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  • 特表-イソシアネート化合物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】イソシアネート化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 263/10 20060101AFI20240118BHJP
   C07C 265/14 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C07C263/10
C07C265/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540178
(86)(22)【出願日】2021-12-30
(85)【翻訳文提出日】2023-06-29
(86)【国際出願番号】 KR2021020328
(87)【国際公開番号】W WO2022146090
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0187830
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501014658
【氏名又は名称】ハンワ ソリューションズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HANWHA SOLUTIONS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジュ・ウォン・ミン
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン・チョル・リュ
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC55
4H006AD11
4H006BB12
4H006BC51
4H006BC52
4H006BD40
4H006BD53
4H006BE52
(57)【要約】
本発明は、イソシアネート化合物の製造方法に関する。本発明は、ホスゲンを使用したイソシアネート化合物の製造時に、反応に使用された物質を回収して再使用することができ、反応生成物の熱変性および副産物の生成を最小化できるイソシアネート化合物の製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミン化合物の塩とホスゲンとを溶媒下で反応させてイソシアネート化合物を含む反応生成物を得る反応段階、
前記反応生成物からガス相を除去する脱ガス段階、
前記脱ガス段階で得られた前記ガス相を、700torr以上760torr未満の負圧下で、-15℃~0℃の温度を有する洗浄溶媒と接触させてホスゲン含有溶液を得る、スクラビング段階、および
前記ホスゲン含有溶液を常圧下で蒸留して前記ホスゲン含有溶液に含まれているホスゲンと前記洗浄溶媒とを分離する蒸留段階
を含み;
前記蒸留段階で得られた前記ホスゲンを前記反応段階に供給し、
前記蒸留段階で得られた前記洗浄溶媒を前記スクラビング段階に供給する、イソシアネート化合物の製造方法。
【請求項2】
前記脱ガス段階は、145℃~165℃の温度および100torr~600torrの圧力下で行われる、請求項1に記載のイソシアネート化合物の製造方法。
【請求項3】
前記洗浄溶媒は、エチレンジクロライド、モノクロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、および1,2,4-トリクロロベンゼンからなる群より選択される1種以上の溶媒である、請求項1に記載のイソシアネート化合物の製造方法。
【請求項4】
前記スクラビング段階は、充填カラムタイプ(packed column type)のスクラビングタワーまたはマルチステージトレイタイプ(multistage tray type)のスクラビングタワーで行われる、請求項1に記載のイソシアネート化合物の製造方法。
【請求項5】
前記脱ガス段階で得られた前記ガス相が除去された反応生成物から溶媒を除去する脱溶媒段階、
前記溶媒が除去された反応生成物から低沸点物質(lights)を除去する脱低沸点物段階、および
前記低沸点物質が除去された反応生成物から高沸点物質(heavies)を除去する脱高沸点物段階
をさらに含む、請求項1に記載のイソシアネート化合物の製造方法。
【請求項6】
前記脱ガス段階、前記脱溶媒段階、前記脱低沸点物段階、および前記脱高沸点物段階は、それぞれ165℃以下の温度下で行われる、請求項5に記載のイソシアネート化合物の製造方法。
【請求項7】
前記脱溶媒段階は、100℃~165℃の温度および30torr以下の圧力下で行われる、請求項5に記載のイソシアネート化合物の製造方法。
【請求項8】
前記アミン化合物は、分子内に脂肪族基を有する脂肪族アミンである、請求項1に記載のイソシアネート化合物の製造方法。
【請求項9】
前記アミン化合物は、分子内に2個以上のアミノ基を含む2官能以上の鎖状または環状の脂肪族アミンである、請求項1に記載のイソシアネート化合物の製造方法。
【請求項10】
前記アミン化合物は、ヘキサメチレンジアミン、2,2-ジメチルペンタンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサンジアミン、ブテンジアミン、1,3-ブタジエン-1,4-ジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,6,11-ウンデカトリアミン、1,3,6-ヘキサメチレントリアミン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、ビス(アミノエチル)カーボネート、ビス(アミノエチル)エーテル、キシリレンジアミン,α,α、α’,α’-テトラメチルキシリレンジアミン、ビス(アミノエチル)フタレート、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、ジシクロヘキシルジメチルメタンジアミン、2,2-ジメチルジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5-ビス(アミノメチル)ビシクロ-[2,2,1]-ヘプタン、2,6-ビス(アミノメチル)ビシクロ-[2,2,1]-ヘプタン、3,8-ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、3,9-ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、4,8-ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、4,9-ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、ビス(アミノメチル)ノルボルネン、およびキシリレンジアミンからなる群より選択される1種以上の化合物である、請求項1に記載のイソシアネート化合物の製造方法。
【請求項11】
