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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ミセルナノ粒子及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/14 20060101AFI20240118BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240118BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240118BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 31/203 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 31/51 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 31/525 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 31/455 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 31/197 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 31/4415 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 31/4188 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 31/714 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 31/375 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 31/592 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 31/593 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 31/355 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 31/712 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20240118BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20240118BHJP
【FI】
A61K9/14
A61K47/10
A61K47/34
A61K47/36
A61K47/32
A61K45/00
A61K31/7088
A61P43/00 105
A61K31/7105
A61K31/711
A61K31/203
A61K31/51
A61K31/525
A61K31/455
A61K31/197
A61K31/4415
A61K31/4188
A61K31/519
A61K31/714
A61K31/375
A61K31/592
A61K31/593
A61K31/355
A61P3/02 102
A61P3/02 105
A61P3/02 106
A61P3/02 107
A61P3/02 109
A61P3/02 104
A61P37/02
A61P35/00
A61P29/00
A61K31/712
A61K31/7125
C12N15/11 Z ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540027
(86)(22)【出願日】2021-12-30
(85)【翻訳文提出日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 IB2021062447
(87)【国際公開番号】W WO2022144812
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】63/199,470
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521564467
【氏名又は名称】バイオーケストラ カンパニー, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リュ, ジン-ヒョブ
(72)【発明者】
【氏名】リム, ユ ナ
(72)【発明者】
【氏名】ミン, ヒュン ス
(72)【発明者】
【氏名】コ, ハン ソク
(72)【発明者】
【氏名】キム, デ フン
(72)【発明者】
【氏名】チョ, ヒョン-ジョン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC23
4C076CC24
4C076CC26
4C076CC27
4C076EE06
4C076EE10
4C076EE12
4C076EE13
4C076EE16
4C076EE17
4C076EE23
4C076EE24
4C076EE26
4C076EE30
4C084AA17
4C084NA10
4C084ZB071
4C084ZB111
4C084ZB211
4C084ZB261
4C086AA01
4C086BA09
4C086BA18
4C086BC18
4C086BC19
4C086BC83
4C086CB09
4C086CB28
4C086DA14
4C086DA39
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086NA10
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZC23
4C086ZC24
4C086ZC25
4C086ZC26
4C086ZC28
4C086ZC29
4C206AA01
4C206DA12
4C206GA05
4C206GA36
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA05
4C206NA10
4C206ZB07
4C206ZB11
4C206ZB26
4C206ZC23
4C206ZC24
(57)【要約】
本開示は、(i)水溶性ポリマー、(ii)正に荷電したキャリア、(iii)疎水性部分、及び(iv)架橋部分を含むカチオン性キャリアユニットを含み、カチオン性キャリアユニットがカチオン性キャリアユニットと静電的に相互作用するアニオン性ペイロード(例えば、RNA及び/またはDNA)と混合される際に、得られる組成物が、アニオン性ペイロードをそのコアに封入しているミセルに自己組織化する。カチオン性キャリアユニットは、組織特異的標的化部分も含み得、これは、ミセルの表面に提示されることとなる。また本開示は、本開示のカチオン性キャリアユニットを含むミセル、カチオン性キャリアユニット及びミセルの製造方法、ミセルを含む医薬組成物、及びさらには、疾患または状態を治療する必要がある対象にミセルを投与することを含む、疾患または状態を治療する方法も含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の図式:
[CC]-L1-[CM]-L2-[HM](図式I)、
[CC]-L1-[HM]-L2-[CM](図式II)、
[HM]-L1-[CM]-L2-[CC](図式III)、
[HM]-L1-[CC]-L2-[CM](図式IV)、
[CM]-L1-[CC]-L2-[HM](図式V)、または
[CM]-L1-[HM]-L2-[CC](図式VI)、
(式中、
CCは、正に荷電したキャリア部分であり、
CMは、架橋部分であり、
HMは、疎水性部分であり、
L1及びL2は、独立して任意選択のリンカーである)を含むカチオン性キャリアユニットであって、
HMの数が、[CC]及び[CM]に対して40%未満である、前記カチオン性キャリアユニット。
【請求項2】
HMの数が、[CC]及び[CM]に対して39%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%である、請求項1に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項3】
HMの数が、[CC]及び[CM]に対して約35%~約1%、約35%~約5%、約35%~約10%、約35%~約15%、約35%~約20%、約35%~約25%、約35%~約30%、約30%~約1%、約30%~約5%、約30%~約10%、約30%~約15%、約30%~約20%、約30%~約25%、約25%~約1%、約25%~約5%、約25%~約10%、約25%~約15%、約25%~約20%、約20%~約1%、約20%~約5%、約20%~約10%、約20%~約15%、約15%~約1%、約15%~約5%、約15%~約10%、約10%~約1%、または約10%~約5%である、請求項1に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項4】
HMの数が、[CC]及び[CM]に対して約39%~約30%、約30%~約20%、約20%~約10%、約10%~約5%、及び約5%~約1%である、請求項1に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項5】
HMの数が、[CC]及び[CM]に対して約39%、約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、約5%、または約1%である、請求項1に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項6】
アニオン性ペイロードと相互作用することができる、請求項1~5のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項7】
前記アニオン性ペイロードが、4000ヌクレオチド未満、約3500ヌクレオチド未満、約3000ヌクレオチド未満、約2500ヌクレオチド未満、約2000ヌクレオチド未満、約1500ヌクレオチド未満、約1000ヌクレオチド未満、約900ヌクレオチド未満、約800ヌクレオチド未満、約700ヌクレオチド未満、約600ヌクレオチド未満、約500ヌクレオチド未満、約400ヌクレオチド未満、約200ヌクレオチド未満、または約150ヌクレオチド未満の長さを有するヌクレオチド配列を含む、請求項6に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項8】
前記アニオン性ペイロードと前記カチオン性キャリアユニットとが、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、前記溶液中の前記カチオン性キャリアユニットと前記アニオン性ペイロードとのN/P比が、約1~約20、約1~約19、約1~約18、約1~約17、約1~約16、約1~約15、約1~14、約1~約13、約1~約12、約1~約11、約1~約10、約1~約9、約1~約8、約1~約7、約1~約6、または約1~約5である、請求項1~7のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項9】
前記アニオン性ペイロードと前記カチオン性キャリアユニットとが、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、前記溶液中の前記カチオン性キャリアユニットと前記アニオン性ペイロードとのN/P比が、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、または約10である、請求項1~7のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項10】
前記アニオン性ペイロードが、約100ヌクレオチド~約1000ヌクレオチドの長さを有するヌクレオチド配列を含む、請求項6または7に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項11】
HMの数が、[CC]及び[CM]に対して39%~約30%、約30%~約20%、約20%~約10%、約10%~約5%、及び約5%~約1%である、請求項10に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項12】
前記アニオン性ペイロードと前記カチオン性キャリアユニットとが、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、前記溶液中の前記カチオン性キャリアユニットと前記アニオン性ペイロードとのN/P比が、約1~約10、または約3~約7である、請求項10または11に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項13】
前記アニオン性ペイロードと前記カチオン性キャリアユニットとが、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、前記溶液中の前記カチオン性キャリアユニットと前記アニオン性ペイロードとのN/P比が、約1~約2、約2~約3、約3~約4、または約4~約5である、請求項10または11に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項14】
前記アニオン性ペイロードと前記カチオン性キャリアユニットとが、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、前記溶液中の前記カチオン性キャリアユニットと前記アニオン性ペイロードとのN/P比が、約1、約2、約3、約4、または約5である、請求項10または11に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項15】
前記アニオン性ペイロードが、約1000ヌクレオチド~約2000ヌクレオチドの長さを有するヌクレオチド配列を含む、請求項6または7に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項16】
HMの数が、[CC]及び[CM]に対して約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、または約1%未満である、請求項15に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項17】
HMの数が、[CC]及び[CM]に対して約30%~約20%、約30%~約25%、約25%~約20%、約25%~約15%、約20%~約10%、約20%~約5%、約10%~約1%、約10%~約5%、及び約5%~約1%である、請求項15に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項18】
前記アニオン性ペイロードと前記カチオン性キャリアユニットとが、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、前記溶液中の前記カチオン性キャリアユニットと前記アニオン性ペイロードとのN/P比が、約4~約7である、請求項15~17のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項19】
前記アニオン性ペイロードと前記カチオン性キャリアユニットとが、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、前記溶液中の前記カチオン性キャリアユニットと前記アニオン性ペイロードとのN/P比が、約4~約5、または約5~約6である、請求項15~17のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項20】
前記アニオン性ペイロードと前記カチオン性キャリアユニットとが、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、前記溶液中の前記カチオン性キャリアユニットと前記アニオン性ペイロードとのN/P比が、約4、約5、約6、または約7である、請求項15~17のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項21】
前記アニオン性ペイロードが、約2000ヌクレオチド~約3000ヌクレオチドの長さを有するヌクレオチド配列を含む、請求項6または7に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項22】
HMの数が、[CC]及び[CM]に対して約20%未満、約19%未満、約18%未満、約17%未満、約16%未満、約15%未満、約14%未満、約13%未満、約12%未満、約11%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満である、請求項21に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項23】
HMの数が、[CC]及び[CM]に対して約20%~約1%、約20%~約5%、約20%~約10%、約20%~約15%、約15%~約1%、約15%~約5%、約15%~10%、約10%~約1%、約10%~約5%、または約5%~約1%ヌクレオチド未満である、請求項21に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項24】
HMの数が、[CC]及び[CM]に対して約20%、約19%、約18%、約17%、約16%、約15%、約14%、約13%、約12%、約11%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、または約1%である、請求項21に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項25】
前記アニオン性ペイロードと前記カチオン性キャリアユニットとが、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、前記溶液中の前記カチオン性キャリアユニットと前記アニオン性ペイロードとのN/P比が、約6~約9である、請求項21~24のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項26】
前記アニオン性ペイロードと前記カチオン性キャリアユニットとが、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、前記溶液中の前記カチオン性キャリアユニットと前記アニオン性ペイロードとのN/P比が、約6~約7、または約7~約8である、請求項21~24のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項27】
前記アニオン性ペイロードと前記カチオン性キャリアユニットとが、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、前記溶液中の前記カチオン性キャリアユニットと前記アニオン性ペイロードとのN/P比が、約6、約7、約8、または約9である、請求項21~24のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項28】
前記アニオン性ペイロードが、約3000ヌクレオチド~約4000ヌクレオチドの長さを有するヌクレオチド配列を含む、請求項6または7に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項29】
HMの数が、[CC]及び[CM]に対して約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満である、請求項28に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項30】
HMの数が、[CC]及び[CM]に対して、約10%~約1%、約10%~約5%、または約5%~約1%ヌクレオチドである、請求項28に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項31】
HMの数が、[CC]及び[CM]に対して約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、または約1%である、請求項28に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項32】
前記アニオン性ペイロードと前記カチオン性キャリアユニットとが、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、前記溶液中の前記カチオン性キャリアユニットと前記アニオン性ペイロードとのN/P比が、約7~約10である、請求項28~31のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項33】
前記アニオン性ペイロードと前記カチオン性キャリアユニットとが、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、前記溶液中の前記カチオン性キャリアユニットと前記アニオン性ペイロードとのN/P比が、約7~約8、または約8~約9である、請求項28~31のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項34】
前記アニオン性ペイロードと前記カチオン性キャリアユニットとが、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、前記溶液中の前記カチオン性キャリアユニットと前記アニオン性ペイロードとのN/P比が、約7、約8、約9、または約10である、請求項28~31のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項35】
前記アニオン性ペイロードが、mRNA、cDNA、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項6~34に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項36】
水溶性ポリマー(WP)をさらに含む、請求項1~35のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項37】
前記水溶性ポリマーが、[CC]、[HM]、または[CM]に結合されている、請求項36に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項38】
前記水溶性ポリマーが、[CC]、[HM]、または[CM]のN末端に結合されている、請求項36または37に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項39】
前記水溶性ポリマーが、[CC]、[HM]、または[CM]のC末端に結合されている、請求項36または37に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項40】
以下の図式:
[WP]-L3-[CC]-L1-[CM]-L2-[HM](図式I’)、
[WP]-L3-[CC]-L1-[HM]-L2-[CM](図式II’)、
[WP]-L3-[HM]-L1-[CM]-L2-[CC](図式III’)、
[WP]-L3-[HM]-L1-[CC]-L2-[CM](図式IV’)、
[WP]-L3-[CM]-L1-[CC]-L2-[HM](図式V’)、または
[WP]-L3-[CM]-L1-[HM]-L2-[CC](図式VI’)を含む、請求項36~39のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項41】
前記水溶性ポリマーが、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリグリセロール、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン(「POZ」)、ポリ(N-アクリロイルモルホリン)、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項36~40のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項42】
前記水溶性ポリマーが、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリグリセロール、またはポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)を含む、請求項36~41のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項43】
前記水溶性ポリマーが、次式:
【化11】
(式中、nは、1~1000である)を含む、請求項36~42のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項44】
前記nが、少なくとも約110、少なくとも約111、少なくとも約112、少なくとも約113、少なくとも約114、少なくとも約115、少なくとも約116、少なくとも約117、少なくとも約118、少なくとも約119、少なくとも約120、少なくとも約121、少なくとも約122、少なくとも約123、少なくとも約124、少なくとも約125、少なくとも約126、少なくとも約127、少なくとも約128、少なくとも約129、少なくとも約130、少なくとも約131、少なくとも約132、少なくとも約133、少なくとも約134、少なくとも約135、少なくとも約136、少なくとも約137、少なくとも約138、少なくとも約139、少なくとも約140、または少なくとも約141である、請求項43に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項45】
前記nが、約80~約90、約90~約100、約100~約110、約110~約120、約120~約130、約140~約150、または約150~約160である、請求項43に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項46】
前記水溶性ポリマーが、直鎖状、分枝鎖状、または樹枝状である、請求項36~45のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項47】
前記カチオン性キャリア部分が、1つ以上のアミノ酸を含む、請求項1~46のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項48】
前記カチオン性キャリア部分が、少なくとも約3個、少なくとも約4個、少なくとも約5個、少なくとも約6個、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも約9個、少なくとも約10個、少なくとも約11個、少なくとも約12個、少なくとも約13個、少なくとも約14個、少なくとも約15個、少なくとも約16個、少なくとも約17個、少なくとも約18個、少なくとも約19個、少なくとも約20個、少なくとも約21個、少なくとも約22個、少なくとも約23個、少なくとも約24個、少なくとも約25個、少なくとも約26個、少なくとも約27個、少なくとも約28個、少なくとも約29個、少なくとも約30個、少なくとも約31個、少なくとも約32個、少なくとも約33個、少なくとも約34個、少なくとも約35個、少なくとも約36個、少なくとも約37個、少なくとも約38個、少なくとも約39個、少なくとも約40個、少なくとも約41個、少なくとも約42個、少なくとも約43個、少なくとも約44個、少なくとも約45個、少なくとも約46個、少なくとも約47個、少なくとも約48個、少なくとも約49個、少なくとも約50個、少なくとも約51個、少なくとも約52個、少なくとも約53個、少なくとも約54個、少なくとも約55個、少なくとも約56個、少なくとも約57個、少なくとも約58個、少なくとも約59個、少なくとも約60個、少なくとも約61個、少なくとも約62個、少なくとも約63個、少なくとも約64個、少なくとも約65個、少なくとも約66個、少なくとも約67個、少なくとも約68個、少なくとも約69個、少なくとも約70個、少なくとも約71個、少なくとも約72個、少なくとも約73個、少なくとも約74個、少なくとも約75個、少なくとも約76個、少なくとも約77個、少なくとも約78個、少なくとも約79個、または少なくとも約80個のアミノ酸を含む、請求項47に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項49】
前記カチオン性キャリア部分が、少なくとも20個、少なくとも約30個、少なくとも約40個、少なくとも約50個、少なくとも60個、少なくとも約70個、少なくとも約80個、少なくとも約90個、少なくとも約100個、少なくとも約110個、少なくとも約120個、少なくとも約130個、少なくとも約140個、または少なくとも約150個のアミノ酸を含む、請求項47に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項50】
前記カチオン性キャリア部分が、約10個~約60個、約15個~約60個、約20個~約60個、約25個~約60個、約30個~約60個、約35個~約60個、約40個~約60個、約10個~約55個、約15個~約55個、約20個~約55個、約25個~約55個、約30個~約55個、約35個~約55個、約40個~約55個、約10個~約50個、約15個~約50個、約20個~約50個、約25個~約50個、約30個~約50個、約35個~約50個、約40個~約50個、約10個~約45個、約15個~約45個、約20個~約45個、約25個~約45個、約30個~約45個、約35個~約45個、約40個~約45個、約10個~約40個、約15個~約40個、約20個~約40個、約25個~約40個、約30個~約40個、約35個~約40個、約10個~約35個、約15個~約35個、約20個~約35個、約25個~約35個、約30個~約35個、約35個~約35個、約40個~約35個、または約40個~約35個のアミノ酸を含む、請求項47に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項51】
前記カチオン性キャリア部分が、約10個、約20個、約30個、約40個、約50、または約60個のアミノ酸を含む、請求項47に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項52】
前記アミノ酸が、アルギニン、リシン、ヒスチジン、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項47~51のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項53】
前記カチオン性キャリア部分が、約20個、約30個、約40個、約50個、または約60個のリシンを含む、請求項1~52のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項54】
前記カチオン性キャリア部分が、約40個のリシンを含む、請求項1~52のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項55】
前記架橋部分が、架橋剤で連結された1つ以上のアミノ酸を含む、請求項1~54のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項56】
前記架橋剤が、チオール基、チオール誘導体、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項55に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項57】
前記架橋剤が、チオール基を含む、請求項55に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項58】
前記架橋部分の前記アミノ酸が、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、少なくとも25個、少なくとも26個、少なくとも27個、少なくとも28個、少なくとも29個、少なくとも30個、少なくとも31個、少なくとも32個、少なくとも33個、少なくとも34個、少なくとも35個、少なくとも36個、少なくとも37個、少なくとも38個、少なくとも39個、少なくとも40個、少なくとも41個、少なくとも42個、少なくとも43個、少なくとも44個、少なくとも45個、少なくとも46個、少なくとも47個、少なくとも48個、少なくとも49個、または少なくとも50個のアミノ酸を含む、請求項55~57に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項59】
前記架橋部分の前記アミノ酸が、約1個~約40個、約5個~約40個、約10個~約40個、約15個~約40個、約20個~約40個、約1個~約35個、約5個~約35個、約10個~約35個、約15個~約35個、約20個~約35個、約10個~約50個、約15個~約50個、約20個~約50個、約25個~約50個、約30個~約40個、約10個~約45個、約15個~約45個、約20個~約45個、約25個~約45個、約30個~約45個、約10個~約40個、約15個~約40個、約20個~約40個、約25個~約40個、または約30個~約40個のアミノ酸を含む、請求項55~57のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項60】
前記架橋部分の前記アミノ酸が、約5個、約10個、約15個、約20個、約25個、約30個、約35個、約40個、約45個、または約50個のアミノ酸を含む、請求項55~57に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項61】
前記架橋部分の前記アミノ酸が、アルギニン、リシン、ヒスチジン、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項55~60のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項62】
前記架橋部分の前記アミノ酸が、約35個のリシンを含む、請求項55~61のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項63】
前記架橋部分の前記アミノ酸が、約23個のリシンを含む、請求項55~61のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項64】
前記架橋部分の前記アミノ酸が、約16個のリシンを含む、請求項55~61のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項65】
前記疎水性部分が、免疫反応、炎症反応、及び/または組織微小環境を調節することができる、請求項1~64のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項66】
前記疎水性部分が、免疫反応を調節することができる、請求項65に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項67】
前記疎水性部分が、腫瘍を有する対象における腫瘍微小環境を調節することができる、請求項65に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項68】
前記疎水性部分が、前記腫瘍微小環境における低酸素状態を阻害または低減することができる、請求項65に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項69】
前記疎水性部分が、イミダゾール誘導体、アミノ酸、ビタミン、またはそれらの任意の組み合わせに結合された1つ以上のアミノ酸を含む、請求項65~68のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項70】
前記疎水性部分が、炎症反応を阻害または低減することができる、請求項65に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項71】
前記疎水性部分が、ビタミンに結合された1つ以上のアミノ酸である、請求項70に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項72】
前記ビタミンが、環式環または環式ヘテロ原子環及びカルボキシル基またはヒドロキシル基を含む、請求項71に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項73】
前記ビタミンが、次式:
【化12】
(式中、Y1及びY2のそれぞれは、C、N、O、またはSであり、nは1または2である)を含む、請求項71に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項74】
前記ビタミンが、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD2、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミンM、ビタミンH、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項71~73のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項75】
前記ビタミンが、ビタミンB3である、請求項74のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項76】
前記疎水性部分が、それぞれがビタミンに連結された少なくとも約2個、少なくとも約3個、少なくとも約4個、少なくとも約5個、少なくとも約6個、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも約9個、少なくとも約10個、少なくとも約11個、少なくとも約12個、少なくとも約13個、少なくとも約14個、少なくとも約15個、少なくとも約16個、少なくとも約17個、少なくとも約18個、少なくとも約19個、少なくとも約20個、少なくとも約21個、少なくとも約22個、少なくとも約23個、少なくとも約24個、少なくとも約25個、少なくとも約26個、少なくとも約27個、少なくとも約28個、少なくとも約29個、少なくとも約30個、少なくとも約31個、または少なくとも約32個のアミノ酸を含む、請求項1~75のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項77】
前記疎水性部分が、それぞれがビタミンに連結された約1個~約35個、約1個~約30個、約1個~約25個、約1個~約20個、約1個~約15個、約1個~約10個、約1個~約5個、約5個~約35個、約5個~約30個、約5個~約25個、約5個~約20個、約5個~約15個、約5個~約10個、約10個~約35個、約10個~約30個、約10個~約25個、約10個~約20個、約10個~約15個、約15個~約35個、約15個~約30個、約15個~約25個、約15個~約20個、約20個~約35個、約20個~約30個、約20個~約25個、約25個~約30個、または約25個~約30個のアミノ酸を含む、請求項1~75のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項78】
前記疎水性部分が、それぞれがビタミンB3に連結された約2個のビタミンB3、約3個のビタミンB3、約4個のビタミンB3、約5個のビタミンB3、約6個のビタミンB3、約7個のビタミンB3、約8個のビタミンB3、約9個のビタミンB3、約10個のビタミンB3、約11個のビタミンB3、約12個のビタミンB3、約13個のビタミンB3、約14個のビタミンB3、約15個のビタミンB3、約16個のビタミンB3、約17個のビタミンB3、約18個のビタミンB3、約19個のビタミンB3、約20個のビタミンB3、約21個のビタミンB3、約22個のビタミンB3、約23個のビタミンB3、約24個のビタミンB3、約25個のビタミンB3、約26個のビタミンB3、約27個のビタミンB3、約28個のビタミンB3、約29個のビタミンB3、約30個、約31個、約32個、約33個、約34個、または約35個のアミノ酸を含む、請求項1~77のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項79】
前記カチオン性キャリア部分が、約35個~約45個のリシンを含み、前記架橋部分が約20個~約40個のリシン-チオールを含み、前記疎水性部分が約1個~約10個のリシン-ビタミンB3を含む、請求項1~9に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項80】
前記カチオン性キャリア部分が、約35個~約45個のリシンを含み、前記架橋部分が約10個~約20個のリシン-チオールを含み、前記疎水性部分が約1個~約10個のリシン-ビタミンB3を含む、請求項1~9に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項81】
前記カチオン性キャリア部分が、約35個~約45個のリシンを含み、前記架橋部分が約10個~約30個のリシン-チオールを含み、前記疎水性部分が約1個~約10個のリシン-ビタミンB3を含む、請求項1~9に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項82】
前記カチオン性キャリア部分が、約35個~約45個のリシンを含み、前記架橋部分が約13個~約25個のリシン-チオールを含み、前記疎水性部分が約1個~約20個のリシン-ビタミンB3を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項83】
前記カチオン性キャリア部分が、約35個~約45個のリシンを含み、前記架橋部分が約13個~約25個のリシン-チオールを含み、前記疎水性部分が約1個~約20個のリシン-ビタミンB3を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項84】
前記水溶性バイオポリマー部分が、約120個~約130個のPEG単位を含む、請求項1~83のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項85】
標的化部分(TM)をさらに含む、請求項1~84のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項86】
前記標的化部分が、組織を標的化することができる、請求項85に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項87】
前記組織が、肝臓、脳、腎臓、肺、卵巣、膵臓、甲状腺、乳房、胃、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項86に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項88】
前記標的化部分が、大型中性アミノ酸輸送体1(LAT1)によって輸送されることができる、請求項87に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項89】
前記標的化部分が、アミノ酸である、請求項88に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項90】
前記標的化部分が、分枝鎖または芳香族アミノ酸を含む、請求項88に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項91】
前記標的化部分が、フェニルアラニン、バリン、ロイシン、及び/またはイソロイシンである、請求項90に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項92】
前記アミノ酸が、フェニルアラニンである、請求項91に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項93】
前記標的化部分が前記水溶性ポリマーに連結されている、請求項85~92のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項94】
前記標的化部分がリンカーによって前記水溶性ポリマーに連結されている、請求項93に記載のカチオン性キャリアユニット。
【請求項95】
請求項1~94のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニットと、アニオン性ペイロードと、を含むミセルであって、前記カチオン性キャリア複合体の前記カチオン性キャリア部分と前記アニオン性ペイロードとが互いに結合している、前記ミセル。
