(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次バッテリのための多孔質アノードを生成するための方法、得られたアノード、および前記アノードを備えるバッテリ
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20240118BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240118BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240118BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20240118BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20240118BHJP
H01M 50/46 20210101ALI20240118BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240118BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240118BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240118BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240118BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20240118BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20240118BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20240118BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/13
H01M4/48
H01M10/058
H01M50/403 D
H01M50/46
H01M50/434
H01M4/58
H01M4/525
H01M4/505
H01M10/0568
H01M10/0565
H01M50/489
H01M4/66 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539920
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(85)【翻訳文提出日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 IB2021062263
(87)【国際公開番号】W WO2022144726
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514110783
【氏名又は名称】アイ テン
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100213654
【氏名又は名称】成瀬 晃樹
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン、ギャバン
【テーマコード(参考)】
5H017
5H021
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017CC01
5H017EE04
5H021AA06
5H021BB01
5H021BB02
5H021BB11
5H021EE21
5H021HH02
5H021HH03
5H029AJ03
5H029AJ06
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AM07
5H029AM16
5H029CJ02
5H029CJ03
5H029CJ15
5H029CJ22
5H029CJ23
5H029CJ24
5H029CJ28
5H029DJ04
5H029DJ07
5H029DJ13
5H029EJ01
5H029EJ03
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ05
5H029HJ06
5H029HJ07
5H029HJ09
5H029HJ14
5H029HJ19
5H050AA08
5H050AA12
5H050AA15
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050DA04
5H050DA19
5H050FA13
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA10
5H050GA16
5H050GA22
5H050GA23
5H050GA24
5H050GA27
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA06
5H050HA07
5H050HA09
5H050HA14
5H050HA19
(57)【要約】
25体積%~50体積%の間の多孔率を有するアノードを製造するための方法であって、(a)基板と、2nm~100nmの間の平均一次直径D50を有する、酸化ニオブ、およびチタン、ゲルマニウム、セリウム、ランタン、銅またはタングステンを有するニオブの混合酸化物から選択されるアノードAの少なくとも1種の活物質の、アグロメレート形態のまたは分散された単分散一次ナノ粒子から構成されるコロイド懸濁液またはペーストとが提供され、(b)電気泳動、印刷プロセス、好ましくは、インクジェット印刷またはフレキソ印刷、コーティング法、好ましくは、ドクターブレードコーティング、ロールコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、またはスロットダイ通過を含む群から選択される方法によって、ステップ(a)で提供された前記コロイド懸濁液またはペーストの層が、前記基板の少なくとも片面に堆積され、(c)ステップ(b)で得られた前記層が、多孔質層を得るために、乾燥させられ、プレスおよび/または加熱によって圧密化される、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードと、セパレータと、カソードとを備える、1mAh超の容量を有するように設計されたバッテリのための多孔質アノードを製造するための方法であって、前記アノードが、25体積%~50体積%の間、好ましくは約35体積%の多孔率を有する多孔質層を含み、細孔が、50nm未満の平均直径を有し、前記製造方法が、
(a)基板と、2nm~100nmの間、好ましくは2nm~60nmの間の平均一次直径D
50を有するアノードAの少なくとも1種の活物質の、アグロメレート形態のまたは分散された単分散一次ナノ粒子から構成されるコロイド懸濁液またはペーストとが提供され、
前記コロイド懸濁液または前記ペーストが液体構成成分も含むと理解され、
アノードAの前記活物質が、酸化ニオブ、およびチタン、ゲルマニウム、セリウム、ランタン、銅またはタングステンを有するニオブの混合酸化物から、好ましくは、
・Nb
2O
5-δ、Nb
18W
16O
93-δ、Nb
16W
5O
55-δ、ここで、0≦x<1および0≦δ≦2;
・TiNb
2O
7-δ、Ti
1-xM
1
xNb
2-yM
2
yO
7-δ、Li
wTi
1-xM
1
xNb
2-yM
2
yO
7、式中、M
1およびM
2がそれぞれ、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、およびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M
1およびM
2が、互いに同一であっても、または異なっていてもよく、0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、および0≦δ≦0.3である;
・Ti
1-xM
1
xNb
2-yM
2
yO
7-zM
3
z、Li
wTi
1-xM
1
xNb
2-yM
2
yO
7-zM
3
z、式中、
・M
1およびM
2がそれぞれ、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、およびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
・M
1およびM
2が、互いに同一であるか、または異なり、
・M
3が、少なくとも1種のハロゲンであり、
・0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、およびz≦0.3である;
・TiNb
2O
7-zM
3
z、Li
wTiNb
2O
7-zM
3
z、式中、M
3が、少なくとも1種のハロゲン、好ましくは、F、Cl、Br、I、またはそれらの混合物から選択される少なくとも1種のハロゲンであり、0≦w≦5および0<z≦0.3である;
・Ti
1-xGe
xNb
2-yM
1
yO
7-z、Li
wTi
1-xGe
xNb
2-yM
1
yO
7-z、Ti
1-xLa
xNb
2-yM
1
yO
7-z、Li
wTi
1-xLa
xNb
2-yM
1
yO
7-z、Ti
1-xCe
xNb
2-yM
1
yO
7-z、Li
wTi
1-xCe
xNb
2-yM
1
yO
7-z、式中、
・M
1が、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、Ce、およびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
・0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、およびz<1であり、好ましくは、0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、およびz<0.3である;
・Ti
1-xGe
xNb
2-yM
1
yO
7-zM
2
z、Li
wTi
1-xGe
xNb
2-yM
1
yO
7-zM
2
z、Ti
1-xLa
xNb
2-yM
1
yO
7-zM
2
z、Li
wTi
1-xLa
xNb
2-yM
1
yO
7-zM
2
z、Ti
1-xCu
xNb
2-yM
1
yO
7-zM
2
z、Li
wTi
1-xCu
xNb
2-yM
1
yO
7-zM
2
z、Ti
1-xCe
xNb
2-yM
1
yO
7-zM
2
z、Li
wTi
1-xCe
xNb
2-yM
1
yO
7-zM
2
z、式中、
・M
1およびM
2が、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、およびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
・0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、およびz≦0.3である;
によって形成される群から選択されると理解され、
(b)電気泳動、押出、印刷法、好ましくは、インクジェット印刷またはフレキソ印刷、コーティング法、好ましくは、ドクターブレード、ロールコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、またはスロットダイ通過によって形成される群から選択される方法によって、ステップ(a)で提供された前記コロイド懸濁液またはペーストからの層を前記基板の少なくとも片面に堆積し、
(c)ステップ(b)で得られた前記層を乾燥させ、これをプレスおよび/または加熱によって圧密化して、多孔質層を得る
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記方法が、ステップ(d):
(d)前記多孔質層の細孔上および細孔の内部に、好ましくは炭素または電子伝導性酸化物材料から選択される電子伝導性材料のコーティングを堆積し、前記電子伝導性酸化物材料が、好ましくは、
- 酸化スズ(SnO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム(In
2O
3)、酸化ガリウム(Ga
2O
3)、これらの酸化物のうちの2種の混合物、例えば、酸化インジウム(In
2O
3)と酸化スズ(SnO
2)との混合物に対応する酸化インジウムスズ、これらの酸化物のうちの3種の混合物、またはこれらの酸化物のうちの4種の混合物、
- 酸化亜鉛をベースとするドープされた酸化物であって、ドーピングに、好ましくは、ガリウム(Ga)、および/またはアルミニウム(Al)、および/またはホウ素(B)、および/またはベリリウム(Be)、および/またはクロム(Cr)、および/またはセリウム(Ce)、および/またはチタン(Ti)、および/またはインジウム(In)、および/またはコバルト(Co)、および/またはニッケル(Ni)、および/または銅(Cu)、および/またはマンガン(Mn)、および/またはゲルマニウム(Ge)を用いる、酸化亜鉛をベースとするドープされた酸化物、
- 酸化インジウムをベースとするドープされた酸化物であって、ドーピングに、好ましくは、スズ(Sn)、および/またはガリウム(Ga)、および/またはクロム(Cr)、および/またはセリウム(Ce)、および/またはチタン(Ti)、および/またはインジウム(In)、および/またはコバルト(Co)、および/またはニッケル(Ni)、および/または銅(Cu)、および/またはマンガン(Mn)、および/またはゲルマニウム(Ge)を用いる、酸化インジウムをベースとするドープされた酸化物、
- ドープされた酸化スズであって、ドーピングに、好ましくは、ヒ素(As)、および/またはフッ素(F)、および/または窒素(N)、および/またはニオブ(Nb)、および/またはリン(P)、および/またはアンチモン(Sb)、および/またはアルミニウム(Al)、および/またはチタン(Ti)、および/またはガリウム(Ga)、および/またはクロム(Cr)、および/またはセリウム(Ce)、および/またはインジウム(In)、および/またはコバルト(Co)、および/またはニッケル(Ni)、および/または銅(Cu)、および/またはマンガン(Mn)、および/またはゲルマニウム(Ge)を用いる、ドープされた酸化スズ
から選択される、ステップ
で継続されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
電子伝導性材料の前記コーティングの堆積が、原子層堆積ALDによって、または前記電子伝導性材料の前駆体を含む液相に浸し、続いて、前記前駆体を電子伝導性材料に変換することによって実施されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記前駆体が、炭水化物などの炭素リッチな化合物であること、および電子伝導性材料への前記変換が、好ましくは不活性雰囲気中での熱分解によるものであること、または前記前駆体が、焼成などの加熱処理後に電子伝導性酸化物を形成することができる1種以上の金属元素を含有する有機塩から選択されること、および電子伝導性材料への前記変換が、焼成などの加熱処理であり、好ましくは空気中または酸化性雰囲気中で実施されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記有機塩が、好ましくは空気中または酸化性雰囲気中で実施される焼成などの加熱処理後に電子伝導性酸化物を形成することができる少なくとも1種の金属元素のアルコレート、好ましくは空気中または酸化性雰囲気中で実施される焼成などの加熱処理後に電子伝導性酸化物を形成することができる少なくとも1種の金属元素のシュウ酸塩、および好ましくは空気中または酸化性雰囲気中で実施される焼成などの加熱処理後に電子伝導性酸化物を形成することができる少なくとも1種の金属元素の酢酸塩から選択されることが好ましいこと、および/または前記金属元素が、スズ、亜鉛、インジウム、ガリウム、またはこれらの元素のうちの2種もしくは3種もしくは4種の混合物から選択されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記一次ナノ粒子が、アグリゲートまたはアグロメレートの形態であり、前記アグリゲートまたはアグロメレートが、50nm~300nmの間、好ましくは100nm~200nmの間の平均直径D
50を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(c)から得られた前記多孔質層が、10m
2/g~500m
2/gの間の比表面積を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(c)で得られた前記層が、1μm~150μmの間の厚さを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記基板が中間基板であり、前記層が、多孔質アノードプレートを形成するために、ステップ(c)で乾燥後に分離されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
25体積%~50体積%の間、好ましくは28体積%~43体積%の間、さらにより好ましくは30体積%~40体積%の間の多孔率を有する多孔質層を含む、1mAh超の容量を有するように設計されたリチウムイオンバッテリのための多孔質アノードであって、
前記多孔質層が、
- 50nm未満の平均直径を有する細孔、
- 材料Aの多孔質ネットワークであって、前記多孔質ネットワークを形成する細孔上および細孔の内部に電子伝導性材料のコーティングを含む、材料Aの多孔質ネットワーク
を含むことを特徴とし、
前記材料Aが、酸化ニオブ、およびチタン、ゲルマニウム、セリウム、ランタン、銅またはタングステンを有するニオブの混合酸化物から、好ましくは、
・Nb
2O
5-δ、Nb
18W
16O
93-δ、Nb
16W
5O
55-δ、ここで、0≦x<1および0≦δ≦2;
・TiNb
2O
7-δ、Ti
1-xM
1
xNb
2-yM
2
yO
7-δ、Li
wTi
1-xM
1
xNb
2-yM
2
yO
7-δ、式中、M
1およびM
2がそれぞれ、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、およびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、互いに同一であってもまたは異なっていてもよいM
1およびM
2、0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、および0≦δ≦0.3である;
・Ti
1-xM
1
xNb
2-yM
2
yO
7-zM
3
z、Li
wTi
1-xM
1
xNb
2-yM
2
yO
7-zM
3
z、式中、
・M
1およびM
2がそれぞれ、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、およびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
・M
1およびM
2が、互いに同一であっても、または異なっていてもよく、
・M
3が、少なくとも1種のハロゲンであり、
・0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、およびz≦0.3である;
・TiNb
2O
7-zM
3
z、Li
wTiNb
2O
7-zM
3
z、式中、M
