(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物、その製造方法及びそれを含有する二次電池と電力消費装置
(51)【国際特許分類】
C01B 25/37 20060101AFI20240118BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240118BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240118BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240118BHJP
C01G 53/00 20060101ALN20240118BHJP
【FI】
C01B25/37 Z
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/36 C
C01G53/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520269
(86)(22)【出願日】2021-12-24
(85)【翻訳文提出日】2023-03-31
(86)【国際出願番号】 CN2021141143
(87)【国際公開番号】W WO2023115527
(87)【国際公開日】2023-06-29
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【氏名又は名称】平山 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 振国
(72)【発明者】
【氏名】范 敬▲鵬▼
(72)【発明者】
【氏名】胡 ▲興▼▲凱▼
(72)【発明者】
【氏名】王 嗣慧
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ ▲強▼
(72)【発明者】
【氏名】柳 娜
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB01
4G048AC06
4G048AD03
4G048AD06
4G048AE05
5H050AA10
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050EA01
5H050EA02
5H050FA17
5H050FA18
5H050FA19
5H050GA02
5H050GA05
5H050GA10
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA14
5H050HA19
5H050HA20
(57)【要約】
本出願は、スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物、その製造方法及びそれを含有する二次電池と電力消費装置を提供する。
【解決手段】 前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物のホスト材料は、一般式LixNiyMnzMmO4Qqによって表され、且つこのホスト材料には元素Pと元素Nb、W、Sbから選択された一種又は複数種の元素が同時にドーピングされており、ここで前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の質量に対して、元素Pのドーピング含有量kは、0.48wt%≦k≦3.05wt%を満たし、元素Nb、W、Sbから選択された一種又は複数種の元素のドーピング含有量gは、0.05wt%≦g≦0.31wt%を満たし、且つ2≦k/g≦20である。本出願による二次電池は、優れた高温ストレージ性能と高温サイクル性能を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物であって、それは、
一般式Li
xNi
yMn
zM
mO
4Q
qによって表されるホスト材料であって、Mは、Ti、Zr、La、Co、Mg、Zn、Al、Mo、V、Cr、Bから選択された一種又は複数種であり、Qは、F、Clから選択された一種又は二種であり、且つ0.95≦x≦1.1、0.45≦y≦0.55、1.4≦z≦1.55、0≦m≦0.05、0≦q≦1であるホスト材料と、
前記ホスト材料にドーピングされたドーピング元素であって、前記ドーピング元素は元素Pを含み、且つ元素Nb、W、SBから選択された一種又は複数種を元素Gとして含むドーピング元素とを含み、
前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の質量に対して、前記元素Pのドーピング含有量は、kとして記され、0.48wt%≦k≦3.05wt%であり、前記元素Gのドーピング含有量は、gとして記され、0.05wt%≦g≦0.31wt%であり、且つ前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物は、2≦k/g≦20を満たす、スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物。
【請求項2】
1.36wt%≦k≦2.95wt%であり、及び/又は、
0.07wt%≦g≦0.21wt%であり、及び/又は、
6≦k/g≦20である、請求項1に記載のスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物。
【請求項3】
前記元素P及び/又は前記元素Gのドーピングは、勾配ドーピングであり、そのドーピング含有量は、前記ホスト材料の表面から内部へ徐々に低下する、請求項1又は2に記載のスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物。
【請求項4】
前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物は、擬単結晶形態又は単結晶形態である、請求項1から3のいずれか1項に記載のスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物。
【請求項5】
前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の比表面積≦1m
2/gであり、選択的には0.1m
2/g-0.8m
2/gである、請求項1から4のいずれか1項に記載のスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物。
【請求項6】
前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の真密度≧4.45g/cm
3であり、選択的には4.5g/cm
3-4.7g/cm
3である、請求項1から5のいずれか1項に記載のスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物。
【請求項7】
前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の体積メジアン径D
v50は、2μm-15μmであり、選択的には6μm-15μmである、請求項1から6のいずれか1項に記載のスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物。
【請求項8】
前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の表面の少なくとも一部は、被覆層をさらに有し、
選択的に、前記被覆層は、元素Al、Ti、B、ZrとSiのうちの一種又は複数種を含み、
選択的に、前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の質量に対して、前記元素Al、Ti、B、ZrとSiのうちの一種又は複数種の元素の含有量は、0.05wt%-2wt%である、請求項1から7のいずれか1項に記載のスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物。
【請求項9】
前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物は、コイン型半電池において0.05C-0.2Cで充放電する時、1サイクル目の3.5V-4.95V充電容量に対する1サイクル目の3.5V-4.4V充電容量の割合<3%である、請求項1から8のいずれか1項に記載のスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物。
【請求項10】
スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の製造方法であって、
ホスト材料Li
xNi
yMn
zM
mO
4Q
qを提供するステップであって、Mは、Ti、Zr、La、Co、Mg、Zn、Al、Mo、V、Cr、Bから選択された一種又は複数種であり、Qは、F、Clから選択された一種又は二種であり、且つ0.95≦x≦1.1、0.45≦y≦0.55、1.4≦z≦1.55、0≦m≦0.05、0≦q≦1であるステップS1と、
P源を提供し、且つNb源、W源、Sb源から選択された一種又は複数種をG源として提供し、且つステップS1のホスト材料と混合してから原料混合物を得るステップS2と、
ステップS2によって得られた原料混合物に対して高温熱処理を行い、前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を得るステップS3とを含み、
ここで、前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の質量に対して、前記P源における元素Pのドーピング含有量は、kとして記され、0.48wt%≦k≦3.05wt%であり、前記G源における元素Gのドーピング含有量は、gとして記され、0.05wt%≦g≦0.31wt%であり、且つ前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物は、2≦k/g≦20を満たす、スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の製造方法。
【請求項11】
ステップS1における前記ホスト材料の原料は、リチウム源、ニッケル源、マンガン源を含み、
選択的に、前記リチウム源は、リチウムを含有する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩から選択された一種又は複数種であり、
選択的に、前記ニッケル源は、ニッケルを含有する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩から選択された一種又は複数種であり、
選択的に、前記マンガン源は、マンガンを含有する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩から選択された一種又は複数種であり、
選択的に、前記ホスト材料の原料は、さらに元素Ti、Zr、La、Co、Mg、Zn、Al、Mo、V、Cr、B、F、Clのうちの一種又は複数種を含有する添加剤を含み、前記添加剤は、元素Ti、Zr、La、Co、Mg、Zn、Al、Mo、V、Cr、B、F、Clのうちの一種又は複数種を含有する酸化物、水酸化物、アンモニウム塩、硝酸塩から選択された一種又は複数種である、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
ステップS2における前記P源は、Pを含有する酸化物、水酸化物、アンモニウム塩、硝酸塩から選択された一種又は複数種であり、及び/又は、
