(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ミリ波帯域でのレーダ及び通信信号のクラスタ・ベースの多重化
(51)【国際特許分類】
H04B 7/06 20060101AFI20240118BHJP
H04B 7/0413 20170101ALI20240118BHJP
G01S 7/02 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
H04B7/06 956
H04B7/0413
G01S7/02 216
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536912
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-08-03
(86)【国際出願番号】 TR2021051427
(87)【国際公開番号】W WO2022132112
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521277671
【氏名又は名称】イスタンブール メディポル ユニベルシテシ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルスラン、フセイン
(72)【発明者】
【氏名】ラフィク、サイラ
(72)【発明者】
【氏名】アビドラッブ、シャイマ
(72)【発明者】
【氏名】アラヤスラ、ムサブ
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB17
5J070AB24
5J070AC11
5J070AD09
5J070AF03
(57)【要約】
本発明では、幾何学的チャネル・モデルによって記述されるチャネル・スパース性を活用することによって、ミリ波帯域でのレーダと通信との共存のための新規な方法が提案される。バイスタティック・ブロードキャストのレーダ/通信共用(JRC)システムにおける送信機/受信機共用構成は、複数の配列されたアンテナからなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミリ波帯域でのレーダ及び通信信号のクラスタ・ベースの多重化の方法であって、
i.レーダ及び通信信号を独立に送信し、異なる送信機を通じて、同じチャネルを通過させるステップと、
ii.デジタル・ビーム形成及び空間多重化技法に基づく、ミリ波での共有チャネルを通して、レーダ及び通信信号を送信するために、マルチ・ビーム形成を用いるステップと、
iii.チャネル・モデル化及び推定プロセスを行うステップであって、
信号は角度領域で分離され、異なる角度を通して各ビームを送信するが、推定のために同じ時間-周波数リソースを通して信号を送ることと、
接続の開始のために、通信ビームを送信することと、
前記チャネルのスパース性により、固有の角度で通信ビームを受信することと、
スパース・チャネル計算式
【数1】
を用いることと、
前記チャネルの前記スパース性を活用することによって、前記送信機によって、未使用の角度を識別し、検知ビームをそれらを通して送信するように、フィードバックを用いて前記送信機に伝えることと、
散乱を用いることと、
複数のビームを送信することと、
各ビームが異なる散乱体に遭遇し、ある角度で反射されることと、
レーダ及び通信信号を前記チャネル内に多重化するように、異なる反射角を活用することと
による、チャネル・モデル化及び推定プロセスを行うスステップと、
iv.前記受信機において複数のクラスタを受信し、前記クラスタを分解可能にするために、前記第3のステップを用いるステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記クラスタは、直交又は部分的に直交する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明では、幾何学的チャネル・モデルによって記述されるチャネル・スパース性を活用することによって、ミリ波帯域でのレーダと通信との共存のための新規な方法が提案される。バイスタティック・ブロードキャストのレーダ/通信共用(JRC:joint radar and communication)システムにおける送信機/受信機共用構成は、複数の配列されたアンテナからなる。
【背景技術】
【0002】
両方のシステムは、同じ周波数及び帯域を利用し、同時に送信する。Txアンテナが複数の狭ビームを送信するとき、各ビーム・チャネルは異なって挙動する。チャネルがスパース散乱であると想定されるので、複数の狭ビームが送信される。各狭ビームは、チャネル内で異なる散乱体に直面し、これらの散乱体は、入射ビームを異なる方向(角度)に反射する。受信機は、完全に独立又は半独立な複数のクラスタを受信する。これらの受信されたクラスタは、受信機で分解可能であり、従って通信及びレーダ・ビームが分離され得る。レーダ及び通信ビームをチャネル内に多重化するために、デジタル・ビーム形成又はハイブリッド・ビーム形成が活用される。
