(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】短腸症候群の予防又は治療のためのインスリン分泌ペプチドとGLP-2の併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/26 20060101AFI20240118BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240118BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240118BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20240118BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240118BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240118BHJP
C07K 14/605 20060101ALI20240118BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240118BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
A61K38/26
A61P1/00
A61P43/00 121
A61K38/16
A61K47/68
A61K39/395 Y
C07K14/605 ZNA
C07K19/00
C07K16/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537538
(86)(22)【出願日】2021-12-24
(85)【翻訳文提出日】2023-06-20
(86)【国際出願番号】 KR2021019854
(87)【国際公開番号】W WO2022139552
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0183440
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515022445
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】チョイ ジェ ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】リ ジン ボン
(72)【発明者】
【氏名】リ サン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】クウォン ヒョン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ホン ソン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】ユ ニョン サン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA94
4C076CC16
4C076EE41M
4C076EE59M
4C076FF31
4C076FF32
4C076FF68
4C084AA01
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA19
4C084BA23
4C084BA44
4C084CA43
4C084CA53
4C084DB34
4C084DB35
4C084NA05
4C084NA12
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZC751
4C085AA33
4C085BB36
4C085BB42
4C085CC22
4C085DD11
4C085EE03
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA18
4H045BA41
4H045BA50
4H045BA57
4H045CA40
4H045DA30
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA10
4H045GA23
(57)【要約】
本発明は、短腸症候群の予防、改善又は治療のためのインスリン分泌ペプチドとGLP-2の併用療法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的有効量のインスリン分泌ペプチドを含有する、短腸症候群(short bowel syndrome)の予防又は治療のための薬学的組成物であって、
前記薬学的組成物は、グルカゴン様ペプチド-2(Glucagon-like peptide-2, GLP-2)と併用投与されることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項2】
薬学的有効量のGLP-2を含有する、短腸症候群の予防又は治療のための薬学的組成物であって、
前記薬学的組成物は、インスリン分泌ペプチドと併用投与されることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項3】
前記インスリン分泌ペプチドは、グルカゴン様ペプチド-1(Glucagon-like peptide-1, GLP-1)、エキセンジン-3、エキセンジン-4、それらのアゴニスト、誘導体、フラグメント、変異体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記インスリン分泌ペプチドは、インスリン分泌ペプチドのN末端のヒスチジン残基がイミダゾアセチルデスヒスチジン、デスアミノヒスチジン、β-ヒドロキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジン、N-ジメチルヒスチジン又はβ-カルボキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジンに置換されたインスリン分泌ペプチド誘導体である、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記インスリン分泌ペプチドは、天然エキセンジン-4、エキセンジン-4のN末端の1番目のアミノ酸であるヒスチジン残基のα炭素及びα炭素に結合されたN末端のアミノ基が除去されたエキセンジン-4誘導体、エキセンジン-4のN末端のアミノ基が除去されたエキセンジン-4誘導体、エキセンジン-4のN末端のアミノ基がヒドロキシ基に置換されたエキセンジン-4誘導体、エキセンジン-4のN末端のアミノ基が2つのメチル基で修飾されたエキセンジン-4誘導体、エキセンジン-4のN末端のアミノ基がカルボキシ基に置換されたエキセンジン-4誘導体、エキセンジン-4の12番目のアミノ酸(リシン)がセリンに置換されたエキセンジン-4誘導体、又はエキセンジン-4の12番目のアミノ酸(リシン)がアルギニンに置換されたエキセンジン-4誘導体である、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記GLP-2は、天然GLP-2又はGLP-2誘導体である、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記GLP-2誘導体は、天然GLP-2配列において少なくとも1つのアミノ酸に置換(substitution)、付加(addition)、欠失(deletion)、修飾(modification)及びそれらの組み合わせからなる群から選択される改変が行われたGLP-2誘導体である、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記GLP-2誘導体は、配列番号1において1番目、2番目、30番目及び33番目のアミノ酸のうち少なくとも1つのアミノ酸に改変が行われたものである、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記GLP-2誘導体は、下記一般式1で表されるアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の薬学的組成物。
[一般式1]
X
1X
2DGSFSDEMNTILDNLAARDFINWLIQTX
30ITDX
34(配列番号9)
ここで、
X
1はヒスチジン、イミダゾアセチルデスヒスチジン、デスアミノヒスチジン、β-ヒドロキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジン、N-ジメチルヒスチジン又はβ-カルボキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジンであり、
X
2はアラニン、グリシン又はAib(2-aminoisobutyric acid)であり、
X
30はリシン又はアルギニンであり、
X
34は存在しないか、リシン、アルギニン、グルタミン、ヒスチジン、6-アジドリシン又はシステインであるが、
一般式1のアミノ酸配列のうち配列番号1と同じ配列は除く。
【請求項10】
前記GLP-2誘導体は、
(1)X
1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X
2がグリシンであり、X
30がリシンであり、X
34がシステインであるか、
(2)X
1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X
2がグリシンであり、X
30がリシンであり、X
34がリシンであるか、
(3)X
1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X
2がグリシンであり、X
30がアルギニンであり、X
34がリシンであるか、
(4)X
1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X
2がグリシンであり、X
30がリシンであり、X
34が6-アジドリシンであるか、
(5)X
1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X
2がグリシンであり、X
30がアルギニンであり、X
34がシステインであるか、
(6)X
1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X
2がAibであり、X
30がリシンであり、X
34がシステインであるか、又は
(7)X
1がヒスチジンであり、X
2がAibであり、X
30がリシンであり、X
34がシステインである、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記GLP-2誘導体は、下記一般式2で表されるアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の薬学的組成物。
[一般式2]
X
1X
2DGSFSDEMNTILDNLAARDFINWLIQTX
30ITDX
34(配列番号10)
ここで、
X
1はヒスチジン、イミダゾアセチルデスヒスチジン、デスアミノヒスチジン、β-ヒドロキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジン、N-ジメチルヒスチジン又はβ-カルボキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジンであり、
X
2はアラニン、グリシン又はAib(2-aminoisobutyric acid)であり、
X
30はリシン又はアルギニンであり、
X
34は少なくとも1つの任意のアミノ酸、又は改変が行われた少なくとも1つの任意のアミノ酸であるが、
一般式2のアミノ酸配列のうち配列番号1と同じ配列は除く。
【請求項12】
前記GLP-2誘導体は、配列番号2~8からなる群から選択されるアミノ酸配列のペプチドである、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記組成物は、個体に投与すると、体重の増加、小腸長の増加、胃腸運動性の減少及び栄養分吸収の増加の少なくとも1つを引き起こす、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記インスリン分泌ペプチド及びGLP-2は、そのC末端が改変されていないか、アミド化されている、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
(i)前記インスリン分泌ペプチドは、その生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質が結合された持続型結合体の形態であるか、
(ii)前記GLP-2は、その生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質が結合された持続型結合体の形態であるか、又は
(iii)前記インスリン分泌ペプチド及びGLP-2のそれぞれは、それらの生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質が結合された持続型結合体の形態である、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
前記結合体は、下記化学式(1)で表される、請求項15に記載の薬学的組成物。
【化1】
ここで、
Xはインスリン分泌ペプチド又はGLP-2であり、
Lはエチレングリコール繰り返し単位を含むリンカーであり、
aは0又は自然数であるが、aが2以上であればそれぞれのLは互いに独立しており、
Fは免疫グロブリンFc領域であり、
前記「-」は共有結合である。
【請求項17】
前記免疫グロブリンFc領域は、非グリコシル化されたIgG4 Fc領域である、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
前記Fは、2本のポリペプチド鎖からなる二量体であり、Lの一末端が前記2本のポリペプチド鎖のいずれかのポリペプチド鎖にのみ連結されている、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
前記Lはポリエチレングリコールである、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
前記L中のエチレングリコール繰り返し単位部分の化学式量は、1~100kDaの範囲にある、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
前記組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤をさらに含む、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項22】
前記インスリン分泌ペプチドを含有する組成物は、GLP-2を含有する組成物と同時、順次又は逆順に併用投与されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短腸症候群の予防又は治療のためのインスリン分泌ペプチドとGLP-2の併用療法に関する。
【背景技術】
【0002】
短腸症候群(short bowel syndrome, SBS)とは、先天的に小腸長が短かくて発生するか、手術などにより後天的に小腸の一定割合以上が消失(小腸の吸収面積減少)して発生する消化吸収不良症候群を意味し、栄養吸収不足、栄養吸収障害、腹痛、下痢、脂肪便、乳糖不耐症、脱水、体重減少、無気力、疲労などの症状が現れる。
【0003】
グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)は、摂取した栄養分に反応して小腸のL細胞において生成される33個のアミノ酸から構成されるペプチドホルモンである。GLP-2は、小腸、大腸で粘膜の成長を促進し、腸細胞及びcrypt細胞の成長促進及びアポトーシス(apoptosis)を抑制する。また、GLP-2は、小腸で栄養分の吸収を増加させ、腸透過性を低下させ、胃排出(Gastric emptying)及び胃酸分泌を抑制し、腸血流速度を上昇させ、腸平滑筋を弛緩させる。さらに、GLP-2は、短腸症候群の齧歯類実験モデルにおいて栄養吸収及び消化管吸収を促進させることが報告されている(非特許文献1)。
【0004】
