(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】単分散マイクロバブルの制御された製造プロセス
(51)【国際特許分類】
A61K 49/22 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
A61K49/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023539760
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(85)【翻訳文提出日】2023-07-24
(86)【国際出願番号】 NL2021050785
(87)【国際公開番号】W WO2022139582
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523237419
【氏名又は名称】ソルスティス ファーマシューティカルズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】デ ヴァルガス セラーノ,ミゲル
(72)【発明者】
【氏名】マンジ,ジュリアナ
【テーマコード(参考)】
4C085
【Fターム(参考)】
4C085HH09
4C085JJ02
4C085KB60
(57)【要約】
本発明は、水和リン脂質溶媒混合物を調製するプロセスであって、第1のリン脂質を、このリン脂質の相転移温度より高い温度で有機溶媒中に溶解して、溶解したリン脂質溶媒混合物を形成することと、第2のリン脂質をこのリン脂質の相転移温度より高い温度でこの溶解したリン脂質溶媒混合物中に溶解して、溶解したリン脂質溶媒混合物を形成することと、水性リン酸緩衝液をこの溶解したリン脂質溶媒混合物に添加して緩衝したリン脂質溶媒混合物を形成することと、この緩衝したリン脂質溶媒混合物を撹拌して水和リン脂質溶媒混合物を形成することによる、プロセスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水和リン脂質溶媒混合物を調製するプロセスであって、
-第1のリン脂質を、前記リン脂質の相転移温度より高い温度で有機溶媒中に溶解して、溶解したリン脂質溶媒混合物を形成することと、
-第2のリン脂質を前記リン脂質の相転移温度より高い温度で前記溶解したリン脂質溶媒混合物中に溶解して、溶解したリン脂質溶媒混合物を形成することと、
-水性リン酸緩衝液を前記溶解したリン脂質溶媒混合物に添加して緩衝したリン脂質溶媒混合物を形成することと、
-前記緩衝したリン脂質溶媒混合物を撹拌して水和リン脂質溶媒混合物を形成することとを含む、
プロセス。
【請求項2】
前記水和リン脂質溶媒混合物を滅菌フィルターで濾過して滅菌した水和リン脂質溶媒混合物を形成する、
請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記リン脂質は、DPPC、DSPC、DSPG、DMPC、DBPC、DPPE、DPPE-mPEG5000、DMPE-PEG-2000及びDSPE-PEG2000の群から選択される、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記リン脂質は、DPPC、DSPC、DSPG、DMPC、DBPC、DPPEの群からの少なくとも1つ並びに、DPPE-mPEG5000、DMPE-PEG-2000及びDSPE-PEG2000の群からの少なくとも1つの、好ましくはDPPC、DSPC、DPPEの群からの少なくとも1つ並びに、DPPE-mPEG5000及びDSPE-PEG2000の群からの少なくとも1つの、より好ましくはDPPC及びDPPE-mPEG5000の組合せである、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記有機溶媒は、プロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール3000及び/又はグリセロールの群から選択され、好ましくは前記有機溶媒は、プロピレングリコールである、
先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記水性リン酸緩衝液は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、グリセリン、水、生理食塩水、生理食塩水/グリセリン及び/又は生理食塩水/グリセリン/非水溶液を含むリン酸緩衝生理食塩水、であり、好ましくはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)である、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記緩衝したリン脂質プロピレングリコール混合物を、少なくとも1時間、好ましくは少なくとも2時間、より好ましくは少なくとも4時間、更により好ましくは少なくとも8時間撹拌する、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記滅菌フィルターは、0.2μmの孔径を有する、請求項2~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
全てのプロセスステップを、前記リン脂質の相転移温度より高い温度で実行する、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記水和リン脂質溶媒混合物中の前記リン脂質の濃度は、5~20mg/mLの範囲、好ましくは10~18mg/mLの範囲である、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記リン脂質の比は、95:5~70:30の範囲、好ましくは90:10~75:25の範囲、より好ましくは85:15~80:20の範囲である、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
