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特表2024-503359高次電圧出力成分の連続補正に基づく磁気センサ出力の線形化
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】高次電圧出力成分の連続補正に基づく磁気センサ出力の線形化
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/09 20060101AFI20240118BHJP
   G01R 35/00 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
G01R33/09
G01R35/00 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540805
(86)(22)【出願日】2021-11-19
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 IB2021060743
(87)【国際公開番号】W WO2022144621
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】63/132,089
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523250120
【氏名又は名称】クロッカス・テクノロジー・インコーポレイティド
(71)【出願人】
【識別番号】509096201
【氏名又は名称】クロッカス・テクノロジー・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 友子
(72)【発明者】
【氏名】セラーノ・ギザン・サンティアゴ
(72)【発明者】
【氏名】アテシュ・グルカン・ハカン
(72)【発明者】
【氏名】アラウィ・アリ
(72)【発明者】
【氏名】モハン・アヌラーグ
【テーマコード(参考)】
2G017
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AA10
2G017AB07
2G017AD55
2G017BA09
2G017BA10
2G017BA15
(57)【要約】
【課題】感度を低下させることなく磁気抵抗センサの線形性を改善する。
【解決手段】本開示は、外部磁場の存在下で磁気抵抗センサによって提供される出力信号を補正する補正方法に関し、この補正方法は、
出力電圧の高次成分信号の振幅による線形応答からの出力信号の偏差を決定することと、
補正出力信号が変動範囲内の外部磁場の変化に比例して変化するように、高次成分信号の出力信号を補償することにより、補正出力信号を決定することとを備える。本開示はさらに、複数の磁気抵抗センサについて、補正方法を実行する際に使用される共通の変数を導出する方法及び特性評価方法を実行するように構成された集積回路(IC)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部磁場(H)の存在下で磁気抵抗センサによって提供される出力信号(Vout)を補正する補正方法であって、
前記出力信号(Vout)の高次成分信号(Vho)の振幅による線形応答からの前記出力信号の偏差を決定することと、
前記高次成分信号(Vho)に対する前記出力信号(Vout)を補償することによって、補正出力信号(Vcorr)が、前記出力信号(Vout)の線形誤差より小さな線形誤差を持つように、補正出力信号(Vcorr)を決定することと
を備える、補正方法。
【請求項2】
前記出力信号(Vout)が
【数1】
によって記述され、ここで、aがオフセット係数であり、aが1次係数であって、
前記高次成分信号(Vho)が少なくとも3次係数aによって記述されている、請求項1に記載の補正方法。
【請求項3】
前記出力信号(Vout)を複数の重ならない出力信号区分(Vout,i)に区分することであって、各出力信号区分(Vout,i)が区分遷移しきい値(Vi)によって区分けされている、前記区分することを備え、
各出力信号区分(Vout,i)が、相当する補正出力信号区分(Vout,i)を得る線形方程式によって近似されている、請求項1又は2に記載の補正方法。
【請求項4】
各出力信号区分(Vcorr,i)内の前記補正出力信号(Vcorr)が、
【数2】
によって決定され、ここで、AiとBiが区分係数である、請求項3に記載の補正方法。
【請求項5】
各出力信号区分(Vout,i)が、iがi番目の区分を示す指標であって、d0iがオフセット係数であり、d1iが1次係数であるところの
【数3】
によって近似され、ここでは、
【数4】
である、請求項4に記載の補正方法。
【請求項6】
前記高次成分信号(Vho)の負値に近いか等しい追加信号(Vsub)を決定することを備え、
補正出力信号(Vcorr)を前記決定することが、前記追加信号(Vsub)を前記出力信号(Vout)に加算することによって前記高次成分信号(Vho)用に前記出力信号(Vout)を補うことを備える、請求項1に記載の補正方法。
【請求項7】
前記追加信号(Vsub)がVout に比例する、請求項6に記載の補正方法。
【請求項8】
前記追加信号(Vsub)が、
2j+1が、前記出力信号Voutの各2j+1次成分の比例因数を決定する係数である、
【数5】
のような前記出力信号(Vout)の3次成分より複数の高次成分に比例する追加の事項をさらに備える、請求項6に記載の補正方法。
【請求項9】
前記追加信号(Vsub)が
【数6】
によって定義され、
ここでH
【数7】
によって定義され
【数8】
を伴い、0.5<C<4を伴い、
ここで、aが前記出力信号(Vout)の線形係数であり、aが前記出力信号(Vout)の3次係数であり、それにより前記補正出力信号(Vcorr)が
【数9】
によって定義される、請求項6に記載の補正方法。
【請求項10】

【数10】
によって定義され、ここで
【数11】
であり、ここで、それぞれaが前記出力信号(Vout)の線形係数であり、aが前記出力信号(Vout)の3次係数である、請求項9に記載の補正方法。
【請求項11】
前記追加信号(Vsub)が
【数12】
前記補正出力信号(Vcorr)が
【数13】
によって定義されるように、
は、与えられた磁場Hについての前記出力信号(Vout)の線形適合によって決定される線形係数であり、
は前記出力電圧の3次係数である、請求項6に記載の補正方法。
【請求項12】
追加信号(Vsub)を決定するとき、信号オフセット(V)が前記出力信号(Vout)に加算される、請求項8から11のいずれか一項に記載の補正方法。
【請求項13】
請求項1から12に記載の方法をコンピュータに実行させるプログラムを記憶している、非一過性のコンピュータ可読媒体。
【請求項14】
請求項3から13のいずれか一項に記載された方法を実施するように構成されている集積回路(IC)。
【請求項15】
前記出力信号区分(Vout,i)と、前記補正出力信号区分(Vout,i)と、前記区分遷移しきい値(V)が電圧を備え、前記ICが少なくとも1つの比較器(10)を備え、前記比較器(10)に前記出力信号(Vout)と前記区分遷移しきい値(V)の1つが入力される、請求項14に記載のIC。
【請求項16】
前記複数の補正出力信号区分(Vcorr,i)の1つを少なくとも1つの前記比較器(10)の出力に基づいて選択するように構成されたマルチプレクサ(11)を備える、請求項15に記載のIC。
【請求項17】
各前記出力信号区分(Vout,i)内の前記補正電圧出力が、AiとBiが区分係数であるところの
【数14】
によって決定され、前記比較器(10)が前記区分係数AiとBiを選択するように構成されている、請求項14に記載のIC。
【請求項18】
少なくとも1つの前記比較器(10)の前記出力が、補正電圧()を生成する補正電圧生成器に接続され、
センサの出力電圧(Vout)が区分遷移しきい値(V)より小さいとき、前記ICがセンサの出力電圧(Vout)を出力して、
前記センサの出力電圧(Vout)が前記区分遷移しきい値(vi)より大きいとき、前記センサの出力電圧(Vout)と前記補正電圧との合計を出力するように構成されている、請求項14に記載のIC。
【請求項19】
第1電圧電流変換回路(15b)が第1電流(icorr2)を生成するように構成されていて、ここで
前記第1電流(icorr2)は、前記センサの出力電圧信号(Vout)がしきい値信号(V)より大きいとき、前記センサの出力電圧信号(Vout)と前記しきい値信号(V)との差の関数であり、
前記第1電流(icorr2)は前記センサの出力電圧信号(Vout)が前記しきい値信号(V)より小さいときゼロであり、
前記第1電流(icorr2)が補正抵抗(R)に供給されるとき補正出力信号(Vcorr)を生成する、前記センサ出力電圧信号(Vout)と前記補正出力信号(Vcorr)の間の補正抵抗(R)が構成されている、請求項14に記載のIC。
【請求項20】
前記第1電流(icorr2)は、前記センサの出力電圧信号(Vout)が前記しきい値信号(V)より大きいとき、前記センサの出力電圧信号(Vout)と前記しきい値信号(V2)との差の線形関数である、請求項19に記載のIC。
【請求項21】
前記電圧電流変換回路(15b)が、
第1入力電圧端子がしきい値信号に接続されていて、第2入力端子がトランジスタ(16)の第1端子に接続されているオペアンプ(13)を備え、
前記オペアンプ(13)の前記出力が前記トランジスタ(16)の第2端子を直接駆動して、前記トランジスタ(16)の第3端子が前記電圧電流変換回路の電流出力端子として作動する、請求項20に記載のIC。
【請求項22】
前記電圧電流変換回路(15b)がMOSトランジスタを備える、請求項20に記載のIC。
【請求項23】
前記出力信号(Vout)に依存する追加信号(Vsub)を提供するように、かつ請求項6から12のいずれか一項に記載された補正する方法を実施するように構成された、集積回路(IC)。
【請求項24】
前記追加信号(Vsub)が、少なくとも1個の電圧乗算器(12)によって決定される、請求項23に記載のIC。
【請求項25】
前記補正出力信号(Vcorr)が
【数15】
となる少なくとも1個の電圧増幅器(13)をさらに備える、請求項24に記載のIC。
【請求項26】
前記出力信号(Vout)が入力され、比較器(10)の出力が少なくとも1個のマルチプレクサ(11)と、1個のデマルチプレクサとの少なくとも一方の起動、もしくはマルチプレクサ及びデマルチプレクサの任意の組み合わせの起動に使われる、比較器(10)と、
