(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】回転子アセンブリ及び自己始動型永久磁石同期リラクタンス電動モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20240118BHJP
【FI】
H02K1/276
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536057
(86)(22)【出願日】2021-10-18
(85)【翻訳文提出日】2023-08-03
(86)【国際出願番号】 CN2021124325
(87)【国際公開番号】W WO2022160782
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】202110102655.X
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517441262
【氏名又は名称】グリー エレクトリック アプライアンス、インコーポレイテッド オブ チューハイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フ、ユーシェン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ビン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ、ヨン
(72)【発明者】
【氏名】シー、チンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】リー、シャ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ジードン
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622AA01
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA07
5H622CA09
5H622CA10
5H622CA12
5H622CB03
(57)【要約】
本願は、回転子アセンブリ、及び自己始動型永久磁石同期リラクタンス電動モータを提供する。回転子アセンブリは、回転子コア1を備え、回転子コア1の断面において、回転子コア1は、スリット溝2と、q軸かご形溝41と、永久磁石3とを備え、q軸かご形溝41は、スリット溝2の両端に設けられ、永久磁石3は、スリット溝2内に配置され、少なくともd軸方向の最内層に位置する永久磁石3は、d軸に対して非対称に配置され、最内層に位置する永久磁石3の、d軸に対するオフセット方向は、回転子アセンブリの回転方向と同じである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子コア(1)を備える回転子アセンブリであって、前記回転子コア(1)の断面において、前記回転子コア(1)は、スリット溝(2)と、q軸かご形溝(41)と、永久磁石(3)とを備え、前記q軸かご形溝(41)は前記スリット溝(2)の両端に配置され、前記永久磁石(3)は前記スリット溝(2)内に配置され、d軸方向の最内層に位置する前記永久磁石(3)は、d軸に対して少なくとも非対称に配置され、前記d軸に対して最内層に位置する前記永久磁石(3)のオフセット方向は、前記回転子アセンブリの回転方向と一致する、回転子アセンブリ。
【請求項2】
永久磁石(3)の少なくとも2つの層は半径方向に配置され、永久磁石(3)の前記隣り合う2つの層では、前記d軸の後側の内層に位置する前記永久磁石(3)の部分は、前記回転子コア(1)の中心に対して中心角a1を有し、前記d軸の前記後側の外層に位置する前記永久磁石(3)の部分は、前記回転子コア(1)の前記中心に対して中心角a2を有し、ここで、a1≦a2であり
前記d軸の前側は、前記回転子アセンブリの前記回転方向と同じ前記d軸の側を指し、前記d軸の前記後側は、前記回転子アセンブリの前記回転方向とは逆の前記d軸の側を指す、請求項1に記載の回転子アセンブリ。
【請求項3】
前記回転子アセンブリは、2極回転子構造である、請求項1に記載の回転子アセンブリ。
【請求項4】
永久磁石(3)の各層は、半径方向外向きに突出する構造を形成し、永久磁石(3)の各層は、1つ又は複数の円弧状又は長方形の永久磁石(3)を備える、請求項1に記載の回転子アセンブリ。
【請求項5】
