCD2を含む。
【0153】
特定の実施形態では、第一の抗原特異性は、腫瘍関連抗原またはそのエピトープを対象とする。「腫瘍関連抗原」という用語は、腫瘍細胞表面上に存在するか、または腫瘍細胞表面上に提示され得、腫瘍細胞上または腫瘍細胞内に位置する抗原を指す。一部の実施形態では、腫瘍関連抗原は、腫瘍細胞によってのみ提示され得、正常な細胞、すなわち、非腫瘍細胞によっては提示され得ない。一部の他の実施形態では、腫瘍関連抗原は腫瘍細胞上で独占的に発現され得るか、または非腫瘍細胞と比較して腫瘍特異的変異を表し得る。一部の他の実施形態では、腫瘍関連抗原は、腫瘍細胞および非腫瘍細胞の両方で見出すことができるが、非腫瘍細胞と比較した場合に腫瘍細胞で過剰発現されるか、または腫瘍組織は非腫瘍組織に比べて構造がコンパクトではないため、腫瘍細胞内での抗体結合に利用可能である。一部の実施形態では、腫瘍関連抗原は腫瘍の脈管構造上に位置する。腫瘍関連表面抗原の具体例は、PCT/CN2018/106766号(WO2019/057122号)に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0154】
特定の実施形態では、第一の抗原特異性は、CD3、4.1BB(CD137)、OX40(CD134)、CD16、CD47、CD19、CD20、CD22、CD33、CD38、CD123、CD133、CEA、cdH3、EpCAM、上皮成長因子受容体(EGFR)、EGFRvIII(EGFRの変異型)、HER2、HER3、dLL3、BCMA、シアリル-Lea、5T4、ROR1、黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、メソテリン、葉酸受容体1、VEGF受容体、EpCAM、HER2/neu、HER3/neu、G250、CEA、MAGE、プロテオグリカン、VEGF、FGFR、αVβ3-インテグリン、HLA、HLA-DR、ASC、CD1、CD2、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD11、CD13、CD14、CD21、CD23、CD24、CD28、CD30、CD37、CD40、CD41、CD44、CD52、CD64、c-erb-2、CALLA、MHCII、CD44v3、CD44v6、p97、ガングリオシドGM1、GM2、GM3、GD1a、GD1b、GD2、GD3、GT1b、GT3、GQ1、NY-ESO-1、NFX2、SSX2、SSX4 Trp2、gp100、チロシナーゼ、Muc-1、テロメラーゼ、サバイビン、G250、p53、CA125 MUC、Wue抗原、Lewis Y抗原、HSP-27、HSP-70、HSP-72、HSP-90、Pgp、MCSP、EpHA2、細胞表面標的GC182、GT468またはGT512、IL-17、IL-20、IL-13、IL-4からなる群から選択される抗原またはそのエピトープを対象とする。
【0155】
抗体可変ドメインは、親抗体に由来することができる。親抗体は、たとえば、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、または動物抗体(たとえば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ウシ、イヌ等)を含む任意のタイプの抗体であり得る。親抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であってもよい。
【0156】
特定の実施形態では、親抗体はモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、当技術分野で知られている様々な方法、たとえば、ハイブリドーマ技術、組換え法、ファージディスプレイ、またはそれらの任意の組み合わせによって産生することができる。抗体を産生する例示的な方法は、PCT/CN2018/106766号(WO2019/057122号)に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0157】
本明細書に記載される親抗体は、たとえば、CDR配列を異なるフレームワークまたはスキャフォールドに移植するため、一つまたは複数のフレームワーク領域の一つまたは複数のアミノ酸残基を置換するため、親和性成熟のために一つまたは複数のCDR領域内の一つまたは複数の残基を置換するため、等のためにさらに改変することができる。これらは、当業者であれば従来の技術を使用して達成することができる。
【0158】
親抗体は、当技術分野で公知の治療用抗体、たとえば、治療用または診断用としてFDAによって承認されている抗体、または状態を治療するための臨床試験中の抗体、または研究開発中の抗体であってもよい。既知の抗体の可変領域のポリヌクレオチド配列およびタンパク質配列は、たとえば、www.ncbi.nlm nih gov/entrez-/query.fcgi; www.atcc.org/phage/hdb.html; www.sciquest.com/; www.abcam.com/; www.antibodyresource.com/onlinecomp.htmlのような公共データベースから得ることができる。治療用抗体の例とは、PCT/CN2018/106766号(WO2019/057122号)に開示されており、参照により本明細書に組み込まれる治療用抗体を含むが、これらに限定されない。
【0159】
特定の実施形態では、第一の抗原結合部分はCTLA-4に結合する。特定の実施形態では、第二の抗原結合部分はPD-L1に結合する。特定の実施形態では、第一の抗原結合部分はPD-L1に結合する。特定の実施形態では、第二の抗原結合部分はCTLA-4に結合する。特定の実施形態では、第一の抗原結合部分はPD-L1に結合する。特定の実施形態では、第二の抗原結合部分は4-1BBに結合する。特定の実施形態では、第一の抗原結合部分は4-1BBに結合する。特定の実施形態では、第二の抗原結合部分はPD-L1に結合する。特定の実施形態では、第一および第二の抗原結合部分は、HER2の2つの別個のドメインに結合する。特定の実施形態では、第一の抗原結合部分はHER2 D2に結合する。 特定の実施形態では、第二の抗原結合部分はHER2 D4に結合する。特定の実施形態では、第一の抗原結合部分はHER2 D4に結合する。特定の実施形態では、第二の抗原結合部分はHER2 D2に結合する。特定の実施形態では、第一の抗原結合部分はIL-17に結合する。特定の実施形態では、第二の抗原結合部分はIL-20に結合する。特定の実施形態では、第一の抗原結合部分はIL-20に結合する。特定の実施形態では、第二の抗原結合部分はIL-17に結合する。特定の実施形態では、第一の抗原結合部分はIL-4に結合する。特定の実施形態では、第二の抗原結合部分はIL-13に結合する。特定の実施形態では、第一の抗原結合部分はIL-13に結合する。特定の実施形態では、第二の抗原結合部分はIL-4に結合する。
【0160】
CDRは抗原結合に関与することが知られているが、6つのCDRのすべてが必須または変更不可であるわけではないことが判明している。換言すれば、抗原に対する特異的結合親和性を実質的に保持しながら、一つまたは複数のCDRを置換または変更または改変することが可能である。
【0161】
二重特異性ポリペプチド複合体
一態様では、本開示は、本明細書において二重特異性ポリペプチド複合体を提供する。本明細書で使用する「二重特異性」という用語は、それぞれが異なる抗原、または同じ抗原上の異なるエピトープに特異的に結合することができる2つの抗原結合部分が存在することを意味する。本明細書で提供される二重特異性ポリペプチド複合体は、第一のTCR定常領域(C1)に作動可能に連結された第一の重鎖可変ドメイン、および第二のTCR定常領域(C2)に作動可能に連結された第一の軽鎖可変ドメインを含む第一の抗原結合部分を含み、ここで、C1およびC2は、C1とC2の間に少なくとも一つの非天然の安定化鎖間結合を含む二量体を形成することができる。本明細書で提供される二重特異性ポリペプチド複合体は、第二の抗原結合部位を含むがTCR定常領域に由来する配列を含まない、第二の抗原結合部分をさらに含む。
【0162】
特定の実施形態では、本開示は、第二の抗原結合部分と結合した第一の抗原結合部分を含む二重特異性ポリペプチド複合体を提供し、ここで:
第一の抗原結合部分は、
N末端からC末端まで、第一のT細胞受容体(TCR)定常領域(C1)に作動可能に連結された第一の抗体の第一の重鎖可変ドメイン(VH)を含む第一のポリペプチド、および
N末端からC末端まで、第二のT細胞受容体(TCR)定常領域(C2)に作動可能に連結された第一の抗体の第一の軽鎖可変ドメイン(VL)を含む第二のポリペプチドを含み、
ここで:
C1は操作されたCBetaを含む、およびC2は操作されたCAlphaを含む;またはC1は操作されたCAlphaを含む、およびC2は操作されたCBetaを含み、
C1およびC2は、C1に含まれる第一の変異残基とC2に含まれる第二の変異残基との間に少なくとも一つの非天然鎖間結合を含む二量体を形成することができ、該非天然鎖間結合は二量体を安定化することができ、
CAlphaおよび/またはCBetaは、二量体をさらに安定化させるために、該CAlphaおよび/またはCBetaのC末端領域、またはCAlphaおよび/またはCBetaのC末端に近接しているアミノ酸位置に少なくとも一つの変異を含む、および
第一の抗体は第一の抗原特異性を有する;および
第二の抗原結合部分は、第一の抗原特異性とは異なる第二の抗原特異性を有する。
【0163】
本明細書で提供される二重特異性ポリペプチド複合体は、重鎖および軽鎖可変ドメインの誤対合を有する傾向が著しく低く、安定性および/または発現レベルが増加している。
【0164】
特定の実施形態では、本明細書で提供される二重特異性ポリペプチド複合体の第二の抗原結合部分は、第二の抗体の第二の重鎖可変ドメイン(VH2)および第二の軽鎖可変ドメイン(VL2)を含む。特定の実施形態では、VH2およびVL2の少なくとも一方が抗体定常領域に作動可能に連結されるか、またはVH2およびVL2の両方がそれぞれ抗体の重鎖定常領域および軽鎖定常領域に作動可能に連結される。特定の実施形態では、第二の抗原結合部分は、VH2に作動可能に連結された抗体定常CH1ドメイン、およびVL2に作動可能に連結された抗体軽鎖定常ドメインをさらに含む。たとえば、第二の抗原結合部分はFabを含む。
【0165】
第一、第二、第三、および第四の可変ドメイン(たとえば、VH1、VH2、VL1、およびVL2)が一つの細胞内で発現される場合、VH1がVL1と特異的に対合し、VH2がVL2と特異的に対合し、結果として生じる二重特異性タンパク質産物は正しい抗原結合特異性を有することになることが望ましい。しかし、ハイブリッドハイブリドーマ(またはクアドローマ)等の既存の技術では、VH1、VH2、VL1、およびVL2のランダムな対合が発生し、その結果、最大10種類の異なる二重特異性抗原結合分子が生成され、そのうち機能的な二重特異性抗原結合分子は一つだけである。これにより、生産収率が低下するだけでなく、目的生成物の精製も複雑になる。
【0166】
例示的な例では、第一の抗原結合ドメインは、VL1-C2と対合したVH1-C1を含み、第二の抗原結合ドメインは、VL2-CLと対になったVH2-CH1を含む。驚くべきことに、C1とC2は優先的に互いに結合し、CLまたはCH1とは結合する傾向が低く、その結果、C1-CH、C1-CL、C2-CH、およびC2-CL等の望ましくない対合の形成が防止され、大幅に減少した。C1-C2の特異的結合の結果、VH1はVL1と特異的に対合して、それにより第一の抗原結合部位を提供し、CH1はCLと特異的に対合して、それにより第二の抗原結合部位を提供するVH2-VL2の特異的対合を可能にする。したがって、第一の抗原結合部分と第二の抗原結合部分はミスマッチになりにくく、たとえばVH1-VL2、VH2-VL1、VH1-VH2、VL1-VL2の間の誤対合は、第一および第二の抗原結合部分の両方がたとえばVH1-CH1、VL1-CL、VH2-CH1、およびVL2-CLの形態の天然Fabの対応物である場合に比べて大幅に減少するであろう。
【0167】
特定の実施形態では、本明細書で提供される二重特異性ポリペプチド複合体は、細胞から発現される場合、同等の条件下で発現される参照分子(参照分子は、C1の代わりに天然のCH1を有し、C2の代わりに天然のCLを有することを除いて、二重特異性ポリペプチド複合体と同一である)よりも、誤対合生成物が有意に少ない(たとえば、誤対合生成物が少なくとも1、2、3、4、5個またはそれ以上少ない)、および/または生産収率が著しく高いであろう(たとえば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、またはそれ以上高い収率)。
【0168】
特定の実施形態では、第一および/または第二の抗原結合部分は、二価、三価、四価等の多価である。本明細書で使用される「価」という用語は、所定の分子内に特定の数の抗原結合部位が存在することを指す。したがって、「二価」、「四価」、および「六価」という用語は、抗原結合分子中にそれぞれ2つの結合部位、4つの結合部位、および6つの結合部位が存在することを示す。2つの結合部位が両方とも同じ抗原または同じエピトープに特異的に結合する場合、二価分子は単一特異的となり得る。同様に、たとえば、2つの結合部位が第一の抗原(またはエピトープ)に対して単一特異性であり、第三の結合部位が第二の抗原(またはエピトープ)に対して特異的である場合、三価分子は二重特異性となり得る。特定の実施形態では、本明細書で提供される二重特異性ポリペプチド複合体中の第一および/または第二の抗原結合部分は、同じ抗原またはエピトープに特異的な少なくとも2つの結合部位を有する、二価、三価、または四価であり得る。これは、特定の実施形態において、一価の対応物よりも抗原またはエピトープへのより強い結合を提供する。特定の実施形態では、二価の抗原結合部分において、第一価の結合部位と第二価の結合部位は構造的に同一である(すなわち、同じ配列を有する)か、または構造的に異なる(すなわち、同じ特異性を有するにもかかわらず異なる配列を有する)。
【0169】
特定の実施形態では、第一および/または第二の抗原結合部分は多価であり、スペーサーの有無にかかわらず、作動可能に互いに連結された2つ以上の抗原結合部位を含む。
【0170】
特定の実施形態では、第一および/または第二の抗原結合部分は、重鎖および/または軽鎖においてスペーサーの有無にかかわらず連結され、少なくとも一つの抗原結合部分を形成する、Spiess et al., 2015(上記)およびBrinkmann et al., 2017(上記)に記載されているFab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)、Fd、Fv、およびscFv断片、ならびに他の断片のうちの一つまたは複数、またはそれらの組み合わせを含む。
【0171】
特定の実施形態では、第二の抗原結合部分は、第二の抗体の2つ以上のFabを含む。2つのFabは、相互に作動可能に連結することができ、たとえば、第一のFabは、間にスペーサーの有無にかかわらず、重鎖を介して第二のFabに共有結合することができる。
【0172】
特定の実施形態では、第一の抗原結合部分は第一の二量体化ドメインをさらに含み、第二の抗原結合部分は第二の二量体化ドメインをさらに含む。本明細書で使用される「二量体化ドメイン」という用語は、互いに結合して二量体を形成することができる、またはいくつかの例では、2つのペプチドの自発的二量体化を可能にするペプチドドメインを指す。
【0173】
特定の実施形態では、第一の二量体化ドメインは第二の二量体化ドメインと結合することができる。この結合は、任意の適切な相互作用または連結または結合、たとえば、コネクタ、ジスルフィド結合、水素結合、静電相互作用、塩橋、もしくは疎水性-親水性相互作用、またはそれらの組み合わせを介するものであってもよい。例示的な二量体化ドメインは、抗体ヒンジ領域、抗体CH2ドメイン、抗体CH3ドメイン、および二量体化して相互に結合することができる他の適切なタンパク質単量体を含むが、これらに限定されない。ヒンジ領域、CH2および/またはCH3ドメインは、IgG1、IgG2、およびIgG4等の任意の抗体アイソタイプに由来していてもよい。
【0174】
