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特表2024-5032062-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルを製造するプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルを製造するプロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 227/18 20060101AFI20240118BHJP
   C07C 227/40 20060101ALI20240118BHJP
   C07C 229/54 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C07C227/18 CSP
C07C227/40
C07C229/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536384
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-06-15
(86)【国際出願番号】 EP2021086334
(87)【国際公開番号】W WO2022129431
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】20215315.1
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521037411
【氏名又は名称】ベーアーエスエフ・エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】シェイン-アルブレヒト,カリン
(72)【発明者】
【氏名】エーリス,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ブランショ,マチュー
(72)【発明者】
【氏名】カウフホルト,デニス
(72)【発明者】
【氏名】クローネマイヤー,ヘルムート
(72)【発明者】
【氏名】ウロッチ,セバスチャン
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AC48
4H006AD16
4H006AD17
4H006BN30
4H006BR60
4H006BT32
4H006BU46
(57)【要約】
本発明は、8.2以下のガードナー値を有する2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルを製造するプロセスであって、2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸をn-ヘキサノールと反応させることによって得られた反応混合物を7超のpHに調整し、続いて水相で少なくとも1回抽出することと、溶解された2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルを少なくとも2種の異なる吸着剤上で吸着させることとを含むプロセスに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルを製造するプロセスであって、
a)フタル酸無水物を3-N,N-ジエチルアミノフェノールと反応させて、2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸を得る工程と、
b)工程a)で得られた前記2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸をn-ヘキサノールと反応させて、2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルを得る工程と、
c)工程b)で得られた前記反応混合物を7超のpHに調整し、続いて水相で少なくとも1回抽出する工程と、
d)前記溶解された2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルを少なくとも2種の異なる吸着剤上で吸着させる工程と
を含むプロセス。
【請求項2】
工程a)で適用される前記3-N,N-ジエチルアミノフェノールは、前記フタル酸無水物と反応する前に蒸留され、且つ/又は
20以下のガードナー値、80以下の黄色度指数及び/若しくは350以下のHess-Ivesを有する、請求項1に記載の製造プロセス。
【請求項3】
前記抽出工程c)の前記反応混合物の前記pHは、アルカリ水溶液で調整される、請求項1又は2に記載の製造プロセス。
【請求項4】
抽出工程c)の前記反応混合物の前記pHは、8~14、好ましくは9~13、特に10.5~12.5である、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項5】
工程c)において、工程b)で得られた前記反応混合物は、工程b)で得られた前記反応混合物に塩基を添加することにより、7超のpHに調整される、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項6】
cII)前記抽出工程c)で得られた有機相から前記2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルを結晶化させる工程
を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項7】
前記結晶化工程cII)において、前記結晶化された2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルは、前記吸着工程d)前に有機溶媒に溶解され、好ましくは、前記結晶化された2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルは、非極性溶媒、より好ましくはトルエンに溶解される、請求項6に記載の製造プロセス。
【請求項8】
前記少なくとも2種の異なる吸着剤は、活性炭、酸化アルミニウム、ゼオライト及びシリカゲル、好ましくは活性炭及びシリカゲルからなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項9】
前記吸着工程d)において、前記溶解された2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルは、最初にシリカゲル上で吸着され、且つ次に活性炭上で吸着される、請求項1~8のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項10】
吸着工程d)の溶液は、吸着工程d)の前記溶液の総重量を基準として10~80重量%、好ましくは20~60重量%、特に25~40重量%の2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項11】
