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特表2024-503285新規な抗菌性組成物及びそれから作製された物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】新規な抗菌性組成物及びそれから作製された物品
(51)【国際特許分類】
   A61L 24/00 20060101AFI20240118BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240118BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 31/444 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20240118BHJP
   A61L 24/04 20060101ALI20240118BHJP
   A61L 24/06 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
A61L24/00 210
A61P31/04
A61K47/34
A61K47/32
A61K31/444
A61K31/155
A61L24/04 100
A61L24/04 200
A61L24/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539944
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-06-29
(86)【国際出願番号】 IB2021061784
(87)【国際公開番号】W WO2022144664
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】63/131,876
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】メノン,ビノド ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ホフデ,ボニー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ディジオ,ジェイムズ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】カールズ,コリー ダブリュ.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA71
4C076BB31
4C076CC32
4C076EE09
4C076EE23
4C076EE24
4C076FF39
4C076FF67
4C081AA06
4C081AA12
4C081AC04
4C081BB06
4C081CA08
4C081CA16
4C081CA18
4C081CA19
4C081CE01
4C081DA02
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086MA03
4C086MA05
4C086NA05
4C086ZB35
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA31
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA52
4C206MA83
4C206NA05
4C206ZB35
(57)【要約】
抗菌性組成物及び物品、並びに抗菌性組成物を調製するための方法が開示される。バイオフィルムの形成又は成長を防止し、バイオフィルムを破壊し、微生物数を減少させ、感染症を治療するための、抗菌性組成物及び物品を使用する方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせと、
3個を超える連続した原子によって分離された少なくとも2個の水素結合基を有する疎水性可塑剤と、を含み、
前記疎水性可塑剤は、HLB法を使用して決定される10以下の親水性親油性バランスによって特徴付けられ、
前記疎水性可塑剤は、20~23℃の温度で100g当たり少なくとも2gの量のグルコン酸クロルヘキシジンを可溶化することができる、組成物。
【請求項2】
グルコン酸クロルヘキシジン及び前記疎水性可塑剤から本質的になる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
グルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせが、前記組成物の重量に対して少なくとも約0.2重量%の量で存在する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
グルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせが、前記組成物の重量に対して約5重量%以下の量で存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
グルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせが、前記疎水性可塑剤の重量に対して少なくとも約0.1重量%の量で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記グルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせが、前記疎水性可塑剤の重量に対して約20重量%以下の量で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記疎水性可塑剤が、前記組成物の重量に対して少なくとも約10重量%の量で存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記疎水性可塑剤が約0.5kg/mol~約6kg/molの平均分子量によって特徴付けられる、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記疎水性可塑剤が、前記組成物の重量に対して約50重量%以下の量で存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも1つの水素結合基が水素結合供与体である、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記水素結合基の各々が水素結合供与体である、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記水素結合基の少なくとも1つが、-OR、-O-、-C(O)-、-C(O)-O-、-SR、-N(R)(R)、-C(O)-N(R)-、-O-C(O)-N(R)-、及び-N(R)-C(O)-N(R)-
[式中、各Rは、独立して、-H及びC1~6アルキルから選択される]
から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記疎水性可塑剤が少なくとも2個のヒドロキシル基を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記疎水性可塑剤が少なくとも約20の水酸基価によって特徴付けられる、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記疎水性可塑剤が、ポリエステルポリオール、ポリアルカジエンポリオール、及びシリコーンポリオールから選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記疎水性可塑剤が、式(I):
【化1】
[式中、
各Aは、独立して、C~C22アルキレン、C~C22アルケニレン、-A’-(シクロヘキシレニル)-A’-、-A’-(シクロヘキセニル)-A’-、及びフェニレンから選択され、
前記C~C22アルキレン、前記C~C22アルケニレン、前記シクロヘキシレニル又は前記シクロヘキセニルは、C~C20アルキル、及びC~C20アルケニルのうちの1つ以上で置換されていてもよく、
各A’は、独立して、C~C16アルキレン及びC~C16アルケニレンから選択され、
各Bは、独立して、-C(O)O-及び-OC(O)-から選択され、
nは、4~10の整数であり、
少なくとも1つのAは、C~C20アルキル及びC~C16アルケニレンのうちの1つ以上で置換されていてもよいC14~C22アルキレン、C~C20アルキル及びC~C16アルケニレンのうちの1つ以上で置換されていてもよいC14~C22アルケニレン、-A’-(シクロヘキシレニル)-A’-、及び-A’-(シクロヘキセニル)-A’-から選択される]
によって表される化合物を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記疎水性可塑剤が、C16~C44アルキル酸及びC16~C44アルキル二酸のうちの1つ以上から誘導される、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記疎水性可塑剤が、C16~C44アルキル酸、C16~C44アルキル二酸、C~C12アルキル酸、C~C12アルケニル酸、C~C12アルキル二酸、C~C12アルケニル二酸、C~C12アルキル三酸、C~C10アリール酸、C~C10アリール二酸、C~C10アリール三酸、C16~C44アルカノール、C16~C44アルキルジオール、C~C10アルカノール、C~C10アルキルジオール、C~C10アルキルトリオール、ポリアルキレングリコール、又はそれらの組み合わせから誘導される、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記疎水性可塑剤が、C~C12アルキル酸、C~C12アルキル二酸、及びC~C12アルキル三酸のうちの1つ以上から誘導される、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記疎水性可塑剤が、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、メタントリカルボン酸、クエン酸、アコニット酸、イソクエン酸、トリカルバリル酸、1,3,5-トリメチルシクロヘキサン-1,3,5-トリカルボン酸、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセロール、又はそれらの組み合わせから誘導される、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記疎水性可塑剤が、C~C10アリール酸、C~C10アリール二酸、及びC~C10アリール三酸のうちの1つ以上から誘導される、請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記疎水性可塑剤が、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、又はそれらの組み合わせから誘導される、請求項1~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記疎水性可塑剤が、C16~C44アルカノール及びC16~C44アルキルジオールのうちの1つ以上から誘導される、請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記疎水性可塑剤が、C~C10アルカノール、C~C10アルキルジオール、及びC~C10アルキルトリオールのうちの1つ以上から誘導される、請求項1~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記疎水性可塑剤が、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセロール、又はそれらの組み合わせから誘導される、請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記疎水性可塑剤が、ダイマー酸、アジピン酸、及び1,6-ヘキサンジオールのうちの1つ以上を含むポリエステルポリオールである、請求項1~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記疎水性可塑剤が、ダイマー酸及びエチレングリコールのうちの1つ以上を含むポリエステルポリオールである、請求項1~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記疎水性可塑剤が、ダイマー酸、アジピン酸、及びエチレングリコールのうちの1つ以上を含むポリエステルポリオールである、請求項1~27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記疎水性可塑剤が、ダイマー酸及びダイマージオールのうちの1つ以上を含むポリエステルポリオールである、請求項1~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記疎水性可塑剤が、ダイマージオール及びイソフタル酸のうちの1つ以上を含むポリエステルポリオールである、請求項1~29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