前記アミン化合物は、ビス(アミノメチル)スルフィド、ビス(アミノエチル)スルフィド、ビス(アミノプロピル)スルフィド、ビス(アミノヘキシル)スルフィド、ビス(アミノメチル)スルホン、ビス(アミノメチル)ジスルフィド、ビス(アミノエチル)ジスルフィド、ビス(アミノプロピル)ジスルフィド、ビス(アミノメチルチオ)メタン、ビス(アミノエチルチオ)メタン、ビス(アミノエチルチオ)エタン、ビス(アミノメチルチオ)エタン、および1,5-ジアミノ-2-アミノメチル-3-チアペンタンからなる群より選択される1種以上の硫黄含有脂肪族アミンである、請求項1に記載のイソシアネート化合物の製造方法。
【請求項12】
前記アミン化合物は、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミンおよびo-キシリレンジアミンからなる群より選択される1種以上の化合物である、請求項1に記載のイソシアネート化合物の製造方法。
【請求項13】
前記アミン化合物の塩は、アミン化合物の塩酸塩または炭酸塩である、請求項1に記載のイソシアネート化合物の製造方法。
【請求項14】
前記反応段階は、芳香族炭化水素系溶媒およびエステル系溶媒のうちの少なくとも1つを含む溶媒下で行われる、請求項1に記載のイソシアネート化合物の製造方法。
【請求項15】
前記溶媒は、モノクロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、アミルホルメート、n-ブチルアセテート、イソブチルアセテート、n-アミルアセテート、イソアミルアセテート、メチルイソアミルアセテート、メトキシブチルアセテート、sec-ヘキシルアセテート、2-エチルブチルアセテート、2-エチルヘキシルアセテート、シクロヘキシルアセテート、メチルシクロヘキシルアセテート、ベンジルアセテート、エチルプロピオネート、n-ブチルプロピオネート、イソアミルプロピオネート、エチルアセテート、ブチルステアレート、ブチルラクテート、アミルラクテート、メチルサリシレート、ジメチルフタレートおよびメチルベンゾエートからなる群より選択される1種以上の化合物である、請求項14に記載のイソシアネート化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソシアネート化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キシリレンジイソシアネート(xylylene diisocyanate、以下、XDI)は、分子内に芳香族環を含んでいるが、脂肪族イソシアネートに分類される。XDIは化学工業、樹脂工業および塗料工業分野でポリウレタン系材料、ポリウレア系材料またはポリイソシアヌレート系材料などの原料として非常に有用な化合物である。
【0003】
通常、イソシアネート化合物は合成過程で副反応が多く発生するので、無水塩酸または炭酸と反応させてアミン化合物の塩を形成し、これをホスゲンと反応させる方法で製造される。
【0004】
一例として、XDIの場合、キシリレンジアミン(xylylene diamine、以下XDA)を無水塩酸と反応させてアミン-塩酸塩を形成し、これをホスゲンと反応させることで製造される。より具体的には、従来は液状の原料アミン、例えば、XDA含有溶液を無水塩酸と反応させてXDA-HCl塩酸塩を形成し、これを少なくとも100℃以上の高温で加熱した後、気相のホスゲンを注入して気-液反応を行い、XDIなどのイソシアネート化合物を製造する方法を適用してきた。
【0005】
前記イソシアネート化合物の形成反応は代表的な吸熱反応であって、その収率を高めるために反応中に持続的な加熱および高温の維持が求められる。
【0006】
しかし、XDIなどのイソシアネート化合物は概してアミノ基の反応性が大きいため、ホスゲン化反応中に副反応が多く発生し、副反応により形成される副産物はイソシアネート化合物を原料として適用した工程(例えば、ポリウレタン樹脂を製造する工程)に影響を及ぼし、品質の低下を招く問題がある。
【0007】
このようにイソシアネート化合物の製造過程中の高温維持の必要性と、XDIなどの生成したイソシアネート化合物の大きな反応性とにより、製品の熱変性などによる副産物の生成や副反応の発生の恐れはさらに高くなり、これによってその精製工程にも大きな負荷がかかる場合が多かった。
【0008】
かかる問題によって、以前からイソシアネート化合物の製造中の副反応や副産物の生成を抑制するための多様な試みが行われてきたが、まだ実効性のある技術は開発されていないのが実情である。
【0009】
そして、イソシアネート化合物の製造過程で発生する排気ガスからホスゲンおよび塩化水素などの化合物を回収して再使用しようとする試みが行われているが、その効率が劣るという限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ホスゲンを使用したイソシアネート化合物の製造時に、反応に使用された物質を回収して再使用することができ、反応生成物の熱変性および副産物の生成を最小化できる、イソシアネート化合物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、
アミン化合物の塩とホスゲンとを溶媒下で反応させてイソシアネート化合物を含む反応生成物を得る反応段階、
前記反応生成物からガス相を除去する脱ガス段階、
前記脱ガス段階で得られた前記ガス相を、700torr以上760torr未満の負圧下で、-15℃~0℃の温度を有する洗浄溶媒と接触させてホスゲン含有溶液を得る、スクラビング段階、および
前記ホスゲン含有溶液を常圧下で蒸留して前記ホスゲン含有溶液に含まれているホスゲンと前記洗浄溶媒とを分離する蒸留段階
を含み;
前記蒸留段階で得られた前記ホスゲンを前記反応段階に供給し、
前記蒸留段階で得られた前記洗浄溶媒を前記スクラビング段階に供給する、イソシアネート化合物の製造方法が提供される。
【0012】
以下、本発明の実施形態によるイソシアネート化合物の製造方法について説明する。
【0013】
本明細書で別に定義されない限り、すべての技術的用語および科学的用語は本発明が属する通常の技術者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本発明で説明に使用される用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためであり、本発明を制限することを意図しない。
【0014】
本明細書で使用される単数形は、文脈上明らかに逆の意味を示さない限り複数形も含む。
【0015】
本明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化するものであり、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるものではない。
【0016】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるため、特定の実施例を例示して以下で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、前記思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物または代替物を含むものとして理解しなければならない。
【0017】
本明細書で、例えば「~上に」、「~上部に」、「~下部に」、「~隣に」など二つの部分の位置関係が説明される場合、「すぐに」または「直接」という表現が使用されない限り、二つの部分の間に一つ以上の他の部分が位置し得る。