前記エステル化工程b)は、酸性触媒の存在下で実施され、好ましくは、前記酸性触媒は、硫酸である、請求項1~10のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項12】
e)前記溶媒を除去する工程であって、好ましくは、前記溶媒は、蒸留によって除去される、工程
を更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項13】
前記製造された2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルは、8.2以下のガードナー値、89未満の黄色度指数、19未満のHess-Ivesを有し、且つ/又は5ppm未満、好ましくは2ppm未満、特に1ppm未満のローダミン及びそのエステルを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項14】
8.2以下、好ましくは7.9未満、特に7.5未満のガードナー値を有し、且つ5ppm未満、好ましくは2ppm未満、特に1ppm未満のローダミン及びそのエステルを含む2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルであって、好ましくは、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセスによって得られる2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステル。
【請求項15】
89未満、好ましくは86未満の黄色度指数及び/又は19未満、好ましくは17未満のHess-Ivesを更に有する、請求項14に記載の2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低いガードナー値を有する2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルを製造するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
UV放射線は、ヒトの皮膚に有害な効果を引き起こす。UV放射線は、皮膚の日焼けという急性影響に加えて、皮膚癌のリスクを増大させることも知られている。更に、UV-A光及びUV-B光への長期間の曝露は、皮膚における光毒性反応及び光アレルギー反応を引き起こす可能性があり、皮膚の老化を加速させる可能性がある。
【0003】
UV放射線からヒトの皮膚を保護するために、UV-Aフィルター、UV-Bフィルター及び広帯域フィルターを含む様々な太陽光線保護UVフィルター(UV吸収剤とも称される)が存在する。日焼け止め又は化粧品組成物には、これらのフィルターが添加されている。UVフィルターは、有機又は無機、粒子状又は非粒子状の化合物であり、これらの全ては、UV光領域で高い吸収効力を有する。一般に、UV光は、UV-A放射線(320~400nm)及びUV-B放射線(280~320nm)に分けることができる。UVフィルターは、吸収極大の位置に応じて、UV-Aフィルター及びUV-Bフィルターに分けられる。UVフィルターがUV-A光とUV-B光との両方を吸収する場合、それは、広帯域吸収剤と称される。
【0004】
2006年以降、EU委員会は、全ての日焼け止め又は化粧品組成物が、表示された太陽光線保護指数(SPF)の少なくとも3分の1のUV-A保護指数を有するべきであることを勧告している(太陽光線保護指数は、主にUV-B保護を指す)。
【0005】
2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルは、効果的なUV-Aフィルターであり、UV放射線から皮膚を保護するために(例えば、日焼け止め中で)使用されている。2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルは、下記に表され、以下でDHHB又は式(I)の化合物とも称される。
【化1】
【0006】
2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルを製造するプロセスは、例えば、独国特許出願公開第10011317号明細書、欧州特許第2155660号明細書及び国際公開第2003097578号パンフレットによって公知である。これに関して、いくつかの課題があることが認められている。2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルの合成プロセス中、ローダミンBタイプの染料(例えば、[9-(2-カルボキシフェニル)-6-ジエチルアミノ-3-キサンテンイリデン]-ジエチルアンモニウム塩)及び対応するエステルが不純物として形成され、これにより最終生成物に望ましくない変色がもたらされる。最終生成物(5ppm未満のローダミンBタイプの色素)を精製するために、追加の精製工程が必要となる。従来、この精製工程は、不純な2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルを非極性溶媒に溶解させ、吸着剤上に吸着させ、且つ層を通過させた後に溶媒を蒸発させることを含む。
【0007】
その後、蒸留によって溶媒を分離することにより、2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルを単離した後、清浄な最終生成物を融解物としてボトルに充填し、任意選択により更に欧州特許第2155660号明細書に従って固化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第10011317号明細書
【特許文献2】欧州特許第2155660号明細書
【特許文献3】国際公開第2003097578号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、特に着色不純物が低減された2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルを迅速且つ効率的に製造するプロセスが引き続き求められている。特に、2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルの望ましくない赤み及び茶色がかった変色を生じさせる着色不純物を低減することが目的であった。更に、本発明の目的は、効率的であり、経済的に改善された、結晶性の2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルを単離するプロセスを提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことに、本発明によるプロセスにより、上記の目的の少なくとも1つが達成され得ることが見出された。本発明のプロセスは、ローダミン含有量が低く(5ppm未満、特に1ppm未満)、潜在的な更なる非赤色着色不純物の含有量が低い2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルを提供する。
【0011】