前記疎水性可塑剤が、ダイマージオール及びテレフタル酸のうちの1つ以上を含むポリエステルポリオールである、請求項1~30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
前記疎水性可塑剤が5未満のHLBによって特徴付けられる、請求項1~31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
前記疎水性可塑剤が2未満のHLBによって特徴付けられる、請求項1~32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
前記組成物の重量に対して約1重量%未満の量で存在する水を更に含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
グルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせの重量に対して重量で1:1未満の量で存在する水を更に含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
グルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせに対して重量で0.1:1未満の量で親水性ビヒクルを更に含み、前記親水性ビヒクルが10を超える親水性親油性バランスによって特徴付けられる、請求項1~35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
親水性ビヒクルを含有せず、前記親水性ビヒクルが10を超える親水性親油性バランスによって特徴付けられる、請求項1~36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
8~12アルキル1,2-ジオール及びC8~12アルキル1,3-ジオールを含有しない、請求項1~37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
式:
【化2】
[式中、
各Rは、独立して、-H又はC1~18アルキルであり、
は、C4~22アルキルである]
の化合物を含有しない、請求項1~38のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
式:
【化3】
[式中、
各Rは、独立して、-H又はC1~18アルキルであり、
各Rは、独立して、C4~22アルキルである]
の化合物を含有しない、請求項1~39のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
請求項1~40のいずれか一項に記載の組成物と、
感圧接着剤と、を含む、抗菌性接着剤。
【請求項42】
前記組成物と前記感圧接着剤とから本質的になる、請求項41に記載の抗菌性接着剤。
【請求項43】
前記感圧接着剤が-90℃~約10℃のガラス転移温度によって特徴付けられる、請求項41又は42に記載の抗菌性接着剤。
【請求項44】
前記感圧接着剤がアクリルポリマー又はアクリルコポリマーから選択される、請求項41~43のいずれか一項に記載の抗菌性接着剤。
【請求項45】
医療用物品であって、
第1の表面及び前記第1の表面の反対側の第2の表面を有する基材と、
前記第1の表面上に配置された請求項41~44のいずれか一項に記載の抗菌性接着剤と、を含む、医療用物品。
【請求項46】
前記基材がポリマーフィルムである、請求項45に記載の医療用物品。
【請求項47】
前記抗菌性接着剤に接触している剥離ライナーを更に含む、請求項45又は46に記載の医療用物品。
【請求項48】
前記医療用物品が外科用ドレープである、請求項45~47のいずれか一項に記載の医療用物品。
【請求項49】
請求項1~40のいずれか一項に記載の組成物を調製するための方法であって、前記方法が、
グルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせと、前記疎水性可塑剤とを準備することと、
前記グルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせを、前記疎水性可塑剤に接触させて、前記組成物を形成することと、を含む、方法。
【請求項50】
請求項41~44のいずれか一項に記載の抗菌性接着剤を調製するための方法であって、前記方法が、
請求項1~40のいずれか一項に記載の組成物を準備することと、
前記感圧接着剤を準備することと、
前記組成物と前記感圧接着剤とを接触させて、前記抗菌性接着剤を形成することと、を含む、方法。
【請求項51】
請求項45~48のいずれか一項に記載の医療用物品を調製するための方法であって、前記方法が、
基材及び請求項41~44のいずれか一項に記載の抗菌性接着剤を準備することと、
前記抗菌性接着剤を前記基材に接触させて、前記医療用物品を準備することと、を含む、方法。
【請求項52】
表面を消毒する方法であって、前記方法が、
請求項45~48のいずれか一項に記載の医療用物品を前記表面に接触させることと、
前記医療用物品を前記表面に一定期間接触させることと、を含む、方法。
【請求項53】
前記医療用物品を前記表面に接触させる前に、前記表面に水を適用することを更に含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
グルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせが、1時間当たり15mcg/sq.を超える平均速度で前記表面に送達される、請求項52又は53に記載の方法。
【請求項55】
前記方法が外科的切開のために前記表面を準備する、請求項52~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記方法が針貫通のために前記表面を準備した、請求項52~55のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
感染制御実践においてなされた進歩にもかかわらず、手術部位感染症(SSI)は、依然として、罹患率、入院長期化、及び死亡の実質的な原因である。実際、SSIは死亡率の3%と関連しており、SSI関連死の75%はSSIに直接起因する。外科医は、現在、病原微生物との接触を軽減するために、ヨウ素含浸接着剤を有する外科用ドレープに頼っている。ポビドンヨードは広く有効な消毒剤であるが、その使用には欠点がある。例えば、ポビドンヨードは、一部の個体において皮膚刺激を引き起こす可能性があり、大きな創傷での使用は、腎臓の問題、高血中ナトリウム、及び代謝性アシドーシスをもたらす可能性がある。更に、ポビドンヨードの使用は、妊娠32週未満の者、リチウムを処方されている者、又は甲状腺に問題がある者には推奨されない。グルコン酸クロルヘキシジン及びオクテンジン塩酸塩は、前述のフォールバックに関連しない実行可能な代替物である。
【0002】
防腐剤を含浸させた接着剤(例えば、グルコン酸クロルヘキシジン及びオクテニジン塩酸塩を含浸させた接着剤)を開発することは、手術部位の感染率を低減するのに役立ち、その一方で、ポビドンヨードに関連する副作用を潜在的に回避する。必要とされているのは、グルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせを担持及び送達することができる感圧接着剤である。
【発明の概要】
【0003】
一実施形態では、組成物が記載される。組成物は、グルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせと、グルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせを可溶化することができる疎水性可塑剤とを、約20~23℃の温度で疎水性可塑剤100g当たり少なくとも約2gのグルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせの量で含む。疎水性可塑剤は、3個を超える連続した原子によって分離された少なくとも2個の水素結合基を有し、HLB法を使用して決定される10以下のHLBによって特徴付けられる。
【0004】
一実施形態では、抗菌性接着剤が記載される。抗菌性接着剤は、本明細書に記載される任意の組成物及び感圧接着剤を含む。
【0005】
一実施形態では、医療用物品が記載される。医療用物品は、基材と、基材上に配置された本明細書に記載の任意の抗菌性接着剤とを含む。
【0006】
一実施形態では、本明細書に記載の組成物を調製するための方法が記載される。この方法は、グルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせと疎水性可塑剤とを準備することと、グルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせを疎水性可塑剤に接触させて組成物を形成することと、を含む。
【0007】
一実施形態では、本明細書に記載される抗菌性接着剤を調製するための方法が記載される。この方法は、本明細書に記載の組成物及び感圧接着剤を準備することと、組成物と感圧接着剤とを接触させて抗菌性接着剤を形成することと、を含む。
【0008】
一実施形態では、本明細書に記載の医療用物品を調製するための方法が記載される。本方法は、本明細書に記載の抗菌性接着剤及び基材を準備することと、抗菌性接着剤を基材上にコーティングすることと、を含む。
【0009】
一実施形態では、表面を消毒するための方法が記載される。本方法は、本明細書に記載の医療用物品を準備することと、医療用物品を表面に一定期間接触させることと、を含む。
【0010】
一実施形態では、手術用に表面を調製するための方法が記載される。本方法は、本明細書に記載の医療用物品を準備することと、医療用物品を表面に接触させることと、を含んでもよい。
【0011】
一実施形態では、キットが記載される。キットは、本明細書に記載の医療用物品と、本明細書に記載の方法に従って表面を消毒するようにユーザーに指示する一式の説明書と、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0012】
