(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】可溶性gp130二量体を含む製剤と使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/17 20060101AFI20240118BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240118BHJP
C07K 14/715 20060101ALI20240118BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240118BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20240118BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240118BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240118BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240118BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240118BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240118BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240118BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240118BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240118BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
A61K38/17
C07K19/00 ZNA
C07K14/715
A61K9/08
A61K9/19
A61K47/18
A61K47/26
A61P1/04
A61P9/10
A61P17/06
A61P19/02
A61P27/02
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P37/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540018
(86)(22)【出願日】2021-12-31
(85)【翻訳文提出日】2023-06-29
(86)【国際出願番号】 CN2021143870
(87)【国際公開番号】W WO2022143999
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】202011624158.8
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521182504
【氏名又は名称】アイ-エムエービー バイオファーマ (ハンジョウ) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ルー, シューユン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ジェルー
(72)【発明者】
【氏名】チャオ, ジュンフア
(72)【発明者】
【氏名】ジュー, ジン
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ジン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA29
4C076BB11
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4H045AA10
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4H045CA40
4H045DA50
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、2つの一本鎖gp130-Fc融合タンパク質の二量体と、ヒスチジン塩と、トレハロースと、ポリソルベート80とを含む水性製剤を提供する。前記水性製剤は、炎症性疾患又はIL-6媒介性病症を治療するために用いられることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性製剤であって、アミノ酸配列がSEQ ID NO: 1である2つのモノマーを含み、複数のジスルフィド結合によって連結された融合タンパク質と、20~30 mMヒスチジン塩と、220~280 mMトレハロースと、0.01(w/v)%~0.03(w/v)%ポリソルベート80とを含み、且つそのpHは、7.0~8.2である、水性製剤。
【請求項2】
前記水性製剤のpHは、7.4~7.8である、請求項1に記載の水性製剤。
【請求項3】
前記水性製剤のpHは、7.6である、請求項2に記載の水性製剤。
【請求項4】
前記水性製剤は、24~26 mMヒスチジン塩を含む、請求項1に記載の水性製剤。
【請求項5】
前記水性製剤は、25 mMヒスチジン塩を含む、請求項4に記載の水性製剤。
【請求項6】
前記水性製剤は、240~260 mMトレハロースを含む、請求項1に記載の水性製剤。
【請求項7】
前記水性製剤は、250 mMトレハロースを含む、請求項6に記載の水性製剤。
【請求項8】
前記水性製剤は、0.015(w/v)%~0.025(w/v)%ポリソルベート80を含む、請求項1に記載の水性製剤。
【請求項9】
前記水性製剤は、0.02(w/v)%ポリソルベート80を含む、請求項8に記載の水性製剤。
【請求項10】
等張化剤、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤、又はその混合物をさらに含む、請求項1に記載の水性製剤。
【請求項11】
前記各融合タンパク質分子は、6個以下のガラクトース-α-1,3-ガラクトースを含む、請求項1に記載の水性製剤。
【請求項12】
前記各融合タンパク質分子は、3個以下のガラクトース-α-1,3-ガラクトースを含む、請求項11に記載の水性製剤。
【請求項13】
前記融合タンパク質は、グリカンを含み、平均で少なくとも52%の前記グリカンは、1つ又は複数のシアル酸残基を含む、請求項11に記載の水性製剤。
【請求項14】
少なくとも10 mg/mLの該融合タンパク質を含む、請求項1に記載の水性製剤。
【請求項15】
少なくとも25 mg/mLの該融合タンパク質を含む、請求項14に記載の水性製剤。
【請求項16】
少なくとも25 mg/mLの該融合タンパク質と、24~26 mMヒスチジン塩と、240~260 mMトレハロースと、0.015(w/v)%~0.025(w/v)%ポリソルベート80とを含み、且つそのpHは、7.4~7.8である、請求項1に記載の水性製剤。
【請求項17】
30 mg/mLの該融合タンパク質と、25 mMヒスチジン塩と、250 mMトレハロースと、0.02(w/v)%ポリソルベート80とを含み、且つそのpHは、7.6である、請求項16に記載の水性製剤。
【請求項18】
10 mMよりも高いヒスチジン塩以外の他のアミノ酸塩を含まないか、又は、好ましくは、他のアミノ酸塩を含まない、請求項1~17のいずれか一項に記載の水性製剤。
【請求項19】
10 mMよりも高いトレハロース以外の他の糖を含まないか、又は、好ましくは、トレハロース以外の他の糖を含まない、請求項18に記載の水性製剤。
【請求項20】
30 mg/mLの該融合タンパク質と、25 mMヒスチジン塩と、250 mMトレハロースと、0.02(w/v)%ポリソルベート80とからなり、且つそのpHは、7.6である、請求項19に記載の水性製剤。
【請求項21】
ヒトにおける炎症性疾患又はIL-6媒介性病症を治療するためのものである、請求項1~20のいずれか一項に記載の水性製剤。
【請求項22】
前記炎症性疾患又はIL-6 媒介性病症は、炎症性腸疾患であり、好ましくは、ここで、前記治療は、炎症性腸疾患の緩和を誘導する、請求項21に記載の使用のための水性製剤。
【請求項23】
前記炎症性腸疾患は、クローン病又は潰瘍性大腸炎であり、好ましくは、ここで、前記治療は、炎症性腸疾患の緩和を維持する、請求項21に記載の使用のための水性製剤。
【請求項24】