前記出力信号(Vout)の各極性について、少なくとも1個の電圧乗算器(12)によって決定される前記追加信号(Vsub)を決定するように構成された、少なくとも1個の反転増幅器(13)と
を少なくともさらに備える、請求項24又は25に記載のIC。
【請求項27】
信号オフセット(V0)が前記出力信号(Vout)に加算されて、
前記信号オフセット(V0)と前記出力信号(Vout)との合計に相当する入力信号(Vin)が前記少なくとも1個の電圧乗算器(12)に入力される、請求項24から26のいずれか一項に記載のIC。
【請求項28】
前記追加信号(Vsub)を決定するように構成された、少なくとも1個のアナログ多目的ユニット(AMU)(14a又は14b)を備える、請求項23に記載のIC。
【請求項29】
前記少なくとも1個のAMU(14a又は14b)が、少なくとも対数比と、対数と、前記入力電圧(Vin)をnのべき数で計算するように構成された反対数オペアンプ(13)に基づき、nが前記AMUシステムの内部構成部品によって定義される変数である、請求項28に記載のIC。
【請求項30】
比較器(10)と、
マルチプレクサ(11)とデマルチプレクサ(11)との少なくとも一方と、
少なくとも1個の反転増幅器(13)とを少なくともさらに備えて、少なくとも1個のAMU(14a,14b)が前記追加信号(Vsub)を前記出力信号(Vout)の極性とは独立に決定する、請求項28又は29に記載のIC。
【請求項31】
ゲインG1を持つ第1電圧増幅器(13a)と、ゲインG2を持つ第2電圧増幅器(13b)をさらに備え、
オフセット信号(V)が前記出力信号(Vout)に加算されて、前記オフセット信号(V0)と前記出力信号(Vout)の合計に相当する入力信号(Vin)が、前記少なくとも2個のAMU及び前記第1電圧増幅器(13a)に入力され、
前記補正出力信号(Vcorr)が、前記AMU(14a,14b)の前記出力電圧に前記第1及び第2電圧増幅器(13a,13b)の前記出力電圧を足した合計である、請求項28又は29に記載のIC。
【請求項32】
前記AMU(14a)の1個が、2のべき数で前記入力信号(Vin)を計算するように構成されていて、
別のAMU(14b)が、3のべき数で前記入力信号(Vin)を計算するように構成されている、請求項31に記載のIC。
【請求項33】
前記追加信号(Vsub)を前記出力信号(Vout)からデジタルで決定するように構成されたデジタルシステム(DS)を備える、請求項23に記載のIC。
【請求項34】
デジタルの補正出力信号(Vcorr)が最終出力として取得されるように、前記補正する方法が前記DSによって実施される、請求項33に記載のIC。
【請求項35】
補正出力信号(Vcorr)が前記出力信号(Vout)及びアナログの追加信号(Vsub)の加算によって取得されるように、デジタルで決定された追加信号(Vsub)からアナログの追加信号(Vsub)を取得するように構成されたデジタルアナログ変換器(DAC)をさらに備える、請求項33に記載のIC。
【請求項36】
複数の磁気抵抗センサに共通変数を導出する特性評価方法であって、
請求項6から12のいずれか一項に記載の補正する方法を実施するとき、前記共通の変数が使われる、特性評価方法。
【請求項37】
前記出力信号(Vout)が
【数16】
によって記述され、ここでaはオフセット係数であり、aが1次係数であり、前記高次成分信号(Vh0)が少なくとも3次係数aによって記述され、
前記補正する方法が、前記高次成分電圧信号(Vh0)の負値に相当する追加電圧信号(Vsub)を決定することを備え、
補正出力信号(Vcorr)を前記決定することが、前記高次成分信号電圧(Vh0)用に補正される前記出力電圧信号(Vout)に、前記追加電圧信号(Vsub)を前記出力信号電圧(Vout)に加算することによって補正することを備え、前記特性評価方法が、
複数の磁気抵抗センサを提供して、各磁気抵抗センサについて出力信号(Vout)を測定することと、
測定した出力信号(Vout)を
【数17】
に適合することで、オフセット係数aと、1次係数aと、少なくとも3次係数aとを決定することと、
前記近似オフセット係数c及び前記近似1次係数cを前記測定された出力信号(Vout)を
【数18】
によって適合することで決定することと、
決定された前記オフセット係数aと、1次係数aと、少なくとも3次係数aと、近似オフセット係数cと、近似1次係数cについて、中央値を決定することと、
を備える、請求項36に記載の特性評価方法。
【請求項38】
前記磁気抵抗センサが、前記磁気抵抗センサの最大作動磁場範囲(H)に相当する外部磁場(H)に出されると、前記出力信号(Vout)を前記測定することが行われる、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記複数の磁気抵抗センサが、ウェーハ内に備わった複数の磁気抵抗センサの下位のセットを備える、請求項37又は38に記載の方法。
【請求項40】
前記磁気抵抗センサが、少なくとも5個の異なる磁場の大きさに相当する外部磁場(H)に出されると、出力信号(Vout)を前記測定することが行われ、前記少なくとも5個の異なる磁場の大きさが、
前記磁気抵抗センサの最大作動磁場範囲(-H,H)に相当する高磁場と、
低磁場Hとの間に備わっていて、前記低磁場Hでは、前記出力信号(Vout)は
【数19】
で記述される磁場範囲(-H,H)内で線形依存性に従い、それによりオフセットaと線形係数aを出力電圧Voutの線形適合によって決定できるようにし、ここでは前記少なくとも3次係数a
【数20】
によって導出され、ここでVout_H2が前記最大作動磁場範囲(H)にて測定された出力電圧である、前記磁場範囲(-H,H)内の線形依存性に従っていて、
前記測定された出力信号
【数21】
を、任意の所望の磁場行程にて-HからHの範囲の磁場について以前決定された係数aと、係数aと、係数aとから再構築することと、
近似オフセット係数c及び近似1次係数cを前記測定された出力信号(Vout)を前記最大作動磁場範囲(-H,H)にわたって
【数22】
に適合することで決定することと、
前記決定されたオフセット係数aと、1次係数aと、少なくとも3次係数aと、近似オフセット係数cと、近似1次係数cとに対する前記中央値を決定することと
を備える、請求項37に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外部磁場の存在下でトンネル磁気抵抗センサによって提供される出力電圧信号を補正する補正方法及びこの方法を実行するように構成された集積回路(IC)に関する。本開示はさらに、複数の磁気抵抗センサについて、補正方法を実行する際に使用される共通の変数を導出する特性評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
線形磁気センサには、民生用、産業用、車載用の多くの用途がある。電流検出、位置決め、近接検出、生体認証検知などがその一例である。トンネル磁気抵抗(TMR)効果に基づく磁気トンネル接合(MTJ)を用いたセンサ技術(以下、TMRセンサ)は、高感度、信号対雑音比(SNR)、温度依存性、長期安定性、ダイサイズの全般的な小型化により、AMR効果、巨大磁気抵抗(GMR)効果、ホール効果に基づく競合技術の中でも優れている。
【0003】
TMRセンサは、各磁気抵抗効果素子がMTJを備える、1つ又は複数の磁気抵抗効果素子を備えてよい。MTJは、帯域幅、消費電力、ノイズなどの特定の用途の要件を満たすために、さまざまな直列及び並列の組み合わせで接続される。一般に、このようなTMRセンサはホイートストンブリッジ配置で構成され、外部の与えられた磁場にほぼ比例する出力電圧(Vout)を提供する。しかしながら、磁場が大きいほど、完全な線形応答からのVoutの偏差が大きくなる。
【0004】
このような磁気抵抗センサセンサの線形性は、一般に、より広い動作磁場範囲を可能にする新しい磁気スタック(積み重ねたもの)の開発によって改善できる。しかしながら、線形性の向上は通常、センサの感度の低下を犠牲にして行われる。
【0005】
外部磁場(H)Vout下でのTMRセンサの典型的な応答は、次式で近似できる。
【数1】
【0006】
ここで、aはセンサオフセット、a、aはそれぞれ線形成分と3次成分の係数である。通常、ai>>aは、さらに高次の成分(第5、第7、第9、...)は無視できることを意味し、ここでは考慮されない。式1で与えられた近似は、異なる磁気スタックを持つ多くのTMRセンサの測定に基づいていて、本開示の目的のためにセンサの挙動を正確に反映することが見い出された。
【0007】
図1は、異なる磁場範囲に対する線形TMRセンサから得られる線形性誤差を示す。Voutを一次関数に当てはめると、線形性誤差は、考慮された磁場範囲(図1の破線を参照)が40mT未満の磁場範囲に対して1%未満に達するにつれて急速に増加する。Voutに追加の高次成分が存在することによる線形性誤差のこの急速な増加は、そのようなセンサの動作磁場範囲を制限する。それゆえ、3次係数と線形係数(a/a)の比は、固定磁場範囲又は作業磁場範囲でのセンサの線形性誤差を決定し、特定の値未満の線形性誤差を取得する(図2a及び2bを参照)。図1において、黒い点は
【数2】
を考慮した線形性誤差を示す一方、白抜き点は、
【数3】
を考慮することによって導出される線形性誤差を示す。
【0008】
図2aは磁場範囲100mTの線形性誤差対a/a比のシミュレーションを示し、図2bは線形性誤差が0.5%未満の、対a/a比の場合の最大磁場範囲を示す。
【0009】
市販の線形TMRセンサは通常最大40mTで動作するが、高精度(<0.1%)の線形応答が必要な場合(外科用又は航空宇宙用の正確な位置決めなど)、又はより大きな磁場(最大100mT)が関与する用途がいくつかある。
【0010】
よって、高い線形Vout応答を保証するMTJスタックの開発は、センサの線形性を向上可能だが、センサの感度を犠牲にする。ルックアップテーブルベースの解決策又は補正多項式の計算に基づく解決策で、ADC、DAC、メモリ、及びマイクロコントローラを必要とし、Vcorrの完全なデジタル再構築を伴うため、消費電力が高く、速度が遅く、ダイ面積が大きくなる。
【発明の概要】
【0011】
高近接TMRセンサを開発するには、2つの異なる戦略が考えられる。1つは、異なる磁気スタック構成の開発である。もう一つは、TMRセンサの出力電圧の線形性誤差を低減する補正戦略の開発である。各戦略には、表1に要約されているように、長所と短所がある。
【0012】
本開示では、出力電圧を補正し、感度を低下させることなくTMRセンサの線形性を改善する方法について論じる。出力電圧応答の非線形性の主な原因である出力電圧の高次項を近似的に決定し補償するため、いくつかの課題解決への道筋が提案される。
