(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】電気素子
(51)【国際特許分類】
H10N 30/20 20230101AFI20240118BHJP
H10N 30/853 20230101ALI20240118BHJP
H10N 30/87 20230101ALI20240118BHJP
H10N 30/88 20230101ALI20240118BHJP
H10N 30/30 20230101ALI20240118BHJP
【FI】
H10N30/20
H10N30/853
H10N30/87
H10N30/88
H10N30/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540814
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-08-24
(86)【国際出願番号】 GB2021053317
(87)【国際公開番号】W WO2022148945
(87)【国際公開日】2022-07-14
(32)【優先日】2021-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516154934
【氏名又は名称】ザール テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】XAAR TECHNOLOGY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】マルディロビッチ ピーター
(72)【発明者】
【氏名】シバラマクリシュナン スブラマニアン
(72)【発明者】
【氏名】コー ソン ウォン
(57)【要約】
改善された電気素子が提供され、セラミック部材であって、セラミック部材が、深さを有する少なくとも1つの層を備える、セラミック部材と、動作中に、セラミック部材の少なくとも一部分を通して、電位差が確立され得るように、セラミック部材の少なくとも1つの層に隣接して配設された第1及び第2の電極と、を備え、電気素子が、可撓性膜に隣接して配置され、第1の電極層が、少なくとも2つのフィンガーを備える第1の電極群と、少なくとも1つのフィンガーを備える第2の電極群と、を備え、第1及び第2の電極群のフィンガーが、相互嵌合方向において、第1の電極層において交互に配置され、第2の電極層が、少なくとも2つのフィンガーを備える第1の電極群と、少なくとも1つのフィンガーを備える第2の電極群と、を備え、第1及び第2の電極群のフィンガーが、相互嵌合方向において、第2の電極層において交互に配置され、各電極群について、群の全てのフィンガーが、互いに、かつ群電気接点に電気的に接続され、第1の電極層の第1の電極群のフィンガーが、相互嵌合方向において、第2の電極層の第1の電極群の対応するフィンガーと少なくとも部分的に重複し、第1の電極層の第2の電極群のフィンガーが、相互嵌合方向において、第2の電極層の第2の電極群の対応するフィンガーと少なくとも部分的に重複し、群電気接点が、相互嵌合方向において、同じ電極層の第1及び第2の電極群のフィンガー間の電位差、並びにセラミック部材のd33モードでの変形を確立するようにアドレス指定可能であるように、かつ深さ方向において、第1及び第2の電極層の第1及び第2の電極群の少なくとも部分的に重複するフィンガー間の電位差、並びにセラミック部材のd31モードでの変形を確立するようにアドレス指定可能であるように配置されている。当該電気素子を駆動するために好適な駆動信号、スイッチング回路、コントローラ、及び電気素子を駆動する方法も提供される。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気素子であって、
セラミック部材であって、前記セラミック部材が、深さを有する少なくとも1つの層を備える、セラミック部材と、
動作中に、前記セラミック部材の少なくとも一部分を通して、電位差が確立され得るように、前記セラミック部材の前記少なくとも1つの層に隣接して配設された第1及び第2の電極と、を備え、
前記電気素子が、可撓性膜に隣接して配置され、
前記第1の電極層が、少なくとも2つのフィンガーを備える第1の電極群と、少なくとも1つのフィンガーを備える第2の電極群と、を備え、
前記第1及び第2の電極群の前記フィンガーが、相互嵌合方向において、前記第1の電極層において交互に配置され、
前記第2の電極層が、少なくとも2つのフィンガーを備える第1の電極群と、少なくとも1つのフィンガーを備える第2の電極群と、を備え、
前記第1及び第2の電極群の前記フィンガーが、相互嵌合方向において、前記第2の電極層において交互に配置され、
各電極群について、前記群の全ての前記フィンガーが、互いに、かつ群電気接点に電気的に接続され、
前記第1の電極層の前記第1の電極群の前記フィンガーが、前記相互嵌合方向において、前記第2の電極層の前記第1の電極群の対応するフィンガーと少なくとも部分的に重複し、
前記第1の電極層の前記第2の電極群の前記フィンガーが、前記相互嵌合方向において、前記第2の電極層の前記第2の電極群の対応するフィンガーと少なくとも部分的に重複し、
前記群電気接点が、前記相互嵌合方向において、同じ電極層の前記第1及び第2の電極群の前記フィンガー間の電位差、並びに前記セラミック部材のd33モードでの変形を確立するようにアドレス指定可能であるように、かつ深さ方向において、前記第1及び第2の電極層の前記第1及び第2の電極群の前記少なくとも部分的に重複するフィンガー間の電位差、並びに前記セラミック部材のd31モードでの変形を確立するようにアドレス指定可能であるように配置されている、電気素子。
【請求項2】
前記セラミック部材が、深さを有する少なくとも第2のセラミック層を更に備え、前記電気素子が、第3の電極層を更に備える、請求項1に記載の電気素子。
【請求項3】
前記第3の電極層が、第1の電極群及び第2の電極群を備え、前記電極群のうちの一方が、少なくとも1つのフィンガーを備え、前記電極群のうちの他方が、少なくとも2つのフィンガーを備え、前記第1及び第2の電極群の前記フィンガーが、前記相互嵌合方向において、前記第3の電極層に交互に配置され、
各電極群について、前記群の全ての前記フィンガーが、互いに、かつ群電気接点に電気的に接続される、請求項2に記載の電気素子。
【請求項4】
前記第3の電極層が、前記可撓性膜に隣接して配設され、前記第2の電極層が、前記セラミック部材の第1及び第2の層に隣接して、かつこれらの間に配設され、前記第1の電極層が、前記セラミック部材の第1の層に隣接して配設される、請求項2又は請求項3に記載の電気素子。
【請求項5】
前記第3の電極層が、前記第1及び第2のセラミック層と前記第1及び第2の電極層との間に位置し、前記第3の電極層が、連続的である、請求項2に記載の電気素子。
【請求項6】
1つの電極層の前記第1の群及び別の電極層の前記第1の群が、互いに電気的に接続され、共通の群電気入力を共有し、1つの電極層の前記第2の群及び別の電極層の前記第2の群が、互いに電気的に接続され、共通の群電気入力を共有し、そのため、電位差が、動作中に、前記セラミック部材の少なくとも一部分の前記相互嵌合方向において、確立され得る、請求項2~5のいずれかに記載の電気素子。
【請求項7】
1つの電極層の前記第1の群及び同じ電極層の前記第2の群が、互いに電気的に接続され、共通の群電気入力を共有し、別の電極層の前記第1の群及び前記別の電極層の前記第2の群が、互いに電気的に接続され、共通の群電気入力を共有し、そのため、電位差が、動作中に、前記セラミック部材の少なくとも一部分の深さ方向において、確立され得る、請求項2~6のいずれかに記載の電気素子。
【請求項8】
少なくとも1つの流体チャンバを備える液滴吐出装置であって、前記少なくとも1つの流体チャンバが、流体入口と、そこからの液滴吐出のためのノズルと、請求項1~7のいずれかに記載の少なくとも1つの電気素子と、を備える、液滴吐出装置。
【請求項9】
請求項1~7のいずれかに記載の電気素子を備える、MEMSデバイス。
【請求項10】
前記電気素子が、電気センサ素子であるように構成されており、
d33モードでの前記セラミック部材の変形が、同じ電極層の前記第1及び第2の電極群の前記フィンガー間の電位差を確立して、前記相互嵌合方向と整列した有効電位フィールドを作成し、
d31モードでの前記セラミック部材の変形が、前記第1及び第2の電極層の前記第1及び第2の電極群の前記少なくとも部分的に重複するフィンガー間の電位差を確立して、深さ方向と整列した有効電位フィールドを作成する、請求項9に記載のMEMSデバイス。
【請求項11】
前記電気素子が、電気アクチュエータ素子であるように構成されており、
前記相互嵌合方向と整列した有効電位フィールドを作成する、同じ電極層の前記第1及び第2の電極群の前記フィンガー間の電位差の前記確立が、d33モードでの前記セラミック部材の変形を引き起こし、
前記深さ方向と整列した有効電位フィールドを作成する、前記第1及び第2の電極層の前記第1及び第2の電極群の前記少なくとも部分的に重複するフィンガー間の電位差の確立が、d31モードでの変形を引き起こす、請求項9に記載のMEMSデバイス。
【請求項12】
請求項1~7のいずれかに記載の電気素子、請求項8に記載の液滴吐出装置、又は請求項9若しくは請求項11に記載のMEMSデバイスのためのスイッチング回路であって、前記スイッチング回路が、d31モード及びd33モードの選択されたシーケンスにおいて前記電気素子を変形させるために、前記群電気接点の選択されたものから少なくとも2つの駆動信号を接続及び接続解除するように、少なくとも2つのスイッチを備える、スイッチング回路。
【請求項13】
請求項12に記載のスイッチング回路のためのコントローラであって、前記コントローラが、前記d31モード及びd33モードの選択されたシーケンスを実装するために、制御信号を前記スイッチング回路に供給する、コントローラ。
【請求項14】
電気アクチュエータ素子のための駆動信号であって、前記電気アクチュエータ素子が、
深さを有するセラミック部材であって、前記セラミック部材が、少なくとも1つの層を備える、セラミック部材と、
動作中に、前記セラミック部材の少なくとも一部分を通して、電位差が確立され得るように、前記セラミック部材の前記少なくとも1つの層に隣接して配設された第1及び第2の電極と、を備え、
前記電気アクチュエータ素子が、可撓性膜に隣接して配置され、
前記第1の電極層が、第1の電極群及び第2の電極群を備え、前記第1及び第2の電極群のうちの一方が、少なくとも1つのフィンガーを備え、前記第1及び第2の電極群のうちの他方が、少なくとも2つのフィンガーを備え、
前記第1及び第2の電極群の前記フィンガーが、相互嵌合方向において、前記第1の電極層において交互に配置され、
前記第2の電極層が、第1の電極群及び第2の電極群を備え、
前記第1及び第2の電極群のうちの一方が、少なくとも1つのフィンガーを備え、前記第1及び第2の電極群のうちの他方が、少なくとも2つのフィンガーを備え、
前記第1及び第2の電極群の前記フィンガーが、前記相互嵌合方向において、前記第2の電極層において交互に配置され、
各電極群について、前記群の全ての前記フィンガーが、互いに、かつ群電気入力に電気的に接続され、
前記第1の電極層の前記第1の電極群の前記フィンガーが、前記相互嵌合方向において、前記第2の電極層の前記第1の電極群の対応するフィンガーと少なくとも部分的に重複し、
前記第1の電極層の前記第2の電極群の前記フィンガーが、前記相互嵌合方向において、前記第2の電極層の前記第2の電極群の対応するフィンガーと少なくとも部分的に重複し、
それぞれの電極群を選択して、前記それぞれの群間の電位差を確立することによって、前記セラミック部材が、d31モード及び/又はd33モードで変形され得、
前記駆動信号が、少なくとも4つの駆動信号を含み、それによって、各駆動信号が、前記群電気接点のうちの1つに供給され、前記少なくとも4つの駆動信号のうちの少なくとも1つの電圧が、前記それぞれの電極群間の電位差を確立するように変化し、それによって、d31及び/又はd33モードの選択されたシーケンスにおいて、前記セラミック部材を変形させ、それによって、前記電気アクチュエータ素子を変形させ、かつ前記可撓性膜を移動させる、駆動信号。
【請求項15】
前記駆動信号が、第1の駆動信号、第2の駆動信号、第3の駆動信号、及び第4の駆動信号を含む、請求項14に記載の駆動信号。
【請求項16】
前記第1の駆動信号が、第1の保持信号を含み、前記第2の駆動信号が、第2の保持信号を含み、前記第3の駆動信号が、第3の保持信号を含み、前記第4の駆動信号が、第4の保持信号を含み、前記保持信号が、持続時間dを有する、請求項15に記載の駆動信号。
【請求項17】
前記第1の保持信号及び前記第2の保持信号が、第1の電圧にあり、前記第3の保持信号及び前記第4の保持信号が、第2の電圧にあり、前記セラミック部材をd31モードで変形させ、前記持続時間dの間、前記セラミック部材をそこに保持するようにする、請求項16に記載の駆動信号。
【請求項18】
前記第1の保持信号、前記第2の保持信号、前記第3の保持信号、及び前記第4の保持信号が、第1の電圧にあり、前記持続期間dの間、前記セラミック部材を未変形に保持するようにする、請求項16に記載の駆動信号。
【請求項19】
前記第1の保持信号及び前記第3の保持信号が、第2の電圧にあり、前記第2の保持信号及び前記第4の保持信号が、第1の電圧にあり、前記セラミック部材をd33モードで変形させ、前記持続時間dの間、前記セラミック部材をそこに保持するようにする、請求項16に記載の駆動信号。
【請求項20】
最初に、前記第1の駆動信号及び前記第2の駆動信号が、第1の電圧にあり、前記第3の駆動信号及び前記第4の駆動信号が、第2の電圧にあり、
同時に、前記第3の駆動信号及び前記第4の駆動信号が、持続時間d1の間、前記第2の電圧から前記第1の電圧に切り替わり、
前記持続時間d1の後、前記第3の駆動信号及び前記第4の駆動信号が、前記第1の電圧から前記第2の電圧に同時に切り替わる、請求項15~19のいずれかに記載の駆動信号。
【請求項21】
最初に、前記第1の駆動信号、前記第2の駆動信号、前記第3の駆動信号、及び前記第4の駆動信号が、第1の電圧にあり、
前記第1の駆動信号及び前記第3の駆動信号が、持続時間d1の間、前記第1の電圧から前記第2の電圧に同時に切り替わり、
前記持続時間d1の後、前記第1の駆動信号及び前記第3の駆動信号が、前記第2の電圧から前記第1の電圧に同時に切り替わる、請求項15~20のいずれかに記載の駆動信号。
【請求項22】
最初に、前記第1の駆動信号、前記第2の駆動信号、前記第3の駆動信号、及び前記第4の駆動信号が、第1の電圧にあり、
前記第1の駆動信号及び前記第3の駆動信号が、前記第1の電圧から前記第2の電圧に同時に切り替わり、
持続時間d2の後、前記第1の駆動信号が、前記第1の電圧に戻り、同時に、前記第4の駆動信号が、前記第1の電圧から前記第2の電圧に切り替わり、
後続の持続時間d3の後、前記第3の駆動信号及び前記第4の駆動信号が、前記第2の電圧から前記第1の電圧に切り替わる、請求項15~21のいずれかに記載の駆動信号。
【請求項23】
最初に、前記第1の駆動信号及び前記第2の駆動信号が、第1の電圧にあり、前記第3の駆動信号及び前記第4の駆動信号が、第2の電圧にあり、
同時に、持続時間d1の間、前記第1の駆動信号が、前記第1の電圧から前記第2の電圧に切り替わり、前記第4の駆動信号が、前記第2の電圧から前記第1の電圧に切り替わり、
前記持続時間d1の後、前記第1の駆動信号が、前記第1の電圧に切り替わり、前記第4の駆動信号が、前記第2の電圧に切り替わる、請求項15~22のいずれかに記載の駆動信号。
【請求項24】
最初に、前記第1の駆動信号、前記第2の駆動信号、前記第3の駆動信号、及び前記第4の駆動信号が、第1の電圧にあり、
前記第3の駆動信号及び前記第4の駆動信号が、持続時間d4の間、前記第1の電圧から前記第2の電圧に同時に切り替わり、
その後、持続時間d5の間、前記第1の駆動信号が、前記第1の電圧から前記第2の電圧に切り替わり、同時に、前記第4の駆動信号が、前記第2の電圧から前記第1の電圧に切り替わり、
その後、前記持続時間d5の後、持続時間d6の間、前記第1の駆動信号が、前記第2の電圧から前記第1の電圧に切り替わり、同時に、前記第4の駆動信号が、前記第1の電圧から前記第2の電圧に切り替わり、
前記持続時間d6の後、前記第3の駆動信号及び前記第4の駆動信号が、前記第2の電圧から前記第1の電圧に同時に切り替わる、請求項15~23のいずれかに記載の駆動信号。
【請求項25】
最初に、前記第1の駆動信号及び前記第2の駆動信号が、第1の電圧にあり、前記第3の駆動信号及び前記第4の駆動信号が、第2の電圧にあり、
持続時間d4の間、前記第3の駆動信号及び前記第4の駆動信号が、前記第2の電圧から前記第1の電圧に同時に切り替わり、