特定の実施形態では、第一および/または第二の二量体化ドメインは、抗体ヒンジ領域の少なくとも一部を含む。特定の実施形態では、第一および/または第二の二量体化ドメインは、抗体CH2ドメインおよび/または抗体CH3ドメインをさらに含んでもよい。特定の実施形態では、第一および/または第二の二量体化ドメインは、ヒンジ-Fc領域、すなわちヒンジ-CH2-CH3ドメインの少なくとも一部を含む。特定の実施形態では、第一の二量体化ドメインは、第一のTCR定常領域のC末端に作動可能に連結されていてもよい。特定の実施形態では、第二の二量体化ドメインは、第二の抗原結合部分の抗体CH1定常領域のC末端に作動可能に連結されていてもよい。
【0175】
特定の実施形態では、第一の二量体化ドメインは、第三の結合ドメインで第一のTCR定常領域(C1)に(間にスペーサーの有無にかかわらず)作動可能に連結される。第三の結合ドメインの様々な設計および配列は、PCT/CN2018/106766号(WO2019/057122号)に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0176】
特定の実施形態では、第一の二量体化ドメインは、操作されたTCR定常領域のC末端に作動可能に連結され、一緒になってキメラ定常領域を形成する。換言すれば、キメラ定常領域は、操作されたTCR定常領域と作動可能に連結された、第一の二量体化ドメインを含む。
【0177】
特定の実施形態では、キメラ定常領域は、IgG1、IgG2、またはIgG4に由来する第一のヒンジFc領域に結合された操作されたCBetaを含む。このようなキメラ定常領域の例示的な配列は、PCT/CN2018/106766号(WO2019/057122号)に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0178】
特定の実施形態では、キメラ定常領域は、IgG1、IgG2、またはIgG4に由来する第一のヒンジに結合された操作されたCAlphaを含む。のようなキメラ定常領域の例示的な配列は、PCT/CN2018/106766号(WO2019/057122号)に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0179】
特定の実施形態では、キメラ定常領域は、第一の抗体のCH2ドメインおよび/または第一の抗体のCH3ドメインをさらに含む。たとえば、キメラ定常領域は、第三の結合ドメインのC末端に結合された第一の抗体のCH2-CH3ドメインをさらに含む。このようなキメラ定常領域の例示的な配列は、PCT/CN2018/106766号(WO2019/057122号)に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0180】
これらのキメラ定常領域および第二のTCR定常ドメインの対合は、本明細書に開示されるポリペプチド複合体を提供するために、それらを操作して所望の抗体可変領域に融合させることができるという点で有用である。たとえば、抗体重鎖可変領域をキメラ定常領域(C1を含む)に融合させることにより、本明細書に提供されるポリペプチド複合体の第一のポリペプチド鎖を与えることができる;同様に、抗体軽鎖可変領域を第二のTCR定常ドメイン(C2を含む)に融合させることにより、本明細書で提供されるポリペプチド複合体の第二のポリペプチド鎖を与えることができる。
【0181】
これらのキメラ定常領域および第二のTCR定常ドメインの対合は、本明細書で提供される二重特異性ポリペプチド複合体の第一の抗原結合部分を生成するためのプラットフォームとして使用することができる。たとえば、第一の抗体の可変領域をプラットフォーム配列のN末端に融合させることができる(たとえば、VHをキメラ定常ドメインに、VLをTCR定常ドメインにそれぞれ融合させる)。二重特異性ポリペプチド複合体を生成するために、本明細書で提供される二重特異性ポリペプチド複合体に結合するように、第二の抗原結合部分を設計および生成することができる。
【0182】
特定の実施形態では、第二の二量体化ドメインはヒンジ領域を含む。ヒンジ領域は、IgG1、IgG2、またはIgG4等の抗体に由来していてもよい。特定の実施形態では、第二の二量体化ドメインは、必要に応じて、例えばヒンジFc領域等の、抗体のCH2ドメインおよび/または抗体のCH3ドメインをさらに含んでもよい。ヒンジ領域は、第二の抗原結合部位(たとえば、Fab)の抗体重鎖に結合していてもよい。
【0183】
二重特異性ポリペプチド複合体では、第一および第二の二量体化ドメインは結合して二量体を形成することができる。特定の実施形態では、第一および第二の二量体化ドメインは異なり、ホモ二量体化を妨げ、および/またはヘテロ二量体化を促進する方法で結合する。たとえば、第一および第二の二量体化ドメインは、それらが同一ではなく、それら自体内でホモ二量体を形成するよりもむしろ相互にヘテロ二量体を優先的に形成するように選択することができる。特定の実施形態では、第一および第二の二量体化ドメインは、ノブ・イン・トゥ・ホールの形成、疎水性相互作用、静電相互作用、親水性相互作用、または柔軟性の増加を介して結合してヘテロ二量体を形成することができる。
【0184】
特定の実施形態では、第一および第二の二量体化ドメインは、ノブ・イン・トゥ・ホールを形成できるようにそれぞれ変異したCH2および/またはCH3ドメインを含む。ノブは、第一のCH2/CH3ポリペプチドにおける小さなアミノ酸残基をより大きなアミノ酸残基に置換することによって得ることができ、ホールは、大きな残基をより小さな残基に置換することによって得ることができる。ノブ・イン・トゥ・ホールの変異部位の詳細については、Ridgway et al., 1996(上記)、Spiess et al., 2015(上記)、およびBrinkmann et al., 2017(上記)を参照されたい。
【0185】
特定の実施形態では、第一および第二の二量体化ドメインは、S139CおよびT151W置換(ノブ)を含むIgG1アイソタイプの第一のCH3ドメインと、Y134C、T151S、L153A、およびY192V置換(ホール)を含むIgG1アイソタイプの第2のCH3ドメインとを含む。別の実施形態では、第一および第二の二量体化ドメインは、S136CおよびT148W置換(ノブ)を含むIgG4アイソタイプの第一のCH3ドメインと、Y131C、T148S、L150A、およびY189V置換(ホール)を含むIgG4アイソタイプの第二のCH3ドメインとを含む。第一および第二の二量体化ドメインのさらなる例示的な例は、PCT/CN2018/106766号(WO2019/057122号)に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0186】
特定の実施形態では、第一および第二の二量体化ドメインは、第一のヒンジ領域および第二のヒンジ領域をさらに含む。たとえば、置換の電荷対をIgG1およびIgG2のヒンジ領域に導入して、ヘテロ二量体化を促進することができる。詳細については、Brinkmann et al.,2017(上記)を参照されたい。
【0187】
二重特異性フォーマット
本明細書で提供される二重特異性ポリペプチド複合体は、当技術分野で知られている任意の適切な二重特異性フォーマットであってもよい。特定の実施形態では、二重特異性ポリペプチド複合体は、参照二重特異性抗体フォーマットに基づく。二重特異性フォーマットに関して本明細書で使用される「に基づく」とは、本明細書で提供される二重特異性ポリペプチド複合体は、抗原結合部分の一つがC1に作動可能に連結されたVHおよびC2に作動可能に連結されたVL(C1およびC2は本明細書に開示されている通り、結合している)を含むように改変されていることを除いて、参照二重特異性抗体と同じ二重特異性フォーマットをとる。当技術分野で公知の参照二重特異性抗体フォーマットの例は、 (i)対称Fcを有する二重特異性抗体、(ii)非対称Fcを有する二重特異性抗体、(iii)追加の抗原結合部分が付加された通常の抗体、(iv)二重特異性抗体断片、(v)追加の抗原結合部分が付加された通常の抗体断片、(vi)ヒトアルブミンまたはヒトアルブミン結合ペプチドが付加された二重特異性抗体を含むが、これらに限定されない。
【0188】
BsIgGは各抗原に対して一価であり、単一の宿主細胞内で2つの軽鎖と2つの重鎖を共発現させることによって産生することができる。追加のIgGは、軽鎖または重鎖のアミノ末端またはカルボキシ末端に追加の抗原結合ユニットを付加することによって二重特異性IgGを形成するように操作される。追加の抗原結合ユニットは、DVD-Ig等の単一ドメイン抗体(不対合VLまたはVH)、対抗体可変ドメイン(FvまたはscFv等)、または操作されたタンパク質スキャフォールドであってもよい。BsIgGにおける抗原結合ユニットのいずれか、特にVH-CH1/VL-CLの対は、本明細書に開示されるようにCH1をC1に、およびCLをC2に置換するように改変して、本明細書に提供される二重特異性ポリペプチド複合体を与えることができる。
【0189】
二重特異性抗体断片は、抗体に由来するが、抗体定常ドメインの一部またはすべてを欠く抗原結合断片である。このような二重特異性抗体断片の例は、例えば、単一ドメイン抗体、Fv、Fab、およびダイアボディ等を含む。本明細書で提供される二重特異性ポリペプチド複合体を提供するために、二重特異性抗体断片中の抗原結合部位(たとえば、特に対合したVH-CH1/VL-CL)を、本明細書で開示されるポリペプチド複合体(たとえば、VH-C1/CL-C2)を含むように改変することができる。
【0190】
特定の実施形態では、本明細書で提供される二重特異性ポリペプチド複合体は、全IgG分子または全IgG様分子等の「全」抗体のフォーマット、およびタンデム単鎖可変断片分子(taFvs)等の小さな組み換えフォーマット、ダイアボディ(Dbs)、単鎖ダイアボディ(scDbs)、およびこれらの様々な他の誘導体(Byrne H. et al. (2013) Trends Biotech,31(11):621-632に記載の二重特異性抗体フォーマットを参照。)に基づいている。二重特異性抗体の例は、クアドローマ、化学的に結合したFab(断片抗原結合)、およびBiTE(登録商標)(二重特異性T細胞エンゲージャー)を含むがこれらに限定されないフォーマットに基づいている。
【0191】
特定の実施形態では、本明細書で提供される二重特異性ポリペプチド複合体は、Triomab(登録商標);ハイブリッドハイブリドーマ(クアドローマ);多特異性アンチカリン(登録商標)プラットフォーム(Pieris);ダイアボディ;単鎖ダイアボディ;タンデム単鎖Fv断片;TandAbs;三重特異性Abs(Affimed);Darts(デュアルアフィニティリターゲティング、Macrogenics);二重特異性Xmab(Xencor);二重特異性T細胞エンゲージャー(Bites; Amgen; 55 kDa);トリプルボディ(Triplebody);トリボディ(Tribody)(Fab-scFv)融合タンパク質(CreativeBiolabs)多機能組換え抗体誘導;Duobody(登録商標)プラットフォーム(Genmab);ドック・ロック(Dock and lock)プラットフォーム;ノブ・イン・トゥ・ホール(KIH)プラットフォーム;ヒト化二重特異性IgG抗体(REGN1979)(Regeneron);Mab二重特異性抗体(F-Star);DVD-Ig(二重可変ドメイン免疫グロブリン)(Abbvie);カッパ-ラムダボディ(kappa-lambda body);TBTI(四価二重特異性タンデムIg);およびCrossMabから選択される二重特異性フォーマットに基づく。
【0192】
特定の実施形態では、本明細書で提供される二重特異性ポリペプチド複合体は、CrossMab;DAF(two-in-one);DA(four-in-one);DutaMab;DT-IgG;ノブ・イン・トゥ・ホール共通LC;ノブ・イン・トゥ・ホールアセンブリ;電荷対(Charge pair);SEEDボディ(SEEDbody);Triomab(登録商標);LUZ-Y;Fcab;カッパ-ラムダボディ;および直交Fab(Orthogonal Fab)を含む二重特異性IgG様抗体(BsIgG)から選択される二重特異性フォーマットに基づく。二重特異性抗体フォーマットの詳細な説明については、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Spiess C., Zhai Q. and Carter P. J. (2015) Molecular Immunology 67: 95-106を参照されたい。
【0193】
特定の実施形態では、本明細書で提供される二重特異性ポリペプチド複合体は、DVD-IgG;IgG(H)-scFv;scFv-(H)IgG;IgG(L)-scFv;scFV-(L)IgG;IgG(L,H)-Fv;IgG(H)-V;V(H)-IgG;IgG(L)-V;V(L)-IgG;KIH IgG-scFab;2scFv-IgG;IgG-2scFv;scFv4-Ig; scFv4-Ig; Zybody(商標);およびDVI-IgG(four-in-one)(同上を参照)を含む追加の抗原結合部分を有するIgG付加抗体から選択される二重特異性フォーマットに基づく。
【0194】
特定の実施形態では、本明細書で提供される二重特異性ポリペプチド複合体は、ナノボディ;ナノボディ-HAS;BiTE;ダイアボディ;DART;TandAb(登録商標);scダイアボディ;sc-ダイアボディ-CH3;ダイアボディ-CH3;トリプルボディ(Triple Body);ミニ抗体(Miniantibody);Minibody;TriBi minibody;scFv-CH3 KIH;Fab-scFv;scFv-CH-CL-scFv;F(ab’)2; F(ab’)2-scFv2;scFv-KIH;Fab-scFv-Fc;四価HCAb;scダイアボディ-Fc;ダイアボディ-Fc;タンデムscFv-Fc;およびイントラボディ(同上を参照)を含む二重特異性抗体断片から選択されるフォーマットに基づく。
【0195】
特定の実施形態では、本明細書で提供される二重特異性ポリペプチド複合体は、ドック・ロック(Dock and lock);ImmTAC;HSAbody;scダイアボディ-HAS;およびタンデムscFv-毒素(Tandem scFv-Toxin)(同上を参照)等の二重特異性フォーマットに基づく。
【0196】
特定の実施形態では、本明細書で提供される二重特異性ポリペプチド複合体は、IgG-IgG;Cov-X-Body;およびscFv1-PEG-scFv2(同上を参照)を含む二重特異性抗体コンジュゲートから選択されるフォーマットに基づく。
【0197】
特定の実施形態では、第一の抗原結合部分および第二の結合部分は、会合してIg様構造を形成することができる。Ig様構造は、抗原結合のための2つのアームと会合および安定化のための1つのステムを備えたY字型構造を有する天然抗体に似ている。天然抗体との類似点は、良好なインビボ薬物動態、所望の免疫学的応答および安定性等の様々な利点を提供することができる。本明細書に提供される第二の抗原結合部分と結合した本明細書に提供される第一の抗原結合部分を含むIg様構造は、Ig(たとえば、IgG)の熱安定性に匹敵する熱安定性を有することが見出されている。特定の実施形態では、本明細書で提供されるIg様構造は、天然IgGのそれ(that of a natural IgG)の少なくとも70%、80%、90%、95%または100%である。
【0198】
特定の実施形態では、二重特異性ポリペプチド複合体は4つのポリペプチド鎖: i)VH1-C1-ヒンジ-CH2-CH3; ii) VL1-C2; iii) VH2-CH1-ヒンジ-CH2-CH3、および iv) VL2-CLを含み、ここでC1およびC2は、少なくとも一つの非天然鎖間結合を含む二量体を形成することができ、2つのヒンジ領域および/または2つのCH3ドメインは、二量体化を促進することができる一つまたは複数の鎖間結合を形成することができる。たとえば、図14(E17R)を参照されたい。特定の実施形態では、二重特異性ポリペプチド複合体は、3つのポリペプチド鎖の対:i)VH1-CH1-VH2-C1-ヒンジ-CH2-CH3; ii)VL2-C2;および iii)VL1-CLを含み、ここでC1およびC2は、少なくとも一つの非天然鎖間結合を含む二量体を形成することができ、2つのヒンジ領域および/または2つのCH3ドメインは、二量体化を促進することができる一つまたは複数の鎖間結合を形成することができる。たとえば、図14(G25R)を参照されたい。