【0013】
【表1】
【0014】
ここで提案する方法は、感度を損なうことなく、線形性誤差を大幅な改善(よって、より広い磁場範囲を達成)を可能にする。さらに、補正方法は、全ての線形磁気抵抗センサに実装できる可能性があり、既存の装置の線形性誤差を大幅に改善する。
【0015】
ここで紹介する補正方法の目標は、試料間と、温度と、動作電圧との変動に比較的敏感でない安定した出力電圧応答を実現することである。これは、ウェーハ上の全ての装置に同じ変数のセットを適用することでこのような補正を実現できることを意味し、製造費用と信頼性性能に影響を与える可能性のあるセンサ装置ごとに時間のかかる個別の較正手順を回避できる。
【0016】
特に、本開示は、外部磁場の存在下で磁気抵抗センサによって提供される出力信号を補正する補正方法に関し、この補正方法は、
前記出力信号の高次成分信号の振幅による線形応答からの前記出力信号の偏差を決定することと、
100mTまでの磁場範囲について、補正出力信号が2%より小さい、好ましくは1%より小さい、より好ましくは0.5%より小さい線形性誤差を持つように、高次成分信号に対する出力信号を補償することによって補正出力信号を決定することと
を備える。
【0017】
本開示はさらに、複数の磁気抵抗センサについて、補正方法を実行する際に使用される共通の変数を導出する方法及び特性評価方法を実行するように構成されたIC(集積回路)に関する。
【0018】
本発明の例示的な実施形態は、説明において開示され、図面によって図示される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、未補正の線形性誤差と3次非線形性補正後の線形性誤差を示す。
図2図2aと図2bは、線形性誤差対1次係数/3次係数比(a/a)のシミュレーションを示し、100mTの磁場範囲の場合(図2a)を示し、0.5%未満の線形性誤差とするため最大磁場範囲対a/aを示す(図2b)。
図3図3aから図3dは、第1補正方法の潜在的な実装を示し、図3aは、線形性補正用のASIC回路の例を示し、図3bは、センサの生出力電圧と補正出力電圧の磁場依存性の比較を示し、図3cは線形性誤差の比較を示し、図3dは、線形性補正用の代替ASIC回路を示す。
図4図4は、不連続性のない区分線形補正の実装回路を示す。
図5図5は、1実施形態により3区分を持つ、区分線形非線形性補正方法及び回路を示す。
図6a図6aは、3区分線形補正法を使用した磁気抵抗センサの非線形性の低減を示す。
図6b図6bは、3区分線形補正法を使用した磁気抵抗センサの非線形性の低減を示す。
図7図7は、同じ回路変数を使用した同じウェーハからの4つの異なる磁気抵抗センサの非線形性補正を示す。
図8図8は、実施形態による区分線形非線形性補正方法及び5区分を持つ回路を示す。
図9a図9aは、5区分線形補正法を使用した実際のセンサの非線形性の低減を示し、補正ありと補正なしのセンサの非線形性(図9a)を示す。補正ありと補正なしのセンサ出力電圧(図9b)。
図9b図9bは、5区分線形補正法を使用した実際のセンサの非線形性の低減を示し、補正ありと補正なしのセンサ出力電圧(図9b)を示す。
図10図10は、同じ回路変数を使用した、同じウェーハからの4つの異なる磁気抵抗センサの非線形性補正を示す。
図11図11は、レシオメトリックシステムにおける50°Cから150°Cの温度及び4.5Vから5.5Vの電源電圧範囲にわたる非線形性補正の安定性を示す。
図12図12は、3区分を持つ区分線形非線形性補正方法及び回路の簡略化された好ましい1実施形態を示す。
図13a図13は、実際のセンサの簡略化された3区分線形非線形性補正を報告し、外部の与えられた磁場の関数としての非線形性(図13a)を示す。
図13b図13は、実際のセンサの簡略化された3区分線形非線形性補正を報告し、外部の与えられた磁場の関数としての出力電圧(図13b)を示す。
図14図14は、同じウェーハ上の4つの異なる磁気抵抗センサの簡略化された3区分線形非線形補正を示す。
図15図15は、温度と電源電圧による非線形性(NL)補正の複数シフトを示す。
図16図16aから図16dは、線形磁気抵抗センサの磁場の関数としての電圧応答を報告し、図16aは、出力電圧の線形適合を示し、図16bは線形性誤差磁場を示し、図16cは、2つの異なる補正変数に対する補正前後の出力電圧の比較を示し、図16dは、2つの異なる補正変数に対する補正後の出力電圧の線形性誤差を示す。
図17図17は、「線形適合」の線形誤差の補正方式に基づく線形性誤差の性能を示す。
図18図18aから図18cは、線形TMRセンサにおけるこのような線形性誤差の補正の検証を示し、図18aは、生出力電圧を磁場の関数として示し、図18bは、線形MTJセンサの磁場の関数としての線形性誤差を示し、図18cは、3次多項式関数により適合された出力電圧を考慮した線形性誤差と、「線形適合」補正方式による出力電圧補正後の線形性誤差を示す。
図19図19は、4象限乗算器を使用した「線形適合」線形性誤差の補正の可能な実施形態を示し、補正は式110と式107bに基づく。
図20図20は、1象限乗算器を使用した「線形適合」線形性誤差の補正の別の実施形態を示し、補正は式110及び式107bに基づく。
図21図21は、1象限乗算器を使用した「線形適合」線形性誤差の補正の別の実施形態を示し、補正は式110及び&式107bに基づく。
図22図22a及び図22bは、対数比、対数及び逆対数オペアンプ(図22a)の組み合わせに基づくアナログICユニットと、アナログ多目的ユニット(AMU)としてのアナログICユニットとを示す。
図23図23a及び図23bは、AMUを使用したMTJベースのセンサ(図23a)及び「線形適合」線形性誤差の補正スキーム(図23b)の出力電圧と補正出力電圧を示す。
図24図24は、1実施形態に係るICを示す。
図25図25は、ICの入力電圧の1つの関数として図24のICによって実装された線形性誤差の補正後の線形TMRセンサから得られた線形性誤差を報告する。
図26図26は、1実施形態による完全アナログMTJセンサ及びASICシステムを示す。
図27図27は、別の実施形態による完全アナログMTJセンサ及びASICシステムを示す。
図28図28aから図28cは、線形性誤差の補正のデジタル実装(図28a)、最大67mTの磁場が与えられたMTJセンサ用の12ビット及び8ビットADCによる「線形適合」線形補正のシミュレーション(図28b)、及びADCのビット数に対する線形性誤差(図18c)を示す。
図29図29は、実施形態によるウェーハ内のセンサ装置に対する線形性誤差の補正の特性評価及び実装のフローチャートを示す。
図A1図A1は、式103aと式103aの近似値を使用して得られた出力電圧を比較する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
線形TMRセンサの電圧応答は式1で記述可能であり、そして次のように書き換え可能である。
【数4】
以下を伴う
【数5】
ここでVhoは高次の成分電圧であり、全ての非線形成分からの出力電圧Voutへの寄与を示す。
係数a、a、aは、それぞれ線形成分、3次成分、5次成分の係数である。完全な線形応答からのVoutの偏差(いわゆる「線形性誤差」又は「非線形性」)は、与えられた磁場とともに急速に増加するVhoの振幅によって決定され、その結果、線形性誤差が増加する(図1を参照)。
【0021】
以下に説明する提案する非線形性補正法は、Voutの高次成分の補償に依存する。つまり、補正出力電圧Vcorrは、補正出力電圧Vcorrが、より大きな磁場範囲内で外部磁場(H)の変動に比例して変化するように、高次成分電圧Vhoに対して出力電圧Voutを補償することによって決定される。この補正は、区分線形又は連続的に実行してよい。
【0022】
この補償方法は、ハードウェア(アナログ)、ソフトウェア(デジタル)、又はハイブリッドハードウェアとソフトウェア(アナログ及びデジタル)回路で実装できる。
【0023】
第1補正方法 区分線形補正
【0024】
説明する第1補正方法は、区分線形補正法である。このアプローチを説明するために、センサの出力電圧Voutは、重複しない出力電圧区分Vout,iに分割される。この方法は、実用的な数の出力電圧区分に拡張できる。この説明では、わかりやすくするために、最初に3区分のケースを検討する。
out<V1には、出力電圧区分I(Vout,1
out>V2には、出力電圧区分II(Vout,2
V1≦Vout≦V2には、出力電圧区分III(Vout,3
ここでは、V1<V2において、各区分遷移しきい値V1及びV2は、出力電圧区分Vout,1とVout,2とVout,3を区分化する。
【0025】
各出力電圧区分Vout内で、iは一次方程式で近似される。
【数6】
ここで、iは出力電圧区分I、II又はIIIを参照する指標であり、ここでd0i及びd1iはそれぞれ、出力電圧区分のセンサオフセット及び線形成分の係数である。
式100から、Hは次のように記述できる。
【数7】
【0026】
センサの以前の特性評価によって、実際のa0係数とai係数(式2a)、各出力電圧区分Voutの補正電圧出力Vcorr,iは次のように記述できる。
【数8】
以下を伴う
【数9】
【0027】
図3aから図3dは、第1補正方法の潜在的な高レベルの実装を示す。このような簡単な補正により、線形性誤差を4から5倍低減できる(図3cを参照)。
【0028】
図3aは、式102a、102bに基づく線形性補正用の回路の例を示す。図3aにおいて、回路は、各比較器が出力信号Vout及び区分遷移しきい値Vのうちの1つによって入力される少なくとも2つの比較器10を備える。図3bは、このような線形性補正方式を考慮したセンサVoutと補正出力電圧Vcorrの磁場依存性の比較を示す。
この例では、
【数10】
である。
図3cは、VoutとVcorrの線形性誤差の比較を示す。図3dは、式102a、式102bに基づく線形性補正用の代替ASIC回路を示す。
【0029】
図3aの例では、一対の比較器が、区分遷移しきい値V1とV2に基づいて動作の出力電圧区分Vout,iを決定し、それに応じて対応する補正信号Vcorr,iを出力に導く。
補正機能(Ai+Bi*Vout)は、オペアンプや受動部品などの一般的なアナログ回路で簡単に実装できる。図3dの例は、比較器を使用して、動作の出力電圧区分Vout,iに基づいてAi、Bi係数の対を選択する代替実装である。この概念は、3区分シナリオで例示されていて、当然、より多くの出力電圧区分Vout,iに拡張できて、センサの非線形性をより正確に補正できる。図3aに示す回路は、1つの比較器10のみを備えられることに留意されたい(例えば、ユニポーラー用途など、センサ出力の半分のみが利用される場合)。
