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特表2024-503261プロトン伝導型二次電池で用いるバルクSi負極
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】プロトン伝導型二次電池で用いるバルクSi負極
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/05 20100101AFI20240118BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20240118BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20240118BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240118BHJP
   H01M 4/52 20100101ALI20240118BHJP
【FI】
H01M10/05
H01M10/0569
H01M10/0567
H01M4/38
H01M4/52
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539201
(86)(22)【出願日】2020-12-29
(85)【翻訳文提出日】2023-06-26
(86)【国際出願番号】 JP2020049276
(87)【国際公開番号】W WO2022145025
(87)【国際公開日】2022-07-07
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヤン クーシャン
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 悠子
(72)【発明者】
【氏名】椎▲崎▼ 伸二
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AK02
5H029AL11
5H029AM01
5H029AM02
5H029AM07
5H029HJ02
5H029HJ18
5H029HJ19
5H050AA08
5H050BA15
5H050CA03
5H050CB11
5H050HA02
5H050HA18
5H050HA19
(57)【要約】
【課題】優れた容量を呈するプロトン伝導性二次電池を提供する。
【解決手段】二次電池は、水素の吸蔵及び放出が可能で、例えばNiを含む正極電気化学的活性物質を含む正極と、負極であり、当該負極は1種以上の第14族元素の負極電気化学的活性物質を含み、当該負極電気化学的活性物質は粉末の形態でありバインダにより結合させられ、当該負極電気化学的活性物質の微細構造は、多結晶であるか、ナノ結晶とアモルファスとの組み合わせであるか、又は多結晶とナノ結晶とアモルファスとの組み合わせである、負極と、を含む。電池は、非水電解液を含み、1ボルトより高い電圧のときに負極電気化学的活性物質において800mAh/gを超える放電容量を示すことにより特徴づけられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトン伝導型二次電池であって、
水素の吸蔵及び放出が可能な正極電気化学的活性物質を含む正極と、
負極であって、前記負極は1種以上の第14族元素を含む負極電気化学的活性物質を含み、前記負極電気化学的活性物質は粉末の形態でありバインダにより結合させられ、前記負極電気化学的活性物質の微細構造は、多結晶であるか、ナノ結晶とアモルファスとの組み合わせであるか、又は多結晶とナノ結晶とアモルファスとの組み合わせである、負極と、
前記負極と前記正極との間に介在する非水電解液と、を備え、
前記二次電池の放電容量は、1Voltよりも高い電圧のときに、前記負極電気化学的活性物質において800mAh/gを超える、プロトン伝導型二次電池。
【請求項2】
前記負極電気化学的活性物質は2種以上の第14族元素を含む、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記負極電気化学的活性物質はSiを含む、請求項1に記載の電池。
【請求項4】
前記負極電気化学的活性物質は、Siと、1種以上の非Si第14族元素とを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の電池。
【請求項5】
前記1種以上の非Si第14族元素は、C,Ge,又はこれらの組合せである、請求項4に記載の電池。
【請求項6】
前記非Si第14族元素の量は、前記負極電気化学的活性物質中の全ての第14族元素に対して、50原子パーセント以下である、請求項4に記載の電池。
【請求項7】
前記二次電池の前記放電容量は、Ni(OH)正極に対して1ボルトよりも高い電圧のときに、負極電気化学的活性物質において1000mAh/gを超え、(特に1ボルトよりも高い電圧のときに例えば1500mAh/gを超える、)請求項1から3のいずれか一項に記載の電池。
【請求項8】
前記二次電池の最大放電容量は、負極電気化学的活性物質において3500mAh/gを超える、請求項1から3のいずれか一項に記載の電池。
【請求項9】
前記電解液は、1種以上の非プロトン性化合物と、プロトン源としての酸とを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の電池。
【請求項10】
前記非プロトン性化合物は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム(BMIM)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート(EMIM)、1,3-ジメチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1,2,3-トリメチルイミダゾリウム、トリス(ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、又は1,2,4-トリメチルピラゾリウムを含む、請求項9に記載の電池。
【請求項11】
前記電解液はさらに添加剤を含み、前記添加剤はカリウム、酢酸、又はこれらの組合せを含む、請求項9に記載の電池。
【請求項12】
前記添加剤は、カリウムのリン酸塩、炭酸塩、又は硫酸塩を含む塩添加剤である、請求項11に記載の電池。
【請求項13】
前記負極電気化学的活性物質は、さらに、1種以上の非第14族元素含有水素貯蔵材料を含み、前記非Si水素貯蔵材料は、50重量パーセント以下の割合で存在する、請求項1から3のいずれか一項に記載の電池。
【請求項14】
前記正極電気化学的活性物質は、Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Y,Zr,Nb,Mo,Tc,Ru,Rh,Pd,Ag,Cd,Lu,Hf,Ta,W,Re,Os,Ir,Pt,Au,その水素化物、その酸化物、その水酸化物、オキシ水酸化物、又は前述のものの任意の組み合わせを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の電池。
【請求項15】
前記正極電気化学的活性物質はNiを含む、請求項14に記載の電池。
【請求項16】
前記正極電気化学的活性物質は、前記正極電気化学的活性物質中の全ての金属に対して、10原子パーセント以上の割合を占めるようにNiを含む、請求項14に記載の電池。
【請求項17】
Niは前記正極電気化学的活物質の金属成分中に、80原子パーセント以上(特に例えば90原子パーセント以上)の割合で存在する、請求項14に記載の電池。
【請求項18】
前記正極電気化学的活性物質は、Ni,Co,Mn,Zn,Al,又はこれらの組合せの水酸化物を含む、請求項14に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電池に関し、より具体的には、1つ以上の装置に電力を供給するために用いる電流の生成において、負極と正極との間でプロトンを循環させる二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムといった当量の小さいアルカリ金属は、電池の構成材料として特に有用である。リチウムを使用することにより、従前から使用されていたニッケルやカドミウムよりも重量当たりのエネルギーを大きくすることができる。しかし、充電式リチウム金属電池の開発においては、有効な電池サイクルが重要な開発課題とされている。充電と放電を繰り返すと、リチウム金属電極の表面にリチウムの「デンドライト」が徐々に生成され、これらは最終的に正極に接触する程度まで成長し、電池の内部短絡を引き起こし、比較的少ないサイクル後に電池が使用できなくなる可能性がある。他方で、シリコンは理論上の比容量が非常に高い(4000mAh/g)ため、リチウムイオン電池の負極材料として一般的に使用されているが、リチウムと共に循環させると400%もの著しい体積格子膨張を引き起こす。この体積膨張により、サイクル寿命がさらに短縮され、多くのシステムで材料を有効に使用できなくなる。