1つ又は複数のリン脂質を、前記リン脂質の相転移温度より高い温度で、溶解したリン脂質溶媒混合物に順次溶解する、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
リン脂質の濃度は、少なくとも12mg/mL、好ましくは少なくとも15mg/mLである、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセスによって得ることができるリン脂質組成物。
【請求項14】
前記組成物は、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)を含まない、請求項13に記載のリン脂質組成物。
【請求項15】
マイクロバブルの制御された製造のためのシステムであって、分散相流体を受け入れるための第1の入口と、連続相流体を受け入れるための第2の入口と、受け入れられた分散相流体及び受け入れられた連続相流体を用いてマイクロバブルを発生するバブル形成チャネルを有するマイクロバブル発生ユニットを備え、前記連続相流体は、請求項13又は14に記載のリン脂質組成物である、システム。
【請求項16】
請求項15に記載のシステムを用いて製造したマイクロバブルの超音波検査のための使用。
【請求項17】
請求項15に記載のシステムを用いて製造したマイクロバブルの治療用途のための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン脂質組成物の調製プロセス及びその生成物に関する。本発明は更に、単分散マイクロバブルの制御された製造におけるリン脂質組成物の使用に関する。このようなリン脂質組成物は、超音波造影剤マイクロバブルを生成する目的でマイクロバブルを作製するために広く使用されている。
【背景技術】
【0002】
超音波造影法では、バブルの大きさ及び量が最も重要である。バブルは、例えば、超音波造影法においてコントラストを高めるために使用されている。これらのバブルは、物体が超音波を反射する能力であるエコー輝度が高い。バブルは静脈内又は体腔内に投与され(腔内投与、例えば尿の逆流を可視化するために尿中に)、例えば臓器を通る血流を高コントラストで可視化することを可能にする。バブルの大きさは、バブルの共振周波数を決定し、これによってバブルの音響特性を決定するが、バブルの量は、患者の健康リスクを引き起こさずに適切なコントラストを達成するのに十分であるべきである。バブルは、リン脂質組成物を使用して作製される。バブルは、ガスコア及びリン脂質シェルを有する。リン脂質組成物は、当技術分野で公知である。
【0003】
超音波検査中、超音波撮像装置の操作者は、検査を実行すべき所望の超音波の周波数を決定する。この周波数は、分析予定の組織又は臓器の深さによって決まる。典型的には、表面身体構造には高い周波数を使用し、深い身体構造には低い周波数を使用する。適切なコントラストを達成するためには、マイクロバブルの共振周波数が所望の周波数に対応することが望ましい。更に、マイクロバブル間の共振周波数のばらつきを十分に小さくする必要がある。
【0004】
マイクロバブルは概して、ガスコアで充填されたシェルを含む。ガスコアとシェルの組合せにより、マイクロバブルの共振周波数が決まる。マイクロバブルを、例えばマイクロバブルの共振周波数と等しいか又は少なくともそれに近い適切な周波数の超音波にかけると、バブルはマイクロバブルの共振周波数で共振する。例えば低調波放射を刺激するために、マイクロバブルを共振周波数の2倍で超音波照射することも可能である。この共振は、超音波撮像装置によってとらえることができる。更に、単分散マイクロバブルを事前に知られている周波数の超音波にかける場合、その音響周波数応答は再現可能であり、正確に予測可能である。このようにして、マイクロバブルが多い領域及びマイクロバブルが少ない領域の間で高いコントラストを達成することができる。
【0005】
米国特許第9801959B号には、フルオロカーボンエマルジョンを安定化するための組成物が記載されている。この組成物には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン-PEG、及びコーン型脂質が含まれる。組成物は、ホスファチジン酸DPPAを含まない。彼らは、DPPAが製剤中の脂質の加水分解を触媒又は加速すると記載している。彼らは更に、コーン型脂質、特にDPPEがあると、そのような第3のコーン型脂質を含まない場合よりも良好なバブルカウント及び良好なマイクロバブル安定性をもたらすと記載している。
【0006】
米国特許第9545457B号明細書は、超音波造影剤として有用な脂質ブレンド及び脂質ブレンドを含有するリン脂質懸濁液の調製法を記載している。
【0007】
上記脂質ブレンドの欠点は、脂質ブレンドがマイクロ流体システムにあまり適していないことである。更なる欠点は、スケールアップが困難なことであり、その理由の1つは、脂質の混合物を調製するために有毒な有機溶媒を使用することである。別の欠点は、最終生成物中に微量の有毒な有機溶媒が存在することである。
【0008】
