(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】N-アシルアミノ酸塩を含む界面活性剤溶液を調製するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 231/02 20060101AFI20240118BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20240118BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20240118BHJP
C07C 233/47 20060101ALI20240118BHJP
C07C 231/24 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C07C231/02
A61Q19/10
A61K8/44
C07C233/47
C07C231/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532503
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(85)【翻訳文提出日】2023-05-29
(86)【国際出願番号】 EP2021082849
(87)【国際公開番号】W WO2022117415
(87)【国際公開日】2022-06-09
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521037411
【氏名又は名称】ベーアーエスエフ・エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】ラーツ,ハンス-クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】クラーゼン,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ベーラー,アンスガー
【テーマコード(参考)】
4C083
4H006
【Fターム(参考)】
4C083AC661
4C083AC662
4C083AD131
4C083CC22
4C083FF01
4H006AA02
4H006AB12
4H006AB68
4H006AB70
4H006AC48
4H006AD11
4H006BC10
4H006BC31
4H006BC52
(57)【要約】
本発明は、N-アシルアミノ酸又はその塩を含む界面活性剤溶液を調製するためのプロセス及び本発明のプロセスにより得られるN-アシルアミノ酸又はその塩を含む界面活性剤溶液に関する。更に本発明は、このプロセスにより得られるN-アシルアミノ酸又はその塩を含む溶液を含む、化粧料用又は洗剤用洗浄剤組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-アシルアミノ酸又はその塩を含む界面活性剤溶液を調製するためのプロセスであって、
a)a1)アミノカルボン酸と、メタノール中のアルカリ金属メトキシドからなる溶液とを、カルボキシルグリセリドエステルの存在下に反応させることによるか、又はa2)アミノカルボン酸と、メタノール中のアルカリ金属メトキシドからなる溶液とを反応させた後、カルボキシルグリセリドエステルを添加することにより、アミノカルボン酸とアルカリ金属メトキシドとを反応させることによって、アミノカルボン酸のアルカリ金属塩をin-situで調製するステップと、次いで、
b)前記アミノカルボン酸のアルカリ金属塩と、カルボキシルグリセリドエステルとを、メタノールを除去しながら加熱し、理論量の少なくとも60wt%のメタノールが除去されるまで反応させることによって、N-アシルアミノ酸塩を形成するステップと、
c)その後、減圧するステップと、
d)減圧を解除した後、水を添加することにより、N-アシルアミノ酸塩を含む溶液を生成するステップと、
e)任意選択的にpH値を調整するステップと、
を含むプロセス。
【請求項2】
前記アミノカルボン酸は、アラニン、グリシン、トレオニン及びアスパラギンからなる群から選択され、好ましくはグリシンである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
a)において、前記アミノカルボン酸のアルカリ金属塩は、アミノカルボン酸を、アミノカルボン酸対アルカリ金属メトキシドの相対的モル比が、約3:1~1:3の範囲、好ましくは1:1.3~1:1の範囲、より好ましくは約1:1の範囲となるように反応させることによって調製される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記アミノカルボン酸のアルカリ金属塩は、a1)アミノカルボン酸とアルカリ金属メトキシドのメタノール溶液とを、カルボキシルグリセリドエステルの存在下に反応させることにより調製される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
a)において、前記アミノカルボン酸のアルカリ金属塩は、アミノカルボン酸とアルカリ金属メトキシドとを、均質化するまで撹拌しながら、好ましくは30~60℃の範囲の温度で撹拌しながら、反応させることにより調製される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記カルボキシルグリセリドエステルは、6~22個の炭素原子を有する脂肪酸のグリセリドエステルから選択され、より好ましくは、ヤシ油からなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記N-アシルアミノ酸塩は、b)において、100℃を超える温度、好ましくは120~170℃の範囲の温度、好ましくは130~160℃の範囲の温度に加熱することにより反応させることによって形成される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記アミノカルボン酸のアルカリ金属塩は、メタノール中のアルカリメトキシドから調製され、前記アルカリ金属は、ナトリウム及びカリウムからなる群から選択され、より好ましくは、ナトリウムからなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
b)において、前記メタノールは大気圧下で除去される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
b)における前記反応は、理論量の少なくとも65wt%、好ましくは65~90wt%のメタノールが除去されるまで実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
アミノカルボン酸のアルカリ金属塩対カルボキシルグリセリドエステルのモル比は、カルボキシルグリセリドエステルの脂肪酸を基準として、0.9:1~1.1:1の範囲にある、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
c)において、減圧は、100~400mbarの範囲、好ましくは250~350mbarの範囲、より好ましくは約300mbarで行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
d)において、前記水の添加により、N-アシルアミノ酸酸又はその塩を20~70wt%の範囲、好ましくは25~55wt%の範囲、より好ましくは25~40wt%の範囲で含む溶液が形成される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
ステップd)において、前記水は、90~130℃の範囲の温度で添加される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項15】
e)において、pH値の調整は冷却後に行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項16】
追加の溶媒も液体も添加されない、請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
その後に、N-アシルアミノ酸塩を得るためのワークアップを行わない、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
得られるN-アシルアミノ酸又はその塩の収率は、アミノ酸を基準として80mol%を超える、請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
請求項1により調製されるN-アシルアミノ酸又はその塩を含む界面活性剤溶液であって、
アミノ酸を0.1~4wt%と、
脂肪酸を0.1~7.5wt%と、
グリセロールを0.1~7wt%と、
N-アシルアミノ酸塩を20.0~70.0wt%と、
グリセロールモノ脂肪酸エステル、グリセロールジ脂肪酸エステル及び/又は脂肪酸のメチルエステルからなる群から選択される副生成物を0~15wt%と、
水を、成分の合計が100wt%となる量と、
からなる、界面活性剤溶液。
【請求項20】
請求項1により調製されるN-アシルアミノ酸又はその塩を含む界面活性剤溶液を含む、洗剤用及び/又は身体化粧料用洗浄剤組成物。
【請求項21】
請求項19に記載のN-アシルアミノ酸又はその塩を含む界面活性剤溶液を含む、洗剤用及び/又は身体化粧料用洗浄剤組成物。
【請求項22】
パーソナルケア組成物用洗浄剤組成物であって、パーソナルケア組成物の重量(wt)%を基準として、
A)請求項19に記載のN-アシルアミノ酸又はその塩を含む界面活性剤溶液を1.0~30wt%、特に1.0~25wt%と、
B)アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性及び/又は両イオン性界面活性剤の群から選択される1種又は複数種の洗浄作用のある界面活性剤であって、前記アニオン性界面活性剤は、請求項1により得られる界面活性剤溶液とは異なる、界面活性剤を、1.0~30wt%、特に5.0~25.0wt%と、
