(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】リチウムイオンおよびリチウム金属バッテリー用の耐炎性準固体および固体状態電解質ならびに製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0565 20100101AFI20240118BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240118BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20240118BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20240118BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20240118BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240118BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240118BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240118BHJP
【FI】
H01M10/0565
H01M10/0562
H01M10/0569
H01M10/0567
H01M4/66 A
H01M4/525
H01M4/505
H01M10/052
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541595
(86)(22)【出願日】2022-01-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-30
(86)【国際出願番号】 US2022070117
(87)【国際公開番号】W WO2022150849
(87)【国際公開日】2022-07-14
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522082160
【氏名又は名称】グローバル グラフェン グループ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Global Graphene Group,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,フイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ルー
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ボア,ゼット.
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017CC01
5H017CC05
5H017EE01
5H017EE04
5H017EE05
5H017EE06
5H017HH00
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL01
5H029AL03
5H029AL04
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL12
5H029AM02
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5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029AM12
5H029AM16
5H029HJ00
5H029HJ02
5H029HJ05
5H029HJ14
5H029HJ20
5H050AA15
5H050BA15
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB05
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB22
5H050DA04
5H050DA06
5H050DA07
5H050DA08
5H050HA00
5H050HA05
5H050HA14
(57)【要約】
(a)反応性添加剤の重合または架橋生成物であるポリマーであって、反応性添加剤が、少なくとも1つの反応性ポリマー、反応性オリゴマー、または反応性モノマーおよび硬化もしくは架橋剤または開始剤を含み、ならびに反応性ポリマー、オリゴマー、またはモノマーが、少なくとも反応性カルボキシルおよび/またはヒドロキシル基を含む、ポリマー;(b)リチウム塩;ならびに(c)有機液体溶媒またはイオン液体を含む、電解質。ポリマーは、好ましくは、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、またはその組み合わせからの鎖の架橋ネットワークを含む。提供されるのはまた、そのような電解質を含むリチウムバッテリーである。組み合わせられたポリマー、リチウム塩、および非水性液体溶媒の全重量または体積に基づいて、重量または体積で0%~30%の非水性液体溶媒が含まれてもよい。この液体溶媒の割合は、重量または体積で好ましくは<20%、より好ましくは<10%、最も好ましくは<5%である。カソードはカソード活性材料の粒子を含み、および電解質は、カソード活性材料粒子の少なくとも大部分または実質的にすべてと物理的に接触している。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)反応性添加剤の重合または架橋生成物であるポリマーであって、前記反応性添加剤が、少なくとも1つの反応性ポリマー、反応性オリゴマー、または反応性モノマーおよび硬化剤または開始剤を含み、ならびに前記反応性ポリマー、オリゴマー、またはモノマーが、少なくとも反応性カルボキシルおよび/またはヒドロキシル基を含む、前記ポリマー;
(b)リチウム塩;ならびに
(c)有機液体溶媒またはイオン液体
を含む、電解質。
【請求項2】
20℃で測定された場合に0.01kPaよりも低い蒸気圧、前記液体溶媒単独での蒸気圧の60%よりも低い蒸気圧、前記液体溶媒単独での引火点よりも少なくとも20℃高い引火点、もしくは150℃よりも高い引火点を呈するか、または測定可能な引火点を呈しない、請求項1に記載の電解質。
【請求項3】
前記ポリマーが、前記ポリマーの中に分散されたいかなる添加剤もなしに測定された場合に室温で10
-8S/cm~5×10
-2S/cmのリチウムイオン伝導性、および2%~1,500%の完全に回復可能な引張弾性歪みを有する高弾性ポリマーを含み、ならびに前記高弾性ポリマーが、カルボキシルおよび/またはヒドロキシル基を含有する少なくとも1つのポリマーからの鎖の架橋ポリマーネットワークを少なくとも含む、請求項1に記載の電解質。
【請求項4】
前記ポリマーが、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、またはその組み合わせからの鎖の架橋ネットワークを含む、請求項1に記載の電解質。
【請求項5】
前記ポリマーが、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ビニルアルコール)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、クエン酸、グリセロール、カルボキシメチルセルロースの誘導体、ポリ(ビニルアルコール)の誘導体、ポリ(アクリル酸)の誘導体、アルカリカチオンで置換されたカルボキシメチルセルロースもしくはポリ(アクリル酸)、またはその組み合わせから選択される少なくとも1つの化合物を含み、前記アルカリカチオンが、Li
+、Na
+、K
+、NH
4
+、またはその組み合わせから選択される、請求項1に記載の電解質。
【請求項6】
前記ポリマーが、5%~500%の弾性引張歪みを付与する架橋の程度まで架橋剤により架橋されたカルボキシメチルセルロース、ビニルアルコール、またはアクリル酸の架橋ネットワークを含む、請求項1に記載の電解質。
【請求項7】
前記架橋剤が、N,N-メチレンビスアクリルアミド、エピクロロヒドリン、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ケイ皮酸、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム18水和物、ジエポキシ、ジカルボン酸化合物、ポリ(カリウム1-ヒドロキシアクリレート)(PKHA)、グリセロールジグリシジルエーテル(GDE)、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDE)、クエン酸、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸の誘導体化合物、メタクリル酸の誘導体化合物、グリシジル官能基、N,N’-メチレンビスアクリルアミド(MBAAm)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMAAm)、イソボルニルメタクリレート、ポリ(アクリル酸)(PAA)、メチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、エチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、エチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルアクリレート、ジイソシアネート、ウレタン鎖、その化学的誘導体、またはその組み合わせから選択される、請求項1に記載の電解質。
【請求項8】
前記電解質が、難燃性添加剤をさらに含み、前記難燃性添加剤が、前記液体溶媒とは組成が異なり、および前記液体溶媒と混合物を形成し、ならびに前記難燃性添加剤が、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、トリフルオロプロピレンカーボネート(FPC)、メチルノナフルオロブチルエーテル(MFE)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト(TTSPi)、トリアリルホスフェート(TAP)、エチレンスルフェート(DTD)、1,3-プロパンスルトン(PS)、プロペンスルトン(PES)、アルキルシロキサン(Si-O)、アルキルシラン(Si-C)、液体オリゴマーシロキサン(-Si-O-Si-)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、キャノーラ油、またはその組み合わせから選択され、ならびに前記混合物中の前記難燃性添加剤対前記液体溶媒の比が重量で5/95~95/5である、請求項1に記載の電解質。
【請求項9】
ハロゲン化難燃剤、リン系難燃剤、メラミン難燃剤、金属水酸化物難燃剤、ケイ素系難燃剤、リン酸難燃剤、生体分子難燃剤、またはその組み合わせから選択される難燃性添加剤をさらに含む、請求項1に記載の電解質。
【請求項10】
前記難燃性添加剤が、実質的にリチウムイオン不透過性および液体電解質不透過性のコーティング材料のシェルにより被包された前記添加剤を含む被包された粒子の形態であり、前記シェルが、閾値温度よりも高い温度に曝露された場合に破壊可能である、請求項9に記載の電解質。
【請求項11】
前記ポリマーが、ポリ(エチレンオキシド)、ポリプロピレンオキシド、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(アクリロニトリル)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ビニリデンフルオリド)、ポリビス-メトキシエトキシエトキシド-ホスファゼン、ポリビニルクロリド、ポリジメチルシロキサン、ポリ(ビニリデンフルオリド)-ヘキサフルオロプロピレン、シアノエチルポリ(ビニルアルコール)、ペンタエリトリトールテトラアクリレート系ポリマー、脂肪族ポリカーボネート、カルボキシレートアニオン、スルホニルイミドアニオン、もしくはスルホネートアニオンを有する単一Liイオン伝導性固体ポリマー電解質、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートもしくはポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレートの架橋電解質、そのスルホン化誘導体、またはその組み合わせから選択される第2のポリマーとの混合物、コポリマー、半相互貫入ネットワーク、または同時相互貫入ネットワークを形成している、請求項1に記載の電解質。
【請求項12】
前記ポリマーが、2nm~30μmの粒子サイズを有する微細粉末の形態の無機固体電解質材料をさらに含み、無機固体電解質材料の前記粒子が、前記ポリマー中に分散されているか、または前記ポリマーにより化学的に結合されている、請求項1に記載の電解質。
【請求項13】
無機固体電解質材料の前記粒子が、酸化物タイプ、硫化物タイプ、水素化物タイプ、ハロゲン化物タイプ、ホウ酸タイプ、リン酸タイプ、リチウムリン酸窒化物(LiPON)、ガーネットタイプ、リチウム超イオン伝導体(LISICON)タイプ、ナトリウム超イオン伝導体(NASICON)タイプ、またはその組み合わせから選択される、請求項12に記載の電解質。
【請求項14】
前記有機液体溶媒が、1,3-ジオキソラン(DOL)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(DEGDBE)、2-エトキシエチルエーテル(EEE)、スルホン、スルホラン、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルプロピオネート、メチルプロピオネート、プロピレンカーボネート(PC)、ガンマ-ブチロラクトン(γ-BL)、アセトニトリル(AN)、エチルアセテート(EA)、プロピルホルメート(PF)、メチルホルメート(MF)、トルエン、キシレン、メチルアセテート(MA)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート(VC)、アリルエチルカーボネート(AEC)、ハイドロフルオロエーテル、およびその組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の充電式リチウム電池。
【請求項15】
前記リチウム塩が、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)、ホウフッ化リチウム(LiBF
4)、ヘキサフルオロヒ化リチウム(LiAsF
6)、トリフルオロ-メタンスルホン酸リチウム(LiCF
3SO
3)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF
3SO
2)
2)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム(LiBF
2C
2O
4)、硝酸リチウム(LiNO
3)、Li-フルオロアルキル-ホスフェート(LiPF
3(CF
2CF
3)
3)、リチウムビスパーフルオロ-エチルスルホニルイミド(LiBETI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)、イオン液体ベースリチウム塩、またはその組み合わせから選択される、請求項1に記載の充電式リチウム電池。
【請求項16】
前記ポリマーが、化学式6:
(式中、R
1およびR
2は、同じまたは異なり、ならびに水素、または置換されたもしくは置換されていないC1~C10アルキル基から独立して選択され、ならびにR
3およびR
4はアルカリ金属である)に由来する架橋ネットワークを含む、
請求項1に記載の電解質。
【請求項17】
前記有機液体溶媒またはイオン液体中の前記リチウム塩のモル比率または分子比率が、0.2より高いおよび最大0.99である、請求項1に記載の電解質。
【請求項18】
前記イオン液体が、テトラアルキルアンモニウム、ジ-、トリ-、もしくはテトラ-アルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウム、ジアルキル-ピロリジニウム、ジアルキルピペリジニウム、テトラアルキルホスホニウム、トリアルキルスルホニウム、またはその組み合わせから選択されるカチオンを有する室温イオン液体から選択される、請求項1に記載の電解質。
【請求項19】
前記イオン液体が、BF
4
-、B(CN)
4
-、CH
3BF
3
-、CH
2CHBF
3
-、CF
3BF
3
-、C
2F
5BF
3
-、n-C
3F
7BF
3
-、n-C
4F
9BF
3
-、PF
6
-、CF
3CO
2
-、CF
3SO
3
-、N(SO
2CF
3)
2
-、N(COCF
3)(SO
2CF
3)
-、N(SO
2F)
2
-、N(CN)
2
-、C(CN)
3
-、SCN
-、SeCN
-、CuCl
2
-、AlCl
4
-、F(HF)
2.3
-、またはその組み合わせから選択されるアニオンを有する室温イオン液体から選択される、請求項1に記載の電解質。
【請求項20】
(a)カソード活性材料を有するカソード;
(b)アノード集電体またはアノード集電体および前記アノード集電体上に支持されたアノード活性材料を有するアノード;
(c)前記アノードおよび前記カソードを電子的に分離する任意選択的な多孔性セパレータ;ならびに
(d)前記アノードおよび前記カソードとイオン的に接触した請求項1に記載の電解質
を含む、充電式リチウム電池。
【請求項21】
リチウム金属二次電池、リチウムイオン電池、リチウム硫黄電池、リチウムイオン硫黄電池、リチウムセレン電池、またはリチウム空気電池である、請求項20に記載の充電式リチウム電池。
【請求項22】
リチウム金属電池であり、前記アノード集電体が、2つの主要な表面を有する金属のホイル、穿孔されたシート、またはフォームを含み、少なくとも1つの主要な表面が、親リチウム性金属の層、グラフェン材料の層、または両方でコーティングまたは保護されている、請求項20に記載の充電式リチウム電池。
【請求項23】
前記金属ホイル、穿孔されたシート、またはフォームが、Cu、Ni、ステンレス鋼、Al、グラフェンコーティングされた金属、グラファイトコーティングされた金属、炭素コーティングされた金属、またはその組み合わせから選択される、請求項22に記載の充電式リチウム電池。
【請求項24】
前記親リチウム性金属が、Au、Ag、Mg、Zn、Ti、K、Al、Fe、Mn、Co、Ni、Sn、V、Cr、その合金、またはその組み合わせから選択される、請求項22に記載の充電式リチウム電池。
【請求項25】
前記グラフェン層が、単一層または少数層グラフェンから選択されるグラフェンシートを含み、前記少数層グラフェンシートが、X線回折による測定で0.3354nm~0.6nmの面間間隔d
002を有する積み重ねられたグラフェン面の2~10個の層を有し、および前記単一層または少数層グラフェンシートが、本質的に0%の非炭素元素を有するプリスティングラフェン材料、または重量で0.001%~45%の非炭素元素を有する非プリスティングラフェン材料を含有する、請求項22に記載の充電式リチウム電池。
【請求項26】
前記非プリスティングラフェンが、グラフェン酸化物、還元されたグラフェン酸化物、グラフェンフッ化物、グラフェン塩化物、グラフェン臭化物、グラフェンヨウ化物、水素化されたグラフェン、窒素化されたグラフェン、ドーピングされたグラフェン、化学的に官能化されたグラフェン、またはその組み合わせから選択される、請求項25に記載の充電式リチウム電池。
【請求項27】
前記カソード活性材料が、リチウムニッケルマンガン酸化物(LiNi
aMn
2-aO
4、0<a<2)、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(LiNi
nMn
mCo
1-n-mO
2、0<n<1、0<m<1、n+m<1)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(LiNi
cCo
dAl
1-c-dO
2、0<c<1、0<d<1、c+d<1)、マンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)、リン酸鉄リチウム(LiFePO
4)、リチウムマンガン酸化物(LiMnO
2)、リチウムコバルト酸化物(LiCoO
2)、リチウムニッケルコバルト酸化物(LiNi
pCo
1-pO
2、0<p<1)、またはリチウムニッケルマンガン酸化物(LiNi
qMn
2-qO
4、0<q<2)を含む、請求項20に記載の充電式リチウム電池。
【請求項28】
リチウムイオン電池であり、前記アノード活性材料が、(a)ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、リン(P)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、およびカドミウム(Cd);(b)他の元素とのSi、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Ni、Co、またはCdの合金または金属間化合物;(c)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Fe、Ni、Co、V、またはCdの酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、およびテルル化物、ならびにそれらの混合物、複合物、またはリチウム含有複合物;(d)Snの塩および水酸化物;(e)チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム、アルミン酸リチウム、ニオブ酸リチウムチタン、リチウム含有チタン酸化物、リチウム遷移金属酸化物、ZnCo
2O
4;(f)炭素またはグラファイト粒子;(g)そのプレリチウム化されたバージョン;ならびに(h)その組み合わせからなる群から選択される、請求項20に記載の充電式リチウム電池。
【請求項29】
a)反応性添加剤および第1の非水性液体溶媒を含む、第1の溶液であって、前記反応性添加剤が、少なくとも1つの反応性ポリマー、反応性オリゴマー、または反応性モノマーを含み、ならびに前記反応性ポリマー、オリゴマー、またはモノマーが、少なくとも反応性カルボキシルおよび/またはヒドロキシル基を含む、前記第1の溶液;ならびに
b)開始剤または架橋剤、リチウム塩、および第2の非水性液体溶媒を含む、第2の溶液
を含み、
電解質を形成させるために前記第1の溶液および前記第2の溶液が混合される前に、前記第1の溶液および前記第2の溶液が別々に貯蔵されている、
電解質組成物。
【請求項30】
前記反応性ポリマー、反応性オリゴマー、または反応性モノマーが、アクリル酸、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリル酸)の誘導体、ビニルアルコール、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアルコール)の誘導体、カルボキシメチルセルロース、クエン酸、グリセロール、カルボキシメチルセルロースの誘導体、アルカリカチオンで置換されたカルボキシメチルセルロースもしくはポリ(アクリル酸)、またはその組み合わせから選択される化学種を含み、前記アルカリカチオンが、Li
+、Na
+、K
+、NH
4
+、またはその組み合わせから選択される、請求項29に記載の電解質組成物。
【請求項31】
前記第1の溶液または前記第2の溶液が難燃性添加剤をさらに含む、請求項29に記載の電解質組成物。
【請求項32】
前記難燃性添加剤が、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、トリフルオロプロピレンカーボネート(FPC)、メチル 、(TTSPi)、トリアリルホスフェート(TAP)、エチレンスルフェート(DTD)、1,3-プロパンスルトン(PS)、プロペンスルトン(PES)、アルキルシロキサン(Si-O)、アルキルシラン(Si-C)、液体オリゴマーシロキサン(-Si-O-Si-)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、キャノーラ油、またはその組み合わせから選択される、請求項31に記載の電解質組成物。
【請求項33】
前記難燃性添加剤が、ハロゲン化難燃剤、リン系難燃剤、メラミン難燃剤、金属水酸化物難燃剤、ケイ素系難燃剤、リン酸難燃剤、生体分子難燃剤、またはその組み合わせから選択される、請求項31に記載の電解質組成物。
【請求項34】
請求項20に記載の充電式リチウム電池を製造する方法であって、
A)カソード活性材料の粒子、任意選択的な伝導性添加剤、任意選択的なバインダー、反応性添加剤、非水性液体溶媒、およびリチウム塩を混合してカソードを形成させることであって、前記反応性添加剤が、少なくとも1つの反応性ポリマー、反応性オリゴマー、または反応性モノマーおよび硬化剤または開始剤を含み、ならびに前記反応性ポリマー、オリゴマー、またはモノマーが、少なくとも反応性カルボキシルおよび/またはヒドロキシル基を含む、前記形成させること;
B)アノードを用意すること;
C)前記カソードおよび前記アノードを組み合わせて電池を形成させること;ならびに
D)工程(C)の前または後に、前記反応性添加剤を重合および/または架橋させて前記充電式リチウム電池を製造すること
を含む、前記方法。
【請求項35】
工程(B)が、アノード活性材料の粒子、任意選択的な伝導性添加剤、任意選択的なバインダー、反応性添加剤、非水性液体溶媒、およびリチウム塩を混合してアノードを形成させる手順を含み、ならびに前記方法が、工程(C)の前または後に、前記反応性添加剤を重合および/または架橋させて前記充電式リチウム電池を製造することをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
工程(A)が、前記カソード中に無機固体電解質粉末の粒子を加えることをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
工程(B)が、前記アノード中に無機固体電解質粉末の粒子を加えることをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
充電式リチウム電池を製造する方法であって、
a)カソードを用意すること;
b)アノードを用意すること;
c)前記カソードおよび前記アノードを組み合わせてドライ電池を形成させること;ならびに
d)請求項29に記載の電解質組成物を前記ドライ電池に導入し、ならびに前記反応性添加剤を重合および/または架橋させて前記充電式リチウム電池を製造すること
を含む、前記方法。
【請求項39】
請求項20に記載の充電式リチウム電池を製造する方法であって、
(A)カソード活性材料の粒子、任意選択的な伝導性添加剤、任意選択的なバインダー、および反応性添加剤を混合してカソードを形成させることであって、前記反応性添加剤が、少なくとも1つの反応性ポリマー、反応性オリゴマー、または反応性モノマーを含み、ならびに前記反応性ポリマー、オリゴマー、またはモノマーが、少なくとも反応性カルボキシルおよび/またはヒドロキシル基を含む、前記形成させること;
(B)アノードを用意すること;
(C)前記カソード、任意選択的なセパレータ、前記アノード、および保護用ハウジングを組み合わせて電池を形成させること;ならびに
(D)リチウム塩、開始剤または架橋剤、および非水性液体溶媒の液体混合物を前記電池に注入し、ならびに前記反応性添加剤を重合および/または架橋させて前記充電式リチウム電池を製造すること
を含む、前記方法。
【請求項40】
重合および/または架橋の前記手順が、熱、高エネルギー放射線、またはその組み合わせに前記反応性添加剤を曝露することを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
