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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】鉄強化茶組成物
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/16 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
A23F3/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023536156
(86)(22)【出願日】2021-06-25
(85)【翻訳文提出日】2023-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2021067549
(87)【国際公開番号】W WO2022128174
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】202021054641
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522414316
【氏名又は名称】エカテラ・リサーチ・アンド・デベロップメント・ユーケー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴェトリ・クマラン
(72)【発明者】
【氏名】ディーパック・ラーマチャンドラ・マサヴェード
(72)【発明者】
【氏名】スワティー・パラギリ
(72)【発明者】
【氏名】バラムルガン・ヴェルサミー
【テーマコード(参考)】
4B027
【Fターム(参考)】
4B027FB01
4B027FB08
4B027FB10
4B027FB13
4B027FC06
4B027FK01
4B027FK03
4B027FK04
4B027FP85
(57)【要約】
本発明は、茶組成物に関する。特に、本発明は、鉄強化茶組成物に関する。したがって、本発明は、a)微粉化鉄化合物;b)第1の、マルトデキストリンを含む多糖;c)第2の、アラビアゴムを含む多糖;及びd)葉茶製品を含む茶組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)微粉化鉄化合物;
b)第1の、マルトデキストリンを含む多糖;
c)第2の、アラビアゴムを含む多糖;及び
d)葉茶製品
を含む茶組成物。
【請求項2】
前記鉄化合物の粒径が、0.1~50μmの範囲にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記鉄化合物の粒径が、0.1~10μmの範囲にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記鉄化合物の25℃の水への溶解度が、0.0001g/100mL未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記鉄化合物が、酸化鉄、ピロリン酸第二鉄、カルボニル鉄、電解鉄、及びそれらの組合せから選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
前記鉄化合物が、酸化鉄、ピロリン酸第二鉄である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記マルトデキストリンの量が、前記組成物の0.5~5質量%の範囲にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記アラビアゴムの量が、0.05~6質量%の範囲にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記葉茶製品が、紅茶製品、緑茶製品、ウーロン茶製品、白茶製品、又はそれらのブレンドから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記葉茶製品が、紅茶製品である、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物中の前記葉茶製品の量が、前記組成物の85~98.5質量%の範囲にある、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
さらなる栄養素を含んでもよい、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
鉄強化茶組成物を提供する方法であって、
a)25℃の水への溶解度が0.0001g/mL未満の鉄化合物を用意する工程と;
b)前記鉄化合物を微粉化して、0.1~10μmの範囲の粒径を生成する工程と;