その後、前記持続時間d4の後、持続時間d5の間、前記第1の駆動信号及び前記第3の駆動信号が、前記第1の電圧から前記第2の電圧に同時に切り替わり、
その後、前記持続時間d5の後、持続時間d6の間、前記第1の駆動信号及び前記第3の駆動信号が、前記第2の電圧から前記第1の電圧に同時に切り替わり、
その後、持続時間d6の後、前記第3の駆動信号及び前記第4の駆動信号が、前記第1の電圧から前記第2の電圧に同時に切り替わる、請求項15~24のいずれかに記載の駆動信号。
【請求項26】
前記第1の電圧が、基準電圧である、請求項15~25のいずれかに記載の駆動信号。
【請求項27】
前記第2の電圧が、前記第1の電圧よりも大きい、請求項15~26のいずれかに記載の駆動信号。
【請求項28】
電気アクチュエータ素子を駆動する方法であって、前記電気アクチュエータ素子が、
セラミック部材であって、前記セラミック部材が、深さを有する少なくとも1つのセラミック層を備える、セラミック部材と、
動作中に、前記セラミック部材の少なくとも一部分を通して、電位差が確立され得るように、深さ方向において、前記少なくとも1つのセラミック層に隣接して配設された第1及び第2の電極層と、を備え、
前記電気アクチュエータ素子が、可撓性膜に隣接して配置され、
前記第1の電極層が、第1の電極群と、第2の電極群と、を備え、
前記第1及び第2の電極群のフィンガーが、相互嵌合方向において、前記第1の電極層において交互に配置され、
前記第2の電極層が、第1の電極群と、第2の電極群と、を備え、
前記第1及び第2の電極群の前記フィンガーが、前記第2の電極層において交互に配置され、
前記第1及び第2の電極層の各電極群について、前記群の全てのフィンガーが、互いに、かつ群電気接点に電気的に接続され、
前記第1の電極層の前記第1の電極群が、前記相互嵌合方向において、前記第2の電極層の前記第1の電極群と少なくとも部分的に重複し、
前記第1の電極層の前記第2の電極群が、前記相互嵌合方向において、前記第2の電極層の前記第2の電極群と少なくとも部分的に重複し、
前記電気アクチュエータ素子が、選択されたそれぞれの電極群をアドレス指定し、かつ前記セラミック部材の少なくとも一部分を通して電位差を確立し、それによって、d31モード又はd33モードで前記セラミック部材を変形することによって変形され、
前記方法が、
-前記d31変形モード若しくは前記d33変形モードを選択するか、又はd31及び/又はd33変形モードのシーケンスを選択することと、
-選択されたそれぞれの電極群のそれぞれの群電気接点をアドレス指定することによって、少なくとも2つの駆動信号を前記電気アクチュエータ素子に供給し、それによって、前記選択されたそれぞれの電極群間の電位差を確立し、それによって、前記選択された変形モード又は前記選択された変形モードのシーケンスで前記セラミック部材を変形し、それによって、前記可撓性膜を移動させることと、を含む、方法。
【請求項29】
前記セラミック部材をd31モードで変形させることが、前記少なくとも2つの駆動信号が、
-第1の電圧を、前記第1の電極層における前記第1の電極群と、前記第1の電極層における前記第2の電極群と、に提供することと、
-第2の電圧を、前記第2の電極層における前記第1の電極群と、前記第2の電極層における前記第2の電極群と、に提供することと、を行うことによって、前記選択されたそれぞれの電極群間の電位差を確立することを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
d33モードで前記セラミック部材を変形させる前記方法は、前記少なくとも2つの駆動信号が、
-第1の電圧を、前記第1の電極層における前記第1の電極群と、前記第2の電極層における前記第1の電極群と、に提供することと、
-第2の電圧を、前記第1の電極層における前記第2の電極群と、前記第2の電極層における前記第2の電極群と、に提供することと、を行うことによって、前記選択されたそれぞれの電極群間の電位差を確立することを含む、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
前記セラミック部材が、前記セラミック部材にわたって電位差が確立されないニュートラル状態を含み、
前記方法が、前記選択された変形モード又は前記d31及び/若しくはd33変形モードの選択されたシーケンスにおいて、前記セラミック部材を変形させる前及び/若しくは後、並びに/あるいは前記d31及び/若しくはd33変形モードの選択されたシーケンスにおける中間ステップとして、前記セラミック部材をニュートラル状態に保持するステップを更に含む、請求項28~30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記方法が、前記選択された変形モード又は前記d31及び/若しくはd33変形モードの選択されたシーケンスにおいて、前記セラミック部材を変形させる前及び/若しくは後、並びに/あるいは前記d31及び/若しくはd33の変形モードの選択されたシーケンスにおける中間ステップとして、前記セラミック部材を変形状態に保持するステップを更に含み、
前記方法が、d33モードで変形させ、かつ保持するか、又はd31モードで変形させ、かつ保持するかどうかを選択することを更に含む、請求項28~31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記第2の電圧が、前記第1の電圧よりも大きい、請求項28~32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記方法が、前記それぞれの群電気接点をアドレス指定することによって、少なくとも4つの駆動信号を前記電気アクチュエータ素子に供給することを更に含み、
前記少なくとも4つの駆動信号のうちの前記少なくとも1つにおける電圧が、選択された変形モード、又はd31及び/若しくはd33変形モードの選択されたシーケンスを実装するように変化する、請求項28~33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記方法が、
-第1の駆動信号を前記第1の電極層における前記第1の電極群に供給することと、
-第2の駆動信号を前記第1の電極層における前記第2の電極群に供給することと、
-第3の駆動信号を前記第2の電極層における前記第1の電極群に供給することと、
-第4の駆動信号を前記第2の電極層における前記第2の電極群に供給することと、を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記第1の駆動信号が、第1の保持信号を含み、前記第2の駆動信号が、第2の保持信号を含み、前記第3の駆動信号が、第3の保持信号を含み、前記第4の駆動信号が、第4の保持信号を含み、
-前記セラミック部材をd31モードで変形させ、かつ保持するために、前記保持信号が、選択された持続時間の間、d31モードで前記セラミック部材を変形させ、かつ保持するために好適な電圧にあり、
-前記セラミック部材をd33モードで変形させ、かつ保持するために、前記保持信号が、選択された持続時間の間、d33モードで前記セラミック部材を変形させ、かつ保持するために好適な電圧にあり、
-前記セラミック部材を未変形位置に保持するために、前記第1、第2、第3、及び第4の保持信号が、全て同じ電圧にあり、選択された期間の間、そのように留まり、前記方法が、
前記セラミック部材の所望の位置を選択することと、
前記セラミック部材を前記所望の位置に保持するように、適切な駆動信号を、それらのそれぞれの電極群に供給することと、を含む、請求項34又は請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記方法が、前記セラミック部材を移動させるために、請求項14~27のいずれかに記載の駆動信号を使用することを含む、請求項34~36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記方法が、前記選択された変形モード又は前記d31及び/若しくはd33変形モードの選択されたシーケンスを実装するために、前記それぞれの群電気接点から前記少なくとも2つの駆動信号のうちの第1の駆動信号及び/又は第2の駆動信号を接続及び接続解除するように、スイッチング回路を制御することを含む、請求項28~33のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記第1の駆動信号が、前記第1の電圧を供給し、前記第2の駆動信号が、前記第2の電圧を供給する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
電気センサ素子を使用して感知する方法であって、前記電気センサ素子が、
セラミック部材であって、前記セラミック部材が、深さを有する少なくとも1つのセラミック層を備える、セラミック部材と、
動作中に、前記セラミック層の少なくとも一部分を通して、電位差が確立され得るように、深さ方向において、前記少なくとも1つのセラミック層に隣接して配設された第1及び第2の電極層と、を備え、
前記電気センサ素子が、可撓性膜に隣接して配置され、
前記第1の電極層が、少なくとも2つのフィンガーを備える第1の電極群と、少なくとも1つのフィンガーを備える第2の電極群と、を備え、
前記第1及び第2の電極群の前記フィンガーが、相互嵌合方向において、前記第1の電極層において交互に配置され、
前記第2の電極が、少なくとも2つのフィンガーを備える第1の電極群と、少なくとも1つのフィンガーを備える第2の電極群と、を備え、
前記第1及び第2の電極群の前記フィンガーが、前記相互嵌合方向において、前記第2の電極層において交互に配置され、
各電極群について、前記群の全ての前記フィンガーが、互いに、かつ群電気接点に電気的に接続され、
前記第1の電極層の前記第1の電極群が、前記相互嵌合方向において、前記第2の電極層の前記第1の電極群と少なくとも部分的に重複し、
前記第1の電極層の前記第2の電極群が、前記相互嵌合方向において、前記第2の電極層の前記第2の電極群と少なくとも部分的に重複し、
前記セラミック部材が、d31モード又はd33モードで変形され得、
前記方法は、前記可撓性膜が、外力及び前記電気センサ素子に応答して移動し、それによって、変形し、前記セラミック部材が、それによって、前記群電気接点のうちの1つ以上に供給される電気信号(1つ又は複数)を生成するために、d31又はd33モードで変形することを含み、前記群電気接点が、出力として構成される、方法。
【請求項41】
前記方法が、前記1つ以上の群電気接点に供給された前記生成された電気信号(1つ又は複数)を測定することと、前記信号(1つ又は複数)を使用して、前記可撓性膜の前記変形を判定し、ひいては前記外力の強度を判定することと、を更に含む、請求項40に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小電気機械システム(MEMS)デバイスのための電気素子、具体的には、電気機械アクチュエータ又は電気機械センサに関するが、これらに限定されない。電気機械アクチュエータは、液滴吐出ヘッド、例えば、インクジェットプリントヘッドのアクチュエータ構成要素として、特に有益な用途を見出し得る。
【背景技術】
【0002】
液滴吐出ヘッドは、インクジェット印刷などのより従来からの用途、3D印刷などの高度な用途、他の材料堆積、又はラピッドプロトタイピング技術であるかにどうかにかかわらず、現在広く使用されている。したがって、使用される流体は、新たな基材に付着及び/又は堆積した材料の機能性を増加させる新規の化学特性を有し得る。
【0003】
近年、高い信頼性及びスループットでインクをセラミックタイル、テキスタイル、又は他の基材に直接堆積させることが可能なインクジェットプリントヘッドが開発されている。これは、基材上のパターンが顧客の正確な仕様になるようにカスタマイズされることを可能にし、全ての印刷生成物を在庫する必要性を低減することも可能にする。
【0004】
更に他の用途では、MEMSアクチュエータデバイスは、アッセイ及び試験など、化学的及び生物学的用途に流体を堆積させるために使用され得、MEMS感知デバイスは、流体圧力などの特性を測定するために使用され得る。
【0005】
新しい、及び/又はますます困難な用途に好適となるように、アクチュエータ及びセンサなどのMEMSデバイスのための電気素子は進化及び特化し続けている。しかしながら、数々の開発が行われてきたが、改善の余地が依然として存在する。
【0006】
MEMSデバイスのための電気素子は、例えば、薄フィルム技術分野で既知の1つ以上の技術を通して、基材上に配置された一連の層の堆積によって一般的に製造される。典型的な電気素子は、
図1A及び
図1Bに示すもののように、強誘電性の挙動を示すセラミック材料の薄フィルム、例えば圧電材料又はリラクサー/強誘電性クロスオーバー材料が、下部電極と上部電極の2つの導電層の間に介在される構成を有し得る。このような電気素子は、基材上に層ごとに堆積され、通常、ウェハが、電気素子の複数のそのようなアレイを収容する。下部電極は、共通電極であり得るか、又はパターン形成されて、個々の電極のアレイを形成し得、各々が個々の電気素子と関連付けられる。セラミック材料の薄フィルムは、同様にパターン形成される場合、又はされない場合がある。したがって、個々の電気素子は、パターン形成されたセラミック材料の薄フィルム又はパターン形成されていない「共通」セラミック材料の薄フィルムの領域を含む可能性がある。電気素子の個々にアドレス指定可能な領域は、各電気素子に対して個別であるように、パターン形成されている電極の少なくとも1つによって画成され得る。駆動回路への電気素子の電気的接続は、電気素子の電極に直接接続される金属トレースの使用を通して確実にされ得る。
【0007】
通常用いられるセラミック材料は、ペロブスカイト構造を有する鉛系セラミック、特にチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ドープPZT及びPZT系固溶体を含む。それらは、当技術分野で既知のいくつかの堆積技術、例えば、スパッタリング、化学気相堆積(CVD)、化学溶液堆積(CSD)を通して基材上に堆積され得る。近年、鉛フリー代替材料、例えば(K,Na)NbO3系材料、(Ba,Ca)(Zr,Ti)O3系材料、及び(Bi,Na,K)TiO3系材料の開発に多大な努力が払われている。
【0008】
アクチュエータとして構成されるときに、このような電気素子の最も重要なパラメータのうちの1つは、その効率である。すなわち、可能な限り低い電圧を使用する最大変位(又はセンサのより高い感度に対する最大変位)である。このような電気素子に対して、3つの主要な動作モードがある。すなわち、d
33d
15、d
31(簡略化のために全体を通してd33、d15、及びd31と称される)である。多くのMEMSアクチュエータは、d31モードで動作する。
図1Aは、d31モードで動作可能なMEMSアクチュエータの概略図であり、これは、液滴吐出装置のためのMEMSデバイス10の概略レイアウトを示す断面図を描写し、MEMSデバイス10は、電気素子120を備えるアクチュエータ素子102を備え得る。電気素子120は、基材110上に装着され、その一部分は可撓性膜として自由に移動することができる。この場合、それは、流体チャンバ195のルーフの一部である。インクなどの流体は、キャッピング層103を通って切断又はエッチングされた流体ポート198を介して流体チャンバ195に供給され得る。キャッピング層103は、電気素子120の上に空洞106を更に備え得る。このような空洞は、流体チャンバ195及び流体ポート198から空洞106内に流体が入るのを防止するために、液密で封止され得る。
【0009】
一部のデバイスでは、入口流体ポート198のみが必要とされ得る。他のMEMSデバイスは、流体が入口流体ポート198から出口流体ポート198へ流体チャンバ195を通って流れ、電気素子120が適切に作動されるときに液滴としてノズル197を介して吐出される流体の割合で、いわゆるスルーフローモードで動作し得る。
【0010】
図1Bは、アクチュエータ構成要素102の一部を描写する、
図1Aの断面の一部分の概略図である。電気素子120は、基材層110の上に配置されることが分かる。電気素子120は、動作中に下部電極121と上部電極122との間にセラミック部材123を通して電位差が確立されるように、セラミック部材123と、セラミック部材123にそれぞれ隣接して配設された下部電極121及び上部電極122と、を備える。下部電極は、基材層110に隣接している。電気トレース160は、上部電極122への電気接続を提供する。下部電極121を電気的に接続するために、更なる電気的トレース(
図1Bには図示せず)が提供される。
【0011】
