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特表2024-503188多環式ケイ素-ゲルマニウム化合物、その製造方法ならびにSiおよびGe含有固体を製造するためのその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】多環式ケイ素-ゲルマニウム化合物、その製造方法ならびにSiおよびGe含有固体を製造するためのその使用
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/12 20060101AFI20240118BHJP
   C07F 19/00 20060101ALI20240118BHJP
   C07F 7/30 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C07F7/12 W
C07F19/00
C07F7/30 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532722
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(85)【翻訳文提出日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 DE2021100913
(87)【国際公開番号】W WO2022111758
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】102020131425.6
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518000039
【氏名又は名称】ヨハン ヴォルフガング ゲーテ-ウニヴェルジテート
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】ワグナー,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】コストラー,ベネディクト
(72)【発明者】
【氏名】ラーナー,ハンス-ヴォルフラム
【テーマコード(参考)】
4H049
4H050
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VN02
4H049VP04
4H049VP05
4H049VP09
4H049VQ02
4H049VQ12
4H049VQ84
4H049VR22
4H049VR23
4H049VR32
4H049VR33
4H049VS02
4H049VS12
4H049VU36
4H049VV03
4H049VW02
4H050AA01
4H050AB84
(57)【要約】
本発明は、式(I)の化合物;その製造方法;ならびにSiおよびGe含有固体を製造するためのこの化合物の使用に関する。
【化1】
[式中、E~Eは、互いに無関係に、SiまたはGeであり;X~Xは、互いに無関係に、H、SiH、ハロゲンおよびSi(Y)からなる群から選択され;Yは、無関係に、C~C20アルキルおよびハロゲンから選択され;R~R12は、互いに無関係に、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、C~C20アルキニル、C~C20シクロアルキル、C~C20アリール、C~C20アリールアルキル、C~C20アルキルアリールおよびZからなる群から選択され;およびZは、無関係に、H、ハロゲンおよびC~C20アルキルからなる群から選択される。]
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物。
【化1】
[式中、
~Eは、互いに無関係に、SiまたはGeであり;
~Xは、互いに無関係に、H、SiH、ハロゲンおよびSi(Y)からなる群から選択され;
Yは、無関係に、C~C20アルキルおよびハロゲンから選択され;
~R12は、互いに無関係に、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、C~C20アルキニル、C~C20シクロアルキル、C~C20アリール、C~C20アリールアルキル、C~C20アルキルアリールおよびZからなる群から選択され;および
Zは、無関係に、H、ハロゲンおよびC~C20アルキルからなる群から選択される。]
【請求項2】
~Eの少なくとも3つがGeであり、E~Eの残りはSiである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
~R12は、互いに無関係に、C~C20アルキルおよびハロゲンからなる群から選択される、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
~R12は、互いに無関係に、メチルおよびClからなる群から選択される、請求項1から3までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