【0018】
本明細書で、例えば「~後に」、「~に続いて」、「~次に」、「~前に」など時間的前後関係が説明される場合、「すぐに」または「直接」という表現が使用されない限り、連続的でない場合を含むこともできる。
【0019】
本明細書で「低沸点物質」は本発明によるターゲット生成物であるイソシアネート化合物より低い沸点を有する物質を意味し;「高沸点物質」は本発明によるターゲット生成物であるイソシアネート化合物より高い沸点を有する物質を意味する。
【0020】
本明細書で蒸留塔の「塔底部」は前記蒸留塔の下部排出物が前記蒸留塔の外部に排出される出口を意味し、蒸留塔の「塔頂部」は前記蒸留塔の上部排出物が前記蒸留塔の外部に排出される出口を意味する。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、
アミン化合物の塩とホスゲンとを溶媒下で反応させてイソシアネート化合物を含む反応生成物を得る反応段階、
前記反応生成物からガス相を除去する脱ガス段階、
前記脱ガス段階で得られた前記ガス相を700torr以上760torr未満の負圧下で-15℃~0℃の温度を有する洗浄溶媒と接触させてホスゲン含有溶液を得るスクラビング段階、および
前記ホスゲン含有溶液を常圧下で蒸留して前記ホスゲン含有溶液に含まれているホスゲンと前記洗浄溶媒を分離する蒸留段階
を含み;
前記蒸留段階で得られた前記ホスゲンを前記反応段階に供給し、
前記蒸留段階で得られた前記洗浄溶媒を前記スクラビング段階に供給する、イソシアネート化合物の製造方法が提供される。
【0022】
本発明の他の一実施形態によれば、
前記脱ガス段階で得られた前記ガス相が除去された反応生成物から溶媒を除去する脱溶媒段階、
前記溶媒が除去された反応生成物から低沸点物質(lights)を除去する脱低沸点物段階、および
前記低沸点物質が除去された反応生成物から高沸点物質(heavies)を除去する脱高沸点物段階
をさらに含む、イソシアネート化合物の製造方法が提供される。
【0023】
ホスゲンを使用したイソシアネート化合物の製造時に、主反応工程および精製工程ではホスゲンおよび塩化水素などを含む排気ガスが排出される。環境規制により、前記排気ガスは、後処理により有害物質を除去した後で大気中に排出される。
【0024】
本発明者らは研究を重ねた結果、前記脱ガス段階で得られた前記ガス相を含む全体工程の排気ガスを、前記条件のスクラビング段階および前記蒸留段階により処理する場合には、前記排気ガスに含まれたホスゲンおよび塩化水素などをより効果的に回収することができ、回収された化合物をこれを必要とする段階に供給することによって原価を節減し、工程効率を高めることが可能であることが確認された。
【0025】
さらに、前記反応段階、前記脱ガス段階、前記脱溶媒段階、前記脱低沸点物段階、および前記脱高沸点物段階を行ってイソシアネート化合物を製造し、特に、前記段階を前記温度および圧力の条件下で行う場合には、反応生成物の熱変性および副産物の生成を最小化することができ、高純度のイソシアネート化合物が得られることが確認された。
【0026】
図1は、発明の一実施形態によるイソシアネート化合物の製造方法に用いられる工程および装置を模式的に示す図である。以下、図1を参照して本発明の一実施形態によるイソシアネート化合物の製造方法に含まれ得る各段階について説明する。
【0027】
(反応段階)
まず、アミン化合物の塩とホスゲンとを溶媒下で反応させて、イソシアネート化合物、前記溶媒および未反応ホスゲンを含む反応生成物を得る、反応段階が行われる。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、アミン化合物とホスゲンとの急激な反応および副反応を抑制するために、前記アミン化合物はアミン化合物の塩として適用することが好ましい。例えば、前記アミン化合物の塩はアミン化合物の塩酸塩または炭酸塩であり得る。
【0029】
前記アミン化合物の塩は、アミン化合物と無水塩酸または炭酸を反応させ、中和反応させることによって準備される。前記中和反応は20~80℃の温度で行われる。
【0030】
前記無水塩酸または炭酸の供給比率は前記アミン化合物1モルに対して、例えば2モル~10モル、あるいは2モル~6モル、あるいは2モル~4モルであり得る。
【0031】
好ましくは、前記アミン化合物としては、分子内に脂肪族基を有する脂肪族アミンを適用することができる。具体的には、前記脂肪族アミンは、鎖状または環状の脂肪族アミンであり得る。より具体的には、前記脂肪族アミンは、分子内に2個以上のアミノ基を含む2官能以上の鎖状または環状の脂肪族アミンであり得る。
【0032】
例えば、前記アミン化合物は、ヘキサメチレンジアミン、2,2-ジメチルペンタンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサンジアミン、ブテンジアミン、1,3-ブタジエン-1,4-ジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,6,11-ウンデカトリアミン、1,3,6-ヘキサメチレントリアミン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、ビス(アミノエチル)カーボネート、ビス(アミノエチル)エーテル、キシリレンジアミン,α,α、α’,α’-テトラメチルキシリレンジアミン、ビス(アミノエチル)フタレート、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、ジシクロヘキシルジメチルメタンジアミン、2,2-ジメチルジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5-ビス(アミノメチル)ビシクロ-[2,2,1]-ヘプタン、2,6-ビス(アミノメチル)ビシクロ-[2,2,1]-ヘプタン、3,8-ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、3,9-ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、4,8-ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、4,9-ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、ビス(アミノメチル)ノルボルネン、およびキシリレンジアミンからなる群より選択される1種以上の化合物であり得る。本発明において、前記キシリレンジアミンは脂肪族ジアミンに分類される。
【0033】
また、前記アミン化合物は、ビス(アミノメチル)スルフィド、ビス(アミノエチル)スルフィド、ビス(アミノプロピル)スルフィド、ビス(アミノヘキシル)スルフィド、ビス(アミノメチル)スルホン、ビス(アミノメチル)ジスルフィド、ビス(アミノエチル)ジスルフィド、ビス(アミノプロピル)ジスルフィド、ビス(アミノメチルチオ)メタン、ビス(アミノエチルチオ)メタン、ビス(アミノエチルチオ)エタン、ビス(アミノメチルチオ)エタン、および1,5-ジアミノ-2-アミノメチル-3-チアペンタンからなる群より選択される1種以上の硫黄含有脂肪族アミンであり得る。
【0034】
