(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】スイッチトリラクタンス型自己検知アクティブパルストルク補償
(51)【国際特許分類】
H02P 27/06 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
H02P27/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537128
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2023-07-07
(86)【国際出願番号】 US2021063175
(87)【国際公開番号】W WO2022140101
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391020193
【氏名又は名称】キャタピラー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガーデス、ジェシー アール.
(72)【発明者】
【氏名】ワイ、ジャクソン
(72)【発明者】
【氏名】カリル、アフメド
(72)【発明者】
【氏名】ソーン、ジェームズ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】アブドゥル、サジャン
(72)【発明者】
【氏名】アシュファク、アマラ
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505AA18
5H505BB05
5H505CC01
5H505DD11
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ04
5H505JJ17
5H505JJ25
(57)【要約】
機械(100)に配置されたスイッチトリラクタンス(SR)機械(104)におけるトルク補償用のシステム(102)及び方法が開示される。システム(102)は、SR機械(104)、インバータ(122)、及びコントローラ(124)を含み得る。コントローラ(124)は、インバータ(122)と動作可能に通信し、制御フェーズ(132)用の複数の巻線(130)の第1の部分の主電流(138)による通電に関連する指令された主電流を決定し、非制御フェーズ(134)における巻線(130)の第2の部分の寄生電流(140)による通電に関連する指令された寄生電流を決定するように構成される。コントローラ(124)は、さらに、指令された寄生電流に基づいてオフセット電流(142)を決定し、指令された主電流とオフセット電流(142)との第1の和に基づいて目標電流(136)を決定し、制御フェーズ(132)中に巻線(130)の第1の部分の目標電流(136)を作動させるようにインバータ(122)に指令するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械(100)に配置されたスイッチトリラクタンス(SR)機械(104)におけるトルク補償用のシステム(102)であって、
複数の巻線(130)を含むステータ(128)と、前記ステータ(128)内に回転可能に配置されたロータ(126)とを含み、1つ以上の前記巻線(130)が通電されると前記ロータ(126)を回転させるように構成されるスイッチトリラクタンス(SR)機械(104)と、
前記複数の巻線(130)に動作可能に接続され、前記複数の巻線(130)の第1の部分に目標電流(136)を生成するように構成されるインバータ(122)と、
前記インバータ(122)と動作可能に通信するコントローラ(124)とを含み、前記コントローラ(124)は、
制御フェーズ(132)の前記複数の巻線(130)の前記第1の部分の主電流(138)による通電に関連する指令された主電流を決定し、
非制御フェーズ(134)における前記巻線(130)の第2の部分の寄生電流(140)による通電に関連する指令された寄生電流を決定し、
前記指令された寄生電流に基づいてオフセット電流(142)を決定し、
前記指令された主電流と前記オフセット電流(142)との第1の和に基づいて目標電流(136)を決定し、
前記制御フェーズ(132)中に前記巻線(130)の前記第1の部分の前記目標電流(136)を作動させるように前記インバータ(122)に指令するように構成される、システム(102)。
【請求項2】
前記オフセット電流(142)は、寄生注入ウィンドウ(144)中の前記指令された寄生電流の振幅に等しい、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記振幅は、前記寄生注入ウィンドウ(144)中の前記指令された寄生電流の最大振幅である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記寄生電流(140)は、寄生注入ウィンドウ(144)中に注入される複数の寄生パルス(146)であり、各寄生パルス(146)はパルス面積(152)を有し、
