(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】菌株、組成物および使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/747 20150101AFI20240118BHJP
A61K 35/744 20150101ALI20240118BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240118BHJP
A61P 15/02 20060101ALI20240118BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20240118BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20240118BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20240118BHJP
A01N 63/20 20200101ALI20240118BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
A61K35/747
A61K35/744
A61P31/04
A61P15/02
C12N1/20 A
C12N1/20 E
C12N1/20 F
A23L33/135
C12Q1/04
A01N63/20
A01P3/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540890
(86)(22)【出願日】2021-12-29
(85)【翻訳文提出日】2023-09-01
(86)【国際出願番号】 EP2021087816
(87)【国際公開番号】W WO2022148699
(87)【国際公開日】2022-07-14
(32)【優先日】2021-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521292984
【氏名又は名称】ラクトバイオ アー/エス
【氏名又は名称原語表記】LACTOBIO A/S
【住所又は居所原語表記】Lerso Parkalle 42,2.,2100 Copenhagen O(DK)
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴェデル,シャーロット
(72)【発明者】
【氏名】ビレコップ オルセン,カーチャ
(72)【発明者】
【氏名】テスドルフ,ジェンス エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ケアウルフ,ゾーレン
(72)【発明者】
【氏名】エルヴェバッケン,ヘレナ ファルホルト
【テーマコード(参考)】
4B018
4B063
4B065
4C087
4H011
【Fターム(参考)】
4B018MD86
4B018ME09
4B063QA01
4B063QA06
4B063QA18
4B063QQ02
4B063QQ06
4B063QQ16
4B063QR75
4B063QS10
4B063QS13
4B063QX01
4B065AA30X
4B065AC20
4B065BA21
4B065CA34
4B065CA41
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC55
4C087BC56
4C087CA09
4C087MA02
4C087MA13
4C087MA17
4C087MA28
4C087MA34
4C087MA38
4C087MA43
4C087MA52
4C087MA56
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA81
4C087ZB35
4H011AA01
4H011BB21
(57)【要約】
本発明は、受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R、受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R、受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918R、または受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919Rを含む組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R;
受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R;
受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R;
受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918R;または
受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919R;
を含む、組成物。
【請求項2】
受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R;
受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R;
受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R;
受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918R;または
受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919Rを特に含む、Lactobacillus crispatusを含む膣マイクロバイオーム移植片。
【請求項3】
1つ以上のPediococcus株(例えば寄託受託番号DSM 33730の下で寄託されたPediococcus pentosaceus LB606R)および/または1つ以上のLactiplantibacillus株(例えば寄託受託番号DSM 33731の下で寄託されたLactiplantibacillus plantarum LB679R)から選択される乳酸菌株をさらに含む、請求項2に記載の膣マイクロバイオーム移植片。
【請求項4】
懸濁液、スプレー、ゲル、クリーム、ローション、粉末、カプセル、油、洗浄液用溶液、卵形剤、膣用インサート、坐剤、ロゼンジ、錠剤、マイクロカプセル化製品として、または食品サプリメントもしくは食品の形態で製剤化される、請求項2から3のいずれか一項に記載の膣マイクロバイオーム移植片。
【請求項5】
受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R;
受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R;
受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R;
受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918R;または
受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919Rを特に含む、Lactobacillus crispatusから選択される単離された細菌株。
【請求項6】
Lactobacillus crispatus、Lactobacillus gasseriまたはLactobacillus jenseniiの種から選択される1つ以上の細菌株を含む、医薬として使用するための組成物。
【請求項7】
1つ以上のLactobacillus crispatus、1つ以上のLactobacillus gasseriまたは1つ以上のLactobacillus jenseniiから選択される細菌株を含む、ヒトまたは動物における膣感染症の予防および/または処置に使用するための組成物。
【請求項8】
1つ以上のLactobacillus crispatus、1つ以上のLactobacillus gasseriまたは1つ以上のLactobacillus jenseniiから選択される細菌株を含む、ヒトもしくは動物の妊孕性の改善および/またはヒトもしくは動物の早産のリスクを低減するのに使用するための組成物。
【請求項9】
1つ以上のLactobacillus crispatus(特に、受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R)、1つ以上のLactobacillus jensenii(特に、受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918Rを含む)、または1つ以上のLactobacillus gasseri(特に、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905Rを含む)を含む、バイオフィルム形成の予防、阻害または処置に使用するための組成物。
【請求項10】
第1の乳酸菌株と第2の乳酸菌株の組み合わせを含む組成物であって、該第1の乳酸菌株がGardnerella vaginalisの阻害を特徴とし、該第2の乳酸菌株がCandida albicansの阻害を特徴とする、組成物。
【請求項11】
請求項1もしくは6から10のいずれか一項に記載の組成物、または請求項2から4に記載の膣マイクロバイオーム移植片、または請求項5に記載の単離された細菌株を含む医療機器。
【請求項12】
膣移植用の1つ以上の乳酸菌株を選択する方法であって、
Gardnerella vaginalisの阻害を特徴とする少なくとも1つの第1の乳酸菌株を選択する工程;および
Candida albicansの阻害を特徴とする少なくとも1つの第2の株を選択する工程;
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単独でまたは組み合わせてプロバイオティクスとして使用することができる新たな乳酸菌株に関する。本発明はまた、株を単独でまたは組み合わせて含む医薬組成物およびパーソナルケア用製品に関する。特に、本発明は、膣感染症または泌尿生殖器感染症の予防または処置のための株の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
性感染症(STI)を含む下部生殖管感染症は、妊娠可能年齢の女性において最も一般的な臨床問題の一部である。膣分泌物は、膣感染症(酵母、細菌性膣炎およびトリコモナス)または子宮頸部感染症(淋病またはクラミジア)に起因し得る。さらに、膣感染症を早産、低出生体重、および新生児死亡に結び付ける一連の証拠があり、これらは産科において直面する最も重要な問題の一部である。
【0003】
細菌性膣炎(BV)は、細菌Gardnerella vaginalis(G.vaginalis)によってしばしば引き起こされる妊娠中の最も一般的な生殖器感染症の1つである。細菌性膣炎はSTIではないが、STIになるリスクを高める可能性がある。妊娠中期に細菌性膣炎と診断された女性は、細菌性膣炎のない女性よりも未熟で低出生体重の乳児を出産する可能性が40%高い。そのような出産のわずかな割合でさえも予防することは、大きな金銭的節約ならびに新生児の罹患率および死亡率の減少につながり得る。
【0004】
膣微生物叢、特に乳酸菌は、免疫の調節、病原体に対抗すること、およびpHを4.5未満に維持することによって、女性の健康において重要な役割を果たす。
【0005】
さらに、外陰膣カンジダ症の症例の約90%は、C.albicansが優勢であるCandida種に起因する(非特許文献1)。女性の75%が生涯のうちに少なくとも1回のエピソードを経験すると推定される。さらに、症例の25%は、年間4回以上のエピソードを伴って再発する。
【0006】
感染は、異なる処置目的で処方された抗生物質療法による処置後に起こることが多い。エストロゲンを含有する経口避妊薬を服用している女性、妊婦および糖尿病の女性においても一般的である。カンジダ感染は、トリアゾール薬(例えば、フルコナゾール、クロトリマゾール、ミコナゾール、イトラコナゾール)またはナイスタチンなどの抗真菌剤で処置される。しかしながら、臨床で単離されたCandida albicansの株の最大20%が最も典型的な処置の1つであるフルコナゾールに対する耐性を示す一方で、Candida glabrataの株がそのような処置に対して高い耐性を示す傾向があることは注目に値し、外陰膣カンジダ症の管理のための新たな処置ツールを見出すことの重要性を強調している。
【0007】
例えば、Garnerella種またはCandida種によって引き起こされる不健康な膣微生物叢または機能不全微生物叢は、不妊症に関連し得る。
【0008】
乳酸菌は、ヒトの腸、口、および膣の微生物フローラの一部である。膣乳酸菌は、過酸化水素H2O2、抗菌ペプチドまたはバイオサーファクタントなどの他の抗菌物質の産生による酸の産生および膣の酸性化を介する感染に対する耐性において、重要な役割を果たす。
【0009】
膣乳酸菌フローラが優勢である女性は、淋病およびクラミジア感染症、トリコモナス症および細菌性膣炎の頻度が50%低いことが実証されている。膣におけるH2O2産生乳酸菌の存在は、細菌性膣炎、症候性酵母膣炎、およびNeisseria gonorrhea、Chlamydia trachomatis、およびTrichomonas vaginalisを含む性感染病原体の頻度の低下に関連している。インビトロ試験により、H2O2産生乳酸菌が膣病原体に対して、さらにヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対しても強力な殺菌特性および殺ウイルス特性を有することが実証されている。
【0010】
妊娠可能年齢の多くの女性は、膣乳酸菌が欠乏している。膣の生態系および微生物叢は、医薬品、石鹸、衛生製品、一般的な健康状態、性的習慣および避妊によって動的に影響を受ける。一部の女性では、健康な微生物叢は、若年時には決して確立されなかった。したがって、機能不全または不均衡な微生物叢もまた、若年時に既に確立されており、問題のある感染症を若年女性および女性に引き起こし、妊孕性も低下させる可能性がある。
【0011】
多くの膣および全身薬は、膣乳酸菌を死滅させ得る。したがって、抗生物質による感染症の処置は、女性が感染症を反復獲得するかまたは抗生物質耐性感染症さえも発症するリスクを高め得る。
【0012】
膣内または経口使用のための乳酸菌は、健康食品店で入手可能なプロバイオティクス調製物の形態、および食料品店でアシドフィルス乳またはヨーグルトの形態で50年以上にわたって利用可能である。これらの製品には、凍結乾燥Lactobacillus種を含有する膣坐剤が含まれている。これらの製品は、膣に外因性Lactobacilliをコロニー形成させず、病原体のバイオフィルム形成を予防しないため、またはインビボでの抗菌活性が欠如しているために、感染症の処置においてほとんど効果がなかった。市販のLactobacillusは、病原体のバイオフィルム形成を予防することができず、また、市販のLactobacillusは、持続性G.vaginalisに対する抗菌活性を有さないことが示されている。
【0013】
ほとんどの市販のプロバイオティクス株は、抗菌活性のために体系的に選択されるのではなく、酸を産生し、アップスケーリングする能力(非特許文献2)のために選択される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Richter,S.S.ら、Antifungal Susceptibilities of Candida Species Causing Vulvovaginitis and Epidemiology of Recurrent Cases.J.Clin.Microbiol.2005,Vol.43,No.5,pages 2155-2162
【非特許文献2】Kwak,Y-K.ら、2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
G.vaginalisがバイオフィルムを形成する能力は、BVに典型的であり、遺憾ながら抗生物質療法を繰り返さざるを得ない高い再発率に寄与する。
【0016】
したがって、G.vaginalisによるバイオフィルムの発生を予防、阻害または低減することができる乳酸菌が有利であろう。
【0017】