前記アミン化合物の中でもキシリレンジアミン(XDA)は、本発明の一実施形態によるイソシアネート化合物の製造方法に適用時、さらに優れた効果を示すことができる。好ましくは、前記アミン化合物は、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミンおよびo-キシリレンジアミンからなる群より選択される1種以上の化合物であり得る。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、前記反応段階は、固体状のアミン化合物の塩と気相のホスゲンとを溶媒下で反応させる気体-液体-固体の3相反応で行われる。そのため、急激な反応を効果的に抑制することができ、副反応および副産物の発生を最小化することができる。
【0036】
前記アミン化合物の塩とホスゲンろを溶媒下で反応させる時、ホスゲンを一度に投入するかまたは分割して投入することができる。例えば、相対的に低い温度下で少量のホスゲンを1次投入して前記アミン化合物の塩と反応させることによってその中間体を生成させる。次に、相対的に高温下で残量のホスゲンを2次投入して前記中間体と反応させることによってイソシアネート化合物を含む反応液を得ることができる。一例として、キシリレンジアミンと少量のホスゲンとを反応させてカルバモイル系塩形態の中間体を生成させた後、残量のホスゲンを投入して前記カルバモイル系塩形態の中間体とホスゲンとを反応させてキシリレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネートを形成することができる。
【0037】
このような反応段階によって最終生成物であるイソシアネート化合物を高温下で露出する時間を最小化することができる。さらに、相対的に低い温度で前記中間体を形成することによって、全体的な反応工程において高温の維持に必要な時間を減らすことができる。これによって、全体工程に投入される熱量が減少する。そして、ホスゲンの高温反応時間を相対的に短縮させ、ホスゲンの爆発的な気化による危険性を減らすこともできる。
【0038】
前記反応段階は、芳香族炭化水素系溶媒およびエステル系溶媒のうち少なくとも一つを含む溶媒下で行われる。前記溶媒は、前記反応段階の実行温度を考慮して選択することができる。
【0039】
前記芳香族炭化水素系溶媒は、モノクロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼンおよび1,2,4-トリクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒であり得る。
【0040】
前記エステル系溶媒は、アミルホルメート、n-ブチルアセテート、イソブチルアセテート、n-アミルアセテート、イソアミルアセテート、メチルイソアミルアセテート、メトキシブチルアセテート、sec-ヘキシルアセテート、2-エチルブチルアセテート、2-エチルヘキシルアセテート、シクロヘキシルアセテート、メチルシクロヘキシルアセテート、ベンジルアセテート、エチルプロピオネート、n-ブチルプロピオネート、イソアミルプロピオネート、エチルアセテート、ブチルステアレート、ブチルラクテート、およびアミルラクテートなどの脂肪酸エステル;またはメチルサリシレート、ジメチルフタレートおよびメチルベンゾエートなどの芳香族カルボン酸エステルであり得る。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、前記反応段階で前記アミン化合物の塩は、前記溶媒に20体積%以下の濃度、例えば1~20体積%、あるいは5~20体積%の濃度で含まれ得る。前記溶媒に含まれる前記アミン化合物の塩の濃度が20体積%を超える場合、前記反応段階で多量の塩が析出する恐れがある。
【0042】
前記反応段階は165℃以下、好ましくは80℃~165℃の温度下で行われる。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、前記反応段階でホスゲンを分割して投入する場合、80℃~100℃あるいは85℃~95℃の温度下でホスゲン全体の投入量のうちの10~30重量%、あるいは12~30重量%、あるいは15~28重量%を投入する。このような反応条件によって急激な反応が抑制され、カルバモイル系塩形態の中間体を選択的かつ効果的に形成することができる。次に、110℃~165℃あるいは120℃~150℃の温度下で残量のホスゲンを投入しながら前記中間体とホスゲンとを反応させてイソシアネート化合物を含む反応生成物を得ることができる。
【0044】
前記イソシアネート化合物は、前記反応段階で使用される前記アミン化合物の種類によって変わる。例えば、前記イソシアネート化合物は、n-ペンチルイソシアネート、6-メチル-2-ヘプタンイソシアネート、シクロペンチルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(H6TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジイソシアナトシクロヘキサン(t-CHDI)、およびジ(イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)からなる群より選択される1種以上の化合物であり得る。
【0045】
特に、本発明の実施形態によるイソシアネート化合物の製造方法は、キシリレンジイソシアネート(XDI)の製造により有用である。XDIは構造異性体として1,2-XDI(o-XDI)、1,3-XDI(m-XDI)、1,4-XDI(p-XDI)を含む。
【0046】
前記反応段階は、バッチ式および連続式のいずれかによっても行うことができる。前記反応段階は、回転軸を有する反応器110;前記反応器の内部に反応物を供給するアミン化合物の塩供給ライン10およびホスゲン供給ライン20;前記反応器に熱量を供給する熱源;前記反応器で得られる反応生成物を後続の精製工程に移送する反応生成物移送ライン102を含む反応ユニット100で行うことができる。
【0047】
(脱ガス段階)
次に、前記反応生成物からガス相を除去する脱ガス段階が行われる。
【0048】
前記脱ガス段階では、前記反応生成物から過剰のホスゲンや副生する塩化水素などのガス相を公知の脱ガスユニット200によって除去する。
【0049】
前記反応生成物からガス相を除去する方法としては、ガスを供給して通気する方法や、フラッシュタンクまたは蒸留塔を用いてガス相を前記反応生成物から分離する方法が挙げられる。
【0050】
特に、本発明の一実施形態によれば、前記脱ガス段階での副産物の生成を最小化するために、前記脱ガス段階は145℃~165℃の温度および100torr~600torrの圧力下で行われることが好ましい。
【0051】
一例として、前記脱ガス段階は蒸留塔で行われるが、前記蒸留塔の下部(bottom)の温度を145℃~165℃にし、前記蒸留塔の上部(top)の圧力は100torr~600torrで運転することが副産物の生成を最小化するのに有利である。ここで、前記蒸留塔の下部の温度は、前記蒸留塔の塔底部に連結されたリボイラーの温度を意味する。そして、前記蒸留塔上部の圧力は、前記蒸留塔の塔頂部に連結された凝縮器の圧力を意味する。
【0052】