3が、少なくとも1種のハロゲン、好ましくは、F、Cl、Br、I、またはそれらの混合物から選択される少なくとも1種のハロゲンであり、0<z≦0.3である;
・Ti
1-xGe
xNb
2-yM
1
yO
7-z、Li
wTi
1-xGe
xNb
2-yM
1
yO
7-z、Ti
1-xCe
xNb
2-yM
1
yO
7-z、Li
wTi
1-xCe
xNb
2-yM
1
yO
7-z、式中、
・M
1が、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、Ce、およびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
・0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、およびz<1であり、好ましくは、0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、およびz<0.3である;
・Ti
1-xGe
xNb
2-yM
1
yO
7-zM
2
z、Li
wTi
1-xGe
xNb
2-yM
1
yO
7-zM
2
z、Ti
1-xLa
xNb
2-yM
1
yO
7-zM
2
z、Li
wTi
1-xLa
xNb
2-yM
1
yO
7-zM
2
z、Ti
1-xCu
xNb
2-yM
1
yO
7-zM
2
z、Li
wTi
1-xCu
xNb
2-yM
1
yO
7-zM
2
z、Ti
1-xCe
xNb
2-yM
1
yO
7-zM
2
z、Li
wTi
1-xCe
xNb
2-yM
1
yO
7-zM
2
z、式中、
・M
1およびM
2が、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、およびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
・0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、およびz≦0.3である;
によって形成される群から選択されることを特徴とし、
前記アノードが、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる、
多孔質アノード。
【請求項11】
前記電子伝導性材料が、炭素、電子伝導性酸化物材料から、好ましくは、
- 酸化スズ(SnO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム(In
2O
3)、酸化ガリウム(Ga
2O
3)、これらの酸化物のうちの2種の混合物、例えば、酸化インジウム(In
2O
3)と酸化スズ(SnO
2)との混合物に対応する酸化インジウムスズ、これらの酸化物のうちの3種の混合物、またはこれらの酸化物のうちの4種の混合物、
- 酸化亜鉛をベースとするドープされた酸化物であって、ドーピングに、好ましくは、ガリウム(Ga)、および/またはアルミニウム(Al)、および/またはホウ素(B)、および/またはベリリウム(Be)、および/またはクロム(Cr)、および/またはセリウム(Ce)、および/またはチタン(Ti)、および/またはインジウム(In)、および/またはコバルト(Co)、および/またはニッケル(Ni)、および/または銅(Cu)、および/またはマンガン(Mn)、および/またはゲルマニウム(Ge)を用いる、酸化亜鉛をベースとするドープされた酸化物、
- 酸化インジウムをベースとするドープされた酸化物であって、ドーピングに、好ましくは、スズ(Sn)、および/またはガリウム(Ga)、および/またはクロム(Cr)、および/またはセリウム(Ce)、および/またはチタン(Ti)、および/またはインジウム(In)、および/またはコバルト(Co)、および/またはニッケル(Ni)、および/または銅(Cu)、および/またはマンガン(Mn)、および/またはゲルマニウム(Ge)を用いる、酸化インジウムをベースとするドープされた酸化物、
- ドープされた酸化スズであって、ドーピングに、好ましくは、ヒ素(As)、および/またはフッ素(F)、および/または窒素(N)、および/またはニオブ(Nb)、および/またはリン(P)、および/またはアンチモン(Sb)、および/またはアルミニウム(Al)、および/またはチタン(Ti)、および/またはガリウム(Ga)、および/またはクロム(Cr)、および/またはセリウム(Ce)、および/またはインジウム(In)、および/またはコバルト(Co)、および/またはニッケル(Ni)、および/または銅(Cu)、および/またはマンガン(Mn)、および/またはゲルマニウム(Ge)を用いる、ドープされた酸化スズ
から選択されることを特徴とする、請求項10に記載のアノード。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか一項に記載の多孔質アノードを製造するための方法を使用するか、または請求項10に記載の多孔質アノードを使用して、1mAh超の容量を有するように設計されたバッテリ、好ましくはリチウムイオンバッテリを製造するための方法。
【請求項13】
請求項10または11に記載の少なくとも1つの多孔質アノードと、少なくとも1つのセパレータと、少なくとも1つの多孔質カソードとを備えるバッテリを製造するための方法であって、
(a)第1の基板、第2の基板が提供され、
- アノードAの少なくとも1種の活物質の単分散一次ナノ粒子のアグリゲートまたはアグロメレートを含む第1のコロイド懸濁液またはペーストが提供され、平均一次直径D
50が、2~100nmの間、好ましくは2~60nmの間であり、前記アグリゲートまたはアグロメレートが、50nm~300nmの間(好ましくは100nm~200nmの間)の平均直径D
50を有し、
前記材料Aが、酸化ニオブ、およびチタン、ゲルマニウム、セリウム、ランタン、銅またはタングステンを有するニオブの混合酸化物から、好ましくは、
・Nb
2O
5-δ、Nb
18W
16O
93-δ、Nb
16W
5O
55-δ、ここで、0≦x<1および0≦δ≦2;
・TiNb
2O
7-δ、Ti
1-xM
1
xNb
2-yM
2
yO
7-δ、Li
wTi
1-xM
1
xNb
2-yM
2
yO
7-δ、式中、M
1およびM
2がそれぞれ、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、およびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M
1およびM
2が、互いに同一であっても、または異なっていてもよく、0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、および0≦δ≦0.3である;
・Ti
1-xM
1
xNb
2-yM
2
yO
7-zM
3
z、Li
wTi
1-xM
1
xNb
2-yM
2
yO
7-zM
3
z、式中、
・M
1およびM
2がそれぞれ、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、およびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
・M
1およびM
2が、互いに同一であっても、または異なっていてもよく、
・M
3が、少なくとも1種のハロゲンであり、
・0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、およびz≦0.3である;
・TiNb
2O
7-zM
3
z、Li
wTiNb
2O
7-zM
3
z、式中、M
3が、少なくとも1種のハロゲン、好ましくは、F、Cl、Br、I、またはそれらの混合物から選択される少なくとも1種のハロゲンであり、0≦w≦5および0<z≦0.3である;
・Ti
1-xGe
xNb
2-yM
1
yO
7-zM
2
z、Li
wTi
1-xGe
xNb
2-yM
1
yO
7-zM
2
z、Ti
1-xLa
xNb
2-yM
1
yO
7-zM
2
z、Li
wTi
1-xLa
xNb
2-yM
1
yO
7-zM
2
z、Ti
1-xCu
xNb
2-yM
1
yO
7-zM
2
z、Li
wTi
1-xCu
xNb
2-yM
1
yO
7-zM
2
z、Ti
1-xCe
xNb
2-yM
1
yO
7-zM
2
z、Li
wTi
1-xCe
xNb
2-yM
1
yO
7-zM
2
z、式中、
・M
1およびM
2が、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、およびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
・0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、およびz≦0.3である;
・Ti
1-xGe
xNb
2-yM
1
yO
7-z、Li
wTi
1-xGe
xNb
2-yM
1
yO
7-z、Ti
1-xCe
xNb
2-yM
1
yO
7-z、Li
wTi
1-xCe
xNb
2-yM
1
yO
7-z、式中、
・M
1が、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、Ce、およびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
・0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、およびz<1であり、好ましくは、0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、およびz<0.3である;
によって形成される群から選択されると理解され、
前記第1および/または前記第2の基板が、電流のコレクタまたは中間基板として機能することができる基板であり得ることを念頭に置いて、
- カソードCの少なくとも1種の活物質の単分散一次ナノ粒子のアグリゲートまたはアグロメレートを含む第2のコロイド懸濁液が提供され、平均一次直径D
50が、2~100nmの間、好ましくは2~60nmの間であり、前記アグリゲートまたはアグロメレートが、50nm~300nmの間(好ましくは100nm~200nmの間)の平均直径D
50を有し、
- 少なくとも1種の無機材料Eのナノ粒子のアグリゲートまたはアグロメレートを含む第3のコロイド懸濁液が提供され、平均一次直径D
50が、2nm~100nmの間、好ましくは2nm~60nmの間であり、前記アグリゲートまたはアグロメレートが、50nm~300nmの間(好ましくは100nm~200nmの間)の平均直径D
50を有し、
(b)電気泳動、押出、好ましくはインクジェット印刷およびフレキソ印刷から選択される印刷法、ならびに好ましくはロールコーティング、カーテンコーティング、ドクターブレードコーティング、スロットダイを通じた押出によるコーティング、浸漬コーティングから選択されるコーティング法を含む群から選択されることが好ましい方法によって、ステップ(a)で供給された前記第1のコロイド懸濁液からのアノード層が、前記第1の基板の少なくとも1つの面に堆積され、ステップ(a)で供給された前記第2のコロイド懸濁液からのカソード層が、前記第2の基板の少なくとも1つの面に堆積され、
(c)多孔質、好ましくはメソポーラスの無機アノード層、および多孔質、好ましくはメソポーラスの無機カソード層をそれぞれ得るために、ステップ(b)で得られた前記アノードおよびカソード層が、必要に応じて前記層をその中間基板から分離した後に乾燥させられ、各層がプレスおよび/または加熱によって圧密化され、
(d)任意選択的に、前記多孔質アノードおよび多孔質カソードを形成するために、電子伝導性材料のコーティングが前記多孔質アノードおよび/またはカソード層の細孔上および細孔の内部に堆積され、
(e)電気泳動、押出、好ましくはインクジェット印刷およびフレキソ印刷から選択される印刷法、ならびに好ましくはロールコーティング、カーテンコーティング、ドクターブレードコーティング、スロットダイを通じた押出によるコーティング、浸漬コーティングを含む群から選択される技術によって、ステップ(a)で提供された第3のコロイド懸濁液からの多孔質無機層が、ステップ(d)で得られた前記多孔質アノードおよび/または前記多孔質カソード上に堆積され、
(f)前記加熱処理を実施する前に、必要に応じて、その中間基板から分離された前記層が、集電体として機能することができる金属シート上にプレスされることを念頭に置いて、ステップ(e)で得られた前記構造の前記多孔質無機層が、好ましくは空気流下で乾燥させられ、130℃よりも高い、好ましくは約300℃~約600℃の間の温度で加熱処理が行われ、
(g)ステップd)またはe)で得られた前記多孔質アノードが、ステップd)またはe)で得られた前記多孔質カソードと向かい合って連続的にスタックされ、得られたスタックが、前記セパレータを形成するステップe)で得られるような少なくとも1つの多孔質無機層を含むと理解され、
(h)少なくとも1つの多孔質アノードと、少なくとも1つのセパレータと、少なくとも1つの多孔質カソードとを備えるバッテリを得るために、ステップ(g)で得られたスタックが120℃~600℃の間の温度で熱圧縮処理に供される
ことを特徴とする、方法。
【請求項14】
前記無機材料Eが電気絶縁体であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(h)から得られる生成物が、
・少なくとも1種の非プロトン性溶媒と少なくとも1種のリチウム塩とから構成される電解質、
・少なくとも1種のイオン液体と少なくとも1種のリチウム塩とから構成される電解質、
・少なくとも1種の非プロトン性溶媒と、少なくとも1種のイオン液体と、少なくとも1種のリチウム塩との混合物、
・少なくとも1種のリチウム塩を添加することによってイオン伝導性にされたポリマー、および
・ポリマー相またはメソポーラス構造のいずれかにおいて液体電解質を添加することによってイオン伝導性にされたポリマー
によって形成される群から選択される電解質で、好ましくは、リチウムイオンキャリア相によって、
さらにより好ましくは、
・N-ブチル-N-メチルピロリジニウム4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾール(N‐butyl‐N‐methyl‐pyrrolidinium 4,5‐dicyano‐2‐(trifluoromethyl) imidazole)(Pyr
14TDI)を含む電解質、
・1-メチル-3-プロピルイミダゾリウム、4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾリド(1-methyl-3-propylimidazolium 4,5-dicyano-2-(trifluoro-methyl)imidazolide)(PMIM-TDI)、およびリチウム4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾリド(lithium 4,5-dicyano-2-(trifluoro-methyl)imidazolide)(LiTDI)を含む電解質
を含む群から選択される電解質によって含浸される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
カソードCの前記活物質が、LiCoPO
4、LiMn
1.5Ni
0.5O
4、0<x<1であるLiFe
xCo
1-xPO
4、x+y+z=10であるLiNi
1/xCo
1/yMn
1/zO
2、Li
1.2Ni
0.13Mn
0.54Co
0.13O
2、Xが、Al、Fe、Cr、Co、Rh、Nd、Sc、Y、Lu、La、Ce、Pr、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選択され、かつ0<x<0.1であるLiMn
1.5Ni
0.5-xX
xO
4、LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2、M=Fe、Co、Ni、またはこれらの異なる元素の混合物であるLi
2MPO
4F、M=V、Fe、T、またはこれらの異なる元素の混合物であるLiMPO
4F、M=Fe、Co、Ni、Mn、Zn、MgであるLiMSO
4F、LiCoO
2によって形成される群から選択される、請求項1から9のいずれか一項または請求項12から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項12から16のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる、1mAh超の容量を有するリチウムイオンバッテリ。
【請求項18】
その電解液が、好ましくはPyr
14TFSIである、少なくとも50質量%のイオン液体を含有することを特徴とする、請求項17に記載のバッテリ。
【請求項19】
- そのカソード集電体が、Mo、Ti、W、Ta、Cr、Al、先に述べられている元素をベースとする合金、ステンレス鋼を含む群から選択される材料で作製されており、
- そのカソードが、NMC、好ましくはNMC433で作製されており、これが、30~40%の多孔質体積を有し、炭素の伝導性層が細孔内に堆積されており、
- そのセパレータが、好ましくは6μm~8μmの間の厚さを有するLi
3PO
4のメソポーラス層であり、
- そのアノードが、好ましくはハロゲン化物および/またはゲルマニウムでドープされた、0≦δ≦0.3のTiNb
2O
7-δの層であり、前記層が、リチウム塩を含有する液体電解質によって含浸されており、
- そのアノード集電体が、Mo、Cu、Ni、先に述べられている元素をベースとする合金、ステンレス鋼によって形成される群から選択される
ことを特徴とする、請求項13から16のいずれか一項に従属する、請求項17または18に記載のバッテリ。
【請求項20】
10μm超の厚さを有する電極を有することを特徴とする、請求項17から19のいずれか一項に記載のバッテリ。
【請求項21】
請求項10もしくは11に記載の、または請求項1から9のいずれか一項に記載の方法によって得ることができるアノードを備えること、および前記アノードが、200mAh/g超、好ましくは250mAh/g超の質量容量を有することを特徴とする、請求項17から20のいずれか一項に記載のバッテリ。
【請求項22】
-10℃未満の温度および/または50℃よりも高い温度での、請求項17から20のいずれか一項に記載のバッテリの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学の分野に関し、より詳細には、電気化学システムに関する。これは、より詳細には、1mAh超の容量を有するバッテリに使用される電極に関する。本発明は、高出力バッテリ(特に、リチウムイオンバッテリ)などの電気化学システムに使用され得る多孔質アノードを製造するための新たな方法に関する。この方法は、アノード材料のナノ粒子を使用する。
【0002】
本発明はまた、この方法によって得られるメソポーラスのアノードに関する。本発明はまた、そのような多孔質アノードを備えるバッテリに関する。この点において、本発明はまた、そのようなメソポーラスアノードから形成されるリチウムイオンバッテリを調製するための方法に関し、このメソポーラスアノードは、多孔質セパレータと接触しており、多孔質セパレータは、多孔質カソードとも接触している。これらの多孔質電極/セパレータ組立品は、液体電解質で含浸され得る。
【0003】
