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  • 特表-媒体用の搬送装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】媒体用の搬送装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20240118BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20240118BHJP
   B60L 50/70 20190101ALI20240118BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/00 Z
B60L50/70
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540172
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(85)【翻訳文提出日】2023-06-29
(86)【国際出願番号】 EP2022051152
(87)【国際公開番号】W WO2022157206
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】102021000306.3
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522100316
【氏名又は名称】セルセントリック・ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】アルミン・ミュッチェレ
(72)【発明者】
【氏名】ハラルト・バドフスキー
【テーマコード(参考)】
5H125
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC07
5H125BD12
5H125FF09
5H127AB04
5H127AC05
5H127AC07
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA33
5H127BA57
5H127BA59
5H127BA60
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127CC01
5H127EE18
(57)【要約】
本発明は、原動機(21)を備えた燃料電池システム(1)における媒体用の搬送装置に関し、原動機によって、少なくとも1つの冷媒ポンプ(17)、少なくとも1つの空気用の搬送機構(8)および少なくとも1つのアノード排ガス再循環用の搬送機構(14)が駆動される。本発明による搬送装置は、原動機(21)がロータシャフト(22)を有し、このロータシャフト(22)に冷媒ポンプ(17)が直接的に連結され、冷媒ポンプ(17)または原動機(21)が搬送機構(8、14)の1つと磁気的に連結され、かつ原動機(21)または搬送機構(8、14)がもう1つの搬送機構(14、8)と磁気的に連結されることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機(21)を備えた燃料電池システム(1)における媒体用の搬送装置であって、前記原動機によって、少なくとも1つの冷媒ポンプ(17)、少なくとも1つの空気用の搬送機構(8)および少なくとも1つのアノード排ガス再循環用の搬送機構(14)が駆動される、前記搬送装置において、
前記原動機(21)がロータシャフト(22)を有し、前記ロータシャフト(22)に前記冷媒ポンプ(17)が直接的に連結され、前記冷媒ポンプ(17)または前記原動機(21)が前記搬送機構(8、14)の1つと磁気的に連結され、かつ前記原動機(21)または前記搬送機構(8、14)がもう1つの前記搬送機構(14、8)と磁気的に連結されることを特徴とする、前記搬送装置。
【請求項2】
前記空気用の搬送機構(8)がフローコンプレッサーとして形成されることを特徴とする、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記アノード排ガス再循環用の搬送機構(14)が再循環ブロワーとして形成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記搬送機構(8、14)の少なくとも1つの領域で、速度調整のために変速機(26、27)が設けられることを特徴とする、請求項1、2または3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記変速機(26、27)が、磁気クラッチ(23)の、それぞれの前記搬送機構(8、14)に面しない側に設けられることを特徴とする、請求項4に記載の搬送装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の搬送装置を備えた燃料電池システム(1)。