従って、より安定で、製造が簡単なリン脂質組成物を製造するためのリン脂質組成物の代替調製プロセスが求められている。更に、マイクロシステムにおいて好適に使用することができる、リン脂質の濃度が高いリン脂質組成物が求められている。また、有毒な有機溶媒を使用せずにリン脂質組成物を製造するプロセスを簡略化することも求められている。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、一般的により良好な安定性を有するリン脂質組成物の調製プロセスを提供することである。本発明の目的は更に、マイクロ流体システムにおける使用に適したリン脂質組成物の調製プロセスを提供することである。本発明の更なる目的は、有毒な有機溶媒を使用せずにリン脂質組成物を調製することである。本発明の更なる目的は、完全に生体適合性である脂質製剤の実用的な製造プロセスを開発することである。本発明の更に別の目的は、容易にスケールアップすることができる実用的な製造プロセスを開発することである。本発明の目的はまた、均一で濾過可能なリン脂質溶液を形成するプロセスを開発することである。本発明の更なる目的は、均一な粒径分布を得るためにマイクロバブルの(マイクロ流体)製造中にマイクロバブルの合体を防ぐリン脂質組成物を調製することである。
【0010】
従って、本発明は、リン脂質組成物の調製プロセスであって、
-第1のリン脂質を、リン脂質の相転移温度より高い温度で有機溶媒中に溶解して、溶解したリン脂質溶媒混合物を形成することと、
-第2のリン脂質をリン脂質の相転移温度より高い温度で溶解したリン脂質溶媒混合物中に溶解して、溶解したリン脂質溶媒混合物を形成することと、
-水性リン酸緩衝液を溶解したリン脂質溶媒混合物に添加して緩衝したリン脂質溶媒混合物を形成することと、及び
-緩衝したリン脂質溶媒混合物を撹拌して水和リン脂質溶媒混合物を形成することによる、
プロセスに関する。
【0011】
本発明はまた、本発明のプロセスによって調製されるリン脂質組成物に関する。
【0012】
本発明は更に、マイクロバブルの制御された製造のためのシステムにおけるリン脂質組成物の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
別段の定めがない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同一の意味を有する。本明細書において本発明の説明に使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明を限定することを意図していない。
【0014】
本明細書で使用される用語「マイクロバブル」は、本質的に同一の共振周波数を示すバブルを含み、単分散マイクロバブルとも呼ばれる。
【0015】
本明細書で使用される用語「単分散」は、マイクロバブルの集合を特徴付けることを含み、PDI=s/nとして数学的に定義される集合の多分散度(PDI)が5×10-2未満であることを表すと解釈され得、式中、nは平均気泡半径を示し、sは気泡半径の標準偏差を示す。すなわち、PDI<10%を有するバブルの集合は、単分散であるとみなされ得る。本発明の文脈で、マイクロバブルは、10μm以下、好ましくは2~5μm以下の範囲の直径を有するバブルである。10μmより大きい直径を有するバブルは、患者の血管系の最も小さい毛細血管をバブル安全に流れず、浮腫を引き起こし得る。一方、小さいバブルは、超音波反射率が低くなり得る。
【0016】
本明細書で使用される用語「分散相流体」は、SF6、N2、CO2、O2、H2、He、Ar、周囲空気、及びCF4、C2F6、C2F8、C3F6、C3F8、C4F6、C4F8、C4F10、C5F10、C5F12などのパーフルオロカーボン並びにこれらの混合物から成る群からの1つ又は複数の気体を含む。
【0017】
マイクロバブルは概して、ガスコアで充填されたシェルを含む。ガスコアとシェルの組合せにより、マイクロバブルの共振周波数が決まる。マイクロバブルをマイクロバブルの共振周波数と等しいか又は少なくともそれに近い適切な周波数の超音波にかけると、バブルはマイクロバブルの共振周波数で共振する。この共鳴は、超音波撮像装置によってとらえることができる。このようにして、マイクロバブルが多い領域及びマイクロバブルが少ない領域の間で高いコントラストを達成することができる。
【0018】
マイクロバブル発生ユニットは、国際公開第2016118010号パンフレットから知られている。本特許出願の内容は、あらゆる目的のために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0019】
本明細書で使用される用語「リン脂質の相転移温度」は、炭化水素鎖が完全に伸長して密に充填されている秩序ゲル相から、炭化水素鎖がランダムに配向して流体である無秩序液晶相への脂質の物理的状態の変化を誘導するのに必要な温度を含む。
【0020】
本明細書で使用される用語「リン脂質」又は「脂質」は、脂質の分子が、アルコール残基によって結合された、リン酸基を含有する親水性「頭部」及び、脂肪酸に由来する2個の疎水性「尾部」とを有する、脂質の種類を含む。リン酸基は、コリン、エタノールアミン又はセリンなどの単純な有機分子で修飾することができる。リン脂質は、全ての細胞膜の重要な構成成分である。リン脂質は、両親媒性のために脂質二重層を形成することができる。真核生物において、細胞膜はまた、リン脂質間に散在する、別の種類の脂質、すなわちステロールを含む。この組合せは、破断に対する機械的強度と組み合わされた二次元の流動性を提供する。
【0021】
本明細書で使用される用語「非毒性溶媒」は、ヒト及び動物などの、生き物の健康に無害である溶媒の種類を含む。例は、プロピレングリコール、エチレングリコール、水、各種リン酸緩衝液などである(これらに限定されない)。
【0022】
