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特表2024-503293金属基材への接着が改善されたシリル化接着剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】金属基材への接着が改善されたシリル化接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/00 20060101AFI20240118BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C09J123/00
C09J11/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540005
(86)(22)【出願日】2021-12-13
(85)【翻訳文提出日】2023-08-24
(86)【国際出願番号】 EP2021085519
(87)【国際公開番号】W WO2022144169
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】20217917.2
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501305888
【氏名又は名称】ボスティク エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ, イーチェン
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040DA001
4J040DM002
4J040DM012
4J040GA31
4J040HA196
4J040JB01
4J040KA26
4J040KA29
4J040KA31
4J040KA37
4J040KA42
4J040MA02
4J040NA16
4J040NA19
(57)【要約】
1)-20重量%~50重量%のシラン修飾APAOと、-2重量%~15重量%の、膨張中空熱可塑性樹脂ポリマーミクロスフェアからなる充填剤と、-10重量%~60重量%の粘着付与剤と、を含む、湿気硬化性シリル化接着剤組成物。2)-当該組成物を130℃~180℃で加熱して、基材上に適用するのに十分に液状にすることと、次いで-一次基材の表面上に当該組成物をコーティングすることと、次いで-一次基材のコーティングされた表面を二次基材の表面と接触させることと、次いで-コーティングされた組成物を水、好ましくは大気水分で化学的に硬化させることと、を含む、組立製品を製造するための方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿気硬化性シリル化接着剤組成物であって、前記組成物の総重量に基づいて、
-20重量%~50重量%の少なくとも1つのシラン修飾非晶質ポリ-α-オレフィン(又はAPAO)(A)と、
-2重量%~15重量%の、膨張中空熱可塑性樹脂ポリマーミクロスフェアからなる少なくとも1つの充填剤(B)と、
-10重量%~60重量%の少なくとも1つの粘着付与剤(C)と、
を含む、湿気硬化性シリル化接着剤組成物。
【請求項2】
シラン修飾非晶質ポリ-α-オレフィン(A)が、式(I)の少なくとも1つ、好ましくは2つのアルコキシシリル基を含み、
-Si(R(OR3-p(I)
式中、
-Rは、1~4個の炭素原子を含む直鎖又は分岐アルキルラジカルを表し、いくつかのラジカルRが存在する場合、これらのラジカルは同一又は異なる可能性があり、
-Rは、1~4個の炭素原子を含む直鎖又は分岐アルキルラジカルを表し、いくつかのラジカルRが存在する場合、これらのラジカルは同一又は異なる可能性があり、2つの基ORが同じ環に係合していてもよい可能性があり、
-pは、0、1又は2に等しい整数、好ましくは0又は1に等しい、
ことを特徴とする、請求項1に記載の湿気硬化性シリル化接着剤組成物。
【請求項3】
充填剤(B)が、コロイド状炭酸カルシウムでコーティングされた膨張中空熱可塑性樹脂ポリマーミクロスフェアからなることを特徴とする、請求項1又は2のいずれかに記載の湿気硬化性シリル化接着剤組成物。
【請求項4】
粘着付与剤(C)が、C5画分、C9画分及びナフサ分解のジシクロペンタジエンの中から選択される少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する環状オレフィンを含む、シラン及び単量体を含む組成物の熱重合によって、C5樹脂、C9樹脂及びC5/C9樹脂の混合物のシラン化誘導体の中から選択されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の湿気硬化性シリル化接着剤組成物。
【請求項5】
粘着付与樹脂(複数可)(C)の軟化点が90℃~115℃の範囲にあることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の湿気硬化性シリル化接着剤組成物。
【請求項6】
前記組成物の総重量に基づいて、
-30重量%~40重量%の少なくとも1つのシラン修飾APAO(A)と、
-3重量%~10重量%の少なくとも1つの充填剤(B)と、
-20重量%~40重量%の少なくとも1つの粘着付与剤(C)と、
を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の湿気硬化性シリル化接着剤組成物。
【請求項7】
いずれのアルコキシシリル基も含有しない少なくとも1つの追加の熱可塑性樹脂ポリマー(D)を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の湿気硬化性シリル化接着剤組成物。
【請求項8】
少なくとも1つの追加の熱可塑性樹脂ポリマー(D)が、スチレンブロック共重合体(SBC)の中から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の湿気硬化性シリル化接着剤組成物。
【請求項9】
少なくとも1つの追加の熱可塑性樹脂ポリマー(D)が直鎖SEBSトリブロック共重合体であることを特徴とする、請求項7又は8のいずれかに記載の湿気硬化性シリル化接着剤組成物。
【請求項10】
少なくとも1つのシラン官能化ポリオレフィンワックス(E)を含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の湿気硬化性シリル化接着剤組成物。
【請求項11】