C)カチオン性ポリマーを0~5wt%、特に0.01~1wt%と、
D)A)、B)及び/又はC)とは異なる、他の成分を、100wt%までと、
を含む、洗浄剤組成物。
【請求項23】
パーソナルケア化粧料用洗浄剤組成物であって、パーソナルケア組成物の重量(wt)%を基準として、
A)請求項1により調製されるN-アシルアミノ酸又はその塩を含む界面活性剤溶液を、1.0~30wt%、特に1.0~25wt%と、
B)アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性及び/又は両イオン性界面活性剤の群から選択される1種又は複数種の洗浄作用のある界面活性剤であって、前記アニオン性界面活性剤は、請求項1により得られる界面活性剤溶液とは異なる、界面活性剤を、1.0~30wt%、特に5.0~25.0wt%と、
C)カチオン性ポリマーを、0~5wt%、特に0.01~1wt%と、
D)A)、B)及び/又はC)とは異なる、他の成分を、100wt%までと、
を含む、洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N-アシルアミノ酸又はその塩を含む界面活性剤溶液を調製するためのプロセス及び本発明のプロセスにより得られるN-アシルアミノ酸又はその塩を含む界面活性剤溶液に関する。更に本発明は、このプロセスにより得られるN-アシルアミノ酸又はその塩を含む溶液を含む、化粧料用又は洗剤用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
N-アシルアミノ酸塩は、洗濯用洗剤、家庭用又は工業用洗浄剤、起泡剤、乳化剤、身体清拭料(personal cleanser)その他の用途に有用なアニオン性界面活性剤である。これらは刺激性が極めて低いものが多いため、塩はパーソナルケア製剤に特に有益である。
【0003】
概して、N-アシルアミノ酸塩はこれまで十分に利用されておらず、その理由の少なくとも一部は製造時の課題にあった。N-アシルアミノ酸塩は、対応する脂肪酸アシルクロリド及びアミノ酸塩から、ショッテン・バウマン化学反応を用いて製造することができるが、このプロセスは費用がかかる上に、副生成物として等モル量の望ましくない塩が生成する。代替的な合成方法においては、脂肪酸をアミノアルコールと反応させることによって脂肪酸アミドを得、次いでこれを酸化することにより、N-アシルアミノ酸が得られる。このプロセスは、収率が比較的低く、酸化ステップにおける選択性が低く、貴金属触媒を使用し、従来の有機合成ワークアップ(organic workup)が必要となることが障害となっている。他の公知のプロセスにおいて、N-アシルアミノ酸塩は、脂肪酸から製造される。例えば、米国特許第3,836,551号明細書には、脂肪酸とアミノ酸塩とを、溶融流体相中で(即ち、無溶媒で)、極性非プロトン性溶媒(ジメチルスルホキシド又はN,N-ジメチルホルムアミドなど)を使用して溶液中で、又は無極性有機溶媒(例えば、キシレン)を使用して懸濁液中で、のいずれかで反応させることが教示されている。典型的な反応時間は約9時間であり、副生成物については議論されていない。一般に、脂肪酸を用いる経路は高い反応温度が必要であり、その結果としてN-アシルアミノ酸塩に望ましくない色が付くことから、この経路も比較的好ましくない。出発物質として脂肪酸エステルも使用されている。国際公開第96/09278号パンフレットには、脂肪酸アルキルエステル(例えば、オレイン酸メチル)を、アミノ酸塩と、30~150%モル過剰の強塩基(例えば、ナトリウムメトキシド/メタノール溶液)と反応させることが教示されている。実施例においてはサルコシンナトリウムが使用されているが、他のアミノ酸塩が好適であると教示されており、減圧は用いられていない。
【0004】
米国特許第4,380,646号明細書には、アミノカルボン酸、そのアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩を、低級アルキルカルボン酸エステルと、アルカリ金属又はアルカリ土類金属アルコラートの存在下に接触させることを含む、アシル化されたアミノカルボン酸の調製が開示されている。
【0005】
国際公開第97/03043号パンフレットには、強塩基の存在下にモノ-、ジ-又はトリグリセリドをアミノ酸塩と反応させることによる、N-アシルアミノ酸塩の調製が記載されている。実施例においては、ナトリウムメトキシド/メタノールの存在下に菜種油(トリグリセリド)をサルコシンナトリウムと反応させ、グリセリドがもはや検出されなくなるまでアスピレーターによる減圧(water jet vacuum)下にこの反応を継続している。続いて典型的な有機合成ワークアップが行われている。この参考文献では、反応が進行するに伴い生成するグリセリンが反応混合物中に残留するか又は従来のワークアップによって部分的若しくは完全に除去されるかのいずれかであることを示唆している。反応完了時の混合物は、通常、粘性を有するペーストである。
【0006】
N-アシルアミノ酸塩の調製が特に困難となるのは、ココイルグリシンナトリウム、ミリスチルグリシンナトリウム又はラウリルグリシンナトリウムを調製するための脂肪酸アルキルエステル及びグリシン酸アルカリ金属塩を反応体として用いる場合である。この反応は試薬の相溶性が低く、高いプロセス温度では反応混合物が固化してしまい、着色し、メタノールを除去する際にひどく泡立ち、多量の副生成物が生成するため厄介である。これらの問題の幾つかを軽減するために溶媒が使用されているが、これは通常、サルコシン塩又はN-アシルアミノ酸塩への変換がより容易な他のアミノ酸塩が関連する場合である。更に、溶媒を除去することで別の難題が発生する。欧州特許第2870136B1号明細書には、N-アシルアミノ酸塩を調製するための2種の異なるプロセスが記載されている。脂肪酸アルキルモノエステルとアミノ酸塩とを、グリセリン及びプロピレングリコールの群から選択されるポリオール並びにC1~C4アルカノールの存在下に反応させる一プロセスによれば、生成したアルカノールを反応混合物から除去し、転化率が50~90mol%の範囲となる完了度に到達するまで、反応混合物を流体に維持するのに有効な量のポリオールが使用されている。第2のプロセスによれば、モノ-、ジ-又はトリグリセリドから選択されるポリオールエステルとアミノ酸塩とが、グリセリン及びプロピレングリコールからなる群から選択される添加されたポリオールの存在下に反応され、転化率が50~90mol%の範囲にある場合、水が追加される。どちらのプロセスにおいてもポリオールを添加する必要性が記載されており、これは界面活性剤混合物中に残存し、全ての用途において望ましくない。欧州特許第2736878B1号明細書には類似のプロセスが開示されており、ここでは、グリシン又はその塩と脂肪酸エステルとを、グリセロール、プロピレングリコール及びこれらの組合せからなる群から選択される媒体中で反応させており、混合物のpKaを9.5~13の範囲としている。このプロセスの後でさえも、反応混合物中にグリセロールが残存する。
【0007】
韓国特許第20190024334号明細書には、アシルグリシン塩を調製するための環境に優しいプロセス及びそれを含む洗浄剤組成物が記載されている。第1ステップにおいては、金属水酸化物とメタノールなどのアルコールとを、例えば減圧によって水を除去しながら反応させることにより、アルカリ金属アルコキシドが調製されている。第2反応ステップにおいては、アルカリ金属アルコキシドと、溶媒と、グリシン及び脂肪酸エステルの混合物とが約135℃で加熱されている。反応を終了させた後、ステップ1で除去した水が添加される。結果として透明な黄色の液体相が得られる。当該出願によれば、反応中に揮発しないグリセリンやグリコールなどの1種又は複数種の多価溶媒を用いることによって、ステップ2の反応における反応性を高めている。ポリオールは界面活性剤混合物中に残存し、これらを界面活性剤混合物を変化させることなく除去するのは困難である。
【0008】
国際公開第2015/026538号パンフレットには、脂肪酸アルキルエステルとアミノ酸塩とを、アルコキシド触媒の存在下に、少なくとも5psigの圧力下に反応させることによる、N-アシルアミノ酸塩を調製するためのプロセスが特許請求されている。一実施例によれば、ラウリン酸メチルをアミノ酸塩及びアルカリ金属アルコキシドのメタノール溶液と混合して反応器を密閉し、130℃、7~50psigで加熱されている。
【0009】
米国特許出願公開第200080008672号明細書には、A)N-長鎖アシル酸性アミノ酸、B)1種の多価アルコール、C)非イオン性界面活性剤、D)二価又はより多価の陽イオンの塩及びE)水を含む、クリーム状の洗浄剤組成物が特許請求されている。実施例2によれば、洗浄剤組成物は、グリセロールを30wt%、N-アシルグルタミン塩及び/又はアラニン塩約18.20wt%含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
つまり、N-アシルアミノ酸塩の水溶液を製造するための改良されたプロセスが必要とされている。特に産業界では、アミノ酸を変換するために酸塩化物を使用しない、より持続可能性の高いプロセスが必要とされている。この改良されたプロセスは、高収率と、塩の生成、高温、長い反応時間、有機溶媒又はグリセリン若しくはプロピレングリコールなどの多量の溶媒を回避するという資源節約性とを同時に示すことが必要である。更に、天然トリグリセリドなどの加工度の低い再生可能な原料から出発する単純なワンポットプロセスが好ましい。更に、この改良されたプロセスにより得られる生成物は、高度に濃縮することができ、高濃度の溶液として配合することが容易であることが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様において、本発明は、N-アシルアミノ酸又はその塩を含む界面活性剤溶液を調製するためのプロセスであって、
