(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ロボットアームの接触感知及び接触反応のシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 34/35 20160101AFI20240118BHJP
【FI】
A61B34/35
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540046
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-07-18
(86)【国際出願番号】 IB2021061417
(87)【国際公開番号】W WO2022144640
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518083032
【氏名又は名称】オーリス ヘルス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ボ
(72)【発明者】
【氏名】ザファール・ムンジル
(72)【発明者】
【氏名】サベティアン・プーヤ
(72)【発明者】
【氏名】フアン・ヤナン
(72)【発明者】
【氏名】マオ・イン
【テーマコード(参考)】
4C130
【Fターム(参考)】
4C130AA02
4C130AA04
4C130AA24
4C130AB01
4C130AD23
4C130BA14
4C130CA16
(57)【要約】
ロボット医療システムは、接触感知及び接触反応が可能であり得る。ロボット医療システムは、ロボットアーム及び1つ又は2つ以上のセンサを含むことができる。ロボット医療システムは、1つ又は2つ以上のセンサを介して、外部物体によってロボットアームに及ぼされた接触力又はトルクを検出するように構成することができる。接触力又はトルクを検出したことに応答して、かつ、接触力又はトルクの大きさが下方接触力限界又は下方トルク限界と上方接触力限界又は上方トルク限界との間にあるという判定に従って、ロボット医療システムは、検出された接触力又はトルクに従ったロボットアーム上の制御された移動の第1のセットを有効化することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットシステムであって、
ロボットアームと、
1つ又は2つ以上のセンサと、
1つ又は2つ以上のプロセッサと、
命令を記憶するメモリと、を備え、前記命令が、前記1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
前記1つ又は2つ以上のセンサを介して、外部物体によって前記ロボットアームに及ぼされた接触力又はトルクを検出することと、
前記接触力又は前記トルクを検出したことに応答して、前記接触力又は前記トルクの大きさが下方接触力限界又は下方トルク限界と上方接触力限界又は上方トルク限界との間にあるという判定に従って、検出された前記接触力又は前記トルクに従った前記ロボットアーム上の制御された移動の第1のセットを有効化することと、
を行わせる、ロボットシステム。
【請求項2】
前記ロボットアーム上の制御された移動の第1のセットを有効化することが、前記ロボットアームのゼロ空間運動を起動することを含む、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記メモリが、命令を更に含み、前記命令が、前記1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
前記接触力又は前記トルクを検出したことに応答して、前記接触力又は前記トルクが前記上方接触力限界又は前記上方トルク限界を超えているという判定に従って、前記ロボットシステムの一部の移動を無効化させる、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記メモリが、命令を更に含み、前記命令は、前記1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
前記接触力又は前記トルクを検出したことに応答して、前記接触力又は前記トルクが下方接触力又は下方トルク未満であるという判定に従って、検出された前記接触力又は前記トルクに従った前記ロボットアーム上の制御された移動の前記第1のセットの有効化を取り止めさせる、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記1つ又は2つ以上のセンサが、1つ又は2つ以上の接触センサを含み、
前記接触力又は前記トルクが、前記1つ又は2つ以上の接触センサを使用して検出される、
請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記1つ又は2つ以上の接触センサが、前記ロボットアームのリンク上に位置している、請求項5に記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記ロボットアームの前記リンクが、遠位リンク又は近位リンクである、請求項6に記載のロボットシステム。
【請求項8】
前記1つ又は2つ以上のセンサが、多軸ロードセルを含み、
前記接触力又は前記トルクが、前記多軸ロードセルを使用して検出される、
請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項9】
前記多軸ロードセルが、前記ロボットアームの遠位部分に位置する6軸ロードセルを備える、請求項8に記載のロボットシステム。
【請求項10】
前記メモリが、命令を更に含み、前記命令が、前記1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
前記ロボットアームの第1の速度を含む第1のユーザコマンドを受信することと、
前記接触力の前記大きさが下方接触力限界と上方接触力限界との間にあるという前記判定に従って、
a)前記接触力の方向を判定することと、
b)前記トルクの方向を判定することと、
c)前記ロボットアームの並進速度及び前記接触力の前記方向によって形成される第1の角度を判定することと、
d)前記ロボットアームの回転速度及び前記トルクの前記方向によって形成される第2の角度を判定することと、
前記第1の角度が第1の角度閾値内にあり、前記第2の角度が第2の角度閾値内にあるという判定に従って、前記第1の速度での前記ロボットアームの1つ又は2つ以上の関節の移動を有効化することと、
(i)前記第1の角度が前記第1の角度閾値を超えているという判定又は(ii)前記第2の角度が前記第2の角度閾値を超えているという判定のうちの少なくとも1つに従って、前記ロボットアームの移動を無効化することと、を行わせる、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項11】
前記第1の角度閾値及び前記第2の角度閾値が、前記接触力を検出するために使用される1つ又は2つ以上の接触センサの測定不確実性に従って判定される、請求項10に記載のロボットシステム。
【請求項12】
前記メモリが、命令を更に含み、前記命令が、前記1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
前記ロボットアームの要求速度を含む第2のユーザコマンドを受信することと、
前記トルクの前記大きさが前記下方トルク限界と前記上方トルク限界との間にあるという前記判定に従って、
前記トルクの方向を判定することと、
前記トルクの前記方向及び前記ロボットアームの前記要求速度によって形成される第3の角度を判定することと、
前記第3の角度が第3の角度閾値内であるという判定に従って、前記要求速度での前記ロボットアームの移動を有効化することと、
前記第3の角度が前記第3の角度閾値を超えているという判定に従って、前記ロボットアームの移動を無効化することと、を行わせる、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項13】
前記トルクの前記大きさが、前記ロボットアームの遠隔運動中心に対して判定される、請求項12に記載のロボットシステム。
【請求項14】
前記第3の角度閾値が、前記トルクを検出するために使用される6軸ロードセルの測定不確実性に従って判定される、請求項12に記載のロボットシステム。
【請求項15】
ロボットシステムであって、
ロボットアームと、
1つ又は2つ以上のセンサと、
1つ又は2つ以上のプロセッサと、
命令を記憶するメモリと、を備え、前記命令が、前記1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
前記1つ又は2つ以上のセンサを介して、外部物体によって前記ロボットアームに及ぼされた接触力又はトルクを検出することと、
前記接触力又は前記トルクを検出したことに応答して、前記接触力又は前記トルクが下方力限界又は下方トルク限界と上方接触力限界又は上方トルク限界との間にあるという判定に従って、前記ロボットアームの予め確立された経路又は予め記録された経路に基づく軌道における前記ロボットアームの移動を有効化することと、
を行わせる、ロボットシステム。
【請求項16】
前記1つ又は2つ以上のセンサが、1つ又は2つ以上の接触センサを含む、請求項15に記載のロボットシステム。
【請求項17】
前記1つ又は2つ以上のセンサが、6軸ロードセルを含む、請求項15に記載のロボットシステム。
【請求項18】
前記ロボットアームの前記予め確立された経路又は前記予め記録された経路が、前記ロボットアームのリンク重心の予め記録された経路を含む、請求項15に記載のロボットシステム。
【請求項19】
前記メモリが、命令を更に含み、前記命令が、前記1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
前記リンク重心の前記予め記録された経路から、構成可能な期間にわたる前記予め記録された経路に沿った並進運動方向及び回転運動方向を判定させる、請求項18に記載のロボットシステム。
【請求項20】
前記ロボットアームの前記予め確立された経路又は前記予め記録された経路が、前記ロボットアームの遠隔中心運動のピッチ角及び/又はヨー角の予め確立された経路又は予め記録された経路を含む、請求項15に記載のロボットシステム。
【請求項21】
前記メモリが、命令を更に含み、前記命令が、前記1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
前記ロボットアームの前記予め確立された経路又は前記予め記録された経路から、構成可能な期間にわたる前記予め記録された経路に沿った平均運動方向を判定させる、請求項20に記載のロボットシステム。
【請求項22】
ロボットシステムであって、
ロボットアームと、
1つ又は2つ以上のセンサと、
1つ又は2つ以上のプロセッサと、
命令を記憶するメモリと、を備え、前記命令が、前記1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
前記1つ又は2つ以上のセンサを介して、外部物体によって及ぼされた前記ロボットアームに対する接触力又はトルクを検出することと、
前記接触力又は前記トルクが下方反応力限界又は下方トルク限界以上であるという判定に従って、前記ロボットアームの速度を低減することと、
を行わせる、ロボットシステム。
【請求項23】
前記ロボットアームが、1つ又は2つ以上の関節を含み、
前記ロボットアームの前記速度を低減することが、前記ロボットアームの前記1つ又は2つ以上の関節の各々のそれぞれの速度を低減することを含む、
請求項22に記載のロボットシステム。
【請求項24】
前記1つ又は2つ以上の関節の各々の前記それぞれの速度を低減することが、全ての前記関節の速度を同じスケールだけ低減することを含む、請求項23に記載のロボットシステム。
【請求項25】
前記ロボットアームの前記速度を低減することが、前記ロボットアームの遠隔中心運動における角速度を低減することを含む、請求項22に記載のロボットシステム。
【請求項26】
前記1つ又は2つ以上のセンサが、1つ又は2つ以上の接触センサを含む、請求項22に記載のロボットシステム。
【請求項27】
前記1つ又は2つ以上のセンサが、6軸ロードセルを含む、請求項22に記載のロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示されるシステム及び方法は、ロボット医療システム、より具体的には、ロボット医療システムのロボット式に制御されるアームを対象とする。
【背景技術】
【0002】
ロボット対応の医療システムは、腹腔鏡などの低侵襲性の処置、及び内視鏡などの非侵襲性の両方の処置を含む、様々な医療処置を実施することができる。内視鏡処置のうち、システムは、気管支鏡検査、尿管鏡検査、胃鏡検査などを実施することができる。
【0003】
そのようなロボット医療システムは、所与の医療処置中に医療ツールの移動を制御するように構成されたロボットアームを含むことができる。医療ツールの所望の姿勢を達成するために、ロボットアームは、セットアッププロセス中又はテレオペレーション中に、ある姿勢に置かれ得る。いくつかのロボット対応の医療システムは、ロボットアームのそれぞれの基台に接続され、ロボットアームを支持するアーム支持体(例えば、バー)を含んでもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
ロボット手術中、ロボットアームは、例えば、ロボットアームのテレオペレーション下での移動に起因して、手術室内の患者、医療従事者、又はアクセサリなどの隣接する物体と接触し、患者又は医療従事者に対して過剰な接触力及び/又はトルクを生じる場合がある。過剰な接触力又はトルクは、手術中に患者又は医療従事者に怪我及び不快感を引き起こす場合がある。いくつかの状況では、そのような接触力及び/又はトルクに応答して、ロボットアームの1つ又は2つ以上の関節及び/又はリンクは、(例えば、カニューレの位置及び/又は配向の)姿勢を維持するために、ゼロ空間運動を実行してもよい。いくつかの状況では、オペレータは、ロボットアームを邪魔にならないところに移動させる前に、患者を移動させる、又は入力制御装置に手を伸ばす必要がある場合がある。しかしながら、これらの行為は、手術室内の患者又は他の物体との望ましくない衝突及び接触の追加の危険性をもたらす場合がある。
【0005】
したがって、改良されたロボット医療システムが望ましい。特に、ロボットアームに対する(例えば、ロボットアームのリンケージ、関節などに対する)相互作用(例えば、力及び/又はトルク)を検出して、検出された力及び/又はトルクの特性(例えば、大きさ、方向、変化率など)に応じて、ロボットアームのゼロ空間運動を有効化する、ロボットアームの1つ又は2つ以上の関節及び/又はリンクを好適な速度でかつ/又は検出された力及び/又はトルクの特性(例えば、大きさ、方向、変化率など)に従って選択される方向に移動させる、あるいはテレオペレーションを無効化する、などのある特定の適切な行為を行うロボット医療システムが必要とされている。これは、有利なことに、手術中の患者及び/又はオペレータの安全性を向上させる。また、外科医が手術中にロボットアームのうちの1つ又は2つ以上を駆動している間の中断を確実に低減する。
【0006】
加えて、本明細書に開示されるように、センサが、ロボットアームに対する力及び/又はトルクを検出し、検出された接触力又はトルクに従って、ロボットアーム上の制御された移動を有効化するために、ロボットアームの複数の領域全体に分散されている。したがって、テレオペレーション中にロボットアームの姿勢を手動で調節すること、患者を移動させること、及び/又はロボットアーム自体の再位置決めなどのために、医療従事者にかかる操作上の負担が低減される。
【0007】
本開示の別の態様では、ロボットアームは、器具を所望の姿勢まで送達し、遠隔運動中心(remote center of motion、RCM)を保持しながら、いくつかの異なる目的のために使用することができる、少なくとも1自由度の冗長性を含んでもよい。これらの目的は、運動学的衝突回避、関節制限回避、過剰接触回避、手動によるアームの再位置決めのためのアドミタンスゼロ空間運動、及びロボット関節を好ましい場所に位置決めすることを含み得る。いくつかの状況では、これらの目的の各々は、ロボットアームのそれぞれのゼロ空間運動を要求する。ロボットアームは、ゼロ空間運動のために利用可能な自由度が制限されているので、これらの目的は、時々互いに競合することがある。したがって、動作の様々な状態下のロボットアームに対してこれらの目的を同時に最適化し、バランスのとれた最適な方式でゼロ空間運動を制御する必要がある。
【0008】
本明細書に開示されるように、ロボット医療システムは、各々がロボットアームのそれぞれのゼロ空間運動を要求し得るロボットシステムに対する複数のタスクを特定することによって、様々な目的に関連したゼロ空間運動要求を管理することができる。ロボットシステムは、統合スキーム(例えば、排他性、切り替え又は重み付けなどのようないくつかの利用可能なスキームのうちの選択された1つ)に従ってタスクに優先順位を付け、統合スキームに従ってロボットアームのゼロ空間速度を判定することができる。いくつかの実施形態では、医療用ロボットシステムは、現在の状況下での各ゼロ空間運動要求の「深刻度」又は必須度(imperativeness)の判定する(例えば、好適な重み及び定量的尺度を有する「コスト関数」を生成する)ことができ、かつ、現在の状況下でのゼロ空間運動要求の集約された「深刻度」を低減する(例えば、コスト関数を最適化する)ことによって、ロボットアームの好適なゼロ空間関節速度を判定することができる。ロボット医療システムは、次いで、その状況下での競合する優先度(例えば、異なるタスクの、安全性、電力消費、効率、目標及び制約など)間の好適なバランスに対応する統合スキームを使用して判定されたゼロ空間関節速度に基づいて、ロボットアームのゼロ空間運動を実行する。
【0009】
本開示のシステム、方法及びデバイスはそれぞれ、いくつかの革新的な態様を有し、そのうちの1つとして本明細書に開示される望ましい属性を単独で司るものではない。
【0010】
本開示のいくつかの実施形態によれば、ロボットシステムは、ロボットアームを含む。ロボットシステムはまた、1つ又は2つ以上のセンサを含む。ロボットシステムは、1つ又は2つ以上のプロセッサ及びメモリを更に含む。メモリは、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ又は2つ以上のプロセッサに、1つ又は2つ以上のセンサを介して、外部物体によってロボットアームに及ぼされた接触力又はトルクを検出させる命令を記憶している。接触力又はトルクを検出したことに応答して、接触力又はトルクの大きさが下方接触力限界又は下方トルク限界と上方接触力限界又は上方トルク限界との間にあるという判定に従って、1つ又は2つ以上のプロセッサは、検出された接触力又はトルクに従って、ロボットアーム上の制御された移動の第1のセットを有効化することができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、ロボットアーム上の制御された移動の第1のセットを有効化することは、ロボットアームのゼロ空間運動を起動することを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、メモリは、命令を更に含み、命令は、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ又は2つ以上のプロセッサに、接触力又はトルクを検出したことに応答して、接触力又はトルクが上方接触力限界又は上方トルク限界を超えているという判定に従って、ロボットシステムの一部の移動を無効化させる。
【0013】
いくつかの実施形態では、メモリは、命令を更に含み、命令は、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ又は2つ以上のプロセッサに、接触力又はトルクを検出したことに応答して、接触力又はトルクが下方接触力又は下方トルク未満であるという判定に従って、検出された接触力又はトルクに従ったロボットアーム上の制御された移動の第1のセットの有効化を取り止めさせる。
【0014】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上のセンサは、1つ又は2つ以上の接触センサを含む。接触力又はトルクは、1つ又は2つ以上の接触センサを使用して検出される。
【0015】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の接触センサは、ロボットアームのリンク上に位置している。
【0016】
いくつかの実施形態では、ロボットアームのリンクは、遠位リンク又は近位リンクである。
【0017】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上のセンサは、多軸ロードセルを含む。接触力又はトルクは、多軸ロードセルを使用して検出される。
【0018】
いくつかの実施形態では、多軸ロードセルは、ロボットアームの遠位部分に位置する6軸ロードセルを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、メモリは、命令を更に含み、命令は、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ又は2つ以上のプロセッサに、ロボットアームの第1の速度を含む第1のユーザコマンドを受信させる。接触力の大きさが下方接触力限界と上方接触力限界との間にあるという判定に従って、1つ又は2つ以上のプロセッサは、a)接触力の方向を判定し、b)トルクの方向を判定し、c)ロボットアームの並進速度及び接触力の方向によって形成される第1の角度を判定し、d)ロボットアームの回転速度及びトルクの方向によって形成される第2の角度を判定する。第1の角度が第1の角度閾値内にあり、第2の角度が第2の角度閾値内にあるという判定に従って、1つ又は2つ以上のプロセッサは、第1の速度でのロボットアームの1つ又は2つ以上の関節の移動を有効化する。(i)第1の角度が第1の角度閾値を超えているという判定又は(ii)第2の角度が第2の角度閾値を超えているという判定のうちの少なくとも1つに従って、1つ又は2つ以上のプロセッサは、ロボットアームの移動を無効化する。
【0020】
いくつかの実施形態では、第1の角度閾値及び第2の角度閾値は、接触力を検出するために使用される1つ又は2つ以上の接触センサの測定不確実性に従って判定される。
【0021】
いくつかの実施形態では、メモリは、命令を更に含み、命令は、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ又は2つ以上のプロセッサに、ロボットアームの要求速度(例えば、線形速度又は角速度)を含む第2のユーザコマンドを受信させる。トルクの大きさが下方トルク限界と上方トルク限界との間にあるという判定に従って、1つ又は2つ以上のプロセッサは、トルクの方向を判定する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上のプロセッサは、トルクの方向及びロボットアームの要求速度(例えば、線形速度又は角速度)によって形成される第3の角度を判定することができる。第3の角度が第3の角度閾値内であるという判定に従って、1つ又は2つ以上のプロセッサは、要求速度でのロボットアームの移動を有効化する。第3の角度が第3の角度閾値を超えているという判定に従って、1つ又は2つ以上のプロセッサは、ロボットアームの移動を無効化する。
【0022】
いくつかの実施形態では、トルクの大きさは、ロボットアームの遠隔運動中心に対して判定される。
【0023】
いくつかの実施形態では、第3の角度閾値は、トルクを検出するために使用される6軸ロードセルの測定不確実性に従って判定される。
【0024】
本開示のいくつかの実施形態によれば、ロボットシステムは、ロボットアームを含む。ロボットシステムはまた、1つ又は2つ以上のセンサを含む。ロボットシステムは、1つ又は2つ以上のプロセッサ及びメモリを更に含む。メモリは、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ又は2つ以上のプロセッサに、1つ又は2つ以上のセンサを介して、外部物体によってロボットアームに及ぼされた接触力又はトルクを検出させる命令を記憶している。接触力又はトルクを検出したことに応答して、かつ、接触力又はトルクが下方力限界又は下方トルク限界と上方接触力限界又は上方トルク限界との間にあるという判定に従って、1つ又は2つ以上のプロセッサは、ロボットアームの予め確立された経路又は予め記録された経路に基づく軌道におけるロボットアームの移動を有効化する。
【0025】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上のセンサは、1つ又は2つ以上の接触センサを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上のセンサは、6軸ロードセルを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、ロボットアームの予め確立された経路又は予め記録された経路は、ロボットアームのリンク重心の予め記録された経路を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、メモリは、命令を更に含み、命令は、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ又は2つ以上のプロセッサに、リンク重心の予め記録された経路から、構成可能な期間にわたる予め記録された経路に沿った並進運動方向及び回転運動方向を判定させる。
【0029】
いくつかの実施形態では、ロボットアームの予め確立された経路又は予め記録された経路は、ロボットアームの遠隔中心運動のピッチ角及び/又はヨー角の予め確立された経路又は予め記録された経路を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、メモリは、命令を更に含み、命令は、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ又は2つ以上のプロセッサに、ロボットアームの予め確立された経路又は予め記録された経路から、構成可能な期間にわたる予め記録された経路に沿った平均運動方向を判定させる。
【0031】
本開示のいくつかの実施形態によれば、ロボットシステムは、ロボットアームを含む。ロボットシステムは、1つ又は2つ以上のセンサを含む。ロボットシステムはまた、1つ又は2つ以上のプロセッサ及びメモリを含む。メモリは、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ又は2つ以上のプロセッサに、1つ又は2つ以上のセンサを介して、外部物体によって及ぼされたロボットアームに対する接触力又はトルクを検出させる命令を記憶している。接触力又はトルクが下方反応力限界又は下方トルク限界以上であるという判定に従って、1つ又は2つ以上のプロセッサは、ロボットアームの速度を低減する。
【0032】
いくつかの実施形態では、ロボットアームは、1つ又は2つ以上の関節を含む。ロボットアームの速度を低減することは、ロボットアームの1つ又は2つ以上の関節の各々のそれぞれの速度を低減することを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の関節の各々のそれぞれの速度を低減することは、全ての関節の速度を同じスケールだけ低減することを含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、ロボットアームの速度を低減することは、ロボットアームの遠隔中心運動における角速度を低減することを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上のセンサは、1つ又は2つ以上の接触センサを含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上のセンサは、6軸ロードセルを含む。
【0037】
本開示のいくつかの実施形態によれば、ロボットシステムは、ユーザコンソールを含む。ロボットシステムはまた、ロボットアームを含む。ロボットシステムはまた、ロボットアームに結合された調節可能なバーを含む。ロボットシステムは、1つ又は2つ以上のプロセッサ及びメモリを更に含む。メモリは、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ又は2つ以上のプロセッサに、ロボットシステムによる実行のための複数のタスクのうちの2つ又はそれ以上のタスクからの入力に基づいて、ロボットアーム及び/又は調節可能なバーのゼロ空間運動を制御させる命令を記憶している。複数のタスクは、ロボットアームの接触検出及び反応を含む第1のタスク、調節可能なバーの最適化を含む第2のタスク、運動学を介した衝突及び/又は関節限界の処理を含む第3のタスク、ロボットアームのゼロ空間及び/又はバーの姿勢ジョギングを含む第4のタスク、並びに好ましい関節位置に向かう運動を含む第5のタスクを含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、ロボットアーム上に位置決めされている1つ又は2つ以上の力センサを更に含む。第1のタスクは、1つ又は2つ以上の力センサを使用して、ロボットアーム上で接触を検出することを更に含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の力センサは、ロボットアームのリンク上に位置決めされている接触センサを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の力センサは、ロボットアームの関節又は遠位端上に位置決めされている接触センサを含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、ロボットアームの関節上に位置決めされている1つ又は2つ以上の力センサを更に含む。第2のタスクは、1つ又は2つ以上のセンサ上で感知された力を使用して、ロボットアームに対する調節可能なバーの姿勢を調節することを含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、ロボットアームの関節上に位置決めされた1つ又は2つ以上のエンコーダを更に含む。第3のタスクは、1つ又は2つ以上のエンコーダを使用して、衝突を検出し、運動学的制御を介して衝突を緩和することを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、メモリは、命令を更に含み、命令は、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ又は2つ以上のプロセッサに、複数のタスクにおけるタスク間の予め設定された相互排他性に基づいて、複数のタスクのうちの1つ又は2つ以上のタスクに優先順位を付けさせる。
【0044】
いくつかの実施形態では、メモリは、命令を更に含み、命令は、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ又は2つ以上のプロセッサに、複数のタスクの各々にそれぞれの重みを割り当てさせる。いくつかの実施形態では、メモリは、命令も含み、命令は、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ又は2つ以上のプロセッサに、複数のタスクのそれぞれの重みの相対的な大きさに基づいて、複数のタスクのうちの1つ又は2つ以上のタスクに優先順位を付けさせる。
【0045】