隣り合う前記q軸かご形溝(41)の間の透磁性チャネルの幅は、同じ層内の前記スリット溝(2)の間の前記透磁性チャネルの最小幅よりも大きい、請求項1に記載の回転子アセンブリ。
【請求項6】
前記回転子コア(1)はまた、独立かご形溝(42)を備えており、同極のもとでは、前記q軸かご形溝(41)及び前記独立かご形溝(42)は、周方向に交互に配置され、前記独立かご形溝(42)の両端の前記透磁性チャネルの全幅は、前記透磁性チャネルの前記最小幅よりも大きい、請求項5に記載の回転子アセンブリ。
【請求項7】
透磁性チャネルは、隣り合う前記スリット溝(2)の間に形成され、前記透磁性チャネルの幅は、前記d軸に近い方向に小さくなり、及び/又は、透磁性チャネルは、隣り合う前記スリット溝(2)の間に形成され、前記透磁性チャネルの最小幅は、前記透磁性チャネルに隣接して内層に位置する前記スリット溝(2)の最小幅の2倍よりも大きい、請求項1に記載の回転子アセンブリ。
【請求項8】
前記回転子コア(1)はまた、独立かご形溝(42)も備えており、前記同極のもとでは、前記q軸かご形溝(41)及び前記独立かご形溝(42)が、前記周方向に交互に配置され、前記q軸かご形溝(41)及び前記独立かご形溝(42)の延伸方向はq軸に平行であり、前記q軸かご形溝(41)及び前記独立かご形溝(42)は、前記q軸又は前記d軸に対して対称的に分布している、請求項1に記載の回転子アセンブリ。
【請求項9】
前記q軸かご形溝(41)の延伸長さは、前記q軸かご形溝(41)の幅の2倍よりも長く、及び/又は、前記独立かご形溝(42)の延伸長さは、前記独立かご形溝(42)の幅の2倍よりも長い、請求項8に記載の回転子アセンブリ。
【請求項10】
前記回転子コア(1)は、d軸かご形溝(43)をさらに備え、前記d軸かご形溝(43)は、前記d軸方向の半径方向最も外側の前記永久磁石(3)の、回転子外円に近い側に位置する、請求項1に記載の回転子アセンブリ。
【請求項11】
複数のd軸かご形溝(43)が配置され、前記d軸又は前記q軸に対して対称的に分布し、及び/又は、前記d軸かご形溝(43)は前記d軸方向に延在する、請求項10に記載の回転子アセンブリ。
【請求項12】
前記スリット溝(2)は、円弧状部分(21)と直線部分(22)とを備え、前記円弧状部分(21)は前記半径方向外向きに突出し、前記直線部分(22)は前記円弧状部分(21)の両端に位置し、前記永久磁石(3)は、前記円弧状部分(21)に設置され、前記円弧状部分(21)の形状に適合する、請求項1に記載の回転子アセンブリ。
【請求項13】
前記スリット溝(2)と、両端の対応する前記q軸かご形溝(41)とが組み合わされて磁気バリア層を形成し、2つの磁気バリア層は、前記回転子コア(1)の前記半径方向に少なくとも配置される、請求項1に記載の回転子アセンブリ。
【請求項14】
前記回転子コア(1)はまた、独立かご形溝(42)を備えており、前記同極のもとでは、前記q軸かご形溝(41)及び前記独立かご形溝(42)は、前記周方向に交互に配置され、前記回転子外円に近い前記q軸かご形溝(41)の少なくとも一部の特定の端部の少なくとも特定の縁部は切断縁部(7)を備え、及び/又は、前記回転子外円に近い前記独立かご形溝(42)の少なくとも一部の特定の端部の少なくとも特定の縁部は切断縁部(7)を備える、請求項1に記載の回転子アセンブリ。
【請求項15】
前記回転子コア(1)はまた、独立かご形溝(42)を備えており、前記同極のもとでは、前記q軸かご形溝(41)及び前記独立かご形溝(42)は、前記周方向に交互に配置され、前記独立かご形溝(42)と前記回転子外円との間の磁気ブリッジ(6)の幅はL61であり、前記q軸かご形溝(41)と前記回転子外円との間の磁気ブリッジ(6)の幅はL62であり、ここで、L61>L62であり、及び/又は、前記回転子コア(1)はまた、d軸かご形溝(43)を備えており、前記d軸かご形溝(43)は、前記d軸方向の半径方向最も外側の前記永久磁石(3)の、前記回転子外円に近い特定の側に位置し、前記d軸かご形溝(43)と前記回転子外円との間の磁気ブリッジ(6)の幅はL63であり、前記q軸かご形溝(41)と前記回転子外円との間の前記磁気ブリッジ(6)の前記幅はL62であり、ここで、L63>L62である、請求項1に記載の回転子アセンブリ。
【請求項16】
前記回転子コア(1)は、独立かご形溝(42)とd軸かご形溝(43)とをさらに備え、前記q軸かご形溝(41)と、前記d軸かご形溝(43)と、前記独立かご形溝(42)とによって形成された、かご形溝(4)の総面積はS1であり、前記かご形溝(4)及び前記スリット溝(2)の総面積はSであり、S1≧40%Sである、請求項1に記載の回転子アセンブリ。
