(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】重質多核芳香族の蓄積を低減した水素化分解操作
(51)【国際特許分類】
C10G 47/14 20060101AFI20240118BHJP
B01J 35/60 20240101ALI20240118BHJP
B01J 23/44 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C10G47/14
B01J35/10 301A
B01J23/44 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540188
(86)(22)【出願日】2021-12-29
(85)【翻訳文提出日】2023-08-02
(86)【国際出願番号】 IB2021062438
(87)【国際公開番号】W WO2022144805
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ、リン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ビー - ゼン
(72)【発明者】
【氏名】ブシェー、ドン
(72)【発明者】
【氏名】マーセン、テオドラス リュドヴィカス ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ティムケン、ヘエ - キョン
(72)【発明者】
【氏名】ダッタ 、リチャード
(72)【発明者】
【氏名】パレク、ジェイ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA12
4G169BA01A
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4H129NA22
4H129NA23
(57)【要約】
石油原料を低沸点生成物に転換するためのリサイクルループによる水素化分解プロセスが提供され、このプロセスは、水素化分解反応器のリサイクルループ内に位置する反応器内で、流れを非ゼオライト貴金属触媒で約650°F(343℃)以下の温度で反応させることを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油原料を低沸点生成物に転換するためのリサイクルループによる水素化分解プロセスであって、前記プロセスは、非ゼオライト貴金属触媒を含む反応器内で炭化水素流を約650°F(343℃)以下の温度で反応させることを含み、前記反応器は、前記水素化分解プロセスの前記リサイクルループ内に配置される、前記プロセス。
【請求項2】
前記プロセスが、二段階水素化分解プロセスを含み、前記非ゼオライト貴金属触媒を含む前記反応器が、第2の段階反応器のリサイクルループ内に配置される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記温度が約550°F(288℃)以下である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記温度が約500°F(260℃)以下である、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記第2の段階反応器の前記リサイクルループ内の前記反応器内の前記反応温度が、約400°F~約500°F(204℃~260℃)の範囲内である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項6】
前記貴金属触媒が、第VIII族貴金属またはそれらの組み合わせを含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項7】
前記貴金属触媒が、白金、パラジウム、金、またはそれらの組み合わせの金属を含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項8】
前記貴金属触媒が、メソ細孔及びマクロ細孔を有する担体を含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項9】
前記第2の段階反応器の前記リサイクルループ内の前記反応器が、前記第2の段階反応器の上流に配置される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項10】
前記第2の段階反応器の前記リサイクルループ内の前記反応器が、前記第2の段階反応器の下流に配置される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項11】
石油原料を低沸点生成物に転換するためのリサイクルを伴う水素化分解プロセスであって、前記プロセスは、
(i)水素の存在下で石油原料を水素化処理して、第1の反応器内に液体生成物を含む水素化処理された流出流を生成することと、
(ii)前記水素化処理された流出流の少なくとも一部を、分離セクションに送ることと、
(iii)前記分離セクションの塔底留分の少なくとも一部を、非ゼオライト貴金属触媒を含む反応器に送ることであって、前記反応器は約650°F(343℃)以下の温度で運転される、前記送ることと、
(iv)前記非ゼオライト貴金属触媒を含む前記反応器からの生成物を、水素化分解反応器に送り、水素化分解された流出流を生成することと、
(v)前記水素化分解反応器から塔底留分を回収し、(ii)の前記分離セクションを通して回収された前記塔底留分の少なくとも一部をリサイクルすることと、を含む、前記プロセス。
【請求項12】
前記分離セクションが蒸留塔を含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
(iii)の前記反応器が約550°F(288℃)以下の温度で運転される、請求項11に記載のプロセス。
【請求項14】
(iii)の前記反応器が約500°F(260℃)以下の温度で運転される、請求項11に記載のプロセス。