a)a1)アミノカルボン酸と、メタノール中のアルカリ金属メトキシドからなる溶液とを、カルボキシルグリセリドエステル(carboxyl glyceride ester)の存在下に反応させることによるか、又はa2)アミノカルボン酸と、メタノール中のアルカリ金属メトキシドからなる溶液とを反応させた後、カルボキシルグリセリドエステルを添加することにより、アミノカルボン酸とアルカリ金属メトキシドとを反応させることによって、アミノカルボン酸のアルカリ金属塩をin-situで調製するステップと、次いで、
b)前記アミノカルボン酸のアルカリ金属塩と、カルボキシルグリセリドエステルとを、メタノールを除去しながら加熱し、理論量の少なくとも60wt%のメタノールが除去されるまで反応させることによって、N-アシルアミノ酸塩を形成するステップと、
c)その後、減圧するステップと、
d)減圧を解除した後、水を添加することにより、N-アシルアミノ酸塩を含む溶液を生成するステップと、
e)任意選択的にpH値を調整するステップと、
を含むプロセスを提供する。
【0012】
本発明のプロセスは、アミノカルボン酸塩がin-situで調製されるため、特に良好に機能する。in-situで調製されるとは、生成物を、生成した直後に、生成物を分離、精製又は他の回収プロセスに付すことなく、その後に続く化学反応に使用することを意味する。本発明によれば、アミノカルボン酸塩を生成し、その調製直後に、好ましくは再処理、精製又は他の回収プロセスに付すことなく、その後に続く化学反応に、特に同一反応容器内で、その後に続くカルボキシルグリセリドエステルとの化学反応に使用すると有利である。比較例において、アミノカルボン酸のアルカリ金属塩をin-situで調製するプロセスは極めて有利であり、市場で購入することができるアミノカルボン酸のアルカリ金属塩を使用するよりも、収率の高さという観点で、収率がはるかに高いことが示された。
【0013】
更に本発明は、ステップb)において最初にメタノールを除去した後に減圧を行う場合に、特に良好に機能する。
【0014】
アミノカルボン酸
本発明によれば、2~10個の炭素原子、好ましくは3~6個の炭素原子を有する脂肪族アミノカルボン酸、より好ましくは、バリン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、メチオニン、アラニン、3-アラニン、サルコシン(N-メチルグリシン)、アスパラギン酸(アスパラギン)、トレオニン又はグルタミン酸からなる群から選択される、特に好ましくはアラニン、グリシン、トレオニン及びアスパラギンからなる群から選択される、脂肪族アミノカルボン酸が適している。特に、本発明による好ましい脂肪族アミノカルボン酸は、グリシンである。
【0015】
カルボン酸グリセリドエステル
本発明による「カルボン酸グリセリド(carboxylic glyceride)」又は「カルボン酸グリセリドエステル」という表現は、グリセロールと炭素酸(いわゆるカルボン酸)とのエステルを意味する。このグリセロールは、それぞれ、1、2及び/又は3個のカルボン酸でエステル化されている(カルボン酸のモノ-、ジ又はトリグリセリドエステル)。ジ-又はトリグリセリドは、2個又は3個の同一又は異なるカルボン酸でエステル化されたグリセロールのエステルであってもよい。好適なカルボン酸グリセリドとしては、特に、天然に存在する脂肪酸グリセリドが挙げられる。これらは、通常、6~30個、特に6~22個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和モノカルボン酸のモノ-、ジ-若しくは特にトリグリセリド又はその混合物である。本発明による好ましいカルボキシルグリセリドエステルは、脂肪酸グリセリドエステルから、好ましくは、6~22個の炭素原子を有する脂肪酸のグリセリドエステルから選択される。その基体となるモノカルボン(脂肪)酸の例は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸である。天然の脂肪酸グリセリドエステル、特にトリグリセリドが好ましく、植物性又は動物性油脂が特に好ましい。この種の好適なトリグリセリドの例は、落花生油、アマニ油、食用菜種油(rapeseed oil)、コプラ油、パーム果実油、ヤシ油又はパーム核油、ヒマシ油、綿実油、牛脂、大豆油、非食用菜種油(colza oil)、オリーブ油、ヒマワリ油、綿実油及び魚油である。本発明によれば、ヤシ油、特に、未硬化精製ヤシ油からなる群から選択されるカルボキシルグリセリドエステルが最も好ましい。
【0016】
プロセスの詳細
驚くべきことに、本発明者らは、カルボン酸グリセリドを、in situで調製されたアミノカルボン酸の塩と反応させた場合に、N-アシルアミノ酸又はその塩がより高い収率で調製されることを見出した。得られるN-アシルアミノ酸又はその塩の収率は、カルボン酸グリセリドを一般に入手可能なアミノカルボン酸の塩と反応させた場合と比較して大幅に高くなる。
【0017】
アミノカルボン酸の塩は、アミノカルボン酸をアルカリ金属アルコキシドと反応させることにより調製することができ、アルカリ金属アルコキシドは、対応するアルコール溶液として使用することが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態によれば、ステップa)において、アミノカルボン酸のアルカリ金属塩は、a1)アミノカルボン酸と、アルカリ金属メトキシドのメタノール溶液とを、カルボキシルグリセリドエステルの存在下に反応させることにより、in-situで調製される。この実施形態によれば、a1)アミノカルボン酸を、メタノール中のアルカリ金属アルコキシドとカルボン酸グリセリドとからなる混合物に添加するか、又はアルカリ金属アルコキシドのメタノール溶液を、アミノカルボン酸及びカルボン酸グリセリドの混合物に添加することが可能である。
【0019】
本発明の他の実施形態によれば、ステップa)において、a2)アミノカルボン酸と、メタノール中のアルカリ金属メトキシドからなる溶液とを反応させることにより、アミノカルボン酸のアルカリ金属塩をin-situで調製し、a2)に従い、その後、ステップb)を行う前に、カルボキシルグリセリドエステルを添加する。この実施形態a2)によれば、反応を行うためにアミノカルボン酸をアルカリ金属アルコキシドのメタノール溶液に加えるか又は反応を行うためにアルカリ金属アルコキシドの溶液をアミノカルボン酸に加えることが可能であり、どちらの選択肢においても、その後、ステップb)の前にカルボン酸グリセリドが添加される。
【0020】
本発明によれば、a1)アミノカルボン酸とアルカリ金属メトキシドのメタノール溶液とを、カルボキシルグリセリドエステルの存在下に反応させることにより、アミノカルボン酸のアルカリ金属塩をin-situで調製するプロセスが好ましい。この実施形態によれば、a1)アルカリ金属アルコキシドのメタノール溶液を、アミノカルボン酸及びカルボン酸グリセリドエステルの混合物に添加することが好ましい。
【0021】
しかしながら、両方の実施形態によれば、本発明のプロセスは、a1)又はa2)約20~35wt%のアルカリ金属メトキシドのメタノール溶液、特に約25wt%のナトリウムメトキシドのメタノール溶液を使用してアルカリ金属塩をin-situで調製した場合は、同様に、特に良好に機能する。
【0022】
a1)又はa2)において、メタノール中のアルカリ金属メトキシドを使用することが好ましく、このアルカリ金属は、
ナトリウム及びカリウム(kalium)からなる群から選択され、より好ましくは、
ナトリウムからなる群から選択される。
【0023】
本発明によるプロセスは、a1)又はa2)アミノカルボン酸を、アミノカルボン酸対アルカリ金属メトキシドの相対的モル比が、約3:1~1:3の範囲、好ましくは1:1.3~1:1の範囲、より好ましくは約1:1の範囲となるように反応させてアミノカルボン酸のアルカリ金属塩を調製すると、良好に機能する。
【0024】
両方の実施形態a1)又はa2)によれば、アミノカルボン酸とアルカリ金属メトキシドとを均質化するまで撹拌しながら、好ましくは30~60℃の範囲の温度、特に35~45℃の範囲の温度で撹拌しながら反応させることによって、アミノカルボン酸の塩を調製することが好ましい。両方の好ましい実施形態によれば、結果として得られるアミノカルボン酸の塩は不溶な析出物として形成され、これは非常に微細に分散している。
【0025】
本発明によれば、アミノカルボン酸の塩はin-situで調製され、ステップa)の後の、ステップb)の前に、分離、精製又は他の回収プロセスを行うことなく、即座に、その後に続くカルボン酸グリセリドとの化学反応に使用される。
【0026】
ステップb)において、カルボン酸グリセリドエステル及びアミノカルボン酸の塩を反応させることにより、N-アシルアミノ酸塩が形成される。反応ステップb)は、メタノールの理論量の少なくとも60重量%(「60wt%」)のメタノールが除去されるまで加熱することにより実施される。反応ステップb)は、100℃を超える温度、好ましくは120~170℃の範囲、好ましくは130~160℃の範囲の温度で加熱することにより反応を実施することが好ましい。
【0027】
カルボン酸グリセリドエステル及びアミノカルボン酸の塩は、好ましくは、脂肪酸:アミノカルボン酸の相対的なモル比が、カルボキシルグリセリドエステルの脂肪酸を基準として、1:2~2:1、より好ましくは0.9:1~1.1:1、特に、相対的なモル比が約1:1となるように存在する。
【0028】
ステップb)におけるメタノールの除去は、好ましくは大気圧下に、即ち、人為的に気圧を上昇又は低下させることなく、特に連続式蒸留で、例えば蒸留用ブリッジ(distillation bridge)を介して、水冷式冷却器で凝縮させながら、実施される。好ましくは、メタノールは、ヘッド温度を約65℃、即ち、その沸点として、蒸留用ブリッジを用いて除去する。反応は、好ましくは、蒸留用ブリッジのヘッド温度が明らかにメタノールの沸点を下回るまで実施される。これは、常圧で約1~16時間、好ましくは、8時間かかる可能性がある。