防腐剤を含浸させた接着剤を開発する取り組みは、重要な課題に直面している。グルコン酸クロルヘキシジン(「CHG」)及びオクテニジン塩酸塩(「オクテニジン」)は、それぞれ高極性化合物であり、疎水性接着剤組成物から沈殿する傾向がある。接着剤中のCHG溶解性又はオクテニジン溶解性の欠如は、CHG又はオクテニジンが表面への適切な移動に利用できないように、CHG又はオクテニジンを効果的に固定化する。更に、CHG及びCHG可溶化ビヒクルのような添加剤をブレンドすることは、接着剤の強度を損なうことが多く、早期の接着剤破損につながる。外科用ドレープに関して、この早期の接着剤破損は、「ドレープドリフト」と呼ばれる。外科用ドレープが移動又は「ドリフト」すると、患者は、微生物へのより大きな曝露を経験し、感染に対してより脆弱になる。
【0013】
本開示は、感圧接着剤(PSA)配合物内に均質に含有させるためのグルコン酸クロルヘキシジンベース及びオクテニジン塩酸塩ベースの組成物、並びにそれから作製される医療用物品を対象とする。当初、親水性(極性)ビヒクルが、グルコン酸クロルヘキシジン又はオクテニジン塩酸塩を接着剤と適合性にするために必要であると考えられていた。後に、近接の(vicinal)(すなわち、2個の原子によって隔てられている;隣接している)、又はそうでなければ接近した(proximate)(すなわち、3個の原子によって隔てられている)水素結合基を有する疎水性(非極性)ビヒクルが、グルコン酸クロルヘキシジン及びオクテニジン塩酸塩を可溶化するのに有効であり、これが次に、疎水性CHG溶液及び疎水性オクテニジン溶液を疎水性感圧接着剤と相溶化することが見出された(国際公開第2014/035981号を参照されたい)。この研究において、驚くべきことに、CHG及びオクテニジンは、極性化合物であるにもかかわらず、3原子を超えて離れた水素結合基を有する疎水性可塑剤に容易に溶解することが見出された。加えて、驚くべきことに、近接の水素結合基を有する疎水性ビヒクルは、当該疎水性ビヒクルを含まない組成物と比較して、接着剤一体性に有害であり得ることが見出された。CHG及び/又はオクテニジン塩酸塩を外科用ドレープなどのPSA含有医療用物品に組み込むための長い間求められてきた手段を本明細書に提示する。
【0014】
本明細書で使用される場合、「約」とは、所与の値の±10パーセントを意味する。例えば、約10とは、9~11を意味する。
【0015】
本明細書で使用される場合、「酸」は、カルボン酸基、すなわち、-COHを指す。
【0016】
本明細書で使用される場合、「アルキル」は、直鎖又は分枝状の飽和炭化水素基を指す。「C1~6アルキル」は、炭化水素基内の炭素原子の数を示す。例えば、C1~6は、1~6個の炭素、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、ペンチル、ヘキシルなどを意味する。
【0017】
本明細書で使用される場合、「アルキルジオール」は、2つのヒドロキシル(-OH)基を有する直鎖又は分枝状の飽和炭化水素基を指す。例えば、Cアルキル1,2-ジオールは、CHCHCHCH(OH)CH(OH)、CHCH(CH3)CH(OH)CH(OH)などを意味する。例えば、Cアルキル1,3-ジオールは、CHCHCH(OH)CHCH(OH)などを意味する。「アルキルトリオール」は、3つのヒドロキシル(-OH)基を有する直鎖又は分枝状の飽和炭化水素基を指す。
【0018】
本明細書で使用される場合、「アルキレン」は、直鎖又は分枝状の二価の炭化水素基を指す。例えば、Cアルキレンは、-CHCHCHCHCHCH-、-CHCH(CH2CH)CHCH-などを意味する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」は、直鎖又は分枝状の不飽和炭化水素基を指す。例えば、Cアルケニルは、-CH=CHCHCH、-CH=C(CH)CH、-CH=CHCH=CHなどを意味する。
【0020】
本明細書で使用される場合、「アルケニレン」は、直鎖又は分枝状の二価の不飽和炭化水素基を指す。例えば、Cアルケニレンは、-CH=CHCHCH-、-CH=C(CH)CH、-CH=CHCH=CH-などを意味する。
【0021】
本明細書で使用される場合、「連続した原子」とは、一緒に連結されて鎖を形成する原子(例えば、炭素、窒素、酸素、及び硫黄)をいう。いくつかの連続した原子によって分離された基は、鎖がその数の介在原子基を含むことを意味する。例えば、以下の鎖中のヒドロキシルは、4個の連続した原子によって分離されている:HOCHCHCH(CH)CHOH、HOCHCH=CHCHOH、HOCHC(O)CHCHOHなど。
【0022】
本明細書で使用される場合、「シクロヘキシレン」は、二価の6員環状炭化水素基を指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、「シクロヘキセニレン」は、1つ以上の不飽和単位、すなわち、-C(R)=C(R)-を有する二価の6員環状炭化水素基を指す。
【0024】
本明細書で使用される場合、「含有しない(excluded)」とは、組成物中に存在する物質が0.0重量%であることを意味する。
【0025】
本明細書で使用される場合、「誘導される」とは、成分Xが化合物Yから調製され得ること、例えば、疎水性可塑剤(X)がC16~44アルキル酸化合物(Y)から調製され得る(誘導され得る)ことを意味する。当業者は、本明細書に記載の任意の化合物Yを反応させるのに適した合成方法を容易に理解するであろう。例えば、当業者は、有機酸(RCOH、Rは任意である)及びアルコール(R-OH、Rは任意である)を組み合わせてエステル(RCO)を形成することができることを理解するであろう。
【0026】
本明細書で使用するとき、「消毒」とは、消毒される表面上に存在する活性微生物の数の減少を指す。消毒は、微生物を死滅させるか、又は微生物が成長若しくは増殖するのを防止し得る。
【0027】
本明細書で使用される場合、「水素結合基」は、孤立電子対及び炭素よりも大きい電気陰性度を有する原子を有する基を指す。このような特徴付けの原子は、水素結合として当該分野で既知のプロセスによって、別のこのような基に結合された水素原子と結合し得る。例えば、-OH、-NH及び-SH、-O-、-N(CH)-及び-S-は、全て水素結合基と考えられる。
【0028】
本明細書で使用される場合、「水素結合供与体」は、孤立電子対を有する原子に結合した水素原子を含む水素結合基を指す。例えば、-OH、-NH及び-SHは水素結合供与体である。
【0029】
本明細書で使用するとき、「親水性親油性バランス」又は「HLB」値は、Griffinの方法(Griffin WC;J.Soc.of Cosmetic Chemists 5,259(1954))を使用して計算される。したがって、本明細書中で使用される場合、「HLB法」は、以下に基づく計算:
【数1】
[式中、
は分子の親水性部分の分子量であり、Mは分子全体の分子量であり、0~20のスケールで結果を与える]
を含む。0のHLB値は、完全に親油性/疎水性の分子に相当し、20の値は、完全に親水性/疎油性の分子に相当する。本開示において使用される場合、親水性ビヒクルは、HLB法を使用して計算される場合、10を超えるHLB値を有する。いくつかの実施形態では、親水性ビヒクルは、11を超える、例えば、12を超えるHLB値を有する。疎水性ビヒクルは、HLB法を使用して計算される場合、10以下のHLB値を有する。いくつかの実施形態では、疎水性ビヒクルは、9以下の、例えば、7以下のHLB値を有する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「親水性ビヒクル」とは、10を超えるHLB値によって特徴付けられる化合物を指す。本開示によって記載される親水性ビヒクルは、5kg/モル以下の分子量を有する化合物を含むことが意図される。更に、本開示によって記載される親水性ビヒクルは、水を含むことを意図しない。
【0031】
本明細書中で使用される場合、「疎水性ビヒクル」とは、10以下のHLB値によって特徴付けられ、2つの水素結合基(例えば、3個以下の原子によって分離されたアルコキシ、例えば、R-CH(X)CH(X)、R-X-CHCHXなどを有する化合物をいう。
【0032】
本明細書で使用される場合、「水酸基価」は、化学物質中の遊離ヒドロキシル基の含有量の尺度を指し、1グラムの化学物質のヒドロキシル含有量に相当するミリグラム単位の水酸化カリウムの質量の単位で表される。
【0033】
本明細書で使用される場合、「置換されていてもよい(optionally substituted)」は、1つ以上の記載された化学部分によって置換されていてもよく、されていなくてもよい化学的実体又は基について述べている。例えば、「1つ以上のヒドロキシルで置換されていてもよい(optionally substituted)C1~6アルキル基」は、非置換C1~6アルキル基又は1つ以上の-OHで置換されているC1~6アルキル基、例えば、2-ヒドロキシブチルなどを含むことが意図される。
【0034】
本明細書で使用するとき、「可塑剤」は、別の物質(例えば、感圧接着剤)のガラス転移温度を低下させる物質又は物質の組み合わせを指す。可塑剤は、それが添加される物質を効果的に軟化させ、可撓性を増加させ、可塑性を増加させ、粘度を減少させ、及び/又は摩擦を減少させる。本明細書に記載される可塑剤は、より大きな分子量のポリマー(すなわち、PSA)の鎖間の間隔を増加させる比較的低分子量のポリマーである。
【0035】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」は、1つ以上の繰り返しモノマー単位を有する物質を指す。本明細書におけるポリマー物質の化学的同一性は、ポリマーが誘導されるモノマーに関して記載されることがある。当業者は、列挙されたモノマーの反応性プロフィール、及びどのようにしてモノマーが合成的に結合されてポリマーを形成し得るかを容易に理解する。
【0036】
本明細書で使用される場合、「感圧接着剤」は、圧力が加えられたときに結合を形成する非反応性自己粘着性接着剤を指す。感圧接着剤を活性化させるために、溶媒、水、又は熱は必要とされない。
【0037】
本明細書で使用される場合、「置換されている」は、任意の存在するC-H結合を報告された置換基(X)で置き換えること、すなわち、C-H→C-Xであることを意味する。
【0038】
「溶解度」、又は「可溶化すること」に言及する場合、成分B中の成分Aの溶解度は、成分A及び成分Bのみが存在する状態、例えば、添加された塩、化合物などがない状態を指すことが理解されるべきである。更に、本明細書で提供される任意の溶解度値は、大気圧(すなわち、760mm/Hg)で約20℃~約23℃の温度範囲に関する。
【0039】
本明細書で使用される場合、「不飽和」は、物質が不飽和の単位を含むこと、すなわち、2つの隣接する水素が除去されて原子間にπ結合を形成することを意味する。不飽和単位には、アルケン(-C(R)=C(R)-)及びアルキン(-C≡C-)が含まれる。
【0040】
任意の一般化された化学名は、特に別段の記載がない限り、例えば、置換されている、置換されていてもよいなど、一般化された化学名において列挙されている化学基のみを含むものとすることを理解されたい。例えば、C18アルキル酸は、C18アルキル基及びカルボン酸基からなる。例えば、1つ以上のヒドロキシルで置換されたC18アルキル酸は、C18アルキル基、カルボン酸基、及び1つ以上のヒドロキシル置換からなる。
【0041】
組成物
