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▶ アイベックス バイオサイエンシーズ, エルエルシーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】CD147を標的とする抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240118BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 33/06 20060101ALI20240118BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240118BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240118BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240118BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240118BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240118BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240118BHJP
【FI】
C07K16/28
A61K39/395 N ZNA
A61P31/12
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
A61P29/00
A61P37/06
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P1/04
A61P3/10
A61P11/00
A61P21/04
A61P33/00
A61P33/06
C07K16/46
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541593
(86)(22)【出願日】2022-01-11
(85)【翻訳文提出日】2023-09-06
(86)【国際出願番号】 US2022011969
(87)【国際公開番号】W WO2022150759
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】63/135,827
(32)【優先日】2021-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520292039
【氏名又は名称】アイベックス バイオサイエンシーズ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】デ ラ クルーズ, ビダル フィリックス
(72)【発明者】
【氏名】クローチ, アルベルト ムラート
(72)【発明者】
【氏名】カーリン, マイケル ジョセフ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA87X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB12
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG04
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書では、CD147に結合し、ウイルスまたは寄生虫の浸潤を阻害し、炎症を低減させ、がん細胞生存率を低減させる新規な抗体配列が提供される。本開示はまた、ウイルス感染およびがんを処置するためにこれらの抗体を使用する方法を提供する。本開示は、細胞上に発現されたCD147に結合してウイルス感染を防止し、マラリア感染を阻害し、血管新生を阻害し、細胞生存率を減少させる新規な抗体、抗体断片、またはその改変体を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号16~39から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%の同一性を含む少なくとも1つのCDRを含む結合ドメインを含む抗CD147抗体。
【請求項2】
前記抗CD147抗体が2つのCDRを含み、前記2つのCDRの各々が独立して、配列番号16~39から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%の同一性を含む、請求項1に記載の抗CD147抗体。
【請求項3】
前記抗CD147抗体が3つのCDRを含み、前記3つのCDRの各々が独立して、配列番号16~39から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%の同一性を含む、請求項1または2に記載の抗CD147抗体。
【請求項4】
前記抗CD147抗体が、配列番号4~15から選択される配列に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗CD147抗体。
【請求項5】
前記抗CD147抗体が、配列番号4~15から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗CD147抗体。
【請求項6】
前記抗体が、完全長抗体、単一特異性抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、抗原結合領域、重鎖、軽鎖、VhH、Vh、CDR、可変ドメイン、scFv、Fc、Fv、Fab、F(ab)2、IgG、還元型IgG(rIgG)、単一特異性Fab2、二重特異性Fab2、三重特異性Fab3、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、三重特異性トリアボディ、ミニボディ、ナノボディ、IgNAR、V-NAR、HcIgG、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の抗CD147抗体。
【請求項7】
前記抗体がVhHである、請求項6に記載の抗CD147抗体。
【請求項8】
キメラ抗原受容体(CAR)の結合領域が、配列番号16~39から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%の同一性を含む少なくとも1つのCDRを含む、請求項1に記載の抗CD147抗体。
【請求項9】
前記CARが免疫細胞に発現される、請求項8に記載の抗CD147抗体。
【請求項10】
前記免疫細胞が、PBMC、リンパ球、T細胞、またはNK細胞である、請求項9に記載の抗CD147抗体。
【請求項11】
前記抗CD147抗体が、細胞の表面に発現されるCD147またはその断片に結合する、請求項1に記載の抗CD147抗体。
【請求項12】
前記細胞が、上皮細胞、内皮細胞、またはニューロン細胞である、請求項11に記載の抗CD147抗体。
【請求項13】
前記抗CD147抗体が、ウイルスとCD147との間の相互作用を低減させるかまたは排除する、請求項1に記載の抗CD147抗体。
【請求項14】
前記相互作用が、前記ウイルスによる前記CD147の結合を含む、請求項13に記載の抗CD147抗体。
【請求項15】
前記抗CD147抗体が、ウイルススパイクタンパク質のCD147への結合を低減させるかまたは排除する、請求項1に記載の抗CD147抗体。
【請求項16】
前記抗CD147抗体が、細胞へのウイルス浸潤を低減させるかまたは排除する、請求項1に記載の抗CD147抗体。
【請求項17】
前記抗CD147抗体が、ウイルス感染性アッセイによって決定される場合、細胞へのウイルス浸潤を少なくとも約1倍低減させるかまたは排除する、請求項1に記載の抗CD147抗体。
【請求項18】
前記ウイルスが、麻疹、コロナウイルス、SARS、MERS、伝染性造血器壊死症ウイルス(IHNV)、パルボウイルス、単純ヘルペスウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ムンプスウイルス、風疹ウイルス、HIV、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、ロタウイルスA、ロタウイルスB、ロタウイルスC、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、水痘帯状疱疹、ポリオウイルス、免疫不全ウイルス(例えば、HIV)、エンベロープウイルス、RNAウイルス、および肝炎からなる群から選択される、請求項13に記載の抗CD147抗体。
【請求項19】
前記ウイルスが前記コロナウイルスである、請求項18に記載の抗CD147抗体。
【請求項20】
前記コロナウイルスがSARS-CoV-2である、請求項19に記載の抗CD147抗体。
【請求項21】
前記細胞ががん細胞である、請求項11に記載の抗CD147抗体。
【請求項22】
前記細胞が腫瘍細胞である、請求項11に記載の抗CD147抗体。
【請求項23】
前記がん細胞が血液がんに由来する、請求項21に記載の抗CD147抗体。
【請求項24】
前記腫瘍細胞が、乳がん、肺がん、前立腺がん、卵巣がん、脳がん、肝臓がん、子宮頸がん、結腸がん、腎臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、骨がん、食道がん、膀胱がん、子宮がん、リンパがん、胃がん、膵臓がん、精巣がん、白血病、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、およびマントル細胞リンパ腫(MCL)からなる群から選択されるがんに由来する、請求項22に記載の抗CD147抗体。
【請求項25】
前記抗CD147抗体が、腫瘍細胞増殖、転移、マトリックスメタロプロテイナーゼの分泌、腫瘍マトリックスの分解、腫瘍細胞浸潤、および/または血管新生を低減させるかまたは排除する、請求項1に記載の抗CD147抗体。
【請求項26】
前記抗CD147抗体が、炎症を低減させるかまたは排除する、請求項1に記載の抗CD147抗体。
【請求項27】
前記抗CD147抗体が、炎症性または自己免疫障害を低減させるかまたは排除するのに有効である、請求項1に記載の抗CD147抗体。
【請求項28】
前記炎症性または自己免疫疾患が、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、セリアック病、炎症性腸疾患、橋本病、アジソン病、グレーブス病、I型糖尿病、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、クローン病、多発性硬化症、および重症筋無力症からなる群から選択される、請求項27に記載の抗CD147抗体。
【請求項29】
前記抗CD147抗体がヒト化されている、請求項1に記載の抗CD147抗体。
【請求項30】
請求項1に記載の抗CD147抗体を投与することを含む、CD147発現に関連する障害の防止、処置、または改善を必要とする対象におけるCD147発現に関連する障害を防止、処置、または改善する方法。
【請求項31】
有効量の請求項1に記載の抗CD147抗体を含む医薬組成物。
【請求項32】
請求項1に記載の抗CD147抗体をコードする配列を含む細胞。
【請求項33】
前記抗CD147抗体が細胞に結合し、それによって、前記細胞内へのPlasmodium寄生虫の浸潤を防止、阻害、または減少させる、請求項1に記載の抗CD147抗体。
【請求項34】
前記細胞内への前記Plasmodium寄生虫の前記浸潤が少なくとも約1倍である、請求項33に記載の抗CD147抗体。
【請求項35】
前記細胞が赤血球である、請求項34に記載の抗CD147抗体。
【請求項36】
前記Plasmodium寄生虫が、Plasmodium falciparum、Plasmodium malariae、Plasmodium ovale、Plasmodium vivax、およびPlasmodium knowlesiからなる群から選択される、請求項33に記載の抗CD147抗体。
【請求項37】
前記抗CD147抗体が、血球における寄生虫血症を減少させるのに有効である、請求項33に記載の抗CD147抗体。
【請求項38】
前記抗CD147抗体が、約48時間以内に血球における寄生虫血症を減少させる、請求項37に記載の抗CD147抗体。
【請求項39】
前記抗CD147抗体が、約96時間以内に血球における寄生虫血症を減少させる、請求項37に記載の抗CD147抗体。
【請求項40】
前記抗CD147抗体の投与が、対象におけるマラリアを防止、改善、または処置する、請求項33に記載の抗CD147抗体。
【請求項41】
CDR1、CDR2、およびCDR3領域を含む抗CD147抗体であって、前記CDR1領域が、配列番号16~配列番号23からなる群から選択されるアミノ酸配列であり、前記CDR2領域が、配列番号24~配列番号31からなる群から選択されるアミノ酸配列であり、前記CDR3領域が、配列番号32~配列番号39からなる群から選択されるアミノ酸配列であり、前記抗CD147抗体が、前記CDR1、前記CDR、または前記CDR3領域の少なくとも1つに0~5個のアミノ酸修飾を含む、抗CD147抗体。
【請求項42】
前記抗CD147抗体が0~3個のアミノ酸修飾を含む、請求項41に記載の抗CD147抗体。
【請求項43】
前記CDR1領域が配列番号18または22に対応し、前記CDR2領域が配列番号26または30に対応し、前記CDR3領域が配列番号34または38に対応する、請求項41に記載の抗CD147抗体。
【請求項44】
前記抗CD147抗体が配列番号12または配列番号14を含む、請求項41に記載の抗CD147抗体。
【請求項45】
前記抗CD147抗体がヒト化されている、請求項41に記載の抗CD147抗体。
【請求項46】
有効量の抗CD147抗体を含む医薬組成物を投与することを含む処置方法であって、前記抗CD147抗体が、CDR1、CDR2、およびCDR3領域を含み、前記CDR1領域が、配列番号16~配列番号23からなる群から選択されるアミノ酸配列であり、前記CDR2領域が、配列番号24~配列番号31からなる群から選択されるアミノ酸配列であり、前記CDR3領域が、配列番号32~配列番号39からなる群から選択されるアミノ酸配列であり、前記抗CD147抗体が、前記CDR1、前記CDR、または前記CDR3領域の少なくとも1つに0~5個のアミノ酸修飾を含む、処置方法。
【請求項47】
前記投与することが、炎症性または自己免疫疾患を低減させるかまたは排除するのに有効である、請求項46に記載の処置方法。
【請求項48】
前記炎症性または自己免疫疾患が、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、セリアック病、炎症性腸疾患、橋本病、アジソン病、グレーブス病、I型糖尿病、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、クローン病、多発性硬化症、および重症筋無力症からなる群から選択される、請求項47に記載の処置方法。
【請求項49】
前記投与することが、ウイルスによる細胞へのウイルス浸潤を低減させるかまたは排除するのに有効である、請求項46に記載の処置方法。
【請求項50】
前記ウイルスが、麻疹、コロナウイルス、SARS、MERS、伝染性造血器壊死症ウイルス(IHNV)、パルボウイルス、単純ヘルペスウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ムンプスウイルス、風疹ウイルス、HIV、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、ロタウイルスA、ロタウイルスB、ロタウイルスC、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、水痘帯状疱疹、ポリオウイルス、免疫不全ウイルス(例えば、HIV)、エンベロープウイルス、RNAウイルス、および肝炎からなる群から選択される、請求項49に記載の処置方法。
【請求項51】
前記ウイルスが前記コロナウイルスである、請求項50に記載の処置方法。
【請求項52】
前記コロナウイルスがSARS-CoV-2を含む、請求項51に記載の処置方法。
【請求項53】
前記投与することが、がんの転移を低減させるかまたは排除するのに有効である、請求項46に記載の処置方法。
【請求項54】
前記がんが、乳がん、肺がん、前立腺がん、卵巣がん、脳がん、肝臓がん、子宮頸がん、結腸がん、腎臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、骨がん、食道がん、膀胱がん、子宮がん、リンパがん、胃がん、膵臓がん、精巣がん、白血病、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、およびマントル細胞リンパ腫(MCL)からなる群から選択される、請求項53に記載の処置方法。
【請求項55】
前記投与することが、細胞内へのPlasmodiumの浸潤を低減させるかまたは排除するのに有効である、請求項46に記載の処置方法。
【請求項56】
請求項1に記載の抗CD147抗体を含む抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項57】
前記薬物が、抗がん薬、抗マラリア薬、抗ウイルス薬、および抗炎症薬からなる群から選択される、請求項56に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項58】
前記抗ウイルス薬を含み、前記抗ウイルス薬が抗SARS-CoV-2薬である、請求項57に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項59】
前記抗がん薬を含み、前記抗がん薬が免疫療法を含む、請求項57に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項60】
前記免疫療法が、抗体、チェックポイント阻害剤、細胞療法、サイトカイン、腫瘍溶解性ウイルス、およびワクチンからなる群から選択される、請求項59に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項61】
前記抗体を含む、請求項60に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項62】
前記抗CD147抗体が配列番号12または配列番号14を含む、請求項56に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月11日に出願された米国仮特許出願第63/135,827号の優先権を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子的に提出されたテキストファイルの説明
本明細書と共に電子的に提出されたテキストファイルの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる:配列表のコンピュータ可読形式のコピー(ファイル名:IBEX_005_01WO_SeqList_ST25.txt、記録日2022年1月11日、ファイルサイズ約52キロバイト)。
【0003】
参照による組み込み
引用されたすべての刊行物、特許および特許刊行物は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
背景
細胞外マトリックスメタロプロテイナーゼ誘導物質CD147(Basigin、EMMPRIN、Neurothelinとしても知られている)は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する膜貫通糖タンパク質である。CD147は、腫瘍発生、Plasmodium浸潤およびウイルス感染に関与している。さらに、CD147は、がんおよび関節リウマチなどの免疫学的障害の潜在的な治療標的として研究されてきた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
簡潔な概要
本開示は、細胞上に発現されたCD147に結合してウイルス感染を防止し、マラリア感染を阻害し、血管新生を阻害し、細胞生存率を減少させる新規な抗体、抗体断片、またはその改変体(modification)を提供する。
【0006】
