(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】親和性クロマトグラフィーによるAAVベクターの精製方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/10 20060101AFI20240118BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C12N15/10 Z ZNA
C12N15/864 100Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537487
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 IB2021062018
(87)【国際公開番号】W WO2022137076
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100133927
【氏名又は名称】四本 能尚
(74)【代理人】
【識別番号】100147186
【氏名又は名称】佐藤 眞紀
(74)【代理人】
【識別番号】100174447
【氏名又は名称】龍田 美幸
(74)【代理人】
【識別番号】100185960
【氏名又は名称】池田 理愛
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム エス. キッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン アール. ライトホルダー
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ケー. ローチ
(72)【発明者】
【氏名】タマラ ゼコビック
(57)【要約】
本開示は、親和性クロマトグラフィーによって溶液から組換えAAV(rAAV)ベクターを精製して、AAVベクター(rAAVベクター)について濃縮された溶出液を生産するための方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えAAV(rAAV)ベクターを精製する方法であって、
親和性クロマトグラフィー固定相上にrAAVベクターを含む溶液をロードすること;
15%~25%のエタノールおよび緩衝剤を含み、5~6のpHを有する溶出前洗浄溶液を固定相に適用すること;
塩、アミノ酸および緩衝剤を含み、2~4のpHを有する溶出緩衝液を用いて固定相からrAAVベクターを溶出させて、親和性溶出液を生産すること
を含む方法。
【請求項2】
親和性クロマトグラフィー固定相がカラム中にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶出緩衝液が5mM~150mMの塩を含み、任意選択により、塩が塩化マグネシウムである、請求項1から2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
溶出緩衝液が50mM~150mMのアミノ酸を含み、任意選択により、アミノ酸がグリシンである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
溶出緩衝液が75mM~250mMの緩衝剤を含み、任意選択により、緩衝剤が酢酸ナトリウムである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
溶出緩衝液が2.5~3.5のpHを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
溶出緩衝液が50mM~150mMのグリシン、10mM~100mMのMgCl
2、50mM~200mMの酢酸ナトリウム、および2.5~3.5のpHを含み、任意選択により、溶出緩衝液が5mS/cm~40mS/cmまたは20mS/cm~35mS/cmの導電率を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
2カラム体積(CV)~10CVまたは4.5CV~5.5CVの溶出緩衝液が固定相に適用される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
溶出緩衝液が、i)固定相からrAAVベクターを溶出させる;ii)固定相から残留不純物を溶出させない;iii)親和性溶出液の沈降をもたらさない;iv)vg回収率%を最大化する;v)陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)の固定相へのrAAVベクターの結合を阻害しない;vi)三価陰イオンを含有しない;vii)クエン酸イオンを含有しない、またはその組合せである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
0.1CV~10CVの親和性溶出液が固定相から収集される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
rAAVベクターを含む溶液が宿主細胞タンパク質および宿主細胞DNAを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
rAAVベクターを含む溶液を固定相上にロードして、固定相1mLあたり1x10
12ウイルスゲノム(vg)~固定相1mLあたり1.5x10
14vgのチャレンジを達成する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
rAAVベクターがAAV血清型に由来するカプシドタンパク質を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
rAAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV3(AAV3AおよびAAV3Bを含む)、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV12、AAVrh8、AAVrh10、AAVrh39、AAVrh43、AAVrh74、AAVrh32.22、AAV1.1、AAV2.5、AAV6.1、AAV6.2、AAV6.3.1、AAV9.45、AAVShH10、HSC15/17、RHM4-1、RHM15-1、RHM15-2、RHM15-3/RHM15-5、RHM15-4、RHM15-6、AAVhu.26、AAV2i8、AAV29G、AAV2、AAV8G9、AAV-LK03、AAV2-TT、AAV2-TT-S312N、AAV3B-S312N、AAVavian、AAVbat、AAVbovine、AAVcanine、AAVequine、AAVprimate、AAVnon-primate、AAVovine、AAVmuscovy duck、AAVporcine4、AAVporcine5、AAVsnake NP4、NP22、NP66、AAVDJ、AAVDJ/8、AAVDJ/9、AAVHSC1、AAVHSC2、AAVHSC3、AAVHSC4、AAVHSC5、AAVHSC6、AAVHSC7、AAVHSC8、AAVHSC9、AAVHSC10、AAVHSC11、AAVHSC12、AAVHSC13、AAVHSC14、AAVHSC15、AAVv66、AAVv33、AAVv37、AAVv40、AAVv67、AAVv70、AAVv72、AAVv84、AAVv86、AAVv87およびAAVv90からなる群から選択されるAAV血清型に由来するカプシドタンパク質を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
固定相がAAVカプシドに結合する高分子を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
溶出前洗浄溶液が10mM~500mMの緩衝剤を含み、任意選択により、緩衝剤が酢酸ナトリウムである、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
溶出前洗浄溶液が15%~25%のエタノール、100mM~200mMの酢酸ナトリウムを含み、5~6のpHを有し、任意選択により、1CV~10CVまたは4.5~5.5CVの溶出前洗浄溶液が固定相に適用される、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
溶出前洗浄が、i)固定相から結合した不純物を除去する;ii)rAAV-固定相リガンド結合を維持する;iii)宿主細胞タンパク質などのrAAVタンパク質以外のタンパク質の除去を改善するために低下したpHを有する、またはその組合せである、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
i)固定相上にrAAVベクターを含む溶液をロードする前、ii)固定相上にrAAVベクターを含む溶液をロードした後、iii)溶出前洗浄の適用前、iv)溶出前洗浄の適用後、v)溶出緩衝液を用いて固定相からrAAVベクターを溶出させる前、vi)溶出緩衝液を用いて固定相からrAAVベクターを溶出させた後、vii)固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させる前、またはその組合せにおいて、固定相の平衡化をさらに含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
平衡化が、固定相への緩衝溶液の適用および固定相からの緩衝溶液の全部または一部の除去を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
緩衝溶液がTrisまたは酢酸ナトリウムを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
緩衝溶液がpH約7.5の約100mMのTrisまたはpH約5.6の約153mMの酢酸ナトリウムを含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項23】
親和性溶出液の少なくとも一部を取得した後、固定相と第1の再生緩衝液とを接触させることをさらに含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
第1の再生緩衝液が0.05N~1.5Nの酸を含み、任意選択により、酸がリン酸である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
第1の再生緩衝液が0.10N~0.15Nのリン酸、および1.5~2.5のpHを含む、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
固定相を、1CV~10CVまたは4.5CV~5.5CVの第1の再生緩衝液と接触させる、請求項23から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
第1の再生緩衝液の少なくとも一部を除去した後に、親和性クロマトグラフィー固定相上にrAAVベクターを含む別の溶液をロードすることをさらに含む、請求項23から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
第1の再生緩衝液の少なくとも一部を除去した後に、親和性クロマトグラフィー固定相上に第2の量の溶出前洗浄溶液を適用することをさらに含む、請求項23から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
第1の再生緩衝液と接触させた固定相上で実行することができる精製サイクルの数が8以上である;
第1の再生緩衝液と接触させた固定相上で実行することができる精製サイクルの数が10以上である;
固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させた後の最後の精製サイクルからの溶出液のvg回収率%が、固定相を第1の再生緩衝液と接触させる前の最初の精製サイクルからの溶出液のvg回収率%と比較して10%を超えて減少していない;
固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させた後の最後の精製サイクルのフロースルー中の未結合のrAAVベクターの量が、固定相を第1の再生緩衝液と接触させる前の最初の精製サイクルのフロースルー中の未結合のrAAVベクターの量と比較して10%を超えて増加していない;
固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させた後の最後の精製サイクルのカラム圧力が、0.4MPa以下である;
固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させた後の最後の精製サイクルからの溶出液の純度%が、固定相を第1の再生緩衝液と接触させる前の最初の精製サイクルからの溶出液の純度%と比較して10%を超えて減少していない;
固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させた後の最後の精製サイクルからの溶出液のHCPの量が、固定相を第1の再生緩衝液と接触させる前の最初の精製サイクルからの溶出液のHCPの量と比較して10%を超えて増加していない;
固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させた後の最後の精製サイクルからの溶出液のHCDNAの量が、固定相を第1の再生緩衝液と接触させる前の最初の精製サイクルからの溶出液のHCDNAの量と比較して10%を超えて増加していない;
固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させた後の最後の精製サイクルからの溶出液の平均A260/A280が、固定相を第1の再生緩衝液と接触させる前の最初の精製サイクルからの溶出液の平均A260/A280と比較して10%を超えて減少していない、またはその組合せである、
請求項23から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
第1の再生緩衝液と接触させた固定相上で実行することができる精製サイクルの数が、グアニジンHClを含む緩衝液と接触させた固定相と比較して増加している、請求項23から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
固定相と第1の再生緩衝液とを接触させた後に、固定相と第2の再生緩衝液とを接触させることをさらに含み、第2の再生緩衝液が第1の再生緩衝液と異なる、請求項23から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
第2の再生緩衝液が0.1%~5%の界面活性剤を含み、任意選択により、界面活性剤がサルコシルである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
第2の再生緩衝液が50mM~150mMの緩衝剤を含み、任意選択により、緩衝剤がTrisである、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
第2の再生緩衝液が0.1%~1.5%のサルコシル、50mM~150mMのTris、7~8のpHを含み、任意選択により、固定相を、1CV~10CVまたは4.5CV~5.5CVの第2の再生緩衝液と接触させる、請求項31から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
第2の再生緩衝液の少なくとも一部を除去した後に、親和性クロマトグラフィー固定相上にrAAVベクターを含む別の溶液をロードすることをさらに含む、請求項31から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
第2の再生緩衝液の少なくとも一部を除去した後に、親和性クロマトグラフィー固定相上に第2の量の溶出前洗浄溶液を適用することをさらに含む、請求項31から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
rAAVベクターを精製する方法であって、
カラム中の親和性クロマトグラフィー固定相上にrAAVベクターを含む溶液をロードすること;
15%~25%のエタノール、100mM~200mMの酢酸ナトリウム、および5~6のpHを含む溶出前洗浄溶液を固定相に適用すること;ならびに
50mM~150mMのグリシン、10mM~100mMのMgCl
2、50mM~250mMの酢酸ナトリウム、および2.5~3.5のpHを含む溶出緩衝液を用いて固定相からrAAVベクターを溶出させて、rAAVベクターを含有する親和性溶出液を生産すること
を含む方法。
【請求項38】
1CV~10CVまたは4.5CV~5.5CVの溶出前洗浄溶液が固定相に適用される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
溶出前洗浄が、固定相からのrAAVタンパク質以外のタンパク質の除去を改善するために低下したpHを有し、溶出前洗浄がrAAV-固定相リガンド結合またはその両方を維持し、任意選択により、rAAVタンパク質以外のタンパク質が宿主細胞タンパク質である、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
溶出緩衝液が親和性溶出液の沈降をもたらさない、溶出緩衝液が陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)固定相へのrAAVベクターの結合を阻害しない、またはその両方である、請求項37から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
親和性溶出液中のvg回収率%が、任意選択により、qPCRによって測定した場合、50%~100%である;親和性溶出液1mLあたりのvgが、任意選択により、qPCRによって測定した場合、約1.0x10
12vg/mL~約1.0x10
14vg/mLである;親和性溶出液の純度%が、任意選択により、SECもしくは非還元的逆相HPLCによって測定した場合、総タンパク質のうち、約95%~約100%のカプシドタンパク質である、またはその組合せである、請求項37から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
親和性溶出液の少なくとも一部を取得した後、固定相と第1の再生緩衝液とを接触させることをさらに含む、請求項37から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
第1の再生緩衝液の後に、固定相と第2の再生緩衝液とを接触させることをさらに含み、第2の再生緩衝液が第1の再生緩衝液と異なる、請求項37から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
親和性クロマトグラフィー固定相を再生する方法であって、固定相と、酸および1~4のpHを含む第1の再生緩衝液とを接触させることを含み、不純物が固定相から除去される、方法。
【請求項45】
第1の再生緩衝液が0.05N~1.5Nの酸を含み、任意選択により、酸がリン酸または酢酸である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
第1の再生緩衝液が0.10N~0.15Nのリン酸、および1.5~2.5のpHを含む、請求項44または45に記載の方法。
【請求項47】
1CV~10CVまたは4.5CV~5.5CVの第1の再生緩衝液を固定相に適用し、固定相を、第1の再生緩衝液の体積の約半分と接触させた後、約45分間保持し、次いで、固定相と、第1の再生緩衝液の体積の第2の半分とを接触させる、請求項44から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
第1の再生緩衝液の少なくとも一部を除去した後に、親和性クロマトグラフィー固定相上にrAAVベクターを含む別の溶液をロードすることをさらに含む、請求項44から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
第1の再生緩衝液の少なくとも一部を除去した後に、親和性クロマトグラフィー固定相上に溶出前洗浄溶液を適用することをさらに含む、請求項44から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
第1の再生緩衝液の後に、固定相と第2の再生緩衝液とを接触させることをさらに含み、第2の再生緩衝液が第1の再生緩衝液と異なる、請求項44から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
第2の再生緩衝液が界面活性剤および緩衝剤を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
第2の再生緩衝液が0.1%~5%の界面活性剤を含み、任意選択により、界面活性剤がサルコシルである、請求項50または51に記載の方法。
【請求項53】
第2の再生緩衝液が50mM~150mMの緩衝剤を含み、任意選択により、緩衝剤がTrisである、請求項50から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
第2の再生緩衝液が0.1%~1.5%のサルコシル、50mM~150mMのTris、7~8のpHを含む、請求項50から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
1CV~10CVまたは4.5CV~5.5CVの第2の再生緩衝液が固定相に適用される、請求項50から54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
第2の再生緩衝液の少なくとも一部を除去した後に、親和性クロマトグラフィー固定相上にrAAVベクターを含む溶液をロードすることをさらに含む、請求項50から55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
第2の再生緩衝液の少なくとも一部を除去した後に、親和性クロマトグラフィー固定相上に溶出前洗浄溶液を適用することをさらに含む、請求項50から56のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月18日に出願された米国仮特許出願第63/212,457号、および2020年12月23日に出願された米国仮特許出願第63/129,934号の優先権を主張し、それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含有し、その全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。2021年11月17日に作成された前記ASCIIコピーは、PC072554A_Seq_Listing_ST25.txtと命名され、1,048,576バイトのサイズである。
【0003】
技術分野
本発明は、AAV、特に、親和性クロマトグラフィーによる組換えAAV(rAAV)ベクターの精製に関する。
【背景技術】
【0004】
治療的導入遺伝子を送達するために組換えAAV(rAAV)ベクターを使用するものを含む遺伝子療法は、治癒がない、また、多くの場合、限られた処置しか存在しない様々な重篤な疾患を処置する能力を有する(Wangら(2019)Nature Reviews 18:358~378)。遺伝子療法ベクターの製造は複雑であり、宿主細胞不純物から、および治療的導入遺伝子をコードする完全なベクターゲノムを含有しないウイルスカプシドから治療的rAAVベクターを精製するために特殊な方法を必要とする。高純度で良好な安全性および効能プロファイルを有する臨床等級のrAAVベクター組成物を生産する精製方法の開発に加えて、精製方法を、患者のニーズを満たす高容量のrAAV生産レベルに拡大可能にもしなければならない。
【0005】
親和性および/またはイオン交換クロマトグラフィーを含むクロマトグラフ法は、完全なrAAVベクターからの空のウイルスカプシドの分離を含む、臨床等級のrAAVの大規模生産にとって有用であることがわかっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最適な純度、効力および一貫性を有する臨床等級のrAAVベクター(例えば、rAAV9)の調製のための方法が依然として必要である。これらの方法は、疾患(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、フリードライヒ運動失調症(FA))の処置に関する臨床的ニーズを満たすのに必要な規模で治療的導入遺伝子を有するベクターゲノムを含むrAAVの精製を含む。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、限定されるものではないが、宿主細胞タンパク質および宿主核酸からのrAAVベクター(例えば、rAAV9ベクター)の精製を含む、rAAVベクターの精製の親和性クロマトグラフィー法を提供する。そのような精製されたrAAVベクターは、DMDを有する対象などの、ヒト対象への投与のための医薬品の製造および生産にとって好適である。その後のクロマトグラフィーステップ、例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)によるさらなる精製のための、rAAVベクターを含むクロマトグラフィー溶出液(例えば、親和性クロマトグラフィーに由来する)の調製方法が本明細書で提供される。本開示はまた、有利には、プロセスの完全性を維持しながら(例えば、rAAVベクターの精製の成功など)、および製造コストを低減させながら、複数のクロマトグラフィー実行において固定相の使用を可能にする親和性クロマトグラフィー固定相の再生のための方法も提供する。したがって、本明細書に開示される精製方法は、一部の実施形態では、rAAVベクター組成物を生産する製造方法の重要な態様である。
【0008】
当業者であれば、ルーチン実験を超えない実験を使用して、本明細書に記載される本発明の特異的実施形態の多くの均等物を認識するか、または確認することが可能であろう。そのような均等物は、以下の実施形態(E)によって包含されることが意図される。
【0009】
E1.rAAVベクターを精製する方法であって、
親和性クロマトグラフィー固定相上にrAAVベクターを含む溶液をロードすること、および
溶出緩衝液を用いて固定相からrAAVベクターを溶出させて、溶出液を生産すること
を含む方法。
【0010】
E2.溶出液が親和性溶出液である、E1に記載の方法。
【0011】
E3.ローディングが100cm/h~550cm/hの直線速度で実施される、E1またはE2に記載の方法。
【0012】
E4.ローディングが約150cm/h~200cm/h、約250cm/h~350cm/hまたは約450cm/h~550cm/hの直線速度で実施される、E1~E3のいずれか1つに記載の方法。
【0013】
E5.ローディングが約170cm/h、約300cm/h、または約500cm/hの直線速度で実施される、E1~E4のいずれか1つに記載の方法。
【0014】
E6.ローディングが約2min/カラム体積(CV)~約10min/CV、例えば、約1min/CV~約5min/CV、約2min/CV~約8min/CV、約2min/CV~約4min/CV、約3min/CV~約4min/CV、約4min/CV~約5min/CV、約5min/CV~約6min/CV、約6min/CV~約7min/CV、約7min/CV~約8min/CV、約8min/CV~約9min/CVまたは約9min/CV~約10min/CVの滞留時間で実施される、E1~E5のいずれか1つに記載の方法。
【0015】
E7.ローディングが約3min/CV、約3.5min/CV、約4min/CV、約4.5min/CV、約5min/CV、約5.5min/CV、約6min/CV、約6.5min/CV、約7min/CV、約7.5min/CVまたは約8min/CVの滞留時間で実施される、E1~E6のいずれか1つに記載の方法。
【0016】
E8.rAAVベクターを含む溶液が清澄化された溶解物である、E1~E7のいずれか1つに記載の方法。
【0017】
E9.清澄化された溶解物が宿主細胞培養物から調製される、E8に記載の方法。
【0018】
E10.宿主細胞培養物が、HEK293、PER.C6、WI38、MRC5、A549、HeLa、HepG2、Saos-2、HuH7、HT1080、VERO、COS-1、COS-7、MDCK、BHK21-F、HKCC、およびCHO細胞からなる群から選択される宿主細胞を含む、E9に記載の方法。
【0019】
E11.宿主細胞がHEK293細胞である、E9またはE10に記載の方法。
【0020】
E12.rAAVベクターを含む溶液を固定相上にロードして、固定相1mLあたり1x1012ウイルスゲノム(vg)~固定相1mLあたり1.5x1014vgのチャレンジを達成する、E1~E11のいずれか1つに記載の方法。
【0021】
E13.rAAVベクターを含む溶液を固定相上にロードして、固定相1mLあたり2x1013vg~固定相1mLあたり8x1013vgのチャレンジを達成する、E1~E12のいずれか1つに記載の方法。
【0022】
E14.rAAVベクターを含む溶液を固定相上にロードして、固定相1mLあたり3x1013vg~固定相1mLあたり7x1013vgのチャレンジを達成する、E1~E13のいずれか1つに記載の方法。
【0023】
E15.rAAVベクターを含む溶液を固定相上にロードして、固定相1mLあたり約3.8x1013vg、固定相1mLあたり約2.5x1013vg、固定相1mLあたり約7.5x1013vgまたは固定相1mLあたり約8x1013vgのチャレンジを達成する、E1~E14のいずれか1つに記載の方法。
【0024】
E16.rAAVベクターを含む溶液を固定相上にロードして、固定相1Lあたり5x1016vg以下のチャレンジを達成する、E1~E15のいずれか1つに記載の方法。
【0025】
E17.固定相がrAAVカプシドに結合する、E1~E16のいずれか1つに記載の方法。
【0026】
E18.固定相がrAAVカプシドに結合する親和性クロマトグラフィー固定相であり、溶出液がrAAVベクターを含む親和性溶出液である、E1~E17のいずれか1つに記載の方法。
【0027】
E19.固定相がrAAVカプシドに結合する1つまたは複数の抗原結合性ドメインを含む、E1~E18のいずれか1つに記載の方法。
【0028】
E20.固定相がrAAVカプシドまたはrAAVベクターに結合する1つまたは複数の単一ドメイン抗体を含む、E1~E19のいずれか1つに記載の方法。
【0029】
E21.固定相が、配列番号3と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVP1タンパク質を含むAAV9カプシドに結合する親和性クロマトグラフィー固定相である、E1~E20のいずれか1つに記載の方法。
【0030】
E22.固定相がラクダ科由来単一ドメイン抗体(例えば、VHH)を含む、E1~E21のいずれか1つに記載の方法。
【0031】
E23.固定相が、固定相1mLあたり1.0x1013vgよりも大きい動的結合容量を有する、E1~E22のいずれか1つに記載の方法。
【0032】
E24.固定相が、固定相1mLあたり約1.0x1014vgの動的結合容量を有し、任意選択により、結合容量がITR qPCRによって測定される、E1~E23のいずれか1つに記載の方法。
【0033】
E25.固定相が、固定相1mLあたり約5.0x1013vgの動的結合容量を有し、任意選択により、結合容量が導入遺伝子 導入遺伝子のqPCRによって測定される、E1~E24のいずれか1つに記載の方法。
【0034】
E26.固定相が、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9またはその組合せのAAV血清型のカプシドに結合することができる親和性樹脂である、E1~E25のいずれか1つに記載の方法。
【0035】
E27.固定相が、AAV9のAAV血清型のカプシドに結合することができる親和性樹脂である、E1~E26のいずれか1つに記載の方法。
【0036】
E28.固定相が、キメラカプシドに結合することができる親和性樹脂である、E1~E27のいずれか1つに記載の方法。
【0037】
E29.固定相がポリスチレンジビニルベンゼンビーズを含む樹脂であり、任意選択により、ビーズが50μmであり、多孔性である、E1~E28のいずれか1つに記載の方法。
【0038】
E30.固定相がPOROS(商標)Capture Select(商標)AAVX親和性樹脂である、E1~E29のいずれか1つに記載の方法。
【0039】
E31.固定相がPOROS(商標)Capture Select(商標)AAV9親和性樹脂である、E1~E30のいずれか1つに記載の方法。
【0040】
E32.固定相上にrAAVベクターを含む溶液をロードする前の、固定相の使用前洗浄をさらに含む、E1~E31のいずれか1つに記載の方法。
【0041】
E33.使用前洗浄が、固定相への水(例えば、注射用水)の適用および固定相からの水の全部または一部の除去を含む、E32に記載の方法。
【0042】
E34.約2CV~約10CV、例えば、約2CV、約3CV、約4CV、約5CV、約6CV、約7CV、約8CV、約9CVまたは約10CVの水が固定相に適用される、E33に記載の方法。
【0043】
E35.使用前洗浄が固定相の中を上向きに流動する、E32~E34のいずれか1つに記載の方法。
【0044】
E36.使用前洗浄が保存溶液を除去し、任意選択により、保存溶液が15%~20%のエタノールを含む溶液である、E32~E35のいずれか1つに記載の方法。
【0045】
E37.固定相上にrAAVベクターを含む溶液をロードする前の、固定相の使用前浄化をさらに含む、E1~E36のいずれか1つに記載の方法。
【0046】
E38.使用前浄化が、固定相へのリン酸(例えば、約0.1N~約0.2Nのリン酸)を含む溶液の適用および固定相からの溶液の全部または一部の除去を含む、E37に記載の方法。
【0047】
E39.溶液が、約1.5~約2.5(例えば、約1.9)のpHの約0.132Nのリン酸を含む、E37またはE38に記載の方法。
【0048】
E40.約2CV~約10CV、例えば、約2CV、約3CV、約4CV、約5CV、約6CV、約7CV、約8CV、約9CVまたは約10CVの溶液が固定相に適用される、E38またはE39に記載の方法。
【0049】
E41.固定相を約2.5CVの溶液と接触させた後、約45分間保持し、次いで、固定相と第2の2.5CVの溶液とを接触させる、E38~E40のいずれか1つに記載の方法。
【0050】
E42.溶液が固定相の中を上向きに流動する、E38~E41のいずれか1つに記載の方法。
【0051】
E43.使用前浄化がバイオバーデンを減少させる、E37~E42のいずれか1つに記載の方法。
【0052】
E44.固定相上にrAAVベクターを含む溶液をロードする前の、固定相の1回目の平衡化をさらに含む、E1~E43のいずれか1つに記載の方法。
【0053】
E45.1回目の平衡化が、固定相への緩衝剤(例えば、50mM~150mMのTris)を含む緩衝溶液の適用および固定相からの緩衝溶液の全部または一部の除去を含む、E44に記載の方法。
【0054】
E46.緩衝溶液がpH7.5の約100mMのTrisを含む、E45に記載の方法。
【0055】
E47.約2CV~約10CV、例えば、約2CV、約3CV、約4CV、約5CV、約6CV、約7CV、約8CV、約9CVまたは約10CVの緩衝溶液が固定相に適用される、E45またはE46に記載の方法。
【0056】
E48.固定相の1回目の平衡化が固定相のpHを調整する、E44~E47のいずれか1つに記載の方法。
【0057】
E49.固定相上にrAAVベクターを含む溶液をロードした後の、および固定相からrAAVベクターを溶出させる前の、および任意選択により、溶出前洗浄の前の、固定相の2回目の平衡化をさらに含む、E1~E48のいずれか1つに記載の方法。
【0058】
E50.2回目の平衡化が、固定相への緩衝剤(例えば、50mM~150mMのTris)を含む緩衝溶液の適用および固定相からの緩衝溶液の全部または一部の除去を含む、E49に記載の方法。
【0059】
E51.緩衝溶液がpH7.5の約100mMのTrisを含む、E50に記載の方法。
【0060】
E52.約2CV~約10CV、例えば、約2CV、約3CV、約4CV、約5CV、約6CV、約7CV、約8CV、約9CVまたは約10CVの緩衝溶液が固定相に適用される、E50またはE51に記載の方法。
【0061】
E53.固定相上にrAAVベクターを含む溶液をロードした後および固定相からrAAVベクターを溶出させる前の、溶出前洗浄をさらに含む、E1~E52のいずれか1つに記載の方法。
【0062】
E54.溶出前洗浄が、固定相への溶出前洗浄溶液の適用および固定相からの溶出前洗浄溶液の全部または一部の除去を含む、E53に記載の方法。
【0063】
E55.溶出前洗浄溶液が、i)固定相から結合した不純物を除去する;ii)rAAV-固定相リガンド結合を維持する;iii)宿主細胞タンパク質などのrAAVタンパク質以外のタンパク質の除去を改善するために低下したpHを有する、またはその組合せである、E53~E54のいずれか1つに記載の方法。
【0064】
E56.溶出前洗浄溶液が溶媒および緩衝剤を含む、E54またはE55に記載の方法。
【0065】
E57.溶媒がエタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、およびエチレングリコールからなる群から選択される、E56に記載の方法。
【0066】
E58.溶媒がエタノールである、E56またはE57に記載の方法。
【0067】
E59.溶媒の濃度が、約2%~約60%、例えば、約10%~約40%、約10%~約30%、約2%~約10%、約10%~約25%、約10%~約20%、約20%~約30%、約30%~約40%、約40%~約50%または約50%~約60%である、E56~E58のいずれか1つに記載の方法。
【0068】
E60.溶媒の濃度が約15%~約20%(例えば、約17%、約17.5%)である、E56~E59のいずれか1つに記載の方法。
【0069】
E61.溶媒がエタノールであり、エタノールの濃度が約15%~約20%(例えば、約17%、約17.5%)である、E56~E60のいずれか1つに記載の方法。
【0070】
E62.溶媒がエタノールであり、エタノールの濃度が約17%である、E56~E61のいずれか1つに記載の方法。
【0071】
E63.溶媒がエタノールであり、エタノールの濃度が約17.5%である、E56~E61のいずれか1つに記載の方法。
【0072】
E64.緩衝剤が酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、Tris(例えば、Tris塩基とTris-HClとの混合物)、BIS-Trisプロパン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、トリシン、トリエタノールアミン、ビシンおよびその組合せからなる群から選択される、E56~E63のいずれか1つに記載の方法。
【0073】
E65.緩衝剤の濃度が約10mM~約500mM、例えば、約50mM~約400mM、約100mM~約300mM、約10mM~約50mM、約50mM~約100mM、約100mM~約200mM、約50mM~約150mM、約200mM~約300mM、約300mM~約400mM、または約400mM~約500mMである、E56~E64のいずれか1つに記載の方法。
【0074】
E66.緩衝剤の濃度が約50mM~約200mMである、E56~E65のいずれか1つに記載の方法。
【0075】
E67.緩衝剤が酢酸ナトリウムである、E56~E66のいずれか1つに記載の方法。
【0076】
E68.緩衝剤が酢酸ナトリウムであり、溶出前洗浄溶液中の酢酸ナトリウムの濃度が約145mM~約155mM(例えば、約153mM)である、E56~E67のいずれか1つに記載の方法。
【0077】
E69.緩衝剤が酢酸ナトリウムであり、溶出前洗浄溶液中の酢酸ナトリウムの濃度が約150mMである、E56~E68のいずれか1つに記載の方法。
【0078】
E70.緩衝剤が酢酸ナトリウムであり、溶出前洗浄溶液中の酢酸ナトリウムの濃度が約153mMである、E56~E69のいずれか1つに記載の方法。
【0079】
E71.溶出前洗浄溶液が、約4.5~8.0、例えば、約5.0~約8.0、約5.0~約6.0、約5.0~約5.5、約5.5~約6.0、約6.0~約6.5、約6.5~約7、約7.0~約8.0、約7.5~約8.0のpHを有する、E54~E70のいずれか1つに記載の方法。
【0080】
E72.溶出前洗浄溶液が5~6(例えば、約5.6)のpHを有する、E54~E71のいずれか1つに記載の方法。
【0081】
E73.溶出前洗浄溶液が、15%~25%のエタノール、100mM~200mMの酢酸ナトリウム、および5~6のpHを含む、E54~E72のいずれか1つに記載の方法。
【0082】
E74.溶出前洗浄溶液が、約15%~20%のエタノール、約145mM~約155mMの酢酸ナトリウム、および5~6のpHを含む、E54~E73のいずれか1つに記載の方法。
【0083】
E75.溶出前洗浄溶液が、約17.5%のエタノール、約153mMの酢酸ナトリウム、および約5.6のpHを含む、E54~E74のいずれか1つに記載の方法。
【0084】
E76.溶出前洗浄溶液が、約17%のエタノール、約150mMの酢酸ナトリウム、および約5.6のpHを含む、E54~E75のいずれか1つに記載の方法。
【0085】
E77.2CV~10CV、例えば、1CV~3CV、3CV~5CV、3CV~8CV、4CV~6CV、5CV~8CV、または8CV~10CVの溶出前洗浄溶液が固定相に適用される、E54~E76のいずれか1つに記載の方法。
【0086】
E78.4.5CV~5.5CVの溶出前洗浄溶液が固定相に適用される、E54~E77のいずれか1つに記載の方法。
【0087】
E79.約5CVの溶出前洗浄溶液が固定相に適用される、E54~E78のいずれか1つに記載の方法。
【0088】
E80.溶出前洗浄溶液の流動速度が、約10cm/h~約600cm/h、例えば、約50cm/h~約500cm/h、約100cm/h~約300cm/h、約100cm/h~約400cm/h、約100cm/h~約500cm/h、約10cm/h~約50cm/h、約50cm/h~約100cm/h、約100cm/h~約200cm/h、約200cm/h~約300cm/h、約150cm/h~約250cm/h、約300cm/h~約400cm/h、約400cm/h~約500cm/h、約450cm/h~約550cm/h、または約500cm/h~約600cm/hである、E54~E79のいずれか1つに記載の方法。
【0089】
E81.溶出前洗浄溶液の流動速度が、約150cm/h~約200cm/h(例えば、約170cm/h)、約150cm/h~約250cm/h(例えば、約200cm/h)または約300cm/h~約400cm/h(例えば、345cm/h)である、E54~E80のいずれか1つに記載の方法。
【0090】
E82.溶出前洗浄の滞留時間が、約2min/CV~約10min/CV、例えば、約1min/CV~約5min/CV、約3min/CV~約8min/CV、約2min/CV~約3min/CV、約3min/CV~約4min/CV、約4min/CV~約5min/CV、約5min/CV~約6min/CV、約6min/CV~約7min/CV、約7min/CV~約8min/CV、約8min/CV~約9min/CV、または約9min/CV~約10min/CVである、E54~E81のいずれか1つに記載の方法。
【0091】
E83.溶出前洗浄溶液の滞留時間が、約2min/CV、約3min/CV、約4min/CV、約4.3min/CV、約4.35min/CV、約4.5min/CV、約5min/CV、約5.5min/CV、約6min/CV、約7min/CV、または約8min/CVである、E54~E82のいずれか1つに記載の方法。
【0092】
E84.溶出前洗浄からの溶出液が、少なくとも750mAU/mmのA280最大ピーク高さを有する、E53~E83のいずれか1つに記載の方法。
【0093】
E85.溶出前洗浄からの溶出液が、少なくとも750mAU/mm~約1250mAU/mmのA280最大ピーク高さを有する、E53~E83のいずれか1つに記載の方法。
【0094】
E86.約15%~約20%(例えば、約17.5%)のエタノール、約150mM~約155mM(例えば、約153mM)の酢酸ナトリウム、pH5~6(例えば、約5.6)を含む約4.5CV~約5.5CV(例えば、約5CV)の溶出前洗浄溶液が固定相に適用され、任意選択により、溶出前洗浄溶液の流動速度が約300~約400cm/h(例えば、約345cm/h)であり、任意選択により、溶出前洗浄溶液の滞留時間が約4min/CV~約5min/CV(例えば、約4.35min/CV)である、E54~E85のいずれか1つに記載の方法。
【0095】
E87.約15%~約20%(例えば、約17.5%)のエタノール、約150mM~約155mM(例えば、約153mM)の酢酸ナトリウム、pH5~6(例えば、約5.6)を含む約4.5CV~約5.5CV(例えば、約5.0CV)の溶出前洗浄溶液が固定相に適用され、任意選択により、溶出前洗浄溶液の流動速度が約150~約250cm/h(例えば、約200cm/h)であり、任意選択により、溶出前洗浄溶液の滞留時間が約4.5min/CV~約5.5min/CV(例えば、約5.0min/CV)である、E54~E86のいずれか1つに記載の方法。
【0096】
E88.約15%~約20%(例えば、約17%)のエタノール、約145mM~約155mM(例えば、約150mM)の酢酸ナトリウム、pH5~6(例えば、約5.6)を含む約2.5CV~約3.5CV(例えば、約3.0CV)の溶出前洗浄溶液が固定相に適用され、任意選択により、溶出前洗浄溶液の流動速度が約150~約200cm/h(例えば、約170cm/h)であり、任意選択により、溶出前洗浄溶液の滞留時間が約2.5min/CV~約3.5min/CV(例えば、約3.0min/CV)である、E54~E87のいずれか1つに記載の方法。
【0097】
E89.固定相上にrAAVベクターを含む溶液をロードした後の、および固定相からrAAVベクターを溶出させる前の、および任意選択により、溶出前洗浄の後の、固定相の3回目の平衡化をさらに含む、E1~E88のいずれか1つに記載の方法。
【0098】
E90.3回目の平衡化が、固定相への緩衝溶液(例えば、約150mM~約160mMの酢酸ナトリウム)の適用および固定相からの緩衝溶液の全部または一部の除去を含む、E89に記載の方法。
【0099】
E91.緩衝溶液が約5.6のpHの約153mMの酢酸ナトリウムを含む、E90に記載の方法。
【0100】
E92.約2CV~約10CV、例えば、約2CV、約3CV、約4CV、約5CV、約6CV、約7CV、約8CV、約9CVまたは約10CVの緩衝溶液が固定相に適用される、E90またはE91に記載の方法。
【0101】
E93.3回目の平衡化が、5.6のpHの約153mMの酢酸ナトリウムを含む約5CVの緩衝溶液の固定相への適用を含む、E90~E92のいずれか1つに記載の方法。
【0102】
E94.固定相からのrAAVベクターの溶出が、溶出緩衝液の固定相への適用および固定相からの溶出緩衝液の全部または一部の除去を含む、E1~E93のいずれか1つに記載の方法。
【0103】
E95.溶出緩衝液が、固定相に由来する残留不純物を優先的に溶出しない、E94に記載の方法。
【0104】
E96.i)溶出緩衝液が固定相からrAAVベクターを溶出する;
ii)溶出緩衝液が親和性溶出液の沈降をもたらさない;
iii)溶出緩衝液がvg回収率(%)を最大化する;
iv)溶出緩衝液が、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)固定相へのrAAVベクターの結合を阻害しない;
v)溶出緩衝液が三価陰イオンを含有しない;
vi)溶出緩衝液がクエン酸イオン、またはその組合せを含有しない、
E1~E95のいずれか1つに記載の方法。
【0105】
E97.90%~100%のrAAVベクターがその後の精製ステップにおいてAEX固定相に結合するように、溶出緩衝液がrAAVベクターのAEX固定相への結合を阻害しない、E1~E96のいずれか1つに記載の方法。
【0106】
E98.溶出緩衝液が、塩、アミノ酸、緩衝剤、およびその任意の組合せからなる群から選択される成分を含む、E1~E97のいずれか1つに記載の方法。
【0107】
E99.溶出緩衝液の塩が、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、およびその任意の組合せからなる群から選択される、E98に記載の方法。
【0108】
E100.溶出緩衝液の塩が塩化マグネシウムである、E98またはE99に記載の方法。
【0109】
E101.溶出緩衝液の塩の濃度が、約1mM~約500mM、例えば、約5mM~150mM、約10mM~約200mM、約25mM~約150mM、約1mM~約10mM、約10mM~約50mM、約50mM~約100mM、約100mM~約200mM、約200mM~約300mM、約300mM~約400mM、および約400mM~約500mMである、E98~E100のいずれかに記載の方法。
【0110】
E102.溶出緩衝液の塩の濃度が約5mM~約150mMである、E98~E101のいずれか1つに記載の方法。
【0111】
E103.塩が塩化マグネシウムであり、溶出緩衝液中の塩化マグネシウムの濃度が約10mM~約100mM(例えば、約25mM)である、E98~E102のいずれか1つに記載の方法。
【0112】
E104.溶出緩衝液のアミノ酸が、ヒスチジン、アルギニン、シトルリン、グリシン、およびその任意の組合せからなる群から選択される、E98~E103のいずれか1つに記載の方法。
【0113】
E105.アミノ酸がグリシンである、E98~E104のいずれか1つに記載の方法。
【0114】
E106.溶出緩衝液のアミノ酸の濃度が、約0mM~約500mM、例えば、約10mM~約400mM、約50mM~約300mM、約50mM~約150mM、約0mM~約10mM、約10mM~約50mM、約50mM~約100mM、約100mM~約200mM、約200mM~約300mM、約300mM~約400mM、および約400mM~約500mMである、E98~E105のいずれか1つに記載の方法。
【0115】
E107.溶出緩衝液中のアミノ酸の濃度が約10mM~約200mMである、E98~E106のいずれか1つに記載の方法。
【0116】
E108.溶出緩衝液中のアミノ酸の濃度が約50mM~約150mMである、E98~E107のいずれか1つに記載の方法。
【0117】
E109.溶出緩衝液中のアミノ酸の濃度が約75mM~約125mM(例えば、約100mM)である、E98~E108のいずれか1つに記載の方法。
【0118】
E110.アミノ酸がグリシンであり、溶出緩衝液中のグリシンの濃度が約75mM~約125mM(例えば、約100mM)である、E98~E109のいずれか1つに記載の方法。
【0119】
E111.緩衝剤がクエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、Tris(例えば、Tris塩基とTris-HClとの混合物)、BIS-Trisプロパン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、トリシン、トリエタノールアミンおよび/またはビシンである、E98~E110のいずれか1つに記載の方法。
【0120】
E112.溶出緩衝液の緩衝剤が酢酸ナトリウムである、E98~E111に記載の方法。
【0121】
E113.溶出緩衝液中の緩衝剤の濃度が、約10mM~約500mM、例えば、約100mM~400mM、約145mM~約150mM、約200mM~約300mM、約10mM~約50mM、約50mM~約100mM、約75mM~約250mM、約100mM~約200mM、約200mM~約300mM、約300mM~約400mM、または約400mM~約500mMである、E98~E112のいずれか1つに記載の方法。
【0122】
E114.溶出緩衝液中の緩衝剤の濃度が約145mM~約150mM(例えば、約148mM)である、E98~E113のいずれか1つに記載の方法。
【0123】
E115.緩衝剤が酢酸ナトリウムであり、溶出緩衝液中の酢酸ナトリウムの濃度が約145mM~約150mM(例えば、約148mM)である、E98~E114のいずれか1つに記載の方法。
【0124】
E116.溶出緩衝液が約2~約6、例えば、約2~4、約2.5~約3.5、約2~2.5、約2.5~約3、約3~約3.5、約2.5~約3.5、約3.5~約4、約4~約4.5、約4.5~約5、約5~約5.5または約5.5~約6.0のpHを有する、E1~E115のいずれか1つに記載の方法。
【0125】
E117.溶出緩衝液が約3、約4、または約5のpHを有する、E1~E116のいずれか1つに記載の方法。
【0126】
E118.溶出緩衝液が約2.5~約3.5(例えば、約3.5)のpHを有する、E1~E116のいずれか1つに記載の方法。
【0127】
E119.溶出緩衝液が、約1mS/cm~約40mS/cm、例えば、約1mS/cm~約20mS/cm、約5mS/cm~約40mS/cm、約15mS/cm~約40mS/cm、約10mS/cm~約15mS/cm、約15mS/cm~約20mS/cm、約20mS/cm~約25mS/cm、約25mS/cm~約30mS/cm、約30mS/cm~約35mS/cm、または約35mS/cm~約40mS/cmの導電率を有する、E1~E118のいずれか1つに記載の方法。