様々な実施形態では、組成物が記載される。組成物は、グルコン酸クロルヘキシジン及び/又はオクテニジン塩酸塩と、グルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせを可溶化することができる疎水性可塑剤とを、約20~23℃の温度で疎水性可塑剤100g当たり少なくとも約2gのグルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせの量で含み得る。疎水性可塑剤は、3個を超える連続した原子によって分離された少なくとも2個の水素結合基を含み得、HLB法を使用して決定される10以下のHLBによって特徴付けられ得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、組成物は、グルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、及び疎水性可塑剤から本質的になり得る。いくつかの実施形態では、組成物は、グルコン酸クロルヘキシジン、及び疎水性可塑剤から本質的になり得る。いくつかの実施形態では、組成物は、オクテニジン塩酸塩、及び疎水性可塑剤から本質的になり得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、組成物は、組成物の重量に対して少なくとも約0.05重量%の量で存在するグルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、組成物の重量に対して約5重量%以下の量で存在するグルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。組成物は、(組成物の重量に対して)約0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、2.2、2.4、2.6、2.8、3.0、3.2、3.4、3.6、3.8、4.0、4.2、4.4、4.6、4.8、5.0重量%、又は前述の値のうちのいずれかの間の範囲の値、例えば、約0.2重量%~約4.0重量%、約2.0重量%~約3.0重量%などの量で存在するグルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩又はそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、組成物は、疎水性可塑剤の重量に対して少なくとも約0.1重量%の量で存在するグルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、疎水性可塑剤の重量に対して約20重量%以下の量で存在するグルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。組成物は、(疎水性可塑剤の重量に対して)約0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、若しくは20重量%、又は前述の値のうちのいずれかの間の範囲の値、例えば、約0.5重量%~約12重量%、約1重量%~約10重量%などの量で存在するグルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩又はそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、組成物は、組成物の重量に対して少なくとも約10重量%の量で存在する疎水性可塑剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、組成物の重量に対して約50重量%以下の量で存在する疎水性可塑剤を含んでもよい。組成物は、(組成物の重量に対して)約10、15、20、25、30、35、40、45、若しくは50重量%、又は前述の値のうちのいずれかの間の範囲の値、例えば、約10重量%~約25重量%、約20重量%~約40重量%などの量で存在する疎水性可塑剤を含んでもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、組成物は、組成物の重量に対して約1重量%未満の量で存在する水を更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、(組成物の重量に対して)約0、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0重量%、又は前述の値のうちのいずれかの間の範囲の値、例えば、約0.01重量%~約1重量%、約0.1重量%~約0.5重量%などの量で存在する水を更に含んでもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、組成物は、グルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせの重量に対して重量で約1:1未満の量で存在する水を更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、(グルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせの重量に対して)約1:1未満、約0.9:1未満、約0.8:1未満、約0.7:1未満、約0.6:1未満、約0.5:1未満、約0.4:1未満、約0.3:1未満、約0.2:1未満、約0.1:1未満、約0.05:1未満、約0.1:1未満、0:1、又は前述の値のいずれかの間の値、例えば、約0.5:1~約0.2:1、約0.9:1~約0.7:1などの量で存在する水を更に含んでもよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、組成物は、グルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせの重量に対して、約0.1:1未満の量で、10を超えるHLBによって特徴付けられる親水性ビヒクルを更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、約0.1:1未満、約0.05:1未満、約0.01:1未満、約0.005:1未満、約0.001:1未満、又は前述の値のいずれかの間の値で親水性ビヒクルを含んでもよい。いくつかの実施形態では、組成物は親水性ビヒクルを含有しない(0:1w/w)。
【0049】
いくつかの実施形態では、組成物は、C~C22アルキル1,2-ジオール及びC~C22アルキル1,3-ジオールを含有しなくてもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、組成物は、C8~12アルキル1,2-ジオール及びC8~12アルキル1,3-ジオールを含有しなくてもよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、組成物は、式:
【化1】
[式中、
各Rは独立して、-H又はC1~18アルキルであり、
は、C4~22アルキルである]
の化合物を含有しなくてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態において、組成物は、式:
【化2】
[式中、
各Rは独立して、-H又はC1~18アルキルであり、
各Rは独立して、C4~22アルキルである]
の化合物を含有しなくてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、組成物は、モノアシルグリセリドを含有しない。
【0054】
いくつかの実施形態では、組成物は、グリセロール、1,2-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2,6-トリヒドロキシヘキサン、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、及び2,3-ブタンジオールのうちの1つ以上を含有しない。
【0055】
いくつかの実施形態では、組成物は、モノステアリン酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、D-酒石酸ジエチル、L-酒石酸ジエチル、L-酒石酸ジブチル、トリステアリン酸デカグリセリル、及びモノオレイン酸グリセリルのうちの1つ以上を含有しない。
【0056】
いくつかの実施形態では、組成物は、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、ソルベス-6,1,3-ジヒドロキシアセトン二量体、及びエチルヘキシルグリセリンのうちの1つ以上を含有しない。
【0057】
いくつかの実施形態では、組成物は、本明細書に記載の疎水性ビヒクルを含有しない。
【0058】
疎水性可塑剤
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は約10以下のHLBによって特徴付けられ得る。例えば、疎水性可塑剤は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下、1以下、又は前述の値のいずれかの間の値、例えば、約6~約8、約3~約7などのHLBによって特徴付けられてもよい。いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は5未満のHLBによって特徴付けられ得る。いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は2未満のHLBによって特徴付けられ得る。
【0059】
いくつかの実施形態において、疎水性可塑剤は、3個を超える連続した原子によって分離された水素結合基を含んでもよい。例えば、水素結合原子は、4、5、6、7、8、9、10、11,12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、若しくは25個の連続した原子、又は前述の値のうちのいずれかの間の範囲内の値、例えば、約16~約18個、約4~約8個の連続した原子によって分離されてもよい。理論に束縛されるものではないが、水素結合原子は、椅子様又は擬椅子様安定配置をとる連続した原子の可撓性鎖によって分離されている。言い換えれば、水素結合原子は、防腐性化合物、例えばグルコン酸クロルヘキシジン及びオクテニジン塩酸塩のキレート化を可能にするような様式で分離される。例えば、4個の連続した原子によって分離された水素結合基は、7員環立体配座を採用することができ、一方、7個の連続した原子による水素結合基の分離は、デカリン様椅子型配置を採用することができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は少なくとも約20の水酸基価によって特徴付けられ得る。いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は約20~約70の水酸基価によって特徴付けられ得る。いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、約20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、又は前述の値のうちのいずれかの間の範囲内の値、例えば、約30~約70、約40~約50などの水酸基価によって特徴付けられ得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は約0.5kg/mol~約6kg/molの平均分子量によって特徴付けられ得る。いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5若しくは6kg/mol、又は前述の値のいずれかの間の値、例えば、約1kg/mol~5kg/mol、約2kg/mol~4kg/molなどの平均分子量を有し得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、約20℃~約23℃の温度で、疎水性可塑剤の重量に対して約1重量%を超える量のグルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせを可溶化し得る。例えば、疎水性可塑剤は、約20℃~約23℃の温度で、グルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせを(疎水性可塑剤の重量に対して)1、2、3、4、若しくは5重量%を超える、又は前述の値のいずれかの範囲内の値、例えば、約2重量%~約3重量%、約3重量%~約5重量%などの量で可溶化し得る。いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、グルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせを最大約5重量%、最大約6重量%、最大約7重量%、最大約8重量%、最大約9重量%、又は最大約10重量%の量で可溶化し得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、少なくとも2つの水素結合基を有するポリマーを含んでもよい。例えば、疎水性可塑剤は、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の水素結合基を有するポリマーであってもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は少なくとも1つの水素結合供与体を有するポリマーを含んでもよい。
