(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-24
(54)【発明の名称】チョコレート組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23G 1/48 20060101AFI20240117BHJP
A23G 9/48 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
A23G1/48
A23G9/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543148
(86)(22)【出願日】2022-01-14
(85)【翻訳文提出日】2023-09-11
(86)【国際出願番号】 EP2022050801
(87)【国際公開番号】W WO2022152884
(87)【国際公開日】2022-07-21
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523270302
【氏名又は名称】バリー カレボー アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】ケグメン エリフ
(72)【発明者】
【氏名】コピン ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】デ シンケル ドミニク
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GB02
4B014GB03
4B014GB19
4B014GE01
4B014GE03
4B014GG06
4B014GG07
4B014GG14
4B014GK03
4B014GL07
4B014GP20
4B014GP22
(57)【要約】
本発明は、チョコレート食品におけるファットブルームを防止するためのタイガーナッツ粉末の使用、およびチョコレートを含有しているタイガーナッツ粉末および冷凍食品を浸漬するためのその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョコレート食品、好ましくは乳製品不使用のチョコレート食品におけるファットブルームを防止するか、若しくは遅延させるか、またはその両方のための、タイガーナッツ粉末の使用。
【請求項2】
前記チョコレート食品は、チョコレートによりアンロバージュされた中心部を有し、前記中心部は、20重量%超の脂肪、植物性脂肪、好ましくはココアバターおよびナッツ由来の脂肪を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記タイガーナッツ粉末は、D
90粒子サイズが800μm未満、好ましくは400μm未満である粒子からなる、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記チョコレート食品は、糖、ココアリカー、乳化剤、例えばレシチン、および香味料をさらに含むか、または本質的にそれらからなる、請求項1~3のいずれか1つに記載の使用。
【請求項5】
最低18重量%のタイガーナッツ製品、好ましくはタイガーナッツ粉末と、ココアリカーまたはココアバターの少なくともいずれかとを含むチョコレート。
【請求項6】
請求項5に記載のチョコレートであって、
- 20~60重量%の甘味料、例えば、糖および/または糖アルコール、
- 最低18重量%、好ましくは最低20重量%のタイガーナッツ粉末、および
- 0~60重量%のココアリカー、若しくは
- 0~30重量%のココアバター、または
- その両方
を含み、
ココアリカーまたはココアバターの少なくともいずれかを含む、チョコレート。
【請求項7】
前記タイガーナッツ粉末は、D
90粒子サイズが800μm未満、好ましくは400μm未満である粒子からなる、請求項6に記載のチョコレート。
【請求項8】
前記チョコレート製品が有する20℃での固形脂肪含有率は、26℃での安定化法により測定されて、50%から65%までの範囲にわたり、より好ましくは50%から60%までの範囲にわたる、請求項6または7に記載のチョコレート。
【請求項9】
チョコレート食品であって、
- 中心部;最低20重量%の脂肪、好ましくはココアおよび/またはナッツ由来の脂肪を含んでいる;および
- 前記中心部のコーティング;請求項1若しくは3~5のいずれか1つに記載のチョコレート食品、または請求項6~8のいずれか1つに記載の製品を含んでいる
を含み、
前記チョコレートは、好ましくは、前記チョコレート製品の最低25重量%を含んでいる、チョコレート食品。
【請求項10】
チョコレート食品、特に乳製品不使用のチョコレート食品を製造するための方法であって、少なくともココアバター、ココアマスおよび甘味料を最低8重量%のタイガーナッツ粉末と混合して混合物を得る工程を含む、方法。
【請求項11】
前記タイガーナッツ粉末は、D
90粒子サイズが800μm未満、好ましくは400μm未満である粒子からなる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記混合物をブレンドしてブレンド済み混合物を得る工程、前記ブレンド済み混合物を精緻化して精緻化済み混合物を得る工程、前記精緻化済み混合物をコンチングしてコンチング済みチョコレート混合物を得る工程、香味料および/または乳化剤を添加することによって前記コンチング済み混合物を最終的に仕上げて仕上げ済みチョコレート混合物を得る工程の連続工程を含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記コンチング工程を実行する際の温度は、90℃未満、好ましくは75℃~89℃、好ましくは70~80℃である、請求項10~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
冷凍食品、特にアイスクリームまたは乳製品不使用のアイスクリーム中に浸漬するための、チョコレート、好ましくは請求項5~9のいずれか1つに記載のチョコレートを含有するタイガーナッツ製品の使用。
【請求項15】
