(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】新規な溶出率を示すタダラフィルまたはこの薬学的に許容される塩及びデュタステリドまたはこの薬学的に許容される塩を含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4985 20060101AFI20240118BHJP
A61K 31/57 20060101ALI20240118BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240118BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20240118BHJP
A61K 47/08 20060101ALI20240118BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240118BHJP
A61P 15/10 20060101ALI20240118BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20240118BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240118BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
A61K31/4985
A61K31/57
A61P43/00 121
A61K9/16
A61K47/08
A61K47/10
A61P15/10
A61P13/08
A61P35/00
A61P17/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540056
(86)(22)【出願日】2021-12-30
(85)【翻訳文提出日】2023-08-15
(86)【国際出願番号】 KR2021020236
(87)【国際公開番号】W WO2022146061
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0188774
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519388893
【氏名又は名称】ドン・クク・ファーム・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】イ,イェリ
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ソンフン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョンシル
(72)【発明者】
【氏名】イ,ケワン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076BB01
4C076CC17
4C076CC18
4C076CC27
4C076DD01F
4C076DD38
4C076DD39
4C076FF33
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB09
4C086DA08
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA41
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA11
4C086ZA81
4C086ZA92
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
タダラフィルまたはこの薬学的に許容される塩5mgと、デュタステリドまたはこの薬学的に許容される塩0.5mgと、を有効成分として含む医薬組成物において、pH 1.2、0.25% SLSを含む溶出液500mLにおいてパドル速度を50rpmとする溶出条件下でタダラフィルの溶出率が5分で60~75%及び30分で80%以上の溶出率、及び水、0.1% SLSを含む溶出液500mLにおいてパドル速度を50rpmとする溶出条件下でデュタステリドの溶出率が15分で50%以上及び30分で85%以上の溶出率を示すことを特徴とする医薬組成物が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タダラフィルまたはこの薬学的に許容される塩5mgと、
デュタステリドまたはこの薬学的に許容される塩0.5mgと、
を有効成分として含む医薬組成物において、
pH 1.2で0.25% SLSを含む溶出液500mLにおいてパドル速度を50rpmとする溶出条件下でタダラフィルの溶出率が5分で60~75%及び30分で80%以上であり、及び
