(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ブラックベリー新品種「イムベリー」
(51)【国際特許分類】
A01H 6/74 20180101AFI20240118BHJP
A01H 1/06 20060101ALI20240118BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20240118BHJP
【FI】
A01H6/74
A01H1/06
A23L19/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527262
(86)(22)【出願日】2021-12-30
(85)【翻訳文提出日】2023-06-27
(86)【国際出願番号】 KR2021020256
(87)【国際公開番号】W WO2022158747
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】10-2021-0008427
(32)【優先日】2021-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523160690
【氏名又は名称】イム,ギソク
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】イム,ギソク
【テーマコード(参考)】
2B030
4B016
【Fターム(参考)】
2B030AA03
2B030AB03
2B030AD06
2B030AD07
2B030AD08
2B030AD16
2B030AD20
2B030CA08
4B016LC02
4B016LG01
4B016LP13
(57)【要約】
本発明はビロードイチゴ(Rubus corchonfolius L.f.)を育種原料として使用し、ガンマ線を70~90Gy照射量で照射(irradiation)して突然変異体を選抜して育成された、ブラックベリー新品種「イムベリー(Imberry)」植物体に関するものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビロードイチゴ(Rubus corchonfolius L.f.)を育種原料として使用し、ガンマ線を照射(irradiation)して突然変異体を選抜して育成され、下記のような特性を有し、無性繁殖法によって繁殖され、植物体に由来の無菌培養体の寄託番号がKCTC14413BPである、ブラックベリー新品種「イムベリー(Imberry)」植物体。
(1)着果特性:節ごとに1個
(2)結果側枝当たりの果実数:4~8個
(3)果実重量:15~22.0g
(4)果実の長さ:40~60mm
(5)完熟期果実の糖度:12~18°Brix
(6)果実収穫時期:6月中旬
【請求項2】
前記無性繁殖法は、吸枝、取り木、幹挿し木、根挿し木、または細胞培養であることを特徴とする、請求項1に記載のブラックベリー新品種「イムベリー(Imberry)」植物体。
【請求項3】
請求項1に記載のブラックベリー新品種「イムベリー(Imberry)」植物体と他のクマイチゴ属(Rubus)植物とを人工交配して生産された、F
1植物体。
【請求項4】
請求項1に記載のブラックベリー新品種「イムベリー(Imberry)」植物体の果実を用いて製造された、加工食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブラックベリー新品種「イムベリー」に関するものであり、より詳しくは野生型ビロードイチゴ(Rubus corchonfolius L.f.)を育種原料として使用し、放射線突然変異育種法によって、既存のブラックベリー(Rubus fruticosus L.)に比べて、成長が非常に早く、果実のサイズが大きくて収穫が容易であり、完熟果の糖度が平均12~18°Brixと高く、酸味が少なく、種子が硬くなく、特有の香(flavor)がある新品種ブラックベリーを育種したものに関するものである。
【背景技術】
【0002】
韓国の栽培種クマイチゴ属としては、トックリイチゴ(Rubus coreanus)、クマイチゴ(Rubus crataegifolius Bunge)及びブラックベリー(Rubus fruticocus L)の改良品種である「メープル(Maple)」、「フクジンジュ」、「フクゾン」、「アモー(Amor)」、「ブラックV3」などが栽培されているが、果実のサイズ、糖度及び風味などの側面で海外のブラックベリーに付いて行くことができない実情である。
