(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ヒドロキシ置換スフィンゴ脂質
(51)【国際特許分類】
C07C 235/08 20060101AFI20240118BHJP
C07H 3/02 20060101ALI20240118BHJP
A61K 31/164 20060101ALI20240118BHJP
A61K 31/7032 20060101ALI20240118BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240118BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240118BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20240118BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20240118BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20240118BHJP
C07C 235/74 20060101ALI20240118BHJP
C07C 231/24 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C07C235/08
C07H3/02 CSP
A61K31/164
A61K31/7032
A61P17/00
A61P43/00 105
A61K8/42
A61Q19/08
A61K8/60
C07C235/74
C07C231/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541054
(86)(22)【出願日】2022-01-05
(85)【翻訳文提出日】2023-07-05
(86)【国際出願番号】 EP2022050107
(87)【国際公開番号】W WO2022148758
(87)【国際公開日】2022-07-14
(32)【優先日】2021-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シン ルー
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー シールト
(72)【発明者】
【氏名】ザンドラ ナットラント
(72)【発明者】
【氏名】マリタ レジーナ ベートセン
(72)【発明者】
【氏名】ウアズラ マチュキエヴィッツ
(72)【発明者】
【氏名】ハンス ヘニング ヴェンク
(72)【発明者】
【氏名】モニカ デジレー ファン ロホヘム
(72)【発明者】
【氏名】リサ マウス
【テーマコード(参考)】
4C057
4C083
4C086
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C057AA17
4C057BB02
4C083AC072
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC342
4C083AC422
4C083AC641
4C083AD201
4C083AD202
4C083BB51
4C083CC03
4C083DD27
4C083EE12
4C083EE16
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA06
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZC01
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA04
4C206GA26
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA83
4C206NA14
4C206ZA89
4C206ZC01
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB12
4H006AD15
(57)【要約】
本発明は、ヒドロキシ置換スフィンゴ脂質、その製造および使用を提供し、また、それらを構成要素とする化粧用配合物も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I
【化1】
[式中、
R
1は、-OHおよび-COOHから選択される少なくとも1つの基で置換されており、かつ任意選択的に少なくとも1つの-O-によって中断されていてよい、2~54個、好ましくは2~30個、より好ましくは2~18個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
R
2は、H、ホスホコリン、セリン、エタノールアミンまたは糖、好ましくは糖またはH、より好ましくはHであり、
Xは、CH=CH、CH
2-CH
2またはCH
2-HCOH、好ましくはCH
2-HCOHであり、
Yは、-OHおよびHから選択され、
ただし、R
1が、ω位が-OH基のみで置換された直鎖アルキル基である場合、Xは、CH
2-HCOHである]のスフィンゴ脂質。
【請求項2】
R
1が、好ましくは、-OHおよび-COOHから選択される少なくとも1つの基で置換されている炭素原子を2~54個、好ましくは2~30個、より好ましくは2~18個有する直鎖状または分枝鎖状のアルキル基から選択され、好ましくは、
R
2、Yが、Hであり、特に好ましくは、
Xが、CH
2-HCOHであることを特徴とする、請求項1記載のスフィンゴ脂質。
【請求項3】
R
1が、好ましくは、ω位で-OHおよび-COOHから選択される少なくとも1つの基により置換されている炭素原子を2~54個、好ましくは2~30個、より好ましくは2~18個有する炭化水素基から選択され、好ましくは、
R
2、Yが、Hであり、特に好ましくは、
Xが、CH
2-HCOHであることを特徴とする、請求項1または2記載のスフィンゴ脂質。
【請求項4】
ヒドロキシブチロイルフィトスフィンゴシン
【化2】
、スクシノイルフィトスフィンゴシン
【化3】
、グルコノイルフィトスフィンゴシン
