IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オラノ・メッドの特許一覧

特表2024-503129PSMA標的化コンジュゲート及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-24
(54)【発明の名称】PSMA標的化コンジュゲート及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/54 20170101AFI20240117BHJP
   A61K 51/08 20060101ALI20240117BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240117BHJP
   A61K 31/395 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
A61K47/54
A61K51/08 200
A61K51/08 100
A61P35/00
A61K31/395
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543185
(86)(22)【出願日】2022-01-17
(85)【翻訳文提出日】2023-09-19
(86)【国際出願番号】 EP2022050885
(87)【国際公開番号】W WO2022157119
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】21305061.0
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521125578
【氏名又は名称】オラノ・メッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アマル・サイディ
(72)【発明者】
【氏名】エイミー・ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・トルグ
(72)【発明者】
【氏名】タニア・スターロンズ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076DD54
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA12
4C084NA13
4C084ZB26
4C085HH03
4C085KA29
4C085KB02
4C085KB56
4C085LL18
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC58
4C086HA28
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA13
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、放射性医薬品を調製するために使用され得る、又はいったん放射性核種で標識されたら、放射性医薬品として使用され得る、PSMA標的化コンジュゲート又は薬学的に許容される塩に関する。コンジュゲートは、式(I):A1-L1-Ch-L2-A2 (I)(式中、Chはキレート剤であり、L1及びL2は、同一である又は異なる、リンカーであり、A1及びA2は、同一である又は異なる、尿素ベースのPSMAリガンドである)のものである。本発明はまた、その使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のコンジュゲート又はその薬学的塩:
A1-L1-Ch-L2-A2 (I)
(式中、
- Chは式(II)又は(III)のキレート剤:
【化1】
(式中、
点線はL1及びL2との共有結合を表し;
R1及びR2は、互いに独立して、-NH2又は-OH基である)
であり;
- L1及びL2は、互いに独立して、式(IV)のリンカー:
------NH-CH2-Y-C(O)-NH-CH(R5)-C(O)------ (IV)
(式中、
式(IV)の左側の点線はChとの共有結合を表し;
式(IV)の右側の点線は、L1についてはA1、L2についてはA2との共有結合を表し;
Yはアリーレン基、ヘテロアリーレン基又は(C5~C8)シクロアルキレン基であり;
R5はアリール基、ヘテロアリール基、アリール-(C1~C6)アルキル基又はヘテロアリール-(C1~C6)アルキル基である)
であり;
- A1及びA2は、互いに独立して、式(V)のPSMAリガンド:
【化2】
(式中、
点線は、A1についてはL1、A2についてはL2との共有結合を表し;
mは2~6の整数であり;
Xは酸素原子、硫黄原子、二価-NH-基又は-N[(CR3R4)n-Z]-基であり、R3及びR4は独立して、H又はC1~C3アルキル基であり、nは1~3の整数であり、Zは置換又は非置換アリール基又はヘテロアリール基である)
である)。
【請求項2】
Chが式(III)のものである、請求項1に記載のコンジュゲート又は塩。
【請求項3】
R1及びR2が互いに同一であり、好ましくは-NH2基である;及び/又は
Yがシクロペンチレン若しくはシクロヘキシレン基、好ましくはシクロヘキシレン基である;及び/又は
R5がナフチル(C1~C3)アルキル基、好ましくは2-ナフチルメチル基である;及び/又は
mが3若しくは4、好ましくは4である;及び/又は
Xが二価-NH-基若しくは二価-N[(CH2)n-Z]-基であり、Zがハロゲン原子によって置換されたフェニル基、ハロゲン原子によって置換されたピリジニル基若しくはキノリニル基、好ましくは式:
【化3】
(式中、
点線は(CH2)n基との共有結合を表し、
Halは臭素、ヨウ素又はフッ素原子である)
の基である、
請求項1又は請求項2に記載のコンジュゲート又は塩。
【請求項4】
L1及びL2が互いに同一である、並びに/又は
A1及びA2が互いに同一である、
請求項1から3のいずれか一項に記載のコンジュゲート又は塩。
【請求項5】
Chが式(III)のものであり;
R1及びR2が-NH2基であり;
L1及びL2が互いに同一であり;
Yが1,4-シクロヘキシレン基であり;
R5が2-ナフチルメチル基であり;
A1及びA2が互いに同一であり;
mが4であり;
Xが-NH-基である、
請求項1から4のいずれか一項に記載のコンジュゲート又は塩。
【請求項6】
キレート剤によってキレート化された放射性核種を更に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のコンジュゲート又は塩。
【請求項7】
放射性核種が鉛放射性核種、好ましくは203Pb又は212Pbである、請求項6に記載のコンジュゲート又は塩。
【請求項8】