アクチュエータ構成要素102は、それ自体が単一の層であり得るか、又はサブ層の積層物を備え得る、いくつかの他の層を備える。絶縁層170、パッシベーション層150及び中間層140などの層は、様々な機能を有し得る。中間層140は、例えば、応力勾配軽減層、セラミック部材と基材との間のイオンの拡散を防止するためのバリア層、及び/又は基材への電気素子の接着を改善するための接着層を備え得る。このような追加の層は、例えば、無機酸化物層又は窒化物層、例えばアルミナ、シリカ、窒化ケイ素、ジルコニア、タンタラ、ハフニアなどを含み得る。
【0012】
セラミック部材123は、XY平面内に延在し、上で説明される材料などの強誘電挙動を呈する任意の好適なタイプの薄フィルムセラミック材料を含む。電界がZ方向に沿って印加されるときに、上部電極122と底部電極121との間に、かつセラミック部材123を通して電位差を確立し、セラミック材料は、Z方向(d33)で膨張し、X-Y方向(d31)で収縮する。電気素子120が、基材110(可撓性膜である部分を備える)に取り付けられるため、セラミック材料が変形するときに、可撓性膜が(負のZ方向において)流体チャンバ195内に下に曲がる(
図1Aでは破線として概略的に示される)。電界が除去されるときに、セラミック材料は電位差を受けなくなり、ニュートラル(未成形)状態及び位置に戻り、可撓性膜をそれとともに移動させる。好適な駆動波形を適用することによって、
図1A及び
図1Bのもののような電気素子120を使用して、所望されるように、及び所望されるときに、ノズル197を介して液滴を吐出し、それによって例えば、基材上に印刷することができる。典型的に、液滴吐出に使用されるMEMSアクチュエータデバイスは、基材の大きい領域に対処することができるように、複数のこのような電気素子及び関連する流体チャンバを備え、それらは、一般的に単一の列又は複数の列を含むアレイに配置される。液滴吐出ヘッドは、例えば、複数のアクチュエータを含み得、それ自体は、単独で、又は複数の他の液滴吐出ヘッドとともに使用され、液滴吐出装置の一部を形成し得る。
【0013】
d31モードで動作するのではなく、いくつかのMEMSアクチュエータはd33モードで動作し、好適に位置した第1の電極と第2の電極を使用して、X方向に沿って電界を印加して、X方向において、セラミック部材を通して電位差を確立するようにする。セラミック材料は、X-Y方向(d33)で膨張し、Z方向(d31)で収縮する。アクチュエータは上へ(正のZ方向に)曲がり、可撓性膜も同様に移動する。再び、電界が除去されると、セラミック部材は、可撓性膜のように、そのニュートラル状態及び位置に戻る。
【0014】
d33又はd31モードで動作する上で説明されるものと同様のMEMSデバイスも、センサとして構成することができることが理解され得る。例えば、印加力(流体圧力など)が、可撓性膜を偏向させ、結果として、セラミック部材を変形させる場合、移動に比例して電気が生成される。好適なキャリブレーションデータにより、MEMSデバイスを、このような力を測定するためのセンサとして使用することが可能となる。
【0015】
このような上で説明されるMEMSアクチュエータの制約は、所与の印加電圧に対する最大変位が、変形モード(d31又はd33)によって達成可能なものに限定されることである(センサの場合、生成された電圧は、変形モードによって達成可能な最大変位に関係する)。アクチュエータとして使用されるときに、所与の印加電圧に対して利用可能なより大きい総変位範囲を有し、センサとして使用されるときに、より大きい変位を有する電気素子を有することが望ましい。
【0016】
図1Aのものなどの液滴吐出ヘッドのためのアクチュエータ構成要素102の更なる特徴は、いくつかの用途及び駆動スキームでは、アクチュエータ素子が、セラミック部材123にわたって電位フィールドを生成するように、電極121、122に好適な電圧を印加することによって、ジェット現象間の変形d31位置に保持され得ることである。液滴吐出イベントが所望されるときに、好適な駆動波形がアクチュエータに供給され、次の一連のイベント、すなわち、電位フィールドが除去され(例えば、d31偏向が、オフに切り替えられる)、したがってアクチュエータがニュートラル位置に戻り、それとともに可撓性膜を移動させることが発生する。これにより、流体チャンバ195の体積が増加し、それによって流体が流体チャンバ195内に引き込まれる。次いで、駆動波形は、セラミック部材123にわたって電位フィールドを再確立し、もう一度d31モードでそれを変形するために(例えば、d31の偏向モードがオンに切り替えられる)、電極121、122に好適な電圧を印加し、それによって可撓性膜を流体チャンバ195内に移動させ、ノズル197を介して流体の液滴を吐出する。
【0017】
このような動作方法の有利な点は、アクチュエータの第1の移動が流体チャンバ充填イベントを引き起こすため、望ましくない液滴吐出イベントを軽減し得るため、より高い性能安定性を提供することである。このような液滴吐出方法の不利な点は、電気素子120が、液滴吐出イベントの間に保持電圧が印加された状態、変形したd31位置に保持されることである。この印加保持電圧は、より高い電力消費をもたらし、動作に望ましくないコストを追加する。更に、これは、アクチュエータ構成要素102内に過剰な熱を引き起こすことがあり、例えば、可撓性膜の境界領域における長期にわたる応力によって、これは、補償される必要があることがあり、アクチュエータ性能の劣化の加速をもたらすことがある。したがって、他の理由で作動される(感知目的、ノズルのクリアランス、又はメンテナンスなどの液滴を排出しない他の機能など)とき以外は、電気素子120が液滴吐出イベント間で電力を消費しない駆動波形を使用することができ、例えば、スタートアップ時に不要な液滴吐出イベントを軽減することが依然としてできながら、作動イベント間の有意な電力消費なしで、電気素子120が、そのニュートラル非変形状態で位置付けられ得ることが望ましい。
【0018】
本発明は、d31モード及びd33モードの両方で変形する電気素子、並びにこのような素子を駆動又は感知する方法を提供することによって、上記の要件に対処し、それらの素子は、それぞれ、達成可能な最大変位及び達成可能な最大感知感度に対する関連する利益を有する。更に、本発明は、駆動波形及び動作方法を含む、このような電気素子を駆動するための好適な駆動波形を提供し、所望される場合、電気素子が、電気素子が作動されるとき(液滴吐出の場合又は上で説明される他の目的の場合のいずれか)以外は、電力を消費しないようにニュートラル位置に保持され得るように動作することができる。
【発明の概要】
【0019】
本発明の態様が、添付の独立請求項に記載され、本発明の特定の実施形態が、添付の従属請求項に記載される。
【0020】
以下の開示は、一態様では、電気素子であって、
セラミック部材であって、当該セラミック部材が、深さを有する少なくとも1つの層を備える、セラミック部材と、
動作中に、セラミック部材の少なくとも一部分を通して、電位差が確立され得るように、セラミック部材の少なくとも1つの層に隣接して配設された第1及び第2の電極と、を備え、
当該電気素子が、可撓性膜に隣接して配置され、
第1の電極層が、少なくとも2つのフィンガーを備える第1の電極群と、少なくとも1つのフィンガーを備える第2の電極群と、を備え、
第1及び第2の電極群のフィンガーが、相互嵌合方向において、第1の電極層において交互に配置され、
第2の電極層が、少なくとも2つのフィンガーを備える第1の電極群と、少なくとも1つのフィンガーを備える第2の電極群と、を備え、
第1及び第2の電極群のフィンガーが、相互嵌合方向において、第2の電極層において交互に配置され、
各電極群について、当該群の全てのフィンガーが、互いに、かつ群電気接点に電気的に接続される、電気素子である。
【0021】
第2の態様では、第1の態様による電気素子を駆動するための駆動信号が提供される。
【0022】
第3の態様では、第1の態様による電気素子のためのスイッチング回路が提供される。
【0023】
第4の態様では、第3の態様によるスイッチング回路のためのコントローラが提供される。
【0024】
第5の態様では、第1の態様による電気素子を駆動する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
ここで、図面を参照する。
【0026】
【
図1A】液滴吐出ヘッドための既知の電気素子の概略レイアウトを示す、既知の電気構成要素を通る概略断面である。
【
図2A】可撓性膜に装着された一実施形態による電気素子の上面図を描写する。
【
図2D】線AAに沿った
図2Aに描写された実施形態を通る断面である。
【
図3A】電極群が陰影付けされて、印加電圧を示し、これが、d33モードでセラミック部材が変形するであろう、
図2Aのもののような電気素子を通る断面を描写する。
【
図4A】電極群が陰影付けされて、印加電圧を示し、これが、d31モードでセラミック部材が変形するであろう、
図2Aのもののような電気素子を通る断面を描写する。
【
図4B】
図4Aのもののような電気素子の2つの電極層を描写する。
【
図5A】別の実施形態による電気素子の上面図であり、この実施形態は、少なくとも2つの層を有するセラミック部材を備え、電気素子も、第3の電極層を備える。
【
図5D】
図5Aに示された線AAに沿った実施形態を通る断面である。
【
図5E】
図5Aに示された線BBに沿った実施形態を通る断面である。
【
図6A】
図5Aのものと同様の、別の実施形態による電気素子の上面図であるが、第1及び第3の電極層の第1の電極群は、互いに電気的に接続され、第1及び第3の電極層の第2の電極群は、互いに電気的に接続される。
【
図6D】
図6Aに示された線AAに沿った実施形態を通る断面である。
【
図6E】
図6Aに示された線BBに沿った実施形態を通る断面である。
【
図6F】電極の第1、第2、及び第3の電極層及びそれらの電気的接続の斜視図である。
【
図7A】第1の電圧V1又は第2の電圧V2が印加されているかどうかに従って陰影付けされた電極群を有する
図5又は
図6のような電気素子を通る断面であり、印加電圧は、セラミック部材をd33モードで変形させる。
【
図8A】第1の電圧V1又は第2の電圧V2が印加されているかどうかに関して陰影付けされた電極群を有する
図5又は
図6のような電気素子を通る断面であり、印加電圧は、セラミック部材をd31モードで変形させる。
【
図9A】
図6のもののような電子素子に対するスイッチング配置を描写し、各電極層の各群における単一のフィンガーが描写され、印加される電圧が、セラミック部材をd33モードで偏向させるようなものである。
【
図9B】
図9Aのものと同様の電気素子に対するスイッチング配置を描写し、印加される電圧が、セラミック部材をd31モードで偏向させるようなものである。
【
図10A】セラミック部材をd31モードで変形させる駆動信号を描写する。
【
図10C】
図10Aに描写された駆動信号の第1及び第3の段階における、
図6のもののような電気素子に印加される電圧を描写する。
【
図10D】
図10Aに描写された駆動信号の第2の段階における、
図6のもののような電気素子に印加される電圧を描写する。
【
図11A】セラミック部材をd33モードで変形させる電気素子の駆動信号を描写する。
【
図11B】ニュートラル位置から開始し、d33変形に移動し、再び戻る、
図11Aの駆動信号に応答した電気素子の変位を描写する。
【
図11C】
図11Aに描写された駆動信号の第1及び第3の段階における、
図6のもののような電気素子に印加される電圧を描写する。
【
図11D】
図11Aに描写された駆動信号の第2の段階における、
図6のもののような電気素子に印加される電圧を描写する。
【
図12A】ニュートラルからd33変形、d31変形、及び再びニュートラルに戻る移動を含む第1のモードでセラミック部材を変形させる電気素子の駆動信号を描写する。
【
図12B】
図12Aの駆動信号に応答したセラミック部材を備える電気素子の変位を描写する。
【
図12C】
図12Aに描写された駆動信号の第1及び第4の段階における、
図6のもののような電気素子に印加される電圧を描写する。
【
図12D】
図12Aに描写された駆動信号の第2の段階における、
図6のもののような電気素子に印加される電圧を描写する。
【
図12E】
図12Aに描写された駆動信号の第3の段階における、
図6のもののような電気素子に印加される電圧を描写する。
【
図13A】d31変形からd33変形、及びd31に戻る移動を含む第2のモードで電気素子を変形させる駆動信号を描写する。
【
図13B】
図13Aの駆動信号に応答したセラミック部材を備える電気素子の変位を描写する。
【
図13C】
図13Aに描写された駆動信号の第1及び第3の段階における、
図6のもののような電気素子に印加される電圧を描写する。
【
図13D】
図13Aに描写された駆動信号の第2の段階における、
図6のもののような電気素子に印加される電圧を描写する。
【
図14A】ニュートラル位置からd31モード、d33モード、d31モードに戻り、次いでニュートラル位置への移動を含む第3のモードで電気素子を変形させる電気素子の駆動信号を描写する。
【
図14B】
図14Aの駆動信号に応答したセラミック部材を備える電気素子の変位を描写する。
【
図14C】
図14Aに描写された駆動信号の第1及び第5の段階における、
図6のもののような電気素子に印加される電圧を描写する。
【
図14D】
図14Aに描写された駆動信号の第2及び第4の段階における、
図6のもののような電気素子に印加される電圧を描写する。
【
図14E】
図14Aに描写された駆動信号の第3の段階における、
図6のもののような電気素子に印加される電圧を描写する。
【
図15A】d31変形からニュートラル位置、d33変形、ニュートラル位置に戻り、d31の変形に戻る移動を含む第4モードで電気素子を変形させる電気素子の駆動信号を描写する。
【
図15C】
図15Aに描写された駆動信号の第1及び第5の段階における、
図6のもののような電気素子に印加される電圧を描写する。
【
図15D】
図15Aに描写された駆動信号の第2及び第4の段階における、
図6のもののような電気素子に印加される電圧を描写する。
【
図15E】
図15Aに描写された駆動信号の第3の段階における、
図6のもののような電気素子に印加される電圧を描写する。
【
図16】電極の代替的な配置を有する様々な電気素子を描写する。
【0027】
図面では、全体を通して、同様の特徴は、同様の参照符号で示される。図面は原寸に比例したものではなく、特定の特徴がより明瞭に見えるように誇張されたサイズで示されている場合があることに留意されたい。
【発明を実施するための形態】
【0028】
ここで、本発明の実施形態及びそれらの変形例を
図2~
図9を参照して説明し、駆動方法及び駆動信号を
図9~
図15を参照して説明する。
【0029】
2層デバイス
図2Aは、可撓性膜10に装着された一実施形態による電気素子20の上面図を描写する。電気素子20は、セラミック部材30及び第1及び第2の電極層41、42を備える。電気素子20は、MEMSデバイス100の一部として可撓性膜10に隣接して配置される。
図2Bは、
図2Aの実施形態の側面図であり、
図2Cは、
図2Aに描写された実施形態の斜視図であり、
図2Dは、線AAに沿った
図2Aに描写された実施形態を通る断面であり、
図2Eは、線BBに沿った
図2Aに描写された実施形態を通る断面である。
【0030】
図2A~
図2Eから、第1及び第2の電極層41、42は、それぞれ第1及び第2の電極群G1(41)、G2(41)、G1(42)、G2(42)を備えることが分かる。更に、例えば、
図2Dから、各電極群が、複数のフィンガーG1(41)(i~ii)、G2(41)(i~iii)、G1(42)(i~ii)、G2(42)(i~iii)を備えることが分かる。更に、各電極群G1(41)、G2(41)、G1(42)、G2(42)の全てのフィンガーが、それぞれ共通コネクタC1(41)、C2(41)、C1(42)、C2(42)によって互いに電気的に接続されていることが分かる。次いで、共通コネクタは各々、それぞれの群電気接点、すなわち、C1(41)はOLに、C2(41)からORに、C1(42)からILに、C2(42)はIRに電気的に接続される。駆動回路への電気素子の電気的接続は、電気素子の群電気接点OL、OR、IL、IRに直接接続される金属トレースの使用を通して確実にされ得る。
【0031】
セラミック部材30は、単一層31を備えるように、
図2A~
図2Eに示されているが、これに決して限定されるものではなく、セラミック部材30は、セラミック部材30を備える電気素子20があるように、複数の層31(i~n)を備え得、セラミック部材30は、(深さ方向80において)深さを有する少なくとも1つの層31を備える。第1及び第2の電極層41、42は、セラミック部材30の少なくとも1つの層31に隣接して配設され、そのため、動作中に、電位差が、セラミック部材30の少なくとも一部分を通して確立され得る。電気素子20は、可撓性膜10に隣接して配置される。別の言い方をすれば、