前記G源は、元素Nb、W、Sbから選択された一種又は複数種の元素を含有する酸化物、水酸化物、アンモニウム塩、硝酸塩から選択された一種又は複数種である、請求項10又は11に記載の製造方法。
【請求項13】
ステップS3における前記高温熱処理の処理条件は、空気又は酸素雰囲気において、0.5-3℃/minの昇温レートで前記原料混合物を910-1050℃に昇温し、5-30時間保温することである、請求項10から12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記製造方法は、
ステップS3における高温熱処理後の生成物に対してボールミル処理を行うステップS4をさらに含む、請求項10から13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記製造方法は、
ステップS3における高温熱処理後の生成物に対してアニール処理を行い又はステップS4においてボールミル処理によって得られた生成物に対してアニール処理を行うステップS5をさらに含む、請求項10から14のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
ステップS5における前記アニール処理の条件は、ステップS3における高温熱処理後の生成物又はステップS4によって得られたボールミル処理生成物を600-700℃に昇温し、5-50時間保温することである、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
請求項1から9のいずれか1項に記載のスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を含み、又は請求項10から16のいずれか1項に記載の方法によって製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を含む、二次電池。
【請求項18】
請求項17に記載の二次電池を含む、電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、電池技術分野に関し、特にスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物、その製造方法及びそれを含有する二次電池と電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、動作電圧が高く、比エネルギーが大きく、汚染がなく、耐用年数が長いなどの利点で、全世界の二次電池市場で主な地位を占め、特に近年、電気自動車などの分野で広く応用されている。しかしながら、現在のリチウムイオン二次電池系(例えばスピネル構造のニッケルマンガン酸リチウムを正極活物質とするリチウム電池系)は、高電圧で長期的安定性が非常に悪く、動作電圧4.5Vは、ほとんど現在のリチウムイオン二次電池が乗り越え難いボトルネックとなり、特に高温で電気的性能の劣化がさらに深刻になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本出願は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、構造が安定で動力学的性能に優れたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物及びその製造方法、及びこのスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を正極材料として製造された二次電池を提供することにある。さらに、本出願の目的は、この二次電池を含む電力消費装置を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を実現するために、本出願の第一の方面によるスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物は、ホスト材料と前記ホスト材料にドーピングされた元素Pと元素Nb、W、Sbから選択された一種又は複数種の元素を含み、本明細書では、元素Nb、W、Sbから選択された一種又は複数種の元素を元素Gとして記す。ここで、
ホスト材料は、一般式LixNiyMnzMmO4Qqによって表され、ここでMは、Ti、Zr、La、Co、Mg、Zn、Al、Mo、V、Cr、Bから選択された一種又は複数種であり、Qは、F、Clから選択された一種又は二種であり、且つ0.95≦x≦1.1、0.45≦y≦0.55、1.4≦z≦1.55、0≦m≦0.05、0≦q≦1であり、
前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の質量に対して、前記元素Pのドーピング含有量は、kとして記され、且つ0.48wt%≦k≦3.05wt%であり、前記元素Gのドーピング含有量は、gとして記され、且つ0.05wt%≦g≦0.31wt%であり、且つ前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物は、2≦k/g≦20を満たす。
【0005】
いくつかの実施の形態では、前記元素Pのドーピング含有量kは、1.36wt%≦k≦2.95wt%であってもよい。
【0006】
いくつかの実施の形態では、前記元素Gのドーピング含有量gは、0.07wt%≦g≦0.21wt%であってもよい。
【0007】
いくつかの実施の形態では、前記元素Pのドーピング含有量kと前記元素Gのドーピング含有量gとの間の関係は、6≦k/g≦20であってもよい。
【0008】
いくつかの実施の形態では、前記元素P及び/又は前記元素Gのドーピングは、勾配ドーピングであってもよく、そのドーピング含有量は、前記ホスト材料の表面から内部へ徐々に低下する。
【0009】
いくつかの実施の形態では、前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物は、擬単結晶形態又は単結晶形態であってもよい。
【0010】
いくつかの実施の形態では、前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の比表面積≦1m2/gであり、選択的には0.1m2/g-0.8m2/gである。
【0011】
いくつかの実施の形態では、前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の真密度≧4.45g/cm3であり、選択的には4.5g/cm3-4.7g/cm3である。
【0012】
いくつかの実施の形態では、前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の体積メジアン径Dv50は、2μm-15μmであってもよく、選択的には6μm-15μmである。
【0013】
いくつかの実施の形態では、前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の表面の少なくとも一部は、被覆層をさらに有し、選択的に、前記被覆層は、元素Al、Ti、B、ZrとSiのうちの一種又は複数種を含み、選択的に、前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の質量に対して、前記元素Al、Ti、B、ZrとSiのうちの一種又は複数種の元素の含有量は、0.05wt%-2wt%であり、選択的に、前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の質量に対して、前記被覆層の被覆量は、0.1wt%-5wt%である。選択的に、前記被覆層は、元素Al、Ti、B、ZrとSiから選択された一種又は複数種の元素の酸化物、水酸化物又はLi含有複合酸化物、水酸化物などであってもよい。
【0014】
いくつかの実施の形態では、前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物は、コイン型半電池において0.05C-0.2Cで充放電する時、1サイクル目の3.5V-4.95V充電容量に対する1サイクル目の3.5V-4.4V充電容量の割合<3%である。
【0015】
本出願の第二の方面によるスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の製造方法は、
ホスト材料LixNiyMnzMmO4Qqを提供するステップであって、Mは、Ti、Zr、La、Co、Mg、Zn、Al、Mo、V、Cr、Bから選択された一種又は複数種であり、Qは、F、Clから選択された一種又は二種であり、且つ0.95≦x≦1.1、0.45≦y≦0.55、1.4≦z≦1.55、0≦m≦0.05、0≦q≦1であるステップS1と、
P源を提供し、且つNb源、W源、Sb源から選択された一種又は複数種をG源として提供し、且つステップS1のホスト材料と混合してから原料混合物を得るステップS2と、
ステップS2によって得られた原料混合物に対して高温熱処理を行い、前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を得るステップS3とを含んでもよく、
ここで、前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の質量に対して、前記P源における元素Pのドーピング含有量は、kとして記され、0.48wt%≦k≦3.05wt%であり、前記G源における元素Gのドーピング含有量は、gとして記され、0.05wt%≦g≦0.31wt%であり、且つ前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物は、2≦k/g≦20を満たす。
【0016】
いくつかの実施の形態では、ステップS1における前記ホスト材料の原料は、リチウム源、ニッケル源、マンガン源を含んでもよく、任意選択的に、前記ホスト材料の原料は、元素Ti、Zr、La、Co、Mg、Zn、Al、Mo、V、Cr、B、F、Clのうちの一種又は複数種を含有する添加剤をさらに含んでもよく、ここで、
前記リチウム源は、リチウムを含有する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩から選択された一種又は複数種であってもよく、前記ニッケル源は、ニッケルを含有する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩から選択された一種又は複数種であってもよく、前記マンガン源は、マンガンを含有する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩から選択された一種又は複数種であってもよく、前記添加剤は、元素Ti、Zr、La、Co、Mg、Zn、Al、Mo、V、Cr、B、F、Clのうちの一種又は複数種を含有する酸化物、水酸化物、アンモニウム塩、硝酸塩から選択された一種又は複数種であってもよい。
【0017】
いくつかの実施の形態では、ステップS2における前記P源は、Pを含有する酸化物、水酸化物、アンモニウム塩、硝酸塩から選択された一種又は複数種であり、前記G源は、元素Nb、W、Sbから選択された一種又は複数種の元素を含有する酸化物、水酸化物、アンモニウム塩、硝酸塩から選択された一種又は複数種である。
【0018】
いくつかの実施の形態では、ステップS3における前記高温熱処理の条件は、空気又は酸素雰囲気において0.5℃/min-3℃/minの昇温レートで前記原料混合物を910-1050℃に昇温し、5-30時間保温することである。
【0019】
いくつかの実施の形態では、前記製造方法は、ステップS3において前記原料混合物に対して高温熱処理を行った後、