【請求項7】
少なくとも1つの請求項6に記載の燃料電池システム(1)を備えた車両(2)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルで詳しく定義されている種類の燃料電池システムにおける媒体用の搬送装置に関する。さらに本発明は、このような搬送装置を備えた燃料電池システムおよびこのような燃料電池システムを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、少なくとも部分的に電気駆動される車両において、電気駆動出力の提供に使用するための燃料電池システムは、大体のところでは先行技術から知られている。燃料電池システムの場合、一方では酸素供給源としての空気を搬送しなければならず、他方では冷却設備が必要であり、この冷却設備では、典型的には液状の冷媒が、廃熱を排出するために循環している。それだけでなく、多くの燃料電池にはいわゆるアノード回路が存在している。圧力損失を補うため、しばしば再循環ブロワーが単独でまたはガスジェットポンプを補助するように設けられる。実際には、冷媒ポンプも、空気用の搬送機構、例えばフローコンプレッサーも、再循環用の搬送機構、例えば再循環ブロワーも、それぞれ専用の駆動部、典型的には電気モータ式駆動部を備えていることが一般的である。これは、一方では大きな構造空間を必要とし、他方では個々のコンポーネントへの多数の給電線を必要とする。
【0003】
それゆえ特許文献1は、複数のユニットに対して共通の駆動部が存在している媒体搬送ユニットを備えた燃料電池システムを説明している。この場合、相応の速度変換装置および/または減速装置、つまり変速機により、必要な速度および搬送出力が調整され、場合によっては、駆動部に対するこれら個々のユニットの接続および切断がこの駆動ユニットによって行われる。
【特許文献1】DE102004037141A1
【0004】
実際にはこの構造は、変速機が必要なことにより、上記の一般的な先行技術に基づく、駆動モータへの直接的な結合によるのと同じように、搬送される空気および/または循環されるアノード排ガスの領域にしばしば油が入り込むので、比較的危険と評価されるべきである。これらの油は、燃料電池にとって不利であり、かつ燃料電池における電気化学的に活性なコンポーネントの劣化を促進し、したがって燃料電池の予測され得る寿命に対して欠点になり得る。
【0005】
さらなる先行技術について、さらに特許文献2を指摘することができる。この文献は、一方では燃料電池への空気のための、他方ではアノード排ガスの再循環のための2つの搬送機構に対する共通の駆動部を説明している。これらの物質の混合を防止するため、これらの搬送機構は気密に密閉されて共通の駆動モータに結合しており、このために、構造がそれぞれいわゆるキャンドモータの形態で実現されている。
【特許文献2】DE102004044068A1
【0006】
さらなる先行技術について、特許文献3を指摘することができ、これは、共通の電気モータ式駆動部を備えた2つの冷媒ポンプを示している。さらに特許文献4も指摘することができる。これは、モータハウジング内にまとめられた複数の電気モータ式駆動部を示しており、これらの電気モータ式駆動部はそれぞれ駆動される搬送ユニットと磁気的に連結している。
【特許文献3】DE102012008494A1
【特許文献4】WO2010/082913A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、燃料電池システムにおける改善された媒体用の搬送装置を提示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は本発明により、請求項1における特徴を有する搬送装置によって解決される。さらに、このような搬送装置を備えた燃料電池システムがこの課題を解決する。燃料電池システムとこのような搬送装置を備えた車両もこの課題を解決できる。
【0009】
加えて、この搬送装置のさらなる有利な形態は主請求項の従属請求項から明らかである。
【0010】
本発明による搬送装置は、冒頭に挙げた先行技術と同じように、冷媒ポンプ、空気用の搬送機構、およびアノード排ガス用の搬送機構に対して共通の原動機を利用する。この原動機は、原動機のロータシャフトによって冷媒ポンプと直接的に結合している。場合によってはあり得る潤滑剤およびその類似物は、原動機、典型的には電気原動機の領域で必要とされ、ここでは比較的危険はなく、したがってここでは、共通のシャフトによる直接的な結合が有利である。この直接的な連結だけでなく、冷媒ポンプまたは原動機は、搬送機構の1つと磁気的に連結しており、さらにまた原動機または連結された搬送機構が、この場合さらなる磁気的な連結によってもう1つの搬送機構と連結している。