いくつかの実施形態では、メモリは、命令を更に含み、命令は、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ又は2つ以上のプロセッサに、ロボットシステムの現在の状態に基づいて、複数のタスクのうちの1つ又は2つ以上のタスクの個別のセット間で切り替えさせる。
【0046】
いくつかの実施形態では、ロボットアームは、少なくとも1自由度の冗長性を有する。
【0047】
いくつかの実施形態では、ロボットアームのゼロ空間運動を制御することは、最適なゼロ空間関節速度で、ロボットアームの1つ又は2つ以上の関節を所望の姿勢まで移動させることを含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、メモリは、命令を更に含み、命令は、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ又は2つ以上のプロセッサに、ロボットアームのエンドエフェクタがコマンドに従うことを可能している間に、ロボットアームのゼロ空間運動を実行させる。
【0049】
本開示の別の態様によれば、ロボットシステムにおいて方法が実施される。ロボットシステムは、ロボットアームと、ロボットアームに結合された調節可能なバーと、1つ又は2つ以上のプロセッサと、メモリとを含む。メモリは、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されるように構成された1つ又は2つ以上のプログラムを記憶している。方法は、ロボットシステムの第1の複数のタスクを特定することを含む。第1の複数のタスクの各タスクは、対応するゼロ空間関節速度を有するロボットアームのそれぞれのゼロ空間運動を要求する。第1の複数のタスクは、運動学的衝突回避を含む第1のタスク、関節制限回避を含む第2のタスク、接触回避及びアドミタンスゼロ空間運動を含む第3のタスク、並びに好ましい関節位置に向かう運動を含む第4のタスクのうちの2つ又はそれ以上を含む。方法は、調節可能なバー及び/又はロボットアームのゼロ空間並びに/あるいはバーの姿勢ジョギングの最適化に対応する第1のコストと、第1の複数のタスクの各タスクに対応する複数の第2のコストとを含むコスト関数を低減することによって判定されるロボットアームの第1のゼロ空間関節速度に基づいて、ロボットアームのゼロ空間運動を実行することを含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、方法は、連続ステップサイズ低減を伴う勾配降下アルゴリズムを使用してコスト関数を低減することを含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、方法は、第1のゼロ空間関節速度で、ロボットアームの1つ又は2つ以上の関節を所望の姿勢まで移動させることを含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、ロボットアームのゼロ空間運動の実行は、ロボットアームのエンドエフェクタがコマンドに従うことを可能にしている間に行われる。
【0053】
いくつかの実施形態では、方法は、第1のコストに第1の重みを割り当てることと、複数の第2のコストの各々にそれぞれの第2の重みを割り当てることと、を更に含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、第2のコストのうちの少なくとも1つのそれぞれの第2の重みはゼロである。
【0055】
いくつかの実施形態では、複数の第2のコストの各々へのそれぞれの第2の重みの割り当ては、ロボットシステムの動作状態に従って実施される。
【0056】
いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、ロボットアームと、ロボットアームに結合された調節可能なバーと、1つ又は2つ以上のプロセッサと、メモリとを含む。メモリは、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ又は2つ以上のプロセッサに、本明細書に記載の方法のいずれかを実施させる、1つ又は2つ以上のプログラムを記憶している。
【0057】
上述の様々な実施形態は、本明細書で説明される任意の他の実施形態と組み合わせることができることに留意されたい。本明細書に記載された特徴及び利点は、全てを含むものではなく、特に、多くの追加の特徴及び利点が、図面、明細書、及び特許請求の範囲を考慮すれば当業者には明らかであろう。更に、本明細書で使用される言語は、主に読みやすさ及び教示目的のために選択されており、本発明の主題を線引き又は制限するために選択されていない場合があることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
開示される態様は、以下、添付の図面と併せて説明され、開示された態様を示すが、限定するものではなく、同様の称号は同様の要素を示す。
【
図1】診断及び/又は治療用気管支鏡検査処置用に配置されたカートベースのロボットシステムの一実施形態を示す。
【
図2】
図1のロボットシステムの更なる態様を描写する。
【
図3】尿管鏡検査用に配置された
図1のロボットシステムの一実施形態を示す。
【
図4】血管処置用に配置された
図1のロボットシステムの一実施形態を示す。
【
図5】気管支鏡検査処置用に配置されたテーブルベースのロボットシステムの一実施形態を示す。
【
図6】
図5のロボットシステムの代替の図を提供する。
【
図7】ロボットアームを収容するように構成されたシステム例を示す。
【
図8】尿管鏡検査処置用に構成されたテーブルベースのロボットシステムの一実施形態を示す。
【
図9】腹腔鏡処置用に構成されたテーブルベースのロボットシステムの一実施形態を示す。
【
図10】ピッチ又は傾動調節を有する
図5~
図9のテーブルベースのロボットシステムの一実施形態を示す。
【
図11】
図5~
図10のテーブルベースのロボットシステムのテーブルとカラムとの間のインターフェースの詳細な図示を提供する。
【
図12】テーブルベースのロボットシステムの代替の実施形態を示す。
【
図13】
図12のテーブルベースのロボットシステムの端面図を示す。
【
図14】ロボットアームが取り付けられた状態のテーブルベースのロボットシステムの端面図を示す。
【
図16】ペアの器具ドライバを有する例示的な医療器具を示す。
【
図17】駆動ユニットの軸が器具の細長シャフトの軸に平行である、器具ドライバ及び器具の代替の設計を示す。
【
図18】器具ベースの挿入アーキテクチャを有する器具を示す。
【
図20】例示的な実施形態による、
図16~
図18の器具の場所など、
図1~
図10のロボットシステムの1つ又は2つ以上の要素の場所を推定する位置特定システムを示すブロック図を示す。
【
図21】いくつかの実施形態による、例示的なロボットシステムを示す。
【
図22】いくつかの実施形態による、例示的なロボットシステムの別の図を示す。
【
図23A】いくつかの実施形態による、例示的なロボットアームの異なる図を示す。
【
図23B】いくつかの実施形態による、例示的なロボットアームの異なる図を示す。
【
図24A】いくつかの実施形態による、ロボットアーム210のセンサを示す。
【
図24B】いくつかの実施形態による、ロボットアーム210のセンサを示す。
【
図24C】いくつかの実施形態による、ロボットアーム210のセンサを示す。
【
図24D】いくつかの実施形態による、ロボットアーム210のセンサを示す。
【
図24E】いくつかの実施形態による、ロボットアーム210のセンサを示す。
【
図24F】いくつかの実施形態による、ロボットアーム210のセンサを示す。
【
図24G】いくつかの実施形態による、ロボットアーム210のセンサを示す。
【
図24H】いくつかの実施形態による、ロボットアーム210のセンサを示す。
【
図25A】いくつかの実施形態による、接触力及び/又はトルクを検出し、それに応答するための方法のフローチャート図を示す。
【
図25B】いくつかの実施形態による、接触力及び/又はトルクを検出し、それに応答するための方法のフローチャート図を示す。
【
図25C】いくつかの実施形態による、接触力及び/又はトルクを検出し、それに応答するための方法のフローチャート図を示す。
【
図26】空間内のロボットアームの許容される移動を示す。
【
図27A】いくつかの実施形態による、接触力及び/又はトルクを検出し、それに応答するための別の方法のフローチャート図を示す。
【
図27B】いくつかの実施形態による、接触力及び/又はトルクを検出し、それに応答するための別の方法のフローチャート図を示す。
【
図28】いくつかの実施形態による、接触力及び/又はトルクを検出し、それに応答するための別の方法のフローチャート図を示す。
【
図29】いくつかの実施形態による、ロボットシステム200についての運動学的アーキテクチャのブロック
図900を示す。
【
図30A】いくつかの実施形態による、ロボットアームのゼロ空間運動を制御するための方法のフローチャート図を示す。
【
図30B】いくつかの実施形態による、ロボットアームのゼロ空間運動を制御するための方法のフローチャート図を示す。
【
図30C】いくつかの実施形態による、ロボットアームのゼロ空間運動を制御するための方法のフローチャート図を示す。
【
図31A】いくつかの実施形態による、ロボットアームのゼロ空間関節速度を判定するための方法のフローチャート図を示す。
【
図31B】いくつかの実施形態による、ロボットアームのゼロ空間関節速度を判定するための方法のフローチャート図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
1.概要。
本開示の態様は、腹腔鏡などの低侵襲性の処置、及び内視鏡などの非侵襲性の両方の処置を含む、様々な医療処置を実施することができるロボット対応の医療システムに統合され得る。このシステムは、内視鏡処置のうち、気管支鏡検査、尿管鏡検査、胃鏡検査などを実施することができる。
【0060】
幅広い処置を実施することに加えて、システムは、医師を支援するための強調された撮像及び誘導などの追加の利益を提供することができる。更に、システムは、厄介な腕の動き及び位置を必要とせずに、人間工学的位置から処置を実施する能力を医師に与えることができる。また更に、システムは、システムの器具のうちの1つ又は2つ以上をユーザ一人だけでも制御することができるような、向上した使いやすさで処置を実施する能力を医師に与えることができる。
【0061】
以下、説明を目的として、図面と併せて、様々な実施形態が説明される。開示される概念の多くの他の実施形態が可能であり、開示される実施形態で様々な利点が達成され得ることを理解されたい。本明細書には、参照に、また様々な節の位置を特定する助けとなるように、見出しを含めている。この見出しは、それに関して述べられる概念の範囲を限るものではない。本明細書全体にわたってこのような概念を適用することができる。
【0062】
A.ロボットシステム-カート。
ロボット対応の医療システムは、特定の処置に応じて様々な方式で構成され得る。
図1は、診断及び/又は治療用気管支鏡検査処置用に配置されたカートベースのロボット対応システム10の一実施形態を示す。気管支鏡検査の間、システム10には、気管支鏡検査用の処置特有気管支鏡であり得る操縦可能な内視鏡13などの医療器具を、診断ツール及び/又は治療ツールを送達する自然開口アクセスポイント(すなわち、この例ではテーブルに位置決めされた患者の口)に送達するための1つ又は2つ以上のロボットアーム12を有するカート11を備えることができる。示す通り、カート11は、アクセスポイントへのアクセスを提供するために、患者の上部胴体に近接して位置決めすることができる。同様に、アクセスポイントに対して気管支鏡を位置決めするように、ロボットアーム12を作動させることができる。消化管(Gastro-Intestinal、GI)処置を、GI処置に特化した内視鏡である胃鏡を用いて実施するときにも
図1の配置を利用することができる。
図2には、カートの実施形態例をより詳細に描写する。
【0063】
図1を引き続き参照すると、カート11が適切に位置決めされると、ロボットアーム12は、操縦可能な内視鏡13をロボットで、手動で、又はそれらの組み合わせで患者内に挿入することができる。示す通り、操縦可能な内視鏡13には、内側リーダー部及び外側シース部などの少なくとも2つの入れ子式パートを備えることができ、各部は、器具ドライバ28のセットから別個の器具ドライバに結合され、各器具ドライバは、個々のロボットアームの遠位端に結合されている。リーダー部をシース部と同軸上に位置合わせしやすい、器具ドライバ28のこの線形配置は、1つ又は2つ以上のロボットアーム12を様々な角度及び/又は位置に巧みに操ることによって空間において位置決めし直すことができる「仮想レール」29を作り出す。本明細書に記載の仮想レールは、破線を使用して図に描いており、したがって破線は、システムの如何なる物理的構造も描いていない。仮想レール29に沿った器具ドライバ28の並進は、外側シース部に対して内側リーダー部を入れ子にするか、又は内視鏡13を患者から前進若しくは後退させる。仮想レール29の角度は、臨床用途又は医師の好みに基づいて調節することも、並進させることも、枢動させることもできる。例えば、気管支鏡検査では、示される仮想レール29の角度及び位置は、内視鏡13への医師のアクセスを提供することと、内視鏡13を患者の口内に曲げ入れることから生じる摩擦を最小限に抑えることとの妥協を表す。
【0064】
内視鏡13は、標的の目的地又は手術部位に到達するまで、ロボットシステムからの正確なコマンドを使用して挿入後に患者の気管及び肺の下流に方向付けられてもよい。患者の肺網を通したナビゲーションを強化しかつ/又は望ましい標的に達するために、内側リーダー部を外側シース部から入れ子状に延ばして、関節運動を強化し、曲げ半径を大きくするように、内視鏡13を巧みに操ることができる。別個の器具ドライバ28の使用により、リーダー部とシース部とが互いに独立して駆動することも可能になる。
【0065】
例えば、患者の肺内の病巣又は小結節などの標的に生検針を送達するように、内視鏡13を方向付けることができる。病理医によって分析される組織試料を得るように、生検針は内視鏡の長さにわたるワーキングチャネルを展開させていくことができる。病理の結果に応じて、更なる生検で、更なるツールは内視鏡のワーキングチャネルを展開させていくことができる。小結節を悪性であると特定した後、内視鏡13は、ツールを内視鏡下で送達し、潜在的な癌組織を切除することができる。場合によっては、診断的治療及び治療的治療を別の処置で果たすことができる。これらの状況において、基準を送達して、標的となる小結節の場所を「マーク」するのにも、内視鏡13を使用することができる。他の例では、診断的治療及び治療的治療を同じ処置中に果たすことができる。
【0066】
システム10はまた、カート11に支持ケーブルを介して接続されて、カート11への制御、電子機器、流体工学、光学系、センサ、及び/又は電力のためのサポートを提供し得る移動可能なタワー30を含んでもよい。タワー30にこのような機能を置くことにより、カート11のフォームファクタを小さくすることができ、手術を行う医師及びそのスタッフがより容易にカート11を調節しかつ/又は位置決めし直すことができる。更に、カート/テーブルと支持タワー30との機能分割は、手術室の乱雑さを低減し、臨床ワークフローの改善を促進する。カート11を患者の近くに位置決めしてもよいが、タワー30は、処置中に邪魔にならないように離れた場所に収容することができる。
【0067】
上述のロボットシステムをサポートするために、タワー30は、例えば、永続的な磁気記憶ドライブ、ソリッドステートドライブなどの非一時的コンピュータ可読記憶媒体内にコンピュータプログラム命令を記憶するコンピュータベースの制御システムの構成要素を含んでもよい。これらの命令の実行は、実行がタワー30内で行われるのか又はカート11内で行われるのかにかかわらず、システム全体又はそのサブシステムを制御してもよい。例えば、コンピュータシステムのプロセッサによって実行されると、命令は、ロボットシステムの構成要素に、当該キャリッジ及びアームマウントを作動させ、ロボットアームを作動させ、医療器具を制御させることができる。例えば、制御信号を受信したことに応答して、ロボットアームの関節にあるモータが、アームをある特定の姿勢に位置決めすることができる。
【0068】
タワー30は、内視鏡13を通して展開することができるシステムに、制御された灌注及び吸引機能を提供するために、ポンプ、流量計、弁制御、及び/又は流体アクセスも含むことができる。これらの構成要素は、タワー30のコンピュータシステムも使用して制御されてもよい。いくつかの実施形態では、別個のケーブルを介して内視鏡13に灌注能力及び吸引能力を直接もたらすことができる。
【0069】
タワー30は、フィルタリングされ、保護された電力をカート11に提供するように設計された電圧及びサージ保護具を含んでもよく、それによって、カート11内に電力変圧器及び他の補助電力構成要素を配置することが回避され、カート11はより小さく、より移動可能になる。
【0070】
タワー30は、ロボットシステム10全体に展開されたセンサのための支持機器も含んでもよい。例えば、タワー30は、ロボットシステム10全体にわたり光センサ又はカメラから受信したデータを検出し、受信し、処理するためのオプトエレクトロニクス機器を含んでもよい。制御システムと組み合わせて、このようなオプトエレクトロニクス機器を使用して、タワー30内を含むシステム全体にわたって展開した任意の数のコンソールに表示するためのリアルタイム画像を生成することができる。同様に、タワー30は、展開した電磁(ElectroMagnetic、EM)センサから信号を受信し、受信した信号を処理するための電子サブシステムも含むことができる。タワー30はまた、医療器具内又は医療器具上のEMセンサによる検出用のEM場発生器を収容し、位置決めするのにも使用することができる。
【0071】
タワー30はまた、システムの残りの部分で利用可能な他のコンソール、例えば、カートの上部に装着されたコンソールに追加して、コンソール31も含んでもよい。コンソール31は、オペレータである医師用に、ユーザインターフェース及びタッチスクリーンなどの表示画面を含むことができる。システム10のコンソールは、通常、ロボット制御と、内視鏡13のナビゲーション情報及び位置特定情報などの処置の術前情報及びリアルタイム情報との両方を提供するように設計される。コンソール31が、医師が使用できる唯一のコンソールではない場合、看護師などの第2のオペレータがコンソール31を使用して、患者の健康又は生命及びシステムの工程を監視するとともに、ナビゲーション情報及び位置特定情報などの処置固有のデータを提供することもできる。他の実施形態では、コンソール30は、タワー30とは別個の本体内に収容される。
【0072】
タワー30は、1つ又は2つ以上のケーブル又は接続部(図示せず)を介してカート11及び内視鏡13に結合されてもよい。いくつかの実施形態では、タワー30からのサポート機能が、ケーブル1本だけを通してカート11に提供されることにより、手術室を簡略化し、整理整頓することができる。他の実施形態では、別個の配線及び接続部において特定の機能を結合することができる。例えば、電力ケーブル1本だけを通してカートに電力を供給することができる一方、制御装置、光学系、流体素子、及び/又はナビゲーションに対する支えを、別個のケーブルを通して与えることができる。
【0073】
図2は、
図1に示されるカートベースのロボット対応システムからのカートの実施形態の詳細な図を提供する。カート11は、通常、細長支持構造14(しばしば「カラム」と呼ばれる)、カート基台15、及びカラム14の頂部にあるコンソール16を含む。カラム14は、1つ又は2つ以上のロボットアーム12(
図2には3つ示している)の展開を支えるためのキャリッジ17(代替として「アーム支持体」)などの1つ又は2つ以上のキャリッジを含むことができる。キャリッジ17は、患者に対する位置決めを良くするように、直交軸に沿って回転してアーム12の基台を調節する、個々に構成可能なアームマウントを含むことができる。キャリッジ17は、キャリッジ17がカラム14に沿って垂直方向に並進するのを可能にするキャリッジインターフェース19も含む。
【0074】
キャリッジインターフェース19は、キャリッジ17の垂直方向の並進をガイドするためにカラム14の両側に位置決めされているスロット20などのスロットを通してカラム14に接続されている。スロット20には、カート基台15に対して様々な垂直方向の高さでキャリッジを位置決め、保持するための垂直方向並進インターフェースが入っている。キャリッジ17の垂直方向並進により、カート11は、様々なテーブル高さ、患者の大きさ、及び医師の好みを満たすようにロボットアーム12のリーチを調節することが可能となる。同様に、キャリッジ17上の個々に構成可能なアームマウントにより、ロボットアーム12のロボットアーム基台21を様々な構成で角度付けすることが可能となる。
【0075】
いくつかの実施形態では、キャリッジ17が垂直方向に並進するときにカラム14の内部チャンバ及び垂直方向の並進インターフェース内に汚れ及び流体が侵入するのを防止するために、スロット20には、スロット表面と同一平面及び平行であるスロットカバーが追加されてもよい。スロット20の垂直上下の近くに位置決めされたバネスプール対を通してスロットカバーを展開させることができる。カバーは、キャリッジ17が上下に垂直方向に並進するにつれて、コイル状態から伸縮するように展開するまで、スプール内でコイル巻きにされている。スプールのバネ仕掛けにより、キャリッジ17がスプールに向かって並進するときにはカバーをスプールに引っ込める力が与えられる一方、キャリッジ17がスプールから離れるように並進するときには密封も維持する。キャリッジ17が並進するのにつれて、カバーが適切に伸縮するのを確実にするために、例えば、キャリッジインターフェース19にあるブラケットを使用してキャリッジ17にカバーを接続することができる。
【0076】
カラム14は、例えば、コンソール16からの入力などのユーザ入力に応答して生成された制御信号に応答してキャリッジ17を機械的に並進させるために垂直方向に位置合わせされた主ねじを使用するように設計された、ギア及びモータなどの機構を内部に含んでもよい。
【0077】
ロボットアーム12は、一般に、一連の関節24によって接続されている一連のリンク23によって分離されたロボットアーム基台21及びエンドエフェクタ22を含んでもよく、各関節は独立したアクチュエータを含み、各アクチュエータは、独立して制御可能なモータを含む。それぞれ別々に制御可能な関節は、ロボットアームが使用できる独立した自由度を示す。アーム12のそれぞれには7つの関節があり、引いては7つの自由度をもたらす。多数の関節により、多数の自由度がもたらされ、「冗長」自由度を可能にする。冗長自由度により、ロボットアーム12が、様々なリンク位置及び関節角度を使用して、空間において特定の位置、配向、及び軌道で、そのそれぞれのエンドエフェクタ22を位置決めすることが可能になる。これにより、システムが空間において望ましい個所から医療器具を位置決めし、方向付けることが可能になる一方、医師がアーム関節を患者から離れる臨床上都合の良い位置に移動させて、アームの衝突を回避しながらアクセスを良くするのを可能にする。
【0078】
カート基台15は、床の上のカラム14、キャリッジ17、及びアーム12の重量の釣り合いをとる。したがって、カート基台15は、電子機器、モータ、電源とともに、カートの移動及び/又は固定化のいずれでも可能にする構成要素など、より重い部品を収容する。例えば、カート基台15は、処置前にカートが部屋中をあちこちに容易に移動することを可能にする、転動可能なホイール形状のキャスタ25を含む。適切な位置に到達した後、キャスタ25は、処置中にカート11を所定の場所に保持するためのホイールロックを使用して動かないようにされてもよい。
【0079】
カラム14の垂直方向の端部に位置決めされたコンソール16は、ユーザ入力を受信するためのユーザインターフェース及び表示画面(又は、例えば、タッチスクリーン26などの二重目的デバイス)の両方を可能にして、術前データ及び術中データの両方を医師であるユーザに提供する。タッチスクリーン26上の潜在的な術前データは、術前計画、術前コンピュータ断層撮影(computerized tomography、CT)スキャンから導出されたナビゲーション及びマッピングデータ、並びに/又は術前の患者への問診からのメモを含んでもよい。ディスプレイ上の術中データが、ツールから提供される光学情報、センサからのセンサ情報及び座標情報とともに、呼吸、心拍数、及び/又はパルスなどの不可欠な患者統計も含むことがある。医師に、キャリッジ17の反対側のカラム14側からコンソールにアクセスさせるように、コンソール16を位置決めし、傾けることができる。この位置から、医師は、コンソール16をカート11の背後から操作しながら、コンソール16、ロボットアーム12、及び患者を見ることができる。示す通り、コンソール16は、カート11を巧みに操り、安定させるのを助けるハンドル27も含む。
【0080】
図3は、尿管鏡検査用に配置された、ロボット対応システム10の実施形態を示す。尿管鏡検査処置では、患者の尿道及び尿管を辿るように設計された処置専用内視鏡である尿管鏡32を患者の下腹部領域に送達するようにカート11を位置決めすことができる。尿管鏡検査では、尿管鏡32が、その範囲における敏感な解剖学的構造に対する摩擦及び力を抑制するように患者の尿道と直接に位置合わせされることが望ましいことがある。示す通り、ロボットアーム12が尿管鏡32を、患者の尿道に直接線形アクセスするように位置決めするのを可能にするように、カート11をテーブルの脚に位置合わせすることができる。テーブルの脚から、ロボットアーム12は、尿道を通して患者の下腹部に直接に、仮想レール33に沿って尿管鏡32を挿入することができる。
【0081】
気管支鏡検査におけるのと同様の制御技法を使用して尿道に挿入した後、尿管鏡32は、診断及び/又は治療用途のために、膀胱、尿管、及び/又は腎臓にナビゲートされてもよい。例えば、尿管鏡32を尿管及び腎臓に方向付けて、尿管鏡32のワーキングチャネルを展開していくレーザー結石破砕デバイス又は超音波結石破砕デバイスを使用して、溜まった腎臓結石を破砕することができる。結石破砕が完了した後、尿管鏡32を展開していくバスケットを使用して、結果として得られた結石片を取り除くことができる。
【0082】
図4は、血管処置用に同様に配置された、ロボット対応システムの実施形態を示す。血管処置において、システム10は、カート11が、操縦可能なカテーテルなどの医療器具34を、患者の脚にある大腿動脈におけるアクセスポイントに送達することができるように構成され得る。大腿動脈は、ナビゲーションのためのより大きな直径とともに、患者の心臓への遠回りが比較的少ない曲がりくねった路との両方を呈し、これによりナビゲーションが簡単になる。尿管鏡検査処置に見られるように、カート11を患者の脚及び下腹部に向けて位置決めすることにより、ロボットアーム12に、患者の大腿/腰領域における大腿動脈アクセスポイントへの直接線形アクセスを仮想レール35に与えることを可能にさせることができる。動脈への挿入後、器具ドライバ28を並進させることによって、医療器具34を方向付けし、挿入することができる。その代わりとして、例えば、肩及び手首の近くの頸動脈及び腕動脈などの代替の血管アクセスポイントに達するために、患者の上腹部の周囲にカートを位置決めすることができる。
【0083】
B.ロボットシステム-テーブル。
ロボット対応の医療システムの実施形態はまた、患者テーブルを組み込んでもよい。テーブルの組み込みは、カートを取り外すことによって手術室内の資本設備量を減らし、患者へのアクセスを良くすることができる。
図5は、気管支鏡検査処置用に配置されたこのようなロボット対応システムの一実施形態を示す。システム36は、プラットフォーム38(「テーブル」又は「ベッド」として図示)を床全体にわたり支えるための支持構造体又はカラム37を含む。カートベースのシステムとよく似て、システム36のロボットアーム39のエンドエフェクタには、器具ドライバ42の線形位置合わせから形成された仮想レール41を通して又はそれに沿って、
図5の気管支鏡40などの細長医療器具を巧みに操るように設計されている器具ドライバ42が含まれる。実際には、エミッタ及び検出器をテーブル38の周りに置くことによって、蛍光透視撮像をもたらすためのCアームを患者の上腹部域全体にわたって位置決めすることができる。
【0084】
図6は、説明を目的として、患者及び医療器具なしのシステム36の代替的な図を提供する。示す通り、カラム37が、システム36において、1つ又は2つ以上のロボットアーム39の基台となり得る、リング形状として示される1つ又は2つ以上のキャリッジ43を含むことができる。キャリッジ43は、カラム37の長さを走る垂直カラムインターフェース44に沿って並進して、そこからロボットアーム39を患者に達するように位置決めすることができる様々な視座を与えることができる。キャリッジ43は、カラム37内に位置決めされた機械式モータを使用してカラム37を中心として回転して、ロボットアーム39に、例えば、患者の両側などのテーブル38の複数の側面へアクセスさせることができる。複数のキャリッジを有する実施形態では、キャリッジは、カラムに別々に位置決めされてもよく、他のキャリッジとは無関係に並進しかつ/又は回転してもよい。キャリッジ43は、カラム37を取り囲む必要はなく、円形であることさえ必要はないが、図示のリング形状は、構造上のバランスを維持しながらカラム37を中心としたキャリッジ43が回転を容易にする。キャリッジ43の回転及び並進により、システムが、内視鏡及び腹腔鏡などの医療器具を患者の様々なアクセスポイントに位置合わせすることが可能になる。他の実施形態(図示せず)では、システム36は、それに並んで延在するバー又はレールの形態の調節式アーム支持体を有する患者テーブル又は患者ベッドを含むことがある。垂直方向に調節することができる調節式アーム支持体に1つ又は2つ以上のロボットアーム39を取り付けることができる(例えば、肘関節を有する肩部を介して)。垂直方向の調節をもたらすことによって、患者テーブル又は患者ベッドの下にロボットアーム39をコンパクトに収容することができ、その後、処置中に上げることができるのが好都合である。
【0085】
アーム39は、ロボットアーム39に追加の構成可能性を提供するために個別に回転及び/又は入れ子式に延在し得る一連の関節を備えるアームマウント45のセットを介してキャリッジに装着されてもよい。更に、アームマウント45をキャリッジ43に位置決めすることができ、キャリッジ43が適切に回転すると、アームマウント45を、テーブル38の同じ側面(
図6に示す通り)、テーブル38の両側(
図9に示す通り)、又はテーブル38の隣り合う側面(図示せず)のいずれにでも位置決めすることができる。
【0086】
カラム37は、テーブル38の支持及びキャリッジの垂直方向の並進のための経路を構造的に提供する。内部に、カラム37は、キャリッジの垂直並進を案内するための主ネジと、主ネジに基づくそのキャリッジの並進を機械化するためのモータとを備えることができる。カラム37は、キャリッジ43に、またそれに取り付けられたロボットアーム39に電力信号及び制御信号を伝達することもできる。
【0087】
テーブル基台46は、
図2に示すカート11のカート基台15と同様の機能を果たし、テーブル/ベッド38、カラム37、キャリッジ43及びロボットアーム39の釣り合いをとるためにより重い構成要素を収容する。テーブル基台46にはまた、剛性キャスタも組み込んで、処置中に安定性をもたらすことができる。テーブル基台46の底から展開するキャスタは、基台46の両側で反対方向に伸び、システム36を移動させる必要があるときには引っ込むことができる。
【0088】
引き続き