【0003】
より具体的には、チャネル内の2つの独立な信号(レーダ及び通信)の多重化を通して、ミリ波帯域でのレーダと通信との共存を実現するために、角度領域が用いられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Liu、Fan他、「Joint radar and communication design: Applications, state-of-the-art, and the road ahead.」、IEEE Transactions on Communications (2020)
【非特許文献2】Hassanien、Aboulnasr他、「Dual-function radar communication systems: A solution to the spectrum congestion problem.」、IEEE Signal Processing Magazine 36.5 (2019)、115~126頁
【非特許文献3】Mishra、Kumar Vijay他、「Toward millimeter-wave joint radar communications: A signal processing perspective.」、IEEE Signal Processing Magazine 36.5 (2019)、100~114頁
【非特許文献4】Hassanien、Aboulnasr他、「A dual-function MIMO radar-communication system via waveform permutation.」、Digital Signal Processing 83 (2018)、118~128頁
【非特許文献5】Sur、Samarendra Nath他、「OFDM Based RADAR-Communication System Development.」、Procedia Computer Science 171 (2020)、2252~2260頁
【非特許文献6】Heath、Robert W.他、「An overview of signal processing techniques for millimeter wave MIMO systems.」、IEEE journal of selected topics in signal processing 10.3 (2016)、436~453頁
【非特許文献7】Ding、Yacong他、「Spatial scattering modulation for uplink millimeter-wave systems.」、IEEE Communications Letters 21.7 (2017)、1493~1496頁
【非特許文献8】Lee、Junho、Gye-Tae Gil、及びYong H. Lee、「Exploiting spatial sparsity for estimating channels of hybrid MIMO systems in millimeter wave communications.」、2014 IEEE global communications conference. IEEE、 2014
【非特許文献9】Deng、Hua、及びAkbar Sayeed、「Mm-wave MIMO channel modeling and user localization using sparse beamspace signatures.」、2014 IEEE 15th International Workshop on Signal Processing Advances in Wireless Communications (SPAWC). IEEE、 2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
6G無線通信は、検知及び通信能力の両方を必要とするV2V(車両通信システム)通信など、いくつかの用途をもたらす。さらに、常に増加する用途及びユーザの数、並びに増加されたデータ・レートに対する要求は、スペクトル不足の問題を生じさせている。これらの課題は、共通のスペクトル及びハードウェア・リソースを使用することができる、検知/通信共用構成のためのフレームワークを開発するように、科学界を推し進めて来ている(1)。無線スペクトルは制限されており、より広い帯域幅を用いることによって通信及び検知機能性の両方が向上することができるので、スペクトル共有は決定的に重要である。