【請求項15】
(iii)の前記反応器が約400°F~500°F(204℃~260℃)以下の温度で運転される、請求項11に記載のプロセス。
【請求項16】
(v)における前記塔底留分の最小部分がFCCユニットに送られる、請求項11に記載のプロセス。
【請求項17】
前記第2の段階反応器の前記リサイクルループ内の前記反応器内の前記反応温度が、約400°F~約500°F(204℃~260℃)の範囲内である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項18】
前記貴金属触媒が、第VIII族貴金属またはそれらの組み合わせを含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項19】
前記貴金属触媒が、白金、パラジウム、金、またはそれらの組み合わせを含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項20】
前記貴金属触媒が、メソ細孔及びマクロ細孔を含む担体を含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項21】
石油原料を低沸点生成物に転換するためのリサイクルを伴う二段階水素化分解プロセスであって、前記プロセスは、
(i)第1の段階反応器内で、水素の存在下で石油原料を水素化処理して、液体生成物を含む水素化処理された流出流を生成することと、
(ii)前記水素化処理された流出流の少なくとも一部を、分離セクションに送ることと、
(iii)前記分離セクションの塔底留分の少なくとも一部を水素化分解反応器に通過させて、水素化分解流出流を生成することと、
(iv)前記水素化分解反応器から塔底留分を回収し、(ii)の前記分離セクションに回収された前記塔底留分の少なくとも一部、または(ii)の前記分離セクションに送られた前記水素化処理された流出流をリサイクルすることであって、前記リサイクルされた塔底液部分は、(ii)の前記分離セクション塔または前記水素化処理された流出流に到達する前に、650°F(343℃)以下の温度で運転される非ゼオライト貴金属触媒を含む反応器を通過する、リサイクルすることと、を含む、前記プロセス。
【請求項22】
前記分離セクションが蒸留塔を含む、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
(iv)の非ゼオライト貴金属触媒を含む前記反応器が、約550°F(288℃)以下の温度で運転される、請求項21に記載のプロセス。
【請求項24】
(iv)の非ゼオライト貴金属触媒を含む前記反応器が、約500°F(260℃)以下の温度で運転される、請求項21に記載のプロセス。
【請求項25】
前記分離セクションからの塔底留分の最小部分がFCCユニットに送られる、請求項21に記載のプロセス。
【請求項26】
前記水素化分解反応器の前記リサイクルループ内の非ゼオライト貴金属触媒を含む前記反応器内の前反応温度が、約400°F~約500°F(204℃~260℃)の範囲にある、請求項21に記載のプロセス。
【請求項27】
前記貴金属触媒が、第VIII族貴金属またはそれらの組み合わせを含む、請求項21に記載のプロセス。
【請求項28】
前記貴金属触媒が、白金、パラジウム、金、またはそれらの組み合わせを含む、請求項21に記載のプロセス。
【請求項29】
前記貴金属触媒が、メソ細孔及びマクロ細孔を含む担体を含む、請求項21に記載のプロセス。
【請求項30】
石油原料を低沸点生成物に転換するためのリサイクルループによる水素化分解プロセスであって、前記プロセスは、メソ細孔及びマクロ細孔を有する担体を有する貴金属触媒を含む反応器内で炭化水素流を約650°F(343℃)以下の温度の前記反応器で反応させることを含み、前記反応器は、前記水素化分解プロセスの前記リサイクルループ内に配置される、前記プロセス。
【請求項31】
前記貴金属触媒が、メソ細孔及びマクロ細孔を有する担体上に第VIII族貴金属水素化成分を含む、請求項30に記載のプロセス。
【請求項32】
前記貴金属触媒が、20~1,000nm(0.020~1μm)の平均細孔径、0.8cc/g超の全細孔容積、及び、10~50%の前記全細孔容積に対するマクロ細孔容積を有し、前記メソ細孔は10~50nmの直径を有し、前記マクロ細孔は100超~5000nmの第2の直径を有する、請求項31に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月30日出願の米国特許出願第17/137,928号に対する優先権の利益を主張し、この出願の開示内容全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
2段階の水素化分解操作で重質多核芳香族の蓄積を制御する。
【背景技術】
【0003】
背景
市場動向や規制環境に対する製油所の柔軟性と対応力は、競争上の地位に大きな影響を与える。低価格の機会原油や互換性のあるカッターストックの入手可能性、残留燃料油に対する規制の強化、石油化学供給原料、基油、輸送用燃料の価格差を含む対応性におけるこの必要性を促進するいくつかの要因がある。製油所のプロセススキームの仕様を厳格化し、より堅牢な触媒システムを組み合わせることで、より持続可能性が高まり、機会供給原料のより大きなポートフォリオを市場動向とより同期した生成物スレートに変えることができる。
【0004】