図6によれば、システム36は、テーブルとタワーとの間でシステム36の機能を分割して、テーブルのフォームファクタ及びバルクを低減するタワー(図示せず)も含んでもよい。先に開示した実施形態に見られるように、タワーは、処理能力、計算能力、及び制御能力、電力、流体素子、並びに/又は光学及びセンサ処理などの様々なサポート機能をテーブルに与えることができる。タワーは、医師のアクセスを改善し、手術室を整理整頓するように、患者から離して位置決めされるようにも移動させることができるものである。更に、タワーに構成要素を置くことにより、ロボットアームの考えられる収容用に、テーブル基台に収納スペースを広げることが可能になる。タワーは、キーボード及び/又はペンダントなどのユーザ入力用のユーザインターフェースと、リアルタイム撮像、ナビゲーション、及び追跡情報などの術前及び術中情報を対象とする表示画面(又はタッチスクリーン)との両方を提供するマスタコントローラ又はコンソールも含むことができる。いくつかの実施形態では、タワーは、通気に使用されるガスタンク用のホルダも含むことができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、テーブル基台は、使用されていないときにロボットアームを収容して格納してもよい。
図7は、テーブルベースのシステムの一実施形態におけるロボットアームを収容するシステム47を示す。システム47では、ロボットアーム50、アームマウント51、及びキャリッジ48を基台49内に収容するように、キャリッジ48を基台49の中に垂直方向に並進させることができる。基台カバー52は、キャリッジ48、アームマウント51、及びアーム50を、カラム53を中心として展開させるのに、基台カバー52を並進し、引っ込めて開き、使用しないときにはそれらをしまって保護するために、基台カバーを閉じることができる。基台カバー52をその開口の縁に沿って膜54で密閉して、閉じたときに汚れ及び流体の侵入を防ぐことができる。
【0090】
図8は、尿管鏡検査処置用に構成されたロボット対応テーブルベースのシステムの一実施形態を示す。尿管鏡検査では、テーブル38は、患者をカラム37及びテーブル基台46からオフ角に位置決めするためのスイベル部55を含むことができる。スイベル部55は、スイベル部55の底部をカラム37から離して位置決めするために、枢動点(例えば、患者の頭部より下に位置する)を中心に回転又は枢動することができる。例えば、スイベル部55の枢動により、Cアーム(図示せず)を、テーブル38より下のカラム(図示せず)とスペースを奪い合うことなく、患者の下部腹部にわたって位置決めすることができる。カラム37の周りにキャリッジ35(図示せず)を回転させることにより、ロボットアーム39は、尿道に到達するように、仮想レール57に沿って、患者の鼠径部領域に尿管鏡56を直接挿入してもよい。尿管鏡検査では、この処置にわたって患者の脚の位置を支え、患者の鼠径部域への明確なアクセスを可能にするように、テーブル38のスイベル部55にあぶみ58を固定することもできる。
【0091】
腹腔鏡処置では、患者の腹壁内の小さな切開部を通して、低侵襲性器具を患者の解剖学的構造に挿入してもよい。いくつかの実施形態では、低侵襲性器具には、患者内の解剖学的構造にアクセスするのに使用されるシャフトなどの細長剛性部材が含まれる。患者の腹腔の膨張後、把持、切断、アブレーション、縫合などの外科タスク又は医療タスクを実施するために、この器具を方向付けることができる。いくつかの実施形態では、この器具は、腹腔鏡などのスコープを備えることができる。
図9は、腹腔鏡処置用に構成されたロボット対応テーブルベースのシステムの一実施形態を示す。
図9に示されるように、システム36のキャリッジ43は回転し、垂直方向に調節されて、器具59が患者の両側の最小切開部を通過して患者の腹腔に到達するようにアームマウント45を使用して位置決めされ得るように、ロボットアーム39の対をテーブル38の両側に位置決めしてもよい。
【0092】
腹腔鏡処置に対応するために、ロボット対応テーブルシステムはまた、プラットフォームを所望の角度に傾斜させてもよい。
図10は、ピッチ調整式又は傾き調整式のロボット対応医療システムの一実施形態を示す。
図10に示す通り、システム36は、テーブル38の傾きに適合して、テーブルの一部分を他の部分よりも床から離して位置決めする。更に、アーム39がテーブル38と同じ平面関係を維持するような傾斜に一致するように、アームマウント45が回転することができる。急角度に適合するために、カラム37は、テーブル38が床に接触するか又は基台46と衝突するのを防ぐようにカラム37の垂直伸びを可能にする入れ子部60も含むことができる。
【0093】
図11は、テーブル38とカラム37との間のインターフェースの詳細な図を提供する。カラム37に対するテーブル38のピッチ角を複数の自由度で変えるように、ピッチ回転機構61を構成することができる。カラム-テーブルインターフェースにおける直交軸1、2の位置決めによって、ピッチ回転機構61を有効化することができ、各軸は、電気ピッチ角コマンドに応答して別々のモータ3、4によって作動する。あるネジ5に沿った回転は、ある軸1における傾き調節を可能にすると考えられる一方、もう1つのネジ6に沿った回転は、もう1つの軸2に沿った傾き調節を可能にすると考えられる。いくつかの実施形態では、球関節を使用すると、カラム37に対するテーブル38のピッチ角を複数の自由度で変えることができる。
【0094】
例えば、ピッチ調整は、テーブルをトレンデレンブルグ体位に位置決めしようとするときに、すなわち下腹部手術のために患者の下腹部よりも床からより高い位置に患者の下腹部を位置決めしようとするときに、特に有用である。トレンデレンブルグ体位により、重力によって患者の内臓を患者の上腹部に滑らせ、低侵襲性ツールが入って腹腔鏡前立腺切除術などの下腹部の外科処置又は医療処置を実施する際に、腹腔を空にする。
【0095】
図12及び
図13は、テーブルベースの外科用ロボットシステム100の別の実施形態の等角図及び端面図を示す。外科用ロボットシステム100は、テーブル101に対して1つ又は2つ以上のロボットアームを支えるように構成され得る1つ又は2つ以上の調節式アーム支持体105を含む(例えば、
図14参照)。図示の実施形態では、調節式アーム支持体105が1つだけ示されているが、テーブル101の反対側に更なるアーム支持体を設けることができる。テーブル101に対して移動して、調節式アーム支持体105及び/又はそれに取り付けられた如何なるロボットアームの位置もテーブル101に対して調節しかつ/又は変えることができるように、調節式アーム支持体105を構成することができる。例えば、テーブル101に対して1つ又は2つ以上の自由度で調節式アーム支持体105を調節することができる。調節式アーム支持体105は、1つ又は2つ以上の調節式アーム支持体105及びそれに取り付けられた如何なるロボットアームもテーブル101の下に容易に収容する能力を含む、高い多様性をシステム100に与える。調節式アーム支持体105を収容位置から、テーブル101の上面より下の位置まで上げることができる。他の実施形態では、調節式アーム支持体105を、収容位置から、テーブル101の上面より上の位置まで上げることができる。
【0096】
調節式アーム支持体105は、リフト、横方向並進、傾斜などを含む、いくつかの自由度を提供することができる。
図12及び
図13の示された実施形態では、アーム支持体105は、4つの自由度で構成され、それらは
図12に矢印で示されている。第1の自由度により、z方向における調節式アーム支持体105の調整(「Zリフト」)が可能になる。例えば、調節式アーム支持体105は、テーブル101を支えるカラム102に沿って又はそれに対して上下に動くように構成されたキャリッジ109を含むことができる。第2の自由度により、調節式アーム支持体105を傾けることができる。例えば、調節式アーム支持体105は、回転接合部を含んでいてもよく、これにより、調節式アーム支持体105を、トレンデレンブルグ体位のベッドと位置合わせすることを可能にすることができる。第3の自由度により、調節式アーム支持体105を「ピボットアップ」させることができ、それを使用して、テーブル101の側面と調節式アーム支持体105との間隔を調節することができる。第4の自由度により、調節式アーム支持体105がテーブルの長手方向の長さに沿って並進するのが可能になる。
【0097】
図12及び
図13の外科用ロボットシステム100は、基台103に装着されたカラム102によって支持されるテーブルを含むことができる。基台103及びカラム102は、支持面に対してテーブル101を支える。床軸131及び支持軸133を
図13に示す。
【0098】
調節式アーム支持体105をカラム102に取り付けることができる。他の実施形態では、アーム支持体105をテーブル101又は基台103に取り付けることができる。調節式アーム支持体105は、キャリッジ109、バー又はレールコネクタ111、及びバー又はレール107を含むことができる。いくつかの実施形態では、レール107に取り付けられた1つ又は2つ以上のロボットアームは、互いに対して並進し移動することができる。
【0099】
第1の接合部113によって、キャリッジ109をカラム102に取り付けてもよく、これにより、キャリッジ109がカラム102に対して移動することが可能になる(例えば、第1の軸すなわち垂直軸123を上下するなど)。第1の接合部113は、調節式アーム支持体105に第1の自由度(「Zリフト」)を与えることができる。調節式アーム支持体105は、第2の自由度(傾き)を調節式アーム支持体105に与える第2の接合部115を含むことができる。調節式アーム支持体105は、第3の自由度(「ピボットアップ」)を調節式アーム支持体105に与えることができる第3の接合部117を含むことができる。第3の軸127を中心にしてレールコネクタ111を回転させるにつれたレール107の配向を維持するように第3の接合部117を機械式に拘束する、更なる接合部119(
図13に示す)を設けることができる。調節式アーム支持体105は、第4の自由度(並進)を第4の軸129に沿って調節式アーム支持体105に与えることができる第4の接合部121を含むことができる。
【0100】
図14には、2つの調節式アーム支持体105A、105Bがテーブル101の両側に取り付けられた状態の外科用ロボットシステム140Aの端面図を示す。第1のロボットアーム142Aは、第1の調節式アーム支持体105Bのバー又はレール107Aに取り付けられている。第1のロボットアーム142Aは、レール107Aに取り付けられた基台144Aを含む。第1のロボットアーム142Aの遠位端は、1つ又は2つ以上のロボット医療器具又はロボット医療ツールに取り付けることができる器具駆動機構146Aを含む。同様に、第2のロボットアーム142Bは、レール107Bに取り付けられた基台144Bを含む。第2のロボットアーム142Bの遠位端は、器具駆動機構146Bを含む。器具駆動機構146Bは、1つ又は2つ以上のロボット医療器具又はロボット医療ツールに取り付けるように構成され得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、ロボットアーム142A、142Bのうちの1つ又は2つ以上が、7つ又はそれ以上の自由度を有するアームを備える。いくつかの実施形態では、ロボットアーム142A、142Bのうちの1つ又は2つ以上が、挿入軸(挿入を含む1つの自由度)、リスト(リストピッチ、ヨー及びロールを含む3つの自由度)、エルボ(エルボピッチを含む1つの自由度)、ショルダ(ショルダピッチ及びヨーを含む2つの自由度)、及び基台144A、144B(並進を含む1つの自由度)、を含む8つの自由度を含むことができる。いくつかの実施形態では、挿入自由度をロボットアーム142A、142Bによって与えることができるが、他の実施形態では、器具自体が、器具ベースの挿入アーキテクチャを介して挿入をもたらす。
【0102】
C.器具ドライバ及びインターフェース。
システムのロボットアームのエンドエフェクタは、(i)医療器具を作動させるための電気機械的手段を組み込む器具ドライバ(代替的には、「器具駆動機構」又は「器具デバイスマニピュレータ」と呼ばれる)と、(ii)モータなどの任意の電気機械的構成要素を欠いていてもよい除去可能な又は取り外し可能な医療器具と、を含む。この二分は、医療処置において使用される医療器具を滅菌する必要性と、医療器具の複雑な機械組立と敏感な電子機器とに起因して高価な資本設備を十分に滅菌することができないこと、によって引き起こされる可能性がある。したがって、医師又は医師のスタッフによる個々の滅菌又は廃棄時に、器具ドライバ(引いてはそのシステム)から引き離され、取り外され、入れ替えられるように、医療器具を設計することができる。これに対して、器具ドライバは、取り替えられなくても、滅菌されなくても済み、保護のために掛け布をすることができる。
【0103】
図15は、例示的な器具ドライバを示す。ロボットアームの遠位端に位置決めされた器具ドライバ62は、駆動軸64を介して医療器具に制御式トルクを与えるように平行軸を伴って配置された1つ又は2つ以上の駆動ユニット63で構成されている。各駆動ユニット63は、器具と相互作用するための個別の駆動軸64と、モータ軸回転を望ましいトルクに変換するためのギアヘッド65と、駆動トルクを発生させるためのモータ66と、モータ軸の回転速度を測定して制御回路にフィードバックを与えるエンコーダ67と、制御信号を受信して駆動ユニットを作動させるための制御回路68と、を備える。各駆動ユニット63は、他と無関係に制御され、電動化され、器具ドライバ62は、複数(
図15では4つを示す)の他と無関係の駆動出力を医療器具に与えることができる。作動時、制御回路68が、制御信号を受信し、モータ66にモータ信号を送信し、エンコーダ67によって測定された結果として得られたモータ回転速度を望ましい回転の速度と比較し、モータ信号を変調して望ましいトルクをもたらすと考えられる。
【0104】
滅菌環境を必要とする処置のために、ロボットシステムは、器具ドライバと医療器具との間に位置する、滅菌ドレープに接続された滅菌アダプタなどの駆動インターフェースを組み込んでもよい。滅菌アダプタの主な目的は、駆動軸と駆動入力との物理的分離、引いては無菌性を維持しながら、器具ドライバの駆動軸から器具の駆動入力に角運動を伝達することである。したがって、滅菌アダプタ例は、器具ドライバの駆動軸と対合することが意図された一連の回転入力及び出力と、器具への駆動入力とで構成することができる。滅菌アダプタに接続される滅菌ドレープは、透明プラスチック又は半透明プラスチックなどの薄い可撓性材料で構成され、器具ドライバ、ロボットアーム、及びカート(カートベースのシステムにおける)又はテーブル(テーブルベースのシステムにおける)などの資本設備を覆うように設計されている。ドレープの使用により、滅菌を必要としない範囲(すなわち、非滅菌野)に依然として位置している間に、資本設備を患者に近接して位置決めすることが可能となる。滅菌ドレープのもう一方の側では、医療器具は、滅菌を必要とする範囲(すなわち、滅菌野)において患者と界面でつながることができる。
【0105】
D.医療器具。
図16は、ペアの器具ドライバを備えた例示的な医療器具を示す。ロボットシステムで使用するように設計された他の器具と同じく、医療器具70は、細長シャフト71(又は細長本体)及び器具基台72を備える。医師による手動相互作用が意図されているその設計により「器具ハンドル」とも呼ばれる器具基台72には、通常、ロボットアーム76の遠位端において器具ドライバ75上の駆動インターフェースを貫通する駆動出力74と対合するように設計されている回転式駆動入力73、例えば、レセプタクル、プーリー、又はスプールを備えることができる。物理的に接続されると、掛け金が掛けられると、かつ/又は結合されると、器具基台72の対合駆動入力73は、器具ドライバ75における駆動出力74と回転軸を共有して、駆動出力74から駆動入力73へのトルクの伝達を可能にすることができる。いくつかの実施形態では、駆動出力74には、駆動入力73にあるレセプタクルと対合するように設計されているスプラインを備えることができる。
【0106】
細長シャフト71は、例えば、内視鏡におけるような解剖学的開口部若しくは管腔、又は腹腔鏡検査におけるような低侵襲性切開部のいずれかを通して送達されるように設計される。細長シャフト71は、可撓性(例えば、内視鏡と同様の性質を有する)若しくは剛性(例えば、腹腔鏡と同様の性質を有する)のいずれでもよく、又は可撓性部と剛性部との両方のカスタマイズされた組み合わせを含めてもよい。腹腔鏡検査用に設計される場合、少なくとも1つの自由度を備えるクレビスから形成された関節式リストから延在するエンドエフェクタに剛性細長シャフトの遠位端を接続することができ、また駆動入力が器具ドライバ75の駆動出力74から受信したトルクに応答して回転するにつれて、テンドンからの力に基づいて作動することができる、例えば、把持具又ははさみなどの手術ツール又は医療器具に剛性細長シャフトの遠位端を接続することができる。内視鏡検査用に設計される場合、可撓性の細長シャフトの遠位端は、器具ドライバ75の駆動出力74から受信したトルクに基づいて関節運動させ、曲げることができる操縦可能屈曲部又は制御可能屈曲部を含むことができる。
【0107】
器具ドライバ75からのトルクは、シャフト71に沿った腱を使用して細長シャフト71の下流に伝達される。器具ハンドル72内の個々の駆動入力73にプルワイヤなどのこれらの個々のテンドンを個別に固定することができる。ハンドル72から、テンドンが、細長シャフト71に沿って1つ又は2つ以上のプルルーメンを進んでいき、細長シャフト71の遠位部分に固定されるか、又は細長シャフトの遠位部分にあるリストに固定される。腹腔鏡処置、内視鏡処置、又はハイブリッド処置などの外科処置中、リスト、把持具、又ははさみなどの遠位取り付けエンドエフェクタに、これらのテンドンを結合することができる。このような配置下で、駆動入力73に及ぼされるトルクは、テンドンに張力を伝達することにより、エンドエフェクタを何らかの方式で作動させると考えられる。いくつかの実施形態では、外科処置中、テンドンが、関節を軸を中心として回転させることによって、エンドエフェクタをある方向又は別の方向に移動させ得る。その代わりに、テンドンからの張力によって把持具が閉じる、細長シャフト71の遠位端で把持具の1つ又は2つ以上のジョーにテンドンを接続することができる。
【0108】
内視鏡検査では、腱は、接着剤、制御リング、又は他の機械的固定を介して、細長シャフト71に沿って(例えば、遠位端に)位置決めされている屈曲部又は関節運動部に結合されてもよい。屈曲部分の遠位端に固定して取り付けられると、駆動入力73に及ぼされるトルクがテンドンに伝わっていくことにより、より柔らかい屈曲部分(関節運動部分又は関節運動領域と呼ばれることがある)が曲がるか又は関節運動すると考えられる。非屈曲部分に沿って、個々のテンドンを内視鏡シャフトの壁に沿って(又は内側に)方向付ける個々のプルルーメンを螺旋状又は渦巻状にして、プルワイヤにおける張力からもたらされる半径方向の力の釣り合いをとるのが都合の良い場合がある。これらの間の螺旋及び/又は間隔の角度は、特定の目的で変えることも巧みに工作することもでき、螺旋が狭くなると、負荷力下で劣ったシャフト圧縮を呈する一方、螺旋の程度が下がると、負荷力下で優れたシャフト圧縮をもたらすが、曲げの限界も呈する。スペクトルのもう一方の端では、プルルーメンを細長シャフト71の長手方向軸に平行に方向付けると、望ましい曲がり部分又は関節運動式部分における制御式関節運動を可能にすることができる。
【0109】
内視鏡検査では、細長シャフト71は、ロボット処置を支援するいくつかの構成要素を収容する。細長シャフトは、手術ツール(又は医療器具)、灌注、及び/又は吸引をシャフト71の遠位端における手術部位に展開させるためのワーキングチャネルで構成され得る。細長シャフト71には、光学カメラを含むことがある光学組立体に/から遠位先端において信号を伝える、ワイヤ及び/又は光ファイバも収容することができる。細長シャフト71には、発光ダイオードなどの近位に位置する光源からシャフトの遠位端に光を運ぶための光ファイバも収容することができる。
【0110】
器具70の遠位端では、遠位先端部は、診断及び/又は治療、灌注、及び吸引のためにツールを手術部位に送達するための作業チャネルの開口部を含んでもよい。遠位先端には、内部解剖学的空間の画像を取り込むために、ファイバスコープ又はデジタルカメラなどのカメラ用のポートも含むことができる。これに関連して、遠位先端には、カメラを使用する際に解剖学的空間を照らすための光源用のポートも含むことができる。
【0111】
図16の実施例では、駆動シャフト軸、したがって駆動入力軸は、細長シャフトの軸に直交する。しかし、この配置は、細長シャフト71のロール能力を複雑にする。駆動入力73を静止させながら、細長シャフト71をその軸に沿って転がすことの結果として、テンドンが駆動入力73から出て、細長シャフト71内のプルルーメンに入るにつれて、テンドンの望ましからざるもつれをもたらす。結果として生じるこのようなテンドンのもつれは、内視鏡処置中に可撓性の細長シャフトの移動を予測することを目的とする如何なる制御アルゴリズムも邪魔することがある。
【0112】
図17は、駆動ユニットの軸が器具の細長シャフトの軸に平行である、器具ドライバ及び器具の代替の設計を示す。示す通り、円形の器具ドライバ80は、その駆動出力81がロボットアーム82の端において平行に位置合わせされた状態の4つの駆動ユニットを備える。駆動ユニット及びそのそれぞれの駆動出力81は、その組立体83内の駆動ユニットのうちの1つによって駆動される器具ドライバ80の回転組立体83に収容されている。回転駆動ユニットによって与えられるトルクに応答して、回転組立体83は、回転組立体83を器具ドライバの非回転部84に接続する円形ベアリングに沿って回転する。電力及び制御信号は、電気接点を介して器具ドライバ80の非回転部分84から回転組立体83に伝達されてよく、ブラシ付きスリップリング接続(図示せず)による回転を通して維持されてよい。他の実施形態では、回転組立体83は、非回転可能部分84に一体化され、引いては他の駆動ユニットと平行ではない別個の駆動ユニットに応答することができる。回転機構83により、器具ドライバ80が、器具ドライバ軸85を中心とする単一ユニットとして、駆動ユニット及びそのそれぞれの駆動出力81を回転させることが可能になる。
【0113】
先に開示した実施形態と同様に、器具86は、細長シャフト部分88と、器具ドライバ80内の駆動出力81を受け入れるように構成された複数の駆動入力89(レセプタクル、プーリー、及びスプールなど)を含む器具基台87(説明目的のために透明な外部スキンで示される)と、を含んでもよい。前に開示した実施形態とは異なり、軸が、
図16の設計に見られるように直交するのではなく、駆動入力89の軸に実質的に平行である状態で、器具シャフト88は、器具基台87の中心から延出する。
【0114】
器具ドライバ80の回転組立体83に結合されると、器具基台87及び器具シャフト88を含む医療器具86は、器具ドライバ軸85を中心にして回転組立体83と一緒に回転する。器具シャフト88が器具基台87の中心に位置決めされているため、器具シャフト88は、取り付けられると器具ドライバ軸85と同軸になる。したがって、回転組立体83の回転により、器具シャフト88は、自らの長手方向軸を中心として回転する。また、器具基台87が器具シャフト88とともに回転するので、器具基台87にある駆動入力89に接続されたいずれのテンドンも、回転中にもつれることはない。したがって、駆動出力81、駆動入力89、及び器具シャフト88の軸の平行性は、どの制御テンドンももつれさせることなくシャフト回転を可能にする。
【0115】
図18には、いくつかの実施形態による、器具ベースの挿入アーキテクチャを有する器具を示す。器具150は、上で考察した器具ドライバのうちのいずれにでも結合することができる。器具150は、細長シャフト152と、細長シャフト152に接続されたエンドエフェクタ162と、細長シャフト152に結合されたハンドル170と、を備える。細長シャフト152は、近位部分154及び遠位部分156を有する管状部材を含む。細長シャフト152は、その外側表面に沿った1つ又は2つ以上のチャネル又は溝158を備える。溝158は、1つ又は2つ以上のワイヤ又はケーブル180を受け入れるように構成されている。したがって、1つ又は2つ以上のケーブル180は、細長シャフト152の外側表面に沿って走っている。他の実施形態では、ケーブル180は、細長シャフト152を走ることもできる。ケーブル180のうちの1つ又は2つ以上の巧みな操り(例えば、器具ドライバを介して)により、エンドエフェクタ162の作動がもたらされる。
【0116】
器具基台とも呼ばれることがある器具ハンドル170には、通常、器具ドライバの取り付け面上で1つ又は2つ以上のトルクカプラと相互に対合するように設計されている1つ又は2つ以上の機械式入力174、例えば、レセプタクル、プーリー又はスプールを有する取り付けインターフェース172を備えることができる。
【0117】
いくつかの実施形態では、器具150は、細長シャフト152にハンドル170に対して並進することを可能にさせる一連のプーリー又はケーブルを備える。言い換えると、器具150そのものが、器具の挿入に適合する器具ベースの挿入アーキテクチャを構成しているので、ロボットアームへの依存を最小限に抑えて、器具150の挿入をもたらす。他の実施形態では、ロボットアームが、器具の挿入に大きく関与することができる。
【0118】
E.コントローラ。
本明細書に記載のロボットシステムのうちのいずれかは、ロボットアームに取り付けられた器具を操作するための入力デバイス又はコントローラを含むことができる。いくつかの実施形態では、コントローラの巧みな操りが、例えばマスタスレーブ制御を介して、器具の対応する巧みな操りを引き起こすような器具とコントローラを結合させることができる(例えば、通信可能に、電気で、無線で、かつ/又は機械で)。
【0119】
図19は、コントローラ182の一実施形態の斜視図である。この実施形態では、コントローラ182には、インピーダンス制御とアドミタンス制御との両方を備えることができるハイブリッドコントローラが含まれる。他の実施形態では、コントローラ182は、インピーダンス制御すなわちは受動制御だけしか活かすことができない。また他の実施形態では、コントローラ182は、アドミタンス制御だけしか活かすことができない。ハイブリッドコントローラであることにより、使用中、コントローラ182の知覚慣性を低くすることができるのが好都合である。
【0120】
図示の実施形態では、コントローラ182は、2つの医療器具の巧みな操りを可能にするように構成され、2つのハンドル184を含む。ハンドル184のそれぞれは、ジンバル186に接続されている。各ジンバル186は、位置決めプラットフォーム188に接続されている。
【0121】
図19に示す通り、各位置決めプラットフォーム188は、プリズム接合部196によってカラム194に結合されたSCARAアーム(選択的コンプライアンス組立ロボットアーム)198を含む。プリズム接合部196は、カラム194に沿って(例えば、レール197に沿って)並進して、ハンドル184のそれぞれがz方向に並進するのを可能にし、第1の自由度を与えるように構成されている。SCARAアーム198は、x-y平面におけるハンドル184の動きを可能にし、2つの更なる自由度を与えるように構成されている。
【0122】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上のロードセルがコントローラ内に位置決めされる。例えば、いくつかの実施形態では、ロードセル(図示せず)が、ジンバル186のそれぞれの本体に位置決めされている。ロードセルを設けることによって、コントローラ182の一部が、アドミタンス制御下で作動することができ、それによって、使用中にコントローラの知覚慣性を低減するのが好都合である。いくつかの実施形態では、位置決めプラットフォーム188がアドミタンス制御用に構成されている一方、ジンバル186がインピーダンス制御用に構成されている。他の実施形態では、ジンバル186がアドミタンス制御用に構成されている一方、位置決めプラットフォーム188がインピーダンス制御用に構成されている。したがって、いくつかの実施形態によっては、位置決めプラットフォーム188の並進自由度又は位置自由度は、アドミタンス制御を当てにすることができる一方、ジンバル186の回転自由度は、インピーダンス制御により決まってくる。
【0123】
F.ナビゲーション及び制御。
従来の内視鏡検査は、オペレータである医師に腔内誘導を提供するために、蛍光透視法(例えば、Cアームを通して送達され得るような)、及び他の形態の放射線ベースの撮像モダリティの使用を伴うことがある。これに対し、本開示によって可能性が考えられるロボットシステムは、放射線への医師の曝露を減らし、手術室内の機器量を減らすために、非放射線ベースのナビゲーション手段及び位置特定手段を提供することができる。本明細書で使用する際、「位置特定」という用語は、基準座標系内の対象物の位置を判断し/又は監視することを指すことがある。術前写像、コンピュータビジョン、リアルタイムEM追跡、及びロボットコマンドデータなどの技術を個別に又は組み合わせて使用して、放射線のない手術環境を実現することができる。放射線ベースの撮像モダリティが依然として使用される他のケースでは、術前写像、コンピュータビジョン、リアルタイムEM追跡、及びロボットコマンドデータを個別に又は組み合わせて使用して、放射線ベースの撮像モダリティを通してのみ得られる情報を向上させることができる。
【0124】
図20は、例示的な実施形態による、器具の場所など、ロボットシステムの1つ又は2つ以上の要素の位置を推定する位置特定システム90を示すブロック図である。位置特定システム90は、1つ又は2つ以上の命令を実行するように構成された1つ又は2つ以上のコンピュータデバイスセットであってもよい。コンピュータデバイスは、上で考察した1つ又は2つ以上の構成要素における1つのプロセッサ(又は複数のプロセッサ)及びコンピュータ可読メモリによって具体化されてもよい。それに限るのではなく例として、コンピュータデバイスは、
図1に示すタワー30、
図1~
図4に示すカート、
図5~
図14に示すベッドにあってもよい。
【0125】
図20に示されるように、位置特定システム90は、入力データ91~94を処理して医療器具の遠位先端部の位置データ96を生成する位置特定モジュール95を含んでもよい。位置データ96は、基準系に対する器具の遠位端の場所及び/又は配向を表すデータ又は論理であってもよい。基準系とは、患者の解剖学的構造に対する、又はEM場発生器(EM場発生器についての以下の考察を参照)などの分かっている対象物に対する基準系とすることができる。
【0126】
ここで、様々な入力データ91~94についてより詳細に説明する。低用量CTスキャンの収集の使用を通して術前写像を果たすことができる。術前CTスキャンは、例えば、患者の内部解剖学的構造の切欠図の「スライス」として可視化される三次元画像に再構成される。全体として分析される場合、患者の肺網などの患者の解剖学的構造の解剖学的空腔、解剖学的空間、及び解剖学的構造を対象とする画像ベースのモデルを起こすことができる。中心線形状などの手法をCT画像から判断し、近似して、モデルデータ91(術前CTスキャンのみを使用して起こされた場合は「術前モデルデータ」とも呼ばれる)と呼ばれる患者の解剖学的構造の三次元ボリュームを作成することができる。中心線形状の使用は、その内容の全体が本明細書に組み込まれている、米国特許出願第14/523,760号で考察されている。ネットワーク位相モデルもまた、CT画像から導出することができ、気管支鏡検査に特に適している。
【0127】