【化4】
、ラクトビオノイルフィトスフィンゴシン
【化5】
、および2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル-ヒドロキシブチロイルフィトスフィンゴシン
【化6】
から選択される、請求項1から3までのいずれか1項記載のスフィンゴ脂質。
【請求項5】
細胞損傷、好ましくはUV照射によって誘発される細胞損傷、特に皮膚細胞損傷であって、本発明による細胞損傷は、好ましくはDNA損傷である、細胞損傷の治療における使用、特に予防における使用のための請求項1から4までのいずれか1項記載のスフィンゴ脂質。
【請求項6】
UV照射により引き起こされる皮膚の老化を防止するための請求項1から4までのいずれか1項記載の少なくとも1種のスフィンゴ脂質の化粧用の非治療的使用。
【請求項7】
請求項1から4までのいずれか1項記載の少なくとも1種のスフィンゴ脂質を、好ましくは0.02重量%~1.50重量%、好ましくは0.03重量%~1.00重量%、より好ましくは0.05重量%~0.50重量%の量で含み、重量パーセンテージは、全配合物を基準としている、化粧用配合物。
【請求項8】
少なくとも1種のUV光保護フィルター物質をさらに含む、請求項7記載の化粧用配合物。
【請求項9】
好ましくは請求項1から5までのいずれか1項記載のスフィンゴ脂質の製造方法であって、
I)第1の成分、一般式II
【化7】
[式中、
R
2bは、H、ホスホコリン、セリン、エタノールアミンまたは糖、好ましくは糖またはH、より好ましくはHであり、
X
bは、CH=CH、CH
2-CH
2またはCH
2-HCOH、好ましくはCH
2-HCOHである]の少なくとも1種のリゾスフィンゴ脂質を準備する工程、
II)第2の成分、式R
1bCY
bHCOOH
[式中、
R
1bは、-OHおよび-COOHから選択される少なくとも1つの基で置換されており、かつ任意に少なくとも1つの-O-によって中断されていてよい、2~54個、好ましくは2~30個、より好ましくは2~18個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
Y
bは、-OHおよびHから選択される]のヒドロキシカルボン酸の少なくとも1種の分子内環状エステルを準備する工程、
III)第1の成分と第2の成分とを反応させてスフィンゴ脂質を得る工程、および任意で
IV)スフィンゴ脂質を精製する工程
を含む方法。
【請求項10】
方法工程III)を、40℃~95℃、好ましくは50℃~80℃、より好ましくは60℃~70℃の温度範囲内で実施することを特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項11】
好ましくは請求項1から5までのいずれか1項記載のスフィンゴ脂質の製造方法であって、以下の方法工程、
A)第1の成分、一般式II
【化8】
[式中、
R
2bは、H、ホスホコリン、セリン、エタノールアミンまたは糖、好ましくは糖またはH、より好ましくはHであり、
X
bは、CH=CH、CH
2-CH
2またはCH
2-HCOH、好ましくはCH
2-HCOHである]の少なくとも1種のリゾスフィンゴ脂質を準備する工程、
B)第2の成分、式R
1bCY
bHCOOH
[式中、
R
1bは、-OHおよび-COOHから選択される少なくとも1つの基で置換されており、かつ任意に少なくとも1つの-O-によって中断されていてよい、2~54個、好ましくは2~30個、より好ましくは2~18個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
Y
bは、-OHおよびHから選択される]の少なくとも1種のヒドロキシカルボン酸を準備する工程、
C)ヒドロキシカルボン酸の活性化のための少なくとも1種のカップリング試薬を使用して第1の成分を第2の成分と反応させ、スフィンゴ脂質を得る工程、および任意で
D)スフィンゴ脂質を精製する工程
を含む方法。
【請求項12】
方法工程C)において、使用されるカップリング試薬が、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドヒドロクロリド、N-シクロヘキシル-N’-(2’-モルホリノエチル)カルボジイミドメト-p-トルエンスルホネート、N-ベンジル-N’-3’-ジメチルアミノプロピルカルボジイミドヒドロクロリド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、N-エチルカルボジイミドヒドロクロリドおよびカルボニルジイミダゾール、特に好ましくはジシクロヘキシルカルボジイミドおよびジイソプロピルカルボジイミドを含む群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項13】
方法工程C)において、N-エチルジイソプロピルアミン、トリアルキルアミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジンおよびヒドロキシベンゾトリアゾール、特に、ヒドロキシベンゾトリアゾールを含む群から選択される少なくとも1種の触媒を使用することを特徴とする、請求項11または12記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ヒドロキシ置換スフィンゴ脂質、その製造および使用を提供し、また、それらを構成要素とする化粧用配合物も提供する。
【0002】
従来技術
ケア化粧品の目的は、例えば、肌や髪などの外見の印象を若々しく保つことである。これを達成するには、原則的にさまざまな方法がある。例えば、不規則な色素沈着またはしわなどの皮膚に対する既存の損傷は、隠蔽粉末またはクリームによって修正することができる。
【0003】
別のアプローチは、永続的な損傷ひいては皮膚の加齢を生じさせる環境影響から皮膚を保護することである。したがって、アイデアは、予防的に介入し、それによって老化プロセスを遅らせるものである。
【0004】
皮膚の最も重要な機能は、一方では制御されない水の漏出から体を保護し、他方では有害な化学物質または細菌による侵入および太陽光線による侵入から体を保護することである。ヒトの皮膚が日光に長時間曝されることにより、皮膚の光誘発性の老化および/または色素沈着障害の発生につながり得る。