より正確には、本発明は、以下の特徴を組み合わせたアノードに関する:高い体積容量(mAh/cm3で表される)、リチウムめっきのリスクを全く伴わずに急速再充電を可能にする十分に高い挿入電位、ならびにバッテリの充電および放電ステップの最中に体積の著しい変動がなく、そのため、前記バッテリが剛性のモノブロック完全固体およびメソポーラスの構造の形態で使用され得ること。
【背景技術】
【0004】
自律型電気デバイス(電話およびラップトップ、手持ち型工具、自律型センサなど)に出力供給するのに、または電動車両を駆動するのに理想的なバッテリは、長寿命を有するべきであり、大量のエネルギーおよび出力の両方を蓄積することができるべきであり、非常に幅広い温度範囲で機能することができるべきであり、過熱または爆発のリスクにあるべきではない。
【0005】
現在、これらの電気デバイスは、本質的に、提案されている様々な蓄積技術のなかでも最高のエネルギー密度を有するリチウムイオンバッテリによって出力供給されている。リチウムイオンバッテリの生成を可能にする電極の様々な構造および化学組成がある。リチウムイオンバッテリを製造するための方法は、数多くの特許で提示されており、2002年(Kluever Academic/Plenum Publishers)に出版された著作物‘‘Advances in Lithium-Ion Batteries’’(Ed.W.van SchalkwijkおよびB.Scrosati)、ならびにC.Julien、A.Mauger,A.Vijh、およびK.Zaghibによる‘‘Lithium Batteries.Science and Technology’’(Springer,Heidelberg2016)が良好な概要を提供している。
【0006】
リチウムイオンバッテリの電極は、公知のコーティング技術(特に、ロールコーティング、カーテンコーティング、スロットダイコーティング、ドクターブレードコーティング、およびテープキャスティングなどの技術)を使用して製造され得る。
【0007】
これらの方法では、電極を作製するために使用される活物質は、直径5μm~15μmの間の平均粒子サイズを有する粉末懸濁液の形態で使用される。これらの粒子は、これらの粒子、有機バインダー、および電子伝導性材料の粉末のフィラー(伝導性フィラー)、典型的にはカーボンブラックからなるインクに統合される。このインクは、金属基板の表面上に堆積され、次いで、このインクが含有する有機溶媒を除去して、有機バインダーによって機械的に一緒に結合かつカーボンブラックによって電気的に接続された活物質の粒子からなる金属ストリップの表面上に多孔質の堆積物のみを残すために、乾燥させられる。
【0008】
これらの技術は、約20μm~約400μmの間の厚さを有する層を得ることを可能にする。層の厚さ、それらの多孔率、および活性粒子のサイズに応じて、バッテリの出力およびエネルギーが調節され得る。
【0009】
従来技術によると、電極を形成するために堆積されるインク(またはペースト)は、活物質の粒子を含有するが、(有機)バインダー、粒子と電極の乾燥ステップにおいて蒸発させられる溶媒との間の電気的接触を確実にするための炭素粉末も含有する。粒子間の電気的接触の品質を改善し、堆積した層をコンパクト化するために、カレンダー加工ステップが電極において実施される。この圧縮ステップの後に、電極の活性粒子は、堆積物の体積の約60~70%を占め、これは、一般に、多孔率の30~40%が粒子間に残ることを意味する。
【0010】
これらの従来的な製造方法で生成されたリチウムイオンバッテリの体積エネルギー密度を最適化するためには、電極の多孔率を減少させることが非常に有用であろう。多孔率の減少、言い換えるなら、電極の単位体積当たりの活物質の量の増加は、いくつかの手法で達成され得る。
【0011】
極端な場合、体積あたりの最も高いエネルギー密度を有する電極膜は、真空堆積技術、例えばPVDを使用して作製される。これらの膜は、完全に稠密であり、多孔質ではない。しかしながら、これらの完全に固体の膜は、イオン輸送を促進するための液体電解質または電荷の輸送を促進するための電子伝導性装入物を含有していないため、それらの厚さは、それらの抵抗が大きくなり過ぎないように数ミクロンに制限されている。
【0012】
標準的なインキング技術を用いると、堆積した粒子のサイズ分布を最適化することによって体積エネルギー密度を増加させることも可能である。実際に、例えば、レビューであるJ.European Ceramic Society 22(2002),pp.2197-2208で2002年に出版されたJ.MaおよびL.C.Limによる論文‘‘Effect of particle size distribution on sintering of agglomerate-free submicron alumina powder compacts’’に示されているように、粒子サイズ分布を最適化することによって、約70%の密度を達成することが可能である。伝導性装入物を含有しており、かつリチウムイオンの伝導性電解質で含浸された多孔率30%を有する電極は、サイズが単分散の粒子からなる多孔率50%を有する同じ電極よりも約35%高い体積エネルギー密度を有するであろう。
【0013】
さらに、高イオン伝導性相での含浸および電子伝導体の添加に基づいて、これらの電極の厚さは、真空堆積技術で達成され得るものと比較して大幅に増加させられ得る。厚さにおけるこれらの増加は、バッテリセルのエネルギー密度の増加にも寄与する。
【0014】
これは、電極のエネルギー密度を増加させるが、活物質粒子のこのサイズ分布には問題がないわけではない。電極中の異なるサイズの粒子は異なる容量を有することになり、同一の充電および/または放電電流の影響下で、それらのサイズに応じてより多くまたはより少なく局所的に充電および/または放電されるであろう。バッテリに電流負荷がかからなくなると、粒子間の局所的な充電状態は再び均衡が取られることになるが、これらの過渡的な段階の最中に、局所的な不均衡は、粒子の安定電圧範囲外で局所的に負荷がかかった粒子をもたらし得る。局所的な充電状態におけるこれらの不均衡は、電流密度が高くなるほどより顕著になるであろう。したがって、これらの不均衡は、サイクリング性能の損失、安全上のリスク、およびバッテリセルの出力の制限をもたらす。
【0015】
活物質の粒度分布が電極の電流/電圧の関係に及ぼすこれらの影響は、J.Electrochemical Society,164(11)2017,p.E3179-E3189で出版された出版物‘‘A study on the effect of porosity and particles size distribution on Li-ion battery performance’’においてS.T.Taleghani等によって調査およびシミュレートされた。
【0016】
従来技術の電極インキング技術では、活物質の粒子は、一般に、5μm~15μmの間のサイズを有する。2つの隣接する粒子間の接触は、本質的に点状であり、粒子は、ほとんどの場合にPVDFである有機バインダーによって結合されている。
【0017】
電極を含浸させるために使用される液体電解質は、リチウム塩が溶解された非プロトン性溶媒からなる。これらの有機電解質は、引火性が高く、殊にカソード活物質にそれらの安定電圧範囲外の電圧範囲で負荷がかけられている場合に、またはホットスポットがセル内で局所的に生じている場合に、バッテリセルの激しい燃焼を引き起こし得る。
【0018】
従来的なリチウムイオンバッテリセルの構造に固有のこれらの安全上の問題に対処するためには、以下のことが必要である:
・有機溶媒ベースの電解質を高い温度安定性のイオン液体と置き換えること。しかしながら、イオン液体は、有機材料の表面を濡らさず、従来的なバッテリ電極中にPVDFおよび他の有機バインダーが存在すると、このタイプの電解質による電極の濡れが防止され、電極の性能が影響される。電極間の電解質接合部におけるこの問題を解決するためにセラミックセパレータが開発されたが、電極中の有機バインダーの存在は、イオン液体電解質の使用に問題を課し続ける。
【0019】
・粒子サイズを均一化して、活物質の従来的な電圧動作範囲外で局所的に応力がかかった活物質を激しい放電の最中にもたらし得る充電状態の局所的な不均衡を避けること。次いで、この最適化は、セルのエネルギー密度に悪影響を及ぼし得る。
【0020】
・電極中の伝導性装入物(カーボンブラック)の分布を均一化して、バッテリの出力供給動作の最中にホットスポットの形成をもたらし得る局所的に電気抵抗がより高い領域が生じるのを避けること。
【0021】
従来技術によるバッテリ電極を製造するための方法に関してより詳細には、それらの製造コストは、部分的には、使用される溶媒の性質に依存する。活物質の固有コストに加えて、電極を製造するコストは、本質的に、使用されるインク(バインダー、溶媒、カーボンブラック...)の複雑性に基づく。
【0022】
リチウムイオンバッテリの電極を作製するために使用される主な溶媒はNMPである。NMPは、インクの配合においてバインダーとして機能するPVDFを溶解させるための優れた溶媒である。電極に含有されているNMPの乾燥は、実際の経済的問題である。NMPの高い沸点は、非常に低い蒸気圧と組み合わさって、乾燥を困難にする。溶媒の蒸気は、回収および再処理される必要がある。さらに、基板への電極のより良好な接着力を保証するためには、NMPの乾燥温度が高過ぎるべきではなく、このことは、乾燥時間およびコストをさらに増加させる傾向があり、これは、Drying Technology,vol.36,n°2(2018)で出版されたD.L.Wood等の出版物‘‘Technical and economic analysis of solvent-based lithium-ion electrode drying with water and NMP’’に記載されている。
【0023】
他の安価な溶媒、特に、水およびエタノール(ethanol)がインクを作製するために使用され得る。しかしながら、それらの表面張力は、NMPの表面張力よりも大きく、これらは、金属集電体の表面をそれほど効果的には濡らさない。さらに、粒子、殊にカーボンブラックナノ粒子は、水中でアグロメレート化する傾向を有する。これらのアグロメレート化は、電極の組成物に入る成分(バインダー、カーボンブラック...)の不均一分布をもたらす。さらに、水中またはエタノール中のいずれにおいても、痕跡量の水が、乾燥後でさえ活物質粒子の表面上に吸着されたままであり得る。
【0024】
最後に、高性能で低コストの電極を達成するためのインクを配合する問題に加えて、活物質の粒子サイズ、ならびに間接的には電極堆積物の多孔率およびそれらの厚さに依存して、電極のエネルギー密度と出力密度との間の比率が調整され得ることに留意することも重要である。レビューであるJ.Electrochem.Soc.,Vol.142,n°1(1995)で出版されたJ.Newmanによる論文‘‘Optimization of Porosity and Thickness of a Battery Electrode by Means of a Reaction-zone Model’’は、電極の厚さおよびそれらの多孔率がそれらの放電出力およびエネルギー密度に及ぼすそれぞれの効果を示す。
【0025】
バッテリセルの構造および製造方法に加えて、電極材料の選択も基本となる。バッテリに蓄積されるエネルギーは、AhまたはmAhの電極容量にセルの動作電圧を掛けた積である。この動作電圧は、アノードおよびカソードにおけるリチウム挿入電位間の差である。
【0026】
アノードのリチウム挿入電位が低いほど、等容量でのバッテリのエネルギーは高くなる。しかしながら、グラファイトなどの低い挿入電位を有するアノードは、高い再充電電流でリチウム「めっき」のリスクを冒す。実際に、バッテリを急速に再充電するためには、大量のリチウムをアノードに急速に挿入する必要がある。アノードの表面上の高いリチウム濃度は、非常に低い電位と関連して、金属リチウムデンドライトの析出に都合良く作用し、それによって、セル内で短絡が誘発されるであろう。
【0027】
さらに、非常に急速な再充電能力を有し、リチウムめっきに基づく安全上のリスクがなく、かつこの再充電能力を理由にセルのエネルギー密度が高いままでであるバッテリを得ることを望む場合には、以下のことが同時に必要である:
- 比較的高い電圧(0.5V/Liよりも高い)でリチウムを挿入するアノードを使用して、高速再充電段階の最中でのリチウムデンドライトの形成を避けること。これらのアノードはまた、それらの容量を増加させることによって動作電圧を減少させることによってエネルギー損失を補償するために、非常に高い質量容量を有する必要がある。
- 動的不均衡を避けるために、非常に大きな比表面積および可能な限り均一な粒子サイズ(挿入域の厚さ)を有する電極を有すること。
- 優れたイオン伝導性および電子伝導性を有する電極を有すること。
- 高い輸率および低い分極抵抗を有する非常に良好なイオン伝導性を有する電解質を有すること。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明は、これらの技術的特徴のうちの少なくともいくつかを有し、好ましくはこれらの特徴のすべてを有する、リチウムイオンバッテリを提案することを目的とする。本発明によると、この問題は、アノードの材料およびその構造を賢明に選択することによって、かつそのような構造を有するアノードを得ることを可能にする製造方法によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明によると、この問題は、本発明の第1の対象を形成する特定の方法に従って、アノードと、セパレータと、カソードとを備える、1mAh超の容量を有するように設計されたバッテリのための多孔質アノードを製造するための方法であって、前記アノードが、25~50体積%の間、好ましくは約35体積%の多孔率を有し、細孔が、50nm未満の平均直径を有する、方法によって解決される。本発明によるアノードは、有利には、1mAh超の容量を有するように設計されたバッテリにおいて使用される。
【0030】
本発明によるバッテリのための多孔質アノードを製造するための方法は、以下のステップを含む:
(a)基板と、2nm~100nmの間、好ましくは2nm~60nmの間の平均一次直径D50を有するアノードAの少なくとも1種の活物質の、アグロメレート形態のまたは分散された単分散一次ナノ粒子から構成されるコロイド懸濁液またはペーストとを提供し、ただし、前記コロイド懸濁液または前記ペーストが液体成分も含み、ただし、アノードAの活物質が、ニオブの酸化物、およびチタン、ゲルマニウム、セリウム、ランタン、銅またはタングステンを有するニオブの混合酸化物から、好ましくは、
・Nb2O5-δ、Nb18W16O93-δ、Nb16W5O55-δ、ここで、0≦x<1および0≦δ≦2;
・TiNb2O7-δ、Ti1-xM1
xNb2-yM2
yO7-δ、LiwTi1-xM1
xNb2-yM2
yO7-δ、式中、M1およびM2がそれぞれ、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、Ce、およびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M1およびM2が、互いに同一であっても、または異なっていてもよく、0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、および0≦δ≦0.3である;
・Ti1-xM1
xNb2-yM2
yO7-zM3
z、LiwTi1-xM1
xNb2-yM2
yO7-zM3
z、式中、
・M1およびM2がそれぞれ、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、Ce、およびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
・M1およびM2が、互いに同一であっても、または異なっていてもよく、
・M3が、少なくとも1種のハロゲンであり、
・0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、およびz≦0.3である;
・TiNb2O7-zM3
z、LiwTiNb2O7-zM3
z、式中、M3が、少なくとも1種のハロゲン、好ましくは、F、Cl、Br、I、またはそれらの混合物から選択される少なくとも1種のハロゲンであり、0≦w≦5および0<z≦0.3である;
・Ti1-xGexNb2-yM1
yO7-zM2
z、LiwTi1-xGexNb2-yM1
yO7-zM2
z、Ti1-xLaxNb2-yM1
yO7-zM2
z、LiwTi1-xLaxNb2-yM1
yO7-zM2
z、Ti1-xCuxNb2-yM1
yO7-zM2
z、LiwTi1-xCuxNb2-yM1
yO7-zM2
z、Ti1-xCexNb2-yM1
yO7-zM2
z、LiwTi1-xCexNb2-yM1
yO7-zM2
z、式中、
・M1およびM2がそれぞれ、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、Ce、およびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
・M1およびM2が、互いに同一であっても、または異なっていてもよく、
・0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、およびz≦0.3である;
・Ti1-xGexNb2-yM1
yO7-z、LiwTi1-xGexNb2-yM1
yO7-z、Ti1-xCexNb2-yM1
yO7-z、LiwTi1-xCexNb2-yM1
yO7-z、式中、
・M1が、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、Ce、およびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
・0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、およびz<1であり、好ましくは、0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、およびz<0.3である;
によって形成される群内で選択される、ステップ、
(b)電気泳動、押出、印刷法、好ましくは、インクジェット印刷またはフレキソ印刷、コーティング法、好ましくは、ドクターブレードコーティング、ロールコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、またはスロットダイ通過によって形成される群から選択される方法によって、ステップ(a)で提供された前記コロイド懸濁液またはペーストからの層を前記基板の少なくとも片側に堆積するステップ、
(c)ステップ(b)で得られた前記層を乾燥させ、これをプレスおよび/または加熱によって圧密化して、多孔質層を得るステップ。
【0031】
有利には、アノードAの前記活物質はまた、ニオブの酸化物、およびチタン、ゲルマニウム、セリウム、ランタン、銅またはタングステンを有するニオブの混合酸化物から、好ましくは、
・Nb2O5-δ、Nb18W16O93-δ、Nb16W5O55-δ、ここで、0≦x<1および0≦δ≦2;
・TiNb2O7-δ、ここで、0<δ≦0.3、Ti1-xM1
xNb2-yM2
yO7-δ、LiwTi1-xM1
xNb2-yM2