いくつかの実施形態では、器具はカメラを装備して、視覚データ92を提供してもよい。位置特定モジュール95が、1つ又は2つ以上の視覚ベースの場所追跡を可能にするように、視覚データを処理することができる。例えば、術前モデルデータを視覚データ92と併用して、医療器具(例えば、内視鏡、又は内視鏡のワーキングチャネルを通って前進する器具)のコンピュータビジョンベースの追跡を可能にすることができる。例えば、術前モデルデータ91を使用して、ロボットシステムは、内視鏡の予想される移動路に基づいて、モデルから予測される内視鏡画像ライブラリを起こすことができ、各画像はモデル内の位置にリンクされる。手術中に、カメラ(例えば、内視鏡の遠位端にあるカメラ)に取り込まれたリアルタイム画像を画像ライブラリにあるものと比較して、位置特定を助けるために、ロボットシステムがこのライブラリを参照することができる。
【0128】
他のコンピュータビジョンベースの追跡技術は、特徴追跡を使用して、カメラ、ひいては、内視鏡の運動を判定する。位置特定モジュール95のいくつかの特徴は、解剖学的管腔に対応する円形幾何学形状を術前モデルデータ91において特定し、その幾何学的形状の変化を追跡し、どの解剖学的管腔が選択されたか、またカメラの相対的な回転及び/又は並進運動を確認し得る。位相マップの使用は、視覚ベースのアルゴリズム又は視覚ベースの技法を更に向上させることができる。
【0129】
光学フロー、別のコンピュータビジョンベースの技術は、カメラの移動を推測するために、視覚データ92内のビデオシーケンス内の画像ピクセルの変位及び並進を分析してもよい。光学フロー技術の例としては、運動検出、物体セグメンテーション計算、輝度、運動補償符号化、立体視差測定などを挙げることができる。複数の反復にわたり複数のフレームを比較することにより、カメラ(及びしたがって内視鏡)の移動及び場所を判定することができる。
【0130】
位置特定モジュール95は、リアルタイムEM追跡を使用して、術前モデルによって表される患者の解剖学的構造に登録され得るグローバル座標系内に、内視鏡のリアルタイムの位置を生成することができる。EM追跡では、医療器具(例えば、内視鏡器具)に1つ又は2つ以上の場所及び配向で埋め込まれた1つ又は2つ以上のセンサコイルで構成されたEMセンサ(又はトラッカ)が、分かっている場所に位置決めされた1つ又は2つ以上の静的EM場発生器によって生み出されたEM場の変動を測定する。EMセンサによって検出された場所情報は、EMデータ93として保存される。埋め込まれたセンサが検出することができる低強度磁場を生み出すように、患者の近くにEM場発生器(又は送信機)を置くことができる。磁場は、EMセンサのセンサコイルに小さい電流を誘導し、この電流を分析して、EMセンサとEM場発生器との間隔及び角度を確認することができる。患者の解剖学的構造の術前モデルにおける位置と座標系における場所1つだけを位置合わせする幾何学的変換を確認するために、この間隔及び配向を患者の解剖学的構造(例えば、術前モデル)に術中「見当合わせ」することができる。見当合わせされると、医療器具の1つ又は2つ以上の位置(例えば、内視鏡の遠位先端)に埋め込まれたEMトラッカが、患者の解剖学的構造を通る医療器具の進行のリアルタイム表示を提供することができる。
【0131】
ロボットコマンド及び運動学データ94はまた、ロボットシステムのための位置特定データ96を提供するために、位置特定モジュール95によって使用されてもよい。術前較正中に、関節運動コマンドからもたらされるデバイスピッチ及びヨーを確認することができる。術中に、これらの較正測定を分かっている挿入深度情報と組み合わせて使用して、器具の位置を推定することができる。その代わりに、これらの計算を、EM、視覚、及び/又は位相モデリングと組み合わせて分析して、ネットワーク内の医療器具の位置を推定することができる。
【0132】
図20が示すように、いくつかの他の入力データは、位置特定モジュール95によって使用することができる。例えば、
図20には示していないが、形状感知ファイバを利用する器具が、位置特定モジュール95が器具の位置及び形状を確認するのに使用することができる形状データを提供することができる。
【0133】
位置特定モジュール95は、入力データ91~94を組み合わせて使用することができる。場合によっては、このような組み合わせでは、位置特定モジュール95が入力データ91~94のそれぞれから確認した場所に信頼重みを割り当てるという確率的手法を使用することができる。したがって、EMデータが信頼できない場合(EM干渉がある場合など)、EMデータ93によって確認された位置の信頼性を低下させることがあり、位置特定モジュール95は、視覚データ92並びに/又はロボットコマンド及び運動学データ94をより強く当てにすることがある。
【0134】
上で考察されるように、本明細書で考察されるロボットシステムは、上述の技術のうちの1つ又は2つ以上の組み合わせを組み込むように設計することができる。タワー、ベッド、及び/又はカートに基づいているロボットシステムのコンピュータベースの制御システムは、例えば、永続的な磁気記憶ドライブ、ソリッドステートドライブなどの非一時的コンピュータ可読記憶媒体内に、コンピュータプログラム命令を記憶してもよく、コンピュータプログラム命令は、実行されると、システムに、センサデータ及びユーザコマンドを受信及び分析させ、システム全体の制御信号を生成させ、グローバル座標系内の器具の位置、解剖学的マップなどのナビゲーション及び位置特定データを表示させる。
【0135】
2.ロボットアームに対する外力及び/又はトルクを検出し、それに応答するためのシステム、デバイス、及び方法
本開示の実施形態は、ロボットアームのテレオペレーションが実施されている間に、ロボットアームとの相互作用(例えば、不注意な接触又は衝突、直接操作など)を検出し、それに応答するためのシステム、方法、及びデバイスに関する。
【0136】
本開示のいくつかの実施形態によれば、ロボット医療システムは、ロボットアーム(例えば、ロボットアームのリンク機構、関節など)における相互作用を感知するための1つ又は2つ以上のセンサ及び/又はセンサアーキテクチャを含む。例えば、ロボットアームは、テレオペレーション(例えば、手術、診断手順など)中に、隣接する物体(例えば、手術室内の患者、医療従事者、及び/又はアクセサリ)と接触する場合がある。センサ及び/又はセンサアーキテクチャは、ロボットアームに対する相互作用(例えば、力、接触、変位、トルクなど)を検出し、任意選択的に、それを測定する。
【0137】
測定された相互作用が、患者、医療従事者、及び/又はアクセサリの安全接触限界(例えば、安全力限界及び/又は安全トルク限界)に近づくと、ロボットシステムは、ロボットマニピュレータに対する接触力が安全接触限界を超えないことを保証するように適切に応答しなければならない。相互作用を検出したことに応答して、かつ、相互作用の特性(例えば、大きさ、方向、変化率など)の判定に従って、例えば、ロボットシステムは、ロボットアームのゼロ空間運動を有効化するなど、ロボットアーム上の適切な制御された移動を有効化すること、及び/又は、検出された力及び/又はトルクの特性に従って選択される速度及び/又は方向(例えば、テレオペレーションにより要求される速度及び/又は方向、他の速度及び/又は方向(例えば、ゼロ空間運動、運動の禁止など))でロボットアームの1つ又は2つ以上の関節及び/又はリンクを移動させることができる。
【0138】
測定された相互作用が安全接触限界に近づくと、ロボットシステムはまた、外科医がシステムの安全接触限界内でロボットシステムを動作させるように、触覚又は他のタイプのフィードバックを外科医に提供する。例えば、いくつかの実施形態によれば、ロボットシステムは、医師コンソールディスプレイへの出力の形態で、又は触覚フィードバックとして、フィードバックを提供することができる。
【0139】
A.ロボットシステム
図21は、いくつかの実施形態による例示的なロボットシステム200を示す。いくつかの実施形態では、ロボットシステム200は、ロボット医療システム(例えば、ロボット手術システム)である。
図21の例では、ロボットシステム200は、患者支持プラットフォーム202(例えば、患者プラットフォーム、テーブル、ベッドなど)を含む。患者支持プラットフォーム202の長さに沿った2つの端部は、それぞれ「頭部」及び「脚部」と呼ばれる。患者支持プラットフォーム202の2つの側は、それぞれ「左」及び「右」と呼ばれる。患者支持プラットフォーム202は、患者支持プラットフォーム202のための支持体204(例えば、剛性フレーム)を含む。
【0140】
ロボットシステム200はまた、ロボットシステム200を支持するための基台206を含む。基台206は、ロボットシステム200が物理的環境において容易に移動可能又は再位置決め可能であることを可能にする車輪208を含む。いくつかの実施形態では、車輪208は、ロボットシステム200から省略されるか又は収納可能であり、基台206が地面又は床に直接置かれることができる。いくつかの実施形態では、車輪208は足で置き換えられる。
【0141】
ロボットシステム200は、1つ又は2つ以上のロボットアーム210を含む。ロボットアーム210は、
図1~
図20を参照して上述したロボット医療処置を実施するように構成することができる。
図21は5つのロボットアーム210を示すが、ロボットシステム200は、5つ未満、又は6つ若しくはそれ以上を含む、任意の数のロボットアームを含んでもよいことを理解されたい。
【0142】
ロボットシステム200はまた、ロボットアーム210を支持する1つ又は2つ以上のバー220(例えば、調節式アーム支持体又は調節可能なバー)を含む。ロボットアーム210の各々は、ロボットアームのそれぞれの基台関節によって、バー220上に支持され、かつ移動可能に結合されている。いくつかの実施形態では、
図12に記載されているように、バー220は、リフト、横方向並進、傾斜などを含むいくつかの自由度を提供することができる。いくつかの実施形態では、ロボットアーム210及び/又は調節式アーム支持体220の各々は、それぞれの運動学的連鎖とも呼ばれる。
【0143】
図21は、図の視野内にあるバー220によって支持された3つのロボットアーム210を示す。残りの2つのロボットアームは、患者支持プラットフォーム202の他方の長さにわたって位置する別のバーによって支持されている。
【0144】
いくつかの実施形態では、調節式アーム支持体220は、ロボット医療処置のためにロボットアーム210のうちの1つ又は2つ以上のための基本位置を提供するように構成されることができる。ロボットアーム210は、ロボットアーム210をその下にあるバー220の長さに沿って並進させることによって、及び/又は1つ又は2つ以上の関節及び/又はリンクを介してロボットアーム210の位置及び/又は配向を調整することによって、患者支持プラットフォーム202に対して位置決めすることができる(例えば、
図23参照)。
【0145】
いくつかの実施形態では、調節式アーム支持体220は、患者支持プラットフォーム202の長さに沿って並進させることができる。いくつかの実施形態では、患者支持プラットフォーム202の長さに沿ったバー220の並進により、バー220によって支持されたロボットアーム210のうちの1つ又は2つ以上が、バーとともに又はバーに対して同時に並進させられる。いくつかの実施形態では、バー220は、ロボットアームのうちの1つ又は2つ以上をロボット医療システム200の基台206に対して静止させたまま、並進させることができる。
【0146】
図21の例では、調節式アーム支持体220は、患者支持プラットフォーム202の部分的な長さに沿って配置されている。いくつかの実施形態では、調節式アーム支持体220は、患者支持プラットフォーム202の全長にわたって、及び/又は患者支持プラットフォーム202の部分的な幅又は全幅にわたって延在してもよい。
【0147】
いくつかの実施形態によれば、ロボット医療処置中に、ロボットアーム210のうちの1つ又は2つ以上はまた、器具212(例えば、内視鏡及び/又は手術中に使用され得る任意の別の器具などのロボット制御される医療器具又はツール)を保持するように構成することができ、かつ/又は1つ又は2つ以上のカニューレを含む1つ又は2つ以上のアクセサリに結合することができる。
【0148】
図22は、いくつかの実施形態による
図21の例示的なロボットシステム200の別の図を示す。この例では、ロボット医療システム200は、6つのロボットアーム210-1、210-2、210-3、210-4、210-5、及び210-6を含む。患者プラットフォーム202は、基台206と患者プラットフォーム202との間に延在するカラム214によって支持されている。いくつかの実施形態では、患者プラットフォーム202は傾斜機構216を含む。傾斜機構216は、患者プラットフォームがカラム214に対して枢動、回転、又は傾斜することを可能にするために、カラム214と患者プラットフォーム202との間に位置決めすることができる。傾斜機構216は、患者プラットフォーム202の横方向及び/又は長手方向の傾斜を可能にするように構成することができる。いくつかの実施形態では、傾斜機構216は、患者プラットフォーム202の横方向及び長手方向の同時傾斜を可能にする。
【0149】
図22は、非傾斜状態又は位置にある患者プラットフォーム202を示す。いくつかの実施形態では、非傾斜状態又は位置は、患者プラットフォーム202のデフォルト位置であってもよい。いくつかの実施形態では、患者プラットフォーム202のデフォルト位置は、図示されるように実質的に水平な位置である。図示のように、非傾斜状態では、患者プラットフォーム202は、ロボット医療システム200を支持する面(例えば、地面又は床)に対して水平又は平行に位置決めすることができる。
【0150】
図22を引き続き参照すると、ロボットシステム200の図示された例では、患者プラットフォーム202は、支持体204を含む。いくつかの実施形態では、支持体204は、剛性支持構造又はフレームを含み、1つ又は2つ以上の表面、パッド、又はクッション222を支持することができる。患者プラットフォーム202の上面は、支持面224を含むことができる。医療処置中に、患者を支持面224上に置くことができる。
【0151】
図22は、ロボットアーム210が患者プラットフォーム202の上方に到達する、例示的な展開構成におけるロボットアーム210及び調節式アーム支持体220を示す。いくつかの実施形態において、患者プラットフォーム202の下方に異なる構成要素の収納を可能にするロボットシステム200の構成により、ロボットアーム210及びアーム支持体220は、患者プラットフォーム202の下方の空間を占めることができる。したがって、いくつかの実施形態では、下方の収納のために利用可能な空間を最大化するために、傾斜機構216を低プロファイル及び/又は低容積を有するように構成することが有利であり得る。
【0152】
図22は、本明細書に開示された実施形態のある特定の特徴を説明するために使用され得る例示的なx、y、及びz座標系を示す。この座標系は例示及び説明のみを目的として提供されており、他の座標系が使用されてもよいことが理解される。図示された例では、x方向又はx軸は、患者プラットフォーム202が非傾斜状態にある場合、患者プラットフォーム202を横切って横方向に延在する。つまり、x方向は、患者プラットフォーム202が非傾斜状態にある場合、横方向の一方側(例えば、右側)から横方向の他方側(例えば、左側)まで患者プラットフォーム202を横切って延在する。y方向又はy軸は、患者プラットフォーム202が非傾斜状態にある場合、患者プラットフォーム202に沿って長手方向に延在する。つまり、y方向は、患者プラットフォーム202が非傾斜状態にある場合、一方の長手方向端部(例えば、頭部端部)から他方の長手方向端部(例えば、脚部端部)まで患者プラットフォーム202に沿って延在する。非傾斜状態では、患者プラットフォーム202は、床又は地面に対して平行であることができるx-y平面にあるか又はx-y平面に対して平行であることができる。図示された例では、z方向又はz軸は、カラム214に沿って垂直方向に延在する。いくつかの実施形態では、傾斜機構216は、y軸に対して平行な横方向傾斜軸を中心に患者プラットフォーム202を回転させることにより、患者プラットフォーム202を横方向に傾斜させるように構成されている。傾斜機構216は更に、x軸に対して平行な長手方向傾斜軸を中心に患者プラットフォーム202を回転させることにより、患者プラットフォーム202を長手方向に傾斜させるように構成することができる。
【0153】
B.ロボットアーム
図23A及び
図23Bは、いくつかの実施形態による例示的なロボットアーム210の異なる図を示す。
【0154】
図23Aは、ロボットアーム210が複数のリンク302(例えば、リンケージ)を含むことを示す。リンク302は、1つ又は2つ以上の関節304によって接続されている。関節304の各々は、1つ又は2つ以上の自由度(degrees of freedom、DoF)を含む。
【0155】
図23Aでは、関節304は、ロボットアーム210の基台306に、又はその近くに位置する第1の関節304-1(例えば、基台関節又はA0関節)を含む。いくつかの実施形態では、基台関節304-1は、ロボットアーム210がバー220に沿って(例えば、y軸に沿って)並進することを可能にするプリズム接合部を備える。関節304はまた、第2の関節304-2(例えば、A1関節)を含む。いくつかの実施形態では、第2の関節304-2は、基台関節304-1に対して回転する。関節304はまた、リンク302-2の一端に接続された第3の関節304-3(例えば、A2関節)を含む。いくつかの実施形態では、関節304-3は、複数のDoFを含み、関節304-3に対するリンク302-2の傾斜及び回転の両方を容易にする。
【0156】
図23Aはまた、リンク302-2の他端に接続された第4の関節304-4(例えば、A3関節)を示す。いくつかの実施形態では、関節304-4は、リンク302-2とリンク302-3とを接続する肘関節を含む。関節304は、ロボットアーム210の遠位部分に位置する一対の関節304-5(例えば、手首ロール関節又はA4関節)及び関節304-6(例えば、手首ピッチ関節又はA5関節)を更に含む。
【0157】
ロボットアーム210の近位端は、基台306に接続されてもよく、ロボットアーム210の遠位端は、高度デバイスマニピュレータ(advanced device manipulator、ADM)308(例えば、ツールドライバ、器具ドライバ、又はロボットエンドエフェクタなど)に接続されてもよい。ADM 308は、医療器具212(例えば、ツール、スコープなど)の位置決め及び操作を制御するように構成され得る。
【0158】
ロボットアーム210はまた、カニューレの存在又はロボットアーム210へのカニューレの近接を検出するためのカニューレセンサ310を含むことができる。いくつかの実施形態では、カニューレセンサ310がカニューレの存在を(例えば、ロボットシステム200の1つ又は2つ以上のプロセッサを介して)検出すると、ロボットアーム210はドッキング状態(例えば、ドッキング位置)に置かれる。いくつかの実施形態では、ロボットアーム210がドッキング位置にあるとき、ロボットアーム210は、以下で更に詳細に論じられるように、カニューレの位置及び/又は配向を維持するために、ゼロ空間運動を実行することができる。逆に、カニューレセンサ310によってカニューレが検出されないとき、ロボットアーム210は、ドッキング解除状態(例えば、ドッキング解除位置)に置かれる。
【0159】
いくつかの実施形態では、
図23Aに図示されるように、ロボットアーム210は、ロボットアーム210を(例えば、ボタン312を押下することによって)アドミタンスモードにするために使用され得る、入力又はボタン312(例えば、ドーナツ形状ボタン、又は他のタイプの制御など)を含む。アドミタンスモードは、アドミタンススキーム又はアドミタンス制御とも呼ばれる。アドミタンスモードでは、ロボットシステム210は、力及び/又はトルク(例えば、ロボットアーム210に付与される)を測定し、対応する速度及び/又は位置を出力する。いくつかの実施形態では、ロボットアーム210は、アドミタンスモードにおいて、ユーザによって手動で操作することができる(例えば、セットアップ手順中、又は手順の間など)。いくつかの例では、アドミタンス制御を使用することによって、オペレータは、ロボットアーム210を移動させるためにロボットシステム200における慣性の全てを克服する必要はない。例えば、アドミタンス制御下で、オペレータがアームに力を付与すると、ロボットシステム200は、力を測定し、ロボットアーム210に関連した1つ又は2つ以上のモータを駆動することによって、オペレータがロボットアーム210を移動させることを支援することができ、それによってロボットアーム210の所望の速度及び/又は位置をもたらすことができる。
【0160】
いくつかの実施形態では、リンク302は、(例えば、ロボットアーム210に対する医療ツール212の取り付け及び取り外しを容易にするために)医療ツール212に取り外し可能に結合されてもよい。関節304は、ADM 308を介して医療ツール212の制御を容易にする複数の自由度(DoF)をロボットアーム210に提供する。
【0161】
図23Bは、ロボットアーム210の正面図を示す。いくつかの実施形態では、ロボットアーム210は、(例えば、ボタン314を1回押すこと、又は連続的に押し続けることによって)ロボットアーム210をインピーダンスモードにするための、
図23Aのボタン312とは異なる第2の入力又はボタン314(例えば、押しボタン)を含む。この例では、ボタン314は、A4関節304-5とA5関節304-6との間に位置している。インピーダンスモードは、インピーダンススキーム又はインピーダンス制御とも呼ばれる。インピーダンスモードでは、ロボットシステム200は、変位(例えば、位置及び速度の変化)を測定し、ロボットアームの手動移動を容易にするための力を出力する。いくつかの実施形態では、ロボットアーム210は、インピーダンスモードにおいて(例えば、セットアップ手順中に)ユーザによって手動で操作することができる。いくつかの実施形態では、インピーダンスモード下で、ロボットアーム210の一部のオペレータの移動は、ロボットアーム210の他の部分を逆駆動してもよい。
【0162】
いくつかの実施形態では、アドミタンス制御のために、力センサ又はロードセルは、オペレータがロボットアーム210に加えている力を測定し、軽く感じるようにロボットアーム210を移動させることができる。アドミタンス制御下では、コントローラ内のモータが質量を加速させる助けとなり得るため、ロボットアーム210の知覚慣性を隠すことができるため、アドミタンス制御は、インピーダンス制御よりも軽く感じることができる。対照的に、インピーダンス制御では、いくつかの実施形態によれば、ユーザは、全てではないにせよほとんどの質量加速に関与する。
【0163】
いくつかの状況では、オペレータに対するロボットアーム210の位置に応じて、手動操作モード(例えば、アドミタンスモード及び/又はインピーダンスモード)を起動するためにボタン312及び/又はボタン314に手を伸ばすことは不便であり得る。したがって、これらの状況下では、ボタン以外によって手動操作モードをトリガすることがオペレータにとって便利であり得る。
【0164】
いくつかの実施形態では、ロボットアーム210は、ロボットアーム210をアドミタンスモード及びインピーダンスモードにするために使用することができる単一のボタンを含む(例えば、長押し、短押し、押して保持などの異なる押しを使用することによって)。いくつかの実施形態では、ロボットアーム210は、ユーザがアームリンク機構(例えば、リンク302)及び/又は関節(例えば、関節304)を押し、力閾値を克服することによって、インピーダンスモードにすることができる。
【0165】
医療処置中、ロボットアーム210のADM308及び/又はそれに結合されたツール212の遠隔運動中心(RCM)を静的姿勢(例えば、位置及び/又は配向)に保つことが望ましい場合がある。RCMは、医療ツール212が挿入されるカニューレ又は他のアクセスポートの運動が制約される空間内の点を参照する場合がある。いくつかの実施形態では、医療ツール212は、RCMを維持しながら患者の切開部又は自然開口部を通して挿入されるエンドエフェクタを含む。いくつかの実施形態では、医療ツール212は、ロボット医療システムのセットアッププロセス中に後退状態にあるエンドエフェクタを含む。
【0166】
いくつかの状況において、ロボットシステム200は、ロボットアーム210のADM308及び/又はRCMがそれぞれの姿勢(例えば、位置及び/又は配向)に維持されている間に、ロボットアーム210の1つ又は2つ以上のリンク302を「ゼロ空間」内で移動させて、近くの物体(例えば、他のロボットアーム)との衝突を回避するように構成することができる。ゼロ空間は、ロボットアーム210が移動することができ、ADM 308及び/又はRCMの移動をもたらさず、それによって(例えば、患者内の)医療ツール212の位置及び/又は配向を維持する空間と見なされ得る。いくつかの実施形態では、ロボットアーム210は、ADM308の各姿勢に利用可能な複数の位置及び/又は構成を有することができる。
【0167】
ロボットアーム210がADM308を空間内の所望の姿勢に移動させるために、ある特定の実施形態では、ロボットアーム210は、少なくとも6つのDoF、すなわち、並進(例えば、X位置、Y位置、及びZ位置)のための3つのDoF及び回転(例えば、ヨー、ピッチ、及びロール)のための3つのDoFを有し得る。いくつかの実施形態では、各関節304は、ロボットアーム210に単一のDoFを提供することができ、したがって、ロボットアーム210は、空間内の任意の姿勢でADM 308を位置決めするための運動の自由度を達成するために少なくとも6つの関節を有してよい。ロボットアーム210のADM308及び/又は遠隔中心若しくは運動を所望の姿勢に更に維持するために、ロボットアーム210は、少なくとも1つの追加の「冗長関節」を更に有してもよい。したがって、特定の実施形態では、システムは、少なくとも7つの関節304を有するロボットアーム210を含んでよく、ロボットアーム210に少なくとも7つのDoFを提供する。いくつかの実施形態では、ロボットアーム210は、各々が2つ以上の自由度を有する関節304のサブセットを含んでもよく、それによって、ゼロ空間運動のための追加のDoFを達成する。しかしながら、実施形態に応じて、ロボットアーム210は、より多い又はより少ない数のDoFを有してもよい。
【0168】
更に、
図12に記載されているように、バー220(例えば、調節式アーム支持体)は、リフト、横方向並進、傾斜などを含むいくつかの自由度を提供することができる。したがって、実施形態に応じて、ロボット医療システムは、ゼロ空間移動及び衝突回避を提供するために、ロボットアーム210における自由度を超えて更に多くのロボット制御された自由度を有することができる。これらの実施形態のうちのそれぞれの実施形態では、1つ又は2つ以上のロボットアームのエンドエフェクタ(及びそれに結合される任意のツール又は器具)、並びにツールの軸に沿った遠隔中心は、有利には、患者内の姿勢及び/又は位置を維持することができる。
【0169】
少なくとも1つの冗長DoFを有するロボットアーム210は、所与のタスクを実施するための最小数のDoFよりも少なくとも1つ多いDoFを有する。例えば、ロボットアーム210は、少なくとも7つのDoFを有することができ、いくつかの実施形態によれば、ロボットアーム210の関節304のうちの1つを冗長関節とみなすことができる。1つ又は2つ以上の冗長関節は、ADM 308の姿勢及びRCMの位置を維持し、かつ他のロボットアーム又は物体との衝突を回避するために、ロボットアーム210がゼロ空間内で移動することを可能にすることができる。
【0170】
いくつかの実施形態では、ロボットシステム200は、ゼロ空間における1つ又は2つ以上の冗長関節の移動を利用することによって、例えば、隣接するロボットアーム210間の衝突を回避するために衝突回避を実施するように構成することができる。例えば、ロボットアーム210が別のロボットアーム210と衝突する、又は近づく(例えば、その規定された距離内に)とき、ロボットシステム200の1つ又は2つ以上のプロセッサは、衝突又は差し迫った衝突を(例えば、運動学を介して)検出するように構成することができる。したがって、ロボットシステム200は、ロボットアーム210の一方又は両方を制御して、衝突又は切迫した衝突を回避するためにゼロ空間内でそれらのそれぞれの関節を調整することができる。少なくとも一対のロボットアームを含む実施形態では、ロボットアームのうちの1つの基台及びそのエンドエフェクタは、その姿勢に留まることができる一方で、それらの間のリンク又は関節は、隣接するロボットアームとの衝突を回避するために、ゼロ空間内で移動する。
【0171】
C.センサ
図24A~
図24Hは、いくつかの実施形態による、ロボットアーム210のセンサを示す。いくつかの実施形態では、ロボットアーム210の各々は、ロボットアーム210と1つ又は2つ以上の外部物体との間の接触を検出するために使用することができる異なるセンサを含む。いくつかの実施形態によれば、検出された力、トルクなどの量に応じて、ロボットシステム200は、検出された接触力又はトルクの量及び/又は方向に従ってロボットアーム210上の制御された移動を有効化することができる。
【0172】
いくつかの実施形態では、センサはセンサアーキテクチャの一部である。いくつかの実施形態によれば、センサアーキテクチャは、センサデータ、例えば、センサ属性又はパラメータ(例えば、力、接触、モーメント、変位、移動、位置など)、及びセンサからロボットシステム200の1つ又は2つ以上のプロセッサへの値(例えば、場所、大きさ、タイミング、持続時間など)を通信するための他の構成要素を含んでもよい。
【0173】
いくつかの実施形態では、センサは、1つ又は2つ以上の関節センサ(例えば、関節ベースのセンサ)を備える。
図24Aは、ロボットアーム210の基台306の近くの関節304-1(例えば、基台関節又はA0関節)上に位置する関節センサ402(例えば、A0関節センサ)を示す。いくつかの実施形態では、A0関節センサ402は、ロボットアーム210の近位端上で相互作用力が検出されることを可能にする力センサを備える。いくつかの実施形態では、A0関節センサ402は、ロボットアーム210を位置制御モードから手動操作モード(例えば、インピーダンスモード、アドミタンスモード、グラブ・アンド・ゴーモードなど)に移行させるための起動検出として機能する。
【0174】
いくつかの実施形態では、センサは、ロボットアーム210の他の関節上に位置する他の関節ベースのセンサ(例えば、A1関節304-2、A2関節304-3、A3関節304-4などに位置するセンサ)を含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、センサは、1つ又は2つ以上の非関節ベースのセンサを含む。非関節ベースのセンサは、ロボットアーム210のリンク302の長さに沿って、及び/又はADM 308上に配置することができる。センサ(関節ベース及び非関節ベースの両方)は、ロボットアーム210と外部物体(例えば、オペレータ、患者、別のロボットアーム、手術ツール、及び/又は下にあるバー220)との間の相互作用を検出する。
【0176】
いくつかの実施形態では、
図24Aに示すように、センサはまた、6軸ロードセル404を備える。6軸ロードセル404は、複数の方向の力及びモーメント(例えば、トルク)を感知することができる力及びモーメントセンサである(例えば、X軸、Y軸、及びZ軸に沿った力、並びに各軸の周りのモーメントを測定することができる)。