本発明は、リン脂質組成物を調製するための新規で環境に優しいプロセスである。完全に生体適合性であり、容易にスケールアップすることができ、最も重要なことに、濾過可能な均一なリン脂質溶液を形成するのは、脂質製剤の実用的な製造プロセスである。溶液は、マイクロ流体フローフォーカシング技術を使用したマイクロバブル形成にすぐに使用できる。バブル形成中に合体が起こらないことが好ましい。
【0023】
脂質の溶解は、好ましくは室温で必要量を秤量することによって実行される。必要であれば、脂質を最初に解凍する。ついで、好ましくは予熱した有機溶媒、より好ましくは予熱した非毒性有機溶媒を用いて、リン脂質の相転移温度より高い温度で、脂質を1つずつフラスコ中で溶解させる。前の脂質が好ましくは(非毒性)有機溶媒に完全に溶解した後にのみ、次の脂質を混合物に添加する。(非毒性)有機溶媒中に完全に溶解するとは、脂質の少なくとも80重量%が溶解する、好ましくは少なくとも90重量%が溶解する、より好ましくは少なくとも95重量%が溶解する、更により好ましくは少なくとも99重量%が溶解することを表す。温度がリン脂質の相転移温度より高いとは、温度が、最も高い相転移温度を有するリン脂質の相転移温度より高いことを表す。第1のリン脂質を、第1のリン脂質の相転移温度より高い温度で有機溶媒に溶解して、溶解したリン脂質溶媒混合物を形成し、その後第2のリン脂質を、第2のリン脂質の相転移温度より高い温度で溶解したリン脂質溶媒混合物に溶解して、溶解したリン脂質溶媒混合物を形成することができる。しかしながら、最も高い相転移温度を有するリン脂質の相転移温度より高い温度で、予熱した有機溶媒を使用することが好ましく、予熱した非毒性有機溶媒を使用することが更に好ましい。好ましくは、予熱した有機溶媒は、65℃超、より好ましくは70℃超の温度である。
【0024】
リン脂質の相転移温度より高い温度で、溶媒を有する別々のフラスコ中で別々に脂質を溶解し、ついで溶解した脂質溶液を足し合わせて1つの溶解したリン脂質溶媒混合物を形成することは、更なる選択肢である。しかしながら、これは好ましい手段ではない。
【0025】
例えば、米国特許第9801959B号では、脂質の混合物をプロピレングリコールに溶解するので、脂質の混合物の調製法は本発明者らの第1のステップと異なる。伝統的には、脂質混合物のリポソーム溶液を、主に薄膜水和法として知られているBangham法に従って調製する(Banghamら、J.Mol.Biol.1965,13:238)。手短に言えば、この手順は、有機溶媒(すなわち、クロロホルム及びメタノール)中にリン脂質固体混合物を可溶化することからなる。続いて、有機溶媒を減圧下での蒸発によって除去し、その後、得られた薄膜をプロピレングリコールに添加し、水性緩衝液で水和する。この手順の欠点は、最終生成物中に毒性溶媒が存在する可能性があることである。微量の有機溶媒を除去するための後処理、並びに生成物に毒性がないことを証明するための追加の臨床試験が必要である。
【0026】
脂質の懸濁に使用される溶媒系は、水性又は非水性ビヒクルのいずれかに分類される。典型的な溶媒系の選択は、最終製剤の溶解度及び長期安定性に依存する。脂質を溶解させるために本発明において使用される有機溶媒は、好ましくはプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール3000及び/又はグリセロールの群から選択され、より好ましくは有機溶媒はプロピレングリコールである。これらの有機溶媒は、非水性水混和性剤として分類され、共溶媒として使用される。有機溶媒は更に非毒性である。PGとも呼ばれるプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール又はプロパン-1,2-ジオール、すなわち式C3H8O2を有する有機化合物(ジオール又は二重アルコール)の使用は、無色透明の粘性液体であり、吸湿性であり、水と混和性であるため、最も好ましい。PGは、リン脂質化合物の溶解性を改善する目的で共溶媒として働くために、この場合に最も好ましく使用される。臨床的には、市販製品における賦形剤としてPGを使用することは、一般的に十分に許容される。好ましくは5~60%V/Vの範囲で使用される。
【0027】
次のステップにおいて、水性リン酸緩衝液を溶解したリン脂質溶媒混合物に添加して、緩衝したリン脂質溶媒混合物を形成する。水性リン酸緩衝液は好ましくは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、グリセリン、水、生理食塩水、生理食塩水/グリセリン及び/又は生理食塩水/グリセリン/非水溶液を含むリン酸緩衝生理食塩水であり、より好ましくはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)と組み合わせた、非水性及び非毒性溶媒としてのプロピレングリコール(PG)の組合せを使用することが最も好ましく、これは、混合物のpHを生理学的pH近くに調整及び安定化するために選択される。
【0028】
溶媒対緩衝液の比(最も好ましい場合、PBS/PG)は、好ましくは80/20%V/V~の範囲、より好ましくは90/10%V/V~98/2%V/Vの範囲である。95/5%V/V PBS/PG±1.5V/V PBS/PGの最終液体組成物を有することが最も好ましい。
【0029】