本明細書では、配列番号16~39から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%の同一性を含む少なくとも1つのCDRを含む結合ドメインを含む抗CD147抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は2つのCDRを含み、2つのCDRの各々は独立して、配列番号16~39から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%の同一性を含む。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は3つのCDRを含み、3つのCDRの各々は独立して、配列番号16~39から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%の同一性を含む。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、配列番号4~15から選択される配列に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、配列番号4~15から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、完全長抗体、単一特異性抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、抗原結合領域、重鎖、軽鎖、VhH、Vh、CDR、可変ドメイン、scFv、Fc、Fv、Fab、F(ab)2、IgG、還元型IgG(rIgG)、単一特異性Fab2、二重特異性Fab2、三重特異性Fab3、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、三重特異性トリアボディ、ミニボディ、ナノボディ、IgNAR、V-NAR、HcIgG、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、抗体はVhHである。いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体(CAR)の結合領域は、配列番号16~39から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%の同一性を含む少なくとも1つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、CARは免疫細胞上に発現される。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、PBMC、リンパ球、T細胞、またはNK細胞である。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、細胞の表面に発現されるCD147またはその断片に結合する。いくつかの実施形態では、細胞は、上皮細胞、内皮細胞、またはニューロン細胞である。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、ウイルスとCD147との間の相互作用を低減させるかまたは排除する。いくつかの実施形態では、相互作用は、ウイルスによるCD147の結合を含む。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、ウイルススパイクタンパク質のCD147への結合を低減させるかまたは排除する。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、細胞へのウイルス浸潤を低減させるかまたは排除する。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、ウイルス感染性アッセイによって決定される場合、細胞へのウイルス浸潤を少なくとも約1倍低減させるかまたは排除する。いくつかの実施形態では、ウイルスは、麻疹、コロナウイルス、SARS、MERS、伝染性造血器壊死症ウイルス(IHNV)、パルボウイルス、単純ヘルペスウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ムンプスウイルス、風疹ウイルス、HIV、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、ロタウイルスA、ロタウイルスB、ロタウイルスC、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、水痘帯状疱疹、ポリオウイルス、免疫不全ウイルス(例えば、HIV)、エンベロープウイルス、RNAウイルス、および肝炎からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ウイルスはコロナウイルスである。いくつかの実施形態では、コロナウイルスはSARS-CoV-2である。いくつかの実施形態では、細胞はがん細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は腫瘍細胞である。いくつかの実施形態では、がん細胞は血液がんに由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍細胞は、乳がん、肺がん、前立腺がん、卵巣がん、脳がん、肝臓がん、子宮頸がん、結腸がん、腎臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、骨がん、食道がん、膀胱がん、子宮がん、リンパがん、胃がん、膵臓がん、精巣がん、白血病、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、およびマントル細胞リンパ腫(MCL)からなる群から選択されるがんに由来する。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、腫瘍細胞増殖、転移、マトリックスメタロプロテイナーゼの分泌、腫瘍マトリックスの分解、腫瘍細胞浸潤、および/または血管新生を低減させるかまたは排除する。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、炎症を低減させるかまたは排除する。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、炎症性または自己免疫障害を低減させるかまたは排除するのに有効である。いくつかの実施形態では、炎症性または自己免疫疾患は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、セリアック病、炎症性腸疾患、橋本病、アジソン病、グレーブス病、I型糖尿病、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、クローン病、多発性硬化症、および重症筋無力症からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体はヒト化されている。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は細胞に結合し、それによって、細胞内へのPlasmodium寄生虫の浸潤を防止、阻害、または減少させる。いくつかの実施形態では、細胞内へのPlasmodium寄生虫の浸潤は少なくとも約1倍である。いくつかの実施形態では、細胞は赤血球である。いくつかの実施形態では、Plasmodium寄生虫は、Plasmodium falciparum、Plasmodium malariae、Plasmodium ovale、Plasmodium vivax、およびPlasmodium knowlesiからなる群から選択される。
【0007】
いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、血球における寄生虫血症を減少させるのに有効である。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、約48時間以内に血球における寄生虫血症を減少させる。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、約96時間以内に血球における寄生虫血症を減少させる。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体の投与は、対象におけるマラリアを防止、改善、または処置する。
【0008】
本明細書では、抗CD147抗体を投与することを含む、CD147発現に関連する障害の防止、処置、または改善を必要とする対象におけるCD147発現に関連する障害を防止、処置、または改善する方法もまた提供される。
【0009】
本明細書では、有効量の抗CD147抗体を含む医薬組成物もまた提供される。
【0010】
本明細書では、抗CD147抗体をコードする配列を含む細胞もまた提供される。
【0011】
本明細書では、CDR1、CDR2、およびCDR3領域を含む抗CD147抗体であって、CDR1領域が、配列番号12~配列番号15からなる群から選択されるアミノ酸配列であり、CDR2領域が、配列番号16~配列番号19からなる群から選択されるアミノ酸配列であり、CDR3領域が、配列番号20~配列番号23からなる群から選択されるアミノ酸配列であり、抗CD147抗体が、CDR1、CDR、またはCDR3領域の少なくとも1つに0~5個のアミノ酸修飾を含む、抗CD147抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は0~3個のアミノ酸修飾を含む。いくつかの実施形態では、CDR1領域は配列番号18または22に対応し、CDR2領域が配列番号26または30に対応し、CDR3領域は配列番号34または38に対応する。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は配列番号12または配列番号14を含む。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体はヒト化されている。
【0012】
本明細書では、有効量の抗CD147抗体を含む医薬組成物を投与することを含む処置方法であって、抗CD147抗体が、CDR1、CDR2、およびCDR3領域を含み、CDR1領域が、配列番号16~配列番号23からなる群から選択されるアミノ酸配列であり、CDR2領域が、配列番号24~配列番号31からなる群から選択されるアミノ酸配列であり、CDR3領域が、配列番号32~配列番号39からなる群から選択されるアミノ酸配列であり、抗CD147抗体が、CDR1、CDR、またはCDR3領域の少なくとも1つに0~2個のアミノ酸修飾を含む、処置方法が提供される。いくつかの実施形態では、投与することは、炎症性または自己免疫疾患を低減させるかまたは排除するのに有効である。いくつかの実施形態では、炎症性または自己免疫疾患は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、セリアック病、炎症性腸疾患、橋本病、アジソン病、グレーブス病、I型糖尿病、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、クローン病、多発性硬化症、および重症筋無力症からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、投与することは、ウイルスによる細胞へのウイルス浸潤を低減させるかまたは排除するのに有効である。いくつかの実施形態では、ウイルスは、麻疹、コロナウイルス、SARS、MERS、伝染性造血器壊死症ウイルス(IHNV)、パルボウイルス、単純ヘルペスウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ムンプスウイルス、風疹ウイルス、HIV、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、ロタウイルスA、ロタウイルスB、ロタウイルスC、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、水痘帯状疱疹、ポリオウイルス、免疫不全ウイルス(例えば、HIV)、エンベロープウイルス、RNAウイルス、および肝炎からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ウイルスはコロナウイルスである。いくつかの実施形態では、コロナウイルスはSARS-CoV-2を含む。いくつかの実施形態では、投与することは、がんの転移を低減させるかまたは排除するのに有効である。いくつかの実施形態では、がんは、乳がん、肺がん、前立腺がん、卵巣がん、脳がん、肝臓がん、子宮頸がん、結腸がん、腎臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、骨がん、食道がん、膀胱がん、子宮がん、リンパがん、胃がん、膵臓がん、精巣がん、白血病、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、およびマントル細胞リンパ腫(MCL)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、投与することは、細胞内へのPlasmodiumの浸潤を低減させるかまたは排除するのに有効である。
【0013】
本明細書では、抗CD147抗体を含む抗体-薬物コンジュゲートが提供される。いくつかの実施形態では、薬物は、抗がん薬、抗マラリア薬、抗ウイルス薬、毒素、および抗炎症薬からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、薬物は、抗ウイルス薬を含み、抗ウイルス薬は抗SARS-CoV-2薬である。いくつかの実施形態では、薬物は、抗がん薬を含み、抗がん薬は免疫療法を含む。いくつかの実施形態では、免疫療法は、抗体、チェックポイント阻害剤、細胞療法、サイトカイン、腫瘍溶解性ウイルス、およびワクチンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ADCは、抗体を含む。いくつかの実施形態では、抗体は配列番号12または配列番号14を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、本開示は、CD147ポリペプチドに結合する抗CD147抗体、抗体断片、またはその改変体を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号16~39のいずれかに含まれる少なくとも1つのCDRを有するアミノ酸配列を含む抗CD147抗体またはその断片を提供する。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号16~39のいずれかに含まれる2~6つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号16~39のいずれか1つに含まれるすべてのCDRを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号16~39のいずれかと少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号16~39のいずれかのアミノ酸配列を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、完全長抗体、単一特異性抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、抗原結合領域、重鎖、軽鎖、VhH、Vh、Vl、CDR、可変ドメイン、scFv、Fc、Fv、Fab、F(ab)2、還元型IgG(rIgG)、単一特異性Fab2、二重特異性Fab2、三重特異性Fab3、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、三重特異性トリアボディ、ミニボディ、ナノボディ、IgNAR、V-NAR、HcIgG、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体はVhHである。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、キメラ抗原受容体(CAR)に含まれる。いくつかの実施形態では、CARは、免疫細胞から発現される。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、PBMC、リンパ球、T細胞、またはNK細胞である。
【0016】
いくつかの実施形態では、抗CD147抗体、抗体断片、または改変体は、細胞の表面に発現されたCD147ポリペプチドまたはその断片に結合する。いくつかの実施形態では、細胞は、上皮細胞、内皮細胞、またはニューロン細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は腫瘍細胞である。いくつかの実施形態では、腫瘍細胞は、固形腫瘍に由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍細胞は、血液がんに由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍細胞は、乳がん、肺がん、前立腺がん、卵巣がん、脳がん、肝臓がん、子宮頸がん、結腸がん、腎臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、骨がん、食道がん、膀胱がん、子宮がん、リンパがん、胃がん、膵臓がん、精巣がん、白血病、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、およびマントル細胞リンパ腫(MCL)からなるがんに由来する。
【0017】
いくつかの実施形態では、抗CD147抗体、抗体断片、または改変体は、ウイルスとCD147との相互作用を阻害する。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、ウイルスがCD147に結合するのを防止または低減する。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、ウイルススパイクタンパク質がCD147に結合するのを防止または低減する。
【0018】
いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、細胞へのウイルス浸潤を低減させるかまたは排除する。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、ウイルス感染を防止または低減する。いくつかの実施形態では、ウイルスは、麻疹、コロナウイルス、SARS、MERS、SARS-CoV-2、伝染性造血器壊死症ウイルス(IHNV)、パルボウイルス、単純ヘルペスウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ムンプスウイルス、風疹ウイルス、HIV、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、ロタウイルスA、ロタウイルスB、ロタウイルスC、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、水痘帯状疱疹、ポリオウイルス、免疫不全ウイルス(例えば、HIV)、エンベロープウイルス、RNAウイルス、および肝炎からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ウイルスは、コロナウイルスである。いくつかの実施形態では、コロナウイルスは、SARS-CoV-2である。
【0019】
いくつかの実施形態では、抗CD147抗体、抗体断片、またはその改変体は、腫瘍細胞増殖、転移、マトリックスメタロプロテイナーゼの分泌、マトリックスの分解、腫瘍細胞浸潤、および/または血管新生を防止または低減する。
【0020】
いくつかの実施形態では、抗CD147抗体、抗体断片、またはその改変体は、炎症を防止または低減する。いくつかの実施形態では、抗体は、炎症性または自己免疫障害を処置または改善する。いくつかの実施形態では、炎症性または自己免疫疾患は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、セリアック病、炎症性腸疾患、橋本病、アジソン病、グレーブス病、I型糖尿病、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、クローン病、多発性硬化症、および重症筋無力症から選択される。
【0021】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載の抗CD147抗体、抗体断片、またはその改変体を投与することを含む、CD147発現に関連する障害の防止、処置、または改善を必要とする対象におけるCD147発現に関連する障害の防止、処置、または改善する方法を提供する。
【0022】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載の抗CD147抗体、抗体断片、またはその改変体を含む医薬組成物を提供する。
【0023】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載の抗CD147抗体、抗体断片、またはその改変体をコードする配列を含む細胞を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、CD147コートプレートへの本開示の抗CD147抗体の結合を実証するELISAを示す。
【0025】
図2図2は、試験した抗体のいずれもマウス(マウス)(murine (mouse))mCD147に結合しないことを示す。
【0026】
図3図3は、ヒトCD147およびマウスCD147への試験した抗体の結合の比較を示す。
【0027】
図4図4は、CD147へのIbx-77結合の定常状態モデルを示す。
【0028】
図5図5は、CD147へのIbx-77結合の動力学モデルを示す。
【0029】
図6図6は、CD147へのIbx-77結合のKd/Ka動力学モデルを示す。
【0030】
図7図7は、CD147へのIbx-77結合の定常状態1:1フィッティングモデルを示す。
【0031】
図8図8は、HEK-293細胞のIbx-77染色を示す。
【0032】
図9図9は、HCC-1954細胞のIbx-77染色を示す。
【0033】
図10図10は、HeLa細胞のIbx-77染色を示す。
【0034】
図11A図11A図11Bは、HCC-1954細胞のIbx-11、Ibx-13、およびIbx-77染色を示す。
図11B図11A図11Bは、HCC-1954細胞のIbx-11、Ibx-13、およびIbx-77染色を示す。
【0035】
図12A図12A図12Bは、HeLa細胞のIbx-11、Ibx-13、およびIbx-77染色を示す。
図12B図12A図12Bは、HeLa細胞のIbx-11、Ibx-13、およびIbx-77染色を示す。
【0036】
図13図13は、Jurkat細胞のIbx-11染色を示す。
【0037】
図14A図14A図14Bは、Vero E6細胞のIbx-11およびIbx-13染色を示す。
図14B図14A図14Bは、Vero E6細胞のIbx-11およびIbx-13染色を示す。
【0038】
図15A-15B】図15A図15Bは、Ibx-75(A)およびIbx-74(B)のセンサーグラムを示す。
【0039】
図16図16は、Ibx-11およびIbx-13抗体-薬物コンジュゲート(ADC)がMiaPaCa-2がん細胞を効果的に死滅させることを示す。
【0040】
図17図17は、Ibx系列処置細胞と対照細胞との間の凝集パターンの違いを示す。
【0041】
図18図18は、ピクセルサイズを測定する画像解析を示し、50μg/ml~25μg/mlのIbx系列抗体は、24時間で粒子(凝集体)のピクセルサイズが大きくなっていることを示す。
【0042】
図19図19は、18時間および24時間でカウントしたこのJurkat凝集アッセイからの画像を示す。
【0043】
図20図20は、24時間で、Ibx-77処置細胞について単一細胞数の有意な減少があったことを示す。
【0044】
図21図21は、Ibx-76またはIbx-77のいずれかで処置した細胞が、管形成アッセイにおいて血管新生の阻害を示したことを実証する。
【0045】
図22図22は、Ibx-13(AB1)、MIF-2-5(AB2)、またはVhH-Fc(AB3)を投与した48時間および96時間後のインビトロにおける寄生虫血症(parasitemia)のパーセントを示す。
【0046】
図23A図23A図23Bは、Ibx-13、MF22.3(AB2)およびh378GL(AB3)を1μg/mL、10μg/mL、および100μg/mLで投与した後のインビトロでの寄生虫血症のパーセントを示す。図23Aは、投与後48時間での寄生虫血症のパーセントを示し、図23Bは、96時間後の寄生虫血症のパーセントを示す。
図23B図23A図23Bは、Ibx-13、MF22.3(AB2)およびh378GL(AB3)を1μg/mL、10μg/mL、および100μg/mLで投与した後のインビトロでの寄生虫血症のパーセントを示す。図23Aは、投与後48時間での寄生虫血症のパーセントを示し、図23Bは、96時間後の寄生虫血症のパーセントを示す。
【0047】
図24図24は、さまざまな濃度のIbx-11、Ibx-13、または対照抗体による処置後のA375悪性黒色腫細胞生存率を示す。
【0048】
図25図25は、30nMのIbx-11、Ibx-13、または対照抗体で処置した後のA375悪性黒色腫細胞生存率の比較を示す。
【0049】
図26図26は、さまざまな濃度のIbx-11、Ibx-13、または対照抗体で処置した後のPC3前立腺がん細胞生存率を示す。
【0050】
図27図27は、30nMのIbx-11、Ibx-13、または対照抗体で処置した後のPC3前立腺がん細胞生存率の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
詳細な説明
がんにおけるCD147
CD147は、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の主要な上流刺激因子として作用する、免疫グロブリンスーパーファミリーの高度にグリコシル化された膜貫通タンパク質である。CD147およびMMPの発現レベルは、炎症過程および腫瘍においてしばしば増加し、がんの進行と関連している。高い細胞表面CD147発現を特徴とするがん幹細胞は、より多くのヒアルロナンを産生し、脂質ラフトの安定化、ならびにMMPおよびABC薬物輸送体の発現、耐性、および生存の増強をもたらす。