薬学的に許容される媒体中に、請求項1から5のいずれか一項に記載のコンジュゲート又は塩を含む組成物。
【請求項9】
薬学的に許容される媒体中に、請求項6又は請求項7に記載のコンジュゲート又は塩を含む放射性医薬品。
【請求項10】
少なくとも:
- 請求項1から5のいずれか一項に記載のコンジュゲート又は塩を含有する第1の容器と;
- 放射性核種を含有する第2の容器と
を含む、キットオブパーツ。
【請求項11】
放射性核種が鉛放射性核種、好ましくは203Pb又は212Pbである、請求項10に記載のキットオブパーツ。
【請求項12】
コンジュゲート又はその塩のキレート剤による放射性核種のキレート化を含む、放射性医薬品を調製するための、請求項1から5のいずれか一項に記載のコンジュゲート又はその塩、或いは請求項10に記載のキットオブパーツの使用。
【請求項13】
放射性核種が鉛放射性核種、好ましくは203Pb又は212Pbである、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前立腺特異的膜抗原が過剰発現しているがん、好ましくは前立腺がんのインビボイメージング又は処置に使用するための、請求項9に記載の放射性医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、放射性医薬品の分野に属する。
【0002】
より具体的には、本発明は、放射性医薬品を調製するために使用され得る、又はいったん放射性核種で標識されたら、放射性医薬品として使用され得る、PSMA標的化コンジュゲート又はその薬学的に許容される塩に関する。
【0003】
本発明はまた、コンジュゲート又はその塩を含む組成物、放射性医薬品並びにキットオブパーツに関する。
【0004】
本発明は更に、放射性医薬品を調製するための、非標識コンジュゲート又はその塩並びにキットオブパーツの使用に関する。
【0005】
本発明はその上、PSMAが過剰発現しているがん、特に前立腺がんのインビボイメージング又は処置に使用するための放射性医薬品に関する。
【背景技術】
【0006】
本発明の背景
前立腺がんは、皮膚がんを除いて、男性で最も一般的ながんであり、米国において男性のがんによる死亡原因の第2位である。
【0007】
がん細胞の種類及びがんの進行段階、患者の年齢及び健康全般に応じて、現在、いくつかの処置選択肢(例えばアクティブサーベイランス、外科手術、外部放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、強力集束超音波及び化学療法)が、前立腺がん患者に提案されている。
【0008】
それにもかかわらず、治療の改善が強く要求されている。
【0009】
前立腺がんリード(leads)に対する改善された治療の1つの有望な方法は、標的化放射性医薬品、すなわち、放射性核種で標識され、正常で健康な組織を保護しながらがん細胞に毒性レベルの放射線を送達するようにがん細胞を標的化することができる薬物の使用である。
【0010】
典型的には、前立腺がん細胞を標的化するように設計された放射性医薬品は、前立腺がん細胞に対して高い親和性を有するベクター分子と、おそらくはリンカー(又はスペーサー)を介して、放射性核種がキレート化によって保持されているキレート剤とを含むコンジュゲートである。
【0011】
葉酸ヒドロラーゼI(F0LH1)及びグルタミン酸カルボキシペプチダーゼII(GCPII)としても知られるPSMA(すなわち、前立腺特異的膜抗原)は、主に正常なヒト前立腺上皮で発現するが、転移性がんを含む前立腺がんで過剰発現する膜貫通糖タンパク質である。PSMAは、全ての前立腺がんで過剰発現し、その発現は、低分化癌、転移性癌及びホルモン不応性癌で更に増加するため、PSMAは、がん前立腺イメージング及び治療にとって非常に魅力的な標的である。
【0012】
2000年代前半には、尿素系化合物、例えばグルタミン酸-尿素-グルタミン酸又はグルタミン酸-尿素-リジンモチーフを含む化合物が、PSMAに対して特定の高い親和性を示すことが示されている(A.P.Kozikowskiら、J.Med.Chem.2001、44、298~301頁;A.P.Kozikowskiら、J.Med.Chem.2004、47、1729~1738頁参照)。
【0013】
したがって、3つの成分で構成される様々なコンジュゲート、すなわち、1つのリンカーを介して放射標識用の1つのキレート剤、例えばDOTA、DOTAGA又はHBEDにコンジュゲートした1つの尿素ベースのPSMAリガンドが、前立腺がん細胞を標的化するために提案されている。
【0014】
このようなコンジュゲートは、特に、ビピボチドテトラキセタンとして市販され、PSMA-617としても知られているコンジュゲートDOTA-PSMA-617、PSMA-I&Tとしても知られているコンジュゲートDOTAGA-PSMA-I&T、並びにPSMA-11としても知られているコンジュゲートPSMA-HBED-CCである(Eiberら、J.Nucl.Med.、2017、58、9(補遺2)参照)。
【0015】
イメージング目的でガリウム-68又は治療目的でルテチウム-177若しくはアクチニウム-225のいずれかで標識されているDOTA-PSMA-617が、特に研究されており、現在、前立腺がんのイメージング及び処置のための最も有望なコンジュゲートの1つと考えられている。
【0016】
しかしながら、彼らの研究の文脈において、本発明者らは、第2の尿素ベースのPSMAリガンドが第2のリンカーを介してキレート剤にコンジュゲートされる場合に、予想外に、3成分コンジュゲートのインビボ分布プロファイル並びにインビボ有効性が有意に改善され得ることを観察した。
【0017】
本発明は、これらの実験的観察に基づいている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】A.P.Kozikowskiら、J.Med.Chem.2001、44、298~301頁
【非特許文献2】A.P.Kozikowskiら、J.Med.Chem.2004、47、1729~1738頁
【非特許文献3】Eiberら、J.Nucl.Med.、2017、58、9(補遺2)
【発明の概要】
【0019】
本発明の概要
本発明は、第一に、式(I)のコンジュゲート又はその薬学的塩:
A1-L1-Ch-L2-A2 (I)
(式中、
- Chは式(II)又は(III)のキレート剤:
【化1】
(式中、
点線はL1及びL2との共有結合を表し;
R1及びR2は、互いに独立して、-NH2又は-OH基である)
であり;
- L1及びL2は、互いに独立して、式(IV)のリンカー:
------NH-CH2-Y-C(O)-NH-CH(R5)-C(O)------ (IV)
(式中、
式(IV)の左側の点線はChとの共有結合を表し;