アノード、カソード、ならびに前記アノードおよび前記カソードとイオン流通した準固体または固体状態電解質を含む充電式リチウムバッテリーであって、前記電解質が、
(a)反応性添加剤の重合または架橋生成物であるポリマーであって、前記反応性添加剤が、少なくとも1つの反応性ポリマー、反応性オリゴマー、または反応性モノマーおよび架橋剤または開始剤を含む、前記ポリマー;
(b)リチウム塩;ならびに
(c)組み合わせられた前記ポリマー、前記リチウム塩、および非水性液体溶媒の全重量または全体積に基づいて重量または体積で0%~30%の前記非水性液体溶媒であって、前記液体溶媒が、前記反応性添加剤とは別個であり、および化学組成が異なり、前記反応性添加剤の部分ではなく、ならびに前記重合もしくは架橋にも前記ポリマーの製造の間のいかなる化学反応にも参加しない、前記非水性液体溶媒
を含み;
前記カソードがカソード活性材料の粒子を含み、ならびに前記電解質が、前記カソード活性材料粒子の少なくとも大部分または実質的にすべてと物理的に接触している、
充電式リチウムバッテリー。
【請求項42】
前記電解質が、20℃で測定された場合に0.01kPaよりも低い蒸気圧、前記ポリマーなしの前記液体溶媒およびリチウム塩単独での蒸気圧の60%よりも低い蒸気圧、前記液体溶媒単独での引火点よりも少なくとも50℃高い引火点、もしくは200℃よりも高い引火点を呈するか、または測定可能な引火点を呈さず、ならびに前記ポリマーが、室温で10
-8S/cm~10
-2S/cmのリチウムイオン伝導性を有する、請求項1に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項43】
前記反応性モノマー、反応性オリゴマー、または反応性ポリマーが、イソシアネート基、オキセタン基、エポキシ基、ジカルボン酸無水物基、シリル基、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基、アルキニル基、またはその組み合わせから選択される化学官能基を有する、請求項1に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項44】
前記架橋剤が、分子中にヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基、アミド基、アミン基、アクリル基、またはメルカプト基から選択される少なくとも1つの反応性基を有する化合物を含む、請求項3に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項45】
前記反応性モノマー、反応性オリゴマー、または反応性ポリマーが、化学式1:
により表される直鎖構造、または化学式2:
により示される環状構造から選択されるエポキシ基を含み、
式中、R
1およびR
2の各々は、独立して、置換されていないまたは置換されたエポキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、エーテル基、エステル基、アリール基、またはハロアルキル基であり;R
3は、置換されていないもしくは置換されたエポキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、エーテル基、エステル基、アリール基、ハロアルキル基、またはアミド基の1~9個の繰り返し単位を含む上記の置換されていないもしくは置換された基であり;ならびにR
1、R
2、およびR
3の少なくとも1つは、エポキシ基を含む基であり、R
4は、少なくとも1つのエポキシ基を含む基であり、R
5は、-(CH
2)
n-、1つもしくは複数の-CH
2-が-NR
4-で置換された-(CH
2)
n-、またはアミド基:
の1~9個の繰り返し単位であり、
nは1~18の整数である、
請求項1に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項46】
前記反応性モノマー、オリゴマー、またはポリマーが環状構造を含み、前記環状構造が、置換されていないもしくは置換されたシクロアルカンの4~20多環式環、芳香族炭化水素、芳香環、複素環式環、またはアミド基の1~10個の繰り返し単位から構成される環状構造であり、R
4が、少なくとも1つのエポキシ基を含む基である、請求項5に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項47】
前記反応性ポリマーが、化学式3から選択されるエポキシ基を含み、および前記ポリマーがアミド基またはアミン基をさらに含む、請求項3に記載の充電式リチウムバッテリー:
【請求項48】
前記アミン基が、化学式4:
から選択される、請求項7に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項49】
前記反応性モノマー、反応性オリゴマー、または反応性ポリマーが、化学式5により表される化学種またはその誘導体を含み、および前記架橋剤が、化学式6により表される化学種またはその誘導体を含む、請求項1に記載の充電式リチウムバッテリー:
(式中、R
1は水素またはメチル基であり、ならびにR
2およびR
3は、各々独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、ジアルキルアミノプロピル(--C
3H
6N(R’)
2)およびヒドロキシエチル(CH
2CH
2OH)基からなる群から選択されるものであり、ならびにR
4およびR
5は各々独立して水素またはメチル基であり、ならびにnは3~30の整数であり、R’はC
1~C
5アルキル基である)。
【請求項50】
前記反応性モノマー、反応性オリゴマー、または反応性ポリマーが、ポリ(エチレングリコール)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、ポリ(エチレングリコール)4-ノニルフェニルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)フェニルエーテルアクリレート、その組み合わせ、およびポリプロピレングリコールまたはポリプロピレングリコールの誘導体とのその組み合わせからなる群から選択される熱硬化性有機化合物を含む、請求項1に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項51】
前記反応性モノマー、反応性オリゴマー、または反応性ポリマーが、ポリプロピレングリコールまたはポリプロピレングリコールの誘導体から選択される熱硬化性有機化合物を含み、および前記電解質が、重量または体積で5%以下の非水性液体溶媒を含む、請求項1に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項52】
前記ポリマーが、ポリマー鎖の架橋ネットワーク中にエーテル結合、ニトリル由来結合、ベンゾ過酸化物由来結合、エチレンオキシド結合、プロピレンオキシド結合、シアノ樹脂結合、トリアクリレートモノマー由来結合、テトラアクリレートモノマー由来結合、またはその組み合わせを有するポリマー鎖の前記架橋ネットワークを含む、請求項1に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項53】
前記ポリマーが、ニトリル含有ポリビニルアルコール鎖、シアノレジン鎖、ペンタエリトリトールテトラアクリレート鎖、ペンタエリトリトールトリアクリレート鎖、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(ETPTA)鎖、エチレングリコールメチルエーテルアクリレート(EGMEA)鎖、またはその組み合わせから選択されるポリマー鎖の架橋ネットワークを含む、請求項1に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項54】
前記開始剤または架橋剤が、アゾ化合物、過酸化ベンゾイル(BPO)、ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、t-アミルペルオキシピバレート、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス-(2-メチルブチロニトリル)、1,1-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル、過酸化水素、ドデカノイルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルオキシピバレート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)、ホウフッ化リチウム(LiBF
4)、ヘキサフルオロヒ化リチウム(LiAsF
6)、トリフルオロ-メタンスルホン酸リチウム(LiCF
3SO
3)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF
3SO
2)
2)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム(LiBF
2C
2O
4)、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム(LiBF
2C
2O
4)、またはその組み合わせから選択される、請求項1に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項55】
前記電解質が、難燃性添加剤をさらに含み、前記難燃性添加剤が、前記液体溶媒とは組成が異なり、および前記液体溶媒と混合物を形成し、ならびに前記難燃性添加剤が、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、トリフルオロプロピレンカーボネート(FPC)、メチルノナフルオロブチルエーテル(MFE)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト(TTSPi)、トリアリルホスフェート(TAP)、エチレンスルフェート(DTD)、1,3-プロパンスルトン(PS)、プロペンスルトン(PES)、アルキルシロキサン(Si-O)、アルキルシラン(Si-C)、液体オリゴマーシロキサン(-Si-O-Si-)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、キャノーラ油、またはその組み合わせから選択され、ならびに前記混合物中の前記難燃性添加剤対前記液体溶媒の比が重量で5/95~95/5である、請求項1に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項56】
前記電解質が、ハロゲン化難燃剤、リン系難燃剤、メラミン難燃剤、金属水酸化物難燃剤、ケイ素系難燃剤、リン酸難燃剤、生体分子難燃剤、またはその組み合わせから選択される難燃性添加剤をさらに含む、請求項1に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項57】
前記難燃性添加剤が、実質的にリチウムイオン不透過性および液体電解質不透過性のコーティング材料のシェルにより被包された前記添加剤を含む被包された粒子の形態であり、前記シェルが、閾値温度よりも高い温度に曝露された場合に破壊可能である、請求項16に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項58】
前記ポリマーが、ポリ(エチレンオキシド)、ポリプロピレンオキシド、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(アクリロニトリル)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ビニリデンフルオリド)、ポリビス-メトキシエトキシエトキシド-ホスファゼン、ポリビニルクロリド、ポリジメチルシロキサン、ポリ(ビニリデンフルオリド)-ヘキサフルオロプロピレン、シアノエチルポリ(ビニルアルコール)、ペンタエリトリトールテトラアクリレート系ポリマー、脂肪族ポリカーボネート、カルボキシレートアニオン、スルホニルイミドアニオン、もしくはスルホネートアニオンを有する単一Liイオン伝導性固体ポリマー電解質、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレートの架橋電解質、そのスルホン化誘導体、またはその組み合わせから選択される第2のポリマーとの混合物、コポリマー、半相互貫入ネットワーク、または同時相互貫入ネットワークを形成している、請求項1に記載の充電式リチウムバッテリー。
【請求項59】
前記ポリマーが、2nm~30μmの粒子サイズを有する微細粉末の形態の無機固体電解質材料をさらに含み、無機固体電解質材料の前記粒子が、前記ポリマー中に分散されているか、または前記ポリマーにより化学的に結合されている、請求項1に記載の電解質。
【請求項60】
無機固体電解質材料の前記粒子が、酸化物タイプ、硫化物タイプ、水素化物タイプ、ハロゲン化物タイプ、ホウ酸タイプ、リン酸タイプ、リチウムリン酸窒化物(LiPON)、ガーネットタイプ、リチウム超イオン伝導体(LISICON)タイプ、ナトリウム超イオン伝導体(NASICON)タイプ、またはその組み合わせから選択される、請求項19に記載の電解質。
【請求項61】
前記有機液体溶媒が、1,3-ジオキソラン(DOL)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(DEGDBE)、2-エトキシエチルエーテル(EEE)、スルホン、スルホラン、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルプロピオネート、メチルプロピオネート、プロピレンカーボネート(PC)、ガンマ-ブチロラクトン(γ-BL)、アセトニトリル(AN)、エチルアセテート(EA)、プロピルホルメート(PF)、メチルホルメート(MF)、トルエン、キシレン、メチルアセテート(MA)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート(VC)、アリルエチルカーボネート(AEC)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、トリフルオロプロピレンカーボネート(FPC)、メチルノナフルオロブチルエーテル(MFE)、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト(TTSPi)、トリアリルホスフェート(TAP)、エチレンスルフェート(DTD)、1,3-プロパンスルトン(PS)、プロペンスルトン(PES)、アルキルシロキサン(Si-O)、アルキルシラン(Si-C)、およびその組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の充電式リチウム電池。
【請求項62】
前記リチウム塩が、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)、ホウフッ化リチウム(LiBF
4)、ヘキサフルオロヒ化リチウム(LiAsF
6)、トリフルオロ-メタンスルホン酸リチウム(LiCF
3SO
3)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF
3SO
2)
2)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム(LiBF
2C
2O
4)、硝酸リチウム(LiNO
3)、Li-フルオロアルキル-ホスフェート(LiPF
3(CF
2CF
3)
3)、リチウムビスパーフルオロ-エチルスルホニルイミド(LiBETI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)、イオン液体リチウム塩、またはその組み合わせから選択される、請求項1に記載の充電式リチウム電池。
【請求項63】
前記イオン液体が、テトラアルキルアンモニウム、ジ-、トリ-、もしくはテトラ-アルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウム、ジアルキル-ピロリジニウム、ジアルキルピペリジニウム、テトラアルキルホスホニウム、トリアルキルスルホニウム、またはその組み合わせから選択されるカチオンを有する室温イオン液体から選択される、請求項1に記載の充電式リチウム電池。
【請求項64】
前記イオン液体が、BF
4
-、B(CN)
4
-、CH
3BF
3
-、CH
2CHBF
3
-、CF
3BF
3
-、C
2F
5BF
3
-、n-C
3F
7BF
3
-、n-C
4F
9BF
3
-、PF
6
-、CF
3CO
2
-、CF
3SO
3
-、N(SO
2CF
3)
2
-、N(COCF
3)(SO
2CF
3)
-、N(SO
2F)
2
-、N(CN)
2
-、C(CN)
3
-、SCN
-、SeCN
-、CuCl
2
-、AlCl
4
-、F(HF)
2.3
-、またはその組み合わせから選択されるアニオンを有する室温イオン液体から選択される、請求項1に記載の充電式リチウム電池。
【請求項65】
リチウム金属二次電池、リチウムイオン電池、リチウム硫黄電池、リチウムイオン硫黄電池、リチウムセレン電池、またはリチウム空気電池である、請求項1に記載の充電式リチウム電池。
【請求項66】
前記カソードが、リチウムニッケルマンガン酸化物(LiNi
aMn
2-aO
4、0<a<2)、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(LiNi
nMn
mCo
1-n-mO
2、0<n<1、0<m<1、n+m<1)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(LiNi
cCo
dAl
1-c-dO
2、0<c<1、0<d<1、c+d<1)、マンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)、リン酸鉄リチウム(LiFePO
4)、リチウムマンガン酸化物(LiMnO
2)、リチウムコバルト酸化物(LiCoO
2)、リチウムニッケルコバルト酸化物(LiNi
pCo
1-pO
2、0<p<1)、またはリチウムニッケルマンガン酸化物(LiNi
qMn
2-qO
4、0<q<2)から選択されるカソード活性材料を含む、請求項1に記載の充電式リチウム電池。
【請求項67】
リチウムイオン電池であり、前記アノードが、(a)ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、リン(P)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、およびカドミウム(Cd);(b)他の元素とのSi、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Ni、Co、またはCdの合金または金属間化合物;(c)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Fe、Ni、Co、V、またはCdの酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、およびテルル化物、ならびにそれらの混合物、複合物、またはリチウム含有複合物;(d)Snの塩および水酸化物;(e)チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム、アルミン酸リチウム、ニオブ酸リチウムチタン、リチウム含有チタン酸化物、リチウム遷移金属酸化物、ZnCo
2O
4;(f)炭素またはグラファイト粒子;(g)そのプレリチウム化されたバージョン;ならびに(h)その組み合わせからなる群から選択されるアノード活性材料を含む、請求項1に記載の充電式リチウム電池。
【請求項68】
前記アノードと前記カソードとの間に配されたセパレータをさらに含み、前記セパレータが前記準固体または固体状態電解質を含む、請求項1に記載の充電式リチウム電池。
【請求項69】
請求項1に記載の充電式リチウム電池を製造する方法であって、
a.アノード、任意選択的なセパレータ層、カソード、および保護用ハウジングを組み合わせて電池を形成させること;
b.反応性液体電解質組成物を前記電池に導入することであって、前記反応性液体電解質組成物が、非水性液体溶媒中に溶解したリチウム塩、架橋剤または開始剤、および反応性モノマー、反応性オリゴマー、または反応性ポリマーを含み、前記液体溶媒が、前記反応性液体電解質組成物の全重量または体積に基づいてΦ
iの初期重量分率または体積分率を占有する、前記導入すること;ならびに
c.前記液体溶媒を部分的にまたは完全に除去し、ならびに前記反応性電解質組成物を硬化(重合および/または架橋)させて準固体または固体状態電解質を得ることであって、前記液体溶媒の最終重量分率または体積分率Φ
fがΦiより小さく、およびΦ
fが0%~30%である、前記得ること
を含む、前記方法。
【請求項70】
請求項1に記載の充電式リチウム電池を製造する方法であって、
A)カソード活性材料の粒子、任意選択的な伝導性添加剤、任意選択的なバインダー、反応性添加剤、非水性液体溶媒、およびリチウム塩を混合してカソードを形成させることであって、前記反応性添加剤が、少なくとも1つの反応性ポリマー、反応性オリゴマー、または反応性モノマーおよび架橋剤または開始剤を含み、ならびに前記非水性液体溶媒が、組み合わせられた前記液体溶媒、リチウム塩、および反応性モノマー、オリゴマーまたはポリマーの全重量または体積に基づいてΦ
iの初期重量分率または体積分率を占有する、前記形成させること;
B)アノードを用意すること;
C)前記カソードおよび前記アノードを組み合わせて電池を形成させること;ならびに
D)工程(C)の前または後に、前記液体溶媒を部分的にまたは完全に除去し、ならびに前記反応性モノマー、オリゴマー、またはポリマーを重合および/または架橋させて前記充電式リチウム電池を製造することであって、前記液体溶媒の最終重量分率または体積分率Φ
fがΦiよりも小さく、およびΦ
fが0%~30%である、前記製造すること
を含む、前記方法。
【請求項71】
工程(B)が、アノード活性材料の粒子、任意選択的な伝導性添加剤、任意選択的なバインダー、反応性添加剤、非水性液体溶媒、およびリチウム塩を混合してアノードを形成させる手順を含み、ならびに前記方法が、工程(C)の前または後に、前記反応性添加剤を重合および/または架橋させて前記充電式リチウム電池を製造することをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項72】
工程(A)が、前記カソード中に無機固体電解質粉末の粒子を加えることをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項73】
工程(B)が、前記アノード中に無機固体電解質粉末の粒子を加えることをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項74】
請求項1に記載の充電式リチウム電池を製造する方法であって、
(A)カソード活性材料の粒子、任意選択的な伝導性添加剤、任意選択的なバインダー、および反応性添加剤を混合してカソードを形成させることであって、前記反応性添加剤が、少なくとも1つの反応性ポリマー、反応性オリゴマー、または反応性モノマーを含む、前記形成させること;
(B)アノードを用意し、ならびに前記カソード、任意選択的なセパレータ、前記アノード、および保護用ハウジングを組み合わせて電池を形成させること;ならびに
(C)リチウム塩、開始剤または架橋剤、および非水性液体溶媒の液体混合物を前記電池に注入することであって、前記非水性液体溶媒が、組み合わせられた前記液体溶媒、リチウム塩、および反応性モノマー、オリゴマーまたはポリマーの全重量または体積に基づいてΦ
iの初期重量分率または体積分率を占有する、前記注入すること;ならびに
(D)前記液体溶媒を部分的にまたは完全に除去し、ならびに前記反応性添加剤を重合および/または架橋させて前記充電式リチウム電池を製造することであって、前記液体溶媒の最終重量分率または体積分率Φ
fがΦiより小さく、およびΦ
fが0%~30%である、前記製造すること
を含む、前記方法。
【請求項75】
重合および/または架橋の前記手順が、熱、高エネルギー放射線、またはその組み合わせに前記反応性添加剤を曝露することを含む、請求項34に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、耐火性電解質ならびにそのような電解質を含有するリチウムバッテリー(リチウムイオンおよびリチウム金属バッテリー)を提供する。
【背景技術】
【0002】
充電式リチウムイオン(Liイオン)およびリチウム金属バッテリー(例えば、リチウム硫黄、リチウムセレン、およびLi金属空気バッテリー)は、電動輸送機器(EV)、ハイブリッド電動輸送機器(HEV)、ならびに携帯型電子デバイス、例えばラップトップコンピュータおよびモバイルホンのための有望な電源と考えられている。金属元素としてのリチウムは、アノード活性材料として任意の他の金属または金属挿入化合物(4,200mAh/gの比容量を有するLi4.4Siを除く)と比較して最も高いリチウム貯蔵容量(3,861mAh/g)を有する。それゆえ、一般に、Li金属バッテリー(リチウム金属アノードを有する)は、リチウムイオンバッテリー(グラファイトアノードを有する)よりも有意に高いエネルギー密度を有する。
【0003】
しかしながら、リチウムイオンバッテリーおよびすべてのリチウム金属二次バッテリーのために使用される電解質は、何らかの安全性の課題を提示する。有機液体電解質のほとんどは、熱暴走または爆発問題を引き起こし得る。
【0004】
イオン液体(IL)は、著しく低い温度において液体である、純粋にイオン性の、塩様の材料の新たなクラスである。ILの公式の定義は、参照点として水の沸点を使用する:「イオン液体は100℃未満で液体であるイオン性化合物である」。ILの特に有用なおよび科学的に興味深いクラスは室温イオン液体(RTIL)であり、これは、室温またはそれ未満の温度で液体である塩を指す。RTILはまた、有機液体塩または有機溶融塩として参照される。RTILの認められる定義は、周囲温度よりも低い融解温度を有する任意の塩である。
【0005】
ILは、それらの非可燃性に起因して充電式リチウムバッテリーのための潜在的な電解質として示唆されたが、従来のイオン液体組成物は、恐らくはいくつかの本来的な欠点に起因して電解質として使用された場合に満足のいく性能を呈していない:(a)ILは、室温またはより低い温度において相対的に高い粘度を有し;そのためリチウムイオン輸送に適しないと考えられている;(b)Li-S電池での使用のために、ILは、カソードにおいてリチウム多硫化物を溶解させ、溶解された種がアノードに移動することを可能とする能力を有する(すなわち、シャトル効果は依然として重度である);および(c)リチウム金属二次電池のために、ILのほとんどはアノードにおいてリチウム金属と強く反応して、Liを消費し続け、繰り返しの充電および放電の間に電解質それ自体を枯渇させる。これらの要因は、相対的に不良な比容量(特には高電流または高充電/放電速度条件下;それゆえより低い出力密度下において)、低い比エネルギー密度、急速な容量減衰および不良なサイクル寿命に繋がる。さらには、ILは依然として極めて高価である。結果的に、現時点で、商業的に入手可能なリチウムバッテリーは、一次電解質成分としてイオン液体を使用していない。
【0006】
固体状態電解質は、防火および防爆の観点において安全であると一般的に考えられている。固体状態電解質は、有機、無機、有機-無機複合電解質に分けられ得る。しかしながら、有機ポリマー固体状態電解質、例えばポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、およびポリ(アクリロニトリル)(PAN)の伝導性は典型的には低い(<10-5S/cm)。
【0007】