【0052】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗CD147抗体もしくは断片、またはその改変体は、がんを処置するために、またはがんの成長を防止するために使用され得る。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体もしくは断片、またはその改変体、および改変バージョン(例えば、抗体-薬物コンジュゲートADC)は、血液がんを処置するか、または血液がんの成長を防止する。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体もしくは断片、またはその改変体は、固形がんを処置するか、または固形がんの成長を防止する。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体もしくは断片、またはその改変体は、血液がんを処置するか、または血液がんの成長を防止する。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体もしくは断片、またはその改変体は、転移性がんを処置するか、または転移性がんの成長を防止する。いくつかの実施形態では、がんとしては、乳がん、肺がん、前立腺がん、卵巣がん、脳がん、肝臓がん、子宮頸がん、結腸がん、腎臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、骨がん、食道がん、膀胱がん、子宮がん、リンパがん、胃がん、膵臓がん、精巣がん、白血病、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、およびマントル細胞リンパ腫(MCL)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
自己免疫障害および炎症性障害
抗CD147抗体、その断片、または改変体は、対象における炎症を処置または低減するために使用され得る。いくつかの実施形態では、炎症は、自己免疫障害または炎症性障害に関連する。いくつかの実施形態では、自己免疫障害または炎症性障害としては、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、セリアック病、炎症性腸疾患、橋本病、アジソン病、グレーブス病、I型糖尿病、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、クローン病、多発性硬化症、および重症筋無力症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
ウイルス感染
抗CD147抗体、その断片、または改変体は、対象におけるウイルス感染および/またはウイルス量を処置または低減するために使用され得る。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体、その断片、または改変体は、細胞内へのウイルス浸潤を防止、阻害、または低減するために使用され得る。CD147は、細胞へのウイルス浸潤に重要であることが知られている。例えば、CD147は、上皮細胞の麻疹ウイルス浸潤のための機能的侵入受容体であることが知られているWatanabe 2010。さらに、HIV-1感染中、CD147分子は、ウイルス関連CyPAとの相互作用を通じてHIV-1ウイルスによる宿主細胞の感染を促進し得る(Chenglong 2020)。いくつかの実施形態では、ウイルス感染は、麻疹、コロナウイルス、SARS、MERS、SARS-CoV-2、伝染性造血器壊死症ウイルス(IHNV)、パルボウイルス、単純ヘルペスウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ムンプスウイルス、風疹ウイルス、HIV、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、ロタウイルスA、ロタウイルスB、ロタウイルスC、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、水痘帯状疱疹、ポリオウイルス、免疫不全ウイルス(例えば、HIV)、エンベロープウイルス、RNAウイルス、および肝炎を含むがこれらに限定されないウイルスによって引き起こされる。
【0055】
マラリア感染
抗CD147抗体、その断片、または改変体は、対象におけるマラリアの症状を処置または低減するために使用され得る。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体、その断片、または改変体は、細胞内への1つもしくはそれを超える Plasmodium株の浸潤を防止、阻害、または低減するために使用され得る。いくつかの実施形態では、細胞は赤血球である。いくつかの実施形態では、Plasmodium株は、Plasmodium falciparum、Plasmodium malariae、Plasmodium ovale、Plasmodium vivax、およびPlasmodium knowlesiから選択される。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体、その断片、または改変体は、細胞内へのPlasmodium falciparumの浸潤を防止する。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体、その断片、または改変体は、細胞内への複数のPlasmodium株の浸潤を防止する。いくつかの実施形態では、PlasmodiumはPlasmodium falciparumである。いくつかの実施形態では、PlasmodiumはPlasmodium malariaeである。
【0056】
いくつかの実施形態では、抗CD147抗体もしくはその断片または改変体は、寄生虫血症を減少させる。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体またはその断片もしくは改変体は、血球における寄生虫血症を減少させる。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体またはその断片もしくは改変体は、10分~120時間以内に血球における寄生虫血症を減少させる。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体またはその断片もしくは改変体は、約10分以内、約20分以内、約30分以内、約40分以内、約50分以内、約1時間、約2時間以内、約3時間以内、約4時間以内、約5時間以内、約6時間以内、約7時間以内、約8時間以内、約9時間以内、約10時間以内、約12時間以内、約15時間以内、約20時間以内、約24時間以内、約25時間以内、約30時間以内、約35時間以内、約36時間以内、約40時間以内、約45時間以内、約48時間以内、約50時間以内、約55時間以内、約60時間以内、約65時間以内、約70時間以内、約75時間以内、約80時間以内、約85時間以内、約90時間以内、約95時間以内、約96時間以内、約100時間以内、約105時間以内、約110時間以内、約115時間以内、または約120時間以内に血球における寄生虫血症を減少させる。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体またはその断片もしくは改変体は、約48時間以内に血球における寄生虫血症を減少させる。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体またはその断片もしくは改変体は、約96時間以内に血球における寄生虫血症を減少させる。いくつかの実施形態では、血球は赤血球である。
【0057】
SARS-CoV-2
2022年1月現在、SARS-CoV-2は2億9,300万人を超える人々に感染しており(米国では5,500万人超)、世界中で540万人を超える命を奪っており(米国で821,408人超)、感染速度が弱まる兆候は全くなく、驚くべき速度(alarming rate)で広がり続けている。SARS-CoV-2の高い毒性および病原性に寄与する要因の1つは、複数の組織に感染する能力であり、重度の場合には臓器不全を起こして死に至らしめる。他のエンベロープウイルスと同様に、SARS-CoV-2は宿主細胞受容体を利用して宿主細胞に浸潤し、最終的に組織壊死、臓器損傷を起こして、結果的に死に至らしめる。CD147は、ウイルス侵入を促進するそのような宿主細胞受容体の1つである。
【0058】
アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)は、一般にSARS-CoV-2感染の主要な受容体として認識されているが、他の分子がこのウイルスの細胞指向性に有意に寄与することが報告されている。CD147は、最近、ウイルスのスパイクタンパク質認識結合ドメイン(RBD)との直接相互作用を介したSARS-CoV-2細胞浸潤におけるその役割について注目を集めており、抗CD147抗体で処置された患者のCOVID-19症状の早期消失を実証した非盲検臨床試験で潜在的な利益が観察されている。
【0059】
抗CD147抗体
いくつかの実施形態では、本開示は、CD147に結合する新規抗体、および状態または疾患の防止または改善におけるそれらの使用を提供する。いくつかの実施形態では、CD147は、細胞の表面に発現される。いくつかの実施形態では、本開示の抗CD147抗体は、それらの効果を直接的または間接的に発揮することができる。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、CD147に結合し、それによって、他に何か(例えば、ウイルスまたはがん細胞)によるCD147の結合を直接低減させるかまたは排除する。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、CD147受容体の結合を立体的に妨害し、それによって、その効果を間接的に発揮することができる。いくつかの実施形態では、抗CD147は、抗体-薬物コンジュゲートの一部として複合体化されたときにブロッキング剤を送達し、それによって、CD147受容体への結合を間接的に低減させるかまたは排除することができる。任意の抗CD147抗体は、完全ヒト、ヒト化、マウス、ラット、ウサギ、およびそれらの任意の組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体はヒト化されている。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は完全ヒト型である。
【0060】
いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、ヒトCD147ポリペプチド、そのアイソフォーム、または断片に結合する。いくつかの実施形態では、ヒトCD147はアイソフォームである。いくつかの実施形態では、CD147アイソフォームは、2つの免疫グロブリンドメインを有するbasiginまたはbasigin-2である。いくつかの実施形態では、CD147アイソフォームは、3つの免疫グロブリンドメインを有するbasigin-1である。いくつかの実施形態では、ヒトCD147ポリペプチドまたはその断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。いくつかの実施形態では、ヒトCD147ポリペプチドまたはその断片は、配列番号1と少なくとも約70%の配列同一性を含むポリペプチドである。いくつかの実施形態では、ヒトCD147ポリペプチドまたはその断片は、配列番号1と少なくとも約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.1%、約99.2%、約99.3%、約99.4%、約99.5%、約99.6%、約99.7%、約99.8%、約または約99.9%の配列同一性を含むポリペプチドである。いくつかの実施形態では、CD147ポリペプチド、そのアイソフォーム、または断片は、細胞の表面に発現される。いくつかの実施形態では、結合に関与するCD147ポリペプチド、そのアイソフォーム、または断片の部分の配列は変更されない。いくつかの実施形態では、結合に関与するCD147ポリペプチド、そのアイソフォーム、または断片の部分の配列は変更される。
【0061】
いくつかの実施形態では、ヒトCD147ポリペプチドまたは断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドのトランケーション(truncation)である。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端がトランケートされている。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、C末端がトランケートされている。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端およびC末端の両方がトランケートされている。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号1のポリペプチドと比較して、最大約20アミノ酸だけトランケートされている。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号1のポリペプチドと比較して、約20、約19、約18、約17、約16、約15、約14、約13、約12、約11、約10、約9、約8、約7、約6、約5、約4、約3、約2、または約1アミノ酸だけトランケートされている。
【0062】
いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、げっ歯類CD147ポリペプチドまたはその断片に結合する。いくつかの実施形態では、げっ歯類CD147ポリペプチドまたはその断片はラットCD147である。いくつかの実施形態では、げっ歯類CD147ポリペプチドまたはその断片はマウスCD147である。いくつかの実施形態では、マウスCD147ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。いくつかの実施形態では、ヒトCD147ポリペプチドは、配列番号2と少なくとも約70%の配列同一性を含むポリペプチドである。いくつかの実施形態では、ヒトCD147ポリペプチドは、配列番号2と少なくとも約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.1%、約99.2%、約99.3%、約99.4%、約99.5%、約99.6%、約99.7%、約99.8%、約または約99.9%の配列同一性を含むポリペプチドである。いくつかの実施形態では、CD147の結合に関与するポリペプチドの部分の配列は変更されない。いくつかの実施形態では、CD147の結合に関与するポリペプチドの部分の配列は変更される。
【0063】
いくつかの実施形態では、マウスCD147ポリペプチドまたは断片は、配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドのトランケーションである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端がトランケートされている。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、C末端がトランケートされている。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端およびC末端の両方がトランケートされている。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号2のポリペプチドと比較して、最大約20アミノ酸だけトランケートされている。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号2のポリペプチドと比較して、約20、約19、約18、約17、約16、約15、約14、約13、約12、約11、約10、約9、約8、約7、約6、約5、約4、約3、約2、または約1アミノ酸だけトランケートされている。
【0064】
いくつかの実施形態では、CD147は、内皮細胞、上皮細胞、ニューロン細胞、免疫細胞、血球、線維芽細胞、T細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、単球細胞、または単核細胞に発現される。いくつかの実施形態では、CD147は、細胞の表面に異常発現される。いくつかの実施形態では、CD147は、細胞の表面に過剰発現される。いくつかの実施形態では、CD147は、腫瘍間質の細胞によって発現される。
【0065】
いくつかの実施形態では、CD147ポリペプチドまたはその断片に結合する抗体は、完全長抗体、単一特異性抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、抗原結合領域、重鎖、軽鎖、VhH、Vh、Vl、CDR、可変ドメイン、scFv、Fc、Fv、Fab、F(ab)2、還元型IgG(rIgG)、単一特異性Fab2、二重特異性Fab2、三重特異性Fab3、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、三重特異性トリアボディ、ミニボディ、ナノボディ、IgNAR、V-NAR、HcIgG、またはそれらの組み合わせである。
【0066】
いくつかの実施形態では、記載される抗CD147抗体のいずれかは、1つもしくはそれを超えるリンカー、タグ、またはリンカーとタグとの両方を含み得る。例えば、抗CD147抗体融合コンストラクトのいずれかは、1つまたはそれを超えるリンカーによって連結され得る(例えば、表1の融合コンストラクトを参照のこと)。いくつかの実施形態では、リンカーは切断リンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは切断可能ではない。本開示のリンカーは、プロテアーゼ感受性、pH感受性、および/またはグルタチオン感受性であり得る。切断可能なリンカーは、標的部位でより効果的に薬物を放出するために利用され得る(例えば、腫瘍において)。例示的な切断可能なリンカーとしては、ヒドラゾン、SPDB、SPP、vc、va、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な切断可能ではないリンカーは、mccおよびmcを含む。いくつかの実施形態では、フレキシブルリンカー、例えば(GGGGS)(配列番号40)リンカーが融合コンストラクトで利用され得る。利用され得る別のリンカーは、EPKIPQPQPKPQPQPQPQPQPKPQPEP(配列番号41)配列を含む。いくつかの実施形態では、タグが利用され得る。例示的なタグは、DYKDDDDK(配列番号42)などのflagタグを含み得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、CD147ポリペプチドまたはその断片に結合する抗体は、VhH抗体を含む。いくつかの実施形態では、CD147ポリペプチドまたはその断片に結合する抗体は、VhH抗体である。いくつかの実施形態では、VhH抗体は、配列番号4~15のいずれかから選択される。いくつかの実施形態では、VhH抗体は、配列番号4~15のいずれかの配列に対して少なくとも約70%の配列同一性を含む。いくつかの実施形態では、VhH抗体は、配列番号4~15のいずれかの配列に対して少なくとも約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.1%、約99.2%、約99.3%、約99.4%、約99.5%、約99.6%、約99.7%、約99.8%、約または約99.9%の配列同一性を含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、配列番号4~15のいずれかの1つまたはそれを超えるものに見出される1つまたはそれを超えるCDRを含む。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、配列番号4~15のいずれかの1つまたはそれを超えるものに見出される1つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、配列番号4~15のいずれかの1つまたはそれを超えるものに見出される2つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、配列番号4~15のいずれかの異なる配列に見出される2つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、配列番号4~15のいずれかの1つまたはそれを超えるものに見出される3つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、配列番号4~15のいずれかの1つまたはそれを超える異なる配列に見出される3つのCDRを含む。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0069】
いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、配列番号16~39のいずれかに見出される1つまたはそれを超えるCDRのものと少なくとも70%同一のCDRを含む。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、配列番号16~39のいずれかの1つまたはそれを超えるものに見出される1つまたはそれを超えるCDRのものと少なくとも約70%同一の1つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、配列番号16~39のいずれかの1つまたはそれを超えるものに見出される1つまたはそれを超えるCDRと少なくとも約70%同一の2つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、配列番号16~39のいずれかの異なる配列に見出される1つまたはそれを超えるCDRと少なくとも約70%同一の2つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、配列番号16~39のいずれかの1つまたはそれを超えるものに見出される1つまたはそれを超えるCDRと少なくとも約70%同一の3つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、配列番号16~39のいずれかの1つまたはそれを超える異なる配列に見出される1つまたはそれを超えるCDRと少なくとも約70%同一の3つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを超えるCDRは、配列番号16~39のいずれかの1つまたはそれを超える異なる配列に見出される1つまたはそれを超えるCDRと少なくとも約60%、約65%、約70%、約75%、80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.1%、約99.2%、約99.3%、約99.4%、約99.5%、約99.6%、約99.7%、約99.8%、約または約99.9%である。
【0070】
いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、配列番号16~23からなる群から選択される配列に対して少なくとも約60%の同一性を含むCDR1を含む。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、配列番号24~31からなる群から選択される配列に対して少なくとも約60%の同一性を含むCDR2を含む。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、配列番号32~39からなる群から選択される配列に対して少なくとも約60%の同一性を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、それぞれ配列番号16、24、および32を含む、CDR1、CDR2、およびCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、それぞれ配列番号17、25、および33を含む、CDR1、CDR2、およびCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、それぞれ配列番号18、26、および34を含む、CDR1、CDR2、およびCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、それぞれ配列番号19、27、および35を含む、CDR1、CDR2、およびCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、それぞれ配列番号20、28、および36を含む、CDR1、CDR2、およびCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、それぞれ配列番号21、29、および37を含む、CDR1、CDR2、およびCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、それぞれ配列番号22、30、および38を含む、CDR1、CDR2、およびCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、それぞれ配列番号23、31、および39を含む、CDR1、CDR2、およびCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、3つのCDR1、CDR2、および/またはCDR3配列をタンデムに含む。実施形態では、抗CD147抗体は、本明細書に記載の融合コンストラクトのいずれかなどにおいて、CDR1、CDR2、またはCDR3を二連または三連で含む。いくつかの実施形態では、融合コンストラクトは、1つまたはそれを超えるリンカーとタンデムに、本明細書に記載のCDR配列のいずれか1つを含み得る。
【表2-1】
【0071】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗CD147抗体は、改変を含み得る。いくつかの実施形態では、改変は、アミノ酸の置換、欠失、および/または挿入を含む。改変に関して、これは、配列の任意の位置におけるアミノ酸の置換、欠失および/または挿入などの任意の改変を含み得る。したがって、改変は、配列および/または長さの改変を含み得る。いくつかの実施形態では、配列はCDR領域を含む。したがって、CDRは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、および最大約35アミノ酸残基の範囲の長さで変化するように改変され得る。同様に、CDRの任意の領域は、先に記載したとおりの、長さの範囲に及ぶ残基の置換、欠失、および/または挿入を含むように改変され得る。いくつかの実施形態では、改変は、約0~2個の残基の改変を含み得る。いくつかの実施形態では、改変は、CDR1、CDR2、および/またはCDR3のいずれか1つに約1~3、2~4、0~4、または1~5個の残基の改変を含み得る。いくつかの実施形態では、配列番号16~配列番号39のいずれか1つは、本明細書に記載の1つまたはそれを超える改変を有し得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、抗CD147抗体またはその断片(例えば、VhH、CDR)は、キメラ抗原受容体(CAR)の一部である。CARは、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインで構成される組換え受容体である。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫細胞からのシグナル伝達ドメインを含み得る。いくつかの実施形態では、免疫細胞は単核細胞である。いくつかの実施形態では、単核細胞は、PBMC、PBL、リンパ球、B細胞、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、樹状細胞、好酸球、好中球、好塩基球、または抗原提示細胞(APC)である。
【0073】
いくつかの実施形態では、CARの結合領域は、本明細書に開示されるCDR配列を含み得る。結合領域は、通常、例えばCD8由来の膜貫通領域と融合しており、これは細胞内シグナル伝達ドメインとも融合している。適切な細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ(CD3ζ)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、共通FcRガンマ(FCER1G)、FcRベータ(FcイプシロンR1b)、CD79a、CD79b、FcガンマRIIa、DAP10およびDAP12分子、またはそれらの組み合わせの細胞内シグナル領域配列を含み得る。いくつかの実施形態では、細胞内シグナルドメインはCD3ζ分子のシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナルドメインはまた、以下の共刺激シグナル分子:CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、CD2、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、LIGHT、NKG2C、B7-H3、PD-1、ICOS、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、CD7、NKp80(KLRF1)、CD160、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMFI、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、CD83に特異的に結合するリガンド、またはそれらの任意の組み合わせから選択され得る共刺激シグナルドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル分子は、4-1BBおよび/またはCD28である。いくつかの実施形態では、0~2個の共刺激シグナル伝達分子がCARに含まれる。
【0074】
本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、一般に、分子の単一の結合部位(例えば、抗体)と、その結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合的な相互作用の総和の強さを指す。特に断りのない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」とは、結合対(例えば、抗体および抗原)のメンバー間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性のことを指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(KD)によって表すことができる。親和性は、平衡解離定数(KD)、および平衡会合定数(KA)を含むがこれらに限定されない、当該技術分野で公知の多くの方法で測定および/または表現することができる。KDは、koff/konの商から計算され、KAは、kon/koffの商から計算され、例えば抗体の抗原に対する会合速度定数を指し、koffは、例えば抗体の抗原に対する解離を指す。konおよびkoffは、BIACORE(登録商標)またはKinExAなどの当業者に公知の技術によって決定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、約50nMまたはそれ未満のKDでCD147に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、約250pM~約1pMの範囲のKDでCD147に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、約100pM~約1pMの範囲のKDでCD147に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、約200nMまたはそれ未満のIC50でCD147に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、約100nM~約1nMのIC50でCD147に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、約10nM~約1nMのIC50でCD147に結合する。
【0075】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体またはその断片は、細胞の表面のCD147に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、がん細胞の表面のCD147に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、まだ転移性になっていないがん細胞の表面のCD147に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、転移性がん細胞の表面のCD147に結合する。
【0076】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体またはその断片は、ウイルス感染細胞の表面のCD147に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、ウイルスに感染していない細胞の表面のCD147に結合する。いくつかの実施形態では、細胞の表面のCD147への抗体の結合は、ウイルス感染を防止する。いくつかの実施形態では、抗体は、細胞の表面のウイルスとCD147との相互作用を妨害する。いくつかの実施形態では、抗体は、スパイクタンパク質とCD147との相互作用を妨害する。いくつかの実施形態では、スパイクタンパク質は、コロナウイルススパイクタンパク質である。いくつかの実施形態では、スパイクタンパク質は、SARS-CoV2スパイクタンパク質である。いくつかの実施形態では、抗体は、ウイルス/CD147相互作用を妨害し、他の細胞間のウイルス浸潤および/または伝播を阻害する。
【0077】
いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体は、ウイルスタンパク質とCD147との相互作用を完全に遮断する。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体は、未処置の細胞と比較して、ウイルスタンパク質とCD147との相互作用を減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体は、未処置の細胞と比較して、ウイルスタンパク質とCD147との相互作用を約99.9%~約1%減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体は、未処置の細胞と比較して、ウイルスタンパク質とCD147との相互作用を約99.9%、約99.8%、約99.7%、約99.6%、約99.5%、約99.4%、約99.3%、約99.2%、約99.1%、約99%、約98%、約97%、約96%、約95%、約94%、約93%、約92%、約91%、約90%、約89%、約88%、約87%、約86%、約85%、約84%、約83%、約82%、約81%、約80%、約79%、約78%、約77%、約76%、約75%、約74%、約73%、約72%、約71%、約70%、約69%、約68%、約67%、約66%、約65%、約64%、約63%、約62%、約61%、約60%、約59%、約58%、約57%、約56%、約55%、約54%、約53%、約52%、約51%、約50%、約49%、約48%、約47%、約46%、約45%、約44%、約43%、約42%、約41%、約40%、約39%、約38%、約37%、約36%、約35%、約34%、約33%、約32%、約31%、約30%、約29%、約28%、約27%、約26%、約25%、約24%、約23%、約22%、約21%、約20%、約19%、約18%、約17%、約16%、約15%、約14%、約13%、約12%、約11%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、または約1%減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体は、未処置の細胞と比較して、投与後約10分~約1日でウイルスタンパク質とCD147との相互作用を減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体は、未処置の細胞と比較して、投与後約5分、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約60分、約70分、約80分、約90分、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、または約24時間でウイルスタンパク質とCD147との相互作用を減少させる。
【0078】
いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体は、細胞へのウイルス浸潤を完全に防止する。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体は、未処置の細胞と比較して、細胞へのウイルス浸潤を減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体は、未処置の細胞と比較して、細胞へのウイルス浸潤を約99.9%~約1%減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体は、未処置の細胞と比較して、細胞へのウイルス浸潤を約99.9%、約99.8%、約99.7%、約99.6%、約99.5%、約99.4%、約99.3%、約99.2%、約99.1%、約99%、約98%、約97%、約96%、約95%、約94%、約93%、約92%、約91%、約90%、約89%、約88%、約87%、約86%、約85%、約84%、約83%、約82%、約81%、約80%、約79%、約78%、約77%、約76%、約75%、約74%、約73%、約72%、約71%、約70%、約69%、約68%、約67%、約66%、約65%、約64%、約63%、約62%、約61%、約60%、約59%、約58%、約57%、約56%、約55%、約54%、約53%、約52%、約51%、約50%、約49%、約48%、約47%、約46%、約45%、約44%、約43%、約42%、約41%、約40%、約39%、約38%、約37%、約36%、約35%、約34%、約33%、約32%、約31%、約30%、約29%、約28%、約27%、約26%、約25%、約24%、約23%、約22%、約21%、約20%、約19%、約18%、約17%、約16%、約15%、約14%、約13%、約12%、約11%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、または約1%減少させる。いくつかの実施形態では、抗体は、未処置の細胞と比較して、投与後約10分~約1日で細胞へのウイルス浸潤を減少させる。いくつかの実施形態では、抗体は、未処置の細胞と比較して、投与後約5分、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約60分、約70分、約80分、約90分、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、または約24時間で細胞へのウイルス浸潤を減少させる。いくつかの実施形態では、細胞は上皮細胞である。いくつかの実施形態では、抗CD147抗体は、本明細書に記載のウイルス感染性アッセイによって決定される場合、細胞へのウイルス浸潤を少なくとも約1倍、50倍、100倍、150倍、200倍、250倍、300倍、350倍、400倍、450倍、500倍、550倍、600倍、650倍、700倍、750倍、800倍、850倍、900倍、950倍、1000倍、1050倍、1100倍、1150倍、1200倍、1250倍、1300倍、1350倍、1400倍、1450倍、1500倍、1550倍、1600倍、1650倍、1700倍、1750倍、1800倍、1850倍、1900倍、1950倍、または最大約2000倍低減させるかまたは排除する。
【0079】
ウイルスの浸潤または感染は、インビトロアッセイを使用して決定することができる。いくつかの実施形態では、ウイルス量は、qRT-PCRによってウイルスRNAゲノムをカウントし、組織培養物中の感染単位の数を測定することによって定量することができる。第2のアプローチは、感受性哺乳動物細胞を対象サンプルの希釈液と共にインキュベートして、細胞の50%を死滅させるのに必要なサンプルの量を決定することを含む。この値を使用して、例えば、Reed and Muench法により、「50%組織培養感染量」またはTCID50の単位でサンプル中の感染力価を逆算する。
【0080】
いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体は、細胞間のウイルス伝播を完全に防止する。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体は、未処置の対象または細胞培養物におけるものと比較して、細胞間のウイルス伝播を減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体は、未処置の対象または細胞培養物におけるものと比較して、細胞間のウイルス伝播を約99.9%~約1%減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体は、未処置の対象または細胞培養物におけるものと比較して、細胞間のウイルス伝播を約99.9%、約99.8%、約99.7%、約99.6%、約99.5%、約99.4%、約99.3%、約99.2%、約99.1%、約99%、約98%、約97%、約96%、約95%、約94%、約93%、約92%、約91%、約90%、約89%、約88%、約87%、約86%、約85%、約84%、約83%、約82%、約81%、約80%、約79%、約78%、約77%、約76%、約75%、約74%、約73%、約72%、約71%、約70%、約69%、約68%、約67%、約66%、約65%、約64%、約63%、約62%、約61%、約60%、約59%、約58%、約57%、約56%、約55%、約54%、約53%、約52%、約51%、約50%、約49%、約48%、約47%、約46%、約45%、約44%、約43%、約42%、約41%、約40%、約39%、約38%、約37%、約36%、約35%、約34%、約33%、約32%、約31%、約30%、約29%、約28%、約27%、約26%、約25%、約24%、約23%、約22%、約21%、約20%、約19%、約18%、約17%、約16%、約15%、約14%、約13%、約12%、約11%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、または約1%減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体は、未処置の対象または細胞培養物中のものと比較して、投与後約10分~約1日で細胞間のウイルス伝播を減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体は、未処置の対象または細胞培養物におけるものと比較して、投与後約5分、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約60分、約70分、約80分、約90分、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、または約24時間で細胞間のウイルス伝播を減少させる。
【0081】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、対象における炎症を減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、類似する未処置の対象または抗体の投与前の同じ対象における炎症のレベルと比較して、炎症を減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、類似する未処置の対象または抗体の投与前の同じ対象における炎症のレベルと比較して、炎症を約99.9%~約1%減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、類似する未処置の対象または抗体の投与前の同じ対象における炎症のレベルと比較して、炎症を約99.9%、約99.8%、約99.7%、約99.6%、約99.5%、約99.4%、約99.3%、約99.2%、約99.1%、約99%、約98%、約97%、約96%、約95%、約94%、約93%、約92%、約91%、約90%、約89%、約88%、約87%、約86%、約85%、約84%、約83%、約82%、約81%、約80%、約79%、約78%、約77%、約76%、約75%、約74%、約73%、約72%、約71%、約70%、約69%、約68%、約67%、約66%、約65%、約64%、約63%、約62%、約61%、約60%、約59%、約58%、約57%、約56%、約55%、約54%、約53%、約52%、約51%、約50%、約49%、約48%、約47%、約46%、約45%、約44%、約43%、約42%、約41%、約40%、約39%、約38%、約37%、約36%、約35%、約34%、約33%、約32%、約31%、約30%、約29%、約28%、約27%、約26%、約25%、約24%、約23%、約22%、約21%、約20%、約19%、約18%、約17%、約16%、約15%、約14%、約13%、約12%、約11%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、または約1%減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、類似する未処置の対象または抗体の投与前の同じ対象における炎症のレベルと比較して、投与後約10分~約1日で炎症を減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、類似する未処置の対象または抗体の投与前の同じ対象における炎症のレベルと比較して、投与後約5分、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約60分、約70分、約80分、約90分、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、または約24時間で炎症を減少させる。
【0082】