図24Aに示されるように、6軸ロードセル404は、アーム210の遠位部分上の一対の関節の間に(例えば、A4関節304-5とA5関節304-6との間に)位置している。6軸ロードセル404は、ツールドライバ(例えば、ADM 308)のための支持マウントとして機能することができる。したがって、6軸ロードセル404は、(例えば、ツールドライバによって)ロボットアーム210の遠位で検出される力及び/又はモーメントを測定することができる。いくつかの実施形態では、6軸ロードセル404は、リンクなしで(例えば、リンク302-4なしで)、A4関節304-5とA5関節304-6との間に直接配置される。
【0177】
いくつかの実施形態では、ロボットアーム210はまた、接触センサ408(例えば、シェルセンサ)を更に含む。
図24Bの例は、14個の接触センサ(例えば、408-1~408-14)を示すが、ロボットアーム210は、任意の数の接触センサ408を含むことができることを理解されたい。いくつかの実施形態では、接触センサ408は、力及び/又はモーメントセンサを備え、複数の方向の力及び/又はモーメントを検出(例えば、感知及び/測定)することができる。いくつかの実施形態では、接触センサ408は、ロボットアームの関節304に位置決めされる。いくつかの実施形態では、接触センサは、ロボットアーム210の近位部分上のリンク及び/又は遠位部分上のリンクなどのリンク302の長さに沿って位置している。
【0178】
いくつかの実施形態では、接触センサ408は、手術中に患者又は医療従事者と定期的に衝突することが知られているロボットアーム210の領域に位置している。
図24Cは、ロボットアーム210の遠位部分の3つの図を示しており、患者と衝突する可能性が比較的高い領域410が陰影付けされている。
図24Dは、ロボットアーム201の近位部分(例えば、
図24Cのロボットアーム210の遠位部分の近位)の3つの図を示しており、患者又は医療従事者と衝突する可能性が比較的高い領域412に陰影が付けられている。
【0179】
図24C(i)の領域410-1を例として使用すると、いくつかの実施形態では、ADM308は、ADM308における、又はそれに近接した相互作用を検出する1つ又は2つ以上の接触センサ408を含む。いくつかの実施形態では、測定された力又はモーメントの大きさが下方接触力限界及び/又は下方トルク限界と上方接触力限界及び/又は上方トルク限界との間にあるという判定に従って、ロボットシステム200は、検出された接触力又はトルクに従って、ロボットアーム210上の制御された移動を有効化することができる。例えば、いくつかの実施形態によれば、制御された移動は、予め設定された制御機構(例えば、テレオペレーション、ボタン制御など)を介して、ユーザのコマンドに従ったロボットアーム210の移動を含んでもよい。いくつかの実施形態によれば、制御された移動はまた、ロボットアームに対する検出された接触力又はトルクを低減するために、ロボットアーム210の1つ又は2つ以上の関節及び/又はリンクの移動を含んでもよい。いくつかの実施形態によれば、制御された移動はまた、ロボットアーム210のゼロ空間運動を含んでもよい。
【0180】
追加的に及び/又は代替的に、いくつかの実施形態では、ADMとの相互作用(例えば、力及びモーメント)は、ADMが(直接的又は間接的に)取り付けられた6軸ロードセル404によって検出されてもよい。
【0181】
いくつかの実施形態では、接触センサ408は、ロボットアームリンクの外側の周りに懸架された「シェル」を有することができる。
図24Eは、いくつかの実施形態による、ロボットアーム210の例示的なリンク302を示す。
【0182】
いくつかの実施形態では、
図24Eに示すように、リンク302は、剛性シェル422と、構造リンク424と、構造カバー426と、第1の関節430(例えば、
図23A及び
図23BのA2関節304-3)と、第2の関節428(例えば、
図23A及び
図23BのA3関節304-4)と、一対のリアクションパドル432と、シェルカバー434(例えば、化粧カバー)と、を備える。いくつかの実施形態によれば、構造カバー426は、構造リンク424の構成要素を収容し、第1の関節430と第2の関節428との間に内部構造接続を形成するために、構造リンク424に取り付けることができる。
【0183】
いくつかの実施形態では、シェル422は、(例えば、外部物体による)ロボットアーム210上で接触を検出するために使用される。例えば、いくつかの実施形態によれば、シェル422は、シェルカバー434とともに、構造リンク424から懸架され、かつ構造リンクを取り囲んでいる。いくつかの実施形態によれば、シェル422とリンク302の内部構成要素/部材(例えば、構造リンク424及び構造カバー426)との間の相対運動は、外部物体との接触を判定するためにリンク302の長さに沿って配置された1つ又は2つ以上のセンサ(例えば、接触センサ408)を使用して検出することができる。
【0184】
いくつかの実施形態では、接触センサ408(例えば、シェルセンサ)のうちの1つ又は2つ以上は、リンク302の長さに沿って、構造リンク424とリンク302のシェル422との間の様々な場所に戦略的に配置される。例えば、シェル422は、接触センサ408を介して構造リンク424上に懸架することができる。
【0185】
いくつかの実施形態では、接触センサ408は、リンク302の長さに沿って均一に分散されている。いくつかの実施形態では、接触センサ408は、リンク302の長さに沿ってランダムに分散させることができる。代替的に、いくつかの実施形態では、より多くの数のセンサ408が、リンク302の特定の領域(例えば、
図24Cの領域410及び
図24Dの領域412など、外部物体とより多く接触することが知られている領域)に位置してもよい。いくつかの実施形態では、センサ408の分布にかかわらず、シェル422が構造リンク424を取り囲んでいるので、リンク302が外部物体に接触すると、物体はシェル422に接触する。したがって、力及び/又はモーメント感知接触センサ408は、シェル422と外部物体との間の接触を検出することができる。センサ408はまた、リンク302が外部物体と接触することによって引き起こされる、シェル422と構造リンク504との間の全方向における力及び/又はトルクの変化を測定することができる。
【0186】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の従来のロードセル、力感知抵抗器、並びに/又は、力、モーメント及び/又は変位を感知することが可能な任意の構成要素(例えば、バネと組み合わせられるとき)が、外部物体との相互作用を検出するために、接触センサ408の代わりに(又はそれに加えて)使用されてもよい。
【0187】
本明細書で使用される場合、シェル422及びシェルカバー434は、集合的に単に「シェル」422と呼ばれることがあり、構造リンク424及び構造カバー426は、文脈が明確に別様に示さない限り、集合的に単に構造リンク424又は操作可能リンク(例えば、リンク302)と呼ばれることがある。
【0188】
図24F及び
図24Gは、いくつかの実施形態によるロボットアーム210のリンク302に沿ったセンサ分布を示す。
【0189】
図24F(i)及び
図24F(ii)は、それぞれ、いくつかの実施形態による、リンク302の1つの端部の例示的な側面図及び正面図を示す。いくつかの実施形態では、リンク302は、ロボットアーム210の近位リンク(例えば、
図23A及び
図23Bのリンク302-2)に対応する。この例では、リンク302の1つの端部は、7つの接触センサ(例えば、408-1~408-7)を含む。いくつかの実施形態では、リンク302(例えば、リンク302-2)は両端で実質的に対称であり得るので、リンク302には合計14個のセンサ408がある。
【0190】
図24G(i)及び
図24G(ii)は、それぞれ、いくつかの実施形態による、リンク302の例示的な側面図及び正面図を示す。いくつかの実施形態では、リンク302は、ロボットアーム210の遠位リンク(例えば、
図23A及び
図23Bのリンク302-3)に対応する。この例では、いくつかの実施形態によれば、12個の接触センサ408は、リンク302に含まれている。
【0191】
図24F及び
図24Gでは、いくつかの実施形態によれば、センサ408は、異なる方向に配向されている。いくつかの実施形態では、センサ408の各々は、個々の力センサ(例えば、単軸力センサ)であり、ロボットシステム200は、全てのセンサを組み合わせて、集中された(例えば、組み合わせられた、又は集約された)力及び/モーメント値を出力する。したがって、いくつかの実施形態によれば、
図24F及び
図24Gに示すように様々な配向でセンサを位置決めすることによって、全ての方向の力及び/又はモーメントを検出することができる。
【0192】
図24F及び
図24Gは、それぞれが複数の接触センサ408を含むリンク302の実施形態を示すが、いくつかの実施形態では、リンク302は、複数の方向における構造リンク424とシェル422との間の力及び/又はトルク及び/又は変位を感知するように構成された単一のセンサを含むことができる。いくつかの実施形態では、センサ408から受信された信号を使用して、ロボットシステム200は、シェル422と外部物体との間の接触の方向を検出することができる。いくつかの実施形態によれば、ロボットシステム200はまた、センサ408からの信号に基づいて、シェル422と外部物体との間の接触から生じる力の大きさを測定することができる。いくつかの実施形態によれば、センサ408の配置に基づいて、ロボットシステム200はまた、リンク302に印加されるトルク(例えば、モーメント)を検出することができる。例えば、いくつかの実施形態によれば、シェル422に力が印加されると、ある特定の接触センサ408(例えば、リンク302-2又はリンク302-3の1つの端部にある)が圧縮され得る。いくつかの実施形態によれば、圧縮されているセンサ408によって感知される位置及び力に基づいて、ロボットシステム200は、リンク302に印加されるトルクを判定することができる。
【0193】
図24H(i)及び
図24H(ii)は、いくつかの実施形態による、1つ又は2つ以上の接触感知シュラウド436(例えば、陰影が付けられた領域によって表される)を含むロボットアーム210を示す。
図24H(i)は、ロボットアーム210の近位リンク(例えば、
図23A及び
図23Bのリンク302-2)上の接触感知シュラウド436-1と、ロボットアーム210の遠位リンク(例えば、
図23A及び
図23Bのリンク302-3)上の接触感知シュラウド436-2と、を示す。近位リンク及び遠位リンクの各々は、接触センサ408を含む。
図24H(ii)は、いくつかの実施形態による、ロボットアームの遠位端上の接触感知シュラウド436-3を示す。ロボットアームの遠位部分上には、6軸ロードセル404も提供することができる。
図24H(ii)はまた、遠隔中心運動(RCM)438を示す。いくつかの実施形態によれば、RCM438は、カニューレと患者の身体との交点である。
【0194】
いくつかの実施形態では、ロボットアームの遠位リンク又は近位リンクのいずれかの上の各感知シュラウド(例えば、感知シュラウド436-1及び436-2)について、ロボットアーム210の任意の点(例えば、リンクの重心、ロボットアームの重心、基台、関節、リンク上の位置、及び/又は遠隔中心位置)に対して作用する組み合わせられた外部接触力測定値(例えば、Fc)(例えば、線形力測定値)及び組み合わせられた外部トルク(例えば、モーメント)測定値(例えば、Mc)は、(例えば、接触センサ408並びに/又は力及び/若しくはモーメントを検出することが可能な任意の他のタイプのセンサを使用して)判定することができる。
【0195】
いくつかの実施形態では、ロボットシステム200は、トルク測定値(例えば、Mc)ではなく力測定値(例えば、Fc)のみを使用して、接触力及び/又はトルクが安全力限界及び/又は安全トルク限界を超えないようにロボットシステム200が応答すべきかどうかを判定する。いくつかの実施形態によれば、ロボットシステム200は、力測定値(例えば、Fc)とトルク測定値(例えば、Mc)の両方を使用して、ロボットアーム210の移動方向を判定する。
【0196】
いくつかの実施形態では、ロボットシステム200は、力測定値(例えば、Fc)ではなく、トルク測定値(例えば、Mc)のみを使用して、ロボットシステム200が任意の行為を行うべきかどうかを判定する。いくつかの実施形態によれば、ロボットシステム200は、トルク測定値(例えば、Mc)及び/又は力測定値(例えば、Fc)を使用して、ロボットアーム210の移動方向を判定する。
【0197】
いくつかの実施形態では、ロボットシステム200は、力測定値(例えば、Fc)とトルク測定値(例えば、Mc)の両方を使用して、ロボットシステム200が応答すべきかどうかを判定する。いくつかの実施形態によれば、ロボットシステム200はまた、力測定値(例えば、Fc)及び/又はトルク測定値(例えば、Mc)を使用して、ロボットアーム210の移動方向を判定する。
【0198】
いくつかの実施形態では、ロボットマニピュレータの遠位端(例えば、
図26H(ii)の接触感知シュラウド436-3によって示される領域)との任意の外部接触力(例えば、Fに対して、RCM438における誘導トルク(例えば、τ
RCM)が何らかのトルク限界τ
limitよりも小さい場合、力Fは、力限界F
limitよりも小さくなるように保証されることが示され得る。いくつかの実施形態では、誘導トルク(例えば、τ
RCMは、6軸ロードセル404、又は遠位端若しくは遠位端に近接して位置する任意の他のセンサによって検出される。したがって、いくつかの実施形態によれば、RCM438における誘導トルクτ
RCMを監視することは、ロボットマニピュレータの遠位端に対する接触力を制限することができる。
【0199】
D.ロボットアームに対する接触力及び/又はトルクを検出し、それに応答するための例示的なシステム及び方法
図25A~25Cは、いくつかの実施形態による、接触力及び/又はトルクを検出し、それに応答するための方法500のフローチャート図を示す。本開示のいくつかの実施形態によれば、方法500は、ロボットシステム(例えば、
図21及び
図22に示されるようなロボット医療システム200、又はロボット手術プラットフォーム)の1つ又は2つ以上のプロセッサによって実施される。
【0200】
ロボットシステムは、ロボットアーム(例えば、
図21、
図22、
図23A、
図23B、
図24A、及び
図24Hのロボットアーム210)を含む。いくつかの実施形態では、ロボットアームは、ロボットシステムの2つ又はそれ以上のロボットアームのうちの第1のロボットアームである(例えば、
図21及び
図22を参照)。
【0201】
いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、単一のロボットアームを含む。ロボットシステムはまた、1つ又は2つ以上のセンサ(例えば、
図24Aのセンサ402及び404、
図24B、
図24F及び
図24Gの接触センサ408、並びに/又は本明細書に記載の他のセンサ)を含む。
【0202】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上のセンサは、センサアーキテクチャは、ロボットアーム210と一体化される(例えば、ロボットアームに固定される、ロボットアームの一部である、ロボットアーム内に含まれる、ロボットアームの表面上にある、ロボットアームに取り付けられる、ロボットアームの表面下に埋め込まれる、ロボットアームの一部分同士の間(例えば、隣接するリンク間、隣接する関節間など)に設置される、ロボットアームの端部に設置される、ロボットアームのリンク上又は内部にある、及び/あるいはロボットアームの関節上又は内部にある、など)。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上のセンサはセンサアーキテクチャの一部である。いくつかの実施形態では、センサアーキテクチャは、センサデータ、例えば、センサ属性又はパラメータ(例えば、力、接触、モーメント、変位、移動、位置など)、及びセンサからロボットシステムの1つ又は2つ以上のプロセッサへの値(例えば、場所、大きさ、タイミング、持続時間など)を通信するための他の構成要素を含む。
【0203】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上のセンサは、ロボットアームのリンク(例えば、リンク302、
図23A及び
図23B)の上又は内部に、2つの隣接する関節(例えば、A4関節及びA5関節、それらの間にリンクを有しない2つの隣接する関節、など)の間に、ロボットアームの関節と隣接するエンドエフェクタなどとの間に、あるいは、ロボットアームの、ロボットアームの関節ではない部分上に位置する1つ又は2つ以上の非関節ベースのセンサを含む。いくつかの実施形態では、非関節ベースのセンサは、1つ又は2つ以上の力センサ、1つ又は2つ以上のモーメントセンサ、及び/又は1つ又は2つ以上の力及びモーメントセンサを含む。
【0204】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上のセンサは、1つ又は2つ以上の関節ベースのセンサを含む。例えば、関節ベースのセンサは、ロボットアームの近位端に(例えば、ロボットアームの基台の近くに)位置してもよく(例えば、A0関節センサ402)、又は、2つの隣接するリンク間の関節に位置してもよい(例えば、2つの隣接するリンク304-2と302-3との間のA3関節302-4内のセンサ)。いくつかの実施形態では、関節ベースのセンサは、力センサ、モーメントセンサ、あるいは組み合わされた力及びモーメントセンサである。
【0205】
図25Aを再び参照すると、ロボットシステムは(例えば、1つ又は2つ以上のプロセッサを使用して)、1つ又は2つ以上のセンサを介して、外部物体によりロボットアームに及ぼされた接触力(例えば、Fc若しくはF)又はトルク(例えば、Mc若しくはτ
rcm)(例えば、誘導トルク)を検出する(510)。いくつかの実施形態では、接触力(例えば、Fc若しくはF)及びトルク(例えば、Mc若しくはτ
rcm)は、感知シュラウド436(例えば、
図24Hの感知シュラウド436-1、436-2及び/又は436-3)を介して、ロボットアーム210上で検出される。例えば、接触力又はトルクは、重力によって引き起こされたもの以外の任意の力又はモーメントであってもよい。いくつかの実施形態によれば、接触力又はトルクは、少なくとも1つの方向であり得る。
【0206】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上のセンサは、1つ又は2つ以上の接触センサ(例えば、接触センサ408、
図24B)を含む(512)。いくつかの実施形態によれば、接触力(例えば、Fc)又はトルク(例えば、モーメント)(例えば、Mc)は、1つ又は2つ以上の接触センサ408を使用して検出(例えば、感知及び測定)される。
【0207】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の接触センサ408は、ロボットアームのリンク上に位置する(514)。例えば、いくつかの実施形態によれば、接触センサ408は、
図24Cの領域410及び
図24Dの領域412など、手術中に患者と定期的に衝突することが知られているロボットアームの領域に位置決めされ得る。いくつかの実施形態では、
図24Eに示されるように、接触センサは、ロボットアームリンク302(例えば、近位リンク又は遠位リンク)の外側の周りに懸架された「シェル」を有することができる。いくつかの実施形態では、接触センサは、複数の方向の力を感知することができる力センサである。いくつかの実施形態では、接触センサは、複数の方向の力及び又はモーメントを感知することができる力及び又はモーメントセンサである。
【0208】
いくつかの実施形態では、ロボットアームのリンクは、遠位リンク(例えば、遠位リンク302-3、
図24B)又は近位リンク(例えば、近位リンク302-2、
図24A)である(516)。
【0209】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上のセンサは、多軸ロードセルを含む(518)。接触力(例えば、F)又はトルク(例えば、τRCM)は、多軸ロードセルを使用して検出(例えば、感知及び測定)される。
【0210】
いくつかの実施形態では、多軸ロードセル(520)は、ロボットアームの遠位部分に位置する6軸ロードセル(例えば、6軸ロードセル404、
図24A)を含む。例えば、
図24Aでは、6軸ロードセル404は、A4関節304-5(例えば、手首ロール関節)とA5関節304-6(例えば、手首ピッチ関節)との間のロボットアーム210の遠位部分に位置している。
【0211】
いくつかの実施形態では、接触力又はトルクを検出したことに応答して(522)、接触力又はトルクの大きさが下方接触力限界(例えば、Fr)又は下方トルク限界(例えば、τr)と上方接触力限界(例えば、Flimit)又は上方トルク限界(例えば、τlimit)との間にあるという判定に従って、ロボットシステムは、検出された接触力又はトルクに従ったロボットアーム上の制御された移動の第1のセットを有効化することができる。例えば、1つ又は2つ以上のプロセッサは、検出された接触力又はトルクの場所、方向、大きさ、方向及び/又は大きさの変化率に従って、ロボットアーム上の制御された移動の第1のセットを有効化することができる。
【0212】
いくつかの実施形態では、接触力又はトルクの大きさは、接触力又はトルクの現在検出中の値、予め設定された時間窓にわたる及び/又はロボットアームの予め設定された領域における接触力又はトルクの平均値を含んでもよい。いくつかの実施形態では、接触力又はトルクの大きさは、予め設定された時間窓にわたる又はロボットアームの予め設定された領域にわたる接触力又はトルクの集約値を含んでもよい。
【0213】
いくつかの実施形態では、下方接触力限界Fr又は下方トルク限界τrは、検出された力(例えば、Fc若しくはF)又はトルク(例えば、Mc若しくはτrcm)に反応してロボットアームが移動を開始する第1の閾値レベルの力又はトルクを含む。いくつかの実施形態では、下方接触力限界又は下方トルク限界は、反応力限界又はトルク限界とも呼ばれる。例えば、下方接触力限界(例えば、Fr)は、15N(例えば、ニュートン)~25Nの間の任意の値であってもよい。下方トルク限界τrは、2Nm~4Nmの任意の値であってもよい。
【0214】
いくつかの実施形態では、上方接触力限界Flimit又は上方トルク限界τlimitは、第2の閾値レベルの力又はトルクであり、それを超えると、検出された力又はトルクに応答してロボットアームを移動させることが安全でない又は望ましくない場合がある。いくつかの実施形態では、上方接触力限界又は上方トルク限界は、安全反力限界又は安全トルク限界とも呼ばれる。例えば、いくつかの実施形態によれば、上方接触力Flimitは、45N~60Nの任意の値であってもよい。いくつかの実施形態によれば、上方トルク限界τlimitは、7Nm~9Nmの任意の値であってもよい。
【0215】
いくつかの実施形態では、接触力又はトルクは、その値が下方接触力限界又は上方接触力限界に等しいとき、下方接触力限界又は下方トルク限界と上方接触力限界又は上方トルク限界との間にあると判定される。
【0216】
いくつかの実施形態では、ロボットアーム210の遠位端(例えば、
図24Hのシュラウド436-3によって示される)との任意の外部接触力(例えば、F)に対して、遠隔中心運動における誘導トルク(例えば、τ
rcm)が何らかのトルク限界τ
limitよりも小さい場合、接触力は、力限界F
limitよりも小さくなるように保証されることが示され得る。したがって、いくつかの実施形態によれば、τ
rcmを監視することによって、ロボットアーム210の遠位端に対する接触力の大きさを制限することができる。
【0217】
いくつかの実施形態では、ロボットアーム上の制御された移動の第1のセットを有効化することは、ロボットアームの1つ又は2つ以上の関節(例えば、
図23A及び
図23Bの関節304)及び/又はリンク(例えば、
図23A及び
図23Bのリンク302)を移動させることを含む。1つ又は2つ以上の関節及び/又はリンクは、検出された接触力又はトルクの場所、方向、大きさ、及び/又は変化率に従って選択され得る。いくつかの実施形態によれば、制御された移動の第1のセットを有効化することは、また、検出された接触力又はトルクの場所、大きさ、方向、及び/又は変化率に従って選択される速度、方向などで、ロボットアームの1つ又は2つ以上の関節及び/又はリンクを移動させることを含んでもよい。
【0218】
いくつかの実施形態では、ロボットアーム上の制御された移動の第1のセットを有効化することは、予め設定された制御機構(例えば、テレオペレーション、ボタン制御など)を介して、ユーザのコマンドに従ってロボットアームの移動を実行することを含む。例えば、いくつかの実施形態によれば、ユーザのコマンドは、テレオペレーション中にロボットアーム(例えば、ロボットアームのリンク及び/又は関節)を移動させる、外科医のコマンドであってもよい。
【0219】
いくつかの実施形態では、ロボットアームでの制御された移動の第1のセットを有効化することは、(例えば、自動的に、かつユーザの介入なしに)ロボットアームのゼロ空間移動を実行することを含む。例えば、1つ又は2つ以上のプロセッサは、カニューレの位置及び/又は配向を維持するために、ゼロ空間運動を実行することができる。いくつかの実施形態では、ロボットアームのゼロ空間移動は、予め設定された制御機構を介して、ユーザが要求するロボットアームを移動させることに加えて実行されてもよい。
【0220】
いくつかの実施形態では、ロボットアーム上の制御された移動の第1のセットを有効化することは、(例えば、ロボットアームが安全限界内で動作し続けることを保証するために)ロボットアーム上の検出された接触力Fc又はトルクτrcmを低減する移動を実行することを含む。
【0221】
いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、ロボットアーム上の制御された移動の第1のセットを有効化している間に、制御された移動の第1のセットとは異なる、ロボットアーム上の制御された移動の第2のセットを制限する。いくつかの実施形態では、制御された移動の第1のセット及び制御された移動の第2のセットは集合的に、ロボットアーム上のロボットシステムにより実装又はサポートされる制御された移動の完全セットを構成する。例えば、いくつかの実施形態によれば、制御された移動の完全セットは、物理的環境におけるロボットアームの様々な関節及びリンクの並進及び/又は回転の異なる組み合わせを含んでもよい。
【0222】
いくつかの実施形態では、ロボットアーム上の制御された移動の第2のセットを制限することは、ロボットアームの1つ又は2つ以上の移動方向、1つ又は2つ以上の移動角度範囲、及び/又は1つ又は2つ以上の移動速度範囲などを制限することを含む。例えば、ロボットシステムは(例えば、1つ又は2つ以上のプロセッサを通じて)、ロボットアームの1つ又は2つ以上の関節及び/又は1つ又は2つ以上のリンクのそれぞれの移動方向、それぞれの移動角度、及び/又はそれぞれの速度などを制限することを含めて、ロボットアームに対する何らかの形態の制御された移動を制限し得る。
【0223】
いくつかの実施形態では、検出された接触力又はトルクが、下方接触力限界又は下方トルク限界と上方接触力限界又は上方トルク限界との間にあるとき、ロボットシステムは、制御された移動を可能にするが、ロボットアームの制御された移動に対して何らかの制限を課す。例えば、いくつかの実施形態によれば、ロボットシステムは、接触力又はトルクを低減するために、ユーザにより要求されるロボットアームの移動の方向及び/又は速度を修正してもよい。したがって、いくつかの実施形態によれば、ロボットシステムは、ユーザにより要求された移動を中断すること又は完全に禁止することなく、ユーザにフィードバックを提供する。いくつかの実施形態では、検出された接触力又はトルクが上方接触力限界又は上方トルク限界に近づいているとき、ロボットシステムは、検出された接触力及び/又はトルクの特性値に従って、ロボットアームの移動速度及び移動の方向を能動的に調節することによって、より強いフィードバック(例えば、触覚又は視覚)をユーザに提供する。
【0224】
図25を再び参照すると、いくつかの実施形態では、ロボットアーム上の制御された移動の第1のセットを有効化すること(524)は、ロボットアームのゼロ空間運動を起動することを含む。例えば、いくつかの状況では、接触力は、手術中のロボットアームと患者との間の接触から生じ得る。いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、手術を中断することなく、ロボットアームによって患者に対して及ぼされる接触力を低減するために、ロボットアームのゼロ空間運動を自動的に(例えば、ユーザの介入なしに)起動してもよい。
【0225】
いくつかの実施形態では、接触力又はトルクを検出したことに応答して(526)、接触力又はトルクが上方接触力限界又は上方トルク限界を超えているという判定に従って、ロボットシステムは(例えば、1つ又は2つ以上のプロセッサを通じて)、ロボットシステムの一部の移動を無効化する。例えば、いくつかの実施形態によれば、1つ又は2つ以上のプロセッサは、ロボットアームの全ての関節及び/又はリンクの、以前に開始された移動を無効化してもよい。いくつかの実施形態によれば、1つ又は2つ以上のプロセッサはまた、ユーザコマンドに応答して、及びロボットアーム上の検出された接触力又はトルクに応答して、移動が開始又は継続することを防止し得る。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上のプロセッサはまた、いくつかの実施形態によれば、ロボットシステムのテーブルトップ又は調節可能なアーム支持体の移動を無効化してもよい。
【0226】
いくつかの実施形態では、接触力又はトルクを検出したことに応答して(528)、接触力又はトルクが下方接触力又は下方トルク未満であるという判定に従って、ロボットシステムは、検出された接触力又はトルクに従ったロボットアーム上の制御された移動の第1のセットの有効化を取り止める。例えば、いくつかの実施形態によれば、接触力又はトルクが非常に低い場合、ロボットシステムは、接触力又はトルクを低減する移動を起動しない。いくつかの実施形態によれば、ロボットアームは静止していてもよく、又は通常は他の能動的制御機構を介して制御されてもよい。例えば、ユーザは、テレオペレーション、ボタン制御、及び/又はインピーダンスモード制御を介してなど、ユーザが手術中に典型的に行うように、ロボットアームを制御することができる。いくつかの実施形態では、接触力又はトルクを検出したことに応答して、かつ、接触力又はトルクが下方接触力又は下方トルク未満であるという判定に従って、ロボットシステムはまた、ロボットアーム上の制御された移動の第2のセットの制限を取り止める。
【0227】
いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、ロボットアームの第1の速度(例えば、
【0228】
【数1】
)を含む第1のユーザコマンドを受信する(530)。いくつかの実施形態では、第1の速度(例えば、
【0229】
【数2】
)は、ロボットアームの第1の運動方向及び/又はロボットアームの第1の移動の大きさ(例えば、速度)を含む。例えば、ロボットアームの第1の速度は、ロボットアームのエンドエフェクタ(例えば、ADM308、
図23A)の速度であってもよい。いくつかの実施形態では、第1のユーザコマンドは、デカルト座標の形態の速度コマンドである。いくつかの実施形態によれば、第1のユーザコマンドを受信した後、ロボットシステムは、第1のユーザコマンドに一致する必要な(例えば、対応する)関節速度を計算する。
【0230】
いくつかの実施形態では、接触力の大きさ(例えば、
【0231】
【数3】