前記オフセット電流(142)は、前記寄生注入ウィンドウ(144)内の各寄生パルス(146)下の前記パルス面積(152)の第2の和に等しい、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記オフセット電流(142)の前記決定が、前記指令された寄生電流及び前記ロータ(126)の回転速度に基づいて行われる、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記オフセット電流(142)の前記決定は、前記指令された寄生電流、前記ロータ(126)の回転速度、及び前記ロータ(126)に対するトルクコマンドに基づいて行われる、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記オフセット電流(142)の前記決定が、前記指令された寄生電流、前記ロータ(126)の回転速度、前記ロータ(126)に対するトルクコマンド、及びDCリンク電圧に基づいて行われる、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
複数の巻線(130)を含むステータ(128)と、前記ステータ(128)内に回転可能に配置されたロータ(126)とを含み、1つ以上の前記巻線(130)が通電されると前記ロータ(126)を回転させるように構成されるSR機械(104)におけるトルク補償用の方法であって、
コントローラ(124)によって、制御フェーズ(132)の前記複数の巻線(130)の第1の部分の主電流(138)による通電に関連する指令された主電流を決定することと、
前記コントローラ(124)によって、非制御フェーズ(134)における前記巻線(130)の第2の部分の寄生電流(140)による通電に関連する指令された寄生電流を決定することと、
前記指令された寄生電流に基づいてオフセット電流(142)を決定することと、
前記指令された主電流と前記オフセット電流(142)との第1の和に基づいて目標電流(136)を決定することと、
前記制御フェーズ(132)中に前記巻線(130)の前記第1の部分の前記目標電流(136)を作動させることとを含む、方法。
【請求項9】
前記オフセット電流(142)が、寄生注入ウィンドウ(144)中の前記指令された寄生電流の振幅に等しい、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
振幅が、前記寄生注入ウィンドウ(144)中の前記指令された寄生電流の最大振幅である、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、スイッチトリラクタンス(SR)機械に関し、具体的には、トルク補償用のシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
SR機械は通常、発電、電力バックアップ、海洋掘削、工作機械、牽引モータ、産業用作業機械、海洋作業機械などを含むさまざまな用途のいずれかのために、電気エネルギーを回転トルクに、又は回転トルクを電気エネルギーに変換するように構成された電気機械である。
【0003】
SR機械にはロータとステータが含まれる。一般的なブラシ付きDCモータタイプとは異なり、電力はロータではなくステータ(ケース)内の巻線に供給される。停止中又は実質的に低い機械速度時に、SR機械のステータに対するロータの位置を正確に決定することは、SR機械の性能と効率にとって重要である。従来、SR機械のロータの位置情報は、シャフトに取り付けられた直接位置センサー(複数可)を使用して取得されるが、そのようなハードウェアは駆動システム全体のコストと複雑さを増大させる。従来の直接位置センサーを使用せずに位置情報を取得又は導出する方法は、SR機械の最小パッケージサイズとコストを削減するのに役立っている。
【0004】
一部のSR機械は、従来の直接位置センサーを使用せずに、ステータに対するロータの位置と速度を推定するセンサーレス操作の制御システムを備える場合がある。このような制御システムは、SR機械のステータの1つ又は複数のアイドルフェーズに電流パルスを注入することによってロータの位置を推定する場合がある。次に、アイドルフェーズに流れるステータ電流は、オブザーバベースの推定アプローチを使用して推定され得る。次に、推定されたステータ電流を実際のステータ電流と比較して、誤差信号を生成することができる。誤差信号は、ロータの推定位置及びロータの推定速度を計算するために使用され得る。しかしながら、ロータが実質的に低い機械速度にある場合、又は停止している場合、生成される誤差信号が非常に弱い可能性があるため、ステータに対するロータの位置を正確に決定することが非常に困難になり得る。さらに、SR機械がモータリングクォードラントで動作している場合、アイドルフェーズ(複数可)に流れるステータ電流により、望ましくない制動トルクが発生する可能性がある。
【0005】