特に、本発明の発明者らにより、式(I)の化合物を効率的に製造するプロセスが見出された。
【0012】
したがって、第1の態様では、本発明は、2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルを製造するプロセスであって、
a)フタル酸無水物を3-N,N-ジエチルアミノフェノールと反応させて、2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸を得る工程と、
b)工程a)で得られた2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸をn-ヘキサノールと反応させて、2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルを得る工程と、
c)工程b)で得られた反応混合物を7超のpHに調整し、続いて水相で少なくとも1回抽出する工程と、
d)溶解された2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルを少なくとも2種の異なる吸着剤上で吸着させる工程と
を含むプロセスに関する。
【0013】
以下では、第1の態様のプロセスの好ましい実施形態を更に詳細に説明する。それぞれの好ましい実施形態は、単独で及び他の好ましい実施形態との組み合わせにおいて適切であることが理解されるべきである。
【0014】
第1の態様の好ましい実施形態A1では、工程a)で適用される3-N,N-ジエチルアミノフェノールは、フタル酸無水物と反応する前に蒸留され、且つ/又は20以下のガードナー値、80以下の黄色度指数及び/若しくは350以下のHess-Ivesを有する。
【0015】
第1の態様の好ましい実施形態A2では、抽出工程c)の反応混合物のpHは、アルカリ水溶液で調整される。
【0016】
第1の態様の好ましい実施形態A3では、抽出工程c)の反応混合物のpHは、8~14、好ましくは9~13、特に10.5~12.5である。
【0017】
第1の態様の好ましい実施形態A4では、工程c)において、工程b)で得られた反応混合物は、工程b)で得られた反応混合物に塩基を添加することにより、7超のpHに調整される。
【0018】
第1の態様の好ましい実施形態A5では、プロセスは、
cII)抽出工程c)で得られた有機相から2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルを結晶化させる工程
を更に含む。
【0019】
第1の態様の好ましい実施形態A6では、結晶化工程cII)において、結晶化された2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルは、吸着工程d)前に有機溶媒に溶解され、好ましくは、結晶化された2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルは、非極性溶媒、より好ましくはトルエンに溶解される。
【0020】
第1の態様の好ましい実施形態A7では、少なくとも2種の異なる吸着剤は、活性炭、酸化アルミニウム、ゼオライト及びシリカゲル、好ましくは活性炭及びシリカゲルからなる群から選択される。
【0021】
第1の態様の好ましい実施形態A8では、吸着工程d)において、溶解された2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルは、最初にシリカゲル上で吸着され、且つ次に活性炭上で吸着される。
【0022】
第1の態様の好ましい実施形態A9では、吸着工程d)の溶液は、吸着工程d)の溶液の総重量を基準として10~80重量%、好ましくは20~60重量%、特に25~40重量%の2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルを含む。
【0023】
第1の態様の好ましい実施形態A10では、エステル化工程b)は、酸性触媒の存在下で実施され、好ましくは、酸性触媒は、硫酸である。
【0024】
第1の態様の好ましい実施形態A11では、プロセスは、
e)溶媒を除去する工程であって、好ましくは、溶媒は、蒸留によって除去される、工程
を更に含む。
【0025】
第1の態様の好ましい実施形態A12では、製造された2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルは、8.2以下のガードナー値、89未満の黄色度指数、19未満のHess-Ivesを有し、且つ/又は5ppm未満、好ましくは2ppm未満、特に1ppm未満のローダミン及びそのエステルを含む。
【0026】
第2の態様では、本発明は、8.2以下、好ましくは7.9未満、特に7.5未満のガードナー値を有し、且つ5ppm未満、好ましくは2ppm未満、特に1ppm未満のローダミン及びそのエステルを含む2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルであって、好ましくは、第1の態様によるプロセスによって得られる2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルに関する。
【0027】
第2の態様の好ましい実施形態B1では、2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルは、89未満、好ましくは86未満の黄色度指数及び/又は19未満、好ましくは17未満のHess-Ivesを更に有する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の例示的な実施形態を詳細に説明する前に、本発明を理解するために重要な定義を示す。
【0029】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される単数形「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、文脈上明確に指示されない限り、それぞれの複数形も包含する。本発明に関連して、「約」及び「およそ」という用語は、対象とする特徴の技術的効果が依然として確保されると当業者が認識するであろう精度の幅を指す。この用語は、典型的には、示された数値から±20%、好ましくは±15%、より好ましくは±10%、更により好ましくは±5%のずれを指す。「含む」という用語は、非限定的であることが理解されるべきである。本発明の目的では、「からなる」という用語は、「含む」という用語の好ましい実施形態であると見なされる。以下では、ある群が少なくとも特定の数の実施形態を含むと定義される場合、好ましくは、これらの実施形態のみからなる群も包含することを意味する。更に、本明細書及び特許請求の範囲における「第1」、「第2」、「第3」又は「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」などの用語は、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも連続した順番又は時系列順を説明するものではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であることと、本明細書に記載される本発明の実施形態は、本明細書に記載又は図示する順序以外の順序で実施することが可能であることとが理解されるべきである。