【0128】
E120.溶出緩衝液が約20mS/cm~約35mS/cmの導電率を有する、E1~E119のいずれか1つに記載の方法。
【0129】
E121.溶出緩衝液が、i)200mMのグリシン、50mMのMgCl2、pH3.5;ii)100mMのグリシン、100mMのMgCl2、150mMの酢酸ナトリウム、pH3.0;iii)100mMのグリシン、50mMのMgCl2、150mMの酢酸ナトリウム、pH3.0;iv)100mMのグリシン、25mMのMgCl2、150mMの酢酸ナトリウム、pH3.0;v)100mMのグリシン、5mMのMgCl2、150mMの酢酸ナトリウム、pH3.0;vi)100mMのグリシン、25mMのMgCl2、148mMの酢酸ナトリウム、pH3.0;vii)100mMのグリシン、100mMのMgCl2、pH3.0;viii)100mMのグリシン、100mMのMgCl2、100mMの酢酸ナトリウム、pH3.0;ix)100mMのグリシン、100mMのMgCl2、100mMの酢酸ナトリウム、25wt./v.%のイオジキサノール、pH3.0;x)100mMのグリシン、100mMのMgCl2、100mMの酢酸ナトリウム、25wt.%プロピレングリコール、pH3.0、およびxi)50mM~150mMのグリシン、10mM~100mMのMgCl2、50mM~150mMの酢酸ナトリウム、および2.5~3.5のpHからなる群から選択される、E1~E120のいずれか1つに記載の方法。
【0130】
E122.溶出緩衝液が、約75mM~約125mM(例えば、約100mM)のグリシン、約20mM~約30mM(例えば、約25mM)のMgCl2、約140~約150mM(例えば、約148mM)の酢酸ナトリウム、pH約2.5~約3.5(例えば、約3.0)を含む、E1~E121のいずれか1つに記載の方法。
【0131】
E123.溶出緩衝液が、約100mMのグリシン、約25mMのMgCl2、約148mMの酢酸ナトリウム、pH3.0を含む、E1~E122のいずれか1つに記載の方法。
【0132】
E124.溶出緩衝液が、rAAVのAEX固定相への結合と競合する陰イオンを含有しない、E1~E123のいずれか1つに記載の方法。
【0133】
E125.陰イオンが三価陰イオンである、E124に記載の方法。
【0134】
E126.陰イオンがクエン酸塩である、E124またはE125に記載の方法。
【0135】
E127.2CV~10CV、例えば、1CV~3CV、3CV~5CV、3CV~8CV、4CV~6CV、5CV~8CV、または8CV~10CVの溶出緩衝液が固定相に適用される、E1~E126のいずれか1つに記載の方法。
【0136】
E128.4.5CV~5.5CV(例えば、約5CV)の溶出緩衝液が固定相に適用される、E1~E127のいずれか1つに記載の方法。
【0137】
E129.溶出緩衝液の流動速度が、約10cm/h~約600cm/h、例えば、約50cm/h~約500cm/h、約100cm/h~約300cm/h、約100cm/h~約400cm/h、約100cm/h~約500cm/h、約10cm/h~約50cm/h、約50cm/h~約100cm/h、約100cm/h~約200cm/h、約200cm/h~約300cm/h、約300cm/h~約400cm/h、約250cm/h~約350cm/h、約400cm/h~約500cm/h、約450cm/h~約550cm/h、または約500cm/h~約600cm/hである、E1~E128のいずれか1つに記載の方法。
【0138】
E130.溶出緩衝液の流動速度が約50cm/h~約100cm/h(例えば、約64cm/h)である、E1~E129のいずれか1つに記載の方法。
【0139】
E131.溶出緩衝液の流動速度が約250cm/h~約350cm/h(例えば、約300cm/h)である、E1~E130のいずれか1つに記載の方法。
【0140】
E132.溶出緩衝液の流動速度が約450cm/h~約550cm/h(例えば、約500cm/h)である、E1~E130のいずれか1つに記載の方法。
【0141】
E133.溶出緩衝液の滞留時間が、約2min/CV~約10min/CV、例えば、約1min/CV~約5min/CV、約3min/CV~約8min/CV、約2min/CV~約3min/CV、約3min/CV~約4min/CV、約4min/CV~約5min/CV、約5min/CV~約6min/CV、約6min/CV~約7min/CV、約7min/CV~約8min/CV、約8min/CV~約9min/CV、または約9min/CV~約10min/CVである、E1~E132のいずれか1つに記載の方法。
【0142】
E134.溶出緩衝液溶液の滞留時間が約3min/CV、約4min/CV、約5min/CV、約5.5min/CV、約6min/CV、約7min/CV、または約8min/CVである、E1~E133のいずれか1つに記載の方法。
【0143】
E135.約75mM~約125mM(例えば、約100mM)のグリシン、約20mM~約30mM(例えば、約25mM)のMgCl2、約140~約150mM(約148mM)の酢酸ナトリウム、pH約2.5~約3.5(例えば、約3.0)を含む約4.5CV~約5.5CV(例えば、約5CV)の溶出緩衝液が固定相に適用され、任意選択により、溶出緩衝液の流動速度が約450~約550cm/h(例えば、約500cm/h)であり、任意選択により、溶出緩衝液の滞留時間が約2.5min/CV~約3.5min/CV(例えば、約3min/CV)である、E1~E134のいずれか1つに記載の方法。
【0144】
E136.約75mM~約125mM(例えば、約100mM)のグリシン、約20mM~約30mM(例えば、約25mM)のMgCl2、約140~約150mM(約148mM)の酢酸ナトリウム、pH約2.5~約3.5(例えば、約3.0)を含む約4.5CV~約5.5CV(例えば、約5CV)の溶出緩衝液が固定相に適用され、任意選択により、溶出緩衝液の流動速度が約250~約350cm/h(例えば、約300cm/h)であり、任意選択により、溶出緩衝液の滞留時間が約2.5min/CV~約3.5min/CV(例えば、約3min/CV)である、E1~E134のいずれか1つに記載の方法。
【0145】
E137.約75mM~約125mM(例えば、約100mM)のグリシン、約20mM~約30mM(例えば、約25mM)のMgCl2、約140~約150mM(約148mM)の酢酸ナトリウム、pH約2.5~約3.5(例えば、約3.0)を含む約4.5CV~約5.5CV(例えば、約5CV)の溶出緩衝液が固定相に適用され、任意選択により、溶出緩衝液の流動速度が約50~約100cm/h(例えば、約64cm/h)であり、任意選択により、溶出緩衝液の滞留時間が約7.5min/CV~約8.5min/CV(例えば、約7.97min/CV)である、E1~E134のいずれか1つに記載の方法。
【0146】
E138.固定相からの溶出液の収集をさらに含み、溶出液が親和性溶出液である、E1~E137のいずれか1つに記載の方法。
【0147】
E139.親和性溶出液の収集が、約1mAU/mmの経路長のA280で開始され、約35mAU/mmの経路長で停止される、E138に記載の方法。
【0148】
E140.親和性溶出液の収集が、約2.5mAU/mmの経路長のA280で開始され、約32.5mAU/mmの経路長で停止される、E138に記載の方法。
【0149】
E141.親和性溶出液の収集が、約2.5mAU/mmの経路長のA280で開始され、約22.5mAU/mmの経路長のA280で停止される、E138に記載の方法。
【0150】
E142.親和性溶出液の収集が、約10mAUの経路長のA280で開始され、約120mAU(約5mmの経路長)で停止される、E138に記載の方法。
【0151】
E143.親和性溶出液の収集が、約12.5mAUのA280で開始され、約112.5mAU(約5mmの経路長)で停止される、E138に記載の方法。
【0152】
E144.固定相から収集される親和性溶出液の体積が約1mL~約3L、約10mL~約3L、約100mL~約3L、約200mL~約3L、約500mL~約3L、約100mL~約2L、または約100mL~約1Lである、E138~E143のいずれか1つに記載の方法。
【0153】
E145.固定相から収集される親和性溶出液の体積が約0.1CV~約10CVである、E138~E144のいずれか1つに記載の方法。
【0154】
E146.固定相から収集される親和性溶出液の体積が約0.1CV~約8CV、約0.1CV~約5CV、約0.1CV~約1CV、約0.1CV~約0.5CV、約0.5CV~約8CV、約0.5CV~約5CV、約0.5CV~約3CV、約0.5CV~約1.5CV、約0.5CV~約1.0CV、約1CV~約8CV、約1CV~約5CV、または約1CV~約2CVである、E138~E145のいずれか1つに記載の方法。
【0155】
E147.固定相から収集される親和性溶出液の体積が約0.5CV~約1.0CVである、E138~E146のいずれか1つに記載の方法。
【0156】
E148.固定相から収集される親和性溶出液の体積が約1CV~約2CV(例えば、約1.1CV~1.9CV)である、E138~E147のいずれか1つに記載の方法。
【0157】
E149.親和性溶出液が単一の画分として収集される、E138~E148のいずれか1つに記載の方法。
【0158】
E150.親和性溶出液が1より多い画分として収集される、E138~E149のいずれか1つに記載の方法。
【0159】
E151.1より多い親和性溶出液画分がプールされる、E150に記載の方法。
【0160】
E152.固定相がカラム内にある、E1~E151に記載の方法。
【0161】
E153.カラムが、約1mL~約30L、約1mL~約20L、約1mL~約10L、約1mL~約5L、約1mL~約1L、約1mL~約500mL、約1mL~約250mL、約1mL~約100mL、約1mL~約50mL、約1mL~約10mL、約500mL~約1L、約1L~約2L、約1L~約3L、約1L~約4L、約1L~約5L、約1L~約6L、約1L~約7L、約1L~約8L、約1L~約9L、約1L~約10L、約10L~約15L、約10L~約20L、約10L~約25L、または約10L~約30Lの体積を有する、E152に記載の方法。
【0162】
E154.カラムの体積が約1L(例えば、約0.997L)であり、約10cmの内径および約13cm(例えば、約12.7cm)の床高を有する、E152~E153のいずれか1つに記載の方法。
【0163】
E155.カラムの体積が約2.6L(例えば、約2.67L)であり、約20cmの内径および約8.5cmの床高を有する、E152~E153のいずれか1つに記載の方法。
【0164】
E156.カラムの体積が約17.0L(例えば、約17.663L)であり、約30cmの内径および約25cmの床高を有する、E152~E153のいずれか1つに記載の方法。
【0165】
E157.カラムの体積が約25L(例えば、約25.61L)であり、約45cmの内径および約15cmの床高を有する、E152~E153のいずれか1つに記載の方法。
【0166】
E158.親和性溶出液中のvg収率(%)が、約50%~約100%、約60%~約100%、約70%~約100%、約80%~約100%、約85%~約100%、約90%~約100%、約95%~約100%、または約98%~約100%である、E2~E157のいずれか1つに記載の方法。
【0167】
E159.親和性溶出液のvg収率(%)が、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約100%である、E158に記載の方法。
【0168】
E160.親和性溶出液1mLあたりのvgが、約1.0x1012vg/mL~約1.0x1014vg/mL、約5.0x1012vg/mL~約1.0x1014vg/mL、約5.0x1012vg/mL~約7.0x1013vg/mL、約1.0x1013vg/mL~約1.0x1014vg/mL、約1.0x1013vg/mL~約8.0x1013vg/mL、または約1.0x1013vg/mL~約5.0x1013vg/mLである、E2~E158のいずれか1つに記載の方法。
【0169】
E161.親和性溶出液のvg収率(%)および/または親和性溶出液1mLあたりのvgが、qPCRによって測定される、E158~E160のいずれか1つに記載の方法。
【0170】
E162.qPCRが導入遺伝子配列のコピーを測定する、E161に記載の方法。
【0171】
E163.導入遺伝子配列が、配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%もしくは100%同一である核酸配列、またはその断片を含む、E162に記載の方法。
【0172】
E164.qPCRが、逆方向末端反復(ITR)配列のコピーを測定する、E161に記載の方法。
【0173】
E165.ITR配列が、配列番号5~8のいずれか1つと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%もしくは100%同一である核酸配列、またはその断片を含む、E164に記載の方法。
【0174】
E166.親和性溶出液のA260/A280比が0.8より大きい、E2~E165のいずれか1つに記載の方法。
【0175】
E167.親和性溶出液のA260/A280比が、約0.8、約0.81、約0.82、約0.83、約0.84、約0.85、約0.86、約0.87、約0.88、約0.89、約0.9、約0.91、約0.92、約0.93、約0.94、約0.95、約0.96、約0.97、約0.98、約0.99、約1.0、約1.1、約1.11、約1.12、約1.13、約1.14、約1.15、約1.16、約1.17、約1.18、約1.19、約1.20、約1.21、約1.22、約1.23、約1.24、約1.25、約1.26、約1.27、約1.28、約1.29、約1.30であるか、またはそれより大きい、E2~E166のいずれか1つに記載の方法。
【0176】
E168.収集される親和性溶出液のA260/A280が、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)と同時に吸光度測定によって測定される、E2~E167のいずれか1つに記載の方法。
【0177】
E169.親和性溶出液の純度(%)が、溶出液中の総タンパク質の約80%~約100%、約85%~約100%、約90%~約100%、約95%~約100%または約98%~約100%のカプシドタンパク質である、E2~E168のいずれか1つに記載の方法。
【0178】
E170.親和性溶出液の純度(%)が、溶出液中の総タンパク質の約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%のカプシドタンパク質である、E2~E169のいずれか1つに記載の方法。
【0179】
E171.親和性溶出液の総タンパク質のウイルスタンパク質の純度(%)が、非還元的逆相HPLCによって測定される、E169またはE170のいずれか1つに記載の方法。
【0180】
E172.親和性溶出液の総タンパク質のウイルスタンパク質の純度(%)が、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定される、E169またはE170のいずれか1つに記載の方法。
【0181】
E173.親和性溶出液の総タンパク質のウイルスタンパク質の純度(%)が、rAAVベクターを含む溶液の総タンパク質のカプシドタンパク質の純度(%)と比較して増加している、E2~E172のいずれか1つに記載の方法。
【0182】
E174.親和性溶出液のウイルス粒子力価が、約1x1011vp/mL~約1x1015vp/mL、約1x1012vp/mL~約1x1014vp/mL、約1x1013vp/mL~約1x1014vp/mL、約1x1013vp/mL~約9x1013vp/mLまたは約2x1013vp/mL~約8x1013vp/mLである、E2~E173のいずれか1つに記載の方法。
【0183】
E175.親和性溶出液のウイルス粒子力価が、約1x1013vp/mL、約2x1013vp/mL、約3x1013vp/mL、約4x1013vp/mL、約5x1013vp/mL、約6x1013vp/mL、約7x1013vp/mL、約8x1013vp/mL、約9x1013vp/mLまたは約10x1013vp/mLである、E2~E174のいずれか1つに記載の方法。
【0184】
E176.親和性溶出液のウイルス粒子力価がサイズ排除クロマトグラフィーによって測定されるE174またはE175に記載の方法。
【0185】
E177.親和性溶出液が約2.5~約4.5、約3~約4、約3.2~約3.6、または約3.4~約3.6のpHを有する、E2~E176のいずれか1つに記載の方法。
【0186】
E178.親和性溶出液中に存在する宿主細胞DNA(HCDNA)の量が、約50ng/1x1014vg~約100ng/1x1014vg、約50ng/1x1014vg~約750ng/1x1014vg、約50ng/1x1014vg~約500ng/1x1014vg、約50ng/1x1014vg~約250ng/1x1014vg、または約50~約100ng/1x1014vgである、E2~E177のいずれか1つに記載の方法。
【0187】
E179.親和性溶出液中に存在するHCDNAの量が、約1pg/1x109vg~約25pg/1x109vg、約1pg/1x109vg~約20pg/1x109vg、約1pg/1x109vg~約15pg/1x109vg、または約1pg/1x109vg~約10pg/1x109vgである、E2~E178のいずれか1つに記載の方法。
【0188】
E180.親和性溶出液中に存在するHCDNAの量が、約1pg/1x109vg、2pg/1x109vg、3pg/1x109vg、4pg/1x109vg、5pg/1x109vg、6pg/1x109vg、7pg/1x109vg、8pg/1x109vg、9pg/1x109vg、10pg/1x109vg、15pg/1x109vgまたは約20pg/1x109vgである、E2~E179のいずれか1つに記載の方法。
【0189】
E181.親和性溶出液中に存在するHCDNAの量が、約1x104pg/mL~約1x106pg/mL、約1x104pg/mL~約1x105pg/mLまたは1x104pg/mL~約5x104pg/mLである、E2~E180のいずれか1つに記載の方法。
【0190】
E182.親和性溶出液中に存在するHCDNAの量が、約5x104pg/mL、6x104pg/mL、7x104pg/mL、8x104pg/mL、9x104pg/mL、1x105pg/mL、2x105pg/mL、3x105pg/mL、4x105pg/mL、5x105pg/mL、6x105pg/mL、7x105pg/mL、8x105pg/mL、9x105pg/mLまたは10x105pg/mLである、E2~E181のいずれか1つに記載の方法。
【0191】
E183.親和性溶出液中に存在するHCDNAの量がqPCRによって測定される、E178~E182のいずれか1つに記載の方法。
【0192】
E184.親和性溶出液中のHCDNAの量が、rAAVベクターを含む溶液中のHCDNAの量と比較して減少している、E2~E183のいずれか1つに記載の方法。
【0193】
E185.減少が、約1~約-1のrAAVベクターを含む溶液中のHCDNAの量と比較した、親和性溶出液中のHCDNAの量の対数減少値である、E184に記載の方法。
【0194】
E186.親和性溶出液中に存在する宿主細胞タンパク質(HCP)の量が、約1000ng/1x1014vg~約20000ng/1x1014vg、約1000ng/1x1014vg~約15000ng/1x1014vg、約1000ng/1x1014vg~約10000ng/1x1014vg、約1000ng/1x1014vg~約5000ng/1x1014vg、約1000ng/1x1014vg~約2500ng/1x1014vg、または約5000ng/1x1014vg~約10000ng/1x1014vgである、E2~E185のいずれか1つに記載の方法。
【0195】
E187.親和性溶出液中に存在するHCPの量が、約10pg/1x109vg~約4000pg/1x109vg、10pgpg/1x109vg~約3000pg/1x109vg、10pg/1x109vg~約2000pg/1x109vg、10pg/1x109vg~約1000pg/1x109vg、約10pg/1x109vg~約800pg/1x109vg、約10pg/1x109vg~約600pg/1x109vg、約10pg/1x109vg~約500pg/1x109vg、約10pg/1x109vg~約250pg/1x109vg、約10pg/1x109vg~約100pg/1x109vg、または約50pg/1x109vg~約500pg/1x109vgである、E2~E186のいずれか1つに記載の方法。
【0196】
E188.親和性溶出液中に存在するHCPの量が、約10pg/1x109vg、20pg/1x109vg、30pg/1x109vg、40pg/1x109vg、50pg/1x109vg、60pg/1x109vg、70pg/1x109vg、80pg/1x109vg、90pg/1x109vg、100pg/1x109vg、200pg/1x109vg、300pg/1x109vg、400pg/1x109vg、500pg/1x109vg、600pg/1x109vg、700pg/1x109vg、800pg/1x109vg、900pg/1x109vgまたは1000pg/1x109vgである、E2~E187のいずれか1つに記載の方法。
【0197】
E189.親和性溶出液中に存在するHCPの量が、約1x102ng/mL~約1x105ng/mL、約1x102ng/mL~約1x104ng/mg、1x102ng/mL~約1x103ng/mLまたは約1x103ng/mL~約1x104ng/mLである、E2~E188のいずれか1つに記載の方法。
【0198】
E190.親和性溶出液中に存在するHCPの量が、約1x103ng/mL、2x103ng/mL、3x103ng/mL、4x103ng/mL、5x103ng/mL、6x103ng/mL、7x103ng/mL、8x103ng/mL、9x103ng/mL、10x103ng/mLまたは20x103ng/mLである、E2~E189のいずれか1つに記載の方法。
【0199】
E191.親和性溶出液中に存在するHCPの量が、ELISA、ウェスタンブロット、および銀染色からなる群から選択される方法によって測定される、E186~E190のいずれか1つに記載の方法。
【0200】
E192.親和性溶出液中のHCPの量が、rAAVベクターを含む溶液中のHCPの量と比較して減少している、E2~E191のいずれか1つに記載の方法。
【0201】
E193.約1~約10のrAAVベクターを含む溶液中のHCPの量と比較した、親和性溶出液中のHCPの量の対数減少値が存在する、E192に記載の方法。
【0202】
E194.親和性溶出液中に存在する残留プラスミドDNAの量が、約1pg/1x109vg~約100pg/1x109vg、約1pg/1x109vg~約90pg/1x109vg、約1pg/1x109vg~約80pg/1x109vg、約1pg/1x109vg~約70pg/1x109vg、約1pg/1x109vg~約60pg/1x109vg、約1pg/1x109vg~約50pg/1x109vgまたは約1pg/1x109vg~約40pg/1x109vgである、E2~E193のいずれか1つに記載の方法。
【0203】
E195.親和性溶出液中に存在する残留プラスミドDNAの量が、約1x104pg/mL~約1x106pg/mL、1x105pg/mL~約1x106pg/mL、1x105pg/mL~約9x105pg/mL、1x105pg/mL~約8x105pg/mL、1x105pg/mL~約8x105pg/mL、1x105pg/mL~約7x105pg/mL、1x105pg/mL~約6x105pg/mLまたは1x105pg/mL~約5x105pg/mLである、E2~E194のいずれか1つに記載の方法。
【0204】
E196.親和性溶出液中の残留プラスミドDNAの量が、rAAVベクターを含む溶液中の残留プラスミドDNAの量と比較して減少している、E2~E195のいずれか1つに記載の方法。
【0205】
E197.約1~約-1のrAAVベクターを含む溶液中の残留プラスミドDNAの量と比較した、親和性溶出液中の残留プラスミドDNAの量の対数減少値が存在する、E196に記載の方法。
【0206】
E198.残留プラスミドDNAがqPCRによって測定される、E194~E197のいずれか1つに記載の方法。
【0207】
E199.親和性溶出液中に存在する残留親和性リガンドの量が、約1pg/1x109vg~約100pg/1x109vg、約1pg/1x109vg~約90pg/1x109vg、約1pg/1x109vg~約80pg/1x109vg、約1pg/1x109vg~約70pg/1x109vg、約1pg/1x109vg~約60pg/1x109vg、約1pg/1x109vg~約50pg/1x109vgまたは約1pg/1x109vg~約40pg/1x109vgであり、任意選択により、残留親和性リガンドがELISAによって測定される、E2~E198のいずれか1つに記載の方法。
【0208】
E200.親和性溶出液中に存在する残留親和性リガンドの量が、約1ng/mL~約1000ng/mL、1ng/mL~約900ng/mL、1ng/mL~約800ng/mL、1ng/mL~約700ng/mL、1ng/mL~約600ng/mL、1ng/mL~約500ng/mL、1ng/mL~約400ng/mLまたは1ng/mL~約300ng/mLであり、任意選択により、残留親和性リガンドがELISAによって測定される、E2~E199のいずれか1つに記載の方法。
【0209】
E201.親和性溶出液中のrAAVベクターの感染性比が、約5000vg/IU~約50000vg/IU(例えば、約12962、17581、20345vg/IU)である、E2~E200のいずれか1つに記載の方法。
【0210】
E202.親和性溶出液中のrAAVベクターの感染性比が、rAAVベクターを含む溶液中のrAAVベクターの感染性比と比較して増加している、E2~E201のいずれか1つに記載の方法。
【0211】
E203.親和性溶出液中のrAAVベクターの感染性比が、細胞に基づくアッセイによって測定される、E201またはE202に記載の方法。
【0212】
E204.rAAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV3(AAV3AおよびAAV3Bを含む)、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV12、AAVrh8、AAVrh10、AAVrh39、AAVrh43、AAVrh74、AAVrh32.22、AAV1.1、AAV2.5、AAV6.1、AAV6.2、AAV6.3.1、AAV9.45、AAVShH10、HSC15/17、RHM4-1、RHM15-1、RHM15-2、RHM15-3/RHM15-5、RHM15-4、RHM15-6、AAVhu.26、AAV2i8、AAV29G、AAV2、AAV8G9、AAV-LK03、AAV2-TT、AAV2-TT-S312N、AAV3B-S312N、AAVavian、AAVbat、AAVbovine、AAVcanine、AAVequine、AAVprimate、AAVnon-primate、AAVovine、AAVmuscovy duck、AAVporcine4、AAVporcine5、AAVsnake NP4、NP22、NP66、AAVDJ、AAVDJ/8、AAVDJ/9、AAVHSC1、AAVHSC2、AAVHSC3、AAVHSC4、AAVHSC5、AAVHSC6、AAVHSC7、AAVHSC8、AAVHSC9、AAVHSC10、AAVHSC11、AAVHSC12、AAVHSC13、AAVHSC14、AAVHSC15、AAVv66、AAVv33、AAVv37、AAVv40、AAVv67、AAVv70、AAVv72、AAVv84、AAVv86、AAVv87およびAAVv90からなる群から選択されるAAV血清型に由来するカプシドタンパク質を含む、E1~E203のいずれか1つに記載の方法。
【0213】
E205.rAAV血清型がAAV9である、E1~E204のいずれか1つに記載の方法。
【0214】
E206.rAAVベクターが、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVP1タンパク質を含む、E1~E205のいずれか1つに記載の方法。
【0215】
E207.rAAVベクターがミニ-ジストロフィン導入遺伝子を含む、E1~E206のいずれか1つに記載の方法。
【0216】
E208.ミニ-ジストロフィン導入遺伝子が配列番号1の核酸配列を含むか、またはそれからなる、E207に記載の方法。
【0217】
E209.ミニ-ジストロフィン導入遺伝子が配列番号2のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるタンパク質をコードする、E207またはE208のいずれか1つに記載の方法。
【0218】
E210.rAAVベクターが配列番号4の核酸配列を含むか、またはそれからなる核酸を含む、E1~E209のいずれか1つに記載の方法。
【0219】
E211.固定相を再生することをさらに含む、E1~E210のいずれか1つに記載の方法。
【0220】
E212.固定相の再生が、固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させることを含み、rAAVベクタータンパク質、宿主細胞不純物、および/または核酸が、第1の再生緩衝液との接触によって固定相から放出され、任意選択により、方法が、第1の再生緩衝液の少なくとも一部を除去した後、固定相上にrAAVベクターを含む溶液をロードすることをさらに含む、E211に記載の方法。
【0221】
E213.親和性クロマトグラフィーによってrAAVベクターの精製のための固定相を再生する方法であって、固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させることを含み、rAAVベクタータンパク質、宿主細胞不純物および/または核酸が、第1の再生緩衝液との接触によって固定相から放出される、方法。
【0222】
E214.固定相と第1の再生緩衝液とを接触させる前に固定相の4回目の平衡化をさらに含む、E211~E213のいずれか1つに記載の方法。
【0223】
E215.4回目の平衡化が、固定相への緩衝溶液(例えば、約150mM~約160mMの酢酸ナトリウム)の適用および固定相からの緩衝溶液の全部または一部の除去を含む、E214に記載の方法。
【0224】
E216.緩衝溶液が5.6のpHの約153mMの酢酸ナトリウムを含む、E215に記載の方法。
【0225】
E217.約2CV~約10CV、例えば、約2CV、約3CV、約4CV、約5CV、約6CV、約7CV、約8CV、約9CVまたは約10CVの緩衝溶液が固定相に適用される、E215またはE216に記載の方法。
【0226】
E218.固定相上で実行することができる精製サイクルの数が、第1の再生緩衝液と接触させていない固定相上で実行することができる精製サイクルの数と比較して、固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させることによって増加し、
精製サイクルが、固定相上にrAAVベクターを含む溶液をロードすること、および固定相からrAAVベクターを溶出させることを含み、
溶出液中のrAAVベクターのvg回収率(%)が50%またはそれより大きい、
E213~E217のいずれか1つに記載の方法。
【0227】
E219.第1の再生緩衝液と接触させた固定相上で実行することができる精製サイクルの数が2より大きい、E218に記載の方法。
【0228】
E220.第1の再生緩衝液と接触させた固定相上で実行することができる精製サイクルの数が8以上である;
第1の再生緩衝液と接触させた固定相上で実行することができる精製サイクルの数が10以上である;
固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させた後の最後の精製サイクルからの溶出液のvg回収率(%)が、固定相を第1の再生緩衝液と接触させる前の最初の精製サイクルからの溶出液のvg回収率(%)と比較して10%を超えて減少していない;
固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させた後の最後の精製サイクルのフロースルー中の未結合のrAAVベクターの量が、固定相を第1の再生緩衝液と接触させる前の最初の精製サイクルのフロースルー中の未結合のrAAVベクターの量と比較して10%を超えて増加していない;
固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させた後の最後の精製サイクルのカラム圧力が、0.4MPa以下である;
固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させた後の最後の精製サイクルからの溶出液の純度(%)が、固定相を第1の再生緩衝液と接触させる前の最初の精製サイクルからの溶出液の純度(%)と比較して10%を超えて減少していない;
固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させた後の最後の精製サイクルからの溶出液のHCPの量が、固定相を第1の再生緩衝液と接触させる前の最初の精製サイクルからの溶出液のHCPの量と比較して10%を超えて増加していない;
固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させた後の最後の精製サイクルからの溶出液のHCDNAの量が、固定相を第1の再生緩衝液と接触させる前の最初の精製サイクルからの溶出液のHCDNAの量と比較して10%を超えて増加していない;および/または
固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させた後の最後の精製サイクルからの溶出液の平均A260/A280が、固定相を第1の再生緩衝液と接触させる前の最初の精製サイクルからの溶出液の平均A260/A280と比較して10%を超えて減少していない、
E218またはE219に記載の方法。
【0229】
E221.第1の再生緩衝液と接触させた固定相上で実行することができる精製サイクルの数が、グアニジンHClを含む緩衝液と接触させた固定相と比較して増加している、E218~E220のいずれか1つに記載の方法。
【0230】
E222.第1の再生緩衝液が酸、プロピレングリコール、および/または尿素を含む、E212~E221のいずれか1つに記載の方法。
【0231】
E223.第1の再生緩衝液の酸がリン酸、酢酸、またはアミノ酸である、E222に記載の方法。
【0232】
E224.第1の再生緩衝液中の酸の濃度が、約0.05N~約1.5N、例えば、約0.05N~約1N、約0.05N~約0.75N、約0.05N~約0.5N、約0.05N~約0.25N、約0.05N~約0.15N、約0.05N~約0.075N、約0.05N~約0.1N、約0.1N~約0.15N、約0.05N~約0.06N、約0.06N~約0.07N、約0.07N~約0.08N、約0.08N~約0.09N、約0.09N~約0.1N、約0.1N~約0.11N、約0.11N~約0.12N、約0.12N~約0.13N、約0.13N~約0.14N、約0.14N~約0.15N、約0.15N~約0.2N、約0.2N~約0.3N、約0.3N~約0.4N、約0.4N~約0.5N、約0.45N~約0.55N、約0.5N~約0.6N、約0.6N~約0.7N、約0.7N~約0.8N、約0.8N~約0.9N、約0.9N~約1.0N、約1.0N~約1.1N、約1.1N~約1.2N、約1.2N~約1.3N、約1.3N~約1.4N、約1.4N~約1.5Nである、E222またはE223に記載の方法。
【0233】
E225.第1の再生緩衝液中の酸の濃度が、約0.10N~約0.15N(例えば、約0.132N、約0.1N)である、E222~E224のいずれか1つに記載の方法。
【0234】
E226.酸がリン酸である、E222~E225のいずれか1つに記載の方法。
【0235】
E227.酸がリン酸であり、リン酸の濃度が約0.13N~約0.14N(例えば、約0.132N)である、E222~E226のいずれか1つに記載の方法。
【0236】
E228.第1の再生緩衝液が、約1~約4、例えば、約1~約3、約1~約2、約1.5~約2.5、約2~約3、約3~約4、約2~約4のpHを有する、E212~E227のいずれか1つに記載の方法。
【0237】
E229.第1の再生緩衝液が約1、約2、約3、約4のpHを有する、E212~E228のいずれか1つに記載の方法。
【0238】
E230.第1の再生緩衝液が約2(例えば、約1.9)のpHを有する、E212~E229のいずれか1つに記載の方法。
【0239】
E231.酸がリン酸であり、リン酸の濃度が約0.10N~約0.15N(例えば、約0.132N)であり、第1の再生緩衝液が約1.5~約2.5(例えば、約1.9)のpHを有する、E222~E230のいずれか1つに記載の方法。
【0240】
E232.固定相を、2CV~10CV、例えば、1CV~3CV、3CV~5CV、3CV~8CV、4CV~6CV、5CV~8CV、または8CV~10CVの第1の再生緩衝液と接触させる、E212~E231のいずれか1つに記載の方法。
【0241】
E233.固定相を、約4.5CV~約5.5CV(例えば、約5CV)の第1の再生緩衝液と接触させる、E212~E232のいずれか1つに記載の方法。
【0242】
E234.固定相を約2.5CVの第1の再生緩衝液と接触させた後、約45分間保持し、次いで、固定相と第2の2.5CVの第1の再生緩衝液とを接触させる、E212~E233のいずれか1つに記載の方法。
【0243】
E235.第1の再生緩衝液が固定相の中を上向きに流動する、E212~E234のいずれか1つに記載の方法。
【0244】
E236.第1の再生緩衝液の流動速度が、約10cm/h~約600cm/h、例えば、約50cm/h~約500cm/h、約100cm/h~約300cm/h、約100cm/h~約400cm/h、約100cm/h~約500cm/h、約10cm/h~約50cm/h、約50cm/h~約100cm/h、約100cm/h~約200cm/h、約200cm/h~約300cm/h、約300cm/h~約400cm/h、約400cm/h~約500cm/h、または約500cm/h~約600cm/hである、E212~E235のいずれか1つに記載の方法。
【0245】
E237.第1の再生緩衝液の流動速度が約450cm/h~約550cm/h(例えば、500cm/h)である、E212~E235のいずれか1つに記載の方法。
【0246】
E238.第1の再生緩衝液の流動速度が約250cm/h~約350cm/h(例えば、300cm/h)である、E212~E235のいずれか1つに記載の方法。
【0247】
E239.第1の再生緩衝液の流動速度が約10cm/h~約20cm/h(例えば、14cm/h)である、E212~E235のいずれか1つに記載の方法。
【0248】
E240.第1の再生緩衝液の滞留時間が、約2.5min/CV~約3.5min/CV(例えば、3min/CV)である、E212~E239のいずれか1つに記載の方法。
【0249】
E241.第1の再生緩衝液の滞留時間が、約11min/CV~約12min/CV(例えば、11.5min/CV)である、E212~E239のいずれか1つに記載の方法。
【0250】
E242.固定相を、約0.10N~約0.15N(例えば、約0.132N)のリン酸を含む、約4.5~約5.5CV(例えば、約5CV)の第1の再生緩衝液と接触させ、第1の再生緩衝液の流動速度が約450~約550cm/h(例えば、約500cm/h)である、E212~E241のいずれか1つに記載の方法。
【0251】
E243.固定相を、約0.10N~約0.15N(例えば、約0.132N)のリン酸を含む、約4.5~約5.5CV(例えば、約5CV)の第1の再生緩衝液と接触させ、第1の再生緩衝液の流動速度が約250~約350cm/h(例えば、約300cm/h)である、E212~E241のいずれか1つに記載の方法。
【0252】
E244.固定相を、約0.08N~約0.12N(例えば、約0.1N)のリン酸を含む、約4.5~約5.5CV(例えば、約5CV)の第1の再生緩衝液と接触させ、第1の再生緩衝液の流動速度が約10~約20cm/h(例えば、約14cm/h)である、E212~E243のいずれか1つに記載の方法。
【0253】
E245.固定相と第1の再生緩衝液とを接触させた後の、固定相の浄化後洗浄をさらに含む、E212~E244のいずれか1つに記載の方法。
【0254】
E246.浄化後洗浄が、固定相への緩衝溶液(例えば、50mM~150mMのTris)の適用および固定相からの緩衝溶液の全部または一部の除去を含む、E245に記載の方法。
【0255】
E247.緩衝溶液がpH7.5の約100mMのTrisを含む、E246に記載の方法。
【0256】
E248.約2CV~約10CV、例えば、約2CV、約3CV、約4CV、約5CV、約6CV、約7CV、約8CV、約9CVまたは約10CVの緩衝溶液が固定相に適用される、E246またはE247に記載の方法。
【0257】
E249.緩衝溶液が固定相の中を下向きに流動する、E246~E248のいずれか1つに記載の方法。
【0258】
E250.固定相と第1の再生緩衝液とを接触させた後、および任意選択により、浄化後洗浄の後、固定相と第2の再生緩衝液とを接触させることをさらに含む、E212~E249のいずれか1つに記載の方法。
【0259】
E251.第2の再生緩衝液が界面活性剤および緩衝剤を含む、E250に記載の方法。
【0260】
E252.界面活性剤が、サルコシル、ポロキサマー188(P188)、Triton X-100、ポリソルベート80(PS80)、Brij-35、ノニルフェノキシポリエトキシルエタノール(NP-40)、およびその組合せからなる群から選択される、E251に記載の方法。
【0261】
E253.界面活性剤がサルコシルである、E251~E252に記載の方法。
【0262】
E254.第2の再生緩衝液中の界面活性剤のパーセンテージが、約0.1%~約10%、例えば、約0.1%~約5%、約0.5%~約5%、約0.5%~約2.5%、約0.5%~約1.5%、約0.1%~約0.5%、約0.5%~約1.0%、約1.0%~約5.0%、約5.0%~約10%である、E251~E253のいずれか1つに記載の方法。
【0263】
E255.界面活性剤のパーセンテージが約0.5%~約1.5%(例えば、約1.0%)である、E251~E254のいずれか1つに記載の方法。
【0264】
E256.界面活性剤がサルコシルであり、サルコシルの濃度が約0.3%~約1.5%(例えば、約1.0%)である、E251~E255のいずれか1つに記載の方法。
【0265】
E257.第2の再生緩衝液の緩衝剤が、Tris(例えば、Tris塩基とTris-HClとの混合物)、BIS-Trisプロパン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、トリシン、トリエタノールアミン、およびビシンからなる群から選択される、E251~E256のいずれか1つに記載の方法。
【0266】
E258.第2の再生緩衝液中の緩衝剤がTrisである、E251~E257のいずれか1つに記載の方法。
【0267】
E259.第2の再生緩衝液中の緩衝剤の濃度が、約10mM~約500mM、例えば、約10mM~約400mM、約10mM~約300mM、約10mM~約200mM、約50mM~約500mM、約50mM~約400mM、約50mM~約100mM、約10mM~約50mM、約50mM~約100mM、約50mM~150mM、約100mM~約200mM、約200mM~約300mM、約300mM~約400mM、または約400mM~約500mMである、E251~E258のいずれか1つに記載の方法。
【0268】
E260.第2の再生緩衝液中の緩衝剤の濃度が約50mM~約150mM(例えば、約100mM)である、E251~E259のいずれか1つに記載の方法。
【0269】
E261.第2の再生緩衝液中の緩衝剤がTrisであり、第2の再生緩衝液中のTrisの濃度が約50mM~約150mM(例えば、約100mM)である、E251~E260のいずれか1つに記載の方法。
【0270】
E262.第2の再生緩衝液が約7~約8、例えば、約7.5のpHを有する、E250~E261のいずれか1つに記載の方法。
【0271】
E263.第2の再生緩衝液が、約0.5%~約1.5%(例えば、約1.0%)のサルコシル、約50mM~約150mM(例えば、約100mM)のTrisを含み、約7~約8(例えば、約7.5)のpHを有する、E250~E262のいずれか1つに記載の方法。
【0272】
E264.固定相を、2CV~10CV、例えば、1CV~3CV、3CV~5CV、3CV~8CV、4CV~6CV、5CV~8CV、または8CV~10CVの第2の再生緩衝液と接触させる、E250~E263のいずれか1つに記載の方法。
【0273】
E265.固定相を、約4.5CV~約5.5CV(例えば、約5CV)の第2の再生緩衝液と接触させる、E250~E264のいずれか1つに記載の方法。
【0274】
E266.第2の再生緩衝液が固定相の中を上向きに流動する、E250~E265のいずれか1つに記載の方法。
【0275】
E267.第2の再生緩衝液の流動速度が約450cm/h~約550cm/h(例えば、500cm/h)である、E250~E266のいずれか1つに記載の方法。
【0276】
E268.第2の再生緩衝液の流動速度が約250cm/h~約350cm/h(例えば、300cm/h)である、E250~E266のいずれか1つに記載の方法。
【0277】
E269.第2の再生緩衝液の流動速度が約10cm/h~約20cm/h(例えば、14cm/h)である、E250~E266のいずれか1つに記載の方法。
【0278】
E270.第2の再生緩衝液の滞留時間が、約2.5min/CV~約3.5min/CV(例えば、3min/CV)である、E250~E269のいずれか1つに記載の方法。
【0279】
E271.再生緩衝液の滞留時間が、約11min/CV~約12min/CV(例えば、11.5min/CV)である、E250~E269のいずれか1つに記載の方法。
【0280】
E272.固定相を、約0.5%~約1.5%(例えば、約1.0%)のサルコシル、約50mM~約150mM(例えば、約100mM)のTrisを含み、約7~約8(例えば、約7.5)のpHを有する、約4.5~約5.5CV(例えば、約5CV)の第2の再生緩衝液と接触させ、第2の再生緩衝液の流動速度が約450~約550cm/h(約500cm/h)である、E250~E271のいずれか1つに記載の方法。
【0281】
E273.固定相を、約0.5%~約1.5%(例えば、約1.0%)のサルコシル、約50mM~約150mM(例えば、約100mM)のTrisを含み、約7~約8(例えば、約7.5)のpHを有する、約4.5~約5.5CV(例えば、約5CV)の第2の再生緩衝液と接触させ、第2の再生緩衝液の流動速度が約250~約350cm/h(約300cm/h)である、E250~E271のいずれか1つに記載の方法。
【0282】
E274.固定相を、約0.5%~約1.5%(例えば、約1.0%)のサルコシル、約50mM~約150mM(例えば、約100mM)のTrisを含み、約7~約8(例えば、約7.5)のpHを有する、約4.5~約5.5CV(例えば、約5CV)の第2の再生緩衝液と接触させ、第2の再生緩衝液の流動速度が約10~約20cm/h(約14cm/h)である、E250~E271のいずれか1つに記載の方法。
【0283】
E275.固定相と第2の再生緩衝液とを接触させた後の、固定相の再生後洗浄をさらに含む、E250~E274のいずれか1つに記載の方法。
【0284】
E276.再生後洗浄が、固定相への緩衝溶液の適用および固定相からの緩衝溶液の全部または一部の除去を含む、E275に記載の方法。
【0285】
E277.緩衝溶液が、約7~8(例えば、約7.5)のpHの、約1M~約3M(例えば、約2M)のNaClおよび約50mM~約150mM(例えば、約100mM)のTrisを含む、E276に記載の方法。
【0286】
E278.約2CV~約10CV、例えば、約2CV、約3CV、約4CV、約5CV、約6CV、約7CV、約8CV、約9CVまたは約10CVの緩衝溶液が固定相に適用される、E276またはE277に記載の方法。
【0287】
E279.緩衝溶液が固定相の中を下向きに流動する、E276~E278のいずれか1つに記載の方法。
【0288】
E280.4回目の平衡化緩衝溶液、第1の再生緩衝液、浄化後洗浄緩衝溶液、第2の再生緩衝液および/または再生後洗浄緩衝溶液の滞留時間が、約1min/CV~約15min/CV、例えば、約2min/CV~約12min/CV、約5min/CV~約10min/CV、約1min/CV~約5min/CV、約3min/CV~約8min/CV、約2min/CV~約3min/CV、約3min/CV~約4min/CV、約4min/CV~約5min/CV、約5min/CV~約6min/CV、約6min/CV~約7min/CV、約7min/CV~約8min/CV、約8min/CV~約9min/CV、約9min/CV~約10min/CVである、E212~E279のいずれか1つに記載の方法。
【0289】
E281.4回目の平衡化緩衝溶液、第1の再生緩衝液、浄化後洗浄緩衝溶液、第2の再生緩衝液および/または再生後洗浄緩衝溶液の滞留時間が、約3min/CV、約4min/CV、約5min/CV、約5.5min/CV、約6min/CV、約7min/CV、約8min/CV、約9min/CV、約9.5min/CV、約10min/CV、約10.5min/CV、約11min/CV、約11.5min/CV、約12min/CV、約12.5min/CV、約13min/CV、約13.5min/CV、約14min/CV、約14.5min/CVまたは約15min/CVである、E212~E280のいずれか1つに記載の方法。
【0290】
E282.4回目の平衡化緩衝溶液、第1の再生緩衝液、浄化後洗浄緩衝溶液、第2の再生緩衝液および/または再生後洗浄緩衝溶液の流動速度が、約10cm/h~約600cm/h、例えば、約50cm/h~約500cm/h、約100cm/h~約300cm/h、約100cm/h~約400cm/h、約100cm/h~約500cm/h、約10cm/h~約50cm/h、約50cm/h~約100cm/h、約100cm/h~約200cm/h、約200cm/h~約300cm/h、約300cm/h~約400cm/h、約400cm/h~約500cm/h、または約500cm/h~約600cm/hである、E212~E281のいずれか1つに記載の方法。
【0291】
E283.再生緩衝液のA280ピーク面積が900mL*mAUより大きくなる、および/または再生緩衝液のA260ピーク面積が500mL*mAUより大きくなるように、第1の再生緩衝液、第2の再生緩衝液、またはその両方が、固定相から不純物を除去する、E212~E282のいずれか1つに記載の方法。
【0292】
E284.親和性クロマトグラフィー実行の経過にわたるカラム圧力の最大変化が、移動相の流動を一定に保持した場合に約0.222mPa~約0.713mPaである、E1~E283のいずれか1つに記載の方法。
【0293】
E285.ガードカラム、ガードフィルター、またはガードカラムとガードフィルターとの両方を固定相上にロードする前に、rAAVベクターを含む溶液を濾過することをさらに含む、E1~E284のいずれか1つに記載の方法。
【0294】
E286.ガードカラムが、第4級アンモニウムもしくはヒドロキシル陰イオンを含む強力な陰イオン交換樹脂(例えば、POROS(商標)XQ、POROS(商標)HQ)、ベンジルウルトラ疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂(例えば、POROS(商標)Benzyl Ultra)、オクチルHIC樹脂(例えば、Capto Octyl)、またはオクチルアミンリガンド樹脂(例えば、Capto 700)ガードカラムを含む、E285に記載の方法。
【0295】
E287.ガードフィルターが0.2μmのノミナルフィルターである、E285またはE286に記載の方法。
【0296】
E288.ガードフィルターが0.2μmのノミナルPall(商標)EAVプレカラムフィルターである、E285~E287のいずれか1つに記載の方法。
【0297】
E289.組換えAAV(rAAV)ベクターを精製する方法であって、
親和性クロマトグラフィー固定相上にrAAVベクターを含む溶液をロードすること;
15%~25%のエタノールおよび緩衝剤を含み、5~6のpHを有する溶出前洗浄溶液を固定相に適用すること;
塩、アミノ酸および緩衝剤を含み、2~4のpHを有する溶出緩衝液を用いて固定相からrAAVベクターを溶出させて、親和性溶出液を生産すること
を含む方法。
【0298】
E290.rAAVベクターを精製する方法であって、
固定相上にrAAVベクターを含む溶液をロードすること;
約15%~20%(例えば、約17%、約17.5%)のエタノールおよび約145mM~約155mM(例えば、約150mM、約153mM)の酢酸ナトリウム、pH5~6(例えば、約5.6)を含む溶出前洗浄溶液を固定相に適用すること;