~Xは、無関係に、H、SiH、Si(C~Cアルキル)、ClおよびSiClからなる群から選択される、請求項1から4までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
~Xは、無関係に、SiClおよびSi(CHからなる群から選択される、請求項1から5までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
式(II)の化合物と式(III)の化合物とを反応させるステップと、
【化2】
【化3】
化合物(II)と(III)との反応の生成物を結晶化させるステップとを含み、
Hal~Halは、互いに無関係に、ハロゲンであり;および
およびRは、請求項1から6までのいずれか一項に定義されている通りである、
請求項1から6までのいずれか一項に記載の式(I)の化合物の製造方法。
【請求項8】
式(II)で示される化合物と式(III)の化合物との前記反応は、触媒の存在で行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記結晶化後に得られた前記生成物とグリニャール試薬とを反応させるステップをさらに含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
SiおよびGe含有固体を製造するための、請求項1から6までのいずれか一項に記載の化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多環式ケイ素-ゲルマニウム化合物、その製造方法ならびにSiおよびGe含有固体を製造するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲンシラン、ポリハロゲンシラン、ハロゲンゲルマン、ポリハロゲンゲルマン、シラン、ポリシラン、ゲルマン、ポリゲルマンならびに対応する混合化合物は、以前から公知であり、無機化学の一般的教書の他に、国際公開第2004/036631号またはC.J. Ritter et al., J. Am. Chem. Soc., 2005, 127, 9855-9864も参照。
【0003】
トリフェニルゲルミルシランおよびその製造方法は、欧州特許出願公開第3409645号明細書に記載されている。
【0004】
クロロシリルアリールゲルマンおよびその製造は、欧州特許第3410466号明細書に開示されている。
【0005】
Ritter et al. J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 9855は、ケイ素上に半導体ナノ構造を製造するために(HGe)SiH4-xの使用を記載している。
【0006】
先行技術から出発して、改善されたケイ素-ゲルマニウム化合物を、特に貯蔵可能なケイ素-ゲルマニウム化合物を製造すること、ならびに多様なこのような化合物を簡単に製造するフレキシブルな方法を提供することが望ましい。同様に、Si/Ge固体を生成するために使用することができる化合物を提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2004/036631号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】C.J. Ritter et al., J. Am. Chem. Soc., 2005, 127, 9855-9864
【非特許文献2】Ritter et al. J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 9855
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、先行技術の欠点を克服すること、特に、Si/Ge固体の製造のために適した貯蔵可能な、オーダーメイドのケイ素-ゲルマニウム化合物を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、式(I)の化合物により解決される。
【化1】
[式中、E~Eは、互いに無関係に、SiまたはGeであり;X~Xは、互いに無関係に、H、SiH、ハロゲンおよびSi(Y)からなる群から選択され;Yは、無関係に、C~C20アルキルおよびハロゲンから選択され;R~R12は、互いに無関係に、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、C~C20アルキニル、C~C20シクロアルキル、C~C20アリール、C~C20アリールアルキル、C~C20アルキルアリールおよびZからなる群から選択され;およびZは、無関係に、H、ハロゲンおよびC~C20アルキルからなる群から選択される。]
【0011】
~Eの少なくとも3つがGeであり、E~Eの残りがSiであることが予定されていてよい。E~Eの4つ、5つまたは6つがGeであり、E~Eの残りがSiであることが予定されていてよい。E~Eの4つまたは5つがGeであり、E~Eの残りがSiであることが予定されていてよい。
【0012】