米国特許第7,604,088号には、慣性補償及び摩擦補償などの補償ロジックを用いることなく、良好なステアリングフィーリングを提供する電動パワーステアリングシステムが開示されている。この電動式パワーステアリングシステムは、ロード情報を表す周波数領域よりもロードノイズを表す高周波数領域でのトルク伝達を減衰するようにステアリング補助モータを制御するロードノイズ抑制制御手段を含む。ステアリング機構の固有振動が現れる程度にステアリング機構の摩擦値を低減する。ステアリング補助モータのロータ慣性は、ロードノイズ抑制制御手段によりトルク伝達が減衰される周波数領域に固有振動の周波数が存在する程度に小さい値に設定される。有益であるが、より良いシステムが必要である。
【発明の概要】
【0006】
本開示の一態様では、機械に配置されたスイッチトリラクタンス(SR)機械におけるトルク補償用のシステムが開示される。このシステムは、SR機械、インバータ、コントローラを含む。SR機械は、ステータと、ステータ内に回転可能に配置されたロータとを含む。ステータは複数の巻線を含む。SR機械は、1つ以上の巻線が通電されるとロータを回転させるように構成される。インバータは、複数の巻線に動作可能に接続される。インバータは、複数の巻線の第1の部分に目標電流を生成するように構成され得る。コントローラは、インバータと動作可能に通信し、コントローラによって、制御フェーズの複数の巻線の第1の部分の主電流による通電に関連する指令された主電流を決定し、コントローラによって、非制御フェーズの巻線の第2の部分の寄生電流による通電に関連する指令された寄生電流を決定し、指令された寄生電流に基づいてオフセット電流を決定し、指令された主電流とオフセット電流の第1の和に基づいて目標電流を決定し、制御フェーズ中に巻線の第1の部分で目標電流を作動させるようにインバータに指令するように構成される。
【0007】
本開示の別の態様では、SR機械におけるトルク補償用の方法が開示される。SR機械は、ステータと、ステータ内に回転可能に配置されたロータとを含む。ステータは複数の巻線を含む。SR機械は、1つ以上の巻線が通電されるとロータを回転させるように構成される。この方法は、コントローラによって、制御フェーズの複数の巻線の第1の部分の主電流による通電に関連する指令された主電流を決定することと、コントローラによって、非制御フェーズの巻線の第2の部分の寄生電流による通電に関連する指令された寄生電流を決定することと、指令された寄生電流に基づいてオフセット電流を決定することと、指令された主電流とオフセット電流の第1の和に基づいて目標電流を決定することと、制御フェーズ中に巻線の第1の部分の目標電流を作動させることとを含む。
【0008】
本開示のさらなる別の態様では、コンピュータプログラム製品が開示される。コンピュータプログラム製品は、コンピュータ可読プログラムコードが内蔵されたコンピュータ使用可能な媒体を含む。コンピュータ可読プログラムコードは、複数の巻線を含むステータと、ステータ内に回転可能に配置されるロータとを含むSR機械におけるトルク補償用の方法を実装するために実行されるように構成され、SR機械は、1つ以上の巻線が通電されるとロータを回転させるように構成され、本方法は、コントローラによって、制御フェーズの複数の巻線の第1の部分の主電流による通電に関連する指令された主電流を決定することと、コントローラによって、非制御フェーズの巻線の第2の部分の寄生電流による通電に関連する指令された寄生電流を決定することと、指令された寄生電流に基づいてオフセット電流を決定することと、指令された主電流とオフセット電流の第1の和に基づいて目標電流を決定することと、制御フェーズ中に巻線の第1の部分の目標電流を作動させることとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本開示による電気駆動システムの例示的な実施形態の概略図である。
【
図3】本開示によるトルク補償の1つの例示的な方法の流れ図である。
【
図4】寄生注入ウィンドウに注入される例示的な寄生パルスの概略図である。
【
図5】2つの例示的な目標電流を比較する線図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、特定の実施形態又は特徴について詳細に参照し、その例を添付図面に示す。一般に、別段の指定がない限り、図面全体を通じて同一又は対応する部分を指すために対応する参照番号が使用される。
【0011】
図1は、本開示の特徴を組み込んだ例示的な機械100であるホイールローダ、すなわちSR機械104、例えばSRモータ又はSR発電機を含む電気駆動システム102の図である。説明の目的で、例示的な実施形態は、SRモータとして利用されるSR機械104を示すが、他の実施形態では、SR機械104は、(電源110(例えば、エンジン)に動作可能に結合された)発電機として利用されてもよい。図に示すように、機械100は、フレーム106と、フレーム106を支持する牽引システム108と、フレーム106に取り付けられた電源110と、電源110から牽引システム108にエネルギーを伝達するように構成された電気駆動システム102とを含む。機械100はまた、運転室112を含んでもよい。電源110は、機械100に電力を供給し、電気駆動システム102に動作電力を提供するように構成される。いくつかの実施形態では、電源110は直流(DC)電源であってもよい。電源110は、運転室112内のオペレータコントロール114と動作可能に通信してもよく、オペレータコントロール114から制御信号を受信するように構成されてもよい。さらに、電源110は、機械100の他のシステムに動作可能に接続され得る。