【0003】
韓国内で自生するエゾイチゴはバラ科(Rosaceae)クマイチゴ属(Rubus)の落ち葉性を有し、抱腹性、半直立性または直立性の植物であり、20余種以上があり、このうちビロードイチゴ(Rubus corchonfolius L.f.)は日本国、中国及び韓国南部地方の西南海岸の山すその日がよく当たる場所に主に自生する直立性エゾイチゴであり、花は4月に開花し、5月中旬乃至5月末に黄紅色に熟し、固有の香があり、糖度が高く、種子が小さくて噛まれないので食感に優れ、花茎は葉が付いている節から二つずつのみ出る特徴があり、他のクマイチゴ属とは違い、実にコア(core)がなく、収穫の際に萼から分離されない特徴がある。
【0004】
したがって、韓国内で自生するクマイチゴ属(Rubus)のうち、糖度、風味及び食感に最も優れ、開花及び収穫の時期が早いビロードイチゴの特性を用いた育種の必要性がある。
【0005】
一方、韓国登録特許第1446962号には「ブラックベリー新品種「アモー」及びその抽出物を有効成分として含む組成物」が開示されており、韓国登録特許第1142650号には「多収穫性トックリイチゴクマイチゴ新品種植物」が開示されているが、本発明の「ブラックベリー新品種「イムベリー」」については記載されたことがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国登録特許第1446962号公報
【特許文献2】韓国登録特許第1142650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記のような要求に応じて導出されたものであり、本発明者は従来韓国内栽培種クマイチゴ属(Rubus)植物が有している果実の欠点を解決し、ビロードイチゴの利点を用いて、画期的に果実のサイズが大きく、果実の糖度及び風味に優れ、収穫が容易であり、既存のブラックベリー品種より収穫時期が早い新品種ブラックベリーを開発して果実の商品性を高めることにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、ビロードイチゴ(Rubus corchonfolius L.f.)を育種原料として使用し、ガンマ線を照射(irradiation)して突然変異体を選抜して育成され、下記のような特性を有し、無性繁殖法によって繁殖され、植物体に由来の無菌培養体の寄託番号がKCTC14413BPである、ブラックベリー新品種「イムベリー(Imberry)」植物体を提供する。(1)着果特性:節ごとに1個、(2)結果側枝当たりの果実数:4~8個、(3)果実重量:15~22.0g、(4)果実の長さ:40~60mm、(5)完熟期果実の糖度:12~18°Brix、(6)果実収穫時期:6月中旬。
【0009】
また、本発明は、ブラックベリー新品種「イムベリー(Imberry)」植物体と他のクマイチゴ属(Rubus)植物とを人工交配して生産された、F1植物体を提供する。
【0010】
また、本発明は、ブラックベリー新品種「イムベリー(Imberry)」植物体の果実を用いて製造された、加工食品を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のブラックベリー新品種「イムベリー(Imberry)」植物は既存のブラックベリー(Rubus fruticosus L.)に比べて、成長が非常に早く、果実のサイズが大きくて収穫が容易であり、完熟果の場合、糖度が平均15°Brixと数等高く、酸味が少なく、種子が硬くなく、特有の香(flavor)があるので、生果用としても優れて経済的価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】野生種ビロードイチゴ(Rubus corchonfolius L.f.)植物体及び果実の写真である。
【
図2】本発明の出願品種であるブラックベリー新品種「イムベリー(Imberry)」の植物体の写真である。
【
図3】本発明の出願品種であるブラックベリー新品種「イムベリー(Imberry)」の果実の写真である。
【
図4】本発明の出願品種であるブラックベリー新品種「イムベリー(Imberry)」の果実の重さを示す写真である。
【
図5】本発明の出願品種であるブラックベリー新品種「イムベリー(Imberry)」の葉の写真である。