無機固体状態電解質(例えば、ガーネットタイプおよび金属硫化物タイプ)は高い伝導性(約10-3S/cm)を呈し得るが、無機固体状態電解質と電極(カソードまたはアノード)との間の界面インピーダンスまたは抵抗は高い。さらに、伝統的な無機セラミック電解質は非常にもろく、不良なフィルム形成能力および不良な機械的特性を有する。これらの材料は、高い対費用効果で生産することができない。有機-無機複合電解質は、低減した界面抵抗に繋がり得るが、リチウムイオン伝導性および動作電圧は、有機ポリマーの追加に起因して減少し得る。
【0008】
本出願人の研究グループは、第4のタイプの固体状態電解質と考えられ得る準固体状態電解質(QSSE)を以前に開発した。準固体状態電解質のある特定の変形形態において、電解質と電極との間の物理的およびイオン的接触を向上させ、そのため界面抵抗を低減させることを助けるために小量の液体電解質が存在し得る。QSSEの例は以下において開示されている:Hui He,et al.「Lithium Secondary Batteries Containing a Non-flammable Quasi-solid Electrolyte」、米国特許出願第13/986,814号(2013年6月10日);米国特許第9,368,831号(2016年6月14日);米国特許第9,601,803号(2017年3月21日);米国特許第9,601,805号(2017年3月21日);米国特許第9,059,481号(2015年6月16日)。
【0009】
しかしながら、ある特定の液体電解質の存在は、何らかの問題、例えば液体漏出、気体放出(gassing)、および高温に対する低い耐性を引き起こし得る。したがって、これらの課題のすべてまたはほとんどを取り除く新規の電解質システムが必要とされている。
【0010】
それゆえ、本開示の一般的な目的は、既存のバッテリー製造設備と適合性の充電式リチウム電池のための安全な、耐炎性/耐火性の、準固体または固体状態電解質システムを提供することである。
【発明の概要】
【0011】
本開示は、(a)反応性添加剤の重合または架橋生成物であるポリマーであって、反応性添加剤が、少なくとも1つの反応性ポリマー、反応性オリゴマー、または反応性モノマーおよび硬化剤または開始剤を含み、ならびに反応性ポリマー、オリゴマー、またはモノマーが、少なくとも反応性カルボキシルおよび/またはヒドロキシル基を含む、ポリマー;(b)リチウム塩;ならびに(c)有機液体溶媒またはイオン液体溶媒を含む、電解質を提供する。
【0012】
典型的にはおよび望ましくは、そのような電解質は、20℃で測定された場合に0.01kPaよりも低い蒸気圧、有機液体溶媒単独での蒸気圧の60%よりも低い蒸気圧、有機液体溶媒単独での引火点よりも少なくとも20℃高い引火点、もしくは150℃よりも高い引火点を呈するか、または測定可能な引火点を呈しない。典型的には、ポリマー対溶媒の重量比は、0.01/100~30/100、より典型的には1/100~10/100である。より高いポリマー含有量は、有意に低減した蒸気圧および増加した引火点または完全に排除された引火点(検出不可能)に繋がる。
【0013】
ある特定の実施形態において、ポリマーは、ポリマーの中に分散されたいかなる充填剤も添加剤もなしに測定された場合に室温で10-8S/cm~5×10-2S/cmのリチウムイオン伝導性、および2%~1,500%(典型的には5%~800%、より典型的には10%~500%)の完全に回復可能な引張弾性歪みを有する高弾性ポリマーを含み、ならびに高弾性ポリマーは、カルボキシルおよび/またはヒドロキシル基を含有する少なくとも1つのポリマーからの鎖の架橋ポリマーネットワークを少なくとも含む。
【0014】
ある特定の実施形態において、電解質中のポリマーは、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、またはその組み合わせからの鎖の架橋ネットワークを含む。
【0015】
一部の実施形態において、ポリマーは、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ビニルアルコール)、カルボキシメチルセルロース、クエン酸、グリセロール、カルボキシメチルセルロースの誘導体、ポリ(ビニルアルコール)の誘導体、ポリ(アクリル酸)の誘導体、アルカリカチオンで置換されたカルボキシメチルセルロースもしくはポリ(アクリル酸)、またはその組み合わせから選択される少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つの化合物を含み、アルカリカチオンは、Li+、Na+、K+、NH4
+、またはその組み合わせから選択される。
【0016】
好ましくは、反応性ポリマー、反応性オリゴマー、または反応性モノマーは、アクリル酸、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリル酸)の誘導体、ビニルアルコール、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアルコール)の誘導体、カルボキシメチルセルロース、クエン酸、グリセロール、カルボキシメチルセルロースの誘導体、アルカリカチオンで置換されたカルボキシメチルセルロースもしくはポリ(アクリル酸)、またはその組み合わせから選択される化学種を含み、アルカリカチオンは、Li+、Na+、K+、NH4
+、またはその組み合わせから選択される。電解質中の特に望ましいポリマーは、カルボキシメチルセルロース(CMC)、その置換されたバージョン、またはその誘導体からの鎖の架橋ポリマーネットワークを含む。
【0017】
ある特定の実施形態において、電解質中のポリマーは、5%~500%の弾性引張歪みを付与する架橋の程度まで架橋剤により架橋されたカルボキシメチルセルロース、ビニルアルコール、またはアクリル酸の架橋ネットワークを含む。
【0018】
架橋剤は、N,N-メチレンビスアクリルアミド、エピクロロヒドリン、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ケイ皮酸、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム18水和物、ジエポキシ、ジカルボン酸化合物、ポリ(カリウム1-ヒドロキシアクリレート)(PKHA)、グリセロールジグリシジルエーテル(GDE)、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDE)、クエン酸、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸の誘導体化合物、メタクリル酸の誘導体化合物、グリシジル官能基、N,N’-メチレンビスアクリルアミド(MBAAm)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMAAm)、イソボルニル(isobomyl)メタクリレート、ポリ(アクリル酸)(PAA)、メチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、エチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、エチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルアクリレート、ジイソシアネート、ウレタン鎖、その化学的誘導体、またはその組み合わせから選択されてもよい。
【0019】
電解質は、難燃性添加剤をさらに含んでもよく、難燃性添加剤は、液体溶媒とは組成が異なり、および液体溶媒と混合物を形成し、ならびに難燃性添加剤は、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、トリフルオロプロピレンカーボネート(FPC)、メチルノナフルオロブチルエーテル(MFE)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト(TTSPi)、トリアリルホスフェート(TAP)、エチレンスルフェート(DTD)、1,3-プロパンスルトン(PS)、プロペンスルトン(PES)、アルキルシロキサン(Si-O)、アルキルシラン(Alkyylsilane)(Si-C)、液体オリゴマーシロキサン(liquid oligomeric silaxane)(-Si-O-Si-)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(Ttetraethylene glycol dimethylether)(TEGDME)、キャノーラ油、またはその組み合わせから選択され、ならびに前記混合物中の難燃性添加剤対前記液体溶媒の比は重量で5/95~95/5である。
【0020】
一部の実施形態において、電解質は、ハロゲン化難燃剤、リン系難燃剤、メラミン難燃剤、金属水酸化物難燃剤、ケイ素系難燃剤、リン酸難燃剤、生体分子難燃剤、またはその組み合わせから選択される難燃性添加剤をさらに含む。
【0021】
電解質中で、難燃性添加剤は、実質的にリチウムイオン不透過性および液体電解質不透過性のコーティング材料のシェルにより被包された添加剤を含む被包された粒子の形態であってもよく、前記シェルは、閾値温度よりも高い温度に曝露された場合に破壊可能である。
【0022】
混合物中の難燃性添加剤対液体溶媒の比は、重量で1/95~99/1、好ましくは重量で10/85~90/10、さらに好ましくは重量で20/80~70/20、最も好ましくは重量で35/65~65/35である。
【0023】
電解質中のポリマーは、ポリ(エチレンオキシド)、ポリプロピレンオキシド、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(アクリロニトリル)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ビニリデンフルオリド)、ポリビス-メトキシエトキシエトキシド-ホスファゼン(poly bis-methoxy ethoxyethoxide-phosphazenex)、ポリビニルクロリド、ポリジメチルシロキサン、ポリ(ビニリデンフルオリド)-ヘキサフルオロプロピレン、シアノエチルポリ(ビニルアルコール)、ペンタエリトリトールテトラアクリレート系ポリマー、脂肪族ポリカーボネート、カルボキシレートアニオン、スルホニルイミドアニオン、もしくはスルホネートアニオンを有する単一Liイオン伝導性固体ポリマー電解質、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートもしくはポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレートの架橋電解質、そのスルホン化誘導体、またはその組み合わせから選択される第2のポリマーとの混合物、コポリマー、半相互貫入ネットワーク、または同時相互貫入ネットワークを形成していてもよい。
【0024】
ある特定の望ましい実施形態において、電解質は、2nm~30μmの粒子サイズを有する無機固体電解質材料の粒子をさらに含み、無機固体電解質材料の粒子は、ポリマー中に分散されているか、またはポリマーにより化学的に結合されている。無機固体電解質材料の粒子は、好ましくは、酸化物タイプ、硫化物タイプ、水素化物タイプ、ハロゲン化物タイプ、ホウ酸タイプ、リン酸タイプ、リチウムリン酸窒化物(LiPON)、ガーネットタイプ、リチウム超イオン伝導体(LISICON)タイプ、ナトリウム超イオン伝導体(NASICON)タイプ、またはその組み合わせから選択される。
【0025】
本開示は、リチウム金属二次電池、リチウムイオン電池、リチウム硫黄電池、リチウムイオン硫黄電池、リチウムセレン電池、またはリチウム空気電池を含む、充電式リチウムバッテリーをさらに提供する。このバッテリーは、本明細書に開示されている非可燃性の、安全な、および高性能の電解質を特色とする。
【0026】
電解質組成物中のポリマーは、好ましくは、硬化または架橋され得る反応性ポリマーを含有する。このポリマーは最初に、バッテリー電池に注入され、次に重合され得る、および/またはドライバッテリー電池に注入された後に硬化もしくは架橋され得る液体として残存するモノマーまたはオリゴマー状態であってもよい。
【0027】
代替的に、反応性ポリマー、オリゴマー、またはモノマーは(必要とされる開始剤および/または架橋剤と共に)、電極活性材料(例えばカソード活性材料粒子、例えばNCM、NCAおよびリン酸鉄リチウム)、伝導性添加剤(例えばカーボンブラック、カーボンナノチューブ、膨張化グラファイトフレーク、またはグラフェンシート)、ならびに任意選択的な難燃剤および/または任意選択的な無機固体電解質の粒子と混合されて、反応性スラリーまたはペーストを形成してもよい。スラリーまたはペーストは次に、場合により集電体(例えばカソード集電体としてのAlホイル)の表面上に支持された、所望される電極形状(例えばカソード電極)にされる。リチウムイオン電池のアノードは、アノード活性材料(例えばグラファイト、Si、SiOなどの粒子)を使用して類似した方式で作られ得る。アノード電極、カソード電極、および任意選択的なセパレータは次に組み合わせられて、バッテリー電池が形成される。電池の内側の反応性ポリマー、オリゴマー、またはモノマーは次に、その場でバッテリー電池の内側で重合および/または架橋される。
【0028】
開示される電解質中の有機液体溶媒は、1,3-ジオキソラン(DOL)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(DEGDBE)、2-エトキシエチルエーテル(EEE)、スルホン、スルホラン、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルプロピオネート、メチルプロピオネート、プロピレンカーボネート(PC)、ガンマ-ブチロラクトン(γ-BL)、アセトニトリル(AN)、エチルアセテート(EA)、プロピルホルメート(PF)、メチルホルメート(MF)、トルエン、キシレン、メチルアセテート(MA)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート(VC)、アリルエチルカーボネート(AEC)、ハイドロフルオロエーテル、およびその組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0029】
電解質中のリチウム塩は、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、ヘキサフルオロヒ化リチウム(LiAsF6)、トリフルオロ-メタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム(LiBF2C2O4)、硝酸リチウム(LiNO3)、Li-フルオロアルキル-ホスフェート(LiPF3(CF2CF3)3)、リチウムビスパーフルオロ-エチルスルホニルイミド(LiBETI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)、イオン液体ベースリチウム塩、またはその組み合わせから選択されてもよい。
【0030】
有機液体溶媒またはイオン液体中に溶解されたリチウム塩の濃度は、ポリマーなしで算出された場合に、好ましくは1.5Mより高く、より好ましくは2.0Mより高い(最大14M)。有機液体溶媒またはイオン液体中のリチウム塩のモル比率または分子比率は、好ましくは0.2より高く、および最大0.99である。
【0031】
開示される電解質中のイオン液体は、テトラアルキルアンモニウム、ジ-、トリ-、もしくはテトラ-アルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウム、ジアルキル-ピロリジニウム、ジアルキルピペリジニウム、テトラアルキルホスホニウム、トリアルキルスルホニウム、またはその組み合わせから選択されるカチオンを有する室温イオン液体から選択されてもよい。
【0032】
イオン液体は、BF4
-、B(CN)4
-、CH3BF3
-、CH2CHBF3
-、CF3BF3
-、C2F5BF3
-、n-C3F7BF3
-、n-C4F9BF3
-、PF6
-、CF3CO2
-、CF3SO3
-、N(SO2CF3)2
-、N(COCF3)(SO2CF3)-、N(SO2F)2
-、N(CN)2
-、C(CN)3
-、SCN-、SeCN-、CuCl2
-、AlCl4
-、F(HF)2.3
-、またはその組み合わせから選択されるアニオンを有する室温イオン液体から選択されてもよい。
【0033】
電解質組成物は、カソードの内部構造中に浸透し、カソード中のカソード活性材料と物理的に接触またはイオン的に接触するように、ならびにアノードカソード中に浸透して、存在する場合にアノード活性材料と物理的に接触またはイオン的に接触するように設計される。
【0034】
一般に、そのような準固体電解質は、ポリマーが存在しないか、または硬化されていない場合に、(20℃で測定された場合に)0.01kPaよりも低いおよび(100℃で測定された場合に)0.1kPaよりも低い蒸気圧を呈する。多くの場合に、蒸気分子は実際的に、検出されるためには少なすぎる。さもなければ高度に揮発性の溶媒中のリチウム塩の高い溶解度は、ポリマーの存在と共に、可燃性気体分子が炎を引き起こすことを極めて高温においても有効に予防した。準固体電解質の引火点は、同じニート有機液体溶媒単独での引火点よりも典型的には少なくとも20度(多くの場合に>50度)高い。ほとんどの場合において、引火点は150℃より高いか、または引火点は検出され得ない。電解質は単に燃え移ることも点火されることもない。任意の偶発的に引き起こされた炎は数秒よりも長く持続しない。火および爆発の課題が、バッテリー駆動式電動輸送機器が広く認められるための大きな障害となっているという考えを考慮すると、これは非常に意義深い発見である。この新たな技術はEV産業の風景を潜在的に造り直し得る。
【0035】
開示される電解質中のポリマーは、バッテリー電池の可燃性をさらに低減させるように設計される。本開示のリチウム二次電池において、反応性モノマー、オリゴマーまたはポリマーと硬化(架橋)剤および/または開始剤との混合物は、アノードおよび/もしくはカソード電極に別々に組み込まれ得るか、またはバッテリー電池全体に同時に組み込まれ得る。換言すれば、反応性混合物は、カソード、アノード、および多孔性セパレータ(またはイオン透過膜)が電池に組み立てられる前にそれぞれカソードおよびアノードに導入されてもよい。反応物の硬化は、電池組み立て工程の前または後に実行されてもよい。
【0036】
代替的に、アノード、カソード、および多孔性セパレータ(またはイオン透過膜)はドライ電池に組み立てられ、ドライ電池は次に反応性混合物を注入される。反応性混合物は引き続いて、所望される硬化温度または高エネルギー放射線に電池を曝露することにより硬化される。上記に指し示されるように、電解質中のポリマーは最初に、バッテリー電池中に注入および流動され、次に電池に注入された後に硬化または架橋される能力を有する液体として残存するモノマーまたはオリゴマー状態であってもよい。長鎖ポリマーは典型的にはカソードの内部に浸透しない。
【0037】
本開示のさらに別の好ましい実施形態は、カソード活性材料として硫黄またはリチウム多硫化物を有する硫黄カソードを含有する充電式リチウム硫黄電池またはリチウムイオン硫黄電池である。
【0038】
リチウム金属電池(リチウム金属が主要な活性アノード材料である)のために、アノード集電体は、2つの主要な表面を有する金属のホイル、穿孔されたシート、またはフォーム(foam)を含んでもよく、少なくとも1つの主要な表面は、親リチウム性(lithiophilic)金属(金属-Li固体溶液を形成する能力を有するか、もしくはリチウムイオンによりウェッタブルな金属)の層、グラフェン材料の層、または両方でコーティングまたは保護されている。金属ホイル、穿孔されたシート、またはフォームは、好ましくは、Cu、Ni、ステンレス鋼、Al、グラフェンコーティングされた金属、グラファイトコーティングされた金属、炭素コーティングされた金属、またはその組み合わせから選択される。
【0039】
親リチウム性金属は、好ましくは、Au、Ag、Mg、Zn、Ti、K、Al、Fe、Mn、Co、Ni、Sn、V、Cr、その合金、またはその組み合わせから選択される。
【0040】
グラフェン層は、好ましくは、単一層または少数層グラフェンから選択されるグラフェンシートを含み、前記少数層グラフェンシートは、X線回折による測定で0.3354nm~0.6nmの面間間隔d002を有する積み重ねられたグラフェン面の2~10個の層を有し、および前記単一層または少数層グラフェンシートは、本質的に0%の非炭素元素を有するプリスティン(pristine)グラフェン材料、または重量で0.001%~45%の非炭素元素を有する非プリスティングラフェン材料を含有する。非プリスティングラフェンは、グラフェン酸化物、還元されたグラフェン酸化物、グラフェンフッ化物、グラフェン塩化物、グラフェン臭化物、グラフェンヨウ化物、水素化されたグラフェン、窒素化されたグラフェン、ドーピングされたグラフェン、化学的に官能化されたグラフェン、またはその組み合わせから選択される。グラフェン層は、多孔性グラフェンボールまたはグラフェンフォームを含んでもよい。
【0041】
本開示の電解質を特色とするリチウムイオンバッテリーのために、アノード活性材料の選択に関する制限は特にない。アノード活性材料は、(a)ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、リン(P)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、およびカドミウム(Cd);(b)他の元素とのSi、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Ni、Co、またはCdの合金または金属間化合物;(c)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Fe、Ni、Co、V、またはCdの酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、およびテルル化物、ならびにそれらの混合物、複合物、またはリチウム含有複合物;(d)Snの塩および水酸化物;(e)チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム、アルミン酸リチウム、ニオブ酸リチウムチタン、リチウム含有チタン酸化物、リチウム遷移金属酸化物、ZnCo2O4;(f)炭素またはグラファイト粒子;(g)そのプレリチウム化されたバージョン;ならびに(h)その組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0042】
一部の実施形態において、アノード活性材料は、プレリチウム化されたSi、プレリチウム化されたGe、プレリチウム化されたSn、プレリチウム化されたSnOx、プレリチウム化されたSiOx、プレリチウム化された酸化鉄、プレリチウム化されたV2O5、プレリチウム化されたV3O8、プレリチウム化されたCo3O4、プレリチウム化されたNi3O4、またはその組み合わせを含有し、x=1~2である。
【0043】
セパレータは、本開示の電解質を含んでもよい。ある特定の実施形態において、セパレータは、ポリマー繊維、セラミック繊維、ガラス繊維、またはその組み合わせを含む。これらの繊維は、リチウムイオンの透過を可能とするが、任意の潜在的に形成されるリチウムデンドライトの透過を可能としないポアがあるような方式で積み重ねられてもよい。これらの繊維は、マトリックス材料中に分散されているか、またはバインダー材料により結合されてもよい。このマトリックスまたはバインダー材料はセラミックまたはガラス材料を含有してもよい。ポリマー電解質は、これらの繊維を一緒に保持することを助けるマトリックス材料またはバインダー材料として役立ち得る。セパレータは、ガラスまたはセラミック材料(例えば金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物など)の粒子を含有してもよい。
【0044】
充電式リチウム電池は、アルミニウムホイル、炭素もしくはグラフェンコーティングされたアルミニウムホイル、ステンレス鋼ホイルもしくはウェブ、炭素もしくはグラフェンコーティングされた鋼ホイルもしくはウェブ、炭素もしくはグラファイト紙、炭素もしくはグラファイト繊維生地、柔軟なグラファイトホイル、グラフェン紙もしくはフィルム、またはその組み合わせから選択されるカソード集電体をさらに含んでもよい。ウェブは、好ましくは相互接続されたポアまたは貫通したアパーチャを有する、スクリーン様構造物または金属フォームを意味する。
【0045】
本開示のリチウム電池は、リチウム金属硫黄電池またはリチウムイオン電池に限定されない。この安全なおよび高性能のハイブリッド電解質は、任意のリチウム金属二次電池(任意のカソード活性材料と連結されたリチウム金属ベースアノード)および任意のリチウムイオン電池において使用され得る。
【0046】
本開示はまた、
a)反応性添加剤および第1の有機溶媒を含む、第1の溶液であって、反応性添加剤が、少なくとも1つの反応性ポリマー、反応性オリゴマー、または反応性モノマーを含み、ならびに反応性ポリマー、オリゴマー、またはモノマーが、少なくとも反応性カルボキシルおよび/またはヒドロキシル基を含む、第1の溶液;ならびに
b)開始剤または架橋剤、リチウム塩、および第2の有機溶媒を含む、第2の溶液
を含み、
電解質組成物を形成させるために第1の溶液および第2の溶液が混合される前に、第1の溶液および第2の溶液が別々に貯蔵されている、
電解質組成物を提供する。
【0047】
電解質組成物中で、反応性ポリマー、反応性オリゴマー、または反応性モノマーは、好ましくは、アクリル酸、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリル酸)の誘導体、ビニルアルコール、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアルコール)の誘導体、カルボキシメチルセルロース、クエン酸、グリセロール、カルボキシメチルセルロースの誘導体、アルカリカチオンで置換されたカルボキシメチルセルロースもしくはポリ(アクリル酸)、またはその組み合わせから選択される化学種を含み、アルカリカチオンは、Li+、Na+、K+、NH4
+、またはその組み合わせから選択される。
【0048】
ある特定の実施形態において、第1の溶液または第2の溶液は難燃性添加剤をさらに含む。難燃性添加剤は、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、トリフルオロプロピレンカーボネート(FPC)、メチルノナフルオロブチルエーテル(MFE)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト(TTSPi)、トリアリルホスフェート(TAP)、エチレンスルフェート(DTD)、1,3-プロパンスルトン(PS)、プロペンスルトン(PES)、アルキルシロキサン(Si-O)、アルキルシラン(Si-C)、液体オリゴマーシロキサン(-Si-O-Si-)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、キャノーラ油、またはその組み合わせから選択されてもよい。
【0049】
一部の実施形態において、難燃性添加剤は、ハロゲン化難燃剤、リン系難燃剤、メラミン難燃剤、金属水酸化物難燃剤、ケイ素系難燃剤、リン酸難燃剤、生体分子難燃剤、またはその組み合わせから選択される。
【0050】