【0005】
日光のこの有害な影響は、特に、太陽光のスペクトルに存在するUVB放射線(280~320nm)によるものである。
【0006】
特に太陽光照射によって引き起こされる皮膚の老化の兆候の発生を低減またはさらに防止することができるスキンケア物質の探求が依然として続いている。
【0007】
仏国特許出願公開第2855049号明細書には、皮膚バリアを強化するための6-ヒドロキシ-スフィンゲニン系セラミドが開示されている。仏国特許出願公開第2874610号明細書には、N-ジヒドロキシアルキルヒドロキシアルカンアミド誘導体および化粧品におけるその使用が開示されている。
【0008】
本発明の課題は、太陽光照射によって引き起こされる老化の兆候を低減する物質を提供することである。
【0009】
発明の説明
驚くべきことに、以下に記載されるセラミド誘導体が、本発明の課題を達成し、UV光により引き起こされる反応性酸素種(ROS)の形成を阻害することができることが見出された。
【0010】
したがって、本発明は、特定のヒドロキシ置換スフィンゴ脂質およびその製造および使用を提供する。
【0011】
本発明はさらに、上記ヒドロキシ置換スフィンゴ脂質を含む化粧用配合物を提供する。
【0012】
本発明のスフィンゴ脂質の利点は、特に皮膚におけるDNA損傷、特にUV誘発性の損傷に対するその保護効果である。
【0013】
本発明のスフィンゴ脂質の別の利点は、特に化粧用配合物におけるその増粘効果である。
【0014】
したがって、本発明は、一般式I
【化1】
[式中、
R
1は、-OHおよび-COOHから選択される少なくとも1つの基で置換されており、かつ任意選択的に少なくとも1つの-O-によって中断されていてよい、2~54個、好ましくは2~30個、より好ましくは2~18個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
R
2は、H、ホスホコリン、セリン、エタノールアミンまたは糖、好ましくは糖またはH、より好ましくはHであり、
Xは、CH=CH、CH
2-CH
2またはCH
2-HCOH、好ましくはCH
2-HCOHであり、
Yは、-OHおよびHから選択され、
ただし、R
1が、ω位が-OH基のみで置換された直鎖アルキル基である場合、Xは、CH
2-HCOHである]のスフィンゴ脂質を提供する。
【0015】
一般式Iのスフィンゴ脂質は、複数の立体中心を有し、そのすべてが一般式Iで覆われている。
【0016】
特に明記しない限り、記載されているパーセンテージ(%)はすべて質量パーセントである。
【0017】
本発明の好ましいスフィンゴ脂質は、
R1が、好ましくは、-OHおよび-COOHから選択される少なくとも1つの基で置換されている炭素原子を2~54個、好ましくは2~30個、より好ましくは2~18個有する直鎖状または分枝鎖状のアルキル基から選択され、好ましくは、
R2、Yが、Hであり、特に好ましくは、
Xが、CH2-HCOHである
ことを特徴とする。
【0018】
本発明のその好ましい実施形態において、R1のアルキル基は、好ましくは直鎖状である。
【0019】
本発明のさらに好ましいスフィンゴ脂質は、
R1が、好ましくは、ω位で-OHおよび-COOHから選択される少なくとも1つの基により置換されている炭素原子を2~54個、好ましくは2~30個、より好ましくは2~18個有する炭化水素基から選択され、好ましくは、
R2、Yが、Hであり、特に好ましくは、
Xが、CH2-HCOHである
ことを特徴とする。
【0020】
本発明のその好ましい実施形態において、R1の炭化水素基は、好ましくは直鎖状である。
【0021】
本発明の特に好ましいスフィンゴ脂質は、ヒドロキシブチロイルフィトスフィンゴシン
【化2】
、スクシノイルフィトスフィンゴシン
【化3】
、グルコノイルフィトスフィンゴシン
【化4】
、ラクトビオノイルフィトスフィンゴシン
【化5】
、および2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル-ヒドロキシブチロイルフィトスフィンゴシン
【化6】
から選択される。
【0022】
本発明のスフィンゴ脂質は、優れた治療効果を示すので、本発明はさらに、細胞損傷、好ましくはUV照射によって誘発される細胞損傷、特に皮膚細胞損傷であって、本発明による細胞損傷は、好ましくはDNA損傷である、細胞損傷の治療における使用、特に予防における使用のための本発明のスフィンゴ脂質を提供する。
【0023】
本発明のスフィンゴ脂質は、純粋な化粧用途でも使用することができ、したがって本発明はさらに、本発明のスフィンゴ脂質の少なくとも1種の、UV照射により引き起こされる皮膚の老化を防止するための化粧用の非治療的使用を提供する。
【0024】
本発明のスフィンゴ脂質は、容易に化粧用配合物に配合することができる。したがって、本発明はさらに、少なくとも1種の本発明のスフィンゴ脂質を、好ましくは0.02重量%~1.50重量%、好ましくは0.03重量%~1.00重量%、より好ましくは0.05重量%~0.50重量%の量で含み、重量パーセンテージは、全配合物を基準としている化粧用配合物を提供する。
【0025】
本発明の化粧用配合物は、特に日焼け止め用の配合物であり、したがって好ましくは、UV光保護フィルターを含む。
【0026】
したがって、本発明の好ましい配合物は、
本発明の少なくとも1種のスフィンゴ脂質、および
少なくとも1種のUV光保護フィルター物質
を含むものである。
【0027】
使用されるUV光保護フィルターは、例えば、紫外線を吸収し、次いで、吸収されたエネルギーをより長波の放射線、例えば熱の形態で再放出することができる有機物質であってよい。
【0028】
UVBフィルターは、油溶性または水溶性であってよい。油溶性UVB光保護フィルターの例には、以下のものが含まれる:
3-ベンジリデンカンフルおよびその誘導体、例えば3-(4-メチルベンジリデン)カンフル、4-アミノ安息香酸誘導体、例えば2-エチルヘキシル4-(ジメチルアミノ)ベンゾエートおよびアミル4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、