チョコレート、好ましくは請求項5~9のいずれか1つに記載のチョコレートを含有するタイガーナッツ製品で覆われた冷凍食品、特にアイスクリームまたは乳製品不使用のアイスクリーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョコレート製品およびチョコレート製品を得るための方法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に「チョコレート」、「ダークチョコレート」または「ミルクチョコレート」と呼ばれるものは通常、ココアリカー、最終的にはココアニブを、糖(または他の甘味料)、ココアバター、バター脂肪(オイル)、粉乳および/またはミルククラム並びに乳化剤とブレンドすることによって得られる。香味料、例えば、バニリン、シナモン、カッシア油、アーモンド、レモン、オレンジなどの精油、様々なバルサム、樹脂およびそれらの組み合わせなどが、通常、混合物に添加される。バターオイルは、脱水およびカードの除去によって無塩乳バターから得られる。バターオイルは、ダークチョコレートにおいて抗ブルーム剤としても使用される。ココアバターおよびバターオイル以外の脂肪は、使用量並びに脂肪の物理的および化学的な特性に関連するいくつかの特定の条件下でのみ使用されてよい。それらが尊重されないならば、「チョコレート」という用語の使用は、国内法によって禁止され得る。これらは変化してもよい。したがって、本明細書におけるチョコレートまたはチョコレート組成物の定義は、最も広い意味で使用され、食品中にココアリカーおよび/またはココアバターが存在することを指すことになる。
【0003】
チョコレートの製造方法は、成分の混合工程、混合物の精緻化工程、精緻化済み混合物のペースト化工程または部分液化およびコンチング工程(または代替工程)、並びにチョコレートの粘度および風味の最終調節工程の基本操作を含む。
【0004】
ミルク製品は、チョコレートおよび菓子の産業における主要な原料である。ミルクチョコレートは、味および口当たりが非常に特徴的な人気商品である。しかしながら、ミルクを使用すると、この製品は一部の消費者(菜食主義者若しくは完全菜食主義者または牛乳アレルギーを発症している人々)に適さなくなる。したがって、「牛乳」チョコレートに代わる乳製品不使用の多数の代替物が試されてきた。チョコレート用の牛乳の最もよくある代替物は、ライスグルコースシロップ、米粉およびイヌリンの混合物である。このような製品は、食感(硬すぎる)および口当たりの観点から満足できるものではない。さらに、感覚的な観点から、代替物は甘味が高く、消費者が評価するミルクチョコレートのクリーミーさを再現することができない。
【0005】
ショクヨウガヤツリ(Cyperus esculentus Lativum)(チュファ、タイガーナッツ、アタドウェ、ショクヨウガヤツリ、およびアースアーモンドとも呼ばれる)は、世界中の多くの場所に広く分布しているスゲ科の作物である。C.esculentusは、アースアーモンドまたはタイガーナッツと呼ばれる食用塊茎をスナック食品として、および甘くて乳白色の飲み物である「オルチャタ・デ・チュファ(horchata de chufa)」の調製のために栽培される。浸したタイガーナッツは、水とブレンドされてチュファミルクと呼ばれる白っぽい液体を生じさせ、これは、例えば糖、塩、スパイスなどを添加することによって風味付けされてオルチャータ飲料を得る。タイガーナッツの粉末は、時々、ビスケットおよび他のベーカリー製品に、並びに油、石鹸、およびデンプン抽出物を作る際に添加される。タイガーナッツ粉末は、ヌガー、ジャム、ビールの製造のために、およびアイスクリーム中の香味料として、およびクンヌ(kunnu:ナイジェリアの地域飲料)の製造においても使用される。
【0006】
チョコレート組成物は、特にファットブルームを起こしやすい。ファットブルームは、ミルクチョコレートまたはダークチョコレートの表面上の白っぽい灰色がかったコーティングである。ファットブルームが脂っぽい外観を有するのは、脂肪構造における変化およびチョコレートの表面に現れる脂肪結晶からそれが生じるからである。ファットブルームは、不適切なテンパリング、不正確な冷却方法、温かい保存条件、チョコレートバターと適合しない脂肪の添加、摩耗および指の跡(特に温かい条件下)によって引き起こされ得る。ファットブルームが現れるのは、特に、軟質の脂肪、例えば、プラリネフィリング(praline filling)またはナッツペーストとチョコレートの混合物を含む中心部にアンロバージュ(enrobe)するためにチョコレートが使用される場合である。ファットブルームは、チョコレートの食味を損なわないが、チョコレートの外観に非常に有害である。消費者はチョコレート製品の外観に非常に敏感であり、ファットブルームは回避される必要がある。ミルクチョコレートに特に使用される乳製品は、チョコレート中のファットブルームを遅延させることが知られている。非特許文献1において言及されているように、牛乳は、ファットブルームを阻害し、味覚および色に重要な役目を果たすことによってチョコレート製品の貯蔵寿命を改善すると考えられている。この論文はさらに、タイガーナッツ中の高レベルの油がチョコレートバー中の成分としてのタイガーナッツの可能性を低下させている理由は、多くの植物油が安定なβ結晶の形成を減少させて、光沢、食感、熱およびファットブルームに対する耐性を低下させるに至っていることが分かっているからだと報告している(p.114)。タイガーナッツ製品は、そのため、植物性脂肪含有率が高いために、チョコレートの製造における牛乳の適切な代替物とは考えられていない。したがって、タイガーナッツ抽出物の使用が、乳製品を置き換えるのに不適切であると広く考えられているのは、タイガーナッツの脂肪含有率がファットブルームを促進するであろう可能性があるためである。固形チョコレート製品中のタイガーナッツ製品の量は、ファットブルームの早期発生を防ぐために数パーセントに制限されてきた。
【0007】
さらに、チョコレートは、アイスクリーム製品用の非常に人気のあるコーティングとして使用される。脆性は、アイスクリームコーティングの非常に重要な特性である。製造および/または輸送中に、コーティングの望ましくない破損が起こる場合があり、これは、当然、消費者には望ましくないものであるが、これらの用途において一般的な問題である。アイスディッピングのためにチョコレート組成物にバターオイルを添加することは標準的な方法である;バターオイルは、望ましくない破損に対する弾性および耐性を提供する。平均して、弾性コーティングの脂肪組成物は、最低20重量%のバター脂肪および80重量%のココアバターを含有すべきである。乳製品不使用組成物において、バター脂肪は、レシピに添加され得ず、このことは、菜食主義者および完全菜食主義者または牛乳アレルギーを有する人々によって消費され得ること、および破損に対する受け入れ可能な弾性および耐性を有するアイスコーティングを開発することが困難であることを意味している。
【0008】
チョコレートとタイガーナッツを組み合わせた様々な製品が知られている。タイガーナッツは、概して、チョコレートをアンロバージュされ、均質な化合物であるチョコレート自体ではない。これらの文献のいずれにも、タイガーナッツ製品、例えば、タイガーナッツ粉末の使用も、その量も開示されていない。例えば、以下が参照される:
- 非特許文献2は、インターネット
1694410134519_0
から検索された;