yO7-δ、式中、M1およびM2がそれぞれ、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、Ce、およびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M1およびM2が、互いに同一であっても、または異なっていてもよく、0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、および0≦δ≦0.3である;
・Ti1-xM1
xNb2-yM2
yO7-zM3
z、LiwTi1-xM1
xNb2-yM2
yO7-zM3
z、式中、
・M1およびM2がそれぞれ、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、Ce、およびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
・M1およびM2が、互いに同一であっても、または異なっていてもよく、
・M3が、少なくとも1種のハロゲンであり、
・0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、およびz≦0.3である;
・TiNb2O7-zM3
z、LiwTiNb2O7-zM3
z、式中、M3が、少なくとも1種のハロゲン、好ましくは、F、Cl、Br、I、またはそれらの混合物から選択される少なくとも1種のハロゲンであり、0≦w≦5および0<z≦0.3である;
・Ti1-xGexNb2-yM1
yO7-zM2
z、LiwTi1-xGexNb2-yM1
yO7-zM2
z、Ti1-xLaxNb2-yM1
yO7-zM2
z、LiwTi1-xLaxNb2-yM1
yO7-zM2
z、Ti1-xCuxNb2-yM1
yO7-zM2
z、LiwTi1-xCuxNb2-yM1
yO7-zM2
z、Ti1-xCexNb2-yM1
yO7-zM2
z、LiwTi1-xCexNb2-yM1
yO7-zM2
z、式中、
・M1およびM2がそれぞれ、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、Ce、およびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
・M1およびM2が、互いに同一であっても、または異なっていてもよく、
・0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、およびz≦0.3である;
・Ti1-xGexNb2-yM1
yO7-z、LiwTi1-xGexNb2-yM1
yO7-z、Ti1-xCexNb2-yM1
yO7-z、LiwTi1-xCexNb2-yM1
yO7-z、式中、
・M1が、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、Ce、およびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
・0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、およびz<1であり、好ましくは、0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、およびz<0.3である;
によって形成される群から選択され得る。
【0032】
任意選択的に、ステップ(c)の最中に、前記層は、蒸発および/または熱分解によって有機残留物を除去するのに十分に高い温度まで加熱される(脱結合ステップと呼ばれる)。
【0033】
より一般には、ステップ(c)の処理は、いくつかのステップで、または連続的な温度傾斜で実施される。この処理は、乾燥で始まり、続いて、堆積物が有機材料を含有している場合、任意選択的に脱結合(この脱結合は、有機材料を熱分解または焼成するための空気中での加熱処理である)、最後に、加熱処理および/または熱機械処理のみであり得る圧密化処理が行われる。
【0034】
リチウムが存在し得ることを示す式、すなわち、LiwTi1-xM1
xNb2-yM2
yO7、LiwTi1-xM1
xNb2-yM2
yO7-zM3
z、LiwTi1-xGexNb2-yM1
yO7-zM2
z、LiwTi1-xGexNb2-yM1
yO7-z、LiwTi1-xLaxNb2-yM1
yO7-zM2
z、LiwTi1-xCuxNb2-yM1
yO7-zM2
z、LiwTi1-xCexNb2-yM1
yO7-zM2
z、およびLiwTi1-xCexNb2-yM1
yO7-zによって表されるアノードAの活物質は、w=0で(すなわち、リチウムを含有することなく)供給および堆積される:これらの材料は、アノードが一部を形成するバッテリの第1の充電の最中にリチウムを挿入する能力を有する。
【0035】
ステップ(b)では、堆積物が基板の両側に作製され得る。
【0036】
第1の実施形態では、前記基板は、集電体として機能することができる基板であり得る。ステップ(c)の後の層の厚さは、有利には、約1μm~約300μmの間、または1μm~150μmの間である。
【0037】
第2の実施形態では、前記基板は、ポリマー膜などの中間の一時的な基板である。この第2の実施形態では、層は、これを乾燥させた後に、好ましくはこれを加熱する前に、ただし遅くともステップ(c)の最後にその基板から分離され得る。ステップ(c)の後の層の厚さは、有利には、約5μm~約300μmの間である。
【0038】
2つの実施形態において、層が厚く抵抗がある場合、ステップ(d)を追加することが有利である:
(d)電子伝導性材料のコーティングが、前記多孔質層の細孔上およびそれらの内部に堆積、すなわち形成され、前記電子伝導性材料は、好ましくは炭素または電子伝導性酸化物材料である。
【0039】
ステップ(d)は、ALDによって実施され得る。
【0040】
ステップ(d)は、以下の連続ステップを含み得、電子伝導性材料の前駆体の層は、ステップ(d1)において、前記多孔質層の細孔上およびそれらの内部に堆積され、ステップ(d2)において、ステップ(d1)で前記多孔質層上に堆積された電子伝導性材料の前駆体は電子伝導性材料に変換され、そのため、前記多孔質層は、細孔上およびそれらの内部に前記電子伝導性材料の層を有する。
【0041】
電子伝導性材料は、炭素であり得る。この場合、ステップ(d1)は、有利には、炭水化物などの炭素リッチな化合物を含む液相中に多孔質層を浸すことによって実施され、ステップ(d2)で実施される電子伝導性材料への前記変換は、この場合、熱分解であり、好ましくは不活性雰囲気中で、より好ましくは窒素中で実施される。
【0042】
ステップ(d1)は、有利には、前記電子伝導性材料の前駆体を含む液相中に多孔質層を浸すことによって実施され、この場合、ステップ(d2)における電子伝導性材料への電子伝導性材料の前駆体の前記変換は、焼成などの加熱処理であり、好ましくは空気中または酸化性雰囲気中で実施される。
【0043】
有利には、電子伝導性材料の前記前駆体は、好ましくは空気中または酸化性雰囲気中で行われる焼成などの加熱処理後に電子伝導性酸化物を形成することができる1種以上の金属元素を含有する有機塩から選択される。これらの金属元素、好ましくはこれらの金属カチオンは、有利には、スズ、亜鉛、インジウム、ガリウム、またはこれらの元素のうちの2種もしくは3種もしくは4種の混合物から選択され得る。有機塩は、好ましくは空気中または酸化性雰囲気中で実施される焼成などの加熱処理後に電子伝導性酸化物を形成することができる少なくとも1種の金属元素のアルコレート(alcoholate)、空気中での焼成後に電子伝導性酸化物を形成することができる少なくとも1種の金属元素のシュウ酸塩(oxalate)、および好ましくは空気中または酸化性雰囲気中で実施される焼成などの加熱処理後に電子伝導性酸化物を形成することができる少なくとも1種の金属元素の酢酸塩(acetate)から選択されることが好ましい。
【0044】
有利には、前記電子伝導性材料は、好ましくは、
- 酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム(In2O3)、酸化ガリウム(Ga2O3)、これらの酸化物のうちの2種の混合物、例えば、酸化インジウム(In2O3)と酸化スズ(SnO2)との混合物に対応する酸化インジウムスズ、これらの酸化物のうちの3種の混合物、またはこれらの酸化物のうちの4種の混合物、
- 酸化亜鉛をベースとするドープされた酸化物であって、ドーピングに、好ましくは、ガリウム(Ga)、および/またはアルミニウム(Al)、および/またはホウ素(B)、および/またはベリリウム(Be)、および/またはクロム(Cr)、および/またはセリウム(Ce)、および/またはチタン(Ti)、および/またはインジウム(In)、および/またはコバルト(Co)、および/またはニッケル(Ni)、および/または銅(Cu)、および/またはマンガン(Mn)、および/またはゲルマニウム(Ge)を用いる、酸化亜鉛をベースとするドープされた酸化物、
- 酸化インジウムをベースとするドープされた酸化物であって、ドーピングに、好ましくは、スズ(Sn)、および/またはガリウム(Ga)、および/またはクロム(Cr)、および/またはセリウム(Ce)、および/またはチタン(Ti)、および/またはインジウム(In)、および/またはコバルト(Co)、および/またはニッケル(Ni)、および/または銅(Cu)、および/またはマンガン(Mn)、および/またはゲルマニウム(Ge)を用いる、酸化インジウムをベースとするドープされた酸化物、
- ドープされた酸化スズであって、ドーピングに、好ましくは、ヒ素(As)、および/またはフッ素(F)、および/または窒素(N)、および/またはニオブ(Nb)、および/またはリン(P)、および/またはアンチモン(Sb)、および/またはアルミニウム(Al)、および/またはチタン(Ti)、および/またはガリウム(Ga)、および/またはクロム(Cr)、および/またはセリウム(Ce)、および/またはインジウム(In)、および/またはコバルト(Co)、および/またはニッケル(Ni)、および/または銅(Cu)、および/またはマンガン(Mn)、および/またはゲルマニウム(Ge)を用いる、ドープされた酸化スズ
から選択される電子伝導性酸化物材料であり得る。
【0045】
一般に、前記一次ナノ粒子は、有利には、アグリゲートまたはアグロメレートの形態であり、前記アグリゲートまたはアグロメレートは、50nm~300nmの間、好ましくは100nm~200nmの間の平均直径D50を有する。
【0046】
ステップ(c)からの前記多孔質層は、10m2/g~500m2/gの間の比表面積を有する。
【0047】
電子伝導性材料の前記コーティングの堆積は、原子層堆積(ALD)の技術によって、または前記電子伝導性材料の前駆体を含む液相に浸し、続いて、前記前駆体を電子伝導性材料に変換することによって実施される。
【0048】
前記第2の実施形態では、バッテリのための多孔質アノードを製造するための方法は、ポリマー(PETなど)で作製された中間基板を使用し、いわゆる「グリーンテープ」をもたらす。次いで、このグリーンテープは、その基板から分離され、次いで、これは、プレートまたはシート(以下では、その厚さに関係なく「プレート」という用語で呼ばれる)を形成する。これらのプレートは、それらの中間基板からの分離前またはその後に切断され得る。次いで、これらのプレートは、有機構成成分を除去するために焼成される。次いで、これらのプレートは、25~50%の間の多孔率を有するメソポーラスセラミック構造が得られるまで、ナノ粒子を圧密化するために焼結される。ステップ(c)で得られる前記多孔質プレートは、有利には、5μm~300μmの間の厚さを有する。先に記載されているように、電子伝導性材料のコーティングを堆積することが有利である。
【0049】
この第2の実施形態では、電極プレートを構成するものと同一であることが好ましいナノ粒子の中間薄層で両側が覆われた金属シートも提供される。前記薄層は、好ましくは、1μm未満の厚さを有する。
【0050】
次いで、このシートは、先に得られた2枚の多孔質電極プレート(例えば、2枚の多孔質アノードプレート)間に挿入される。次いで、この組立品は熱プレスされ、そのため、ナノ粒子の前記薄い中間層は、焼結によって変形され、電極/基板/電極組立品を圧密化して、剛性のモノブロック組立品を得る。この焼結の最中に、電極層と中間層との間の結合が原子の拡散によって確立される;この現象は、拡散結合として知られている。この組立品は、同じ極性の2枚の電極プレート(典型的には、2つのアノード間)で作製され、同じ極性のこれらの2枚の電極プレート間の金属シートが、それらの間に並列接続を確立する。
【0051】
第2の実施形態の利点のうちの1つは、アルミニウムまたは銅箔などの安価な基板の使用を可能にすることである。実際に、これらの箔は、堆積した層を圧密化するために使用される加熱処理に耐えず、それらの加熱処理後に電極プレートに貼られるという事実もそれらの酸化を防止する。
【0052】
拡散結合によるこの組み立ては、先に記載されているように別々に行われてもよく、得られた電極/基板/電極サブ組立品は、バッテリを製造するために使用され得る。拡散結合によるこの組立品はまた、バッテリ構造全体をスタックして熱プレスすることによって実施されてもよく、この場合、本発明による第1の多孔質アノード層、その金属基板、本発明による第2の多孔質アノード層、固体電解質層、第1のカソード層、その金属基板、第2のカソード層、新たな固体電解質層などを備える多層スタックが組み立てられる。
【0053】
より正確には、メソポーラスセラミック電極(特に、本発明によるアノード)のプレートを金属基板の両面に貼ることができる(金属基板の両面に堆積物を有するものと同じ構成)。次いで、電解質膜(セパレータ)がこの電極/基板/電極(特に、アノード/基板/アノード)上に堆積される。次いで、いくつかの基本セルを有するバッテリを生成するために必要な切断が行われ、次いで、サブ組立品が(典型的には頭部から尾部まで)スタックされ、固体電解質のレベルで電極を互いに結合するために熱圧縮が実施される。
【0054】
あるいは、第1の電極プレート、結合要素でコーティングされたその基板(典型的には、この中間層が溶接されるべき電極材料のナノ粒子の中間層)、1つ目と同じ極性の第2の電極プレート、固体電解質(セパレータ)、反対極性の電極プレート、結合要素でコーティングされたその基板(典型的には、この中間層が結合されるべき電極材料のナノ粒子の中間層)などを備える、スタックが形成され得る。次いで、電極を固体電解質上で一緒に溶接するため、および電極プレートを集電体に溶接するための両方に使用される最終的な熱圧縮が行われる。
【0055】
先に提示されている2つの変形例では、熱圧縮溶接は、比較的低い温度で実施されるが、これは、ナノ粒子の非常に小さなサイズに基づいて可能である。結果として、基板の金属層の酸化はない。
【0056】
電極層またはプレート(「電極プレート」という用語、「プレート」という用語は「シート」も含むことに留意されたい)が十分な電子伝導性を示す場合、別個の集電体は必要ないことがある。この変形例は、主にマイクロバッテリおよび中出力バッテリに使用され、1mAh超の出力定格を有するバッテリについての好ましい実施形態ではない。
【0057】
以下に記載されている組立品の他の実施形態では、(グラファイトが充填された)伝導性接着剤もしくは伝導性粒子が充填されたゾルゲル堆積物、または低融点を有することが好ましい金属ストリップ(例えば、アルミニウム)が使用され、熱機械処理(熱プレス)の最中に、金属箔が、流動によって変形され得るか、またはプレート間にこの継ぎ目を形成するために使用され得る。
【0058】
本発明の第2の対象は、25体積%~50体積%の間、好ましくは28体積%~43体積%の間、さらにより好ましくは30体積%~40体積%の間の多孔率を有する多孔質層を含む、1mAh超の容量を有するように設計されたリチウムイオンバッテリのための多孔質アノードであって、
前記多孔質層が、
- 50nm未満の平均直径を有する細孔、
- 材料Aの多孔質ネットワークであって、前記多孔質ネットワークを形成する細孔上およびそれらの内部に電子伝導性材料のコーティングを任意選択的に含む、材料Aの多孔質ネットワーク
を含むことを特徴とし、
前記材料Aが、酸化ニオブ、およびチタン、ゲルマニウム、セリウム、ランタン、銅またはタングステンを有するニオブの混合酸化物から、好ましくは、
・Nb2O5-δ、Nb18W16O93-δ、Nb16W5O55-δ、ここで、0≦x<1および0≦δ≦2;
・TiNb2O7-δ、Ti1-xM1
xNb2-yM2
yO7-δ、LiwTi1-xM1
xNb2-yM2
yO7-δ、式中、M1およびM2がそれぞれ、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、およびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M1およびM2が、互いに同一であっても、または異なっていてもよく、0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、および0≦δ≦0.3である;
・Ti1-xM1
xNb2-yM2
yO7-zM3
z、LiwTi1-xM1
xNb2-yM2
yO7-zM3
z、式中、
・M1およびM2がそれぞれ、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、およびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
・M1およびM2が、互いに同一であっても、または異なっていてもよく、
・M3が、少なくとも1種のハロゲンであり、
・0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、およびz≦0.3である;
・TiNb2O7-zM3
z、LiwTiNb2O7-zM3
z、式中、M3が、少なくとも1種のハロゲン、好ましくは、F、Cl、Br、I、またはそれらの混合物から選択される少なくとも1種のハロゲンであり、0<z≦0.3である;
・Ti1-xGexNb2-yM1
yO7-z、LiwTi1-xGexNb2-yM1
yO7-z、Ti1-xCexNb2-yM1
yO7-z、LiwTi1-xCexNb2-yM1
yO7-z、式中、
・M1およびM2が、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、Ce、およびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
・0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、およびz<1であり、好ましくは、0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、およびz≦0.3(好ましくは、z<0.3)である;
・Ti1-xGexNb2-yM1
yO7-zM2
z、LiwTi1-xGexNb2-yM1
yO7-zM2
z、Ti1-xLaxNb2-yM1
yO7-zM2
z、LiwTi1-xLaxNb2-yM1
yO7-zM2
z、Ti1-xCuxNb2-yM1
yO7-zM2
z、LiwTi1-xCuxNb2-yM1
yO7-zM2
z、Ti1-xCexNb2-yM1
yO7-zM2
z、LiwTi1-xCexNb2-yM1
yO7-zM2
z、式中、
・M1およびM2がそれぞれ、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、Ce、およびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
・M1およびM2が、互いに同一であっても、または異なっていてもよく、