好ましくは、前記脱ガス段階の実行温度は、145℃~165℃、あるいは150℃~165℃、あるいは150℃~160℃、あるいは155℃~160℃であり得る。そして、好ましくは、前記脱ガス段階の実行圧力は100torr~600torr、あるいは200torr~500torr、あるいは300torr~450torr、あるいは350torr~450torrであり得る。
【0053】
前記脱ガス段階の実行温度および圧力が上記の範囲を満たさない場合には、前記脱ガス段階での副産物の生成量が増加し、ガス相の除去効率が低下し、これにより、前記脱ガス段階から得られる反応生成物におけるイソシアネート化合物の濃度が低下する。
【0054】
一例として、前記脱ガス段階は、前記反応ユニット100の反応生成物移送ライン102を介して供給される前記反応生成物からガス相を除去できるように構成された蒸留塔220;前記蒸留塔の塔頂部からガス相を排出するガス相排出ライン209;および前記蒸留塔の塔底部から前記ガス相が除去された反応生成物を排出して後続段階に移送する反応生成物移送ライン203を含む脱ガスユニット200によって行うことができる。
【0055】
(スクラビング段階)
次に、前記脱ガス段階で得られた前記ガス相を700torr以上760torr未満の負圧下で-15℃~0℃の温度を有する洗浄溶媒と接触させてホスゲン含有溶液を得る、スクラビング段階が行われる。
【0056】
前記スクラビング段階では、前記脱ガス段階で得られた前記ガス相からホスゲンを、公知のスクラビングユニット250によって回収する。
【0057】
前記ガス相からホスゲンを回収する方法としては、前記ガス相をスクラビングタワー251に供給して洗浄溶媒と接触させる方法が挙げられる。
【0058】
スクラビングタワー251の種類は、前記ガス相排出ライン209から供給される前記ガス相と溶媒供給ライン295から供給される洗浄溶媒との接触効率などを考慮して決定することができる。非制限的な例として、スクラビングタワー251は、充填カラムタイプ(packed column type)のスクラビングタワー、マルチステージトレイタイプ(multistage tray type)のスクラビングタワーであり得る。前記充填カラムタイプのスクラビングタワーは、内部にラッシングリング(rashing ring)、ポールリング(pall ring)、サドル(saddle)、ガーゼ(gauze)、ストラクチャードパッキング(structured packing)などの充填剤が適用されたものであってもよい。
【0059】
前記スクラビング段階の効率を考慮して、前記ガス相はスクラビングタワー251の下部から供給され、前記洗浄溶媒はスクラビングタワー251の上部から供給される。
【0060】
前記洗浄溶媒は、前記ガス相に含まれているホスゲンをスクラビングすることができる有機溶媒であり得る。
【0061】
一例として、前記洗浄溶媒としては、エチレンジクロライド、モノクロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、および1,2,4-トリクロロベンゼンからなる群より選択される1種以上の溶媒であり得る。
【0062】
特に、ホスゲンのスクラビング効率を考慮して、前記スクラビング段階は負圧下で行われることが好ましい。より好ましくは、前記スクラビング段階は700torr以上760torr未満、あるいは710torr~750torr、あるいは720torr~740torrの負圧下で行うことができる。
【0063】
そして、ホスゲンのスクラビング効率を考慮して、前記スクラビング段階に適用される前記洗浄溶媒は、-15℃~0℃、あるいは-12℃~-3℃、あるいは-10℃~-5℃の温度を有することが好ましい。
【0064】
前記洗浄溶媒の温度が低すぎる場合には、前記洗浄溶媒が凍ってスクラビング効率が低下する。ただし、前記洗浄溶媒の温度が高すぎる場合、スクラビングタワー251の塔頂ストリーム内に含まれる前記洗浄溶媒の量が増加してフィルター255による前記洗浄溶媒の除去が難しくなる。
【0065】
前記スクラビング段階で、スクラビングタワー251の下部からは前記洗浄溶媒にホスゲンが溶解している溶液(以下、「ホスゲン含有溶液」という)が塔底ストリームライン256を介して排出される。スクラビングタワー251の上部からはホスゲンから脱気された非凝縮性ガス(例えば、塩酸ガスまたは炭酸ガス)が塔頂ストリームライン253を介して排出される。
【0066】
塔頂ストリームライン253を介して排出される前記非凝縮性ガスは、残留洗浄溶媒を除去するためのフィルター255を介して非凝縮性ガス排出ライン257を経て反応系外から回収される。ここで、フィルター255としては、活性炭フィルターなどの前記非凝縮性ガスに含まれている残留洗浄溶媒を除去できるフィルターを適用することができる。非凝縮性ガス排出ライン257を介して回収された前記非凝縮性ガスは、前記反応段階で前記アミン化合物の塩を形成する反応に用いられる。
【0067】
塔底ストリームライン256を介して排出される前記ホスゲン含有溶液は蒸留ユニット270に移送される。
【0068】
(蒸留段階)
次に、前記スクラビング段階で得られた前記ホスゲン含有溶液を常圧下で蒸留して、前記ホスゲン含有溶液に含まれているホスゲンと前記洗浄溶媒を分離する蒸留段階が行われる。
【0069】
前記蒸留段階では、前記ホスゲン含有溶液からホスゲンと前記洗浄溶媒とを公知の蒸留塔271を含む蒸留ユニット270によって分離して回収する。
【0070】
本発明の一実施形態によれば、前記ホスゲン含有溶液の蒸留効率の確保のために、前記蒸留段階は常圧(例えば760torr)下で行われることが好ましい。
【0071】
前記蒸留段階で、蒸留塔271の上部からは前記ホスゲン含有溶液から分離されたホスゲンが塔頂ストリームライン273を介して排出される。排出されたホスゲンは凝縮器275に供給される。凝縮器275で凝縮されたホスゲンの一部は蒸留塔271に再供給され、その残りは、ホスゲン排出ライン279を介して回収される。凝縮器275で凝縮されないガス相は、ガス相排出ライン277を介してスクラビングユニット250のスクラビングタワー251の下部に供給される。ホスゲン排出ライン279を介して回収されたホスゲンは、前記反応段階の反応物として使用される。つまり、前記蒸留段階でホスゲン排出ライン279を介して回収されたホスゲンは、反応ユニット100のホスゲン供給ライン20を介して反応器110に供給される。
【0072】
前記蒸留段階で、蒸留塔271の下部からは前記ホスゲン含有溶液から分離された洗浄溶媒含有溶液が塔底ストリームライン276を介して排出される。排出された前記洗浄溶媒含有溶液はリボイラー280に供給される。リボイラー280では、低沸点分画は蒸留塔271の下部に再供給され、残りの分画である前記洗浄溶媒は、溶媒リカバリードラム290に移送される。
【0073】
溶媒リカバリードラム290にはリボイラー280から移送された前記洗浄溶媒以外に、前記蒸留段階を行うときに必要な新鮮な洗浄溶媒がさらに供給される。前記新鮮な洗浄溶媒は、溶媒供給ライン293を介して溶媒リカバリードラム290に供給される。
【0074】
溶媒リカバリードラム290に集まった前記洗浄溶媒は、溶媒供給ライン295を介してスクラビングユニット250のスクラビングタワー251の上部に供給される。この時、前記洗浄溶媒は、前記洗浄溶媒を0℃以下の温度に下げる熱交換器を介してスクラビングタワー251に供給される。好ましくは、前記洗浄溶媒は-15℃~0℃、あるいは-12℃~-3℃、あるいは-10℃~-5℃の温度でスクラビングタワー251に供給される。