さらに、膣を酸性化しG.vaginosisおよび/またはCandida種のバイオフィルム形成を予防する能力である抗菌活性を維持する、膣感染症の処置のための乳酸菌が必要とされている。
【0018】
本発明は、膣内の病原性微生物を特異的に打ち負かし、それによって健康な微生物叢を再確立する能力について選択された新たな単離された細菌に関する。さらに、新たな単離された細菌は、G.vaginalisおよび/またはCandida種に対するそれらの標的抗菌活性のために選択される。
【0019】
したがって、本発明の目的は、婦人科および泌尿器科における使用に適した新たな乳酸菌および局所組成物におけるその使用に関する。したがって、本発明の目的は、膣または泌尿生殖器の感染症を処置または予防し、再発性感染症を減少させ、STIを減少させ、妊孕性を改善し、および/または早産を減少させることができる新たな単離された乳酸菌に関する。
【0020】
特に、本発明の目的は、病原体を標的制御し、それによって感染症を予防する能力を有する、先行技術の上述の問題を解決する新たな株を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、以下の株、受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R、受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R、受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918R、受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919Rの1つ以上を含む株および組成物に関する。
【0022】
したがって、本発明の一態様は、受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R、受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R、受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918R、または受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919Rを含む組成物に関する。
【0023】
本発明の別の態様は、Lactobacillus crispatusを含む、特に以下の株、受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R株、受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R、受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918R、受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919Rのうちの少なくとも1つを含む膣マイクロバイオーム移植片に関する。
【0024】
本発明のさらなる態様は、膣マイクロバイオーム移植片を調製するための方法であって、女性(例えば、ヒト女性または動物の雌)からマイクロバイオーム試料を得る工程、1つ以上のLactobacillus crispatus(特に、受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R、受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R、または受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919Rを含む)、1つ以上のLactobacillus jensenii(特に、受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918Rを含む)、または1つ以上のLactobacillus gasseri(特に、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905Rを含む)などの1つ以上のLactobacillus種を含むマイクロバイオーム試料から画分を単離する工程、増殖画分を提供する1つ以上のLactobacillus種を含む画分を増殖させる工程、および増殖画分を懸濁液、スプレー、ゲル、クリーム、ローション、粉末、カプセル、軟膏、油、洗浄液用溶液、卵形剤(ovule)、膣インサート、坐剤、ロゼンジ、錠剤、マイクロカプセル化製品に製剤化する工程を含む、方法に関する。
【0025】
本発明のさらなる態様は、膣マイクロバイオーム移植片を調製する方法であって、健康な膣微生物叢を有する女性(ヒト女性または動物の雌など)からマイクロバイオーム試料を得る工程、マイクロバイオーム試料から乳酸菌を単離する工程(好ましくは、単離された乳酸菌は、1つ以上のLactobacillus crispatus、1つ以上のLactobacillus gasseriまたは1つ以上のLactobacillus jenseniiなどの1つ以上のLactobacillus種を含み、最も好ましくは、単離された乳酸菌は、1つ以上のLactobacillus crispatusを含む)、病原性微生物に対して抗菌活性を有する単離された細菌を選択する工程を含む、方法に関する。
【0026】
本発明の一実施形態では、病原性微生物に対して抗菌活性を有する選択された単離された細菌を増殖させることができ、選択された単離された細菌は、懸濁液、スプレー、ゲル、クリーム、ローション、粉末、カプセル、軟膏、油、洗浄液用溶液、卵形剤、膣用インサート、坐剤、ロゼンジ、錠剤、マイクロカプセル化製品に製剤化され得る。
【0027】
本発明のさらに一態様は、女性における機能不全の微生物叢を処置または予防するための方法であって、以下の工程:
1.健康な膣微生物叢を有する女性(ヒト女性など)の膣から乳酸菌を単離する工程、
2.病原性微生物に対して抗菌活性を有する単離された細菌を選択する工程、
3.選択された単離された細菌の1つ以上を含む組成物を調製する工程、および
4.機能不全の膣微生物叢を有する女性の膣に組成物を移植する工程
を含む、方法に関する。
【0028】
本発明のさらなる態様は、Lactobacillaceaeから選択される単離された細菌株、特に、以下の株、受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R、受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R、受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918R、または受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919Rのうちの少なくとも1つに関する。
【0029】
本発明のさらに一態様は、医薬品として使用するための、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus gasseriまたはLactobacillus jenseniiの種から選択される1つ以上の細菌株を含む組成物に関する。
【0030】
本発明のさらに一態様は、ヒトまたは動物における膣感染症の予防および/または処置に使用するための、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus gasseriまたはLactobacillus jenseniiから選択される1つ以上の株から選択される細菌株を含む組成物に関する。
【0031】
本発明の別の態様は、ヒトまたは動物の妊孕性の改善に使用するための、1つ以上のLactobacillus crispatus、1つ以上のLactobacillus gasseriまたは1つ以上のLactobacillus jenseniiから選択される細菌株を含む組成物に関する。
【0032】
本発明のさらに一態様は、ヒトまたは動物の早産のリスクを低減するのに使用するための、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus gasseriまたはLactobacillus jenseniiから選択される1つ以上の株から選択される細菌株を含む組成物に関する。
【0033】
本発明のさらなる態様は、バイオフィルム形成の予防、阻害または処置に使用するための、1つ以上の膣単離株、特に受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R、受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R、受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918Rおよび/または受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919Rを含む組成物に関する。
【0034】
本発明のさらに一態様は、本発明による組成物、または本発明による膣マイクロバイオーム移植片、または本発明による単離された細菌株を含む医療機器に関する。
【0035】
本発明のさらに一態様は、本発明による組成物を含む食品成分、飼料成分、および/または個人向け衛生製品に関する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】G.vaginalisと妊娠後期の女性の膣から単離されたLB714Rとの共凝集を示す。
【
図2】Gardnerella vaginalisを阻害することができる適切な乳酸菌、例えば、1つ以上の乳酸菌、例えば、1つ以上のLactobacillus crispatus、Lactobacillus gasseriまたはLactobacillus jensenii(特に、受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R、受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R、受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918Rまたは受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919R)を含むLactobacillus種の同定を含む、本発明による組成物または膣微生物叢移植片の好ましい調製物を示す。この方法は、膣感染症または泌尿生殖器感染症の予防または処置のための株の単離および同定のための方法を含む膣微生物叢の移植を含む。特に、本方法は、(i)健康な膣微生物叢を有する女性から乳酸菌を収集する工程、(ii)健康な膣微生物叢から個々の株を単離する工程、(iii)膣病原性微生物に対する抗菌活性に基づいて単離された株を選択する工程、(iv)選択された染色を単一培養物として増殖させ、膣移植に適した組成物に製剤化する工程、(v)場合により、組成物に2つ以上の株を混合することによって組成物を増強する工程、および(vi)機能不全の膣微生物叢を有する女性へ組成物を移植する工程を含む。
【
図3】本発明による、受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R、受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R、受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918Rおよび受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919Rの共凝集スコアを、Cisar,J.O.ら(1979)に従って決定された薄い灰色の列によって示している。
【
図4】Lactobacillus株、Lactobacillus crispatus LB714Rの生存細胞および死/不活性化細胞を使用してG.vaginalisと共凝集する、受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714Rの能力の顕微鏡画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
発明の詳細な説明
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0038】
したがって、本発明の発明者らは、ヒトもしくは動物における不健康もしくは機能不全の膣微生物叢を正常化するための抗菌活性、および/または例えば本明細書で定義される表面上のバイオフィルム形成の阻害を有する特定の乳酸菌を見出した。
【0039】
本発明の一実施形態では、動物は、霊長類、家畜、競技用動物、げっ歯類およびペットを含み得るが、これらに限定されない。より具体的には、動物は、マウス、ラット、ハムスターおよびモルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ヒツジ、豚、子豚、雌豚、家禽、七面鳥、ブロイラー、ミンク、ヤギ、ウシ、ウマ、および非ヒト霊長類、例えば類人猿およびサルを含み得る。
【0040】
乳酸菌は、好ましくはプロバイオティクス細菌であり得、好ましくは以前に同定されていないプロバイオティクス細菌であり得る。
【0041】
新たなプロバイオティクス細菌は、下部生殖管における感染数を減少させ、それによって妊孕性を改善し、早産のリスクを低下させ、STIのリスクを低下させ得る。
【0042】
下部生殖管は、好ましくは尿路および/または膣を含み得る。膣は、女性生殖管の弾性の筋肉部分であり得る。ヒトでは、膣は外陰部から子宮頸部に延びる。
【0043】
本発明による1つ以上の乳酸菌は、抗菌活性を有していてもよい。
【0044】
本発明による乳酸菌は、粘膜にコロニー形成することができ、および/または病原性膣微生物によるバイオフィルム形成を予防することができ、および/または病原性膣微生物に対して抗菌活性を有することができる。
【0045】
「粘膜(mucous membrane)」または「粘膜(mucosa)」は、体内の様々な空洞を裏打ちし、内臓の表面を覆う膜である。これは、疎性結合組織の層を覆う上皮細胞の1つ以上の層からなる。それは主に内胚葉起源であり、眼、耳、鼻および口の内側、唇、膣、尿道開口ならびに肛門などの様々な身体開口部で皮膚と連続している。
【0046】
本発明による組成物は、本発明による少なくとも1つの乳酸菌を含む組成物を粘膜に適用することを含む、それを必要とするヒトまたは動物の粘膜状態を処置するために使用され得る。
【0047】
本発明の好ましい実施形態では、本発明による乳酸菌は、1つ以上のLactobacillus種、特に1つ以上のLactobacillus crispatus、1つ以上のLactobacillus gasseriもしくは1つ以上のLactobacillus jensenii、特にL.crispatus LB714R(DSM 33732)、L.crispatus LB912R(DSM 34095)、L.crispatus LB919R(DSM 34097)、Lactobacillus gasseri LB905R(DSM 34094)、Lactobacillus jensenii LB918R(DSM 34096)、1つ以上のPediococcus種、例えば1つ以上のPediococcus pentosaceus、例えばPediococcus pentosaceus LB606R(DSM 33730)、および/またはLactobacillus plantarum LB356R(DSM 33094)などの1つ以上のLactiplantibacillusからなる群から選択され得る。
【0048】
好ましくは、本発明による乳酸菌は、少なくとも1つ以上のLactobacillus crispatus、特にLactobacillus crispatus LB714R(DSM 33732)を含み得る。
【0049】
好ましくは、本発明による乳酸菌は、少なくとも1つ以上のLactobacillus crispatus、特にLactobacillus crispatus LB912R(DSM 34095)を含み得る。
【0050】
好ましくは、本発明による乳酸菌は、少なくとも1つ以上のLactobacillus crispatus、特にLactobacillus crispatus LB919R(DSM 34097)を含み得る。
【0051】