ナフテン油、パラフィン油、植物油、ポリイソブチレン、ベンゾエートエステル、非シラン官能化ワックス及びアクリル酸又はカルボン酸修飾ワックスから選択され得る少なくとも1つの可塑剤(F)を含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の湿気硬化性シリル化接着剤組成物。
【請求項12】
輸送及びエレクトロニクス産業、好ましくは自動車産業における、組立接着剤又はラミネート接着剤としての、請求項1~11のいずれか一項に記載の湿気硬化性シリル化接着剤組成物の使用。
【請求項13】
組立製品を製造するための方法であって、
-請求項1~11のいずれか一項に記載の湿気硬化性シリル化接着剤組成物を130℃~180℃の範囲の温度で、前記組成物を基材上に適用するのに十分な液体にするのに十分長い時間加熱する工程(i)と、次いで
-一次基材の表面上に前記組成物をコーティングする工程(ii)と、次いで
-一次基材のコーティングされた表面を二次基材の表面と接触させる工程(iii)と、次いで
-コーティングされた組成物を水、好ましくは大気水分で化学的に硬化させる工程(iv)と、
を含む、組立製品を製造するための方法。
【請求項14】
一次基材及び二次基材の少なくとも一方がアルミニウムであることを特徴とする、請求項13に記載の組立製品を製造するための方法。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか一項に定義されるような少なくとも1つの硬化シリル化接着剤組成物によって結合された少なくとも2つの基材を含む組立製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属基材上の接着性が改善された湿気硬化性ポリオレフィンホットメルト接着剤組成物、及び金属基材、好ましくはアルミニウム基材を含む基材を組み立てるためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤は無溶媒接着剤であり、室温で固体であり、溶融物の形態で結合される基材に適用される。冷却後、接着剤は固化し、物理的に生じる結合によって基材との接着結合を形成する。従来のホットメルト接着剤は非反応性接着剤であり、加熱時に再び軟化し、したがって高温での使用には適していない。ホットメルト接着剤は、一般に、熱可塑性樹脂ポリマー並びに場合により粘着付与樹脂及び可塑剤を含む組成物の形態で提供される。
【0003】
反応性ホットメルト接着剤は、例えば三次元固体ネットワークへのポリマー鎖の架橋によって接着剤の化学硬化を可能にする反応性基を有するポリマーを含有する。この硬化ネットワークのために、反応性ホットメルトは加熱時に軟化せず、したがって、これらの接着剤は高温での使用にも適している。
【0004】
ポリマーの化学的硬化は、例えば、組成物を加熱又は水に曝露することによって開始され得る。湿気硬化性ホットメルト接着剤は、典型的には、イソシアネート又はシラン基で官能化されたポリマーを含有し、組み立てられるために基材の表面に存在する水、特に大気水分又は水分と接触した時にポリマー鎖の架橋を可能にする。
【0005】
輸送産業、特に自動車産業において組立接着剤として使用される典型的な湿気硬化性ホットメルト接着剤には、ポリウレタン系及びポリオレフィン系のホットメルト接着剤が含まれる。
【0006】
反応性ホットメルトポリウレタン(HMPUR)接着剤は、主にイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーからなり、これは、適切なポリオール、典型的にはジオールを、化学量論的に過剰のポリイソシアネート、典型的にはジイソシアネートと反応させることによって得られる。水と接触すると、ポリウレタンプレポリマーの残留イソシアネート基はカルバミン酸を形成し、これは不安定であり、アミン及び二酸化炭素に分解する。アミンは、他のイソシアネート基と急速に反応して尿素結合を形成する。
【0007】
最先端のHMPUR接着剤はある種の欠点を有する。1つの欠点は、ポリイソシアネート、特により揮発性のジイソシアネートの残留単量体含有量である。いくつかのHMPUR接着剤組成物は、有意な量の未反応単量体ジイソシアネートを含有し得る。ホットメルト適用温度(典型的には100℃~170℃)では、単量体ジイソシアネートはかなりの蒸気圧を有し、ガス状形態で部分的に排出され得る。イソシアネート蒸気は毒性、刺激性であり、感作効果を有するため、適用プロセスにおいて予防措置を講じなければならない。最新技術のHMPUR接着剤の別の欠点は、ポリプロピレン及びポリエチレン等の非極性基材へのそれらの接着が不十分であるため、そのような非極性基材を結合するために適用しなければならない場合、対応する基材表面をプライマーで前処理する必要があるという事実に由来する。このような前処理は、総適用コストを大幅に増加させる。
【0008】
反応性ホットメルトポリオレフィン接着剤(HMPOR)、特にシラン修飾非晶質ポリ-α-オレフィン(又はAPAOと略される「非晶質ポリ-αオレフィン」)に基づくものが、HMPUR接着剤組成物に取って代わるために開発されてきた。それらの高い非極性特性のために、それらは原則として、基材表面をプライマーで前処理することなく、ポリプロピレン及びポリエチレン等の非極性基材並びに対応する複合材を結合するのに適している。更に、イソシアネートが存在しないため、イソシアネート単量体蒸気の放出についての懸念もない。
【0009】
シラン修飾ポリ-α-オレフィンに基づく反応性ポリオレフィンホットメルト接着剤は、例えば、米国特許第5,994,474号及び米国特許第8,865,822号に開示されている。水と接触すると、メトキシシラン基等のポリオレフィンポリマーのシラン基は、水と反応してシラノールを形成し、その後、縮合反応の一部として、他のシラノール基との反応を経て、個々のポリマー分子間にシロキサン共有結合を形成する。
【0010】
自動車産業において、HMPORは、ヘッドライナー、アームレスト又はドアパネル積層の製造に広く使用されている。しかし、極性基材への接着性が比較的低いため、PMMA又はアルミニウム等の金属等の極性基材の結合に対して実施することは困難である。現在、天井のスカイライト等の自動車ヘッドライナーの開発の増加に伴い、金属製、特にアルミニウム製のフレームが、例えばスカイライト窓システムの支持体としてますます一般的に使用されている。これらの種類の使用のために、現在の反応性HMPORは、アルミニウムに対する接着性の欠如のために実施することができなかった。
【0011】
SIKAのPCT出願国際公開第2019/048593号は、1つの熱可塑性樹脂シラン基含有ポリ-α-オレフィン、及びモノイソシアネートと、ヒドロキシル基、メルカプト基及びアミノ基の中から選択される1つのイソシアネート反応性基を含有するシランとの反応生成物を含む接着剤組成物を記載している。しかしながら、そのような組成物のアルミニウムへの接着性は不十分であると指摘されている。