一方、インスリン分泌ペプチドの一種であるグルカゴン様ペプチド-1(Glucagon like peptide 1, GLP-1)は、回腸と大腸のL細胞から分泌されるインクレチン(incretin)ホルモンである。GLP-1の主な作用はインスリン分泌を増加させることであり、グルコースの濃度に応じたインスリン分泌(Glucose dependent secretion)が行われるので、低血糖が発生しない。これらの特徴から2型糖尿病の治療方法に適用されるが、血中半減期が約2分と非常に短いので、薬剤として開発する上で大きな制約がある。よって、開発されて市販されているGLP-1アゴニストとしては、アメリカドクトカゲ(gila monster)の唾液腺から精製されたGLP-1アナログであるエキセンジン-4(Exendin-4)が挙げられる。これは、DPP-IV(Dipeptidyl peptidase-4)に対する抵抗性と共に、GLP-1より高い生理活性を有する。よって、体内半減期が2~4時間とGLP-1に比べて延長された体内半減期を有する(特許文献1)。しかし、DPP-IVの抵抗性を向上させる方法のみでは十分な生理活性の持続期間を期待できず、例えば現在市販されているエキセンジン-4(エキセナチド,exenatide)の場合、患者に1日2回注射で投与しなければならず、投与による吐き気や嘔吐の誘発が患者に大きな負担になるという欠点が依然として残っている。
【0005】
現在まで、GLP-2を用いた短腸症候群治療剤の開発は十分でないので、持続的な治療剤の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5424286号明細書
【特許文献2】韓国公開特許第10-2019-0037181号公報
【特許文献3】国際公開第97/034631号
【特許文献4】国際公開第96/032478号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Ljungmann K et al., Am. J. Physiol. Gastrointest Liver Physiol., 2001, 281(3):G779-85
【非特許文献2】H.Neurath, R.L.Hill, The Proteins, Academic Press, New York, 1979
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、インスリン分泌ペプチドとGLP-2(Glucagon-like peptide-2, GLP-2)を併用する、短腸症候群(short bowel syndrome)の予防、改善又は治療のための療法を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、インスリン分泌ペプチドを含有する、短腸症候群の予防又は治療のための薬学的組成物であって、前記薬学的組成物は、GLP-2と併用投与されることを特徴とする薬学的組成物を提供することを目的とする。
【0010】
さらに、本発明は、GLP-2を含有する、短腸症候群の予防又は治療のための薬学的組成物であって、前記薬学的組成物は、インスリン分泌ペプチドと併用投与されることを特徴とする薬学的組成物を提供することを目的とする。
【0011】
さらに、本発明は、インスリン分泌ペプチド及びGLP-2を含む組合せ物を提供することを目的とする。
【0012】
さらに、本発明は、前記組合せ物を含む、短腸症候群の予防、改善又は治療のための薬学的組成物を提供することを目的とする。
【0013】
さらに、本発明は、インスリン分泌ペプチド及びGLP-2を含む、短腸症候群の予防、改善又は治療のための薬学的キットを提供することを目的とする。
【0014】
さらに、本発明は、前記組合せ物、薬学的組成物又は薬学的キットを必要とする個体に、前記組合せ物、薬学的組成物又は薬学的キットを投与及び/又は使用するステップを含む、短腸症候群の予防、改善又は治療方法を提供することを目的とする。
【0015】
さらに、本発明は、薬学的有効量のインスリン分泌ペプチドを含有する組成物、及び薬学的有効量のGLP-2を含有する組成物を必要とする個体に、薬学的有効量のインスリン分泌ペプチドを含有する組成物と、薬学的有効量のGLP-2を含有する組成物を併用投与及び/又は併用使用するステップを含む、短腸症候群の予防、改善又は治療方法を提供することを目的とする。
【0016】
さらに、本発明は、前記組合せ物、薬学的組成物又は薬学的キットの、短腸症候群の予防、改善もしくは治療用途、及び/又は短腸症候群の予防、改善もしくは治療のための薬剤の製造のための用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明を実現する一態様は、インスリン分泌ペプチドとGLP-2を併用する、短腸症候群の予防、改善又は治療のための療法である。
【0018】
本発明を実現する一態様は、インスリン分泌ペプチドを含有する、短腸症候群の予防、改善又は治療のための組成物であって、前記インスリン分泌ペプチドは、GLP-2と併用投与されることを特徴とする組成物である。
【0019】
一具体例として、本発明は、薬学的有効量のインスリン分泌ペプチドを含有する、短腸症候群の予防、改善又は治療のための薬学的組成物であって、前記薬学的組成物は、GLP-2と併用投与されることを特徴とする。
【0020】
他の具体例として、本発明は、インスリン分泌ペプチドを含有する、短腸症候群の予防又は改善のための食品組成物であって、前記食品組成物は、GLP-2と併用投与されることを特徴とする。
【0021】
本発明を実現する一態様は、GLP-2を含有する、短腸症候群の予防、改善又は治療のための組成物であって、前記GLP-2は、インスリン分泌ペプチドと併用投与されることを特徴とする組成物である。
【0022】
一具体例として、本発明は、薬学的有効量のGLP-2を含有する、短腸症候群の予防、改善又は治療のための薬学的組成物であって、前記薬学的組成物は、インスリン分泌ペプチドと併用投与されることを特徴とする。
【0023】
他の具体例として、本発明は、GLP-2を含有する、短腸症候群の予防又は改善のための食品組成物であって、前記食品組成物は、インスリン分泌ペプチドと併用投与されることを特徴とする。
【0024】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記インスリン分泌ペプチドは、グルカゴン様ペプチド-1(Glucagon-like peptide-1, GLP-1)、エキセンジン-3、エキセンジン-4、それらのアゴニスト(agonist)、誘導体、フラグメント、変異体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする。
【0025】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記インスリン分泌ペプチドは、インスリン分泌ペプチドのN末端のヒスチジン残基がイミダゾアセチルデスヒスチジン、デスアミノヒスチジン、β-ヒドロキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジン、N-ジメチルヒスチジン又はβ-カルボキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジンに置換されたインスリン分泌ペプチド誘導体であることを特徴とする。
【0026】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記インスリン分泌ペプチドは、天然エキセンジン-4、エキセンジン-4のN末端の1番目のアミノ酸であるヒスチジン残基のα炭素及びα炭素に結合されたN末端のアミノ基が除去されたエキセンジン-4誘導体、エキセンジン-4のN末端のアミノ基が除去されたエキセンジン-4誘導体、エキセンジン-4のN末端のアミノ基がヒドロキシ基に置換されたエキセンジン-4誘導体、エキセンジン-4のN末端のアミノ基が2つのメチル基で修飾されたエキセンジン-4誘導体、エキセンジン-4のN末端のアミノ基がカルボキシ基に置換されたエキセンジン-4誘導体、エキセンジン-4の12番目のアミノ酸(リシン)がセリンに置換されたエキセンジン-4誘導体、又はエキセンジン-4の12番目のアミノ酸(リシン)がアルギニンに置換されたエキセンジン-4誘導体であることを特徴とする。
【0027】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記GLP-2は、天然GLP-2又はGLP-2誘導体であることを特徴とする。
【0028】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記GLP-2誘導体は、天然GLP-2配列において少なくとも1つのアミノ酸に置換(substitution)、付加(addition)、欠失(deletion)、修飾(modification)及びそれらの組み合わせからなる群から選択される改変が行われたGLP-2誘導体であることを特徴とする。
【0029】
前述した具体例のいずれかによる薬学的組成物において、前記GLP-2誘導体は、配列番号1において1番目、2番目、30番目及び33番目のアミノ酸のうち少なくとも1つのアミノ酸に改変が行われたものであることを特徴とする。
【0030】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記GLP-2誘導体は、一般式1で表されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする。
[一般式1]
X1X2DGSFSDEMNTILDNLAARDFINWLIQTX30ITDX34(配列番号9)
【0031】
ここで、X1はヒスチジン、イミダゾアセチルデスヒスチジン、デスアミノヒスチジン、β-ヒドロキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジン、N-ジメチルヒスチジン又はβ-カルボキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジンであり、X2はアラニン、グリシン又はAib(2-aminoisobutyric acid)であり、X30はリシン又はアルギニンであり、X34は存在しないか、リシン、アルギニン、グルタミン、ヒスチジン、6-アジドリシン又はシステインであるが、一般式1のアミノ酸配列のうち配列番号1と同じ配列は除く。
【0032】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記GLP-2誘導体は、(1)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がグリシンであり、X30がリシンであり、X34がシステインであるか、(2)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がグリシンであり、X30がリシンであり、X34がリシンであるか、(3)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がグリシンであり、X30がアルギニンであり、X34がリシンであるか、(4)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がグリシンであり、X30がリシンであり、X34が6-アジドリシンであるか、(5)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がグリシンであり、X30がアルギニンであり、X34がシステインであるか、(6)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がAibであり、X30がリシンであり、X34がシステインであるか、又は(7)X1がヒスチジンであり、X2がAibであり、X30がリシンであり、X34がシステインであることを特徴とする。
【0033】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記GLP-2誘導体は、一般式2で表されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする。
[一般式2]
X1X2DGSFSDEMNTILDNLAARDFINWLIQTX30ITDX34(配列番号10)
【0034】
ここで、X1はヒスチジン、イミダゾアセチルデスヒスチジン、デスアミノヒスチジン、β-ヒドロキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジン、N-ジメチルヒスチジン又はβ-カルボキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジンであり、X2はアラニン、グリシン又はAib(2-aminoisobutyric acid)であり、X30はリシン又はアルギニンであり、X34は少なくとも1つの任意のアミノ酸、又は改変が行われた少なくとも1つの任意のアミノ酸であるが、一般式2のアミノ酸配列のうち配列番号1と同じ配列は除く。
【0035】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記GLP-2誘導体は、配列番号2~8からなる群から選択されるアミノ酸配列のペプチドであることを特徴とする。
【0036】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記組成物は、個体に投与すると、体重の増加、小腸長の増加、胃腸運動性の減少及び栄養分吸収の増加の少なくとも1つを引き起こすことを特徴とする。
【0037】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記インスリン分泌ペプチド及びGLP-2は、そのC末端が改変されていないか、アミド化されていることを特徴とする。
【0038】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、(i)前記インスリン分泌ペプチドは、その生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質が結合された持続型結合体の形態であるか、(ii)前記GLP-2は、その生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質が結合された持続型結合体の形態であるか、又は(iii)前記インスリン分泌ペプチド及びGLP-2のそれぞれは、それらの生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質が結合された持続型結合体の形態であることを特徴とする。
【0039】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記結合体は、化学式(1)で表されることを特徴とする。
【0040】
X-La-F・・・(1)
【0041】
ここで、Xはインスリン分泌ペプチド又はGLP-2であり、Lはエチレングリコール繰り返し単位を含むリンカーであり、aは0又は自然数であるが、aが2以上であればそれぞれのLは互いに独立しており、Fは免疫グロブリンFc領域であり、前記「-」は共有結合である。
【0042】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記免疫グロブリンFc領域は、非グリコシル化されたIgG4 Fc領域であることを特徴とする。
【0043】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記Fは、2本のポリペプチド鎖からなる二量体であり、Lの一末端が前記2本のポリペプチド鎖のいずれかのポリペプチド鎖にのみ連結されていることを特徴とする。
【0044】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記Lはポリエチレングリコールであることを特徴とする。
【0045】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記L中のエチレングリコール繰り返し単位部分の化学式量は、1~100kDaの範囲にあることを特徴とする。
【0046】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤をさらに含むことを特徴とする。
【0047】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記インスリン分泌ペプチドを含有する組成物は、GLP-2を含有する組成物と同時、順次又は逆順に併用投与されることを特徴とする。
【0048】
本発明を実現する他の態様は、インスリン分泌ペプチド及びGLP-2を含む組合せ物である。
【0049】