【0006】
レーダ/通信共用システムを実現するために、いくつかの技法が文献で論じられている(2)。これらは、共存及びコ・デザインである。共存手法では、レーダ及び通信サブシステムの両方は、独立して動作する。しかし、この手法での主な問題は、レーダと通信システムとの間の干渉である。二重機能レーダ通信(DFRC:Dual Function Radar Communication)としても知られているコ・デザインでは、レーダ及び通信システムは、共用構成で設計される。共用構成の波形設計は、検知及び送出の両方のために単一の放射が用いられるDFRCシステムの焦点の1つである。しかし、この手法では、レーダ又は通信機能性は、波形が通信を中心とするか、レーダを中心とするかという事実に基づいて妥協される。
【0007】
すべてのこれらの要因は、干渉を引き起こさずに受信機において互いに分離される能力を有して、通信及びレーダ信号の両方は独立して動作する本発明に繋がる。両方の信号は、同じ周波数及び時間を共有しながら、独立のビームによって送信されるので、検知及びレーダ性能は、共通の波形を有する共用構成で設計されるJRCシステムと比べて良好となる。
【0008】
主要な新たに出現する用途と共に、常に悪化するスペクトル不足は、レーダと通信システムとの間のスペクトル・リソースの利用に完全な再考を課している(1)。過去の数十年の間に、レーダ及び通信システムは共に、世界的に展開されてきており、マイクロ波からミリメートル波(ミリ波)帯域までのスペクトルに、全面的に広がっている。従来は、商用通信システムのほとんどは、サブ6GHz帯域内に収容され、これは多様な既存のレーダ・システムとの調和した共存を達成することが期待される(1)(2)。
【0009】
しかし、より最近には、使用可能な大きな帯域幅リソースを活かすように、5G展開のためにミリ波スペクトルがアクセス可能にされている。これはさらに、この帯域内の常駐している既存のレーダに関連して、周波数スペクトルの増加する混雑に繋がる(1)(2)。無線通信のために、十分に利用されていないレーダ・スペクトル・リソースを活用するように、産業界及び学界は共に、レーダ通信スペクトル共有に関心を向けてきており、これは今では、著しい研究の関心及び投資を集めてきている。
【0010】
文献では、「レーダ/通信共用(Joint Rader and Communication)」を実施するためのいくつかの展開機構がある。これらの機構は、共存及びコ・デザインである(3)。一方では、コ・デザイン手法は、検知及び送出機能性の両方を行う能力を有する、単一の波形を設計することに焦点を当てる。これは通常、二重機能レーダ通信(DFRC)と呼ばれ、従来は競合するレーダ及び通信送信が、単一のハードウェア・プラットフォームと、共用構成の信号処理フレームワークとの共有使用を通じて共用構成で設計され得る、パラダイム変化を標榜する。DFRCは、車両ネットワーク、屋内測位、並びにドローン・ネットワークを含む、いくつかの新興の用途に対する成功への鍵として構想される(1)。最近の実験は、分数次フーリエ変換(FrFT)を用いて、マルチキャリア波形のチャープ・サブキャリアでの、データの重ね合わせを実証した(4)。しかし、共通の単一の波形を設計することは、無線及びレーダ通信の両方に対して良好な性能を達成するのに、実装及び検出プロセスにおいて何らかの複雑さを加え得る。並びにコ・デザイン手法は、高いコスト効率、及び新たなハードウェア実装形態をもたらし得る。
【0011】
一方、共存シナリオでは、レーダ及び通信システムは共に、同じスペクトル・リソースを共有して、独立的に又は半独立的に存在する。しかし、同じ周波数帯域を共有するので、レーダ及び通信システムは、互いに干渉を引き起こす。この干渉は、直交する、及び高度に直交する信号を用いる場合は、制御され得る。単にスペクトルを共有することを超えたステップとして、無線通信と、レーダ検知機能性との間の統合が、極めて追求される。それは、スペクトル、エネルギー、ハードウェア、及びコスト効率の観点から、かなりの利点をもたらす。すべてのこれらの利点は、共有された帯域内で、適正なレベルの共存に到達するように、双方において我々が有するものを活用、及び利用することによって実現される。我々の発明は、共存手法に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記で述べられた不利な点を除去するための、及び関連する技術分野に新たな利点をもたらすための、ミリ波帯域でのレーダ及び通信信号のクラスタ・ベースの多重化の方法に関する。
【0013】