【0065】
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は少なくとも2つの水素結合供与体を有するポリマーを含んでもよい。
【0066】
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、-OR、-O-、-C(O)-、-C(O)-O-、-SR、-N(R)(R)、-C(O)-N(R)-、-O-C(O)-N(R)-、及び-N(R)-C(O)-N(R)-[式中、各Rは、独立して、-H及びC1~6アルキルから選択される]から選択される水素結合供与体を有するポリマーを含んでもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、-OH及び-NH(R)[式中、Rは、-H及びC1~6アルキルから選択される]から選択される水素結合供与体を含んでもよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、2つの-OH基を含んでもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、ポリエステルポリオール、ポリアルカジエンポリオール、及びシリコーンポリオール、又はそれらの組み合わせから選択されてもよい。本開示のポリエステルポリオール、ポリアルカジエンポリオール、及びシリコーンポリオールは、以下により詳細に記載される。
【0070】
ポリエステルポリオール
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、ポリエステルポリオールを含んでもよい。当業者は、アルコール(ROH)を周知の条件下で酸HOC(O)R又は無水物RC(O)OC(O)Rと反応させてエステル(ROC(O)R)を生成し得ることを容易に理解するであろう。ポリエステルとは、2つ以上のエステル部分を有する分子を指す。ポリオールは、2つ以上のアルコール部分を有する分子を指す。したがって、ポリエステルポリオールは、2つ以上のエステル及び2つ以上のアルコールを有する分子を指す。
【0071】
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、平均して少なくとも2つのヒドロキシル(すなわち、-OH)基を有するポリエステルポリオールを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ポリエステルポリオールは約20~約70の水酸基価を有し得る。いくつかの実施形態では、ポリエステルポリオールは、約20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、若しくは70、又は前述の値のうちのいずれかの間の範囲内の値、例えば、約25~約50、約20~約30などの水酸基価を有し得る。
【0072】
いくつかの実施形態において、疎水性可塑剤は、約1500~約4000kg/molの分子量を有するポリエステルポリオールを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ポリエステルポリオールは、約1500、1600、1700、1800、1900、2000、2200、2400、2600、2800、3000、3200、3400、3600、3800、若しくは4000kg/mol、又は前述の値のいずれかの間の値、例えば、約2000kg/mol~3000kg/mol、約1800kg/mol~3600kg/molなどの分子量を有し得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、式(I):
【化3】
[式中、
各Aは、独立して、C~C22アルキレン、C~C22アルケニレン、-A’-(シクロヘキシレニル)-A’-、-A’-(シクロヘキセニル)-A’-、及びフェニレンから選択され、
これらのC~C22アルキレン、C~C22アルケニレン、シクロヘキシレニル又はシクロヘキセニルは、C~C20アルキル、及びC~C20アルケニルのうちの1つ以上で置換されていてもよく、
各A’は、独立して、C~C16アルキレン及びC~C16アルケニレンから選択され、
各Bは、独立して、-OC(O)-及び-C(O)O-から選択され、
nは、4~10の整数であり、
少なくとも1つのAは、1つ以上のC~C20アルキル及びC~C16アルケニレンで置換されていてもよいC14~C22アルキレン、1つ以上のC~C20アルキル及びC~C16アルケニレンで置換されていてもよいC14~C22アルケニレン、-A’-(シクロヘキシレニル)-A’-、及び-A’-(シクロヘキセニル)-A’-から選択される]
によって表されるポリエステルポリオールを含んでもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、ポリエステルポリオールは、C16~C44アルキル酸、C16~C44アルキル二酸、C~C12アルキル酸、C~C12アルケニル酸、C~C12アルキル二酸、C~C12アルケニル二酸、C~C12アルキル三酸、C~C10アリール酸、C~C10アリール二酸、C~C10アリール三酸、C16~C44アルカノール、C16~C44アルキルジオール、C~C10アルカノール、C~C10アルキルジオール、C~C10アルキルトリオール、ポリアルキレングリコール、又はそれらの組み合わせから誘導され得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、ポリエステルポリオールは、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、メタントリカルボン酸、クエン酸、アコニット酸、イソクエン酸、トリカルバリル酸、1,3,5-トリメチルシクロヘキサン-1,3,5-トリカルボン酸、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセロール、又はそれらの組み合わせなどから誘導されてもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、ポリエステルは、C16~C44アルキル酸、C16~C44アルキル二酸、C~C12アルキル酸、C~C12アルキル二酸、C~C12アルキル三酸、C~C10アリール酸、C~C10アリール二酸、C~C10アリール三酸、C16~C44アルカノール、C16~C44アルキルジオール、C~C10アルカノール、C~C10アルキルジオール、C~C10アルキルトリオール、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、メタントリカルボン酸、クエン酸、アコニット酸、イソクエン酸、トリカルバリル酸、1,3,5-トリメチルシクロヘキサン-1,3,5-トリカルボン酸、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセロール、又はそれらの組み合わせから誘導されてもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、C16~C44アルキル酸及びC16~C44アルキル二酸のうちの1つ以上から誘導されるポリエステルポリオールを含んでもよい。いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、C36アルキル二酸及びC36アルキルジオールから誘導されるポリエステルポリオールを含んでもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、C~C12アルキル酸、C~C12アルキル二酸、及びC~C12アルキル三酸のうちの1つ以上から誘導されるポリエステルポリオールを含んでもよい。いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、メタントリカルボン酸、クエン酸、アコニット酸、イソクエン酸、トリカルバリル酸、1,3,5-トリメチルシクロヘキサン-1,3,5-トリカルボン酸、又はそれらの組み合わせから誘導されるポリエステルポリオールを含んでもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、C~C10アリール酸、C~C10アリール二酸、及びC~C10アリール三酸のうちの1つ以上から誘導されるポリエステルポリオールを含んでもよい。いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、又はそれらの組み合わせから誘導されるポリエステルポリオールを含んでもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、C16~C44アルカノール及びC16~C44アルキルジオールのうちの1つ以上から誘導されるポリエステルポリオールを含んでもよい。いくつかの実施形態において、疎水性可塑剤は、それらから誘導されるポリエステルポリオール又はそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、C~C10アルカノール、C~C10アルキルジオール、及びC~C10アルキルトリオールのうちの1つ以上から誘導されるポリエステルポリオールを含んでもよい。いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセロール、又はそれらの組み合わせから誘導されるポリエステルポリオールを含んでもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、ダイマー酸、アジピン酸、及び1,6-ヘキサンジオールのうちの1つ以上から誘導されるポリエステルポリオールを含んでもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、ダイマー酸及びエチレングリコールのうちの1つ以上から誘導されるポリエステルポリオールを含んでもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、ダイマー酸、アジピン酸、及びエチレングリコールのうちの1つ以上から誘導されるポリエステルポリオールを含んでもよい。
【0085】
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、ダイマー酸及びダイマージオールのうちの1つ以上から誘導されるポリエステルポリオールを含んでもよい。
【0086】