本発明を実現する他の態様は、前記組合せ物を含む、短腸症候群の予防、改善又は治療用薬学的組成物である。
【0050】
本発明を実現する他の態様は、前記組合せ物を含む、短腸症候群の予防、改善又は治療用薬学的キットである。
【0051】
本発明を実現する他の態様は、前記組合せ物、薬学的組成物又は薬学的キットを必要とする個体に、前記組合せ物、薬学的組成物又は薬学的キットを投与及び/又は使用するステップを含む、短腸症候群の予防、改善又は治療方法である。
【0052】
本発明を実現する他の態様は、薬学的有効量のインスリン分泌ペプチドを含有する組成物、及び薬学的有効量のGLP-2を含有する組成物を必要とする個体に、薬学的有効量のインスリン分泌ペプチドを含有する組成物と、薬学的有効量のGLP-2を含有する組成物を併用投与及び/又は併用使用するステップを含む、短腸症候群の予防、改善又は治療方法である。
【0053】
本発明を実現する他の態様は、前記組合せ物、薬学的組成物又は薬学的キットの、短腸症候群の予防、改善もしくは治療用途、及び/又は短腸症候群の予防もしくは治療のための薬剤の製造のための用途である。
【発明の効果】
【0054】
本発明によるインスリン分泌ペプチドとGLP-2の併用投与療法は、単独投与療法に比べて向上した効果を有するので、短腸症候群の予防、改善又は治療に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】インスリン分泌ペプチド(GLP-1誘導体持続型結合体)とGLP-2(GLP-2誘導体持続型結合体)の併用投与によるマウスの体重の変化を示す図である。
【
図2】インスリン分泌ペプチド(GLP-1誘導体持続型結合体)とGLP-2(GLP-2誘導体持続型結合体)の併用投与によるマウスの小腸長の変化を示す図である。
【
図3】インスリン分泌ペプチド(GLP-1誘導体持続型結合体)とGLP-2(GLP-2誘導体持続型結合体)の併用投与による胃腸運動性の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0057】
なお、本発明で開示される各説明及び実施形態はそれぞれ他の説明及び実施形態にも適用される。すなわち、本発明で開示される様々な要素のあらゆる組み合わせが本発明に含まれる。また、以下の具体的な記述に本発明が限定されるものではない。
【0058】
また、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、通常の実験のみを用いて本発明に記載された本発明の特定の態様の多くの等価物を認識し、確認することができるであろう。さらに、その等価物も本発明に含まれることが意図されている。
【0059】
本明細書全体を通して、天然に存在するアミノ酸に対する通常の1文字及び3文字コードが用いられるだけでなく、Aib(2-aminoisobutyric acid)、AZK(6-azidolysine)などの他のアミノ酸に対して一般に許容される3文字コードが用いられる。また、本明細書において略語で言及したアミノ酸は、IUPAC-IUB命名法に従って記載したものである。
アラニン Ala,A
アルギニン Arg,R
アスパラギン Asn,N
アスパラギン酸 Asp,D
システイン Cys,C
グルタミン酸 Glu,E
グルタミン Gln,Q
グリシン Gly,G
ヒスチジン His,H
イソロイシン Ile,I
ロイシン Leu,L
リシン Lys,K
メチオニン Met,M
フェニルアラニン Phe,F
プロリン Pro,P
セリン Ser,S
トレオニン Thr,T
トリプトファン Trp,W
チロシン Tyr,Y
バリン Val,V
【0060】
本発明を実現する一態様は、インスリン分泌ペプチドを含有する、短腸症候群(short bowel syndrome, SBS)の予防、改善又は治療のための薬学的組成物であって、前記インスリン分泌ペプチドは、グルカゴン様ペプチド-2(Glucagon-like peptide-2, GLP-2)と併用投与されることを特徴とする薬学的組成物を提供する。
【0061】
本発明の一具体例において、前記薬学的組成物は、薬学的有効量のインスリン分泌ペプチドを含有する、短腸症候群の予防又は治療のための薬学的組成物であって、前記薬学的組成物は、GLP-2(例えば、薬学的有効量のGLP-2)と併用投与されることを特徴とするが、これらに限定されるものではない。
【0062】
本発明を実現する他の態様は、GLP-2を含有する、短腸症候群の予防、改善又は治療のための薬学的組成物であって、前記GLP-2は、インスリン分泌ペプチドと併用投与されることを特徴とする薬学的組成物を提供する。
【0063】
本発明の一具体例において、前記薬学的組成物は、薬学的有効量のGLP-2を含有する、短腸症候群の予防、改善又は治療のための薬学的組成物であって、前記薬学的組成物は、インスリン分泌ペプチド(例えば、薬学的有効量のインスリン分泌ペプチド)と併用投与されることを特徴とするが、これらに限定されるものではない。
【0064】
本発明の一具体例として、前記併用投与は、(i)インスリン分泌ペプチドと共にGLP-2を混合物の形態又は別個の分離された形態で含む薬学的組成物を用いて併用投与するものであってもよく、(ii)前記インスリン分泌ペプチドを含有する薬学的組成物とGLP-2を含有する別個の薬学的組成物を同時、順次又は逆順に併用投与するものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0065】
本発明の他の態様は、インスリン分泌ペプチドとGLP-2を併用する、短腸症候群の予防、改善又は治療用途を提供する。
【0066】
他の具体例として、インスリン分泌ペプチドとGLP-2を併用する、短腸症候群の予防、改善又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0067】
具体的には、本発明の一態様は、インスリン分泌ペプチド及びGLP-2を含む、組合せ物、薬学的組成物又は薬学的キットを提供する。一具体例として、短腸症候群の予防、改善又は治療用組合せ物、薬学的組成物又は薬学的キットを提供する。
【0068】
本発明における「組合せ物(combination)」とは、インスリン分泌ペプチドとGLP-2の併用投与用途を有するものを意味し、「併用用途(combined used)」と同義である。これには、インスリン分泌ペプチドとGLP-2が併用されることを特徴とする、薬学的組成物の形態及び薬学的キットの形態が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
前記組合せ物は、a)インスリン分泌ペプチドとGLP-2が混合された1つの混合物(mixture)として投与されるものであってもよく、b)インスリン分泌ペプチドとGLP-2が分離された形態で投与されるものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0070】
インスリン分泌ペプチドとGLP-2が分離された形態の場合、インスリン分泌ペプチド及びGLP-2のそれぞれが別個の製剤に製剤化され、別個の製剤が同時、個別、順次又は逆順に投与されてもよい。
【0071】
本発明における「併用投与」、「併用される」又は「併用する」とは、単に同時の投与を意味するだけでなく、インスリン分泌ペプチド及びGLP-2が個体に共に作用し、各物質が本然の機能と同等又はそれ以上のレベルの機能を果たす投与形態を意味するものと理解されるべきである。よって、本願における「併用」とは、同時、個別、順次又は逆順の投与を意味し、その順序はいかなるものでもよいものと理解されるべきである。前記投与が順次、逆順又は個別の場合、投与の順序は、特に限定されるものではないが、2次成分投与の間隔は、前記併用の有利な効果を失わないものでなければならない。
【0072】
本発明における「組合せ物を含む組成物(composition)」とは、前記インスリン分泌ペプチド及びGLP-2を含む組合せ物自体、又はそれらを含み、治療学的用途を有するものを意味するが、上記例に限定されるものではない。例えば、短腸症候群の予防、改善又は治療用途を有するものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明における「組合せ物を含む組成物」は、「組成物」と互換的に用いられる。
【0073】
本発明による組合せ物を含む組成物は、インスリン分泌ペプチドとGLP-2を併用投与するためのものであり、インスリン分泌ペプチド及びGLP-2が1つの製剤に製剤化されたものであってもよく、個別に製剤化されたものであってもよい。具体的には、インスリン分泌ペプチドとGLP-2を同時、個別、順次又は逆順に投与するものであるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
本発明における「キット」は、インスリン分泌ペプチドとGLP-2を併用投与するために、本発明による組合せ物又は組成物を含むものであってもよい。具体的には、本発明によるキットは、1つの製剤に製剤化されたインスリン分泌ペプチド及びGLP-2、又はインスリン分泌ペプチド及びGLP-2のそれぞれの個別製剤を含むものであってもよく、2つの物質の併用投与に必要な物質をさらに含むものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0075】
本発明は、インスリン分泌ペプチドにGLP-2を加えて併用すると、インスリン分泌ペプチド単独に比べて、短腸症候群の予防、改善又は治療効果が画期的に向上することを確認し、上記併用使用療法を見出した。
【0076】
前記「インスリン分泌ペプチド」とは、インスリン分泌機能を有するペプチドを意味し、膵臓β細胞のインスリンの合成又は発現を刺激することができる。前記インスリン分泌ペプチドとしては、例えばGLP-1(Glucagon like peptide-1)、エキセンジン-3(exendin-3)又はエキセンジン-4(exendin-4)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記インスリン分泌ペプチドには、天然インスリン分泌ペプチドだけでなく、その前駆物質(precursors)、アゴニスト(agonist)、誘導体(derivatives)、フラグメント(fragments)、変異体(variants)などが含まれ、また、それらの生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質が結合された持続型結合体の形態も含まれる。前記インスリン分泌ペプチドは、薬学的有効量で薬学的組成物に含まれてもよい。
【0077】
GLP-1は、小腸から分泌されるホルモンであり、一般にインスリン生合成及び分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑制し、細胞内へのグルコース取り込みを促進する。小腸において、グルカゴン前駆体はグルカゴン、GLP-1、GLP-2の3つのペプチドに分解される。ここで、GLP-1とは、GLP-1(1-37)を意味し、インスリン分泌機能のない形態であり、GLP-1(7-37)の形態にプロセシングされて活性型GLP-1(7-37)となる。GLP-1(7-37)アミノ酸配列は次の通りである。
GLP-1(7-37):HAEGT FTSDV SSYLE GQAAK EFIAW LVKGR G(配列番号32)
【0078】
エキセンジン-3とエキセンジン-4は、GLP-1と53%のアミノ酸配列類似性を示す39個のアミノ酸からなるGLP-1アナログ又は誘導体であり、インスリン分泌ペプチドに該当する。エキセンジン-3とエキセンジン-4のアミノ酸配列は次の通りである。
エキセンジン-3:HSDGT FTSDL SKQME EEAVR LFIEW LKNGG PSSGA PPPS(配列番号33)
エキセンジン-4:HGEGT FTSDL SKQME EEAVR LFIEW LKNGG PSSGA PPPS(配列番号34)
【0079】
インスリン分泌ペプチド誘導体は、インスリン分泌機能を有し、天然インスリン分泌ペプチドとアミノ酸配列において少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の相同性又は同一性を示すものであり、かつ/又はインスリン分泌ペプチドのアミノ酸の1つの残基の一部の基が化学的に置換(例えば、alpha-methylation、alpha-hydroxylation)、除去(例えば、deamination)もしくは修飾(例えば、N-methylation)された形態であるが、これらに限定されるものではない。
【0080】
具体的な一実施形態において、本発明のインスリン分泌ペプチド誘導体は、N末端のヒスチジンのαアミノ基を除去する方法、N末端のアミノ基をヒドロキシ(hydroxyl)基又はカルボキシ(carboxyl)基に置換して合成する方法、N末端のヒスチジンのα炭素及びα炭素に結合されたN末端のアミノ基を除去してイミダゾアセチル(imidazo-acetyl)官能基のみ残す方法、N末端のアミノ基を2つのメチル基で修飾する方法などにより作製してもよい。上記方法により作製されたインスリン分泌ペプチド誘導体は、インスリン分泌ペプチドのN末端のヒスチジン残基がイミダゾアセチルデスヒスチジン、デスアミノヒスチジン、β-ヒドロキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジン、N-ジメチルヒスチジン又はβ-カルボキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジンに置換されたインスリン分泌ペプチド誘導体であってもよい。
【0081】
一具体例として、インスリン分泌ペプチド誘導体は、GLP-1誘導体であってもよく、GLP-1誘導体には、エキセンジン-3、エキセンジン-4又はそれらの誘導体が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
また、インスリン分泌ペプチド誘導体の例として、エキセンジン-4のN末端のアミノ基又はアミノ酸残基を化学的に変異させた誘導体が挙げられ、エキセンジン-4のN末端の1番目のアミノ酸であるヒスチジン残基のα炭素及びα炭素に結合されたN末端のアミノ基が除去されたイミダゾアセチルデスヒスチジルエキセンジン-4(imidazoacetyl-deshistidyl-exendin-4, CA-exendin-4)、エキセンジン-4のN末端のアミノ基が除去されたデスアミノヒスチジルエキセンジン-4(desaminohistidyl exendin-4, DA-exendin-4)、エキセンジン-4のN末端のアミノ基がヒドロキシ基に置換されたβ-ヒドロキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジルエキセンジン-4(β-hydroxyimidazopropionyldeshistidyl exendin-4, HY-exendin-4)、エキセンジン-4のN末端のアミノ基が2つのメチル基で修飾されたN-ジメチルヒスチジルエキセンジン-4(N-dimethylhistidyl exendin-4, DM-exendin-4)、エキセンジン-4のN末端のアミノ基がカルボキシ基に置換されたβ-カルボキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジルエキセンジン-4(β-carboxyimidazopropionyl-deshistidyl exendin-4, CX-exendin-4)、エキセンジン-4の12番目のアミノ酸(リシン)がセリンに置換されたエキセンジン-4誘導体、又はエキセンジン-4の12番目のアミノ酸(リシン)がアルギニンに置換されたエキセンジン-4誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
インスリン分泌ペプチドフラグメントとは、天然インスリン分泌ペプチドのN末端又はC末端に少なくとも1つのアミノ酸が付加及び/又は欠失された形態を意味し、付加されるアミノ酸は、天然に存在しないアミノ酸(例えば、D型アミノ酸)であってもよい。
【0084】
インスリン分泌ペプチド変異体とは、天然インスリン分泌ペプチドとアミノ酸が少なくとも1つ異なるペプチドであって、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の相同性又は同一性を示し、インスリン分泌機能を有するペプチドを意味する。
【0085】