c)第1の、マルトデキストリンを含む多糖及び第2の、アラビアゴムを含む多糖を、前記微粉化鉄化合物に添加する工程と;
d)工程(c)の材料を混合して、コーティング混合物を得る工程と;
e)工程dで得られた前記コーティング混合物で葉茶製品をコーティングする工程と
を含む方法。
【請求項14】
工程(d)で水が添加される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記水の温度が、25℃~75℃の範囲にある、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶組成物に関する。特に、本発明は、鉄強化茶組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
茶は、世界で最も人気のある飲料の1つである。茶を摂取すると心がリフレッシュされると考えられている。また、茶に含まれるポリフェノールが、人の健康に良いと考えられている。市販されている様々な茶には、例えば、紅茶、緑茶、ウーロン茶、白茶等がある。紅茶は、一般に、萎凋、浸漬、発酵、及び乾燥(firing/drying)の工程を含む方法によって製造される。一方、緑茶の製造方法は、発酵の工程を含まない。したがって、緑茶の特性プロファイルは、紅茶とは異なる。
【0003】
アジア諸国のほとんどの人は、少なくとも1日に2回又はそれ以上茶を飲む。したがって、茶は、栄養素及び必須元素を供給する方法の1つになる可能性がある。
【0004】
鉄は、人体の適切な機能に必要な最も重要な元素の1つである。人体内で血液を生成するのに必須な元素である。鉄欠乏は、貧血を引き起こすことがあり、治療が遅れると重篤になる可能性がある。したがって、いくつかの鉄強化食品が市販されている。
【0005】
鉄強化食品を開示している先行技術もある。
【0006】
米国特許第6998143号(Nestle社、2006年)は、食品及び飲料を鉄で強化するために使用できる鉄強化複合体を開示している。複合体は、第二鉄イオン及びカゼイン塩で形成される。複合体は十分に安定しているため、レトルト製品での使用に適している。しかし、この安定性にもかかわらず、複合体中の鉄は、硫酸第一鉄と実質的に同じ生物学的利用能を有する。
【0007】
国際公開第03032741号(Unilever社、2003年)は、鉄-植物タンパク質加水分解物複合体で強化された茶製品を開示している。この複合体は、茶中で鉄-ポリフェノール複合体の沈殿を起こさず、生物学的利用能も示す。この発明の茶から作られた茶飲料は、魅力的な色を有する。
【0008】
本発明者らは、茶製品の鉄強化には特に問題があることを発見した。この問題は、茶に含まれるポリフェノール化合物が鉄と反応して、沈殿物が形成され、飲料の色が非常に黒ずみ、明るさが低下し、赤みがなくなるために生じると考えられている。赤い色は、主に紅茶製品と関連するものである。これは消費者には受け入れられない。
【0009】
一方、ほとんどの人が1日に複数回茶を摂取するため、茶は人体に鉄を供給するのに適した製品の1つと考えられる。したがって、浸出させた際の鉄の供給も適切である必要がある。
【0010】
したがって、明るく鮮やかな赤色の浸出液(infusion)を有する鉄強化茶製品が依然として望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6998143号
【特許文献2】国際公開第03032741号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記を考慮して、本発明の一目的は、鉄強化茶組成物を提供することである。
【0013】
本発明の別の一目的は、明るく鮮やかな赤色の浸出液を有する鉄強化茶組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、驚くべきことに、いくつかの選択された微粉化形態の鉄塩を、特定の選択された2種の多糖と一緒に含ませることにより、鮮やかな赤色及び明るい色の浸出液の特性を有する鉄強化茶組成物が提供されることを見出した。
【0015】
第1の態様において、本発明は、
a)微粉化鉄化合物;
b)第1の、マルトデキストリンを含む多糖;
c)第2の、アラビアゴムを含む多糖;及び
d)葉茶製品
を含む茶組成物を提供する。
【0016】