【請求項96】
前記結合が、共有結合である、請求項95に記載のミセル。
【請求項97】
前記結合が、非共有結合である、請求項95に記載のミセル。
【請求項98】
前記結合が、イオン結合である、請求項95に記載のミセル。
【請求項99】
前記アニオン性ペイロードと前記カチオン性キャリアユニットとが、互いに混合される場合にミセルを形成することができ、前記カチオン性キャリアユニットと前記アニオン性ペイロードとのN/P比が、約1~約20である、請求項95~98のいずれか1項に記載のミセル。
【請求項100】
前記カチオン性キャリアユニットと前記アニオン性ペイロードとのN/P比が、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、または約20である、請求項99に記載のミセル。
【請求項101】
前記カチオン性キャリアユニットの前記カチオン性キャリア部分の正電荷が、溶液中でアニオン性ペイロードと混合される際にミセルを形成するのに十分であり、前記カチオン性キャリアユニットと前記アニオン性ペイロードとのN/P比が、約3、約4、約5、約6、約7、約8、または約9である、請求項99に記載のミセル。
【請求項102】
前記カチオン性キャリアユニットが、DNアーゼ及び/またはRNアーゼによる分解から前記アニオン性ペイロードを保護することができる、請求項95~101のいずれか1項に記載のミセル。
【請求項103】
前記アニオン性ペイロードが、共有結合により前記カチオン性キャリアユニットに結合されていない、及び/または前記アニオン性ペイロードが、イオン相互作用によってのみ前記カチオン性キャリアユニットの前記カチオン性キャリア部分と相互作用する、請求項95~102のいずれか1項に記載のミセル。
【請求項104】
前記アニオン性ペイロードの半減期が、ミセルに取り込まれていない遊離アニオン性ペイロードの半減期と比較して延長される、請求項95~103のいずれか1項に記載のミセル。
【請求項105】
前記アニオン性ペイロードが、約1000~約2000ヌクレオチドの長さを有するヌクレオチド配列を含む、請求項95~104のいずれか1項に記載のミセル。
【請求項106】
前記アニオン性ペイロードと前記カチオン性キャリアユニットとが、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、前記カチオン性キャリアユニットと前記アニオン性ペイロードとのN/P比が、約4~約7である、請求項105に記載のミセル。
【請求項107】
前記アニオン性ペイロードと前記カチオン性キャリアユニットとが、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、前記カチオン性キャリアユニットと前記アニオン性ペイロードとのN/P比が、約4~約5、または約5~約6である、請求項105または106に記載のミセル。
【請求項108】
前記アニオン性ペイロードと前記カチオン性キャリアユニットとが、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、前記カチオン性キャリアユニットと前記アニオン性ペイロードとのN/P比が、約4、約5、約6、または約7である、請求項105~107のいずれか1項に記載のミセル。
【請求項109】
前記アニオン性ペイロードが、約2000~約3000ヌクレオチドの長さを有するヌクレオチド配列を含む、請求項95~104のいずれか1項に記載のミセル。
【請求項110】
前記アニオン性ペイロードと前記カチオン性キャリアユニットとが、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、前記カチオン性キャリアユニットと前記アニオン性ペイロードとのN/P比が、約6~約9である、請求項109に記載のミセル。
【請求項111】
前記アニオン性ペイロードと前記カチオン性キャリアユニットとが、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、前記カチオン性キャリアユニットと前記アニオン性ペイロードとのN/P比が、約6~約7、または約7~約8である、請求項109または110に記載のミセル。
【請求項112】
前記アニオン性ペイロードと前記カチオン性キャリアユニットとが、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、前記カチオン性キャリアユニットと前記アニオン性ペイロードとのN/P比が、約6、約7、約8、または約9である、請求項109~111のいずれか1項に記載のミセル。
【請求項113】
前記アニオン性ペイロードが、約3000~約4000ヌクレオチドの長さを有するヌクレオチド配列を含む、請求項95~104のいずれか1項に記載のミセル。
【請求項114】
前記アニオン性ペイロードと前記カチオン性キャリアユニットとが、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、前記カチオン性キャリアユニットと前記アニオン性ペイロードとのN/P比が、約7~約10である、請求項113に記載のミセル。
【請求項115】
前記アニオン性ペイロードと前記カチオン性キャリアユニットとが、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、前記カチオン性キャリアユニットと前記アニオン性ペイロードとのN/P比が、約7~約8、または約8~約9である、請求項113または114に記載のミセル。
【請求項116】
前記アニオン性ペイロードと前記カチオン性キャリアユニットとが、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、前記カチオン性キャリアユニットと前記アニオン性ペイロードとのN/P比が、約7、約8、約9、または約10である、請求項113~115のいずれか1項に記載のミセル。
【請求項117】
前記ミセルの直径が、約10nm~約200nm、約20nm~約200nm、約1nm~100nm、約10nm~約100nm、約10nm~約90nm、約10nm~約80nm、約10nm~約70nm、約20nm~約100nm、約20nm~約90nm、約20nm~約80nm、約20nm~約70nm、約30nm~約100nm、約30nm~約90nm、約30nm~約80nm、約30nm~約70nm、約40nm~約100nm、約40nm~約90nm、約40nm~約80nm、または約40nm~約70nmである、請求項95~116のいずれか1項に記載のミセル。
【請求項118】
前記アニオン性ペイロードが核酸を含む、請求項95~117のいずれか1項に記載のミセル。
【請求項119】
前記核酸が、mRNA、miRNAスポンジ、タフデコイmiRNA、gDNA、cDNA、pDNA、PNA、BNA、アプタマー、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項118に記載のミセル。
【請求項120】
前記核酸が、少なくとも1つのヌクレオシドアナログを含む、請求項118または119に記載のミセル。
【請求項121】
前記ヌクレオシドアナログが、ロックド核酸(LNA);2’-0-アルキルRNA;2’-アミノDNA;2’-フルオロDNA;アラビノ核酸(ANA);2’-フルオロANA、ヘキシトール核酸(HNA)、インターカレーティング核酸(INA)、拘束エチルヌクレオシド(cEt)、2’-0-メチル核酸(2’-OMe)、2’-0-メトキシエチル核酸(2’-MOE)、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項120に記載のミセル。
【請求項122】
前記核酸が、5~30ヌクレオチドの長さを有するヌクレオチド配列を含む、請求項118~121のいずれか1項に記載のミセル。
【請求項123】
前記ヌクレオチド配列の長さが、4000ヌクレオチド未満、3000ヌクレオチド未満、2000ヌクレオチド未満、または1000ヌクレオチド未満である、請求項122に記載のミセル。
【請求項124】
前記ヌクレオチド配列が、ホスホジエステル結合、リン酸トリエステル結合、メチルホスホン酸結合、ホスホロアミダート結合、ホスホロチオエート結合、及びそれらの組み合わせを含む骨格を有する、請求項122または123に記載のミセル。
【請求項125】
前記核酸が、PAPD5/7、Gタンパク質、ゲフィリン、タンパク質アンカー、またはMDA5(IFIH1)をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項122に記載のミセル。
【請求項126】
請求項1~94のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニットと、アニオン性ペイロードと、を含む組成物。
【請求項127】
請求項1~94のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニット、請求項95~125のいずれか1項に記載のミセル、請求項126に記載の組成物、または/及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項128】
前記カチオン性キャリア部分を、前記架橋部分及び前記疎水性部分と連結することを含む、請求項1~94のいずれか1項に記載のカチオン性キャリアユニットを調製する方法。
【請求項129】
水溶性ポリマーと標的化部分とをさらに連結する、請求項128に記載の方法。
【請求項130】
溶液中で前記カチオン性キャリアユニットと前記アニオン性ペイロードとを混合することを含む、請求項128~129のいずれか1項に記載のミセルを調製する方法。
【請求項131】
前記ミセルを精製することをさらに含む、請求項130に記載の方法。
【請求項132】
疾患または状態の治療を必要とする対象の疾患または状態を治療する方法であって、請求項95~125のいずれか1項に記載のミセル、または請求項126のいずれか1項に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項133】
前記ミセルのコア中の前記アニオン性ペイロードが、ミセルに組み込まれていない対応するアニオン性ペイロードよりも長い半減期を示す、請求項132に記載の方法。
【請求項134】
前記対象が、哺乳動物である、請求項132または133に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本PCT出願は、2020年12月30日出願の米国仮特許出願第63/199,470号の優先権の利益を主張するものであり、その全体が参照によって本明細書に援用するものである。
【0002】
電子的に提出された配列表の参照
本出願と共にASCIIテキストファイル(名称4366_040PC01_Seqlisting_ST25;サイズ:3,414バイト;作成日:2021年12月27日)の形で提出される、電子的に提出される配列表の内容を、その全体にわたり参照により本明細書に援用に援用するものである。
【0003】
本開示は、生理学的透過障壁(例えば、血液脳関門)を通してアニオン性ペイロード(例えば、RNA及び/またはDNA)を送達するために使用され得る、カチオン性キャリアユニット及びミセルシステムを提供する。
【背景技術】
【0004】
細胞内薬剤送達は、外因性分子が細胞質ゾルに到達するためには最初に細胞膜を通過しなければならないため、しばしば困難である。細胞膜は、脂溶性で細胞膜を通過することができる非極性治療薬に対して選択的に透過性である。一方で、mRNAなどの大きく荷電した治療薬は、細胞膜により効果的に排除される。
【0005】
ポリヌクレオチドは、負に荷電した膜とポリヌクレオチドの大きな負電荷との間の電荷反発のため、容易に細胞膜を透過しない。結果として、ポリヌクレオチドは、バイオアベイラビリティーが低く、細胞への取り込みが乏しい(通常、1%未満)(Dheur et al,Nucleic Acid Drug Dev.,9:522(1999);Park et al,J Controlled Release,93:188(2003))。一般にほとんどのポリヌクレオチドは5,000Daよりも大きいため、それらは容易に細胞膜を通って拡散できず、細胞への取り込みは主にピノサイトーシスまたはエンドサイトーシスプロセスに限定される。一旦細胞内に入ると、ポリヌクレオチドはリソソーム区画に蓄積し得、それらの細胞質または核への到達は限定される。非経口投与されたポリヌクレオチドは、細胞質の内部及び外部の両方のヌクレアーゼによる急速な分解を極めて受けやすい。研究により、静脈内投与後の血中ポリヌクレオチドの約30分の半減期での急速な分解が示されている(Geary et al,J.Pharmacol.Exp.Ther.,296,890-897,2001)。
【0006】
したがって、ポリヌクレオチド、例えば、mRNAの送達が直面している問題は、大まかに2つに分けることができる。第1に、治療用ポリヌクレオチドは、細胞質に送達され得るような形で配合されなければならず、第2に、ポリヌクレオチドはインタクトで完全に機能する形で細胞核に到達しなければならない。治療薬としてのヌクレオチドの応用、例えば遺伝子治療における進歩にもかかわらず、改善された薬理学的特性、例えば、血清安定性、正しい臓器、組織または細胞への送達、及び膜透過送達を与える送達システムが求められている。
核酸の膜透過送達を改善することを目的とした試みにおいて、タンパク質キャリア、抗体キャリア、リポソーム送達システム、エレクトロポレーション、直接注入、細胞融合、ウイルスベクター、及びリン酸カルシウム媒介形質転換が用いられてきた。しかしながら、これらの技術の多くは、膜透過輸送が可能な細胞の種類及びこうした輸送を実現するのに必要な条件によって制限される。したがって、荷電した治療薬(例えば、mRNA)を、特定の標的細胞または組織に、透過障壁(例えば、形質膜またはBBB)を通過して選択的に誘導することができる一方で、血清安定性及び/または内因性分解酵素(例えば、RNアーゼ)に対する耐性を改善する送達システムが求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Dheur et al,Nucleic Acid Drug Dev.,9:522(1999)
【非特許文献2】Park et al,J Controlled Release,93:188(2003)
【非特許文献3】Geary et al,J.Pharmacol.Exp.Ther.,296,890-897,2001
【発明の概要】
【0008】
本開示は、次の図式:
[CC]-L1-[CM]-L2-[HM](図式I)、
[CC]-L1-[HM]-L2-[CM](図式II)、
[HM]-L1-[CM]-L2-[CC](図式III)、
[HM]-L1-[CC]-L2-[CM](図式IV)、
[CM]-L1-[CC]-L2-[HM](図式V)、または
[CM]-L1-[HM]-L2-[CC](図式VI)、
(式中、
CCは、正に荷電したキャリア部分であり、
CMは、架橋部分であり、
HMは、疎水性部分であり、
L1及びL2は、独立して任意選択のリンカーである)を含むカチオン性キャリアユニットであって、
HMの数が、[CC]及び[CM]に対して40%未満である、カチオン性キャリアユニットを提供する。
【0009】
いくつかの態様では、HMの数は、[CC]及び[CM]に対して39%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満である。いくつかの態様では、HMの数は、[CC]及び[CM]に対して約35%~約1%、約35%~約5%、約35%~約10%、約35%~約15%、約35%~約20%、約35%~約25%、約35%~約30%、約30%~約1%、約30%~約5%、約30%~約10%、約30%~約15%、約30%~約20%、約30%~約25%、約25%~約1%、約25%~約5%、約25%~約10%、約25%~約15%、約25%~約20%、約20%~約1%、約20%~約5%、約20%~約10%、約20%~約15%、約15%~約1%、約15%~約5%、約15%~約10%、約10%~約1%、または約10%~約5%である。いくつかの態様では、HMの数は、[CC]及び[CM]に対して約39%~約30%、約30%~約20%、約20%~約10%、約10%~約5%、及び約5%~約1%である。いくつかの態様では、HMの数は、[CC]及び[CM]に対して約39%、約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、約5%、または約1%である。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、アニオン性ペイロードと相互作用することができる。
【0010】
いくつかの態様では、アニオン性ペイロードは、4000ヌクレオチド未満、約3500ヌクレオチド未満、約3000ヌクレオチド未満、約2500ヌクレオチド未満、約2000ヌクレオチド未満、約1500ヌクレオチド未満、約1000ヌクレオチド未満、約900ヌクレオチド未満、約800ヌクレオチド未満、約700ヌクレオチド未満、約600ヌクレオチド未満、約500ヌクレオチド未満、約400ヌクレオチド未満、約200ヌクレオチド未満、または約150ヌクレオチド未満の長さを有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、アニオン性ペイロードとカチオン性キャリアユニットとは、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、溶液中のカチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約1~約20、約1~約19、約1~約18、約1~約17、約1~約16、約1~約15、約1~約14、約1~約13、約1~約12、約1~約11、約1~約10、約1~約9、約1~約8、約1~約7、約1~約6、または約1~約5である。いくつかの態様では、アニオン性ペイロードとカチオン性キャリアユニットとは、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、溶液中のカチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、または約10である。
【0011】
いくつかの態様では、アニオン性ペイロードは、約100ヌクレオチド~約1000ヌクレオチドの長さを有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、HMの数は、[CC]及び[CM]に対して39%~約30%、約30%~約20%、約20%~約10%、約10%~約5%、及び約5%~約1%である。いくつかの態様では、アニオン性ペイロードとカチオン性キャリアユニットとは、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、溶液中のカチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約1~約10、または約3~約7である。いくつかの態様では、アニオン性ペイロードとカチオン性キャリアユニットとは、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、溶液中のカチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比が、約1~約2、約2~約3、約3~約4、または約4~約5である。いくつかの態様では、アニオン性ペイロードとカチオン性キャリアユニットとは、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、溶液中のカチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約1、約2、約3、約4、または約5である。
【0012】
いくつかの態様では、アニオン性ペイロードは、約1000ヌクレオチド~約2000ヌクレオチドの長さを有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、HMの数は、[CC]及び[CM]に対して約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、または約1%未満である。いくつかの態様では、HMの数は、[CC]及び[CM]に対して約30%~約20%、約30%~約25%、約25%~約20%、約25%~約15%、約20%~約10%、約20%~約5%、約10%~約1%、約10%~約5%、及び約5%~約1%である。いくつかの態様では、アニオン性ペイロードとカチオン性キャリアユニットとは、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、溶液中のカチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約4~約7である。いくつかの態様では、アニオン性ペイロードとカチオン性キャリアユニットとは、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、溶液中のカチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約4~約5、または約5~約6である。いくつかの態様では、アニオン性ペイロードとカチオン性キャリアユニットとは、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、溶液中のカチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約4、約5、約6、または約7である。
【0013】
いくつかの態様では、アニオン性ペイロードは、約2000ヌクレオチド~約3000ヌクレオチドの長さを有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、HMの数は、[CC]及び[CM]に対して約20%未満、約19%未満、約18%未満、約17%未満、約16%未満、約15%未満、約14%未満、約13%未満、約12%未満、約11%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満である。いくつかの態様では、HMの数は、[CC]及び[CM]に対して約20%~約1%、約20%~約5%、約20%~約10%、約20%~約15%、約15%~約1%、約15%~約5%、約15%~10%、約10%~約1%、約10%~約5%、または約5%~約1%ヌクレオチド未満である。いくつかの態様では、HMの数は、[CC]及び[CM]に対して約20%、約19%、約18%、約17%、約16%、約15%、約14%、約13%、約12%、約11%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、または約1%である。いくつかの態様では、アニオン性ペイロードとカチオン性キャリアユニットとは、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、溶液中のカチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約6~約9である。いくつかの態様では、アニオン性ペイロードとカチオン性キャリアユニットとは、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、溶液中のカチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約6~約7、または約7~約8である。いくつかの態様では、アニオン性ペイロードとカチオン性キャリアユニットとは、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、溶液中のカチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約6、約7、約8、または約9である。
【0014】
いくつかの態様では、アニオン性ペイロードは、約3000ヌクレオチド~約4000ヌクレオチドの長さを有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、HMの数は、[CC]及び[CM]に対して約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満である。いくつかの態様では、HMの数は、[CC]及び[CM]に対して約10%~約1%、約10%~約5%、または約5%~約1%ヌクレオチドである。いくつかの態様では、HMの数は、[CC]及び[CM]に対して約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、または約1%である。いくつかの態様では、アニオン性ペイロードとカチオン性キャリアユニットとは、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、溶液中のカチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約7~約10である。いくつかの態様では、アニオン性ペイロードとカチオン性キャリアユニットとは、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、溶液中のカチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約7~約8、または約8~約9である。いくつかの態様では、アニオン性ペイロードとカチオン性キャリアユニットとは、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、溶液中のカチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約7、約8、約9、または約10である。
【0015】
いくつかの態様では、アニオン性ペイロードは、mRNA、cDNA、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0016】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアは、水溶性ポリマー(WP)をさらに含む。いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、[CC]、[HM]、または[CM]に結合される。いくつかの実施形態では、水溶性ポリマーは、[CC]、[HM]、または[CM]のN末端に結合される。いくつかの実施形態では、水溶性ポリマーは、[CC]、[HM]、または[CM]のC末端に結合される。
【0017】
いくつかの実施形態では、キャリアユニットは、
[WP]-L3-[CC]-L1-[CM]-L2-[HM](図式I’)、
[WP]-L3]-[CC]-L1-[HM]-L2-[CM](図式II’)、
[WP]-L3]-[HM]-L1-[CM]-L2-[CC](図式III’)、
[WP]-L3]-[HM]-L1-[CC]-L2-[CM](図式IV’)、
[WP]-L3]-[CM]-L1-[CC]-L2-[HM](図式V’)、または
[WP]-L3]-[CM]-L1-[HM]-L2-[CC](図式VI’)を含む。
【0018】
いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリグリセロール、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン(「POZ」)、ポリ(N-アクリロイルモルホリン)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリグリセロール、またはポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)を含む。いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、下式:
【化1】
(式中、nは、1~1000である)を含む。
【0019】
いくつかの態様では、nは、少なくとも約110、少なくとも約111、少なくとも約112、少なくとも約113、少なくとも約114、少なくとも約115、少なくとも約116、少なくとも約117、少なくとも約118、少なくとも約119、少なくとも約120、少なくとも約121、少なくとも約122、少なくとも約123、少なくとも約124、少なくとも約125、少なくとも約126、少なくとも約127、少なくとも約128、少なくとも約129、少なくとも約130、少なくとも約131、少なくとも約132、少なくとも約133、少なくとも約134、少なくとも約135、少なくとも約136、少なくとも約137、少なくとも約138、少なくとも約139、少なくとも約140、または少なくとも約141である。いくつかの態様では、nは、約80~約90、約90~約100、約100~約110、約110~約120、約120~約130、約140~約150、または約150~約160である。
【0020】
いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、直鎖状、分枝鎖状、または樹枝状である。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、1つ以上のアミノ酸を含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、少なくとも25個、少なくとも26個、少なくとも27個、少なくとも28個、少なくとも29個、少なくとも30個、少なくとも31個、少なくとも32個、少なくとも33個、少なくとも34個、少なくとも35個、少なくとも36個、少なくとも37個、少なくとも38個、少なくとも39個、少なくとも40個、少なくとも41個、少なくとも42個、少なくとも43個、少なくとも44個、少なくとも45個、少なくとも46個、少なくとも47個、少なくとも48個、少なくとも49個、少なくとも50個の塩基性アミノ酸、少なくとも約51個、少なくとも約52個、少なくとも約53個、少なくとも約54個、少なくとも約55個、少なくとも約56個、少なくとも約57個、少なくとも約58個、少なくとも約59個、少なくとも約60個、少なくとも約61個、少なくとも約62個、少なくとも約63個、少なくとも約64個、少なくとも約65個、少なくとも約66個、少なくとも約67個、少なくとも約68個、少なくとも約69個、少なくとも約70個、少なくとも約71個、少なくとも約72個、少なくとも約73個、少なくとも約74個、少なくとも約75個、少なくとも約76個、少なくとも約77個、少なくとも約78個、少なくとも約79個、または少なくとも約80個のアミノ酸を含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、少なくとも20個、少なくとも約30個、少なくとも約40個、少なくとも約50個、少なくとも60個、少なくとも約70個、少なくとも約80個、少なくとも約90個、少なくとも約100個、少なくとも約110個、少なくとも約120個、少なくとも約130個、少なくとも約140個、または少なくとも約150個のアミノ酸を含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、約10個~約60個、約15個~約60個、約20個~約60個、約25個~約60個、約30個~約60個、約35個~約60個、約40個~約60個、約10個~約55個、約15個~約55個、約20個~約55個、約25個~約55個、約30個~約55個、約35個~約55個、約40個~約55個、約10個~約50個、約15個~約50個、約20個~約50個、約25個~約50個、約30個~約50個、約35個~約50個、約40個~約50個、約10個~約45個、約15個~約45個、約20個~約45個、約25個~約45個、約30個~約45個、約35個~約45個、約40個~約45個、約10個~約40個、約15個~約40個、約20個~約40個、約25個~約40個、約30個~約40個、約35個~約40個、約10個~約35個、約15個~約35個、約20個~約35個、約25個~約35個、約30個~約35個、約35個~約35個、約40個~約35個、または約40個~約35個のアミノ酸を含む。
【0021】
いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、約10個、約20個、約30個、約40個、約50、または約60個のアミノ酸を含む。いくつかの態様では、アミノ酸は、アルギニン、リシン、ヒスチジン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、約20個、約30個、約40個、約50個、または約60個のリシンを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、約40個のリシンモノマーを含む。
【0022】
いくつかの態様では、架橋部分は、架橋剤で連結された1つ以上のアミノ酸を含む。いくつかの態様では、架橋剤が、チオール基、チオール誘導体、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、架橋剤は、チオール基を含む。いくつかの態様では、架橋部分のアミノ酸は、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、少なくとも25個、少なくとも26個、少なくとも27個、少なくとも28個、少なくとも29個、少なくとも30個、少なくとも31個、少なくとも32個、少なくとも33個、少なくとも34個、少なくとも35個、少なくとも36個、少なくとも37個、少なくとも38個、少なくとも39個、少なくとも40個、少なくとも41個、少なくとも42個、少なくとも43個、少なくとも44個、少なくとも45個、少なくとも46個、少なくとも47個、少なくとも48個、少なくとも49個、または少なくとも50個のアミノ酸を含む。いくつかの態様では、架橋部分のアミノ酸は、約1個~約40個、約5個~約40個、約10個~約40個、約15個~約40個、約20個~約40個、約1個~約35個、約5個~約35個、約10個~約35個、約15個~約35個、約20個~約35個、約10個~約50個、約15個~約50個、約20個~約50個、約25個~約50個、約30個~約40個、約10個~約45個、約15個~約45個、約20個~約45個、約25個~約45個、約30個~約45個、約10個~約40個、約15個~約40個、約20個~約40個、約25個~約40個、または約30個~約40個のアミノ酸を含む。いくつかの態様では、架橋部分のアミノ酸は、約5個、約10個、約15個、約20個、約25個、約30個、約35個、約40個、約45個、または約50個のアミノ酸を含む。いくつかの態様では、架橋部分のアミノ酸は、アルギニン、リシン、ヒスチジン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、架橋部分のアミノ酸は、約35個のリシンを含む。いくつかの態様では、架橋部分のアミノ酸は、約23個のリシンを含む。いくつかの態様では、架橋部分のアミノ酸は、約16個のリシンを含む。
【0023】
いくつかの態様では、疎水性部分は、免疫反応、炎症反応、及び/または組織微小環境を調節することができる。いくつかの態様では、疎水性部分は、免疫反応を調節することができる。いくつかの態様では、疎水性部分は、腫瘍を有する対象における腫瘍微小環境を調節することができる。
【0024】
いくつかの態様では、疎水性部分は、腫瘍微小環境における低酸素状態を阻害または低減することができる。いくつかの態様では、疎水性部分は、イミダゾール誘導体、アミノ酸、ビタミン、またはそれらの任意の組み合わせに結合された1つ以上のアミノ酸を含む。
【0025】
いくつかの態様では、疎水性部分は、炎症反応を阻害または低減することができる。いくつかの態様では、疎水性部分は、ビタミンに結合された1つ以上のアミノ酸である。いくつかの態様では、ビタミンは、環式環または環式ヘテロ原子環及びカルボキシル基またはヒドロキシル基を含む。
【0026】
いくつかの態様では、ビタミンは、下式を含む:
【化2】
式中、Y及びYの各々は、C、N、O、ならびにSから独立して選択され、nは、1または2である。
【0027】
いくつかの態様では、ビタミンは、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD2、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミンM、ビタミンH、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様では、ビタミンは、ビタミンB3である。
【0028】
いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンに連結された少なくとも約2個、少なくとも約3個、少なくとも約4個、少なくとも約5個、少なくとも約6個、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも約9個、少なくとも約10個、少なくとも約11個、少なくとも約12個、少なくとも約13個、少なくとも約14個、少なくとも約15個、少なくとも約16個、少なくとも約17個、少なくとも約18個、少なくとも約19個、少なくとも約20個、少なくとも約21個、少なくとも約22個、少なくとも約23個、少なくとも約24個、少なくとも約25個、少なくとも約26個、少なくとも約27個、少なくとも約28個、少なくとも約29個、少なくとも約30個、少なくとも約31個、または少なくとも約32個のアミノ酸を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンに連結された約1個~約35個、約1個~約30個、約1個~約25個、約1個~約20個、約1個~約15個、約1個~約10個、約1個~約5個、約5個~約35個、約5個~約30個、約5個~約25個、約5個~約20個、約5個~約15個、約5個~約10個、約10個~約35個、約10個~約30個、約10個~約25個、約10個~約20個、約10個~約15個、約15個~約35個、約15個~約30個、約15個~約25個、約15個~約20個、約20個~約35個、約20個~約30個、約20個~約25個、約25個~約30個、または約25個~約30個のアミノ酸を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約2個のビタミンB3、約3個のビタミンB3、約4個のビタミンB3、約5個のビタミンB3、約6個のビタミンB3、約7個のビタミンB3、約8個のビタミンB3、約9個のビタミンB3、約10個のビタミンB3、約11個のビタミンB3、約12個のビタミンB3、約13個のビタミンB3、約14個のビタミンB3、約15個のビタミンB3、約16個のビタミンB3、約17個のビタミンB3、約18個のビタミンB3、約19個のビタミンB3、約20個のビタミンB3、約21個のビタミンB3、約22個のビタミンB3、約23個のビタミンB3、約24個のビタミンB3、約25個のビタミンB3、約26個のビタミンB3、約27個のビタミンB3、約28個のビタミンB3、約29個のビタミンB3、約30個、約31個、約32個、約33個、約34個、または約35個のアミノ酸を含む。
【0029】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは約35個~約45個のリシンを含み、架橋部分は約20個~約40個のリシン-チオールを含み、疎水性部分は約1個~約10個のリシン-ビタミンB3を含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは約35個~約45個のリシンを含み、架橋部分は約10個~約20個のリシン-チオールを含み、疎水性部分は約1個~約10個のリシン-ビタミンB3を含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは約35個~約45個のリシンを含み、架橋部分は約10個~約30個のリシン-チオールを含み、疎水性部分は約1個~約10個のリシン-ビタミンB3を含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは約35個~約45個のリシンを含み、架橋部分は約13個~約25個のリシン-チオールを含み、疎水性部分は約1個~約20個のリシン-ビタミンB3を含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは約35個~約45個のリシンを含み、架橋部分は約13個~約25個のリシン-チオールを含み、疎水性部分は約1個~約20個のリシン-ビタミンB3を含む。
【0030】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、約120個~約130個のPEG単位を含む水溶性バイオポリマー部分を含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、標的化部分(TM)をさらに含む。いくつかの態様では、標的化部分は、組織を標的化することができる。いくつかの態様では、組織は、肝臓、脳、腎臓、肺、卵巣、膵臓、甲状腺、乳房、胃、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの態様では、標的化部分は、大型中性アミノ酸輸送体1(LAT1)により輸送されることができる。いくつかの態様では、標的化部分は、アミノ酸である。いくつかの態様では、標的化部分は、分枝鎖または芳香族アミノ酸を含む。いくつかの態様では、標的化部分は、フェニルアラニン、バリン、ロイシン、及び/またはイソロイシンである。いくつかの態様では、アミノ酸はフェニルアラニンである。いくつかの態様では、標的化部分は水溶性ポリマーに連結される。いくつかの態様では、標的化部分は、リンカーによって水溶性ポリマーに連結される。
【0031】
本開示は、本明細書に開示されるカチオン性キャリアユニット及びアニオン性ペイロードを含むミセルも提供し、カチオン性キャリア複合体のカチオン性キャリア部分とアニオン性ペイロードとは互いに結合される。いくつかの態様では、結合は、共有結合である。他の態様では、結合は、非共有結合である。いくつかの態様では、結合は、イオン結合である。
【0032】
いくつかの態様では、アニオン性ペイロードとカチオン性キャリアユニットとは、互いに混合される場合にミセルを形成することができ、カチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約1~約20である。いくつかの態様では、溶液中のカチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、または約20である。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットのカチオン性キャリア部分の正電荷は、溶液中でアニオン性ペイロードと混合される際にミセルを形成するのに十分であり、カチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約3、約4、約5、約6、約7、約8、または約9である。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、DNアーゼ及び/またはRNアーゼによる分解からアニオン性ペイロードを保護することができる。いくつかの態様では、アニオン性ペイロードは、共有結合によりカチオン性キャリアユニットにコンジュゲートされていない、及び/またはアニオン性ペイロードは、イオン相互作用によってのみカチオン性キャリアユニットのカチオン性キャリア部分と相互作用する。
【0033】
いくつかの態様では、アニオン性ペイロードの半減期は、ミセルに取り込まれていない遊離アニオン性ペイロードの半減期と比較して延長される。
【0034】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアと混合してミセルを形成することができるアニオン性ペイロードは、約1000ヌクレオチド~約2000ヌクレオチドの長さを有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、アニオン性ペイロードとカチオン性キャリアユニットとは、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、カチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約4~約7である。いくつかの態様では、アニオン性ペイロードとカチオン性キャリアユニットとは、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、カチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約4~約5、または約5~約6である。いくつかの態様では、アニオン性ペイロードとカチオン性キャリアユニットとは、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、カチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約4、約5、約6、または約7である。