水および0.1% SLSを含む溶出液500mLにおいてパドル速度を50rpmとする溶出条件下でデュタステリドの溶出率が15分で50%以上及び30分で85%以上であることを特徴とする、医薬組成物。
【請求項2】
前記医薬組成物は、タダラフィルまたはこの薬学的に許容される塩を含む顆粒、及びデュタステリドまたはこの薬学的に許容される塩を含む顆粒を含むことを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記タダラフィルまたはこの薬学的に許容される塩を含む顆粒の粒度が、D10が30μm以下、D50が70~130μm、D90が250~350μmであることを特徴とする、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記デュタステリドまたはこの薬学的に許容される塩を含む顆粒の粒度が、D10が15μm以下、D50が25~40μm、D90が90~150μmであることを特徴とする、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記タダラフィル顆粒は、タダラフィル、界面活性剤、水溶性高分子及び溶媒を含む懸濁液を製造して顆粒化した顆粒であることを特徴とする、請求項3または4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記デュタステリド顆粒は、デュタステリド、ジエチレングリコールモノエチルエーテル及びモノ/ジグリセリドを含むオイル混合液に溶解させて、得られた溶液を吸着剤に吸着させた後に、顆粒化したものであることを特徴とする、請求項3または4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記デュタステリド顆粒は、ポリオキシルひまし油を含まないことを特徴とする、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記吸着剤は、二酸化ケイ素、コロイド状二酸化ケイ素、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、カルシウムシリケート、マグネシウムアルミノメタシリケート及びこれらの組み合わせから選ばれることを特徴とする、請求項6に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な溶出率を示す医薬組成物に関する。より詳細には、タダラフィルまたはこの薬学的に許容される塩(以下、「タダラフィル」と略称する。)とデュタステリドまたはこの薬学的に許容される塩(以下、「デュタステリド」と略称する。)を有効成分として含む医薬組成物に関する。また、本発明においては、タダラフィルとデュタステリドを有効成分として含む医薬組成物において、生体外溶出試験を通じて生体内吸収を容易に予測できる方法も提供する。さらに、このような溶出率を示すために特定の粒度分布を有する含タダラフィル顆粒と含デュタステリド顆粒を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
大韓民国登録特許第1745425号は、デュタステリド及びタダラフィルを含む経口用複合エマルジョン組成物を開示する。同文献に開示されたエマルジョン組成物は、デュタステリド及びタダラフィルという二種類の薬剤を一つの単位剤形に含むが、安定性の低下の問題がなく、製造が便利であり、不快な負担(pill burden)が軽減され、それぞれの単一の製剤と同等の薬物溶出及び同一の薬効を示して、勃起不全及び前立腺肥大症の同時治療が可能であることから、患者の服薬順応度を高めるという効果を有する。
【0003】
大韓民国登録特許第1712524号は、タダラフィル製剤及びデュタステリド製剤を含む複合製剤組成物であって、タダラフィル及びデュタステリドを含む複合製剤組成物及びその製造方法に関する。同文献では、デュタステリド、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、モノ/ジグリセリド及びポリオキシルひまし油を含む混合溶液及び吸着剤を含み、前記混合溶液は吸着剤に吸着されたことを特徴とするデュタステリド製剤とタダラフィル、界面活性剤、水溶性高分子、溶媒を含む懸濁液を製造して顆粒物にしたことを特徴とするタダラフィル製剤を混合して製造した複合製剤組成物及びその製造方法を開示する。
【0004】
大韓民国登録特許第1780739号は、第1の活性成分としてホスホジエステラーゼ5阻害剤、例えばタダラフィル及び第2の活性成分として5-α-還元酵素阻害剤、例えばデュタステリドを含む複合製剤を開示する。同文献では、5-α-還元酵素阻害剤をコーティング層に含めることを技術的特徴とするものであって、薬理機序が互いに異なる二種類の前立腺肥大症の治療薬物を一つの製剤に両方とも含めて前立腺肥大症の治療及び緩和において相乗効果を提供することにより、患者の服薬順応度を増加させることを効果とする。
【0005】