- 非特許文献3;インターネット:
1694410134519_1
1694410134519_2
recipes_tigernuts_chocolate/ D3 DATABASE GNPD [Online] MINTEL; 29 November 2017 (2017-11-29)から検索;
- 非特許文献4(Database accession no. 5283823);
- 非特許文献5;
- 非特許文献6。
【0009】
タイガーナッツは、非チョコレート(すなわち、非ココアリカーまたはバター)菓子、例えば、ブラウニーの一部であることも知られている:
D4 DATABASE GNPD[オンライン]MINTEL;2015年5月30日(2015-05-30),匿名:非特許文献7、Database accession no. 3196035。
【0010】
本発明の1つの目的は、従来技術の欠点のうちの少なくとも1つを克服することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、ファットブルームを最小化および/または遅延させるチョコレートを提供することにある。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、破損に耐性がある冷凍製品用のコーティングとして有用なチョコレートを提供することにある。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、味、食感、口当たりおよび/またはクリーミーさを有するチョコレートを提供することにある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Frank A. Asante著、“Process development and evaluation of tiger nut based chocolate products”,2015年発行、Engineering、KWAME NKRUMAH University of Science and technology, Kumasi, Ghanaによる
【非特許文献2】“Raw Chocolate and Tiger Nut Bar- 3 pack- The Tiger Nut Company 1 UK Chufa Tigernut supplier”、2020年9月11日(2020-09-11),XP055806233
【非特許文献3】“Tigernuts chocolate- Tigernuts”,2008年1月12日(2008-01-12), pages 1-5, XP055806235
【非特許文献4】"Jerusalem Artichoke and Dark Chocolate Tigernut Granola", XP055770065
【非特許文献5】ARAFAT S M ら著:“Chufa tubers (Cyperus esculentus L.): as a new source of food”、WORLD APPLIED SCIENCES JOURNAL, INTERNATIONAL DIGITAL ORGANIZATION FOR SCIENTIFIC INFORMATION(I D 0 S 1)第7巻、第2号、2009年1月1日(2009-01-01)、pages 151-156、XP009527471
【非特許文献6】“Biological flora of Central Europe:Cyperus esculentus L”、PERSPECTIVES IN PLANT ECOLOGY, EVOLUTION AND SYSTEMATICS、第23巻、2016年1月1日(2016-01-01)、pages 33-51、XP029842661
【非特許文献7】“Organic Walnut Brawnie”、XP055524211
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の説明)
本発明の1つの目的は、チョコレート食品におけるファットブルームを防止するための、若しくは遅延させるための、またはその両方のための、タイガーナッツ製品、特にタイガーナッツ粉末の使用にある。
【0016】
今回、最も驚くべきことに、チョコレート製品におけるタイガーナッツの使用、特にタイガーナッツ粉末または粉体(ファットブルームの遅延にタイガーナッツ粉末の特性に影響を及ぼす限り、焙煎したタイガーナッツ粉体を含んでよい)の使用が有する制限効果は、ファットブルームに対して、乳製品に関連するものよりも良好であることが分かった。タイガーナッツ粉末の割合が高くとも、ファットブルームを制限するだけでなく、優れた口当たりおよび味並びに/または良好な栄養プロファイルを有するチョコレートを提供することがさらに分かった。ファットブルームの制限は、チョコレートの脂肪混合物を含有している場合もあるナッツおよび糖(プラリーヌ)から作製された中心部をチョコレートがアンロバージュした菓子、例えばチョコレートボンボン上のファットブルームの発生を防止/遅延させるのに特に強力である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
「チョコレート」の定義は、国および「法律」によって異なる。上述したように、チョコレートは、ココア材料からの適切な製造工程によって得られる均質な製品に対する総称であり、乳製品、糖および/または甘味料、並びに他の添加剤または他の食用食品と組み合わされてもよいが、小麦粉およびデンプン(特定の種類の製品を除く)並びに乳脂肪以外の動物性脂肪の添加を除く。異なる種類のチョコレート製品が異なる国々に存在し、各々の種類のチョコレート製品に必要な成分および任意選択の成分の具体的な最小/最大量は、地域の法律において規定されている。
【0018】
本発明において、「チョコレート」という用語は、標準的なダークチョコレートだけを指すために使用されず、ミルクチョコレート、ホワイトチョコレート、ルビーチョコレート、および全ての代用チョコレート、例えば、コンパウンド、クーベルチュールまたはアイスクリームコーティングに使用されるようなものも含む。
【0019】
本発明において、「甘味料」という用語は、糖(スクロース)、甘味能力のために使用される糖およびコンパウンドを示すために使用される。この用語は、糖および糖アルコール、例えば、スクロース、フルクトース、グルコース、キシリトール、マルチトール、ソルビトール、マンニトール、イソマルト、ポリデキストロースを包含する。
【0020】