約75mM~約125mM(例えば、約100mM)のグリシン、約20mM~約30mM(例えば、約25mM)のMgCl2、約140~約150mMの酢酸ナトリウム(約148mM)、pH2.5~3.5(例えば、約3.0)を含む溶出緩衝液を用いて、固定相からrAAVベクターを溶出させること;
固定相から、精製されたrAAVベクターを含む親和性溶出液を収集すること
を含む方法。
【0299】
E291.rAAVベクターを精製する方法であって、
使用前洗浄が水の固定相への適用を含む、固定相の使用前洗浄;
使用前浄化が約0.1N~約0.2Nのリン酸(例えば、約0.132N)、pH1.5~2.5(例えば、約1.9)を含む溶液の固定相への適用を含む、固定相の使用前浄化;
1回目の平衡化が約50mM~約150mM(例えば、約100mM)の緩衝剤(例えば、Tris)、pH7~8(例えば、約7.5)を含む緩衝溶液の固定相への適用を含む、固定相の1回目の平衡化;
固定相上へのrAAVベクターを含む溶液のローディング;
2回目の平衡化が約50mM~約150mM(例えば、約100mM)の緩衝剤(例えば、Tris)、pH7~8(例えば、約7.5)を含む緩衝溶液の固定相への適用を含む、固定相の2回目の平衡化;
溶出前洗浄が約15%~20%(例えば、約17%、約17.5%)のエタノールおよび約145mM~約155mM(例えば、約150mM、約153mM)の酢酸ナトリウム、pH5~6(例えば、約5.6)を含む溶出前洗浄溶液の固定相への適用を含む、固定相の溶出前洗浄;
3回目の平衡化が約150mM~約160mM(例えば、約153mM)の緩衝剤(例えば、酢酸ナトリウム)、pH5~6(例えば、約5.6)を含む緩衝溶液の固定相への適用を含む、固定相の3回目の平衡化;
溶出緩衝液が約75mM~約125mM(例えば、約100mM)のグリシン、約20mM~約30mM(例えば、約25mM)のMgCl2、約140~約150mMの酢酸ナトリウム(約148mM)、pH2.5~3.5(例えば、約3.0)を含む、溶出緩衝液を用いた、固定相からのrAAVベクターの溶出;および/または
固定相からの、精製されたrAAVベクターを含む親和性溶出液の収集
を含む方法。
【0300】
E292.4回目の平衡化が約150mM~約155mM(例えば、約153mM)の緩衝剤(例えば、酢酸ナトリウム)、pH5~6(例えば、約5.6)を含む緩衝溶液の固定相への適用を含む、固定相の4回目の平衡化;
固定相と、約0.10N~約0.15N(例えば、約0.132N)のリン酸、pH1.5~2.5(例えば、約1.9)を含む第1の再生緩衝液との接触;
浄化後洗浄が約50mM~約150mM(例えば、約100mM)の緩衝剤(例えば、Tris)、pH7~8(例えば、約7.5)を含む緩衝溶液の固定相への適用を含む、固定相の浄化後洗浄;
固定相と、約0.5%~約1.5%(例えば、約1%)の界面活性剤(例えば、サルコシル)および約50mM~約150mM(例えば、約100mM)の緩衝剤(例えば、Tris)、pH7~8(例えば、約7.5)を含む第2の再生緩衝液との接触;
再生後洗浄が、約7~8(例えば、約7.5)のpHの、約1M~約3M(例えば、約2M)のNaClおよび約50mM~約150mM(例えば、約100mM)のTrisを含む緩衝溶液の適用を含む、固定相の再生後洗浄;
固定相への注射用水の適用を含む使用後フラッシュ;ならびに/または
固定相と、17.5%のエタノールを含む溶液との接触
をさらに含む、E291に記載の方法。
【0301】
E293.17.5%のエタノールを含む溶液の少なくとも一部を除去した後に、親和性クロマトグラフィー固定相上にrAAVベクターを含む溶液をロードすることをさらに含む、E292に記載の方法。
【0302】
E294.固定相を再生する方法であって、
平衡化が約150mM~約155mM(例えば、約153mM)の緩衝剤(例えば、酢酸ナトリウム)、pH5~6(例えば、約5.6)を含む緩衝溶液の固定相への適用を含む、固定相の平衡化;
固定相と、約0.10N~約0.15N(例えば、約0.132N)のリン酸、pH1.5~2.5(例えば、約1.9)を含む第1の再生緩衝液との接触;
浄化後洗浄が約50mM~約150mM(例えば、約100mM)の緩衝剤(例えば、Tris)、pH7~8(例えば、約7.5)を含む緩衝溶液の固定相への適用を含む、固定相の浄化後洗浄;
固定相と、約0.5%~約1.5%(例えば、約1%)の界面活性剤(例えば、サルコシル)および約50mM~約150mM(例えば、約100mM)の緩衝剤(例えば、Tris)、pH7~8(例えば、約7.5)を含む第2の再生緩衝液との接触;
再生後洗浄が、約7~8(例えば、約7.5)のpHの、約1M~約3M(例えば、約2M)のNaClおよび約50mM~約150mM(例えば、約100mM)のTrisを含む緩衝溶液の適用を含む、固定相の再生後洗浄;
固定相への注射用水の適用を含む使用後フラッシュ;ならびに/または
固定相と、17.5%のエタノールを含む溶液との接触
を含む方法。
【0303】
E295.rAAVベクタータンパク質、カプシドタンパク質、宿主細胞不純物および/または核酸が、第1の再生緩衝液、第2の再生緩衝液またはその両方との接触によって固定相から放出される、E294に記載の方法。
【0304】
E296.17.5%のエタノールを含む溶液の少なくとも一部を除去した後に、親和性クロマトグラフィー固定相上にrAAVベクターを含む溶液をロードすることをさらに含む、E294またはE295に記載の方法。
【0305】
E297.組換えAAV(rAAV)ベクターを精製する方法であって、
親和性クロマトグラフィー固定相上にrAAVベクターを含む溶液をロードすること;
15%~25%のエタノールおよび緩衝剤を含み、5~6のpHを有する溶出前洗浄溶液を固定相に適用すること;
塩、アミノ酸および緩衝剤を含み、2~4のpHを有する溶出緩衝液を用いて固定相からrAAVベクターを溶出させて、親和性溶出液を生産すること
を含む方法。
【0306】
E298.親和性クロマトグラフィー固定相がカラム中にある、E297に記載の方法。
【0307】
E299.溶出緩衝液が5mM~150mMの塩を含み、任意選択により、塩が塩化マグネシウムである、E297~E298のいずれか1つに記載の方法。
【0308】
E300.溶出緩衝液が50mM~150mMのアミノ酸を含み、任意選択により、アミノ酸がグリシンである、E298~E299のいずれか1つに記載の方法。
【0309】
E301.溶出緩衝液が75mM~250mMの緩衝剤を含み、任意選択により、緩衝剤が酢酸ナトリウムである、E297~E300のいずれか1つに記載の方法。
【0310】
E302.溶出緩衝液が2.5~3.5のpHを有する、E297~E301のいずれか1つに記載の方法。
【0311】
E303.溶出緩衝液が50mM~150mMのグリシン、10mM~100mMのMgCl2、50mM~200mMの酢酸ナトリウム、および2.5~3.5のpHを含み、任意選択により、溶出緩衝液が5mS/cm~40mS/cmまたは20mS/cm~35mS/cmの導電率を有する、E297~E302のいずれか1つに記載の方法。
【0312】
E304.2カラム体積(CV)~10CVまたは4.5CV~5.5CVの溶出緩衝液が固定相に適用される、E297~E303のいずれか1つに記載の方法。
【0313】
E305.溶出緩衝液が、i)固定相からrAAVベクターを溶出させる;ii)固定相から残留不純物を溶出させない;iii)親和性溶出液の沈降をもたらさない;iv)vg回収率(%)を最大化する;v)陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)の固定相へのrAAVベクターの結合を阻害しない;vi)三価陰イオンを含有しない;vii)クエン酸イオンを含有しない、またはその組合せである、E297~E304のいずれか1つに記載の方法。
【0314】
E306.0.1CV~10CVの親和性溶出液が固定相から収集される、E297~E305のいずれか1つに記載の方法。
【0315】
E307.rAAVベクターを含む溶液が宿主細胞タンパク質および宿主細胞DNAを含む、E297~E306のいずれか1つに記載の方法。
【0316】
E308.rAAVベクターを含む溶液を固定相上にロードして、固定相1mLあたり1x1012ウイルスゲノム(vg)~固定相1mLあたり1.5x1014vgのチャレンジを達成する、E297~E307のいずれか1つに記載の方法。
【0317】
E309.rAAVベクターがAAV血清型に由来するカプシドタンパク質を含む、E297~E308のいずれか1つに記載の方法。
【0318】
E310.rAAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV3(AAV3AおよびAAV3Bを含む)、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV12、AAVrh8、AAVrh10、AAVrh39、AAVrh43、AAVrh74、AAVrh32.22、AAV1.1、AAV2.5、AAV6.1、AAV6.2、AAV6.3.1、AAV9.45、AAVShH10、HSC15/17、RHM4-1、RHM15-1、RHM15-2、RHM15-3/RHM15-5、RHM15-4、RHM15-6、AAVhu.26、AAV2i8、AAV29G、AAV2、AAV8G9、AAV-LK03、AAV2-TT、AAV2-TT-S312N、AAV3B-S312N、AAVavian、AAVbat、AAVbovine、AAVcanine、AAVequine、AAVprimate、AAVnon-primate、AAVovine、AAVmuscovy duck、AAVporcine4、AAVporcine5、AAVsnake NP4、NP22、NP66、AAVDJ、AAVDJ/8、AAVDJ/9、AAVHSC1、AAVHSC2、AAVHSC3、AAVHSC4、AAVHSC5、AAVHSC6、AAVHSC7、AAVHSC8、AAVHSC9、AAVHSC10、AAVHSC11、AAVHSC12、AAVHSC13、AAVHSC14、AAVHSC15、AAVv66、AAVv33、AAVv37、AAVv40、AAVv67、AAVv70、AAVv72、AAVv84、AAVv86、AAVv87およびAAVv90からなる群から選択されるAAV血清型に由来するカプシドタンパク質を含む、E309に記載の方法。
【0319】
E311.固定相がAAVカプシドに結合する高分子を含む、E297~E310のいずれか1つに記載の方法。
【0320】
E312.溶出前洗浄溶液が10mM~500mMの緩衝剤を含み、任意選択により、緩衝剤が酢酸ナトリウムである、E297~E311のいずれか1つに記載の方法。
【0321】
E313.溶出前洗浄溶液が15%~25%のエタノール、100mM~200mMの酢酸ナトリウムを含み、5~6のpHを有し、任意選択により、1CV~10CVまたは4.5~5.5CVの溶出前洗浄溶液が固定相に適用される、E297~E312のいずれか1つに記載の方法。
【0322】
E314.溶出前洗浄が、i)固定相から結合した不純物を除去する;ii)rAAV-固定相リガンド結合を維持する;iii)宿主細胞タンパク質などのrAAVタンパク質以外のタンパク質の除去を改善するために低下したpHを有する、またはその組合せである、E297~E313のいずれか1つに記載の方法。
【0323】
E315.i)固定相上にrAAVベクターを含む溶液をロードする前、ii)固定相上にrAAVベクターを含む溶液をロードした後、iii)溶出前洗浄の適用前、iv)溶出前洗浄の適用後、v)溶出緩衝液を用いて固定相からrAAVベクターを溶出させる前、vi)溶出緩衝液を用いて固定相からrAAVベクターを溶出させた後、vii)固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させる前、またはその組合せにおいて、固定相の平衡化をさらに含む、E297~E314のいずれか1つに記載の方法。
【0324】
E316.平衡化が、固定相への緩衝溶液の適用および固定相からの緩衝溶液の全部または一部の除去を含む、E315に記載の方法。
【0325】
E317.緩衝溶液がTrisまたは酢酸ナトリウムを含む、E316に記載の方法。
【0326】
E318.緩衝溶液がpH約7.5の約100mMのTrisまたはpH約5.6の約153mMの酢酸ナトリウムを含む、E316またはE317に記載の方法。
【0327】
E319.親和性溶出液の少なくとも一部を取得した後、固定相と第1の再生緩衝液とを接触させることをさらに含む、E297~E318のいずれか1つに記載の方法。
【0328】
E320.第1の再生緩衝液が0.05N~1.5Nの酸を含み、任意選択により、酸がリン酸である、E319に記載の方法。
【0329】
E321.第1の再生緩衝液が0.10N~0.15Nのリン酸、および1.5~2.5のpHを含む、E319またはE320に記載の方法。
【0330】
E322.固定相を、1CV~10CVまたは4.5CV~5.5CVの第1の再生緩衝液と接触させる、E319~E321のいずれか1つに記載の方法。
【0331】
E323.第1の再生緩衝液の少なくとも一部を除去した後に、親和性クロマトグラフィー固定相上にrAAVベクターを含む別の溶液をロードすることをさらに含む、E319~E322のいずれか1つに記載の方法。
【0332】
E324.第1の再生緩衝液の少なくとも一部を除去した後に、親和性クロマトグラフィー固定相上に第2の量の溶出前洗浄溶液を適用することをさらに含む、E319~E323のいずれか1つに記載の方法。
【0333】
E325.第1の再生緩衝液と接触させた固定相上で実行することができる精製サイクルの数が8以上である;
第1の再生緩衝液と接触させた固定相上で実行することができる精製サイクルの数が10以上である;
固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させた後の最後の精製サイクルからの溶出液のvg回収率(%)が、固定相を第1の再生緩衝液と接触させる前の最初の精製サイクルからの溶出液のvg回収率(%)と比較して10%を超えて減少していない;
固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させた後の最後の精製サイクルのフロースルー中の未結合のrAAVベクターの量が、固定相を第1の再生緩衝液と接触させる前の最初の精製サイクルのフロースルー中の未結合のrAAVベクターの量と比較して10%を超えて増加していない;
固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させた後の最後の精製サイクルのカラム圧力が、0.4MPa以下である;
固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させた後の最後の精製サイクルからの溶出液の純度(%)が、固定相を第1の再生緩衝液と接触させる前の最初の精製サイクルからの溶出液の純度(%)と比較して10%を超えて減少していない;
固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させた後の最後の精製サイクルからの溶出液のHCPの量が、固定相を第1の再生緩衝液と接触させる前の最初の精製サイクルからの溶出液のHCPの量と比較して10%を超えて増加していない;
固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させた後の最後の精製サイクルからの溶出液のHCDNAの量が、固定相を第1の再生緩衝液と接触させる前の最初の精製サイクルからの溶出液のHCDNAの量と比較して10%を超えて増加していない;
固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させた後の最後の精製サイクルからの溶出液の平均A260/A280が、固定相を第1の再生緩衝液と接触させる前の最初の精製サイクルからの溶出液の平均A260/A280と比較して10%を超えて減少していない、またはその組合せである、
E319~E324のいずれか1つに記載の方法。
【0334】
E326.第1の再生緩衝液と接触させた固定相上で実行することができる精製サイクルの数が、グアニジンHClを含む緩衝液と接触させた固定相と比較して増加している、E319~E325のいずれか1つに記載の方法。
【0335】
E327.固定相と第1の再生緩衝液とを接触させた後に、固定相と第2の再生緩衝液とを接触させることをさらに含み、第2の再生緩衝液が第1の再生緩衝液と異なる、E319~E326のいずれか1つに記載の方法。
【0336】
E328.第2の再生緩衝液が0.1%~5%の界面活性剤を含み、任意選択により、界面活性剤がサルコシルである、E327に記載の方法。
【0337】
E329.第2の再生緩衝液が50mM~150mMの緩衝剤を含み、任意選択により、緩衝剤がTrisである、E327~E328に記載の方法。
【0338】
E330.第2の再生緩衝液が0.1%~1.5%のサルコシル、50mM~150mMのTris、7~8のpHを含み、任意選択により、固定相を、1CV~10CVまたは4.5CV~5.5CVの第2の再生緩衝液と接触させる、E327~E329のいずれか1つに記載の方法。
【0339】
E331.第2の再生緩衝液の少なくとも一部を除去した後に、親和性クロマトグラフィー固定相上にrAAVベクターを含む別の溶液をロードすることをさらに含む、E327~E330のいずれか1つに記載の方法。
【0340】
E332.第2の再生緩衝液の少なくとも一部を除去した後に、親和性クロマトグラフィー固定相上に第2の量の溶出前洗浄溶液を適用することをさらに含む、E327~E331のいずれか1つに記載の方法。
【0341】
E333.rAAVベクターを精製する方法であって、
カラム中の親和性クロマトグラフィー固定相上にrAAVベクターを含む溶液をロードすること;
15%~25%のエタノール、100mM~200mMの酢酸ナトリウム、および5~6のpHを含む溶出前洗浄溶液を固定相に適用すること;ならびに
50mM~150mMのグリシン、10mM~100mMのMgCl2、50mM~250mMの酢酸ナトリウム、および2.5~3.5のpHを含む溶出緩衝液を用いて固定相からrAAVベクターを溶出させて、rAAVベクターを含有する親和性溶出液を生産すること
を含む方法。
【0342】
E334.1CV~10CVまたは4.5CV~5.5CVの溶出前洗浄溶液が固定相に適用される、E333に記載の方法。
【0343】
E335.溶出前洗浄が、固定相からのrAAVタンパク質以外のタンパク質の除去を改善するために低下したpHを有し、溶出前洗浄がrAAV-固定相リガンド結合またはその両方を維持し、任意選択により、rAAVタンパク質以外のタンパク質が宿主細胞タンパク質である、E333またはE334に記載の方法。
【0344】
E336.溶出緩衝液が親和性溶出液の沈降をもたらさない、溶出緩衝液が陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)固定相へのrAAVベクターの結合を阻害しない、またはその両方である、E333~E335のいずれか1つに記載の方法。
【0345】
E337.親和性溶出液中のvg回収率(%)が、任意選択により、qPCRによって測定した場合、50%~100%である;親和性溶出液1mLあたりのvgが、任意選択により、qPCRによって測定した場合、約1.0x1012vg/mL~約1.0x1014vg/mLである;親和性溶出液の純度(%)が、任意選択により、SECもしくは非還元的逆相HPLCによって測定した場合、総タンパク質のうち、約95%~約100%のカプシドタンパク質である、またはその組合せである、E333~E336のいずれか1つに記載の方法。
【0346】
E338.親和性溶出液の少なくとも一部を取得した後、固定相と第1の再生緩衝液とを接触させることをさらに含む、E333~E337のいずれか1つに記載の方法。
【0347】
E339.第1の再生緩衝液の後に、固定相と第2の再生緩衝液とを接触させることをさらに含み、第2の再生緩衝液が第1の再生緩衝液と異なる、E333~E338のいずれか1つに記載の方法。
【0348】
E340.親和性クロマトグラフィー固定相を再生する方法であって、固定相と、酸および1~4のpHを含む第1の再生緩衝液とを接触させることを含み、不純物が固定相から除去される、方法。
【0349】
E341.第1の再生緩衝液が0.05N~1.5Nの酸を含み、任意選択により、酸がリン酸または酢酸である、E340に記載の方法。
【0350】
E342.第1の再生緩衝液が0.10N~0.15Nのリン酸、および1.5~2.5のpHを含む、E340またはE341に記載の方法。
【0351】
E343.1CV~10CVまたは4.5CV~5.5CVの第1の再生緩衝液を固定相に適用し、固定相を、第1の再生緩衝液の体積の約半分と接触させた後、約45分間保持し、次いで、固定相と、第1の再生緩衝液の体積の第2の半分とを接触させる、E340~E342のいずれか1つに記載の方法。
【0352】
E344.第1の再生緩衝液の少なくとも一部を除去した後に、親和性クロマトグラフィー固定相上にrAAVベクターを含む溶液をロードすることをさらに含む、E340~E343のいずれか1つに記載の方法。
【0353】
E345.第1の再生緩衝液の少なくとも一部を除去した後に、親和性クロマトグラフィー固定相上に溶出前洗浄溶液を適用することをさらに含む、E340~E344のいずれか1つに記載の方法。
【0354】
E346.第1の再生緩衝液の後に、固定相と第2の再生緩衝液とを接触させることをさらに含み、第2の再生緩衝液が第1の再生緩衝液と異なる、E340~E345のいずれか1つに記載の方法。
【0355】
E347.第2の再生緩衝液が界面活性剤および緩衝剤を含む、E346に記載の方法。
【0356】
E348.第2の再生緩衝液が0.1%~5%の界面活性剤を含み、任意選択により、界面活性剤がサルコシルである、E346~E347に記載の方法。
【0357】
E349.第2の再生緩衝液が50mM~150mMの緩衝剤を含み、任意選択により、緩衝剤がTrisである、E346~E348のいずれか1つに記載の方法。
【0358】
E350.第2の再生緩衝液が0.1%~1.5%のサルコシル、50mM~150mMのTris、7~8のpHを含む、E346~E349のいずれか1つに記載の方法。
【0359】
E351.1CV~10CVまたは4.5CV~5.5CVの第2の再生緩衝液が固定相に適用される、E346~E350のいずれか1つに記載の方法。
【0360】
E352.第2の再生緩衝液の少なくとも一部を除去した後に、親和性クロマトグラフィー固定相上にrAAVベクターを含む溶液をロードすることをさらに含む、E350~E351のいずれか1つに記載の方法。
【0361】
E353.第2の再生緩衝液の少なくとも一部を除去した後に、親和性クロマトグラフィー固定相上に溶出前洗浄溶液を適用することをさらに含む、E350~E352のいずれか1つに記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0362】
【
図1】溶出緩衝液AおよびBに関する例示的な親和性溶出クロマトグラムを描写する。
【
図2】HQ-17およびHQ-18 AEX溶出プロファイルの例示的なオーバーレイを描写する。
【
図3】HQ-21およびHQ-22の実行に関する例示的な親和性溶出クロマトグラムを描写する。
【
図4】HQ-21およびHQ-22 AEX溶出プロファイルの例示的な対照比較を描写する。
【
図5】HQ-24およびHQ-25 AEX溶出プロファイルの例示的な対照比較を描写する。HQ-24親和性溶出緩衝液は、30mMクエン酸塩、100mMグリシン、100mM MgCl
2 pH3.0であった。HQ-25親和性溶出緩衝液は、150mM酢酸塩、100mMグリシン、100mM MgCl
2 pH3.0であった。
【
図6】3min/CVの滞留時間で操作された15cmの床高のPOROS(商標)CaptureSelect AAV9カラム上での12回の精製サイクルにわたる例示的な最大デルタカラム圧力を描写する。
【
図7】3min/CVの滞留時間で操作された15cmの床高のPOROS(商標)CaptureSelect AAV9カラム上での12回の精製サイクルにわたる例示的なデルタカラム圧力を描写する。
【
図8】直列EAVガードフィルターを用いて操作されたPOROS(商標)CaptureSelect AAV9カラム上での6回の精製サイクルにわたる例示的なカラム圧力を描写する。
【
図9】2.7Lのカラム上での例示的な親和性溶出クロマトグラムを描写する。
【
図10】17.6Lのカラム上での例示的な親和性溶出クロマトグラムを描写する。
【発明を実施するための形態】
【0363】
I.定義
別途定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態だけを説明するためのものであり、本発明の限定を意図するものではない。本発明の説明および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形の「a」、「an」および「the」は、本文が別途明確に指摘しない限り、複数形を同様に含むことが意図される。以下の用語は、与えられる意味を有する。
【0364】
本明細書で使用される場合、用語「A260/A280」または「A260/A280比」とは、260nmで測定された吸光度と、280nmで測定された吸光度との比を指す。rAAVカプシドを含む溶液のA260/A280比は、溶液中に存在するパッケージングされたDNAを含むカプシド(すなわち、全カプシドおよび中間カプシド)およびパッケージングされたDNAを含まないカプシド(すなわち、空カプシド)の相対量の見積もりを提供する。例えば、その値が高いほど、親和性溶出液などの、溶液中に存在する全カプシドおよび中間カプシドのパーセンテージが大きくなる。溶液間のA260/A280比の比較により、カプシド種の相対的見積もりが可能になり、したがって、より高いA260/A280を有する溶液は、より低いA260/A280比を有する溶液よりも大きいパーセンテージの全カプシドおよび中間カプシドを有する。本明細書で使用される場合、0.7より大きいA260/A280比を有する親和性溶出液は、医薬品としての使用にとって好適なrAAVベクター組成物を生産するためのさらなる精製プロセス(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー)における使用にとって許容可能であると考えられる。一部の実施形態では、吸光度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システム中の分析的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して測定され、吸光度の測定は、1つまたは複数の波長(例えば、260nmおよび/または280nm)であってもよい。
【0365】
本明細書で使用される場合、用語「約」または「およそ」は、ある値が、その値を決定するために用いられるデバイスまたは方法に関する誤差の標準偏差を含むことを示すために使用される。一部の実施形態では、用語「約」を、数が測定する時の誤差の標準偏差を有する程度で本明細書に記載される任意の数に付加することができる。
【0366】
本明細書で使用される場合、用語「親和性vg回収率%」とは、固定相上にロードされたロード溶液(例えば、清澄化された溶解物)中に存在するvgの総量のパーセンテージとしての、親和性溶出液中に存在するベクターゲノム(vg)の量を指す。例えば、親和性vg回収率%=((親和性溶出液中のvgの量/ロード溶液中のvgの量)*100)。親和性溶出液は、親和性クロマトグラフィー溶出ステップからの全アウトプットを表す、親和性プールと称することができる。vgの量を、限定されるものではないが、定量的PCR(qPCR)を含む、当業界で公知の任意の方法によって測定することができる。vg中に存在する任意の核酸配列、例えば、ITR配列または導入遺伝子配列を検出および定量することによって、QPCRを使用してvgを測定することができる。
【0367】
本明細書で使用される場合、用語「アデノ随伴ウイルス」および/または「AAV」とは、線状一本鎖DNAゲノムを有するパルボウイルスおよびそのバリアントを指す。この用語は、別途要求される場合を除いて、全てのサブタイプ、および天然に存在する形態と組換え形態との両方を包含する。
【0368】
カノニカルなAAV野生型ゲノムは、4681塩基を含み(Bernsら(1987)Advances in Virus Research 32:243~307)、DNA複製の起点として、およびウイルスのためのパッケージングシグナルとしてcisに機能するそれぞれの末端に末端反復配列(例えば、逆方向末端反復(ITR))を含む。ゲノムは、それぞれ、AAV複製(「AAV rep」または「rep」)およびカプシド(「AAV cap」または「cap」)遺伝子として知られる、2つの大きなオープンリーディングフレームを含む。AAV repおよびcapは、AAV「パッケージング遺伝子」と本明細書で称することもできる。これらの遺伝子は、ウイルスゲノムの複製およびパッケージングに関与するウイルスタンパク質をコードする。
【0369】
野生型AAVでは、3つのカプシド遺伝子VP1、VP2およびVP3が単一のオープンリーディングフレーム内で互いに重複し、選択的スプライシングがVP1、VP2およびVP3カプシドタンパク質の産生をもたらす(Griegerら(2005)J.Virol.79(15):9933~9944)。単一のP40プロモーターは、それぞれ、VP1、VP2、VP3について約1:1:10の比で3つ全てのカプシドタンパク質を発現させ、AAVカプシドの産生を補完することができる。より具体的には、VP1は全長タンパク質であり、VP2およびVP3はN末端のトランケーションの増加に起因して次第に短縮される。周知の例は、米国特許第7,906,111合に記載されたAAV9のカプシドであり、VP1は配列番号123のアミノ酸残基1~736を含み、VP2は配列番号123のアミノ酸残基138~736を含み、VP3は配列番号123のアミノ酸残基203~736を含む。本明細書で使用される場合、用語「AAV Cap」または「cap」とは、AAVカプシドタンパク質VP1、VP2および/またはVP3、ならびにそのバリアントおよびアナログを指す。カプシド遺伝子の第2のオープンリーディングフレームは、カプシドアセンブリープロセスにとって必須である、アセンブリー活性化タンパク質(AAP)と呼ばれるアセンブリー因子をコードする(Sonntagら(2011)J.Virol.85(23):12686~12697)。
【0370】
少なくとも4種のウイルスタンパク質が、その見かけの分子量に従って命名される、AAV rep遺伝子-Rep78、Rep68、Rep52およびRep40から合成される。本明細書で使用される場合、「AAV rep」または「rep」は、AAV複製タンパク質Rep78、Rep68、Rep52および/またはRep40、ならびにそのバリアントおよびアナログを意味する。本明細書で使用される場合、repおよびcapは、野生型と組換え(例えば、改変キメラなど)の両方のrepおよびcap遺伝子ならびにそれらがコードするポリペプチドを指す。一部の実施形態では、repをコードする核酸は、1より多いAAV血清型に由来するヌクレオチドを含むであろう。例えば、repタンパク質をコードする核酸は、AAV2血清型に由来するヌクレオチドおよびAAV3血清型に由来するヌクレオチドを含んでもよい(Rabinowitzら(2002)J.Virology 76(2):791~801)。
【0371】
本明細書で使用される場合、用語「組換えアデノ随伴ウイルスベクター」、「rAAV」および/または「rAAVベクター」とは、別途具体的に指摘しない限り、ベクターゲノムを含むAAVカプシドを指す。ベクターゲノムは、少なくとも部分的に、天然に存在するAAVに由来しないポリヌクレオチド配列(例えば、野生型AAV中に存在しない異種ポリヌクレオチド)を含み、野生型AAVゲノムのrepおよび/またはcap遺伝子は、ベクターゲノムから除去されている。AAVのrepおよび/またはcap遺伝子が除去されている(および/またはAAVに由来するITRが付加されているか、もしくは残っている)場合、AAV内の核酸は「ベクターゲノム」と称される。したがって、用語rAAVベクターは、カプシドを含むが、完全なAAVゲノムを含まない両方のrAAVウイルス粒子を包含する;その代わりに、組換えウイルス粒子は、異種の、すなわち、カプシド中に元々存在しない、核酸を含んでもよく、以後、ベクターゲノムと称される。かくして、「rAAVベクターゲノム」(または「ベクターゲノム」)とは、AAVカプシド内に含有されてもよいが、必ずしもそうである必要はない、異種ポリヌクレオチド配列(少なくとも1つのITRを含む)を指す。rAAVベクターゲノムは、二本鎖(dsAAV)、一本鎖(ssAAV)または自己相補性(scAAV)であってもよい。典型的には、ベクターゲノムは、治療的導入遺伝子、遺伝子編集核酸などをコードすることが多い異種(それが誘導される元のAAVに対して)の核酸を含む。
【0372】
本明細書で使用される場合、用語「rAAVベクター」、「rAAVウイルス粒子」および/または「rAAVベクター粒子」とは、別途具体的に指摘しない限り、少なくとも1つのAAVカプシドタンパク質(しかし、典型的には、AAVの全てのカプシドタンパク質、例えば、VP1、VP2およびVP3、またはそのバリアントが存在する)を含み、異種核酸配列を含むベクターゲノムを含有するAAVカプシドを指す。これらの用語は、カプシドがrepおよびcap遺伝子をコードするウイルスゲノムを含有し、AAVウイルスが、アデノウイルスおよび/もしくは単純ヘルペスウイルスなどのヘルパーウイルス、ならびに/またはそれに由来する必要なヘルパー遺伝子も含む細胞中に存在する場合に複製することができる、組換えではない「AAVウイルス粒子」または「AAVウイルス」とは区別されるべきである。かくして、rAAVベクター粒子の産生は、組換えDNA技術を使用する組換えベクターゲノムの産生を必ず含み、そのため、ベクターゲノムはカプシド内に含有され、rAAVベクター、rAAVウイルス粒子、またはrAAVベクター粒子を形成する。一部の実施形態では、親和性溶出液などの、組成物または溶液中のウイルス粒子を定量し、ウイルス粒子力価(例えば、vp/mL)として表すことができる。一部の実施形態では、組成物または溶液のウイルス粒子力価は、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定される。
【0373】
AAVの種々の血清型のゲノム配列、ならびに逆方向末端反復(ITR)、repタンパク質、およびカプシドサブユニットの配列が当業界で公知である。そのような配列を、文献中またはGenBankなどの公共のデータベース中に見出すことができる。例えば、GenBank受託番号NC_002077(AAV1)、AF063497(AAV1)、NC_001401(AAV2)、AF043303(AAV2)、NC_001729(AAV3)、AF028705.1(AAV3B)、NC_001829(AAV4)、U89790(AAV4)、NC_006152(AAV5)、AF028704(AAV6)、AF513851(AAV7)、AF513852(AAV8)、NC_006261(AAV8)、AY530579(AAV9)、AY631965(AAV10)、AY631966(AAV11)、およびDQ813647(AAV12)を参照されたい;その開示は参照により本明細書に組み込まれる。また、例えば、Srivistavaら(1983)J.Virology 45:555;Chioriniら(1998)J.Virology 71:6823;Chioriniら(1999)J.Virology 73:1309;Bantel-Schaalら(1999)J.Virology 73:939;Xiaoら(1999)J.Virology 73:3994;Muramatsuら(1996)Virology 221:208;Shadeら(1986)J.Virol.58:921;Gaoら(2002)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 99:11854;Morisら(2004)Virology 33:375~383;国際特許出願公開WO00/28061、WO99/61601、WO98/11244;WO2013/063379、WO2014/194132、WO2015/121501;ならびに米国特許第6,156,303号および第7,906,111号も参照されたい。
【0374】
本明細書で使用される場合、用語「AEXのvg回収率%」とは、ロード溶液(例えば、親和性溶出液または希釈した親和性溶出液)中に存在するvgの総量のパーセンテージとしてのAEXカラムから収集された溶出液中に存在するvgの量を指す。例えば、AEXのvg回収率%=((AEXの溶出液中のvgの量/ロード溶液中のvgの量)*100)。AEXの溶出液は、AEX溶出ステップからのアウトプットの一部を表す、AEXプールと称することができる。vgの量を、限定されるものではないが、定量的PCR(qPCR)を含む、当業界で公知の任意の方法によって測定することができる。vg中に存在する任意の核酸配列、例えば、ITR配列または導入遺伝子配列を検出および定量することによって、QPCRを使用してvgを測定することができる。
【0375】
本明細書で使用される場合、用語「および/または」とは、関連する列挙されている項目の1つまたは複数のありとあらゆる可能性のある組合せ、ならびに代替(「または」)として解釈される場合には組合せがないことを指し、それを包含する。
【0376】
本明細書で使用される場合、用語「陰イオン交換クロマトグラフィー」または「AEX」とは、物質の電荷の差に基づいて物質(例えば、AAVカプシド、DNA、タンパク質、高分子量種、アミノ酸)を分離するために正に荷電した固定相(例えば、樹脂)を用いるクロマトグラフィープロセスを指す。AEXは、適度に酸性からアルカリ性のpH(例えば、pH6よりも高い)での電荷の差に基づいて不純物からrAAVカプシドを分離するのに有用である。AEXは、空カプシドと全カプシドとの電荷の差に依拠することによって、完全な、または本質的に完全なベクターゲノム(すなわち、全カプシド)を含有するrAAVベクターから空カプシドを分離することもできる。
【0377】
理論によって束縛されることを望むものではないが、AAVカプシドと、AEXクロマトグラフィー固定相との間の結合の堅固さは、カプシド内の任意の核酸、溶液のpHおよび溶液の導電率からの電荷の寄与を含む、カプシドの負電荷の強度と関連する(Qu,G.ら(2007)J.Virological Methods 140:183~192)。一部の実施形態では、AEXクロマトグラフィー固定相は、樹脂(例えば、共有結合により四級化されたポリエチレンイミン、および任意選択により、OH基で改変されたポリスチレンジビニルベンゼン粒子(例えば、POROS(商標)50 HQ樹脂))である。
【0378】
本明細書で使用される場合、用語「と関連する」とは、一方の存在、レベルおよび/または形態が他方のそれと相関する場合、互いに関してを指す。例えば、特定の実体(例えば、ポリペプチド、遺伝子シグネチャー、代謝物、微生物など)は、その存在、レベルおよび/または形態が、特定の疾患、障害、または状態の発生および/またはそれに対する感受性と相関する場合(例えば、関連集団にわたる)、その疾患、障害、または状態と関連すると考えられる。一部の実施形態では、2つ以上の実体が直接的または間接的に相互作用して、互いに物理的に近くにある、および/または依然として近くにある場合、それらは互いに物理的に「関連する」。一部の実施形態では、互いに物理的に関連する2つ以上の実体は、互いに共有的に連結されている;一部の実施形態では、互いに物理的に関連する2つ以上の実体は、互いに共有的に連結されていないが、例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、磁性、およびその組合せによって、非共有的に関連している。
【0379】
本明細書で使用される場合、用語「清澄化された溶解物」および「細胞溶解物からの上清」とは、宿主細胞培養物からの宿主細胞の溶解および清澄化後に収集される溶液を指す。限定されるものではないが、沈降化、遠心分離、軟凝集、深層濾過、帯電深層濾過および珪藻土媒体を含有するフィルターを使用する濾過を含む、当業界で公知の任意の方法によって、溶解物を清澄化することができる。
【0380】
本明細書で使用される場合、用語「定置洗浄」または「CIP」とは、固定相を溶液と接触させて、HCP、HCDNAおよび他の宿主細胞材料などの不純物を除去するステップ、フェーズまたはプロセスを指す。一部の実施形態では、定置洗浄ステップは、固定相を浄化するのにも役立ち得る。定置洗浄ステップを、クロマトグラフィー実行の経過にわたって2回以上、固定相に対して実施することができる。
【0381】
本明細書で使用される場合、用語「コード配列」または「コードする核酸」とは、タンパク質またはポリペプチドをコードする核酸配列を指し、適切な調節配列の制御下に置いた(それに作動可能に連結された)場合、in vitroまたはin vivoでポリペプチドに転写(DNAの場合)および翻訳(mRNAの場合)される配列を意味する。コード配列の境界は一般に、5’(アミノ)末端の開始コドンおよび3’(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンによって決定される。コード配列は、限定されるものではないが、原核または真核生物のmRNAに由来するcDNA、原核または真核生物のDNAに由来するゲノムDNA配列、およびさらに、合成DNA配列を含んでもよい。
【0382】
本明細書で使用される場合、用語「キメラ」とは、その開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる、Rabinowitzらの米国特許第6,491,907号に記載された、異なるパルボウイルス、好ましくは、異なるAAV血清型に由来するカプシドまたは粒子の配列を含む、ウイルスカプシドまたは粒子を指す。Rabinowitzら(2004)J.Virol.78(9):4421~4432も参照されたい。一部の実施形態では、キメラウイルスカプシドは、以下の突然変異:263のQ→A;265のTの挿入;705のN→A;708のV→A;および716のT→Nを有するAAV2カプシドの配列を有するAAV2.5カプシドである。そのようなカプシドをコードするヌクレオチド配列は、WO2006/066066に記載された配列番号15として定義されている。他の好ましいキメラAAVカプシドとしては、限定されるものではないが、WO2010/093784に記載されたAAV2i8、WO2014/144229に記載されたAAV2G9およびAAV8G9、ならびにAAV9.45(Pulicherlaら(2011)Molecular Therapy 19(6):1070~1078)、WO2013/029030に記載されたAAV-NP4、NP22およびNP66、AAV-LK0~AAV-LK019、WO2015/013313に記載されたRHM4-1およびRHM15_1~RHM5_6、WO2007/120542に記載されたAAVDJ、AAVDJ/8、AAVDJ/9が挙げられる。
【0383】
本明細書で使用される場合、用語「クロマトグラフィー固定相」または「固定相」は、ある生成物の別の物質(例えば、不純物)からの分離のために使用することができる任意の物質を指すために使用される。一部の実施形態では、クロマトグラフィー固定相は、樹脂、媒体、膜、膜吸着剤、繊維、またはモノリスである。一部の実施形態では、クロマトグラフィー固定相は、ある特定の条件下でAAVカプシドに結合する媒体である。一部の実施形態では、クロマトグラフィー固定相は、親和性クロマトグラフィー樹脂である。一部の実施形態では、親和性クロマトグラフィー固定相は、ラクダ科由来単一ドメイン抗体(例えば、VHH)リガンドで改変された50μmの多孔性ポリスチレンジビニルベンゼンビーズを含み、樹脂1mLあたり1.0x1014vgの動的結合容量を有する樹脂(例えば、POROS(商標)CaptureSelect(商標)AAV9親和性樹脂、POROS(商標)CaptureSelect(商標)AAVX親和性樹脂)である。一部の実施形態では、クロマトグラフィー固定相は、イオン交換媒体(例えば、陰イオン交換媒体(AEX)、陽イオン交換媒体)である。一部の実施形態では、クロマトグラフィー固定相は、AEXクロマトグラフィー樹脂である。一部の実施形態では、クロマトグラフィー固定相は、POROS(商標)50HQである。一部の実施形態では、AEXクロマトグラフィー固定相は、共有結合した四級化されたポリエチレンイミン、および任意選択により、OH基で改変されたポリスチレンジビニルベンゼン粒子を含む樹脂(例えば、POROS(商標)50 HQ樹脂)である。
【0384】
本明細書で使用される場合、用語「溶出液」とは、移動相および固定相を通過した、または固定相から移動した材料を含む、クロマトグラフィー固定相(例えば、モノリス、膜、樹脂、繊維、媒体)から出る(例えば、「固定相から溶出する」)流体を指す。一部の実施形態では、固定相は、例えば、モノリス、膜、樹脂、繊維または媒体を含む。移動相は、カラム上にロードされ、カラムを通って流れた溶液(すなわち、「フロースルー画分」または「未結合画分」と称される)、平衡化溶液(例えば、平衡化緩衝液)、イソクラチック溶出溶液、勾配溶出溶液、固定相の再生のための溶液、固定相の浄化のための溶液、洗浄のための溶液、およびそれらの組合せであってもよい。本明細書で使用される場合、用語「親和性溶出液」または「親和性プール」とは、親和性クロマトグラフィー固定相および/または親和性クロマトグラフィーカラムからの溶出液を指す。本明細書で使用される場合、用語「AEX溶出液」または「AEXプール」とは、AEX固定相および/またはAEXカラムからの溶出液を指す。
【0385】
本明細書で使用される場合、用語「平衡化」とは、平衡化緩衝液が固定相に適用されるクロマトグラフィープロセスのステップを指す。平衡化緩衝液は、標的分子(例えば、AAVカプシド)は固定相リガンドと効率的に相互作用し、リガンドによる結合を受けるが、不純物などの他の分子は固定相を通って流れるか、またはその周囲を流れるような、特定の条件(例えば、pH、導電率)がカラム内に存在することを確保する。フロースルーは、ロードステップの間に、および/またはその後の洗浄ステップの間に起こってもよい。
【0386】
本明細書で使用される場合、用語「挟まれた」とは、他のエレメントによって挟まれた配列を指し、その配列に対して、上流および/または下流の、すなわち、5’および/または3’の1つまたは複数の挟んでいるエレメントの存在を示す。用語「挟まれた」は、配列が必ずしも連続的であることを示すことを意図しない。例えば、導入遺伝子をコードする核酸と、挟んでいるエレメントとの間に介在配列が存在してもよい。2つの他のエレメント(例えば、ITR)によって「挟まれた」配列(例えば、導入遺伝子)は、一方のエレメントが配列に対して5’に位置し、他方が配列に対して3’に位置することを示すが、その間に介在配列が存在してもよい。
【0387】
本明細書で使用される場合、用語「軟凝集」とは、微粒子を一緒に凝集させてフロックを形成させるプロセスを指す。微粒子は、タンパク質、核酸、リポタンパク質、宿主細胞の溶解から得られる細胞断片を含んでもよい。一部の実施形態では、液相中で形成するフロックは、液体の頂部に浮く(クリーミング)、液体の底部に沈降する(沈降化)か、または液相から濾過され得る。
【0388】
本明細書で使用される場合、用語「断片」とは、全体の別々の一部分を含むが、全体に見出される1つまたは複数の部分を欠く構造を有する材料または実体を指す。一部の実施形態では、断片は、別々の一部分からなる。一部の実施形態では、断片は、全体に見出される特徴的な構造エレメントまたは部分からなるか、またはそれを含む。一部の実施形態では、ポリマー断片は、全体ポリマー中に見出される少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500個以上の単量体単位(例えば、アミノ酸残基、ヌクレオチド)を含むか、またはそれからなる。
【0389】
rAAVベクターは、カプシドが、導入遺伝子を含む完全なベクターゲノムを含有する場合、「全」、「全カプシド」、「全ベクター」、または「完全にパッケージングされたベクター」と称される。宿主細胞によるrAAVベクターの産生の間に、全カプシドよりも少ない核酸がパッケージングされ、例えば、部分的な、またはトランケートされたベクターゲノムを含有するベクターが産生され得る。これらのベクターは、「中間体」、「中間カプシド」、「部分的」または「部分的にパッケージングされたベクター」と称される。中間カプシドは、分析的超遠心分離によって分析した場合、全カプシドと空カプシドの沈降速度の間の沈降速度である中間の沈降速度を有するカプシドであってもよい。宿主細胞は、いかなる検出可能な核酸材料も含有しないウイルスカプシドを産生することもできる。これらのカプシドは、「空」または「空カプシド」と称される。A260/A280比を分析的超遠心分離によって分析されたカプシド(すなわち、全、中間および空)に対して予め較正したSEC-HPLCによって決定されたA260/A280比に基づいて、全カプシドを空カプシドと区別することができる。カプシドの特性評価のための当業界で公知の他の方法としては、CryoTEM、キャピラリー等電点電気泳動および電荷検出質量分析が挙げられる。それぞれ、空および全AAV9カプシドに関する約6.2および約5.8の算出された等電点が報告されている(Venkatakrishnanら(2013)J.Virology 87.9:4974~4984)。
【0390】
本明細書で使用される場合、用語「ヌルカプシド」とは、ベクターゲノムを欠くように意図的に生産されたカプシドを指す。そのようなヌルカプシドは、ベクタープラスミドとしても知られる、導入遺伝子カセット配列を含むプラスミドではなく、rep/capおよびヘルパープラスミドを用いた宿主細胞のトランスフェクションによって生産することができる。
【0391】
本明細書で使用される場合、用語「機能性」とは、それが特徴付けられる特性および/または活性を示す形態にある生体分子を指す。生体分子は、2つの機能(すなわち、二機能性)または多くの機能(すなわち、多機能性)を有してもよい。
【0392】
本明細書で使用される場合、用語「遺伝子」とは、転写および翻訳された後に、特定のポリペプチドまたはタンパク質をコードすることができる少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含有するポリヌクレオチドを指す。「遺伝子移入」または「遺伝子送達」とは、外来DNAを宿主細胞中に確実に挿入するための方法またはシステムを指す。そのような方法は、非組込み型の導入されたDNAの一過的発現、移入されたレプリコン(例えば、エピソーム)の染色体外複製および発現、ならびに/または宿主細胞のゲノムDNA中への移入された遺伝物質の組込みをもたらすことができる。
【0393】
本明細書で使用される場合、用語「異種」とは、細胞中への核酸のベクター媒介性移入/送達のためのベクター(例えば、rAAVベクター)中に挿入された核酸を指す。異種核酸は、典型的には、ベクター(例えば、AAV)核酸とは異なる、すなわち、異種核酸は、ウイルス(例えば、AAV)核酸に関して非天然である。細胞中に移入または送達されたら、ベクター内に含まれる異種核酸を発現(例えば、適切な場合、転写および翻訳)させることができる。あるいは、ベクター内に含まれる、細胞中の移入または送達された異種核酸は、発現される必要はない。用語「異種」は、核酸を参照して本明細書で常に使用されるものではないが、修飾語句「異種」が存在しない場合であっても、核酸に対する参照は、異種核酸を含むことが意図される。例えば、異種核酸は、ジストロフィンポリペプチドをコードする核酸、またはその断片、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの処置における使用のための、参照により本明細書に組み込まれるWO2017/221145に記載されたコドン最適化されたミニ-ジストロフィン導入遺伝子であろう。
【0394】
さらなる例示的な異種核酸は、以下の遺伝子のうちの1つの野生型コード配列、またはその断片(例えば、トランケートされた、内部欠失)を含み、コドン最適化されていても、されていなくてもよい。
【0395】
【0396】
本明細書で使用される場合、用語「相同な」または「相同性」とは、所与の領域または一部分にわたって少なくとも部分的な同一性を共有する2つ以上の参照実体(例えば、ヌクレオチドまたはポリペプチド配列)を指す。例えば、2つのペプチドにおけるアミノ酸位置が同一のアミノ酸によって占有されている場合、それらのペプチドはその位置で相同である。とりわけ、相同ペプチドは、非改変または参照ペプチドと関連する活性または機能を保持し、改変ペプチドは一般に、非改変配列のアミノ酸配列と「実質的に相同な」アミノ酸配列を有するであろう。ポリペプチド、核酸またはその断片を言う場合、「実質的な相同性」または「実質的な類似性」とは、別のポリペプチド、核酸(もしくはその相補鎖)またはその断片と、適切な挿入または欠失と共に最適に整列させた場合、配列の少なくとも約95%~99%において配列同一性が存在することを意味する。2つの配列の間の相同性(同一性)の程度を、コンピュータープログラムまたは数学的アルゴリズムを使用して確認することができる。配列相同性(または同一性)パーセントを算出するそのようなアルゴリズムは一般に、比較領域またはエリアにわたって配列のギャップおよびミスマッチを説明する。例示的なプログラムおよびアルゴリズムは、以下に提供される。