図2に示すように、この実施形態では、第1及び第2の電極層41、42は、セラミック部材30の対向面上に配置され、この実施形態では、セラミック部材30が、層31を備えるが、これは限定ではないことが理解され得、セラミック部材30は、複数の層を備え得る。
【0032】
第1の電極層41は、2つのフィンガーG1(41)(i~ii)を備える第1の電極群G1(41)と、3つのフィンガーG2(41)(i~iii)を備える第2の電極群G2(41)と、を備える。第1及び第2の電極群G1(41)、G2(41)のフィンガーは、相互嵌合方向81において、第1の電極層41において交互に嵌合(相互嵌合)するように配置される。電極層における交互のフィンガー間には、ギャップy1があり、そのため、それらが、互いに接触しないことが分かる。同様に、第2の電極層42は、2つのフィンガーG1(42)(i~ii)を備える第1の電極群G1(42)と、3つのフィンガーG2(42)(i~iii)を備える第2の電極群G2(42)と、を備える。第1及び第2の電極群G1(42)、G2(42)のフィンガーは、相互嵌合方向81において、第2の電極層42において交互に配置される。
図2Dから、この配置では、第2の電極層42の交互のフィンガー間のギャップy1の各々が、層31の一部を含む材料で満たされていることが分かる。
【0033】
各電極群について、群内の全てのフィンガーは、(例えば、それぞれ共通コネクタC1(41)、C2(41)、C1(42)、C2(42)を介して)互いに電気的に接続され、それぞれ、群電気接点OL、OR、IL、IRに電気的に接続される。
【0034】
図2Dから分かるように、第1の電極層41の第1の電極群G1(41)のフィンガーは、それらが、相互嵌合方向81において、セラミック部材30の他方側で第2の電極層42の第1の電極群G1(42)の対応するフィンガーと重複するように配置され、フィンガーG1(41)(i)は、フィンガーG1(42)(i)と重複し、電極群G1(41)、G1(42)における残りのフィンガーに対しても同様である。同様に、第1の電極層41の第2の電極群G2(41)のフィンガーは、相互嵌合方向81において、第2の電極層42の第2の電極群G2(42)の対応するフィンガーと重複し、例えば、フィンガーG2(41)(i)は、フィンガーG2(42)(i)と重複する。
【0035】
対応する電極群対は、少なくとも部分的に重複し得、好ましくは、それらは、相互嵌合方向81において、少なくとも50%重複し得、より好ましくは、それらは、50%以上重複し得、更により好ましくは、90%以上重複し得る。中心間間隔Z1(
図2Dに描写されるように)は、実質的に一定であり得る。中心間間隔Z1を一定に維持することで、電極を実質的に整列させ、群及び層における対応するフィンガーの間の重複領域を最大化し得る。
図2D及び
図2Eから分かるように、この実施形態では、深さ方向80及び相互嵌合方向81は、互いに垂直である。
図2D及び
図2Eから分かるように、第2の電極層42は、第1の電極層41よりも可撓性膜10に近い。
【0036】
セラミック部材30の層31は、例えば、所望の厚さのセラミック部材を形成するように、複数の層を蓄積するために、化学蒸着(CVD)、化学溶液堆積(CSD)、ゾルゲル堆積などによって、複数のサブ層を堆積させることによって形成され得ることが理解されよう。本明細書で使用される場合、セラミック材料は、強誘電性挙動を呈するセラミック材料を含み、その例が、上で考察されることが理解されよう。
【0037】
可撓性膜10は、支持体50に固定して取り付けられる。支持体50が、可撓性膜10の2つの側面に沿って示されているが、電気素子20が使用されるデバイス及びデバイスにおける位置に応じて、他の2つの側面に沿って連続的な支持体、又は流体が、例えば、可撓性膜に隣接する空間に入ることを可能にするように、不連続な支持体又は開口部を有する支持体があり得る。例えば、
図2A~
図2Eの電気素子20は、既知の配置の代わりに、
図1Aの液滴吐出ヘッドアクチュエータ構成要素のアクチュエータ素子として使用され得る。更に、支持体50は単に概略的に示されており、実際には任意の好適な配置を使用して、可撓性膜10を、それが必要に応じて移動できるように支持し得ることが理解されよう。
【0038】
ここで、
図3Aを参照すると、これは、第1の電極群G1(41)、G1(42)が両方とも、2つではなく、3つのフィンガーを備えることを除き、
図2A~
図2Eのものと同様の電気素子21を通る断面を描写する。
図3A~
図3Bは、アクチュエータ素子として電気素子21を駆動するために電圧がどのように印加され得るかを描写する。簡略化のため、
図2A~
図2Eの詳細の多くが
図3A~
図3Bから省略されている。
図3A~
図3Bでは、電極群G1(41)、G2(41)、G1(42)、G2(42)が、それらが第1の電圧V1(灰色)又は第2の電圧V2(黒色)にあるかどうかを示すために陰影付けされている。相互嵌合方向81における電極フィンガーの交互の列91、92は、第1の電圧V1にあるか、又は第2の電圧V2にあり、例えば、第1の列91(i)は、第2の電圧V2にあるG1(41)(i)、G2(41)(i)を含み、第2の列92(i)は、第1の電圧V1にあるG2(41)(i)及びG2(42)(i)を含み、パターンが相互嵌合方向81において繰り返されている。
【0039】
図3Aの例では、電極群が選択され、セラミック部材30がd33モードで変形するように、それらに電圧が印加される。
図3Bは、セラミック部材30が省略された、
図3Aの電気素子21の第1及び第2の電極層41、42の分解上面図を描写する。
図3Bはまた、共通コネクタC1(41)、C2(41)、C1(42)、C2(42)、及び群電気接点OL、OR、IL及びIRも描写する。電極群G1(41)、G2(41)、G1(42)、G2(42)、それらのそれぞれのコネクタC1(41)、C2(41)、C1(42)、C2(42)、及び群電気接点OL、OR、IL及びIRは、
図3Aのように、第1の電圧V1(灰色)又は第2の電圧V2(黒色)がそれらに印加されたかどうかを示すために陰影付けされている。
【0040】
図3A及び
図3Bの両方から、各電極層41、42において、第1の電極群G1(41)、G1(42)が第2の電圧V2(黒色)にあり、第2の電極群G2(41)、G2(42)が第1の電圧V1(灰色)にあることが分かる。第2の電圧V2と第1の電圧V1(例えば、V2>V1)との間に電圧差がある場合、このような構成は、相互嵌合方向81と整列したセラミック部材30に有効な電位フィールドを生成し、
図3Aの破線L33によって示されるように、d33モードでセラミック部材30が変形し、深さ方向80に対して上へ曲がるようにする。効果的に、有効電位フィールドは、異なって荷電される群のそれぞれのフィンガー間に発達した全ての場の平均であることが理解されよう。
【0041】
簡略化のために、可撓性膜10及び支持体50は、
図3A又は
図3Bには描写されていないが、電気素子21に隣接して、かつ(例えば、
図2に示すように)固定接続される可撓性膜10がある場合、d33モードでのセラミック部材30の変形は、同様に、深さ方向80に対して可撓性膜10を上へ移動させることが理解されよう。可撓性膜10は、支持体50及び電気素子21に固定して取り付けられるため、支持体は、可撓性膜10の移動を制約し、そのため、線L33(例えば、概して中央)によって示されるように、支持体50から最も離れて最大変位が発生する。
【0042】
図4Aは、印加された第1及び第2の電圧V1、V2がd31モードでセラミック部材30が変形することをもたらすように、電極群が選択される点を除いて、
図3Aのもののような電気素子21を通る断面を描写する。
図4Bは、
図4Aの電気素子21の第1及び第2の電極層41、42の分解上面図を表す。
図3に関しては、
図4の電極群、共通コネクタ、及び群電気接点は、第1の電圧V1又は第2の電圧V2がそれらに印加されているかどうかを示すために陰影付けされている。
【0043】
図4A及び
図4Bの両方から、第1の電極層41において、第1及び第2の電極群G1(41)、G2(41)は両方とも第1の電圧V1にあり、第2の電極層42において、第1及び第2の電極群G1(42)、G2(42)は両方とも第2の電圧V2であることが分かる。別の言い方をすると、
図4Aでは、所与の電極層41、42における全てのフィンガーが同じ電圧にあるのが分かるが、
図3Aでは、フィンガーに印加される電圧が、相互嵌合方向81において、列91、92において交互になっている。
【0044】
第2の電圧V2と第1の電圧V1(例えば、V2>V1)との間に電圧差がある場合、このような構成は、セラミック部材30に有効電位フィールドを生成し、
図4に描写される場合では、有効電位フィールドは、深さ方向80と整列し、破線L31によって示されるように、d31モードでセラミック部材30が変形し、深さ方向80において下へ曲がるようにする。
図3に示すように、可撓性膜10及び支持体50は、
図4には描写されていないが、d31モードでのセラミック部材30の変形は、同様に可撓性膜10が、深さ方向80において下へ移動するようにすることが理解されよう。
【0045】
電極群G1(41)、G2(41)、G1(42)、G2(42)から選択された群に好適な駆動信号を適用することによって、それらのそれぞれの群電気接点OL、OR、IL、IRをアドレス指定することによって、セラミック部材30を駆動して、d33及び/又はd31モードで変形させ得、電気素子21が可撓性膜に取り付けられる場合、これは、例えば、流体チャンバから液滴を吐出するために液滴吐出ヘッドにおいて、使用する電気機械アクチュエータを作成することができる。
【0046】
代替として、例えば、可撓性膜10に隣接する流体中の流体圧力が、それを偏向させ、ひいてはセラミック部材30を変形させる場合、d31及び/又はd33モードでのセラミック部材30の変形が電気信号又は(圧力が変動する)信号を生成するため、電気素子20、21がセンサとして使用され得ることも理解されよう。センサは、例えば、流体内の圧力を測定するために、好適なキャリブレーションデータとともに使用され得る。更なる例として、液滴吐出ヘッドなどの流体デバイスにおける電気機械アクチュエータは、流体特性を測定及び監視するために液滴を吐出しないときに、アイドル時間に使用され得、例えば、アクチュエータとして使用されないときに、センサとして使用され得る。また更に、例えば、経年によるアクチュエータ性能の任意の変化(例えば、劣化)を追跡するか、又はアクチュエータの非応答性をチェックするなど、アクチュエータの特性を判定するために、流体液滴を吐出するのに不十分な、より小さい偏向を引き起こすために、アイドルのときに、より低い電圧信号が電気素子20、21に送信され得る。
【0047】
方法
一例として、電気素子20、21を電気アクチュエータ素子20、21として使用すると、電気アクチュエータ素子20、21を駆動する方法は、以下のようであり得、電気アクチュエータ素子20、21は、セラミック部材30を備える。セラミック部材30は、深さを有する少なくとも1つのセラミック層31と、動作中に、セラミック層の少なくとも一部分を通して電位差が確立され得るように、深さ方向80において、少なくとも1つのセラミック層31に隣接して配設された第1及び第2の電極層41、42と、を備える。電気アクチュエータ素子20は、可撓性膜10に隣接して配置される。
【0048】
第1の電極層41は、第1の電極群G1(41)と、第2の電極群G2(41)と、を備え、第1及び第2の電極群G1(41)、G2(41)のフィンガーは、相互嵌合方向81において、第1の電極層41において、交互に配置される。第2の電極層42は、第1の電極群G1(42)と、第2の電極群G2(42)と、を備える。第1及び第2の電極群G1(42)、G2(42)のフィンガーは、相互嵌合方向81において、第2の電極層42において交互に配置される。
【0049】
各電極群G1(41)、G2(41)、G1(42)、G2(42)について、所与の群における全てのフィンガーは、互いに、かつ群電気接点OL、OR、IL、IRに電気的に接続され、第1の電極層41の第1の電極群G1(41)は、相互嵌合方向81において、第2の電極層42の第1の電極群G1(42)と少なくとも部分的に重複する。第1の電極層41の第2の電極群G2(41)は、相互嵌合方向81において、第2の電極層42の第2の電極群G2(42)と少なくとも部分的に重複する。
【0050】
セラミック部材30の少なくとも一部分(例えば、それぞれの選択された電極群間)を通して電位差を確立するためにそれぞれの電極群を選択することによって、セラミック部材30は、d31モード又はd33モードで変形され得る。方法は、変形モード、又は変形モードのシーケンスを選択することと、それぞれの群電気接点OL、OR、IL、IRをアドレス指定することによって、少なくとも2つの駆動信号をセラミック部材30に供給して、選択されたそれぞれの電極群間の電位差を確立して、選択された変形モード又は選択されたd31及び/又はd33変形モードのシーケンスでセラミック部材30を変形させて、それによって、可撓性膜を移動させるようにする。
【0051】
セラミック部材30は、深さ方向80に対して上及び下の両方に移動できるため、d33及びd31モードの両方で変形できる電気素子を使用し、かつd33及び/又はd31モードでこのような電気素子を変形するように駆動する方法を使用することは、所与の印加電圧に対して達成可能な最大変位を増加させるように使用され得る。セラミック部材30の最大変位の増加は、電気アクチュエータ素子20、21の最大作動範囲を増加させる。例えば、液滴吐出装置では、これは、流体チャンバ内で達成可能な流体の変位体積を増加させ、ひいては達成可能な最大液滴サイズを増加させ得る。より大きい最大変位体積が達成可能になることは、より高い粘度を有する流体がより容易に吐出され、吐出可能な流体の範囲を拡張することを可能にする有益な効果も有し得る。
【0052】
代替的に、より低い印加電圧を使用して、
図1Aのもののような既知の電気素子と同じ変位を達成し得、電気素子、ひいてはこのような電気素子20、21を組み込む液滴吐出ヘッドなどの流体MEMSデバイスに対して、達成可能な寿命関して有益な効果を有し得る。また更に、セラミック部材30をd33及びd31モードで動作させることにより、このような材料で達成可能な最大変位を増加させることによって、全体的な性能がより低い材料の使用が可能となる。これは、このような材料が、製造コストの低減、又はより良好な環境証明書(鉛フリー材料など)などの他の利点のために使用に望ましい場合、有益であることがある。
【0053】
電気アクチュエータ素子20、21を未変形又はニュートラル位置(ニュートラル位置は、例えば、印加電圧が静止電圧又はゼロであるため、さもなければ、セラミック部材30がいかなる印加電圧も受けないために、セラミック部材30が電位差の影響を受けない場所である)からd31モードで変形させるための方法は、第1の電圧V1を第1の電極層41における第1及び第2の電極群G1(41)、G2(41)に供給することと、第2の電圧V2を第2の電極層42における第1及び第2の電極群G1(42)、G2(42)に供給することと、を含み得る。これは、
図4Aに示されており、第1の電極層41において、両方の群G1(41)、G2(41)における全ての電極は、電圧V1(陰影付きの灰色)にあり、第2の電極層42において、両方の群G1(41)、G2(41)における全ての電極は、電圧V2(陰影付きの黒色)にある。理解され得るように、第1の電極群G1(41)は、第1の群電気接点OL及び第1の共通コネクタC1(41)を介して接続され得、第2の電極群G2(41)の群は、第2の群電気接点OR及び第2の共通コネクタC2(41)を介して接続され得る。同様に、第1の電極群G1(42)は、第3の群電気接点IL及び第1の共通コネクタC1(42)を介して接続され得、第2の電極群G2(42)は、第4の群電気接点IR及び第2の共通コネクタC2(42)を介して接続され得る。この配置によって確立される電位差は、深さ方向80におけるものである。
【0054】
第2の電圧V2が第1の電圧V1よりも大きいときに、上で説明される電圧の印加は、
図4Aの点線L31で示されるように、セラミック部材30がd31モードで深さ方向80において下に変形させ得る。第1及び第2の電圧V1、V2が持続時間dの間維持される場合、セラミック部材30、ひいては電気アクチュエータ素子20、21は、持続時間dの間、変形したd31モード位置に保持される。例えば、第1の駆動信号は、第1の電圧V1にあり得、第2の駆動信号は、第2の電圧V2にあり得る。
【0055】