本発明による好ましいリン脂質は、DPPC、DSPC、DSPG、DMPC、DBPC、DPPE、DPPE-mPEG5000、DMPE-PEG-2000及びDSPE-PEG2000の群から選択される。より好ましくは、リン脂質は、DPPC、DSPC、DSPG、DMPC、DBPC、DPPEの群からの少なくとも1つ並びに、DPPE-mPEG5000、DMPE-PEG-2000及びDSPE-PEG2000の群からの少なくとも1つの、更により好ましくは、DPPC、DSPC、DPPEの群からの1つ並びに、DPPE-mPEG5000及びDSPEの群からの1つの、最も好ましくは、DPPC及びDPPE-mPEG5000の組合せである。DPPCは、例えば、単一マイクロバブル溶解研究において、DPPCでコーティングされたマイクロバブルが滑らかなままであることが観察されたので、最も好ましい脂質である。更に、DPPCは、表面剪断及び酸素ガス透過に対して測定可能な抵抗を示さなかった。DPPE-mPEG5000、DMPE-PEG-2000及びDSPE-PEG2000の群からは、優れたリポポリマー乳化剤であるのでDPPE-mPEG5000が好ましい。
【0030】
有利には、水和リン脂質溶媒混合物中に2種類の脂質が存在する場合の脂質の比は、95:5~70:30の範囲、より好ましくは90:10~75:25の範囲、更により好ましくは85:15~80:20の範囲である。
【0031】
有利には、1つ又は複数のリン脂質を、リン脂質の相転移温度より高い温度で、溶解したリン脂質溶媒混合物中に連続的に溶解してよい。従って、本発明においては2つより多い脂質を含む最終生成物を、予想するのが好ましい。追加の脂質として、二官能性PEG化脂質が用いられ得る。
【0032】
二官能性PEG化脂質としては、DSPE-PEG(2000)スクシニル1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[スクシニル(ポリエチレングリコール)-2000](アンモニウム塩)、DSPE-PEG(2000)PDP1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[PDP(ポリエチレングリコール)-2000](アンモニウム塩)、DSPE-PEG(2000)マレイミド1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[マレイミド(ポリエチレングリコール)-2000](アンモニウム塩)、DSPE-PEG(2000)ビオチン1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[マレイミド(ポリエチレングリコール)-2000](アンモニウム塩)、DSPE-PEG(2000)シアヌル1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[シアヌル(ポリエチレングリコール)-2000](アンモニウム塩)、DSPE-PEG(2000)アミン1,2-ジステアロイル;sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[アミノ(ポリエチレングリコール)-2000](アンモニウム塩)、DPPE-PEG(5,000)-マレイミド、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[ジベンゾシクロオクチル(ポリエチレングリコール)-2000](アンモニウム塩)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[アジド(ポリエチレングリコール)-2000](アンモニウム塩)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[スクシニル(ポリエチレングリコール)-2000](アンモニウム塩)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[カルボキシ(ポリエチレングリコール)-2000](アンモニウム塩)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[マレイミド(ポリエチレングリコール)-2000](アンモニウム塩)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[PDP(ポリエチレングリコール)-2000](アンモニウム塩)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[アミノ(ポリエチレングリコール)-2000](アンモニウム塩)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[ビオチニル(ポリエチレングリコール)-2000](アンモニウム塩)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[シアヌル(ポリエチレングリコール)-2000](アンモニウム塩)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[ホレート(ポリエチレングリコール)-2000](アンモニウム塩)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[ホレート(ポリエチレングリコール)-5000](アンモニウム塩)、N-パルミトイル-スフィンゴシン-1-{スクシニル[メトキシ(ポリエチレングリコール)2000]}及びN-パルミトイル-スフィンゴシン-1{スクシニル[メトキシ(ポリエチレングリコール)5000]}が挙げられるが、これらに限定されない。二官能性脂質は、抗体、ペプチド、ビタミン、糖ペプチド及び他の標的リガンドをマイクロバブルに付着させるために使用され得る。PEG鎖MWは、脂質中で約1000~約5000ダルトンで変動し得る。
【0033】