【0030】
式102aの特に有用な実装を図4の回路に示し、以下を考慮する。
outの値が小さい場合、補正は不要であり、
=0及びB=1、それゆえ
corr,3=Vout,3
である。図4の回路は、1つの比較器10のみ備えてよい。
【0031】
補正出力電圧Vcorrは、不連続性が適用において非常に望ましくないため、区分遷移時に不連続性を持たせてはならない。V1とV2は区分遷移電圧であり、これは以下のようにBiとAiの関係を維持することによって達成できる。すなわち
【数11】
である。
【0032】
図4に示す区分線形補正方法の好ましい実施形態は、図5の回路に示されるようなオペアンプ、トランジスタ及び抵抗などの従来の回路要素を備える。この好ましい実施形態では、図4の比較器及び電圧源の機能は、オペアンプ、MOSトランジスタ及び抵抗器で構成される電圧-電流(V-to-l)変換器において組み合わされる。加算演算は、出力電流がRに与えられるカレントミラーによって電流領域で実行され、補正出力電圧Vcorrを生成する。
区分遷移しきい値電圧V1及びV2、ならびにR1及びR2は、非線形性補正を最適化するためセンサの特性に基づいて変更できるプログラム可能な変数として好ましくは実装される。出力信号区分Vout,iが区分遷移しきい値Viより大きい場合に出力信号区分Vout,iを出力し、出力信号区分Vout,iが区分遷移しきい値Vより大きい場合に出力信号区分Vout,iに加算された補正出力信号区分Vcorr,iを出力するように構成されている。
【0033】
図5に続いて、一観点では、第1電圧電流変換回路15aは、第1抵抗Rを備え、電圧信号Vout,iとしきい値信号Vとの間の差の関数として第1電流を生成するように構成できる。第2電圧電流変換回路15bは、第2抵抗Rを備え、第1電流iを関数として第2電流iを生成するように構成できる。
補正抵抗Rは、補正抵抗Rに第2電流iが供給されると、補正出力信号区分Vcorr,iを生成する。この回路は、出力信号区分Vout,iが区分遷移しきい値Vより小さい場合に出力し、後者が区分遷移しきい値Vより大きい場合に出力信号区分Vout,iに加算された補正出力信号区分Vcorr,iを出力するように構成されている。第1電流iは、出力信号区分Vout,iと区分遷移しきい値Viとの差の一次関数として生成できる。図5の回路は、ユニポーラー適用用の電圧電流変換回路(15bなど)を1つだけ備えてよい。
【0034】
図6aと図6bは、-45mTから+45mTの磁場範囲内の3区分の区分線形補正法を使用した実際の磁気抵抗センサの非線形性の低下を示す。図6aは、補正ありと補正なしのセンサの非線形性を示す。図6bは、補正ありと補正なしのセンサ出力電圧を示す。プロットでわかるように、3区分での区分線形補正法(フルスケール(測定範囲)の-1.3%から-0.25%まで)では、非線形性が約5倍減少する。この場合、次の回路変数
【数12】
を使用した。
【0035】
通常、同じウェーハからの磁気抵抗センサは、同様の非線形特性を示す。よって、補正回路変数は、ウェーハごとに1回決定され、同じウェーハ上の全てのセンサダイスに適用できる。図7は、同じ回路変数を使用した、同じウェーハからの4つの異なるセンサの非線形性補正を示す。プロットで観察されるように、非線形性の取り消しは、提示された全てのセンサに対して有効である。図7では、同じウェーハからの4つの磁気抵抗センサの3区分非線形性補正は、図6と同じ回路変数セット
【数13】
を使用した。
【0036】
図4に示す区分線形非線形性補正方法は、より高レベルの非線形性補正を達成するため、より多くの出力電圧区分に容易に拡張できる。図8は、5区分を持つ好ましい実施形態を示す。
【0037】
図9aと図9bは、(マイナス)-45mTから+45mTの磁場範囲内で5区分での区分線形補正法を使用した実際の磁気抵抗センサの非線形性の低下を示す。図9aは、補正ありと補正なしのセンサの非線形性を示す。図9bは、補正ありと補正なしのセンサ出力電圧を示す。プロットで観察できるように、5区分での区分線形補正法(測定範囲の約1.3%から約0.14%まで)で非線形性の約9倍の減少が達成される。この場合、次の回路変数が使用された。
【数14】
【0038】
図9図8で検討したセンサは、図6で検討したセンサと同じであることに留意されたい。
【0039】
図10は、同じ回路変数を使用した、同じウェーハからの4つの異なる磁気抵抗センサの非線形性補正を示す。プロットで観察されるように、非線形性のキャンセルは、提示された全てのセンサに対して有効である。図10では、5区分の非線形性補正には、図9a、9bと同じ回路変数セット
【数15】
を使用した。
【0040】
図5図8に示す実施形態は、温度と電源電圧の範囲にわたって安定した非線形性補正を提供する(センサ固有の非線形性特性が温度範囲と電圧範囲にわたって変化しないと仮定する)。図11は、レシオメトリックシステムにおける(マイナス)-50°Cから150°Cの温度及び4.5Vから5.5Vの電源電圧範囲にわたる非線形性補正(5区分を考慮)の安定性を示す。レシオメトリックシステムでは、区分しきい値電圧V1、V2、V3、及びV4も電源電圧とレシオメトリックに変化させる必要があり、分圧器を使用して簡単に実装できることに留意されたい。非レシオメトリックシステムでは、区分しきい値電圧V1、V2、V3、V4は温度に依存しない定電圧レベルである必要があり、温度の影響を受けない電圧基準によって生成できるであろう。
【0041】
図11では、レシオメトリックシステムの(マイナス)-50°Cから150°Cの温度及び4.5Vから5.5Vの電源電圧範囲にわたる5区分の非線形性の補正安定性に次の変数を使用した。
【数16】
注、しきい値電圧V1、V2、V3、V4は5Vに対して与えられ、VDDによってレシオメトリックに変化する)。
【0042】
図5図8の好ましい実施形態では、連続的なリアルタイムの非線形性補正を可能にするため、電圧電流変換器は、オーバーシュートを回避するのに十分な大きさの位相マージンを備えた主シグナルチェーンよりも高いスルーレートと広い帯域幅を持つように好ましくは設計すべきであろう。しかしながら、ゲインと入力オフセットの要件は必ずしも厳しくないため、比較的簡単に設計できる。
【0043】
図4に示される区分線形補正方法の別のより単純な好ましい実施形態は、図12に示されるようなトランジスタ及び抵抗器などの伝統的な回路要素を備える。図12は、3区分を用いた区分線形非線形性補正方法の簡略化された実施形態を示す。この好ましい実施形態では、図4の比較器及び電圧源の機能は、MOSトランジスタ及び抵抗器で構成される簡略化された電圧電流(V-to-I)変換器において組み合わされる(各電圧電流変換回路15a、15bはMOSトランジスタを備えてもよい)。加算演算は、出力電流がR0に与えられるカレントミラーによって電流領域で実行され、補正出力電圧Vcorrを生成する。
【0044】
図12に示す好ましい実施形態は、カレントミラー構成に配置された抵抗及びトランジスタを使用して、バイアス電圧V1及びV2及びPMOS/NMOSトランジスタしきい値電圧VTP及びVTNによってそれぞれ決定されるVout範囲で、Voutに比例する電流を生成する。図12はMOSトランジスタに基づく単純なカレントミラーを示すが、バイポーラー接合トランジスタ(BJT)を使用して、異なるカレントミラー配置によって同じ機能を実現できる。
【0045】
簡単にするために、図12に列挙した式は、iとiがそれぞれ(V1+VTP)と(V2+VTN)の正確なVoutレベルで流れ始めることを示唆しているが、MOSトランジスタのターンオンは本質的に緩やかである。MOSトランジスタのこの動作には、出力電圧区分間の遷移を平滑化できるという有利点がある。一方、区分しきい値電圧はMOSトランジスタのしきい値に依存するため、補正は処理工程、温度、及び電源の変動に依存する。さらに、この簡略化された実施形態では、真のレシオメトリック補正を確立することはできない。それでも、この単純な回路によって線形性を大幅に向上できる。図12に示す3区分構成の回路は、当然、より多くの出力電圧区分に拡張できるため、より高いレベルの非線形性補正が可能になる。
図13aと図13bは、次の回路変数を使用して実際の磁気抵抗センサに適用された3区分の簡略化された区分線形補正を示す。
【数17】
外部の与えられた磁場の関数としての非線形性(図13a)及びVout図13b)を示す。
【0046】
先の実施形態と同様に、図13a、図13bと同様の補正回路変数のセット
【数18】
は、同じウェーハからの全ての磁気抵抗センサに使用できる。
図14は、同じ変数セットで非線形性を補正した4つの異なるセンサを示す。
【0047】
(MOSトランジスタ特性の変化による)温度と(真のレシオメトリーの欠如による)電源電圧による非線形性補正のシフトを図15に示す。27°C、5Vで測定範囲の0.2%未満(<)を維持するように最適化された補正後の最大非線形性は、-50°Cから150°Cの温度及び4.5Vから5.5Vの電源電圧範囲でほぼ2倍になることに留意されたい。これは、同じ温度及び電圧範囲にわたってほとんど変化しなかった前述の実施形態とは対照的である。
図15では、レシオメトリックシステムでの(マイナス)-50°Cから150°Cの温度及び4.5Vから5.5Vの電源電圧範囲にわたる3区分の単純な非線形性補正安定性は、次の変数セットを使用した。
【数19】
【0048】
第2補正方法 線形適合補正
【0049】
別の可能な方法は、出力信号Voutから-Vhoに十分近い(換言すると、高次成分信号Vhoの負値に対応する)追加の電圧信号Vsubの決定に依存する。よって、VoutにVsubを追加することによって、非常に線形的な補正出力電圧Vcorrを導出できる。つまり、出力信号Voutに追加信号Vsub(出力信号Voutから導出)を加算して、高次成分信号Vhoに対する出力信号Voutを補償することで、補正出力信号Vcorrを求められる。例えば、Voutを式1で記述でき、a>>aとa~0(通常はそうである)で記述できると考えると、
【数20】
である。
【0050】
それゆえ、Vsubはa・Hにできるだけ近づける必要がある。そのため
【数21】
である。
【0051】
これを達成には、測定された磁場Hのできるだけ正確な「推定」が不可欠であり、3次方程式式103aを解いてHを決定することは、センサの時間応答と消費電力に悪影響を与えることに留意されたい。この補正方法の背後にある考え方は、測定フィールドHの近似解を使用して、Vsubがa・Hに十分近くなるため、消費電力とセンサの時間応答への影響を最小限に抑えながら、線形性誤差を大幅に低減することである。