【0029】
反応ステップb)は、理論量の少なくとも60重量%(「60wt%」)のメタノールが留去されるまで実施することが好ましい。好ましくは、反応ステップb)は、理論量の65~90wt%が留去されるまで実施する。この理論量には、溶液中の溶媒として使用したメタノールの量及びアルカリ金属メトキシドから形成されるメタノールの量が含まれる。
【0030】
本発明によれば、本プロセスは、a)及びb)の後、即ち、理論量の少なくとも60wt%のメタノールが除去された後に、減圧を行う追加のステップc)を含む。
【0031】
減圧は、約100~400mbarの範囲、好ましくは250~350mbarの範囲、特に約300mbarで行うと有利である。好ましくは、追加のステップc)は、好ましくは120~170℃の範囲の温度、より好ましくは130~160℃の範囲の温度で、特に好ましくは約0.5~8時間、特に蒸留用ブリッジのヘッド温度が20~40℃の範囲の温度に低下するまで実施する。
【0032】
反応ステップc)は、好ましくは、理論量の少なくとも95wt%、より好ましくは約100wt%のメタノールが除去されるまで実施する。
【0033】
反応時間は、規模、構成及び加熱機構に依存し、本実施例とは異なり得る。好ましい実施形態において、ステップa)、b)及びc)を含む反応には、約1.5~24時間、好ましくは1.5~16時間、より好ましくは2~約4時間を要する。
【0034】
本プロセスによれば、ステップd)において、減圧を、特に窒素を導入することによって解除した後、水を添加することにより反応生成物を水溶液に変換する。本発明によれば、水の添加は、90~130℃の範囲の温度で、混合物を依然として撹拌可能なままにして行うことが好ましい。温度がそれよりも低いと、材料を溶解するのに要する時間がより長くなる。好ましくは、反応混合物への水の添加は、90~130℃の温度で、非常にゆっくりと行う。d)においては、N-アシルアミノ酸又はその塩を含む約20~70wt%、特に25~55wt%、より好ましくは25~40wt%溶液が得られるような量の水を加えることが好ましい。
【0035】
溶液のpHは、典型的には、最終的に8~12の範囲、好ましくは9~11の範囲となり、所望により、ステップd)の後、苛性ソーダを添加するか又は酸、好ましくはクエン酸を添加することにより、更に調整することができる。好ましくは、ステップにおいて、冷却後にpH値の調整が行われ、特にステップe)は省略される。
【0036】
N-アシルアミノ酸又はその塩の収率は非常に高く、一般に、アミノ酸を基準として、70mol%を超え、好ましくは80mol%を超え、最も好ましくは80~90mol%の範囲にある。
【0037】
本発明のプロセスによれば、グリセロール又はプロピレングリコールのような多価アルコールなどの溶媒若しくは液体又は先行技術において知られている他の溶媒若しくは液体を追加して使用することはない。このことは、グリセロール又はプロピレングリコールが望ましくない化粧用途に使用する場合に非常に有利である。
【0038】
更に、本発明によれば、先行技術において知られている触媒の追加は、本プロセスに不要であるか又は使用されない。
【0039】
本発明によれば、有利には、N-アシルアミノ酸又はその塩を得るためのステップe)の後に、例えば収率を高めるため又は望ましくない副生成物を低減するためのワークアップは作業流れに不要である、及び/又は用いない。
【0040】
本発明の特定の好ましい一実施形態は、N-ココイルグリシネート又はその塩を含む界面活性剤溶液を調製するためのプロセスに関する。この特定の実施形態によれば、ステップa)において、a1)グリシンと、メタノール中のナトリウムメトキシドからなる溶液とを、ヤシ油の存在下に反応させることにより、グリシンのナトリウム塩が調製され、ここでは、ナトリウムメトキシドのメタノール溶液をグリシン及びヤシ油に添加した。ステップb)において、このin-situで調製されたアミノカルボン酸の塩及びカルボン酸グリセリドエステルを含む反応混合物が、120~170℃の範囲、好ましくは130~160℃の範囲の温度に加熱されることによって、N-ココイルグリシネートが形成される。理論量の約60~80重量%のメタノールを大気圧で留去した後。その後、ステップc)において、メタノールがそれ以上除去されなくなるまで、100~400mbarの範囲に減圧する。反応には、合計して約2~4、好ましくは約3時間必要である。その後、ステップd)において、減圧を解除(released、lifted)し、温度を好ましくは約110℃まで低下させ、水を、好ましくは約30wt%の溶液が得られるように添加する。N-C8~C18ココイルグリシネートのナトリウム塩の収率は、グリシンを基準として80~90mol%の範囲となる。
【0041】
第2の態様において、本発明は、請求項1により調製されるN-アシルアミノ酸又はその塩を含む界面活性剤溶液であって、
- アミノ酸を0.1~4wt%と、
- 脂肪酸を0.1~7.5wt%と、
- グリセロールを0.1~7wt%と、
- N-アシルアミノ酸又はその塩を20.0~70.0wt%と、
- グリセロールモノ脂肪酸エステル、グリセロールジ脂肪酸エステル及び/又は脂肪酸のメチルエステルからなる群から選択される副生成物を0~15wt%と、
水を、成分の合計が100wt%となる量と、
からなる、界面活性剤溶液を提供する。
【0042】
本発明によれば、「wt%」は「重量%」を意味する。
【0043】
好ましくは、請求項1により調製されるN-アシルアミノ酸又はその塩を含む界面活性剤溶液は、
- アミノ酸を0.5~4wt%と、
- 脂肪酸を3.0~7.5wt%と、
- グリセロールを2.0~7.0wt%と、
- N-アシルアミノ酸又はその塩を25.0~55.0wt%と、
- グリセロールモノ脂肪酸エステル、グリセロールジ脂肪酸エステル及び/又は脂肪酸のメチルエステルからなる群から選択される副生成物を0~15wt%と、
水を、成分の合計が100wt%となる量と、
からなる。
【0044】
溶液は、更にグリセロールモノ脂肪酸エステル及び/又はグリセロールジ脂肪酸エステル(いわゆる部分グリセリド)のような更なる副生成物を含む可能性もあるが、好ましくは、その量は10wt%未満であり、最も好ましくは0.1~10wt%の間にある。
【0045】
本発明の更なる態様は、請求項1により調製されるN-アシルアミノ酸又はその塩を含む界面活性剤溶液を含む洗剤用及び/又は身体(personal)化粧料用洗浄剤組成物並びに請求項19による界面活性剤溶液、特に上に定義した好ましい界面活性剤溶液に従う界面活性剤溶液を含む洗剤用及び/又は身体用化粧料用洗浄剤組成物に関する。
【0046】
洗浄剤組成物
洗剤用及び/又は身体化粧料用洗浄剤組成物とは、本明細書においては、専ら又は主に、ヒトの身体又は毛髪の、清浄化、ケア、保護及び良好な状態の維持、付香、見た目を変化させるため又は影響を与えるために適用される、当業者に知られているあらゆる組成物と理解される。好ましくは、界面活性剤溶液は、パーソナルケア組成物、特に、身体化粧料用洗浄剤組成物などの界面活性を有するパーソナルケア組成物、例えば、泡入浴剤、シャワージェル、シャワー浴剤(shower bath)、乳液状シャワー浴剤(shower milk)、クリーム状シャワー浴剤(shower cream)、シャンプー、ヘアパック、ヘアミルク及びヘアコンディショナーに使用される。
【0047】
好ましくは、パーソナルケア組成物用洗浄剤組成物は、パーソナルケア組成物の重量(wt)%を基準として、
A)請求項19により得られるN-アシルアミノ酸又はその塩を、1.0~30wt%、特に1.0~25wt%と、
B)アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性及び/又は両イオン性界面活性剤の群から選択される1種又は複数種の洗浄作用のある界面活性剤であって、アニオン性界面活性剤は請求項1により得られる界面活性剤溶液とは異なる、界面活性剤を、1.0~30wt%、特に5.0~25.0wt%と、
C)カチオン性ポリマーを0~5wt%、特に0.01~1wt%と、
D)A)、B)及び/又はC)とは異なる、他の成分を、100wt%までと、
を含む。
【0048】
好ましくは、パーソナルケア組成物は、パーソナルケア組成物の重量を基準として(wt)%、
A)請求項1により得られるN-アシルアミノ酸又はその塩を1.0~30wt%、特に1.0~25wt%と、
B)アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性及び/又は両イオン性界面活性剤の群から選択される1種又は複数種の洗浄作用のある界面活性剤であって、アニオン性界面活性剤は、請求項1により得られる界面活性剤溶液とは異なる、界面活性剤を、1.0~30wt%、特に5.0~25.0wt%と、
C)カチオン性ポリマーを0~5wt%、特に0.01~1wt%と、
A)、B)及び/又はC)とは異なる、他の成分を、100wt%までと、
を含む。
【0049】
A)アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性及び/又は両イオン性界面活性剤