【0012】
HENKELのPCT出願国際公開第2019/109328号は、シラン修飾ポリマー及び粘着付与剤に加えて、エチレン性不飽和カルボン酸グラフト修飾ポリマーを含む湿気硬化性ホットメルト接着剤組成物を記載している。本出願は、金属基材、特にアルミニウムへの接着を指すものではない。
【0013】
したがって、金属基材、好ましくはアルミニウム基材に対する改善された接着性を有するシラン修飾APAO系接着剤組成物が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、湿気硬化性シリル化接着剤組成物に関し、当該組成物の総重量に基づいて、
-20重量%~50重量%の少なくとも1つのシラン修飾非晶質ポリ-α-オレフィン(又はAPAO)(A)と、
-2重量%~15重量%の、膨張中空熱可塑性樹脂ポリマーミクロスフェアからなる少なくとも1つの充填剤(B)と、
-10重量%~60重量%の少なくとも1つの粘着付与剤(C)と、
を含む。
【0015】
別途指示がない限り、本発明による組成物の成分の量を表すために本文で使用される百分率は、重量/重量百分率に対応する。
【0016】
先に定義されたような湿気硬化性シリル化接着剤組成物は、予想外にも、湿気で硬化した後に、金属基材、特にアルミニウム基材に対する高レベルの接着性も有利に有する硬化組成物になることが見出された。
【0017】
このような高レベルの接着は、組立体の結合領域上に存在する接着接合部が剪断応力を受ける試験において、当該硬化組成物によって結合領域上で接合された2つのアルミニウムプレートからなる組立体の破壊モードから実験的に推測され得る。実際、接着剤の分野では、引張及び/又は剪断試験における以下のいくつかのタイプの破壊が区別され得る。
-2つの基材結合領域の各々が接着剤の画分を有する接着接合部の実際の層内で発生する凝集破壊(多くの場合、100%のCFとして示される)、
-接着剤/基材接触面で発生し、2つの基材接合領域の一方に接着剤が残らない接着破壊(多くの場合、100%AFとして示される)。
【0018】
凝集破壊領域及び接着破壊領域の部分を計算することによって評価される2つの破壊モードの混合に対応する多くの中間状況も存在する。
【0019】
ここで、上述の2つのアルミニウムプレート組立体は、剪断試験において、100%の凝集破壊又は少なくとも50%のCFを有利に示すことが見出された。
【0020】
アルミニウム基材に対するその高い接着品質に加えて、対応する接着接合部はまた、有利な凝集特性を示し、これは、上述の2つのアルミニウムプレート組立体の破壊(又は破断又は破裂)に対応する応力の測定によって観察され得る。
【0021】
したがって、本発明による湿気硬化性シリル化接着剤組成物は、金属基材、より好ましくはアルミニウム基材を組み立てることを目的とする使用によく適している。
【0022】
シラン修飾非晶質ポリ-α-オレフィン(A):
本発明による湿気硬化性シリル化接着剤組成物は、少なくとも1つのシラン修飾非晶質ポリ-α-オレフィン(A)を含む。
【0023】
「α-オレフィン」という用語は、第1の炭素原子(α-炭素)に炭素-炭素二重結合を有する式C2n(nは炭素原子の数に対応する)のアルケンを示す。α-オレフィンの例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-メチル-1-プロペン(イソブチレン)、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン及び1-オクテンが挙げられる。
【0024】
「ポリ-α-オレフィン」という用語は、1つ又は複数のα-オレフィンの重合又はオリゴマー化によって得られるホモポリマー及び共重合体を示す。
【0025】
特に有用なシラン修飾ポリ-α-オレフィンは、完全に非晶質であるか、又は低レベルの結晶性を有する。一実施形態では、結晶化度は、X線回折によって決定される場合、約25%以下である。
【0026】
好ましい実施形態によれば、シラン修飾非晶質ポリ-α-オレフィン(A)は、式(I)の少なくとも1つ、好ましくは2つのアルコキシシリル基を含み、
-Si(R(OR3-p(I)
式中、
-Rは、1~4個の炭素原子を含む直鎖又は分岐アルキルラジカルを表し、いくつかのラジカルRが存在する場合、これらのラジカルは同一又は異なる可能性があり、
-Rは、1~4個の炭素原子を含む直鎖又は分岐アルキルラジカルを表し、いくつかのラジカルRが存在する場合、これらのラジカルは同一又は異なる可能性があり、2つの基ORが同じ環に係合し得る可能性があり、
-pは、0、1又は2に等しい整数、好ましくは0又は1に等しい。
【0027】
このようなポリ-α-オレフィンを含むアルコキシシリル基は当業者に公知であり、例えば、チーグラー・ナッタ触媒重合又はメタロセン触媒重合によって得られたポリ-α-オレフィンにビニル-トリメトキシシラン等の不飽和シランをグラフトすることによって製造され得る。
【0028】
ポリ-α-オレフィンを含有する適切なアルコキシシリル基としては、シラングラフトホモポリマー、共重合体、及びエチレン、プロピレン、1-ブテン及び高級α-オレフィンからなる群から選択される単量体のターポリマーが挙げられる。ポリ-α-オレフィンを含有する特に好適なアルコキシシリル基としては、プロピレンのシラングラフトホモポリマー、プロピレン及びエチレンのシラングラフト共重合体、プロピレン及び1-ブテン又は他の高級α-オレフィンのシラングラフト共重合体、並びにエチレン、プロピレン、及び1-ブテンのシラングラフトターポリマーが挙げられる。好ましくは、少なくとも1つのアルコキシシリル基含有ポリ-α-オレフィンは、シラングラフトアタクチックポリ-α-オレフィン、特にシラングラフト非晶質ポリ-α-オレフィン(APAO)である。
【0029】
非晶質ポリ-α-オレフィンは市販されている。例えば、エチレン、プロピレン及び1-ブテンに基づく非晶質ポリ-α-オレフィンは、EVONIKのVESTOPLAST(登録商標)製品群から得ることができ、これには、VESTOPLAST(登録商標)206と呼ばれるシラン修飾非晶質ポリ-α-オレフィングレードが含まれる。
【0030】
充填剤(B):
本発明による湿気硬化性シリル化接着剤組成物は、膨張中空熱可塑性樹脂ポリマーミクロスフェアからなる少なくとも1つの充填剤(B)を含む。
【0031】
膨張性熱可塑性樹脂ポリマーミクロスフェアは、熱可塑性樹脂ポリマーシェルと、その中に封入された発泡剤とを含む。このような膨張性ミクロスフェアを、一定の時間にわたって十分な程度の膨張を誘導するのに十分高い温度で加熱すると、膨張中空熱可塑性樹脂ポリマーミクロスフェアが得られる。