インスリン分泌ペプチドアゴニストとは、インスリン分泌ペプチドの構造に関係なく、インスリン分泌ペプチドの生体内受容体に結合してインスリン分泌ペプチドと同じ生物学的活性を示す物質を意味する。
【0086】
本発明の誘導体、フラグメント、変異体及びアゴニストにおいて用いる各作製方法は、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。例えば、アミノ酸配列が少なくとも1つ異なり、N末端のアミノ酸残基が脱アミノ化(deamination)されたインスリン分泌ペプチドが挙げられる。
【0087】
本発明における「グルカゴン様ペプチド-2」又は「GLP-2(Glucagon-like peptide-2)」とは、グルカゴン様ペプチド-2受容体のアゴニスト(agonist)を意味し、ポリペプチドの形態、又はその生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質が結合された持続型結合体の形態であるが、これらに限定されるものではない。本発明におけるグルカゴン様ペプチド-2又はGLP-2には、天然ヒトGLP-2に一致する配列だけでなく、GLP-2誘導体も含まれ、天然GLP-2又はGLP-2誘導体に生体適合性物質が結合された形態の持続型結合体も含まれる。前記GLP-2は、インスリン分泌ペプチドを含有する薬学的組成物と併用投与又は併用使用されるように、前記組成物又はそれとは別の組成物に薬学的有効量で含まれてもよい。
【0088】
天然GLP-2のアミノ酸配列は次の通りである。
GLP-2(1-33)
HADGSFSDEMNTILDNLAARDFINWLIQTKITD(配列番号1)
【0089】
本発明における「GLP-2受容体アゴニスト」とは、生体内の又は分離されたヒトグルカゴン様ペプチド-2受容体に結合し、天然GLP-2と同等又は類似の生理活性を引き起こす物質を意味する。例えば、GLP-2アゴニストとしては、天然GLP-2又はGLP-2誘導体が挙げられる。
【0090】
本発明における「GLP-2誘導体」には、天然GLP-2と比較してアミノ酸配列に少なくとも1つの差異があるペプチド、天然GLP-2配列の修飾(modification)により改変されたペプチド、並びに/又は天然GLP-2と同様に短腸症候群の予防、治療及び/もしくは改善機能を有する天然GLP-2の模倣体が含まれる。具体的には、前記GLP-2誘導体は、天然GLP-2配列において少なくとも1つのアミノ酸に置換(substitution)、付加(addition)、欠失(deletion)、修飾(modification)及びそれらの組み合わせからなる群から選択される改変が行われたものであるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
付加されるアミノ酸は非天然アミノ酸(例えば、D型アミノ酸)であってもよく、また、天然アミノ酸以外に、非天然アミノ酸の置換であってもよい。前記付加されるアミノ酸配列は、天然GLP-2に由来するものであるが、これに限定されるものではない。また、本発明において、アミノ酸の改変とは、少なくとも1つのアミノ酸の置換、付加、欠失又はそれらの組み合わせと共に、又はそれと独立して、アミノ酸残基の一部の基が化学的に置換(例えば、alpha-methylation、alpha-hydroxylation、azido基への置換)、除去(例えば、deamination)及び/もしくは修飾(例えば、N-methylation)されることを意味するが、これらに限定されるものではない。
【0092】
具体的な一実施形態において、本発明のGLP-2の誘導体は、天然GLP-2とアミノ酸配列において少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の相同性又は同一性を示すものであり、かつ/又はGLP-2のアミノ酸の1つの残基の一部の基が化学的に置換(例えば、alpha-methylation、alpha-hydroxylation、azido基への置換)、除去(例えば、deamination)及び/もしくは修飾(例えば、N-methylation)された形態であるが、これらに限定されるものではない。
【0093】
具体的な一実施形態において、本発明のGLP-2は、N末端のアミノ基が置換、除去又は修飾されるが、これらに限定されるものではない。本発明のGLP-2は、持続型結合体を作製する際にGLP-2の生体内活性に重要な部位であるN末端に結合が生じるのを防止するために、N末端のヒスチジンのαアミノ基を除去する方法、N末端のアミノ基をヒドロキシ(hydroxyl)基又はカルボキシ(carboxyl)基に置換して合成する方法、N末端のヒスチジンのα炭素及びα炭素に結合されたN末端のアミノ基を除去してイミダゾアセチル(imidazo-acetyl)官能基のみ残す方法、N末端のアミノ基を2つのメチル基で修飾する方法などにより作製してもよい。
【0094】
具体的には、GLP-2誘導体は、GLP-2のN末端の1番目のアミノ酸であるヒスチジン残基のα炭素及びα炭素に結合されたN末端のアミノ基が除去されたイミダゾアセチルデスヒスチジルGLP-2(imidazoacetyl-deshistidyl-GLP-2, CA-GLP-2)、GLP-2のN末端のアミノ基が除去されたデスアミノヒスチジルGLP-2(desaminohistidyl GLP-2, DA-GLP-2)、GLP-2のN末端のアミノ基がヒドロキシ基に置換されたβ-ヒドロキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジルGLP-2(β-hydroxyimidazopropionyldeshistidyl GLP-2, HY-GLP-2)、GLP-2のN末端のアミノ基が2つのメチル基で修飾されたN-ジメチルヒスチジルGLP-2(N-dimethylhistidyl GLP-2, DM-GLP-2)、又はGLP-2のN末端のアミノ基がカルボキシ基に置換されたβ-カルボキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジルGLP-2(β-carboxyimidazopropionyl-deshistidyl GLP-2, CX-GLP-2)であるが、これらに限定されるものではない。以下、GLP-2誘導体の作製に用いられる物質の構造の例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0095】
【0096】
本発明において、イミダゾアセチルデスヒスチジル(ジン)、デスアミノヒスチジル(ジン)、β-ヒドロキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジル(ジン)、N-ジメチルヒスチジル(ジン)及びβ-カルボキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジル(ジン)は、それぞれイミダゾアセチル、デスアミノヒスチジル、β-ヒドロキシイミダゾプロピオニル、ジメチルヒスチジル及びβ-カルボキシイミダゾプロピオニルと同じ意味で用いられる。
【0097】
具体的な一実施形態において、前記GLP-2誘導体は、配列番号1において1番目、2番目、30番目及び33番目のアミノ酸のうち少なくとも1つのアミノ酸に改変が行われたものであるが、これらに限定されるものではない。具体的には、前記改変は少なくとも1つのアミノ酸の置換、付加、欠失、修飾及びそれらの組み合わせからなる群から選択される改変であり、ここで、付加されるアミノ酸は非天然アミノ酸(例えば、D型アミノ酸)であってもよく、また、天然アミノ酸以外に、非天然アミノ酸の置換であってもよい。前記付加されるアミノ酸配列は、天然GLP-2に由来するものであるが、これに限定されるものではない。また、本発明において、アミノ酸の改変とは、少なくとも1つのアミノ酸の置換、付加、欠失又はそれらの組み合わせと共に、又はそれと独立して、アミノ酸残基の一部の基が化学的に置換(例えば、alpha-methylation、alpha-hydroxylation、azido基への置換)、除去(例えば、deamination)及び/もしくは修飾(例えば、N-methylation)されることを意味するが、これらに限定されるものではない。
【0098】
具体的な一実施形態において、GLP-2誘導体は、一般式1のアミノ酸配列を含むが、これに限定されるものではない。
[一般式1]
X1X2DGSFSDEMNTILDNLAARDFINWLIQTX30ITDX34(配列番号9)
【0099】
ここで、X1はヒスチジン、イミダゾアセチルデスヒスチジン、デスアミノヒスチジン、β-ヒドロキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジン、N-ジメチルヒスチジン又はβ-カルボキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジンであり、X2はアラニン、グリシン又はAib(2-aminoisobutyric acid)であり、X30はリシン又はアルギニンであり、X34は存在しないか、リシン、アルギニン、グルタミン、ヒスチジン、6-アジドリシン又はシステインである。
【0100】
具体的な他の実施形態において、GLP-2誘導体は、一般式2のアミノ酸配列を含むが、これに限定されるものではない。
[一般式2]
X1X2DGSFSDEMNTILDNLAARDFINWLIQTX30ITDX34(配列番号10)
【0101】
ここで、X1はヒスチジン、イミダゾアセチルデスヒスチジン、デスアミノヒスチジン、β-ヒドロキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジン、N-ジメチルヒスチジン又はβ-カルボキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジンであり、X2はアラニン、グリシン又はAib(2-aminoisobutyric acid)であり、X30はリシン又はアルギニンであり、X34は少なくとも1つの任意のアミノ酸、又は改変が行われた少なくとも1つの任意のアミノ酸である。
【0102】
具体的には、前記アミノ酸は、天然アミノ酸又は非天然アミノ酸であり、前記アミノ酸の改変については前述した通りである。
【0103】
また、一般式1又は2のアミノ酸配列のうち配列番号1と同じ配列は、GLP-2誘導体から除外されるが、これに限定されるものではない。
【0104】
具体的には、本発明のGLP-2誘導体は、天然GLP-2の2番目のアミノ酸であるアラニンのグリシンもしくはAib(2-aminoisobutyric acid)への置換、30番目のアミノ酸であるリシンのアルギニンへの置換、又はそれらの組み合わせを有するが、上記例に限定されるものではない。また、前記GLP-2誘導体は、C末端(例えば、33番目のアミノ酸)にチオール基(例えば、システイン)、アミノ基(例えば、リシン、アルギニン、グルタミン又はヒスチジン)又はアジド基(例えば、6-アジドリシン)が導入されるが、これらに限定されるものではない。
【0105】
GLP-2誘導体の持続型結合体を作製する際に、前述したように導入される基において結合が生じるので、それを用いて結合位置が選択的に調節されたGLP-2結合体を作製することができる。具体的には、GLP-2誘導体のヒドロキシ基、チオール基、アミノ基又はアジド基にリンカーの一末端が結合され、リンカーの他の末端に生体内半減期を延長させることのできる物質(例えば、免疫グロブリンFc領域)が結合されてもよい。前記チオール基、アミノ基又はアジド基は、GLP-2にアミノ酸を付加することにより導入することができるが、これに限定されるものではない。前記チオール基はGLP-2にシステイン(C)を付加することにより導入することができ、アミノ基はリシン(K)、アルギニン(R)、グルタミン(Q)又はヒスチジン(H)を付加することにより導入することができ、アジド基は6-アジドリシン(6-azidolysine, AZK)を付加することにより導入することができるが、これらに限定されるものではない。
【0106】
具体的には、本発明によるGLP-2誘導体は、少なくとも1つの残基がシステイン、リシン、アルギニン、グルタミン、ヒスチジン又は6-アジドリシンであるが、これらに限定されるものではない。
【0107】
具体的には、本発明のGLP-2誘導体は、天然GLP-2の2番目のアミノ酸であるアラニンのグリシンへの置換、及びC末端へのチオール基(例えば、システイン)の導入を含み、より具体的には、N末端の1番目のアミノ酸であるヒスチジン残基のα炭素及びα炭素に結合されたN末端のアミノ基が除去されたイミダゾアセチルデスヒスチジンを含み、例えば配列番号2のアミノ酸配列を有するものであるが、これらに限定されるものではない。
【0108】
具体的には、本発明のGLP-2誘導体は、天然GLP-2の2番目のアミノ酸であるアラニンのグリシンへの置換、及びC末端へのアミノ基(例えば、リシン)の導入を含み、より具体的には、N末端の1番目のアミノ酸であるヒスチジン残基のα炭素及びα炭素に結合されたN末端のアミノ基が除去されたイミダゾアセチルデスヒスチジンを含み、例えば配列番号3のアミノ酸配列を有するものであるが、これらに限定されるものではない。
【0109】
具体的には、本発明のGLP-2誘導体は、天然GLP-2の2番目のアミノ酸であるアラニンのグリシンへの置換、天然GLP-2の30番目のアミノ酸であるリシンのアルギニンへの置換、及びC末端へのアミノ基(例えば、リシン)の導入を含み、より具体的には、N末端の1番目のアミノ酸であるヒスチジン残基のα炭素及びα炭素に結合されたN末端のアミノ基が除去されたイミダゾアセチルデスヒスチジンを含み、例えば配列番号4のアミノ酸配列を有するものであるが、これらに限定されるものではない。
【0110】
具体的には、本発明のGLP-2誘導体は、天然GLP-2の2番目のアミノ酸であるアラニンのグリシンへの置換、及びC末端へのアジド基(例えば、6-アジドリシン)の導入を含み、より具体的には、N末端の1番目のアミノ酸であるヒスチジン残基のα炭素及びα炭素に結合されたN末端のアミノ基が除去されたイミダゾアセチルデスヒスチジンを含み、例えば配列番号5のアミノ酸配列を有するものであるが、これらに限定されるものではない。
【0111】
具体的には、本発明のGLP-2誘導体は、天然GLP-2の2番目のアミノ酸であるアラニンのグリシンへの置換、天然GLP-2の30番目のアミノ酸であるリシンのアルギニンへの置換、及びC末端へのチオール基(例えば、システイン)の導入を含み、より具体的には、N末端の1番目のアミノ酸であるヒスチジン残基のα炭素及びα炭素に結合されたN末端のアミノ基が除去されたイミダゾアセチルデスヒスチジンを含み、例えば配列番号6のアミノ酸配列を有するものであるが、これらに限定されるものではない。
【0112】
具体的には、本発明のGLP-2誘導体は、天然GLP-2の2番目のアミノ酸であるアラニンの2-アミノイソブチル酸への置換、及びC末端へのチオール基(例えば、システイン)の導入を含み、例えば配列番号8のアミノ酸配列を有するものであり、より具体的には、N末端の1番目のアミノ酸であるヒスチジン残基のα炭素及びα炭素に結合されたN末端のアミノ基が除去されたイミダゾアセチルデスヒスチジンを含み、例えば配列番号7のアミノ酸配列を有するものであるが、これらに限定されるものではない。
【0113】
配列番号2~8のGLP-2誘導体を表1に示す。
【0114】
【0115】
表1において、caHはヒスチジンがイミダゾアセチルデスヒスチジンに置換されたものを示し、Aibは2-アミノイソブチル酸(2-aminoisobutyric acid)を示し、AZKは6-アジド-L-リシン(6-azido-L-lysyine)を示す。
【0116】
本発明によるGLP-2は、上記特定配列を含むペプチド、上記特定配列からなる(又は必須に構成される)ペプチドであるが、これらに限定されるものではない。
【0117】
なお、本発明に「特定配列番号で構成される(からなる)」ペプチド又はGLP-2と記載されていても、当該配列番号のアミノ酸配列からなるペプチド又はGLP-2と同一又は相当する活性を有するものであれば、当該配列番号のアミノ酸配列の前後の無意味な配列付加や、自然発生する突然変異や、その非表現突然変異(silent mutation)を除外するものではなく、このような配列付加又は突然変異を有するものも本願に含まれることは言うまでもない。
【0118】
具体的には、GLP-2誘導体は、一般式1又は2において、(1)X2がグリシンもしくはAibであるか、(2)X30がリシンもしくはアルギニンであるか、又は(3)X2がグリシンもしくはAibであり、X30がリシンもしくはアルギニンであるが、これらに限定されるものではない。