アニオン性界面活性剤の例は、石鹸、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルキルエーテルスルホン酸塩、グリセロールエーテルスルホン酸塩、α-メチルエステルスルホン酸塩、スルホ脂肪酸、アルキル硫酸塩、脂肪アルコールエーテル硫酸塩、グリセロールエーテル硫酸塩、脂肪酸エーテル硫酸塩、ヒドロキシ混合エーテル硫酸塩、モノグリセリド(エーテル)硫酸塩、脂肪酸アミド(エーテル)硫酸塩、モノ-及びジアルキルスルホコハク酸塩、モノ-及びジアルキルスルホサクシンアミド酸塩、スルホトリグリセリド、アミド石鹸、エーテルカルボン酸及びその塩、脂肪酸イセチオン酸エステル塩、脂肪酸タウリン塩、アルキルオリゴグルコシド硫酸塩、タンパク質脂肪酸縮合物(特に、コムギをベースとする植物製品)及びアルキル(エーテル)リン酸塩である。アニオン性界面活性剤がポリグリコールエーテル鎖を含む場合、ポリグリコールエーテル鎖は、従来の同族体分布を有していてもよいが、好ましくは狭い同族体分布を有する。本発明による調製における特に好適なアニオン性界面活性剤は、アルキルエーテル硫酸塩である。
【0050】
アルキルエーテル硫酸塩(「エーテル硫酸塩」)は公知のアニオン性界面活性剤であり、工業規模では、脂肪アルコール又はオキソアルコールポリグリコールエーテルをSO3又は塩化スルホン酸(CSA)で硫酸化し、続いて中和することにより製造される。エーテル硫酸エステルは、従来の同族体分布及び狭い同族体分布の両方を有し得る。平均1~6mol、好ましくは1~3molのエチレンオキシドを、工業用(technical)C12/14又はC12/18ヤシ油脂肪アルコール画分に付加した付加物をベースとするエーテル硫酸エステルを、それらのナトリウム及び/又はマグネシウム塩の形態で使用することが特に好ましい。
【0051】
本発明に関連する範囲内において有用な更なるアニオン性界面活性剤は、上に規定した式(I):
R1CH(SO3M1)COOM2 (I)
(式中、R1基は、6~18個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル又はアルケニル基であり、M1及びM2基は、互いに独立に、H、Li、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミンを含む群から選択される)に従うα-スルホ脂肪酸二塩である。これに関連して、特に好ましいアルカノールアミンは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びモノイソプロパノールアミンである。
【0052】
好ましい実施形態において、式(I)のR1基は、10~16個の炭素原子を有する飽和直鎖アルキル基である。式(I)のM1基及びM2基は、好ましくは、H(水素)及びNa(ナトリウム)を含む群から選択される。
【0053】
この化合物は、当業者に知られているあらゆる適切な方法により調製することができる。本明細書における特に好ましい調製方法は、対応するカルボン酸の硫酸化である。この場合、対応するカルボン酸、特に対応する脂肪酸が、気体状三酸化硫黄と反応され、三酸化硫黄は、好ましくは、SO3対脂肪酸のモル比が1.0:1~1.1:1の範囲となる量で使用される。こうして得られた粗生成物は酸性の硫酸化物であり、次いでこれが部分的に又は完全に中和され、好ましくは、水性NaOHで完全に中和される。所望により、精製ステップ及び/又は脱色(生成物を所望の薄い色に調整するため)に付すことも可能である。
【0054】
好ましいα-スルホ脂肪酸二塩は、α-スルホ脂肪酸デ塩(desalt)の工業用グレードの混合物であり、これは、Texapon(登録商標)SFAとしてBASF Personal Nutrition GmbHから市販されている。
【0055】
更に、両性及び/又は両イオン性界面活性剤を、このアニオン性界面活性剤に加えて又はアニオン性界面活性剤に替えて使用することができる。好適な両性及び/又は両イオン性界面活性剤としては、式(II)及び/又は(III)に従うベタイン界面活性剤が有用であり、特に、CTFA名コカミドプロピルベタイン(Cocamidopropyl Betaine)として知られている、C8/18ヤシ油脂肪酸-N,N-ジメチルアミノプロピルアミドとクロロ酢酸ナトリウムとの縮合物が好ましい。
【0056】
ベタインは、主としてアミン系化合物をカルボキシアルキル化、好ましくはカルボキシメチル化することにより製造される公知の界面活性剤である。出発物質は、好ましくはハロカルボン酸又はその塩、より具体的にはクロロ酢酸ナトリウムと縮合される。好適なベタインの例は、式(II):
【化1】
(式中、R
4は、6~22個の炭素原子を含むアルキル及び/又はアルケニル基を表し、R
2は、水素又は1~4個の炭素原子を含むアルキル基を表し、R
3は、1~4個の炭素原子を含むアルキル基を表し、nは、1~6の数を表し、Xは、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属又はアンモニウムである)に相当する、2級及び、特に3級アミンのカルボキシアルキル化物である。典型的な例は、ヘキシルメチルアミン、ヘキシルジメチルアミン、オクチルジメチルアミン、デシルジメチルアミン、ドデシルメチルアミン、ドデシルジメチルアミン、ドデシルエチルメチルアミン、C
12/14ヤシアルキルジメチルアミン、ミリスチルジメチルアミン、セチルジメチルアミン、ステアリルジメチルアミン、ステアリルエチルメチルアミン、オレイルジメチルアミン、C
16/18牛脂アルキルジメチルアミン及びこれらの工業用混合物のカルボキシメチル化物である。
【0057】
他の好適なベタインは、式(III):
【化2】
(式中、R
6COは、6~22個の炭素原子及び0又は1~3個の二重結合を含む脂肪族アシル基であり、mは、1~3の数であり、R
7は、水素又はC
1~4アルキル基を表し、R
5は、C
1~4アルキル基を表し、nは、1~6の数であり、Xは、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属又はアンモニウムである)に相当する、アミドアミンのカルボキシル化生成物である。典型的な例は、6~22個の炭素原子を含む脂肪酸、即ち、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、ペトロセリン酸、リノール酸、リノレン酸、エラエオステアリン酸(elaeostearic acid)、アラキジン酸、ガドレイン酸、ベヘン酸及びエルカ酸並びにこれらの工業用混合物と、N,N-ジメチルアミノエチルアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、N,N-ジエチルアミノエチルアミン及びN,N-ジエチルアミノプロピルアミンとの反応生成物をクロロ酢酸ナトリウムと縮合させたものである。CTFA名がコカミドプロピルベタイン(Cocamidopropyl Betaine)である、C
8/18ヤシ油脂肪酸-N,N-ジメチルアミノプロピルアミドとクロロ酢酸ナトリウムとの縮合物を使用することが好ましい。高純度のものとして分類されるベタイン;換言すれば、最大塩含有量が、活性物質を基準として13重量%、好ましくは11重量%、より詳細には7重量%である、低塩タイプのベタインを使用することが特に好ましい。対応する塩は、両性界面活性剤の製造に依存し;最も一般的な場合は、塩化ナトリウムである。特に好ましい実施形態において、これらのベタインは遊離脂肪酸の含有量も低く、活性物質を基準として、最大で4重量%、好ましくは最大で3重量%である。
【0058】
更に、イミダゾリニウムベタインも含まれる。これらの物質は、例えば、1又は2molの脂肪酸を多官能性アミン、例えば、アミノエチルエタノールアミン(AEEA)又はジエチレントリアミンなどと環化縮合することにより得ることができる物質としても知られている。対応するカルボキシアルキル化物は、異なる開環鎖状ベタインの混合物である。典型的な例は、上に述べた脂肪酸とAEEAとの縮合生成物、好ましくはラウリン酸又はここでも同じくC12/14ヤシ油脂肪酸をベースとするイミダゾリンを、続いてクロロ酢酸ナトリウムでベタイン化したものである。
【0059】
好適なコカミドプロピルベタインは、Dehyton(登録商標)PK 45(BASF Personal Care and Nutrition GmbHから供給されている)などが市販されている。
【0060】
更に、非イオン性界面活性剤を、アニオン性界面活性剤、両性又は両イオン性界面活性剤に加えて、又はこれらに替えて、使用することができる。好適な非イオン性界面活性剤は、脂肪アルコールポリグリコールエーテル、エトキシル化脂肪酸グリセロールエステル;混合エーテル又は混合ホルマール;ポリソルベート及び糖系炭水化物からなる群から選択される。
【0061】
特に、アルキル(アルケニル)ポリグリコシドは、糖系炭水化物の好ましい例である。
【0062】
アルキルポリグリコシドは公知の非イオン性界面活性剤であり、特に式(IV):
RO-[G]p (IV)
(式中、
- Rは、6~22個の炭素原子を有するアルキル基であり、
- Gは、5又は6個の炭素原子を有する糖基であり、
- pは、1~10の数である)を有するものである。
【0063】
これらは対応する有機化学的調製法により得ることができる。アルキルポリグリコシドは、5又は6個の炭素原子を有するアルドース又はケトース、好ましくはグルコースから誘導することができる。したがって、好ましいアルキルポリグリコシドは、アルキルポリグルコシドである。一般式(IV)中の添え字の数pは、重合度(DP)、即ち、モノ-及びポリグリコシドの分布を規定するものであり、1~10の間の数である。所与の化合物のpは常に整数でなければならず、本明細書においては、特に、p=1~6の値を想定することができるが、具体的なアルキルポリグリコシドのpの値は、分析によって決定される、算出される変数であり、ほとんどの場合は分数になる。好ましくは、アルキルポリグリコシドは、平均重合度pが1.1~3.0であるものが使用される。技術的応用の観点から、重合度が1.7未満、特に1.2~1.7の間にあるアルキルポリグリコシドが好ましい。
【0064】