好ましくは、本発明による乳酸菌は、少なくとも1つ以上のLactobacillus gasseri、特にLactobacillus gasseri LB905R(DSM 34094)を含み得る。
【0052】
好ましくは、本発明による乳酸菌は、少なくとも1つ以上のLactobacillus jensenii、特にLactobacillus jensenii LB918R(DSM 34096)を含み得る。
【0053】
Lactiplantibacillus plantarumは、以前はLactobacillus plantarumと命名されていたものであり、Lactiplantibacillus属のメンバーであり、多くの発酵食品および嫌気性植物に一般的に見られる。
【0054】
本発明は、膣感染症を予防および/または処置するための医薬組成物を調製するための本発明による1つ以上の乳酸菌の使用に関する。
【0055】
さらに、本発明は、尿路感染症を予防および/または処置するための医薬組成物を調製するための本発明による1つ以上の乳酸菌の使用に関する。
【0056】
本発明は、STIを予防および/または処置するための医薬組成物を調製するための本発明による1つ以上の乳酸菌の使用にも関する。
【0057】
さらに、本発明は、機能不全の膣微生物叢を回復させるための医薬組成物を調製するための本発明による1つ以上の乳酸菌の使用に関する。
【0058】
「機能不全の微生物叢」または「機能不全の膣微生物叢」は、Nugentスコア、またはpH、Gardnerella vaginalis、Bacteroides種もしくはCandida種からなる混合フローラに対するLactobacillus種の存在を評価することによって、もしくはpH、糸玉状細胞、白色分泌物およびKOHと混合した後のアミンの臭気の存在を評価することを含む細菌性膣炎のAmsel基準を使用することによって行われる診断のいずれかによって決定することができる。
【0059】
本発明による1つ以上の乳酸菌は、抗生物質処置と組み合わせて機能不全の膣微生物叢を回復させるための、または抗生物質処置後に不均衡な微生物叢を回復させるための組成物を調製するために使用され得る。
【0060】
本発明の一実施形態は、妊孕性を改善するための組成物を調製するための、および/または早産のリスクを低減するための組成物を調製するための、本発明による1つ以上の乳酸菌の使用に関する。
【0061】
本発明による組成物は、医療機器に配合することができる。したがって、本発明による1つ以上の乳酸菌を含む本発明による組成物は、医療機器として使用することができる。
【0062】
本発明による組成物は、有効量の本発明による乳酸菌をヒトまたは動物に投与することを含む、ヒトまたは動物の粘膜における微生物不均衡の処置または予防に使用することができる。
【0063】
本発明のさらに別の態様は、健康な女性の膣微生物叢から乳酸菌を単離する方法であって、以下の工程:
1.健康な膣微生物叢を有する女性から乳酸菌を単離する工程
2.Garnerella vaginalisおよび/またはCandida albicansのいずれかに対して抗菌活性を有する単離された細菌を選択する工程
3.選択された単離された細菌の少なくとも1つを含む組成物を調製する工程、ならびに
4.本発明に従って調製された組成物を使用する工程
を含む、方法である。
【0064】
「乳酸菌」という用語は、Lactobacillaceae科、Aerococcaceae科、Bifidobacteriaceae科、Carnobacteriaceae科、Enterococcaceae科、Leuconostocaceae科およびStreptococcaceae科からの種を含む。これらの乳酸菌は非病原性であると考えられ、胃腸内フローラを改善するため、および胃腸症状の処置において一般にプロバイオティクス細菌として使用される。「プロバイオティクス」は、適切な量で投与または消費されるときに宿主に健康上の利益を与える、生きた微生物として定義され得る。
【0065】
本発明による乳酸菌は、生存または非生存形態で提供され得る。
【0066】
本発明による非生存細胞は、溶解物として、画分として、発酵物として、代謝産物として、抽出物として、誘導体として、類似体として、ポストバイオティクスとして、パラプロバイオティクスとして、または本発明によるLactobacillus crispatus、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus jensenii、Pediococcus株もしくはLactiplantibacillus株の1つの変異体として提供され得る。好ましくは、本発明によるLactobacillus crispatusである。
【0067】
「溶解物」、「誘導体」、「類似体」、「画分」、「ポストバイオティクス」、「パラプロバイオティクス」または「抽出物」は、死んだまたは死滅した乳酸菌から得ることができる。これらの溶解物、画分、誘導体、類似体、および抽出物は、好ましくは、病原性細菌と結合または共凝集することができ、それによって病原体の増殖および/またはバイオフィルム形成を予防することができるという特性を有し、「溶解物」および「抽出物」という用語は、特に、水性媒体中の本発明による微生物の細胞および/または代謝産物の溶液または懸濁液を指し、例えば、DNA、RNA、タンパク質、ペプチド、脂質、炭水化物、細胞壁物質などの巨大分子、ならびに細胞破片を含む。溶解物は、好ましくは、共凝集のための結合受容体を含む細胞壁または細胞壁構成成分を含む。溶解物を製造する方法は、当業者に十分に周知であり、例えば、フレンチプレスまたは酵素溶解、ガラスビーズまたは鉄ビーズを有するボールミルの使用を含む。細胞は、酵素的、物理的または化学的方法によって破壊することができる。酵素細胞溶解の例としては、個々の酵素ならびに酵素カクテル、例えばプロテアーゼ、プロテイナーゼK、リパーゼ、グリコシダーゼが挙げられ得る。化学的溶解は、イオノフォア、界面活性剤、例えばSDS、酸または塩基によって誘導され得る。物理的方法は、高圧、例えばフレンチプレス、オスモル濃度、温度、または交互に高温および低温とすることを使用することによって実施することもできる。さらに、化学的、物理的および酵素的方法を当然組み合わせることができる。「抽出物」は、これらの細胞成分、代謝産物、発酵物、または細胞画分のいずれかであり得る。
【0068】
別の態様では、本教示は、生存微生物を実質的に含まない組成物を開示する。組成物は、溶解物または発酵物の形態の死細胞を含む細胞材料を含むことができる。本発明の一態様では、組成物は、発酵からの上清およびさらなる機能的効果を有する細胞材料を含む。本発明の一態様では、細胞材料は、標的病原体と共凝集するか、または標的病原体を阻害することができる。
【0069】
本発明による微生物は、好ましくは単離または精製形態であり、「単離」という用語は、特に乳酸菌がそれらの天然培地を含むそれらの培地に由来することを意味する。
【0070】
本発明の一実施形態は、病原性微生物の増殖の処置、緩和、抑制、予防、および/または防止に使用するための、本発明による生きた乳酸菌を含む組成物に関する。
【0071】
好ましくは、本発明は、ヒトまたは動物における1つ以上の病原性細菌感染症の処置、緩和、抑制、予防および/または防止に使用するための本明細書で定義される組成物を提供し得る。
【0072】
好ましくは、本発明は、ヒトまたは動物における1つ以上の真菌または細菌感染症の処置、緩和、抑制、予防および/または防止に使用するための本明細書で定義される組成物を提供し得る。より好ましくは、本発明は、Gardnerella vaginalis、Candida albicansまたはその両方から選択される病原性微生物の増殖の処置、緩和、抑制、予防および/または防止に使用するための本明細書で定義される組成物を提供し得る。
【0073】
本発明の一実施形態では、増殖の処置、緩和、抑制、予防および/または防止は、少なくとも25%の増殖の減少として決定され得る。好ましくは、成長の減少は少なくとも50%であり得、より好ましくは成長の減少は少なくとも80%であり得、より好ましくは成長の減少は少なくとも90%であり得る。
【0074】
したがって、本発明の一態様は、受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714Rを含む組成物に関する。
【0075】
したがって、本発明の一態様は、受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912Rを含む組成物に関する。
【0076】
したがって、本発明の一態様は、受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919Rを含む組成物に関する。
【0077】
したがって、本発明の一態様は、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905Rを含む組成物に関する。
【0078】
したがって、本発明の一態様は、受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918Rを含む組成物に関する。
【0079】
本発明の一実施形態では、組成物は、1つ以上のPediococcus株(例えば、寄託受託番号DSM 33730の下で寄託されたPediococcus pentosaceus LB606R)、および/または1つ以上のLactobacillus株(好ましくはLactobacillus plantarum、例えばLactobacillus plantarum LB356R(受託番号DSM 33094の下で寄託)から選択される乳酸菌株をさらに含み得る。
【0080】
好ましくは、本発明による組成物は、受託番号DSM 33730の下で寄託されたPediococcus pentosaceus LB606Rをさらに含み得る。
【0081】
したがって、本発明の一実施形態では、本発明による組成物は、
-1つ以上のLactobacullus crispatus(好ましくは、受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R)、
-1つ以上のPediococcus株(好ましくは、寄託受託番号DSM 33730の下で寄託されたPediococcus pentosaceus LB606R)、および
-1つ以上のLactobacillus plantarum(好ましくは受託番号DSM 33094の下で寄託されたLactobacillus plantarum LB356R))
の組み合わせを含む。
【0082】
本発明の一実施形態では、組成物はバイオフィルム形成を予防または阻害する。
【0083】
本発明のさらに一実施形態では、組成物はバイオフィルム形成を予防または阻害する。特に、本発明の組成物は、1つ以上の細菌のバイオフィルム形成を予防または阻害する。より具体的には、本発明の組成物は、病原性Garnerella種のバイオフィルム形成を予防または阻害する。さらにより具体的には、本発明の組成物は、Garnerella vaginalisのバイオフィルム形成を防止または阻害する。
【0084】
本文脈において、バイオフィルム形成の阻害は、少なくとも25%のバイオフィルム阻害、例えば少なくとも50%のバイオフィルム阻害、例えば少なくとも75%のバイオフィルム阻害、例えば少なくとも85%のバイオフィルム阻害、例えば少なくとも90%のバイオフィルム阻害、例えば少なくとも95%のバイオフィルム阻害、例えば少なくとも98%のバイオフィルム阻害であり得る。
【0085】
「予防する」という用語は当技術分野で認識され、局所再発などの状態に関連して使用される場合、当技術分野で十分に理解され、組成物を受けていない対象と比較して、対象における医学的状態の症状の頻度を減少させるか、またはその発症を遅延させる組成物の投与を含む。したがって、感染の予防には、例えば、予防的処置を受けている患者の集団における検出可能な病原性微生物の数を未処置の対照集団と比較して減少させること、および/または未処置の対照集団と比較して、例えば統計的および/または臨床的に有意な量だけ、処置集団における検出可能な病変の出現を遅延させることが含まれる。
【0086】
本明細書で使用される「阻害」または「阻害する」という用語は、望ましくない微生物などの微生物の死滅または当該微生物の増殖の制御を意味する。微生物の初期付着の阻害またはバイオフィルム形成微生物の増殖阻害によるバイオフィルムのさらなる形成の阻害であり得るバイオフィルム形成の阻害を含む。
【0087】
本発明の発明者らは、Lactobacillus crispatus(LB714R/DSM 33732)、Lactobacillus gasseri(LB905R/DSM 34094)、Lactobacillus crispatus(LB912R/DSM 34095)、Lactobacillus jensenii(LB918R/DSM 34096)、Lactobacillus crispatus(LB919R/DSM 34097)、Pediococcus pentosaceus(LB606R/DSM 33730)および Lactobacillus plantarum(LB356R/DSM 33094)の特定の株を同定および単離し、バイオフィルム形成の阻害もしくは予防のような、および/または機能不全の膣微生物叢の処置のための、特定の株によって提供される1つ以上の特定の活性を同定した。
【0088】
本明細書で使用される場合、「処置する」または「処置」という用語は、対象の状態を改善または安定化する方法で、状態の症状、臨床徴候、および基礎病理を逆転、低減、または停止することを含む。
【0089】
本明細書で使用される場合、および当技術分野でよく理解されているように、「処置」は、臨床結果を含む有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチである。この主題の目的のために、有益なまたは所望の臨床結果には、1つ以上の症状の緩和もしくは改善、疾患の程度の縮小、疾患の安定化(すなわち、悪化しない)状態、疾患の予防、疾患の進行の遅延もしくは遅延、および/または疾患状態の改善もしくは軽減が含まれるが、これらに限定されない。
【0090】
減少は、合併症または症状の重症度の10%の減少、合併症または症状の重症度の20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%または100%の減少であり得る。
【0091】
本発明の一実施形態では、本発明による組成物は、表面上のバイオフィルム形成を阻害または予防するために使用され得る。好ましくは、表面は、病院内の表面、および/または医療機器の表面であってもよい。
【0092】
本発明のさらに一実施形態では、本発明による組成物は、ヒトまたは動物の身体内または身体上のバイオフィルム形成を阻害するために使用され得る。
【0093】
本文脈において、バイオフィルム形成は、1つ以上の微生物によって産生され得る。特に、1つ以上の微生物は細菌であり得る。1つ以上の細菌は、1つ以上の病原性Gardnerella種であり得る。1つ以上の病原性ガードネレラ種は、1つ以上のGardnerella vaginalisであり得る。
【0094】
本発明の一実施形態では、組成物は、経口使用、局所使用、肛門での使用または生殖器での使用のために製剤化され得る。
【0095】
好ましくは、本発明による組成物は、経口または生殖器での使用のために製剤化される。さらにより好ましくは、本発明による組成物は、生殖器での使用のために製剤化される。
【0096】
本発明の一実施形態では、生殖器使用は、男性生殖器での使用、または女性生殖器での使用、例えば膣および/または泌尿器での使用であり得る。
【0097】
本発明の組成物の局所使用中、組成物は、ヒトまたは動物の皮膚、粘膜、または爪に使用され得る。
【0098】
組成物は、懸濁液、スプレー、ゲル、クリーム、ローション、粉末、カプセル、軟膏、油、洗浄液用溶液、卵形剤、膣用インサート、坐剤、ロゼンジ、錠剤、マイクロカプセル化製品、または食品サプリメントもしくは食品の形態に製剤化されてもよい。当業者は、そのような製剤を調製する方法を知っているであろう。
【0099】