標準的なダークチョコレートは、一般に、ココアリカーをココアバターおよび糖と混合した後、精緻化し、コンチングし、テンパリングすることによって得られる。ミルクチョコレートは、同様の方法で調製されるが、粉ミルク、好ましくは牛乳パウダーの添加を含む。ココアバターは、部分的または全体的に、ココアバター代替物、例えば、パーム核油、ココナッツ油若しくはパーム油またはそれらの混合物からのステアリン酸フラクションに置き換えられてよい。上記のように調製されたこれらのチョコレートは、代用チョコレートとも呼ばれる。ホワイトチョコレートは、ココアのリカーまたは粉体を含まないミルクチョコレートであり、同様の方法で、リカーの代わりにココアバターを、糖およびミルクまたは別の乳製品、例えば、粉ミルクと共に使用して調製される。
【0021】
本発明において定義されるチョコレート、またはより一般的に本発明において定義されるチョコレート食品にタイガーナッツ粉末を添加することが人間の食品に好都合であるのは、タイガーナッツ粉末が非アレルギー性であり、かつ、穀物含有製品ではないからである。それが不健康でもないのは、タイガーナッツ粉末の栄養素は、糖、健康に良い脂肪(オレイン酸およびリノール酸に富む)、タンパク質、食物繊維、ビタミンEおよびミネラル、例えば鉄を含んでいるバランスの取れた栄養組成物を構成するからである。
【0022】
本明細書に記載されるタイガーナッツ粉末含有チョコレートは、乳糖不耐症を有するか、または動物性製品を食する/消費することを望まない(菜食主義者または完全菜食主義者など)かのいずれかの人々によって容易に食され/消費され得る。それ故に、本発明によるタイガーナッツ粉末を含有するチョコレートは、日常的な食事が何であろうと、チョコレートを好む全ての人々に適している。
【0023】
タイガーナッツ粉末成分中に含まれる食物繊維以外の食物繊維が存在しないので、チョコレートのコンチング温度をより高くすることができ、チョコレートのレオロジーをより良好にする場合がある。したがって、ココア豆および/またはタイガーナッツ粉末のみに由来するか、またはそれに本質的に由来する食物繊維を有するチョコレートが好適である。「本質的に(essentially from)」とは、食物繊維の95重量%超、有利には98重量%超、特に99重量%超がココア豆および/またはタイガーナッツ食物繊維であることを意味する。
【0024】
ミルクまたはミルク脂肪と比較してタイガーナッツ粉末を使用する別の利点は、より小さいカーボンフットプリントにある。
【0025】
有利には、本発明は、上で定義された、使用、またはチョコレートであって、前記チョコレート食品は、チョコレートをアンロバージュされた中心部を有し、前記中心部は20重量%超、好ましくは20重量%~80重量%の(好ましくは植物性)脂肪、例えば、脂肪、ココアバターおよびナッツ由来の脂肪を有する、使用、またはチョコレートに関する。
【0026】
実際、ココアバターおよび/または脂肪、特に、ナッツ類由来の脂肪、例えば、ヘーゼルナッツ、アーモンド、クルミ、ピーカンナッツ、カシューなどを含有する食品であって、チョコレートによってアンロバージュされたものは、容易および迅速にファットブルームを受ける。これは、特にプラリーヌの場合に当てはまる。それ故に、タイガーナッツ粉末を含有するチョコレートを使用してチョコレート食品の中心部をアンロバージュする場合、チョコレート上でのファットブルームの発生が著しく減少する。
【0027】
より有利には、本発明は、上で定義された使用であって、前記タイガーナッツ粉末は、粒子サイズ(D90)が800μm未満、好ましくは400μm未満である粒子からなり、粒子のサイズをレーザ回折によって測定する、使用に関する。
【0028】
レーザ回折による粒度分布の測定は、分散した粒子サンプルをレーザビームが通過するときに散乱する光の強度における角度変化を測定することにより行われる。本発明において測定されるレーザ回折は、Malvern回折計を使用することによって実行され、データは、D90パラメータ(Dv(90)パラメータとも呼ばれる)に従って収集される。このパラメータは、サンプル中の物質の総体積の90%までが含まれるサイズ分布中の点を示す。これは、D90が400μmであるならば、サンプルの90%が400μm以下のサイズを有することを意味する。800μm未満のD90により、チョコレートのファットブルームおよび/または脆性並びに良好な口当たりに関して特に良好な結果が提供される。
【0029】
より有利には、本発明は、上で定義された使用であって、前記チョコレート食品が、甘味料、特に糖、ココアリカー(ココアマスとも呼ばれる)、乳化剤、例えばレシチン、および香味料をさらに含むか、または本質的にそれらからなる、使用に関する。可溶性食物繊維、例えば、トウモロコシデキストリンが、有利には、添加されてもよい。
【0030】
換言すれば、本発明は、上で定義された使用であって、チョコレートおよび中心部の両方が、甘味料、特に砂糖、ココアリカー、乳化剤、例えばレシチン、香味料を含む、使用に関する。タイガーナッツ粉末は、好ましくは、チョコレート中にのみ存在するが、チョコレートおよび中心部の両方に存在することもできる。
【0031】
定義を明確にするために、上で定義されたチョコレート食品は、有利には、以下のものを有している:
- 中心部:ココアリカー、甘味料、例えば糖、乳化剤、例えばレシチン、香味料を含み、場合によってはタイガーナッツ粉末を含有する;この中心部は、以下のものをアンロバージュされる:
- チョコレート(すなわち、チョコレートのコーティングまたはアンロバージュ);ココアリカー、甘味料、例えば糖、乳化剤、例えばレシチン、香味料も含み、タイガーナッツ粉末も含む。
【0032】
より有利には、コア/中心部は、1種または複数種のナッツの粉体またはペーストを含有することもでき、ナッツの粉体またはペーストは、一般的に、アーモンド、若しくはヘーゼルナッツの粉体またはペースト、またはそれらの混合物である。より有利には、本発明は、上で定義された使用であって、前記チョコレート食品は、乳製品不使用のチョコレートである、使用に関する。
【0033】
「乳製品不使用のチョコレート」は、上で定義されたチョコレートであって、0.05mg/kg以下のミルク痕跡(最低検出限界)の混入を有する、ものである。ミルク痕跡のこの決定は、ELISA試験を使用することによって当該技術分野において周知である(例えば、カゼインの存在を同定する)。
【0034】
より有利には、本発明は、チョコレート食品におけるファットブルームを防止するための、上で定義されたタイガーナッツ製品、好ましくはタイガーナッツ粉末の使用であって、前記チョコレート食品は、チョコレートを含み、前記チョコレートは、
- 20~60重量%の甘味料、例えば、糖、糖アルコールおよび/またはそれらの混合物、および
- 0~60重量%のココアリカー、若しくは
- 0~50重量%、好ましくは0~30重量%のココアバター、または
- 両方
を含有するか、または、これらにより本質的に構成されるか、またはこれらにより構成され、