【0032】
好ましい実施形態によれば、充填剤(B)は、コロイド状炭酸カルシウムでコーティングされた膨張中空熱可塑性樹脂ポリマーミクロスフェアからなる。そのようなミクロスフェアは公知であり、米国特許第6225361号に開示されている。膨張した熱可塑性樹脂ポリマーミクロスフェアは、中空の膨張した熱可塑性樹脂ポリマーミクロスフェアシェルと、その表面に堆積したコロイド状炭酸カルシウムとを有する複合ビーズを提供するために、コロイド状炭酸カルシウムと混合される。
【0033】
このような充填剤はまた、無水流動性製品として、例えば、EMC Organic-inorganicハイブリッド充填剤の名称でJapan Fillite Co.Ltdから市販されている。
【0034】
粘着付与剤(C):
本発明による湿気硬化性シリル化接着剤組成物は、少なくとも1つの粘着付与剤(C)を含む。
【0035】
粘着付与樹脂(C)は、好ましくは以下のカテゴリーの中から選択される。
(a)例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、蒸留ロジン、水素化ロジン、二量化ロジン及び重合ロジン等の天然及び修飾ロジン;
(b)例えば、白木ロジンのグリセロールエステル、水素化ロジンのグリセロールエステル、重合ロジンのグリセロールエステル、白木ロジンのペンタエリスリトールエステル、水素化ロジンのペンタエリスリトールエステル、トール油ロジンのペンタエリスリトールエステル及びロジンのフェノール修飾ペンタエリスリトールエステル等の天然ロジン及び修飾ロジンのグリセロール及びペンタエリスリトールエステル;
(c)約20℃~140℃のリングアンドボール軟化点を有する水素化ポリテルペン樹脂が含まれるポリテルペン樹脂であって、後者のポリテルペン樹脂は、一般に、適度に低温でのフリーデルクラフツ触媒の存在下で、ピネンとして知られるモノテルペン等のテルペン炭化水素の重合から生じる、ポリテルペン樹脂;
(d)例えば、酸性媒体中でテルペンとフェノールとの縮合から生じるもの等フェノール修飾テルペン樹脂;
(e)約60℃~140℃のリングアンドボール軟化点を有する脂肪族(脂環式を含む)石油炭化水素樹脂(C5)であって、C5-炭化水素単量体の重合から生じる脂肪族(脂環式を含む)石油炭化水素樹脂(C5)、及びその後のその全部又は部分水素化から生じる対応する水素化誘導体;
(f)約60℃~140℃のリングアンドボール軟化点を有する芳香族石油炭化水素樹脂(C9)であって、C9-炭化水素単量体の重合から生じる、芳香族石油炭化水素樹脂(C9);及びその後のその全部又は部分水素化から生じる対応する水素化誘導体;
(g)約60℃~140℃のリングアンドボール軟化点を有する脂肪族(脂環式を含む)及び/又は芳香族石油樹脂(C5/C9)であって、C5/C9炭化水素単量体の重合から生じる、脂肪族(脂環式を含む)及び/又は芳香族石油樹脂(C5/C9);及びその後のその全部又は部分水素化から生じる対応する水素化誘導体;
(h)C5画分、C9画分、及びナフサ分解のジシクロペンタジエンの中から選択される少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する環状オレフィンを含む、シラン及び単量体を含む組成物の熱重合による、上記クラス(e)、(f)及び(g)によって定義されるような、C5樹脂、C9樹脂及びC5/C9樹脂の混合物のシラン化誘導体。そのようなシラン化誘導体は、例えば欧州特許第3176191号に開示されている。
【0036】
より好ましい実施形態によれば、粘着付与樹脂(C)は、カテゴリー(h)のシラン化誘導体の中から選択される。
【0037】
クラス(e)又は(g)に属する粘着付与樹脂を調製するのに有用なC5-炭化水素単量体の例として、トランス-1,3-ペンタジエン、シス-1,3-ペンタジエン、2-メチル-2-ブテン、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエン、シクロペンテン、及びそれらの任意の混合物が言及され得る。
【0038】
クラス(f)又は(g)に属する粘着付与樹脂を調製するのに有用なC9-炭化水素単量体の例として、ビニルトルエン、ジシクロペンタジエン、インデン、メチルスチレン、スチレン、メチルインデン、及びそれらの任意の混合物が言及され得る。
【0039】
本発明の特定の実施形態によれば、上述の粘着付与樹脂の2つ以上の混合物が、本発明によるホットメルト接着剤組成物に使用される。
【0040】
本発明に従って使用される粘着付与樹脂(複数可)(C)は市販されている。
【0041】
クラス(a)に属する市販の粘着付与樹脂(複数可)(C)の例として、以下のものが言及され得る。
-KRATON CompanyからSYLVAROS(登録商標)(85、90及びNCY)の商品名で販売されている非修飾の天然トール油ロジン、
-EASTMAN CompanyからFORALYN(登録商標)Eの商品名で販売されている部分水素添加ロジン、及びEastmanからFORAL(登録商標)AX-Eの商品名で販売されている完全水素添加ロジン、
-EASTMAN CompanyからDYMEREX(登録商標)の商品名で販売されている二量化ロジン。
【0042】
クラス(b)に属する市販の粘着付与樹脂(複数可)(C)の例として、以下のものが言及され得る。
両方ともKRATON Companyから入手可能である、
-ペンタエリスリトール系トール油ロジンエステルであるSYLVALITE(登録商標)RE 100L、及び
-トール油ロジンのグリセロールエステルであるSYLVALITE(登録商標)RE 85L。
【0043】
クラス(c)に属する市販の粘着付与樹脂(複数可)(C)の例として、以下のものが言及され得る。
-KRATON CompanyからSYLVAGUM(登録商標)TR及びSYLVARES(登録商標)TRシリーズ(7115、7125、A25L、B115、M1115)の商品名で販売されているポリテルペン粘着付与剤。
【0044】
クラス(d)に属する市販の粘着付与樹脂(複数可)(C)の例として、以下のものが言及され得る。
-SYLVARES(登録商標)TP(96、2040、300、7042、2019)の商品名で販売されているKRATON Companyのテルペンフェノール樹脂。
【0045】
クラス(e)に属する市販の粘着付与樹脂(複数可)(C)の例として、以下のものが言及され得る。