しかしながら、上記のいかなる文献においても、タダラフィル及びデュタステリドを有効成分として含む医薬組成物において、生体外溶出試験と生体内吸収挙動との相関関係を具体的に言及したり、このための構成を開示したりしていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】大韓民国登録特許第1745425号
【特許文献2】大韓民国登録特許第1712524号
【特許文献3】大韓民国登録特許第1780739号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Efficacy of tadalafil treatment on erectile dysfunction in patients under dutasteride treatment: A prospective non-randomized comparative study(Turk J Urol. 2018 Jul; 44(4): 294-297.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
タダラフィル及びデュタステリドを有効成分として含む医薬組成物(複合剤)に対するin vitro溶出パターンとin vivo吸収様相との相関関係を究めることにより、タダラフィルを有効成分として含む単一剤及びデュタステリドを有効成分として含む単一剤からの各有効成分の生体内吸収パターンと前記複合剤組成物からの各有効成分の生体内吸収パターンを同一にできる溶出条件及び溶出率を導き出すことを解決しようとする課題とする。これにより、特定の溶出条件下で生体外溶出試験の結果と生体内吸収様相との間に強度な牽連関係(以下、「IVIVC(in vitro in vivo correlation)」と略称する。)を有するタダラフィル及びデュタステリドを有効成分として含む医薬組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
タダラフィルまたはこの薬学的に許容される塩5mgと、デュタステリドまたはこの薬学的に許容される塩0.5mgと、を有効成分として含む医薬組成物において、pH 1.2で0.25%のラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate;SLS)を含む溶出液500mLにおいてパドル速度を50rpmとする溶出条件下でタダラフィルの溶出率が5分で60~75%及び30分で80%以上であり、及び水、0.1% SLSを含む溶出液500mLにおいてパドル速度を50rpmとする溶出条件下でデュタステリドの溶出率が15分で50%以上及び30分で85%以上であることを示すことを特徴とする医薬組成物を提供することにより上記の課題を解決する。前記溶出率を示す一つの具体的な手段として、含タダラフィル顆粒の粒度をD10が30μm以下、D50が70~130μm、D90が250~350μmになるように調節し、含デュタステリド顆粒の粒度をD10が15μm以下、D50が25~40μm、D90が90~150μmになるように調節してもよい。
【発明の効果】
【0010】
タダラフィル及びデュタステリドを有効成分として含む医薬組成物を製造するに当たって、生体外吸収様相を正確に予測できる溶出条件及び溶出率を導き出すことにより、医薬品の製剤化や製剤開発の期間を短縮することができる。さらに、各単一成分の溶出率が改善されることにより、治療効果が極大化される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1、比較例1及び参考例(アボダート)を対象として従来の仕様および試験法によって溶出試験を行ったときの結果を示すグラフである。
【
図2】実施例1、比較例1及び参考例(シアリス)を対象として従来の仕様および試験法によって溶出試験を行ったときの結果を示すグラフである。
【
図3】実施例1、比較例1及び参考例(アボダート)を対象としたビーグル犬におけるPK(薬物動態プロファイル)を示すグラフである。
【
図4】実施例1、比較例1及び参考例(シアリス)を対象としたビーグル犬におけるPK(薬物動態プロファイル)を示すグラフである。
【
図5】実施例1、比較例1及び参考例(シアリス)を対象として本発明の溶出条件下で溶出試験を行ったときの結果を示すグラフである。
【
図6】実施例1、比較例1及び参考例(アボダート)を対象として本発明の溶出条件下で溶出試験を行ったときの結果を示すグラフである。
【
図7】実施例1、比較例2~3及び参考例(シアリス)を対象として本発明の溶出条件下で溶出試験を行ったときの結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
医薬品の開発過程においては、in vitro試験、動物試験及び人間を対象とするin vivo試験などが伴われる。これは、新薬の開発過程のみならず、改良新薬と呼ばれるいわゆる資料提出医薬品やジェネリック医薬品を開発するときにも同様である。