レーダ及び通信の間の共存シナリオでは、両方のサブシステムは、同じスペクトル・リソースを共有しながら、独立して動作する。提案される技法は、波形ベース又はハードウェア・ベースのJRC手法の場合のような、追加の設計の複雑さを導入せずに、レーダ及び通信信号を空間的に多重化するために、チャネル・スパース性を活用することに基づく。従って、本発明は、何らのハードウェアの複雑さなしに、スペクトル及びエネルギー効率、コスト効率をもたらす。この能力によって、提案される解決策は、学界及び産業界の両方から大きな関心を得る潜在性を有する。
【0014】
本発明の目的は、追加の複雑さなしに、及び受信機での強化された信号分離能力を有して、レーダ及び通信システムの共存を達成することである。提案される方法は、幾何学的チャネル・モデルによって十分に説明されるチャネル・スパース性を活用することによって、これらの目標を達成する。共存JRC手法は、レーダと通信信号との間の干渉を低減するための機構を中心に展開する。通信のために環境内のいくつかのクラスタを割り当て、レーダのために他の角度位置を用いることによって、我々は、受信機においてレーダと通信信号とをうまく分離することができる。JRC受信機は、どの送信されたビームが、特定のクラスタに関連付けられるかを追跡する能力を有し、このようにして受信機において、通信及びレーダ信号の両方は分離される。
【0015】
波形ベースの共用構成設計JRCシステムでは、同時の検知及び送出を行うように、単一の放射が最適化される。空間領域について述べると、著者らは(2)で、レーダ・ビームのサイド・ローブを、通信信号で変調することを試みた。しかし、この手法では、通信システムのスループットは低い。同様に、OFDMベースのJRCシステム(7)は、高分解能レーダ撮像の能力に欠ける。
【0016】
上述の方法と対照的に、提案されるJRCシステムは、独立の狭ビームの複数の送信を通じて、共に信頼性のある検知及び通信機能を行う。結論として、本発明では、一方は通信のため、他方はレーダのために、2つの固有チャネルが作成される。
【0017】
1.結果として受信機において複数のクラスタ又はマルチパス成分の電波線(ray)を受信する、ミリ波帯域での複数の独立の狭ビーム(レーダ及び通信ビーム)の送信
2.これらのマルチパス成分の識別、すなわち、受信機における、受信された反射された電波線の良好な分解可能性
3.通信及びレーダ信号の空間領域での分離能力
4.追加のハードウェアの複雑さがないこと
5.低減された干渉
6.スペクトル効率
7.信頼性のある検知及び通信性能を達成すること
【0018】
ミリ波帯域でのレーダ及び無線通信の間の共存のための提案される方法は、工業化に拡張され得る。この方法では、JRC共存は、ミリ波チャネルのスパース性特性を活用することによって達成される。受信機は、レーダと通信信号とを、それらが異なる角度で到来するのに従って識別及び区別し、従ってそれらの間の干渉を減少させる能力を有する。さらに、提案される解決策は、スペクトル、エネルギー、ハードウェア、及びコスト効率の観点から、かなりの利点をもたらす。従って、産業界及び学界の両方が、本発明から恩恵を得ることができる。
【0019】
さらに、V2V通信、衝突回避を有する自動車レーダ、高分解能撮像レーダなどの用途は、本発明から恩恵を得ることができる。これらに加えて、無線通信の観点から5G新無線、及び802.11ad/ay WLANプロトコルがある。
【0020】
図は、本発明によって開発された、ミリ波帯域でのレーダ及び通信信号のクラスタ・ベースの多重化の方法をさらに開示するために用いられ、図は、以下のように説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】チャネルにわたるレーダ及び無線通信の多重化を示す図である。
【
図3】本発明で用いられる複数送信ビームを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の新規性については、本発明の範囲を限定するものではく、本発明の主題を明らかにするためのみのものである例を用いて述べられる。本発明は、以下で詳しく述べられる。
【0023】
システム・モデル:
