(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ガソリンへのバイオマスの変換
(51)【国際特許分類】
C10G 3/00 20060101AFI20240118BHJP
C10G 11/18 20060101ALI20240118BHJP
C10G 45/08 20060101ALI20240118BHJP
C10G 45/10 20060101ALI20240118BHJP
C10L 1/06 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C10G3/00 Z
C10G11/18
C10G45/08 Z
C10G45/10 Z
C10L1/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540539
(86)(22)【出願日】2021-12-31
(85)【翻訳文提出日】2023-08-23
(86)【国際出願番号】 EP2021087898
(87)【国際公開番号】W WO2022144444
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523109013
【氏名又は名称】アバンディア バイオマス―トゥ―リキッズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ABUNDIA BIOMASS-TO-LIQUIDS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】アトキンス マーティン
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
本発明は、バイオマス供給原料から生物由来のガソリン燃料を形成するための方法及びシステム、並びにそれから形成される生物由来のガソリン燃料に関する。本発明はまた、生物由来の炭化水素供給原料から生物由来のガソリン燃料を形成するための方法及びシステム、並びにそれから形成される生物由来のガソリン燃料にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス供給原料からバイオガソリン燃料を形成するための方法であって、
a. バイオマス供給原料を用意するステップ;
b. 前記バイオマス供給原料の水分含有量を確実に、前記バイオマス供給原料の10重量%以下にするステップ;
c. 前記低水分バイオマス供給原料を、少なくとも950℃の温度で熱分解して、バイオ炭、炭化水素供給原料、水素、一酸化炭素、二酸化炭素及びメタンなどの非凝縮性軽ガス、並びに水の混合物を形成するステップ;
d. ステップc.で形成される前記混合物から前記炭化水素供給原料を分離するステップ;
e. 流動接触分解(FCC)プロセスを使用してステップd.の前記炭化水素供給原料を分解して、バイオオイルを生成するステップ;並びに
f. 前記得られたバイオオイルを分画して、生物由来のガソリン燃料画分を得るステップ
を含む、前記方法。
【請求項2】
バイオマス供給原料が、セルロース、ヘミセルロース又はリグニン系供給原料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
バイオマス供給原料が、非食用作物バイオマス供給原料であり、好ましくは非作物バイオマス供給原料が、ススキ属、スイッチグラス、庭の刈り草、わら(例えば、稲わら若しくは麦わら)、綿繰り機のごみ、都市固形廃棄物、ヤシの葉/空果房(EFB)、ヤシ種の殻、バガス、木材(例えば、ヒッコリー、マツ樹皮、バージニアマツ、レッドオーク、ホワイトオーク、トウヒ、ポプラ及びスギ)、牧乾草、メスキート、木粉、ナイロン、リント、竹、紙、トウモロコシの茎、又はそれらの組合せから選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
バイオマス供給原料が、ペレット、チップ、粒子又は粉末の形態であり、好ましくは前記ペレット、チップ、粒子又は粉末が、5μm~10cm、例えば5μm~25mm、好ましくは50μm~18mm、より好ましくは100μm~10mmの直径を有する、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ペレット、チップ、粒子又は粉末が、少なくとも1mm、例えば1mm~25mm、1mm~18mm、又は1mm~10mmの直径を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
バイオマス供給原料の初期水分含有量が、前記バイオマス供給原料の最大50重量%、例えば、前記バイオマス供給原料の最大45重量%、又は例えば前記バイオマス供給原料の最大30重量%である、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
バイオマス供給原料の水分含有量が、前記バイオマス供給原料の7重量%以下、例えば5重量%以下に低減される、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
バイオマス原料の水分含有量を確実に、前記バイオマス供給原料の10重量%以下にするステップが、前記バイオマス供給原料の前記水分含有量を低減することを含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
バイオマス供給原料の水分含有量が、真空オーブン、回転乾燥機、フラッシュ乾燥機、又は熱交換機、例えば連続ベルト乾燥機の使用によって低減され、好ましくは前記バイオマス供給原料の前記水分含有量が、間接加熱の使用により、例えば間接加熱ベルト乾燥器、間接加熱流動層又は間接加熱接触回転スチームチューブ乾燥機を使用することによって、低減される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
低水分バイオマス供給原料が、少なくとも1000℃の温度、より好ましくは少なくとも1100℃の温度で熱分解される、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
対流加熱、マイクロ波加熱、電気加熱又は超臨界加熱によって、熱分解ステップに熱がもたらされる、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
熱源が、マイクロ波支援加熱、加熱ジャケット、固体熱担体、管状炉又は電気加熱器を含み、好ましくは加熱源が管状炉である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
熱源が、反応器の内部に配置され、好ましくは前記熱源が1又は2つ以上の電気スパイラル加熱器、例えば複数の電気スパイラル加熱器を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
低水分バイオマスが、大気圧で熱分解される、又は低水分バイオマスが、850~1000Pa、好ましくは900~950Paの圧力下で熱分解され、任意に、形成される熱分解ガスが蒸留により分離される、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
低水分バイオマス供給原料が、10秒~2時間、好ましくは30秒~1時間、より好ましくは60秒~30分間、例えば100秒~10分間の時間、熱分解される、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
熱分解反応器が、低水分バイオマスが形成される任意の熱分解ガスに対して向流方向に運ばれるように配置構成され、任意に、熱分解ステップの結果として形成されるバイオ炭が、前記熱分解ガスとは別に熱分解反応器を離れる、請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
続いて、熱分解ガスが、例えばベンチュリの使用により冷却されて、炭化水素原料供給生成物が凝縮される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ステップd.が、炭化水素供給原料生成物からバイオ炭を少なくとも部分的に分離するステップを含み、好ましくはバイオ炭が、ろ過(例えば、セラミックフィルターの使用による)、遠心分離、又はサイクロン若しくは重力分離によって少なくとも部分的に分離される;及び/あるいは
ステップd.が、炭化水素供給原料生成物から水を少なくとも部分的に分離するステップを含み、好ましくは少なくとも部分的に分離された前記水が、有機夾雑物をさらに含み、より好ましくは前記炭化水素原料生成物から少なくとも部分的に分離された前記水が木酢であり、さらにより好ましくは前記水が、重力油分離、遠心分離、サイクロン又はマイクロバブル分離によって、前記炭化水素原料生成物から少なくとも部分的に分離される;及び/あるいは
ステップd.が、炭化水素供給原料生成物から非凝縮性軽ガスを少なくとも部分的に分離するステップを含み、好ましくは、前記非凝縮性軽ガスが、フラッシュ蒸留又は分留の使用によって、前記炭化水素原料生成物から少なくとも部分的に分離される、
請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
ステップc.において、分離された非凝縮性軽ガスがリサイクルされ、任意に、低水分バイオマス供給原料と組み合わせられる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
非凝縮性軽ガス中に存在する一酸化炭素が、水性ガスシフト反応においてスチームと接触させられて、二酸化炭素及び生物由来の水素ガスを生成し、好ましくは前記水性ガスシフト反応が、205℃~482℃の温度、より好ましくは205℃~260℃の温度で実施される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
水性ガスシフト反応が、シフト触媒をさらに含み、好ましくは前記シフト触媒が、銅-亜鉛-アルミニウム触媒又はクロム若しくは銅促進鉄系触媒から選択され、より好ましくは前記シフト触媒が銅-亜鉛-アルミニウム触媒である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
炭化水素供給原料生成物をろ過して、その中に含有された炭素、グラフェン、ポリ芳香族化合物及び/又はタールなどの夾雑物を少なくとも部分的に除去するステップをさらに含み、好ましくは、前記ろ過ステップが、より大きな夾雑物を除去するためのメンブレンフィルターの使用及び/又は例えば、ヌッチェフィルターを使用することによって、より小さな夾雑物を除去するための精密ろ過を含む、請求項1~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
ろ過ステップが、炭化水素供給原料生成物を活性炭素化合物及び/又は架橋有機炭化水素樹脂と接触させ、続いて、ろ過により前記活性炭素及び/又は架橋有機炭化水素樹脂化合物から前記炭化水素供給原料生成物を分離するステップを含む、請求項22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
活性炭素化合物及び/若しくは架橋有機炭化水素樹脂を、およそ大気圧で炭化水素供給原料生成物と接触させる;並びに/又は
活性炭素化合物及び/若しくは架橋有機炭化水素樹脂が、分離前に少なくとも15分間、好ましくは少なくとも20分間、より好ましくは少なくとも25分間、前記炭化水素供給原料生成物と接触させる;並びに/又は
炭化水素供給原料をろ過するステップが、1回実施される、又は1若しくは2回以上繰り返される、
請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ステップc.において、炭化水素供給原料から除去されたタールがリサイクルされ、場合により低水分バイオマス原料と組み合わせられる、請求項22~24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
生物由来の炭化水素供給原料からバイオガソリン燃料を形成するための方法であって、
i. 少なくとも0.1重量%の1又は2種以上のC
8化合物、少なくとも1重量%の1又は2種以上のC
10化合物、少なくとも5重量%の1又は2種以上のC
12化合物、少なくとも5重量%の1又は2種以上のC
16化合物、及び少なくとも30重量%の1又は2種以上のC
18化合物を含む生物由来の炭化水素供給原料を用意するステップ;
ii. 流動接触分解(FCC)プロセスを使用してステップi.の前記炭化水素供給原料を分解して、バイオオイルを生成するステップ;並びに
iii. 前記得られたバイオオイルを分画して、生物由来のガソリン燃料画分を得るステップ
を含む、前記方法。
【請求項27】
請求項1~25のいずれかに定義される通りのステップd.の炭化水素供給原料、又は請求項26に定義される通りのステップi.の炭化水素供給原料が、400℃~800℃の温度、好ましくは450℃~750℃の温度で、より好ましくは500℃~700℃の温度でFCCを受ける、請求項1~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
請求項1~25のいずれかに定義される通りのステップd.の炭化水素供給原料、又は請求項26に定義される通りのステップi.の炭化水素供給原料が、0.05MPa~10MPa、好ましくは0.1MPa~8MPa、より好ましくは0.5MPa~6MPaの圧力でFCCを受ける、請求項1~27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
炭化水素供給原料を、1:1~1:150、好ましくは1:2~1:100、より好ましくは1:5~1:50の重量比で流動分解触媒と接触させる、請求項1~28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
FCCプロセスが、流動高密度層反応器又はライザー反応器などの流動接触分解反応器において実施され、好ましくは前記FCC反応器がライザー反応器であり、より好ましくは前記ライザー反応器が、内部ライザー反応器又は外部ライザー反応器から選択される、請求項1~29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
請求項1~25のいずれかに定義される通りのステップd.の炭化水素供給原料、又は請求項26に定義される通りのステップi.の炭化水素供給原料、及び流動分解触媒が、FCC反応器のベース又はその近くの入口において供給され、形成されるバイオオイル及び失活触媒が、前記FCC反応器の上部又はその近くの出口から抽出される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
請求項1~25のいずれかに定義される通りのステップd.の炭化水素供給原料、又は請求項26に定義される通りのステップi.の炭化水素供給原料が、FCC反応器に入る前又は入る時に霧化され、好ましくは前記炭化水素供給原料が、10μm~60μmの液滴径、より好ましくは20μm~50μmの液滴径まで霧化される、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
リフトガスが、反応器のベース又はその近くの入口を通してFCC反応器に供給され、好ましくは、前記リフトガスが、スチーム、窒素、又は気化した油から選択される、請求項30~32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
請求項1~25のいずれかに定義される通りのステップd.の炭化水素供給原料、又は請求項26に定義される通りのステップi.の炭化水素供給原料が、0.5秒~15秒、好ましくは1秒~10秒、より好ましくは2秒~5秒の時間、FCC反応器中で流動分解触媒と接触する、請求項30~33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
流動分解触媒が、粒子又は粉末の形態であり、好ましくは、前記流動分解触媒が、微粉末の形態である、請求項1~34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
粒子又は粉末が、10μm~300μm、好ましくは15μm~200μmの直径、より好ましくは20μm~150μmの直径を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
流動分解触媒が、ゼオライト若しくは高活性結晶質アルミナケイ酸塩を含み、任意に、アモルファスバインダー化合物及び/若しくはフィラーをさらに含み、好ましくは前記アモルファスバインダー化合物が、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア及び酸化マグネシウム、若しくはそれらの組合せから選択され、並びに/又は前記フィラーが、粘土、例えば、カオリンから選択される、請求項1~36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
ゼオライトが大細孔ゼオライトであり、好ましくは前記大細孔ゼオライトが、FAU又はフォージャサイト、好ましくは合成フォージャサイト、例えば、ゼオライトY又はX、超安定ゼオライトY(USY)、希土類ゼオライトY(REY)及び希土類USY(REUSY)から選択され、より好ましくは前記大細孔ゼオライトが、超安定ゼオライトY(USY)から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