~R12は、互いに無関係に、C~C12アルキル、C~C12アルケニル、C~C12アルキニル、C~C12シクロアルキル、C~C12アリール、C~C13アリールアルキル、C~C13アルキルアリール、およびハロゲンからなる群から選択されることが予定されていてよい。
【0013】
~R12は、互いに無関係に、C~C12アルキル、C~C12アリール、C~C13アリールアルキル、C~C13アルキルアリール、およびハロゲンからなる群から選択されることが予定されていてよい。
【0014】
~R12は、互いに無関係に、C~C20アルキル、C~C20アリールおよびハロゲンからなる群から選択されることが予定されていてよい。
【0015】
~R12は、互いに無関係に、C~C12アルキルおよびハロゲンからなる群から選択されることが予定されていてよい。
【0016】
~R12は、互いに無関係に、Clまたはメチルであることが予定されていてよい。
【0017】
同じEと直接結合されている二つのR(すなわち、ペアのRとR、RとR、RとR、RとR、RとR10、ならびにR11とR12の両方のR)は、同じであることが予定されていてよい。
【0018】
(すなわち、E~Eからの1つ)がGeである場合、Eと直接結合されている両方のRは、C~C20アルキルであることが予定されていてよい。E(すなわち、E~Eからの1つ)がGeである場合、Eと直接結合されている両方のRは、C~C12アルキルであることが予定されていてよい。E(すなわち、E~Eからの1つ)がGeである場合、Eと直接結合されている両方のRは、C~Cアルキルであることが予定されていてよい。E(すなわち、E~Eからの1つ)がGeである場合、Eと直接結合されている両方のRは、C~Cアルキルであることが予定されていてよい。E(すなわち、E~Eからの1つ)がGeである場合、Eと直接結合されている両方のRは、メチルであることが予定されていてよい。
【0019】
(すなわち、E~Eからの1つ)がSiである場合、Eと直接結合されている両方のRは、ハロゲンであることが予定されていてよい。E(すなわち、E~Eからの1つ)がSiである場合、Eと直接結合されている両方のRは、Clであることが予定されていてよい。
【0020】
~Xは、無関係に、H、SiH、Si(C~C20アルキル)、ClおよびSiClからなる群から選択されることが予定されていてよい。X~Xは、無関係に、H、SiH、Si(C~C12アルキル)、ClおよびSiClからなる群から選択されることが予定されていてよい。X~Xは、無関係に、H、SiH、Si(C~Cアルキル)、ClおよびSiClからなる群から選択されることが予定されていてよい。X~Xは、無関係に、H、SiH、Si(C~Cアルキル)、ClおよびSiClからなる群から選択されることが予定されていてよい。X~Xは、無関係に、Si(C~Cアルキル)およびSiClからなる群から選択されることが予定されていてよい。
【0021】
式(I)の化合物は、以下の化合物C1~C4の1つから選択されることが予定されていてよい。
【化2】
【化3】
【0022】
この課題は、さらに、式(II)の化合物を、式(III)の化合物と反応させるステップと、
【化4】
【化5】
化合物(II)と(III)の反応の生成物を結晶化させるステップとを含み、
Hal~Halは、互いに無関係に、ハロゲンであり;RおよびRは、先に定義された通りである、先行する請求項のいずれか一つに記載の式(I)の化合物の製造方法により解決される。
【0023】
この方法において、EはGeであり、EおよびEは、それぞれSiであることが予定されていてよい。
【0024】
化合物(II)対化合物(III)のモル比は、10:1~1:40;5:1~1:2;2:1~1:20;1.5:1~1:10;1.2:1~1:8;1:3~1:5、約1:4であってよい。
【0025】
式(II)で示される化合物と式(III)の化合物との反応は、触媒の存在で行うことが予定されていてよい。触媒を0.001~1当量、好ましくは0.01~0.1当量の量で使用することが予定されていてよい。触媒は塩基であることが予定されていてよい。触媒は、リン含有塩基または窒素含有塩基であることが予定されていてよい。触媒は、窒素含有塩基であることが予定されていてよい。触媒は、ホスホニウム塩またはアンモニウム塩であることが予定されていてよい。触媒は、[(RP]Clまたは[(RN]Clから選択され、基Rは、互いに無関係に、C~C12アルキル、C~C12アリール、C~C13アリールアルキルおよびC~C13アルキルアリールから選択されることが予定されていてよい。触媒は、[(RN]Clであり、Rは、メチル、エチル、イソプロピル、n-ブチルおよびフェニルから選択されることが予定されていてよい。触媒は、[(RN]Clであり、Rは、n-ブチルから選択されることが予定されていてよい。
【0026】