【0397】
本明細書で使用される場合、用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」および「宿主細胞培養物」は、互換的に使用され、外因性核酸が導入された細胞を指し、そのような細胞の子孫を含む。宿主細胞は、初代のトランスフェクトされた、形質転換された、または形質導入された細胞、継代の回数に関係なく、それから誘導された子孫を含む、「トランスフェクタント」、「形質転換体」、「形質転換細胞」、および「形質導入細胞」を含む。一部の実施形態では、宿主細胞は、rAAVベクターの生産のためのパッケージング細胞である。
【0398】
本明細書で使用される場合、用語「宿主細胞DNA」または「HCDNA」とは、rAAVベクターを産生した宿主細胞培養物に由来し、クロマトグラフィー画分(例えば、親和性溶出液、AEX溶出液、洗浄)またはクロマトグラフィーロード(例えば、親和性ロード、AEXロード)中に存在する残留DNAを指す。宿主細胞DNAを、宿主細胞にとってユニークな配列を検出するためのqPCRなどの当業界で公知の方法によって測定することができる。一般的なDNA濃度を、蛍光色素(例えば、PicoGreen(登録商標)もしくはSYBR(登録商標)Green)、吸光度測定(例えば、260nm、もしくは254nmでの)または電気泳動技術(例えば、アガロースゲル電気泳動、もしくはキャピラリー電気泳動)を使用して見積もることができる。溶出液中に存在するHCDNAの量を、溶出液中に存在するvgの量に対して、例えば、ng HCDNA/1x1014vgまたはpg HCDNA/1x109vgで表すことができる。溶出液中に存在するHCDNAの量を、ある体積の溶出液中に存在するvgの量に対して、例えば、溶出液1mLあたりのpg HCDNAで表すことができる。
【0399】
本明細書で使用される場合、用語「宿主細胞タンパク質」または「HCP」とは、rAAVベクターを産生した宿主細胞培養物に由来し、クロマトグラフィー画分(例えば、親和性溶出液、AEX溶出液、洗浄)またはクロマトグラフィーロード(例えば、親和性ロード、AEXロード)中に存在する残留タンパク質を指す。宿主細胞タンパク質を、ELISAなどの、当業界で公知の方法によって測定することができる。宿主細胞タンパク質を、種々の電気泳動染色法(例えば、銀染色SDS-PAGE、SYPRO(登録商標)Ruby染色SDS-PAGE、および/またはウェスタンブロット)によって半定量的に測定することができる。溶出液中に存在するHCPの量を、存在するvgの量に対して、例えば、ng HCP/1x1014vgまたはpg HCP/1x109vgで表すことができる。
【0400】
本明細書で使用される場合、用語「同一性」または「と同一」とは、ポリマー分子間、例えば、核酸分子(例えば、DNA分子および/もしくはRNA分子)間ならびに/またはポリペプチド分子間の全体的関係性を指す。一部の実施形態では、ポリマー分子は、それらの配列が少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%以上同一である場合、互いに「実質的に同一」であると考えられる。
【0401】
2つの核酸またはポリペプチド配列の同一性パーセントの算出を、例えば、最適な比較目的で2つの配列を整列させることによって実施することができる(例えば、最適なアラインメントのために第1および第2の配列の一方または両方にギャップを導入し、非同一の配列を比較目的で無視することができる)。ある特定の実施形態では、比較目的で整列される配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%である。次いで、対応する位置のヌクレオチドを比較する。第1の配列中の位置が、第2の配列中の対応する位置と同じ残基(例えば、ヌクレオチドまたはアミノ酸)によって占有される場合、その分子はその位置で同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要がある、ギャップの数、およびそれぞれのギャップの長さを考慮に入れた、配列によって共有される同一の位置の数の関数である。配列の比較および2つの配列間の同一性パーセントの決定を、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。
【0402】
同一性パーセント、または相同性を決定するために、ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/においてワールドワイドウェブ上で利用可能な、BLASTを含む方法およびコンピュータープログラムを使用して、配列を整列させることができる。別のアラインメントアルゴリズムは、Madison、Wis.、USAからの、Genetics Computing Group(GCG)パッケージにおいて利用可能な、FASTAである。アラインメントのための他の技術は、Methods in Enzymology、vol.266:Computer Methods for Macromolecular Sequence Analysis(1996)、Doolittle(編)、Academic Press,Inc.に記載されている。特に興味深いものは、配列中のギャップを許容するアラインメントプログラムである。Smith-Watermanは、配列アラインメント中のギャップを許容する1つの型のアルゴリズムである。Meth.Mol.Biol.70:173~187(1997)を参照されたい。また、NeedlemanおよびWunschのアラインメント法を使用するGAPプログラムを利用して配列を整列させることもできる。J.Mol.Biol.48:443~453(1970)を参照されたい。
【0403】
また興味深いものは、配列同一性を決定するためにSmithおよびWaterman(1981、Advances in Applied Mathematics 2:482~489)の部分相同性アルゴリズムを使用するBestFitプログラムである。ギャップ生成ペナルティは、一般に、1~5、通常は2~4の範囲、一部の実施形態では3であろう。ギャップ伸長ペナルティは、一般に、約0.01~0.20の範囲、一部の例では0.10であろう。プログラムは、比較するために入力される配列によって決定されるデフォルトパラメーターを有する。好ましくは、配列同一性は、プログラムによって決定されるデフォルトパラメーターを使用して決定される。このプログラムは、Madison、WI、USAからのGenetics Computing Group(GCG)パッケージからも入手可能である。
【0404】
興味深い別のプログラムは、FastDBアルゴリズムである。FastDBは、Current Methods in Sequence Comparison and Analysis、Macromolecule Sequencing and Synthesis、Selected Methods and Applications、127~149頁、1988、Alan R.Liss,Inc.に記載されている。配列同一性パーセントは、以下のパラメーター:ミスマッチペナルティ:1.00;ギャップペナルティ:1.00;ギャップサイズペナルティ:0.33;および結合ペナルティ:30.0に基づいてFastDBによって算出される。
【0405】
本明細書で使用される場合、用語「不純物」とは、精製されるrAAVベクターを含む溶液中にも存在する、精製されるrAAVベクター以外の任意の分子を指す。不純物は、空カプシド、中間カプシド、生体高分子、例えば、DNA(例えば、宿主細胞DNA)、RNA、非AAVタンパク質(例えば、宿主細胞タンパク質)、AAV凝集体、損傷したAAVカプシド、精製ステップの間/前に試料中に浸出し得るクロマトグラフィーのために使用される吸着剤の一部である分子、内毒素、培地成分を含む、細胞培養物に由来する細胞デブリおよび化学物質、トランスフェクションに由来するプラスミドDNA、偶発的な因子、細菌およびウイルスを含む。
【0406】
本明細書で使用される場合、用語「感染性比」または「IR」とは、細胞に感染するのに必要とされるrAAVベクター粒子の数を指す。一部の実施形態では、細胞は、in vitro系である。一部の実施形態では、細胞は、rAAVベクターを用いた処置を必要とする対象の中の細胞、またはそれから採取された細胞である。感染性比は、細胞に基づくqPCRアッセイを含む、当業界で公知の任意の方法によって測定することができる。感染性を、体積あたりの感染性単位(IU)、IU/mLとして、または存在するvgの量に対して、IU/vgで表すことができる。
【0407】
本明細書で使用される場合、用語「逆方向末端反復」、「ITR」、「末端反復」、および「TR」とは、多くは相補的な、対称的に配置された配列を含む、AAVウイルスゲノムの末端にあるか、またはその近くにあるパリンドローム末端反復配列を指す。これらのITRは、折り重なって、DNA複製の開始の間のプライマーとして機能するT型ヘアピン構造を形成することができる。それらはまた、宿主ゲノム中へのウイルスゲノムの組込み、宿主ゲノムからのレスキュー、および成熟ビリオンへのウイルス核酸の封入にとって必要である。ITRは、ベクターゲノムの複製およびウイルス粒子中へのそのパッケージングにとってcisに必要とされる。「5’ITR」とは、AAVゲノムの5’末端および/または組換え導入遺伝子の5’のITRを指す。「3’ITR」とは、AAVゲノムの3’末端および/または組換え導入遺伝子の3’のITRを指す。野生型ITRは、約145bpの長さである。改変型、または組換えITRは、野生型AAV ITR配列の断片または一部分を含んでもよい。当業者であれば、DNA複製の連続ラウンドの間に、ITR配列は、5’ITRが3’ITRになる、およびその逆になるように交換し得ることを理解するであろう。一部の実施形態では、ベクターゲノムをカプシド中にパッケージングして、ベクターゲノムを含むrAAVベクター(本明細書では「rAAVベクター粒子」または「rAAVウイルス粒子」)を産生することができるように、少なくとも1つのITRが組換えベクターゲノムの5’および/または3’末端に存在する。
【0408】
本明細書で使用される場合、用語「単離された」とは、1)人の手によって設計、生産、調製、および/もしくは製造される、ならびに/または2)最初に生産された時に(自然にあるにしろ、および/または実験設定にあるにしろ)、それが結合していた少なくとも1つの成分から分離される物質または組成物を指す。一般に、単離された組成物は、それらが通常は自然に結合する1つまたは複数の材料、例えば、1つまたは複数のタンパク質、核酸、脂質、炭水化物および/または細胞膜を実質的に含まない。用語「単離された」は、人工の組合せ、例えば、組換え核酸、組換えベクターゲノム(例えば、rAAVベクターゲノム)、例えば、ベクターゲノムをパッケージングする、例えば、封入するrAAVベクター粒子(例えば、限定されるものではないが、AAV9カプシドを含むrAAVベクター粒子など)および医薬製剤を排除しない。用語「単離された」はまた、ハイブリッド/キメラ、多量体/オリゴマー、改変(例えば、リン酸化、グリコシル化、脂質化)、バリアントもしくは誘導体化形態、または人工である宿主細胞中で発現される形態などの、組成物の代替的な物理的形態を排除しない。
【0409】
単離された物質または組成物を、約10%、約20%、約30%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%の、または約99%を超える、それらが最初に結合していた他の成分から分離することができる。一部の実施形態では、単離された薬剤は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%を超えて純粋である。本明細書で使用される場合、ある物質が他の成分を実質的に含まない場合、それは「純粋」である。一部の実施形態では、当業者であれば理解できるように、例えば、1つまたは複数の担体または賦形剤(例えば、緩衝液、溶媒、水など)などのある特定の他の成分と組み合わせた後に、ある物質は「単離された」またはさらには「純粋」であると依然として考えることができる;そのような実施形態では、物質の単離または純度のパーセントは、そのような担体または賦形剤を含むことなく算出される。
【0410】
本明細書で使用される場合、用語「直線流動速度」または「流動速度」とは、溶液が、体積流量およびカラム半径の関数としてカラム中で固定相を通って流れる速度を指し、式:u=F/(π*r2)(式中、u=直線流量(cm/h)であり、F=体積流量(mL/h)であり、r=カラム半径(cm)である)によって表される。直線流動速度は、時間あたりの距離、例えば、cm/hとして表すことができる。
【0411】
本明細書で使用される場合、用語「ロード」または「ロード溶液」とは、クロマトグラフィー固定相上にロードされる目的の生成物を含有する任意の材料(例えば、溶液)を指す。一部の実施形態では、目的の生成物は、rAAVベクターである。一部の実施形態では、「ロード溶液」がクロマトグラフィー固定相に曝露された場合、ロード溶液の一部の成分は固定相に結合する。一部の実施形態では、ロード溶液がクロマトグラフィー固定相に曝露された場合、ロード溶液の一部の成分はクロマトグラフィー固定相に結合せず、「未結合画分」または「フロースルー」として移動相と共にカラムを通って流れる。一部の実施形態では、ロード溶液は、清澄化された溶解物である。
【0412】
本明細書で使用される場合、用語「ロードチェイス」とは、ロードまたはロード溶液(上で定義された)が適用された後にカラムに適用される溶液を指す。ロードチェイスは、ロードまたはロード溶液の固定相への完全な適用に役立ち、カラムから未結合の材料を除去するのに役立つ。
【0413】
本明細書で使用される場合、用語「モディファイアー」または「移動相モディファイアー」は、クロマトグラフィーを変更するために移動相を改変する移動相の成分である。クロマトグラフィーのそのような変更は、例えば、固定相からの不純物の除去、もしくは洗浄除去、または固定相からの目的の生成物もしくは物質の溶出をもたらす。「モディファイアー」の例としては、塩、緩衝剤、界面活性剤、アミノ酸(例えば、アルギニン、ヒスチジン、シトルリン、グリシン)、有機溶媒(例えば、エタノール、エチレングリコール)、カオトロピック剤(例えば、尿素)、または置換剤(選択的溶出剤とも称される)が挙げられる。
【0414】
本明細書で使用される場合、用語「核酸配列」、「ヌクレオチド配列」および「ポリヌクレオチド」とは、ホスホジエステル結合によって接続された単量体ヌクレオチドから構成されるか、またはそれを含む任意の分子を互換的に指す。核酸は、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドであってもよい。核酸配列は、5’から3’の向きに本明細書で提示される。本開示の核酸配列(すなわち、ポリヌクレオチド)は、デオキシリボ核酸(DNA)分子またはリボ核酸(RNA)分子であってよく、二本鎖分子、一本鎖分子、小または短ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA、小または短干渉RNA(siRNA)、トランススプライシングRNA、アンチセンスRNA、メッセンジャーRNA、転移RNA、リボソームRNAなどのあらゆる形態の核酸を指す。ポリヌクレオチドがDNA分子である場合、その分子は、遺伝子、cDNA、アンチセンス分子または前記分子のいずれかの断片であってもよい。ヌクレオチドは、一文字コード:アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)、イノシン(I)およびウラシル(U)によって本明細書で示される。ヌクレオチド配列は、化学的に改変されているか、または人工であってもよい。ヌクレオチド配列は、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノおよびロックド核酸(LNA)、ならびにグリコール核酸(GNA)およびトレオース核酸(TNA)を含む。これらの配列はそれぞれ、分子の骨格に対する変化によって、天然に存在するDNAまたはRNAと区別される。また、ホスホロチオエートヌクレオチドを使用してもよい。他のデオキシヌクレオチドアナログとしては、本開示のヌクレオチド配列において使用することができる、メチルホスホネート、ホスホラミデート、ホスホロジチオエート、N3’-P5’-ホスホラミデート、ならびにオリゴリボヌクレオチドホスホロチオエートおよびその2’-O-アリルアナログならびに2’-O-メチルリボヌクレオチドメチルホスホネートが挙げられる。
【0415】
本明細書で使用される場合、用語「ヌクレオチド構築物」とは、組換えDNA技術の使用から生じる天然に存在しない核酸分子(例えば、組換え核酸)を指す。核酸構築物は、自然に見出されない様式で組み合わせ、配置される、核酸配列のセグメントを含有するように改変された、一本鎖または二本鎖の核酸分子である。核酸構築物は、外因的に作出されたDNAを宿主細胞中に送達するように設計された核酸分子である、「ベクター」(例えば、プラスミド、rAAVベクターゲノム、発現ベクターなど)であってもよい。
【0416】
本明細書で使用される場合、用語「作動可能に連結された」とは、機能的関係での核酸配列(またはポリペプチド)エレメントの連結を指す。核酸は、それが別の核酸配列と機能的な関係に置かれる場合、作動可能に連結されている。例えば、プロモーターまたは他の転写調節配列(例えば、エンハンサー)は、それがコード配列の転写に影響する場合、コード配列に作動可能に連結されている。一部の実施形態では、作動可能に連結されたとは、連結される核酸配列は連続的であることを意味する。一部の実施形態では、作動可能に連結されたとは、核酸配列が連続的に連結されていることを意味せず、むしろ、介在配列が、連結されるこれらの核酸配列の間にある。
【0417】
本明細書で使用される場合、用語「純度パーセント」、「純度%」または「カプシド純度%」とは、全カプシド、空カプシドおよび中間カプシドを含む溶液の純度を指す。純度パーセントは、非還元条件の逆相HPLC(RP-HPLC、NR)を含む、当業界で公知の方法によって決定される。溶液中に存在するカプシドに起因し得る、RP-HPLC、NRによって生成されたクロマトグラム吸光度曲線下面積は、吸光度曲線下総面積のパーセンテージとして表される。純度パーセントを、SDS-PAGEまたはキャピラリー電気泳動によって測定することもできる。
【0418】
本明細書で使用される場合、用語「vg収率パーセント」、「vg収率%」または「vg回収率%」とは、親和性カラム上にロードされた溶液(例えば、清澄化された溶解物)中に存在するVGの量のパーセンテージとしての親和性カラムから収集された溶出液(すなわち、親和性溶出液または親和性プール)中のVGの量を指す。例えば、VG収率%=((親和性溶出液中のVGの量)/(清澄化された溶解物中のVGの量))x100である。
【0419】
本明細書で使用される場合、用語「VGステップ収率パーセント」または「VGステップ収率%」とは、希釈または濾過の前に親和性プール(本明細書では親和性溶出液とも称される)中に存在するVGの量のパーセンテージとしての、AEXカラムから収集されたプールされた溶出液(すなわち、AEXプール)中のVGの量を指す。例えば、VGステップ収率=((AEXプール中のVGの量)/(親和性プール中のVGの量))X100である。
【0420】
本明細書で使用される場合、用語「溶出前洗浄」とは、ロード溶液が固定相に適用された後に、移動相中に存在する不純物、固定相に非特異的に結合した、および/またはrAAVカプシドに結合した不純物を除去するのに役立つクロマトグラフィープロセスのステップを指す。固定相に非特異的に結合する不純物は、樹脂材料および/またはリガンドに結合してもよい。例えば、クロマトグラフィープロセスによってrAAVベクターを精製する場合、rAAVベクターを含む溶液を固定相上にロードした後に、溶出前洗浄溶液を固定相に適用して、固定相(例えば、リガンドを介する)とrAAVベクターとの相互作用を維持しながら、移動相中に存在する不純物(例えば、HCDNA、HCP)ならびに固定相もしくはrAAVカプシドに非特異的に結合した不純物を除去する。
【0421】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される」および「生理学的に許容される」とは、1つまたは複数の投与経路、in vivoでの送達または接触にとって好適である、生物学的に許容される製剤、気体、液体もしくは固体、またはそれらの混合物を指す。
【0422】
本明細書で使用される場合、用語「ポリペプチド」、「タンパク質」または「核酸配列によってコードされる」(すなわち、ポリヌクレオチド配列によってコードされる、ヌクレオチド配列によってコードされる)とは、天然に存在するタンパク質と同様、全長天然配列、ならびにサブ配列、改変形態またはバリアントが天然全長タンパク質のある程度の機能性を保持する限り、機能性サブ配列、改変形態または配列バリアントを指す。本開示の方法および使用において、核酸配列によってコードされるそのようなポリペプチド、タンパク質およびペプチドは、必要とされるわけではないが、欠陥がある、またはその発現が不十分である、または遺伝子療法で処置した対象において欠損している内因性タンパク質と同一であってよい。
【0423】
本明細書で使用される場合、用語「組換え」とは、クローニング、制限もしくはライゲーションステップ(例えば、含まれるポリヌクレオチドもしくはポリペプチドに関連する)、および/または天然に見出される生成物とは異なる構築物をもたらす他の手順の様々な組合せの生成物である、ベクター、ポリヌクレオチド(例えば、組換え核酸)、ポリペプチドまたは細胞を指す。組換えウイルスまたはベクター(例えば、rAAVベクター)は、組換え核酸(例えば、導入遺伝子および1つまたは複数の調節エレメントを含む核酸)を含むベクターゲノムを含む。これらの用語はそれぞれ、元のポリヌクレオチド構築物の複製物および元のウイルス構築物の子孫を含む。
【0424】
本明細書で使用される場合、用語「再生」とは、例えば、不純物の除去またはクロマトグラフィーステップ中に固定相に適用される化学物質の除去によって、固定相と、固定相をその元の状態に戻す溶液とを接触させるステップ、フェーズまたはプロセスを指す。一部の実施形態では、再生のステップは、rAAVベクターを含む溶液を固定相上にロードするステップに先行する。一部の実施形態では、再生のステップを、クロマトグラフィー実行の経過にわたって2回以上、固定相に対して実施することができる。
【0425】
本明細書で使用される場合、用語「滞留時間」または「接触時間」とは、カラム内の溶液が固定相と接触する時間を指す。滞留時間は、カラム体積(CV)あたりの時間、例えば、分/CVとして表すことができる。
【0426】
本明細書で使用される場合、用語「浄化」とは、固定相と、カラム内のバイオバーデンを減少させるのに役立つ溶液と接触させるステップ、フェーズまたはプロセスを指す。浄化ステップを、クロマトグラフィー実行の経過にわたって2回以上、固定相に対して実施することができる。
【0427】
本明細書で使用される場合、用語「対象」とは、生物、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト哺乳動物、非ヒト霊長類、霊長類、実験動物、マウス、ラット、ハムスター、スナネズミ、ネコ、イヌ)を指す。一部の実施形態では、ヒト対象は、成人、青年、または小児対象である。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害または状態、例えば、本明細書に提供されるように処置することができる疾患、障害または状態に罹患している。一部の実施形態では、対象は、欠損または機能障害ジストロフィンと関連する疾患、障害または状態、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに罹患している。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害、または状態の影響を受けやすい。一部の実施形態では、影響を受けやすい対象は、疾患、障害または状態を生じる素因がある、および/または生じる高いリスク(参照対象もしくは集団において観察される平均リスクと比較して)を示す。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害または状態の1つまたは複数の症状を呈する。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害、または状態の特定の症状(例えば、疾患の臨床兆候)または特徴を呈しない。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害、または状態のいかなる症状も特徴も呈しない。一部の実施形態では、対象は、ヒト患者である。一部の実施形態では、対象は、診断および/または療法が投与される、および/または投与された個体である(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのための遺伝子療法)。一部の実施形態では、対象は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを有するヒト患者である。
【0428】
本明細書に記載の方法に従って精製されたrAAVベクターを使用して処置することができる疾患、障害および状態としては、例えば、代謝疾患もしくは障害(例えば、ファブリ病、ゴーシェ病、フェニルケトン尿症、糖原病);尿素サイクル疾患もしくは障害(例えば、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症);リソソーム蓄積疾患もしくは障害(例えば、異染性白質ジストロフィー、ムコ多糖症);肝臓疾患もしくは障害(例えば、1~3型進行性家族性肝内胆汁鬱滞症);血液疾患もしくは障害(A型血友病、B型血友病、αサラセミア);がん(例えば、癌腫、肉腫、血液がん);遺伝子疾患もしくは障害(例えば、嚢胞性線維症);または感染症(例えば、HIV)が挙げられる。
【0429】
本明細書に記載の方法に従って精製されたrAAVベクターを使用して処置することができる疾患、障害および状態としては、例えば、21-ヒドロキシラーゼ欠損性先天性副腎過形成症、1B型軟骨無形成、軟骨形成不全、色覚異常、酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症(ナイマン・ピック病A型またはB型)、急性間欠性ポルフィリン症、アデノシンデアミナーゼ2欠損症、アデノシンデアミナーゼ欠損症(例えば、X連鎖重症複合免疫不全)、副腎白質ジストロフィー(例えば、X連鎖)、加齢黄斑変性(例えば、血管新生、ウェット型)、アラジール症候群、アルカプトン尿症、アルファ-1抗トリプシン欠乏症、アルファ-サラセミア、アルポート症候群、アルツハイマー病、アペール症候群、アルギナーゼ欠損症、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)欠損症、アルギニノコハク酸シンターゼ(ASS1)欠損症(シトルリン血症1型)、芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼ欠損症、常染色体劣性先天性魚鱗癬、ベッカー型筋ジストロフィー、ベータ-サラセミア、カルバモイルホスファターゼシンテターゼI欠損症、セロイドリポフスチン症、シャルコー・マリー・ツースニューロパチー、先天性脈絡膜欠如、慢性肉芽腫症、シトリン欠損症、クリグラー・ナジャー症候群1型および2型、重症下肢虚血、嚢胞性線維症、シスチン症、ダノン病、糖尿病性黄斑網膜症、顕性遺伝性低身長症、ドラベ症候群、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ジスフェルリン異常症(例えば、三好型ミオパチー、肢帯型筋ジストロフィー2B)、栄養障害性表皮水疱症、ファブリ病、家族性高コレステロール血症、家族性リポタンパクリパーゼ欠損症、ファンコニ貧血(例えば、ファンコニ貧血A)、フリードライヒ運動失調症、前頭側頭型認知症、ゴーシェ病、1A型および1B型糖原病(フォン・ギールケ病)、III型糖原病、IV型糖原病、V型糖原病、VI型糖原病、XV型糖原病、GM1ガングリオシドーシス、脳回転状萎縮、A型血友病、B型血友病、I~III型遺伝性血管性浮腫、ハンチントン病、封入体筋炎、接合部型表皮水疱症、歌舞伎症候群、レーバー先天性黒内障、1型白血球接着不全症、肢帯型筋ジストロフィー、2C型肢帯型筋ジストロフィー(ガンマ-サルコグリカン異常症)、2D型肢帯型筋ジストロフィー、異染性白質ジストロフィー、I型ムコ多糖症、II型ムコ多糖症(ハンター症候群)、IIIA型ムコ多糖症、IIIB型ムコ多糖症、IIIC型ムコ多糖症、IIID型ムコ多糖症、IVA型ムコ多糖症(モルキオA症候群)、IVB型ムコ多糖症(モルキオB症候群)、VI型ムコ多糖症(マロトー・ラミー型)、I型筋強直性ジストロフィー、2型筋強直性ジストロフィー、N-アセチルグルタミン酸シンターゼ(NAGS)欠損症、ネザートン症候群、神経セロイドリポフスチン症、オルニチントランスロカーゼ欠損症、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症、パーキンソン病、フェニルケトン尿症、ポンペ病、1~3型進行性家族性肝内胆汁鬱滞症、進行性筋原線維性ミオパチー、ピルビン酸キナーゼ欠損症、網膜色素変性、RPE65関連レーバー先天性黒内障、サンドホフ病、鎌状赤血球病、脊髄性筋萎縮症、テイ・サックス病、ウィルソン病、ウィスコット・アルドリッチ症候群、ウィスコット・アルドリッチ症候群2、X連鎖性副腎白質ジストロフィー、X連鎖性慢性肉芽腫症、X連鎖性ミオチュブラーミオパチー、X連鎖性網膜色素変性、X連鎖性網膜分離症およびX連鎖重症複合免疫不全が挙げられる。
【0430】
本明細書で使用される場合、用語「実質的に」とは、目的の特徴または特性の全体の、または全体に近い程度または度合いの表出の定性的状態を指す。当業者であれば、生物学的および化学的現象が、仮にあるとしても、完了まで行く、および/または完全性まで進行するか、もしくは絶対的な結果を達成することは稀であることを理解するであろう。したがって、用語「実質的に」は、多くの生物学的および化学的現象に内在する完全性の潜在的な欠如を捕捉するために本明細書で使用される。
【0431】
本明細書で使用される場合、用語「治療的ポリペプチド」は、標的細胞(例えば、単離された細胞)または生物(例えば、対象)中のタンパク質の非存在または欠陥から生じる症状を軽減するか、または低減することができるペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質(例えば、酵素、構造タンパク質、膜貫通タンパク質、輸送タンパク質)である。導入遺伝子によってコードされる治療的ポリペプチドまたはタンパク質は、例えば、遺伝的欠陥を補正するため、発現または機能と関連する遺伝子の欠損を補正するために、対象に対する利益を付与するものである。同様に、「治療的導入遺伝子」は、治療的ポリペプチドをコードする導入遺伝子である。一部の実施形態では、宿主細胞中で発現される治療的ポリペプチドは、導入遺伝子から発現される酵素(すなわち、宿主細胞中に導入された外因性核酸)である。一部の実施形態では、治療的ポリペプチドは、筋肉細胞(例えば、骨格筋細胞)中に形質導入された治療的導入遺伝子から発現されるジストロフィンタンパク質、またはその断片である。
【0432】
本明細書で使用される場合、用語「治療有効量」とは、投与される量について所望の治療効果をもたらす量を指す。一部の実施形態では、この用語は、治療剤投薬レジメンに従って疾患、障害または状態に罹患している、またはその影響を受けやすい集団に投与した場合に、疾患、障害または状態を処置するのに十分な量を指す。一部の実施形態では、治療有効量は、疾患、障害、および/または状態の1つまたは複数の症状の発生および/もしくは重症度を低減する、ならびに/またはその開始を遅延させるものである。当業者であれば、用語「治療有効量」が事実、特定の個体において達成される処置の成功を必要としないことを理解するであろう。むしろ、治療有効量は、そのような処置を必要とする患者に投与した場合に、有意な数の対象において特定の望ましい薬理学的応答をもたらすその量であってよい。
【0433】
本明細書で使用される場合、用語「導入遺伝子」は、宿主細胞、標的細胞または生物(例えば、対象)への送達および/またはその中での発現のための任意の異種ポリヌクレオチドを意味するために使用される。そのような「導入遺伝子」を、ベクター(例えば、rAAVベクター)を使用して宿主細胞、標的細胞または生物に送達することができる。導入遺伝子を、プロモーターなどの制御配列に作動可能に連結することができる。当業者であれば、発現制御配列を、宿主細胞、標的細胞または生物中での導入遺伝子の発現を促進する能力に基づいて選択することができることを理解するであろう。一般に、導入遺伝子を、天然で導入遺伝子と結合した内因性プロモーターに作動可能に連結することができるが、より典型的には、導入遺伝子を、導入遺伝子が天然で結合していないプロモーターに作動可能に連結する。導入遺伝子の例は、治療的ポリペプチド、例えば、ジストロフィンポリペプチドまたはその断片をコードする核酸であり、例示的なプロモーターは、天然でジストロフィンをコードするヌクレオチドに作動可能に連結されていないものである。そのような非内因性プロモーターは、当業界で公知の多くの他のもののうち、CBhプロモーターまたは筋肉特異的プロモーターを含んでもよい。
【0434】
トランスフェクションおよび形質導入を含む、当業界で周知の様々な技術によって、目的の核酸を宿主細胞中に導入することができる。
【0435】
「トランスフェクション」は、ウイルスベクターを使用することなく、外因性核酸を細胞中に導入するための技術として一般に公知である。本明細書で使用される場合、用語「トランスフェクション」とは、ウイルスベクターを使用することなく、組換え核酸(例えば、発現プラスミド)の細胞(例えば、宿主細胞)中への移入を指す。組換え核酸が導入された細胞は、「トランスフェクト細胞」と称される。トランスフェクト細胞は、組換えAAVベクターを生産するための発現プラスミド/ベクターを含む宿主細胞(例えば、CHO細胞、Pro10細胞、HEK293細胞)であってもよい。一部の実施形態では、トランスフェクト細胞(例えば、パッケージング細胞)は、導入遺伝子(例えば、ジストロフィン導入遺伝子)を含むプラスミド、AAV rep遺伝子およびAAV cap遺伝子を含むプラスミドならびにヘルパー遺伝子を含むプラスミドを含んでもよい。多くのトランスフェクション技術が当業界で公知であり、限定されるものではないが、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈降、マイクロインジェクション、陽イオンまたは陰イオンリポソーム、および核局在化シグナルと組み合わせたリポソームが挙げられる。
【0436】
本明細書で使用される場合、用語「形質導入」とは、ウイルスベクター(例えば、rAAVベクター)による細胞(例えば、標的細胞、例えば、筋肉細胞)への核酸(例えば、ベクターゲノム)の移入を指す。一部の実施形態では、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのための遺伝子療法は、ジストロフィンをコードする改変された核酸、またはその断片を含むベクターゲノムを、筋肉細胞中に形質導入することを含む。導入遺伝子がウイルスまたはウイルスベクターによって導入された細胞は、「形質導入細胞」と称される。一部の実施形態では、形質導入細胞は、単離された細胞であり、形質導入はex vivoで行われる。一部の実施形態では、形質導入細胞は、生物(例えば、対象)内の細胞であり、形質導入はin vivoで行われる。形質導入細胞は、生物の標的細胞がポリヌクレオチド(例えば、導入遺伝子、例えば、ジストロフィン、またはその断片をコードする改変された核酸)を発現するような、組換えAAVベクターによって形質導入された生物の標的細胞であってもよい。
【0437】
形質導入することができる細胞は、任意の組織もしくは臓器型、または任意の起源(例えば、中胚葉、外胚葉もしくは内胚葉)の細胞を含む。細胞の非限定例としては、肝臓(例えば、肝細胞、類洞内皮細胞)、膵臓(例えば、膵島ベータ細胞、外分泌細胞)、肺、中枢または末梢神経系、例えば、脳(例えば、神経もしくは上衣細胞、オリゴデンドロサイト)または脊椎、腎臓、眼(例えば、網膜)、脾臓、皮膚、胸腺、精巣、肺、横隔膜、心臓(心臓細胞)、筋肉もしくは腰筋、または腸(例えば、内分泌細胞)、脂肪組織(白色、褐色またはベージュ)、筋肉(例えば、線維芽細胞、筋細胞)、滑膜細胞、軟骨細胞、破骨細胞、上皮細胞、内皮細胞、唾液腺細胞、内耳神経細胞または造血(例えば、血液もしくはリンパ)細胞が挙げられる。別の例としては、肝臓(例えば、肝細胞、類洞内皮細胞)、膵臓(例えば、膵島ベータ細胞、外分泌細胞)、肺、中枢または末梢神経系、例えば、脳(例えば、神経もしくは上衣細胞、オリゴデンドロサイト)または脊椎、腎臓、眼(例えば、網膜)、脾臓、皮膚、胸腺、精巣、肺、横隔膜、心臓(心臓細胞)、筋肉もしくは腰筋、または腸(例えば、内分泌細胞)、脂肪組織(白色、褐色またはベージュ)、筋肉(例えば、線維芽細胞、筋細胞)、滑膜細胞、軟骨細胞、破骨細胞、上皮細胞、内皮細胞、唾液腺細胞、内耳神経細胞または造血(例えば、血液もしくはリンパ)細胞に発生または分化する万能性または多能性前駆細胞などの、幹細胞が挙げられる。
【0438】
一部の実施形態では、組織または臓器(例えば、筋肉)の特定の領域を、組織または臓器に投与されるrAAVベクター(例えば、ジストロフィン、またはジストロフィンの一部分の導入遺伝子を含むrAAVベクター)によって形質導入することができる。一部の実施形態では、筋肉細胞に、ジストロフィン導入遺伝子を含むrAAVを形質導入する。一部の実施形態では、骨格筋細胞に、ジストロフィン導入遺伝子を含むrAAVを形質導入する。一部の実施形態では、心筋細胞に、ジストロフィン導入遺伝子を含むrAAVを形質導入する。
【0439】
本明細書で使用される場合、用語「2ステップのvg回収率%」とは、親和性クロマトグラフィーおよびAEXクロマトグラフィーによるrAAVベクターを含む溶液からのrAAVの精製後のvg回収率を指す。例えば、2ステップのvg回収率を、親和性のvg回収率%にAEXのvg回収率%を乗ずることによって算出することができる。
【0440】
本明細書で使用される場合、用語「上向きに流動する」とは、移動相の流動がカラムの底部からカラムの頂部に向かうような、クロマトグラフィー分離中の移動相の流動の方向を指す。一部の実施形態では、使用前の注射用水(WFI)、または再生緩衝液などの移動相は、溶液(例えば、水)がカラムの底部からカラムの頂部に向かって流動するが、クロマトグラフィー分離ステップ(例えば、ローディング、洗浄または溶出)の間に、溶液がカラムの頂部からカラムの底部に向かって流動するように、クロマトグラフィー分離ステップのものと反対の方向に流動する。
【0441】
本明細書で使用される場合、用語「ベクター」とは、核酸(例えば、組換え核酸)の挿入または組込みによって操作することができるプラスミド、ウイルス(例えば、rAAV)、コスミド、または他のビヒクルを指す。ベクターを、例えば、核酸を細胞中に導入/移入するため、細胞中の挿入された核酸を転写または翻訳するための、遺伝子操作(例えば、クローニングベクター)を含む、様々な目的で使用することができる。一部の実施形態では、ベクター核酸配列は、細胞中での増殖のための少なくとも複製起点を含有する。一部の実施形態では、ベクター核酸は、異種核酸配列、発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー)、選択マーカー(例えば、抗生物質耐性)、ポリアデノシン(ポリA)配列および/またはITRを含む。一部の実施形態では、宿主細胞に送達された場合、核酸配列は増殖される。一部の実施形態では、in vitroまたはin vivoのいずれかで宿主細胞に送達された場合、細胞は異種核酸配列によってコードされるポリペプチドを発現する。一部の実施形態では、宿主細胞に送達された場合、核酸配列、または核酸配列の一部は、カプシド中にパッケージングされる。宿主細胞は、単離された細胞または宿主生物内の細胞であってもよい。ポリペプチドまたはタンパク質をコードする核酸配列(例えば、導入遺伝子)に加えて、追加の配列(例えば、調節配列)が同じベクター内に存在し(すなわち、遺伝子に対してcisに)、遺伝子を挟んでもよい。一部の実施形態では、調節配列は、遺伝子の発現を調節するためにtransに作用する別々の(例えば、第2の)ベクター上に存在してもよい。プラスミドベクターを、本明細書では「発現ベクター」と称してもよい。
【0442】
本明細書で使用される場合、用語「ベクターゲノム」とは、rAAVベクターを形成するためにAAVカプシド中にパッケージング/封入されていてもよいが、それが必要とされるわけではない核酸を指す。典型的には、ベクターゲノムは、異種ポリヌクレオチド配列(例えば、導入遺伝子、調節エレメントなど)および少なくとも1つのITRを含む。組換えプラスミドを使用して組換えベクター(例えば、rAAVベクター)を構築または製造する場合、ベクターゲノムは、プラスミド全体を含むのではなく、むしろ、ウイルスベクターによる送達を意図された配列のみを含む。組換えプラスミドのこの非ベクターゲノム部分は、「プラスミド骨格」と称され、組換えウイルスベクター生産の増殖にとって必要とされるプロセスであるプラスミドのクローニング、選択および増幅にとって重要であるが、それ自体はrAAVベクター中にパッケージングまたは封入されない。典型的には、カプシド中にパッケージングされる異種配列は、ITRによって挟まれ、プラスミド骨格から切断された場合、それはカプシド中にパッケージングされる。
【0443】
本明細書で使用される場合、用語「ウイルスベクター」は一般に、核酸送達ビヒクルとして機能し、ウイルス粒子(すなわち、カプシド)内にパッケージングされたベクターゲノム(例えば、野生型repおよびcapを置き換えた導入遺伝子を含む)を含むウイルス粒子を指し、例えば、AAV血清型およびバリアント(例えば、rAAVベクター)を含む、レンチウイルスおよびパルボウイルスを含む。本明細書の他の箇所に記載されるように、組換えウイルスベクターは、repおよび/またはcap遺伝子を含むウイルスゲノムを含まない;むしろ、これらの配列は、目的の導入遺伝子を運搬するベクターゲノムの能力を提供するために除去されている。
【0444】
本開示は、宿主細胞回収物からのrAAVベクター(例えば、全rAAVベクター)の精製のための方法を提供する。特に、本開示は、宿主細胞によって産生される他の核酸およびタンパク質(空カプシドを含む)からのrAAVベクター(例えば、全rAAVベクター)の精製のための方法を提供する。さらに、本開示は、全rAAVベクター(例えば、ベクターゲノムを含むrAAVベクター)からの空カプシドの分離のための方法を提供する。本開示のこれらの態様はそれぞれ、次のセクションでさらに考察される。
【0445】
II.AAVおよびrAAVベクター
A.AAV
上で考察されたように、「アデノ随伴ウイルス」および/または「AAV」とは、線状一本鎖DNAゲノムを有するパルボウイルスおよびそのバリアントを指す。この用語は、別途要求される場合を除いて、全てのサブタイプ、および天然に存在する形態と組換え形態との両方を包含する。AAVを含むパルボウイルスは、それらは細胞に浸透し、核酸(例えば、導入遺伝子)を核に導入することができるため、遺伝子療法ベクターとして有用である。一部の実施形態では、導入された核酸(例えば、rAAVベクターゲノム)は、形質導入細胞の核においてエピソームとして持続する環状コンカテマーを形成する。一部の実施形態では、導入遺伝子は、宿主細胞ゲノム中の特定の部位に、例えば、ヒト第19染色体上の部位に挿入される。部位特異的組込みは、無作為の組込みとは反対に、予測可能な長期的発現プロファイルをもたらす可能性が高いと考えられる。ヒトゲノム中へのAAVの挿入部位は、AAVS1と称される。細胞中に導入されたら、核酸によってコードされるポリペプチドは、細胞によって発現され得る。AAVはヒトにおいてはいかなる病原性疾患とも関連しないため、AAVによって送達される核酸を使用して、ヒト対象における疾患、障害および/または状態の処置のための治療的ポリペプチドを発現させることができる。
【0446】
AAVの複数の血清型が天然に存在し、今までのところ、少なくとも15の野生型血清型(AAV1~AAV15)がヒトから同定されている。150を超えるユニークなAAV血清型が同定されている。天然に存在する血清型とバリアント血清型とは、他のAAV血清型と血清学的に異なるタンパク質カプシドを有することによって区別される。特に、AAV1型(AAV1)、AAV2型(AAV2)、AAV3A型(AAV3A)およびAAV3B型(AAV3B)を含むAAV3型(AAV3)、AAV4型(AAV4)、AAV5型(AAV5)、AAV6型(AAV6)、AAV7型(AAV7)、AAV8型(AAV8)、AAV9型(AAV9)、AAV10型(AAV10)、AAV12型(AAV12)、AAVrh10、AAVrh74(WO2016/210170を参照されたい)、AAVrh32.22、AAV1.1、AAV2.5、AAV6.1、AAV6.2、AAV6.3.1、AAV9.45、AAVShH10、HSC15/17、RHM4-1(WO2015/013313の配列番号5)、RHM15-1、RHM15-2、RHM15-3/RHM15-5、RHM15-4、RHM15-6、AAVhu.26、AAV2i8、AAV29G、AAV2、AAV8G9、AAV-LK03、AAV2-TT、AAV2-TT-S312N、AAV3B-S312N、鳥類AAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、霊長類AAV、非霊長類AAV、およびヒツジAAV、NP4、NP22、NP66、AAVDJ、AAVDJ/8、AAVDJ/9(例えば、Fieldsら、「Virology」、Volume 2、Chapter 69(第4版、Lippincott-Raven Publishers);米国特許第7,906,111号;Gaoら(2004)J.Virol.78:6381;Morrisら(2004)Virol.33:375;WO2013/063379;WO2014/194132;WO2015/121501;WO2015/013313を参照されたい、これらは全て参照により本明細書に組み込まれる)。ヒトCD34+細胞から単離されたAAVバリアントとしては、AAVHSC1、AAVHSC2、AAVHSC3、AAVHSC4、AAVHSC5、AAVHSC6、AAVHSC7、AAVHSC8、AAVHSC9、AAVHSC10、AAVHSC11、AAVHSC12、AAVHSC13、AAVHSC14およびAAVHSC15が挙げられる(参照により本明細書に組み込まれるSmithら(2014)Molecular Therapy 22(9):1625~1634)。ロングリード配列決定によってヒト組織から単離された天然に存在するAAVとしては、CNSに対する向性を示すAAVv66ならびにAAVv33、AAVv37、AAVv40、AAVv67、AAVv70、AAVv72、AAVv84、AAVv86、AAVv87およびAAVv90が挙げられる(Hsuら(2020)Nat.Comm.11:3279)。
【0447】
「霊長類AAV」とは、霊長類に感染するAAVを指し、「非霊長類AAV」とは、非霊長類哺乳動物に感染するAAVを指し、「ウシAAV」とは、ウシ哺乳動物に感染するAAVなどを指す。血清型の独自性は、別のAAVと比較したあるAAVに対する抗体間の交差反応性の欠如に基づいて決定される。そのような交差反応性の差は通常、カプシドタンパク質配列および抗原性決定基の差異に起因する(例えば、AAV血清型のVP1、VP2、および/またはVP3配列の差異に起因する)。しかしながら、一部の天然に存在するAAVまたは人工のAAV突然変異体(例えば、組換えAAV)は、現在公知の血清型のいずれかとの血清学的な差異を示さないことがある。その場合、これらのウイルスは、対応する型のサブグループ、またはより単純には、バリアントAAVであると考えることができる。かくして、本明細書で使用される場合、用語「血清型」とは、血清学的に異なるウイルス、例えば、AAV、ならびに血清学的に異ならないが、所与の血清型のサブグループまたはバリアント内にあってもよいウイルス、例えば、AAVの両方を指す。
【0448】
公知のAAV血清型のカプシドのアミノ酸配列の包括的な一覧およびアラインメントは、Marsicら(2014)Molecular Therapy 22(11):1900~1909、特に、添付の
図1によって提供されている;この刊行物全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0449】
AAVの種々の血清型のゲノム配列、ならびに天然の逆方向末端反復(ITR)、repタンパク質、およびカプシドサブユニットの配列が当業界で公知である。そのような配列を、文献中またはGenBankなどの公共のデータベース中に見出すことができる。例えば、GenBank受託番号NC_002077(AAV1)、AF063497(AAV1)、NC_001401(AAV2)、AF043303(AAV2)、NC_001729(AAV3)、AF028705.1(AAV3B)、NC_001829(AAV4)、U89790(AAV4)、NC_006152(AAV5)、AF028704(AAV6)、AF513851(AAV7)、AF513852(AAV8)、NC_006261(AAV8)、AY530579(AAV9)、AY631965(AAV10)、AY631966(AAV11)、およびDQ813647(AAV12)を参照されたい;その開示は参照により本明細書に組み込まれる。また、例えば、Srivistavaら(1983)J.Virology 45:555;Chioriniら(1998)J.Virology 71:6823;Chioriniら(1999)J.Virology 73:1309;Bantel-Schaalら(1999)J.Virology 73:939;Xiaoら(1999)J.Virology 73:3994;Muramatsuら(1996)Virology 221:208;Shadeら(1986)J.Virol.58:921;Gaoら(2002)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 99:11854;Morisら(2004)Virology 33:375~383;国際特許出願公開WO00/28061、WO99/61601、WO98/11244;WO2013/063379、WO2014/194132、WO2015/121501;ならびに米国特許第6,156,303号および第7,906,111号も参照されたい。例示目的のみで、野生型AAV2は、重複配列を含む3つのタンパク質(VP1、VP2、およびVP3;合計60個のタンパク質がAAVカプシドを構成する)から構成されるAAVの小さい(20~25nm)20面体ウイルスカプシドを含む。タンパク質VP1(735aa;Genbank受託番号AAC03780)、VP2(598aa;Genbank受託番号AAC03778)およびVP3(533aa;Genbank受託番号AAC03779)は、カプシド中で約1:1:10の比で存在する。すなわち、AAVについて、VP1は全長タンパク質であり、VP2およびVP3はVP1の次第に短くなるバージョンであり、VP1と比較してN末端のトランケーションが増加している。一実施形態では、本明細書に開示される方法の、rAAVベクターは、配列番号3のアミノ酸配列を含むAAV9 VP1を含む。
【0450】
B.組換えAAV(rAAV)
上で考察されたように、「組換えアデノ随伴ウイルス」または「rAAV」は、ウイルスゲノムの全部または一部の、非天然配列による置き換えによって、野生型AAVと区別される。ウイルス内の非天然配列の組込みは、ウイルスベクターを「組換え」ベクター、したがって、「rAAVベクター」と定義する。rAAVベクターは、所望のタンパク質またはポリペプチド(例えば、ジストロフィンポリペプチド、またはその断片、例えば、配列番号2)をコードする異種ポリヌクレオチド(例えば、ヒトミニ-ジストロフィン、例えば、をコードするヒトコドン最適化された遺伝子、例えば、配列番号1)を含んでもよい。組換えベクター配列をAAVカプシド中に封入またはパッケージングすることができ、それを「rAAVベクター」、「rAAVベクター粒子」、「rAAVウイルス粒子」または単に「rAAV」と称することができる。
【0451】
本開示は、AAV起源のものではないポリヌクレオチド配列(例えば、AAVに対して異種であるポリヌクレオチド)を含むrAAVベクターを精製する方法を提供する。異種ポリヌクレオチドは、少なくとも1つ、時には2つのAAV末端反復配列(例えば、逆方向末端反復(ITR))によって挟まれていてもよい。本明細書では「ベクターゲノム」とも称される、ITRによって挟まれた異種ポリヌクレオチドは、典型的には、目的のポリペプチド、または目的の遺伝子(「GOI」)、例えば、治療的処置のための標的(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの処置のための、ジストロフィン、またはその断片をコードする核酸)をコードする。rAAVベクターの対象(例えば、患者)への送達または投与は、コードされたタンパク質およびペプチドを対象に提供する。かくして、rAAVベクターを使用して、例えば、種々の疾患、障害および状態を処置するために、発現のための異種ポリヌクレオチドを移入/送達することができる。