【0199】
PCT/CN2018/106766(WO2019/057122、たとえばその中の図1および22)は、多くの二重特異性抗体フォーマットを示しており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に開示される操作されたCAlphaおよびCBetaは、PCT/CN2018/106766号(WO2019/057122号)に記載されている二重特異性抗体フォーマットのいずれにも適用することができる。
【0200】
二重特異性複合体の抗原特異性
本明細書で提供される二重特異性複合体は、2つの抗原特異性を有する。第一および第二の抗原結合部分は、それぞれ第一および第二の抗原特異性を対象とする。
【0201】
第一および第二の抗原特異性は同一であってもよく、換言すれば、第一および第二の抗原結合部分は同じ抗原分子、または同じ抗原分子の同じエピトープに結合する。
【0202】
あるいは、第一および第二の抗原特異性は異なっていてもよい。たとえば、第一および第二の抗原結合部分は、異なる抗原に結合することができる。このような二重特異性ポリペプチド複合体は、たとえば、2つの異なる抗原を近接させ、それによってそれらの相互作用を促進する(たとえば、免疫細胞を腫瘍抗原または病原体抗原に近接させ、したがって免疫系によるそのような抗原の認識または除去を促進する)のに有用であり得る。別の例として、第一および第二の抗原結合部分は、一つの抗原の異なる(および場合により重複しない)エピトープに結合することができる。これは、標的抗原、特に変異を受けやすい抗原(たとえば、ウイルス抗原)の認識または結合を強化するのに役立ち得る。
【0203】
一部の実施形態では、本明細書で提供される二重特異性複合体の抗原特異性の一つは、T細胞特異的受容体分子および/またはナチュラルキラー細胞(NK細胞)特異的受容体分子を対象とする。一部の実施形態では、第一および第二の抗原結合部分の一方は、CD3、TCR、CD28、CD16、NKG2D、Ox40、4-1BB、CD2、CD5、またはCD95に特異的に結合することができ、他方は腫瘍関連抗原に対して特異的に結合することができる。
【0204】
一部の実施形態では、本明細書で提供される二重特異性複合体の抗原特異性の一方は、T細胞特異的受容体分子および/またはナチュラルキラー細胞(NK細胞)特異的受容体分子を対象とし、他方の抗原特異性は、腫瘍関連表面抗原を対象とする。特定の実施形態では、二重特異性複合体の第一の抗原結合部分は、T細胞特異的受容体分子および/またはナチュラルキラー細胞(NK細胞)特異的受容体分子(CD3等)に特異的に結合することができ、および第二の抗原結合部分は、腫瘍関連抗原(CD19等)に特異的に結合することができ、あるいはその逆も可能である。
【0205】
特定の実施形態では、二重特異性ポリペプチド複合体は、以下を含む4つのポリペプチド鎖を含む: i)第一のキメラ定常領域に作動可能に連結されたVH1; ii)第二のキメラ定常領域に作動可能に連結されたVL1; iii)従来の抗体重鎖定常領域に作動可能に連結されたVH2、および iv)従来の抗体軽鎖定常領域に作動可能に連結されたVL2。特定の実施形態では、第一のキメラ定常領域は、それぞれ上記で定義されたC1-ヒンジ-CH2-CH3を含むことができる。特定の実施形態では、第二のキメラ定常領域は、上で定義したように、C2を含むことができる。特定の実施形態では、従来の抗体重鎖定常領域は、それぞれ上記で定義したように、CH1-ヒンジ-CH2-CH3を含むことができる。特定の実施形態では、従来の抗体軽鎖定常領域は、上記で定義したように、CLを含むことができる。
【0206】
特定の実施形態では、二重特異性ポリペプチド複合体は、配列番号66、67、および68(表22)からなる群から選択される3つの配列の組み合わせを含み、ここで第一の抗原結合部分はPD-L1に結合し、第二の抗原結合部分は4-1BBに結合する。
【0207】
特定の実施形態では、二重特異性ポリペプチド複合体は、配列番号69、70、71、および72(表23)からなる群から選択される4つの配列の組み合わせを含み、ここで第一の抗原結合部分はHER2 D2に結合し、第二の抗原結合部分はHER2 D4に結合する。
【0208】
特定の実施形態では、二重特異性ポリペプチド複合体は、配列番号73、74、および75(表24)からなる群から選択される3つの配列の組み合わせを含み、ここで第一の抗原結合部分はIL-17に結合し、第二の抗原結合部分はIL-20に結合する。
【0209】
特定の実施形態では、二重特異性ポリペプチド複合体は、配列番号76、77、および78(表25)からなる群から選択される3つの配列の組み合わせを含み、ここで第一の抗原結合部分はIL-4に結合し、第二の抗原結合部分はIL-13に結合する。
【0210】
調製方法
本開示は、本明細書で提供されるポリペプチド複合体および二重特異性ポリペプチド複合体をコードする単離された核酸またはポリヌクレオチドを提供する。
【0211】
本明細書で使用される「核酸」または「ポリヌクレオチド」という用語は、一本鎖または二本鎖の形態のデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)およびそれらのポリマーを指す。特に限定しない限り、この用語は、参照核酸と同様の結合特性を有し、天然ヌクレオチドと同様の様式で代謝される天然ヌクレオチドの既知のアナログを含むポリヌクレオチドを包含する。他に示さない限り、特定のポリヌクレオチド配列は、明示的に示された配列だけでなく、保存的に改変されたそのバリアント(たとえば、縮重コドン置換)、アリル、オルソログ、SNP、および相補配列も暗黙的に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、一つまたは複数の選択された(またはすべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換されている配列を生成することによって達成することができる(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991); Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608 (1985);およびRossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98 (1994)を参照)。
【0212】
本明細書で提供されるポリペプチド複合体および二重特異性ポリペプチド複合体をコードする核酸またはポリヌクレオチドは、組換え技術を使用して構築することができる。この目的のために、親抗体の抗原結合部分(CDRまたは可変領域等)をコードするDNAを単離し、従来の手順を使用して(たとえば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)配列決定することができる。同様に、TCR定常領域をコードするDNAも取得することができる。一例として、可変ドメイン(VH)をコードするポリヌクレオチド配列および第一のTCR定常領域(C1)をコードするポリヌクレオチド配列が得られ、作動可能に連結されて、宿主細胞内での転写および発現が可能となり、第一のポリペプチドが生成される。同様に、VLをコードするポリヌクレオチド配列は、宿主細胞内での第二のポリペプチドの発現を可能にするために、C1をコードするポリヌクレオチド配列に作動可能に連結される。必要に応じて、一つまたは複数のスペーサーをコードするポリヌクレオチド配列も、他のコード配列に作動可能に連結されて、所望の産物の発現を可能にする。
【0213】
コードするポリヌクレオチド配列(encoding polynucleotide sequence)は、第一および第二のポリペプチドの発現または産生が実現可能であり、適切な制御下にあるように、場合により発現ベクターにおいて一つまたは複数の制御配列にさらに作動可能に連結することができる。
【0214】
コードするポリヌクレオチド配列は、当技術分野で公知の組換え技術を使用して、さらなるクローニング(DNAの増幅)または発現のためにベクターに挿入することができる。別の実施形態では、本明細書で提供されるポリペプチド複合体および二重特異性ポリペプチド複合体は、当技術分野で知られている相同組換えによって生成され得る。多くのベクターが利用可能である。ベクター成分は一般に、シグナル配列、複製起点、一つまたは複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター(たとえば、SV40、CMV、EF-1α)、および転写終結配列のうちの一つまたは複数を含むが、これらに限定されない。
【0215】
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、タンパク質をコードするポリヌクレオチドが作動可能に挿入され、そのタンパク質の発現をもたらすことができるビヒクルを指す。通常、構築物は適切な調節配列も含む。たとえば、ポリヌクレオチド分子は、ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列および/または部位特異的改変ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の5’隣接領域に位置し、ポリヌクレオチド分子は、ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列および部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の5'隣接領域に位置し、宿主細胞内で所望の転写物/遺伝子を発現することができる様式でコード配列に作動可能に連結された調節配列を含むことができる。ベクターを使用して宿主細胞を形質転換、形質導入、またはトランスフェクトし、それが宿主細胞内で保有する遺伝因子の発現をもたらすことができる。ベクターの例は、プラスミド、ファージミド、コスミド、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、またはP1由来人工染色体(PAC)等の人工染色体、ラムダファージまたはM13ファージ等のバクテリオファージ、および動物ウイルスを含む。ベクターとして使用される動物ウイルスのカテゴリーは、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス等)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、およびパポバウイルス(SV40等)を含む。ベクターは、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択エレメント、およびレポーター遺伝子を含む、発現を制御するための様々なエレメントを含んでもよい。さらに、ベクターは複製起点を含んでもよい。ベクターは、ウイルス粒子、リポソーム、またはタンパク質コーティングを含むがこれらに限定されない、細胞への侵入を補助する物質も含んでいてもよい。
【0216】
一部の実施形態では、ベクター系は、哺乳動物系、細菌系、酵母系等を含み、pALTER、pBAD、pcDNA、pCal、pL、pET、pGEMEX、pGEX、pCI、pCMV、pEGFP、pEGFT、pSV2、pFUSE、pVITRO,pVIVO、pMAL、pMONO、pSELECT、pUNO、pDUO、Psg5L、pBABE、pWPXL、pBI、p15TV-L、pPro18、pTD、pRS420、pLexA、pACT2.2等、および他の研究室ベクター(laboratorial vector)および市販のベクターのようなプラスミドを含むが、これらに限定されない。適切なベクターは、プラスミドベクターまたはウイルスベクター(たとえば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)を含んでもよい。
【0217】
本明細書に提供されるポリヌクレオチド配列を含むベクターは、クローニングまたは遺伝子発現のために宿主細胞に導入することができる。本明細書で使用される「宿主細胞」という語句は、外因性ポリヌクレオチドおよび/またはベクターが導入された細胞を指す。
【0218】
本明細書のベクターにおいてDNAをクローニングまたは発現するのに適した宿主細胞は、上記の原核生物、酵母、または高等真核生物の細胞である。この目的に適した原核生物は、グラム陰性菌またはグラム陽性菌等の真正細菌、たとえば大腸菌(E.coli)等のエシェリキア属、エンテロバクター属、エルウィニア属、クレブシエラ属、プロテウス属、ネズミチフス菌、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescans)等のセラチア属、シゲラ属、ならびに枯草菌(B. subtilis)およびバチルス・リケニフォルミス(B. licheniformis)等のバチルス属、シュードモナス・エルギノーザ(P. aeruginosa)等のシュードモナス属、およびストレプトマイセス属等の腸内細菌科(Enterobacteriaceae)を含む。
【0219】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母菌等の真核微生物も、ポリペプチド複合体および二重特異性ポリペプチド複合体をコードするベクターの適切なクローニングまたは発現宿主である。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、または一般的なパン酵母は、下等真核生物の宿主微生物の中で最も一般的に使用される。しかしながら、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クルイベロミセス・ラクティス(K.lactis)、クルイベロミセス・フラジリス(K.fragilis)(ATCC 12,424)、クルイベロミセス・ブルガリクス(K.bulgaricus)(ATCC 16,045)、クルイベロミセス・ウィケラミイ(K.wickeramii)(ATCC 24,178)、クルイベロミセス・ワルティ(K.waltii)(ATCC 56,500)、クルイベロミセス・ドロソフィラム(K.drosophilarum)(ATCC 36,906)、クルイベロミセス・サーモトレランス(K.thermotolerans)、およびクルイベロミセス・マルシアナス(K.marxianus)等のクルイベロミセス属の宿主;ヤロウィア属(EP 402,226);ピキア・パストリス(Pichia pastoris)(EP 183,070);カンジダ;トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesia)(EP 244,234);ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa);シュワンニオミセス・オシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)等のシュワンニオミセス属;ならびにニューロスポラ属、ペニシリウム属、トリポクラジウム属、およびアスペルギルス・ニデュランス(A.nidulans)およびアスペルギルス・ニガー(A.niger)等の糸状菌等の他の多くの属、種、および株も一般に入手可能であり、本明細書において有用である。
【0220】
グリコシル化ポリペプチド複合体、本明細書で提供される二重特異性ポリペプチド複合体の発現に適切な宿主細胞は、多細胞生物に由来する。無脊椎動物細胞の例は、植物細胞および昆虫細胞を含む。多数のバキュロウイルス株およびバリアント、およびヨトウガ[スポドプテラ・フンギペルダ(Spodoptera fragiperda)](毛虫)、ネッタイシマカ[アエデス・アエジプチ(Aedes aegypti)](蚊)、ヒトスジシマカ[アエデス・アルボピクツス(Aedes albopictus)](蚊)、キイロショウジョウバエ[ドロソフィラ・メラノガスター(Drosophila melanogaster)](ショウジョウバエ)、カイコ[ボンビス・モリ(Bombyx mori)]等の宿主由来の対応する許容昆虫宿主細胞(permissive insect host cell)が同定されている。トランスフェクションのための様々なウイルス株、たとえば、オートグラファ・カリフォルニアNPV(Autographa californica NPV)のL-1バリアントおよびカイコNPV(Bombyx mori NPV)のBm-5株が公的に入手可能であり、そのようなウイルスを、本開示による本明細書におけるウイルスとして使用することができ、特に、ヨトウガ[スポドプテラ・フンギペルダ(Spodoptera fragiperda)]細胞のトランスフェクション用に使用することができる。ワタ、トウモロコシ、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト、およびタバコの植物細胞培養物も宿主として利用することができる。