この及び他の態様、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明を読むことにより当業者には明らかになるであろう。疑念を排除するために記すと、本発明の一態様の任意の特徴は、本発明の任意の他の態様において利用することができる。「含む(comprising)」という語は、「含む(including)」という意味を意図しているが、必ずしも「からなる(consisting of)」又は「で構成される(composed of)」を意味するものではない。言い換えると、列挙した工程又は選択肢は網羅的である必要はない。以下の説明で示す実施例は、本発明を明確にすることを意図しており、本発明をこれらの実施例自体に限定することを意図するものではないことに留意されたい。同様に、すべての百分率は、別段の指示がない限り、質量/質量百分率である。実施例及び比較例を除き、又は別段の明確な指示がない場合を除き、本記載において、材料の量又は反応の条件、材料の物理的性質及び/又は使用を示すすべての数値は、「約(about)」という語に修飾されているものとして理解されたい。「xからyまで(from x to y)」という形式で表される数値範囲は、x及びyを含むと理解されたい。特定の特徴について複数の好ましい範囲が「xからyまで」の形式で記載されている場合、異なる端点を組み合わせたすべての範囲もまた企図されていると理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書に見られる本発明の開示は、請求項が多項従属性又は冗長性を有さないと判断され得る事実に関わらず、互いに多項従属である請求項において見られるすべての実施形態を網羅するとみなされる。
【0018】
特徴が本発明の特定の態様(例えば、本発明の組成物)に関して開示されている場合、そのような開示は、本発明の任意の他の態様(例えば、本発明の方法)にも準用して適用されるものとみなされる。
【0019】
本発明は、
a)微粉化鉄化合物;
b)第1の、マルトデキストリンを含む多糖;
c)第2の、アラビアゴムを含む多糖;及び
d)葉茶製品
を含む茶組成物を提供する。
【0020】
微粉化鉄化合物の粒径は、好ましくは0.1~50μmの範囲、より好ましくは0.1~30μmの範囲、更により好ましくは0.1~20μmの範囲、最も好ましくは0.1~10μmの範囲にある。
【0021】
鉄化合物をより大きなサイズで入手し、続いて、サイズを縮小するプロセスを施して、上述のような望ましいサイズの微粉化鉄化合物を得てもよい。
【0022】
代わりに、微粉化形態の鉄粒子を直接入手して、本発明に使用することもできる。
【0023】
鉄化合物の25℃の水への溶解度は、0.001g/mL未満であることが好ましく、より好ましくは0.0005g/mL未満である。最も好ましくは、鉄化合物は、水不溶性である。
【0024】
鉄化合物は、好ましくは、酸化鉄、ピロリン酸第二鉄、カルボニル鉄、電解鉄、及びそれらの組合せから選択されてもよい。最も好ましい鉄化合物は、酸化鉄である。
【0025】
鉄化合物の量は、組成物の質量に対して、好ましくは0.5~4%、より好ましくは1~3%、最も好ましくは1.5~2%の範囲にある。
【0026】
本発明の組成物はまた、2種の多糖を含む。第1の多糖はマルトデキストリンを含む。最も好ましい一態様では、第1の多糖は、マルトデキストリンである。
【0027】
マルトデキストリンは、非常によく知られた食品添加物である。これは風味のない物質である。これは一般に、植物デンプンから加水分解によって製造される。デンプンは、好ましくはトウモロコシ又はコムギである。これは一般に、風味食品(savouries)の口当たりを改善することが知られている。
【0028】
本発明の組成物に使用されるマルトデキストリンの量は、組成物の、好ましくは0.5~5質量%、より好ましくは1~4質量%、更に好ましくは2~4質量%、最も好ましくは2~3質量%の範囲にある。
【0029】
本発明の組成物はまた、第2の多糖を含む。第2の多糖はアラビアゴムである。これは一般に、アカシアガムとしても既知である。これは、安定剤及び/又は増粘剤として食品産業で広く使用されている食用の水溶性ガムである。
【0030】
本発明の組成物中のアラビアゴムの量は、好ましくは0.05~6質量%、より好ましくは0.1~4質量%、更に好ましくは0.1~3質量%、最も好ましくは0.5~2質量%の範囲にある。
【0031】
本発明の組成物は、葉茶製品を含む。葉茶製品は、好ましくは、葉茶の製造プロセスの後に得られ、且つ葉茶製品の質量に対して10%未満、好ましくは7%未満、最も好ましくは5%未満の水分を含む茶製品を意味する。
【0032】
葉茶製品は、好ましくは、紅茶製品、緑茶製品、ウーロン茶製品、白茶製品、又はそれらのブレンドから選択されてもよい。
【0033】
紅茶は、一般に、発酵茶を指し、新鮮な茶葉を加工することによって製造される。新鮮な茶葉とは、水分含有量が30質量%未満になるまで乾燥させたことのない茶葉、芽、及び/又は茎を指し、通常は60~90%の範囲の水分含有量を有する。紅茶は、緑茶とは異なる特徴を有する。紅茶は、緑茶よりも渋みがあり、苦みが少ない。また、紅茶液(liquor)の赤みは、緑茶よりもかなり強い。紅茶には、より高いレベルのテアフラビン類も含有されている。
【0034】