【0013】
人間を対象として行うin vivo試験を減らそうとする努力が科学的な根拠の下で盛んに試みられている。その一環として、生体内試験を生体外試験に取り換えようとする努力が国内外を問わずに盛んに行われている。しかしながら、生体内に投与された医薬品からの薬物の溶出及び吸収過程は、様々な生理的な物質が与った複雑なシステムにおいて起こり、薬物の吸収に及ぼす生体内の影響因子も非常に多岐にわたるため、薬物の生体内動態を生体外試験方法のみにて評価するのには限界がある。したがって、生体内外の相関性の研究を通じて生体内の状態を最も適切に反映できる生体外試験条件に関する研究が必要である。IVIVC相関性の開発及び予測性の評価結果は、人間を対象とした生物学的同等性試験の代理指標として溶出試験の方法を確立し、これに基づいて製造規模の拡張及び許可後の変更並びに最初の承認過程において行われるべき生物学的同等性試験の数を減らすことができる筈であり、生体外溶出試験は、工程管理と品質保証、全時間帯に亘っての製品の安定的な放出特性の確認、些細な製剤の変更または製造元の変更においてある規制的な決定をする上で重要である。経口用放出制御型製剤の場合であれば、溶出試験が製造過程の品質管理及び製剤の生体内の動態様相を示す指標としても使用可能である。
【0014】
本発明は、タダラフィル及びデュタステリドを有効成分として含む医薬組成物に関する。タダラフィルは、シアリス(登録商標)(商品名)(Cialis)として市販される医薬品の有効成分であって、下記の化学式1の構造を有する。
【0015】
【0016】
タダラフィルは、サイクリックグアノシンモノホスファート(cGMP)-特異的ホスホジエステラーゼ5型(以下、PDE-5)に対する選択的及び可逆的な阻害剤である。タダラフィルは、勃起不全及び陽性前立腺肥大症の治療または勃起不全と陽性前立腺肥大症の合併患者の治療に使用可能であると言われている。
【0017】
デュタステリドは、アボダート(登録商標)(商品名)(AVODART)として市販される医薬品の有効成分であって、下記の化学式2の構造を有する。
【0018】
【0019】
デュタステリドは、5-α還元酵素の1型と2型を両方とも阻害する二重5-α還元酵素阻害剤であって、テストステロンがジヒドロテストステロン(DHT)に切り換えられることを阻害することにより、陽性前立腺肥大症、前立腺がん及び男性型脱毛症の治療に有効に使用可能であることが知られている。
【0020】
前立腺肥大症は、年を取るにつれて前立腺の大きさが大きくなって各種の排尿機能に異常を与える非常にありふれた疾患である。前立腺肥大症の治療のためには、前立腺の大きさを減らす薬剤である5-α還元酵素阻害剤を投与することが効果的であるものの、改善効果が直ちに現れない場合があり、これにより、症状の改善のための他の薬物と併用投与をすることがあり、他の薬物にはタダラフィルが含まれる。したがって、デュタステリド及びタダラフィルを有効成分として含む複合剤を提供することにより、前立腺の大きさを減らすとともに、症状の改善効果を期待することができる。
【0021】
既存に知られており、医薬品許可当局の許可を受けて市販される2種類の単一剤の有効成分を一つの剤形にして製造する複合剤を製造するにあたっては、当該複合剤に含まれている有効成分の生体内吸収様相が既存に許可を受けている単一剤の有効成分の生体内吸収様相と同等になるようにする必要がある。そして、このような事項は、人間を対象とする臨床試験によって確証されなければならない。ところが、同一の有効成分であるとしても、単一剤からの薬物の溶出及び吸収のパターンと複合剤からの薬物の溶出及び吸収のパターンとが同一ではない場合が多く、したがって、単に溶出試験を行って単一剤からの有効成分の溶出率と複合剤からの有効成分の溶出率とを同等に調節するとしても、実際の臨床試験における人体内吸収様相が異なってくる場合が多い。これにより、複数回の臨床試験を経ながら、製剤の設計を繰り返し行うことを余儀なくされるため、これにかかるコストと時間の消耗は、複合剤の開発過程においてぶつかる最も大きな障害要素の一つとなる。
【0022】
1997年9月に発表された米国食品医薬品局(FDA)のガイダンスによれば、IVIVCについての研究を行う目的は、溶出、溶解度及び腸管膜の透過度試験を生体利用率の試験に関する代替方法として使用できるようにするところにある。すなわち、IVIVCが確立されれば、医薬品の許可後に、生産量の拡大の際や添加剤の変更の際に両製剤の間の生物学的な同等性の確保が溶出試験でも可能である。一方、国内の試験機関において経口固形製剤の品質管理のために溶出試験が広範に用いられているものの、このような生体外溶出試験データだけでは、生体内動態を正確に予測することができない場合が多い。まして、複合剤の場合、生体外溶出試験結果に基づいて生体外吸収様相を予測することは、現実にはまだほど遠いのが現状である。