【0035】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアと混合してミセルを形成することができるアニオン性ペイロードは、約2000ヌクレオチド~約3000ヌクレオチドの長さを有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、アニオン性ペイロードとカチオン性キャリアユニットとは、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、カチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約6~約9である。いくつかの態様では、アニオン性ペイロードとカチオン性キャリアユニットとは、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、カチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約6~約7、または約7~約8である。いくつかの態様では、アニオン性ペイロードとカチオン性キャリアユニットとは、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、カチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約6、約7、約8、または約9である。
【0036】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアと混合してミセルを形成することができるアニオン性ペイロードは、約3000ヌクレオチド~約4000ヌクレオチドの長さを有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、アニオン性ペイロードとカチオン性キャリアユニットとは、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、カチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約7~約10である。いくつかの態様では、アニオン性ペイロードとカチオン性キャリアユニットとは、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、カチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約7~約8、または約8~約9である。いくつかの態様では、アニオン性ペイロードとカチオン性キャリアユニットとは、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、カチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約7、約8、約9、または約10である。
【0037】
いくつかの態様では、ミセルの直径は、約10nm~約200nm、約20nm~約200nm、約1nm~100nm、約10nm~約100nm、約10nm~約90nm、約10nm~約80nm、約10nm~約70nm、約20nm~約100nm、約20nm~約90nm、約20nm~約80nm、約20nm~約70nm、約30nm~約100nm、約30nm~約90nm、約30nm~約80nm、約30nm~約70nm、約40nm~約100nm、約40nm~約90nm、約40nm~約80nm、または約40nm~約70nmである。
【0038】
いくつかの態様では、アニオン性ペイロードは、核酸である。いくつかの態様では、核酸は、mRNA、miRNAスポンジ、タフデコイmiRNA、cDNA、pDNA、PNA、BNA、(ASO)、アプタマー、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、核酸は、少なくとも1つのヌクレオシドアナログを含む。いくつかの態様では、ヌクレオシドアナログは、ロックド核酸(LNA);2’-0-アルキルRNA;2’-アミノDNA;2’-フルオロDNA;アラビノ核酸(ANA);2’-フルオロANA、ヘキシトール核酸(HNA)、インターカレーティング核酸(INA)、拘束エチルヌクレオシド(cEt)、2’-0-メチル核酸(2’-OMe)、2’-0-メトキシエチル核酸(2’-MOE)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0039】
いくつかの態様では、核酸は、少なくとも約100、少なくとも約500、少なくとも約1000、少なくとも約1500、少なくとも約2000、少なくとも約2500、少なくとも約3000、少なくとも約3500、または少なくとも約4000ヌクレオチドの長さを有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、ヌクレオチド配列は、ホスホジエステル結合、リン酸トリエステル結合、メチルホスホン酸結合、ホスホロアミダート結合、ホスホロチオエート結合、及びそれらの組み合わせを含む骨格を有する。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、任意選択的にリンカーにより水溶性ポリマーに連結されている標的化部分をさらに含む。
【0040】
本開示は、本明細書に開示されるカチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとを含む組成物も提供する。本明細書において開示されるカチオン性キャリアユニット、組成物、またはミセル、及び薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物も提供される。
【0041】
本開示は、カチオン性キャリア部分を架橋部分及び疎水性部分と連結することを含む、本明細書に開示されるカチオン性キャリアユニットを調製する方法も提供する。いくつかの態様では、方法は、水溶性ポリマーと標的化部分とを連結することをさらに含む。いくつかの態様では、本明細書に開示されるミセルを調製する方法は、溶液中でカチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとを混合することを含む。いくつかの態様では、本方法は、ミセルを精製することをさらに含む。
【0042】
本開示は、疾患または状態の治療を必要とする対象の疾患または状態を治療する方法であって、本開示のミセルまたは医薬組成物を対象に投与することを含む方法も提供する。いくつかの態様では、ミセルの核のアニオン性ペイロードは、ミセルに組み込まれていない対応するアニオン性ペイロードより長い半減期を示す。いくつかの態様では、対象は哺乳動物である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】A~Cは、本開示のキャリアユニットセル及びミセルの例示的な構造を示す。例示的なキャリアユニットは、任意選択の組織特異的標的化部分、水溶性ポリマー、及びカチオン性キャリアユニット(それぞれアニオン性ペイロードと相互作用することができる)を含む(A)。Bは、アニオン性ペイロードの模式図を示す。いくつかの態様では、カチオン性キャリアとアニオン性ペイロードとは繋留されておらず、静電的に相互作用する。Cは、A及びBのカチオン性キャリアとアニオン性ペイロードとを含むミセルの概略図を示す。いくつかの態様では、カチオン性キャリアとアニオン性ペイロードとは繋留されており、静電的に相互作用する。
【0044】
図2】A~Eは、カチオン性キャリアユニットの例示的な組成を示す。Aは、標的化部分と、水溶性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)と、80個のリシン残基を含むカチオン性キャリアユニットとを含むキャリアユニットを示し、ただし、64個のリシン残基は修飾されておらず(例えば、正に荷電した-NH3+を含む)、16個のリシン残基は架橋のために修飾されている(例えば、チオール、アルキルチオール、またはリシン-チオールに連結されている)。Bは、標的化部分と、水溶性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)と、80個のリシン残基を含むカチオン性キャリアユニットとを含むキャリアユニットを示し、ただし、40個のリシン残基は修飾されておらず(例えば、正に荷電したアミン基、例えば、-NH3+を含む)、35個のリシン残基は架橋のために修飾されており(例えば、チオール、アルキルチオール、またはリシン-チオールに連結されている)、5個のリシン残基は疎水性部分(例えば、ビタミン)を含むように修飾されている。Cは、標的化部分と、水溶性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)と、80個のリシン残基を含むカチオン性キャリアユニットとを含むキャリアユニットを示し、ただし、38個のリシン残基は修飾されておらず(例えば、正に荷電したアミン基、例えば、-NH3+を含む)、23個のリシン残基は架橋のために修飾されており(例えば、チオール、アルキルチオール、またはリシン-チオールに連結されている)、19個のリシン残基は疎水性部分(例えば、ビタミン)を含むように修飾されている。Dは、標的化部分と、水溶性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)と、80個のリシン残基を含むカチオン性キャリアユニットとを含むキャリアユニットを示し、ただし、32個のリシン残基は修飾されておらず(例えば、正に荷電したアミン基、例えば、-NH3+を含む)、16個のリシン残基は架橋のために修飾されており(例えば、チオール、アルキルチオール、またはリシン-チオールに連結されている)、32個のリシン残基は疎水性部分(例えば、ビタミン)を含むように修飾されている。Eは、標的化部分と、水溶性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)と、80個のリシン残基を含むカチオン性キャリアユニットとを含むキャリアユニットを示し、ただし、63個のリシン残基は修飾されておらず(例えば、正に荷電したアミン基、例えば、-NH3+を含む)、17個のリシン残基は疎水性部分(例えば、ビタミン)を含むように修飾されている。
【0045】
図3】ヌクレオチドミセル送達のための組織特異的標的化ポリマー構造及びキャリアユニットのH-NMR特性を示す。標的化部分(「標的化分子」と表記されている)に相当するH-NMRチャートは、標的化部分(脳の内皮細胞のLAT1標的に結合する環状構造を有するアミノ酸部分)が支障なく合成されたことを示す。第2のH-NMRチャート(「ポリマー」と表記されている)は、カチオン性PEGブロックコポリマー(カチオン性キャリア部分及び疎水部分も含む)も合成されたことを示す。
【0046】
図4】A~Dは、Zeta-sizerによって測定された、化合物A及びヌクレオチドミセルについて、N/P比を増加させたときの粒径及び計数率を示す。Aは、化合物A(図2A)の模式図を示す。B~Dは、N/P比1~10の、800ヌクレオチド、1800ヌクレオチド、及び3800ヌクレオチド(例えば、アニオン性ペイロード)それぞれと、カチオン性キャリアユニットとしての化合物Aとを含むミセルの計数率及び粒径を示す。
【0047】
図5】A~Dは、Zeta-sizerによって測定された、化合物B及びヌクレオチドミセルについて、N/P比を増加させたときの粒径及び計数率を示す。Aは、化合物B(図2B)の模式図を示す。B~Dは、N/P比1~10の、800ヌクレオチド、1800ヌクレオチド、及び3800ヌクレオチド(例えば、アニオン性ペイロード)それぞれと、カチオン性キャリアユニットとしての化合物Aとを含むミセルの計数率及び粒径を示す。
【0048】
図6】A~Dは、Zeta-sizerによって測定された、化合物C及びヌクレオチドミセルについて、N/P比を増加させたときの粒径及び計数率を示す。Aは、化合物C(図2C)の模式図を示す。B~Dは、N/P比1~10の、800ヌクレオチド、1800ヌクレオチド、及び3800ヌクレオチド(例えば、アニオン性ペイロード)それぞれと、カチオン性キャリアユニットとしての化合物Aとを含むミセルの計数率及び粒径を示す。
【0049】
図7】A~Dは、Zeta-sizerによって測定された、化合物D及びヌクレオチドミセルについて、N/P比を増加させたときの粒径及び計数率を示す。Aは、化合物D(図2D)の模式図を示す。B~Dは、N/P比1~10の、800ヌクレオチド、1800ヌクレオチド、及び3800ヌクレオチド(例えば、アニオン性ペイロード)それぞれと、カチオン性キャリアユニットとしての化合物Dとを含むミセルの計数率及び粒径を示す。
【0050】
図8】A~Dは、Zeta-sizerによって測定された、化合物E及びヌクレオチドミセルについて、N/P比を増加させたときの粒径及び計数率を示す。Aは、化合物E(図2E)の模式図を示す。B~Dは、N/P比1~10の、800ヌクレオチド、1800ヌクレオチド、及び3800ヌクレオチド(例えば、アニオン性ペイロード)それぞれと、カチオン性キャリアユニットとしての化合物Eとを含むミセルの計数率及び粒径を示す。
【0051】
図9】A~Bは、最適化されたN/P比(A)及び固定N/P比(B)でポリマー(化合物B、C、D)とmRNA(800nt、1800nt、3800nt)とを個別にミセル配合した後のmRNAミセルの粒径を示す。
【0052】
図10】A~Cは、化合物Bと、800(A)、1800(B)、及び3800(C)のmRNAヌクレオチド長とを用いて調製したmRNA含有ミセルの粒径分布を示す。
【0053】
図11】HEK293T細胞のPBS、mRNA封入ミセル及びリポフェクタミン2000とmRNAによるトランスフェクション後の相対的mRNA発現レベルを示す。PBS、ポリマーキャリアまたはリポフェクタミン2000と配合した5μgのmRNAをHEK-293T細胞に30分間トランスフェクトした。遺伝子のmRNAレベルは、hGAPDH遺伝子発現に基づいて正規化した。遺伝子の相対的なmRNA発現レベルを、2-ΔΔCt法を使用して計算した。
【0054】
図12】A~Dは、BALB/cマウス及びDBA/2Jマウスの筋肉におけるLAT1のタンパク質発現レベルを示す。ウェスタンブロットアッセイを行ってBALB/cマウス(A)及びDBA/2Jマウス(B)におけるLAT1発現を測定した。BALB/cマウス(C)及びDBA/2Jマウス(D)におけるLAT1の相対発現レベルを定量化し、LAT1の発現レベルをGAPDHレベルに対して正規化した。腓腹筋:GAS、大腿四頭筋:QF、大腿二頭筋:BF、前脛骨筋:TA。
【0055】
図13】A~Bは、それぞれ、ポリマーミセルに封入されたLuc-mRNA(A)またはリポフェクタミン(B)の投与後のマウスの生物発光画像を示す。発光画像は筋肉内注射の8日後までに撮影した。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本開示は、水溶性バイオポリマー部分(例えば、PEG)、荷電部分(例えば、ポリリシン)、架橋部分、及び疎水性部分を含むキャリアユニットを対象とする。カチオン性キャリアユニットは、ユニットがアニオン性ペイロードと相互作用する際、ミセルにパッケージ化することができ、その際、ペイロードはミセルのコアに位置し、水溶性バイオポリマー部分は溶媒に面し、架橋部分は1つのユニットを他のキャリアユニットと架橋する。様々な態様の非限定的な例を本開示に示す。
【0057】
記載される特定の組成物またはプロセスステップは無論のこと異なりうることから、本開示をより詳細に記載するのに先立って、本開示は特定の組成物またはプロセスステップに限定されない点を理解されたい。本開示を読むことで当業者には明らかであるように、本明細書に記載及び図示される個々の態様の各々は、本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの態様のいずれかから容易に分離され得るか、またはそれらの特徴と組み合わされ得る別個の構成要素及び特徴を有する。記載されるいずれの方法も、記載される事象の順序で、または論理的に可能な他の任意の順序で実施することが可能である。
【0058】
本明細書に示される見出しは本開示の様々な態様を限定するものではなく、本開示の態様は、本明細書の全体を参照することによって定義されうるものである。本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものであるので、本明細書で使用される用語は、あくまで特定の態様を説明することを目的としたものであって、限定することを目的としたものではない点も理解されるべきである。
【0059】
したがって、直下に定義される用語は、明細書全体を参照することによって、より完全に定義される。
【0060】
I.定義
本明細書がより容易に理解され得るように、特定の用語を最初に定義する。さらなる定義は、「発明を実施するための形態」の全体を通じて記載される。
【0061】
「a」または「an」なる用語で示される実体は、その実体の1つ以上を指し、例えば、「a nucleotide sequence」(ヌクレオチド配列)は、1つ以上のヌクレオチド配列を表すものとして理解される点に留意されたい。したがって、「a」(または「an」)、ならびに「one or more」(1つ以上の)、及び「at least one」(少なくとも1つの)は、本開示では互換的に用いられる場合がある。各請求項は、あらゆる任意選択的な要素を除外するように起草される場合もある点にも留意されたい。したがって、この記載は、請求項の要素の記載との関連において「~だけの」、「~のみ」などといった除外的な語の使用に対する、または否定による限定の使用に対する先行詞としての役割を有するものとする。
【0062】
さらに、本明細書で使用する場合、「及び/または」とは、他方を伴うかまたは伴わない、2つの特定の特性または要素のそれぞれの具体的な開示として理解されるべきである。したがって、本明細書で「A及び/またはB」などの語句で使用される「及び/または」という用語は、「A及びB」、「AまたはB」、「A」(単独)、及び「B」(単独)を含むことが意図される。同様に、「A、B、及び/またはC」といった語句で使用される「及び/または」なる用語は、以下の態様、すなわち、A、B、及びC、A、B、またはC、AまたはC、AまたはB、BまたはC、A及びC、A及びB、B及びC、A(のみ)、B(のみ)、ならびにC(のみ)のそれぞれを包含するものとする。
【0063】
本明細書において「comprising(含む)」なる文言で態様が説明されている場合は常に、「consisting of(からなる)」及び/または「consisting essentially of(から本質的になる)」なる用語で記載される他の類似の態様も提供される点を理解されたい。
【0064】
別段の定義がなされないかぎり、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が関連する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有するものとする。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press、The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press、及びOxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressは、当業者に、本開示で使用される用語の多くについての一般的な辞書を与えるものである。
【0065】
単位、接頭辞、及び記号は、それらのSysteme International de Unites(SI)で承認された形式で示される。数値範囲は、その範囲を規定する数値を含むものとする。数値の範囲が記載されている場合、その範囲の記載された上限と下限との間にあるそれぞれの介在する整数値、及びそのそれぞれの分数もまた、そのような値の間のそれぞれの部分範囲とともに具体的に開示される点は理解されるべきである。任意の範囲の上限値及び下限値は独立してその範囲に含まれる場合も、その範囲から除外される場合もあるが、どちらかの限界値が含まれるか、どちらの限界値も含まれないか、または両方の限界値が含まれるそれぞれの範囲もまた、本開示に包含される。したがって、本明細書に記載される範囲は、記載される端点を含む、その範囲内のすべての値の簡略的な表記であるものとして理解される。例えば、1~10の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10からなる群からの任意の数、数の組み合わせ、または部分範囲を含むものとして理解される。
【0066】
値が明示的に記載されている場合、記載されている値とほぼ同じ数または量である値もまた、本開示の範囲内に含まれる点を理解されたい。ある組み合わせが開示される場合、その組み合わせの要素の部分的な組み合わせのそれぞれも具体的に開示され、本開示の範囲内に含まれる。逆に、異なる要素または要素群が個別に開示される場合、それらの組み合わせも開示される。ある開示の任意の要素が複数の選択肢を有するものとして開示される場合、各選択肢が単独で、または他の選択肢との任意の組み合わせとして除外されるその開示の例もまた、本明細書に開示される。つまり、ある開示の複数の要素がそのような除外を有することができ、そのような除外を有する要素のすべての組み合わせが本明細書に開示される。
【0067】
ヌクレオチドは、それらの広く認められている1文字の略号で呼称する。特に断らない限り、ヌクレオチド配列は5’から3’の方向に左から右に記載する。本明細書においてヌクレオチドは、IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される一般的に公知のヌクレオチドの1文字記号により表記される。したがって、「a」はアデニンを表し、「c」はシトシンを表し、「g」はグアニンを表し、「t」はチミンを表し、「u」はウラシルを表す。
【0068】
アミノ酸配列はアミノ末端からカルボキシ末端の方向に左から右に記載する。本明細書においてアミノ酸は、IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される、一般的に公知のアミノ酸の3文字記号または1文字記号により表記される。
【0069】
「約」という用語は、本明細書では、およそ、大体、おおよそ、またはその範囲内の意味で使用される。「約」という用語が数値範囲とともに使用される場合、記載される数値よりも上及び下の境界値を広げることによって、その範囲を修飾する。一般に、「約」という用語は、例えば、上または下に10パーセント(より高いまたはより低い)の変動で、明示される値の上及び下に数値を修正することができる。
【0070】
「投与」、「投与すること」という用語、及びその文法的変化形は、本開示のミセルなどの組成物を、薬学的に許容される経路により対象に導入することを指す。本開示のミセルなどの組成物の対象への導入は、腫瘍内、経口的、肺、鼻腔内、非経口的(静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下)、直腸に、リンパ内、クモ膜下腔内、眼球周囲、または局所的が挙げられる任意の好適な経路によるものである。投与は、自己投与及び他者による投与を含む。適当な投与経路によって、組成物または薬剤はその目的とする機能を実行することができる。例えば、適当な経路が静脈内である場合、組成物は、組成物または薬剤を対象の静脈内に導入することによって投与される。
【0071】
本明細書で使用する場合、「およそ」という用語は、対照とする1つ以上の値に適用される場合、規定の参照値と同様の値を指す。ある特定の態様では、「ほぼ」という用語は、特に明記しない限り、または他のことが文脈から明らかでない限り、明示される参照値の両方向に(数を超えるか、またはそれ未満の)10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ以下の範囲内の値の範囲を指す(かかる数がとり得る値の100%を超える場合を除く)。
【0072】
本明細書で使用する場合、「保存された」という用語は、比較されている2つ以上の配列の同じ位置において不変に見出されるものである、それぞれポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列のヌクレオチドまたはアミノ酸残基を指す。相対的に保存されているヌクレオチドまたはアミノ酸は、配列の他の部分で出現するヌクレオチドまたはアミノ酸と比べてより関連する配列の間で保存されているものである。
【0073】
いくつかの態様では、2つ以上の配列は、それらが互いに100%同一である場合、「完全に保存されている」または「同一である」と言われる。いくつかの態様では、2つ以上の配列は、それらが互いに少なくとも70%同一であるか、少なくとも80%同一であるか、少なくとも90%同一であるか、または少なくとも95%同一である場合、「高度に保存されている」と言われる。いくつかの態様では、2つ以上の配列は、それらが互いに約70%同一であるか、約80%同一であるか、約90%同一であるか、約95%同一であるか、約98%同一であるか、または約99%同一である場合、「高度に保存されている」と言われる。いくつかの態様では、2つ以上の配列は、それらが互いに少なくとも30%同一であるか、少なくとも40%同一であるか、少なくとも50%同一であるか、少なくとも60%同一であるか、少なくとも70%同一であるか、少なくとも80%同一であるか、少なくとも90%同一であるか、または少なくとも95%同一である場合、「保存されている」と言われる。いくつかの態様では、2つ以上の配列は、それらが互いに約30%同一であるか、約40%同一であるか、約50%同一であるか、約60%同一であるか、約70%同一であるか、約80%同一であるか、約90%同一であるか、約95%同一であるか、約98%同一であるか、または約99%同一である場合、「保存されている」と言われる。配列の保存は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの全長に適用され得るか、または部分、領域、もしくはそれらの特徴に適用され得る。
【0074】
本明細書で使用する場合、「由来する」という用語は、特定の分子もしくは生物または情報(例えば、アミノ酸または核酸の配列)を使用して、特定の分子もしくは生物から単離されるか、製造される構成要素を指す。例えば、第2の核酸配列に由来する核酸配列は、第2の核酸配列のヌクレオチド配列と同一であるか、または実質的に類似するヌクレオチド配列を含み得る。ヌクレオチドまたはポリペプチドの場合、派生した種は、例えば、自然に生じる変異誘発、人為的定方向突然変異誘発、または人為的ランダム変異誘発により得られ得る。ヌクレオチドまたはポリペプチドを派生させるために使用される変異誘発は、意図的に定方向、もしくは意図的にランダムであるか、または各々の組み合わせである。最初のものに由来する異なるヌクレオチドまたはポリペプチドを作製するためのヌクレオチドまたはポリペプチドの変異誘発は、ランダム事象(例えば、ポリメラーゼの不忠実さにより引き起こされる)であり得、派生したヌクレオチドまたはポリペプチドの同定は、例えば、本明細書において述べられる適切なスクリーニング法によりなされ得る。ポリペプチドの変異誘発は、通常、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの操作を伴う。一部の態様では、第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列に由来するヌクレオチドまたはアミノ酸配列は、それぞれ第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列に対する少なくとも約50%、少なくとも約51%、少なくとも約52%、少なくとも約53%、少なくとも約54%、少なくとも約55%、少なくとも約56%、少なくとも約57%、少なくとも約58%、少なくとも約59%、少なくとも約60%、少なくとも約61%、少なくとも約62%、少なくとも約63%、少なくとも約64%、少なくとも約65%、少なくとも約66%、少なくとも約67%、少なくとも約68%、少なくとも約69%、少なくとも約70%、少なくとも約71%、少なくとも約72%、少なくとも約73%、少なくとも約74%、少なくとも約75%、少なくとも約76%、少なくとも約77%、少なくとも約78%、少なくとも約79%、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有し、ここで、第1のヌクレオチドまたはアミノ酸配列は、第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列の生物活性を保持する。
【0075】
「相補的」及び「相補性」という用語は、ワトソン・クリック型塩基対形成則により互いに関連する2つ以上のオリゴマー(すなわち、それぞれが核酸塩基配列を含む)、またはオリゴマーと標的遺伝子との間を指す。例えば、核酸塩基配列「T-G-A(5’→3’)」は、核酸塩基配列「A-C-T(3’→5’)」に相補的である。相補性は「部分的」であり得、その場合、所与の核酸塩基配列の核酸塩基のすべてより少ないものが塩基対形成則に従って他の核酸塩基配列と一致している、。例えば、いくつかの態様では、所与の核酸塩基配列と他の核酸塩基配列との間の相補性は、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%であり得る。それに対して、例のような、「完璧な」または「完全な」(100%)相補性が、所与の核酸塩基配列と他の核酸塩基配列との間に存在し得る。核酸塩基配列間の相補性の程度は、配列間のハイブリダイゼーションの効率及び強度に顕著な影響を与える。
【0076】
「下流」という用語は、参照ヌクレオチド配列の3’側に存在するヌクレオチド配列を指す。ある特定の態様では、下流ヌクレオチド配列は、転写開始点に続く配列に関する。例えば、遺伝子の翻訳開始コドンは、転写開始部位の下流に存在する。
【0077】
「賦形剤」及び「キャリア」という用語は、互換的に使用され、化合物の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性物質を指す。
【0078】
本明細書で使用する場合、「相同性」という用語は、ポリマー分子間、例えば核酸分子間(例えば、DNA分子及び/またはRNA分子)及び/またはポリペプチド分子間の全体的関連性を指す。一般に、「相同性」という用語は、2つの分子の進化的関係を意味する。したがって、相同な2つの分子は、共通の進化的祖先を有する。本開示との関連で、相同性という用語は、同一性及び類似性の両方を包含する。
【0079】
いくつかの態様では、ポリマー分子は、分子における少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%のモノマーが同一(厳密に同じモノマー)であるか、または類似する(保存的置換)場合、互いに「相同である」とみなされる。「相同である」という用語は、必然的に少なくとも2つの配列(ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列)間の比較を指す。
【0080】
本明細書で使用する場合、「同一性」という用語は、ポリマー分子間、例えば、ポリペプチド分子またはポリヌクレオチド分子(例えば、DNA分子及び/またはRNA分子)間の全体的なモノマー保存を指す。いかなる追加の修飾語もない「同一である」という用語、例えば、「タンパク質Aはタンパク質Bと同一である」は、配列が100%同一(100%の配列同一性)であることを意味する。例えば、「70%同一である」と2つの配列を表現することは、例えば、「70%配列同一性」を有するとそれらを表現することに等しい。
【0081】
2つのポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列の同一率(%)の計算は、例えば、最適な比較のために2つの配列をアラインメントすることにより実行され得る(例えば、最適なアラインメントのために第1及び第2のポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列の一方または両方にギャップが導入され得、同一でない配列が比較のために無視され得る)。ある特定の態様では、比較のためにアラインメントされる配列の長さは、参照配列の全長の少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%である。次いで、対応するアミノ酸位のアミノ酸、またはポリヌクレオチドの場合は塩基が比較される。
【0082】
第1の配列におけるある位置が第2の配列における対応する位置と同じアミノ酸により占められる場合、分子はその位置で同一である。2つの配列間の同一率(%)は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入される必要があるギャップの数及び各ギャップの長さを考慮した、配列により共有される同一の位置の数の関数である。配列の比較及び2つの配列間の同一率(%)の決定は、数学アルゴリズムを使用して達成され得る。
【0083】
適当なソフトウェアプログラムは、さまざまな販売元から入手可能であり、タンパク質及びヌクレオチド配列の両方のアライメント用のものがある。配列同一率(%)を決定するための適当なプログラムの1つに、米国政府のNational Center for Biotechnology Information BLASTウェブサイト(blast.ncbi.nlm.nih.gov)から入手可能なBLASTパッケージプログラムの一部であるbl2seqがある。Bl2seqは、BLASTNまたはBLASTPアルゴリズムのいずれかを使用して、2個の配列間の比較を行う。BLASTNが核酸配列を比較するために使用されるのに対して、BLASTPはアミノ酸配列を比較するために使用される。他の好適なプログラムは、例えば、EMBOSSバイオインフォマティクスプログラム集の一部であり、またwww.ebi.ac.uk/Tools/psaのEuropean Bioinformatics Institute(EBI)から利用可能である、Needle、Stretcher、Water、またはMatcherである。
【0084】
配列アライメントは、当該技術分野において公知の方法、例えば、MAFFT、Clustal(ClustalW、Clustal X、またはClustal Omega)、MUSCLEなどを使用して実施され得る。
【0085】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチド参照配列と整列する単一のポリヌクレオチドまたはポリペプチド標的配列内の異なる領域は、それぞれ、それら自体の配列同一率(%)を有することができる。配列同一率(%)は、10分の1の位に四捨五入される点に留意されたい。たとえば、80.11、80.12、80.13、及び80.14は、80.1に切り捨てられ、80.15、80.16、80.17、80.18、及び80.19は80.2に切り上げられる。また、長さの値は常に整数である点に留意されたい。
【0086】
ある特定の態様では、同一性パーセンテージ(%ID)または第1のアミノ酸配列(または核酸配列)の第2のアミノ酸配列(または核酸配列)に対する同一性パーセンテージ(%ID)は、%ID=100×(Y/Z)として計算され、式中、Yは、第1及び第2の配列のアラインメント(目視検査または特定の配列アライメントプログラムによりアラインメントされる)において完全な一致と評価されたアミノ酸残基(または核酸塩基)の数であり、Zは、第2の配列における残基の総数である。第1の配列の長さが第2の配列を超える場合、第1の配列の第2の配列に対する同一率(%)は、第2の配列の第1の配列に対する同一率(%)より高くなるであろう。
【0087】
当業者であれば、配列同一率(%)を計算するための配列アラインメントの生成が、一次配列データによってのみ行われるバイナリー配列間比較に限定されない点は理解されよう。配列アライメントは、配列データを異種の供給源由来のデータ、例えば、構造データ(例えば、タンパク質結晶構造)、機能データ(例えば、変異の位置)、または系統学的データと統合することにより生成され得ることも理解されよう。異種のデータを統合して多重配列アラインメントを生成する好適なプログラムは、www.tcoffee.orgで利用可能であり、代替的に例えば、EBIから利用可能なT-Coffeeである。配列同一率(%)を計算するために使用される最終的なアラインメントは、自動または手動のいずれかで管理され得ることも理解されよう。
【0088】
本明細書で使用する場合、「単離された」、「精製された」、「抽出された」という用語、及びそれらの文法的変化形は、互換的に使用され、1つ以上の精製プロセスを受けた本開示の所望の組成物の調製状態を指す。いくつかの態様では、本明細書で使用する場合、単離または精製は、夾雑物を含有する試料から本開示の組成物を取り出す、(例えば、画分を)部分的に取り出すプロセスである。いくつかの態様では、単離された組成物は、検出可能な望ましくない活性を有さないか、または代替的に、望ましくない活性のレベルもしくは量が許容可能なレベルまたは量以下である。他の態様では、単離された組成物は、許容可能な量及び/または濃度及び/または活性以上の量及び/または濃度の本開示の所望の組成物を有する。他の態様では、単離された組成物は、組成物が取得される出発物質と比較して濃縮される。この濃縮は、出発物質と比較して少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.9%、少なくとも約99.99%、少なくとも約99.999%、少なくとも約99.9999%、または99.9999%超であり得る。いくつかの態様では、単離された調製物は、残留する生物学的産物を実質的に含まない。いくつかの態様では、単離された調製物は、任意の混入している生物学的物質を100%、少なくとも約99%、少なくとも約98%、少なくとも約97%、少なくとも約96%、少なくとも約95%、少なくとも約94%、少なくとも約93%、少なくとも約92%、少なくとも約91%、または少なくとも約90%含まない。残留する生物学的産物は、非生物物質(化学物質を含む)または不要な核酸、タンパク質、脂質、もしくは代謝産物を含み得る。
【0089】
本明細書で使用する場合、「連結された」という用語は、共有結合または非共有結合によりそれぞれ第2のアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列に結合された、第1のアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列を指す。第1のアミノ酸またはポリヌクレオチド配列は、第2のアミノ酸またはポリヌクレオチド配列に直接的に結合もしくは並列され得るか、または代替的に介在配列が第1の配列から第2の配列までに共有結合により加わり得る。「連結された」という用語は、第1のポリヌクレオチド配列の第2のポリヌクレオチド配列への5’末端または3’末端での融合を意味するだけでなく、第2のポリヌクレオチド配列(または第1のポリヌクレオチド配列)における任意の2つのヌクレオチドへの第1のポリヌクレオチド配列(またはそれぞれ第2のポリヌクレオチド配列)全体の挿入も含む。第1のポリヌクレオチド配列は、ホスホジエステル結合またはリンカーにより第2のポリヌクレオチド配列に連結され得る。リンカーは、例えば、ポリヌクレオチドであり得る。
【0090】
「ミスマッチ」または「複数のミスマッチ」という用語は、オリゴマー核酸塩基配列における塩基対形成則に従って標的プレmRNAと一致しない1つ以上の核酸塩基(連続しているまたは離れているにかかわらず)を指す。多くの場合、完全な相補性が所望されるが、いくつかの態様は、標的プレmRNAに対する1つ以上であるが、好ましくは6つ、5つ、4つ、3つ、2つ、または1つのミスマッチを含み得る。オリゴマー内の任意の位置でのバリエーションが含まれる。ある特定の態様では、本開示のアンチセンスオリゴマーは、末端近くでの核酸塩基配列のバリエーション、内部でのバリエーションを含み、存在する場合、通常、5’及び/または3’末端の約6、5、4、3、2、または1サブユニット以内に存在する。ある特定の態様では、1つ、2つ、または3つの核酸塩基が除去され得、依然として正確な結合を提供し得る。
【0091】
本明細書で使用する場合、「調節する」、「修飾する」という用語、及びそれらの文法的変化形は、一般に、特定の濃度、レベル、発現、機能、または行動に適用される場合、例えば、アンタゴニストまたはアゴニストとして作用するために、特定の濃度、レベル、発現、機能、または行動を増加または減少させること、例えば、直接または間接的に、促進すること/刺激すること/上方調節することまたはそれらに干渉すること/それらを阻害すること/それらを下方調節することにより変化させる能力を指す。場合によっては、修飾因子は、ある特定の濃度、レベル、活性、または機能を、コントロールと比較して、または一般に予想される活性の平均レベルと比較して、もしくは活性の対照レベルと比較して増加及び/または減少させ得る。
【0092】
「核酸」、「核酸分子」、「ヌクレオチド配列」、「ポリヌクレオチド」、及びそれらの文法的変化形は、互換的に使用され、一本鎖形態または二重螺旋のいずれかでのリン酸エステルポリマー形態のリボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジン、またはシチジン;「RNA分子」)もしくはデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、チミジン、またはデオキシシチジン;「DNA分子」)、またはそれらの任意のホスホエステルアナログ、例えば、ホスホロチオネート及びチオエステルを指す。一本鎖核酸配列は、一本鎖DNA(ssDNA)または一本鎖RNA(ssRNA)を指す。二本鎖DNA-DNA、DNA-RNA、及びRNA-RNA螺旋が可能である。核酸分子及び特にDNAまたはRNA分子という用語は、分子の一次及び二次構造のみを指し、任意の特定の三次形態に限定されない。したがって、この用語は、とりわけ線形または環状DNA分子(例えば、制限断片)、プラスミド、スーパーコイルDNA、及び染色体に見出される二本鎖DNAを含む。特定の二本鎖DNA分子の構造について述べる際、配列は、DNAの非転写鎖(すなわち、mRNAに相同な配列を有する鎖)に沿った5’~3’方向での配列のみを提供する通常の慣例に従って本明細書に記載され得る。「組換えDNA分子」は、分子生物学的操作を受けたDNA分子である。DNAとしては、限定されるものではないが、cDNA、ゲノムDNA、プラスミドDNA、合成DNA、及び半合成DNAが挙げられる。本開示の「核酸組成物」は、本明細書に記載されるような1つ以上の核酸を含む。
【0093】
本明細書で使用する場合、語句「非経口投与」及び「非経口的に投与される」は、経腸投与及び局所投与以外の通常注射による投与様式を意味し、限定されるものではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、クモ膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊髄内、及び胸骨内注射及び注入が挙げられる。
【0094】
「薬学的に許容される担体」、「薬学的に許容される賦形剤」という用語、及びそれらの文法的変化形は、ヒトを含む動物に使用するための米国連邦政府の規制機関により承認されたか、または米国薬局方に列挙される薬剤のいずれか、ならびに対象への組成物の投与を禁止する程度まで望ましくない生理作用の発生を引き起こさず、投与される化合物の生物活性及び特性を抑制しない任意の担体または希釈剤を包含する。医薬組成物を調製するのに有用であり、一般に安全で、非毒性であり、望ましい賦形剤及び担体が含まれる。
【0095】
本明細書で使用する場合、「医薬組成物」という用語は、1種以上の他の化学成分、例えば、薬学的に許容されるキャリア及び賦形剤と混合もしくは混ぜ合わされたか、またはそれらの中に懸濁された、例えば、本開示のミセルなどの本明細書に記載される化合物のうちの1種以上を指す。医薬組成物の1つの目的は、対象へのミセル調製物の投与を容易にすることである。
【0096】
本明細書で使用する場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、それらのアナログ、またはそれらの混合物が挙げられるヌクレオチドの任意の長さのポリマーを指す。この用語は分子の一次構造を指す。したがって、この用語は、三本鎖、二本鎖、及び一本鎖デオキシリボ核酸(「DNA」)、ならびに三本鎖、二本鎖、及び一本鎖リボ核酸(「RNA」)を含む。この用語は、例えば、アルキル化及び/またはキャッピングにより修飾されたポリヌクレオチド及び未修飾形態のポリヌクレオチドも含む。