前記炎症性疾患又はIL-6媒介性病症は、関節リウマチ、乾癬、ブドウ膜炎又はアテローム性動脈硬化である、請求項21に記載の使用のための水性製剤。
【請求項25】
前記炎症性疾患又はIL-6媒介性病症は、炎症性腸疾患と関係のない大腸炎であり、好ましくは、ここで、前記大腸炎は、放射性大腸炎、憩室大腸炎、虚血性大腸炎、感染性大腸炎、セリアック病、自己免疫性大腸炎、又は大腸に影響を及ぼすアレルギーに起因する大腸炎である、請求項21に記載の使用のための水性製剤。
【請求項26】
請求項1~20のいずれか一項に記載の水性製剤を凍結乾燥することにより得られる、乾燥製剤。
【請求項27】
水を加えると、請求項1~20のいずれか一項に記載の水性製剤を生成することができる、乾燥製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ医薬研究分野に属し、具体的にgp130二量体を含む製剤、及び炎症性疾患と癌を含む様々なIL-6媒介性病症を治療するための用途に関する。
【背景技術】
【0002】
糖タンパク質130(gp130、IL6ST、IL6-beta又はCD130とも呼ばれる)は、膜貫通タンパク質である。それは、IL-6受容体ファミリーにおけるI型サイトカイン受容体の1つのサブユニットを形成する。それは、サイトカインが関与した後のシグナル伝達にとって非常に重要である。構造的には、gp130の細胞外部分は、5つのフィブロネクチンIII型ドメインと1つの免疫グロブリン様C2型ドメインから構成されている。
【0003】
IL-6受容体ファミリーのメンバーは、いずれもgp130と複合体を形成することでシグナル伝達を行う。例えば、IL-6は、IL-6受容体と結合される。そして、これら2つのタンパク質の複合体は、gp130と会合される。そして、3種類のタンパク質からなる複合体は、いずれも二量化し、下流シグナルを発生できる六量体複合体が形成される。
【0004】
IL-6は、造血細胞と非造血細胞から産生される多重効用サイトカインであり、例えば感染と組織損傷に応答するIL-6は、主に肝細胞と一部の白血球に存在する膜を介してIL-6Rを結合する、いわゆる古典的リガンド-受容体経路と、膜結合IL-6Rに由来するタンパク質加水分解切断又は選択的スプライシングに由来する循環sIL-6R(soluble IL-6R、又は可溶性IL-6Rと呼ばれる)を介したクロスシグナル伝達経路(トランスシグナル経路)の2つの主要なシグナル伝達経路を介してその多重生物活性を発揮する。
【0005】
古典的な経路では、IL-6は、有限範囲の細胞型の表面上の膜に結合されるIL-6Rと直接結合する。IL-6/IL-6R複合体は、シグナル伝達性gp130受容体タンパク質の予め形成された二量体と会合し、gp130と二量体の空間的変化を引き起こすことによって、細胞内シグナル伝達カスケードを引き起こす。古典的なシグナル伝達は、急性炎症防御機序と重要な生理学的IL-6機能、例えば腸上皮細胞の成長と再生シグナルを担当する。IL-6Rとgp130の細胞外ドメインは、選択的にスプライシングされたmRNAを、膜-アンカー構造ドメインなしで翻訳することによって生成され、sIL-6Rとgp130変異体を生成することができる。
【0006】
IL-6/sIL-6R複合体の活性は一般的に、循環中に存在する高レベル可溶性sgpl30(solublegp130)によって制御され、その膜と結合したgp130と効果的に競争する。本発明におけるgp130二量体は、天然のsgpl30よりも高い結合親和性を有するため、IL-6シグナル伝達を抑制する能力がより強い。本発明の製剤は、該gp130二量体を生産、輸送と運用において、より安定化することを可能にする。
【発明の概要】
【0007】
従来の技術における問題を克服するために、本発明は、gp130二量体(又は「gp130含む融合タンパク質」、又は「融合タンパク質」と略称される)を含む製剤、及び炎症性疾患と癌を含む様々なIL-6媒介性病症を治療するための用途を提供する。該製剤は、1つのヒスチジン塩緩衝系を含み、pH7.6程度であり、非常に高い安定性を有し、且つ種々な用量で安全にヒトに投与することができる。
【0008】
1つの実施形態では、本明細書は、水性製剤(液体製剤と呼ばれてもよい)と凍結乾燥製剤を記述し、それは、アミノ酸配列がSEQ ID NO: 1である2つのモノマーを含み、且つ複数のジスルフィド結合によって連結された融合タンパク質と、20~30 mM ヒスチジン塩と、220~280 mM トレハロースと、0.01(w/v)%~0.03(w/v)% ポリソルベート80とを含み、且つそのpHは、7.0~8.2である。いくつかの実施形態では、それは、少なくとも10 mg/mL、15 mg/mL、20 mg/mL、25 mg/mL、又は少なくとも30 mg/mLの該融合タンパク質を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記水性製剤のpHは、7.4~7.8である。いくつかの実施形態では、前記水性製剤のpHは、7.6である。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、24~26 mMヒスチジン塩を含む。いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、25 mMヒスチジン塩を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、240~260 mMトレハロースを含む。いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、250 mMトレハロースを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、0.015(w/v)%~0.025(w/v)%ポリソルベート80を含む。いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、0.02(w/v)%ポリソルベート80を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、等張化剤(又は浸透圧調整剤又は安定剤と呼ばれる)、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤、又はその混合物をさらに含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記各融合タンパク質分子は、6個以下のガラクトース-α-1,3-ガラクトースを含む。いくつかの実施形態では、前記各融合タンパク質分子は、3個、2個、又は1個以下のガラクトース-α-1,3-ガラクトースを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は、グリカンを含み、平均で少なくとも52%の前記グリカンは、1つ又は複数のシアル酸残基を含む。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は、グリカンを含み、平均で少なくとも54%の前記グリカンは、1つ又は複数のシアル酸残基を含む。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は、グリカンを含み、ここで平均52~65%の前記グリカンは、1つ又は複数のシアル酸残基を含む。
【0016】
1つのf実施形態では、前記水性製剤は、少なくとも25 mg/mLの該融合タンパク質と、24~26 mMヒスチジン塩と、240~260 mMトレハロースと、0.015(w/v)%~0.025(w/v)%ポリソルベート80とを含み、且つそのpHは、7.6~7.8である。
【0017】