【0221】
しかし、脊椎動物細胞への関心が最も高く、培養(組織培養)中での脊椎動物細胞の増殖はルーチン的な手順となっている。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40(COS-7, ATCC CRL 1651)によって形質転換されたサル腎臓CV1株;Expi293等のヒト胎児腎臓株(浮遊培養での増殖のためにサブクローン化された293または293細胞、Graham et al., J. Gen Virol. 36:59 (1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK, ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、CHO, Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980));マウスのセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod. 23:243-251 (1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76, ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸がん細胞(HELA, ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK, ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A, ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138, ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2, HB 8065);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562, ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982));MRC5細胞;FS4細胞;およびヒト肝がん株(Hep G2)である。
【0222】
宿主細胞は、上記の発現ベクターまたはクローニングベクターで形質転換され、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、またはクローニングベクターの増幅のために適切に改変された従来の栄養培地中で培養することができる。
【0223】
本明細書で提供されるポリペプチド複合体および二重特異性ポリペプチド複合体の産生のために、発現ベクターで形質転換された宿主細胞を様々な培地で培養することができる。ハムF10培地(Sigma)、最小必須培地(Minimal Essential Medium ;MEM)(Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、およびダルベッコ改変イーグル培ti(DMEM)(Sigma)等の市販の培地は、宿主細胞の培養に適している。さらに、Ham et al., Meth. Enz. 58:44 (1979), Barnes et al., Anal. Biochem. 102:255 (1980), 米国特許第4,767,704号;第4,657,866号;第4,927,762号;第4,560,655号;または第5,122,469号;WO90/03430号;WO87/00195号;または米国特許登録番号第30,985号(U.S. Pat. Re. 30,985)で記載されている培地のいずれかを宿主細胞の培養培地として使用することもできる。これらの培地には、必要に応じて、ホルモンおよび/または他の成長因子(インスリン、トランスフェリン、または上皮成長因子等)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸塩等)、緩衝液(HEPES等)、ヌクレオチド(アデノシンおよびチミジン等)、抗生物質(ゲンタマイシン(商標)等の薬物)、微量元素(通常、マイクロモル範囲の最終濃度で存在する無機化合物として定義される)、およびグルコースまたは同等のエネルギー源を補充することができる。他の必要なサプリメントも、当業者に知られている適切な濃度で含めることができる。温度、pH等の培養条件は、発現のために選択された宿主細胞で以前に使用されたものであり、当業者には明らかであろう。
【0224】
一態様では、本開示は、本明細書に提供されるポリペプチド複合体および二重特異性ポリペプチド複合体を発現する方法を提供し、この方法は、ポリペプチド複合体または二重特異性ポリペプチド複合体が発現される条件下で、本明細書に提供される宿主細胞を培養することを含む。
【0225】
特定の実施形態では、本開示は、本明細書で提供されるポリペプチド複合体を産生する方法であって、以下を含む、方法を提供する: a) 宿主細胞に以下を導入する工程: N末端からC末端まで、第一のTCR定常領域(C1)に作動可能に連結された第一の抗体の第一の重鎖可変領域(VH)を含む第一のポリペプチドをコードする第一のポリヌクレオチド、および N末端からC末端まで、第二のTCR定常領域(C2)に作動可能に連結された第一の抗体の第一の軽鎖可変ドメイン(VL)を含む第二のポリペプチドをコードする第二のポリヌクレオチド、 ここで: C1およびC2は、C1とC2の間に少なくとも一つの非天然鎖間結合を含む二量体を形成することができ、該非天然鎖間結合はC1とC2との二量体を安定化することができる、および第一の抗体は第一の抗原特異性を有する; b) 宿主細胞にポリペプチド複合体を発現させる工程。
【0226】
特定の実施形態では、本開示は、本明細書で提供される二重特異性ポリペプチド複合体を産生する方法であって、以下を含む、方法を提供する: a) 宿主細胞に以下を導入する工程: N末端からC末端まで、第一のTCR定常領域(C1)に作動可能に連結された第一の抗体の第一の重鎖可変領域(VH)を含む第一のポリペプチドをコードする第一のポリヌクレオチド、および
N末端からC末端まで、第二のTCR定常領域(C2)に作動可能に連結された第一の抗体の第一の軽鎖可変ドメイン(VL)を含む第二のポリペプチドをコードする第二のポリヌクレオチド、および第二の抗原結合部分をコードする一つまたは複数(たとえば、1つまたは2つ)の追加のポリヌクレオチド、ここで: C1およびC2は、C1に含まれる第一の変異残基とC2に含まれる第二の変異残基との間に少なくとも一つの非天然鎖間結合を含む二量体を形成することができ、非天然鎖間結合はC1とC2との二量体を安定化することができ、第一の抗原結合部分および第二の抗原結合部分は、第一の抗原結合部分が天然のFab対応物である場合に比べてミスペアリングを減少させる、および第一の抗体は第一の抗原特異性を有し、第二の抗体は第二の抗原特異性を有する、 b) 宿主細胞が二重特異性ポリペプチド複合体を発現できるようにする工程。
【0227】
特定の実施形態では、この方法は、ポリペプチド複合体を単離する工程をさらに含む。
【0228】
組換え技術を使用する場合、本明細書で提供されるポリペプチド複合体、二重特異性ポリペプチド複合体は、細胞内で、細胞膜周辺腔で産生することができ、または培地に直接分泌することができる。生成物が細胞内で生成される場合、最初の工程として、宿主細胞または溶解断片のいずれかの微粒子破片が、たとえば遠心分離または限外濾過によって除去される。Carter et al., Bio/Technology 10:163-167(1992)は、大腸菌の細胞膜周辺腔に分泌される抗体を単離する手順を記載している。簡単に説明すると、細胞ペーストを酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、およびフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下で約30分間かけて解凍する。細胞破片は遠心分離によって除去することができる。生成物が培地中に分泌される場合、そのような発現系からの上清は、通常、最初に市販のタンパク質濃縮フィルター、たとえばAmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用して濃縮される。PMSF等のプロテアーゼ阻害剤は、タンパク質分解を阻害するために前述の工程のいずれかに含めることができ、外来性汚染物質の増殖を防ぐために抗生物質を含めることができる。
【0229】
細胞から調製される、本明細書に提供されるポリペプチド複合体および二重特異性ポリペプチド複合体は、たとえば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、DEAEセルロースイオン交換クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム沈殿、塩析、およびアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製することができ、好ましい精製技術はアフィニティークロマトグラフィーである。
【0230】
本明細書で提供されるポリペプチド複合体または二重特異性ポリペプチド複合体が免疫グロブリンFcドメインを含む場合、ポリペプチド複合体中に存在するFcドメインの種およびアイソタイプに応じて、プロテインAを親和性リガンドとして使用することができる。プロテインAは、ヒトγ1、γ2、またはγ4重鎖に基づくポリペプチド複合体の精製に使用することができる(Lindmark et al., J. Immunol. Meth. 62:1-13 (1983))。プロテインGは、すべてのマウスアイソタイプおよびヒトγ3に対して推奨される(Guss et al., EMBO J. 5:1567 1575 (1986))。アフィニティーリガンドが結合するマトリックスは、ほとんどの場合アガロースであるが、他のマトリックスも使用することができる。制御多孔質ガラスやポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の機械的に安定したマトリックスを使用すると、アガロースで達成できる流量および処理時間よりも速い流量およびより短い処理時間が可能になる。
【0231】
本明細書で提供されるポリペプチド複合体または二重特異性ポリペプチド複合体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX樹脂(J.T.Baker、ニュージャージー州フィリップスバーグ)が精製に有用である。イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンでのクロマトグラフィー陰イオンまたは陽イオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラム等)でのセファロース(商標)クロマトグラフィー[chromatography on heparin SEPHAROSE(商標) chromatography on an anion or cation exchange resin (such as a polyaspartic acid column)]、等電点電気泳動、SDS-PAGE、および硫酸アンモニウム沈殿も、回収する抗体に応じて使用することができる。
【0232】
任意の予備精製工程に続いて、目的のポリペプチド複合体および夾雑物を含む混合物を、約2.5~4.5のpHで溶出緩衝液を使用する、好ましくは低塩濃度(たとえば、約0~0.25Mの塩)で行う、低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーに供することができる。
【0233】
特定の実施形態では、本明細書で提供される二重特異性ポリペプチド複合体は、従来の方法を使用して高収率で容易に精製することができる。二重特異性ポリペプチド複合体の利点の一つは、重鎖可変ドメイン配列と軽鎖可変ドメイン配列との間のミスペアリングが大幅に減少することである。これにより、不要な副生成物の生成が減少し、比較的単純な精製プロセスを使用して高純度の生成物を高収率で得ることが可能になる。
【0234】
誘導体
特定の実施形態では、ポリペプチド複合体または二重特異性ポリペプチド複合体は、所望のコンジュゲートとの結合のベースとして使用することができる。
【0235】
様々なコンジュゲートが、本明細書に提供されるポリペプチド複合体または二重特異性ポリペプチド複合体に結合され得ることが企図される(たとえば、“Conjugate Vaccines”, Contributions to Microbiology and Immunology, J. M. Cruse and R. E. Lewis, Jr. (eds.), Carger Press, New York, (1989)を参照)。これらのコンジュゲートは、他の方法の中でも、共有結合、親和性結合、インターカレーション、配位結合、複合体形成、会合、混合、または付加によって、ポリペプチド複合体または二重特異性ポリペプチド複合体に結合され得る。
【0236】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるポリペプチド複合体または二重特異性ポリペプチド複合体は、一つまたは複数の複合体への結合に利用することができる、エピトープ結合部分の外側に特定の部位を含むように操作してもよい。たとえば、そのような部位は、コンジュゲートへの共有結合を促進するために、たとえばシステインまたはヒスチジン残基等の一つまたは複数の反応性アミノ酸残基を含んでいてもよい。
【0237】
特定の実施形態では、ポリペプチド複合体または二重特異性ポリペプチド複合体は、直接的に、またはたとえば別のコンジュゲートまたはリンカーを通じて間接的にコンジュゲートに結合されていてもよい。
【0238】
たとえば、システイン等の反応性残基を有するポリペプチド複合体または二重特異性ポリペプチド複合体は、反応性基がたとえばマレイミド、ヨードアセトアミド、ピリジルジスルフィド、または他のチオール反応性結合パートナー(conjugation partner)であるチオール反応性薬剤に結合されていてもよい(Haugland,2003,Molecular Probes Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals,Molecular Probes, Inc.;Brinkley,1992, Bioconjugate Chem.3:2;Garman,1997,Non-Radioactive Labelling: A Practical Approach, Academic Press,London;Means(1990) Bioconjugate Chem.1:2; Hermanson, G. in Bioconjugate Techniques(1996) Academic Press,San Diego,pp.40-55,643-671)。
【0239】
別の例として、ポリペプチド複合体または二重特異性ポリペプチド複合体をビオチンに結合させ、次にアビジンに結合した第二のコンジュゲートに間接的に結合させることができる。さらに別の例として、ポリペプチド複合体または二重特異性ポリペプチド複合体は、結コンジュゲートにさらに結合するリンカーに結合することができる。リンカーの例は、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(アジポイミド酸ジメチルHCl等)、活性エステル(スベリン酸ジスクシンイミジル等)、アルデヒド(グルタルアルデヒド等)、ビスアジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン等)、ジイソシアネート(トルエン2,6-ジイソシアネート等)、およびヒスチジン活性フッ素化合物[his-active fluorine](1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン等)を含む。特に好ましいカップリング剤は、ジスルフィド結合を提供する、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)(Carlsson et al., Biochem. J. 173:723-737 (1978))およびN-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエート(SPP)を含む。