ケイ皮酸のエステル、例えば2-エチルヘキシル4-メトキシシンナメート、イソペンチル4-メトキシシンナメート、2-エチルヘキシル2-シアノ-3-フェニルシンナメート(オクトクリレン)、
サリチル酸のエステル、例えば2-エチルヘキシルサリチレート、4-イソプロピルベンジルサリチレート、ホモメンチルサリチレート、
ベンゾフェノンの誘導体、例えば2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4’-メチルベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、
ベンザルマロン酸のエステル、例えばジ-2-エチルヘキシル4-メトキシベンズマロネート、トリアジン誘導体、例えば2,4,6-トリアニリノ-(p-カルボ-2’-エチル-1’-ヘキシルオキシ)-1,3,5-トリアジン、オクチルトリアゾン、ならびに欧州特許出願公開第1180359号明細書および独国特許出願公開第2004/027475号明細書に記載されているもの、
プロパン-1,3-ジオン、例えば1-(4-tert-ブチルフェニル)-3-(4’-メトキシフェニル)プロパン-1,3-ジオン。
【0029】
適切な水溶性UVB光保護フィルターには、以下のものが含まれる:
2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸およびそのアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルキルアンモニウム、アルカノールアンモニウムおよびグルカアンモニウム塩、
ベンゾフェノンのスルホン酸誘導体、例えば2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸およびそれらの塩、
3-ベンジリデンカンフルのスルホン酸誘導体、例えば4-(2-オキソ-3-ボルニリデンメチル)ベンゼンスルホン酸および2-メチル-5-(2-オキソ-3-ボルニリデン)スルホン酸およびそれらの塩。
【0030】
適切な典型的なUVA光保護フィルターには、特に、ベンゾイルメタンの誘導体、例えば1-(4’-tert-ブチルフェニル)-3-(4’-メトキシフェニル)プロパン-1,3-ジオンまたは1-フェニル-3-(4’-イソプロピルフェニル)プロパン-1,3-ジオンが含まれる。当然ながら、UV-AフィルターとUV-Bフィルターとの混合物を使用することも可能である。
【0031】
記載された可溶性物質に加えて、不溶性顔料、すなわち、微細に分散した金属酸化物または塩、例えば二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、ケイ酸塩(タルク)、硫酸バリウムおよびステアリン酸亜鉛もこの目的に適している。本明細書において、粒子は、100nm未満、例えば5~50nm、特に15~30nmの平均直径を有するべきである。それらは、球形であってもよいが、楕円形であるか、または何らかの他の方法で球状から逸脱した形状を有する粒子を使用することも可能である。比較的新しいクラスの光保護フィルターは、例えば50%水性分散液として得られる、微粉化された有機顔料、例えば200nm未満の粒径を有する2,2’-メチレンビス{6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール}のものである。
【0032】
さらに適切なUV光保護フィルターは、SOEFW-Journal 122, 543 (1996)のP.Finkelによるレビューに見出すことができる。
【0033】
本発明の配合物に関連して、上記配合物は、好ましくは親油性の疎水性のUV光保護フィルター物質、特にトリアジン誘導体を含む。ここで、UV-Bフィルターとして、UV光保護フィルター物質-2-エチルヘキシル2-シアノ-3-フェニルシンナメート、2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、ジオクチルブチルアミドトリアゾン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4’-メチルベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、ジ-2-エチルヘキシル4-メトキシベンズマロネート、2,4,6-トリス-[アニリノ-(p-カルボ-2’-エチル-1’-ヘキシルオキシ)]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス[5,1(ジメチルプロピル)ベンゾオキサゾール-2-イル-(4-フェニル)イミノ]-6-(2-エチルヘキシル)イミノ-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス-{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジンおよび2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-(オクチルオキシ)フェノールを使用することが特に好ましい。
【0034】
使用されるUV-Aフィルターは、好ましくは1-(4’-tert-ブチルフェニル)-3-(4’-メトキシフェニル)プロパン-1,3-ジオン、1-フェニル-3-(4’-イソプロピルフェニル)プロパン-1,3-ジオンである。
【0035】
特に好ましいUV-Aフィルターは、DSMによりParsol(登録商標)1789ブランドで販売されており、MerckによりEusolex(登録商標)9020の商品名で販売されている、4-(tert-ブチル)-4’-メトキシジベンゾイルメタン(CAS No.70356-09-1)、および独国特許出願公開第102004027475号明細書によるヒドロキシベンゾフェノン、特に好ましくはBASFからUvinul A Plusという名称で入手可能な、ヘキシル2-(4’-ジエチルアミノ-2’-ヒドロキシベンゾイル)ベンゾエート(また、アミノベンゾフェノン)である。
【0036】