【0003】
そこで、二次電池の技術として有望であると考えられるのは、極めて低分子量である水素原子を循環させる技術である。金属水素化物合金や水酸化ニッケル等の一部の材料は、水素を吸蔵及び放出できることが知られている。適切な負極材料と組み合わせることにより、これらの水素貯蔵材料を燃料電池や金属水素化物電池に使用することができる。
【0004】
シリコンもまた、水素貯蔵において理論上は高重力エネルギーを提供するので、プロトン伝導型電池で有用な負極材料である。しかし、これらのシステムで一般的に用いられるアルカリ性水系電解液は、シリコン系材料に対して腐食性を示すので、負極活物質としてSiを使用するプロトン伝導性二次電池を実現するには努力を要する。近年、シリコン系負極活物質を電池に使用できるようにするために、新しい電解液材料を用いる試みがされている。しかしシリコン(Si)は、膜厚を例えば約250ナノメートルにまで増大させると、破壊応力が臨界値に到達し、容量の低減が生じ、サイクル寿命が不十分となることから、薄膜での用途にのみ使用できると従前より考えられていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、水素貯蔵材料を使用するタイプのプロトン伝導型電気化学セルの改善と、その製造及び活性化のプロセスに対する改善が、求められていた。本明細書において以下で説明するように、本開示は、非水電解液及びシリコン系負極を備えたプロトン伝導性電気化学セルを提供することで、優れた容量を呈するセルを実現し、数多くの電気化学装置で有用に使用可能とし、上記のニーズに対処するものである。本開示のこれら及び他の利点が、以下の図面、考察、及び説明から明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下の概要は、本開示に特有の、新規な特徴の一部が容易に把握できるように提供されており、完全な説明であることは意図していない。本開示の様々な局面の完全な理解は、明細書、請求項、図面、及び要約書全てを全体として考えることによって獲得できる。本明細書に記載される発明は、以下の請求項で示される。
【0007】
プロトン伝導型電池は、比較的低コストであること、リチウムイオン電池と比較して向上した安定性の高い特性を有することなど、数多くの利点を有する。プロトン伝導型電池は、複数の課題がある中で特に、その容量を向上させてきた。よって、高容量のプロトン伝導型電池システムを提供するというニーズに、対処することが望まれていた。本明細書は、負極にSiを使用したプロトン伝導型電池を提供するものであり、他者に先んじて、1Vよりも高い電圧において負極活物質で800mAh/グラムもの高い放電容量を実現できたことを実証するものである。
【0008】
このように、プロトン伝導性二次電池は、水素の吸蔵及び放出が可能な正極電気化学的活性物質を含む正極と、負極であって、当該負極は1種以上の第14族元素の負極電気化学的活性物質を含み、当該負極電気化学的活性物質は粉末の形態でありバインダにより結合させられ、当該負極電気化学的活性物質の微細構造は、多結晶であるか、ナノ結晶とアモルファスとの組み合わせであるか、又は多結晶とナノ結晶とアモルファスとの組み合わせである、負極と、負極と正極との間に介在する非水電解液と、を含み、当該二次電池の放電容量は、Ni(OH)正極に対して1ボルトよりも高い電圧のときに、負極電気化学的活性物質において800mAh/gを超える。
【0009】
上記電池において、負極活物質はいくつかの局面では、1~3種の異なる第14族元素、例えば2種の第14族元素、例えば1つの第14族元素を含有してもよい。負極電気化学的活性物質中の第14族元素は例えばSiである。いくつかの局面では、この負極活物質は、1つ以上の第14族元素以外の、金属や半金属は含有しない。例えば、負極電気化学的活性物質は、Siと、1種以上の非Si第14族元素、例えばC,Ge,又はこれらの組合せを含む。非Si第14族元素は、例えば、負極電気化学的活性物質中の全ての第14族元素に対して、50原子パーセント以下で存在する。また、いくつかの局面では、負極電気化学的活性物質はさらに、例えば50重量パーセント以下で、1種以上の非第14族元素含有水素貯蔵材料を含む。
【0010】
先の2つの段落の一方の電池、又はその両方の電池は、1ボルトよりも高い電圧のときに、負極電気化学的活性物質において1000mAh/gを超える放電容量を、例えば、1ボルトよりも高い電圧のときに、1500mAh/gを超える放電容量を有する。いくつかの局面では、電池は、二次電池の最大放電容量を有し、放電容量は、負極電気化学的活性物質で3500mAh/gを超える。
【0011】
先の段落の任意の1種以上の電池は、例えば、1種以上の非プロトン性化合物と、プロトン源としての酸とを含む非水電解液を含む。非プロトン性化合物は、例えば、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム(BMIM)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート(EMIM)、1,3-ジメチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1,2,3-トリメチルイミダゾリウム、トリス(ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、又は1,2,4-トリメチルピラゾリウムを含んでもよい。電解液は、さらに、プロトン伝導型添加剤、塩添加剤、又はその両方を含んでもよい。塩添加剤は、例えば酢酸を含む。塩添加剤は、例えばカリウムを含む。このセクションの前述の段落のいずれかにおける電解液は、例えば10ppm未満の水を含む。
【0012】
このセクションの先の段落のいずれかの局面において、正極は、例えば、Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Y,Zr,Nb,Mo,Tc,Ru,Rh,Pd,Ag,Cd,Lu,Hf,Ta,W,Re,Os,Ir,Pt,Au,その水素化物、その酸化物、その水酸化物、そのオキシ水酸化物、又は前述の任意の組み合わせを含み得る正極電気化学的活性物質を含む。いくつかの局面では、正極電気化学的活性物質は、正極電気化学的活性物質中の全ての金属に対して10原子パーセント以上で、例えば80原子パーセント以上で、例えば90原子パーセント以上で、Niを含む。例えば、正極電気化学的活性物質は、Ni,Co,Mn,Zn,Al,又はこれらの組合せの水酸化物を含む。
【0013】
前述の段落のいずれかに示した正極、負極、及び電解液は、例えばハウジング内に配置されるとしてもよい。負極と正極とは、例えばセパレータによって分離されるとしてもよい。負極は負極集電体を含み、正極は正極集電体を含む。これにより、負極集電体と正極集電体とは、1つ以上の電子伝導性コンジットによって、電気的に結合される。
【発明の効果】
【0014】
このプロトン伝導型電池によれば、優れた容量を実現することができ、、容量を理論上の最大限に近づけることができ、その技術を飛躍的に推し進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】シリコンサンプルのX線回折(XRD)パターンを示しており、当該サンプルは、多結晶の微細構造を備えており、本明細書で提供されるいくつかの局面において、負極電気化学的活性物質として用いられる。
図2】シリコンサンプルのXRDパターンを示しており、当該サンプルは、多結晶とナノ結晶とアモルファスのSiを組み合わせたものであり、本明細書で提供されるいくつかの局面において、負極電気化学的活性物質として用いられる。
図3】シリコンサンプルのXRDパターンを示しており、当該さンプルは、ナノ結晶とアモルファスの微細構造を備えており、本明細書で提供されるいくつかの局面において、負極電気化学的活性物質として用いられる。
図4】本明細書で提供される試験セルを示しており、当該セルは、負極電気化学的活性物質及び電解液に特徴を有している。
図5】サンプル1(多結晶Si)及びサンプル2(多結晶とナノ結晶とアモルファスのSi混合物)に対するサイクル28の放電電圧プロフィールを示す。
図6】サンプル3(ナノ結晶でアモルファスであるSi)に対するサイクル31の放電電圧プロフィールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