【0240】
コンジュゲートは、検出可能な標識、薬物動態修飾部分(pharmacokinetic modifying moiety)、精製部分、または細胞傷害性部分であってもよい。検出可能な標識の例は、蛍光標識(たとえば、フルオレセイン、ローダミン、ダンシル、フィコエリトリン、またはテキサスレッド)、酵素基質標識(たとえば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼまたはβ-D-ガラクトシダーゼ)、放射性同位体(たとえば、123I、124I、125I、131I、35S、H、111In、112In、14C、64Cu、67Cu、86Y、88Y、90Y、177Lu、211At、186Re、188Re、153Sm、212Bi、および32P、他のランタニド)、発光ラベル、発色団部分、ジゴキシゲニン、ビオチン/アビジン、検出用のDNA分子または金を含んでもよい。特定の実施形態では、コンジュゲートは、抗体の半減期を延長するのに役立つPEG等の薬物動態修飾部分であってもよい。他の適切なポリマーは、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー等を含む。特定の実施形態では、コンジュゲートは、磁気ビーズ等の精製部分であってもよい。「細胞傷害性部分」は、細胞に有害な物質、または細胞に損傷を与えるか細胞を殺す可能性のある任意の物質であってもよい。細胞傷害性部分の例は、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxy anthracin dione)、ミトキサントロン、ミスラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシンおよびそのアナログ、代謝拮抗剤(たとえば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン(5-fluorouracil decarbazine))、アルキル化剤(たとえば、メクロレタミン、チオエパクロランブシル(thioepa chlorambucil)、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン (CCNU)、シクロホスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびcis-ジクロロジアミンプラチナ(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン系(たとえば、ダウノルビシン(旧ダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(たとえば、ダクチノマイシン(旧アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミスラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、および有糸分阻害薬(たとえば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)を含むが、これらに限定されない。
【0241】
抗体、免疫グロブリンまたはその断片等のタンパク質へのコンジュゲートの結合のための方法は、たとえば、米国特許第5,208,020号;米国特許第6,441,163号;WO2005037992号;WO2005081711号; およびWO2006/034488号に見出され、これらはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0242】
医薬組成物
本開示は、本明細書で提供されるポリペプチド複合体または二重特異性ポリペプチド複合体および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物も提供する。
【0243】
「薬学的に許容される」という用語は、指定された担体、ビヒクル、希釈剤、賦形剤、および/または塩が、一般に、製剤を構成する他の成分と化学的および/または物理的に適合し、そのレシピエントと生理学的に適合することを示す。
【0244】
「薬学的に許容される担体」とは、生物活性が許容され、対象にとって非毒性である、活性成分以外の医薬製剤中の成分を指す。本明細書に開示される医薬組成物で使用するための薬学的に許容される担体は、たとえば、薬学的に許容される液体、ゲル、または固体担体、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗菌剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、麻酔薬、懸濁剤/分散剤、封鎖剤またはキレート剤、希釈剤、アジュバント、賦形剤、または非毒性の補助物質、当該技術分野で知られている他の成分、またはそれらの様々な組み合わせを含む。
【0245】
適切な成分は、たとえば、抗酸化剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、緩衝剤、保存剤、滑沢剤、香味料、増粘剤、着色剤、乳化剤、または糖およびシクロデキストリン等の安定化剤を含んでもよい。適切な抗酸化剤は、たとえば、メチオニン、アスコルビン酸、EDTA、チオ硫酸ナトリウム、白金、カタラーゼ、クエン酸、システイン、チオグリセロール、チオグリコール酸、チオソルビトール、ブチルヒドロキシアニソール(butylated hydroxanisol)、ブチルヒドロキシトルエン、および/または没食子酸プロピルを含んでもよい。本明細書に開示されるように、本明細書に提供される医薬組成物中にメチオニン等の一つまたは複数の抗酸化剤を含めると、ポリペプチド複合体または二重特異性ポリペプチド複合体の酸化が減少する。この酸化の減少により、結合親和性の損失が防止または軽減され、それによってタンパク質の安定性が向上し、保存期間が最大化される。したがって、特定の実施形態では、本明細書に開示されるポリペプチド複合体または二重特異性ポリペプチド複合体およびメチオニン等の一つまたは複数の抗酸化剤を含む組成物が提供される。
【0246】
さらに説明すると、薬学的に許容される担体は、たとえば、塩化ナトリウム注射液、リンガー注射液、等張ブドウ糖注射液、滅菌水注射液、またはブドウ糖加乳酸リンゲル注射液等の水性ビヒクル、植物由来の固定油、綿実油、コーン油、ゴマ油、または落花生油等の非水性ビヒクル、静菌濃度または静真菌濃度の抗菌剤、塩化ナトリウムまたはブドウ糖等の等張剤、リン酸緩衝液またはクエン酸緩衝液等の緩衝液、重硫酸ナトリウム等の抗酸化剤、塩酸プロカイン等の局所麻酔薬、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはポリビニルピロリドン等の懸濁剤および分散剤、ポリソルベート80(TWEEN(登録商標)-80)等の乳化剤、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)またはEGTA(エチレングリコール四酢酸)等の封鎖剤またはキレート剤、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、または乳酸を含んでもよい。担体として利用される抗菌剤は、フェノールまたはクレゾール、水銀剤(mercurial)、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルおよびプロピルp-ヒドロキシ安息香酸エステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、および塩化ベンゼトニウムを含む複数回用量の容器内の医薬組成物に添加することができる。適切な賦形剤は、たとえば、水、生理食塩水、ブドウ糖、グリセロール、またはエタノールを含む。適切な非毒性補助物質は、たとえば、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、安定化剤、溶解促進剤、または酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート、またはシクロデキストリンを含む。
【0247】
医薬組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、丸剤、カプセル剤、錠剤、徐放性製剤、または散剤であってもよい。経口製剤は、医薬品グレードのマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等の標準的な担体を含んでもよい。
【0248】
特定の実施形態では、医薬組成物は注射可能な組成物に製剤化される。注射可能な医薬組成物は、たとえば溶液、懸濁剤、乳剤、または液剤、または懸濁剤、乳剤、もしくは液剤を生成するのに適した固体形態等の任意の従来の形態で調製することができる。注射用製剤は、すぐに注射することができる滅菌および/または非発熱性の液剤、使用直前に溶媒と混合することができる凍結乾燥粉末等の滅菌乾燥可溶性製品(皮下注射錠剤(hypodermic tablet)を含む)、すぐに注射することができる滅菌懸濁剤、使用直前にビヒクルとすぐに混合できる滅菌乾燥不溶性製品、滅菌および/または非発熱性乳剤を含んでもよい。溶液は水性であっても非水性であってもよい。
【0249】
特定の実施形態では、単位用量の非経口製剤は、アンプル、バイアル、または針付きの注射器に包装される。当技術分野で知られ実施されているように、非経口投与のためのすべての製剤は無菌であるべきであり、発熱性ではないべきである。
【0250】
特定の実施形態では、滅菌凍結乾燥粉末は、本明細書に開示されるポリペプチド複合体または二重特異性ポリペプチド複合体を適切な溶媒に溶解することによって調製される。溶媒は、粉末または粉末から調製される再構成溶液の安定性を改善する賦形剤または他の薬理学的成分を含んでもよい。使用できる賦形剤は、水、ブドウ糖、ソルビタール、フルクトース、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、スクロース、または他の適切な薬剤を含むが、これらに限定されない。溶媒は、一実施形態では、ほぼ中性のpHで、クエン酸塩、リン酸ナトリウムもしくはリン酸カリウム、または当業者に公知の他のそのような緩衝液等の緩衝液を含有してもよい。続いて溶液を滅菌濾過し、続いて当業者に公知の標準条件下で凍結乾燥することにより、望ましい製剤が得られる。一実施形態では、得られた溶液は、凍結乾燥のためにバイアルに分配される。各バイアルは、本明細書で提供されるポリペプチド複合体、二重特異性ポリペプチド複合体、またはそれらの組成物の単回投与量または複数回投与量を含むことができる。正確な試料の採取および正確な投与を容易にするために、1回の用量または一連の用量に必要な量より少量(たとえば、約10%)を超える量をバイアルに過剰充填することは許容される。凍結乾燥粉末は、約4℃から室温等の適切な条件下で保存することができる。
【0251】
凍結乾燥粉末を注射用水で再構成すると、非経口投与に使用するための製剤が提供される。一実施形態では、再構成のために、滅菌および/または非発熱性の水、または他の液体の適切な担体が凍結乾燥粉末に添加される。正確な量は、選択された治療法によって異なり、経験的に決定することができる。
【0252】
治療方法
治療有効量の本明細書で提供されるポリペプチド複合体または二重特異性ポリペプチド複合体を、それを必要とする対象に投与し、それによって状態または障害を治療または予防することを含む、治療方法も提供される。特定の実施形態では、対象は、本明細書で提供されるポリペプチド複合体または二重特異性ポリペプチド複合体に応答する可能性が高い障害または状態を有すると同定されている。
【0253】
本明細書で使用される状態の「治療すること(treating)」または「治療(treatment)」は、状態を予防または緩和すること、状態の発症または発症速度を遅らせること、状態を発症するリスクを低減すること、状態に関連する症状の発現を予防または遅延すること、状態に関連する症状の軽減または終了、状態の完全または部分的な後退の生成、状態の治癒、またはそれらの組み合わせを含む。
【0254】
本明細書で提供されるポリペプチド複合体および二重特異性ポリペプチド複合体の治療有効量は、たとえば、対象の体重、年齢、過去の病歴、現在の投薬、健康状態、交差反応の可能性、アレルギー、過敏症、および有害な副作用、ならびに投与経路および疾患の進行の程度等の当技術分野で知られている様々な要因に依存するであろう。用量は、これらおよび他の状況または要件によって示されるように、当業者(たとえば、医師または獣医師)によって比例的に減少または増加することができる。
【0255】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるポリペプチド複合体または二重特異性ポリペプチド複合体は、約0.01mg/kg~約100mg/kgの治療有効量で投与することができる(たとえば、約0.01mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約55mg/kg、約60mg/kg、約65mg/kg、約70mg/kg、約75mg/kg、約80mg/kg、約85mg/kg、約90mg/kg、約95mg/kg、または約100mg/kg)。これらの実施形態の特定のものでは、本明細書で提供されるポリペプチド複合体または二重特異性ポリペプチド複合体は、約50mg/kg以下の用量で投与され、これらの実施形態の特定のものでは、用量は10mg/kg以下、5mg/kg以下、1mg/kg以下、0.5mg/kg以下、または0.1mg/kg以下である。特定の実施形態では、投与量は治療の過程で変化し得る。たとえば、特定の実施形態では、初回投与量はその後の投与量よりも高くてもよい。特定の実施形態では、投与量は、対象の応答に応じて治療期間にわたって変化し得る。
【0256】
投与計画は、最適な所望の応答(たとえば、治療応答)を提供するように調整することができる。たとえば、単回用量を投与してもよいし、時間をかけて数回に分けて投与してもよい。
【0257】
本明細書で提供されるポリペプチド複合体または二重特異性ポリペプチド複合体は、たとえば、非経口(たとえば、皮下、腹腔内、静脈内注入、筋肉内または皮内注射を含む静脈内注射)または非非経口[non-parenteral](たとえば、経口、鼻腔内、眼内、舌下、直腸、または局所)経路等の当技術分野で知られている任意の経路によって投与することができる。
【0258】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるポリペプチド複合体または二重特異性ポリペプチド複合体によって治療される状態または障害は、がんまたはがん性状態、自己免疫疾患、感染症および寄生虫性疾患、心血管疾患、神経障害、精神神経状態(neuropsychiatric condition)、傷害、炎症、または凝固障害である。
【0259】
がんに関して、「治療すること(treating)」または「治療(treatment)」は、新生物または悪性細胞の成長、増殖、または転移を予防または遅らせること、新生物または悪性細胞の成長、増殖、または転移の発生を予防または遅らせること、またはそれらの一部の組み合わせを指し得る。腫瘍に関して、「治療すること(treating)」または「治療(treatment)」は、腫瘍の全部または一部を根絶すること、腫瘍の増殖(tumor growth)および転移を予防または遅らせること、腫瘍の発達(development of a tumor)を予防または遅らせること、またはそれらの一部の組み合わせを含む。
【0260】