ゼオライトが大細孔ゼオライトであり、好ましくは天然大細孔ゼオライト、例えばグメリナイト、チャバザイト、ダチアルダイト、クリノプチロライト、フォージャサイト、ヒューランダイト、アナルサイト、レビナイト、エリオナイト、ソーダライト、カンクリナイト、ネフェリン、ラズライト、スコレサイト、ナトロライト、オフレタイト、メソライト、モルデナイト、ブリューステライト及びフェリエライト、並びに/又は合成大細孔ゼオライト、例えばゼオライトX、Y、A、L.ZK-4、ZK-5、B、E、F、H、J、M、Q、T、W、Z、アルファ及びベータ、オメガ、REY並びにUSYゼオライトから選択され、好ましくは前記大細孔ゼオライトが、好ましくはフォージャサイト、特にゼオライトY、USY及びREYから選択される、請求項37又は38に記載の方法。
【請求項40】
大細孔ゼオライトが、0.62nm~0.8nmの細孔直径を有する内部細孔を含む、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項41】
ゼオライトが中細孔ゼオライトであり、好ましくは前記中細孔ゼオライトが、MFI型ゼオライト、例えばZSM-5、MFS型ゼオライト、MEL型ゼオライト MTW型ゼオライト、例えばZSM-12、MTW型ゼオライト、EUO型ゼオライト、MTT型ゼオライト、HEU型ゼオライト、TON型ゼオライト、例えばシータ-1、及び/又はFER型ゼオライト、例えばフェリエライトである、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
中細孔ゼオライトが、ZSM-5、ZSM-12、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-34、ZSM-35、ZSM-38、ZSM-48、ZSM-50、シリカライト及びシリカライト2から選択され、好ましくは前記中細孔ゼオライトがZSM-5である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
中細孔ゼオライトが、0.45nm~0.62nmの直径を有する内部細孔を有する、請求項41又は42に記載の方法。
【請求項44】
ゼオライト触媒が、請求項38~40のいずれかに定義される通りの1又は2種以上の大細孔ゼオライト及び請求項41~43のいずれかに定義される通りの1又は2種以上の中細孔ゼオライトのブレンドを含む、請求項37~43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
大細孔ゼオライト対中細孔ゼオライトの重量比が、99:1~70:30、好ましくは98:2~85:15の範囲内である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
流動分解触媒が、向流フロー、並流フロー又はクロスフロー構成で請求項1~25のいずれかに定義される通りのステップd.の炭化水素供給原料、又は請求項26に定義される通りのステップi.の炭化水素供給原料と接触するように配置構成されている、請求項1~45のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
形成されるバイオオイルから失活した触媒を少なくとも部分的に除去するステップをさらに含み、好ましくは前記失活した触媒が、1若しくは2つ以上のサイクロン、及び/又は1若しくは2つ以上の渦管を使用して、前記バイオオイルから少なくとも部分的に除去される、請求項1~46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
形成されるバイオオイル、及び/又は生物由来のガソリン燃料画分から硫黄含有成分を少なくとも部分的に除去するステップをさらに含み、好ましくは前記硫黄除去ステップが、接触水素化脱硫ステップを含む、請求項1~47のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
触媒が、固定層又はトリクル層反応器の一部である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
触媒が、ニッケルモリブデン硫化物(NiMoS)、モリブデン、二硫化モリブデン(MoS
2)、コバルト/モリブデン、コバルトモリブデン硫化物(CoMoS)及び/又はニッケル/モリブデン系触媒から選択され、好ましくは前記触媒が、ニッケルモリブデン硫化物(NiMoS)系触媒から選択され、好ましくは前記触媒が、活性化炭素、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、分子篩及び/又はゼオライトから選択される支持体などによる担持触媒である、請求項48又は49に記載の方法。
【請求項51】
水素化脱硫ステップが、250℃~400℃、好ましくは300℃~350℃の温度で実施される;及び/又は水素化脱硫ステップが、4~6MPaG、好ましくは4.5~5.5MPaG、より好ましくは約5MPaGの反応圧力で実施される、請求項48~50のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
接触水素化脱硫プロセスが、例えば硫黄が低減されたバイオオイル及び/又はガソリン燃料画分を60~120℃、好ましくは80~100℃の温度に冷却し、任意に、6KPaA未満、好ましくは5KPaA未満、より好ましくは4KPaA未満の真空圧を印加することによって、前記硫黄が低減されたバイオオイル及び/又はガソリン燃料画分を脱気して、硫化水素ガスを除去するステップをさらに含む、請求項48~51のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
請求項1~25のいずれかに定義される通りのステップd.の分離された炭化水素供給原料、又は請求項26に定義される通りのステップi.の炭化水素供給原料を脱酸素するステップをさらに含む、請求項1~52のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
脱酸素ステップが、200℃~450℃、好ましくは250℃~400℃、より好ましくは280℃~350℃の温度で実施される水素化脱酸素ステップであり、及び/又は前記水素化脱酸素ステップが、1MP~30MPa、好ましくは5MPa~30MPaの圧力で実施される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
水素化脱酸素ステップが、触媒、例えば固定層又はトリクル層反応器の一部としての触媒をさらに含む、請求項53又は54に記載の方法。
【請求項56】
触媒が、周期表のVIII族及び/又はVIB族から選択される金属を含み、好ましくは前記触媒が、Ni、Cr、Mo、W、Co、Pt、Pd、Rh、Ru、Ir、Os、Cu、Fe、Zn、Ga、In、V、及びそれらの混合物から選択される金属を含み、より好ましくは前記触媒が、アルミナ、アモルファスシリカ-アルミナ、チタニア、シリカ、セリア、ジルコニア、炭素、炭化ケイ素、又はゼオライト、例えば、ゼオライトY、ゼオライトベータ、ZSM-5、ZSM-12、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-48、SAP0-11、SAP0-41及びフェリエライトから選択される支持体などによる担持触媒である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
形成されるバイオオイルを水素化処理するステップをさらに含む、請求項1~56のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
水素化処理ステップが、250℃~350℃、好ましくは270℃~330℃、より好ましくは280℃~320℃の温度で実施され;及び/又は前記水素化処理ステップが、4MPaG~6MPaG、好ましくは4.5MPaG~5.5MPaG、より好ましくは約5MPaGの反応圧力で実施される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
水素化処理プロセスが、触媒、例えば固定層又はトリクル層反応器の一部としての触媒をさらに含む、請求項57又は58に記載の方法。
【請求項60】
触媒が、周期表のIIIB族、IVB族、VB族、VIB族、VIIB族及びVIII族から選択される金属を含み、好ましくは前記触媒が、周期表のVIII族から選択される金属を含み、好ましくは前記触媒が、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir及び/又はPt、例えばNi、Co、Mo、W、Cu、Pd、Ru、Ptを含む触媒を含み、好ましくは前記触媒が、CoMo、NiMo又はNiから選択され、より好ましくは前記触媒が、活性化炭素、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、分子篩及び又はゼオライトから選択される支持体などによる担持触媒である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
凝縮及び/又はフラッシュ蒸留によってバイオオイルからLPGを少なくとも部分的に除去するステップをさらに含む、請求項1~60のいずれかに記載の方法。
【請求項62】
バイオオイルに6KPaA未満、好ましくは5KPaA未満、より好ましくは4KPaA未満の真空圧を印加して、残留するバイオオイルからLPGを分離するステップをさらに含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
分画ステップが、大気圧下で、30℃~220℃、好ましくは50℃~210℃、より好ましくは70℃~200℃のカットポイントを有する、バイオオイルの第1の分画カットを分離するステップを含み、分離された画分が、生物由来のガソリン燃料として回収される、請求項1~62のいずれかに記載の方法。
【請求項64】
大気圧下で、280℃~320℃、好ましくは290℃~310℃、より好ましくは約300℃のカットポイントを有する、ボイル油の第2の分画カットを実施するステップをさらに含み、分離された画分が、生物由来のジェット燃料として回収される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
バイオオイルの底流を生物由来のディーゼル燃料として回収するステップを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
少なくとも部分的に除去された触媒が再生を受け、
a. 失活した触媒をストリップして、触媒の表面に吸収されたバイオオイルを除去するステップ;及び
b. 前記触媒を再生するステップ
を含む、請求項47~65のいずれかに記載の方法。
【請求項67】
ストリップステップが、失活した触媒を、400℃~800℃、好ましくは400℃~700℃、より好ましくは450℃~650℃の温度でスチームを含むガスと接触させるステップを含み、好ましくは前記失活した触媒を、1~10分間、好ましくは2~8分間、より好ましくは3~6分間の時間、スチームを含むガスと接触させる、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
失活した触媒を、10:1~100:1の重量比で、好ましくは20:1~60:1の重量比でスチームを含むガスと接触させる、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
触媒が、ストリップされた触媒を550℃~950℃、好ましくは575℃~900℃、より好ましくは600℃~850℃の温度で酸素含有ガスと接触させることによって再生され、及び/又は前記再生ステップが、0.05MPa~1MPaの圧力、好ましくは0.1MPa~0.6MPaの圧力で実施される、請求項66~68のいずれかに記載の方法。
【請求項70】
再生された触媒が、FCCプロセスに少なくとも部分的にリサイクルされる、請求項66~69のいずれかに記載の方法。
【請求項71】
請求項1~62のいずれかに記載の方法によって形成される生物由来のLPG燃料;及び/又は
請求項1~63のいずれかに記載の方法によって形成される、好ましくは、バイオマス供給原料から完全に形成される生物由来のガソリン燃料、及び/又は
請求項1~64のいずれかに記載の方法によって形成される生物由来のジェット燃料、及び/又は
請求項1~65のいずれかに記載の方法によって形成される生物由来のディーゼル燃料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス供給原料から生物由来のガソリン燃料を形成するための方法及びシステム、並びにそれから形成される生物由来のガソリン燃料に関する。本発明はまた、生物由来の炭化水素原料から生物由来のガソリン燃料を形成するための方法及びシステム、並びにそれから形成される生物由来のガソリン燃料にも関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギーへの需要は、個人及び商業の立場の両方における技術への増大した依存、世界の人口拡大、並びに発展途上国においてなされる必要な技術的進歩に起因して、長年にわたって増加している。エネルギー資源は、伝統的に、化石燃料に主に由来しているが、しかし、そのような資源の供給は減退するため、エネルギーを供給する代替法を模索する研究にはより大きな意義がある。さらに、化石燃料を燃焼することの環境への影響に対する意識の高まり及び温室効果ガスの排出の削減に対する責任により、よりグリーンなエネルギー資源への需要が大幅に増加している。
【0003】
バイオ燃料は、化石燃料、特にディーゼル、ナフサ、ガソリン及びジェット燃料に対する有望でより環境にやさしい代替物であると考えられる。現在、そのような材料は、ブレンドすることにより生物由来の燃料で部分的にのみ置き換えられる。一部のバイオ燃料の形成に関連するコストに起因して、完全にバイオマス材料に由来する燃料を製造することは未だ商業的に実現可能ではない。生物由来の燃料を化石燃料と組み合わせる場合でさえ、一部の生物由来の燃料をブレンドすることが困難であることにより、処理時間が長くなり、コストが高くなりうる。
【0004】
バイオマスという用語は、トウモロコシ、ダイズ、亜麻仁、ナタネ、サトウキビ及びパーム油などの植物ベースの供給源から形成される材料に関して一般に使用されるが、しかし、この用語は、任意のごく最近生きている生体又はそれらの代謝副産物から形成される材料を包含する。バイオマス材料は、化石燃料と比較してより少量の窒素及び硫黄を含み、大気中CO2レベルの正味の増加をもたらさないため、経済的に実現可能な生物由来の燃料の形成は環境に有益であると考えられる。
【0005】
ディーゼル及びガソリンなどの高品質化石燃料は、原油を精製することによって形成される。生成されたガソリン燃料は、パラフィン(アルカン)、オレフィン(アルケン)及びシクロアルカン(ナフテン)を主に含む。典型的には、ガソリン製品の要求される化学、物理、経済及び在庫要件の全てを満たす燃料を生成するために、精製プロセスは、存在する硫黄の量を低減するための水素化処理プロセス、より大きな炭化水素化合物の存在を低減するための接触分解及び/又は水素化分解、並びに他の流れとの任意のブレンドを含む追加の精製/品質向上プロセスを含む。
【0006】
化石燃料ベースのガソリンは、炭化水素化合物の複合混合物から形成され、炭化水素化合物の大部分は、4~12の炭素数を含む。原油ベースのガソリン燃料と代替可能であると考えられるバイオ燃料に関して、それは、指令2009/30/ECに定義される通りの、これらの材料の標準化された化学及び物理特性を満たさなくてはならない。
【0007】
欧州では、より低い目標排出要件を満たし、かつ燃料効率を改善するために、ガソリンベースの燃料に関する標準要件がよりいっそう厳しくなりつつある。ガソリン燃料に関する直近の要件は、EURO VI(Euro 6dTEMP(2017年から)、Euro 6d(2020年から))によって定義される。カテゴリーVI無鉛ガソリン燃料の要件は"Worldwide Fuel Charter: Sixth Edition - Gasoline and Diesel Fuel"に定義されており、Euro 6グレード無鉛ガソリン燃料の標準要件の一部を以下の表1に示す。
【0008】
【0009】
任意のガソリン燃料(又はガソリン燃料を形成するのに使用される炭化水素供給原料)に関する特に重要な要件は、i)存在する硫黄の量、及びii)存在するジエン含有化合物の量である。炭化水素を含有する硫黄の燃焼は、硫黄酸化物の形成につながる。硫黄酸化物はエアロゾル及び粒子状物質(煤煙)の形成に寄与すると考えられ、これは、燃焼エンジンのフィルター及び構成部品において流動の低下又は詰まりを引き起こしうる。さらに、硫黄酸化物はタービンブレードの腐食を引き起こすことが公知であり、そのため、燃料中の高い硫黄含有量は非常に望ましくない。
【0010】
臭素数又は臭素指数は、材料中に存在する不飽和炭化水素基の量を推定するために使用されるパラメーターである。生物由来のガソリン燃料内に存在する不飽和炭化水素結合は、材料の物理特性及び性能に悪影響を及ぼしうる。不飽和炭素結合は、酸素と架橋又は反応してエポキシドを形成しうる。架橋により、炭化水素化合物は重合してガム又はワニスが形成し、これらのガム及びワニスは、燃料系又はエンジン内で堆積物を形成し、フィルター及び/又は燃料を内部燃焼エンジンに供給する管を詰まらせることがある。燃料流動の低下の結果、エンジン出力が低下し、エンジンが始動するのを妨げることさえある。EURO V及びEURO VIは、ガソリン燃料のオレフィン含有量が18%以下であることを必要とする。
【0011】