「第1」、「第2」、「第3」又は「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」、「i」、「ii」などの用語が方法若しくは使用又はアッセイの工程に関する場合、本出願で別段の指定がない限り、本明細書で前述又は後述するように、この工程間に時間を置かないか、又は時間間隔の一貫性がなく、即ち、この工程は、同時に実施され得るか、又はこのような工程間に数秒間、数分間、数時間、数日間、数週間、数ヶ月間若しくは更に数年間の時間間隔があり得る。本明細書に記載される特定の方法、手順、試薬などは、変動する可能性があるため、本発明は、それらに限定されるものではないことが理解されるべきである。本明細書において使用する用語は、特定の実施形態を記載する目的のみに使用され、本発明の範囲を限定することを意図せず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されるべきである。他に定義しない限り、本明細書において使用する全ての技術及び科学用語は、当業者が一般に理解する意味と同義である。
【0030】
「本発明による化合物」又は「式(I)の化合物」という用語は、2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルを指す。
【0031】
「ハロゲン」という用語は、それぞれの場合にフッ素、臭素、塩素又はヨウ素を指し、特にフッ素、塩素又は臭素を指す。
【0032】
「ボディーケア製品」という用語は、人体に適用するのに好適なあらゆる製品、例えば日焼け止め組成物、バス及びシャワー製品、香料及び芳香性物質を含む製剤、ヘアケア製品、歯磨剤、化粧用製剤並びに活性成分を含有する化粧品配合物を指す。日焼け止め組成物が好ましい。
【0033】
「日焼け止め組成物」、又は「日焼け止め」、又は「スキンケア製品」という用語は、UV放射線の特定の部分を反射及び/又は吸収するあらゆる外用剤を指す。したがって、「日焼け止め組成物」という用語は、日焼け止め組成物だけでなく、UV保護を提供するあらゆる化粧品組成物も含むことが理解されるべきである。「外用剤」という用語は、皮膚に塗布される製品を指し、例えばスプレー、ローション、クリーム、オイル、フォーム、パウダー又はゲルを指し得る。本発明によれば、日焼け止め組成物は、1種以上の活性剤、例えば有機UVフィルター及び他の成分又は添加剤、例えば乳化剤、軟化剤、粘性調整剤、安定剤、保存剤又は香料を含み得る。
【0034】
「デイリーケア組成物」という用語は、UV放射線の特定の部分を反射又は吸収するあらゆる外用剤を指し、人体、例えば顔、体又は毛髪のための日常的なケア製品として使用されるものである。デイリーケア組成物は、1種以上の活性剤、例えば有機又は無機UVフィルター及び他の成分又は添加剤、例えば乳化剤、軟化剤、粘性調整剤、安定剤、保存剤又は香料を含み得る。
【0035】
好適なバス及びシャワー添加剤は、例えば、シャワージェル、バスソルト、バブルバス及び石鹸である。
【0036】
香料及び芳香性物質を含有する好適な製剤は、特に香水、香料、化粧水及びシェービングローション(アフターシェーブ製剤)である。
【0037】
好適なヘアケア製品は、例えば、ヒト及び動物、特に犬用シャンプー、ヘアコンディショナー、髪のスタイリング及び処理用製品、パーマ剤、ヘアスプレー及びラッカー、整髪用ジェル、毛髪固定剤及び毛髪染料又は脱色剤である。
【0038】
好適な歯磨剤は、例えば、歯用クリーム、練り歯磨き、洗口剤、口内洗浄液、歯石防止製剤及び義歯用洗浄剤である。
【0039】
好適な化粧用製剤は、例えば、リップスティック、マニキュア液、アイシャドウ、マスカラ、ドライ及びモイストメークアップ、ルージュ、パウダー、脱毛剤並びに日焼け用ローションである。
【0040】
活性成分を含有する好適な化粧品配合物は、例えば、ホルモン製剤、ビタミン製剤、野菜抽出物製剤及び抗菌製剤である。
【0041】
言及されるボディーケア製品は、クリーム、軟膏、ペースト、フォーム、ゲル、ローション、パウダー、メークアップ、スプレー、スティック又はエアロゾルの形態であり得る。それにより、式(I)の化合物は、光安定剤として作用し得る。
【0042】
「臨界波長」という用語は、UV保護曲線下面積(波長に対する保護率)が、UV領域(280~400nm)の曲線下の総面積の90%となる波長として定義される。例えば、370nmの臨界波長は、日焼け止め組成物の保護がUV-Bの波長、即ち280~320nmの波長に限定されず、UV領域の保護曲線下の総面積の90%が370nmで達成されるような方法で370nmまで拡大されることを示す。
【0043】
本明細書で使用する場合、「紫外線フィルター」又は「UVフィルター」という用語は、太陽光によって生じるUV放射線を吸収及び/又は反射することのできる有機又は無機化合物を指す。UVフィルターは、それらのUV保護曲線を基準にしてUV-A、UV-B又は広帯域フィルターとして分類することができる。本出願に関連して、広帯域フィルターは、UV-A保護も提供するため、UV-Aフィルターとして列記することができる。換言すれば、好ましいUV-Aフィルターは、広帯域フィルターも含む。
【0044】
「広帯域」保護(広域スペクトル保護又は広域保護とも称される)の定義は、「臨界波長」に基づくものである。広帯域を適用範囲とするには、UV-B及びUV-Aの保護を提供する必要がある。米国での基準によれば、広域スペクトル保護を達成するために、少なくとも370nmの臨界波長が必要となる。更に、全ての日焼け止め又は化粧品組成物は、表示された太陽光線保護指数(SPF)の少なくとも3分の1のUVA保護指数を有するべきである(例えば、日焼け止め組成物がSPF30である場合、UVA保護指数は、少なくとも10でなければならない)ことが欧州委員会によって勧告されている。
【0045】
本発明によるプロセスに関する好ましい実施形態を以下に記載する。本発明の好ましい実施形態は、単独で又は互いの組み合わせにおいて好ましいことが理解されるべきである。
【0046】
上記で示されるように、一実施形態では、本発明は、2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルを製造するプロセスであって、
a)フタル酸無水物を3-N,N-ジエチルアミノフェノールと反応させて、2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸を得る工程と、
b)工程a)で得られた2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸をn-ヘキサノールと反応させて、2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルを得る工程と、