【0097】
より具体的には、「ポリヌクレオチド」という用語は、ポリデオキシリボヌクレオチド(2-デオキシ-D-リボースを含有する)、スプライシングされたまたはスプライシングされていないにかかわらず、tRNA、rRNA、hRNA、siRNA、及びmRNAが挙げられるポリリボヌクレオチド(D-リボースを含有する)、プリンまたはピリミジン塩基のN-またはC-配糖体である任意の他の種類のポリヌクレオチド、ならびに非ヌクレオチド骨格を含有する他のポリマー、例えば、ポリアミド(例えば、ペプチド核酸「PNA」)及びポリモルホリノポリマー、ならびにDNA及びRNAにおいて見出されるような塩基対形成及び塩基スタッキングを可能にする配置で核酸塩基を含有することを条件とする他の配列特異的合成核酸ポリマーを含む。
【0098】
本開示のいくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、例えばmRNAのようなRNA、またはDNAであり得る。いくつかの態様では、RNAは、合成RNAである。いくつかの態様では、合成RNAは、少なくとも1つの非天然核酸塩基を含む。いくつかの態様では、ある特定の種類のすべての核酸塩基が、非天然核酸塩基と置き換えられている(例えば、本明細書において開示されるポリヌクレオチドにおけるすべてのウリジンが、非天然核酸塩基、例えば、5-メトキシウリジンと置き換えられ得る)。
【0099】
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」なる用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを呼称するうえで本明細書で互換的に使用される。ポリマーは、修飾アミノ酸を含み得る。これらの用語は、自然に修飾された、または、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識成分との結合など、他の任意の操作もしくは改変などの介入により修飾されたアミノ酸ポリマーも包含される。例えば、1つ以上のアミノ酸アナログ(例えば、ホモシステイン、オルニチン、p-アセチルフェニルアラニン、D-アミノ酸、及びクレアチンなどの非天然アミノ酸が挙げられる)、及び当該技術分野において公知の他の修飾を含有するポリペプチドも定義の範囲内に含まれる。本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」という用語は、任意のサイズ、構造、または機能のタンパク質、ポリペプチド、及びペプチドを指す。ポリペプチドとしては、遺伝子産物、天然に存在するポリペプチド、合成ポリペプチド、上述のもののホモログ、オーソログ、パラログ、断片及び他の等価物、バリアント、ならびにアナログが挙げられる。ポリペプチドは、単一のポリペプチドであり得るか、またはダイマー、トリマー、もしくはテトラマーなどの多分子複合体であり得る。それらは、一本鎖または多連鎖ポリペプチドも含み得る。最も一般的には、ジスルフィド結合が多連鎖ポリペプチドにおいて見出される。ポリペプチドという用語は、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学的アナログであるようなアミノ酸ポリマーにも適用されうる。いくつかの態様では、「ペプチド」は、50アミノ酸長以下、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50アミノ酸長であり得る。
【0100】
カチオン性キャリアとの関連で使用される任意のアミノ酸、例えばリシンは、その天然の側基(例えば、リシンの-NH )を有することによって、または修飾された側基を有することによって正電荷を有する。架橋部分または疎水性部分との関連で使用される任意のアミノ酸、例えばリシンは、正電荷を持たなくてもよく、それぞれ、アミド結合またはリンカーによって架橋剤(例えばチオール)または疎水性剤(例えばビタミンB3)と結合させることができる。
【0101】
本明細書で使用する場合、「N/P比」という用語は、カチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードが溶液中で互いに混合される際の、カチオン性キャリアユニットのカチオン性キャリア部分中のプロトン化アミンとアニオン性ペイロード中のリン酸塩とのモル比を意味する。
【0102】
本明細書で使用する場合、「予防する」、「予防すること」という用語、及びそれらの変化形は、疾患、障害、及び/または状態の発症を部分的または完全に遅延させること;特定の疾患、障害、及び/または状態の1つ以上の症状、特徴、または臨床徴候の発症を部分的または完全に遅延させること;特定の疾患、障害、及び/または状態の1つ以上の症状、特徴、または徴候の発症を部分的または完全に遅延させること;特定の疾患、障害、及び/または状態の進行を部分的または完全に遅延させること;及び/または疾患、障害、及び/または状態に関連する病理を生じるリスクを減少させることを指す。いくつかの態様では、転帰の予防は、予防的治療によって実現される。
【0103】
本明細書で使用する場合、「予防」とは、疾患もしくは状態の発症を予防するために、または疾患もしくは状態に関連する症状を予防または遅延させるために使用される治療的行動または行動方針を指す。
【0104】
本明細書で使用する場合、「予防法」は、健康を維持し、出血症状の発症を予防もしくは遅延させるために、または疾患もしくは状態に関連する症状を予防もしくは遅延させるために取られる手段を指す。
【0105】
本明細書で使用する場合、「類似性」という用語は、ポリマー分子間、例えば、ポリヌクレオチド分子(例えば、DNA分子及び/またはRNA分子)間、及び/またはポリペプチド分子間の全体的関連性を指す。ポリマー分子同士の互いに対する類似率(%)の計算は、類似率(%)の計算が当該技術分野で理解されるところの保存的置換を考慮している点を除いて、同一率(%)の計算と同様にして行うことができる。類似率(%)は、用いられる比較尺度、すなわち、アミノ酸同士が、例えばそれらの進化的な近さ、電荷、体積、柔軟性、極性、疎水性、芳香族性、等電点、抗原性、またはそれらの組み合わせのどれにしたがって比較されるかによって左右されることが理解される。
【0106】
「対象」、「患者」、「個体」、及び「宿主」なる用語、及びそれらの変化形は、本明細書において互換的に使用され、限定されるものではないが、ヒト、家庭用動物(例えば、イヌ、ネコなど)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)、及び実験動物(例えば、サル、ラット、マウス、ウサギ、モルモットなど)が挙げられる、診断、処置、または治療が所望される任意の哺乳動物対象、特にヒトを指す。本明細書に記載される方法は、ヒトの治療及び獣医学的用途の両方に適用可能である。
【0107】
本明細書で使用する場合、「その必要がある対象」という表現は、例えば、止血を改善するために、本開示のミセルの投与から恩恵を受ける哺乳動物対象などの対象を含む。
【0108】
本明細書で使用する場合、「全身投与」、「全身投与される」、「末梢投与」、及び「末梢投与される」という表現は、化合物、薬物、または他の物質の中枢神経系への直接投与以外の、それが患者の系に入り、したがって、代謝及び他の同様のプロセスに供されるような投与、例えば、皮下投与を意味する。
【0109】
本明細書で使用する場合、「治療上有効量」という用語は、所望の治療効果、薬理学的、及び/または生理学的効果をもたらす必要がある対象に対する所望の治療効果、薬理学的、及び/または生理学的効果をもたらすのに十分な、本開示のミセルを含む試薬または医薬化合物の量である。治療上有効量は、予防が治療とみなされ得る場合、「予防上有効量」であり得る。
【0110】
本明細書で使用する場合、「治療する」、「治療」、または「治療すること」という用語は、例えば、疾患または状態の重症度の低減、疾患経過の期間の低減、疾患または状態に関連する1つ以上の症状の改善または除去、疾患または状態を必ずしも治療しない、疾患または状態を有する対象に対する有益な効果の提供を指す。この用語には、疾患もしくは状態またはその症状の予防または防止も含まれる。一態様では、「治療すること」または「治療」なる用語は、対象に抗原に対する免疫応答を誘導することを意味する。
【0111】
「上流」という用語は、参照ヌクレオチド配列の5’側に存在するヌクレオチド配列を指す。
【0112】
II.キャリアユニット
本開示は、ミセルに自己組織化し得るか、またはミセルに取り込まれ得るキャリアユニットを提供する。本開示のキャリアユニットは、水溶性バイオポリマー部分(例えば、PEG)、荷電したキャリア部分、架橋部分、及び疎水性部分を含む。いくつかの態様では、荷電キャリア部分は、図1に例示されるように、カチオン性(例えば、ポリリシン)である。
【0113】
本開示のキャリアユニットは、負に荷電したペイロード(例えば、治療薬または診断用薬)を送達するために使用することができる。いくつかの態様では、ミセルによって送達され得る負に荷電したペイロードは、少なくとも約100、少なくとも約1000、少なくとも約2000、少なくとも約3000、または少なくとも約4000ヌクレオチドの長さを有する。カチオン性の荷電したキャリア部分を有するキャリアユニットは、アニオン性ペイロード(例えば、ポリヌクレオチド)の送達に使用され得る。アニオン性の荷電したキャリア部分を有するキャリアユニットは、カチオン性ペイロード(例えば、正に荷電した低分子薬物)の送達に使用され得る。図1を参照されたい。いくつかの態様では、カチオン性荷電キャリア部分とアニオン性ペイロードとは、互いに静電的に相互作用することができる。
【0114】
得られるキャリアユニット:ペイロード複合体は、水溶性バイオポリマー部分を含む「頭部」と、ペイロードに静電的に結合したカチオン性キャリア部分を含む「尾部」とを有する。
【0115】
キャリアユニット:ペイロード複合体は、単独で、または他の分子との組み合わせで自己結合することで、ペイロードがミセルのコアに存在し、水溶性バイオポリマー部分が溶媒に面したミセルをもたらし得る。「本開示のミセル」という用語は、典型的なミセルだけでなく小粒子、小型ミセル、ミセル、桿状構造、またはポリマソームも包含する。ポリマソームが内腔を含むことを考慮すると、典型的なミセルの「コア」に関連するすべての開示が、本開示のキャリアユニットを含むポリマソームにおける内腔に等しく適用されると理解されたい。
【0116】
本開示のキャリアユニットは、1つ以上の任意選択のリンカーにより水溶性バイオポリマー部分に共有結合された標的化部分(例えば、標的化リガンド)を含み得る。ミセルが形成されると、標的化部分はミセルの表面に位置することができ、特定の標的組織、特定の細胞種にミセルを送達し得、及び/または生理学的バリア(例えば、細胞形質膜)を通した輸送を促進することができる。いくつかの態様では、本開示のミセルは、2種類以上の標的化部分を含み得る。
【0117】
本開示のキャリアユニットは、荷電したカチオンキャリア部分に共有結合された疎水性部分(HM)も含み得る。疎水性部分は、例えば、治療効果、共治療効果を有するか、または標的細胞もしくは標的組織の恒常性にプラスの影響を及ぼすことができる。いくつかの態様では、HMは、1つ以上のアミノ酸を含む。いくつかの態様では、HMは、疎水性分子(例えば、ビタミン)に連結された1つ以上のアミノ酸を含む。いくつかの態様では、Hmは、疎水性分子(例えば、ビタミン)に共有結合された1つ以上のリシン残基を含む。
【0118】
いくつかの態様では、アニオン性ペイロードは、キャリアユニットに共有結合によって連結されていない。しかしながら、他の態様では、アニオン性ペイロードは、カチオン性キャリアユニット、例えば、切断可能なリンカーなどのリンカーに共有結合によって連結され得る。
【0119】
様々な態様の非限定的な例を本開示に示す。本開示は、特に、例えば、核酸などのアニオン性ペイロードを送達するための、カチオン性キャリアユニットの使用に関する。しかしながら、キャリア部分及びペイロードの電荷を逆転させること(すなわち、カチオン性ペイロードを送達するためにキャリアユニットにアニオン性キャリア部分を使用すること)により、またはアニオン性もしくはカチオン性キャリア部分と静電的相互作用するそれぞれカチオン性もしくはアニオン性アダプターに連結された中性ペイロードを使用することにより、本開示がカチオン性ペイロードの送達または中性ペイロードの送達に同様に適用され得ることが当業者には明らかであろう。
【0120】
したがって、一態様において、本開示は、図式I~図式VI:
[CC]-L1-[CM]-L2-[HM](図式I)、
[CC]-L1-[HM]-L2-[CM](図式II)、
[HM]-L1-[CM]-L2-[CC](図式III)、
[HM]-L1-[CC]-L2-[CM](図式IV)、
[CM]-L1-[CC]-L2-[HM](図式V)、または
[CM]-L1-[HM]-L2-[CC](図式VI)、
(式中、
CCは、カチオン性キャリア部分、例えば、ポリリシンであり、
CMは、架橋部分であり、
HMは、疎水性部分、例えば、ビタミン、例えば、ビタミンB3であり、
L1及びL2は、独立して任意選択のリンカーである)のカチオン性キャリアユニットを提供する。
【0121】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、水溶性ポリマー(WP)をさらに含む。いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、[CC]、[HM]、及び/または[CM]に結合される。いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、[CC]、[HM]、または[CM]のN末端に結合される。いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、[CC]のN末端に結合される。いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、[CC]、[HM]、または[CM]のC末端に結合される。いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、[CC]のC末端に結合される。
【0122】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、
[WP]-L3-[CC]-L1-[CM]-L2-[HM](図式I’)、
[WP]-L3-[CC]-L1-[HM]-L2-[CM](図式II’)、
[WP]-L3-[HM]-L1-[CM]-L2-[CC](図式III’)、
[WP]-L3-[HM]-L1-[CC]-L2-[CM](図式IV’)、
[WP]-L3-[CM]-L1-[CC]-L2-[HM](図式V’)、または
[WP]-L3-[CM]-L1-[HM]-L2-[CC](図式VI’)を含む。
【0123】
上記の図式I’~VI’のコンストラクトのいくつかの態様では、[WP]構成要素は、少なくとも1つの標的化部分、すなわち、[T]-[WP]-…に連結され得、式中、nは整数、例えば、1、2、または3である。
【0124】
図2A~2Eは、本開示のカチオン性キャリアユニットの模式図を示す。簡単のために、図2A~2Eのユニットは、直線的に示されている。しかしながら、いくつかの態様では、キャリアユニットは、例えば、(i)正に荷電したユニット(例えば、ポリリシン)を含むポリマーCC部分と、(ii)CC部分のN末端またはC末端に結合されたCM(例えば架橋剤に連結されたリシン、例えばリシン-チオール)と、(iii)CM部分のN末端またはC末端に結合されたHM(例えば、疎水性物質に連結されたリシン、例えば、ビタミンB3に連結されたリシン)とを含む、分枝状のスカフォールド配置(図2及び図3を参照)として構成されたCC、CM、及びHM部分を含むことができる。
【0125】
本開示のカチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロード(例えば、核酸)とが約20:約1のイオン比(すなわち、アニオン性ペイロード中の負電荷の数が、カチオン性キャリア部分中の正電荷の数の約20倍大きい場合)~約20:約1のイオン比(すなわち、カチオン性キャリア部分中の正電荷の数が、アニオン性ペイロード中の負電荷の数の約10倍大きい場合)で混合される場合、主として静電的相互作用を介した、カチオン性キャリア部分中の正電荷によるアニオン性ペイロード中の負電荷の中和によって、変化のない親水性部分(WP部分を含む)と、大幅に疎水性が高い部分(カチオン性キャリア部分+疎水性部分及びアニオン性ペイロードとの間の結合に起因する)とを有するカチオン性キャリアユニット:アニオン性ペイロード複合体が形成される。
【0126】
いくつかの態様では、疎水性部分は、それ自身の正電荷を、アニオン性ペイロードの負電荷と相互作用するカチオン性キャリア部分の正電荷に与えることができる。カチオン性キャリア部分とアニオン性ペイロードとの間の相互作用(例えば、静電的相互作用)への言及は、疎水性部分及びカチオン性キャリア部分の電荷とアニオン性ペイロードの電荷との間の相互作用も包含することを理解されたい。
【0127】
アニオン性ペイロードの負電荷との静電的相互作用による正電荷の中性化に起因するカチオン性キャリアユニットのカチオン性キャリア部分の疎水性の増加は、両親媒性複合体をもたらす。かかる両親媒性複合体は、単独でまたは他の両親媒性成分との組み合わせでミセルに自己組織化し得る。得られたミセルは、溶媒に面しているWP部分(すなわち、WP部分はミセルの外面に向いている)を含むが、CC及びHM部分ならびに会合したペイロード(例えば、ヌクレオチド配列、例えば、RNA、DNA、またはそれらの任意の組み合わせ)はミセルの中心に存在する。
【0128】
いくつかの特定の態様では、カチオン性キャリアユニットは、
(a)WP部分であって、水溶性バイオポリマーが、式III(下記参照)のポリエチレングリコール(PEG)(ただし、nは約120~約130である)(例えば、PEGは、PEG5000またはPEG6000である)である、WP部分と、
(b)CC部分であって、カチオン性キャリア部分が、例えば、約20個~約100個のリシン(例えば、直鎖状ポリ(L-リシン)n(ここで、nは約30~約40である))、ポリエチレンイミン(PEI)、またはキトサンを含む、CC部分と、
(c)CM部分であって、架橋部分が、それぞれが架橋剤に結合した約10個~約50個のリシン(例えば10個~40個のリシン-チオール)を含む、CM部分と、
(d)HM部分であって、疎水性部分が、それぞれがビタミンB3単位に結合した約1個~約20個のリシンを有する、HM部分と、を含む。
【0129】
いくつかの特定の態様では、カチオン性キャリアユニットは、
(a)WP部分であって、水溶性バイオポリマーが、式III(下記参照)のポリエチレングリコール(PEG)(ただし、nは約120~約PEG130である)(例えば、PEGは、PEG5000またはPEG6000である)である、WP部分と、
(b)CC部分であって、カチオン性キャリア部分が、例えば、約20個~約100個のリシン(例えば、直鎖状ポリ(L-リシン)n(ここで、nは約30~約40である))、ポリエチレンイミン(PEI)、またはキトサンを含む、CC部分と、
(c)CM部分であって、架橋部分が、それぞれが架橋剤に結合した約10個~約50個のリシン(例えば10個~40個のリシン-チオール)を含む、CM部分と、
(d)HM部分であって、疎水性部分が、それぞれがビタミンB3単位に結合した約1個~約10個のリシンを有する、HM部分と、を含む。
【0130】
いくつかの特定の態様では、カチオン性キャリアユニットは、
(a)WP部分であって、水溶性バイオポリマーが、式III(下記参照)のポリエチレングリコール(PEG)(ただし、nは約120~約PEG130である)(例えば、PEGは、PEG5000またはPEG6000である)である、WP部分と、
(b)CC部分であって、カチオン性キャリア部分が、例えば、約20個~約100個のリシン(例えば、直鎖状ポリ(L-リシン)n(ここで、nは約30~約40である))、ポリエチレンイミン(PEI)、またはキトサンを含む、CC部分と、
(c)CM部分であって、架橋部分が、それぞれが架橋剤に結合した約10個~約50個のリシン(例えば10個~40個のリシン-チオール)を含む、CM部分と、
(d)HM部分であって、疎水性部分が、それぞれがビタミンB3単位に結合した約5個~約10個のリシンを有する、HM部分と、を含む。
【0131】
いくつかの特定の態様では、カチオン性キャリアユニットは、
(a)WP部分であって、水溶性バイオポリマーが、式III(下記参照)のポリエチレングリコール(PEG)(ただし、nは約120~約PEG130である)(例えば、PEGは、PEG5000またはPEG6000である)である、WP部分と、
(b)CC部分であって、カチオン性キャリア部分が、例えば、約20個~約100個のリシン(例えば、直鎖状ポリ(L-リシン)n(ここで、nは約30~約40、例えば40である))、ポリエチレンイミン(PEI)、またはキトサンを含む、CC部分と、
(c)CM部分であって、架橋部分が、それぞれが架橋剤に結合した約10個~約50個のリシン(例えば10個~40個のリシン-チオール、例えば35個のリシン-チオール)を含む、CM部分と、
(d)HM部分であって、疎水性部分が、それぞれがビタミンB3単位に結合した約1個~約5個のリシンを有する、HM部分と、を含む。
【0132】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、カチオン性キャリアユニットのWP部分に結合された少なくとも1つの標的化部分をさらに含む。いくつかの態様では、ミセルの表面に提示される標的化部分の数及び/または密度は、標的化部分を有するカチオン性キャリアユニット対標的化部分を有さないカチオン性キャリアユニットの特定の比率を使用することにより調節され得る。いくつかの態様では、標的化部分を有するカチオン性キャリアユニット対標的化部分を有さないカチオン性キャリアユニットの比は、少なくとも約1:5、少なくとも約1:10、少なくとも約1:20、少なくとも約1:30、少なくとも約1:40、少なくとも約1:50、少なくとも約1:60、少なくとも約1:70、少なくとも約1:80、少なくとも約1:90、少なくとも約1:100、少なくとも約1:120、少なくとも約1:140、少なくとも約1:160、少なくとも約1:180、少なくとも約1:200、少なくとも約1:250、少なくとも約1:300、少なくとも約1:350、少なくとも約1:400、少なくとも約1:450、少なくとも約1:500、少なくとも約1:600、少なくとも約1:700、少なくとも約1:800、少なくとも約1:900、または少なくとも約1:1000である。
【0133】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、
(i)輸送体LAT1を標的とする標的化部分(A)(例えば、フェニルアラニン)と、
(ii)PEGである水溶性ポリマーと、
(iii)リシンであるカチオン性ポリマーブロックを含むカチオン性キャリア部分と、
(iv)架橋部分に連結されたリシンである架橋ポリマーブロックを含む架橋部分と、
(v)ビタミンB3に連結されたリシンである疎水性ポリマーブロックを含む疎水性部分と、を含む。
【0134】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、
(i)輸送体LAT1を標的とする標的化部分(A)(例えば、フェニルアラニン)と、
(ii)PEGである水溶性ポリマーであって、n=100~200、例えば、100~150、例えば、120~130である、水溶性ポリマーと、
(iii)カチオン性ポリマーブロックを含むカチオン性キャリア部分、例えば、ポリリシンと、
(iv)架橋部分に連結されたリシンである架橋ポリマーブロックを含む架橋部分と、
(iv)ビタミンB3に連結されたリシンである疎水性ポリマーブロックを含む疎水性部分と、を含む。
【0135】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、
(i)輸送体LAT1を標的とする標的化部分(A)(例えば、フェニルアラニン)と、
(ii)PEGである水溶性ポリマーであって、n=100~200、例えば、100~150、例えば、120~130である、水溶性ポリマーと、
(iii)カチオン性ポリマーブロックを含むカチオン性キャリア部分、例えば、10~100個のリシン、例えば、10~50個のリシン、例えば、30~40個のリシンと、
(iv)架橋部分に連結されたリシンである架橋ポリマーブロックを含む架橋部分と、
(iv)ビタミンB3に連結されたリシンである疎水性ポリマーブロックを含む疎水性部分と、を含む。
【0136】
いくつかの態様では、HMの数(割合)は、[CC]及び[CM]に対して39%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満である。いくつかの態様では、HMの数(割合)は、[CC]及び[CM]に対して約35%~約1%、約35%~約5%、約35%~約10%、約35%~約15%、約35%~約20%、約35%~約25%、約35%~約30%、約30%~約1%、約30%~約5%、約30%~約10%、約30%~約15%、約30%~約20%、約30%~約25%、約25%~約1%、約25%~約5%、約25%~約10%、約25%~約15%、約25%~約20%、約20%~約1%、約20%~約5%、約20%~約10%、約20%~約15%、約15%~約1%、約15%~約5%、約15%~約10%、約10%~約1%、または約10%~約5%である。いくつかの態様では、HMの数(割合)は、[CC]及び[CM]に対して約39%~約30%、約30%~約20%、約20%~約10%、約10%~約5%、及び約5%~約1%である。いくつかの態様では、HMの数(割合)は、[CC]及び[CM]に対して約39%、約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、約5%、または約1%である。いくつかの態様では、HMの数は、[CC]及び[CM]に対する[HM]の割合として表される。
【0137】
いくつかの態様では、本開示のカチオン性キャリアユニットは、約100~約1000ヌクレオチドの長さを有するヌクレオチドペイロードと相互作用する。いくつかの態様では、約100~約1000ヌクレオチドの長さを有するヌクレオチドペイロードは、1つ以上のタンパク質またはそのフラグメント、例えば、PAPD5/7またはそのフラグメントをコードする。いくつかの態様では、約100~約1000ヌクレオチドの長さを有するヌクレオチドペイロードと複合体化されたキャリアユニットは、ミセルを形成する。
【0138】
いくつかの態様では、本開示のカチオン性キャリアユニットは、約1000~約2000ヌクレオチドの長さを有するヌクレオチドペイロードと相互作用する。いくつかの態様では、約1000~約2000ヌクレオチドの長さを有するヌクレオチドペイロードは、1つ以上のタンパク質またはそのフラグメント、例えば、Gタンパク質またはその任意のフラグメントをコードする。いくつかの態様では、約1000~約2000ヌクレオチドの長さを有するヌクレオチドペイロードと複合体化されたキャリアユニットは、ミセルを形成する。
【0139】
いくつかの態様では、本開示のカチオン性キャリアユニットは、約2000~約3000ヌクレオチドの長さを有するヌクレオチドペイロードと相互作用する。いくつかの態様では、約2000~約3000ヌクレオチドの長さを有するヌクレオチドペイロードは、1つ以上のタンパク質またはそのフラグメント、例えば、ゲフィリンまたはその任意のフラグメントをコードする。いくつかの態様では、約2000~約3000ヌクレオチドの長さを有するヌクレオチドペイロードと複合体化されたキャリアユニットは、ミセルを形成する。
【0140】
いくつかの態様では、本開示のカチオン性キャリアユニットは、約3000~約4000ヌクレオチドの長さを有するヌクレオチドペイロードと相互作用する。いくつかの態様では、約3000~約4000ヌクレオチドの長さを有するヌクレオチドペイロードは、1つ以上のタンパク質またはそのフラグメント、例えば、MDA5(IFIH1)またはその任意のフラグメントをコードする。いくつかの態様では、約3000~約4000ヌクレオチドの長さを有するヌクレオチドペイロードと複合体化されたキャリアユニットは、ミセルを形成する。
【0141】
いくつかの態様では、ビタミンB3ユニットは、好適なコンジュゲーション試薬、例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)の存在下での例えば、リシンのNH基とビタミンB3のCOOH基との間のカップリング反応によりHM部分の側鎖に導入される。
【0142】
本開示は、本開示のキャリアユニット(例えば、カチオン性キャリアユニット)を含む組成物を提供する。他の態様では、本開示は、ペイロード(例えば、ヌクレオチド配列などのアニオン性ペイロード、例えば、RNA、DNA、またはそれらの任意の組み合わせ)に非共有結合的に結合された、本開示のキャリアユニット(例えば、カチオン性キャリアユニットユニット)を含む複合体を提供し、ここで、キャリアユニットとペイロードとは静電的に相互作用する。他の態様では、本開示は、ペイロード(例えば、ヌクレオチド配列などのアニオン性ペイロード、例えば、RNA、DNA、またはそれらの任意の組み合わせ)に共有結合的に結合された、本開示のキャリアユニット(例えば、カチオン性キャリアユニットユニット)を含む複合体を提供し、ここで、キャリアユニットとペイロードとは静電的に相互作用する。いくつかの態様では、キャリアユニット及びペイロードは、切断可能なリンカーにより連結され得る。いくつかの態様では、キャリアユニット及びペイロードは、静電的相互作用することに加えて、共有結合的に相互作用し得る(例えば、静電的相互作用後、キャリアユニット及びペイロードは、ジスルフィド結合または切断可能な結合により「ロック」され得る)。
【0143】
いくつかの特定の態様では、カチオン性キャリアユニットは、約120~約130個の単位を有するPEGを含む水溶性ポリマーと、約20~約60個のリシン単位を有するポリリシンを含むカチオン性キャリア部分と、約3~約40個のリシン-チオール単位を含む架橋部分と、約1~約20個の、ビタミンB3単位に連結されたリシンを含む疎水性部分と、を含む。
【0144】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、少なくとも1つのイオン結合により(すなわち、カチオン性キャリアユニットのカチオン性キャリア部分との静電的相互作用により)カチオン性キャリア部分と相互作用する負に荷電したペイロード(例えば、ヌクレオチド配列、例えば、RNA、DNA、またはそれらの任意の組み合わせ)と会合する。
【0145】
本開示のカチオン性キャリアユニットの具体的な構成要素を、以下に詳細に開示する。
【0146】
a.水溶性バイオポリマー
いくつかの態様では、本開示のカチオン性キャリアユニットは、少なくとも1つの水溶性バイオポリマーを含む。本明細書で使用する場合、「水溶性バイオポリマー」という用語は、生体適合性、生物学的に不活性、非免疫原性、非毒性、かつ親水性のポリマー、例えば、PEGを指す。
【0147】
いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリグリセロール、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン(「POZ」)、ポリ(N-アクリロイルモルホリン)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、水溶性バイオポリマーは、直鎖状、分枝鎖状、または樹枝状である。
【0148】
いくつかの態様では、水溶性バイオポリマーは、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリグリセロール(「PG」)、またはポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)を含む。PPGは、PEGより毒性が少ないため、現在多くの生物学的製剤が、PEGの代わりにPPGで製造されている。
【0149】
いくつかの態様では、水溶性バイオポリマーは、式R-(O-CH-CH-またはR-(0-CH-CH-O-(式中、Rは水素、メチル、またはエチルであり、nは2~200の値を有する)を特徴とするPEGを含む。いくつかの態様では、PEGは、次式を有し、
【化3】
式中、nは、1~1000である。
【0150】
いくつかの態様では、PEGのnは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、189、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、または200の値を有する。
【0151】
いくつかの態様では、nは、少なくとも約10、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80、少なくとも約90、少なくとも約100、少なくとも約110、少なくとも120、少なくとも約130、少なくとも約140、少なくとも約150、少なくとも約160、少なくとも約170、少なくとも約180、少なくとも約190、少なくとも約200、少なくとも約210、少なくとも約220、少なくとも約230、少なくとも約240、少なくとも約250、少なくとも約260、少なくとも約270、少なくとも約280、少なくとも約290、少なくとも約300、少なくとも約310、少なくとも約320、少なくとも約330、少なくとも約340、少なくとも約350、少なくとも約360、少なくとも約370、少なくとも約380、少なくとも約390、少なくとも約400、少なくとも約410、少なくとも約420、少なくとも約430、少なくとも約440、少なくとも約450、少なくとも約460、少なくとも約470、少なくとも約480、少なくとも約490、少なくとも約500、少なくとも約510、少なくとも約520、少なくとも約530、少なくとも約540、少なくとも約550、少なくとも約560、少なくとも約670、少なくとも約580、少なくとも約590、少なくとも約600、少なくとも約610、少なくとも約620、少なくとも約630、少なくとも約640、少なくとも約650、少なくとも約660、少なくとも約670、少なくとも約680、少なくとも約690、少なくとも約700、少なくとも約710、少なくとも約720、少なくとも約730、少なくとも約740、少なくとも約750、少なくとも約760、少なくとも約770、少なくとも約780、少なくとも約790、少なくとも約800、少なくとも約810、少なくとも約820、少なくとも約830、少なくとも約840、少なくとも約850、少なくとも約860、少なくとも約870、少なくとも約880、少なくとも約890、少なくとも約900、少なくとも約910、少なくとも約920、少なくとも約930、少なくとも約940、少なくとも約950、少なくとも約960、少なくとも約970、少なくとも約980、少なくとも約990、または約1000である。
【0152】
いくつかの態様では、nは、約50~約100、約100~約150、約150~約200、約200~約250、約250~約300、約300~約350、約350~約400、約400~約450、約450~約500、約500~約550、約550~約600、約600~約650、約650~約700、約700~約750、約750~約800、約800~約850、約850~約900、約900~約950、または約950~約1000である。
【0153】
いくつかの態様では、nは、少なくとも約80、少なくとも約81、少なくとも約82、少なくとも約83、少なくとも約84、少なくとも約85、少なくとも約86、少なくとも約87、少なくとも約88、少なくとも約89、少なくとも約90、少なくとも約91、少なくとも約92、少なくとも約93、少なくとも約94、少なくとも約95、少なくとも約96、少なくとも約97、少なくとも約98、少なくとも約99、少なくとも約100、少なくとも約101、少なくとも約102、少なくとも約103、少なくとも約104、少なくとも約105、少なくとも約106、少なくとも約107、少なくとも約108、少なくとも約109、少なくとも110、少なくとも約111、少なくとも約112、少なくとも約113、少なくとも約114、少なくとも約115、少なくとも約116、少なくとも約117、少なくとも約118、少なくとも約119、少なくとも約120、少なくとも約121、少なくとも約122、少なくとも約123、少なくとも約124、少なくとも約125、少なくとも約126、少なくとも約127、少なくとも約128、少なくとも約129、少なくとも約130、少なくとも約131、少なくとも約132、少なくとも約133、少なくとも約134、少なくとも約135、少なくとも約136、少なくとも約137、少なくとも約138、少なくとも約139、少なくとも約140、少なくとも約141、少なくとも約142、少なくとも約143、少なくとも約144、少なくとも約145、少なくとも約146、少なくとも約147、少なくとも約148、少なくとも約149、少なくとも約150、少なくとも約151、少なくとも約152、少なくとも約153、少なくとも約154、少なくとも約155、少なくとも約156、少なくとも約157、少なくとも約158、少なくとも約159、または少なくとも約160である。
【0154】
いくつかの態様では、nは、約80~約90、約90~約100、約100~約110、約110~約120、約120~約130、約130~約140、約140~約150、約150~約160、約85~約95、約95~約105、約105~約115、約115~約125、約125~約135、約135~約145、約145~約155、約155~約165、約80~約100、約100~約120、約120~約140、約140~約160、約85~約105、約105~約125、約125~約145、または約145~約165である。
【0155】
いくつかの態様では、nは、約100~約150である。いくつかの態様では、nは、約100~約140である。いくつかの態様では、nは、約100~約130である。いくつかの態様では、nは、約110~約150である。いくつかの態様では、nは、約110~約140である。いくつかの態様では、nは、約110~約130である。いくつかの態様では、nは、約110~約120である。いくつかの態様では、nは、約120~約150である。いくつかの態様では、nは、約120~約140である。いくつかの態様では、nは、約120~約130である。いくつかの態様では、nは、約130~約150である。いくつかの態様では、nは、約130~約140である。
【0156】
したがって、いくつかの態様では、PEGは、分枝鎖PEGである。分枝鎖PEGは、中心コア基から延びる3~10本のPEG鎖を有する。ある特定の態様では、PEG部分は、単分散ポリエチレングリコールである。本開示の文脈において、単分散ポリエチレングリコール(mdPEG)は、単一の既定の鎖長及び分子量を有するPEGである。mdPEGは、通常、クロマトグラフィーによる重合混合物からの分離により生成される。ある特定の式において、単分散PEG部分は、略語mdPEGを割り当てられる。
【0157】
いくつかの態様では、PEGは、Star PEGである。Star PEGは、中心コア基から延びる10~100本のPEG鎖を有する。いくつかの態様では、PEGは、Comb PEGである。Comb PEGは、通常、ポリマー主鎖上にグラフトされた複数のPEG鎖を有する。
【0158】
ある特定の態様では、PEGは、約1000g/mol~約2000g/mol、約2000g/mol~約3000g/mol、約3000g/mol~約4000g/mol、約4000g/mol~約5000g/mol、約5000g/mol~約6000g/mol、約6000g/mol~約7000g/mol、または7000g/mol~約8000g/molのモル質量を有する。
【0159】
いくつかの態様では、PEGは、PEG100、PEG200、PEG300、PEG400、PEG500、PEG600、PEG700、PEG800、PEG900、PEG1000、PEG1100、PEG1200、PEG1300、PEG1400、PEG1500、PEG1600、PEG1700、PEG1800、PEG1900、PEG2000、PEG2100、PEG2200、PEG2300、PEG2400、PEG2500、PEG1600、PEG1700、PEG1800、PEG1900、PEG2000、PEG2100、PEG2200、PEG2300、PEG2400、PEG2500、PEG2600、PEG2700、PEG2800、PEG2900、PEG3000、PEG3100、PEG3200、PEG3300、PEG3400、PEG3500、PEG3600、PEG3700、PEG3800、PEG3900、PEG4000、PEG4100、PEG4200、PEG4300、PEG4400、PEG4500、PEG4600、PEG4700、PEG4800、PEG4900、PEG5000、PEG5100、PEG5200、PEG5300、PEG5400、PEG5500、PEG5600、PEG5700、PEG5800、PEG5900、PEG6000、PEG6100、PEG6200、PEG6300、PEG6400、PEG6500、PEG6600、PEG6700、PEG6800、PEG6900、PEG7000、PEG7100、PEG7200、PEG7300、PEG7400、PEG7500、PEG7600、PEG7700、PEG7800、PEG7900、またはPEG8000である。いくつかの態様では、PEGは、PEG5000である。いくつかの態様では、PEGは、PEG6000である。いくつかの態様では、PEGは、PEG4000である。
【0160】
いくつかの態様では、PEGは、単分散、例えば、mPEG100、mPEG200、mPEG300、mPEG400、mPEG500、mPEG600、mPEG700、mPEG800、mPEG900、mPEG1000、mPEG1100、mPEG1200、mPEG1300、mPEG1400、mPEG1500、mPEG1600、mPEG1700、mPEG1800、mPEG1900、mPEG2000、mPEG2100、mPEG2200、mPEG2300、mPEG2400、mPEG2500、mPEG1600、mPEG1700、mPEG1800、mPEG1900、mPEG2000、mPEG2100、mPEG2200、mPEG2300、mPEG2400、mPEG2500、mPEG2600、mPEG2700、mPEG2800、mPEG2900、mPEG3000、mPEG3100、mPEG3200、mPEG3300、mPEG3400、mPEG3500、mPEG3600、mPEG3700、mPEG3800、mPEG3900、mPEG4000、mPEG4100、mPEG4200、mPEG4300、mPEG4400、mPEG4500、mPEG4600、mPEG4700、mPEG4800、mPEG4900、mPEG5000、mPEG5100、mPEG5200、mPEG5300、mPEG5400、mPEG5500、mPEG5600、mPEG5700、mPEG5800、mPEG5900、mPEG6000、mPEG6100、mPEG6200、mPEG6300、mPEG6400、mPEG6500、mPEG6600、mPEG6700、mPEG6800、mPEG6900、mPEG7000、mPEG7100、mPEG7200、mPEG7300、mPEG7400、mPEG7500、mPEG7600、mPEG7700、m PEG7800、mPEG7900、またはmPEG8000である。いくつかの態様では、mPEGは、mPEG5000である。いくつかの態様では、mPEGは、mPEG6000である。いくつかの態様では、mPEGは、mPEG4000である。
【0161】
いくつかの態様では、水溶性バイオポリマー部分は、式((R-O-(CH-CHOH-CHO)n-)で表現されるポリグリセロール(PG)であり、Rは、水素、メチル、またはエチルであり、nは3~200の値を有する。いくつかの態様では、水溶性バイオポリマー部分は、式(R-O-(CH-CHOR-CH-O)-)で表現され、Rが水素である分枝鎖状ポリグリセロールまたは式(R-O-(CH-CHOH-CH-O)-)で表現される直鎖状グリセロール鎖であり、Rは、水素、メチル、またはエチルである。いくつかの態様では、水溶性バイオポリマー部分は、式(R-O-(CH-CHOR-CH-O)-)で表現され、Rが水素である超分岐ポリグリセロール、または式(R-O-(CH-CHOR-CH-O)-)で表現され、Rが水素であるグリセロール鎖、または式(R-O-(CH-CHOR-CH-O)-)で表現され、R水素であるグリセロール鎖、または式(R-O-(CH-CHOH-CH-O)-)で表現される直鎖状グリセロール鎖であり、Rは、水素、メチル、またはエチルである。超分岐グリセロール及びその合成方法は、Oudshorn et al.(2006) Biomaterials 27:5471-5479;Wilms et al.(20100 Acc.Chem.Res.43,129-41、及びその中で引用される参考文献に記載されている。