【0012】
電気駆動システム102は、電源110に動作可能に結合され、オペレータコントロール114からの制御信号を介して機械100を選択的に推進し得る。電気駆動システム102は、図示のように、車軸、ドライブシャフト、トランスミッション、及び/又は他のコンポーネントを介して機械100に動作可能に接続され得る牽引システム108に動作可能に接続され得る。いくつかの実施形態では、牽引システム108は、車輪駆動システム、軌道駆動システム、又は地面と係合して機械100を推進するように構成された任意の他のタイプの駆動システムの形態で提供され得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、電気駆動システム102は、追加的に、又は代替的に、フレーム106上に移動可能に取り付けられ、電気駆動システム102に動作可能に接続され得る器具116を選択的に動作させるために、電源110に動作可能に結合され得る。図示の器具116は、リフトアームアセンブリ118及びバケット120を含む。他の実施形態は、例えば、ドージング、ブレード、ブラッシング、圧縮、整地、持ち上げ、リッピング、耕耘などの様々な作業に適した他の任意の器具を含み得る。
【0014】
以上に示したように、
図1は、本開示の電気駆動システム102を利用できる機械100の一例として提供される。他の例も可能であり、
図1に関連して説明したものとは異なり得る。
【0015】
図2に示すように、電気駆動システム102は、スイッチトリラクタンス(SR)機械104、インバータ122、及びコントローラ124を含む。SR機械104は、(固定された)ステータ128内に回転可能に配置されたロータ126を含む。例示的な実施形態では、SR機械104は、SRモータとして動作するように構成され得る。SR機械104のロータ126は出力シャフト(図示せず)に結合されてもよく、次に、出力シャフトは機械的負荷(図示せず)を駆動するために接続されてもよい。SR機械104のステータ128の各(相)巻線130は、インバータ122に電気的に結合され得る。SR機械104は、インバータ122からステータ128に供給される電流(例えば、目標電流136、主電流138)に応じてロータ126を回転させるように構成され得る。目標電流136(
図5を参照)又は主電流138を通電されて、機械コマンドに従って指令された方向にロータ126(
図2)を回転させる巻線130は、制御フェーズ132にあると呼ばれる。通電されていない、又は診断/位置決め目的などで寄生電流140(
図4)によって通電されている残りの巻線130は、アイドル又は非制御フェーズ134(
図2)にあると呼ばれる。
【0016】
インバータ122は、電源110(
図1)に電気的に接続され得る。いくつかの実施形態では、インバータ122(
図2)は、DC電流を受け、SR機械104のステータ128にAC電流を供給することができる。より具体的には、インバータ122は、コントローラ124と動作可能に通信し、コントローラ124から受信した制御信号/コマンドに応答して、SR機械104のステータ128の選択された巻線130に(AC)電流を供給するように構成される。供給される電流は、目標電流136(
図5)、主電流138(
図5参照)、寄生電流140(
図4)、又は他の電流であってもよい。
【0017】
コントローラ124(
図2)は、インバータ122の動作を制御するように構成される。コントローラ124は、制御信号をインバータ122に送信して、SR機械104の1つ又は複数の巻線130に電流を選択的に通電するように構成され得る。上述したように、ロータ126の所望の回転を駆動するために通電されると、巻線130は制御フェーズ132にあると考えられ、本明細書で後述するように、インバータ122によって供給される電流は目標電流136と呼ばれ得(
図5)、又は、(本明細書で後述する)オフセット電流142がない場合、制御フェーズ132においてインバータ122(
図2)によって供給される電流は、主電流138(
図5)と呼ばれ得る。
【0018】
コントローラ124(
図2)は、さらに、SR機械104が毎分ゼロ回転数(rpm)、ほぼゼロrpm、又はその他の比較的低速で動作しているときに、インバータ122にコマンドを送信して、寄生電流140(
図4)(コマンド、指令された寄生電流など)をSR機械104のステータ128の少なくとも1つのアイドル又は非制御フェーズ134(
図2)に注入するように構成され得る。寄生電流140(
図4)は、電流パルス(「寄生パルス(複数可)」146)の形態でインバータ122(