c)工程b)で得られた反応混合物を7超のpHに調整し、続いて水相で少なくとも1回抽出する工程と、
d)溶解された2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルを少なくとも2種の異なる吸着剤上で吸着させる工程と
を含むプロセスに関する。
【0047】
プロセスに関する好ましい実施形態を以下に定義する。
【0048】
本発明の好ましい実施形態では、工程a)で適用される3-N,N-ジエチルアミノフェノールは、フタル酸無水物と反応する前に蒸留される。蒸留は、当技術分野で公知の任意の方法によって実施され得る。
【0049】
好ましくは、工程a)で適用される3-N,N-ジエチルアミノフェノールの蒸留は、工程a)による反応前の72時間以内、より好ましくは48時間以内、更により好ましくは24時間以内、特に12時間以内に行われる。特定の好ましい実施形態では、工程a)で適用される3-N,N-ジエチルアミノフェノールの蒸留は、工程a)による反応前の6時間以内、より好ましくは3時間以内、更により好ましくは1時間以内、なおより好ましくは30分以内に行われる。
【0050】
本発明の好ましい実施形態では、工程a)で適用される3-N,N-ジエチルアミノフェノールは、20以下、より好ましくは18以下、更により好ましくは15以下、なおより好ましくは10以下、特に7以下のガードナー値(ASTM D1544-04に従って測定される)を有する。
【0051】
本発明の別の好ましい実施形態では、工程a)で適用される3-N,N-ジエチルアミノフェノールは、80以下、より好ましくは70以下、更により好ましくは60以下、なおより好ましくは50以下、特に40以下の黄色度指数(CIE XYZ三刺激値、標準光源C及び2°標準観察者を基準としてASTM D5386-93bに従って測定される)を有する。
【0052】
本発明の別の好ましい実施形態では、工程a)で適用される3-N,N-ジエチルアミノフェノールは、350以下、より好ましくは280以下、更により好ましくは150以下、なおより好ましくは50以下、特に20以下のHess-Ives値(DGK法の番号F 050.2に従って測定される)を有する。
【0053】
好ましくは、工程a)で適用される3-N,N-ジエチルアミノフェノールは、20以下のガードナー値(ASTM D1544-04によって測定される)、80以下の黄色度指数(CIE XYZ三刺激値、標準光源C及び2°標準観察者を基準としてASTM D5386-93bに従って測定される)及び350以下のHess-Ives値(DGK法の番号F 050.2に従って測定される)を有する。
【0054】
本発明の好ましい実施形態では、エステル化工程b)は、酸性触媒の存在下で実施される。好適な酸性触媒は、例えば、塩化水素、硫酸、硝酸、リン酸、スルホン酸、例えばベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸又はこれらの酸の混合物であるが、例えばLewatits S100(Bayer)などのスルホン酸基含有イオン交換体でもある。好ましい酸性触媒は、塩化水素、硫酸、メタンスルホン酸及びp-トルエンスルホン酸、特に硫酸である。
【0055】
好ましくは、工程a)及びb)による反応は、溶媒中で実施される。溶媒は、ベンゼン、トルエン及びキシレンなどの芳香族炭化水素;オクタン、石油エーテル、イソオクタン及びデカンなどの脂肪族C5~C12炭化水素;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル及びテトラヒドロフランなどのエーテル;アセトン及びアセトフェノンなどのケトン;酢酸エチル及び酢酸イソプロピルなどのエステル;メタノール、エタノール、イソプロパノール及びヘキサノールなどのアルコール;ペルクロロエチレン及びクロロベンゼンなどの塩素化炭化水素;シクロヘキサン;並びにこれらの混合物からなる群から選択され得る。特に好ましい溶媒は、工程a)ではトルエン及びキシレン並びに工程b)ではヘキサノールである。
【0056】
工程c)において、当技術分野で公知の任意の好適な塩基でpHを調整し得る。好ましくは、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩及びアルカリ土類金属炭酸水素塩、アルカリ金属アルコラート及びアルカリ土類金属アルコラート並びに3級アミン、ピリジン及び二環式アミンを含む窒素含有塩基に由来するアルカリ溶液でpHを調整する。特に、アルカリ水溶液によってpHを調整する。
【0057】
好適なアルカリ水溶液は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属の少なくとも1種の水酸化物を含むアルカリ水溶液であり得る。水酸化ナトリウム水溶液及び水酸化カリウム水溶液が好ましい。好ましくは、アルカリ水溶液は、0.5~5%、より好ましくは1~4%、特に2~3%の水酸化ナトリウム水溶液である。
【0058】
本発明の好ましい実施形態では、抽出工程c)の反応混合物のpHは、7.5超、好ましくは8超、より好ましくは8.5超、特に9超である。
【0059】
本発明の好ましい実施形態では、抽出工程c)の反応混合物のpHは、8~14、より好ましくは9~13、特に10.5~12.5である。代わりに、工程b)で得られた反応混合物に水を加え、より高濃度の塩基、例えば25%の水酸化ナトリウム水溶液又は25%の水酸化カリウム水溶液を加えることによってpHを調整する。これに関して、pHが7超、好ましくは8~14、より好ましくは9~13、特に10.5~12.5に達したとき、より高濃度の塩基の添加を停止する。
【0060】
本発明の好ましい実施形態では、工程c)において、工程b)で得られた反応混合物は、工程b)で得られた反応混合物に塩基を添加することにより、7超のpHに調整される。これに関して、工程b)で得られた反応混合物は、pHを7超のpHに調整する前に有機溶媒で更に希釈されないことが理解されるべきである。
【0061】
本発明の好ましい実施形態では、プロセスは、
cII)抽出工程c)で得られた有機相から2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルを結晶化させる工程
を更に含む。
【0062】
好ましくは、結晶化工程cII)において、結晶化された2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルは、吸着工程d)前に有機溶媒に溶解される。
【0063】
結晶化された2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルを溶解させるために工程cII)で適用される適切な有機溶媒は、ケトン;エーテル;酢酸エチル及び酢酸イソプロピルなどのエステル;メタノール、エタノール、イソプロパノール及びn-ヘキサノールなどのアルコール;トルエン、キシレン、シクロヘキサン及び石油エーテルなどの非極性の脂肪族及び芳香族炭化水素;並びにこれらの混合物である。