1より十分小さいaxについて近似
【数22】
を使って、数式103aを次の式に近似できる。
【数23】
【0052】
この場合、わかりやすくするためにセンサオフセット項aは省略されていることに留意されたい。よって、式104は、磁気抵抗センサのVoutの磁場依存性の近似的な記述と見なせる。この近似は、Hの解を単に式103aから導出するよりもはるかに単純な解析解が見つかることを意味することに留意されたい。その結果、Voutから導出されたVsubを決定できて、線形性誤差を大幅に低減できる。式104の解は、次のように近似できる(完全な分析については付属事項を参照)。
【数24】
以下を伴う
【数25】
【0053】
これは、Vsubが次のように記述できることを意味する。
【数26】
【0054】
そして、補正出力電圧Vcorrは次のように記述できる。
【数27】
【0055】
この補正方法は、以下を考慮して若干一般化できる。
【数28】
以下を伴う
【数29】
【0056】
図16aから図16dは、この補正方法の性能を示すことに留意されたい。
【0057】
図16aは、線形係数
【数30】
と3次係数
【数31】
を持つ線形磁気抵抗センサの磁場の関数としての電圧応答を示す。
灰色の線はVoutの線形適合(LinFit)を示す。図16bは、磁場の関数としての線形性誤差
【数32】
を示す。Voutを完全な線形関数と見なすときに誘発される誤差は5%にもなる。
小さな磁場(20mT未満)でも、Voutは1%より大きな(>)線形性誤差を示すことに留意されたい(図16bを参照)。
図16c及び図16dは、式105及び式107に基づく補正方式の性能を示す。図16cは、変数kの2つの異なる値(暗い灰色の曲線と明るい灰色の曲線)に対するVout(黒い曲線)と補正後のVout(Vcorr)の比較を示す。このような考え方により、線形性誤差を0.5%<値に減らせる(それゆえ、x10の削減)。両方のVcorr信号の感度は約1.5mV/V/mTであり、これはVoutの線形係数(a-,)と同じであることに留意されたい。
これらの結果は、感度の低下が得られないというこのような補正方式の可能性を裏付けている。図16dは、両方のVcorrの線形性誤差を示す(変数kの2つの異なる値の場合)。
【0058】
式105及び式107によるVsubの決定には、大量の計算能力が必要になる場合がある。この問題を克服するために、式105aの低次の解決手段も検討してよい。
【数33】
【0059】
それにもかかわらず、次数解が小さいほど、Hoと測定場Hの間の不一致が大きくなり、線形性誤差が大きくなる。低い計算要件と高い線形性の誤差の補正の間の最適な妥協点は、以下を考慮すると得られる。
【数34】
ここでcは、生のVoutの線形適合によって決定される線形係数を指す。これは、次のことを意味する。
【数35】
【0060】
実際、式110と107bを補正の考え方(スキーム)として考えると、最大94mTの磁場に対してVcorrが0.5%未満の線形性誤差が得られる(図17を参照)。この線形性誤差の補正の取り組み手法(アプローチ)は、「線形適合」線形性補正という。
【0061】
(請求項8)一観点では、補正信号Vcorrを導出するために出力信号Voutに加算される追加信号Vsubは、出力信号Vout(Vout )の3乗に比例する。
【0062】
(請求項9)一観点では、追加の信号Vsubは、出力電圧信号Voutの3次成分よりも高次の成分に比例する追加の項をさらに含み、次のようにする。
【数36】
【0063】
(請求項10)別の観点では、追加の信号Vsubは、さらに、以下によって定義できる。
【数37】
上記の式では0.5<C<4であり、ここでcは与えられた磁場Hに対する出力信号(Vout)の線形適合によって決定される線形係数であり、aは出力電圧の3次係数である。
【0064】
(請求項11)別の観点では、追加の信号Vsubは、以下によってさらに定義できる。
【数38】
ここでは
【数39】
を伴い
ここで、aとaはそれぞれ出力信号Voutの線形係数と3次係数である。
【0065】
(請求項12)別の観点では、追加の信号Vsubは、以下によってさらに定義できる。
【数40】
ここでは
【数41】
を伴い、ここで、aとaはそれぞれ出力信号Voutの線形係数と3次係数である。
【0066】
図17は、線形係数
【数42】
3次係数
【数43】
の線形MTJセンサについて、k=a(濃い灰色の曲線)、k=(3/2)a(薄い灰色の曲線)、k=(5/3)a(黒の曲線)の場合の線形性誤差の補正方式(式110と107bを考慮)の性能を示す。
【0067】
図18aから図18cは、異なる線形TMRセンサ上でのそのような「線形適合」線形性誤差の補正アプローチの検証を示す。図18は、Voutとその線形性誤差を、最大67mTの磁場の関数として示す。この場合、
【数44】
線形性誤差は約0.7%となる。図18cは、Voutを式103aとして3次多項式関数で適合を行うと、Voutと適合関数の間の適合誤差が値~0.1%に減少することを示す。磁場に対するこの適合誤差の外形(図18cの薄い灰色の曲線)は、Voutの5次成分の寄与のシグネチャである。しかしながら、「線形適合」補正を使用した場合、Vcorrの線形性誤差も~0.1%であり、同様の磁場依存性があることに留意されたい(図18cの濃い灰色の曲線を参照)。この結果は、Voutの3次成分が「線形適合」補正によって完全に補償されることを示す。
【0068】
このTMRセンサでは、最大67mTの磁場に対して0.7%の初期線形性誤差が得られる(図18bを参照)。このような線形適合から導かれる線形係数は、
【数45】
である。しかしながら、式109と式107の線形性補正の考え方を考慮すると、線形性誤差は0.09%に低下する(図18cの濃い灰色の曲線を参照)。
【0069】
さらに、この「線形適合」線形性補正は、装置ごとの典型的な変数変動に対して非常にロバストである。表2は、最大47mTの磁場が与えられた8個の磁気抵抗センサの結果をまとめたものである。初期線形性誤差はそれら全てで約1.35%であり、「線形適合」補正後、線形性誤差は~0.15%に低下する。なお、この線形性誤差の改善(約9倍)は、装置間でcとa変数(約10%)の初期分散にもかかわらず、同じcと補正係数として使用することで得られる。
【0070】
【表2】
【0071】
表2では、最大47mTの磁場を与えた場合の8つの異なる線形TMRセンサの「線形適合」線形性誤差の補正の結果である。係数c及びcは、Voutの線形適合によって得られる係数、すなわちVout=c+cHを指し、係数a,aとa
【数46】
を適合することによって得られる。初期線形性誤差(Voutの線形適合から導出)は全装置について約1.35%である。式109及び式107における全装置のc及びa係数の中央値
【数47】
を考慮することにより、補正電圧出力Vcorrが得られる。Vcorrの線形性誤差(補正線形性誤差)は全ての装置で約0.15%である。
【0072】
図19は、「線形適合」線形性補正実装の実施形態を示す。このICは、2つのカスケード接続された電圧乗算器12を備える。乗算器12は、複数の対数及び逆対数オペアンプの組み合わせで構成されるアナログICユニットであり、その信号出力VMULTは2つの入力信号V1とV2の積であるため、VMULT=Vである。2つの乗算器12をカスケード接続して組み合わせることで、Vsubの主成分である信号(約)~Vout を求められる。本実施形態では、乗算器12は、V及びVの任意の可能な極性(4象限乗算器)で動作可能である。
この回路はまた、ゲインG=k/c を持つオペアンプ13を備える。
【数48】
(βは電圧乗算器に固有の変数である)の場合、オペアンプ13はゲイン
【数49】
を持つ必要があることに留意されたい。次に、非反転加算アンプによって、Vout信号とVsub信号の両方が加算され、補正出力信号
【数50】
になる。図19に示す1象限乗算器を備える同じ実施形態は、ユニポーラー式の適用、つまりVoutの1つの特定の極性でのみ線形性誤差の補正が必要な場合に使用可能であることに留意されたい。
【0073】
乗算器がVとVの1つの特定の極性(1象限乗算器)でしか動作できず、Voutの両方の極性での線形性補正が必要な場合、代替の実施形態を図20に示す。一般性を失うことなく、この特定の実施形態は、ゼロ未満のVに対してのみ動作する乗算器12を示す。この実施形態では、ICは、2つの乗算器12と、ゲインG=k/c を持つオペアンプ13と、2つの反転増幅器14と、比較器10と、マルチプレクサ11(MUX)とデマルチプレクサ11(DMUX)との少なくとも一方と、を備える。
比較器、反転増幅器、MUXとDMUXとの少なくとも一方の役割は、電圧乗算器12が出力電圧Voutの両方の極性で動作し、Voutのいずれかの極性に対するVsubの決定を確実に可能にすることである。出力信号Voutによって入力された比較器10は、両方のMUX11を起動するため、比較器の出力値に応じて、MUXは2つの入力信号のうちの1つを選択する。
それゆえ、第1マルチプレクサをその出力信号が常に正になるように構成してよく、少なくとも2つのカスケード乗算器の動作を可能にして信号~Vout を計算する。この信号をオペアンプ13で増幅した後、信号
【数51】
が得られる。反転アンプ14でVsubの極性を反転させた後、第2MUXはVsubの右極性を選択する。)次に、非反転加算アンプによって、Vout信号とVsub信号の両方が加算され、補正出力信号
【数52】
になる。この特定の実施形態では、2つのMUXが考慮されたが、一般性を失うことなく、2つのDMUXを代替使用することも、MUXとDMUXの両方を任意に組み合わせて使用できることにも留意されたい。
【0074】
このようなカスケード構造に乗算器を追加すると、Voutの他の高次寄与(第5、第7、...)を補正できることに留意されたい。
【0075】
1象限乗算器に関するVoutの両極性における線形性補正の別の実施形態を図21に描く。ここで、出力電圧信号Voutに電圧信号オフセットVが加算され、電圧信号オフセットVと出力電圧信号Voutの和に対応する入力電圧Vinが前記2つのカスケード電圧乗算器12)に入力される。このケースの背後にある考え方は、Vsubを決定する前に出力電圧Voutに電圧オフセット(V)が追加されるため、全ての磁場に対して入力電圧
【数53】
になるというものである。Voutには一定の電圧しか追加されないため、同じ補正方法を適用できることに留意されたい。しかしながら、この場合、式110は次のようになる。
【数54】
【0076】
この構成により、図20の前の実施例で検討した比較器に加えてMUX及びDMUXを除去できる。図20と同じ数の乗算器を関係させたい場合は、式111によれば、VとV とV は3つの異なる基準電圧である必要がある。しかしながら、本実施形態の特殊なケースは、図21に示すように、