本発明では、独立したレーダ及び通信信号が用いられる。ここで独立とは、信号の生成が、互いからの何らの影響又は制御なしになされたことを意味する。例えば、(1)では、直交周波数分割多元接続(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiple Access)波形が通信のために用いられ、周波数変調連続波(FMCW:Frequency Modulated Continuous Wave)信号が送信され、レーダ検知のために用いられる。両方の信号は、同じチャネルを共有しながら、異なる送信機を通じて送信される。通信信号は、高いスループットによって情報を送るために用いられ、レーダ波形は、環境内の目標についての情報を得るために送信される。両方の信号は、レーダ検知及び通信の両方を必要とする用途のためにそれらの指定されたタスクを行うチャネル内で、平和的に存在する。より具体的には、文献に基づいて、本発明は2つのタイプのJRCシステムを有する。第1のものは、レーダ及び通信システムは、同じチャネルを共有しながら独立して動作する、共存である。この手法の主な焦点は、2つのシステムの間の相互干渉の回避である。このケースは、本発明での我々の範囲内である。他方のものは、コ・デザイン信号であり、JRC信号は、互いに依存し得る特定の方法で設計される。具体的には、単一の波形が検知及び通信の両方のために最適化され、この波形は、レーダ及び通信システムの両方によって共有される、単一の送信機によって送信される。
【0024】
通信及びレーダ信号の両方は独立に送信され、それら(レーダ及び通信信号)は、同じチャネルを通過するので、チャネルはレーダと通信信号との間の共有チャネルと呼ばれる。Tx及びRxは共に、複数の配列されたアンテナを有し、従ってレーダ及び通信ビームを送信するために、ビーム形成が用いられる。Tx及びRxアンテナの数が大きいときは、ビームは狭くなり、及び互いに直交し、これはまたクラスタの間の干渉が制限されることを意味する。複数のTxアンテナは、デジタル・ビーム形成を通じて、複数の直交する狭ビームを、ミリ波帯域での共有チャネル内に送る。
【0025】
本発明では、マルチビーム送信は、デジタル・ビーム形成及び空間多重化技法を活用することによって、レーダと通信信号との間のミリ波帯域での共有チャネルを通してなされる。具体的には、レーダ及び通信信号は、ビーム形成及び空間多重化の両方の利点を十分に利用するビーム空間多重化を用いることによって、チャネル内に多重化される。ビーム形成技法を用いて、送信及び受信アンテナ・アレイのビーム・パターンは、いくつかの所望の方向(すなわち、所望の角度)に誘導され得る。誘導段階に基づいて、レーダ及び通信のための所望の角度の選択がなされる。さらに、ビーム形成された空間的チャネルに基づく空間多重化は、複数の活動化されたネットワーク、又は言い換えれば固有チャネル(レーダ及び通信)を可能にし、これは本発明において活用される。
【0026】
本発明において、2つの技術を空間的に多重化する、すなわち環境内でいくつかのクラスタを通信信号に割り当て、他の角度位置をレーダ信号に割り当てることによって、チャネル内のレーダ及び通信を空間的に多重化する新規な方法が提案される。
図2に示されるように、システム・モデルは、レーダと通信システムとの間で共有されたTx及びRxからなる。Tx及びRxは共に、複数の配列されたアンテナを有する。チャネルは、スパース散乱であることが想定される。チャネルは、5つのパラメータ、すなわち、到来方位角及び仰角(azimuth and elevation angle of arrival(AoA))(θ
r,φ
r)、発射方位角及び仰角(azimuth and elevation angle of departure(AoD))(θ
t,φ
t)、チャネル複素係数α、時間遅延τ、及びドップラー偏移νを有する。このようなチャネル・モデルは、主要な幾何学的チャネル・モデルである空間的MIMOチャネル・モデルによって表されることができ、(12)で述べられている。N
t個の送信アンテナと、N
r個の受信アンテナに対して
【数1】
となるように、チャネルはN
cl個のクラスタからなり、l番目のクラスタはL
l個の電波線を含むとすると、チャネルは(8)と同等となり、スパース・チャネル計算式は、以下の式によって表される。
【数2】
【0027】
送信及び受信アンテナの数(Nt,Nr)が大きいとき、ビームは狭くなり、互いに直交する。これはまた、散乱クラスタの間の干渉が制限されることを示す(9)。
【0028】
送信機は、同じ周波数及び同じ帯域を用いて、同時にレーダ及び通信信号ビームを送信する。この概念では、2つのビーム、すなわち、レーダ及び通信信号をチャネル内に空間的に多重化し、それらを受信機において分離することが意図される。本発明の主な動機は、JRC共存手法でのレーダと通信信号との間の相互干渉を回避することである。時間及び周波数領域での両方の技術の干渉に対処する代わりに、それらは空間領域で分離される。
【0029】
このプロセスは、
図1に示される。マルチビーム(レーダ及び通信)送信は、結果として複数のクラスタ又はマルチパス成分の電波線を受信する。これらのクラスタは、直交又は部分的に直交となり得る。
【0030】