式(II)で示される化合物と式(III)の化合物との反応を溶媒中で行うことが予定されていてよい。この方法では、化合物(III)1モル当たり少なくとも5モルの溶媒、あるいは化合物(III)1モル当たり10モル~100モルの溶媒を使用することができる。溶媒は、有機溶媒であることが予定されていてよい。溶媒(反応のステップでも、水素化のステップでもいずれも)は、無極性有機溶媒であることが予定されていてよい。溶媒は、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム、tert-ブチルメチルエーテル、アセトンおよびテトラヒドロフランから選択されることが予定されていてよい。溶媒はジクロロメタンであることが予定されていてよい。
【0027】
式(II)で示される化合物と式(III)の化合物との反応を、0℃~50℃、10℃~40℃、15℃~30℃、20℃~25℃の範囲内の温度で、または22℃(=室温)の温度で行うことが予定されていてよい。
【0028】
式(II)で示される化合物と式(III)の化合物との反応を、5分~24時間、30分~12時間、または1時間~4時間行うことが予定されていてよい。
【0029】
この方法は、さらに、結晶化の後に得られた生成物とグリニャール試薬との反応を含むことが予定されていてよい。グリニャール試薬は、一般式R-Mg-Halの化合物であり、Rは、アシル(例えばアリールまたはアルキル)であり、Halは、ハロゲン(例えばClまたはBr)である。このような化合物は、適切な有機溶媒中でのアシルハロゲン化物とマグネシウムとの反応により製造することができる。適切な有機溶媒は、非共有電子対によってR-Mg-Hal内のMgに配位結合を形成することができる有機溶媒である。好ましくは、有機溶媒として、エーテル(好ましくは、ジアルキルエーテル、例えばジエチルエーテルまたは環状エーテル、例えばテトラヒドロフラン(THF))が使用される。グリニャール試薬ならびにその製造および使用は、先行技術から、特に有機化学の関連する教書から周知である。
【0030】
~XがSiHalである式(I)の化合物と、Rがアシルである式R-Mg-Halのグリニャール試薬とのTHFまたはジエチルエーテル中での反応により、X~XがSiアシルである式(I)の化合物が得られることが予定されていてよい。X~XがSiHalである式(I)の化合物と、Rがアルキルである式R-Mg-Halのグリニャール試薬とのTHFまたはジエチルエーテル中での反応により、X~XがSiアルキルである式(I)の化合物が得られることが予定されていてよい。X~XがSiClである式(I)の化合物と、RがC~Cアルキルである式R-Mg-Halのグリニャール試薬とのジエチルエーテル中での反応により、X~XがSi(C~Cアルキル)である式(I)の化合物が得られることが予定されていてよい。X~XがSiClである式(I)の化合物と、Rがメチルである式R-Mg-Halのグリニャール試薬とのジエチルエーテル中での反応により、X~XがSiMeである式(I)の化合物が得られることが予定されていてよい。
【0031】
この課題は、同様に、SiおよびGe含有固体を製造するための、上述の化合物の使用により解決される。
【0032】
SiおよびGe含有固体は、金属間相であり、両方の半金属のSiおよびGeは、この関連では、金属と見なされるべきであることが予定されていてよい。金属間相(金属間化合物とも言う)は、二つまたはそれ以上の金属からなる化合物である。合金とは異なり、金属間相は、構成される金属とは異なる格子構造を示す。異なるタイプの原子の格子結合は、優勢な金属結合と、僅かな割合の他の結合種(共有結合、イオン結合)との混合形態であり、それにより、これらの相は、特別な物理的および機械的特性を有する。
【0033】
SiおよびGe含有固体の製造は、化合物を300℃またはそれ以上の温度に加熱することを含むことが予定されていてよい。SiおよびGe含有固体の製造は、化合物を400℃またはそれ以上の温度に加熱することを含むことが予定されていてよい。SiおよびGe含有固体の製造は、化合物を450℃またはそれ以上の温度に加熱することを含むことが予定されていてよい。SiおよびGe含有固体の製造は、化合物を500℃またはそれ以上の温度に加熱することを含むことが予定されていてよい。SiおよびGe含有固体の製造は、化合物を550℃またはそれ以上の温度に加熱することを含むことが予定されていてよい。SiおよびGe含有固体の製造は、化合物を600℃またはそれ以上の温度に加熱することを含むことが予定されていてよい。SiおよびGe含有固体の製造は、化合物を400℃~1000℃の温度に加熱することを含むことが予定されていてよい。SiおよびGe含有固体の製造は、化合物を400℃~800℃の温度に加熱することを含むことが予定されていてよい。SiおよびGe含有固体の製造は、化合物を450℃~750℃の温度に加熱することを含むことが予定されていてよい。SiおよびGe含有固体の製造は、化合物を500℃~700℃の温度に加熱することを含むことが予定されていてよい。SiおよびGe含有固体の製造は、化合物を550℃~650℃の温度に加熱することを含むことが予定されていてよい。SiおよびGe含有固体の製造は、化合物を約600℃の温度に加熱することを含むことが予定されていてよい。
【0034】