【0064】
好ましくは、結晶化された2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルは、非極性溶媒に溶解される。
【0065】
非極性溶媒は、15未満の誘電定数(ε)を有することが理解されるべきである。非極性は、代替的に又は付加的に、0~2の双極子モーメント(μ)によって表すことができる。これに関して、非極性溶媒が石油エーテル、リグロイン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ジ-n-ブチルエーテル、キシレン、トルエン、ベンゼン及びこれらの混合物からなる群から選択される場合に特に好ましい。
【0066】
本発明の特定の好ましい実施形態によれば、結晶化された2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルは、トルエンに溶解される。
【0067】
吸着工程d)において、溶解された2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルは、好ましくは、有機溶媒に溶解される。有機溶媒は、好ましくは、ケトン;エーテル;酢酸エチル及び酢酸イソプロピルなどのエステル;メタノール、エタノール、イソプロパノール及びn-ヘキサノールなどのアルコール;トルエン、キシレン、シクロヘキサン及び石油エーテルなどの非極性の脂肪族及び芳香族炭化水素;並びにこれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、溶解された2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルは、非極性溶媒に溶解される。特に、吸着工程d)の溶媒は、トルエン、キシレン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0068】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも2種の異なる吸着剤は、活性炭、酸化アルミニウム、ゼオライト及びシリカゲル、好ましくは活性炭及びシリカゲルからなる群から選択される。本発明のより好ましい実施形態では、少なくとも2種の異なる吸着剤は、化学的組成物が異なるものであり、即ち第1の吸着剤が活性炭である場合、第2の吸着剤は、酸化アルミニウム、ゼオライト及びシリカゲル、好ましくは活性炭及びシリカゲルからなる群から選択される。
【0069】
少なくとも2種の吸着剤として活性炭及びシリカゲルを用いた場合、これらは、任意の比率で適用され得る。好ましくは、これらは、活性炭とシリカゲルとの重量比を0.001~2、より好ましくは0.005~1.5、更により好ましくは0.01~1.0、特に0.02~0.5として適用される。
【0070】
吸着剤として好適なシリカゲルは、とりわけ、CD Rompp Chemie Lexikon-Version 1.0,keyword:silica gels,Stuttgart/New York:Georg Thieme Verlag 1995及びそこで引用されている文献に記載されている。好ましいシリカゲルは、Merck(Darmstadt)社製シリカゲル60及びGrace社製シリカゲル123である。
【0071】
活性炭は、粉末形態、顆粒形態又は円筒形に形成された粒子として使用され得る。これに関して、活性炭は、有利には、顆粒形態(粒状活性炭)で固定層フィルター又は流動層フィルターに使用される。好ましい炭素の例は、Chemviron Carbon社製活性炭CPG(R)LF、CAL(R)及びAPC(R)、又はCabot社製Norit C Gran及びNorit GAC 1240 Plus、又はCeca社製Acticarbone BGEである。
【0072】
使用される活性炭の特性及びグレードについての更なる詳細は、Ullmann’s Encyclopedia,Sixth Edition,2000 Electronic Release,Chapter 5に示されている。
【0073】
本発明の好ましい実施形態では、吸着工程d)において、溶解された2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルは、最初にシリカゲル上で吸着され、且つ次に活性炭上で吸着される。
【0074】
本発明のなお好ましい実施形態では、吸着工程d)において、溶解された2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルは、最初にシリカゲル上で吸着され、次に活性炭上で吸着され、且つ次にシリカゲル上で再度吸着される。
【0075】
本発明の別の好ましい実施形態では、吸着工程d)において、溶解された2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルは、最初に活性炭上で吸着され、且つ次にシリカゲル上で吸着され、好ましくは続いて活性炭上で更に吸着される。
【0076】
好ましくは、吸着工程d)は、15~80℃、より好ましくは18~70℃、更により好ましくは19~60℃、なおより好ましくは20~50℃、特に20~25℃の範囲の温度で実施される。
【0077】
好ましくは、吸着工程d)の溶液は、吸着工程d)の溶液の総重量を基準として10~80重量%、より好ましくは20~60重量%、更により好ましくは22~50重量%、特に25~40重量%の2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルを含む。
【0078】
好ましくは、吸着は、固定層(カラム)で連続的に実施される。しかしながら、それは、溶媒中、好ましくは上記で説明したような有機溶媒中の2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステル溶液に吸着剤を加え、続いて撹拌して吸着剤を濾過することにより、非連続的に実施することもできる。
【0079】
本発明の好ましい実施形態では、プロセスは、
e)溶媒を除去する工程であって、好ましくは、溶媒は、蒸留によって除去される、工程
を更に含む。
【0080】
工程e)は、吸着工程d)後に実施されることが理解されるべきである。工程e)後の潜在的な残留溶媒を除去するために、追加のストリッピング工程を実施することが好ましい。
【0081】
本発明の好ましい実施形態では、製造された2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルは、8.2以下、好ましくは7.9未満、より好ましくは7.6未満、特に7.5未満のガードナー値、89未満、好ましくは86未満、より好ましくは84未満、特に82未満の黄色度指数、19未満、好ましくは17未満、より好ましくは16未満、特に15未満のHess-Ivesを有し、且つ/又は5ppm未満、好ましくは2ppm未満、特に1ppm未満のローダミン及びそのエステルを含む。
【0082】