非変形位置又はニュートラル位置からd33モードで電気アクチュエータ素子20、21を変形させる方法は、[第1の群電気接点OL及び第3の群電気接点ILそれぞれを介して、]第1の電圧V1を第1の電極層41における第1の電極群G1(41)及び第2の電極層42における第1の電極群G1(42)に供給することと、[第2の群電気接点OR及び第4の群電気接点IRそれぞれを介して、]第2の電圧V2を第1の電極層41における第2の電極群G2(41)及び第2の電極層42における第2の電極群G2(42)に供給することと、を含み得る。これは
図3Aに示されており、それぞれの第1及び第2の電極層41、42の第1の群G1(41)、G1(42)における全ての電極が、電圧V2(陰影付きの黒色)にあり、それぞれの第1及び第2の電極層41、42の第2の群G2(41)、G2(42)における全ての電極が、電圧V1(陰影付きの灰色)であり、例えば、先で説明されるように、フィンガーに印加される電圧V1、V2は、相互嵌合方向81において、例91、92において交互する。このような配置は、相互嵌合方向81において有効な電位フィールドを作成するであろう。
【0056】
第2の電圧V2が第1の電圧V1よりも大きいときに、電圧V1、V2の印加(例えば、上で説明されるように第1及び第2の駆動信号として)は、
図3Aの点線L33で示されるように、セラミック部材30がd33モードで上に変形させ得る。第1及び第2の電圧V1、V2が持続時間dの間維持される場合、セラミック部材30、ひいては電気アクチュエータ素子20、21は、持続時間dの間、変形したd33モード位置に保持される。第1の電圧V1は、基準電圧、例えば、接地電圧であり得る。
【0057】
それぞれの電極群間の電位差を確立するためにそれぞれの電極群を選択することによって、セラミック部材30は、d31モード又はd33モード、又は選択されたd31及び/又はd33モードのシーケンスで変形され得、電気アクチュエータ素子20、21の使用に対してより大きい動作柔軟性を提供する。更に、このようなシーケンスは、セラミック部材30がニュートラル位置にあるシーケンスにおける段階を更に含み得ることが理解されよう。
【0058】
先で説明されるように、電気アクチュエータ素子20、21が可撓性膜10に固定して接続されるときに、セラミック部材30を変形させることで、それとともに可撓性膜10を移動させる。電気アクチュエータ素子20、21は、液滴吐出装置などの流体MEMSデバイスにおいて流体チャンバ壁の一部を形成する可撓性膜10に隣接して配置され得、流体チャンバは、流体入口及びノズルを更に備える。
【0059】
いくつかの実施形態では、流体チャンバは、流体チャンバがいわゆるスルーフローモードで(例えば、
図1Aのものと同様の配置において)使用され得るように、流体出口を更に備え得る。このような液滴吐出装置(スルーフローであるかどうかにかかわらず)では、方法は、電気アクチュエータ素子20、21を駆動して、d33モード又はd31モード、並びに/又はd33モード及び/若しくはd31モードのシーケンスで変形させて、可撓性膜10を移動させて、ノズルを介して液滴を吐出させるようにすることを含み得る。液滴吐出装置は、個々の電気アクチュエータ素子20、21が、上記の方法を使用して必要に応じて起動されるように、所与の位置で液滴の選択されたシーケンスを吐出するように、アレイで配置され得る複数のこのような流体チャンバを備え得る。このような方法は、基材上に印刷するために使用され得、液滴吐出装置が、インクジェットプリントヘッドなどの液滴吐出ヘッドとして構成されている。
【0060】
いくつかの用途では、変形したd31モード位置に電気アクチュエータ素子20、21を下に曲げて保持することが望ましくあり得ることが理解されよう。例えば、可撓性膜10が流体チャンバの壁の一部を形成する液滴吐出装置のための電気アクチュエータ素子において、d31モードで電気アクチュエータ素子20、21を下に変形して保持することにより、可撓性膜10を流体チャンバ内に移動させ、流体チャンバ体積を低減させる。
【0061】
液滴吐出サイクルは、次いで、d31の変形を解放すること(例えば、セラミック部材30にわたって電位差がないように、V1及びV2をオフに切り替えることによって)を含み得る。次いで、電気アクチュエータ素子20、21は、に戻り、それとともに可撓性膜10を引き、流体チャンバ体積を増加させ、追加の流体を引き込み(DRAW)、次いで、後続のd31変形の再適用により、流体チャンバ体積を減少させ、流体の一部をノズルから吐出(PUSH)させ得る。したがって、いくつかの液滴吐出サイクルでは、液滴吐出イベントなどの最初の作動イベント又は後続の作動イベントに準備した状態で、セラミック部材30をd31変形位置に保持するために、作動イベントの前又は後に、ある長さの時間の間、保持信号を印加することが望ましくあり得る。
【0062】
そのためセラミック部材を変形したd31モードで変形して保持するための方法は、第1の電圧V1で第1の保持信号を供給し、かつ第2の電圧V2で第2の保持信号を供給することを含み得、本方法は、[それぞれ第1の群電気接点OL及び第2の群電気接点ORを介して、]第1の保持信号を第1の電極層41における第1及び第2の電極群G1(41)、G2(41)に供給し、[それぞれ第3の群電気接点IL及び第4の群電気接点IRを介して、]第2の保持信号を第2の電極層42における第1及び第2の電極群G1(42)、G2(42)に供給して、d31モードでセラミック部材30を変形させて、それを定位置に保持し、電気素子20、21及び可撓性膜10についても同様である、ことを含む。
【0063】
いくつかの実装では、セラミック部材30を、作動イベントの前又は間に、セラミック部材30にわたって電位差がないそのニュートラル位置又は未変形位置にセラミック部材を保持することが望ましくあり得る。このような状況では、本方法は、第1及び第2の電極層41、42の第1及び第2の電極群G1(41)、G2(41)、G1(42)、G2(42)に、保持信号(1つ又は複数)を供給することを含み得る。例えば、保持信号は、全て、第1の電圧V1にあり得、そのため、全ての電極が第1の電圧V1にある。代替的に、このような方法は、例えば、電圧信号をオフに切り替えることによって、電極群G1(41)、G2(41)、G1(42)、G2(42)のうちのいずれにも信号を供給しないことを含み得る。
【0064】
液滴吐出装置のための電気アクチュエータ素子では、可撓性膜10が、流体チャンバの壁の一部を形成する場合、セラミック部材をd33モードで上に変形させることにより、可撓性膜10を流体チャンバから離れるように移動させ、流体チャンバ体積を増加させ、追加の流体を引き込む。このようなステップは、液滴吐出イベントの準備に使用され得、上記のd31変形について説明されたものと同様の方式で、好適な保持信号を使用して、d33モードでセラミック部材30を変形させ、それを定位置に保持し得る。
【0065】
このような方法は、第1の電圧V1にある第1の保持信号及び第2の電圧V2にある第2の保持信号を含み得、本方法は、第1の保持信号を、第1の電極層41、42における第2の電極群G2(41)、G2(42)に供給し、第2の保持信号を、第1及び第2の電極層41、42における第1の電極群G1(41)、G1(42)に供給して、d33モードでセラミック部材30を変形させて、保持することを含む。
【0066】
3層デバイス、
図5及び
図6
図5Aは、
図2Aの実施形態と同様の、別の実施形態による電気素子22の上面図を示し、そのため、適切な場合、同様の数字が同様の特徴のために使用されてきた。
図5Aの実施形態(
図5B~
図5Eでより明確に見える)では、電気素子22は、(深さ方向80における)深さを有する少なくとも第2の層32を更に備えるセラミック部材30を備える。電気素子22は、第3の電極層43及び第3の電極群G1(43)、G2(43)を更に備える。
【0067】
図5Bは、
図5Aの実施形態の側面図であり、
図5Cは、
図5Aに描写された実施形態の斜視図であり、
図5Dは、線AAに沿った
図5Aに描写された実施形態を通る断面であり、
図5Eは、線BBに沿った
図5Aに描写された実施形態を通る断面である。電気素子22は、可撓性膜10及び支持体50も備えるMEMSデバイス101の一部を備える。
【0068】
図5D及び
図5Eから分かるように、第3の電極層43は、2つのフィンガーを備える第1の電極群G1(43)と、3つのフィンガーを備える第2の電極群G2(43)と、備える、第1及び第2の電極群G1(43)、G2(43)のフィンガーは、相互嵌合方向81において、第3の電極層43において交互に配置され、各電極群G1(43)、G2(43)について、それぞれの群における全てのフィンガーは、(例えば、それぞれ共通コネクタC1(43)、C2(43)を介して、)互いに電気的に接続され、共通コネクタC1(43)、C2(43)は、群電気接点OL2、OR2に電気的に接続され、C1(43)は、OL2に接続され、C2(43)は、OR2に接続される。
図5Dから更に分かるように、この実施形態では、第3の電極層43は、第1の電極層41よりも可撓性膜10に近く、また、第2の電極層42よりも可撓性膜10に近い。明確にするために、
図5に示すように、第1及び第3の電極層41、43は、セラミック部材30の対向面上に配置され、セラミック部材の層31は、第1及び第2の電極層41、42を分離し、セラミック部材30の第2の層32は、第2及び第3の電極層42、43を分離する。第3の電極層43は、可撓性膜10に隣接して配置される。
【0069】
このような3層配置は、3つの電極層41、42、43の全て、又は3つの電極層のうち2つが、群電気接点OL、OR、IL、IR、OL2、OR2に提供される駆動信号に応じて駆動され得るため、駆動スキームのより大きい複雑さを可能にし得る。例えば、電気素子22は、例えば、電気素子22が流体チャンバから液滴を吐出するために使用されているときに、3つの電極層全てが駆動され得、一方、3つの電極層のうちの2つが、可撓性膜の十分な変位を引き起こして液滴を吐出することなく、電気素子22の性能を試験するために(例えば、エージング効果又は損傷をチェックするために)駆動され得るように構成され得る。追加的に、3つの層のうちの2つが駆動されて、液滴を吐出するには不十分であるが、流体チャンバ内の反射された圧力波又は隣接する流体チャンバから到来する圧力波を消す流体チャンバにおける圧力波(このような望ましくない圧力波は、流体クロストークと称される)を生成するように調整され得る、可撓性膜10のより小さい移動を提供することができる。クロストークは、そうでなければ、望ましくない液滴吐出イベント、又はより小さいサブ液滴の放出、又は所望されるものよりも大きい若しくは小さい体積の液滴の放出などの望ましくない効果を引き起こす可能性がある。
【0070】
ここで、
図6Aを参照すると、これは、
図5Aのものと同様の、別の実施形態による電気素子23の上面図を示すが、第1の電極層41の第1の電極群G1(41)及び第3の電極層43の第1の電極群G1(43)は、互いに電気的に接続され、すなわち、G1(41)の共通コネクタC1(41)は、ショート61を介してG1(43)の共通コネクタC1(43)に電気的に接続され、第1の電極層41の第2の電極群G2(41)及び第3の電極層43の第2の電極群G2(43)は、互いに電気的に接続され、すなわち、G2(41)の共通コネクタC2(41)は、ショート62を介してG2(43)の共通コネクタC2(43)に電気的に接続される。この配置(例えば、
図6Fにより明確に見える)は、
図5Aの電気素子22の6つの電気トレースとは対照的に、4つのトレース及び4つの電気接点OL、OR、IL、IR(
図2Aの実施形態に関して)のみが必要とされるため、電気素子23への電気接続の複雑さを低減し得る。これは、ダイ上の空間、若しくはデバイス内の空間が重要である場合、又は複数の電気素子の緊密なパッキングが必要とされる場合に有利であり得る。
【0071】
以下、
図6Bは、
図6Aの実施形態の側面図であり、
図6Cは、
図6Aに描写された実施形態の斜視図であり、
図6Dは、線AAに沿った
図6Aに描写された実施形態を通る断面であり、
図6Eは、線BBに沿った
図6Aに描写された実施形態を通る断面であり、
図6Fは、
図6Aに描写された実施形態に対する第1、第2及び第3の電極層41、42、43及びそれらの電気的接続の斜視図である(例えば、他の全ての特徴が省略されている)。
【0072】
図5A及び
図6Aの両方から、これらの実施形態では、第3の電極層43は、可撓性膜10に隣接して配設され、第2の電極層42は、セラミック部材30の第1及び第2の層31、32に隣接して、かつこれらの間に配設され、第1の電極層41は、セラミック部材30の第1の層31に隣接して配設される。
図2を参照して先で考察されるように、第1の層31及び第2の層32が、単一の層を備え得るが、これは決して限定するものではなく、セラミック部材30は、複数の層31(i~n)及び(存在する場合)32(i~n)を備え得る。例えば、層31、32は、例えば、所望の厚さのセラミック部材30を形成するように、複数の層を蓄積するために、化学蒸着(CVD)、化学溶液堆積(CSD)、ゾルゲル堆積などによって、複数のサブ層を堆積させることによって形成され得る。
【0073】
ここで、
図7A、
図7B及び
図8A、
図8Bを参照すると、これらは、
図3A~
図3B及び
図4A~4Bのものと同様の電気素子24を描写するが、3つの電極層41、42、43を備える。簡略化のために、セラミック部材30は、
図7A及び
図8Aにおける連続構成要素として描写されるが、例えば、
図5C及び
図6Cにおいて描写されるような2つの層31、32を備える。
【0074】
図7Aは、電気素子24を通る断面を描写し、電極群G1(41)、G2(41)、G1(42)、G2(42)、G1(43)、G2(43)が、それらが、第1の電圧V1又は第2の電圧V2がそれらに印加されたかどうか、及び選択された群及びそれらに印加された電圧が、セラミック部材30がd33モードで変形することをもたらすかどうかを示すために陰影付けされている。
【0075】
図7Bは、
図7Aの電気素子24の3つの電極層41、42、43を表し、再び、電極群G1(41)、G2(41)、G1(42)、G2(42)、G1(43)、G2(43)、及びそれらに電気的に接続されるそれぞれの構成要素は、第1の電圧V1(灰色)又は第2の電圧V2(黒色)がそれらに印加されたかどうかを示すために陰影付けされている。
【0076】
図7A~
図7Bは、
図3A~
図3Bと同様であり、相互嵌合方向81における電極フィンガーの交互の列91、92は、電圧V1又は第2の電圧V2にある。
図3A~
図3Bにおけるように、このような配置は、相互嵌合方向81において、有効電位フィールドを作成し、これは、セラミック部材30がd33モードで変形させ、上に曲がるようにするであろう。効果は、関連する電圧が、
図5A~
図5Eのもののような配置に対する電気入力として作用する6つの電気接点OL、IL、OL2、OR、IR、OR2を通して印加されるかによらず、又は電圧が、
図6A~
図6Fの配置に関して、電気入力として作用する4つの電気接点OL、IL、OR、IRを通して印加されるかによらず同じであろう。
【0077】
明確にするために、
図7Bでは、
図6A~
図6Fの配置は、第1の電極群G1(41)、G1(43)を接続するショート61に対する黒色の点線と、第1及び第3の電極層41、43の第2の電極群G2(41)、G2(43)接続するショート62に対する灰色の点線とで示されている。
【0078】
図7Aに関しては、
図8Aは、電気素子24を通す断面を描写し、電極群が、第1の電圧V1(灰色)又は第2の電圧V2(黒色)がそれらに印加されたかどうかを示すために陰影付けされている。
図8A及び
図8Bから、この実装では、第1及び第3の電極層41、43が第1の電圧V1にあり、第2の電極層42が第2の電圧V2にあることが分かる。
図4A及び
図4Bに関しては、この配置によって確立される電位差は、深さ方向80にあり、第2の電圧V2が第1の電圧V1よりも大きい場合、印加電圧は、セラミック部材30がd31モードで変形し、深さ方向80において下に移動することをもたらすだろう。この移動は、
図5A~
図5Eにおけるもののような配置に対して適切な電圧V1、V2を6つの電気接点OL、IL、OL2、OR、IR、OR2に印加することによって達成され得る。同じ効果はまた、灰色の点線がショート61及びショート62を示す、
図6A~
図6Fにおけるもののような配置に対して電気入力として作用する4つの電気接点OL、IL、OR、IRに適切な電圧V1、V2を印加することによって達成され得る。
図7Bに関しては、ショート61は、第1の及び第3の電極層41、43の第1の電極群G1(41)、G1(43)を接続し、ショート62は、第2の電極群G2(41)、G2(43)を接続する。