ガソリン燃料は周囲温度で可燃性が高いので、オクタン価は、燃焼エンジン内のそのような燃料のバイアビリティーを示すことができる。オクタン価は、標準的なスパーク点火内部燃焼エンジン内で圧縮される場合の着火に対する炭化水素の耐性の尺度である。オクタン価が増加するにつれて、炭化水素の「ノッキング」の可能性、すなわち、燃焼エンジン内の早すぎる着火に起因する爆発を引き起こす可能性が低下する。ガソリン燃料のオクタン価は、リサーチ法オクタン価(RON)及びモーター法オクタン価(MON)の平均を計算することによって決定される。RONは、研究試験条件(可変圧縮比で600rpm試験エンジンを使用する)下でガソリン燃料の性能を分析し、結果をiso-オクタン及びn-ヘプタンの混合物の結果と比較する(ASTM D2699に定義される通り)ことによって決定される。MONは、より激しい運転条件(ASTM D 2700に定義される通り、900rpmエンジンを使用する)下でガソリン燃料の性能を分析することによって決定される。ブタン及び芳香族などの添加剤が、ガソリン燃料のオクタン価を増加させるために使用できるが、しかし、そのような添加剤は、望ましくない環境影響をもたらす。例えば、ブタンは、蒸発により未燃炭化水素の損失を増加させることが公知であり、芳香族がエンジン清浄度を低下させ、エンジン堆積物を増加させることがある。芳香族添加剤の使用はまた、排気ガス中に存在する発癌性化合物、例えば、ベンゼン及びポリ芳香族化合物の量を増加させることがある。
【0012】
当技術分野において、ガソリン燃料の物理特性、例えば、オクタン価、腐食性及び蒸気圧、さらに、タービンエンジンにおける燃料の性能は、存在する異なる炭化水素化合物の分子量又は炭素数及び比の両方に関連することが十分理解されている。
【0013】
ガソリン燃料の目的に一致すると考えられる生物由来の燃料の場合、それは、上記の標準化要件を満たさなくてはならない。しかしながら、生物由来の油を生成する公知の方法は、典型的には、広範囲の炭化水素化合物を生成し、したがって、油を許容される仕様にするために、さらに大規模な費用のかかる精製ステップを必要とする。そのような方法は、化石燃料に対して経済的に競争力のある代替法を提供することができない。
【0014】
当技術分野内の研究は、これまで、例えば、i)バイオマスの分画、並びにセルロース及びヘミセルロース分画のエタノールへの発酵、又はii)完全バイオマスの分解によるガス化によりシンガス(syngas)を形成した後、続いて、メタノール若しくはフィッシャー・トロプシュ法に品質向上することを含む、バイオ燃料を形成する間接的方法に焦点が当てられてきた。
【0015】
現在、熱変換法が、バイオ燃料へのバイオマスの変換において最も有望な技術であると考えられている。熱化学変換は、熱分解、ガス化、液化及び超臨界流体抽出の使用を含む。特に、研究は、バイオ燃料を形成するための熱分解及びガス化に焦点が当てられてきた。
【0016】
ガス化は、バイオマス材料を、酸素又は空気の存在下、430℃超の温度に加熱して、二酸化炭素及び水素(合成ガス又はシンガスとも呼ばれる)を形成するステップを含む。次いで、シンガスは、触媒されたフィッシャー・トロプシュ合成を使用して、液体燃料に変換されうる。フィッシャー・トロプシュ反応は、通常、触媒を用い、加圧され、150~300℃で行われる。使用される触媒は、クリーンなシンガスを必要とするため、シンガスを清浄する追加ステップも必要である。
【0017】
バイオマス材料を含む典型的なガス化法は、以下の式1に示される通り、およそ1のH2:CO比を生成する:
C6H10O5+H2O=6CO+6H2 (式1)
【0018】
したがって、反応生成物は、バイオ燃料を形成するための後続のフィッシャー・トロプシュ合成に必要なH2に対するCO対の比(~2のH2:CO比)では形成されない。COに対するH2の比を増加させるために、以下の追加ステップが、通常、適用される:
・追加の水性ガスシフト反応が使用され;
・水素ガスが添加され;
・ガス化を使用して炭素が抽出され;
・増加した量のCO2が、過剰量のスチームを使用することによって生成される:C6H10O5+7H2O=6CO2+12H2。二酸化炭素は、炭素の添加により一酸化炭素に変換することができ、これは、スチームではなく二酸化炭素によるガス化と呼ばれる。
・未反応のCOは除去され、熱及び/又は電力を形成するために使用される。
【0019】
全体として、ガス化反応は、複数の反応ステップ及び追加の反応物質を必要とするため、この方式でバイオ燃料を生成する際のエネルギー効率は低い。さらに、ガス化及びフィッシャー・トロプシュ反応の組合せに必要な時間、エネルギー必要量、反応物質及び触媒の増加により、製造コストが大幅に増加する。
【0020】
熱変換プロセスの中では、熱分解法が、バイオマスを生物由来の油に変換する最も効率的な経路であると考えられる。熱分解法は、酸素の非存在下でバイオマス材料を急速に加熱することによって、バイオオイル、炭及び非凝縮性ガスを生成する。生成された生成物の比は、反応温度、反応圧力及び形成される熱分解蒸気の滞留時間に依存する。
【0021】
より低い反応温度及びより遅い加熱速度では、より大量のバイオ炭が形成され;より低い反応温度、より速い加熱速度及びより短い滞留時間を使用して、より大量の液体燃料が形成され;より高い反応温度、より遅い加熱速度及びより長い滞留時間では、燃料ガスが優先的に形成される。熱分解反応は、使用される反応条件に応じて3つの主要カテゴリーである従来の熱分解、高速熱分解及びフラッシュ熱分解に分けられる。
【0022】
従来の熱分解プロセスでは、加熱速度は低く維持され(およそ5~7℃/分)、バイオマスはおよそ275~675℃の温度まで加熱され、滞留時間は7~10分間である。加熱の増加がより遅いほど、典型的には、バイオオイル及びガスと比較して、より大量の炭が形成される。
【0023】
高速熱分解は、高い反応温度(575~975℃)、及び高い加熱速度(およそ300~550℃/分)、及び熱分解蒸気のより短い滞留時間(典型的には最大10秒間)の使用に続いて急速冷却を含む。高速熱分解法では、形成されるバイオオイルの相対量が増加する。
【0024】
フラッシュ熱分解は、不活性雰囲気、高加熱速度、高反応温度(典型的には、775℃超)及び非常に短い蒸気滞留時間(<1秒間)における急速脱揮発を含む。これらの限定された時間でバイオマス材料に熱を十分に伝達するために、バイオマス材料は、一般的に約1mmの直径を有する粒子形態で存在する必要がある。形成される反応生成物は、主にガス燃料である。
【0025】
しかしながら、熱分解プロセスにより生成されたバイオオイルは、多くの場合、水、並びに酸、アルコール、ケトン、アルデヒド、フェノール、エステル、糖、フラン及び炭化水素を含む種々の有機化合物の複合混合物のほか、大量のオリゴマーを含む。水、酸、アルデヒド及びオリゴマーの存在は、形成されるバイオオイルにおける不十分な燃料特性の原因になると考えられる。
【0026】
さらに、得られたバイオオイルは、300~400種の異なる酸素化化合物を含有し得、これは腐食性で、熱及び化学的に不安定で、石油燃料と非混和性でありうる。これらの酸素化化合物の存在によりまた、燃料の粘度が増加し、吸湿性が増加する。
【0027】
これらの問題に対処するため、水素化処理触媒、担持金属材料及び最近では遷移金属を使用した接触(水素化)脱酸素を含むいくつかの品質向上技術が提案されている。しかしながら、触媒失活(コークス化を介した)及び/又は不十分な生成物収率は、さらなる研究が必要であることを意味している。
【0028】
代替の品質向上技術は、乳化接触水素化、流動接触分解及び/又は接触エステル化を含む。しかしながら、これまでに公知の生物由来の炭化水素供給原料を生成する方法は、顕著な量の夾雑物及び/又は望ましくない成分を含む広範囲の炭化水素化合物をもたらすので、生物由来の炭化水素供給原料は、流体接触分解などの品質向上分解プロセスを受けるのに十分に安定でないことがあり、再重合して、そのような反応器システム内で流動を阻止又は低減しうる。必然的に、追加の精製ステップ及び追加の反応物質材料が必要なことから、運転コスト及び設備投資の両方の点でそのようなプロセスに関連する時間及びコストの両方が増加する。
【0029】
これまでに公知の方法を使用して生成される生物由来の炭化水素原料又は生物由来の燃料の不十分な品質に起因して、多くの場合、上で論じた化学、物理及び経済要件を満たすために、流動接触分解技術の前、又はあるいは形成される生物由来の燃料を化石燃料若しくはその画分とブレンドする前に炭化水素原料を化石燃料又はその画分とブレンドすることが必要である。一部の場合には、化石燃料又はその画分対生物由来の炭化水素フィード/生物由来の燃料の重量比は、現在の標準要件を満たす燃料を生成するために、最大99.9:0.1でありうる。
【0030】
したがって、当技術分野において、化石燃料ベースの材料の標準化された化学、物理及び性能特性の少なくとも一部を満たすことができる、生物由来のガソリン燃料を形成する、より簡潔で効率的な方法への必要性がなお存在している。特に、化石燃料から生成されるものに匹敵する、生物由来の燃料を生成する、より費用効果的な方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0031】
第1の実施形態では、本発明は、バイオマス供給原料からバイオガソリン燃料を形成するための方法であって、
a. バイオマス供給原料を用意するステップ;
b. バイオマス供給原料の水分含有量を確実に、バイオマス供給原料の10重量%以下にするステップ;
c. 低水分バイオマス供給原料を、少なくとも950℃の温度で熱分解して、バイオ炭、炭化水素供給原料、水素、一酸化炭素、二酸化炭素及びメタンなどの非凝縮性軽ガス、並びに水の混合物を形成するステップ;
d. ステップcで形成される混合物から炭化水素供給原料を分離するステップ;
e. 流動接触分解(FCC)プロセスを使用してステップd.の炭化水素供給原料を分解して、バイオオイルを生成するステップ;並びに
f. 得られたバイオオイルを分画して、生物由来のガソリン燃料画分を得るステップ
を含む、方法に関する。
【0032】
好ましくは、バイオマス供給原料は、セルロース、ヘミセルロース又はリグニン系原料を含む。
【0033】
トウモロコシ、サトウキビ及び植物油などの食用作物をバイオマスの供給源として使用することが可能であるものの、そのような出発材料の使用は、他の環境及び/又は人道的問題をもたらしうることが示唆されている。例えば、食用作物がバイオマス源として使用される場合、必要な追加の作物を栽培するためにより多くの土地を振り当てる必要があるか、又は現在栽培されている作物の一部をこの使用に転換しなくてはならず、さらなる森林伐採又は特定の食品のコストの増加につながる。したがって、本発明の好ましい実施形態では、バイオマス供給原料は、非作物バイオマス供給原料から選択される。
【0034】
特に、適切なバイオマス供給原料は、好ましくは、ススキ属、スイッチグラス、庭の刈り草、わら(例えば、稲わら若しくは麦わら)、綿繰り機のごみ、都市固形廃棄物、ヤシの葉/空果房(EFB、empty fruit bunches)、ヤシ種の殻、バガス、木材、例えば、ヒッコリー、マツ樹皮、バージニアマツ、レッドオーク、ホワイトオーク、トウヒ、ポプラ及びスギ、牧乾草、メスキート、木粉、ナイロン、リント、竹、紙、トウモロコシの茎、又はそれらの組合せから選択されてもよい。
【0035】
炭化水素供給原料又はバイオ燃料の燃焼の間、その中に含有される硫黄が酸素化されえ、さらに水と反応して、硫酸(H2SO4)を生成しうる。形成される硫酸は、燃焼エンジンの金属表面で凝縮し、腐食を引き起こしうる。したがって、バイオオイルの硫黄含有量を適切なレベルに低減するためにさらなる又は反復処理ステップが必要である。これは次に、実現可能なバイオ燃料を生成するための処理時間を増加させ、これらの材料の製造に関連するコストを増加させる。したがって、バイオマス供給原料は、低硫黄バイオマス供給原料から選択されうる。一般に、非作物バイオマス供給原料は、少量の硫黄を含有するが、しかし、特に好ましい低硫黄バイオマス原料には、ススキ属、牧草、及びわら、例えば、稲わら又は麦わらが含まれる。
【0036】
低硫黄バイオマス供給原料の使用により、得られる炭化水素供給原料が産業要件を満たすために脱硫処理を受ける必要がある範囲が減少し、一部の場合には、脱硫処理ステップの必要性は排除される。
【0037】
熱分解ステップの間、バイオマス材料を通した熱伝達の効率は、使用されるバイオマス材料の表面積及び容積に少なくとも部分的に依存することが見出された。したがって、好ましくは、バイオマス供給原料は、バイオマス材料を分解及び/又はその粒径を低減するために、例えば、チューブ式グラインダー、ミル、例えば、ハンマーミル、ナイフミル、スラリーミリングの使用により、摩砕され、又はチッパーの使用により必要な粒径にサイズ調整される。好ましくは、バイオマス原料は、ペレット、チップ、粒子又は粉末の形態で提供される。より好ましくは、ペレット、チップ、粒子又は粉末は、5μm~10cm、例えば、5μm~25mm、好ましくは50μm~18mm、より好ましくは100μm~10mmの直径を有する。これらのサイズは、効率的な熱伝達に関して特に有用であることが見出されている。本明細書において定義されるペレット、チップ、粒子及び粉末の直径は、材料の測定可能な最大幅に関する。
【0038】
高温熱分解反応の間に必要とされるものなどの高温において、より小さい粒子の存在により、粉塵爆発及び火災の機会が増加しうることも見出されている。しかしながら、約1mm未満の直径を有するバイオマスペレット、チップ、粒子又は粉末を少なくとも部分的に除去又はその形成を防止することによって、粉塵爆発又は火災の発生する可能性が大幅に減少することが見出された。したがって、バイオマス原料(一般に、ペレット、チップ、粒子又は粉末の形態)は、少なくとも1mm、例えば、1mm~25mm、1mm~18mm、又は1mm~10mmの直径を有することが好ましい。バイオマス供給原料は、表面水分を含んでもよい。好ましくは、そのような水分は、バイオマス供給原料を熱分解するステップの前に低減される。バイオマス供給原料中に存在する水分の量は、バイオマス供給材料の種類、使用前の材料の輸送及び保存条件に依存して様々である。例えば、新鮮な木材は、およそ50~60%の水分を含有しうる。バイオマス原料中の増加した量の水分の存在により、バイオマス材料自体は加熱されずに水分の蒸発により熱が失われ、それによって、バイオマス材料が加熱される温度が低下し、又はバイオマス材料を必要な温度に加熱する時間が増加するため、本発明の熱分解ステップの効率が低下することが見出された。これは次に、炭化水素供給原料生成物中で形成される熱分解生成物の所望の比に影響する。
【0039】
例として、バイオマス供給原料の初期水分含有量は、バイオマス供給原料の10重量%~50重量%、例えば、バイオマス供給原料の15重量%~45重量%、又は例えば、バイオマス供給原料の20重量%~30重量%であってもよい。
【0040】
好ましくは、バイオマス供給原料の水分含有量は、バイオマス原料の7重量%以下、例えば5重量%以下に低減される。
【0041】
任意に、バイオマス供給原料の水分は、バイオマス原料が摩砕される前に、少なくとも部分的に低減される。
【0042】
あるいは、バイオマス供給原料は、例えば、形成プロセスが「湿式」プロセスである場合、バイオマス供給原料の水分含有量がバイオマス供給原料の10重量%以下に少なくとも部分的に低減される前にペレット、チップ、粒子若しくは粉末に形成されてもよく、又はバイオマス供給原料からの少なくとも一部の水分の除去は、バイオマス供給原材料の表面積を増加させることによって、より効率的に実現されてもよい。
【0043】
存在する水分の量は、真空オーブン、回転乾燥機、フラッシュ乾燥機、又は熱交換機、例えば、連続ベルト乾燥機の使用により低減されてもよい。好ましくは、水分は、間接加熱法、例えば、間接加熱ベルト乾燥機、間接加熱流動層、又は間接加熱接触回転スチームチューブ乾燥機の使用により低減される。
【0044】
間接加熱法は、熱を、空気又は酸素の非存在下で伝達でき、それによって火災及び/又は粉塵爆発の発生を軽減及び/又は低減するため、プロセス全体の安全性を改善することが見出されている。さらに、そのような間接加熱法は、より正確な温度制御をもたらし、これにより次に、炭化水素供給原料生成物中の形成される熱分解生成物の比をより良好に制御することが可能になることが見出されている。好ましいプロセスにおいて、間接加熱法は、間接加熱接触回転スチームチューブ乾燥機を含み、ここでは、水蒸気が、熱搬送媒体として使用される。
【0045】
低水分バイオマス供給原料は、少なくとも1000℃、より好ましくは少なくとも1100℃、例えば、1120℃、1150℃、又は1200℃で熱分解されてもよい。
【0046】
一般に、バイオマス供給原料は、対流加熱、マイクロ波加熱、電気加熱、又は超臨界加熱によって加熱されてもよい。例として、バイオマス供給原料は、マイクロ波支援加熱、加熱ジャケット、固体熱担体、管状炉又は電気加熱器の使用により加熱されてもよい。好ましくは、加熱源は管状炉である。管状炉は、任意の適切な材料、例えば、ニッケル金属合金から形成されてもよい。
【0047】
上述の通り、熱分解チャンバーの間接加熱の使用は、粉塵爆発又は火災が発生する可能性を減少及び/又は軽減するため、好ましい。
【0048】
あるいは又はさらに、加熱源が、低水分バイオマス供給原料を直接加熱するために熱分解反応器内に配置される。加熱源は、電気加熱源、例えば、電気スパイラル加熱器から選択されてもよい。熱分解反応器内で2又は3つ以上の電気スパイラル加熱器を使用することが有益であることが見出された。複数の加熱器の使用により、反応器全体にわたって熱のより均質な分布をもたらし、より均一な反応温度を確実に低水分バイオマス材料に適用することができる。
【0049】
ステップb.からのバイオマス材料が、連続して熱分解反応器を通して輸送されることが有益であることが見出された。例えば、バイオマス材料は、コンベヤ、例えば、スクリューコンベヤ又は回転ベルトを使用して熱分解反応器を通して輸送されてもよい。任意に、2又は3つ以上のコンベヤが、熱分解反応器を通してバイオマス材料を連続して輸送するために使用されうる。スクリューコンベヤは、熱分解反応器を通してバイオマス材料を輸送する速度、及びしたがって、熱分解反応器における滞留時間を、スクリューコンベヤのピッチを変更することによって制御できるため、特に有用であることが見出された。
【0050】