製油所は、操作の信頼性を最大化するために、操作に制約を課す。最近のプロセス及び触媒のオプションは、これらの制約形勢を大幅に軽減及び改善するために開発された。軽質原油と重質原油の生産が増加し、中質原油の生産が減少する中、ますます多くの製油所が軽質原油と重質原油の機会ブレンドを供給している。これらの原油ブレンドは適合性に関する懸念を引き起こし、蒸留トレインに影響を与える可能性があり、水素化分解装置の原料中の残留油の飛沫同伴を悪化させることがよくある。たとえ飛沫同伴が標準分析技術の検出限界に近いほど微量であっても、飛沫同伴した残留油は水素化分解装置の性能に悪影響を及ぼす。資本があれば、改良されたプロセスオプションに投資して水素化分解供給原料を改善し、それによって機会原油を悪影響に曝すことを軽減できる。互換性の問題に対処する必要性に対する現在の緊急性が示すように、問題となる成分の蒸留や吸収などの解決策は、最初に提案されてからかなり経ってから現在実行されている。資本中立的な解決策は、水素化分解装置への供給原料の最終沸点のわずかな上昇に伴うリスクを軽減できる触媒系である。
【0005】
減圧軽油を水素化処理するように設計された水素化分解装置への原料に飛沫同伴した残留油は、原料の水素化処理が開始されると、残留油の一部が適合性を維持しないことが多いため、問題となる。水素化処理により、原料中に最初に溶解していた複合残留油分子を多環芳香族コアまでストリップする一方で、原料を飽和して、大きな芳香族にとって好ましくない芳香族性の低いストリームにするため、相溶性が失われる。相溶性は、より小さな芳香族化合物が熱力学的に有利なより大きな構造に凝縮することによってさらに低下する。より芳香性の高い溶質及びより芳香性の低い溶媒が同時に形成されると、ナノエマルジョンが生成され、最終的に反応器内または反応器の下流の装置内に沈降するメソフェーズ(液晶)を形成する可能性がある。
【0006】
最も問題となるのは、重質多核芳香族に関するものである。重質多核芳香族(HPNA)は、分子構造内に複数の芳香環を持つ多環芳香族化合物である。商業用水素化分解装置にHPNAが存在すると、熱交換器やラインでのHPNAの析出によりプロセス装置を汚す可能性がある。また、HPNAが析出して触媒表面に堆積し、活性部位をブロックするため、触媒が急速に失活する可能性がある。HPNAは水素化分解供給原料に存在するだけでなく、水素化処理プロセス中にも形成され、特に第2の段階の水素化分解装置のリサイクルループではHPNAが通常の運転条件で形成され、ストリームの時間の経過とともにますます濃縮される。
【0007】
この問題は、数十年にわたり、世界中の製油所の水素化分解業者にとって困難な問題となっている。ほとんどの製油所では、HPNAの急速な蓄積を防ぐために、やむなくリサイクル流の一部を継続的に排出させている。排出量はリサイクル流の5重量%~最大20重量%の範囲で変化し得る。これにより、重大な材料損失が発生する。一部の企業は、HPNAを選択的に除去するためにリサイクルループ内の活性炭吸着剤など、この問題を軽減しようとする特定の技術を開発したが、根本原因を解決してはおらず、HPNAの形成を防止するものではない。さらに、物理的経路によるHPNAの分離及び除去は必ずしも効果的であるとは限らず、分離が不完全なために材料の損失が発生する可能性もある。
【0008】
二段階水素化分解装置、特に第2の反応器で卑金属触媒を使用する二段階水素化分解装置におけるHPNAの生成及び蓄積を排除するか、または少なくとも実質的に低減するためのアプローチは、産業界において非常に価値があるであろう。
【発明の概要】
【0009】
概要
石油原料を低沸点生成物に転換するためのリサイクルループによる水素化分解プロセスが提供される。このプロセスは、非ゼオライト貴金属触媒を含む反応器内で炭化水素流を約650°F(343℃)以下の温度で反応させることを含み、反応器は水素化分解プロセスのリサイクルループ内に配置される。
【0010】
一実施形態では、石油原料を低沸点生成物に転換するための二段階水素化分解プロセスが提供され、このプロセスは、第二段階水素化分解反応器のリサイクルループ内に位置する反応器内で、流れを非ゼオライト貴金属触媒で約650°F(343℃)以下の温度で反応させることを含む。
【0011】
一実施形態では、石油原料を低沸点生成物に転換するためのリサイクルを伴う水素化分解プロセスが提供され、このプロセスは、水素の存在下で石油供給原料を水素化処理して、第1の反応器内で液体生成物を含む水素化処理された流出流を生成することを含む。水素化処理された流出流の少なくとも一部は、分離セクションに送られる。分離セクションの塔底留分の少なくとも一部は、非ゼオライト貴金属触媒を含む反応器に送られ、この反応器は分離セクションと水素化分解反応器との間に配置され、約650°F(343℃)以下の温度で運転される。非ゼオライト貴金属触媒を含む反応器からの生成物は、水素化分解反応器に送られ、水素化分解流出流が生成される。水素化分解反応器からの塔底留分が回収され、回収された塔底留分の少なくとも一部が分離セクションを通過する。
【0012】
別の実施形態では、石油原料をより低い沸点に転換するためのリサイクルを伴う二段階水素化分解プロセスが提供される。このプロセスは、水素の存在下で第1の段階反応器内で石油原料を水素化処理して、液体生成物を含む水素化処理された流出流を生成することを含む。水素化処理された流出流の少なくとも一部は、蒸留塔などの分離セクションに送られる。蒸留塔の塔底留分の少なくとも一部は、第2の反応器の水素化分解段階に送られて、水素化分解流出流が生成される。第2の反応器からの塔底留分が回収され蒸留塔にリサイクルされるか、または水素化処理された流出流が蒸留塔に送られる。リサイクル流は、非ゼオライト貴金属触媒を含む反応器に送られ、この反応器は水素化分解反応器と蒸留塔の間に位置し、650°F(343℃)以下の温度で運転される。リサイクル流は、蒸留塔に到達する前にこの非ゼオライト貴金属触媒反応器を通過するか、または水素化分解された流出流が蒸留塔に送られる。
【0013】
一実施形態では、石油原料を低沸点生成物に転換するためのリサイクルループによる水素化分解プロセスが提供される。このプロセスは、貴金属触媒と、メソ細孔及びマクロ細孔を有する担体とを含む反応器内で炭化水素流を反応させることを含み、反応器は約650°F(343℃)以下の温度で運転され、反応器は水素化分解プロセスのリサイクルループ内に配置される。
【0014】