【0079】
選択されたd31及び/又はd33モードのシーケンスで電気素子を変形させるために、2つ以上の駆動電圧を使用して、選択された電極群(1つ又は複数)に適切な電圧を印加する2つの主要な方法がある。
【0080】
スイッチング回路の方法及び装置
第1のこのような方法は、第1の駆動信号及び/又は第2の駆動信号を、選択されたシーケンスに従ってそれぞれの群電気接点から接続及び接続解除するように、スイッチング回路を制御することを含む。スイッチング回路85を含む配置が、
図9A及び
図9Bに描写されている。
図9Aは、
図6A~
図6Fのもののような電気素子に対するスイッチング配置を描写する。簡略化のために、セラミック層30は省略されているため、電極層のみが示されており、各電極層41、42、43では、各電極群G1、G2に対する単一のフィンガー(i)が描写されており(画像が、各電極層41、42、43における2つの隣接するフィンガーを示すようにわずかに傾斜していると想像できる)、例えば、
図9Aは、
図7Bと同じ印加電圧を示しているが、各層は、41、42、43において単一のフィンガーを描写する。
【0081】
図9Aに示す配置では、スイッチ71は、第1の群電気接点OLを第3の群電気接点ILに接続し、第2の電圧V2にある駆動信号が両方に供給される。スイッチ72は、第2及び第4の群電気接点OR及びIRを、第1の電圧V1にある駆動信号に接続する。結果は、第1の電極群G1(41)、G1(42)及びG1(43)が第2の電圧V2にあり、第2の電極群G2(41)、G2(42)及びG2(43)が第1の電圧V1にあることである。第1の電圧V1と第2の電圧V2との間に電圧の差がある場合、印加される電圧及びスイッチ71、72の位置は、セラミック部材30がd33モードで偏向するようになっている。
【0082】
図9Bは、
図9Aのものと電気素子に対する同様のスイッチング配置を描写するが、スイッチ71、72の位置が変更されている。
図9Bは、
図8Bと同じ印加電圧を描写するが、各電極層41、42、43における単一のフィンガーのみを描写することが分かる。
【0083】
図9Bに示す配置では、スイッチ71は、第1の群電気接点OLを第1の電圧V1にある駆動信号に接続する。第3の群電気接点ILは、第2の電圧V2にある駆動信号に接続したままである。第2の群電気接点ORは、第1の電圧V1にある駆動信号に接続したままであり、スイッチ72は、第4の群電気接点IRを第2の電圧V2にある駆動信号に接続するために移動している。結果は、第1及び第3の電極層41、43における第1及び第2の電極群G1(41)、G1(43)、G2(41)、G2(43)は、第1の電圧V1にあり、第2の電極層42における第1及び第2の電極群G1(42)、G2(42)は、第2の電圧V2にあることである。V1とV2(V2>V1)の間に電圧の差があるときに、印加される電圧及びスイッチ71、72の位置は、例えば、セラミック部材30をd31モードにおいて偏向させるようになっている。セラミック部材30及び可撓性膜をニュートラル位置に戻すために、電圧V1及びV2は、印加電圧がなく、ひいてはセラミック部材に印加される電位差がないように、オフにされ得る。所望されるときに、接地に接続するための更なるスイッチのような代替的な方法もまた、実装され得る。
【0084】
図9A及び
図9Bは、本明細書に説明されるような電気素子21、22、23、24に対するスイッチング回路85、又は電気素子などを組み込む液滴吐出装置などのMEMSデバイスを描写し、電気素子21、22、23、24は、電気アクチュエータ素子として構成されており、スイッチング回路85は、少なくとも2つのスイッチ71、72を備え、群電気接点OL、IL、OR、IRのうち選択された1つから少なくとも2つの駆動信号を接続及び/又は接続解除するようにし、[当該群電気接点は、電気入力として構成されている]、それによってスイッチング回路85は、電気素子21、22、23、24が、選択されたd31及び/又はd33モードのシーケンスで変形されることを可能にする。スイッチング回路85が液滴吐出装置のためのものであるときに、それは、電気素子が、選択されたd31及び/又はd33モードのシーケンスで変形し、それによって、可撓性膜10を移動させ、ノズルから液滴を吐出することを可能にする。
【0085】
図9A及び
図9Bに描写されるようなスイッチング回路85が、
図6A~
図6Fにおけるもののような電気素子のためのものであると理解され得るが、更に、ショート61、62及び第3の電極層43の省略により、スイッチング回路85は、2つの電極層41、42を備える
図2におけるもののような電気素子に対して等しく良好に機能することが理解されよう。更に、
図5A~
図5Eのもののような電気素子に対して、異なる層における電極群を接続するショート61、62がない場合、
図9A~
図9Bのものと同様の配置であるが、追加の群電気入力OL2及びOR2に適切な電圧を印加するために使用するために使用され得るスイッチを更に備え、それによって複数のスイッチを含むスイッチング回路85があるだろう。
【0086】
再度、
図9A及び
図9Bを参照すると、コントローラ86が、選択された変形モードのシーケンスを実装するために、制御信号をスイッチング回路85に供給するように、スイッチング回路85ためのコントローラ86があることが分かる。このようなコントローラ86は、事前にプログラムされたコントローラ86であり得、制御信号をスイッチ71、72に提供するように、電気素子(1つ又は複数)に近接して配置され得る。更に、コントローラ86は、液滴吐出ヘッド上に装着され得る。
【0087】
代替的に、コントローラ86には、
図9Bに示すように、外部コントローラ87から情報が供給され得る。外部コントローラは、液滴吐出装置の一部であり得るが、液滴吐出ヘッドの外側に位置し得る。コントローラは、別個の制御ボードであり得るか、又は液滴吐出装置の様々な構成要素の機能を制御するように構成され得る液滴吐出装置の制御回路の一部であり得る。コントローラ86は、システムオンチップモジュール、計算デバイス、マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、又はスイッチ71、72を制御するための他の任意の好適なデバイスであり得る。更に、コントローラ86又は外部コントローラ87は、外部プロセッサによって制御されるように構成され得る。外部プロセッサは、印刷プロセスパラメータを調整するためのユーザインターフェースを備え得、例えば、外部プロセッサが、パーソナルコンピュータ、又はユーザインターフェースを有する他の任意の好適な装置であり得る。
【0088】
更に、いくつかの配置では、第1及び第3の電極層41、43の電極群を接続するショート61、62はまた、電気素子が
図2A~
図2E、
図3A~
図3B及び
図4A~
図4Bに描写されるもののような2層モードでか、又は
図6A~
図6F、
図7A~
図7B及び
図8A~
図8Bに描写されるもののような3層モードで接続及び駆動され得るようにスイッチを備え得ることが理解されよう。動作における層数におけるこのような変更は、コントローラ86によって、又は外部プロセッサから受信される入力に応答して、例えば、ユーザがアクチュエータの状態及び動作可能性に関する情報を必要とし、これを決定して動作モードを変更するための試験プログラムの実装することを望む場合に、制御され得る。更に、スイッチング回路は、3層配置に存在する3層のうちのいずれか2つを駆動して、2層モードで電気素子を変形させることができるように、スイッチを備え得ることが理解されよう。そのような柔軟性は、例えば、目的が、先で考察されるように、試験又は圧力パルスキャンセルのためのより弱い偏向を提供するときに、望ましくあり得る。
【0089】
ドライブ信号方法及びドライブ信号
電気素子を変形させるために、選択された電極群(1つ又は複数)に適切な電圧を印加する第2の方法であって、電気素子が、選択されたd31及び/又はd33モードのシーケンスにおいて、アクチュエータとして使用されていると理解され得る、方法は、それぞれの群電気接点OL、OR、IL、IRを介して電気素子に最大4つの駆動信号DOL、DOR、DIL、DIRを供給することであって、4つの駆動信号のうちの少なくとも1つにおける電圧が、選択されたシーケンスを実装するように変化する、ことを含む方法である。例えば、本方法は、
[第1の群電気接点(OL)をアドレス指定することによって、]第1の駆動信号DOLを第1の電極層41における第1の電極群G1(41)に供給することと、
-[第2の群電気接点(OR)をアドレス指定することによって、]第2の駆動信号DORを第1の電極層41における第2の電極群G2(41)に供給することと、
-[第3の群電気接点(IL)をアドレス指定することによって、]第3の駆動信号DILを第2の電極層42における第1の電極群G1(42)に供給することと、
-[第4の群電気接点(IR)をアドレス指定することによって、]第4の駆動信号DIRを第2の電極層42における第2の電極群G2(42)に供給することと、を含み得る。
【0090】
このような駆動信号のいくつかの非限定的な例が、
図10A~
図15Eに描写されており、以下に説明される。第3の電極層43がある場合、追加の一対の駆動信号を使用して第3の層を駆動し得ることが理解されよう。代替的に、
図6A~
図6Fに示すように、3つの層における電極群は、4つの駆動信号のみが必要とされるように、好適に電子的に接続され得る。
【0091】
概して、必要なのは、電気アクチュエータ素子が、深さを有するセラミック部材30を備え、セラミック部材30が、少なくとも1つの層31と、動作中に、セラミック部材30の少なくとも一部分を通して、電位差が確立され得るように、セラミック部材30の少なくとも1つの層31に隣接して配設されたて配置された第1及び第2の電極層と、を備える電気アクチュエータ素子のための駆動信号である。電気アクチュエータ素子20、21、22、23、24は、可撓性膜10に隣接して配置され、第1の電極層41は、第1の電極群G1(41)及び第2の電極群G2(41)を備え、第1及び第2の電極群G1(41)、G2(41)のうちの一方は、少なくとも1つのフィンガーを備え、第1及び第2の電極群G1(41)、G2(41)のうちの他方は、少なくとも2つのフィンガーを備え、第1及び第2の電極群G1(41)、G2(41)のフィンガーは、第1の電極層41において交互に配置されている。
【0092】
第2の電極層42は、第1の電極群G1(42)及び第2の電極群G2(42)を備え、第1及び第2の電極群G1(42)、G2(42)のうちの一方は、少なくとも1つのフィンガーを備え、第1及び第2の電極群G1(42)、G2(42)のうちの他方は、少なくとも2つのフィンガーを備える。第1及び第2の電極群G1(42)、G2(42)のフィンガーは、第2の電極層において交互に配置されている。各電極群G1(41)、G2(41)、G1(42)、G2(42)、当該群における全てのフィンガーは、互いに、かつ群電気入力OL、OR、IL、IRに電気的に接続され、それぞれの群間に電位差を確立するためにそれぞれの電極群を選択することによって、セラミック部材が、d31モード又はd33モードで変形することができ、駆動信号が、最大4つの駆動信号DOL、DOR、DIL、DIRを備え、それによって駆動信号が群電気接点OL、OR、IL、IRのうちの1つに供給され、4つの駆動信号のうちの少なくとも1つの電圧は、それぞれの電極群間に電位差を確立し、それによって、選択されたd31及びd33モードのシーケンスでセラミック部材30を変形させ、それによって可撓性膜10を移動させるように変化する。スイッチング回路ではなく、このように複数の駆動波形を使用することは、スイッチング回路及び接続はもはや必要ではなくなるため、ダイ上で使用される空間の観点から有利であり得る。また、用途に応じて良好な設計柔軟性を可能にし、駆動信号の異なる組み合わせを使用して、所望の効果を創出し、アクチュエータ性能を微調整することができる。
【0093】
最初に
図10Aを考慮すると、これは、(群電気接点OLに供給され、ひいては第1の電極層41の第1の電極群G1(41)に供給される)第1の駆動信号DOL、(群電気接点ORに供給され、ひいては第1の電極層41の第2の電極G2(41)に供給される)第2の駆動信号DOR、(群電気接点ILに供給され、ひいては第2の電極層42の第1の電極群G1(42)に供給される)第3の駆動信号DIL、及び(群電気接点IRに供給され、ひいては第2の電極層42の電極群G2(42)に供給される)第4の駆動信号DIRを含む、電気アクチュエータ素子のための駆動信号を描写する。明確にするために、駆動信号DOL、DOR、DIL、及びDIRは、
図10Aの垂直軸上でシフトして描写され、互いに区別され得る。この例では、駆動信号DIL及びDIRの2つの電圧は、それらが、セラミック部材30をd31モードで変形させ、他の2つの駆動信号が、例えば、第1の電圧V1などの定電圧に維持されるように、経時的に変化する。
【0094】
図10Bは、電気素子の変位を描写し(変位は、
図10Aの駆動信号に応答して達成された総変位の割合として示される)、
図10Cは、群電気接点OL、OR、IL、IRを通して、
図6A~
図6Fのもののような電気素子に印加されるときの駆動信号の3つの段階M、N、及びOにおける印加電圧を描写する。
図10Cは、
図9A及び
図9Bと同じ表現方法を使用し、各電極層41、42、43の各電極群の単一のフィンガー(i)が示されており、陰影は、印加電圧、第1の電圧V1(灰色)又は第2の電圧V2(黒色)を示す。
【0095】
先で考察されるように、可撓性膜10は流体チャンバの一部を形成し、液滴を吐出するためにd31モードで駆動される場合、可撓性膜10が流体チャンバ内に下に偏向するように、作動イベントの前にd31モードで変形されたセラミック部材30を保持することが望ましくあり得る。これは、
図10A及び
図10Bの段階M、及び
図10Cの概略図に示される。そのため、第1の駆動信号DOLは、第1の保持信号HOLを含み、第2の駆動信号DORは、第2の保持信号HORを含み、第3の駆動信号DILは、第3の保持信号HILを含み、第4の駆動信号DIRは、第4の保持信号HIRを含む。保持信号HOL、HOR、HIL、HIRは、持続時間dを有する。第1及び第2の保持信号HOL、HORは、第1の電圧V1にあり、第3及び第4の保持信号HIL、HIRは、第2の電圧V2にあり、V2>V1であり、そのため、駆動信号DOL、DOR、DIL、DIRがセラミック部材30に供給されるときに、それがd31モードで、例えば、持続時間dの間、d31オンで変形される。
【0096】
選択された持続時間dは、作動イベント又はセラミック部材30の他の移動が必要とされるまで、d31モードで変形されたセラミック部材30を保持することである。動作要件に応じて、持続時間dは、変化し得る。多数の作動イベントが互いに密接に連続して続く場合、保持信号の持続時間dが短くあり得るか、又は省略され得るか、又は各開始イベント後の一連の後パルスが同様に/代わりに使用され得ることが理解されよう。更に、いくつかの実装では、セラミック部材30は、代わりに、作動イベントの前及び/又は間にニュートラル位置に保持され得、代わりに、前パルス又は一連の前パルスを使用して、作動イベントの前にd31モードでセラミック部材30を変形し得ることが理解されよう。
【0097】
図10Aから、d31モードでの作動のための駆動シーケンスは、以下のようであり得ることが分かる。
【0098】
第1の段階M:第3及び第4の駆動信号DIL、DIRは、第2の電圧V2にあり、第1の駆動信号DOL及び第2の駆動信号DORは、第1の電圧V1にあり、V2>V1である。これらの電圧は、ある長さの時間の間保持され、
図10Bから、結果として、セラミック部材30が、d31変形(下)位置(第1の段階Mは、-100%変位にある)に保持されていることが分かる。次いで、
第2の段階N:時間t=t1で、第3及び第4の駆動信号DIL、DIRは、4つの駆動信号DIL、DIR、DOL、DOR全てが第1の電圧V1にあるように、持続時間d1の間、電圧V1に切り替えられて、それに応答して、セラミック部材30は、t=t1(変位0%、
図10Bを参照)で、持続時間d1の間、ニュートラルな未変形位置に移動する。
【0099】
第3段O:次いで、t=t1+d1で、第3及び第4の駆動信号DIL、DIRは、第2の電圧V2に戻り、電気素子は、d31変形下位置に戻る。
【0100】
この駆動シーケンスの電極群への影響を
図10C(第1及び第3の段階M、O)及び
図10D(第2の段階N)に示す。
【0101】