ステップS3における高温熱処理後の生成物に対してボールミル処理を行うステップS4をさらに含む。
【0020】
いくつかの実施の形態では、前記製造方法は、
ステップS3における高温熱処理後の生成物に対してアニール処理を行い又はステップS4においてボールミル処理によって得られた生成物に対してアニール処理を行うステップS5をさらに含む。
【0021】
いくつかの実施の形態では、ステップS5における前記アニール処理の条件は、ステップS3における高温熱処理後の生成物又はステップS4においてボールミル処理によって得られた生成物を600-700℃に昇温し、5-50時間保温することである。
【0022】
いくつかの実施の形態では、本発明の第二の方面によるスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の製造方法は、被覆処理のステップをさらに含んでもよく、この被覆処理ステップにおいて使用された被覆材料は、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素、及びアルミニウム、チタン、ホウ素、ジルコニウム、ケイ素のうちの一種又は複数種を含有するリチウム含有複合酸化物から選択された一種又は複数種であってもよい。
【0023】
本出願の第三の方面による二次電池は、本出願の第一の方面によるスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を含む。
【0024】
本出願の第四の方面による電力消費装置は、本出願の第三の方面による二次電池を含む。
【発明の効果】
【0025】
本出願による、二次電池の正極材料とすることができるスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物は、元素Pと元素Gが共ドーピングされたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物であり、ここでP元素と元素Gは一定の含有量に従って共同して共ドーピングされ、この複合酸化物の構造を安定にすることができ、その表面構造を安定にすることを重点とし、この複合酸化物を電池正極材料として使用する時、高温高電圧での電池系の長期的安定性などの性能、特に高温での満充電ストレージ性能を大幅に向上させることができる。そのため、本出願に係る本出願によるスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を含む二次電池は、優れた高温高電圧での長期的安定性能(特に高温ストレージ性能)を有し、且つそのため延長された耐用年数を有する。本出願の電力消費装置は、本出願による二次電池を含み、従って少なくとも前記二次電池と同じ優位性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本出願の実施例の技術案をより明瞭に説明するために、以下は、本出願の実施例において使用される必要がある図面を簡単に紹介し、自明なことに、以下に記述された図面は、ただ本出願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労力を払わない前提で、図面に基づいて他の図面を得ることもできる。
【
図1】本出願の実施例による二次電池の概略図である。
【
図2】本出願の実施例による電池モジュールの概略図である。
【
図3】本出願の実施例による電池パックの概略図である。
【
図5】本出願の実施例による電力消費装置の概略図である。
【
図6】実施例1で製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料の形態図である。
【
図7】実施例20で製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料の形態図である。
【
図8】実施例23で製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料の形態図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を適当に参照しながら本出願のスピネル型ニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物及びその製造方法、二次電池と電力消費装置の実施の形態を詳細に説明する。しかしながら、必要のない詳細な説明を省略する場合がある。例えば、周知の事項に対する詳細な説明、実際に同じである構造に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に長くなることを回避し、当業者に容易に理解させるためである。なお、図面及び以下の説明は、当業者に本出願を十分に理解させるために提供するものであり、特許請求の範囲に記載された主題を限定するためのものではない。
【0028】
本出願に開示された「範囲」は、下限と上限の形式で限定され、与えられた範囲は、一つの下限と一つの上限を選定することで限定されるものであり、選定された下限と上限は、特定の範囲の境界を限定した。このように限定される範囲は、端値を含むか又は含まないものであってもよく、且つ任意の組み合わせが可能であり、即ち任意の下限は、任意の上限と組み合わせて、一つの範囲を形成することができる。例えば、特定のパラメータに対して60-120と80-110の範囲がリストアップされた場合、60-110と80-120の範囲も想定できると理解される。なお、最小範囲値として1と2がリストアップされており、最大範囲値として3、4と5がリストアップされている場合、1-3、1-4、1-5、2-3、2-4と2-5という範囲がすべて想定できる。本出願では、特に断りのない限り、「a-b」という数値範囲は、a~bの任意の実数の組み合わせの短縮表現を表し、ここで、aとbはいずれも実数である。例えば、「0-5」という数値範囲は、本明細書において「0-5」の間のすべての実数がすでにリストアップされていることを表し、「0-5」は、これらの数値の組み合わせの短縮表現だけである。また、あるパラメータが≧2の整数であると表記すると、このパラメータが例えば整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などであることを開示していることに相当する。
【0029】
特に説明しない場合、本出願のすべての実施の形態及び選択的な実施の形態は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成することができる。
【0030】
特に説明しない場合、本出願のすべての技術的特徴及び選択的な技術的特徴は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成することができる。
【0031】
特に説明しない場合、本出願のすべてのステップは、順番に行われてもよく、ランダムに行われてもよく、好ましくは、順番に行われる。例えば、前記方法がステップ(a)と(b)とを含むことは、前記方法が、順番に行われるステップ(a)と(b)とを含んでもよく、順番に行われるステップ(b)と(a)とを含んでもよいことを表す。例えば、以上に言及された前記方法がステップ(c)をさらに含んでもよいことは、ステップ(c)が任意の順序で前記方法に追加されてもよいことを表し、例えば前記方法は、ステップ(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)と(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)及び(b)などを含んでもよい。
【0032】
特に説明しない場合、本出願に言及された「含む」と「包含」は、開放型を表し、閉鎖型であってもよい。例えば、前記「含む」と「包含」は、リストアップされていない他の成分をさらに含むか又は包含してもよく、リストアップされている成分のみを含むか又は包含してもよいことを表してもよい。
【0033】
特に説明しない場合、本出願では、用語である「又は」は包括的である。例を挙げると、「A又はB」というフレーズは、「A、B、又はAとBとの両方」を表す。より具体的には、Aが真であり(又は存在し)且つBが偽である(又は存在しない)条件と、Aが偽である(又は存在しない)が、Bが真である(又は存在する)条件と、AとBがいずれも真である(又は存在する)条件とのいずれも「A又はB」を満たしている。
【0034】
本明細書の記述において、説明すべきこととして、特に断りのない限り、「以上」、「以下」は、その数を含み、「一つ又は複数」における「複数」は、二つ以上を意味している。
【0035】
(二次電池)
二次電池は、エネルギー密度が高く、携帯しやすく、記憶効果がなく、環境に優しいなどの優位性を有するため、電力消費装置の電源として好ましい。しかしながら、スピネル構造のニッケルマンガン酸リチウム(LNMO)を正極材料とする二次電池について、高電圧と遷移金属Ni、Mnの触媒作用で、高電圧に充電した後、正極材料の表面には大量の副反応、例えば酸素欠損、H+発生、遷移金属(主にMn)イオン溶出などが発生する。ここでH+は、負極に広がって還元されてH2を生成し、Mn2+は、負極に広がって堆積して負極SEI膜のLi+伝導性を低下させ、それによって電池のストレージとサイクル過程において発生したガスによる膨張リスクを引き起こし、且つ容量が速く減衰し、高温高電圧での悪い長期的安定性能が現れ、二次電池の耐用年数をさらに短縮させる。そのため、どのようにLNMOを正極材料とする二次電池の高温高圧での長期的安定性(特に高温満充電ストレージ性能)を高めるかは、既に二次電池の技術分野のフォーカスポイントになった。
【0036】
本出願は、二次電池を提供し、この二次電池は、高温高電圧でよい長期的安定性、特に高温満充電ストレージ性能を有する。
【0037】
一般的には、二次電池は、正極極板と、負極極板と、電解質と、セパレータとを含む。電池充電過程において、活性イオンは、正極極板と負極極板との間で往復して吸蔵と脱離をする。電解質は、正極極板と負極極板との間でイオンを伝導する役割を果たす。セパレータは、正極極板と負極極板との間に設置され、主に正負極の短絡を防止する役割を果たすとともに、イオンを通過させることができる。
【0038】
[正極極板]
正極極板は、正極集電体と正極集電体の少なくとも一つの表面に設置され且つ正極活物質を含む正極膜とを含む。例として、正極集電体は、それ自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、正極膜層は、正極集電体の対向する二つの表面のうちのいずれか一方又は両方に設置される。
【0039】
正極集電体は、良好な導電性及び機械的強度を有する材質を採用してもよい。いくつかの実施例では、正極集電体は、アルミニウム箔を採用してもよい。
【0040】
本出願による二次電池において、正極極板上の正極活物質は、本出願によるスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を含む。このスピネル構造のニッケルマンガン酸リチウム複合酸化物材料は、良好な構造安定性、特に表面の構造安定性を有し、それを二次電池の正極極板の活物質として使用する時、この二次電池の高温高電圧での電池系性能を大幅に向上させることができ、例えばガスによる膨張を減少させ、且つ容量の減衰を遅くし、高温高電圧での長期的安定性、特に高温満充電ストレージ性能を実現し、さらに二次電池の耐用年数を著しく延長し、安全性能を向上させることができる。以下では、本出願によるスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物及びその製造方法を詳細に記述する。