他の要因の中でも、水素化分解プロセスのリサイクルループ、例えば、第2の段階反応器のリサイクルループで非ゼオライト貴金属触媒を使用することにより、低温で操作すると、飽和してHPNAを転換できることが判明した。これにより、リサイクルループ内でHPNAが凝縮することが防止され、これに対処しなければ、最終的には装置の汚れや触媒の失活につながる可能性がある。このアプローチは、リサイクル流の必要な流出による材料損失を軽減するのに役立つ。このアプローチにより、例えばFCCユニットへの流出が最小限に抑えられる。また、第2の段階の触媒寿命及び稼働期間が延長され、より重質の原料を二段階水素化分解装置で処理する機会を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図面の簡単な記述
【
図1】
図1は、第2の段階リサイクルループが示された従来の二段階水素化分解装置システムを示す。
【0016】
【
図2】
図2は、二段階水素化分解システムの第2の段階の上流のリサイクルループにおいて非ゼオライト触媒を使用する実施形態を概略的に示す。
【0017】
【
図3】
図3は、二段階水素化分解システムの第2の段階から下流のリサイクルループにおいて非ゼオライト触媒を使用する実施形態を概略的に示す。
【0018】
【
図4】
図4は、第2の段階後に分離セクションを備え、第1の段階反応器の供給物へリサイクルを備え、分離セクションと第1の段階反応器への供給物との間のリサイクルループ内に非ゼオライト触媒を備えた、二段階水素化分解装置システムを概略的に示す。
【0019】
【
図5】
図5は、非ゼオライト触媒が分離セクションと第2の段階反応器との間のリサイクルループ内にあるリサイクルループによる別の炭化水素プロセスを概略的に示す。
【0020】
【
図6】
図6は、一実施形態における有用な非ゼオライト貴金属触媒の細孔径分布をグラフで示している。
【0021】
【
図7】
図7は、3つの特定の重質多核芳香族種(ベンゾペリレン、コロネン、及びオバレン)の構造を示す。
【0022】
【
図8】
図8は、HPNAが飽和され転換される例1の試験結果をグラフで示す。
【0023】
【
図9】
図9は、試験した原料がコロネンをスパイクした原料であった例1の試験結果をグラフで示す。
【0024】
【
図10】
図10は、HPNAの転換に対するLHSV及び温度の影響をグラフで示す。
【0025】
【
図11】
図11は、HPNAの転換に対する操作圧力及び温度の影響をグラフで示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本プロセスは、特に卑金属触媒が第2の段階で使用される場合の、二段階水素化分解装置における重質多核芳香族(HPNA)の形成及び蓄積を制御する方法に関する。
図1は、従来の二段階水素化分解システムを示している。重質多核芳香族(HPNA)は、通常650°F(343℃)超で運転される、卑金属触媒を使用した第2の段階反応器1内で形成される。HPNAは、ストリーム時間の経過とともに、第2の段階リサイクルループ(
図1の導管2~12で示す)内でどんどん濃縮されていく。最終的に、これらの濃縮されたHPNAは析出し、触媒の表面及び熱交換器やラインの内部に堆積する。その結果、触媒が急速に失活し、装置が汚れてしまう。第2の段階リサイクルループでのHPNAの蓄積を管理可能なレベルに制御するために、製油所は通常、リサイクル流の一部(導管13経由でFCCに送られる)を継続的に排出する必要があり、これにより重大な材料損失が発生する。このことは、第2の段階リサイクルループにおける高濃度のHPNAのため、ユニットの動作を維持するために非常に高い排出率が必要となるため、運転の終わりに向けて特に当てはまる。
【0027】
本プロセスは、第2の段階水素化分解装置の液体リサイクルループ内で低温(約650°F以下)で運転される非ゼオライト貴金属触媒反応器を使用する。一実施形態では、非ゼオライト貴金属触媒を含む反応器が運転される温度は、約550°F(288℃)以下であり、ある実施形態では、約500°F(260℃)以下である。別の実施形態では、運転温度は約400°F~約500°F(204℃~260℃)の範囲にある。
【0028】
図2は、第2の段階反応器の上流の液体リサイクルループ内に設置された非ゼオライトPt-Pd触媒が装填された追加の反応器を備えた二段階水素化分解装置のフロー図を示し、一般に卑金属触媒が装填されている。リサイクルループの第2の段階の原料は、低温で操作される非ゼオライトPt-Pd触媒によって処理される。卑金属触媒を用いた第2の反応器で形成される重質多核芳香族(HPNA)は、第2の段階反応器にリサイクルされる前に効果的に飽和され、転換される。
図3は、第2の段反応器塔の下流のリサイクルループに追加の反応器が装填されたニ段階水素化分解装置を示す。再度、非ゼオライト貴金属触媒反応器をリサイクルループ内に配置すると、第2の段階反応器で形成されるHPNAは効果的に飽和され、転換される。
【0029】
この方法では、基本的に第2の段階リサイクルループ内のどこにでも追加の反応器を配置することができる。第2の段階リサイクルループには、第2の段階反応器塔からの塔底液がリサイクルされ、最終的に第2の段階反応器にループバックまたは戻る導管及び装置が含まれる。このループは、
図1の導管2~12によって示されており、これには、蒸留塔、そしてもちろん第2の段階反応器塔も含まれる。この反応器を第2の段階反応器リサイクルループに使用すると、第2の段階でのHPNAの濃度が抑制され、触媒の寿命が延び、装置の汚れが防止されることがわかっている。一方、リサイクル流の排出を減少または排除されるであろう。FCCへ5~20重量%排出する代わりに、本プロセスは排出を0~4重量%まで減らすことができ、一般に1重量%未満である。排出の必要性を完全になくすことも可能である。
【0030】
図4及び5は、非ゼオライト貴金属触媒を含む反応器がリサイクルループで使用される他の炭化水素プロセスを示す。