式(IV)の右側の点線は、L1についてはA1、L2についてはA2との共有結合を表し;
Yはアリーレン基、ヘテロアリーレン基又は(C5~C8)シクロアルキレン基であり;
R5はアリール基、ヘテロアリール基、アリール-(C1~C6)アルキル基又はヘテロアリール-(C1~C6)アルキル基である)
であり;
- A1及びA2は、互いに独立して、式(V)のPSMAリガンド:
【化2】
(式中、
点線は、A1についてはL1、A2についてはL2との共有結合を表し;
mは2~6の整数であり;
Xは酸素原子、硫黄原子、二価-NH-基又は二価-N[(CR3R4)n-Z]-基であり、R3及びR4は独立して、H又はC1~C3アルキル基であり、nは1~3の整数であり、Zは置換又は非置換アリール基又はヘテロアリール基である)
である)
に関する。
【0020】
先行するもの及び以下のものにおいて、
- 「C1~C3アルキル基」という用語は、メチル、エチル、n-プロピル又はイソプロピル基を指し;
- 「アリール基」という用語は、環炭素原子から水素原子を除去することによって単環式又は多環式芳香族炭化水素から誘導される任意の基(例えばフェニル、トリル、キシリル、メシチル、ナフチル、ビフェニル又はアントラセニル基)を指し、「ヘテロアリール基」という用語は、定義したばかりであるような任意のアリール基であるが、その1個又は複数の環が1個又は複数のヘテロ原子を含み、この又はこれらのヘテロ原子が、典型的には窒素、酸素及び硫黄原子の中から選択される任意のアリール基(例えば、フリル、チオフェニル、ピロリル、ピリジニル、ピラジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾフリル、イソベンゾフリル、インドリル、イソインドリル又はベンゾチアゾリル基)を指し;置換されている場合、アリール又はヘテロアリール基は特に、ハロゲン原子、例えば臭素、塩素、ヨウ素又はフッ素原子によって置換され得;
- 「アリーレン基」という用語は、2個の環炭素原子から水素原子を除去することによって単環式又は多環式芳香族炭化水素から誘導される任意の二価基(例えば、フェニレン基)を指し、「ヘテロアリーレン基」という用語は、定義したばかりであるような任意のアリーレン基であるが、その1個又は複数の環が1個又は複数のヘテロ原子を含み、この又はこれらのヘテロ原子が、典型的には窒素、酸素及び硫黄原子の中から選択される任意のアリーレン基(例えば、チエニレン基)を指し;
- 「(C5~C8)シクロアルキレン基」という用語は、5、6、7又は8個の炭素原子を含む任意の二価シクロアルキル基、すなわち、二価シクロペンチル基(若しくはシクロペンチレン基)、二価シクロヘキシル基(若しくはシクロヘキシレン基)、二価シクロヘプチル基(若しくはシクロヘプチレン基)又は二価シクロオクチル基(若しくはシクロオクチレン基)を指し;
- 「アリール-(C1~C6)アルキル基」という用語は、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を含み、その少なくとも1個の水素原子がアリール基で置き換えられている任意の直鎖状又は分岐アルキル基を指し、「ヘテロアリール-(C1~C6)アルキル基」という用語は、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を含み、その少なくとも1個の水素原子がヘテロアリール基で置き換えられている任意の直鎖状又は分岐アルキル基を指す。
【0021】
本発明によると、Chは、好ましくは式(III)を満たす。
【0022】
R1及びR2は、好ましくは互いに同一である。より好ましくは、R1及びR2は-NH2基である。
【0023】
Yは、好ましくは(C5~C8)シクロアルキレン基、より好ましくはシクロペンチレン基(1,2-シクロペンチレン若しくは1,3-シクロペンチレン基)又はシクロヘキシレン基(1,2-シクロヘキシレン、1,3-シクロヘキシレン若しくは1,4-シクロヘキシレン基)、なお良くは、好ましくは1,4-シクロヘキシレン基であるシクロヘキシレン基である。
【0024】
R5は、好ましくはアリール-(C1~C6)アルキル基、より好ましくはナフチル(C1~C3)アルキル基、例えば1-ナフチルメチル、1-ナフチルエチル、1-ナフチル-n-プロピル、2-ナフチルメチル、2-ナフチルエチル又は2-ナフチル-n-プロピル基であり、2-ナフチルメチル基が極めて特に好ましい。
【0025】
mは、好ましくは3又は4、より好ましくは4である。
【0026】
Xは、好ましくは二価-NH-基又は二価-N[(CH2)n-Z]-基であり、nは前に定義される通りであるが、Zは、ハロゲン原子によって置換されたフェニル基、ハロゲン原子によって置換されたピリジニル基又はキノリニル基、なお良くは、式:
【化3】
(式中、
点線は(CH2)nとの共有結合を表し、
Halは臭素、ヨウ素又はフッ素原子、好ましくは臭素又はヨウ素原子である)
の基である。
【0027】
前述のように、L1及びL2は互いに同一であってもよく、又は互いに異なっていてもよい。同様に、A1及びA2は互いに同一であってもよく、又は互いに異なっていてもよい。
【0028】
しかしながら、L1及びL2が互いに同一であるか、若しくはA1及びA2が互いに同一であるかのいずれかであるか、又はなお良くは、両方の組合せであることが好ましい。
【0029】
本発明の別の実施形態によると、R1及びR2は-OH基である。
【0030】
本発明によると、コンジュゲートは、好ましくは
Chが、R1及びR2が-NH2基である式(III)のものであり;
L1及びL2が互いに同一であり;
Yが1,4-シクロヘキシレン基であり;
R5が2-ナフチルメチル基であり;
A1及びA2が互いに同一であり;
mが4であり;
Xが-NH-基である、
式(I)を満たすコンジュゲートである。
【0031】
以下、PSMA-OM-00214と示されるこのコンジュゲートは、特定の式(VI):
【化4】
を満たす。
【0032】
コンジュゲートの適切な薬学的に許容される塩は、特に遊離酸又は遊離塩基の付加塩であり得る。
【0033】
酸付加塩は無機酸又は有機酸から調製され得る。適切な無機酸には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸、及びリン酸が含まれ、適切な有機酸は、脂肪族、脂環式、芳香族、芳香脂肪族(araliphatic)、複素環式、カルボン及びスルホン有機酸から選択され得、その例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、4-ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、スルファニル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、ステアリン酸、アルギン酸、β-ヒドロキシ酪酸、サリチル酸、ガラクタル酸及びガラクツロン酸が挙げられる。