さらに好ましいUVフィルター物質は、さらにいわゆる広帯域フィルター、すなわち、UV-AおよびUV-Bの双方の放射を吸収するフィルター物質である。この群内では、Ciba Chemikalien GmbHよりTinosorb(登録商標)Mの商品名で入手可能な2,2’-メチレンビス(6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール)、およびINCI名ドロメトリゾールトリシロキサンを有する2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-[2-メチル-3-[1,3,3,3-テトラメチル-1-[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニル]プロピル]フェノール(CAS No.:155633-54-8)の使用が好ましい。
【0037】
上述の2つの群の一次UV光保護フィルターに加えて、紫外線が皮膚を透過する際に開始される光化学反応鎖を捕捉する酸化防止剤タイプの二次光安定剤を使用することも可能である。
【0038】
本発明の化粧用配合物は、配合物全体を基準として、好ましくは0.01重量%~15重量%、好ましくは0.05重量%~10重量%、より好ましくは0.1重量%~5重量%の量でUV光保護フィルターを含む。
【0039】
好ましくは、本発明の化粧用配合物は、2つ以上の異なるUV光保護フィルターの組み合わせを含む。
【0040】
UVAおよびUVBの双方の光保護フィルターが本発明の配合物に使用される場合、これらのフィルターの重量比は、好ましくは1:2~1:4である。
【0041】
本発明の配合物は、以下の群から選択される少なくとも1種の追加の成分をさらに含み得る:
皮膚軟化剤、
乳化剤、
増粘剤/粘度調整剤/安定剤、
酸化防止剤、
ヒドロトロープ(またはポリオール)、
固体およびフィラー、
膜形成剤、
パール光沢添加剤、
消臭剤および制汗活性物質、
防虫剤、
セルフタンニング剤、
防腐剤、
調整剤、
香料、
染料、
臭気吸収剤、
化粧用活性物質、
ケア添加剤、
過脂肪剤、
溶剤。
【0042】
個々の群の例示的な代表物として使用され得る物質は、当業者に公知であり、例えば独国特許出願公開第102008001788号明細書に見出すことができる。この特許出願は、参照として本明細書に組み込まれ、したがって本開示の一部を構成する。
【0043】
さらなる任意成分およびこれらの成分の使用量に関しては、当業者に公知の関連するハンドブック、例えば、K. Schrader, “Grundlagen und Rezepturen der Kosmetika” [Fundamentals and formulations of cosmetics], 2nd edition, pages 329 to 341, Huethig Buch Verlag Heidelbergが明示的に参照される。
【0044】
各添加剤の量は、意図する使用によって導かれる。
【0045】
特定の用途のための典型的なフレーム配合物は、先行技術で公知であり、例えば、特定のベース材料および活性成分のメーカーのパンフレットに含まれている。これらの既存の配合物は、概して変更なしに採用され得る。しかしながら、調整および最適化が必要な場合、所望の修正は、単純な試験を通して簡単に実行され得る。
【0046】
本発明はさらに、スフィンゴ脂質の製造方法、特に本発明のスフィンゴ脂質の製造方法であって、
I)第1の成分、一般式II
【化7】
[式中、
R
2bは、H、ホスホコリン、セリン、エタノールアミンまたは糖、好ましくは糖またはH、より好ましくはHであり、
X
bは、CH=CH、CH
2-CH
2またはCH
2-HCOH、好ましくはCH
2-HCOHである]の少なくとも1種のリゾスフィンゴ脂質を準備する工程
II)第2の成分、式R
1bCY
bHCOOH
[式中、
R
1bは、-OHおよび-COOHから選択される少なくとも1つの基で置換されており、かつ任意に少なくとも1つの-O-によって中断されていてよい、2~54個、好ましくは2~30個、より好ましくは2~18個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
Y
bは、-OHおよびHから選択される]のヒドロキシカルボン酸の少なくとも1種の分子内環状エステルを準備する工程、
III)第1の成分と第2の成分とを反応させてスフィンゴ脂質を得る工程、および任意で
IV)スフィンゴ脂質を精製する工程
を含む方法を提供する。
【0047】
本発明の方法は、好ましくは、方法工程III)が、40℃~95℃、好ましくは50℃~80℃、より好ましくは60℃~70℃の温度範囲内で実施されることを特徴とする。
【0048】
本発明はさらに、スフィンゴ脂質を製造するための、特に本発明のスフィンゴ脂質を製造するための代替的な方法であって、以下の方法工程、
A)第1の成分、一般式II
【化8】
[式中、
R
2bは、H、ホスホコリン、セリン、エタノールアミンまたは糖、好ましくは糖またはH、より好ましくはHであり、
X
bは、CH=CH、CH
2-CH
2またはCH
2-HCOH、好ましくはCH
2-HCOHである]の少なくとも1種のリゾスフィンゴ脂質を準備する工程
B)第2の成分、式
R
1bCY
bHCOOH
[式中、
R
1bは、-OHおよび-COOHから選択される少なくとも1つの基で置換されており、かつ任意に少なくとも1つの-O-によって中断されていてよい、2~54個、好ましくは2~30個、より好ましくは2~18個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
Y
bは、-OHおよびHから選択される]の少なくとも1種のヒドロキシカルボン酸を準備する工程、
C)ヒドロキシカルボン酸の活性化のための少なくとも1種のカップリング試薬を使用して第1の成分を第2の成分と反応させ、スフィンゴ脂質を得る工程、および任意で
D)スフィンゴ脂質を精製する工程
を含む方法を提供する。
【0049】