【0041】
スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物
本出願によるスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物は、ホスト材料と前記ホスト材料にドーピングされた元素リン(P)と元素Gを含み、ここで、
ホスト材料は、一般式LixNiyMnzMmO4Qqによって表され、ここでMは、Ti、Zr、La、Co、Mg、Zn、Al、Mo、V、Cr、Bから選択された一種又は複数種であってもよく、Qは、F、Clから選択された1種又は2種であってもよく、且つ0.95≦x≦1.1、0.45≦y≦0.55、1.4≦z≦1.55、0≦m≦0.05、0≦q≦1であり、
前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の質量に対して、前記元素Pのドーピング含有量は、kとして記され、且つ0.48wt%≦k≦3.05wt%であり、前記元素Gのドーピング含有量は、gとして記され、且つ0.05wt%≦g≦0.31wt%であり、且つ前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物は、2≦k/g≦20を満たす。
【0042】
本発明者らは、大量の研究を行った結果、スピネル構造のニッケルマンガン酸リチウム複合酸化物が元素リン(P)と元素Gにより共ドーピングされるとともに、前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の質量に対して、元素Pのドーピング含有量kが0.48wt%≦k≦3.05wt%を満たし、元素Gのドーピング含有量gが0.05wt%≦g≦0.31wt%を満たし、且つ2≦k/g≦20ということを満たす場合、このスピネル構造のニッケルマンガン酸リチウム複合酸化物材料に良好な構造安定性、特に表面の構造安定性を持たせることができ、それを正極材料として使用して二次電池に製造すると、この二次電池の高温高電圧での電池系性能を大幅に向上させることができ、例えばガスによる膨張を減少させ、且つ容量の減衰を遅くし、高温高電圧での長期的安定性、特に高温満充電ストレージ性能を実現し、さらに二次電池、及びこの二次電池を含む電力消費装置の耐用年数を著しく延長し、安全性能を向上させることができる。
【0043】
いくつかの実施例では、前記元素Pのドーピング含有量kは、1.36wt%≦k≦2.95wt%であってもよい。
【0044】
いくつかの実施例では、前記元素Gのドーピング含有量gは、0.07wt%≦g≦0.21wt%であってもよい。
【0045】
いくつかの実施例では、前記元素Pのドーピング含有量kと前記元素Gのドーピング含有量gとの間の関係は、6≦k/g≦20であってもよい。
【0046】
いくつかの実施例では、前記元素P及び/又は前記元素Gのドーピングは、勾配ドーピングであってもよく、そのドーピング含有量は、前記ホスト材料の表面から内部へ徐々に低下する。ここで元素Pと元素Gとの勾配ドーピング方式は、このスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料の表面安定性により有利である。
【0047】
いくつかの実施例では、前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物は、擬単結晶形態又は単結晶形態であってもよい。多結晶形態と比べて、単結晶形態又は擬単結晶形態は、被覆を行う時、全面的な被覆をより容易に実現し、後続の極板製造と電池サイクル過程において結晶粒が破砕する可能性が小さくなり、それによって電池のサイクル、ストレージなどの長期的安定性と安全性などの性能をさらに改善する。
【0048】
いくつかの実施例では、前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の比表面積≦1m2/gであり、選択的には0.1m2/g-0.8m2/gである。より小さい比表面積は、表面の副反応の発生を減少させることができ、このスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を正極材料として製造された二次電池の長期サイクル安定性により有利である。
【0049】
いくつかの実施例では、前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の真密度≧4.45g/cm3であり、選択的には4.5g/cm3-4.7g/cm3である。このスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料の粉体粒子は、緻密であり、これは、材料の耐圧性を高め、極板内で粒子が破砕する可能性を低下させ、電池系全体の安定性をさらに高めることに有利である。
【0050】
いくつかの実施例では、前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の体積メジアン径Dv50は、2μm-15μmであってもよく、選択的には3.9μm-14.1μmである。
【0051】
いくつかの実施例では、前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の表面の少なくとも一部は、被覆層をさらに有し、選択的に、前記被覆層は、元素Al、Ti、B、ZrとSiのうちの一種又は複数種を含み、選択的に、前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の質量に対して、前記元素Al、Ti、B、ZrとSiのうちの一種又は複数種の元素の含有量は、0.05wt%-2wt%であり、選択的には0.3wt%-1wt%、例えば0.05wt%、0.1wt%、0.2wt%、0.5wt%、1wt%、1.5wt%、2wt%などである。
【0052】
いくつかの実施例では、前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の質量に対して、前記被覆層の被覆量は、0.1wt%-5wt%であり、選択的には0.6wt%-3wt%、例えば0.1wt%、0.2wt%、0.5wt%、1wt%、1.5wt%、2wt%、3.5wt%、4.5wt%、5wt%などである。選択的に、前記被覆層は、元素Al、Ti、B、ZrとSiから選択された一種又は複数種の元素の酸化物、水酸化物又はLi含有複合酸化物、水酸化物などであってもよい。元素Al、Ti、B、ZrとSiから選択された一種又は複数種の元素を含有する被覆層の存在は、スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料の動力学的性能をさらに改善することができ、電池レート性能に有利である。それとともに、被覆層は、電解液と正極材料とを物理的に隔絶するという作用を果たすだけでなく、さらに消耗材(自体を消耗し、主材を保全する)とすることができるため、スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料の総合性能をさらに高めることができる。
【0053】
いくつかの実施例では、前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物は、コイン型半電池において0.05C-0.2Cで充放電する時、1サイクル目の3.5V-4.95V充電容量に対する1サイクル目の3.5V-4.4V充電容量の割合<3%である。発明者らは、正極活物質の3.5V-4.4Vプラトーでの充電容量の割合が低いほど、正極活物質におけるP4332含有量が高くなり、Mn3+含有量が低いほど、電池の高温高圧での長期的安定性に有利になるということを発見した。
【0054】
スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物製造方法
本出願によるスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の製造方法は、
ホスト材料LixNiyMnzMmO4Qqを提供するステップであって、Mは、Ti、Zr、La、Co、Mg、Zn、Al、Mo、V、Cr、Bから選択された一種又は複数種であり、Qは、F、Clから選択された一種又は二種であり、且つ0.95≦x≦1.1、0.45≦y≦0.55、1.4≦z≦1.55、0≦m≦0.05、0≦q≦1であるステップS1と、
P源を提供し、且つNb源、W源、Sb源から選択された一種又は複数種をG源として提供し、且つステップS1のホスト材料と混合してから原料混合物を得るステップS2と、
ステップS2によって得られた原料混合物に対して高温熱処理を行い、前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を得るステップS3とを含んでもよく、
ここで、前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の質量に対して、前記P源における元素Pのドーピング含有量は、kとして記され、0.48wt%≦k≦3.05wt%であり、前記G源における元素Gのドーピング含有量は、gとして記され、0.05wt%≦g≦0.31wt%であり、且つ前記スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物は、2≦k/g≦20を満たす。
【0055】
いくつかの実施例では、ステップS1における前記ホスト材料の原料は、リチウム源と、ニッケル源と、マンガン源とを含んでもよく、任意選択的に、前記ホスト材料の原料は、元素Ti、Zr、La、Co、Mg、Zn、Al、Mo、V、Cr、B、F、Clのうちの一種又は複数種を含有する添加剤をさらに含んでもよい。
【0056】
いくつかの実施例では、前記リチウム源は、リチウムを含有する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩から選択された一種又は複数種であってもよい。
【0057】
いくつかの実施例では、前記ニッケル源は、ニッケルを含有する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩から選択された一種又は複数種であってもよい。
【0058】
前記マンガン源は、マンガンを含有する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩から選択された一種又は複数種であってもよい。
【0059】
いくつかの実施例では、前記添加剤は、元素Ti、Zr、La、Co、Mg、Zn、Al、Mo、V、Cr、B、F、Clのうちの一種又は複数種を含有する酸化物、水酸化物、アンモニウム塩、硝酸塩から選択された一種又は複数種であってもよい。
【0060】
いくつかの実施例では、ステップS2における前記P源は、Pを含有する酸化物、水酸化物、アンモニウム塩、硝酸塩から選択された一種又は複数種であってもよい。
【0061】
いくつかの実施例では、ステップS2における前記G源は、元素Nb、W、Sbから選択された一種又は複数種の元素を含有する酸化物、水酸化物、アンモニウム塩、硝酸塩から選択された一種又は複数種であってもよい。
【0062】
いくつかの実施例では、ステップS3における前記高温熱処理の条件は、空気又は酸素雰囲気において0.5℃/min-3℃/minの昇温レートで前記原料混合物を910-1050℃に昇温し、5-30時間保温することであってもよい。
【0063】
いくつかの実施例では、前記製造方法は、ステップS3において前記原料混合物に対して高温熱処理を行った後、以下のステップS4とS5のうちの一つ又はいくつかをさらに含んでもよい:
ステップS4:ステップS3における高温熱処理後の生成物に対してボールミル処理を行う。
【0064】
いくつかの実施例では、ステップS4においてステップS3によって得られた高温熱処理後の生成物に対してボールミル処理を行い(例えばボールミルを採用して通常のボールミル処理を行い、処理時間<6hである)、ステップS3における高温熱処理時の弱凝集をオンにし、結晶粒の分散性を高めることができる。この操作は、通常の破砕操作(例えばロール破砕、ジェット粉砕)、高エネルギーボールミル操作又は長時間研磨(処理時間>10h)と区別し、ここで破砕操作、高エネルギーボールミル操作又は長時間研磨は、強凝集をオンにし、単結晶性(即ち粉体粒子における結晶粒の数がより少ない)を高めることができるが、結晶粒の表面を深刻に破壊し、微粉を発生させる。微粉が電池の性能と安全に与えた影響は、非常に大きく、除去される必要がある。試験から分かるように、ステップS4においてステップS3によって得られた高温熱処理後の生成物に対して通常のボールミル処理を行い、このように結晶粒の完全性をできるだけ維持すると同時に、より大きいサイズ(粒子体積メジアン径Dv50=2-15μm)の単結晶形態又は擬単結晶形態のスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料を得ることができ、この材料の表面安定性をさらに高めることができる。
【0065】
ステップS5:ステップS3における高温熱処理後の生成物又はステップS4のボールミル処理によって得られた生成物に対してアニール処理を行う。
【0066】
いくつかの実施例では、ステップS5における前記アニール処理の条件は、ステップS3における高温熱処理後の生成物又はステップS4によって得られたボールミル処理された生成物を600-700℃に昇温し、5-50時間保温することであってもよい。このステップにおいて、適切なアニール処理温度と十分な保温時間は、材料が規則相P4332に転換するように促し、ステップS3において高温熱処理によりもたらされた酸素欠陥を減少させ、バルク相Mn3+含有量を減少させることができ、バルク相Mn3+もMn溶出の主な源の一つであるため、このステップS5によってMnの溶出をより少なくすることができ、それによって得られたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料の高温高電圧での長期的安定性をさらに著しく向上させることができる。
【0067】
いくつかの実施例では、本発明によるスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の製造方法は、被覆処理のステップをさらに含んでもよく、例えばS3、S4又はS5のいずれか一つのステップにおいて得られた生成物に対して被覆処理を行い、材料表面の少なくとも一部が被覆されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を得る。
【0068】
被覆処理の温度と保温時間は、限定されなくてもよく、本発明の目的を実現するだけでよく、例えば被覆処理の温度がステップS5におけるアニール温度以下であってもよく、被覆処理の保温時間が5-20hであってもよい。
【0069】
いくつかの実施例では、被覆処理において使用された被覆材料は、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素、及びアルミニウム、チタン、ホウ素、ジルコニウム、ケイ素のうちの一種又は複数種を含有するリチウム含有複合酸化物から選択された一種又は複数種であってもよい。
【0070】
被覆処理ステップによって、被覆において使用された被覆材料は、得られたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料の動力学的性能を更に改善することができ、レート性能に有利である。ここで被覆材料、例えば酸化アルミニウム、酸化ホウ素などは、電解液と正極材料とを物理的に隔絶するという作用を果たすだけでなく、さらに消耗材(自体を消耗し、F-を捕捉し、主材を保全する)としてもよく、そのため材料の総合性能をさらに高めることができる。
【0071】
いくつかの実施例では、本発明による二次電池は、リチウムイオン二次電池であってもよい。正極活物質は、本発明によるスピネル型ニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料のほか、他の当分野において公知の電池に用いられる正極活物質を含んでもよい。例えば、他の正極活物質は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、リチウム遷移金属酸化物及びそれぞれの改質化合物のうちの少なくとも一つをさらに含んでもよい。しかしながら、本出願は、これらの材料に限らず、他の電池正極活物質として使用される従来の材料を使用することもできる。ここで、リチウム遷移金属酸化物の例は、リチウムコバルト酸化物(例えばLiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(例えばLiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(例えばLiMnO2、LiMn2O4)、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NCM333と略称してもよい)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2(NCM523と略称してもよい)、LiNi0.5Co0.25Mn0.25O2(NCM211と略称してもよい)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2(NCM622と略称してもよい)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(NCM811と略称してもよい)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えばLiNi0.85Co0.15Al0.05O2)及びその改質化合物などのうちの少なくとも一つを含んでもよいが、それらに限らない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例は、リン酸鉄リチウム(例えばLiFePO4(LFPと略称してもよい))、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム(例えばLiMnPO4)、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料のうちの少なくとも一つを含んでもよいが、それらに限らない。
【0072】
いくつかの実施例では、正極膜には、さらに選択的に接着剤が含まれる。接着剤の種類に対して限定せず、当業者は、実際の需要に応じて選択することができる。例として、正極膜に用いられる接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のうちの一つ又は複数を含んでもよい。
いくつかの実施例では、正極膜には、さらに選択的に導電剤が含まれる。導電剤の種類に対して限定せず、当業者は、実際の需要に応じて選択することができる。例として、正極膜に用いられる導電剤は、黒鉛、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの一つ又は複数を含んでもよい。
【0073】
いくつかの実施例では、正極活物質を採用して正極極板を製造するステップは、正極活物質、接着剤、及び選択的な導電剤を溶媒(溶媒はN-メチルピロリドンであってもよい)に分散させて、真空攪拌機の作用で均一に攪拌して正極スラリーを得ることと、正極スラリーを正極集電体のアルミニウム箔上に均一に塗覆し、室温で乾かした後、オーブンに移して乾燥させ、そして冷間プレスを行い、スリットによって正極極板を得ることとを含んでもよい。
【0074】
[負極極板]
負極極板は、負極集電体及び負極集電体の少なくとも一つの表面上に設置される負極膜を含む。例として、負極集電体は、その自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、負極膜層は、負極集電体の対向する二つの表面のうちのいずれか一方又は両方上に設置される。
【0075】
負極集電体は、良好な導電性及び機械強度を持つ材質を採用してもよく、導電と集電の役割を果たす。いくつかの実施例では、負極集電体は、銅箔を採用してもよい。
【0076】
負極膜は、負極活物質を含み、採用負極活物質製造負極極板のステップは、負極活物質、接着剤、及び選択的な増粘剤と導電剤を溶媒(溶媒は、脱イオン水であってもよい)に分散させて、均一な負極スラリーを形成することと、負極スラリーを負極集電体上に塗覆し、乾燥、冷間プレスなどの工序を経た後、負極極板を得ることとを含んでもよい。
【0077】
いくつかの実施例では、本出願は、負極活物質の具体的な種類に対して限定せず、負極極板は、選択的に二次電池負極に使用可能な負極活物質を含む。負極活物質は、黒鉛材料(例えば人造黒鉛、天然黒鉛)、メソカーボンマイクロビーズ(MCMBと略す)、ハードカーボン、ソフトカーボン、シリコン系材料、スズ系材料のうちの一つ又は複数であってもよい。
【0078】
いくつかの実施例では、接着剤は、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリエチレンアルコール(PVA)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの一つ又は複数から選ばれてもよい。
【0079】
いくつかの実施例では、増粘剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)であってもよい。
【0080】
いくつかの実施例では、負極極板に用いられる導電剤は、黒鉛、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェンとカーボンナノファイバーのうちの一つ又は複数から選ばれてもよい。
【0081】
[電解質]
電解質は、正極極板と負極極板との間でイオンを伝導する役割を果たす。本出願は、電解質の種類に対して具体的に限定せず、需要に応じて選択することができる。例えば、電解質は、液体、ゲル状又は全固体であってもよい。
【0082】
いくつかの実施例では、電解質として、電解液を採用する。電解液は、電解質塩と溶媒と含む。
【0083】
いくつかの実施例では、電解質塩は、LiPF6(ヘキサフルオロリン酸リチウム)、LiBF4(テトラフルオロホウ酸リチウム)、LiClO4(過塩素酸リチウム)、LiAsF6(ヘキサフルオロヒ酸リチウム)、LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、LiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiDFOB(ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム)、LiBOB(ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム)、LiPO2F2(ジフルオロリン酸リチウム)、LiDFOP(ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム)及びLiTFOP(テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム)のうちの一つ又は複数から選ばれてもよい。