図2)によって注入ウィンドウ(「寄生注入ウィンドウ」144)時間枠内で供給され得る。寄生注入ウィンドウの開始は「オン」回転角によって定義され、寄生注入ウィンドウの終了は「オフ」回転角によって定義される。「オン」回転角と「オフ」回転角は、それぞれ、ロータ126の位置θと比較して測定される。本明細書で使用される場合、θは基準電気サイクルロータ位置を意味する。
図4は、インバータ122によって寄生注入ウィンドウ144内でステータ128の少なくとも1つのアイドル又は非制御フェーズ134に注入される例示的な寄生パルス146の概略図を示す。
【0019】
コントローラ124(
図2)は、プロセッサ148及びメモリコンポーネント150を含み得る。コントローラ124は、SR機械104及びインバータ122と動作可能に通信する。コントローラ124は、制御フェーズ132の複数の巻線130の第1の部分の主電流138による通電に関連する指令された主電流を決定するように構成される。コントローラ124は、さらに、非制御フェーズ134の複数の巻線130の第2の部分の寄生電流140による通電に関連する指令された寄生電流を決定するように構成される。コントローラ124は、さらに、指令された寄生電流に基づいてオフセット電流142を決定し、指令された主電流とオフセット電流142の和に基づいて目標電流136を決定するように構成される。コントローラ124は、さらに、制御フェーズ132中に巻線130の第1の部分の目標電流136を作動させるようにインバータ122に指令するように構成される。
【0020】
プロセッサ148は、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、電子制御モジュール(ECM)、電子制御ユニット(ECU)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、マイクロプロセッサ、又は当技術分野で知られている任意の他の適切なプロセッサ148であってもよい。プロセッサ148は、命令を実行し、指令された主電流、指令された寄生電流、オフセット電流142及び目標電流136を決定しインバータ122を作動させるための制御信号を生成し得る。このような命令は、メモリコンポーネント150などのコンピュータ可読媒体に読み込まれるか組み込まれてもよいし、プロセッサ148の外部に提供されてもよい。代替実施形態では、制御方法を実装するために、ソフトウェア命令の代わりに、又はソフトウェア命令と組み合わせて、ハードワイヤ回路が使用され得る。
【0021】
本明細書で使用される「コンピュータ可読媒体」という用語は、実行のためにプロセッサ148に命令を提供することに関与する任意の非一時的な媒体又は媒体の組み合わせを指す。このような媒体には、一時的な伝播信号を除くすべてのコンピュータ可読媒体が含まれ得る。コンピュータ可読媒体の一般的な形態には、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、又はその他の磁気媒体、CD-ROM、その他の光学媒体、又はその他のコンピュータ可読媒体が含まれる。
【0022】
コントローラ124は、1つのプロセッサ148及びメモリコンポーネント150に限定されない。コントローラ124は、いくつかのプロセッサ148及びメモリコンポーネント150を含み得る。一実施形態では、プロセッサ148は、共有メモリコンポーネント(複数可)150にアクセスできる並列プロセッサであってもよい。別の実施形態では、プロセッサ148は、プロセッサ148(及びそれに関連するメモリコンポーネント150)が分散コンピューティングシステムの一部である1つ以上の他のプロセッサ148(及び関連するメモリコンポーネント150)又はFPGAから遠隔に配置され得る分散コンピューティングシステムの一部であってもよい。
【0023】
コントローラ124はまた、メモリコンポーネント150から、本明細書で説明する計算に必要な式及び他のデータを取得するように構成され得る。
【0024】
SR機械104におけるトルク補償の方法も開示される。この方法は、コントローラ124によって、制御フェーズ132の複数の巻線130の第1の部分の主電流138による通電に関連する指令された主電流を決定することと、コントローラ124によって、非制御フェーズ134の巻線130の第2の部分の寄生電流140による通電に関連する指令された寄生電流を決定することと、指令された寄生電流に基づいてオフセット電流142を決定することと、指令された主電流とオフセット電流142の和に基づいて目標電流136を決定することと、制御フェーズ132中に巻線130の第1の部分の目標電流136を作動させることとを含み得る。
【0025】
また、スイッチトリラクタンスSR機械104におけるトルク補償用の方法を実装するために実行されるように構成されたコンピュータ可読プログラムコードが内蔵されたコンピュータ使用可能な媒体を備えるコンピュータプログラム製品も開示され、該方法は、コントローラ124によって、制御フェーズ132の複数の巻線130の第1の部分の主電流138による通電に関連する指令された主電流を決定することと、コントローラ124によって、非制御フェーズ134の巻線130の第2の部分の寄生電流140による通電に関連する指令された寄生電流を決定することと、指令された寄生電流に基づいてオフセット電流142を決定することと、指令された主電流とオフセット電流142の和に基づいて目標電流136を決定することと、制御フェーズ132中に巻線130の第1の部分の目標電流136を作動させることとを含む。