【0075】
一方、本発明の他の実施形態によれば、前記イソシアネート化合物の製造方法としては、前記脱ガス段階で得られた前記ガス相が除去された反応生成物から溶媒を除去する脱溶媒段階、前記溶媒が除去された反応生成物から低沸点物質(lights)を除去する脱低沸点物段階、および前記低沸点物質が除去された反応生成物から高沸点物質(heavies)を除去する脱高沸点物段階をさらに含むことができる。
【0076】
図2は、前記実施形態によるイソシアネート化合物の製造方法に用いられる工程および装置を模式的に示す図である。以下、図2を参照して前記実施形態によるイソシアネート化合物の製造方法にさらに含まれ得る段階について説明する。
【0077】
(脱溶媒段階)
前記脱ガス段階で得られた前記ガス相が除去された反応生成物から溶媒を除去する脱溶媒段階が行われる。
【0078】
前記脱溶媒段階では、前記ガス相が除去された反応生成物から公知の脱溶媒ユニット300によって溶媒を蒸留除去する。
【0079】
本発明の一実施形態によれば、前記脱溶媒段階における前記反応生成物の熱変性および副産物の生成を最小化するために、前記脱溶媒段階は、100℃~165℃の温度および30torr以下の圧力下で行われることが好ましい。
【0080】
一例として、前記脱溶媒段階は蒸留塔で行われるが、前記蒸留塔の下部(bottom)の温度を100℃~165℃にし、前記蒸留塔の上部(top)の圧力は30torr以下で運転することが前記熱変性および副産物の生成を最小化するのに有利である。ここで、前記蒸留塔の下部の温度は、前記蒸留塔の塔底部に連結されたリボイラーの温度を意味する。そして、前記蒸留塔上部の圧力は前記蒸留塔の塔頂部に連結された凝縮器の圧力を意味する。
【0081】
好ましくは、前記脱溶媒段階の実行温度は100℃~165℃、あるいは115℃~165℃、あるいは115℃~160℃、あるいは130℃~160℃であり得る。そして、好ましくは、前記脱溶媒段階の実行圧力は5torr~30torr、あるいは5torr~25torr、あるいは10torr~20torr、あるいは10torr~15torrであり得る。
【0082】
前記脱溶媒段階の実行温度および圧力が上記の範囲を満たさない場合には、前記脱溶媒段階における前記熱変性および副産物の生成量が増加し、溶媒の除去効率が低下し、これにより、前記脱溶媒段階から得られる反応生成物におけるイソシアネート化合物の濃度が低下する。
【0083】
一例として、前記脱溶媒段階は、前記脱ガスユニット200の反応生成物移送ライン203を介して供給される前記反応生成物から溶媒を除去できるように構成された蒸留塔330;前記蒸留塔の塔頂部から溶媒を排出する溶媒排出ライン309;および前記蒸留塔の塔底部から前記溶媒が除去された反応生成物を排出して後続段階に移送する反応生成物移送ライン304を含む脱溶媒ユニット300で行うことができる。
【0084】
前記脱溶媒段階で前記反応生成物の高温での滞留時間を最小化するために、ケトル型リボイラー(Kettle type reboiler)、薄膜蒸留装置(thin film evaporator)、強制循環型リボイラー(force circulated reboiler)、およびジャケット付容器型リボイラー(jacketed vessel type reboiler)などの装置が備えられた蒸留塔440が用いられる。
【0085】
(脱低沸点物段階)
次に、前記脱溶媒段階で得られた前記溶媒が除去された反応生成物から低沸点物質(lights)を除去する脱低沸点物段階が行われる。
【0086】
前記脱低沸点物段階では、前記溶媒が除去された反応生成物から、公知の脱低沸点物ユニット400によって、低沸点物質(lights)を除去する。
【0087】
前記低沸点物質は、前記反応段階での主生成物であるイソシアネート化合物より低い沸点を有する物質を意味する。前記低沸点物質としては、前記主生成物を得る工程で副反応によって生成される物質が挙げられる。一例として、前記イソシアネート化合物でXDIを製造する工程で、前記低沸点物質は(クロロメチル)ベンジルイソシアネート((chloromethyl)benzyl isocyanate、CBI)およびエチルフェニルイソシアネート(ethylphenyl isocyanate、EBI)などのモノイソシアネートを含むことができる。
【0088】
本発明の一実施形態によれば、前記脱低沸点物段階における前記反応生成物の熱変性および副産物の生成を最小化するために、前記脱低沸点物段階は、蒸留塔440の塔底部の温度が150℃~165℃であり、前記蒸留塔の下部(bottom)の圧力は5torr以下で行うことが好ましい。ここで、前記蒸留塔の塔底部の温度は、前記蒸留塔の塔底部に連結されたリボイラーの温度を意味する。
【0089】
好ましくは、前記脱低沸点物段階の実行温度は150℃~165℃、あるいは155℃~165℃、155℃~162℃、あるいは160℃~162℃であり得る。そして、好ましくは、前記脱低沸点物段階を行う上部圧力は1torr~5torr、あるいは2torr~5torr、あるいは2torr~4torrであり得る。
【0090】
前記脱低沸点物段階の実行温度および圧力が上記の範囲を満たさない場合、前記脱低沸点物段階における前記熱変性および副産物の生成量が増加し、低沸点物質の除去効率が低下し、これにより、前記脱低沸点物段階から得られる反応生成物におけるイソシアネート化合物の濃度が低下する。
【0091】
一例として、前記脱低沸点物段階は、前記脱溶媒ユニット300の反応生成物移送ライン304を介して供給される前記反応生成物から低沸点物質を除去できるように構成された蒸留塔440;前記蒸留塔の塔頂部から低沸点物質を排出する低沸点物質排出ライン409;および前記蒸留塔の塔底部から前記低沸点物質が除去された反応生成物を排出して後続段階に移送する反応生成物移送ライン405を含む脱低沸点物ユニット400で行うことができる。
【0092】
前記脱低沸点物段階で前記反応生成物の高温での滞留時間を最小化するために、ケトル型リボイラー(Kettle type reboiler)、薄膜蒸留装置(thin film evaporator)、強制循環型リボイラー(force circulated reboiler)、およびジャケット付容器型リボイラー(jacketed vessel type reboiler)などの装置が備えられた蒸留塔440が用いられる。
【0093】
(脱高沸点物段階)
次に、前記脱低沸点物段階で得られた前記低沸点物質が除去された反応生成物から高沸点物質(heavies)を除去する脱高沸点物段階が行われる。
【0094】
前記脱高沸点物段階では、前記低沸点物質が除去された反応生成物から、公知の脱高沸点物ユニット500によって、高沸点物質(heavies)を除去する。
【0095】
前記高沸点物質は、前記反応段階での主生成物であるイソシアネート化合物より高い沸点を有する物質を意味する。前記高沸点物質としては、前記主生成物を得る工程で形成されるイソシアネート化合物の二量体あるいは三量体以上の多量体を含むオリゴマー、あるいはポリマーなど高分子形態の副産物が挙げられる。
【0096】
本発明の一実施形態によれば、前記脱高沸点物段階における前記反応生成物の熱変性および副産物の生成を最小化するために、前記脱高沸点物段階は、145℃~165℃の温度および1torr以下の圧力下で行われることが好ましい。