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、ダイマージオール及びイソフタル酸のうちの1つ以上から誘導されるポリエステルポリオールを含んでもよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、ダイマージオール及びテレフタル酸のうちの1つ以上から誘導されるポリエステルポリオールを含んでもよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、商品名PRIPLAST(商標)で販売されている1つ以上のポリエステルポリオール配合物(例えば、Priplast 3186、Priplast 3190、Priplast 3192、Priplast 3196、Priplast 3197、及びPriplast 3238)を含んでもよい。
【0089】
ポリアルカジエンポリオール
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、ポリアルカジエンポリオールを含んでもよい。ポリアルカジエンポリオールは、1分子当たり平均して約1.6~2個のヒドロキシル基(-OH)を有する1つ以上の共役ジエンモノマー(すなわち、ホモポリマー及びコポリマー)から誘導されるポリマーである。共役ジエンは、2つのオレフィン(すなわち、-CR=CR-)が単一の炭素-炭素結合によって分離されている部分を指す。
【0090】
いくつかの実施形態では、本開示のポリアルカジエンポリオールを調製するために使用される共役ジエンとしては、4~12個の炭素原子を有する2-置換又は2,3-二置換1,3-ジエンが挙げられる。共役ジエンの例としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2-シアノ-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,2-ブタジエンなどが挙げられる。
【0091】
いくつかの実施形態では、ポリアルカジエンポリオールは、ヒドロキシ末端である。ヒドロキシ末端ポリアルカジエンポリオールは、米国特許第5,416,168号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に従って調製されてもよく、リチウム化シリル保護アルカノールが開始剤として使用され(後に脱保護され)、ポリマー鎖がエチレンオキシドで末端化される。
【0092】
いくつかの実施形態では、ポリアルカジエンポリオールは、約30~70%の1,4-付加を有し得る(例えば、I+T+CH=CH-CH=CH→R-CH-CH=CH-CH-T)。→1,4-付加(1,2-付加とは対照的に)が好ましいことは、当技術分野において既知の条件を選択することによって与えられ得る。例えば、30~70%の1,4-付加を有するポリブタジエンは、粘度を最小にする。
【0093】
いくつかの実施形態では、ポリアルカジエンポリオールは、80%以上の1,4-付加を有し得る。例えば、80%以上の1,4-付加を有するポリイソプレンは、適切なT及び粘度を提供する。
【0094】
いくつかの実施形態では、ポリアルカジエンポリオールは、水素添加されない。
【0095】
いくつかの実施形態では、ポリアルカジエンポリオールは更に水素化されてもよく、すなわち、オレフィンの少なくとも一部が水素及び好適な触媒で還元される。いくつかの実施形態では、ポリアルカジエンポリオールは、オレフィンの50~95%が還元されるように水素化される。例えば、ポリアルカジエンポリオール中のオレフィンの50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、若しくは95%、又は前述の値のいずれかの間の範囲内の値、例えば、約90%~約95%、約65%~約85%などが、水素化によって還元され得る。いくつかの実施形態では、ポリアルカジエン中のオレフィンの100%が還元され得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、水素化ポリアルカジエンポリオールは、約40~60%の1,2-付加を有し得る(例えば、I+T+CH=CH-CH=CH→R-CH-CH(CH=CH)-T)。→1,2-付加(1,2-付加とは対照的に)が好ましいことは、当技術分野において既知の条件を選択することによって与えられ得る。水素化ポリアルカジエンポリオール、例えば、40~60%の1,2-付加を有する水素化ポリブタジエンは、ポリマーのワックス性を防止し得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、以下の式II:
【化4】
[式中、
各Rは、独立して、-OHで置換されたC~Cアルキルから選択され、
各Aは、独立して、-C(R)=C(R)-、-CH(R)CH(R)-、
-C(R)(C(R)=CH)-、-C(R)(CH(R)CH)-から選択され、
各Rは、独立して-H、ハロゲン、-CN、フェニル、C~Cアルキル、-OHで置換されたC~Cアルキルから選択され、
nは10~200の整数である]
によって表される1つ以上のポリアルカジエンポリオールを含んでもよい。
【0098】
いくつかの実施形態では、一方のRは-(CHOHであり、一方のRは-CHCHOHである。
【0099】
いくつかの実施形態では、各Aは-C(R)=C(R)-であり、各Rは-Hである。
【0100】
いくつかの実施形態では、各Aは-C(R)=C(R)-であり、一方のRは-Hであり、一方のRはC~Cアルキル、例えば、-CHである。
【0101】
いくつかの実施形態では、ポリアルカジエンポリオールは、約500~約20,000の平均分子量によって特徴付けられ得る。例えば、ポリアルカジエンポリオールは、約500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、12000、14000、16000、18000、若しくは20000、又は前述の値のうちのいずれかの間の範囲内の値、例えば、約12000~約18000、約1000~約10000などでの平均分子量によって特徴付けられ得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、ポリアルカジエンポリオールは、約250~約10,000の水酸基価によって特徴付けられ得る。例えば、ポリアルカジエンポリオールは、約250、500、750、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、若しくは10000、又は前述の値のうちのいずれかの間の範囲内の値、例えば、約500~約5000、約1000~約8000などの水酸基価によって特徴付けられ得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、Poly-BD R-45HT(ARCO Chemicals;Newtown Square,Pennsylvania)、Polyvest HT(Evonik Industries;Essen Germany),Krasol LBH 2000又はLBH 3000(Cray Valley USA LLC;Exton,Pennsylvania)から選択されるポリアルカジエンポリオールを含んでもよい。
【0104】
シリコーンポリオール
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、シリコーンポリオールを含んでもよい。
【0105】
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、以下の式(III):
【化5】
[式中、
各R及びRは、独立して、-OH、C~Cアルキル、-OHで置換されたC~Cアルキルから選択され、
各Aは、独立して、-O-、C~C10アルキル、及びフェニルから選択され、
nは、10~200の整数である]
によって表される1つ以上のシリコーンポリオールを含んでもよい。
【0106】
いくつかの実施形態では、各Rは、-OHである。
【0107】
いくつかの実施形態では、各Rは、独立して、-OHで置換されたC~Cアルキルから選択される。例えば、各Rは、-CHCHOHであってもよい。
【0108】
いくつかの実施形態では、各Rは、C~Cアルキルから選択される。例えば、各Rは、-CHであってもよい。
【0109】
いくつかの実施形態では、nは、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、140、160、180、若しくは200、又は前述の値のいずれかの間の値、例えば、約100~約160、約50~約90などの値である。
【0110】
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、約10~約200の水酸基価によって特徴付けられるシリコーンポリオールを含んでもよい。例えば、シリコーンポリオールは、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、若しくは200、又は前述の値のいずれかの間の範囲の値、例えば、約50~約130、約20~約70などの水酸基価によって特徴付けられ得る。
【0111】
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、KF-6000、KF-6001、KF-6002、KF-6003、X-21-5841、KF-9701(全て、Shin-Etsu Chemical Companyから入手可能)、及びそれらの組み合わせなどから選択されるシリコーンポリオールを含んでもよい。
【0112】
抗菌性接着剤
多くの実施形態では、抗菌性接着剤が記載される。抗菌性接着剤は、本明細書に記載される任意の組成物及び感圧接着剤を含んでもよい。
【0113】
いくつかの実施形態では、抗菌性接着剤は、組成物及び感圧接着剤から本質的になり得る。
【0114】
いくつかの実施形態では、抗菌性接着剤は約-90℃~約10℃のガラス転移温度(T)によって特徴付けられ得る。いくつかの実施形態では、抗菌性接着剤は、約-90℃、-80℃、-70℃、-60℃、-50℃、-40℃、-30℃、-20℃、-10℃、-5℃、0℃、5℃若しくは10℃、又は前述の値のいずれかの間の範囲内の値、例えば、約-30℃~約-5℃、約-70℃~約0℃などのガラス転移温度(℃)によって特徴付けられ得る。抗菌性接着剤のTは、感圧接着剤に対する疎水性可塑剤の作用によって与えられ得る(すなわち、可塑剤は、感圧接着剤のガラス転移温度を低下させる)。
【0115】
いくつかの実施形態では、抗菌性接着剤は、1つ以上の粘着付与剤、酸化防止剤、色素、補強充填剤、架橋剤、及び電解質を更に含んでもよい。
【0116】
感圧接着剤
いくつかの実施形態では、感圧接着剤は、約-70℃~約20℃のガラス転移温度(T)によって特徴付けられ得る。いくつかの実施形態では、感圧接着剤は、約-70℃、-60℃、-50℃、-40℃、-30℃、-20℃、-10℃、-5℃、0℃、5℃、10℃、若しくは20℃、又は前述の値のいずれかの間の範囲内の値、例えば、約-20℃~約5℃、約-50℃~約-30℃などのTによって特徴付けられ得る。
【0117】
いくつかの実施形態では、感圧接着剤はアクリルポリマー又はコポリマーから選択される。いくつかの実施形態では、アクリルポリマー又はコポリマーは、アルキル(メタ)アクリレート、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、(アルキル置換)アクリルアミド、(アルキル置換)メタクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又は及びそれらの組み合わせから選択されるモノマーのうちの1つの反応生成物であってもよい。
【0118】
医療用物品