あるいは又はさらに、反応器内でのバイオマス材料の滞留時間は、バイオマス材料が運ばれる熱分解反応器の幅又は直径を変更することによって変更することができる。
【0051】
バイオマス材料は、大気圧(本質的に大気条件を含む)下で熱分解されてもよい。好ましくは、バイオマス材料は、望ましくない酸素化化合物の形成を回避するために、酸素枯渇環境で熱分解され、より好ましくは、バイオマス材料は、不活性雰囲気中で熱分解され、例えば、反応器は、熱分解ステップの前に、窒素又はアルゴンなどの不活性ガスでパージされる。バイオマス材料は、大気圧(本質的に大気条件を含む)下で熱分解されてもよい。あるいは、バイオマス材料は、低圧下、例えば、850~1,000Pa、好ましくは、900~950Paで熱分解されてもよい。得られた熱分解ガスは、続いて、当技術分野内で公知のいずれかの方法、例えば、凝縮及び蒸留によって分離されうる。熱分解ステップ、並びに後続の形成される熱分解ガスの凝縮及び蒸留の間の、850~1,000Paなどの圧力の印加は、バイオ炭などの熱分解反応の間に形成される任意の残留固体から熱分解ガスを分離するのに有益であることが見出された。したがって、一部の実施形態では、必要な真空圧を印加する及び/又は形成される熱分解ガスを除去するための手段が提供される。
【0052】
特定の例では、バイオマス材料は、形成される任意の熱分解ガスに対して向流方向に運ばれ、熱分解ステップの結果として形成されるバイオ炭などの任意の固体材料は、形成される熱分解ガスとは別に除去される。熱い熱分解ガスがバイオマス材料を通過すると、熱が熱分解ガスからバイオマス材料に伝達され、バイオマス材料の少なくとも少量の低温熱分解が生じる。
【0053】
さらに、熱分解ガスは、塵として少なくとも部分的に清浄され、ガス中に存在する重炭素は、バイオマス材料によって捕捉される。
【0054】
熱分解ステップが低圧条件下で実施される場合、熱分解反応器を通して運ばれる、バイオマス材料に対して向流方向の熱分解ガスの流動、及び任意に、熱分解ガスの除去を補助するために真空が適用されてもよい。
【0055】
一部の例では、ステップb.からのバイオマス供給原料は、10秒~2時間、好ましくは30秒~1時間、より好ましくは60秒~30分間、例えば、100秒~10分間の時間、熱分解される。
【0056】
本発明によると、ステップd.は、炭化水素供給原料生成物からバイオ炭を分離するステップをさらに含んでもよい。一部の例では、炭化水素原料生成物からのバイオ炭の分離は、熱分解反応器中で行われる。他の例では、形成される熱分解ガスは、例えば、ベンチュリの使用により、まず冷却されて、炭化水素供給原料生成物が凝縮され、続いてバイオ炭が、形成される液体炭化水素供給原料生成物及び非凝縮性ガスから分離される。
【0057】
熱分解ステップにおいて形成されるバイオ炭の量は、ステップb.において形成されるバイオマス原料の5重量%~20重量%であってもよく、好ましくは、形成されるバイオ炭の量は、ステップb.において形成されるバイオマス供給原料の10~15重量%である。
【0058】
炭化水素供給原料生成物は、ろ過法(例えば、セラミックフィルターの使用)、遠心分離、サイクロン又は重力分離を使用して、形成されるバイオ炭から少なくとも部分的に分離されてもよい。
【0059】
本発明によると、ステップd.は、炭化水素供給原料生成物から水を少なくとも部分的に分離するステップを含んでもよく、又はさらに含む。炭化水素供給原料から少なくとも部分的に分離された水は、木酢などの有機夾雑物をさらに含むことが見出されている。一般に、木酢は、炭化水素供給原料生成物から少なくとも部分的に分離された水中に10重量%~30重量%の水性木酢の量で存在し、好ましくは、木酢は、15重量%~28重量%の水性木酢の量で存在する。
【0060】
水性木酢(pyrolignous acid)(木酢液(wood vinegar)とも呼ばれる)は、主に水を含むが、酢酸、アセトン及びメタノールなどの有機化合物も含有する。木酢液は、抗菌剤及び殺虫剤など、農業目的で使用されることが公知である。さらに、木酢液は、土壌品質を改善する肥料として使用でき、植物の根、茎、塊茎 花及び果実の成長を加速させうる。木酢液はまた、医療適用されることも公知であり、例えば、抗菌特性を有する木酢液において、コレステロールに対する正の効果を提供でき、消化を促進し、呑酸、胸やけ及び吐き気を緩和するのを補助しうる。したがって、本方法にはそのような生成物流を単離することができるというさらなる利益がある。
【0061】
水は、重力油分離、遠心分離、サイクロン又はマイクロバブル分離によって炭化水素供給原料から少なくとも部分的に分離されてもよい。
【0062】
本発明によると、ステップd.は、炭化水素供給原料生成物から非凝縮性軽ガスを少なくとも部分的に分離することを含んでもよく、又はさらに含む。非凝縮性軽ガスは、当技術分野内で公知のいずれかの方法により、例えば、フラッシュ蒸留又は分留によって、炭化水素供給原料生成物から分離されてもよい。
【0063】
一般に、非凝縮性軽ガスは、少なくとも部分的にリサイクルされてもよい。好ましくは、炭化水素供給原料生成物から分離された非凝縮性軽ガスは、熱分解(ステップc.)に供されているバイオマス供給原料と組み合わせられる。
【0064】
非凝縮性軽ガスが一酸化炭素を含む場合、その中に含有される一酸化炭素は、少なくとも部分的に分離され、水性ガスシフト(WGS)反応においてさらに処理されうる。特に、熱分解ステップにおいて生成される一酸化炭素は、スチームと組み合わせて、二酸化炭素及び水素ガス燃料を生成することができる。WSG反応において使用される供給原料はバイオマス供給原料に由来することから、生成される水素ガスは、グリーンな生物由来の水素ガスである。好ましくは、一酸化炭素は、205℃~482℃の温度でスチームと接触させられる。WGS反応は発熱性であるので、一酸化炭素は、より好ましくは、生物由来の水素ガスの収率を増加させるために、205℃~260℃の温度でスチームと接触させられる。
【0065】
シフト触媒はまた、WGS反応において存在してもよく、ここで、そのシフト触媒は、銅-亜鉛-アルミニウム触媒又はクロム若しくは銅促進鉄系触媒から選択されてもよい。好ましくは、触媒は、銅-亜鉛-アルミニウム触媒から選択される。一酸化炭素、スチーム及び選択したシフト触媒の間の接触を増加させ、したがって、WGS反応の効率を改善するために、触媒は、固定層又はトリクル層反応器中に含有されてもよい。
【0066】
WGS反応により生成される生物由来の水素ガスは、少なくとも部分的にリサイクルされて、下流のさらなる処理又は「品質向上」ステップにおいて使用されてもよい。例えば、生成される生物由来の水素ガスは、脱硫、脱酸素及び/又は水素化処理ステップなどの下流処理ステップにおいて少なくとも部分的に使用できる。
【0067】
炭化水素供給原料生成物をさらに処理して、その中に含有された炭素、グラフェン、ポリ芳香族化合物及びタールなどの夾雑物を少なくとも部分的に除去することが有益でありうる。バイオガソリン中の不純物の存在は、そのエンジン性能に大幅に影響するだけでなく、その取り扱い及び保存を複雑にもする。メンブレンフィルターなどのフィルターが、より大量の夾雑物を除去するために使用されてもよい。
【0068】
さらに又はあるいは、精密ろ過が、炭化水素供給原料中に懸濁しうる少量の夾雑物を除去するために使用されてもよい。例として、ヌッチェフィルターが、少量の夾雑物を除去するために使用されてもよい。
【0069】
炭化水素供給原料をろ過するステップは、存在する夾雑物を所望のレベルに低減するために(例えば、炭化水素供給原料がわら色になるまで)、2又は3回以上繰り返されてもよい。
【0070】
あるいは又はさらに、多環式芳香族化合物などの夾雑物は、炭化水素供給原料を活性炭素化合物及び/又は架橋有機炭化水素樹脂と接触させることによって除去されてもよい。続いて、炭化水素供給原料は、ろ過などの任意の適切な手段により、活性炭素及び/又は架橋有機樹脂から分離されてもよい。特に、活性化炭素及び/又は架橋有機炭化水素樹脂は、吸着剤及び炭化水素供給原料の間の接触を増加させ、それによって、所望のレベルの夾雑物除去を実現するために必要な時間を低減するために、粒子又はペレット形態であってもよい。
【0071】
しかしながら、活性化炭素は、再生するコストが高くなりうる。代替として、例えば、本方法において形成されるバイオ炭は、炭化水素フィードから夾雑物を除去するための活性化炭素に対する、より費用効果的で環境にやさしい代替物として使用できる。
【0072】
上で論じた通り、架橋有機炭化水素樹脂はまた、炭化水素原料生成物から夾雑物を除去するために使用されてもよい。特に、架橋有機炭化水素樹脂は、疎水性相互作用(すなわち、ファンデルワールス)又は親水性相互作用(例えば、樹脂材料の表面に存在するカルボニル官能基などの官能基での水素結合)により有機系夾雑物を除去するのに有用である。樹脂吸着材料の疎水性/親水性は、選択した樹脂材料の化学組成及び構造に依存する。したがって、特定の吸着樹脂は、所望の夾雑物を除去するように調整されうる。バイオ燃料中に存在する夾雑物を除去するために一般に使用される架橋有機炭化水素樹脂には、ポリスルホン、ポリアミド、ポリカーボネート、再生セルロース、芳香族ポリスチレン又はポリジビニルベンゼン、及び脂肪族メタクリレートが含まれる。特に、芳香族ポリスチレン又はポリジビニルベンゼン系樹脂材料は、炭化水素フィードからフェノールなどの芳香族分子を除去するために使用できる。
【0073】
さらに、夾雑物材料の吸着は、架橋有機ポリマー樹脂の表面積及び多孔度を増加させることによって増加しうるため、好ましい実施形態では、炭化水素供給原料は、処理された炭化水素供給原料生成物の純度をさらに改善し、精製ステップの効率を改善するために、架橋有機炭化水素多孔質ペレット又は粒子と接触させられる。
【0074】
好ましくは、炭化水素供給原料生成物から分離されたタールは、少なくとも部分的にリサイクルされ、ステップb.においてバイオマス供給原料と組み合わせられる。バイオマス材料の熱分解から得られたタールは、フェノール系組成物及びある範囲のさらなる酸素化有機化合物を主に含む。この熱分解タールは、加熱の使用によってさらに分解されて、炭化水素供給原料を少なくとも部分的に形成しうる。したがって、ステップb.において熱分解タールをバイオマス原料に少なくとも部分的にリサイクルすることによって、バイオマス源から得られた炭化水素供給原料生成物のパーセンテージ収率が増加しうる。
【0075】
炭化水素供給原料生成物は、およそ大気圧(本質的に大気条件を含む)で活性化炭素、バイオ炭又は架橋有機炭化水素樹脂と接触させられてもよい。
【0076】
活性化炭素、バイオ炭及び/又は架橋有機炭化水素樹脂は、炭化水素供給原料生成物内に存在する夾雑物を十分除去するのに必要な任意の時間にわたって接触させられてもよい。炭化水素原料及び吸着材料の適切な接触時間を決定することは、十分当技術分野の当業者の知識の範囲内であると考えられる。いくつかの例では、活性化炭素、バイオ炭及び/又は架橋有機炭化水素樹脂は、分離前に少なくとも15分間、好ましくは少なくとも20分間、より好ましくは少なくとも25分間、炭化水素供給原料と接触させられる。
【0077】
炭化水素供給原料生成物を活性化炭素、バイオ炭及び/又は架橋有機炭化水素樹脂と接触させるステップは、存在する夾雑物を適切なレベルに低減するために(例えば、炭化水素供給原料がわら色になるまで)、1又は2回以上繰り返されてもよい。
【0078】
ステップd.において形成される分離された炭化水素供給原料は、好ましくは、少なくとも0.1重量%の1又は2種以上のC8化合物、少なくとも1重量%の1又は2種以上のC10化合物、少なくとも5重量%の1又は2種以上のC12化合物、少なくとも5重量%の1又は2種以上のC16化合物、及び少なくとも30重量%の少なくとも1又は2種以上のC18化合物を含む。
【0079】
より好ましくは、ステップd.において形成される分離された炭化水素供給原料は、少なくとも0.5重量%の1又は2種以上のC8化合物、少なくとも2重量%の1又は2種以上のC10化合物、少なくとも6重量%の1又は2種以上のC12化合物;少なくとも6重量%の1又は2種以上のC16化合物、及び/又は少なくとも33重量%の1又は2種以上のC18化合物を含む。
【0080】
分離された炭化水素供給原料は、好ましくは、-10℃以下、好ましくは-15℃以下、例えば-16℃以下の流動点を有する。
【0081】
分離された炭化水素供給原料は、好ましくは、300ppmw以下、好ましくは150ppmw以下、より好ましくは70ppmw以下の硫黄を含む。
【0082】
第2の実施形態は、生物由来の炭化水素原料からバイオガソリン燃料を形成するための方法であって、
i. 少なくとも0.1重量%の1又は2種以上のC8化合物、少なくとも1重量%の1又は2種以上のC10化合物、少なくとも5重量%の1又は2種以上のC12化合物、少なくとも5重量%の1又は2種以上のC16化合物、及び少なくとも30重量%の少なくとも1又は2種以上のC18化合物を含む生物由来の炭化水素供給原料を用意するステップ;
ii. 流動接触分解(FCC)プロセスを使用してステップi.の炭化水素供給原料を分解して、バイオオイルを生成するステップ;並びに
iii. 得られたバイオオイルを分画して、生物由来のガソリン燃料画分を得るステップ
を含む、方法を提供する。
【0083】
好ましくは、生物由来の炭化水素供給原料は、少なくとも0.5重量%の1又は2種以上のC8化合物、少なくとも2重量%の1又は2種以上のC10化合物、少なくとも6重量%の1又は2種以上のC12化合物;少なくとも6重量%の1又は2種以上のC16化合物、及び/又は少なくとも33重量%の1又は2種以上のC18化合物を含む。
【0084】
ステップd.の炭化水素供給原料又はステップi.の炭化水素供給原料は、本質的に液体状態、本質的に気体状態で、又は部分的に液体-部分的に気体状態で流動接触分解触媒と接触させられうる。しかしながら、触媒的分解反応は気相中でのみ起こりうるので、炭化水素供給原料が本質的又は部分的に液体状態で存在する実施形態では、炭化水素供給原料又はその一部は、好ましくは、流動接触分解触媒との接触前又は接触時に気化される。
【0085】
好ましくは、ステップd.の炭化水素供給原料又はステップi.の炭化水素原料は、少なくとも400℃の温度で、好ましくは400℃~800℃の温度で、より好ましくは450℃~750℃の温度、より好ましくは500℃~700℃の温度で流動接触分解触媒と接触させられて、1又は2種以上の分解された炭化水素生成物を含むバイオオイルを生成する。
【0086】
一部の実施形態では、炭化水素供給原料は、流動接触分解触媒との接触前に加熱され、例えば、炭化水素原料は、流動接触分解触媒との接触前に少なくとも50℃、好ましくは少なくとも75℃、より好ましくは少なくとも100℃の温度に加熱されてもよい。好ましくは、炭化水素供給原料は、流動接触分解触媒との接触前に最高200℃、好ましくは最高175℃、より好ましくは最高150℃の温度に加熱されてもよい。炭化水素原料が50℃未満の温度で維持される場合、炭化水素のコークス化がパイプライン又はノズル内で起こり、その中の流動を低減し、又はこれらの構造を詰まらせる流動接触分解触媒につながりうることが見出された。炭化水素供給原料を少なくとも50℃の温度で維持することによって、炭化水素のコークス化は、大幅に低減又は排除されうる。
【0087】
ステップd.の炭化水素供給原料又はステップi.の炭化水素供給原料は、0.05MPa~10MPa、好ましくは0.1MPa~8MPa、より好ましくは0.5MPa~6MPaの圧力で流動接触分解を受けてもよい。
【0088】
炭化水素供給原料対流動接触分解触媒の重量比は、1:1~1:150、好ましくは1:2~1:100、より好ましくは1:5~1:50であってもよい。上記の炭化水素供給原料及びFCC触媒の重量比は、炭化水素原料を短い滞留時間で効果的に分解させることができることが見出された。
【0089】
流動接触分解ステップは、当技術分野で公知のいずれか適切な流動接触分解反応器において実施されてもよい。例えば、流動接触分解反応器は、流動高密度層反応器又はライザー反応器から選択されてもよい。好ましくは、接触分解反応器はライザー反応器である。
【0090】
適切なライザー反応器の例が、Penn Well Publishing Company社(1997), chapter 3, pages 101 to 112によって公開されたJoseph W. Wilsonによる"Fluid Catalytic Cracking technology and operations"と題するハンドブックに記載されている。例えば、ライザー反応器は、その中に記載される通りの内部ライザー反応器又は外部ライザー反応器であってもよい。特に、ライザー反応器は、ベッセルの外側に位置する本質的に垂直の上流端及びベッセルの内側に位置する本質的に垂直の下流端、又はベッセルの外側に位置する本質的に垂直の下流端及びベッセルの内側に位置する本質的に垂直の上流端を含んでもよい。内部ライザー反応器は詰まりにくく、それによって安全性及びハードウェアの完全性を高めうるので、本発明による使用にとりわけ有利なことがある。
【0091】
本明細書において定義される通りのライザー反応器は、流動接触分解反応を行うのに適切な細長い本質的に管状形の反応器を意味すると理解されるべきである。細長い本質的に管状形の反応器は、好ましくは、本質的に垂直に向いている。
【0092】
ライザー反応器の長さは、流動接触分解反応を実施するのに適切な任意の長さであってもよく、かつ反応器内での炭化水素供給原料の必要な滞留時間に依存してもよい。本明細書において定義される流動接触分解ステップを実施するのに適切なライザー長さを選択することは、十分当業者の知識内であると考えられる。しかしながら、例えば、FCC反応器は、10~65メートル、好ましくは15~55メートル、より好ましくは20~45メートルの長さを有してもよい。
【0093】