【0452】
rAAVベクターゲノムは一般に、ウイルスrepおよびcap遺伝子を置き換える異種核酸配列に対してcisに145塩基のITRを保持する。そのようなITRは、組換えAAVベクターを生産するのに必要である;しかしながら、改変されたAAV ITRおよび部分的または完全に合成の配列を含む非AAV末端反復も、この目的に役立ち得る。ITRはヘアピン構造を形成し、例えば、感染後に相補的DNA鎖の宿主細胞媒介性合成のためのプライマーとして働くように機能する。ITRはまた、ウイルスのパッケージング、組込みなどにおいても役割を果たす。ITRは、AAVゲノムの複製およびrAAVベクター中へのパッケージングにとってcisに必要とされる唯一のAAVウイルスエレメントである。rAAVベクターゲノムは、一般に、異種配列(例えば、目的の遺伝子をコードする導入遺伝子、または限定されるものではないが、特に、アンチセンス、およびsiRNA、CRISPR分子などの目的の核酸配列)を含むベクターゲノムの5’および3’末端にある2つのITRを含んでもよい。5’および3’ITRは両方とも、同じ配列を含んでもよいか、またはそれぞれ異なる配列を含んでもよい。AAV ITRは、限定されるものではないが、血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10もしくは11を含む任意のAAVまたは他の任意のAAVに由来してもよい。ITRは、AAVゲノムの複製およびパッケージングを媒介する配列である。
【0453】
本開示のrAAVベクターは、カプシドの血清型(例えば、AAV9またはその他)とは異なるAAV血清型(例えば、野生型AAV2、その断片またはバリアント)に由来するITRを含んでもよい。1つの血清型に由来する少なくとも1つのITRを含むが、異なる血清型に由来するカプシドを含むそのようなrAAVベクターを、ハイブリッドウイルスベクターと称することができる(米国特許第7,172,893号を参照されたい)。AAV ITRは、野生型ITR配列全体を含むか、またはそのバリアント、断片、もしくは改変体であってもよいが、機能を保持するであろう。
【0454】
一部の実施形態では、異種ポリペプチドは、ベクターゲノムの左右の末端(すなわち、それぞれ、5’および3’末端)に位置するITR(例えば、AAV2に由来するITRであるが、任意の野生型AAV血清型、またはそのバリアントに由来するITRを含んでもよい)を含む。一部の実施形態では、左側(例えば、5’側)のITRは、配列番号5または配列番号6の核酸配列を含むか、またはそれからなる。一部の実施形態では、左側(例えば、5’側)のITRは、配列番号5もしくは配列番号6である、またはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%もしくは100%同一である、またはそれと多くとも80%、85%、90%、95%、98%、99%もしくは100%同一である核酸配列を含む。一部の実施形態では、右側(例えば、3’側)のITRは、配列番号5または配列番号6の核酸配列を含むか、またはそれからなる。一部の実施形態では、右側(例えば、3’側)のITRは、配列番号5もしくは配列番号6である、またはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%もしくは100%同一である、またはそれと多くとも80%、85%、90%、95%、98%、99%もしくは100%同一である核酸配列を含む。それぞれのITRは、cisにあるが、互いに、またはジストロフィンをコードする改変された核酸、もしくはその断片と、調節エレメントとを含む組換え核酸などの、可変長の核酸配列によって、ベクターゲノム中の他のエレメントから隔てられていてもよい。一部の実施形態では、ITRは、AAV2 ITR、またはそのバリアントであり、ジストロフィン導入遺伝子を挟む。一部の実施形態では、rAAVは、AAV2 ITR(例えば、配列番号5または配列番号6に記載の配列を有するITR)によって挟まれたジストロフィン導入遺伝子(例えば、配列番号1の核酸配列を含む)を含む。
【0455】
一部の実施形態では、rAAVベクターゲノムは、線状の、一本鎖であり、AAV ITRによって挟まれている。異種遺伝子の転写および翻訳の前に、およそ4700ヌクレオチドの一本鎖DNAゲノムを、第2鎖合成を開始するために一方の自己プライミングするITRの遊離3’-OHを使用してDNAポリメラーゼ(例えば、形質導入細胞内のDNAポリメラーゼ)によって二本鎖形態に変換する必要がある。一部の実施形態では、全長一本鎖ベクターゲノム(すなわち、センスおよびアンチセンス)はアニーリングして、全長二本鎖ベクターゲノムを生成する。これは、反対の極性(すなわち、センスまたはアンチセンス)のゲノムを担持する複数のrAAVベクターが同じ細胞を同時に形質導入する場合に起こり得る。それらがどのように生産されるかに関係なく、二本鎖ベクターゲノムが形成されたら、細胞は二本鎖DNAを転写および翻訳し、異種遺伝子を発現することができる。
【0456】
rAAVベクターからの導入遺伝子発現の効率は、発現の前に一本鎖rAAVゲノム(ssAAV)を二本鎖DNAに変換する必要性によって妨げられ得る。このステップは、DNA合成または複数のベクターゲノム間の塩基対合を必要とすることなく、二本鎖DNAにフォールディングすることができる逆方向反復ゲノムをパッケージングすることができる自己相補性AAVゲノム(scAAV)を使用することによって回避される(McCarty(2008)Molec.Therapy 16(10):1648~1656;McCartyら(2001)Gene Therapy 8:1248~1254;McCartyら(2003)Gene Therapy 10:2112~2118)。scAAVベクターの制限は、カプシド中にパッケージングしようとする独自の導入遺伝子、調節エレメントおよびITRのサイズが、ssAAVベクターゲノム(すなわち、2つのITRを含む約4,900ヌクレオチド)の約半分のサイズ(すなわち、約2,500ヌクレオチドであり、そのうち2,200ヌクレオチドは導入遺伝子および調節エレメントであり、+2コピーの約145ヌクレオチドのITRであってよい)であるということである。
【0457】
scAAVベクターゲノムは、発現プラスミドの1つのrAAV ITRから末端分離部位(terminal resolution site)(TRS)を欠失させることによって、その末端からの複製の開始を防止することによって作製される(米国特許第8,784,799号を参照されたい)。宿主細胞内でのAAV複製は、ゲノムの野生型ITRで開始され、末端分離なしに突然変異体ITRを介して継続し、次いで、ゲノムをわたって戻り、二量体を作出する。二量体は、中央に突然変異体ITR、および各末端に野生型ITRを含む自己相補性ゲノムである。一部の実施形態では、TRSが欠失した突然変異体ITRは、ベクターゲノムの5’末端にある。一部の実施形態では、TRSが欠失した突然変異体ITRは、ベクターゲノムの3’末端にある。一部の実施形態では、突然変異体ITRは、配列番号7または配列番号8の核酸配列を含む。
【0458】
理論によって束縛されることを望むものではないが、scAAVゲノムの2つの半分は相補的であるが、多くの塩基がカプシド内殻のアミノ酸残基と接触し、リン酸骨格は、中心に向かうように隔離されているため、カプシド内に実質的な塩基対合が存在する可能性は低い(McCarty(2008)Molec.Therapy 16(10):1648~1656)。脱殻の際に、scAAVゲノムの2つの半分はアニーリングして、一方の末端に共有結合的に閉じたITRおよび他方の末端に2つの、末端が開いたITRを有するdsDNAヘアピン分子を形成すると考えられる。ITRは、特に、導入遺伝子、およびそれに対してcisの調節エレメントをコードする二本鎖領域を挟む。
【0459】
rAAVベクターのウイルスカプシドは、野生型AAVまたはバリアントAAV、例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV3A、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAVrh74(WO2016/210170を参照されたい)、AAV12、AAV2i8、AAV1.1、AAV2.5、AAV6.1、AAV6.3.1、AAV9.45、RHM4-1(WO2015/013313の配列番号5)、RHM15-1、RHM15-2、RHM15-3/RHM15-5、RHM15-4、RHM15-6、AAVhu.26、AAV1.1、AAV2.5、AAV6.1、AAV6.3.1、AAV9-45、AAV2i8、AAV29G、AAV2、AAV8G9、AAV-LK03、AAV2-TT、AAV2-TT-S312N、AAV3B-S312N、鳥類AAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、霊長類AAV、非霊長類AAV、ヘビAAV、ヤギAAV、エビAAV、ヒツジAAVおよびそのバリアントなどに由来してもよい(例えば、Fieldsら、「Virology」、volume 2、chapter 69(第4版、Lippincott-Raven Publishers)を参照されたい)。カプシドは、米国特許第7,906,111号;Gaoら(2004)J.Virol.78:6381;Morrisら(2004)Virol.33:375;WO2013/063379;WO2014/194132に開示されたいくつかのAAV血清型に由来してもよく、WO2015/121501に開示されたトゥルータイプAAV(AAV-TT)バリアント、ならびにWO2015/013313に開示されたRHM4-1、RHM15-1~RHM15-6、およびそのバリアントが挙げられる(これらは全て参照により本明細書に組み込まれる)。カプシドはまた、ヒトCD34+細胞から単離されたAAVバリアントに由来してもよく、AAVHSC1、AAVHSC2、AAVHSC3、AAVHSC4、AAVHSC5、AAVHSC6、AAVHSC7、AAVHSC8、AAVHSC9、AAVHSC10、AAVHSC11、AAVHSC12、AAVHSC13、AAVHSC14およびAAVHSC15が挙げられる(Smithら(2014)Molecular Therapy 22(9):1625~1634)。ロングリード配列決定によってヒト組織から単離された天然に存在するAAVとしては、CNSに対する向性を示すAAVv66ならびにAAVv33、AAVv37、AAVv40、AAVv67、AAVv70、AAVv72、AAVv84、AAVv86、AAVv87およびAAVv90が挙げられる(Hsuら(2020)Nat.Comm.11:3279)。当業者であれば、同じか、または類似する機能を果たす、まだ同定されていない他のAAVバリアントが存在する可能性が高いことを知っているであろう。AAV capタンパク質の完全な補体は、VP1、VP2、およびVP3を含む。AAV VPカプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むORFは、完全な補体よりも小さいAAV Capタンパク質を含んでもよいか、またはAAV capタンパク質の完全な補体を提供することができる。
【0460】
一部の実施形態では、本開示は、治療的in vivo遺伝子療法における使用のための祖先AAVベクターの使用を提供する。具体的には、in silico由来配列をde novoで合成し、生物活性について特性評価することができる。rAAVベクターへのアセンブリーに加えて、祖先配列の予測および合成を、WO2015/054653(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載された方法を使用して達成することができる。とりわけ、祖先ウイルス配列からアセンブリーされたrAAVベクターは、現代のウイルスまたはその一部と比較して、ヒト集団において元々存在する免疫に対する感受性の低下を示してもよい。
【0461】
一部の実施形態では、1つより多いAAV血清型(例えば、野生型AAV血清型、バリアントAAV血清型)に由来するヌクレオチド配列によってコードされるカプシドタンパク質を含むrAAVベクターは、「キメラベクター」または「キメラカプシド」と称される(開示全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,491,907号を参照されたい)。一部の実施形態では、キメラカプシドタンパク質は、2、3、4、5、6、7、8、9、10種以上のAAV血清型に由来する核酸配列によってコードされる。一部の実施形態では、組換えAAVベクターは、例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV3A、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAVrh74、AAVrh10、AAV2i8に由来するカプシド配列、または前記AAV血清型のいずれかに由来するアミノ酸の組合せを含むキメラカプシドタンパク質をもたらす、そのバリアントを含む(Rabinowitzら(2002)J.Virology 76(2):791~801を参照されたい)。あるいは、キメラカプシドは、ある血清型に由来するVP1、異なる血清型に由来するVP2、さらに異なる血清型に由来するVP3、およびその組合せの混合物を含んでもよい。例えば、キメラウイルスカプシドは、AAV1 capタンパク質またはサブユニットおよび少なくとも1つのAAV2 capタンパク質またはサブユニットを含んでもよい。キメラカプシドは、例えば、1つまたは複数のB19 capサブユニットを有するAAVカプシドを含んでもよく、例えば、AAV capタンパク質またはサブユニットを、B19 capタンパク質またはサブユニットによって置き換えることができる。例えば、一実施形態では、AAVカプシドのVP3サブユニットを、B19のVP2サブユニットによって置き換えることができる。
【0462】
一部の実施形態では、キメラベクターは、変更された向性または特定の組織もしくは細胞型に対する向性を示すように遺伝子操作されている。用語「向性」とは、ある特定の細胞もしくは組織型へのウイルスの優先的進入および/またはある特定の細胞もしくは組織型への進入を容易にする細胞表面との優先的相互作用を指す。AAVの向性は、一般に、異なるウイルスカプシドタンパク質と、その同種細胞受容体との特異的相互作用によって決定される(Lykkenら(2018)J.Neurodev.Disord.10:16)。好ましくは、ウイルスまたはウイルスベクターが細胞に進入したら、ベクターゲノム(例えば、rAAVベクターゲノム)によって担持される配列(例えば、導入遺伝子などの異種配列)が発現される。
【0463】
「向性プロファイル」とは、1つまたは複数の標的細胞、組織および/または臓器の形質導入のパターンを指す。例えば、AAVカプシドは、例えば、脳細胞の低いものにすぎない形質導入と共に、筋肉細胞の効率的な形質導入を特徴とする向性プロファイルを有してもよい。
【0464】
III.組換え核酸
本開示の方法は、改変核酸を含む組換え核酸を含むrAAVベクターならびに改変核酸を含むプラスミドおよびベクターゲノムの精製を含む。組換え核酸、プラスミドまたはベクターゲノムは、増殖をモジュレートする(例えば、プラスミドの)、および/または改変核酸(例えば、導入遺伝子)の発現を制御するための調節配列を含んでもよい。組換え核酸を、ウイルスベクター(例えば、rAAVベクター)の成分として提供することもできる。一般に、ウイルスベクターは、カプシド中にパッケージングされた組換え核酸を含むベクターゲノムを含む。
【0465】
A.改変核酸
改変形態、またはバリアント形態の遺伝子、核酸またはポリヌクレオチド(例えば、導入遺伝子)は、参照配列から外れる核酸を指す。参照配列は、天然に存在する、野生型配列(例えば、遺伝子)であってもよく、天然に存在するバリアント(例えば、スプライスバリアント、選択的リーディングフレーム)を含んでもよい。当業者であれば、参照配列をGenBank(ncbi.nlm.nih.gov/genbank)などの公共的に利用可能なデータベース中に見出すことができることを知っているであろう。改変/バリアント核酸は、参照配列と比較して、実質的に同じ、より高いまたはより低い活性、機能または発現を有してもよい。好ましくは、本明細書で互換的に使用される、改変核酸またはバリアント核酸は、改善されたタンパク質発現を示し、例えば、それによってコードされたタンパク質は、その他の点で同一の細胞中で内因性遺伝子(例えば、野生型遺伝子、突然変異体遺伝子)によって提供されるタンパク質の発現のレベルと比較して、細胞中で検出可能により高いレベルで発現される。一部の実施形態では、本明細書で互換的に使用される、改変核酸またはバリアント核酸は、改善されたタンパク質発現を示し、例えば、それによってコードされたタンパク質は、その他の点で同一の細胞中での突然変異を含む内因性遺伝子によって提供されるタンパク質の発現のレベルと比較して、細胞中で検出可能により高いレベルで発現される。
【0466】
核酸に対する改変は、参照配列の1つまたは複数のヌクレオチド置換(例えば、1~3、3~5、5~10、10~15、15~20、20~25、25~30、30~40、40~50、50~100個以上のヌクレオチドの置換)、付加(例えば、1~3、3~5、5~10、10~15、15~20、20~25、25~30、30~40、40~50、50~100個以上のヌクレオチドの挿入)、欠失(例えば、1~3、3~5、5~10、10~15、15~20、20~25、25~30、30~40、40~50、50~100個以上のヌクレオチドの欠失、モチーフ、ドメイン、断片の欠失など)を含む。改変核酸は、参照配列と約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%または約99%同一であってよい。
【0467】
改変核酸は、参照ポリペプチドに対する約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、約99%または100%の同一性を有するポリペプチドをコードしてもよい。一部の実施形態では、改変核酸は、参照ポリペプチドに対する100%の同一性を有するポリペプチドをコードする。
【0468】
一部の実施形態では、改変核酸(例えば、導入遺伝子)は、野生型タンパク質をコードする。そのような改変核酸をコドン最適化することができる。本明細書で互換的に称される「最適化された」または「コドン最適化された」とは、例えば、稀なコドンの使用を最小化すること、CpGジヌクレオチドの数を減少させること、クリプティックスプライスドナーまたはアクセプター部位を除去すること、Kozak配列を除去すること、リボソーム進入部位を除去することなどによって、ポリペプチドの発現を増加させるために、野生型コード配列または参照配列(例えば、ミニ-ジストロフィンポリペプチドのコード配列、例えば、配列番号2)と比較して最適化されているコード配列を指す。一部の実施形態では、コドン最適化された配列からのタンパク質の発現のレベルは、その他の点では同一の細胞中での野生型遺伝子からのタンパク質の発現のレベルと比較して増加している。一部の実施形態では、コドン最適化された配列からのタンパク質の発現のレベルは、その他の点では同一の細胞中での野生型遺伝子からのタンパク質の発現のレベルと比較して増加していない(例えば、発現が実質的に類似している)。一部の実施形態では、コドン最適化された配列からのタンパク質の発現のレベルは、その他の点では同一の細胞中での突然変異体遺伝子からのタンパク質の発現のレベルと比較して増加している。
【0469】
改変の例としては、1つまたは複数のcis作用モチーフの除去および1つまたは複数のKozak配列の導入が挙げられる。一部の実施形態では、1つまたは複数のcis作用モチーフが除去され、1つまたは複数のKozak配列が導入される。
【0470】
除去することができるcis作用モチーフの例としては、内部TATAボックス;カイ部位;リボソーム進入部位;ARE、INS、および/またはCRS配列エレメント;反復配列および/またはRNA二次構造;(クリプティック)スプライスドナーおよび/またはアクセプター部位、分岐点;ならびに制限部位が挙げられる。
【0471】
一部の実施形態では、改変核酸は、改変ポリペプチドまたはバリアントポリペプチドをコードする。改変核酸によってコードされる改変ポリペプチド(例えば、コドン最適化されたミニ-ジストロフィン)は、野生型コード配列または参照配列によってコードされるポリペプチドの機能または活性の全部または一部を保持してもよい。一部の実施形態では、改変ポリペプチドは、1つまたは複数の非保存的または保存的アミノ酸変化を有する。一部の実施形態では、ポリペプチドの機能において限られた役割を果たす、または役割を果たさないことが示されたある特定のドメインは、改変ポリペプチド中に存在しない(例えば、ある特定の結合ドメイン)(例えば、WO2016/097219)。rAAVベクター中に存在する改変核酸は、rAAVカプシドのパッケージング容量に起因して、野生型コード配列または参照配列よりも少ないヌクレオチドを含んでもよく(例えば、短縮されたミニジストロフィン導入遺伝子、WO2001/83695を参照されたい;Bドメインが欠失したヒト第VIII因子導入遺伝子、WO2017/074526を参照されたい)、また、トランケート型と、コドン最適化型(例えば、WO2017/221145に記載されたコドン最適化されたミニ-ジストロフィン導入遺伝子)との両方である短縮された導入遺伝子を含んでもよい。一部の実施形態では、改変核酸によってコードされるポリペプチドは、参照配列によってコードされるポリペプチドの機能または活性よりも低い、同じか、または高いが、その少なくとも一部を有する。
【0472】
改変核酸は、参照および/または野生型配列と比較して、改変されたGC含量(例えば、核酸配列中に存在するGおよびCヌクレオチドの数)、改変された(例えば、増加もしくは減少した)CpGジヌクレオチド含量および/または改変された(例えば、増加もしくは減少した)コドン適応指数(CAI)を有してもよい。例えば、WO2017/077451を参照されたい(最適化のために核酸配列を分析するための公共的に利用可能なソフトウェアを含む、目的の核酸配列のコドン最適化のための当業界で周知の様々な配慮を考察している)。本明細書で使用される場合、改変されたとは、特定の値、量または効果の減少または増加を指す。
【0473】
一部の実施形態では、本開示の改変核酸配列のGC含量は、参照および/または野生型遺伝子もしくはコード配列と比較して増加している。改変核酸のGC含量は、野生型コード配列のGC含量よりも、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも17%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%高い。一部の実施形態では、GC含量は、配列中のG(グアニン)およびC(シトシン)ヌクレオチドのパーセンテージとして表される。
【0474】
一部の実施形態では、本開示の改変核酸配列のコドン適応指数は、少なくとも0.74、少なくとも0.76、少なくとも0.77、少なくとも0.80、少なくとも0.85、少なくとも0.86、少なくとも0.87、少なくとも0.90、少なくとも0.95または少なくとも0.98である。
【0475】
一部の実施形態では、本開示の改変核酸配列は、野生型または参照核酸配列と比較して、約10%、20%、30%、50%以上の減少である、減少したレベルのCpGジヌクレオチドを有する。一部の実施形態では、改変核酸は、参照配列(例えば、野生型配列)よりも1~5個少ない、5~10個少ない、10~15個少ない、15~20個少ない、20~25個少ない、25~30個少ない、30~40個少ない、40~45個少ない、もしくは45~50個少ない、またはさらに少ないジヌクレオチドを有する。
【0476】
CpGジヌクレオチドのメチル化は、真核生物における遺伝子発現の調節において重要な役割を果たすことが知られている。具体的には、真核生物におけるCpGジヌクレオチドのメチル化は、本質的には転写機構を阻害することによって遺伝子発現をサイレンシングするのに役立つ。そのため、CpGモチーフのメチル化によって誘発される遺伝子サイレンシングのため、減少した数のCpGジヌクレオチドを有する核酸およびベクターは、高く、より長く続く導入遺伝子発現レベルをもたらすであろう。
【0477】
改変核酸配列は、発現ベクター中へのサブクローニングを容易にするための挟んでいる制限部位を含んでもよい。多くのそのような制限部位が当業界で周知であり、限定されるものではないが、AvaI、SwaI、ApaL1およびXmaIが挙げられる。
【0478】
本開示は、ジストロフィンポリペプチドの機能的に活性な断片をコードする、配列番号1の改変核酸を含む。「機能的に活性」または「機能性ジストロフィンポリペプチド」は、断片が全長ジストロフィンポリペプチドと同じか、または類似する生物学的機能および/または活性を提供することを示す。すなわち、断片は、限定されるものではないが、筋肉線維の筋フィラメントの構造タンパク質と同じ機能を提供する。ジストロフィンの機能的断片の生物活性は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーと関連する神経筋表現型を好転させること、または防止することを包含する。
【0479】
かくして、本発明の一実施形態は、ミニ-ジストロフィンタンパク質をコードする改変核酸であって、配列番号1の核酸配列またはそれと少なくとも約90%同一である配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなる核酸を含むrAAVベクターを精製する方法に関する。一部の実施形態では、核酸は、配列番号1の核酸配列と少なくとも、または多くても90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一である。ある特定の実施形態では、核酸は、ウイルスベクター、例えば、パルボウイルスベクター、例えば、rAAVベクターの容量の範囲内にある長さを有する。一部の実施形態では、核酸は、少なくとも、または多くても5000、4900、4800、4700、4600、4500、4400、4300、4200、4100、または約4000ヌクレオチド、もしくはそれ以下である。
【0480】
一部の実施形態では、核酸は、配列番号2のアミノ酸配列、または配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも、もしくは多くても90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一である配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなるミニ-ジストロフィンタンパク質をコードする。
【0481】
一部の実施形態では、核酸(例えば、配列番号1)は、ジストロフィンタンパク質の生産のための組換え核酸の一部である。組換え核酸は、ジストロフィンの発現を増加させるのに有用な調節エレメントをさらに含んでもよい。
【0482】
B.調節エレメント
本開示の方法は、ポリペプチド(例えばミニ-ジストロフィン)および種々の調節または制御エレメントをコードする改変核酸を含む組換え核酸を含むrAAVベクターの精製を含む。典型的には、調節エレメントは、作動可能に連結されたポリヌクレオチドの発現に影響する核酸配列である。適切な異種ポリヌクレオチドの転写および翻訳を容易にする意図で、例えば、プロモーター、エンハンサー、イントロンなどを含む、遺伝子発現にとって有用な調節エレメントの正確な性質は、生物間および細胞型間で変化するであろう。調節制御は、転写、翻訳、スプライシング、メッセージ安定性などのレベルで影響され得る。典型的には、転写をモジュレートする調節制御エレメントは、転写されるポリヌクレオチドの5’末端(すなわち、上流)の近くに並置される。調節制御エレメントはまた、転写される配列の3’末端(すなわち、下流)に、または転写物の内部に(例えば、イントロン中に)位置してもよい。調節制御エレメントは、転写される配列から離れた距離(例えば、1~100、100~500、500~1000、1000~5000、5000~10,000個以上のヌクレオチド)に位置してもよい。しかしながら、AAVベクターゲノムの長さのため、調節制御エレメントは、典型的には、ポリヌクレオチドから1~1000ヌクレオチドの範囲内にある。
【0483】
C.プロモーター
本明細書で使用される場合、「真核プロモーター」などの用語「プロモーター」とは、真核細胞(例えば、筋肉細胞)中での、特定の遺伝子、または1つもしくは複数のコード配列(例えば、ミニ-ジストロフィンコード配列)の転写を開始させるヌクレオチド配列を指す。プロモーターは、遺伝子またはコード配列の転写のレベルを指令する他の調節エレメントまたは領域と共に動作することができる。これらの調節エレメントとしては、例えば、転写結合部位、リプレッサーおよびアクチベータータンパク質結合部位、ならびに例えば、アテニュエータ-、エンハンサーおよびサイレンサーなどのプロモーターからの転写の量を調節するように直接的または間接的に作用することが知られる他のヌクレオチド配列が挙げられる。プロモーターは、ほとんどの場合、それが作動可能に連結されている遺伝子またはコード配列の5’側の、同じ鎖上に、および転写開始部位の近くに位置する。プロモーターは、一般に、100~1000ヌクレオチド長である。プロモーターは、典型的には、プロモーターの非存在下での同じ遺伝子の発現と比較して遺伝子発現を増加させる。
【0484】
本明細書で使用される場合、「コアプロモーター」または「最小プロモーター」とは、転写を適切に開始させるのに必要とされるプロモーター配列の最小部分を指す。それは以下のいずれかを含んでもよい:転写開始部位、RNAポリメラーゼのための結合部位および一般的な転写因子結合部位。プロモーターはまた、他の一次調節エレメント(例えば、エンハンサー、サイレンサー、境界エレメント、インスレーター)を含有する近位プロモーター配列(コアプロモーターの5’側)ならびに遠位プロモーター配列(コアプロモーターの3’側)を含んでもよい。
【0485】
好適なプロモーターの例としては、アデノウイルス主要後期プロモーターなどのアデノウイルスプロモーター;サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターなどの異種プロモーター;呼吸器合胞体ウイルスプロモーター;ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター;アルブミンプロモーター;マウス乳がんウイルス(MMTV)プロモーターなどの誘導的プロモーター;メタロチオネインプロモーター;熱ショックプロモーター;α-1-抗トリプシンプロモーター;B型肝炎表面抗原プロモーター;トランスフェリンプロモーター;アポリポタンパク質A-1プロモーター;ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター;伸長因子1a(EF1a)プロモーター;ハイブリッド形態のCBAプロモーター(CBhプロモーター);CAGプロモーター(サイトメガロウイルス初期エンハンサーエレメントおよびプロモーター、第1エクソン、ならびにニワトリベータ-アクチン遺伝子の第1イントロンおよびウサギベータ-グロビン遺伝子のスプライスアクセプター)(Alexopoulouら(2008)BioMed.Central Cell Biol.9:2);クレアチンキナーゼプロモーター;およびヒトジストロフィン遺伝子プロモーターが挙げられる。本開示の一部の実施形態では、真核プロモーター配列(例えば、クレアチンキナーゼプロモーター)は、ミニ-ジストロフィンをコードする改変核酸に作動可能に連結される。
【0486】
プロモーターは、構成的、組織特異的または調節的であってもよい。構成的プロモーターは、作動可能に連結された遺伝子を本質的には常に発現させるものである。一部の実施形態では、構成的プロモーターは、多くの生理学的および発生条件下で多くの真核組織中で活性である。
【0487】
調節的プロモーターは、活性化または不活性化することができるものである。調節的プロモーターとしては、通常は「オフ」であるが、「オン」に変化するように誘導することができる誘導的プロモーター、および通常は「オン」であるが、「オフ」に変化させることができる「抑制的」プロモーターが挙げられる。温度、ホルモン、サイトカイン、重金属および調節タンパク質を含む、多くの異なる調節因子が公知である。それらの区別は絶対的なものではない;構成的プロモーターは、多くの場合、ある程度まで調節することができる。一部の場合、内因性経路を利用して、例えば、生理学的条件が改善する時に天然で下方調節されるプロモーターを使用して、導入遺伝子発現の調節を提供することができる。
【0488】
組織特異的プロモーターは、特定の型の組織、細胞または臓器においてのみ活性であるプロモーターである。典型的には、組織特異的プロモーターは、特定の組織、細胞および/または臓器に特異的である転写活性化因子エレメントによって認識される。例えば、組織特異的プロモーターは、他の組織よりも、1つまたはいくつかの特定の組織(例えば、2、3または4つ)において活性が高くてもよい。一部の実施形態では、組織特異的プロモーターによってモジュレートされる遺伝子の発現は、プロモーターが他の組織におけるよりも特異的である組織においてはるかにより高い。一部の実施形態では、プロモーターが特異的である組織以外の任意の組織においてそのプロモーターの活性がわずかであるか、または実質的に活性がなくてもよい。プロモーターは、肝臓細胞中で活性である、マウスアルブミンプロモーター、またはトランスサイレチンプロモーター(TTR)などの組織特異的プロモーターであってもよい。組織特異的プロモーターの他の例としては、骨格筋における発現を誘導する、骨格α-アクチン、ミオシン軽鎖2A、ジストロフィン、筋肉クレアチンキナーゼをコードする遺伝子に由来するプロモーターが挙げられる(Liら(1999)Nat.Biotech.17:241~245)。肝臓特異的発現を、アルブミン遺伝子(Miyatakeら(1997)J.Virol.71:5124~5132)、B型肝炎ウイルスコアプロモーター(Sandigら(1996)Gene Ther.3:1002~1009)およびアルファ-フェトタンパク質(Arbuthnotら(1996)Hum.Gene.Ther.7:1503~1514)に由来するプロモーターを使用して誘導することができる。
【0489】
D.エンハンサー
別の態様では、治療的ポリペプチドをコードする改変核酸は、治療的ポリペプチドの発現を増加させるためのエンハンサーをさらに含む。典型的には、エンハンサーエレメントは、プロモーターエレメントの上流に位置するが、別の配列(例えば、導入遺伝子)の下流または内部に位置してもよい。エンハンサーは、改変核酸の100ヌクレオチド、200ヌクレオチド、300ヌクレオチドまたはそれより上流または下流に位置してもよい。エンハンサーは、典型的には、プロモーターエレメントのみによってもたらされる発現の増加を超えて改変核酸(例えば、治療的ポリペプチドをコードする)の発現を増加させる。
【0490】
限定されるものではないが、サイトメガロウイルス主要極初期エンハンサーを含む多くのエンハンサーが当業界で公知である。より具体的には、サイトメガロウイルス(CMV)MIEプロモーターは、3つの領域:モジュレーター、ユニークな領域およびエンハンサーを含む(Isomuraら(2003)J.Virol.77(6):3602~3614)。CMVエンハンサー領域を、別のプロモーター、またはその一部と組み合わせて、ハイブリッドプロモーターを形成させ、それに作動可能に連結された核酸の発現をさらに増加させることができる。例えば、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター、またはその一部を、CMVプロモーター/エンハンサー、またはその一部と組み合わせて、Grayら(2011)Human Gene Therapy 22:1143~1153に記載されたような、ニワトリベータ-アクチンハイブリッドプロモーターを表す、「CBh」プロモーターと呼ばれるCBAのバージョンを作製することができる。プロモーターと同様、エンハンサーは構成的、組織特異的または調節的であってもよい。
【0491】
本開示の一部の実施形態では、調節エレメントは、筋肉特異的転写調節エレメント(hCK)として働き、ミニ-ジストロフィンをコードする改変核酸に作動可能に連結されたクレアチンキナーゼ(CK)遺伝子に由来する合成ハイブリッドエンハンサーおよびプロモーターなどの、ハイブリッドエンハンサーおよびプロモーターを含む。
【0492】
E.フィラー、スペーサーおよびスタッファー
本明細書に開示される場合、rAAVベクターにおける使用について意図される組換え核酸は、rAAVベクター中へのAAVのパッケージングにとって許容されるウイルスゲノム配列の、近くに、または通常のサイズ(例えば、約4.7~4.9キロベース)に核酸の長さを調整するための追加の核酸エレメントを含んでもよい(Griegerら(2005)J.Virol.79(15):9933~9944)。そのような配列を、フィラー、スペーサーまたはスタッファーと互換的に称することができる。一部の実施形態では、フィラーDNAは、核酸の非翻訳(非タンパク質コード)セグメントである。一部の実施形態では、フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列は、約1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~70、70~80、80~90~90~100、100~150、150~200、200~250、250~300、300~400、400~500、500~750、750~1000、1000~1500、1500~2000、2000~3000以上の長さの配列である。
【0493】
AAVベクターは、典型的には、AAVカプシドへの核酸の最適なパッケージングのための約4kb~約5.2kbまたは約4.1~4.9kbの範囲のサイズを有するDNAの挿入物を受け入れる。一部の実施形態では、rAAVベクターは、約3.0kb~約3.5kb、約3.5kb~約4.0kb、約4.0kb~約4.5kb、約4.5kb~約5.0kbまたは約5.0kb~約5.2kbの全長を有するベクターゲノムを含む。一部の実施形態では、rAAVベクターは、約4.5kbの全長を有するベクターゲノムを含む。一部の実施形態では、rAAVベクターは、自己相補性であるベクターゲノムを含む。rAAVベクター中の自己相補性(sc)ベクターゲノムの全長は一本鎖(ss)ベクターゲノムと同等であるが(すなわち、約4kb~約5.2kb)、scベクターゲノムをコードする核酸配列(すなわち、導入遺伝子、調節エレメントおよびITRを含む)は、scベクターをカプシド中にパッケージングするために、ssベクターゲノムをコードする核酸配列のわずか半分ほどの長さでなければならない。
【0494】
F.イントロンおよびエクソン
一部の実施形態では、組換え核酸は、例えば、イントロン、エクソンおよび/またはその一部を含む。イントロンは、rAAVベクター中へのベクターゲノムのパッケージングのための適切な長さを達成するためにフィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列として機能してもよい。イントロンおよび/またはエクソン配列はまた、イントロンおよび/またはエクソンエレメントの非存在下での発現と比較して、ポリペプチド(例えば、導入遺伝子)の発現を増強させることもできる(Kurachiら(1995)J.Biol.Chem.270(10):576~5281;WO2017/074526)。さらに、フィラー/スタッファーポリヌクレオチド配列(「インスレーター」とも称される)は、当業界で周知であり、限定されるものではないが、WO2014/144486およびWO2017/074526に記載されたものが挙げられる。
【0495】
イントロンエレメントは、異種ポリヌクレオチドと同じ遺伝子に由来するか、または完全に異なる遺伝子もしくは他のDNA配列(例えば、ニワトリβ-アクチン遺伝子、マウス微小ウイルス(MVM))に由来してもよい。一部の実施形態では、組換え核酸は、非同種遺伝子(すなわち、改変核酸、例えば、導入遺伝子に由来しない)に由来するイントロンおよびエクソンから選択される少なくとも1つのエレメントを含む。
【0496】
G.ポリアデニル化シグナル配列(ポリA)
さらなる調節エレメントは、停止コドン、終結配列、および限定されるものではないが、ウシ増殖ホルモンポリAシグナル配列(BHGポリA)などのポリアデニル化(ポリA)シグナル配列を含んでもよい。ポリAシグナル配列は、遺伝子転写の終結を導く真核mRNAの3’末端でのポリアデノシン「尾部」の効率的な付加を駆動する(例えば、Goodwinら(1992)J.Biol.Chem.267(23):16330~16334を参照されたい)。ポリAシグナルは、新しく形成された前駆体mRNAの、その3’末端でのエンドヌクレアーゼ的切断のための、およびアデノシン塩基のみからなるRNAストレッチのこの3’末端への付加のためのシグナルとして作用する。ポリA尾部は、mRNAの核外輸送、翻訳および安定性にとって重要である。一部の実施形態では、ポリAは、SV40初期ポリアデニル化シグナル、SV40後期ポリアデニル化シグナル、HSVチミジンキナーゼポリアデニル化シグナル、プロタミン遺伝子ポリアデニル化シグナル、アデノウイルス5E1bポリアデニル化シグナル、増殖ホルモンポリアデニル化シグナル、PBGDポリアデニル化シグナルまたはin silicoで設計されたポリアデニル化シグナルである。
【0497】
一部の実施形態では、任意選択により、本明細書に記載の1つまたは複数の他の調節エレメントと共に、組換え核酸のポリAシグナル配列は、ミニ-ジストロフィンをコードする改変核酸(例えば、配列番号2)の転写の結果得られる前駆体mRNAのエンドヌクレアーゼ的切断およびポリアデニル化を指令し、行うことができるポリAシグナルである。
【0498】
一部の実施形態では、筋肉細胞に対する向性を示すrAAV9ベクターは、AAV ITR(例えば、AAV2 ITR)およびミニ-ジストロフィンをコードする改変(すなわち、コドン最適化された)核酸を含む組換え核酸および少なくとも1つの以下の調節エレメント:プロモーター(例えば、ヒトCKプロモーター)、ハイブリッドエンハンサーおよびプロモーターならびにポリA(配列番号4)を含むベクターゲノムを含有する。
【0499】
IV.ウイルスベクターのアセンブリー
導入遺伝子(例えば、ミニ-ジストロフィンをコードする)を担持するウイルスベクター(例えば、rAAVベクター)は、導入遺伝子、好適な調節エレメントおよび細胞形質導入を媒介するウイルスタンパク質の産生にとって必要なエレメントをコードするポリヌクレオチドからアセンブリーされる。ウイルスベクターの例としては、限定されるものではないが、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルスおよびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、特に、rAAVベクター(上掲で考察された)が挙げられる。
【0500】
本開示の方法に従って生産されるrAAVベクターのベクターゲノム成分は、少なくとも1つの導入遺伝子、例えば、コドン最適化されたミニ-ジストロフィン導入遺伝子およびジストロフィン、またはその断片をコードする改変核酸の発現を制御するための関連する発現制御配列を含む。
【0501】
例示的な非限定的実施形態では、ベクターゲノムは、repおよびcapが欠失した、および/または改変核酸(例えば、導入遺伝子、例えば、コドン最適化されたミニ-ジストロフィン導入遺伝子)によって置き換えられたAAVゲノムなどのパルボウイルスゲノムの一部と、その関連する発現制御配列とを含む。ジストロフィン、またはその断片をコードする改変核酸は、典型的には、ウイルスrepおよびcapタンパク質をコードする核酸の代わりに、ウイルス複製にとって十分な1つまたは2つのAAV ITRまたはITRエレメント(Xiaoら(1997)J.Virol.71(2):941~948)に隣接して挿入される(すなわち、によって挟まれる)。標的細胞(例えば、筋肉細胞)中でのコドン最適化されたミニ-ジストロフィン導入遺伝子の組織特異的発現を容易にする際の使用にとって好適な他の調節配列を含有させてもよい。
【0502】
A.パッケージング細胞
当業者であれば、導入遺伝子を含み、ウイルス複製にとって必要とされるウイルスタンパク質(例えば、capおよびrep)を欠くrAAVベクターは、そのようなタンパク質がウイルスの複製およびパッケージングにとって必要であるため、複製することができないことを理解するであろう。capおよびrep遺伝子を、ベクターゲノムに導入遺伝子を供給するプラスミドとは別であるプラスミドの一部として、細胞(例えば、宿主細胞、例えば、パッケージング細胞)に供給することができる。
【0503】
「パッケージング細胞」または「産生細胞」とは、ベクター、プラスミドまたはDNA構築物をトランスフェクトすることができる細胞または細胞株を意味し、ウイルスベクターの完全な複製およびパッケージングにとって必要とされる全ての欠けている機能をtransに提供する。rAAVベクターのアセンブリーにとって必要な遺伝子は、ベクターゲノム(例えば、コドン最適化されたミニ-ジストロフィン導入遺伝子、調節エレメント、およびITR)、AAV rep遺伝子、AAV cap遺伝子、および例えば、アデノウイルスなどの他のウイルスに由来するある特定のヘルパー遺伝子を含む。当業者であれば、AAV生産のための必要な遺伝子を、例えば、1つまたは複数のプラスミドのトランスフェクションを含む様々な方法でパッケージング細胞中に導入することができることを理解するであろう。しかしながら、一部の実施形態では、いくつかの遺伝子(例えば、rep、cap、ヘルパー)は、既にパッケージング細胞中に存在するか、ゲノム中に組み込まれているか、またはエピソーム上に担持されていてもよい。一部の実施形態では、パッケージング細胞は、構成的または誘導的様式で、1つまたは複数の欠けているウイルス機能を発現する。
【0504】
当業界で公知の任意の好適なパッケージング細胞を、パッケージングされたウイルスベクターの生産において用いることができる。哺乳動物細胞または昆虫細胞が好ましい。本開示の実施におけるパッケージング細胞の生産にとって有用な細胞の例としては、例えば、PER.C6、WI38、MRC5、A549、HEK293(構成的プロモーターの制御下で機能性アデノウイルスE1を発現する)、B-50または他の任意のHeLa細胞、HepG2、Saos-2、HuH7、およびHT1080細胞株などのヒト細胞株が挙げられる。好適な非ヒト哺乳動物細胞株としては、例えば、VERO、COS-1、COS-7、MDCK、BHK21-F、HKCCまたはCHO細胞が挙げられる。
【0505】
一部の実施形態では、パッケージング細胞は、懸濁培養物中で増殖することができる。一部の実施形態では、パッケージング細胞は、無血清培地中で増殖することができる。例えば、HEK293細胞は、無血清培地中の懸濁液中で増殖する。別の実施形態では、パッケージング細胞は、米国特許第9,441,206号に記載されたHEK293細胞であり、American Type Culture Collection(ATCC)番号PTA13274として寄託されている。限定されるものではないが、WO2002/46359に開示されたものを含む、いくつかのrAAVパッケージング細胞株が当業界で公知である。
【0506】
パッケージング細胞としての使用のための細胞株は、昆虫細胞株を含む。AAVの複製を可能にし、培養物中で維持することができる任意の昆虫細胞を、本開示に従って使用することができる。例としては、Sf9またはSf21細胞株などのツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)、ショウジョウバエ(Drosophila spp.)細胞株、または蚊細胞株、例えば、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)由来細胞株が挙げられる。好ましい細胞株は、ツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)Sf9細胞株である。以下の参考文献は、異種ポリペプチドの発現のための昆虫細胞の使用、そのような細胞に核酸を導入する方法、および培養物中でそのような細胞を維持する方法に関するその教示について本明細書に組み込まれる:「Methods in Molecular Biology」、Richard(編)、Humana Press、NJ(1995);O’Reillyら、「Baculovirus Expression Vectors:A Laboratory Manual」、Oxford Univ.Press(1994);Samulskiら(1989)J.Virol.63:3822~3828;Kajigayaら(1991)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 88:4646~4650;Ruffingら(1982)J.Virol.66:6922~6930;Kimbauerら(1996)Virol.219:37~44;Zahoら(2000)Virol.272:382~393;および米国特許第6,204,059号。
【0507】
さらなる代替手段として、本開示のウイルスベクターを、例えば、Urabeら(2002)Human Gene Therapy 13:1935~1943によって記載されたように、rep/cap遺伝子およびrAAV鋳型を送達するためにバキュロウイルスを使用して昆虫細胞中で生産することができる。AAVのためにバキュロウイルス生産を使用する場合、一部の実施形態では、ベクターゲノムは、自己相補性である。一部の実施形態では、宿主細胞は、任意選択により、バキュロウイルスヘルパー機能をコードする追加の核酸を含み、それによって、ウイルスカプシドの産生を容易にするバキュロウイルス感染細胞(例えば、昆虫細胞)である。
【0508】
パッケージング細胞は一般に、ウイルスベクターの複製およびパッケージングを得るのに十分なヘルパー機能およびパッケージング機能と共に、1つまたは複数のウイルスベクター機能を含む。これらの様々な機能を、プラスミドまたはアンプリコンなどの遺伝子構築物を使用してパッケージング細胞に一緒に、または別々に供給することができ、それらは細胞株内で染色体外に存在するか、または宿主細胞の染色体中に組み込まれてもよい。一部の実施形態では、パッケージング細胞に、少なくともi)導入遺伝子およびAAV ITRを含み、以下の調節エレメント:エンハンサー、プロモーター、エクソン、イントロンおよびポリAのうちの少なくとも1つをさらに含むベクターゲノムを含むプラスミドならびにii)rep遺伝子(例えば、AAV2 rep)およびcap遺伝子(例えば、AAV9または他のcap)を含むプラスミドをトランスフェクトする。
【0509】
一部の実施形態では、宿主細胞に、例えば、1つまたは複数のベクター機能が染色体外に含まれた、または細胞の染色体DNA中に組み込まれた宿主細胞株内に含まれる1つまたは複数のパッケージングまたはヘルパー機能を供給する。
【0510】
B.ヘルパー機能
AAVは、それがヘルパーウイルスによる細胞の同時感染なしには細胞中で複製することができないディペンドウイルスである。ヘルパー機能は、ウイルスベクターのパッケージングを開始させるのに必要とされる、パッケージング細胞の活動性感染を確立するのに必要とされるヘルパーウイルスエレメントを含む。ヘルパーウイルスとしては、典型的には、アデノウイルスまたは単純ヘルペスウイルスが挙げられる。アデノウイルスヘルパー機能は、典型的には、アデノウイルス成分であるアデノウイルス初期領域1A(E1a)、E1b、E2a、E4、およびウイルス関連(VA)RNAを含む。細胞に、種々のヘルパーエレメントをコードする1つまたは複数の核酸をトランスフェクトすることによって、パッケージング細胞にヘルパー機能(例えば、E1a、E1b、E2a、E4、およびVA RNA)を提供することができる。あるいは、宿主細胞(例えば、パッケージング細胞)は、ヘルパータンパク質をコードする核酸を含んでもよい。例えば、HEK293細胞を、ヒト細胞に、アデノウイルス5のDNAを形質転換することによって生成し、ここで、それは限定されるものではないが、E1およびE3を含むいくつかのアデノウイルス遺伝子を発現する(例えば、Grahamら(1977)J.Gen.Virol.36:59~72)。かくして、これらのヘルパー機能を、例えば、それらをコードするプラスミドによって細胞にそれらを供給する必要なく、HEK293パッケージング細胞によって提供することができる。一部の実施形態では、パッケージング細胞に、少なくともi)導入遺伝子およびAAV ITRを含み、以下の調節エレメント:エンハンサー、プロモーター、エクソン、イントロンおよびポリAのうちの少なくとも1つをさらに含むベクターゲノムを含むプラスミドならびにii)rep遺伝子(例えば、AAV2 rep)およびcap遺伝子(例えば、AAV9または他のcap)を含むプラスミドならびにiii)ヘルパー機能を含むプラスミドをトランスフェクトする。
【0511】