たとえば、がんを治療するための本明細書に開示されるポリペプチド複合体または二重特異性ポリペプチド複合体の使用に関して、治療有効量は、腫瘍の全部または一部を根絶することができる、腫瘍を予防または遅らせることができる、がん性状態を媒介する細胞の成長または増殖を予防することができる、腫瘍細胞の転移を予防することができる、腫瘍またはがん性状態に関連する症状またはマーカーを改善することができる、腫瘍またはがん性状態の発症を予防または遅らせることができる、またはそれらの一部の組み合わせを可能にする、ポリペプチド複合体の用量または濃度である。
【0261】
特定の実施形態では、状態および障害は、腫瘍およびがん、たとえば、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、腎細胞がん、結腸直腸がん、卵巣がん、乳がん、膵臓がん、胃がん、膀胱がん、食道がん、中皮腫、黒色腫、頭頸部がん、甲状腺がん、肉腫、前立腺がん、グリア芽腫、子宮頸がん、胸腺がん、白血病、リンパ腫、骨髄腫、菌状息肉腫(mycoses fungoids)、メルケル細胞がん、古典的ホジキンリンパ腫(CHL)、原発性縦隔大細胞リンパ腫、T細胞/組織球豊富B細胞リンパ腫(T-cell/histiocyte-rich B-cell lymphoma)、EBV陽性および陰性PTLD、およびEBV関連びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、形質芽球性リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫等のその他の血液悪性腫瘍、上咽頭がん、およびHHV8関連原発性滲出性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、原発性CNSリンパ腫、脊髄軸腫瘍(spinal axis tumor)、脳幹神経膠腫等の中枢神経系(CNS)の新生物を含む。
【0262】
特定の実施形態では、状態および障害は、B細胞リンパ腫、場合によりホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫等のCD19関連疾患または状態を含み、ここで非ホジキンリンパ腫は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫(MZL)、粘膜関連リンパ組織リンパ腫(MALT)、小リンパ球性リンパ腫(慢性リンパ性白血病、CLL)、またはマントル細胞リンパ腫(MCL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、またはワルデンストロムマクログロブリン血症(WM)を含む。
【0263】
特定の実施形態では、状態および障害は、CTLA-4および/またはPD-1による免疫応答の制御を介して治療することができる過剰増殖状態または感染症を含む。過剰増殖状態の例は、固形腫瘍、血液がん、軟部組織腫瘍、および転移性病変を含むが、これらに限定されない。
【0264】
ポリペプチド複合体または二重特異性ポリペプチド複合体は、単独で投与してもよいし、一つまたは複数の追加の治療手段または薬剤と組み合わせて投与してもよい。
【0265】
特定の実施形態では、がん、腫瘍、または増殖性疾患の治療に使用される場合、本明細書で提供されるポリペプチド複合体または二重特異性ポリペプチド複合体は、がんの治療のための化学療法、放射線療法、手術(たとえば、腫瘍切除術)、一つまたは複数の制吐薬、または化学療法から生じる合併症の他の治療法、またはがんまたは関連する何らかの医学的障害の治療に使用するための他の治療薬と組み合わせて投与することができる。本明細書で使用される「組み合わせて投与される」は、同じ医薬組成物の一部として同時に、別個の組成物として同時に、または別個の組成物として異なるタイミングで投与することを含む。別の薬剤の前または後に投与される組成物は、組成物と第二の薬剤が異なる経路を介して投与される場合でも、本明細書で使用される表現のように、その薬剤と「組み合わせて」投与されるとみなされる。可能な場合、本明細書で提供されるポリペプチド複合体または二重特異性ポリペプチド複合体と組み合わせて投与される追加の治療薬は、追加の治療薬の製品情報シートに記載されているスケジュールに従って、または米医薬品便覧[Physicians‘ Desk Reference](Physicians’ Desk Reference, 70th Ed (2016))または当技術分野において公知のプロトコルに従って投与される。
【0266】
特定の実施形態では、治療薬は、がんに対する免疫応答を誘導または増強することができる。たとえば、腫瘍ワクチンは、特定の腫瘍またはがんに対する免疫応答を誘導するために使用することができる。サイトカイン療法は、免疫系への腫瘍抗原の提示を強化するために使用することもできる。サイトカイン療法の例は、インターフェロン-α、-β、-γなどのインターフェロン、マクロファージ-CSF、顆粒球マクロファージCSF、および顆粒球-CSF等のコロニー刺激因子、IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、およびIL-12等のインターロイキン、TNF-αおよびTNF-β等の腫瘍壊死因子を含むが、これらに限定されない。免疫抑制標的を不活性化する薬剤、たとえば、TGF-ベータ阻害剤、IL-10阻害剤、およびFasリガンド阻害剤も使用することができる。別の薬剤グループは、腫瘍またはがん細胞に対する免疫応答を活性化する薬剤、たとえば、T細胞活性化を増強する薬剤(たとえば、CTLA-4、ICOS、およびOX-40等のT細胞共刺激分子のアゴニスト)、および樹状細胞機能および抗原提示を増強する薬剤を含む。
【0267】
キット
本開示はさらに、本明細書で提供されるポリペプチド複合体または二重特異性ポリペプチド複合体を含むキットを提供する。一部の実施形態では、キットは、生体試料中の一つまたは複数の対象標的の存在もしくはレベルを検出するか、またはそれを捕捉もしくは濃縮するのに有用である。生体試料、は細胞または組織を含んでもよい。
【0268】
一部の実施形態では、キットは、検出可能な標識と結合した、本明細書で提供されるポリペプチド複合体または二重特異性ポリペプチド複合体を含む。特定の他の実施形態では、キットは、本明細書で提供される非標識ポリペプチド複合体または二重特異性ポリペプチド複合体を含み、本明細書で提供される非標識ポリペプチド複合体または二重特異性ポリペプチド複合体に結合することができる二次標識抗体をさらに含む。キットはさらに、使用説明書、およびキット内の各構成要素を分離するパッケージを含んでもよい。
【0269】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるポリペプチド複合体または二重特異性ポリペプチド複合体は、基板またはデバイスと結合される。有用な基質またはデバイスは、たとえば、磁気ビーズ、マイクロタイタープレート、または試験紙であってもよい。このようなものは、結合アッセイ(ELISA等)、イムノグラフィーアッセイ、生体試料中の標的分子の捕捉または濃縮に役立ち得る。
【0270】
以下の実施例は、本開示をより良く説明するために提供されるものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。以下に記載されるすべての特定の組成物、材料、および方法は、全部または一部が、本開示の範囲内に含まれる。これらの特定の組成物、材料、および方法は、本発明を限定することを意図したものではなく、単に本発明の範囲内に含まれる特定の実施形態を例示することを目的としている。当業者は、発明能力を発揮することなく、また本発明の範囲から逸脱することなく、同等の組成物、材料、および方法を開発することができる。本開示の範囲内に留まりながら、本明細書に記載の手順において多くの変形を行うことができることが理解されるであろう。このような変形例が本開示の範囲内に含まれることが発明者の意図である。
【実施例1】
【0271】
1. 方法
1.1. 表1および10に例示される二重特異性抗体の生成
VL、VH、Ck、およびCH1をそれぞれコードするポリヌクレオチドを、既存のインハウスDNA鋳型からPCRによって増幅した。CAlphaおよびCBeta領域をコードするポリヌクレオチドは、Genewiz Inc.によって合成された。抗体のネイティブまたはキメラ軽鎖配列をコードするポリヌクレオチドを、CMVプロモーターおよびカッパまたはラムダシグナルペプチドを含む線状ベクターに挿入した。
【0272】
抗標的1 VH-CH1および抗標的2 VH-CBetaのDNA断片を、フォーマット、たとえばE17RおよびG25Rによる(G4S)nリンカーを有するヒトIgG1またはヒトIgG4(S228P)定常領域CH2-CH3を含む線状化ベクターに挿入した。たとえば、(G4S)nリンカーは、2つの結合部分の間(たとえば、第一の結合部分のCH1と第二の結合部分のVH2との間)、またはFcと結合部分との間に位置し得る。特定の実施形態では、E17Rは(G4S)nリンカーを有さない。特定の実施形態では、G25Rは、2つの結合部分の間に(G4S)nリンカーを有する。
【0273】
ベクターはCMVプロモーターおよびヒト抗体重鎖シグナルペプチドを含む。
【0274】
1.2. 発現および精製
重鎖および軽鎖発現プラスミドを、メーカーの説明に従って、Expi293発現システムキット(ThermoFisher-A14635)を使用して、Expi293細胞に同時トランスフェクトした。トランスフェクションの5日後、上清を収集し、プロテインAカラム(GE Healthcare-17543 802)を使用してタンパク質を精製した。抗体濃度はNano Dropにより測定した。タンパク質の純度は、SDS-PAGEおよびHPLC-SECによって評価した。
【0275】
1.3. 示差走査蛍光分析(DSF)
抗体の融解温度(Tm)は、QuantStudio(商標) 7 FlexリアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems)を使用して研究した。19μLの抗体溶液を1μLの62.5×SYPRO Orange溶液(Invitrogen)と混合し、96ウェルプレート(Biosystems)に移した。プレートを0.9℃/分の速度で26℃から95℃まで加熱し、得られた蛍光データを収集した。異なる温度に対する蛍光変化の負の導関数を計算し、データ収集およびTonset/Tm計算を操作ソフトウェa(QuantStudio(商標)リアルタイムPCRソフトウェアv1.3)によって自動的に実行した。
【0276】
1.4. 示差走査熱量測定(DSC)
DSC分析は、Malvern DSCシステムによって実施した。分析前に、タンパク質試料をまず配合緩衝液(formulation buffer)で1mg/mLに希釈した。400μLのそれぞれの配合緩衝液を参照として96ウェルプレートに添加し、400μLのタンパク質試料を添加した。試料は、DSCシステム内で90℃/時間の加熱速度で 10℃から95℃まで加熱された。DSC結果(TmオンセットおよびTm値)は、ベンダーのソフトウェア(MicroCal PEAQ DSCソフトウェア1.30およびMalvern)によって分析した。
【0277】
1.5. 動的光散乱(DLS)によるタグオンセット測定(Tagg-onset measurement)
タグオンセットの測定(Tagg-onset measurement)は、DynaPro Plate Reader III(Wyatt Dynapro(商標))を使用して研究した。各タンパク質試料について3回の取得が収集され、各取得時間は5秒であった。各ウェルは、1536プレート(Aurora マイクロプレート)に7.5μLの抗体溶液および5μLのシリコンオイルを含んでいた。プレートを0.125℃/分の速度で40℃から80℃まで加熱した。各測定について、拡散係数を決定し、温度に対してプロットした。タグオンセット値は、操作ソフトウェア(DYNAMICS 7.8.1.3)によって自動的に計算した。
【0278】
1.6. 40℃加速熱安定性試験
抗体は、エッペンドルフ恒温ミキサーを使用して40℃でインキュベートし、Nanodrop 2000によって280nmでタンパク質溶液の吸収値を測定し、外観を記録し、0日後、1日後、3日後、7日後、14日後、27日後、および34日後にSEC-HPLCによって純度を検出した。
【0279】
1.7. O-グリカンの質量スペクトル
20μgのタンパク質試料(タンパク質濃度に基づいて試料量を計算した)を1.5mLチューブに添加した。タンパク質試料は、4μL 5×Rapid PNGase F Buffer、1μL 1mol/L DTT、および精製水で20μLに調製した。得られたタンパク質試料をよく混合し、75℃で 5~7分間インキュベートした。次に試料を室温まで冷却し、1μL Rapid PNGase Fを添加し、よく混合し、50℃で10~15分間インキュベートした。インキュベーション後、試料に30μLの精製水を添加してよく混合し、脱グリコシル化試料を得た。次いで、脱グリコシル化された試料を、分析のためにガラスインサートバイアルを備えた HPLCバイアルに移した。
【0280】
1.8 標的発現細胞への結合
ヒトPD-L1発現細胞W315-CHOK1.hPro1.C11(1×10細胞/ウェル)および4-1BB発現細胞WBP342-CHO-K1.hPro1.C1を、様々な濃度の試験抗体とともに4℃で1時間インキュベートした。洗浄後、二次抗体R-PEヤギ抗ヒト IgG(Jackson-109-115-098)を添加し、細胞とともに4℃で1時間インキュベートした。次いで細胞を洗浄し、1%BSAを含むDPBSに再懸濁した。細胞のMFIをフローサイトメーターで測定し、FlowJoで解析した。
【0281】
1.9. レポーター遺伝子アッセイ
エフェクター細胞WBP342-CHO-K1.hPro1.NFκB.C1D8およびPD-L1発現細胞W315-CHOK1.hPro1.C11を回収し、洗浄し、F-12K完全培地に再懸濁した。完全培地中の様々な濃度の試験抗体をPD-L1発現CHO-K1細胞に添加した。次に、RGAエフェクター細胞、WBP342-CHO-K1.hPro1.NFκB.C1D8細胞(安定して組み込まれたNFκBルシフェラーゼ レポーター遺伝子とともに、完全長のヒト4-1BBを安定して発現する)を各ウェルに添加した。ヒトIgG1アイソタイプ抗体を陰性対照として使用した。プレートを37℃、5% COで4~6時間インキュベートした。インキュベーション後、再構成されたNano-Gloルシフェラーゼ基質(Promega)を添加し、ルシフェラーゼ強度をマイクロプレートリーダーで測定した。
【0282】
1.10. げっ歯類の薬物動態(PK)
この研究では、一群として5匹の動物を使用した。動物には、10mg/kgの抗体を10分間に1回静脈内注入してそれぞれ投与した。ベースライン試料(投与前)は研究-1日目に収集した。PKサンプルは、ラットへの投与終了後0.5時間、2時間、6時間、24時間、48時間、72時間、120時間、168時間、240時間、288時間、336時間、および504時間で収集した。
【0283】
抗薬物抗体(ADA)試料を、投与前(-1日目)、ならびに投与後の168時間および240時間で収集した。血清試料中の抗体およびADAの血清濃度はELISAによって測定した。
【0284】
2. 結果
2.1.1. T8311 WuXiBody(商標)分子(2+2、対称)の工学設計
この例示的な実施形態では、T8311-U14T2.G25R-?.uIgG1シリーズと呼ばれる対称2+2 WuXiBody(商標)分子のCAlpha領域およびCAlpha-CBeta界面領域を操作した。特定の変異は、ロゼッタ設計を使用して導入した(Froning et al., NATURE COMMUNICATIONS, (2020) 11:2330, https://doi.org/10.1038/s41467-020-16231-7.)。T8311-U14T2.G25R-?.uIgG1分子のCAlpha配列(TCRα配列)およびCBeta配列(TCRβ配列)を表1に示す。「T8311-U14T2.G25R-?.uIgG1」シリーズの分子の名称の長さを短くすることができる。たとえば、T8311-U14T2.G25R-57.uIgG1は、T8311-57または設計57と呼ぶことができる。
【0285】