本発明の一実施形態では、1つ以上のLactobacillus株、特に1つ以上のLactobacillus株(例えば、受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R、受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919R、受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R、受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918R)、および場合により、1つ以上のPediococcus株(例えば寄託受託番号DSM 33730で寄託されたPediococcus pentosaceus LB606R)、および/または1つ以上のLactobacillus plantarum(例えば、受託番号DSM 33094の下で寄託されたLactobacillus plantarum LB356R)は、生存細胞として、非生存細胞として、溶解物として、画分として、発酵物として、代謝産物として、抽出物として、誘導体として、類似体として、または本発明によるPediococcus株もしくはLactiplantibacillus株の1つの変異体として提供され得る。
【0100】
好ましくは、1つ以上のLactobacillus株(例えば、受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R、受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919R、受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R、受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918R)、および場合により、1つ以上のPediococcus株(例えば寄託受託番号DSM 33730で寄託されたPediococcus pentosaceus LB606R)、および/または1つ以上のLactobacillus plantarum(例えば、受託番号DSM 33094の下で寄託されたLactobacillus plantarum LB356R)は、生存細胞、非生存細胞、細胞画分または溶解物として提供され得る。
【0101】
本発明によるLactobacillus株、Pediococcus株および/またはLactiplantibacillus株のいずれかの変異体は、以下のいずれかの株:受託番号DSM 33732の下でGermena Collection of Microorganisms and Cell Culturesに寄託されたLactobacillus crispatus LB714R、受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919R、受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R、受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918R、受託番号DSM 33730の下で寄託されたPediococcus pentosaceus LB 606または受託番号DSM 33094の下で寄託されたLactobacillus plantarum LB356Rの1つの変異体を得る方法であって、寄託された株を出発材料として使用する工程と突然変異誘発を適用する工程とを含み、得られた突然変異体が、プロバイオティクスおよび/もしくは抗細菌および/もしくは抗真菌および/もしくは抗菌特性、ならびに/または細菌性および/もしくは真菌性膣炎を阻害、予防もしくは処置する能力を保持または増強する方法によって、提供され得る。
【0102】
本発明の一実施形態では、組成物は、1つ以上のプレバイオティクスをさらに含む。
【0103】
「プレバイオティクス」は、特定の微生物の増殖を増加させる非消化性食品成分である。「シンバイオティクス」は、少なくとも1つのプロバイオティクスおよび少なくとも1つのプレバイオティクスを含む組成物である。そのような組成物は、有益な細菌(例えば、プロバイオティクス)の増殖を促進すると理解される。したがって、強力なシンバイオティクスは、プロバイオティクス細菌の特定の株と慎重に選択されたプレバイオティクスとの組み合わせをベースとする。それらは、ヒトまたは動物に重要な健康上の利益をもたらすことができる。
【0104】
プレバイオティクスは、宿主の福祉に寄与する共生微生物(例えば、細菌および真菌)の増殖および/または活性を誘導する化学製品を指す。プレバイオティクスは、宿主によって消化されないかまたは部分的に消化されず、宿主にコロニー形成する有利な細菌の増殖および/または活性を刺激する、非消化性炭水化物である。
【0105】
プレバイオティクスとして使用されるいくつかのオリゴ糖は、フルクトオリゴ糖(FOS)、キシロオリゴ糖(XOS)、ポリデキストロース、ペクチン、ガラクトオリゴ糖(GOS)またはヒトミルクオリゴ糖(HMO)である。さらに、ラクツロースまたはラクトースのような二糖類、タガトースのようないくつかの単糖類もプレバイオティクスとして使用することができる。
【0106】
本発明の一実施形態では、プロバイオティクス微生物(例えば、本発明による乳酸菌)および少なくとももう1つの活性成分を含み、場合によりプレバイオティクス微生物と組み合わせた組成物を提供してもよい。
【0107】
他の活性成分(または他の成分)は、決して限定されない。
【0108】
好ましい態様では、少なくとも1つのプレバイオティクス化合物が、本発明の組成物中に、すなわち他の成分として含まれる。非常に広い概念では、プレバイオティクスは、プロバイオティクスによって代謝され得る全ての化合物である。好ましくは、プレバイオティクスは、ヒトまたは動物によって消化されないか、またはほとんど消化されない。プレバイオティクスは当技術分野で周知であり、本発明で使用される場合、プレバイオティクス自体に特に制限はない。しかしながら、好ましい実施形態では、組成物中の少なくとも1つのプレバイオティクス製品は、以下の化合物および組成物から選択される:非消化性炭水化物、β-グルカン、マンナンオリゴ糖、イヌリン、オリゴフルクトース、ヒトミルクオリゴ糖(HMO)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、ラクツロース、ラクトスクロース、ガラクトトリオース、フルクトオリゴ糖(FOS)、セロビオース、セロデキストリン、シロデキストリン(cylodextrins)、マルチトール、ラクチトール、グリコシルスクロース。場合により、マンナンオリゴ糖および/またはイヌリンが好ましい場合がある。
【0109】
HMOは、ラクト-N-テトラオース、ラクト-N-フコペンタオース、ラクト-N-トリオース、3´-シアリルラクトース、ラクト-N-ネオフコペンタオース、シアル酸、L-フコース、2-フコシルラクトース、6´-シアリルラクトース、ラクト-N-ネオテトラオースおよび3-フコシルラクトースを含む。
【0110】
D-フコースおよびL-フコースは、皮膚の自然防御を強化し、表皮免疫防御を刺激し、ならびに/または皮膚自己免疫疾患を予防および/もしくは処置する。本発明の好ましい一実施形態では、組成物はD-またはL-フコースを含む。
【0111】
本発明の一実施形態では、組成物は、1mM~1000mMの範囲、例えば10mM~500mMの範囲、例えば25mM~250mMの範囲の濃度でL-フコースをさらに含む。
【0112】
好ましくは、本発明による組成物は、グラム当たり103~1013コロニー形成単位の本発明による乳酸菌を含む。より具体的には、グラム当たり106~1012コロニー形成単位の乳酸菌を含む医薬組成物。より具体的には、グラム当たり107~1011コロニー形成単位の乳酸菌を含む医薬組成物。
【0113】
微生物の数はコロニー形成単位CFU/mlとして測定され得る。
【0114】
本発明の一実施形態では、組成物は医薬組成物であり得る。好ましくは、本発明による1つ以上の乳酸菌を薬学的に許容される担体および/または希釈剤と共に含む医薬組成物。
【0115】
医薬組成物は、懸濁液、スプレー、ゲル、クリーム、ローション、粉末、カプセル、油、洗浄液用溶液、卵形剤、膣用インサート、坐剤、ロゼンジ、錠剤、マイクロカプセル化製品の形態であってもよい。
【0116】
組成物には、治療有効量の乳酸菌、特に1つ以上のLactobacillus crispatus(特に、受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R、受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919R、または受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R)、1つ以上のLactobacillus gasseri(特に、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R)、1つ以上のLactobacillus jensenii(特に、受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918R)が提供され得る。
【0117】
本発明の文脈において、「処置有効量」または「有効量」という用語は、所望の投与レジメンの一部として投与された場合に、処置される障害もしくは状態または美容目的のための臨床的に許容される基準に従って、例えば任意の医療処置に適用可能な合理的な利益リスク比で、症状を緩和する、状態を改善する、または疾患状態の発症を遅らせる組成物または製剤中の化合物の量を指し得る。
【0118】
実際の使用のために、本発明の微生物は、ゲル、クリーム、カプセル、錠剤、洗浄液用溶液、小袋、任意の食品などの適切な投与形態で製剤化され得る。単位用量は、各単一株の10~1013個の細胞を含み得、好ましい用量は単位用量あたり105個の細胞を超える。より好ましい投与量は、単位投与量当たり106個の細胞を超える。
【0119】
細菌培養物は、フリーズドライ、凍結乾燥またはマイクロカプセル化形態で安定化され得、従来の方法に従って調製され得る。
【0120】
洗浄および灌注のための水性製剤の調製には、二相系を使用することができる。例えば、使用前にボトルに収容された適切な液体担体に溶解される、凍結乾燥微生物を収容するリザーバを備えた小型ボトル。
【0121】
クリームおよびゲルの調製のために、乳酸菌は製剤中で安定化される。水分活性が低いか、またはマイクロカプセル化形態である製剤が好ましい。
【0122】
本発明のさらに一実施形態では、組成物は膣マイクロバイオーム移植片であり得る。
【0123】
膣マイクロバイオーム移植は、健康な女性から不健康な膣微生物叢または機能不全の膣微生物叢への微生物叢の移植であり得る。したがって、本発明の一実施形態では、膣マイクロバイオーム移植片は、健康な女性から、特に健康な女性の膣から得ることができ、別の女性に移され、特に別の女性、好ましくは不健康な膣微生物叢または機能不全の膣微生物叢を有する別の女性の膣に移される。
【0124】
本発明の一実施形態では、膣マイクロバイオーム移植片は、受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R、受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919R、受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R、受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918Rを特に含む、少なくとも1つのLactobacillus株を含み得る。
【0125】
膣マイクロバイオーム移植片は、1つ以上のPediococcus株(例えば、寄託受託番号DSM 33730の下で寄託されたPediococcus pentosaceus LB606R)から選択される乳酸菌株をさらに含み得る。
【0126】
膣マイクロバイオーム移植片は、1つ以上のLactobacillus plantarum(例えば、寄託受託番号DSM 33731の下で寄託されたLactiplantibacillus plantarum LB679R、受託番号DSM 33094の下で寄託されたLactobacillus plantarum LB356R、受託番号DSM 32996の下で寄託されたLactobacillus plantarum LB244R、およびこの任意の組み合わせ)から選択される乳酸菌株をさらに含み得る。
【0127】
好ましくは、膣マイクロバイオーム移植片は、懸濁液、スプレー、ゲル、クリーム、ローション、粉末、カプセル、油、洗浄液用溶液、卵形剤、膣用インサート、坐剤、ロゼンジ、錠剤、マイクロカプセル化製品として、または食品サプリメントもしくは食品の形態で製剤化され得る。
【0128】
本発明の一実施形態では、本発明による組成物および/または膣マイクロバイオーム移植片は、抗生物質化合物を含まない。
【0129】
抗生物質化合物は、そのような化合物が健康な細菌および病原性細菌の両方を非特異的に死滅させる可能性があり、したがって所望の健康な微生物叢も破壊するので、本発明による組成物および/または膣マイクロバイオーム移植片に含まれないことが好ましい場合がある。
【0130】
抗生物質化合物は、細菌の増殖を阻害することによって、または細菌を死滅させることによって、細菌の増殖に対して活性である抗菌物質の一種である。
【0131】
本発明による膣マイクロバイオーム移植片は、膣マイクロバイオーム移植片を調製する方法であって、女性(例えば、ヒト女性または動物の雌)からマイクロバイオーム試料を得る工程、1つ以上のLactobacillus crispatus(特に、受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R、受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919R、または受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912Rを含む)、1つ以上のLactobacillus gasseri(特に、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R)または1つ以上のLactobacillus jensenii(特に、受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918R)などの1つ以上のLactobacillus種を含むマイクロバイオーム試料から画分を単離する工程、増殖画分を提供する1つ以上のLactobacillus種を含む画分を増殖させる工程、および増殖画分を懸濁液、スプレー、ゲル、クリーム、ローション、粉末、カプセル、軟膏、油、洗浄液用溶液、卵形剤、膣インサート、坐剤、ロゼンジ、錠剤、マイクロカプセル化製品に製剤化する工程とを含む方法によって調製することができる。
【0132】
本発明の一実施形態では、マイクロバイオーム試料を得ることができる女性は、好ましくは妊婦である。好ましくは、妊婦は、マイクロバイオーム試料を得ることができる場合、出産から7ヶ月以下、例えば5ヶ月以下、例えば3ヶ月以下、例えば1ヶ月以下、例えば20日以下、例えば10日以下、例えば5日以下である。
【0133】
本発明は、女性における機能不全の微生物叢を処置または予防するための方法であって、以下の工程:
1.健康な膣微生物叢を有する女性(ヒト女性など)の膣から乳酸菌を単離する工程、
2.病原性微生物に対して抗菌活性を有する単離された細菌を選択する工程、
3.選択された単離された細菌の1つ以上を含む組成物を調製する工程、および
4.機能不全の膣微生物叢を有する女性の膣に組成物を移植する工程
を含む、方法に関する。
【0134】
さらに、本発明は、第1の乳酸菌株および第2の乳酸菌株の組み合わせを含む(または本質的にそれらからなる)組成物に関し、第1の乳酸菌株はGardnerella vaginalisの阻害を特徴とし得、第2の乳酸菌株はCandida albicansの阻害を特徴とし得る。
【0135】
本発明の一実施形態では、第1の株と第2の株の組み合わせを含む組成物は、膣マイクロバイオーム移植に使用される膣マイクロバイオーム移植片であり得る。
【0136】
本発明はまた、膣移植用の1つ以上の乳酸菌株を選択する方法であって、Gardnerella vaginalisの阻害を特徴とする少なくとも1つの第1の乳酸菌株を選択する工程、およびCandida albicansの阻害を特徴とする少なくとも1つの第2の株を選択する工程を含む、方法に関する。
【0137】
第1乳酸菌株および第2乳酸菌株は、同一の乳酸菌株であってもよいし、異なる乳酸菌株であってもよい。好ましくは、第1の乳酸菌株および第2の乳酸菌株は、異なる乳酸菌株であり得る。