アルキル基Rは、6~22個、好ましくは6~18個の炭素原子を有する1級アルコールから誘導することができる。典型的な例は、カプロンアルコール、カプリルアルコール、カプリンアルコール、デシルアルコール及びウンデシルアルコールに加えて、これらの工業用グレードの混合物、例えば、工業用グレードの脂肪酸メチルエステルの水素化により得られるか又はローレン(Roelen)のオキソ合成由来のアルデヒドを水素化する際に得られるものである。アルキル基Rはまた、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、パルモレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、ペトロセリニル(petroselinyl)アルコール、アラキルアルコール、ガドレイルアルコール、ベヘニルアルコール、エルシルアルコール、ブラシジルアルコールに加えて、これらの工業用グレードの混合物から誘導されたものとすることもできる。
【0065】
本発明に関連して、特に、Rが1級アルコール混合物から誘導されたものである、式(IV)の異なるアルキルポリグリコシドの混合物が好ましい。好ましいRの1種は、8~10個の炭素原子を10~50重量%と12~16個の炭素原子を50~90重量%とを含む1級アルコール混合物から誘導されたものである。
【0066】
他の好ましいRは、10~22個の炭素原子を含む1級高級アルコールを75~95重量%含む1級アルコール混合物から誘導されたもの、特にココヤシの実から得られる脂肪酸混合物から誘導された、好ましくは12~16個の炭素原子を有するものである。
【0067】
好適な製品は、Plantacare(登録商標)2000及びPlantacare(登録商標)818であり、どちらもBASFから入手可能である。
【0068】
アニオン性界面活性剤、両性及び/又は両イオン性界面活性剤及び/又は非イオン性界面活性剤は、パーソナルケア組成物に対し、活性物質としての計算を基準として、1.0~30wt%、特に5.0~25.0wt%の量で使用することが好ましい。
【0069】
B)カチオン性ポリマー
カチオン性ポリマーは公知の付着剤(deposition agent)である、即ち、これらをパーソナルケア組成物に使用すると、皮膚及び/又は毛髪に付着し、心地よく柔らかい感触を付与する。しかしながら、カチオン性グアーポリマーなどのカチオン性ポリマーを含むパーソナルケア組成物にワックス分散体が存在する場合は、おそらくカチオン性ポリマーが付着性を有することに起因してワックスがより容易に沈降する傾向を示すため、安定性に問題が生じる。
【0070】
好ましいパーソナルケア組成物はカチオン性ポリマーも含む。このようなカチオン性付着性ポリマーとしては、カチオン性グアーポリマー、カチオン性非グアーガラクトマンナンポリマー、カチオン性タピオカポリマー、アクリルアミドモノマーとカチオン性モノマーとのカチオン性コポリマー及び/又は合成非架橋カチオン性ポリマーの少なくとも1種を挙げることができる。好適なカチオン性ポリマーは、例えば、カチオン性セルロース誘導体、例えば、AmercholからPolymer JR 400(登録商標)の名称で入手可能な4級化ヒドロキシエチルセルロースなど、カチオン性デンプン、ジアリルアンモニウム塩とアクリルアミドとのコポリマー、4級化ビニルピロリドン/ビニルイミダゾールポリマー、例えば、Luviquat(登録商標)(BASF)など、ポリグリコールとアミンとの縮合生成物、4級化コラーゲンポリペプチド、例えば、ラウリルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コラーゲン(Lamequat(登録商標)L、Gruenau)など、4級化コムギポリペプチド、ポリエチレンイミン、カチオン性シリコーンポリマー、例えば、アモジメチコンなど、アジピン酸とジメチルアミノヒドロキシプロピルジエチレントリアミンとのコポリマー(Cartaretine(登録商標)、Sandoz)、アクリル酸とジメチルジアリルアンモニウムクロリドとのコポリマー(Merquat(登録商標)550、Chemviron)、ポリアミノポリアミド及びその架橋された水溶性ポリマー、カチオン性キチン誘導体、例えば、任意選択的に微結晶が分散している4級化キトサンなど、ジハロアルキル、例えば、ジブロモブタンとビスジアルキルアミン、例えば、ビスジメチルアミノ-1,3-プロパンとの縮合生成物、カチオン性グアーガム、例えば、CelaneseのJaguar(登録商標)CBS、Jaguar(登録商標)C-17、Jaguar(登録商標)C-16など、4級化アンモニウム塩のポリマー、例えば、MiranolのMirapol(登録商標)A-15、Mirapol(登録商標)AD-1、Mirapol(登録商標)AZ-1などである。
【0071】
特にパーソナルケア組成物は、カチオン変性セルロース誘導体、PQ10、PQ67、カチオン変性グアー誘導体、例えば、Dehyquart(登録商標)GuarNなど、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、アクリルアミドをベースとするカチオン性ホモ又はコポリマー、ビニルピロリドンをベースとするカチオン性ホモ又はコポリマー、4級化ビニルイミダゾールをベースとするカチオン性ホモ又はコポリマー並びにメタアクリル酸エステルをベースとするカチオン性ホモ又はコポリマーからなる群から選択されるカチオン性ポリマーを含むことができる。
【0072】
特に、カチオン変性グアー誘導体、好ましくはグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドが存在する。
【0073】
カチオン性ポリマーを、パーソナルケア組成物を基準として、0~5wt%、特に0.01~1.0wt%の量で使用することが好ましい。
【0074】
C)他の成分
最終使用者向け用途のために、化粧製剤は、例えば、水、増粘剤(bodying agent)、粘度低下剤、増粘剤(thickener)、塩、過脂肪剤、安定剤、ポリマー、脂肪、ロウ、シリコーン、レシチン、タンパク質加水分解物、リン脂質、生物活性成分、UVサンスクリーン要素(UV sunscreen factor)、酸化防止剤、防臭剤、制汗剤、抗フケ剤、皮膜形成剤、膨潤剤、昆虫忌避剤、セルフタンニング剤、チロシナーゼ阻害剤(色素沈着抑制剤)、ハイドロトロープ剤、可溶化剤、防腐剤、オイル香水、染料、水を含む同種のものなどの一連の更なる補助剤及び添加剤を含むことができる。
【0075】
パーソナルケア組成物は、粘度を低下させるために、任意選択的な成分としてポリオールを更に含むことができる。好適なポリオールは、好ましくは2~15個の炭素原子及び少なくとも2個のヒドロキシル基を含む。ポリオールは、他の官能基、より特別にはアミノ基を含んでいてもよく、又は窒素で変性されていてもよい。典型的な例は、
・グリセロール;
・アルキレングリコール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール及び平均分子量が100~1000ダルトンであるポリエチレングリコールなど;
・自己縮合度が1.5~10である工業用オリゴグリセロール混合物、例えば、ジグリセロール含有量が40~50重量%である工業用ジグリセロール混合物など;
・メチロール化合物、特に、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトールなど;
・低級アルキルグルコシド、特に、アルキル基が1~8個の炭素原子を含むもの、例えば、メチル及びブチルグルコシド;
・5~12個の炭素原子を含む糖アルコール、例えば、ソルビトール又はマンニトール;
・5~12個の炭素原子を含む糖、例えば、グルコース又はスクロース;
・アミノ糖、例えば、グルカミン;
・ジアルコールアミン、例えば、ジエタノールアミン又は2-アミノプロパン-1,3-ジオール;
である。
【0076】
ポリオールは、典型的には、パーソナルケア組成物を基準として、0.1~10重量%、好ましくは0.5~5重量%、より詳細には0.7~3重量%の量で使用される。ポリオール、好ましくはグリセロール又はエチレングリコールをより多い量で使用した場合、溶液は、微生物の侵襲に対し安定化される。
【0077】
好適な油成分は、例えば、6~18個、好ましくは8~10個の炭素原子を含む脂肪アルコールをベースとするゲルベアルコール、直鎖C6~22脂肪酸と直鎖C6~22脂肪アルコールとのエステル、分岐C6~13カルボン酸と直鎖C6~22脂肪アルコールとのエステル、例えば、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸ミリスチル、ステアリン酸ミリスチル、イソステアリン酸ミリスチル、オレイン酸ミリスチル、ベヘン酸ミリスチル、エルカ酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸セチル、イソステアリン酸セチル、オレイン酸セチル、ベヘン酸セチル、エルカ酸セチル、ミリスチン酸ステアリル、パルミチン酸ステアリル、ステアリン酸ステアリル、イソステアリン酸ステアリル、オレイン酸ステアリル、ベヘン酸ステアリル、エルカ酸ステアリル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸イソステアリル、オレイン酸イソステアリル、ベヘン酸イソステアリル、オレイン酸イソステアリル、ミリスチン酸オレイル、パルミチン酸オレイル、ステアリン酸オレイル、イソステアリン酸オレイル、オレイン酸オレイル、ベヘン酸オレイル、エルカ酸オレイル、ミリスチン酸ベヘニル、パルミチン酸ベヘニル、ステアリン酸ベヘニル、イソステアリン酸ベヘニル、オレイン酸ベヘニル、ベヘン酸ベヘニル、エルカ酸ベヘニル、ミリスチン酸エルシル、パルミチン酸エルシル、ステアリン酸エルシル、イソステアリン酸エルシル、オレイン酸エルシル、ベヘン酸エルシル及びエルカ酸エルシルなどである。直鎖C6~22脂肪酸と分岐アルコール、より具体的には2-エチルヘキサノールとのエステル、ヒドロキシルカルボン酸と直鎖若しくは分岐C6~22脂肪アルコールとのエステル、より具体的にはリンゴ酸ジオクチル、直鎖及び/若しくは分岐脂肪酸と多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ダイマージオール若しくはトリマートリオール及び/若しくはゲルベアルコールとのエステル、C6~10脂肪酸をベースとするトリグリセリド、C6~18脂肪酸をベースとする液状モノ-/ジ-/トリグリセリド混合物、C6~22脂肪アルコール及び/又はゲルベアルコールと芳香族カルボン酸、より具体的には安息香酸とのエステル、C2~12ジカルボン酸と1~22個の炭素原子を含む直鎖若しくは分岐アルコール若しくは2~10個の炭素原子及び2~6個のヒドロキシル基を含むポリオールとのエステル、植物油、分岐1級アルコール、置換シクロヘキサン、直鎖及び分岐C6~22脂肪アルコール炭酸エステル、ゲルベアルコール炭酸エステル(Guerbet carbonate)、安息香酸と直鎖及び/若しくは分岐C6~22アルコールとのエステル(例えば、Finsolv(登録商標)TN)、アルキル基当たり6~22個の炭素原子を含む直鎖若しくは分岐の対称若しくは非対称ジアルキルエーテル、エポキシ化された脂肪酸エステルとポリオールとの開環生成物、シリコーン油並びに/又は脂肪族若しくはナフテン系炭化水素、例えば、スクワラン、スクアレン若しくはジアルキルシクロヘキサンも適している。