いくつかの実施形態では、炎症は炎症性肺損傷をもたらす。炎症性肺損傷の減少は、当該技術分野で公知の任意の手段によって測定され得る。例えば、炎症性肺損傷および/またはその症状は、患者の酸素レベルの変化、呼気一酸化窒素、呼吸数、または肺活量測定による測定値を評価することによって測定され得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、対象におけるプロテイナーゼ活性を減少させる。いくつかの実施形態では、プロテイナーゼはメタロプロテイナーゼである。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片またはその改変体の投与は、類似する未処置の対象または抗体の投与前の同じ対象におけるレベルと比較して、プロテイナーゼ活性を減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、類似する未処置の対象または抗体の投与前の同じ対象におけるレベルと比較して、プロテイナーゼ活性を約99.9%~約1%減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、類似する未処置の対象または抗体の投与前の同じ対象におけるレベルと比較して、プロテイナーゼ活性を約99.9%、約99.8%、約99.7%、約99.6%、約99.5%、約99.4%、約99.3%、約99.2%、約99.1%、約99%、約98%、約97%、約96%、約95%、約94%、約93%、約92%、約91%、約90%、約89%、約88%、約87%、約86%、約85%、約84%、約83%、約82%、約81%、約80%、約79%、約78%、約77%、約76%、約75%、約74%、約73%、約72%、約71%、約70%、約69%、約68%、約67%、約66%、約65%、約64%、約63%、約62%、約61%、約60%、約59%、約58%、約57%、約56%、約55%、約54%、約53%、約52%、約51%、約50%、約49%、約48%、約47%、約46%、約45%、約44%、約43%、約42%、約41%、約40%、約39%、約38%、約37%、約36%、約35%、約34%、約33%、約32%、約31%、約30%、約29%、約28%、約27%、約26%、約25%、約24%、約23%、約22%、約21%、約20%、約19%、約18%、約17%、約16%、約15%、約14%、約13%、約12%、約11%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、または約1%減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、類似する未処置の対象または抗体の投与前の同じ対象におけるレベルと比較して、投与後約10分~約1日でプロテイナーゼ活性を減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、類似する未処置の対象または抗体の投与前の同じ対象におけるプロテイナーゼ活性のレベルと比較して、投与後約5分、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約60分、約70分、約80分、約90分、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、または約24時間でプロテイナーゼ活性を減少させる。いくつかの実施形態では、プロテイナーゼは、CD147を発現する細胞によって産生および/または分泌される。いくつかの実施形態では、プロテイナーゼは、がん細胞によって産生および/または分泌される。いくつかの実施形態では、プロテイナーゼは、CD147を発現するがん細胞によって産生および/または分泌される。
【0084】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、対象におけるマトリックス分解を減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片またはその改変体の投与は、類似する未処置の対象または抗体の投与前の同じ対象におけるレベルと比較して、マトリックス分解を減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、類似する未処置の対象または抗体の投与前の同じ対象におけるレベルと比較して、マトリックス分解を約99.9%~約1%減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、類似する未処置の対象または抗体の投与前の同じ対象におけるレベルと比較して、マトリックス分解を約99.9%、約99.8%、約99.7%、約99.6%、約99.5%、約99.4%、約99.3%、約99.2%、約99.1%、約99%、約98%、約97%、約96%、約95%、約94%、約93%、約92%、約91%、約90%、約89%、約88%、約87%、約86%、約85%、約84%、約83%、約82%、約81%、約80%、約79%、約78%、約77%、約76%、約75%、約74%、約73%、約72%、約71%、約70%、約69%、約68%、約67%、約66%、約65%、約64%、約63%、約62%、約61%、約60%、約59%、約58%、約57%、約56%、約55%、約54%、約53%、約52%、約51%、約50%、約49%、約48%、約47%、約46%、約45%、約44%、約43%、約42%、約41%、約40%、約39%、約38%、約37%、約36%、約35%、約34%、約33%、約32%、約31%、約30%、約29%、約28%、約27%、約26%、約25%、約24%、約23%、約22%、約21%、約20%、約19%、約18%、約17%、約16%、約15%、約14%、約13%、約12%、約11%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、または約1%減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片またはその改変体の投与は、類似の未処置対象または抗体の投与前の同じ対象におけるレベルと比較して、投与後約10分~約1日でマトリックス分解を減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、類似の未処置対象または抗体の投与前の同じ対象におけるレベルと比較して、投与後約5分、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約60分、約70分、約80分、約90分、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間または約24時間でマトリックス分解を減少させる。
【0085】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、対象における細胞浸潤を減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片またはその改変体の投与は、類似する未処置の対象または抗体の投与前の同じ対象におけるレベルと比較して、細胞浸潤を減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、類似する未処置の対象または抗体の投与前の同じ対象におけるレベルと比較して、細胞浸潤を約99.9%~約1%減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、類似する未処置の対象または抗体の投与前の同じ対象におけるレベルと比較して、細胞浸潤を約99.9%、約99.8%、約99.7%、約99.6%、約99.5%、約99.4%、約99.3%、約99.2%、約99.1%、約99%、約98%、約97%、約96%、約95%、約94%、約93%、約92%、約91%、約90%、約89%、約88%、約87%、約86%、約85%、約84%、約83%、約82%、約81%、約80%、約79%、約78%、約77%、約76%、約75%、約74%、約73%、約72%、約71%、約70%、約69%、約68%、約67%、約66%、約65%、約64%、約63%、約62%、約61%、約60%、約59%、約58%、約57%、約56%、約55%、約54%、約53%、約52%、約51%、約50%、約49%、約48%、約47%、約46%、約45%、約44%、約43%、約42%、約41%、約40%、約39%、約38%、約37%、約36%、約35%、約34%、約33%、約32%、約31%、約30%、約29%、約28%、約27%、約26%、約25%、約24%、約23%、約22%、約21%、約20%、約19%、約18%、約17%、約16%、約15%、約14%、約13%、約12%、約11%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、または約1%減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片またはその改変体の投与は、類似の未処置対象または抗体の投与前の同じ対象におけるレベルと比較して、投与後約10分~約1日で細胞浸潤を減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、類似の未処置対象または抗体の投与前の同じ対象におけるレベルと比較して、投与後約5分、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約60分、約70分、約80分、約90分、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間または約24時間で細胞浸潤を減少させる。いくつかの実施形態では、細胞は腫瘍細胞である。
【0086】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、対象における腫瘍細胞転移を減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片またはその改変体の投与は、類似する未処置の対象または抗体の投与前の同じ対象におけるレベルと比較して、腫瘍細胞転移を減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、類似する未処置の対象または抗体の投与前の同じ対象におけるレベルと比較して、腫瘍細胞転移を約99.9%~約1%減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、類似する未処置の対象または抗体の投与前の同じ対象におけるレベルと比較して、腫瘍細胞転移を約99.9%、約99.8%、約99.7%、約99.6%、約99.5%、約99.4%、約99.3%、約99.2%、約99.1%、約99%、約98%、約97%、約96%、約95%、約94%、約93%、約92%、約91%、約90%、約89%、約88%、約87%、約86%、約85%、約84%、約83%、約82%、約81%、約80%、約79%、約78%、約77%、約76%、約75%、約74%、約73%、約72%、約71%、約70%、約69%、約68%、約67%、約66%、約65%、約64%、約63%、約62%、約61%、約60%、約59%、約58%、約57%、約56%、約55%、約54%、約53%、約52%、約51%、約50%、約49%、約48%、約47%、約46%、約45%、約44%、約43%、約42%、約41%、約40%、約39%、約38%、約37%、約36%、約35%、約34%、約33%、約32%、約31%、約30%、約29%、約28%、約27%、約26%、約25%、約24%、約23%、約22%、約21%、約20%、約19%、約18%、約17%、約16%、約15%、約14%、約13%、約12%、約11%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、または約1%減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片またはその改変体の投与は、類似の未処置対象または抗体の投与前の同じ対象におけるレベルと比較して、投与後約10分~約1日で腫瘍細胞転移を減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、類似の未処置対象または抗体の投与前の同じ対象におけるレベルと比較して、投与後約5分、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約60分、約70分、約80分、約90分、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間または約24時間で腫瘍細胞転移を減少させる。
【0087】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、対象における腫瘍細胞生存率を減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片またはその修飾物の投与は、類似する未処置の対象または抗体の投与前の同じ対象におけるレベルと比較して、腫瘍細胞生存率を減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、類似する未処置対象または抗体の投与前の同じ対象におけるレベルと比較して、腫瘍細胞生存率を約99.9%~約1%減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、類似する未処置対象または抗体の投与前の同じ対象におけるレベルと比較して、腫瘍細胞生存率を約99.9%、約99.8%、約99.7%、約99.6%、約99.5%、約99.4%、約99.3%、約99.2%、約99.1%、約99%、約98%、約97%、約96%、約95%、約94%、約93%、約92%、約91%、約90%、約89%、約88%、約87%、約86%、約85%、約84%、約83%、約82%、約81%、約80%、約79%、約78%、約77%、約76%、約75%、約74%、約73%、約72%、約71%、約70%、約69%、約68%、約67%、約66%、約65%、約64%、約63%、約62%、約61%、約60%、約59%、約58%、約57%、約56%、約55%、約54%、約53%、約52%、約51%、約50%、約49%、約48%、約47%、約46%、約45%、約44%、約43%、約42%、約41%、約40%、約39%、約38%、約37%、約36%、約35%、約34%、約33%、約32%、約31%、約30%、約29%、約28%、約27%、約26%、約25%、約24%、約23%、約22%、約21%、約20%、約19%、約18%、約17%、約16%、約15%、約14%、約13%、約12%、約11%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、または約1%減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片またはその改変体の投与は、類似の未処置対象または抗体の投与前の同じ対象におけるレベルと比較して、投与後約10分~約1日で腫瘍細胞生存率を減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、類似の未処置対象または抗体の投与前の同じ対象におけるレベルと比較して、投与後約5分、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約60分、約70分、約80分、約90分、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間または約24時間で腫瘍細胞生存率を減少させる。
【0088】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、対象における血管新生を減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片またはその改変体の投与は、類似する未処置の対象または抗体の投与前の同じ対象におけるレベルと比較して、血管新生を減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、類似する未処置の対象または抗体の投与前の同じ対象におけるレベルと比較して、血管新生を約99.9%~約1%減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、類似する未処置の対象または抗体の投与前の同じ対象におけるレベルと比較して、血管新生を約99.9%、約99.8%、約99.7%、約99.6%、約99.5%、約99.4%、約99.3%、約99.2%、約99.1%、約99%、約98%、約97%、約96%、約95%、約94%、約93%、約92%、約91%、約90%、約89%、約88%、約87%、約86%、約85%、約84%、約83%、約82%、約81%、約80%、約79%、約78%、約77%、約76%、約75%、約74%、約73%、約72%、約71%、約70%、約69%、約68%、約67%、約66%、約65%、約64%、約63%、約62%、約61%、約60%、約59%、約58%、約57%、約56%、約55%、約54%、約53%、約52%、約51%、約50%、約49%、約48%、約47%、約46%、約45%、約44%、約43%、約42%、約41%、約40%、約39%、約38%、約37%、約36%、約35%、約34%、約33%、約32%、約31%、約30%、約29%、約28%、約27%、約26%、約25%、約24%、約23%、約22%、約21%、約20%、約19%、約18%、約17%、約16%、約15%、約14%、約13%、約12%、約11%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、または約1%減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片またはその改変体の投与は、類似の未処置対象または抗体の投与前の同じ対象におけるレベルと比較して、投与後約10分~約1日で血管新生を減少させる。いくつかの実施形態では、抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、類似の未処置対象または抗体の投与前の同じ対象におけるレベルと比較して、投与後約5分、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約60分、約70分、約80分、約90分、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間または約24時間で血管新生を減少させる。いくつかの実施形態では、対象はがんを有する。いくつかの実施形態では、血管形成は腫瘍特異的血管新生である。
【0089】
抗体-薬物コンジュゲート(ADC)
いくつかの実施形態では、提供される抗CD147抗体のいずれかは、ADCの一部として薬物と融合され得る。いくつかの実施形態では、抗体は、表1または表2に記載の前述のコンストラクトのいずれかを含む。抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、永続的または不安定なリンカーのいずれかを用いて、小分子薬物または別の治療薬を抗体に付着させることによって構築することができる。抗体は、典型的には標的細胞に見られる特定の抗原を標的とする。それが一旦細胞に結合すると、薬物と一緒に抗体の内在化を引き起こす。これにより、疾患細胞または標的細胞に対して非常に高い特異性で薬物を送達し、それらの有効性を最大化し、副作用の関連リスクを伴う全身曝露を最小限に抑える。いくつかの実施形態では、リンカーを利用して抗体を薬物と連結する。リンカーは、通常、標的外組織の周囲での薬物の放出を回避するために安定化され、リンカーは、抗体に結合している間、コンジュゲートを不活性で非毒性の状態に維持し得る。いくつかの実施形態では、リンカーは、標的細胞内へのADCの内在化の際に薬物を放出する特性を有するべきである。いくつかの実施形態では、先に記載したリンカーのいずれかをADCコンストラクトに利用することができる。いくつかの実施形態では、ADCの一部である薬物は、抗がん薬、抗マラリア薬、抗ウイルス薬、抗炎症薬、および毒素からなる群から選択される。
【0090】
いくつかの実施形態では、薬物は抗ウイルス薬である。いくつかの実施形態では、抗ウイルス薬は抗SARS-CoV-2薬である。いくつかの実施形態では、抗SARS-CoV-2薬は、バムラニビマブ、エテセビマブ、カシリビマブ、インデビマブ、およびソトロビマブを含むがこれらに限定されないモノクローナル抗体を含む。いくつかの実施形態では、抗SARS-CoV-2薬物は抗体ではない。いくつかの実施形態では、薬物は抗がん薬である。いくつかの実施形態では、抗がん薬は免疫療法を含む。いくつかの実施形態では、免疫療法は、抗体、チェックポイント阻害剤、細胞療法、サイトカイン、腫瘍溶解性ウイルス、およびワクチンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、抗がん薬は細胞傷害剤を含む。いくつかの実施形態では、免疫療法は抗体を含む。企図される抗体としては、ゲムツズマブ、イノツズマブ、抗B4-bR、デニロイキン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、薬物は毒素を含む。適切な毒素は、シュードモナス外毒素および/またはジフテリア毒素を含む。いくつかの実施形態では、ADCは、配列番号14の抗CD147抗体を含む。いくつかの実施形態では、ADCは、配列番号12の抗CD147抗体を含む。いくつかの実施形態では、薬物は成長因子を含む。例示的な成長因子としては、IL-2、IL-13、TGFα、GM-CSF、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0091】
処置方法
いくつかの実施形態では、本開示は、CD147発現および/またはその症状に関連する障害を処置、改善、または防止する方法を提供する。
【0092】
いくつかの実施形態では、本開示は、必要とする対象に本開示の抗CD147抗体、抗体断片、またはその改変体の医薬組成物を投与することを含む、がんを処置、改善、または防止する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示の抗CD147抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、対象における腫瘍の成長またはがん細胞の増殖を防止または遅延させる。いくつかの実施形態では、本開示の抗CD147抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、対象におけるがん細胞の進行を防止または遅延させる。いくつかの実施形態では、本開示の抗CD147抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、対象におけるがん細胞転移を防止または遅延させる。いくつかの実施形態では、本開示の抗CD147抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、対象における血管新生を防止または遅延させる。いくつかの実施形態では、本開示の抗CD147抗体、抗体断片、またはその改変体の投与は、対象における細胞浸潤を防止または遅延させる。いくつかの実施形態では、がんとしては、乳がん、肺がん、前立腺がん、卵巣がん、脳がん、肝臓がん、子宮頸がん、結腸がん、腎臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、骨がん、食道がん、膀胱がん、子宮がん、リンパがん、胃がん、膵臓がん、精巣がん、白血病、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、およびマントル細胞リンパ腫(MCL)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
いくつかの実施形態では、本開示は、必要とする対象に本開示の抗CD147抗体、抗体断片、またはその改変体の医薬組成物を投与することを含む、炎症性または自己免疫障害を処置、改善、または防止する方法を提供する。いくつかの実施形態では、自己免疫障害または炎症性障害としては、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、セリアック病、炎症性腸疾患、橋本病、アジソン病、グレーブス病、I型糖尿病、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、クローン病、多発性硬化症、および重症筋無力症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