優れた容量を有することが実証されるプロトン伝導型二次電池を提供する。ここで提供されるプロトン伝導型電池は、薄膜負極を必要としないため、従前のSi含有負極電気化学的活性物質のときのような、膜剥離やその容量ロスなどの懸念がない。電池は、バインダにより集結させられた粉末の形態の負極電気化学的活性物質を含む負極を用いている。この粉末の負極は、プロトン伝導型電池中において、水素化元素として固体Siを他者に先んじて用い、それにより大きな容量を実現する。多結晶であるか、アモルファスであるか、ナノ結晶とアモルファスとの組み合わせからなるか、又は多結晶とナノ結晶とアモルファスとの組み合わせからなる、微細構造を備えた1種以上の第14族元素を使用することによって、電池は、Ni(OH)正極と比べて1ボルトよりも高い電圧において負極電気化学的活性物質が800mAh/gを超える優れた放電容量を生じる。
【0017】
本明細書における「プロトン伝導型二次電池」は、水系電解液を用いない等、従来の金属水素化物を用いた電池とは、多くの点で異なる。この新型のプロトン伝導型二次電池は、従来の電池と同様、負極と正極との間で水素を循環させることによって作動される。これにより、充電中の負極においては、1種又は複数種の元素の水素化物が形成される。この水素化物は可逆的な生成物であり、放電中に、負極電気化学的活性物質の一部としてプロトンと電子の両方を生成する。負極で生じる半反応は、以下の半反応式で説明される。
【0018】
【化1】

式中、Mは、1種以上の第14族元素を含有し、またはそれ自体である。。
【0019】
対応する正極反応における半反応式は、通常は以下のようになる。
【0020】
【化2】

式中、Mは、正極電気化学的活性物質として使用される任意の適切な種類の金属であり、例えばNiであるとしてもよい。
【0021】
本明細書で使用される用語「電池(battery)」又は「セル(cell)」は、同じ意味で用いてもよい。例えば電池は2つ以上のセルの集まりであり、各セルがプロトン伝導型電池として機能するとしてもよい。
【0022】
本明細書で使用される「負極」は、充電中に電子受容体として振る舞う電気化学的活性物質を含有する。
【0023】
本明細書で使用される「正極」は、充電中に電子供与体として振る舞う電気化学的活性物質を含有する。
【0024】
本明細書で使用される「電気化学的活性」を有する物質は、可逆的に水素イオンを吸蔵することが可能な1種以上の元素を含むものである。
【0025】
原子百分率(at%)が示されており、かつ別段の定義がないときは、原子百分率は、水素及び酸素以外の、記載されている材料中の全ての元素の量に基づいて示される。
【0026】
このように、正極と、負極と、非水電解液とを含むプロトン伝導型電気化学セルが本明細書によって提供される。セルは、1種以上の第14族元素を含む負極電気化学的活性物質を含有する負極を用いている。化学蒸着(Chemical Vapor Deposition:CVD)又は物理蒸着(Physical Vapor Deposition:PVD)によって形成される従前の薄膜の用途とは異なり、いくつかの局面について本明細書で提供される負極電気化学的活性物質は、多結晶であるか、ナノ結晶とアモルファスとの組み合わせからなるか、又は多結晶とナノ結晶とアモルファスとの組み合わせからなる、微細構造を有する。
【0027】
負極電気化学的活性物質は、例えば1種以上の第14族元素を含む。第14族元素は、炭素(C)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、及び鉛(Pb)を含有する。いくつかの局面では、第14族元素にはPbは含まれない。例えば、第14族元素は、C,Si,Ge,又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。いくつかの局面では、負極電気化学的活性物質はSiを含有していてもよい。例えば、負極電気化学的活性物質はCを含有していてもよい。例えば、負極電気化学的活性物質はGeを含有していてもよい。
【0028】
いくつかの局面では、負極電気化学的活性物質は2種以上の第14族元素を有していてもよい。例えば、負極電気化学的活性物質は2種の第14族元素を含有していてもよい。例えば、負極電気化学的活性物質は3種の第14族元素を含んでいてもよい。いくつかの局面では、負極電気化学的活性物質はSi及びCを含有してもよい。例えば、負極電気化学的活性物質はSi及びGeを含有してもよい。例えば、負極電気化学的活性物質はC及びGeを含有してもよい。例えば、負極電気化学的活性物質はSi,C,及びGeを含有してもよい。
【0029】
いくつかの局面による負極電気化学的活性物質は、Siと、1種以上の非Si第14族元素とを含有し、例えばC及び/又はGeを含有してもよい。非Si第14族元素は、例えば、負極電気化学的活性物質中の全ての第14族元素に対して50原子パーセント以下で存在してもよい。非Si第14族元素は、例えば45原子パーセント以下、例えば40原子パーセント以下、例えば35原子パーセント以下、例えば30原子パーセント以下、例えば29原子パーセント以下、例えば28原子パーセント以下、例えば27原子パーセント以下、例えば26原子パーセント以下、例えば25原子パーセント以下、例えば24原子パーセント以下、例えば23原子パーセント以下、例えば22原子パーセント以下、例えば21原子パーセント以下、例えば20原子パーセント以下、例えば15原子パーセント以下、例えば10原子パーセント以下、例えば5原子パーセント以下、例えば4原子パーセント以下、例えば3原子パーセント以下、例えば2原子パーセント以下、又は例えば1原子パーセント以下の割合で存在してもよい。
【0030】
いくつかの局面では、負極電気化学的活性物質はSi及びGeを含有し、Geは、負極電気化学的活性物質中の全ての第14族元素に対して、50原子パーセント以下で存在してもよい。Geは、例えば45原子パーセント以下、例えば40原子パーセント以下、例えば35原子パーセント以下、例えば30原子パーセント以下、例えば29原子パーセント以下、例えば28原子パーセント以下、例えば27原子パーセント以下、例えば26原子パーセント以下、例えば25原子パーセント以下、例えば24原子パーセント以下、例えば23原子パーセント以下、例えば22原子パーセント以下、例えば21原子パーセント以下、例えば20原子パーセント以下、例えば15原子パーセント以下、例えば10原子パーセント以下、例えば5原子パーセント以下、例えば4原子パーセント以下、例えば3原子パーセント以下、例えば2原子パーセント以下、又は例えば1原子パーセント以下の割合で存在してもよい。
【0031】
他の局面では、負極電気化学的活性物質はSi及びCを含有し、Cは、負極電気化学的活性物質中の全ての第14族元素に対して、50原子パーセント以下で存在してもよい。Cは、例えば45原子パーセント以下、例えば40原子パーセント以下、例えば35原子パーセント以下、例えば30原子パーセント以下、例えば29原子パーセント以下、例えば28原子パーセント以下、例えば27原子パーセント以下、例えば26原子パーセント以下、例えば25原子パーセント以下、例えば24原子パーセント以下、例えば23原子パーセント以下、例えば22原子パーセント以下、例えば21原子パーセント以下、例えば20原子パーセント以下、例えば15原子パーセント以下、例えば10原子パーセント以下、例えば5原子パーセント以下、例えば4原子パーセント以下、例えば3原子パーセント以下、例えば2原子パーセント以下、又は例えば1原子パーセント以下の割合で存在してもよい。
【0032】
負極電気化学的活性物質は例えばSi1-xを含有し、Mは1種以上の非Si第14族元素からなり、0<x<1であるとしてもよい。上記のようにMは、例えばC,Ge,又はこれらの任意の組み合わせであってもよい。例えばMはCであってもよい。例えばMはGeであってもよい。例えば、xは0.5以上、例えばxは0.55以上、例えばxは0.6以上、例えばxは0.65以上、例えばxは0.7以上、例えばxは0.71以上、例えばxは0.72以上、例えばxは0.73以上、例えばxは0.74以上、例えばxは0.75以上、例えばxは0.76以上、例えばxは0.77以上、例えばxは0.78以上、例えばxは0.79以上、例えばxは0.8以上、例えばxは0.85以上、例えばxは0.9以上、例えばxは0.95以上、例えばxは0.96以上、例えばxは0.97以上、例えばxは0.98以上、又は例えばxは0.99以上であってもよい。
【0033】
負極電気化学的活性物質は、1種以上の他の非第14族元素を含み得ると理解される。非第14族元素の具体的な例は、リチウム、ホウ素、ナトリウム、マグネシウム、及びアルミニウムを含むが、これらに限定されない。例えば、非第14族元素が存在するとき、当該元素は、50原子パーセント(以下、「at%」と称する場合がある。)以下、例えば20at%以下、例えば10at%以下、例えば5at%以下、例えば4at%以下、例えば3at%以下、例えば2at%以下、例えば1at%以下の割合で存在する。
【0034】