紅茶のプロセスにおいて、発酵とは、例えば、葉の浸漬による細胞の機械的破壊によってある種の内因性酵素及び基質を一緒にした場合に茶が受ける酸化及び加水分解のプロセスを指す。このプロセス中、葉に含まれる無色のカテキンは、黄色及びオレンジ色から暗褐色のポリフェノール物質の複雑な混合物に変換される。
【0035】
緑茶は、実質的に発酵していない茶を指す。緑茶は、紅茶とは異なる特徴を有する。緑茶液は、紅茶とは異なって色が薄い。緑茶はまた、カテキンが豊富に含まれており、テアフラビン類は少量又はまったく含まれていない。
【0036】
ウーロン茶とは、半発酵茶を指す。
【0037】
本発明の目的に好ましい葉茶製品は、紅茶又は緑茶のいずれかであり、最も好ましいのは紅茶である。
【0038】
組成物中の葉茶製品の量は、組成物の、好ましくは85~98.5質量%、より好ましくは87~98.5質量%、更に好ましくは90~98.5質量%、最も好ましくは92~98.5質量%の範囲にある。
【0039】
本発明による組成物は、さらなる栄養素を含んでもよい。さらなる栄養素は、ビタミンC又は任意の他の適切な栄養素から選択することができる。
【0040】
本発明はまた、鉄強化茶組成物を提供する方法であって、
a)25℃の水への溶解度が0.001g/mL未満の鉄化合物を用意する工程と;
b)鉄化合物を微粉化して、0.1~10μmの範囲の粒径を生成する工程と;
c)第1の、マルトデキストリンを含む多糖及び第2の、アラビアゴムを含む多糖を、微粉化鉄化合物に添加する工程と;
d)工程(c)の材料を混合して、コーティング混合物を得る工程と;
e)工程dで得られたコーティング混合物で葉茶製品をコーティングする工程と
を含む方法を提供する。
【0041】
方法は、25℃の水への溶解度が0.001g/mL未満の鉄化合物を用意することから始まる。より好ましくは、溶解度は、0.0005g/mL未満である。最も好ましくは、鉄化合物は、水不溶性である。その後、鉄化合物は、微粉化(サイズ縮小)の工程を経る。微粉化鉄化合物の粒径は、好ましくは0.1~50μmの範囲、より好ましくは0.1~30μmの範囲、更により好ましくは0.1~20μmの範囲、最も好ましくは0.1~10μmの範囲にある。
【0042】
代わりに、前述の溶解度及び粒径を有する鉄化合物を、本発明の方法で直接使用することもできる。
【0043】
次の工程において、第1の、マルトデキストリンを含む多糖及び第2の、アラビアゴムを含む多糖を、微粉化鉄化合物に添加する。次いで、これらの材料を適切に混合して、コーティング混合物を得る。
【0044】
その後、このコーティング混合物を葉茶製品にコーティングする。葉茶製品は、好ましくは、紅茶製品、緑茶製品、ウーロン茶製品、白茶製品、又はそれらのブレンドから選択されてもよい。
【0045】
成分のより良好な混合を助けるため、コーティング溶液の調製中に水を添加することが好ましい。好ましくは、水の温度は、25℃~75℃、より好ましくは30℃~70℃、更により好ましくは35℃~65℃、最も好ましくは35℃~55℃の範囲にある。
【0046】
次に、本発明を以下の非限定的な実施例によって示す。実施例は例示するためだけのものであり、どのような形でも本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例
【0047】
様々な鉄強化茶製品の調製
以下に記載する方法を使用して、一連の様々な鉄強化茶製品を調製した。
【0048】
(実施例A)
フマル酸第一鉄5g(溶解度:25℃で水100gあたり0.14g)、アラビアゴム1g、及びマルトデキストリン3gを蒸留水43g(50℃)に溶解して、コーティング溶液を調製した。次いで、紅茶葉茶(ケニアから入手)91gをボウルに取り、コーティング溶液を葉茶に振りかけ、ホバートブレンダーで十分に混合した。次いで、この混合物をセラミックス板上に広げ、80℃の熱風オーブンで乾燥させた。
【0049】
次いで、上記で生成した乾燥葉茶1.9gを、通常の紅茶葉茶(ケニアから入手)0.1gとブレンドした。次いで、このブレンド物を使用して、茶浸出液を調製した。
【0050】
(実施例B)
フマル酸第一鉄5g(溶解度:25℃で水100gあたり0.14g)、アラビアゴム1g、及びマルトデキストリン3gを蒸留水43g(50℃)に溶解して、コーティング溶液を調製した。次いで、紅茶葉茶(ケニアから入手)91gをボウルに取り、コーティング溶液を葉茶に振りかけ、ホバートブレンダーで十分に混合した。次いで、この混合物をセラミックス板上に広げ、80℃の熱風オーブンで乾燥させた。
【0051】
次いで、上記で生成した乾燥葉茶1.8gを、通常の紅茶葉茶(ケニアから入手)0.2gとブレンドした。次いで、このブレンド物を使用して、茶浸出液を調製した。
【0052】
(実施例1)