図4において、リサイクルループは分離セクション61の底部60を含み、原料62を第1の反応器63に送る。非ゼオライト貴金属触媒を含む反応器は、分離セクション61と原料62との間の64にある。底部60の一部もFCCユニットに64を排出する。上述したように、本プロセスは、この無駄な排出を大幅に最小限に抑えることができる。
【0031】
図5において、分離セクション71、例えば蒸留塔、からの塔底液70は、第2の段階反応器72に送られる。反応器72へのリサイクル物は、非ゼオライト貴金属触媒を含む反応器73を通過する。塔底液70の一部もまた、FCCユニットへの排出物として74を送る。
【0032】
一実施形態において使用される非ゼオライト貴金属触媒は、米国特許第9,956,553号に記載されており、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
「貴金属」という用語は、腐食及び/または酸化に対する耐性が高い金属を指す。VIII族貴金属には、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、及び白金(Pt)が挙げられる。
【0034】
「マクロ多孔質」、「メソ多孔質」、及び「ミクロ多孔質」という用語は当業者には公知であり、本明細書では、国際純粋応用化学連合(IUPAC)の化学用語大要バージョン2.3.2、2012年8月19日(非公式に「ゴールドブック」として知られる)における説明と一貫して使用される。一般に、ミクロ多孔質材料には、断面直径が2nm(0.002μm)未満の細孔を有する材料が含まれる。メソ多孔質材料には、断面直径が2~50nm(0.002~0.05μm)の細孔を有する材料が含まれる。マクロ多孔質材料には、断面直径が約50nm(0.05μm)超の細孔を有する材料が含まれる。所与の材料または組成物は、2つ以上のそのようなサイズ領域の細孔を有し得ること、例えば、粒子は、マクロ多孔性、メソ多孔性、及び微小多孔性を含み得ることが理解されよう。
【0035】
貴金属触媒は、担体上に支持された第VIII族貴金属水素化成分を含み、一実施形態では担体はメソ細孔及びマクロ細孔を含む。
【0036】
第VIII族貴金属水素化成分は、Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt、及びそれらの組み合わせ(例えば、Pd、Pt、及びそれらの組み合わせ)から選択され得る。第VIII族貴金属水素化成分は、イオン交換、含浸、初期湿潤または物理的混合などの当技術分野で知られている方法によって水素化触媒に組み込まれ得る。VIII族貴金属を組み込んだ後、触媒は通常、200℃~500℃の温度で焼成される。
【0037】
貴金属触媒中の第VIII族貴金属の量は、触媒の総重量の0.05~2.5重量%(例えば、0.05~1重量%、0.05~0.5重量%、0.05~0.35重量%、0.1~1重量%、0.1~0.5重量%、または0.1~0.35重量%)であり得る。
【0038】
適切な担体としては、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、ジルコニア、チタニア、及びそれらの組み合わせが挙げられる。アルミナが好ましい担体である。適切なアルミナとしては、γ-アルミナ、η-アルミナ、擬ベーマイト、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0039】
マクロ多孔質担体は、10~10,000nm(0.01~10μm)の範囲のメソ細孔及びマクロ細孔を含み得る。メソ細孔のサイズは主に10~50nm(0.01~0.05μm)の範囲にあり、マクロ細孔のサイズは100~5,000nm(0.1~5μm)の範囲にある。平均メソ細孔径は10~50nm(0.01~0.05μm)の範囲、好ましくは10~20nm(0.01~0.02μm)の範囲である。平均マクロ細孔径は100~1000nm(0.1~1μm)の範囲、好ましくは200~5000nm(0.2~0.5μm)の範囲である。
【0040】
本開示の目的のために、メソ細孔及びマクロ細孔を有する担体の2つの平均細孔径を報告するのではなく、他の材料と効果的に比較するために、全細孔容積及び総表面積を使用して平均細孔径を推定する。
【0041】
貴金属触媒は、20~1000nm(0.02~1μm)(例えば、20~800nm、20~500nm、20~200、25~800、25~500、または25~250nm)の平均細孔径を有し得る。
【0042】
貴金属触媒は、少なくとも0.10cc/g(例えば、0.10~0.50cc/g、0.10~0.45cc/g、0.10~0.40cc/g、0.15~0.50cc/g、0.15~0.45cc/g、0.15~0.40cc/g、0.20~0.50cc/g、0.20~0.45cc/g、または0.20~0.40cc/g)のマクロ細孔容積を有し得る。
【0043】
貴金属触媒は、0.80cc/g(例えば、少なくとも0.85cc/g、少なくとも0.90cc/g、少なくとも0.95cc/g、>0.80~1.5cc/g、>0.80~1.25cc/g、>0.80~1.10cc/g、0.85~1.5cc/g、0.85~1.25cc/g、0.85~1.10cc/g、0.90~1.50cc/g、0.90~1.25cc/g、0.90~1.10cc/g、0.95~1.50cc/g、0.95~1.25cc/g、または0.95~1.10cc/g)超の全細孔容積を有し得る。
【0044】
貴金属触媒の全細孔容積に対するマクロ細孔容積の割合は、10~50%(例えば、15~50%、15~45%、15~40%、20~50%、20~45%、20~40%、25~50%、25~45%、または25~40%)の範囲であり得る。
【0045】