様々な実施形態では、医療用物品が記載される。医療用物品は、第1の表面及び第1の表面の反対側の第2の表面を有する基材と、第1の表面上に配置された本明細書に記載の抗菌性接着剤と、を含み得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、基材はポリマーフィルムであってもよい。ポリマーフィルムは、織布であっても不織布であってもよい。
【0120】
いくつかの実施形態では、医療用物品は、抗菌性接着剤と接触する剥離ライナーを更に備えることができる。剥離ライナーは、抗菌性接着剤が使用前に異物と接触することから保護し得る。剥離ライナーは、表面への医療用物品の適用を更に容易にし得る。
【0121】
いくつかの実施形態では、医療用物品は、第2の表面と接触する送達システムを更に含むことができる。送達システムは、例えば、接着剤で第2の表面に剥離可能に固定された紙であってもよい。送達システムは、医療用物品の表面への適用を容易にするために、医療用物品に構造的完全性を提供してもよい。
【0122】
いくつかの実施形態では、医療用物品は、輪郭形成された表面上に適合するためのカスタム形状を含む、種々の形状で構成されてもよい。
【0123】
いくつかの実施形態では、医療用物品はシート又はロールの形態であってもよい。
【0124】
いくつかの実施形態では、抗菌性物品はテープ又はラップである。
【0125】
いくつかの実施形態では、医療用物品は創傷ドレッシング材である。医療用物品は、当技術分野において既知の任意の創傷ドレッシング材の形状であってもよい。
【0126】
いくつかの実施形態では、医療用物品は静脈内ドレッシング材である。
【0127】
いくつかの実施形態では、医療用物品は外科用ドレープである。
【0128】
組成物を調製するための方法
様々な実施形態では、本明細書に記載の組成物を調製するための方法が記載される。この方法は、グルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせと疎水性可塑剤とを準備することと、グルコン酸クロルヘキシジンを疎水性可塑剤に接触させて組成物を形成することと、を含んでもよい。
【0129】
いくつかの実施形態では、グルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせは、固体として準備される。他の実施形態では、グルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせは水溶液として準備される。
【0130】
いくつかの実施形態では、疎水性可塑剤は、揮発性非極性有機溶媒(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなど)中の溶液として提供される。
【0131】
いくつかの実施形態では、本方法は、グルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせと疎水性可塑剤とを接触させて形成された混合物を、約30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、若しくは80℃、又は前述の値のいずれかの範囲内の値、例えば、約40℃~約60℃、約50℃~約70℃などの温度(℃)に加熱することを更に含む。いくつかの実施形態では、加熱は真空下で行われてもよい。加熱又は真空下での加熱は、溶媒及び水を除去することができる。いくつかの実施形態では、水は、例えば分液漏斗を用いたデカンテーションによって除去されてもよい。
【0132】
いくつかの実施形態では、本方法は、加熱、真空(回転蒸発又は凍結-ポンプ-解凍技術を含む)、蒸留又は共沸蒸留、モレキュラーシーブなどのうちの1つ以上による溶媒及び/又は水の除去を更に含み得る。
【0133】
抗菌性接着剤を調製するための方法
様々な実施形態では、本明細書に記載される抗菌性接着剤を調製するための方法が記載される。この方法は、本明細書に記載の組成物及び感圧接着剤を準備することと、組成物と感圧接着剤とを接触させて抗菌性接着剤を形成することと、を含み得る。
【0134】
いくつかの実施形態では、組成物は、グルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせに対して約1:1未満の量の水(w/w)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、水は、グルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせに対して、約1:1、0.9:1、0.8:1、0.7:1、0.6:1、0.5:1、0.4:1、0.3:1、0.2:1、0.1:1、0.05、0.01:1、0.005:1、若しくは0.001:1未満、又は前述の値のうちのいずれかの間の範囲の値、例えば、約0.4:1~約0.05:1、約0.1:1~約0.01:1などの量(w/w)で組成物中に存在してもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、組成物の重量に対して、残留水のみ、すなわち約0.01重量%未満の量で存在する水を含んでもよい。
【0135】
いくつかの実施形態では、感圧接着剤は、溶媒ベースの溶液として準備されてもよい。溶媒は、感圧接着剤と混和性である任意の有機溶媒であってよい。例えば、溶媒は、酢酸エチル、ヘプタン、トルエン、及びメチルエチルケトン、それらの組み合わせなどを含んでもよい。
【0136】
医療用物品を調製するための方法
様々な実施形態では、本明細書に記載される医療用物品を調製するための方法が記載される。本方法は、本明細書に記載の抗菌性接着剤及び基材を準備することと、抗菌性接着剤を基材上にコーティングすることと、を含み得る。
【0137】
いくつかの実施形態では、基材は、熱可塑性ポリウレタン(例えば、ESTANE(登録商標)によって販売されているような)などのポリマーバッキング材料であってもよい。他の実施形態では、基材は剥離ライナーであってもよく、これは紙、ポリコート紙、ポリエステルフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、シリコーンなどの様々な材料から作製することができる。
【0138】
いくつかの実施形態では、抗菌性接着剤は、約50~約525ミクロンの厚さによってコーティングされ得る。例えば、厚さは、約50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、若しくは525ミクロン、又は前述の値のうちのいずれかの間の値、例えば、約100ミクロン~約200ミクロン、約75ミクロン~約350ミクロンなどであってもよい。
【0139】
いくつかの実施形態では、抗菌性接着剤を基材上にコーティングすることは、抗菌性接着剤の均一な層を基材上に手で広げることを含んでもよい。手で広げることは、ナイフエッジコーターを用いて行うことができる。
【0140】
いくつかの実施形態では、方法は、抗菌性接着剤を高温で一定期間乾燥させて、乾燥抗菌性接着剤を形成することを更に含んでもよい。例えば、抗菌性接着剤は、約65℃~約93℃の温度で約1分間~約10分間乾燥されてもよい。
【0141】
基材がポリマーバッキング材料であり得る実施形態では、本方法は、乾燥した抗菌性接着剤を剥離ライナーに接触させることを更に含み得る。
【0142】
基材が剥離ライナーであり得る実施形態では、本方法は、乾燥した抗菌性接着剤をポリマーバッキング材料に積層することを更に含み得る。積層は、室温でニップローラーを使用して行うことができる。
【0143】
表面を消毒するための方法
様々な実施形態では、表面を消毒するための方法が記載される。本方法は、本明細書に記載の医療用物品を準備することと、医療用物品を表面に一定期間接触させることと、を含み得る。
【0144】
いくつかの実施形態では、表面は、皮膚又は組織であり得る。いくつかの実施形態では、皮膚又は組織は、哺乳動物の皮膚又は組織である。いくつかの実施形態では、組織は、粘膜組織、慢性創傷、急性創傷、火傷などから選択されてもよい。
【0145】
いくつかの実施形態では、皮膚又は組織は無傷であってもよく、すなわち、損傷していなくてもよい。
【0146】
いくつかの実施形態では、皮膚又は組織には、創傷又は別の損傷があってもよい。
【0147】
いくつかの実施形態では、皮膚又は組織は、接触時に無傷であってもよく、皮膚を損傷、例えば、切断、穿刺等に供した際に接触したままであってもよい。
【0148】
他の実施形態では、表面は、医療用表面、例えば、外科用デバイス(例えば、メス、鋏、ブレード、鉗子、ドレープなど)、医療用デバイス(例えば、カテーテル、ステント、人工関節、歯科インプラントなど)、床タイル、カウンタートップ、桶、皿、手袋、スワブ、布、スポンジ、発泡体、不織布、及び紙製品であってもよい。
【0149】
いくつかの実施形態では、医療用物品は、様々な微生物タイプ、例えば、グラム陽性菌、グラム陰性菌、真菌、原虫、マイコプラズマ、酵母ウイルス、脂質エンベロープウイルスなどに対して有効であり得る。例えば、抗菌性接着剤及びそれから作製される医療用物品は、例えば、ブドウ球菌属、ストレプトコッカス属、シュードモナス属、エンテロコッカス属、エシェリキア属、アスペルギルス属、フサリウム属、カンジダ属、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus)(MRSA)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、エンテロコッカス・フィカリス(Enterococcus faecalis)、バンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant Enterococcus)(VRE)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、大腸菌(Esherichia coli)、黒コウジカビ(Aspergillus niger)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・クラバツス(Aspergillus clavatus)、フザリウム・ソラニ(Fusarium solani)、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、フザリウム・クラミドスポラム(Fusarium chlamydosporum)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・グラブラタ(Candid glabrata)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)などの表面上に存在する微生物の数を減少させること、及び/又はそのような微生物の増殖を予防することで有効であり得る。
【0150】
いくつかの実施形態では、医療用物品は、約30、60、90、120、150、180、若しくは210分、又は前述の値のうちのいずれかの間の範囲内の値、例えば、約30分~約120分、約90分~約180分などの期間にわたって表面に接触してもよい。
【0151】
他の実施形態では、抗菌性物品は、約1、2、3、4、5、12、若しくは24時間超、又は前述の値のうちのいずれかの間の範囲内の値、例えば、約2~約5時間、約12~約24時間などの期間にわたって表面に接触してもよい。いくつかの実施形態では、抗菌性物品は、約1、2、3、4、5、6、若しくは7日、又は前述の値のうちのいずれかの間の範囲内の値、例えば、約1~約2日、約2~約5日などの期間にわたって表面に接触してもよい。
【0152】
いくつかの実施形態では、方法は、医療用物品を表面に接触させる前に、表面に水を適用することを更に含み得る。表面を水で濡らすことは、抗菌性接着剤の表面へのCHG又はオクテニジンの移動を容易にし得る。