・0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、およびz≦0.3である;
によって形成される群内で選択されることを特徴とし、
前記アノードが、本発明による方法によって得ることが可能である、
多孔質アノードである。
【0059】
第3の対象は、本発明による多孔質アノードを製造するための方法を実装することによって、または本発明による多孔質アノードを使用することによって、バッテリ、好ましくはリチウムイオンバッテリを製造するための方法である。
【0060】
そのような方法は、本発明による少なくとも1つの多孔質アノードと、少なくとも1つのセパレータと、少なくとも1つの多孔質カソードとを備えるバッテリを製造するための方法であって、
(a)第1の基板、第2の基板が提供され、
- アノードAの少なくとも1種の活物質の単分散一次ナノ粒子のアグリゲートまたはアグロメレートを含む第1のコロイド懸濁液またはペーストが提供され、平均一次直径D50が、2~100nmの間、好ましくは2~60nmの間であり、前記アグリゲートまたはアグロメレートが、50nm~300nmの間(好ましくは100nm~200nmの間)の平均直径D50を有し、
前記材料Aが、酸化ニオブ、およびチタン、ゲルマニウム、セリウム、ランタン、銅またはタングステンを有するニオブの混合酸化物から、好ましくは、
・Nb2O5-δ、Nb18W16O93-δ、Nb16W5O55-δ、ここで、0≦x<1および0≦δ≦2;
・TiNb2O7-δ、Ti1-xM1
xNb2-yM2
yO7-δ、LiwTi1-xM1
xNb2-yM2
yO7、式中、M1およびM2がそれぞれ、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、およびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、互いに同一であってもまたは異なっていてもよいM1およびM2、0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、および0≦δ≦0.3である;
・Ti1-xM1
xNb2-yM2
yO7-zM3
z、LiwTi1-xM1
xNb2-yM2
yO7-zM3
z、式中、
・M1およびM2がそれぞれ、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、およびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
・M1およびM2が、互いに同一であっても、または異なっていてもよく、
・M3が、少なくとも1種のハロゲンであり、
・0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、およびz≦0.3である;
・TiNb2O7-zM3
z、LiwTiNb2O7-zM3
z、式中、M3が、少なくとも1種のハロゲン、好ましくは、F、Cl、Br、I、またはそれらの混合物から選択される少なくとも1種のハロゲンであり、0<z≦0.3である;
・Ti1-xGexNb2-yM1
yO7-z、LiwTi1-xGexNb2-yM1
yO7-z、Ti1-xCexNb2-yM1
yO7-z、LiwTi1-xCexNb2-yM1
yO7-z、式中、
・M1が、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、Ce、およびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
・0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、およびz<1であり、好ましくは、0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、およびz<0.3である;
・Ti1-xGexNb2-yM1
yO7-zM2
z、LiwTi1-xGexNb2-yM1
yO7-zM2
z、Ti1-xLaxNb2-yM1
yO7-zM2
z、LiwTi1-xLaxNb2-yM1
yO7-zM2
z、Ti1-xCuxNb2-yM1
yO7-zM2
z、LiwTi1-xCuxNb2-yM1
yO7-zM2
z、Ti1-xCexNb2-yM1
yO7-zM2
z、LiwTi1-xCexNb2-yM1
yO7-zM2
z、式中、
・M1およびM2がそれぞれ、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、Ce、およびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
・互いに同一であってもまたは異なっていてもよいM1およびM2、
・0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、およびz≦0.3である;
によって形成される群内で選択されると理解され、
前記第1および/または前記第2の基板が、集電体または中間基板として機能することができる基板であり得ることを念頭に置いて、
- 少なくとも1種のカソード活物質Cの単分散一次ナノ粒子のアグリゲートまたはアグロメレートを含む第2のコロイド懸濁液が提供され、平均一次直径D50が、2nm~100nmの間、好ましくは2nm~60nmの間であり、前記アグリゲートまたはアグロメレートが、50nm~300nmの間(好ましくは100nm~200nmの間)の平均直径D50を有し、
- 少なくとも1種の無機材料E(好ましくは電気絶縁体である)のナノ粒子のアグリゲートまたはアグロメレートを含む第3のコロイド懸濁液が提供され、平均一次直径D50が、2nm~100nmの間、好ましくは2nm~60nmの間であり、前記アグリゲートまたはアグロメレートが、50nm~300nmの間(好ましくは100nm~200nmの間)の平均直径D50を有し、
(b)電気泳動、押出、好ましくはインクジェット印刷およびフレキソ印刷から選択される印刷法、ならびに好ましくはロールコーティング、カーテンコーティング、ドクターブレードコーティング、スロットダイを通じた押出によるコーティング、浸漬コーティングから選択されるコーティング法からなる群から選択されることが好ましい方法によって、ステップ(a)で提供された前記第1のコロイド懸濁液からのアノード層を前記第1の基板の少なくとも1つの面に堆積し、ステップ(a)で提供された前記第2のコロイド懸濁液からのカソード層を前記第2の基板の少なくとも1つの面に堆積し、
(c)多孔質、好ましくはメソポーラスの無機アノード層、および多孔質、好ましくはメソポーラスの無機カソード層をそれぞれ得るために、ステップ(b)で得られた前記アノードおよびカソード層が、必要に応じて前記層をその中間基板から分離した後に乾燥させられ、各層がプレスおよび/または加熱によって圧密化され、
(d)任意選択的に、同様に前記多孔質アノードおよび多孔質カソードを形成するために、電子伝導性材料のコーティングが前記多孔質アノードおよび/またはカソード層の細孔上およびそれらの内部に堆積され、
(e)電気泳動、押出、好ましくはインクジェット印刷およびフレキソ印刷から選択される印刷法、ならびに好ましくはロールコーティング、カーテンコーティング、ドクターブレードコーティング、スロットダイを通じた押出によるコーティング、浸漬コーティングを含む群から選択される技術によって、ステップ(a)で提供された第3のコロイド懸濁液からの多孔質無機層が、ステップ(c)または(d)で得られた前記多孔質アノードおよび/または前記多孔質カソード上に堆積され、
(f)前記熱処理を実施する前に、必要に応じて、その中間基板から分離された層が、集電体として機能することができる金属シート上にプレスされることを念頭に置いて、ステップ(e)で得られた構造の前記多孔質無機層が、好ましくは空気流下で乾燥させられ、130℃超、好ましくは約300℃~約600℃の間の温度で加熱処理が行われ、
(g)ステップd)またはe)で得られた多孔質アノードが、ステップd)またはe)で得られた多孔質カソードと向かい合って連続的にスタックされ、得られたスタックが、前記セパレータを形成するステップe)で得られるような少なくとも1つの多孔質無機層を含むと理解され、
(h)少なくとも1つの多孔質アノードと、少なくとも1つのセパレータと、少なくとも1つの多孔質カソードとを備えるバッテリを得るために、ステップ(g)で得られたスタックが120℃~600℃の間の温度で熱圧縮処理に供される
ことを特徴とする、方法である。
【0061】
ステップ(h)における加熱処理は、膜セパレータの電極上での堆積の後に実施される。次いで、ステップ(h)からの生成物は、イオン伝導性ポリマーもしくはイオン伝導性にされたポリマーによって、またはさらには少なくとも1種のリチウム塩を含有する液体電解質によって含浸され得、これらは、有利には、
・少なくとも1種の非プロトン性溶媒と少なくとも1種のリチウム塩とから構成される電解質、
・少なくとも1種のイオン液体と少なくとも1種のリチウム塩とから構成される電解質、
・少なくとも1種の非プロトン性溶媒と、少なくとも1種のイオン液体と、少なくとも1種のリチウム塩との混合物、
・少なくとも1種のリチウム塩を添加することによってイオン伝導性にされたポリマー、および
・ポリマー相またはメソポーラス構造のいずれかにおいて液体電解質を添加することによってイオン伝導性にされたポリマー
によって形成される群から選択される。
【0062】
これらの製造方法は、微細なセラミックセパレータを有する完全固体バッテリの製造を可能にする。これらのセパレータは、イオン液体で非常に良好に含浸されており、高温に抵抗性がある。
【0063】
本発明のさらなる対象は、本発明による方法によって得ることができる1mAh超の容量を有するリチウムイオンバッテリである。この場合、バッテリは、本発明によるアノード、または本発明による方法によって得ることができるアノードを備える。このアノードは、有利には、200mAh/g超、好ましくは250mAh/g超の質量容量を有する。
【0064】
本発明の最後の対象は、-10℃よりも低い温度および/または50℃よりも高い温度、好ましくは-20℃よりも低い温度および/または60℃よりも高い温度、さらにより好ましくは-30℃よりも低い温度および/または70℃よりも高い温度での本発明によるバッテリの使用である。
【0065】
本発明の有利な実施形態では、バッテリは、カソードの表面容量よりも低いアノードの表面容量を有し、このことによって、バッテリの温度安定性が改善される。
【0066】
一般に、完全固体の焼結多層構造の作製には多くの問題がある。これは、焼結を実施するために高温に加熱することを必要とし、それによって、電極材料が劣化され、界面での相互拡散が引き起こされ得る。その必須の特徴のうちの1つによると、本発明による方法は、焼結温度を低下させることを可能にするナノ粒子を使用する。さらに、有利には、メソポーラス構造を得るために部分焼結が行われ得る。さらに、この焼結は、セパレータを用いた組み立て前に電極層またはプレート上で実施され得、それによって、焼結の最中に接触している異なる材料のセラミック層の存在が避けられる。セパレータについて、比較的低い温度でこの組み立てを行うことができるようにするために、比較的低い融点を有し、かつ電極の接触に対して不活性な材料を選択することが有利である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】2つの異なる領域についての、本発明によるTi
0.95Ge
0.05Nb
2O
7アノードを用いて得られた放電曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0068】
1.定義
本文書の文脈では、粒子のサイズは、その最大寸法によって定義される。「ナノ粒子」は、その寸法のうちの少なくとも1つが100nm以下であるナノメートルサイズの粒子または物体として定義される。
【0069】
本文書の文脈において、「電子伝導性酸化物」という用語は、電子伝導性酸化物および電子半伝導性酸化物として定義される。
【0070】
本文書の文脈において、電子絶縁性材料または層、好ましくは電子絶縁性およびイオン伝導性層は、105Ω・cm超の電気抵抗率(電子の通過に対する抵抗)を有する材料または層である。「イオン液体」とは、電気を輸送することができる液体塩を指すが、溶融温度が100℃未満である点ですべての溶融塩とは異なる。これらの塩には、周囲温度では液体のままであり、非常に低い温度でも固化しないものもある。そのような塩は、「周囲温度でイオン液体」と呼ばれる。
【0071】
「メソポーラス材料」という用語は、マイクロ細孔のサイズ(2nm未満の幅)とマクロ細孔のサイズ(50nm超の幅)との中間のサイズ、すなわち、2nm~50nmの間のサイズを有する「メソ細孔」と呼ばれる細孔をその構造内に有する固体を指す。この専門用語は、当業者にとって参考となるIUPAC(国際純正・応用化学連合:International Union for Pure and Applied Chemistry)によって採用された専門用語に対応する。したがって、メソ細孔のサイズよりも小さなサイズの細孔が当業者によって「マイクロ細孔」と呼ばれることを念頭に置いて、先に定義されているようなメソ細孔がナノ粒子の定義の意味合いでナノメートルの寸法を有する場合でも、ここでは「ナノ細孔」という用語は使用されない。
【0072】
多孔率の概念(および先に説明されている専門用語)の説明は、論文集‘‘Techniques de l’Ingenieur’’(‘‘Engineering techniques’’),Analyse and Caracterisation,section P1050で出版されたF.Rouquerol等による論文である‘‘Texture des materiaux pulverulents or poreux’’(‘‘Texture of powdered or porous materials’’)に示されており、この論文は、多孔率を特徴付けるための技術、特にBET法についても記載している。
【0073】
本発明の意味において、「メソポーラス層」という用語は、メソ細孔を有する層を指す。以下で説明されているように、これらの層では、メソ細孔が総細孔体積に著しく寄与し、このことは、以下の記載で使用される「X体積%超のメソポーラス多孔性を有するメソポーラス層」という表現に反映されており、X%は、層の好ましくは25%超、優先的には30%超、さらにより好ましくは30~50%の間の総体積である。
【0074】
「アグリゲート」という用語は、IUPAC定義によると、一次粒子の緩く結合した集合体を表すために使用される。この場合、これらの一次粒子は、透過型電子顕微鏡によって決定され得る直径を有するナノ粒子である。アグリゲート化される一次ナノ粒子のアグリゲートは、通常、当業者に公知の技術によって、超音波の効果から液相において懸濁液中で破壊され得る(すなわち、一次ナノ粒子に縮小され得る)。
【0075】
「アグロメレート」という用語は、IUPACの定義によると、一次粒子またはアグリゲートの強く結合した集合体として定義される。
【0076】
本発明の意味において、「電解質層」という用語は、電気化学デバイス内の層を指し、このデバイスは、その目的に従って機能することができる。例えば、前記電気化学デバイスが二次リチウムイオンバッテリである場合、「電解質層」という用語は、リチウムイオンのキャリア相で含浸された「多孔質無機層」を表す。電解質層は、イオン伝導体であるが、電子絶縁性である。
【0077】
電気化学デバイスにおける前記多孔質無機層は、当業者によって使用される専門用語に従って、ここでは「セパレータ」とも呼ばれる。
【0078】
本発明によると、好ましくはメソポーラスである「多孔質無機層」は、以下で「浸漬コーティング」と呼ばれる浸漬コーティング法によって、以下で「インクジェット印刷」と呼ばれるインクジェット印刷法によって、「ロールコーティング」によって、「カーテンコーティング」によって、または「ドクターブレードコーティング」によって電気泳動的に堆積され得、これは、ナノ粒子アグリゲートまたはアグロメレートの懸濁液から、好ましくは、ナノ粒子のアグロメレートを含有する濃縮懸濁液から堆積され得る。
【0079】
2.ナノ粉末懸濁液の調製
本発明の文脈では、100nm未満の一次粒子サイズを有する単分散結晶化ナノ粉末は、好ましくは、電極層およびセパレータ層に使用される。これは、圧密化処理の最中に(アグロメレート化形態か否かに関わらず)一次粒子間のネッキングを促進する。次いで、一次粒子がすでに結晶化状態にある場合、この処理の目的がもはや一次粒子を再結晶化することではないことを念頭に置いて、圧密化が比較的低い温度で行われ得る。一部の化学組成では、単分散結晶化ナノ粒子の集団を得るために特定の合成方法を使用する必要がある。
【0080】
一般に、TNO(TiNb2O7)タイプの組成物は、非常に低い電子伝導性を有する。バッテリにおいて、高出力を送るためには、粒子は非常に小さい必要がある。さらに、以下に説明されているように、アノード材料のこの低い電子伝導性を補償するために、メソポーラスネットワークは、電子伝導性材料の薄層でコーティングされることが有利であり、黒鉛炭素の薄層がこの目的に使用される(ダイヤモンドライクカーボンではない)。
【0081】
TNO(TiNb2O7)タイプの粒子は、約50nm~約300nmの分散サイズを伴って水熱的に合成され得ることが知られているが、このサイズを制御することは難しく、分散が幅広くなる。この合成は非晶質粒子をもたらし、次いで、これは、高温、例えば約1000℃で約30分間にわたって加熱処理によって結晶化される必要がある。この結晶化の最中に、粒子が制御されずに成長することがあり、それによって、サイズの分散が広がる。あるいは、化学組成を均一にするために高温処理も必要とする固相合成法がある。
【0082】
本発明の文脈では、アグロメレート化しているか否かに関わらず、100nm未満、好ましくは60nm未満、さらにより好ましくは40nm未満のサイズを有する一次ナノ粒子を使用することが好ましい。そのようなナノ粒子は、様々な方法で得ることができる。
【0083】
1つの方法によると、所望の相の組成に入る金属元素のカチオンの塩、錯体、またはアルコレート(エタノレート(ethanolates)など)は、原子スケールで完全に均一な分布を得るために混合され、分子、イオン、または金属元素を含む錯体のこの分布を固定するためにポリマーが使用される。次いで、これらのポリマーは、加熱処理によって除去され、原子スケールの無機構成成分のみを残し、これについて、比較的低い温度での単純な焼成が、ナノ粒子スケールの所望の結晶相を得ることを可能にするであろう。加熱処理段階の最中に強力にガス放出することができ、かつメソポーラスアグロメレートを得るのに寄与する有機材料を添加することが可能である。
【0084】
そのような合成の一例は、ゾルゲルタイプのプロセスである「ペチーニプロセス」であり、このプロセスでは、所望の相のカチオン(本発明者等の場合、例えば、Nb、Tiなど)が、有機分子(クエン酸(citric acid)またはEDTA(エチレンジアミン四酢酸(ethylenediaminetetraacetic acid))など)によって錯化され、ポリマーマトリックス(例えば、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)またはポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)などの多価アルコール)に導入される。これは、錯化および希釈されたカチオンの非常に均一な分布をもたらす。続いて、ポリマーおよび錯化有機分子が熱分解によって排除され、ターゲット無機酸化物の形成がもたらされる。約700℃での焼成は、結晶化したナノ粒子を得ることを可能にする。このプロセスは、粒子のサイズを調整することを可能にし、次いで、それによって、縮小されたポリマーマトリックス中のカチオンの濃度が減少する。