産業上の利用可能性
【0026】
動作中、コントローラ124は、例えば
図3に示すように、所定の方法300に従って動作するように構成され得る。
図3は、トルク補償用の方法300を説明する例示的なフローチャートである。
【0027】
ブロック310において、コントローラ124は、SR機械104の制御フェーズ132の複数の巻線130の第1の部分の主電流138(
図5を参照)による通電に関連する指令された主電流を決定する。指令された主電流は、ステータ128の1つ又は複数の巻線130に通電して選択された速度又はトルクでロータ126の回転引力を生成するためにインバータ122によって提供されるAC電流の発生に関連付けられる。このような電流は、主電流138と呼ばれ得る。通電された巻線130は、主電流138の継続期間中、制御フェーズ132にあると考えられる。いくつかの実施形態では、SR機械104に応じて変化し得る特定の速度領域及びトルク領域において、主電流138は、
図5に示すように、ほぼ台形状波形を有し得る。
【0028】
一実施形態では、ブロック310の決定は、別のコントローラ、ユーザインタフェース、又は機械システムから指令された主電流を受信するコントローラ124を含んでもよく、又は指令された主電流をメモリコンポーネント150から取得することを含んでもよい。さらに別の実施形態では、決定することは、コントローラ124によって、動作パラメータに基づいて指令された主電流を計算することを含み得る。このような動作パラメータには、ロータ速度、ロータ位置、電気駆動システム102のDCリンク電圧、トルクコマンド、又はそれらの組み合わせが含まれ得る。コントローラ124は、また、目標速度、実際の速度、又は推定速度、ロータのトルクコマンド、及び/又は電気駆動システム102に関連する目標DCリンク電圧、推定DCリンク電圧又は実際のDCリンク電圧を含む動作パラメータを受信し得る。
【0029】
ブロック320において、コントローラ124は、非制御フェーズ134における巻線130の第2の部分の寄生電流140(
図4)による通電に関連する指令された寄生電流を決定する。指令された寄生電流は、インバータ122によって提供されるAC電流の発生に関連付けられて、ステータ128の1つ以上の巻線130(非制御フェーズ134)に通電して、ステータ128内、例えば、ロータ126に動作可能に結合されたシャフトに取り付けられた位置センサーによるロータ126の直接位置検知を持たないステータ128内のロータ126の位置を決定するために利用され得る電流量を提供する。このような電流は、寄生電流140と呼ばれ得る。
【0030】
寄生電流140は診断目的で注入され得るが、そのような寄生電流140の注入により、(例えば、SR機械104がモータリングクォードラントで動作しているときに)制御フェーズ132において主電流138によって生成される所望のトルクとは逆の回転方向の制動トルクが発生することもある。ロータ126が静止しているとき、寄生電流140は、ロータ126に意図しない方向への回転力を引き起こす可能性のある制動トルクを生成し得、また、ロータ126が意図された方向に回転し始めるのに必要なトルクを増加させ得る。
【0031】
通常、制動トルクの発生を最小限に抑えながら、ロータ126の位置を決定するのに十分な電流を供給するために、寄生電流140の振幅は、アプリケーションに応じて比較的低くなる(たとえば、0アンペア(A)よりも大きく、最大で150アンペア(A)、25~150A、45~53A、又は約50Aである)。寄生電流140は、寄生注入ウィンドウ144中に注入される複数の電流パルス(「寄生パルス」)146を含み得る。このような寄生パルス146のそれぞれは、当技術分野で知られているように、波形曲線の下にパルス面積152を有する。いくつかの実施形態では、寄生パルス146は、
図4に見られるように、ほぼ台形状波形を有し得る。他の実施形態では、寄生電流140は他の波形を有してもよい。
【0032】
ブロック330において、コントローラ124は、寄生注入ウィンドウ144中にステータ128の1つ又は複数の制御フェーズ132の巻線130を通電するためにインバータ122によって供給される目標電流136(
図5を参照)を決定する。目標電流136は、(例えば、モータリングクォードラントで動作するときに)トルクに対する寄生電流140の制動効果を補償することを目的とする。当技術分野で知られているように、SR機械104は、制動クォードラント及びモータリングクォードラントで動作し得る。寄生パルス146は、SR機械104がモータリングしているときに制動クォードラントにあり、SR機械104が制動しているときにモータリングクォードラントにあると考えられる。これは、SR機械104がモータとして動作しているとき、又は発電機として動作しているとき、又はSR機械104の他の用途に適用される。一実施形態では、ロータ126の速度が比較的低いとき(例えば、約0~500rpmの範囲にあり)、コントローラ124は、ステータ128の1つ以上の制御フェーズ132を通電し、寄生電流140の制動効果を補償するために、インバータ122によって供給される目標電流136を決定し得る。目標電流136は、指令された主電流とオフセット電流142の和に基づくものであってもよいし、又はその和に等しいものであってもよい。