1つの好ましくい実施形態では、前記水性製剤は、30 mg/mLの該融合タンパク質と、25 mMヒスチジン塩と、250 mMトレハロースと、0.02(w/v)%ポリソルベート80とを含み、且つそのpHは、7.6である。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、10 mMよりも高いヒスチジン塩以外の他のアミノ酸塩を含まない(又は5 mM、2 mM、1 mM、0.1 mM、又は0.01 mMよりも高いものを含まない)か、又は、好ましくは、他の任意のアミノ酸塩を全く含まない。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、10 mMよりも高いトレハロース以外の他の糖を含まない(又は5 mM、2 mM、1 mM、0.1 mM、又は0.01 mMよりも高いものを含まない)か、又は、好ましくは、他の任意の糖を全く含まない。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、ヒトにおける炎症性疾患又はIL-6媒介性病症を治療するためのものである。いくつかの実施形態では、ここで、前記炎症性疾患又はIL-6 媒介性病症は、炎症性腸疾患であり、好ましくは、ここで、前記治療は、炎症性腸疾患の緩和を誘導する。いくつかの実施形態では、ここで、前記炎症性腸疾患は、クローン病又は潰瘍性大腸炎であり、好ましくは、ここで、前記治療は、炎症性腸疾患の緩和を維持する。いくつかの実施形態では、ここで、前記炎症性疾患又はIL-6 媒介性病症は、関節リウマチ、乾癬、ブドウ膜炎又はアテローム性動脈硬化である。いくつかの実施形態では、ここで、前記炎症性疾患又は IL-6媒介性病症は、炎症性腸疾患と関係のない大腸炎であり、好ましくは、ここで、前記大腸炎は、放射性大腸炎、憩室大腸炎、虚血性大腸炎、感染性大腸炎、セリアック病、自己免疫性大腸炎、又は大腸に影響を及ぼすアレルギーに起因する大腸炎である。
【0021】
本明細書は、乾燥製剤を記述し、それは、本明細書に記載のいずれか1つの水性製剤を凍結乾燥することにより得られるか、又は水を加えると、本明細書に記載のいずれか1つの水性製剤を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】pH/緩衝系スクリーニングDSCの結果である。
【
図2】pH/緩衝系スクリーニングHT-DLSの結果である。
【
図3】補助材料及び界面活性剤スクリーニングDSCの結果である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
すべての数字記号(例えば、pH、温度、時間、濃度と分子量、範囲を含む))は、いずれも0.1又は10%の増分(1)又は(-)で変化する近似値である。理解すべきこととして、必ずしも明示的に述べられているわけではないが、すべての数字記号の前に「約」という用語がある。さらに理解すべきこととして、必ずしも明示的に述べられているわけではないが、本明細書に記載の試薬は、例示的なものであり、且つその等価物が当業者に知られているものである。
【0024】
用語である「タンパク質」と「ポリペプチド」は、交換的に使用される可能であり、且つその最も広い意味で、2種類以上のサブユニットアミノ酸、アミノ酸類似体又はペプチド模倣体の化合物を指す。前記サブユニットは、ペプチド結合によって結合されてもよい。別の実施方案では、前記サブユニットは、例えばエステル、エーテルなどの他の結合によって結合されてもよい。タンパク質又はペプチドは、少なくとも2種類のアミノ酸を含んでいなければならず、且つタンパク質又はペプチドを構成できる配列に関するアミノ酸の最大数は、制限されていない。本明細書で使用されるように、用語である「アミノ酸」は、天然及び/又は非天然又は合成アミノ酸を指し、グリシン、DとL光学異性体、アミノ酸類似体とペプチド模倣体を含む。天然に存在するアミノ酸の1文字と3文字の略語を以下に示す。
【0025】
「組成物」は、活性剤と他の不活性剤(例えば、検出可能な試薬又は標識)又は活性化合物又は組成物(例えば、アジュバント)との組み合わせを意味することを意図する。「医薬組成物」は、インビトロ、インビボ又はエクスビボでの診断又は治療用途に適した組成物を生成するために、活性剤と不活性又は活性担体との組み合わせを含むことを意図する。
【0026】
「水性製剤」は、溶剤として水を使用する液体製剤である。1つの実施形態では、水性製剤は、安定性(例えば、化学的及び/又は物理的安定性及び/又は生物学的活性)を維持するために、凍結乾燥、噴霧乾燥及び/又は凍結を必要としない製剤である。
【0027】
本明細書で使用されるように、用語である「緩衝液」は、医薬製剤のpHを安定化する薬学的に許容される賦形剤を表す。適切な緩衝液は、当分野でよく知られており、且つ文献に発見できる。薬学的に許容される緩衝液は、tri s緩衝液、アルギニン緩衝液、ヒスチジン緩衝液、クエン酸塩緩衝液、コハク酸塩緩衝液とリン酸塩緩衝液を含むが、それらに限らない。使用される緩衝液とは関係なく、pHは、当分野で既知の酸又はアルカリ、例えばコハク酸、塩酸、酢酸、リン酸、硫酸とクエン酸、コハク酸塩、クエン酸塩、tris塩基、ヒスチジン、ヒスチジンHCl、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムなどの調節に用いられてもよい。適切な緩衝液は、ヒスチジン緩衝液、2-モルホリノエタンスルホン(MES)、ジメチルアルシン塩、リン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩とクエン酸塩を含むが、それらに限らない。前記緩衝液の濃度は、4mMと約60mM、又は代替的に約4mM から約40mM、又は代替的に約5mMから約25mMの間であってもよい。
【0028】
本明細書で使用されるように、用語である「治療」、「治療法」と「処理」は、本明細書に記載の疾患又は病症又はその1つ又は複数の症状を逆転させること、疾患又は病症又はその1つ又は複数の症状を軽減すること、疾患又は病症又はその1つ又は複数の症状の発症を遅延させること又は疾患又は病症又はその1つ又は複数の症状の進行を抑制することである。いくつかの実施形態では、治療は、1つ又は複数の症状が進行した後に投与されてもよい。他の実施形態では、治療は、無症状で投与されてもよい。例えば、症状が発症する前に、(例えば、症状歴を考慮し、及び/又は、遺伝的又は他の感受性要因を考慮して)感受性個体に治療を施すことができる。症状が解消された後も、治療、例えば再発の予防や遅延を続けることができる。
【0029】
本発明の各テーマにおける固有名詞又は用語の解釈及び実施例は、いずれも共通可能であり、説明を略する。
製剤
【0030】
IM001は、2つの一本鎖gp130-Fc融合タンパク質を含む二量体である。炎症性疾患と癌を含む様々なIL-6媒介性疾患の治療に用いられてもよい。他のタンパク質薬物と同様に、IM001の可溶性、安定性と活性は、その環境の影響を受ける。そのため、適切な緩衝系を含む適切な製剤を開発することは容易ではない。
【0031】
本発明者は、12種類のpH/緩衝系処方(表2)、9種類の補助材料及び界面活性剤水性製剤スクリーニング処方(表7)を製造し、30℃で2週間の安定性を考察し、DSC、DLS、外観、タンパク質濃度、pH、SEC-HPLC、SDS(還元/非還元)方法でこれらを比較した。pH ≦ 6.5であり、明らかに可視異物が発生し、タンパク質も不安定であるが、pH8.0(ややアルカリ性)の緩衝系ではより安定であることがわかった。なお、同じpH 8.0緩衝系について、ヒスチジン緩衝系の安定性は、グリシンとTris緩衝系よりも高かった。興味深いことに、IM001タンパク質を緩衝系に加えるとpHがドリフトし、pH8.0ヒスチジン緩衝系では、タンパク質を加えると、pHが7.6にドリフトした。
【0032】
様々な水性製剤の処方を考察した結果、本出願の発明者は、ショ糖とポリソルベート80の保護効果の下で、15mg/mLのタンパク質濃度の安定性が最適であることを発見した。しかし、残念ながらタンパク質濃度が30mg/mLになると、その安定性が十分ではなかった。
【0033】
この結果は、Fc断片を含むタンパク質、例えば抗体の多くが、より高濃度で安定な水性製剤を容易に開発することができるため、意外である。いかなる特定の理論にも束縛されず、本出願の発明者は、これが本融合タンパク質の分子特性が高温又は高濃度で不安定になりやすく、また等電点の原因で選択できるpH緩衝系も限られており、一般的なマブ等の生物薬分子製剤の開発に対して挑戦性がより大きいからであると考えている。
【0034】
高濃度製剤処方の安定性を高めるために、本出願の発明者は、5つの凍結乾燥製剤スクリーニング処方(表14)を製造し、25℃と40℃の条件での安定性を考察し、実験結果によると、同じ高濃度30mg/mLで、凍結乾燥品の安定性は、溶液処方よりも明らかに改善された。興味深いことに、凍結乾燥処方(30mg/mL 25mM His、250mM Trehalose、0.02%PS80、pH 7.6)は、異なる温度と様々なテストで良好な結果を示し、特に高温40℃の条件で2ヶ月間ほとんど変化がなく、このような結果は非常に意外であり、一般的に同一の製剤が様々なテストでいずれも利点があるとは限らないからである。そのため、いずれもIM001タンパク質の凍結乾燥製剤処方とする。且つ、この凍結乾燥製剤処方に使用される糖(トレハロース)も、水性製剤の処方における好ましい処方(ショ糖)とは異なる。