【0119】
具体的には、GLP-2誘導体は、一般式1又は2において、(1)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がグリシンであり、X30がリシンであり、X34がシステインであるか、(2)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がグリシンであり、X30がリシンであり、X34がリシンであるか、(3)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がグリシンであり、X30がアルギニンであり、X34がリシンであるか、(4)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がグリシンであり、X30がリシンであり、X34が6-アジドリシンであるか、(5)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がグリシンであり、X30がアルギニンであり、X34がシステインであるか、(6)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がAibであり、X30がリシンであり、X34がシステインであるか、又は(7)X1がヒスチジンであり、X2がAibであり、X30がリシンであり、X34がシステインであるが、これらに限定されるものではない。
【0120】
本発明において、天然GLP-2のアゴニスト、フラグメント、変異体及び誘導体の作製のためのこのような改変には、L型もしくはD型アミノ酸及び/又は非天然アミノ酸を用いた改変、並びに/あるいは天然配列を修飾又は翻訳後修飾(例えば、メチル化、アシル化、ユビキチン化、分子内の共有結合など)することによる改変が全て含まれる。
【0121】
本発明において、前記GLP-2又はGLP-2誘導体は、生体内のタンパク質切断酵素から保護して安定性を向上させるために、そのN末端及び/又はC末端などが化学的に修飾された形態であってもよく、有機基により保護された形態であってもよく、末端などにアミノ酸が付加されて改変された形態であってもよい。
【0122】
特に、化学的に合成したペプチドの場合、N及びC末端が電荷を帯びているので、その電荷を除去するために、N末端のアセチル化(acetylation)及び/又はC末端のアミド化(amidation)を行うが、特にこれらに限定されるものではない。
【0123】
具体的には、本発明において、GLP-2又はGLP-2誘導体は、そのC末端が改変されていないか、アミド化されているものであるが、これらに限定されるものではない。
【0124】
本発明において、インスリン分泌ペプチド及び/又はGLP-2は、それぞれの生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質が結合された持続型結合体の形態であるが、これらに限定されるものではない。前記持続型結合体は、生体適合性物質(例えば、免疫グロブリンFc領域)が結合されていないインスリン分泌ペプチド又はGLP-2の誘導体より向上した効力の持続性を示し、本発明においては、インスリン分泌ペプチド又はGLP-2に生体適合性物質が結合して半減期が延長されたインスリン分泌ペプチド又はGLP-2を含む結合体をそれぞれ「インスリン分泌ペプチド持続型結合体もしくはインスリン分泌ペプチドの持続型結合体」又は「GLP-2持続型結合体もしくはGLP-2の持続型結合体」という。本発明において、持続型結合体は、結合体と混用される。
【0125】
一具体例において、(i)前記インスリン分泌ペプチドは、その生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質が結合された持続型結合体の形態であってもよく、(ii)前記GLP-2は、その生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質が結合された持続型結合体の形態であってもよく、(iii)前記インスリン分泌ペプチド及びGLP-2のそれぞれは、それらの生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質が結合された持続型結合体の形態であってもよい。
【0126】
なお、このような結合体は、天然に存在しない(non-naturally occurring)ものであってもよい。
【0127】
また、持続型結合体において、インスリン分泌ペプチド又はGLP-2と生体適合性物質(例えば、免疫グロブリンFc領域)の連結は、物理結合もしくは化学結合であるか、又は非共有結合もしくは共有結合であり、具体的には共有結合であるが、これらに限定されるものではない。
【0128】
さらに、持続型結合体は、インスリン分泌ペプチド又はGLP-2と生体適合性物質(例えば、免疫グロブリンFc領域)の連結方法が特に限定されるものではないが、リンカーを介してインスリン分泌ペプチド又はGLP-2と生体適合性物質(例えば、免疫グロブリンFc領域)が互いに連結されたものである。
【0129】
さらに、GLP-2の持続型結合体に関する特許文献2は、参照として本発明に含まれる。
【0130】
具体的な一実施形態において、本発明のインスリン分泌ペプチド又はGLP-2の持続型結合体は、化学式(1)の構造を有するが、これに限定されるものではない。
【0131】
X-La-F・・・(1)
【0132】
ここで、Xはインスリン分泌ペプチド又はGLP-2であり、Lはリンカー(例えば、エチレングリコール繰り返し単位を含むリンカー)であり、aは0又は自然数であるが、aが2以上であればそれぞれのLは互いに独立しており、FはXの生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質(例えば、免疫グロブリンFc領域)であり、前記「-」は化学結合(例えば、共有結合)である。
【0133】
より具体的には、XとL、及びLとFは、共有結合により互いに連結されたものであってもよく、ここで、前記結合体は、化学式(1)の順に、X、L及びFが共有結合によりそれぞれ連結された結合体であってもよい。
【0134】
また、前記Fは、Xに直接連結された(すなわち、化学式(1)においてaが0である)ものであってもよく、リンカーLを介して連結されたものであってもよい。
【0135】
本発明による結合体において、Fは、X、すなわち本発明によるインスリン分泌ペプチド又はGLP-2の半減期を延長させることのできる物質であり、本発明の結合体の一部をなす一構成である。
【0136】
前記Fは、Xに共有化学結合又は非共有化学結合により互いに結合されたものであってもよく、Lを介して、Xに共有化学結合、非共有化学結合又はそれらの組み合わせにより互いに結合されたものであってもよい。
【0137】
前記F、すなわちXの生体内半減期を延長させることのできる物質は、生体適合性物質であり、例えば高分子重合体、脂肪酸、コレステロール、アルブミン及びそのフラグメント、アルブミン結合物質、特定アミノ酸配列の繰り返し単位の重合体、抗体、抗体フラグメント、FcRn結合物質、生体内結合組織、ヌクレオチド、フィブロネクチン、トランスフェリン(Transferrin)、サッカライド(saccharide)、ヘパリン並びにエラスチンからなる群から選択されるものであるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0138】
前記エラスチンの場合、水溶性前駆体であるヒトトロポエラスチン(tropoelastin)であってもよく、それらの一部の配列又は一部の繰り返し単位の重合体であってもよく、例えばエラスチン様ポリペプチドであってもよいが、特にこれらに限定されるものではない。
【0139】
前記高分子重合体の例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン、ヒアルロン酸、オリゴヌクレオチド及びそれらの組み合わせからなる群から選択される高分子重合体が挙げられ、前記ポリサッカライドとしては、デキストランが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0140】
本明細書において、ポリエチレングリコールは、エチレングリコールホモポリマー、PEGコポリマー又はモノメチル置換PEG重合体(mPEG)の形態を包括するものであるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0141】
また、前記生体適合性物質には、ポリリシン、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸などのポリアミノ酸が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0142】
さらに、脂肪酸は、生体内アルブミンとの結合力を有するものであるが、特にこれに限定されるものではない。
【0143】
一例として、前記FはFcRn結合物質であり、具体的には、前記FcRn結合物質は免疫グロブリンFc領域であり、より具体的にはIgG Fc領域、さらに具体的には非グリコシル化されたIgG4 Fc領域であるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0144】
本発明の具体的な一例として、前記F(例えば、免疫グロブリンFc領域)は、2本のポリペプチド鎖からなる二量体であり、Lの一末端が前記2本のポリペプチド鎖のいずれかのポリペプチド鎖にのみ連結されている構造を有するが、これに限定されるものではない。
【0145】
具体的な一実施形態において、本発明の持続型結合体は、インスリン分泌ペプチド又はGLP-2と免疫グロブリンFc領域が連結されたものであるが、これらに限定されるものではない。
【0146】
本発明における「免疫グロブリンFc領域」とは、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域を除いた重鎖定常領域を意味する。具体的には、前記免疫グロブリンFc領域は、重鎖定常領域2(CH2)及び/又は重鎖定常領域3(CH3)部分を含むものであってもよく、より具体的には、ヒンジ領域(ヒンジ領域の全部又は一部を意味する)をさらに含むものであってもよい。前記免疫グロブリンFc領域は、本発明の結合体の一部をなす一構成であってもよい。具体的には、化学式(1)のFに該当する。
【0147】
本明細書において、Fc領域には、免疫グロブリンのパパイン消化により得られる天然配列だけでなく、その誘導体、置換体、例えば天然配列の少なくとも1つのアミノ酸残基が欠失、挿入、非保存的もしくは保存的置換、又はそれらの組み合わせにより置換されて天然のものとは異なる配列などの改変体も含まれる。前記誘導体、置換体、改変体は、FcRnに結合する能力を保有することを前提とする。
【0148】
前記F(例えば、免疫グロブリンFc領域)は、2本のポリペプチド鎖がジスルフィド結合で連結されている構造であり、前記2本の鎖のうち1本の鎖の窒素原子を介してのみ連結されている構造であるが、これに限定されるものではない。前記窒素原子を介した連結は、リシンのεアミノ原子やN末端のアミノ基に還元的アミノ化により連結されるものであってもよい。
【0149】
還元的アミノ化反応とは、反応物のアミン基又はアミノ基が他の反応物のアルデヒド(すなわち、還元的アミノ化が可能な官能基)と反応してアミンを生成し、次いで還元反応によりアミン結合を形成する反応を意味し、当該技術分野で周知の有機合成反応である。
【0150】
一具体例として、前記免疫グロブリンFc領域がそのN末端の窒素原子を介して連結されたものであってもよい。
【0151】
このような免疫グロブリンFc領域は、重鎖定常領域にヒンジ(hinge)部分を含むが、これに限定されるものではない。
【0152】
本発明において、免疫グロブリンFc領域は、N末端に特定ヒンジ配列を含んでもよい。
【0153】
本発明における「ヒンジ配列」とは、重鎖に位置してジスルフィド結合(inter disulfide bond)により免疫グロブリンFc領域の二量体を形成する部位を意味する。
【0154】
本発明において、前記ヒンジ配列は、次のアミノ酸配列を有するヒンジ配列中の一部が欠失して1つのシステイン残基のみ有するように変異したものであるが、これに限定されるものではない。
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号11)
【0155】
前記ヒンジ配列は、配列番号11のヒンジ配列中の8番目又は11番目のシステイン残基が欠失して1つのシステイン残基のみ含むものであってもよい。本発明のヒンジ配列は、1つのシステイン残基のみ含む、3~12個のアミノ酸からなるものであるが、これに限定されるものではない。より具体的には、本発明のヒンジ配列は、次の配列を有するものであってもよい。
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号12)
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Pro(配列番号13)
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser(配列番号14)
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Pro(配列番号15)
Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser(配列番号16)
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号17)
Glu-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号18)
Glu-Ser-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号19)
Glu-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号20)
Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号21)
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号22)
Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号23)
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号24)
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号25)
Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro(配列番号26)
Glu-Ser-Lys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号27)
Glu-Ser-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号28)
Glu-Pro-Ser-Cys(配列番号29)
Ser-Cys-Pro(配列番号30)
【0156】
より具体的には、前記ヒンジ配列は、配列番号21(Pro-Ser-Cys-Pro)又は配列番号30(Ser-Cys-Pro)のアミノ酸配列を含むものであるが、これらに限定されるものではない。
【0157】
本発明の持続型結合体のより具体的な形態において、前記結合体中の免疫グロブリンFc領域のN末端はプロリンであり、その結合体は前記プロリンの窒素原子を介してFc領域がリンカーに連結されたものである。
【0158】
具体的な一実施形態において、免疫グロブリンFc領域は、ヒンジ配列が存在することにより免疫グロブリンFc領域の2本の鎖がホモ二量体(homodimer)やヘテロ二量体(heterodimer)を形成する二量体の形態であってもよい。本発明の化学式(1)の結合体は、リンカーの一末端が二量体の免疫グロブリンFc領域の1本の鎖に連結された形態であるが、これに限定されるものではない。
【0159】
本発明における「N末端」とは、タンパク質又はポリペプチドのアミノ末端を意味し、アミノ末端の最末端、又は最末端から1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個もしくは10個以上のアミノ酸が含まれる。本発明の免疫グロブリンFc領域は、ヒンジ配列をN末端に含むが、これに限定されるものではない。