T8311-U14T2.G25R-1.uIgG1(表1ではT8311-1と示される)の全長アミノ酸配列を表22に示す。表1に挙げた他の抗体(たとえば、T8311-8、T8311-26、T8311-29等)はそれぞれ、表1に示すCAlpha配列およびCBeta配列を除き、T8311-U14T2.G25R-1.uIgG1と同じアミノ酸配列を含む。たとえば、T8311-1は、CAlpha領域に配列番号10、CBeta領域およびヒンジ領域に配列番号11を含む;T8311-8は、CAlpha領域に配列番号12、CBeta領域およびヒンジ領域に配列番号13を含む。T8311-1およびT8311-8は、表1:配列番号10および11(T8311-1の場合)対配列番号12および13(T8311-8の場合)に示すように、CAlpha配列およびCBeta配列を除いて抗体の他の領域に同じ配列を含む。
【0286】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0287】
2.1.2. T8311 WuXiBody(商標)分子(2+2、対称)のタンパク質産生
表2は、Expi293における一過性発現による、T8311-U14T2.G25R-1.uIgG1、T8311-U14T2.G25R-8.uIgG1、T8311-U14T2.G25R-26.uIgG1、T8311-U14T2.G25R-29.uIgG1、T8311-U14T2.G25R-45.uIgG1からT8311-U14T2.G25R-61.uIgG1を含むタンパク質の収量および純度の概要を示す。プロテインAを一工程で精製した後、すべてのbsAbの純度は>90%に達した。表2に示すように、T8311-U14T2.G25R-57.uIgG1およびT8311-U14T2.G25R-61.uIgG1は、発現レベル(たとえば、一段階精製後の収量)をそれぞれ46~86%および12~39%改善した。図1および図2は、精製後のタンパク質の2つのバッチのSDS-PAGEおよびSEC-HPLCの特性を示す。これらのbsAbは、非還元条件下では250kDa、還元条件下では75kDa、25kDaの見かけの分子量で移動し、インタクトで良好に組み立てられた(well-assembled)二重特異性分子を示した。
【0288】
【表2】
【0289】
2.1.3. T8311 WuXiBody(商標)分子(2+2、対称)のDSF特性評価
T8311シリーズの精製タンパク質の熱安定性をDSFによって特性評価し、その結果を表3に列挙した。T8311シリーズのほとんどは、Tm-onsetおよびTm1が程度の差はあるが改善されており、特にT8311-U14T2.G25R-57.uIgG1およびT8311-U14T2.G25R-61.uIgG1。参照WuXiBody(商標)分子(T8311-U14T2.G25R-1.uIgG1)と比較して、T8311-U14T2.G25R-57.uIgG1およびT8311-U14T2.G25R-61.uIgG1はTm-onsetを6~8℃改善し、Tm1を3℃改善している。図3は、温度上昇時のT8311 WuXiBody(商標)分子の最初のバッチのDSFプロファイルを示す。
【0290】
【表3】
【0291】
2.1.4. T8311 WuXiBody(商標)分子(2+2、対称)のDSC特性評価
参照T8311 2+2分子(T8311-U14T2.G25R-1.uIgG1)、ならびに他のT8311分子の一部を、DSCを使用してさらに特性評価した。図4は、T8311分子のDSC曲線が右にシフトしていることを示しており、温度上昇に対する耐性が比較的強いことを示している。表4にTm-onsetおよびTm1の値を示す。T8311-U14T2.G25R-57.uIgG1および T8311-U14T2.G25R-61.uIgG1は、最も性能が優れた2つの分子であった。U14T2.G25R-57.uIgG1は、Tm-onsetを8.8℃上昇させ、Tm1を3.6℃改善して、64.0℃にした。これは、通常のIgG4抗体のTm1(~65℃)に近い値である。T8311-U14T2.G25R-61.uIgG1も、Tm-onsetおよびTm1をそれぞれ5.5℃および2.8℃、大幅に改善した。
【0292】
【表4】
【0293】
2.1.5. T8311 WuXiBody(商標)(2+2、対称)分子の設計のDLS特性評価
一部のT8311 WuXiBody(商標)分子も、図5に示すようにDLSによって特性評価した。得られたタグオンセット(Tagg-onset)値を表5に列挙する。T8311-U14T2.G25R-57.uIgG1およびT8311-U14T2.G25R-61.uIgG1は、タグオンセット値の観点で上位2つのバリアントとしてランク付けされた。どちらの設計でも、参照分子(T8311-U14T2.G25R-1.uIgG1)と比較してタグオンセットが約3~4℃改善された。
【0294】
【表5】
【0295】
2.1.6. T8311 WuXiBody(商標)分子(2+2、対称)の40℃加速熱安定性試験
T8311-U14T2.G25R-1.uIgG1、T8311-U14T2.G25R-57.uIgG1、およびT8311-U14T2.G25R-61.uIgG1を熱ストレス条件でさらに検査した。5mg/mlおよび>90%の純度で調製した分子を40℃で2週間インキュベートした。これらの試料の純度を1日目、3日目、7日目、および14日目にモニタリングした。表6に2つの抗体の純度の変化を示した。
【0296】
14日目の参照抗体(T8311-U14T2.G25R-1.uIgG1)の純度は90%未満の値に低下したが、T8311-U14T2.G25R-57.uIgG1(設計-57のCAlpha配列およびCBeta配列の設計)およびT8311-U14T2.G25R-61.uIgG1(設計-61)の純度は、90%以上を維持しており、この2つの設計は、抗体の長期的な熱安定性の向上においても重要な役割を果たしていることを示している。CAlpha配列およびCBeta配列の設計(配列)T8311-U14T2.G25R-57.uIgG1は、設計-57と呼ばれ、CAlpha配列およびCBeta配列の設計(配列)T8311-U14T2.G25R-61.uIgG1は、設計-61と呼ばれる。これらのデータをさらに分析したところ、設計-57および設計-61は凝集画分の発達(growth)を低減することによって抗体の長期熱安定性を主に向上させたことが明らかになり、これはDLSの結果とも一致している。
【0297】
【表6】
【0298】
2.1.7. 質量スペクトルによって特性評価されるO-グリカン
選択されたWuXiBody(商標)分子のグリコシル化状態を質量分析法によって検査した。参照WuXiBody(商標)分子にはO-グリコシル化部位があることが知られている。還元質量スペクトルでは、コア-1構造のO-グリカン(GlcNAc+Hex+2*NeuAc)の質量が参照分子のVL-CAlpha軽鎖上で観察された。しかし、O-グリカンシグナルは、設計-57および設計-61のVL-CAlpha鎖では観察されなかった(図6)。
【0299】
2.1.8. 標的発現細胞への結合
CAlphaおよび/またはCBeta領域におけるこれらの変異がT8311 bsAbの結合能力に影響を及ぼさないことを確認するために、各標的(抗原)を発現する細胞操作に対するFACS結合を実施した。図7および表7に示すように、参照分子と比較して、T8311バリアントは標的結合能力を非常に良好に維持した。
【0300】
【表7】
【0301】
図7は、2つの標的に対するT8311 WuXiBody(商標) bsAbのFACS結合を示す。太い曲線は各標的に対する陽性対照であった。EC50および上位MFI値を表7に列挙する。
【0302】
2.1.9. レポーター遺伝子アッセイ
T8311 WuXiBody(商標) bsAbの機能をレポーター遺伝子アッセイで確認した。標的A発現細胞によって架橋結合すると、T8311-U14T2.G25R-1.uIgG1、T8311-U14T2.G25R-57.uIgG1、およびT8311-U14T2.G25R-61.uIgG1は、標的Bを介したNF-KB経路活性化において同等のアゴニスト効果を示した。データを表8および図8に示す。
【0303】
【表8】
【0304】
図8は、T8311 bsAbの機能を確認するためのレポーター遺伝子アッセイの結果を示す。
【0305】
2.1.10. げっ歯類PK
設計されたWuXiBody(商標)分子のPKをラットで評価した。SDラットに10mg/kgで単回静脈内投与した。分子の血漿濃度はELISA法により測定した。試料を21日間収集した。並べて比較するために、scFabを使用して制御フォーマットG34も構築した。表9Aに示すように、設計-8、設計-26、設計-29、および設計-45は、参照(T8311-U14T2.G25R-1.uIgG1)と比較して同等の薬物曝露およびPKパラメータを示した。G34フォーマットを図14に示す。これはscFabを含むが、CalphaおよびCbetaを含まない。表9Bに示すように、設計-57および設計-61は薬物曝露を大幅に改善した。参照分子のクリアランス11.1ml/日/kgと比較して、T8311-U14T2.G25R-57.uIgG1およびT8311-U14T2.G25R-61.uIgG1のクリアランスは、それぞれ6.6ml/日/kgおよび6.7ml/日/kgに減少した(表9B)。これは40%の向上であり、通常のモノクローナル抗体に近いレベルを達成した。しかし、制御フォーマットG34は最悪のPK動作を示した。
【0306】
【表9】
【0307】
【表10】
【0308】
2.2.1. W3618分子(1+1、非対称)のWuXiBody(商標)エンジニアリング
【0309】
【表11】
【0310】
2.2.2. W3618 WuXiBody(商標)分子のタンパク質産生
表11は、Expi293における一過性発現によるW3618-U4T1.E17R-1.uIgG1、W3618-U4T1.E17R-57.uIgG1、およびW3618-U4T1.E17R-61.uIgG1の収量および純度の概要を示す。3段階の精製後、すべてのbsAbの純度は>90%に達した。図10は、精製後のタンパク質の関連するSDS-PAGEおよびSEC-HPLC特性を示す。これらのbsAbは、非還元条件下では150kDa、還元条件下では50kDa、25kDaの見かけの分子量で移動し、インタクトで良好に組み立てられた(well-assembled)二重特異性分子を示した。
【0311】
【表12】
【0312】
2.2.3. W3618 WuXiBody(商標)分子のDSF
W3618シリーズの精製タンパク質の熱安定性をDSFによって特性評価し、その結果を表12に列挙した。参照WuXiBody(商標)分子(W3618-U4T1.E17R-1.uIgG1)と比較して、設計-57(W3618-U4T1.E17R-57.uIgG1)および設計-61(W3618-U4T1.E17R-61.uIgG1)は、Tm-onsetを2~4℃改善し、Tm1を4℃改善した。
【0313】
【表13】
【0314】
図11は、温度上昇時のW3618 WuXiBody(商標)分子のDSFプロファイルを示す。
【0315】
2.2.4. げっ歯類PK
図15に示すように、W3618の設計-57および設計-61は、薬物曝露を大幅に改善した。参照分子(W3618-U4T1.E17R-1.uIgG1)のクリアランス9.94ml/日/kgと比較して、W3618-U4T1.E17R-57.uIgG1およびW3618-U4T1.E17R-61.uIgG1のクリアランスはそれぞれ6.35ml/日/kgおよび5.54ml/日/kgに減少した。W3618-U4T1.E17R-1.uIgG1の半減期も、設計-57および設計-61によって、それぞれ176時間から289時間および388時間に大幅に改善された(表13)。これは40%以上の改善であり、通常のモノクローナル抗体に近いレベルを達成した。
【0316】
【表14】
【0317】
2.3.1. W329001-U3T3 WuXiBody(商標)分子(2+2、対称)に関するWuXiBody(商標)操作
【0318】
【表15】
【0319】
2.3.2. W329001-U3T3 WuXiBody(商標)分子のタンパク質産生
W329001-U3T3 WuXiBody(商標)分子は、FIT-Ig(IL17×IL20)(WO2017/136820号、FIT-Igを参照)の公的に入手可能な配列に基づいて生成された(W329001-U3T3.G25R-1.uIgG1と命名)。
【0320】
表15は、Expi293における一過性発現によるW329001-U3T3.G25R-1.uIgG1、W329001-U3T3.G25R-57.uIgG1、およびW329001-U3T3.G25R-61.uIgG1の収量および純度の概要を示す。2段階の精製後、これらすべてのbsAbの純度は>90%に達した。図16は、精製後のタンパク質の関連するSDS-PAGEおよびSEC-HPLC特性を示す。これらのbsAbは、非還元条件下では250kDa、還元条件下では75kDa、25kDa、および25kDaの見かけの分子量で移動し、インタクトで良好に組み立てられた(well-assembled)二重特異性分子を示した。
【0321】
【表16】
【0322】
2.3.3. W329001-U3T3 WuXiBody(商標)分子のDSF
W329001-U3T3シリーズの精製タンパク質の熱安定性をDSFによって特性評価し、その結果を表16に列挙した。参照WuXiBody(商標)分子(W329001-U3T3.G25R-1.uIgG1)と比較して、設計-57(W329001-U3T3.G25R-57.uIgG1)および設計-61(W329001-U3T3.G25R-61.uIgG1)はTm1を1℃改善した。
【0323】
【表17】
【0324】
図17は、温度上昇時のW329001-U3T3 WuXiBody(商標)分子のDSFプロファイルを示す。
【0325】
2.3.4. げっ歯類PK
図18に示すように、W329001-U3T3の設計-57および設計-61は、薬物曝露を大幅に改善した。参照分子(W329001-U3T3.G25R-1.uIgG1)のクリアランス9.6ml/日/kgと比較して、W329001-U3T3.G25R-57.uIgG1およびW329001-U3T3.G25R-61.uIgG1のクリアランスはそれぞれ8.63ml/日/kgおよび6.06ml/日/kgに減少した。半減期も、W329001-U3T3.G25R-1.uIgG1と比較して、設計-57および設計-61によって、それぞれ167時間から213時間および341時間に改善された(表17)。同様の改善は、抗原-Fc ELISA法で検出した場合にも観察された。これは大幅な改善であり、通常のモノクローナル抗体に近いレベルを達成した。
【0326】
【表18】
【0327】
2.4.1. W329001-U4T4 WuXiBody(商標)分子(2+2、対称)に関するWuXiBody(商標)操作
【0328】
【表19】
【0329】
2.4.2. W329001-U4T4 WuXiBody(商標)分子のタンパク質産生
W329001-U4T4 WuXiBody(商標)分子は、公的に入手可能なCODV-Ig配列(IL4×IL13)に基づいて生成された(Anke Steinmetz et al.、「CODV-Ig、医療用途のための普遍的な二重特異性四価および多機能免疫グロブリンフォーマット」、MABS,2016,VOL.8,NO.5,867-878,CODV-Igを参照)。
【0330】
表19は、Expi293での一過性発現によるW329001-U4T4.G25R-1.uIgG1、W329001-U4T4.G25R-57.uIgG1、W329001-U4T4.G25R-61.uIgG1、W329001-U4T4.G25R-78.uIgG1、およびW329001-U4T4.G25R-79.uIgG1のタンパク質の収量および純度の概要を示す。一段階の精製後、これらすべてのbsAbの純度は>90%に達した。図19は、精製後のタンパク質の関連するSDS-PAGEおよびSEC-HPLC特性を示す。これらのbsAbは、非還元条件下では250kDa、還元条件下では75kDa、25kDa、および25kDaの見かけの分子量で移動し、インタクトで良好に組み立てられた(well-assembled)二重特異性分子を示した。
【0331】
【表20】
【0332】
2.4.3. W329001-U4T4 WuXiBody(商標)分子のDSF