触媒(及び担体)は、例えば、触媒(及び担体)を調製するときに細孔形成剤を利用するか、そのようなマクロ細孔を含む担体(すなわち、マクロ多孔質担体)を利用するか、または触媒を熱に曝露する(蒸気の有無にかかわらず)ことによって、マクロ細孔を含むように調製することができる。細孔形成剤は、担体を調製する際に細孔形成剤を使用しない場合よりも多くの及び/またはより大きな細孔を担体が含むように、触媒担体における細孔の形成を補助できる材料である。適切な細孔サイズを確保するために必要な方法及び材料は、触媒を調製する当業者には一般に知られている。
【0046】
触媒(及び担体)は、ビーズ、モノリシック構造、三葉、押出物、ペレットまたは不規則な非球形の凝集体の形態であってもよく、その特定の形状は、押出成形を含む成形プロセスの結果であり得る。
【0047】
一実施形態では、非ゼオライト貴金属触媒は二元金属Pt-Pd触媒を含み、組成物中にゼオライトを有していない。別の実施形態では、貴金属触媒は、白金、パラジウム、金、またはそれらの組み合わせを含み、組成中にゼオライトを有していない。残留触媒ベースを使用するため、細孔径が大きい。この種の触媒がHPNA制御用触媒として選択される特徴としては、(1)貴金属触媒は水素化分解卑金属触媒よりも水素化能力が強力であり、貴金属触媒との反応がHPNAの水素化に有利な比較的低温で操作されること、(2)大きな細孔は、HPNAの大きな分子の物質移動を促進すること、が挙げられる。以下の表は、一実施形態において、選択された触媒の物理的特性をまとめたものである。選択された触媒の細孔径分布を
図6に示す。この触媒は例で使用され、触媒NZと記されている。
【表1】
【0048】
本プロセスは、石油原料を低沸点生成物に転換するための二段階水素化分解プロセスである。このプロセスは、水素の存在下で石油原料を水素化処理して、液体生成物を含む水素化処理された流出流を生成することを含む。水素化処理された流れ流出物の少なくとも一部は、一般に2つ以上の反応ゾーンを含む水素化分解段階に送られる。この反応は、第1の水素化分解流出流を生成する。次いで、第1の水素化分解された流出流は、水素化分解段階の第2の反応ゾーンに送られる。
【0049】
さまざまな反応ゾーンは、水素化処理、水素化分解(及び水素化脱硫)のための従来の条件下で操作され得る。条件はさまざまであるが、通常、水素化処理または水素化分解のいずれも、反応温度は約250℃~約500℃(482°F~932°F)、圧力約3.5MPa~約24.2MPa(500~3,500psi)、及び供給速度(油体積/触媒体積時間)約0.1~約20時間-1である。水素の循環速度は一般に、約350標準リットルH2/kg油~1,780標準リットルH2/kg油(バレルあたり2,310~11,750標準立方フィート)の範囲にある。好ましい反応温度は、約340℃~約455℃(644°F~851°F)の範囲である。好ましい全反応圧力は、約7.0MPa~約20.7MPa(1,000~3,000psi)の範囲である。反応器はまた、任意の適切な触媒床配置モード、例えば、固定床、スラリー床、または沸騰床で運転することもできるが、通常は固定床、並流下降流が利用される。
【0050】
図面の特定の図及び以下の例を詳しく検討することにより、さらなる理解が得られる。
【0051】
一実施形態における
図2は、本プロセスを実行するための二段階水素化分解システムを示す。第1の操作は、第1の段階反応器で主に原料を水素化し、ヘテロ原子の大部分を除去することである。続いて蒸留により中間生成物(NH
3やH
2Sなどの触媒阻害剤を含む)が除去されるため、第2の反応器は原料沸点範囲に残ったものを輸送用燃料沸点範囲に水素化分解することに専念できるようになる。第2の段階で転換されずに残った最も耐火性の高い化合物は、FCCユニットなどへの排出がなければリサイクルループに蓄積することになるであろう。
【0052】
より具体的には、一実施形態では、
図2は、リサイクルを伴う二段階水素化分解装置を使用する実施形態を示す。二段階水素化分解システムは、第1の段階水素化または(水素化処理段階)21と第2の段階(水素化分解段階)22との間に蒸留塔20を有する。石油原料は、水素24とともに第1の段階に供給されて、水素化が行われる。水素化処理段階では4つの床が示されているが、数を変更することができる。水素化によりヘテロ原子の大部分が除去される。水素化処理された流出物25は次に蒸留塔20に供給され、中間生成物とNH
3やH
2Sなどの触媒阻害剤が分離される。次いで、蒸留塔の塔底液26は、導管27を介して第2の、または水素化分解段階22に供給され、これは、水素化分解触媒(複数可)を含む多数の重ねられた触媒床を含む。床または反応ゾーンの数も変更することができる。塔底液の流出流は一般に導管28を介してFCC供給物として送られる。
【0053】
蒸留塔26の塔底物が導管27を介して第2の段階塔22に供給されるときに、供給物は反応器30を通過する。この反応器は非ゼオライトの貴金属(Pt-Pd)触媒を含み、約500°F(260℃)以下の温度で運転される。一実施形態では、反応の温度範囲は約400°F~約500°F(204℃~260℃)である。HPNAが飽和し、最も効果的に転換されることが判明したのは、このような低い温度においてのみである。反応器20は、第2の段階リサイクルループ内にあるが、第2の段階22の上流にある。
図2のリサイクルループは、蒸留装置は、蒸留塔20、第2の段階22及び反応器30、並びに導管29、30、21、32、25、26、27、33及び34を含む。
【0054】
第2の段階から、水素化分解されたストリームは、29を介して蒸留塔20にリサイクルすることができる。リサイクル物は塔20に直接リサイクルすることができるか、または導管29及び30を介して示されるように最初に水素化処理された流出物と組み合わせることができる。
【0055】
別の実施形態では、
図3には、非ゼオライト貴金属触媒反応が第2の段階の下流であるが、リサイクルループ内にある、リサイクルを伴う二段階水素化分解装置ユニットが示されている。示される二段水素化分解ユニットは、第1の段階水素化または(水素化処理段階)41と第2の段階(水素化分解段階)42との間に蒸留塔40を有する。炭化水素原料43は、水素44とともに第1の段階に供給されて、水素化が行われる。床の数は、第1段階の塔で変更することができる。水素化によりヘテロ原子の大部分が除去される。水素化処理された流出物45は、次いで、蒸留塔40に供給されて、中間生成物、並びに、NH