【0160】
また、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然のものと実質的に同等又は向上した効果を有するものであれば、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域を除き、一部又は全部の重鎖定常領域1(CH1)及び/又は軽鎖定常領域1(CL1)を含む拡張されたFc領域であってもよい。さらに、CH2及び/又はCH3に相当する非常に長い一部のアミノ酸配列が欠失した領域であってもよい。
【0161】
例えば、本発明の免疫グロブリンFc領域は、1)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン、2)CH1ドメイン及びCH2ドメイン、3)CH1ドメイン及びCH3ドメイン、4)CH2ドメイン及びCH3ドメイン、5)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメインの少なくとも1つののドメインと免疫グロブリンヒンジ領域(又はヒンジ領域の一部)との組み合わせ、又は6)重鎖定常領域の各ドメインと軽鎖定常領域の二量体であるが、これらに限定されるものではない。
【0162】
また、本発明の持続型結合体の一実施形態として、前記免疫グロブリンFc領域は、二量体形態(dimeric form)であってもよく、二量体形態の1つのFc領域にX1分子が共有結合的に連結されたものであってもよく、ここで前記免疫グロブリンFcとXは1つの同じリンカーにより互いに連結されたものであってもよい。一方、二量体形態の1つのFc領域にX2分子が対称に結合されたものであってもよい。ここで、前記免疫グロブリンFcとXは、リンカーにより互いに連結されてもよい。しかし、これらに限定されるものではない。
【0163】
また、本発明の免疫グロブリンFc領域には、天然アミノ酸配列だけでなく、その配列誘導体も含まれる。アミノ酸配列誘導体とは、天然アミノ酸配列の少なくとも1つのアミノ酸残基が欠失、挿入、非保存的もしくは保存的置換、又はそれらの組み合わせにより異なる配列を有するものを意味する。
【0164】
例えば、IgG Fcの場合、結合に重要であることが知られている214~238、297~299、318~322又は327~331番目のアミノ酸残基が修飾に適した部位として用いられる。
【0165】
また、ジスルフィド結合を形成する部位が除去された誘導体、天然FcからN末端のいくつかのアミノ酸が欠失した誘導体、天然FcのN末端にメチオニン残基が付加された誘導体など、様々な種類の誘導体が用いられる。さらに、エフェクター機能をなくすために、補体結合部位、例えばC1q結合部位が除去されてもよく、ADCC(antibody dependent cell mediated cytotoxicity)部位が除去されてもよい。このような免疫グロブリンFc領域の配列誘導体を作製する技術は、特許文献3、4などに開示されている。
【0166】
分子の活性を全体的に変化させないタンパク質及びペプチドにおけるアミノ酸交換は、当該分野において公知である(非特許文献2)。最も一般的な交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫酸化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、グリコシル化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)、アセチル化(acetylation)、アミド化(amidation)などにより修飾(modification)されてもよい。
【0167】
前述したFc誘導体は、本発明のFc領域と同等の生物学的活性を示し、Fc領域の熱、pHなどに対する構造的安定性を向上させたものであってもよい。
【0168】
また、このようなFc領域は、ヒトや、ウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物の生体内から分離した天然のものから得てもよく、形質転換された動物細胞もしくは微生物から得られた組換えたもの又はその誘導体であってもよい。ここで、天然のものから得る方法は、全免疫グロブリンをヒト又は動物の生体から分離し、その後タンパク質分解酵素で処理することにより得る方法であってもよい。パパインで処理するとFab及びFcに切断され、ペプシンで処理するとpF’c及びF(ab)2に切断される。これらは、サイズ排除クロマトグラフィー(size-exclusion chromatography)などを用いてFc又はpF’cを分離することができる。より具体的な実施形態において、ヒト由来のFc領域は、微生物から得られた組換え免疫グロブリンFc領域である。
【0169】
また、免疫グロブリンFc領域は、天然糖鎖であってもよく、天然のものに比べて増加した糖鎖であってもよく、天然のものに比べて減少した糖鎖であってもよく、糖鎖が除去された形態であってもよい。このような免疫グロブリンFc糖鎖の増減又は除去には、化学的方法、酵素学的方法、微生物を用いた遺伝工学的手法などの通常の方法が用いられる。ここで、Fcから糖鎖が除去された免疫グロブリンFc領域は、補体(c1q)との結合力が著しく低下し、抗体依存性細胞傷害又は補体依存性細胞傷害が低減又は除去されるので、生体内で不要な免疫反応を誘発しない。このようなことから、糖鎖が除去されるか、非グリコシル化された免疫グロブリンFc領域は、薬物のキャリアとしての本来の目的に適する形態である。
【0170】
本発明における「糖鎖の除去(Deglycosylation)」とは、酵素で糖を除去したFc領域を意味し、非グリコシル化(Aglycosylation)とは、原核生物、より具体的な実施形態においては大腸菌で産生されてグリコシル化されていないFc領域を意味する。
【0171】
一方、免疫グロブリンFc領域は、ヒト起源、又はウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物起源であり、より具体的な実施形態においてはヒト起源である。
【0172】
また、免疫グロブリンFc領域は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM由来のFc領域であってもよく、それらの組み合わせ(combination)又はそれらのハイブリッド(hybrid)によるFc領域であってもよい。より具体的な実施形態においては、ヒト血液に最も豊富なIgG又はIgM由来のものであり、さらに具体的な実施形態においては、リガンド結合タンパク質の半減期を延長させることが知られているIgG由来のものである。一層具体的な実施形態において、前記免疫グロブリンFc領域はIgG4 Fc領域であり、最も具体的な実施形態において、前記免疫グロブリンFc領域はヒトIgG4由来の非グリコシル化されたFc領域であるが、これらに限定されるものではない。
【0173】
また、一具体例として、免疫グロブリンFc領域は、ヒトIgG4 Fcのフラグメントであり、各単量体の3番目のアミノ酸であるシステイン間のジスルフィド結合(inter-chain形態)により2つの単量体が連結されたホモ二量体であってもよく、ここで、ホモ二量体は、各単量体において35番目と95番目のシステイン間、及び141番目と199番目のシステイン間にジスルフィド結合、すなわち2つのジスルフィド結合(intra-chain形態)を有するものである/有するものであってもよい。
【0174】
各単量体のアミノ酸は、221個のアミノ酸からなり、ホモ二量体を形成するアミノ酸は、全体で442個のアミノ酸からなるが、これらに限定されるものではない。具体的には、免疫グロブリンFc領域は、配列番号35のアミノ酸配列(442個のアミノ酸からなる)を含むホモ二量体(ここで、配列番号31のアミノ酸配列(221個のアミノ酸からなる)を有する2つの単量体が各単量体の3番目のアミノ酸であるシステイン間のジスルフィド結合によりホモ二量体を形成し、前記ホモ二量体の単量体は、それぞれ独立して35番目と95番目のシステイン間の内部のジスルフィド結合、及び141番目と199番目のシステイン間の内部のジスルフィド結合を形成する)であるが、これらに限定されるものではない。
【0175】
一方、本発明において、免疫グロブリンFc領域に関する「組み合わせ(combination)」とは、二量体又は多量体を形成する際に、同一起源の一本鎖免疫グロブリンFc領域をコードするポリペプチドが異なる起源の一本鎖ポリペプチドに結合することを意味する。すなわち、IgG Fc、IgA Fc、IgM Fc、IgD Fc及びIgE Fc領域からなる群から選択される少なくとも2つのFc領域から二量体又は多量体を作製することができる。
【0176】
本発明における「ハイブリッド(hybrid)」とは、一本鎖免疫グロブリン定常領域内に、少なくとも2つの異なる起源の免疫グロブリンFc領域に相当する配列が存在することを意味する。本発明においては、様々な形態のハイブリッドが可能である。すなわち、IgG Fc、IgM Fc、IgA Fc、IgE Fc及びIgD FcのCH1、CH2、CH3及びCH4からなる群から選択される1つ~4つのドメインのハイブリッドが可能であり、ヒンジを含んでもよい。
【0177】
一方、IgGもIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4のサブクラスに分けられ、本発明においては、それらの組み合わせ又はそれらのハイブリダイゼーションも可能である。具体的には、IgG2及びIgG4サブクラスであり、より具体的には、補体依存性細胞傷害(CDC, Complement dependent cytotoxicity)などのエフェクター機能(effector function)のほとんどないIgG4のFc領域である。
【0178】
また、前述した結合体は、天然インスリン分泌ペプチドもしくは天然GLP-2より、又はFが修飾されていないXより効力の持続性が向上したものであり、このような結合体には、前述した形態だけでなく、生分解性ナノ粒子に封入された形態などが全て含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0179】
化学式(1)において、リンカーLは、ペプチド性リンカー又は非ペプチド性リンカー(例えば、エチレングリコール繰り返し単位を含むリンカー)であってもよい。
【0180】
前記Lがペプチド性リンカーである場合、1つ以上のアミノ酸を含み、例えば1個~1000個のアミノ酸を含むが、特にこれらに限定されるものではない。本発明において、FとXを連結するために、公知の様々なペプチドリンカーが用いられ、例えば[GS]xリンカー、[GGGS]xリンカー、[GGGGS]xリンカーなどが挙げられ、ここで、xは1以上の自然数である。しかし、上記例に限定されるものではない。
【0181】
本発明における「非ペプチド性リンカー」には、繰り返し単位が少なくとも2つ結合された生体適合性重合体が含まれる。前記繰り返し単位は、ペプチド結合を除く任意の共有結合により互いに連結される。前記非ペプチド性リンカーは、本発明の結合体の一部をなす一構成であり、化学式(1)のLに該当する。
【0182】
本発明に用いられる非ペプチド性リンカーは、生体内タンパク質分解酵素に抵抗性のある重合体であればいかなるものでもよい。本発明における前記非ペプチド性リンカーは、非ペプチド性重合体と混用される。
【0183】
また、前記非ペプチド性リンカーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド(例えば、デキストランなど)、ポリビニルエチルエーテル、PLA(polylactic acid)やPLGA(polylactic-glycolic acid)などの生分解性高分子、脂質重合体、キチン、ヒアルロン酸、オリゴヌクレオチド及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるものであるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0184】
さらに、本発明に用いられる非ペプチド性リンカーは、生体内タンパク質分解酵素に抵抗性のある重合体であればいかなるものでもよい。具体的には、非ペプチド性重合体の分子量は、0超~約100kDaの範囲、約1~約100kDaの範囲、より具体的には、約1~50kDaの範囲、約1~約20kDaの範囲、約1~約10kDaの範囲、又は約3.4kDa~10kDaであるが、これらに限定されるものではない。
【0185】
前記非ペプチド性リンカーは、エチレングリコール繰り返し単位を含むリンカー、例えばポリエチレングリコールであるが、特にこれらに限定されるものではない。また、当該分野で公知のそれらの誘導体や当該分野の技術水準で容易に作製できる誘導体も本発明に含まれる。
【0186】
前記非ペプチド性リンカーの繰り返し単位は、エチレングリコール繰り返し単位であってもよく、具体的には、前記非ペプチド性リンカーは、エチレングリコール繰り返し単位を含むと共に、結合体の作製に用いられる官能基を末端に含むものであってもよい。本発明による持続型結合体は、前記官能基を介してXとFが連結された形態であるが、これに限定されるものではない。本発明において、前記非ペプチド性リンカーは、2個又は3個以上の官能基を含み、各官能基は、同じものであってもよく、異なるものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0187】
具体的には、前記リンカーは、化学式(4)で表されるポリエチレングリコール(PEG)であるが、これに限定されるものではない。
【0188】
【0189】
ここで、n=10~2400、n=10~480又はn=50~250であるが、これらに限定されるものではない。
【0190】
前記持続型結合体のPEG部分は、-(CH2CH2O)n-構造だけでなく、連結要素とその-(CH2CH2O)n-間に介在する酸素原子も含むが、これに限定されるものではない。
【0191】
また、具体的な一実施形態における前記結合体は、インスリン分泌ペプチド又はGLP-2と免疫グロブリンFc領域(F)がエチレングリコール繰り返し単位を含むリンカーを介して共有結合により連結された構造であるが、これらに限定されるものではない。
【0192】
前記ポリエチレングリコールは、エチレングリコールホモポリマー、PEGコポリマー又はモノメチル置換PEGポリマー(mPEG)の形態を包括するものであるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0193】
一具体例として、前記エチレングリコール繰り返し単位は[OCH2CH2]nで表され、n値は、自然数であって、前記ペプチド結合体中の[OCH2CH2]n部分の平均分子量、例えば数平均分子量が0超~約100kDaになるように決定されるが、これらに限定されるものではない。他の具体例として、前記n値は、自然数であって、前記ペプチド結合体中の[OCH2CH2]n部分の平均分子量、例えば数平均分子量が約1~約100kDa、約1~約80kDa、約1~約50kDa、約1~約30kDa、約1~約25kDa、約1~約20kDa、約1~約15kDa、約1~約13kDa、約1~約11kDa、約1~約10kDa、約1~約8kDa、約1~約5kDa、約1~約3.4kDa、約3~約30kDa、約3~約27kDa、約3~約25kDa、約3~約22kDa、約3~約20kDa、約3~約18kDa、約3~約16kDa、約3~約15kDa、約3~約13kDa、約3~約11kDa、約3~約10kDa、約3~約8kDa、約3~約5kDa、約3~約3.4kDa、約8~約30kDa、約8~約27kDa、約8~約25kDa、約8~約22kDa、約8~約20kDa、約8~約18kDa、約8~約16kDa、約8~約15kDa、約8~約13kDa、約8~約11kDa、約8~約10kDa、約9~約15kDa、約9~約14kDa、約9~約13kDa、約9~約12kDa、約9~約11kDa、約9.5~約10.5kDa、約3.4kDa、又は約10kDaであるが、これらに限定されるものではない。
【0194】
本発明における「約」とは、±0.5、±0.4、±0.3、±0.2、±0.1などが全て含まれる範囲であり、約という用語の後に続く数値と同等又は同程度の範囲の数値であればいかなるものでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0195】
また、免疫グロブリンFc領域に結合される本発明の非ペプチド性リンカーは、1種類の重合体だけでなく、異なる種類の重合体の組み合わせが用いられてもよい。