【0035】
これらのテスト結果に基づいて、本出願は、IM001に適用される水性製剤と凍結乾燥製剤を提供し、それは、融合タンパク質と、ヒスチジン塩と、トレハロースと、ポリソルベートとを含む。いくつかの実施形態では、該水性製剤は、凍結乾燥後に凍結乾燥製剤を形成することができる。いくつかの実施形態では、該凍結乾燥製剤は、適切な水を加えた後、該水性製剤を生産することができる。このような水性製剤は、適応された疾患を治療するために患者に注射することもできる。
【0036】
前述のように、ここでの融合タンパク質(IM001)アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 1である2つのモノマーを含み、複数のジスルフィド結合によって連結される。いくつかの実施形態では、前記各融合タンパク質分子は、6個以下のガラクトース-α-1,3-ガラクトースを含む。いくつかの実施形態では、前記各融合タンパク質分子は、3個、2個、又は1個以下のガラクトース-α-1,3-ガラクトースを含む。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は、グリカンを含み、平均で少なくとも52%の前記グリカンは、1つ又は複数のシアル酸残基を含む。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は、グリカンを含み、平均で少なくとも54%の前記グリカンは、1つ又は複数のシアル酸残基を含む。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は、グリカンを含み、ここで平均52~65%の前記グリカンは、1つ又は複数のシアル酸残基を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、少なくとも10 mg/mL、15 mg/mL、20 mg/mL、25 mg/mL、又は少なくとも30 mg/mLの該融合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、10~60 mg/mL、15~45 mg/mL、20~40 mg/mL、25~35 mg/mL、又は30 mg/mLの該融合タンパク質を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、少なくとも10 mMヒスチジン塩を含む。いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、少なくとも15 mM、20 mM、25 mM、30 mM、又は35 mMヒスチジン塩を含む。いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、10~50 mMヒスチジン塩、又は10~40 mM、15~35 mM、20~30 mM、22~28 mM、又は24~26 mMヒスチジン塩を含む。いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、25 mMヒスチジン塩を含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、少なくとも100 mMトレハロースを含む。いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、少なくとも100 mM、150 mM、200 mM、250 mM 又は 300 mMトレハロースを含む。いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、100~400 mMトレハロース、又は150~350 mM、200~300 mM、220~280 mM、240~260 mM、又は245~255 mMトレハロースを含む。いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、250 mMトレハロースを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、ポリソルベート、例えばポリソルベート20又はポリソルベート80を含む。いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、少なくとも0.005(w/v)%ポリソルベートを含む。いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、少なくとも0.01(w/v)%ポリソルベート、又は少なくとも0.015(w/v)%ポリソルベート、少なくとも0.02(w/v)%ポリソルベート、又は少なくとも0.025(w/v)%ポリソルベートを含む。いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、0.01(w/v)%~0.03(w/v)%ポリソルベート80を含む。いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、0.015(w/v)%~0.025(w/v)%ポリソルベート80を含む。いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、0.018(w/v)%~0.022(w/v)%ポリソルベート80を含む。いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、0.019(w/v)%~0.021(w/v)%ポリソルベート80を含む。いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、0.02(w/v)%ポリソルベート80を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記水性製剤のpHは、7.0以上である。いくつかの実施形態では、前記水性製剤のpHは、7.1以上、7.2以上、7.3以上、7.4以上、7.5以上、又は7.6以上である。いくつかの実施形態では、前記水性製剤のpHは、7.0~8.2又は7.1~8.1、7.2~8.0、7.3~7.9、7.4~7.8、7.5~7.7、又は7.55~7.65である。いくつかの実施形態では、前記水性製剤のpHは、7.6である。
【0042】
1つの例示的な実施形態では、前記水性製剤は、少なくとも25 mg/mLの該融合タンパク質と、24~26 mMヒスチジン塩と、240~260 mMトレハロースと、0.015(w/v)%~0.025(w/v)%ポリソルベート80とを含み、且つそのpHは、7.4~7.8である。1つの例示的な実施形態では、前記水性製剤は、少なくとも25 mg/mLの該融合タンパク質と、24~26 mMヒスチジン塩と、240~260 mMトレハロースと、0.015(w/v)%~0.025(w/v)%ポリソルベート80とからなり、且つそのpHは、7.4~7.8である。
【0043】
1つの例示的な実施形態では、前記水性製剤は、少なくとも25 mg/mLの該融合タンパク質と、25 mMヒスチジン塩と、250 mMトレハロースと、0.02(w/v)%ポリソルベート80とを含み、且つそのpHは、7.6である。1つの例示的な実施形態では、前記水性製剤は、30 mg/mLの該融合タンパク質と、25 mMヒスチジン塩と、250 mMトレハロースと、0.02(w/v)%ポリソルベート80とからなり、且つそのpHは、7.6である。
【0044】
いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、等張化剤(又は浸透圧調整剤、安定剤と呼ばれる)、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤、又はその混合物をさらに含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、等張化剤(又は浸透圧調整剤、安定剤と呼ばれる)をさらに含む。本明細書で使用されるように、用語である「等張化剤」は、製剤の張度を調節するための薬学的に許容される試薬を表す。等張性は、一般的に溶液対して、一般的にヒト血清に対する溶液の浸透圧に関する。製剤は、張力が減退したもの、等張したもの、又は張力が亢進したものであってもよい。一方、前記製剤は、等張である。等張製剤は、液体又は固体形態(例えば凍結乾燥形態)から復元された液体であり、且つそれと比較するいくつかの他の溶液(例えば生理食塩溶液と血清)と同じ張度を有する溶液を表す。適切な等張剤は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、マンニトールと本明細書で定義されるアミノ酸、糖由来の任意の成分及びその組み合わせを含むが、それらに限らない。