3及びH
2Sなどの触媒阻害剤を分離する。蒸留塔の塔底液46は、導管47を介して第2の段階42、水素化分解段階に供給される。水素化分解段階の床の数も、その目的と同様に変更することができる。塔底液の流出流は一般に導管48を介してFCC供給物として通る。
【0056】
第2の段階の塔底液は、49を介してリサイクルされる。リサイクル物は蒸留塔40に直接リサイクルすることができるか、またはまず第1段階からの流出物45にリサイクルすることができ、この流出物は蒸留塔に送られる。この後のリサイクルを
図3に示す。第2の段階の塔底液のリサイクルでは、塔底液は非ゼオライト、貴金属触媒反応器50を通過する。反応器50は非ゼオライト貴金属、例えば(Pt-Pd)触媒を含み、約500°F(260℃)以下の温度で運転される。ある実施形態では、反応の温度範囲は約400°F~約500°F(204℃~260℃)である。HPNAが飽和し、最も効果的に転換されることが判明したのは、このような低い温度、500°F以下においてのみである。これは以下の例で実証される。
【0057】
塔底液が反応器50を通過すると、反応生成物は蒸留塔40に進み、最終的には第2の段階42に戻る。したがって、反応器50は、第2の段階リサイクルループ内にあるが、第2の段階42の下流にある。
【0058】
供給原料
本プロセスに従って、広範囲の石油及び化学原料を水素化処理することができる。適切な原料には、全石油原油及び還元石油原油、大気及び減圧残油、プロパン脱れき残油、例えばブライトストック、サイクル油、FCC塔底油、常圧軽油及び減圧軽油及びコーカー軽油を含む軽油、生バージン留分を含む軽質から重質留分、水素化分解物、水素化処理油、脱ロウ油、スラックワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ラフィネート、ナフサ、並びにこれらの材料の混合物が挙げられる。典型的な軽質原料には、約175℃(約350°F)~約375℃(約750°F)で沸騰する留分画分が含まれるであろう。このタイプの原料を使用すると、低硫黄ガソリン混合原料として使用できるかなりの量の水素化分解ナフサが生成される。典型的なより重質の原料には、例えば、最高約593℃(約1100°F)まで沸騰し、通常は約350℃~約500℃(約660°F~約935°F)の範囲にある減圧軽油が含まれ、この場合、生成されるディーゼル燃料の割合はそれに応じて大きくなる。
【0059】
一実施形態では、プロセスは、一般に高レベルの硫黄及び窒素を含む供給原料を最初の水素化処理反応段階に導き、原料中の相当量の硫黄及び窒素を無機形態に転換することによって操作され、この工程における主な目的は、原料の窒素含有量を減らすことにある。水素化処理工程は、水素及び水素化処理触媒の存在下、1つまたは複数の反応ゾーン(触媒床)で行われる。使用される条件は、原料の特性に応じて水素化脱硫及び/または脱窒素に適している。次いで、生成物流は水素化分解段階に送られ、そこで沸点範囲の転換が行われる。本二段階システムでは、第1の水素化転換段階からの液体炭化水素の流れは、水素処理ガス及び硫化水素及びアンモニアを含む他の水素化処理/水素化分解反応生成物とともに、好ましくは蒸留塔などの分離器に送られ、そこで水素、ライトエンド、無機窒素及び硫化水素が水素化分解された液体生成物流から除去される。リサイクル水素ガスは洗浄してアンモニアを除去することができ、また、リサイクル水素の純度を向上させて生成物の硫黄レベルを低減するために、アミンスクラブにかけて硫化水素を除去することができる。第2の段階で水素化分解反応が完了する。バルク多金属触媒などの水素化脱硫触媒の床を、第2の段階の底部に設けることができる。
【0060】
水素化処理触媒
第1の段階で使用される従来の水素化処理触媒は、任意の適切な触媒であり得る。本発明で使用するための典型的な従来の水素化処理触媒には、比較的表面積の大きい担体材料、好ましくはアルミナ上の、少なくとも1つの第VIII族金属、好ましくはFe、CoまたはNi、より好ましくはCo及び/またはNi、最も好ましくはCo;及び、少なくとも1つのVIB族金属、好ましくはMoまたはW、より好ましくはMoからなる触媒が挙げられる。他の適切な水素化脱硫触媒担体としては、ゼオライト、非晶質シリカ-アルミナ、及びチタニア-アルミナが挙げられる。好ましくは貴金属がPd及びPtから選択される場合は、貴金属触媒も使用することができる。2種類以上の水素化脱硫触媒を同じ反応容器内の異なる床で使用することができる。第VIII族金属は、典型的には、約2~約20重量%の範囲の量で存在し、好ましくは約4~約12重量%である。第VIB族金属は、典型的には、約5~約50重量%、好ましくは約10~約40重量%、より好ましくは約20~約30重量%の範囲の量で存在する。すべての金属の重量パーセントは担体上にある(担体の重量に基づくパーセント)。
【0061】
水素化分解触媒
第2の段階の水素化分解反応ゾーン、すなわち水素化分解段階で使用できる従来の卑金属水素化分解触媒の例としては、ニッケル、ニッケル-コバルト-モリブデン、コバルト-モリブデン、ニッケル-タングステン及び/またはニッケル-モリブデンが挙げられ、後者の2つが好ましい。金属触媒に使用され得る多孔質担体材料は、アルミナ、シリカ、アルミナ-シリカ、珪藻土、珪藻土、マグネシア、またはジルコニアなどの耐火性酸化物材料を含み、アルミナ、シリカ、アルミナ-シリカが好ましく、最も一般的である。ゼオライト担体、特にUSYなどの大きな細孔のフォージャサイトも使用できる。
【0062】