まとめると、液滴を吐出するように、圧電部材をd31モードで駆動するときに、d31変形モード位置から開始し、駆動信号は、以下のよう、すなわち、開始時間t=t1で、第3の駆動信号DIL及び第4の駆動信号DIRが、同時に、持続時間d1の間、第2の電圧V2から第1の電圧V1に切り替わり、次いで、第3の駆動信号DIL及び第4の駆動信号DIRは、同時に、第2の電圧V2に戻り、例えば、セラミック部材30は、d31オフ、持続時間d1の間、ニュートラ未変形位置に移動し、次いで、再度d31オンを経験する。
【0102】
図10の電気素子が、液滴吐出装置ための電気アクチュエータ素子である場合、可撓性膜は、段階Mで流体チャンバへの偏向を開始し、次いで、段階Nでニュートラル位置に移動し、チャンバ体積を増加させ、流体を引き込み(ドロー)、段階Oで偏向された位置に戻ると、チャンバ体積を低減させ、持続時間d1及びV2とV1の間の電圧の差が十分である場合、流体の液滴が、ノズルを介して流体チャンバから吐出(プッシュ)される。
【0103】
ここで、
図11を参照すると、これは、電気アクチュエータ素子として作用する電気素子の
図10と同様の一連の画像を含むが、ここでは、駆動信号により、セラミック部材30がd33モードで変形するようにする。
図11Aは、それぞれ第1、第2、第3、及び第4の駆動信号DOL、DOR、DIL、DIRを含む駆動信号を描写する。
図11Bは、
図11Aの駆動信号に応答した電気素子の変位率を描写する。
図11C及び
図11Dは、
図9A及び
図9Bと同じ表現方法を使用して、
図11Aの駆動信号に応答した
図6A~
図6Fのもののような電気素子に印加された電圧を描写し、各電極層41、42、43の各電極群の単一のフィンガー(i)が示されており、陰影は、印加電圧、第1の電圧V1(灰色)又は第2の電圧V2(黒色)を示す。
【0104】
図11から分かるように、
第1の段階M:電気素子は、セラミック部材30にわたって電位差がないニュートラル位置で開始し、例えば、第1、第2、第3及び第4の駆動信号DOL、DOR、DIL、DIRは、全て第1の電圧V1にある。その後に、
第2の段階N:時間t=t1で、第1の駆動信号DOL及び第3の駆動信号DILは、同時に、持続時間d1の間、第1の電圧V1から第2の電圧V2に切り替わる(セラミック部材をd33モードで変形させる)。
【0105】
第3の段階O:次いで、持続時間d1の後、第1及び第3の駆動信号DOL、DILは、第1の電圧V1に戻る(また、セラミック部材30は、ニュートラル位置に戻る)。
これは、
図11Bから分かるように、d33オフのニュートラルな位置で開始し、d33オン(ドロー)に切り替え、次いで、d33オフ(プッシュ)に戻る変形サイクルである。電気アクチュエータ素子が液滴吐出のために使用されている場合、これは、セラミック部材30が上に変形して流体チャンバの体積が増加する際のそこへの流体のドロー、セラミック部材30がニュートラルな位置に戻るように下に移動してチャンバの体積が減少する際のそこからの流体のプッシュと同等であり、V1とV2との間の電圧差及び持続時間d1が十分である場合、この駆動信号は液滴吐出イベントを引き起こす。
【0106】
電気素子が、d33モード又はd31モードのいずれかで駆動され得るように構成されている場合、この能力を使用して、両方の変形モードの組み合わせにおいてセラミック部材30を駆動する駆動信号を開発することができることが理解されよう。可能であろう複数の順列があり、
図12A~
図15Eに例示され、かつ以下で考察される駆動信号は、セラミック部材30がd31及びd33の変形のシーケンスで移動するであろう限られた一連の駆動信号を説明する。
【0107】
モード1:
ここで、
図12を考慮すると、これは、
図10A~
図10D及び
図11A~
図11Dのものと同様の一連の図を含むが、セラミック部材が、モード1と称されるd33モードとd31モードの組み合わせにおいて変形されている。前の図に示すように、
図12Cは、段階M(及び段階P)での各電極層41、42、43の各電極群における単一のフィンガーでの電圧を描写し、同様に、
図12Dは、段階Nでの電圧を示し、
図12Eは、段階Oでの電圧を描写する。
図12Aは、モード1変形を達成するための駆動信号を描写する。
【0108】
第1の段階M:第1、第2、第3、及び第4の駆動信号DOL、DOR、DIL、DIRは全て、第1の電圧V1で開始するが、
図12Bから、第1の段階Mでは、全ての電極群における全てのフィンガーに対して電圧は、V1であり、セラミック部材は、そのニュートラルな未変形状態になることも分かる。その後に、
第2の段階N:時間t=t1で、第1の駆動信号DOL及び第3の駆動信号DILは、同時に、第1の電圧V1から第2の電圧V2(d33オン)に切り替わり、各電極層41、42、43における一方の電極群における全てのフィンガーの電圧は、第1の電圧V1にあり、各電極層41、42、43における他方の電極群における全てのフィンガーは、第2の電圧V2にあり、セラミック部材30は、d33モードで変形する(どの電極群が、第1の電圧V1にあり、どの電極群が第2の電圧V2にあるかは、各層41、42における同じ電極群が同じ電圧にある限り、問題ではなく、例えば、
図7Aに示すように、電極群が、第1の電圧V1と第2の電圧V2との間で交互になり、一連の列91(i)、92(i)、91(ii)、92(ii)を形成することなどであり、同じ列における全ての電極フィンガーが同じ電圧にあることに留意されたい)。
【0109】
第3の段階O:次いで、持続時間d2の後、第1の駆動信号DOLは、第1の電圧V1に戻り、同時に、第4の駆動信号DIRは、第1の電圧V1から第2の電圧V2(d33オフ及びd31オン)に切り替わり、第1及び第3の電極層41、43は、第1の電圧V1にあり、第2の電極層42は、第2の電圧V2にあり、それによってセラミック部材はd31モードで変形する。最後に、
第4の段階P:持続時間d3の後、第3の駆動信号DIL及び第4の駆動信号DIRは、第2の電圧V2から第1の電圧V1(d33及びd31オフ)に切り替わり、
図12Cから、段階Pでは、段階Mとして、全ての電極群における全てのフィンガーに対する電圧がV1であり、セラミック部材30はそのニュートラルな未変形状態になることが分かる。
【0110】
このような駆動信号を使用して、モード1でセラミック部材30を変形させる方法は、セラミック部材30が、d33及びd31変形モードオフのニュートラル位置にあることから開始することと、次いで、4つの駆動信号を群電気接点に供給して、継続時間d2の間、d33変形モードをオンに切り替え、次いで、同時に、持続時間d3の間、d33変形モードオフ及びd31変形モードオンに切り替え、次いで、d31変形モードオフに切り替え、d33及びd31変形モードを両方ともオフにしてニュートラル位置に戻るようにすることと、を含む。
【0111】
モード2:
図13A~
図13Dを考慮すると、これらは、
図10A~
図12Eのものと同様の一連の図を含むが、セラミック部材30は、
図12A~
図12Eのものとは異なり、モード2と称されるd33モード及びd31モードの組み合わせにおいて変形される。
図13Cは、段階M(及び段階O)での各電極層41、42、43における各電極群における単一のフィンガー(i)での電圧を示し、
図13Dは、同様に、段階Nでの電圧を示す。
図13Aから、以下のことが分かる。
【0112】
第1の段階M:第1及び第2の駆動信号DOL、DORは、第1の電圧V1にあり、第3及び第4の駆動信号であり、DIL、DIRは、第2の電圧V2にあり、そのため、
図13Bの負変位によって示されるように、セラミック部材30がd31モードで下に変形される。
【0113】
第2の段階N:時間t=t1で、
図13Bに見られるように、第1の駆動信号DOLは、持続時間d1の間、第1の電圧V1から第2の電圧V2に切り替わり、同時に、第4の駆動信号DIRは、持続時間d1の間、第2の電圧V2から第1の電圧V1(d31オフ、d33オン)に切り替わり、セラミック部材30は、d33モードで上に変形させる。
【0114】
第3の段階O:t=t1+d1で、第1の駆動信号DOLは、第1の電圧V1に戻り、第4の駆動信号DIRは、第2の電圧V2(d33オフ、d31オン)に戻り、セラミック部材30は、d31モードで下への変形に戻る。
【0115】
したがって、モード2でセラミック部材30を変形させるための方法は、セラミック部材30がd31モードで下に変形した状態で開始することと、次いで、持続時間d1の間、d31変形オフに切り替え、かつd33変形オンに切り替えることと、次いで、同時に、d33変形オフ及びd31変形オンに切り替えることと、を含む。
【0116】
モード3:
ここで、
図14A~
図14Eを参照すると、これは、セラミック部材30が、モード3と称されるd33及びd31モードの組み合わせにおいて変形する配置を描写する。
【0117】
第1の段階M:
図14Aから、モード1に関して、第1、第2、第3、及び第4の駆動信号DOL、DOR、DIL、DIRは全て、第1の電圧V1で開始し、セラミック部材30は、ニュートラル位置にあることが分かる(
図14Bを参照)。その後に、
第2の段階N:t=t1で、第3の駆動信号DIL及び第4の駆動信号DIRは、同時に、持続時間d4の間、第1の電圧V1から第2の電圧V2に切り替わる(D31オン、D33オフ)。
【0118】
第3の段階O:持続時間d4の後、第4の駆動信号DIRは、第2の電圧V2から第1の電圧V1に切り替わり、同時に、第1の駆動信号DOLは、第1の電圧V1から第2の電圧V2に切り替わる(d31オフ、d33オン)。その後に、
第4の段階P:持続時間d5の後、第1の駆動信号DOLは、第2の電圧V2から第1の電圧V1に切り替わり、同時に、第4の駆動信号DIRは、第1の電圧V1から第2の電圧V2に切り替わる(d31オン、d33オフ)。最後に、
第5の段階Q:持続時間d6の後、第3の駆動信号DIL及び第4の駆動信号DIRは、同時に、第2の電圧V2から第1の電圧V1(d31オフ、d33オフ)に切り替わり、セラミック部材30はニュートラル位置に戻る。
【0119】
したがって、モード3でセラミック部材30を変形させる方法は、セラミック部材30がニュートラル位置にある状態で開始することと、次いで、持続時間d4の間、d31オンに切り替えることと、次いで、同時に、持続時間d5の間、d31オフ及びd33オンに切り替えることと、次いで、持続時間d6の間、d31オン及びd33オフに切り替えることと、次いで、d31オフに切り替えて、セラミック部材がニュートラル位置に戻るようにすることと、を含む。
【0120】
モード4:
最後に、
図15A~15Eを考慮すると、これらは、モード4を描写する。
【0121】
第1の段階M:MODE2に関して、MODE4は、第1及び第2の駆動信号DOL、DORが第1の電圧V1にあり、かつ第3及び第4の駆動信号DIL、DIRが第2の電圧V2にある状態で開始し、(例えば、そのため、セラミック部材30がd31モードで下に変形される)、次いで、
第2の段階N:t=t1で、第3の駆動信号DIL及び第4の駆動信号DIRは、同時に、持続時間d4の間、第2の電圧V2から第1の電圧V1に切り替え、それによって、セラミック部材30が、持続時間d4の間、ニュートラル位置に移動するように、d31オフに切り替え、次いで、
第3の段階O:t=t1+d4で、第1の駆動信号DOL及び第3の駆動信号DILは、同時に、持続時間d5の間、第1の電圧V1から第2の電圧V2(d33オン、セラミック部材30が上に変形)に切り替わり、その後に、
第4の段階P:t=t1+d4+d5で、第1の駆動信号DOL及び第3の駆動信号DILは、次いで、第1の電圧V1に戻り、d33オフに切り替え、持続時間d6の間、ニュートラル位置に戻り、最後に、
第5の段階Q:t=t1+d4+d5+d6で、第3の駆動信号DIL及び第4の駆動信号DIRは、同時に、第1の電圧V1から第2の電圧V2に切り替わり、d31オンに切り替えることによってセラミック部材30を下に変形させる。
図15Aから分かるように、第3の駆動信号DIL及び第4の駆動信号DIRは、同時に、持続時間d4の間、第2の電圧V2から第1の電圧V1に切り替わり、その後に、持続時間d4の後、第1の駆動信号DOL及び第3の駆動信号DILは、同時に、持続時間d5の間、第1の電圧V1から第2の電圧V2に切り替わり、次いで、第1の電圧V1に戻り、その後に、持続時間d6の後、第3の駆動信号DIL及び第4の駆動信号DIRは、同時に、第1の電圧V1から第2の電圧V2に同時に切り替わる。
【0122】
本明細書に説明されるモードは、可能な動作モード、並びにそれらに関連する方法及び駆動信号の小さいサブ選択であることが理解されよう。これらは、駆動波形の一式を提供することによって、設計及び動作性能の柔軟性を提供する。当業者は、d31及び/又はd33モードでセラミック部材を変形させ、それによって電気素子を電気アクチュエータ素子として使用するための好適な駆動信号及び方法を開発し得る。セラミック部材30、ひいては可撓性膜10が変形位置で開始することが要求される場合、駆動信号DOL、DOR、DIL、DIRは、必要に応じて、第1及び第2の電圧V1、V2の適切な組み合わせにおいて、それぞれ適切な保持信号HOL、HOR、HIL、HIRを含んで、d33又はd31モードでセラミック部材30を変形させ得る。
【0123】
更に、本明細書に説明される駆動波形は、例えば、クロストークに対処するため、追加の流体プライミング及び機能性を提供するため、又は作動イベントの前にセラミック部材30をある位置から別の位置へ移動させるために、前パルス及び後パルスを追加的に含み得る。複数のこのような駆動波形は、互いにつながって、一連の変形イベント、ひいては、必要に応じて作動イベントを形成し得る。好適な保持信号は、シーケンスにおいて、次の変形イベントの前に、セラミック部材を必要な位置に保持するように、液滴吐出イベントの間に使用され得ることが理解されよう。本明細書に説明される駆動信号のうちのいずれも、少なくとも1つの流体チャンバを備える液滴吐出装置に供給され得、少なくとも1つの流体チャンバは、流体入口、電気素子、及びそこからの液滴吐出のためのノズルを備え、適切な駆動信号に応答した可撓性膜の移動は、ノズルからの流体液滴の吐出を引き起こすと理解されよう。
【0124】
センサモード
先で説明されるように、本明細書に説明される電気素子20、21、22、23、24は、電気アクチュエータ素子として使用されないときに、アイドル時間で電気センサ素子として動作し得る。代替的に、電気センサ素子として構成された電気素子と、電気素子が電気センサ素子であり、群電気接点(1つ又は複数)が電気出力として構成されるように構成されたMEMSデバイスとがあり得る。両方の場合で、当該電気センサ素子を使用して感知する方法があり得、電気センサ素子は、
a)セラミック部材30であって、セラミック部材30が、深さを有する少なくとも1つのセラミック層31を備える、セラミック部材30と、
b)動作中に、セラミック層31の少なくとも一部分を通して電位差が確立され得るように、深さ方向において、少なくとも1つのセラミック層31に隣接して配設された第1及び第2の電極層41、42と、を備え、
電気センサ素子20、21、22、23、24は、可撓性膜10に隣接して配置される。第1の電極層41は、第1の電極群G1(41)及び第2の電極群G2(41)を備え、第1及び第2の電極群G1(41)、G2(41)のうちの一方は、少なくとも1つのフィンガーを備え、第1及び第2の電極群のうちの他方は、少なくとも2つのフィンガーを備え、第1の電極群G1(41)、G2(41)は、相互嵌合方向81において、第1の電極層41において交互に配置される。第2の電極層42は、第1の電極群G1(42)及び第2の電極群G2(42)を備え、第1及び第2の電極群G1(42)、G2(42)のうちの一方は、少なくとも1つのフィンガーを備え、第1及び第2の電極群のうちの他方は、少なくとも2つのフィンガーを備え、第1の電極群G1(42)、G2(42)は、相互嵌合方向81において、第2の電極層42において交互に配置され、各電極群G1(41)、G2(41)、G1(42)、G2(42)について、群における全てのフィンガーは、(共通コネクタを通して)互いに、かつ群電気接点OL、OR、IL、IRに電気的に接続される。
【0125】
第1の電極層41の第1の電極群G1(41)は、相互嵌合方向81において、第2の電極層42の第1の電極群G1(42)と重複し、第1の電極層41の第2の電極群G2(41)は、相互嵌合方向81において、第2の電極層42の第2の電極群G2(42)と重複する。セラミック部材30は、d31モード又はd33モードで変形することができる。
【0126】
感知方法は、可撓性膜10が、外力に応答して移動することと、セラミック部材30が、それによって、群電気接点OL、OR、IL、IRの1つ以上に供給される電気信号(1つ又は複数)生成するために、d31及び/又はd33モードで変形することを含み、群電気接点OL、OR、IL、IRが、出力として構成される。感知方法は、1つ以上の群電気接点OL、OR、IL、IRに供給された生成された電気信号(1つ又は複数)を測定することと、当該信号(1つ又は複数)を使用して、可撓性膜10の変形を判定し、ひいては外力(1つ又は複数)の強度を判定することと、を更に含み得る。このような方法は、例えば、既知の信号、既知の変形、及び既知の力の予め記憶された表又はルックアップ表を使用して、可撓性膜10に印加された力を判定することを含み得る。