【請求項17】
前記回転子コア(1)は、独立かご形溝(42)及びd軸かご形溝(43)をさらに備え、前記q軸かご形溝(41)、前記d軸かご形溝(43)、及び前記独立かご形溝(42)は、導電性及び不透磁性材料で充填され、前記回転子コア(1)の両端はエンド・リング(8)を備え、前記q軸かご形溝(41)、前記d軸かご形溝(43)、及び前記独立かご形溝(42)は、前記エンド・リング(8)を介して短絡され、かご形構造を形成する、請求項1に記載の回転子アセンブリ。
【請求項18】
前記回転子コア(1)の両端は、不透磁性バッフル(9)を備え、前記不透磁性バッフル(9)は、前記永久磁石(3)を遮蔽するように配置されている、請求項1に記載の回転子アセンブリ。
【請求項19】
固定子及び回転子アセンブリを備え、前記回転子アセンブリは、請求項1から18までのいずれか一項に記載の回転子アセンブリである、自己始動型永久磁石同期リラクタンス・モータ。
【請求項20】
前記q軸かご形溝(41)と前記回転子外円との間の磁気ブリッジ(6)との前記幅はL62であり、0.5σ≦L62≦1.5σで、σは、前記固定子と前記回転子コア(1)との間のエア・ギャップの半径方向の幅である、請求項19に記載の自己始動型永久磁石同期リラクタンス・モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年1月26日に出願された「ROTOR ASSEMBLY AND SELF-STARTING PERMANENT MAGNET SYNCHRONOUS RELUCTANCE MOTOR」という名称の中国特許出願第202110102655.X号の優先権を主張し、その内容全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は、モータの技術分野に関し、詳細には、回転子アセンブリ及び自己始動型永久磁石同期リラクタンス・モータに関する。
【背景技術】
【0003】
自己始動型永久磁石同期リラクタンス・モータは、誘導電動機及び同期永久磁石リラクタンス・モータの構造特性を兼ね備えている。力のモーメントは、始動を実現するためにかご形誘導機によって生成され、一定の回転速度動作は、回転子のd軸及びq軸の間の磁束差と永久磁石によって発生するトルクとによって実現され、始動動作は、電源を直接接続することによって実現することができる。自己始動型永久磁石同期リラクタンス・モータは、リラクタンス・トルクを使用することによってモータ出力トルクを向上させることができる。自己始動型永久磁石モータと比べて、永久磁石の使用量は減少し、コストは低下する。非同期モータと比べて、自己始動型永久磁石同期リラクタンス・モータは、高い効率と、一定の同期回転速度を有し、同期回転速度は、負荷の変化とともに変化することはない。
【0004】
従来の永久磁石モータ及び永久磁石同期リラクタンス・モータについて、ドライバは、動作を始動し制御するのに必要であり、コストは高く、制御は複雑であり、ドライバは損失の一部を占め、モータ・システム全体の効率を低下させる。
【0005】
関連技術は、自己始動型永久磁石同期リラクタンス・モータを提供して、永久磁石のコストを低下させる。しかしながら、関連技術における永久磁石は、長い円弧状の構造を採用しているため、回転子の回転方向とは逆の永久磁石の特定の端部にある磁束が回転子の磁界と衝突し、永久磁石の利用率及びモータ効率が低下するという結果になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本願で解決される技術的課題は、永久磁石のより多くの磁束が回転子アセンブリの回転方向の一方側に流れ、永久磁石利用率を向上させ、モータ効率を向上させることが可能な、回転子アセンブリ及び自己始動型永久磁石同期リラクタンス・モータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願は、回転子コアを含む回転子アセンブリを提供し、回転子コアの断面において、回転子コアは、スリット溝と、q軸かご形溝と、永久磁石とを備え、q軸かご形溝はスリット溝の両端に配置され、永久磁石はスリット溝内に配置され、d軸方向の最内層に位置する永久磁石は、d軸に対して少なくとも非対称に配置され、d軸に対して最内層に位置する永久磁石のオフセット方向は、回転子アセンブリの回転方向と一致する。
【0008】