)(例えば、ロボットアームのリンク上の接触センサによって測定される)が、下方接触力限界(例えば、Fr)と上方接触力限界(例えば、F
limit)との間にあるという判定に従って(532)、ロボットシステムは、(a)接触力の方向(例えば、θ
F)を判定し(534)、(b)トルクの方向(例えば、θ
ω)を判定し(536)、(c)ロボットアームの並進速度(例えば、接触が生じるロボットアームリンクの並進速度)及び接触力の方向によって形成される第1の角度を判定し(538)、(d)ロボットアームの回転速度とトルクの方向とによって形成される第2の角度を判定する(540)。
【0232】
例えば、いくつかの実施形態では、ロボットアームの並進速度及び接触力の方向によって形成される第1の角度は、以下の式によって表すことができる。
【0233】
【数4】
式中、いくつかの実施形態によれば、V
Cは、その重心(又は、ロボットアームの任意の他の位置)に対するロボットアーム(例えば、ロボットアームのリンク)の並進速度ベクトルであり、F
Cは、接触力ベクトルであり、
【0234】
【数5】
は、ベクトルV
Cのノルム(例えば、大きさ)であり、
【0235】
【数6】
は、ベクトルF
Cのノルム(大きさ)である。
【0236】
ロボットアームの回転速度及びトルクの方向によって形成される第2の角度は、以下の式によって表すことができる。
【0237】
【数7】
式中、ω
Cは、その重心(又は、ロボットアームの任意の他の位置)に対するロボットアームの回転速度ベクトル(例えば、ロボットアームのリンクの回転速度)であり、M
Cは、リンクの重心(又は、ロボットアームの任意の他の位置)に対するトルクベクトル(例えば、接触センサ408によって検出される)であり、
【0238】
【数8】
は、ベクトルω
Cのノルム(例えば、大きさ)であり、
【0239】
【数9】
は、ベクトルM
Cのノルム(例えば、大きさ)である。いくつかの実施形態によれば、
【0240】
【数10】
、式中、J
c(q)は、リンク重心のヤコビアン(Jacobian)である。
【0241】
図25を引き続き参照すると、いくつかの実施形態では、第1の角度が第1の角度閾値内にあり(例えば、第1の角度閾値未満であり、それを超えない)(例えば、θ
1≦θ
limit,f)、第2の角度が第2の角度閾値内にある(例えば、第2の角度閾値未満であり、それを超えない)(例えば、θ
2≦θ
limit,ω)という判定に従って(542)、ロボットシステムは、第1の速度(例えば、
【0242】
【数11】
)でのロボットアームの関節の移動(例えば、
【0243】
【0244】
いくつかの実施形態では、第1の角度閾値(例えば、θ
limit,f)及び第2の角度閾値(例えば、θ
limit,ω)は、接触力を検出するために使用される1つ又は2つ以上の接触センサ(例えば、接触センサ408、
図24B)の測定不確実性に従って判定される(544)。例えば、いくつかの実施形態によれば、接触センサ408は、
図24H(i)の感知シュラウド436-1又は感知シュラウド436-2によって示される領域に位置してもよい。
【0245】
いくつかの実施形態では、(i)第1の角度が第1の角度閾値を超えている(例えば、θ1>θlimit,f)という判定、又は、(ii)第2の角度が第2の角度閾値を超えている(例えば、θ2>θlimit,ω)という判定のうちの少なくとも1つに従って(546)、ロボットシステムは、ロボットアームの移動を無効化する(例えば、
【0246】
【0247】
いくつかの実施形態では、空間内のロボットアームの許容される移動は、
図26に示されるように、円錐600(例えば、角度範囲)によって表すことができる。円錐600は、接触力(例えば、Fc)又はモーメント(例えば、Mc)の方向を表す軸602を備える。円錐600はまた、接触の衝突点を表す頂点604を含み、円錐内の体積は、3次元空間内のロボットアームの許容される次の移動の近傍を表す。いくつかの実施形態によれば、ロボットアームが反応し、前の衝突点から離れると、接触力Fcは減少することが予想される。いくつかの実施形態では、Fcが依然として反応力限界Frを上回っている場合、新しい接触条件によって判定される新しい円錐が、新しい許容される移動を定義する。いくつかの実施形態では、F
limitの代表値は、110Nであり得る。いくつかの実施形態では、そのような反応挙動の反応力限界Frは、80Nに設定(例えば、予め定義)することができる。
【0248】
いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、ロボットアームの要求速度(例えば、要求角速度、ωreq)を含む第2の制御コマンドを受信する(548)。例えば、いくつかの実施形態によれば、ロボットアームの要求速度は、ロボットアームのリンク(例えば、リンク302)の要求角速度又はロボットアームの関節(例えば、304)の要求角速度を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ロボットアームの角速度は、大きさ(例えば、速度)及び方向を含む(例えば、ロボットアームの角速度はベクトルである)。いくつかの実施形態では、ロボットアームの角速度(例えば、ωreq)は、ロボットアームのテレオペレーション中に外科医から要求される角速度である。
【0249】
いくつかの実施形態では、接触トルクの大きさ(例えば、
【0250】
【数14】
)(例えば、接触モーメント又は誘導トルク)(例えば、
図24A及び
図24H(ii)の6軸ロードセル404など、リンク間上の又はロボットアームの遠位端上の多軸ロードセルによって測定される)が、下方反応トルク限界(例えば、τ
R)と上方トルク限界(例えば、τ
limit)との間にあるという判定に従って(550)、ロボットシステムは、トルクの方向を判定する(552)。いくつかの実施形態によれば、ロボットシステムはまた、トルクの方向とロボットアームの角速度とによって形成される第3の角度を判定する(554)。
【0251】
いくつかの実施形態では、下方反応トルク限界(例えば、τR)は、ロボットアームが接触に反応するためにRCM(例えば、RCM438)において要求される最小測定トルクである。
【0252】
いくつかの実施形態では、トルクの方向とロボットアームの角速度とによって形成される第3の角度は、以下の式によって表すことができる。
【0253】
【数15】
式中、ω
reqは、ロボットアームの角速度ベクトルであり、τ
RCMは、6軸ロードセルによって測定されるトルクベクトルであり、
【0254】
【数16】
は、トルクベクトルω
reqのノルム(例えば、大きさ)であり、
【0255】
【数17】
は、トルクベクトルτ
RCMのノルム(例えば、大きさ)である。
【0256】
いくつかの実施形態では、トルクの大きさは、ロボットアームの遠隔運動中心(例えば、RCM438、
図24H(ii))に対して判定される(556)。
【0257】
いくつかの実施形態では、第3の角度が第3の角度閾値内にある(例えば、第2の角度閾値以下であり、それを越えない)(例えば、θ3≦θlimit)という判定に従って、ロボットシステムは、要求速度(例えば、要求角速度、ωreq)でのロボットアームの移動を有効化する(558)。
【0258】
いくつかの実施形態では、第3の角度閾値は、トルクを検出するために使用される6軸ロードセル(例えば、6軸ロードセル404)の測定不確実性に従って判定される(560)。
【0259】
いくつかの実施形態では、第3の角度が第3の角度閾値を超えている(例えば、θ3>θlimit)という判定に従って(562)、ロボットシステムは、ロボットアームの移動を無効化する。
【0260】
図27A~
図27Bは、いくつかの実施形態による、接触力及び/又はトルクを検出し、それに応答するための方法700のフローチャート図を示す。いくつかの実施形態によれば、方法700は、ロボットシステム(例えば、
図21及び
図22に示されるようなロボット医療システム200、又はロボット手術プラットフォーム)の1つ又は2つ以上のプロセッサによって実施される。
【0261】
ロボットシステムは、ロボットアーム(例えば、
図21、
図22、
図23A、
図23B、
図24A、及び
図24Hのロボットアーム210)を含む。ロボットシステムはまた、1つ又は2つ以上のセンサ(例えば、
図24Aのセンサ402及び404、
図24B、
図24F及び
図24Gの接触センサ408、並びに/又は本明細書に記載の他のセンサ)を含む。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上のセンサは、1つ又は2つ以上の接触センサ(例えば、接触センサ408)を含む。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上のセンサは、6軸ロードセル(例えば、6軸ロードセル404、
図24A及び
図24H)を含む。ロボットシステムはまた、1つ又は2つ以上のプロセッサ及びメモリを含む。メモリは、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行される命令を記憶している。
【0262】
本開示のいくつかの実施形態によれば、ロボットシステムは、1つ又は2つ以上のセンサを介して、外部物体によってロボットアームに及ぼされた接触力(例えば、Fc又はF)又はトルク(例えば、Mc又はτrcm)を検出する(714)。
【0263】
いくつかの実施形態では、接触力又はトルクを検出したことに応答して(716)、接触力又はトルク(例えば、接触力又はトルクの大きさ)が、力(例えば、Fr)又はトルク(例えば、τr)と、接触力(例えば、Flimit)又はトルク(例えば、τlimit)との間にあるという判定に従って、ロボットシステムは、ロボットアームの予め確立された経路又は予め記録された経路に基づく軌道におけるロボットアームの移動を有効化する。
【0264】
いくつかの実施形態では、軌道は、力又はトルクの検出の前に実行された以前の移動経路の反転に対応する。
【0265】
いくつかの実施形態では、接触力又はトルクは、その値が下方接触力限界又は上方接触力限界に等しいとき、下方接触力限界又は下方トルク限界と上方接触力限界又は上方トルク限界との間にあると判定される。
【0266】
いくつかの実施形態では、ロボットアームの予め確立された経路又は予め記録された経路は、ロボットアームのリンク重心の予め記録された経路を含む(718)。いくつかの実施形態では、ロボットアームの予め確立された経路又は予め記録された経路は、ロボットアームの関節の予め記録された経路、又はロボットアームの複数の関節の関節値を含む。
【0267】
いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、リンク重心の予め記録された経路から、構成可能な期間にわたる予め記録された経路に沿った並進運動方向(例えば、Dt)及び回転運動方向(例えば、Dr)を判定する(720)。例えば、構成可能な期間は、10秒から100秒までの任意の期間(例えば、持続時間)とすることができる。いくつかの実施形態では、構成可能な期間の各時間インスタンス(例えば、1秒毎、2秒毎など)において、それぞれの遷移及び回転運動方向を、記録された経路に基づいて判定することができる。
【0268】
いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、第1の速度(例えば、
【0269】
【数18】
)を含むユーザコマンドを受信する。いくつかの実施形態では、第1の速度(例えば、
【0270】
【数19】
)は、ロボットアームの運動方向及び/又はロボットアームの移動の大きさ(例えば、速度)を含む。例えば、ロボットアームの速度は、ロボットアームのエンドエフェクタ(例えば、ADM308、
図23A)の速度であってもよい。いくつかの実施形態では、接触力の大きさ(例えば、ロボットアームのリンク上の接触センサによって測定される)が、下方接触力限界(例えば、Fr)と上方接触力限界(例えば、F
limit)との間にあるという判定に従って、ロボットシステムは、(a)接触力の方向(例えば、θ
F)を判定し、(b)トルクの方向(例えば、θ
ω)を判定し、(c)ロボットアームの並進速度及び予め記録された経路に沿った並進運動方向によって形成される第1の角度を判定し、(d)予め記録された経路に沿ったロボットアームの回転速度及び回転運動方向によって形成される第2の角度を判定する。
【0271】
例えば、ロボットアームの並進速度及び予め記録された経路に沿った並進運動方向によって形成される第1の角度は、以下の式によって表すことができる。
【0272】
【数20】
式中、いくつかの実施形態によれば、V
Cは、ロボットアームの並進速度ベクトルであり、D
tは、構成可能な期間にわたるリンク重心の予め記録された経路に沿ったロボットアームの並進運動方向ベクトルであり、
【0273】
【数21】
は、ベクトルV
Cのノルム(例えば、大きさ)であり、
【0274】
【数22】
は、ベクトルD
tのノルム(大きさ)である。
【0275】
ロボットアームの回転速度及び予め記録された経路に沿った回転運動方向によって形成される第2の角度は、以下の式によって表すことができる。
【0276】
【数23】
式中、いくつかの実施形態によれば、ω
Cは、その重心(又は、ロボットアームの任意の他の位置)に対するロボットアーム(例えば、ロボットアームのリンク)の回転速度ベクトルであり、D
rは、構成可能な期間にわたるリンク重心の予め記録された経路に沿った回転運動方向ベクトルであり、
【0277】
【数24】
は、ベクトルω
Cのノルム(例えば、大きさ)であり、
【0278】
【数25】
は、ベクトルD
rのノルム(大きさ)である。
【0279】
いくつかの実施形態では、第1の角度が第1の角度閾値内にあり(例えば、第1の角度閾値未満であり、それを超えない)(例えば、θ1≦θlimit,f)、第2の角度が第2の角度閾値内にある(例えば、第2の角度閾値未満であり、それを超えない)(例えば、θ2≦θlimit,ω)という判定に従って、ロボットシステムは、ユーザコマンド速度の、予め記録された経路におけるロボットアームの関節の移動(例えば、
【0280】
【0281】
例えば、ロボットシステムは、第1及び第2の角度がそれぞれの角度閾値内にあるかどうかを判定するために、構成可能な期間の各時間インスタンス(例えば、1秒毎、2秒毎など)において、第1及び第2の角度を計算することができ、いくつかの実施形態によれば、当該時間インスタンスについて、第1の角度が第1の角度閾値内にあり(例えば、第1の角度閾値以下であり、それを超えない)(例えば、θ1≦θlimit,f)、かつ、第2の角度が第2の角度閾値内にある(例えば、第2の角度閾値以下であり、それを超えない)(例えば、θ2≦θlimit,ω)場合の第1及び第2の角度という判定に従って、ロボットアームの関節の移動を有効化する。
【0282】
いくつかの実施形態では、第1の角度が第1の角度閾値を超えている(例えば、θ1>θlimit,f)、及び/又は、第2の角度が第2の角度閾値を超えている(例えば、θ2>θlimit,ω)という判定に従って、ロボットシステムは、ロボットアームの移動を無効化する。
【0283】
図27を再度参照すると、いくつかの実施形態では、ロボットアームの予め確立された経路又は予め記録された経路は、ロボットアームの遠隔中心運動(例えば、RCM438、
図24H)のピッチ角及び/又はヨー角の予め確立された経路又は予め記録された経路を含む(722)。
【0284】
いくつかの実施形態では、ロボットシステムはまた、ロボットアームの予め確立された経路又は予め記録された経路(例えば、RCMのピッチ/ヨー角の予め記録された経路)から、構成可能な期間(例えば、2秒~100秒)にわたる予め記録された経路に沿った平均運動方向(例えば、
【0285】
【0286】
いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、ロボットアームの角速度(例えば、ω
req)を含む制御コマンドを受信する。ロボットシステムは、
図24A及び
図24H(ii)の6軸ロードセル404など、リンク間上の又はロボットアームの遠位端上の多軸ロードセルを使用して、トルクの大きさを判定することができる。いくつかの実施形態では、検出されたトルクの大きさ(例えば、|τ
RCM|)が、下方反応トルク限界(例えば、τ
R)と上方トルク限界(例えば、τ
limit)との間にあるという判定に従って、ロボットシステムは、トルクの方向を判定する。ロボットシステムはまた、トルクの方向とロボットアームの角速度とによって形成される第3の角度を判定する。
【0287】
いくつかの実施形態では、トルクの方向とロボットアームの角速度とによって形成される第3の角度は、以下の式によって表すことができる。
【0288】
【数28】
式中、ω
reqは、構成可能な期間にわたるロボットアームの角速度ベクトルであり、
【0289】
【数29】
は、構成可能な期間にわたる予め記録された経路に沿った平均運動方向であり、
【0290】
【数30】
は、ベクトルω
reqのノルム(例えば、大きさ)であり、
【0291】
【0292】
【0293】
いくつかの実施形態では、第3の角度が第3の角度閾値内にある(例えば、第3の角度閾値以下であり、それを越えない)(例えば、θ3≦θlimit)という判定に従って、ロボットシステムは、予め記録された経路に沿った平均運動方向(例えば、
【0294】
【数33】
)における移動ロボットアームを有効化する。
【0295】
いくつかの実施形態では、第3の角度が第3の角度閾値を超えているという判定に従って、ロボットシステムは、ロボットアームの移動を無効化する。
【0296】
図28は、いくつかの実施形態による、接触力及び/又はトルクを検出し、それに応答するための方法800のフローチャート図を示す。いくつかの実施形態によれば、方法700は、ロボットシステム(例えば、
図21及び
図22に示されるようなロボット医療システム200、又はロボット手術プラットフォーム)の1つ又は2つ以上のプロセッサによって実施される。
【0297】
ロボットシステムは、ロボットアームを備える。(例えば、
図21、
図22、
図23A、
図23B、
図24A、及び
図24Hのロボットアーム210)。いくつかの実施形態では、ロボットアームは、ロボットシステムの2つ又はそれ以上のロボットアームのうちの第1のロボットアームである(例えば、
図21及び
図22を参照)。いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、単一のロボットアームを備える。
【0298】
ロボットシステムはまた、1つ又は2つ以上のセンサ(例えば、
図24Aのセンサ402及び404、
図24B、
図24F及び
図24Gの接触センサ408、並びに/又は本明細書に記載の他のセンサ)を備える。
【0299】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上のセンサは、1つ又は2つ以上の接触センサ(例えば、接触センサ408、
図24B)を含む。いくつかの実施形態では、接触センサは、力及び又はモーメント(例えば、トルク)を検出する力及び又はモーメントセンサである。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上のセンサは、6軸ロードセル(例えば、6軸ロードセル404)を含む。
【0300】
ロボットシステムはまた、1つ又は2つ以上のプロセッサ及びメモリを備える。メモリは、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行される命令を記憶している。
【0301】
ロボットシステムは、1つ又は2つ以上のセンサを介して、外部物体によって及ぼされたロボットアームに対する接触力(例えば、Fc又はF)又はトルク(例えば、Mc又はτ
rcm)を検出する(814)。いくつかの実施形態では、接触力(例えば、Fc)及びトルク(例えば、Mc)は、感知シュラウド(例えば、
図24Hの感知シュラウド436-1及び/又は436-2)を介して、ロボットアーム210上で検出される。いくつかの実施形態では、接触力(例えば、F)及びトルク(例えば、τ
rcmは、感知シュラウド(例えば、
図24Hの感知シュラウド又は436-3)を介して、ロボットアーム210上で検出される。例えば、接触力又はトルクは、重力によって引き起こされたもの以外の任意の力又はモーメントであってもよい。接触力又はトルクは、複数の方向であってもよい。
【0302】
いくつかの実施形態では、接触力又はトルクが下方反応力限界(例えば、Fr)又は下方トルク限界(例えば、τr)以上であるという判定に従って(816)、ロボットシステムは、ロボットアームの速度を低減する。
【0303】
いくつかの実施形態では、ロボットアームは、1つ又は2つ以上の関節を含む(818)。ロボットアームの速度を低減することは、ロボットアームの1つ又は2つ以上の関節の各々のそれぞれの速度を低減すること(820)を含む。
【0304】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の関節の各々のそれぞれの速度を低減することは、全ての関節の速度を同じスケール(例えば、同じ割合だけ低減すること(822)を含む。例えば、いくつかの実施形態によれば、ロボットシステムは、関節の各々のそれぞれの速度を1%、2%、5%、又は10%など、だけ低減し得る。
【0305】
いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、第1の速度(例えば、
【0306】
【数34】
)を含む第1の制御されたコマンドを受信する(例えば、第1の速度は、ロボットアームのエンドエフェクタの速度を含む)。接触力が下方反応力限界以下である(例えば、Fc≦Fr)という判定に従って、ロボットシステムは、第1の速度でのロボットアームの移動を有効化する。いくつかの実施形態によれば、接触力が下方反応力限界よりも大きい(例えば、Fc>Fr)という判定に従って、ロボットシステムは、第1の速度未満であるコマンド速度(例えば、
【0307】
【数35】
)でのロボットアームの移動を有効化する。例えば、ロボットアームの(例えば、ロボットアームの関節の)コマンド速度は、いくつかの実施形態によれば、以下の式によって表すことができる。
【0308】
【0309】
式(7)は、接触力Fcが下方反応力限界よりも大きい(例えば、Fc>Fr)場合、接触力Fcが増加するにつれてロボット関節速度が減少することを示す。いくつかの実施形態によれば、この式において、Flimitは力の上限閾値レベルあり、それを超えると、検出された力に応答してロボットアームを移動させることが安全でない又は望ましくない場合がある。いくつかの実施家形態によれば、(Flimit-Fr)が定数なので、式(7)は、検出された接触力Fcが高いほど、コマンド速度
【0310】
【数37】
が低くなることを示す。更に、いくつかの実施形態によれば、検出された接触力Fcが少なくともF
limitと同じ大きさであるとき、ロボットアームの移動は有効化されない(例えば、F
C≧F
limitであるとき、
【0311】
【数38】
)。いくつかの実施形態によれば、接触力Fcが下方反応力限界以下である(例えば、Fc≦Fr)場合、コマンド関節速度
【0312】
【数39】
は、外科医により要求されたものと同じである(例えば、
【0313】
【0314】
いくつかの実施形態では、ロボットアームの速度を低減することは、ロボットアームの遠隔中心運動(例えば、RCM438、
図24H)における角速度を低減すること(824)を含む。
【0315】
例えば、いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、ロボットアームの第1の角速度(例えば、ωreq)を含む第2の制御コマンドを受信する。例えば、いくつかの実施形態によれば、ロボットアームの角速度は、ロボットアームのリンク(例えば、リンク302)の角速度又はロボットアームの関節(例えば、304)の角速度を含んでもよい。トルクが下方トルク限界以下である(例えば、τrcm≦τr)という判定に従って、ロボットシステムは、第1の角速度でのロボットアームの移動を有効化する。トルクが下方トルク限界よりも大きい(例えば、τrcm>τr)という判定に従って、ロボットシステムは、第1の角速度ωreq未満であるコマンド角速度(例えば、ωcmd)でのロボットアームの移動を有効化する。いくつかの実施形態では、このシナリオは、以下の式によって表すことができる。
【0316】
【0317】
式(8)において、τlimitはトルクの上方閾値レベルであり、それを超えると、検出されたトルクに応答してロボットアームを移動させることが安全でない又は望ましくない場合がある。いくつかの実施家形態によれば、(τlimit-τr)が定数値なので、式(8)は、検出されたトルクτrcmが高いほど、コマンド角速度ωcmdが低くなることを示す。更に、いくつかの実施形態によれば、検出されたトルクτrcmが少なくともτlimitと同じ大きさであるとき、ロボットアームの移動は有効化されない(例えば、τrcm≧τlimitであるとき、ωcmd=0)。
【0318】
いくつかの実施形態では、方法500、方法700、又は方法800の種々の態様は、ロボットアームのうちの1つ又は2つ以上に対して独立して使用することができ、あるいは組み合わせることができる。
【0319】
D.統合型ゼロ空間運動制御
上述したように、ロボットアーム(例えば、ロボットアーム210)は、多数の関節(例えば、関節304、
図23A及び
図23B)を含むことができ、これにより、多数の自由度(DoF)がもたらされる。いくつかの実施形態では、ロボットアームは、少なくとも7つの関節を有することができ、したがって、7つのDoFを有する。ロボットアームが7つの関節を有する場合、関節のうちの1つは、冗長関節とみなすことができる。したがって、少なくとも7つの関節を有するロボットアームは、少なくとも1つの追加のDoF(例えば、追加の冗長性、又は1つの冗長DoF)を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の冗長DoFは、ADM308の姿勢及び/又はRCMの位置を維持し、かつ他のロボットアーム又は物体との衝突を回避するために、ロボットアームがゼロ空間内で移動することを可能にすることができる。いくつかの実施形態では、いくつかの実施形態によれば、ロボットアームがゼロ空間内で移動している間、異なるリンケージ位置及び関節角度を使用して、ロボットアームのエンドエフェクタを空間内で特定の姿勢(例えば、位置及び/又は配向)並びに軌道に向かって位置決めすることができる。いくつかの実施形態では、ロボットアームのエンドエフェクタの移動は、テレオペレーションを介することができるが、他の実施形態では、ロボットアームのエンドエフェクタの移動は、ロボットアームの手動による移動又はスレーブクラッチを介することができる。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の冗長DoFは、ロボットアームが、空間において望ましい個所から医療器具を位置決めし、方向付けることを有効化する一方、医師がアーム関節を患者から離れる臨床上都合の良い位置に移動させて、アームの衝突を回避しながらアクセスを良くするのを可能にする。
【0320】
いくつかの実施形態では、1つのDoF冗長性を有するロボットアームに、その遠隔中心を保持しながら(例えば、テレオペレーション中)、所望の姿勢になるようにコマンドすることができる。所望の姿勢のアームを送達している間に、同じロボットアームを、いくつかの目的のために並行して(例えば、同時に)使用することができる。いくつかの実施形態によれば、これらの目的として、運動学的衝突(例えば、ロボットシステムのアーム間の衝突、又はアームと地面若しくは調節可能なバー、ベッドトップなどの他のシステム構成要素との間の衝突)回避、関節制限回避、過剰接触回避、手動によるアームの再位置決め、手動によるバーの再位置決め及び/若しくはバー最適化適応のためのアドミタンスゼロ空間運動、並びに、所望の(例えば、好ましい)場所に関節を位置決めすることを挙げることができる。これらの目的の各々は、ロボットアームのそれぞれのゼロ空間運動を要求する場合がある。冗長性のDoFが1つだけ追加される(又は1つに制限される)場合、これらの目的は互いに競合する場合がある。したがって、ロボットアームの様々な動作状態下で同時に目的を最適化し、バランスのとれた最適な方式でロボットアームのゼロ空間運動を制御する必要がある。
【0321】
図29は、いくつかの実施形態による、ロボットシステム200についての運動学的アーキテクチャのブロック
図900を示す。
【0322】
ブロック
図900は、マスターアプリケーション902を含む。いくつかの実施形態では、マスターアプリケーション902は、ロボットアーム(例えば、ロボットアーム210、
図21及び
図22)のエンドエフェクタを制御するために、テレオペレーション中に外科医によって使用される。いくつかの実施形態では、マスターアプリケーション902は、(例えば、外科医からのコマンドを介して)RCMの周りのエンドエフェクタの姿勢(例えば、位置及び/又は配向)を含むベクトルであるマスターコントローラコマンド
【0323】
【数42】
(例えば、エンドエフェクタの軌道)を出力する。いくつかの実施形態では、マスターアプリケーション902は、上述したように、外科医が外科医コンソールにおいてロボットアーム又は器具をテレオペレーションで制御するときに開始される。
【0324】
図29はまた、いくつかの実施形態による、新規の統合型ゼロ空間運動制御モジュール904を示す。いくつかの実施形態では、統合型ゼロ空間運動制御モジュール904は、マスターアプリケーション902と並行して(例えば、同時に)実行する。本開示のいくつかの実施形態によれば、統合型ゼロ空間運動制御モジュール904は、複数のタスク(例えば、複数のタスクモジュールの動作のそれぞれのセット)を管理する。いくつかの実施形態では、複数のタスクは、とりわけ、接触検出906、バー最適化908、衝突及び/又は関節回避910、ゼロ空間ジョギング912、並びに好ましい関節位置914を含む。いくつかの実施形態によれば、複数のタスクはまた、他のタスク916を含んでもよい。いくつかの実施形態では、複数のタスクのうちの少なくとも1つは、所与の時間にロボットアームのそれぞれのゼロ空間運動を必要とする。
【0325】
いくつかの実施形態では、複数のタスクは、接触検出906を含む。
図23A~
図24Hで前述したように、いくつかの実施形態によれば、ロボットシステムは、ロボットアームの1つ又は2つ以上のリンク及び/又は関節(例えば、リンク302及び/又は関節304)に沿って位置し得る、接触センサ408、6軸ロードセル(例えば、6軸ロードセル404)、力センサ(例えば、A0力センサ402)、及び/又は任意の他のセンサ(例えば、容量センサ)などの1つ又は2つ以上のセンサを含む感知アーキテクチャを含む。いくつかの実施形態によれば、ロボットシステムは、1つ又は2つ以上のセンサを使用して、ロボットアームに対する接触力及び/又はトルクを検出(例えば、感知及び測定)する。いくつかの実施形態では、検出された接触力及び/又はトルクに基づいて、ロボットシステムは、ロボットアームのゼロ空間運動を利用する反応スキームを判定してもよい。例えば、いくつかの実施形態によれば、検出された接触力及び/又はトルクに従って、ロボットアームに対するゼロ空間制御を起動して、接触力及び/又はトルクの量を低減することができる。
【0326】
再び
図29を参照すると、いくつかの実施形態では、接触検出906モジュールは、2つのパラメータ
【0327】
【数43】
及びf
0を、統合型ゼロ空間運動制御モジュール904に出力し、
【0328】
【数44】
は、接触センサ408及び/又は6軸ロードセル404からの力とトルクの両方を含む接触レンチであり、f