【0023】
このような状況で、本発明者らは、タダラフィルとデュタステリドを含む医薬組成物において、特定の溶出条件下における溶出率が生体外吸収様相と強固な相関関係を有するという知見を得て本発明を完成させるに至った。
【0024】
具体的には、タダラフィル及びデュタステリドを有効成分として含む医薬組成物において、pH 1.2、0.25% SLSを含む溶出液500mLにおいてパドル速度を50rpmとする溶出条件下でタダラフィルの溶出率が5分で60~75%及び30分で80%以上であり、及び水、0.1% SLSを含む溶出液500mLにおいてパドル速度を50rpmとする溶出条件下でデュタステリドの溶出率が15分で50%以上及び30分で85%以上である場合、タダラフィルを有効成分として含む単一剤及びデュタステリドを有効成分として含む単一剤と前記医薬組成物の生体外吸収様相が同等になるという新規な知見を得た。
【0025】
換言すれば、上記の溶出条件から外れる場合、タダラフィルとデュタステリドを含む医薬組成物は、タダラフィル及びデュタステリドをそれぞれ含む単一剤の各有効成分と生体内吸収様相が同一にならない。したがって、本発明において開示する特定の溶出条件を満たす医薬組成物の場合、繰り返し行われる臨床試験なしに最低限のコストと時間を投資して医薬品の開発を行うことができるというメリットを有することになる。
【0026】
上記のような溶出条件を発揮させる一つの技術的手段として、タダラフィルとデュタステリドを含む顆粒の粒度分布を調節することができる。本発明の医薬組成物は、タダラフィルを含む顆粒(以下、「タダラフィル顆粒」と称する。)及びデュタステリドを含む顆粒(以下、「デュタステリド顆粒」と称する。)を含む。具体的には、前記タダラフィル製剤は、タダラフィル、界面活性剤、水溶性高分子、溶媒を含む懸濁液を製造して顆粒化したものであり、デュタステリド顆粒は、モノ/ジグリセリド及び/又はジエチレングリコールモノエチルエーテルなどの溶液に溶解させて吸着剤に吸着させて顆粒化したものである。
【0027】
本発明者らは、前記タダラフィル顆粒及びデュタステリド顆粒の粒度分布が本発明に係る医薬組成物の微細な溶出様相に影響を与えるという知見を得た。具体的に、本発明に開示されている溶出条件は、30分であるという比較的に短い時間の間に放出される溶出様相を微細に調節したものであって、このような溶出パターンは、それぞれの有効成分を含む顆粒の粒度分布をさらに精度よく調節することによって成し遂げられる。具体的には、含タダラフィル顆粒の粒度をD10が30μm以下、D50が70~130μm、D90が250~350μmになるように調節し、含デュタステリド顆粒の粒度をD10が15μm以下、D50が25~40μm、D90が90~150μmになるように調節したとき、本発明の溶出パターンが発現可能である。D10とは、粒度分布計による累積粒度分布において体積累計の下位10%に相当する粒子の直径のことをいい、D50及びD90とは、それぞれ50%、90%に相当する粒子の直径のことを意味する。粒度分布の調節及び測定は、この技術分野において広く知られている微粉化方法及び測定方法によって行われる。例えば、粒度分布の調節のために知られている通常の方法として、マイクロフルイダイザー、ジェットミル、コミル(Co-mill)、ボールミルなどを用いた粉砕、湿式もしくは乾式顆粒の整粒などの方法が挙げられる。粒度分布の調節を確認するために、レーザー回折粒度分析器(例えば、HELOS(H0184)&RODOS、R5:0.5/4.5...875μm)乾式測定法により測定することができる。
【0028】
本発明に係る医薬組成物は、タダラフィル、界面活性剤、水溶性高分子、溶媒を含む懸濁液を製造してタダラフィル顆粒を製造するステップと、デュタステリドをモノ/ジグリセリド及びジエチレングリコールモノエチルエーテルの混合溶液に溶解させた後、吸着剤に吸着させてデュタステリド吸着物を製造して顆粒化してデュタステリド顆粒を製造するステップ、及び前記タダラフィル顆粒及びデュタステリド顆粒を混合した後、薬学的に許容される賦形剤、崩解剤、添加剤を混合して充填したり打錠したりするステップを含む。
【0029】
本発明の医薬組成物に含まれる界面活性剤、水溶性高分子、吸着剤及び薬学的に許容される賦形剤、崩解剤、希釈剤、添加剤は、本発明において定める溶出条件を満たす限り、あるいは、本発明において定める顆粒の粒度条件を満たしつつ、溶出条件を満たす限り、特に制限されず、通常の製剤学的な剤形技術を採択することにより製造される。例えば、Remington’s The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed., Lippincott Williams & Wilkins (2005)などに開示されている標準的な製剤技術を用いて様々な医薬組成物として製剤化可能であり、好ましくは、錠剤またはカプセル剤にすればよい。本発明の医薬組成物に含まれる界面活性剤、水溶性高分子、吸着剤及び薬学的に許容される賦形剤、崩解剤、希釈剤、添加剤については、文献[Handbook of PH armaceutical Excipients (Rowe, Ed., APH A Publications, 2017)]などを参照すればよく、賦形剤は、顆粒内(intragranular)(すなわち、顆粒内に混入される)または顆粒外(extragranular)(すなわち、顆粒の外部)に存在してもよい。