【0034】
塩基付加塩は、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属塩、例えば、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム及び亜鉛塩を含む金属塩、又は塩基性アミン、例えば、N,N-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N-メチルグルカミン)及びプロカインから調製される有機塩である。
【0035】
放射性医薬品として使用するために、コンジュゲート又はその塩は、キレート剤によってキレート化された放射性核種を更に含む。
【0036】
本発明はまた、薬学的に許容される媒体、例えば生理食塩水、メタルフリー水、アスコルビン酸、エタノール、ポリソルベート80(すなわち、商品名TWEEN(商標)80で販売されているポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)、緩衝液、例えば酢酸アンモニウム緩衝液、又はこれらの混合物中に非標識形態(すなわち、いずれの放射性核種も含まない)のコンジュゲート又はその塩を含む組成物に関し、アスコルビン酸及びエタノールは、有利には抗酸化剤として作用し、ポリソルベート80は、有利には粘着性を低減する。
【0037】
本発明は更に、上述のような薬学的に許容される媒体中に、放射標識形態のコンジュゲート又はその塩(すなわち、キレート剤によってキレート化された放射性核種を含む)を含む、使用準備完了放射性医薬品に関する。
【0038】
本発明はまた、放射性医薬品を調製するために使用することができ、少なくとも:
- 非標識形態のコンジュゲート又はその塩を含有する第1の容器と;
- 典型的には塩(塩化物、酢酸塩、...)の形態の放射性核種を含有する第2の容器と
を含む、キットオブパーツに関する。
【0039】
キットオブパーツにおいて、コンジュゲート又はその塩及び放射性核種は、任意の適切な形態、例えば乾燥形態(例えば、粉末)、液体形態、すなわち、上述のような薬学的に許容される媒体中の溶液、又は凍結形態であり得る。
【0040】
それ自体知られているように、キットは、
- 1つ若しくは複数の試薬及び/若しくは1つ若しくは複数の溶媒若しくは希釈剤、例えば、生理食塩水、メタルフリー水、生物学的緩衝液等、並びに/又は
- 放射性医薬品を調製及び/若しくは使用するための説明書を含む小冊子、並びに/又は
- 付属品、例えば針(例えば、通気針)、滅菌フィルター、シール、品質管理サンプリングアイテム等
を更に含み得る。
【0041】
本発明は更に、放射性医薬品を調製するための非標識コンジュゲート、その塩又はキットオブパーツの使用であって、コンジュゲート又はその塩のキレート剤による放射性核種のキレート化を含む使用に関する。
【0042】
先行するものでは、放射性核種が、好ましくは、鉛放射性核種であり、特に、放射性医薬品がインビボイメージング目的で使用されることを意図している場合、203Pb、又は放射性医薬品が治療目的で使用されることを意図している場合、212Pbである。
【0043】
本発明はその上、例えば、単一光子放射断層撮影(SPECT)によるインビボイメージング、又はPSMAが過剰発現するがんの処置に使用するための放射性医薬品に関する。
【0044】
このような使用は、適切な用量の放射性医薬品を、イメージング又は処置される患者に、典型的には静脈内に、投与することと、インビボイメージングの場合には、患者をイメージングに供することとを含む。
【0045】
好ましくは、がんが、転移を有する又は有さない、前立腺がんである。
【0046】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の説明への補足を読むことでより明らかになるであろう。
【0047】
明らかに、説明へのこの補足は、本発明の目的を例示するためだけに与えられており、いかなる場合も、前記目的の限定を構成するものではない。
図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】L1及びL2が互いに同一であり、A1及びA2が互いに同一である式(I)のコンジュゲートの合成経路を示す図である。
図2】皮下LNCaP腫瘍を保有するR2G2(商標)マウスにおいて、コンジュゲート10ng当たり10μCiの比活性で、212Pbで標識されたコンジュゲートPSMA-OM-00214を用いて行われた生体内分布試験の結果を示す図である。結果は、マウスに212Pb-PSMA-OM-00214用量を注射した後4時間でマウスの臓器に見られる、%ID/gと示される、臓器1グラム当たりのパーセント注射用量により表される。
図3A】皮下LNCaP腫瘍を保有する胸腺欠損ヌードマウスにおいて、コンジュゲート10ng当たり10μCiの比活性で、212Pbで標識されたコンジュゲートPSMA-OM-00214の生体内分布を、同じ比活性で、同様に212Pbで標識され、DOTAMに連結したただ1つのPSMAリガンドを含むという点でPSMA-OM-00214と異なる、DOTAM-PSMA-617と示されるコンジュゲートの生体内分布と比較することを目的とした比較試験の結果を示す図である。結果は、マウスに212Pbコンジュゲート用量を注射した後1時間、4時間及び24時間でマウスの臓器に見られる、%ID/gと示される、臓器1グラム当たりのパーセント注射用量により表される。
図3B図3Aに示されるが、限られた数の臓器についての結果を示す図である。
図4図4A及び図4Bは、皮下LNCaP腫瘍を保有するR2G2(商標)マウスにおいて、コンジュゲート10ng当たり10μCiの比活性で、212Pbで標識されたコンジュゲートPSMA-OM-00214を使用した、1処置サイクル(サイクル1)又は3処置サイクル(サイクル3)の有効性を評価すること、及びこの有効性を、コンジュゲート10ng当たり10μCiの比活性で、同様に212Pbで標識されたコンジュゲートDOTAM-PSMA-617を使用した、3処置サイクル(サイクル3)の有効性と比較することを目的とした比較試験の結果を示す図である。図4Aは、tと示され、週で表される、マウスにがん細胞を注射した後の時間の関数としての、Sと示され、%で表されるマウスの生存に関する結果を示し、図4Bは、tと示され、日で表される、マウスにがん細胞を注射した後の時間の関数としての、Vと示され、mm3で表される平均腫瘍体積に関する結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明の詳細な説明
I-式(I)のコンジュゲートの合成:
L1及びL2が互いに同一であり、A1及びA2が互いに同一である式(I)のコンジュゲート:
L1及びL2が互いに同一であり、A1及びA2が互いに同一である式(I)の任意のコンジュゲートを得ることができる合成経路を示す図1を参照する。
【0050】
図1でa)と示される第1の工程で、1と示されるL-グルタミン酸ジ-tert-ブチルエステル塩酸塩を、極性非プロトン性溶媒、例えばジクロロメタン(DCM)中、トリホスゲン及びN-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)と反応させて、化合物2を得る。
【0051】
b)と示される第2の工程で、化合物2を、極性非プロトン性溶媒、例えばDCM中、固相ペプチド合成用の樹脂(灰色ディスクとして表される)、例えば2-クロロトリチルクロリド樹脂に、式:HOOC-CH(NH2)-(CH2)m-X-C(O)-O-CH2-CH=CH2(式中、mは式(V)で定義される通りであり、XはO、S又は-NH-である)の化合物を充填して得られた化合物3と反応させて、化合物4を得る。
【0052】
c)と示される第3の工程で、化合物4のアロキシカルボニル基を、極性非プロトン性溶媒、例えばDCM中、アリル基を受容することができる求核性化合物、例えばモルホリン又はピロリジン、及び触媒量のパラジウム錯体、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)と反応させることによって切断して、XがO、S又は-NH-である化合物5を得る。Xが合成されるコンジュゲート中の-N[(CH2)n-Z]-である場合、Xが-NH-である化合物5を、メタノール中、還元剤として水素化物、例えば水素化ホウ素ナトリウムを使用して、化合物5を式CH(O)(CH2)n'-Z(式中、n'は1又は2であり、Zは式(V)で定義される通りである)のアルデヒドと反応させることによって達成される還元的アルキル化(図1には表されない)に更に供する。Xが-N[(CH2)n-Z]-である化合物5がこうして得られる。
【0053】
d)と示される第4の工程で、化合物5を、式:HOOC-C(O)-CH(R5)-NH2(式中、R5は式(IV)に定義される通りである)の化合物にカップリングして、化合物6を得る。
【0054】
e)と示される第5の工程で、化合物6を、式:HOOC-Y-CH2-NH2(式中、Yは式(IV)に定義される通りである)の化合物にカップリングして、化合物7を得る。
【0055】
f)と示される第6の工程で、化合物7のペプチド模倣部分を樹脂から切断して、化合物8を得る。
【0056】
g)と示される第7の工程で、化合物8を、R1及びR2が式(II)に定義される通りである化合物9a又はR1及びR2が式(III)に定義される通りである化合物9bのいずれかにコンジュゲートして、式(I)のコンジュゲートを粗生成物として得る。
【0057】
次いで、式(I)の粗コンジュゲートを逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって精製することができる。
【0058】
L1及びL2が互いに異なる、並びに/又はA1及びA2が互いに異なる式(I)のコンジュゲート:
L1及びL2が互いに異なる、並びに/又はA1及びA2が互いに異なる式(I)の任意のコンジュゲートは、上述の工程a)~f)によって、L1及びL1の意味によって、並びに/又はA1及びA2の意味によって互いに異なる2つの化合物8を合成し、こうして得られた化合物8を化合物9a又は化合物9bのいずれかに同時にコンジュゲートすることによって得ることができる。
【0059】
次いで、こうして得られた式(I)の粗コンジュゲートを逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって精製することができる。
【0060】
II-PSMA-OM-00214の合成への一般的な合成経路の実施例:
コンジュゲートPSMA-OM-00214(式(VI)の化合物)を、上記項目Iに開示され、図1に示される一般的な合成経路を以下のように実施することによって合成した。
【0061】
予備工程:mが4であり、Xが-NH-である化合物3の調製:
2-クロロトリチルクロリド樹脂(Chem-lmpex International,Inc.社から入手可能、カタログ:03498)にNα-Fmoc-Nε-アリルオキシカルボニル-L-リジン(より単純にはFmoc-L-Lys(Aloc)-OHと呼ばれ、同様にChem-lmpex International,Inc.社から入手可能、カタログ:03616)を充填した。
【0062】
それを行うために、樹脂(10.4ミリ当量、6.9g)を500mL丸底フラスコに添加し、DCM 100mLに懸濁した。混合物をロータリーエバポレーター上140rpmで20分間以上回転させて、樹脂の膨潤を可能にした。250mLエルレンマイヤーフラスコで、Fmoc-L-リジン(Aloc)-OH(5.3当量、55.2mmol、25g)をDCM 100mLに添加した。これを40分間攪拌し、その後、これをDIEA(23.3当量、241.1mmol、42mL)と共にスラリーの形態で樹脂に添加した。エルレンマイヤーフラスコをDCM 60mLですすぎ、これを樹脂に添加した。次いで、反応物をロータリーエバポレーター上で一晩回転させた。翌日、樹脂を粗いフリット漏斗で濾過し、過剰なDCMで洗浄した。次いで、これを、完全に乾燥するまで、高真空下で6時間乾燥させた。0.84ミリ当量/gの積載容量がこうして得られた。樹脂を20%ピペリジンに10分間懸濁した後、樹脂を過剰なDCMで洗浄することによって、Fmoc保護基を除去した。
【0063】
工程a):
L-グルタミン酸ジ-tert-ブチルエステル塩酸塩(Chem-lmpex International,Inc.社、カタログ:03064、3当量、1.2mmol、354.96mg)を、DCM 80mL中でトリホスゲン(0.33当量、0.4mmol、118.7mg)及びDIEA(2当量、0.6mmol、0.6mL)と0℃で4時間反応させて、化合物2を得た。
【0064】
工程b):
化合物2(0.2mmol)を、DCM 80mL中で化合物3(0.2mmol)と一晩反応させて、mが4であり、Xが-NH-である化合物4を得た。
【0065】
工程c):
化合物4のアロキシカルボニル保護基を、DCM 15mL中でテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.02当量、0.004mmol、92.4mg)及びモルホリン(0.03当量、0.006mmol、0.368mL)と室温で3時間反応させることによって切断して、mが4であり、Xが-NH-である化合物5を得た。
【0066】