【0196】
具体的な一実施形態において、前記非ペプチド性リンカーの両末端は、免疫グロブリンFc領域のチオール基、アミノ基、ヒドロキシ基、及びGLP-2のチオール基、アミノ基、アジド基、ヒドロキシ基に結合されるが、これらに限定されるものではない。
【0197】
具体的には、前記非ペプチド性リンカーは、両末端がそれぞれ免疫グロブリンFc及びインスリン分泌ペプチド又はGLP-2に結合される反応基、より具体的には、免疫グロブリンFc領域のシステインのチオール基と、N末端、リシン、アルギニン、グルタミン及び/又はヒスチジンに位置するアミノ基と、C末端に位置するヒドロキシ基とからなる群から選択される少なくとも1つに結合され、GLP-2のシステインのチオール基と、リシン、アルギニン、グルタミン及び/又はヒスチジンのアミノ基と、アジドリシンのアジド基と、ヒドロキシ基とからなる群から選択される少なくとも1つに結合される反応基であるが、これらに限定されるものではない。
【0198】
さらに具体的には、前記非ペプチド性重合体の反応基は、アルデヒド基、マレイミド基及びスクシンイミド誘導体からなる群から選択される少なくとも1つであるが、これらに限定されるものではない。
【0199】
上記において、アルデヒド基の例として、プロピオンアルデヒド基又はブチルアルデヒド基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0200】
上記において、スクシンイミド誘導体としては、スクシンイミジルカルボキシメチル、スクシンイミジルバレレート、スクシンイミジルメチルブタノエート、スクシンイミジルメチルプロピオネート、スクシンイミジルブタノエート、スクシンイミジルプロピオネート、N-ヒドロキシスクシンイミド、ヒドロキシスクシンイミジル又はスクシンイミジルカーボネートが用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0201】
前記非ペプチド性リンカーは、上記反応基を介して、生体適合性物質(例えば、免疫グロブリンFc)及びインスリン分泌ペプチド又はGLP-2に連結され、非ペプチド性重合体連結部に変換されてもよい。
【0202】
また、アルデヒド結合による還元性アルキル化で生成された最終産物は、アミド結合で連結されたものよりはるかに安定している。アルデヒド反応基は、低いpHではN末端に選択的に反応し、高いpH、例えばpH9.0の条件ではリシン残基と共有結合を形成することができる。
【0203】
本発明の非ペプチド性リンカーの末端の反応基は、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。前記非ペプチド性リンカーは、末端にアルデヒド反応基を有するものであってもよく、また前記非ペプチド性リンカーは、末端にそれぞれアルデヒド基及びマレイミド反応基を有するものであってもよく、末端にそれぞれアルデヒド基及びスクシンイミド反応基を有するものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0204】
一例として、一末端にはマレイミド基、他の末端にはアルデヒド基、プロピオンアルデヒド基又はブチルアルデヒド基を有するものであってもよい。他の例として、一末端にはスクシンイミジル基、他の末端にはプロピオンアルデヒド基又はブチルアルデヒド基を有するものであってもよい。
【0205】
プロピオン側の末端にヒドロキシ反応基を有するポリエチレングリコールを非ペプチド性リンカーとして用いる場合、公知の化学反応により前記ヒドロキシ基を前述した様々な反応基として活性化するか、市販されている修飾された反応基を有するポリエチレングリコールを用いることにより、本発明の結合体を作製することができる。
【0206】
具体的な一実施形態において、前記非ペプチド性リンカーの反応基がインスリン分泌ペプチド又はGLP-2のシステイン残基、より具体的にはシステインの-SH基に連結されるが、これらに限定されるものではない。
【0207】
マレイミド-PEG-アルデヒドを用いる場合、マレイミド基はインスリン分泌ペプチド又はGLP-2の-SH基にチオエーテル(thioether)結合で連結することができ、アルデヒド基は免疫グロブリンFcの-NH2基に還元的アルキル化反応により連結することができるが、これらに限定されるものではなく、これらは一例にすぎない。
【0208】
このような還元的アルキル化により、PEGの一末端に位置する酸素原子に免疫グロブリンFc領域のN末端アミノ基が-CH
2CH
2CH
2-の構造を有するリンカー官能基を介して互いに連結され、-PEG-O-CH
2CH
2CH
2NH-免疫グロブリンFcのような構造を形成することができ、チオエーテル結合により、PEGの一末端がGLP-2又はGLP-2のシステインに位置する硫黄原子に連結された構造を形成することができる。前述したチオエーテル結合は、
の構造を有するものであってもよい。
【0209】
【0210】
しかし、上記例に特に限定されるものではなく、これは一例にすぎない。
【0211】
また、前記結合体において、非ペプチド性リンカーの反応基が免疫グロブリンFc領域のN末端に位置する-NH2に連結されたものであってもよいが、これは一例にすぎない。
【0212】
さらに、前記結合体において、インスリン分泌ペプチド又はGLP-2は、反応基を有する非ペプチド性リンカーにC末端を介して連結されてもよいが、これは一例にすぎない。
【0213】
本発明における「C末端」とは、ペプチドのカルボキシ末端を意味し、本発明の目的上、非ペプチド性重合体に結合する位置を意味する。例えば、これらに限定されるものではないが、C末端の最末端のアミノ酸残基だけでなく、C末端周辺のアミノ酸残基が全て含まれ、具体的には最末端から1~20番目のアミノ酸残基が含まれる。
【0214】
一具体例として、化学式(1)の結合体は、化学式(2)又は(3)の構造を有するものであってもよい。
【0215】
【0216】
【0217】
化学式(2)又は(3)において、Xは前述した化学式(1)のペプチドであり、Fは免疫グロブリンFcフラグメントであり、nは自然数である。ここで、nについては前述した通りである。
【0218】
一具体例として、化学式(2)の持続型結合体は、インスリン分泌ペプチド又はGLP-2のXと免疫グロブリンFc領域のFがエチレングリコール繰り返し単位を介して共有結合により連結された構造であってもよく、また、Xは化学式(2)のスクシンイミド環、Fは化学式(2)のオキシプロピレン基にそれぞれ連結された形態であってもよい。また、化学式(3)の持続型結合体は、インスリン分泌ペプチド又はGLP-2のXと免疫グロブリンFc領域のFがエチレングリコール繰り返し単位を介して共有結合により連結された構造であってもよく、また、Xは化学式(3)のオキシプロピレン基、Fは化学式(3)の他のオキシプロピレン基にそれぞれ連結された形態であってもよい。
【0219】
化学式(2)又は(3)において、前記nの値は、前記ペプチド結合体中の[OCH2CH2]n部分の平均分子量、例えば数平均分子量が1~100kDa、1~20kDa又は10kDaになるように決定されるが、これらに限定されるものではない。
【0220】
一実施形態において、化学式(2)のスクシンイミド環又は化学式(2)のスクシンイミド環にXが連結される部位は、XのC末端システインの硫黄原子であってもよい。また、化学式(3)のオキシプロピレン基又は化学式(3)のオキシプロピレン基にXが連結される部位は、XのC末端システインの硫黄原子であってもよい。
【0221】
Fにおいて、化学式(2)又は化学式(3)のオキシプロピレン基に連結される部位は、特に限定されるものではない。本発明の一実施形態において、前記オキシプロピレン基に連結されるFの部位は、N末端窒素又はFの内部残基の窒素原子(例えば、リシンのε窒素)であってもよい。本発明の具体的な一実施形態において、Fが化学式(2)又は化学式(3)のオキシプロピレン基に連結される部位は、FのN末端プロリンであるが、これに限定されるものではない。
【0222】
なお、本発明によるインスリン分泌ペプチド、GLP-2又はそれらの持続型結合体には、それら自体、それらの塩(例えば、薬学的に許容される塩)、又はそれらの溶媒和物の形態が全て含まれる。
【0223】
また、インスリン分泌ペプチド、GLP-2又はそれらの持続型結合体は、薬学的に許容されるものであればいかなる形態であってもよい。
【0224】
前記塩の種類は、特に限定されるものではない。もっとも、個体、例えば哺乳類に安全かつ効果的な形態であることが好ましいが、特にこれに限定されるものではない。
【0225】
本発明における「薬学的に許容される塩」には、薬学的に許容される無機酸、有機酸又は塩基から誘導された塩が含まれる。好適な酸の例としては、塩酸、臭素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などが挙げられる。好適な塩基から誘導された塩には、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、アンモニウムなどが含まれる。
【0226】
また、本発明における「溶媒和物」とは、本発明によるペプチド、化合物又はその塩が溶媒分子と複合体を形成したものを意味する。
【0227】
本発明の天然インスリン分泌ペプチドと修飾されたインスリン分泌ペプチド、GLP-2は、Solid phase合成法により合成することもでき、組換え法により生産することもでき、商業的に依頼して作製することもできる。
【0228】
他の具体例として、本発明の組合せ物、薬学的組成物又は薬学的キットは、(i)インスリン分泌ペプチドと、GLP-2とを含んでもよく、(ii)生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質が結合されたインスリン分泌ペプチド持続型結合体と、GLP-2とを含んでもよく、(iii)インスリン分泌ペプチドと、生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質が結合されたGLP-2持続型結合体とを含んでもよく、(iv)生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質が結合されたインスリン分泌ペプチド持続型結合体と、生体内半減期を延長させることのできる生体適合性物質が結合されたGLP-2持続型結合体とを含んでもよい。
【0229】
本発明の組合せ物、薬学的組成物又は薬学的キットは、短腸症候群の予防、改善又は治療に用いられてもよい。
【0230】
本発明における「予防」とは、インスリン分泌ペプチド及びGLP-2を含む組合せ物又は組成物の投与により目的とする疾患、例えば短腸症候群の発症を抑制又は遅延させるあらゆる行為を意味し、「治療」とは、インスリン分泌ペプチド及びGLP-2を含む組合せ物又は組成物の投与により目的とする疾患、例えば短腸症候群の症状を好転又は有利に変化させるあらゆる行為を意味する。また、「改善」とは、本発明の組合せ物又は組成物の投与により治療される状態に関するパラメーター、例えば症状の程度を少なくとも減少させるあらゆる行為を意味する。
【0231】
本発明における「投与」とは、任意の適切な方法で患者に所定の物質を導入することを意味し、前記組成物の投与経路は、前記組成物を生体内標的に送達できるものであれば、一般的なあらゆる経路で投与することができ、例えば腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻腔内投与、肺内投与、直腸内投与などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0232】
前記インスリン分泌ペプチドとGLP-2は、併用されて短腸症候群の予防又は治療に用いられる。
【0233】
本発明における「短腸症候群(short bowel syndrome, SBS)」とは、先天的に小腸長が短かくて発生するか、手術などにより後天的に小腸の一定割合以上(例えば、50%以上)が消失(小腸の吸収面積減少)して発生する消化吸収不良症候群を意味し、栄養吸収不足、栄養吸収障害、腹痛、下痢、脂肪便、乳糖不耐症、脱水、体重減少、無気力、疲労などの症状が現れる。
【0234】
本発明による組合せ物又は組成物は、個体に投与すると、体重の増加、小腸長の増加、胃腸運動性の減少及び栄養分吸収の増加の少なくとも1つを引き起こし、短腸症候群を予防、改善又は治療することができる。しかし、これらに限定されるものではない。
【0235】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤をさらに含んでもよい。このような薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤は、非自然発生のものであってもよい。
【0236】
本発明における「薬学的に許容される」とは、治療効果を発揮する程度の十分な量と副作用を起こさないことを意味し、疾患の種類、患者の年齢、体重、健康状態、性別、薬物に対する感受性、投与経路、投与方法、投与回数、治療期間、配合、同時に用いられる薬物などの医学分野における公知の要素により当業者が容易に決定することができる。
【0237】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含んでもよい。前記賦形剤は、特にこれらに限定されるものではないが、経口投与の場合は、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを用いることができ、注射剤の場合は、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤、安定化剤などを混合して用いることができ、局所投与用の場合は、基剤、賦形剤、滑沢剤、保存剤などを用いることができる。
【0238】
本発明の組成物の剤形は、前述したような薬学的に許容される賦形剤と混合して様々な形態に製造することができる。例えば、経口投与の場合は、錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハー剤などの形態に製造することができ、注射剤の場合は、使い捨てアンプル又は複数回投薬形態に製造することができる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル剤、徐放性製剤などに剤形化することができる。
【0239】
なお、製剤化に適した担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、グルコース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、デンプン、アカシア、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱物油などが挙げられる。また、充填剤、抗凝集剤、滑沢剤、湿潤剤、香料、防腐剤などをさらに含んでもよい。
【0240】
また、本発明の薬学的組成物は、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、滅菌水溶液剤、非水性溶剤、凍結乾燥製剤及び坐剤からなる群から選択されるいずれかの剤形を有してもよい。
【0241】
さらに、前記組成物は、薬学的分野における通常の方法による患者の体内投与に適した単回投与型の製剤、具体的にはタンパク質医薬品の投与に有用な製剤形態に剤形化し、当該技術分野で通常用いる投与方法を用いて経口、又は皮膚、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、髄膜腔内、心室内、肺、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、消化管内、局所、舌下、膣内もしくは直腸経路が含まれる非経口投与経路で投与することができるが、これらに限定されるものではない。
【0242】
さらに、前記結合体は、生理食塩水や有機溶媒のように薬剤に許容される様々な担体(carrier)と混合して用いることができ、安定性や吸収性を向上させるために、グルコース、スクロース、デキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸(ascorbic acid)、グルタチオンなどの抗酸化剤(antioxidants)、キレート剤、低分子タンパク質、他の安定化剤(stabilizers)などを薬剤として用いることができる。
【0243】