本発明によれば、全てのプロセスステップをリン脂質の相転移温度より高い温度で行うことが好ましい。その利点は、全プロセス中に脂質が全て液晶相なので、脂質をついで均質に混合することである。相転移温度は、炭化水素鎖が完全に伸長して密に充填されている秩序ゲル相から、炭化水素鎖がランダムに配向して流体である無秩序液晶相への脂質の物理的状態の変化を誘導するのに必要な温度として定義される。
【0034】
有利には、緩衝したリン脂質プロピレングリコール混合物を、少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも2時間、更により好ましくは少なくとも4時間、最も好ましくは少なくとも8時間撹拌する。このステップにおいて、脂質の広範な水和が起こる。撹拌ステップは、手順をより大きなバッチサイズにスケールアップする場合に容易なステップである。撹拌は、標準的なバッフルミキサー反応器を用いて行うことができる。
【0035】
有利には、水和リン脂質溶媒混合物を滅菌フィルター上で濾過して、滅菌した水和リン脂質溶媒混合物を形成する。不純物をリン脂質溶媒混合物から取り除く。より好ましくは、滅菌フィルターは、0.2μmの孔径を有する。溶液中に懸濁した細菌を除去するためには、0.2μmの孔径が有効であると考えられる。このフィルターでは、マイクロバブルを生成するマイクロ流体プロセスにおいて影響を有し得るより大きな粒子も除去される。
【0036】
有利には、水和リン脂質溶媒混合物を少なくとも2回濾過する、より好ましくは水和リン脂質溶媒混合物を室温より高い、より好ましくは50℃より高い混合物の温度で濾過する、そして水和リン脂質溶媒混合物を室温より低い、より好ましくは15℃より低い混合物の温度で濾過する。第2のステップを好ましくは、水和リン脂質溶媒混合物の保存前に行い、より安定な混合物を生じる。
【0037】
本発明によれば、水和リン脂質溶媒混合物中の脂質の濃度は、5~20mg/mLの範囲、好ましくは10~18mg/mLの範囲である。水和リン脂質溶媒混合物中の脂質の濃度がこのように高いことは、マイクロ流体製造に有利である。これらのより高い濃度は通常、「標準的な」リン脂質組成物が使用される場合、合体に関する問題を生じる。本発明のプロセスにより、これらの問題を克服した。多分散マイクロバブルをもたらすマイクロバブルの合体は、本発明のプロセスを適用する場合、もはや観察されない。単分散マイクロバブル集団を維持するためには、合体を依然として回避するべきである。
【0038】
本発明は更に、リン脂質の総濃度が少なくとも12mg/mLである、本明細書に記載の本発明のプロセスによって得ることができるリン脂質組成物に関する。有利には、リン脂質の総濃度は少なくとも15mg/mLである。リン脂質の濃度がこのように高いことは、マイクロ流体製造に有利である。より高い濃度は、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)が存在する場合に問題を生じる。有利には、本発明によるリン脂質組成物は、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)を含まない。リン脂質組成物を先行技術のプロセスにより調製する場合、これらのより高い濃度は、合体の困難をもたらす。マイクロバブルの合体が起こると、多分散マイクロバブルが生じる。単分散マイクロバブル集団を維持するためには、合体を回避するべきである。
【0039】
マイクロバブルの挙動にとって、リン脂質のサイズ及びシェル特性の両方が重要である。同一のサイズであるが異なるシェル特性を有するマイクロバブルは、挙動が異なることが文献で知られている。有利には、本明細書に記載の本発明のプロセスによって得ることができるリン脂質組成物は、1~10μm、好ましくは2~5μmの平均直径を有する単分散マイクロバブルを含む。代替的に定義すると、本明細書に記載の本発明のプロセスによって得ることができるリン脂質組成物は好ましくは、単分散性PDI≦10%を有するマイクロバブルを含み、この値は幾何標準偏差(GSD)≦1.1と一致する。本発明によるリン脂質組成物の調製プロセスは、より均一なリポソーム分布に有利に働き、マイクロバブルシェル間の均一性を高める。
【0040】
超音波検査中、超音波撮像装置の操作者は、検査を実行すべき所望の超音波の周波数を決定する。この周波数は、組織又は器官の深さ及び分析予定の身体構造の種類並びに超音波手順によって決定される。適切なコントラストを達成するためには、マイクロバブルの共振周波数が所望の周波数に対応することが望ましい。更に、マイクロバブル間の共振周波数のばらつきを十分に小さくする必要がある。これは一例であるが、超音波周波数は、例えば、マイクロバブルの共振周波数の2倍であってもよい。マイクロバブルの音響挙動の分散は十分に低く、予測可能であることが望ましい。この目的のために、マイクロバブルの制御された製造が望ましい。
【0041】
本発明はまた、マイクロバブルの制御された製造のためのシステムであって、分散相流体を受け入れるための第1の入口、連続相流体を受け入れるための第2の入口、及び受け入れた分散相流体及び受け入れた連続相流体を使用してマイクロバブルを発生するバブル形成チャネルとを有するマイクロバブル発生ユニットを備え、この連続相流体は、本明細書に記載の本発明のプロセスによって得ることができるリン脂質組成物である、システムに関する。マイクロ流体製造は、均一なバブルサイズ及びシェル特性の均一性を与える。これにより、均一な音響挙動が改善される。
【0042】
好ましくは、マイクロバブルの使用は、治療用途にも向けられる。マイクロバブル支援薬物送達については、予測可能な音響挙動を有することも重要である。これにより、マイクロバブルの正確な超音波誘発が可能になり、従って、薬物又は遺伝子送達の制御を改善することができる。非侵襲的圧力推定については、明確な音響挙動を有する単分散マイクロバブルを用いると、低調波信号が改善され、多種多様な臨床疾患に対するこの測定技術の感度が改善される。