【数55】
の場合である。この場合、ゲインG、-G、3G、-3G(G=k/c )の追加の電圧アンプがいくつか必要であることにも留意されたい。
【0077】
なお、これまでの全ての実施形態において、このようなカスケード構造に追加の乗算器を追加することで、Voutの他の高次寄与(第5、第7、...)の補正が可能になる。
【0078】
これまでの全ての実施例において、カスケード乗算器は、Vsub~Vout を得るために使用されていた。しかしながら、この目的のために他のアナログICユニットも検討できる。図22aに描いたように、対数比、対数、逆対数オペアンプの組み合わせに基づくいくつかのアナログICユニットは、次の動作を実行できる。
【数56】
ここで、Vin,1、Vin,2、及びVin,3は3つの入力信号、nは回路内の2つの異なる抵抗の比率に応じた変数、Vout,AMUはICユニットの出力信号である。
【0079】
実行できる可能性のあるさまざまなタイプの操作(乗算、除算、電力、及び根)を考慮して、このアナログICユニットをアナログ多目的ユニット(又はAMU)として定義し、図22bに描く。入力信号
【数57】
を考慮すると、AMU(VAMU)の出力信号は次のように表せる。
【数58】
【0080】
よって、Vout、AMUをセンサVoutの出力信号に追加して、線形化された補正出力信号
【数59】
を得られる。
【0081】
図23aは、図24の実施例を考慮したAMUによって得られる0mTから140mTまでの磁場にさらされたときのMTJベースのセンサの出力電圧Vout及び補正出力電圧Vcorrを示す。この特定のケースでは
【数60】
である。図23bは、この補正の考え方によって線形性誤差が~1.5%から0.12%に低下することを示す。このセンサ
【数61】
として留意されたい。
【数62】
となり、これは
【数63】
で得られる値に非常に近い。
【0082】
図24は、4つの磁気抵抗効果素子2を備えるフルブリッジ磁気抵抗センサ20と、差動増幅器13aと、AMU14と、非反転加算増幅器13bとを備える実施形態によるICを示す。
【0083】
さらに、図25は、線形TMRセンサと、入力電圧Vin、3の関数として図24で説明したICから得られる線形性誤差を報告する。図25は、1.7Vと2.4Vの間でVin,3を微調整しても、0.45%未満の線形性誤差が得られることを示す。
【数64】
として、この結果は、cの可能な変動及びTMRセンサの係数に対するこの考え方(スキーム)のロバスト性を示す。
【0084】
これらの結果は全て、
この線形化補正の考え方をフルアナログMTJセンサとASCIシステム(外部磁場に依存する出力電圧Voutを示すMTJベースの磁気センサ(式103)と、
出力電圧Vout,AMUがVout に比例するように構成されたAMU(式113で記述)と、
出力電圧が
【数65】
の電圧加算増幅器とに、少なくとも基づくASCIシステム)
に実装する可能性を示す。
【0085】
ここで、1象限AMUを用いる場合、図24の実施形態はVoutの1つの極性に対してのみ機能し、それゆえ磁場の一方向に対してのみ機能することに留意されたい。次に、いくつか他の実施形態(図26図27)は、正磁場及び磁場振幅に対するこの線形化補正の考え方を実装するために考慮されてよい。このために、2つの選択肢(図20図21で前述したものと同様)を検討できる。
【0086】
例えば、1実施形態では、フルアナログMTJセンサ+ASICシステム(図26参照)は、以下を備える。
MTJベースの磁場センサと、
比較器(センサの出力電圧Voutの極性を決定するため)と、
2つの逆変換器(1つはVoutの極性を反転し、もう1つはVout,AMUの極性を反転させる)と、
out,AMU~Vout の計算を可能にするAMUと、
subを決定するのに適切なVout及びVAMU信号を選択するため、MUXとDMUXとの少なくとも一方のいくつかと、
出力電圧が
【数66】
となる電圧加算アンプ。
【0087】
別の実施形態では、フルアナログMTJセンサ+ASICシステム(図27)は、以下を備える。
磁気抵抗センサと、
全ての磁場に対して
【数67】
となるようにVoutに加算される基準オフセット電圧Vと、
in を計算できる第1AMU14a
in を計算できる第2AMU14b(又は別のアナログIC回路)と、
inを係数x3G(ここでG=k/c )で増幅可能にする第1電圧増幅器13aと、
を係数x(-G)で増幅可能にする第2電圧増幅器13bと、
corrを式111で決定可能にする電圧加算アンプ。
本実施形態では、オフセット信号Voと出力信号Voutとの和が、AMU14a,14bの少なくとも一方及び前記第1電圧増幅器13aに入力される。補正出力信号Vcorrは、AMU14a,14bの出力電圧に第1及び第2電圧増幅器13a,13bの出力電圧を加えた和である。なお、本実施形態の特殊なケースは、図27に示すように、V=1V(それゆえV=V =V )のときであることに留意されたい。
【0088】
上記の全ての実施形態において、高次補正項(第5、第7、...)は、nが5、7…の追加のAMUを追加することによっても実装できることに留意されたい。
【0089】
一観点では、追加の信号Vsubは、出力信号Voutの3次成分よりも高次成分に比例する追加の項をさらに備えてよく、以下のようになる。
【数68】
【0090】
表3に要約すると、初期のa/a比に応じて異なるアプローチを検討もできるが、他のアプローチ(「2D適合」や「3D適合」など)がより複雑なアナログICシステムを意味する可能性があるため、ほとんどのアナログ実装では第1アプローチ(「線形適合」)のみが関連する。特に、表3は、最大100mTの磁場範囲で線形性誤差が0.5%未満のVcorrを得るa係数とa係数の条件を報告する。
【0091】
【表3】
【0092】
それにもかかわらず、Vsubのデジタル解析を考慮する場合、「2D適合」又は「3D適合」補正方法も考慮できる。図28aから28cは、Vsubが基本的にデジタルで決定され、DACによってこの信号を生のVoutから差し引けるため、純粋なアナログVcorr信号が得られるアプローチを示す。この場合、補正方法の主な特徴は、(図28aに描いたように、
1)アナログ-デジタル変換器(ADC)と、
2)Vsubを決定するデジタルシステム(DS)と、
3)デジタル-アナログ変換器(DAC)
に基づく。このようなDSは、マイクロコントローラ(MCU)、ルックアップテーブル(LUT)、又はマイクロプロセッサ、メモリユニット、及びMCUの他の種類の組み合わせで構成できることに留意されたい。
【0093】
図28aは、線形性誤差補正のデジタル実装用の1実施形態の図を示す。VoutはADCによってデジタル信号に変換される。Vsubの決定はDSによって行われる。Vsubがデジタル的に決定されると、アナログ信号に変換され、Voutに追加されてVcorrが得られる。図28bは、最大67mTの磁場が与えられた磁気抵抗センサの12ビット及び8ビットADCを使用した「線形適合」線形性補正のシミュレーションを示す。図28cは、ADCのビット数に対する線形性誤差を示す。
【0094】
図28aでは、ADCとDACはVsubの計算にのみ使用され、Voutからの減算は類推的に行われる。それゆえ、ビット数が少ないシンプルな設計で、妥当な消費電力でより高速に動作できる。さらに、この近づきかた(アプローチ)は、特に大きな磁場が与えられる場合に、提案された両方のアナログ線形化方法のいずれかと組み合わせられるという利点があり、必要なのは、繰り返しになるが、より単純な設計と低いビット数である。Vcorrの全てデジタルでの再構成に依存する以前に開発されたデジタル線形化アプローチとは異なり、この提案手法は、追加の信号Vsubのデジタル決定と、VoutとVsubの追加によるアナログ補正(デジタル-アナログ変換後)に基づいていることに留意されたい。
【0095】
最後に、このような補正方法を生産レベルで実施するためには、装置間の変数変動性(表2に示すように)に対してそのロバスト性を示す必要があるだけでなく、ウェーハの各個々の装置の完全な特性評価なしに、そのような共通の変数cを導出することも不可欠である。これらの変数が決定されると、同じウェーハの全ての装置に対して線形化補正を実行する共通のASICシステムを実装できる。
【0096】
1実施形態では、コンピュータに前述の方法を実行させるプログラムを記憶する非一時的コンピュータ可読媒体である。
【0097】
1実施形態では、複数のTMRセンサについて共通の変数を導出する特性評価方法であって、ここでは、前述の補正方法を実行する際に共通変数が使用されることが開示される。
【0098】
一観点において、特性評価方法は、
複数の磁気抵抗センサを設け、各磁気抵抗センサの出力信号Voutを測定することと、
測定された出力信号Vout
【数69】
に適合することにより、オフセット係数a、1次係数a、及び少なくとも3次係数aを決定することと、
測定された出力信号Vout
【数70】
に適合することにより、近似オフセット係数cと近似1次係数cを決定することと、
決定されたオフセット係数a、1次係数a、少なくとも3次係数a、近似オフセット係数c及び近似1次係数cについての中央値を決定すること
を備える。
【0099】
出力信号Voutの測定は、磁気抵抗センサの最大動作磁場範囲Hに対応する外部磁場Hに磁気抵抗センサを照射する際に行える。
【0100】
複数の磁気抵抗センサは、ウェーハ内に構成される磁気抵抗センサのサブセットを備えてよい。例えば、磁気抵抗センサのサブセットは、10からN(個)の間を備えてよい。ここで、Nはウェーハ上の磁気抵抗センサの総数である。
【0101】
一観点では、出力信号Voutの測定は、磁気抵抗センサが少なくとも5つの異なる磁場の大きさに対応する外部磁場Hに提出されるときに行える。外部磁場Hは、磁気抵抗センサの最大動作磁場範囲Hに対応する高振幅と、出力信号Voutが磁場Hとの線形依存性に従う低振幅磁場範囲Hとの間にしてよい。
【数71】
【0102】
それゆえ、オフセットaと線形係数aは、低磁場範囲でのVoutの線形適合によって得られる。3次係数は、次式で導ける。
【数72】
ここで、Vout_H2)は最大動作磁場範囲Hで測定された出力電圧である。最後に、全磁場範囲を通してVoutを再構成した後、係数c及びcは、最大磁場範囲Hにおける線形適合Voutによって導かれる。
【0103】
図29は、磁場点5点又は5個の磁場装置のみのウェーハの一定数のセンサ装置N(10<N)のみを特性評価することで共通変数を取得できる特性評価方法を示すフローチャートである。Hは通常、センサの最大動作磁場範囲であり、H1は磁場の小さな値(通常は1から6mT)である。