本発明の代替的な方法は、好ましくは、方法工程C)において、使用されるカップリング試薬が、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドヒドロクロリド、N-シクロヘキシル-N’-(2’-モルホリノエチル)カルボジイミドメト-p-トルエンスルホネート、N-ベンジル-N’-3’-ジメチルアミノプロピルカルボジイミドヒドロクロリド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、N-エチルカルボジイミドヒドロクロリドおよびカルボニルジイミダゾール、特に好ましくはジシクロヘキシルカルボジイミドおよびジイソプロピルカルボジイミドを含む群、好ましくはこれらからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0050】
本発明の代替的な方法は、好ましくは、方法工程C)において、N-エチルジイソプロピルアミン、トリアルキルアミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジンおよびヒドロキシベンゾトリアゾール、特に、ヒドロキシベンゾトリアゾールを含む群、好ましくはこれらからなる群から選択される少なくとも1種の触媒を使用することを特徴とする。
【0051】
本発明の方法は、好ましくは、方法工程C)が、40℃~95℃、好ましくは50℃~80℃、より好ましくは55℃~65℃の温度範囲内で実施されることを特徴とする。
【0052】
本発明による好ましい方法は、好ましくは、本発明による好ましいものとして上記のスフィンゴ脂質をもたらす。
【0053】
以下に示す実施例は、本発明を例示的に説明するものであり、本明細書および特許請求の範囲の全体からその適用範囲が明らかである本発明を、実施例において指定される実施形態に限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
以下の図面は、実施例の一部を構成する。
【
図3】試験配合物を2、4および8週間適用した後のITA°の増加を示す図である。
【
図4】試験配合物を2、4および8週間適用した後のL
*の増加を示す図である。
【
図5】試験配合物を2、4および8週間適用した後の皮膚粗さの減少を示す図である。
【
図6】試験配合物を2、4および8週間適用した後の皮膚密度の増加を示す図である。
【0055】
実施例:
実施例1:4-ヒドロキシブチロイルフィトスフィンゴシン
フィトスフィンゴシンおよびγ-ブチロラクトンを、1:1のモル比でメタノールに溶解する。この混合物を、フィトスフィンゴシンがもはや検出できなくなるまで65℃で反応させる。室温に冷却することで、4-ヒドロキシブチロイルフィトスフィンゴシンの結晶が得られ、これを吸引濾過し、1:1のTHF/水混合物で洗浄した。収率は、80%を上回り、純度は、90%を上回る。
【0056】
実施例1b:6-ヒドロキシヘキサノイルフィトスフィンゴシン
フィトスフィンゴシンおよびε-カプロラクトンを、1:1のモル比でメタノールに溶解する。この混合物を、フィトスフィンゴシンがもはや検出できなくなるまで65℃で反応させる。室温に冷却することで、6-ヒドロキシヘキサノイルフィトスフィンゴシンの結晶が得られ、これを吸引濾過し、1:1のTHF/水混合物で洗浄した。収率は、80%を上回り、純度は、90%を上回る。
【0057】
実施例1c(本発明によるものではない):3-ヒドロキシプロピオイルフィトスフィンゴシン
フィトスフィンゴシンおよびβ-プロピオラクトンを、メタノール中に1:1のモル比で溶解させる。この混合物を、フィトスフィンゴシンがもはや検出できなくなるまで65℃で反応させる。室温に冷却することで3-ヒドロキシプロピオイルフィトスフィンゴシンの結晶を得て、これを吸引で濾過し、1:1のTHF/水混合物で洗浄した。収率は、80%を上回り、純度は、90%を上回る。
【0058】
実施例2:スクシノイルフィトスフィンゴシン
フィトスフィンゴシンおよび無水コハク酸を、メタノール中に1:1のモル比で溶解させる。この混合物を、フィトスフィンゴシンがもはや検出されなくなるまで65℃で反応させる。室温に冷却することで、スクシノイルフィトスフィンゴシンの結晶が得られ、これを吸引で濾過し、1:1のTHF/水混合物で洗浄した。収率は、80%を上回り、純度は、90%を上回る。
【0059】
実施例3:グルコノイルフィトスフィンゴシン
フィトスフィンゴシンおよびd-グルコノラクトンを、メタノール中に1:1のモル比で溶解させる。この混合物を、フィトスフィンゴシンがもはや検出できなくなるまで65℃で反応させる。後処理は、温度を10℃まで徐々に下げて結晶化させることにより行われる。生成物を、真空を用いて濾過し、エタノールで洗浄する。一定質量まで乾燥させた後、収率は、80%を上回り、純度は、90%を上回る。
【0060】
実施例4:ラクトビオノイルフィトスフィンゴシン
ラクトビオン酸71.66gおよびフィトスフィンゴシン75.44gを、ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させる。N-ヒドロキシスクシンイミド(HSU)2gおよびN,N-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)15mlを添加し、この混合物を60℃で2時間反応させる。残留DICを、15mlの水を添加し、混合物をさらに1/2時間反応させることによりクエンチする。後処理のために、ジメチルホルムアミドを留去し、生成物残渣を次いでメタノールに溶解させる。次いで、生成物を10℃にゆっくりと冷却することにより結晶化させる。このようにして得られた生成物を濾過し、メタノールで洗浄し、乾燥させる。収率は、80%を上回り、純度は、90%を上回る。
【0061】
実施例5:2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル-ヒドロキシブチロイルフィトスフィンゴシン
フィトスフィンゴシンおよびD-パントラクトンを、エタノール中に1:1のモル比で溶解させる。この混合物を、60℃で8時間反応させる。次いで、生成物を10℃にゆっくりと冷却することにより結晶化させる。次いで、これを濾過し、乾燥させる。収率は、80%を上回り、純度は、90%を上回る。
【0062】
実施例5b:2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル-ヒドロキシブチロイルスフィンガニン