いくつかの推定技法を用いて、アップリンク・チャネルを推定することによって、受信機及び送信機の両方での、通信信号に対するAoA及びAoDが知られていると想定され(1)、ダウンリンク・チャネルは、TDD及びFDD多重化モードを可能にするシステム能力を与えるこれらの周波数帯域での角度相反性の性質により、知られていると想定される。チャネル推定のために、信号は、角度領域において分離されながら、同じ時間-周波数リソースを通して送られることが想定される。それに基づいて、各ビームは異なる角度にわたって送信される。これらの角度は、干渉効果を取り除くために、互いに完全に直交すると想定される。角度の直交性は、システムにおいて多数のアンテナ要素を使用することによって達成され得る。
【0031】
接続を開始するために、最初に通信ビームが送信され、チャネルのスパース性による固有の角度で受信される。その後に、チャネルのスパースな性質を活用することによって(10、11)、受信機は、未使用の角度を識別し、それらを通して検知ビームを送信するように、送信機にフィードバックを知らせることができる。次いで、推定プロセスは続行され得る。各ビームのための各経路でのチャネルの利得は、固有の散乱体と呼ばれる。散乱体は、利得、入射及び反射角を含む、特定の特性を用いて定義される。ここで、各経路の利得は、散乱体利得に等しいと想定する。さらに、通信ビームに関連付けられた散乱体は、通信散乱体と呼ばれ、検知ビームに関連付けられた散乱体は、検知散乱体と呼ばれる。これは、受信機側で識別される。
【0032】
複数のビームの送信機/受信機を有する狭帯域チャネルを想定し、チャネルは、ビーム送信の間は固定されると想定される。先に述べられたように、幾何学的設計は、チャネルに対してモデル化され、チャネルが狭帯域であると想定されるので、3つのパラメータ(AoA、AoD、チャネル利得)のみが主な焦点となる。複数の狭ビームが、特定のAoDを有して異なる方向に送信されるとき、各送信されたビームは、固有の散乱体に直面し、特に、各ビームは、異なる散乱体に遭遇し、特定の角度で反射される。これらの異なる反射角度は、レーダ及び通信信号をチャネル内に多重化するために活用される。これは、
図3で説明される。実際、本発明は環境内に散乱クラスタを有し、それらの位置及び数は固定され、環境に依存する。各散乱クラスタは、その中に散乱体を有する。各散乱クラスタは、受信機に反射される電波線のクラスタの原因となる。受信機は、これらのクラスタを識別することができ、特定のクラスタに、どのビーム及び散乱体が寄与するかを追跡することができる。従って、受信機のクラスタ分解可能性能力を通して、レーダ及び通信信号はうまく分離され得る。
【0033】
クラスタ識別及び分解可能性のために、いくつかの他の技法も用いられ得る。通信及びレーダ信号の特定の特徴に基づくクラスタ識別は、ブラインド信号識別などの機械学習技法を活用することによって実現され得る。これらの固有の特徴は、変調タイプ、帯域幅、及び/又は電力レベルとすることができる。
【0034】
周波数変調連続波形(FMCW)は、レーダ検知のために用いられ、直交周波数分割多重(OFDM)は、通信ビームのために用いられる。
【0035】
ミリ波帯域でのレーダ及び通信信号のクラスタ・ベースの多重化の方法は、受信機に反射される電波線のクラスタの原因となる散乱クラスタと、同じ周波数及び同じ帯域を用いてレーダ及び通信信号ビームを同時に送信する共有送信機(Tx)と、受信機(Rx)と備え、受信機では、多重化された2つのビームは、レーダと通信システム、及び識別されたクラスタ及びビームとの間で分離される。
【0036】
ミリ波帯域でのレーダ及び通信信号のクラスタ・ベースの多重化の方法であって、
i.レーダ及び通信信号を独立に送信し、異なる送信機を通じて、同じチャネルを通過させるステップと、
ii.デジタル・ビーム形成及び空間多重化技法に基づく、ミリ波での共有チャネルを通して、レーダ及び通信信号を送信するために、マルチ・ビーム形成を用いるステップと、
iii.チャネル・モデル化及び推定プロセスを行うステップであって、
- 信号は角度領域で分離され、異なる角度を通して各ビームを送信するが、推定のために同じ時間-周波数リソースを通して信号を送ることと、
- 接続の開始のために、通信ビームを送信することと、
- チャネルのスパース性により、固有の角度で通信ビームを受信することと、
- スパース・チャネル計算式
【数3】
を用いることと、
- チャネルのスパース性を活用することによって、送信機によって、未使用の角度を識別し、検知ビームをそれらを通して送信するように、フィードバックを用いて送信機に伝えることと、
- 散乱を用いることと、
- 複数のビームを送信することと、
- 各ビームが異なる散乱体に遭遇し、特定の角度で反射されることと、
- レーダ及び通信信号をチャネル内に多重化するように、異なる反射角を活用することと、
による、チャネル・モデル化及び推定プロセスを行うステップと、