SiおよびGe含有固体の製造は、GiGeの析出を含むことが予定されていてよい。SiおよびGe含有固体の製造は、SiとGeの同時の析出を含むことが予定されていてよい。SiおよびGe含有固体中のSi対Geの化学量論比は、式(I)の化合物中のSi対Geの化学量論比に対応することが予定されていてよい。SiおよびGe含有固体中のSi対Geの化学量論比は、式(I)の化合物中のSi対Geの化学量論比に、±10%の偏差で対応することが予定されていてよい。
【0035】
SiおよびGe含有固体は、SiおよびGe含有固体の全質量を基準として10質量%またはそれ以下の量で他の元素を含有することが予定されていてよい。SiおよびGe含有固体は、SiおよびGe含有固体の全質量を基準として5質量%またはそれ以下の量で他の元素を含有することが予定されていてよい。SiおよびGe含有固体は、SiおよびGe含有固体の全質量を基準として3質量%またはそれ以下の量で他の元素を含有することが予定されていてよい。SiおよびGe含有固体は、SiおよびGe含有固体の全質量を基準として2質量%またはそれ以下の量で他の元素を含有することが予定されていてよい。SiおよびGe含有固体は、SiおよびGe含有固体の全質量を基準として1質量%またはそれ以下の量で他の元素を含有することが予定されていてよい。SiおよびGe含有固体は、SiおよびGe含有固体の全質量を基準として0.5質量%またはそれ以下の量で他の元素を含有することが予定されていてよい。SiおよびGe含有固体は、SiおよびGe含有固体の全質量を基準として0.1質量%またはそれ以下の量で他の元素を含有することが予定されていてよい。SiおよびGe含有固体は、SiおよびGe含有固体の全質量を基準として0.01質量%またはそれ以下の量で他の元素を含有することが予定されていてよい。SiおよびGe含有固体は、SiおよびGe含有固体の全質量を基準として0.001質量%またはそれ以下の量で他の元素を含有することが予定されていてよい。
【0036】
SiおよびGe含有固体中に含まれる他の元素は、炭素、酸素、アルミニウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されることが予定されていてよい。
【0037】
SiおよびGe含有固体の製造の間の、式(I)の化合物の加熱は、R-HおよびR-Hの形成を伴うことが予定されていてよい。
【化6】
【0038】
本明細書で使用される「アルキル」の概念は、飽和鎖状のまたは分枝状の炭化水素の一価基を指す。好ましくは、アルキル基は、1~12(例えば1~10)の炭素原子、つまり、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12の炭化水素、好ましくは1~8の炭化水素、あるいは1~6または1~4の炭化水素を含む。例示的なアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イアミル、n-ヘキシル、イヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、イヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシルまたはn-ドデシルである。
【0039】
本明細書で使用される「アルケニル」の概念は、少なくとも1つの二重結合を有する飽和鎖状または分枝状の炭化水素の一価基を指す。
【0040】
本明細書で使用される「アルキニル」の概念は、少なくとも1つの三重結合を有する飽和鎖状または分枝状の炭化水素の一価基を指す。
【0041】
本明細書で使用される「アリール」の概念は、芳香族環式炭化水素の一価基を指す。好ましくは、アリール基は、5~14(例えば5、6、7、8、9、10)の炭素原子を含み、これらの炭素原子は、1つの環(例えば、「フェニル」=「Ph」)の形態に、または二つまたはそれ以上の縮合環(例えば、「ナフチル」)の形態に配置されていてよい。例示的なアリール基は、例えばシクロペンタジエニル、フェニル、インデニル、ナフチル、アズレニル、フルオレニル、アントリル、およびフェナントリルである。
【0042】
本明細書で使用される「シクロアルキル」の概念は、アルキルの環状の非芳香族の形態を指す。
【0043】
本明細書で使用される「アリールアルキル」の概念は、少なくとも1つのアルキルで置換されているアリール基、例えばトルオリルを指す。
【0044】
本明細書で使用される「アルキルアリール」の概念は、少なくとも1つのアリールで置換されているアルキル基、例えば2-フェニルエチルを指す。
【0045】
本明細書で使用される「ハロゲン」の概念は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を指す。
【実施例
【0046】
以下に、本発明を、特に好ましい実施形態および実施例を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、本発明は、この特に好ましい実施形態および実施例に限定されるものではなく、特に好ましい実施形態および実施例の個々の特徴は、別の特徴または本発明の上述の一般的な開示の特徴と一緒に、本発明の実現のために利用されてよい。