いくつかの実施例では、永久磁石の少なくとも2つの層は半径方向に配置され、永久磁石の2つの隣り合う層において、d軸の後側の内層に位置する永久磁石の部分は、回転子コアの中心に対して中心角a1を占め、d軸の後側の外層に位置する永久磁石の部分は、回転子コアの中心に対して中心角a2を占め、ここで、a1≦a2である。d軸の前側は、回転子アセンブリの回転方向と同じd軸の側を指し、d軸の後側は、回転子アセンブリの回転方向とは逆のd軸の側を指す。
【0009】
いくつかの実施例では、回転子アセンブリは、2極回転子構造である。
【0010】
いくつかの実施例では、永久磁石の各層は、半径方向外向きに突出する構造を形成し、永久磁石の各層は、1つ又は複数の円弧状又は長方形の永久磁石を含む。
【0011】
いくつかの実施例では、隣り合うq軸かご形溝の間の透磁性チャネルの幅は、同じ層内のスリット溝の間の透磁性チャネルの最小幅よりも大きい。
【0012】
いくつかの実施例では、回転子コアはまた、独立かご形溝を備えており、同極のもとでは、q軸かご形溝及び独立かご形溝は、周方向に交互に配置され、独立かご形溝の両側の透磁性チャネルの全幅は、透磁性チャネルの最小幅よりも大きい。
【0013】
いくつかの実施例では、透磁性チャネルは、隣り合うスリット溝の間に形成され、透磁性チャネルの幅は、d軸に近い方向に小さくなり、及び/又は、透磁性チャネルは、隣り合うスリット溝の間に形成され、透磁性チャネルの最小幅は、透磁性チャネルに隣接して内層に位置するスリット溝の最小幅の2倍よりも大きい。
【0014】
いくつかの実施例では、回転子コアはまた、独立かご形溝を備え、同極のもとでは、q軸かご形溝及び独立かご形溝は、周方向に交互に配置され、q軸かご形溝及び独立かご形溝の延伸方向はq軸に平行であり、q軸かご形溝及び独立かご形溝は、q軸又はd軸に対して対称的に分布している。
【0015】
いくつかの実施例では、q軸かご形溝の延伸長さは、q軸かご形溝の幅の2倍よりも長く、及び/又は、独立かご形溝の延伸長さは、独立かご形溝の幅の2倍よりも長い。
【0016】
いくつかの実施例では、回転子コアは、d軸かご形溝をさらに備え、d軸かご形溝は、d軸方向の半径方向最も外側の永久磁石の、回転子外円に近い特定の側に位置する。
【0017】
いくつかの実施例では、複数のd軸かご形溝が配置され、d軸又はq軸に対して対称的に分布し、及び/又は、d軸かご形溝はd軸方向に延在する。
【0018】
いくつかの実施例では、スリット溝は、円弧状部分と直線部分とを含み、円弧状部分は半径方向外向きに突出し、直線部分は円弧状部分の両端に位置し、永久磁石は、円弧状部分に設置され、円弧状部分の形状に適合する。
【0019】
いくつかの実施例では、スリット溝と、両端の対応するq軸かご形溝とが組み合わされて磁気バリア層を形成し、2つの磁気バリア層は、回転子コアの半径方向に少なくとも配置される。
【0020】
いくつかの実施例では、回転子コアはまた、独立かご形溝を備えており、同極のもとでは、q軸かご形溝及び独立かご形溝は、周方向に交互に配置され、回転子外円に近いq軸かご形溝の少なくとも一部の特定の端部の少なくとも特定の縁部は切断縁部を備え、及び/又は、回転子外円に近い独立かご形溝の少なくとも一部の特定の端部の少なくとも特定の縁部は切断縁部を備える。
【0021】
いくつかの実施例では、回転子コアはまた、独立かご形溝を備えており、同極のもとでは、q軸かご形溝及び独立かご形溝は、周方向に交互に配置され、独立かご形溝と回転子外円との間の磁気ブリッジの幅はL61であり、q軸かご形溝と回転子外円との間の磁気ブリッジの幅はL62であり、ここで、L61>L62であり、及び/又は、回転子コアはまた、d軸かご形溝を備えており、d軸かご形溝は、d軸方向の半径方向最も外側の永久磁石の、回転子外円に近い特定の側に位置し、d軸かご形溝と回転子外円との間の磁気ブリッジの幅はL63であり、q軸かご形溝と回転子外円との間の磁気ブリッジの幅はL62であり、ここで、L63>L62である。
【0022】
いくつかの実施例では、回転子コアは、独立かご形溝及びd軸かご形溝をさらに備え、q軸かご形溝と、d軸かご形溝と、独立かご形溝とによって形成されたかご形溝の総面積はS1であり、かご形溝及びスリット溝の総面積はSであり、S1≧40%Sである。
【0023】
いくつかの実施例では、回転子コアは、独立かご形溝及びd軸かご形溝をさらに備え、q軸かご形溝、d軸かご形溝、及び独立かご形溝は、導電性及び不透磁性材料で充填され、回転子コアの両端はエンド・リングを備え、q軸かご形溝、d軸かご形溝、及び独立かご形溝は、エンド・リングを介して短絡され、かご形構造を形成する。
【0024】