【0138】
第1の株は、1つ以上の乳酸菌を含み得る(または本質的にそれからなり得る)。好ましくは、1つ以上の第1の株の乳酸菌は、1つ以上のLactobacullus株(好ましくは、受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R、受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919R、受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R、受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918R)、1つ以上のPediococcus株(好ましくは、寄託受託番号DSM 33730の下で寄託されたPediococcus pentosaceus LB606R)、1つ以上のLactobacillus株(好ましくはLactobacillus plantarum、例えばLactobacillus plantarum LB356R(受託番号DSM 33094の下で寄託)、Lactobacillus plantarum LB244R(受託番号DSM 32996の下で寄託)、またはこれらの任意の組み合わせから選択され得る。第1の株は、好ましくは、1つ以上のLactobacullus株、好ましくはLactobacillus crispatus(例えば、受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R、受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R、または受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919R)、Lactobacillus gasseri(例えば、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R)またはLactobacillus jensenii(受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918R)から選択される1つ以上の乳酸菌を含み得る(または本質的にそれらからなり得る)。
【0139】
第2の株は、1つ以上の乳酸菌を含み得る(または本質的にそれからなり得る)。好ましくは、1つ以上の第2の株の乳酸菌は、1つ以上のPediococcus株(好ましくは、寄託受託番号DSM 33730の下で寄託されたPediococcus pentosaceus LB606R)、1つ以上のLactobacillus株(好ましくはLactobacillus plantarum、例えばLactobacillus plantarum LB356R(受託番号DSM 33094の下で寄託)、またはこれらの任意の組み合わせから選択され得る。
【0140】
第2の株は、好ましくは、1つ以上のPediococcus株、特に寄託受託番号DSM 33730の下で寄託されたPediococcus pentosaceus LB606Rから選択される1つ以上の乳酸菌を含み得る(または本質的にそれらからなり得る)。
【0141】
好ましくは、Gardnerella vaginalisおよび/またはCandida albicansの阻害は、本明細書に記載されるバイオフィルム形成の阻害減少によって決定され得る。
【0142】
本発明はまた、第1の乳酸菌株および第2の乳酸菌株の組み合わせを含む組成物を提供するための方法であって、
(a)Gardnerella vaginalisの阻害を特徴とする少なくとも1つの第1の乳酸菌株を選択する工程、
(b)Candida albicansの阻害を特徴とする少なくとも1つの第2の乳酸菌株を選択する工程、および
(c)工程(a)で得られた選択された少なくとも1つの第1の乳酸菌株を工程(b)で得られた選択された少なくとも1つの第2の乳酸菌株と混合し、第1の乳酸菌株と第2の乳酸菌株の組み合わせを含む組成物を提供する工程
を含む、方法に関する。
【0143】
本発明の一実施形態では、単離された細菌が上記方法の抗菌活性工程2を示す病原性微生物は、Gardnerella vaginalis、Candida albicansまたはその両方から選択され得る。
【0144】
本発明の好ましい実施形態は、受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R、受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919R、受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R、受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918Rを特に含む、Lactobacillus種から選択される単離された細菌株に関する。
【0145】
本発明による微生物は、好ましくは単離または精製形態であり得、「単離」という用語は、例えば、特に乳酸菌がそれらの天然培地を含むそれらの培地に由来することを意味する。「精製」という用語は、絶対純度に限定されない。
【0146】
本発明の好ましい実施形態は、受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R、受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919R、受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R、受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918Rを特に含むLactobacillus種から選択される単離された細菌株であって、抗菌活性を示す単離された細菌株に関する。
【0147】
抗菌活性は、ヒトもしくは動物における不健康または機能不全の膣微生物叢を正常化すること、および/または本明細書で定義される表面上のバイオフィルム形成の阻害であり得る。特に、受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R、受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919R、受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R、受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918Rを特に含むLactobacillus種から選択される単離された細菌株は、1つ以上の細菌のバイオフィルム形成を阻害し得る。より具体的には、単離された株は、病原性Gardnerella種のバイオフィルム形成を阻害し得る。さらにより具体的には、単離された株はGardnerella vaginalisのバイオフィルム形成を阻害し得る。
【0148】
抗菌活性は、性感染症(STI)、膣感染症(細菌性膣炎など)または子宮頸部感染症(淋病またはクラミジアなど)の処置を含み得る。細菌性膣炎であっても、性感染症と直接みなされない場合があり、性感染症の発生率を増加させる場合があり、細菌性膣炎の処置は、少なくとも性感染症の間接的な処置とみなされる場合がある。
【0149】
本発明の好ましい実施形態は、医薬品として使用するための、Lactobacillus crispatus種から選択される1つ以上の細菌株を含む組成物に関する。
【0150】
本発明のさらに好ましい実施形態は、医薬品として使用するためのLactobacillus gasseri種から選択される1つ以上の細菌株を含む組成物に関する。
【0151】
本発明のさらに好ましい実施形態では、医薬品として使用するためのLactobacillus jensenii種から選択される1つ以上の細菌株を含む組成物に関する。
【0152】
本発明の一実施形態は、医薬品として使用するための、受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R、受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919R、受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R、または受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918Rを含む組成物に関する。
【0153】
本発明のなおさらなる実施形態では、医薬品として使用するための、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus gasseriまたはLactobacillus jenseniiから選択される1つ以上の細菌株から本質的になる組成物。
【0154】
好ましくは、医薬品として使用するための、以下の株、受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R、受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919R、受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R、または受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918Rの少なくとも1つから本質的になる組成物。
【0155】
本発明の文脈において、「から本質的になる」という用語は、特定の特徴または工程、および言及されておらず、特許請求される発明の基本的かつ新たな特徴に実質的に影響を及ぼさない特徴または工程に対する特許請求の範囲の限定に関する。
【0156】
本発明の好ましい実施形態は、ヒトまたは動物における膣感染症の予防および/または処置に使用するための、1つ以上のLactobacillus crispatusから選択される細菌株を含む組成物に関する。
【0157】
本発明の好ましい実施形態は、ヒトまたは動物における膣感染症の予防および/または処置に使用するための、1つ以上のLactobacillus gasseriから選択される細菌株を含む組成物に関する。
【0158】
本発明の好ましい実施形態は、ヒトまたは動物における膣感染症の予防および/または処置に使用するための、1つ以上のLactobacillus jenseniiから選択される細菌株を含む組成物に関する。
【0159】
本発明による組成物は、1つ以上のPediococcus株および/または1つ以上のLactiplantibacillus株から選択される1つ以上の細菌株をさらに補充することができる。1つ以上のLactobacillus crispatus、1つ以上のPediococcus株および/または1つ以上のLactiplantibacillus株とのこの組み合わせは、ヒトまたは動物における膣感染症の予防および/または処置における組成物の効果をさらに改善し得る。
【0160】
本発明による組成物は、膣のpH値を低下させ得る。本発明の一実施形態では、膣のpHは、pH6以下のpH値、例えばpH5以下のpH値、例えばpH4.5以下のpH値、例えばpH4以下のpH値、例えばpH3~5の範囲、例えばpH3.5~4.5の範囲のpH値に低下する。
【0161】
膣感染症は、細菌性膣炎、膣の微生物の不均衡、尿路感染症、妊孕性の低下、および/または早産のリスクの増加を含むか、またはこれらを引き起こし得る。
【0162】
本発明の一実施形態は、細菌性膣炎の予防および/または処置に使用するための組成物に関する。
【0163】
本発明のさらなる実施形態は、膣の微生物不均衡の予防および/または処置に使用するための組成物に関する。
【0164】
さらに、本発明の一実施形態は、尿路感染症の予防および/または処置に使用するための組成物に関する。
【0165】
本発明の好ましい実施形態は、ヒトまたは動物の妊孕性の改善に使用するための、1つ以上のLactobacillus crispatus、1つ以上のLactobacillus gasseriまたは1つ以上のLactobacillus jenseniiから選択される細菌株を含む組成物に関する。
【0166】
本発明の更に好ましい実施形態は、ヒトまたは動物の早産のリスクを低減するのに使用するための、1つ以上のLactobacillus crispatus、1つ以上のLactobacillus gasseriまたは1つ以上のLactobacillus jenseniiから選択される細菌株を含む組成物に関する。
【0167】
本発明の一実施形態では、1つ以上のLactobacillus株(特に、受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R、受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919R、受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R、受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918R)、1つ以上のPediococcus株(特に、寄託受託番号DSM 33730の下で寄託されたPediococcus pentosaceus LB606R)および/または1つ以上のLactobacillus plantarum(特に、受託番号DSM 33094の下で寄託されたLactobacillus plantarum LB356R、受託番号DSM 32996の下で寄託されたLactobacillus plantarum LB244Rおよび/または)を含む組成物は、ヒトもしくは動物の妊孕性の改善および/またはヒトもしくは動物の早産のリスクを低減するのに使用され得る。
【0168】
好ましくは、ヒトまたは動物における細菌性膣炎の予防および/または処置は、細菌性膣炎の膣予防および/もしくは処置、細菌性膣炎の口腔予防および/もしくは処置、ならびに/または細菌性膣炎の腸内予防および/もしくは処置であり得る。
【0169】
本発明は、ヒトまたは動物における膣感染症の予防および/または処置に使用するための、1つ以上のLactobacillus株(特に、受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R、受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919R、受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R、受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918R)および1つ以上のPediococcus株(特に、寄託受託番号DSM 33730の下で寄託されたPediococcus pentosaceus LB606R)または1つ以上のLactobacillus plantarum(特に、受託番号DSM 33094の下で寄託されたLactobacillus plantarum LB356R、および/または受託番号DSM 32996の下で寄託されたLactobacillus plantarum LB244R)から本質的になる組成物に関し得る。
【0170】
本発明の好ましい実施形態は、バイオフィルム形成の予防、阻害または処置に使用するための、1つ以上のLactobacillus株(特に、受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R、受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919R、受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R、受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918R)を含む組成物に関する。
【0171】
バイオフィルム形成は、細菌バイオフィルム形成または酵母もしくは真菌バイオフィルム形成、例えば病原性Garnerella種バイオフィルム形成、特にGardnerella vaginalisバイオフィルム形成であり得る。
【0172】