-EASTMAN CompanyからWINGTACK(登録商標)98、WINGTACK(登録商標)ETの商品名で販売されている、及びEXXONMOBILからESCOREZ(登録商標)1310LCの商品名で販売されている、60℃~140℃の範囲のリングアンドボール軟化点を有する、C5-石油炭化水素画分(トランス-1,3-ペンタジエン、シス-1,3-ペンタジエン、2-メチル-2-ブテン、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエン、シクロペンテンの混合物等)に基づく脂肪族及び脂環式石油炭化水素樹脂、
-KOLON CompanyからSUKOREZ(登録商標)SU210及びSUKOREZ(登録商標)230の商品名で販売されている、80℃~140℃の範囲のリングアンドボール軟化点を有する、C5-石油炭化水素画分(トランス-1,3-ペンタジエン、シス-1,3-ペンタジエン、2-メチル-2-ブテン、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエン、シクロペンテンの混合物等)に基づく部分脂肪族及び脂環式石油炭化水素樹脂。SUKOREZ(登録商標)SU210の軟化点は110℃である。
-ESCOREZ(登録商標)5400シリーズ(5400、5415、5490)の商品名で販売されているEXXONMOBILからの、60℃~140℃の範囲のリングアンドボール軟化点を有する、ジシクロペンタジエン-石油炭化水素画分に基づく完全水素化脂環式石油炭化水素樹脂。ESCOREZ(登録商標)5400の軟化点は100℃である。
【0046】
クラス(f)に属する市販の粘着付与樹脂(複数可)(C)の例として、以下が言及され得る。
-HIKOTACK(登録商標)(P-90、P110 S及びP120 S)の商品名で販売されているKOLON INDUSTRIESから入手可能な、約60℃~140℃のリングアンドボール軟化点を有する、C9-炭化水素石油画分(ビニルトルエン、ジシクロペンタジエン、インデン、メチルスチレン、スチレン、メチルインデンの混合物等)に基づく芳香族石油炭化水素樹脂。
【0047】
クラス(g)に属する市販の粘着付与樹脂(複数可)(C)の例として、以下が言及され得る。
-ESCOREZ(登録商標)5600シリーズ(5600、5615、5690)の商品名で販売されているEXXONMOBIL Companyからの、約60℃~140℃のリングアンドボール軟化点を有する、C5/C9炭化水素石油画分に基づく部分水素化脂環式修飾芳香族石油炭化水素樹脂。ESCOREZ(登録商標)5600の軟化点は100℃である。
-93℃の軟化点を有する、商品名QUINTONE(登録商標)DX390NとしてZEONから販売されているC5/C9炭化水素石油画分に基づく非水素化脂肪族修飾芳香族炭化水素石油樹脂。
【0048】
クラス(h)に属する市販の粘着付与樹脂(複数可)(C)の例として、商品名HRR(登録商標)(100、A100及び120)で販売されているKOLON INDUSTRIESから入手可能なシラン化樹脂(複数可)が言及され得る。
【0049】
HRR(登録商標)-100及びHRR(登録商標)-A100は、リングアンドボール軟化点が100℃である。HRR(登録商標)-120は、リングアンドボール軟化点が120℃である。
【0050】
好ましい実施形態によれば、粘着付与樹脂(複数可)(C)のリングアンドボール(又は軟化点)は、好ましくは90℃~125℃の範囲、更により好ましくは90℃~115℃の範囲にある。
【0051】
軟化温度(又は点)は、標準化されたASTM E28試験に従って決定され、その原理は以下の通りである。直径約2cmの真鍮リングに、溶融状態の試験対象の樹脂を充填する。室温に冷却した後、リング及び固体樹脂を、温度が毎分5℃変化し得るサーモスタット付きグリセロール浴中に水平に置く。直径約9.5mmのスチールボールを、固体樹脂ディスクの中心に置く。軟化温度は、5℃/分の速度で浴の温度を上昇させる間、樹脂ディスクがボールの重量下で25.4mmの量だけ流れる温度である。
【0052】
特に好ましい実施形態によれば、本発明による湿気硬化性シリル化接着剤組成物は、当該組成物の総重量に基づいて、
-30重量%~40重量%の少なくとも1つのシラン修飾APAO(A);
-3重量%~10重量%の少なくとも1つの充填剤(B);及び
-20重量%~40重量%の少なくとも1つの粘着付与剤(C)
を含む。
【0053】
任意成分:
本発明による湿気硬化性シリル化接着剤組成物は、シラン修飾APAO(A)に加えて、いずれのアルコキシシリル基を含有しない少なくとも1つの追加の熱可塑性樹脂ポリマー(D)を含んでもよい。
【0054】
好ましくは、このようなポリマー(D)は、スチレンブロック共重合体(SBC)の中から選択される。
【0055】
本発明による有用なスチレンブロック共重合体(複数可)は、ポリスチレンブロックである少なくとも1つの非エラストマーブロックAと、完全に又は部分的に水素添加された又は水素添加されていないジエンポリマーブロックである少なくとも1つのエラストマーブロックBと、を含む直鎖又は放射状ブロック共重合体を含む。
【0056】
特に、本発明によるスチレンブロック共重合体は、以下の共重合体:
-AB構造の直鎖ジブロック共重合体、
-ABA構造の直鎖トリブロック共重合体、
-(AB)nY構造の放射状ブロック共重合体
及びそれらの混合物から選択され得、
式中、
-Aは非エラストマー性ポリスチレンブロックであり、
-Bは、ポリブタジエン又はポリイソプレンブロック等のエラストマー性ジエンブロックポリマーであり、
-Yは多価化合物であり、
-nは少なくとも3の整数である。
【0057】
ABA構造の直鎖トリブロック共重合体は、単独で、又はAB構造の直鎖ジブロック共重合体と混合して使用され得る。
【0058】
エラストマーブロックBは、その熱安定性を改善するために、部分的又は完全な水素化によって後処理され得る。
【0059】
好ましくは、本発明による有用なスチレンブロック共重合体は、以下の直鎖トリブロック共重合体から選択される。
-スチレン-ブタジエンジブロック(SB)を含む又は含まないスチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、
-スチレン-イソプレンジブロック(SI)を含む又は含まないスチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、
-スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、
-スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレン共重合体(SBBS)、
スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)、
-及びそれらの任意の混合物。
【0060】
より好ましくは、スチレンブロック共重合体は、上で定義したABA構造の直鎖トリブロック共重合体であり、更により好ましい実施形態によれば、直鎖SEBSトリブロック共重合体である。
【0061】
スチレンブロック共重合体が、上で定義したようなABA構造の直鎖トリブロック共重合体とAB構造の直鎖ジブロック共重合体との混合物である場合、直鎖ジブロック含有量は、好ましくは、トリブロックとジブロックとの混合物の総重量に対して1~70重量%の範囲である。
【0062】
上で定義したABA構造の直鎖トリブロック共重合体中の末端ブロックAの量は、ABA構造の直鎖トリブロック共重合体の総重量に対して、又はABA構造及びAB構造の直鎖トリブロック共重合体及びジブロック共重合体の混合物の場合、トリブロック及びジブロックの混合物の総重量に対して、14~51重量%、好ましくは20~40重量%の範囲であり得る。
【0063】
有用な市販のスチレンブロック共重合体としては、KRATON POLYMERSからのKRATON D及びG(登録商標)シリーズ、VERSALIS(ENI group)からのEUROPRENE Sol T(登録商標)シリーズ、DYNASOL ELASTOMERSからのSOLPRENE(登録商標)シリーズ、並びにTSRC CorporationからのTAIPOL(登録商標)及びVECTOR(登録商標)シリーズが挙げられる。
【0064】
有用な特定のスチレンブロック共重合体の例として、以下が言及され得る。
-スチレン及びエチレン/ブチレンに基づく透明な直鎖トリブロック共重合体であり、ポリスチレン含有量は20%、平均分子量は約110000g/mol、MFI(ASTMD1238に従って測定)は、230℃、2.16キログラム(kg)の荷重下で19グラム(g)/10分(mn)、SEBジブロック含有量は混合物の総重量に対して約7重量%である、KRATON(登録商標)G1643V。
-直鎖SBSトリブロックとSBジブロック共重合体の混合物であり、混合物の総重量に対して29.5重量%のスチレン含有量、約122000g/molの平均分子量、5キログラム(kg)の荷重下、200℃で8.5グラム(g)/10分(mn)のMFI(ISO1133に従って測定)、及び混合物の総重量に対して約17重量%のSBジブロック含有量を有する、KRATON(登録商標)D1152 ES。
-直鎖SISトリブロックとSIジブロック共重合体の混合物であり、混合物の総重量に対して15重量%のスチレン含有量、5kgの荷重下、200℃で9g/10mnのMFI(ISO1133に従って測定)、約220000g/molの平均分子量、及び混合物の総重量に対して約19重量%のSIジブロック含有量を有する、KRATON(登録商標)D1161。
-トリブロック共重合体の総重量に対して40重量%のスチレン含有量、1%未満のSBジブロック含有量、5kgの荷重下、190℃で3~10g/10mnのMFI(ASTMD1238に従って測定)、約102400g/molの平均分子量を有する直鎖SBSトリブロック共重合体である、TSRC Corporation製のTAIPOL(登録商標)SBS4202。
-トリブロック共重合体の総重量に対して44重量%のスチレン含有量、1%未満のSIジブロック含有量、5kgの荷重下、200℃で40g/10mnのMFI(ASTMD1238に従って測定)、約106000g/molの平均分子量を有する直鎖SISトリブロック共重合体である、TSRC Corporation製のVECTOR(登録商標)4411。
【0065】
好ましくは、スチレンブロック共重合体(D)は、本発明による組成物中に、当該組成物の総重量に基づいて、4重量%~16重量%、より好ましくは8%~12%の範囲の量で存在する。
【0066】
本発明による湿気硬化性シリル化接着剤組成物はまた、場合により、少なくとも1つのシラン官能化ポリオレフィンワックス(E)を含んでもよい。適切なシラン官能化ポリオレフィンワックスは、ポリオレフィンワックスにシランをグラフトすることによって製造される。好ましいシラン官能化ポリオレフィンワックスとしては、シランでグラフトされたエチレン及びプロピレンホモポリマー又は共重合体のワックス、特にシランでグラフトされたポリプロピレン又はポリエチレンワックスが挙げられる。
【0067】
このようなシラン官能化ワックスは、例えばシラン修飾ポリプロピレンワックスであるLicocene(登録商標)PP SI 1362という名称でClariantから市販されている。
【0068】
接着剤組成物中の少なくとも1つのシラン官能化ポリオレフィンワックスの量は、特に制限されない。少なくとも1つのシラン官能化ポリオレフィンワックスは、接着剤組成物の総重量に基づいて、少なくとも1.0重量%、特に少なくとも2.5重量%の量で接着剤組成物中に存在してもよい。好ましくは、少なくとも1つのシラン官能化ポリオレフィンワックスは、接着剤組成物の総重量に基づいて、1.0~30.0重量%、好ましくは2.5~20.0重量%、より好ましくは8.0~17.0重量%の量で接着剤組成物中に存在する。
【0069】
本発明による湿気硬化性シリル化接着剤組成物はまた、任意選択で、ナフテン油、パラフィン油、植物油、ポリイソブチレン、ベンゾエートエステル、非シラン官能化ワックス及びアクリル酸又はカルボン酸修飾ワックスから選択され得る少なくとも1つの可塑剤(F)を含んでもよい。
【0070】
可塑剤(複数可)(F)は、ホットメルト接着剤組成物に良好な加工性を付与し得る。更に、可塑剤(複数可)(F)は、ホットメルト接着剤の接着強度又は供給温度(使用温度)を実質的に低下させることなく、所望の粘度制御を提供することもできる。
【0071】
ナフテン油及びパラフィン油は、ナフテン炭化水素(脂肪族、飽和又は不飽和、C4~C7員炭化水素環、好ましくは脂肪族、飽和又は不飽和、C4~C6員環)の混合物からなる石油系油である。例として、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等のシクロアルカン)、パラフィン系炭化水素(飽和、直鎖又は分岐鎖アルカン)及び芳香族炭化水素(単環式又は多環式であってもよい芳香族炭化水素環、好ましくは芳香族C6員炭化水素環)が言及され得る。
【0072】
ナフテン油及びパラフィン油の分類は、油中の各タイプの炭化水素の量に基づいて行われる。典型的には、パラフィン油は、少なくとも50重量%のパラフィン系炭化水素含有量を有し、ナフテン油は、可塑剤の総重量に対して30%~40重量%のナフテン炭化水素含有量を有する。