本開示はまた、開示される充電式リチウム電池を製造する方法であって、(A)カソード活性材料の粒子、任意選択的な伝導性添加剤(カソードにおいて典型的には要求される)、任意選択的なバインダー(重合および/または架橋で、反応性添加剤は電極において固体粒子を結合させるバインダーとなるため、要求されない)、反応性添加剤、非水性液体溶媒、およびリチウム塩を混合してカソードを形成させることであって、反応性添加剤が、少なくとも1つの反応性ポリマー、反応性オリゴマー、または反応性モノマーおよび硬化剤または開始剤を含み、ならびに反応性ポリマー、オリゴマー、またはモノマーが、少なくとも反応性カルボキシルおよび/またはヒドロキシル基を含む、形成させること;(B)アノードを用意すること;(C)カソードおよびアノードを組み合わせて電池を形成させること;ならびに(D)工程(C)の前または後に、反応性添加剤を重合および/または架橋させて充電式リチウム電池を製造することを含む、方法を提供する。
【0051】
ある特定の実施形態において、工程(B)は、アノード活性材料の粒子、任意選択的な伝導性添加剤(アノード活性材料が炭素またはグラファイト材料である場合には要求されない)、任意選択的なバインダー(重合および/または架橋で、反応性添加剤は電極において固体粒子を結合させるバインダーとなるため、要求されない)、反応性添加剤(カソードにおいて使用されるものと同じまたは異なる反応物)、非水性液体溶媒、ならびにリチウム塩を混合してアノードを形成させる手順を含み、ならびに方法は、工程(C)の前または後に、反応性添加剤を重合および/または架橋させて充電式リチウム電池を製造することをさらに含む。
【0052】
一部の実施形態において、工程(A)は、カソード中に無機固体電解質粉末の粒子および/または難燃性添加剤を加えることをさらに含む。工程(B)は、アノード中に無機固体電解質粉末の粒子および/または難燃性添加剤を加えることをさらに含んでもよい。
【0053】
本開示は、充電式リチウム電池を製造する方法であって、(a)カソードを用意すること;(b)アノードを用意すること;(c)カソードおよびアノードを組み合わせてドライ電池を形成させること;ならびに(d)本開示の電解質組成物をドライ電池に導入し、ならびに反応性添加剤を重合および/または架橋させて充電式リチウム電池を製造することを含む、方法をさらに提供する。工程(c)は、アノード、多孔性セパレータ、カソードをそれらのそれぞれの集電体と共に組み合わせて、ドライ電池を形成させるための保護用ハウジング中に封入された単位電池を形成させることを伴ってもよい。
【0054】
本開示は、開示される充電式リチウム電池を製造するさらに別の方法であって、(A)カソード活性材料の粒子、任意選択的な伝導性添加剤(カソードにおいて典型的には要求される)、任意選択的なバインダー(反応性添加剤は重合および/または架橋でバインダーとなるため、要求されない)、任意選択的な無機固体電解質粉末の粒子、任意選択的な難燃剤、ならびに反応性添加剤を混合してカソードを形成させることであって、反応性添加剤が、少なくとも1つの反応性ポリマー、反応性オリゴマー、または反応性モノマーを含み、ならびに反応性ポリマー、オリゴマー、またはモノマーが、少なくとも反応性カルボキシルおよび/またはヒドロキシル基を含む、形成させること;(B)アノードを用意すること;(C)カソード、任意選択的なセパレータ、アノード、および保護用ハウジングを組み合わせて電池を形成させること;ならびに(D)リチウム塩、非水性液体溶媒、ならびに開始剤および/または硬化剤の液体混合物を電池に注入し、ならびに反応性添加剤を重合および/または架橋させて充電式リチウム電池を製造することを含む、方法を提供する。
【0055】
重合および/または架橋の手順は、熱、高エネルギー放射線、またはその組み合わせに反応性添加剤を曝露することを含んでもよい。
【0056】
本開示は、アノード、カソード、ならびにアノードおよびカソードとイオン流通した準固体または固体状態電解質を含む充電式リチウムバッテリーであって、電解質が、(a)反応性添加剤の重合または架橋生成物であるポリマーであって、反応性添加剤が、少なくとも1つの反応性ポリマー、反応性オリゴマー、または反応性モノマーおよび架橋剤または開始剤を含む、ポリマー;(b)リチウム塩;ならびに(c)組み合わせられたポリマー、リチウム塩、および水性液体溶媒の全重量または全体積に基づいて重量または体積で0%~30%の非水性液体溶媒を含む、充電式リチウムバッテリーを提供する。
【0057】
液体溶媒は、液体有機溶媒、イオン液体、またはその組み合わせであることができる。この液体溶媒は、反応性添加剤とは別個であり、および化学組成が異なり、反応性添加剤の部分ではなく、ならびに重合もしくは架橋にもポリマーの製造の間のいかなる化学反応にも参加しない。液体溶媒それ自体は、ポリマーの重合および架橋条件(温度、時間、圧力など)下で重合しない。この液体溶媒の割合は、重合および架橋の完了時に重量または体積で好ましくは<20%、より好ましくは<10%、最も好ましくは<5%である。
【0058】
カソードはカソード活性材料の粒子を含み、および電解質は、カソードに浸透し、実質的にすべてのカソード活性材料粒子と物理的に接触している。
【0059】
一部の好ましい実施形態において、バッテリー電池は、バッテリー電池の中に液体溶媒を実質的に含有しない。しかしながら、電池に液体溶媒を最初に含めて、リチウム塩がリチウムイオンおよびアニオンに解離することを可能にすることが必須である。液体溶媒(特には有機溶媒)の大部分(>50%、好ましくは>70%)または実質的にすべては次に、反応性添加剤の硬化の直前または後に除去される。実質的に0%の液体溶媒を用いる場合、結果としてもたらされる電解質は固体状態電解質である。30%未満の液体溶媒を用いる場合、準固体電解質が得られる。両方は高度に耐炎性である。
【0060】
ある特定の実施形態において、電解質は、20℃で測定された場合に0.01kPaよりも低い蒸気圧、ポリマーなしの前記液体溶媒およびリチウム塩単独での蒸気圧の60%よりも低い蒸気圧、前記液体溶媒単独での引火点よりも少なくとも50℃高い引火点、もしくは200℃よりも高い引火点を呈するか、または測定可能な引火点を呈さず、ならびにポリマーは、室温で10-8S/cm~10-2S/cmのリチウムイオン伝導性を有する。
【0061】
電解質中の液体溶媒のより低い割合は、有意に低減した蒸気圧および増加した引火点または完全に排除された引火点(検出不可能)に繋がる。典型的には液体溶媒の割合を低減させることにより、結果としてもたらされる電解質について低減したリチウムイオン伝導性が観察される傾向があるが;しかしながら、かなり驚くべきことに、閾値となる液体溶媒比率後に、この傾向は減少または逆転される(リチウムイオン伝導性は、一部の場合において、液体溶媒の低減と共に実際に増加し得る)。
【0062】
反応性モノマー、反応性オリゴマー、または反応性ポリマーは、好ましくは、イソシアネート基、オキセタン基、エポキシ基、ジカルボン酸無水物基、シリル(sibyl)基、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基、アルキニル基、またはその組み合わせから選択される化学官能基を有する。
【0063】
架橋剤は、好ましくは、分子中にヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基、アミド基、アミン基、アクリル基、またはメルカプト基から選択される少なくとも1つの反応性基を有する化合物を含む。
【0064】
一部の実施形態において、反応性モノマー、反応性オリゴマー、または反応性ポリマーは、化学式1:
【0065】
【0066】
により表される直鎖構造、または化学式2:
【0067】
【0068】
により示される環状構造から選択されるエポキシ基を含み、
式中、R1およびR2の各々は、独立して、置換されていないまたは置換されたエポキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、エーテル基、エステル基、アリール基、またはハロアルキル基であり;R3は、置換されていないもしくは置換されたエポキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、エーテル基、エステル基、アリール基、ハロアルキル基、またはアミド基の1~9個の繰り返し単位を含む上記の置換されていないもしくは置換された基であり;ならびにR1、R2、およびR3の少なくとも1つは、エポキシ基を含む基であり、R4は、少なくとも1つのエポキシ基を含む基であり、R5は、-(CH2)n-、1つもしくは複数の-CH2-が-NR4-で置換された-(CH2)n-、またはアミド基:
【0069】
【0070】
の1~9個の繰り返し単位であり、
nは1~18の整数である。
【0071】
一部の実施形態において、反応性モノマー、オリゴマー、またはポリマーは環状構造を含み、環状構造は、置換されていないもしくは置換されたシクロアルカンの4~20多環式環、芳香族炭化水素、芳香環、複素環式環、またはアミド基の1~10個の繰り返し単位から構成される環状構造であり、R4は、少なくとも1つのエポキシ基を含む基である。
【0072】
一部の実施形態において、反応性ポリマーは、化学式3から選択されるエポキシ基を含み、およびポリマーはアミド基またはアミン基をさらに含む:
【0073】
【0074】
アミン基は、化学式4から選択されてもよい:
【0075】
【0076】
充電式リチウムバッテリーにおいて、反応性モノマー、反応性オリゴマー、または反応性ポリマーは、化学式5により表される化学種またはその誘導体を含んでもよく、および架橋剤は、化学式6により表される化学種またはその誘導体を含む:
【0077】
【0078】
【0079】
(式中、R1は水素またはメチル基であり、ならびにR2およびR3は、各々独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、ジアルキルアミノプロピル(--C3H6N(R’)2)およびヒドロキシエチル(CH2CH2OH)基からなる群から選択されるものであり、ならびにR4およびR5は各々独立して水素またはメチル基であり、ならびにnは3~30の整数であり、R’はC1~C5アルキル基である)。
【0080】
ある特定の実施形態において、電解質中のポリマーは、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、またはその組み合わせからの鎖の架橋ネットワークを含む。一部の実施形態において、ポリマーは、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ビニルアルコール)、カルボキシメチルセルロース、クエン酸、グリセロール、カルボキシメチルセルロースの誘導体、ポリ(ビニルアルコール)の誘導体、ポリ(アクリル酸)の誘導体、アルカリカチオンで置換されたカルボキシメチルセルロースもしくはポリ(アクリル酸)、またはその組み合わせから選択される少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つの化合物を含み、アルカリカチオンは、Li+、Na+、K+、NH4
+、またはその組み合わせから選択される。
【0081】
好ましくは、反応性ポリマー、反応性オリゴマー、または反応性モノマーは、アクリル酸、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリル酸)の誘導体、ビニルアルコール、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアルコール)の誘導体、カルボキシメチルセルロース、クエン酸、グリセロール、カルボキシメチルセルロースの誘導体、アルカリカチオンで置換されたカルボキシメチルセルロースもしくはポリ(アクリル酸)、またはその組み合わせから選択される化学種を含み、アルカリカチオンは、Li+、Na+、K+、NH4
+、またはその組み合わせから選択される。電解質中の特に望ましいポリマーは、カルボキシメチルセルロース(CMC)、その置換されたバージョン、またはその誘導体からの鎖の架橋ポリマーネットワークを含む。
【0082】
ある特定の実施形態において、電解質中のポリマーは、5%~500%の弾性引張歪みを付与する架橋の程度まで架橋剤により架橋されたカルボキシメチルセルロース、ビニルアルコール、またはアクリル酸の架橋ネットワークを含む。
【0083】
架橋剤は、N,N-メチレンビスアクリルアミド、エピクロロヒドリン、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ケイ皮酸、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム18水和物、ジエポキシ、ジカルボン酸化合物、ポリ(カリウム1-ヒドロキシアクリレート)(PKHA)、グリセロールジグリシジルエーテル(GDE)、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDE)、クエン酸、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸の誘導体化合物、メタクリル酸の誘導体化合物、グリシジル官能基、N,N’-メチレンビスアクリルアミド(MBAAm)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMAAm)、イソボルニルメタクリレート、ポリ(アクリル酸)(PAA)、メチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、エチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、エチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルアクリレート、ジイソシアネート、ウレタン鎖、その化学的誘導体、またはその組み合わせから選択されてもよい。
【0084】
電解質は、難燃性添加剤をさらに含んでもよく、難燃性添加剤は、液体溶媒とは組成が異なり、および液体溶媒と混合物を形成し、ならびに難燃性添加剤は、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、トリフルオロプロピレンカーボネート(FPC)、メチルノナフルオロブチルエーテル(MFE)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト(TTSPi)、トリアリルホスフェート(TAP)、エチレンスルフェート(DTD)、1,3-プロパンスルトン(PS)、プロペンスルトン(PES)、アルキルシロキサン(Si-O)、アルキルシラン(Si-C)、液体オリゴマーシロキサン(-Si-O-Si-)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、キャノーラ油、またはその組み合わせから選択され、ならびに前記混合物中の難燃性添加剤対前記液体溶媒の比は重量で5/95~95/5である。
【0085】
一部の実施形態において、電解質は、ハロゲン化難燃剤、リン系難燃剤、メラミン難燃剤、金属水酸化物難燃剤、ケイ素系難燃剤、リン酸難燃剤、生体分子難燃剤、またはその組み合わせから選択される難燃性添加剤をさらに含む。
【0086】
電解質中で、難燃性添加剤は、実質的にリチウムイオン不透過性および液体電解質不透過性のコーティング材料のシェルにより被包された添加剤を含む被包された粒子の形態であってもよく、前記シェルは、閾値温度よりも高い温度に曝露された場合に破壊可能である。
【0087】
混合物中の難燃性添加剤対液体溶媒の比は、重量で1/95~99/1、好ましくは重量で10/85~90/10、さらに好ましくは重量で20/80~70/20、最も好ましくは重量で35/65~65/35である。
【0088】
電解質中のポリマーは、ポリ(エチレンオキシド)、ポリプロピレンオキシド、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(アクリロニトリル)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ビニリデンフルオリド)、ポリビス-メトキシエトキシエトキシド-ホスファゼン、ポリビニルクロリド、ポリジメチルシロキサン、ポリ(ビニリデンフルオリド)-ヘキサフルオロプロピレン、シアノエチルポリ(ビニルアルコール)、ペンタエリトリトールテトラアクリレート系ポリマー、脂肪族ポリカーボネート、カルボキシレートアニオン、スルホニルイミドアニオン、もしくはスルホネートアニオンを有する単一Liイオン伝導性固体ポリマー電解質、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートもしくはポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレートの架橋電解質、そのスルホン化誘導体、またはその組み合わせから選択される第2のポリマーとの混合物、コポリマー、半相互貫入ネットワーク、または同時相互貫入ネットワークを形成していてもよい。
【0089】
ある特定の望ましい実施形態において、電解質は、2nm~30μmの粒子サイズを有する無機固体電解質材料の粒子をさらに含み、無機固体電解質材料の粒子は、ポリマー中に分散されているか、またはポリマーにより化学的に結合されている。無機固体電解質材料の粒子は、好ましくは、酸化物タイプ、硫化物タイプ、水素化物タイプ、ハロゲン化物タイプ、ホウ酸タイプ、リン酸タイプ、リチウムリン酸窒化物(LiPON)、ガーネットタイプ、リチウム超イオン伝導体(LISICON)タイプ、ナトリウム超イオン伝導体(NASICON)タイプ、またはその組み合わせから選択される。
【0090】
本開示は、リチウム金属二次電池、リチウムイオン電池、リチウム硫黄電池、リチウムイオン硫黄電池、リチウムセレン電池、またはリチウム空気電池を含む、充電式リチウムバッテリーをさらに提供する。このバッテリーは、本明細書に開示されている非可燃性の、安全な、および高性能の電解質を特色とする。
【0091】
充電式リチウム電池は、アノードとカソードとの間に配されたセパレータをさらに含んでもよい。好ましくは、セパレータは、本明細書に開示されている準固体または固体状態電解質を含む。
【0092】
電解質組成物中のポリマーは、好ましくは、硬化または架橋され得る反応性ポリマーを含有する。このポリマーは最初に、バッテリー電池に注入され、次にドライバッテリー電池に注入された後にその場で硬化(重合および/または架橋)され得る液体として残存するモノマーまたはオリゴマー状態であってもよい。硬化の前または後に、液体溶媒は部分的にまたは完全に除去される。
【0093】
代替的に、反応性ポリマー、オリゴマー、またはモノマーは(必要とされる開始剤および/または架橋剤と共に)、電極活性材料(例えばカソード活性材料粒子、例えばNCM、NCAおよびリン酸鉄リチウム)、伝導性添加剤(例えばカーボンブラック、カーボンナノチューブ、膨張化グラファイトフレーク、またはグラフェンシート)、ならびに任意選択的な難燃剤および/または任意選択的な無機固体電解質の粒子と混合されて、反応性スラリーまたはペーストを形成してもよい。スラリーまたはペーストは次に、場合により集電体(例えばカソード集電体としてのAlホイル)の表面上に支持された、所望される電極形状(例えばカソード電極)にされる。リチウムイオン電池のアノードは、アノード活性材料(例えばグラファイト、Si、SiOなどの粒子)を使用して類似した方式で作られ得る。アノード電極、カソード電極、および任意選択的なセパレータは次に組み合わせられて、バッテリー電池が形成される。電池の内側の反応性ポリマー、オリゴマー、またはモノマーは次に、その場でバッテリー電池の内側で重合および/または架橋される。
【0094】
開示される電解質中の有機液体溶媒は、1,3-ジオキソラン(DOL)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(DEGDBE)、2-エトキシエチルエーテル(EEE)、スルホン、スルホラン、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルプロピオネート、メチルプロピオネート、プロピレンカーボネート(PC)、ガンマ-ブチロラクトン(γ-BL)、アセトニトリル(AN)、エチルアセテート(EA)、プロピルホルメート(PF)、メチルホルメート(MF)、トルエン、キシレン、メチルアセテート(MA)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート(VC)、アリルエチルカーボネート(AEC)、ハイドロフルオロエーテル、)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、トリフルオロプロピレンカーボネート(FPC)、メチルノナフルオロブチルエーテル(MFE)、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト(TTSPi)、トリアリルホスフェート(TAP)、エチレンスルフェート(DTD)、1,3-プロパンスルトン(PS)、プロペンスルトン(PES)、アルキルシロキサン(Si-O)、アルキルシラン(Si-C)、およびその組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0095】
これらの液体溶媒は、反応性添加剤とは別個であり、および化学組成が異なり、反応性添加剤の部分ではなく(例えば反応性モノマー/オリゴマー/ポリマーでも架橋剤でもなく)、ならびに重合もしくは架橋にもポリマーの製造の間のいかなる化学反応にも参加しない。液体溶媒それ自体は、電解質ポリマーの重合および架橋条件(温度、時間、圧力など)下で重合しない。
【0096】
電解質中のリチウム塩は、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、ヘキサフルオロヒ化リチウム(LiAsF6)、トリフルオロ-メタンスルホン酸リチウム(lithium trifluoro-metasulfonate)(LiCF3SO3)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム(LiBF2C2O4)、硝酸リチウム(LiNO3)、Li-フルオロアルキル-ホスフェート(LiPF3(CF2CF3)3)、リチウムビスパーフルオロ-エチルスルホニルイミド(lithium bisperfluoro-ethysulfonylimide)(LiBETI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)、イオン液体リチウム塩、またはその組み合わせから選択されてもよい。
【0097】
開示される電解質中のイオン液体は、テトラアルキルアンモニウム、ジ-、トリ-、もしくはテトラ-アルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウム、ジアルキル-ピロリジニウム、ジアルキルピペリジニウム、テトラアルキルホスホニウム、トリアルキルスルホニウム、またはその組み合わせから選択されるカチオンを有する室温イオン液体から選択されてもよい。
【0098】
イオン液体は、BF4
-、B(CN)4
-、CH3BF3
-、CH2CHBF3
-、CF3BF3
-、C2F5BF3
-、n-C3F7BF3
-、n-C4F9BF3
-、PF6
-、CF3CO2
-、CF3SO3
-、N(SO2CF3)2
-、N(COCF3)(SO2CF3)-、N(SO2F)2
-、N(CN)2
-、C(CN)3
-、SCN-、SeCN-、CuCl2
-、AlCl4
-、F(HF)2.3
-、またはその組み合わせから選択されるアニオンを有する室温イオン液体から選択されてもよい。
【0099】
電解質組成物は、カソードの内部構造中に浸透し、カソード中のカソード活性材料と物理的に接触またはイオン的に接触するように、およびアノードに浸透して、存在する場合にアノード活性材料と物理的に接触またはイオン的に接触するように設計される。
【0100】
一般に、そのような準固体電解質は、ポリマーが存在しないか、または硬化されていない場合に、(20℃で測定された場合に)0.01kPaよりも低いおよび(100℃で測定された場合に)0.1kPaよりも低い蒸気圧を呈する。多くの場合に、蒸気分子は実際的に、検出されるためには少なすぎる。さもなければ高度に揮発性の溶媒中のリチウム塩の高い溶解度は、ポリマーの存在と共に、可燃性気体分子が炎を引き起こすことを極めて高温においても有効に予防した。準固体電解質の引火点は、典型的には、同じニート有機液体溶媒単独での引火点よりも少なくとも50度(典型的には100度)高い。ほとんどの場合において、引火点は200℃より高いか、または引火点は検出され得ない。電解質は単に燃え移ることも点火されることもない。任意の偶発的に引き起こされた炎は数秒よりも長く持続しない。火および爆発の課題が、バッテリー駆動式電動輸送機器が広く認められるための大きな障害となっているという考えを考慮すると、これは非常に意義深い発見である。この新たな技術はEV産業の風景を潜在的に造り直し得る。
【0101】
開示される電解質中のポリマーは、バッテリー電池の可燃性をさらに低減させるように設計される。本開示のリチウム二次電池において、反応性モノマー、オリゴマーまたはポリマーと硬化(架橋)剤および/または開始剤との混合物は、アノードおよび/もしくはカソード電極に別々に組み込まれ得るか、またはバッテリー電池全体に同時に組み込まれ得る。換言すれば、反応性混合物は、カソード、アノード、および多孔性セパレータ(またはイオン透過膜)が電池に組み立てられる前にそれぞれカソードおよびアノードに導入されてもよい。反応物の硬化は、電池組み立て工程の前または後に実行されてもよい。
【0102】
代替的に、アノード、カソード、および多孔性セパレータ(またはイオン透過膜)はドライ電池に組み立てられ、ドライ電池は次に反応性混合物を注入される。反応性混合物は引き続いて、所望される硬化温度または高エネルギー放射線に電池を曝露することにより硬化される。上記に指し示されるように、電解質中のポリマーは最初に、バッテリー電池中に注入および流動され、次に電池に注入された後に硬化または架橋される能力を有する液体として残存するモノマーまたはオリゴマー状態であってもよい。長鎖ポリマーは典型的にはカソードの内部に浸透しない。
【0103】
本開示のさらに別の好ましい実施形態は、カソード活性材料として硫黄またはリチウム多硫化物を有する硫黄カソードを含有する充電式リチウム硫黄電池またはリチウムイオン硫黄電池である。
【0104】
リチウム金属電池(リチウム金属が主要な活性アノード材料である)のために、アノード集電体は、2つの主要な表面を有する金属のホイル、穿孔されたシート、またはフォームを含んでもよく、少なくとも1つの主要な表面は、親リチウム性金属(金属-Li固体溶液を形成する能力を有するか、もしくはリチウムイオンによりウェッタブルな金属)の層、グラフェン材料の層、または両方でコーティングまたは保護されている。金属ホイル、穿孔されたシート、またはフォームは、好ましくは、Cu、Ni、ステンレス鋼、Al、グラフェンコーティングされた金属、グラファイトコーティングされた金属、炭素コーティングされた金属、またはその組み合わせから選択される。親リチウム性金属は、好ましくは、Au、Ag、Mg、Zn、Ti、K、Al、Fe、Mn、Co、Ni、Sn、V、Cr、その合金、またはその組み合わせから選択される。
【0105】
グラフェン層は、好ましくは、単一層または少数層グラフェンから選択されるグラフェンシートを含み、前記少数層グラフェンシートは、X線回折による測定で0.3354nm~0.6nmの面間間隔d002を有する積み重ねられたグラフェン面の2~10個の層を有し、および前記単一層または少数層グラフェンシートは、本質的に0%の非炭素元素を有するプリスティングラフェン材料、または重量で0.001%~45%の非炭素元素を有する非プリスティングラフェン材料を含有する。非プリスティングラフェンは、グラフェン酸化物、還元されたグラフェン酸化物、グラフェンフッ化物、グラフェン塩化物、グラフェン臭化物、グラフェンヨウ化物、水素化されたグラフェン、窒素化されたグラフェン、ドーピングされたグラフェン、化学的に官能化されたグラフェン、またはその組み合わせから選択される。グラフェン層は、多孔性グラフェンボールまたはグラフェンフォームを含んでもよい。