【0162】
ある特定の態様では、PGは、約1000g/mol~約2000g/mol、約2000g/mol~約3000g/mol、約3000g/mol~約4000g/mol、約4000g/mol~約5000g/mol、約5000g/mol~約6000g/mol、約6000g/mol~約7000g/mol、または7000g/mol~約8000g/molのモル質量を有する。
【0163】
いくつかの態様では、PGは、PG100、PG200、PG300、PG400、PG500、PG600、PG700、PG800、PG900、PG1000、PG1100、PG1200、PG1300、PG1400、PG1500、PG1600、PG1700、PG1800、PG1900、PG2000、PG2100、PG2200、PG2300、PG2400、PG2500、PG1600、PG1700、PG1800、PG1900、PG2000、PG2100、PG2200、PG2300、PG2400、PG2500、PG2600、PG2700、PG2800、PG2900、PG3000、PG3100、PG3200、PG3300、PG3400、PG3500、PG3600、PG3700、PG3800、PG3900、PG4000、PG4100、PG4200、PG4300、PG4400、PG4500、PG4600、PG4700、PG4800、PG4900、PG5000、PG5100、PG5200、PG5300、PG5400、PG5500、PG5600、PG5700、PG5800、PG5900、PG6000、PG6100、PG6200、PG6300、PG6400、PG6500、PG6600、PG6700、PG6800、PG6900、PG7000、PG7100、PG7200、PG7300、PG7400、PG7500、PG7600、PG7700、PG7800、PG7900、またはPG8000である。いくつかの態様では、PGは、PG5000である。いくつかの態様では、PGは、PG6000である。いくつかの態様では、PGは、PG4000である。
【0164】
いくつかの態様では、PGは、単分散、例えば、mPG100、mPG200、mPG300、mPG400、mPG500、mPG600、mPG700、mPG800、mPG900、mPG1000、mPG1100、mPG1200、mPG1300、mPG1400、mPG1500、mPG1600、mPG1700、mPG1800、mPG1900、mPG2000、mPG2100、mPG2200、mPG2300、mPG2400、mPG2500、mPG1600、mPG1700、mPG1800、mPG1900、mPG2000、mPG2100、mPG2200、mPG2300、mPG2400、mPG2500、mPG2600、mPG2700、mPG2800、mPG2900、mPG3000、mPG3100、mPG3200、mPG3300、mPG3400、mPG3500、mPG3600、mPG3700、mPG3800、mPG3900、mPG4000、mPG4100、mPG4200、mPG4300、mPG4400、mPG4500、mPG4600、mPG4700、mPG4800、mPG4900、mPG5000、mPG5100、mPG5200、mPG5300、mPG5400、mPG5500、mPG5600、mPG5700、mPG5800、mPG5900、mPG6000、mPG6100、mPG6200、mPG6300、mPG6400、mPG6500、mPG6600、mPG6700、mPG6800、mPG6900、mPG7000、mPG7100、mPG7200、mPG7300、mPG7400、mPG7500、mPG7600、mPG7700、m PG7800、mPG7900、またはmPG8000である。
【0165】
いくつかの態様では、水溶性バイオポリマーは、ポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)を含む。いくつかの態様では、PPGは、以下の式を特徴とし、式中、nは、1~1000の値を有する。
【化4】
【0166】
いくつかの態様では、PPGのnは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、189、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、または200の値を有する。
【0167】
いくつかの態様では、PPGのnは、少なくとも約10、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80、少なくとも約90、少なくとも約100、少なくとも約110、少なくとも120、少なくとも約130、少なくとも約140、少なくとも約150、少なくとも約160、少なくとも約170、少なくとも約180、少なくとも約190、少なくとも約200、少なくとも約210、少なくとも約220、少なくとも約230、少なくとも約240、少なくとも約250、少なくとも約260、少なくとも約270、少なくとも約280、少なくとも約290、少なくとも約300、少なくとも約310、少なくとも約320、少なくとも約330、少なくとも約340、少なくとも約350、少なくとも約360、少なくとも約370、少なくとも約380、少なくとも約390、少なくとも約400、少なくとも約410、少なくとも約420、少なくとも約430、少なくとも約440、少なくとも約450、少なくとも約460、少なくとも約470、少なくとも約480、少なくとも約490、少なくとも約500、少なくとも約510、少なくとも約520、少なくとも約530、少なくとも約540、少なくとも約550、少なくとも約560、少なくとも約670、少なくとも約580、少なくとも約590、少なくとも約600、少なくとも約610、少なくとも約620、少なくとも約630、少なくとも約640、少なくとも約650、少なくとも約660、少なくとも約670、少なくとも約680、少なくとも約690、少なくとも約700、少なくとも約710、少なくとも約720、少なくとも約730、少なくとも約740、少なくとも約750、少なくとも約760、少なくとも約770、少なくとも約780、少なくとも約790、少なくとも約800、少なくとも約810、少なくとも約820、少なくとも約830、少なくとも約840、少なくとも約850、少なくとも約860、少なくとも約870、少なくとも約880、少なくとも約890、少なくとも約900、少なくとも約910、少なくとも約920、少なくとも約930、少なくとも約940、少なくとも約950、少なくとも約960、少なくとも約970、少なくとも約980、少なくとも約990、または約1000である。
【0168】
いくつかの態様では、PPGのnは、約50~約100、約100~約150、約150~約200、約200~約250、約250~約300、約300~約350、約350~約400、約400~約450、約450~約500、約500~約550、約550~約600、約600~約650、約650~約700、約700~約750、約750~約800、約800~約850、約850~約900、約900~約950、または約950~約1000である。
【0169】
いくつかの態様では、PPGのnは、少なくとも約80、少なくとも約81、少なくとも約82、少なくとも約83、少なくとも約84、少なくとも約85、少なくとも約86、少なくとも約87、少なくとも約88、少なくとも約89、少なくとも約90、少なくとも約91、少なくとも約92、少なくとも約93、少なくとも約94、少なくとも約95、少なくとも約96、少なくとも約97、少なくとも約98、少なくとも約99、少なくとも約100、少なくとも約101、少なくとも約102、少なくとも約103、少なくとも約104、少なくとも約105、少なくとも約106、少なくとも約107、少なくとも約108、少なくとも約109、少なくとも110、少なくとも約111、少なくとも約112、少なくとも約113、少なくとも約114、少なくとも約115、少なくとも約116、少なくとも約117、少なくとも約118、少なくとも約119、少なくとも約120、少なくとも約121、少なくとも約122、少なくとも約123、少なくとも約124、少なくとも約125、少なくとも約126、少なくとも約127、少なくとも約128、少なくとも約129、少なくとも約130、少なくとも約131、少なくとも約132、少なくとも約133、少なくとも約134、少なくとも約135、少なくとも約136、少なくとも約137、少なくとも約138、少なくとも約139、少なくとも約140、少なくとも約141、少なくとも約142、少なくとも約143、少なくとも約144、少なくとも約145、少なくとも約146、少なくとも約147、少なくとも約148、少なくとも約149、少なくとも約150、少なくとも約151、少なくとも約152、少なくとも約153、少なくとも約154、少なくとも約155、少なくとも約156、少なくとも約157、少なくとも約158、少なくとも約159、または少なくとも約160である。
【0170】
いくつかの態様では、PPGのnは、約80~約90、約90~約100、約100~約110、約110~約120、約120~約130、約130~約140、約140~約150、約150~約160、約85~約95、約95~約105、約105~約115、約115~約125、約125~約135、約135~約145、約145~約155、約155~約165、約80~約100、約100~約120、約120~約140、約140~約160、約85~約105、約105~約125、約125~約145、または約145~約165である。
【0171】
したがって、いくつかの態様では、PPGは、分枝鎖状PPGである。分枝鎖状PPGは、中心コア基から延びる3~10本のPPG鎖を有する。ある特定の態様では、PPG部分は、単分散ポリエチレングリコールである。本開示の文脈において、単分散ポリエチレングリコール(mdPPG)は、単一の既定の鎖長及び分子量を有するPPGである。mdPEGは、通常、クロマトグラフィーによる重合混合物からの分離により生成される。ある特定の式において、単分散PPG部分は、略語mdPPGを割り当てられる。
【0172】
いくつかの態様では、PPGは、Star PPGである。Star PPGは、中心コア基から延びる10~100本のPPG鎖を有する。いくつかの態様では、PPGは、Comb PPGである。Comb PPGは、通常、ポリマー主鎖上にグラフトされた複数のPPG鎖を有する。
【0173】
ある特定の態様では、PPGは、約1000g/mol~約2000g/mol、約2000g/mol~約3000g/mol、約3000g/mol~約4000g/mol、約4000g/mol~約5000g/mol、約5000g/mol~約6000g/mol、約6000g/mol~約7000g/mol、または7000g/mol~約8000g/molのモル質量を有する。
【0174】
いくつかの態様では、PPGは、PPG100、PPG200、PPG300、PPG400、PPG500、PPG600、PPG700、PPG800、PPG900、PPG1000、PPG1100、PPG1200、PPG1300、PPG1400、PPG1500、PPG1600、PPG1700、PPG1800、PPG1900、PPG2000、PPG2100、PPG2200、PPG2300、PPG2400、PPG2500、PPG1600、PPG1700、PPG1800、PPG1900、PPG2000、PPG2100、PPG2200、PPG2300、PPG2400、PPG2500、PPG2600、PPG2700、PPG2800、PPG2900、PPG3000、PPG3100、PPG3200、PPG3300、PPG3400、PPG3500、PPG3600、PPG3700、PPG3800、PPG3900、PPG4000、PPG4100、PPG4200、PPG4300、PPG4400、PPG4500、PPG4600、PPG4700、PPG4800、PPG4900、PPG5000、PPG5100、PPG5200、PPG5300、PPG5400、PPG5500、PPG5600、PPG5700、PPG5800、PPG5900、PPG6000、PPG6100、PPG6200、PPG6300、PPG6400、PPG6500、PPG6600、PPG6700、PPG6800、PPG6900、PPG7000、PPG7100、PPG7200、PPG7300、PPG7400、PPG7500、PPG7600、PPG7700、PPG7800、PPG7900、またはPPG8000である。いくつかの態様では、PPGは、PPG5000である。いくつかの態様では、PPGは、PPG6000である。いくつかの態様では、PPGは、PPG4000である。
【0175】
いくつかの態様では、PPGは、単分散、例えば、mPPG100、mPPG200、mPPG300、mPPG400、mPPG500、mPPG600、mPPG700、mPPG800、mPPG900、mPPG1000、mPPG1100、mPPG1200、mPPG1300、mPPG1400、mPPG1500、mPPG1600、mPPG1700、mPPG1800、mPPG1900、mPPG2000、mPPG2100、mPPG2200、mPPG2300、mPPG2400、mPPG2500、mPPG1600、mPPG1700、mPPG1800、mPPG1900、mPPG2000、mPPG2100、mPPG2200、mPPG2300、mPPG2400、mPPG2500、mPPG2600、mPPG2700、mPPG2800、mPPG2900、mPPG3000、mPPG3100、mPPG3200、mPPG3300、mPPG3400、mPPG3500、mPPG3600、mPPG3700、mPPG3800、mPPG3900、mPPG4000、mPPG4100、mPPG4200、mPPG4300、mPPG4400、mPPG4500、mPPG4600、mPPG4700、mPPG4800、mPPG4900、mPPG5000、mPPG5100、mPPG5200、mPPG5300、mPPG5400、mPPG5500、mPPG5600、mPPG5700、mPPG5800、mPPG5900、mPPG6000、mPPG6100、mPPG6200、mPPG6300、mPPG6400、mPPG6500、mPPG6600、mPPG6700、mPPG6800、mPPG6900、mPPG7000、mPPG7100、mPPG7200、mPPG7300、mPPG7400、mPPG7500、mPPG7600、mPPG7700、m PPG7800、mPPG7900、またはmPPG8000である。いくつかの態様では、mPPGは、mPPG5000である。いくつかの態様では、mPPGは、mPPG6000である。いくつかの態様では、mPPGは、mPPG4000である。
【0176】
b.カチオン性キャリア
いくつかの態様では、本開示のカチオン性キャリアユニットは、少なくとも1つのカチオン性キャリア部分を含む。「カチオン性キャリア」という用語は、アニオン性ペイロード(またはペイロードに結合されたアニオン性キャリア)と静電的相互作用し、結合することができる複数の正電荷を含む、本開示のカチオン性キャリアユニットの部分または一部を指す。いくつかの態様では、カチオン性キャリアの正電荷または正に荷電した基の数は、アニオン性ペイロード(またはペイロードに結合されたアニオン性キャリア)の負電荷または負に荷電した基の数と同程度である。いくつかの態様では、カチオン性キャリアは、バイオポリマー、例えば、ペプチド(例えば、ポリリシン)を含む。
【0177】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアは、1つ以上の塩基性アミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン、またはそれらの組み合わせ)を含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアは、少なくとも約3個、少なくとも約4個、少なくとも約5個、少なくとも約6個、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも約9個、少なくとも約10個、少なくとも約11個、少なくとも約12個、少なくとも約13個、少なくとも約14個、少なくとも約15個、少なくとも約16個、少なくとも約17個、少なくとも約18個、少なくとも約19個、少なくとも約20個、少なくとも約21個、少なくとも約22個、少なくとも約23個、少なくとも約24個、少なくとも約25個、少なくとも約26個、少なくとも約27個、少なくとも約28個、少なくとも約29個、少なくとも約30個、少なくとも約31個、少なくとも約32個、少なくとも約33個、少なくとも約34個、少なくとも約35個、少なくとも約36個、少なくとも約37個、少なくとも約38個、少なくとも約39個、少なくとも約40個、少なくとも約41個、少なくとも約42個、少なくとも約43個、少なくとも約44個、少なくとも約45個、少なくとも約46個、少なくとも約47個、少なくとも約48個、少なくとも約49個、少なくとも約50個、少なくとも約51個、少なくとも約52個、少なくとも約53個、少なくとも約54個、少なくとも約55個、少なくとも約56個、少なくとも約57個、少なくとも約58個、少なくとも約59個、少なくとも約60個、少なくとも約61個、少なくとも約62個、少なくとも約63個、少なくとも約64個、少なくとも約65個、少なくとも約66個、少なくとも約67個、少なくとも約68個、少なくとも約69個、少なくとも約70個、少なくとも約71個、少なくとも約72個、少なくとも約73個、少なくとも約74個、少なくとも約75個、少なくとも約76個、少なくとも約77個、少なくとも約78個、少なくとも約79個、少なくとも約80個の塩基性アミノ酸、例えば、リシン、アルギニン、またはそれらの組み合わせを含む。
【0178】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、少なくとも約40個の塩基性アミノ酸、例えば、リシンを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、少なくとも約45個の塩基性アミノ酸、例えば、リシンを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、少なくとも約50個の塩基性アミノ酸、例えば、リシンを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、少なくとも約55個の塩基性アミノ酸、例えば、リシンを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、少なくとも約60個の塩基性アミノ酸、例えば、リシンを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、少なくとも約65個の塩基性アミノ酸、例えば、リシンを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、少なくとも約70個の塩基性アミノ酸、例えば、リシンを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、少なくとも約75個の塩基性アミノ酸、例えば、リシンを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、少なくとも約80個の塩基性アミノ酸、例えば、リシンを含む。
【0179】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、約30個~約1000個、約30個~約900個、約30個~約800個、約30個~約700個、約30個~約600個、約30個~約500個、約30個~約400個、約30個~約300個、約30個~約200個、約30個~約100個、約40個~約1000個、約40個~約900個、約40個~約800個、約40個~約700個、約40個~約600個、約40個~約500個、約40個~約400個、約40個~約300個、約40個~約200個、または約40個~約100個の塩基性アミノ酸、例えば、リシンを含む。いくつかの態様では、塩基性アミノ酸、例えばリシンは、-NH3+(例えば、正電荷)を有するように修飾されていない。
【0180】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、約30個~約100個、約30個~約90個、約30個~約80個、約30個~約70個、約30個~約60個、約30個~約50個、約30個~約40個、約40個~約100個、約40個~約90個、約40個~約80個、約40個~約70個、約40個~約60個、約70個~約80個、約75個~約85個、約65個~約75個、約65個~約80個、約60個~約85個、または約40個~約500の塩基性アミノ酸、例えば、リシンを含む。
【0181】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、約100個~約1000個、約100個~約900個、約100個~約800個、約100個~約700個、約100個~約600個、約100個~約500個、約100個~約400個、約100個~約300個、約100個~約200個、約200個~約1000個、約200個~約900個、約200個~約800個、約200個~約700個、約200個~約600個、約200個~約500個、約200個~約400個、約200個~約300個、約300個~約1000個、約300個~約900個、約300個~約800個、約300個~約700個、約300個~約600個、約300個~約500個、約300個~約400個、約400個~約1000個、約400個~約900個、約400個~約800個、約400個~約700個、約400個~約600個、約400個~約500個、約500個~約1000個、約500個~約900個、約500個~約800個、約500個~約700個、約500個~約600個、約600個~約1000個、約600個~約900個、約600個~約800個、約600個~約700個、約700個~約1000個、約700個~約900個、約700個~約800個、約800個~約1000個、約800個~約900個、または約900個~約1000の塩基性アミノ酸、例えば、リシンを含む。
【0182】
いくつかの態様では、塩基性アミノ酸、例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン、またはそれらの組み合わせの数は、アニオン性ペイロードの長さに基づいて調整され得る。例えば、より長い配列を有するアニオン性ペイロードは、より大きな数の塩基性アミノ酸(例えば、リシン)と対合させることができる。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニット中の塩基性アミノ酸、例えばリシンの数は、ポリマー中のプロトン化アミンとアニオン性ペイロード、例えばmRNA中のリン酸とのモル比(N/P比)が、少なくとも約1、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、または少なくとも約20となるように計算することができる。いくつかの態様では、ポリマー中のプロトン化アミンとアニオン性ペイロード、例えばmRNA中のリン酸とのモル比(N/P比)は、約1~約20の間、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、または約20である。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットの塩基性アミノ酸、例えば、リシンの数は、ポリマー中のプロトン化アミンと、アニオン性ペイロード、例えばmRNA中のリン酸とのモル比(N/P)が、約1~約10、例えば約3~約4、約4~約5、約5~約6、約6~約7、または約7~約8となるように計算される。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットの塩基性アミノ酸、例えば、リシンの数は、ポリマー中のプロトン化アミンと、アニオン性ペイロード、例えばmRNA中のリン酸とのモル比(N/P比)が、約1~約2となるように計算される。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットの塩基性アミノ酸、例えば、リシンの数は、ポリマー中のプロトン化アミンと、アニオン性ペイロード、例えばmRNA中のリン酸とのモル比(N/P比)が、約3~約4となるように計算される。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットの塩基性アミノ酸、例えば、リシンの数は、ポリマー中のプロトン化アミンと、アニオン性ペイロード、例えばmRNA中のリン酸とのモル比(N/P比)が、約2~約3となるように計算される。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットの塩基性アミノ酸、例えば、リシンの数は、ポリマー中のプロトン化アミンと、アニオン性ペイロード、例えばmRNA中のリン酸とのモル比(N/P比)が、約4~約5となるように計算される。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットの塩基性アミノ酸、例えば、リシンの数は、ポリマー中のプロトン化アミンと、アニオン性ペイロード、例えばmRNA中のリン酸とのモル比(N/P比)が、約5~約6となるように計算される。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットの塩基性アミノ酸、例えば、リシンの数は、ポリマー中のプロトン化アミンと、アニオン性ペイロード、例えばmRNA中のリン酸とのモル比(N/P比)が、約6~約7となるように計算される。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットの塩基性アミノ酸、例えば、リシンの数は、ポリマー中のプロトン化アミンと、アニオン性ペイロード、例えばmRNA中のリン酸とのモル比(N/P比)が、約7~約8となるように計算される。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットの塩基性アミノ酸、例えば、リシンの数は、ポリマー中のプロトン化アミンと、アニオン性ペイロード、例えばmRNA中のリン酸とのモル比(N/P比)が、約8~約9となるように計算される。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットの塩基性アミノ酸、例えば、リシンの数は、ポリマー中のプロトン化アミンと、アニオン性ペイロード、例えばmRNA中のリン酸とのモル比(N/P比)が、約9~約10となるように計算される。
【0183】
当業者は、カチオン性キャリア部分の役割はペイロードの負電荷(例えば、mRNAのリン酸骨格における負電荷)を静電的相互作用により中性化することであるため、いくつかの態様では(例えば、ペイロードがantimiRなどの核酸である場合)、カチオン性キャリアの長さ、カチオン性キャリアの正に荷電した基の数、ならびにカチオン性キャリアに存在する電荷の分布及び配置は、ペイロード分子の長さ及び電荷分布に依存することを理解するであろう。
【0184】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアは、約5個~約10個、約10個~約15個、約15個~約20個、約20個~約25個、約25個~約30個、約30個~約35個、約35個~約40個、約40個~約45個、約45個~約50個、約50個~約55個、約55個~約60個、約60個~約65個、約70個、約70個~約75個、または約75個~約80個の塩基性アミノ酸を含む。いくつかの特定の態様では、正に荷電したキャリアは、30個~約50個の塩基性アミノ酸を含む。いくつかの特定の態様では、正に荷電したキャリアは、70個~約80個の塩基性アミノ酸を含む。
【0185】
いくつかの態様では、塩基性アミノ酸は、アルギニン、リシン、ヒスチジン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、塩基性アミノ酸は、D-アミノ酸である。いくつかの態様では、塩基性アミノ酸は、L-アミノ酸である。いくつかの態様では、正に荷電したキャリアは、D-アミノ酸及びL-アミノ酸を含む。いくつかの態様では、塩基性アミノ酸は、少なくとも1つの非天然アミノ酸またはその誘導体を含む。いくつかの態様では、塩基性アミノ酸は、アルギニン、リシン、ヒスチジン、L-4-アミノメチル-フェニルアラニン、L-4-グアニジン-フェニルアラニン、L-4-アミノメチル-N-イソプロピル-フェニルアラニン、L-3-ピリジル-アラニン、L-trans-4-アミノメチルシクロヘキシル-アラニン、L-4-ピペリジニル-アラニン、L-4-アミノシクヘキシル-アラニン、4-グアニジノ酪酸、L-2-アミノ-3-グアニジノプロピオン酸、DL-5-ヒドロキシリシン、ピロリシン、5-ヒドロキシ-L-リシン、メチルリシン、ヒプシン、またはそれらの任意の組み合わせである。特定の態様では、正に荷電したキャリアは、約40個のリシンを含む。特定の態様では、正に荷電したキャリアは、約50個のリシンを含む。特定の態様では、正に荷電したキャリアは、約60個のリシンを含む。特定の態様では、正に荷電したキャリアは、約70個のリシンを含む。特定の態様では、正に荷電したキャリアは、約80個のリシンを含む。
【0186】
他の態様では、カチオン性キャリアは、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、少なくとも25個、少なくとも26個、少なくとも27個、少なくとも28個、少なくとも29個、少なくとも30個、少なくとも31個、少なくとも32個、少なくとも33個、少なくとも34個、少なくとも35個、少なくとも36個、少なくとも37個、少なくとも38個、少なくとも39個、少なくとも40個、少なくとも41個、少なくとも42個、少なくとも43個、少なくとも44個、少なくとも45個、少なくとも46個、少なくとも47個、少なくとも48個、少なくとも49個、少なくとも50個、少なくとも51個、少なくとも52個、少なくとも53個、少なくとも54個、少なくとも55個、少なくとも56個、少なくとも57個、少なくとも58個、少なくとも59個、少なくとも60個、少なくとも61個、少なくとも62個、少なくとも63個、少なくとも64個、少なくとも65個、少なくとも66個、少なくとも67個、少なくとも68個、少なくとも69個、少なくとも70個、少なくとも71個、少なくとも72個、少なくとも73個、少なくとも74個、少なくとも75個、少なくとも76個、少なくとも77個、少なくとも78個、少なくとも79個、または少なくとも80個のカチオン性基(例えば、アミノ基)を含むポリマーまたはコポリマーを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアは、約5~約10のカチオン性基、約10~約15のカチオン性基、約15~約20のカチオン性基、約20~約25のカチオン性基、約25~約30のカチオン性基、約30~約35のカチオン性基、約35~約40のカチオン性基、約40~約45のカチオン性基、約45~約50のカチオン性基、約50~約55のカチオン性基、約55~約60のカチオン性基、約60~約65のカチオン性基、約65~約70のカチオン性基、約70~約75のカチオン性基、または約45~約50のカチオン性基(例えば、アミノ基)を含むポリマーまたはコポリマーを含む。いくつかの特定の態様では、カチオン性キャリアは、30~約50のカチオン性基(例えば、アミノ基)を含むポリマーまたはコポリマーを含む。いくつかの特定の態様では、カチオン性キャリアは、70~約80のカチオン性基(例えば、アミノ基)を含むポリマーまたはコポリマーを含む。いくつかの態様では、ポリマーまたはコポリマーは、アクリレート、ポリアルコール、または多糖である。
【0187】
いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、単一のペイロード分子に結合する。他の態様では、カチオン性キャリア部分は、同一であり得るか、または異なり得る複数のペイロード分子に結合し得る。
【0188】
いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分の正電荷と核酸ペイロードの負電荷とのイオン比は、約20:1、約19:1、約18:1、約17:1、約16:1、約15:1、約14:1、約13:1、約12:1、約11:1、約10:1、約9:1、約8:1 約7:1、約6:1 約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、または約1:1である。いくつかの態様では、核酸ペイロードの負電荷とカチオン性キャリア部分の正電荷とのイオン比は、約20:1、約19:1、約18:1、約17:1、約16:1、約15:1、約14:1、約13:1、約12:1、約11:1、約10:1、約9:1、約8:1 約7:1、約6:1 約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、または約1:1である。
【0189】
いくつかの態様では、アニオン性ペイロードは、約10~約1000(例えば、約100~約1000)の長さを有するヌクレオチド配列を含み、カチオン性キャリア部分とアニオン性ペイロードとのN/P比は、約2~約10、例えば、約2~約9、約2~約8、約2~約7、約2~約6、約2~約5、約2~約4、約2~約3、例えば、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、または約10である。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分と、約10~約1000ヌクレオチドの長さのアニオン性ペイロードとのN/P比は、約1~約10、例えば、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、または約10である。
【0190】
いくつかの態様では、アニオン性ペイロードは、約1000~約2000の長さを有するヌクレオチド配列を含み、カチオン性キャリア部分とアニオン性ペイロードとのN/P比は、約3~約12、例えば、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、または約12である。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分とアニオン性ペイロードとのN/P比は、約4~約7、例えば、約4、約5、約6、または約7である。
【0191】
いくつかの態様では、アニオン性ペイロードは、約2000~約3000の長さを有するヌクレオチド配列を含み、カチオン性キャリア部分とアニオン性ペイロードとのN/P比は、約3~約16、例えば、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16である。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分とアニオン性ペイロードとのN/P比は、約6~約9、例えば、約6、約7、約8、または約9である。
【0192】
いくつかの態様では、アニオン性ペイロードは、約3000~約4000の長さを有するヌクレオチド配列を含み、カチオン性キャリア部分とアニオン性ペイロードとのN/P比は、約3~約20、例えば、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、または約20である。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分とアニオン性ペイロードとのN/P比は、約7~約10、例えば、約7、約8、約9、または約10である。
【0193】
いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、自由末端を有し、ここで、末端基は反応性基である。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、自由末端(例えば、ポリリジンカチオン性キャリア部分におけるC末端)を有し、ここで、末端基は、アミノ(-NH)基である。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、自由末端を有し、ここで、末端基はスルフヒドリル基である。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分の反応性基は、疎水性部分、例えば、ビタミンB3疎水性部分に結合される。
【0194】
c.架橋部分
いくつかの態様では、本開示のカチオン性キャリアユニットは、少なくとも1つの架橋部分を含む。「架橋部分」という用語は、架橋を形成することができる複数の物質を含むポリマーブロックの化学部分または部分を指す。いくつかの態様では、架橋を形成することができるいくつかの物質は、架橋剤の側鎖を有するアミノ酸を含む。いくつかの態様では、CMは、バイオポリマー、例えば、架橋剤に連結されたペプチド(例えば、ポリリシン)を含む。
【0195】
いくつかの態様では、架橋部分は、1つ以上のアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン、またはそれらの組み合わせ)を含む。いくつかの態様では、架橋部分は、それぞれが架橋剤に連結された少なくとも約3個、少なくとも約4個、少なくとも約5個、少なくとも約6個、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも約9個、少なくとも約10個、少なくとも約11個、少なくとも約12個、少なくとも約13個、少なくとも約14個、少なくとも約15個、少なくとも約16個、少なくとも約17個、少なくとも約18個、少なくとも約19個、少なくとも約20個、少なくとも約21個、少なくとも約22個、少なくとも約23個、少なくとも約24個、少なくとも約25個、少なくとも約26個、少なくとも約27個、少なくとも約28個、少なくとも約29個、少なくとも30個、少なくとも約31個、少なくとも約32個、少なくとも約33個、少なくとも約34個、少なくとも約35個、少なくとも約36個、少なくとも約37個、少なくとも約38個、少なくとも約39個、少なくとも約40個、少なくとも約41個、少なくとも約42個、少なくとも約43個、少なくとも約44個、少なくとも約45個、少なくとも約46個、少なくとも約47個、少なくとも約48個、少なくとも約49個、または少なくとも約50個のアミノ酸、例えば、リシン、アルギニン、またはそれらの組み合わせを含む。
【0196】
いくつかの態様では、架橋部分は、それぞれが架橋剤に連結された少なくとも約10個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、架橋部分は、それぞれが架橋剤に連結された少なくとも約11個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、架橋部分は、それぞれが架橋剤に連結された少なくとも約12個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、架橋部分は、それぞれが架橋剤に連結された少なくとも約13個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、架橋部分は、それぞれが架橋剤に連結された少なくとも約14個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、架橋部分は、それぞれが架橋剤に連結された少なくとも約15個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、架橋部分は、それぞれが架橋剤に連結された少なくとも約16個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、架橋部分は、それぞれが架橋剤に連結された少なくとも約17個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、架橋部分は、それぞれが架橋剤に連結された少なくとも約18個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、架橋部分は、それぞれが架橋剤に連結された少なくとも約19個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、架橋部分は、それぞれが架橋剤に連結された少なくとも約20個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。
【0197】
いくつかの態様では、架橋剤はチオールである。いくつかの態様では、架橋剤はチオール誘導体である。
【0198】
d.疎水性部分
いくつかの態様では、本開示のカチオン性キャリアユニットは、少なくとも1つの疎水性部分を含む。本明細書で使用する場合、「疎水性部分」という用語は、例えば、(i)ペイロードの治療活性もしくは予防活性を補足し得るか、(ii)ペイロードの治療活性もしくは予防活性を調節し得るか、(iii)標的組織もしくは標的細胞において治療薬及び/または予防薬として機能し得るか、(iv)生理学的バリア、例えば、BBB及び/または形質膜を通したカチオン性キャリアユニットの輸送を促進し得るか、(v)標的組織もしくは標的細胞の恒常性を改善し得るか、(vi)正に荷電した基をカチオン性キャリア部分に提供し得るか、または(vii)それらの任意の組み合わせであり得る分子実体を指す。
【0199】
いくつかの態様では、疎水性部分は、例えば、免疫反応、炎症反応、または組織微小環境を調節することができる。
【0200】
いくつかの態様では、免疫反応を調節することができる疎水性部分は、例えば、チロシンまたはドーパミンを含み得る。チロシンは、L-ドーパに変換され得、次いで、2ステップの酵素反応によりドーパミンに変換される。通常、ドーパミンレベルは、パーキンソン病患者において低い。したがって、いくつかの態様では、チロシンは、パーキンソン病の治療に使用されるカチオン性キャリアユニットにおける疎水性部分である。トリプトファンは、食欲、感情、ならびに運動機能、認知機能、及び自律神経機能において役割を果たすと考えられている神経伝達物質であるセロトニンに変換され得る。したがって、いくつかの態様では、低セロトニンレベルに関連する疾患または状態の治療に使用される本開示のカチオン性キャリアユニットは、疎水性部分としてトリプトファンを含む。
【0201】
いくつかの態様では、疎水性部分は、例えば、腫瘍微小環境における低酸素状態を阻害または低減することにより、腫瘍を有する対象における腫瘍微小環境を調節し得る。
【0202】
いくつかの態様では、疎水性部分は、例えば、イミダゾール誘導体、ビタミン、またはそれらの任意の組み合わせに連結されたアミノ酸を含む。
【0203】
いくつかの態様では、疎水性部分は、下式を含むイミダゾール誘導体に連結されたアミノ酸(例えば、リシン):
【化5】
(式中、G及びGのそれぞれは、独立して、H、芳香環、もしくは1~10アルキルであるか、またはG及びGは、ともに芳香環を形成し、nは1~10である。)を含む。
【0204】
いくつかの態様では、疎水性部分は、ニトロイミダゾールに連結されたアミノ酸(例えば、リシン)を含む。ニトロイミダゾールは、抗生物質として機能する。ニトロイミダゾールにおけるニトロ複素環は、低酸素細胞において還元的に活性化され得、次いで、酸化還元リサイクルを受け得るか、または細胞毒性産物に分解し得る。還元は、通常、嫌気性細菌または無酸素組織においてのみ起こるため、それらのヒト細胞または好気性細菌に対する影響は比較的小さい。いくつかの態様では、疎水性部分は、メトロニダゾール、チニダゾール、ニモラゾール、ジメトリダゾール、プレトマニド、オルニダゾール、メガゾール、アザニダゾール、ベンズニダゾール、ニトロイミダゾール、またはそれらの任意の組み合わせに連結されたアミノ酸(例えば、リシン)を含む。
【0205】
いくつかの態様では、疎水性部分は、下式を含む:
【化6】
【化7】
【0206】
いくつかの態様では、疎水性部分は、炎症反応を阻害または低減することができる。
【0207】
いくつかの態様では、疎水性部分は、ビタミンに連結されたアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、ビタミンは、環式環(cyclic ring)または環式ヘテロ原子環(cyclic hetero atom ring)及びカルボキシル基またはヒドロキシル基を含む。いくつかの態様では、ビタミンは、下式を含む:
【化8】
(式中、Y1及びY2のそれぞれは、C、N、O、またはSであり、nは1または2である)。
【0208】
いくつかの態様では、ビタミンは、ビタミンA(レチノール)、ビタミンB1(チアミン塩化物)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(ナイアシンアミド)、ビタミンB6(ピリドキサール)、ビタミンB7(ビオチン)、ビタミンB9(葉酸)、ビタミンB12(コバラミン)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンD2、ビタミンD3、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンM、ビタミンH、それらの誘導体、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0209】
いくつかの態様では、ビタミンは、以下のビタミンB3(ナイアシンまたはニコチン酸としても公知)である。
【化9】
【0210】
いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された少なくとも1個、少なくとも約2個、少なくとも約3個、少なくとも約4個、少なくとも約5個、少なくとも約6個、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも約9個、少なくとも約10個、少なくとも約11個、少なくとも約12個、少なくとも約13個、少なくとも約14個、少なくとも約15個、少なくとも約16個、少なくとも約17個、少なくとも約18個、少なくとも約19個、または少なくとも約20個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約1個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約2個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約3個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約4個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約5個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約6個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約7個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約8個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約9個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約10個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約11個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約12個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約13個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約14個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約15個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約16個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約17個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約18個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約19個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約20個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。
【0211】
いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約1個~約10個のアミノ酸(例えば、リシン)、それぞれがビタミンB3に結合された約5個~約10個のアミノ酸(例えば、リシン)、それぞれがビタミンB3に結合された約10個~約15個のアミノ酸(例えば、リシン)、それぞれがビタミンB3に結合された約15個~約20個のアミノ酸(例えば、リシン)、それぞれがビタミンB3に結合された約1個~約20個のビタミンアミノ酸(例えば、リシン)、それぞれがビタミンB3に結合された約1個~約15個のビタミンアミノ酸(例えば、リシン)、それぞれがビタミンB3に結合された約1個~約10個のアミノ酸(例えば、リシン)、それぞれがビタミンB3に結合された約1個~約5個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。
【0212】
ナイアシンは、インビボにおいて補酵素であるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)及びニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)の前駆体である。NADは、酵素NAD+キナーゼの存在下でのリン酸化によりNADPに変換される。NADP及びNADは、多数の水素転移プロセスに関与する多数のデヒドロゲナーゼの補酵素である。NADは、脂肪、炭水化物、タンパク質、及びアルコールの異化、ならびに細胞シグナル伝達及びDNA修復に重要であり、NADPは、主に同化反応、例えば、脂肪酸及びコレステロール合成に重要である。エネルギー必要量が高い(脳)か、または代謝回転速度が速い器官(消化管、皮膚)は、通常、それらの欠乏に最も感受性が高い。
【0213】
ナイアシンは、脳、消化管、皮膚、及び血管組織を含む種々の組織においてNIACR1の活性化により顕著な抗炎症効果をもたらす。ナイアシンは、神経炎症を減弱することが示されており、多発性硬化症及びパーキンソン病などの神経免疫障害の処置における有効性を有し得る。Offermanns & Schwaninger(2015) Trends in Molecular Medicine 21:245-266;Chai et al(2013) Current Atherosclerosis Reports 15:325;Graff et al.(2016) Metabolism 65:102-13;及びWakade & Chong(2014) Journal of the Neurological Sciences 347:34-8(参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0214】
e.標的化部分
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、任意選択的にリンカーにより水溶性ポリマーに連結されている標的化部分を含む。本明細書で使用する場合、「標的化部分」という用語は、特定の生体物質または部位に結合する生体認識分子を指す。いくつかの態様では、標的化部分は、ある特定の標的分子に対して特異的(例えば、受容体を標的とするリガンドまたは表面タンパク質を標的とする抗体)であるか、組織に対して特異的(例えば、特定の器官または組織、例えば、肝臓、脳、または内皮にミセルを優先的に輸送する分子)であるか、または生理学的バリアを通した輸送を促進する(例えば、血液脳関門または形質膜を通した輸送を促進し得るペプチドまたは他の分子)。
【0215】
ペイロード(例えば、ヌクレオチド分子、例えば、mRNA)を本開示に従って標的化するために、標的化部分は、カチオン性キャリアユニットに連結され得、これによって、ミセルの外面に連結され得る一方で、ミセルは、その核内に封入されたペイロードを有する。
【0216】
いくつかの態様では、標的化部分は、本開示のミセルを組織に標的化することができる標的化部分である。いくつかの態様では、組織は、肝臓、脳、腎臓、肺、卵巣、膵臓、甲状腺、乳房、胃、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの態様では、組織は、がん組織、例えば、肝臓癌、脳癌、腎臓癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、甲状腺癌、乳癌、胃癌、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0217】
特定の態様では、組織は、肝臓である。特定の態様では、肝臓を標的とする標的化部分は、コレステロールである。他の態様では、肝臓を標的とする標的化部分は、アシアロ糖タンパク質受容体標的化部分と結合するリガンドである。いくつかの態様では、アシアロ糖タンパク質受容体標的化部分は、GalNAcクラスターを含む。いくつかの態様では、GalNAcクラスターは、一価、二価、三価、または四価のGalNAcクラスターである。
【0218】
別の態様では、組織は、膵臓である。いくつかの態様では、膵臓を標的とする標的化部分は、膵臓細胞上のαvβ3インテグリン受容体を標的とするリガンドを含む。いくつかの態様では、標的化部分は、アルギニルグリシルアスパラギン酸(RGD)ペプチド配列(L-アルギニル-グリシル-L-アスパラギン酸、Arg-Gly-Asp)を含む。
【0219】
いくつかの態様では、組織は、中枢神経系の組織、例えば、神経組織である。いくつかの態様では、中枢神経系を標的とする標的化部分は、大型中性アミノ酸輸送体1(LAT1)により輸送されることができる。LAT1(SLC7A5)は、大型中性アミノ酸及びいくつかの医薬品の両方の取り込みのための輸送体である。LAT1は、L-ドーパまたはガバペンチンなどの薬物を輸送し得る。
【0220】
いくつかの態様では、標的化部分は、グルコース輸送体1(またはGLUT1)に結合することができ、BBBを通過することができるグルコース、例えば、D-グルコースを含む。溶質輸送体ファミリー2促進性グルコース輸送体メンバー1(SLC2A1)としても公知のGLUT1は、ヒトにおいてSLC2A1遺伝子によりコードされる単輸送体タンパク質である。GLUT1は、哺乳動物細胞の形質膜を通したグルコースの輸送を促進する。この遺伝子は、哺乳動物の血液脳関門における主要なグルコース輸送体をコードする。
【0221】
いくつかの態様では、標的化部分は、GLUT1輸送体に結合することができ、BBBを通過することができるガラクトース(例えば、D-ガラクトース)を含む。いくつかの態様では、標的化部分は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(AChEI)及び/またはEAAT阻害剤に結合することができ、BBBを通過することができるグルタミン酸を含む。アセチルコリンエステラーゼは、コリンエステラーゼ酵素ファミリーの主要なメンバーである酵素である。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(AChEI)は、アセチルコリンエステラーゼがアセチルコリンをコリン及び酢酸に分解するのを阻害し、これにより、アセチルコリン受容体が豊富である中枢神経系、自律神経節、及び神経筋接合部における神経伝達物質アセチルコリンのレベル及び作用持続時間の両方を増加させる阻害剤である。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤は、2種類のコリンエステラーゼ阻害剤のうちの1つであり、もう一方は、ブチルコリンエステラーゼ阻害剤である。
【0222】
いくつかの態様では、標的化部分により標的とされる組織は、骨格筋である。いくつかの態様では、骨格筋を標的とする標的化部分は、大型中性アミノ酸輸送体1(LAT1)により輸送されることができる。
【0223】
LAT1は、T細胞、がん細胞、及び脳内皮細胞を含む多数の細胞種で発現される。LAT1は、脳微小血管内皮細胞において一貫して高レベルで発現される。溶質輸送体が主にBBBに存在するため、本開示のミセルのLAT1への標的化により、BBBを通した送達を可能となる。いくつかの態様では、本開示のミセルをLAT1輸送体に標的化する標的化部分は、アミノ酸、例えば、分枝鎖または芳香族アミノ酸である。いくつかの態様では、アミノ酸は、バリン、ロイシン、及び/またはイソロイシンである。いくつかの態様では、アミノ酸は、トリプトファン及び/またはチロシンである。いくつかの態様では、アミノ酸は、トリプトファンである。他の態様では、アミノ酸は、チロシンである。
【0224】
いくつかの態様では、標的化部分は、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、チロキシン、メルファラン、L-ドーパ、ガバペンチン、3,5-I-ジヨードチロシン、3-ヨード-I-チロシン、フェンクロニン、アシビシン、ロイシン、BCH、メチオニン、ヒスチジン、バリン、またはそれらの任意の組み合わせから選択されるLAT1リガンドである。
【0225】
Singh & Ecker (2018) “Insights into the Structure,Function,and Ligand Discovery of the Large Neutral Amino Acid Transporter 1,LAT1,” Int.J.Mol.Sci.19:1278;Geier et al.(2013) “Structure-based ligand discovery for the Large-neutral Amino Acid Transporter 1,LAT-1,” Proc.Natl.Acad.Sci.USA 110:5480-85;及びChien et al.(2018) “Reevaluating the Substrate Specificity of the L-type Amino Acid Transporter (LAT1),” J. Med. Chem. 61:7358-73(参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0226】
標的化部分の非限定的な例を以下に記載する。
【0227】
i.リガンド
リガンドは、別の物質に対する選択的(または特異的)親和性を有する選択的に結合可能な物質として定義される標的化部分の一種として機能する。リガンドは、必ずしもではないが、通常、より大きな特異的に結合する物体または「結合パートナー」または「受容体」により認識及び結合される。標的化に好適なリガンドの例は、とりわけ、抗原、ハプテン、ビオチン、ビオチン誘導体、レクチン、ガラクトサミン及びフコシルアミン部分、受容体、基質、補酵素、ならびに補因子である。
【0228】
本開示のミセルに適用される場合、リガンドとしては、その対応する抗体もしくはその断片により、またはそれらに結合されることができる抗原またはハプテンが挙げられる。任意のDNA及びRNAウイルス、AIDS、HIV、及び肝炎ウイルス、アデノウイルス、アルファウイルス、アレナウイルス、コロナウイルス、フラビウイルス、ヘルペスウイルス、ミクソウイルス、オンコルナウイルス、パポバウイルス、パラミクソウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、レオウイルス、ラブドウイルス、ライノウイルス、トガウイルス、及びウイロイド由来のものを含むウイルス抗原またはヘマグルチニン及びノイラミニダーゼ及びヌクレオカプシド;グラム陰性細菌及びグラム陽性細菌、Acinetobacter属、Achromobacter属、Bacteroides属、Clostridium属、Chlamydia属、腸内細菌、Haemophilus属、Lactobacillus属、Neisseria属、Staphyloccus属、またはStreptoccocus属のものを含む任意の細菌抗原;Aspergillus属、Candida属、Coccidiodes属、真菌症、藻菌類、及び酵母のものを含む任意の真菌抗原;任意のマイコプラズマ抗原;任意のリケッチア抗原;任意の原生動物抗原;任意の寄生虫抗原;血液細胞、ウイルス感染細胞、遺伝マーカー、心疾患、腫瘍性タンパク質、血漿タンパク質、補体因子、リウマチ因子のものを含む任意のヒト抗原も挙げられる。がん及び腫瘍抗原、例えば、とりわけ、αフェトプロテイン、前立腺特異抗原(PSA)及びCEA、がんマーカー、ならびに腫瘍性タンパク質も挙げられる。
【0229】
本開示のミセルを標的化するためのリガンドとして機能し得る他の物質は、ある特定のビタミン(すなわち、葉酸、B12)、ステロイド、プロスタグランジン、炭水化物、脂質、抗生物質、薬物、ジゴキシン、殺虫剤、麻薬、神経伝達物質、及びリガンドとして機能するように使用または修飾される物質である。
【0230】
いくつかの態様では、標的化部分は、細胞親和性を有するタンパク質またはタンパク質断片(例えば、ホルモン、毒素)及び合成または天然ポリペプチドを含む。リガンドとしては、組換えDNA、遺伝子工学、及び分子工学により作製される、リゲーターに対する選択的親和性を有する様々な物質も挙げられる。特に明示される場合を除き、本開示のリガンドには、米国特許第3,817,837号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)において定義されるリガンドも含まれる。
【0231】
ii.リゲーター
リゲーターは、必ずしもではないが、通常、結合することができるリガンドより大きな特異的に結合する物体または「パートナー」または「受容体」と本開示において定義される標的化部分の一種として機能する。本開示の目的のため、リゲーターは、特異的リガンドとの選択的親和性結合ができる特異的な物質または材料または化学物質または「反応物質」であり得る。リゲーターは、抗体などのタンパク質、タンパク質でない結合する物体、または「特異的反応を示すもの」であり得る。
【0232】
本開示に適用される場合、リゲーターとしては、すべてのクラスの抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、Fab断片、それらの断片及び誘導体を含むと定義される抗体が挙げられる。「抗体」という用語は、天然であるか、または一部もしくは全体が合成により生成されたかどうかにかかわらず、免疫グロブリン及びその断片を包含する。この用語はまた、免疫グロブリン結合ドメインに相同である結合ドメインを有するあらゆるタンパク質を包含する。「抗体」には、抗原を特異的に結合及び認識する、免疫グロブリン遺伝子またはその断片由来のフレームワーク領域を含むポリペプチドもさらに含まれる。抗体という用語の使用は、全長抗体、ポリクローナル、モノクローナル、及び組換え抗体、それらの断片を含み、一本鎖抗体、ヒト化抗体、マウス抗体、キメラ、マウス/ヒト、マウス/霊長類、霊長類/ヒトモノクローナル抗体、抗イディオタイプ抗体、抗体断片、例えば、scFv、scFab、(scFab)、(scFv)、Fab、Fab’、及び、F(ab’)、F(ab1)、Fv、dAb、ならびにFd断片、ダイアボディ、ならびに抗体関連ポリペプチドをさらに含むことを意図する。抗体は、所望の生物学的活性または機能を有するものである限り、二重特異性抗体及び多重特異性抗体を含む。本開示のいくつかの態様では、標的化部分は、抗体または分子であって、その抗原結合断片を含む、抗体または分子である。いくつかの態様では、抗体は、ナノボディである。いくつかの態様では、抗体は、ADCである。「抗体薬物コンジュゲート」及び「ADC」という用語は、互換的に使用され、例えば、共有結合により治療薬(場合により、本明細書において、薬剤、薬物、または活性医薬成分と称される)または薬剤に連結された抗体を指す。本開示のいくつかの態様では、標的化部分は、抗体薬物コンジュゲートである。
【0233】
ある特定の状況では、本開示は、他の物質のリゲーターとしての使用にも適用可能である。例えば、標的化に好適な他のリゲーターとしては、ホルモン、ビタミン、薬物、抗生物質、がんマーカー、遺伝マーカー、ウイルス、及び組織適合性マーカーに特異的に結合する、天然に存在する受容体、任意のヘマグルチニン及び細胞膜及び核の誘導体が挙げられる。別の類のリゲーターとしては、任意のRNA及びDNA結合物質、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)及びポリペプチドまたはタンパク質、例えば、ヒストン及びプロタミンが挙げられる。
【0234】
他のリゲーターとしては、酵素、特にノイラミニダーゼなどの細胞表面酵素、血漿タンパク質、アビジン、ストレプトアビジン、ケイロン、キャビタンド、チログロブリン、内因子、グロブリン、キレート剤、界面活性剤、有機金属物質、ブドウ球菌プロテインA、プロテインG、リボソーム、バクテリオファージ、シトクロム、レクチン、ある特定の樹脂、及び有機ポリマーも挙げられる。
【0235】
標的化部分としては、様々な物質、例えば、組換えDNA、遺伝子工学、及び分子工学により作製される、任意の細胞、組織、または微生物の表面に対する親和性を有する任意のタンパク質、タンパク質断片、またはポリペプチドも挙げられる。したがって、いくつかの態様では、標的化部分は、本開示のミセルを特定の組織(すなわち、肝臓組織または脳組織)、特定の種類の細胞(例えば、ある特定の種類のがん細胞)、または生理学的区画もしくは生理学的バリア(例えば、BBB)に誘導する。
【0236】
f.リンカー
前述したように、本明細書において開示されるカチオン性キャリアユニットは、例えば、図2に示すように、1つ以上のリンカーを含み得る。本明細書で使用する場合、「リンカー」という用語は、主な機能が本明細書において開示されるカチオン性キャリアユニットにおける2つの部分を連結することである、ペプチドもしくはポリペプチド配列(例えば、合成ペプチドまたはポリペプチド配列)、または非ペプチドリンカーを指す。いくつかの態様では、本開示のカチオン性キャリアユニットは、組織特異的標的化部分(TM)を水溶性ポリマー(WS)と連結する少なくとも1つのリンカー、水溶性バイオポリマー(WP)をカチオン性キャリア(CC)もしくは疎水性部分(HM)もしくは架橋部分(CM)と連結する少なくとも1つのリンカー、カチオン性キャリア(CC)を疎水性部分(HM)と連結する少なくとも1つのリンカー、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの態様では、2つ以上のリンカーを直列に連結することができる。
【0237】
複数のリンカーが本明細書において開示されるカチオン性キャリアユニットに存在する場合、リンカーの各々は、同一であり得るか、または異なり得る。一般に、リンカーは、カチオン性キャリアユニットに柔軟性を提供する。リンカーは、通常切断されないが、ある特定の態様では、かかる切断が望ましいことがあり得る。したがって、いくつかの態様では、リンカーは、リンカーの配列内に位置するかまたはリンカー配列のいずれかの末端でリンカーに隣接させることができる1つ以上のプロテアーゼ切断部位を含むことができる。
【0238】
一態様では、リンカーは、ペプチドリンカーである。いくつかの態様では、ペプチドリンカーは、少なくとも約2個、少なくとも約3個、少なくとも約4個、少なくとも約5個、少なくとも約10個、少なくとも約15個、少なくとも約20個、少なくとも約25個、少なくとも約30個、少なくとも約35個、少なくとも約40個、少なくとも約45個、少なくとも約50個、少なくとも約55個、少なくとも約60個、少なくとも約65個、少なくとも約70個、少なくとも約75個、少なくとも約80個、少なくとも約85個、少なくとも約90個、少なくとも約95個、または少なくとも約100個のアミノ酸を含むことができる。
【0239】
いくつかの態様では、ペプチドリンカーは、少なくとも約110個、少なくとも約120個、少なくとも約130個、少なくとも約140個、少なくとも約150個、少なくとも約160個、少なくとも約170個、少なくとも約180個、少なくとも約190個、または少なくとも約200個のアミノ酸を含むことができる。
【0240】
他の態様では、ペプチドリンカーは、少なくとも約200個、少なくとも約250個、少なくとも約300個、少なくとも約350個、少なくとも約400個、少なくとも約450個、少なくとも約500個、少なくとも550個、少なくとも約600個、少なくとも約650個、少なくとも約700個、少なくとも約750個、少なくとも約800個、少なくとも約850個、少なくとも約900個、少なくとも約950個、または少なくとも約1,000個のアミノ酸を含むことができる。
【0241】
ペプチドリンカーは、1~約5個の個のアミノ酸、1~約10個のアミノ酸、1~約20個のアミノ酸、約10~約50個のアミノ酸、約50~約100個のアミノ酸、約100~約200個のアミノ酸、約200~約300個のアミノ酸、約300~約400個のアミノ酸、約400~約500個のアミノ酸、約500~約600個のアミノ酸、約600~約700個のアミノ酸、約700~約800個のアミノ酸、約800~約900個のアミノ酸、または約900~約1000アミノ酸を含むことができる。
【0242】
ペプチドリンカーの例は、当該技術分野では周知のものである。いくつかの態様では、リンカーはグリシン/セリンリンカーである。いくつかの態様では、ペプチドリンカーは、式[(Gly)n-Ser]mによるグリシン/セリンリンカーであり、式中、nは、1~100の任意の整数であり、mは、1~100から任意の整数である。他の態様では、グリシン/セリンリンカーは、式[(Gly)x-Sery]z(配列番号1)によるものであり、式中、xは、1~4の整数であり、yは、0または1であり、zは、1~50の整数である。一態様では、ペプチドリンカーは、配列Gnを含み、式中、nは、1~100の整数であり得る。特定の態様では、ペプチドリンカーの配列は、GGGG(配列番号2)である。
【0243】
いくつかの態様では、ペプチドリンカーは、配列(GlyAla)n(配列番号3)を含み得、式中、nは、1~100の整数である。他の態様では、ペプチドリンカーは、配列(GlyGlySer)n(配列番号4)を含み得、式中、nは、1~100の整数である。
【0244】
他の態様では、ペプチドリンカーは、配列(GGGS)n(配列番号5)を含む。さらに他の態様では、ペプチドリンカーは、配列(GGS)n(GGGGS)n(配列番号6)を含む。これらの例において、nは、1~100の整数であり得る。他の例において、nは、1~20の整数、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20であり得る。
【0245】
リンカーの例としては、限定されるものではないが、GGG、SGGSGGS(配列番号7)、GGSGGSGGSGGSGGG(配列番号8)、GGSGGSGGGGSGGGGS(配列番号9)、GGSGGSGGSGGSGGSGGS(配列番号10)、またはGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号11)が挙げられる。他の態様では、リンカーは、ポリG配列(GGGG)n(配列番号12)であり、式中、nは、1~100の整数であり得る。
【0246】
一態様では、ペプチドリンカーは、合成、すなわち、非天然である。一態様では、ペプチドリンカーは、アミノ酸の第1の直線配列を、第1の直線配列が自然には連結されていない、または遺伝子的に融合されていないアミノ酸の第2の直線配列に連結または遺伝子的に融合するアミノ酸配列を含むペプチド(またはポリペプチド)(例えば、天然または非天然ペプチド)を含む。例えば、一態様では、ペプチドリンカーは、天然に存在するポリペプチドの改変された形態(例えば、付加、置換または欠失などの変異を含む)である非天然のポリペプチドを含むことができる。別の態様では、ペプチドリンカーは、非天然アミノ酸を含み得る。別の態様では、ペプチドリンカーは、自然に生じない直鎖状配列で生じる天然に存在するアミノ酸を含み得る。さらに別の態様では、ペプチドリンカーは、天然に存在するポリペプチド配列を含み得る。
【0247】
いくつかの態様では、リンカーは、非ペプチドリンカーを含む。他の態様では、リンカーは、非ペプチドリンカーからなる。いくつかの態様では、非ペプチドリンカーは、例えば、マレイミドカプロイル(MC)、マレイミドプロパノイル(MP)、メトキシルポリエチレングリコール(MPEG)、4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボン酸スクシンイミジル(SMCC)、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、4-(p-マレイミドフェニル)酪酸スクシンイミジル(SMPB)、(4-ヨードアセチル)アミノ安息香酸N-スクシンイミジル(SIAB)、6-[3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド]ヘキサン酸スクシンイミジル(LC-SPDP)、4-スクシンイミジルオキシカルボニル-α-メチル-α-(2-ピリジルジチオ)トルエン(SMPT)、など(米国特許第7,375,078号を参照のこと)であり得る。
【0248】
リンカーは、当該技術分野において公知の技術(例えば、化学的コンジュゲーション、組換え技術、またはペプチド合成)を使用してポリペプチド配列に導入され得る。修飾は、DNA配列解析により確認され得る。いくつかの態様では、リンカーは、組換え技術を使用して導入され得る。他の態様では、リンカーは、固相ペプチド合成を使用して導入され得る。ある特定の態様では、本明細書において開示されるカチオン性キャリアユニットは、組換え技術を使用して導入された1つ以上のリンカー、及び固相ペプチド合成または当該技術分野において公知の化学的コンジュゲーションの方法を使用して導入された1つ以上のリンカーを同時に含有し得る。いくつかの態様では、リンカーは切断部位を含む。
【0249】
III.ペイロード
本明細書で使用する場合、「ペイロード」という用語は、生物活性分子、例えば、それ自体で、もしくはアダプターを介して本開示のカチオン性キャリアユニットと相互作用的であり得、本開示のミセルのコアに含まれ得る治療薬を指す。
【0250】
他の生物活性分子は、とりわけ、任意のDNA及びRNAウイルス、AIDS、HIV及び肝炎ウイルス、アデノウイルス、アルファウイルス、アレナウイルス、コロナウイルス、フラビウイルス、ヘルペスウイルス、ミクソウイルス、オンコルナウイルス、パポバウイルス、パラミクソウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、レオウイルス、ラブドウイルス、ライノウイルス、トガウイルス及びウイロイドに対するものが含まれる抗ウイルス薬、核酸、及び他の抗ウイルス物質;グラム陰性細菌及びグラム陽性細菌、Acinetobacter属、Achromobacter属、Bacteroides属、Clostridium属、Chlamydia属、腸内細菌、Haemophilus属、Lactobacillus属、Neisseria属、Staphyloccus属、またはStreptoccocus属に対するものが含まれる任意の抗菌薬、核酸、及び他の抗菌物質;Aspergillus属、Candida属、Coccidiodes属、真菌症、藻菌類、及び酵母に対するものが含まれる任意の抗真菌薬、核酸、及び他の抗真菌物質;マイコプラズマ及びリケッチアに対する任意の薬物、核酸、及び他の物質;任意の抗原虫薬、核酸、及び他の物質;任意の抗寄生虫薬、核酸、及び他の物質;心疾患、腫瘍、及びウイルス感染細胞に対する任意の薬物、核酸、及び他の物質である。
【0251】
(a)核酸
いくつかの態様では、生物活性分子(ペイロード)は、核酸、例えば、RNAまたはDNAである。本開示のミセルを使用した送達に適した核酸活性剤には、あらゆる種類のRNA及びあらゆる種類のDNAが含まれる。いくつかの態様では、核酸は、mRNA、miRNAスポンジ、タフデコイmiRNA(TD)、cDNA、pDNA、PNA、BNA、アプタマー、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0252】
いくつかの態様では、生物活性分子(例えば、アニオン性ペイロード)は、4,000ヌクレオチド未満の長さを有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、生物活性分子(例えば、アニオン性ペイロード)は、約3,500未満、約3,000未満、約2,500未満、約2,000未満、約1,500未満、約1,000未満、約900未満、約800未満、約700未満、約600未満、約500未満、約400未満、約200未満、または約150未満の長さを有するヌクレオチド配列を含む。
【0253】
いくつかの態様では、核酸は、リン酸ジエステルヌクレオチド、及び糖リン酸「骨格」が、誘導体化されているか、または「骨格アナログ」、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロアミダート、アルキルリン酸トリエステル、またはメチルホスホン酸結合と置き換えられている任意のヌクレオチドである。いくつかの態様では、核酸は、スルファメート、3’-チオホルムアセタール、メチレン(メチルイミノ)(MMI)、3’-N-カルバメート、またはモルホリノカルバメートのような非リン骨格アナログを有する。
【0254】
いくつかの態様では、アニオン性ペイロードはポリヌクレオチドであり、ヌクレオチドまたは核酸とも呼ばれる。「ポリヌクレオチド」という用語には、その最も広い意味で、ヌクレオチドのポリマーを含む任意の化合物及び/または物質が含まれる。本開示の例示的なポリヌクレオチドとしては、これらに限定されるものではないが、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、トレオース核酸(TNA)、グリコール核酸(GNA)、ペプチド核酸(PNA)、ロック核酸(β-D-リボ立体配置を有するLNA、α-L-リボ立体配置を有するα-LNA(LNAのジアステレオマー)、2’-アミノ官能基を有する2’-アミノ-LNA、及び2’-アミノ官能基を有する2’-アミノ-α-LNAを含む各LNA)、またはこれらのハイブリッドが挙げられる。
【0255】
いくつかの態様では、合成ポリヌクレオチドは合成メッセンジャーRNA(mRNA)である。本明細書で使用される場合、「メッセンジャーRNA」(mRNA)という用語は、ポリペプチド、例えばGタンパク質をコードし、インビトロ、インビボ、インサイチュー、またはエクスビボで翻訳されてコードされたポリペプチドを産生することができる、合成であってもよい任意のポリヌクレオチドを指す。
【0256】
本開示は、いくつかの態様において、ポリヌクレオチドが導入された細胞の自然免疫応答の実質的な誘導の欠如を含む、ポリヌクレオチドに有用な特性を付与する1つ以上の構造的及び/または化学的修飾または改変を含む合成ポリポリヌクレオチドを提供することによって、従来のmRNA分子の機能性の範囲を拡大するものである。本明細書で使用される場合、「構造的」特徴または改変とは、ヌクレオチド自体に対する大きな化学修飾を伴うことなく、合成ポリヌクレオチド、一次コンストラクトまたはmmRNAにおいて、2つ以上の連結されたヌクレオチドが挿入、欠失、複製、反転またはランダム化されているものである。構造的改変を行うには化学結合が必然的に切断及び再形成されるため、構造改変は化学的な性質のものであり、したがって化学的改変である。しかしながら、構造的改変によって異なるヌクレオチドの配列を生じる可能性がある。例えば、ポリヌクレオチド「ATCG」は、「AT-5meC-G」に化学修飾することができる。同じポリヌクレオチドが「ATCG」から「ATCCCG」に構造的に改変される場合もある。
【0257】
いくつかの態様では、アニオン性ペイロードは非翻訳領域を含むことができる。遺伝子の非翻訳領域(UTR)は転写されるが、翻訳されない。5’UTRは転写開始部位で始まり、開始コドンまで続くが、開始コドンは含まれない。一方、3’UTRは終止コドンの直後から始まり、転写終結シグナルまで続く。核酸分子の安定性と翻訳の観点から、UTRが果たす調節的役割についての多くの証拠が示されつつある。UTRの調節要素を本発明のポリヌクレオチド、一次コンストラクト及び/またはmmRNAに組み込むことで、分子の安定性を高めることができる。本発明のポリヌクレオチド、一次コンストラクト及び/またはmmRNAが望ましくない臓器部位に誤って誘導された場合に備えて、転写物の発現低下の制御を行うための特定の機能を組み込むこともできる。
【0258】
記載されたものは例であり、任意の遺伝子からの任意のUTRを、一次コンストラクトの対応する第1または第2の隣接領域に組み込むことができる点は理解されるはずである。さらに、任意の既知の遺伝子の複数の野生型UTRを用いることもできる。野生型遺伝子のバリアントではない人工UTRを提供することも本発明の範囲内である。これらのUTRまたはその一部は、それらが選択された転写物と同じ方向に配置することも、それらの方向または位置を変更することもできる。したがって、5’または3’UTRを反転、短縮、延長し、1つ以上の他の5’UTRまたは3’UTRとキメラ化することができる。本明細書で使用する場合、UTR配列に関して「改変された」という用語は、UTRが参照配列に対して何らかの形で改変されていることを意味する。例えば、3’または5’UTRは、上記に教示されるように方向または位置の変更によって野生型または天然UTRに対して改変することができ、またはさらなるヌクレオチドの包含、ヌクレオチドの欠失、ヌクレオチドの交換または転位によって改変することもできる。「改変された」UTR(3’または5’であろうと)を生成するこれらの変更はいずれも、バリアントUTRを構成する。
【0259】
いくつかの態様では、ヌクレオチドには、ポリAテール、miRNA結合部位、AUエレメント、またはそれらの任意の組み合わせも含まれる。
【0260】
いくつかの態様では、約100~約1000ヌクレオチドの長さを有するアニオン性ペイロードは、約30アミノ酸以下の長さを有する任意のタンパク質またはそのフラグメントであり得る。例えば、約100~約1000ヌクレオチドの長さを有するアニオン性ペイロードは、PAPD5/7(0.8kb)またはその任意のフラグメントをコードする。
【0261】
いくつかの態様では、約1000~約2000ヌクレオチドの長さを有するアニオン性ペイロードは、約660アミノ酸以下の長さを有する任意のタンパク質またはそのフラグメントであり得る。例えば、約1000~約2000ヌクレオチドの長さを有するアニオン性ペイロードは、Gタンパク質(1.5kb)をコードすることができる。
【0262】
いくつかの態様では、約2000~約3000ヌクレオチドの長さを有するアニオン性ペイロードは、約1000アミノ酸以下の長さを有する任意のタンパク質またはそのフラグメントであり得る。例えば、約2000~約3000ヌクレオチドの長さを有するアニオン性ペイロードは、アンカータンパク質であるゲフィリン(2.2kb)をコードすることができる。
【0263】
いくつかの態様では、約3000~約4000ヌクレオチドの長さを有するアニオン性ペイロードは、約1330アミノ酸以下の長さを有する任意のタンパク質またはそのフラグメントであり得る。例えば、約3000~約4000ヌクレオチドの長さを有するアニオン性ペイロードは、MDA5(IFIH1)(3.0kb)をコードすることができる。
【0264】
i.化学修飾されたポリヌクレオチド
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(例えば、mRNA)は、少なくとも1つの化学修飾されたヌクレオシド及び/またはヌクレオチドを含む。本開示のポリヌクレオチドが化学修飾されている場合、ポリヌクレオチドは、「修飾されたポリヌクレオチド」と称され得る。
【0265】
「ヌクレオシド」は、糖分子(例えば、ペントースまたはリボース)またはその誘導体を、有機塩基(例えば、プリンまたはピリミジン)またはその誘導体(本明細書において「核酸塩基」とも称される)とともに含有する化合物を指す。
【0266】
「ヌクレオチド」は、リン酸基を含むヌクレオシドを指す。修飾されたヌクレオチドは、1つ以上の修飾された非天然ヌクレオシドを含むように、任意の有用な方法により、例えば、化学的に、酵素的に、または組換えにより合成され得る。
【0267】
ポリヌクレオチドは、連結されたヌクレオシドの領域または複数の領域を含み得る。かかる領域は、可変的な骨格結合を有し得る。連結は、標準的なホスホジエステル結合であり得、その場合、ポリヌクレオチドはヌクレオチドの領域を含む。
【0268】
本明細書において開示される修飾されたポリヌクレオチドは、様々な異なる修飾を含み得る。いくつかの態様では、修飾されたポリヌクレオチドは、1種、2種、またはそれ以上(任意選択的に異なる)のヌクレオシドまたはヌクレオチド修飾を含有する。いくつかの態様では、修飾されたポリヌクレオチドは、1つ以上の所望の特性、例えば、未修飾ポリヌクレオチドと比較して改善された熱または化学安定性、低減された免疫原性、低減された分解、標的遺伝子またはタンパク質に対する結合の増加、他の遺伝子または他の分子に対する低減された非特異的結合を示し得る。
【0269】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチドは、化学修飾されている。本明細書で使用する場合、ポリヌクレオチドに関して、「化学修飾」または必要に応じて「化学修飾された」という用語は、アデノシン(A)、グアノシン(G)、ウリジン(U)、チミジン(T)、またはシチジン(C)リボヌクレオシドまたはデオキシリボヌクレオシドに対する、限定されるものではないが、それらの核酸塩基、糖、骨格、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるそれらの位置、パターン、パーセント、または集団のうちの1つ以上における修飾を指す。
【0270】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(例えば、mRNA)は、同じヌクレオシド種類のすべてもしくはいずれかの均一な化学修飾、または同じヌクレオシド種類のすべてもしくはいずれかにおける同じ出発修飾の下方滴定(downward titration)によって生成される修飾の群、またはランダムな組み込みを伴うことを除いて同じヌクレオシド種類のすべてもしくはいずれかの測定されたパーセントの化学修飾を有し得る。別の態様では、本開示のポリヌクレオチド(例えば、mRNA)は、ポリヌクレオチド全体にわたって同じヌクレオシド種類のうちの2つ、3つ、または4つの均一な化学修飾を有し得る(例えば、すべてのウリジン及びすべてのシトシンなどが、同じように修飾される)。
【0271】
修飾されたヌクレオチドの塩基対形成は、標準的なアデニン-チミン、アデニン-ウラシル、またはグアニン-シトシン塩基対だけでなく、ヌクレオチド及び/または非標準的もしくは修飾塩基を含む修飾ヌクレオチドの間で形成される塩基対も包含し、ここで、水素結合ドナー及び水素結合アクセプターの配置が、非標準的塩基と標準的塩基との間、または2つの相補的な非標準的塩基構造間の水素結合を可能にする。かかる非標準的塩基対形成の1つの例は、修飾された核酸塩基イノシンとアデニン、シトシン、またはウラシルとの間の塩基対形成である。塩基/糖またはリンカーの任意の組み合わせが、本開示のポリヌクレオチドに組み込まれ得る。
【0272】
当業者は、特に注記される場合を除き、本出願に記載されるポリヌクレオチド配列は、代表的なDNA配列において「T」を列挙するが、配列がRNAを表す場合、「T」は「U」と置換されることを理解するであろう。例えば、本開示のTDは、RNAとして、DNAとして、またはRNA及びDNAユニットの両方を含むハイブリッド分子として投与され得る。
【0273】
いくつかの態様では、ポリヌクレオチド(例えば、mRNA)は、少なくとも2つ(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、8つ、10、11、12、13、14、15、16、17、18、18、20以上)の修飾された核酸塩基の組み合わせを含む。
【0274】
1.塩基修飾
特定の態様では、化学修飾は、本開示のポリヌクレオチド(例えば、mRNA)内の核酸塩基に存在する。いくつかの態様では、少なくとも1つの化学修飾ヌクレオシドは、修飾されたウリジン(例えば、シュードウリジン(ψ)、2-チオウリジン(s2U)、1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)、1-エチル-シュードウリジン(e1ψ)、または5-メトキシ-ウリジン(mo5U))、修飾されたシトシン(例えば、5-メチルシチジン(m5C))、修飾されたアデノシン(例えば、1-メチル-アデノシン(m1A)、N6-メチル-アデノシン(m6A)、または2-メチルアデニン(m2A))、修飾されたグアノシン(例えば、7-メチルグアノシン(m7G)または1-メチルグアノシン(m1G))、またはそれらの組み合わせである。