iv.受信機において複数のクラスタを受信し、クラスタを分解可能にするために、第3のステップを用いるステップと
を含む。
【0037】
参照文献
(1)Liu、Fan他、「Joint radar and communication design: Applications, state-of-the-art, and the road ahead.」、IEEE Transactions on Communications (2020)
(2)Hassanien、Aboulnasr他、「Dual-function radar communication systems: A solution to the spectrum congestion problem.」、IEEE Signal Processing Magazine 36.5 (2019)、115~126頁
(3)Mishra、Kumar Vijay他、「Toward millimeter-wave joint radar communications: A signal processing perspective.」、IEEE Signal Processing Magazine 36.5 (2019)、100~114頁
(4)Hassanien、Aboulnasr他、「A dual-function MIMO radar-communication system via waveform permutation.」、Digital Signal Processing 83 (2018)、118~128頁
(5)Huang、Tianyao他、「MAJoRCom: A dual-function radar communication system using index modulation.」、IEEE Transactions on Signal Processing (2020)
(6)Hassanien、Aboulnasr他、「Dual-function radar-communications: Information embedding using side lobe control and waveform diversity.」、IEEE Transactions on Signal Processing 64.8 (2015)、2168~2181頁
(7)Sur、Samarendra Nath他、「OFDM Based RADAR-Communication System Development.」、Procedia Computer Science 171 (2020)、2252~2260頁
(8)Heath、Robert W.他、「An overview of signal processing techniques for millimeter wave MIMO systems.」、IEEE journal of selected topics in signal processing 10.3 (2016)、436~453頁
(9)Ding、Yacong他、「Spatial scattering modulation for uplink millimeter-wave systems.」、IEEE Communications Letters 21.7 (2017)、1493~1496頁
(10)Lee、Junho、Gye-Tae Gil、及びYong H. Lee、「Exploiting spatial sparsity for estimating channels of hybrid MIMO systems in millimeter wave communications.」、2014 IEEE global communications conference. IEEE、 2014
(11)Deng、Hua、及びAkbar Sayeed、「Mm-wave MIMO channel modeling and user localization using sparse beamspace signatures.」、2014 IEEE 15th International Workshop on Signal Processing Advances in Wireless Communications (SPAWC). IEEE、 2014
(12)Heath、Robert W.他、「An overview of signal processing techniques for millimeter wave MIMO systems.」、IEEE journal of selected topics in signal processing 10.3 (2016)、436~453頁
【国際調査報告】