【0106】
本開示の電解質を特色とするリチウムイオンバッテリーのために、アノード活性材料の選択に関する制限は特にない。アノード活性材料は、(a)ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、リン(P)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、およびカドミウム(Cd);(b)他の元素とのSi、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Ni、Co、またはCdの合金または金属間化合物;(c)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Fe、Ni、Co、V、またはCdの酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、およびテルル化物、ならびにそれらの混合物、複合物、またはリチウム含有複合物;(d)Snの塩および水酸化物;(e)チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム、アルミン酸リチウム、ニオブ酸リチウムチタン、リチウム含有チタン酸化物、リチウム遷移金属酸化物、ZnCo2O4;(f)炭素またはグラファイト粒子;(g)そのプレリチウム化されたバージョン;ならびに(h)その組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0107】
一部の実施形態において、アノード活性材料は、プレリチウム化されたSi、プレリチウム化されたGe、プレリチウム化されたSn、プレリチウム化されたSnOx、プレリチウム化されたSiOx、プレリチウム化された酸化鉄、プレリチウム化されたV2O5、プレリチウム化されたV3O8、プレリチウム化されたCo3O4、プレリチウム化されたNi3O4、またはその組み合わせを含有し、x=1~2である。
【0108】
セパレータは、本開示の電解質を含んでもよい。ある特定の実施形態において、セパレータは、ポリマー繊維、セラミック繊維、ガラス繊維、またはその組み合わせを含む。これらの繊維は、リチウムイオンの透過を可能とするが、任意の潜在的に形成されるリチウムデンドライトの透過を可能としないポアがあるような方式で積み重ねられてもよい。これらの繊維は、マトリックス材料中に分散されているか、またはバインダー材料により結合されてもよい。このマトリックスまたはバインダー材料はセラミックまたはガラス材料を含有してもよい。ポリマー電解質は、これらの繊維を一緒に保持することを助けるマトリックス材料またはバインダー材料として役立ち得る。セパレータは、ガラスまたはセラミック材料(例えば金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物など)の粒子を含有してもよい。
【0109】
充電式リチウム電池は、アルミニウムホイル、炭素もしくはグラフェンコーティングされたアルミニウムホイル、ステンレス鋼ホイルもしくはウェブ、炭素もしくはグラフェンコーティングされた鋼ホイルもしくはウェブ、炭素もしくはグラファイト紙、炭素もしくはグラファイト繊維生地、柔軟なグラファイトホイル、グラフェン紙もしくはフィルム、またはその組み合わせから選択されるカソード集電体をさらに含んでもよい。ウェブは、好ましくは相互接続されたポアまたは貫通したアパーチャを有する、スクリーン様構造物または金属フォームを意味する。
【0110】
本開示はまた、開示される充電式リチウム電池を製造する方法であって、(a)アノード、任意選択的なセパレータ層、カソード、および保護用ハウジングを組み合わせて電池を形成させること;(b)反応性液体電解質組成物を電池に導入することであって、反応性液体電解質組成物が、非水性液体溶媒中に溶解したリチウム塩、架橋剤または開始剤、および反応性モノマー、反応性オリゴマー、または反応性ポリマーを含み、液体溶媒が、反応性液体電解質組成物の全重量または体積に基づいてΦiの初期重量分率または体積分率を占有する、導入すること;ならびに(c)液体溶媒を部分的にまたは完全に除去し、ならびに反応性電解質組成物を硬化(重合および/または架橋)させて準固体または固体状態電解質を得ることであって、液体溶媒の最終重量分率または体積分率ΦfがΦiより小さく、およびΦfが0%~30%である、得ることを含む、方法を提供する。
【0111】
本開示の別の実施形態は、充電式リチウム電池を製造する方法であって、(A)カソード活性材料の粒子、任意選択的な伝導性添加剤、任意選択的なバインダー、反応性添加剤、非水性液体溶媒、およびリチウム塩を混合してカソードを形成させることであって、反応性添加剤が、少なくとも1つの反応性ポリマー、反応性オリゴマー、または反応性モノマーおよび架橋剤または開始剤を含み、ならびに非水性液体溶媒が、組み合わせられた液体溶媒、リチウム塩、および反応性モノマー、オリゴマーまたはポリマーの全重量または体積に基づいてΦiの初期重量分率または体積分率を占有する、形成させること;(B)アノードを用意すること;(C)カソードおよびアノードを組み合わせて電池を形成させること;ならびに(D)工程(C)の前または後に、液体溶媒を部分的にまたは完全に除去し、ならびに反応性モノマー、オリゴマー、またはポリマーを重合および/または架橋させて充電式リチウム電池を製造することであって、液体溶媒の最終重量分率または体積分率ΦfがΦiよりも小さく、およびΦfが0%~30%である、製造することを含む、方法である。
【0112】
この方法において、工程(B)は、アノード活性材料の粒子、任意選択的な伝導性添加剤、任意選択的なバインダー、反応性添加剤、非水性液体溶媒、およびリチウム塩を混合してアノードを形成させる手順を含んでもよく、ならびに方法は、工程(C)の前または後に、反応性添加剤を重合および/または架橋させて充電式リチウム電池を製造することをさらに含む。
【0113】
工程(A)は、カソード中に無機固体電解質粉末の粒子を加えることをさらに含んでもよい。工程(B)は、アノード中に無機固体電解質粉末の粒子を加えることをさらに含んでもよい。
【0114】
本開示のさらに別の実施形態は、充電式リチウム電池を製造する方法であって、(A)カソード活性材料の粒子、任意選択的な伝導性添加剤、任意選択的なバインダー、および反応性添加剤を混合してカソードを形成させることであって、反応性添加剤が、少なくとも1つの反応性ポリマー、反応性オリゴマー、または反応性モノマーを含み、ならびに反応性ポリマー、オリゴマー、またはモノマーが、少なくとも反応性カルボキシルおよび/またはヒドロキシル基を含む、形成させること;(B)アノードを用意し、ならびにカソード、任意選択的なセパレータ、アノード、および保護用ハウジングを組み合わせて電池を形成させること;ならびにC()リチウム塩、開始剤または架橋剤、および非水性液体溶媒の液体混合物を電池に注入することであって、非水性液体溶媒が、組み合わせられた液体溶媒、リチウム塩、および反応性モノマー、オリゴマーまたはポリマーの全重量または体積に基づいてΦiの初期重量分率または体積分率を占有する、注入すること;ならびに(D)液体溶媒を部分的にまたは完全に除去し、ならびに反応性添加剤を重合および/または架橋させて充電式リチウム電池を製造することであって、液体溶媒の最終重量分率または体積分率ΦfがΦiより小さく、およびΦfが0%~30%である、製造することを含む、方法である。
【0115】
重合および/または架橋の手順は、熱、高エネルギー放射線(例えば電子線、ガンマ線など)、またはその組み合わせに反応性添加剤を曝露することを含んでもよい。
【0116】
本開示のこれらおよび他の利点および特色は、以下のベストモードの実施および実例的な実施例の記載と共により明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【
図1(A)】
図1(A)は、本開示の一部の実施形態による実質的に固体状態の電解質を含むリチウム金属バッテリーを製造する方法を図示するためのプロセスフローチャート。
【
図1(B)】
図1(B)は、本開示の一部の実施形態による反応性電解質組成物を製造する方法を図示するためのプロセスフローチャート。
【
図1(C)】
図1(C)は、本開示の一部の実施形態による実質的に固体状態の電解質を含むリチウム金属バッテリーを製造する方法を図示するためのプロセスフローチャート。
【
図1(D)】
図1(D)は、本開示の一部の実施形態による実質的に固体状態の電解質を含むリチウム金属バッテリーを製造する方法を図示するためのプロセスフローチャート。
【
図2(A)】
図2(A)は、本開示の一部の実施形態によるアノードレスリチウム金属電池(生産時または放電された状態)の構造。
【
図2(B)】
図2(B)は、本開示の一部の実施形態によるアノードレスリチウム金属電池(充電された状態)の構造。
【発明を実施するための形態】
【0118】
詳細な説明
本開示は、リチウムイオン電池またはリチウム金属電池の様々なタイプのいずれかであり得る、安全なおよび高性能のリチウムバッテリーを提供する。高い程度の安全性は、高度に耐炎性のおよび火を引き起こすことも火を持続させることもなく、それゆえ爆発の危険を課さない新規のおよび独特の電解質によりこのバッテリーに付与される。本開示は、20年よりも長きにわたりリチウム金属およびリチウムイオン産業を悩ませてきたまさに最も決定的な課題を解決した。
【0119】
背景技術のセクションにおいて既に指し示したように、既存のバッテリー製造設備と適合性の、充電式リチウム電池のための安全な、非可燃性の、しかし注入可能な準固体電解質(または実際的に固体状態の電解質)システムに対する強い必要性が存在する。固体状態電解質バッテリーは、典型的には、既存のリチウムイオンバッテリー製造設備または方法を使用して製造され得ないことは当技術分野において周知である。
【0120】
本開示は、(a)反応性添加剤の重合または架橋生成物であるポリマーであって、反応性添加剤が、少なくとも1つの反応性ポリマー、反応性オリゴマー、または反応性モノマーおよび硬化剤または開始剤を含み、ならびに反応性ポリマー、オリゴマー、またはモノマーが、少なくとも反応性カルボキシルおよび/またはヒドロキシル基を含む、ポリマー;(b)リチウム塩;ならびに(c)有機液体溶媒またはイオン液体溶媒を含む、電解質を提供する。重合および/または架橋で、電解質は、以下の非常に望まれているおよび有利な特色:(i)液体電解質により一般的に享受される良好な電解質-電極接触および界面安定性(最小の固体電極-電解質界面インピーダンス);(ii)バッテリー電池製造の良好な加工可能性および容易性;(iii)炎および火に対する高度な耐性を有する準固体または実質的に固体状態の電解質となる。
【0121】
ポリマーは、好ましくは、ポリマーの中に分散されたいかなる添加剤もなしに測定された場合に室温で10-8S/cm~5×10-2S/cmのリチウムイオン伝導性、および2%~1,500%の完全に回復可能な引張弾性歪みを有する高弾性ポリマーを含み、高弾性ポリマーは、カルボキシルおよび/またはヒドロキシル基を含有する少なくとも1つのポリマーからの鎖の架橋ポリマーネットワークを少なくとも含む。そのような高弾性ポリマーは、リチウムバッテリー中の異なる層、例えばアノード層、セパレータ、およびカソード層の間の優れた接触を可能にし、それにより界面インピーダンスを低減させる。
【0122】
ある特定の実施形態において、充電式リチウム電池は、
(a)(任意選択的な伝導性添加剤および任意選択的な樹脂バインダーと共に)カソード活性材料を有するカソードならびにカソード活性材料を支持する任意選択的なカソード集電体(例えばAlホイル);
(b)アノード活性材料を有するかまたは有しない、アノード集電体を有するアノード;(電池が作られたときならびに電池が充電および放電され始める前に従来のアノード活性材料、例えばグラファイト、Si、SiO、Sn、および変換タイプアノード材料、ならびにリチウム金属が電池に存在しない場合、バッテリー電池は「アノードレス」電池として一般的に参照されることが留意され得る。)
(c)アノードおよびカソードを電子的に分離する任意選択的な多孔性セパレータ(リチウムイオン透過膜);ならびに
(d)(i)反応性添加剤の重合または架橋生成物であるポリマーであって、反応性添加剤が、少なくとも1つの反応性ポリマー、反応性オリゴマー、または反応性モノマーおよび硬化剤または開始剤を含み、ならびに反応性ポリマー、オリゴマー、またはモノマーが、少なくとも反応性カルボキシルおよび/またはヒドロキシル基を含む、ポリマー;(ii)リチウム塩;ならびに(iii)有機液体溶媒またはイオン液体溶媒を含む、上記される電解質
を含む。このポリマーは、ポリマーの中に分散されたいかなる添加剤もなしに、高度に弾性であり、および良好なリチウムイオン伝導性を有する。
【0123】
本開示は、アノード、カソード、ならびにアノードおよびカソードとイオン流通した準固体または固体状態電解質を含む充電式リチウムバッテリーであって、電解質が、(a)反応性添加剤の重合または架橋生成物であるポリマーであって、反応性添加剤が、少なくとも1つの反応性ポリマー、反応性オリゴマー、または反応性モノマーおよび架橋剤または開始剤を含む、ポリマー;(b)リチウム塩;ならびに(c)組み合わせられたポリマー、リチウム塩、および非水性液体溶媒の全重量または全体積に基づいて重量または体積で0%~30%の非水性液体溶媒を含む、充電式リチウムバッテリーを提供する。バッテリーにおいて、カソードはカソード活性材料の粒子を含み、および電解質は、カソード活性材料粒子の少なくとも大部分または実質的にすべてと物理的に接触している。
【0124】
液体溶媒は、液体有機溶媒、イオン液体、またはその組み合わせであることができる。この液体溶媒は、反応性添加剤の部分ではなく、および電解質ポリマーの重合または架橋に参加しない。この液体溶媒の割合は、重量または体積で好ましくは<20%、より好ましくは<10%、最も好ましくは<5%である。
【0125】
重合および/または架橋ならびに液体溶媒の少なくとも大部分の除去で、電解質は、以下の非常に望まれているおよび有利な特色:(i)液体電解質により一般的に享受される良好な電解質-電極接触および界面安定性(最小の固体電極-電解質界面インピーダンス);(ii)バッテリー電池製造の良好な加工可能性および容易性;(iii)炎および火に対する高度な耐性を有する準固体または実質的に固体状態の電解質となる。
【0126】
ポリマーは、好ましくは、典型的には室温で10-8S/cm~10-2S/cmのリチウムイオン伝導性を有するポリマーを含む。
【0127】
ある特定の実施形態において、充電式リチウム電池は、
(a)(任意選択的な伝導性添加剤および任意選択的な樹脂バインダーと共に)カソード活性材料を有するカソードならびにカソード活性材料を支持する任意選択的なカソード集電体(例えばAlホイル);
(b)アノード活性材料を有するかまたは有しない、アノード集電体を有するアノード;(電池が作られたときならびに電池が充電および放電され始める前に従来のアノード活性材料、例えばグラファイト、Si、SiO、Sn、および変換タイプアノード材料、ならびにリチウム金属が電池に存在しない場合、バッテリー電池は「アノードレス」リチウム電池として一般的に参照されることが留意され得る。)
(c)アノードおよびカソードを電子的に分離する任意選択的な多孔性セパレータ(リチウムイオン透過膜);ならびに
(d)(i)反応性添加剤の重合または架橋生成物であるポリマーであって、反応性添加剤が、少なくとも1つの反応性ポリマー、反応性オリゴマー、または反応性モノマーおよび架橋剤または開始剤を含む、ポリマー;(ii)リチウム塩;および(iii)非水性液体溶媒(例えば、有機液体溶媒、イオン液体溶媒、または2つの混合物)を含む、電解質
を含む。
【0128】
一部の好ましい実施形態において、バッテリー電池は、バッテリー電池の中に液体溶媒を実質的に含有しない。しかしながら、電池に液体溶媒を最初に含めて、リチウム塩がリチウムイオンおよびアニオンに解離することを可能にすることが必須である。液体溶媒(特には有機溶媒)の大部分(>50%、好ましくは>70%)または実質的にすべては次に、反応性添加剤の硬化の直前または後に除去される。実質的に0%の液体溶媒を用いる場合、結果としてもたらされる電解質は固体状態電解質である。30%未満の液体溶媒を用いる場合、準固体電解質が得られる。両方は高度に耐炎性である。
【0129】
ある特定の実施形態において、電解質は、20℃で測定された場合に0.01kPaよりも低い蒸気圧、ポリマーなしの前記液体溶媒およびリチウム塩単独での蒸気圧の60%よりも低い蒸気圧、前記液体溶媒単独での引火点よりも少なくとも50℃高い引火点、もしくは200℃よりも高い引火点を呈するか、または測定可能な引火点を呈さず、ならびにポリマーは、室温で10-8S/cm~10-2S/cmのリチウムイオン伝導性を有する。
【0130】
電解質中の液体溶媒のより低い割合は、有意に低減した蒸気圧および増加した引火点または完全に排除された引火点(検出不可能)に繋がる。典型的には液体溶媒の割合を低減させることにより、結果としてもたらされる電解質について低減したリチウムイオン伝導性が観察される傾向があるが;しかしながら、かなり驚くべきことに、閾値となる液体溶媒比率後に、この傾向は減少または逆転される(リチウムイオン伝導性は、一部の場合において、液体溶媒の低減と共に実際に増加し得る)。
【0131】
反応性モノマー、反応性オリゴマー、または反応性ポリマーは、好ましくは、イソシアネート基またはウレタン基、オキセタン基、エポキシ基、ジカルボン酸無水物基、ビニル基、シリル基、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基、アルキニル基、またはその組み合わせから選択される化学官能基を有する。ここで、ジカルボン酸無水物基は、ジカルボキシル(dicarboxylic)の酸無水物から得られる基を指す。
【0132】
架橋剤は、好ましくは、分子中にヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基、アミド基、アミン基、アクリル基、またはメルカプト基から選択される少なくとも1つの反応性基を有する化合物を含む。
【0133】
一部の実施形態において、反応性モノマー、反応性オリゴマー、または反応性ポリマーは、化学式7:
【0134】
【0135】
により表される直鎖構造、または化学式8:
【0136】
【0137】
により示される環状構造から選択されるエポキシ基を含み、
式中、R1およびR2の各々は、独立して、置換されていないまたは置換されたエポキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、エーテル基、エステル基、アリール基、またはハロアルキル基であり;R3は、置換されていないもしくは置換されたエポキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、エーテル基、エステル基、アリール基、ハロアルキル基、またはアミド基の1~9個の繰り返し単位を含む上記の置換されていないもしくは置換された基であり;ならびにR1、R2、およびR3の少なくとも1つは、エポキシ基を含む基であり、R4は、少なくとも1つのエポキシ基を含む基であり、R5は、-(CH2)n-、1つもしくは複数の-CH2-が-NR4-で置換された-(CH2)n-、またはアミド基:
【0138】
【0139】
の1~9個の繰り返し単位であり、
nは1~18の整数である。
【0140】
例えば、化学式1を有する直鎖構造は、以下の通りであってもよい:
【0141】
【0142】
別の例として、R3がアミド基の1個の繰り返し単位を含む場合、化学式1を有する直鎖構造は、以下の通りであってもよい:
【0143】
【0144】
一部の実施形態において、反応性モノマー、オリゴマー、またはポリマーは環状構造を含み、環状構造は、置換されていないもしくは置換されたシクロアルカンの4~20多環式環、芳香族炭化水素、芳香環、複素環式環、またはアミド基の1~10個の繰り返し単位から構成される環状構造であり、R4は、少なくとも1つのエポキシ基またはビニル基を含む基であり、R5は、-(CH2)n--(n=1~18の整数)、1つもしくは複数の-(CH2)-が-NR4--により置換された-(CH2)n-(n=1~18の整数)、またはアミド基:
【0145】
【0146】
の1~9個の繰り返し単位であってもよい。
【0147】
一部の実施形態において、式2を有する環状構造は、以下の非限定的な例から選択されてもよい:
【0148】
【0149】
アミド基の1~10個の繰り返し単位から構成される環状構造の一部の例は以下に与えられる:
【0150】
【0151】
一部の実施形態において、反応性ポリマーは、化学式9から選択されるエポキシ基を含み、およびポリマーは、アミド基またはアミン基をさらに含む:
【0152】
【0153】
アミン基は、好ましくは、化学式10から選択される:
【0154】
【0155】
充電式リチウムバッテリーにおいて、反応性モノマー、反応性オリゴマー、または反応性ポリマーは、化学式11により表される化学種またはその誘導体を含んでもよく、および架橋剤は、化学式12により表される化学種またはその誘導体を含む:
【0156】
【0157】
【0158】
(式中、R1は水素またはメチル基であり、ならびにR2およびR3は、各々独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、ジアルキルアミノプロピル(--C3H6N(R’)2)およびヒドロキシエチル(CH2CH2OH)基からなる群から選択されるものであり、ならびにR4およびR5は各々独立して水素またはメチル基であり、ならびにnは3~30の整数であり、R’はC1~C5アルキル基である)。
【0159】
化学式5を有する好適なビニルモノマーの例は、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノ-プロピルアクリルアミド、およびN-アクリロイルモルホリンを含む。これらの種の中で、N-イソプロピルアクリルアミドおよびN-アクリロイルモルホリンは好ましい。
【0160】
開始剤または架橋剤は、アゾ化合物、過酸化ベンゾイル(BPO)、ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、t-アミルペルオキシピバレート、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス-(2-メチルブチロニトリル)、1,1-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル、過酸化水素、ドデカノイルペルオキシド(dodecamoyl peroxide)、イソブチリルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルオキシピバレート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、ヘキサフルオロヒ化リチウム(LiAsF6)、トリフルオロ-メタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム(LiBF2C2O4)、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム(LiBF2C2O4)、またはその組み合わせから選択されてもよい。
【0161】
反応性モノマー、反応性オリゴマー、または反応性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、ポリ(エチレングリコール)4-ノニルフェニルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)フェニルエーテルアクリレート、その組み合わせ、およびポリプロピレングリコールまたはポリプロピレングリコールの誘導体とのその組み合わせからなる群から選択される熱硬化性有機化合物を含んでもよい。一部の実施形態において、熱硬化性有機化合物は、ポリプロピレングリコールまたはポリプロピレングリコールの誘導体から選択され、電解質は、重量または体積で5%以下の非水性液体溶媒を含む。
【0162】
ある特定の実施形態において、電解質中のポリマーは、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、またはその組み合わせからの鎖の架橋ネットワークを含む。一部の実施形態において、ポリマーは、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ビニルアルコール)、カルボキシメチルセルロース、クエン酸、グリセロール、カルボキシメチルセルロースの誘導体、ポリ(ビニルアルコール)の誘導体、ポリ(アクリル酸)の誘導体、アルカリカチオンで置換されたカルボキシメチルセルロースもしくはポリ(アクリル酸)、またはその組み合わせから選択される少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つの化合物を含み、アルカリカチオンは、Li+、Na+、K+、NH4
+、またはその組み合わせから選択される。
【0163】
好ましくは、反応性ポリマー、反応性オリゴマー、または反応性モノマーは、アクリル酸、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリル酸)の誘導体、ビニルアルコール、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアルコール)の誘導体、カルボキシメチルセルロース、クエン酸、グリセロール、カルボキシメチルセルロースの誘導体、アルカリカチオンで置換されたカルボキシメチルセルロースもしくはポリ(アクリル酸)、またはその組み合わせから選択される化学種を含み、アルカリカチオンは、Li+、Na+、K+、NH4
+、またはその組み合わせから選択される。電解質中の特に望ましいポリマーは、カルボキシメチルセルロース(CMC)、その置換されたバージョン、またはその誘導体からの鎖の架橋ポリマーネットワークを含む。
【0164】
ある特定の実施形態において、電解質中のポリマーは、5%~500%の弾性引張歪みを付与する架橋の程度まで架橋剤により架橋されたカルボキシメチルセルロース、ビニルアルコール、またはアクリル酸の架橋ネットワークを含む。
【0165】
ある特定の所望される実施形態において、ポリマーはポリマー鎖の架橋ネットワークを含有する。この高弾性ポリマーは、カルボキシル基(-COOH)、ヒドロキシル基(-OH)、その誘導体、またはその組み合わせを有する。例えば、高弾性ポリマーは、ポリ(アクリル酸)(PAA、化学式13)およびポリ(ビニルアルコール)(PVA、化学式14)鎖の架橋ネットワークを含む。PAAポリマー、オリゴマー(低分子量ポリマー)、またはモノマーは、重合または架橋に先立って1つまたは複数の-COOH基を有する。
【0166】
【0167】
【0168】
典型的には100℃~200℃の温度において、PAAおよびPVA鎖は、典型的にはPAAのカルボキシル官能基(-COOH)とPVAのヒドロキシル官能基(-OH)との間のエーテル化を通じて、反応して架橋ポリマーネットワークを形成することができる。
【0169】
ポリマーは、カルボキシル官能基(-COOHまたはその誘導体)を有する多様なポリマー鎖、オリゴマー、またはモノマーから得られてもよい。高弾性ポリマーの例は、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ビニルアルコール)、クエン酸、グリセロール、CMC、ポリ(ビニルアルコール)の誘導体、ポリ(アクリル酸)の誘導体、アルカリカチオンで置換されたポリ(アクリル酸)、またはその組み合わせから選択される少なくとも2つの化合物を含むことができ、アルカリカチオンは、Li+、Na+、K+、NH4
+、またはその組み合わせから選択される。これらのネットワークまたは架橋ポリマーは、高い弾性(高い弾性変形歪み)および高いリチウムイオン伝導性の独特の組み合わせを呈する。