チョコレート組成物は、ココアリカーまたはココアバターの少なくともいずれかを含む、使用に関する。
【0035】
有利には、上述のチョコレートは、6~40重量%、好ましくは8~40重量%、より有利には18重量%超のタイガーナッツ製品、好ましくは粉末を含む。
【0036】
さらにより有利には、上述のチョコレートは、13重量%~35重量%、好ましくは16重量%~30重量%、より有利には20±5重量%のタイガーナッツ製品、好ましくは粉末を含む。
【0037】
本発明において、「6~40重量%のタイガーナッツ製品、好ましくは粉末」とは、チョコレートまたは食品が、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、20.5、21、21.5、22、22.5、23、23.5、24、24.5、25、25.5、26、26.5、27、27.5、28、28.5、29、29.5、30、30.5、31、31.5、32、32.5、33、33.5、34、34.5、35、35.5、36、36.5、37、37.5、38、38.5、39、39.5または40重量%のタイガーナッツ製品、好ましくは粉末を含有することを意味する。
【0038】
ここで開示されているのはまた、以下:
- 20~60重量%の甘味料、例えば、糖および/または糖アルコール、
- 6~40重量%のタイガーナッツ製品、好ましくはタイガーナッツ粉末、
- 0~60重量%のココアマス/リカー、および/または
- 0~30重量%、好ましくは18~25重量%のココアバター
を含んでいる本発明のチョコレート組成物であり、
組成物は、ココアリカーまたはココアバターの少なくともいずれかを含む。
【0039】
本発明の別のチョコレート組成物は、
- 20~60重量%の甘味料、例えば、糖および/または糖アルコールと、
- 8~40重量%の製品、好ましくはタイガーナッツ粉末、
- 0~60重量%のココアマス/リカー、および/または
- 0~30重量%、好ましくは18~25重量%のココアバターと
を含み、
組成物は、ココアリカーまたはココアバターの少なくともいずれかを含む。
【0040】
さらに別のチョコレートも以下を含むとして開示される:
- 30~50重量%の甘味料、例えば、糖および/または糖アルコール、
- 25~35重量%のココアバター、
- 5~20重量%のココアリカー、および
- 8~40重量%の製品、好ましくはタイガーナッツ粉末。
【0041】
本発明は、
- 20~60重量%の甘味料、例えば、糖および/または糖アルコール、
- 最低18重量%、好ましくは最低20重量%のタイガーナッツ粉末、および
- 0~60重量%のココアリカー、または
- 0~30重量%のココアバター、または
- その両方
を含んでいるチョコレートであって、
チョコレートは、ココアリカーまたはココアバターの少なくともいずれかを含む、チョコレートにも関する。
【0042】
有利には、上で定義されたチョコレートは、
- 30~50重量%の甘味料、
- 25~35重量%のココアバター、
- 5~20重量%のココアリカー、および
- 最低20重量%のタイガーナッツ粉末
を含む。
【0043】
より有利には、上述のチョコレートのいずれかは、18~40重量%、好ましくは20~40重量%、さらにより好ましくは18~30重量%のタイガーナッツ粉末を含む。
【0044】
したがって、本発明によるより有利なチョコレートは、
- 30~50重量%の甘味料、
- 25~35重量%のココアバター、
- 5~20重量%のココアリカー、および
- 18~40重量%、好ましくは20~40重量%、さらにより好ましくは15~30重量%のタイガーナッツ粉末
を含む。
【0045】
より有利には、上述のチョコレートのいずれかは、35~45重量%、あるいは25重量%~40重量%の甘味料またはそれらの混合物を含んでよい。好ましくは、甘味料は、糖(スクロース)、フルクトースおよび/またはグルコースを含むか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる。
【0046】
より有利には、上述のチョコレートのいずれかは、15~35重量%、好ましくは18重量%~25重量%、あるいは、25重量%~35重量%のココアバターを含んでよい。
【0047】
より有利には、上述のチョコレートのいずれかは、10~18重量%のココアマスを含む。
【0048】
特に好適な実施形態によると、本発明のチョコレートは、約39.5重量%の糖、約25.0重量%のタイガーナッツ粉末、約20.7重量%のココアバター、14.0重量%のココアマス、約0.7重量%の大豆レシチンおよび約0.15重量%のバニラエッセンスを含むか、または本質的にそれらからなる。
【0049】
特に好適な実施形態によると、本発明のチョコレートは、約38.9重量%の糖、約25.0重量%のタイガーナッツ粉末、約20.1重量%のココアバター、15.5重量%のココアマス、約0.4重量%のヒマワリレシチンおよび約0.1重量%の香味料を含むか、または本質的にそれらからなる。
【0050】
特に好適な実施形態によると、本発明のチョコレートは、約37.2重量%の糖、約22.7重量%タイガーナッツ粉末、約23.9重量%のココアバター、16.0重量%のココアマス、約4.0重量%のトウモロコシデキストリン、約0.4重量%のヒマワリレシチンおよび約0.1重量%の香味料を含むか、または本質的にそれらからなる。
【0051】
特に好適な実施形態によると、本発明のチョコレートは、約38.4重量%の糖、約18.1重量%のタイガーナッツ粉末、約22.9重量%のココアバター、15.5重量%のココアマス、約4.7重量%の小麦デキストリン、約0.3重量%のヒマワリレシチンおよび約0.1重量%の香味料を含むか、または本質的にそれらからなる。
【0052】
前述のように、本発明のチョコレート組成物は、特にタイガーナッツ粉末を含有しないチョコレートと比較した場合に、ファットブルームの発生を遅延させるより良好な能力を示す。あるいはまたはその上、本発明のチョコレート、チョコレート組成物または食品は、ミルクを含有するチョコレートと比較して、同等またはより良好なファットブルームを遅延させる能力を示す。
【0053】
有利には、上述のチョコレート/チョコレート組成物およびチョコレート食品は、ココアニブ、並びに1種または複数種の香味料および/または1種または複数種の乳化剤を含有してよい。
【0054】
上記の混合物の遊離脂肪含有率が約27重量%であることは、特に有利である。遊離脂肪のこの量は、正確な精緻化を可能とし、成分の均質な混合物を得るためには、高すぎても低すぎてもいけない。
【0055】
チョコレートは、以下の実施例1に例示されるように、当技術分野で周知の方法に従って製造される。簡単には、成分が一緒に混合され、ブレンドされて、均質なペーストを得る。次いで、ペーストは、精緻化されて、微粉度が通常約20ミクロンである粉体を得、生じた粉体は、適切な温度、例えば、45℃~90℃の範囲の温度でコンチングされる。