流動分解触媒反応器は、炭化水素供給原料及び/又は流動接触分解触媒を反応器にフィードするための流動接触分解反応器のベース又はその近くの入口(inlet)、並びに流動接触分解反応器の上部又はその近くの出口(outlet)を含んでもよく、ここで、形成されるバイオオイル及び失活触媒は、流動接触分解反応器から抽出される。
【0094】
炭化水素供給原料を流動接触分解反応器のベース又はその近くに供給することによって、in-situで形成される水が反応器の底部で発生する。in-situで形成される水は、炭化水素分圧を低下させ、二次水素移動反応を減少させて、オレフィン収率をより高くすることがある。
【0095】
好ましくは、ステップd.の炭化水素供給原料又はステップi.の炭化水素供給原料は、流動接触分解反応器に入る前又は入る時に霧化される。霧化(atomising)という用語は、本明細書において、炭化水素供給原料がガス中の液滴の分散物に形成されることを意味すると理解される。好ましくは、液滴は、10μm~60μmの平均直径、より好ましくは20μm~50μmの平均直径を有する。一部の実施形態では、炭化水素供給原料は、剪断エネルギーを印加することによってフィードノズル内で霧化されてもよい。好ましくは、フィードノズルは、底部進入フィードノズル又は側部進入フィードノズルである。底部進入フィードノズルによって、本明細書において、フィードノズルが流動接触分解反応器の底部から突き出ることが理解される。側部進入フィードノズルによって、本明細書において、フィードノズルが流動接触分解反応器の側壁から突き出ることが理解される。ノズルは、炭化水素供給原料が流動接触分解反応器に入るときに霧化するように構成されてもよく、好ましくは、ノズルは、円錐形のスプレー、扇形のスプレー又はミストを生成するように構成される。
【0096】
炭化水素原料を流動接触分解反応器に入る前又は入る時に霧化することによって、炭化水素供給原料の表面積の増加は、それに熱をより効率的に伝達させることができ、液体又は部分的に液体の炭化水素供給原料の気体状態への変換効率を改善する。
【0097】
一般に、気体炭化水素供給原料が流動接触分解触媒を反応器長さに沿って搬送するとき流動接触分解が起こる。炭化水素供給原料が流動接触分解反応器のベース又はその近くに供給される場合、リフトガスをライザー反応器のベース又はその近くに供給することも有利なことがある。反応器に供給されるリフトガスの速度が、炭化水素供給原料及び/又はFCC触媒の滞留時間を制御するために有利に使用できる。本明細書において使用される通りの滞留時間という用語は、流動接触分解反応器が流動接触分解反応器内の気体炭化水素供給原料と接触する時間を示すと考えられ、もちろん滞留時間は、炭化水素供給原料の滞留時間だけでなく、その変換生成物の滞留時間も含む。適切なリフトガスの例には、スチーム、窒素、気化した油又はそれらの混合物が含まれる。好ましくは、リフトガスはスチームである。好ましい実施形態では、リフトガス及び炭化水素原料は、流動接触分解反応器に入る前に組み合わせられてもよい。
【0098】
ステップd.の炭化水素供給原料又はステップi.の炭化水素供給原料は、0.5秒~15秒、好ましくは1秒~10秒、より好ましくは2秒~5秒の滞留時間を有してもよい。
【0099】
流動分解触媒は、粒子又は粉末の形態であってもよく、好ましくは、流動分解触媒は、微粉末の形態である。上で論じた通り、流動接触分解プロセスは、炭化水素供給原料が気体状態で流動接触分解触媒と接触させられることを必要とする。したがって、炭化水素供給原料の接触分解の速度は、少なくとも部分的に、自由に利用可能な流動接触分解触媒の表面積及び容積に依存する。したがって、好ましくは、流動接触分解触媒は、その粒径を低減するために、例えば、チューブ式グラインダー、ミル、例えば、ハンマーミル、ナイフミル、スラリーミリングの使用により、摩砕され、又はチッパーの使用により必要な粒径にサイズ調整される。特に、流動分解触媒は、10μm~300μm、好ましくは15μm~200μmの直径、より好ましくは20μm~150μmの直径を有する粒子又は粉末の形態であってもよい。これらの範囲内の粒径を有する触媒は、接触分解反応の効率を増加させるのに特に有用であることが見出されている。
【0100】
流動接触分解触媒は、流動接触分解プロセスにおける使用に適切であることが当業者に公知のいずれかの触媒でありうる。好ましくは、流動接触分解触媒は、ゼオライト又は高活性結晶質アルミナケイ酸塩を含む。流動接触分解触媒は、アモルファスバインダー化合物及び/又はフィラーをさらに含んでもよい。アモルファスバインダー成分の例には、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア及び酸化マグネシウム、又はそれらの組合せが含まれる。フィラーの例には、粘土、例えば、カオリンが含まれる。触媒を炭化水素フィード全体にわたってより均質に分布させ、したがって、炭化水素フィードと接触した触媒の量を増加させることができるため、バインダー及び/又はフィラー材料の使用は有益であることが見出されている。したがって、バインダー及び/又はフィラー材料と組み合わせた触媒の使用により、流動接触分解反応に必要な触媒の量を低減し、方法全体のコスト(運転及び設備投資)を低減することができる。
【0101】
流動接触分解触媒がゼオライトを含む場合、ゼオライトは、大細孔ゼオライト、中細孔ゼオライト、又はそれらの組合せから選択されてもよい。
【0102】
大細孔ゼオライトは、好ましくは、合成フォージャサイトなどのFAU又はフォージャサイト、例えば、ゼオライトY又はX、超安定ゼオライトY(USY)、希土類ゼオライトY(REY)及び希土類USY(REUSY)から選択され、より好ましくは、大細孔ゼオライトは、超安定ゼオライトY(USY)から選択される。
【0103】
特に、大細孔ゼオライトは、天然大細孔ゼオライト、例えば、グメリナイト、チャバザイト、ダチアルダイト、クリノプチロライト、フォージャサイト、ヒューランダイト、アナルサイト、レビナイト、エリオナイト、ソーダライト、カンクリナイト、ネフェリン、ラズライト、スコレサイト、ナトロライト、オフレタイト、メソライト、モルデナイト、ブリューステライト及びフェリエライト、並びに/又は合成大細孔ゼオライト、例えば、ゼオライトX、Y、A、L.ZK-4、ZK-5、B、E、F、H、J、M、Q、T、W、Z、アルファ及びベータ、オメガ、REY並びにUSYゼオライトから選択されてもよく、好ましくは、天然大細孔ゼオライトは、フォージャサイト、特にゼオライトY、USY及びREYから選択される。
【0104】
大細孔ゼオライトは、0.62nm~0.8nmの細孔直径を有する内部細孔を含んでもよく、ここで、細孔直径は、細孔の長軸に沿って測定される。ゼオライトの軸は、W. M. Meier, D. H. Olson, and Ch. Baerlocher, Fourth Revised Edition 1996, Elsevier, ISBN 0-444-10015-6の'Atlas of Zeolite Structure Types'に記述されている。
【0105】
中細孔ゼオライトは、MFI型ゼオライト、例えば、ZSM-5、MFS型ゼオライト、MEL型ゼオライト MTW型ゼオライト、例えば、ZSM-12、MTW型ゼオライト、EUO型ゼオライト、MTT型ゼオライト、HEU型ゼオライト、TON型ゼオライト、例えば、シータ-1、及び/又はFER型ゼオライト、例えば、フェリエライトから選択されてもよい。好ましくは、中細孔ゼオライトは、ZSM-5、ZSM-12、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-34、ZSM-35、ZSM-38、ZSM-48、ZSM-50、シリカライト及びシリカライト2から選択され、より好ましくは中細孔ゼオライトはZSM-5である。
【0106】
中細孔ゼオライトは、0.45nm~0.62nmの直径を有する内部細孔を含んでもよく、ここで、細孔直径は、細孔の長軸に沿って測定される。ゼオライトの軸は、W. M. Meier, D. H. Olson, and Ch. Baerlocher, Fourth Revised Edition 1996, Elsevier, ISBN 0-444-10015-6の'Atlas of Zeolite Structure Types'に記述されている。
【0107】
接触分解反応によって生成される分解されたオレフィンの種類及び範囲は、使用されるゼオライト触媒の種類、したがって、選択性に依存して様々でありうることが公知である。上で論じた通り、より厳しい要件、例えば、生成される燃料の最小オクタン値が現代の燃料に適用されている。FCCプロセスが、ある範囲の分解されたオレフィン生成物を生成する場合、得られる燃料が、これらの要件を満たすのに十分な品質のものではないことがある。したがって、一部の場合には、さらなる処理又は品質向上技術が、燃料製品の品質を改善するために使用されうる。しかしながら、そのような追加の処理ステップは、市場性のある製品を生産するために必要な時間及び支出の両方を増加させる。あるいは、又はさらに、中細孔ゼオライトを含む触媒は、分解された炭化水素生成物中の軽質オレフィン(C2-C4)、主にプロピレン及びブチレンの収率を増加させることが公知である。
【0108】
軽質オレフィンは、高オクタン値化合物であることが公知であり、得られる燃料の揮発性を高めうる。したがって、流動接触分解プロセス内に中細孔ゼオライトを含有することにより、形成されるバイオオイルの品質を改善し、後続の処理又は品質向上ステップの必要性を減少させることができる。形成されるバイオオイルの揮発性及びオクタン価の向上に加えて、増加した量の軽質オレフィンにより、得られる燃料の排出を削減することもできる。同じく増加しうるエチレンは、化学素材として価値がある。
【0109】
特に、ZSM-5は、より軽質のオレフィン(C2-C4)の大幅に高い収率、例えば、プロピレンの収率の増加をもたらすことが示されている。
【0110】
上で論じた通り、流動接触分解触媒は、1又は2種以上の大細孔ゼオライト及び1又は2種以上の中細孔ゼオライトのブレンドを含んでもよく、好ましくは、1若しくは2種以上の大細孔ゼオライトは、上で定義した通りであり、及び/又は1若しくは2種以上の中細孔ゼオライトは、上で定義した通りである。一部の実施形態では、大細孔ゼオライト対中細孔ゼオライトの重量比は、99:1~70:30、好ましくは98:2~85:15の範囲内である。
【0111】
好ましくは、流動接触分解触媒のブレンドが、1又は2種以上の大細孔ゼオライト及び1又は2種以上の中細孔ゼオライトを含んで選択される場合、中細孔ゼオライトのうちの少なくとも1種は、ZSM-5から選択される。より好ましくは、ZSM-5ゼオライトは、触媒の総重量に基づいて1~20wt%、好ましくは2~15wt%、より好ましくは2~8wt%の量で存在する。
【0112】
流動分解触媒中に存在する大細孔径ゼオライト及び/又は中細孔ゼオライトの総量は、流動接触分解触媒の総質量に対して好ましくは5wt%~40wt%の範囲内、より好ましくは10wt%~30wt%の範囲内、さらにより好ましくは10wt%~25wt%の範囲内である。
【0113】
流動接触分解触媒は、向流フロー、並流フロー又はクロスフロー構成で炭化水素流体フィードと接触させることができ、好ましくは、流動接触分解触媒は、並流構成で炭化水素流体フィードと接触させられる。
【0114】
流動接触分解プロセス後、失活した触媒は、形成されるバイオオイルから少なくとも部分的に分離されてもよい。分離ステップは、好ましくは、1若しくは2つ以上のサイクロンセパレーター、及び/又は1若しくは2つ以上の渦管を使用して行われる。
【0115】
一部の実施形態では、方法は、ステップd.又はステップiiにおいて形成されるバイオオイルから硫黄含有成分を少なくとも部分的に除去するステップをさらに含む。さらに又はあるいは、方法は、ステップe.又はステップiiiにおいて形成される生物由来のガソリン燃料画分から硫黄含有成分を少なくとも部分的に除去するステップをさらに含んでもよい。
【0116】
バイオオイル及び/又はガソリン燃料画分から硫黄含有成分を少なくとも部分的に除去するステップは、炭化水素原料中に存在するチオール、スルフィド、ジスルフィド、チオフェンのアルキル化誘導体、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、4-メチルジベンゾチオフェン、4,6-ジメチルジベンゾチオフェン、ベンゾナフトチオフェン及びベンゾ[def]ジベンゾチオフェンのうちの1又は2種以上を少なくとも部分的に除去するステップを含んでもよい。好ましくは、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェンは、バイオオイル及び/又はガソリン燃料画分から少なくとも部分的に除去される。
【0117】
バイオオイル及び/又はガソリン燃料画分から硫黄含有成分を少なくとも部分的に除去するステップは、水素化脱硫ステップ、好ましくは接触水素化脱硫ステップを含んでもよい。
【0118】
触媒は、好ましくは、ニッケルモリブデン硫化物(NiMoS)、モリブデン、二硫化モリブデン(MoS2)、コバルト/モリブデン、例えば、コバルト及びモリブデンの二元組合せ、コバルトモリブデン硫化物(CoMoS)、二硫化ルテニウム(RuS2)、並びに/又はニッケル/モリブデン系触媒から選択される。より好ましくは、触媒は、ニッケルモリブデン硫化物(NiMoS)系触媒及び/又はコバルトモリブデン硫化物(CoMoS)系触媒から選択される。
【0119】
あるいは、触媒は、バイオオイル及び/又はガソリン燃料画分から硫黄含有成分を少なくとも部分的に除去するのに適切な、金属成分及び有機配位子を含む公知のいずれかの金属有機骨格(MOF)から選択されてもよい。特に、MOF材料は、銅-1,3,5-ベンゼントリカルボン酸(Cu-BTC)及びV/Cu-BTCから選択されてもよい。好ましくは、触媒はV/Cu-BTCを含む。
【0120】
触媒は、担持触媒であってもよく、支持体は、天然又は合成材料から選択されうる。特に、支持体は、活性化炭素、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、分子篩及び/又はゼオライトから選択される。触媒を炭化水素フィード全体にわたってより均質に分布させ、したがって、バイオオイル及び/又はガソリン燃料画分と接触する触媒の量を増加させることができるため、支持体の使用は有益であることが見出されている。したがって、担持触媒の使用により、水素化脱硫反応に必要な触媒の量を低減し、方法全体のコスト(運転及び設備投資)を低減することができる。
【0121】
水素化脱硫ステップは、バイオオイル及び/又はガソリン燃料画分と存在する触媒との間の接触を増加させて、硫黄除去ステップの効率を増加させるために、固定層又はトリクル層反応器において実施されてもよい。
【0122】
水素化脱硫ステップは、250℃~400℃、好ましくは300℃~350℃の温度で実施されてもよい。
【0123】
バイオオイル及び/又はガソリン燃料画分は、水素ガス、及び存在する場合、水素化脱硫触媒と、接触する前に予備加熱されてもよい。バイオオイル及び/又はガソリン燃料画分は、熱交換機の使用により予備加熱されてもよい。あるいは、バイオオイル及び/又はガソリン燃料画分は、まず、水素ガス、及び存在する場合は水素化脱硫触媒、と接触させられ、続いて、所望の温度に加熱されてもよい。バイオオイル及び/又はガソリン燃料画分及び水素ガスは、上で定義した直接又は間接加熱法のうちの任意のものを使用して、所望の温度に加熱されてもよい。
【0124】
水素化脱硫ステップは、4~6MPaG、好ましくは4.5~5.5MPaG、より好ましくは約5MPaGの反応圧力で実施される。
【0125】
脱硫反応の間、硫黄含有成分は水素ガスと反応して、硫化水素ガス(H2S)を生成する。形成される硫化水素ガスは、当技術分野で公知のいずれかの方法によって、例えば、ガスセパレーターの使用又は反応器ベッセルへのわずかな真空、例えば、6KPaA未満、好ましくは5KPaA未満、より好ましくは4KPaA未満の真空圧の印加により、炭化水素原料から分離されうる。
【0126】
任意に、硫黄が低減されたバイオオイル及び/又はガソリン燃料画分は、次いで、さらなる処理ステップが実施される前に、当技術分野で公知のいずれか適切な手段によって例えば、熱交換機の使用によって、冷却されてもよい。
【0127】
硫黄が低減されたバイオオイル及び/又はガソリン燃料画分中に残留する微量の硫化水素は、続いて、例えば、およそ周囲圧力でフラッシュセパレーターの使用による部分気化、及び気化した硫化水素の脱気による除去により除去されてもよい。好ましくは、バイオオイル及び/又はガソリン燃料画分は、脱気ステップの間、60℃~120℃の温度を有し、より好ましくは、バイオオイル及び/又はガソリン燃料画分は、80℃~100℃の温度を有する。脱気ステップは、真空下で、好ましくは6KPaA未満の真空圧力下で、より好ましくは5KPaA未満の真空圧力下で、さらにより好ましくは4KPaA未満の真空圧力下で実施されてもよい。
【0128】
脱気ステップの間に除去された任意の未反応の富水素ガスは、例えば、アミン接触器の使用により硫化水素から分離されてもよい。分離されたガスは、次いで、有利にリサイクルされ、ステップd.又はステップiの炭化水素原料と組み合わせられてもよい。未反応の水素ガスをリサイクルすることによって、バイオオイル及び/又はガソリン燃料画分から硫黄含有成分を除去するのに必要な水素ガスの量が低減され、それによって、より費用効果的な方法が提供される。
【0129】
水素化脱硫ステップは、バイオオイル及び/又はガソリン燃料画分における所望の硫黄低減を実現するために1又は2回以上繰り返されてもよい。しかしながら、典型的には、バイオオイル及び/又はガソリン燃料画分の硫黄含有量を所望のレベルに十分低減するために、とりわけ、炭化水素供給原料が本明細書の上に記載される方法に従って生成される場合、1回の水素化脱硫ステップのみが必要である。