【0104】
ここで、上述した出力信号Vout、高次成分信号Vho、補正出力信号Vcorr、出力信号区分Vout,i、補正出力信号区分Vcorr,i、追加信号Vsub、信号オフセットV、しきい値信号V、入力信号Vinは、上述した電圧又は電流の形態としてよい。
【0105】
附属事項A
【0106】
式104の解は次のように記述できる。
【数73】
以下を伴う
【数74】
【0107】
さらに、Voutが式103aに近似できる最大磁場範囲は、Voutがローカル最大値又は最小値である磁場によって区切られる(図A1を参照)。この磁場Hcは、式103aを最小化することで得られるので、以下である。
【数75】
【0108】
これは、-HcからHcまでの磁場の場合、
【数76】
を伴う。
【0109】
それゆえ、関心のある磁場範囲のD<1として、式A01は次のように近似できる。
【数77】
【0110】
H+は磁場
【数78】
の解であることに留意されたい。そのような近似はこれ以上効果的ではない。そのため、式103bの可能な解としてH-のみを検討する。
【0111】
開示された技術の有利点
【0112】
ここに提示される補正方法は、高磁場での線形性を改善することによって磁気抵抗センサの動作磁場範囲を拡大するか、又は感度を低下させることなく、より高い線形性で同じ磁場範囲での動作を可能にする。
【0113】
さらに、提示された補正方法は、アナログ手段による非線形性のリアルタイム補正に適していて、それゆえ、高帯域幅動作を可能にする。
【0114】
アナログ非線形性補正(図3図5図8、及び1図2に示す実施形態による第1補正方法は、マイクロコントローラ、ADC又はDACを必要とせず、温度及び電源電圧に対して安定であり、ウェーハ全体に適用可能であり、磁気抵抗センサの小さな到達範囲を必要とするリアルタイムの連続補正を可能にする。
【0115】
式110及び表2に基づく非線形性補正の枠組み(第2補正方法は、図19図20図21図24図26及び図27に示すアナログ実装実施形態を参照されたい)は、
マイクロコントローラ、ADC、DACを必要としないリアルタイムの連続補正と、
装置間の変数の変動に対するロバスト性と、
outの高次成分の計算用にこのアプローチをデジタルで実装する可能性(図29を参照)
を可能にする。
非線形性補正方式は、「線形適合」補正法の2つの主要変数のウェーハレベルで高速決定する方法を使えるようにする(図30のフローチャート)。
【0116】
本明細書に開示される技術は、
新しいMTJスタックを開発する必要なしに、現在の線形磁気センサの性能(線形性誤差又は磁場範囲)の改善と、
線形性誤差の補正方式に基づく新しい線形磁気センサ製品の開発
を可能にする。
【0117】
外部磁場Hの存在下で磁気抵抗センサによって提供される出力信号Voutを補正する本明細書に記載の補正方法は、100mTまでの磁場範囲について、2%より小さい、好ましくは1%より小さい、より好ましくは0.5より小さい線形性誤差を持つ補正出力信号Vcorrを取得できるようにする。ここで、線形性誤差は、外部磁場の関数として測定された出力電圧信号と、出力電圧信号と外部磁場の間の理想的には線形関係との差として定義される。
【符号の説明】
【0118】
10 比較器
11 マルチプレクサ、デマルチプレクサ
12 乗算器、電圧乗算器
13 オペアンプ、電圧増幅器
13a 第1電圧増幅器、差動増幅器
13b 第2電圧増幅器、非反転加算増幅器
14,14a,14b アナログ多目的ユニット(AMU)
15a 第1電圧電流変換回路
15b 第2電圧電流変換回路
16 トランジスタ
2 磁気抵抗素子
20 磁気抵抗センサ
オフセット係数
1次係数
3次成分
近似オフセット係数
近似1次係数
H 外部磁場
最大動作磁場範囲
第1電流
第2電流
補正抵抗器
第1抵抗器
第2抵抗器
corr 補正出力電圧
ho 高次成分信号
in 、Vin,i 入力信号
信号オフセット
out 出力信号
out,i 出力信号セグメント
遷移しきい値信号
sub 追加信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9a
図9b
図10
図11
図12
図13a
図13b
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図A1
【手続補正書】
【提出日】2023-08-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0061
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0061】
観点では、補正された信号Vcorrを導出するために出力信号Voutに加算される追加信号Vsubは、出力信号Vout(Vout )の3乗に比例する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0062
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0062】
観点では、追加の信号Vsubは、出力電圧信号Voutの3次成分よりも高次の成分に比例する追加の項をさらに含み、次のようにする。
【数36】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0063
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0063】
の観点では、追加の信号Vsubは、さらに、以下によって定義できる。
【数37】
上記の式では0.5<C<4であり、ここでcは与えられた磁場Hに対する出力信号(Vout)の線形適合によって決定される線形係数であり、aは出力電圧の3次係数である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0064
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0064】
の観点では、追加の信号Vsubは、以下によってさらに定義できる。
【数38】
ここでは
【数39】
を伴い
ここで、a1とaはそれぞれ出力信号Voutの線形係数と3次係数である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0065
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0065】
の観点では、追加の信号Vsubは、以下によってさらに定義できる。
【数40】
ここでは
【数41】
を伴い、ここで、aとaはそれぞれ出力信号Voutの線形係数と3次係数である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部磁場の存在下で磁気抵抗センサによって提供される出力信号を補正する補正方法であって、
前記出力信号の高次成分信号の振幅による線形応答からの前記出力信号の偏差を決定することと、
前記高次成分信号に対する前記出力信号を補償することによって、補正出力信号が、前記出力信号の線形誤差より小さな線形誤差を持つように、補正出力信号を決定することと
を備える、補正方法。
【請求項2】
前記出力信号が
【数1】
によって記述され、ここでHが外部磁場であり、V ho が前記高次成分信号であり、がオフセット係数であり、aが1次係数であって、
前記高次成分信号が少なくとも3次係数aによって記述されている、請求項1に記載の補正方法。
【請求項3】
前記出力信号を複数の重ならない出力信号区分に区分することであって、各出力信号区分が区分遷移しきい値によって区分けされている、前記区分することを備え、
各出力信号区分が、相当する補正出力信号区分を得る線形方程式によって近似されている、請求項記載の補正方法。
【請求項4】
各出力信号区分内の前記補正出力信号が
【数2】
によって決定され、ここで corr,i が前記補正出力信号区分であり、Vout,iが前記出力信号区分であり、AiとBiが区分係数である、請求項3に記載の補正方法。
【請求項5】
各出力信号区分が、iがi番目の区分を示す指標であって、d0iがオフセット係数であり、d1iが1次係数であるところの
【数3】
によって近似され、ここでは、
【数4】
である、請求項4に記載の補正方法。
【請求項6】
前記高次成分信号の負値に近いか等しい追加信号を決定することを備え、
補正出力信号を前記決定することが、前記高次成分信号用に前記出力信号を前記追加信号を前記出力信号に加算することによって補正することを備える、請求項1に記載の補正方法。
【請求項7】
前記追加信号がout に比例する、請求項6に記載の補正方法。
【請求項8】
前記追加信号が
sub が前記追加信号であり、2j+1が、前記出力信号Voutの各2j+1次成分の比例因数を決定する係数である、
【数5】
のような前記出力信号Voutの3次成分より複数の高次成分に比例する追加の事項をさらに備える、請求項6に記載の補正方法。
【請求項9】
前記追加信号が
【数6】
によって定義され、
ここでH
【数7】
によって定義され
【数8】
ここで、aが前記出力信号の線形係数であり、aが前記出力信号の3次係数であり、Cが定数であり、それにより前記補正出力信号が
【数9】
によって定義される、請求項6に記載の補正方法。
【請求項10】

【数10】
によって定義され、ここで
【数11】
であり、ここで、それぞれaが前記出力信号の線形係数であり、aが前記出力信号の3次係数である、請求項9に記載の補正方法。
【請求項11】
前記追加信号が
【数12】
によって定義され、ここで
【数13】
を伴い
前記補正出力信号が
【数14】
によって定義されるように、
は、与えられた磁場Hについての前記出力信号の線形適合によって決定される線形係数であり、
は前記出力電圧の3次係数である、請求項6に記載の補正方法。
【請求項12】
追加信号を決定するとき、信号オフセットが前記出力信号に加算される、請求項に記載の補正方法。
【請求項13】
外部磁場の存在下で磁気抵抗センサによって提供される出力信号を補正する方法をコンピュータに実行させるプログラムを記憶している、非一過性のコンピュータ可読媒体であって、前記補正する方法が、
出力電圧の高次成分信号の振幅による線形応答からの出力信号の偏差を決定することと、
補正出力信号の直線性誤差が前記出力信号の直線性誤差よりも小さいように、高次成分信号の出力信号を補償することにより、前記補正出力信号を決定することと、
を備える、
前記補正する方法をコンピュータに実行させるプログラムを記憶している、非一過性のコンピュータ可読媒体。