スフィンガニンおよびD-パントラクトンを、エタノール中に1:1のモル比で溶解させる。この混合物を、60℃で8時間反応させる。次いで、生成物を10℃にゆっくりと冷却することにより結晶化させる。次いで、これを濾過し、乾燥させる。収率は、80%を上回り、純度は、90%を上回る。
【0063】
実施例6:UV損傷に対する予防
本発明の物質がUV照射に曝露した正常ヒト表皮角化細胞(NHEK)に対して予防効果を及ぼすことができる程度を検討した。
【0064】
このために、2,7-ジクロロジヒドロフルオレセインジアセテートで定量化された反応性酸素種(ROS)のバイオマーカーおよびコメットアッセイによって定量化されたDNA損傷および修復について、対応する調査を実施した。
【0065】
反応性酸素種(ROS)
反応性有機種(ROS)の細胞内形成は、とりわけ、UV照射による細胞DNAの損傷をもたらす因子である。
【0066】
96ウェルプレートに角化細胞を播種し、これを培養培地において24時間、次いでアッセイ培地においてさらに24時間培養した。次に、培地を、試験化合物もしくは参照(ビタミンE 100μΜおよびEGCG 10μΜ)を含む試験培地またはそれらが存在しない(照射された対照)試験培地に置き換え、細胞を24時間プレインキュベートした。プレインキュベーション後、培地を取り出し、アッセイ培地に置き換え、蛍光プローブ(2,7-ジクロロジヒドロフルオレセインジアセテート(アッセイ培地中10μΜ 2,7-DCDHF-DA)))を添加し、細胞を37℃で30分間インキュベートした。次いで、細胞をPBS溶液で洗浄し、化合物または参照なしで100mJ/cm2のUVB+UVA(+0.7J/cm2)で照射した。使用したランプは、H2フィルターを備えたSOL500ソーラーシミュレーター(Dr. Hoenle, AG)であった。照射後、細胞を30分間インキュベートした。未照射の対照および試料なしの条件(バックグラウンドノイズ)を並行して実施した。
【0067】
すべての実験条件を、3連で実施した。
【0068】
蛍光の放射強度(ex=485nm、em=538nm)を、EnVision(登録商標)(PerkinElmer)マイクロプレートリーダーを使用して測定した。
【0069】
代謝試料(DCF)の蛍光強度は、ROSの形成に比例した。したがって、ROSの産生を、蛍光の相対強度として表した。
【0070】
【0071】
ヒト表皮角化細胞における反応性酸素種(ROS)の産生は、UV光の照射によって誘導されることが分かる(0%の保護効果に相当する)。この試験で使用したビタミンEおよびエピガロカテキンガレート(EGCG)陽性対照は、UV照射に対する保護効果を有することが知られており、したがってROSの形成に対して30~40%の保護効果を示す。本発明の使用された物質は、同様に、濃度が増加するにつれて40%を上回る実質的な保護効果を示す。このような効果は、スフィンゴ脂質/セラミドについてはこれまで報告されていない。
【0072】
塩基として、スフィンゴイド塩基フィトスフィンゴシン(PS)も試験した。ここで有意な予防効果は認められなかった。
【0073】
以下の実験は、
図1には示していない:
上記の設定において、2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル-ヒドロキシブチロイルスフィンガニンは、5μMの濃度で22%の保護効果を示し、2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル-ヒドロキシブチロイルフィトスフィンゴシンは、5μMの濃度で38%の保護効果を示す。
【0074】
上記の設定において、セラミド3(セラミドNPとしても知られる)は、10μMの濃度で4%の保護効果を示し、3-ヒドロキシプロピオイルフィトスフィンゴシンは、10μMの濃度で5%の保護効果を示す。
【0075】
DNA損傷および修復
6ウェルプレートに角化細胞を播種し、これを培養培地で48時間インキュベートし、培地を24時間後に補充した。次に、培地を、試験化合物もしくは参照(0.3mMの対照)を含む培養培地またはそれらが存在しない(対照)培養培地に置き換え、細胞を24時間インキュベートした。プレインキュベーション後、培養培地を除去し、アッセイ培地を再び添加し、化合物の非存在下で250mJ/cm2のUVB+UVA(+1.6J/cm2)で細胞を照射した。使用したランプは、H2フィルターを備えたSOL500ソーラーシミュレーター(Dr. Hoenle, AG)であった。未照射の対照条件を並行して実施した。すべての実験条件を、2連で実施した。
【0076】
照射の終わりに、培養上清を廃棄し、分析前に細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した。
【0077】
細胞をトリプシン処理してカウントし、遠心分離後に上清を除去した。次いで、細胞をPBS溶液で洗浄し、細胞濃度が1×105細胞/mlとなるように同じPBS溶液中に懸濁した。次いで、細胞懸濁液を、溶融(37℃)した低融点の1%アガロースゲルと混合し、コメット顕微鏡スライド上にピペットで移した(各条件についての二重分析)。細胞溶解のために、電気泳動支持体上で新たに調製したアルカリ性溶液(1mMのEDTAを含有する200mMのNaOH、pH>13)に顕微鏡スライドを浸漬した。ゲル電気泳動を21ボルトで30分間行った。コメット顕微鏡スライドを、水で2回、各回5分間洗浄し、次いで70%のエタノールで5分間洗浄し、37℃で15分間、風乾させた。
【0078】
電気泳動後、乾燥した各試料を、DNAインターカレート蛍光色素(SYBRグリーン溶液)で染色した。次いで、自動化されたIN Cell Analyzer(商標)2200顕微鏡画像解析装置(GE Healthcare)(X10対物レンズ)を用いて、細胞を落射蛍光で観察した。励起(ex 494nm、em 524nm)時に、DNAに結合したSYBR(登録商標)Greenが、緑色光を放射する。健康な細胞では、蛍光は、ヌクレオイドに制限される:損傷を受けていないDNAは、超らせん化され、したがって、電流の影響下でヌクレオイドからあまり移動しない。DNA損傷が生じた場合、アルカリ処理によってDNAが巻き上げられ、電界に曝された場合に細胞外に移動する断片が放出される。負に帯電したDNAは、アノードに移動し、押出長さは、損傷の指標である超らせん化構造の緩和に比例している。アルカリ電気泳動条件を使用する場合、テールとコメットヘッドとの間のDNAの分布を使用して、DNA損傷の程度を決定することができる。