【0085】
一例として、カソード材料粒子の懸濁液を得るために、論文‘‘Synthesis and Electrochemical Studies of Spinel Phase LiMn2O4 Cathode Materials Prepared by the Pechini Process’’,W.Liu,G.C.Farrington,F.Chaput,B.Dunn,J.Electrochem.Soc.,vol.143,No.3,1996に記載されているペチーニプロセスを使用して、ナノ粒子のクラスターからなるLiMn2O4粉末が合成され得る。600℃での焼成ステップの後に、粉末は、典型的には50nm~100nmのサイズを有するクラスターを含有し、結晶化された一次ナノ粒子のサイズは、合成条件に応じて、典型的には、10nm~30nmの間である。
【0086】
特に好ましいアノード材料は、LiwTi1-xGexNb2-yM1
yO7-zM3
zであり、式中、M1が、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、Ce、およびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0≦w≦5、0≦x≦1、0≦y≦2、およびz≦0.3である。M3は、少なくとも1種のハロゲンである。アノードの組成物中にゲルマニウムが存在すると、バッテリの抵抗が減少し、その出力が増加するため、好ましくは0<x≦1、さらにより好ましくは0.1≦x≦1である。
【0087】
ゲルマニウムの酸化還元特性が、この化合物において、ゲルマニウムなしの類似化合物のリチウム挿入挙動とほぼ同一のリチウム挿入挙動を得ることを可能にすることに留意されたい。Ge4+/Ge3+イオンの酸化還元電位がTi4+/Ti3+対の酸化還元電位よりわずかに低い場合でも、この電位は、再充電時のリチウムの堆積(めっき)を避けるのに十分な高さを維持し、アノードのエネルギー密度を増加させることを可能にする。
【0088】
他の活性アノード材料Aが特に好ましく、これらは、Ti1-xGexNb2-yM1
yO7-zM2
z、LiwTi1-xGexNb2-yM1
yO7-zM2
z、Ti1-xLaxNb2-yM1
yO7-zM2
z、LiwTi1-xLaxNb2-yM1
yO7-zM2
z、Ti1-xCuxNb2-yM1
yO7-zM2
z、LiwTi1-xCuxNb2-yM1
yO7-zM2
z、Ti1-xCexNb2-yM1
yO7-zM2
z、LiwTi1-xCexNb2-yM1
yO7-zM2
zのタイプの材料であり、式中、
・M1およびM2がそれぞれ、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs、Ce、およびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
・互いに同一であってもまたは異なっていてもよいM1およびM2、
・0≦w≦5、および0≦x≦1、および0≦y≦2、およびz≦0.3である。
【0089】
アノードのこれらの活物質のそれぞれについて、アノードの組成中にゲルマニウム、セリウム、ランタン、または銅が存在すると、バッテリのサイクル性能が改善されるため、0<x≦1が好ましく、0.1≦x≦1がさらにより好ましい。
【0090】
LiwTi1-xCuxNb2-yM1
yO7-zM2
zに関しては、アノードのこの活物質中に銅が存在すると、バッテリ出力を増加させることも可能になるため、0<x≦1が好ましく、0.1≦x≦1がさらにより好ましい。
【0091】
この材料から作製されたメソポーラスアノードを有するバッテリは、非常に急速に再充電され得、従来技術によるLi4Ti5O12アノードで得られる体積エネルギー密度よりも大きな、非常に良好な体積エネルギー密度を有する。
【0092】
本発明によると、カソードの材料は、有利には、LiCoPO4;LiMn1.5Ni0.5O4;LiFexCo1-xPO4(式中、0<x<1);LiNi1/XCo1/yMn1/ZO2、ここで、x+y+z=10;Li1.2Ni0.13Mn0.54Co0.13O2;LiMn1.5Ni0.5-xXxO4、式中、Xは、Al、Fe、Cr、Co、Rh、Nd、Sc、Y、Lu、La、Ce、Pr、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選択され、式中、0<x<0.1;LiNi0.8Co0.15Al0.05O2;Li2MPO4F(ここで、M=Fe、Co、Ni、またはこれらの異なる元素の混合物);LiMPO4F(ここで、M=V、Fe、Ti、またはこれらの異なる元素の混合物);LiMSO4F(ここで、M=Fe、Co、Ni、Mn、Zn、Mg)、LiNi1/xMn1/yCo1/zO2、ここで、x+y+z=10;LiCoO2を含む群から選択される。
【0093】
高容量カソードについては、特に、LiNi1/xMn1/yCo1/zO2、ここで、x+y+z=10、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、およびLiCoO2が好ましい。
【0094】
例えば、LiNixMnyCozO2(NMCとしても知られている)は、好ましくはx+y+z=1、さらにより好ましくはx:y:z=4:3:3(NMC433として知られている材料)で使用され得る。
【0095】
3.層の堆積およびそれらの圧密化
一般に、ナノ粒子懸濁液の層は、任意の適切な技術によって、特に、電気泳動、押出、印刷法、好ましくは、インクジェット印刷またはフレキソ印刷、コーティング法、好ましくは、ドクターブレードコーティング、ロールコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、またはスロットダイ通過を含む群から選択される方法によって基板上に堆積される。懸濁液は、典型的には、インクの形態、すなわち、かなり流動的な液体であるが、ペースト状の粘稠度も有し得る。堆積技術および堆積方法は、懸濁液の粘度に適合している必要があり、その逆も同様である。
【0096】
次いで、堆積した層は乾燥させられる。次いで、層は、所望のセラミックメソポーラス構造を得るために圧密化される。この圧密化は、以下に記載されている。これは、加熱処理、および場合によって熱機械処理、典型的には熱圧縮を含む。この熱機械処理の最中に、電極層は、有機構成成分および残留物(ナノ粒子懸濁液の液相および界面活性剤生成物など)が取り除かれ、無機(セラミック)層になる。プレートの圧密化は、中間基板がこの処理の最中に劣化する可能性があるため、好ましくは、その中間基板からのその分離後に行われる。
【0097】
層の堆積、それらの乾燥、および圧密化は、これより論じられるある特定の問題を引き起こす可能性がある。これらの問題は、層の圧密化の最中に収縮が起こり、これが内部応力を発生させるという事実に部分的に関係している。
【0098】
第1の実施形態によると、電極層はそれぞれ、集電体として機能することができる基板上に堆積される。金属シート(すなわち、積層金属シート)がこの目的のために好ましい。ナノ粒子またはナノ粒子アグロメレートの懸濁液を含む層は、先に示されている堆積技術によって両側に堆積され得る。
【0099】
電極の厚さを増加させたい場合、圧密化によって発生する収縮が、層の亀裂をもたらし得るか、または基板(固定された寸法を有する)とセラミック電極との界面にせん断応力をもたらし得ることが観察される。このせん断応力が閾値レベルを上回ると、層がその基板から取り外される。
【0100】
この現象を避けるためには、堆積-焼結の動作を連続することによって電極の厚さを増加させることが好ましい。層を堆積する第1の実施形態のこの第1の変形例は、良好な結果を与えるが、それほど生産的ではない。あるいは、第2の変形例では、より大きな厚さを有する層が穿孔基板の両側に堆積される。穿孔部は、表および裏の2つの層が穿孔部において接触するのに十分な直径を有する必要がある。したがって、圧密化の最中に、基板の穿孔部を通じて接触している電極材料のナノ粒子および/またはナノ粒子のアグロメレートが互いに溶接して、付着点(両側の堆積物間の溶接点)を形成する。これは、圧密化ステップの最中の基板への層の接着力の損失を制限する。
【0101】
第2の実施形態によると、電極層は、集電体として機能することができる基板上ではなく、一時的な中間基板上に堆積される。特に、かなり厚い層(グリーンシート)は、ナノ粒子および/またはナノ粒子アグロメレートがより濃縮された懸濁液(すなわち、流動性がより低く、好ましくはペースト状)から堆積され得る。これらの厚い層は、例えば、ドクターブレードまたはテープキャスティング技術を参照したコーティング法によって堆積される。前記中間基板は、ポリマーシート、例えば、PETと省略されるポリエチレンテレフタレートであり得る。乾燥の最中に、これらの層は、亀裂が入らない。加熱処理による圧密化のために(好ましくはこれらを乾燥させるためにすでに)、これらは、それらの基板から取り外され得る;結果的に、焼成加熱処理および部分焼結後に自立型メソポーラスセラミックプレートになるいわゆる「グリーン」電極プレートが得られる。
【0102】
次いで、三層スタック、すなわち、集電体として機能することができる金属シートによって分離された同じ極性を有する2枚の電極プレートが形成される。次いで、このスタックは、プレスおよび加熱処理を好ましくは同時に含む熱機械処理によって組み立てられる。一変形例では、セラミックプレートと金属シートとの間の結合を促進するために、界面は、電子伝導結合を可能にする層でコーティングされ得る。この層は、電子伝導性材料の粒子が場合によって装入されたゾルゲル層(好ましくは、加熱処理後に達成されるべき電極の化学組成を可能にするタイプのもの)であり得、これは、メソポーラス電極と金属シートとの間にセラミック結合を作製するであろう。この層はまた、未焼結電極ナノ粒子の薄層、または伝導性接着剤の薄層(例えば、グラファイト粒子が装入されている)、またはさらには低融点を有する金属の金属層によって形成され得る。
【0103】
前記金属シートは、好ましくは積層シートであり、すなわち、積層によって得られる。積層の後に、任意選択的に、最終的なアニーリングが続いてもよく、これは、冶金学の専門用語によると、軟化(全体的または部分的)または再結晶アニーリングであり得る。電気化学的に堆積されたシート、例えば、電気めっきされた銅シートまたは電気めっきされたニッケルシートを使用することも可能である。
【0104】
いずれの場合も、メソポーラスセラミック電極は、有機バインダーなしで、電子集電体として使用される金属基板のどちらかの側に配置され得る。
【0105】
本発明による方法の一変形例では、バッテリは、金属集電体を使用することなく作製される。これは、電極プレートが、電極の端部にわたる電子の通過を確実にするのに十分に電子伝導性である場合に可能である。電極材料が固有的に非常に高い電子伝導性を有する場合(LiCoO2もしくはNb16W5O55などの材料の場合)またはメソポーラス表面が電子伝導性層でコーティングされている場合のいずれかに、十分な電子伝導性が観察され得る。
【0106】
4.電子伝導体の薄層の堆積
このステップは任意選択的である。実際に、電極の所望の出力(その厚さにも影響する)および電極材料の伝導性に応じて、この処理を行って電極の伝導性を改善する必要がある場合またはそうでない場合がある。例えば、TNO(チタンニオブ酸化物)は、一般に、NWO(ニオブタングステン酸化物)よりも伝導性が低く、したがって、同じ厚さの場合、薄い電子伝導性膜のこの堆積をより多く必要とするのは、NWOのアノード層である。同様に、同じ材料の場合、より厚い電極層は、薄い電極層よりも多くのこの電子伝導性薄膜を必要とするであろう。
【0107】
本発明の文脈で使用されるアノード材料(より詳細には、酸化チタン、酸化ニオブ、およびチタンとニオブとの混合酸化物、特に、TNOと省略されるTiNb2O7)およびカソード材料は、不十分な電子伝導体である。したがって、これらを含有するバッテリは、高い直列抵抗を有し、このことは、エネルギーの抵抗損失を示唆しており、電極が厚いほどさらにその傾向が強くなる。本発明によると、電子伝導性材料のナノ層は、電極の良好な電子伝導性を保証するために、メソ多孔性ネットワーク内、すなわち、細孔の内部に堆積されている。伝導率を増加させるこの必要性は、堆積物が厚いほど大きくなる。したがって、低い直列抵抗を有する高出力の厚い電極を有することが可能である。
【0108】
この問題に対処するために、本発明の任意選択的な特徴によると、電子伝導性材料のコーティングは、アノード材料の前記多孔質層の細孔上およびそれらの内部に堆積される。
【0109】
実際に、先に説明されているように、層アノード材料の圧密化の最中に、アノード材料のナノ粒子は、自然に互いに「溶接」して、有機バインダーを全く用いることなく、多孔質で剛性の三次元構造を生成し、この多孔質層、好ましくはメソポーラス層は、気体または液体手段による表面処理の適用に完全に適しており、これは、層の開放多孔質構造の深さに浸透する。
【0110】
非常に有利には、この堆積は、行われる場合、コーティングを可能にする技術(「コンフォーマル堆積」とも呼ばれる)、すなわち、これが適用される基板の原子トポグラフィーを忠実に再現する堆積によって行われ、これは、層の開放多孔性ネットワークに深く浸透する。前記電子伝導性材料は、炭素であり得る。
【0111】
それ自体が公知であるALD技術(原子層堆積)またはCSD(化学溶液堆積)が適切であり得る。これらは、製造後に、セパレータ粒子の堆積前および/またはその後に、ならびにセルの組み立て前および/またはその後に電極に適用され得る。ALD堆積技術は、周期的な方法によって層ごとに実施され、基板のトポグラフィーを厳密に再現したコーティングを形成することを可能にし、コーティングは、電極の表面全体を覆う。このコーティングは、典型的には、1nm~5nmの間の厚さを有する。
【0112】
ALDによる堆積は、典型的には100℃~300℃の温度で実施される。層が有機材料を含まないことが重要であり、これらは、有機バインダーを全く含有していてはならず、懸濁液を安定化するために使用される安定化バインダーの残留物はいずれも、懸濁液の精製によって、および/または乾燥後の層の加熱処理の最中に除去されている必要がある。実際に、ALD堆積の温度では、有機バインダーを形成する有機材料(例えば、インクテープのキャスティング電極に含有されるポリマー)は、分解してALD反応器を汚染するリスクがある。さらに、電極活物質粒子と接触している残留ポリマーが存在すると、ALDコーティングが粒子表面全体をコーティングすることが防止され、それによって、その有効性が低下される。
【0113】
CSD堆積の技術は、基板のトポグラフィーを忠実に再現する電子伝導性材料の前駆体によるコーティングを形成することも可能にし、これは、電極の表面全体を覆う。このコーティングは、典型的には、5nm未満、好ましくは1nm~5nmの間の厚さを有する。次いで、これは、電子伝導性材料に変換される必要がある。炭素前駆体の場合、これは、好ましくは不活性ガス(窒素など)中で、熱分解によって行われる。
【0114】
電子伝導性材料の層は、前記電子伝導性材料の前駆体を含む液相に浸し、続いて、加熱処理で前記電子伝導性材料の前駆体を電子伝導性材料に変換することによって、非常に有利に形成され得る。この方法は、実装が単純、高速、容易であり、ALD原子層堆積技術よりも安価である。有利には、電子伝導性材料の前記前駆体は、好ましくは空気中または酸化性雰囲気中で行われる焼成などの加熱処理後に電子伝導性酸化物を形成することができる1種以上の金属元素を含有する有機塩から選択される。これらの金属元素、好ましくは金属カチオンは、有利には、スズ、亜鉛、インジウム、ガリウム、またはこれらの元素のうちの2種もしくは3種もしくは4種の混合物から選択され得る。有機塩は、好ましくは空気中または酸化性雰囲気中で実施される焼成などの加熱処理後に電子伝導性酸化物を形成することができる少なくとも1種の金属カチオンのアルコレート、好ましくは空気中または酸化性雰囲気中で実施される焼成などの加熱処理後に電子伝導性酸化物を形成することができる少なくとも1種の金属カチオンのシュウ酸塩、および好ましくは空気中または酸化性雰囲気中で実施される焼成などの加熱処理後に電子伝導性酸化物を形成することができる少なくとも1種の金属カチオンの酢酸塩から選択されることが好ましい。
【0115】
有利には、前記電子伝導性材料は、好ましくは、
- 酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム(In2O3)、酸化ガリウム(Ga2O3)、これらの酸化物のうちの2種の混合物、例えば、酸化インジウム(In2O3)と酸化スズ(SnO2)との混合物に対応する酸化インジウムスズ、これらの酸化物のうちの3種の混合物、またはこれらの酸化物のうちの4種の混合物、
- 酸化亜鉛をベースとするドープされた酸化物であって、ドーピングに、好ましくは、ガリウム(Ga)、および/またはアルミニウム(Al)、および/またはホウ素(B)、および/またはベリリウム(Be)、および/またはクロム(Cr)、および/またはセリウム(Ce)、および/またはチタン(Ti)、および/またはインジウム(In)、および/またはコバルト(Co)、および/またはニッケル(Ni)、および/または銅(Cu)、および/またはマンガン(Mn)、および/またはゲルマニウム(Ge)を用いる、酸化亜鉛をベースとするドープされた酸化物、
- 酸化インジウムをベースとするドープされた酸化物であって、ドーピングに、好ましくは、スズ(Sn)、および/またはガリウム(Ga)、および/またはクロム(Cr)、および/またはセリウム(Ce)、および/またはチタン(Ti)、および/またはインジウム(In)、および/またはコバルト(Co)、および/またはニッケル(Ni)、および/または銅(Cu)、および/またはマンガン(Mn)、および/またはゲルマニウム(Ge)を用いる、酸化インジウムをベースとするドープされた酸化物、
- ドープされた酸化スズであって、ドーピングに、好ましくは、ヒ素(As)、および/またはフッ素(F)、および/または窒素(N)、および/またはニオブ(Nb)、および/またはリン(P)、および/またはアンチモン(Sb)、および/またはアルミニウム(Al)、および/またはチタン(Ti)、および/またはガリウム(Ga)、および/またはクロム(Cr)、および/またはセリウム(Ce)、および/またはインジウム(In)、および/またはコバルト(Co)、および/またはニッケル(Ni)、および/または銅(Cu)、および/またはマンガン(Mn)、および/またはゲルマニウム(Ge)を用いる、ドープされた酸化スズ
から選択される電子伝導性酸化物材料であり得る。
【0116】
アルコレート、シュウ酸塩、または酢酸塩からの電子伝導性材料、好ましくは電子伝導性酸化物材料の層を得るために、多孔質層は、所望の電子伝導性材料前駆体のリッチ溶液に浸され得る。次いで、電極は、乾燥させられ、好ましくは空気中または酸化性雰囲気中で、着目される電子伝導性材料の前駆体を熱分解するのに十分な温度で加熱処理に供される。したがって、コーティングは、電極の内部表面全体にわたって完全に分布して、電子伝導性材料から形成されており、好ましくは、電子伝導性酸化物材料のコーティングであり、より好ましくは、SnO2、ZnO、In2O3、Ga2O3、または酸化インジウムスズで作製されている。