【0011】
これは原理的に、ただ1つの原動機、好ましくは電気原動機しか必要ないという決定的な利点を有しており、ただしこの原動機は場合によっては、燃料電池システムにおいて一般的に知られており、かつ通常であるいわゆる電動ターボチャージャの場合にそうであるように、タービンによって補助することができる。つまりこの原動機としては、その駆動されるシャフト、例えば電気駆動モータのロータシャフトにより、冷媒ポンプと直接的に連結されていてもよく、かつ冷媒ポンプを直接的に駆動することができる。そして、空気およびアノード排ガスのための両方の搬送機構が磁気クラッチを介して連結される。これらの搬送機構は、例えば相前後して連結することができ、すなわち、搬送機構の1つ、例えば空気用の搬送機構またはそのコンプレッサーホイールが、磁気クラッチを介してポンプと連結しており、かつ再循環用の搬送機構のブロワーホイールは、空気用の搬送機構とこれもまた磁気クラッチによって連結している。これは、空気中にも、再循環されるアノード排ガス中にも、電気機械の領域から望ましくない物質が進入しないという決定的な利点を有している。同等の構造は、搬送機構の1つまたは両方が原動機に磁気的に連結していて、もう片側では、冷媒ポンプが単独でまたは冷媒ポンプと搬送機構の1つが、相応に連結している場合にももちろん可能である。
【0012】
これに関し、一方では空気用の搬送機構をおよび他方ではアノード排ガス再循環用の搬送機構を磁気的に連結することは、相応の媒体を有する構造が、非常に簡単かつ効率的に密閉され得るという決定的な利点を有している。これは、周囲への水素の流出を効率的に防止するために、とりわけ水素を含むアノード排ガスの場合に決定的な利点である。これは安全性の理由から絶対必要である。
【0013】
この搬送機構の有利な一形態によれば、搬送機構の少なくとも1つのために、冷媒ポンプの領域および/または搬送機構の1つの領域で、速度調整のために変速機が設けられる。これに関して好ましいのは、変速機がモータ側にまたは冷媒ポンプの領域に配置されることであり、この場合、既に変換された速度が、磁気クラッチを介してそれぞれの搬送機構のコンプレッサーホイールおよび/またはブロワーホイールに伝達される。この構造は、例えば変速機の領域で用いられる相応の潤滑剤による汚染を最小限に抑える。ただし、相応の搬送機構の構造に応じて、例えば再循環ブロワーの領域で、単純な無潤滑の変速要素を使用することもでき、これにより磁気クラッチと再循環ブロワー自体との間にも変速機を配置することができる。
【0014】
既に言及したように、このような搬送装置は、とりわけ、少なくとも1つの冷媒ポンプ、少なくとも1つの空気用の搬送機構、および少なくとも1つのアノード排ガス再循環用の搬送機構を備えた燃料電池システム内での使用に適している。そこではこの搬送装置を有利に使用することができる。その際これは原理的には、定置型の燃料電池システムの場合にも、これらの燃料電池システムの少なくとも1つによってそれらの電気駆動出力の少なくとも一部が供給される車両の場合にも当てはまる。
【0015】
本発明による搬送装置、燃料電池システム、および車両のさらなる有利な形態は、図を参照しながら以下に詳しく示す例示的実施形態からも明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による搬送装置を利用するための概略的に示唆した燃料電池システムを示す図である。
図2】本発明による搬送装置の第1のあり得る実施形態の概略図である。
図3】本発明による搬送装置のさらなる代替的な一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1の表示では、非常に概略化して示唆した車両2内に、電気駆動出力の少なくとも一部を提供するために使用される燃料電池システム1が認識できる。これに関しては車両2に応じて、複数のこのような燃料電池システム1が設けられるか、またはここに示した燃料電池システム1内に1つまたは複数の燃料電池スタック3が設けられる。ここで概略的に示唆している1つの燃料電池スタック3は、この燃料電池スタック3の内部に、カソード室4、アノード室5、および例として示唆している冷却用熱交換器6を含む。これに関し、カソード室4はプロトン伝導膜7によってアノード室5から隔てられている。現実には、この構造は単セルのスタックとして実現される。図では、純粋に例示的に共通のカソード室4および共通のアノード室5ならびに共通の冷却用熱交換器6が概略的に示唆されている。
【0018】
燃料電池スタック3によって電気出力を提供するために、搬送機構8により、給気管9を介して燃料電池スタック3に空気が送られる。排気は排気管29を通って、酸素が減った状態で燃料電池システム1および車両2から外に達する。この領域には、排気から圧力エネルギーおよび熱エネルギーを回収するために、それ自体で知られているやり方で排気タービンを設けてもよいであろう。排気タービンは、大体のところでは先行技術から知られており、ここでは同様に存在できるであろう。図1を簡略化するため図示はしていない。