【0078】
過脂肪剤は、例えば、ラノリン及びレシチンに加えて、ポリエトキシル化又はアシル化されたラノリン及びレシチン誘導体、ポリオール脂肪酸エステル、モノグリセリド及び脂肪酸アルカノールアミドなどの物質から選択することができ、脂肪酸アルカノールアミドは泡安定剤としても機能する。
【0079】
主に使用される粘稠要素(consistency factor)は、12~22個、好ましくは16~18個の炭素原子を含む脂肪アルコール又はヒドロキシル脂肪アルコールに加えて、部分グリセリド、脂肪酸又はヒドロキシル脂肪酸である。これらの物質と、アルキルオリゴグルコシド及び/又は同じ鎖長を有する脂肪酸N-メチルグルカミド及び/又はポリグリセロールポリ-12-ヒドロキシルステアレートとの組合せが好ましく使用される。
【0080】
好適な増粘剤は、例えば、Aerosil系のもの(親水性シリカ)、多糖類、より特別にはキサンタンガム、グアーグアー(guar-guar)、寒天、アルギン酸塩及びtylose、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシルエチルセルロースに加えて、比較的高分子量の脂肪酸のポリエチレングリコールモノエステル及びジエステル、ポリアクリル酸エステル(例えば、Carbopols(登録商標)[Goodrich]又はSynthalens(登録商標)[Sigma])、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドン、界面活性剤、例えば、エトキシル化脂肪酸グリセリド、脂肪酸とポリオール、例えばペンタエリスリトール又はトリメチロールプロパンとのエステル、分子量分布の狭い(narrow-range)脂肪アルコールエトキシレート又はアルキルオリゴグルコシドなど、並びに塩化ナトリウム及び塩化アンモニウムなどの電解質である。
【0081】
好適なシリコーン化合物は、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環状シリコーン並びにアミノ-、脂肪酸-、アルコール-、ポリエーテル-、エポキシ-、フッ素-、グリコシド-及び/又はアルキル変性シリコーン化合物であり、これらは室温で液状及び樹脂様のどちらであってもよい。他の好適なシリコーン化合物は、平均鎖長がジメチルシロキサン単位200~300個のジメチコンと水素化シリケートとの混合物であるシメチコンである。脂肪の典型的な例は、グリセリドであり、一方、好適なロウは、特に、天然ロウ、例えば、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、モクロウ、エスパルトロウ(esparto grass wax)、コルクロウ(cork wax)、グアルマワックス(guaruma wax)、米油ロウ、サトウキビワックス、オウリキュリーロウ、モンタンロウ、ミツロウ、シェラックロウ、鯨ロウ、ラノリン(羊毛ロウ)、尾脂線からの脂肪(uropygial fat)、セレシン、オゾケライト(地ロウ)、ペトロラタム、パラフィンロウ、微結晶ロウ;化学的に変性されたロウ(硬質ワックス)、例えば、モンタンエステルロウ、サソールワックス及び水添ホホバロウなど、並びに合成ロウ、例えば、ポリアルキレンワックス及びポリエチレングリコールワックスなどである。
【0082】
安定剤として、脂肪酸の金属塩、例えば、ステアリン酸又はリシノール酸マグネシウム、アルミニウム及び/又は亜鉛などを使用することができる。
【0083】
塩化ナトリウムなどの塩が副生成物として混入し得る。
【0084】
本発明に関連する生物由来物質(biogenic agent)は、例えば、トコフェロール、酢酸トコフェリル、パルミチン酸トコフェロール、アスコルビン酸、デオキシリボ核酸、レチノール、ビサボロール、アラントイン、フィタントリオール、パンテノール、AHA酸、アミノ酸、セラミド、擬似セラミド、精油、植物抽出物及びビタミン複合体である。
【0085】
更に、皮膜形成剤が存在してもよい。慣用されている皮膜形成剤は、例えば、キトサン、微結晶キトサン、4級化キトサン、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸系列のポリマー、4級セルロース誘導体、コラーゲン、ヒアルロン酸並びにこれらの塩及び類似の化合物である。
【0086】
所望により、先行技術から知られている更なるタンパク質加水分解物、例えば、市販のNutrilan(登録商標)Keratin W PPなどのケラチンをベースとするもの又はGluadin(登録商標)WLM Benz、Gluadin(登録商標)WK若しくはGluadin(登録商標)WPなどのコムギをベースとするものを使用することができる。リジン又はアルギニンなどの遊離アミノ酸を少量添加することも可能である。
【0087】
典型的な水溶液添加剤は、例えば、防腐剤、水溶性香料、pH調整剤、例えば、緩衝剤混合物、水溶性増粘剤、例えば、水溶性天然又は合成ポリマー、例えば、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン又は高分子量ポリエチレンオキシドなどである。
【0088】
好適な抗フケ剤は、クリンバゾール、オクトピロックス及び亜鉛ピリチオンである。
【0089】
標準的な皮膜形成剤は、例えば、キトサン、微結晶キトサン、4級化キトサン、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸系のポリマー、4級化セルロース誘導体、コラーゲン、ヒアルロン酸並びにこれらの塩及び類似の化合物である。
【0090】
更に、流動挙動を改善するために、ハイドロトロープ剤、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール又はポリオールを使用することができる。
【0091】
好適な防腐剤は、例えば、フェノキシエタノール、ホルムアルデヒド溶液、パラベン、ペンタンジオール又はソルビン酸及び当該技術分野において知られている他の種類の化合物である。好適な昆虫忌避剤は、N,N-ジエチル-m-トルアミド、ペンタン-1,2-ジオール又はブチルアセチルアミノプロピオン酸エチルである。好適なセルフタンニング剤はジヒドロキシルアセトンである。
【0092】
好適なオイル香水は、天然及び合成香料の混合物である。天然香料としては、花の抽出物(ユリ、ラベンダー、バラ、ジャスミン、ネロリ、イランイラン)、茎及び葉の抽出物、(ゼラニウム、パチョリ、プチグレン)、果実の抽出物(アニス、コリアンダー、ヒメウイキョウ、ジュニパー)、果皮の抽出物(ベルガモット、レモン、オレンジ)、根の抽出物(ナツメグ、アンゼリカ、セロリ、カルダモン、木香、アヤメ、カルムス(calmus))、木の抽出物(マツ、ビャクダン、ガイアックウッド(guaiac wood)、セダーウッド、ローズウッド)、薬草及び草の抽出物(タラゴン、レモングラス、セージ、タイム)、針状葉及び小枝の抽出物(トウヒ、モミ、マツ、モンタナマツ)、樹脂及びバルサムの抽出物(ガルバヌム、エレミ、安息香、没薬、乳香、オポポナックス)が挙げられる。動物性原料、例えば、シベット及び海狸香(beaver)を使用することもできる。典型的な合成香料化合物は、エステル、エーテル、アルデヒド、ケトン、アルコール及び炭化水素型の生成物である。エステル型の香料化合物の例は、酢酸ベンジル、イソ酪酸フェノキシエチル、酢酸p-tert-ブチルシクロヘキシル、酢酸リナリル、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、酢酸フェニルエチル、安息香酸リナリル、ギ酸ベンジル、メチルフェニルグリシン酸エチル、シクロヘキシルプロピオン酸アリル、プロピオン酸スチラリル及びサリチル酸ベンジルである。エーテルとしては、例えば、ベンジルエチルエーテルが挙げられ、一方、アルデヒドとしては、例えば、8~18個のC原子を有する直鎖アルカナール、シトラール、シトロネラール、シトロネリルオキシアセトアルデヒド、シクラメンアルデヒド、ヒドロキシシトロネラール、リリアール及びブルゲオナールが挙げられる。好適なケトンの例は、イオノン、イソメチルイオノン及びメチルセドリルケトンである。好適なアルコールは、アネトール、シトロネロール、オイゲノール、イソオイゲノール、ゲラニオール、リナロール、フェニルエチルアルコール及びテルピネオールである。炭化水素としては、主にテルペン及びバルサムが挙げられる。しかしながら、一緒になって好ましい香りを作り出す異なる香料化合物の混合物を使用することが好ましい。他の好適なオイル香水は、主に芳香成分として使用されている、比較的揮発性の低い精油である。その例が、セージ油、カミツレ油、チョウジ油、メリッサ油、ハッカ油、桂葉油、ライムブロッサム油、セイヨウネズ果実油、ベチベル油、ニュウコウジュ油、フェルラガルバニフルア樹脂油、ラブダナム油及びラバンデュラヒブリダ油である。好ましくは、以下に示すものが、単独で又は混合物の形態のいずれかで使用される:ベルガモット油、ジヒドロミルセノール、リリアール、リラール、シトロネロール、フェニルエチルアルコール、ヘキシルシンナムアルデヒド、ゲラニオール、ベンジルアセトン、シクラメンアルデヒド、リナロール、ボイスアンブレン・フォルテ(Boisambrene Forte)、Ambroxan(アンブロキサン)、インドール、ヘディオン、サンデライス(sandelice)、柑橘油、マンダリン油、オレンジ油、アリルアミルグリコレート、シクロバータル(cyclovertal)、ラバンジン油、オニサルビア油、ダマスコン、ゼラニウム・オイル(ブルボン)、サリチル酸シクロヘキシル、ベルトフィクス・クール(Vertofix Coeur)、Iso-E-Super、Fixolide NP、エベリニル、イラルダイン・ガンマ(iraldein gamma)、フェニル酢酸、酢酸ゲラニル、酢酸ベンジル、ローズオキサイド、ロミラ(romillat)、イロチル(irotyl)及びフローラマット(floramat)。