【0130】
脱硫されたバイオオイル及び/又はガソリン燃料画分は、5ppmw未満、好ましくは3ppmw未満、より好ましくは1ppmw未満の硫黄含有量を含んでもよい。
【0131】
一部の実施形態では、脱硫ステップは必要にならない。上で論じた通り、バイオマス原料は、非作物バイオマス供給原料から選択されてもよい。ススキ属、牧草、及びわら、例えば、稲わら又は麦わらなどの非作物バイオマス供給原料は、少量の硫黄を含有するため、それから得られる炭化水素供給原料、バイオオイル及びガソリン燃料画分は、上で述べた硫黄限度内に本質的に入る。さらに、非作物バイオマスフィード中に存在する硫黄含有成分は、主にベンゾチオフェンを含み、これは、およそ500℃の温度で容易に分解されて、ベンゼン及び硫化水素(H2S)を形成する。したがって、そのような硫黄含有成分は、本明細書に定義される通りの熱分解プロセス及び/又は流動接触分解プロセスの間に分解し、得られるバイオオイルの硫黄含有量をさらに低減する。結果として、そのようなバイオマス原料の使用により、本方法に関連する時間及びコストを低減することができる。
【0132】
本発明によると、方法は、炭化水素供給原料から酸素含有化合物(酸素化物)を少なくとも部分的に除去するために、流動接触分解ステップの前に炭化水素供給原料を脱酸素するステップをさらに含んでもよい。原油ベースの炭化水素供給原料とは異なり、生物由来の炭化水素供給原料は酸素含有成分を含み、これらは、現存する炭化水素ベースのインフラストラクチャーに容易に統合されうる形態に容易に変換されない。例えば、これらの酸素含有成分は、従来の燃料生産プロセスにおいて一般に使用される触媒を毒しうる。さらに、酸素含有成分を含む炭化水素原料は、流動接触分解法を使用して容易に処理されない。バイオ燃料又は伝統的に形成される化石燃料中の酸素含有炭化水素の存在により、高酸性度及び低エネルギー変換がもたらされうる。これらの酸素化炭化水素はまた、保存の間又は加熱された場合に二次反応を受けて、詰まりを引き起こし、かつ液体輸送運転を阻止する望ましくない化合物、例えば、オリゴマー、ポリマー、及び他の化合物を生成しうる。
【0133】
酸素化物という用語は、少なくとも1又は2個以上の炭素原子、1又は2個以上の水素原子、及び1又は2個以上の酸素原子を含む化合物を指す。酸素化物は、例えば、アルデヒド、カルボン酸、アルカノール、フェノール及び/又はケトンを含んでもよい。
【0134】
好ましくは、脱酸素ステップは、200℃~450℃、好ましくは250℃~400℃、より好ましくは280℃~350℃の温度で実施される水素化脱酸素ステップである。
【0135】
炭化水素供給原料は、水素ガス、及び存在する場合、水素化脱酸素触媒と接触する前に予備加熱されてもよい。炭化水素供給原料は、熱交換機の使用により予備加熱されてもよい。あるいは、炭化水素供給原料は、まず、水素ガス、及び存在する場合、水素化脱酸素触媒と接触させられ、続いて、所望の温度に加熱されてもよい。炭化水素供給原料及び水素ガスは、上で定義した直接又は間接加熱法のうちの任意のものを使用して、所望の温度に加熱されてもよい。
【0136】
形成される水蒸気は、当技術分野で公知のいずれかの方法によって、例えば、ガスセパレーターの使用又は反応器ベッセルへのわずかな真空、例えば、6KPaA未満、好ましくは5KPaA未満、より好ましくは4KPaA未満の真空圧の印加により、炭化水素供給原料から分離されうる。
【0137】
好ましくは、水素化脱酸素ステップは、水素化脱酸素触媒をさらに含む。水素化脱酸素ステップは、炭化水素供給原料と存在する触媒との間の接触を増加させて、酸素除去ステップの効率を増加させるために、固定層又はトリクル層反応器において実施されてもよい。
【0138】
触媒は、好ましくは、周期表のVIII族及び/又はVIB族から選択される金属を含み、特に、触媒は、Ni、Cr、Mo、W、Co、Pt、Pd、Rh、Ru、Ir、Os、Cu、Fe、Zn、Ga、In、V、及びそれらの混合物から選択される金属を含む。
【0139】
触媒は、担持触媒であってもよく、支持体は、天然又は合成材料から選択されうる。特に、支持体は、アルミナ、アモルファスシリカ-アルミナ、チタニア、シリカ、セリア、ジルコニア、炭素、炭化ケイ素、又はゼオライト、例えば、ゼオライトY、ゼオライトベータ、ZSM-5、ZSM-12、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-48、SAP0-11、SAP0-41及びフェリエライトから選択される。触媒を炭化水素供給原料全体にわたってより均質に分布させ、したがって、炭化水素供給原料と接触した触媒の量を増加させることができるため、支持体の使用は有益であることが見出されている。したがって、担持触媒の使用により、水素化脱酸素反応に必要な触媒の量を低減し、方法全体のコスト(運転及び設備投資)を低減することができる。
【0140】
場合により、酸素が低減された炭化水素供給原料は、次いで、さらなる処理ステップが実施される前に、当技術分野で公知のいずれか適切な手段によって例えば、熱交換機の使用によって、冷却されてもよい。
【0141】
酸素が低減された炭化水素供給原料中に残留する微量の水素は、続いて、例えば、およそ周囲圧力(本質的に大気条件を含む)でフラッシュセパレーターの使用による部分気化、及び気化した水素の脱気による除去により除去されてもよい。脱気ステップは、真空下で、好ましくは6KPaA未満の真空圧力下で、より好ましくは5KPaA未満の真空圧力下で、さらにより好ましくは4KPaA未満の真空圧力下で実施されてもよい。
【0142】
脱気ステップの間に除去された任意の未反応の富水素ガスは、有利にリサイクルされ、ステップd.又はステップiiの炭化水素供給原料と組み合わせられてもよい。未反応の水素ガスを少なくとも部分的にリサイクルすることによって、炭化水素原料から酸素含有成分を除去するのに必要な水素ガスの量が低減され、それによって、より費用効果的な方法が提供される。
【0143】
水素化脱酸素ステップは、炭化水素供給原料における所望の酸素低減を実現するために1又は2回以上繰り返されてもよい。しかしながら、典型的には、炭化水素供給原料の酸素含有量を所望のレベルに十分低減するために、とりわけ、炭化水素供給原料が本明細書の上に記載される方法に従って生成される場合、1回の水素化脱酸素ステップのみが必要である。
【0144】
方法は、ステップe.又はステップiiにおいて形成されるバイオオイルを水素化処理するステップをさらに含んでもよい。
【0145】
本発明の水素化処理ステップは、バイオオイル中に存在する不飽和炭化水素官能基の数を低減し、バイオオイルを、より高いエネルギー密度を有するより安定な燃料に有利に変換するために使用される。
【0146】
水素化処理ステップは、250℃~350℃、好ましくは270℃~330℃、より好ましくは280℃~320℃の温度で実施されてもよい。好ましくは、バイオオイルは、水素ガス、及び存在する場合は水素化処理触媒、との接触前に加熱される。バイオオイルは、熱交換機の使用により予備加熱されてもよい。あるいは、バイオオイルは、まず、水素ガス、及び存在する場合は水素化処理触媒、と接触させられてもよく、続いて、所望の温度に加熱される。バイオオイル及び水素ガスは、上で定義した直接又は間接加熱法のうちの任意のものを使用して、所望の温度に加熱されてもよい。
【0147】
水素化処理ステップは、4MPaG~6MPaG、好ましくは4.5MPaG~5.5MPaG、より好ましくは約5MPaGの反応圧力で実施されてもよい。
【0148】
一般に、水素化処理ステップは、触媒をさらに含む。好ましくは、触媒は、周期表のIIIB族、IVB族、VB族、VIB族、VIIB族及びVIII族から選択される金属触媒を含む。特に、金属触媒は、周期表のVIII族から選択され、例えば、触媒は、Ni、Co、Mo、W、Cu、Pd、Ru、Ptを含む触媒など、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir及び/又はPtから選択されてもよい。好ましくは、触媒は、CoMo、NiMo又はNi触媒から選択される。
【0149】
水素化処理触媒が白金系触媒から選択される場合、炭化水素供給原料に含有される硫黄が白金系触媒を毒し、したがって、水素化処理ステップの効率を低下させうるため、水素化脱硫ステップは水素化処理ステップの前に実施されることが好ましい。
【0150】
触媒は、担持触媒であってもよく、支持体は、任意に、天然又は合成材料から選択されうる。特に、支持体は、活性化炭素、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、分子篩及び/又はゼオライトから選択されてもよい。触媒がバイオオイル全体にわたってより均質に分布し、バイオオイルと接触した触媒の量が増加しうるため、支持体の使用は有益であることが見出された。したがって、担持触媒の使用により、水素化処理反応に必要な触媒の量を低減し、方法全体のコスト(運転及び設備投資)を低減することができる。
【0151】
水素化処理ステップは、バイオオイル及び存在する触媒の間の接触を増加させ、それによって水素化処理反応の効率を改善するために、固定層又はトリクル層反応器において実施されてもよい。
【0152】
任意に、水素化処理されたバイオオイルは、任意のさらなる処理ステップが実施される前に、例えば、熱交換機の使用によって、続いて冷却される。
【0153】
形成されるバイオオイルを分画する前に、LPGガスは、任意に、当技術分野で公知のいずれかの方法によって、例えば、ガスコンデンサー及び/又はガスセパレーターの使用により、バイオオイルから少なくとも部分的に分離されてもよい。あるいは又はさらに、LPGガスは、わずかな真空の印加によって、例えば、残留するバイオオイルからLPGを分離するために6KPaA未満、好ましくは5KPaA未満、より好ましくは4KPaA未満の真空圧を使用して、バイオオイルから分離されてもよい。あるいは、LPGは、凝縮及びフラッシュ蒸留法によってバイオオイルから分離されてもよい。
【0154】
本発明の分画ステップは、精製バイオオイルをそれぞれのナフサ、ガソリン、ジェット燃料及び/又は重ディーゼル画分に分離できる。分画方法は、当技術分野で公知のいずれかの標準法を使用して、例えば、分留カラムの使用により実施されてもよい。
【0155】
分画ステップは、大気圧(本質的に大気条件を含む)で、30℃~220℃、好ましくは50℃~210℃、例えば70℃~200℃のカットポイントを有する、精製バイオオイルの第1の分画カットを分離するステップを含んでもよい。あるいは、分画ステップは、850~1000Pa、好ましくは、900~950Paの圧力で実施されてもよい。第1の分画カット中の炭化水素は、続いて冷却され、凝縮されてもよい。第1のカット画分は、生物由来のガソリン燃料画分である。
【0156】
方法は、280℃~320℃、好ましくは290℃~310℃、より好ましくは約300℃のカットポイントを有する、精製バイオオイルの第2の分画カットを実施するステップをさらに含んでもよい。第2の分画カットは、一般に、生物由来のジェット燃料を含む。第2の分画カット中の炭化水素は、例えばコンデンサーを使用して、冷却され、凝縮されてもよい。
【0157】
第2の分画カットは、生物由来のジェット燃料、好ましくはA1グレードのジェット燃料である。好ましくは、第2の分画カットの物理及び化学特性は、ジェット燃料の標準化要件の少なくとも一部を満たす。
【0158】
底流中の残留するバイオオイルは、生物由来のディーゼル燃料である。
【0159】
流動接触分解ステップの間、コークス及び炭化水素系材料は、触媒の表面に堆積され、触媒活性及び選択性の損失が生じる。したがって、方法は、少なくとも部分的に除去された不活性化された流動接触分解触媒を再生するステップをさらに含んでもよい。特に、少なくとも部分的に除去された不活性化された流動接触分解触媒は、
a. 失活した触媒を、触媒の表面に吸収されたバイオオイルにストリップするステップ;及び
b. 触媒を再生するステップ
を介して再生されてもよい。
【0160】
ストリップするステップは、再生するステップの前に、失活した触媒に吸着された炭化水素系反応生成物を除去する。ストリップするステップの間に除去された生成物は、少なくとも部分的にリサイクルされ、ステップe.又はステップiiにおいて生成されるバイオオイルと組み合わせられてもよい。
【0161】
好ましくは、ストリップするステップは、失活した触媒を、400℃~800℃、好ましくは400℃~700℃、より好ましくは450℃~650℃の温度でスチームを含むガスと接触させるステップを含む。好ましくは、スチームを含むガスは、失活した触媒との接触前に加熱される。ガスは、熱交換機の使用により予備加熱されてもよい。あるいは、失活した触媒は、まず、スチームを含むガスと接触させられてもよく、続いて、所望の温度に加熱される。失活した触媒及びスチームを含むガスは、上で定義した直接又は間接加熱法のうちの任意のものを使用して、所望の温度に加熱されてもよい。
【0162】
失活した触媒は、失活した触媒の表面に吸着された水素化分解生成物を十分除去するために必要な任意の期間にわたって、スチームを含むガスと接触させられてもよい。特に、失活した触媒は、1~10分間、好ましくは2~8分間、より好ましくは3~6分間の期間にわたって、スチームを含むガスと接触させられてもよい。
【0163】
好ましい実施形態では、失活した触媒は、10:1~100:1の重量比で、好ましくは20:1~60:1の重量比でスチームを含むガスと接触させられる。
【0164】
再生するステップは、好ましくは、ストリップされた流動接触分解触媒を再生器中で550℃以上の温度で空気又は空気及び酸素の混合物と接触させて、再生された接触分解触媒、熱及び二酸化炭素を生成するステップを含む。好ましくは、ストリップされた流動接触分解触媒は、再生器中で550℃~950℃、好ましくは575℃~900℃、より好ましくは600℃~850℃の温度で空気又は空気及び酸素の混合物と接触させられる。
【0165】
再生するステップの間、流動接触分解ステップの結果として触媒に堆積されたコークスが焼去されて、触媒活性を回復させる。触媒の表面のコークスの燃焼は、発熱性が高い反応である。したがって、再生するステップは、触媒の表面からコークスを除去するのに役立つだけでなく、触媒を吸熱流動接触分解に適切な温度に加熱もする。したがって、加熱された再生された流動接触分解触媒は、流動接触分解ステップに少なくとも部分的にリサイクルされうる。好ましくは、触媒は、流動接触分解ステップからストリップするステップ及び再生するステップに連続して循環され、流動接触分解ステップに戻る。触媒の循環速度は、炭化水素供給原料のフィード速度に対して調整されて、再生するステップにおいて生成された熱が流動接触分解反応を維持するのに十分であり、循環する再生された触媒が熱伝達媒体として使用される熱平衡運転を維持することができる。
【0166】
あるいは又はさらに、発熱再生するステップの間に生成された熱は、水を加熱し、及び/又はスチームを発生させるために少なくとも部分的に使用されてもよい。生成されたスチームは、ライザー反応器中でリフトガスとして使用されうる。あるいは又はさらに、発熱再生するステップの間に生成された熱は、水素化脱酸素ステップの前に炭化水素原料を予備加熱するために、及び/又は水素化処理ステップの前にバイオオイルを予備加熱するために、及び/又は脱硫ステップの前にバイオオイル及び/又はガソリン燃料画分を予備加熱するために少なくとも部分的に使用されてもよい。したがって、発熱再生するステップの間に生成された熱を少なくとも部分的にリサイクルすることによって、方法全体のコスト(運転及び設備投資)は低減されうる。
【0167】
再生するステップは、0.05MPa~1MPaの圧力、好ましくは0.1MPa~0.6MPaの圧力で実施されてもよい。
【0168】
第3の実施形態は、本明細書において定義される方法に従って生成された生物由来のLPG燃料を含む。
【0169】
第4の実施形態は、本明細書において定義される方法に従って生成された生物由来のガソリン燃料を含む。好ましくは、生物由来のガソリン燃料は、バイオマス供給原料から完全に形成される。
【0170】
驚くべきことに、本発明の方法に従って生成された生物由来のガソリン燃料は、EURO VIガソリン燃料の基準を満たすことが見出された。
【0171】
生物由来のガソリン燃料は、少なくとも98、好ましくは少なくとも102、より好ましくは少なくとも105のリサーチ法オクタン価を有してもよい。生物由来のガソリン燃料は、少なくとも88、好ましくは少なくとも90、より好ましくは少なくとも95のモーター法オクタン価を有してもよい。
【0172】
生物由来のガソリン燃料は、好ましくは、10ppmw以下の硫黄、好ましくは5ppmw以下の硫黄、より好ましくは1ppmw以下の硫黄を含む。
【0173】
好ましくは、生物由来のガソリン燃料は、測定可能な臭素指数を有さない。
【0174】
第5の実施形態は、本明細書において定義される方法に従って生成された生物由来のジェット燃料を含む。
【0175】
第6の実施形態は、本明細書において定義される方法に従って生成された生物由来のディーゼル燃料を含む。
【0176】
技術的に必須ではないが、本発明の生物由来の燃料は、現在の燃料規格を満たすために、他の材料(例えば、化石燃料由来の燃料材料)とブレンドされてもよいことが認識される。例として、そのようなブレンドは、最大50%であってもよい。しかしながら、本発明の燃料の驚くべき品質は、そのようなプロセスを回避可能にすることを実現可能にする。
【0177】
第7の実施形態は、バイオマス供給原料からバイオガソリン燃料を形成するためのシステムであって、
バイオマス供給原料の水分含有量を確実に、バイオマス原料の10重量%未満にする手段;
バイオマス供給原料を、少なくとも950℃の温度に加熱して、バイオ炭、炭化水素供給原料、水素、一酸化炭素、二酸化炭素及びメタンなどの非凝縮性軽ガス、並びに水の混合物を形成するように構成された加熱体を含む反応器;