【0047】
本発明は、式(I)の新規多環式ケイ素-ゲルマニウム化合物に関する。
【化7】
対応する化合物は、例えば、ジオルガニルジクロロゲルマンおよびヘキサクロロジシランから出発して、新規合成を介して入手可能である。例えば、テトラブチルアンモニウムクロリドの添加および場合によりグリニャール試薬との引き続く反応により、目的化合物(I)が製造可能である。これらの多環式ケイ素-ゲルマニウム化合物は、例えば純粋なSiおよびGeの析出の際に、その熱分解挙動により優れていて、この場合に得られた残留物は、化学量論比で純粋なSiおよびGeからなる。
【0048】
合成例
1030Cl14GeSi(C1)の合成
【化8】
[nBuN]Cl(161mg、0.58mmol、0.2当量)、MeGeCl(500mg、2.88mmol、1当量)、10mL CHClおよびSiCl(3092mg、11.5mmol、4当量)を、室温で3時間攪拌し、引き続き減圧下で全ての揮発性成分を除去した。粗製生成物を、それぞれ5mL nヘキサンで2回洗浄し、残留物をCHCl中に溶かした。時間とともに、無色の固体が晶出した。CHClを用いた洗浄は、無色の結晶性固体としてC1(4%、32mg、0.025mmol)を提供した。この生成物を、X線回折(斜方晶、Cmc2)およびNMR分光法により特性決定した。
H NMR(500.2MHz、CDCl、298K):δ=1.00、0.94、0.93ppm。
13C{H}NMR(125.8MHz、CDCl、298K):δ=2.57、2.23、1.97ppm。
29Si NMR(99.4MHz、CDCl、298K):δ=16.2、12.1、-80.7、-83.3ppm。
【0049】
24Cl16GeSi10(C2)の合成
【化9】
[nBuN]Cl(161mg、0.58mmol、0.2当量)、MeGeCl(500mg、2.88mmol、1当量)、10mL CHClおよびSiCl(3092mg、11.5mmol、4当量)をSchottフラスコ中に装入した。数日後に無色の結晶が形成され、これを濾過により単離することができた。CHClを用いた洗浄は、無色の結晶性固体としてC2(18%、163mg、0.13mmol)を提供した。この生成物を、X線回折(三方晶、R-3)およびNMR分光法により特性決定した。
H NMR(500.2MHz、CDCl、298K):δ=1.03ppm。
13C{H}NMR(125.8MHz、CDCl、298K):δ=1.59ppm。
29Si NMR(99.4MHz、CDCl、298K):δ=11.9、-80.8ppm。
【0050】
2266ClGeSi(C3)の合成
【化10】
C1(12mg、0.009mmol、1当量)および0.5mL EtOを、NMR管中に装入し、氷冷下でMeMgBr(3M、0.1mL、0.30mmol、30当量)のEtO溶液を添加した。このNMR管を真空下で融封した。室温で約2週間後に、NMR分光法により完全な変換を観察することができた。次いで、このNMR管を開放し、内容物を3mL EtOと一緒にシュレンクフラスコ中に移し入れ、引き続き氷冷下で0.05mL MeOHを添加した。10分間攪拌した後、全ての揮発性成分を除去し、残留物を、合計で7mL nヘキサンで抽出した。抽出物から、再び全ての揮発性成分を除去すると、無色の結晶性固体としてC3(82%、8mg、0.008mmol)が得られた。この生成物を、X線回折(斜方晶、Cmcm)およびNMR分光法により特性決定した。
H NMR(500.2MHz、CDCl、298K):δ=0.66、0.61、0.59、0.35、0.27ppm。
13C{H}NMR(125.8MHz、CDCl、298K):δ=4.06、3.81、3.60、3.27、2.92ppm。
29Si NMR(99.4MHz、CDCl、298K):δ=-2.6、-3.5、-91.5、-97.2ppm。
【0051】
2060ClGeSi10(C4)の合成
【化11】
C2(20mg、0.015mmol、1当量)および0.5mL EtOを、NMR管中に装入し、氷冷下でMeMgBr(3M、0.2mL、0.60mmol、40当量)のEtO溶液を添加した。このNMR管を真空下で融封した。60℃で14時間加熱した後、NMR分光法により完全な変換を観察することができた。次いで、更なる後処理を、C3と同様に行った。
【0052】
最終的に、無色の結晶性固体としてC4(89%、16mg、0.016mmol)が得られた。この生成物を、X線回折(斜方晶、Pbca)およびNMR分光法により特性決定した。
H NMR(500.2MHz、CDCl、298K):δ=0.70、0.37ppm。
13C{H}NMR(125.8MHz、CDCl、298K):δ=3.7、2.5ppm。
29Si NMR(99.4MHz、CDCl、298K):δ=-1.8、-91.6ppm。
【0053】
上述の明細書ならびに特許請求の範囲に開示された本発明の特徴は、多様な実施形態での本発明の実現のために、単独でも任意に組み合わせても重要であることができる。
【国際調査報告】