いくつかの実施例では、回転子コアの両端は、不透磁性バッフルを備え、不透磁性バッフルは、永久磁石を遮蔽するように配置されている。
【0025】
本願の別の態様によれば、自己始動型永久磁石同期リラクタンス・モータが設けられ、固定子及び回転子アセンブリを含んでおり、回転子アセンブリは、上記回転子アセンブリである。
【0026】
いくつかの実施例では、q軸かご形溝と回転子外円との間の磁気ブリッジの幅はL62であり、0.5σ≦L62≦1.5σで、σは、固定子と回転子コアとの間のエア・ギャップの半径方向の幅である。
【0027】
本願による回転子アセンブリは、回転子コアを含む。回転子コアの断面において、回転子コアは、スリット溝と、q軸かご形溝と、永久磁石とを備える。q軸かご形溝は、スリット溝の両端に配置され、永久磁石はスリット溝内に配置される。d軸方向の最内層に位置する永久磁石は、d軸に対して少なくとも非対称に配置され、d軸に対して最内層に位置する永久磁石のオフセット方向は、回転子アセンブリの回転方向と一致する。このような構造によって、オフセットされた永久磁石によって発生する磁束の流れ方向は、より回転子のq軸の磁束方向に向かい、より多くのq軸磁石が設けられており、永久磁石の磁束が回転子アセンブリの回転のもとで回転子アセンブリの回転方向の後側に向かってオフセットされるために生じる永久磁石の不均衡な磁束の問題を回避し、その結果、d軸の前側に位置する磁束が、d軸の後側に位置する磁束とより一致し、永久磁石の利用効率が向上し、モータ効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本願の一実施例による回転子アセンブリの概略構造図である。
【
図2】本願の一実施例による回転子アセンブリの部分拡大構造概略図である。
【
図3】本願の一実施例による回転子アセンブリの概略構造図である。
【
図4】本願の一実施例による回転子アセンブリの軸方向図である。
【
図5】本願の一実施例による回転子アセンブリの不透磁性バッフルの概略構造図である。
【
図6】本願の一実施例による回転子アセンブリの軸方向図である。
【
図7】本願の一実施例によるモータと関連技術のモータとの間のトルク・カーブの比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1~
図7を組み合わせて参照すると、本願の一実施例によれば、回転子アセンブリは、回転子コア1を含む。回転子コア1の断面において、回転子コア1は、軸穴5と、スリット溝2と、q軸かご形溝41と、永久磁石3とを備える。q軸かご形溝41は、スリット溝2の両端に配置され、永久磁石3はスリット溝2内に配置される。d軸方向の最内層に位置する永久磁石3は、少なくともd軸に対して非対称に配置され、d軸に対して最内層に位置する永久磁石3のオフセット方向は、回転子アセンブリの回転方向と一致する。
【0030】
この構造により、オフセットされた永久磁石によって発生する磁束の流れ方向は、より回転子のq軸の磁束方向に向かい、より多くのq軸磁石が設けられ、永久磁石の磁束が、回転子アセンブリの回転中に回転子アセンブリの回転方向の後側に向かってオフセットされるために生じる永久磁石の不均衡な磁束の問題は回避され、その結果、d軸の前側に位置する磁束は、d軸の後側に位置する磁束とより一致し、永久磁石の利用効率は向上し、モータ効率は向上する。d軸の前側は、回転子アセンブリの回転方向と同じd軸の側を指し、d軸の後側は、回転子アセンブリの回転方向とは逆のd軸の側を指す。
【0031】
この実施例では、d軸に対して最内層に位置する永久磁石3のオフセット方向は、回転子アセンブリの回転方向と一致しており、そのことは、最内層に位置する永久磁石3について、d軸の前側の永久磁石の使用量が、d軸の後側の永久磁石の使用量よりも多いことを意味している。特に、d軸に対する永久磁石3について、d軸の前側に位置する永久磁石の長さは、d軸の後側に位置する永久磁石の長さよりも長い、又は、d軸の前側に位置する永久磁石の厚さは、d軸の後側に位置する永久磁石の厚さよりも厚い、などである。その目的は、回転子アセンブリが動作していないときに、d軸の前側の永久磁石3の磁束を、d軸の後側の永久磁石3の磁束よりも大きくできるようにすることであり、その結果、回転子アセンブリが回転するときに回転子アセンブリの回転によって生じる磁束のオフセットが減少し、d軸の両側の磁束をできるだけ均等にし、永久磁石の利用率を向上させ、モータ効率を向上させる。
【0032】