反応器で生成された反応混合物から、形成される炭化水素供給原料を分離するように構成されたセパレーター;
炭化水素供給原料を分解して、バイオオイルを生成するのに適切な流動接触分解反応器;並びに
バイオオイルからガソリン燃料画分を分離するように構成されたセパレーター
を含む、システムを提供する。
【0178】
本発明によると、反応器に入る前にバイオマス供給原料を摩砕して、材料の粒径を低減する手段をさらに含んでもよく、例えば、バイオマス供給原料は、ペレット、チップ、粒子又は粉末に形成されてもよく、最大粒子直径は1mm~25mm、1mm~18mm、又は1mm~10mmである。好ましくは、システムは、バイオマス供給原料の粒径を低減するためのチューブ式グラインダー、ミル、例えば、ハンマーミル、ナイフミル、スラリーミリング又はチッパーを含む。
【0179】
いくつかの例では、システムは、バイオマス供給原料の水分含有量を10重量%未満に低減する加熱手段をさらに含んでもよい。加熱手段は、真空オーブン、回転乾燥機、フラッシュ乾燥機、又は熱交換機、例えば、連続ベルト乾燥機から選択されてもよい。好ましくは、加熱手段は、バイオマス原料を間接加熱するように配置構成され、例えば、加熱手段は、間接加熱ベルト乾燥機、間接加熱流動層、又は間接加熱接触回転スチームチューブ乾燥機から選択されてもよい。
【0180】
本発明によると、加熱体は、バイオマス供給原料を少なくとも1000℃、より好ましくは少なくとも1100℃、例えば、1120℃、1150℃、又は1200℃の温度に加熱するように構成されてもよい。
【0181】
加熱体は、マイクロ波支援加熱、加熱ジャケット、固体熱担体、管状炉又は電気加熱器を含んでもよく、好ましくは、加熱体は管状炉を含む。
【0182】
あるいは又はさらに、加熱体は、反応器内に配置されてもよく、バイオマス供給原料を直接加熱するように構成される。例として、加熱体は、電気加熱体、例えば、電気スパイラル加熱器から選択されてもよい。好ましくは、2又は3つ以上の電気スパイラル加熱器が反応器内に配置構成されてもよい。
【0183】
バイオマス供給原料は、反応器を通して連続して輸送されてもよく、例えば、バイオマス材料は、スクリューコンベヤ又は回転ベルトなど、コンベヤ上/内に含有されてもよい。任意に、2つのコンベヤが、反応器を通してバイオマス材料を連続して輸送するために配置構成されてもよい。
【0184】
反応器は、バイオマス材料が大気圧下(本質的に大気条件を含む)で加熱されるように配置構成されてもよい。あるいは、反応器は、低圧条件、例えば、850~1,000Pa、好ましくは、900~950Paを形成するように配置構成されてもよい。反応器は、反応器が真空下に維持されて、形成される熱分解ガスの除去を補助するように構成されてもよい。好ましくは、反応器は、真空の印加を使用して、反応器から除去される任意の熱分解ガスに対して向流方向にバイオマス材料を連続して輸送するように構成される。このようにして、バイオ炭など、加熱の結果として形成される任意の固体材料は、形成される熱分解ガスとは別に除去される。
【0185】
本発明によると、システムは、反応器中で形成される熱分解ガスを凝縮して、炭化水素供給原料生成物及び非凝縮性軽ガスを生成するための冷却手段をさらに含んでもよい。
【0186】
システムは、例えば、蒸留により、形成される熱分解ガスを分離するための手段をさらに含んでもよい。
【0187】
セパレーターは、炭化水素供給原料生成物からバイオ炭を分離するように配置構成されてもよい。例えば、セパレーターは、ろ過手段(例えば、セラミックフィルターの使用)、遠心分離、又はサイクロン若しくは重量分離を含んでもよい。
【0188】
さらに又はあるいは、セパレーターは、炭化水素原料生成物から水を少なくとも部分的に分離するための手段を含んでもよい。例えば、セパレーターは、重力油分離装置、遠心分離、サイクロン又はマイクロバブル分離手段を含んでもよい。
【0189】
さらに又はあるいは、セパレーターは、炭化水素供給原料生成物から非凝縮性軽ガスを少なくとも部分的に分離するための手段を含んでもよく、例えば、セパレーターは、炭化水素供給原料生成物がフラッシュ蒸留又は分留を受けるように配置構成されてもよい。
【0190】
セパレーターは、炭化水素供給原料生成物から分離された任意の非凝縮性軽ガスが反応器に入る前に、バイオマス原料にリサイクルされるように配置構成されてもよい。
【0191】
あるいは又はさらに、セパレーターが、形成される非凝縮性ガスから一酸化炭素を少なくとも部分的に分離するように配置構成されてもよい場合。システムは、少なくとも部分的に分離された一酸化炭素を、水性ガスシフト反応を介して水素ガス及び二酸化炭素に変換するための手段をさらに含んでもよい。特に、反応器は、分離された一酸化炭素をスチームと接触させるように構成されてもよい。反応器は、一酸化炭素及びスチームを205℃~482℃、より好ましくは205℃~260℃の温度に加熱するように構成された加熱体をさらに含む。いくつかの例では、反応器は、銅-亜鉛-アルミニウム触媒又はクロム若しくは銅促進鉄系触媒から選択されるシフト触媒を含む。好ましくは、触媒は、銅-亜鉛-アルミニウム触媒から選択される。
【0192】
本発明によると、システムは、形成される炭化水素供給原料生成物をさらに処理するための手段を含んでもよい。例として、システムは、炭素、グラフェン及びタールなどの炭化水素供給原料中に存在する夾雑物を除去するように配置構成されてもよい。好ましくは、システムは、メンブレンフィルターなどのフィルターをさらに含み、これは、存在する大きな夾雑物を除去するために使用できる。さらに又はあるいは、システムは、炭化水素原料中に懸濁したちいさな夾雑物を除去するための、ヌッチェフィルターなどの精密ろ過手段をさらに含んでもよい。あるいは又はさらに、システムは、生成された炭化水素供給原料生成物をさらに処理するために、炭化水素供給原料を活性炭素化合物及び/又は架橋有機炭化水素樹脂と接触させるように配置構成されてもよい。活性化炭素及び/又は架橋有機炭化水素樹脂は、吸着剤と炭化水素原料との間の接触を増加させ、それによって、所望のレベルの夾雑物除去を実現するために必要な時間を低減するために、粒子又はペレット形態であってもよい。炭化水素供給原料生成物は、およそ大気圧(本質的に大気条件を含む)で活性化炭素及び/又は架橋有機炭化水素樹脂と接触させられてもよい。いくつかの例では、システムは、炭化水素供給原料生成物がさらなる処理手段を2又は3回以上通過するように配置構成されてもよい。
【0193】
本発明によると、流動接触分解反応器は、炭化水素供給原料及び流動接触分解触媒を少なくとも400℃の温度、好ましくは400℃~800℃の温度、より好ましくは450℃~750℃の温度、より好ましくは500℃~700℃の温度に加熱して、1又は2種以上の分解された炭化水素生成物を含むバイオオイルを生成するように構成された加熱体を含んでもよい。
【0194】
さらに、流動接触分解反応器は、0.05MPa~10MPa、好ましくは0.1MPa~8MPa、より好ましくは0.5MPa~6MPaの圧力条件を形成するように配置構成されてもよい。
【0195】
流動接触分解反応器は、流動高密度層反応器又はライザー反応器から選択されてもよい。好ましくは、接触分解反応器はライザー反応器である。例えば、ライザー反応器は、いわゆる内部ライザー反応器又はいわゆる外部ライザー反応器であってもよい。
【0196】
ライザー反応器は、好ましくは本質的に垂直に向いた、細長い本質的に管状形の反応器を含むように配置構成されてもよい。
【0197】
ライザー反応器の長さは、流動接触分解反応を実施するのに適切な長さであってもよい。例えば、流動接触分解反応器は、10~65メートル、好ましくは15~55メートル、より好ましくは20~45メートルの長さを有してもよい。
【0198】
流動接触分解反応器は、炭化水素供給原料及び/又は流動接触分解触媒を反応器にフィードするためのベース又はその近くの入口、並びに流動接触分解反応器の上部又はその近くの出口を含むように構成されてもよく、ここで、形成されるバイオオイル及び失活触媒は、流動接触分解反応器から抽出される。
【0199】
好ましくは、流動接触分解反応器は、炭化水素供給原料を流動接触分解反応器に入る前又は入る時に霧化するように構成される。反応器は、炭化水素原料を分散させて、10μm~60μmの平均直径、より好ましくは20μm~50μmの平均直径を有する液滴を形成するように配置構成されてもよい。いくつかの例では、反応器は、前記分散物を形成するために剪断エネルギーを炭化水素原料に印加するように構成されたフィードノズルを含む。ノズルは、炭化水素供給原料が流動接触分解反応器に入るときそれを霧化するように構成されてもよく、好ましくは、ノズルは、円錐形のスプレー、扇形のスプレー又はミストを生成するように構成される。
【0200】
流動接触分解反応器は、流動接触分解触媒が向流フロー、並流フロー又はクロスフロー構成で炭化水素流体フィードに接触するように配置構成され、好ましくは、流動接触分解反応器は、流動接触分解触媒が並流構成で炭化水素流体フィードに接触するように配置構成される。
【0201】
さらに、システムは、形成されるバイオオイルから失活した触媒を少なくとも部分的に分離するための手段をさらに含んでもよい。好ましくは、分離手段は、1若しくは2つ以上のサイクロンセパレーター、及び/又は1若しくは2つ以上の渦管から選択される。
【0202】
システムは、形成されるバイオオイル又は生物由来のガソリン燃料画分から硫黄含有成分を少なくとも部分的に除去するための手段をさらに含んでもよい。炭化水素供給原料から硫黄含有成分を少なくとも部分的に除去するための手段は、反応器に水素ガスを供給するための入口を含んでもよい。反応器はまた、水素化脱硫触媒、好ましくは、上で定義した通りの水素化脱硫触媒を含んでもよい。いくつかの例では、炭化水素供給原料から硫黄成分を少なくとも部分的に除去するための手段は、炭化水素原料を250℃~400℃、好ましくは300℃~350℃の温度に加熱するように配置構成された加熱体を含んでもよい。任意に、加熱体は、反応器に入る前に、炭化水素供給原料を必要な温度に加熱するように配置構成されてもよく、例として、加熱体は、熱交換機から選択されてもよい。あるいは、加熱体は、水素ガス、及び存在する場合は水素化脱硫触媒、との接触後、炭化水素供給原料を必要な温度に加熱するように配置構成されてもよい。炭化水素フィードが反応器に入った後に加熱される場合、加熱体は、上で定義した直接又は間接加熱法のうちの任意のものから選択されてもよい。いくつかの例では、炭化水素供給原料から硫黄含有成分を少なくとも部分的に除去するための手段は、4~6MPaG、好ましくは4.5~5.5MPaG、より好ましくは約5MPaGの圧力下で維持されてもよい。
【0203】
反応器は、脱硫プロセスの間に形成される硫化水素ガスを除去するための手段をさらに含んでもよく、例えば、反応器は、存在する硫化水素ガスの除去を補助するために、わずかな真空、例えば、6KPaA未満の真空圧、より好ましくは5KPaA未満の真空圧、さらにより好ましくは4KPaA未満の真空圧を提供するように配置構成されたガスセパレーターをさらに含んでもよい。
【0204】
システムは、さらなる処理ステップが実施される前に、硫黄が低減された炭化水素原料を冷却するための冷却手段、例えば、熱交換機をさらに含んでもよい。
【0205】
任意に、システムは、硫黄が低減された炭化水素供給原料を部分的に気化して、存在する微量の硫化水素を除去するための手段をさらに含んでもよい。例として、部分的に気化する手段は、周囲圧力で維持されたフラッシュセパレーター、及び気化された硫化水素を除去するための脱気装置を含んでもよい。部分的に気化する手段は、脱気ステップの間に、炭化水素供給原料を60℃~120℃の温度、より好ましくは80℃~100℃の温度に加熱するように配置構成された加熱体を含んでもよい。任意に、脱気装置は、6KPaA未満の真空圧力下で、より好ましくは5KPaA未満の真空圧力下で、さらにより好ましくは4KPaA未満の真空圧力下で維持されてもよい。
【0206】
好ましくは、反応器は、脱硫ステップ後に存在する任意の未反応の水素ガスを、反応器に入る生物由来の炭化水素供給原料にリサイクルするように構成される。このようにして、生物由来の炭化水素供給原料中の硫黄含有成分を除去するのに必要な水素ガスの量が減少し、よりコスト効果的なシステムが提供される。
【0207】
いくつかの例では、反応器は、炭化水素供給原料が、硫黄含有成分を少なくとも部分的に除去するための手段を2又は3回以上通って流動するように配置構成される。
【0208】
さらに又はあるいは、システムは、流動接触分解反応器に入る前に炭化水素供給原料から酸素含有化合物を少なくとも部分的に除去するように構成されてもよい。好ましくは、炭化水素供給原料から酸素含有化合物を少なくとも部分的に除去するための手段。いくつかの例では、手段は、反応器に炭化水素フィード及び水素ガスを供給するための入口を有する反応器を含む。いくつかの例では、反応器は、固定層又はトリクル層反応器であってもよい。反応器は、上で定義した通り、水素化脱酸素触媒をさらに含んでもよい。反応器は、例えば、上で定義した直接又は間接加熱法のうちの任意のものを使用して、炭化水素フィードを200℃~450℃、好ましくは250℃~400℃、より好ましくは280℃~350℃の温度に加熱するように配置構成された加熱体をさらに含んでもよい。
【0209】
炭化水素フィードからの酸素含有化合物を少なくとも部分的に低減するための手段は、炭化水素供給原料から、形成される水蒸気を少なくとも部分的に分離するための手段をさらに含んでもよく、例えば、形成される水蒸気を少なくとも部分的に除去するための手段は、6KPaA未満、好ましくは5KPaA未満、より好ましくは4KPaA未満の真空圧を反応器ベッセルに印加するように配置構成された真空を含んでもよい。
【0210】
任意に、システムは、さらなる処理ステップが実施される前に、酸素が低減された炭化水素供給原料の温度を低下させるための冷却手段をさらに含んでもよい。例として、冷却手段は、熱交換機を含んでもよい。
【0211】
さらに又はあるいは、システムは、酸素が低減された炭化水素供給原料中に残留する微量の水素を少なくとも部分的に除去するための脱気手段をさらに含んでもよい。特に、脱気手段は、およそ周囲圧力(本質的に大気圧を含む)でフラッシュセパレーターを含む。好ましくは、脱気手段は、酸素が低減された炭化水素原料に真空圧を印加するように構成される。より好ましくは、脱気手段は、6KPaA未満、より好ましくは5KPaA未満、さらにより好ましくは4KPaA未満の真空圧を印加するように構成される。
【0212】
好ましくは、反応器は、脱酸素ステップ後に存在する任意の未反応の水素ガスを、反応器に入る生物由来の炭化水素供給原料にリサイクルするように構成される。このようにして、生物由来の炭化水素供給原料中の酸素含有成分を除去するのに必要な水素ガスの量が減少し、よりコスト効果的なシステムが提供される。
【0213】
さらに又はあるいは、システムは、形成されるバイオオイルを水素化処理するための手段をさらに含んでもよい。バイオオイルを水素化処理するための手段は、水素化処理触媒、例えば、上で定義した通りの水素化処理触媒を含んでもよい。水素化処理する手段は、バイオオイルを250℃~350℃、好ましくは270℃~330℃、より好ましくは280℃~320℃の温度に加熱するように配置構成された加熱体をさらに含んでもよい。任意に、加熱体は、炭化水素原料を水素化処理するための手段と接触する前に、バイオオイルを必要な温度に加熱するように配置構成されてもよく、例として、加熱体は、熱交換機から選択されてもよい。あるいは、加熱体は、水素ガス、及び存在する場合は水素化処理触媒、との接触後、バイオオイルを必要な温度に加熱するように配置構成されてもよい。炭化水素フィードが水素化処理手段の接触に続いて加熱される場合、加熱体は、上で定義した直接又は間接加熱法のうちの任意のものから選択されてもよい。いくつかの例では、水素化処理ステップを実施するために使用される場合、反応器は、4~6MPaG、好ましくは4.5~5.5MPaG、より好ましくは約5MPaGの圧力下で維持されてもよい。
【0214】
システムは、さらなる処理ステップが実施される前に、水素化処理されたバイオオイルを冷却するための冷却手段、例えば、熱交換機をさらに含んでもよい。
【0215】
任意に、システムは、バイオオイルからLPGガスを少なくとも部分的に分離するための手段を含んでもよい。特に、システムは、ガスコンデンサー及び/又はガスセパレーターなどの脱気手段をさらに含んでもよい。いくつかの例では、脱気手段は、真空圧をバイオオイルに印加するように構成される。より好ましくは、脱気手段は、6KPaA未満、より好ましくは5KPaA未満、さらにより好ましくは4KPaA未満の真空圧を印加して、LPGガスを少なくとも部分的に除去するように構成される。
【0216】
セパレーターは、大気圧(すなわち、およそ101.3KPa)で、30℃~220℃、好ましくは50℃~210℃、例えば70℃~200℃のカットポイントを有する、精製バイオオイルの第1の分画カットを分離するように構成されてもよい。あるいは、セパレーターは、第1の分画カットが850~1000Pa、好ましくは900~950Paの圧力で分離されるように配置構成されてもよい。
【0217】
セパレーターは、第1の分画カットを冷却するための手段をさらに含んでもよく、例えば、冷却手段は、熱交換機から選択されてもよい。
【0218】
任意に、セパレーターはまた、280℃~320℃、好ましくは290℃~310℃、より好ましくは約300℃のカットポイントを有する第2の分画カットを分離するように構成されてもよい。第2の分画カットは、一般に、生物由来のジェット燃料を含む。
【0219】
さらなる選択肢として、セパレーターは、底流中の残留するバイオオイルが生物由来のディーゼル燃料であることを照合するように配置構成されてもよい。
【0220】
一部の実施形態では、セパレーターは、分留カラムから選択される。