【0046】
いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、界面活性剤をさらに含む。本明細書で使用されるように、用語である「界面活性剤」は、両親媒性構造を有する薬学的に許容される有機物質を指し、即ち、それは、逆溶解性を有する基で構成されており、一般的に油溶性炭化水素鎖と水溶性イオン基である。界面活性剤の可視界面活性部の電荷は、陰イオン性、陽イオン性と非イオン性界面活性剤に分類される。界面活性剤は、一般的に、多くの医薬組成物と生体材料製剤に使用される湿潤剤、乳化剤、可溶化剤と分散剤として使用される。本明細書に記載の医薬製剤のいくつかの実施方案では、界面活性剤の量は、重量/体積百分率(w/v%)として記載される百分率である。適切な薬学的に許容される界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(Tween)、ポリオキシエチレン希釈燃焼エーテル、燃焼フェニルポリオキシエチレン希釈エーテル(Triton-X)、ポリオキシエチレン希釈-ポリオキシプロピレンコポリマー(ポロキサマ、Pluronic)又はドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の群を含むが、それらに限らない。ポリオキシエチレンソルビタン-脂肪酸エステルは、ポリソルビタンエステル20 (商標Tween 20TMで販売される)とポリソルビタンエステル80 (商標Tween 80TMで販売される)とを含む。ポリエチレン-ポリプロピレン共重合体は、Pliironic(R)F68又はポロキサマ188TMという名前で販売されているものを含む。ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、商標Bri jTMで販売されているものを含む。アルキルフェノールポリオキシエチレンエーテルは、Triton-Xの商品名で販売されているものを含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、酸化防止剤をさらに含む。「酸化防止剤」は、他の分子の酸化を遅らせたり防止したりすることができる分子を指す。酸化は、物質から電子を酸化剤に移す化学反応である。酸化反応は、タンパク質治療薬を不安定にし、最終的に生成物の活性に影響を及ぼす連鎖反応を開始するラジカルを生成することができる。酸化防止剤は、ラジカル中間体を除去することにより、これらの連鎖反応を停止し、且つ自体を酸化することにより、他の酸化反応を抑制する。そのため、酸化防止剤は、一般的に、還元剤、キレート剤と脱酸素剤、例えばクエン酸塩、EDTA、DPTA、チオール、アスコルビン酸又はポリフェノールである。酸化防止剤の非限定的な例としては、アスコルビン酸(AA、E300)、チオ硫酸塩、メチオニン、トコフェロール(E306)、没食子酸プロピル(PG、E310)、tert-ブチルハイドロキノン(TBHQ)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA、E320)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT、E321)が挙げられる。
【0048】
いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、防腐剤をさらに含む。「防腐剤」は、天然又は合成化学品であり、微生物の増殖又は望ましくない化学変化による分解を防止するために、食品、医薬品、塗料、生物学的試料、木材等の製品に添加される。防腐剤添加剤は、単独で、又は他の防腐方法と組み合わせて使用することができる。防腐剤は、細菌や真菌の増殖を抑制する抗菌防腐剤、成分の酸化を抑制する脱酸素剤などの抗酸化剤であってもよい。一般的な抗菌防腐剤は、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、クロロヘキシジン(cholorohexidine)、グリセリン、ベンゼン酸、ソルビン酸カリウム、チリュウ、亜硫酸塩(二酸化硫黄、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムなど)とEDTA二ナトリウムを含む。他の防腐剤は、胃腸外タンパク質によく使用されるもの、例えばベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、クロロブタノール、p-ヒドロキシ安息香酸メチルを含む。
【0049】
実施例から分かるように、いくつかのよく使われる生物学的医薬製剤補助物質、例えばグリシン、トリス、マンニトールなどは、優れた水性又は凍結乾燥製剤の形成には寄与していない。そのため、いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、これらの補助材料を含まない。
【0050】
いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、10 mM(又は5 mM、2 mM、1 mM、0.1 mM、又は0.01 mMよりも高いものを含まない)よりも高いヒスチジン塩以外の他のアミノ酸塩、例えばアルギニン、リジン、アスパラギン、グルタミン、グリシン、又はそれらの塩を含まない。いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、ヒスチジン塩以外の他のアミノ酸塩、例えばアルギニン、リジン、アスパラギン、グルタミン、グリシン、又はそれらの塩を含まない。
【0051】
いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、10 mM(又は5 mM、2 mM、1 mM、0.1 mM、又は0.01 mMよりも高いものを含まない)よりも高いトレハロース以外の他の糖、例えばショ糖を含まない。いくつかの実施形態では、前記水性製剤は、トレハロース以外の他の糖、例えばショ糖を含まない。
【0052】
いくつかの実施形態では、本明細書は、該当する乾燥製剤、例えば凍結乾燥製剤を記述している。いくつかの実施形態では、該乾燥製剤は、本明細書に記載の水性製剤を凍結乾燥することによって得られる。いくつかの実施形態では、該乾燥製剤は、適切な量の水を加えると、本明細書に記載の水性製剤を生成することができる。
用途
【0053】
本出願に記述された製剤は、様々な該当する疾患の治療に用いられることができる。本発明におけるgp130二量体は、天然可溶性gpl30よりも高い結合親和性を有し、それによってIL-6シグナル伝達を抑制する能力がより強い。IL-6シグナル伝達は、以下に簡単に記述される疾患、と当業者に一般的に知られている他の疾患を含む多くの疾患に関連している。
【0054】
慢性炎症、例えばクローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、関節リウマチ(RA)又は乾癬は、マクロファージやリンパ球などの単球の存在と組織学的に関係しており、急性炎症期の解決のために得られた後も組織に持続的に存在する。慢性炎症性疾患モデルでは、T細胞に持続的なMCP-I分泌、血管新生、抗アポトーシス機能を誘導することにより、IL-6は、損傷部位での単球蓄積を促進する有害な作用を有するようである。
【0055】
炎症性腸疾患(IBD)、即ちCD又はUCは、感受性個体の腸管に発生する慢性炎症であり、特定の病原体とは無関係であると考えられている。上皮粘膜バリアの変化は、腸管透過性の増加に伴う粘膜免疫系の増強をもたらし、腸管抗原への暴露は、患者の腸管免疫系の不適切な活性化をもたらす。粘膜CD4+T-リンパ球の制御されない活性化は、炎症促進性サイトカインの連続的な過剰放出を伴い、病原性胃腸管炎症と組織障害を誘導する。IBDの発症機序に関与する主な活性化免疫細胞は、腸T細胞とマクロファージであるという共通認識がある。
【0056】