工程d)及びe):
Fmoc-3-(2-ナフチル)-L-アラニン(より単純にはFmoc-2-Nal-OHと呼ばれ、Chem-lmpex International,Inc.社から入手可能である、カタログ:02588)を化合物5にカップリングして、mが4であり、Xが-NH-であり、R5が1-ナフチルメチル基である化合物6を得た。
【0067】
次いで、トランス-4-(Fmoc-アミノメチル)シクロヘキサンカルボン酸(より単純にはN-Fmoc-トラネキサム酸と呼ばれ、Sigma-Aldrich社から入手可能である、カタログ:58446)を化合物6にカップリングして、mが4であり、Xが-NH-であり、R5が1-ナフチルメチル基であり、Yが二価シクロヘキシル基である化合物7を得た。
【0068】
工程d)及びe)を自動マイクロ波ペプチド合成装置Biotage(商標)Initiator+Alstra(商標)によって実施した。標準的なFmoc化学を、活性剤として2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)を用いて使用した。
【0069】
工程f):
化合物7のペプチド模倣部分を、95%(v/v)のトリフルオロ酢酸(TFA)、2.5%(v/v)のトリイソプロピルシラン(TIPS)及び2.5%(v/v)のH2Oで構成されたカクテルに懸濁して最終体積15mLとすることによって樹脂から切断して、mが4であり、Xが-NH-であり、R5が1-ナフチルメチル基であり、Yが二価シクロヘキシル基である化合物8を得た。
【0070】
反応物を50mL丸底フラスコ中で3時間回転させ、その後、反応媒体を粗いフリット漏斗で濾過した。N2ガスを使用してTFAを蒸発させ、冷エチルエーテルを使用して粗生成物を沈殿させた。次いで、フラスコを4,500rpmで10分間遠心分離し、エチルエーテル上清を除去した。次いで、粗生成物を一晩凍結乾燥させて、過剰なエチルエーテルを除去した。
【0071】
工程g):
化合物8(2.2当量、0.167mmol、110mg)を、50mM重炭酸ナトリウム緩衝液pH7.5 15mL中で、R1及びR2が-NH2である化合物9b、すなわち、DOTAM-1,10-ジNHS-エステル(Macrocyclics(商標)社から入手可能な1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-4,7-ジ(カルバモイルメチル)-1,10-ジ-N-ヒドロキシ-スクシンイミジルエステル-2.2当量、0.167mmol、110mg)と24時間反応させて、粗コンジュゲートPSMA-OM-00214を得た。
【0072】
粗PSMA-OM-00214の精製:
粗PSMA-OM-00214を、勾配として:t=0~45分:溶離液A(水中0.1%TFA)+溶離液A中20%から40%まで直線的に上昇する溶離液B(アセトニトリル(CAN)中0.1%TFA)を用いたPhenomenex(商標)社Luna(商標)10mm C18(2)分取カラム(250×50mm)を使用して逆相HPLCによって精製した。
【0073】
PSMA-OM-00214は、保持時間が約29分であった。収集したピークを回転蒸発させて有機溶媒を除去し、乾燥するまで凍結乾燥させた。
【0074】
こうして、勾配として:t=0~30分:溶離液A(ACN中0.1%TFA)+溶離液A中5%から42.5%まで直線的に上昇する溶離液B(100%水)を用いてRESTREK(商標)社Ultra IBD 3μm分析カラム(150×2.1mm)を使用してAgilent(商標)1100シリーズLC-MSで決定される95%超の純度を有するPSMA-OM-00214 7mgを得た。
【0075】
PSMA-OM-00214の質量をHewlett Packard(商標)1100シリーズMSDと組み合わせたAgilent(商標)1100シリーズLC-MSで確認した:予測1677.89;実測1677.65。
【0076】
PSMA-OM-00214を後の鉛標識のために-80℃で保存した。
【0077】
III-PSMA-OM-00214の放射標識:
マウスにおけるインビボ分布及び有効性試験のために、以下「212Pb-PSMA-OM-00214」と示される、212Pbで標識されたPSMA-OM-00214の試料を、マウスへの注射日に調製し、所望の比活性(すなわち、コンジュゲート1ng当たりの活性)でキレート化し、次いで、希釈して、注射時に必要な活性を達成した。
【0078】
それを行うために、上記項目IIで得られたPSMA-OM-00214を解凍し、注射用のメタルフリー水中で希釈した。次いで、適切な体積のこうして得られたコンジュゲート溶液を、適切な体積の0.4M酢酸アンモニウム、アスコルビン酸、エタノール及びTween(商標)80溶液をおそらく含有する低温バイアルに添加した。これに続いて、適切な体積の酢酸212Pb溶液(Orano Med社)を添加した。
【0079】
試料を(特に注記しない限り)50℃で10分間インキュベートし、212Pbのキレート化を、インスタント薄層クロマトグラフィー(iTLC)を使用して試料中で遊離したままの212Pbを測定することによって検証した。
【0080】
IV-212Pb-PSMA-OM-00214を用いたインビボ試験:
以下の通りである:
*使用した胸腺欠損ヌードマウスは、Envigo(商標)社製のHsd:Athymic Nude-Foxn1nuマウスであり;
*使用したR2G2(商標)マウスは、Envigo(商標)社製のRag2-IL2rg二重ノックアウトマウス(B6;129-Rag2tm1Fwall2rgtm1Rsky/DwlHsd)であり;
*使用したLNCaPヒト前立腺がん細胞は、ATCC(商標)社製のATCC(商標)CRL-1740(商標)細胞であり;
*使用した自動ガンマカウンターは、Perkin Elmer(商標)社Wizard2(商標)カウンターである。
【0081】
IV.1-異種移植片保有マウスにおける212Pb-PSMA-OM-00214生体内分布試験:
ヒト前立腺がん細胞腫瘍を保有するR2G2(商標)マウスにおいて、コンジュゲート10ng当たり10μCiの比活性で、212Pbで標識したPSMA-OM-00214の生体内分布を評価するために、試験を行った。
【0082】
*試験設計:
試験開始時に7~8週齢で体重が33.9±3.5gの15匹の雄R2G2(商標)マウスに、100μLのRPMI-1640培地/Matrigel(商標)(v/v:1/1)中106個のLNCaP細胞を右脇腹に皮下注射した。腫瘍を、200~300mm3(式:体積=0.5×長さ×幅2によって決定される)に達するまで成長させた。
【0083】
次いで、動物を腫瘍サイズに基づいて無作為化し、6匹のマウスの群が静脈内に(尾静脈に)1回の10μCi用量の212Pb-PSMA-OM-00214(コンジュゲート10ng当たり10μCi、注射体積100μL)を受けた。