負極電気化学的活性物質のSi成分は、微細構造を有することによって特徴づけられる。負極電気化学的活性物質中のSiの微細構造は、例えば、多結晶であるか、ナノ結晶とアモルファスとの組み合わせであるか、アモルファスであるか、又は多結晶とナノ結晶とアモルファスとの組み合わせであるとしてもよい。例えば、微細構造はアモルファス単独ではないとしてもよい。
【0035】
例えば、負極電気化学的活性物質中のSi材料の微細構造は、多結晶を含むか、多結晶自体であるとしてもよい。多結晶シリコンは、多数の小さなシリコン結晶又は結晶子で形成されるとしてもよい。多数の結晶子は、典型的にはランダムに配置されていてもよい。実例として、多結晶Siは、任意の認定された商業的な供給業者、例えば、多くの供給業者の中でも、Wacker Chemi、又はHemlock Semiconductorなどから入手されるとしてもよい。
【0036】
例えば、負極電気化学的活性物質中のSiの微細構造は、ナノ結晶とアモルファスとの組み合わせであってもよい。このナノ結晶シリコンは、典型的にはアモルファス相を含む準結晶構造を備えたシリコンの形態であるが、アモルファス相の中に結晶性シリコンの粒子も含有するという点で、アモルファスSiとは異なる。ナノ結晶シリコンの典型的な供給元には、Strem(米国)及びCenate(ノルウェー)などがある。
【0037】
いくつかの局面では、負極電気化学的活性物質中のSiの微細構造は、多結晶とナノ結晶とアモルファスとの組み合わせであってもよい。多結晶Siが、他の微細構造が組み合わされてなるシリコン中に存在するときは、多結晶相の割合(mass)は20パーセント以下であるとしてもよい。例えば、多結晶Siの割合は、15パーセント以下、例えば10パーセント以下、例えば5パーセント以下であるとしてもよい。
【0038】
負極電気化学的活性物質は、例えば、1種以上の非第14族元素含有水素貯蔵材料を含有してもよい。非第14族元素含有水素貯蔵材料が負極電気化学的活性物質中に存在する場合、当該非第14族元素含有水素貯蔵材料は、例えば、50重量パーセント以下の割合で存在してもよい。例えば、非第14族元素含有水素貯蔵材料は、40重量パーセント以下、例えば30重量パーセント以下、例えば20重量パーセント以下、例えば10重量パーセント以下、例えば5重量パーセント以下、例えば3重量パーセント以下、例えば2重量パーセント以下、例えば1重量パーセント以下、例えば0.1重量パーセント以下、例えば0.01重量パーセント以下の割合で存在してもよい。
【0039】
負極電気化学的活性物質中に含まれ得る、非第14族元素含有水素貯蔵材料の具体的な例としては、電気化学的かつ可逆的に水素を吸蔵可能な、当技術分野で既知である任意の材料が挙げられる。このような材料の具体的な例は、AB型の水素貯蔵材料であり、Aは水素化物形成元素であり、Bは非水素化物形成元素であり、xは1~5である。具体的な例として、当該技術分野で既知であるAB,AB,及びA型(系)材料が挙げられる。水素化物形成金属の成分(A)は、例えば、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、イットリウム、若しくはこれらの組合せ又はミッシュメタル等の他の金属(s)が挙げられるが、これらに限定されない。B(非水素化物形成)成分は、例えば、アルミニウム、ニッケル、コバルト、銅、及びマンガン、又はこれらの組合せからなる群から選択される金属を含む。いくつかの局面では、負極電気化学的活性物質中にさらに含まれ得るAB型(系)材料は、例えば、米国特許第5,536,591号及び米国特許第6,210,498号に開示される。例えば、非第14族元素含有水素貯蔵材料は、Youngら,International Journal of Hydrogen Energy,2014;39(36):21489-21499、又はYoungら,Int.J.Hydrogen Energy,2012;37:9882中に記載される通りである。例えば、非第14族元素含有水素貯蔵材料は、米国特許出願公開第2016/0118654号に開示される通りである。いくつかの局面では、非第14族元素含有水素貯蔵材料は、例えば米国特許第9,502,715号に開示される通り、Ni,Co,Al,Mn,又はこれらの組合せの水酸化物、酸化物、又はオキシ水酸化物を含む。例えば、非第14族元素含有水素貯蔵材料は、例えば米国特許第9,859,531号に開示される通り、Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ag,Au,Cd,又はこれらの組合せ等の遷移金属を含む。
【0040】
負極電気化学的活性物質は粉末の形態で存在し、これは、負極電気化学的活性物質は摂氏25度(℃)で固体の状態であり、基板(substrate)なしの状態ということを意味する。これまでは反対のことが信じられていたにもかかわらず、固体の状態の第14族元素は、固体の状態の水素化物を形成するために用いられ、水素貯蔵又は電池の用途で有用であり得ることが判明した。この粉末はバインダによって保持され、バインダはこの粉体粒子を、負極の形成時に集電体上に形成される層に結合させる。
【0041】
本明細書で提供される電気化学セルはまた、正極電気化学的活性物質を収容する正極を含む。正極電気化学的活性物質は、水素を循環させて電流を生成するために正極活物質が負極電気化学的活性物質と対となって機能するように、プロトン伝導型電池中での循環において水素イオンを吸蔵及び放出する特性を有する。正極電気化学的活性物質に用いるのに適した例示的な材料は、金属水酸化物を含む。正極電気化学的活性物質に用いられ得る金属水酸化物の具体的な例としては、米国特許第5,348,822号、第5,637,423号、第5,366,831号、第5,451,475号、第5,455,125号、第5,466,543号、第5,498,403号、第5,489,314号、第5,506,070号、第5,571,636号、第6,177,213号、及び第6,228,535号に記載されるものが挙げられる。
【0042】
いくつかの局面では、正極電気化学的活性物質はNiの水酸化物を単独で、又は1種以上の追加金属と組み合わせて含む。例えば、電気化学的活性物質は、Niと、1,2,3,4,5,6,7,8,9,又はそれ以上の種類の追加金属を含む。例えば、正極電気化学的活性物質は唯一の金属としてNiを含むとしてもよい・。
【0043】
例えば、正極電気化学的活性物質は、Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Y,Zr,Nb,Mo,Tc,Ru,Rh,Pd,Ag,Cd,Lu,Hf,Ta,W,Re,Os,Ir,Pt,Au,その水素化物、その酸化物、その水酸化物、そのオキシ水酸化物、及び前述のものの任意の組み合わせからなる群から選択される1種以上の金属を含む。例えば、正極電気化学的活性物質は、Ni,Co,Mn,Zn,Al,Zr,Mo,Mn,希土類、及びこれらの組合せのうち、1種以上を含む。いくつかの局面では、正極電気化学的活性物質は、Ni,Co,Al,又はこれらの組合せを含む。
【0044】
正極電気化学的活性物質は、Niを含んでもよい。Niは例えば、正極電気化学的活性物質中の全ての金属に対して原子百分率で、10原子パーセント(at%)以上で存在する。例えばNiは、15at%以上、例えば20at%以上、例えば25at%以上、例えば30at%以上、例えば35at%以上、例えば40at%以上、例えば45at%以上、例えば50at%以上、例えば55at%以上、例えば60at%以上、例えば65at%以上、例えば70at%以上、例えば75at%以上、例えば80at%以上、例えば85at%以上、例えば90at%以上、例えば91at%以上、例えば92at%以上、例えば93at%以上、例えば94at%以上、例えば95at%以上、例えば96at%以上、例えば97at%以上、例えば98at%以上、例えば99at%以上の割合で存在するとしてもよい。例えば、正極電気化学的活性物質中の唯一の金属はNiであるとしてもよい。
【0045】
負極電気化学的活性物質及び正極電気化学的活性物質の一方又は両方は、例えば粉末又は粒状の形態であるとしてもよい。粒子同士は、負極又は正極の形成時に集電体上に層を形成するように、バインダによって保持されていてもよい。バインダとしては、負極、正極、又はその両方の形成に使用するのに適しており、かつプロトン伝導に適したものであれば、当技術分野において既知である任意のバインダを使用することができる。
【0046】