【0056】
有利には、本発明は、上で定義されたチョコレートであって、前記タイガーナッツ粉末は、D90粒子サイズが800μm未満、好ましくは400μm未満である粒子からなり、粒子のサイズは、上記のレーザ回折によって測定される、チョコレートに関する。
【0057】
より有利には、本発明は、上で定義されたチョコレートであって、前記チョコレート製品は、乳製品不使用および/または動物性製品不使用である、チョコレートに関する。
【0058】
より有利には、本発明は、上で定義されたチョコレートであって、前記チョコレート製品が有する26℃での固形脂肪含有率は、20重量%から30重量%までの範囲にわたり、好ましくは約26重量%である、チョコレートに関する。
【0059】
有利には、チョコレートの20℃での固形脂肪含有率は、26℃での安定化法により測定されて、50%から65%までの範囲にわたり、より好ましくは50%から60%までの範囲にわたる。
【0060】
このようなチョコレート/組成物/食品は、標準的なミルクチョコレートの口当たりと同様の口当たりを有する。
【0061】
別の態様において、本発明は、以下:
- 中心部;最低20重量%の脂肪、好ましくは非動物性脂肪、より好ましくは植物性脂肪、好ましくはココアおよび/またはナッツ由来のものを含んでいる;
- 前記中心部のコーティング;上で定義されたチョコレート製品を含んでいるか、または本質的にそれらなる;
を含むか、または本質的にそれらからなるか、またはそれらからなるチョコレート食品であって、
前記チョコレートは、好ましくは、前記チョコレート製品の最低25重量%を含む、チョコレート食品に関する。
【0062】
換言すると、本発明は、特に、以下:
- 中心部;最低20重量%の脂肪、好ましくは非動物性脂肪、より好ましくは植物性脂肪、好ましくはココアおよび/またはナッツ由来のものを含んでいる、および
- 前記中心部のコーティング;チョコレートを含むか、または本質的にそれからなる、当該チョコレートは、以下のもの:
*20~60重量%の甘味料、例えば、糖および/または糖アルコール、
*8~40重量%のタイガーナッツ粉末、および
o0~60重量%のココアリカー、若しくは
o0~50重量%、好ましくは0~30重量%のココアバター、または
oその両方
を含んでおり、ここで、チョコレートは、ココアリカーまたはココアバターの少なくともいずれかを含んでいる
を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなるチョコレート食品であって、
前記チョコレートは、好ましくは、前記チョコレート製品の最低25重量%を含む、チョコレート食品に関する。
【0063】
より有利には、チョコレートコーティングは、前記中心部をアンロバージュする。
【0064】
本発明は、チョコレート食品、特に乳製品不使用のチョコレート食品を製造するための方法であって、少なくともココアバター、ココアマス/リカーおよび甘味料を最低8重量%、好ましくは8~40重量%、より好ましくは20~40重量%のタイガーナッツ製品、好ましくはタイガーナッツ粉末と混合して混合物を得る工程を含む、方法にも関する。
【0065】
有利には、本発明は、上で定義された方法であって、前記タイガーナッツ粉末は、D90粒子サイズが800μm未満、好ましくは400μm未満である粒子からなり、粒子のサイズを、上で定義されたレーザ回折によって測定する、方法に関する。
【0066】
有利には、本発明は、上で定義された方法であって、前記混合物をブレンドしてブレンド済み混合物を得る工程、前記ブレンド済み混合物を精緻化して精緻化済み混合物を得る工程、前記精緻化済み混合物をコンチングしてコンチング済みチョコレート混合物を得る工程、香味料および/または乳化剤を添加することによって前記コンチング済み混合物を最終的に仕上げて仕上げ済みチョコレート混合物を得る工程の連続工程を含む、方法に関する。
【0067】
この方法は、以下の実施例1によって例示され、ブレンド、精緻化およびコンチングの工程は、本発明によるチョコレートについて詳述される。
【0068】
コンチング済み混合物を仕上げる任意選択の工程は、本方法の終わりに行われて、前の工程で得られたチョコレート製品中に香味料および/または乳化剤を組み込むようにすることもできる。
【0069】
有利には、本発明は、上記の方法であって、前記コンチング済み混合物をテンパリングする、方法に関する。
【0070】
有利には、コンチング済み混合物を仕上げ工程に供して、仕上げ済み混合物を得るようにする場合、これは、次いで、仕上げ済み混合物がテンパリングされる。
【0071】
任意選択的に、テンパリング工程は、コンチングの工程の後および仕上げの工程の後にも行われ得る。
【0072】
より有利には、本発明は、上で定義された方法であって、前記コンチング工程を、90℃未満、かつ、好ましくは70℃以上の温度で実行する、方法に関する。それ故に、コンチング温度は、75℃から89℃まで、好ましくは70℃から80℃までの範囲にわたってよい。
【0073】
1つの他の態様において、本発明は、冷凍食品、特にアイスクリームまたは乳製品不使用のアイスクリームに浸漬するための、タイガーナッツ粉末含有チョコレートの使用に関する。
【0074】
有利には、本発明は、冷凍食品、特にアイスクリームまたは乳製品不使用のアイスクリームを浸漬するための、上で定義されたタイガーナッツ粉末含有チョコレートの使用に関する。
【0075】
より有利には、本発明は、以下:
- 20~60重量%の甘味料、糖、および糖アルコール、並びに
- 6~40重量%のタイガーナッツ粉末、
- 0~60重量%のココアマス/リカー、および/または
- 0~50重量%、好ましくは0~30重量%のココアバター
を含み、チョコレートは、ココアリカーまたはココアバターの少なくともいずれかを含むタイガーナッツ粉末含有チョコレートを、冷凍食品、特にアイスクリームまたは乳製品不使用のアイスクリーム中に浸漬するための使用に関する。
【0076】
より有利には、本発明は、冷凍食品、特にアイスクリームまたは乳製品不使用のアイスクリーム中に浸漬するための、以下のもの:
- 30~50重量%の甘味料、
- 25~35重量%のココアバター、
- 5~20重量%のココアリカー、および
- 最低8重量%、好ましくは最低20重量%、より好ましくは8~40重量%のタイガーナッツ粉末
を含むタイガーナッツ粉末含有チョコレートの使用に関する。
【0077】
冷凍食品、例えば、アイスクリーム、乳製品不使用のアイスクリームだけでなく、冷凍果実またはデザートの冷凍調理食品(インサートなど)もチョコレートによってコーティングされ得る。しかしながら、このようなコーティングは、操作中および輸送中に壊れやすい。