本発明の一実施形態では、本発明による組成物は、細菌バイオフィルム形成、真菌バイオフィルム形成および/または酵母バイオフィルム形成の予防、阻害または処置に使用するための、1つ以上のPediococcus株(特に、寄託受託番号DSM 33730の下で寄託されたPediococcus pentosaceus LB606R)または1つ以上のLactobacillus plantarum(特に、受託番号DSM 33094の下で寄託されたLactobacillus plantarum LB356R、および/または受託番号DSM 32996の下で寄託されたLactobacillus plantarum LB244R)と組み合わせた、本発明による1つ以上のLactobacillus株(特に、受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R、受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919R、受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R、受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918R)を含み得る。
【0173】
そのような酵母バイオフィルム形成は、1つ以上の病原性Candida種、特にCandida albicansによって提供される酵母バイオフィルム形成であり得る。
【0174】
本発明による組成物は、場合により1つ以上のPediococcus株(特に、寄託受託番号DSM 33730の下で寄託されたPediococcus pentosaceus LB606R)または1つ以上のLactobacillus plantarum(特に、受託番号DSM 33094の下で寄託されたLactobacillus plantarum LB356R、および/または受託番号DSM 32996の下で寄託されたLactobacillus plantarum LB244R)と組み合わせた、本発明による1つ以上のLactobacillus株(特に、受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R、受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919R、受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R、受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918R)から本質的になり得る。
【0175】
本発明の一実施形態では、組成物は、Lactobacillus crispatusに加えて、細菌、酵母またはカビからなる群から選択される少なくとも1つのさらなるプロバイオティクス微生物を含む。
【0176】
少なくとも1つのさらなるプロバイオティクス微生物は、Bifidobacterium lactis DSM10140、B.lactis LKM512、B.lactis DSM 20451、Bifidobacterium bifidum BB-225、Bifidobacterium adolescentis BB-102、Bifidobacterium breve BB-308、財団法人日本ビフィズス菌センター(Japan Bifidus Bacteria Center)からのBifidobacterium longum BB-536、欧州特許第2823822号に記載のBifidobacterium NCIMB 41675、Bifidobacterium bifidum BB-225、Bifidobacterium adolescentis BB-102、Bifidobacterium breve BB-308、Bifidobacterium lactis HN019(Howaru)、Bifidobacterium bifidum Bb-02、Bifidobacterium bifidum Bb-06、Bifidobacterium longum KC-1、Bifidobacterium longum 913、B.lactis BI-04、DuPont Nutrition Biosciences ApSから入手可能なB.lactis Bi-07、Groupe Danoneから入手可能なBifidobacterium lactis DN 173010、Chr Hansen A/Sから入手可能なBifidobacterium lactis Bb-12、Bifidobacterium breve M-16V(Morinaga)および/またはプロバイオティクス効果を有し以下のいずれかの株であり得るLactobacillus、Lactobacillus rhamnosus LGG(Chr.Hansen)、Lactobacillus gasseri LN40、L.gasseri EB01TM、L.rhamnosus PB01TM L.rhamnosus LN113、L.fermentum LN99、Lactobacillus acidophilus NCFM、Lactobacillus bulgaricus 1260、Lactobacillus paracasei Lpc-37、DuPont Nutrition Biosciences ApSから入手可能なLactobacillus rhamnosus HN001、DuPont Nutrition Biosciences ApSから入手可能なStreptococcus thermophilus 715およびStreptococcus thermophilus ST21、Lactobacillus paracasei subsp.paracasei CRL431(ATCC 55544)、Medipharm,Inc.からのLactobacillus paracasei株F-19、L.paracasei LAFTI L26((DSM Food Specialties、the Netherlands)およびL.paracasei CRL 431(Chr.Hansen)、Lactobacillus acidophilus PTA-4797、L.salivarius Ls-33 およびL.curvatus 853(DuPont Nutrition Biosciences ApS)、Lactobacillus pentosus CECT 7504、Lactobacillus plantarum 299v(Probi AB)、Lactobacillus plantarum LMC1(DSM 32252)、Lactobacillus paracasei LMC4(DSM 32254)、Lactobacillus rhamnosus LMC6(DSM 32256)、Lactobacillus rhamnosus LMC7(DSM 32257)、Lactobacillus paracasei LMC8(DSM 32258)、Lactobacillus casei ssp.rhamnosus LC705は、フィンランド特許92498、Valio Oyに記載されており、Lactobacillus rhamnosus LC705(DSM 7061)、プロピオン酸菌、例えばフィンランド特許92498、Valio Oyに詳細に記載されているPropionibacterium freudenreichii ssp.shermanii PJS(DSM 7067)、Nitrosomonas eutropha D23(ABIome)、Staphylococcus hominis株A9、C2、AMT2、AMT3、AMT4-C2、AMT4-Glおよび/もしくはAMT4-D12(全てMatrisys Bioscienceから)、Staphylococcus epidermidis 株M034、M038、All、AMT1、AMT5-C5および/もしくはAMT5-G6(全てMatrisys Bioscienceから)、L.plantarum YUN-V2.0(BCCM LMG P-29456)、L.pentosus YUN-V1.0(BCCN LMG P-29455)、L.rhamnosus YUN-S1.0(BCCM LMG P-2961)ならびに/またはこの任意の組み合わせから選択され得るが、これらに限定されない。
【0177】
あるいは、組成物は、本発明によるLactobacillus crispatusに加えて、Pediococcus pentosaceus LB606R(DSM 33730)、Lactiplantibacillus plantarum LB679R(DSM 33731)、Weisella viridescens LB10G(DSM 32906)、Lactobacillus paracasei LB113R(DSM 32907)、Lactobacillus paracasei LB116R(DSM 32908)、Lactobacillus paracasei LB28R(DSM 32994)、Lactobacillus brevis LB152G(DSM 32995)、Lactobacillus plantarum LB244R(DSM 32996)、Lactobacillus plantarum LB316R(DSM 33091)および Lactobacillus plantarum LB356R(DSM 33094)からなる群から選択される少なくとももう1つの乳酸菌を含み得る。
【0178】
好ましい実施形態では、組成物は、本発明によるLactobacillus crispatusに加えて、Pediococcus pentosaceus(特に、Pediococcus pentosaceus LB606R(DSM 33730))およびLactobacillus plantarum(特に、Lactobacillus plantarum LB356R(DSM 33094)および/または受託番号DSM 32996の下で寄託されたLactobacillus plantarum LB244R)を含む。
【0179】
本発明の好ましい実施形態は、本発明による組成物、または本発明による膣マイクロバイオーム移植片、または本発明による単離された細菌株を含む医療機器に関する。
【0180】
本発明による医療機器は、懸濁液、スプレー、ゲル、クリーム、ローション、粉末、カプセル、軟膏、油、洗浄液用溶液、卵形剤、膣用インサート、坐剤、ロゼンジ、錠剤、マイクロカプセル化製品に製剤化されてもよい。
【0181】
バイオフィルム形成は、環境中でのバイオフィルム形成を予防する方法であって、バイオフィルムがGardnerella vaginalisなどのGardnerella種(および/または場合によりcandida種)を含み、抗菌活性を有する有効量の乳酸菌を環境に投与する工程を含み、環境が、家庭、職場、実験室、工業環境、水生環境、医療機器、歯科機器、上皮細胞、粘膜である、方法によって予防することができる。
【0182】
乳酸菌は、1つ以上のLactobacillus株(特に、受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R、受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919R、受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R、受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918R)、1つ以上のPediococcus株(特に、寄託受託番号DSM 33730の下で寄託されたPediococcus pentosaceus LB606R)および/または1つ以上のLactobacillus plantarum(特に、受託番号DSM 33094の下で寄託されたLactobacillus plantarum LB356R、および/または受託番号DSM 32996の下で寄託されたLactobacillus plantarum LB244R)を含み得る。
【0183】
本発明による組成物および/または本発明の1つ以上の単離された細菌株は、外科的創傷、褥瘡性潰瘍、カテーテル、ステント、心臓循環装置、人工装具、人工装具挿入、耳鼻科、整形外科および歯科用人工装具、ねじおよび釘からの感染症、口腔感染症ならびに口腔粘膜および膣粘膜の感染症、局所感染症、耳炎、鼻洞炎、咽頭炎、喉頭炎および肺炎から生じた1つ以上の処置に使用され得る。
【0184】
本発明の一実施形態では、本発明による組成物および/または本発明の1つ以上の単離された細菌株は、抗生物質耐性微生物に対して有効であり得る。特に、抗生物質耐性感染症に対して有効である。
【0185】
本発明の一実施形態では、プロバイオティクス株は、安定化された形態の生きている単離された微生物として使用され得る。安定化のための適切な方法は当業者に公知であり、フリーズドライ、または異なる凍結保護剤を伴う凍結乾燥が挙げられる。
【0186】
本発明のさらなる実施形態では、株を生きている単離されたとして使用することができる。
【0187】
好ましくは、株は、生きている単離された安定化株として使用され得る。さらにより好ましくは、株は、凍結乾燥によって安定化された生きている単離された株として使用され得る。さらにより好ましくは、株は、凍結乾燥によって安定化され、凍結保護剤を含む生きている単離された株として使用され得る。
【0188】
生体物質の寄託
本発明による乳酸菌には、特に、German Collection for Microorganisms and Cell Culturesに2020年12月14日に寄託された以下の微生物:Lactobacillus crispatus LB714R(DSM 33732)、Pediococcus pentosaceus LB606R(DSM 33730)、Lactiplantibacillus plantarum LB679R(DSM 33731)を含む群から選択される微生物または類似体、断片、誘導体、発酵物、溶解物、変異体またはそれらの組み合わせが含まれる。2021年11月25日に寄託された以下の微生物:受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919R、受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R、受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918R。2019年4月10日に寄託されたLactobacillus plantarum LB356R(DSM 33094)、および/または2018年12月13日に寄託されたLactobacillus plantarum LB244R(DSM 32996)、
【0189】
本発明の態様の1つの文脈で説明された実施形態および特徴は、本発明の他の態様にも適用されることに留意されたい。
【0190】
本出願で引用された全ての特許および非特許文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0191】
本発明を、以下の非限定的な実施例においてさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0192】
実施例1
株スクリーニング同定
試料
本発明による微生物の同定および選択のために、新たに単離された乳酸菌(LAB)の株コレクションを確立した。少なくとも1200種の新たな乳酸菌株を単離するために、自製のザワークラウト、キムチおよび健康なヒトドナー試料(膣、口腔、肛門、皮膚)などの異なる起源の試料を収集した。
【0193】
収集物の大部分は、健康な膣微生物叢を有する女性から単離された150を超える株を含み、妊娠後期に膣から単離された健康な妊婦からの単離株が含まれる。
【0194】
試料をMan Rogosa Sharp(MRS、Sigma-Aldrich)ブロスおよび寒天上に収集し、37℃で終夜またはコロニー形成まで嫌気的に培養した。単離株を播種し、純粋なコロニーが得られるまで継代培養する。純粋なコロニーを、後の使用のために-80℃で25%グリセロールを含むMRSブロスに保存する。16S rRNAサンガー配列決定標準法を使用して株を同定した。
【0195】
実施例2
スクリーニング
【0196】
1200種を超える単離されたLAB(実施例1)を、細菌性膣炎に関連する病原体であるGardnerella vaginitisを増殖阻害する能力についてスクリーニングした。
【0197】
G.vaginalis JCP 7275カタログ番号HM-1105は、BEI resourceから入手した。HM-1105株JCP 7275を、検査で細菌性膣炎陽性となった女性から単離した(10のNugentスコア)。