負極の形成に用いられるバインダの実例としてはポリマーバインダ材料が含まれるが、これに限定されない。バインダの素材の例としては、エラストマー材料が挙げられ、例えば、スチレン-ブタジエン(SB)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、及びスチレン-エチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)が挙げられる。バインダのより具体的な例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルアルコール(PVA)、テフロン(登録商標)化アセチレンブラック(TAB-2)、スチレン-ブタジエンバインダ材料、又はカルボキシメチルセルロース(CMC)が含まれるが、これらに限定されない。具体的な例は、米国特許第10,522,827号で確認され得る。電気化学的活性物質とバインダの比率は、例えば4:1から1:4である。例えば、電気化学的活性物質とバインダの比率は、1:3から1:2である。
【0047】
正極及び負極の一方又は両方は、さらに、電気化学的活性物質に含まれる1種又は複数種の添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、例えば導電性材料である。導電性材料は、好適には導電性炭素である。導電性炭素の具体的な例としては、グラファイトが挙げられる。他の例として、黒鉛化コークス等の黒鉛状炭素を含有する材料が挙げられる。考えられる炭素材料のさらに他の例には、アモルファスで非晶質であり無秩序な非黒鉛化炭素、例えば石油コークスやカーボンブラックが含まれる。導電性材料は、負極又は正極に、例えば0.1wt%から20wt%の重量パーセント(wt%)の割合で、又は任意の割合を示す値もしくはその範囲内で存在する。
【0048】
負極及び正極は、当該技術分野において既知の任意の方法によって形成されてもよい。例えば、負極電気化学的活性物質又は正極電気化学的活性物質を、適切な溶媒中でバインダと、任意選択で導電性の材料と混合してスラリーを形成し、スラリーを集電体上にコーティングし、乾燥させて溶媒の一部又は全部を蒸発させることによって、集電体の表面に電気化学的活性物質の層を形成することができる。
【0049】
集電体は、メッシュ状、箔状、又は他の適当な形態であってもよい。例えば、集電体は、アルミニウム合金等のアルミニウム、ニッケル又はニッケル合金、ステンレス鋼等の鋼、銅又は銅合金、又はこのような種類の他の材料で形成されてもよい。集電体は、例えばシート状であり、箔、固体基板、多孔質基板、グリッド、発泡体もしくは1種以上の金属でコーティングされた発泡体、又は当技術分野において既知の他の形態であってもよい。いくつかの局面では、集電体は箔状である。例えば、グリッドはエキスパンドメタルグリッド及び穿孔箔グリッドを含んでいてもよい。集電体は、任意の適切な電子伝導性および選択的な不透過性又は実質的な不透過性を有する材料であってよく、その例として銅、ステンレス鋼、チタン、もしくは炭素紙/フィルム、非穿孔金属箔、アルミ箔、ニッケル及びアルミニウムを含むクラッド材、銅及びアルミニウムを含むクラッド材、ニッケルめっき鋼、ニッケルめっき銅、ニッケルめっきアルミニウム、金、銀、任意の適切な電子伝導性および不透過性を有する材料、又はこれらの任意の適切な組み合わせたものであってもよい。例えば、集電体は、1種以上の適した金属で形成するか、又は金属(例えば、合金、固溶体、メッキ金属)を組み合わせて形成されるものであるとしてもよい。例えば負極のための集電体は、ステンレス鋼等の鋼を含有するものであってもよく、排他的にステンレス鋼等のそれ自体であるとしてもよい。
【0050】
プロトン伝導性電気化学セルは負極と正極との間に介在するセパレータを含んでいてもよい。セパレータとしては、負極と正極との間のイオン移動を許容可能に又は許容できないほどには制限しないように、水素イオンに対して透過性を有するものを用いることができる。セパレータの具体的な例としては、ナイロン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ガラス繊維、綿等の材料を挙げることができるが、これらに限定されない。実例として、セパレータはポリエチレン又はポリプロピレンであってもよい。
【0051】
本明細書で提供されるプロトン伝導型電池は、非水プロトン伝導型電解液を含む。電解液は、負極電気化学的活性物質と正極電気化学的活性物質との間にあり、負極と正極との間におけるプロトンの流れや他の移動を可能にする。非水電解液は、例えば10wt%未満の水、例えば5wt%未満の水、例えば1wt%の水を含むとすることができる。いくつかの局面では、非水電解液は、100ppm未満の水、50ppm未満の水、例えば10ppm未満の水を含むとしてもよい。
【0052】
非水電解液は例えば、1種以上の非プロトン性化合物を単独で含むか、有機酸等の1種以上のプロトン源を組み合わせて含むとしてもよい。非プロトン性化合物は、電解液中で用いるのに適した化合物であって、電気化学セル内の他の成分と有害な反応を起こさない化合物であれば、いかなる化合物であってもよい。非プロトン酸の具体的な例としては、アンモニウム又はホスホニウム化合物が含まれ、例えば、このアンモニウム又はホスホニウムは、窒素又はリンに結合した1つ以上の直鎖、分岐、もしくは環状の置換又は非置換アルキル基を含んでいてもよい。
【0053】
非水電解液は、例えば、正の荷電を有する窒素又はリン原子に結合した、1又は2つ以上の、直鎖状、分岐状、もしくは環状の置換又は非置換アルキル基を含むアンモニウム又はホスホニウム化合物であってもよい。例えば、化合物は、このようなアルキルを1つ含み、例えば、同一又は異なり得るこのようなアルキルを2つ含む。例えば、アンモニウム又はホスホニウム化合物のアルキルは、1~6個の炭素原子であるかこれを含み、例えば1~4個の炭素原子であるかこれを含み、分岐状、直鎖状、又は環状であり得る。いくつかの局面では、窒素又はリンは、中心環から延びる1つ以上のペンダント基を有し得る5又は6員環構造の構成元素であってもよい。例えば、アンモニウムイオンはイミダゾリウムイオンであってよい。例えば、ホスホニウムイオンはピロリジニウムイオンであってもよい。
【0054】
いくつかの局面では、アンモニウム又はホスホニウムは、1~6個の炭素原子を有する、1又は2つの直鎖状もしくは環状の、置換又は非置換のアルキルを含む。例えば、アルキルは2,3,4,5,又は6個の炭素を含む。いくつかの局面では、非プロトン性化合物は炭素の数が1~6である1又は2つのアルキルを含む。アルキルの置換元素は、例えば、窒素、酸素、硫黄、又はこのような種類の他の元素である。例えば、アンモニウム又はホスホニウムは、環がN,O,又はPで置換されている、5又は6員の環構造を含む。
【0055】
電解液として用いられる非プロトン性化合物の具体的な例には、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム(BMIM)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(EMIM)、1,3-ジメチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1,2,3-トリメチルイミダゾリウム、トリス(ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、1,2,4-トリメチルピラゾリウム、又はこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
非プロトン性化合物は、例えば、非プロトン性化合物と組み合わせて1つ以上の陰イオンを含む。陰イオンの具体的な例には、メチド、硝酸塩、カルボキシレート、イミド、ハロゲン化物、ホウ酸塩、リン酸塩、ホスフィン酸塩、ホスホネート、スルホン酸塩、硫酸塩、炭酸塩、及びアルミン酸塩が含まれるが、これらに限定されない。さらに具体的な例は、米国特許第6,254,797号及び第9,006,457号で確認され得る。具体的な例示的局面では、陰イオンは、酢酸塩等のカルボン酸塩、水素、アルキル、又はフルオロリン酸塩等のリン酸塩、ホスフィン酸アルキル等のホスフィネートなどを含む。このような非プロトン性化合物の具体的な例には、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム(BMIM)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(EMIM)、1,3-ジメチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1,2,3-トリメチルイミダゾリウム、トリス(ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、1,2,4-トリメチルピラゾリウム、又はこれらの組合せの酢酸塩、スルホン酸塩、又はホウ酸塩が含まれるが、これらに限定されない。具体例として、トリフルオロメタンスルホン酸ジエチルメチルアンモニウム(DEMA TfO)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート(EMIM Ac)、又は1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(BMIM TFSI)が挙げられる。