W329001-U4T4シリーズの精製タンパク質の熱安定性をDSFによって特性評価し、その結果を表20に列挙する。参照WuXiBody(商標)分子(W329001-U4T4.G25R-1.uIgG1)と比較して、設計-57(W329001-U3T3.G25R-57.uIgG1)、設計-61(W329001-U3T3.G25R-61.uIgG1)、設計-78(W329001- U4T4.G25R-78.uIgG1)、および設計-79(W329001- U4T4.G25R-79.uIgG1)はTm1を6~9℃改善した。
【0333】
【表21】
【0334】
図20は、温度上昇時のW329001-U4T4 WuXiBody(商標)分子のDSFプロファイルを示す。
【0335】
2.4.4. げっ歯類PK
図21に示すように、W329001-U4T4の設計-57および設計-61は、薬物曝露を大幅に改善した。参照分子W329001-U4T4.G25R-1.uIgG1)のクリアランス5.16ml/日/kgと比較して、W329001- U4T4.G25R-57.uIgG1およびW329001-U4T4.G25R-61.uIgG1のクリアランスは、それぞれ4.75ml/日/kgおよび3.39 ml/日/kgに減少した。半減期も、W329001-U4T4.G25R-1.uIgG1と比較して、設計-57および設計-61によって、それぞれ220時間から225時間および344時間に改善された(表21)。同様の改善は、抗原-Fc ELISA法で検出した場合にも観察された。これは大幅な改善であり、通常のモノクローナル抗体に近いレベルを達成した。
【0336】
図22および図23では、設計-57および設計-78(CalphaにC末端PESSが付加された設計-57)、ならびに設計-61および設計-79(CalphaにC末端PESSが付加された設計-61)の間のラットPK結果を比較する場合、Fc-Fc検出法または抗原-Fc検出法のいずれによっても有意差は観察されなかった(表21)。DSF (図20)およびO-グリコシル化(データは示さず)による特性評価でも、明らかな違いは示されなかった。
【0337】
【表22】
【0338】
【表23-1】
【表23-2】
【0339】
【表24】
【0340】
【表25】
【0341】
【表26】
【0342】
【表27】
【0343】
本開示は、特定の実施形態を参照して特に図示および記載されてきたが、本明細書に開示されるとおりの本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態および詳細における様々な変更を行うことができることが当業者によって理解されるべきである。
図1
図1-2】
図1-3】
図2
図2-2】
図2-3】
図3
図3-2】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図19-2】
図20
図21
図22
図23
【配列表】
2024503118000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-09-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の抗原結合部分および第二の抗原結合部分を含むポリペプチド複合体であって、ここで:
該第一の抗原結合部分は、
N末端からC末端まで、第一のT細胞受容体(TCR)定常領域(C1)に作動可能に連結された第一の抗体の第一の重鎖可変ドメイン(VH)を含む第一のポリペプチド、および
N末端からC末端まで、第二のT細胞受容体(TCR)定常領域(C2)に作動可能に連結された第一の抗体の第一の軽鎖可変ドメイン(VL)を含む第二のポリペプチドを含み、
ここで:
C1は操作された(engineered)CBetaを含み、およびC2は操作されたCAlphaを含み、
またはC1は操作されたCAlphaを含み、およびC2は操作されたCBetaを含み、
C1およびC2は、C1とC2の間に少なくとも一つの非天然鎖間結合を含む二量体を形成することができ、該非天然鎖間結合は該ポリペプチド複合体を安定化することができ、
該操作されたCAlphaおよび/または操作されたCBetaは、該操作されたCAlphaおよび/または操作されたCBetaのC末端領域、または操作されたCAlphaおよび/または操作されたCBetaのC末端に近接している一つまたは複数のアミノ酸位置に少なくとも1つの変異をさらに含み、ここで該少なくとも一つの変異は、操作されたCAlphaの安定性、操作されたCBetaの安定性、および/または操作されたCAlpha-CBetaの界面安定性を改善する、および
該第一の抗体は第一の抗原特異性を有する;および
該第二の抗原結合部分は第二の抗原特異性を有する、
ポリペプチド複合体。
【請求項2】
前記操作されたCAlphaが、P92S、E93D、S94V、およびS95Pから選択される少なくとも一つの変異残基を含む、および/または前記操作されたCBetaが、E17KおよびS21Aから選択される少なくとも一つの変異残基を含む、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項3】
前記操作されたCAlphaおよび/またはCBetaが、以下から選択される、一つまたは複数の非天然ジスルフィド結合を形成するための一つまたは複数の変異残基を含む、請求項1または2に記載のポリペプチド複合体: CAlpha上のP8C、CAlpha上のA9C、CAlpha上のV10C、CAlpha上のF26C、CAlpha上のF29C、CAlpha上のT33C、CAlpha上のQ34C、CAlpha上のV35C、CAlpha上のS36C、CAlpha上のS38C、CAlpha上のK39C、CAlpha上のF78C、CAlpha上のN80C、CAlpha上のS81C、CAlpha上のI82C、CAlpha上のP84C、CAlpha上のD86C、CAlpha上のT87C、CAlpha上のF88C、CAlpha上のF89C、CAlpha上のP90C、およびCBeta上のA18C。
【請求項4】
前記操作されたCAlphaが、そのC末端に「FFPSPESS」(配列番号9)または「PESS」(配列番号6)の欠失を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項5】
前記操作されたCAlphaが、CAlphaのC末端に「PESS」(配列番号6)の代わりに「VEPKS」(配列番号5)を有する変異を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項6】
前記操作されたCAlphaが、CAlphaのC末端に「PESS」(配列番号6)の代わりに「NRGE」(配列番号7)を有する変異を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項7】
前記操作されたCAlphaおよび前記操作されたCBetaが、CAlpha上の変異S22F、T33I、およびA73T、およびCBeta上の変異E17K、H22R、D38P、およびS53Dを含む、請求項1~6のいずれかに記載のポリペプチド複合体。
【請求項8】
前記操作されたCAlphaが、CAlpha上の変異残基P8CおよびD86C、ならびにCAlphaのC末端の4アミノ酸残基(アミノ酸残基92~95)の欠失を含む、請求項1、3、および4のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項9】
前記操作されたCAlphaおよび前記操作されたCBetaが、CAlpha上の変異残基P90CおよびCBeta上の変異残基A18C、ならびにCAlphaのC末端の4アミノ酸残基(アミノ酸残基92~95)の欠失を含む、請求項1、3、および4のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項10】
前記操作されたC2が、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、79、および80のいずれか一つを含み、前記操作されたC1が、配列番号11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、および65のいずれか一つを含む、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項11】
前記操作されたC1が、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、79、および80のいずれか一つを含み、前記操作されたC2が、配列番号11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、および65のいずれか一つを含む、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項12】
前記操作されたC1および前記操作されたC2がそれぞれ、以下の配列番号からなる群から選択される一対の配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド複合体: 10/11、12/13、14/15、16/17、18/19、20/21、22/23、24/25、26/27、28/29、30/31、32/33、34/35、36/37、38/39、40/41、42/43、44/45、46/47、48/49、50/51、52/53、54/55、56/57、58/59、60/61、62/63、64/65、79/43、および80/51。
【請求項13】
前記操作されたC2および前記操作されたC1がそれぞれ、以下の配列番号からなる群から選択される一対の配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド複合体: 12/13、14/15、16/17、18/19、20/21、22/23、24/25、26/27、28/29、30/31、32/33、34/35、36/37、38/39、40/41、42/43、44/45、46/47、48/49、50/51、52/53、54/55、56/57、58/59、60/61、62/63、64/65、79/43、および80/51。
【請求項14】
前記操作されたC2および前記操作されたC1がそれぞれ配列番号42および43の一対の配列を含むか、または前記操作されたC1および前記操作されたC2がそれぞれ配列番号42および43の一対の配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項15】
前記操作されたC2および前記操作されたC1がそれぞれ配列番号50および51の一対の配列を含むか、または前記操作されたC1および前記操作されたC2がそれぞれ配列番号50および51の一対の配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項16】
前記操作されたC2および前記操作されたC1がそれぞれ配列番号79および43の一対の配列を含むか、または前記操作されたC1および前記操作されたC2がそれぞれ配列番号79および43の一対の配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項17】
前記操作されたC2および前記操作されたC1がそれぞれ配列番号80および51の一対の配列を含むか、または前記操作されたC1および前記操作されたC2がそれぞれ配列番号80および51の一対の配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項18】
前記第一の抗原特異性および前記第二の抗原特異性のうちの一つが、外来性抗原、内在性抗原、自己抗原、ネオ抗原、ウイルス抗原、または腫瘍抗原を対象とする、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項19】
前記第一の抗原特異性および前記第二の抗原特異性のうちの一方が、T細胞特異的受容体分子および/またはナチュラルキラー細胞(NK細胞)特異的受容体分子を対象とし、他方が腫瘍関連抗原を対象とする、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項20】
前記第一の抗原特異性および前記第二の抗原特異性のうちの一方が、PD-L1を対象とし、他方が4-1BBを対象とする、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項21】
前記第一の抗原特異性および前記第二の抗原特異性のうちの一方が、HER2 D2を対象とし、他方がHER2 D4を対象とする、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項22】
前記第一の抗原特異性および前記第二の抗原特異性のうちの一方が、IL-17を対象とし、他方がIL-20を対象とする、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項23】
前記第一の抗原特異性および前記第二の抗原特異性のうちの一方が、IL-4を対象とし、他方がIL-13を対象とする、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項24】
部分(a moiety)に結合された、請求項1~23のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体を含む、コンジュゲート。
【請求項25】
請求項1~23のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体をコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項26】
請求項25に記載のポリヌクレオチドを含む、単離されたベクター。
【請求項27】
請求項25に記載の単離されたポリヌクレオチドまたは請求項26に記載の単離されたベクターを含む、宿主細胞。
【請求項28】
前記ポリペプチド複合体が発現される条件下で宿主細胞を培養する工程を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体を発現する方法であって、該宿主細胞が、前記ポリペプチド複合体をコードするポリヌクレオチドを含む、方法。
【請求項29】
請求項1~23のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体を産生する方法であって、以下を含む、方法:
a) 宿主細胞に以下を導入する工程:
N末端からC末端まで、第一のTCR定常領域(C1)に作動可能に連結された第一の抗体の第一の重鎖可変領域(VH)を含む第一のポリペプチドをコードする第一のポリヌクレオチド、および
N末端からC末端まで、第二のTCR定常領域(C2)に作動可能に連結された第一の抗体の第一の軽鎖可変ドメイン(VL)を含む第二のポリペプチドをコードする第二のポリヌクレオチド、
ここで:
C1およびC2は、C1とC2の間に少なくとも一つの非天然鎖間結合を含む二量体を形成することができ、該非天然鎖間結合は二量体を安定化することができる、および
前記第一の抗体は第一の抗原特異性を有する、
b) 前記宿主細胞に前記ポリペプチド複合体を発現させる工程。
【請求項30】
以下の工程をさらに含む、請求項29に記載の方法:
前記第一の抗原特異性とは異なる第二の抗原特異性を有する、第二の抗原結合部分をコードする一つまたは複数の追加のポリヌクレオチドを
前記宿主細胞に導入する工程。
【請求項31】
前記ポリペプチド複合体を単離することをさらに含む、請求項29~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
請求項1~23のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体を含む組成物。
【請求項33】
請求項1~23のいずれかに記載のポリペプチド複合体および薬学的に許容される担体を含む、治療を必要とする対象の状態を治療するための、医薬組成物であって、前記第一の抗原および前記第二の抗原が両方とも調節される場合、該状態を軽減、除去、治療、または予防することができる、医薬組成物
【請求項34】
請求項1~23のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体を含む一つまたは複数の容器を含むキット。
【国際調査報告】