IL-6は、ヒトにおいてIBDの中枢サイトカインとして示される。対照群と比べ、(3)とUC患者が上昇レベルのIL-6を産生し、IL-6レベルが臨床活動に関連していることを発見した。また、(3)患者のSIL-6Rレベルが上昇することによって、血清中のIL-6/sIL-6R複合体のレベルが上昇していることも発見した。CDとUC患者の手術結腸標本から得られた固有層固有単球は、対照と比べてCD4+T細胞とマクロファージの両方がIL-6の産生量が増加したことを示す。SIL-6Rが、IL-6レベルの上昇に関連する生産増加に伴い、マクロファージと単球の表面から脱落して放出されることを発見した。CD患者では、粘膜T細胞がIL-6のクロスシグナル伝達に強い証拠を示し、STAT3、bcl-2、bcl-xlの活性化を伴う。IL-6クロスシグナル伝達の遮断は、T細胞のアポトーシスを引き起こし、IL-6/sIL-6R系がCDにおいてT細胞のアポトーシスに対する耐性を媒介することを示す。
【0057】
そのため、IBD患者では、炎症の持続的な存在をもたらす固有層における炎症促進CD4+T細胞の獲得性蓄積は、抗アポトーシスIL-6/sIL-6Rクロスシグナル伝達に大きく依存している。本明細書で開示されたポリペプチドは、IL-6/sIL-6R複合体に作用することにより、CDと他の炎症性疾患の治療に用いられることができると考えられる。
【0058】
そのため、本発明の製剤は、IL-6媒介性病症を治療することができる。IL-6媒介性病症は、炎症性疾患又は癌を含む。この態様では、本明細書に記載のポリペプチドと組成物は、炎症性疾患に罹患している被験者、例えば、若年性特発性関節炎、クローン病、大腸炎(例えば、放射性大腸炎、憩室大腸炎、虚血性大腸炎、感染性大腸炎、セリアック病、自己免疫性大腸炎又は大腸に影響を及ぼすアレルギーに起因する大腸炎IBDと関係のない大腸炎)、皮膚炎、乾癬、ブドウ膜炎、憩室炎、肝炎、腸易動症候群(IBS)、エリテマトーデス、腎炎、パーキンソン病、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症(MS)、アルツハイマー病、関節炎、関節リウマチ、喘息及び、アテローム性動脈硬化症と血管炎のような種々な心血管疾患に投与することができる。いくつかの実施形態では、炎症性疾患は、糖尿病、痛風、凍結タンパク質関連周期性症候群と慢性閉塞性肺疾患からなる群から選択される。
【0059】
好ましくは、炎症性疾患又はIL-6媒介性病症は、炎症性腸疾患であり、好ましくはここで、治療は、炎症性腸疾患の緩和を誘導する。好ましくは、炎症性腸疾患は、クローン病又は潰瘍性大腸炎であり、好ましくはここで、治療は、炎症性腸疾患の緩和を維持する。好ましくは、炎症性疾患又はIL-6媒介性病症は、関節リウマチ、乾癬、ブドウ膜炎又はアテローム性動脈硬化である。好ましくは、炎症性疾患又はIL-6媒介性病症は、炎症性腸疾患と関係のない大腸炎であり、好ましくはここで、大腸炎は、放射性大腸炎、憩室大腸炎、虚血性大腸炎、感染性大腸炎、セリアック病、自己免疫性大腸炎又は大腸に影響を及ぼすアレルギーに起因する大腸炎である。好ましくは、炎症性疾患又はIL-6媒介性病症は、クローン病、潰瘍性大腸炎、関節リウマチと乾癬から選択され、さらに好ましくは、クローン病と潰瘍性大腸炎から選択される。
【0060】
炎症性腸疾患などのような炎症性疾患の場合、治療は、症状の緩和、症状の緩和の維持、又はその両方を含むことができる。
【0061】
他の実施形態では、癌を治療し、癌の重症度を減少させ、又は癌を予防する方法を提供し、癌は、多発性骨髄腫、形質細胞白血病、腎細胞癌、カポジ肉腫、結腸直腸癌、胃癌、黒色腫、白血病、リンパ腫、神経膠腫、多形性膠芽腫、肺癌(非小細胞肺癌(NSCLC、腺癌と扁平上皮癌)を含むが、それらに限らない)、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、形質細胞腫、肉腫、胸腺腫、乳癌、前立腺癌、肝細胞癌、膀胱癌、子宮癌、膵臓癌、食道癌、脳癌、頭頸部癌、卵巣癌、子宮頸癌、精巣癌、胃癌、食道癌、肝癌、卵巣癌、急性リンパ性白血病(ALL)、T-ALL、急性骨髄性白血病(AML)、慢性粒性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、唾液癌又はその他の癌を含むが、それらに限らない。
【0062】
本開示の別の実施の形態では、疾患を治療し、疾患の重症度を減少させ、又は疾患を予防する方法を提供し、該疾患は、敗血症、骨吸収症(骨粗鬆症)、悪液質、癌関連疲労、乾癬、全身性若年性特発性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、糸球体膜増殖性糸球体腎炎、高ガンマグロブリン血症、キャッスルマン病、IgMガンマグロブリン血症、心臓粘液腫と自己免疫インスリン依存性糖尿病からなる群から選択される。
生産方法
【0063】
本開示のさらなる形態では、該製剤の生産方式を提供した。SEQ ID NO:1をコードするcDNAは、シグナルペプチドが抗体鎖のアミノ酸配列のアミノ末端フレーム内に結合するようにベクターにクローニングされてもよい。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド又は異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリン由来のシグナルペプチド)であってもよい。
【0064】
調節配列の選択を含む発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルなどの要因に依存し得る。哺乳動物宿主細胞の発現のための制御配列は、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を誘導するウイルス要素、例えば、レトロウイルスLTR、サイトメガロウイルス(CMV)(例えばCMVプロモーター/エンハンサー)、サルウイルス40(SV40)(例えばSV40プロモーター/エンハンサー)、アデノウイルス(例えばアデノウイルス一次進行プロモーター(AdMLP))、多腫瘍性と強哺乳動物プロモーター(例えば自然免疫グロブリンとアクチンプロモーター)に由来するプロモーター及び/又はエンハンサーを含む。宿主細胞は、哺乳動物、昆虫、植物、細菌又は酵母細胞であってもよく、好ましくは、細胞は、哺乳動物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。例示的なCHO細胞は、欧州細胞培養物寄託センター(ECACC、番号9406067)から得られた(CHO) /dhfr-細胞である。好ましくは、宿主細胞は、CHO細胞であり、且つポリペプチドをコードする核酸がコドンにより最適化されてCHO細胞に用いられる。
【0065】
本開示の別の態様は、本明細書に開示された方法によって生成された融合タンパク質を含む。好ましくは、二量体は、本明細書に記述された特徴(例えば、ポリペプチド1モル当たり%ガラクトース-α-l,3-ガラクトース、シアリル化)を有する。前記方法により生産された二量体は、適切な組成物を製造するために用いられてもよい。このように生産された融合タンパク質分子は、6個以下のガラクトース-α-1,3-ガラクトース、又は3個、2個、又は1個以下のガラクトース-α-1,3-ガラクトースを含む。
【0066】
このように生産された融合タンパク質分子は、グリカンを含み、平均で少なくとも52%の前記グリカンは、1つ又は複数のシアル酸残基を含む。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は、グリカンを含み、平均で少なくとも54%の前記グリカンは、1つ又は複数のシアル酸残基を含む。いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は、グリカンを含み、ここで平均52~65%の前記グリカンは、1つ又は複数のシアル酸残基を含む。
【実施例】
【0067】
実施例1
IM001タンパク質は、gp130-Fc融合タンパク質遺伝子を発現するCHO-K1改変細胞から、細胞培養、単離、精製を経て得られる。
【表1】
【0068】
IM001のcDNA配列は、CHO細胞発現系で発現される。Fc領域にIgGl Cys-Pro-Pro-Cys配列が存在することにより、2つの同じgpl30-FcサブユニットがFc領域上のメルカプト残基によって二量化され、それらが一緒にIM001を形成する。
【0069】
IM001薬物物質の試験的製造と精製プロセスは、以下のとおりである。生産バイオリアクターに接種する前に、無タンパク質培地を用いて、WCBバイアルから細胞を蘇生させ、徐々に拡大させた。細胞培養終了後、培養物濾過により細胞及び細胞破片を除去した。精製は、3つのカラムクロマトグラフィー工程、1つの濃縮と浸出工程、及び2つの特定のウイルス除去工程(ウイルス不活性化処理とナノろ過、エンベロープと非エンベロープウイルスの除去)からなる。濃縮して浸出した後、賦形剤を加えて薬物物質を調製した。調製したIM001を0.22μmろ過膜で容器にろ過した。