【0221】
本明細書において定義される通りの本発明が添付図面に示される。
【図面の簡単な説明】
【0222】
【
図1】本発明に従ってバイオマス供給原料からバイオガソリン燃料を形成するプロセスのフロー図である。
【
図2】本発明に従って生物由来の炭化水素供給原料からバイオガソリン燃料を形成するプロセスのフロー図である。
【
図3-2】標準的なFFCプロセスに基づいて燃料を形成する公知の方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0223】
図1は、流動接触分解反応器を介してバイオマス供給原料からバイオガソリン燃料を形成する簡略化されたプロセス(10)を示す。破線で示されるプロセスステップは、任意のプロセスステップであると理解されるべきである。
【0224】
バイオマス供給原料流(12)は、バイオマス供給原料の水分含有量を確実に、バイオマス供給原料の10重量%以下にするために、原料オーブン又は乾燥機(14)にフィードされる。供給原料オーブン又は乾燥機は、バイオマス材料から除去された任意の水蒸気を分離するための出口(16)をさらに含んでもよい。低水分バイオマス材料は、次いで、熱分解反応器(18)に供給されてもよく、ここで、低水分バイオマス材料は、少なくとも1000℃、より好ましくは少なくとも1100℃、例えば、1120℃、1150℃、又は1200℃の温度に加熱される。バイオマス材料は、低圧下、例えば、850~1,000Pa、好ましくは、900~950Paで熱分解されてもよい。熱分解反応器は、熱分解ステップが実施される前に熱分解反応器に窒素又はアルゴンなどの不活性ガスを供給するための入口(20)をさらに含む。得られた熱分解ガスは、続いて、熱分解反応器から出口(22)を介して除去されうる。熱分解反応器は、バイオ炭などの熱分解反応の間に形成される任意の残留固体を除去するためのさらなる出口(24)をさらに含む。炭化水素供給原料生成物は、ろ過法(例えば、セラミックフィルターの使用)、遠心分離、サイクロン又は重力分離を使用して、形成されるバイオ炭から少なくとも部分的に分離されてもよい。
【0225】
熱分解反応器(22)から抽出される熱分解ガスは、形成される熱分解ガスを凝縮して、炭化水素供給原料生成物及び非凝縮性軽ガスを生成するために冷却手段(26)に供給され、炭化水素供給原料は、次いで、蒸留カラム(28)に移送されえ、ここで、非凝縮性軽ガスは、蒸留カラムの上部(30)から除去され、炭化水素供給原料は、蒸留カラムの底部(32)から除去される。炭化水素供給原料生成物から分離された非凝縮性軽ガス(30)は、低水分バイオマス供給原料流(18)に少なくとも部分的にリサイクルされてもよい。分離された炭化水素供給原料(32)は、セパレーター(34)に供給されて、炭化水素供給原料生成物(32)から水が少なくとも部分的に除去される。例えば、セパレーターは、重力油分離装置、遠心分離、サイクロン又はマイクロバブル分離手段を含んでもよい。セパレーターは、水が炭化水素供給原料から除去されうる第1の出口(36)、及び水が低減された炭化水素供給原料が得られうる第2の出口(38)を含む。
【0226】
水が低減された炭化水素供給原料は、その中に含有された炭素、グラフェン、ポリ芳香族化合物及びタールなどの夾雑物を少なくとも部分的に除去するために、反応器(40)にフィードされうる。反応器は、より大きな及びより小さな夾雑物それぞれを除去するための膜又はヌッチェなどのフィルターを含んでもよい。あるいは又はさらに、多環式芳香族化合物などの夾雑物を除去するための活性炭素化合物及び/又は架橋有機炭化水素樹脂。活性化炭素の代替として、反応器は、低水分炭化水素フィードから夾雑物を除去するためのバイオ炭を含んでもよい。反応器は、炭化水素供給原料から夾雑物を分離するための出口(42)を含む。炭化水素供給原料から分離された夾雑物がタールを含む場合、分離されたタールは、少なくとも部分的にリサイクルされ、低水分バイオマス供給原料流(18)と組み合わせられうる。
【0227】
処理された炭化水素供給原料(44)は、次いで、水素化脱酸素触媒を含む脱酸素反応器(48)にフィードされてもよく、ここで、反応器は、水素含有ガスを脱酸素反応器(48)に供給するための入口(50)をさらに含む。脱酸素反応器は、炭化水素供給原料(44)、水素含有ガス及び水素化脱酸素触媒を200℃~450℃、好ましくは250℃~400℃、より好ましくは280℃~350℃の温度に加熱する。
【0228】
低減された酸素を含有する炭化水素供給原料(52)は、次いで、流動接触分解反応器(54)に供給される。流動接触分解システムの一例も
図3に示される。
図1は、流動接触分解反応器が、炭化水素原料及び/又は流動接触分解触媒を反応器にフィードするための流動接触分解反応器(54)の底部又はその近くの入口(56)、並びに流動接触分解反応器(54)の上部又はその近くの出口(58)を含むことを示し、ここで、形成されるバイオオイル及び失活触媒は、流動接触分解反応器(54)から抽出される。流動接触分解反応器は、炭化水素供給原料及び流動接触分解触媒を少なくとも400℃の温度に、好ましくは400℃~800℃の温度で、より好ましくは450℃~750℃の温度、より好ましくは500℃~700℃の温度で加熱する。流動接触分解プロセスは、0.05MPa~10MPa、好ましくは0.1MPa~8MPa、より好ましくは0.5MPa~6MPaの圧力で実施されてもよい。
【0229】
失活した触媒(60)は、形成されるバイオオイルから少なくとも部分的に分離される。分離ステップは、好ましくは、1若しくは2つ以上のサイクロンセパレーター、及び/又は1若しくは2つ以上の渦管を使用して行われる。
【0230】
分離されたバイオオイル(62)は、水素化脱硫触媒を含む脱硫反応器(64)にフィードされ、ここで、脱硫反応器は、水素含有ガスを反応器に供給するための入口(66)をさらに含む。脱硫反応器は、バイオオイル、水素含有ガス及び水素化脱硫触媒を250℃~400℃、好ましくは300℃~350℃の温度に加熱する。
【0231】
脱硫ステップは、4~6MPaG、好ましくは4.5~5.5MPaG、より好ましくは約5MPaGの圧力で実施されてもよい。
【0232】
脱硫反応器は、バイオオイルから形成される硫化水素を除去するためのガスセパレーターをさらに含んでもよい。任意に、硫黄が低減されたバイオオイル及び/又はガソリン燃料画分は、次いで、当技術分野で公知のいずれか適切な手段によって例えば、熱交換機の使用によって、冷却されてもよい。硫黄が低減されたバイオオイル、及び/又は硫黄が低減されたガソリン燃料画分中に残留する微量の硫化水素は、続いて、例えば、およそ周囲圧力でフラッシュセパレーターの使用による部分気化、及び気化した硫化水素の脱気による除去により除去されてもよい。好ましくは、バイオオイル及び/又はガソリン燃料画分は、脱気ステップの間、60℃~120℃の温度を有し、より好ましくは、バイオオイル及び/又はガソリン燃料画分は、80℃~100℃の温度を有する。脱気ステップは、真空下で、好ましくは6KPaA未満の真空圧力下で、より好ましくは5KPaA未満の真空圧力下で、さらにより好ましくは4KPaA未満の真空圧力下で実施されてもよい。
【0233】
脱気ステップの間に除去された任意の未反応の富水素ガス(68)は、例えば、アミン接触器の使用により硫化水素から分離されてもよい。分離されたガスは、次いで、少なくとも部分的にリサイクルされ、低減された酸素を含有する炭化水素原料(52)と組み合わせられる。
【0234】
硫黄が低減されたバイオオイルは、次いで、バイオオイル中に存在する不飽和炭化水素官能基の数を低減し、かつバイオオイルをより高いエネルギー密度を有するより安定な燃料に有利に変換するための水素化処理触媒を含む水素化処理反応器(70)にフィードされる。
【0235】
水素化処理反応器は、水素含有ガスを反応器に供給するための入口(72)をさらに含む。水素化処理反応器は、バイオオイル、水素含有ガス及び水素化処理触媒を250℃~350℃、好ましくは270℃~330℃、より好ましくは280℃~320℃の温度に加熱する。
【0236】
水素化処理ステップは、4MPaG~6MPaG、好ましくは4.5MPaG~5.5MPaG、より好ましくは約5MPaGの反応圧力で実施されてもよい。
【0237】
水素化処理されたバイオオイル(74)は、次いで、分留カラム(76)に移送され、ここで、分留カラムは、大気圧(本質的に大気条件を含む)で、30℃~220℃、好ましくは50℃~210℃、例えば70℃~200℃のカットポイントを有する、精製バイオオイルの第1の分画カットを分離する。あるいは、分画ステップは、850~1000Pa、好ましくは900~950Paの圧力で実施されてもよい。第1の分画カットは、分留カラムから出口(78)を介して除去されうる。第1のカット画分は、生物由来のガソリン燃料画分である。
【0238】
脱硫反応器(64)を介して、又はこの脱硫ステップの代わりに、バイオオイルの硫黄含有化合物を低減することに加えて、バイオ燃料中の硫黄含有成分を少なくとも部分的に除去するために、生物由来のガソリン燃料(78)は、脱硫反応器(80)にフィードされてもよい。脱硫反応器(80)は、上で定義した通りである。
【0239】
プロセス(10)は、触媒ストリップ反応器及び触媒再生反応器を含む触媒再生器(82)をさらに含んでもよい。バイオオイルから分離された失活した触媒(60)は、その上に吸収された触媒分解生成物を除去するために、触媒ストリップ反応器に少なくとも部分的にリサイクルされる。ストリップするステップは、失活した触媒を、400℃~800℃、好ましくは400℃~700℃、より好ましくは450℃~650℃の温度でスチームを含むガスと接触させるステップを含む。あるいは、失活した触媒は、まず、スチームを含むガスと接触させられてもよく、続いて、所望の温度に加熱される。
【0240】
ストリップするステップの間に除去された生成物(84)は、少なくとも部分的にリサイクルされ、バイオオイル(62)と組み合わせられてもよい。
【0241】
ストリップされた流動接触分解触媒は、次いで、再生反応器中で550℃以上の温度で空気又は空気及び酸素の混合物と接触させられて、再生された接触分解触媒、熱及び二酸化炭素を生成する。好ましくは、ストリップされた流動接触分解触媒は、再生器中で550℃~950℃、好ましくは575℃~900℃、より好ましくは600℃~850℃の温度で空気又は空気及び酸素の混合物と接触させられる。
【0242】
再生するステップは、0.05MPa~1MPaの圧力、好ましくは0.1MPa~0.6MPaの圧力で実施されてもよい。
【0243】
再生された流動接触分解触媒(86)は、次いで、流動接触分解反応器(54)に少なくとも部分的にリサイクルされる。
【0244】
図2は、生物由来の炭化水素供給原料からバイオガソリン燃料を形成する代替の簡略化されたプロセス(110)を示す。破線で示されるプロセスステップは、任意のプロセスステップであると理解されるべきである。
【0245】
少なくとも0.1重量%の1又は2種以上のC8化合物、少なくとも1重量%の1又は2種以上のC10化合物、少なくとも5重量%の1又は2種以上のC12化合物、少なくとも5重量%の1又は2種以上のC16化合物、及び少なくとも30重量%の少なくとも1又は2種以上のC18化合物を含む生物由来の炭化水素供給原料(144)が、水素化脱酸素触媒を含む脱酸素反応器(148)にフィードされ、ここで、反応器は、水素含有ガスを脱酸素反応器(148)に供給するための入口(150)をさらに含む。脱酸素反応器は、生物由来の炭化水素供給原料(144)、水素含有ガス及び水素化脱酸素触媒を200℃~450℃、好ましくは250℃~400℃、より好ましくは280℃~350℃の温度に加熱する。
【0246】
低減された酸素を含有する炭化水素供給原料(152)は、次いで、流動分解触媒反応器(154)に供給される。流動接触分解システムの一例も
図3に示される。
図2は、流動接触分解反応器が、炭化水素供給原料及び/又は流動接触分解触媒を反応器にフィードするための流動接触分解反応器(154)の底部又はその近くの入口(156)、並びに流動接触分解反応器(154)の上部又はその近くの出口(158)を含むことを示し、ここで、形成されるバイオオイル及び失活触媒は、流動接触分解反応器(154)から抽出される。流動接触分解反応器は、炭化水素供給原料及び流動接触分解触媒を少なくとも400℃の温度に、好ましくは400℃~800℃の温度で、より好ましくは450℃~750℃の温度、より好ましくは500℃~700℃の温度で加熱する。流動接触分解プロセスは、0.05MPa~10MPa、好ましくは0.1MPa~8MPa、より好ましくは0.5MPa~6MPaの圧力で実施されてもよい。
【0247】
失活した触媒(160)は、形成されるバイオオイルから少なくとも部分的に分離される。分離ステップは、好ましくは、1若しくは2つ以上のサイクロンセパレーター、及び/又は1若しくは2つ以上の渦管を使用して行われる。
【0248】
分離されたバイオオイル(162)は、水素化脱硫触媒を含む脱硫反応器(164)にフィードされ、ここで、脱硫反応器は、水素含有ガスを反応器に供給するための入口(166)をさらに含む。脱硫反応器は、バイオオイル、水素含有ガス及び水素化脱硫触媒を250℃~400℃、好ましくは300℃~350℃の温度に加熱する。
【0249】
脱硫ステップは、4~6MPaG、好ましくは4.5~5.5MPaG、より好ましくは約5MPaGの圧力で実施されてもよい。
【0250】
脱硫反応器は、バイオオイルから形成される硫化水素を除去するためのガスセパレーターをさらに含んでもよい。任意に、硫黄が低減されたバイオオイル及び/又はガソリン燃料画分は、次いで、当技術分野で公知のいずれか適切な手段によって例えば、熱交換機の使用によって、冷却されてもよい。硫黄が低減されたバイオオイル、及び/又は硫黄が低減されたガソリン燃料画分中に残留する微量の硫化水素は、続いて、例えば、およそ周囲圧力でフラッシュセパレーターの使用による部分気化、及び気化した硫化水素の脱気による除去により除去されてもよい。好ましくは、バイオオイル及び/又はガソリン燃料画分は、脱気ステップの間、60℃~120℃の温度を有し、より好ましくは、バイオオイル及び/又はガソリン燃料画分は、80℃~100℃の温度を有する。脱気ステップは、真空下で、好ましくは6KPaA未満の真空圧力下で、より好ましくは5KPaA未満の真空圧力下で、さらにより好ましくは4KPaA未満の真空圧力下で実施されてもよい。
【0251】
脱気ステップの間に除去された任意の未反応の富水素ガス(168)は、例えば、アミン接触器の使用により硫化水素から分離されてもよい。分離されたガスは、次いで、少なくとも部分的にリサイクルされ、低減された酸素を含有する炭化水素供給原料(152)と組み合わせられる。
【0252】
硫黄が低減されたバイオオイルは、次いで、バイオオイル中に存在する不飽和炭化水素官能基の数を低減し、かつバイオオイルをより高いエネルギー密度を有するより安定な燃料に有利に変換するための水素化処理触媒を含む水素化処理反応器(170)にフィードされる。
【0253】
水素化処理反応器は、水素含有ガスを反応器に供給するための入口(172)をさらに含む。水素化処理反応器は、バイオオイル、水素含有ガス及び水素化処理触媒を250℃~350℃、好ましくは270℃~330℃、より好ましくは280℃~320℃の温度に加熱する。
【0254】
水素化処理ステップは、4MPaG~6MPaG、好ましくは4.5MPaG~5.5MPaG、より好ましくは約5MPaGの反応圧力で実施されてもよい。
【0255】
水素化処理されたバイオオイル(174)は、次いで、分留カラム(176)にフィードされ、ここで、分留カラムは、大気圧(本質的に大気条件を含む)で、30℃~220℃、好ましくは50℃~210℃、例えば70℃~200℃のカットポイントを有する、精製バイオオイルの第1の分画カットを分離する。あるいは、分画ステップは、850~1000Pa、好ましくは900~950Paの圧力で実施されてもよい。第1の分画カットは、分留カラムから出口(178)を介して除去されうる。第1のカット画分は、生物由来のガソリン燃料画分である。
【0256】
脱硫反応器(164)を介して、又はこの脱硫ステップの代わりに、バイオオイルの硫黄含有化合物を低減することに加えて、バイオ燃料中の硫黄含有成分を少なくとも部分的に除去するために、生物由来のガソリン燃料(178)は、脱硫反応器(180)にフィードされてもよい。脱硫反応器(180)は、上で定義した通りである。
【0257】
プロセス(110)は、触媒ストリップ反応器及び触媒再生反応器を含む触媒再生器(182)をさらに含んでもよい。バイオオイルから分離された失活した触媒(160)は、吸収された触媒分解生成物を除去するために、触媒ストリップ反応器にフィードされる。ストリップするステップは、失活した触媒を、400℃~800℃、好ましくは400℃~700℃、より好ましくは450℃~650℃の温度でスチームを含むガスと接触させるステップを含む。あるいは、失活した触媒は、まず、スチームを含むガスと接触させられてもよく、続いて、所望の温度に加熱される。
【0258】
ストリップするステップの間に除去された生成物(184)は、少なくとも部分的にリサイクルされ、バイオオイル(162)と組み合わせられてもよい。
【0259】
ストリップされた流動接触分解触媒は、次いで、再生反応器中で550℃以上の温度で酸素含有ガスと接触させられて、再生された接触分解触媒、熱及び二酸化炭素を生成する。好ましくは、再生器中の550℃~950℃、好ましくは575℃~900℃、より好ましくは600℃~850℃の温度の酸素含有ガスとのストリップされた流動接触分解触媒。
【0260】
再生するステップは、0.05MPa~1MPaの圧力、好ましくは0.1MPa~0.6MPaの圧力で実施されてもよい。
【0261】
再生された流動接触分解触媒(186)は、次いで、流動接触分解反応器(154)に少なくとも部分的にリサイクルされる。
【国際調査報告】