【0073】
好ましくは、本発明による組成物に含まれる可塑剤(複数可)(F)は、植物油、好ましくはエポキシ化植物油、最も好ましくはエポキシ化亜麻仁油である。
【0074】
有用な可塑剤(F)は市販されている。例として、以下が言及され得る。
-商品名NYFLEX(登録商標)223及びNYFLEX(登録商標)222Bで販売されているNYNASからのナフテン油;
-商品名VIKOFLEX(登録商標)7190の下でARKEMAからのエポキシ化亜麻仁油。
【0075】
好ましくは、可塑剤(F)は、本発明による組成物中に、当該組成物の総重量に基づいて、1重量%~20重量%、好ましくは4%~10%の範囲の量で存在する。
【0076】
本発明による湿気硬化性シリル化接着剤組成物はまた、場合により、少なくとも1つの水分捕捉剤及び/又は1つの接着促進剤を含んでもよい。
【0077】
シラン修飾非晶質ポリ-α-オレフィン(A)の即時架橋を防止し、その貯蔵中に接着剤組成物の粘度を増加させるために、本発明による組成物の水含有量を監視することが好ましい。水分は、その成分の一部によって組成物に導入することができる。
【0078】
この理由のために、本発明による組成物は、1つ又は複数の脱水剤(又は水分捕捉剤)を含み得る。適切な脱水剤は、特に、トリアルコキシシラン(特にトリメトキシシラン)及びアミノ、メルカプト、エポキシ又はイソシアヌレート基を含むアルコキシシラン等のアルコキシシランである。その例として、ビニルトリメトキシシラン(又はVTMO)、γ-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン又はトリメトキシメチルシランを挙げることができる。
【0079】
これらの化合物のいくつかは、接着促進剤、特にアミノ、メルカプト、エポキシ又はイソシアヌレート基を含むトリアルコキシシラン、例えば[3-(2-アミノエチル)アミノプロピル]トリメトキシシラン(DAMOとも呼ばれる)又はトリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートとしても作用することができる。
【0080】
多くの水分捕捉剤及び接着促進剤が市販されている。例えば、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートは、Dynasylan(登録商標)7163の名称でEVONIKから入手可能である。
【0081】
好ましい実施形態によれば、組成物は、ホットメルト接着剤組成物の総重量に対して、0.1~2重量%の水分捕捉剤及び0.5~5重量%の接着促進剤を含み得る。
【0082】
本発明による湿気硬化性シリル化接着剤組成物はまた、好ましくは、ホットメルト接着剤組成物の総重量に対して、0.1%~2重量%の少なくとも1つの抗酸化剤を含んでもよい。
【0083】
本発明に有用な抗酸化剤は、好ましくは、ホットメルト接着剤組成物を化学分解から保護するのを助けるためにホットメルト接着剤組成物中に組み込まれる。当該分解は、一般に、紫外光又は熱のいずれかによって触媒される鎖切断から生じるフリーラジカルと二酸素との反応を含む。そのような分解は、通常、接着剤の外観(色の褐色化)又は他の物理的特性、及び接着剤の性能特性の劣化によって現れる。
【0084】
特に、抗酸化剤(複数可)は、ホットメルト接着剤組成物及びその成分が二酸素の存在下で高温で長時間加熱される接着剤の製造及び適用プロセス中に主に生じる熱分解反応の影響から接着剤を保護する。
【0085】
有用な抗酸化剤(複数可)としては、ヒンダードフェノール類並びに硫黄及びリン含有フェノールが挙げられる。ヒンダードフェノール類は当業者に周知であり、そのフェノール性ヒドロキシル基に近接して立体的にかさ高い基も含有するフェノール化合物として特徴付けることができる。特に、第3級ブチル基は、一般に、フェノール性ヒドロキシル基に対してオルト位の少なくとも1つでベンゼン環上に置換される。
【0086】
代表的なヒンダードフェノール類としては、以下が挙げられる。
1,3,5-トリメチル1-2,4,6-トリス(3-5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン;
ペンタエリスリトールテトラキス-3(3,5-ジ-tert-ブチル1-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;
n-オクタデシル-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;
4,4’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール);
4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-o-クレゾール);
2,6-ジ-tert-ブチルフェノール;
6-(4-ヒドロキシフェノキシ)-2,4-ビス(n-オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン;
2,4,6-トリス(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチル-フェノキシ)-1,3,5-トリアジン;
ジ-n-オクタデシル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート;
2-(n-オクチルチオ)エチル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート;
ソルビトールヘキサ-(3,3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニル)プロピオネート;
2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)ホスファイト(例えば、トリス-(p-ノニルフェニル)-ホスファイト(TNPP)及びビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)4,4’-ジフェニレン-ジホスホナイト,ジ-ステアリル-3,3’-チオジプロピオネート(DSTDP)を含む);
テトラキス(メチレン(3,5-ジ-ter-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート))メタン;
(トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート)、及びそれらの組合わせ。
【0087】