【0084】
いくつかの実施例では、溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、エチルメチルスルホン(EMS)及びジエチルスルホン(ESE)のうちの一つ又は複数から選ばれてもよい。
【0085】
いくつかの実施例では、電解液には、さらに選択的に添加剤が含まれる。例えば、添加剤は、負極膜形成添加剤を含んでもよく、正極膜形成添加剤を含んでもよく、電池のいくつかの性能を改善できる添加剤、例えば電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温性能を改善する添加剤などを含んでもよい。
【0086】
[セパレータ]
電解液を採用する二次電池、及び固体電解質を採用するいくつかの二次電池には、セパレータがさらに含まれる。セパレータは、正極極板と負極極板との間に設置され、隔離の役割を果たす。本出願は、セパレータの種類に対して特に限定せず、良好な化学安定性と機械安定性を持つ任意の公知の多孔質構造セパレータを選択して使用することもできる。いくつかの実施例では、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリビニリデンフルオロライドのうちの一つ又は複数から選ばれてもよい。セパレータは、単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよい。セパレータが多層複合フィルムである時、各層の材料は同じであっても異なってもよい。
【0087】
[外装体]
いくつかの実施例では、二次電池は、正極極板、負極極板と電解質をパッケージングするための外装体を含んでもよい。一例として、正極極板、負極極板とセパレータは、積層又は捲回によって積層構造電池コア又は捲回構造電池コアを形成してもよく、電池コアは、外装体内にパッケージングされ、電解質として、電解液を採用してもよく、電解液は、電池コアに浸潤される。二次電池における電池コアの数は、一つ又は数個であってもよく、需要に応じて調節することができる。
【0088】
いくつかの実施例では、二次電池の外装体は、ソフトバッグ、例えばパウチ型ソフトバッグであってもよい。ソフトバッグの材質は、プラスチックであってもよく、例えばポリプロピレンPP、ポリブチレンテレフタレートPBT、ポリブチレンサクシネートPBSなどのうちの一つ又は複数を含んでもよい。二次電池の外装体は、硬質ケース、例えばアルミニウムケースなどであってもよい。
【0089】
いくつかの実施例では、正極極板、負極極板とセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリを製造してもよい。
【0090】
本出願は、二次電池の形状に対して特に限定せず、それは、円柱形、四角形又は他の任意の形状であってもよい。
図1は、一例としての四角形構造の二次電池5である。
【0091】
本発明による二次電池を電池モジュールに組み立ててもよく、電池モジュールに含まれる二次電池の数は、複数であってもよく、具体的な数は、電池モジュールの応用と容量に応じて調節されることができる。
【0092】
図2は、一例としての電池モジュール4である。
図2を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順に並べて設置されてもよい。無論、他の任意の方式で配列してもよい。さらに締め具によってこれらの複数の二次電池5を固定してもよい。
【0093】
選択的に、電池モジュール4は、収容空間を有するハウジングをさらに含んでもよく、複数の二次電池5は、この収容空間に収容される。
【0094】
本発明では、二次電池により組み立てられた電池モジュールを電池パックに組み立ててもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、電池パックの応用と容量に応じて調節されることができる。
【0095】
図3と
図4は、一例としての電池パック1である。
図3と
図4を参照すると、電池パック1には、電池ボックスと電池ボックスに設置される複数の電池モジュール4が含まれてもよい。電池ボックスは、上部筐体2と下部筐体3とを含み、上部筐体2は、下部筐体3に蓋設され、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は、任意の方式で電池ボックスに配列されてもよい。
【0096】
(電力消費装置)
本出願は、電力消費装置をさらに提供し、この電力消費装置は、本出願による二次電池を含み、前記二次電池は、前記電力消費装置に電源を提供する。前記電力消費装置は、移動体機器(例えば携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクータ、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどであってもよいが、これらに限らない。
【0097】
前記電力消費装置は、その使用需要に応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0098】
図5は、一例としての電力消費装置である。この電力消費装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。この電力消費装置の二次電池の高パワーと高エネルギー密度に対する需要を満たすために、電池パック又は電池モジュールを採用してもよい。
【0099】
別の例としての電力消費装置は、携帯電話、タブレットパソコン、ノートパソコンなどであってもよい。この電力消費装置は、一般的には薄型化が求められており、二次電池を電源として採用してもよい。
【実施例】
【0100】
以下では、本出願の実施例を説明する。以下に記述されている実施例は、例示的なもので、本出願を解釈するためにのみに用いられ、本出願を制限するものとして理解すべきではない。実施例において具体的な技術又は条件が明記されていないものは、当技術分野の文献に記述されている技術若しくは条件、又は製品説明書に従って実行する。使用する試薬又は機器について、製造メーカが明記されていないものは、いずれも市販で購入できる一般的な製品である。
【0101】
以下の実施例と比較例において製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の物理化学的パラメータ検出方法は、以下で示される。
【0102】
EPA 6010D-2014誘導結合プラズマ発光分析法を参照して、スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料における各元素の含有量を測定する。
【0103】
GB/T 19077-2016粒子径分析レーザー回折法を参照して、Mastersizer 3000レーザー粒度計を使用してスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料の体積メジアン径Dv50を測定し、それは、前記材料の累積体積分布百分率が50%に達する時に対応する粒径を表す。
【0104】
JY/T010-1996を参照して、電界放出走査電子顕微鏡(ツァイスSigma300)を使用してスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料の粉体の形態を観察する。走査電子顕微鏡の写真において観察し、一つの粉体粒子は、一つだけの結晶粒を有し又は一つの結晶粒がこの粉体粒子体積の半分以上を占める時、単結晶粒子と称され、一つの粉体粒子は、10個を超えない、大きさが近い結晶粒を含有する時、擬単結晶粒子と称され、一つの粉体粒子内の結晶粒の数が10個を超える時、それは、多結晶粒子と称される。
【0105】
GB/T 24533-2009圧縮密度テスト方法を参照して、スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料粉体の圧縮密度を測定する。
【0106】
GB/T 24586-2009鉄鉱石の見かけ密度、真密度と気孔率の測り方法を参照して、スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料粉体の真密度を測定する。
【0107】
GB/T 19587-2004気体吸着BET方法の固体状態物質の比表面積測り方法を参照して、スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料粉体の比表面積を測定する。
【0108】
実施例1
S1:ホスト材料の化学量論的配合比率に応じて、リチウム源(炭酸リチウム)、ニッケルマンガン源(粒径DV50が3.8マイクロメートルのニッケルマンガン水酸化物)を秤取する。
【0109】
S2:ターゲットドーピング量に応じて、P源(NH4H2PO4)とG源(WO3)を秤取し、且つステップS1のホスト材料と混合し、原料混合物を得る。
【0110】
S3:空気又は酸素雰囲気において、ステップS2によって得られた原料混合物を1℃/minの昇温レートで1000℃に昇温し、10時間保温し、その後、室温まで炉冷し、スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を得る。
【0111】
表1は、この実施例1のステップS2におけるP源とG源、及び添加された元素PとGの量を示し、この実施例1において製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料の元素含有量をテストし、結果は表2に示され、これで分かるように、この実施例1において製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料のホスト材料の化学式は、Li
1.04Ni
0.51Mn
1.49O
4であり、スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の質量に対して、元素Pのホスト材料でのドーピング量は1.39%であり、元素Wのホスト材料でのドーピング量は0.19%である。
図6は、この実施例1において製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料の形態図を示し、それは擬単結晶形態である。このスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を正極活物質とする時、二次電池をテスト対象とした電池性能は、表3に示される。ここで二次電池の組み立て方法、及び電池性能テスト方法は、以下のとおりである。
【0112】
[二次電池の組み立て]
スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料と導電カーボンブラック、PVDFを重量比96:2.5:1.5に応じて混合し、適量なN-メチルピロリドンを加え、均一に撹拌し、正極スラリーを得る。正極スラリーをアルミニウム箔上に塗布し、塗布後で乾燥させ、正極極板を得る。正極極板上の正極活物質の担持量は、0.02g/cm2である。
【0113】
負極活物質の人造黒鉛と導電カーボンブラック、カルボキシメチルセルロースナトリウムを重量比96:1:3に応じて混合し、適量の脱イオン水を加え、均一に撹拌し、負極スラリーを得る。負極スラリーを銅箔上に塗布し、塗布後で乾燥させ、負極極板を得る。負極極板上の黒鉛の担持量は、0.008g/cm2である。
【0114】
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を体積比1:1:1に応じて混合し、そしてLiPF6を上記溶液内に均一に溶解させ、電解液を得る。この電解液において、LiPF6の濃度は、1mol/Lである。