【0084】
投与注射後4時間でマウスを屠殺した。
【0085】
血液、膀胱、生殖器官、小腸、盲腸を含む結腸、脾臓、膵臓、腎臓、胃、肝臓、肺、心臓、脳、大腿骨、腹部脂肪、骨格筋、尾(注射部位として)及びLNCaP腫瘍を各屠殺マウスから採取し、秤量し、自動ガンマカウンターのために個々のチューブに移した。
【0086】
チューブを2分間カウントした。バックグラウンドをカウントから自動的に差し引いた。マウスに注射した溶液5μLからなる標準も、マウスの各群についてカウントし、減衰補正のために使用した。
【0087】
採取した各臓器について、%ID/gと示される1グラム当たりのパーセント注射用量を計算した(平均±標準偏差)。
【0088】
*結果:
得られた結果を図2に示す。
【0089】
この図によって示されるように、PSMA-OM-00214は、全ての主要な非腫瘍組織において非常に低い取り込み及び満足のいく腫瘍/腎臓比を有する好ましい生体内分布プロファイルを有する。腫瘍取り込みは、平均で20%ID/g超である。
【0090】
腎臓取り込みが、4時間でおよそ10%ID/gと高いことが観察できる。これは、腎臓濾過と、PSMA標的化剤による腎臓への十分に説明されたオフターゲット結合の両方を説明できる。
【0091】
IV.2-異種移植片保有マウスにおける比較生体内分布試験:
ヒト前立腺がん細胞腫瘍を保有する胸腺欠損ヌードマウスにおいて、コンジュゲート10ng当たり10μCiの比活性で、212Pbで標識されたPSMA-OM-00214の生体内分布を、同様に212Pbで標識され、2つの代わりにただ1つのPSMAリガンドを含むという点でPSMA-OM-00214とは異なる、以下「DOTAM-PSMA-617」と示されるコンジュゲートの生体内分布と比較するために試験を行った。
【0092】
よって、DOTAM-PSMA-617は、式:
【化5】
のものである。
【0093】
*212Pb-DOTAM-PSMA-617の調製:
化合物8をDOTAM-モノNHS-エステル(1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-トリ(カルバモイルメチル)-10-モノ-N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル)と反応させたことを除いて、上記項目IIに記載されるのと同じプロトコルに従って、非標識コンジュゲートDOTAM-PSMA617を調製したが、DOTAM-PSMA-617の212Pbによる標識は、上記項目IIIに記載されるのと同じプロトコルに従って行った。
【0094】
*試験設計:
試験開始時に、7~8週齢で、第1のバッチについては体重が27.90±2.6g、第2のバッチについては体重が27.90±2.5g、第3のバッチについては体重が29.50±2.5gの雄胸腺欠損ヌードマウスの3つのバッチに、100μLのRPMI-1640培地/Matrigel(商標)(v/v:1/1)中106個のLNCaP細胞を右脇腹に皮下注射した。腫瘍を、200~300mm3に達するまで成長させた。
【0095】
マウスを、それぞれ3~14匹のマウスを含む複数の群に分けた。
【0096】
いずれの場合も、各マウスは、1回の10μCi用量の212Pb-PSMA-OM-00214(コンジュゲート10ng当たり10μCi、注射体積100μL)又は1回の10μCi用量の212Pb-DOTAM-PSMA-617(コンジュゲート10ng当たり10μCi、注射体積100μL)のいずれかを静脈内に受けた。
【0097】
一部のマウスを投与注射後1時間で屠殺し、他のマウスを投与注射後4時間で屠殺し、なお他のマウスを投与注射後24時間で屠殺した。
【0098】
血液、生殖器官、小腸、盲腸を含む結腸、脾臓、膵臓、腎臓、胃、肝臓、肺、心臓、脳、大腿骨、腹部脂肪、骨格筋、尾、唾液腺及びLNCaP腫瘍を各屠殺マウスから採取し、秤量し、自動ガンマカウンターのために個々のチューブに移した。
【0099】
チューブを2分間カウントした。バックグラウンドをカウントから自動的に差し引いた。マウスに注射した溶液5μLからなる標準もカウントし、減衰補正のために使用した。
【0100】
採取した各臓器について、%ID/gと示される、1グラム当たりのパーセント注射用量を計算した(平均±標準偏差)。
【0101】
*結果:
結果を、図3A(全ての採取した臓器について)及び図3B(限られた数の採取した臓器について)に示す。
【0102】
これらの図によって示されるように、PSMA-OM-00214は、DOTAM-PSMA-617よりも優れたインビボ分布プロファイルを有し、投与注射後1時間、4時間及び24時間で有意に高い腫瘍取り込み及び保持を有する。
【0103】
IV.3-異種移植片保有マウスにおける比較有効性試験:
ヒト前立腺がん細胞腫瘍を保有するR2G2(商標)マウスにおいて、コンジュゲート10ng当たり10μCiの比活性で、212Pbで標識されたコンジュゲートPSMA-OM-00214を使用した、1処置サイクル(サイクル1)又は3処置サイクル(サイクル1、2及び3)の有効性を評価するため、及びこの有効性を、コンジュゲート10ng当たり10μCiの比活性で、同様に212Pbで標識されたコンジュゲートDOTAM-PSMA-617を使用した、3処置サイクル(サイクル1、2及び3)の有効性と比較するために試験を行った。
【0104】
*試験設計:
試験開始時に7~8週齢で、体重が27.43±2.3gの雄R2G2(商標)マウスに、100μLのRPMI-1640培地/Matrigel(商標)(v/v:1/1)中106個のLNCaPヒト前立腺がん細胞を右脇腹に皮下注射した。腫瘍を、200~300mm3に達するまで成長させた。
【0105】
次いで、マウスをそれぞれ以下のように処置した5つの群、A、B、C、D及びEに分けた:
A群(15匹):LNCaP細胞注射後24日(サイクル1)で1回の10μCi用量の212Pb-PSMA-OM-00214(コンジュゲート10ng当たり10μCi、注射体積100μL);
B群(15匹):それぞれLNCaP細胞注射後24日(サイクル1)、38日(サイクル2)及び52日(サイクル3)で1回の10μCi用量の212Pb-PSMA-OM-00214(コンジュゲート10ng当たり10μCi、注射体積100μL);
C群(15匹):それぞれLNCaP細胞注射後24日(サイクル1)、38日(サイクル2)及び52日(サイクル3)で1回の10μCi用量の212Pb-DOTAM-PSMA-617(コンジュゲート10ng当たり10μCi、注射体積100μL);