【0170】
一部の実施形態において、ポリマーは、カルボキシメチルセルロース(CMC)、その置換されたバージョン、またはその誘導体からの鎖の架橋ポリマーネットワークを含む。
【0171】
高弾性ポリマーは、5%~500%の弾性引張歪みを付与する架橋の程度まで架橋剤により架橋されたカルボキシメチルセルロースの架橋ネットワークを含んでもよい。
【0172】
ある特定の所望される実施形態において、ポリマーは、カルボキシメチルセルロースからのポリマー鎖の架橋ネットワークを含有する。カルボキシメチルセルロース(CMC;式15)は水溶性材料であり、温水または冷水のいずれにおいても可溶性である。CMCは、その-Hの一部がアルカリイオン、例えばLi+、Na+、K+、およびNH4
+により置換されていてもよい。
【0173】
【0174】
CMCのための架橋剤は、好ましくは、N,N-メチレンビスアクリルアミド、エピクロロヒドリン、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ケイ皮酸、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム18水和物、ジエポキシ、ジカルボン酸化合物、ポリ(カリウム1-ヒドロキシアクリレート)(PKHA)、グリセロールジグリシジルエーテル(GDE)、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDE)、クエン酸(以下の式16)、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸の誘導体化合物、メタクリル酸の誘導体化合物(例えばポリヒドロキシエチルメタクリレート)、グリシジル官能基、N,N’-メチレンビスアクリルアミド(MBAAm)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMAAm)、イソボルニルメタクリレート、ポリ(アクリル酸)(PAA;化学式13および式17)、メチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、エチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、エチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルアクリレート、ジイソシアネート(例えばメチレンジフェニルジイソシアネート、MDI)、ウレタン鎖、その化学的誘導体、またはその組み合わせから選択される。
【0175】
【0176】
【0177】
CMCのための特に望ましい架橋剤はアクリル酸およびポリ(アクリル酸)(PAA)である。典型的には50℃~200℃の温度において、PAAおよびCMC鎖は、典型的にはPAAのカルボキシル官能基(-COOH)とCMCのヒドロキシル官能基(-OH)との間のエーテル化を通じて、反応して架橋ポリマーネットワークを形成することができる。PAA鎖中の-COOH基の一部は、Si、高容量アノード活性材料の表面上に一般的に見出される-OH基と強い共有結合を形成することができる。Si粒子は架橋ポリマーネットワークに化学的に結合できることをこれは含意する。
【0178】
置換されたCMC種について、CMC構造(化学式13)中の-H基は-Rにより置き換えられてもよく、Rは、置換されたもしくは置換されていないC1~C10アルキル基、アルカリ金属、置換されたもしくは置換されていないC6~C30アリール基、または置換されたもしくは置換されていないC1~C30アルコキシ基から選択される。
【0179】
ある特定の所望される実施形態において、弾性ポリマーマトリックスとして半相互貫入ポリマーネットワーク(半IPN)を使用することができ、半IPNは、CMC由来鎖および化学式18により表される繰り返し単位または化学式19により表される繰り返し単位からのポリマー鎖を含み、R1およびR2は、同じまたは異なり、ならびに水素、または置換されたもしくは置換されていないC1~C10アルキル基から独立して選択され、ならびにR3およびR4はアルカリ金属であり、ならびにR5~R8は同じまたは異なり、および、独立して、水素、置換されたもしくは置換されていないC1~C30アルキル基、置換されたもしくは置換されていないC6~C30アリール基、または置換されたもしくは置換されていないC1~C30アルコキシ基である。
【0180】
【0181】
【0182】
電解質は、難燃性添加剤をさらに含んでもよく、難燃性添加剤は、液体溶媒とは組成が異なり、および液体溶媒と混合物を形成し、ならびに難燃性添加剤は、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、トリフルオロプロピレンカーボネート(FPC)、メチルノナフルオロブチルエーテル(MFE)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト(TTSPi)、トリアリルホスフェート(TAP)、エチレンスルフェート(DTD)、1,3-プロパンスルトン(PS)、プロペンスルトン(PES)、アルキルシロキサン(Si-O)、アルキルシラン(Si-C)、液体オリゴマーシロキサン(-Si-O-Si-)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、キャノーラ油、またはその組み合わせから選択され、ならびに前記混合物中の難燃性添加剤対前記液体溶媒の比は重量で5/95~95/5である。
【0183】
難燃性添加剤は、関与する様々な機序(加熱、点火、および熱分解の伝播)に干渉することによりポリマー熱分解および電解質燃焼プロセスを阻害しまたは停止させることが意図される。
【0184】
難燃性添加剤は、ハロゲン化難燃剤、リン系難燃剤、メラミン難燃剤、金属水酸化物難燃剤、ケイ素系難燃剤、リン酸難燃剤、生体分子難燃剤、またはその組み合わせから選択されてもよい。
【0185】
弾性ポリマーに物理的にまたは化学的に組み込まれ得る難燃剤のタイプに関して制限はない。難燃剤の主なファミリーは、ハロゲン(臭素および塩素)、リン、窒素、膨張系(Intumescent Systems)、鉱物(アルミニウムおよびマグネシウムに基づく)、ならびにその他(例えばホウ砂、Sb2O3、およびナノ複合材料)を含有する化合物に基づく。三酸化アンチモンは良好な選択であるが、アンチモンの他の形態、例えばアンチモン酸五酸化物およびナトリウムもまた使用され得る。
【0186】
反応性タイプ(ポリマー構造に化学的に結合するか、またはその部分となる)および添加物タイプ(ポリマーマトリックス中に単純に分散される)を使用することができる。例えば、反応性ポリシロキサンは、EPDMタイプ弾性ポリマーと化学的に反応し、架橋ネットワークポリマーの部分となることができる。難燃基修飾されたポリシロキサンそれ自体は、本開示の一実施形態による難燃剤を含有する弾性ポリマー複合物であることが留意され得る。反応性タイプおよび添加物タイプの両方の難燃剤は、いくつかの異なるクラスにさらに分けられ得る:
1)鉱物:例は、水酸化アルミニウム(ATH)、水酸化マグネシウム(MDH)、ハンタイトおよびハイドロマグネサイト、様々な水和物、赤リンならびにホウ素化合物(例えばホウ酸塩)を含む。
2)有機ハロゲン化合物:このクラスは、有機塩素、例えばクロレンド酸誘導体および塩素化パラフィン;有機臭素、例えばデカブロモジフェニルエーテル(decaBDE)、デカブロモジフェニルエタン(decaBDEの代替物)、ポリマー臭素化化合物、例えば臭素化ポリスチレン、臭素化カーボネートオリゴマー(BCO)、臭素化エポキシオリゴマー(BEO)、テトラブロモフタル酸無水物(tetrabromophthalic anyhydride)、テトラブロモビスフェノールA(TBBPA)、およびヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)を含む。
3)有機リン化合物:このクラスは、有機ホスフェート、例えばトリフェニルホスフェート(TPP)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(RDP)、ビスフェノールAジフェニルホスフェート(BADP)、およびトリクレジルホスフェート(TCP);ホスホネート、例えばジメチルメチルホスホネート(DMMP);ならびにホスフィネート、例えばアルミニウムジエチルホスフィネートを含む。難燃剤の1つの重要なクラスにおいて、化合物はリンおよびハロゲンの両方を含有する。そのような化合物は、トリス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェート(臭素化トリス)ならびに塩素化有機ホスフェート、例えばトリス(1,3-ジクロロ-2-プロピル)ホスフェート(塩素化トリスまたはTDCPP)およびテトラキス(2-クロレチル)ジクロロイソペンチルジホスフェート(V6)を含む。
4)有機化合物、例えばカルボン酸およびジカルボン酸。
【0187】
鉱物難燃剤は、主に添加物難燃剤として作用し、周囲のシステム(ポリマー)に化学的に取り付けられない。有機ハロゲンおよび有機ホスフェート化合物のほとんどもまた、ポリマーに取り付けられるために永久的に反応しない。反応性および非放射性の特徴を有する、ある特定の新たな非ハロゲン化生成物もまた商業的に入手可能である。
【0188】
ある特定の実施形態において、難燃性添加剤は、閾値温度よりも高い温度(例えば、内部短絡により誘導される炎または火の温度)に曝露された場合に破壊可能または融解可能なコーティング材料のシェルにより被包された添加剤を含む被包された粒子の形態である。被包性材料は、実質的にリチウムイオン不透過性および液体電解質不透過性のコーティング材料である。被包性または微小滴形成プロセス。
【0189】
混合物中の難燃性添加剤対液体溶媒の比は、重量で1/95~99/1、好ましくは重量で10/85~90/10、さらに好ましくは重量で20/80~70/20、最も好ましくは重量で35/65~65/35である。
【0190】
電解質中のポリマーは、ポリ(エチレンオキシド)、ポリプロピレンオキシド、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(アクリロニトリル)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ビニリデンフルオリド)、ポリビス-メトキシエトキシエトキシド-ホスファゼン、ポリビニルクロリド、ポリジメチルシロキサン、ポリ(ビニリデンフルオリド)-ヘキサフルオロプロピレン、シアノエチルポリ(ビニルアルコール)、ペンタエリトリトールテトラアクリレート系ポリマー、脂肪族ポリカーボネート、カルボキシレートアニオン、スルホニルイミドアニオン、もしくはスルホネートアニオンを有する単一Liイオン伝導性固体ポリマー電解質、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートもしくはポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレートの架橋電解質、そのスルホン化誘導体、またはその組み合わせから選択される第2のポリマーとの混合物、コポリマー、半相互貫入ネットワーク、または同時相互貫入ネットワークを形成していてもよい。
【0191】
ある特定の望ましい実施形態において、電解質は、2nm~30μmの粒子サイズを有する無機固体電解質材料の粒子をさらに含み、無機固体電解質材料の粒子は、ポリマー中に分散されているか、またはポリマーにより化学的に結合されている。無機固体電解質材料の粒子は、好ましくは、酸化物タイプ、硫化物タイプ、水素化物タイプ、ハロゲン化物タイプ、ホウ酸タイプ、リン酸タイプ、リチウムリン酸窒化物(LiPON)、ガーネットタイプ、リチウム超イオン伝導体(LISICON)タイプ、ナトリウム超イオン伝導体(NASICON)タイプ、またはその組み合わせから選択される。
【0192】
弾性ポリマー保護層に組み込まれ得る無機固体電解質は、ペロブスカイトタイプ、NASICONタイプ、ガーネットタイプおよび硫化物タイプ材料を含むが、これらに限定されない。代表的なおよび周知のペロブスカイト固体電解質は、Li3xLa2/3-xTiO3であり、これは室温で10-3S/cmを上回るリチウムイオン伝導性を呈する。この材料は、リチウム金属との接触でのTi4+の還元のためリチウムバッテリーにおいて好適でないとみなされてきた。しかしながら、この材料は、弾性ポリマー中に分散された場合に、この問題を被らないことを我々は見出した。
【0193】
ナトリウム超イオン伝導体(NASICON)タイプ化合物は、周知のNa1+xZr2SixP3-xO12を含む。これらの材料は、一般に、AM2(PO4)3の式を有し、A部位は、Li、NaまたはKにより占有される。M部位は、通常は、Ge、ZrまたはTiにより占有される。特に、LiTi2(PO4)3システムは、リチウムイオンバッテリー用の固体状態電解質として広く研究されている。LiZr2(PO4)3のイオン伝導性は非常に低いが、HfまたはSnの置換により改善され得る。これは、Li1+xMxTi2-x(PO4)3(M=Al、Cr、Ga、Fe、Sc、In、Lu、YまたはLa)を形成させるための置換でさらに増強され得る。Al置換は、最も有効な固体状態電解質であることが実証されている。Li1+xAlxGe2-x(PO4)3システムもまた、その相対的に広い電気化学安定性ウィンドウに起因して有効な固体状態である。NASICONタイプ材料は、高電圧固体電解質バッテリーのための好適な固体電解質と考えられている。
【0194】
ガーネットタイプ材料は一般式A3B2Si3O12を有し、AおよびBのカチオンはそれぞれ8配位および6配位を有する。Li3M2Ln3O12(M=WまたはTe)に加えて、広範囲のガーネットタイプ材料が添加剤として使用可能であり、これは、Li5La3M2O12(M=NbまたはTa)、Li6ALa2M2O12(A=Ca、SrまたはBa;M=NbまたはTa)、Li5.5La3M1.75B0.25O12(M=NbまたはTa;B=InまたはZr)ならびに立方体システムLi7La3Zr2O12およびLi7.06M3Y0.06Zr1.94O12(M=La、NbまたはTa)を含む。Li6.5La3Zr1.75Te0.25O12化合物は、室温で1.02×10-3S/cmの高いイオン伝導性を有する。
【0195】
硫化物タイプ固体電解質はLi2S-SiS2システムを含む。このタイプの材料において報告された最も高い伝導性は6.9×10-4S/cmであり、これは、Li2S-SiS2システムにLi3PO4をドーピングすることにより達成された。硫化物タイプはまた、Li2S-P2S5システムにより表されるチオ-LISICON(リチウム超イオン伝導体)結晶性材料のクラスを含む。Li2S-P2S5システムの化学的安定性は不良と考えられ、材料は水分に対して感受性である(気体状H2Sを生成する)。安定性は、金属酸化物の追加により改善され得る。安定性はまた、Li2S-P2S5材料が弾性ポリマー中に分散された場合に有意に改善される。
【0196】
電解質ポリマー中に分散されたこれらの固体電解質粒子は、内因的に低いイオン伝導性を有するある特定のポリマーのリチウムイオン伝導性の増強を助けることができる。
【0197】
好ましくはおよび典型的には、ポリマーは、10-5S/cm以上、より好ましくは10-4S/cm以上、さらに好ましくは10-3S/cm以上、最も好ましくは10-2S/cm以上のリチウムイオン伝導性を有する。
【0198】
高弾性ポリマーは高い弾性(弾性変形歪み値>2%)を有するべきである。弾性変形は、完全に回復可能な変形であり、回復プロセスは本質的に即時(重大な時間遅延なし)である。高弾性ポリマーは、5%から最大1,000%(その元々の長さの10倍)まで、より典型的には10%~800%、さらにより典型的には50%~500%、最も典型的にはおよび望ましくは70%~300%の弾性変形を呈することができる。金属は典型的には高い延性を有する(すなわち、破壊なしに大きい程度まで広げられ得る)が、変形の大部分は塑性変形(回復不可能)であり、弾性変形は小量に過ぎない(典型的には<1%、より典型的には<0.2%)ことが留意され得る。
【0199】
開示されるリチウムバッテリーは、リチウムイオンバッテリーまたはリチウム金属バッテリーであることができ、後者は、主要なアノード活性材料としてリチウム金属を有する。リチウム金属バッテリーは、電池が作られるときにアノードに装備されたリチウム金属を有することができる。代替的に、リチウムはカソード活性材料中に貯蔵されてもよく、アノード側は最初にリチウム金属フリーである。これはアノードレスリチウム金属バッテリーと呼ばれる。
【0200】
図2(A)に図示されるように、アノードレスリチウム電池は、本開示のある特定の実施形態にしたがって生産時のまたは完全に放電された状態にある。電池は、アノード集電体12(例えば、Cuホイル)、セパレータ、カソード活性材料、任意選択的な伝導性添加剤(図示せず)、任意選択的な樹脂バインダー(図示せず)、および電解質(カソード層全体中に分散されており、カソード活性材料と接触している)を含むカソード層16、ならびにカソード層16を支持するカソード集電体18を含む。電池が生産されるときにアノード側にリチウム金属はない。
【0201】
充電された状態において、
図2(B)に図示されるように、電池は、アノード集電体12、アノード集電体12(例えば、Cuホイル)の表面(または2つの表面)上にめっきされたリチウム金属20、セパレータ15、カソード層16、およびカソード層を支持するカソード集電体18を含む。リチウム金属は、カソードが作られるときにLi元素を含有するカソード活性材料(例えば、LiCoO
2およびLiMn
2O
4)に由来する。充電工程の間に、リチウムイオンはカソード活性材料から放出され、アノード側に移動してアノード集電体の1つまたは両方の表面に沈着する。
【0202】
本開示のアノードレスリチウム電池の1つの独特の特色は、バッテリー電池が作られるときにアノード活性材料およびリチウム金属が実質的に存在しないという概念である。一般的に使用されるアノード活性材料、例えばインターカレーションタイプアノード材料(例えばグラファイト、炭素粒子、Si、SiO、Sn、SnO2、Geなど)、P、または任意の変換タイプアノード材料は電池に含まれない。アノードは、集電体または保護された集電体のみを含有する。電池が作られるときにリチウム金属(例えばLi粒子、表面安定化Li粒子、Liホイル、Liチップなど)はアノードに存在せず;リチウムは基本的にカソードに貯蔵される(例えばLiCoO2、LiMn2O4、リン酸鉄リチウム、リチウム多硫化物、リチウム多セレン化物などにおけるLi元素)。電池がハウジング(例えばステンレス鋼中空シリンダーまたはAl/プラスチック積層エンベロープ)中に密封された後の第1の充電手順の間に、リチウムイオンは、カソード中のこれらのLi含有化合物(カソード活性材料)から放出され、電解質/セパレータを通じてアノード側に移動し、アノード集電体の表面上に沈着する。引き続いての放電手順の間に、リチウムイオンはこれらの表面を離れ、再びカソードに移動し、カソード活性材料にインターカレートまたは挿入される。
【0203】
そのようなアノードレス電池は、製造がはるかにより単純およびより高い費用効果であり、その理由は、従来のスラリーコーティングおよび乾燥手順を介してCuホイル表面上にプレコーティングされたアノード活性材料(例えば、伝導性添加剤およびバインダーと共に、グラファイト粒子)の層を有する必要がないからである。アノード材料およびアノード活性層生産コストは節約され得る。さらには、アノード活性材料層(さもなければ典型的には40~200μmの厚さ)がないので、電池の重量および体積は有意に低減可能であり、それにより、電池の重量測定および容積測定エネルギー密度が増加され得る。
【0204】
アノードレス電池の別の重要な利点は、リチウム金属電池が作られるときにアノードにリチウム金属が存在しないという概念である。リチウム金属(例えばLi金属ホイルおよび粒子)は、空気中の水分および酸素に対して高度に感受性であり、Li金属電池の生産の間の取り扱いの困難性および危険性が悪名高く知られている。生産設備は、特別なクラスのドライルームを備えていなければならず、これは高価であり、バッテリー電池のコストを重大に増加させる。
【0205】
アノード集電体は、Cu、Ni、ステンレス鋼、Al、グラフェン、グラファイト、グラフェンコーティングされた金属、グラファイトコーティングされた金属、炭素コーティングされた金属、またはその組み合わせのホイル、穿孔されたシート、またはフォームから選択されてもよい。好ましくは、集電体は、Cuホイル、Niホイル、ステンレス鋼ホイル、グラフェンコーティングされたAlホイル、グラファイトコーティングされたAlホイル、または炭素コーティングされたAlホイルである。
【0206】
アノード集電体は、典型的には、2つの主要な表面を有する。好ましくは、これらの主要な表面の1つまたは両方は、リチウム誘引性金属(親リチウム性金属)の複数の粒子またはコーティングを沈着されており、好ましくは1nm~10μmの直径または厚さを有する、リチウム誘引性金属は、Au、Ag、Mg、Zn、Ti、K、Al、Fe、Mn、Co、Ni、Sn、V、Cr、その合金、またはその組み合わせから選択される。この沈着された金属層は、親リチウム性金属の複数の粒子またはコーティングをカバーおよび保護するグラフェンの層をさらに沈着されていてもよい。
【0207】
グラフェン層は、単一層または少数層グラフェンから選択されるグラフェンシートを含んでもよく、少数層グラフェンシートは、X線回折による測定で0.3354nm~0.6nmの面間間隔d002を有する積み重ねられたグラフェン面の2~10個の層を有するように一般的に定義される。単一層または少数層グラフェンシートは、本質的に0%の非炭素元素を有するプリスティングラフェン材料、または重量で0.001%~45%の非炭素元素を有する非プリスティングラフェン材料を含有してもよい。非プリスティングラフェンは、グラフェン酸化物、還元されたグラフェン酸化物、グラフェンフッ化物、グラフェン塩化物、グラフェン臭化物、グラフェンヨウ化物、水素化されたグラフェン、窒素化されたグラフェン、ドーピングされたグラフェン、化学的に官能化されたグラフェン、またはその組み合わせから選択されてもよい。
【0208】
グラフェン層は、グラフェンボールおよび/またはグラフェンフォームを含んでもよい。好ましくは、グラフェン層は、1nm~50μmの厚さを有し、および/または5~1000m2/g(より好ましくは10~500m2/g)の比表面積を有する。
【0209】
本開示の電解質を特色とするリチウムイオンバッテリーのために、アノード活性材料の選択に関する制限は特にない。アノード活性材料は、(a)ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、リン(P)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、およびカドミウム(Cd);(b)他の元素とのSi、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Ni、Co、またはCdの合金または金属間化合物;(c)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Fe、Ni、Co、V、またはCdの酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、およびテルル化物、ならびにそれらの混合物、複合物、またはリチウム含有複合物;(d)Snの塩および水酸化物;(e)チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム、アルミン酸リチウム、ニオブ酸リチウムチタン、リチウム含有チタン酸化物、リチウム遷移金属酸化物、ZnCo2O4;(f)炭素またはグラファイト粒子;(g)そのプレリチウム化されたバージョン;ならびに(h)その組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0210】
別の驚くべきおよび途方もない科学的なおよび技術的な意義は、十分に多い量のリチウム塩およびポリマーをこの有機溶媒に加えて溶解させて固体様または準固体電解質(例えばカソードにおける第1の電解質)を形成させれば、任意の揮発性有機溶媒の可燃性は有効に抑制され得るという我々の発見である。一般に、そのような準固体電解質は、(20℃で測定された場合に)0.01kPa未満、多くの場合に0.001kPa未満、および(100℃で測定された場合に)0.1kPa未満、多くの場合に0.01kPa未満の蒸気圧を呈する。(その中に溶解したいかなるリチウム塩も有しない、対応するニート溶媒の蒸気圧は典型的には有意により高い。)多くの場合に、蒸気分子は実際的に、検出されるためには少なすぎる。
【0211】
非常に意義深い観察は、さもなければ非常に揮発性の溶媒中に溶解した高濃度のリチウム塩(リチウム塩の高い分子比またはモル比率、典型的には>0.2、より典型的には>0.3、多くの場合に>0.4またはさらには>0.5)は、熱力学的平衡状態において蒸気相に逃避できる揮発性溶媒分子の量を劇的に削減できるということである。多くの場合に、これは、可燃性気体分子が炎を引き起こすことを極めて高温においても有効に予防した。準固体電解質の引火点は、ニート有機溶媒単独での引火点よりも典型的には少なくとも20度(多くの場合に>50度)高い。ほとんどの場合において、引火点は150℃より高いか、または引火点は検出され得ない。電解質は単に燃え移ることがない。さらには、任意の偶発的に引き起こされた炎は3秒よりも長く持続しない。火および爆発の課題が、バッテリー駆動式電動輸送機器が広く認められるための大きな障害となっているという考えを考慮すると、これは非常に意義深い発見である。この新たな技術は、活気に満ちたEV産業の到来に意義深く影響し得る。
【0212】
ポリマー電解質組成物は、好ましくは、硬化または架橋され得るポリマーを含有する。このポリマーは最初に、バッテリー電池に注入され、次に電池に注入された後に硬化または架橋され得る液体として残存するモノマーまたはオリゴマー状態であってもよい。
【0213】
非可燃性および高いリチウムイオン転移数に加えて、本開示の準固体電解質の使用と関連付けられるいくつかの追加の利益がある。1つの例として、準固体電解質は、リチウムデンドライトの増大の有効な抑制を通じて充電式リチウムバッテリーのサイクルおよび安全性性能を有意に増強することができる。高いリチウムイオン濃度および高いリチウムイオン転移数に起因して、準固体電解質は、大量の利用可能なリチウムイオンフラックスを提供し、および電解質とリチウム電極との間のリチウムイオン質量移動速度を上昇させ、それにより、充電/放電プロセスの間のリチウム沈着均一性および溶解を増強する。追加的に、高濃度および架橋ネットワークの存在により誘導される局所的な高い粘性は、電解質からの圧力を増加させてデンドライトの増大を阻害し、アノードの表面上のより均一な沈着を潜在的にもたらすことができる。高い粘性はまた、沈着区画の近くでのアニオン対流を制限して、Liイオンのより均一な沈着を促進し得る。これらの理由は、別々にまたは組み合わせで、我々がこれまで調査してきた多数の充電式リチウム電池のいずれでもデンドライト様特色が観察されていないという考えの原因となると考えられる。
【0214】
別の利益の例として、この電解質は、カソードにおけるリチウム多硫化物の溶解およびLi-S電池のアノードへの移動を阻害する能力を有し、そのため多硫化物シャトル現象を克服し、電池容量が時間と共に重大に劣化しないことを可能とする。結果的に、100%に近いクーロン効率が長いサイクル寿命と共に達成され得る。濃縮された電解質および架橋ポリマーが使用される場合、リチウム多硫化物の溶解性は有意に低減される。
【0215】