【0275】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(例えば、mRNA)は、特定の修飾について均一に修飾される(例えば、完全に修飾される、配列全体にわたって修飾される)。例えば、ポリヌクレオチドは、同じ種類の塩基修飾、例えば、5-メチルシチジン(m5C)により均一に修飾され得、これは、ポリヌクレオチド配列におけるすべてのシトシン残基が、5-メチルシチジン(m5C)と置き換えられることを意味する。同様に、ポリヌクレオチドは、配列に存在する任意の種類のヌクレオシド残基について、修飾されたヌクレオシド、例えば、上記に記載されるもののいずれかとの置換により均一に修飾され得る。
【0276】
2.骨格修飾
いくつかの態様では、ペイロードは、「本開示のポリヌクレオチド」(例えば、mRNAを含む)を含み得、ここで、ポリヌクレオチドは、ヌクレオシド間の結合に任意の有用な修飾を含む。本開示の組成物において有用な、骨格修飾を含むそのような結合としては、これらに限定されるものではないが、以下のものが挙げられる:3’-アルキレンホスホネート、3’-アミノホスホロアミダート、アルケン含有骨格、アミノアルキルホスホロアミダート、アミノアルキルホスホトリエステル、ボラノホスフェート、-CH-O-N(CH)-CH-、-CH-N(CH)-N(CH)-CH-、-CH-NH-CH-、キラルホスホネート、キラルホスホロチオネート、ホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格、メチレン(メチルイミノ)、メチレンホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格、メチレンイミノ及びメチレンヒドラジノ骨格、モルホリノ結合、-N(CH)-CH-CH-、ヘテロ原子ヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオシド、ホスフィナート、ホスホロアミダート、ホスホロジチオエート、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合、ホスホロチオネート、ホスホトリエステル、PNA、シロキサン骨格、スルファメート骨格、スルフィド、スルホキシド、及びスルホン骨格、スルホネート及びスルホンアミド骨格、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、ならびにチオノホスホロアミダート。
【化10】
【0277】
いくつかの態様では、上記に開示される骨格結合の存在は、本開示のポリヌクレオチド(例えば、mRNA)の安定性(例えば、熱安定性)及び/または分解(例えば、酵素分解)に対する耐性を増加させる。いくつかの態様では、修飾されたポリヌクレオチドにおける安定性及び/または分解に対する耐性は、修飾されていない対応するポリヌクレオチド(参照または対照ポリヌクレオチド)と比較して少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約100%増加する。
【0278】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(例えば、mRNA)中の骨格結合の少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%が修飾される(例えば、それらのすべてがホスホロチオエートである)。
【0279】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(例えば、mRNA)の1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、または21個の骨格結合が修飾される(例えば、ホスホロチオエート)。
【0280】
いくつかの態様では、骨格は、ホスホジエステル結合、ホスホトリエステル結合、メチルホスホン酸結合、ホスホロアミダート結合、ホスホロチオエート結合、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される結合を含む。
【0281】
3.糖修飾
本開示のポリヌクレオチド(例えば、mRNA)に組み込まれ得る修飾されたヌクレオシド及びヌクレオチドは、核酸の糖に対して修飾され得る。したがって、いくつかの態様では、ペイロードは、核酸を含み、ここで、核酸は、少なくとも1つのヌクレオシド類似体(例えば、糖修飾を有するヌクレオシド)を含む。
【0282】
ポリヌクレオチドに親和性を増強するヌクレオチド類似体、例えば、LNAまたは2’置換された糖を組み込むことは、ポリヌクレオチドの長さが低減されるのを可能にし得、非特異的または異常な結合が起こらないポリヌクレオチドサイズの上限も緩和し得る。
【0283】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(すなわち、mRNA)中のヌクレオチドの少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%が糖修飾(例えば、LNA)を有する。
【0284】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(例えば、mRNA)中の1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個個、17個、18個、19個、20個、21個、または22個のヌクレオチド単位が糖修飾される(例えば、LNA)。
【0285】
一般に、RNAは、酸素を有する5員環である糖基リボースを含む。非限定的な例示的修飾ヌクレオチドとしては、リボースにおける酸素の(例えば、S、Se、またはアルキレン、例えば、メチレンまたはエチレンとの)置換;二重結合の付加(例えば、リボースのシクロペンテニルまたはシクロヘキセニルとの置換);リボースの環縮小(例えば、シクロブタンまたはオキセタンの4員環の形成);リボースの環拡大(例えば、追加の炭素またはヘテロ原子を有し、6または7員環の形成、例えば、アンヒドロヘキシトール、アルトリトール、マンニトール、シクロヘキサニル、シクロヘキセニル、及びホスホロアミダート骨格も有するモルホリノ);多環式形態(例えば、トリシクロ);及び「ロックされていない(unlocked)」形態、例えば、グリコール核酸(GNA)(例えば、R-GNAまたはS-GNA、ここで、リボースは、ホスホジエステル結合に結合されたグリコール単位と置き換えられる)、トレオース核酸(TNA、ここで、リボースは、α-L-トレオフラノシル-(3’→2’)と置き換えられる)、及びペプチド核酸(PNA、ここで、2-アミノ-エチル-グリシン結合が、リボース及びホスホジエステル骨格と置き換わる)が挙げられる。糖基は、リボースにおける対応する炭素と反対の立体化学配置を有する1つ以上の炭素も含有し得る。したがって、ポリヌクレオチド分子は、糖として、例えば、アラビノースを含有するヌクレオチドを含み得る。
【0286】
リボースの2’ヒドロキシ基(OH)は、いくつかの異なる置換基で修飾または置換され得る。2’-位での例示的な置換としては、限定されるものではないが、H、ハロ、任意選択的に置換されたC1~6アルキル;任意選択的に置換されたC1~6アルコキシ;任意選択的に置換されたC6~10アリールオキシ;任意選択的に置換されたC3~8シクロアルキル;任意選択的に置換されたC3~8シクロアルコキシ;任意選択的に置換されたC6~10アリールオキシ;任意選択的に置換されたC6~10アリール-C1~6アルコキシ、任意選択的に置換されたC1~12(ヘテロシクリル)オキシ;糖(例えば、リボース、ペントース、または本明細書に記載されるいずれか);ポリエチレングリコール(PEG)、-O(CHCHO)CHCHOR(ここで、Rは、Hまたは任意選択的に置換されたアルキルであり、nは、0~20(例えば、0~4、0~8、0~10、0~16、1~4、1~8、1~10、1~16、1~20、2~4、2~8、2~10、2~16、2~20、4~8、4~10、4~16、及び4~20)の整数である);「ロックド」核酸(LNA)(2’-ヒドロキシが、C1~6アルキレンまたはC1~6ヘテロアルキレン架橋により、同じリボース糖の4’-炭素に連結されており、ここで、例示的な架橋としては、メチレン、プロピレン、エーテル、アミノ架橋、アミノアルキル、アミノアルコキシ、アミノ、及びアミノ酸が挙げられる)が挙げられる。
【0287】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(例えば、mRNA)中に存在するヌクレオシド類似体は、例えば、2’-O-アルキル-RNAユニット、2’-OMe-RNAユニット、2’-O-アルキル-SNA、2’-アミノ-DNAユニット、2’-フルオロ-DNAユニット、LNAユニット、アラビノ核酸(ANA)ユニット、2’-フルオロ-ANAユニット、HNAユニット、INA(インターカレーティング核酸)ユニット、2’MOEユニット、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、LNAは、例えば、オキシLNA(例えば、β-D-オキシ-LNAまたはα-L-オキシ-LNA)、アミノLNA(例えば、β-D-アミノ-LNAまたはα-L-アミノ-LNA)、チオLNA(例えば、β-D-チオ0-LNAまたはα-L-チオ-LNA)、ENA(例えば、β-D-ENAまたはα-L-ENA)、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0288】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチドに存在するヌクレオシドアナログは、ロックド核酸(LNA);2’-0-アルキルRNA;2’-アミノDNA;2’-フルオロDNA;アラビノ核酸(ANA);2’-フルオロANA、ヘキシトール核酸(HNA)、インターカレーティング核酸(INA)、拘束エチルヌクレオシド(cEt)、2’-0-メチル核酸(2’-OMe)、2’-0-メトキシエチル核酸(2’-MOE)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0289】
IV.ミセル
本開示は、本開示のカチオン性キャリアユニットを含むミセルも提供する。本開示のミセルは、本開示のカチオン性キャリアユニット及び負に荷電したペイロードを含み、ここで、負に荷電したペイロード及びカチオン性キャリアユニットは、互いに結合している。いくつかの態様では、結合は、共有結合を含む。他の態様では、結合は、共有結合を含まない。他の態様では、結合は、イオン結合、すなわち、静電的相互作用によるものである。いくつかの態様では、負に荷電したペイロード(例えば、DNA及び/またはRNA)は、共有結合によりカチオン性キャリアユニットに結合されていない、及び/または負に荷電したペイロードは、イオン相互作用によってのみカチオン性キャリアユニットのカチオン性キャリア部分と相互作用する。
【0290】
いくつかの態様では、本開示のカチオン性キャリアユニット及びミセルは、ペイロード(例えば、DNA及び/またはRNA)を(例えば、DNアーゼ及び/またはRNアーゼによる)分解から保護する。第1に、カチオン性キャリアユニットは、静電的相互作用によりペイロードを保護することができる。第2に、ミセルは、ペイロードをミセルの核に、すなわち、DNアーゼ及び/またはRNアーゼの影響が及ぶ範囲外に隔離する。いくつかの態様では、循環する酵素(例えば、ヌクレアーゼ)からのペイロードの保護は、負に荷電したペイロード(例えば、DNA及び/またはRNA)の半減期を遊離ペイロードと比較して増加させ得る。いくつかの態様では、本開示のミセルへのペイロードの封入は、ペイロードの血漿半減期を、遊離ペイロードと比較して少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、少なくとも約12倍、少なくとも約13倍、少なくとも約14倍、少なくとも約15倍、少なくとも約16倍、少なくとも約17倍、少なくとも約18倍、少なくとも約19倍、少なくとも約20倍、少なくとも約21倍、少なくとも約22倍、少なくとも約23倍、少なくとも約24倍、少なくとも約25倍、少なくとも約26倍、少なくとも約27倍、少なくとも約28倍、少なくとも約29倍、または少なくとも約30倍増加させ得る。
【0291】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットの正電荷、特にカチオン性キャリア部分の電荷は、溶液中で負に帯電したペイロード(例えば、核酸)と混合される際にミセルを形成するのに十分であり、カチオン性キャリアユニット、特にそのカチオン性キャリア部分と負に荷電したペイロード(例えば、核酸)との全体のイオン比は、約20:1、約19:1、約18:1、約17:1、約16:1、約15:1、約14:1、約13:1、約12:1、約11:1、約10:1、約9:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、または約1:1である。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニット、特にそのカチオン性キャリア部分と負に荷電したペイロード(例えば、核酸)との全体のイオン比は、約1:20、約1:19、約1:18、約1:17、約1:16、約1:15、約1:14、約1:13、約1:12、約1:11、約1:10、約1:9、約1:8、約1:7、約1:6、約1:5、約1:4、約1:3、約1:2、または約1;1である。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニット、特にそのカチオン性キャリア部分と負に荷電したペイロード(例えば、核酸)との全体のイオン比は、約2:1である。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニット、特にそのカチオン性キャリア部分と負に荷電したペイロード(例えば、核酸)との全体のイオン比は、約3:1である。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニット、特にそのカチオン性キャリア部分と負に荷電したペイロード(例えば、核酸)との全体のイオン比は、約4:1である。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニット、特にそのカチオン性キャリア部分と負に荷電したペイロード(例えば、核酸)との全体のイオン比は、約5:1である。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニット、特にそのカチオン性キャリア部分と負に荷電したペイロード(例えば、核酸)との全体のイオン比は、約6:1である。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニット、特にそのカチオン性キャリア部分と負に荷電したペイロード(例えば、核酸)との全体のイオン比は、約7:1である。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニット、特にそのカチオン性キャリア部分と負に荷電したペイロード(例えば、核酸)との全体のイオン比は、約8:1である。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニット、特にそのカチオン性キャリア部分と負に荷電したペイロード(例えば、核酸)との全体のイオン比は、約9:1である。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニット、特にそのカチオン性キャリア部分と負に荷電したペイロード(例えば、核酸)との全体のイオン比は、約10:1である。
【0292】
いくつかの態様では、ミセルにおけるアニオン性ペイロードは、約10~約1000(例えば、約100~約1000)の長さを有するヌクレオチド配列を含み、カチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約2~約10、例えば、約2~約9、約2~約8、約2~約7、約2~約6、約2~約5、約2~約4、約2~約3、例えば、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、または約10である。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットと、約10~約1000ヌクレオチドの長さのアニオン性ペイロードとのN/P比は、約1~約10、例えば、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、または約10である。
【0293】
いくつかの態様では、ミセルにおけるアニオン性ペイロードは、約1000~約2000の長さを有するヌクレオチド配列を含み、カチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約3~約12、例えば、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、または約12である。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約4~約7、例えば、約4、約5、約6、または約7である。
【0294】
いくつかの態様では、ミセルにおけるアニオン性ペイロードは、約2000~約3000の長さを有するヌクレオチド配列を含み、カチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約3~約16、例えば、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16である。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約6~約9、例えば、約6、約7、約8、または約9である。
【0295】
いくつかの態様では、ミセルにおけるアニオン性ペイロードは、約3000~約4000の長さを有するヌクレオチド配列を含み、カチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約3~約20、例えば、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、または約20である。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約7~約10、例えば、約7、約8、約9、または約10である。
【0296】
いくつかの態様では、アニオン性ペイロードとカチオン性キャリアユニットとは、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、溶液中のカチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約7~約10である。いくつかの態様では、アニオン性ペイロードとカチオン性キャリアユニットとは、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、溶液中のカチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約7~約8、または約8~約9である。いくつかの態様では、アニオン性ペイロードとカチオン性キャリアユニットとは、溶液中で互いに混合される場合にミセルを形成することができ、溶液中のカチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロードとのN/P比は、約7、約8、約9、または約10である。
【0297】
いくつかの態様では、好適な緩衝液(例えば、PBS)と組み合わせると、本開示のカチオン性キャリアユニットとペイロード(例えば、mRNA)との間に形成される複合体は、自己組織化して、ミセルを生じる。
【0298】
ミセルは、1つ以上の両親媒性分子から構成される水溶性またはコロイド状の構造または集合体である。両親媒性分子は、少なくとも1つの親水性(極性)部分及び少なくとも1つの疎水性(非極性)部分を含有する分子である。「典型的なミセル」は、親水性層または「殻」により囲まれた単一の、中心の、かつ主に疎水性の区画または「核」を有する。水溶液において、ミセルは、両親媒性分子の親水性の「頭部」領域が周囲の溶媒と接触しており、両親媒性分子の疎水性の単一尾部領域をミセル核に隔離している集合体を形成する。ミセルの形状は、ほぼ球状である。他の形状、例えば、楕円体、円柱、桿状構造、またはポリマソームも可能である。開示されるミセルの形状及びサイズ、ならびにしたがって、ローディング容量は、水溶性バイオポリマー(例えば、PEG)とカチオン性キャリア(例えば、ポリリシン)との間の比率を変化させることにより修飾され得る。比率に応じて、キャリアユニットは、小粒子、小型ミセル、ミセル、桿状構造、またはポリマソームとして組織化し得る。したがって、「本開示のミセル」という用語は、典型的なミセルだけでなく小粒子、小型ミセル、ミセル、桿状構造、またはポリマソームも包含する。
【0299】
本開示のミセルは、疎水性及び親水性部分を含有する単一の単分子ポリマー、または極性溶液(すなわち、水溶液)中で、臨界ミセル濃度(CMC)以上で形成された多数の両親媒性(すなわち界面活性剤)分子を含有する集合体の混合物のいずれかから構成され得る。ミセルは、1つ以上の両親媒性分子から自己組織化され、ここで、部分は、主に疎水性の内部核及び主に親水性の外側をもたらすように配向される。
【0300】
本開示のミセルは、5~約2000ナノメートルの範囲のサイズであり得る。いくつかの態様では、ミセルの直径は、約10nm~約200nmである。いくつかの態様では、ミセルの直径は、約1nm~約100nm、約10nm~約100nm、約10nm~約90nm、約10nm~約80nm、約10nm~約70nm、約20nm~約100nm、約20nm~約90nm、約20nm~約80nm、約20nm~約70nm、約30nm~約100nm、約30nm~約90nm、約30nm~約80nm、約30nm~約70nm、約40nm~約100nm、約40nm~約90nm、約40nm~約80nm、または約40nm~約70nmである。いくつかの態様では、本開示のミセルの直径は、約30nm~約60nmである。いくつかの態様では、本開示のミセルの直径は、約15nm~約90nmである。いくつかの態様では、本開示のミセルの直径は、約15nm~約80nmである。いくつかの態様では、本開示のミセルの直径は、約15nm~約70nmである。いくつかの態様では、本開示のミセルの直径は、約15nm~約60nmである。いくつかの態様では、本開示のミセルの直径は、約15nm~約50nmである。いくつかの態様では、本開示のミセルの直径は、約20nm~約60nmである。いくつかの態様では、本開示のミセルの直径は、約20nm~約50nmである。いくつかの態様では、本開示のミセルの直径は、約20nm~約40nmである。いくつかの態様では、本開示のミセルの直径は、約25nm~約35nmである。いくつかの態様では、本開示のミセルの直径は、約32nmである。いくつかの態様では、本開示のミセルの直径は、約100nm~約200nmである。いくつかの態様では、本開示のミセルの直径は、約40nm~約50nmである。いくつかの態様では、本開示のミセルの直径は、約50nm~約60nmである。いくつかの態様では、本開示のミセルの直径は、約60nm~約70nmである。いくつかの態様では、本開示のミセルの直径は、約70nm~約80nmである。いくつかの態様では、本開示のミセルの直径は、約80nm~約90nmである。いくつかの態様では、本開示のミセルの直径は、約90nm~約100nmである。
【0301】
いくつかの態様では、本開示のミセルは、単一種類のカチオン性キャリアユニットを含む。他の態様では、本開示のミセルは、2種類以上のカチオン性キャリアユニット(例えば、標的細胞表面上の異なる受容体を標的とする)を含む。いくつかの態様では、本開示のミセルは、異なる標的化部分、(例えば、異なるペイロードを収容するための)異なるカチオン性キャリア部分、及び/または異なる疎水性及び/または架橋ユニットを有するカチオン性キャリアユニットを含み得る。
【0302】
ミセルをペイロードとともに形成させるために、異なる種類のカチオン性またはアニオン性キャリアユニットが、一緒に組み合わされ得る。例えば、血液脳関門を標的とするために、本開示のミセルは、標的化部分に連結されたカチオン性(またはアニオン性)キャリアユニット及び標的化部分に連結されていないカチオン性(またはアニオン性)キャリアユニットを含み得る。いくつかの態様では、ミセルは、約50~約200のカチオン性またはアニオン性キャリアユニットを含む。他の態様では、ミセルは、約50~約150、約50~約140、約50~約130、約50~約120、約50~約110、または約50~約100のカチオン性またはアニオン性キャリアユニットを含む。いくつかの態様では、ミセルは、約60~約200のカチオン性またはアニオン性キャリアユニットを含む。他の態様では、ミセルは、約60~約150、約60~約140、約60~約130、約60~約120、約60~約110、約60~約100、約60~約90、約60~約80、または約60~約70のカチオン性またはアニオン性キャリアユニットを含む。いくつかの態様では、ミセルは、約70~約200のカチオン性またはアニオン性キャリアユニットを含む。他の態様では、ミセルは、約70~約150、約70~約140、約70~約130、約70~約120、約70~約110、約70~約100、約70~約90、または約70~約80のカチオン性またはアニオン性キャリアユニットを含む。いくつかの態様では、ミセルは、約80~約200のカチオン性またはアニオン性キャリアユニットを含む。他の態様では、ミセルは、約80~約150、約80~約140、約80~約130、約80~約120、約80~約110、約80~約100、または約80~約90のカチオン性またはアニオン性キャリアユニットを含む。いくつかの態様では、ミセルは、約90~約200のカチオン性またはアニオン性キャリアユニットを含む。他の態様では、ミセルは、約90~約150、約90~約140、約90~約130、約90~約120、約90~約110、または約90~約100のカチオン性またはアニオン性キャリアユニットを含む。いくつかの態様では、ミセルは、約100~約200のカチオン性またはアニオン性キャリアユニットを含む。他の態様では、ミセルは、約100~約150、約100~約140、約100~約130、約100~約120、約100~約110、または約100~約100のカチオン性またはアニオン性キャリアユニットを含む。
【0303】
本開示は、(i)ヌクレオチド配列(例えば、4000ヌクレオチド未満の長さを有するmRNA)、及び(ii)本明細書に記載されるカチオン性キャリアユニットを含むミセルも含む。いくつかの態様では、本開示は、(i)ヌクレオチド配列(例えば、4000ヌクレオチド未満の長さを有するmRNA)、及び(ii)約80個~約120個(例えば、約85個~約115個、約90個~約110個、約95個~約105個)の本明細書に記載されるカチオン性キャリアユニット、例えば、図式I~VI、図式I’~VI’、またはそれらの組み合わせ(図2A~2Eを参照)を含むミセルに関する。いくつかの態様では、ミセルは、(i)ヌクレオチド配列(例えば、mRNA)、及び(ii)約80個~約120個(例えば、約80個、約85個、約90個、約95個、約100個、約105個、または約110個)の本明細書に記載されるカチオン性キャリアユニット、例えば、任意選択のC[CC]-L1-[CM]-L2-[HM](図2を参照)を含む。いくつかの態様では、ミセルは、(i)ヌクレオチド配列(例えば、mRNA)、及び(ii)約60個~約110個、例えば、約80個のカチオン性キャリアユニットを含み、(a)カチオン性キャリアユニットのうちの約45個~約90個、例えば、約80個は、[CC]-L1-[CM]-L2-[HM]を含み、(b)カチオン性キャリアユニットのうちの約45個~約55個、例えば、約50個は、TM-[CC]-L1-[CM]-L2-[HM]を含み、ただし、TMは、フェニルアラニンであり、WPは、(PEG)5000であり、CCは、約40個~約50個のリシン、例えば、約45個、約46個、約47個、約48個、約49個、または約50個のリシンであり、リシンのうちの約5個~約15個、約5個のリシンのそれぞれは、ビタミンB3(ニコチンアミド)に融合されている。
【0304】
いくつかの態様では、ミセルは、単一のペイロード(例えば、単一のmRNA)を含み得る。他の態様では、ミセルは、複数のペイロード(例えば、複数のmRNA)を含み得る。
【0305】
V.製造方法
本開示は、本開示のカチオン性キャリアユニット及びミセルを作製する方法も提供する。概して、本開示は、例えば、実施例セクションに記載されるようにカチオン性キャリアユニットを合成することを含む、本開示のカチオン性キャリアユニットを調製する方法を提供する。本明細書で使用する場合、「合成する」という語は、当該技術分野では周知の方法を用いてカチオン性キャリアユニットをアセンブルすることを指す。例えば、タンパク質構成要素(例えば、抗体標的化部分)は、組換えにより調製され得、その後に、カチオン性キャリアユニットの他の構成要素に結合され得る。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットの構成要素のそれぞれは、当該技術分野において公知の方法、例えば、組換えタンパク質生成、固相ペプチドまたは核酸合成、化学合成、酵素合成、またはそれらの任意の組み合わせを使用して調製され得、得られた構成要素は、当該技術分野において公知の化学的方法及び/または酵素による方法を使用して結合され得る。
【0306】
本開示のカチオン性キャリアユニットは、夾雑物を除去するために精製され得る。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、カチオン性キャリアユニットの均一な集団を含む。しかしながら、他の態様では、カチオン性キャリアユニットは、複数の種類を含み得る(例えば、それらの一部は標的化部分を含み、一部は残りの部分を含むが、標的化部分を有さない)。いくつかの態様では、本開示のカチオン性キャリアユニットの製造は、凍結乾燥または再構成に好適な任意の他の種類の乾燥保存を含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットをペイロード(例えば、核酸)と組み合わせた後に、乾燥形態のカチオン性キャリアユニットの調製が行われる。
【0307】
いくつかの態様では、本開示のミセルを調製する方法は、カチオン性キャリアユニットを負に荷電したペイロード(例えば、mRNAのような核酸)と1:1のイオン比率で混合することを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットと負に荷電したペイロードとは溶液中で組み合わされる。いくつかの態様では、溶液中でカチオン性キャリア及び負に荷電したペイロードを組み合わせた後に、得られた溶液が凍結乾燥または乾燥される。いくつかの態様では、カチオン性キャリア及び負に荷電したペイロードの組み合わせは、乾燥形態で実施される。
【0308】
カチオン性キャリア部分(例えば、ポリリシン)におけるモノマーユニット(例えば、リシン)の数mに対する水溶性ポリマー(例えば、PEG)におけるモノマーユニットの数nの比率(いずれの場合においても、ユニットの数nまたはmは、最高1,000ユニットであり得る)は、得られるミセルのサイズ及び形状に影響を及ぼす。0.5のmB/(nA+mB)比率では、得られるミセルは、古典的なミセルである。mB/(nA+mB)が0.5超である場合、得られるミセルは、桿状ミセルまたはポリマソームである。mB/(nA+mB)が0.5未満である場合、得られるミセルは、小型ミセルまたは小粒子である。
【0309】
本開示のミセルは、当該技術分野において公知の技術のいずれか、例えば、ボルテックスすること、押出し、または音波処理を使用して生成され得る。ミセルの形成は、本開示のカチオン性キャリアユニットを含む溶液の臨界ミセル濃度(CMC)を越える条件を適用することに依存する。それらがある特定の値の濃度に達した後、界面活性剤が会合し始め、より複雑なユニット、例えば、ミセルに自己組織化し始める。本開示のカチオン性キャリアを含む溶液のCMCは、CMC周辺で明白な遷移を示す任意の物理的性質(例えば、表面張力)により決定され得る。
【0310】
周知のSmith-Ewart理論により、CMCを超える濃度でミセルの形成を引き起こす核生成した粒子の数は、界面活性剤(本開示では、アニオン性ペイロードと複合体形成または会合したカチオン性キャリアユニット)濃度の0.6乗と比例すると予測される。これは、所与の界面活性剤では、形成されるミセルの数は、一般に界面活性剤濃度の増加とともに増加するためである。
【0311】
いくつかの態様では、本開示のミセルは、例えば、夾雑物を除去するため、及び/または均一なミセルの集団(例えば、同じサイズを有するミセル、または同じペイロードもしくは同じ標的化部分を有するミセル)を生成するために精製され得る。
【0312】
VI.医薬組成物
本開示は、対象への投与に好適である本開示のカチオン性キャリアユニット及び/またはミセル(すなわち、本開示のカチオン性キャリアユニットを含むミセル)を含む医薬組成物も提供する。上記のように、本開示のミセルは、均一であり得る(すなわち、すべてのミセルが同じ種類のカチオン性キャリアユニットを、同じ標的化部分及び同じペイロードとともに含む)。しかしながら、他の態様では、ミセルは、複数の標的化部分、複数のペイロードなどを含み得る。
【0313】
医薬組成物は、一般に、本開示のカチオン性キャリアユニット及び/またはミセル、ならびに薬学的に許容される賦形剤または担体を、対象への投与に好適な形態で含む。薬学的に許容される賦形剤または担体は、投与される特定の組成物、及び組成物を投与するために使用される特定の方法により部分的に決定される。
【0314】
本開示のミセルを含む医薬組成物の多種多様な好適な製剤が存在する(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.18th ed.(1990)を参照のこと)。医薬組成物は一般に、無菌状態で、米国食品医薬品局の適正製造基準(GMP)規制のすべてに完全に準拠したものとして製剤化される。いくつかの態様では、医薬組成物は、本明細書に記載される1つ以上のミセルを含む。
【0315】
ある特定の態様では、本明細書に記載されるミセルは、薬学的に許容される担体中で1種以上の追加の治療薬と同時投与される。いくつかの態様では、本明細書に記載されるミセルを含む医薬組成物は、追加の治療薬(複数可)の投与前に投与される。他の態様では、本明細書に記載されるミセルを含む医薬組成物は、追加の治療薬(複数可)の投与後に投与される。さらなる態様では、本明細書に記載されるミセルを含む医薬組成物は、追加の治療薬(複数可)と同時に投与される。
【0316】
いくつかの態様では、薬学的担体は、ミセル形成後に添加される。他の態様では、薬学的担体は、ミセル形成前に添加される。
【0317】
許容可能な担体、賦形剤、または安定剤は、用いられる投与量及び濃度でレシピエント(例えば、動物またはヒト)に対し無毒性であり、これらとしては、緩衝剤、例えば、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸;アスコルビン酸及びメチオニンが挙げられる抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジン;グルコース、マンノース、またはデキストリンが挙げられる単糖、二糖、及び他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース、またはソルビトール;塩形成性対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/または非イオン性活性剤、例えば、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、またはポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。
【0318】
担体または希釈剤の例としては、これらに限定されるものではないが、水、生理食塩水、リンガー液、デキストロース溶液、及び5%ヒト血清アルブミンが挙げられる。薬学的活性物質のためのかかる媒体及び化合物の使用は当該技術分野では周知のものである。任意の従来の媒体または化合物が、本明細書に開示されるカチオン性キャリアユニットまたはミセルと不適合でない限り、組成物におけるそれらの使用は想到される。
【0319】
補助的治療薬も本開示の組成物に組み込まれ得る。一般的に、医薬組成物は、その意図される投与経路に適合するように配合される。本明細書に記載されるミセルは、非経口、局所、静脈内、経口、皮下、動脈内、皮内、経皮、直腸、頭蓋内、腹腔内、鼻腔内、腫瘍内、筋肉内経路により、または吸入剤として投与され得る。ある特定の態様では、本明細書に記載される医薬組成物のミセルは、例えば、注射により静脈内投与される。本明細書に記載されるミセルは、任意選択的に、本明細書に記載されるミセルが対象とする疾患、障害、または状態を処置するのに少なくとも部分的に効果的である他の治療薬と組み合わせて投与され得る。
【0320】
溶液または懸濁液は、以下の構成要素を含み得る:無菌の希釈剤、例えば、水、生理食塩液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒;抗菌化合物、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート化合物、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA);緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはホスフェート、及び張度の調整のための化合物、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHは、塩酸や水酸化ナトリウムなどの酸または塩基によって調整することができる。製剤は、ガラスもしくはプラスチックで形成されたアンプル、使い捨て注射器、または複数用量バイアルに封入することができる。
【0321】
注射可能な使用に適した医薬組成物としては、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液及び滅菌粉末が挙げられる。静脈内投与の場合、適当な担体として、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,N.J.)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。組成物は一般的に無菌であり、容易に注射器で使用できる程度の流動性を有する。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの適当な混合物を含有する溶媒または分散媒とすることができる。適正な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合には必要な粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の活動の防止は、さまざまな抗菌化合物及び抗真菌化合物、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって実現することができる。必要に応じて、等張性化合物、例えば、糖、多価アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、及び塩化ナトリウムが組成物に添加され得る。例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンなどの吸収を遅延させる化合物を組成物に含めることによって注射用組成物の長期的吸収をもたらすことができる。
【0322】
本開示の医薬組成物は、従来の周知の滅菌技術により滅菌され得る。水溶液は、使用するために包装され得るか、または無菌条件下濾過され、凍結乾燥され、凍結乾燥された調製物は、投与の前に無菌の水溶液と組み合わされる。
【0323】
無菌注射剤は、所望される場合、本明細書において列挙される成分の1つまたは組み合わせとともに、本明細書に記載されるミセルを有効量でかつ適切な溶媒中に組み込むことにより調製され得る。一般に、分散体は、本明細書に記載されるミセルを基本的な分散媒及び任意の所望の他の成分を含有する無菌のビヒクルに組み込むことにより調製される。滅菌注射液の調製用の滅菌粉末の場合、調製方法は、真空乾燥及びフリーズドライであり、予め滅菌濾過したその溶液から有効成分及び任意の追加的な所望の成分の粉末が得られる。本明細書に記載されるミセルは、本明細書に記載されるミセルの持続放出またはパルス放出を可能にするような様式で製剤化され得る、蓄積注射またはインプラント調製物の形態で投与され得る。
【0324】
本明細書に記載されるミセルを含む組成物の全身投与は、経粘膜手段によるものであり得る。経粘膜投与のために、浸透すべき障壁に適切な浸透剤が製剤に使用される。かかる浸透剤は、当該技術分野では周知のものであり、例えば、経粘膜投与の場合では、洗剤、胆汁酸塩、及びフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、例えば、鼻内噴霧を使用することにより達成され得る。
【0325】
ある特定の態様では、本明細書に記載されるミセルを含む医薬組成物は、医薬組成物から恩恵を受ける対象に静脈内投与される。ある特定の態様では、組成物は、例えば、リンパ管内注射もしくは結節内注射(例えば、Senti et al.,PNAS 105(46):17908(2008)参照のこと)によりリンパ系に、または筋肉内注射により、皮下投与により、腫瘍内注射により、胸腺または肝臓への直接注入により投与される。
【0326】
ある特定の態様では、本明細書に記載されるミセルを含む医薬組成物は、懸濁液として投与される。ある特定の態様では、医薬組成物は、投与後の貯留物を形成することができる製剤として投与される。ある特定の好ましい態様では、貯留物は、本明細書に記載されるミセルを血行にゆっくりと放出するか、または貯留物形態で残存する。
【0327】
通常、薬学的に許容される組成物は、夾雑物を含まないように高度に精製されており、生体適合性でありかつ有毒でなく、対象への投与に適している。水がキャリアの構成成分である場合、水は、夾雑物(例えば、エンドトキシン)を含まないように高度に精製及び処理される。
【0328】
薬学的に許容されるキャリアは、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギナート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び/または鉱油であり得るが、それらに限定されない。医薬組成物は、滑沢剤、湿潤剤、甘味剤、風味増強剤、乳化剤、沈殿防止剤、及び/または防腐剤をさらに含み得る。
【0329】
本明細書に記載される医薬組成物は、本明細書に記載されるミセル及び任意選択的に薬学的活性薬剤または治療薬を含む。治療薬は、生物学的薬剤、低分子薬剤、または核酸薬剤であり得る。
【0330】
本明細書に記載されるミセルを含む剤形が提供される。いくつかの態様では、剤形は、静脈内注射のための懸濁液として製剤化される。
【0331】
本明細書において開示されるミセルまたはミセルを含む医薬組成物は、他の薬物と同時に使用され得る。具体的には、本開示のミセルまたは医薬組成物は、薬剤、例えば、ホルモン治療薬、化学療法薬、免疫治療薬剤、細胞増殖因子または細胞増殖因子受容体の作用を阻害する薬剤などとともに使用され得る。
【0332】
VII.治療方法及び使用方法
本開示は、疾患または状態を処置する必要がある対象の疾患または状態を処置する方法も提供し、当該方法は、本開示のミセルまたはその組み合わせを対象、例えば、ヒト対象などの哺乳動物に投与することを含む。いくつかの態様では、本開示は、神経変性障害またはがんを処置する必要がある対象の神経変性障害またはがんを処置する方法も提供し、当該方法は、治療上有効量の本開示のミセルまたは本開示の医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0333】
いくつかの態様では、本開示のミセルは、静脈内、筋肉内、動脈内、クモ膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊髄内、及び胸骨内注射及び注入により投与され得る。
【0334】
いくつかの態様では、本開示のミセルは、本明細書において開示される疾患及び症状の処置に好適な他の薬剤または処置と同時に使用され得る。