【請求項14】
外部磁場の存在下で磁気抵抗センサによって提供される出力信号を補正する方法を実施するように構成されている集積回路(IC)であって、前記補正する方法が、
出力電圧の高次成分信号の振幅による線形応答からの出力信号の偏差を決定することと、
補正出力信号の直線性誤差が前記出力信号の直線性誤差よりも小さいように、高次成分信号の出力信号を補償することにより、前記補正出力信号を決定することと、
を備える、
前記補正する方法を実施するように構成されている集積回路(IC)。
【請求項15】
前記出力信号区分と、前記補正出力信号区分と、前記区分遷移しきい値が電圧を備え、前記ICが少なくとも1つの比較器を備え、前記比較器(10)に前記出力信号と前記区分遷移しきい値の1つが入力される、請求項14に記載のIC。
【請求項16】
前記複数の補正出力信号区分の1つを少なくとも1つの前記比較器の出力に基づいて選択するように構成されたマルチプレクサを備える、請求項15に記載のIC。
【請求項17】
前記出力信号区分内の前記補正電圧出力が、 corr,i が前記補正出力信号区分であり、V out,i が前記出力信号区分であり、AiとBiが区分係数であるところの
【数15】
によって決定され、前記比較器が前記区分係数AiとBiを選択するように構成されている、請求項14に記載のIC。
【請求項18】
少なくとも1つの前記比較器の前記出力が、補正電圧を生成する補正減圧生成器に接続され、
センサの出力電圧が区分遷移しきい値より小さいとき、前記ICがセンサの出力電圧を出力して、
前記センサの出力電圧が前記区分遷移しきい値より大きいとき、前記センサの出力電圧と前記補正電圧との合計を出力するように構成されている、請求項14に記載のIC。
【請求項19】
第1電圧電流変換回路が第1電流を生成するように構成されていて、ここで
前記第1電流は、前記センサの出力電圧信号がしきい値信号より大きいとき、前記センサの出力電圧信号と前記しきい値信号との差の関数であり、
前記第1電流は前記センサの出力電圧信号が前記しきい値信号より小さいときゼロであり、
前記第1電流が補正抵抗に供給されるとき補正出力信号を生成する、前記センサ出力電圧信号と前記補正出力信号の間の補正抵抗が構成されている、請求項14に記載のIC。
【請求項20】
前記第1電流は、前記センサの出力電圧信号が前記しきい値信号より大きいとき、前記センサの出力電圧信号と前記しきい値信号との差の線形関数である、請求項19に記載のIC。
【請求項21】
前記電圧電流変換回路が
第1入力電圧端子がしきい値信号接続されていて、第2入力端子がトランジスタの第1端子に接続されているオペアンプを備え、
前記オペアンプの前記出力が前記トランジスタの第2端子を直接駆動して、前記トランジスタの第3端子が前記電圧電流変換回路の電流出力端子として作動する、請求項20に記載のIC。
【請求項22】
前記電圧電流変換回路がMOSトランジスタを備える、請求項20に記載のIC。
【請求項23】
前記出力信号に依存する追加信号を提供するように、かつ外部磁場の存在下で磁気抵抗センサによって提供される出力信号を補正する方法であって、前記補正する方法が、
出力電圧の高次成分信号の振幅による線形応答からの出力信号の偏差を決定することと、
補正出力信号の直線性誤差が前記出力信号の直線性誤差よりも小さいように、高次成分信号の出力信号を補償することにより、前記補正出力信号を決定することと、
を備え、前記方法がさらに
前記高次成分信号の負値に近いか等しい追加信号を決定することを備え、ここでは前記補正出力信号を前記決定することが、前記出力信号に前記追加信号を付加することによって前記高次成分信号に対する前記出力信号を補償することを備える、補正する方法を実施するように構成された、集積回路(IC)。
【請求項24】
前記追加信号が、少なくとも1個の電圧乗算器によって決定される、請求項23に記載のIC。
【請求項25】
前記補正出力信号V corr
【数16】
となる少なくとも1個の電圧増幅器(13)をさらに備え、
corr が前記補正出力信号であり、V out が前記出力信号であり、a が1次係数であり、
【数17】
においてa が3次係数であり、Cが定数である、請求項24に記載のIC。
【請求項26】
前記出力信号が入力され、比較器の出力が少なくとも1個のマルチプレクサと、1個のデマルチプレクサとの少なくとも一方の起動、もしくはマルチプレクサ及びデマルチプレクサの任意の組み合わせの起動に使われる、比較器と
前記出力信号の各極性について、少なくとも1個の電圧乗算器によって決定される前記追加信号を決定するように構成された、少なくとも1個の反転増幅器と
を少なくともさらに備える、請求項24に記載のIC。
【請求項27】
信号オフセットが前記出力信号に加算されて、
前記信号オフセットと前記出力信号との合計に相当する入力信号が前記少なくとも1個の電圧乗算器に入力される、請求項24に記載のIC。
【請求項28】
前記追加信号を決定するように構成された、少なくとも1個のアナログ多目的ユニット(AMU)を備える、請求項23に記載のIC。
【請求項29】
前記少なくとも1個のAMUが、少なくとも対数比と、対数と、前記入力電圧をnのべき数で計算するように構成された反対数オペアンプに基づき、nが前記AMUシステムの内部構成部品によって定義される変数である、請求項28に記載のIC。
【請求項30】
比較器と
マルチプレクサとデマルチプレクサとの少なくとも一方と、
少なくとも1個の反転増幅器とを少なくともさらに備えて、少なくとも1個のAMUが前記追加信号を前記出力信号の極性とは独立に決定する、請求項28に記載のIC。
【請求項31】
ゲインG1を持つ第1電圧増幅器と、ゲインG2を持つ第2電圧増幅器をさらに備え、
オフセット信号が前記出力信号に加算されて、前記オフセット信号と前記出力信号の合計に相当する入力信号が、前記少なくとも2個のAMU及び前記第1電圧増幅器に入力され、
前記補正出力信号が、前記AMUの前記出力電圧に前記第1及び第2電圧増幅器の前記出力電圧を足した合計である、請求項28に記載のIC。
【請求項32】
前記AMUの1個が、2のべき数で前記入力信号を計算するように構成されていて、
別のAMUが、3のべき数で前記入力信号を計算するように構成されている、請求項31に記載のIC。
【請求項33】
前記追加信号を前記出力信号からデジタルで決定するように構成されたデジタルシステム(DS)を備える、請求項23に記載のIC。
【請求項34】
デジタルの補正出力信号が最終出力として取得されるように、前記補正する方法が前記DSによって実施される、請求項33に記載のIC。
【請求項35】
前記補正出力信号が前記出力信号及びアナログの追加信号の加算によって取得されるように、デジタルで決定された追加信号からアナログの追加信号を取得するように構成されたデジタルアナログ変換器(DAC)をさらに備える、請求項33に記載のIC。
【請求項36】
複数の磁気抵抗センサに共通変数を導出する特性評価方法であって、
外部磁場の存在下で磁気抵抗センサによって提供される出力信号を補正する方法であって、前記補正する方法が、
出力電圧の高次成分信号の振幅による線形応答からの出力信号の偏差を決定することと、
補正出力信号の直線性誤差が前記出力信号の直線性誤差よりも小さいように、高次成分信号の出力信号を補償することにより、前記補正出力信号を決定することと、
を備え、前記方法がさらに
前記高次成分信号の負値に近いか等しい追加信号を決定することを備え、ここでは前記補正出力信号を前記決定することが、前記出力信号に前記追加信号を付加することによって前記高次成分信号に対する前記出力信号を補償することを備える、補正する方法を実施するとき、前記共通の変数が使われる、特性評価方法。
【請求項37】
前記出力信号V out
【数18】
によって記述され、ここで、Hが外部磁場であり、はオフセット係数であり、aが1次係数であり、前記高次成分信号V h0 少なくとも3次係数aによって記述され、
前記補正する方法が、前記高次成分電圧信号の負値に相当する追加電圧信号を決定することを備え、
補正出力信号前記決定することが、前記高次成分信号電圧用に補正される前記出力電圧信号に、前記追加電圧信号を前記出力信号電圧に加算することによって補正することを備え、前記特性評価方法が、
複数の磁気抵抗センサを提供して、各磁気抵抗センサについて出力信号を測定することと、
測定した出力信号を
【数19】
に適合することで、オフセット係数aと、1次係数aと、少なくとも3次係数aとを決定することと、
前記近似オフセット係数c及び前記近似1次係数cを前記測定された出力信号を
【数20】
によって適合することで決定することと、
決定された前記オフセット係数aと、1次係数aと、少なくとも3次係数aと、近似されたオフセット係数cと、近似された1次係数c1について、中央値を決定することと、
を備える、請求項36に記載の特性評価方法。
【請求項38】
前記磁気抵抗センサが、前記磁気抵抗センサの最大作動磁場範囲に相当する外部磁場に出されると、前記出力信号を前記測定することが行われる、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記複数の磁気抵抗センサが、ウェーハ内に備わった複数の磁気抵抗センサの下位のセットを備える、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記磁気抵抗センサが、少なくとも5個の異なる磁場の大きさに相当する外部磁場に出されるとき、出力信号を前記測定することが行われ、前記少なくとも5個の異なる磁場の大きさが、
前記磁気抵抗センサの最大作動磁場範囲に相当する高磁場と、
低磁場Hとの間に備わっていて、前記低磁場Hでは、前記出力信号(Vout)は
【数21】
で記述される磁場範囲(-H,H)内で線形依存性に従い、それによりオフセットaと線形係数aを出力電圧Voutの線形適合によって決定できるようにし、ここでは前記少なくとも3次係数a
【数22】
によって導出され、ここでVout_H2が前記最大作動磁場範囲H て測定された出力電圧である、前記磁場範囲(-H,H)内の線形依存性に従っていて、
前記測定された出力信号
【数23】
を、任意の所望の磁場行程にて-HからHの範囲の磁場について以前決定された係数aと、係数aと、係数aとから再構築することと、
近似オフセット係数c及び近似1次係数cを前記測定された出力信号を前記最大作動磁場範囲にわたって
【数24】
に適合することで決定することと、
前記決定されたオフセット係数aと、1次係数aと、少なくとも3次係数aと、近似オフセット係数cと、近似1次係数cとに対する前記中央値を決定することと
を備える、請求項37に記載の方法。
【国際調査報告】