【0043】
従って、本発明はまた、マイクロバブルの制御された製造のためのシステムにおける、本明細書で前述したリン脂質組成物の使用に関する。簡単な説明:マイクロ流体工学においては、マイクロバブルは、「フローフォーカシング」狭い狭窄部を通って流れるガス流を用いて作製される。内側ガスは、外側の平行に流れる液体流によって、狭い狭窄部を通って流れるように強制される。この狭窄部において、ガス流は、均一なマイクロバブルに分解する細いガス状の細流を形成する。これらのマイクロバブルのサイズは、気体対液体の流速比によって支配される。マイクロバブルは、毎秒100,000~1,000,000マイクロバブルの典型的な製造速度で製造される。一度マイクロバブルを製造すると、減速して衝突する。このことは、マイクロバブルを製造するマイクロ流体方法に関連する。これらの衝突は激しく、合体(2つのバブルの合体)を引き起こすことができる。これは、脂質濃度を高める(約15mg/mLまで、「標準」脂質濃度よりも10倍高い)ことによって回避してよい。脂質濃度を高めると、均質なリポソーム分散液を得るための問題が生じる。これを、リン脂質組成物の調製法を改善し、DPPAの使用を回避することによって解決した。脂質濃度が高く、DPPAが存在すると、凝集体が形成される。凝集体があると、マイクロ流体生産が妨害され、濾過能力が低下する。凝集体(又はリン脂質組成物の均一性の低下)は、マイクロバブルシェルの形成に悪影響を及ぼし、マイクロバブルをより合体しやすくする。単分散マイクロバブルを得るためには、合体を避けるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
以下の非限定的な図面は、本発明を更に示す。
【
図1】当技術分野で公知のマイクロバブル発生ユニットを示す。
【
図2】様々なマイクロバブル集団の粒径分布を示す。
【
図3】様々なマイクロバブルサンプルについての正規化減衰を示す。
【0045】
図1にマイクロバブル発生ユニット1として概略的に示した公知のユニットは、連続相流体が供給される2個の入口2、2’及び分散相流体が供給される入口3を備える。入口2、2’は、互いに流体連通している。ほとんどの場合、以下で入口2として示される単一の入口を使用することができ、その後、投入された流体を、
図1の上部及び下部のそれぞれのチャネルで分割することができる。
【0046】
上部及び下部チャネルの屈曲部により、連続相流体は、2つの反対側から分散相流体に衝突する。連続相流体はこれにより、分散相流体のバブル又は液滴4がバブル形成チャネル5内の連続相流体中に形成されるように、分散相流体の流れを成形及び制限する。バブル4は、本質的に次々に生成される。
【0047】
図1のバブル形成チャネル5は、幅15~35μm、高さ10~30μm、及び長さ50~1000μmの矩形断面を有する。
【0048】
以下の非限定的な実施例は、本発明を説明するために提供される。
【0049】
実施例1
(V/V%)体積比5:95のPG及びPBSの液体溶液に溶解した、それぞれモル比85:15及び総質量脂質濃度15mg/mLのDPPC及びDPPE-mPEG5000Kのリン脂質溶液30mLを調製するために、以下の成分を秤量した。
-DPPC0.189g
-DPPE-mPEG5000K0.261g
-PG1.5g
-PBS28.4g。
【0050】
PG及びPBSを別々の丸底フラスコ中で74℃に予熱した。この場合、まずDPPCを予熱したPGに添加し、溶解し、完全に溶解した後、溶解したDPPCを含む予熱したPG溶液にDPPE-mPEG5000kを添加した。PG中の脂質の完全な可溶化を達成した後、予熱したPBSを添加した。生じた溶液を74℃で一晩撹拌し、0.22μmの酢酸セルロース膜を使用して濾過した。
【0051】
最終リン脂質溶液を保存し、室温まで冷却し、使用できる準備をした。
【0052】
このリン脂質製剤及びフローフォーカシングマイクロ流体デバイスを使用して、様々な気体対液体流速比を使用して7個のマイクロバブルサンプルを作製した。マイクロバブルを、この目的のために設計された収集リザーバ内に収集した。粒径標準分析器Coulter Counter(Beckman)を使用して、各マイクロバブルサンプルの粒径を特徴付け、表1に要約した結果を得た。
【0053】
【0054】
共振周波数を測定するために更に、減衰測定を行った。単分散マイクロバブルの場合、共振周波数は、減衰曲線におけるピーク値の周波数に対応する。結果を
図1及び
図2に示す。
【0055】
図1は、様々なマイクロバブル集団の粒径分布を示す。図から結論付けることができるように、マイクロバブルの粒径分布は狭く、多分散マイクロバブルをもたらすマイクロバブルの合体は起こらなかった。
【0056】
図2は、様々なマイクロバブルサンプルについての正規化減衰を示す。共振周波数は、減衰曲線のピーク値に対応する。共振周波数は、マイクロバブル直径の逆数に線形依存する。
【0057】
全体として、リン脂質組成物を製造するための本発明のプロセスが成功していること、及びリン脂質組成物を高濃度のリン脂質を用いて調製できること、マイクロバブルの制御された製造のためのシステムにおいて高濃度のリン脂質を適切に使用することができることが実証される。
【0058】
以上、本発明を実施例を用いて説明した。しかしながら、当業者は、本発明がこれらの実施例に限定されず、添付の特許請求の範囲及びその等価物によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、より多くの実施例が可能であることを理解するであろう。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水和リン脂質溶媒混合物を調製するプロセスであって、