【0019】
カソード室4には、圧縮ガス貯蔵器10から、圧力調整・計量バルブ11を介して水素が送られる。消費されなかった水素は、いわゆるアノード回路12内で、再循環管13を通って戻される。その際、アノード排ガス再循環用の搬送機構14により、圧力損失が補われる。水分離器15により、アノード室5の領域で発生する生成水が分離される。この生成水は、アノード回路12内で蓄積された不活性ガスと一緒に、例えば時々またはアノード回路12内の水素濃度に応じて、バルブ16を介して抜き取られる。
【0020】
燃料電池スタック3の冷却用熱交換器6は、液状の冷媒を冷媒ポンプ17によって循環させている冷却回路28の一部である。廃熱は、冷却用熱交換器(日常語では冷却器とも言う)によって車両2の周囲に放出される。非常に簡略化して図示した冷却回路28は、冷却用熱交換器18を迂回するためのバイパス管19をさらに有し、したがって、このバイパス管を制御しているバルブ20および冷媒ポンプ17の速度により、冷却出力を制御することができる。
【0021】
これはすべて、大体のところでは当業者に知られており、したがってこれをさらに取り上げる必要はない。
【0022】
冷媒ポンプ17および両方の搬送機構8、14は、ここでは共通の原動機21によって駆動されるべきである。図2の表示では、この共通の原動機21が示唆されている。この原動機21は例えば電気原動機であり得る。可能な限りエネルギー効率の良い駆動を実現するために、原動機21をさらに、上で既に述べた最適な排気タービンと機械的または電気的に連結することができる。原動機21は、シャフト22を介して冷媒ポンプ17と直接的に連結している。そして冷媒ポンプ17自体またはそのポンプ羽根車が、駆動側24および従動側25を備えた磁気クラッチ23を介して、空気用の搬送機構8と連結している。磁気クラッチ23の従動側25と搬送機構8との間には、クロスハッチングで示した任意の変速機26をさらに設けることができる。空気用の搬送機構8はまた、駆動側24および従動側25を備えた別の磁気クラッチ23を介して、アノード排ガス再循環用の搬送機構14と連結している。ここでも、第2の磁気クラッチ23の従動側25と搬送機構14またはそのブロワーホイールとの間にさらなる変速機27を設けることができる。
【0023】
潤滑剤の主な進入は、シャフト22が原動機21と冷媒ポンプ17を直接的に結合している領域で生じる。この進入は冷媒にとって典型的には無害である。これに対し、空気中へのおよび特に再循環される排ガス中への潤滑剤の進入は、これがアノード室5またはカソード室4内に達してそこで燃料電池スタック3の電気化学特性に悪影響を及ぼすかもしれないので危険である。この理由から、これらの搬送機構8、14の、原動機21からの、比較的良好な容易に密閉可能な切り離しを、両方の磁気クラッチ23によって行うことができる。任意の変速機26、27は確かにこの状況をまた厳しくする可能性があるが、しかしながらこの領域ではしばしば無潤滑のまたは極僅かしか潤滑剤を用いない変速機が必要なので、これは比較的危険のない状態が保たれる。
【0024】
図3の表示では、代替的な一実施形態を示している。電気原動機21はそのシャフト22を介し、ここでも冷媒ポンプ17と直接的に連結している。そして冷媒ポンプ17は、今回は冷媒ポンプ17の側に配置される任意の変速機26を介して、磁気クラッチ23の1つにより、空気用の搬送機構8と相応に連結している。変速機と搬送機構8のコンプレッサーホイールとの間では、磁気クラッチ23により、非常に良好に密閉可能な磁気的な連結が行われるので、搬送機構8によって圧縮された空気から、変速機26内の潤滑剤による万一の汚染を遠ざけておくことができる。
【0025】
ここでさらなる搬送機構14は、搬送機構8のコンプレッサーホイールに隣接しているのではなく、駆動モータ21のもう片側に配置される。ここでも任意の変速機27はモータ側に配置されており、それからようやく磁気クラッチ23が来ており、したがってここでも、搬送機構14のブロワーホイールの領域への電気原動機21および任意の変速機からの万一の汚染の進入を防止できる。
【0026】
任意の変速機26、27と磁気クラッチ23の順番を図2での表示に対して回転させたこの構造は、もちろん図2の表示においても考えられるであろう。図3に基づく構造の場合に、図2に示した順番を用いることも考えられるであろう。そのうえもちろん、両方の搬送機構8、14を相互に入れ替えること、または両方を電気原動機21の片側に取り付けて、冷媒ポンプ17を原動機21のもう片側に取り付けることが考えられるであろう。
図1
図2
図3
【国際調査報告】