本発明の薬学的組成物の投与量と回数は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別及び体重、疾患の重症度などの様々な関連因子と共に、活性成分である薬物の種類により決定される。具体的には、本発明の組成物は、前記ペプチド又はそれを含む持続型結合体を薬学的有効量で含むものであるが、これらに限定されるものではない。
【0244】
前記インスリン分泌ペプチド又はGLP-2を薬学的有効量で含むとは、インスリン分泌ペプチド又はGLP-2により目的とする薬理活性が得られる程度に含むことを意味し、また、投与される個体に毒性や副作用がないか、僅かなレベルであって、薬学的に許容されるレベルで含むことを意味するが、これらに限定されるものではない。このような薬学的有効量は、投与回数、患者、剤形などを総合的に考慮して決定される。
【0245】
本発明の前記薬学的組成物は、上記成分(有効成分)を0.01~99重量対体積%で含有するが、特にこれに限定されるものではない。
【0246】
本発明の組成物の総有効量は、単回投与量(single dose)で患者に投与してもよく、複数回投与量(multiple dose)で長期間投与する分割治療方法(fractionated treatment protocol)により投与してもよい。本発明の薬学的組成物は、疾患の程度に応じて有効成分の含有量を変えてもよい。具体的には、本発明のペプチド又は結合体の総用量は、1日体重1kg当たり約0.0001mg~500mgであることが好ましいが、これに限定されるものではない。しかし、前記結合体の用量は、薬学的組成物の投与経路及び治療回数だけでなく、患者の年齢、体重、健康状態、性別、疾患の重症度、食餌、排泄率などの様々な要因を考慮して患者に対する有効投与量が決定されるので、これらを考慮すると、当該分野における通常の知識を有する者であれば、前記本発明の組成物の特定の用途に応じた適切な有効投与量を決定することができるであろう。本発明による薬学的組成物は、本発明の効果を奏するものであれば、その剤形、投与経路及び投与方法が特に限定されるものではない。
【0247】
本発明の薬学的組成物は、生体内持続性及び力価に優れ、本発明の薬学的製剤の投与回数及び頻度を大幅に減少させることができるが、これらに限定されるものではない。
【0248】
本発明を実現する他の態様は、GLP-2と併用することを特徴とする前記インスリン分泌ペプチドを含む、短腸症候群の予防、改善又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0249】
前記インスリン分泌ペプチド、GLP-2、予防、治療、改善、併用、短腸症候群及び薬学的組成物については前述した通りである。
【0250】
本発明を実現する他の態様は、インスリン分泌ペプチドを含有する、短腸症候群の予防又は改善のための食品組成物であって、前記インスリン分泌ペプチドは、GLP-2と併用投与されることを特徴とする食品組成物を提供する。
【0251】
前記インスリン分泌ペプチド、GLP-2、予防、改善、併用及び短腸症候群については前述した通りである。
【0252】
前記食品組成物は、機能性食品として用いられてもよい。本発明の組成物を食品補助添加剤として用いる場合は、インスリン分泌ペプチド、GLP-2、それを含む持続型結合体、又はそれらの組み合わせをそのまま添加してもよく、他の食品又は食品成分と共に用いてもよく、通常の方法で適宜用いられる。有効成分の混合量は、使用目的(予防、健康又は治療的処置)に応じて適宜決定される。
【0253】
本発明における「機能性食品」とは、健康補助を目的として特定成分を原料とするか、食品原料に入っている特定成分を抽出、濃縮、精製、混合などの方法で製造、加工した食品であって、前記成分により生体防御、生体リズムの調節、疾病の防止及び回復などの生体調節機能が生体において十分に発揮されるように設計、加工された食品を意味する。前記健康食品用の組成物は、疾病の予防、回復などに関する機能を有する。
【0254】
本発明を実現する他の態様は、インスリン分泌ペプチド及びGLP-2を必要とする個体に、インスリン分泌ペプチド及びGLP-2を投与するステップを含む、短腸症候群の予防、改善又は治療方法を提供する。
【0255】
他の具体例として、本発明の組合せ物、薬学的組成物又は薬学的キットを必要とする個体に、本発明の組合せ物、薬学的組成物又は薬学的キットを投与及び/又は使用するステップを含む、短腸症候群の予防、改善又は治療方法であってもよい。
【0256】
他の具体例として、薬学的有効量のインスリン分泌ペプチドを含有する組成物、及び薬学的有効量のGLP-2を含有する組成物を必要とする個体に、薬学的有効量のインスリン分泌ペプチドを含有する組成物と、薬学的有効量のGLP-2を含有する組成物を併用投与及び/又は併用使用するステップを含む、短腸症候群の予防、改善又は治療方法である。
【0257】
前記インスリン分泌ペプチド、GLP-2、予防、治療、改善、短腸症候群、併用、組合せ物、薬学的組成物及び薬学的キットについては前述した通りである。
【0258】
本発明における前記個体とは、短腸症候群の疑いのある個体を意味し、前記短腸症候群の疑いのある個体とは、当該疾患が発症したか、発症するリスクのある、ヒトをはじめとしてマウス、家畜などが含まれる哺乳動物を意味するが、本発明の組成物で治療可能な個体であればいかなるものでもよい。また、本発明の組成物を短腸症候群疾患の疑いのある個体に投与することにより、個体を効率的に治療することができる。短腸症候群については前述した通りである。
【0259】
本発明の方法は、インスリン分泌ペプチド及びGLP-2を含む組合せ物又は薬学的組成物を薬学的有効量で投与するステップを含んでもよい。本発明による方法は、インスリン分泌ペプチド及びGLP-2を1つの製剤として投するものであってもよく、個別製剤を同時、個別、順次又は逆順に投与するものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0260】
好適な総1日使用量は正しい医学的判断の範囲内で担当医により決定され、1回又は数回に分けて投与することができる。しかし、本発明の目的上、特定の患者に対する具体的な治療的有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、場合によっては他の製剤が用いられるか否か、具体的な組成物、患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食餌、投与時間、投与経路、組成物の分泌率、治療期間、具体的な組成物と共に又は同時に投与される薬物をはじめとする様々な因子や、医薬分野で周知の類似の因子に応じて異なる量であることが好ましい。
【0261】
本発明を実現する他の態様は、前記組合せ物、薬学的組成物又は薬学的キットの、短腸症候群の予防、改善もしくは治療用途、及び/又は短腸症候群の予防もしくは治療のための薬剤の製造のための用途である。
【0262】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示するものにすぎず、本発明がこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0263】
GLP-1誘導体持続型結合体の作製
1-1.CA-Exendin-4-PEG結合体の作製
CA-Exendin-4(N-[2-(1H-Imidazol-5-yl)acetyl]-Exendin4,ハンミ精密化学,韓国)ペプチド中の27番目のリシン残基のアミノ基と、両末端にアルデヒド(Aldehyde, ALD)基を有するポリエチレングリコール(3.4kDa,ALD(2)PEG,ハンミ精密化学,韓国)の共有結合により、ペグ化(PEGylation)されたペプチド結合体(モノペグ化された(mono-PEGylated)CA-Exendin-4)を作製した。具体的には、CA-Exendin-4:ALD(2)PEGのモル比を1:5~1:15とし、CA-Exendin-4の濃度を6~12mg/mlとして、4(~10)℃~常温で約4~12時間反応させた。ここで、反応は0.1M HEPES(pH7.0~8.5)の約45%イソプロパノールで行い、2~50mMの濃度のシアノ水素化ホウ素ナトリウム[sodium cyanoborohydride (NaCNBH3)]を添加して反応させた。反応液はクエン酸ナトリウム(pH2.0~3.5)、約45%エタノールを含む緩衝液と塩化カリウムの濃度勾配を用いたSource 15S(Cytiva, 米国)カラムで精製した。
【0264】
1-2.CA-Exendin-4-PEG-Fc結合体の作製
CA-Exendin-4-PEG-Fc結合体を作製するために、実施例1-1で得られたモノペグ化されたCA-Exendin-4に免疫グロブリンFcフラグメントを添加して総タンパク質濃度を10~50mg/mlとし、その後4(~10)℃~常温で約12~17時間反応させた。ここで、反応液は0.1Mリン酸カリウム(pH5.5~8.5)であり、還元剤として2~50mMシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加した。反応終了後に、反応液中のCA-Exendin-4-PEG-Fc結合体を疎水性結合カラムと陰イオン交換カラムの2種類で精製した。疎水性結合カラムであるSource 15Phenyl(Cytiva, 米国)においては、Tris-HCl(pH7.5)緩衝液とNaClの濃度勾配を用いて、反応していない免疫グロブリンFcフラグメントを分離及び精製し、陰イオン交換カラムであるSource 15Q(Cytiva, 米国)においては、Tris-HCl(pH7.5)緩衝液とNaClの濃度勾配を用いて、過剰反応した不純物を除去してCA-Exendin-4-PEG-Fc結合体を分離及び精製した。
【実施例2】
【0265】
GLP-2誘導体持続型結合体の作製
2-1.CA GLP-2 RK-PEG結合体の作製
表1の配列番号4のGLP-2誘導体CA GLP-2 RKを改質ポリエチレングリコールであるALD(2)PEG(両末端の水素がそれぞれプロピオンアルデヒド基(3-オキソプロピル基)に置換され、エチレングリコール繰り返し単位部分(moiety)の化学式量が3.4kDaである改質ポリエチレングリコール,日本NOF社)にペグ化させるために、GLP-2誘導体とALD(2)PEGのモル比を1:5~1:20とし、GLP-2誘導体の濃度を5~10mg/mlとして、2~8℃で4~16時間反応させた。ここで、反応は、20mMヘペス(HEPES, pH7.5)とエタノールで行い、還元剤として20mMシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加して反応させた。反応液は、クエン酸ナトリウム(pH2.0)、エタノールを含む緩衝液と塩化カリウムの濃度勾配を用いたSource 15S(GE, 米国)カラムで精製し、モノペグ化されたGLP-2誘導体を得た。
【0266】
2-2.CA GLP-2 RK-PEG-Fc結合体の作製
次に、前述したように精製したモノペグ化されたGLP-2誘導体と免疫グロブリンFcフラグメントのモル比を1:2~1:6とし、総タンパク質濃度を30~35mg/mLとして、2~8℃で12~20時間反応させた。ここで、反応液には、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)とイソプロパノールに還元剤としての20mMシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加した。
【0267】
反応終了後に、反応液は、ビス-トリス(bis-Tris, pH6.5)緩衝液と塩化ナトリウムの濃度勾配を用いてSource 15Q(GE, 米国)カラムに適用し、硫酸アンモニウムとクエン酸ナトリウム(pH5.0~5.2)の濃度勾配を用いてSource 15 ISO(GE, 米国)に適用して精製し、免疫グロブリンFcフラグメントにGLP-2誘導体がポリエチレングリコールリンカーにより共有結合で連結された結合体であるGLP-2誘導体の持続型結合体を得た。
【実施例3】
【0268】
GLP-1誘導体持続型結合体とGLP-2誘導体持続型結合体の併用投与によるマウスにおける体重及び小腸長の増加の確認
GLP-1誘導体持続型結合体とGLP-2誘導体持続型結合体の併用投与によるインビボ(in vivo)の体重及び小腸(Small intestine)長の改善効果を測定するために、マウスを用いた。具体的には、7週齢の雄マウス(C57BL/6)を次のように各群5匹ずつに分けた。
・G1:正常対照群(薬物を投与しない群,Vehicle)
・G2:GLP-1誘導体持続型結合体(0.039mg/kg/Q2D)を投与した群(GLP-1誘導体持続型結合体0.039mg/kg/Q2D,2週間)
・G3:GLP-2誘導体持続型結合体(0.889mg/kg/Q2D)を投与した群(GLP-2誘導体持続型結合体0.889mg/kg/Q2D,2週間)
・G4:GLP-1誘導体持続型結合体(0.039mg/kg/Q2D)とGLP-2誘導体持続型結合体(0.889mg/kg/Q2D)を投与した群([GLP-1誘導体持続型結合体0.039mg/kg/Q2D+GLP-2誘導体持続型結合体0.889mg/kg/Q2D],2週間)
【0269】
本明細書における、GLP-1誘導体持続型結合体又はGLP-2誘導体持続型結合体の投与量として示した数値は、用いたGLP-1誘導体持続型結合体又はGLP-2誘導体持続型結合体の総質量からポリエチレングリコールリンカー部位の質量を除いた数値、すなわちポリペプチド部位のみの質量を合計した値を示した数値である。
【0270】
2週間の反復投与(D0~D14:薬物を投与した最初の日を第0日とする)を行い、マウスの体重を観察した。その後、D14に剖検により小腸長を測定した。
【0271】
その結果、GLP-1誘導体持続型結合体の単独投与群に比べて、GLP-1誘導体持続型結合体とGLP-2誘導体持続型結合体の併用投与群において、GLP-1による体重減少が観察されず(
図1)、GLP-1誘導体持続型結合体の単独投与群又はGLP-2誘導体持続型結合体の単独投与群に比べて、GLP-1誘導体持続型結合体とGLP-2誘導体持続型結合体の併用投与群において、有意な小腸長の増加が確認された(
図2)。
【実施例4】
【0272】
GLP-1誘導体持続型結合体とGLP-2誘導体持続型結合体の併用投与による胃腸運動性の減少
GLP-1誘導体持続型結合体とGLP-2誘導体持続型結合体の併用投与によるインビボ(in vivo)の胃腸運動性の減少効果を測定するために、マウスを用いた。具体的には、7週齢の雄マウス(C57BL/6)を次のように各群6匹ずつに分けた。
・G1:正常対照群(薬物を投与しない群,Vehicle)
・G2:GLP-1誘導体持続型結合体(0.136mg/kg)を投与した群(GLP-1誘導体持続型結合体0.136mg/kg)
・G3:GLP-2誘導体持続型結合体(3.111mg/kg)を投与した群(GLP-2誘導体持続型結合体3.111mg/kg)
・G4:GLP-1誘導体持続型結合体(0.136mg/kg)とGLP-2誘導体持続型結合体(3.111mg/kg)を投与した群(GLP-1誘導体持続型結合体0.136mg/kg+GLP-2誘導体持続型結合体3.111mg/kg)
【0273】
次に、絶食させると共に、薬物を単回投与した。24時間後に、5%チャコールミール(Charcoal meal)(w/v in 10% Gum Arabic,マウス1匹当たり0.3mL)を経口投与した。20分後に、剖検により小腸を採取し、次いでCharcoal mealの移動距離と全小腸長を測定し、小腸におけるcharcoal mealの移動の程度を次の式で測定した。
【0274】
【0275】
これらの結果は、本発明のGLP-1誘導体持続型結合体とGLP-2誘導体持続型結合体の併用投与が、単独投与群に比べて、GLP-2による小腸長の増加だけでなく、GLP-1による体重減少をもたらすことなく小腸長を迅速に増加させ、胃腸運動性の減少(
図3)により患者の栄養分吸収を増加させ、短腸症候群の治療に効果を有することを示唆するものである。
【0276】
以上の説明から、本発明の属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、上記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明には、明細書ではなく請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれるあらゆる変更や変形された形態が含まれるものと解釈すべきである。
【配列表】
【国際調査報告】