【0030】
本発明の医薬組成物に含まれる界面活性剤は、薬学的に許容可能な界面活性剤が特に制限なしに使用可能であり、好ましくは、ポリオキシエチレンステアレート類、パルミチン酸エステル類、硫酸ラウリルナトリウム、ポロキサマー及びこれらの組み合わせから選ばれたものが使用可能であり、より好ましくは、硫酸ラウリルナトリウムが使用可能であるが、これに必ずしも限定されるとは限らない。本発明の医薬組成物に含まれる水溶性高分子は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン及びこれらの組み合わせから選択可能である。本発明においていう溶媒がメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、精製水及びこれらの組み合わせから選択可能である。
【0031】
本明細書中において、前記「モノ/ジグリセリド」は、モノグリセリド、ジグリセリド及びこれらの混合物を通称する概念である。本発明において、吸着剤としては、薬学的に許容可能な吸着剤が特に制限なしに使用可能であり、好ましくは、二酸化ケイ素、コロイド状二酸化ケイ素、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、カルシウムシリケート、マグネシウムアルミノメタシリケート及びこれらの組み合わせから選ばれたものが使用可能であり、より好ましくは、ケイ酸アルミン酸マグネシウムが使用可能である。
【0032】
本発明に係る医薬組成物には、上記の成分に加えて、薬学的に許容可能な通常の追加の成分、例えば、賦形剤、崩解剤、添加剤などがさらに含まれ得る。薬学的に許容可能な賦形剤、崩解剤、添加剤などとしては、制限されるものではないが、ジリン酸カルシウム、硫酸カルシウム、糖、例えば、ラクトース、グルコース及びスクロース;デンプン、例えば、トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン;セルロース及びこの誘導体、例えば、ソジウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース及びメチルセルロース;カオリン、粉末トラガカント;麥芽;ゼラチン;タルク;固体潤滑油、例えば、ステアリン酸、マグネシウムステアレート及びカルシウムステアレート;硫酸カルシウム;鉱油;植物油、例えば、水素化植物油、落花性油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及びカカオ油;ポリオール、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、イノシトール、マンニトール及びポリエチレングリコール;アルギン酸;乳化剤、例えば、ポリソルベート;湿潤剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポロキサマー;着色剤;着香料;錠剤化剤、安定化剤;抗酸化剤;保存剤などが挙げられる。
【0033】
以下、本発明の具体的な実施形態について実施例を挙げて説明する。これらの実施例は、本発明の理解への一助となるために例示するものに過ぎず、これらによって本発明の権利範囲が制限されることはない。
【0034】
実施例1~3の製造
【0035】
下記の表1に記載されている組成に従い、医薬組成物を製造した。タダラフィル顆粒は、精製水にヒドロキシプロピルセルロースとラウリル硫酸ナトリウム、ポロキサマーを入れて完全に溶解させた後、タダラフィルを入れて分散させて懸濁液を製造した。希釈剤である微結晶セルロース、乳糖水和物及びD-マンニトール、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースと崩解剤であるクロスカルメロースナトリウムを混合した後、上記の懸濁液で練り合わせ、製粒工程を通じてタダラフィルの含量の均一性に問題が起こらないようにした。製粒物を60℃の温度下で乾燥させて整粒した後、タダラフィルを含む顆粒を製造した。デュタステリド顆粒は、まず、デュタステリドをモノ/ジグリセリド及びジエチレングリコールモノエチルエーテルの混合溶液に溶解させて製造した。吸着剤であるコロイド状二酸化ケイ素とラウリル硫酸ナトリウムに上記において製造された混合溶液を吸着させてデュタステリドを含有する吸着物を製造した。上記において製造したタダラフィル顆粒及びデュタステリド顆粒を混合した後、D-マンニトール、クロスカルメロースナトリウム及びステアリン酸マグネシウムを追加して打錠した。