【0117】
多孔質層の細孔上およびそれらの内部の炭素コーティングの代わりに酸化物の形態の電子伝導性コーティングが存在すると、高温での電極の良好な電気化学的性能が与えられ、電極の安定性が著しく増加する。炭素コーティングの代わりに酸化物の形態の電子伝導性コーティングを使用するという事実は、なかでも、最終的な電極へのより良好な電子伝導を与える。実際に、多孔質層またはプレートの細孔上およびそれらの内部にこの電子伝導性酸化物層が存在すると、特に伝導性コーティングが酸化物の形態であるという事実に基づいて、電極の最終的な特性を改善し、特に電極の耐電圧性、焼結の最中のその耐温度性を改善し、特にこれが電解液と接触しているときの電極の電気化学的安定性を改善し、電極が厚い場合でさえ電極の分極抵抗を低減することが可能になる。電極が厚い場合、および/または多孔質層の活物質の抵抗が強過ぎる場合、酸化物の形態、特に、In2O3、SnO2、ZnO、Ga2O3のタイプまたはこれらの酸化物のうちの1種以上の混合物の形態の電子伝導性コーティングを電極活物質の多孔質層の細孔上およびそれらの内部で使用することが特に有利である。
【0118】
本発明による電極は、多孔質、好ましくはメソポーラスであり、大きな比表面積を有する。電極の比表面積の増加は、交換表面を増やし、結果的に、バッテリの出力を増やすが、寄生反応も加速させる。多孔質層の細孔上およびそれらの内部に酸化物の形態でこれらの電子伝導性コーティングが存在すると、これらの寄生反応が遮断されるであろう。
【0119】
さらに、非常に大きな比表面積に基づいて、これらの電子伝導性コーティングが電極の電子伝導性に及ぼす効果は、堆積された伝導性コーティングが薄くても、比表面積がより小さい従来的な電極の場合よりもはるかに顕著になるであろう。多孔質層の細孔上およびそれらの内部に堆積されたこれらの電子伝導性コーティングは、優れた電子伝導性を電極に与える。
【0120】
これは本質的に、電極活物質から作製された多孔質層またはプレートと、電極の最終的な特性を改善して、電極の内部抵抗を増加させることなく厚い電極を得ることを特に可能にする前記多孔質層またはプレートの細孔上およびそれらの内部に置かれた酸化物の形態の電子伝導性コーティングとの相乗的な組み合わせである。
【0121】
さらに、多孔質層の細孔上およびそれらの内部の酸化物の形態の電子伝導性コーティングは、炭素コーティングよりも容易かつ安く達成することができる。実際に、酸化物の形態の電子伝導性材料コーティングの場合、電子伝導性コーティングへの電子伝導性材料の前駆体の変換は、炭素コーティングの場合とは異なり、不活性雰囲気中で行われる必要はない。
【0122】
電子伝導性材料のナノ層を堆積するこの変形例では、伝導性層が電極層の開放多孔性を詰まらせることを防止するために、電極材料の一次粒子の直径D50が少なくとも10nmであることが好ましい。
【0123】
自立型電極プレートを堆積する場合、この処理は、メソポーラスセラミックプレート上で集電体への結合前に行われ得る。
【0124】
5.層の材料の選択
高性能バッテリを得るためには、それらの質量容量および電圧を最適化する必要がある。これは、互いに適合性である必要があり、かつバッテリが動作する潜在的な条件で安定している必要がある異なる材料の選択に制限があることを意味し得る。
【0125】
この項では、カソード材料が論じられる。アノード材料は、先に提示されており、これらは、ニオブを含有する酸化物配合物である。これらのアノード材料は、160mAh/g超の質量容量および0.5V/Li超のリチウム挿入電圧を有し、リチウムめっきのリスクなしで急速再充電を可能にする。さらに、本発明によって使用されるこれらのアノード材料は、充電および放電状態の最中に著しい体積変動を有しないため、これらは、完全固体状態セル(fully solid-state cells)において使用され得る。
【0126】
カソード材料に関しては、本発明によるバッテリを製造するための方法において、先の「発明の対象」の項で提示されているように、第1の実施形態では、多孔質カソードが、120mAh/g超の質量容量を有し、4.5V未満の電圧で動作する場合、
- 前記カソード活物質Cは、有利には、LiCoO2、LiNi1/xCo1/yMn1/zO2、ここで、x+y+z=10、Li1.2Ni0.13Mn0.54Co0.13O2、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、Li2FePO4F、LiMSO4F、ここで、M=Fe、Co、Ni、Mn、Zn、Mg、またはこれらの異なる元素の混合物によって形成される群から選択され、
- カソード層が、最初に中間基板上に堆積され、かつカソード層がその最初の基板から分離された後および集電体として機能することができる基板と接触させられる前に熱処理された、カソードプレートであり、前記プレートが、アルミニウムのシートなどの低溶融基板でめっきされ得ることを念頭に置いて、前記第1および第2の基板は、金属Cu、Al、ステンレス鋼、Mo、W、Ta、Ti、Cr、Ni、およびこれらの元素のうちの少なくとも1種によって形成される合金によって形成される群から選択され、
方法が、より詳細には、以下のように特徴付けられる:
- ステップ(i)において、ステップ(f)とステップ(g)との間で、ステップ(f)の後に得られる構造、またはステップ(h)の後に、前記バッテリは、
・少なくとも1種の非プロトン性溶媒と少なくとも1種のリチウム塩とから構成される電解質、
・少なくとも1種のイオン液体と少なくとも1種のリチウム塩とから構成される電解質、
・少なくとも1種の非プロトン性溶媒と、少なくとも1種のイオン液体と、少なくとも1種のリチウム塩との混合物、
・少なくとも1種のリチウム塩を添加することによってイオン伝導性にされたポリマー、および
・ポリマー相またはメソポーラス構造のいずれかにおいて液体電解質を添加することによってイオン伝導性にされたポリマー
によって形成される群から選択される、少なくとも4.5Vまで電気化学的に安定な電解質によって、
さらにより好ましくは、
・N-ブチル-N-メチル-ピロリジニウム4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾール(Pyr14TDI)を含み、かつLiTDIタイプのリチウム塩を含有する電解質、
・1-メチル-3-プロピルイミダゾリウム、4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾリド(PMIM-TDI)、およびリチウムの4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾリド(LiTDI)を含む電解質
によって形成される群から選択される電解質によって含浸される。
【0127】
伝導性接着剤またはゾルゲル法によって堆積された電子的に堆積された導電層の使用は、金属基板を腐食から保護することができ、この場合、言及されているよりも貴重性の低い金属、特に、アルミニウムおよび銅で作製された第1および/または第2の基板が使用され得る。
【0128】
使用されるRTILは、カチオン性基とアニオン性基との組み合わせである。カチオンは、好ましくは、以下のカチオン性化合物およびカチオン性化合物のファミリーによって形成される群から選択される:イミダゾリウム(カチオン1-ペンチル-3-メチルイミダゾリウム(cation 1-pentyl-3-methylimidazolium)など、PMIMと省略される)、アンモニウム、ピロリジニウム(pyrrolidinum)、および/またはアニオンは、好ましくは、以下のアニオン性化合物およびアニオン性化合物のファミリーによって形成される群から選択される:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)、ビス(トリフルオロスルホニル)イミド(bis(trifluorosulfonyl)imide)、トリフルオロメチルスルホネート(trifluoromethylsulfonate)、テトラフルオロボレート(tetra-fluoroborate)、ヘキサフルオロホスフェート(hexafluorophosphate)、4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾリウム(4,5-dicyano-2-(trifluoromethyl)imidazolium)(TDIと省略される)、ビス(オキサレート)ボレート(bis(oxlate)borate)(BOBと省略される)、オキサリルジフルオロボレート(oxalyldifluoroborate)(DFOBと省略される)、ビス(マンデラト)ボレート(bis(mandelato)borate)(BMBと省略される)、ビス(ペルフルオロピナコラト)ボレート(bis(perfluoropinacolato) borate)(BPFPBと省略される)。
【0129】
以下の項でより詳細に説明されているように、この方法の第2の実施形態では、ステップ(h)の後に、ステップ(i)において、前記バッテリは、
・少なくとも1種の非プロトン性溶媒と少なくとも1種のリチウム塩とから構成される電解質、
・少なくとも1種のイオン液体と少なくとも1種のリチウム塩とから構成される電解質、
・少なくとも1種の非プロトン性溶媒と、少なくとも1種のイオン液体と、少なくとも1種のリチウム塩との混合物、
・少なくとも1種のリチウム塩を添加することによってイオン伝導性にされたポリマー、および
・ポリマー相またはメソポーラス構造のいずれかにおいて液体電解質を添加することによってイオン伝導性にされたポリマー
によって形成される群から選択される電解質で、好ましくは、リチウムイオンのキャリア相によって、
さらにより好ましくは、
・N-ブチル-N-メチル-ピロリジニウム4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾール(Pyr14TDI)を含み、かつLiTDIタイプのリチウム塩を含有する電解質、
・1-メチル-3-プロピルイミダゾリウム、4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾリド(PMIM-TDI)、およびリチウムの4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾリド(LiTDI)を含む電解質
によって形成される群から選択される電解質によって含浸される。
【0130】
無機材料Eは、電子絶縁体である必要がある。Al2O3、ZrO2、SiO2などの酸化物、またはホスフェートもしくはボレートも使用され得る。この材料Eのナノ粒子は、メソポーラス電解質セパレータ層を形成する。
【0131】
6.バッテリを形成するための電解液による含浸
バッテリを形成することが意図された層のスタックの組み立ての後に、熱圧縮が続き、得られた組立品は、バッテリを形成するために電解質で含浸されなくてはならない。前記電解質は、前述の項で記載されているように、リチウムイオンキャリア相を含む必要がある。含浸は、方法の異なるステップで実施され得る。殊に液体電解質での含浸は、特にスタックされて熱圧縮されたセルに対して、すなわち、バッテリが完成した後に実施され得る。殊に液体電解質での含浸はまた、封入後に切断端から開始して実施され得る。
【0132】
リチウムイオンのキャリア相は、リチウム塩を含有する有機液体であり得る。リチウムイオンのキャリア相はまた、有機溶媒またはこれとは異なり得るリチウム塩含有有機溶媒の混合物で場合によって希釈された、リチウム塩を含有するイオン液体(もしくはいくつかのイオン液体の混合物)、またはイオン液体に溶解した混合物であり得る。リチウムイオンのキャリア相は、いくつかのイオン液体の混合物を含み得る。周囲温度で液体であるイオン液体(RTIL=室温イオン液体)が使用され得る。
【0133】
一般に、このイオン液体のカチオンは、好ましくは、以下のカチオン性化合物およびカチオン性化合物のファミリーによって形成される群から選択される:イミダゾリウム(カチオン1-ペンチル-3-メチルイミダゾリウムなど、PMIMと省略される)、アンモニウム、ピロリジニウム、および/またはこのイオン液体のアニオンは、好ましくは、以下のアニオン性化合物およびアニオン性化合物のファミリーによって形成される群から選択される:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロスルホニル)イミド、トリフルオロメチルスルホネート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾリウム(TDIと省略される)、ビス(オキサレート)ボレート(BOBと省略される)、オキサリルジフルオロボレート(DFOBと省略される)、ビス(マンデラト)ボレート(BMBと省略される)、ビス(ペルフルオロピナコラト)ボレート(BPFPBと省略される)。
【0134】
含浸電解質の組成およびそのリチウム塩濃度は、温度、出力などの観点からバッテリの意図された用途の要件に応じて調整され得る。
【0135】
したがって、例示的には、高温で動作するように設計されたバッテリの場合、リチウム塩などのLiFSIおよび/またはLiTFSIおよび/またはLiTDIを有するPyr14FSIまたはPyr14TFSIタイプのRTILベースの電解質が好ましい。例えばGBLなどの、高温に抵抗性のある溶媒は、50%未満のレベルで添加され得る。
【0136】
また、電極の表面上および/または集電体の表面上での寄生反応を低減するために、添加剤がこれらの配合物に添加され得る。
【0137】
有利には、リチウムイオンのキャリア相は、少なくとも1種のイオン液体、好ましくは、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)などの少なくとも1種の溶媒で任意選択的に希釈されたPYR14TFSIなどの周囲温度の少なくとも1種のイオン液体を含む。
【0138】
リチウムイオンのキャリア相は、例えば、非プロトン性溶媒に溶解したLiPF6もしくはLiBF4を含有し得るか、またはリチウム塩を含有するイオン液体を含有し得る。場合によって適切な溶媒に溶解した、および/または有機電解質と混合したイオン液体を使用することも可能である。例えば、EC/DMCに溶解したLiPF6は、LiTFSI:PYR14TFSIタイプ(モル比1:9)のリチウム塩を含有するイオン液体と50質量%まで混合され得る。例えば、混合物LiTFSI:PYR13FSI:PYR14TFSI(モル比2:9:9)などの低温で動作するイオン液体の混合物を作製することも可能である。
【0139】
ECは、エチレンカーボネート(ethylene carbonate)(CAS番号:96-49-1)の一般的な略語である。DMCは、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate)(CAS番号:616-38-6)の一般的な略語である。LITFSIは、リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド(bis-trifluoromethanesulfonimide)(CAS番号:90076-65-6)の一般的な略語である。PYR13FSIは、N-プロピル-N-メチルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(N-Propyl-N-Methylpyrrolidinium bis(fluorosulfonyl) imide)の一般的な略語である。PYR14TFSIは、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(1-butyl-1-methylpyrrolidinium bis(trifluoro-methanesulfonyl)imide)の一般的な略語である。
【0140】
リチウムイオンのキャリア相は、イオン液体を含む電解質溶液であり得る。イオン液体は、アニオンと連結したカチオンによって形成され、このアニオンおよびこのカチオンは、イオン液体がバッテリの動作温度範囲で液体状態であるように選択される。イオン液体は、高い熱安定性を有し、低い可燃性を有し、不揮発性であり、低い毒性を有し、かつ電極材料として使用され得る材料であるセラミックスの良好な濡れ性を有するという利点を有する。驚くべきことに、リチウムイオンのキャリア相に含有されるイオン液体の質量百分率は、50%超、好ましくは60%超、さらにより好ましくは70%超であり得、これは、従来技術のリチウムイオンバッテリとは対照的であり、従来技術では、バッテリが、放電時の高い容量および電圧、ならびに良好なサイクル安定性を維持するように、電解質中のイオン液体の質量百分率が50質量%未満でなくてはならない。米国特許出願公開第2010/209783号の出願に示されているように、50質量%超では、従来技術のバッテリの容量は劣化する。これは、従来技術のバッテリの電解質内にポリマーバインダーが存在することによって説明されることもあり、これらのバインダーは、イオン液体によって弱く濡れているため、リチウムイオンのキャリア相内で不十分なイオン伝導を誘発し、バッテリ容量の劣化を引き起こす。
【0141】
PYR14TFSIおよびLiTFSIが使用されてもよく、これらの略語は、以下に記載されている。
【0142】
有利には、イオン液体は、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI-)アニオンおよび/またはビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI-)と連結した、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(EMI+またはEMIM+とも呼ばれる)、および/またはn-プロピル-n-メチルピロリジニウム(PYR13
+とも呼ばれる)、および/またはn-ブチル-n-メチルピロリジニウム(PYR14
+とも呼ばれる)のタイプのカチオンであり得る。有利な実施形態では、液体電解質は、好ましくはPyr14TFSIである少なくとも50質量%のイオン液体を含有する。
【0143】
これらのイオン液体で使用され得る他のカチオンは、PMIM+を含む。これらのイオン液体で使用され得る他のアニオンは、BF4
-、PF6
-、BOB-、DFOB-、BMB-、BPFPB-を含む。電解質を形成するためには、LiTFSIなどのリチウム塩が、溶媒として使用されるイオン液体またはγ-ブチロラクトンなどの溶媒に溶解され得る。γ-ブチロラクトンは、イオン液体の結晶化を防止し、殊に低温で、イオン液体のより広い動作温度範囲を誘発する。有利には、多孔質カソードがリチウム化ホスフェート(lithiated phosphate)を含む場合、リチウムイオンのキャリア相は、LiBH4、またはLiBH4と、LiCl、LiIおよびLiBrから選択される1種以上の化合物との混合物などの固体電解質を含む。LiBH4は、リチウムの良好な伝導体であり、低い融点を有するため、特に浸漬による多孔質電極への含浸を容易にする。その極度の還元特性に基づいて、LiBH4は、電解質としては広く使用されていない。多孔質リン酸リチウム電極の表面上での保護膜の使用は、LiBH4によるカソード材料の還元を防止し、その劣化を避ける。
【0144】