【0078】
本発明者らは、本発明において示されるような、タイガーナッツ粉末を含有するチョコレートが、バターオイルを含有する参照チョコレートと比較して、同じ時間内での望ましくない破損に抵抗することを示した。
【0079】
これは、冷凍食品の商品化の前にそれらの完全性を保つために、製造業者によって特に高く評価される。
【0080】
本発明は、タイガーナッツ製品、好ましくは粉末を含むチョコレートによってコーティングされた冷凍食品、特にアイスクリームまたは乳製品不使用のアイスクリームにも関する。
【0081】
本発明は、上で定義されたようなタイガーナッツ粉末含有チョコレートでコーティングされた、冷凍食品、特にアイスクリームまたは乳製品不使用のアイスクリームにも関する。
【0082】
本発明は、タイガーナッツ粉末含有チョコレートであって、
- 20~60重量%の甘味料、糖、および糖アルコール、並びに
- 6~40重量%のタイガーナッツ粉末
- 0~60重量%のココアマス/リカー、および/または
- 0~30重量%のココアバター
を含んでいるものによって覆われた冷凍食品、特にアイスクリームまたは乳製品不使用のアイスクリームであって、
チョコレートは、ココアリカーまたはココアバターの少なくともいずれかを含む、冷凍食品、特にアイスクリームまたは乳製品不使用のアイスクリームにも関する。
【0083】
有利には、本発明は、上で定義された冷凍食品であって、
- 30~50重量%の甘味料、
- 25~35重量%のココアバター、
- 5~20重量%のココアリカー、および
- 最低8重量%、好ましくは最低20重量%、より好ましくは8~40重量%のタイガーナッツ粉末
を含む、冷凍食品に関する。
【0084】
上述された使用、上で定義されたチョコレートおよびチョコレート食品において、チョコレート/組成物/食品が固体であることが有利である。
【0085】
上述された使用、上で定義されたチョコレートおよびチョコレート食品において、タイガーナッツ製品は、タイガーナッツ粉末およびタイガーナッツミルク、またはタイガーナッツの任意の誘導体を包含する。タイガーナッツ粉末は、好適なタイガーナッツ製品である。
【0086】
有利には、上記の使用、チョコレートおよび食品において、チョコレートは、穀物または穀物誘導体、例えば、大豆、米またはイヌリンを含有しない。
【0087】
有利には、上記の使用、チョコレートおよび食品において、チョコレートは、ココアバターおよびタイガーナッツ由来のものを除いて追加の脂肪を有さず、特に追加の脂肪、特に、バター油または植物由来の脂肪、例えばココナッツ油またはナッツ由来の油を含有しない。
【0088】
本発明は、以下の図面および実施例を考慮してより良く理解されるであろう。
【0089】
(図面への凡例)
図1は、実施例2のチョコレート製品の写真である。
【0090】
図2は、実施例1のチョコレート(B)並びに2個の比較例(A:ライスグルコースシロップおよびイヌリンおよびC:ミルクチョコレート)の温度(℃)にわたる固形脂肪含有率(%)を示すグラフである。
【0091】
図3は、乳製品不使用の参照チョコレートでコーティングしたアイスクリームに対して行われた脆性決定の実験の写真であり、チョコレートはライスを含有する。
【0092】
図4は、本発明によるチョコレートでコーティングされたアイスクリームに対して行われた脆性決定実験の写真である。
【0093】
(実施例1:本発明に合致するチョコレートの製造)
タイガーナッツ(または「チュファ(chufa))粉末を、バレンシア(ES)のTigernuts Traders,S.L.から入手した。タイガーナッツ粉末は、Cyperus esculentus Lativum種に由来し、最大含水率約8%、pH約7.3の白色/褐色の粉体である。粉体が有しているかさ密度は、462kg/m3であり、極微細、すなわち粒子サイズ<330μmである。粉体は、5.68重量%の飽和脂肪、19.37重量%の不飽和脂肪、19.4重量%の糖、15.6重量%の食物繊維および61.3重量%の総炭水化物を含む。粉体の脂肪酸含有率は、主に、オレイン酸(約64重量%)、パルミチン酸(約15%)およびステアリン酸(約4%)を含む。粉体を熱蒸気を使用して滅菌し、以下の表1に示される微生物学的およびマイコトキシンの限界に達するようにする。
【0094】
【0095】
【0096】
1.成分のブレンド-混合物の調製
上記のタイガーナッツ粉末1405g+糖2225g+ココアリカー(50℃で)790g+ココアバター(50℃で)580gを、KRUPS製のVariomix型ブレンダーで一緒にブレンドする。
【0097】
ブレンダーの速度を、ブレンド工程中に適合させる:最初は遅いrpm(粉塵形成を防止するため)で、終わりに向かってより高いrpmであり、均質なペーストを得る。混合時間は、典型的には40~45℃で10分であった。使用された開始速度は、約25ppmであった;使用された最大速度は、50ppmであった。
2.混合物の精緻化
次いで、均一なペーストを、Buhler社(CH)の典型的な3ロールミルリファイナにおいて精緻化した。20ミクロンの精緻度を有するチョコレートを得た。
3.コンチング
微粒化済み粉体をBuehler Elkolinoコンチェに入れ、90℃を超えてはならない温度で2.5時間にわたってコンチングした。90℃を超えるとチョコレートの濃厚化が観察される。
【0098】
このようにして得られたチョコレートは、多くの用途に適したレオロジーを有する:線形粘度範囲は、1500~2200mPasであり、降伏値範囲は、12~16Pasである。含水率は、最高1%である。
【0099】
(実施例2:本発明に合致するチョコレートでアンロバージュされた菓子の製造)
(チョコレートのテンパリング)
実施例1の仕上げ工程において得られた液状チョコレートを、テンパー指数(TI)3または5が得られるように、Sollichテンパー装置において機械テンパリングした。
【0100】
ナッツペースト20重量%+タイガーナッツチョコレート80重量%からなるナッツ中心部の調製を、溶融後に単純に混合し、次いで個々の中心部に成形することによって行った。2週間の結晶化時間の後、ナッツ中心部を、Sollichテンパー機からのテンパリング済みチョコレートをアンロバージュして、アンロバージュ済み片が約30重量%のチョコレートを含有するようにした。アンロバージュ機を「少振動または無振動」に設定し、ブロー率は45~50%であった。アンロバージュ済み片を、冷蔵庫内で11℃で1.5時間中、冷却した。
【0101】
(比較例3:標準的なミルクチョコレートおよび標準的な乳製品不使用のチョコレートの製造)