限定されるものではないが、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈降、マイクロインジェクション、陽イオン性または陰イオン性リポソーム、担体分子(例えば、ポリエチレンイミン(PEI))および核局在化シグナルと組み合わせたリポソームを含む、複製およびパッケージングのためにヘルパー機能を担持するヌクレオチド配列を細胞宿主中に導入する任意の方法を用いることができる。一部の実施形態では、ヘルパー機能は、ウイルスベクターを使用するトランスフェクション、またはヘルパーウイルスを使用する感染によって提供され、ウイルス感染をもたらすための標準的な方法を使用することができる。
【0512】
ベクターゲノムは、DNAまたはRNA構築物などの任意の好適な組換え核酸であってよく、一本鎖、二本鎖、または二重鎖(すなわち、WO2001/92551に記載されたような自己相補性)であってもよい。
【0513】
V.パッケージングされたウイルスベクターの生産
ウイルスベクターを、当業者には公知のいくつかの方法によって作製することができる(例えば、WO2013/063379を参照されたい)。例示的な非限定的方法は、Griegerら(2015)Molecular Therapy 24(2):287~297に記載されており、その内容はあらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。簡単に述べると、HEK293細胞の効率的なトランスフェクションを出発点として使用し、適格な臨床マスター細胞バンクからの付着性HEK293細胞株を使用して、迅速かつ拡大可能なrAAV生産を可能にする、振とうフラスコおよびWAVEバイオリアクター中、動物成分を含まない懸濁条件で増殖させる。トリプルトランスフェクション法(例えば、WO96/40240)を使用して、HEK293細胞株懸濁液は、トランスフェクションの48時間後に回収した場合、細胞あたり1x105を超えるベクターゲノム含有粒子(VG)、または細胞培養物1Lあたり1x1014を超えるVGを生成することができる。より具体的には、トリプルトランスフェクションとは、パッケージング細胞に、3つのプラスミドをトランスフェクトする:1つのプラスミドはAAV repおよびcap(例えば、AAV9 cap)遺伝子をコードし、別のプラスミドは種々のヘルパー機能(例えば、アデノウイルスまたはHSVタンパク質、例えば、E1a、E1b、E2a、E4およびVA RNA)をコードし、別のプラスミドは導入遺伝子(例えば、ジストロフィン、またはその断片)および導入遺伝子の発現を制御するための種々のエレメントをコードする方法を指す。
【0514】
一本鎖ベクターゲノムは、ほぼ等しい割合のプラス鎖またはマイナス鎖としてカプシド中にパッケージングされる。rAAVベクターの一部の実施形態では、ベクターゲノムは、プラス鎖の極性(すなわち、DNA鎖のセンスまたはコード配列)である。rAAVベクターの一部の実施形態では、ベクターは、マイナス鎖の極性(すなわち、アンチセンスまたは鋳型DNA鎖)である。5’から3’の向きにあるプラス鎖のヌクレオチド配列を考慮して、5’から3’の向きにあるマイナス鎖のヌクレオチド配列を、プラス鎖のヌクレオチド配列の逆相補体と決定することができる。
【0515】
望ましい収量を達成するために、増殖およびトランスフェクションの両方を支援する適合性無血清懸濁培地の選択、トランスフェクション試薬、トランスフェクション条件および細胞密度の選択などの、いくつかの変数を最適化する。
【0516】
カラムクロマトグラフィーまたは塩化セシウム勾配などの当業界で標準的な方法によって、rAAVベクターを精製することができる。rAAVベクターを精製するための方法が当業界で公知であり、Clarkら(1999)Human Gene Therapy 10(6):1031~1039;Schenppら(2002)Methods Mol.Med.69:427~443;米国特許第6,566,118号およびWO98/09657に記載された方法が挙げられる。
【0517】
本開示のrAAVベクターを本明細書に開示された方法に従って生産および精製した後、それらを滴定して(例えば、試料中のrAAVベクターの量を定量することができる)、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを有するヒト対象などの、対象への投与のための組成物を調製することができる。rAAVベクターの滴定を、当業界で公知の方法を使用して達成することができる。
【0518】
一部の実施形態では、ベクターゲノムを含有する粒子およびベクターゲノムを含有しない「空」カプシドを含む、ウイルス粒子の数を、電子顕微鏡、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)によって決定することができる。そのようなTEMに基づく方法は、試料中のベクター粒子(または野生型AAVの場合、ウイルス粒子)の数を提供することができる。一部の実施形態では、ベクターゲノムを含有する粒子(全カプシド)、およびベクターゲノムを含有しない「空」カプシドの量を、電荷検出質量分析、分析的超遠心分離(AUC)、ならびに/またはA260/A280比を決定するための260nmおよび280nmでの吸光度の測定によって決定することができる。
【0519】
一部の実施形態では、rAAVベクターゲノムを、ベクターゲノム中の配列、例えば、ITR配列(例えば、配列番号5もしくは配列番号6)、および/または導入遺伝子中の配列(もしくは調節エレメント)に対するプライマーを使用する定量的PCR(qPCR)を使用して滴定することができる。ベクターゲノムの配列を含有するプラスミドなどの、既知の濃度の標準の希釈液に対して同時にqPCRを実施することにより、マイクロリットルまたはミリリットルなどの単位体積あたりのベクターゲノム(VG)の数として、rAAVベクターの濃度を算出することができる標準曲線を生成することができる。例えば、SECまたはELISAによって測定されたベクター粒子の数と、試料中のベクターゲノムの数とを比較することによって、空カプシドのパーセンテージを見積もることができる。ベクターゲノムは治療的導入遺伝子を含有するため、ベクター試料のvg/kgまたはvg/mlは、一部が空であり、ベクターゲノムを含有しないベクター粒子の数よりも、対象が受けるであろうベクターの治療量を示すことができる。保存溶液中のrAAVベクターゲノムの濃度が決定されたら、それを、対象(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを有する対象)への投与のための組成物(例えば、製剤原料)の調製における使用のための好適な緩衝液中で希釈するか、または緩衝剤に対して透析することができる。
【0520】
VI.親和性クロマトグラフィーによるAAVベクターの精製
親和性クロマトグラフィー法に基づく新規精製戦略を使用して、高純度AAVベクター調製物を生成することができる。一部の実施形態では、高純度rAAVベクター調製物を生成するための方法が使用される。一部の実施形態では、そのような方法は、AAV血清型および/またはカプシドのキメラ現象に関して普遍的である。一部の実施形態では、種々のAAV血清型の、および/またはキメラカプシド(例えば、AAV1、AAV2、AAV3AおよびAAV3Bを含むAAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV12、AAVrh10、AAVrh74、鳥類AAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、霊長類AAV、非霊長類AAV、およびヒツジAAV、ならびに組換え生産されたバリアント(例えば、挿入、欠失および置換などを有するカプシドバリアント)、例えば、AAV2i8、NP4、NP22、NP66、AAVDJ、AAVDJ/8、AAVDJ/9、AAVLK03、RHM4-1、AAVHSC1、AAVHSC2、AAVHSC3、AAVHSC4、AAVHSC5、AAVHSC6、AAVHSC7、AAVHSC8、AAVHSC9、AAVHSC10、AAVHSC11、AAVHSC12、AAVHSC13、AAVHSC14、およびAAVHSC15と称するバリアント)に由来する高純度rAAVベクター調製物を生成するための方法が使用される。一部の実施形態では、rAAV9ベクターを精製するための方法を適用することができる。本明細書に記載されるような、拡大可能な製造技術を使用して、疾患(例えば、DMD)を処置するための医薬品適正製造基準(GMP)の臨床および商業用rAAVベクターを製造することができる。
【0521】
一部の例では、遺伝子療法のための組換えAAVベクター(例えば、rAAV)の生産には、ベクターを産生した宿主細胞(例えば、限定されるものではないが、宿主細胞のDNA、RNA、タンパク質、脂質、膜およびオルガネラを含む宿主細胞デブリ)からのrAAVベクターの精製、ならびに完全なベクターゲノムを含有しない(例えば、中間および/または空カプシド)、かくして、治療的導入遺伝子を含まないカプシドの除去が必要である。
【0522】
そのような精製方法は一般に、カラム精製、低速遠心分離、超遠心分離、正常流濾過、限外濾過/透析濾過、またはこれらの方法の任意の組合せによる、例えば、宿主細胞の溶解、宿主細胞タンパク質および核酸の沈降、宿主細胞タンパク質および核酸からのAAVベクター(例えば、rAAV)の分離、ならびに空カプシドからの全rAAVベクター(例えば、rAAV9)の分離を含む複数のステップを含む。カラム精製は、例えば、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陰イオン、陽イオン)、親和性クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、マルチモードクロマトグラフィー、および/または疎水性相互作用クロマトグラフィーを含んでもよい。遠心分離法は、例えば、超遠心分離または低速遠心分離(例えば、固体の除去および清澄化のため)を含んでもよい。濾過法は、限定されるものではないが、透析濾過、深層濾過、ノミナル濾過および/または絶対濾過を含んでもよい。
【0523】
一部の実施形態では、rAAVベクターを、親和性クロマトグラフィーによって精製することができる。一部の実施形態では、rAAVベクターを含む溶液を固定相上にロードすること、および固定相からrAAVベクターを溶出させて、親和性溶出液を生産することによる、親和性クロマトグラフィーによって、rAAVベクターを精製することができる。一部の実施形態では、rAAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3(AAV3AおよびAAV3Bを含む)、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV12、AAVrh8、AAVrh10、AAVrh39、AAVrh43、AAVrh74、AAVrh32.22、AAV1.1、AAV2.5、AAV6.1、AAV6.2、AAV6.3.1、AAV9.45、AAVShH10、HSC15/17、RHM4-1、RHM15-1、RHM15-2、RHM15-3/RHM15-5、RHM15-4、RHM15-6、AAVhu.26、AAV2i8、AAV29G、AAV2、AAV8G9、AAV-LK03、AAV2-TT、AAV2-TT-S312N、AAV3B-S312N、AAVavian、AAVbat、AAVbovine、AAVcanine、AAVequine、AAVprimate、AAVnon-primate、AAVovine、AAVmuscovy duck、AAVporcine4、AAVporcine5、AAVsnake NP4、NP22、NP66、AAVDJ、AAVDJ/8、AAVDJ/9、AAVHSC1、AAVHSC2、AAVHSC3、AAVHSC4、AAVHSC5、AAVHSC6、AAVHSC7、AAVHSC8、AAVHSC9、AAVHSC10、AAVHSC11、AAVHSC12、AAVHSC13、AAVHSC14、AAVHSC15、AAVv66、AAVv33、AAVv37、AAVv40、AAVv67、AAVv70、AAVv72、AAVv84、AAVv86、AAVv87およびAAVv90からなる群から選択されるAAV血清型に由来するカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態では、AAV血清型は、AAV9であってもよい。一部の実施形態では、AAVカプシドは、配列番号3と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVP1タンパク質を含む。一部の実施形態では、AAVカプシドは、配列番号3のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるVP1タンパク質を含む。一部の実施形態では、rAAVベクターは、ミニ-ジストロフィン導入遺伝子を含む。一部の実施形態では、ミニ-ジストロフィン導入遺伝子は、配列番号1の核酸配列を含むか、またはそれからなる。一部の実施形態では、ミニ-ジストロフィン導入遺伝子は、配列番号2のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるタンパク質をコードする。一部の実施形態では、rAAVベクターは、配列番号4の核酸配列を含むか、またはそれからなる核酸を含む。
【0524】
A.親和性クロマトグラフィーカラム
一部の例では、本明細書の方法は、rAAVベクターを精製するために、またはrAAVベクターのための精製プロセスにおけるステップとして、親和性クロマトグラフィーを使用する。親和性クロマトグラフィーは、移動相中の標的高分子に対する親和性を示す固定相を使用する。固定相は、固定相マトリックス中で結合した、またはそれに結合した高分子を含有することによって標的高分子に対する親和性を有してもよく、結合した高分子は、標的高分子に対する特異的結合親和性を有する。親和性クロマトグラフィーは、移動相中の物質(例えば、AAVカプシド、DNA、タンパク質、高分子量種、アミノ酸)を分離するために高分子間の特異的な高分子結合親和性を用いる。
【0525】
親和性クロマトグラフィー固定相は、クロマトグラフィーカラム中に存在してもよい。一部の実施形態では、カラムは、約、少なくとも約、または多くても約0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、170、180、190、200、300、400、500、600、700、800、900、997、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、6000、7000、8000、9000、10000、11000、12000、13000、14000、15000、16000、17000、18000、19000、20000、30000、40000、50000、または60000mL(またはそれに由来する任意の範囲)の体積を有してもよい。一部の実施形態では、カラムは、約2670mLの体積を有してもよい。一部の実施形態では、カラムは、約17,663mLの体積を有してもよい。一部の実施形態では、カラムは、約25,610mLの体積を有してもよい。一部の実施形態では、カラムは、約、少なくとも約、または多くても約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、または100cm(またはそれに由来する任意の範囲)の内径を有してもよい。一部の実施形態では、カラムは、約、少なくとも約、または多くても約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、または100cm(またはそれに由来する任意の範囲)の床高を有してもよい。
【0526】
B.固定相
一部の実施形態では、固定相は、AAVカプシドに結合する親和性クロマトグラフィー固定相である。一部の実施形態では、親和性クロマトグラフィー固定相は、カラム中にある。一部の実施形態では、使用される固定相は、AAVカプシドに結合することができる高分子を含有する。一部の実施形態では、使用される固定相は、AAVカプシドに結合する1つまたは複数の抗原結合性ドメインを含有する。一部の実施形態では、使用される固定相は、AAVカプシドに結合することができる1つまたは複数の抗体を含有する。AAVカプシドは、rAAVベクターのカプシドであってもよい。AAVカプシドは、種々のAAV血清型のものである、および/またはキメラカプシドに由来してもよい(例えば、AAV1、AAV2、AAV3(AAV3AおよびAAV3Bを含む)、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV12、AAVrh8、AAVrh10、AAVrh39、AAVrh43、AAVrh74、AAVrh32.22、AAV1.1、AAV2.5、AAV6.1、AAV6.2、AAV6.3.1、AAV9.45、AAVShH10、HSC15/17、RHM4-1、RHM15-1、RHM15-2、RHM15-3/RHM15-5、RHM15-4、RHM15-6、AAVhu.26、AAV2i8、AAV29G、AAV2、AAV8G9、AAV-LK03、AAV2-TT、AAV2-TT-S312N、AAV3B-S312N、AAVavian、AAVbat、AAVbovine、AAVcanine、AAVequine、AAVprimate、AAVnon-primate、AAVovine、AAVmuscovy duck、AAVporcine4、AAVporcine5、AAVsnake NP4、NP22、NP66、AAVDJ、AAVDJ/8、AAVDJ/9、AAVHSC1、AAVHSC2、AAVHSC3、AAVHSC4、AAVHSC5、AAVHSC6、AAVHSC7、AAVHSC8、AAVHSC9、AAVHSC10、AAVHSC11、AAVHSC12、AAVHSC13、AAVHSC14、AAVHSC15、AAVv66、AAVv33、AAVv37、AAVv40、AAVv67、AAVv70、AAVv72、AAVv84、AAVv86、AAVv87およびAAVv90)。一部の実施形態では、固定相は、rAAV9カプシドに結合する親和性クロマトグラフィー固定相である。一部の実施形態では、固定相は、AAVカプシドに結合する高分子(例えば、抗体)を含む。一部の実施形態では、使用される固定相は、rAAV9カプシドに結合することができる抗体を含有する。
【0527】
一部の実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、単一ドメイン抗体など、またはその組合せであってもよい。一部の実施形態では、抗体は、ラクダ科由来単一ドメイン抗体(例えば、VHH)であってもよい。
【0528】
一部の実施形態では、親和性クロマトグラフィー固定相マトリックスは、樹脂である。一部の例では、マトリックスは、アガロース、セルロース、デキストラン、ポリアクリルアミド、ラテックス、もしくは多孔質ガラス、またはその組合せである。一部の例では、マトリックスは、多孔質ポリスチレンジビニルベンゼンビーズを含む。一部の例では、ポリスチレンジビニルベンゼンビーズは、ラクダ科由来単一ドメイン抗体(例えば、VHH)リガンドで改変される。一部の実施形態では、親和性クロマトグラフィー固定相は、POROS(商標)CaptureSelect(商標)AAV9親和性樹脂である。一部の実施形態では、親和性クロマトグラフィー固定相は、POROS(商標)CaptureSelect(商標)AAVX親和性樹脂である。
【0529】
一部の態様では、固定相は、固定相1mLあたり1.0x1013vgを超える動的結合容量を有する。一部の態様では、固定相は、固定相1mLあたり、約、少なくとも約、または多くても約1.0x1013、2.0x1013、3.0x1013、4.0x1013、5.0x1013、6.0x1013、7.0x1013、8.0x1013、9.0x1013、1.0x1014、2.0x1014、3.0x1014、4.0x1014、5.0x1014、6.0x1014、7.0x1014、8.0x1014、9.0x1014、または1.0x1015vgまたはそれ以上(またはそれに由来する任意の範囲)の動的結合容量を有する。
【0530】
C.親和性クロマトグラフィー固定相のローディング
親和性クロマトグラフィーによってAAVベクター(例えば、rAAV)を精製する方法は、AAVベクターを含む溶液、例えば、精製しようとする物質を、クロマトグラフィーカラム中の親和性クロマトグラフィー固定相上にロードするステップを含む。一部の実施形態では、rAAVベクターを含む溶液は、宿主細胞タンパク質および宿主細胞DNAを含む。ロード(例えば、AAVベクターを含む溶液)をカラム上に重力供給すること、および/またはロードをカラム上にポンプで注入することによって、ローディングのステップを実施することができる。
【0531】
一部の実施形態では、AAVベクターを含む溶液を、約、少なくとも約、または多くても約5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、170、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、700、750または800cm/h(またはそれに由来する任意の範囲)の直線速度で親和性クロマトグラフィー固定相上にロードすることができる。一部の実施形態では、固定相へのAAVベクターを含む溶液のローディングを、溶液のカラム体積(CV)あたり、約、少なくとも約、または多くても約0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、または20min(またはそれに由来する任意の範囲)の固定相上での滞留時間で実施することができる。一部の実施形態では、固定相上にロードされるAAVベクターを含む溶液の量は、約、少なくとも約、または多くても約0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、または20CV(またはそれに由来する任意の範囲)である。
【0532】
一部の実施形態では、AAVベクターを含む溶液は、本明細書で使用される場合、宿主細胞培養物からの溶解した宿主細胞の沈降化後に収集される溶液を指す、「細胞溶解物に由来する上清」(「清澄化された溶解物」としても知られる)を含んでもよい。一部の実施形態では、AAVベクターを含む溶液は、本明細書で使用される場合、宿主細胞の細胞溶解の結果得られる溶液であって、軟凝集、深層濾過、および/またはノミナル濾過を受けた溶液を指す、「回収後溶液」を含んでもよい。一部の実施形態では、AAVベクターを、少なくとも1つの他の精製または処理ステップ(例えば、細胞溶解、軟凝集、濾過、希釈、pH調整、クロマトグラフィー)を受けている溶液から精製することができる。一部の実施形態では、清澄化された溶解物は、少なくとも1つの他の精製または処理ステップ(例えば、細胞溶解、軟凝集、濾過、希釈、pH調整、クロマトグラフィー)を受けている。一部の実施形態では、回収後溶液は、少なくとも1つの他の精製または処理ステップ(例えば、細胞溶解、軟凝集、濾過、希釈、pH調整、クロマトグラフィー)を受けている。一部の実施形態では、rAAVベクターを含む溶液(例えば、親和性クロマトグラフィー固定相にロードされた溶液)は、少なくとも1つの他の精製または処理ステップ(例えば、細胞溶解、軟凝集、濾過、希釈、pH調整、クロマトグラフィー)から得られる。
【0533】
一部の実施形態では、宿主細胞培養物は、HEK293、PER.C6、WI38、MRC5、A549、HeLa細胞、HepG2、Saos-2、HuH7、HT1080、VERO、COS-1、COS-7、MDCK、BHK21-F、HKCC、およびCHO細胞の群から選択される宿主細胞を含んでもよい。一部の実施形態では、宿主細胞は、HEK293細胞であってもよい。
【0534】
一部の実施形態では、親和性クロマトグラフィー固定相上にロードされるrAAVベクター(例えば、rAAV9)を含む溶液を、固定相1mLあたり、約、少なくとも約、または多くても約1x1012、5x1012、1x1013、1.5x1013、2x1013、2.5x1013、3x1013、3.5x1013、4x1013、4.5x1013、5x1013、5.5x1013、6x1013、6.5x1013、7x1013、7.5x1013、8x1013、8.5x1013、9x1013、9.5x1013、1x1014、1.5x1014、2x1014、2.5x1014、3x1014、3.5x1014、4x1014、4.5x1014、5x1014、5x1014、5.5x1014、6x1014、6.5x1014、7x1014、7.5x1014、8x1014、8.5x1014、9x1014、9.5x1014、または1x1015ウイルスゲノム(vg)(またはそれに由来する任意の範囲)のチャレンジを達成するために固定相上にロードすることができる。一部の実施形態では、rAAVベクターを含む溶液は、固定相1mLあたり1x1012ウイルスゲノム(vg)から固定相1mLあたり1.5x1014vgのチャレンジを達成するために固定相上にロードされる。一部の実施形態では、AAVベクターを含む溶液を、固定相1mLあたり5x1013以下のvgのチャレンジを達成するために固定相上にロードすることができる。
【0535】
一部の実施形態では、親和性クロマトグラフィーによるAAVベクター(例えば、rAAV)を精製する方法は、AAVベクターを含む溶液を固定相上にロードする前に固定相の使用前洗浄をさらに含む。一部の実施形態では、使用前洗浄は、固定相保存溶液(例えば、エタノール)を除去し、任意選択により、平衡化のための固定相を調製する。一部の実施形態では、使用前洗浄は、固定相への水(例えば、注射用水)の適用および固定相からの水の全部または一部の除去を含む。一部の実施形態では、約2CV~約10CV、例えば、約2CV、約3CV、約4CV、約5CV、約6CV、約7CV、約8CV、約9CVまたは約10CVの溶出前洗浄溶液が固定相に適用される。一部の実施形態では、使用前洗浄は、カラム中の固定相の中を上向きに流動する。
【0536】
一部の実施形態では、親和性クロマトグラフィーによるAAVベクター(例えば、rAAV)を精製する方法は、AAVベクターを含む溶液を固定相上にロードする前に固定相の使用前浄化をさらに含む。一部の実施形態では、使用前浄化は、固定相へのリン酸(例えば、約0.1N~約0.2Nのリン酸)を含む溶液の適用および固定相からのリン酸を含む溶液の全部または一部の除去を含む。一部の実施形態では、使用前浄化溶液は、1.9のpHで約0.132Nリン酸を含む。一部の実施形態では、約2CV~約10CV、例えば、約2CV、約3CV、約4CV、約5CV、約6CV、約7CV、約8CV、約9CVまたは約10CVの溶出前浄化溶液が固定相に適用される。一部の実施形態では、使用前浄化溶液の固定相への適用は、バイオバーデンを減少させる。一部の実施形態では、使用前浄化溶液は、カラム中の固定相の中を上向きに流動する。
【0537】
一部の実施形態では、親和性クロマトグラフィーによるAAVベクター(例えば、rAAV)を精製する方法は、固定相の平衡化をさらに含む。一部の実施形態では、固定相は、固定相上にロードしようとする溶液、例えば、清澄化された溶解物、および精製しようとする分子、例えば、rAAVベクター(例えば、rAAV9)と適合する緩衝液の適用によって平衡化される。特に、清澄化された溶解物、およびそれが含有するrAAVベクターと適合する緩衝液は、適合性pH(例えば、pH7.5)および/または適合性導電率を有する。
【0538】
親和性クロマトグラフィーによってAAVベクターを精製する場合、1回または複数回、例えば、2、3、4、5、6回以上、固定相の平衡化を実施することができる。一部の実施形態では、平衡化を、i)固定相上にrAAVベクターを含む溶液をロードする前、ii)固定相上にrAAVベクターを含む溶液をロードした後、iii)溶出前洗浄の適用前、iv)溶出前洗浄の適用後、v)溶出緩衝液を用いて固定相からrAAVベクターを溶出させる前、vi)溶出緩衝液を用いて固定相からrAAVベクターを溶出させた後、および/またはvii)固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させる前に実施することができる。一部の実施形態では、平衡化は、固定相への緩衝溶液の適用および固定相からの緩衝溶液の全部または一部の除去を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝溶液は、Trisまたは酢酸ナトリウムを含む。一部の実施形態では、平衡化のための緩衝溶液は、7~8のpH(例えば、約7.5のpH)の約50mM~約150mMのTris(例えば、約100mM)を含む。一部の実施形態では、緩衝溶液は、5~6のpH(例えば、約5.6のpH)の約100mM~約200mMの酢酸ナトリウム(例えば、約153mMの酢酸ナトリウム)を含む。一部の実施形態では、緩衝溶液は、pH約7.5の約100mMのTrisを含む。一部の実施形態では、緩衝溶液は、pH約5.6の約153mMの酢酸ナトリウムを含む。
【0539】
一部の実施形態では、固定相の1回目の平衡化は、任意選択により、固定相および周囲の水性相を、ロード溶液と適合性にするために、固定相上にrAAVベクターを含む溶液をロードする前に実施される。
【0540】
一部の実施形態では、固定相の2回目の平衡化は、固定相上にrAAVベクターを含む溶液をロードした後および固定相からrAAVベクターを溶出させる前、および任意選択により、溶出前洗浄の前に実施される。「洗浄」と称することができる、そのような2回目の平衡化は、より強力な洗浄または溶出緩衝液の適用前に、固定相から、および固定相の小孔内から、未結合の不純物を除去する。
【0541】
一部の実施形態では、固定相の3回目の平衡化は、固定相上にrAAVベクターを含む溶液をロードした後および固定相からrAAVベクターを溶出させる前、および任意選択により、溶出前洗浄の後に実施される。一部の実施形態では、固定相の4回目の平衡化は、固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させる前に実施される。
【0542】
一部の実施形態では、約、少なくとも約、または多くても約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、15、20、または30カラム体積(CV)(またはそれに由来する任意の範囲)の平衡化緩衝溶液が固定相に適用される。一部の実施形態では、平衡化緩衝溶液は、約、少なくとも約、または多くても約1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、345、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、700、750、800、900、1000、1500または2000cm/h(またはそれに由来する任意の範囲)の流動速度で固定相に適用される。一部の実施形態では、平衡化緩衝溶液は、約、少なくとも約、または多くても約0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.1、4.2、4.3、4.35、4.4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、または20min/カラム体積(CV)(またはそれに由来する任意の範囲)の滞留時間で固定相に適用される。
【0543】
D.溶出前洗浄
一部の実施形態では、親和性クロマトグラフィーを用いたAAVベクター(例えば、rAAVベクター)の精製方法は、溶出前洗浄の使用を含んでもよい。溶出前洗浄は、溶出緩衝液を用いた固定相からのAAVベクターの溶出の前以外に、AAVベクターをロードした固定相への溶出前洗浄溶液の適用を含んでもよい。一部の実施形態では、溶出前洗浄溶液は、親和性溶出液を生産するために、rAAVベクターを含む溶液をロードした後および溶出緩衝液を用いて固定相からrAAVベクターを溶出させる前に固定相に適用される。一部の例では、溶出前洗浄は、溶出緩衝液を用いた固定相からのAAVベクターの溶出前に、固定相から少なくとも部分的に、または完全に除去される。有利には、溶出前洗浄は、生成物(例えば、rAAVベクター)を溶出させる前に固定相から宿主細胞タンパク質を溶出させることによって、生成物を含む宿主細胞タンパク質の溶出を回避するであろう。
【0544】
一部の実施形態では、溶出前洗浄は、i)固定相から結合した不純物を除去する、もしくは十分に除去する;ii)固定相に結合したAAVを維持する、もしくは十分に維持する;および/またはiii)宿主細胞タンパク質(HCP)などの、AAVタンパク質以外のタンパク質の除去を改善するために低下したpHを有してもよい。
【0545】
一部の実施形態では、溶出前洗浄溶液は、溶媒および緩衝剤を含んでもよい。一部の実施形態では、溶出前洗浄溶液は、溶媒および緩衝剤を含む水性溶液であってもよい。一部の実施形態では、溶媒は、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、またはその任意の組合せであってもよい。一部の実施形態では、溶媒は、エタノールであってもよい。一部の態様では、溶出前洗浄溶液中の、エタノールなどの溶媒の濃度は、約、少なくとも約、または多くても約0.1、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、または80wt.%(またはそれに由来する任意の範囲)であってもよい。一部の実施形態では、溶出前緩衝液は、溶媒および緩衝剤を含む。一部の実施形態では、溶出前緩衝液は、エタノールである溶媒を含む。一部の実施形態では、溶出前緩衝液は、約17%または約17.5%のエタノールを含む。
【0546】
一部の実施形態では、緩衝剤は、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、Tris(例えば、Tris塩基とTris-HClとの混合物)、BIS-Trisプロパン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、トリシン、トリエタノールアミン、ビシン、またはその任意の組合せであってもよい。一部の実施形態では、溶出前洗浄溶液中の、酢酸ナトリウムなどの緩衝剤の濃度は、約、少なくとも約、または多くても約1、5、10、20、30、40、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、150、155、160、170、180、190、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、または2000mM(またはそれに由来する任意の範囲)であってもよい。一部の実施形態では、溶出前洗浄溶液は、約、少なくとも約、または多くても約1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、170、180、190、200、または300mM(またはそれに由来する任意の範囲)の酢酸ナトリウムを含む。一部の実施形態では、溶出前洗浄溶液は、10mM~500mMの緩衝剤を含み、任意選択により、緩衝剤は、酢酸ナトリウムである。一部の実施形態では、溶出前洗浄溶液は、約150または約153mMの酢酸ナトリウムを含む。
【0547】
一部の実施形態では、溶出前洗浄溶液は、約、少なくとも約、または多くても約3、3.5、4、4.5、5、5.5、5.6、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、または10(またはそれに由来する任意の範囲)のpHを有してもよい。一部の実施形態では、溶出前洗浄溶液は、約5~約6のpHを含む。一部の実施形態では、溶出前洗浄溶液は、約5.6のpHを含む。
【0548】
一部の実施形態では、溶出前洗浄溶液は、i)2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、または50%(またはそれに由来する任意の範囲)のエタノール;ii)約、少なくとも約、または多くても約100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、または3000mM(またはそれに由来する任意の範囲)の塩化ナトリウム;iii)約、少なくとも約、または多くても約5、10、20、30、40、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、150、155、160、170、180、190、200、300、400、または500mM(またはそれに由来する任意の範囲)のTris;およびiv)約、少なくとも約、または多くても約5、5.5、5.6、6、6.5、7、7.5、8、8.5、または9(またはそれに由来する任意の範囲)のpHを含んでもよい。一部の実施形態では、溶出前洗浄溶液は、i)2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、または50%(またはそれに由来する任意の範囲)のエタノール;ii)約、少なくとも約、または多くても約100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、または3000mM(またはそれに由来する任意の範囲)の塩化ナトリウム;iii)約、少なくとも約、または多くても約5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、170、180、190、200、または300mM(またはそれに由来する任意の範囲)の酢酸ナトリウム;およびiv)約、少なくとも約、または多くても約4、4.5、5、5.5、5.6、6、6.5、7、7.5、または8(またはそれに由来する任意の範囲)のpHを含んでもよい。一部の実施形態では、溶出前洗浄溶液は、i)2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、または50%(またはそれに由来する任意の範囲)のエタノール;ii)約、少なくとも約、または多くても約5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、170、180、190、200、または300mM(またはそれに由来する任意の範囲)の酢酸ナトリウム;およびiii)約、少なくとも約、または多くても約4、4.5、5、5.5、5.6、6、6.5、7、7.5、または8(またはそれに由来する任意の範囲)のpHを含んでもよい。一部の実施形態では、溶出前洗浄溶液は、15%~25%のエタノール、100mM~200mMの酢酸ナトリウムを含み、5~6のpHを有する。一部の実施形態では、溶出前洗浄溶液は、約17.5%のエタノール、約153mMの酢酸ナトリウムを含み、約5.6のpHを有する。一部の実施形態では、溶出前洗浄溶液は、約17%のエタノール、約150mMの酢酸ナトリウムを含み、約5.6のpHを有する。
【0549】
一部の実施形態では、約、少なくとも約、または多くても約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、15、20、または30カラム体積(CV)(またはそれに由来する任意の範囲)の溶出前洗浄溶液が固定相に適用される。一部の実施形態では、1CV~10CVまたは4.5~5.5CVの溶出前洗浄溶液が、固定相に適用される。一部の実施形態では、約5CVの溶出前洗浄溶液が固定相に適用される。一部の実施形態では、溶出前洗浄溶液は、約、少なくとも約、または多くても約1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、345、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、700、750、800、900、1000、1500または2000cm/h(またはそれに由来する任意の範囲)の流動速度で固定相に適用される。一部の実施形態では、溶出前洗浄溶液は、約、少なくとも約、または多くても約0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.1、4.2、4.3、4.35、4.4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、または20min/カラム体積(CV)(またはそれに由来する任意の範囲)の滞留時間で固定相に適用される。
【0550】
一部の実施形態では、溶出前洗浄は、固定相からの除去後、2mmの経路長を使用する場合、約、少なくとも約、または多くても約1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、または2500mAUのA280ピーク高さを有する。
【0551】
E.親和性クロマトグラフィーカラムの溶出
一部の実施形態では、AAV(例えば、rAAV)ベクターを、溶出緩衝液の固定相への適用によって固定相から溶出させることができる。一部の実施形態では、溶出緩衝液は、固定相から残留不純物を溶出させない、もしくは優先的に溶出させない、および/または親和性溶出液中に比較的少ない沈降物をもたらす、もしくは沈降物をもたらさない。一部の実施形態では、AAV(例えば、rAAV)ベクターは、溶出前洗浄が固定相に適用された後、溶出前洗浄が固定相から少なくとも部分的に除去された後、または固定相を溶出前洗浄と接触させることなく、固定相から溶出される。
【0552】
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、以下の特性:i)固定相からrAAVなどのAAVを溶出させる;ii)固定相から残留不純物を溶出させない;iii)親和性溶出液の沈降をもたらさない;iv)親和性vg回収率%を増加させる、および/または最大化する;v)溶出液中の、rAAV9などのrAAVベクターの、陰イオン交換(AEX)固定相への結合を阻害しない、または十分に阻害しない、のうちのいずれか1つ、その任意の組合せ、または全部を有する。一部の実施形態では、溶出緩衝液は、クエン酸イオンなどの三価陰イオンを含有しない。一部の実施形態では、溶出緩衝液は、その後の精製ステップにおいて、溶出液中のrAAV9ベクターなどのrAAVベクターのAEX固定相への結合を阻害しない、または十分に阻害せず、溶出液中の、例えば、約、少なくとも約80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%のrAAVベクターがAEX固定相に結合する。
【0553】
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、塩、アミノ酸、緩衝剤、またはその任意の組合せを含む。
【0554】
一部の実施形態では、溶出緩衝液中の塩は、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウムおよびその組合せであってもよい。一部の実施形態では、溶出緩衝液中の塩は、塩化マグネシウムであってもよい。一部の実施形態では、溶出緩衝液中の塩化マグネシウムなどの塩の濃度は、約、少なくとも約、または多くても約0.1、0.5、1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、170、180、190、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、または5000mM(またはそれに由来する任意の範囲)であってもよい。一部の実施形態では、溶出緩衝液中の塩化マグネシウムの濃度は、約、少なくとも約、または多くても約0.1、0.5、1、5、10、15、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、50、60、70、80、90、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、170、180、190、200、250、または300mM(またはそれに由来する任意の範囲)であってもよい。一部の実施形態では、溶出緩衝液は、5mM~150mMの塩を含み、任意選択により、塩は、塩化マグネシウムである。一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約25mMの塩化マグネシウムを含む。
【0555】
一部の実施形態では、溶出緩衝液中のアミノ酸は、ヒスチジン、アルギニン、シトルリン、グリシン、またはその任意の組合せであってもよい。一部の実施形態では、溶出緩衝液中のアミノ酸は、グリシンであってもよい。一部の実施形態では、溶出緩衝液中のグリシンなどのアミノ酸の濃度は、約、少なくとも約、または多くても約0、0.1、0.5、1、5、10、20、30、40、50、60、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、170、180、190、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、または5000mM(またはそれに由来する任意の範囲)であってもよい。一部の実施形態では、溶出緩衝液は、50mM~150mMのアミノ酸を含み、任意選択により、アミノ酸は、グリシンである。一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約100mMのグリシンを含む。
【0556】
一部の態様では、溶出緩衝液中の緩衝剤は、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、クエン酸ナトリウム、Tris(例えば、Tris塩基とTris-HClとの混合物)、BIS-Trisプロパン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、トリシン、トリエタノールアミン、ビシン、またはその任意の組合せであってもよい。一部の実施形態では、溶出緩衝液中の酢酸ナトリウムなどの緩衝剤の濃度は、約、少なくとも約、または多くても約0.1、0.5、1、5、10、20、30、40、50、60、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、170、180、190、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、または5000mM(またはそれに由来する任意の範囲)であってもよい。一部の実施形態では、溶出緩衝液中の酢酸ナトリウムの濃度は、約、少なくとも約、または多くても約50、60、70、80、90、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、170、180、190、200、300、400、または500mM(またはそれに由来する任意の範囲)であってもよい。一部の実施形態では、溶出緩衝液は、75mM~250mMの緩衝剤を含み、任意選択により、緩衝剤は、酢酸ナトリウムである。一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約148mMの酢酸ナトリウムを含む。
【0557】
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約、少なくとも約、または多くても約1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、5.6、6、6.5、7、7.5、または8(またはそれに由来する任意の範囲)のpHを有してもよい。一部の実施形態では、溶出緩衝液は、2.5~3.5、例えば、約3.0のpHを有する。
【0558】
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、i)約、少なくとも約、または多くても約50、60、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、170、180、190、200、または300mM(またはそれに由来する任意の範囲)のグリシン;ii)約、少なくとも約、または多くても約1、5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、50、60、70、80、90、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、170、180、190、200、または250mM(またはそれに由来する任意の範囲)のMgCl2;iii)約、少なくとも約、または多くても約0、0.1、1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、170、180、190、200、250、または300mM(またはそれに由来する任意の範囲)の酢酸ナトリウム;およびiv)約、少なくとも約、または多くても約1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、または5(またはそれに由来する任意の範囲)のpHを含んでもよい。一部の実施形態では、溶出緩衝液は、50mM~150mMのグリシン、10mM~100mMのMgCl2、50mM~150mMの酢酸ナトリウム、および2.5~3.5のpHを含む。一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約100mMのグリシン、約25mMのMgCl2、約148mMの酢酸ナトリウムを含み、約3.0のpHを有する。
【0559】
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、rAAVベクターなどのAAVベクターの、AEX固定相への結合と競合する陰イオンを含有しない。一部の態様では、溶出緩衝液は、rAAVベクターなどのAAVベクターの、AEX固定相への結合と競合する三価陰イオンを含有しない。一部の実施形態では、溶出緩衝液は、クエン酸陰イオンを含有しない。
【0560】
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約、少なくとも約、または多くても約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、および100mS/cm(またはそれに由来する任意の範囲)の導電率を有してもよい。一部の実施形態では、溶出緩衝液は、1mS/cm~40mS/cm、1mS/cm~30mS/cmまたは20mS/cm~35mS/cmの導電率を有する。
【0561】
一部の実施形態では、約、少なくとも約、または多くても約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、15、20、または30カラム体積(CV)(またはそれに由来する任意の範囲)の溶出緩衝液が固定相に適用される。一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約、少なくとも約、または多くても約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、700、750、800、900、1000、1500または2000cm/h(またはそれに由来する任意の範囲)の流動速度で固定相に適用される。一部の実施形態では、約2CV~10CVまたは4.5CV~5.5CVの溶出緩衝液が固定相に適用される。一部の実施形態では、約5CVの溶出緩衝液が固定相に適用される。
【0562】
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約、少なくとも約、または多くても約0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、または20min/カラム体積(CV)(またはそれに由来する任意の範囲)の滞留時間で固定相に適用される。
【0563】
一部の実施形態では、固定相からのAAVベクターの溶出は、固定相にロードされたrAAVベクターの約、少なくとも約、または多くても約60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、または100%(またはそれに由来する任意の範囲)を除去する。
【0564】
一部の例では、溶出液、または溶出液の一部1mlあたりのウイルスゲノム(vg)の濃度は、約、少なくとも約、または多くても約1.0x1013、2.0x1013、3.0x1013、4.0x1013、5.0x1013、6.0x1013、7.0x1013、8.0x1013、9.0x1013、1.0x1014vg/ml(またはそれに由来する任意の範囲)である。
【0565】
一部の例では、標的AAVベクターに由来するタンパク質である、溶出液、または溶出液の一部における総タンパク質の純度%は、約、少なくとも約、または多くても約60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、または100%(またはそれに由来する任意の範囲)である。
【0566】
一部の例では、溶出液、または溶出液の一部における宿主細胞タンパク質(HCP)の量は、約、少なくとも約、または多くても約1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、11000、12000、13000、14000、15000、16000、17000、18000、19000、もしくは20000ng/1x1014vg(もしくはそれに由来する任意の範囲)または約、少なくとも約、または多くても約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、もしくは500pg/1x109vg(もしくはそれに由来する任意の範囲)である。
【0567】
一部の例では、溶出液、または溶出液の一部における宿主細胞DNA(HCDNA)の量は、約、少なくとも約、または多くても約50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、もしくは500ng/1x1014vg(もしくはそれに由来する任意の範囲)または約、少なくとも約、または多くても約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、21、22、23、24、もしくは25pg/1x109vg(もしくはそれに由来する任意の範囲)である。