-第1のリン脂質を、前記リン脂質の相転移温度より高い温度で有機溶媒中に溶解して、溶解したリン脂質溶媒混合物を形成することと、
-第2のリン脂質を前記リン脂質の相転移温度より高い温度で前記溶解したリン脂質溶媒混合物中に溶解して、溶解したリン脂質溶媒混合物を形成することと、
-水性リン酸緩衝液を前記溶解したリン脂質溶媒混合物に添加して緩衝したリン脂質溶媒混合物を形成することと、
-前記緩衝したリン脂質溶媒混合物を撹拌して水和リン脂質溶媒混合物を形成することとを含み、
前記リン脂質は、DPPC、DSPC、DSPG、DMPC、DBPC、DPPEの群からの少なくとも1つである第1のリン脂質と、DPPE-mPEG5000、DMPE-PEG-2000及びDSPE-PEG2000の群からの少なくとも1つである第2のリン脂質との組合せであり、前記水和リン脂質溶媒混合物中の前記リン脂質の濃度は、5~20mg/mLの範囲であり、前記第1のリン脂質と前記第2のリン脂質との比は95:5~70:30の範囲であり、前記水和リン脂質溶媒混合物はジパルミトイルホスファチジン酸を含まない、プロセス。
【請求項2】
前記水和リン脂質溶媒混合物を滅菌フィルターで濾過して滅菌した水和リン脂質溶媒混合物を形成する、
請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記リン脂質は、DPPC、DSPC、DPPEの群からの少なくとも1つである前記第1のリン脂質と、DPPE-mPEG5000及びDSPE-PEG2000の群からの少なくとも1つである前記第2のリン脂質との組合せであり、好ましくは、前記第1のリン脂質はDPPCであり、前記第2のリン脂質はDPPE-mPEG5000である、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項4】
前記有機溶媒は、プロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール3000及び/又はグリセロールの群から選択され、好ましくは前記有機溶媒は、プロピレングリコールである、
先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記水性リン酸緩衝液は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、グリセリン、水、生理食塩水、生理食塩水/グリセリン及び/又は生理食塩水/グリセリン/非水溶液を含むリン酸緩衝生理食塩水、であり、好ましくはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)である、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記緩衝したリン脂質プロピレングリコール混合物を、少なくとも1時間、好ましくは少なくとも2時間、より好ましくは少なくとも4時間、更により好ましくは少なくとも8時間撹拌する、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記滅菌フィルターは、0.2μmの孔径を有する、請求項2~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
全てのプロセスステップを、前記リン脂質の相転移温度より高い温度で実行する、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記水和リン脂質溶媒混合物中の前記リン脂質の濃度は、10~18mg/mLの範囲である、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記第1のリン脂質と前記第2のリン脂質との比は、90:10~75:25の範囲、好ましくは85:15~80:20の範囲である、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
1つ又は複数のリン脂質を、前記リン脂質の相転移温度より高い温度で、溶解したリン脂質溶媒混合物に順次溶解する、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
マイクロバブルの制御された製造のためのシステムを使用して製造したマイクロバブルの使用であって、システムは、分散相流体を受け入れるための第1の入口と、連続相流体を受け入れるための第2の入口と、受け入れられた分散相流体及び受け入れられた連続相流体を用いてマイクロバブルを発生するバブル形成チャネルを有するマイクロバブル発生ユニットを備え、前記連続相流体は、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセスによって得ることができるリン脂質組成物である、マイクロバブルの超音波検査のための使用。
【請求項13】
マイクロバブルの制御された製造のためのシステムを使用して製造したマイクロバブルの使用であって、システムは、分散相流体を受け入れるための第1の入口と、連続相流体を受け入れるための第2の入口と、受け入れられた分散相流体及び受け入れられた連続相流体を用いてマイクロバブルを発生するバブル形成チャネルを有するマイクロバブル発生ユニットを備え、前記連続相流体は、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセスにより得ることができるリン脂質組成物である、マイクロバブルの治療用途のための使用。
【国際調査報告】