本発明のチョコレートの特性を比較するために、標準的なミルクチョコレートおよび標準的な乳製品不使用の「ミルク」チョコレートを製造し、実施例1に記載したのと同一の方法を用いて保存した。それらは大きさおよび形状におおいて同一であった。
【0102】
同様に、標準的なミルクチョコレートプラリーヌおよび標準的な乳製品不使用の「ミルク」チョコレートプラリーヌの製造・保存を、実施例2に記載したのと同一の方法を用い、本発明のチョコレートの代わりに標準的なミルクチョコレートおよび標準的な乳製品不使用のミルクチョコレートを用いて行った。それらは、サイズおよび形状において同一であった。
【0103】
これらの2個の比較例の組成を、実施例1の本発明のチョコレートの組成と共に以下の表2に示す。
【0104】
【0105】
実施例1および2のナポリタンおよびプラリーヌは、標準的なミルクチョコレートに匹敵する滑らかでミルキーな味および口当たりを有していた。これは、口当たりがダークチョコレートに類似していた標準的な乳製品不使用のチョコレートには当てはまらなかった。
【0106】
3種類の全てのチョコレートアンロバージュナッツ中心部菓子、またはプラリーヌのファットブルームを10月にわたって視覚的に評価した。ファットブルームスコアリングシステムは以下の通りだった。
【0107】
ファットブルームなし=0
光沢の初期損失=1
光沢の持続的損失=2
ファットブルームの開始=3
中間段階のファットブルーム=4
完全なファットブルーム=5
各月(M1~MIO)に観察された結果を以下の表3に報告する。
【0108】
【0109】
最も予想外なことに、本発明に従って作製された乳製品不使用のプラリーヌは、ナッツ中心部をアンロバージュする場合、優れた安定性およびファットブルームに対する耐性を示す。したがって、この製品の貯蔵寿命は実質的に増大した。対照的に、標準的なミルクチョコレート製品は、非常に早くからファットブルームを示した。標準的な乳製品不使用のチョコレートは、ファットブルームに対して非常に低い耐性を示した。さらに、TI 3でテンパリングが不十分なタイガーナッツチョコレートは、実際のミルクチョコレートと比較して、ファットブルームに対する感受性が低い。これは、本発明によるチョコレートの更なる利点である。
【0110】
(比較例4:アイスクリームスティックの脆性の決定)
(1.アイスクリーム浸漬試験)
コーティングしていないアイスクリーム(Glaces De Smetから入手)を、以下の表4に列挙される様々なチョコレートサンプルに浸漬した。
【0111】
【0112】
チョコレートの釣り合いの取れた取り出し重量(pick-up weight)を得る試みを行って、結果を比較可能なままに保つようにした。取り出し重量とは、コーティングされていないアイスクリームの重量と、浸漬後のアイスクリームの重量との差である。チョコレートの温度を変えることによって、釣り合いの取れた取り出し重量を得た。取り出し重量は、24g前後で変動した。浸漬温度は、約45.7℃であった。一方では側面が、他方では上面が乾燥した乾燥時間も記録した。アイスクリームを、冷凍庫において-20℃で保存した。
【0113】
(2.脆性決定方法)
次いで、上述されたように調製されたアイスクリームの脆性を調べた。アイスクリームに力を加えたときに、アイスクリームがどの程度の深さで、どの程度速く壊れるかを調べた。その方法は以下の通りである。
【0114】
脆性の決定を、Stable Micro Systems社製のテクスチュロメータTA.XTplusを用いて行う。デバイスは、サンプルの力、距離および時間を測定し、これのグラフ表示を提供する。通常、ロードセル5kgを使用する。冷凍温度で保存されたチョコレートの測定には、ロードセル50kgを用いる。これらのサンプルが硬すぎてテクスチャーメータのアームが曲がりすぎる可能性があるためである。
【0115】
割れの数とそれらの形状を説明するために、1/2インチの球状ステンレスプローブ(
図3および4)を使用する。アイスクリームスティックを2つの支持体の間に配置し、滑らないようにする。プローブを、アイスクリームの上の中央、高さ37mmに配置する。速度を自動設定し、プローブはアイスクリームに向かって1.00mm/秒で移動し、50Nの力が感じられるまでアイスクリーム中を0.50mm/秒で移動し、2.00mm/秒で戻る。いくつかのアイスクリームについて、50Nの力に到達せず、試験を手動で停止する。
【0116】
アイスクリームを冷凍庫から-20℃で取り出し、1分の待機時間の後に試験を開始する。次いで、氷コーティング上の亀裂の量および形状を視覚的に検査し、比較する。結論は、チュファチョコレートがバターオイルと同様の亀裂パターンを示し、ライスレシピが多くの望ましくない深い亀裂を示すことである。
【0117】
(時間測定試験)
新たに浸漬したアイスクリームスティックに球状物体で圧力を加え(この試験ではスティックを押すのにスプーンを使用した)、コーティングに亀裂が入り始める時間を手動で記録した。
【0118】
典型的には、バターオイルを使用した参照レシピの亀裂のタイミングは、約3分である。時間が3分より短いならば、実稼働環境において望ましくない亀裂が多すぎる可能性がある。時間が3分であれば、より多くの望ましくない亀裂が生じるのは回避されるだろう。
【0119】
完全菜食主義者用レシピにおいて亀裂時間を延長するために、チョコレートコーティングの層をより厚くすることが必要とされるか、または柔軟性のある脂肪の添加が必要とされるかのいずれかであるが、チョコレートコーティングの層をより熱くすることは、費用対効果の良い解決策ではない。
【0120】
脆性測定の結果を以下の表5に示す。
【0121】
【0122】
亀裂のタイミングの結果を以下の表6に示す。
【0123】
【0124】
(結論)
これらの試験から、本発明によるタイガーナッツチョコレートが望ましくない破損に抵抗するのは、バターオイルを含む標準的なチョコレートと比較した場合、特にアイスクリームをチョコレートで覆うために使用する場合であることが示される。さらに、タイガーナッツチョコレートは、この同じ用途について、参照の乳製品不使用のチョコレートと比較して、望ましくない破損に対してより耐性である。
【0125】
植物油を添加すると、破壊時間が著しく増加することが留意されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【
図2】実施例1のチョコレート(B)並びに2個の比較例(A:ライスグルコースシロップおよびイヌリンおよびC:ミルクチョコレート)の温度(℃)にわたる固形脂肪含有率(%)を示すグラフである。
【
図3】乳製品不使用の参照チョコレートでコーティングしたアイスクリームに対して行われた脆性決定の実験の写真であり、チョコレートはライスを含有する。
【
図4】本発明によるチョコレートでコーティングされたアイスクリームに対して行われた脆性決定実験の写真である。
【国際調査報告】