【0093】
使用可能な染料は、例えば公知の刊行物に記載されているもののような、化粧用として承認されている好適な物質である。その例は、コチニールレッドA(C.I.16255)、パテントブルーV(C.I.42051)、インジゴチン(C.I.73015)、クロロフィリン(C.I.75810)、キノリンイエロー(C.I.47005)、二酸化チタン(C.I.77891)、インダンスレンブルーRS(C.I.69800)及びマダーレーキ(C.I.58000)である。発光染料としてルミノールを存在させることも可能である。これらの染料は、通常、混合物全体を基準として、0.001~0.1重量%の濃度で使用される。
【0094】
この他の成分C)は、パーソナルケア組成物を基準として、100wt%以下の量で使用することが好ましい。
【実施例】
【0095】
実施例1a:N-アシル化されたアミノ酸の製造:グリシン(=アミノ酸)とヤシ油(=トリグリセリド)との、Naメタノラートのメタノール溶液の存在下における、減圧下での反応(本発明)
反応器にグリシン(0.3mol)22.5g及びヤシ油65.7g(0.1mol)を投入し、25wt%ナトリウムメチラートのメタノール溶液64.8g(ナトリウムメチラート0.3mol)を撹拌しながら加えた。この不均質な混合物を130~140℃で加熱しながらメタノールを留去し、水冷式冷却器で凝縮させた。蒸留用ブリッジのヘッド温度は65℃に上昇する。反応が終わりに近付き、メタノールの理論量の80wt%が除去されると、蒸留用ブリッジの温度は低下し、生成物の混合物は十分に撹拌可能であった。メタノールを反応混合物から完全に除去するために、更に300mbarに減圧し、更にメタノールを留去した。反応混合物はこの段階で非常に粘度が高くなった。合計3時間後、窒素を導入することにより減圧を解除し、混合物を水で希釈することにより、おおよそで30wt%のココイルグリシンナトリウムの淡黄色透明水溶液を得た。温度を100℃未満に低下させて生成物を周囲温度まで冷却しても、十分に撹拌できる透明な溶液のままであった。液体クロマトグラフィーで分析したところ、ココイルグリシンナトリウムの収率は87.2mol%(出発グリシンを基準とする)であった(表1参照)。得られた生成物は低粘度であった。溶媒は追加しなかった;表1に「溶媒」と記載されているメタノールは全てナトリウムメチラート溶液に由来するものである。
【0096】
実施例1b:N-アシル化されたアミノ酸の製造:グリシン(=アミノ酸)とヤシ油(=トリグリセリド)との、Naメタノラートのメタノール溶液の存在下における、減圧下での反応(本発明)
反応器に25wt%ナトリウムメチラートのメタノール溶液64.8g(ナトリウムメチラート0.3mol)及びグリシン22.5g(0.3mol)を40℃で撹拌しながら加えた。均質化した後、ヤシ油65.7g(0.1mol)を加え、メタノールを留去しながら温度を約140℃まで昇温した。理論量の80wt%のメタノールを除去した後、300mbarまで減圧した。蒸留を2時間行った後、100℃に冷却して減圧を解除し、窒素を導入し、水を加えることにより、乾燥物35~40wt%を含む水溶液を調製した(「乾燥物」は固体生成物の量を意味する)。
【0097】
実施例2:N-アシル化されたアミノ酸の製造:グリシン(=アミノ酸)とヤシ油(=トリグリセリド)との、Naメタノラートのメタノール溶液の存在下における、減圧を行わない反応(比較)
減圧しなかったことを除いて実施例1と同じ手順を用いた。総反応時間を5時間に延長した。液体クロマトグラフィーで分析したところ、ココイルグリシンナトリウムの収率は48.1%(出発グリシンを基準とする)であった。
【0098】
実施例3:N-アシル化されたアミノ酸の製造:グリシン(=アミノ酸)とヤシ油(=トリグリセリド)との、Naメタノラートのメタノール溶液の存在下及びグリセロールの存在下における、減圧を行わない反応(比較)
グリセロール34.8g(0.378mol)を反応の出発混合物に加えたことを除いて、実施例2と同じ手順を用いた。減圧は行わなかった。総反応時間は5時間とした。液体クロマトグラフィーで分析したところ、ココイルグリシンナトリウムの収率は63.8%(出発グリシンを基準とする)であった。
【0099】
実施例4:N-アシル化されたアミノ酸の製造:グリシンNa(=アミノ酸の塩)とヤシ油(=トリグリセリド)との、Naメタノラートのメタノール溶液の存在下における、減圧下での反応(比較)
反応器にグリシンNa29.1g(0.3mol)、ヤシ油65.7g(0.1mol)を投入し、25%ナトリウムメチラートのメタノール溶液6.48g(ナトリウムメチラート0.03mol)及びメタノール43.7gを撹拌しながら加えた。この不均質な混合物を130~140℃で加熱しながら、メタノールを留去し、水冷式冷却器で凝縮させることができる。蒸留用ブリッジのヘッド温度は65℃に上昇する。メタノールが除去される反応が終わりに近付くと、蒸留用ブリッジの温度は低下する。生成物の混合物は十分に撹拌可能である。メタノールを反応混合物から完全に除去するために、更に100~300mbarに減圧し、更にメタノールを留去する。反応混合物はこの段階で非常に粘度が高くなる。合計3.5時間後、窒素を導入することにより減圧を解除し、混合物を水で希釈することにより、おおよそで30%のココイルグリシンナトリウムの淡黄色~橙色の透明な水溶液が得られる。温度が100℃未満に低下し、生成物が周囲温度まで冷却されても、十分に撹拌できる透明な溶液のままとすることができる。液体クロマトグラフィーで分析したところ、ココイルグリシンナトリウムの収率は67.3%(出発グリシンを基準とする)であった。
【0100】
実施例5:N-アシル化されたアミノ酸の製造:グリシン(=アミノ酸)とラウリン酸メチル(=メチルエステル、トリグリセリドなし)との、Naメタノラートのメタノール溶液の存在下及びグリセロールの存在下における、減圧下での反応(比較)
反応器にラウリン酸メチル128.6g(0.6mole)、グリシン45.0g(0.6mole)を投入し、25%ナトリウムメチラートのメタノール溶液192.6g(ナトリウムメチラート0.6mol)及びグリセロール17.9g(0.194mol)を撹拌しながら加えた。この不均質な混合物を110~120℃で加熱しながら、メタノールを留去し、水冷式冷却器で凝縮させることができる。蒸留用ブリッジのヘッド温度は65℃に上昇する。メタノールが除去される反応が終わりに近付くと、蒸留用ブリッジの温度は低下する。生成物の混合物は十分に撹拌可能である。メタノールを反応混合物から完全に除去するために、更に100~20mbarに減圧し、更にメタノールを留去する。反応混合物はこの段階で非常に粘度が高くなる。合計4.5時間後、窒素を導入することにより減圧を解除し、混合物を水で希釈することにより、おおよそで30%のラウロイルグリシンナトリウムの淡黄色~橙色の透明な水溶液が得られる。温度が100℃未満に低下し、生成物が周囲温度まで冷却されても、十分に撹拌できる透明な溶液のままとすることができる。液体クロマトグラフィーで分析したところ、ラウロイルグリシンナトリウムの収率は25.8%(出発グリシンを基準とする)であった。
【0101】
実施例6:N-アシル化されたアミノ酸の製造:グリシンNa(=アミノ酸の塩)とヤシ油(=トリグリセリド)との、酸化カルシウム及びグリセロールの存在下における反応(比較;欧州特許第2736878号明細書と類似)
反応器にグリシンNa35g(0.36mol)、ヤシ油82.4g(0.125mol)、酸化カルシウム0.8g(0.014mol)及びグリセロール50g(0.54mol)を投入した。不均質な混合物を加熱しながら130℃で反応させた。合計5時間後、混合物を水で希釈することにより、おおよそで30%のココイルグリシンナトリウム水溶液を得た。温度が100℃未満に低下し、生成物が周囲温度まで冷却されても、十分に撹拌できる溶液のままとすることができる。液体クロマトグラフィーで分析したところ、ココイルグリシンナトリウムの収率は59.8%(出発グリシンを基準とする)であった。
【0102】
【0103】
【0104】
表1から、本発明の実施例1により調製したN-アシル化されたグリシン塩の収率が最も高かったことが分かる。塩をin-situで生成させないプロセス(比較例4参照)、減圧しないプロセス(比較例2参照)、他の追加の溶媒を用いるプロセス(比較例3参照)、他の触媒を用いるプロセス(比較例6参照)、カルボン酸グリセリドに替えてメチルエステルを用いるプロセス(比較例5参照)又は公知の先行技術のプロセスにより得られた生成物と比較すると、反応時間がより長くてさえも、全ての比較例の生成物の収率が明らかに低いことが分かる。
【国際調査報告】