【0097】
一例として、前記脱高沸点物段階は薄膜蒸留装置(thin-film evaporator)下で行われるが、前記薄膜蒸留装置の下部(bottom)の温度を145℃~165℃にし、前記薄膜蒸留装置の下部(bottom)の圧力は1torr以下で運転することが前記熱変性と副産物の生成を最小化するのに有利である。
【0098】
好ましくは、前記脱高沸点物段階の実行温度は145℃~165℃、あるいは150℃~165℃、あるいは150℃~160℃、あるいは155℃~160℃であり得る。そして、好ましくは、前記脱高沸点物段階の実行圧力は0.1torr~1torr、あるいは0.5torr~1torrであり得る。
【0099】
前記脱高沸点物段階の実行温度および圧力が上記の範囲を満たさない場合には、前記脱高沸点物段階における前記熱変性および副産物の生成量が増加し、高沸点物質の除去効率が低下し、これにより、前記脱高沸点物段階から得られるイソシアネート化合物の濃度が低下する。
【0100】
一例として、前記脱高沸点物段階は、前記脱低沸点物ユニット400の反応生成物移送ライン405を介して供給される前記反応生成物から高沸点物質を除去できるように構成された薄膜蒸留装置550;前記薄膜蒸留装置の凝縮部からイソシアネート化合物を排出するイソシアネート化合物排出ライン509;および前記薄膜蒸留装置の塔底部から前記高沸点物質を排出する高沸点物質排出ライン506を含む脱高沸点物ユニット500で行うことができる。
【発明の効果】
【0101】
本発明は、ホスゲンを使用したイソシアネート化合物の製造時、反応に使用された物質を回収して再使用することができ、反応生成物の熱変性および副産物の生成を最小化できるイソシアネート化合物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
図1】本発明の一実施形態によるイソシアネート化合物の製造方法に用いられる工程および装置を模式的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態によるイソシアネート化合物の製造方法に用いられる工程および装置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0103】
以下、本発明の具体的な実施形態により発明の作用、効果をより具体的に説明する。ただし、これは発明の理解を助けるための例示として提示されたものであり、発明の権利範囲はこれによっていかなる意味でも限定されるものではない。
【実施例
【0104】
実施例1
図1および図2に示すような装置を用いて次の工程で1,3-XDI(m-XDI)を製造した。
【0105】
(反応段階)
常温および常圧の条件下で、6500kgの1,2-ジクロロベンゼン(o-DCB)の溶媒中で、塩酸500kgとm-キシリレンジアミン(m-XDA)560kgを4時間の間反応させ、m-キシリレンジアミンの塩酸塩870kgを形成した。
【0106】
前記m-キシリレンジアミンの塩酸塩870kgを、供給ライン10を介して反応器110に投入し、反応器の温度を125℃に昇温した。反応進行時間の間供給ライン20を介して合計1359kgのホスゲン(phosgene)を反応器に入れて攪拌した。ホスゲン投入時点から反応終了時点までドライアイス-アセトンコンデンサを用いてホスゲンが外部に漏れないようにした。90℃の温度下で1.5時間反応を進行させた。
【0107】
その後、反応器の内部温度を125℃になるように加熱し、ホスゲン6000kgをさらに投入した。反応器の温度は125℃を維持し、反応溶液が透明になるまで4.5時間さらに攪拌した。反応溶液が透明になった後に加熱を中断した。前記方法で得られた反応生成物は移送ライン102を介して脱ガスユニット200に移送された。
【0108】
(脱ガス段階)
脱ガスユニット200の蒸留塔220は、移送ライン102を介して供給される前記反応生成物からガス相を除去できるように構成した。
【0109】
具体的には、蒸留塔220は、構造パッキングの一種類であるメラパック(Mellapak)が充填されたパッキングタワーを使用し、その高さは約6mである。
【0110】
蒸留塔220の下部(bottom)の温度を155℃にし、蒸留塔220の上部(top)の圧力を400torrで運転した。
【0111】
約150kg/hrの還流ストリームを蒸留塔220に再投入し、これは塔頂の流出量に対して約3.2の還流比に相当する。
【0112】
蒸留塔220の塔頂部に連結されたガス相排出ライン209を介してホスゲンを含むガス相が排出された。ガス相排出ライン209を介して排出された前記ガス相は、スクラビングユニット250のスクラビングタワー251に移送された。前記ガス相が除去された反応生成物は、蒸留塔220の塔底部に連結された移送ライン203を介して脱溶媒ユニット300に移送された。
【0113】
(スクラビング段階)
スクラビングユニット250のスクラビングタワー251は、ガス相排出ライン209を介して供給される前記ガス相からホスゲンを回収できるように構成される。
【0114】
具体的には、スクラビングタワー251は、構造パッキングの一種類であるメラパック(Mellapak)が充電されたパッキングタワーを使用し、その高さは約4mである。
【0115】
スクラビングタワー251は、700torrの負圧下で運転した。
【0116】
前記ガス相はスクラビングタワー251の下部に供給された。前記ガス相に含まれているホスゲンをスクラビングするための洗浄溶媒は、溶媒供給ライン295を介してスクラビングタワー251の上部に供給された。前記洗浄溶媒としては-15℃の温度を有する1,2-ジクロロベンゼン(o-DCB)を使用した。
【0117】
スクラビングタワー251の下部からは前記洗浄溶媒にホスゲンが溶解している溶液(以下、「ホスゲン含有溶液」という)が塔底ストリームライン256を介して排出された。スクラビングタワー251の上部からはホスゲンが脱気された非凝縮性ガス(塩酸ガス)が塔頂ストリームライン253を介して排出された。
【0118】
塔頂ストリームライン253を介して排出された塩酸ガスは、残留溶媒を除去するための活性炭フィルター255を介して排出ライン257を経て回収された。回収された塩酸ガスは、前記反応段階で前記アミン化合物の塩を形成する反応に供給された。
【0119】
塔底ストリームライン256を介して排出された前記ホスゲン含有溶液は蒸留ユニット270に移送された。
【0120】
(蒸留段階)
蒸留ユニット270の蒸留塔271は、スクラビングユニット250の塔底ストリームライン256を介して供給される前記ホスゲン含有溶液からホスゲンと前記洗浄溶媒とを分離できるように構成される。
【0121】
具体的には、蒸留塔271は、7段のバブルキャップトレイからなる約5mのカラムである。約400kg/hrの還流ストリームを蒸留塔271に再投入し、これは塔頂の流出量に対して約1.4の還流比に相当する。
【0122】
蒸留塔271の下部(bottom)の温度を181℃にし、蒸留塔271の上部(top)の圧力を760torrとして運転した。
【0123】