【
図6】本発明の出願品種であるブラックベリー新品種「イムベリー(Imberry)」の花の写真である。
【
図7】本発明の出願品種であるブラックベリー新品種「イムベリー(Imberry)」の結果枝(bearing branch)の着果の写真である。
【
図8】ブラックベリー品種「ブラックベリー(V3)」の植物体及び結果枝の着果の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の目的を達成するために、本発明は、ビロードイチゴ(Rubus corchonfolius L.f.)を育種原料として使用し、ガンマ線を照射(irradiation)して突然変異体を選抜して育成され、下記のような特性を有し、無性繁殖法によって繁殖され、植物体に由来の無菌培養体の寄託番号がKCTC14413BPであるブラックベリー新品種「イムベリー(Imberry)」植物体を提供する。
(1)着果特性:節ごとに1個
(2)結果側枝当たり実の数:4~8個
(3)果実の重量:15~22.0g
(4)果実の長さ:40~60mm
(5)完熟期果実の糖度:12~18°Brix
(6)果実収穫時期:6月中旬
【0014】
本発明において、前記ブラックベリー新品種「イムベリー」植物体はビロードイチゴ(Rubus corchonfolius L.f.)を育種原料として使用し、60Coのガンマ線(γ線)を70~90Gyの照射量で23~25時間照射(irradiation)し、ビロードイチゴの本葉と形態学的に区分される本葉を有する突然変異体を選抜して育種したものであり、前記突然変異体のうち、既存のブラックベリー(Rubus fruticosus L.)品種に比べて、収穫時期が一ヶ月くらい早くなり、果実のサイズが1.6~2.4倍大きく、完熟果の糖度が1.6倍増加したことが特徴である。
【0015】
本発明者はこのような特性を有するブラックベリー新品種「イムベリー」の無菌培養体を2020年12月18日付けで韓国生命工学研究院生物資源センター(KCTC)に寄託した(受託番号:KCTC14413BP)。
【0016】
放射線突然変異育種(radiation mutation breeding)技術は、植物の種子や苗木に放射線を照射して遺伝子または染色体の突然変異を引き起こした後、後代で優れた形質を有する突然変異体を選抜し、遺伝的な固定過程を経て新しい遺伝資源を開発する技術である。自然状態でも低い頻度で発生する突然変異の発生頻度を放射線刺激によって高める育種技術であり、人為的に外来の遺伝子を注入する遺伝子組み換え技術とは違い、安全性が立証されて作物改良及び新品種開発に用いられている方法である。
【0017】
本発明によるブラックベリー新品種「イムベリー」植物体は全(whole)植物体自体を意味することもあり、植物体の部分、すなわち、葉、枝、根、果実、花または花粉(pollen)などを含むことができる。
【0018】
また、前記無性繁殖法は、次のものに限定されるものではないが、吸枝、取り木、幹及び根挿し木、または細胞培養であり得る。「無性繁殖(unsexual propagation)」という用語は無性生殖と同じ言葉であり、雄雌が必要なく、単一の個体が独りで新しい個体を形成する方法をいい、単一の個体で作られた生殖細胞が単独で新しい個体になる場合が無性生殖である。種子繁殖(有性生殖)以外のすべての繁殖方法を意味する。
【0019】
また、本発明は、ブラックベリー新品種「イムベリー(Imberry)」植物体と異なるクマイチゴ属(Rubus)植物を人工交配して生産されたF1植物体を提供する。本発明のブラックベリー新品種「イムベリー」は、既存のブラックベリー品種に比べて、収穫時期が早く、果実のサイズ及び糖度に優れるので、収穫容易性及び経済性を考慮するとき、ブラックベリー新品種育種のための主要な育成素材として用いることができるであろう。前記人工交配は当該分野で公知となった通常の方法によって実施することができる。
【0020】
また、本発明は、ブラックベリー新品種「イムベリー(Imberry)」植物体の果実を用いて製造された加工食品を提供する。前記加工食品は、ジャム、ジュースを含む飲み物、アイスクリーム、乳加工品などであり得るが、これに限定されない。
【0021】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものであるだけで、本発明の内容が下記の実施例に限定されるものではない。