図2に示すように、永久磁石3の少なくとも2つの層は、半径方向に配置される。永久磁石3の2つの隣り合う層において、d軸の後側の内層に位置する永久磁石3の部分は、回転子コア1の中心に対して中心角a1を占め、d軸の後側の外層に位置する永久磁石3の部分は、回転子コアの中心に対して中心角a2を占め、ここで、a1≦a2である。したがって、より多くのq軸鎖交磁束は、内層の永久磁石3によって発生させることができ、モータ効率をさらに向上させ、永久磁石3をより十分に利用することもできる。
【0033】
半径方向に配置された永久磁石3の3つの層を1つの実例として挙げると、d軸の後側の最外層に位置する永久磁石3の部分は、回転子コア1の中心に対して中心角a3を占め、d軸の後側の中間層に位置する永久磁石3の部分は、回転子コア1の中心に対して中心角a2を占め、d軸の後側の最内層に位置する永久磁石3の部分は、中心角a1を占め、a1≦a2≦a3である。永久磁石3は、d軸を境界線とみなす。回転子アセンブリの回転方向において、d軸の後側に位置する永久磁石3のd軸から離れた一端の終点と回転子コア1の中心との間の接続線は、第1の接続線とみなされ、第1の接続線とd軸との間に形成された夾角は、回転子コア1の中心に対してd軸の後側の永久磁石3の部分によって占められた中心角である。
【0034】
この実施例では、半径方向外向きの方向において、永久磁石3がd軸の前側に向かってオフセットする比率は、より小さくなっていく。
【0035】
一実施例では、中間層と最内層とに位置する永久磁石3は、両方とも、d軸の前側に向かってオフセットされ、半径方向最外層に位置する永久磁石3は、d軸に対して左右対称である。
【0036】
いくつかの実施例では、回転子アセンブリは、2極回転子構造である。
【0037】
このモータについて、内層に位置する永久磁石の磁界及び固定子の磁界によって発生する力のモーメントはより大きく、モータの性能により大きな影響を有する。したがって、モータの性能を最大限に向上させ、構造を最大限に最適化することを保証するために、最内層に位置する永久磁石の最大限のオフセットを確保することだけが必要である。
【0038】
いくつかの実施例では、永久磁石3の3つの層が半径方向に配置されるとき、半径方向の最内層に位置する永久磁石3のみがオフセットされてもよく、中間層と最外層とに位置する永久磁石3は、d軸に対して左右対称である。
【0039】
永久磁石3の各層は、半径方向外向きに突出する構造を形成し、永久磁石3の各層は、1つ又は複数の円弧状又は長方形の永久磁石を含む。
【0040】
永久磁石3の層が複数の永久磁石を含むとき、オフセットは、永久磁石3の一部をオフセットすることによって実現することができ、
図3に示すように、最内層に位置する永久磁石では、ある永久磁石3はd軸の前側に位置し、別の永久磁石3はd軸に対して左右対称であり、それにより、d軸の前側で永久磁石3のオフセットを実現することができる。この構造では、永久磁石3がブロック構造を採用するため、設計がより柔軟であり、永久磁石3の設置位置は、より合理的に設定することができる。
【0041】
いくつかの実施例では、隣り合うq軸かご形溝41の間の透磁性チャネルの幅は、同じ層内のスリット溝2の間の透磁性チャネルの最小幅よりも大きい。
【0042】
回転子コア1はまた、独立かご形溝42を備える。同極のもとでは、q軸かご形溝41及び独立かご形溝42は、周方向に交互に配置され、独立かご形溝42の両側の透磁性チャネルの全幅は、透磁性チャネルの最小幅よりも大きい。
【0043】
図1に示すように、半径方向に配置された永久磁石3の3つの層を1つの実例として挙げると、独立かご形溝42は、隣り合うq軸かご形溝41の間に配置され、内層に位置する独立かご形溝42の両側の透磁性チャネルの幅はL31及びL32であり、内層に位置する透磁性チャネルの最小幅はL3であり、外層に位置する独立かご形溝42の両側の透磁性チャネルの幅はL41及びL42であり、外層に位置する透磁性チャネルの最小幅はL4であり、L31+L32>L3、及びL41+L42>L4である。
【0044】
透磁性チャネルは、隣り合うスリップ溝2の間に形成され、透磁性チャネルの幅は、d軸に近い方向に小さくなる。
【0045】
透磁性チャネルは、隣り合うスリップ溝2の間に形成され、透磁性チャネルの最小幅は、透磁性チャネルに隣接して内層に位置するスリット溝2の最小幅の2倍よりも大きい。
【0046】
図1及び