酸化鉄(水に不溶)2.6gを、ミル(分析用ミル、モデル:IKA A11ベーシック)を使用して10μmの粒子に微粉化した。次いで、アラビアゴム1g及びマルトデキストリン3gを蒸留水(50℃)43gに溶解して、バインダー溶液を調製した。微粉化酸化鉄をバインダー溶液に添加して、コーティング溶液を調製した。この後、紅茶葉茶(ケニアから入手)93.4gをボウルに取り、コーティング溶液を葉茶に振りかけ、ホバートブレンダーで十分に混合した。次いで、この混合物をセラミックス板上に広げ、80℃の熱風オーブンで乾燥させた。
【0053】
次いで、上記で生成した乾燥葉茶1.9gを、通常の紅茶葉茶(ケニアから入手)0.1gとブレンドする。次いで、このブレンド物を使用して、茶浸出液を調製した。
【0054】
(実施例2)
酸化鉄(水に不溶)2.6gを、ミル(分析用ミル、モデル:IKA A11ベーシック)を使用して10μmの粒子に微粉化した。次いで、アラビアゴム1g及びマルトデキストリン3gを蒸留水(50℃)43gに溶解して、バインダー溶液を調製した。微粉化酸化鉄をバインダー溶液に添加して、コーティング溶液を調製した。この後、紅茶葉茶(ケニアから入手)93.4gをボウルに取り、コーティング溶液を葉茶に振りかけ、ホバートブレンダーで十分に混合した。次いで、この混合物をセラミックス板上に広げ、80℃の熱風オーブンで乾燥させた。
【0055】
次いで、上記で生成した乾燥葉茶1.8gを、通常の紅茶葉茶(ケニアから入手)0.2gとブレンドする。次いで、このブレンド物を使用して、茶浸出液を調製した。
【0056】
実施例では、フマル酸第一鉄は、Sigma Aldrich社(カタログ番号F5381)から入手し、アラビアゴムは、Merck社(カタログ番号1042281000)から入手し、マルトデキストリンは、Sigma Aldrich社(カタログ番号419699-100G)から入手し、酸化鉄は、Sigma Aldrich社(カタログ番号529311)から入手した。
【0057】
上記の茶製品を使用して、以下のプロトコルに従って浸出液を調製した。
【0058】
茶製品2gをマグカップに取り、そこに熱湯200mLを注いだ。2分間淹出した後、内容物をこし器を使用してろ過し、ろ過した茶をさらなる分析のために採取した。
【0059】
次いで、以下の手順を使用して、a*及びb*値を測定した。
【0060】
Hunter lab Ultrascan XE(Model-USXE/UNIバージョン3.4、Hunterlab Associates Laboratories Inc.社、バージニア州)を使用して、色(CIE L*a*b*値)を測定した。光源としてハロゲンサイクルランプを使用した。使用した光源はD65であり、観察者角度10°で測定を行った。経路長10mmの石英キュベットを使用して、測定を行った。上記で調製した茶浸出液をキュベットの縁まで満たし、色測定用の機器に配置した。取扱説明書に示された指示に従って、標準的な白色タイル(Hunterlab Duffuse/8°、モード-RSEX、ポート-1"、領域-大)を使用して、器機を較正した。L*a*b*値を室温(25℃)で測定した。
【0061】
a*及びb*軸は、特定の数値制限は有さない。正のa*は赤であり、負のa*は緑である。a*値が高いほど、浸出液はより赤く見える。同様に、正のb*は黄であり、負のb*は青である。b*値が高いほど、浸出液は明るく見える。
【0062】
更に、通常のICP-OES(誘導結合プラズマ-発光分光分析装置)の手順に従って、茶浸出液中の鉄の量を測定した。
【0063】
茶浸出液を濃硝酸(約65%)で酸性化し、マイクロ波ダイジェスタ(Anton Paar社製、モデル:Multiwave Go)で60分間温浸した。次いで、温浸した溶液をICP-OES(Perkin Elmer社)に注入し、発光スペクトル強度を213.8nmの波長で測定した。次いで、標準検量線を使用して、強度を鉄の濃度に変換した。
【0064】
結果を以下の表 1にまとめる。
【0065】
【表1】
【0066】
上記の表から、本発明の範囲内にある実施例(1及び2)は、濃い赤み(a*)及び増強された明るさ(b*)を有する茶浸出液を提供することが明らかである。一方、実施例A及びBは、a*及びb*の値においてはるかに劣る茶浸出液を提供する。更に、実施例1及び2は、実施例A及びBと比較して、はるかに高い鉄供給をもたらす。
【0067】
別の一連の異なる鉄強化茶製品を、以下に記載する方法を使用して製造した。
【0068】
(実施例C)
この実施例は、以下のブレンド量が異なる以外は、実施例A(フマル酸第一鉄を含む)と同じである。
【0069】
この場合、生成した乾燥葉茶3.8gを、通常の紅茶葉茶(ケニアから入手)0.2gとブレンドした。次いで、このブレンド物を使用して、茶浸出液を調製した。
【0070】
(実施例D)