【0022】
実施例1.放射線を用いた突然変異ベリー育種
育種原料として使用された野生型ビロードイチゴ(Rubus corchonfolius L.f.)の種子1,500粒は2015年5月に韓国全羅南道咸平郡羅山面三 里の野山で採取した後、4℃で保管した。前記植物体の確認は国立樹木園国家生物種知識情報システム国家標準植物目録から確認した。2016年3月に韓国原子力研究所ガンマ照射室で60Coのガンマ線(γ線)を誘起原として、総線量70~90Gyの低準位放射線を低温保管中の種子1,000粒に24時間平面照射し、照射された種子は室内に準備されたポットに播種し、発芽有無をチェックして生存率を確認した。
【0023】
放射線照射された種子の生存率は40%水準であることが確認され、発芽した個体のうち本葉の形状が育種原料として使用されたビロードイチゴ(
図1参照)の心臓形1葉とは違い、3葉(初期)または5葉(成長後)に分離される特性を示し、成長に優れた突然変異個体20個を1次的に選抜した。その後、選抜された突然変異個体を全羅南道咸平郡羅山面山12所在のビニルハウスで2017年から2019年まで育成栽培し、それぞれの突然変異個体は幹挿し木によって繁殖させたところ、同じ形態学的特性が維持されることを確認した。2019年に、前記突然変異20個体のうち完熟果の色が暗赤色(dark red)であり、果実のサイズが大きく、糖度が高い1個体を最終に選抜し、国立樹木園国家生物種知識情報システム国家標準植物目録から前記植物体がブラックベリー(Rubus fruticosus L.)に分類されることを確認し、当該植物体をブラックベリー新品種「イムベリー(Imberry)」と名付けた。
【0024】
実施例2.ブラックベリー新品種「イムベリー(Imberry)」植物の特性調査
本発明者はブラックベリー新品種「イムベリー」の主要形態学的特性をビロードイチゴ及び商用化したブラックベリー品種であるブラックベリー(V3)(品種保護公報第2003-497号)と比較して分析した。形態学的特性分析に使用された「イムベリー」植物体は2016年にポットに播種して育成栽培していた植物体であり、ビロードイチゴ植物体は全羅南道咸平郡羅山面三 里の野山で自生していた植物体であり、ブラックベリー(V3)植物体は当該植物体を栽培する農園で購入し、「イムベリー」を育成しているビニルハウス内の他の区域に植栽して栽培した植物体である。形態学的特性の分析は2020年に実施した。
【0025】
【0026】
前記表1から確認できるように、本発明のブラックベリー新品種「イムベリー(Imberry)」植物は野生種ビロードイチゴの早い収穫期及び着果特性の利点を有しているので、既存のブラックベリー品種(ブラックベリー(V3))に比べて、収穫期が一ヶ月以上早く、節ごとに1個ずつ着果する特性があり、果実のサイズ(長さ40~60mm)がブラックベリー品種より1.6~2.4倍大きいことが分かり、果実サイズの増加によって収穫が容易であることが特徴である。また、ブラックベリー新品種「イムベリー」植物は完熟果の糖度が平均15°Brixであり、既存のブラックベリー品種の9°Brixに比べて数等高く、特有の香があるので、生果用としても優秀であって経済的価値があり、産業利用可能性が非常に高いものと判断された。
【0027】
本発明者は前記ブラックベリー新品種「イムベリー」の新芽の枝を1cmサイズに切断し、流れる水で1時間以上消毒し、80%アルコールで1分、2%次亜塩素酸ナトリウム溶液で20分間消毒し、滅菌蒸留水で3回以上洗浄した後、培地[MB Agar(cat. no A5112、エヌバイオラブ、韓国)3.6g、砂糖15g、滅菌蒸留水500ml、M&S Basal Medium with Vitamins(cat. no MB-M4531、キサンバイオテック社製、韓国)2.24g、BAP 0.1ml、pH5.8]に入れ、24~29℃で16時間-明/8時間-暗の光周期の条件で培養して無菌培養体を培養し、前記無菌培養体を2020年12月18日付けで韓国生命工学研究院生物資源センター(KCTC)に寄託した(受託番号:KCTC14413BP)。
【0028】
<受託番号>
寄託機関名:韓国生命工学研究院
受託番号:KCTC14413BP
受託日:20201218
【0029】
【手続補正書】
【提出日】2023-08-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
【国際調査報告】