いくつかの実施形態では、本開示は、必要とする対象に本開示の抗CD147抗体、抗体断片、またはその改変体を含む医薬組成物を投与することを含む、ウイルス感染症状および/または関連状態を処置または防止する方法を提供する。いくつかの実施形態では、ウイルス感染は、麻疹、コロナウイルス、SARS、MERS、SARS-CoV-2、伝染性造血器壊死症ウイルス(IHNV)、パルボウイルス、単純ヘルペスウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ムンプスウイルス、風疹ウイルス、HIV、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、ロタウイルスA、ロタウイルスB、ロタウイルスC、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、水痘帯状疱疹、ポリオウイルス、免疫不全ウイルス(例えば、HIV)、エンベロープウイルス、RNAウイルス、および肝炎を含むがこれらに限定されないウイルスによって引き起こされる。いくつかの実施形態では、ウイルス感染はコロナウイルス感染である。いくつかの実施形態では、コロナウイルス感染症はSARS-CoV-2感染である。アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、イプシロン、ジータ、イータ、シータ、イオタ、カッパ、ラムダ、ミュー、ニュー、クシー、オミクロン、パイ、ロー、シグマ、タウ、ウプシロン、ファイ、カイ、プサイ、またはオメガを含むがこれらに限定されないSARS-CoV-2の任意の株を本開示の抗体で処置することができる。いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2株は、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、および/またはオミクロンのうちの1つもしくはそれを超えるものである。
【0095】
いくつかの実施形態では、症状および/または関連状態は、呼吸困難および/または呼吸不全である。いくつかの実施形態では、呼吸不全は、以下:気管内挿管および機械換気、高流量鼻カニューレによって送達される酸素;強化鼻カニューレを介して>20L/分の流量で送達される、加熱され、加湿された酸素(送達される酸素の割合≧0.5)、非侵襲的陽圧換気、体外式膜型人工肺(ECMO)、および/または呼吸不全の臨床診断(例えば、先行する治療のうちの1つを臨床的に必要とするが、先行する治療は資源制限のある状況では施行することができない)のうちの少なくとも1つを必要とする資源利用に基づいて定義される。
【0096】
医薬組成物および投与
本開示は、1つまたはそれを超える薬学的に許容され得る賦形剤および/または希釈剤を有する、本開示の抗CD147抗体、抗体断片、またはその改変体を含む医薬組成物を提供する。例えば、そのような賦形剤としては、塩、および水素結合を安定化するように作用し得る他の賦形剤が挙げられる。当該技術分野で公知の任意の適切な賦形剤を使用することができる。例示的な賦形剤としては、ヒスチジン、グリシン、またはアルギニンなどのアミノ酸;グリセロール;スクロースなどの糖;ポリソルベート20およびポリソルベート80などの界面活性剤;クエン酸;クエン酸ナトリウム;酸化防止剤;ナトリウム、カリウム、およびカルシウムなどのアルカリ土類金属塩を含む塩;塩化物およびリン酸塩などの対イオン;防腐剤;糖アルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール);ならびに緩衝剤が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸カリウム、および二塩基性リン酸カリウムが挙げられる。特定の実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、増強された有効性、バイオアベイラビリティ、治療半減期、持続性、分解耐性などを有する。
【0097】
医薬製剤は、凍結、冷蔵または室温で保存することができる。保存条件は、凍結点未満、例えば約-10℃未満、または約-20℃未満、または約-40℃未満、または約-70℃未満であり得る。いくつかの実施形態では、医薬製剤は2°~8℃で保存される。例えば、医薬製剤は、血液と等張であってもよく、または生理学的条件を模倣するイオン強度を有してもよい。例えば、製剤は、少なくとも25mM塩化ナトリウムのイオン強度、または少なくとも30mM塩化ナトリウムのイオン強度、または少なくとも40mM塩化ナトリウムのイオン強度、または少なくとも50mM塩化ナトリウムのイオン強度、または少なくとも75mM塩化ナトリウムのイオン強度、または少なくとも100mM塩化ナトリウムのイオン強度、または少なくとも150mM塩化ナトリウムのイオン強度を有し得る。特定の実施形態では、製剤は、0.9%食塩水(154mM塩化ナトリウム)のイオン強度と同等のイオン強度を有する。
【0098】
いくつかの実施形態では、医薬製剤は、生理学的pHで製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬製剤は、約5.5~約8.5の範囲のpHで製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬製剤は、約6.0~約8.0の範囲のpHで製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬製剤は、約6.5~約7.5の範囲のpHで製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬製剤は、7.5のpHで製剤化される。いくつかの実施形態では、より低いpHを有する医薬製剤は、より高いpHの製剤と比較して改善された製剤安定性を示す。いくつかの実施形態では、より高いpHを有する医薬製剤は、より低いpHの製剤と比較して改善された製剤安定性を示す。
【0099】
いくつかの実施形態では、医薬製剤は、保存条件で安定である。安定性は、当該技術分野における任意の適切な手段を使用して測定することができる。一般に、安定な製剤は、分解生成物または不純物の増加が5%未満を示す製剤である。いくつかの実施形態では、製剤は、保存条件で少なくとも約1ヶ月間、少なくとも約2ヶ月間、少なくとも約3ヶ月間、少なくとも約4ヶ月間、少なくとも約5ヶ月間、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約1年間、または少なくとも約2年またはそれを超えて安定である。いくつかの実施形態では、製剤は、25℃で少なくとも約1ヶ月間、少なくとも約2ヶ月間、少なくとも約3ヶ月間、少なくとも約4ヶ月間、少なくとも約5ヶ月間、少なくとも約6ヶ月間、または少なくとも約1年間またはそれを超えて安定である。
【0100】
別の実施形態では、本開示は、本明細書に開示される医薬製剤を送達するための方法を提供する。本方法は、必要とする対象に本明細書に記載の医薬製剤を投与することを含み、医薬製剤は、1ヶ月当たり約1~約31回投与される。いくつかの実施形態では、医薬製剤は、1ヶ月当たり約1回、約2回、約3回および/または約4回投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、毎日投与される。いくつかの実施形態では、医薬は、毎週投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、毎週投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、毎週1~3回投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、2週間毎に1回投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、月に1~2回投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1ヶ月当たり約1回投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、2ヶ月毎に約1回、3ヶ月毎に約1回、4ヶ月毎に約1回、5ヶ月毎に約1回、および/または6ヶ月毎に約1回投与される。
【0101】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、処置されている障害の少なくとも1つまたはそれを超える症状が低減および/または改善されるまで投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、少なくとも1つまたはそれを超える症状が改善されるまで投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、少なくとも1つまたはそれを超えるそれの症状が遅延するまで投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、障害が治癒するまで投与される。
【0102】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、患者が1つまたはそれを超える症状を示し始める前に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、症状の発症時に投与される。
【0103】
医薬組成物は、任意の公知の経路によって、例えば、経口、静脈内、筋肉内、経鼻、皮下、非経口、吸入を介して、または皮内に投与され得る。いくつかの実施形態では、製剤は、一般に皮下投与用である。いくつかの実施形態では、製剤は、一般に静脈内投与用である。
【0104】
当業者は、各場合において望ましい用量を決定することができるが、治療上の利益を達成するための医薬組成物の適切な用量は、例えば、レシピエントの体重1キログラム当たり約1マイクログラム(μg)~約100ミリグラム(mg)の範囲、好ましくは体重1キログラム当たり約10μg~約50mgの範囲、最も好ましくは体重1キログラム当たり約100μg~約10mgの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、低用量で投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、0.1mg/キログラム/体重~約9mg/キログラム/体重の用量で投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.05mg/キログラム体重、約0.1mg/キログラム体重、約0.2mg/キログラム体重、約0.4mg/キログラム体重、約0.5mg/キログラム体重、約0.8mg/キログラム体重、約1mg/キログラム体重、約1.2mg/キログラム体重、約2mg/キログラム体重、約3mg/キログラム体重、および/または約9mg/キログラム体重で投与される。所望の用量を毎週投与することができる。
【0105】
治療上の利益を達成するための医薬組成物の適切な用量は、例えば、レシピエントの体重1キログラム当たり約1マイクログラム(μg)~約10ミリグラム(mg)の範囲、好ましくは体重1キログラム当たり約10μg~約5mgの範囲、最も好ましくは体重1キログラム当たり約100μg~約2mgの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、低用量で投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、0.1mg/キログラム/体重~約9mg/キログラム/体重の用量で投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.05mg/キログラム体重、約0.1mg/キログラム体重、約0.2mg/キログラム体重、約0.4mg/キログラム体重、約0.5mg/キログラム体重、約0.8mg/キログラム体重、約1mg/キログラム体重、約1.2mg/キログラム体重、約2mg/キログラム体重、約3mg/キログラム体重、および/または約9mg/キログラム体重で投与される。所望の用量は、適切な間隔で投与される1つの用量、または2つもしくはそれを超える部分用量として提示され得る。これらの部分用量は、例えば、単位剤形当たり約10μg~約1000mg、好ましくは約50μg~約500mg、最も好ましくは約50μg~約250mgの有効成分を含有する単位剤形で投与され得る。あるいは、レシピエントの状態によって必要であれば、用量は連続注入として投与され得る。
【0106】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1mg~約1gまたはそれを超える用量で、患者の体重にかかわらず、固定用量で投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1.0mg、約1.1mg、約1.2mg、約1.3mg、約1.4mg、約1.5mg、約1.6mg、約1.7mg、約1.8mg、約1.9mg、約2.0mg、約3.0mg、約4.0mg、約5.0mg、約6.0mg、約7.0mg、約8.0mg、約9.0mg、約10.0mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約310mg、約320mg、約330mg、約340mg、約350mg、約360mg、約370mg、約380mg、約390mg、約400mg、約410mg、約420mg、約430mg、約440mg、約450mg、約460mg、約470mg、約480mg、約490mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1gまたはそれより多くの用量で投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約10mg、40mg、または100mgの用量で投与される。
【0107】
医薬組成物は、約1日~約1年またはそれを超えて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月またはそれを超えて投与される。
【0108】
特定の実施形態では、対象はヒトであるが、他の実施形態では、飼い馴らされた愛玩動物(例えば、イヌもしくはネコ)、または家畜もしくは農場動物(例えば、ウマ、ウシ、ヒツジもしくはブタ)などの非ヒト哺乳動物であり得る。
【0109】
患者集団
任意の適切な対象に、本開示の医薬組成物が投与され得る。いくつかの実施形態では、対象は、ウイルス感染、がんの発症、または自己免疫もしくは炎症性障害の発症のリスクがある。いくつかの実施形態では、患者は、本明細書に記載の障害の有害なまたは生命を脅かす影響を発症するリスクがある。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載の障害の有害なまたは生命を脅かす影響を経験している。
【0110】
いくつかの実施形態では、対象は、SARS-CoV-2に感染しているか、またはそれに感染していると推定される。いくつかの実施形態では、対象は、COVID-19、ARDSを有し、および/またはCOVID-19もしくはARDSに関連する症状を経験している。いくつかの実施形態では、対象は入院している。いくつかの実施形態では、患者は、COVID-19、ARDSの軽度の症例を有し、および/またはCOVID-19もしくはARDSに関連する軽度の症状を経験している。いくつかの実施形態では、対象は、COVID-19、ARDSの中等度の症例を有し、および/またはCOVID-19もしくはARDSに関連する中等度の症状を経験している。いくつかの実施形態では、対象は、COVID-19、ARDSの重度の症例を有し、および/またはCOVID-19に関連する重度の症状(例えば、急速な臨床的悪化、ARDSおよび/または死亡)を経験している。いくつかの実施形態では、患者は、補助呼吸を必要とする。いくつかの実施形態では、患者は、酸素補給を受けている。いくつかの実施形態では、患者は、フェイスマスクまたはプロング付き鼻カニューレによって酸素補給を受けている。いくつかの実施形態では、患者は、呼吸するために人工呼吸器を必要とする。いくつかの実施形態では、患者は、低い酸素飽和度レベルを示す。いくつかの実施形態では、患者は、呼吸数の増加(例えば、24回/分を超える呼吸)を示す。いくつかの実施形態では、患者は、発熱を伴う(例えば、100.4°Fまたは38℃を超える体温)。いくつかの実施形態では、患者は、より重度のCOVID-19、ARDS、またはその症状に進行するリスクがあり、本開示の医薬組成物は、症状が悪化する前に投与される。
【0111】
いくつかの実施形態では、患者は、1)標準的なRT-PCRアッセイまたは同等のものによる試験陽性、2)発熱、咳、咽頭痛、倦怠感、頭痛、筋肉痛、胃腸症状を含み得る、呼吸困難の息切れを伴わないCOVID-19を有する軽度の病気の症状;および/または3)中程度、重度、または重症COVID-19を示す臨床徴候がないことによって、軽度のCOVID-19を有すると決定される。
【0112】
いくつかの実施形態では、患者は、1)標準的なRT-PCRアッセイまたは同等のものによる試験陽性、2)軽度の病気または運動に伴う息切れの任意の症状を含み得る、COVID-19を有する中程度の病気の症状;3)呼吸数≧20回/分、海面位で室内空気における酸素飽和度(SpO)>93%、心拍数≧90回/分などの、COVID-19を有する中程度の病気を示唆する臨床徴候、および/または4)重度もしくは重症の病気を示す臨床徴候がないことによって、中等度のCOVID-19を有すると決定される。
【0113】
いくつかの実施形態では、患者は、1)標準的なRT-PCRアッセイまたは同等のものによる試験陽性、2)中程度の病気もしくは安静時の息切れ、または呼吸困難の任意の症状を含み得る、COVID-19を有する重度の全身性疾患を示唆する症状;3)呼吸数≧30回/分、心拍数≧125回/分、海面位で室内空気におけるSpO≦93%、もしくはPaO/FiO<300などの、COVID-19を有する重度の全身性疾患を示す臨床徴候および/または4)重症重度(critical severity)についての基準がないことによって、重度のCOVID-19を有すると決定される。
【0114】
いくつかの実施形態では、患者は、1)標準的なRT-PCRアッセイまたは同等のものによる試験陽性、2)以下:a)気管内挿管および機械換気、高流量鼻カニューレによって送達される酸素;強化鼻カニューレを介して>20L/分の流量で送達される、加熱され、加湿された酸素(送達される酸素の割合≧0.5)、非侵襲的陽圧換気、体外式膜型人工肺(ECMO)、および/または呼吸不全の臨床診断(例えば、先行する治療のうちの1つを臨床的に必要とするが、先行する治療は資源制限のある状況では投与することができない)のうちの少なくとも1つを必要とする資源利用に基づいて定義される呼吸不全、b)ショック(例えば、収縮期血圧<90mmHg、または拡張期血圧<60mmHg、または血管収縮薬を必要とすることで定義される)、および/またはc)多臓器機能障害/不全のうちの少なくとも1つによって定義される重症の病気のエビデンスによって、重度のCOVID-19を有すると決定される。
【0115】
いくつかの実施形態では、患者は乳児(例えば、0歳から2歳まで全てを含む)である。いくつかの実施形態では、患者は小児患者(例えば、2歳から18歳まで全てを含む)である。いくつかの実施形態では、患者は18歳~100歳である。いくつかの実施形態では、患者は18歳~85歳である。いくつかの実施形態では、患者は50歳~100歳である。いくつかの実施形態では、患者は65歳超である。いくつかの実施形態では、患者は、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100歳もしくはそれを超える。いくつかの実施形態では、50歳超の患者は、重度の疾患(例えば、COVID-19またはARDS)を発症するリスクが高いと考えられる。いくつかの実施形態では、65歳超の患者は、重度の疾患(例えば、COVID-19またはARDS)を発症するリスクが高いと考えられる。
【0116】
いくつかの実施形態では、1つまたはそれを超える併存症を有する患者は、重度の疾患(例えば、COVID-19またはARDS)を発症するリスクが高いと考えられる。いくつかの実施形態では、併存症としては、肥満、高血圧、糖尿病、自己免疫障害(例えば、関節リウマチ)、心疾患、心不全、アテローム性動脈硬化症、がん(例えば、肺がん)、肺損傷剤への曝露、肝疾患、アルコール依存症、他の肺感染症、および慢性腎臓病が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、リスクのある患者は、心外傷または機能障害のマーカー(例えば、hsTnI、NT-proBNP)の上昇を示す。いくつかの実施形態では、人種は、重度の疾患(例えば、COVID-19またはARDS)を発症するリスクが高いと考えられる患者における要因である。いくつかの実施形態では、社会経済的状態は、重度の疾患(例えば、COVID-19またはARDS)を発症するリスクが高いと考えられる患者における要因である。
【0117】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物が投与されている間、患者は、任意の併存症に対する標準的なケアを受け続ける。
【0118】
併用療法
本明細書に開示される医薬組成物は、がん、ウイルス感染、炎症、自己免疫障害、炎症性肺損傷、COVID-19、および/またはARDSを処置、防止、遅延、または改善するために使用されるさまざまな治療と共に投与され得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、標準治療薬と同時に投与される。1つまたはそれを超える治療薬は、治療効果を発揮すること必要とする対象に治療効果を発揮する任意の化合物、分子、または物質であり得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、抗ウイルス剤、抗マラリア剤、上皮細胞を保護する薬剤、デフィブロチド、回復期血漿、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、レムデシビル、デスフェラル、ファビピラビル、コルチコステロイド、クレブジン、抗炎症剤、抗酸化剤、ダパグリフロジン、IFX-1、ルキソリチニブ、バリシチニブ、インターフェロンベータ1a、アジスロマイシン、トシリズマブ、アカラブルチニブ、ウミフェノビル、シクレソニド、サリルマブ、抗インターロイキン剤、およびテルミサルタンを含むがこれらに限定されない治療薬と共に投与される。
【0120】
いくつかの実施形態では、対象は、以前に抗SARS-CoV-2療法もしくはCOVID-19療法で処置されているか、または抗SARS-CoV-2療法もしくはCOVID-19療法との併用療法を受けている。適切な治療は、モノクローナル抗体(例えば、バムラニビマブ、エバシェルド(evusheld)、ソトロビマブ、Regen-Cov、およびエテセビマブ)、レムデシビル、機械換気、酸素療法、およびそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象は、抗SARS-CoV-2療法またはCOVID-19療法、例えば本明細書で提供される適切な治療に対して不応性である。いくつかの実施形態では、抗SARS-CoV-2療法に対して不応性である、治療を必要とする対象を、本開示の抗体で処置する。
【0121】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、メトトレキサート、ダウノマイシン、マイトマイシン、シスプラチン、ビンクリスチン、エピルビシン、フルオロウラシル、ベラパミル、シクロホスファミド、シトシンアラビノシド、アミノプテリン、ブレオマイシン、マイトマイシンC、デモコルシン(democolcine)、エトポシド、ミトラマイシン、クロラムブシル、メルファラン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、タモキシフェン、パクリタキセル、ビンブラスチン、カンプトテシン、アクチノマイシンD、シタラビン、およびコンブレスタチンを含むがこれらに限定されない1つまたはそれを超える化学療法剤と共に投与される。