D群(10匹):それぞれLNCaP細胞注射後24日(サイクル1)、38日(サイクル2)及び52日(サイクル3)で1回の10ng用量の非標識PSMA-OM-00214(注射体積100μL);
E群(10匹):それぞれLNCaP細胞注射後24日、38日及び52日で100μLの緩衝液。
【0106】
試験中、その腫瘍体積が2000mm3に達したマウスを直ちに安楽死させた。更に、マウスが、腫瘍負担による耐えられない苦痛若しくは疼痛の徴候、注射の副作用、又は以下の終了基準:急性体重減少(2連続日超の15%の体重減少若しくは初期体重からの20%の体重減少);悪い腫瘍状態(例えば、潰瘍化、歯痕若しくは開放創);5日超のみすぼらしさ/毛づくろいの欠如;3日超の嗜眠若しくは運動性低下;5日超の衰弱/バランスの問題;せむし様外観;下痢;麻痺;重篤な貧血及び低体温のうちの2つ以上の組合せを示した場合には、計画されたエンドポイント前にマウスを安楽死させた。
【0107】
*結果:
結果を図4A及び図4Bに示す。
【0108】
これらの図によって示されるように、3サイクルの212Pb-PSMA-OM-00214の投与は、重要な抗腫瘍効果及び他の全ての処置と比較して有意に延長された生存を示した。生存はかなり延長され、3サイクルの212Pb-PSMA-OM-00214処置群は、LNCaP細胞注射後15週間を超えて生存期間中央値に達しなかったが、1サイクル又は212Pb-DOTAP-PSMA-617処置は、それぞれ13.4週及び15週の生存期間中央値との結果であった。緩衝液及び非標識対照は共に8週間の生存期間中央値を提示した。
図1-1】
図1-2】
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
【手続補正書】
【提出日】2023-09-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のコンジュゲート又はその薬学的塩:
A1-L1-Ch-L2-A2 (I)
[式中、
- Chは式(II)又は(III)のキレート剤:
【化1】
(式中、
点線はL1及びL2との共有結合を表し;
R1及びR2は、互いに独立して、-NH2又は-OH基である)
であり;
- L1及びL2は、互いに独立して、式(IV)のリンカー:
------NH-CH2-Y-C(O)-NH-CH(R5)-C(O)------ (IV)
(式中、
式(IV)の左側の点線はChとの共有結合を表し;
式(IV)の右側の点線は、L1についてはA1及びL2についてはA2との共有結合を表し;
Yはアリーレン基、ヘテロアリーレン基又は(C5~C8)シクロアルキレン基であり;
R5アリール基、ヘテロアリール基、アリール-(C1~C6)アルキル基又はヘテロアリール-(C1~C6)アルキル基である)
であり;
- A1及びA2は、互いに独立して、式(V)のPSMAリガンド:
【化2】
(式中、
点線は、A1についてはL1及びA2についてはL2との共有結合を表し;
mは2~6の整数であり;
Xは酸素原子、硫黄原子、二価-NH-基又は-N[(CR3R4)n-Z]-基であり、R3及びR4は独立して、H又はC1~C3アルキル基であり、nは1~3の整数であり、Zは置換又は非置換アリール基又はヘテロアリール基である)
である]
【請求項2】
Chが式(III)のものである、請求項1に記載のコンジュゲート又は塩。
【請求項3】
R 1 及びR 2 が、互いに同一である;及び/又は
Yが、シクロペンチレン若しくはシクロヘキシレン基である;及び/又は
R 5 が、ナフチル(C 1 ~C 3 )アルキル基である;及び/又は
mが、3若しくは4である;及び/又は
Xが、二価-NH-基若しくは二価-N[(CH 2 ) n -Z]-基であり、Zが、ハロゲン原子によって置換されたフェニル基、ハロゲン原子によって置換されたピリジニル基、若しくはキノリニル基である
請求項1又は請求項2に記載のコンジュゲート又は塩。
【請求項4】
Xが、二価-N[(CH 2 ) n -Z]-基であり、Zが、式:
【化3】
(式中、
点線は、(CH 2 ) n との共有結合を表し、
Halは、臭素、ヨウ素又はフッ素原子である)
の基である、請求項3に記載のコンジュゲート又は塩。
【請求項5】
L1及びL2互いに同一である、並びに/又は
A1及びA2互いに同一である、
請求項1から4のいずれか一項に記載のコンジュゲート又は塩。
【請求項6】
Chが式(III)のものであり;
R1及びR2-NH2基であり;
L1及びL2互いに同一であり;
Yが1,4-シクロヘキシレン基であり;
R52-ナフチルメチル基であり;
A1及びA2互いに同一であり;
mが4であり;
Xが-NH-基である、
請求項1から3のいずれか一項に記載のコンジュゲート又は塩。
【請求項7】
前記キレート剤によってキレート化された放射性核種を更に含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のコンジュゲート又は塩。
【請求項8】
放射性核種が、鉛放射性核種である、請求項6に記載のコンジュゲート又は塩。
【請求項9】
前記放射性核種が、 203 Pb又は 212 Pbである、請求項8に記載のコンジュゲート又は塩。
【請求項10】
薬学的に許容される媒体中に、請求項1から6のいずれか一項に記載のコンジュゲート又は塩を含む組成物。
【請求項11】
薬学的に許容される媒体中に、請求項7から9のいずれか一項に記載のコンジュゲート又は塩を含む放射性医薬品。
【請求項12】
少なくとも:
- 請求項1から6のいずれか一項に記載のコンジュゲート又は塩を含有する第1の容器;及び
- 放射性核種を含有する第2の容
を含む、キットオブパーツ。
【請求項13】
前記放射性核種が、鉛放射性核種である、請求項12に記載のキットオブパーツ。
【請求項14】
前記放射性核種が、 203 Pb又は 212 Pbである、請求項13に記載のキットオブパーツ。
【請求項15】
前記コンジュゲート又はその塩の前記キレート剤による放射性核種のキレート化を含む、放射性医薬品を調製するための、請求項1から6のいずれか一項に記載のコンジュゲート又はその塩の使用。
【請求項16】
前記放射性核種が、鉛放射性核種である、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記放射性核種が、 203 Pb又は 212 Pbである、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記コンジュゲート又はその塩の前記キレート剤による前記放射性核種のキレート化を含む、放射性医薬品を調製するための、請求項12から14のいずれか一項に記載のキットオブパーツの使用。
【請求項19】
前立腺特異的膜抗原が過剰発現しているがんのインビボイメージング又は処置に使用するための、請求項11に記載の放射性医薬品。
【国際調査報告】