【0070】
本実施例も、IM001タンパク質の最も安定なpH/緩衝系のスクリーニングを試みた。
【0071】
透析方法によりIM001原液をそれぞれ20 mM醋酸塩(pH4.5、pH5.0、pH5.5)、クエン酸塩(pH5.0)、ヒスチジン-アスパラギン酸塩(pH5.0、pH5.5)、ヒスチジン(pH5.5、pH6.0、pH6.5、pH7.0、pH8.0)とリン酸塩(pH7.0)に交換した。タンパク質濃度を30mg/mL程度に調節し、そして0.22μm PVDFメンブレンフィルターでろ過した。濾過後、試料は瓶詰めされ、密封された。すべての操作は、バイオセーフティカバー内で行われた。そのうちの1本をT0とし、T0 DSC及びHT-DLSの結果に基づいて適切な安定性考察条件を選択し、残りの試料を該条件で保存し、1本ごとに表2に規定した時点でサンプリング分析した。
【表2】
1.1. DSC及びHT-DLS結果
【0072】
結果の詳細を表3、
図1~
図2に示す。すべての処方のTm-onsetは、40.9~43.0℃であり、Tagg Onsetは、処方1 60.6℃と処方11 65.7℃を除き、他の処方のTagg Onsetは、いずれも45℃程度である。
【表3】
1.2. 外観、pHとタンパク質濃度の結果
【0073】
結果の詳細を表4に示す。外観結果によると、T0時に処方1と処方11に可視異物がなかった以外、すべての処方に可視異物が現れ、30℃で1週間と2週間保管した後、すべての処方に可視異物が現れた。pHとタンパク質濃度の結果は、30℃で2週間保管してもすべての処方に有意な変化がなかったことを示した。
【表4】
1.3. SEC純度結果
【0074】
結果の詳細を表5に示し、結果によると、30℃で1~2週間保管した後、すべての処方のSEC純度は、異なる程度の低下が現れ、そのうち処方11の低下の程度は、最も低く(約13%)、その他の緩衝系の低下幅の範囲は、19.3%~72%である。
【表5】
1.4. SDS-PAGE(還元/非還元)の結果
【0075】
結果の詳細を表6に示し、還元SDS-PAGE結果によると、30℃で2週間保存した後、p10(pH 7.0のHis)、p11(pH 8.0のHis)とp12(pH 7.0のPhosphate)の純度は、低下せず、残りの試料は、いずれも異なる程度の低下が発生し、低下幅は、10.8%~50.0%の間であり、非還元SDS-PAGEの純度は、いずれも異なる程度の低下が現れ、そのうちp10(pH 7.0のHis)、p11(pH 8.0のHis)とp12(pH 7.0のPhosphate)の低下幅は、残りの試料よりも小さく、残りの試料の低下幅は、14.6%~65.7%である。
【表6】
【0076】
本研究は、DSC、DLS、外観、タンパク質濃度、pH、SEC-HPLC、SDS-PAGE(還元/非還元)方法によりIM001タンパク質の最も安定なpH/緩衝系をスクリーニングした。DSCとDLSの結果によると、IM001分子のTm OnsetとTagg Onsetは、pH値の上昇とともに上昇傾向を呈し、そのうちp11(pH 8.0のHis)のTm OnsetとTagg Onsetは、残りの試料より高かった。30℃の条件で2週間考察した後、外観、SEC-HPLC、SDS-PAGE(還元/非還元)の結果によると、IM001は、低pH環境で不安定であり、処方11(ヒスチジン塩緩衝系、pH8.0、タンパク質含有pH7.6)は、各試験においても他の処方よりも優れていた。
実施例2
【0077】
本実施例の研究目的は、pH/緩衝系スクリーニングに基づいて適切な補助材料安定剤をスクリーニングすることである。
【0078】
pH/緩衝系スクリーニング実験の結果に基づいて、pH 8.0の25 mMのヒスチジン緩衝系を補助材料として主に評価される緩衝系をスクリーニングした。なお、pH7.5のグリシン緩衝系とpH 7.5のTris緩衝系を追加して考察した。限外濾過遠心法によりIM001原液を25 mMヒスチジン緩衝系(pH 8.0)、25mMグリシン緩衝系(pH7.5)と25mM Tris緩衝系(pH7.5)に交換し、実験方案に基づいてそれぞれ異なる補助材料母液と界面活性剤母液を添加し、且つタンパク質含有量をそれぞれ30mg/mLと15mg/mL程度に調節し、最終的に異なる補助材料と界面活性剤を含有する9つの処方を製造した。バイオセーフティーキャビネットでそれぞれ0.22μm PVDF膜を用いて濾過した後、バイアルに分注し、栓をして密封した。異なる条件の実験考察を開始し、具体的な方案を表7に示し、表における処方pHは、タンパク質を加えない前の緩衝液pHであり、IM001タンパク質を緩衝系に加えるとpHにドリフト現象があるため、実際処方pHを測定結果に示した。
【表7】
2.1 補助材料及び界面活性剤スクリーニング実験のDSC結果
【0079】
すべての処方の試料を製造した後、試料に対してDSC検出を行い、検出結果を表8に示し、DSC曲線図を
図3に示す。データによると、9つの試料のTm Onsetは、45℃程度であり、異なる処方試料のTm Onsetは、有意差がなかった。
【表8】
2.2 補助材料及び界面活性剤スクリーニング実験の外観検出結果
【0080】
補助材料及び界面活性剤スクリーニング実験の外観結果を表9にまとめ、データによると、9つの処方試料を5サイクル凍結融解した考察を経た後、いずれも可視粒子を観察しなかったが、25℃ 300 rpmで7日間シェイクした条件で、9つの処方試料は、いずれも多くの可視粒子が現れ、高温(30±2℃)条件で2週間考察した後、F1とF4処方は、可視粒子が現れ、加速(25±2℃)条件下で1ヶ月考察した後、F1、F4とF5処方は、可視粒子が現れ、長期(2~8℃)条件で1ヶ月考察した後、F5処方以外の処方は、可視粒子が現れた。
【表9】
2.3 補助材料及び界面活性剤スクリーニング実験の浸透圧、pHとタンパク質濃度の結果
【0081】
補助材料及び界面活性剤スクリーニング実験の浸透圧、pHとタンパク質濃度の結果を表10にまとめ、データによると、9つの処方試料は、凍結融解、シェイク、高温(30±2℃)考察、加速(25±2℃)と2~8℃考察を繰り返した後、pHとタンパク質濃度にいずれも明らかな変化がなかった。
【表10】
2.4 補助材料及び界面活性剤スクリーニング実験の不溶性微粒子検出(MFI)の結果
【0082】
補助材料及び界面活性剤スクリーニング実験の不溶性微粒子検出(MFI)の結果を表11にまとめ、凍結融解試料データによると、F1処方試料は、凍結融解後、不溶性微粒子の数が残りの試料よりも多く、30℃で2週間考察した試料データによると、F1処方試料の不溶性微粒子の数は、残りの試料よりも多く、F4処方試料は、可視粒子が多いため、MFI検出を実施せず、25℃で1ヶ月間考察した試料のデータによると、F1とF4処方試料の不溶性微粒子の数は、残りの試料よりも高かった。
【表11】
2.5 補助材料及び界面活性剤スクリーニング実験の純度(SEC-HPLC)結果
【0083】
SEC-HPLC検出結果を表12にまとめ、25℃で1ヶ月間考察した試料と30℃で2週間考察した試料のデータによると、F4とF5処方試料の低下幅は、いずれも残りの試料よりも大きく、F9の低下幅は、いずれも残りの試料よりも小さく、残りの試料の低下幅は、近かった。2~8℃で1ヶ月間考察した試料データによると、F5試料のメインピーク純度は、2.1%低下し、残りの処方試料のメインピーク純度に有意な変化はなかった。5サイクル凍結融解した試料のデータによると、F8試料のメインピーク純度は、10.3%低下し、残りの試料のメインピーク純度に有意な変化はなかった。
【表12】
2.6 補助材料及び界面活性剤スクリーニング実験の純度(SDS-PAGE)結果
【0084】
SDS-PAGEデータを表13にまとめ、還元SDS-PAGEデータによると、異なる試料間の純度データに有意な差がなく、非還元SDS-PAGEデータによると、F9試料の純度は、残りの試料より優れ、残りの試料の純度データは、近かった。
【表13】
2.7 補助材料及び界面活性剤スクリーニング実験のまとめ
【0085】
外観と不溶性微粒子の測定結果によると、ポリソルベート80は、ポリソルベート20よりも微粒子の発生を避けるのに有利であり、グリシン緩衝系は、タンパク質に対する安定作用がヒスチジン緩衝系よりも弱かった。
【0086】