一般に、ガードナー値は、ガードナー値が低いと茶色がかった変色が少ないことを示すことから、茶色がかった着色不純物を表すのに特に好適なものであると考えられている。最終生成物である2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルの赤みがかった望ましくない着色不純物は、Hess-Ivesが低いと赤みがかった変色が少ないことを示すことから、Hess-Ivesを用いて表すことが好ましい。
【0083】
第2の態様では、本発明は、8.2以下、好ましくは7.9未満、より好ましくは7.6未満、特に7.5未満のガードナー値を有し、且つ5ppm未満、好ましくは2ppm未満、特に1ppm未満のローダミン及びそのエステルを含む2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルに関する。
【0084】
好ましくは、2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルは、89未満、好ましくは86未満、より好ましくは84未満、特に82未満の黄色度指数及び/又は19未満、好ましくは17未満、より好ましくは16未満、特に15未満のHess-Ivesを更に有する。
【0085】
好ましくは、本発明は、8.2以下、好ましくは7.9未満、より好ましくは7.6未満、特に7.5未満のガードナー値、89未満、好ましくは86未満、より好ましくは84未満、特に82未満の黄色度指数、19未満、好ましくは17未満、より好ましくは16未満、特に15未満のHess-Ivesを有し、且つ5ppm未満、好ましくは2ppm未満、特に1ppm未満のローダミン及びそのエステルを含む2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルに関する。
【0086】
好ましい実施形態では、8.2以下、好ましくは7.9未満、より好ましくは7.6未満、特に7.5未満のガードナー値を有し、且つ5ppm未満、好ましくは2ppm未満、特に1ppm未満のローダミン及びそのエステルを含む2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルは、第1の態様によるプロセスによって得られる。好ましくは、第1の態様によるプロセスによって得られる2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルは、89未満、好ましくは86未満、より好ましくは84未満、特に82未満の黄色度指数及び/又は19未満、好ましくは17未満、より好ましくは16未満、特に15未満のHess-Ivesを更に有する。
【0087】
特定の好ましい実施形態では、8.2以下、好ましくは7.9未満、より好ましくは7.6未満、特に7.5未満のガードナー値、89未満、好ましくは86未満、より好ましくは84未満、特に82未満の黄色度指数、19未満、好ましくは17未満、より好ましくは16未満、特に15未満のHess-Ivesを有し、且つ5ppm未満、好ましくは2ppm未満、特に1ppm未満のローダミン及びそのエステルを含む2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルは、第1の態様によるプロセスによって得られる。
【0088】
特許請求されるプロセスに従って得られた2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルは、ボディーケア製品又はデイリーケア組成物中に含まれ得る。特に、特許請求されるプロセスに従って得られた2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルは、日焼け止め組成物中に含まれ得る。
【0089】
特許請求されるプロセスに従って得られた2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルは、ボディーケア製品又はデイリーケア組成物中、特に日焼け止め組成物中にUVフィルターとして使用され得る。
【0090】
本発明を以下の実施例によって更に例示する。
【0091】
実験の部
方法
2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステル及びローダミンタイプの不純物を測定するためのHPLC法
DAD/UV検出器を備えたHPLCクロマトグラフ(Agilent 1100又は類似品)。HPLCクロマトグラフィーカラム:Symmetry C18 5μm 250×4.6mm Waters。
溶媒A:水+0.1%v/vのo-リン酸85%、溶媒B:アセトニトリル。流速1.2ml/分。注入量5μL、T=20℃。
勾配:t=0分 80%A、20%B/t=20分、0%A、100%B/t=30分、0%A、100%B/t=32分、80%A、20%B。
ローダミンB:RT=8.8分(558nm)、ローダミン-ヘキシルエステル:RT=11.9分(558nm)、2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステル:RT=21.7分(360nm)。
外部標準:ローダミンB、ローダミン-ヘキシルエステル、2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステル。
【0092】
着色評価
11mmの丸形キュベットを用いて、Lico 690比色計(Hach-Lange)によって色値を測定した。2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルを65℃に加熱し、ホモジナイズしてキュベットに移すことによって試料を調製した。5~7分冷却した後、色値を測定した。
【0093】
ガードナー値は、ASTM D1544-04に従って測定した。
【0094】
黄色度指数は、CIE XYZ三刺激値、標準光源C及び2°標準観察者を基準としてASTM D5386-93bに従って測定した。
【0095】
Hess-Ives値は、DGK法の番号F 050.2に従って測定した。
【0096】
較正のための分析標準は、標準的な最新の方法によって実施した。
【0097】
シリカ吸着剤としてSilica 123(Grace)を使用した。
【0098】
活性炭吸着剤としてNorit C GRAN(Cabot Norit)を使用した。
【実施例
【0099】
一般手順
2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステル(DHHB)を、国際公開第03097578号パンフレットに記載されているプロセスを元に合成した(実施例1及び2)。いくつかのパラメータ(表2)を以下のように変化させた;即ちi)3-N,N-ジエチルアミノフェノール(DEMAP)を使用前に蒸留し/蒸留せず、且つ/又はii)抽出中のpHをpH7若しくはpH約11.5に設定した。プロセスは、以下の一般工程を含む。
【0100】
一般工程1:2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸の合成