蒸留塔271の上部からは前記ホスゲン含有溶液から分離されたホスゲンが塔頂ストリームライン273を介して排出された。排出されたホスゲンは凝縮器275に供給された。凝縮器275で凝縮されたホスゲンの一部は蒸留塔271に再供給され、その残りは排出ライン279を介して回収された。回収されたホスゲンは、反応ユニット100のホスゲン供給ライン20を介して反応器110に供給された。凝縮器275で凝縮されないガス相は、排出ライン277を介してスクラビングユニット250のスクラビングタワー251の下部に供給された。
【0124】
蒸留塔271の下部からは前記洗浄溶媒含有溶液が塔底ストリームライン276を介して排出された。排出された前記洗浄溶媒含有溶液はリボイラー280に供給された。リボイラー280では、低沸点分画は蒸留塔271の下部に再供給され、残りの分画である前記洗浄溶媒は溶媒リカバリードラム290に移送された。
【0125】
溶媒リカバリードラム290には溶媒供給ライン293を介して新鮮な洗浄溶媒がさらに供給された。溶媒リカバリードラム290に集まった前記洗浄溶媒は、溶媒供給ライン295を介してスクラビングユニット250のスクラビングタワー251の上部に供給された。前記洗浄溶媒は、熱交換器で-15℃の温度で冷却された状態でスクラビングタワー251に供給された。
【0126】
(脱溶媒段階)
脱溶媒ユニット300の蒸留塔330は、移送ライン203を介して供給される前記反応生成物から溶媒を除去できるように構成した。
【0127】
具体的には、蒸留塔330は、構造パッキングの一種類であるメラパック(Mellapak)が充填されたパッキングタワーを使用し、その高さは約7mである。
【0128】
蒸留塔330の下部(bottom)の温度を160℃にし、蒸留塔330の上部(top)の圧力を15torrで運転した。
【0129】
約600kg/hrの還流ストリームを蒸留塔330に再投入し、これは塔頂の流出量に対して約0.5の還流比に相当する。
【0130】
蒸留塔330の塔頂部に連結された溶媒排出ライン309を介して、1,2-ジクロロベンゼン(o-DCB)を含む溶媒が排出された。前記溶媒が除去された反応生成物は、蒸留塔330の塔底部に連結された移送ライン304を介して脱低沸点物ユニット400に移送された。
【0131】
(脱低沸点物段階)
脱低沸点物ユニット400の蒸留塔440は、移送ライン304を介して供給される前記反応生成物から低沸点物質を除去できるように構成した。
【0132】
具体的には、蒸留塔440は、構造パッキングの一種類であるメラパック(Mellapak)が充填されたパッキングタワーを使用し、その高さは約13mである。
【0133】
蒸留塔440の下部(bottom)の温度を160℃にし、蒸留塔440の上部(top)の圧力を3torrで運転した。
【0134】
約40kg/hrの還流ストリームを蒸留塔440に再投入し、これは塔頂の流出量に対して約2.0の還流比に相当する。
【0135】
蒸留塔440の塔頂部に連結された低沸点物質排出ライン409を介して、(クロロメチル)ベンジルイソシアネート(CBI)を含む低沸点物質が排出された。前記低沸点物質が除去された反応生成物は、蒸留塔440の塔底部に連結された移送ライン405を介して脱高沸点物ユニット500に移送された。
【0136】
(脱高沸点物段階)
脱高沸点物ユニット500の薄膜蒸留装置550は、移送ライン405を介して供給される前記反応生成物から高沸点物質を除去できるように構成した。
【0137】
具体的には、薄膜蒸留装置550は、内部に凝縮器が設置されているshort path evaporator形態の蒸発器を使用した。
【0138】
薄膜蒸留装置550の下部(bottom)の温度を160℃にし、薄膜蒸留装置550の下部(bottom)の圧力を0.5torrとして運転した。
【0139】
薄膜蒸留装置の下部(bottom)で約13kg/hrの高沸点凝縮物が分離された。
【0140】
薄膜蒸留装置550の塔頂部に連結された排出ライン509を介して、1,3-XDI(m-XDI)を含むイソシアネート化合物が排出された。前記反応生成物から分離した高沸点物質は、薄膜蒸留装置550の塔底部に連結された排出ライン506を介して排出された。
【0141】
実施例2
前記スクラビング段階でスクラビングタワー251の上部に供給される前記洗浄溶媒の温度を-5℃にしたことを除いて、前記実施例1と同様の方法で1,3-XDI(m-XDI)を含むイソシアネート化合物を得た。
【0142】
実施例3
前記スクラビング段階でスクラビングタワー251の運転圧力を730torrにしたことを除いて、前記実施例1と同様の方法で1,3-XDI(m-XDI)を含むイソシアネート化合物を得た。
【0143】
比較例1
前記スクラビング段階でスクラビングタワー251の上部に供給される前記洗浄溶媒の温度を10℃にしたことを除いて、前記実施例1と同様の方法で1,3-XDI(m-XDI)を含むイソシアネート化合物を得た。
【0144】
参考例1
前記スクラビング段階で、塔頂ストリームライン253を介して排出された塩酸ガスを活性炭フィルター255を通過させないことを除いて、前記実施例1と同様の方法で1,3-XDI(m-XDI)を含むイソシアネート化合物を得た。
【0145】
試験例
前記実施例および比較例の前記スクラビング段階および前記蒸留段階で得られる主なストリームの一部を回収してgel permeation chromatography分析を行った。前記分析により確認された主成分の含有量を下記の表1~表5に示す。
【0146】
さらに、前記実施例および比較例の前記スクラビング段階および前記蒸留段階の実施に投入される単位時間当たりのエネルギー(kcal/hr)を測定して、下記の表1~表5に示す。
【0147】
【表1】
【0148】
【表2】
【0149】
【表3】
【0150】
【表4】
【0151】
【表5】
【0152】
上記表1~表5を参照すると、前記実施例によるイソシアネート化合物の製造方法によれば、前記反応段階で用いられたホスゲンとその回収に使用された前記洗浄溶媒とを低いエネルギー消耗量下で効率的に回収して再使用することができることが確認された。
【0153】
それに対して、前記比較例1では高いエネルギー消耗量にもかかわらず、ホスゲンと前記洗浄溶媒との回収効率が同等であるかまたは低いことが確認された。
【符号の説明】
【0154】
10 アミン化合物の塩供給ライン
20 ホスゲン供給ライン
100 反応ユニット
110 反応器
102 反応生成物移送ライン
200 脱ガスユニット
220 蒸留塔
209 ガス相排出ライン
203 反応生成物移送ライン
250 スクラビングユニット
251 スクラビングタワー
253 塔頂ストリームライン
255 フィルター
257 非凝縮性ガス排出ライン
256 塔底ストリームライン
270 蒸留ユニット
271 蒸留塔
273 塔頂ストリームライン
275 凝縮器
277 ガス相排出ライン
279 ホスゲン排出ライン
276 塔底ストリームライン
280 リボイラー
290 溶媒リカバリードラム
293 溶媒供給ライン
295 溶媒供給ライン
300 脱溶媒ユニット
330 蒸留塔
309 溶媒排出ライン
304 反応生成物移送ライン
400 脱低沸点物ユニット
440 蒸留塔
409 低沸点物質排出ライン
405 反応生成物移送ライン
500 脱高沸点物ユニット
550 薄膜蒸留装置
506 高沸点物質排出ライン
509 イソシアネート化合物排出ライン
図1
図2
【国際調査報告】