本発明の電解質において利用される液体溶媒は、1,3-ジオキソラン(DOL)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(DEGDBE)、2-エトキシエチルエーテル(EEE)、スルホン、スルホラン、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルプロピオネート、メチルプロピオネート、プロピレンカーボネート(PC)、ガンマ-ブチロラクトン(γ-BL)、アセトニトリル(AN)、エチルアセテート(EA)、プロピルホルメート(PF)、メチルホルメート(MF)、トルエン、キシレン、メチルアセテート(MA)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート(VC)、アリルエチルカーボネート(AEC)、ハイドロフルオロエーテル(hydrofloroether)(例えばメチルパーフルオロブチルエーテル、MFE、またはエチルパーフルオロブチルエーテル、EFE)、およびその組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0216】
リチウム塩は、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、ヘキサフルオロヒ化リチウム(LiAsF6)、トリフルオロ-メタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム(LiBF2C2O4)、硝酸リチウム(LiNO3)、Li-フルオロアルキル-ホスフェート(LiPF3(CF2CF3)3)、リチウムビスパーフルオロ-エチルスルホニルイミド(LiBETI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)、イオン液体ベースリチウム塩、またはその組み合わせから選択されてもよい。
【0217】
イオン液体は、イオンのみから構成される。イオン液体は、所望される温度を上回る場合に融解または液体状態である低融解温度の塩である。例えば、イオン性の塩は、その融点が100℃を下回る場合にイオン液体と考えられる。融解温度が室温(25℃)に等しいかまたはそれより低い場合、塩は室温イオン液体(RTIL)として参照される。ILベースリチウム塩は、大きいカチオンと電荷非局在化アニオンとの組み合わせに起因して、弱い相互作用により特徴付けられる。これは、柔軟性(アニオン)および非対称性(カチオン)に起因して結晶化する低い傾向を結果としてもたらす。
【0218】
一部のILは、本開示の第1の有機溶媒と共に働くために(塩としてではなく)共溶媒として使用されてもよい。周知のイオン液体は、1-エチル-3-メチル-イミダゾリウム(EMI)カチオンとN,N-ビス(トリフルオロメタン)スルホンアミド(TFSI)アニオンとの組み合わせにより形成される。この組み合わせは、多くの有機電解質溶液と同等のイオン伝導性、低い分解傾向および約300~400℃までで低い蒸気圧を有する液体を与える。これは一般に低い揮発性および非可燃性、ならびにそれゆえバッテリー用のはるかにより安全な電解質溶媒を含意する。
【0219】
イオン液体は、有機または無機イオンから基本的に構成され、多様なそれらの成分の作製の容易性に起因して無数の構造的バリエーションがある。そのため、様々な種類の塩を使用して、所与の応用のための所望される特性を有するイオン液体を設計することができる。これらは、数ある中でも、カチオンとしてのイミダゾリウム、ピロリジニウムおよび第四級アンモニウム塩ならびにアニオンとしてのビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(フルオロスルホニル)イミドおよびヘキサフルオロホスフェートを含む。有用なイオン液体ベースリチウム塩(溶媒ではない)は、カチオンとしてのリチウムイオンならびにアニオンとしてのビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(フルオロスルホニル)イミドおよびヘキサフルオロホスフェートから構成されてもよい。例えば、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)は特に有用なリチウム塩である。
【0220】
それらの組成に基づいて、イオン液体は、各々が特有の応用のために好適な、3つの基本的なタイプ:非プロトン、プロトンおよび双性イオンタイプを含む異なるクラスに入る。室温イオン液体(RTIL)の一般的なカチオンは、テトラアルキルアンモニウム、ジ、トリ、およびテトラ-アルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウム、ジアルキル-ピロリジニウム、ジアルキルピペリジニウム、テトラアルキルホスホニウム、ならびにトリアルキルスルホニウムを含むが、これらに限定されない。RTILの一般的なアニオンは、BF4
-、B(CN)4
-、CH3BF3
-、CH2CHBF3
-、CF3BF3
-、C2F5BF3
-、n-C3F7BF3
-、n-C4F9BF3
-、PF6
-、CF3CO2
-、CF3SO3
-、N(SO2CF3)2
-、N(COCF3)(SO2CF3)-、N(SO2F)2
-、N(CN)2
-、C(CN)3
-、SCN-、SeCN-、CuCl2
-、AlCl4
-、F(HF)2.3
-などを含むが、これらに限定されない。相対的に言えば、イミダゾリウムまたはスルホニウム系カチオンと複合ハロゲン化物アニオン、例えばAlCl4
-、BF4
-、CF3CO2
-、CF3SO3
-、NTf2
-、N(SO2F)2
-、またはF(HF)2.3
-との組み合わせは、良好な作動伝導性を有するRTILを結果としてもたらす。
【0221】
RTILは、典型的な特性、例えば高い内因的イオン伝導性、高い熱安定性、低い揮発性、低い(実際的に0の)蒸気圧、非可燃性、室温を上回るおよび下回る広範囲の温度において液体のままである能力、高い極性、高い粘性、ならびに広い電気化学的ウィンドウを有することができる。これらの特性は、高い粘性を除いて、充電式リチウム電池における電解質共溶媒としてRTILを使用する場合に望ましい属性である。
【0222】
本開示の実施において使用され得るカソード材料のタイプに関しても制限はない。Li-S電池のために、カソード活性材料はリチウム多硫化物を含有してもよい。電池が作られるときにカソード活性材料がリチウム含有種(例えば、リチウム多硫化物)を含む場合、リチウム金属がアノードに予備装備される必要はない。
【0223】
一次バッテリーまたは二次バッテリーであることができる本開示のリチウムバッテリーにおいて使用され得るカソード活性材料のタイプに関して特に制限はない。充電式リチウム金属またはリチウムイオン電池は、好ましくは、例として、層状化合物LiMO2、スピネル化合物LiM2O4、カンラン石化合物LiMPO4、ケイ酸化合物Li2MSiO4、タボライト化合物LiMPO4F、ホウ酸化合物LiMBO3、またはその組み合わせから選択されるカソード活性材料を含有してもよく、Mは遷移金属または複数の遷移金属の混合物である。
【0224】
充電式リチウム電池において、カソード活性材料は、金属酸化物、金属酸化物フリー無機材料、有機材料、ポリマー材料、硫黄、リチウム多硫化物、セレン、またはその組み合わせから選択されてもよい。金属酸化物フリー無機材料は、遷移金属フッ化物、遷移金属塩化物、遷移金属ジカルコゲン化物、遷移金属トリカルコゲン化物、またはその組み合わせから選択されてもよい。特に有用な実施形態において、アノードがアノード活性材料としてリチウム金属を含有する場合に、カソード活性材料は、FeF3、FeCl3、CuCl2、TiS2、TaS2、MoS2、NbSe3、MnO2、CoO2、酸化鉄、酸化バナジウム、またはその組み合わせから選択される。酸化バナジウムは、好ましくは、VO2、LixVO2、V2O5、LixV2O5、V3O8、LixV3O8、LixV3O7、V4O9、LixV4O9、V6O13、LixV6O13、それらのドーピングされたバージョン、それらの誘導体、およびその組み合わせからなる群から選択されてもよく、0.1<x<5である。その中にLi元素を含有しないカソード活性材料について、最初にカソード側にリチウム供給源が装備されているべきである。これは、高いリチウム含有量を含有する任意の化合物、またはリチウム金属合金などであることができる。
【0225】
充電式リチウム電池(例えば、リチウムイオンバッテリー電池)において、カソード活性材料は、層状化合物LiMO2、スピネル化合物LiM2O4、カンラン石化合物LiMPO4、ケイ酸化合物Li2MSiO4、タボライト化合物LiMPO4F、ホウ酸化合物LiMBO3、またはその組み合わせを含有するように選択されてもよく、Mは遷移金属または複数の遷移金属の混合物である。
【0226】
特に望ましいカソード活性材料は、リチウムニッケルマンガン酸化物(LiNiaMn2-aO4、0<a<2)、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(LiNinMnmCo1-n-mO2、0<n<1、0<m<1、n+m<1)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(LiNicCodAl1-c-dO2、0<c<1、0<d<1、c+d<1)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、リチウムマンガン酸化物(LiMnO2)、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケルコバルト酸化物(LiNipCo1-pO2、0<p<1)、またはリチウムニッケルマンガン酸化物(LiNiqMn2-qO4、0<q<2)を含む。
【0227】
好ましいリチウム金属二次電池において、カソード活性材料は、好ましくは、(a)セレン化ビスマスもしくはテルル化ビスマス、(b)遷移金属ジカルコゲン化物もしくはトリカルコゲン化物、(c)ニオビウム、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、もしくは遷移金属の硫化物、セレン化物、もしくはテルル化物;(d)窒化ホウ素、または(e)その組み合わせから選択される無機材料を含有する。再び、その中にLi元素を含有しないカソード活性材料について、最初にカソード側にリチウム供給源が装備されているべきである。
【0228】
別の好ましい充電式リチウム電池(例えばリチウム金属二次電池またはリチウムイオン電池)において、カソード活性材料は、ポリ(アントラキノニルスルフィド)(PAQS)、リチウムオキソカーボン(スクアリン酸、クロコン酸、およびロジゾン酸リチウム塩を含む)、オキサカーボン(キニーネ、酸無水物、およびニトロ化合物を含む)、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、ポリ(アントラキノニルスルフィド)、ピレン-4,5,9,10-テトラオン(PYT)、ポリマー結合PYT、Quino(トリアゼン)、レドックス活性有機材料(複数の隣接するカルボニル基に基づくレドックス活性構造(例えば、「C6O6」タイプ構造、オキソカーボン)、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラシアノエチレン(TCNE)、2,3,6,7,10,11-ヘキサメトキシトリフェニレン(HMTP)、ポリ(5-アミノ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン)(PADAQ)、ホスファゼンジスルフィドポリマー([(NPS2)3]n)、リチウム化1,4,5,8-ナフタレンテトラオールホルムアルデヒドポリマー、ヘキサアザトリナフチレン(HATN)、ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル(HAT(CN)6)、5-ベンジリデンヒダントイン、イサチンリチウム塩、ピロメリト酸ジイミドリチウム塩、テトラヒドロキシ-p-ベンゾキノン誘導体(THQLi4)、N,N’-ジフェニル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PHP)、N,N’-ジアリル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(AP)、N,N’-ジプロピル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PRP)、チオエーテルポリマー、キノン化合物、1,4-ベンゾキノン、5,7,12,14-ペンタセンテトロン(PT)、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン(ADDAQ)、5-アミノ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン(ADAQ)、カリックスキノン、Li4C6O6、Li2C6O6、Li6C6O6、またはその組み合わせから選択される有機材料またはポリマー材料を含有する。
【0229】
チオエーテルポリマーは、主鎖チオエーテルポリマーとしてポリ[メタンテトリル-テトラ(チオメチレン)](PMTTM)、ポリ(2,4-ジチオペンタニレン)(PDTP)、またはポリ(エテン-1,1,2,2-テトラチオール)(PETT)から選択されてもよく、該ポリマーにおいて硫黄原子は炭素原子を連結してポリマー骨格を形成させる。側鎖チオエーテルポリマーは、コンジュゲート性芳香族部分を含むポリマー主鎖を有するが、ペンダントとしてチオエーテル側鎖を有する。それらの中で、ポリ(2-フェニル-1,3-ジチオラン)(PPDT)、ポリ(1,4-ジ(1,3-ジチオラン-2-イル)ベンゼン)(PDDTB)、ポリ(テトラヒドロベンゾジチオフェン)(PTHBDT)、およびポリ[1,2,4,5-テトラキス(プロピルチオ)ベンゼン](PTKPTB)はポリフェニレン主鎖を有し、チオランをペンダントとしてのベンゼン部分に連結している。同様に、ポリ[3,4(エチレンジチオ)チオフェン](PEDTT)はポリチオフェン骨格を有し、シクロ-チオランをチオフェン環の3,4位に連結している。
【0230】
さらに別の好ましい充電式リチウム電池において、カソード活性材料は、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、スズフタロシアニン、鉄フタロシアニン、鉛フタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、フルオロクロムフタロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、二価マンガンフタロシアニン、ジリチウムフタロシアニン、アルミニウムフタロシアニンクロリド、カドミウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、コバルトフタロシアニン、銀フタロシアニン、金属フリーフタロシアニン、その化学的誘導体、またはその組み合わせから選択されるフタロシアニン化合物を含有する。このクラスのリチウム二次バッテリーは、高い容量および高いエネルギー密度を有する。再び、その中にLi元素を含有しないカソード活性材料について、最初にカソード側にリチウム供給源が装備されているべきである。
【0231】
図1(B)に図示されるように、本開示はまた、(a)反応性添加剤および第1の非水性液体溶媒(例えば、有機溶媒またはイオン液体溶媒)を含む、第1の溶液であって、反応性添加剤が、少なくとも1つの反応性ポリマー、反応性オリゴマー、または反応性モノマーを含み、ならびに反応性ポリマー、オリゴマー、またはモノマーが、少なくとも反応性カルボキシルおよび/またはヒドロキシル基を含む、第1の溶液;ならびに(b)開始剤または架橋剤、リチウム塩、および第2の水性液体溶媒(例えば、有機溶媒またはイオン液体溶媒)を含む、第2の溶液を含み;電解質を形成させるために第1の溶液および第2の溶液が混合される前に、第1の溶液および第2の溶液が別々に貯蔵されている、電解質組成物を提供する。
【0232】
本開示は、(
図1(A)において図示されるような)充電式リチウム電池を製造する方法であって、(a)カソードを用意すること;(b)アノードを用意すること;(c)カソードおよびアノードを組み合わせてドライ電池を形成させること;ならびに(d)ドライ電池に本開示の電解質組成物を導入(例えば、注入)し、ならびに反応性添加剤を重合および/または架橋させて充電式リチウム電池を製造することを含む、方法をさらに提供する。
【0233】
この方法において、工程(a)は、任意の一般的に使用されるカソード製造方法から選択されてもよい。例えば、方法は、(i)カソード活性材料の粒子、伝導性添加剤、任意選択的な樹脂バインダー、任意選択的な固体無機電解質粉末の粒子、および任意選択的な難燃剤を液体媒体(例えば、有機溶媒、例えばNMP)中で混合してスラリーを形成させること;ならびに(ii)カソード集電体(例えば、Alホイル)上にスラリーをコーティングし、および溶媒を除去することを含んでもよい。工程(b)におけるアノードは、類似した方式であるが、アノード活性材料の粒子(例えば、Si、SiO、Sn、SnO2、グラファイト、および炭素の粒子)を使用して製造されてもよい。アノードの製造において使用される液体媒体は水または有機溶媒であってもよい。工程(c)は、アノード、多孔性セパレータ、カソードをそれらのそれぞれの集電体と共に組み合わせて、ドライ電池を形成させるための保護用ハウジング中に封入された単位電池を形成させることを伴ってもよい。
【0234】
図1(C)に図示されるように、本開示はまた、開示される充電式リチウム電池を製造する方法であって、(A)カソード活性材料の粒子、任意選択的な伝導性添加剤(カソードにおいて典型的には要求される)、任意選択的なバインダー(重合および/または架橋で、反応性添加剤は電極において固体粒子を結合させるバインダーとなるため、任意選択的であるが要求されない)、任意選択的な難燃剤、任意選択的な無機固体電解質粉末の粒子、反応性添加剤、非水性液体溶媒、ならびにリチウム塩を混合してカソードを形成させることであって、反応性添加剤が、少なくとも1つの反応性ポリマー、反応性オリゴマー、または反応性モノマーおよび硬化剤または開始剤を含み、ならびに反応性ポリマー、オリゴマー、またはモノマーが、少なくとも反応性カルボキシルおよび/またはヒドロキシル基を含む、形成させること;(B)アノードを用意すること;(C)カソードおよびアノードを組み合わせて電池を形成させること;ならびに(D)工程(C)の前または後に、反応性添加剤を重合および/または架橋させて充電式リチウム電池を製造することを含む、方法を提供する。
【0235】
工程(A)において、カソード活性材料の粒子、任意選択的な伝導性添加剤、任意選択的なバインダー、任意選択的な難燃剤、任意選択的な無機固体電解質粉末の粒子、反応性添加剤、およびリチウム塩は、スラリーを形成させるために非水性液体溶媒中に分散されてもよい。スラリーは、カソードを形成させるためにカソード集電体(例えば、Alホイル)の主要な表面または両方の主要な表面上に取り付けまたはコーティングされる。
【0236】
ある特定の実施形態において、工程(B)は、アノード活性材料の粒子、任意選択的な伝導性添加剤(アノード活性材料が炭素またはグラファイト材料である場合には要求されない)、任意選択的なバインダー(重合および/または架橋で、反応性添加剤は電極において固体粒子を結合させるバインダーとなるため、要求されない)、任意選択的な難燃剤、任意選択的な無機固体電解質粉末の粒子、反応性添加剤(カソードにおいて使用されるものと同じまたは異なる反応物)、非水性液体溶媒、ならびにリチウム塩を混合してアノードを形成させる手順を含む。
【0237】
方法は、工程(C)の前または後に、反応性添加剤を重合および/または架橋させて充電式リチウム電池を製造することをさらに含む。
【0238】
一部の実施形態において、工程(A)は、カソード中に無機固体電解質粉末の粒子を加えることをさらに含む。工程(B)は、アノード中に無機固体電解質粉末の粒子を加えることをさらに含んでもよい。
【0239】
図1(D)において図示されるのは、開示される充電式リチウム電池を製造する方法である、本開示のさらに別の実施形態である。方法は、(A)カソード活性材料の粒子、任意選択的な伝導性添加剤(カソードにおいて典型的には要求される)、任意選択的なバインダー(反応性添加剤は重合および/または架橋でバインダーとなるため、要求されない)、任意選択的な難燃剤、任意選択的な無機固体電解質粉末の粒子、ならびに反応性添加剤を混合してカソード(好ましくは集電体上に支持された少なくとも1つのカソード活性材料層を含有する)を形成させることであって、反応性添加剤が、少なくとも1つの反応性ポリマー、反応性オリゴマー、または反応性モノマーを含み、ならびに反応性ポリマー、オリゴマー、またはモノマーが、少なくとも反応性カルボキシルおよび/またはヒドロキシル基を含む、形成させること;(B)アノードを用意すること;(C)カソード、任意選択的なセパレータ、アノード、および保護用ハウジングを組み合わせて電池を形成させること;ならびに(D)リチウム塩、開始剤または架橋剤、任意選択的な難燃剤(液体状態である場合)および非水性液体溶媒の液体混合物を電池に注入し、ならびに反応性添加剤を重合および/または架橋させて充電式リチウム電池を製造することを含む。
【0240】
代替的に、本開示は、(
図1(A)に図示されるような)充電式リチウム電池を製造する方法であって、(a)カソードを用意すること;(b)アノードを用意すること;(c)カソードおよびアノードを組み合わせてドライ電池を形成させること;ならびに(d)本開示の電解質組成物(初期溶媒比率Φiを有する)をドライ電池に導入(例えば、注入)し、ならびに反応性添加剤を重合および/または架橋させて充電式リチウム電池を製造することを含む、方法をさらに提供する。工程(d)は、工程(C)の前または後に、液体溶媒を部分的にまたは完全に除去し、ならびに反応性モノマー、オリゴマー、またはポリマーを重合および/または架橋させて充電式リチウム電池を製造することであって、液体溶媒の最終重量分率または体積分率Φ
fがΦiよりも小さく、およびΦ
fが0%~30%である、製造することを含む。
【0241】
この方法において、工程(a)は、任意の一般的に使用されるカソード製造方法から選択されてもよい。例えば、方法は、(i)カソード活性材料の粒子、伝導性添加剤、任意選択的な樹脂バインダー、任意選択的な固体無機電解質粉末の粒子、および任意選択的な難燃剤を液体媒体(例えば、有機溶媒、例えばNMP)中で混合してスラリーを形成させること;ならびに(ii)カソード集電体(例えば、Alホイル)上にスラリーをコーティングし、および溶媒を除去することを含んでもよい。工程(b)におけるアノードは、類似した方式であるが、アノード活性材料の粒子(例えば、Si、SiO、Sn、SnO2、グラファイト、および炭素の粒子)を使用して製造されてもよい。アノードの製造において使用される液体媒体は水または有機溶媒であってもよい。工程(c)は、アノード、多孔性セパレータ、カソードをそれらのそれぞれの集電体と共に組み合わせて、ドライ電池を形成させるための保護用ハウジング中に封入された単位電池を形成させることを伴ってもよい。
【0242】
図1(C)に図示されるように、本開示はまた、開示される充電式リチウム電池を製造する方法であって、(A)カソード活性材料の粒子、任意選択的な伝導性添加剤(カソードにおいて典型的には要求される)、任意選択的なバインダー(重合および/または架橋で、反応性添加剤は電極において固体粒子を結合させるバインダーとなるため、任意選択的であるが要求されない)、任意選択的な難燃剤、任意選択的な無機固体電解質粉末の粒子、反応性添加剤、非水性液体溶媒(初期溶媒比率Φiを有する)、ならびにリチウム塩を混合してカソードを形成させることであって、反応性添加剤が、少なくとも1つの反応性ポリマー、反応性オリゴマー、または反応性モノマーおよび硬化剤または開始剤を含む、形成させること;(B)アノードを用意すること;(C)カソードおよびアノードを組み合わせて電池を形成させること;ならびに(D)工程(C)の前または後に、反応性添加剤を重合および/または架橋させて充電式リチウム電池を製造することであって、液体溶媒の最終重量分率または体積分率Φ
fがΦiよりも小さく、およびΦ
fが0%~30%である、製造することを含む、方法を提供する。
【0243】
工程(A)において、カソード活性材料の粒子、任意選択的な伝導性添加剤、任意選択的なバインダー、任意選択的な難燃剤、任意選択的な無機固体電解質粉末の粒子、反応性添加剤、およびリチウム塩は、スラリーを形成させるために非水性液体溶媒中に分散されてもよい。スラリーは、カソードを形成させるためにカソード集電体(例えば、Alホイル)の主要な表面または両方の主要な表面上に取り付けまたはコーティングされる。
【0244】
ある特定の実施形態において、工程(B)は、アノード活性材料の粒子、任意選択的な伝導性添加剤(アノード活性材料が炭素またはグラファイト材料である場合には要求されない)、任意選択的なバインダー(重合および/または架橋で、反応性添加剤は電極において固体粒子を結合させるバインダーとなるため、要求されない)、任意選択的な難燃剤、任意選択的な無機固体電解質粉末の粒子、反応性添加剤(カソードにおいて使用されるものと同じまたは異なる反応物)、非水性液体溶媒、ならびにリチウム塩を混合してアノードを形成させる手順を含む。
【0245】
方法は、工程(C)の前または後に、反応性添加剤を重合および/または架橋させて充電式リチウム電池を製造することをさらに含む。
【0246】
一部の実施形態において、工程(A)は、カソード中に無機固体電解質粉末の粒子を加えることをさらに含む。工程(B)は、アノード中に無機固体電解質粉末の粒子を加えることをさらに含んでもよい。
【0247】
図1(D)において図示されるのは、開示される充電式リチウム電池を製造する方法である、本開示のさらに別の実施形態である。方法は、(A)カソード活性材料の粒子、任意選択的な伝導性添加剤(カソードにおいて典型的には要求される)、任意選択的なバインダー(反応性添加剤は重合および/または架橋でバインダーとなるため、要求されない)、任意選択的な難燃剤、任意選択的な無機固体電解質粉末の粒子、ならびに反応性添加剤を混合してカソード(好ましくは集電体上に支持された少なくとも1つのカソード活性材料層を含有する)を形成させることであって、反応性添加剤が、少なくとも1つの反応性ポリマー、反応性オリゴマー、または反応性モノマーを含む、形成させること;(B)アノードを用意すること;(C)カソード、任意選択的なセパレータ、アノード、および保護用ハウジングを組み合わせて電池を形成させること;ならびに(D)リチウム塩、開始剤または架橋剤、任意選択的な難燃剤(液体状態である場合)および非水性液体溶媒(初期溶媒重量または体積分率Φiを有する)の液体混合物を電池に注入し、ならびに反応性添加剤を重合および/または架橋させて充電式リチウム電池を製造することであって、液体溶媒の最終重量分率または体積分率Φ
fがΦiよりも小さく、およびΦ
fが0%~30%である、製造することを含む。
【0248】
リチウムイオン電池の製造のために、工程(B)は、アノード材料の粒子(例えば、Si、SiO、グラファイト、炭素粒子など)、任意選択的な伝導性添加剤、任意選択的なバインダー、任意選択的な難燃剤、任意選択的な無機固体電解質粉末の粒子、および反応性添加剤を混合して、アノード集電体(例えば、Cuホイル)上に支持された少なくとも1つのアノード活性層を形成させることを含んでもよい。
【0249】
以下の実施例は、主に本開示のベストモードの実施を説明する目的のために提示され、本開示の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0250】
実施例1:弾性ポリマーベース電解質を含有するアノードレスリチウムバッテリー