ヒンダードフェノール系抗酸化剤は、単独で、又は他の抗酸化剤、例えば、IRGAFOS(登録商標)シリーズのようなホスファイト系抗酸化剤、又はADDIVANTのNAUGARD(登録商標)シリーズのような芳香族アミン抗酸化剤と組み合わせて使用することができる。
【0088】
有用な抗酸化剤は、例えば、BASFからのIRGANOX(登録商標)シリーズのヒンダードフェノール系抗酸化剤、例えば、IRGANOX(登録商標)1010(テトラキス(メチレン(3,5-ジ-ter-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート))メタン)及びIRGAFOS(登録商標)168抗酸化剤(トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート)を含む様々な商品名称で市販されている。
【0089】
抗酸化剤(複数可)の総量は、ホットメルト接着剤組成物の総重量に対して、好ましくは0.1~3重量%、より好ましくは0.5%~1重量%の範囲である。
【0090】
本発明による湿気硬化性シリル化接着剤組成物はまた、好ましくは少なくとも1つの硬化触媒を含んでもよく、これはシラノールの縮合のための当業者に公知の任意の触媒であってもよい。そのような触媒の例として、アミン又は有機金属誘導体、特に鉄、チタン、アルミニウム又は二価若しくは四価のスズの有機誘導体、例えばジブチルスズラウラート(DBTL)が言及され得る。
【0091】
硬化触媒の量の重量は、通常、0.1~2%の範囲にある。
【0092】
本発明による湿気硬化性組成物は、シラン修飾非晶質ポリ-α-オレフィン(A)と充填剤(B)とを、温度120℃~180℃、相対湿度0.1%~50%の範囲で混合することにより調製することができる。触媒が存在する場合、触媒は、好ましくは、シラン修飾APAO(A)及び充填剤(B)を混合した後、第2の工程で添加される。他の成分は、通常の慣行に従って導入される。
【0093】
本発明はまた、輸送及びエレクトロニクス産業、好ましくは自動車産業における、組立接着剤又はラミネート接着剤としての、本発明による湿気硬化性シリル化接着剤組成物の使用に関する。
【0094】
本発明はまた、組立製品を製造するための方法に関し、
-本発明による湿気硬化性シリル化接着剤組成物を130℃~180℃の範囲の温度で、当該組成物を基材上に適用するのに十分な液体にするのに十分長い時間加熱する工程(i)と、次いで
-一次基材の表面上に当該組成物をコーティングする工程(ii)と、次いで
-一次基材のコーティングされた表面を二次基材の表面と接触させる工程(iii)と、次いで
-コーティングされた組成物を水、好ましくは大気水分で化学的に硬化させる工程(iv)と、
を含む。
【0095】
接着剤組成物は、スロットダイコーティング、ローラーコーティング、押出コーティング又はスプレーコーティング等の任意の従来技術を使用して、一次基材の表面に適用することができる。
【0096】
一次基材の表面単位によるコーティングされた接着剤の量は、結合しようとする基材に応じて、50~500g/m、好ましくは65~300g/mの非常に広い範囲で変化し得る。
【0097】
一次基材及び二次基材は、異なる性質又は同じ性質であってもよく、ポリプロピレン、ポリエチレン、ABS、PMMA及び金属基材を含む任意の従来の材料から構成することができる。
【0098】
より好ましい実施形態によれば、一次基材及び二次基材の少なくとも一方はアルミニウムである。
【0099】
本出願は、少なくとも1つの本発明による硬化シリル化接着剤組成物によって結合された少なくとも2つの基材を含む組立製品に関する。
【0100】
結合される基材は、本発明による方法について上に列挙された基材の中から選択されてもよい。
【0101】
本発明の特定の実施形態では、本発明による組立製品は、本発明による少なくとも1つの硬化シリル化接着剤組成物によって結合された少なくとも2層の基材を含む多層製品であり得る。
【実施例
【0102】
以下の実施例は、純粋に本発明を例示するために与えられるが、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0103】
実施例1:
APAO(A)、充填剤(B)及び粘着付与剤(C)に基づく湿気硬化性シリル化接着剤組成物
1)調製:
実施例1の組成物は、先に開示したように、表1に指摘した成分を混合することによって調製する。
【0104】
その調製後、組成物を密封カートリッジに保存し、次いで、以下の試験に供する。
【0105】
2)結合領域上で硬化組成物によって接合された2つのアルミニウムプレートからなる組立体の破壊試験:
寸法100mmx25mmの2枚のアルミニウム長方形プレートを使用する。エタノールで2つのプレートを洗浄した後、各プレートの一端に寸法12.5mmx25mmの長方形の接合領域を(接着テープによって)画定する。
【0106】
上で調製した接着剤組成物を150℃で1時間加熱し、次いで第1のアルミニウムプレートの結合領域に適用し、次いで第2のアルミニウムプレートの結合領域と素早く重ねて、結合領域の両側から2つのアルミニウムプレートの自由部分が反対側に延びる剪断試験片を作製する。
【0107】
2つのアルミニウムプレート間の接着剤組成物の厚さは2mmであり、2mmのスペーサによって制御される。
【0108】
剪断試験片を120℃のオーブンに5分間入れ、次いで硬化のために23℃/50%RHのコンディショニングルームに7日間入れる。
【0109】
硬化後、当該剪断試験片の両端部を、試験片の破壊(又は破裂)が得られるまで、10mm/分に等しい一定の速度で引張機内で引っ張る。
【0110】
対応する応力(又は破断応力)を記録し、表1に示す。
【0111】
破壊モードを決定するために、各プレートの結合領域を観察する。50%凝集破壊が観察され、表1では50%CFとして示されている。
【0112】
実施例2~4:
APAO(A)、充填剤(B)及び粘着付与剤(C)に基づく湿気硬化性シリル化接着剤組成物:
表1に示す組成物で実施例1を繰り返す。次いで、実施例1と同じ試験を実施した。結果を表1に示す。
【0113】
実施例A及びB(比較):
APAO(A)及び充填剤(B)を含まない粘着付与剤(C)に基づく湿気硬化性シリル化接着剤組成物
表1に示す組成物で実施例1を繰り返す。次いで、実施例1と同じ試験を実施した。結果を表1に示す。
【0114】
表1の実施例1~4は、実施例A及びBとは対照的に、硬化組成物からなる接着接合部の適切な凝集と共に、アルミニウム基材上の著しく改善された接着を指し示す少なくとも50%のCFの剪断破壊モードを明確に示す。
【国際調査報告】