0は、A0関節において(例えば、A0力センサ402によって)検出された力である。いくつかの実施形態では、そのような力がある特定の閾値を超えている場合、ロボットアームに対するゼロ空間運動が起動され得る。例えば、
図25、
図27、及び
図28に記載されているように、いくつかの実施形態によれば、ロボットシステムは、接触力又はトルクの大きさが、下方接触力限界(例えば、Fr)又は下方トルク限界(例えば、τ
r)と、上方接触力限界(例えば、F
limit)又は上方トルク限界(τ
limit)との間にあるという判定に従って、ゼロ空間運動を有効化し得る。
【0329】
いくつかの実施形態では、複数のタスクは、バー最適化908を含む。
図21に記載されているように、ロボットアーム及び/又は調節可能なアーム支持体(例えば、バー)の各々は、それぞれの運動連鎖と呼ぶことができる。いくつかの実施形態では、ロボットアーム及びその下にあるバーは、1つの運動連鎖とみなすことができる。例えば、
図22では、ロボットアーム210-1及びその下にあるバー220-1は、いくつかの実施形態によれば、同じ運動連鎖の一部であり得る。いくつかの実施形態では、バー最適化は、ロボットアームをゼロ空間内で移動させている間、ロボットアーム210のエンドエフェクタ(例えば、ADM308)及び/又はそれに結合されたツール212の遠隔運動中心(RCM)を静的姿勢に維持するように、ロボットアーム(例えば、ロボットアーム210-1)を支持する下にあるバー(例えば、バー220-1)の姿勢(例えば、位置及び/又は配向)を最適化することを含む。いくつかの実施形態では、バー最適化モジュール908は、ロボットアームのA0関節の位置(例えば、q
0)を統合型ゼロ空間運動制御モジュール904に出力する。いくつかの実施形態では、バー最適化モジュール908は、手動によるバーの再位置決めをカバーするように延在することができ、結果として生じる出力(例えば、q
0)は、同じ方法で一体化される。
【0330】
いくつかの実施形態では、複数のタスクはまた、衝突及び/又は関節回避910を含む。いくつかの状況では、ロボットアームは、別のロボットアーム、患者支持プラットフォーム、及び/又はロボットアームに近接する他の物体など、他の物体と衝突する場合がある。更に、いくつかの状況では、ロボットアームの関節は、それらの関節限界において又はその近くで動作している場合がある。いくつかの実施形態によれば、衝突及び/又は関節回避910において、ロボットアームは、エンドエフェクタの軌道(例えば、
【0331】
【数45】
)に影響を与えることなく衝突及び/又関節制限を回避するために、ゼロ空間運動を利用する。
【0332】
いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、ロボットアームの1つ又は2つ以上の関節上に位置決めされている1つ又は2つ以上のエンコーダ(例えば、関節エンコーダ)を含む。いくつかの実施形態によれば、関節エンコーダは、ロボットアームの関節の位置及び/又は角度を測定し、関節エンコーダのデータに従って衝突検出及び処理を有効化する。いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、関節の測定された位置及び/又は角度に基づいて、運動学的モデルを作成する。衝突及び/又は関節回避は、ロボットシステムの測定値(例えば、ロボットアームの関節の位置及び/又は角度)を使用する運動学的アプローチに基づいて、ロボットアームのゼロ空間運動を制御する。したがって、衝突及び/又は関節回避910モジュールは、センサデータを使用してゼロ空間制御を起動する接触検出906モジュールとは異なる。
【0333】
いくつかの実施形態では、衝突及び/又は関節回避モジュール910は、2つのパラメータPc,i及びPo,iを統合型ゼロ空間制御モジュール904に出力し、Pc,i及びPo,iは、衝突制御点及び障害物点のデカルト座標に対応する。いくつかの実施形態によれば、ロボットアームが障害物(別のロボットアーム、ロボットシステムの別の物体、又は外部物体など)の近くにあるとき、物体上の1つ又は2つ以上の対応する点に最も近いロボットアーム上の1つ又は2つ以上の点を特定することができる。いくつかの実施形態によれば、衝突制御点は、ロボットアーム上の1つ又は2つ以上の点である。いくつかの実施形態によれば、障害物点は、ロボットアームの障害物上の1つ又は2つ以上の点である。
【0334】
いくつかの実施形態では、衝突及び/又は関節回避910は、ロボットアームの下にあるバーが静止していると仮定する。いくつかの状況では、ロボットアームの下にあるバーを静止位置に保ちながらゼロ空間内でロボットアームを移動させることは、解決策にはならないことがある。これらの例では、いくつかの実施形態によれば、(例えば、統合型ゼロ空間運動制御モジュール904を使用する)ロボットシステムはまた、下にあるバーの並進(及び/又は回転、及び/又は傾斜)によるロボットアームのゼロ空間運動を有効化するために、バー最適化モジュール908を並行して起動する。
【0335】
いくつかの実施形態では、複数のタスクはまた、ゼロ空間ジョギング912(例えば、ロボットアームのゼロ空間ジョギング及び/又はバーの姿勢ジョギング)を含む。ゼロ空間ジョギングでは、ユーザは、アーム移動中の任意の時間にエンドエフェクタの姿勢(例えば、ゼロ空間)に影響を与えることなく、ロボットアームをその下にあるバーに沿って(例えば、正及び負のy軸に沿って、
図22)両方向に手動で移動させることができる。いくつかの実施形態では、ゼロ空間ジョギングは、ロボットアーム上のボタン(例えば、
図23Aのボタン312又は他の入力ボタン)を押すことによって、又はジョイスティックなどの外部入力を使用することによって、又は内蔵力センサ、内蔵トルクセンサ、及び/又は内蔵接触センサを装備したロボットアームのリンクを押すことによって、起動することができる。いくつかの実施形態では、ゼロ空間ジョギングは、(例えば、正及び負のy軸に沿った、
図22)アームベースの並進に平行である、下にあるバーの並進を利用することを含み、かつ、各アーム上のジョギングの運動範囲を拡大する。
【0336】
ゼロ空間ジョギングの一例は、アドミタンスゼロ空間ジョギングである。いくつかの状況では、外科医がテレオペレーションを実施しているとき、患者の傍にいる医療スタッフが患者にアクセスする必要があり得る。これらの状況では、医療スタッフは、ロボットアーム自体から、並びに/又はロボットアーム及びその下にあるバーを含む運動連鎖から利用可能なゼロ空間を手動で制御(例えば、手動で操作)し、かつ、患者アクセスを可能にする姿勢までロボットアームを移動させるために、アドミタンスゼロ空間ジョギングを起動することができる。別の言い方をすれば、いくつかの実施形態によれば、アドミタンスゼロ空間ジョギングは、ユーザが、ロボットアーム及び/又はロボットアームの関節を好ましい場所に手動で再位置決めすることを可能にする一方で、手動による再位置決め中にロボットアームがゼロ空間内で移動することを保証する。いくつかの実施形態によれば、ゼロ空間ジョギングモジュール912は、統合型ゼロ空間運動制御モジュール904に、A0関節の速度(例えば、δ90)を出力する。
【0337】
図29はまた、複数のタスクが好ましい関節位置914を含むことを示す。いくつかの実施形態では、ロボットアームの姿勢にとって好ましい値が存在する。例えば、ロボットシステムの運動能力に起因して、又は姿勢がテレオペレーション中の潜在的なアーム衝突の可能性の低減につながることが知られているので、いくつかの姿勢(例えば、ロボットアームの関節及び/又はリンクの位置及び/配向)が好ましい場合がある。いくつかの実施形態によれば、好ましい関節位置914において、ロボットアームは、対応する好ましい関節位置を計算し、好ましい姿勢に向かって移動するために、ゼロ空間運動を利用する。いくつかの実施形態では、好ましい関節値は、処置又は運動学的測定基準(例えば、操作可能性)に基づいて判定することができる。いくつかの実施形態によれば、好ましい関節位置モジュール914は、統合型ゼロ空間運動制御モジュール904に、ロボットアームの関節の好ましい位置(例えば、q
k,preferred)を出力する。
【0338】
いくつかの実施形態では、統合型ゼロ空間運動制御モジュール902は、ロボットアームのゼロ空間関節速度
【0339】
【数46】
を判定(及び出力)する。いくつかの実施形態によれば、
【0340】
【数47】
は、ロボットアームの関節の各々の速度に対応する成分を有するn×1ベクトルであり、nは、ロボットアームの関節の数を示す。7つの関節を有するロボットアーム(例えば、ロボットアームは1つの冗長DoFを有する)の場合、
【0341】
【0342】
【0343】
【数49】
(rは基準である)は、エンドエフェクタベクトルのマスターコントローラコマンドである。マスターアプリケーション入力は、デカルト飽和を含み得る(918)。いくつかの実施形態によれば、ロボットアームの現在位置に基づいてロボット運動ソルバへの入力を制限することによって、線形仮定の違反、特異点、ロボット作業空間、衝突検出制限など、運動学における任意の悪条件を低減又は防止することができる。同時に、いくつかの実施形態によれば、他の適切な飽和を適用することができる。いくつかの実施形態では、デカルト飽和モジュール918はまた、患者の安全性を更に保証にするために、ツール先端速度を飽和させることができる。
【0344】
いくつかの実施形態によれば、初期逆運動学解(例えば、
【0345】
【数50】
を計算し、統合型ゼロ空間運動制御モジュール904の出力(例えば、
【0346】
【数51】
に加算し(922)、統合型運動飽和モジュール924を通過させた後、結果として得られる逆運動学解(例えば、
【0347】
【数52】
)を(例えば、α-飽和及び過剰速度/衝突条件モジュール926を介して)異なるアーム本体の場所に対する速度制約及び関節速度限界と照合する。この時点で、関節速度
【0348】
【数53】
を積分(928)して、関節位置コマンド(例えば、
【0349】
【数54】
)を判定する。また、いくつかの実施形態によれば、衝突検出及び検証モジュール930の後に、関節位置コマンド(例えば、
【0350】
【数55】
)にフィルタ(932)を適用して、コマンドに対する平滑信号を生成する。
【0351】
図30A及び
図30Cは、いくつかの実施形態による、ロボットアームのゼロ空間運動を制御するための方法1000のフローチャート図を示す。本開示のいくつかの実施形態によれば、方法1000は、ロボットシステム(例えば、
図21及び
図22に示されるようなロボット医療システム200、又はロボット手術プラットフォーム)の1つ又は2つ以上のプロセッサによって実施される。
【0352】
ロボットシステムは、ユーザコンソール(例えば、テレオペレーション及びロボットシステムの他の動作を実施するための医師コンソール)を含む。ロボットシステムはまた、ロボットアーム(例えば、
図21、
図22、
図23A、
図23B、
図24A、及び
図24Hのロボットアーム210)を含む(1004)。いくつかの実施形態では、ロボットアームは、ロボットシステムの2つ又はそれ以上のロボットアームのうちの第1のロボットアームである(例えば、
図21及び
図22を参照)。いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、単一のロボットアームを含む。いくつかの実施形態では、ロボットアームは、少なくとも1自由度の冗長性を有する。例えば、いくつかの実施形態では、ロボットアームは、少なくとも7つの関節(例えば、関節304、
図23)を有することができ、したがって、少なくとも7つのDoF(例えば、少なくとも1つの冗長DoF)がもたらされる。いくつかの実施形態によれば、少なくとも7つの冗長DoFを有するロボットアーム210は、所与のタスクを実施するための最小数のDoFよりも少なくとも1つ多いDoF(例えば、6つのDoF)を有する。いくつかの実施形態によれば、ロボットアームが7つの関節を有する場合、関節のうちの1つは、冗長関節とみなすことができる。いくつかの実施形態によれば、1つ又は2つ以上の冗長関節は、ADM308の姿勢及びRCMの位置を維持し、かつ他のロボットアーム又は物体との衝突を回避するために、ロボットアーム210がゼロ空間内で移動することを可能にすることができる。ロボットシステムはまた、ロボットアームに結合された調節可能なバー(例えば、バー220、
図21及び
図22)を含む。ロボットシステムは、1つ又は2つ以上のプロセッサ及びメモリを更に含む。メモリは、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行される命令を記憶している。
【0353】
いくつかの実施形態によれば、ロボットシステムは、ロボットシステムにより実行するための複数のタスクのうちの2つ又はそれ以上のタスクからの入力に基づいて、ロボットアーム210及び/又は調節可能なバー220のゼロ空間運動を制御する(1012)。
【0354】
いくつかの実施形態では、
図29に示されるように、複数のタスクは、ロボットアームの接触検出(例えば、接触検出906)を含む第1のタスク、調節可能なバーの最適化(例えば、バー最適化908)を含む第2のタスク、運動学を介した衝突及び/又は関節限界の処理(例えば、衝突/関節回避910)を含む第3のタスク、ロボットアームのゼロ空間及び/又はバーの姿勢ジョギング(例えば、ゼロ空間ジョギング912)を含む第4のタスク、並びに好ましい関節位置(例えば、好ましい関節位置916)に向かう運動を含む第5のタスクを含む(1014)。いくつかの実施形態では、複数のタスクの各々は、ロボットアームのそれぞれのゼロ空間運動を必要とする。いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、タスクの実行を最適化する方式で、ロボットアームのゼロ空間運動を制御するゼロ空間運動制御システム(例えば、統合型ゼロ空間運動制御モジュール904)を備える。
【0355】
いくつかの実施形態では、複数のタスクは、運動学的衝突回避、関節限界回避、過剰接触回避、及び手動によるアームの再位置決めのためのアドミタンスゼロ空間運動など、複数の目的に関連する。
【0356】
いくつかの実施形態では、ロボットアームのゼロ空間運動を制御することは、最適なゼロ空間関節速度で、ロボットアームの1つ又は2つ以上の関節を所望の姿勢(例えば、位置及び配向)まで移動させること(1016)を含む。
【0357】
例えば、
図29では、マスターアプリケーション902は、いくつかの実施形態によれば、ロボットアームのエンドエフェクタの姿勢(例えば、位置及び/又は配向)を含むマスターコントローラコマンド
【0358】
【数56】
を出力する。いくつかの実施形態によれば、統合型ゼロ空間運動制御モジュール904は、ロボットアームの関節の速度に対応する成分を有するゼロ空間関節速度ベクトル
【0359】
【0360】
いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、ロボットアームのエンドエフェクタがコマンドに従うことを可能にしている(1018)間に、ロボットアームのゼロ空間運動を制御する。いくつかの実施形態では、コマンドは、外科医によるロボットアームのテレオペレーションを介して生成することができる。他の実施形態では、コマンドは、スレーブクラッチを介するなど、ロボットアームの手動操作を介して生成することができる。
【0361】
例えば、
図29では、統合型ゼロ空間運動制御モジュール904は、ロボットアームのゼロ空間運動を制御する。統合型ゼロ空間運動制御モジュール904は、ロボットアームのエンドエフェクタの姿勢を制御するマスターアプリケーション902と並行して実行することができる。
【0362】
いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、ロボットアーム上に位置決めされている1つ又は2つ以上の力センサを更に含む(1020)。
【0363】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の力センサは、ロボットアームのリンク上に位置決めされている接触センサ(例えば、接触センサ408)を含む(1022)。例えば、
図24B、
図24C、
図24D、
図4E、
図24F及び
図24Gに記載されているように、接触センサ408は、ロボットアームのリンク302上に位置決めすることができる力センサである。
【0364】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の力センサは、ロボットアームの関節又は遠位端上に位置決めされている接触センサを含む(1024)。例えば、いくつかの実施形態では、
図24Bの接触センサ408は、ロボットアーム210の関節304上に位置決めすることができる。接触センサ408はまた、ロボットアーム210の近位部分上のリンク及び/又は遠位部分上のリンクなどのリンク302の長さに沿って位置することができる。また、
図24Gは、ロボットアームの遠位端に位置決めた接触センサ408を示す。
【0365】
いくつかの実施形態では、第1のタスク(例えば、接触検出906)は、1つ又は2つ以上の力センサを使用して、ロボットアーム上で接触を検出すること(1026)を更に含む。
【0366】
例えば、いくつかの実施形態によれば、ロボットシステムは、ロボットアームの1つ又は2つ以上のリンク及び/又は関節(例えば、リンク302及び/又は関節304)に沿って位置し得る、接触センサ408、6軸ロードセル(例えば、6軸ロードセル404)、力センサ(例えば、A0力センサ402)、及び/又は任意の他のセンサ(例えば、容量センサ)などの1つ又は2つ以上のセンサを含む感知アーキテクチャを含む。これらのセンサは、ロボットアーム上で接触を検出する。例えば、いくつかの実施形態によれば、接触センサ408は、力センサ(又は、力及びモーメントセンサ)である。いくつかの実施形態によれば、6軸ロードセル404は、力及びモーメントセンサである。
【0367】
いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、ロボットアームの関節上に位置決めされている1つ又は2つ以上の力センサ(1028)を更に含む。いくつかの実施形態によれば、第2のタスクは、1つ又は2つ以上のセンサ上で感知された力を使用して、ロボットアーム210に対する調節可能なバーの姿勢(例えば、位置及び/又は配向)を調節すること(1030)を含む。
【0368】
例えば、
図24Aに示すように、いくつかの実施形態によれば、ロボットシステムは、ロボットアームのA0関節304-1上に位置決めされた力センサ402を含む。いくつかの実施形態によれば、バー最適化908タスクは、A0力センサ上で感知された力を使用して、ロボットアームの下にあるバーの姿勢(例えば、位置及び/又は配向)を調節することを含む。
【0369】
例えば、いくつかの実施形態によれば、ロボットアーム及びその下にある調節可能なバーは、1つの運動連鎖を形成する(又は、同じ運動連鎖の一部である)。いくつかの実施形態では、バー最適化は、ロボットアームをゼロ空間内で移動させている間、ロボットアームのエンドエフェクタ(例えば、ADM308)及び/又はそれに結合されたツールの遠隔運動中心(RCM)を静的姿勢に維持するように、ロボットアーム(例えば、ロボットアーム210-1)を支持する下にあるバー(例えば、バー220-1)の姿勢(例えば、位置及び/又は配向)を最適化することを含む。
【0370】
いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、(例えば、ロボットアームの位置及び/又は角度を測定するために)ロボットアームの関節上に位置決めされた1つ又は2つ以上のエンコーダ(例えば、関節エンコーダ)を更に含む(1032)。いくつかの実施形態によれば、第3のタスク(例えば、関節衝突/回避910)は、1つ又は2つ以上のエンコーダを使用して、衝突を検出し、運動学的制御を介して衝突を緩和することを含む(1034)。
【0371】
いくつかの実施形態によれば、ロボットアームの1つ又は2つ以上のセンサからのデータに従ってゼロ空間運動を起動する第1のタスク(例えば、接触検出906)とは異なり、第3のタスク(例えば、関節衝突/回避910)は、関節エンコーダによって測定された関節の位置及び/又は角度を使用して、運動学的モデルを構築し、ゼロ空間運動学的制御を使用して関節衝突を緩和する。
【0372】
いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、排他性、重み付け、及び/又は切り替えに基づいて、様々なタスクのゼロ空間運動に優先順位を付ける。
【0373】
いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、複数のタスクにおけるタスク間の予め設定された相互排他性に基づいて、複数のタスクのうちの1つ又は2つ以上のタスクに優先順位を付ける(1034)。
【0374】
例えば、いくつかの実施形態によれば、ロボットシステムがある特定のタスクを実行するとき、ある特定の他のタスクは、(例えば、それらの重みを0に設定することによって)無効化される。一例では、いくつかの実施形態によれば、バー最適化908が有効化されると、リンク/関節衝突回避910が無効化される。別の例では、いくつかの実施形態によれば、ゼロ空間ジョギング912が使用されるとき、他の全てのタスク(例えば、接触検出906、バー最適化908、リンク/関節衝突回避910、及び好ましい関節位置914)が無効化される。
【0375】
いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、複数のタスクの各々にそれぞれの重みを割り当てる(1038)。
【0376】
例えば、いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、タスクの相対的な重要性に基づいて、それぞれの重みを複数のタスクの各々に割り当ててもよく、より重要なタスクは、より重要ではないタスクよりも高いそれぞれの重みを与えられる。いくつかの実施形態では、重みは、現在検出中のセンサデータ及び/又は関節エンコーダデータ、並びに/あるいはロボットシステムの現在の状態(例えば、アイドル、手術中、セットアップ中、など)に基づいて、オンザフライで計算される動的に調節可能な重みである。
【0377】
いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、複数のタスクのそれぞれの重みの相対的な大きさに基づいて、複数のタスクのうちの1つ又は2つ以上のタスクに優先順位を付ける(1040)。例えば、優先順位を付けられるタスクは、複数のタスクの中で最も高い重みを有する。1つ又は2つ以上のタスクが無効化される、したがってロボットアームのゼロ空間運動の判定において考慮されない場合がある排他性又は切り替え(以下参照)などの他の優先順位付けスキームとは異なり、いくつかの実施形態によれば、重み付けスキームでは、全てのタスクは、それぞれの割り当てられた重みによって判定される相対的な重要性に基づいて考慮される。
【0378】
いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、ロボットシステムの現在の状態に基づいて、複数のタスクのうちの1つ又は2つ以上のタスクの別個のセット間で切り替わる(1042)。
【0379】
いくつかの実施形態によれば、切り替わることは、異なる時間に異なるタスクを有効化することを可能にする。いくつかの実施形態によれば、切り替わることは、ロボットシステムの状態(例えば、セットアップ中、手術、インピーダンスモード中、アドミタンスモード中、など)に応じて、各状態において所望の結果を生成する。
【0380】
いくつかの事例では、ユーザは、ロボットアームを手動で操作するために、セットアップ手順中にインピーダンスモードを起動し得る。いくつかの実施形態によれば、ロボットアームがインピーダンスモードにあるとき、衝突及び/又は関節限界の処理(例えば、衝突/関節回避(910))、接触検出(906)、並びにゼロ空間ジョギング(912)はオフに切り替えられる。いくつかの実施形態によれば、手術のために最適化された姿勢へのロボットアーム/調節可能なバーの運動連鎖の構成を容易にするために、バー最適化(908)を起動することができる。
【0381】
別の例では、いくつかの実施形態によれば、衝突及び/又は関節回避(910)は、ロボットアームの下にあるバーが静止していると仮定する。いくつかの状況では、いくつかの実施形態によれば、ロボットアームの下にあるバーを静止位置に保ちながらゼロ空間内でロボットアームを移動させることは、解決策にはならないことがある。これらの例では、いくつかの実施形態によれば、(例えば、統合型ゼロ空間運動制御モジュール904を使用する)ロボットシステムはまた、下にあるバーの並進(及び/又は回転、及び/又は傾斜)によるロボットアームのゼロ空間運動を有効化するために、バー最適化モジュール908を並行して起動する。
【0382】
いくつかの実施形態では、好ましい関節位置モジュール914は、デフォルトで無効化されており、ユーザコマンドに応じて補助特徴としてのみ起動される。起動されると、ロボットシステムは、コスト関数(例えば、
図31参照)が好ましい関節位置で増強される異なる状態に切り替わり、他のタスクが潜在的に異なる重みで無効化又は有効化される。
【0383】
本開示の別の態様によれば、ゼロ空間関節速度
【0384】
【数58】
(例えば、ゼロ空間運動制御モジュール902の出力)は、いくつかの実施形態によれば、最適化によって判定することができる。
図31A及び
図31Bは、いくつかの実施形態による、ロボットアームのゼロ空間関節速度を判定するための方法1100のフローチャート図を示す。本開示のいくつかの実施形態によれば、方法1100は、ロボットシステム(例えば、
図21及び
図22に示されるようなロボット医療システム200、又はロボット手術プラットフォーム)の1つ又は2つ以上のプロセッサによって実施される。
【0385】
ロボットシステムは、ロボットアーム(例えば、
図21、
図22、
図23A、
図23B、
図24A、及び
図24Hのロボットアーム210)を備える。いくつかの実施形態では、ロボットアームは、ロボットシステムの2つ又はそれ以上のロボットアームのうちの第1のロボットアームである(例えば、
図21及び
図22を参照)。いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、単一のロボットアームを含む。ロボットシステムはまた、ロボットアームに結合された調節可能なバー(例えば、バー220、
図21及び
図22)を含む。ロボットシステムはまた、1つ又は2つ以上のプロセッサ及びメモリを含む。メモリは、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されるように構成された1つ又は2つ以上のプログラムを記憶している。
【0386】
いくつかの実施形態によれば、ロボットシステムは、ロボットシステムのための第1の複数のタスク(例えば、S)を特定する(1108)。いくつかの実施形態では、第1の複数のタスクは、ロボットシステムの目的(例えば、目標)(例えば、ロボットシステムのロボットアーム(例えば、単一のロボットアーム、各ロボットアーム)によって達成される目的)を含む。例えば、いくつかの実施形態によれば、第1の複数のタスク(例えば、目的)は、運動学的衝突回避、関節制限回避、過剰接触回避、手動によるアームの再位置決めのためのアドミタンスゼロ空間運動、及びロボット関節を好ましい場所に位置決めすることを含む。いくつかの実施形態では、第1の複数のタスクは、ブロック
図900に示されるタスクを含む。例えば、いくつかの実施形態によれば、第1の複数のタスクは、接触検出(906)、バー最適化(908)、衝突/関節回避(910)、ゼロ空間ジョギング(912)、好ましい関節位置(914)、及び/又は他のタスク916を含む。
【0387】
いくつかの実施形態では、第1の複数のタスク(例えば、S)の各タスク(例えば、si⊆S)は、対応するゼロ空間関節速度(例えば、
【0388】
【数59】
)を有するロボットアームのそれぞれの(例えば、別個の)ゼロ空間運動を要求する(1110)。
【0389】
いくつかの実施形態では、第1の複数のタスクは、運動学的衝突回避を含む第1のタスク、関節限界回避を含む第2のタスク、接触回避及びアドミタンスゼロ空間運動を含む第3のタスク、並びに好ましい関節位置に向かう運動を含む第4のタスクのうちの2つ又はそれ以上を含む(1112)。
【0390】
いくつかの実施形態では、運動学的衝突回避を含む第1のタスクは、
図29に記載される衝突/関節回避タスク(910)に対応する。いくつかの実施形態では、第1のタスクは、以下の式によって表すことができる。
【0391】
【数60】
式中、p
c,iは、制御点iのデカルト座標であり、p
o,iは、障害物点iのデカルト座標であり、
【0392】
【0393】
【数62】
のノルム(例えば、大きさ)であり、d
triggerは、それを上回ると関節のゼロ空間移動がトリガされる閾値距離であり、d
stopは、関節のゼロ空間運動が停止される上方限界である。衝突及び/又は関節回避モジュール910に関して記載したように、いくつかの実施形態によれば、ロボットアームが、別のロボットアーム、ロボットシステムの別の物体、又は外部物体などの障害物の近くにあるとき、物体上の対応する点に最も近いロボットアーム上の点を特定することができる。いくつかの実施形態によれば、制御点i、p
o,i(又は衝突制御点)がロボットアーム上の点を指すのに対し、障害物点は、ロボットアームの障害物上の対応する点である。
【0394】
いくつかの実施形態では、関節限界回避を含む第2のタスクは、
図29に記載される衝突/関節回避タスク(910)に対応する。いくつかの実施形態では、第2のタスクは、以下の式によって表すことができる。
【0395】
【0396】
【数64】
は、関節の現在の関節値iであり、q
lim,iは、関節の限界(例えば、定数値)であり、
【0397】
【0398】
【数66】
のノルム(例えば、大きさ)であり、q
free,iは、関節iのゼロ空間運動がトリガされる関節iの自由限界値であり、q
stop,iは、関節iのゼロ空間運動が停止される関節の上方限界値である。
【0399】
いくつかの実施形態では、第2のタスクは、現在の関節値
【0400】
【数67】
が、自由限界値(例えば、q
free,i)と上方限界値(q
stop,i)との間にあるときに(例えば、統合型ゼロ空間運動制御モジュール902によって)起動される。
【0401】
いくつかの実施形態では、接触回避及びアドミタンスゼロ空間運動を含む第3のタスクは、
図29の接触検出タスク(906)及びゼロ空間ジョギングタスク(912)に対応する。いくつかの実施形態では、第3のタスクは、以下の式によって表すことができる。
【0402】
【数68】
式中、|f
1|は、A0関節上に位置している力センサ、接触センサ、及び/又は6軸ロードセルによって検出される外力f
1の大きさである。いくつかの実施形態では、式(11)のf
1は、接触検出モジュール906)からの出力f
0と同じであり、f
maxは、ゼロ空間運動が有効化される下方力閾値限界及び上方力閾値限界である。例えば、
図25、
図27、及び
図28に記載されているように、いくつかの実施形態によれば、ロボットシステムは、接触力大きさ(例えば、|f
1|)が、下方接触力限界(例えば、Fr)と上方接触力限界(例えば、F
limit)との間にあるという判定に従って、ゼロ空間運動を有効化し得る。
【0403】
いくつかの実施形態では、好ましい関節位置に向かう運動を含む第4のタスクは、