【0127】
代替的なレイアウト
図16A~
図16Dは、電極に対する様々な代替的な配置を描写する。
図16Aは、
図7A又は
図8Aのものと同様の電気素子25を有する配置を示すが、層のうちの1つは、この場合、第2の電極層42であるが、この層は、電極層41、42、43における電極群が整列されるように、中心間間隔Z1が実質的に同じである状態で、相互嵌合方向81において、他の2つの電極層41、43におけるものよりも長いフィンガーG1(42)、G2(42)を備える。したがって、電極42の層の隣接するフィンガー間のギャップy2は、他の2層のギャップy1、y3よりも小さいことが分かる。このような配置は、層間にミスアライメントがあっても、重複を確実にするように、2つの電極層41、43におけるより短い電極のフィンガーが、相互嵌合方向81において、より長いフィンガーG1(42)(i~iii)、G2(42)(i~iii)の長さに含有されることを確実にし得る。このような配置は、より効果的なd31変形モードを提供し得る。
【0128】
ここで、
図16Bを参照すると、これは、第1及び第2の電極層41、42と、第1及び第2の電極層41及び42間に位置する第3の連続電極層G(42a)と、を有する電気素子26を有する配置を描写し、第1及び第2の電極層41、42のみが、相互嵌合され、第1の電極層41の第1の電極群G1(41)及び第2の電極層42の第1の電極群G1(42)は、互いに電気的に接続され、共通の群電気コネクタを共有し得、同様に、第2の電極群G2(41)及びG2(42)は、互いに電気的に接続され、かつ共通の群電気コネクタを共有し得、一方で、第3の電極層G(42a)は、別個の群電気入力を有する。
図16Bから更に分かるように、この実施形態では、第3の電極層は、第1の電極層よりも可撓性膜に近いが、第2の電極層は、第3の電極層よりも可撓性膜に近い。このような配置は、第1及び第2の電極層41、42を、d33モードでの変形のために使用し得、そのため、例えば、相互嵌合方向81における電極フィンガーの交互の列91、92は、第1及び第2の電極層41、42のそれぞれ第1の群G1(41)、G1(42)と第2の群G2(41)、G2(42)から形成され、一方、第3の電極層G(42a)は、ニュートラルのままである。このような配置は、例えば、
図8Aに示すものと同様の方式で、d31モードでの変形のために3つの層全てを使用し得る。
【0129】
図16C及び
図16Dは、下の流体チャンバ(図示せず)、ひいては(電気アクチュエータ素子の場合)可撓性膜に対して異なる配向で配置された第1の電極層の相互嵌合されたフィンガーを有する電気素子27及び28の上面図を描写し、そのため、相互嵌合方向81は各場合で異なる。
図16Cでは、相互方向81は、チャンバ長さ方向yに平行であり、
図16Dでは、相互嵌合方向81は、チャンバ長さ方向yに垂直である。どちらの配向も、本明細書に説明される実施形態及び配置のうちのいずれにおける使用にも好適であり、各場合で、第2及び(存在する場合)第3の電極層42、43(図示せず)が、適切に重複するように第1の電極層41と同じ方法で配向され得ることが理解されよう。
【0130】
モデリング作業の例
COMSOL Multiphysicsシミュレーションソフトウェアにおいてモデリング作業を行い、様々な構成の影響を調査し、結果を表1~表3に示す。
【0131】
表1では、印加電圧、電界、変位及び変位領域が示され、セラミック部材の両側に2つの連続電極が1つある従来のd31設計(
図1のものなど)と比較される。
【表1】
【0132】
表2は、3層の電極41、42、43における電極フィンガーの相互嵌合方向81の幅を変化させた結果を描写する。幅は、1μm~2.5μmで変化し、5μmの一定のピッチ(中心間間隔Z1)を維持し、印加電圧を10V~40Vで変化させ、全ての場合で、同じ印加電界10V/μmを与えるようにする。この表では、全てのケースは、3層の電極41、42、43を含み、第1の層41及び第3の層43における電極フィンガーの幅は同じである。
【表2】
【0133】
d33及びd31動作モードの場合の異なる電極幅に対する総変位及び総変位面積が描写されている。全ての場合において、20Vの同じ電圧差が印加された。
【表3】
【0134】
上記の表では、各電極層における電極フィンガー間のピッチは、全ての場合に対して5μmである。
【0135】
総論
本明細書で説明される電気素子20、21、22、23、24、25、26のうちのいずれも、又はこれらの実施形態の変形例のうちのいずれも、MEMSデバイスに組み込むことができる。いくつかのMEMSデバイスでは、電気素子は、例えば、液滴吐出装置が少なくとも1つの流体チャンバを含み、流体チャンバが、流体入口と、そこからの液滴吐出のためのノズルと、本明細書に説明される電気素子20、21、22、23、24、25、26のうちの少なくとも1つを含む、液滴吐出装置で説明されるような電気アクチュエータ素子として使用され得る。液滴吐出装置は、印刷デバイスとしての用途を含む、様々な用途に使用され得る。このような用途では、液滴吐出装置は、基材の大きい領域に対処するようにアレイに配置され得る、複数のこのような流体チャンバを備え得る。いくつかの液滴吐出装置は、複数の液滴吐出ヘッドを備え得、その各々は、複数のこのような流体チャンバを備える。
【0136】
各電極群におけるフィンガーの数は、本明細書に描写するものに限定されず、最小要件は、第1及び第2の電極群のうちの一方が少なくとも1つのフィンガーを備え、第1及び第2の電極群のうちの他方が少なくとも2つのフィンガーを備えることが理解されよう。本明細書で説明される実施形態のうちのいずれかによる電気素子20、21、22、23、24、25、26があり得、各電極群は、複数のフィンガーを備えることが更に理解されよう。
【0137】
更に、電極群のうちのいずれにおいても、偶数又は奇数のフィンガーに対する要件はなく、第1及び第2の電極群におけるフィンガーが交互に配設されることを条件に、第1及び第2の電極群が、同じ数のフィンガー、又は異なる数のフィンガーを備え得ることが理解されよう。いくつかの実施形態では、整列した群におけるフィンガーの数は、同じであり得、例えば、G1(41)、G1(42)、G1(43)は、互いに同じ数のフィンガーを有し、同様に、G2(41)、G2(42)、G2(43)は、互いに同じ数のフィンガーを有する。
【0138】
更に、電気素子20、21、22、23、24、25、26は、可撓性膜10に隣接して配置され、かつ固定接続されるものとして説明されているが、他の層が必要に応じて、電気素子20、21、22、23、24、25、26などの部分と可撓性膜10との間に介在し得るため、可撓性膜10に直接接続されない場合があることが理解されよう。このような層は、
図1A及び
図1Bを参照して説明したものと同様の、電気素子と可撓性膜10との間にあり、電気素子の構成及び動作に必要なことがある、電気及び/又は化学パッシベーション層、接着層、応力勾配緩和層、拡散バリア、又は任意の他の追加層を備え得ることが理解されよう。例えば、電極層が白金(Pt)から作製される場合、軟質膜10とそれに隣接した電極層(実施形態に応じて42又は43)との間の二酸化ジルコニウム(ZrO
2)の層は、白金電極がエッチングされた領域でのPZTなどのセラミックの成長を補助し得る。
【0139】
しかしながら、電気素子20、21、22、23、24、25、26と軟質膜10との間に介在する層が存在するかどうかにかかわらず、電気素子20、21、22、23、24、25、26が電気アクチュエータ素子として作用し、セラミック部材30が、d33及び/又はd31モードで変形するように駆動されて、それによって軟質膜10を移動させるように、2つが互いに固定接続されることが理解されよう。同様に、電気素子20、21、22、23、24、25、26がセンサとして構成されているか、又はセンサとして作用するときに、可撓性膜に印加される力に応答して移動し、それによってセラミック部材30は、d33及び/又はd31モードで変形し、電気信号を生成する。したがって、隣接し、かつ固定接続されることは、電気素子20、21、22、23、24、25、26及び可撓性膜10が、本明細書で説明される介在する層を有する配置を包含するが、依然として、電気素子20、21、22、23、24、25、26の移動(例えば、変形)が、可撓性膜10の移動(逆に電気センサ素子に対して)を引き起こすことを可能にする。
【0140】
更に、セラミック部材の層31及び層32(存在する場合)は、それぞれ単一の層として描写されているが、これは単純化のために行われ、層31、32は、複数の層又はサブ層(例えば、層31(1~m)及び32(1~n)のスタック)を備え得ることが理解されよう。例えば、このような層のスタックは、層31及び層32(存在する場合)の所望の厚さに到達するまで、例えば、1つの薄フィルム層を次々に(例えば、1、2、3m/n)堆積させる連続的な堆積から典型的に形成される。MEMS用途用のセラミック薄フィルム層の調製は、通常、化学溶液前駆体を使用する化学溶液堆積、又は固体焼結セラミックターゲット若しくはホットプレスセラミックターゲットを使用するスパッタリング(例えば、RFマグネトロンスパッタリング)を伴う。任意の他の好適な調製方法もまた、使用され得る。
【0141】
層31、32は、好ましくは、化学溶液堆積を通して形成され得る。例えば、多層薄フィルムセラミック部材30は、セラミック材料の前駆体溶液の堆積及び乾燥の複数回の繰り返しによって、堆積及び乾燥ステップの各セット間に結晶化によって、又は堆積及び乾燥の複数回の繰り返しの終了時に結晶化ステップによって、形成され得る。理解されるように、多層薄フィルムセラミック部材30の層の各々の組成物は、実質的に同一であり得る。代替的に、多層薄フィルムセラミック部材30の個々の層の組成物は、例えば、サブ層のうちの1つが、電気素子の基材及び/又は電極と接触するかどうかに応じて、特定の動作要件を満たすように最適化され得る。したがって、このような実施形態では、多層薄フィルムセラミック材料31(1~m)、32(1~n)の個々の層の組成物は、互いに異なり得、例えば、それらは、異なるドーパント、異なる全体組成物などを含み得る。このような設計の柔軟性は、特性、及びしたがってセラミック部材30の性能の微調整を可能にし得る。更に、2つの層31、32は、深さ方向80において同じ厚さであるとして本明細書に描写されているが、これは決して必須ではなく、層31、32は異なる厚さを有し得、異なる数のサブ層を含み得ることが理解されよう。深さ方向80におけるセラミック部材30の典型的な厚さは、0.5~3μmの範囲であり得るか、又は1~2μmであり得、典型的な例は、1.3μm、1.4μm、又は1.5μmであり得る。セラミック部材30の厚さは、所望の動作周波数に依存し、概して高い動作周波数は、より厚い可撓性膜10を必要とし得、したがって、より厚いセラミック部材30は、より厚い可撓性膜を駆動することができるようにより強力である(より高いピエゾ効率を有するセラミック部材を設計することも利用され得る)。更に、それぞれの位置に基づいて適宜、層31、32は、それらに隣接するそれぞれの電極層における隣接するフィンガーの間にギャップy1、y2、y3を形成する部分を備え得ることが理解されよう。
【0142】
電極群41、42、43は、100~200nmであり得、例えば、深さ方向80において、150nmの厚さのオーダであり得る。電極群41、42(及び存在する場合)43の厚さは、同じ若しくは異なり得、それらは、同じ材料を含み得るか、又はそれらは、全てが異なる材料を含み得、セラミック部材30に含まれる電極群42は、3層デバイスの外縁41、43上の材料とは異なる材料であり得る。電極群の材料及び厚さは、セラミック部材30の設計及び目的のために最適化され得る。電極群41、42、43は、例えば、スパッタリングなどの任意の好適な堆積技術などの任意の好適な方法によって形成され得る。
【0143】
当業者によって理解されるように、複数の電気素子がある場合、セラミック部材30は最初に堆積され得、その後、パターン形成され、及び、例えば、エッチングによって複数の分離されたセラミック部材30に分割され、各々が複数の電気素子20、21、22、23、24、25、26のうちの個々の1つと関連付けられる。更に、本明細書に描写されないが、パッシベーション層などの追加の層は、外部損傷から保護するために電気素子を覆って、電気及び化学パッシベーションなどを提供し得ることが理解されよう。
【0144】
本明細書で使用される場合、「セラミック材料」は、例えば、圧電材料又はリラクサー/強誘電体クロスオーバー材料などの強誘電体挙動を呈する任意の好適な材料を包含することが理解されよう。上で説明されるように、好適なセラミック材料の例は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ドープPZT及びPZT系固溶体などのペロブスカイト構造を有する鉛系セラミックを含むが、これらに限定されない。他の好適なセラミック材料は、(K,Na)NbO3系材料、(Ba,Ca)(Zr,Ti)O3系材料、及び(Bi,Na,K)TiO3系材料などの鉛フリー代替セラミック材料を含む。これらの例示的な材料は、決して限定するものではなく、他の好適な材料も使用され得る。
【0145】
第1の電圧V1が基準電圧である場合、この電圧は接地であり得るが、これは決して必須ではなく、基準電圧は接地以外の電圧であり得ることが理解されよう。
【0146】
更に、本明細書で説明されるような第1及び第2の電圧V1、V2は、限定されず、異なる電圧が使用され得ることが理解されよう。更に、第2の電圧V2が第1の電圧V1よりも大きい場合、第1及び第2の電圧V1、V2間の差(V2-V1)は、限定されない。例えば、より小さい電圧差は、より小さい偏向を提供するために使用され得るか、又はより大きい電圧差は、より粘性の大きい流体とともに使用されるか、又はより大きい偏向を提供するために使用され得る。更に、異なる電圧若しくは電圧順序、又は異なる電圧差を使用して、クロストーク抑制などのための前パルス及び後パルスを形成し得る。
【0147】
また更に、所与の駆動波形内で、本明細書における実施例に使用されるバイナリの第1の電圧V1、第2の電圧V2ではなく、異なるステップ及びレベルの電圧を使用し得、例えば、第2の電圧V2は、例えば、前パルス及び後パルスのため、アクチュエータ感知のため、又はアクチュエータ評価のために使用される、より小さい電圧、及び液滴吐出イベントが必要とされるときに使用される、より強い電圧で、変化する電圧レベルの第2の電圧V2の範囲を含み得る。また更に、パルスの長さ(例えば、ある変形モードから別の変形モード、又はニュートラル位置への/からの変化の持続時間は、必要に応じて変化し得る。例えば、低電圧を有する短い持続時間のパルスを使用して、例えば、液滴吐出を防止しながら、アクチュエータ性能を感知又は試験するために、アクチュエータを移動させ、膜を励起させ得る。同様に、電圧がゆっくりとかつ徐々に変化する長い持続時間パルスを使用して、液滴吐出イベントを引き起こすことなく、セラミック部材をある位置から別の位置(例えば、保持位置)に移動させ得る。
【0148】
図10A~
図15Aにおける電圧の切り替えは、瞬間的に発生するものとして描写されるが、決して限定されるものではなく、ある電圧レベルから別の電圧レベルに切り替えるときに、ゆっくりとした立ち上がり及び/又はゆっくりとした立下りがあり得る。また、ある電圧レベルから別の電圧レベルへの切り替えが、所定の又は動的である可能性がある間、遅延があり得る。更に、電圧レベルとパルスの幅との間の差は、必要に応じて制御され得る。結果として、遅延、最大電圧、最小電圧及び/又はパルス幅によれば、
図10B~
図15Bに描写される(ステップM~Pを通じた)セラミック部材30の位置の変化は、同様に、制御され得る。
【0149】
図10A~
図15Aに示す波形は、理解を容易にするためであり、特定の波形形状に限定されないが、例えば、台形、正弦波などの他の形態及び形状を採り得ることに留意されたい。更に、d31偏向及びd33偏向の両方を含む波形は対称的に描写されるが、変位分割50%:50%では、提示が容易であり、ニュートラル位置の両側への非対称な変形が可能であることが理解されよう。更に、いくつかの用途については、非対称は、特定の用途に対して可撓性膜の偏向を調整するように設計され得る。これは、そのd33応答及びd31応答が非対称であるセラミック部材を設計することによって、及び/又は非対称波形を使用することによって行われ得る。
【国際調査報告】