【0115】
ポリプロピレンフィルムをセパレータとして、上述した、製造して得られた正極極板、セパレータ、負極極板を順番に置き、セパレータが正負極板の間に位置して隔離の役割を果たすようにさせ、巻き取って成形し、アルミニウムプラスチック袋で包装する。電解液を注ぎ、パッケージングした後で容量化成を行い、二次電池を製造する。
【0116】
[二次電池性能テスト]
1、二次電池初期放電容量テスト
製造された二次電池をテスト対象とする。
【0117】
25℃で、二次電池を0.3C定電流で電圧4.9Vに充電し、そして4.9V定電圧で電流0.05Cに充電し、5min静置した後、二次電池を0.33C定電流で電圧3.5Vに放電し、この放電容量は、二次電池の1サイクル目の放電容量である。
【0118】
2、二次電池の高温満充電ストレージ性能テスト
製造された二次電池をテスト対象とする。
【0119】
25℃で、二次電池を0.3C定電流で電圧4.9Vに充電し、そして4.9V定電圧で電流0.05Cに充電する。そして二次電池を45℃で置き、5d(日)おきに放電プロセスを一回行った後、再度満充電し且つ45℃の環境でストレージし続ける。放電容量値を抽出し、放電容量が初期値の80%に減衰すると、ストレージが終わる。満充電後、45℃でストレージする総時間長は、高温満充電ストレージ時間長である。
【0120】
3、二次電池高温サイクル性能テスト
製造された二次電池をテスト対象とする。
【0121】
45℃で、二次電池を0.3C定電流で電圧4.9Vに充電し、そして4.9V定電圧で電流0.05Cに充電し、5min静置した後、二次電池を0.33C定電流で電圧3.5Vに放電し、これは一つの充電サイクル過程であり、今回の放電容量は、初回サイクルした放電容量である。全電池に対して上記方法によってサイクル充電テストを200回行った後、残った可逆放電容量を記録する。
【0122】
実施例2-4
ドーピングされたG源が異なる以外、その他は、実施例1と同じであり、具体的なP源とG源、及び加えられた元素PとGの量は、表1に示される。得られたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料の構造特徴と元素含有量テストの結果は、表2に示され、製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を正極活物質とする時、二次電池をテスト対象とする電池性能は、表3に示される。
【0123】
実施例5-10
ドーピングされたP源とG源の量が異なる以外、その他は、実施例1と同じであり、具体的なP源とG源、及び加えられた元素PとGの量は、表1に示される。得られたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料の構造特徴と元素含有量テストの結果は、表2に示され、製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を正極活物質とする時、二次電池をテスト対象とする電池性能は、表3に示される。
【0124】
比較例1-9
比較例1においてP源が添加されない以外、その他は、実施例1と同じである。
【0125】
比較例2においてG源が添加されない以外、その他は、実施例1と同じである。
【0126】
比較例3においてP源とG源が添加されない以外、その他は、実施例1と同じである。
【0127】
比較例4-9においてドーピングされたP源とG源の量が異なる以外、その他は、実施例1と同じである。
【0128】
具体的なP源とG源、及び加えられた元素PとGの量は、表1に示される。得られたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料の構造特徴と元素含有量テストの結果は、表2に示され、製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を正極活物質とする時、二次電池をテスト対象とする電池性能は、表3に示される。
【0129】
表1:実施例1-10と比較例1-9との製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物のP源とG源
【表1】
注記:元素PとGの含有量は、標準ニッケルマンガンスピネル成分LiNi
0.5Mn
1.5O
4に基づいて計算して得られる。
【0130】
表2:実施例1-10と比較例1-9との製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の構造特徴及び元素PとGとの実際ドーピング量
【表2】
【0131】
表3:実施例1-10と比較例1-9との製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を正極活物質とする時の電池性能
【表3】
【0132】
上記表1、表2と表3に記載された結果から分かるように、比較例1-3においてスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を製造する時にP源とG源のうちの多くとも1種だけを加えるのに対し、実施例1-10は、P源とG源を同時にドーピングし、それが得られたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を電池の正極材料とすることによって、電池は、優れた高温ストレージ性能(45℃満充電ストレージ日数によって表れる)と高温サイクル性能(1サイクル目の放電容量と45℃200サイクル容量によって表れる)を有する。比較例4-9においてスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を製造する時にP源とG源を同時に混ぜ込むのに対し、実施例1-10では、P源とG源を同時に混ぜ込むとともに、製造して得られたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料にドーピングされたP元素とG元素が同時に以下の条件を満たす時、得られたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を電池の正極材料とすることによって、電池は、優れた高温ストレージ性能(45℃満充電ストレージ日数によって表れる)と高温サイクル性能(ともに1サイクル目の放電容量と45℃200サイクル容量によって表れる)を有する。この条件は、スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の質量に対して、元素Pのドーピング含有量0.48wt%≦k≦3.05wt%であり、元素G(Nb、W、Sbから選択された一種又は複数種の元素)のドーピング含有量0.05wt%≦g≦0.31wt%であり、且つ2≦k/g≦20であることである。特に1.36wt%≦k≦2.95wt%、0.07wt%≦g≦0.21wt%、6≦k/g≦20を満たす時、二次電池の高温ストレージ性能と高温サイクル性能はより優れている。
【0133】
実施例11-12
実施例1の上で、実施例11と12は、ステップS1において別の添加剤をさらに添加し、ここで実施例11において加えられた添加剤は、TiO2であり、実施例12において加えられた添加剤は、LiFである。実施例11-12によって得られたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料の構造特徴と元素含有量テストの結果は、表4に示され、製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を正極活物質とする時、二次電池をテスト対象とする電池性能は、表5に示される。
【0134】
表4:実施例11-12の製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の構造特徴及び元素PとGとの実際ドーピング量
【表4】
【0135】
表5:実施例11-12の製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を正極活物質とする時の電池性能
【表5】
【0136】
上記表4と表5に記載された結果から分かるように、製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物のホスト材料には別の添加剤がさらに添加される時、得られたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を電池の正極活物質とすることによって、電池に、依然として優れた高温ストレージ性能と高温サイクル性能を持たせることができる。このような添加剤は、カチオン添加剤又はアニオン添加剤を含んでもよく、ここでカチオン添加剤は、Ti、Zr、La、Co、Mg、Zn、Al、Mo、V、Cr、Bから選択された一種又は複数種であってもよく、アニオン添加剤は、F、Clから選択された1種又は2種であってもよい。
【0137】
実施例13
S1:ホスト材料の化学量論的配合比率に応じて、リチウム源(炭酸リチウム)、ニッケルマンガン源(粒径DV50が3.8マイクロメートルのニッケルマンガン水酸化物)を秤取する。
【0138】
S2:ターゲットドーピング量に応じて、P源(NH4H2PO4)とG源(WO3)を秤取し、且つステップS1のホスト材料と混合し、原料混合物を得る。
【0139】
S3:空気又は酸素雰囲気において、ステップS2によって得られた原料混合物を1℃/minの昇温レートで1000℃に昇温し、10時間保温し、その後、室温まで炉冷し、高温熱処理後の生成物を得る。
【0140】
S4:ステップS3によって得られた高温熱処理後の生成物を5h(時間)ボールミルする。
【0141】
S5:空気又は酸素雰囲気において、ステップS4においてボールミルされた後の生成物を650℃に昇温し、15時間保温し、そして室温まで炉冷し、スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を得る。
【0142】
この実施例13の製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料の元素含有量をテストし、結果は表6に示され、このスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を正極活物質とする時、コイン型半電池と二次電池をテスト対象とする電池性能は、表7に示される。
【0143】
実施例14-15
ドーピングされたP源とG源の量が異なる以外、その他は、実施例13と同じである。得られたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料の構造特徴と元素含有量テストの結果は、表6に示され、製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を正極活物質とする時、コイン型半電池と二次電池をテスト対象とする電池性能は、表7に示される。ここでコイン型半電池の組み立て方法及びコイン型半電池性能テスト方法は、以下のとおりである。
【0144】
実施例16
ドーピングされたP源とG源の量が異なり、及びステップS5ではステップS4においてボールミルされた後の生成物を500℃に昇温する以外、その他は、実施例13と同じである。得られたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料の構造特徴と元素含有量テストの結果は、表6に示され、製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を正極活物質とする時、コイン型半電池と二次電池をテスト対象とする電池性能は、表7に示される。ここでコイン型半電池の組み立て方法及びコイン型半電池性能テスト方法は、以下のとおりである。