図3に示すように、半径方向に配置された永久磁石3の3つの層を1つの実例として挙げると、内層の透磁性チャネルの最小幅はL3であり、内層の透磁性チャネルに隣接し、且つ、内層に位置するスリット溝2の最小幅はL1であり、外層の透磁性チャネルの最小幅はL4であり、外層の透磁性チャネルに隣接し、且つ、内層に位置するスリット溝2の最小幅はL2であり、ここで、L3>2×L1及びL4>2×L2である。上記設計によって、かご形溝4又はスリット溝2の間の透磁性チャネルの飽和状態を回避することができ、q軸磁束のかご形溝4の影響は軽減され、モータの出力トルク及び効率が向上する。
【0047】
回転子コア1はまた、独立かご形溝42を備える。同極のもとでは、q軸かご形溝41及び独立かご形溝42は、周方向に交互に配置され、q軸かご形溝41及び独立かご形溝42の延伸方向はq軸に平行であり、その結果、q軸かご形溝41はスリット溝2と一致し、回転子の円滑な透磁性チャネルを形成することができる。q軸かご形溝41及び独立かご形溝42は、q軸又はd軸に対して対称的に分布している。
【0048】
q軸かご形溝41の延伸長さは、q軸かご形溝41の幅の2倍よりも長く、及び/又は、独立かご形溝42の延伸長さは、独立かご形溝42の幅の2倍よりも長い。
【0049】
図3に示すように、独立かご形溝42を1つの実例として挙げると、q軸方向のその延伸長さはL52であり、幅はL51であり、L52>2×L51である。不飽和の磁界の状況下で、かご形溝は、より多くのかご形溝のかご形を配置するための細長い構造を採用し、それにより、モータの始動性能が向上する。かご形溝をより長くすることにより、かご形溝の面積を増加させ、かご形溝の抵抗を減少させることができ、さらに、始動性能を向上させ、モータの同期始動能力を確保することができる。
【0050】
回転子コア1はまた、d軸かご形溝43を備え、d軸かご形溝43は、d軸方向の半径方向最も外側の永久磁石3の、回転子外円に近い特定の側に位置する。
【0051】
d軸又はq軸に対して対称的に分布する複数のd軸かご形溝43があり、及び/又は、d軸かご形溝43は、d軸方向に延在する。
【0052】
d軸かご形溝43は、d軸に平行な方向に延在し、回転子外円に近い方向のd軸かご形溝43の幅が漸減することによって生じる磁気飽和現象を回避することができる。同時に、複数の透磁性チャネルは、d軸かご形溝43の間に形成され、それは、磁力線の通過に便利で、モータの出力を向上させる。
【0053】
図1を示すように、いくつかの実施例では、スリット溝2は、円弧状部分21及び直線部分22を含む。円弧状部分21は半径方向外向きに突出し、直線部分22は円弧状部分21の両端に位置する。永久磁石3は、円弧状部分21に設置され、円弧状部分21の形状に適合する。永久磁石3の各層は、1つ又は複数の永久磁石を含み、回転子空間は、スリット溝2及び永久磁石3を配置するために有効に利用することができ、モータの材料利用率が向上する。
【0054】
一実施例では、スリット溝2の各層はまた、複数の直線部分を組み合わせることによって形成することができ、永久磁石3の各層の全体形状はd軸方向に回転方向外向きに突出している。
【0055】
スリット溝2と、スリット溝2の両端の対応するq軸かご形溝41とが組み合わされて磁気バリア層を形成し、回転子コアの半径方向の磁気バリア層の数は、少なくとも2以上であり、一定数の磁気バリアが回転子コア1上に形成され、一定の突極差を確保し、モータのリラクタンス・トルクを増加させ、モータの出力能力及び効率を向上させることができる。
【0056】
回転子コア1はまた、独立かご形溝42を備える。同極のもとでは、q軸かご形溝41及び独立かご形溝42は、周方向に交互に配置され、回転子外円に近いq軸かご形溝41の少なくとも一部の特定の端部の少なくとも特定の縁部は、切断縁部7を備える。
【0057】
回転子外円に近い独立かご形溝42の少なくとも一部の特定の端部の少なくとも特定の縁部は、切断縁部7を備える。切断縁部7は、インダクタンスの急激な変化を効果的に低減することができ、その結果、磁束は緩やかに移行し、磁界の変動は低減され、モータの高調波及びトルク・リップルは低減される。
【0058】
一実施例では、回転子外円に近いq軸かご形溝41及び独立かご形溝42の特定の端部の両端は、切断縁部7を備える。
【0059】
回転子コア1はまた、独立かご形溝42を備える。同極のもとでは、q軸かご形溝41及び独立かご形溝42は、周方向に交互に配置される。独立かご形溝42と回転子外円との間の磁気ブリッジ6の幅はL61であり、q軸かご形溝41と回転子外円との間の磁気ブリッジ6の幅はL62であり、ここで、L61>L62であり、その結果、永久磁石3と一致せず接続されていない独立かご形溝42と回転子外円との間の磁気ブリッジ6の幅は、適宜拡大されて、モータの高調波を低減させ、モータの始動性能を向上させることができる。