【0122】
1つ以上の治療薬は、別個の医薬組成物として、または単一の医薬組成物に混合して、対象に「共投与」され得る、すなわち、調整されて一緒に投与され得る。「共投与される」ことによって、1つもしくはそれを超える治療薬はまた、本医薬組成物と同時に投与されてもよく、または異なる時間でおよび異なる頻度で、を含めて別々に投与されてもよい。1つまたはそれを超える治療薬は、例えば、経口、静脈内、筋肉内、経鼻、エアロゾルを介して、皮下、膣内、直腸内などの任意の公知の経路によって投与されてもよい。治療薬はまた、任意の従来の経路によって投与されてもよい。いくつかの実施形態では、医薬組成物は皮下投与される。
【0123】
2つまたはそれを超える治療薬を組み合わせて使用する場合、各治療薬の投与量は、一般に、独立して使用される場合の薬剤の投与量と同一である。しかしながら、治療薬が他の治療薬の代謝を妨げる場合、各治療薬の投与量は適宜調整される。あるいは、2つまたはそれを超える治療薬が相乗効果を示す場合、1つまたは複数の用量を減少させてもよい。各治療薬は、適切な時間間隔で同時にまたは別々に投与され得る。
【0124】
定義
本開示で使用される場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確に別のことを示していない限り、複数の指示対象を含む。
【0125】
本開示で使用される場合、「または」という用語は、包括的であると理解され、「または」と「および」との両方を包含する。
【0126】
本開示で使用される場合、任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比の範囲または整数範囲は、特に明記しない限り、列挙された範囲内の任意の整数の値、および適切な場合にはその分数(整数の1/10および100分の1など)を全て含むと理解されるべきである。本明細書で使用される単位、接頭辞、および記号は、国際単位系(SI)で認められている形式を使用して提供される。数値範囲は、その範囲を定義する数値を全て含む。
【0127】
「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」という用語は互換的に使用され、ペプチド結合によって共有結合したアミノ酸残基を含む化合物を指す。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含有し、タンパク質またはペプチドの配列を含むことができるアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドは、ペプチド結合によって互いに結合した2つもしくはそれを超えるアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質を含む。本明細書で使用される場合、この用語は、例えば、当該技術分野で一般にペプチド、オリゴペプチドおよびオリゴマーとも呼ばれる短鎖と、当該技術分野で一般にタンパク質と呼ばれる長鎖との両方を指し、それらには多くの種類が存在する。「ポリペプチド」には、例えば、とりわけ、生物学的に活性な断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドのバリアント、修飾ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が含まれる。ポリペプチドには、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0128】
同一性パーセントを計算するために、比較される配列は、典型的には、配列間の最大一致を与えるようにアラインメントされる。同一性パーセントを決定するために使用され得るコンピュータプログラムの一例は、GAP(Devereuxら、1984,Nucl.Acid Res.12:387;Genetics Computer Group,University of Wisconsin,Madison,Wis)を含むGCGプログラムパッケージである。コンピュータアルゴリズムGAPは、パーセント配列同一性が決定される2つのポリペプチドまたはポリヌクレオチドをアラインメントするために使用される。配列は、それらのそれぞれのアミノ酸またはヌクレオチドが最適に一致するようにアラインメントされる(アルゴリズムによって決定される「一致スパン」)。特定の実施形態では、標準比較マトリックス(PAM250比較マトリックスについては、Dayhoffら、1978,Atlas of Protein Sequence and Structure 5:345-352;BLOSUM 62比較マトリックスについては、Henikoffら、1992,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:10915-10919を参照のこと)もアルゴリズムによって使用される。
【0129】
本開示の非限定的な実施形態の例
本明細書に開示される本主題の実施形態は、単独で、または1つもしくは複数の他の実施形態と組み合わせて有益であり得る。前述の説明を限定することなく、本開示の特定の非限定的な実施形態を以下に提供する。本開示を読めば当業者には明らかなように、個々に番号付けされた実施形態の各々は、先行するまたは後続する個々に番号付けされた実施形態のいずれかと使用または組み合わせられ得る。これは、実施形態のすべてのそのような組み合わせに対するサポートを提供することを意図しており、以下に明示的に提供される実施形態の組み合わせに限定されない。
【0130】
実施形態:
【0131】
実施形態1. 配列番号16~39から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%の同一性を含む少なくとも1つのCDRを含む結合ドメインを含む抗CD147抗体。
【0132】
実施形態2. 前記抗CD147抗体が2つのCDRを含み、前記2つのCDRの各々が独立して、配列番号16~39から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%の同一性を含む、実施形態1に記載の抗CD147抗体。
【0133】
実施形態3. 前記抗CD147抗体が3つのCDRを含み、前記3つのCDRの各々が独立して、配列番号16~39から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%の同一性を含む、実施形態1または2に記載の抗CD147抗体。
【0134】
実施形態4. 前記抗CD147抗体が、配列番号4~15から選択される配列に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の抗CD147抗体。
【0135】
実施形態5. 前記抗CD147抗体が、配列番号4~15から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の抗CD147抗体。
【0136】
実施形態6. 前記抗体が、完全長抗体、単一特異性抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、抗原結合領域、重鎖、軽鎖、VhH、Vh、CDR、可変ドメイン、scFv、Fc、Fv、Fab、F(ab)2、IgG、還元型IgG(rIgG)、単一特異性Fab2、二重特異性Fab2、三重特異性Fab3、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、三重特異性トリアボディ、ミニボディ、ナノボディ、IgNAR、V-NAR、HcIgG、またはそれらの組み合わせである、実施形態1~5のいずれか1つに記載の抗CD147抗体。
【0137】
実施形態7. 前記抗体がVhHである、実施形態6に記載の抗CD147抗体。
【0138】
実施形態8. キメラ抗原受容体(CAR)の結合領域が、配列番号16~39から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%の同一性を含む少なくとも1つのCDRを含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の抗CD147抗体。
【0139】
実施形態9. 前記CARが免疫細胞に発現される、実施形態8に記載の抗CD147抗体。
【0140】
実施形態10. 前記免疫細胞が、末梢血単核細胞(PBMC)、リンパ球、T細胞、またはNK細胞である、実施形態9に記載の抗CD147抗体。
【0141】
実施形態11. 前記抗CD147抗体が、細胞の表面に発現されるCD147またはその断片に結合する、実施形態1~10のいずれか1つに記載の抗CD147抗体。
【0142】
実施形態12. 前記細胞が、上皮細胞、内皮細胞、またはニューロン細胞である、実施形態11に記載の抗CD147抗体。
【0143】
実施形態13. 前記抗CD147抗体が、ウイルスとCD147との間の相互作用を低減させるかまたは排除する、実施形態1~12のいずれか1つに記載の抗CD147抗体。
【0144】
実施形態14. 前記相互作用が、前記ウイルスによる前記CD147の結合を含む、実施形態13に記載の抗CD147抗体。
【0145】
実施形態15. 前記抗CD147抗体が、ウイルススパイクタンパク質のCD147への結合を低減させるかまたは排除する、実施形態1~14のいずれか1つに記載の抗CD147抗体。
【0146】
実施形態16. 前記抗CD147抗体が、細胞へのウイルス浸潤を低減させるかまたは排除する、実施形態1~15のいずれか1つに記載の抗CD147抗体。
【0147】
実施形態17. 前記抗CD147抗体が、ウイルス感染性アッセイによって決定される場合、細胞へのウイルス浸潤を少なくとも約1倍低減させるかまたは排除する、実施形態1~16のいずれか1つに記載の抗CD147抗体。
【0148】
実施形態18. 前記ウイルスが、麻疹、コロナウイルス、SARS、MERS、伝染性造血器壊死症ウイルス(IHNV)、パルボウイルス、単純ヘルペスウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ムンプスウイルス、風疹ウイルス、HIV、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、ロタウイルスA、ロタウイルスB、ロタウイルスC、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、水痘帯状疱疹、ポリオウイルス、免疫不全ウイルス(例えば、HIV)、エンベロープウイルス、RNAウイルス、および肝炎からなる群から選択される、実施形態13~17のいずれか1つに記載の抗CD147抗体。
【0149】
実施形態19. 前記ウイルスが前記コロナウイルスである、実施形態18に記載の抗CD147抗体。
【0150】
実施形態20. 前記コロナウイルスがSARS-CoV-2である、実施形態19に記載の抗CD147抗体。
【0151】
実施形態21. 前記細胞ががん細胞である、実施形態11~20のいずれか1つに記載の抗CD147抗体。
【0152】
実施形態22. 前記細胞が腫瘍細胞である、実施形態11~20のいずれか1つに記載の抗CD147抗体。
【0153】
実施形態23. 前記がん細胞が血液がんに由来する、実施形態21に記載の抗CD147抗体。
【0154】
実施形態24. 前記腫瘍細胞が、乳がん、肺がん、前立腺がん、卵巣がん、脳がん、肝臓がん、子宮頸がん、結腸がん、腎臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、骨がん、食道がん、膀胱がん、子宮がん、リンパがん、胃がん、膵臓がん、精巣がん、白血病、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、およびマントル細胞リンパ腫(MCL)からなる群から選択されるがんに由来する、実施形態22に記載の抗CD147抗体。
【0155】
実施形態25. 前記抗CD147抗体が、腫瘍細胞増殖、転移、マトリックスメタロプロテイナーゼの分泌、腫瘍マトリックスの分解、腫瘍細胞浸潤、および/または血管新生を低減させるかまたは排除する、実施形態1~24のいずれか1つに記載の抗CD147抗体。
【0156】
実施形態26. 前記抗CD147抗体が、炎症を低減させるかまたは排除する、実施形態1~24のいずれか1つに記載の抗CD147抗体。
【0157】
実施形態27. 前記抗CD147抗体が、炎症性または自己免疫障害を低減させるかまたは排除するのに有効である、実施形態1~24のいずれか1つに記載の抗CD147抗体。
【0158】
実施形態28. 前記炎症性または自己免疫疾患が、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、セリアック病、炎症性腸疾患、橋本病、アジソン病、グレーブス病、I型糖尿病、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、クローン病、多発性硬化症、および重症筋無力症からなる群から選択される、実施形態27に記載の抗CD147抗体。
【0159】
実施形態29. 前記抗CD147抗体がヒト化されている、実施形態1~28のいずれか1つに記載の抗CD147抗体。
【0160】
実施形態30. 実施形態1~29のいずれか1つに記載の抗CD147抗体を投与することを含む、CD147発現に関連する障害の防止、処置、または改善を必要とする対象におけるCD147発現に関連する障害を防止、処置、または改善する方法。
【0161】
実施形態31. 有効量の実施形態1~29のいずれか1つに記載の抗CD147抗体を含む医薬組成物。
【0162】
実施形態32. 実施形態1~29のいずれか1つに記載の抗CD147抗体をコードする配列を含む細胞。
【0163】
実施形態33. 前記抗CD147抗体が細胞に結合し、それによって、前記細胞内へのPlasmodium寄生虫の浸潤を防止、阻害、または減少させる、実施形態1~29のいずれか1つに記載の抗CD147抗体。
【0164】
実施形態34. 前記細胞内への前記Plasmodium寄生虫の前記浸潤が少なくとも約1倍である、実施形態33に記載の抗CD147抗体。
【0165】
実施形態35. 前記細胞が赤血球である、実施形態34に記載の抗CD147抗体。
【0166】
実施形態36. 前記Plasmodium寄生虫が、Plasmodium falciparum、Plasmodium malariae、Plasmodium ovale、Plasmodium vivax、およびPlasmodium knowlesiからなる群から選択される、実施形態33~35のいずれか1つに記載の抗CD147抗体。
【0167】
実施形態37. 前記抗CD147抗体が、血球における寄生虫血症を減少させるのに有効である、実施形態33~36のいずれか1つに記載の抗CD147抗体。
【0168】
実施形態38. 前記抗CD147抗体が、約48時間以内に血球における寄生虫血症を減少させる、実施形態37に記載の抗CD147抗体。
【0169】
実施形態39. 前記抗CD147抗体が、約96時間以内に血球における寄生虫血症を減少させる、実施形態37に記載の抗CD147抗体。
【0170】
実施形態40. 前記抗CD147抗体の投与が、対象におけるマラリアを防止、改善、または処置する、実施形態33に記載の抗CD147抗体。
【0171】
実施形態41. CDR1、CDR2、およびCDR3領域を含む抗CD147抗体であって、前記CDR1領域が、配列番号16~配列番号23からなる群から選択されるアミノ酸配列であり、前記CDR2領域が、配列番号24~配列番号31からなる群から選択されるアミノ酸配列であり、前記CDR3領域が、配列番号32~配列番号39からなる群から選択されるアミノ酸配列であり、前記抗CD147抗体が、前記CDR1、前記CDR、または前記CDR3領域の少なくとも1つに0~5個のアミノ酸修飾を含む、抗CD147抗体。
【0172】
実施形態42. 前記抗CD147抗体が0~3個のアミノ酸修飾を含む、実施形態41に記載の抗CD147抗体。
【0173】
実施形態43. 前記CDR1領域が配列番号18または22に対応し、前記CDR2領域が配列番号26または30に対応し、前記CDR3領域が配列番号34または38に対応する、実施形態41~42のいずれか1つに記載の抗CD147抗体。
【0174】
実施形態44. 前記抗CD147抗体が配列番号12または配列番号14を含む、実施形態41~43のいずれか1つに記載の抗CD147抗体。
【0175】
実施形態45. 前記抗CD147抗体がヒト化されている、実施形態41~44のいずれか1つに記載の抗CD147抗体。
【0176】
実施形態46. 有効量の抗CD147抗体を含む医薬組成物を投与することを含む処置方法であって、前記抗CD147抗体が、CDR1、CDR2、およびCDR3領域を含み、前記CDR1領域が、配列番号16~配列番号23からなる群から選択されるアミノ酸配列であり、前記CDR2領域が、配列番号24~配列番号31からなる群から選択されるアミノ酸配列であり、前記CDR3領域が、配列番号32~配列番号39からなる群から選択されるアミノ酸配列であり、前記抗CD147抗体が、前記CDR1、前記CDR、または前記CDR3領域の少なくとも1つに0~2個のアミノ酸修飾を含む、処置方法。
【0177】
実施形態47. 前記投与することが、炎症性または自己免疫疾患を低減させるかまたは排除するのに有効である、実施形態46に記載の処置方法。
【0178】
実施形態48. 前記炎症性または自己免疫疾患が、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、セリアック病、炎症性腸疾患、橋本病、アジソン病、グレーブス病、I型糖尿病、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、クローン病、多発性硬化症、および重症筋無力症からなる群から選択される、実施形態46~47のいずれか1つに記載の処置方法。
【0179】
実施形態49. 前記投与することが、ウイルスによる細胞へのウイルス浸潤を低減させるかまたは排除するのに有効である、実施形態46~48のいずれか1つに記載の処置方法。
【0180】
実施形態50. 前記ウイルスが、麻疹、コロナウイルス、SARS、MERS、伝染性造血器壊死症ウイルス(IHNV)、パルボウイルス、単純ヘルペスウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ムンプスウイルス、風疹ウイルス、HIV、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、ロタウイルスA、ロタウイルスB、ロタウイルスC、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、水痘帯状疱疹、ポリオウイルス、免疫不全ウイルス(例えば、HIV)、エンベロープウイルス、RNAウイルス、および肝炎からなる群から選択される、実施形態49に記載の処置方法。
【0181】
実施形態51. 前記ウイルスが前記コロナウイルスである、実施形態50に記載の処置方法。
【0182】
実施形態52. 前記コロナウイルスがSARS-CoV-2を含む、実施形態51に記載の処置方法。
【0183】
実施形態53. 前記投与することが、がんの転移を低減させるかまたは排除するのに有効である、実施形態46~48のいずれか1つに記載の処置方法。
【0184】
実施形態54. 前記がんが、乳がん、肺がん、前立腺がん、卵巣がん、脳がん、肝臓がん、子宮頸がん、結腸がん、腎臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、骨がん、食道がん、膀胱がん、子宮がん、リンパがん、胃がん、膵臓がん、精巣がん、白血病、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、およびマントル細胞リンパ腫(MCL)からなる群から選択される、実施形態53に記載の処置方法。
【0185】
実施形態55. 前記投与することが、細胞内へのPlasmodiumの浸潤を低減させるかまたは排除するのに有効である、実施形態46~48のいずれか1つに記載の処置方法。
【0186】
実施形態56. 実施形態1~29のいずれか1つに記載の抗CD147抗体を含む抗体-薬物コンジュゲート。
【0187】
実施形態57. 前記薬物が、抗がん薬、抗マラリア薬、抗ウイルス薬、および抗炎症薬からなる群から選択される、実施形態56に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【0188】
実施形態58. 前記抗ウイルス薬を含み、前記抗ウイルス薬が抗SARS-CoV-2薬である、実施形態57に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【0189】
実施形態59. 前記抗がん薬を含み、前記抗がん薬が免疫療法を含む、実施形態57に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【0190】
実施形態60. 前記免疫療法が、抗体、チェックポイント阻害剤、細胞療法、サイトカイン、腫瘍溶解性ウイルス、およびワクチンからなる群から選択される、実施形態59に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【0191】
実施形態61. 前記抗体を含む、実施形態60に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【0192】
実施形態62. 前記抗CD147抗体が配列番号12または配列番号14を含む、実施形態56に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【実施例
【0193】
実施例1-ヒトCD147に結合するVhH抗体の産生
ヒトCD147に結合するVhH抗体を作製するために、ラマを組換えCD147(21抗原のカクテル中)で免疫し、4回追加免疫した。血液リンパ球からmRNAを抽出し、酵母表面発現系でVhH抗体ディスプレイライブラリーを構築した。抗CD147 VhH抗体を発現する酵母クローンを2回のパニングおよびFACSによって富化し、24個をVhH分泌について分析した。それらの抗CD147活性をELISAによって測定した。
【0194】
これら24個のうち、固有の配列およびELISAで高いシグナル/ノイズ比を有する4つのクローンを更なる研究のために選択した。これらのうちの2つ(Ibx-11およびIbx-13)は、哺乳動物細胞においてIgG Fc融合物として良好に発現し、3つのタンデム二価VhH構築物(IgG Fc融合物なし)も産生された(Ibx-75、Ibx-76、Ibx-75 VhH)。
【0195】
ELISAのために、100ngのヒトCD147をNunc polysorbプレート上に1×コーティング緩衝液中で一晩コーティングした。ウェルをTBST(0.01%Tween(登録商標)20)で1回洗浄し、次いで、室温(RT)でTBST中1×フィッシュゲルを使用して1時間ブロッキングした。Ibx-11、Ibx-13、Ibx-75、Ibx-76、Ibx-77、および抗HIS抗体を、RTで1時間、100μl中、0.01ng/ウェル~100ng/ウェルでインキュベートした後、各洗浄につき3回5分間洗浄した。ウェルを1:1000希釈でRTにて1時間、Ibx-11およびIbx-13処置ウェルについては抗ヒト抗体と共にインキュベートし、Ibx-77、Ibx-75、Ibx-76処置ウェルについては抗flag抗体と共にインキュベートし、次いで、各洗浄につき3回5分間洗浄した。ウェルを100μl/ウェルのTMBEと共に30分間インキュベートし、100μl/ウェルの2N硫酸で反応を停止した。光学密度(OD)は、定量のためにBiotek synergy 4機器を使用して測定した。