【0079】
細胞の画像を、ImageJソフトウェアと共にOpenCometを用いて分析した。解析の各反復では、500個のイベントの最小値を解析した。
【0080】
【0081】
ヒト表皮角化細胞にUV光を照射して生じたDNA損傷は、識別可能である。タイロン陽性対照は、その既知の酸化防止特性のためにDNA損傷から保護することができ、したがって、UV照射後にDNA損傷に対しておよそ60%の保護効果を示す。本発明の物質は、同様に、60%を上回る保護効果を示す。この効果は、スフィンゴ脂質/セラミドについては知られておらず、この試験では純粋なスフィンゴイド塩基フィトスフィンゴシン(PS)に対しても実証できない。
【0082】
以下の実験は、
図2には示されていない:
上記の設定において、2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル-ヒドロキシブチロイルスフィンガニンは、5μMの濃度で24%の保護効果を示し、2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル-ヒドロキシブチロイルフィトスフィンゴシンは、2μMの濃度で39%の保護効果を示す。
【0083】
上記の設定において、セラミド3(セラミドNPとしても知られる)は、10μMの濃度で12%の保護効果を示し、3-ヒドロキシプロピオイルフィトスフィンゴシンは、10μMの濃度で13%の保護効果を示す。
【0084】
実施例7:生体内データ
生体内試験では、皮膚に日焼けのストレスを受ける24名の被験者(男女)を募集した。皮膚に日焼けのストレスを確実に与えるために、この試験を、9月から11月にかけて実施した。皮膚が夏季の終わりに最大レベルの日焼けのストレスを示すことを想定した。
【0085】
被験者は、2つの異なる試験配合物(それぞれ1つの前腕に適用される)、または1つの試験配合物(1つの前腕に適用され、もう1つの前腕は未処理のままとした(対照))のいずれかを受けた。試験配合物は、ビヒクルおよび0.1%のヒドロキシブチロイルフィトスフィンゴシン(ヒドロキシブチロイルPS)を含有する配合物であった。さまざまな試験の組み合わせを、被験者にランダムに割り当てた。
【0086】
試験配合物の組成を、第1表に示す。被験者は、8週間にわたり、1日2回、いずれの場合も1つの前腕の内側および外側に試験配合物を適用した。前腕に関する以下の測定を、出願開始前および2、4および8週間後に行った:
1.色測定:比色計プローブ(Skin-Colorimeter CL 400、Courage & Khazaka、ケルン)を使用して、前腕の外側のパラメータL
*およびITA°を測定した。L
*は、皮膚の黒/白の値を表し、ITA°は、皮膚色調を表す。皮膚が明るくなる場合、両方の値が増加を示す。
2.皮膚粗さ:このパラメータを、前腕の内側にある特別なカメラ(Visioscan VC 98、Courage & Khazaka)を用いて測定した。このカメラは、皮膚のデジタル白黒画像を記録する。画像のグレースケール分布を使用して、皮膚粗さを決定することができる。
3.真皮の密度:真皮の密度を、前腕の外側での超音波によって測定した(SkinLab Combo、Cortex Technologies、デンマーク)。このために、特別なプローブが皮膚に超音波信号を送信し、その反射を記録する。この反射を使用して、皮膚密度の値を求めることができる。皮膚密度の低下は、特に、日光に非常に強く曝された皮膚領域によって示される。
【表1】
【0087】
図3は、試験配合物を2、4および8週間適用した後のITA°の増加を示す。
【0088】
図4は、試験配合物を2、4および8週間適用した後のL
*の増加を示す。
【0089】
図xy1および図xy2における色パラメータL*およびITA°の増加は、皮膚が測定周期全体にわたって明るくなったことを示し、輝度の増加は、ヒドロキシブチロイルフィトスフィンゴシンで処理された皮膚領域上で、ビヒクル配合物または未処理の対照と比較して、最も顕著である。これは、この場合、皮膚のメラニンの破壊に起因するものではなかった。皮膚の日焼けは、通常の皮膚再生サイクルの結果として、夏季の終わりに最も顕著であり、その後、秋に治まる。このサイクルは、ヒドロキシブチロイルフィトスフィンゴシンによって強化され、この場合、皮膚はより急速に明るくなる。
【0090】
図5は、試験配合物を2、4および8週間適用した後の皮膚粗さの減少を示す。
【0091】
図5から、皮膚粗さの減少は、未処理の対照と比較して、特にビヒクルと比較して、両方とも、ヒドロキシブチロイルフィトスフィンゴシンを含有する試験配合物で最も顕著であることが分かる。これは皮膚の色の測定結果を裏付けるものである:日焼けのストレスを受けた皮膚の特徴的な特性は、皮膚の粗さが増すことである。この粗さは、同様に、通常の皮膚再生の結果として、秋に向かって減少する。ヒドロキシブチロイルフィトスフィンゴシンは、皮膚の再生サイクルを助けるため、ビヒクル配合物または未処理の対照よりも皮膚粗さの減少がより顕著である。
【0092】
図6は、試験配合物を2、4および8週間適用した後の皮膚密度の増加を示す。
【0093】
太陽光線への曝露が多い皮膚領域は、皮膚密度の低下を示す。皮膚試験の結果は、ヒドロキシブチロイルフィトスフィンゴシンの皮膚密度が、未処理の対照またはビヒクルと比較して、2週間の使用後にすでに顕著に増加していることを示す。
【0094】
実験は、6-ヒドロキシヘキサノイルフィトスフィンゴシン(実施例1b)、2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル-ヒドロキシブチロイルスフィンガニン(実施例5b)、セラミド3(セラミドNPとしても知られる)および3-ヒドロキシプロピオイルフィトスフィンゴシン(実施例1c)を用いて同じ方法で繰り返される。
【表2】
【国際調査報告】