図29の好ましい関節位置タスク(914)に対応する。いくつかの実施形態では、第4のタスクは、以下の式によって表すことができる。
【0404】
【数69】
式中、q
kは、関節kの現在の値であり、q
k,preferredは、関節kの好ましい位置であり、(q
k,max-q
k,min)は、関節kの運動範囲である。7つの関節(例えば、7つのDoF)を有するロボットシステムの場合、kは、1~7の範囲(両端値を含む)の整数値を有する。
【0405】
式(9)~(12)では、si(式中、i=1~4)は非負値であり、対応するゼロ空間運動要求のそれぞれの正規化された「深刻度」を表す。例えば、いくつかの実施形態によれば、関節が、構成された関節限界にある場合、この事象からのゼロ空間運動要求は、正規化された深刻度s=1を有さず、同じ関節が、構成された量だけ関節限界から離れている場合、S=1である。いくつかの実施形態によれば、第4のタスクを例として使用すると、関節が現在、その好ましい関節位置にある場合、式(12)における現在の関節値qkはqk,preferred、したがって、s4=0であり、関節がすでにその好ましい関節位置にあるので、「深刻度」がないことを意味する。
【0406】
再び
図31を参照すると、いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、コスト関数(例えば、H(q))を低減(例えば、最適化)することによって判定されるロボットアームの第1のゼロ空間関節速度に基づいて、ロボットアームのゼロ空間運動を実行する(1114)。コスト関数H(q)は、調節可能なバー及び/又はロボットアームゼロ空間並びに/あるいはバーの姿勢ジョギングの最適化に対応する第1のコストを含む(1116)。いくつかの実施形態によれば、コスト関数はまた、第1の複数のタスクの各タスクに対応する複数の第2のコストを含む(1118)。
【0407】
いくつかの実施形態では、コスト関数H(q)は、以下のように記述することができる。
【0408】
【0409】
コスト関数H(q)は、調節可能なバー及び/又はロボットアームのゼロ空間並びに/あるいはバーの姿勢ジョギングの最適化に対応する第1のコスト
【0410】
【数71】
を有する。w
mは、バー最適化及び/又はロボットアームゼロ空間並びに/あるいはバーの姿勢ジョギングに対する重みである。いくつかの実施形態によれば、n
Jは、ロボットアームのヤコビアンのゼロ空間基底ベクトルである。いくつかの実施形態では、qは、第1のコストに対応するゼロ空間速度である。いくつかの実施形態では、第1のコストは、
図29のバー最適化タスク(908)及びゼロ空間ジョギングタスク(912)に対応する。
【0411】
いくつかの実施形態によれば、コスト関数H(q)は、第2のコスト
【0412】
【数72】
を有し、i=1~4の場合のs
i⊆Sは、上記の式(9)~(12)で定義される。上述したように、いくつかの実施形態によれば、s
iは、対応するゼロ空間運動要求のそれぞれの正規化された「深刻度」であり、w
iは、対応するs
iに対するそれぞれの重みである。本明細書で定義されるように、いくつかの実施形態によれば、コスト関数H(q)は、スカラー関数であり、第1のコスト及び第2のコストの各々は、非負値を有する(例えば、H(q)の項の各々は、0又は正の値を有する)。
【0413】
いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、連続ステップサイズ低減を伴う勾配降下アルゴリズムを使用してコスト関数を低減する(1120)。
【0414】
いくつかの実施形態では、H(q)は、以下によって与えられる最急降下の公式を使用して最適化される。
【0415】
【0416】
いくつかの実施形態によれば、勾配降下の公式の解は、ロボットアームのゼロ空間関節速度である
【0417】
【0418】
【数75】
はまた、
図29の統合型ゼロ空間運動制御モジュール902の出力である。いくつかの実施形態によれば、ステップサイズαは、アルミホのルール(Armijo’s rule)などのアルゴリズムを使用して更新される定数パラメータ又は可変パラメータであり得る。いくつかの実施形態では、解いた後の閉形式解∇H(q)は、以下のように記述することができる。
【0419】
【数76】
式中、kは、運動学的衝突回避についての回避範囲d
stop-d
triggerの関数及び関節限界回避についての回避範囲q
stop,j-q
free,j関数であり、
【0420】
【数77】
は、i番目の衝突事象の衝突点のヤコビアンであり、e
jは、j次元の標準基底である。
【0421】
いくつかの実施形態では、ロボットアームは、ロボットアームのテレオペレーション中及び/又は(例えば、スレーブクラッチを介した)ロボットアームの手動操作中など、ロボットアームのエンドエフェクタがコマンドに従うことを可能にしている間に、ロボットアームのゼロ空間運動を実行する(1122)。
【0422】
例えば、いくつかの実施形態によれば、
図29では、統合型ゼロ空間運動制御モジュール904は、ロボットアームのゼロ空間運動を制御する。いくつかの実施形態によれば、統合型ゼロ空間運動制御モジュール904は、ロボットアームのエンドエフェクタの姿勢を制御するマスターアプリケーション902と並行して実行する。
【0423】
いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、第1のゼロ空間関節速度で、ロボットアームの1つ又は2つ以上の関節を所望の姿勢(例えば、位置及び配向)まで移動させる(1124)。
【0424】
いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、第1のタスクに第1の重みを割り当てる(1126)。いくつかの実施形態によれば、ロボットシステムはまた、複数の第2のコストの各々にそれぞれの第2の重みを割り当てる(1128)。
【0425】
例えば、式(13)を参照すると、ロボットシステムは、いくつかの実施形態によれば、第1のコストに第1の重みwmを割り当てる。いくつかの実施形態によれば、ロボットシステムはまた、複数の第2のコストの各々に、それぞれの第2の重みwiを割り当て、i=1~4(例えば、又は優先順位付け及び統合スキームに関与するタスクの数に対応する別の数)である。
【0426】
いくつかの実施形態によれば、コスト関数を低減することは、コスト関数H(q)を最小化することを含む。いくつかの実施形態では、コスト関数は、
図30に記載される排他性スキームに基づいて最小化される。例えば、いくつかの実施形態では、第1のコストが使用される(すなわち、w
mがゼロでない)ときはいつでも、第2のコストは、全て無視される(例えば、w
1、w
2、w
3、及びw
4は全て0である)。いくつかの実施形態によれば、このシナリオは、ロボットアームがバー最適化コマンドを受信するときの状況にあてはまる。この例では、いくつかの実施形態によれば、ロボットアームは、その目的のためだけにゼロ空間運動を使用する。
【0427】
いくつかの実施形態では、第2のコストのうちの少なくとも1つのそれぞれの第2の重みはゼロである(1130)。
【0428】
いくつかの実施形態では、複数の第2のコストの各々へのそれぞれの第2の重みの割り当ては、ロボットシステムの動作状態に従って実施される。
【0429】
例えば、いくつかの実施形態によれば、w1、w2、w3、及びw4は、第1の複数のタスク(例えば、S)の各タスク(例えば、si⊆S)に関するそれぞれのゼロ空間運動要求に対する優先度を設定するために使用される重みを表すことができる。いくつかの実施形態では、重みw1~w4の実際の値は、ロボットシステムの動作状態又はゼロ空間運動要求の重大度(例えば、si)の関数に応じて変化し得る。例えば、いくつかの実施形態によれば、調整されたテーブル運動では、好ましい関節位置タスク(例えば、s4)よりも高い重みが、運動学的衝突回避タスク(例えば、s1)及び関節限界回避タスク(例えば、s2)に割り当てられる。すなわち、いくつかの実施形態によれば、運動学的衝突回避タスクs1に対応する重みw1及び関節限界回避タスクs2に対応する重みw2は、好ましい関節位置タスクs4に対応する重みw4よりも大きな値を有する。
【0430】
いくつかの実施形態では、バー最適化タスクにおいて、好ましい関節位置のみが許容される。したがって、いくつかの実施形態によれば、ユーザはw4を適切な重みに設定することができ、かつ、重みw1,w2及びw3をゼロに設定することによって、第2のコストにより表される全ての他の要求を無効化することができる。いくつかの実施形態によれば、要求深刻度に依存する重みの別の例として、アドミタンスゼロ空間運動/接触回避要求が現れる、又はs3>0であるとき、w1、w2及びw4を全てゼロに設定することができるとき、それにより、ユーザがロボットアームの完全制御を行い、ユーザの目的を達成する。
【0431】
3.実装システム及び用語。
本明細書に開示される実施形態は、テレオペレーションがロボットアームを使用して実施されている間に、ロボットアームとの相互作用を検出し、それに応答するためのシステム、方法、及び装置を提供する。
【0432】
本明細書で使用するとき、「結合する」、「結合している」、「結合された」という用語、又は結合という単語の他の変形は、間接的接続又は直接的接続のいずれかを示し得ることに留意されたい。例えば、第1の構成要素が第2の構成要素に「結合される」場合、第1の構成要素は、別の構成要素を介して第2の構成要素に間接的に接続されている、又は第2の構成要素に直接に接続されている、のいずれかであってもよい。
【0433】
本明細書に記載の手動操作モードへ移行するための機能は、プロセッサ可読媒体又はコンピュータ可読媒体上の1つ又は2つ以上の命令として記憶されてもよい。「コンピュータ可読媒体」という用語は、コンピュータ又はプロセッサがアクセスすることができる任意の利用可能な媒体を指すものである。一例として、限定するものではないが、このような媒体は、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)、読み出し専用メモリ(read-only memory、ROM)、電気的消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(electrically erasable programmable read-only memory、EEPROM)、フラッシュメモリ、コンパクトディスク読み出し専用メモリ(compact disc read-only memory、CD-ROM)、又は他の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置、若しくは他の磁気記憶デバイス、又は命令若しくはデータ構造の形態で所望のプログラムコードを記憶するために使用することができ、コンピュータによってアクセスされることができる任意の他の媒体を含んでもよい。コンピュータ可読媒体が、有形で、非一時的であってもよいことに留意されたい。本明細書で使用する際、「コード(code)」という用語は、コンピューティングデバイス又はプロセッサによって実行可能であるソフトウェア、命令、コード、又はデータを言うことができる。
【0434】
本明細書に開示される方法は、記載される方法を達成するための1つ又は2つ以上のステップ又は行為を含む。方法ステップ及び/又は行為は、特許請求の範囲から逸脱しない限り、互いに置き換えることができる。言い換えれば、記載の方法の正しい実施に特定の順序のステップ又は行為が必要とされない限り、特許請求の範囲から逸脱しない限り、特定のステップ及び/又は行為の順序及び/又は使用を修正することができる。
【0435】
本明細書で使用するとき、「複数」という用語は、2つ又はそれ以上を示す。例えば、複数の構成要素は、2つ又はそれ以上の構成要素のことである。「判断する(determining)」という用語は、多種多様な行為に及び、したがって、「判断する」には、計算する、コンピュータで計算する、処理する、導出する、調査する、ルックアップする(例えば、テーブル、データベース又は別のデータ構造を調べる)、確かめるなどを含めることができる。また、「判断する」には、受け取る(例えば、情報を受信する)、アクセスする(例えば、メモリ内のデータにアクセスする)などを含めることができる。また、「判断する」には、解決する、選択する、選出する、確立するなどを含めることができる。
【0436】
語句「に基づく」は、別段に明示的に指定されない限り、「のみに基づく」を意味しない。言い換えれば、語句「基づく」は、「のみに基づく」及び「少なくとも基づく」の両方を言うものである。
【0437】
開示された実施形態の前述の説明は、任意の当業者が本発明を製造すること、又は使用することを可能にするために提供される。これらの実施形態に対する様々な修正は、当業者には容易に明らかになり、かつ、本明細書で規定される一般的な原理は、本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態に適用され得る。例えば、当業者であれば、締結、取り付け、結合、又は係合ツール構成要素と同様の方式、特定の作動運動を生み出すのと同等の機構、及び電気エネルギを送達するのと同等の機構など、多くの対応する代替え、同等の構造上の細目を採用することができることが分かるであろう。したがって、本発明は、本明細書に示される実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示される原則及び新規な特徴と一致する最も広い範囲が与えられるものである。
【0438】
以下の条項により、いくつかの実施形態又は実装形態を記述する。
条項1. ロボットシステムであって、
ロボットアームと、
1つ又は2つ以上のセンサと、
1つ又は2つ以上のプロセッサと、
命令を記憶するメモリと、を備え、命令は、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ又は2つ以上のプロセッサに、
1つ又は2つ以上のセンサを介して、外部物体によってロボットアームに及ぼされた接触力又はトルクを検出することと、
接触力又はトルクを検出したことに応答して、接触力又はトルクの大きさが下方接触力限界又は下方トルク限界と上方接触力限界又は上方トルク限界との間にあるという判定に従って、検出された接触力又はトルクに従ったロボットアーム上の制御された移動の第1のセットを有効化することと、
を行わせる、ロボットシステム。
条項2. ロボットアーム上の制御された移動の第1のセットを有効化することは、ロボットアームのゼロ空間運動を起動することを含む、条項1に記載のロボットシステム。
条項3. メモリが、命令を更に含み、命令は、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ又は2つ以上のプロセッサに、
接触力又はトルクを検出したことに応答して、接触力又はトルクが上方接触力限界又は上方トルク限界を超えているという判定に従って、ロボットシステムの一部の移動を無効化させる、条項1又は2に記載のロボットシステム。
条項4. メモリが、命令を更に含み、命令は、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ又は2つ以上のプロセッサに、
接触力又はトルクを検出したことに応答して、接触力又はトルクが下方接触力又は下方トルク未満であるという判定に従って、検出された接触力又はトルクに従ったロボットアーム上の制御された移動の第1のセットの有効化を取り止めさせる、条項1~3のいずれかに記載のロボットシステム。
条項5.
1つ又は2つ以上のセンサは、1つ又は2つ以上の接触センサを含み、
接触力又はトルクは、1つ又は2つ以上の接触センサを使用して検出される、
条項1~4のいずれかに記載のロボットシステム。
条項6. 1つ又は2つ以上の接触センサは、ロボットアームのリンク上に位置している、条項5に記載のロボットシステム。
条項7. ロボットアームのリンクは、遠位リンク又は近位リンクである、条項6に記載のロボットシステム。
条項8.
1つ又は2つ以上のセンサは、多軸ロードセルを含み、
接触力又はトルクは、多軸ロードセルを使用して検出される、
条項1~7のいずれかに記載のロボットシステム。
条項9. 多軸ロードセルは、ロボットアームの遠位部分に位置する6軸ロードセルを含む、条項8に記載のロボットシステム。
条項10. メモリが、命令を更に含み、命令は、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ又は2つ以上のプロセッサに、
ロボットアームの第1の速度を含む第1のユーザコマンドを受信することと、
接触力の大きさが下方接触力限界と上方接触力限界との間にあるという判定に従って、
接触力の方向を判定することと、
トルクの方向を判定することと、
ロボットアームの並進速度及び接触力の方向によって形成される第1の角度を判定することと、
ロボットアームの回転速度及びトルクの方向によって形成される第2の角度を判定することと、
第1の角度が第1の角度閾値内にあり、第2の角度が第2の角度閾値内にあるという判定に従って、第1の速度でのロボットアームの1つ又は2つ以上の関節の移動を有効化することと、
(i)第1の角度が第1の角度閾値を超えているという判定又は(ii)第2の角度が第2の角度閾値を超えているという判定のうちの少なくとも1つに従って、ロボットアームの移動を無効化することと、を行わせる、条項1~9のいずれかに記載のロボットシステム。
条項11. 第1の角度閾値及び第2の角度閾値は、接触力を検出するために使用される1つ又は2つ以上の接触センサの測定不確実性に従って判定される、条項10に記載のロボットシステム。
条項12. メモリが、命令を更に含み、命令は、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ又は2つ以上のプロセッサに、
ロボットアームの要求速度を含む第2のユーザコマンドを受信することと、
トルクの大きさが下方トルク限界と上方トルク限界との間にあるという判定に従って、
トルクの方向を判定することと、
トルクの方向及びロボットアームの要求速度によって形成される第3の角度を判定することと、
第3の角度が第3の角度閾値内であるという判定に従って、要求速度でのロボットアームの移動を有効化することと、
第3の角度が第3の角度閾値を超えているという判定に従って、ロボットアームの移動を無効化することと、を行わせる、条項1~9のいずれかに記載のロボットシステム。
条項13. トルクの大きさは、ロボットアームの遠隔運動中心に対して判定される、条項12に記載のロボットシステム。
条項14. 第3の角度閾値は、トルクを検出するために使用される6軸ロードセルの測定不確実性に従って判定される、条項12又は13に記載のロボットシステム。
条項15. ロボットシステムであって、
ロボットアームと、
1つ又は2つ以上のセンサと、
1つ又は2つ以上のプロセッサと、
命令を記憶するメモリと、を備え、命令は、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ又は2つ以上のプロセッサに、
1つ又は2つ以上のセンサを介して、外部物体によってロボットアームに及ぼされた接触力又はトルクを検出することと、
接触力又はトルクを検出したことに応答して、接触力又はトルクが下方力限界又は下方トルク限界と上方接触力限界又は上方トルク限界との間にあるという判定に従って、ロボットアームの予め確立された経路又は予め記録された経路に基づく軌道におけるロボットアームの移動を有効化することと、
を行わせる、ロボットシステム。
条項16. 1つ又は2つ以上のセンサは、1つ又は2つ以上の接触センサを含む、条項15に記載のロボットシステム。
条項17. 1つ又は2つ以上のセンサは、6軸ロードセルを含む、条項15又は16に記載のロボットシステム。
条項18. ロボットアームの予め確立された経路又は予め記録された経路は、ロボットアームのリンク重心の予め記録された経路を含む、条項15~17のいずれかに記載のロボットシステム。
条項19. メモリが、命令を更に含み、命令は、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ又は2つ以上のプロセッサに、
リンク重心の予め記録された経路から、構成可能な期間にわたる予め記録された経路に沿った並進運動方向及び回転運動方向を判定させる、条項18に記載のロボットシステム。
条項20. ロボットアームの予め確立された経路又は予め記録された経路は、ロボットアームの遠隔中心運動のピッチ角及び/又はヨー角の予め確立された経路又は予め記録された経路を含む、条項15~19のいずれかに記載のロボットシステム。
条項21. メモリが、命令を更に含み、命令は、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ又は2つ以上のプロセッサに、
ロボットアームの予め確立された経路又は予め記録された経路から、構成可能な期間にわたる予め記録された経路に沿った平均運動方向を判定させる、条項20に記載のロボットシステム。
条項22. ロボットシステムであって、
ロボットアームと、
1つ又は2つ以上のセンサと、
1つ又は2つ以上のプロセッサと、
命令を記憶するメモリと、を備え、命令は、1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ又は2つ以上のプロセッサに、
1つ又は2つ以上のセンサを介して、外部物体によって及ぼされたロボットアームに対する接触力又はトルクを検出することと、
接触力又はトルクが下方反応力限界又は下方トルク限界以上であるという判定に従って、ロボットアームの速度を低減することと、
を行わせる、ロボットシステム。
条項23.
ロボットアームは、1つ又は2つ以上の関節を含み、
ロボットアームの速度を低減することは、ロボットアームの1つ又は2つ以上の関節の各々のそれぞれの速度を低減することを含む、
条項22に記載のロボットシステム。
条項24. 1つ又は2つ以上の関節の各々のそれぞれの速度を低減することは、全ての関節の速度を同じスケールだけ低減することを含む、条項23に記載のロボットシステム。
条項25. ロボットアームの速度を低減することは、ロボットアームの遠隔中心運動における角速度を低減することを含む、条項22~24のいずれかに記載のロボットシステム。
条項26. 1つ又は2つ以上のセンサは、1つ又は2つ以上の接触センサを含む、条項22~25のいずれかに記載のロボットシステム。
条項27. 1つ又は2つ以上のセンサは、6軸ロードセルを含む、条項22~26のいずれかに記載のロボットシステム。
【0439】
〔実施の態様〕
(1) ロボットシステムであって、
ロボットアームと、
1つ又は2つ以上のセンサと、
1つ又は2つ以上のプロセッサと、
命令を記憶するメモリと、を備え、前記命令が、前記1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
前記1つ又は2つ以上のセンサを介して、外部物体によって前記ロボットアームに及ぼされた接触力又はトルクを検出することと、
前記接触力又は前記トルクを検出したことに応答して、前記接触力又は前記トルクの大きさが下方接触力限界又は下方トルク限界と上方接触力限界又は上方トルク限界との間にあるという判定に従って、検出された前記接触力又は前記トルクに従った前記ロボットアーム上の制御された移動の第1のセットを有効化することと、
を行わせる、ロボットシステム。
(2) 前記ロボットアーム上の制御された移動の第1のセットを有効化することが、前記ロボットアームのゼロ空間運動を起動することを含む、実施態様1に記載のロボットシステム。
(3) 前記メモリが、命令を更に含み、前記命令が、前記1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
前記接触力又は前記トルクを検出したことに応答して、前記接触力又は前記トルクが前記上方接触力限界又は前記上方トルク限界を超えているという判定に従って、前記ロボットシステムの一部の移動を無効化させる、実施態様1に記載のロボットシステム。
(4) 前記メモリが、命令を更に含み、前記命令は、前記1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
前記接触力又は前記トルクを検出したことに応答して、前記接触力又は前記トルクが下方接触力又は下方トルク未満であるという判定に従って、検出された前記接触力又は前記トルクに従った前記ロボットアーム上の制御された移動の前記第1のセットの有効化を取り止めさせる、実施態様1に記載のロボットシステム。
(5) 前記1つ又は2つ以上のセンサが、1つ又は2つ以上の接触センサを含み、
前記接触力又は前記トルクが、前記1つ又は2つ以上の接触センサを使用して検出される、
実施態様1に記載のロボットシステム。
【0440】
(6) 前記1つ又は2つ以上の接触センサが、前記ロボットアームのリンク上に位置している、実施態様5に記載のロボットシステム。
(7) 前記ロボットアームの前記リンクが、遠位リンク又は近位リンクである、実施態様6に記載のロボットシステム。
(8) 前記1つ又は2つ以上のセンサが、多軸ロードセルを含み、
前記接触力又は前記トルクが、前記多軸ロードセルを使用して検出される、
実施態様1に記載のロボットシステム。
(9) 前記多軸ロードセルが、前記ロボットアームの遠位部分に位置する6軸ロードセルを備える、実施態様8に記載のロボットシステム。
(10) 前記メモリが、命令を更に含み、前記命令が、前記1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
前記ロボットアームの第1の速度を含む第1のユーザコマンドを受信することと、
前記接触力の前記大きさが下方接触力限界と上方接触力限界との間にあるという前記判定に従って、
a)前記接触力の方向を判定することと、
b)前記トルクの方向を判定することと、
c)前記ロボットアームの並進速度及び前記接触力の前記方向によって形成される第1の角度を判定することと、
d)前記ロボットアームの回転速度及び前記トルクの前記方向によって形成される第2の角度を判定することと、
前記第1の角度が第1の角度閾値内にあり、前記第2の角度が第2の角度閾値内にあるという判定に従って、前記第1の速度での前記ロボットアームの1つ又は2つ以上の関節の移動を有効化することと、
(i)前記第1の角度が前記第1の角度閾値を超えているという判定又は(ii)前記第2の角度が前記第2の角度閾値を超えているという判定のうちの少なくとも1つに従って、前記ロボットアームの移動を無効化することと、を行わせる、実施態様1に記載のロボットシステム。
【0441】
(11) 前記第1の角度閾値及び前記第2の角度閾値が、前記接触力を検出するために使用される1つ又は2つ以上の接触センサの測定不確実性に従って判定される、実施態様10に記載のロボットシステム。
(12) 前記メモリが、命令を更に含み、前記命令が、前記1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
前記ロボットアームの要求速度を含む第2のユーザコマンドを受信することと、
前記トルクの前記大きさが前記下方トルク限界と前記上方トルク限界との間にあるという前記判定に従って、
前記トルクの方向を判定することと、
前記トルクの前記方向及び前記ロボットアームの前記要求速度によって形成される第3の角度を判定することと、
前記第3の角度が第3の角度閾値内であるという判定に従って、前記要求速度での前記ロボットアームの移動を有効化することと、
前記第3の角度が前記第3の角度閾値を超えているという判定に従って、前記ロボットアームの移動を無効化することと、を行わせる、実施態様1に記載のロボットシステム。
(13) 前記トルクの前記大きさが、前記ロボットアームの遠隔運動中心に対して判定される、実施態様12に記載のロボットシステム。
(14) 前記第3の角度閾値が、前記トルクを検出するために使用される6軸ロードセルの測定不確実性に従って判定される、実施態様12に記載のロボットシステム。
(15) ロボットシステムであって、
ロボットアームと、
1つ又は2つ以上のセンサと、
1つ又は2つ以上のプロセッサと、
命令を記憶するメモリと、を備え、前記命令が、前記1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
前記1つ又は2つ以上のセンサを介して、外部物体によって前記ロボットアームに及ぼされた接触力又はトルクを検出することと、
前記接触力又は前記トルクを検出したことに応答して、前記接触力又は前記トルクが下方力限界又は下方トルク限界と上方接触力限界又は上方トルク限界との間にあるという判定に従って、前記ロボットアームの予め確立された経路又は予め記録された経路に基づく軌道における前記ロボットアームの移動を有効化することと、
を行わせる、ロボットシステム。
【0442】
(16) 前記1つ又は2つ以上のセンサが、1つ又は2つ以上の接触センサを含む、実施態様15に記載のロボットシステム。
(17) 前記1つ又は2つ以上のセンサが、6軸ロードセルを含む、実施態様15に記載のロボットシステム。
(18) 前記ロボットアームの前記予め確立された経路又は前記予め記録された経路が、前記ロボットアームのリンク重心の予め記録された経路を含む、実施態様15に記載のロボットシステム。
(19) 前記メモリが、命令を更に含み、前記命令が、前記1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
前記リンク重心の前記予め記録された経路から、構成可能な期間にわたる前記予め記録された経路に沿った並進運動方向及び回転運動方向を判定させる、実施態様18に記載のロボットシステム。
(20) 前記ロボットアームの前記予め確立された経路又は前記予め記録された経路が、前記ロボットアームの遠隔中心運動のピッチ角及び/又はヨー角の予め確立された経路又は予め記録された経路を含む、実施態様15に記載のロボットシステム。
【0443】
(21) 前記メモリが、命令を更に含み、前記命令が、前記1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
前記ロボットアームの前記予め確立された経路又は前記予め記録された経路から、構成可能な期間にわたる前記予め記録された経路に沿った平均運動方向を判定させる、実施態様20に記載のロボットシステム。
(22) ロボットシステムであって、
ロボットアームと、
1つ又は2つ以上のセンサと、
1つ又は2つ以上のプロセッサと、
命令を記憶するメモリと、を備え、前記命令が、前記1つ又は2つ以上のプロセッサによって実行されると、前記1つ又は2つ以上のプロセッサに、
前記1つ又は2つ以上のセンサを介して、外部物体によって及ぼされた前記ロボットアームに対する接触力又はトルクを検出することと、
前記接触力又は前記トルクが下方反応力限界又は下方トルク限界以上であるという判定に従って、前記ロボットアームの速度を低減することと、
を行わせる、ロボットシステム。
(23) 前記ロボットアームが、1つ又は2つ以上の関節を含み、
前記ロボットアームの前記速度を低減することが、前記ロボットアームの前記1つ又は2つ以上の関節の各々のそれぞれの速度を低減することを含む、
実施態様22に記載のロボットシステム。
(24) 前記1つ又は2つ以上の関節の各々の前記それぞれの速度を低減することが、全ての前記関節の速度を同じスケールだけ低減することを含む、実施態様23に記載のロボットシステム。
(25) 前記ロボットアームの前記速度を低減することが、前記ロボットアームの遠隔中心運動における角速度を低減することを含む、実施態様22に記載のロボットシステム。
【0444】
(26) 前記1つ又は2つ以上のセンサが、1つ又は2つ以上の接触センサを含む、実施態様22に記載のロボットシステム。
(27) 前記1つ又は2つ以上のセンサが、6軸ロードセルを含む、実施態様22に記載のロボットシステム。
【国際調査報告】