【0196】
このアッセイの結果を図1に示す。試験した抗体についてのELISA EC50は、2log(0.1~10ngのVhH抗体/ウェル)にわたる範囲であった。タンデム二価Ibx-75(10ng/ウェル)は、ヒトCD147に対する結合が最も低く、続いてIbx-76およびIbx-77が同じレベル(1ng/ウェル)で結合した。IgG Fc融合物Ibx-11およびIbx-13(0.1ng/ウェル)で最良の結合が観察された。タンデム二価にわたるIgG Fc融合物の結合の改善は、使用される異なる二次試薬(それぞれ抗Fc 対 抗Flag)、または機能的価数の違い(すなわち、タンデム二価構造は、短いリンカー長に起因して一価構造として効果的に結合している可能性がある)に起因し得る。
【0197】
実施例2-マウスCD147へのVhHの結合
実施例1に記載のVhHがマウスCD147に結合する能力を試験するために、ELISAを行った。
【0198】
ELISAのために、100ngのマウスCD147をNunc polysorbプレート上に1×コーティング緩衝液中で一晩コーティングした。ウェルをTBST(0.01%Tween(登録商標)20)で1回洗浄し、次いで、室温(RT)でTBST中1×フィッシュゲルを使用して1時間ブロッキングした。Ibx-11、Ibx-13、Ibx-75、Ibx-76、Ibx-77、および抗HIS抗体を、RTで1時間、100μl中、0.01ng/ウェル~100ng/ウェルでインキュベートした後、各洗浄につき3回5分間洗浄した。ウェルを1:1000希釈でRTにて1時間、Ibx-11およびIbx-13処置ウェルについては抗ヒトと共にインキュベートし、Ibx-77、Ibx-75、Ibx-76処置ウェルについては抗flagと共にインキュベートし、次いで、各洗浄につき3回5分間洗浄した。ウェルを100μl/ウェルのTMBEと共に30分間インキュベートし、100μl/ウェルの2N硫酸で反応を停止した。光学密度(OD)は、定量のためにBiotek synergy 4機器を使用して測定した。
【0199】
実施例3-CD147へのIBX-77結合のSPR分析
このアッセイのために、CD147をHBS-EP緩衝液pH7.4中に0nM~900nMの範囲の濃度で10μl/分で600秒間注入した。0nM、9.22nM、0nM、23.04nM、57.6nM、144nM、360nM、900nMについて、2回のCD147注入を行った(2.5倍希釈系列)。チップ表面を10mMグリシンpH2.0を用いて10μl/分で180秒間再生した。
【0200】
分析物注入中の突然の空気スパイクおよびDIPのために、0nmおよび23.04nMの1つの技術的反復(technical replicate)を分析から除外した。データは、機器製造業者によって提供されるQ-Datソフトウェアで分析した。定常状態1:1フィッティングモデル(図4)を初期定常状態結合分析に使用し、単純Kd/Ka動力学モデル(図5)を使用してKDを推定した。
【0201】
各濃度についての2回の注入は類似していたが、2回目の応答は1回目よりも低かった。定常状態1:1でKD=138.0nM(±0.003nM)を計算した。計算された動力学モデル
【0202】
Ka=1.328×10(±0.005)M-1s-1
【0203】
Kd=4.89×10-4(±0.001)s-1
【0204】
KD=36.1nM(±0.001nM)。
【0205】
実施例4-CMDチップ上でのCD147へのIbx-77結合のSPR分析
NHS/EDCの1:1混合物を10μl/分で420秒間注入することによってCMDチップ表面を活性化した。100μg/mlのCD147を10μl/分で510秒間10mM酢酸ナトリウム溶液pH4.5で固定した。未反応のCD147および活性化されたチップ表面を洗浄し、エタノールアミンpH8.5によって10μl/分で420秒間不活性化した。合計約3800RUのCD147を固定した。
【0206】
Ibx-77をHBS-EP緩衝液pH7.4中に9.22nM~360nMの範囲の濃度で10μl/分で420秒間注入した。10mMグリシンpH2.0を用いてチップ表面を再生した。
【0207】
データは、機器製造業者によって提供されるqDatソフトウェアで分析した。初期定常状態結合分析には、定常状態1:1フィッティングモデルを使用した。(図7)。次いで、単純Kd/Ka動力学モデルを使用してKDを推定した。(図6)。
【0208】
実施例5-Ibx-77がHEK293およびHCC1954細胞に結合する
本開示のVhH抗体が細胞に発現されたCD147に結合する能力を試験するために、フローサイトメトリーを行った。すべての細胞株を、T-75フラスコ中の推奨培地中でコンフルエントになるまで成長させた。(HCC1954-RPMI;SKBR3-McCoyの5A;HEK293-DMEM;MCF-7-EMEM)。およそ100万個の細胞を6ウェルプレートにプレーティングし、静置させ、一晩成長させた。細胞を、1mlピペットチップの広くて鈍い口端を用いて手動で掻き取ることによって取り出し、細胞を、以前と同様にフローサイトメトリー分析のために調製した。1μgのIbx-77、抗CD147、ウサギアイソタイプ対照、抗Flag dylightを、氷上で1時間、細胞を染色するために使用し、続いて洗浄および遠心分離を行った。次いで、細胞を、二次抗体として1μgの抗ウサギDylight488および抗フラグdyligth488と共に30分間インキュベートし、続いて遠心分離および洗浄した。細胞を1000μlのフローソースに再懸濁し、フローサイトメーターで最終実行した。300秒(5分)以内に可能な限り分析するために、合計30,000イベントが収集された。陰性細胞は、個々の細胞株についての未染色細胞に基づいてゲートアウトした。
【0209】
各細胞株についての条件:陽性対照のみのCST;Ibx-77のみ;ISO型対照ウサギ;UST;抗Flag488 2°のみ-XF2。
【0210】
Ibx-77染色細胞は、HEK293細胞(図8)およびHCC1954(図9)細胞株において、未染色対照とは異なる陽性染色細胞集団を示す。
【0211】
実施例6-Ibx-77がHeLa細胞に発現されたCD147に結合する
HELA細胞株を、T-75フラスコ中の推奨培地中でコンフルエントになるまで成長させた。およそ100万個の細胞を6ウェルプレートにプレーティングし、静置させ、一晩成長させた。細胞を、1mlピペットチップの広くて鈍い口端を用いて手動で掻き取ることによって取り出し、細胞を、以前と同様にフローサイトメトリー分析のために調製した。細胞をフローソースで1回洗浄し、1μl/mlの生存率色素(viability dye)660で氷上で30分間インキュベートし、次いで2回洗浄した。10μgおよび5μgのIbx-77を氷上で1時間、細胞を染色するために使用し、続いて2回洗浄した。次いで、細胞を、二次抗体として1μgの抗ヒトDylight488および抗Flag dyligth488と共に30分間インキュベートし、続いて2回洗浄した。細胞を1000μlのフローソースに再懸濁し、フローサイトメーターで最終実行した。300秒(5分)以内に可能な限り分析するために、合計50,000イベントが収集された。陰性細胞は、個々の細胞株についての未染色細胞に基づいてゲートアウトした。各細胞株についての条件は、Ibx-77のみ;UST、抗flag488二次抗体のみ-Flag2のみ、であった。
【0212】
図10に示すように、5μgのIbx-77は、二次抗体のみの対照および未染色細胞とは異なるピークを示す。
【0213】
実施例7-Ibx-77、Ibx-13およびIbx-11が細胞に結合する能力の分析
HeLaおよびHCC-1954細胞株を、T-75フラスコ中の推奨培地中でコンフルエントになるまで成長させた。およそ100万個の細胞を6ウェルプレートにプレーティングし、静置させ、一晩成長させた。細胞を、1mlピペットチップの広くて鈍い口端を用いて手動で掻き取ることによって取り出し、細胞を、以前と同様にフローサイトメトリー分析のために調製した。細胞をフローソース(PBS、1%FBSおよびアジ化Na)中で1回洗浄した。1μl/mlの生存率色素660で氷上で30分間インキュベートし、次いで2回洗浄した。1μg/100μlのFcブロック試薬を使用して、氷上で10分間、まず確実なFc受容体をブロッキングした。続いて2回洗浄した。表に示す指示量の抗体を使用して細胞を氷上で1時間染色し、続いて2回洗浄した。次いで、細胞を、二次抗体として抗ヒトDylight488、抗ウサギDylight488および抗Flag dyligth488と共に30分間インキュベートし、続いて2回洗浄した。細胞を2000μlのフローソースに再懸濁し、フローサイトメーターで最終実行した。300秒(5分)以内に可能な限り分析するために、合計50,000イベントが収集された。陰性細胞は、個々の細胞株のVhH-Fc-(h27-8GL)細胞に基づいてゲートアウトした。
【0214】
この実験では、以下の抗体および対照を試験した:Ibx-77(10μg);Ibx-13(10μg);Ibx-11(10μg);ヒトアイソタイプ対照(10μg);抗ヒト二次抗体のみ(1μg;ヒト2);VhH-Fc-(h27-8GL)(10μg);XF2(抗flag488)のみ;未染色。
【0215】
Ibx-11およびIbx-13は、同様のパターンで細胞を染色し、ヒストグラムがインポーズ可能である。Ibx-77は、二次抗体が結合するのに利用可能なFlagエピトープがおそらく1つであるため、より弱い染色を示す。1μgのFcブロックによるブロッキングは、ヒトアイソタイプ対照のバックグラウンドノイズを少し減少させた。VhH-Fc(h27-8GL)対照抗体は、それ自体とIbx-11およびIbx-13との間の染色の違いを明確に示す。したがって、VhH-Fcを使用するすべての実験について、そのような対照を使用することができる。全体的なHELA細胞は、HCC1954よりも多くのCD147を発現するようである。
【0216】
実施例8-Ibx-11およびIbex-13抗体がJurkat T細胞に結合する能力の分析
Jurkat細胞を推奨培地中でコンフルエントになるまで成長させ、400万個の細胞を収集し、以前と同様にフローサイトメトリー分析のために調製した。これらの細胞はアジ化ナトリウム処理しなかった。細胞をフローソース(PBS、1%FBSおよびアジ化Na)で一回洗浄した後、氷上で30分間1μl/mLの生存率色素660でインキュベートし、2回洗浄した。1μg/100μlのFcブロック試薬を使用して、室温で10分間Fc受容体をブロッキングし、続いて2回洗浄した。細胞を氷上で1時間、図13の表に示されるとおりの指示量の抗体で染色し、続いて2回洗浄した。指定されたチューブをスパイクRBD(1μg/チューブ)と共に1時間インキュベートし、次いで2回洗浄した。次いで、細胞を、抗スパイク抗体、VhH-Fc対照、ヒトアイソタイプ抗体またはIbx-11と共に4℃で1時間インキュベートし、次いで2回洗浄した。次いで、細胞を抗ヒトDylight488、次いで抗ウサギDylight488と共に30分間インキュベートし、続いて2回洗浄した。細胞を1000μlのフローソースに再懸濁し、フローサイトメーターで最終実行した。300秒(5分)以内に可能な限り分析するために、合計50,000イベントが収集された。陰性細胞は、個々の細胞株のVhH-Fc-(h27-8GL)細胞に基づいてゲートアウトした。
【0217】
全体として、Ibx-11およびIbex-13抗体はJurkat細胞を染色した。
【0218】
実施例9-Ibx-11およびIbex-13抗体がVero E-6細胞に結合する能力の分析
JurkatおよびVero E-6細胞を推奨培地中でコンフルエントになるまで成長させた。ウェル当たり約100万個の細胞を6ウェルディッシュにプレーティングし、以前と同様にフローサイトメトリー分析のために調製した。細胞はアジ化ナトリウム処理しなかった。細胞をフローソース(PBS、1%FBSおよびアジ化Na)中で1回洗浄した。1μg/100μlのFcブロック試薬を使用して、室温で10分間Fc受容体をブロッキングし、続いて2回洗浄した。細胞を氷上で1時間、図14A~Bの表に示されるとおりの指示量の抗体で染色し、続いて2回洗浄した。次いで、細胞をスパイクRBD(1μg/チューブ)と共に1時間インキュベートし、次いで2回洗浄した。次いで、細胞を、抗スパイク抗体、VhH-Fc対照、ヒトアイソタイプ抗体またはIbx-11、Ibx-13、もしくはIbx-77と共に4℃で1時間インキュベートし、次いで2回洗浄した。次いで、細胞を抗ヒトDylight488、次いで抗ウサギDylight488と共に30分間インキュベートし、続いて2回洗浄した。細胞を1000μlのフローソースに再懸濁し、フローサイトメーターで最終実行した。300秒(5分)以内に可能な限り分析するために、合計50,000イベントが収集された。陰性細胞は、個々の細胞株のVhH-Fc-(h27-8GL)細胞に基づいてゲートアウトした。
【0219】
Vero E6細胞を、Jurkat細胞に対して設定したものと同じフローサイトメーターの電圧設定を使用して分析した。Jurkat細胞は、Ibx-11、Ibx-13およびIbx-77による良好な染色を示し、陰性対照(VhH-Fc-(h27-8GL)と未染色対照とを明瞭に分離している。図14Aを参照されたい。驚くべきことに、Vero E6細胞は、Ibx-13がIbx-11よりも強く染色することを示す。図14Bを参照されたい。これらの違いは、ヒトおよびサルのCD147の配列の違いによるものであり得る。そのようなアミノ酸の違いは、Ibx抗体系列の重要なエピトープの一部であり得、潜在的なエピトープマッピングに使用することができる。非ヒト霊長類モデルの場合、Ibx-13およびその二量体化バージョンIbx-76が良好な候補であり得る。Ibx-77は、Vero E6細胞のより弱い染色を示し得る2つのピーク集団を示した。
【0220】
実施例10-Ibx-74およびIbx-75のKD
さまざまな精製段階で約45μlのIbx-74およびIbx-75を準備した。各サンプル35μlをセンサーチップに注入し、センサーグラムを収集した。流速は10μ/分であり、pH1.5で10mMグリシンを用いてチップを再生した。結果を図15A図15Bに示す。
【0221】
ここで得られたKD値は不純物または濃度の影響を受け得るが、値は主に抗体に依存するため、強力なバインダーを同定するためのスクリーニングツールとして使用することができる。この場合、Ibx-75は1×10-6(±0.009)s-1のKで結合し、Ibx-74は3×10-5(±0.001)s-1のKで結合した。
【0222】
この比較は、Ibx-75がIbx-74よりも低いオフレートを有するより強力なバインダーであり得ることを示す。
【0223】
実施例11-抗体-薬物コンジュゲート(ADC)細胞傷害性アッセイ
MiaPaCa-2がん細胞を2500細胞/ウェルで96ウェルディッシュに播種し、接着させ、一晩成長させた。古い培地を50μlの新鮮な培地と交換した。Ibx-11およびIbx-13は、抗体を抗ヒトIgG Fc-MMAFと予備混合することによって調製した。種々の濃度(30nM~1.1nMの最終濃度)の50マイクロリットルのIbx-11およびIbx-13混合物をウェルに添加した。アイソタイプおよび二次ADCのみの対照をプレートに含めた。次いで、プレートを72時間インキュベートした。この72時間のインキュベーション後、Rockland社のキットを使用して細胞の生存率を測定した。
【0224】
最高濃度では、Ibx-11およびIbx-13は、それぞれ約73%および74%の生細胞を示した。図16を参照されたい。これらの抗体は、がん細胞を効果的に死滅させた。
【0225】
実施例12-Jurkat T細胞凝集アッセイ
Jurkat T細胞を、96丸底ウェルに20,000細胞/ウェル、100μl播種した。100μg/mlのIbx-77、Ibx-11、またはIbx-13を、ウェル当たり200μlの最終体積および50μg/mlの抗体の最終濃度になるように100μlの細胞に添加した。0時間、2時間、4時間、9時間、18時間、および24時間で画像を収集した。ImageJを使用してピクセルを2時間測定し、24時間で最大値に達した。48時間で更なる差は認められなかった。視覚的同定(図17)は、18時間で凝集パターンの違いが明らかになったことを示し、50μg/mlのIbx系列抗体で処置した細胞は、未処置の対照と比較して、凝集体のクラスターがより密で、個々の細胞の数がより少ない、明瞭な凝集パターンを示した。同様のパターンが、20μg/mlのより低い用量の抗CD147対照抗体および抗CD98抗体で観察された。これらのデータはまた、8ビット画像からピクセルサイズをカウントするイメージング分析によって定量分析された。50μg/ml~25μg/mlのIbx系列抗体は、24時間で粒子(凝集体)のより大きなピクセルサイズを示す。これらの違いは、Ibx系列抗体間では微妙に異なる。図18を参照されたい。
【0226】
別の細胞凝集アッセイでは、Jurkat T細胞を、96丸底ウェルに20,000万細胞/ウェル、100μl播種した。100μg/mlのIbx-77、Ibx-11、またはIbx-13を、ウェル当たり200μlの最終体積および50μg/mlの抗体の最終濃度になるように100μlの細胞に添加した。0時間、2時間、4時間、9時間、18時間、および24時間で画像を収集した。より大きな凝集体の一部ではなく、明瞭な境界を有する個々の細胞および細胞群(群当たり3細胞未満)を、18時間および24時間に手動で計数した。図19。24時間で、Ibx-77処置細胞について単一細胞数の有意な減少があった(p=0.071)。図20A図20B
【0227】
実施例13-Ibx-76およびIbx-77が細管形成アッセイにおいて血管形成を阻害する
抗CD147 VhH抗体が血管新生を阻害する能力を、細管形成アッセイを使用して調査した。HuVEC細胞をマトリゲルコートウェルの表面に播種した。播種の翌日、抗体およびCD147タンパク質(競合のために添加)を添加した。さらに1日培養した後、細胞をカルセインAMで染色した。次いで、管形成を顕微鏡法によって評価した。この場合、ヒトCD147(HIM6)に結合するマウス抗体を陽性対照として使用した。
【0228】
図21に示すように、Ibx-76またはIbx-77のいずれかで処置した細胞は、血管新生の阻害を示した。この場合、CD147が、血管新生のための刺激剤として使用される。CD147とIbx-76およびIbx-77との共インキュベーションは、CD147単独で誘導される血管新生の減少を示す。
【0229】
実施例14-Ibx-13が血球におけるPlasmodium falciparumの成長を防止する
異なる抗体が赤血球におけるPlasmodium falciparumのNF54株の成長を遮断する能力。初期寄生虫血症は1.3%であり、この株を96ウェルプレート中2%ヘマトクリットで培養した。Ibx-13またはMIF-2-5抗体またはVhH-Fcを1、10、および100μg/mLでウェルに投与した。いかなる抗体にも曝露されていない寄生虫を陰性対照として培養し、抗マラリア薬クロロキン(CQ)と共に培養した寄生虫を陽性対照として使用した。血液塗抹標本を処置の48時間後および96時間後に調製し、染色し、盲検様式で顕微鏡検査を行った。感染赤血球(RBC)の数を、約1000個の赤血球から盲検様式でスコア化し、寄生虫血症のパーセンテージとして表した。
【0230】
結果を図22および23ならびに表2に示す。
【0231】
陽性対照処置では、寄生虫は48時間後に正常に成長し、1.3%~5.9%に増加した。陰性対照では、クロロキンによる処置は、48時間で寄生虫の約93%を死滅させ、96時間で約98%を死滅させた。Ibx-13による処置は、試験した最低濃度でさえ約100%の寄生虫阻害をもたらしたが、MIF-2-5またはVhH-Fcによる処置は測定可能な効果を有していなかった。96時間までに、対照、MIF-2-5およびVhH-Fc群の寄生虫は、培地を毎日交換しなかったため、非常に高い寄生虫血症のために死んでいた。
【表2-2】
【0232】
実施例15-悪性黒色腫細胞に対する抗体薬物コンジュゲートアッセイ
2,500個のA375(悪性黒色腫)細胞を、完全成長培地(DMEM、10%FBS)を含む96ウェルプレートにウェル当たり播種し、一晩接着させた。翌日、古い培地に50μlの新鮮な完全培地および25μlのIbx-11、Ibx-13、または対照抗体(完全培地で希釈)を補充した。二次ADCを30nMで一定に保ちながら、抗体を、3倍づつ濃度を減少させた30nM~1.1nMの範囲の量で添加した。これらの混合物を5分間インキュベートした。25μlの抗Fc(ヒト)二次抗体薬物コンジュゲート試薬(完全培地で希釈)をウェルに添加し、5.0%COインキュベーター中、37℃で72時間インキュベートした。72時間後、製造業者のプロトコルに従ってViability Kit(登録商標)を用いて生存率を評価した。
【0233】
A375細胞は、3.3nMまでの漸増用量の一次抗体Ibx-11およびIbx-13に対する感受性を示す。図24図25を参照されたい。観察された最大効果は3.3nMで約55%の生存率の低下であり、その後、より高い抗体濃度で生存率が漸減した。30nMの二次ADC自体は、未処置の細胞と比較して小さな効果を有し得る。ヒトアイソタイプ対照のいくつかの効果も観察された。
【0234】
実施例16-前立腺がん細胞に対する抗体薬物コンジュゲートアッセイ
2,500個のPC-3(前立腺がん)細胞を、完全成長培地(F-12K、10%FBS)を含む96ウェルプレートにウェル当たり播種し、一晩接着させた。翌日、古い培地に50μlの新鮮な完全培地および25μlのIbx-11、Ibx-13、または対照抗体(完全培地で希釈)を補充した。二次ADCを30nMで一定に保ちながら、抗体を、、3倍づつ濃度を減少させた30nM~1.1nMの範囲の量で添加した。これらの混合物を5分間インキュベートした。25μlの抗Fc(ヒト)二次抗体薬物コンジュゲート試薬(完全培地で希釈)をウェルに添加し、5.0%CO2インキュベーター中、37℃で72時間インキュベートした。72時間後、製造業者のプロトコルに従ってViability Kit(登録商標)を用いて生存率を評価した。
【0235】
PC3細胞は、実施例15で教示されるA375(悪性黒色腫)細胞よりもADCアッセイに対する感受性が低い可能性がある。図26および図27を参照されたい。ここで観察された最大効果は、生存率の約25%の喪失であった。この生存率の差は、細胞に存在する表面CD147の量と、それに対応するエンドサイトーシスの速度の差およびアッセイで使用される毒性ペイロードに対するがんの感受性の差とに起因し得る。
参考文献
Watanabe et al. (2010). CD147/EMMPRIN Acts as a Functional Entry Receptor for Measles Virus on Epithelial Cells. Journal of Virology Apr 2010, 84 (9) 4183-4193.
Chenglong et al. (2020) Cyclophilin A and CD147: novel therapeutic targets for the treatment of COVID-19. Medicine in Drug Discovery, Volume 7:100056
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【配列表】
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【国際調査報告】