SECデータによると、マンノースのIM001タンパク質に対する保護作用は、ショ糖とトレハロースより弱く、DSCとDLSの結果によると、IM001分子は、低い温度条件(40~50℃)で鎖切断と重合が発生しやすかった。F2とF3処方試料は、各考察条件でのデータが類似し、ショ糖とトレハロースのタンパク質に対する安定作用が類似することを示し、F4とF5処方試料は、各考察条件でのメインピーク純度が残りの試料よりやや低く、pH8.0のヒスチジン緩衝系がグリシンとTris緩衝系より優れていることを示し、F2とF6処方試料は、各考察条件でのデータが類似し、F6処方の1mMメチオニンの添加とF2処方のメチオニンの無添加とは有意な差がないことを示し、F2とF7処方試料は、各考察条件でのデータが類似し、F7処方の4%マンニトールと2%ショ糖の組み合わせの安定性がF2処方の250 mMショ糖を含む安定性と類似していることを示した。F9処方試料は、各考察条件でメインピーク純度がいずれもF2よりも高く、水性製剤15 mg/mLのタンパク質濃度が30 mg/mLよりIM001タンパク質の安定に有利であることを示した。
【0087】
還元SDS-PAGEデータによると、異なる試料間の純度データに有意な差がなく、非還元SDS-PAGEデータによると、F9試料の純度が残りの試料より優れ、残りの試料の純度データが類似した。F2とF9処方は、濃度が異なることを除き、他の組成が一致していることから、水性製剤に対して15mg/mLの蛋白濃度が30mg/mLよりIM001タンパク質の安定に有利であることを示した。
実施例3
【0088】
本実施例の研究目的は、高濃度凍結乾燥製剤処方をスクリーニングすることである。
【0089】
水性製剤処方スクリーニングの結果によると、IM001タンパク質濃度は、30mg/mLまで上昇し、25℃以上の温度では放置時間が長くなるにつれて純度が著しく低下する傾向が認められた。そのため、凍結乾燥製剤の処方設計を行い、方案を表14に示す。IM001原液を25mMヒスチジン緩衝系(pH8.0)に交換し、実験方案に基づいてそれぞれ異なる補助材料母液と界面活性剤母液を添加し、タンパク質含有量を調節してそれぞれ異なる種類の糖の母液と界面活性剤母液を添加し、タンパク質含有量を30mg/mLまで調節した。製造した5つの処方をバイオセーフティーキャビネットにそれぞれ0.22μmのPVDF膜を用いて濾過した後、ピペットで5 mLの薬液をすでに洗浄滅菌した20Rバイアルに取り、直ちに栓を入れ、蓋をし、ラベルを貼り付けた。そして凍結乾燥して異なる条件の安定性考察を開始し、具体的な方案を表15に示す。
【表14】
【表15】
3.1 凍結乾燥品の外観観察
【0090】
凍結乾燥品の外観を図 4に示し、すべての処方を凍結乾燥した後の外観は、いずれも白色の疎塊状であり、その中でF7(4%マンニトールと2%ショ糖を含む)の性状は、他の凍結乾燥品より更に疎である。
3.2 凍結乾燥品の水分量測定
【0091】
凍結乾燥品の水分測定の結果を表16に示し、異なる処方の水分量は、いずれも3%未満であり、凍結乾燥品の水分含量基準に達して、具体的な水分含量は、1.1~1.6%の間である。その中でF7の水分量は、1.63%とやや高い。
【表16】
3.3 凍結乾燥処方凍結溶液のガラス転移温度(Tg’)と凍結乾燥崩壊温度(Tc)の測定
【0092】
凍結乾燥処方冷凍溶液のガラス転移温度(Tg’)と凍結乾燥崩壊温度(Tc)の測定結果を表17に示し、ショ糖を含有する処方F2、F16、F17のTg’は、いずれも-27℃前後で、トレハロースを含有する処方F7のTg’は、-25.9℃とやや高く、4%マンニトールと2%ショ糖を含有する処方F7のTg’は、最も低くて-33.2℃である。また、F2とF15の2処方のTcを測定したが、それぞれ-23.8℃と-26.7℃である。
【表17】
3.4 凍結乾燥品の再溶解液の外観検出
【0093】
凍結乾燥品の凍結乾燥前後の質量変化の差に基づいて、再溶解加水体積を計算し、水を加えて凍結乾燥品を再溶解し、再溶解が完了した後の再溶解液の外観を観察した結果を表18に示す。T0を含むすべての試料、加速条件(25℃)及び高温条件(40℃)に置かれた試料の再溶解後の溶液は、淡黄色、微乳光であり、いずれも可視粒子がなかった。
【表18】
3.5 凍結乾燥品の再溶解液pH、タンパク質濃度と浸透圧の検出
【0094】
異なる処方の凍結乾燥品を再溶解した後の溶液のpH、タンパク質濃度と浸透圧の測定結果を表19にまとめ、データによると、5つの処方試料を加速条件(25℃)と高温条件(40℃)で放置した後、pH、タンパク質濃度と浸透圧は、いずれも明らかな変化がなかった。
【表19】
3.6 凍結乾燥品の再溶解液の不溶性微粒子の検出(MFI)
【0095】
凍結乾燥品の再溶解液の不溶性微粒子の検出(MFI)結果を表20にまとめ、異なる処方の不溶性微粒子の数は、有意な差がなく、且つ25℃で1ヶ月間又は40℃で2ヶ月間放置した後の試料は、再溶解後の不溶性微粒子の数がT0試料と比べて明らかな上昇がなかった。
【表20】
3.7 凍結乾燥品の再溶解液純度(SEC-HPLC)の検出
【0096】
SEC-HPLCの検出結果を表21に示し、すべての処方は、加速条件(25℃)と高温条件(40℃)で2週間から3ヶ月間放置され、F7 SEC純度は、微小に低下したが、残りのSEC純度は、基本的に変化がなく、凍結乾燥品の安定性が液体製剤に比べて顕著に向上したことを説明した。その中でF7処方(4%マンニトールと2%ショ糖を含む)の安定性は、他の処方に比べて悪く、焼鈍後のマンニトールの結晶化、タンパク質の糖の保護作用の喪失と関係があるかもしれないが、残りの処方は、SECメインピークの含有量が基本的に変わらず、いずれも良好な安定性があった。
【表21】
3.8 凍結乾燥製剤スクリーニング実験のまとめ
【0097】
考察した5つの凍結乾燥品は、いずれも外観がよく、白い疎塊状である。水分量の測定結果は、1.1~1.6%であり、いずれも3%未満であり、水分量は、合格である。加速条件(25℃)と高温条件(40℃)で2週間から3ヶ月間放置され、再溶解液は、いずれも淡黄色、微乳光であり、且つ可視粒子がなかった。F7(4%マンニトールと2%ショ糖を含む)の的Tg’は、-33.2℃であり、残りの処方のTg’は、-26~-27℃程度である。MFIの結果は、異なる処方間で有意な差がなかった。SEC結果によると、F7以外のすべての考察処方は、凍結乾燥後の安定性が良く、加速条件(25℃)で3ヶ月間と高温条件(40℃)で2ヶ月間放置され、そのメインピークは、いずれもて明らかな低下がなく、F7処方(4%マンニトールと2%ショ糖を含む)のSECメインピークは、他の処方よりもっと低下し、その安定性は、もっと悪かった。
まとめ
【0098】
緩衝系スクリーニング結果によると、pH 8.0 His緩衝液塩(処方pH 7.6)体系の安定性が最も良かった。
【0099】
補助材料と界面活性剤スクリーニング結果によると、pH 8.0ヒスチジン緩衝系の安定性は、グリシンとTris緩衝系よりも強く、ショ糖とトレハロースの保護効果が類似し、マンニトールの保護効果より優れ、且つ15 mg/mLのタンパク質濃度安定性は、30 mg/mLの体系より優れ、その中でF9処方(15 mg/mLタンパク質、25 mM His、250 mM Sucrose、0.02% PS80、pH 7.6)の水性製剤の安定性が最も良かった。
【0100】
凍結乾燥製剤スクリーニング実験結果によると、凍結乾燥品の安定性は、溶液処方に比べて明らかに改善された。その中でF7処方(30 mg/mLタンパク質、25 mM His pH 8.0、4% Mannitol、2% Sucrose、0.02% PS80)の表現は、やや悪く、残りの処方は、いずれも優れた安定性を示した。
【0101】
以上の実験結果に基づき、IM001タンパク質の凍結乾燥製剤処方としてF15処方(30 mg/mL タンパク質、25 mM His、250 mM Trehalose、0.02% PS80、pH 7.6)を選択した。
【0102】
上述したように、本発明の好ましい実施形態にすぎず、本発明のいかなる形式的及び実質的な制限ではなく、指摘すべきこととして、本技術分野の通常の技術者についても、本発明の方法から逸脱することなく、いくつかの改良及び補足が可能であり、これらの改良及び補足も本発明の保護範囲とみなすべきである。当業者であれば、本発明の精神と範囲を逸脱することなく、上記の開示された技術的内容を利用して行うことができる若干の変更、改変及び進化の均等な変更は、いずれも本発明の等価な実施例であり、同時に、本発明の本質的な技術に基づいて上述の実施例に加えられた同等の変化の変更、改変、進化は、いずれも本発明の技術案の範囲内にある。
【配列表】
【国際調査報告】