【0153】
いくつかの実施形態では、方法は、グルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせを、1時間当たり15mcg/sqを超える平均速度で表面に送達するのに有効であり得る。例えば、方法は、グルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせを表面に、約15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、若しくは100、又は前述の値のうちのいずれかの間の値、例えば、約30~約50、約20~約60などの平均速度(1時間当たりのmcg/sq.)で送達するのに有効であり得る。表面に送達されるグルコン酸クロルヘキシジン、オクテニジン塩酸塩、又はそれらの組み合わせの量は、本明細書に記載の表面可用性分析を使用して決定することができる。
【0154】
いくつかの実施形態では、本方法は、切開、例えば、手術のために表面を調製するための方法であってもよい。
【0155】
いくつかの実施形態では、本方法は、例えば、静脈内医薬品又は流体を投与する、流体を抜き取るなどのために、針貫通のための表面を調製するための方法であってもよい。
【0156】
キット
様々な実施形態では、キットが記載される。キットは、本明細書に記載の医療用物品と、本明細書に記載の方法に従って表面を消毒するようにユーザーに指示する一式の説明書と、を含み得る。
【0157】
様々な実施形態では、キットが記載される。キットは、本明細書に記載の医療用物品と、本明細書に記載の方法に従って手術用に表面を調製するようにユーザーに指示する一式の説明書と、を含み得る。
【実施例
【0158】
本開示の目的及び利点を以下の実施例によって更に例示するが、これらの実施例に記載の特定の材料及びその量並びに他の条件及び詳細は、本開示を不当に限定するものと解釈されるべきではない。これらの実施例は、単に説明する目的のためのものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【0159】
本明細書の実施例及び他の箇所における全ての部、百分率、比などは、別途指示がない限り、重量に基づくものである。実施例で使用される材料及びそれらの供給元を表1に記載する。使用されている溶媒及び他の試薬は、特に断りのない限り、Sigma-Aldrich Chemical Company(St.Louis,MO)より入手したものである。特に明記しない限り、全ての水は蒸留水であり、全ての分子量は重量平均分子量である。
【0160】
実施例の準備に用いた材料を表1に要約する。
【表1】
【0161】
実施例1:溶解度スクリーニング
疎水性ビヒクル中のグルコン酸クロルヘキシジン(CHG)の溶解度を決定するために、スクリーニング試験を行った。スクリーニングは、n-ヘプタン中に疎水性ビヒクルを希釈し、次いで、適切な量の20%w/vのCHG水溶液中に懸濁することによって行った。得られた懸濁液を含有するバイアルを、マグネチックスターラーを備えたホットプレート上に置いた。それを一定に撹拌しながら65℃で加熱して、ヘプタン及び水をフラッシュオフした。ヘプタン及び水を除去した後、疎水性ビヒクルとグルコン酸クロルヘキシジンとを含む不揮発性残留物をガラス顕微鏡スライドに塗布し、室温に冷却し、薄い切片において透明度及び清澄度を観察した。溶解度を目視観察によって決定し、透明な半透明の外観は、疎水性ビヒクル中のCHGの溶解度を示した。HLB値は、利用可能な場合、分子量及び構造から推定した。構造が利用できない場合、分子は最大4個のエステル基及び2個のヒドロキシル基を有すると推定された。
【表2】
【0162】
接着剤の調製手順
接着剤組成物は、溶媒系感圧接着剤(3M Company,St.Paul,MNから入手した酢酸エチル/ヘプタン/メタノールブレンド中のポリ(イソオクチルアクリレート/N-ビニルピロリドン))、CHGの水溶液、及び疎水性ジオールを、単純な手動撹拌によって一緒にブレンドすることによって調製した。
【0163】
接着剤のコーティング手順
ナイフエッジコーターを使用して、好適な剥離ライナーの剥離表面上に、調製された接着剤組成物の均一な層を適用することによって、接着剤組成物をハンドスプレッドとしてコーティングした。湿潤接着剤の厚さは50~510ミクロン(2~20ミル)の範囲であった。コーティングされた接着剤組成物を、65℃~93℃(150°F~200°F)の温度で1~10分間溶媒オーブン中で乾燥させた。
【0164】
接着剤の積層手順
室温でニップローラーを使用して、乾燥した接着剤を、0.8ミル厚のEstane 58309フィルムに積層することによって、乾燥させた接着剤を用いて接着剤物品を調製した。
【0165】
表面可用性分析
いくつかの実施形態では、離散量のCHGが接着剤の表面で利用可能であるべきである。表面可用性は、以下の方法に従って、乾燥した接着剤の表面を静止状態で水に曝露することによって決定した。5.07平方センチメートルの円形面積を覆うのに十分な接着剤物品の試料を、上記のように調製した接着剤物品のより大きな部分から切断した。剥離ライナーを除去し、乾燥した接着剤の表面を露出させ、水(50mcL)を接着剤表面上にピペットで移し、2.54平方センチメートルの面積を覆うように均一に広げた。次いで、試料を、約70%の相対湿度で90分間、加湿インキュベーターにおいて35℃でインキュベートした。所望の試験時間が経過した後、水を分析のために液体クロマトグラフィーバイアルに移した。クオータナリーグラジエントポンプ、オートサンプラー、加熱カラムコンパートメント及び可変波長検出器からなるAgilent 1200 HPLCシステムでの吸光度検出を使用して、逆相HPLCによってサンプルを分析した。サンプル溶液の5.0mcL部分を、MACMOD Analytical Inc.150×3mm ACE 3マイクロメートルC18カラム上に注入した。40mMのpH3.7のギ酸アンモニウム緩衝液を含有する80/20(v/v)水/メタノールを用いて、0.50mL/分及び40℃でカラムを平衡化した。注入後、サンプルを、40mMのpH3.7のギ酸アンモニウム緩衝液を含有する20/80(v/v)水/メタノールへの30分間の直線勾配で溶離した。この溶離剤組成物を、出発溶離剤中で再平衡化する前に、一定組成で5分間保持した。254±2nmシグナルの吸光度検出を利用して、酢酸クロルヘキシジン(「CHA」)を含有する標準溶液に対するグルコン酸クロルヘキシジンのサンプル濃度を定量化した。1.435のモル分率を定量に適用して、CHG/CHA(898/626)のモル比を説明した。
【0166】
実施例2
以下の実施例は、異なるα,ω-ジオール(A1~A5)を含有する接着剤配合物を用いて作製されたドレープサンプルからのCHGの放出、及び放出に対するジオール濃度の影響(A5、A6)を実証する。サンプルA1~A6で使用した接着剤の組成、推定HLB値、及びCHG放出結果を表3に示す。
【表3】
【0167】
直接時間死滅分析
いくつかのコーティングされた接着剤の試料を、以下の90分の時間死滅試験に従って抗菌性能試験に供した。MSSA、E.coli、又はC.albicansの懸濁液を、0.5のマックファーランド標準比濁液(McFarland Equivalence Turbidity Standard)を使用して、リン酸緩衝水(pbw)中1×10コロニー形成単位(CFU)/ミリリットル(mL)の濃度で調製した。エッペンドルフピペットを使用して、50マイクロリットル(μL)のこの懸濁液を、15~16個の別々の液滴として、接着フィルムの直径2.5cmの部分の接着剤表面に移した。次いで、これらの接種した試料を室温(23+/-2℃)で5~30分間インキュベートした。インキュベーション後、試料を20mLの中和緩衝液に入れ、1分間超音波処理し、続いて2分間ボルテックスした。得られた溶液の一部をリン酸緩衝水で連続的に希釈した。原液及び希釈物をそれぞれ、3M PETRIFILM好気計数プレート(3M Company,St.Paul,MN)に播種し、少なくとも24時間インキュベートした。次いで、3M PETRIFILMプレートリーダー(モデル6499、3M Company)を使用して、3M PETRIFILMプレートを計数した。
【0168】
実施例3
実施例3では、接着剤A5を用いて作製したドレープサンプルの抗菌活性を、室温で異なる時間でエージングした後に評価した。プラセボでは、CHGを組成物A5から省き、追加のベースPSAで置き換えた。結果を表4に示す。代表的なグラム陽性(MSSA)、グラム陰性(E.coli)及び酵母(C.albicans)微生物に対して、全ての場合において4logを超える抗菌活性が実証された。
【表4】
【0169】
膝屈曲モデル研究
膝屈曲モデルを使用して、グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)抗菌切開ドレープの皮膚へのドレープ接着及びドレープ除去性能を評価した。膝屈曲モデルを使用して、手術条件をシミュレートした。
【0170】
試験では、被験者はパッド付きの検査台に座っていたか又は横になっていた。試験部位に過剰な量の毛が存在する場合、試験開始前にその領域を刈り込んで、サンプルと皮膚との良好な接触を確実にした。両脚を、所望の外科用調製物、CHLORAPREP HI-LITE ORANGE(Becton-Dickinson,Franklin Lakes,NJ)で調製した。皮膚調製物を少なくとも3分間空気乾燥した後、脚にドレープをかけた。各被験者に、2つの3インチ×10インチのドレープサンプルを、正中線の左側及び右側の膝の上に長手方向に各脚に適用した。約1/4インチ~1/2インチの間隙が、膝蓋骨の約3インチ上から膝の3インチ下まで、2つのドレープ間に残された。
【0171】
ドレープサンプルを約30分間着用させた。ドライフレックスチャレンジ(膝を快適になるまで10回屈曲させ、まっすぐに伸ばす)、ウェットフレックスチャレンジ(生理食塩水に浸したガーゼを適用して正中線を5分間覆い、続いて10回膝を屈曲させる)、及びパルス洗浄チャレンジ(低設定パルス洗浄を使用して2つのドレープの間の正中線に沿って200~300ccの生理食塩水を適用する)後に、ドレープリフト(drape lift)を評価した。ドレープリフトの領域をマークし、各チャレンジ後に写真撮影した。パルス洗浄リフト評価の終わりに、ドレープサンプル及び過剰な皮膚調製物を除去した。皮膚の状態(刺激及び剥がれ)の評価、接着剤の残留、除去の容易さ、及び被験者の疼痛レベルの評価を、ドレープ除去後に行った。リフト面積(mm2)及びリフト頻度(%)の幾何平均を、各臨床研究の全ての被験者について報告した。
【0172】
実施例4
接着剤A5を使用して、上記の手順を用いて代表的なCHGドレープを作製した。比較用接着剤(C1)も使用して比較用ドレープを作製した。両方の接着剤配合物を表5に提供する。代表的なCHGドレープ、比較ドレープ、及び市販のIobanドレープ(3M Company)の膝屈曲モデル研究の結果を表6に提供する。洗浄後のリフト面積(非0値の幾何平均)及びドレープリフト頻度(任意の量のリフトを示すドレープサンプルの割合)は、A5及び3M Ioban切開ドレープについて統計的に差がないことが観察された。C1ドレープは、リフト面積及びリフト頻度においてこれらのドレープの両方よりも統計的に劣っており、水素結合基が分子上の3個を超える炭素原子によって分離されているジオール可塑剤を使用する利点を強調している。
【表5】
【表6】
【0173】
等価物
当業者であれば、日常業務に過ぎない実験法を使用して、本明細書に具体的に記載した特定の実施形態に対する多数の等価物を認識している、又は見極めることができるであろう。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【国際調査報告】