【0198】
Zhang P.ら(2015)およびArena,M.P.ら(2016)に記載されている方法を使用して、増殖阻害および抗菌代謝産物についての菌叢上のスポット試験を試験した。
【0199】
G.vaginalisを、嫌気性キャンバー中、37℃で3~4日間、コロンビア寒天(sigma)上で増殖させた。コロニーを寒天プレートから回収し、ニューヨーク市(NYC)IIIブロスに接種し、スポットアッセイおよびウェル拡散アッセイに直接使用した。
【0200】
無細胞上清補充脳心臓浸出液グルコース培地(sBHIG)を用いたMICアッセイを使用した。これは、2%(w/v)のゼラチン、0.5%の酵母抽出物、0.1%のデンプンおよび1%を含有していた。HM-1105を、冷凍庫ストックから直接、sBHIG中で終夜増殖させた。
【0201】
実施例1からの細菌株単離株を、保存試料から24ウェルプレート中の2mLのMRSブロス中で培養した。
【0202】
ウェル拡散アッセイを、コロンビア寒天で行った。G.vaginalisの終夜培養物をOD 0.1に調整し、200μlを菌叢に使用した。直径0.5cmのウェルを寒天に打ち抜いた。各ウェルにおいて、50μlの乳酸菌の終夜培養物を、嫌気性条件下、37℃で終夜インキュベートした。ウェルの端部からG.vaginalisの目に見える増殖までの阻害領域を測定した。
【0203】
スポットアッセイのために、G.vaginalis HM-1105をNYCIIIブロス(ATCC培地:1685 NYC III)中で嫌気的に48~72時間培養した。LAB単離株をMRSブロス中で37℃で終夜嫌気的に増殖させた。G.vaginalisの終夜培養物の細胞密度を、NYCIIIブロス中で600nmでの光学密度(OD 600)が0.1になるように調整し、その後PBS緩衝液で10-2希釈に希釈する。200マイクロリットルの細胞懸濁液を、コロンビア寒天プレート上に広げた。G.vaginalis菌叢を含むプレートを滅菌空気中で約10~20分間乾燥のために放置した。3連の20μLの単離LABをG.vaginalis菌叢にスポットした。プレートを乾燥のために放置し、その後、37℃で48~72時間嫌気的にインキュベートした。阻害領域を、スポットの周りのクリアリング領域としてmmで測定し、直径をスポットの全直径として測定する。増殖阻害を、LABがスポット領域でG.vaginalis株を超えて増殖できることとして観察し、表2に(+)として示す。G.vaginalis株がスポットされた細菌株を超えて増殖することができる場合、増殖阻害は検出されず、表2に(-)として示す。
【0204】
2つのLAB株は、G.vaginalisに対して有意な増殖阻害効果を有し、スポットの周りに1mmを超える阻害領域を有すると同定された。これら2つの株の両方を健康な女性の膣から単離した。
【0205】
【0206】
【0207】
実施例3
共凝集
【0208】
G.vaginalis HM-1105をスクリーニングのための研究試験生物として使用した。
【0209】
共凝集を、公知の方法であるCisar,J.O.ら(1979)´´Specificity of Coaggregation Reactions between Human Oral Streptococci and Strains of Actinomyces Viscosus or Actinomyces Naeslundii.´´Infection and Immunity 24(3):742-52に従って決定した。
【0210】
全ての乳酸菌(LAB)の種菌をMRSブロス中で嫌気的に終夜増殖させ、G.vaginalisをチョコレート寒天プレート上で嫌気的に37℃で48~72日間増殖させた。コロニーをすすぎ、掻き取り、PBSに懸濁して、それぞれ0.5および1のOD(600nm)にした。
【0211】
終夜のLAB細胞試料を遠心分離(6000rpm、2分間)によって回収し、上清をペレットから除去した。ペレットを1×PBS緩衝液で2回洗浄した。
【0212】
細胞ペレットを1×PBSに再懸濁し、500μlのLAB株を24ウェルプレートに分注し、500μlのG.vaginalis PBS懸濁液を各ウェルに添加した。プレートをシェーカー(200rpm)上でインキュベートした。自発凝集および共凝集の形成を、1時間、2時間、3時間および24時間後に視覚的に観察した。
【0213】
自己凝集(自発凝集)の対照として、各株を各ウェルで1500ulの最終体積でPBSと混合した。
【0214】
G.vaginalis株とLAB株を混合することによって共凝集を決定した。各株をPBS緩衝液に懸濁し、各ウェルで1500ulの最終体積で1:1で混合した。
【0215】
プレートをシェーカー上で約200rpmにて24時間インキュベートした。共凝集形成を、1時間、2時間、3時間および24時間後に観察する。
【0216】
共凝集の形成を、以下のスケールを使用して1~5で視覚的にスコア化した:
1:凝集なし
2:目視による初期の凝集
3:<0.5mmの凝集体の形成
4:>0.5mmかつ<1mmの凝集体の形成
5:>1mmの凝集体の形成
【0217】
5つのLAB株が、G.vaginalisと共凝集することができると同定された。膣単離株(LB714R、LB918R、LB919R、LB912R、およびLB905R)は、G.vaginalisとの共凝集に優れていることが分かった。
【0218】
LB918R、LB919R、LB912RおよびLB905Rを健康な女性の膣から単離した。LB905RはG.vaginalisと強く共凝集し、スコアは4であった(
図1)。
【0219】
妊娠後期の女性の膣から単離されたLB714Rは、共凝集にとって最良の株の1つであり、スコアは5であった(
図1)。
【0220】
図1は、共凝集を、自発凝集についての対照の列の下に示す。左ウェルはOD 0.5の濃度の細胞懸濁液中のG.vaginalisであり、右ウェルはOD 1である。
【0221】
図3は、Cisar,J.O.ら(1979)に従って決定された薄灰色の列によって示されたLB714R、LB918R、LB919R、LB912R、およびLB905Rの共凝集スコアを示す。実験から、LB714R、LB918R、およびLB919Rは最大5の非常に強い共凝集スコアを示したが、LB905Rはわずかに弱く、4の共凝集スコアを示し、LB912Rは3の共凝集スコアを示したことが実証された。
【0222】
市販品からのプロバイオティクス:
製品A:3つのLactobacillus株(L.acidophilis、L.casei、L.rhamnosus)を含むVitabalansによってデンマークで入手可能なGynoLact。試験のための前培養物を、一錠をMRS培地中で分割し、37℃で終夜嫌気的にインキュベートすることによって調製した。
製品B:2つのLactobacillus株(L.gasseri EB01TMおよびL.rhamnosus PB01TM)を含む、Orkla Care A/Sによってデンマークで入手可能なVivagカプセル。試験のための前培養物を、一錠をMRS培地中で分割し、37℃で終夜嫌気的にインキュベートすることによって調製した。
製品C:3つのLactobacillus株(L.gasseri LN40、L.fermentum LN99、L.rhamnosus LN113)を含むEllen ABによってデンマークで入手可能なEllen。試験のための前培養物を、0.1 mlをMRS培地に移し、37℃で終夜嫌気的にインキュベートすることによって調製した。
【0223】
これら3つの市販品由来の株を共凝集について上記のようにLAB株として増殖させ、全て対照株として共凝集スクリーニングに含めた。しかしながら、これらの株はいずれも、G.vaginalisと共凝集する能力を有さない。
【0224】
共凝集は、生物の成長を阻害し、バイオフィルムを作成する能力に影響を及ぼし得る。したがって、LABがG.vaginalisと共凝集することができると、バイオフィルム形成を阻害し、株の病原性を減少させることができる。
【0225】
実施例4
病原体との共培養における競合
【0226】
1200種を超える単離されたLAB(実施例1)を、細菌性膣炎に関連する病原体であるGardnerella vaginitisを増殖阻害する能力についてスクリーニングした。
【0227】
G.vaginalis HM-1105は、BEIリソースから得た。
【0228】
LABとG.vaginalisとの間の競合は、以下の刊行物:Dowarah,R.ら、2018,Selection and characterization of probiotic lactic acid bacteria and its impact on growth,nutrient digestibility,health and antioxidant status in weaned piglets.PLoS ONE,13(3)、Khare,A.,&Tavazoie,S.(2015).Multifactorial Competition and Resistance in a Two-Species Bacterial System.PLoS Genetics,11(12),1-21に記載されている方法に従って決定した。
【0229】
G.vaginalisをNYCIIIブロス(ATCC培地:1685 NYC III)中で嫌気的に48時間培養した。G.vaginalisおよびLAB単離株の細胞密度を1の600nmでの光学密度(OD600)に従って調整し、遠心分離(6.000rpmで2分間)によって回収した。細胞ペレットをリン酸緩衝生理食塩水(1×PBS)で2回洗浄し、1×PBSに再懸濁する。1ミリリットルの各細胞懸濁液を50mLのNYCIIIブロス中で混合し、37℃で24時間共インキュベートし、一方、G.vaginalisの単一培養物および各LABを対照として使用する。時間0、2時間、6時間、10時間および24時間に、細胞溶液の連続希釈物を栄養寒天プレート上に播種して、形成コロニーを計数する。MRS寒天をLAB単離株に使用し、G.vaginalis選択的補助物質(Thermo Scientific CM0331およびSR0119)を含む選択培地、コロンビア寒天ベース(Merck)をG.vaginalisに使用した。
【0230】
Lactobacillus rhamnosus LGG(Chr.Hansen)を、全ての実験において対照プロバイオティクス株として使用した。
【0231】
1200株のコレクションからの20株のLABは、試験株の増殖を少なくとも50%低下させる能力として決定して、G.vaginalisの増殖を打ち負かすことができると同定された。6株が90%を超えて増殖を減少させると判定された。対照プロバイオティクスとしてのL.rhamnosus LGGは、G.vaginalis HM-1105の増殖を打ち負かすことができなかった。
【0232】
両方とも健康な女性の膣から単離されている2つの株のみが、G.vaginalisよりも優勢であり、その増殖を完全に阻害することができると特定された。
【0233】
G.vaginalisの増殖を打ち負かすことができる実施例2で同定された20株を、G.vaginalisの存在下で基質を酸性化する能力について評価した。
【0234】
共培養アッセイを実施例2に記載されるように行い、両方ともNYCIII基質をミューラーヒントンブロス(Sigma-Aldrich)と交換した。接種時の初期pHは7.4であった。
【0235】
24時間の嫌気性インキュベーション後、MHブロス中の増殖阻害を実施例2に記載のように決定し、各MHブロス上清中のpHを測定した。
【0236】
実施例2からの20株は全て、pHを4.7未満に低下させることができた。
【0237】
実施例5
過酸化水素形成
【0238】
過酸化水素の製造は、Marshall(Marshall,V.M.(1979)J.Appl.Bacteriol.47 pp 327-328.doi.org/10.1111/j.1365-2672.1979.tb01762.x)の方法に従って行った。
【0239】
実施例6
G.vaginalisバイオフィルムの予防
【0240】
G.vaginalisのバイオフィルム形成の予防に対する乳酸菌の効果を、Gottschickら(2016)Screening of compounds against Gardnerella vaginalis biofilms.PLos One 11(4).doi.org/10.1371/journal.pone.0154086に記載されているように決定した。
【0241】
G.vaginalisの前培養物をNYCIIIで調製し、37℃で48時間嫌気的にインキュベートした。この前培養物を、最終バイオフィルム培養のためにNYCIII(pH7.0)でOD600=0.05に希釈した。選択された乳酸菌を、前培養のためにMRSを使用して同様に調製し、1:1に混合した後、Nunc(商標)MicroWell(商標)96ウェルマイクロプレート(Thermo Scientific)で培養した。37℃で24時間インキュベートした後、嫌気的に分析を行った。上清を除去し、バイオフィルムを滅菌PBS緩衝液で2回洗浄した。バイオフィルムを有しない対照、および単一バイオフィルム培養物として増殖させた各微生物の対照バイオフィルムと比較して、OD600を測定した。
【0242】
乳酸菌(LAB)によるバイオフィルム形成の阻害を以下のように決定した:
((OD600[G.vaginalisのバイオフィルム]-OD600[LAB試験株とG.vaginalisの混合バイオフィルム培養])/OD600[G.vaginalisのバイオフィルム])×100%
【0243】
選択した株を、細菌性膣炎に対する膣適用のための市販の消費者製品と比較した。
【0244】
製品A:3つのLactobacillus株(L.acidophilis,L.casei,L.rhamnosus)を含むVitabalansによってデンマークで入手可能なGynoLact。試験のための前培養物を、一錠をMRS培地中で分割し、37℃で終夜嫌気的にインキュベートすることによって調製した。
製品B:2つのLactobacillus株(L.gasseri EB01TMおよびL.rhamnosus PB01TM)を含む、Orkla Care A/Sによってデンマークで入手可能なVivagカプセル。試験のための前培養物を、一錠をMRS培地中で分割し、37℃で終夜嫌気的にインキュベートすることによって調製した。
製品C:3つのLactobacillus株(L.gasseri LN 40、L.fermentum LN 99、L.rhamnosus LN 113)を含むEllen ABによってデンマークで入手可能なEllen intimcreme。試験のための前培養物を、0.1 mlのintimcremeをMRS培地に移し、37℃で一晩嫌気的にインキュベートすることによって調製した。
【0245】
G.vaginalisおよびLAB株と同様に、実験のために各製品を調製した。
【数1】
【0246】
選択されたLAB株は、G.vaginalisによるバイオフィルム形成を予防する有意により良好な能力を有する。
【0247】
Lactobacillus crispatus LB714Rは、Lactobio ApS、Copenhagen、Denmarkにより、受託番号33732でGerman Collection of Microorganisms and Cell Cultures GmbH(DSMZ)に2020年12月14日に寄託された。
【0248】
Lactobacillus gasseri LB905R、Lactobacillus crispatus LB912R、Lactobacillus jensenii LB918RおよびLactobacillus crispatus LB919Rは、Lactobio A/S、Copenhagen、Denmarkにより、German Collection of Microorganisms and Cell Cultures GmbH(DSMZ)に2021年11月25日に、以下の通り寄託された。受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R、受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R、受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918R、受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919R。