この実施例は、以下のブレンド量が異なる以外は、実施例B(フマル酸第一鉄を含む)と同じである。
【0071】
この場合、生成した乾燥葉茶3.6gを、通常の紅茶葉茶(ケニアから入手)0.4gとブレンドした。次いで、このブレンド物を使用して、茶浸出液を調製した。
【0072】
(実施例3)
この実施例は、以下のブレンド量が異なる以外は、実施例1(酸化鉄を含む)と同じである。
【0073】
この場合、生成した乾燥葉茶3.8gを、通常の紅茶葉茶(ケニアから入手)0.2gとブレンドした。次いで、このブレンド物を使用して、茶浸出液を調製した。
【0074】
(実施例4)
この実施例は、以下のブレンド量が異なる以外は、実施例2(酸化鉄を含む)と同じである。
【0075】
この場合、生成した乾燥葉茶3.6gを、通常の紅茶葉茶(ケニアから入手)0.4gとブレンドした。次いで、このブレンド物を使用して、茶浸出液を調製した。
【0076】
上記の茶製品を調製した後、以下のプロトコルを使用して、茶製品からミルク入り浸出液(milk infusion)を生成した。
【0077】
水120mLをミルク80mLに添加し、鍋に入れた。その後、そこに茶製品4gを添加した。鍋をコンロで加熱した。ミルクを1回温めた後、内容物をこし器を使用してろ過し、ろ過したミルク入り茶浸出液をさらなる分析のために採取した。
【0078】
次いで、前項に記載した手順を使用して、a*及びb*値を測定した。
【0079】
結果を以下の表 2にまとめる。
【0080】
【表2】
【0081】
上記の表から、本発明の範囲内にある実施例(3及び4)は、濃い赤み(a*)及び増強された明るさ(b*)を有する茶浸出液を提供することが明らかである。一方、実施例C及びDは、a*及びb*値においてはるかに劣る茶浸出液を提供する。
【0082】
したがって、ミルク入り茶浸出液であろうと通常の浸出液であろうと、本発明によって生成した茶製品は、はるかに高いa*及びb*値を提供する。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)微粉化鉄化合物;
b)第1の、マルトデキストリンを含む多糖;
c)第2の、アラビアゴムを含む多糖;及び
d)葉茶製品
を含み、
前記微粉化鉄化合物の粒径が、0.1~10μmの範囲にある、茶組成物
【請求項2】
前記鉄化合物の25℃の水への溶解度が、0.0001g/100mL未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記鉄化合物が、酸化鉄、ピロリン酸第二鉄、カルボニル鉄、電解鉄、及びそれらの組合せから選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記鉄化合物が、酸化鉄、ピロリン酸第二鉄である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記マルトデキストリンの量が、前記組成物の0.5~5質量%の範囲にある、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記アラビアゴムの量が、0.05~6質量%の範囲にある、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記葉茶製品が、紅茶製品、緑茶製品、ウーロン茶製品、白茶製品、又はそれらのブレンドから選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記葉茶製品が、紅茶製品である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物中の前記葉茶製品の量が、前記組成物の85~98.5質量%の範囲にある、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
さらなる栄養素を含んでもよい、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
鉄強化茶組成物を提供する方法であって、
a)25℃の水への溶解度が0.0001g/mL未満の鉄化合物を用意する工程と;
b)前記鉄化合物を微粉化して、0.1~10μmの範囲の粒径を生成する工程と;
c)第1の、マルトデキストリンを含む多糖及び第2の、アラビアゴムを含む多糖を、前記微粉化鉄化合物に添加する工程と;
d)工程(c)の材料を混合して、コーティング混合物を得る工程と;
e)工程dで得られた前記コーティング混合物で葉茶製品をコーティングする工程と
を含む方法。
【請求項12】
工程(d)で水が添加される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記水の温度が、25℃~75℃の範囲にある、請求項11又は12に記載の方法。
【国際調査報告】