PAA/PVA架橋ネットワークポリマーベース弾性ポリマー電解質を熱誘導性重合アプローチにより作製した。ポリマー前駆体(PAAおよびPVA水性溶液、9:1の重量比)、カソード活性材料の粒子、および別々にNCM-811、所望される量のLiOH(LiOH対ポリマー比=1/10)、ならびに所望される量の選択された難燃剤(例えば、水酸化アルミニウム、およびAmfine Chemical Corp.からのリン化合物、以下の化学式20)を混合することにより反応溶液またはスラリーを作製した。
【0251】
【0252】
混合物を3時間撹拌し、続いてAlホイル表面にキャストしてカソード層を形成させた。作製された層を次に、120℃で5時間および次に150℃で2時間加熱することにより熱重合させた。エーテル化反応がPAAのカルボキシル官能基(-COOH)とPVAのヒドロキシル官能基(-OH)との間で起こった。
【0253】
別々に、ある量のPVA/PAA水性溶液をガラス表面にキャストしてウェットフィルムを形成させ、それを類似した条件下で熱硬化させて架橋ポリマーのフィルムを形成させた。この実験において、PAA/PVA重量比を1/9~9/1で変動させて、いくつかの異なるポリマーフィルムにおいて架橋の程度を変動させた。硬化させたポリマー試料の一部を動的機械試験に供して、架橋の程度を特徴付ける手段として、2つの架橋点の間の数平均分子量(Mc)および対応する繰り返し単位の数(Nc)の決定のための平衡動的弾性率Geを得た。
【0254】
いくつかの引張試験の試験片を各々の架橋されたフィルムから切断し、万能試験機で試験した。このシリーズのネットワークポリマーは約55%~345%の弾性変形を有することを代表的な引張応力-歪み曲線は指し示している。上記されるこれらは、いかなる添加剤も有しないニートポリマーについてのものである。重量で最大30%のリチウム塩の追加は、典型的には、この弾性を10%~100%の可逆的引張歪みまで低減させる。
【0255】
軽度に架橋されたPAA/PVAネットワークポリマーのいくつかの層を、グローブボックス中でEC/VC/HEC(8:1:1の重量比)の液体混合物中に2.5Mのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を含む液体電解質溶液中に24時間浸漬してアノード保護層を得た。Cuホイル、アノード保護層、多孔性PE-PPセパレータ、および上記されているカソード層を積み重ね、Al-プラスチック積層エンベロープ中に封入してアノードレスリチウム金属電池を形成させる。浸漬の代わりに、ドライ電池が作られた後に液体電解質を注入することを選択してもよい。
【0256】
電気化学測定(CV曲線)を1~100mV/sのスキャン速度で電気化学ワークステーションにおいて実行した。Arbin電気化学ワークステーションを使用して50~500mA/gの電流密度において定電流充電/放電サイクリングにより電池の電気化学的性能を評価した。
【0257】
実施例2:リチウム-LiCoO2電池(最初にリチウムフリーである電池)およびグラファイト-LiCoO2リチウムイオン電池におけるNa+置換ポリアクリル酸ポリマー電解質
意図される電解質におけるポリマーは、18wt%のポリアクリル酸水性溶液(10wt%の濃度)またはアクリル酸モノマー(ポリビニルアルコール用の硬化剤として)、および8wt%のNaOH、および74wt%のポリビニルアルコールに基づいた。カソード活性材料としてのLiCoO2の粒子および伝導性添加剤としてのマルチウォールカーボンナノチューブをポリマー溶液と混合し(最終LiCoO2:ポリマー:CNT比=8:1:1)、Alホイルの表面にコーティングした。コーティングで、得られた反応物を120℃で60分間加熱して、カソード中のCNTおよびLiCoO2の両方と物理的に接触したNa+置換ポリアクリル酸およびポリビニルアルコールの架橋された化合物を製造した。カソードを、有機液体溶媒中に溶解したリチウム塩を含有する液体電解質中に浸漬させて、液体電解質を浸透させ、架橋ポリマーネットワークをわずかに膨潤させた。
【0258】
リチウムイオン電池用のアノードを類似した方式で作製したが、LiCoO2粒子は、アノード活性材料としてのグラフェンコーティングされたSi粒子により置き換えた。
【0259】
別々に、反応物をガラス表面にキャストしていくつかのフィルムを形成させ、それを硬化させて、異なる架橋の程度を有する架橋ポリマーを得た。引張試験もまたこれらのフィルムにおいて実行した。このシリーズの架橋ポリマーは、約43%(より高い架橋の程度)から445%(より低い架橋の程度)まで弾性的に伸長され得る。
【0260】
一部の試料において、所望される量(全電極重量に基づいて重量で5%)の難燃剤(例えば、別々にデカブロモジフェニルエタン(DBDPE)、臭素化ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキシド)(BPPO)、およびメラミン系難燃剤;後者はItalmatch Chemicalsからのもの)を次に反応物に加えた。
【0261】
いくつかの試料において、ガーネットタイプ固体電解質(Li7La3Zr2O12(LLZO)粉末)もまた溶液に加えた。引き続いて、これらの溶液を別々にキャストして、Alホイル上の前駆体反応物の薄層を形成させた。前駆体反応物を次に75~100℃の温度で2~8時間加熱して、Cuホイル表面に接着したアノードまたはAlホイル表面に接着したカソードの層を得た。
【0262】
リチウムイオン電池の構築のために、グラフェンコーティングされたSi粒子ベースのアノード、多孔性セパレータ、およびLiCoO2ベースカソードを積み重ね、プラスチック/Al積層エンベロープに収容して電池を形成させた。
【0263】
リチウムイオン電池の構築のために、Cuホイル、多孔性セパレータ、およびLiCoO2ベースカソードを積み重ね、プラスチック/Al積層エンベロープに収容して電池を形成させた。
【0264】
実施例3:半相互貫入ネットワークポリマーベース電解質を含有するLi金属電池
いくつかの弾性ポリマー電解質を、(a)以下の化学式20により表される繰り返し単位および以下の化学式21により表される繰り返し単位を含有するコポリマーならびに(ii)アクリルアミドまたはアルキレングリコール(硬化剤として)を含む半相互貫入ネットワークポリマーから得た。
【0265】
【0266】
【0267】
例において、390gの脱イオン水、25gのイソブチレン-コ-マレイン酸無水物、および10gのポリエチレングリコールを、加熱器、冷却器、および撹拌器を有する2L反応器に導入した。室温で8.0gの水酸化リチウムを80gの脱イオン水に溶解させることにより作製された水性溶液を緩徐にこの反応器に加え、混合物を10分間撹拌した。反応器を窒素雰囲気下で80℃まで加熱し、3時間維持した。引き続いて、0.125gの過硫酸アンモニウムを10gの脱イオン水に溶解させることにより作製された溶液を混合物に加え、それを20分間維持し、65gのアクリルアミドを180gの脱イオン水に溶解させることにより作製された水性溶液をそこに滴下の様式で2時間加えた。商業的に入手可能なNCM-532粉末(周知のリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物)をグラフェンシート(伝導性添加剤として)と共に溶液に加えた。混合物を1時間反応させ、40℃よりも低くまで冷却した。2.9gの水酸化リチウムを20gの脱イオン水に溶解させることにより作製された水性溶液をそこに滴下の様式で10分間加えた。スラリーをAlホイルにコーティングしてカソード層を形成させた。硬化で、ポリマーは、化学式20により表される繰り返し単位および化学式21により表される繰り返し単位を含むコポリマーならびにポリアクリルアミドを含む半相互貫入ポリマーネットワーク、ならびにポリアルキレングリコールを含み、ならびに遊離リチウムイオンを含んだ。
【0268】
この例において、上記の化学式20において、R1およびR2は水素であり、R3およびR4はLiである。上記の化学式21において、R5およびR7は水素であり、R6およびR8はCH3である。
【0269】
上記の化学式20により表される繰り返し単位はコポリマーの全量に基づいて40mol%の量で含まれ、上記の化学式21により表される繰り返し単位はコポリマーの全量に基づいて60mol%の量で含まれた。さらには、半相互貫入ポリマーネットワークにおいて、コポリマー対ポリアクリルアミドのモル比は3:7であった。弾性ポリマー組成物中で半相互貫入ポリマーの量は90mol%であり、ポリアルキレングリコールの量は10モル%であった。
【0270】
ポリアルキレングリコールの重量平均分子量は3000g/molであり、遊離リチウムイオンの量は6.6mol%であった。
【0271】
一部の試料において、難燃剤(例えばトリフェニルホスフェート(TPP)、およびItalmatch Chemicalsからのリン化合物である「Phoslite」)を弾性ポリマー中に分散させた後に、Cuホイル表面上に予め沈着させたリチウム金属層にキャストして前駆体フィルムを形成させ、それを70℃で30分間重合および硬化させて、軽度に架橋されたポリマーを得た。
【0272】
Alホイルに支持されたカソード活性層、セパレータ、およびCuホイルに支持されたリチウム金属ホイルを次にリチウム金属電池に組み立て、続いて液体電解質をこの電池に注入した。LiTFSI(リチウム塩)を含有する液体電解質は(DME+DOL+FPC)の液体混合物に溶解した。
【0273】
実施例4:架橋CMC/PAAネットワークベース弾性ポリマー電解質を含有するLiイオン電池
CMC/PAA鎖の架橋ポリマーネットワークを以下の手順にしたがって作製した:PAA架橋CMCネットワークポリマーを熱誘導性重合および架橋アプローチにより作製した。100mgのCMC、400mgのアクリル酸モノマー(AA)、40mgの(NH4)2S2O8、および12mgのNaHSO3を12mLの水中で混合することにより反応性スラリーを作製した。溶液を45~50℃で2~3時間加熱し、NaOHにより6.2のpH値に中和した。約3gのSiO粉末(アノード活性材料として)を溶液に加えた。得られたスラリーを2時間撹拌し、次にキャストして反応物の層を形成させ、それを次に115℃で5時間および次に150℃で2時間熱処理してCuホイル表面上にアノード活性層を形成させた。エーテル化反応は、PAAのカルボキシル官能基(-COOH)とCMCのヒドロキシル官能基(-OH)との間で起こったと推定される。
【0274】
別々に、Alホイル表面上に支持されたカソード層を類似した方式で製造したが、SiOはマンガン酸リチウム(LiMn2O4)の粒子により置き換えた。
【0275】
キャスティングにより保護された電池にアノード、セパレータ、およびカソード層を組み合わせることによりリチウムイオン電池を次に製造した。電池に次に、所望される液体電解質を注入した。
【0276】
別々に、ある量のCMC/PAA水性溶液をガラス表面にキャストしてウェットフィルムを形成させ、それを類似した条件下で熱硬化させて架橋ポリマーのフィルムを形成させた。この実験において、PAA/CMC重量比は1/9~9/1で変動させて、いくつかの異なるポリマーフィルムにおいて架橋の程度を変動させた。硬化したポリマー試料の一部を動的機械試験に供して、架橋の程度を特徴付ける手段として、2つの架橋点の間の数平均分子量(Mc)および対応する繰り返し単位の数(Nc)の決定のための平衡動的弾性率Geを得た。
【0277】
いくつかの引張試験の試験片を各々の架橋されたフィルムから切断し、万能試験機で試験した。このシリーズのネットワークポリマーは約22%~310%の弾性変形を有することを代表的な引張応力-歪み曲線は指し示している。
【0278】
実施例5:硬化剤としてクエン酸およびグリセロールを使用した架橋ポリアクリル酸からの弾性ポリマー電解質
高弾性ポリマー電解質をPAA、クエン酸、およびグリセロールの混合物から作った。8:1:1の比を有するようにPAA、クエン酸およびグリセロールを混合した。カソードの作製のために、PAA(重量で7%)、カソード活性材料の粒子(85%)、および伝導性添加剤(カーボンブラック、8%)を蒸留水中に分散させて水性スラリーを形成させた。研究されたカソード活性材料は、NCM、NCA、およびリチウム多硫化物を含んだ。スラリーをAlホイルの表面にコーティングして、水の除去でドライカソード層を形成させた。
【0279】
アノード層をCuホイル表面上に類似した方式で作ったが;アノード活性材料は、グラフェンコーティングされたSi粒子である。アノード層、セパレータ、およびカソード層を組み合わせてドライ電池を形成させた。リチウム塩(LiBF4)、クエン酸、グリセロール、および有機溶媒(EC+アセトン)を含有する液体電解質溶液をドライ電池に注入した。アセトンを引き続いて蒸発させた。電池を100℃に2時間および次に150℃に2時間加熱してゲルポリマーネットワーク電解質を形成させた。
【0280】
実施例6:弾性ポリマー電解質としてのクエン酸架橋CMC
カルボキシメチルセルロースナトリウム粉末(2.0g)を100mLのDI水に加え、完全な可溶化が起こるまで室温で撹拌することによりCMC溶液(2% w/v)を作製した。溶解後に、所望される量のカソード活性材料および伝導性添加剤(例えば、CNT)を、得られた溶液中に分散させてスラリーを形成させた。スラリーを引き続いてAlホイルの表面にコーティングし、水を除去してドライカソード層を形成させた。アノードの層を類似した方式で作った。カソード、セパレータ(多孔性PE-PPコポリマー膜)、およびアノードを積み重ねてドライ電池を形成させ、それをポーチ中に封入した。
【0281】
引き続いて、クエン酸(CA;意図される架橋剤として)およびリチウム塩を有機液体溶媒(7.0:1.5:1.5の比のEC+DEC+FEC)中に分散させて溶液を形成させ、それをドライ電池に注入した。電池を80±2℃で24時間加熱してクエン酸によるCMCの架橋反応を完了させた。
【0282】
実施例7:弾性ポリマー電解質としてのPEGDE架橋CMC
ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDE)により架橋されたCMCベースネットワークポリマーのシリーズを作製した。典型的な手順は以下のように行った:5.0gのCMC(モノマー単位用に23mmol)を100mLの1.5mol L-1の水性NaOH溶液に完全に溶解させ、0.50gのPEGDE(1.1mmol)を引き続いて25℃でTeflon羽根車を使用する300rpmでの撹拌と共に溶液に加えて反応溶液を形成させた。カソード活性材料(例えば別々に、LiCoO2およびNCM532)の粒子ならびに所望される量(全カソード活性層重量の5~10%)の無機固体電解質粉末(例えば、実施例10において作製されたc-Li6.25Al0.25La3Zr2O12)を次に反応溶液中に分散させて反応性スラリーを形成させた。スラリーをAlホイル表面上にコーティングし、乾燥させてカソードを作った。アノードを類似した方式で作った。カソード、セパレータ(多孔性PE-PPコポリマー膜)、およびアノードを積み重ねてドライ電池を形成させ、それをポーチ中に封入した。
【0283】
引き続いて、リチウム塩(LiPF6)を有機液体溶媒(7.5:1.0:1.5の比のEC+VC+HFE)中に分散させて溶液を形成させ、それをドライ電池に注入した。架橋反応を60℃で開始させ、60℃で4時間維持して架橋反応を完了させた。
【0284】
実施例8:固体充填剤または添加剤としての使用のための固体電解質粉末、リン酸リチウム窒化物化合物(LIPON)の作製
Li3PO4の粒子(平均粒子サイズ4μm)および尿素を原材料として用意し;各々5gのLi3PO4および尿素を計量し、乳鉢中で混合して原材料組成物を得た。引き続いて、モールド製作機で1cm×1cm×10cmのロッドに原材料組成物をモールド成型し、得られたロッドをガラスチューブに入れ、排気した。ガラスチューブを次に管状炉中での500℃で3時間の加熱に供してリン酸リチウム窒化物化合物(LIPON)を得た。化合物を乳鉢中で粉末形態に粉砕した。これらの粒子を弾性ポリマーマトリックスに加えて、所望されるアノード活性材料またはカソード活性材料と共にそれぞれアノードまたはカソードを作ることができる。
【0285】
実施例9:固体電解質粉末、Li10GeP2S12(LGPS)タイプ構造を有するリチウム超イオン伝導体の作製
ボールミーリング装置を使用して出発材料、Li2SおよびSiO2粉末をミーリング加工して微粒子を得た。これらの出発材料を次に、Ar充填グローブボックス中で適切なモル比のP2S5と共に混合した。混合物を次にステンレス鋼ポットに入れ、高強度ボールミルを使用して90分間ミーリング加工した。試料を次にペレットにプレス加工し、グラファイトのるつぼに入れ、次に炭素コーティングされた石英チューブ中に10Paで密封した。1,000℃の反応温度で5時間加熱した後に、チューブを氷水中でクエンチした。得られた固体電解質材料を次に乳鉢中での摩砕に供して、意図される弾性ポリマーマトリックス中に分散された無機固体電解質粒子として後に加えられる粉末試料を形成させた。
【0286】
実施例10:ガーネットタイプ固体電解質粉末の作製
c-Li6.25Al0.25La3Zr2O12の合成は、改変されたゾル-ゲル合成燃焼方法に基づき、650℃の温度でのか焼後にサブミクロンサイズの粒子を得た(J.van den Broek,S.Afyon and J.L.M.Rupp,Adv.Energy Mater.,2016,6,1600736)。
【0287】
組成c-Li6.25Al0.25La3Zr2O12の立方体ガーネット粒子の合成のために、化学量論量のLiNO3、Al(NO3)3-9H2O、La(NO3)3-6(H2O)、およびジルコニウム(IV)アセチルアセトネートを70℃の温度で水/エタノール混合物中に溶解させた。か焼および焼結の間の起こり得るLi損失を回避するために、リチウム前駆体を他の前駆体と比べてわずかに過剰な10wt%とした。溶媒を95℃で終夜蒸発させてドライキセロゲルを得、それを乳鉢中で粉砕し、650℃の鉛直管状炉中、一定の合成気流下のアルミナのるつぼ中で15時間か焼した。か焼は立方相c-Li6.25Al0.25La3Zr2O12を直接的にもたらし、それをさらなる加工のために乳鉢中で微細な粉末に粉砕した。
【0288】
(1070℃の水平管状炉中O2雰囲気下で10時間焼結した)この粉末から作られた約87±3%の相対密度を有するc-Li6.25Al0.25La3Zr2O12固体電解質ペレットは、約0.5×10-3S cm-1のイオン伝導性を呈した(RT)。粉末形態のc-Li6.25Al0.25La3Zr2O12(LLZO)の組成を有するガーネットタイプ固体電解質を、以前に議論されたいくつかの電気的な、イオン伝導性ポリマー中に分散させた。
【0289】
実施例11:ナトリウム超イオン伝導体(NASICON)タイプ固体電解質粉末の作製
八面体6配位Zr部位にアルカリ土類イオンをドーピングすることによりNa3.1Zr1.95M0.05Si2PO12(M=Mg、Ca、Sr、Ba)材料を合成した。用いた手順は2つの逐次的な工程を含む。最初に、アルカリ土類金属酸化物(MO)およびZrO2の固体溶液を875rpmで2時間の高エネルギーボールミーリング加工により合成した。次にNASICON Na3.1Zr1.95M0.05Si2PO12構造物を1260℃でのNa2CO3、Zr1.95M0.05O3.95、SiO2、およびNH4H2PO4の固体状態反応を通じて合成した。
【0290】
実施例12:一部の溶媒および添加剤ならびにx=0.2のリチウム塩分子比を有する対応する準固体電解質の引火点および蒸気圧
いくつかの溶媒(液体難燃性添加剤ありまたはなし)およびリチウム塩分子比x=0.2を有するそれらの電解質の引火点を以下の表1に提示している。OSHA(Occupational Safety & Health Administration)分類によれば、38.7℃を下回る引火点を有する任意の液体は可燃性であることが留意され得る。しかしながら、安全性を確実にするために、我々は、我々の準固体電解質を、38.7℃よりも意義深く高い(大きい余裕で、例えば少なくとも50℃の増加、好ましくは150℃を上回る、最も好ましくは250℃を上回る)引火点を呈するように設計した。0.2の分子比へのリチウム塩の追加は、所望される量の選択されたポリマーを液体溶媒に加える場合にこれらの基準を満たすために通常十分であることを表1におけるデータは指し示す。そのようなポリマーの追加は、引火点を実質的に完全に抑制することが見出された。
【0291】
【0292】
実施例13:熱硬化性モノマーまたはオリゴマー(トリエチレングリコールジメタクリレート、TEGDA)からの準固体および固体状態電解質
最初に、重量で30%のTEGDAおよび70%の有機液体溶媒(エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート/ジエチルカーボネート=4/4/1の比)を1.3MのLiPF6(リチウム塩)および重量で1%のジベンゾイルヒドロペルオキシド(開始剤として)と共に混合して反応物(反応性添加剤)を形成させた。5つのドライ電池を天然グラファイトベースアノード、Celgard-2400セパレータ(多孔性PE-PPコポリマー)、およびLiCoO2ベースカソードから作製した。適切な量の反応物をドライ電池の各々に注入した。4つの電池を、有機液体の重量%がそれぞれ約45%、27%、14%、および5%となる程度まで真空ポンプ処理を介する有機溶媒除去に供した。第5の電池は約64%の液体溶媒含有量を有した。5つすべての電池を次に50℃で2時間および80℃で2時間重合および硬化させた。電気化学測定(CV曲線)を1~100mV/sのスキャン速度で電気化学ワークステーションにおいて実行した。Arbin電気化学ワークステーションを使用して50~500mA/gの電流密度において定電流充電/放電サイクリングにより電池の電気化学的性能を評価した。
【0293】
別々に、液体反応物の同じバッチを5つのガラスチューブに注ぎ、電池におけるものとおおよそ同じまたは類似した液体溶媒の割合までポンプ処理した。これらの5つの試料を次に同等の熱処理条件下で硬化させた。45%および64%の液体溶媒の割合を有する試料は、ゲル様の状態を呈することが見出されたが;他の3つの電解質は相対的に堅く、固体様の状態である。実質的に固体状態の電解質を含有する3つの電池は、高い充電/放電レートにおいて不良なサイクリング挙動を呈するはずであるとバッテリー科学者は予想したであろう。驚くべきことに、5つの電池は、おおよそ同じまたは類似したレート能力を与える。しかしながら、固体状態電解質は、高い有機溶媒含有量を有するゲル電解質よりもはるかに安全である。
【0294】
実施例14:リチウム/NCM-532電池(最初にリチウムフリーである電池)におけるポリマー電解質
本研究において、開始剤としてのLiBF4およびリチウム塩としてのLiPF6を有機溶媒EC/DMC(v/v=1:2)中に溶解させて、有機溶媒中のLiBF4の濃度を0.5M、有機溶媒中のLiPF6の濃度を1Mとした。次に、表2に示される重量および比にしたがって、化学式Xおよび化学式Y(8:2の比)を有する反応性添加剤を、LiBF4の開始剤およびLiPF6のリチウム塩を含有する上述の有機溶媒に加えた。混合物を室温で混合し、徹底的に撹拌して電解質を形成させた。
【0295】
【0296】
【0297】
【0298】
上記の混合後に、様々な比較例および実施例において形成された電解質は最初に液体状態であった。45℃で約4時間静置した後に、様々な比較例および実施例において形成された電解質の物理的状態および外見は異なるものとなった。約4時間の反応後に比較例13の電解質はコロイド状態に変化し、実施例13a~13dの電解質は準固体状態または実質的に固体状態に変化したことを表2は示す。対照的に、比較例13の電解質は依然として液体状態であった。本開示の反応物は、リチウムイオンバッテリーまたはリチウム金属において準固体状態電解質または固体状態電解質を成功裏に形成することができ、これは安全(非可燃性)であり、液体電解質漏出問題を被らないことを結果は明らかにする。
【0299】
(当業者により予想されるように)液体溶媒含有量が重量で92%から46%へと減少する場合に電解質のリチウムイオン伝導性は最初に9.3×10-3S/cmから5.6×10-6S/cmへと減少するが、この減少傾向は約30%で終了し、その後に傾向は逆転することがさらに観察された。これはかなり驚くべきことである。リチウムイオン伝導機序は閾値液体濃度で変化するようである。
【0300】
一部の試料において、所望される量(全電極重量に基づいて重量で5%)の難燃剤(例えば別々にデカブロモジフェニルエタン(DBDPE)、臭素化ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキシド)(BPPO)、およびメラミン系難燃剤;後者はItalmatch Chemicalsからのもの)を反応物に加えた。
【0301】
いくつかの試料において、ガーネットタイプ固体電解質(Li7La3Zr2O12(LLZO)粉末)をアノードレスリチウムバッテリーにおけるカソード(NCM-532)に加えた。
【0302】
リチウムイオン電池の構築のために、グラフェンコーティングされたSi粒子ベースのアノード、多孔性セパレータ、およびNCM-532ベースカソードを積み重ね、プラスチック/Al積層エンベロープに収容して電池を形成させた。
【0303】
実施例15:固体電解質としてコポリマーの架橋ネットワークを含有するLi金属電池およびLiイオン電池
Li金属電池(アノード材料としてリチウムホイルを含有する)およびLiイオン電池(アノード活性材料として人工的なグラファイト粒子を含有する)の両方を作製した。両方の電池はカソード活性材料としてNCA粒子を含む。ポリマー電解質は、化学式5により表される重合可能なモノマーおよび化学式6により表される架橋剤のコポリマーから構成されるポリマーネットワークを有する。
【0304】
いくつかの例として、1M LiPF6およびN,N-ジメチルアセトアミド(共溶媒として)を含有するエチレンカーボネート(有機溶媒)を1:1の容積測定比で混合して電解質溶液を作製した。次に、15wt%のN-イソプロピルアクリルアミド(「NIPAM」、式5の例として)およびn=23を有する5wt%のポリエチレングリコールジメタクリレート(「23G」、架橋剤として)(各々の重量パーセントはポリマー電解質媒体の重量に基づく)を電解質溶液に加えた。次に1%のベンゾインエチルエーテル(BEE、開始剤として)を電解質溶液(重量で79%)に混合した。
【0305】
引き続いて、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を小さいボトルに入れ、次に3mlのアセトンで溶解させ、引き続いて上記の混合物と混合した。その後、N,N-ジエチルアクリルアミド(DEAA)を得られた混合物に加えて、ポリマー固体電解質用の組成物を得た。PVDF(1%)およびDEAA(5%)の含有量は、組み合わせられたNIPAM、23GおよびBEEの全重量に基づいて決定される。
【0306】
上記の組成物をガラス基材にコーティングしていくつかの電解質フィルムを得、それを別々に真空ポンプ処理して、液体溶媒含有量を重量で約80%(対照)からそれぞれ44%、27%、15%、および3.2%に低減させた。これらのフィルムを紫外線に約30分間供して重合および架橋させ、準固体または固体状態ポリマー電解質を得た。これらの電解質フィルムのリチウムイオン伝導性、物理的状態および可燃性を表3に要約した。液体溶媒含有量が重量で80%から27%へ減少する場合に電解質のリチウムイオン伝導性は最初に3.4×10-3S/cmから8.4×10-5S/cmへ減少することが分かる。この減少傾向は約27%で終了し、その後に傾向は逆転する。再び、これはかなり驚くべきことである。
【0307】
【0308】
一部の試料において、リチウム電池への注入に先立って難燃剤(例えばトリフェニルホスフェート(TPP)、およびItalmatch Chemicalsからのリン化合物である「Phoslite」)を電解質溶液中に分散させた。
【国際調査報告】