先に説明されているように、多くのイオン液体、特に、Pyr14TFSI-LiTFSIおよびEMIM-TFSIが使用され得る。EMIM-TFSIは、Pyr14-TFSIよりも流動性がある。これら2種のイオン液体の主な違いは、これらが使用され得る安定性の潜在的な範囲である。EMIM-TFSIは、1V~4.7Vまでで安定しており、その一方で、Pyr14-TFSIは、0V~5.0Vまでで安定しており、この理由から、Pyr14-TFSIが、そのより低い流動性にも関わらず好まれる。
【0145】
しかしながら、TFSIタイプのリチウム塩は、基板を腐食する傾向がある。この理由から、カソードが4.3V超で動作される場合、イオン液体および関連する塩のなかでも、LiTFSIの代わりに、またはこれに加えて、LiTDIが、イオン液体および/またはリチウム塩のアニオン性基として好ましい。LiTDIタイプの塩をLiTFSIタイプの塩に単純に添加することで、金属基板と比較してイオン液体の腐食効果がすでに低下することが観察される。LiTFSIは、殊に高温での動作の最中に基板を腐食する傾向がある硫黄を含有する。LiTDIは、基板を腐食しない。TFSIは、保護層でコーティングされた基板とともに、またはTFSIの腐食作用に対してより抵抗性のある材料で作製された基板とともに使用され得、そのような基板は、Mo、W、Cr、Ti、Taである。
【0146】
一般に、リチウムイオンのキャリア相が、10質量%~40質量%の間の溶媒、好ましくは30質量%~40質量%の間の溶媒、さらにより好ましくは30質量%~40質量%の間のγ-ブチロラクトン、グライム(glyme)、またはPCを含むことが有利である。
【0147】
有利な実施形態では、リチウムイオンのキャリア相は、50質量%超の少なくとも1種のイオン液体および50%未満の溶媒を含み、それによって、そのようなリチウムイオンキャリア相を含むバッテリの故障時の安全性および発火のリスクが制限される。
【0148】
有利には、リチウムイオンのキャリア相は、
- LiTFSI、LiFSI、LiBOB、LiDFOB、LiBMB、LiBPFPB、およびLiTDIを含む群から選択されるリチウム塩またはリチウム塩の混合物;リチウム塩の濃度は、好ましくは、0.5mol/L~4mol/Lの間であり、出願人は、十分に高い濃度のリチウム塩を有する電解質の使用が非常に急速な充電の性能にとって都合が良いことを見出した。
- 40%未満、好ましくは20%以下の質量含有率を有する溶媒または溶媒混合物;この溶媒は、例えば、γ-ブチロラクトン、PC、グライムであり得る。
- 任意選択的に、界面を安定化し、寄生反応を制限するためのVCなどの添加剤
を含む。
【0149】
別の実施形態では、リチウムイオンキャリア相は、
- 30~40質量%の溶媒、好ましくは30~40質量%のγ-ブチロラクトン、またはPCもしくはグライム、および
- 50質量%超の少なくとも1種のイオン液体、好ましくは50質量%超のPYR14TFSI
を含む。
【0150】
一例として、リチウムイオンキャリア相は、PYR14TFSIと、LiTFSIと、γ-ブチロラクトンとを含む電解質溶液であり得、好ましくは、約90質量%のPYR14TFSIと、0.7MのLiTFSIと、2%のLiTDIと、10質量%のγ-ブチロラクトンとを含む電解質溶液であり得る。
【0151】
7.有利な実施形態の記載
本発明によるバッテリのいくつかの実施形態は、以下に記載されている。
【0152】
一般に、本発明の文脈内では、電極は、メソポーラスであり得る。これらは、厚くてもよく(典型的には、約10マイクロメートル~100マイクロメートルの間)、より詳細には、それらの厚さは、10μm超であり得る。これらは、ナノ粒子のアグロメレートを堆積することによって調製され得る。これらのアグロメレートは、多分散サイズおよび/または2つの異なるサイズ(二峰性粒度分布)を有し得る。完成した状態では、これらの電極は、バインダーを全く含有していない(これらは、ナノ粒子懸濁液またはペーストの堆積時にバインダーを含有し得るが、これらのバインダーは、焼成加熱処理の最中に排除されるであろう)。これらは、部分的に焼結されており、すなわち、熱機械的圧密化処理後の一次ナノ粒子は、連続的な三次元メソポーラスネットワークを形成するために、「ネッキング」現象によって一緒に溶接されている(当業者には公知であり、例えば、R.M.Germanによる‘‘Particulate Composites’’,Springer International Publishing 2016,p.26/27を参照)。
【0153】
本発明による多孔質アノードは、有利には、50%未満、好ましくは20%~45%、好ましくは25%~40%未満のメソ多孔率を有し、約35%の値が適切である。有利には、電子伝導体(例えば、炭素)のナノ層がメソポーラス表面上に堆積されている。
【0154】
本発明によると、これらのメソポーラス電極は、それらの表面全体にわたって延在するナノメートル厚の層(この厚さは、典型的には、約0.8nm~10nmの間である)でコーティングされている。ここで、表面は、層の幾何学的表面ではなく、そのメソポーラス表面全体であり、コーティングは、細孔の内側にも適用されている。前記コーティングは、伝導性炭素コーティングであり得る。
【0155】
この電極は、伝導性層でコーティングされた後に、リチウムイオン伝導性相で含浸される。この相は、液体または固体であり得る。これが固体である場合、これは、有機物または鉱物であり得る。
【0156】
この電極は、高温加熱処理に抵抗性のある基板上に結合および焼結され、前記基板は、例えば、W、Mo、Cr、Ti、およびこれらの元素のうちの少なくとも1種を含有するすべての合金で作製され得る。ステンレス鋼が適切であり得る。自立型電極プレートが調製される場合、電極の加熱処理温度での酸化に対する基板または集電体の抵抗性のこの制限は、加熱処理時に電極がその集電体とまだ接触していないため、もはや存在しないことに留意されたい。
【0157】
アノードは、より詳細には、TiNb2O7アノード(「TNO」と省略される)であり得るが、以下の記載は、アノードの他の活物質にも関する。
【0158】
より詳細には、約35%のメソポーラス体積を有するTiNb2O7アノードが使用され得る。このアノードは、約230mAh/gの容量に合わせて寸法決めされている。
【0159】
これらの電極を用いて、特に、先に記載されているような約35%のメソポーラス体積を有するTiNb2O7アノードを用いて、リチウムイオンバッテリを作製することが可能である。当業者が本発明を実装することができるように、5つの実施形態を記載するが、これらは、本発明の範囲を決して限定するものではない。
【0160】
第1の実施形態では、高電圧で動作するカソードを選択することによって、バッテリのエネルギーを増加させる試みがなされた。
【0161】
カソード集電体は、Mo、W、Ta、Ti、Al、ステンレス鋼、Cr、またはこれらの元素のうちの少なくとも1種を含有する任意の合金のシートであり、その厚さは、典型的には、5μm~20μmである。カソードは、約35%のメソポーラス体積を有するLiCoPO4で作製されている。カソードの厚さは、約90μmであり、電子伝導体のナノ層(この場合は、炭素)がメソポーラス表面に堆積されている。このカソードは、約145mAh/gの容量に合わせて寸法決めされている。
【0162】
セパレータは、約50%のメソポーラス体積を有する厚さ約6μmのLi3PO4の層である。
【0163】
アノード集電体は、Mo、W、Ta、Ti、Cu、Cr、Ni、Al、ステンレス鋼、またはこれらの元素のうちの少なくとも1種を含有する任意の合金のシートであり、その厚さは、典型的には、5μm~20μmである。アノードが最初に中間基板(押し出されたもの)上に堆積される本発明の第2の実施形態では、例えばアルミニウム電極を使用することも可能である。約35%のメソポーラス体積を有するTiNb2O7アノードは、約50μmの厚さを有していた。
【0164】
いずれの場合も、より詳細には、本発明の第2の実施形態(アノードがプレートの形態で作製されている)では、電極と接触するように設計されたコレクタの表面は、伝導性コーティングでコーティングされていてもよく、これは、本発明の第2の実施形態の場合、結合を形成する役割も果たすであろう。
【0165】
セルは、Pyr14TFSI(1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド;CAS番号223437-11-4)と20%のGBLおよびLiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド;CAS番号90076-65-6;0.7Mの濃度)との混合物によって形成されるRTILタイプのイオン液体(室温イオン液体)で含浸されていた。
【0166】
以下の混合物も使用され得る:LiTFSI0.7M+Pyr14TFSI+10%のGBL+2%のLiTDI。
【0167】
そのようなバッテリは、約200mAh/cm3の体積容量密度および約610mWh/cm3の体積エネルギー密度を達成する。これは、約50℃の連続出力を提供することができる。これは、典型的には約-40℃~約+60℃の間の非常に幅広い温度範囲で機能する。熱暴走のリスクはない。
【0168】
このバッテリの欠点のうちの1つは、その高いコバルト含有率に基づいて、カソード材料のコストが高いことである。
【0169】
第2の実施形態では、LiCoPO4カソード材料は、コバルトを含有しない別の高電圧カソード材料、すなわち、スピネル材料LiMn1.5Ni0.5O4に置き換えられた。これはマンガンを含有しており、この理由から、高温におけるこのセルの抵抗は、第1の実施形態よりもわずかに制限されている。
【0170】
LiMn1.5Ni0.5O4カソードは、炭素ナノ層の堆積を伴って、約90μmの厚さ、約35%のメソポーラス体積を有していた;このカソードは、約120mAh/gの容量にサイズ調整されている。
【0171】
セパレータ、アノード、カソード、およびアノード集電体、ならびにセルの含浸に使用されるイオン液体は、第1の実施形態と同じであった。
【0172】
このバッテリは、210mAh/cm3の体積容量密度および625mWh/cm3の体積エネルギー密度を達成する。これは、50℃超の直流を送ることができる。これは、典型的には約-40℃~約+60℃の間の非常に幅広い温度範囲で動作する。熱暴走のリスクはない。これらのバッテリは、急速充電に適合しており、これらは、リチウム析出物を形成するリスクなく5分未満で再充電され得る。
【0173】
第3の実施形態では、低電圧で動作するカソードが使用された。
【0174】
カソードは、炭素ナノ層の堆積を伴って、約90μmの厚さおよび約35%のメソポーラス体積を有するLi1.2Ni0.13Mn0.54Co0.13O2で作製された;このカソードは、約200mAh/gの容量にサイズ調整されている。
【0175】
セパレータは、約50%のメソポーラス体積を有する厚さ約6μmのLi3PO4の層である。
【0176】
アノード集電体は、Cu、Ni、W、Ta、Al、Cr、ステンレス鋼、Ti、またはMo、およびこれらの元素のうちの少なくとも1種を含む任意の合金のシートであり、その厚さは、典型的には、5μm~20μmである。約35%のメソポーラス体積を有するTiNb2O7アノードは、約80μmの厚さを有しており、炭素ナノ層は、メソポーラス表面上に堆積されていた。
【0177】
セルは、LiTDIとLiTFSIとの混合物からなり、かつより正確には0.7MのLiTFSIと2%のLiTDIとを有するPyr14TFSIで形成されていた、RTILタイプのイオン液体で含浸されていた。
【0178】
このバッテリは、285mAh/cm3の体積容量密度および720mWh/cm3の体積エネルギー密度を達成する。これは、50℃よりも高い直流を送ることができる。これは、典型的には約-40℃~約+70℃の間の非常に広い温度範囲にわたって動作することができる。熱暴走のリスクはない。これらのバッテリは、急速充電に適合しており、これらは、リチウム析出物を形成するリスクなく5分未満で再充電され得る。
【0179】
このバッテリは、カソード表面容量がアノード表面容量よりも低い場合、拡張温度範囲(約+85℃まで)で動作することができることに留意されたい。
【0180】
第4の実施形態は、低電圧で動作するカソードを有する高容量マイクロバッテリに関する。
【0181】
カソード集電体は、Mo、W、Ta、Ti、Al、ステンレス鋼、Cr、またはこれらの元素のうちの少なくとも1種を含有する任意の合金のシートであり、その厚さは、典型的には、5μm~20μmである。電極が電極プレートとして作製されている場合、焼結後に、カソードが作製されるナノ粒子がすでに完全に結晶化されていれば、またはコレクタが電極に貼られていれば、アルミニウムのシートを使用することが可能である。
【0182】
カソードは、炭素ナノ層の堆積を伴って、約16μmの厚さ、約35%のメソポーラス体積を有するLi1.2Ni0.13Mn0.54Co0.13O2で作製されており、このカソードは、約200mAh/gの容量に合わせて寸法決めされている。
【0183】
セパレータは、約50%のメソポーラス体積を有する厚さ約6μmのLi3PO4層である。
【0184】
アノード集電体は、Cu、Ni、Al、またはMoのシートであり、その厚さは、典型的には、5μm~20μmである。約35%のメソポーラス体積を有するTiNb2O7アノードは、約14μmの厚さを有しており、炭素ナノ層は、メソポーラス表面上に堆積されていた。
【0185】
セルは、0.7MのLiTFSIと2%のLiTDIとを有するPyr14TFSIからなっていたRTILタイプのイオン液体で含浸されていた。
【0186】
このマイクロバッテリは、215mAh/cm3の体積容量密度および535mWh/cm3の体積エネルギー密度を達成する。これは、50℃よりも高い直流を提供することができる。これは、典型的には約-40℃~約+70℃の間の非常に広い温度範囲にわたって動作することができる。熱暴走のリスクはない。これらのバッテリは、急速再充電にも適合している。先に示されているように、カソード表面容量がアノード表面容量よりも低くなるようにバッテリがサイズ調整される場合、動作温度範囲は、約+85℃まで拡張され得る。
【0187】
これらのバッテリセルおよびバッテリは、低温でも優れた性能を有する。これらは、液体電解質の結晶化温度未満の温度で動作することができる。含浸がポリマーを用いて実施されると、ポリマーの伝導特性は、広い温度範囲にわたって増強される。
【0188】
本発明による有利なバッテリは、Mo、Ti、W、Ta、Cr、Al、先に述べられている元素をベースとする合金、ステンレス鋼によって形成される群から選択される材料から作製されたカソード集電体を有し、これはまた、NMC、好ましくはNMC433で作製され得る30~40%の細孔体積を有するカソードも有し、炭素の伝導性層は、細孔内に堆積されている。そのセパレータは、好ましくは6μm~8μmの間の厚さを有するLi3PO4のメソポーラス層である。そのアノードは、好ましくはハロゲン化物および/またはセリウムおよび/またはゲルマニウムおよび/またはランタンおよび/または銅でドープされたTiNb2O7の層であり、前記層は、リチウム塩を含有する液体電解質によって含浸されている。そのアノード集電体は、Mo、Cu、Ni、先に述べられているベース元素をベースとする合金、ステンレス鋼によって形成される群から選択される。アルミニウムを使用することも可能である。他のセパレータ材料が使用されてもよい。
【0189】
本発明によるバッテリは、非常に様々な出力定格で作製され得る。特に、本発明による方法によって、1mAh超の容量を有するリチウムイオンバッテリを生成することが可能である。これらは、殊に電動車両における使用のための高出力バッテリの形態で特に着目されている。中間出力定格で、これらは、携帯電話、ラップトップ、およびポータブル読書デバイスなどの様々な移動型電子デバイスで使用され得る。1mAh以下の容量を有するバッテリは、ここでは「マイクロバッテリ」と呼ばれる。例えば、先に記載されている第4の実施形態のセルは、電極の厚さを6倍にすることによって生成された。したがって、50μm~80μmの範囲のアノード厚さで、本発明者等は、非常に広い温度範囲で動作し、かつ15分未満で再充電することが可能な550Wh/l超のバッテリを得る。このバッテリは、急速再充電を伴うハイブリッド車両および電動車両のニーズに特に良好に適している。
【実施例】
【0190】
当業者が本発明を再現することができるように、先の「発明を実施するための形態」の項で記載された非常に正確な実施形態に加えて、さらなる例がここに示される。これらの実施例は、本発明を限定するものではない。
【0191】
実施例1:本発明によるアノードを作製するために使用され得るTNOナノ粉末の合成
Ti0.95Ge0.05Nb2O7ナノ粒子のアグロメレートの配合物は、以下のアルコキシドから合成された:
(i)Ge(OC2H5)4、モル質量252.88g/mol、密度1.14g/cm3;
(ii)Ti(OC2H5)4、モル質量228.11g/mol、密度1.09g/cm3;
(iii)Nb(OC2H5)4、モル質量318.21g/mol、密度1.268g/cm3。
【0192】
最初のステップでは、クエン酸は、80℃に加熱することによってエチレングリコール(ethylene glycol)に溶解させられた。並行して、ターゲット成分の化学量論を考慮して、エトキシドの混合物がグローブボックス内で調製された。
【0193】
第2のステップでは、アルコキシドの混合物が、周囲温度で強い撹拌下でクエン酸/エチレングリコール溶液中に導入された。反応混合物は、80℃で12時間撹拌され、それによって、溶液のゲル化が生じた。
【0194】
次いで、ゲルは、抽出されてアルミナるつぼ内に置かれる。るつぼは、250℃の加熱チャンバ内に12時間置かれる。この加熱ステップは、過剰なエチレングリコールの除去を可能にし、エステル化反応を活性化するであろう。次いで、生成物は、大部分の有機物質を除去するために、600℃で1時間焼成される。
【0195】
次いで、第2の加熱処理が800℃で行われる。次いで、空間群I2/mJCPDS:39-1407で結晶化されたナノ粒子のアグロメレート(40nmの基本サイズを有する)が得られる。これらは、純粋な単斜晶系結晶である。
【0196】
図1は、この例によって調製されたアノードの電気化学的特徴を示す。
【0197】
実施例2:本発明によるメソポーラスアノードプレートの製造
アグロメレートTNOナノ粒子からなるスリップが調製された。これらのアグロメレートは、サイズが約100nmであり、直径15nmの一次粒子からなっていた。ナノ粒子のこれらのアグロメレートは、以下の組成(質量パーセント)を有するスリップに統合された:20%のTNOナノ粒子アグロメレート、溶媒として機能する36%の2-ブタノン(2-butanone)および24%のエタノール、分散剤として機能する3%のリン酸エステル(phosphoric ester)、可塑剤として機能する8.5%のジブチルフタレート(dibutylphtalate)、バインダーとして機能する8.5%のメタクリレート(methacrylate)樹脂。
【0198】
このスリップは、ストリップにキャスティングされ、次いで、プレートに切断され、乾燥させられた。次いで、これらのプレートは、電極としての役割を果たすメソポーラスセラミックプレートを得るために、空気中において600℃で1時間アニールされた。次いで、このプレートは、電極のメソポーラス表面全体に伝導性炭素のナノコーティングを実施するために、グルコース溶液によって含浸され、N2下において400℃でアニールされた。
【0199】
これらのプレートは、高出力バッテリの製造に非常に有用である。
【国際調査報告】