【0568】
一部の例は、溶出液、または溶出液の一部のA260/A280比は、約、少なくとも約、または多くても約0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.2、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.29、1.3、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、または2(またはそれに由来する任意の範囲)である。
【0569】
一部の例では、親和性溶出液の感染性比は、約、少なくとも約、または多くても約8000、10000、11000、12000、12962、13000、14000、15000、16000、17000、17581、18000、19000、20000、20345、22000、25000、または30000vg/IU(またはそれに由来する任意の範囲)である。
【0570】
F.親和性溶出液の収集
一部の実施形態では、親和性クロマトグラフィーを用いたrAAV9ベクターなどのrAAVベクターの精製方法は、固定相からの親和性溶出液の収集を含んでもよい。一部の実施形態では、親和性溶出液を、単一の画分として収集することができる。一部の実施形態では、親和性溶出液を、1つより多い画分として収集することができる。一部の態様では、1つより多い親和性画分の少なくともいくらか、および/または一部をプールすることができる。
【0571】
一部の態様では、親和性溶出液の収集を、2mmの経路長を使用してA280にて約、少なくとも約、または多くても約0.1、0.5、1、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、12.5、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、または70mAU(またはそれに由来する任意の範囲)で開始することができる。一部の態様では、親和性溶出液の収集を、2mmの経路長を使用してA280にて約、少なくとも約、または多くても約10、11、12、12.5、13、14、15、16、17、18、19、20、22.5、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、170、180、190、または200mAU(またはそれに由来する任意の範囲)で停止することができる。一部の態様では、親和性溶出液の収集を、A280にて約、少なくとも約、または多くても約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、12.5、13、14、15、16、17、18、19、20、22.5、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100mAU/5mm経路長(またはそれに由来する任意の範囲)で開始することができる。一部の態様では、親和性溶出液の収集を、A280にて約、少なくとも約、または多くても約25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、170、180、190、または200mAU/5mm経路長(またはそれに由来する任意の範囲)で停止することができる。一部の態様では、親和性溶出液の収集を、A280にて約、少なくとも約、または多くても約0.1、0.5、1、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、12.5、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、または70mAU/mm(またはそれに由来する任意の範囲)で開始し、親和性溶出液の収集を、A280にて約、少なくとも約、または多くても約0.1、0.5、1、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、12.5、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、または70mAU/mm(またはそれに由来する任意の範囲)で停止することができる。一部の例では、収集は、吸光度/時間の勾配に基づいて開始および停止される。一部の例では、開始時間でのmAU変化/minは、開始時間でのmAU変化/min+1secより小さく、停止時間でのmAU変化/minは、停止時間でのmAU変化/min+1secより大きく、収集は、開始時間に開始され、収集は停止時間に停止される。一部の例では、収集は、所定の時間または溶出液体積で開始および/または停止される。
【0572】
一部の態様では、rAAVベクターを精製する方法は、カラム中の親和性クロマトグラフィー固定相上にrAAVベクターを含む溶液をロードするステップ;15%~25%のエタノール、100mM~200mMの酢酸ナトリウム、および5~6のpHを含む溶出前洗浄溶液を固定相に適用するステップ;ならびに50mM~150mMのグリシン、10mM~100mMのMgCl2、50mM~250mMの酢酸ナトリウム、および2.5~3.5のpHを含む溶出緩衝液を用いて固定相からrAAVベクターを溶出させて、rAAVベクターを含有する親和性溶出液を生産するステップを含む。一部の実施形態では、rAAVベクターを精製する方法は、親和性溶出液の少なくとも一部を取得した後、固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させるステップをさらに含む。一部の実施形態では、rAAVベクターを精製する方法は、第1の再生緩衝液の後に、固定相と第2の再生緩衝液とを接触させることをさらに含み、第2の再生緩衝液は、第1の再生緩衝液と異なる。
【0573】
一部の実施形態では、固定相から収集される親和性溶出液の体積は、約、少なくとも約、または多くても約0.1、0.5、1、5、10、20、30、40、50、60、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、170、180、190、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、または5000mL(またはそれに由来する任意の範囲)であってもよい。一部の実施形態では、固定相から収集される親和性溶出液の体積は、約、少なくとも約、または多くても約0.01、0.1、0.5、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、15、20、または30CV(またはそれに由来する任意の範囲)であってもよい。一部の実施形態では、0.1CV~10CVの親和性溶出液が、固定相から収集される。
【0574】
一部の実施形態では、収集される親和性溶出液のvg回収率%は、約、少なくとも約、または多くても約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%(またはそれに由来する任意の範囲)である。一部の実施形態では、親和性溶出液のvg回収率%を、qPCRによって測定することができる。一部の実施形態では、qPCRは、導入遺伝子配列のコピーを測定する。一部の実施形態では、導入遺伝子配列は、配列番号1の核酸配列を含むか、またはそれからなる。一部の実施形態では、qPCRは、逆方向末端反復(ITR)配列のコピーを測定する。一部の実施形態では、ITR配列は、配列番号5~8のいずれか1つに記載の核酸配列を含む、またはそれからなる。一部の実施形態では、親和性溶出液のvg回収率%は、任意選択により、qPCRによって測定された場合、50%~100%である。
【0575】
一部の実施形態では、収集される親和性溶出液は、約、少なくとも約、または多くても約1.0x1012、5.0x1012、1.0x1013、2.0x1013、3.0x1013、4.0x1013、5.0x1013、6.0x1013、7.0x1013、8.0x1013、9.0x1013、1.0x1014、2.0x1014、3.0x1014、4.0x1014、5.0x1014、6.0x1014、7.0x1014、8.0x1014、9.0x1014、または1.0x1015vg/mL(またはそれに由来する任意の範囲)を含んでもよい。一部の実施形態では、親和性溶出液のvg/mLを、qPCRによって測定することができる。一部の実施形態では、qPCRは、導入遺伝子配列のコピーを測定する。一部の実施形態では、導入遺伝子配列は、配列番号1の核酸配列を含むか、またはそれからなってもよい。一部の実施形態では、qPCRは、逆方向末端反復(ITR)配列のコピーを測定する。一部の実施形態では、ITR配列は、配列番号5~8のいずれか1つに記載の核酸配列を含む、またはそれからなる。一部の実施形態では、親和性溶出液のvg/mLは、任意選択により、qPCRによって測定された場合、約1.0x1012vg/mL~約1.0x1014vg/mLである。
【0576】
一部の実施形態では、親和性クロマトグラフィーカラムから溶出液を収集するステップは、カラムから収集された溶出液の260nmでの吸光度(A260)および/または280nmでの吸光度(A280)の測定を含んでもよい。一部の実施形態では、親和性溶出液の吸光度(例えば、A260またはA280での)の測定は、溶出液の流れに従って実施される。一部の実施形態では、収集される親和性溶出液のA260/A280比は、0.8より大きくてもよい。一部の実施形態では、親和性溶出液のA260/A280比は、約、少なくとも約、または多くても約0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.2、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.29、1.3、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、または2(またはそれに由来する任意の範囲)であってもよい。一部の実施形態では、親和性溶出液のA260/A280比を、同時に吸光度を検出しながらサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定することができる。
【0577】
一部の実施形態では、収集される親和性溶出液の純度%は、約、少なくとも約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%(またはそれに由来する任意の範囲)である。一部の実施形態では、親和性溶出液の純度%は、任意選択により、SECまたは非還元的逆相HPLCによって測定した場合、約95%~約100%である。一部の実施形態では、親和性溶出液の純度%を、逆相HPLCによって測定することができる。一部の実施形態では、純度%を、SECによって測定することができる。一部の実施形態では、親和性溶出液中のAAVカプシドを、非還元形態のHPLCカラムにロードして、親和性溶出液中での純度%を測定することができる。親和性溶出液中のrAAVベクターなどのAAVベクターの純度%は、rAAVベクターなどのAAVベクターを含む溶液中の、rAAVベクターなどのAAVベクターの純度%と比較して高くてもよい。
【0578】
一部の実施形態では、収集される親和性溶出液中の宿主細胞DNA(HCDNA)の量は、親和性溶出液中で、約、多くても約5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100ng/1.0x1014vg(またはそれに由来する任意の範囲)であってもよい。一部の実施形態では、収集される親和性溶出液中のHCDNAの量は、親和性溶出液中で、約、多くても約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20pg/1.0x109vg(またはそれに由来する任意の範囲)であってもよい。親和性溶出液中のHCDNAの量を、qPCRによって測定することができる。親和性溶出液中のvgあたりのHCDNAの量は、rAAVベクターなどのAAVベクターを含む溶液中のvgあたりのHCDNAの量と比較して少なくてもよい。
【0579】
一部の実施形態では、収集される親和性溶出液中の宿主細胞(HCP)の量は、約、多くても約1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、11000、12000、13000、14000、15000、16000、17000、18000、19000、または20000ng/1.0x1014vg(またはそれに由来する任意の範囲)であってもよい。一部の実施形態では、収集される親和性溶出液中のHCPの量は、約、多くても約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、170、180、190、200、300、400、500、600、700、800、900、1000pg/1.0x109vg(またはそれに由来する任意の範囲)であってもよい。一部の実施形態では、親和性溶出液中のHCPの量を、ELISA、ウェスタンブロット、および/または銀染色によって測定することができる。親和性溶出液中のvgあたりのHCPの量は、rAAVベクターなどのAAVベクターを含む溶液中のvgあたりのHCPの量と比較して少なくてもよい。
【0580】
一部の実施形態では、収集される親和性溶出液の感染性比は、約、少なくとも約、または多くても約8000、10000、11000、12000、12962、13000、14000、15000、16000、17000、17581、18000、19000、20000、20345、22000、25000、または30000vg/IU(またはそれに由来する任意の範囲)である。一部の実施形態では、親和性溶出液の感染性比を、細胞に基づくアッセイによって測定することができる。一部の実施形態では、親和性溶出液の感染性比を、rAAVベクターを含む溶液の感染性比と比較して増加させることができる。
【0581】
G.親和性クロマトグラフィーによるrAAVベクターの精製のために固定相を再生する方法
親和性溶出液の少なくとも1つの画分および/または少なくとも一部の親和性溶出および収集の後、rAAV9親和性精製実行などのさらなるrAAVベクターのローディングおよび溶出のための親和性クロマトグラフィーカラム媒体を調製するための追加のステップを実施することができる。そのようなステップは、例えば、浄化、平衡化、再生、フラッシュおよび/または保存を含んでもよい。当業者であれば、1つまたは複数のステップを、様々な順序および頻度で実施することができることを理解するであろう。一部の実施形態では、親和性溶出液の少なくとも1つの画分および/または少なくとも一部の親和性溶出および収集の後、親和性クロマトグラフィーカラム中の固定相は、rAAV9親和性精製実行などのさらなるrAAVのローディングおよび溶出のために再生される。当業者であれば、精製されたrAAVベクターを含む少なくとも1つの溶出液画分の親和性溶出および収集の後に固定相を再生する方法が、rAAVベクタータンパク質を含む不純物を、固定相から除去する方法を含むことも理解するであろう。
【0582】
一部の実施形態では、親和性クロマトグラフィーによるrAAVベクターの精製のために固定相を再生する方法が記載される。一部の実施形態では、親和性クロマトグラフィーによるrAAVベクターの精製のために固定相を再生する方法は、固定相からのrAAVベクターの溶出および収集の後、固定相と第1の再生緩衝液とを接触させることを含む。一部の実施形態では、親和性クロマトグラフィーによるrAAVベクターの精製のために固定相を再生する方法は、親和性溶出液の少なくとも一部を取得した後、固定相と第1の再生緩衝液とを接触させることを含む。一部の実施形態では、固定相上で実行することができる精製サイクルの数は、第1の再生緩衝液と接触させていない固定相上で実行することができる精製サイクルの数と比較して増加している。一部の実施形態では、精製サイクルは、固定相上にrAAVベクターを含む溶液をロードすること、および固定相からrAAVベクターを溶出させることを含む。
【0583】
一部の実施形態では、第1の再生緩衝液と接触させた固定相上で実行することができる精製サイクルの数は、グアニジンHClを含む緩衝液と接触させた固定相と比較して増加している。一部の実施形態では、第1の再生緩衝液と接触させた固定相上で実行することができる精製サイクルの数は、約、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18または20(またはそれに由来する任意の範囲)であってもよい。一部の実施形態では、第1の再生緩衝液と接触させた固定相上で実行することができる精製サイクルの数は、8以上である。一部の実施形態では、第1の再生緩衝液と接触させた固定相上で実行することができる精製サイクルの数は、10以上である。一部の実施形態では、精製サイクルは、固定相上への1回のロードおよび固定相の1回の溶出を含み、ここで、固定相からの親和性溶出液のvg回収率%は、固定相上にロードされた親和性溶出液の90%以上である。
【0584】
一部の実施形態では、実行することができる精製サイクルは、固定相から溶出液中へのvg回収率%によって決定される。一部の実施形態では、実行することができる精製サイクルは、そのカラムを使用する最初の精製サイクルからの溶出液のvg回収率%と比較して、減少していない、または約0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10%(もしくはそれに由来する任意の範囲)を超えて減少していない現在のサイクルからのvg回収率%を有する。一部の実施形態では、固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させた後の最後の精製サイクルからの溶出液のvg回収率%は、固定相を第1の再生緩衝液と接触させる前の最初の精製サイクルからの溶出液のvg回収率%と比較して10%を超えて減少していない。
【0585】
一部の実施形態では、実行することができるサイクルは、そのカラムを使用する最初の精製サイクルのフロースルー中の未結合のAAVベクターの量と比較して増加していない、または約0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10%(もしくはそれに由来する任意の範囲)を超えて増加していない現在のサイクルのフロースルー中の未結合のAAVベクターの量を有する。一部の実施形態では、固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させた後の最後の精製サイクルのフロースルー中の未結合のrAAVベクターの量は、固定相を第1の再生緩衝液と接触させる前の最初の精製サイクルのフロースルー中の未結合のrAAVベクターの量と比較して10%を超えて増加していない。
【0586】
一部の実施形態では、実行することができるサイクルは、そのカラムを使用する最初の精製サイクルのカラム圧力と比較して、増加していない、または約0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10%(もしくはそれに由来する任意の範囲)を超えて増加していない現在のサイクルのカラム圧力を有する。一部の実施形態では、固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させた後の最後の精製サイクルのカラム圧力は、0.4MPa以下である。
【0587】
一部の実施形態では、実行することができるサイクルは、そのカラムを使用する最初の精製サイクルからの溶出液のカプシド純度%と比較して、減少していない、または約0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10%(もしくはそれに由来する任意の範囲)を超えて減少していない現在のサイクルからの溶出液のカプシド純度%を有する。一部の実施形態では、固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させた後の最後の精製サイクルからの溶出液の純度%は、固定相を第1の再生緩衝液と接触させる前の最初の精製サイクルからの溶出液の純度%と比較して10%を超えて減少していない。
【0588】
一部の実施形態では、実行することができるサイクルは、そのカラムを使用する最初の精製サイクルからの溶出液中のHCPの量と比較して、増加していない、または約0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10%(もしくはそれに由来する任意の範囲)を超えて増加していない現在のサイクルからの溶出液中のHCPの量を有する。一部の実施形態では、固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させた後の最後の精製サイクルからの溶出液のHCPの量は、固定相を第1の再生緩衝液と接触させる前の最初の精製サイクルからの溶出液のHCPの量と比較して10%を超えて増加していない。
【0589】
一部の実施形態では、実行することができるサイクルは、そのカラムを使用する最初の精製サイクルからの溶出液中のHCDNAの量と比較して、増加していない、または約0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10%(もしくはそれに由来する任意の範囲)を超えて増加していない現在のサイクルからの溶出液中のHCDNAの量を有する。一部の実施形態では、固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させた後の最後の精製サイクルからの溶出液のHCDNAの量は、固定相を第1の再生緩衝液と接触させる前の最初の精製サイクルからの溶出液のHCDNAの量と比較して10%を超えて増加していない。
【0590】
一部の実施形態では、実行することができるサイクルは、そのカラムを使用する最初の精製サイクルからの溶出液のA260/A280と比較して、減少していない、または約0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10%(もしくはそれに由来する任意の範囲)を超えて減少していない現在のサイクルからの溶出液のA260/A280を有する。一部の実施形態では、固定相と、第1の再生緩衝液とを接触させた後の最後の精製サイクルからの溶出液の平均A260/A280は、固定相を第1の再生緩衝液と接触させる前の最初の精製サイクルからの溶出液の平均A260/A280と比較して10%を超えて減少していない。
【0591】
一部の実施形態では、実行することができるサイクルは、約、多くても約0.222、0.25、0.275、0.3、0.325、0.35、0.375、0.4、0.425、0.45、0.475、0.5、0.525、0.55、0.575、0.6、0.625、0.65、0.675、0.7、または0.713mPa(またはそれに由来する任意の範囲)である、固定相の親和性溶出の経過にわたって一定の流量を使用するカラム圧力の最大変化を有する。
【0592】
一部の態様では、親和性クロマトグラフィー固定相を再生する方法は、固定相と、1~4のpHの酸を含む第1の再生緩衝液とを接触させることを含み、不純物が固定相から除去される。一部の実施形態では、第1の再生緩衝液は、酸を含む。一部の態様では、第1の再生緩衝液中の酸の濃度は、約、少なくとも約、または多くても約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、または2N(またはそれに由来する任意の範囲)であってもよい。一部の実施形態では、第1の再生緩衝液中の酸は、リン酸および/または酢酸であってもよい。一部の実施形態では、第1の再生緩衝液中の酸は、リン酸である。一部の実施形態では、第1の再生緩衝液中の酸はリン酸であり、リン酸の濃度は約、少なくとも約、または多くても約0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、または0.15N(またはそれに由来する任意の範囲)である。一部の実施形態では、第1の再生緩衝液は、0.05N~1.5Nの酸を含み、任意選択により、酸はリン酸である。一部の例では、第1の再生緩衝液のpHは、約、少なくとも約、または多くても約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、または3.5(またはそれに由来する任意の範囲)であってもよい。一部の実施形態では、第1の再生緩衝液は、0.10N~0.15Nのリン酸、および1.5~2.5のpHを含む。一部の実施形態では、第1の再生緩衝液は、pH約1.9の約0.132Nのリン酸を含む。
【0593】
一部の実施形態では、固定相を、約、少なくとも約、または多くても約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、15、20、または30CV(またはそれに由来する任意の範囲)の第1の再生緩衝液と接触させる。一部の実施形態では、固定相を、1CV~10CVまたは4.5CV~5.5CVの第1の再生緩衝液と接触させる。一部の実施形態では、固定相を、約5CVの第1の再生緩衝液と接触させる。一部の実施形態では、固定相を、約、少なくとも約、または多くても約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、または15CV(またはそれに由来する任意の範囲)の第1の再生緩衝液と接触させた後、保持期間の後、固定相と、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、または15CV(またはそれに由来する任意の範囲)の第1の再生緩衝液とを再度接触させる。一部の実施形態では、保持期間は、約、少なくとも約、または多くても約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、65、70、80、90、150、300、450、または600min(またはそれに由来する任意の範囲)であってもよい。一部の実施形態では、固定相を、約半分の体積の第1の再生緩衝液と接触させた後、約45分間の保持期間の後、固定相と、第2の半分の体積の第1の再生緩衝液とを接触させる。一部の実施形態では、固定相を、約2.5CVの第1の再生緩衝液と接触させた後、約45分の保持期間の後、固定相と、約2.5CVの第1の再生緩衝液とを接触させ、任意選択により、第1の再生緩衝液は、pH約1.9の約0.132Nのリン酸を含む。
【0594】
一部の実施形態では、第1の再生緩衝液は、固定相の中を上向きに流動する。一部の実施形態では、第1の再生緩衝液は、固定相を含有するカラムの中を上向きに流動する。一部の実施形態では、第1の再生緩衝液は、緩衝化された溶出液が固定相の中を流動する向きとは反対の向きに固定相の中を流動する。一部の実施形態では、第1の再生緩衝液は、緩衝化された溶出液が固定相を含有するカラムの中を流動する向きとは反対の向きに固定相を含有するカラムの中を流動する。
【0595】
一部の実施形態では、第1の再生緩衝液は、約、少なくとも約、または多くても約1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、65、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、700、750、800、900、1000、1500、または2000cm/h(またはそれに由来する任意の範囲)の流動速度で固定相に適用される。一部の実施形態では、第1の再生緩衝液は、約、少なくとも約、または多くても約0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、または20min/カラム体積(CV)(またはそれに由来する任意の範囲)の滞留時間で固定相に適用される。一部の実施形態では、固定相を再生する方法は、第1の再生緩衝液の少なくとも一部を除去した後に、親和性クロマトグラフィー固定相上にrAAVベクターを含む別の溶液をロードすることをさらに含む。一部の実施形態では、固定相を再生する方法は、第1の再生緩衝液の少なくとも一部を除去した後に、親和性クロマトグラフィー固定相上に第2の量の溶出前洗浄溶液を適用することをさらに含む。
【0596】
一部の実施形態では、親和性クロマトグラフィーによるrAAVベクターの精製のために固定相を再生する方法は、第1の再生緩衝液の後、固定相と、第2の再生緩衝液とを接触させることをさらに含む。一部の実施形態では、第2の再生緩衝液は、第1の再生緩衝液とは異なる。一部の実施形態では、第2の再生緩衝液は、界面活性剤および緩衝剤を含んでもよい。一部の実施形態では、第2の再生緩衝液中の界面活性剤は、サルコシル、ポロキサマー188(P188)、Triton X-100、ポリソルベート80(PS80)、Brij-35、ノニルフェノキシポリエトキシルエタノール(NP-40)、またはその任意の組合せであってもよい。一部の実施形態では、界面活性剤は、サルコシルであってもよい。一部の実施形態では、第2の再生緩衝液は、約、少なくとも約、または多くても約0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、22、24、26、28、または30%(またはそれに由来する任意の範囲)の界面活性剤、例えば、サルコシルを含んでもよい。一部の実施形態では、第2の再生緩衝液は、0.1%~5%の界面活性剤を含み、任意選択により、界面活性剤は、サルコシルである。一部の実施形態では、第2の再生緩衝液は、約1%のサルコシルを含む。
【0597】
一部の実施形態では、第2の再生緩衝液中の緩衝剤は、Tris(例えば、Tris塩基とTris-HClとの混合物)、BIS-Trisプロパン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、トリシン、トリエタノールアミン、ビシン、またはその任意の組合せであってもよい。一部の実施形態では、第2の再生緩衝液は、約、少なくとも約、または多くても約0.1、0.5、1、5、10、20、30、40、50、60、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、170、180、190、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、または2000mMの緩衝剤、例えば、Trisを含んでもよい。一部の実施形態では、第2の再生緩衝液は、50mM~150mMの緩衝剤を含み、任意選択により、緩衝剤はTrisである。一部の実施形態では、第2の再生緩衝液は、約100mMのTrisを含む。
【0598】
一部の実施形態では、第2の再生緩衝液のpHは、約、少なくとも約、または多くても約6、6.5、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.5、または9(またはそれに由来する任意の範囲)である。一部の実施形態では、第2の再生緩衝液のpHは、約7~8である。一部の実施形態では、第2の再生緩衝液のpHは、約7.5である。
【0599】
一部の実施形態では、第2の再生緩衝液は、約、少なくとも約、または多くても約0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、または10%(またはそれに由来する任意の範囲)のサルコシル、約、少なくとも約、または多くても約10、20、30、40、50、60、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、146、147、148、149、または150mM(またはそれに由来する任意の範囲)のTrisを含み、約、少なくとも約、または多くても約6、6.5、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.5、または9(またはそれに由来する任意の範囲)のpHを有する。一部の実施形態では、第2の再生緩衝液は、0.1%~1.5%のサルコシル、50mM~150mMのTris、7~8のpHを含む。一部の実施形態では、第2の再生緩衝液は、pH約7.5の、約1%のサルコシル、約100mMのTrisを含む。
【0600】
一部の実施形態では、第2の再生緩衝液は、固定相の中を上向きに流動する。一部の実施形態では、第2の再生緩衝液は、固定相を含有するカラムの中を上向きに流動する。一部の実施形態では、第2の再生緩衝液は、緩衝化された溶出液が固定相の中を流動する向きとは反対の向きに固定相の中を流動する。一部の実施形態では、第2の再生緩衝液は、緩衝化された溶出液が固定相を含有するカラムの中を流動する向きとは反対の向きに固定相を含有するカラムの中を流動する。
【0601】
一部の実施形態では、固定相を、約、少なくとも約、または多くても約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、15、20、または30CV(またはそれに由来する任意の範囲)の第2の再生緩衝液と接触させる。一部の実施形態では、固定相を、1CV~10CVまたは4.5CV~5.5CVの第2の再生緩衝液と接触させる。一部の実施形態では、固定相を、約5CVの第2の再生緩衝液と接触させる。
【0602】
一部の実施形態では、第2の再生緩衝液は、約、少なくとも約、または多くても約0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、または20min/カラム体積(CV)(またはそれに由来する任意の範囲)の滞留時間で固定相に適用される。一部の実施形態では、第2の再生緩衝液は、約、少なくとも約、または多くても約1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、65、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、700、750、800、900、1000、1500、または2000cm/h(またはそれに由来する任意の範囲)の流動速度で固定相に適用される。
【0603】
一部の実施形態では、第1の再生緩衝液、第2の再生緩衝液、またはその両方は、i)第1の再生緩衝液、第2の再生緩衝液、もしくはその両方に由来する溶出液中のA280のピーク面積が、約、少なくとも約700、800、900、1000、1200、1300、1400もしくは1500mL*mAU(もしくはそれに由来する任意の範囲)である;および/またはii)第1の再生緩衝液、第2の再生緩衝液、もしくはその両方に由来する溶出液中のA260のピーク面積が、約、少なくとも約300、400、500、600、700もしくは800mL*mAU(もしくはそれに由来する任意の範囲)であるように、固定相から不純物を除去する。
【0604】
一部の実施形態では、固定相を再生する方法は、第2の再生緩衝液の少なくとも一部を除去した後に、親和性クロマトグラフィー固定相上にrAAVベクターを含む別の溶液をロードすることをさらに含む。一部の実施形態では、固定相を再生する方法は、第2の再生緩衝液の少なくとも一部を除去した後に、親和性クロマトグラフィー固定相上に第2の量の溶出前洗浄溶液を適用することをさらに含む。
【0605】
H.追加のステップ
ある特定の実施形態では、AAVベクター(例えば、rAAV)の精製方法は、ガードカラム、ガードフィルター、またはガードカラムとガードフィルターとの両方を用いて固定相上にロードする前に、AAVベクターを含む溶液を濾過することをさらに含む。一部の実施形態では、ガードカラムは、POROS(商標)XQ、POROS(商標)HQ、POROS(商標)Benzyl Ultra、Capto Octyl、またはCapto 700ガードカラムである。一部の実施形態では、ガードフィルターは、0.2μmのノミナルPall(商標)EAVプレカラムフィルターなどの、0.2μmのノミナルフィルターである。一部の実施形態では、ガードカラムおよび/またはガードフィルターは使用されない。
【0606】
一部の実施形態では、親和性クロマトグラフィーによるAAVベクター(例えば、rAAV)の精製方法は、保存溶液を置換するためのカラム媒体の使用前フラッシング、カラム媒体の使用前浄化、カラム媒体の浄化後洗浄、カラム媒体の平衡化(例えば、使用前の間、使用中における異なる溶液の適用間、および/もしくは使用後)、保存媒体の使用後適用、またはその任意の組合せから選択される追加のステップを含んでもよい。一部の実施形態では、1つまたは複数の追加のステップを除外することができる。当業者であれば、これらのステップの順序が変化してもよく、ある特定のステップを2回以上実施してもよく、必ずしも順次実施しなくてもよいことも理解するであろう。
【0607】
一部の実施形態では、本明細書に記載の全ての範囲の一部を除外することができる。本明細書に記載される濃度%は、wt.%および/またはvol.%濃度であってもよい。
【0608】
VII.均等物
前記明細書は、当業者が本開示を実施することができるために十分であると考えられる。前記説明および実施例は、本開示のある特定の例示的実施形態を詳述する。しかしながら、どんなに詳細に上記のことが本文中に現れる場合があっても、本開示を多くの方法で実施することができ、本開示が、添付の特許請求の範囲およびその任意の均等物に従って解釈されるべきであることが理解されるであろう。
【0609】
特許、特許出願、論文、教科書などを含む本明細書に引用される全ての参考文献、ならびにこれらに引用された参考文献は、これらが既に組み込まれていない程度に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0610】
VIII.例示的実施形態
本発明は、以下の実験例を参照して詳細にさらに説明される。これらの実施例は、例示目的でのみ提供され、別途特定しない限り、限定を意図するものではない。かくして、本発明は、以下の実施例に限定されると解釈されるべきでは全くないが、本明細書に提供される教示の結果として明らかになる任意かつ全ての変化を包含すると解釈されるべきである。
【実施例】
【0611】
(実施例1)
最適条件のための溶出前洗浄液のスクリーニング
A.溶出前洗浄液スクリーニングのための親和性ロードの調製
HEK293細胞を懸濁培養物中で増殖させ、当業界で公知の標準的な方法に従って、rAAV9ベクターを生産するための3プラスミド系をトランスフェクトした(Griegerら(2016)Molecular Therapy 24(2):287~297)。細胞懸濁液を、回収のために50Lの単回使用バイオリアクター(SUB)から取得した。細胞回収物を、0.5%のトリトンX-100(オクトキシノール-9としても知られる)で処理し、30分間混合して、細胞を溶解し、rAAVゲノム、中間カプシド、および空カプシドを含む全カプシドを含むAAV9を放出させた。溶解物を軟凝集させ、深層濾過し、クエンチし、0.2μmで濾過して、清澄化された溶解物を生産し、これを以下に記載されるように親和性クロマトグラフィーカラム上にロードした。
【0612】
B.親和性クロマトグラフィーによる溶出前洗浄液スクリーニング
表1に記載される、3つの溶出前洗浄液(洗浄液1、洗浄液2、および洗浄液3)を試験して、樹脂リガンドに結合したAAV9を保持しながら、結合した不純物を除去するための最適条件を決定した。POROS(商標)CaptureSelect AAV9カラム(1cmの内径、10cmの床高、および8mLのカラム体積)を、平衡化しようとするAKTA Avant 150に接続し、2Lの50SUBの清澄化溶解物をロードし、洗浄した。溶出前の5カラム体積(CV)の洗浄を、表1に示される特定の流動速度および滞留時間で実施した。異なる洗浄緩衝液を用いるそれぞれの方法を、異なる親和性カラム上で実施して、それぞれの条件の反復物を得た。5mLの溶出体積および40mLの洗浄体積を、それぞれの実行およびそれぞれの条件について収集した。収集された溶出前洗浄液を、280nm(A280)での吸光度について評価した。より高いピーク高さは、より高レベルの不純物を示す。親和性溶出液を、表2に示されるように、ウイルスゲノム回収率(vg回収率%)、純度%、260nm/280nm比についての吸光度測定と同時のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)(SECA260/280)、宿主細胞DNA(HCDNA)、宿主細胞タンパク質(HCP)除去、および感染性比について評価した。
【0613】
【0614】
【0615】
溶出前洗浄ステップを用いた、および用いない親和性溶出は、SEC A260/280比、HCDNAレベル、および感染性比によって決定した場合、類似する生成物品質を示した。洗浄ステップを用いない、および洗浄液1を用いた親和性溶出は、非還元的逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC、NR)によって決定した場合、他の試験した条件と比較して有意に低い純度%を示した(洗浄液1についての67%に対して洗浄液3についての92%、表2)。表2に示されるように、収集された17%エタノール、150mM酢酸ナトリウム、pH5.6の洗浄液(洗浄液3)は、洗浄液なし、または洗浄液1よりも9~10倍高いA280ピーク高さを有していたが、これは、より高レベルの不純物がこの溶出前洗浄によって除去されたことを示している。17%エタノール、1M NaCl、150mM酢酸ナトリウム、pH5.6の洗浄液(洗浄液2)は、表2に示されるように、洗浄液なし、または洗浄液1よりもわずか2.5倍高いピーク高さを示すA280ピークを有していたが、これは、洗浄液3と比較して、洗浄液2中の追加成分である塩化ナトリウムが不純物の除去を妨げていることを示している。したがって、溶出ステップにおける高い生成物回収率を維持しながら、結合した不純物を除去する際のその有効性のため、親和性クロマトグラフィーのための溶出前洗浄として、17%エタノール、150mM酢酸ナトリウム、pH5.6の洗浄(洗浄液3)ステップを選択した。
【0616】
C.まとめ
本実施例は、ミニ-ジストロフィン導入遺伝子を含むrAAV9ベクターの親和性クロマトグラフィー捕捉ステップのための溶出前洗浄の最適化を記載する。有効な溶出前洗浄は、rAAV9-樹脂リガンド相互作用を維持しながら、結合した不純物を除去した。17%エタノール、150mM酢酸ナトリウム、pH5.6の溶出前洗浄は、一貫して高いウイルスゲノム(vg)回収率%および純度%を維持しながら、不純物を除去したため、それを親和性クロマトグラフィープロセスにおいて使用することができると結論付けられた。
【0617】
(実施例2)
親和性溶出緩衝液に関するMgCl2濃度およびpHのスクリーニング
A.スクリーニング試験のための親和性ロードの調製
HEK293細胞を懸濁培養物中で増殖させ、3プラスミド系をトランスフェクトして、rAAV9ベクターを産生させた。細胞懸濁液を、回収のために250LのSUBから取得した。細胞回収物を、0.5%のトリトンX-100で処理し、30分間混合して、細胞を溶解し、rAAVゲノム、中間カプシド、および空カプシドを含む全カプシドを含むAAV9を放出させた。溶解物を軟凝集させ、深層濾過し、クエンチし、0.2μmで濾過して、清澄化された溶解物を生産し、これを以下に記載されるように親和性クロマトグラフィーカラム上にロードした。
【0618】
B.初期溶出緩衝液スクリーニング試験(DoE#1):pHおよびMgCl2濃度
親和性溶出ステップの最適化は、親和性カラムから最大量のAAV9を回収するのに重要である。溶出緩衝液成分は、AAV9が親和性樹脂から回収されることを確保する際に重要な役割を果たし得る。この第1のスクリーニング試験において、試験した因子は、表3に示されるような親和性溶出緩衝液中のpH(3.0、4.0、および5.0)ならびにMgCl2濃度(0、50、100、および200mM)であった。これらの実験のための親和性カラム上の平均ロードは、3.8x1013vg/mLの樹脂であった。2つのPOROS(商標)CaptureSelect AAV9親和性カラム(1cmの内径、10cmの床高、および8mLのカラム体積)を使用して、12回の実行(それぞれのカラム上で6回の実行)からなる実験試験の設計を行った。
【0619】
【0620】
これらの実験のために使用された親和性クロマトグラフィーのプロトコールを、表3に示されたように変化させる溶出緩衝液組成と共に、表4に示す。それぞれの実行について、親和性溶出液を収集し、表3に示される、vg回収率%(逆方向末端反復のqPCR(ITR qPCR)によって測定される)、SEC A260/A280比、およびHCDNA(qPCRによって測定される)を含む分析試験のために提出した。vg回収率%によって決定された最も高い生成物回収率を示す溶出緩衝液は、100mMのグリシン、10mMのクエン酸ナトリウム、0mMのMgCl2、pH3.0(表3中のqPCRによる60%~65%のvg回収率、実行回数5および8)を含有していたが、沈降物が観察された。これらの溶出試料を、分析試験のために採取した上清と共に遠心分離した。pH3.0の溶出緩衝液について、親和性溶出液中に存在するHCDNAの有意な範囲があり、MgCl2濃度に依存していた。HCDNA量は、pH3.0、200mMのMgCl2溶出緩衝液についての170ng/1x1014vgとpH3.0、0mMのMgCl2溶出緩衝液についての773ng/1x1014vgとの間で変化した。かくして、MgCl2濃度は、親和性溶出液中のHCDNAレベルに影響した。低いpHの溶出緩衝液中のMgCl2の存在は、沈降を防止した。pH4.0または5.0の溶出緩衝液は、MgCl2濃度に関係なく、最も低い生成物回収率をもたらした。SEC A260/A280比は、全ての条件について0.83~0.86で変化したが、これは、溶出画分が空カプシドの全カプシドに対する同じ比(約5%~10%の全カプシド)を含有していたことを示唆する。この初期スクリーニング試験から、より低いpHの溶出緩衝液およびMgCl2の存在が、親和性溶出緩衝液にとっての最適条件であることが決定された。この初期スクリーニング試験は、MgCl2濃度およびpHなどの同様のパラメーターを試験する次の実験(DoE#2)の設計に関する情報を提供した。
【0621】
【0622】
C.第2の溶出緩衝液スクリーニング試験(DoE#2):pH、MgCl2濃度、およびグリシン濃度の評価
初期スクリーニング試験(DoE#1)から得られた結果に基づいて、第2のスクリーニング試験(DoE#2)を、DoEの範囲を限定し、溶出液属性に影響する重要な因子に焦点を当てるために開発した。この二次スクリーニング試験において試験した因子は、表5に示されるように、pH(3.0、3.5)、MgCl2濃度(25、50、100、200mM)、およびグリシン濃度(0、100、200mM)であった。これらの実験のための親和性カラム上の平均ロードは、2.5x1013vg/mLの樹脂であった。2つのPOROS(商標)CaptureSelect AAV9親和性カラム(1cmの内径、10cmの床高、および8mLのカラム体積)を、これらの実験のために使用し、それぞれのカラム上で7回実行した。これらの実験のために使用した親和性クロマトグラフィーのプロトコールは、変化させる溶出緩衝液条件と共に、表4に概略されている。それぞれの実行について、親和性溶出液を収集し、qPCRによって測定されるvg回収率%およびSEC A260/A280を含む様々な分析試験のために提出した。その結果を、表5に示す。全体として、vg回収率%は、より低い樹脂チャレンジのため、初期スクリーニング試験のものよりもこの二次スクリーニング試験について低かった。樹脂チャレンジ(平均ロード)は、第1(DoE#1)および第2(DoE#2)の試験スクリーニングについて、それぞれ、3.8x1013vg/mLおよび2.5x1013vg/mLの樹脂であった。
【0623】
【0624】
25mMのMgCl2、100mMのグリシン、100mMのクエン酸ナトリウム、pH3.0(表5、実行13)からなる溶出緩衝液は、最も高いvg回収率%(qPCRによる55%)を有していた。しかしながら、親和性溶出液はいくらかの沈降物を有することが観察されたが、これは、銀染色SDS-PAGE分析によってAAV9と同時に溶出するさらなる不純物によって引き起こされると決定された(データは示さず)。全ての条件に関するSEC A260/280比は一貫していたが、これは、親和性溶出液中の類似する全カプシドの空カプシドに対する比を示唆している。DoE#2データ(表5)とDoE#1データ(表3)との比較により、残留不純物の同時溶出を防止する溶出緩衝液の最適な導電率範囲があることが示された。表6に示されるように、20~34mS/cmの導電率範囲は、高い収率でAAV9ベクターを溶出させ、不純物の溶出を低減させ、沈降を低減させる。逆に、より低い導電率(例えば、4mS/cm)を示す溶出は、高い収率をもたらすが、不純物に基づく沈降をももたらす。この傾向は、溶出緩衝液の導電率ならびにイオン強度が不純物の同時溶出を低減させる際に役割を果たすことを示していた。最も好ましい条件は、より低いMgCl2濃度、および20~34mS/cmの溶出導電率範囲であった。
【0625】
【0626】
D.まとめ
本実施例では、2つのDoEを実施して、最適な溶出属性を提供する重要な溶出緩衝液成分の範囲を限定した。第1のDoEは、100mMクエン酸ナトリウム中で、広範囲のpH値(pH3.0、4.0および5.0)およびMgCl2(0、50、100、および200mM)濃度を試験した。この第1のDoEから、より低いpHの溶出緩衝液ならびにMgCl2の存在が、親和性溶出液のvg回収率%を改善すると結論付けられた。第2のDoEは、100mMクエン酸ナトリウム中で、より狭い範囲のpH値(pH3.0および3.5)、MgCl2濃度(25、50、100、および200mM)、およびグリシン濃度(25、50、100、および200mM)を試験した。第1のDoEから得られた結果のため、pH範囲は3.0および3.5であった。第2のDoEから、pH3.0、より低いMgCl2濃度、および20~34mS/cmの溶出導電率が全て、親和性カラムからの最適なvg回収率%をもたらす条件であると結論付けられた。
【0627】
(実施例3)
親和性溶出緩衝液におけるクエン酸ナトリウムの役割および陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)溶出プロファイルに対するその効果
A.溶出緩衝液比較試験のための親和性ロードの調製
HEK293細胞を懸濁培養物中で増殖させ、3プラスミド系をトランスフェクトして、rAAV9ベクターを産生させた。細胞懸濁液を、回収のために50LのSUBから取得した。細胞回収物を、0.5%のトリトンX-100で処理し、30分間混合して、細胞を溶解し、rAAVゲノム、中間カプシド、および空カプシドを含む全カプシドを含むAAV9を放出させた。溶解物を軟凝集させ、深層濾過し、クエンチし、0.2μmで濾過して、清澄化された溶解物を生産し、これを以下に記載されるように親和性クロマトグラフィーカラム上にロードした。
【0628】
B.親和性クロマトグラフィー
試験した親和性溶出緩衝液は、200mMのグリシン、50mMのMgCl2、pH3.5(緩衝液A)および100mMのグリシン、100mMのクエン酸ナトリウム、100mMのMgCl2、pH3.0(緩衝液B)であった。両方の溶出緩衝液のための親和性クロマトグラフィー法を、表7に示す。POROS(商標)CaptureSelect AAV9親和性カラム(1cmの内径、10cmの床高、および8mLのカラム体積)を、2回の実行のために使用した。
【0629】
【0630】
それぞれ1mLの溶出画分を収集した後、合計5mLのためにプールした。両方の実行について、プールした親和性溶出液を、1MのTris pH9.0で中和した。溶出緩衝液Aについて、中和された親和性溶出液は有意に濁っていたため、溶液を遠心分離した。上清を試験のために提出し、その後の陰イオン交換クロマトグラフィーステップのためのロードとして使用した。緩衝液Bについて、プールした親和性溶出液は透明であり、中和後に沈降物は観察されなかった。それぞれの親和性溶出液に関する分析試験の結果を、表8に示す。溶出緩衝液は、類似するvg回収率%および純度%プロファイルを示した。緩衝液Aと緩衝液Bとの主な差異は、中和時の沈降物の存在であった。緩衝液Aの溶出プロファイルはより広かったが、これは
図1に示されるように残留不純物の同時溶出を示し得る。このより広い溶出プロファイルは、rAAVカプシドと共に不純物の溶出をもたらし得た、より段階的なpHの低下によって引き起こされた。
【0631】
【0632】
C.緩衝液AおよびBの親和性溶出液を使用する陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)
緩衝液AおよびBを用いた親和性実行からの親和性溶出液を、以下に記載される陰イオン交換カラム上でそれぞれさらに処理した。AEXステップを使用して、空および全AAV9カプシドを分離し、ならびに残留宿主細胞不純物を減少させる。親和性溶出緩衝液組成は、AAV9が空/全カプシド分離中にAEXカラムにどれぐらいよく結合するかに影響し得る。POROS(商標)HQカラム(HQ)(0.5cmの内径、5cmの床高、および1mLのカラム体積)を、両方の実行のために使用した。両方の実行からの親和性溶出液を、1MのTris塩基を使用してpH9.0に調整した後、20mMのTris、2%のPEG(8k)、pH9.0を含む緩衝液中で最初は10倍に希釈した。溶出液を、導電率が2.0mS/cm以下となるまで、20mMのTris、2%のPEG(8k)、pH9.0を用いてさらに希釈した。2%のPEG 8kを、共溶媒として希釈緩衝液中に含有させて、AAV9のAEXカラムへの結合を促進した。それぞれの実行のために使用したAEX法を、表9に詳述する。
【0633】
【0634】