【0033】
目標電流136の決定の一部として、コントローラ124はオフセット電流142を決定する。オフセット電流142は、指令された寄生電流に基づくものであってもよい(
図4)。一実施形態では、オフセット電流142は、寄生注入ウィンドウ144中の指令された寄生電流の振幅と等しく設定され得る。例えば、一実施形態では、オフセット電流142は、寄生注入ウィンドウ144内の寄生電流140(又は寄生パルス146)の最大又は目標振幅に等しく設定され得る。例示的な実施形態では、寄生電流140は50Aに等しく、オフセット電流142は50Aに等しく設定され得る。次に、指令された目標電流は、指令された主電流と50A(寄生電流140の振幅の値)のオフセット電流142との和に等しくてもよい。50Aの値は一例である。寄生電流140に関連する他の振幅を利用して、オフセット電流142を(例えば、0アンペア(A)より大きく、最大で150アンペア(A)、25~150A、45~53A、又は約50Aに)調整することもできる。
【0034】
いくつかの応用例では、寄生注入ウィンドウ144内の各寄生パルス146のパルス面積152の和は、実際には目標電流136曲線の下の面積154と等しくない可能性があるため、主電流138に一定値のオフセット電流142を加算すると、過剰補償又は過少補償のいずれかになり得る。場合によっては、制動トルクの影響を補償するために必要な目標電流136は、寄生電流140の振幅の一定値(例えば、50A)を使用してコントローラ124によって計算される目標電流136よりもはるかに高い。これを解決するために、オフセット電流142の計算を改良し得る。改良では、コントローラ124は、指令された主電流とオフセット電流142の和に基づくオフセット電流142を決定/計算し得、オフセット電流142は、寄生注入ウィンドウ144内の各寄生パルス146の下のパルス面積152の和に基づくものである。
【0035】
図5は、寄生電流140(例えば50A)に等しいオフセット電流142aを指令された主電流に加えたものに基づく第1の目標電流136aと、指令された主電流にオフセット電流142bを加えたものに基づく第2の目標電流136bを比較する例示的なシナリオを示す。ここで、オフセット電流142bは、寄生注入ウィンドウ144内の各寄生パルス146の下のパルス面積152の和に基づくものである。この例示的なシナリオでは、第1の目標電流136aは寄生電流140の制動トルクを十分に補償せず、第2の目標電流136bはそのような制動トルクを完全に補償する。コントローラ124は、ルックアップテーブル、ハッシュテーブル、マップ、又は他の構造(集合的に「マップ」)を利用して、寄生注入ウィンドウ144内の各寄生パルス146の下のパルス面積152を決定し得る。各寄生パルス146の下のパルス面積152は、寄生電流140及びロータ126の(推定又は実際の)回転速度に基づいて面積値をマップから取得することによって決定され得る。別の実施形態では、各寄生パルス146の下のパルス面積152は、寄生電流140、ロータ126の(推定又は実際の)回転速度、及びロータ126のトルクコマンドに基づいて面積値をマップから取得することによって決定され得る。別の実施形態では、各寄生パルス146の下のパルス面積152は、寄生電流140、ロータ126の(推定又は実際の)回転速度、及びロータ126のトルクコマンド、及び電気駆動システム102に関連する(推定又は実際の)DCリンク電圧に基づいて面積値をマップから取得することによって決定され得る。パルス面積152のマップ内の値は、経験的評価、試験、既知の計算の結果、又は上記の組み合わせによるものであってもよい。
【0036】
ブロック340において、コントローラ124は、制御フェーズ132中に巻線130の第1の部分の目標電流136を作動させる。いくつかの実施形態では、コントローラ124はまた、寄生電流140を作動させる。
【0037】
一般に、前述の開示は、SR機械に関連するさまざまな用途に有用であることが分かる。より具体的には、開示された電気駆動システム102及び方法は、(例えば、ロータ126の位置と速度を決定するために利用される)寄生電流140のロータ126に対する影響を補償するために、すなわち、寄生電流140によって生成される制動トルクを補償するために使用され得る。
【0038】
上記から、特定の実施形態のみが例示の目的で記載されているが、代替案及び修正案は上記の説明から当業者に明らかであることが理解されるであろう。これら及び他の代替案は同等とみなされ、本開示及び添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内に含まれる。
【国際調査報告】