【0057】
非プロトン性化合物に加え、電解液には、例えばプロトン供与体として作用する有機酸がさらに付加されてもよい。有機酸の存在により、電解液のプロトン伝導性が全体的に向上し、これにより当該電解液を利用するプロトン伝導型電池の機能が向上する。例えば、有機酸はカルボキシレートであるとしてもよい。カルボキシレートの具体的な例としては、末端カルボン酸に付加された0~10個、又はそれ以上の炭素を備えるものが挙げられる。より具体的な例としては、(例えば、1~3個のフッ素又は塩素原子を備えた)酢酸又はハロ酢酸等の酢酸が挙げられる。例えば、有機酸は酢酸であるとしてもよい。
【0058】
有機酸は、例えば1~5モル/kg(以下、この単位を「m」と称する場合がある。)で電解液中に存在する。例えば、有機酸は3~4mの濃度で存在するとしてもよい。例えば、有機酸は3~3.5mの濃度で存在するとしてもよい。
【0059】
上記或いは本明細書で提供される局面のいずれかにおいて用いられる非水電解液は、例えば、負極電気化学的活性物質で重量当たり1000mAh/gを超える放電容量に対して、電解液を収容するプロトン伝導型電気化学セルに最大容量を持たせるのに適した1種又は複数種の添加剤を含む。適切な塩等の、1種又は複数種の適切な添加剤の追加により、本明細書で提供されるプロトン伝導型電気化学セルの形成が飛躍的に向上し、これにより、当該電池により実現可能な放電容量を向上さされることが判明した。他の同一のセルでは、1種類又は複数種類のこのような添加剤の追加により、最大容量を、多くの場合3~7倍にも押し上げることが可能であると判明した。1つの特定の理論に限定されることなく、電解液内での自由水素の可用性(availability)が、セル形成が抑制される程度まで、形成の間に変化する。適切な塩の追加は、自由水素濃度を安定させ、当該セルにより実現可能な、得られる容量を押し上げる。
【0060】
負極電気化学的活性物質が重量当たり1000mAh/gを超える放電容量を有するのに対して、電解液を収容するプロトン伝導型電気化学セルに最大容量を持たせるためには、塩添加剤として、例えば、水中のpKaが1~14、例えば3~13、例えば7~13、例えば3~8のものを用いるのが適している。
【0061】
負極電気化学的活性物質が重量当たり1000mAh/gを超える放電容量を有するのに対して、電解液を収容するプロトン伝導型電気化学セルに最大容量を持たせるための、塩添加剤の具体的な例として、カリウム又はナトリウムの塩が挙げられる。適切な塩には、カリウムもしくはナトリウムのリン酸塩、炭酸塩、又は硫酸塩が含まれる。カリウム塩のより具体的な例には、リン酸一カリウム又はリン酸二カリウム等のリン酸カリウム、炭酸カリウム、硫酸カリウムなどが含まれるが、これらに限定されない。ナトリウム塩の具体的な例には、一,二,四リン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、及び硫酸水素ナトリウムが含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
負極電気化学的活性物質が重量当たり1000mAh/gを超える放電容量を有するのに対して、電解液を収容するプロトン伝導型電気化学セルに最大容量を持たせるためには、塩添加剤は、0.01~1m、例えば0.01~0.2m、例えば0.5~1mの濃度で電解液に存在するとしてもよい。
【0063】
負極と正極とセパレータと非水電解液とは、セルケース(例えば、外装体)に収容されてもよい。外装体は、金属もしくはポリマー製の缶、又はアルミニウムで被覆したポリプロピレンフィルム等のヒートシール可能なアルミホイルなどのラミネートフィルムであってもよい。このように、本明細書で提供される電気化学セルは、任意の既知のセル形態、実例として、ボタン電池、パウチ電池、円筒型電池、又は他の適切な構造のものであってもよい。いくつかの局面では、外装体は可撓性フィルムの形態、例えばポリプロピレンフィルムである。このような外装体は一般的にパウチ電池を形成するのに用いられる。プロトン伝導型電池は、任意の適切な構造又は形状を有していてもよく、円柱状又は角柱状であってもよい。
【0064】
集電体又は基板は1つ以上のタブを備えてもよく、これにより、電子が集電体からセルの外部領域へ移動できるようになり、集電体が回路に接続され、セルの放電中に生成された電子が、1つ以上の装置に電力を供給するために利用されてもよい。タブは、任意の適切な導電性材料(例えば、Ni,Al,又は他の金属)により形成することができ、集電体に溶接されてもよい。例えば、各電極はシングルタブを有するとしてもよい。
【0065】
本明細書で提供されるプロトン伝導型電池は、記載される任意の局面において、例えば、Ni(OH)正極に対して1ボルトを上回る電圧にしたときに、負極電気化学的活性物質において800mAh/gを超える二次電池放電容量を有する。例えば、セル形成後の放電の容量は、例えばサイクルを20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30にして計測される。電池の放電容量は上記の条件ごとに計測され、例えば900mAh/g、例えば1000mAh/g、例えば1100mAh/g、例えば1200mAh/g、例えば1300mAh/g、例えば1400mAh/g、例えば1500mAh/g、例えば1600mAh/g、例えば1700mAh/g、例えば1800mAh/g、例えば1900mAh/g、例えば2000mAh/gであるか、又はこれを超える。
【0066】
いくつかの局面では、本明細書で提供されるプロトン伝導型電池は、1000mAh/gであるか、又はこれを超える最大容量を有し、そのときのグラムは負極電気化学的活性物質の重量であり、Ni(OH)正極に対して計測される。例えば、最大容量は、1100mAh/g、例えば1200mAh/g、例えば1300mAh/g、例えば1400mAh/g、例えば1500mAh/g、例えば1600mAh/g、例えば1700mAh/g、例えば1800mAh/g、例えば1900mAh/g、例えば2000mAh/g、例えば2500mAh/g、例えば3000mAh/g、例えば3500mAh/g、例えば4000mAh/g、例えば4500mAh/g、例えば5000mAh/g、例えば5500mAh/g、例えば6000mAh/g、例えば6500mAh/gであるか、又はこれを超える。
【0067】
特定の局面では、本明細書によって提供される電気化学セルは、水素の吸蔵及び放出が可能な正極電気化学的活性物質を含む正極と、負極であって、当該負極は1種以上の第14族元素の負極電気化学的活性物質を含み、当該負極電気化学的活性物質は粉末の形態でありバインダにより結合させられ、当該負極電気化学的活性物質の微細構造は、多結晶であるか、ナノ結晶とアモルファスとの組み合わせであるか、又は多結晶とナノ結晶とアモルファスとの組み合わせである、負極と、アンモニウム非プロトン性化合物とカルボン酸添加剤とを含み、例えばここで当該負極電気化学的活性物質はSiを含んでおり、例えばカリウム又はナトリウムのうちの1種又は複数種の塩添加剤を含有する非水電解液と、を含む。
【0068】
他の局面では、本明細書によって提供される電気化学セルは、Niを含む正極電気化学的活性物質を含む正極と、負極であって、当該負極はSiと、1種以上の非Si第14族元素との負極電気化学的活性物質を含み、当該負極電気化学的活性物質は粉末の形態でありバインダにより結合させられ、当該負極電気化学的活性物質の微細構造は、多結晶であるか、ナノ結晶とアモルファスとの組み合わせ、又は多結晶とナノ結晶とアモルファスとの組み合わせである、負極と、アンモニウム非プロトン性化合物とカルボン酸添加剤とを含み、例えばここで当該負極電気化学的活性物質はSiを含んでおり、例えばカリウム又はナトリウムのうちの1種又は複数種の塩添加剤を含有する非水電解液と、を含む。
【0069】
いくつかの局面では、本明細書によって提供される電気化学セルは、Niを主成分とする正極電気化学的活性物質を含む正極と、負極であって、当該負極は1種以上の第14族元素の負極電気化学的活性物質を含み、当該負極電気化学的活性物質は粉末の形態でありバインダにより結合させられ、当該負極電気化学的活性物質の微細構造は、アモルファスであるか、多結晶であるか、ナノ結晶とアモルファスとの組み合わせ、又は多結晶とナノ結晶とアモルファスとの組み合わせである、負極と、アンモニウム非プロトン性化合物と酢酸添加剤とを含み、例えばここで当該負極電気化学的活性物質は、原子百分率においてSiを主成分としており、例えば、本明細書によって提供される、カリウム系の1種又は複数種の塩添加剤を含む非水電解液と、を含む。
[実施例]
【0070】
実施例1