20mMのTris pH9.0の緩衝液中の、0~250mMのNaClの直線勾配の50カラム体積(50mL)を使用して、AEXカラムからAAV9を溶出させた。フロースルーならびに溶出画分を全て収集し、50mMクエン酸ナトリウム、pH3.6で中和した。1.2以上のSEC A260/280比を有する溶出ピーク画分を、表10および表11に示されるようにプールした。AEX実行(HQ-18)の緩衝液Aの親和性溶出液(200mMグリシン、50mM MgCl2、pH3.5)については、2つの溶出画分をプールしたが、AEX実行(HQ-17)の緩衝液Bの親和性溶出液(100mMグリシン、100mM MgCl2、100mMクエン酸ナトリウム、pH3.0)については、8つの溶出画分をプールした。
【0635】
【0636】
【0637】
両方の実行についての溶出プールを、表12に示されるような、vg回収率%、純度%、HCDNA、および分析的超遠心分離(AUC)の分析試験のために提出した。
【0638】
【0639】
小さいロードの差異が、
図2のクロマトグラムオーバーレイに示されるように劇的に異なる結合/溶出プロファイルを有していた。三価陰イオンであるクエン酸塩は、陽イオンAEX-HQ樹脂への結合についてAAV9との競合に打ち勝ち、有意に異なる溶出プロファイルおよび特性をもたらすことが決定された。AEXロード中に8mMのクエン酸塩を含有するHQ-17は、54%の未結合のVGをもたらした。逆に、AEXロード中にクエン酸塩を含有しないHQ-18は、全てのロードしたVGに完全に結合した(フロースルー画分中の0%のVG)。しかしながら、クエン酸塩を含有しない緩衝液A(200mMグリシン、50mM MgCl
2、pH3.5)の中和後に、沈降物が見られた。これは、凝集(かくして、沈降)を防止するためには、親和性溶出緩衝液中に陰イオンが必要であるが、クエン酸塩のような強力な陰イオンはAAV9カプシドと比較してAEX樹脂に優先的に結合するため、陰イオンはクエン酸塩のような強力な陰イオンではあり得ないことを示唆していた。
【0640】
D.まとめ
本実施例では、2つの親和性溶出緩衝液(緩衝液AおよびB)を試験して、親和性およびAEX溶出プロファイルに対するその効果を決定した。緩衝液Aはクエン酸ナトリウムを含有していなかったが、緩衝液Bは100mMクエン酸ナトリウムを含有していた。緩衝液AおよびBは、類似するvg回収率%を示す類似する親和性溶出プロファイルを有していた。主な差異は、緩衝液Aの親和性溶出液(クエン酸ナトリウムを含有しない)の中和時に、沈降物が観察されたことであった。それぞれの緩衝液実行からの親和性溶出液が中和されたら、それらを希釈し、AEXによって処理した。緩衝液Aの親和性溶出液(クエン酸ナトリウムを含有しない)を使用したクロマトグラフィー実行からのAEX溶出液は、緩衝液Bの親和性溶出液を使用したクロマトグラフィー実行からのAEX溶出液よりもはるかに高いvg回収率%を有していた(27%対7%)。緩衝液Aおよび緩衝液Bの親和性溶出液に関するAEX溶出プロファイルは、有意に異なるように見えたが、緩衝液AのAEX溶出プロファイルは、より最適な全/空カプシド濃縮を示した。
【0641】
クエン酸ナトリウムはAAV9-AEX樹脂相互作用を阻害し、AEX樹脂上へのAAV9の結合の減少をもたらすと結論付けられた。したがって、親和性溶出緩衝液からクエン酸塩を除去し、代替手段を試験した。
【0642】
(実施例4)
AEX HQ実行に対する親和性溶出緩衝液の効果
A.AEX実行試験に対する溶出緩衝液のための親和性ロードの調製
HEK293細胞を懸濁培養物中で増殖させ、3プラスミド系をトランスフェクトして、rAAV9ベクターを産生させた。細胞懸濁液を、回収のためにウェーブバッグから取得した。細胞回収物を、0.5%のトリトンX-100で処理し、30分間混合して、細胞を溶解し、rAAVゲノム、中間カプシド、および空カプシドを含む全カプシドを含むAAV9を放出させた。溶解物を軟凝集させ、深層濾過し、クエンチし、0.2μmで濾過して、清澄化された溶解物を生産し、これを以下に記載されるように親和性クロマトグラフィーカラム上にロードした。
【0643】
B.親和性クロマトグラフィー-AEX連結試験
この連結試験では、様々な溶出緩衝液を用いて親和性クロマトグラフィーを実行した後、希釈し、POROS(商標)50 HQ樹脂(本明細書ではHQと称される)上での陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)を使用して空/全カプシドを分離した。上から2つの性能のよい親和性溶出緩衝液を選択したら、大規模試験を行って、類似する結果を確認することができることを確保した。6つの異なる親和性溶出緩衝液を試験して、親和性およびAEX溶出プロファイルに対するその効果を決定した。これらの異なる溶出緩衝液の組成を、表13に提供する。
【0644】
【0645】
合計2Lの清澄化された細胞溶解物を、POROS(商標)CaptureSelect AAV9親和性カラム(1cmの内径、10cmの床高、および8mLのカラム体積)上にロードした。6つ全ての溶出緩衝液のための親和性クロマトグラフィー法を、表14に提供する。
【0646】
【0647】
1mLの溶出画分を親和性カラムから収集し、Nanodrop分析からのA280値に基づいてプールした。溶出プール(それぞれの画分について950μL)を、1MのTris塩基、pH9.0を使用して中和した。中和後に沈降物が観察された場合、溶出プールを遠心分離し、分析試験のために上清を保持した。親和性溶出プールに関する分析結果を、それぞれの実行について表15に示す。
【0648】
【0649】
次いで、それぞれの親和性クロマトグラフィー実行について得られた親和性溶出液を、陰イオン交換クロマトグラフィーカラム上にロードして、空/全分離を評価した。親和性溶出プールを、20mM Tris、2% PEG 8k、pH9.0中で9~11倍に希釈した後、AEXカラム上にロードした。希釈倍数は初期の親和性溶出液体積に依存し、導電率が2.0mS/cm以下となるまで溶出液を希釈した。それぞれのロードのpHを、1M Tris塩基の添加によって9.0に調整した。POROS(商標)HQカラム(0.5cmの内径、5cmの床高、および1mLのカラム体積)を、AEXによる異なる親和性溶出液の分析のために使用した。
【0650】
陰イオン交換クロマトグラフィー法は、全ての実行にわたって一貫していたが、これを表16に提供する。
【0651】
【0652】
AEXカラムからの1mLの溶出画分を収集し、SEC A260/280のために提出して、溶出プール化戦略を決定した。SEC A260/280比が1.2以上であった場合、その画分を溶出プールの一部として含有させた。それぞれの実行について、溶出プールを、さらなる分析試験のために提出して、vg回収率%(導入遺伝子のqPCRによって測定される)、純度%(RP-HPLC、NRによって測定される)、HCP、HCDNA(qPCRによって測定される)、および空/中間/全カプシドの%(SEC-HPLCによって測定される)を得た。データは、表15に示されている。
【0653】
試験した6つの親和性溶出緩衝液のうち、実行HQ-21(30mMクエン酸ナトリウム、10mMグリシン、10mM MgCl2、pH3.0)およびHQ-22(150mM酢酸ナトリウム、100mMグリシン、100mM MgCl2、pH3.0)は、最も性能のよい溶出緩衝液であった。希釈時に、両方の親和性溶出緩衝液は、POROS(商標)50HQ樹脂への高いAAV9結合および高い空/全カプシド分離を可能にした。高い性能を示した重要なパラメーターは、26~29%の2ステップのvg回収率%(親和性*AEX)、RP-HPLC、NRによる99%の純度%、低いHCDNA含量(600ngのHCDNA/1x1014vg)、定量限界未満のレベルのHCP、および分析的超遠心分離(AUC)によって測定した場合の高いパーセントの全カプシド(41%~54%)であった。
【0654】
これらの2つの実行に関する親和性およびAEXクロマトグラムを、
図3および
図4に示す。両方の実行に関する鋭く狭い親和性溶出ピークは、AAV9の捕捉および溶出の成功と共に、残留不純物の最小限の同時溶出を示す。両方の実行に関する二峰性のAEX溶出プロファイルは、空カプシドと全カプシドの鋭い分離を示し、AUCデータを用いて定量的に確認された。
【0655】
C.スケールアップ親和性クロマトグラフィー-AEXクロマトグラフィー連結試験
小規模試験から、2つの異なる親和性溶出緩衝液が、最良の性能を示した(30mMクエン酸ナトリウム、100mMグリシン、100mM MgCl2、pH3.0(「30mMクエン酸」(HQ-21))および150mM酢酸ナトリウム、100mMグリシン、100mM MgCl2、pH3.0(「150mM酢酸」(HQ-22)))。これらの2つの親和性溶出緩衝液候補を使用して、スケールアップ試験を行って、それらがより大きい規模でも同等の性能を示すことを確保した。合計7Lの50L SUBの清澄化された溶解物を、POROS(商標)CaptureSelect AAV9カラム(2.6cmの内径、19cmの床高、および100mLのカラム体積)上にロードした。このスケールアップ試験のための親和性クロマトグラフィー法は、表17に概略される。
【0656】
【0657】
25mLの溶出画分を、親和性カラムから収集し、プールした。親和性溶出プールを、1M Tris塩基、pH9.0で中和した後、分析試験のために提出した。より大きい規模での2つの親和性溶出緩衝液の性能は、表18に示される収率および純度に関して類似していた。回収されたベクターのSEC A260/280比(示さず)は、いずれの親和性溶出緩衝液も、他の緩衝液と比較してrAAV9全カプシドの濃縮を増加させないことを示していた。
【0658】
【0659】
これらの2つの親和性クロマトグラフィー実行からの親和性溶出プールを、AEX実行(HQ-24およびHQ-25)のための出発材料として使用した。導電率が1.9mS/cm以下となるまで、100mM Tris pH9.0中で親和性溶出プール(48.8mL)を30~40倍に希釈して、AEXロードを形成させた。必要に応じて、希釈したロードのpHを、Tris塩基を使用してpH9.0に調整した。希釈したAEXロードを、EKVフィルターを通して濾過した後、POROS(商標)50HQカラム(1.2cmの内径、5cmの床高、および5.7mLのカラム体積)上にロードした。それぞれの実行のために使用したAEX法は、表16に概略されている。1mLの溶出画分を収集した後、SEC A260/280比に基づいてプールした。実行HQ-24およびHQ-25に関するAEXプール化戦略を表19および表20に示し、HQ-24(30mMクエン酸ナトリウムを含む親和性溶出緩衝液を使用)からプールされた12個の画分およびHQ-25(150mM酢酸ナトリウムを含む溶出緩衝液を使用)からプールされた3個の画分と共に示した。
【0660】
【0661】
【0662】
AEXプールを、純度%(RP-HPLC、NRによって測定される)および全/空カプシド%(SEC-HPLCによって測定される)のために提出した。その結果は表18で詳述されている。
【0663】
HQ-24(30mMクエン酸塩)実行については、ロードされたvgの7%がAEX樹脂から解放されたが、HQ-25(150mM酢酸塩)実行については、ロードされたvgの3%のみがAEX樹脂から解放された。この結果は、小規模試験(HQ-17およびHQ-18実行)において観察されたもの、すなわち、三価陰イオンであるクエン酸塩が、POROS(商標)50HQ樹脂へのAAV9結合を減少させることをさらに裏付ける。HQ-24(30mMクエン酸塩)のvgステップ収率%は63%であったが、HQ-25実行(150mM酢酸塩)からのvgステップ収率%は44%であった。HQ-24(30mMクエン酸塩)は、空カプシド%を6分の1に減少させることができたが(79%から13%まで)、HQ-25(150mM酢酸塩)は、空カプシド%を3分の2に減少させることしかできなかった(79%から54%まで)。両方の実行は、RP-HPLC、NRによって99.9%の非常に純粋な生成物プールを生産した。
【0664】
これらの結果から、2つの親和性溶出緩衝液が親和性クロマトグラフィーステップについて同等の性能を示すと決定された。AEXステップについて、HQ-24(30mMクエン酸塩)実行は、
図5に示される異なる溶出プロファイルをもたらしたHQ-25(150mM酢酸塩)実行と同じレベルのAAV9をAEX樹脂に結合させることができなかった。小規模およびスケールアップ試験は、同様の結果をもたらし、親和性溶出緩衝液中でのクエン酸塩の酢酸塩による置換をもたらした。追加の試験は、AEXステップ中に全カプシド%の濃縮を改善するために酢酸塩を含有する親和性溶出緩衝液中のMgCl
2濃度を最適化した。
【0665】
D.まとめ
以前の実施例(実施例3)により、100mMクエン酸ナトリウムはAEX溶出にとって最適ではないことが示されたので、他の親和性溶出緩衝液成分を試験した。本実施例では、最初に6つの異なる親和性溶出緩衝液(異なる成分を、100mMグリシン、100mM MgCl2、pH3.0を含む溶液に添加した)を試験して、親和性およびAEX溶出プロファイルに対するその効果を決定した。
【0666】
この試験から、30mMクエン酸ナトリウム、100mMグリシン、100mM MgCl2、pH3.0および150mM酢酸ナトリウム、100mMグリシン、100mM MgCl2、pH3.0は、親和性とAEXとの両方の溶出についてvg回収率%ならびにAEX溶出液中で回収された全カプシド%に関して最良の性能を示した。これに基づいて、スケールアップ親和性クロマトグラフィー-AEX連結試験を、100mLの親和性カラムおよびこれらの上から2つの性能のよい親和性溶出緩衝液を使用して実施した。大規模試験については、150mM酢酸ナトリウム、100mMグリシン、100mM MgCl2、pH3.0親和性溶出緩衝液は、30mMクエン酸ナトリウム、100mMグリシン、100mM MgCl2、pH3.0の親和性溶出緩衝液を含む緩衝液よりも性能が優れていた。150mM酢酸ナトリウムの親和性溶出緩衝液を使用した場合、AEXステップ中にロードされたvgの約3%のみが解放されたが、30mMクエン酸の親和性溶出緩衝液を使用した場合、AEXステップ中にロードされたvgの約7%が解放された。これは、小規模の親和性-AEX連結試験中に観察されたものを裏付け、150mM酢酸ナトリウムの親和性溶出緩衝液をさらなる最適化と共に実現して、AEXステップ中の全カプシド%濃縮を改善するべきであると結論付けられた。
【0667】
(実施例5)
150mM酢酸ナトリウム親和性溶出緩衝液中の様々なMgCl2濃度
A.親和性クロマトグラフィーステップ:最適MgCl2濃度試験
親和性溶出緩衝液、150mM酢酸ナトリウム、100mMグリシンpH3.0を、5mM、25mM、50mM、および100mM MgCl2と共に製剤化して、MgCl2濃度を試験し、最適化した。陰イオン交換クロマトグラフィーステップ中にPOROS(商標)50HQ樹脂上へのAAV9の結合を阻害するため、クエン酸ナトリウム緩衝液は親和性溶出緩衝液中に含有させなかった。これらの親和性クロマトグラフィー実験の目的は、ベクター回収(qPCRアッセイに基づく)を最大化し、親和性溶出後のベクター沈降を防止する親和性クロマトグラフィー溶出緩衝液を同定することであった。
【0668】
合計1Lの清澄化された細胞溶解物を、4mLのPOROS(商標)CaptureSelect AAV9カラム(1cmの内径および5cmの床高)上にロードした。これらの実験のために使用された親和性クロマトグラフィー法を、表21に詳述する。
【0669】
【0670】
5mLの溶出画分を親和性カラムから収集し、分析試験のために提出し、重要な結果を表22に示した。ITR qPCR結果に基づいて、溶出緩衝液がより低い濃度のMgCl2を含有していた場合、25mM MgCl2を含有する緩衝液についての65%のvg回収率および5mM MgCl2を含有する緩衝液についての58%のvg回収率などの、vg回収率%の増加が達成された。しかしながら、5mM MgCl2、150mM酢酸ナトリウム、100mMグリシン、pH3.0を含有する親和性溶出液中で沈降物が観察された。
【0671】
【0672】
B.最適MgCl2濃度試験のためのAEXクロマトグラフィーステップ
次に、AEX性能、特に、AAV9空/全分離に対するMgCl2の効果を決定するために、試験を実施した。以前に記載された親和性クロマトグラフィー実行からの4つの親和性溶出プールを、AEXクロマトグラフィーステップ(実行29~32)のために使用した。これらのAEX実験の目的は、AEX希釈ステップおよび空/全カプシド分離性能に対する、親和性溶出緩衝液中、かくして、親和性溶出液中のMgCl2濃度の効果を評価することであった。AEXロード中に存在するMgCl2の量は、POROS(商標)50HQ樹脂へのAAV9の結合に影響し、したがって、空/全カプシド分離に影響し得る。
【0673】
それぞれの親和性溶出プール(5mL)を、導電率が約1.9mS/cmに達するまで20mM Tris、pH9.0、2%PEG 8kで希釈した。必要に応じて、1M Tris塩基を使用してpHを9.0に調整した。最終的なpH、導電率、および希釈倍数を、それぞれのAEXロードについて記録した。pHは8.9~9.0の範囲であり、導電率は1.90~1.98mS/cmの範囲であり、希釈倍率は11~17倍の範囲であった。希釈した試料全体を、EKVフィルターを通して濾過した後、POROS(商標)50HQカラム(0.5cmの内径、5cmの床高、および1mLのカラム体積)上にロードした。これらの実験のために使用したAEX法を、表23に詳述する。
【0674】
【0675】
1mLのAEX溶出画分を収集し、元の画分の体積の15%である体積の50mMクエン酸ナトリウム、pH3.6の添加によって中和した。溶出画分が中和されたら、それらをSEC A260/280分析のために提出して、空/全カプシド比を決定した。これらの溶出画分に関するプール化戦略を、表24~27に概略する。1.15以上のSEC A260/280比を示すAEX溶出画分をプールした。実行29(150mM酢酸ナトリウム、100mM MgCl2)および実行30(150mM酢酸ナトリウム、50mM MgCl2)について、3つの連続した溶出画分をプールした。実行31(150mM酢酸ナトリウム、25mM MgCl2)および実行32(150mM酢酸ナトリウム、5mM MgCl2)について、4つの連続した溶出画分をプールした。
【0676】
【0677】
【0678】
【0679】
【0680】
それぞれの実行に関するAEX溶出プールを、ITR qPCRによって測定されるvg回収率%、AUCによって測定されるカプシド種%、およびRP-HPLC、NRによって測定される純度%を含む分析試験のために提出した。データは、表22に示されている。
【0681】
4回全てのAEX実行において、全てのロードしたvgが、AEXカラムに結合した。さらに、純度%(平均純度%=98.8±0.3%)および生成物の品質は、非常に類似していた(平均全カプシド%+平均中間カプシド%=58±2%および平均SEC A260/280比=1.16±0.015)。4回全てのAEX実行で全カプシドの類似する濃縮が見られたので、MgCl2濃度はAEX空/全カプシド分離性能に影響しなかった。しかしながら、親和性溶出緩衝液中のMgCl2の濃度は、親和性とAEXとの両方の実行におけるvg回収率%に影響しなかった。最適な親和性溶出緩衝液は、親和性およびAEXユニット操作について、それぞれ、65%および50%のvg回収率%をもたらしたため、150mM酢酸ナトリウム、100mMグリシン、25mM MgCl2、pH3.0であることがわかった(表22)。
【0682】
C.様々なMgCl2濃度試験のための親和性ロードの調製
HEK293細胞を懸濁培養物中で増殖させ、3プラスミド系をトランスフェクトして、rAAV9ベクターを産生させた。細胞懸濁液を、回収のためにバイオリアクターから取得した。細胞回収物を、0.5%のトリトンX-100で処理し、30分間混合して、細胞を溶解し、rAAVゲノム、中間カプシド、および空カプシドを含む全カプシドを含むAAV9を放出させた。溶解物を軟凝集させ、深層濾過し、クエンチし、0.2μmで濾過して、清澄化された溶解物を生産し、これを以下に記載されるように親和性クロマトグラフィーカラム上にロードした。
【0683】
D.150mM酢酸ナトリウム/25mM MgCl2親和性溶出緩衝液の拡張性および再現性
上記の結果は小規模親和性クロマトグラフィーカラム(4mL)上で得られたため、より大きい規模(8mLおよび40mLのカラム)でさらなる実験を行って、初期の知見を評価し、再現性を試験した。より大きい規模の親和性クロマトグラフィー実行を、150mM酢酸ナトリウム、100mMグリシン、25mM MgCl2、pH3.0の親和性溶出緩衝液を使用して完了させ、初期の小規模の結果を確認した。合計5回のスケールアップした親和性実行を、表28に示されるように、8mLの親和性カラム上での4回の実行および40mLの親和性カラム上での1回の実行を用いて実施した。
【0684】
【0685】
親和性ロードの調製は、本実施例において以前に記載されたものと同じであった。合計1Lの清澄化された細胞溶解物を、POROS(商標)CaptureSelect AAV9カラム(1cmの内径、10cmの床高、および8mLのカラム体積)上にロードした。直線流動速度が異なることを除いて小規模実行と同様の親和性クロマトグラフィー法を使用した。溶出プールを収集し、ITR qPCRのために提出して、vg回収率%を決定した。全部で4回の8mLのカラム体積の親和性クロマトグラフィー実行にわたる平均vg回収率%は、表28に示されるように88%(83%~96%の範囲)であった。
【0686】
単一のスケールアップした親和性クロマトグラフィー実行を、40mLの親和性カラム上で実施した(実行5)。親和性ロードの調製は、本実施例において以前に記載されたものと同じであった。合計4Lの清澄化された細胞溶解物を、POROS(商標)CaptureSelect AAV9カラム(1.6cmの内径、20cmの床高、および40mLのカラム体積)上にロードした。直線流動速度が異なることを除いて小規模実行と同様の親和性クロマトグラフィー法を使用した。親和性溶出プールを収集し、ITR qPCRのために提出して、vg回収率%を測定し、RP-HPLC、NRのために提出して、純度%を測定した。vg回収率%は69%(表28)であり、純度%は86%であった。これらの8回のスケールアップした親和性クロマトグラフィー実行から、小規模での最適な親和性溶出緩衝液が、より大きい規模でも最適な溶出緩衝液であると決定された。vg回収率%は、様々な規模で全ての実行にわたって同等である。したがって、最適な親和性溶出緩衝液は全ての規模で、150mM酢酸ナトリウム、100mMグリシン、25mM MgCl2、pH3.0である。
【0687】
E.まとめ
本実施例では、MgCl2濃度を150mM酢酸ナトリウムの親和性溶出緩衝液中で変化させて、vg回収率%およびAEXステップで精製された全カプシド%をさらに最適化した。4つの異なるMgCl2濃度を試験した。小規模で、150mM酢酸ナトリウム、25mM MgCl2の親和性溶出緩衝液が最良の性能を示し、親和性クロマトグラフィーステップでは65%のvg回収率およびAEXステップでは50%のvg回収率を示した。さらに、それは、試験した全ての緩衝液のうち、AEXステップで最も高い全カプシド%を提供した(35%の全カプシド)。これらの結果を確認し、再現性を試験するために、8mLおよび40mLの親和性カラムを用いるより大規模の試験を行った。これらのより大きい規模での親和性クロマトグラフィーステップでのvg回収率%は、小規模のものと同等であったが、これは、150mM酢酸ナトリウム、25mM MgCl2の親和性溶出緩衝液の結果の再現性および拡張性を示している。したがって、選択された親和性溶出緩衝液は、150mM酢酸ナトリウム、100mMグリシン、25mM MgCl2、pH3.0を含有する緩衝液であった。
【0688】
(実施例6)
代替的な再生緩衝液に関する定置洗浄(CIP)スクリーニング試験
A.CIPスクリーニング試験のための親和性ロードの調製
HEK293細胞を懸濁培養物中で増殖させ、3プラスミド系をトランスフェクトして、rAAV9ベクターを産生させた。細胞懸濁液を、回収のために50L SUB/FIN43(Finesse bioreactor)バイオリアクターから取得した。細胞回収物を、0.5%のトリトンX-100で処理し、30分間混合して、細胞を溶解し、rAAVゲノム、中間カプシド、および空カプシドを含む全カプシドを含むAAV9を放出させた。溶解物を軟凝集させ、深層濾過し、クエンチし、0.2μmで濾過して、清澄化された溶解物を生産し、これを以下に記載されるように親和性クロマトグラフィーカラム上にロードした。
【0689】
B.異なる再生緩衝液の初期スクリーニング
3MグアニジンHCl、pH5.05を含む再生緩衝液は、樹脂を完全に洗浄せず、親和性クロマトグラフィーカラム樹脂上で実行することができる精製サイクルの数を減少させた。この問題を解決するために、異なる再生緩衝液をスクリーニングして、樹脂の有効な洗浄を提供する最適な再生緩衝液を決定した。
【0690】
合計4Lの50L SUBの清澄化された溶解物を、POROS(商標)CaptureSelect AAV9カラム(1cmの内径、2.25cmの床高、および1.57mLのカラム体積)上にロードした。全ての実行について、表29に詳述される親和性クロマトグラフィー法を使用した。
【0691】
【0692】
実行1~7において使用した再生緩衝液AおよびBを、表30に列挙する。実行7については、0.1Nリン酸、pH1.90を、34min/CVの滞留時間で使用した。
【0693】
【0694】
親和性クロマトグラフィー法の各ステップからの試料を収集した。再生緩衝液画分を中和した後、ITR qPCRのために提出して、vg回収率%を決定した。結果を、表31に示す。
【0695】
【0696】
ITR qPCRによって測定されたvg回収率%に加えて、各実行についての再生緩衝液のピーク面積を表32に示されるように決定した。
【0697】
【0698】
データは、0.1Nリン酸、pH1.90が試験したもののうち最適な再生緩衝液であることを示していた。2番目および3番目に最も高いvg回収率%は、それぞれ、8min/CVの滞留時間、0.1Nリン酸(18%vg)の実行、および34min/CVの滞留時間、0.1Nリン酸(16.8%vg)の実行から得られた。再生緩衝液のピーク面積比較により、8min/CVまたは34min/CVの滞留時間を用いる0.1Nリン酸、pH1.90が、より多い量の不純物およびより多い量の残留rAAVを除去することによって他の再生緩衝液よりも性能がよいことが示された。34min/CVの滞留時間、0.1Nリン酸の再生ピークは、ピーク面積の増大を示したが、それは、親和性クロマトグラフィー法における他のステップと一致している、8min/CVの滞留時間からの変化を保証するには十分に有意ではなかった。
【0699】
リガンドアッセイデータは、新しい樹脂の最初の洗浄が、0.1Nリン酸、pH1.90を用いた洗浄後の最初の画分中に67.65ngのカラムリガンドをもたらすことを示した。これは、最初の0.1Nリン酸、pH1.90が、緩く結合したリガンドを洗浄除去することを示している。これらの結果を確認するために、0.1Nリン酸、pH1.90を、様々な親和性ロード材料(例えば、清澄化された溶解物)に対して試験した。
【0700】
C.代替的な再生緩衝液の第2のスクリーニング
スケールアップされた製造において、親和性樹脂は、再生を3MグアニジンHCl、pH5.05を用いて実施した場合にわずか2~3サイクルについて使用可能であったが、これは経済的でも効率的でもない。代替的な再生緩衝液のスクリーニングにより、0.1Nリン酸、pH1.90が最良の性能を示すことが示された。しかしながら、0.1Nリン酸、pH1.90の性能の一貫性を確保するために、様々な親和性ロード材料を使用して結果を確認した。
【0701】
代替的な再生緩衝液の第2のスクリーニングは、異なる再生緩衝液、ならびに0.1Nリン酸を試験した。合計240mLの50L SUBおよびFIN43の清澄化された溶解物を、POROS(商標)CaptureSelect AAV9カラム(1cmの内径、2.8cmの床高、および2.2mLのカラム体積)上にロードした。全ての実行について、表33に詳述される親和性クロマトグラフィー法を使用した。
【0702】
【0703】
以下の緩衝液:1M酢酸、pH2.4;0.1Nリン酸、pH1.9;0.5Mリン酸、pH1.2;100mM Tris、pH7.5中の4M尿素;100mM Tris、pH7.5中の25%プロピレングリコール;および100mM Tris、pH7.5中の10mMサルコシルの1つから、再生緩衝液AおよびBを選択した。各実行について試験した特定の代替的な再生緩衝液は、表30(実行8~13)に概略されている。親和性クロマトグラフィー法の各ステップからの試料を収集した。再生緩衝液画分を中和した後、ITR qPCRのために提出して、表31(実行8~13)に示されたようにvg回収率%を決定した。ITR qPCRに加えて、各実行に関する再生緩衝液のピーク面積を、表32(実行8~13)に示されたように決定した。データは、いずれの再生緩衝液も、これらの実験において樹脂の有効な洗浄のための陽性対照として使用された10mMサルコシル洗浄のピークを有意に低減させないことを示唆していた。10mMサルコシル洗浄は、樹脂からの不純物および残留rAAVの除去を示す、一貫した大きいA280およびA260ピークを生成し、かくして、サルコシルの使用が実行可能な進むべき道であるかどうかを決定するためのライフサイクル試験によって試験した。
【0704】
D.まとめ
本実施例では、2つのスクリーニング試験を行って、親和性クロマトグラフィープロセスにおけるCIPステップのための代替的な再生緩衝液を試験した。使用した3MグアニジンHCl、pH5.05は、樹脂を効率的に洗浄せず、親和性樹脂の限られたライフサイクルをもたらした。初期スクリーニング試験では、0.1Nリン酸、pH1.90は、より高いvg回収率%の1つおよびより高い再生ピーク面積を有し、より高いレベルの不純物の除去およびより高いレベルの残留rAAVの除去を示したため、最良のCIP再生緩衝液であった。
【0705】
異なる親和性ロード材料を使用した場合の初期スクリーニング結果との一貫性を示すために、第2のスクリーニング試験を実施した。この第2のスクリーニング試験により、試験した再生緩衝液はいずれも、10mMサルコシル洗浄のピーク面積を低減させることができないことが示され、これは、樹脂が試験した種々の再生緩衝液によって効率的に洗浄されないことを示していた。さらなる試験を行って、最適なCIPステップを決定した。
【0706】
(実施例7)
3minの滞留時間および15cmの床高を用いた親和性樹脂のサイクリング試験
A.ライフサイクル試験のための親和性ロードの調製
HEK293細胞を懸濁培養物中で増殖させ、3プラスミド系をトランスフェクトして、rAAV9ベクターを産生させた。細胞回収物を、0.5%のトリトンX-100で処理し、30分間混合して、細胞を溶解し、rAAVゲノム、中間カプシド、および空カプシドを含む全カプシドを含むAAV9を放出させた。溶解物を軟凝集させ、深層濾過し、クエンチし、0.2μmで濾過して、清澄化された溶解物を生産し、これを以下に記載されるように親和性クロマトグラフィーカラム上にロードした。
【0707】
B.POROS(商標)CaptureSelect AAV9親和性樹脂のサイクリング試験
以前のプロセス開発サイクリング試験は、3分~36分の範囲の滞留時間を用いる親和性クロマトグラフィー法を使用した。製造規模で、親和性クロマトグラフィー操作インターフェース(SKID)は、これらの滞留時間と関連する流量の範囲を収容することができない。したがって、製造規模のクロマトグラフィーSKIDを使用することができるように、このサイクリング試験は、全ての親和性ステップにわたって3分間の滞留時間を使用した。
【0708】
12回の精製サイクルを、POROS(商標)CaptureSelect AAV9親和性カラム(0.66cmの内径、15cmの床高、および5.1mLのカラム体積)に対して実施した。それぞれの実行について、合計270mLのFIN92の清澄化された溶解物を、7.5x1013vg/mLの樹脂の樹脂チャレンジで親和性カラム上にロードした。ロードの濁度は、0.2μmのPall(商標)EAVフィルターを用いて濾過する前に、約4.7±0.3NTUであると測定された。濾過された清澄化された溶解物を含有する親和性ロードの袋を、親和性カラムと直列に接続した。実行中に、親和性ロードの袋を、2~8℃に設定した冷蔵庫に入れた。
【0709】
このライフサイクル試験のために使用した親和性クロマトグラフィー法は、表34に詳述される。
【0710】
【0711】
全ての親和性クロマトグラフィーステップは、3分/CVの滞留時間を有していた。親和性溶出のための収集ゲートは、2mmの経路長で280nmにて50mAUで開始し、45mAUで停止すると特定される。この親和性溶出収集基準を用いて、複数の溶出画分を収集し、プールする必要なく、単一の溶出画分を収集することができる。再生ステップ(0.1Nリン酸、pH1.90および1%サルコシル、100mM Tris、pH7.5)は、製造操作を容易にするために48分の保持を含んでいた。カラム圧力をモニタリングし、溶出前エタノール洗浄ステップ、サルコシル再生ステップ、およびエタノール保存ステップの間に記録した。それぞれの実行に関する最大デルタカラム圧力を
図6に示し、ライフサイクル試験のそれぞれの実行に関するカラム圧力プロファイルを
図7に示す。12回の精製サイクルのそれぞれに由来する親和性溶出を収集し、分析試験のために提出し、その結果を表35に示す。
【0712】
【0713】
デルタカラム圧力は、精製サイクルの間に約0.2MPaから0.7MPaまで増大した。親和性クロマトグラフィー法におけるある特定のステップは、他のものよりも高い圧力を示した。実行1~7の間に、エタノール洗浄ステップが、最も高い圧力を示した。実行8~10の間に、エタノール保存ステップは、0.258MPa~0.375MPaに達する最も高いデルタカラム圧力を有するステップであった。最後に、実行11および12の間に、サルコシル洗浄ステップは、それぞれ、0.513MPaおよび0.713MPaに達する、最も高いデルタカラム圧力を有するステップであった。ライフサイクル試験の間のこれらの有意な圧力増大は、不純物が、再生ステップによってカラムから効率的に除去されず、樹脂上に蓄積していることを示していた。実行中の有意な圧力増大は、親和性樹脂が詰まり始めており、樹脂をさらなる親和性実行のために使用することができないことを示していた。
【0714】
POROS(商標)CaptureSelect AAV9を用いたサイクリングは、12回の精製サイクルにわたって83±6%の平均vg収率%を与えた。実行1~10の間に定量可能な未結合のvgは検出されず、実行11および12の間に2%未満の未結合のvgが検出されたため、カラムは試験を通して高い結合容量を維持した。これは、vg収率%および親和性樹脂結合容量が、12回の連続した精製実行の後でも有意に影響されないことを示していた。
【0715】
12回の実行の経過にわたって、残留HCPレベルは2495ng/1x1014vg(実行1)から6019ng/1x1014vg(実行12)まで増加し、純度パーセントは約4%減少した。まとめて、これらの結果は、親和性カラムが12回の実行の経過にわたってAAVに結合するその能力を維持するが、カラム樹脂がそれぞれの連続実行と共に不純物で詰まるようになり、カラム圧力および残留HCPの増大をもたらすことを示していた。
【0716】
全体として、このライフサイクル試験は、カラム圧力および残留HCPレベルの有意な増大、ならびに純度パーセントの減少を観察する前に、約8~10回の連続する親和性実行を、単一のPOROS(商標)CaptureSelect AAV9カラムを使用して上手く実施することができることを示した。
【0717】
C.まとめ
本実施例では、15cmの床高のカラムを使用する親和性樹脂ライフサイクル試験を、それぞれのステップについて3分間の滞留時間を用いて行った。合計12回の実行を、同じカラムおよび樹脂に対して実施した。カラム圧力およびvg回収率%を、試験を通して測定した。12回全ての実行にわたって、vg回収率%は一定のままであったが、カラム圧力は実行9~10のあたりで急上昇した。カラム圧力のこの増大は、実行の間に樹脂から効率的に除去されなかった、樹脂上での不純物の蓄積に起因するものであった。純度パーセントの減少も観察された。したがって、親和性樹脂の詰まりが観察される前に、約8~10回の実行を、単一のカラム上で上手く実施することができた。
【0718】
(実施例8)
不純物の除去のためのガードカラムプレ親和性クロマトグラフィーの使用
A.ガードカラムロードの調製
HEK293細胞を懸濁培養物中で増殖させ、3プラスミド系をトランスフェクトして、rAAV9ベクターを産生させた。細胞懸濁液を、回収のために50LのSUBバイオリアクターから取得した。細胞回収物を、0.5%のトリトンX-100で処理し、30分間混合して、細胞を溶解し、rAAVゲノム、中間カプシド、および空カプシドを含む全カプシドを含むAAV9を放出させた。溶解物を軟凝集させ、深層濾過し、クエンチし、0.2μmで濾過して、清澄化された溶解物を生産し、これを以下に記載されるように親和性クロマトグラフィーカラム上にロードした。
【0719】
B.不純物除去プレ親和性カラムに関するガードカラム試験
ガードカラムは、分析カラムの前に配置される保護カラムであり、本試験では、ガードカラムは親和性カラムの前に配置された。次いで、ガードカラムからのフロースルーを、親和性カラム中に供給した。ガードカラムの目的は、同時に、生成物の損失を最小限にしながら、親和性ロードから不純物および沈降物を除去し、それらが親和性カラムに達するのを防止することである。親和性樹脂に結合した不純物/沈降物は、カラム圧力の増大、ならびに樹脂の全体のライフサイクルの減少をもたらし得る。これは、樹脂の無効な使用、およびプロセス費用の増加をもたらす。
【0720】
少ない不純物が親和性カラム上にロードされた;親和性カラムからの再生ピークは減少する可能性が高い。5つの異なるガードカラム(POROS(商標)XQ、POROS(商標)HQ、POROS(商標)Benzyl Ultra、Capto Octyl、およびCapto 700)を、親和性クロマトグラフィー法において試験して、より少ない量の不純物がカラム上にロードされたことを示す、10mMサルコシル洗浄のピーク面積が減少したかどうかを決定した。POROS(商標)HQおよびXQ樹脂は陰イオン交換樹脂であるが、Capto Octyl、POROS(商標)Benzyl Ultra、およびCapto 700は疎水性相互作用樹脂であり、したがって、これらの2つの樹脂群は、清澄化された溶解物中に存在し得る様々な不純物を標的とする。
【0721】
それぞれのガードカラムは、表36~39に示されるような異なるクロマトグラフィー手順を使用した。
【0722】
【0723】
【0724】
【0725】
【0726】
合計1Lの50L SUBの清澄化された溶解物を、8mLのPOROS(商標)XQ、HQ、Benzyl Ultra、およびCapto Octylガードカラム上にロードしたが、230mLの50L SUBの清澄化された溶解物を、4.7mLのCapto 700ガードカラム上にロードした。合計6回の実行をこの試験のために実施した:1回の実行はそれぞれのガードカラムを使用し、対照実行はガードカラムを使用しなかった。それぞれのガードカラムからのフロースルー(240mL)を、POROS(商標)CaptureSelect AAV9親和性カラム(1cmの内径、2.8cmの床高、および2.2mLのカラム体積)上にロードした。ガードカラムの後、これらの実行のために使用した親和性クロマトグラフィー法を、表40に詳述する。
【0727】
【0728】
親和性クロマトグラフィー法におけるそれぞれの再生ステップに関するピーク面積を、表41に提供する。試料を、ガードカラムの各ステップおよびPOROS(商標)CaptureSelect AAV9カラム手順から取得し、qPCR分析のために提出した。その結果を表42に示す。qPCRの結果に基づくと、ガードカラムを親和性クロマトグラフィー法に含有せた場合、有意な生成物の損失はなかったが、これは、AAVカプシドが、媒体に結合することなく、試験したガードカラムから流出したことを示している。
【0729】
【0730】
【0731】
親和性溶出のvg回収率%は、約40%~90%の範囲であった。全ての実行について、0.1Nリン酸、pH1.90の再生ステップが、残存する結合したAAV9を樹脂から除去するのに有効であった。各実行について1%サルコシルステップは、残存するAAV9がほとんどないか、全くないことを示したが、これは、樹脂からの残留AAV9の有効な除去を示している。ガードカラム上で処理された清澄化された溶解物をロードした全ての親和性カラムについて、再生ピーク面積は、対照ピーク面積と類似していたが、これは、ガードカラムが、リン酸および/またはサルコシル洗浄によって少なくとも部分的に後に除去される不純物を効率的に吸着しなかったことを示している。
【0732】
POROS(商標)CaptureSelect AAV9樹脂の洗浄性能の主な指標は、1%サルコシルピークの面積であった。ガードカラムを使用した全ての実行は、対照実行よりも高い1%サルコシルのピーク面積を有していたが、これは、ガードカラムが表41に示されたように樹脂上への不純物の沈着を防止するのに有効ではなかったことを示している。大きい1%サルコシルのピーク面積をもたらすガードカラムを実装した後であっても、樹脂上に不純物が残存していた。したがって、AAV9のための最終的な親和性クロマトグラフィープロセスにおいては、ガードカラムを使用しなかった。
【0733】
C.まとめ
本実施例では、5つの異なるガードカラムを試験して、それらが親和性カラム上にロードされた不純物のレベルを低下させ、カラム樹脂の寿命を改善するかどうかを決定した。ガードカラムを親和性カラムの前に配置し、ガードカラムのフロースルーを親和性カラム上にロードした。ガードカラムにわたって有意なAAV9の損失は観察されなかったが、これは、AAV9が、結合することなくカラムを通って流れることを示していた。親和性クロマトグラフィープロセスからの再生ピーク面積に基づくと、ピーク面積の有意な減少は観察されなかったが、これは、ガードカラムが親和性ロードからの不純物の除去にとって有効ではなかったことを示している。したがって、ガードカラムは、親和性クロマトグラフィー法の経過にわたって親和性樹脂の詰まりを低減させるのに有効ではない。
【0734】
(実施例9)
親和性樹脂のライフサイクルを改善するためのプレ親和性ガードフィルターの使用
A.EAVガードフィルターロードの調製
HEK293細胞を懸濁培養物中で増殖させ、3プラスミド系をトランスフェクトして、rAAV9ベクターを産生させた。細胞懸濁液を、回収のためにHCD68および50LのSUBバイオリアクターから取得した。細胞回収物を、0.5%のトリトンX-100で処理し、30分間混合して、細胞を溶解し、rAAVゲノム、中間カプシド、および空カプシドを含む全カプシドを含むAAV9を放出させた。溶解物を軟凝集させ、深層濾過し、クエンチし、0.2μmで濾過して、清澄化された溶解物を生産し、これを以下に記載されるように親和性クロマトグラフィーカラム上にロードした。
【0735】
B.POROS(商標)CaptureSelect AAV9親和性樹脂と直列のEAVガードフィルターの使用
以前の実行においては、軟凝集の結果生じる、不純物によるPOROS(商標)CaptureSelect AAV9樹脂の詰まりが生じた。これは、大規模AAV製造プロセスの高価な成分である親和性樹脂のライフサイクルを減少させた。この試験の目的は、0.2μmのノミナルPall(商標)EAVプレカラムフィルターの使用が、POROS(商標)CaptureSelect AAV9親和性樹脂の現在のライフサイクルを延長することができるかどうかを決定することであった。
【0736】
濾液がカラム上に直接ロードされるように、EAVフィルターを親和性カラムと直列に配置した。合計3LのHCD68または50L SUBの清澄化された溶解物を、115L/m2の体積測定ロードで260cm2のEAVフィルターに通した。次いで、濾液をPOROS(商標)CaptureSelect AAV9親和性カラム(1.6cmの内径、11cmの床高、および22mLのカラム体積)上にロードした。この実験のために使用した親和性クロマトグラフィー法を、表43に概略する。
【0737】
【0738】
5mLの溶出画分を収集し、1M Tris塩基、pH9.0を使用して中和した。1M Tris塩基、pH9.0の体積は、溶出画分の初期pHに依存した。溶出画分をプールし、表44に示されるような導入遺伝子のqPCRおよびSEC A260/A280比を含む分析試験のために提出した。
【0739】
【0740】
図8に示されるように、カラム圧力をモニタリングし、同じ親和性カラム上で実施された6回の実行にわたって記録した。vg回収率%およびSEC A260/A280比は、6回全ての実行にわたって類似しており、平均回収率は約38%であった。各実行中にカラムから溶出するAAV9の量は、ロード体積によって正規化された溶出ピーク面積によって示されるように、一貫していた。
【0741】
これらの結果に基づいて、EAVガードフィルタープレ親和性カラムは、親和性カラムのライフサイクルを有意に増強しないと決定された。EAVガードフィルターに関するライフサイクルは、約4~5回の実行であった。5回目の実行は、約0.2MPaのエタノール溶出前洗浄ステップにおける有意な圧力増大を示した。6回目の実行までに、圧力増大はさらにより顕著となったが、これは、不純物が、樹脂上に蓄積しており、かくして、EAVガードフィルターを用いて効率的に除去されなかったことを示している。したがって、最終的な親和性クロマトグラフィープロセスにおいては、直列EAVガードフィルターの使用は実行されなかった。
【0742】
C.まとめ
本実施例では、0.2μmのPall(商標)EAVガードフィルターの使用を試験して、それが親和性カラム上にロードされる前に、親和性ロードから残留軟凝集体を除去するかどうかを決定した。残留軟凝集剤は、不純物による親和性樹脂の詰まりをもたらし、そのライフサイクルを減少させた。ガードフィルターが様々なロードについて成功したかどうかを決定するために、様々な供給源材料を試験した。ガードフィルターを用いた親和性樹脂のライフサイクルは約4~5回の実行であり、再生ピーク面積の有意な減少はなかった。したがって、最終的な親和性クロマトグラフィープロセスにおいては、ガードフィルターを使用しなかった。
【0743】
(実施例10)
親和性クロマトグラフィーのための溶出およびCIP床高および滞留時間の最適化
A.溶出床高および滞留時間の試験のための親和性ロードの調製
HEK293細胞を懸濁培養物中で増殖させ、3プラスミド系をトランスフェクトして、rAAV9ベクターを産生させた。細胞懸濁液を、回収のためにFIN43バイオリアクターから取得した。細胞回収物を、0.5%のトリトンX-100で処理し、30分間混合して、細胞を溶解し、rAAVゲノム、中間カプシド、および空カプシドを含む全カプシドを含むAAV9を放出させた。溶解物を軟凝集させ、深層濾過し、クエンチし、0.2μmで濾過して、清澄化された溶解物を生産し、これを以下に記載されるように親和性クロマトグラフィーカラム上にロードした。
【0744】
B.溶出およびCIP床高および滞留時間の試験
この試験の目的は、POROS(商標)CaptureSelect AAV9親和性クロマトグラフィーの溶出、CIP床高および滞留時間が、親和性溶出のvg回収率%、純度%、およびA260/A280比に影響するかどうかを決定することであった。これを試験するために、3つの異なるカラム床高(10、15、および20cm)および3つの異なる滞留時間(3、5.5、および8分/CV)を、表45に概略されるように試験した。
【0745】
【0746】
親和性ロードの体積を、8.00x1013vg/mLの樹脂の樹脂チャレンジを保持し、出発材料の導入遺伝子力価を使用することによって決定した。3つの異なるPOROS(商標)CaptureSelect AAV9カラムを、複数の実行(3.4、5.1、および6.9mLのカラム体積)のために使用した。3分/CV、5.5分/CV、および8分/CVの滞留時間に関する一般的な親和性クロマトグラフィー法を、表46~48に示す。
【0747】
【0748】
【0749】
【0750】
各実行に関する溶出プールを収集し、表49に示されるようにvg回収率%、HCP、HCDNA、純度%、およびSEC A260/A280比に関する分析試験のために提出した。
【0751】
【0752】
10回の親和性クロマトグラフィー実行を行って、10cm~20cmの床高、および溶出の滞留時間および3分/CV~8分/CVのCIPが、vg回収率%、純度%、不純物レベル(HCP、HCDNA)、およびA260/A280比に有意に影響するかどうかを決定した。試験した床高および滞留時間のうち、HCP、HCDNA、純度%、凝集、またはA260/A280比含量における顕著な差異はなかった。vg回収率%のわずかな差異があったが、これは、溶出およびCIPステップに関して3分/CVおよび5.5分/CVの滞留時間が最適であり得ることを示している。溶出に関する3および5.5min/CVの滞留時間は、生成物の品質または収率の低下をもたらさなかった。3分/CVおよび5.5分/Cvの滞留時間の実行は、0.1Nリン酸、pH1.9および1%サルコシル、100mM Tris、pH7.5のステップを除いて、全てのステップについて5カラム体積を使用した。これらのステップは、60分の総接触時間を可能にするのに十分な体積を標的とした。全ての滞留時間でのCIPピークは、形状、ピーク面積、および保持体積において一致していた。より低い滞留時間を使用して、プロセス時間を減少させることができた。この試験に基づいて、3分/CVの滞留時間が、15cmの床高と共に、親和性溶出およびCIPステップにとっての最適な滞留時間であると決定された。
【0753】
C.まとめ
本実施例では、3つの異なる溶出およびCIP滞留時間および床高が、親和性溶出液のvg回収率%、純度%、およびA260/A280比にどのように影響するかを決定するために、それらを試験した。HCPおよびHCDNAレベルならびに純度%には有意差はなかった。3分/CVおよび5.5分/CVの滞留時間は、わずかにより高いvg回収率%を有していた。したがって、プロセス時間を減少させるために、溶出およびCIPのために3分の滞留時間を実行した。
【0754】
(実施例11)
パイロットおよび製造規模の親和性クロマトグラフィープロセス
A.大規模での清澄化された溶解物または親和性ロードの調製
単回使用バイオリアクター(SUB)中で、HEK293細胞を懸濁培養物中で増殖させ、3プラスミド系をトランスフェクトして、rAAV9ベクターを産生させた。10%トリトンX-100をSUBに添加して、0.5%の最終濃度を達成し、30分間撹拌して細胞を溶解し、rAAVゲノム、中間カプシドおよび空カプシドを含む全カプシドを含むAAV9を放出させた。溶解物を軟凝集させた後、濾過して、清澄化された溶解物を生産した。清澄化された溶解物を0.2μmのプレカラムフィルターの中を通した後、溶解物をPOROS(商標)CaptureSelect AAV9親和性樹脂上にロードした。
【0755】
B.250および2000LのDMD親和性クロマトグラフィー規模への最適化されたスケールアップ
最適化された親和性クロマトグラフィー法を、250Lおよび2000LのSUB中で生産されたAAVベクターの下流の処理のために、rAAV9捕捉およびHCP除去のためにスケールアップした。250L規模では、2.67LのPOROS(商標)CaptureSelect AAV9カラム(20cm(直径)x8.5cm(高さ))に、8x1013vg/mL樹脂(ITR qPCRによる)の標的樹脂チャレンジでロードした。2000L規模では、17.663L(30cm(d)x25cm(h))または25.610L(45cm(d)x15±1cm(h))のPOROS CaptureSelect AAV9カラムに、5x1016vg/L樹脂以下の標的ローディング容量でロードした。
【0756】
250Lおよび2000L規模のための親和性クロマトグラフィー法を、表50~表52に提供する。
図9および
図10は、それぞれ、250Lおよび2000L規模で実行した代表的な親和性クロマトグラフィー実行のクロマトグラムを提供する。
【0757】
250L規模については、溶出のUV収集基準は、25mAUのUV280で開始し、65mAUで終了し(2mmの経路長)、合計0.5~1.0CVの溶出を収集した。2000L規模については、溶出のUV収集基準は、12.5mAUのUV280で開始し、112.5mAUで終了し(5mmの経路長)、合計1.1~1.9CVの溶出を収集した。250Lおよび2000L規模に関する分析結果を、表53~表55に示す。ミニ-ジストロフィン導入遺伝子を含むrAAVベクターの精製のための親和性クロマトグラフィープロセスを、生成物の品質を維持しながら、250Lおよび2000Lの規模にスケールアップすることができた。表56および表57は、2000L規模での、および17.663Lまたは25.610Lのカラムを使用した、清澄化された溶解物からのHCタンパク質の有意な対数減少を示す(3.0~4.4LRV)。
【0758】
【0759】
【0760】
【0761】
【0762】
【0763】
【0764】
【0765】
【0766】
【0767】
【0768】
【0769】
【配列表】
【国際調査報告】