3-N,N-ジエチルアミノフェノール(DEMAP)をトルエン中のフタル酸無水物と還流状態で反応させた後、濾過し、濾滓をヘキサノールで洗浄することによって2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸を単離した。濡れた濾滓は、第2の工程に使用した。
【0101】
一般工程2:2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルの合成
酸性触媒、好ましくは硫酸の存在下、水を共沸除去しながら還流してヘキサノール中で酸のエステル化を行い、2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルを得た。反応後、反応混合物のpHを、2.3%の水酸化ナトリウム水溶液を用いて、下記の実施例に示されるpHに調整した。有機相を水でもう一度洗浄し、抽出後に有機相からエステルを結晶化させた。濾滓をヘキサノールで洗浄し、濡れた濾滓を吸着のために使用した。
【0102】
DEMAPの蒸留
蒸留は、一般的な蒸留装置、例えば蒸留ブリッジ又は短行程蒸留(薄膜蒸発器)を用いて低圧で行った。蒸留塔も同様に好適である。
【0103】
蒸留(ブリッジ):
450gのDEMAP(暗褐色、HPLCにより97.1重量%)を160~170℃(加熱ジャケット)/0.7ミリバールにおいてクライゼンブリッジ上で蒸留した。以下の4つの分画:1)92.1g;2)18.4g;3)7.7g及び4)330.6gを採取した。分画1~3は、淡黄色であり、分画4は、黄色であった。DEMAP含有量が99.1重量%(HPLC)の4つめの分画をDHHBの合成に使用した。
【0104】
薄膜蒸発の実施例:
353.5gのDEMAP(HPLCにより94.2重量%)を80℃で融解させ、21.2gのポリプロピレングリコール(Pluriol P 600)を添加した。約310gの混合物を5ミリバール、156℃(ジャケット温度)で薄膜蒸発により蒸留した(0.016m、450U/分)。ポンプによって混合物を添加した(250g/時間)。回収した生成物を除く、DEMAPと接触した冷却管を含む全ての部分を80℃に加熱した。蒸留後、281.8gのDEMAP(97.7重量%、HPLC)を黄色の融解物として得た(サンプ:24.6g)。
【0105】
一般工程3:2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステル(DHHB)の精製
直径3.6cmのカラムを用いて吸着を行った。吸着剤(シリカ、活性炭(木炭とも称される)又はその両方)の体積は、常に同一に維持した(吸着剤の高さ約10cm)。カラムにトルエン中で吸着剤をスラリーにしたものを充填するか、又は吸着剤を充填した後にトルエンでフラッシングしてから吸着を開始した。
【0106】
一般工程2に従って調製した結晶性の2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステル(ヘキサノール-ウェット、約15%のヘキサノール)をトルエンに溶解させ、シリカ及び/又は活性木炭上で吸着させることによって精製した。溶液の濃度は、30%のDHHBであった(cal.100%)。トルエン中の溶液(及び残留ヘキサノール)として、合計で100gのDHHB(cal.100%)を33.4gで何回かに分けてカラムに加えた(10gのDHHB cal.100%。約38mlの溶液)。生成物を分画で回収した。新たな分量を開始するごとに新たな分画を開始し、最初の2つの分画のみを共に回収した。合計で9つの分画を回収した。1つの分画を加える時間は、約40分であった。各分画を50℃で4ミリバールの圧力となるまで濃縮し、更に<1ミリバール(室温)で30分間乾燥させた。合成に用いた異なるパラメータを評価するために、比較可能な分画の色数を測定した(基準:吸着後のエステルの総グラム数、cal.100%)。
【0107】
吸着における実施例(一般工程3の特定の手順)
IE1:(表2、番号1):2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステルの精製
カラム(φ3.6cm)に、1)1cmの砂、2)5.4gのSilica 123(Grace)、5.2gのNorit C GRAN(Cabot Norit)、3)37gのSilica 123、及び4)1cmの砂(各層間に濾紙)を充填した。カラムを100gのトルエン(廃棄)でフラッシングした。
【0108】
工程2で調製した125.4gのエステルを226gのトルエンに溶解させ、トルエン及び残留ヘキサノールの混合物中に約30重量%のエステル溶液を得た。この溶液をカラムに33.4gで10回に分けて連続的に添加した(40分/回)。新たな分量を開始するごとに、最初の分画がカラムに負荷するために必要なものであるために、共に回収された最初の2つの分画を除く新たな分画を回収した。各生成物分画を50℃で4ミリバールの圧力に達するまで(膜ポンプで)濃縮し、更に<1ミリバールで30分間乾燥させた。
【0109】
更なる実験
一般工程1~3に記載される一般プロセスに基づき、いくつかのパラメータ:i)DEMAPの蒸留、ii)抽出中のpH、及びiii)吸着剤を変更した。吸着剤の全体積を、常にIE1に記載されているように維持した(吸着剤の全高約10cm;φ=3.6cm)。
【0110】
実施例IE2、C3及びC4は、全て一般工程1~3に従って合成し、変更したパラメータのみを記載する(表2)。
【0111】
IE2及びC3及びC4:DEMAPを事前に蒸留することなく、一般工程1及び2に従ってDHHBの試料を合成した。
【0112】
IE2の場合、一般工程2のエステル化後の抽出時のpHをpH=11.5に設定した。結晶化後、122.4g(83.7重量%)の結晶性生成物を219gのトルエンに溶解させ、1)1cmの砂、2)5.4gのSilica 123(Grace)、5.2gのNorit C GRAN(Cabot Norit)、3)37gのSilica 123、及び4)1cmの砂(各層間に濾紙、カラムを100gのトルエンでフラッシングした)で充填されたカラムに通して濾過した。IE1に記載されるように、分画を回収して濃縮した(表1)。
【0113】
C3及びC4の場合、一般工程2のエステル化後の抽出時のpHをpH=7に設定した。結晶化後、133g(76.0重量%)の結晶性生成物を204gのトルエンに溶解させ、1)1cmの砂、2)19gのNorit C GRAN(Cabot Norit;実験C3の場合)又は61.0gのSilica 123(Grace;実験C4の場合)、及び3)1cmの砂(各層間に濾紙、カラムを100gのトルエンでフラッシングした)で充填されたカラムに通して濾過した。IE1に記載されるように、分画を回収して濃縮した(表1)。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
表2から分かるように、本発明のプロセスにより、着色不純物の量が減少したDHHBが提供される。
【国際調査報告】