一連のシリコン含有組成物を商業的供給源から入手した。多結晶シリコンは、Alfa Aesar(米国)、Fijifilm(日本)、Hongwu(中国)、Silican(台湾)、及びParaclete(米国)から入手した。アモルファス/ナノ結晶シリコンは、Cenate(ノルウェー)及びStrem(米国)から入手した。用いる各シリコンの微細構造を確認するために、各サンプルに対して、放射線源としてCu-Kαを用いてPhilips X’Pert ProX線回折計により分析が行われた。サンプル1は、多結晶Siを含んでいた。回折パターンは図1に示される。回折は約48°付近と56°付近で鋭いピークを示し、これは多結晶シリコンの模範的な特徴である。材料は、アモルファス又はナノ結晶のシリコンを含んでいないようである。サンプル2の分析結果が図2に示され、これは、ナノ結晶とアモルファスに多結晶を組み合わせたシリコンを含む。ナノ結晶は、29°付近のブロードなピークとして現れ、52°付近のブロードなピークとしてアモルファスが示される。多結晶Siも幾らかサンプルに存在することが、48°付近と56°付近の小さな鋭いピークにより明らかである。図3に示すようなサンプル3は、多結晶Siがない場合の、ナノ結晶Si及びアモルファスSiの組み合わせを示す。
【0071】
負極は、各サンプルシリコン含有材料を素材として構成した。シリコン材料は乾燥状態の粉末の形態であり、1:3の重量比で乾燥状態のTAB-2バインダと混合した。材料は、集電体であるNiメッシュ基板にプレスされた。Ni(OH)正極は、商業的に供給されかつ焼結されたNi(OH)を用いて標準的な方法により作製された。電気化学的性質を試験するために、テフロン(登録商標)のSwagelok製ティー内に電気化学セルを形成することにより、負極の試験が行われた。電気化学的分析に用いられたセルが図4に示される。当該セルは、カラー3によって固定されたフェルール2で両端が覆われている中央グランド1を含む。サンプル4は、Niメッキ鋼(NS)又はステンレス鋼(SS)から形成された2つの集電ロッド5の間に挟まれている。上部チャネルは、圧力ベント装置であるパラフィルム6によって覆われている。サンプルは、負極及び正極を、標準的なセパレータを介して積層させて形成している。セル内に、1種又は複数種の塩添加剤を含む酢酸を3.33mの濃度で含有するEMIM/ACを含む電解液を充填した。
【0072】
このセルを、充電レート700mA/g、充電時間20時間、放電レート70mA/g、放電終止1V又は0Vでサイクルさせた。セル形成後の放電は、サンプル1及び2(図5)ではサイクル28まで、サンプル3(図6)ではサイクル31まで行われ、試験が行われたすべてのサンプルで、(Siが)3800mA/gを超える大きな容量を実証された。多結晶Si負極と、ナノ結晶Si及びアモルファスSiの組み合わせの両方で5500mAh/gを超える最大放電容量を示した。3つすべてのサンプルの結果及び試験条件を表1に示す。
【表1】
【0073】
実施例2
Si含有負極を使用するプロトン伝導型電池の電解液に特定の塩を加えると、セルの形成が安定すると共に向上し、これによりセルの電気化学的特性が向上することが判明した。実施例1のセルに対して、電解液に1種又は複数種の塩添加剤を追加するか、又は追加せずに試験を行う。これらの検討は、単純にカリウム塩の方が易溶性に優れるためにカリウム塩を用いて行われたが、ナトリウム塩添加剤に対しても、類似する機能が示されることが期待される。
【0074】
酢酸を3.33mの濃度で含むEMIM/Ac電解液に対して、そのまま、又は、0.1又は0.05mの濃度で、KHPO,KHPO,KHCO,KHSO,又はKを追加して、さらに試験が行われた。実施例1のサンプル1の多結晶Si負極を含むセル内において電解液の検討が行われた。セルは、20時間、700mAh/gの条件下で充電され、続いて終止電圧0Vとなるまで70mAh/gで放電され、31サイクルに到達するまでの容量について検討が行われた。その結果を表2に示す。
【表2】
【0075】
塩添加剤を用いなかった場合に優れた最大容量が実現された一方で、セルは、カリウム塩添加剤を追加することで、最大容量が3倍を超えたことが実証された。KHPO添加剤を用いたセルの容量は、Si負極材料において6800mAh/gを超えるほどの、注目すべき最大容量を示した。
【0076】
特定の局面に対する上述の説明は、本質的に単なる例示であり、以下にクレームされる発明の範囲、用途、又は当然変化し得る使用を限定することは意図しない。本開示は、本明細書に含まれる非限定的な定義及び用語と関連し提供される。これらの定義及び用語は、発明の範囲又は実施を限定するよう機能するよう意図されておらず、例示的かつ記述的な目的のためだけに示される。プロセス又は組成物が、個別のステップの順序として、又は具体的な材料を用いて記載されている一方で、そのステップ又は材料は、発明の記載が、当業者により容易に理解可能な多くの方法で包含される多数の要素又はステップを含み得るように置換可能であると理解される。
【0077】
ある要素がその他の要素の「上に」存在するという場合、それは、その他の要素の直接上に存在することもあり得るし、それらの間に介在する要素が存在することもあり得ることは当然理解される。対照的に、ある要素がその他の要素の「直接上に」存在するという場合、介在する要素は存在しない。
【0078】
用語「第1の」、「第2の」、「第3の」などは、本明細書において、様々な要素、成分、領域、層、及び/又はセクションを説明するために使用されてよいが、これらの要素、成分、領域、層、及び/又はセクションは、これらの用語によっては制限されないことは、理解される。これらの用語は、1つの要素、成分、領域、層、又はセクションを、その他の要素、成分、領域、層、又はセクションと区別するためにのみ使用される。従って、以下で考察される「第1の要素」、「成分」、「領域」、「層」、又は「セクション」は、本明細書中の教示から逸脱することなく、第2の(又は他の)要素、成分、領域、層、又はセクションと名づけることができ得る。
【0079】
本明細書で使用される用語は特定の実施形態を記載する目的だけのためのものであり、限定することを意図していない。本明細書で使用される通り、「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」という単数形は、文書内容による明確な断りがない限り、「少なくとも1つの」を含んだ複数形も含むことを意図している。「又は」は「及び/又は」を意味する。本明細書に用いられているように、用語「及び/又は」は、関連する列挙項目のうち1つ以上のあらゆる組み合わせを含む。さらに、用語「から構成される」及び/又は「から構成された」或いは「を含む」及び/又は「を含んだ」は、本明細書で用いられる場合、述べられた特徴、領域、整数、工程、動作、要素、及び/又は成分の存在を明示するが、1つ以上のその他の特徴、領域、整数、工程、動作、要素、成分、及び/又はその群が存在することや、付加されることを除外するものではない、と理解される。用語「又はそれらの組み合わせ」は、上記要素のうち少なくとも1つを含む組み合わせを意味する。
【0080】
異なって定義されない限り、本明細書で用いられる(技術用語及び科学用語を含む)全ての用語は、本開示の属する分野における当業者によって一般的に理解されている意味と同一の意味を有する。さらに、一般的に用いられる辞書において定義される用語等の用語が、関連分野及び本開示の文脈におけるそれらの意味と矛盾しない意味を有すると解釈されるべきであり、理想的な又は過度に形式的な意味として本明細書で明確に定義されない限りそのような意味で解釈されない、と理解される。
【0081】
本明細書で言及される特許、公報、及び出願は、本発明が関連する分野の当業者の水準を示すものである。各特許、公報、又は出願が参照により本明細書に詳細にかつ個々に組み込まれるような程度で、これらの特許、公報、及び出願が参照により本明細書に組み込まれる。
【0082】
上記を考慮し、本発明の他の変形及び変更が行われ得ることが理解される。上記図面、考察、及び説明は発明のいくつかの具体的な実施形態の例示であり、その実施を限定することは意味していない。以下の請求項は、発明の範囲を定める全ての等価物を含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-12-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトン伝導型二次電池であって、
水素の吸蔵及び放出が可能な正極電気化学的活性物質を含む正極と、
負極であって、前記負極は1種以上の第14族元素を含む負極電気化学的活性物質を含み、前記負極電気化学的活性物質は粉末の形態でありバインダにより結合させられ、前記負極電気化学的活性物質の微細構造は、多結晶であるか、ナノ結晶とアモルファスとの組み合わせであるか、又は多結晶とナノ結晶とアモルファスとの組み合わせである、負極と、