多数の水素化分解触媒がさまざまな商業供給業者から入手可能であり、原料及び製品の要件に応じて使用され得、それらの機能は経験的に決定され得る。水素化分解触媒の選択は重要ではない。従来の水素化分解触媒を含め、選択された操作条件で所望の水素化転換機能を有する任意の触媒を使用することができる。
【0063】
以下の例(実施例)は本発明のプロセスを例示するものであり、限定するものではない。
【0064】
例
例1
第2の段階リサイクルループでのHPNA制御に非ゼオライトPt-Pd貴金属触媒を使用する概念を説明するために、第2の段階反応器に装填された卑金属触媒を有する二段階水素化分解装置から収集された第2の段階原料をテスト原料として使用した。HPLC-UVで定量分析できる3つの重質多核芳香族種(メチルベンゾペリレンを含むベンゾペリレン、メチルコロネンを含むコロネン、及びオバレン)が、本試験でフォーカスされるHPNAである。それらの構造を
図7に示す。
【0065】
二段階水素化分解装置からの第2の段階原料のHPNA含有量を、原料Aとして以下の表に列挙する。追加のコロネンをAに添加して、試験用のコロネンスパイク原料B(コロネン88重量ppm)を調製した。そのHPNA含有量も、以下の表に原料Bとして記載している。
【表2】
【0066】
ベンチスケールユニット試験を、第2の段階原料A及びコロネンをスパイクした第2の段階原料Bを使用して、前述した非ゼオライトPt-Pd貴金属触媒NZでのHPNA転換を検証するように設計した。プロセス条件:全圧2300psig、1h-1LHSV、油に対して3000H2、C.A.T.=400~675°F。異なるC.A.T.で収集した液体生成物全体をHPLC-UVによるHPNA分析に供し、非ゼオライト貴金属触媒で原料を処理した後の未転換のHPNAを定量した。
【0067】
【0068】
第2の段階の原料Aでは、C.A.T.が400°F(204℃)~500°F(260℃)のときに、原料中のすべてのHPNA(ベンゾペリレン、メチルベンゾペリレン、コロネン、メチルコロネン、オバレン)が飽和し、転換された。C.A.T.を500°F超まで上昇させると、ベンゾペリレン及びメチルベンゾペリレンは転換されたが、一部のコロネン及びメチルコロネンは転換されず、液体生成物全体に残された。C.A.T.を650°F超までさらに上昇させると、原料中のすべてのHPNAはまったく転換されなかった。第2の段階の原料中のHPNA(ベンゾペリレン、メチルベンゾペリレン、コロネン、メチルコロネン、オバレン)を飽和させて転換させるには、非ゼオライト触媒を用いた反応器の反応を500°F未満、例えば400°F~500°Fで操作する必要がある。
【0069】
コロネンをスパイクした第2の段階原料Bを用いた試験結果を
図9に示す。
【0070】
コロネンをスパイクした第2の段階原料Bでは、C.A.T.が400°F~500°Fにあるとき、原料中の他のHPNA(ベンゾペリレン、メチルベンゾペリレン、メチルコロネン、オバレン)を含むすべてのスパイクされたコロネンが飽和して転換された。C.A.T.を550°Fまで上昇させると、液体生成物全体に少量の未転換のコロネン(約2重量ppm)が見つかったが、スパイクされたコロネンの大部分は転換された。C.A.T.をさらに600°F及び625°Fまで増加させるにつれて、コロネン転換率は減少し続けた。C.A.T.が650°Fを超えると、コロネンの転換はほとんど観察されなかった。さらに、原料中の他のHPNAも高温では転換されなかった。この結果は、第2の段階原料Aの試験と一致している。HPNA(ベンゾペリレン、メチルベンゾペリレン、コロネン、メチルコロネン、オバレン)を効果的に転換させるには、反応器の反応を500°F未満、好ましくは400°F~500°Fで操作する必要がある。
【0071】
例2
非ゼオライト、Pt-Pd触媒上でのスパイクされたコロネン(88重量ppm)の転換に対するLHSVの影響を研究するために、別の試験を行った。LHSVは1から2、3と増加させ、最終的には6h
-1に増加させた。
図10のプロットはその結果を示す。
【0072】
LHSVが1h-1~6h-1に増加した場合でも、C.A.T.が500°F未満である限り、原料中のスパイクされたコロネン(88重量ppm)はすべて依然として転換することができた。この結果は、第2の段階リサイクルループに貴金属触媒を装填した小型反応器が、適切な温度(<500°F)で操作された場合にHPNAの制御に効果的であり得ることを実証した。
【0073】
例3
非ゼオライト貴金属触媒NZ上でのスパイクされたコロネン(88重量ppm)の転換に対する操作圧力の影響も試験した。2300psig及び1500psigの2つの操作圧力を加えた。
【0074】
C.A.T.が500~600°Fではあったが、1500psigという低圧ではコロネン転換率が低下した。C.A.T.が500°F未満の場合、スパイクされたコロネンはすべて1500psigで転換することができた。結果を
図11に示す。この結果により、第2の段階リサイクルループで触媒NZを使用したHPNA制御の圧力の広い操作ウィンドウを提供する。
【0075】
本開示で使用される「含む(comprises)」または「含む(comprising)」という用語は、挙げられた要素を含めるが、他の挙げられていない要素を必ずしも除外するわけではないことを意味する、オープンエンドの移行句を意図している。「本質的にからなる(consists essentially of)」または「本質的にからなる(consisting essentially of)」という語句は、組成物にとって本質的に重要な他の要素を排除することを意味することを意図している。「からなる(consisting of)」または「からなる(consists of)」という語句は、ほんの微量の不純物を除いて、列挙された要素以外のすべての除外を意味する移行句を意図している。
【0076】
本明細書の教示及び例に照らして、本発明の多くの変形が可能である。したがって、以下の特許請求の範囲内で、本発明は、本明細書に具体的に記載または例示されたとおり以外にも実施され得る旨を理解されたい。
【国際調査報告】