【0145】
[コイン型半電池の組み立て]
スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料と導電カーボンブラック、PVDFを重量比90:5:5に応じて混合し、適量なN-メチルピロリドンを加え、均一に撹拌し、正極スラリーを得る。正極スラリーをアルミニウム箔上に塗布し、塗布後で乾燥させ、正極極板を得る。正極極板上の正極活物質の担持量は、0.015g/cm2である。製造して得られた正極極板を直径が14mmのウェハに裁断する。
【0146】
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を体積比1:1:1に応じて混合し、そしてLiPF6を上記溶液内に均一に溶解させ、電解液を得る。この電解液で、LiPF6の濃度は、1mol/Lである。
【0147】
ポリプロピレンフィルム(例えば厚さが12μmであり、直径が16mmのウェハ)をセパレータとする。
【0148】
直径が15mmの金属リチウム片を対極とする。
【0149】
上記金属リチウム片、セパレータ、正極極板のウェハを順番に積層し、セパレータが金属リチウム片と正極極板のウェハとの間に位置して隔離の役割を果たすようにさせる。電解液を注ぎ、CR2030コイン型電池に組み立て、24h静置し、コイン型半電池を得る。
【0150】
[充電容量割合テスト]
25℃で、上述した、製造されたコイン型半電池を0.1C定電流で電圧4.95Vに充電し、そして4.95V定電圧で電流0.05Cに充電し、5min静置した後、コイン型半電池を0.1C定電流で電圧3.5Vに放電する。初回充電の初期充電データから4.4-3.5Vの充電平均容量(Q1)と4.95-3.5Vの充電平均容量(Q2)を切り取り、Q1/Q2を計算する。
【0151】
表6:実施例13-16の製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の構造特徴及び元素PとGとの実際ドーピング量
【表6】
【0152】
表7:実施例13-16の製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を正極活物質とする時の電池性能
【表7】
【0153】
上記表6と表7に記載された結果から分かるように、実施例13-15は、スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料の製造方法において、ステップS4において得られたボールミル処理後の生成物に対して、適当な温度でアニール処理をさらに行い、得られたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物は、コイン型半電池において0.1Cで充放電する時、1サイクル目の3.5V-4.95V充電容量に対する1サイクル目の3.5V-4.4V充電容量の割合<3%であり、製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料におけるMn3+含有量が比較的低く、規則相P4332含有量が比較的高いことが表明され、これは、電池の高温高圧での長期的安定性に有利である。二次電池をテスト対象として、結果によって、この二次電池がより優れた高温ストレージ性能と高温サイクル性能を有することがさらに表明される。実施例16は、比較的低いアニール温度でステップS4によって得られたボールミル処理後の生成物に対してアニール処理を行い、得られたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物は、二次電池が比較的よい高温ストレージ性能と高温サイクル性能を有することを確保することもできるが、1サイクル目の3.5V-4.95V充電容量に対する1サイクル目の3.5V-4.4V充電容量の割合の増加を引き起こす。
【0154】
実施例17-27
表8によってステップS3における高温熱処理プロセスパラメータ又はステップS5におけるアニール処理プロセスパラメータを調整する以外、その他は、実施例13と同じである(特に、実施例23で使用されたニッケルマンガン水酸化物の粒径DV50=1.7μm)。得られたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料の元素含有量テスト結果及び物理化学的パラメータは、表9と表10にそれぞれ示され、製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を正極活物質とする時、二次電池をテスト対象とする電池性能は、表11に示される。
【0155】
表8:実施例17-27のスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を製造する高温熱処理とアニール処理のプロセスパラメータ
【表8】
【0156】
表9:実施例17-27の製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の構造特徴及び元素PとGとの実際ドーピング量
【表9】
【0157】
表10:実施例17-27の製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物の物理化学的パラメータ
【表10】
【0158】
表11:実施例17-27の製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を正極活物質とする時の電池性能
【表11】
【0159】
表8-11に記載された結果から分かるように、表8に示される高温熱処理プロセスパラメータとアニール処理プロセスパラメータに従って、いずれも実施例13と同様に、類似している構造特徴を有するスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料を得ることができる。これらのスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料の形態と粉体粒径に対するテストによって、それは、擬単結晶又は単結晶形態であり、粉体粒径D
V50は、2μm-15μmの範囲にあり、ここで
図7と
図8は、実施例20と実施例23で製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料の形態図をそれぞれ示し、ここで実施例20は、材料粉体粒径D
V50が14.1μmの大きな単結晶を得、実施例23は、材料粉体粒径D
V50が5.9μmの小さな単結晶を得る。これらのスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料の比表面積と真密度を測ることによって、ここで材料の比表面積は、通常1m
2/g以下であり、真密度は、通常4.45g/cm
3以上である。材料真密度が高いほど、極板における活性ダイヤフラムの圧縮密度の限界値は、高くなり、低い比表面積ほど、表面副反応の減少に有利である。実施例17-27で製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を正極活物質とする時、表11に示される結果のように、いずれも二次電池に優れた高温ストレージ性能と高温サイクル性能を有させることができる。
【0160】
実施例28
S1:ホスト材料の化学量論的配合比率に応じて、リチウム源(炭酸リチウム)、ニッケルマンガン源(粒径DV50が3.8マイクロメートルのニッケルマンガン水酸化物)を秤取する。
【0161】
S2:ターゲットドーピング量に応じて、P源(NH4H2PO4)とG源(WO3)を秤取し、且つステップS1のホスト材料と混合し、原料混合物を得る。
【0162】
S3:空気又は酸素雰囲気において、ステップS2によって得られた原料混合物を1℃/minの昇温レートで1000℃に昇温し、10時間保温し、その後、室温まで炉冷し、高温熱処理後の生成物を得る。
【0163】
S4:ステップS3によって得られた高温熱処理後の生成物と被覆材料(B2O3)とを混合して5hボールミルする。
【0164】
S5:空気又は酸素雰囲気において、ステップS4のボールミル処理された生成物を650℃に昇温し、15時間保温し、そして室温まで炉冷し、スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を得る。
【0165】
実施例29-33
添加された被覆材料及び使用量が異なる以外、その他は、実施例28と同じであり、具体的には、実施例29-33がAl2O3を被覆材料として採用する。各実施例で得られたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料の構造特徴と元素含有量のテスト結果は、表12に示され、製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を正極活物質とする時、二次電池をテスト対象とする電池性能は、表13に示される。
【0166】
表12:実施例28-33で製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料の元素含有量
【表12】
【0167】
表13:実施例28-33で製造されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物を正極活物質とする時の電池性能
【表13】
【0168】
上記表12と13に記載された結果から分かるように、被覆材料を使用してスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料に対して被覆を行ってもよく、被覆層の量は、具体的に選択された被覆元素の量に応じて算出されてもよく、製造して得られた、被覆されたスピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料を電池の正極材料とする時にも、電池に優れた高温ストレージ性能と高温サイクル性能を有させることができる。ここで被覆処理操作において、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素、及びアルミニウム、チタン、ホウ素、ジルコニウム、ケイ素のうちの一種又は複数種を含有するリチウム含有複合酸化物から選択された一種又は複数種を被覆材料として使用してもよい。ここで被覆材料、例えば酸化アルミニウム、酸化ホウ素などは、電解液と正極材料とを物理的に隔絶するという作用を果たすだけでなく、さらに消耗材(自体を消耗し、主材を保全する)とすることができるため、被覆処理は、スピネル型のニッケルマンガンリチウム含有複合酸化物材料の総合性能をさらに高めることに有利である。
【0169】
説明すべきこととして、本出願は、上記実施の形態に限らない。上記実施の形態は、例示だけであり、本出願の技術案の範囲内に技術的思想と実質的に同じ構成を有し、同じ作用効果を奏する実施の形態は、いずれも本出願の技術範囲内に含まれる。なお、本出願の趣旨を逸脱しない範囲内で、実施の形態に対して当業者が想到できる各種の変形を加え、実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構築された他の方式も、本出願の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0170】
ここで、符号の説明は以下のとおりである。
1、電池パック;
2、上部筐体;
3、下部筐体;
4、電池モジュール;
5、二次電池。
【国際調査報告】