【0335】
本開示は、送達のためにペイロードを封入する方法も提供し、当該方法は、ペイロード、例えば、核酸などのアニオン性ペイロード(例えば、mRNA)を本開示のミセルに組み込むことを含む。
【0336】
本開示は、ペイロードの分解(例えば、ヌクレアーゼにより媒介される分解)への耐性を増加させる方法も提供し、当該方法は、ペイロード、例えば、核酸などのアニオン性ペイロード(例えば、mRNA)を本開示のミセルに組み込むことを含む。
【0337】
いくつかの態様では、本開示は、血液脳関門(BBB)を通過する方法を提供し、当該方法は、本明細書において開示されるミセル、例えば、標的化部分としてトリプトファン及び/またはチロシンを含むミセルを投与することを含む。mRNAがロードされた本開示のミセルは、上記に開示されるように、BBBの受容体、例えば、LAT1に標的化され得る。
【0338】
いくつかの態様では、本開示のミセルへのペイロードの封入は、ペイロードの分解への耐性を、遊離ペイロード(すなわち、ミセル内でない、例えば、溶液中で遊離しているペイロード)と比較して少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約100%増加させ得る。
【0339】
いくつかの態様では、本開示のミセルへのペイロードの封入は、ペイロードの分解への耐性を、遊離ペイロードと比較して少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、少なくとも約12倍、少なくとも約13倍、少なくとも約14倍、少なくとも約15倍、少なくとも約16倍、少なくとも約17倍、少なくとも約18倍、少なくとも約19倍、少なくとも約20倍、少なくとも約21倍、少なくとも約22倍、少なくとも約23倍、少なくとも約24倍、少なくとも約25倍、少なくとも約26倍、少なくとも約27倍、少なくとも約28倍、少なくとも約29倍、または少なくとも約30倍に増加させ得る。
【0340】
本開示は、投与の間(例えば、対象の血流中に存在する間)のペイロードの安定性を増加させる方法も提供し、当該方法は、ペイロード、例えば、核酸などのアニオン性ペイロード(例えば、mRNA)を本開示のミセルに組み込むことを含む。
【0341】
いくつかの態様では、本開示のミセルへのペイロードの封入は、ペイロードの安定性を、遊離ペイロードと比較して少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約100%増加させ得る(例えば、ヌクレアーゼに対する耐性を増加させる)。
【0342】
いくつかの態様では、本開示のミセルへのペイロードの封入は、ペイロードの安定性を、遊離ペイロードと比較して少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、少なくとも約12倍、少なくとも約13倍、少なくとも約14倍、少なくとも約15倍、少なくとも約16倍、少なくとも約17倍、少なくとも約18倍、少なくとも約19倍、少なくとも約20倍、少なくとも約21倍、少なくとも約22倍、少なくとも約23倍、少なくとも約24倍、少なくとも約25倍、少なくとも約26倍、少なくとも約27倍、少なくとも約28倍、少なくとも約29倍、または少なくとも約30倍増加させ得る(例えば、ヌクレアーゼに対する耐性を増加させる)。
【0343】
本開示は、ペイロードの血漿半減期を増加させる方法も提供し、当該方法は、ペイロード、例えば、核酸などのアニオン性ペイロード(例えば、mRNA)を本開示のミセルに組み込むことを含む。
【0344】
いくつかの態様では、本開示のミセルへのペイロードの封入は、ペイロードの血漿半減期を、遊離ペイロードと比較して少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%、少なくとも約500%、少なくとも約600%、少なくとも約700%、少なくとも約800%、少なくとも約900%、少なくとも約1000%、少なくとも約1100%、少なくとも約1200%、少なくとも約1300%、少なくとも約1400%、少なくとも約1500%、少なくとも約1600%、少なくとも約1700%、少なくとも約1800%、少なくとも約1900%、または少なくとも約2000%増加させ得る。
【0345】
いくつかの態様では、本開示のミセルへのペイロードの封入は、ペイロードの血漿半減期を、遊離ペイロードと比較して少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、少なくとも約12倍、少なくとも約13倍、少なくとも約14倍、少なくとも約15倍、少なくとも約16倍、少なくとも約17倍、少なくとも約18倍、少なくとも約19倍、少なくとも約20倍、少なくとも約21倍、少なくとも約22倍、少なくとも約23倍、少なくとも約24倍、少なくとも約25倍、少なくとも約26倍、少なくとも約27倍、少なくとも約28倍、少なくとも約29倍、または少なくとも約30倍増加させ得る。
【0346】
いくつかの態様では、本開示のミセルへのペイロードの封入は、生理学的バリア、例えば、BBBまたは形質膜を通したペイロードの透過、送達、移動、または輸送を、遊離ペイロードと比較して少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約100%増加させ得る。
【0347】
いくつかの態様では、本開示のミセルへのペイロードの封入は、生理学的バリア、例えば、BBBまたは形質膜を通したペイロードの透過、送達、移動、または輸送を、遊離ペイロードと比較して少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、少なくとも約12倍、少なくとも約13倍、少なくとも約14倍、少なくとも約15倍、少なくとも約16倍、少なくとも約17倍、少なくとも約18倍、少なくとも約19倍、少なくとも約20倍、少なくとも約21倍、少なくとも約22倍、少なくとも約23倍、少なくとも約24倍、少なくとも約25倍、少なくとも約26倍、少なくとも約27倍、少なくとも約28倍、少なくとも約29倍、または少なくとも約30倍に増加させ得る。
【0348】
いくつかの態様では、本開示のミセルは、幹細胞を標的とするために、例えば、治療用分子(例えば、治療用ポリヌクレオチド)または遺伝子治療成分を送達するために使用され得る。他の態様では、本開示のミセルは、がんを処置するために使用され得る。例えば、本開示のミセルは、ある特定の種類のがん、例えば、神経膠腫、乳癌、膵臓癌、肝臓癌、皮膚癌、または子宮頸癌に特異的なマーカーを標的とし得、治療用分子(例えば、治療用ポリヌクレオチド、ペプチド、または低分子)をペイロードとして保有し得る。
【0349】
特定の態様では、本開示のミセルは、膵臓癌を処置するために使用され得る。いくつかの態様では、本開示のミセルを膵臓組織に誘導する標的化部分は、環状RGDペプチドである。他の態様では、本開示のミセルを膵臓組織に誘導する標的化部分は、正常またはがん性膵臓細胞の表面に主にまたはもっぱら発現されるバイオマーカーである。
【0350】
VIII.キット
本開示は、本開示のカチオン性キャリアユニット、ミセル、または医薬組成物、及び任意選択的に使用説明書を含むキットまたは製造品も提供する。いくつかの態様では、キットまたは製造品は、本開示のカチオン性キャリアユニット、ミセル、または医薬組成物を1つ以上の容器に含む。いくつかの態様では、キットまたは製造品は、本開示のカチオン性キャリアユニット、ミセル、または医薬組成物、及びパンフレットを含む。いくつかの態様では、キットまたは製造品は、本開示のカチオン性キャリアユニット、ミセル、または医薬組成物、及び使用説明書を含む。当業者は、本開示のカチオン性キャリアユニット、ミセル、もしくは医薬組成物、またはそれらの組み合わせが、技術分野において周知である確立されたキットフォーマットのうちの1つに容易に組み込まれ得ることを容易に理解するであろう。
【0351】
いくつかの態様では、キットまたは製造品は、容器(例えば、ガラスバイアル)内の乾燥形態の本開示のカチオン性キャリアユニット、及び任意選択的に乾燥したカチオン性キャリアユニットを水和させるのに好適な溶媒を有するバイアル、及び任意選択的にカチオン性キャリアユニットの水和及びミセルの形成のための使用説明書を含む。いくつかの態様では、キットまたは製造品は、ミセルのアニオン性ペイロード(例えば、mRNA)を有する少なくとも1つの追加の容器(例えば、ガラスバイアル)をさらに含む。いくつかの態様では、キットまたは製造品は、乾燥形態の本開示のカチオン性キャリアユニット及び同様に乾燥形態のミセルのアニオン性ペイロードを同じ容器に、または異なる容器に含む。いくつかの態様では、キットまたは製造品は、溶液中の本開示のカチオン性キャリアユニット及び同様に溶液中のミセルのアニオン性ペイロードを同じ容器に、または異なる容器に含む。いくつかの態様では、キットまたは製造品は、溶液中の本開示のミセル及び使用説明書を含む。いくつかの態様では、キットまたは製造品は、乾燥形態の本開示のミセル及び使用説明書(例えば、再構成及び投与のための使用説明書)を含む。
【0352】
***
本開示の実施は、特に明記しない限り、当業者の技能範囲内にある、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、及び免疫学の従来技術を用いるであろう。かかる技術は文献に充分な説明がなされている例えば、下記を参照されたい:Sambrook et al., ed. (1989) Molecular Cloning A Laboratory Manual (2nd ed.;Cold Spring Harbor Laboratory Press);Sambrook et al., ed. (1992) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, (Cold Springs Harbor Laboratory, NY);D. N. Glover ed., (1985) DNA Cloning, Volumes I and II;Gait, ed. (1984) Oligonucleotide Synthesis;Mullis et al. 米国特許第4,683,195号;Hames and Higgins, eds. (1984) Nucleic Acid Hybridization;Hames and Higgins, eds. (1984) Transcription And Translation;Freshney (1987) Culture Of Animal Cells (Alan R. Liss, Inc.);Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press) (1986);Perbal (1984) A Practical Guide To Molecular Cloning;the treatise, Methods In Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.);Miller and Calos eds. (1987) Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells, (Cold Spring Harbor Laboratory);Wu et al., eds., Methods In Enzymology, Vols. 154 and 155;Mayer and Walker, eds. (1987) Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Academic Press, London);Weir and Blackwell, eds., (1986) Handbook Of Experimental Immunology, Volumes I-IV;Manipulating the Mouse Embryo, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., (1986););Crooke, Antisense drug Technology: Principles, Strategies and Applications, 2nd Ed. CRC Press (2007) and in Ausubel et al. (1989) Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley and Sons, Baltimore, Md.)。
【0353】
上記で引用された参考文献のすべて、及び本明細書において引用されるすべての参考文献は、本明細書に参照によりその全容を援用するものである。
【0354】
以下の実施例は、例示のために示すものであって、限定のためのものではない。
【実施例
【0355】
実施例1
アルキン修飾チロシンの合成:アセトニトリル(4.0ml)中、N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-チロシンメチルエステル(Boc-Tyr-OMe)(0.5g,1.69mmol)及びKCO(1.5当量,2.54mmol)の混合物を、臭化プロパルギル(1.2当量,2.03mmol)に滴下した。
【0356】
反応混合物を60℃で16時間加熱した。反応後、反応混合物を、水と酢酸エチル(EA)により抽出した。次いで、有機層を、ブライン液で洗浄した。粗製物を、フラッシュカラム(ヘキサン中、10%EA)により精製した。次に、得られた生成物をテトラヒドロフラン(7.0ml)及び6.0M HCl(7.0ml)に溶解し、65℃で16時間加熱した。その後、ジオキサンを除去し、EAを使用して生成物を抽出した。次いで、水性NaOH(1.0M)溶液をpH値が7になるまで混合物に加えた。反応物質をエバポレーターで濃縮し、12,000rpmで0℃で遠心分離した。沈殿物を脱イオン水で洗浄して使用に先立って凍結乾燥した。
【0357】
(メトキシまたは)アジド-ポリ(エチレングリコール)b-ポリ(L-リシン)(PEG-PLL)の合成:ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(L-リシン)を、Lys(TFA)-NCAと高分子開始剤としてのアジドPEG(N3-PEG)との開環重合により合成した。要約すると、N3-PEG(600mg,0.12mmol)及びLys(TFA)-NCA(1447mg,5.4mmol)を、1Mのチオ尿素を含んだDMFとDMFに別々に溶解した。Lys(TFA)-NCA溶液を、マイクロシリンジの針によりN3-PEG溶液に滴下し、反応混合物を37℃で3日間撹拌した。反応ボトルをAr及び真空によりパージした。すべての反応はAr雰囲気下で行った。
【0358】
反応後、混合物を過剰量のジエチルエーテル中で沈殿させた。次いで、混合物を濾過し、減圧下で乾燥後に白色粉末を得た。PEG-PLL(TFA)のTFA基を脱保護するため、N3-PEG-PLL(500mg)をメタノール(60mL)に溶解し、1NのNaOH(6mL)を、撹拌しながらポリマー溶液に滴下した。混合物を37℃で攪拌しながら1日維持した。反応混合物を10mMのHEPESに対して4回、及び蒸留水に対して透析した。凍結乾燥後にN3-PEG-PLL(NH)の白色粉末を得た。
【0359】
(メトキシまたは)アジドポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(L-リシン/メルカプトプロパンアミド)(PEG5K-PLL80(SH16)(化合物A)の合成:ミセルの安定性を高めるために、チオール化末端基を疎水性部分としてポリマー主鎖に導入した。最初に、(メトキシまたは)アジド-ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(L-リシン/メルカプトプロパンアミド)((MeO-または)NPEG5K-PLL80(SH16))を、EDC/NHSの存在下、PEG5K-PLL80-NH及び3,3’-ジチオジプロピオン酸の化学修飾により合成した。
(a)PEG5K-PLL80-NH(100mg)を脱イオン水とメタノールの(1:1)混合物に溶解した。
(b)3,3’-ジチオジプロピオン酸(65.6mg、PEG-PLLのNHに対して0.17当量)をMeOHに溶解した。
(c)EDC(20.5mg、PEG-PLLのNHに対して0.2当量)及びNHS(12.3mg、PEG-PLLのNHに対して0.2当量)を(b)の3,3’-ジチオジプロピオン酸溶液に加え、これを、(a)のPEG5K-PLL80-NH溶液と加え合わせた。
【0360】
得られた混合物を37℃で4時間攪拌した後、反応物をMeOHに対して2時間透析し(MWCO=7,000~8,000)、1,4-ジチオトリトール(DTT、20.6mg、PEG-PLLのNHに対して0.14当量)を膜に直接加えて、ポリマー側鎖のジスルフィド結合を切断した。
【0361】
膜を30分間インキュベートし、50%MeOHに対して2時間透析し、脱イオン水に対して24時間透析した。溶液をシリンジフィルター(0.45μm)で濾過し、2日間凍結乾燥した。PEG5K-PLL80(SH16)の模式図を図2Aに示す。
【0362】
(メトキシまたは)アジドポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(L-リシン/ニコチンアミド/メルカプトプロパンアミド)(PEG5K-PLL80(Nic/SH35)(化合物B)の合成:ミセルの安定性を高めるために、ニコチンアミドを含むチオール化末端基を疎水性部分としてポリマー主鎖に導入した。まず最初に、(メトキシまたは)アジド-ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(L-リシン/ニコチンアミド/メルカプトプロパンアミド)((MeO-または)N3-PEG5K-PLL80(Nic/SH35))を、EDC/NHSの存在下、PEG5K-PLL80-NH及びニコチン酸の化学修飾により合成した。
【0363】
PEG5K-PLL80-NH(200mg)及びニコチン酸(88mg,PEG-PLLのNHに対して0.7当量)を、脱イオン水とメタノールの(1:1)混合物に別々に溶解した。EDC(205.2mg,PEG-PLLのNHに対して1当量)をニコチン酸溶液に加え、NHS(123.2mg,PEG-PLLのNHに対して1当量)を混合物に段階的に加えた。室温でポストインキュベーションの30分後、反応混合物をN3-PEG-PLL(NH)溶液に加えた。
【0364】
反応混合物を撹拌しながら37℃で16時間維持した。次に、3,3’-ジチオジプロピオン酸(65.6mg、PEG-PLLのNHに対して0.17当量)、EDC(41.8mg、PEG-PLLのNHに対して0.25当量)、及びNHS(25.1mg、PEG-PLLのNHに対して0.25当量)をMeOHに溶解し、反応混合物に直接加えた。混合物を37℃で4時間攪拌した後、反応物をMeOHに対して2時間透析し(MWCO=7,000~8,000)、1,4-ジチオトリトール(DTT、20.6mg、PEG-PLLのNHに対して0.14当量)を膜に直接加えて、ポリマー側鎖のジスルフィド結合を切断した。膜を30分間インキュベートし、50%MeOHに対して2時間透析し、脱イオン水に対して24時間透析した。溶液をシリンジフィルター(0.45μm)で濾過し、2日間凍結乾燥した。PEG5K-PLL80(Nic/SH35)の模式図を図2Bに示す。
【0365】
(メトキシまたは)アジドポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(L-リシン/ニコチンアミド/メルカプトプロパンアミド)(PEG5K-PLL80(Nic19/SH23)(化合物C)の合成:ミセルの安定性を高めるために、ニコチンアミド及びチオール化末端基を疎水性部分としてポリマー主鎖に導入した。最初に、(メトキシまたは)アジド-ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(L-リシン/ニコチンアミド/メルカプトプロパンアミド)((MeO-または)N-PEG5K-PLL80(Nic19/SH23))を、EDC/NHSの存在下、PEG5K-PLL80-NH及びニコチン酸の化学修飾により合成した。PEG5K-PLL80-NH(200mg)及びニコチン酸(88mg,PEG-PLLのNHに対して0.7当量)を、脱イオン水とメタノールの(1:1)混合物に別々に溶解した。EDC(205.2mg,PEG-PLLのNHに対して1当量)をニコチン酸溶液に加え、NHS(123.2mg,PEG-PLLのNHに対して1当量)を混合物に段階的に加えた。室温でポストインキュベーションの30分後、反応混合物をN3-PEG-PLL(NH)溶液に加えた。
【0366】
反応混合物を撹拌しながら37℃で16時間維持した。次に、3,3’-ジチオジプロピオン酸(18.8mg、PEG-PLLのNHに対して0.17当量)、EDC(41.8mg、PEG-PLLのNHに対して0.25当量)、及びNHS(25.1mg、PEG-PLLのNHに対して0.25当量)をMeOHに溶解し、反応混合物に直接加えた。混合物を37℃で4時間攪拌した後、反応物をMeOHに対して2時間透析し(MWCO=7,000~8,000)、1,4-ジチオトリトール(DTT、20.5mg、PEG-PLLのNHに対して0.14当量)を膜に直接加えて、ポリマー側鎖のジスルフィド結合を切断した。膜を30分間インキュベートし、50%MeOHに対して2時間透析し、脱イオン水に対して24時間透析した。溶液をシリンジフィルター(0.45μm)で濾過し、2日間凍結乾燥した。PEG5K-PLL80(Nic19/SH23)の模式図を図2Cに示す。
【0367】
(メトキシまたは)アジドポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(L-リシン/ニコチンアミド/メルカプトプロパンアミド)(PEG5K-PLL80(Nic32/SH16)(化合物D)の合成:ミセルの安定性を高めるために、ニコチンアミド及びチオール化末端基を疎水性部分としてポリマー主鎖に導入した。最初に、(メトキシまたは)アジド-ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(L-リシン/ニコチンアミド/メルカプトプロパンアミド)((MeO-または)N3-PEG5K-PLL80(Nic32/SH16))を、EDC/NHSの存在下、PEG5K-PLL80-NH及びニコチン酸の化学修飾により合成した。PEG5K-PLL80-NH(200mg)及びニコチン酸(131mg,PEG-PLLのNHに対して1.0当量)を、脱イオン水とメタノールの(1:1)混合物に別々に溶解した。EDC(307.8mg,PEG-PLLのNHに対して1当量)をニコチン酸溶液に加え、NHS(184.8mg,PEG-PLLのNHに対して1当量)を混合物に段階的に加えた。室温でポストインキュベーションの30分後、反応混合物をN-PEG5K-PLL80(NH)溶液に加えた。
【0368】
反応混合物を撹拌しながら37℃で16時間維持した。次に、3,3’-ジチオジプロピオン酸(9.4mg、PEG-PLLのNHに対して0.17当量)、EDC(41.8mg、PEG-PLLのNHに対して0.25当量)、及びNHS(25.1mg、PEG-PLLのNHに対して0.25当量)をMeOHに溶解し、反応混合物に直接加えた。混合物を37℃で4時間攪拌した後、反応物をMeOHに対して2時間透析し(MWCO=7,000~8,000)、1,4-ジチオトリトール(DTT、10.3mg、PEG-PLLのNHに対して0.14当量)を膜に直接加えて、ポリマー側鎖のジスルフィド結合を切断した。膜を30分間インキュベートし、50%MeOHに対して2時間透析し、脱イオン水に対して24時間透析した。溶液をシリンジフィルター(0.45μm)で濾過し、2日間凍結乾燥した。PEG5K-PLL80(Nic32/SH16)の模式図を図2Dに示す。
【0369】
(メトキシまたは)アジドポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(L-リシン/ニコチンアミド)(PEG5K-PLL80(Nic17)(化合物E)の合成:ミセルの安定性を高めるために、ニコチンアミド及びチオール化末端基を疎水性部分としてポリマー主鎖に導入した。最初に、(メトキシまたは)アジド-ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(L-リシン/ニコチンアミド)((MeO-または)N-PEG5K-PLL80(Nic17))を、EDC/NHSの存在下、PEG5K-PLL80-NH及びニコチン酸の化学修飾により合成した。PEG5K-PLL80-NH 150mg)及びニコチン酸(79.1mg,PEG-PLLのNHに対して0.8当量)を、脱イオン水とメタノールの(1:1)混合物に別々に溶解した。EDC(184.9mg,PEG-PLLのNHに対して1.2当量)をニコチン酸溶液に加え、NHS(111.0mg,PEG-PLLのNHに対して1.2当量)を混合物に段階的に加えた。室温でポストインキュベーションの30分後、反応混合物をN-PEG-PLL(NH)溶液に加えた。
【0370】
反応混合物を撹拌しながら37℃で16時間維持した。粗生成物を脱イオン水に対して24時間透析した。溶液をシリンジフィルター(0.45μm)で濾過し、2日間凍結乾燥した。PEG5K-PLL80(Nic17)の模式図を図2Eに示す。
【0371】
フェニルアラニン-ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(L-リシン/ニコチンアミド/メルカプトプロパンアミド)(Phe-PEG-PLL(Nic/SH))の合成:血流中で脳内皮組織を標的化するため、LAT1標的化アミノ酸としてフェニルアラニンを、銅触媒の存在下でN3-PEG-PLL(Nic/ss)とアルキン修飾したチロシンとのクリック反応により導入した。
【0372】
要約すると、N-PEG-PLL(Nic/ss)(30mg,3.2μmol)及びアルキン修飾されたフェニルアラニン(1.31mg,6.4μmol)を脱イオン水に溶解した。次いで、CuSO4・H2O(0.172mg,0.69μmol)とアスコルビン酸(0.3mg,1.7μmol)を混合溶液に加えた。反応混合物を、16時間、撹拌しながら室温に維持した。反応後、混合物を透析膜(MWCO=7,000)に移し、脱イオン水に対して1日間透析した。最終生成物を凍結乾燥後に得た。
【0373】
実施例2
ポリイオン複合体(PIC)ミセルの調製
本開示のカチオン性キャリアユニットを実施例1に記載したように作製した後、ミセルを作製した。本実施例に記載されるミセルは、異なる長さのmRNAペイロードと組み合わされたカチオン性キャリアユニットからなるものである。
【0374】
(a)800ヌクレオチドのmRNAと化合物B:MeO-またはPhe-PEG5K-PLL80(Nic/SH35)とmRNAを混合することによりナノサイズのPICミセルを調製した。PEG5K-PLL80(Nic/SH35)を、200mMのDTT(10mMのHEPES緩衝液中)に1.26mg/mLで溶解した。次いで、RNアーゼ非含有水中のmRNA溶液(0.5μM)を、2:1(v/v)のmRNA対ポリマー比でポリマー溶液と混合した。ポリマーと、mRNAとの混合比は、ポリマー中のアミン(N)と、mRNA中のリン酸(P)とのミセル形成比を最適化することにより決定した。最適なN対P比は3.0であった。ポリマーとmRNAとの混合物を、マルチボルテックスにより3000rpmで3分間、激しく混合し、室温で30分間維持して、ミセルを安定化した。粒径分布及び散乱光強度(SLI)をZeta-sizerにより634nmの波長で測定した。使用に先立ち、得られたミセル(0.33μMのmRNA濃度)を4℃で保存した。
【0375】
(b)800ヌクレオチドのmRNAと化合物C:MeO-またはPhe-PEG5K-PLL80(Nic19/SH23)とmRNAを混合することによりナノサイズのPICミセルを調製した。PEG5K-PLL80(Nic19/SH23)を、200mMのDTT(10mMのHEPES緩衝液中)に1.32mg/mLで溶解した。次いで、RNアーゼ非含有水中のmRNA溶液(0.38μM)を、2:1(v/v)のmRNA対ポリマー比でポリマー溶液と混合した。ポリマーと、mRNAとの混合比は、ポリマー中のアミン(N)と、mRNA中のリン酸(P)とのミセル形成比を最適化することにより決定した。最適なN対P比は4.0であった。ポリマーとmRNAとの混合物を、マルチボルテックスにより3000rpmで3分間、激しく混合し、室温で30分間維持して、ミセルを安定化した。粒径分布及び散乱光強度(SLI)をZeta-sizerにより634nmの波長で測定した。使用に先立ち、得られたミセル(0.25μMのmRNA濃度)を4℃で保存した。
【0376】
(c)800ヌクレオチドのmRNAと化合物D:MeO-またはPhe-PEG5K-PLL80(Nic32/SH16)とmRNAを混合することによりナノサイズのPICミセルを調製した。PEG5K-PLL80(Nic32/SH16)を、200mMのDTT(10mMのHEPES緩衝液中)に1.59mg/mLで溶解した。次いで、RNアーゼ非含有水中のmRNA溶液(0.3μM)を、2:1(v/v)のmRNA対ポリマー比でポリマー溶液と混合した。ポリマーと、mRNAとの混合比は、ポリマー中のアミン(N)と、mRNA中のリン酸(P)とのミセル形成比を最適化することにより決定した。最適なN対P比は5.0であった。ポリマーとmRNAとの混合物を、マルチボルテックスにより3000rpmで3分間、激しく混合し、室温で30分間維持して、ミセルを安定化した。粒径分布及び散乱光強度(SLI)をZeta-sizerにより634nmの波長で測定した。使用に先立ち、得られたミセル(0.2μMのmRNA濃度)を4℃で保存した。
【0377】
(d)1,800ヌクレオチドのmRNAと化合物B:MeO-またはPhe-PEG5K-PLL80(Nic/SH35)とmRNAを混合することによりナノサイズのPICミセルを調製した。PEG5K-PLL80(Nic/SH35)を、200mMのDTT(10mMのHEPES緩衝液中)に2.73mg/mLで溶解した。次いで、RNアーゼ非含有水中のmRNA溶液(0.25μM)を、2:1(v/v)のmRNA対ポリマー比でポリマー溶液と混合した。ポリマーと、mRNAとの混合比は、ポリマー中のアミン(N)と、mRNA中のリン酸(P)とのミセル形成比を最適化することにより決定した。最適なN対P比は6.0であった。ポリマーとmRNAとの混合物を、マルチボルテックスにより3000rpmで3分間、激しく混合し、室温で30分間維持して、ミセルを安定化した。粒径分布及び散乱光強度(SLI)をZeta-sizerにより634nmの波長で測定した。使用に先立ち、得られたミセル(0.17μMのmRNA濃度)を4℃で保存した。
【0378】
(e)1,800ヌクレオチドのmRNAと化合物C:MeO-またはPhe-PEG5K-PLL80(Nic19/SH23)とmRNAを混合することによりナノサイズのPICミセルを調製した。PEG5K-PLL80(Nic19/SH23)を、200mMのDTT(10mMのHEPES緩衝液中)に2.85mg/mLで溶解した。次いで、RNアーゼ非含有水中のmRNA溶液(0.25μM)を、2:1(v/v)のmRNA対ポリマー比でポリマー溶液と混合した。ポリマーと、mRNAとの混合比は、ポリマー中のアミン(N)と、mRNA中のリン酸(P)とのミセル形成比を最適化することにより決定した。最適なN対P比は6.0であった。ポリマーとmRNAとの混合物を、マルチボルテックスにより3000rpmで3分間、激しく混合し、室温で30分間維持して、ミセルを安定化した。粒径分布及び散乱光強度(SLI)をZeta-sizerにより634nmの波長で測定した。使用に先立ち、得られたミセル(0.17μMのmRNA濃度)を4℃で保存した。
【0379】
(f)1,800ヌクレオチドのmRNAと化合物D:MeO-またはPhe-PEG5K-PLL80(Nic32/SH16)とmRNAを混合することによりナノサイズのPICミセルを調製した。PEG5K-PLL80(Nic32/SH16)を、200mMのDTT(10mMのHEPES緩衝液中)に3.44mg/mLで溶解した。次いで、RNアーゼ非含有水中のmRNA溶液(0.21μM)を、2:1(v/v)のmRNA対ポリマー比でポリマー溶液と混合した。ポリマーと、mRNAとの混合比は、ポリマー中のアミン(N)と、mRNA中のリン酸(P)とのミセル形成比を最適化することにより決定した。最適なN対P比は7.0であった。ポリマーとmRNAとの混合物を、マルチボルテックスにより3000rpmで3分間、激しく混合し、室温で30分間維持して、ミセルを安定化した。粒径分布及び散乱光強度(SLI)をZeta-sizerにより634nmの波長で測定した。使用に先立ち、得られたミセル(0.14μMのmRNA濃度)を4℃で保存した。
【0380】
(g)3,800ヌクレオチドのmRNAと化合物B:MeO-またはPhe-PEG5K-PLL80(Nic/SH35)とmRNAを混合することによりナノサイズのPICミセルを調製した。PEG5K-PLL80(Nic/SH35)を、200mMのDTT(10mMのHEPES緩衝液中)に6.03mg/mLで溶解した。次いで、RNアーゼ非含有水中のmRNA溶液(0.21μM)を、2:1(v/v)のmRNA対ポリマー比でポリマー溶液と混合した。ポリマーと、mRNAとの混合比は、ポリマー中のアミン(N)と、mRNA中のリン酸(P)とのミセル形成比を最適化することにより決定した。最適なN対P比は7.0であった。ポリマーとmRNAとの混合物を、マルチボルテックスにより3000rpmで3分間、激しく混合し、室温で30分間維持して、ミセルを安定化した。粒径分布及び散乱光強度(SLI)をZeta-sizerにより634nmの波長で測定した。使用に先立ち、得られたミセル(0.14μMのmRNA濃度)を4℃で保存した。
【0381】
(h)3,800ヌクレオチドのmRNAと化合物C:MeO-またはPhe-PEG5K-PLL80(Nic19/SH23)とmRNAを混合することによりナノサイズのPICミセルを調製した。PEG5K-PLL80(Nic19/SH23)を、200mMのDTT(10mMのHEPES緩衝液中)に6.3mg/mLで溶解した。次いで、RNアーゼ非含有水中のmRNA溶液(0.19μM)を、2:1(v/v)のmRNA対ポリマー比でポリマー溶液と混合した。ポリマーと、mRNAとの混合比は、ポリマー中のアミン(N)と、mRNA中のリン酸(P)とのミセル形成比を最適化することにより決定した。最適なN対P比は8.0であった。ポリマーとmRNAとの混合物を、マルチボルテックスにより3000rpmで3分間、激しく混合し、室温で30分間維持して、ミセルを安定化した。粒径分布及び散乱光強度(SLI)をZeta-sizerにより634nmの波長で測定した。使用に先立ち、得られたミセル(0.13μMのmRNA濃度)を4℃で保存した。
【0382】
(i)3,800ヌクレオチドのmRNAと化合物D:MeO-またはPhe-PEG5K-PLL80(Nic32/SH16)とmRNAを混合することによりナノサイズのPICミセルを調製した。PEG5K-PLL80(Nic32/SH16)を、200mMのDTT(10mMのHEPES緩衝液中)に7.59mg/mLで溶解した。次いで、RNアーゼ非含有水中のmRNA溶液(0.15μM)を、2:1(v/v)のmRNA対ポリマー比でポリマー溶液と混合した。ポリマーと、mRNAとの混合比は、ポリマー中のアミン(N)と、mRNA中のリン酸(P)とのミセル形成比を最適化することにより決定した。最適なN対P比は10.0であった。ポリマーとmRNAとの混合物を、マルチボルテックスにより3000rpmで3分間、激しく混合し、室温で30分間維持して、ミセルを安定化した。粒径分布及び散乱光強度(SLI)をZeta-sizerにより634nmの波長で測定した。使用に先立ち、得られたミセル(0.1μMのmRNA濃度)を4℃で保存した。
【0383】
実施例3
インビトロでのmRNA発現
細胞株と培養:ヒト胎児腎臓細胞株(HEK-293T)及びヒト肺がん細胞株(A549)を、10%FBS(Gibco 26140-079)及びペニシリンストレプトマイシン(Gibco 15140-122)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Welgene、LM001-05)及びRPMI1640(Welgene、LM011-01)培地で培養した。細胞を6ウェルプレートに1×10細胞/ウェルの密度で播種した。細胞を、2%FBS及び0.5%ペニシリン-ストレプトマイシンを含む培地中で24時間培養した。mRNAをロードしたミセルまたはポジティブコントロールとしてのリポフェクタミン2000/mRNA複合体を細胞にトランスフェクトした。
【0384】
細胞株のトランスフェクション:細胞を6ウェルプレートに1×10細胞/ウェルの密度で播種した。細胞を、2%FBS及び0.5%ペニシリン-ストレプトマイシンを含む培地中で24時間培養し、PBS、mRNAをロードしたミセル、またはリポフェクタミン2000/mRNA複合体(ポジティブコントロールとして)でトランスフェクトした。
【0385】
リポフェクタミン2000トランスフェクション試薬(Invitrogen、11668019)を、10μLのストック溶液を100μLのOpti-MEMで希釈することによって調製した。mRNA製剤の場合、リポフェクタミン2000を5μgのmRNAと混合した。混合物を静かにピペッティングし、室温で15分間インキュベートして、リポフェクタミン/mRNA複合体を形成した。
【0386】
mRNAミセルをOpti-MEMで希釈して、リポフェクタミン/mRNA複合体と同じ濃度となるようにmRNAの濃度を調整した。
【0387】
5ugのmRNA含有リポフェクタミン/mRNA複合体またはmRNAミセルをそれぞれ細胞に添加した。ポストインキュベーションの30分後、細胞を回収し、RNAを単離した。
【0388】
RNA抽出及びqRT-PCR:製造者のプロトコールに従ってTRIzol試薬(Thermofisher、15596018)を使用して細胞から全RNAを単離した。製造者のプロトコールに従って、TOPscript(商標)RT DryMIX(dN6 plus)(Enzynomics、RT210)を使用して、500ngのRNAをcDNAに逆転写した。得られたcDNAを鋳型として使用し、Bio-Rad CFX96サイクラー(Bio-Rad Laboratories,Inc.)で製造者のプロトコールに従ってTOPreal qPCR 2x PreMIX(低ROXのSYBR Green)(Enzynomics,RT500M)を使用してRT-qPCRを行った。HA mRNAの相対レベルを、hGAPDHに対して正規化した2-ΔΔCt法を使用して計算した。
【0389】
結果:ポストトランスフェクションの30分後、qRT-PCRではmRNAはほとんど検出されなかった。mRNAをロードしたミセルで処理したグループは、約1×10のmRNAレベルを示した。対照的に、リポフェクタミン2000/mRNA複合体で処理したグループでは、1×10~1×10の相対mRNAレベルが観察された。リポフェクタミン2000は、インビトロ実験に使用される市販のトランスフェクション試薬である。mRNAをロードしたミセルは、インビボ送達用に特別に設計されているにもかかわらず、インビトロで細胞に取り込まれた。図11を参照されたい。
【0390】
実施例4
インビボのLAT-1発現レベル
マウス組織におけるLAT-1分布:動物を麻酔し、筋肉(腓腹筋:GAS、大腿四頭筋:QF、大腿二頭筋:BF、前脛骨筋:TA)を採取した。ホモジナイズした組織を、RIPA溶解及びプロテアーゼ阻害剤を含む抽出バッファーを使用して溶解し、BCAタンパク質アッセイキットを使用してタンパク質濃度を測定した。
【0391】
等量の総タンパク質を10%ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離し、電気泳動によりポリ二フッ化ビニリデンメンブレンに転写した。メンブレンをLAT1(Santa Cruz、SC-374232)またはGAPDH(Santa Cruz、SC-32233)一次抗体とともに4℃で一晩インキュベートし、次にホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)と結合させた二次抗体とともに室温で1時間インキュベートした。
【0392】
結果:マウス筋肉中のLAT1分布レベルを評価するため、ウェスタンブロットアッセイを行った。ウェスタンブロット1回当たり50μgのタンパク質を使用した。評価の結果、GAS、QF、BF、TAのすべての部位でLAT1が発現していることが示された。BALB/cマウスとDBA/2Jマウスでは発現パターンに差が認められたが、有意な差ではなかった。これらの結果は、LAT1標的化ポリマービヒクルを使用して筋肉を標的化できることを示した。図12A~12Dを参照されたい。
【0393】
実施例5
インビボのmRNA発現
ホタルルシフェラーゼ(Luc)をコードする5μgのmRNAを、ポリマーキャリア、リポフェクタミン2000(Themo Fisher Scientific)、及びインビボ-jetRNA(Polyplus)と総量50μlに配合した。
【0394】
Luc mRNAを筋肉内投与(両側)によってBALB/cマウスに注射した。マウスに、VivoGloルシフェリン(Promega)を150mg/kgの用量で腹腔内注射した。生物発光イメージングを、IVISイメージングシステム(PerkinElmer)を使用して行った。
【0395】
結果:Luc-mRNAをリポフェクタミン2000(Lipo+Luc)またはインビボjetRNA(jetRNA+Luc、図示せず)に封入したもののルシフェラーゼシグナルが、注射約6時間後に観察され始めた。シグナルのレベルは初日までに減少し、2または3日後にはシグナルはほとんど残らなかった。図13A
【0396】
対照的に、mRNAをロードしたミセルで処理したグループの最大ルシフェラーゼシグナルは、他の送達試薬を使用して観察されたシグナルと比較して高くはなかったものの、経時的な応答は異なった。シグナル強度は、Luc-mRNAをリポフェクタミン2000(Lipo+Luc)またはインビボJetRNA(jetRNA+Luc、図示せず)に封入したもので6時間後に観察されたものと同様であったが、24時間後に増加し始めた。高い発現レベルが3~5日間観察され、シグナルの強度は徐々に減少した。発現は最長7日間維持された。図13Bを参照。
【0397】
これらの結果は、ポリマーミセルシステムを使用したmRNA送達が、他の送達試薬を使用した送達よりも安定であることを示している。このような持続的なmRNA発現は、ポリマーミセルなどの本開示のカチオン性キャリアを、mRNAを送達し、結合したmRNAを長期間にわたって放出するために効果的に使用することができ、したがって、本開示のカチオン性キャリアは例えばmRNAワクチンの送達に適していることを示すものである。
【0398】
***
特許請求の範囲を解釈するうえで、「発明の概要」及び「要約」のセクションではなく、「発明の詳細な説明」のセクションを用いることが意図されている点は認識されるべきである。発明の概要及び要約セクションは、本発明者(複数可)により意図される1つ以上であるが、すべてではない本開示の例示的態様を示し得、したがって、本開示及び添付の特許請求の範囲を如何様にも限定することを意図しない。
【0399】
本開示は、特定の機能及びそれらの関係の実施を示す機能的構成単位を用いて上記された。これらの機能的要素の境界は、説明の便宜上、本明細書では任意に定義されている。特定の機能及びそれらの関係性が適切に実施されている限り、代替的な境界を定義することもできる。
【0400】
具体的な実施形態の上記の具体的な説明は本開示の一般的な性質を余すところなく示しているため、他者は、当業者の技能の範囲内の知識を適用することで、不要な実験を行うことなく、本開示の一般的概念から逸脱せずに、かかる具体的な実施形態を容易に改変し、かつ/またはさまざまな用途に適合させることができる。したがって、そのような適合及び改変は、本明細書に示される教示及び助言に基づき、開示される実施形態の均等物の意味及び範囲内に包含されるものとする。本明細書における語句または用語は、説明を目的としたものであって、限定を目的とするものではなく、本明細書における語句または用語は本明細書の教示及び助言を考慮することで当業者によって理解されるはずである。
【0401】
本開示の幅及び範囲は、上記に記載した例示的な実施形態のいずれによっても限定されるべきでなく、下記の請求項及びそれらの均等物のみにしたがって定義されるべきものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
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【国際調査報告】