【0249】
実施例7
試験生物としてCandida albicansを使用して、上記の実施例2、3および4に記載されるようなスクリーニング方法を繰り返した。
【0250】
寒天アッセイでのスポット
Candida株をBEI Resourcesから得た。
【0251】
Candida albicans、P57055株、カタログ番号29439(血液単離株)
Candida albicans、L26株、カタログ番号29445(膣単離株)
Candida albicans、19F株、カタログ番号29449(膣単離株)
【0252】
乳酸菌(LAB)株をMan Rogosa Sharp(MRS、Sigma-Aldrich)ブロス中で37℃で終夜インキュベートした。C.albicansをYPDブロス(20g/Lペプトン、10g/L酵母抽出物、20g/Lグルコース)中37℃で終夜インキュベートした。約0.5のOD600を有するC.albicans培養物を10^-1または10^-2に希釈し、1mLをミューラーヒントン寒天プレートに播種して菌叢を作製した。LAB培養物から、20μLをミューラーヒントンプレートの上部にスポットした。37℃、好気的条件で終夜インキュベートした後、阻害領域を測定した。
【0253】
ウェル拡散アッセイのために、LABおよびC.albicansの終夜培養物を調製した。LABをMRSブロス中で増殖させ、CandidaをYPDブロス中で37℃で増殖させた。約0.5のOD600を有するCandida培養物の各々から、10^-1希釈物を調製し、1mLをミューラーヒントン寒天プレートの上に播種した。プレートにウェルを作製し、50μLのLAB培養物をウェルに移した。37℃で終夜インキュベートした後、ウェル周囲の阻害領域を調べた。
【0254】
さらに2つの株がCandida albicansに対して活性であると同定された。
【0255】
同定された2株は、Lactobio ApS、Copenhagen、Denmarkにより、German Collection of Microorganisms and Cell Cultures GmbH(DSMZ)に2020年12月14日に寄託された。株を以下のように寄託した:
【0256】
DSM 33730として寄託されたPediococcus pentosaceus LB606R
【0257】
DSM 33731として寄託されたLactiplantibacillus plantarum LB679R
【0258】
Lactiplantibacillus plantarumは、International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiologyによって2020年4月15日に発表された分類法の変更に従って命名された。以前はLactobacillus plantarumとして知られていた。
【0259】
【0260】
共凝集は、LB606R株とLB679R株の両方について、3~4であると決定された。
【0261】
実施例8
膣感染症または泌尿生殖器感染症の予防または処置のための株の単離および同定のための方法を含む膣微生物叢の移植。
【0262】
110人の健康な女性が膣から採取したスワップを提供した。
【0263】
この方法は、
図2に示されており、健康な膣微生物叢を有するドナーから機能不全の膣微生物叢を有する患者への乳酸菌の膣移植を含む。
【0264】
この方法は、移植される乳酸菌の単離、選択および増殖の工程を含む。
【0265】
この方法は、健康な女性の膣微生物叢から乳酸菌を単離することを含み、以下の工程を含む:
1.健康な膣微生物叢を有する女性から採取した膣スワップから乳酸菌を単離し、スワップをMRS寒天プレート上でインキュベートし、37℃で24~48時間嫌気的にインキュベートする。コロニーを新たなMRSプレートに打つことによってコロニーをさらに単離し、37℃で24~48時間嫌気的にインキュベートし、単離した各コロニーを、20%グリセロールを含む1mlのMRSブロスに接種し、-80℃で保存する。
2.工程1からの株コレクションを、前述の実施例に記載された方法を使用して、Gardnerella vaginalisおよび/またはCandida albicansのいずれかに対する抗菌活性についてスクリーニングする。少なくとも1つの抗菌活性を有する株が選択され、少なくとも1つの抗菌活性は、増殖阻害、共凝集またはバイオフィルム形成の阻害から選択される。
3.工程2で同定された株は、単離された個々の株として増殖され、好ましい実施形態では、株は、105から1013CFU/mlを含み、pHが3から7である組成物中の個々の株として安定化される。組成物は、少なくとも1つの単離された株を含む。一実施形態では、組成物は、少なくとももう1つの単離された株の混合物である。混合物は、異なるドナーから単離された株を含むことができる。
組成物は、膣の上皮に局所適用するための溶液、油、洗浄液、ゲルもしくは軟膏、または膣に挿入するためのカプセルもしくは錠剤のいずれかであり得る。組成物は、プレバイオティクスをさらに含むことができる。
4.健康な女性の膣から単離された、単離された株の調製された組成物を、機能不全の膣微生物叢、膣感染症、尿路感染症、STIを有する女性に、または妊婦もしくは不妊症処置中の女性に移す。
【0266】
実施例9
【0267】
受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714Rを、MRSブロス中、37℃で終夜、三連で増殖させた。増殖した細胞を2つの画分に分け、1つの画分はLB714Rの生存細胞を含み、これは実施例3と同じ共凝集手順に従ってG.vaginalisと共凝集する能力について評価し、第2の画分は遠心分離し、細胞を培地から除去した。細胞をpH2、2のPBS緩衝液に3日間可溶化した。細胞をMRS寒天上にスポットして、それらの生存率を確認して、細胞が死滅/不活性化されたことを確実にした。死細胞(パラプロバイオティクス)を、実施例3と同じ共凝集手順に従ってG.vaginalisと共凝集する能力について評価した。
【0268】
LB714Rの生存細胞は、5の共凝集スコアで強い共凝集を示し、LB714Rの死細胞は、4.5の平均スコアで共凝集した(
図4に示す)。
【0269】
参照文献
Arena, M. P. et al.(2016) Use of Lactobacillus plantarum Strains as a Bio-Control Strategy against Food-Borne Pathogenic Microorganisms. Frontiers in Microbiology 7 (APR): 1-10. doi.org/10.3389/fmicb.2016.00464.
Dowarah, R., et al. (2018) Selection and characterization of probiotic lactic acid bacteria and its impact on growth, nutrient digestibility, health and antioxidant status in weaned piglets. PLoS ONE, 13(3)
Gottschick et al. (2016) Screening of compounds against Gardnerella vaginalis biofilms. PLos One 11(4). doi.org/10.1371/journal.pone.0154086
Khare, A., & Tavazoie, S. (2015). Multifactorial Competition and Resistance in a Two-Species Bacterial System. PLoS Genetics, 11(12), 1-21.
Kwak, Y-K. Et al. (2016) Persistence of Lactobacilli in postmenopausal women - a double-blind, randomized, pilot study. Gynecol. Obstet Invest 82: 144-150. Doi: 10.1159/000446946
Marshall, V.M. (1979) J. Appl. Bacteriol. 47 pp 327-328. doi.org/10.1111/j.1365-2672.1979.tb01762.x
Zhang P. et al.(2015) Interstrain interactions between bacteria isolated from vacuum-packaged refrigerated beef. Appl Environ Microbiol 81:2753-2761. doi:10.1128/AEM.03933-14
【0270】
【0271】
【0272】
【0273】
【0274】
【0275】
【0276】
【0277】
【手続補正書】
【提出日】2023-09-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
病原体のバイオフィルム形成を予防、阻害または処置することができる菌株を含み、前記菌株は、
受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R;
受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919R;
受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918R;
受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R;または
受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R;
から選択される、組成物。
【請求項2】
病原体のバイオフィルム形成を予防、阻害または処置することができる菌株を含み、前記菌株は、Lactobacillus crispatusから選択され、特に、
受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R;
受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919R;
受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918R;
受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R;または
受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R;
を含む
、膣マイクロバイオーム移植片。
【請求項3】
1つ以上のPediococcus株(例えば寄託受託番号DSM 33730の下で寄託されたPediococcus pentosaceus LB606R)および/または1つ以上のLactiplantibacillus株(例えば寄託受託番号DSM 33731の下で寄託されたLactiplantibacillus plantarum LB679R)から選択される乳酸菌株をさらに含む、請求項2に記載の膣マイクロバイオーム移植片。
【請求項4】
懸濁液、スプレー、ゲル、クリーム、ローション、粉末、カプセル、油、洗浄液用溶液、卵形剤、膣用インサート、坐剤、ロゼンジ、錠剤、マイクロカプセル化製品として、または食品サプリメントもしくは食品の形態で製剤化される、請求項2から3のいずれか一項に記載の膣マイクロバイオーム移植片。
【請求項5】
病原体のバイオフィルム形成を予防、阻害または処置することができる、単離された細菌株であって、前記菌株は、Lactobacillus crispatusから選択され、特に、
受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R;
受託番号DSM 34097の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB919Rを特に含む、Lactobacillus crispatus;
受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918R;
受託番号DSM 34095の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB912R;または
受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905R;
を含む、単離された細菌株。
【請求項6】
病原体のバイオフィルム形成を予防、阻害または処置することができる1つ以上の菌株を含み、前記菌株は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus gasseriまたはLactobacillus jenseniiの種から選択される
、医薬として使用するための組成物。
【請求項7】
病原体のバイオフィルム形成を予防、阻害または処置することができる菌株を含み、前記菌株は、1つ以上のLactobacillus crispatus、1つ以上のLactobacillus gasseriまたは1つ以上のLactobacillus jenseniiから選択される細菌株を含む、ヒトまたは動物における膣感染症の予防および/または処置に使用するための組成物。
【請求項8】
病原体のバイオフィルム形成を予防、阻害または処置することができる菌株を含み、前記菌株は、1つ以上のLactobacillus crispatus、1つ以上のLactobacillus gasseriまたは1つ以上のLactobacillus jenseniiから選択される細菌株を含む、ヒトもしくは動物の妊孕性の改善および/またはヒトもしくは動物の早産のリスクを低減するのに使用するための組成物。
【請求項9】
1つ以上のLactobacillus crispatus、1つ以上のLactobacillus gasseri、または1つ以上のLactobacillus jenseniiを含む、バイオフィルム形成の予防、阻害または処置に使用するための組成物。
【請求項10】
1つ以上のLactobacillus crispatus(特に、受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714R)、1つ以上のLactobacillus jensenii(特に、受託番号DSM 34096の下で寄託されたLactobacillus jensenii LB918Rを含む)、または1つ以上のLactobacillus gasseri(特に、受託番号DSM 34094の下で寄託されたLactobacillus gasseri LB905Rを含む)を含む、バイオフィルム形成の予防、阻害または処置に使用するための組成物。
【請求項11】
受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714Rを含む、医薬として使用するための組成物。
【請求項12】
受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714Rを含む、ヒトまたは動物における膣感染症の予防および/または処置に使用するための組成物。
【請求項13】
受託番号DSM 33732の下で寄託されたLactobacillus crispatus LB714Rを含む、ヒトもしくは動物の妊孕性の改善および/またはヒトもしくは動物の早産のリスクを低減するのに使用するための組成物。
【請求項14】
請求項1もしくは6から
13のいずれか一項に記載の組成物、または請求項2から4に記載の膣マイクロバイオーム移植片、または請求項5に記載の単離された細菌株を含む、医療機器。
【請求項15】
膣移植用の1つ以上の乳酸菌株を選択する方法であって、
Gardnerella vaginalisの阻害を特徴とする少なくとも1つの第1の乳酸菌株を選択する工程;および
Candida albicansの阻害を特徴とする少なくとも1つの第2の株を選択する工程;
を含
み、
前記Gardnerella vaginalisおよび/またはCandida albicansの阻害は、病原体のバイオフィルム形成の減少もしくは阻害、又は病原体のバイオフィルム形成を予防、阻害または処置することができることにより提供される、方法。
【国際調査報告】