前記負極と前記正極との間に介在する非水電解液と、を備え、
前記二次電池の放電容量は、1よりも高い電圧のときに、前記負極電気化学的活性物質において800mAh/gを超える、プロトン伝導型二次電池。
【請求項2】
前記負極電気化学的活性物質は2種以上の第14族元素を含む、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記負極電気化学的活性物質はSiを含む、請求項1に記載の電池。
【請求項4】
前記負極電気化学的活性物質は、Siと、1種以上の非Si第14族元素とを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の電池。
【請求項5】
前記1種以上の非Si第14族元素は、C,Ge,又はこれらの組合せである、請求項4に記載の電池。
【請求項6】
前記非Si第14族元素の量は、前記負極電気化学的活性物質中の全ての第14族元素に対して、50原子パーセント以下である、請求項4に記載の電池。
【請求項7】
前記二次電池の前記放電容量は、Ni(OH)正極に対して1よりも高い電圧のときに、負極電気化学的活性物質において1000mAh/gを超える、請求項1から3のいずれか一項に記載の電池。
【請求項8】
前記二次電池の最大放電容量は、負極電気化学的活性物質において3500mAh/gを超える、請求項1から3のいずれか一項に記載の電池。
【請求項9】
前記電解液は、1種以上の非プロトン性化合物と、プロトン源としての酸とを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の電池。
【請求項10】
前記非プロトン性化合物は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム(BMIM)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート(EMIM)、1,3-ジメチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1,2,3-トリメチルイミダゾリウム、トリス(ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、又は1,2,4-トリメチルピラゾリウムを含む、請求項9に記載の電池。
【請求項11】
前記電解液はさらに添加剤を含み、前記添加剤はカリウム、酢酸、又はこれらの組合せを含む、請求項9に記載の電池。
【請求項12】
前記添加剤は、カリウムのリン酸塩、炭酸塩、又は硫酸塩を含む塩添加剤である、請求項11に記載の電池。
【請求項13】
前記負極電気化学的活性物質は、さらに、1種以上の非第14族元素含有水素貯蔵材料を含み、前記非Si水素貯蔵材料は、50重量パーセント以下の割合で存在する、請求項1から3のいずれか一項に記載の電池。
【請求項14】
前記正極電気化学的活性物質は、Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Y,Zr,Nb,Mo,Tc,Ru,Rh,Pd,Ag,Cd,Lu,Hf,Ta,W,Re,Os,Ir,Pt,Au,その水素化物、その酸化物、その水酸化物、オキシ水酸化物、又は前述のものの任意の組み合わせを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の電池。
【請求項15】
前記正極電気化学的活性物質はNiを含む、請求項14に記載の電池。
【請求項16】
前記正極電気化学的活性物質は、前記正極電気化学的活性物質中の全ての金属に対して、10原子パーセント以上の割合を占めるようにNiを含む、請求項14に記載の電池。
【請求項17】
Niは前記正極電気化学的活物質の金属成分中に、80原子パーセント以上の割合で存在する、請求項14に記載の電池。
【請求項18】
前記正極電気化学的活性物質は、Ni,Co,Mn,Zn,Al,又はこれらの組合せの水酸化物を含む、請求項14に記載の電池。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0082
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0082】
上記を考慮し、本発明の他の変形及び変更が行われ得ることが理解される。上記図面、考察、及び説明は発明のいくつかの具体的な実施形態の例示であり、その実施を限定することは意味していない。以下の請求項は、発明の範囲を定める全ての等価物を含む。
なお、本開示は、実施の態様として以下の内容を含む。
[態様1]
プロトン伝導型二次電池であって、
水素の吸蔵及び放出が可能な正極電気化学的活性物質を含む正極と、
負極であって、前記負極は1種以上の第14族元素を含む負極電気化学的活性物質を含み、前記負極電気化学的活性物質は粉末の形態でありバインダにより結合させられ、前記負極電気化学的活性物質の微細構造は、多結晶であるか、ナノ結晶とアモルファスとの組み合わせであるか、又は多結晶とナノ結晶とアモルファスとの組み合わせである、負極と、
前記負極と前記正極との間に介在する非水電解液と、を備え、
前記二次電池の放電容量は、1Voltよりも高い電圧のときに、前記負極電気化学的活性物質において800mAh/gを超える、プロトン伝導型二次電池。
[態様2]
前記負極電気化学的活性物質は2種以上の第14族元素を含む、態様1に記載の電池。
[態様3]
前記負極電気化学的活性物質はSiを含む、態様1に記載の電池。
[態様4]
前記負極電気化学的活性物質は、Siと、1種以上の非Si第14族元素とを含む、態様1から3のいずれか一態様に記載の電池。
[態様5]
前記1種以上の非Si第14族元素は、C,Ge,又はこれらの組合せである、態様4に記載の電池。
[態様6]
前記非Si第14族元素の量は、前記負極電気化学的活性物質中の全ての第14族元素に対して、50原子パーセント以下である、態様4に記載の電池。
[態様7]
前記二次電池の前記放電容量は、Ni(OH) 正極に対して1ボルトよりも高い電圧のときに、負極電気化学的活性物質において1000mAh/gを超え、(特に1ボルトよりも高い電圧のときに例えば1500mAh/gを超える、)態様1から3のいずれか一態様に記載の電池。
[態様8]
前記二次電池の最大放電容量は、負極電気化学的活性物質において3500mAh/gを超える、態様1から3のいずれか一態様に記載の電池。
[態様9]
前記電解液は、1種以上の非プロトン性化合物と、プロトン源としての酸とを含む、態様1から3のいずれか一態様に記載の電池。
[態様10]
前記非プロトン性化合物は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム(BMIM)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート(EMIM)、1,3-ジメチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1,2,3-トリメチルイミダゾリウム、トリス(ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、又は1,2,4-トリメチルピラゾリウムを含む、態様9に記載の電池。
[態様11]
前記電解液はさらに添加剤を含み、前記添加剤はカリウム、酢酸、又はこれらの組合せを含む、態様9に記載の電池。
[態様12]
前記添加剤は、カリウムのリン酸塩、炭酸塩、又は硫酸塩を含む塩添加剤である、態様11に記載の電池。
[態様13]
前記負極電気化学的活性物質は、さらに、1種以上の非第14族元素含有水素貯蔵材料を含み、前記非Si水素貯蔵材料は、50重量パーセント以下の割合で存在する、態様1から3のいずれか一態様に記載の電池。
[態様14]
前記正極電気化学的活性物質は、Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Y,Zr,Nb,Mo,Tc,Ru,Rh,Pd,Ag,Cd,Lu,Hf,Ta,W,Re,Os,Ir,Pt,Au,その水素化物、その酸化物、その水酸化物、オキシ水酸化物、又は前述のものの任意の組み合わせを含む、態様1から3のいずれか一態様に記載の電池。
[態様15]
前記正極電気化学的活性物質はNiを含む、態様14に記載の電池。
[態様16]
前記正極電気化学的活性物質は、前記正極電気化学的活性物質中の全ての金属に対して、10原子パーセント以上の割合を占めるようにNiを含む、態様14に記載の電池。[態様17]
Niは前記正極電気化学的活物質の金属成分中に、80原子パーセント以上(特に例えば90原子パーセント以上)の割合で存在する、態様14に記載の電池。
[態様18]
前記正極電気化学的活性物質は、Ni,Co,Mn,Zn,Al,又はこれらの組合せの水酸化物を含む、態様14に記載の電池。
【国際調査報告】