【0060】
一実施例では、回転子コア1はまた、d軸かご形溝43を備え、d軸かご形溝43は、d軸方向の半径方向最も外側の永久磁石3の、回転子外円に近い特定の側に位置する。d軸かご形溝43と回転子外円との間の磁気ブリッジ6の幅はL63であり、q軸かご形溝41と回転子外円との間の磁気ブリッジ6の幅はL62であり、ここで、L63>L62である。
【0061】
回転子コア1はまた、独立かご形溝42及びd軸かご形溝43を備える。q軸かご形溝41と、d軸かご形溝43と、独立かご形溝42とによって形成された、かご形溝4の総面積はS1であり、かご形溝4及びスリット溝2の総面積はSであり、S1≧40%Sである。いくつかの実施例では、0.5×S<S1<0.7×Sであり、一定数の面積を確保することができ、モータの同期能力を向上させることができる。
【0062】
図6に示すように、回転子コア1はまた、独立かご形溝42及びd軸かご形溝43を備える。q軸かご形溝41、d軸かご形溝43、及び独立かご形溝42は、回転子コア1の周方向に一緒に配置されるかご形溝4を形成し、かご形溝4は、アルミニウム又はアルミニウム合金などの導電性及び不透磁性材料で充填される。回転子コア1の両端は、エンド・リング8を備え、q軸かご形溝41、d軸かご形溝43、及び独立かご形溝42は、エンド・リング8を介して短絡され、かご形溝構造を形成する。エンド・リングの材料は、かご形溝4内の充填材と同じである。それ自体が短絡されたかご形構造は、モータの自己始動を実現するために、モータの始動段階で非同期トルクを提供する。スリット溝2と、かご形溝4と、永久磁石3とによって形成される回転子多層永久磁気バリア構造は、モータの同期動作を実現するために、モータ用の永久磁石トルク及びリラクタンス・トルクを提供する。
【0063】
回転子コア1の両端は、不透磁性バッフル9を備え、不透磁性バッフル9は、永久磁石3を遮蔽することができるが、すべてのスリット溝2を遮蔽することはできない。不透磁性バッフル9は、回転子コア1の軸方向の永久磁石3の両端を固定することができ、スリット溝2の遮蔽されていない部分は、回転子コア1の軸方向の貫通孔を形成することができ、空気又は冷媒が流れるのに役立ち、回転子の放熱を改善し、モータ効率を向上させる。
【0064】
回転子コア1はまた、リベット穴を備え、回転子アセンブリは、リベット10を介して回転子コア1の両端の不透磁性バッフル9を軸方向に強く圧縮し、それにより回転子アセンブリを形成する。
【0065】
軸穴5は、円形、楕円形、又は長方形であってもよい。
【0066】
本願の実施例のモータ及び関連技術のモータのトルク・カーブの比較図である
図7を組み合わせて参照すると、同じ固定子及び電流のもとでは、本願の実施例の解決策を採用するモータのトルクは向上し、トルク・ピーク及びトルク・リップルの値は低減し、より優れた効果を実現することができるということが
図7から理解され得る。
【0067】
本願の一実施例によれば、自己始動型永久磁石同期リラクタンス・モータは、固定子及び回転子アセンブリを含み、回転子アセンブリは、上記の回転子アセンブリである。
【0068】
一実施例では、q軸かご形溝41と回転子外円との間の磁気ブリッジ6の幅はL62であり、0.5σ≦L62≦1.5σで、ここで、σは、固定子と回転子コア1との間のエア・ギャップの半径方向の幅であり、その結果、q軸かご形溝41と回転子外円との間の磁気ブリッジ6は、適切な幅を有することができ、回転子アセンブリの機械的強度を確保しつつ、磁気漏れが可能な限り減少され得る。
【0069】
上記さまざまな好ましい方法を、矛盾することなく自由に組み合わせ、重ね合わせることができることは、当業者であれば容易に理解できる。
【0070】
以上は、本願の好ましい実施例に過ぎず、本願を限定する意図はない。本願の趣旨及び原理内でなされたいかなる修正、等価置換、及び改良も、本願の保護範囲内に含まれるべきである。以上は、本願の好ましい実施例に過ぎない。当業者であれば、本願の技術原理から逸脱することなく、いくつかの改良及び変形を行うことができることを指摘すべきである。これらの改良及び変形はまた、本願の保護範囲とみなされるべきである。
【符号の説明】
【0071】
1 回転子コア
2 スリット溝
21 円弧状部分
22 直線部分
3 永久磁石
4 かご形溝
41 q軸かご形溝
42 独立かご形溝
43 d軸かご形溝
5 軸穴
6 磁気ブリッジ
7 切断縁部
8 エンド・リング
9 不透磁性バッフル
10 リベット
【国際調査報告】