【0036】
【0037】
(上記の表に記載されている数値は、錠剤1錠当たりに含まれる含量をmgにて示したものである。)
【0038】
実施例1~3において製造したタダラフィル顆粒及びデュタステリド顆粒の粒度は、下記の表2の通りである。
【0039】
【0040】
比較例1~3の製造
【0041】
【0042】
(上記の表に記載されている数値は、錠剤1錠当たりに含まれる含量をmgにて示したものである。)
【0043】
実施例1~3の方法と同様にして比較例1~3を製造するが、比較例1~3のタダラフィル顆粒及びデュタステリド顆粒の粒度分布を表3に記載されたように調節した。
【0044】
【0045】
実験例1
【0046】
実施例1、比較例1及び参考例としてアボダート錠(デュタステリド0.5mg)及びシアリス錠(タダラフィル5mg)を用いて、下記のような条件下で溶出を実施し、デュタステリドの溶出率の結果を
図1及び表4に、かつ、タダラフィルの溶出率の結果を
図2及び表5に示す。
【0047】
溶出条件
【0048】
水、0.25% SLS 900mL、50rpm
【0049】
【0050】
【0051】
上記の表4及び5と
図1及び2から明らかなように、通常の基試法の溶出条件下では、参考例、実施例1及び比較例1の間の溶出率に差がなかった。したがって、通常の製剤研究者であれば、実施例1や比較例1が両方とも参考例と生物学的な同等性があるだろうと推測する筈である。
【0052】
実験例2
【0053】
ビーグル犬を対象として参考例、実施例1及び比較例1を用いてPK(薬物動態プロファイル)を測定し、タダラフィルの血中薬物濃度の推移を
図3及び表6に、かつ、デュタステリドの血中薬物濃度の推移を
図4及び表7に記載した。
【0054】
薬物の動態学的な評価のために、ビーグル犬15匹(1群当たりに5匹)に次の各群を3X3交差服用させる。但し、このとき、休薬期間は、薬物の半減期を考慮して2週間に設定する。採血は、デュタステリドとタダラフィルの最高の血中濃度を考慮して、0、0.25、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、5、6、8、12、24、48時間おきに実施した。
【0055】
[試験薬の情報]
【0056】
対照群:シアリス1錠とアボダート1カプセルの併用投与
【0057】
試験群1:実施例1の1錠
【0058】
試験群2:実施例2の1錠
【0059】
図3、
図4及び表6、表7から明らかなように、実施例1は、参考例と生物学的に同等であったが、比較例1は参考例と同等ではなかった。参考例、実施例1及び比較例1の間の溶出率に差がなかった実験例1の結果を考慮すれば、このような結果は、タダラフィル及びデュタステリドを有効成分として含む医薬組成物においては、通常の基試法の溶出条件では生体外溶出様相と生体内吸収様相との間に強固な牽連関係が存在しないということが分かる。
【0060】
【0061】
【0062】
実験例3
【0063】
下記のような溶出条件下で、実施例1、比較例1及び参考例(アボダート及びシアリス錠)に対して溶出試験を行い、タダラフィルに対する溶出率を表8及び
図5に、かつ、デュタステリドに対する溶出率を表9及び
図6に示す。
【0064】
タダラフィル溶出条件
【0065】
pH 1.2、0.25% SLS、50rpm、500mL
【0066】
デュタステリド溶出条件
【0067】
水、0.1% SLS、50rpm、500mL
【0068】
【0069】
【0070】
表8、表9及び
図5、
図6から明らかなように、実施例1は、タダラフィル溶出条件としてpH 1.2、0.25% SLS、50rpm、500mLにおいて5分で60~75%、30分で80%以上の溶出率を示すことを確認することができ、デュタステリドの溶出条件として水、0.1% SLS、50rpm、500mLにおいて15分で50%以上及び30分で85%以上の溶出を示すということが分かった。
【0071】
実験例4
【0072】
本発明に係る溶出試験条件下で、実施例1と比較例1、2、3を対象としてタダラフィルの溶出率を測定して、その結果を表10及び
図7に示す。
【0073】
【0074】
表10及び
図7から、本発明において提示する粒度分布を満たせない場合、本発明の溶出条件を満たすことができないということが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0075】
タダラフィル及びデュタステリドを有効成分として含む医薬組成物を製造するに当たって、本発明において開示している溶出条件及び溶出率を用いる場合、当該医薬組成物からの各有効成分の生体内吸収様相と既存に許可された単一剤からの有効成分の生体内吸収様相とを同等に調節することができる。
【国際調査報告】